くーちゃん「しょくぶつさんとおはなししてたらびょういんにつれていかれました」

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125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:39:15.23 ID:hX7kkdOe0
母「いつからそんな不良娘になったの」

くーちゃん「思春期ですお母さん。思春期に少年から大人に変わってるです」

母「大人は鍵が開かないからって窓を割ったりしないのよ」

くーちゃん「お母さんの顔、見たくないので」

母「走って出ていったと思ったら、ずいぶんと言うじゃない」

くーちゃん「くーちゃんは嘘が嫌いですので」

126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:40:51.92 ID:hX7kkdOe0
母「……とりあえず、ちゃんと説明してもらいたいところなんだけど」

くーちゃん「あの巫女服を、平気な顔してもってきたお母さんに、なにかを説明したい気分にはなれません」

くーちゃん「説明したら、わかってくれるんですか?」

母「あれは、悪気があったわけじゃ」

くーちゃん「悪気がなかったらなにしてもよいわけじゃないです」

くーちゃん「そういうところが嫌なんです」


127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:44:54.86 ID:hX7kkdOe0
くーちゃん「もういいです。貯めてたお小遣い、机に入れてるので」

くーちゃん「それだけ回収します。移動費に使います」

ゴソゴソ

ガシッ

くーちゃん「放してください」

母「いやよ」

母「もうだれにも」

母「いなくなってほしくないの」

くーちゃん(…意味が分かりません)

くーちゃん(あ、そういえば)

くーちゃん(くーちゃんと、お母さんと)

くーちゃん(今はもういない、もう一人のことでしょうか)

その人が、どうしてもういないのか。お母さんは言ってくれません。

それに今この場で話すことでもありません。きっと、楽しい話ではないので。

くーちゃんも、現実の世界に見切りをつけ、旅に出ようとしてます。

お母さんを、本当の本当に一人にすることになりえる片道切符だと思います。
 
そして、お母さんも、そのことをきっと察してたんです。
 
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:46:32.08 ID:hX7kkdOe0
ぶんっ!!

力いっぱいお母さんの腕を振りほどきます。

ギギッ

くーちゃん(お母さんの爪の痕、残りました)

くーちゃん(でもいいです。だって)

くーちゃん「くーちゃん、やらなきゃいけないこと、あります!!!!!!!」

ダッ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:50:47.40 ID:hX7kkdOe0
公園

ハナ「・・・・・・・・・・・・・」

「はあ…はあ…はあ…」

ハナ「…?」

くーちゃん「ハ、ハ、ハナちゃん…!」

くーちゃん「ちょっとめんどくさいことになったので! 旅! いそぎます!」

ハナ「…?」

くーちゃん「信頼できる人のところ、いきます!」

くーちゃん「きて、くれますね!?」

ハナ「・・・・・・・」こくり

 その旅は片道切符かもしれません。

トンネルの向こう側に行けば、人間のいるこっち側に戻ってこられないかもしれません。

でも、そんなのくーちゃんにとって、どうでもよかったですし、

くーちゃんの知っている世界を理解してくれてるハナちゃんとなら、一緒に行けるような気がしたんです。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:51:53.64 ID:hX7kkdOe0
小学校

?「…お久しぶりですね」

校長先生「天野さん」

くーちゃん「くーちゃんです」

校長先生「それで、相談ってなんですか?」

くーちゃん「トンネルを探す旅、手伝ってください」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:52:58.15 ID:hX7kkdOe0
また明日ノシ
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/06(火) 13:47:40.07 ID:d9/oBxQwo
おつおつ
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:18:20.62 ID:gZx10ktQ0
校長室

校長先生「トンネル…以前から天野さんから聞いてはいましたが」

ハナ「」カチコチ

くーちゃん「ハナちゃん、そんなに固まらなくてだいじょぶです」

くーちゃん「自分の家だと思ってリラックスしてください」ゴロゴロ

校長先生「だからといって転がるのはやめてください」

校長先生「あとそれは校長先生のセリフです」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:20:06.15 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「ハナちゃん、このリュックに絵、ありますね?」

ハナ「」

くーちゃん「」

ごそごそ

校長先生「何も言ってないのに人の荷物をあさるのはやめましょう」

校長先生「それにしてもずいぶん大荷物ですね、そのハナさんは」

校長先生「天野さんは手ぶらですか」

くーちゃん「現金が数十万円ポケットにつっこんでいます」

校長先生「それはそれで不気味です」

くーちゃん「ありました」

バサッ

くーちゃん「この絵です。この絵のトンネルに、行きたいんです」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:22:01.08 ID:gZx10ktQ0
校長先生「なるほど…これは、すごい」

校長先生「たしかに、天野さんからずっと聴いていたトンネルの描写と一致します」

校長先生「で、そのハナさんは、なぜこの絵を描けたか、言葉にしにくい、といったところですか」

くーちゃん「そのとおりです。さすがです」

校長先生「この絵からは、確かにエネルギーのようなものを感じますが」

校長先生「その一方で」

校長先生「どこか、さみしく、冷たい印象も受けます」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:24:07.08 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「そうなんです。だからきっとこのトンネルの植物さん、さみしがってます」

くーちゃん「とても、とても、長い間」

くーちゃん「だから、すごい植物さんがいるところだと思うのです」

くーちゃん「校長先生は、心当たりないでしょか」

校長先生「天野さんは、今の段階ではどう考えてますか?」

くーちゃん「ジャングルとかですかね、となると海外…」

くーちゃん「不法入国の罪、重いのでしょうか。パスポート、もってないです」

校長先生「ええ、重いです。さすがの校長先生でもそれは止めます」

137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:26:25.16 ID:gZx10ktQ0
校長先生「それに、ジャングルとは限らないでしょう」

