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【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】

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1 : ◆S6ROLCWdjI :2019/03/23(土) 09:15:09.54 ID:mHCNoPnp0
ようこそ、能力者たちの世界へ。
この世界は、数多の能力者たちが住まう世界。

無限大の大きさのこの世界。
多くのことが語られたこの世界だが、まだまだ多くの空白がある。
先人たちの戦い、絆、そして因縁。これらが絡み合い、この世界は混沌としている。
もしかすると、初めて見た貴方はとっつきづらいと思うかも知れない。
――だが、この世界の住人は新しい来訪者にことのほか優しい。
恐れず、以下に示す雑談所や、場合によってはこのスレでも質問をしてみてくれ。
すぐにスレへの溶け込み方を教えてくれるだろう。

【雑談所。質問や現状、雑談などはこちらでどうぞ】
PC【http://jbbs.livedoor.jp/internet/14029/】 

【はじめに】
このスレの元ネタはVIPで行われていた邪気眼スレです。
長く続けるに際して、いくつかのルールを設けています。以下にそれを記します。

この世界は「多様性のある世界」です。
完全無敵の能力は戦闘の楽しみがなくなり、またスレの雰囲気も壊れますので『禁止』です。 
弱点などがあると戦闘の駆け引きが楽しめます。
戦闘では自分の行動結果に対する確定的な描写を避けること。【例:○○に刀で斬り付ける。○○の首が斬れる】など。
基本の心構えですが、「自分が楽しむのと同じくらい相手が楽しむことも考える」ことが大事です。
書きこむ前にリロードを。場の状況をしっかり把握するのは生き残る秘訣です。
描写はできるだけ丁寧に。読ませる楽しみと、しっかりと状況を共有することになります。
他のキャラクターにも絡んでみると新たな世界が広がるかも。自分の世界を滔々と語ってもついてきてもらえません。
コテハン「推奨」です!
基本的に次スレは>>950が責任を持って立ててください。無理なら他の能力者に代行してもらってください。また、950を超えても次スレが立たない場合は減速を。
スレチなネタは程々に。
スレの性質上『煽り文句』や『暴言』が数多く使用されますが過剰な表現は抑えてください。
基本的に演じるキャラクターはオリキャラで。マンガ・アニメ・ゲームなどのキャラの使用は禁じます。(設定はその限りでない)

【インフレについて】
過去、特に能力に制限を設けていなかったのでインフレが起きました。
下記の事について自重してください。

国など、大規模を一瞬で破壊できるような能力を使用。
他の人に断り無しに勝手に絶対神などを名乗る。
時空を自由に操る能力、道具などを使用する。時空を消し飛ばして敵の攻撃を回避、などが該当します。
特定の物しか効かないなどの、相手にとって絶対に倒せないような防御を使う。
あくまで能力者であり、サイヤ人ではありません。【一瞬で相手の後ろに回り込む】などは、それが可能な能力かどうか自分でもう一度確認を。
全世界に影響を及ぼしたり、一国まるごとに影響が及ぶような大きなイベントは一度雑談所でみんなの意見を聞いてみてください。

 勝手に世界を氷河期などにはしないように。

能力上回避手段が思いついても、たまには空気を読んで攻撃を受けたりするのも大事。
エロ描写について

 確かに愛を確かめ合う描写は、キャラの関係のあるひとつの結末ではあります。
 なので、全面的な禁止はしていません。
 ですが、ここは不特定多数の人が閲覧する『掲示板』です。そういった行為に対して不快感も持つ人も確実に存在します
 やる前には、本当にキャラにとって必要なことなのか。自分の欲望だけで望んでいないか考えましょう。
 カップル、夫婦など生活の一部として日常的に行う場合には、一緒のベッドに入り、【禁則事項です】だけでも十分事足ります。
 あまり細部まで描写するのはお勧めしません。脳内補完という選択も存在しますよ。

前スレ【https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1550412867/】
wiki  【http://www53.atwiki.jp/nrks/
2 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2019/03/23(土) 09:52:49.93 ID:qjuKmnzw0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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3 : ◆S6ROLCWdjI [sage]:2019/03/23(土) 13:40:09.43 ID:mHCNoPnp0
【街中】
【そいつは今日も買い出しに出かけていた。向かう先はスーパー。今日も今日とて料理の練習をしたくって】
【無数にブックマークしてあるレシピサイト。はたまたSNSのお料理アカウント、見ながら何を作ろうか】
【鼻歌交じり、呑気に考えているだけだった。だけだった、はず、なのに】

………………あれっ?

【スマホの液晶を撫でる指先がふと凍りつく。フォローしているお料理アカウントのひとつ、ホームを覗いて】
【目が釘付けになる――料理のりの字もないよくわからないリツイート。じっと見つめるのなら】
【そこからハッシュタグに飛んで、さらにまとめサイトにまで飛んで――歩む足取りが完全に止まる】

【黒いオーバーサイズのスウェットを、ワンピースみたいに着ている少女。目立つ赤髪。スマホを見つめる視線も同色】
【すっかり暖かくなったからタイツの類は履かないで――生足の先に靴下と、これもまた真っ赤な厚底靴】
【そんな出で立ち。街中に溶け込むにはまあすこし髪が目立つ、その程度の子だったけれど】

【(友達が実はカルトの残党だった。そしてそれを知り合いが――伴侶の属する組織が、工作して匿っていた)】
【(そんなことを知ってしまった。だけど彼女にとっては「そんなこと」どうでもよかった)】
【(一番肝要だったのは――ひとつだけまとめられた呟き、しかしさしたる反応もされなかったはずのそれ)】

