くーちゃん「しょくぶつさんとおはなししてたらびょういんにつれていかれました」

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25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:01:32.17 ID:+jo1S2vH0
夜。布団の中

くーちゃん(…つかれました)

くーちゃん(…うたいたいです)

くーちゃん(あのときの、しょくぶつさんの、とんねるできいた、歌)

くーちゃん(うたいたいです)

くーちゃん(ずっとおはなししてないです)

くーちゃん(ちょっとくらいは、いいはずです)

「歌うな」

くーちゃん「」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:02:56.13 ID:+jo1S2vH0
くーちゃん(なんで、だれもいないのに)

くーちゃん(こえが、きこえるですか)

「歌うな」

「悲しませるぞ」

「お母さんを苦しめるのか」

「普通じゃない」

「病気だ、病気だ」

「お前は変だ」

「変なお前は」

「「「「「お母さんを、苦しめるぞ」」」」」」

くーちゃん(・・・・・・・・・・・)

くーちゃん(こわいです)
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:03:45.31 ID:+jo1S2vH0
翌朝

お母さん「どうしたの、くーちゃん」

お母さん「目の下のクマ、ひどいけど」

くーちゃん「…なんでもないです」

くーちゃん「ちょっと、うるさかっただけです」

お母さん「うるさかった?」

くーちゃん「なんでもないです」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:07:29.90 ID:+jo1S2vH0
くーちゃん(とても大きな声でした)

くーちゃん(テレビの音を間違ってあげすぎた時の何倍も何倍も、大きかったです)

くーちゃん(うたうのやめたら、とまったとゆうことは)

くーちゃん(きっと、神様か何かに、くーちゃんは歌っちゃいけないって言われてるんです)

くーちゃん(……しょくぶつさんのうた、うたわないのが)

くーちゃん(ふつうなくらし、なんですね)

くーちゃん(なれるしか、ないですね)
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:09:15.29 ID:+jo1S2vH0
TRACK2 校長先生

小学校の校門

くーちゃん(…今日も一日、おわりました)

くーちゃん(…まるで、みずのなかにいるみたいです)

くーちゃん(まえより、苦しいのはましですけど)

くーちゃん(みずのなかにいるの、慣れただけですね)

ソヨソヨ

くーちゃん「あ」

くーちゃん「タンポポさん」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:11:53.90 ID:+jo1S2vH0
きょろきょろ

くーちゃん(だれも、いません)

くーちゃん(こっそり、手とか、ふってもよいでしょうか)

くーちゃん(あ、でも)

くーちゃん(タンポポさん、へんにおもわないでしょうか)

くーちゃん(手なんかふったら)

くーちゃん(今までお話してなかったの、なんだったのって)

くーちゃん(タンポポさん、怒りますかね…)

31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:13:56.36 ID:+jo1S2vH0
手を、あげようとして、またおろす。

それをくりかえしてる、ときでした。

校長先生「おや」

校長先生「天野さんじゃないですか」

32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:17:32.07 ID:+jo1S2vH0
くーちゃん(どうしましょう)

くーちゃん(どうしましょうどうしましょうどうしましょう)

くーちゃん(ふつうじゃないって、おもわれます。へんっておもわれます)

くーちゃん(はしってにげましょうか、いやでも)

くーちゃん(はしってにげたら、よけいへんでしょうか)

校長先生「天野さん」

バクバクバクバクバクバク

くーちゃん(しんぞう、いたいです)

くーちゃん(どうか、このままどこか行ってください)

くーちゃん(くーちゃんの変なところを見ないでください。聞かないでください)

校長先生「お花、好きですか?」

くーちゃん「…え?」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:21:05.55 ID:+jo1S2vH0
柔らかくて、優しい口調でした。

くーちゃんに対して、ああしてやろうとか、こうしてやろうとか

そういう気持ちは感じなかったです。

くーちゃん(…おちついて、きました)

くーちゃん(しんぞう、ゆっくりになりました)

くーちゃん「す、すき、です」
 
校長先生「そうですか、それはいい」

くーちゃん(いい)

くーちゃん(くーちゃんの、すきな言葉です)

くーちゃん(大きくて、温かくて、優しい感じがしました)


校長先生「よかったら、これ、いっしょに運んでくれますか?」

くーちゃん「あ!!!!!」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:24:53.98 ID:+jo1S2vH0
くーちゃん「いっぱいです! いっぱい、お花さん!」

くーちゃん(ひさしぶりに、ほんとうのこと、言いました)

校長先生「一人じゃ持ちきれないんですよ」

くーちゃん「もちます、てつだいます」

くーちゃん「どこ、まではこぶ、ですか?」

校長先生「校長先生の秘密の場所ですよ」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:31:39.15 ID:+jo1S2vH0
体育館裏

くーちゃん(たくさん、苔さんとか、雑草さんとか、生えてます)

くーちゃん(森の奥に向かってるみたいです)

くーちゃん「あ」

くーちゃん「きりかぶ、です」

校長先生「ええ、そうです。切り株です」

くーちゃん「おおきいです」

くーちゃん「学校にあるいす、倍以上大きくしたくらいあります)

校長先生「ええ、その通り」

校長先生「とても、大きな木でした」

校長先生「つい、昨日切りました。ずいぶんと、伸びてましたからね」

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:32:49.13 ID:+jo1S2vH0
校長先生「では、天野さん」