校長先生「どことなく、和風の感じもしますし、日本の可能性の方が高いのでは?」

くーちゃん「うむむ、たしかに」

校長先生「となると、シンプルに、日本の山、でしょうか」

くーちゃん「やはりしらみつぶし作戦が最強そうですね」

校長先生「しらみつぶし作戦?」

くーちゃん「日本中の森とか山をしらみつぶしに探していく作戦です」

校長先生「恐ろしい計画ですね」

くーちゃん「ありがとうございます」

校長先生「褒めてないです」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:28:38.46 ID:gZx10ktQ0
TRACK6 山

バス停

くーちゃん「とりあえず、この町で一番大きな山があるところまで、バスで行きましょう」

ハナ「」ジッ

くーちゃん「どしたですか、ハナちゃん」

ハナ「」スッ

くーちゃん「あ、パトカーですね」

くーちゃん「…まずいかもです」

くーちゃん「どうしましょう」

ハナ「」ごそごそ

スッ

139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:30:30.72 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「メガネですね」

ハナ「」こくり

くーちゃん「…たしかにこれなら、お母さんが通報してても」

くーちゃん「顔写真とは違う印象になるかもです」

くーちゃん「あ、でも髪型が」

ハナ「」ごそごそ

スッ

くーちゃん「…え」

ハナ「」

チャキンチャキン

くーちゃん「まさかのハサミとは」

くーちゃん「なんでくーちゃんより用意周到なんですかハナちゃん」

ハナ「」てれてれ
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:44:19.56 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「でもさすがです、ハナちゃん」

くーちゃん「このハサミなら眉毛、鼻毛の手入れもできますね」

ハナ「」ぶんぶん

くーちゃん「あ、普通に髪を切るだけでしたか」

ハナ「」こくり


141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:46:44.21 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「じゃあ、カットおねがいします」

くーちゃん「あ、でも先にハナちゃん切った方がよいかもです」

くーちゃん「ハナちゃんもご両親に捜索願だされてるかもしれません」

ハナ「」こくり

ジョキン

くーちゃん「」

くーちゃん「結構思い切り切るんですね」

ハナ「」テレテレ

くーちゃん「ほめてないです」

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:49:09.48 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「じゃあ、くーちゃんもおねがいします」

ハナ「」ソーッ…

ハナ「」

くーちゃん「どうしたですか? ハナちゃん」

ハナ「」ジッ

くーちゃん「くーちゃんの腕のあざですか?」

くーちゃん「気にしなくてよいです」

くーちゃん「事故みたいなものです」

ハナ「」ぺこり
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:51:02.09 ID:gZx10ktQ0
ブーン

くーちゃん「パトカーも無事に通り過ぎてくれました」

くーちゃん「ハナちゃん、切るのうまいですね」

ハナ「」テレテレ

ブーン

くーちゃん「バスも来たので乗りましょう」

くーちゃん「終点に、その山、たどりつけます」

くーちゃん「だいぶ田舎のバス停なので、きっと一目にはつきません」

ハナ「」こくり
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:55:18.02 ID:gZx10ktQ0
バス内

くーちゃん「貸し切りですね。だれもいません」

くーちゃん「経営が続いてるの、ふしぎなくらいです」

ハナ「」カキカキ

くーちゃん「ハナちゃん、お絵かきですか?」

くーちゃん「また、トンネルの絵ですか?」

ハナ「」スッ

くーちゃん「これは…」

ハナ「」ジッ

くーちゃん「窓の外の空、ですか?」

ハナ「」こくり

くーちゃん「すごいです」

くーちゃん「あおいろ、いっこもつかってません」

ハナ「」テレテレ
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:57:28.73 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん、絵のこと、からっきしなんですけど、

絵が描かれる過程、見るの大好きなんです。

今生きてる世界と違う世界、作られてるみたいで、旅行してる気分になります。

特にハナちゃんの絵は素敵でした。

見えてる世界より、たくさんの色を使って、形も変わってたりするです。

すっかりくーちゃんは、ハナちゃんのファンになってしまいました。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:58:17.73 ID:gZx10ktQ0
また明日ノシ
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 22:18:18.78 ID:/+CsG3T+0
終点

運転手「どちらへ?」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、あ」

くーちゃん「行きたいところがあるので」

運転手「そうですか」

運転手「だいぶ日も暮れてきましたので、気を付けて」

くーちゃん(こういう時、親戚のおばさんの家へ行きますとか言っておけばよいのかもですが)

くーちゃん(くーちゃんは、正直なのが、もっとーなのです)
 
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 22:25:40.13 ID:/+CsG3T+0
田舎の夜道。

くーちゃん「街灯、ほとんどないですね」

ハナ「…ん」

くーちゃん「目を閉じても開けてもほとんど変わらないほど暗いです」

くーちゃん「今が現実なのか、夢の中なのか、わからなくなりそうですね」

くーちゃん「でも、目を閉じるとそれだけで音や匂い、よくわかります」

くーちゃん「草、土、雨の匂いが混じった、素敵な香りです」

くーちゃん「体に巡ってゆくんです」

ピカッ

くーちゃん「…まぶしいです」

ハナ「」にこっ

くーちゃん「懐中電灯、忘れてました」

くーちゃん「用意周到ですね、ハナちゃん」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 22:28:02.88 ID:/+CsG3T+0