【 「相手の女、冒涜者じゃね?」 】

…………………………、う、……ゔぇ、っ、

【――流れ続ける人混みに肩を押されて。思い出したかのように二歩、三歩ふらついてから――蹲る】
【スマホを持つ手と逆の手で口元を押さえていた。気分が悪くなったようだった。そうしていれば流れる人々も】
【さすがに少女を放置するわけにはいかなくなって――「大丈夫ですか?」「気分悪いの?」】
【彼女を囲むようにして、ほんのちょっとした人集りができる。その中心で彼女は――顔を、真っ青にしていた】
4 :?????? ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 14:18:41.64 ID:QhqfSCns0
【――――国を越えての情報の伝達は、ネットワークが発達した今の時代、それこそノータイムで成立するもので】
【『コト』が起きてからさほどに間を置かず、『彼ら』は自分たちが、知らぬ間に危うい立ち位置にいる事を、知らされる事になる】



【――――風の国 『導人会』出張所】

――――ジャファー、ジャファー聞いたか!?
「声がでかいぞガゼル……言われずとも、こっちにも報告は届いたって……」

【現在、風の国にて急速に、知名度と支持とを伸ばしている、政治結社。次の国政選挙に名乗りを上げるだろうと、しきりに話題を浚っていた『導人会』】
【その最高幹部の2人――――ガゼルとジャファーは、共に切迫した様子で、顔を突き合わせていた】

……これは、どう考えれば良い? このカード……そうおいそれと切っていいものではなかったはずだが……!?
「言われずとも……相談なしに、こんな危ない橋を渡るもんかい。見ろ……流れの着火点は別だ
 恐らく……誰かの描いた絵だな。個人が、こんな詳しく事情をペラペラできるもんかい……
 誰かにとって、こっちの「突然の戦闘」によって、事情が変わった。だから、ついでに俺たちに導火線を引いてきた……んなところだろ」

【『外務八課』の存在。朧気ながら、彼らもその情報自体は触れていた。だが、まだ利用価値も準備も無いと、温めていたはずのものである】
【それが、急速にネットワーク上に拡散している。それどころか、その発信源の1つが、自分たちに連なる様な印象を与えるもので――――】
【――――拙速の裏工作が、自分たちに絡みついている。それを理解した2人の危機感は、徐々に煽られていく】

……『戦略・対策部』としては、どうする? こんな流れ、下手に巻き込まれれば、無用な火種だぞ?
「確かに……せっかく大っぴらに、国政に踏み込んでいけるかってところだってのに、ここで足を引っ張られたくはないな
 ――――けど、考えようによっては、上手い具合に調理できるんじゃないか?」
なに……?
「――――こそこそするから後ろめたいのさ。やるんだったら大手を振って、胸を張って堂々と、だ……
 ガヤなんざ使わず、表立ってグイグイ発言してけば良い。そしてヒットしたら……奴らに内政干渉の疑惑ありと、大々的に糾弾するんだよ
 後は今まで通りだ……水の国の醜態を踏むな、それは『魔能制限法』だけでなく、『外務八課』の存在も然りだ、と……手札に加えて、終わりだよ……」

【だが――――彼らも、ただでは終わらない。状況が変わったなら、それに対応して、もう1度利用するまで】
【狼狽は、さほど間を置かずに、狡猾にとって代わられていく――――】

――――簡単に言ってくれるな? それを言うなら、こちらの腹も堂々と探られかねんぞ?
「そんなの、今更だろう……? 疑惑なんざ、虚々実々、今まで俺たちにもついて回ってたじゃないか。何も変わらない……
 それに……そういう手合いを上手い事調理するのが、お前さん……『広報・実働部』代表、ガゼル=イヴン=カーリマン様じゃないのか?」
……本当に、簡単に言ってくれる……だが、まぁ良い……分かったよ。躓きの石は、向こうに蹴り返してやろう……そういう事だな?

――――それと、この流言の発信源、部下たちに探らせなければな……流石に、そこは押さえておきたい
「あぁ、そこから先は兵隊たちにお任せするよ。俺は情報収集と分析、作戦立案に専念だ……」

【――――彼らのするべき事は変わらない。水の国の醜態を殊更に喧伝し、その危機感の中、風の国を上手い方向に誘導する事――――それだけである】

/いわゆるソロール、絡み不要です
5 :?????? ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 14:39:13.27 ID:QhqfSCns0
>>3

――――良い様だ、来な……!
<……本当に、意味あんのかよコレ……?>
しょうがないじゃないさ……見つかったら負け、遅くても負け……旦那の頼みだってんなら、少しくらい身を張るしか、もうしょうがない……
<そりゃ、そうだけどよ……――――っ、い、行こうお姉ちゃん?>
……えーと――――そうだね、急ごう……
{(……2人とも、ぎこちないの、もう少しどうにかならないのかしらぁ……?)}
<(うるっせ! 俺に女の振りしろとか、カメに空飛べって言ってる様なもんだぞ!)>
「(良いから2人とも……今は急がないと……)」

【雑踏の流れは、その時まではなんて事も無かったのだろう。その中に紛れた彼女らが、多少特異な見た目でも、それは正常の中に紛れていた】

【銀色のウェーブがかったロングヘアーに、目元をサングラスで隠し、毒々しい赤い口紅が塗られた唇をしている】
【全身は、飾り気のない黒のライダースーツで固められており、スマートな印象を与える】
【両手足が、どこか不釣り合いな細さの、鋼鉄製のものに接ぎ変えられている、身長160cm前後の女性と】

【灰色のフード付きパーカーに、さっぱりした色合いのチェック柄の入ったスカートを履いた】
【額に、正三角形の形に、赤・青・緑の点が浮かび、それらを繋ぐ様にぼんやりと光の円環が浮かび上がっている】
【少し癖のあるオレンジ色のショートカットと、赤色の瞳が印象的な、身長140cm前後の少女】

【パーカーの少女の手には、やけにごつい銀色のジュラルミンケースが携えられており、それを重そうに持ち歩いている】
【いささか奇矯な2人組は、それでも人の流れの中を、静かに進行している、はずだった】

【――――蹲った少女の姿を認める、その時までは】

……、ん……?
<お、お姉ちゃん……あれ……?>
あの格好……ひょっとして…………?
――――おいお前、アーディンの旦那のとこに、前に顔出してた子じゃないのかい……?