校長先生「このあたりに、花壇を作りたいので」

校長先生「一緒に植えるのを…」

くーちゃん「」

校長先生「天野さん?」


37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:35:21.91 ID:+jo1S2vH0
くーちゃん「もう、いないんですね」

くーちゃん「切っちゃったんですね」

校長先生「ええ、切ってしまいました」

くーちゃん(なんだか)

くーちゃん(とても大切なお友達と、お別れした気分です)

両手に持っていたお花を地面に置いて

くーちゃんは切り株さんのところへ行きました。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:37:16.83 ID:+jo1S2vH0
ソッ

ナデナデ

くーちゃん(つるつるしてます、氷みたいです)

ピタッ

くーちゃんは、切り株さんの切り口に、顔をくっつけました。

とても近い距離で、鼻の中に木の優しい香りが入ってきます。

くーちゃん「スーッ・・・・・・・はーっ・・・・・・・」

くーちゃん(トンネルにいくの、もうしないってきめてたんですけどね)
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:47:00.37 ID:+jo1S2vH0
「やめろ」

くーちゃん(またきこえてきました)

「きもちわるい」

「ふつうじゃない」

「こっちのせかいに、いくんじゃない」

「人の世界に、戻れないぞ」

くーちゃん(…やっぱり、うるさいです…)

くーちゃん(でも、この切り株さんのせかい、感じたいです)

校長先生「天野さん?」

くーちゃん「・・・・・・・・・・」

くーちゃん(静かになりました)

 
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:48:00.81 ID:+jo1S2vH0
くーちゃん(今なら、むかしみたいに)

くーちゃん(あのトンネル、感じられます)

目を閉じて、切られてしまった切り株さんの奥に、

くーちゃんは沈んでゆきます。

とても、暗くて、静かな場所です。

ずいぶんと久しぶりのトンネルでした。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:49:33.46 ID:+jo1S2vH0
くーちゃん(…なんだか声が、聞こえます)

くーちゃん(でも、小さいです。消えてしまいそうです)

くーちゃん(よく、きいてみます)

声「あははっ! あははっ!」

くーちゃん(……これは)

くーちゃん(子どもたちの、声ですね)

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:51:58.90 ID:+jo1S2vH0
くーちゃん(たくさんの笑い声です)

くーちゃん(けんかする声も、聞こえます)

くーちゃん(…あ)

くーちゃん(悲しんでいる声も、きこえますね)

ビデオの早回しみたいに、声はどんどん過ぎ去っていきます。

暗くて静かな不思議な世界に、微かに温もりの名残があったんです。

それは、きっと、この切られてしまった

木の温もりだと思いました。



43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:53:24.10 ID:+jo1S2vH0
くーちゃん(でも、この方はもういないんですね)

くーちゃん(切られてしまったんですね)

くーちゃん(温かいんですけど)

くーちゃん(生きている植物さんが伝えてくれる)

くーちゃん(音や息吹が、ないです)

校長先生「……天野さん、大丈夫ですか?」

くーちゃん「・・・・・・・おはなししたかったです」

校長先生「…お話?」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:55:53.72 ID:+jo1S2vH0
どういうことなのか説明するより前に

トンネルにいるくーちゃんの胸の奥に、

すごくすごく、熱い何かが流れ込んできます。

でも、嫌な熱さじゃなかったです。

まるで、ありがとう、ありがとうって、言われてるみたいでした。

くーちゃん「校長先生」

校長先生「はい」

くーちゃん「しゃべりたいことがあります」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:56:56.68 ID:+jo1S2vH0
校長先生「どうぞ」

くーちゃん「もしかして、おともだちだったですか?」

校長先生「お友達?」

くーちゃん「おともだち、だったんじゃ、ないですか?」

くーちゃん「この、切られた木と、校長先生は」

くーちゃん「おともだちだった、気がしました」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 20:58:32.74 ID:+jo1S2vH0
校長先生「…どうして、そう思ったんですか?」

くーちゃん「別に、りゆうは、ないです」

くーちゃん「この切り株さんが、校長先生との思い出を、人間の言葉で、言ってたわけじゃ、ないので」

くーちゃん「でも」

くーちゃん「この切り株さんは」

くーちゃん「何年も、何十年も、ずっとずっと」

くーちゃん「この学校の、子どもたちを見守っていて、大好きだったって」

くーちゃん「そんな気が、したんです」

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 21:00:22.93 ID:+jo1S2vH0
校長先生「友達…そうかも、しれません」

校長先生「……私の、一方的な思いかもしれませんが」

校長先生「私は、この木を大切な友達だと、思っていました」

校長先生「子どものころから生えていた木は、私の、大切な友達でした」

くーちゃん「……ごめんなさい」

校長先生「なぜ、あやまるのですか?」

くーちゃん「ごめんなさい、ごめんなさい」

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 21:01:30.51 ID:+jo1S2vH0
くーちゃん「切られる前に、この方と出会えたら」

くーちゃん「おともだちになれたかもしれないのに」

くーちゃん「くーちゃんはしょくぶつさんとのお話をやめてたんです」

くーちゃん「耳をふさいで、目を閉じて、『ふつうの子』を目指してたんです」

くーちゃん「ごめんなさい、ごめんなさい」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 21:04:19.61 ID:+jo1S2vH0
くーちゃん「ずっと無視して、ごめんなさい」