くーちゃん「この山なら、トンネルにつながる木、ある可能性」

くーちゃん「ゼロじゃないかもです」

ハナ「」よろっ、よろっ

くーちゃん「ついてきてますかー」

ハナ「え、あ、う、ん」

くーちゃん「ハナちゃん、運動苦手ですか?」

ハナ「」こくり

くーちゃん「がんばりましょう」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」こくり
 しばらく歩いた後、くーちゃんは、山の中で空を見上げました。木はあまり生えてない、開けた場所です。吸い込まれそうな夜空が、どこまでも広がってました。お月様が浮かんでて、ハナちゃんの懐中電灯が、いらないほど明るかったです。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 22:49:02.75 ID:/+CsG3T+0
山中

くーちゃん「ここでよいんではないでしょか」

ハナ「はあ……はあ……はっあ……う……ん」

くーちゃん「…返事、でいいんですよね」

ゴロン

くーちゃん(ハナちゃんは寝転がらないのですね)

くーちゃん(まあ、過ごし方は人それぞれです)

くーちゃん「すーっ、はーっ」

息を吸って、吐きました。

全身が土に溶けてゆくような感じでした。

山から漂う、温かさ、優しさ、冷たさ。そんなものが混じりあったトンネルに、

くーちゃんはいつのまにかいたんです。

151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 22:52:03.05 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん(このトンネルは悪い感じ、しません)

くーちゃん(広くて大きくて安心します)

くーちゃん(でも、くーちゃんのことを呼んでません)

くーちゃん(それに、ハナちゃんの描いていたトンネルと、違う色な気がします)

くーちゃん(あの絵で感じた、さみしさも、感じません)

くーちゃん(それに)

くーちゃん(別の何かの気配がします)
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:00:14.53 ID:/+CsG3T+0
パチクリ

ハナ「?」

くーちゃん「ここ、違います」

ハナ「?」

くーちゃん「この山、違います。くーちゃん、呼ばれてません」

くーちゃん「きっと、別の誰かの場所です」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:03:19.46 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん「ほかの山です。ハナちゃん、地図帳とか、もってますか?」

ハナ「」こくり

バサッ

くーちゃん「さすがです、ハナちゃん。ここからちゃんと、それっぽい山を選んで…」

くーちゃん「あ」

ハナ「?」

くーちゃん「ハナちゃん、くーちゃん、気づいてませんでした」

くーちゃん「日本には、山が多すぎます」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ハナ「」こくり
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:04:24.90 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん「困りました。なんでこんなに山、多いですか!」

くーちゃん「ハナちゃん! どうゆうことですか!」

ハナ「」

くーちゃん「ごめんなさい、八つ当たりでしたね」

ハナ「」こくり
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:07:38.25 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん「とにかく、もうおそいです」

くーちゃん「とりあえず、きょうはここで夜、明かしましょう

ハナ「」こくり

バサッ

くーちゃん「なるほど、寝袋、もってきてたですね」

くーちゃん「さすがです」

くーちゃん「とりあえずくーちゃん、お布団にできそうな落ち葉、拾ってきます」

ハナ「」
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:09:36.45 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん「あの、もしかして、くーちゃん、何か変なことしてますか?」

ハナ「」こくり

くーちゃん「まあ、たしかに、風邪、ひくかもですね」

くーちゃん「植物さんの、トンネルの向こうへ行くにしても、健康が一番です」

くーちゃん「ですが、着替えも寝る道具も忘れました」

くーちゃん「ハナちゃん、地図帳かしてください。おふとんにします」

ハナ「」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:11:48.96 ID:/+CsG3T+0
ハナ「」スッ

くーちゃん「ハナちゃん、もしかして寝袋、ゆずってくれてますか?」

ハナ「」こくり

くーちゃん「ハナちゃんがそれだと風邪ひきます、だめです」

ハナ「」ぶんぶん

くーちゃん「うーむ、なら」

くーちゃん「二人で、入りましょう」

くーちゃん「つめれば、きっと入ります」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:13:17.30 ID:/+CsG3T+0
ぎゅうぎゅう

くーちゃん「ちょっとせまいですね」

くーちゃん「まあでも、なんとかなりそうです」

ハナちゃんの汗の香りが好きで、心は落ち着きました。

目を閉じると、昔、とても大切な人と行った場所を思い出します。

波の音や潮の香り。おひさまが、きらきら反射してた海です。

とても、懐かしい気持ちになりました。

幼稚園にいた時より、もっともっと昔の思い出です。

159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:16:07.54 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん(どんな顔の人と行ったでしょうか)

くーちゃん(思い出せませんね)

くーちゃん(そういえば、海の向こうには)

くーちゃん(たしか…)

くーちゃん「あ!!!!!」

ハナ「!!!!」ビクッ

くーちゃん「島です!!!!!!!」

くーちゃん「山じゃないです!!!!!! 島です!!!!!!!」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:16:43.45 ID:/+CsG3T+0
ガサ

ガサ

ガサ

?「どこだ…どこだ…」

?「この子の…母親は…」

?「どこに、いる…?」

161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:17:17.38 ID:/+CsG3T+0
また明日ノシ
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/08(木) 00:03:42.15 ID:FedE/ynOo
おつ〜
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:28:14.60 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「ハナちゃん! 地図です! 地図見せてください!」

ハナ「」スッ

くーちゃん「やっぱりです」

くーちゃん「島の方が!!」

くーちゃん「山より数が! 少ないです!」

ハナ「」

164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:30:09.17 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「それに、島の方が、ハナちゃんの描いていたトンネルに、近い感じします」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」こくり

