くーちゃん「しょくぶつさんとおはなししてたらびょういんにつれていかれました」

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225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:09:28.55 ID:IQVafa730
そんな、くーちゃんとハナちゃんが、たのしい海の旅をしている時でした

ブロロロロ

くーちゃん(…なんでしょう、なつかしい音です)

くーちゃん(たしか、これは)

?「おいなにしてんだお前ら!!」

?「はやくあがってこい!」

くーちゃん(ふねのおとです)
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:10:51.91 ID:IQVafa730
赤い船の上

ハナ「はあ…はあ…」

?「なにしてんだお前ら」

くーちゃん「お前らじゃないです、くーちゃんとハナちゃんです」

くーちゃん「おじさんはだれですか?」

?「…まあ、そうだな」」

?「俺は海の男だよ」
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:13:32.95 ID:IQVafa730
海の男「で、説明してもらおうか。なんであんなことしてたんだ?」

くーちゃん「あの島にいきたいのです」

くーちゃん「そのために、ハナちゃんのリュックもあったので」

くーちゃん「流木につかまったままなら、リュックを背負ってでもいけると考えました」

くーちゃん「くーちゃんの頭脳は天才的なのです」

海の男「溺れ死にてえのか」

くーちゃん「…いけると、おもったです」

海の男「無理に決まってるだろ」

くーちゃん「若さゆえの過ちです」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:14:42.79 ID:IQVafa730
海の男「でだ、お前さんたちはどうしてあの島に」

くーちゃん「なんで船にギターおいてるですか? 弾くんですか?」

海の男「今それ関係ねえだろ」

カーカー

くーちゃん「カラスさんいるです! かわいいです!!」

海の男「聞けよ」
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:16:24.59 ID:IQVafa730
くーちゃん「あの島に、なまえがなかったので、いくのです」

くーちゃん「ハナちゃんのふるさと近くの島、探したです」

くーちゃん「そしたら、一つだけ、名前なかったからです。それが理由です。だから一つ目、あの島です」

海の男「一つ目?」

くーちゃん「はい。一つ目です。トンネル探すためです。呼ばれたので、向かってるです」

海の男「トンネル……ねえ」ジーッ
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:18:04.96 ID:IQVafa730
くーちゃん「わからなくてだいじょうぶです。とにかくあの島までくーちゃんたちは」

海の男「正解だ」

くーちゃん「?」

くーちゃん「なにがですか? くーちゃんたち、いつのまにクイズしてたのですか?」

海の男「クイズじゃねえよ」

海の男「トンネルだなんだっていうのは、俺にはわからねえが」

海の男「嬢ちゃんたちのゴールはあの島で正解だってことだよ」

くーちゃん「おじょうちゃんじゃないです。くーちゃんです」

くーちゃん「それに、なんでわかるですか?」

海の男「俺が海の男だからだ」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:19:41.09 ID:IQVafa730
くーちゃん「いみわからないです」

海の男「とにかくだ」

海の男「嬢ちゃん、どこかで見たことあると思ったら」

海の男「植物と話ができる巫女さんじゃねえか」

くーちゃん「」

海の男「ずいぶんと髪を切ったんだな。テレビや雑誌にも取り上げられてただろ」

くーちゃん(いやな情報、もりだくさんです)

くーちゃん(それに、くーちゃんの変装、あっさりばれてるとゆうことです)

くーちゃん(ですが、海の男とここで敵対してしまっても、よいことはありません)
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:20:52.43 ID:IQVafa730
海の男「「そんでだ。なんでそのトンネルを目指しているのか、詳しく聞かせてくれ」

くーちゃん「海の男でもわからないですか?」

海の男「なんでもわかっちまえば、宝くじの当選番号や、競馬の勝つ馬がどれかなんてのもわかるだろ?」

海の男「つまり海の男にも限界があるんだよ。教えてくれ」
 
海の男とゆう言葉、あまり便利じゃなさそうです。

買いかぶりすぎてました。

そんな怖い顔しないでください。余計老けて見えますよ。

233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:22:42.53 ID:IQVafa730
くーちゃん「ことばどおりです。トンネル探してるです」

くーちゃん「くーちゃんは、ハナちゃんが絵にかいた、トンネルに続いてる」

くーちゃん「植物さんの世界、行きたいです」

くーちゃん「呼ばれてるです。必要とされてるです」

くーちゃん「だからさがしてるです」

海の男「・・・・・・・ほう」ジー

ハナ「」ビクッ

くーちゃん「なんでハナちゃんのことみてるですか」

海の男「……どこかで見たことあると思えば」

海の男「お前さん、あいつの娘か」

ハナ「」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:24:26.43 ID:IQVafa730
ハナ「かはっ、は、はあ…」

くーちゃん「海の男、ハナちゃんを、知ってるですか?」

海の男「知り合いの娘だ。何回かこの船にも乗せてたんだがな」

海の男「ずいぶんとでかくなったもんだ」

ハナ「」ガタガタ
 
くーちゃん「ハナちゃん、怖いですか? 寒いですか?」

ハナ「」

くーちゃん(…どっちにしろ楽しくお話できる状況ではなさそうですね)
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:28:14.62 ID:IQVafa730
海の男「で、こいつが描いたトンネルの絵とやらは、どんな絵なんだ。みせてみろ」

くーちゃん「こいつちがいます。ハナちゃんです」

くーちゃん「知り合いなら名前、呼んであげてください」

海の男「お前さんは初対面の人間に対して、ずいぶんと言うんだな」

くーちゃん「おたがい様です。あとお前ちがいます。くーちゃんです」

236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:29:54.55 ID:IQVafa730
くーちゃん「とにかく、ハナちゃんの絵、すてきな絵です」

海の男「全然わからん」

くーちゃん「海の男でもわからないですか?」

海の男「言っただろ。同じことを何度も言わさないでくれ」

海の男「海の男もな、見たことがないものはわからねえんだよ」

ハナ「…はあ…はあ…」ごそごそ

くーちゃん「ハナちゃん、もうだいじょぶですか?」

ハナ「」バサッ

海の男「なるほど、こいつか」

くーちゃん(リュックの防水性、すばらしくてよかったです)
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:33:51.61 ID:IQVafa730
海の男「ふむ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん(ずいぶん考え込んでます(

くーちゃん(てっきり、絵についてわからないこと、ハナちゃんに尋ねると思ったのですが)

くーちゃん(もしかしたら海の男、ハナちゃんが気持ちを言葉にするの)

くーちゃん(苦手なこと、知ってたのかもです)

くーちゃん(海の男はそれくらいのはいりょ、できるということでしょう)

海の男「お嬢ちゃん」

くーちゃん「くーちゃんです」
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:38:07.40 ID:IQVafa730
くーちゃん「くーちゃん、おじょうちゃんなんて呼ばれるの、好きじゃありません」

くーちゃん「くーちゃんにはくーちゃんとゆう、かわいい名前があるですから」

海の男「さっきからいやにその名前にこだわるな」

くーちゃん「大切な名前です。だからちゃんと、くーちゃん、呼んでください」

海の男「クウ……クウ、か……ふむ」

海の男「もしかして、空のクウか?」

くーちゃん「なんでわかるですか?」

海の男「俺は海の男だからな」

くーちゃん「わかる範囲とわからない範囲がわからないです」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:40:04.06 ID:IQVafa730
海の男「なあ、一つききたい」

くーちゃん「はい、なんですか?」

海の男「本気で行くのか?」

くーちゃん「……どういう意味ですか?」

海の男「この絵はすごい絵だ」

海の男「このトンネルの奥深さ。ハナの描いた世界を、俺は素直に尊敬する」

海の男「美しい」

海の男「だが、俺には荷が重い」

海の男「俺には、耐えられない」

240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:41:21.54 ID:IQVafa730
くーちゃん「海の男でもですか?」