【彼女らも彼女らで、蹲る少女を認めて、声をかけたのだろう。だが、そのニュアンスは、他の面々とは異なっていた】
【――――彼女らは、その姿にピンとくるものがあったのだ。知り合いの、知り合い。話だけは聞いていた、その赤色が、印象に重なって】
【2人は、歩みを曲げて、その少女に声をかける。何か、尋常ではない事が、あったのだろうと――――】
6 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 14:48:01.11 ID:mHCNoPnp0
>>5

……………………?

【朦朧とした目で近づいてくる二人を見上げる。顔色はやっぱりよくなくて】
【ただ、口元を隠していた手だけはのける。スマホはそのまま――例のまとめサイトを開いて】
【本当にぼうっと力なく、辛うじて前を見ているだけの状態だった。それでもなんとか口を動かし】

…………、……おねーさんは、……アーディンさんの知り合い?
そっか、そうだよ……うん。あたし、アーディンさんにたくさん世話になって……
夕月っていうの。ごめんネ、なんか、心配かけちゃったみたいで……大丈夫だから、

【ふらり、危うげな足取りで立ち上がるのだろう。そうして何でもないと言いたげな顔して笑うから】
【明らかに何かしら無理しているのは明白だった。本人的にはうまくやっているつもりなのだろうが】
【…………話題を変えたかったらしい。あるいは逸らしたかった。胡乱な速度で視線を動かして】

すっごい荷物持ってるじゃん――どしたの? 旅行用ではないよね、ケース……
ぎっしりお金が詰まってるとか? ふふ、…………けほっ、

【指さすのは少女が持ったジュラルミンケースだった。冗談めかして笑うのも、やはりどこか下手糞】
7 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 15:01:04.25 ID:QhqfSCns0
>>6

(――――随分な感じだねぇ。何があったってのさ……――――なんか、見てたのか?)

【サングラスの奥で、女性はふと考え込む。不意に体調を崩したというよりは、何かにショックを受けた様な状況だ】
【では、そのスマホに映っているのは何なのか――――流石に、そこを問いただすほどには、胸襟は開かれていなかった】

……やっぱりそうかい?
実はあたしもさ、あの旦那には色々と世話になっててね……話は、ちょっとばかりだけど、聞いてたのさ
――――あたしゃ、ブラックハートって言う。で、こっちが……何というのかな、友達、で良いのか……
<……リベルです。リベル=アシェル……よろしくね?>

【手を貸そうとも思ったが、何とか少女――――夕月は自力で立ち上がり、それを見守りながら、女性――――ブラックハートは名を名乗る】
【ただ、手を貸すのもどうかと言う話だったかもしれない。彼女の両手足は、鋼鉄のニセモノ。通常の義肢と違い、ある程度自在に操れているようだったが】
【そんな冷たい手を貸す事が、良かった事かどうかは、分からないのだ】
【そして、そばについている少女――――リベルも名を名乗る。本当ならその名は彼女『自身』ではないが、余計な事を言って、混乱させる必要もないだろう】

ッ――――……これかい。これはね……そのアーディンの旦那に頼まれた荷物なのさ
大事なもんでね……ただの一抱えのケースだけど、わざわざ2人掛かりでね……
<大事なものだから、直接運んで欲しいって言われて、私たちで……>
<(……なんて言えばいい、この場合……?)>
{(一緒に届けようとしてる所、とでも言いなさい。本当に下手くそなんだから……)}
<――――2人で一緒に、届けなきゃいけないんだ……>

【何かで、気持ちを紛らわせようとしているのは、分かる。それに、2人にとってもその方が好ましかった】
【問題なのは、夕月が興味を示した先――――ケースに触れられて、わずかに2人の表情が曇る】
【殊に『リベル』は、言葉に妙な間を挟んで、口ごもり――――実際には、言動のフリに悩んでいたのだが、荷物の言い訳に口ごもっている様に見えたかもしれない】

――――ともあれ、歩けるかい? 目立っちゃったからね……少し、フケようじゃないのさ

【先ほどまで蹲っていた夕月の周りには、まだ数人の通行人がいたのだろう。ブラックハートは、夕月に歩けるかと問いかけた】
8 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 15:13:32.95 ID:mHCNoPnp0
>>7

【――目を凝らさなくても。そのうちにニュースで見る羽目になるかもしれないのだから】
【ここで聞かなくていいのは本当のことかもしれなかった。「それ」に、何故少女がショックを受けていたか】
【そこまでは解らずとも。……それとも、アーディンに聞けば諒解できるのかもしれず】
【どっちにしたってここで聞かなくてもいい話なのは変わらないけど。それでもいつかは――ばれるのだろうが】

ブラックハート、さん、に……リベルちゃん。うん、よろしく。
……そんな大切な荷物だったんだ。そっか、アーディンさんが頼むくらいなんだったら
本当にすごいものなんだろネ、…………そっか。じゃあ、気を付けて――

【口ごもる動作にはさしたる反応を示さなかった。示す余裕もなかっただけ、とも言えるけど】
【それだけ聞いたら――あろうことかさっさと踵を返し、帰ろうとまでするのだった】
【今は誰とも会いたくない。そう言いたげな態度と言動、しかし実際のところ身体はそれについていかず、】

………………っあ、……へい、き……だよ。歩ける、あるいて、帰れるから……

【嘘もいいところだった。二、三歩目でよろけて倒れかけた。ならば腕を引っ張ってでも動きを止めて】
【どこかしらで休ませてやるのが「ただしい」はずだった。だけど少女はそれすら嫌がる素振りを見せるから】
【「何かあった」のはどう考えても明白だった。……それも、アーディンの知り合いたる二人には言い出せなさそうな】
【そういうことを隠していそうな気配。――なら、前言撤回、問い詰めてやったほうがいいのかとも思わせる】
9 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 15:32:27.33 ID:qRStJCCTo