くーちゃん「くーちゃんは、くーちゃんは、ふつうじゃないと、だめなんだって、思ってたです」

くーちゃん「でも、むりです」

くーちゃん「聞こえないふりするの『ふつうの子』なら」

くーちゃん「くーちゃんは、『ふつうの子』じゃなくて、いいです」

♪♪♪♪♪

くーちゃん「あ」

くーちゃん「きこえて、きました」

 
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 21:04:46.58 ID:+jo1S2vH0
くーちゃんが意識をトンネルにゆだねてると、たくさんの、音が飛び込んできました。

他の植物さんとも、つながりができたのかもしれません。

その音は、歌みたいでした。

きっと、切り株さんへ、植えられたお花さんたちが歌ってくれたのかもしれません。
 
変だと思われてもよかったです。お花さんたちが歌っているんだから。

くーちゃんだって歌ってもよいと、思いました。

だから、歌いました。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 21:06:54.56 ID:+jo1S2vH0
夕方

校長先生「…ありがとう、天野さん」

校長先生「素敵な歌でした」

くーちゃん「え」

くーちゃん「よいですか? くーちゃん、うたっても、よいですか?」

校長先生「ええ、もちろん」

校長先生「天野さんにしか歌えない、才能です。植物と、対話ができるのですから」

校長先生「その才能を、絶対に私は、いや。この学校は無駄にしません。約束します」

くーちゃん「……」

くーちゃん「ありがとうございます」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 21:08:01.20 ID:+jo1S2vH0
その約束が

くーちゃんの未来を、大きく変えてしまいました。



全校集会

校長先生「えー、生徒の皆さん。今日は校長先生が体験した」

校長先生「素晴らしいお話をしましょう」

校長先生「この学校には、植物とお話ができる」

校長先生「すごい、生徒がいたんです」

くーちゃん「」

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/01(木) 21:09:39.93 ID:+jo1S2vH0
すいません長くなりました。

また明日ノシ
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/01(木) 21:12:36.25 ID:UWQm3qZuo
おつ
あっやばそう
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 00:10:38.98 ID:0Oqbp7Vz0
明日書きます
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 19:37:46.34 ID:0Oqbp7Vz0
病院

医師「それで、校長先生に、くーちゃんのトンネルを感じられる話や」

医師「そのトンネルで植物さんの思いを知れる話を晒された、と」

くーちゃん「…はい」

医師「で、生徒たちから」

くーちゃん「はい」

くーちゃん「絶賛されました」

医師「」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 19:39:33.31 ID:0Oqbp7Vz0
学校

生徒1「天野さん! 植物と話せるの!」

生徒2「すごいすごい!」

生徒3「神様みたい!」

くーちゃん「…そう、ですかね…」

くーちゃん(幼稚園の頃は、へんだとか気持ち悪いとか、言われてたはずなんですけど)

くーちゃん(校長先生みたいな、すごい人が言ったら)

くーちゃん(みんな信じるんですね)

くーちゃん(よくわからないです、人間って)
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 19:41:11.32 ID:0Oqbp7Vz0
生徒1「ねえねえ! やってみせてよ!」

生徒2「この間育てたアサガオとか!」

生徒3「それに、アサガオの歌とか聞いて歌えるんでしょ!」

生徒4「聴きたい聴きたい!!」

くーちゃん「……」

くーちゃん(でも期待されるの、悪い気分じゃないですね)

くーちゃん「やりましょか」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 19:44:23.70 ID:0Oqbp7Vz0
校庭

生徒1「で、どうやるの?」

くーちゃん「えと」

くーちゃん「こんなかんじで、頬、植物さんのとこにくっつけて」

ペタ

くーちゃん「目、とじます」

60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 19:48:07.43 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん(暗くて、青白くて、でも優しい光のあるトンネルです)

くーちゃん(きれいなとこです)

くーちゃん(あ、みえます)

くーちゃん(みんなで種を植えて、大きくなれって、いってます)

くーちゃん(アサガオさん、喜んでます)

くーちゃん(水、おいしいって、いってます)

くーちゃん(アサガオさん、わくわくしてます)

くーちゃん(わくわくが、コップに水を注ぐみたいに)

くーちゃん(とぽとぽたまっていきます)

くーちゃん(あ、きこえました)

くーちゃん(うたです)
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 19:51:07.71 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん「あwwふぃhrvじwwkごえこgぽpらwwgrじwwkろqf」

くーちゃん「Bぺqkv炉アk添えkfq@でわふぇfrsfvbGMあえtpくぇ」

くーちゃん「vれあじょいじおsgkヴぉえqこえくぇこえgk@ふぇq!」

くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・ふう」

生徒たち「」

くーちゃん「あ・・・・・・・・」

くーちゃん「えと」

くーちゃん「その」

生徒1「天野さん」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:24:04.17 ID:0Oqbp7Vz0
生徒1「何今の! すごいすごい!」

生徒2「神様の歌みたい!」

生徒3「神秘的というか、かっこいい!」

くーちゃん「」

くーちゃん(これが手のひら返しというやつですか)
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:25:36.99 ID:0Oqbp7Vz0
病院

医師「なるほど…なんか、不思議な話だね」

くーちゃん「とゆうわけで、くーちゃんのトンネルはくうそうじゃないとゆうことです」

医師「まあ、そういうことかな。なんにせよよかったじゃないか」

くーちゃん「それだけじゃないんです」

くーちゃん「くーちゃん、最近すごく忙しくなりました」

医師「忙しく?」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:27:40.83 ID:0Oqbp7Vz0
自宅