海の男「ああ、俺が海の男でもだ」

海の男「海の男にも、耐えがたいものだ」

くーちゃん「なんですか、それは。なにが、重たいですか?」


海の男「孤独だよ」

241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:43:19.49 ID:IQVafa730
くーちゃん「こどく」

くーちゃん「くーちゃんはこのトンネルに少しだけ、つめたさ、かんじてました」

くーちゃん「けれども、感情より、居心地の良さがあったです」

海の男「あの島に行けば、きっとわかる」

海の男「ハナには、あの島のこと、伝えたことはないはずなんだがな。どこで知ったんだか…」

海の男「まあとにかくだ、それは俺が言葉でこうだって言ったところでわかるもんじゃねえし」

海の男「わかってもらいたいとも思わない」

242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:44:49.65 ID:IQVafa730
くーちゃん「なるほど。よいことと思います」

海の男「なんだ。じれったいとか思わねえのか」

くーちゃん「いわないことば、大切な思いだったりします」

くーちゃん「大切なもの、しまっておくの、変なことじゃないです」

海の男「わかってくれて何よりだよ」

海の男「お前さんのことはむかつくガキだと思ってたが、案外筋は通ってるんだな」

くーちゃん「どもです」

海の男「だがな、お前さんの旅には、一つだけ大きな問題がある」

くーちゃん「問題、ですか?」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:46:07.96 ID:IQVafa730
海の男「この旅は、ここいらで潮時ってことだよ」

海の男はお尻のポケットから、くしゃくしゃになった紙を取り出して、広げました。

そこには、行方不明の中学生、探してますと書かれてて

写真がプリントされていました。

そして、そこに写ってたのは、どうみてもくーちゃんとハナちゃんでした。
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:46:46.46 ID:IQVafa730
また明日ノシ
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/12(月) 19:41:47.47 ID:VR/JrcnGo
おつー
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:27:02.23 ID:yG3666Uy0
くーちゃん「…ずっと、気づいてたですか」

海の男「ご丁寧に経緯まで説明してくれたしな。もう自白も同然だ。誤魔化せねえだろ?」

海の男「なあクウ。そしてハナ」

くーちゃん「ちゃんをつけてください。くーちゃんの名前、ちゃん、つけてなんぼです」

くーちゃん「ちゃんがないの、かわいくないです」

海の男「海の男はな、ちゃんをつけて人を呼ばないんだよ」

くーちゃん「それなら海の男、やめて、ふつうの男になってください」

くーちゃん「くーちゃんはくーちゃんです」

海の男「海の男はそれほど簡単に辞められねえんだよ」

247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:29:35.52 ID:yG3666Uy0
海の男「ま、とにかくお前らの旅は、もうやめるべきだ」

海の男「ハナ、お前の親から連絡が入ってたんだよ」

海の男「だいぶ前に会ったきりで、お前さんは覚えてないかもしれねえが」

海の男「海の男の目は誤魔化せねえ」

海の男「まあとにかく、奇妙な偶然もあるもんだな…いや、必然か?」

海の男「子どものためなら、ここまでするのが親だわな」

くーちゃん(…さすがのハナちゃんも、遠く離れた地元に)

くーちゃん(手配書が配られてるなんて思わなかったのでしょう)

くーちゃん(ハナちゃんを責めるわけにはいきません)

くーちゃん(なんにせよこの旅は、そんな簡単にまとめられていいものじゃありません)

くーちゃん(こんなところで戻れるわけがないんです)

くーちゃん(となると、くーちゃんの必殺奥義しかありません)
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:31:04.55 ID:yG3666Uy0
くーちゃん「このお金で、みのがしてください。100万円くらいあるとおもいます」

くしゃくしゃ

海の男「くしゃくしゃじゃねえか」

くーちゃん「海に入ったので許してください。乾けば使えます」

海の男「いや、中学生に買収されるような、馬鹿な大人だと思ったか?」

くーちゃん「買収させてくれたおじさん、いました」 

失敬、お兄さんでした。ですがこの時訂正してくる本人はいなかったので、許してください。

くーちゃんは嘘、苦手なんです。

249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:32:14.24 ID:yG3666Uy0
海の男「そいつはたぶん馬鹿な大人だ」

怒らないでください。くーちゃんはお兄さんを馬鹿だと、思ったことありません。

だってくーちゃんたちを助けてくれたじゃないですか。

海の男「ふう」カチッ フーッ

くーちゃん「タバコ、からだにわるいです」

海の男「…喫煙者にしかわからない魅力があるんだよ」
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:33:36.38 ID:yG3666Uy0
海の男「俺は海の男だ」

海の男「だけど、一人の大人でもある」

海の男「大人ってのは、子どもを守るのが仕事なんだよ」

くーちゃん「なら守ってください」

くーちゃん「くーちゃんを守るなら、島、連れてってください」

海の男「そういうわけにはいかないんだよ」

海の男「クウ。そしてハナ。お前さんたちは」

くーちゃん「ちゃん、つけてください」

海の男「お前さんたちは楽しいかもしれない」

くーちゃん「むししないでください」

海の男「大人っていうのは、お前さんたちが想像している以上に」

海の男「お前さんたちを大切に思っているもんなんだ」

251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:35:24.15 ID:yG3666Uy0
海の男「まあ、もちろん例外はあるが」

海の男「少なくとも、お前さんたちは大切に育てられているんじゃないか?」

くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで」

くーちゃん「なんで、そんなことわかるですか」

くーちゃん「もちろん、ハナちゃんのご両親から連絡受けて」

くーちゃん「どれだけ心配しているか、聞いてたんでしょう」

くーちゃん「でも、くーちゃんのことも、ハナちゃんのことも」

くーちゃん「海の男は、何も知らないです」

海の男「わかるさ」

くーちゃん「なんでですか」

海の男「俺が海の男だからだよ」

くーちゃん「おわれないんです!!!!!!!!!!!!!!!!!」
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:37:06.43 ID:yG3666Uy0
くーちゃん「くーちゃん、嘘、嫌いです!!」

くーちゃん「嘘だらけの毎日なんです!! ずっとずっとそんなまいにちでした!!」

くーちゃん「海の男に何がわかるですか!!!!!」

くーちゃん「くーちゃんの生き地獄を! なにもしらないのに!!」

くーちゃん「勝手なこと! いわないでください!」


海の男「勝手はどっちだこのクソガキ!」

くーちゃん「クソガキじゃないです! くーちゃんです!!」
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:39:07.22 ID:yG3666Uy0
くーちゃん(もうよいです)

くーちゃん(今すぐ海に飛び込んで、バタ足で島まで行ってしまえば…)

ドン!

くーちゃん「え」

ハナ「」

海の男「ぬわあああああああああああああああああああああああああああああ!」

ザパーン!!!!

くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・ハナちゃん?」

ハナ「…はあ…はあ…はあ…」

くーちゃん「…ないすきっく、です」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:42:06.26 ID:yG3666Uy0
海の男「おいこら! 何考えてる!!」バチャバチャ

くーちゃん「ハナちゃん、たしかにくーちゃんたちは逃亡の身です」

くーちゃん「なので軽犯罪の一つや二つ、重ねたところで特にくーちゃんは何も思いません」

くーちゃん「正しいことだけが人生のすべてじゃないですから」

くーちゃん「でも、どうやって島までいくですか?」

ブロロロロロ

ハナ「」

くーちゃん「…ハナちゃん」

くーちゃん「…うんてん、できるのですね」

ハナ「」こくり
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:42:41.13 ID:yG3666Uy0
また明日ノシ
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/12(月) 23:02:28.32 ID:RCh8UAYv0
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/12(月) 23:03:15.33 ID:VR/JrcnGo
おつー
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/13(火) 12:45:29.99 ID:fDCpKnGDO
見方を変えればいじめられてるでもなく恵まれてるのに自分で勝手に絶望して親不孝してる子供ってなるのかも
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 18:50:53.37 ID:RYXcxsNH0
ブロロロロロ

くーちゃん「…うまいですね、うんてん」

ハナ「えへへ」

海の男「まてえええええ!」ばちゃばちゃばちゃ

くーちゃん「ハナちゃん、なんで運転できるですか?」

ハナ「…おぼえてた、から」

ハナ「あの人の、運転」

くーちゃん「すごすぎます、ハナちゃん」

260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 18:51:53.83 ID:RYXcxsNH0
ハナちゃんは、真剣な顔で船の舵を切って、前進してゆきます。

行き先の島までぐんぐん近づいていました。

途中、飛んでるカモメさんや、海を泳ぐ魚さんたちは、

まるでくーちゃんとハナちゃんを応援しているみたいでした。

縦にぐわんぐわん揺れる船は、空を飛んでるみたいでした。
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 18:52:41.26 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは、船の先端部へ、好奇心で向かってみました。

揺れているので少し動きにくかったですが、島の方をよく見たかったので、足を止めませんでした。
 
不安定で、まっすぐ立つのは難しかったのですが、

勇気を出して、体を起こして、両手を思い切り広げました。
 
最高に気持ちのいい海風が、くーちゃんの体を吹き抜けていきました。

冷たかったですけど、それがくーちゃんの火照った体を優しく包んでくれたんです。

抱きしめられてるみたいでした。

くーちゃん「ハナちゃん! 最高です! 最高です! すごいですハナちゃん‼」

ハナ「///」
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 18:58:59.91 ID:RYXcxsNH0
TRACK10 島

くーちゃん「ハナちゃん、島、みえてきましたけど」

くーちゃん「どこにとめるですか?」

ハナ「………砂」

くーちゃん「…すな?」

ザザザザザザザザーーーーーー!!

くーちゃん「…すな、はままで言ってください」

くーちゃん「さすがのくーちゃんでもおどろきました」

ハナ「ごめん」
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:01:28.20 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「なにはともあれ、つきました」

くーちゃん「ここであってるのでしょか」

なんとなく、島とゆうのは、一つの生き物に近い感じがして、

どこからでもトンネルにつながってるような気がしたんです。

じゃりっとした、一粒一粒砂が、くーちゃんのほっぺにふれます。

生臭さや、お日さまの香りが混じった匂いでした。
 

くーちゃんの想像は当たりました。

目を閉じてると、トンネルを感じられました。

暗くて、深くて、風が遠くへ吸い込まれてるような暗いトンネルです。
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:03:00.31 ID:RYXcxsNH0
ですが、ハナちゃんの描いたようなトンネルと、少し、違います。

とゆうより、まだ距離が空いているような、そんな感じです。

けれど、違うトンネルとも言いきれません。

砂浜から感じたトンネルの奥。

底の底から、微かに香りました。

ハナちゃんの絵から感じた少ししょっぱくて、冷たくも、

なにかを求めてるような、来てほしい、という

言葉に近い何かが。

くーちゃん「海の男の、言ってた通りです。ここです。この島です」

265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:04:22.15 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは目を開きます。

いつの間にか船から降りていたハナちゃんが、トンネルの絵を畳んで、手に持ったまま隣に立ってました。

くーちゃんは体を起こします。

ほっぺについていた砂が、ぱらぱらと落ちましたが、まだ何粒かくっついたままです。

でもかまいません。

ほっぺにいくら砂がついてようと、くーちゃんの目的に関係ありませんから。

そして、その小さな島の全貌を確認します。

驚きました。

島の中央から、大きな幹と葉が見えたんです。

枝葉は、島全体を覆うほど広がってました。

くーちゃん「きっとあります」

くーちゃん「この島の中央に、とても大きな木が」

くーちゃん「そこが、ごーるです」
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:06:57.10 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「ハナちゃん、ききたいこと、あります」

くーちゃん「その絵、どうして描いたですか?」

くーちゃん「どうして、描けたですか?」

ハナ「・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「大丈夫です。変なこと、ちがいます」

くーちゃん「ハナちゃん、にんげんじゃない存在の気持ち、わかる人なんですね」

くーちゃん「だからハナちゃん、この木の思い、受け取ったです」

くーちゃん「この島、見える町で住んでて」

くーちゃん「海の男の船に乗って、あの島、見て、受け取ったんじゃないですか?」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「ごめんなさいハナちゃん」

くーちゃん「無理に言葉、しなくて大丈夫です」

ハナ「」ぶんぶん

くーちゃん「じゃあ」

くーちゃん「行きましょう」
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:10:01.17 ID:RYXcxsNH0
島の中

くーちゃん「しょくぶつ、ずいぶんのびてますね」

ペタペタ

くーちゃん「虫さんもたくさんです」

くーちゃん「秋にこれなら、夏はもっとすごそうです」

くーちゃん「…ハナちゃん?」

ハナ「はあ…はあ…」

くーちゃん(運転でくたくたになってしまったでしょか)

くーちゃん(さすがにペース、おそめです)
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:11:17.29 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「ハナちゃん、だいじょぶですか!」

ハナ「…大丈夫、おい、つく」

くーちゃん(…ハナちゃんも、必死です)

くーちゃん(きっとハナちゃんも、くーちゃんと同じように、トンネルの呼び声に応えたいのでしょう)

くーちゃん(あの絵を描いて、ここまでついてきてくれたです)

くーちゃん(きっとこの旅の終着に、ハナちゃんは必要なのです)

くーちゃんはそう信じて、ハナちゃんに手を伸ばしました。

くーちゃん「行きましょう! 一緒に!」
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:12:32.49 ID:RYXcxsNH0
ハナ「」プルプル

ガシッ

ハナちゃんを引っぱりながら、くーちゃんはずんずん、島の中を進んでゆきます。

途中でぼろぼろになった木造のお家や、昔使われた階段のようなものがありました。

もしかしたらこの島も、昔、人でにぎわってたのかもしれません。

小さなお墓みたいなものも、たくさん埋められてました。

くーちゃんもこの島で生まれて、生きて見たかったです。

そしたら、もっと早く、大きな植物さんの気持ちに、気づけたかもしれないのに。

270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:13:52.87 ID:RYXcxsNH0
一歩一歩、踏みしめてると、森の香りが強くなってきます。

時折、くーちゃんは地面にまた顔をすりつけ、トンネルの片鱗を感じました。

くーちゃん「もう、ちょっとです」

長い長い階段を登って、今度は下りに差し掛かりました。

階段を一段、一段と降りてると、違和感がありました。

あんなににぎわっていた植物さんたちの気配が、一気に消えてしまったんです。

まるで、人ごみから抜け出したような感覚で、とても心細くなりました。

ハナ「あ、あれ、?」
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:14:28.12 ID:RYXcxsNH0
ハナちゃんが久しぶりに声をだして、指をさしました。その方向にそれはありました。

 
大きな木でした。ただ、大きいだけじゃありません

見上げると首が痛くなるほど、とても、とてもとてもとても

高く、静かに、そびえたっていました。
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:15:59.21 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「…ハナちゃん、しゃべりたいこと、あります」

ハナ「」コクリ

くーちゃん「今までくーちゃんはいろいろな御神木さんで感じたことを、歌や舞にしてました」

くーちゃん「ですが、この木は、今までの御神木さんとは全く違います」

くーちゃん「楠だと思います。大きな楠なので、大楠さんです」

くーちゃん「この、方です。きっと、この方です」

273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:17:25.99 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは走って近づきました。