【焼け付いたような白い午後だった。マスメディアの垂れ流すニュースは何時にも増して喧しかった】
【 ─── 水国の外務省に属している秘匿機関が、種々の違法な軍事作戦に関与し、剰え壊滅した筈のカルト教団/その幹部を雇用していたという風聞】
【街頭を見上げる人々の騒めきが途絶える事はなかった。誰もが誰もを疑っていた。この街に平和が齎された事などあったろうか】

【水国/首都フルーソ。"最高議会"野党の主要本部/その一ツである高層複合ビル、"ウォーターゲート"】
【硝子を基調に彩られた、ごく清潔なエントランス。 ─── 入口近く、柱の裏側。人影一ツが佇んでいた】



    「状況、開始。」



【冬も終わるというのに厚手のトレンチコートを着込んでいた。一瞥するに上等なスーツは一張羅にも見えた】
【ハンチング帽を目深に被って、 ─── 耳朶と口許に何かを付けていた。嗄れた声が独白のように囁いた】
【ひどく人目を引くべき男だった。それでも傾き始めた陽に晒されて雑踏は疎らだった。ならば、或いは】


/そんなに長いロールにはならないかもしれません。しばらく見ています
10 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 15:33:03.01 ID:QhqfSCns0
>>8

……色々訳ありでさ。あたしの身体、ほとんどがニセモノなのさ……
ま、生きてるだけで儲けものだから、今更そんなに気にしちゃ、いないんだけどね?

【夕月の機微から、ブラックハートは自分の体に、夕月がまた、何らかのショックを受けたらしい事を理解したようだった】
【苦笑しながら、黒鋼の腕で、金属繊維の髪を掻き撫でる。流石に、間接的に面識があったとはいえ、初対面の人間に対して詳らかに話す事でもない】
【ただ、自分は気にしていないと笑ってごまかすのが、精一杯だった――――夕月の方にも、事情があった事など露知らず】

(……流石に、メンテナンスも……限界が近いかもしれない。あたしゃ、くたばる前に……何が出来るってんだろうね……)

【そして、ブラックハート自身はと言えば、既にいつ死んでもおかしくない環境に身を置いている】
【表層を取り繕いながら、ふと心に陰が差さる。生き延びた事の意味を、なす事はできるのだろうかと】

あぁ……ちょっとあの旦那の『裏』に触れる事だし、ほら……今色々ときな臭いじゃないか、櫻州とか色々と、ね……
何とかしなきゃいけないのさ。だから……命を張る事にも、なるというか、ね……
<……本当は、『UT』にお世話になってるんだけど、私たち……アーディンさんが、気に掛けてくれたから、お手伝いをしてて……>
{(――――可愛くなってきたんじゃない? 初々しいランドちゃん?)}
<(うるせえぞルヴァ! お前後で覚えとけよ!?)>

【ケースについては、微かに仄めかす程度に抑えた。聞いている『敵』――――彼女のやり口なら、こんな会話からすらも、糸口を掴まれてしまいかねない】
【ただ、1つだけ言える事は――――ブラックハートとリベルもまた、戦っているという事だろう】

え……あぁ、大丈夫なら……――――ッ?
……夕月、あんたすっかり参っちゃってるじゃないのさ! 今は無理ってもんだ……リベル、少しばかり……!
<ま、待てよ! あぁ、いや……ちょっと待ってよお姉ちゃん! 『これ』は……!?>
……放っといて良いものだったら、放っとくさ……そうはいかねぇだろ、リベル……! 夕月、ちょ……――――ッ

【そのまま去ろうとする夕月を、釈然としないままに見送ろうとしていたブラックハートだが】
【そのコンディションが、想像以上に悪い事を悟り、思わず駆け寄る。同時に、明らかにリベルの言動が乱れるが】
【それよりも――――何か、意地を張ってる様な夕月の態度に、ブラックハートは唇を噛み締めた】

――――あたしに話せないなら、ラベンダーを呼ぶよ。あいつなら、なんか話してやってもいいんじゃないかい……?

【夕月の頑なさに、ブラックハートはラベンダァイスの名前を出す。もう少し、気心の知れた相手なら、という事なのだろう】
【そうして、通信端末を取り出す。このまま、夕月を放っておくつもりはない様だった】

……なんだ、なんかバズッてる……?

【連絡を入れるかどうか、それを勘案しながら端末を取り出したブラックハートは、通知に気づく】
【――――恐らくは、夕月の見たそれと同じ情報が、ブラックハートの下に届いているのだろう】
11 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 15:47:27.23 ID:mHCNoPnp0
>>10

えっ? …………あ、そんな、あたし別にそんなつもりじゃ……
身体がニセモノだなんて、そんなこと! ぜんぜん気にしてないよっ、これ本当だから――

【はっとする。間違えた風に捉えられてしまったことを深く恥じて、ぶんぶん首を振る】
【そうして言うことは取り繕っているようにも聞こえるかもしれないが――かぎりなく本当のことだった】
【そも、夕月という少女自身が「ニセモノ」の命をしているのだから。……それは今、どうでもいいかもしれないけど】

…………そうだね、櫻も、水も――いろんなことがあって。
アーディンさん、やっぱり忙しい? だったらパーティしてだなんてワガママ言えないや。
あのネ、……あたし、アルクさんやレグルスさんにたくさんお世話になったから。そのうち会いに行きたいって、

【「思ってたんだけど――」 声がどんどん細くなる。ふたりの口から聞くに、そんな暇はないのだと】
【理解してしまう。だから彼らに別れの挨拶を告げることすらできないのだって、我慢しなければならない】
【しょうがないって思っていた、こんな世界だから。だから――目の前のふたりもまた戦士であること、理解するのだろう】