くーちゃん「やっぱりです!」

くーちゃん「となると、ハナちゃん、たしか、海沿いの町に住んでたと、言ってましたね」

ハナ「」こくり

くーちゃん「どこですか?」

ハナ「」すっ

くーちゃん「やはりです。この町」

くーちゃん「島、いくつかありますね」

165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:31:35.46 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「これです」

ハナ「?」

くーちゃん「この島です」

くーちゃん「この島、名前がありません」

くーちゃん「名前がない、孤独な島」

くーちゃん「あのトンネルの感じと、近い気がしました」


166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:32:50.27 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「それにしてもハナちゃん、ずいぶん遠くからおひっこししてきたですね」

くーちゃん「この町に行くなら、大移動となります」

くーちゃん「ただ、旅です。旅はこれくらいじゃないと、面白くありません」

くーちゃん「さあ、ハナちゃん! 行きましょう!」

ハナ「」ブンブン

くーちゃん「あ」

くーちゃん「…せめて夜が明けてからにしますか」

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:39:19.63 ID:bEJFPFt/0


くーちゃん(結局一睡もできませんでした)

くーちゃん(ぽかぽかおひさま、いい気持ちです)

くーちゃん「ハナちゃん! 朝です! 行きましょう!」

ハナ「…ん」もぞもぞ

くーちゃん「…朝、弱いんですね」

くーちゃん「近くに、川あるので、顔洗ってきます」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:41:46.47 ID:bEJFPFt/0
ぱちゃん

くーちゃん(つめたくて気持ちよいです)

ザブン

ついでにくーちゃんは水の中に頭を突っ込んで、目を閉じてみました。

昨日、土に顔をうずめたときより、ずっとずっと山に近づけた感じがしました。

?「くる、しくない?」

ザブン

くーちゃん「!」

くーちゃん「ハナちゃん!!」

くーちゃん「すごい! ちゃんと初めて単語聞きました!」

ハナ「」テレテレ
 ハナちゃんは、一緒に夜を明かしたからかわかりませんが、少しだけお話してくれるようになりました。

「はい。だいじょぶです」

 くーちゃんは、顔をあげてそう言いました。

 ハナちゃんも、くーちゃんの感じていたトンネルを描けたとゆうことは、もしかしたらハナちゃんも、不思議なトンネルに心をゆだねることができるのかと思いました。直接確かめてもよかったんですけど、ハナちゃんも川に、顔をばちゃんとつけたので、尋ねるタイミングを失ってしまいました。くーちゃんはしばらく息を止められたのですが、ハナちゃんは、長く息を止めれなかったようで、すぐに顔を出しました。
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:44:12.06 ID:bEJFPFt/0
ザブン!

ハナ「はーっ…はーっ! き、きもち、いいね」

 あんまり顔的に、気持ちよさそうには思えなかったですけど

 気持ちいいと言っていたから、多分気持ちよかったんだと思います。

後で確かめてみますね。もうずいぶん前のことですから、本人、忘れちゃってるかもしれませんけど。

 
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:45:31.38 ID:bEJFPFt/0
朝ごはんタイム

ハナ「」パキッ

くーちゃん「ハナちゃんは板チョコですか」

ハナ「」スッ

くーちゃん「あ、そういえば、くーちゃん、手ぶらでした」

くーちゃん「だいじょぶです」

くーちゃん「なんかおなかの中、ずっしりと重たいもの、乗ってる感じするので」

くーちゃん「今、いらないんだと思います」

171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:47:39.53 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「ともかく、島に行くには、ハナちゃんの住んでた町へ向かう必要あります」

くーちゃん「ただ歩くには、ちょっと遠すぎます」

くーちゃん「また、バスですかね」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ハナ「よくない、かも」

くーちゃん「よくない?」

ハナ「私たち、行方不明」

くーちゃん「…言われてみればそうです」

くーちゃん「お母さんもですけど、ハナちゃんのご両親も、そろそろ通報しててもおかしくありません」

くーちゃん「変装をしてますが、年まではごまかせません」

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:48:49.20 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「声を掛けられる可能性、ありますし」

くーちゃん「くーちゃんは嘘が苦手です。きっとばれてしまいます」

くーちゃん「完全に失念してました」

くーちゃん「ハナちゃんは、頭の回転がコンピューター並みに速いです。

くーちゃん「「スーパーコンピューター、ハナちゃんですね」

ハナ「……そ、そうかな」

くーちゃん「そうです。くーちゃんも頭脳、天才的ではあるのですが、ハナちゃんもすごく頭、よいです」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:51:40.15 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「となると、移動手段です」

くーちゃん「お金、あるにはあります。きっと電車だろうと飛行機だろうと大丈夫です」

くーちゃん「スペースシャトルには乗れないかもしれませんが」

くーちゃん「ですが、公共のやつは、見つかってしまいます。となると」

くーちゃん「信用できる人に助けてもらうしか、ありませんね」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「そんな心配そうな顔しないでください」

くーちゃん「心当たりがあります」

くーちゃん「この山です」

ハナ「え、」

174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:53:55.21 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「トンネルで感じました」

くーちゃん「この山には、くーちゃんたち以外の人、溶け込んでます」

くーちゃん「きっと、います。この山と共に生きてる、優しい人が」

くーちゃん「だから、その人を探しましょう。優しい人なら、きっと助けてくれるはずです」

ハナ「」こくり

くーちゃん(ハナちゃんの頷き方、大好きです)

くーちゃん(しっかり考えて、なにか決めてくれたのが伝わるので)