とても太い幹は、蜘蛛の足みたいに枝分かれしてます。

柔らかい地面には、深く深く、長い根っこが伸びていることでしょう。

大楠さんの伸びてしまった枝を支えるため、古びた鳥居が何個か作られています。

くーちゃん「…大楠さんだけで、体、支える、たいへんです」

くーちゃん「骨が弱くなったおじいちゃんやおばあちゃんが、杖や車いすを使うのと同じです。

土の奥から匂いがしました。

木の匂いです。大楠さんと似てますが、

少し違います。それに、たくさんです。

たくさんの木の香りがするんです。

もしかしたら、土の中には、大楠さん以外の誰か、まだいるのかもしれません。
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:18:59.03 ID:RYXcxsNH0
ゴロゴロ

ポツンポツン

くーちゃん「…あめ、ですね」

くーちゃん「別にもう関係ありません」

くーちゃん「くーちゃんの目的に、天気なんてどうでもよいです」

くーちゃん「トンネルの中に、雨も晴れもありません。

くーちゃんは、幹を手で触れながら、ゆっくりとお腹を。頭を。ほっぺをぺたりと、くっつけます。

全身で、大楠さんの息吹を感じました。

大楠さんが、やさしいのか、さみしいのか、それもわかりません

目を閉じてくーちゃんは、いつものように、トンネルの中へ入ってゆきました。

275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:19:57.06 ID:RYXcxsNH0
じんわり、じんわり、暗闇だらけの瞼の裏に、うっすらと世界が広がってゆきます。

トンネル独特の風の音。土の香り。

トンネルの中のくーちゃんは、トンネルを見るために、ゆっくりと目を開きました。

そこは、ハナちゃんが描いていた世界に、とても似てました。

少しだけ違いはありますが、匂いや温度は、とても近いです。

そして、そこで感じたのは

確かな孤独でした。

276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:35:32.08 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「何千年も、大楠さんは見てきたんですね」

くーちゃん「たくさんの植物さんとの出会いと別れ」

くーちゃん「土砂崩れで埋まってしまった、たくさんのお友達。

くーちゃん「そして」

くーちゃん「大楠さんを、切る、切らないかの人の争いです」

くーちゃん「くーちゃん、かみさまなんてしんじてません。でも」

くーちゃん「大楠さんは、神様にさせられてしまったのですね」


277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:37:18.75 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「ながくいきてたから、勝手にされたんです」

くーちゃん「とても、とても長い時間です」

くーちゃん「それは、きっとくーちゃんたち人間には、想像できないほど」

くーちゃん「くるしかったですよね。神様、しんどいです」

くーちゃん「いつも、勝手に期待されます。願い事なんて叶えられないのに、勝手に願われます」

くーちゃん「すごく、すごくわかります」

くーちゃん「くーちゃんたちは、よくにています」
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:39:33.54 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは、トンネルにいる意識の中

いつもならそこにとどまって、そのトンネルを全身に感じてました。

でも、同じ場所にとどまってては、大楠さんの芯に触れられません。

今まで知らなかったトンネルの深淵へ向かって、くーちゃんは進むことにしました。

足に力を入れてみました。

ぐっと、右足が踏み出せました。

続けて、左足も、踏み出します。

歩けば歩くほど、曖昧な体の感覚が、確かなものに変わってゆきました。

孤独の風のようなもの、トンネルを進むくーちゃんを包んでゆきます。

とても苦しくて、辛くて、頭が割れそうになりました。

でも、どこか帰ってきた感覚もあるんです。

居心地が悪いわけじゃないんです。

まるで、ずいぶん昔からのお友達と、再会した気分でした。
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:44:20.35 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「誰にも、わかってもらえないですね」

くーちゃん「人間に、あなたの言葉、聴こえませんもん」

くーちゃん「くーちゃんにも、大楠さんの言葉、わかりませんけど」

トンネルの奥まで、くーちゃんは進むことにしました。

一歩一歩、重たくて、苦しくて、その場で何度もうずくまりたくなりました。

くーちゃん「あの、大楠さん、もしかして」

くーちゃん「きてほしい、とゆうきもちと」

くーちゃん「誰もきてほしくないとゆう、二つのきもち、あるですか?」

280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:06:52.50 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「そですよね。こたえられませんよね」

キラッ

ポチャ、ポチャッ

くーちゃん「なにかみえます」

くーちゃん「水たまり。でしょか」

くーちゃん「」ソッ

ピチャ

ドロッ

ズブッ

くーちゃん(冷たくて、どろりとしていて、指が奥まで沈んでしまいそうです)

くーちゃん「これは、水たまりでなく」

くーちゃん「沼、ですね」

281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:08:35.90 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは、沼に濡れた指先を見つめながら、顔を上げました。

その沼の中に、一本の木が生えています。

茶色くすすけてて、幹からいくつも、皮が剥がれています。

他には、茶色だったり緑色だったり、様々な葉っぱも、幹に張り付いてます。

胸の奥が切なくなるような、どことなく焦げた香りもしました。

くーちゃんはこの木が、あの大楠さんと、同じなんだと、直感しました。

どうなんでしょうね。トンネルの奥の奥まで入ったのは、初めてだったので。

少なくとも、くーちゃんは

今すぐ、大楠さんを抱きしめたくなりました。
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:11:16.86 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「大楠さん」

くーちゃん「くーちゃん、旅に出るとき、感じてました」

くーちゃん「この旅は片道切符です」

くーちゃん「この沼に入ったら、もう戻れません」

くーちゃん「でも、それでよいです」

くーちゃん「一緒に沼に入れる人間がくーちゃんだけなら」

くーちゃん「あなたにくーちゃんのすべてをささげましょう」
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:14:25.33 ID:RYXcxsNH0
 くーちゃんは、沼に、一歩足を踏み入れます。

冷たく、ぬめっとした感触が伝わり、今にも全身が飲み込まれてしまいそうです。

足もずぶずぶと、深く沈んでゆきます。

きっと、両足を突っ込んでしまえば、しばらくしないうちに、完全にくーちゃんは沈んでしまうでしょう。

一歩、一歩、歩きます。

大楠さんを抱きしめられるところにたどり着けるまで、沈み切るわけにはいきません。

十歩ほど、進んだところで

くーちゃんは思い切り沼を蹴るように前方へと体を放り出し

目の前の大楠さんにガバッと、抱き着きました。

森の香りと、焦げた香りと、海の香りがしました。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:16:42.53 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「大楠さん。これで、さみしくないです」

ずぶずぶ

くーちゃん「…ちから、ぬけてきました」

くーちゃん「あ、大楠さんも沈んでますね」

くーちゃん「そですよねっと、沼から体を浮かし続けるのは、難しいですよね」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「そうです。大楠さん、大切なこと、忘れてました」

くーちゃん「おともだち、しょうかいします」

くーちゃん「ハナちゃんです」

くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」

くーちゃん「ハナちゃん?」
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:20:31.94 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん(そういえば、トンネルに入ってから)

くーちゃん(一度もハナちゃんの声、聴いてないです」

くーちゃん「ハナちゃん」

くーちゃん「ほったらかしてごめんなさい」

くーちゃん「一緒に沼の底、行きましょう」

クルッ

くーちゃん「あ」

くーちゃん「…ついてきてると思ったんですけど」

くーちゃん「あ、そうです」

くーちゃん「ハナちゃん、トンネルの絵、かいてましたけど」

くーちゃん「いっしょに、トンネルに行けるって」

くーちゃん「一度も言ってませんでしたね」
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:25:10.20 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん(…ずいぶん、ハナちゃん、振り回してしまいました)

くーちゃん(もうしわけないです)

くーちゃん「大楠さん。しゃべりたいこと、あります」

くーちゃん「くーちゃん、ここまで来るのに、いろいろな人、助けてくれました」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:26:27.05 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「くーちゃんのこと、最初にわかってくれた校長先生だったり」