…………っ、……ラベンダーちゃんにまで、迷惑かけらんないよ。大丈夫、ごめん……
ちょっと休んだらきっとよくなるから、だから――そうだな、それまでちょっとそばに居てくれたら、
それでいいから、――、…………。…………バズ、…………ああ、

【ブラックハートが端末を出すのなら、やっぱり意地を張ったように首を横に振るのだろう。そうして】
【彼女が何かに気付いたのを悟る。であるなら、諦めたような顔をして――嘆息交じりの声を上げた】
【ならば十中八九、「それ」が原因なのだとわかってしまうのだろう。だって夕月は、縋るような目つきをしていた】
【お願いだからそれを見ないで、なんて顔。しかし彼女らは初対面、そんな懇願に付き合ってやるほどの絆はないなら?】
12 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 16:10:25.04 ID:QhqfSCns0
>>11

お、おいおい……そんなに焦るような事でもないんじゃ――――
(ぁ――――アリア……そういや、「そういう事」も、有り得る訳か……)
ま……良いじゃないのさ。どうあれ『今』が、一番あたしらに結びついている。それだけさ……

【確かに、取り繕いに思えていた。ブラックハートとしても、昔に比べて丸くなったのか。それを宥めるような言葉がすんなりと出てきたが】
【――――そうれは同時に、相手の事を察する能力が低減している事も、意味していたのかもしれない】
【昔のブラックハートなら、もう少し早く察する事も出来ただろう。アリアの様に――――「自分みたいな」奴も、いない事はないのだろう、と】

――――あ……あぁ、そういう事かい……
……奴らの事は、あたしも悔しく思うよ……一度、危ない所を助けてもらっちまってたし、ね……
でも……そうだね。旦那、何でも近頃、敵に一杯食わされたって言ってて、最近ピリついてるのさ……
――――生きてるうちに、顔を合わせておくのが、一番なのかもしれないけど……――――『人間』どもはまだ、虐げ足りないし、泣き足りないらしい……ッ!
<……>

【夕月と、アーディン達との約束。それを聞くと、ブラックハートも表情を曇らせる】
【レグルスとアルクの、虚神との戦いの中での戦死。それは、流石に彼女も無関心ではいられない】
【落ち着いたら、その時こそ――――そんな約束を、一体どれくらい果たす事が出来るのだろう?】
【久々に、「『人間』の愚かしさ」を呪いたくなる心地が、ブラックハートの中から湧き上がっていた】

……逆に、こんな時だからこそ……アーディンの旦那には、息抜きが必要かもしれないって、話かもしれないけどね
――――切れちまいかねないよ。今のままだと……この世界、そのものが……
<お姉ちゃん……でも……>
……所詮、無いものねだりってか……やり切れんね……

【消沈する夕月を慮ってか、夕月の方から声を掛けたらどうかと、それとなく仄めかすブラックハートだが、静かにリベルが諫める】
【――――今の夕月は、明らかに精神的に摩耗している。とてもそんな気分にはなれないだろう、と】

……そうかい。でも、無理はしないで。確かに、少し落ち着いた方が良い……あたしらも、少し早いけどここで休憩と行こう……
――――ん…………

【少なくとも、そばに居てくれれば――――その言葉が聞けただけ、前進なのだろう】
【ブラックハートは連絡は諦めたようだが。もののついでとばかりに、ネットを閲覧してしまう】
【――――気持ちが急いていたのだろう。夕月の言外の懇願に、気づいてさえもいなかった】

――――なんだこりゃ。暇なのか……それとも感覚がアホになってるのか。こんな馬鹿馬鹿しい事で、よくもまぁ…………

【蜜姫かえで、そして『外務八課』の疑惑。それを目にして、ブラックハートは呆れた様な態度を見せるだけだった】
【『コト』の重要性を、理解していない。ただ、慌てふためく民衆の、集団パニックの様なもの、程度にしか、受け取っていなかったのだろう】
【夕月の不安は、取り越し苦労だったのかもしれない――――が】

――――『冒涜』…………ッ?

【――――ブラックハートが漏らしたその一言、声のトーンが下がったのは、間違いないだろう】
13 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 16:21:45.86 ID:mHCNoPnp0
>>12

…………そっか。今みたいなときこそ、……会ったほうがいいのかもしれないのか。
ならそのうちにでも行こうかな、えへへ……アルクさんとレグルスさんってどんなものが好き?
プレゼント、持っていきたいの――あたしはアルクさんにもらってばっかりだったから、……、

【曇り行く空気を振り払うようにして、またしても話題の転換。ふたりの墓前に供えるものについて】
【あれやこれやと思いを広げていくのも――束の間の話でしかなかったのだろう】
【近くのベンチにでも座って、三人は休息を取り始めるだろうか。そしたら、ブラックハートは見てしまうから】

【蜜姫かえで。外務八課。その単語が耳に入っただけだとしても、きっと夕月は怯えただろう】
【何せ前者は友達だった。後者に至っては、伴侶の属する組織だった。それが今や「炎上」だなんて】
【そんなスラングじゃ言い表せないほどに燃え上がっている。だけど問題はその次であり、】

……………………っヒ、………………、

【冒涜。その単語が、低い声にて紡がれたことに関して。夕月は間違いなく怯えの表情を見せた】
【なんなら顔なんか見ていなくてもわかってしまうのだろう。びく、と痙攣するように体が震えていた】
【それはどういう感情によるものだったろう。……ブラックハートが思い当たった節、「自分みたいな」、――】
【そこが引っかかるのかもしれなかった。すなわち、この少女は“冒涜者”とやらに害されたのではないか、と】

【そう考えることもできた。けれど実態は少し違うようにも見えた――夕月の表情を見返してみるなら】
【限りなく、「そんな怖い声を出さないで」と言いたげな。そんな顔をしているのだから】
【おかしな話だった、まるでこの少女が、“冒涜者”とやらの身内――それもいい意味でのもの、みたいな態度、取るのだから】
14 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 16:42:00.65 ID:QhqfSCns0
>>13