プルルルル

ガチャ

母「はい、もしもし。ええ、空は、うちの娘ですけど…」

母「え? そちらの神社の御神木の声を、聴いてほしい?」

母「すいません、言ってる意味が…」

母「あ、校長先生から、話を聞いた…なるほど…」

くーちゃん「どうしたですか、お母さん」

母「なんかくーちゃん」

母「…すごいことになってない?」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:30:23.83 ID:0Oqbp7Vz0
病院

くーちゃん「とゆうわけで、どんどんいそがしくなりました」

くーちゃん「いろんな神社とか、お寺とか、山や森に生えてる」

くーちゃん「長く長く生きた植物さんの声を、聴きに行って」

くーちゃん「歌にしてほしいって、言われるようになりました」

医師「…いや、いくらなんでも、そんなに話が大きくなるなんて…」

くーちゃん「くーちゃんもびっくりしました」

くーちゃん「でも、校長先生が、いろんな神社とかの関係者と、お友達だったみたいで」

くーちゃん「くーちゃんのこと、たくさんたくさん話したんです」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:31:55.15 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん「いつの間にか、雑誌のインタビューまで受けることになっちゃいました」

ドサ

くーちゃん「この本、全部くーちゃんがしゃべったこと、のってます」

医師「なるほど…」

医師「不思議なこともあるもんだね」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:33:32.46 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん「お金も払ってくれますからね」

くーちゃん「くーちゃんの家、おとうさんいないので」

くーちゃん「生活には、たすかってるみたいです」

くーちゃん「いくらかは、大人になったくーちゃんのために」

くーちゃん「貯金、してくれてるみたいですけど」

医師「そんなお年玉みたいに…」

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:37:22.33 ID:0Oqbp7Vz0
その日の夜

母「くーちゃん、また電話があったわよ」

母「今度は隣の町の神社で、声を聴いてほしいんだって」

くーちゃん「わかりました」

くーちゃん「でもお母さん」

くーちゃん「よいんですか? この暮らし、ふつうじゃないですよ」

母「…そうね」

母「くーちゃんの、不思議な力が、誰かのためになってるなら、いいんじゃない?」

母「みんながすごいって言うなら、きっとくーちゃんはすごいのよ」

くーちゃん「…そうですか」

くーちゃん(ほんとと、うそが、いりまじった、変な感じがします)

母「どうかした?」

くーちゃん「なんでもないです」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:44:25.03 ID:0Oqbp7Vz0
数か月後。

病院

医師「ずいぶん疲れてるね」

くーちゃん「はい、疲れました」

医師「最近はよくテレビにも出てるもんね。植物と話せる巫女さんって」

くーちゃん「はい…植物さんの世界かもしれない、不思議なトンネルのお話とか、音の話もしました」

くーちゃん「でも、難しい質問をたくさんされることもあって」

くーちゃん「たくさん、わからないですと、ゆってしまいます」

医師「別にいいことだろう。わからないことは、わからないで」

くーちゃん「でも、わからないって、時々、すごく大きな解釈、されちゃうんです」

くーちゃん「くーちゃんがしゃべったこと、たくさんのえらい人、どんどん広げていくんです」

くーちゃん「広げて、広げて、どんどん形もかわっていって」

くーちゃん「最後には、別の言葉になっちゃうんです」

くーちゃん「だから、気持ち悪くて、くーちゃんはテレビも本も、見てません」

医師「…ミステリアスさは、時として神秘性を帯びる…か…」

くーちゃん「どういうことですか?」

医師「わかりにくいものは、魅力的に見えるんだよ。みんなね」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:46:34.86 ID:0Oqbp7Vz0
週末。とある神社

神主「さあ! どうかよろしくお願いいたします!」

くーちゃん「…はい」

くーちゃん(…すごく、この人、わくわくしてます)

くーちゃん(木が、いつだって、いいことばかり、言ってるわけじゃ、ないのに)
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:49:21.43 ID:0Oqbp7Vz0
観衆たち「わくわく」

くーちゃん(やるしかなさそうです)

ゴロン

ペタッ


くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

神主「どうですか⁉ どうですか⁉」

くーちゃん(・・・・・・・・・・きこえないです)

くーちゃん(たまにあるんです。長く生きてる木だと、もう人間に)

くーちゃん(何の感情も、抱いてない時が)

男1「…何も歌わないな」

女1「ねえ、彼女、結構不思議なことばかり言ってるけど」

女1「本当に、巫女なの?」

くーちゃん「」

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:51:54.38 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん(…あ、もどってきちゃいました。トンネルから)

くーちゃん(もう、土の感じしかしません)

くーちゃん(目覚まし時計で起こされた気分です)

くーちゃん(最悪な気分です)

くーちゃん(さけんでやりたいです。やめてください!って、叫びたいです)

神主「…いかが、されましたか?」

くーちゃん(…でも、だめです)

くーちゃん(たくさんの大人、くーちゃんに期待してます)

くーちゃん(植物さんが、人間に対してどれだけ慈悲深く、素敵な気持ちを抱いているか)

くーちゃん(みんな、くーちゃんが教えてくれること、期待してるんです)

くーちゃん「…」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:55:08.44 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん(むかつきます)

くーちゃん(人間だって、みんながみんな、お友達にはなれないですよ)

くーちゃん(植物さんだって同じです)