くーちゃん(それがハナちゃんのよいとこなんです)
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:55:52.79 ID:bEJFPFt/0
山道

ハナ「…ど、どこ、いるの?」

くーちゃん「宛はなんとなくあります」

くーちゃん「トンネルで感じられた匂い、山を歩いてると漂ってきます」

くーちゃん「自然の匂いと少し違います」

くーちゃん「まるで体育の後の体操服みたいな、そんな汗のにおいです」

ハナ「」

くーちゃん「くーちゃんの好きなにおいです」

ガサッ


?「駄目だなあ、これじゃあねえんだよなあ」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:59:14.08 ID:bEJFPFt/0
ハナ「ヒイッ!!!!!」

声の方には、髪の長い男の人がいました。

その髪は、肩よりさらに伸びてて、まるで女の人みたいでした。

あ、男の人でも髪伸ばす人はいますよね。失礼しました。

くーちゃん「大丈夫です。きっとあの人です」

くーちゃん「この山に受け入れられているような人です」

くーちゃん「きっと悪い人、ちがいます」

ハナ「…」コクリ

男「違うなあ、違うなあ」

男の人はくーちゃんたちに目もくれません。

その代わり、地面に落ちてる枝や棒を手にとっては、地面に捨てることをくりかえしてました。

177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 22:02:12.84 ID:bEJFPFt/0
ハナ「鹿さん!」

ダッ!

くーちゃん「ハナちゃん⁉ どうしました⁉」

くーちゃん「…あ…」

ハナちゃんの向かった先には、落ちている枝や葉っぱで作られた

鹿の大きな置物がありました。

しかも一頭じゃないです。たくさん、います。

数を数えるの、くーちゃんは苦手だったので、何頭か覚えてません。

ごめんなさい。でも、とても器用に組まれてて、

まるで最初からその形で、山から生えてるみたいでした。
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 22:04:22.39 ID:bEJFPFt/0
男「なんだあんたら」

くーちゃん「旅の者です」

男「その年で旅か」

ハナ「……美しい……」

くーちゃん(ハナちゃん、ずっと鹿さん見てますね…)

179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 22:05:55.08 ID:bEJFPFt/0
男「なんだ、俺の作品が気に入ったか」

ハナ「」カアア

ハナ「」コクリ

男「ここの部分はこだわったんだよ。まず説明するとだな、この足なんだが」

くーちゃん「すいません! 喋りたいことがあります!」

男「なんだ! 俺の作品解説の邪魔をするのか!」

くーちゃん(いい人と思ってましたが、すこしめんどくさい人かもです)
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 22:10:06.90 ID:bEJFPFt/0
TRACK7 お兄さん

くーちゃん「いえ! くーちゃんも素敵と思います! かわいいです!」

男「かわいいだと! 美しいの間違いだろう!」

くーちゃん「すいません! 美しいです!」

男「それでいい!」

くーちゃん「ありがとうございます!」

男「だがなあ! だがなあ!!」

ゴロンゴロンゴロン!!!

男「だめなんだああああ! 見つからないんだあああああ!」

くーちゃん(…トンネルで感じた人、この人なのでしょうか…)
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 22:11:33.91 ID:bEJFPFt/0
男「みつからないいいい! みつからないいいい!!」ボリボリガリガリ

くーちゃん(顔、めちゃくちゃ掻いてます)

くーちゃん(お風呂に入らなさすぎると、ああなってしまうのですね)

男「こいつの、こいつの…」

ハナ「母…おや…?」

男「!!!!」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 22:15:30.43 ID:bEJFPFt/0
男「そう! 母親だよ! お前話がわかるな!」

男「だけどなあ…そこなんだよなあ…だからこそ困ってるんだよなあ」

くーちゃん「何に困っているですか?」

男「母親の体だよ! さっき言っただろうが!」

めんどくさい人です。

悪い人じゃないと思ったのは、見込み違いだったかもしれません。

すいません、嘘です。そんな顔しないでください。

誰だって見当はずれのことを言ったら、声を荒げたくもなりますよね。

くーちゃんも経験あるのでよくわかります。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 22:17:17.55 ID:bEJFPFt/0
男「すまん。取り乱した。まあとにかくだ」

男「あんたら、もしよかったら、一緒にこいつの母親の体の心当たりとか」

くーちゃん「きっと海に、あります!」

男「……は?」

くーちゃん(唐突なことを言われたら、人は戸惑います)

くーちゃん(大人たちを納得させるインタビューを、何度か受けてたくーちゃんからすれば)

くーちゃん(これくらい、どうってことないです)

くーちゃん(嘘は苦手ですけど、大げさに言うことは得意なんです)

くーちゃん(人生、多少大げさなくらいがちょうどよいんです)

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 22:18:16.47 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「くーちゃんたちも探し物してます」

くーちゃん「そして、それは海にあると思ってます」

くーちゃん「もしかしたら、あなたが探してるのも、海にあるんじゃないですか?」

くーちゃん(別に嘘は吐いてません)

くーちゃん(同じとこを探し続けて見つからなければ、場所を変えるのは鉄則です)

男「海、海、海……なるほど、海、海かあ」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 22:21:13.74 ID:bEJFPFt/0
男「海、海。海…」

ぐるぐる

男の人は、鹿の置物に手を添えて、目を閉じました。

くーちゃんがトンネルの中でやってる、植物さんとの時間に、少しだけ似てました。

男「海、母なる海」

男「そうか、こいつは、きっと、離れ離れに、なっちまったんだな。海はすべての始まりだ」

男「そうだ。海だ、海しかねえ。今すぐ出発だ。今すぐだ‼」

くーちゃん「おお! そうですそうです! 出発です!」

くーちゃん「くーちゃんたちもいっしょに連れてってくれますか!」

男「断る!」

くーちゃん(まじめんどくさいですねこいつ)
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 22:23:13.79 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「なぜでしょうか!」