……本当ならね。会えるうちに会っておく。今はそれ、馬鹿に出来ないんじゃないか、多分ね……
――――2人の場所だったら、あたしも知ってるし、レグルスは1度、『会って』きた……

【今のご時世、どうしてもネガティブな意味合いを払拭し切れないが、それは大事な事なのだろう】
【レグルスの言っていた「悔いのない様に」――――例え戦士として生きる人間でなくても、個の心がまえは、大事なのかもしれない】
【それは、生者に対してだけでなく、死者に対しても同じ事だと言わんばかりに】

アルク? ……あいつはね、なんでも……意外と、料理なんかが好きだったそうだよ
よく、サンドイッチだのラスクだの、頬張ってたらしいし、たまに自分で作ってたらしいね……
<レグルスは……レグルスさんは、お酒……重たいビールなんかが、好きだって言ってました……
 お姉ちゃん……お墓参りに、お酒持って行ったって……>

【彼らは、アーディン程にはレグルスとアルクについては、詳しくない。それでも、その人となりを伝えることくらいは出来た】
【アルクについては――――かつての『たんぽぽ』でのやり取りが思い出されるだろう。中性的な風貌だったが、そういうところは得意だったらしい】
【そしてレグルスは、ある意味、言うまでも無い事かもしれない。見た目からして、豪快に酒を煽っているのが似合う奴だった】
【彼の下に持っていくとなると、もう酒以外に思いつかない。それが2人の見解らしい。それも、妥当なものだろう】

【――――そんなやり取りも、すぐに上塗りされることになる、その異変――――】

……背の、馬鹿高い女……? ――――まさか、アリア……!?

【関連情報を覗いていくと、1つ気になるものがあった。そのキーワードに、引っかかる人物が、記憶の中にあったのだ】
【――――自分の同類。恐らくはそうだった彼女。同じくレグルスを弔った彼女が、この騒動に関係している――――】

――――考えてみたら、このかえでってのも、あたしみたいなもんか――――

【呆れつつも情報を流し見して、その中にブラックハートの中に、妙な感慨がわき上がった】
【本当だったら、自分だって、今すぐにでも往来から石を投げつけられ、打ち殺されていてもおかしくない人間なのだ】
【それが、話題の渦中にあるという事――――思わず、己が身と重ね合わせて考えてしまい】

ッ――――、ゆ、夕月、どうした……?
お前、こいつと――――「この畜生」と、何かあったんだな……!? ――――ごめんな、それでそんなに……
<…………ッ、おね――――――――ブラックハート……ッ!>
あぁ、なんだ……ッ? ――――――――ッ?

【夕月の失調に、ようやく気付いたブラックハートが、慌てた様子でその顔を覗き込む】
【夕月を心配している様ではあったが、その言葉は、そして頬のヒクつきは、明らかな怒りを押し殺しているもので】
【ようやく、夕月の不調の原因が、この一連の騒動にあるのだと理解して、ブラックハートはバツが悪そうに、夕月に謝罪する】

【――――それが、「それだけではない」事に気づいたのは、リベルの方だった。彼女も、低いトーンでブラックハートの名前を呼びながら、その袖を引っ張り】
【改めて、ブラックハートは、夕月を、何かを言いたくて言い出せなさそうな、その微妙な態度に気づくのだった】
15 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 16:58:15.07 ID:mHCNoPnp0
>>14

………………、そっか、じゃあアルクさんにはお料理――ピクニックに持ってくみたいなやつがいいのかな。
あたし最近練習してるんだ、だからきっとマシなのが作れるようには、なったし、……レグルスさんはお酒、
そっか、………………そっか。ふふ、ふつうに、パーティの準備、するみたいな――――

【青い顔のまま。話の節々に意味深な沈黙を挟んで。話すのはやっぱり、話題を逸らしたいからか】
【少なくとも無理矢理作った笑い顔はもはや引き攣り顔と言ってしまったほうが、正しかった】
【そのまま楽しい、幸せな――近しい未来の話だけしていたい。させてほしい。どうか、そうさせて】
【願うように呟くのはほとんど譫言のような響きを持って、……しかし、ブラックハートは気づいてしまうから】

ち、が…………違うっ、……ちがわないけどっ、何もなかった、わけじゃないけどっ、
…………むしろたくさんあるんだけど、…………、そうだよね、「畜生」だよね。
ハートさんだってわかるもんね、何もされてないハートさんでも……こいつはひどいヤツだって。

あたしだって、…………あたしだってわかってるよ、“冒涜者”だなんて、
本当だったら生きてていいようなヤツじゃないってわかるよ、真っ先に死ぬべきヤツだって、わかってるよ――

【ほとんど独白のように一方的に喋り始めるのは、どこか強迫観念に囚われた患者にも似て】
【表情は依然として引き攣り笑いのままだった。いま自分が口にしていることが限りなく正しいと】
【自分で自分に言い聞かせて安心を得たがっているような――だのに身体はそれに反比例して】
【震え始めるのを、二の腕を掴んで抱きしめて、押さえつけるようにして――血反吐を吐くみたいに言うから、】

―――――やっぱりそうだよね。あたしがおかしいんだ、……ミアが今度こそ間違いなく殺されちゃうかもって!
そんな当たり前のことが、………………あたし怖いんだよ、だって、だってミアは、あたしの…………

【吐くものがなくなってしまったなら最後、本当に本当のことしか言えなくなってしまうのは道理だった】
【それでも最後の言葉だけはどうにか言わないようにして、我慢しているのは明白だった】
【唇は依然狂ったみたいに端を吊り上げて笑うのに、目だけが限界まで見開かれて、ぎちぎち音を立てそうなくらい】
【であれば、わからせてしまうのだ。この少女もどこか「おかしい」。だって何故だか、“冒涜者”を想うような言葉を、口にしている】
16 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 17:20:01.81 ID:QhqfSCns0
>>15

(……考えようによっちゃ、これ……これも、残酷だな……ドラッグに逃げるってのを、まんま見てるみたいだ……)

【なんて事のない話題に興じながら――――興じようとしながら、必死の作り笑いをしている夕月に、なんとも言えない心境になる】
【無理をしている事が、手に取る様に分かってしまうから。そして、その無理を、更なる『無理』で塗りつぶそうとしている】
【――――こんな時に「しっかりしろ」などと言うべきではない。正解が、正着手が見えないから、ブラックハートは何も言う事が出来なかった】

<……ブラックハート、ちょっと……>
――――夕月、今はもう何も考えなくていい。余計な事は、雑音は、もうこれ以上……ッ――――!?