くーちゃん(いつだって心地いい音や気持ちを、人間に感じているわけじゃないんです)

くーちゃん(でも、納得してもらうには)

くーちゃん(こうするしか、ありません)


 
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:56:07.32 ID:0Oqbp7Vz0
TRACK3 巫女もどき


あの日切り株さんに、くーちゃんが無視したこと、謝りました。

聞こえているのに、聴こえていない嘘、ついてたこと、謝りました。

でも、今度は逆のことを、してしまったんです。
 
聞こえていないのに、聞こえているフリをしてしまいました。
 
こんな動き、こんな音があれば、きっとみんな納得するんじゃないか。

♪♪♪♪♪♪

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 20:58:46.16 ID:0Oqbp7Vz0
パチパチパチ

男1「すごいすごい!」

女1「本物なのね…涙が出てきた…」

神主「彼女こそ…巫女、いや…」

神主「神、そのものかもしれない」

神主「ありがとう…ありがとう…」

ギュッ

くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん(きもちわるいです)

くーちゃん(みんなみんな、いい加減です)



76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:00:53.99 ID:0Oqbp7Vz0
病院

くーちゃん「みんあ、くーちゃんの嘘、ほめてくれました」

くーちゃん「帰ってから、ずっとずっと泣いていました」

くーちゃん「みんな、本当のことが知りたかったわけじゃないんです」

くーちゃん「自分にとって、都合のよいことなら。神秘的で、美しく見えたら。なんでもよかったんです」

医師「…もう、やめたらいいんじゃないかな」

くーちゃん「…そう簡単には行きません」

くーちゃん「おうちのお金に、なってますから」


 
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:01:45.29 ID:0Oqbp7Vz0
医師「…ねえ、空ちゃん」

医師「お友達は、いるかい?」

くーちゃん「いません。いりません」

くーちゃん「くーちゃんは、人間が、好きじゃなくなりました」

医師「…そうか」

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:03:08.35 ID:0Oqbp7Vz0
帰り道

女1「あ! あの子! 巫女さんの天野さんじゃない!」

女2「ほんとだ! すごい! かわいい!」

女3「植物の声、聞こえるなんてすごいわn」

女1「握手してもらっても

くーちゃん「うるさいです」

女1「え」

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:36:52.71 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん(くーちゃんの嘘にまみれた対話もどきを褒められても、何もうれしくないです)

くーちゃん「うるさいです、来ないでください。うるさいです」

話しかけられないほうが楽でした。
 
嫌われているほうが楽でした。
 
くーちゃんの嘘が神聖視されるより、ずっとずっとマシでした。

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:38:26.02 ID:0Oqbp7Vz0
学校行事も、休み時間も、全部全部嫌いになりました。

でも学校に行かないと、お母さんが心配するのは目に見えたので

渋々舌打ちしながら、小石を蹴って、学校に通い続けて。

なんとかくーちゃんは小学校という一つの山を終えることができました。
 

まあそのあと中学校もあるのか思うと、憂鬱なのは変わりませんが。

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:39:28.04 ID:0Oqbp7Vz0
卒業式

くーちゃん(ようやく終わりました)

くーちゃん(中学校を卒業したら、山にこもって、草でもかじりながら、一生過ごすのもありかもです)

くーちゃん(お母さんのために、頑張っては来ましたけど)

くーちゃん(中学を卒業すれば、もういい年です)

くーちゃん(お母さんの顔色を窺わなくてもよいでしょう)

母「くーちゃん」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:40:16.98 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん「はい、なんでしょう」

母「みんなと写真、撮らなくていいの?」

くーちゃん「いいでs」

?「天野さん」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「校長先生」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:45:00.94 ID:0Oqbp7Vz0
校長先生「よかったら、一緒に写真でも、撮りませんか?」

くーちゃん「・・・・・・・」

くーちゃん「校長先生なら、よいです」

84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:46:02.76 ID:0Oqbp7Vz0
パシャッ

校長先生「天野さん、笑ってくれてもいいんですよ」

くーちゃん「くーちゃんはうそがきらいです。笑いたくないのに笑えません」

校長先生「なるほど」

校長先生「天野さん。少しお話をしませんか?」

くーちゃん「おはなし?」

校長先生「喋りたいことがあります」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:48:17.19 ID:0Oqbp7Vz0
体育館裏

くーちゃん(久しぶりに来ました。あの日、以来です)

校長先生「ずいぶんと、お花、増えたでしょう」

くーちゃん「すごいです。きれいです」

くーちゃん「赤、青、黄色のパンジー、にタンポポまであります。たくさんです。たくさん」

くーちゃん「まるでお花のじゅうたんです」

86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:49:07.54 ID:0Oqbp7Vz0
優しいお花さんたちの声が聞こえてきそうで、

くーちゃんはいつものように土の上に寝そべって、

トンネルを感じることにしました。

温かくて甘い香りで満たされたトンネル。

中には、あの時の切り株さんみたいに、子どもたちの笑い声がたくさんたくさんしみ込んでました。

くーちゃんに友達はいませんが、

いろんな子たちにとって、学校生活は、充実した時間になってたみたいです。

そんな子どもたちに踏みしめられながら生きてたお花たちは、子どもたちのことが大好きでした。

誰にも邪魔されない。本物の対話です。

巫女もどきのお仕事より、ずっと幸せでした。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:51:58.60 ID:0Oqbp7Vz0
校長先生「天野さん。校長先生は」