くーちゃん「木で鹿さん、作る変わったお兄さんだったり」

くーちゃん「海の男、自称してる変わった人だったり」

くーちゃん「そんな人たちの力、なかったら、大楠さんに出会えなかったと思います」

くーちゃん「でも、ずっとずっと一緒に来てくれたハナちゃんとゆう友達、いるです」

くーちゃん「ハナちゃんは、あなたの思い、聴いてくれてた思ったんです」

くーちゃん「だからくーちゃん、ここまで来れたです」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:28:49.87 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「でも、くーちゃんだけでも、よいですよね」

くーちゃん「もう一人いたほうが、にぎやかだったかもしれませんが」

くーちゃん「沼に沈めるの、くーちゃんだけみたいですし」

気が付けば体はずぶずぶと沈んでて、沼の水はあごまで迫ってました。

どうせならハナちゃんも一緒がよかったですけど、だいぶ振り回してしまいましたからね。

くーちゃんの勘違いが悪いんです。

何も言わないことが、イエスとは限らないんです。

いつだってくーちゃんは、早とちりなんですよ。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:31:18.99 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「それに、ハナちゃんは元の世界に残った方がよいです」

くーちゃん「大楠さん、ハナちゃんは、とても絵が上手です」

くーちゃん「きっと、世界中に絵を見てもらったほうがよいです」

くーちゃん「あと、ハナちゃん、めちゃくちゃかわいいんです」

くーちゃん「きっと素敵な人と出会って、愛し合うこともあるかもしれません」

くーちゃん「あ、でもくーちゃんには、愛とか恋はよくわかりません」

くーちゃん「ですが、愛し合う二人は幸せだと、聞いたことあります」

くーちゃん「もちろん、ハナちゃんと沈めたら幸せですけど」

くーちゃん「それよりもっともっと、すごい幸せになる権利が、ハナちゃんにもあります」

くーちゃん「ハナちゃんの幸せの方が、ずっとずっとたいせつです」

だってくーちゃん、ハナちゃんのこと、大好きなんですから。
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:32:42.99 ID:RYXcxsNH0
だから、沼に一人で沈む決心がつきました。

気が付けば頭の先まで沼に沈んでて、

目の前はどんどん茶色く染まってゆきます。

体のどこもいたくなかったです。苦しかったはずの冷たさは、心地よさにかわってました。



291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:34:37.36 ID:RYXcxsNH0
この沼で永遠の時、刻んだりして、
いつしか人間だったこと、忘れて、
自分の
手とか
足とか
体とか
頭とか
血液とか
骨とか
神経とか
心臓とか
脳みそとか
爪とか
鼻とか
目とか
口とか
そういうくーちゃん構成するすべて、曖昧な世界、溶けてって、
そうしたら、このたった一人で何千年も、孤独な時間に耐え続けてた大楠さん
幸せなんじゃないかとか、そういうこと考えてたりして
そして、そして、そして、そしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそして
くーちゃんは、くーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんは
、、、、、、えっと、、、、

あ             
れ、

   、なん 、、、、
                、、でしたっけ。



292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:35:14.47 ID:RYXcxsNH0
また明日ノシ
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/13(火) 20:54:18.63 ID:fDCpKnGDO
うわああああ…
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/14(水) 08:14:53.20 ID:q35FvgRoo
おつおつ
大楠様よそれでいいのか……?
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:16:30.55 ID:Lds9YMgP0
ムグ



むぐ



じわあ…



?????


あれそうだ、、
そうだ、、、
そうだ。。。。

ひろがってきたです

じんわり、じんわり
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:17:48.89 ID:Lds9YMgP0
あたまのなかやら

からだやらが、すべてふわふわでどろどろ、なりつつあったとき、

くちのなか、なにかが、ひろがったです

すごくすごく、すっっっごく

あまかったです。

なつかしいです。

あのおかし、えっと、そです

あれです

TRACK12 チョコレート
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:19:39.83 ID:Lds9YMgP0
むぐむぐ

くーちゃん(チョコレートです、おいしいです)

ポタ、ポタ

くーちゃん(なんか、おちてきてます)

くーちゃん(あめ、ですかね)

くーちゃん(たしか、げんじつで、あめ、ふってました)

くーちゃん(あれ、でも)

くーちゃん(しょっぱいです)
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:25:15.81 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん(うみ、でしょか)

くーちゃん(もしかしてくーちゃんしらないうちに)

くーちゃん(くーちゃん、ぬまの、そこのそこまでしずんでて)

くーちゃん(そこがうみとつながってて)

くーちゃん(くーちゃんも、おおくすさんも)

くーちゃん(うみのいちぶに)

くーちゃん(なったのですかね)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さん」

くーちゃん「?」

299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:26:24.21 ID:Lds9YMgP0
「・・・・・・・・・・・・・・・ま、さん」

「・・の・・・・・・・・・・・・・・・ん」

くーちゃん(きこえます)

くーちゃん(すごく、かわいいこえ)



「あまのさん!!!!!!!!!!!!!!!!」

300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:28:25.36 ID:Lds9YMgP0
しょっぱかったの、雨でも海でもなかったです。

ハナちゃんが泣いてるだけでした。

くーちゃんの口にお菓子、詰め込まれてるだけでした。

チョコレートです。それがチョコレートだったです。

おいしかった。

おいしかった。

おいしい。

おいしい。

ああ、そうです。

くーちゃんはそのとき、人間の世界に戻ってこれたんです。
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:31:04.41 ID:Lds9YMgP0
ハナ「だめ! だめ!」

ハナ「だめなの! だめなの!」

くーちゃん(なにが、だめですか?)

くーちゃん(あ、くち、うごきません)

くーちゃん(そういえば、くーちゃん)

くーちゃん(このたびで、ずっと、おみず、のんでません)

くーちゃん(たべものも、なにもです)

くーちゃん(おにいさんのくれただがしも、すぐに吐いてました)

くーちゃん(わすれてました、くーちゃん)

くーちゃん(そだちざかりでした)

くーちゃん(くーちゃんは、もう、ガソリン切れでしたか)

実際、大楠さんのトンネルにいたくーちゃんの呼吸は、

止まってたとハナちゃんが後から教えてくれました。

302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:31:29.57 ID:Lds9YMgP0
くーちゃんの肌に

ぽろぽろとハナちゃんの涙が伝います。

とてもしょっぱくて、チョコで甘くなった口の中には

ちょうどよかったです。

だからハナちゃんが泣いてるのは、全然悪い気分じゃなかったですよ。大丈夫です。

そこから、ハナちゃんはこんなことを言ってくれました。

今でもよく覚えてます。
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:34:58.89 ID:Lds9YMgP0
ハナ「天野さん、天野さん、ごめんなさい」
   トンネルなんてわからないの。
   トンネルなんてよくわかんなかったし、
   どういうことなのか全然わかんないの! 
   植物の声も聞こえてないし、聞き届けたわけでもないの。
   描いちゃったの。
   描きたかったの。
   描いたら、近づけると思ったの。
   天野さんはね、すごく素敵なの。
   天野さんのインタビュー、全部読んだ。
   テレビの録画も全部見た。
   本当に本当に、すごくかっこよかった! 
   私の知らない世界。感じられない世界。
   
   私はふつうの人だから。天野さんみたいにすごくないから!
   
    学校に行けなくなって、それでも天野さんみたいな素敵な人がいるなら
    学校行けそうだって思って、
            それで天野さんの学校に転校したの! 



   天野さんと同じ学校なら、生きていけそうだって思ったの! 


               天野さんの世界を絵にして、
 
                              そしたら天野さんに

少しでも近づけるんじゃないかって、




ずっと描いてた! 