男「あんたらにはあんたらの道があるだろう!」

男「俺には俺の道がある! それを交えるのはナンセンスだと思わんか!」

くーちゃん「一理あります! けれど、くーちゃんたちの目的地!」

くーちゃん「女子中学生二人じゃ大変です!」

男「知らねえよそんなこと!!」

くーちゃん「では」

くーちゃん「40万ほどお支払いします!」

くーちゃん「これで一緒に連れて行ってください」

男「誰が断るって言った!!」

くーちゃん「あなたです!」

交渉は成立しました
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 22:28:09.04 ID:bEJFPFt/0
また明日ノシ
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/09(金) 12:26:05.17 ID:HvMkhSduO
お兄さん意外と現金で草
おつ
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/09(金) 16:11:56.34 ID:UE0pqEIDO
むしろ不審者…
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/09(金) 18:48:35.91 ID:iRS0hCSE0
TRACK8 軽トラ

くーちゃん「断られたと思いました!」

男「誰が断るか! あんたらみたいな若い子を導くのが、俺の役目さ!」

男「さあ来い! ふもとにある軽トラに乗せてやろう!」

くーちゃん「ありがとうございますおじさん!」

男「お兄さんだ!!!」

191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 18:51:52.51 ID:iRS0hCSE0
ふもと

くーちゃん「散らかりすぎです。座れません」

くーちゃん「工具に枝、薪だらけじゃないですかおじさん」

男「だからお兄さんだ。まだ俺は二十歳にもなっていない」

くーちゃん(不潔さを極めると、人は老けて見えるのですね)

男「荷台なら開いてるな。そこでもいいか?」

ハナ「」サーッ…

くーちゃん「ハナちゃんが青くなってます」

くーちゃん「こわいですか?」

ハナ「…ん」

くーちゃん「でも背に腹は代えられません」

くーちゃん「徒歩で海まで行っている間に、二人とも力尽きてしまったら無駄死にです」

くーちゃん「現世に未練はありませんが、そんな終わり方は嫌です」

ハナ「…わか、た」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 18:53:41.25 ID:iRS0hCSE0
くーちゃん「ところで、なんで、鹿、作ってるですか? おじさん」

男「お兄さんだ」

 同じ失敗を繰り返すのは、よくないとわかるのですが。

習慣を変えるのは、結構大変なので、また間違えてしまいました。

反省してます。

お願いですから、そんな目でみないでください。照れてしまいます。

193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 18:54:37.14 ID:iRS0hCSE0
男「必要だからだよ。俺にはこれが必要なんだ」

くーちゃん「「ひつよう、ですか」
 
くーちゃん(どう必要なのでしょか)

男「ふふふっ」

くーちゃん(愛おしそうに木材を見つめています)

くーちゃん(まあよいでしょう。言葉にうまくできないこともあるのです)
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 18:57:31.97 ID:iRS0hCSE0
道中

ブルルルル

くーちゃん「こわくないですか? ハナちゃん」

ハナ「…ん、きもちいい」

くーちゃん「そうですね、秋の風、きもちよいです」

ハナ「」ごそごぞ

ハナ「」さらさら

くーちゃん(また絵です)

くーちゃん(…生き物でしょか。腕が四本生えてて、赤や青や緑色。色の大洪水です)

くーちゃん「きれいですね」

ハナ「」

195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 18:59:51.88 ID:iRS0hCSE0
くーちゃん「あ、言ってしまいました」

くーちゃん「ごめんなさい。ハナちゃんの時間、じゃましたくなかったですけど」

くーちゃん「最高においしすぎる料理を食べたとき」

くーちゃん「シェフを呼んで、おいしかったと言いたくなるものじゃないですか?」

くーちゃん「くーちゃんは大人になっても、シェフを呼んで、おいしかったと言います」

ハナ「ふふっ」

くーちゃん「笑わないでください」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 19:01:27.30 ID:iRS0hCSE0
くーちゃん「ところで、この生き物は…一体」

ハナ「」すっ

くーちゃん「くーちゃん、指さしてます?」

くーちゃん「……くーちゃんが、どうかしましたか?」
 
ハナ「」サラサラ

くーちゃん「もしかして、くーちゃんを、描いてくれたですか?」


ハナ「」ピタッ


ハナ「・・・・・・・・・・・・・」

ハナ「ごめんなさい」
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 19:03:19.35 ID:iRS0hCSE0
くーちゃん「なんであやまるですか?」

くーちゃん「くーちゃんは、ハナちゃんに、こんな風に見えてるですね」

くーちゃん「びっくりです。すてきです」

ハナ「///」

もしかしたら、ハナちゃんの見てる世界は、くーちゃんの見てる世界と、違うのかもしれません。
 
つまり、何が言いたいかとゆうと、

くーちゃんは後にも先にも、ハナちゃんみたいな絵を描く人に出会ったことはありませんし、

今でもハナちゃんはくーちゃんにとって世界一の絵描きさんです。
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 19:04:41.53 ID:iRS0hCSE0
休憩中

くーちゃん「うんてんお疲れ様です」

くーちゃん「うんてん、大変ですか?」

男「免許とるのが大変だったけど、あとは楽勝よ」

男「ん? お前さん、それもしかして!」

男「俺の鹿! 描いてねえか!?」

ハナ「」ビクッ
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 19:06:20.37 ID:iRS0hCSE0
男「すげえええええええええええええ!」