くーちゃん「ごめんなさいは、いりません」

校長先生「……」

校長先生「……天野さん、それでもあなたの望んでいたことは、きっとこんなことでは」

校長先生「だから、せめて…」

くーちゃん「いりません」

くーちゃん「校長先生は、くーちゃんのこと、思ってやってくれたです」

くーちゃん「だからごめんなさいは、いりません」

くーちゃん「校長先生は頑固ですが、やさしい人です」

くーちゃん「それが少し大きくなりすぎて、違う形になってしまっただけです」

くーちゃん「だから、気にしてません」

くーちゃん「少なくとも、変な視線を向けてくる人より、校長先生はすきです」

くーちゃん「くーちゃんは人間が嫌いですけど、校長先生のことはすきです」

88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:53:22.14 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん「くーちゃんのこと、わかってくれて、うれしかったです」
 
くーちゃん「くーちゃんは、謝られるのが、好きじゃありません」

くーちゃん「謝られても、くーちゃんにできることは何もないですし、過去は変わらないので」

くーちゃん「だから、大丈夫です」

校長先生「……天野さん、ありがとう」

校長先生「何かあったら、何でも相談してください。校長先生は、天野さんの味方です」
 
くーちゃん「なるほど」

くーちゃん「じゃあ、一つだけ」

89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:54:19.92 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん「「天野さんじゃないです。くーちゃんです」


校長先生「・・・・・・・ふふっ」

校長先生「わかりました。くーちゃん」

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:54:48.16 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃんはくーちゃんという名前が大好きなんです。

だから、大切な人には呼んでほしいです。

皆さんも、いつでもくーちゃんと気楽に呼んでください。
 
何はともあれ、くーちゃんの小学校のお話は終わりです。長すぎましたね。

ですが、まだ大事な人、出てきてません。

安心してください。ここからちゃんと出てきます。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:55:16.92 ID:0Oqbp7Vz0
また明日ノシ

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/03(土) 22:05:17.13 ID:65n6n0fxo

いじめられるよりはよかった
いやよくねぇ
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/04(日) 02:55:06.05 ID:pgv19obDO
優しい世界かな?って思ったらちょっと違った
でもやっぱり優しい世界かな?
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 18:32:18.68 ID:xw7vYgqJ0
TRACK4 ハナちゃん

病院

医師「早いね、空ちゃんももう中学生か」

くーちゃん「はい、まあでも、やることそんなに変わりません」

くーちゃん「嘘ばかりの奉納。嘘ばかりの歌。嘘ばかりの踊り。嘘ばかりの言葉」

くーちゃん「頭、おかしくなりそうです」

医師「やめたらいいのに」

くーちゃん「そういうわけにもいかないのです」

くーちゃん「くらしの、お母さんのためですから」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 18:34:12.14 ID:xw7vYgqJ0
くーちゃん「まあでも、昔より、クラスメイトに巫女もどきの話をされることも減りました」

医師「さすがにそうだよね」

医師「友達はできた?」

くーちゃん「いえ、くーちゃん、もう誰かに温かい態度、とるのしんどかったので」

くーちゃん「くーちゃんは、冷たい態度をとる人間として評判なのです」

医師「嫌な評判だね」

くーちゃん「おかげで話しかけられなくて助かるのです」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 18:36:47.26 ID:xw7vYgqJ0
とある10月の月曜日

先生「転校生を紹介します」

先生「ほら、自己紹介を」

転校生「・・・・・・・・・・・・・・・」

先生「・・・・・・・・・・・・え、あの、自己紹介を」

転校生「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん(すごく、長い髪です。いつから切ってないのでしょう)

くーちゃん(丸いメガネが、かわいいです)

それが、転校生、ハナちゃんとの出会いでした。


97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 18:40:45.45 ID:xw7vYgqJ0
先生「えっと、その……」

先生「浜辺ハナさんは、その、××県からやってきてて」

先生「すごい、穏やかな海が、綺麗な場所、なんだよね」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

先生「絵が、好きなんだっけ…」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

先生「あの、なんかせめて頷くとか…」

くーちゃん(…おしゃべりな人、無口な人、いろいろいますけど)

くーちゃん(何もしゃべらないのは、めずらしいです)

くーちゃん(安心します)

くーちゃん(嘘を沢山つく人たちより)

くーちゃん(ずっと、ふつうのひとです)
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 18:42:53.79 ID:xw7vYgqJ0
生徒1「え、あの子大丈夫…?」

生徒2「おとなしいだけ、じゃないのかな…」

生徒3「でも自己紹介くらい…」

生徒4「なんかこわい」

くーちゃん(…わからないから、こわいんですね)

くーちゃん(おばけがこわいのと、おなじです)
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:01:06.55 ID:xw7vYgqJ0
授業中

先生「では、浜辺さん」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

先生「…浜辺さん?」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

先生「浜辺さん!!」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

プルプルプル

生徒1「…ねえ、多分あれだよね、転校してきたのって」

生徒2「絶対親の事情とかじゃないよね」

生徒3「ねえ、ああいうのって、どうしたらいいの?」

生徒4「知らないよ…下手なこと言って地雷踏んだらめんどくさそうじゃん」

くーちゃん「…」

くーちゃん(いいですね)
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:02:34.63 ID:xw7vYgqJ0
休み時間