天野さんが見てるトンネルってこんなのかなって、

  きっと天野さん気に入ってくれるって! 

 でも見せる勇気なくて。いつか見てもらえるんじゃないかって
 
、ずっとずっと描いてて、
                  そしたら、たまたま見てくれて、

  すごくうれしくて。まさか一緒に旅までしてくれるなんて思ってなかった!


 すごくうれしかったの! 



世界で一番幸せだった! 



私も、天野さんと一緒に、トンネルの向こう側に行きたかった。



もっともっと面白い世界が見れて、わたしだってすごい素敵な人間になれるんじゃないかって。

みんなとうまくやれない私でも、



幸せになれるって思った! 

それで死ねるんなら、それでよかった!

 でも、だめ! だめ! だめなの! 

えっと、
   えっと、
       えっと

 だって、
         だって、

                  ここまで、わたし、



                         わたし、」
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:35:53.41 ID:Lds9YMgP0
そこからハナちゃん、ずっと泣いてました。

なにがどう、だめなのか、それをくーちゃんは聞きたかったですけど、

きっとハナちゃんには泣く時間が必要でしたし、

くーちゃんもいつの間にか泣いてたので、

二人ともそういう気分だったんです。

くーちゃんたち、ふたりとも泣き虫ですね。

305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:37:59.52 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん(けっきょく、げんじつのせかいです)

くーちゃん(ゴール、ちかかったんですけどね)

くーちゃん(このまま目、閉じれば、きっと戻れます)

くーちゃん(くーちゃんの、いきたかった、ゴールです)

くーちゃん(げんじつなんかより、おおくすさんとの沼、よいなと思ってたんですけど)

くーちゃん(でも、なんだか)

くーちゃん(ハナちゃんとの時間が終わるの、さみしいですね)
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:39:09.29 ID:Lds9YMgP0
お母さんの顔が浮かびました。

あんなに必死でくーちゃんが行くのを止めてて。

きっと、くーちゃんにとってのハナちゃんみたいに、

ほんとにくーちゃんを大切にしてくれてたんだなと、今更ながら思いました。

校長先生の顔が浮かびました。

くーちゃんの大切にしてたことを、一番最初にわかってくれて。

誰かに分かってもらえることの幸せを知りました。

おいしゃさんの顔もうかびました。

なんだかんだ、ずっと話を聞いてくれました。

お仕事とはいえ、すごいこととおもいます。
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:39:51.92 ID:Lds9YMgP0
鹿のお兄さんの顔が浮かびました。

自信をもって何かを続けること

それが何につながるか、そんな大層なことを考えるのは横に置いておいて

ただ続けること。

きっとそれが大切だって、伝えてくれました。

ほんとに、素敵な人です。

海の男の顔が浮かびました。

くーちゃんも誰かに大切にされてることを、思い出させてくれました。

あのときくーちゃん、反発したですけど、今なら、なんとなくわかります。

海の男も、くーちゃんを大切にしてくれてただけだったです。

そして、誰かの手の温もりを思い出しました。
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:42:40.93 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん(あれ、さいごの、だれのことでしょう)

くーちゃん(顔も思い出せません)

くーちゃん(でも、そのぬくもりがあったから)

くーちゃん(くーちゃんは、くーちゃんな気がします)

くーちゃん(沼の底にいったら、おわかれです)

くーちゃん(みんなと、おわかれです。もうあえなくなります)

くーちゃん(大楠さんの孤独、癒したいと思ってたんですけどね)

くーちゃん(もしかしたら、くーちゃん)

くーちゃん(とても、はくじょうな人間かもです)

くーちゃん(ごめんなさい、大楠さん)

くーちゃん(大楠さんのいた沼より)

くーちゃん(ハナちゃんの涙で溺れてしまう方が、気持ちよさそうです)
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:43:38.16 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん「ハナちゃん」

ハナ「……天野さん?」

くーちゃん「ちがいます」

くーちゃん「くーちゃんです。ハナちゃん」

くーちゃん「それが、くーちゃんの名前です」

くーちゃん「くーちゃんの世界一かわいい名前です。

ハナ「くーちゃん、くーちゃん」
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:44:24.36 ID:Lds9YMgP0
何度も何かを確かめるように、ハナちゃんはくーちゃんの名前を呼びました。

呼ぶたびに、ハナちゃんの両腕が、くーちゃんを強く、強く、

ぎゅうううっと、抱きしめてくれます。

くーちゃんはハナちゃんが大好きでしたが、

どうやらハナちゃんもくーちゃんのこと、好きだったみたいです。誰かにこんなにも好かれるなんて思ってませんでした。嘘ばかりついて、くーちゃんは自分のことを嫌いになりそうだったですけど。どうやらハナちゃんだけは何があってもくーちゃんのこと、嫌いにならなさそうです。

くーちゃんという変な人間も、そんなに捨てたもんじゃないなって、思えました。

それに






大好きな子に名前を呼んでもらえるの、最高の気分です。
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:45:06.96 ID:Lds9YMgP0
また明日ノシ

だいぶ冒険も終盤です。

みなさんしばらくお付き合いください。
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:15:13.46 ID:DcOEz2F40
海の男「なに寝転んでんだクソガキども」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「びちょびちょですね」

海の男「そりゃ、泳いできたからな」

くーちゃん「さすがです、海の男」

海の男「まず謝れクソガキ」

ハナ「…ごめんなさい」

くーちゃん「たしかに、この件の過失はハナちゃんです」

海の男「ちょっとはお前も悪びれろ」
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:24:46.37 ID:DcOEz2F40
海の男「で、トンネルは見つかったのか?」

パンパン

くーちゃん(大楠さんに、合掌してます)

くーちゃん(てっきりさっさと連れ戻されるかと思いました)

くーちゃん「はい、みつかりました」

くーちゃん「この島の、大楠さんのトンネルです」

くーちゃん「海の男の言う通りでした」
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:25:27.53 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「とても長い間、さみしがってました」

くーちゃん「ただ、そこに生えてただけなのに、いろいろ勘違いされて」

くーちゃん「持ち上げられて、勝手に絶望されて、もううんざりしてる感じがしました」

海の男「お前のトンネルに入る力ってのは、眉唾じゃねえみたいだな」

海の男「お前の言う通りだよ」
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:27:14.85 ID:DcOEz2F40
海の男「大昔は、この島にも人がいた」

海の男「この大楠も、御神木として崇められた」

海の男「たくさんの人が崇拝したよ。だけどな」

海の男「土砂崩れで、木の半分や、島民の家やらが埋まっちまった」

海の男「言われちまったよ。大楠の祟りだってな」

くーちゃん「そんなのありえません」

くーちゃん「祟りなんて、起こせるものじゃないです」

海の男「神様ってのは祟りを起こすらしいぞ」

くーちゃん「そんなの神様じゃありません」

海の男「ああ」

海の男「俺もそう思うよ」
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:38:37.76 ID:DcOEz2F40
海の男「で、だ」

海の男「満足したか?」

くーちゃん「微妙です」

くーちゃん「もう1回いってきます」

海の男「」

ハナ「いやいやいやいやいや!」

ハナ「く、くーちゃんだめ! まじで死んじゃう!」

ハナ「呼吸とまってたんだよ!」

海の男「どこまでもやべえやつだなお前」

くーちゃん「だいじょうぶです」

くーちゃん「ちゃんと戻ってきますから」

317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:39:04.41 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「あとハナちゃん」

くーちゃん「ちょっと雰囲気変わりましたね」

ハナ「え、そう?」

くーちゃん「では」

くーちゃん「いってきます」

くーちゃんはそう言うと、大楠さんの幹に再び近寄り、目を閉じます。

現実の世界の音と空気が遠くなり、またさみしい風と冷たい香りが漂い始めます。

くーちゃんは、さっきまでいたトンネルに降りてゆきました。
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:46:18.66 ID:DcOEz2F40
くーちゃん(…しずかですね)