男「天才だ! こいつは天才だ!」

くーちゃん「くーちゃんのが先にハナちゃんのファンなりました」

くーちゃん「簡単に天才だなんて言葉使わないでほしいです」

男「天才は天才だろう! 後も先もない!」

男「お前みたいな古参ぶっているファンが、新規のファンを遠ざけるんだよ!」

ハナ「ふふふっ」

くーちゃん「ハナちゃん、笑った顔かわいいですね」

ハナ「///」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 19:07:27.19 ID:iRS0hCSE0
パラパラパラ

男「こんなにたくさん、すげえ絵が描けるのか」

男「ハナちゃんよ、あんたはすげえ」

男「ここからは俺の想像だ。もし違ってたら、謝らせてくれ」

男「もしかして、あんたはみんなと見えてる世界や色が違うんじゃねえか?」

男「それが怖くて、嫌で、悲しいこともあったんじゃねえか?」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 19:09:28.19 ID:iRS0hCSE0
くーちゃん(…その予想は、きっと当たってます)

くーちゃん(むしろ、くーちゃんが、勘違いしてたかもしれません)

くーちゃん(ハナちゃんの夜の底みたいな目には)

くーちゃん(恐れじゃなくて、悲しさが宿っていたのかもしれません)

男「でもな! それでいいんだ!」

男「あんたは違うから最高なんだ! そのことをわかってくれ!」

男「あんたは最高だ!」

ハナ「!!!!」コクコクコク

くーちゃん(きっと、誰かに言ってもらいたかった言葉なのかもしれません)

くーちゃん(誰だって、言ってほしい言葉があるものです)

202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 19:10:26.18 ID:iRS0hCSE0
お兄さんとの旅は、とても楽しかったです。

途中で見つけた駄菓子屋さんでおかしをまとめて買ってくれたり、

河原を見つけて、そこで水切りもやりました。

途中で調子に乗って崖から落ちそうになったり、

飛び去る鳥さんを追いかけて、転んでしまったり、

お兄さんが「眠い」と言い始めて、そのまま何時間もいびきをかきながらお昼寝したり。

まるで子どもみたいでした。

校長先生ほどではないですが、お兄さんのことをくーちゃんとハナちゃんは信頼していました。

格好つける大人より、格好悪いくらいの方が、くーちゃんにはちょうどいいんです。
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 19:12:53.83 ID:iRS0hCSE0


男「完成だ! 鹿の次男! ミニチュアバージョン!!」

ハナ「」キラキラキラ

くーちゃん「…なんか、いいですね。物が作れるって」

くーちゃん「…くーちゃんには、できません」

男「お前さんにしかできないこともあるんだろ?」

くーちゃん「お前さんじゃないです、くーちゃんです」

男「どっちでもいい。まあとにかくだ」

男「明日の昼過ぎくらいには、きっと海につく」

少しだけさみしそうに、お兄さんは言いました。

お気楽なお兄さんがくーちゃんにとって、見慣れた姿だったので、

少しだけ変な気分でした。

204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 19:14:10.97 ID:iRS0hCSE0
男「くーちゃん、ハナちゃんよ」

男「俺はあんたらを応援してるぜ」
 
くーちゃん(そういえば、くーちゃんたち、お兄さんにトンネルの話をし忘れてました)

くーちゃん(まあよいでしょう。お兄さんはそんなことを説明しなくても、気にする人じゃないです)

くーちゃん(それにお兄さんも、自分の話をあまりしたがりません)

くーちゃん(きっと同じようにお兄さんも、なにかを抱えてたのでしょう)

だから、くーちゃんは言いました。

くーちゃん「とても楽しかったです」
 
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 19:14:58.63 ID:iRS0hCSE0
素直に感じたこと、そのまま伝えました。

男「俺もだよ。だからさ、あんたらさ」

 そう言ってお兄さんは、くーちゃんとハナちゃんの頭にポンと触れます。

土で汚れた手でしたが、とても温かかったです。

くーちゃんも、たぶんハナちゃんも、お兄さんの手が好きでした。

運転する手、お菓子、食べる手、頭、撫でる手。

とても、優しい手です。

男「続けろよ」
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/09(金) 19:15:59.66 ID:iRS0hCSE0
くーちゃんとハナちゃんは頷きました。星と月がきれいな夜でした。

そして、お兄さんとの、最後の車中泊は終わりました。

207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/09(金) 19:49:25.76 ID:iRS0hCSE0
また明日ノシ
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/09(金) 19:52:13.74 ID:oQb5ZmTSo
おつおつ
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 00:51:35.15 ID:IQVafa730


くーちゃん「うみの香りしてきました」

くーちゃん「お魚さんがくさったような、少し生臭い感じですね」

くーちゃん「この匂い、すきです」

くーちゃん「ハナちゃんは海、好きですか?」

ハナ「……うん」

くーちゃん「よいとこです。ここで、ハナちゃん、生まれ育ったですね」

ハナ「……うん」

210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 00:53:35.77 ID:IQVafa730
男「すまねえな! だいぶ時間かかっちまった!」

くーちゃん「だいじょうぶです! 目立たない道ばかり走ってくれたので」

くーちゃん(それに、トンネルはきっと逃げません)

男「まあ長旅も疲れただろ。まとめ買いした駄菓子でも食って元気出せ!」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・」ジーッ