【そんな無理が、逆方向に溢れ始めた――――リベルはもう、偽装している口調を投げ捨てて、ブラックハートに厳しい視線を向ける】
【ブラックハートとしても分かっていた。夕月に、この現実を見せるべきではない。シャットしなければならない、と】
【――――だが、もう遅すぎた。恐らく、崖際の巌を、転がしてしまったのだ】

――――ッ、ミア…………!?
<……ブラス、フェ、ミア――――ブラックハート、もしかして、夕月は……!?>
……言うんじゃないよ、『ランド』――――分かってる……分かってる。安くはないよ……何か、とんでもない、何か……あるのは、分かってるんだよ……!

【そして、夕月の口から漏れ出た愛称――――『ブラスフェミア』を表すのだろうその言葉に、2人は息を飲む】
【ブラスフェミア。恐らくは、夕月にとって、因縁浅からぬ関係であり、そして――――話題の渦中に居る、台風の目】

【――――もっと言えば、何よりも――――】

――――――――夕月、ちょっと良いかい…………――――この刻印、見た事は無いか……?

【ブラックハートは、少し間をおいて、取り出した紙に何やらマークを書いていく。30秒は掛からないだろう、書き上がったそれを、夕月へと示して】

――――これは、『ブラスフェミア』と言う人物を表す、或いは……彼女が自身で使っている、シンボルマークだって話だ……

【やりきれない様に、しかし抑えきれない怒りを表すように、ブラックハートは、努めて平明な事実を口にする】

――――アーディンの旦那の保護してた『子供』が、このマークを刻み付けられて、バラバラにされちまったんだ
……アーディンの旦那に、一杯食わした敵って言うのが……子供をズタズタにしてのけた、ブラスフェミアって女なんだよ……!

【そのマークの出所。それは、アーディンの――――恐らくは、彼の善意か何かで面倒を見ていた子供の、凄惨な有様にされた体に残っていたモノ】
【――――アーディンが現在、敵として戦っているのは。――――そこから先は、もう言う必要も無いんだろう】

【――――しかし。ここに来てブラックハートは、全く突拍子もない事を、口にし始める】

――――夕月。あたしゃ実は……元『機関』の操り人形だったんだ。セリーナが……命がけで助け出してくれて、アーディンの旦那が、世話を焼いてくれた……
おかしいよな? そもそも、敵としてさえ会った事のない、知らない他人に過ぎなかったってのに、さ……

――――他人であっても良い。話せる事があるなら、話してくれないかい? 思い違いかもしれないけど、あたしゃ……なんだか、あんたが……

【他人に隷属させられていた過去。それを持っているブラックハートは、夕月の事を「放っておけない」と思ったのだ】
【もしかしたら、何か束縛の下にあるのかもしれない。それが事実ならば、どうか話して欲しい、と――――】
17 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 17:41:07.81 ID:mHCNoPnp0
>>16

【描かれたシンボルを見て、引き攣っていた唇がぐっと噛みしめられる。それだけで十分だった】
【肯定も否定もしなかった、けれど前者であるのは明らかだった。だって見覚えのないものを見るなら】
【こんな顔などしないはずだ。こんな、――ああ全部が終わってしまった、なんて悟ったような、顔】

……………………こども、を、…………ずたずた……?

【そうしてオウム返しのように呟く声色にも――やはりどこか心当たりがあるとでも言いたげな色が含まれる】
【だって彼女は、件の女から直接聞いていた。「ちょっと難しいお仕事があるから」、つい最近のこと】
【であれば「それ」が「そう」だったのだと、理解してしまうのだ。もはや逃げる場所、逸らせる話題などどこにもなく】

【――――もいちどぐう、と唇を噛みしめる。何も言い返せることなどない。これで終いだと思って、けれど】
【ブラックハートがいくらでも言葉を選んで、思慮して、言ってくれているのがよくわかった。……わかったからこそ】
【夕月はひどくつらそうな顔をする。俯いてしまう。軽く頭を横に振るのであれば、それは決別の証となって】

………………ハートさん。ハートさんとあたしは、きっと、……違うよ。
ハートさんはきっとひどい人に無理矢理言うこと聞かされてたんでしょう? ……あたしはそうじゃない。
あたしはあたしの意思で生きてる、今も、昔も、これからも――だからあたしはかわいそうなんかじゃない。

あたしは、………………あたしの意思で、ブラスフェミアを見捨てない。
見捨てられない、じゃなくて――――見捨てたくない。だから、………………だから、

――――――――――――ごめんなさい。ねえ、伝えておいてくれる?
アーディンさんに、…………シャッテンさん、ラベンダーちゃん、……アルクさんと、レグルスさんにも。
あたしきっと、…………みんなに銃口を向ける、悪い子になる。ミアのこと、殺されるの、いやだから――

【束縛されている、と言うのなら――きっとその感情にそうされているのだ。“冒涜者”が術をかけたとか、】
【そういう話ではなくて。この少女はきっと、あの女に、捨てきれない――膨大な熱量を持った感情を抱いている】
【それはきっと、今しがた口にした人々への感情を束ねたって叶わないくらいに轟轟と燃えているものだった】
【もう消し方すらわからないのだろう。抑える方法すら。だから、――少女は徐に、提げていたショルダーバッグを探って】