生徒1「ハマベさん、またどこか行ってるね」

生徒2「保健室とか?」

生徒3「保健室この間休んだけど、いなかったよ」

生徒4「えー、なんかこわっ」

くーちゃん(まるでおばけみたいに言われてます)

くーちゃん(でも、みんなの方が、他人を勝手に判断してて)

くーちゃん(おばけよりこわいです)
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:04:46.54 ID:xw7vYgqJ0
ガラッ

ハナ「…」

生徒1「あ、戻ってきた」

ハナ「……」チラッ

くーちゃん「…?」

くーちゃん(きれいな目で、くーちゃんのこと、見てきました)

くーちゃん(…何か、言いたいのでしょうか)

ハナ「・・・・・・・・」

くーちゃん(まだ、話す準備ができてないようですので)

くーちゃん(待ちましょう)

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:08:12.66 ID:xw7vYgqJ0
翌朝

くーちゃん「…今日は金曜日です」

くーちゃん「明日、またお仕事ありますね」

コンコン

母「くーちゃん、入るわよ」

ガチャッ

ゴトッ

くーちゃん「なんですか、この箱」

母「これね」

母「いつもくーちゃんが奉納とかするとき」

母「私服なのがあまりよくないんじゃないかって言ってて」

パカッ

母「これ、巫女服」

くーちゃん「」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:09:36.19 ID:xw7vYgqJ0
母「ね、このヒラヒラとかきれいで」

ダッ

母「え、ちょ、くーちゃん?」

くーちゃん(わかってくれない人だけど、母親だから気を使ってましたが)

くーちゃん(もういいです)

くーちゃん(ここまでわからない人だとは、思わなかったです)
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:22:54.48 ID:xw7vYgqJ0
タッタッタッタッ

くーちゃん(あ、くつ、履き忘れました)

くーちゃん(まあ、学校行けば、うわばきありますし、はだしはすきです。地面、感じられます)

くーちゃん(巫女服の嫌な感じ、地面の石の感触で忘れられるかもしれません)

くーちゃん(飛び出てしまいましたけど、まあよいです)

くーちゃん(お母さんのためだけに生きるの、つかれました)

くーちゃん(でも、このままどこいきましょう)

くーちゃん(山でもいって、本当に草でもかじって生きていきましょうか)

くーちゃん(巫女もどきの仕事続けるより、数億倍ましです)
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:24:00.73 ID:xw7vYgqJ0
空地

?「・・・・・・・・・・・・・・・・」

カキカキ

くーちゃん「?」

くーちゃん「あ、あれは」

くーちゃん「ハナちゃんです」

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:26:15.06 ID:xw7vYgqJ0
ハナちゃん「♪♪♪♪」

カキカキ、サラサラ

くーちゃん(何か、スケッチに描いてます)

くーちゃん(初めてハナちゃん見たとき、夜の底みたいな目でしたのに)

くーちゃん(すごくたのしそうです。きらきらしてます)

くーちゃん(流れ星みたいな目です)

くーちゃん(いったい、何の絵を描いてるのでしょうか)

ソッ

くーちゃん「」

くーちゃん「えっ…」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:30:53.91 ID:xw7vYgqJ0
ハナ「!!」

くーちゃん「ハナ、ちゃん」

くーちゃん「なんで、しってるですか」

くーちゃん「なんで、くーちゃんしか知らないトンネルの絵」

くーちゃん「しってるですか」


108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:31:45.54 ID:xw7vYgqJ0
ハナ「!!」

くーちゃん「ハナ、ちゃん」

くーちゃん「なんで、しってるですか」

くーちゃん「なんで、くーちゃんしか知らないトンネルの絵」

くーちゃん「しってるですか」


109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:33:03.65 ID:xw7vYgqJ0
ミスです。連投失礼



ハナ「あ、えあ、えあ」

くーちゃん「知ってるん、ですね?」

ハナ「・・・・・・・」

コクリ

くーちゃん「ハナちゃん」

くーちゃん「もっと、ありますか?」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:37:18.53 ID:xw7vYgqJ0
学校。屋上につながるドアの前にあるスペース

くーちゃん「ハナちゃん、どして、こんなとこに」

くーちゃん「もしかして、休み時間、ここで絵、描いてたですか?」

ハナ「」にやっ

こくり

くーちゃん(…かわいいですね、ハナちゃん)

くーちゃん(今すぐにでも抱きしめたくなるほどですが)

くーちゃん(人間同士のスキンシップはよくわからないので、やめときましょう)


その屋上の入り口前には、使われていない勉強机が乱雑に置かれていて、そこには、何冊か大きなスケッチブックが入ってました。ハナちゃんは、机から一冊のスケッチブックを取り出して、開きました。そこには、黒やら灰色やら、少し緑の入り混じった不思議な絵が描かれていたんです。

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:38:55.42 ID:xw7vYgqJ0
くーちゃん「ハナちゃん、これは、なんですか?」

ハナちゃんはスケッチブックからその絵を切り離して、床の上に置きました。

そして、また一枚、また一枚と、別のページに描いていた絵を切り離して、

並べていきます。

やがてそれは、大きな絵になりました。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:40:48.49 ID:xw7vYgqJ0
くーちゃん(今まで、見たことないトンネルの世界です)

くーちゃん(ずっと大きく深く、静かな、世界です)

ゴロン

くーちゃんは、ハナちゃんの並べた絵の上に、トンネルの時間を思い出しながら寝そべります。

くーちゃん(ふしぎです。絵は植物さんとちがって、生きてないのに)