くーちゃん「ハナちゃん、どしたですか?」

くーちゃん「ハナちゃん、気にせず食べるとよいです」

くーちゃん「くーちゃん、おなかへってないです」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 00:55:48.05 ID:IQVafa730
砂浜

くーちゃん「つきましたね。ちょっとさむいです」

男「おお…海だ。母なる海。ここだ、ここなら、きっと」

男「うおおおおおおお!」ダッ

くーちゃん「走って行ってしまいました」

ハナ「…うん」

くーちゃん「まあ、さいごのあいさつ、昨日の夜にすませたので、べつによいでしょう」

くーちゃん「ここでさよならでも、お兄さんとくーちゃんたちらしくないですか?」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

タッ

くーちゃん「ハナちゃん?」

くーちゃん「どこいくですか」
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 00:57:00.77 ID:IQVafa730
男「よし! ここの木材なら、母親の足に…」

ギュッ

男「ん?」

ハナ「…はあ…はあ…」

男「…どした?」

男「運転荒かったか? そのクレームか?」

ハナ「」ブンブン
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 00:58:21.32 ID:IQVafa730
くーちゃん(どしたのでしょう、ハナちゃん)

くーちゃん(…ハナちゃん、たしかにあのトンネルの絵、描いてました)

くーちゃん(くーちゃんの世界、きっと理解してます)

くーちゃん(だから、一緒にトンネルを探してほしかったです)

くーちゃん(でも、お兄さんとの時間が楽しかったのなら)

くーちゃん(お兄さんのところに行ってくれても、よいかもしれません)

214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 00:59:04.74 ID:IQVafa730
ハナ「あ…え…あ…」

ポン

男「ありがとうな」

「ありがとうな」

ハナちゃんが何か言おうとする前に、お兄さんは言いました。

ハナちゃんの、何かを伝えたい気持ちは、くーちゃんの胸の奥に流れ込んでくる時があります。

トンネルでいるときの感覚に、少しだけ似てました。

お兄さんも、ハナちゃんの思いを。大きくて、温かくて、優しい何かを、受け取ったのかもしれません。


ハナちゃんも深く頷きます。時間が止まったみたいでした。
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 01:03:10.69 ID:IQVafa730
くーちゃん「お兄さん、今度こそいってしまいましたね」

くーちゃん「よかったですか? ここでさよならして」

ハナ「うん」コクリ

ハナ「続けるって、言ったから」

くーちゃん(ハナちゃんのことば、ゆっくりで、とても小さいです)

くーちゃん(でも、しっかりとくーちゃんの耳まで届きました)

くーちゃん(ハナちゃんなしの旅も覚悟してたのですが)

くーちゃん(やはり旅には頼もしいなかまが必要です)
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 01:04:37.30 ID:IQVafa730
くーちゃん「まあ、さみしくもなりましたが、センチメンタルになってばかりもいけません」

くーちゃん「くーちゃんたちの旅は、全然終わってないですから」

くーちゃん「さて、島は…多分地図だと…」

ハナ「あ」

くーちゃん「あ!!!!!!!」

くーちゃん「あれです! 名前のない島! 絶対あれです!!」
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 01:05:55.11 ID:IQVafa730
くーちゃん「あの大きさなら、きっと人もいないか、ほとんど住んでいないかのどちらかです」

くーちゃん「通報される心配もないでしょう。心置きなく、トンネルの向こう側が目指せます」

くーちゃん「ついにです」

くーちゃん「きっとハナちゃんが描いてくれたトンネルがあるのは、あの島なんです」

ハナ「」キョロキョロ

くーちゃん「どうしたですか、ハナちゃん。トイレですか?」

ハナ「ト、トイレも、だけど、それ、より」

ハナ「いきかた、ない、あの島…」
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 01:07:33.38 ID:IQVafa730
くーちゃん「…たしかに、近くにフェリー乗り場らしきもの、ないですね」

くーちゃん「まあ、名前が地図にのってないんですから、当然かもしれませんが」

くーちゃん「でも、フェリーを選んでしまえば」

くーちゃん「お風呂に数日入ってないぼろぼろの女子中学生客が乗ることになるので」

くーちゃん「確実に通報案件です」

ハナ「…たしかに」

219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 01:09:34.02 ID:IQVafa730
くーちゃん「なので、ちょうどよかったかもしれません」

くーちゃん「くーちゃんたち、この旅を始めてからよいことづくめです」

くーちゃん「となると、ぷらんBですね…なにかいい方法は…」キョロキョロ

くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」

ハナ「?」

くーちゃん「ハナちゃん、くーちゃんの天才的な頭脳に、降りてきました。ひらめきが」

ハナ「…?」

くーちゃん「あそこに」

くーちゃん「ちょうどよい流木があります」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ハナ「え?」
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 01:10:27.58 ID:IQVafa730
海上

ハナ「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

ハナ「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

ザパーン! ザパーン!
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 01:11:35.50 ID:IQVafa730
また明日ノシ
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/11(日) 11:50:26.45 ID:je7B667bo
アグレッシブがすぎるw
おつ
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/11(日) 14:10:16.31 ID:wbWh4z17o
ハナちゃんでっかい声出せるんだ……
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:07:11.29 ID:IQVafa730
TRACK9 海の男

ハナ「いやああああああああ! ぎゃあああああああ!」

くーちゃん「だいじょぶですハナちゃん! 流木ちゃんと! 浮いてくれます!」

ハナ「ぎゃあああああああ!」

くーちゃん「だいじょぶです、ハナちゃん!」

バチャバチャ

くーちゃん「バタ足すれば! 少し早くなります!」

ハナ「いやああああああああああ!」
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