――――――――ほんとうはごめんなさい、だなんて言えないくらいひどいことしてる自覚はあるの、
だけどやっぱり、どうしても、…………ごめんなさい。だから、…………アルクさんに、これを……
…………もうあたしにはこれを使う資格なんてないから。だから、……返しますって。ごめんなさいって。

あたしのことを赦さないでくださいって、………………伝えておいてくれるかな。

【取り出すのは――やさしい桃色に輝くクリスタル。上質な布に包んであって、大切にしていたことを示すそれ】
【それをそっと手渡そうとして、そのまま――立ち上がって帰っていこうとするのだろう。今度こそ。ふらついた足取りでも】
【引き留められたって振り返りそうにはなかった。だって、たった今、敵対宣言したばかりの相手だった。顔なんかもう合わせられない】
18 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 18:06:53.32 ID:QhqfSCns0
>>17

<……やっぱり、な……>
…………

【その反応を、傍から見ていれば、実に分かりやすいものだったのだろう。『リベル』――――現在は『ランド』の人格だが――――は、静かに頷いた】
【それを、ブラックハートも理解して。すぐにその紙を握りしめて、手を下ろす】

あぁ――――この国の、大物と手を組んで、上手い事その子を誘拐して、その『大物』に言われるままに、道具に仕立て上げちまったんだよ……ッ
あたしゃ、アーディンの旦那があんなにキレたの、見た事ないよ……

【自分たちの身に何があったのか、それをブラックハートは、知ってる限りに話していく】
【つまるところ、ブラスフェミアと言うその女は――――アーディンにとって、シャッテンにとって、不倶戴天の敵と化したのだろう】
【それこそ――――ラベンダーにとっての、アルクにとっての、鈴音の様に】

ッ、夕月……あんた…………ッ!

【被りを振る夕月の言葉――――それは決別の文句だった。ブラックハートは、やはり低い声で唸る】
【夕月の中に何があるのか。それは当然、今日初めて会ったばかりのブラックハートには分からない】
【分かるのは――――夕月は、その本心を明かす事は出来ないと決意し、そしてその『本心』に従い、自分たちと決別しようとしている、その事実だけだ】

――――夕月、違わない…………違うなんて、事はない!!

【渡された、アルクの形見。その中身は分からないが、ともあれ、ブラックハートの中に、それを叫ばずには居られない衝動が、込み上げてきていた】
【またも、無理をしながら歩きだそうとしている夕月の姿を前にして――――その衝動は、もう抑えが効かなくなっていたのだ】

――――自分の意志だからって、言ったな……? そりゃ、あたしも同じ事だ……同じなんだよ、夕月……ッ!
そりゃ、無理やりさ……無理やり、あたしゃ戦わされてた。でも……あたしゃ、別に嫌だなんて思っちゃいなかった!

――――あたしゃ、『人間』なんざ大っ嫌いなんだ……! 今も、正直言えば、それは変わらない……! 無理して、押さえつけてるだけさ……ッ!!
……両親はあたしを売り飛ばしやがった。友達は、あたしを嘲笑いやがった。機関はあたしから『人間』を奪っていったッ!
だから、あたしゃ……『人間』なんか大っ嫌いだった。どれだけ殺しても、飽きるなんて事は無かったんだ!!

気持ちだけが、己の道の全てじゃない!! あんた、そんな辛そうな顔で、旦那やラベンダーに「殺してやる」なんて言えるのかよ!?

【思いの丈を、それこそぶちまけるというに足る勢いで、ブラックハートは叫ぶ】
【――――自分の中の黒い火は、未だにくすぶり続けている。その中で、それでも自分には道がある】
【なぜ、夕月は違うなどと言えるのか。そして――――そんな状態で、どうして選んだ道に後悔しないなどと言えるのか】
【追いはしない。だが、その言葉を叩きつける。ブラックハートは、苛立ちとも辛苦とも取れない何かに、突き動かされていた】

/すみません、飯行ってくるので、次遅れますー
19 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 18:21:31.51 ID:mHCNoPnp0
>>18

………………そっか。あいつ、代価さえ貰えればなんでもやるもんね。
どれほどひどいことでも、……ひどいことされるのでも、なんでも、やるもん……

【どこか納得したように、やはり諦めきった声で呟くのだろう。しかし、代わりに謝るなんてことはしなかった】
【そんなことをしても無意味だと知っていた。冒涜者、その死で償うことすらできるのかもわからないのに】
【そんな無責任な言葉で、この場をなあなあにしようだなんて、できなかった。ぎゅうと目を瞑って】

違わないかな。どうだろう――――あたしはハートさんのこと、よく知らないから、あれだけど。
…………あたしは人のことが、みんなのことが大好きだよ。大好きな人のこと、傷つけるヤツ以外はみんな好き。
いろんな好きのカタチがあるの、友達としての好きとか、信頼できるから好きとか、それ以外にも――

――――――――でもね、「好き」にはね、順番があるの。どうしても。
覆せないの、みんなのこと好きだけど――それでも特別好きな人のことのことを、どうしても優先しちゃう。
あたしはそういう、―――――化物だから。化物だから殺すよ、みんなのこと。


     だってあたし、イズルのことが好き。…………冒涜者だなんて呼ばれていても。


【――唐突に、ふたりの知らぬ人名が出される。それが“冒涜者”の本名であることは想像に難くない】
【振り返らなかった。背を向けたままだった。然るに表情は見えなくて――見せたくなかったのかもしれない】
【辛そうな顔してるだなんて思わせたくなかった。あるいは、最早目にするだけでも悍ましいくらいの】
【化物の顔になっていたのかもしれなかった。だから見せなかったのは、少なくとも、最後の恩情であり】

【――――やはり立ち去ろうとするのだろう。分厚い靴の底を鳴らして、……今度は背中にどんな声をかけられても】
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