くーちゃん(あ、でも、そんなにさむくないです)

くーちゃん(あったかいです)

くーちゃん(沼も、こんなに近くなかったです)

くーちゃん(それに)

くーちゃん(ずいぶんと小さくなりました)
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:47:26.56 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「大楠さん。呼んでくれてうれしかったです」

くーちゃん「でもくーちゃん、もう少しあっち側、います」

大楠さんは何も言いません

引き留めても来ませんし、応援もしてません。

でもそれでよいんです。

くーちゃん「でも、約束します」

くーちゃん「また来ます」
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:48:36.53 ID:DcOEz2F40
このトンネルでは、何も聞こえません。

他のトンネルなら、不思議な音がたくさん響いてて、メロディになってることが多いんです。

トンネルの植物さんが歌いたいから、きっとそんな音が流れてたんです。

だからきっと大楠さんは、歌いたい気分じゃなかったんでしょう。

でもくーちゃんは、歌いたくてたまりませんでした。

歌わないと、頭の中の何かがはじけ飛びそうだったので。

だから歌いました。

くーちゃんの感じた音を、言葉を、口にして。

大楠さんは、相変わらず何も言いません。

でも、それでよいんじゃないかって思いました。
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:49:23.27 ID:DcOEz2F40
気が付けばくーちゃんは、トンネルから現実に戻ってました。

沼の香り、さみしい風は、もうありません。

お日さまの光、気持ちよかったです。

そして、歌の続きを寝そべったまま歌います。

空に溶けてくみたいに、歌は、高く高く響き渡ります。

それがくーちゃんの耳から全身に広がっていって、とても気持ちよかったです。

嘘の歌は嫌いでしたが、誰かのための歌なら、好きになれそうだなって。そう思いました。

ハナちゃんも海の男もそんなくーちゃんの歌を、じっくり聴いてくれました。

322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:50:23.28 ID:DcOEz2F40
すると、ハナちゃんは、地面に落ちている枝を、突然手に持ちました。

そして、湿った土を、絵具みたいにつけて、

地面に置かれたトンネルの絵に、枝をふれさせて、

そのまま何かを描き始めました。

丸、三角、不思議に枝分かれした線、ぐるぐるうずまき、

何、描いてるのか、今一つピンときません。

それはくーちゃんだったのでしょうか。

それとも大楠さんだったのでしょうか。

それとも、ハナちゃん自身だったのでしょうか。

きっと、ハナちゃんにしかわかりませんし、言葉にするのは何か違うから、絵にしたんでしょう。

ずっとずっと見てたくなりました。

別に本人に確認したわけじゃないですけど、

ハナちゃんは、最高の絵描きさんになる。

そう思いました。
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:52:28.37 ID:DcOEz2F40
海の男「ほら、お前らロクなもん食ってねえんだろ」

海の男「これでも食え」ごそごそ

くーちゃん「おにぎり」

くーちゃん「手作りですか?」

海の男「ああ、海の男特性おにぎりだ」

むぐむぐ

くーちゃん「ちょっと塩が多いです」

海の男「文句言うんじゃねえよクソガキ」

ハナ「」にこにこ もぐもぐ

くーちゃん「ハナちゃん、ほっぺたついてるです」

ハナ「えへへ」

海の男「…お気楽な奴らだ」
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:56:15.86 ID:DcOEz2F40


海の男「ったく、砂浜にこんな雑に乗り上げやがって…」

海の男「運転できるんなら上陸の仕方も勉強しとけ」

ズザザザザ

ハナ「ごめんなさい…操縦してるとこしか、見たことなくて」

カーカー

海の男「だまれクソガラス!」

くーちゃん「海の男、カラスさんのことば、わかるですか?」

海の男「ああ、海の男だからな」

くーちゃん「いみわかりません」

海の男「おまえさんのトンネルの力とおなじだよ」
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:59:54.75 ID:DcOEz2F40
海上

くーちゃん(…さすがに、ちょっとつかれましたね)

ハナ「眠いの? くーちゃん」

くーちゃん「かもしれません」

くーちゃん「くーちゃん、食べてないだけじゃなかったです。夜、眠ってなかったです」

ハナ「ちゃんと寝なきゃだめだよ」

くーちゃん(大楠さんの前で、たくさん喋ってから)

くーちゃん(ハナちゃん、別人みたいに、喋ってます)

くーちゃん(でも、明日には無口なハナちゃんに戻ってしまう可能性、ありますね)
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:01:04.03 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「ハナちゃん」

ハナ「なに? くーちゃん」

くーちゃん「しゃべりたいこと、あります」

ハナ「なに?」

くーちゃん「ハナちゃん、素敵な人です」

ハナ「…え?」
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:02:04.45 ID:DcOEz2F40
ハナ「ど、どうしたの、急に」

くーちゃん「無口なハナちゃん、素敵です。絵を描くハナちゃん、素敵です」

ハナ「えへへ、ありがとう」

くーちゃん「だから、学校に行けなくなるほど、ハナちゃん、つらい思いをしてたのだとしたら」

くーちゃん「なんだか、くーちゃん、悲しくなりました」

くーちゃん「くーちゃんには友達がいません」

くーちゃん「普通のフリをしてるとき、遊んでくれる人はいました」

くーちゃん「でも、それは友達じゃなかったです」

くーちゃん「だって、その時のくーちゃんを、くーちゃんは好きじゃなかったですから。
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:03:10.38 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「くーちゃん、学校、嫌いです」

くーちゃん「みんな、楽しいと思えるお話、遠足、修学旅行」

くーちゃん「お休みに遊ぶ、全部全部、くーちゃん、楽しめません」

くーちゃん「楽しいフリする、うんざりする時間でした」

ハナ「うん」

ハナちゃんは、そっとくーちゃんの手を握ってくれました。

とても暖かかったです。

ほんのりチョコレートの香りがしました。

329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:04:35.03 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「学校に行けなくなったハナちゃん、きっと間違ってないです」

くーちゃん「何があったのか知りませんけど、ハナちゃんがそうしたの、きっと間違ってないです」

ハナ「うん」

くーちゃん「えっと、だから、なんだって、話なんですけど」

くーちゃん「くーちゃんと、巻き込まれたハナちゃん」

くーちゃん「警察とか、先生とか、家族に、とても怒られます」

くーちゃん「学校、また通うことなります」

くーちゃん「それはくーちゃんにとっても、ハナちゃんにとっても」

くーちゃん「あまり楽しい時間じゃないとか、思ったですけど」

くーちゃん「でも、くーちゃんは」

ハナ「私ね」
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:38:46.78 ID:DcOEz2F40
ハナ「私、くーちゃんとなら」

ハナ「一緒に遠足とか、修学旅行とか、文化祭とか、お休みの日に、一緒に遊んだりとか」

ハナ「すっごく、楽しい気がする」

船のエンジンの音、カラスの鳴き声、海のばしゃばしゃとゆう音が混じります。

とてもきれいな音でした。

もしかしたらハナちゃんには、その音に色がついて見えるのでしょうか。

とてもキラキラした目で、空や海を見つめてました。

そのハナちゃんの笑顔が眩しくて、まるで太陽みたいでした。
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:39:38.09 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「ハナちゃん、くーちゃんのこと」