くーちゃん(冷たくて、優しい感じ、します)

くーちゃん(あ)

くーちゃん(何か、聞こえます)




 きてほしい。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:43:04.81 ID:xw7vYgqJ0
くーちゃん(…誰でしょう、なぜ、呼ぶのでしょう)

くーちゃん(すごく、つよい、思いです)

くーちゃん(絵なのに、トンネルを感じられるなんて、ふしぎです)

くーちゃん(でも、この感じ、きっと本物です)

くーちゃん「ハナちゃん」

くーちゃん「このトンネル、どこに、つながってますか?」

ハナ「」ブンブン

くーちゃん「わからないのですね」

くーちゃん「ハナちゃん」

くーちゃん「くーちゃん、ここ、行きたいです」
 
ハナ「・・・・・・・・・・・・・え」

ハナ「い、いきたい?」

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:48:31.69 ID:xw7vYgqJ0
くーちゃん(ハナちゃんの声、はじめてききます)

くーちゃん(かすれた喉の奥から絞り出すような音ですけど)

くーちゃん(とてもやさしい音です)

くーちゃん「はい。行きたいです。呼んでます」

くーちゃん「くーちゃんが、このトンネルの向こうのだれかから、必要とされてます」

くーちゃん「だから、行きたいです」
 
くーちゃん「嘘っぱちのくーちゃんじゃなくて、本当のくーちゃんを必要としてくれるこの方のために」

くーちゃん「くーちゃんは、自分を使いたいんです」

115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:50:22.68 ID:xw7vYgqJ0
ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ハナ「ん」

 言葉なのかどうか、よくわからない音を出して、ハナちゃんは頷きます。

くーちゃん「ハナちゃん」

 寝そべりながら、くーちゃんは、ハナちゃんに言いました。

くーちゃん「くーちゃんと、一緒に、この絵のトンネル、探しませんか?」

116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:50:54.68 ID:xw7vYgqJ0
また明日ノシ
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:25:21.69 ID:hX7kkdOe0
病院

くーちゃん「というわけで、くーちゃんは」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「このハナちゃんと旅に出ることにしたので、今日が最後の診察です」

医師「いやいやいやいやいや」

医師「話が急ピッチ過ぎてついていけないよ」

くーちゃん「安心してください」

くーちゃん「旅のプランは考えてます」

医師「いやそういう問題じゃないから」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:26:40.88 ID:hX7kkdOe0
くーちゃん「くーちゃん、天才的な頭脳で考えたのです」

くーちゃん「トンネルを探す計画」

医師「…では、一応聞こうか」

くーちゃん「トンネルは、植物さんのところからいけます」

くーちゃん「つまり」

くーちゃん「日本中の森とか山をしらみつぶしに探せば」

くーちゃん「ハナちゃんの絵のトンネルにたどり着けると考えました」

医師「それ計画?」

くーちゃん「はい、天才的な計画です」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:27:51.63 ID:hX7kkdOe0
くーちゃん「でも見てください、ハナちゃんのこのトンネルの絵」

バサッ

くーちゃん「すごいとおもいませんか?」

医師「いやすごいけど、折り目やばいよ」

医師「いいの、ハナちゃんは」

ハナ「」こくり

医師「いいのかよ」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:29:13.85 ID:hX7kkdOe0
医師「ただ、このハナちゃんが描いたトンネルなんだよね」

医師「もっと、なんでこの絵を描いたのかとか、聞いたらいいんじゃないかな」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「こんな感じなのでむずかしいのです」

医師「なるほど…」

くーちゃん「とゆうわけで、お世話になりました」

くーちゃん「先生は、校長先生と、ハナちゃんの次に」

くーちゃん「すきなにんげんでした」

医師「…どうもありがとうね」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:30:24.38 ID:hX7kkdOe0


くーちゃん「ではハナちゃん、荷造りをして夕方に公園前で集合です」

くーちゃん「今日は半日授業だったので、これはチャンスなのです」

くーちゃん「やるなら、今日しかありません」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ハナ「」こくり


くーちゃん「さすがです、ハナちゃん」

くーちゃん「では、また後程」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:31:59.58 ID:hX7kkdOe0
自宅前

くーちゃん(あ、今日お母さん、仕事休みでした)

くーちゃん(堂々と旅の準備なんかしたらばれますよね)

くーちゃん(となると、こっそりやるしかないです)

くーちゃん(裏庭に回って、くーちゃんの部屋の窓から出入りすれば、ばれません)

くーちゃん(くーちゃんのおうちが、平屋でよかったです)

ガチャガチャ

くーちゃん「カギ閉めてました」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:33:07.80 ID:hX7kkdOe0
くーちゃん「仕方ありません」

パリン!

くーちゃん「聞いたことがあります。窓の修理費より鍵の修理費の方が高いと」

くーちゃん「窓の修理費は、見逃してもらいましょう」

母「…まじでなにしてるのあなた」

くーちゃん「」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:35:38.14 ID:hX7kkdOe0
くーちゃん「…鍵、わすれたので」

母「ピンポンおしなさいよ、わたしいるんだから」

くーちゃん「…そういうわけにはいかないので」

母「旅に出るから?」

くーちゃん「なんでしってるのですか」

母「病院から連絡あったからよ」

母「あんな話したら私に連絡行くのわかるでしょう」

くーちゃん「先生は、口が軽いです」

くーちゃん「許せません」

母「逆恨みしないで」
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