くーちゃん「素敵とか、すごいとか言ってましたけど」

くーちゃん「少なくとも、ハナちゃん、くーちゃんの何倍も素敵と思います」

くーちゃんがそう言うと、ハナちゃんはいつもみたいに顔を赤くして、うつむきました。

やっぱりハナちゃんは、こうでなくっちゃです。

TRACK13 旅の終わり
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:42:42.86 ID:DcOEz2F40
また明日ノシ
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/15(木) 21:16:16.96 ID:fmHj17xDO
おつ
大人になったらどんな感じになってるんだろう
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/15(木) 21:25:29.05 ID:QuHQtw7lo
おつおつ
百合ですねっっっ!!
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:17:09.45 ID:Ppk08Rtz0


くーちゃん「結構警察来てますね…」

海の男「まあ、それだけのことしたんだからな」

ハナ「…あ」

ハナ「おかあさん」

くーちゃん「くーちゃんのお母さんも来てます」
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:19:29.57 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん(ハナちゃん、もうおかあさんのところ走っていきました)

くーちゃん(海の男とも何か話してますね)

くーちゃん(やさしそうな、家族です)

ガバッ

くーちゃん「…おかあさん、くるしいです」

お母さん「…ねえ、くーちゃん」

お母さん「…痛かった? 腕」

くーちゃん「だいじょぶです、お母さん。もう全然いたくないです」

くーちゃん「腕のことより、くーちゃんは喋りたいこと、あります」
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:21:05.99 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「大げさかもしれませんが、くーちゃん、人生で最高の旅、しました」

ぎゅっ

くーちゃん(汗の香りがします。海みたいです)

くーちゃん(くーちゃんの好きな香りです)

くーちゃん「それで、思ったです」

くーちゃん「いろいろ嫌なこともありましたけど、やっぱりくーちゃん、お母さん大好きです」

くーちゃん「お母さん、心配かけたくなくて、色々頑張ってました」

くーちゃん「でも、くーちゃん、もう嘘、嫌です」

お母さん「…そう」

お母さん「…わかったわ」

くーちゃん「しんぱいかけて、ごめんなさい。おかあさん」
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:23:10.10 ID:Ppk08Rtz0
お母さん「心配かけたのは、わたしだけじゃないわよ」

くーちゃん「誰ですか?」

?「心当たりは、ありませんか?」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「校長先生」

校長先生「山に行くとは聞いていましたが、大冒険に出るとは聞いていませんでしたよ」

339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:24:18.79 ID:Ppk08Rtz0
校長先生「まあ、なにはともあれ、長旅お疲れさまでした」

くーちゃん「おこらないですか?」

校長先生「それは別の人の仕事です」

校長先生「あとでたっぷり、怒られてください」

くーちゃん「わかりました」

くーちゃん「ところで校長先生」

校長先生「はい、なんでしょう」

くーちゃん「しゃべりたいこと、あります」
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:27:57.47 ID:Ppk08Rtz0
校長先生「はい、どうぞ」

くーちゃん「ハナちゃんは、島にある大楠さんの言葉、聴こえたわけじゃありません」

くーちゃん「でも、島の大楠さんのトンネル、ハナちゃんの絵、そっくりでした」

くーちゃん「呼んでいることも、伝わってきたです。なぜでしょう」

校長先生「ふむ」

校長先生「校長先生の意見よりも」

校長先生「この旅を続けたあなたの方が、いい答えをもってそうです」

校長先生「先に、あなたのお話を聞かせてもらえませんか? くーちゃん」

くーちゃん(くーちゃんとよんでくれました)

くーちゃん(うれしいです)
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:31:49.01 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「多分なんですけど、たまたま、同じだったから、呼ばれたと感じただけだと思います」

校長先生「同じ?」

くーちゃん「ハナちゃんも、大楠さんも。くーちゃんも」

くーちゃん「みんなつぶされそうで、誰かに来てほしかったのかもしれません」

校長先生「なるほど。続けてください」

くーちゃん「きっと、くーちゃん、ハナちゃん、大楠さん、似た者同士です」

くーちゃん「似た者同士、集まるんです」

くーちゃん「類は友を呼んだ。ただそれだけの話じゃないでしょか」

校長先生「ふふふ」

校長先生「素敵な答えですね、くーちゃん」

くーちゃん「あたりまえです。くーちゃんの頭脳は、天才的なのです」
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:33:02.40 ID:Ppk08Rtz0
お母さん「くーちゃん、そろそろ行くわよ」

お母さん「警察の人が、お話をしましょうだって」

くーちゃん「楽しくはなさそうですね」

お母さん「あたりまえでしょうが」

海の男「まあ、そう言ってやんな」

お母さん「あ…」

海の男「よう」

海の男「久しぶりだな」
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:34:35.12 ID:Ppk08Rtz0
海の男「でかくなったじゃねえか、この子も」

お母さん「…そうですね、おかげさまで」

海の男「なんの心配することはねえよ」

海の男「ふつうの、いい子だよ」

お母さん「………」

お母さん「ありがとうございます」

くーちゃん(…知り合い、だったのでしょうか)

くーちゃん(まあよいです)

くーちゃん(海の男にも、お母さんにも)

くーちゃん(それぞれ、物語があるだけです)
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:04:40.67 ID:Ppk08Rtz0
5年後、病院

くーちゃん「といった感じです」

医師「…ハードすぎるね、いろいろと」

くーちゃん「ありがとうございます」

医師「褒めてないよ」

医師「戻ってからは、どんな感じ?」

くーちゃん「まあ、普通の毎日です」

くーちゃん「でも植物さんとの時間は、堂々と過ごすようになりました」

くーちゃん「道端の植物さんにもくーちゃんは挨拶します」

くーちゃん「素敵なお花さんがいたら、トンネルを感じたいので寝そべります」

くーちゃん「周りの人も、くーちゃんがそんなことをするの」

くーちゃん「当たり前のこととわかってくれてるので、注目されることもありません」

医師「…そっか。仕事にはせず、自分の時間として、過ごすようにしたんだね」

くーちゃん「正直助かりました。おかしいも、日常になれば普通なんです」
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:05:54.60 ID:Ppk08Rtz0
医師「ハナちゃんの方は、どうなったの?」

くーちゃん「無口ですね」

医師「…なるほど」

くーちゃん「あ、でも、たまに笑うよになりました」

くーちゃん「あと、堂々と絵を教室で描くようになりました」

346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:12:06.07 ID:Ppk08Rtz0
医師「周りからはどんなリアクション?」

くーちゃん「ハナちゃんの絵、すごいので」

くーちゃん「注目浴びること、ありましたけど、ハナちゃんはあまり気にしていません」

医師「…彼女も変わったんだね」

くーちゃん「しいて言えば」

くーちゃん「一度だけ、「変な絵」って言ってきたクラスメイトに」

くーちゃん「思い切り回し蹴りを喰らわせてました」

医師「バイオレンスすぎない?」

くーちゃん「さすがくーちゃんの大好きなハナちゃんです」
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:15:06.49 ID:Ppk08Rtz0
医師「でも、たしかに彼女の絵は、評価されてたみたいだね」

医師「17歳にて、多くの賞を取っている」

くーちゃん「そうなんです。なんだかすごいコンテストで、なんだかすごい賞、とってました」

くーちゃん「くーちゃんもその展示会に行きました」

くーちゃん「色んな人、ハナちゃんの絵を見て、感動してました」

くーちゃん「新参者がなに安っぽい涙を流してるんだと思いました」

医師「新規のファンに厳しすぎるよ」

348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:16:23.47 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「あれですよ。好きなミュージシャンが、売れ始めてから急に熱が冷めるあれです」

くーちゃん「それ言ったら、ハナちゃん、また照れくさそうにうつむくだけでした」

くーちゃん「肝心な時に何も言わないんです。それがハナちゃんのよいところです」

医師「なるほどね」

医師「他にはまだあるかい?」

くーちゃん「はい、まだまだあります」
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:19:12.88 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「ハナちゃんとの学校生活、とても楽しかったです」

くーちゃん「はい、あの船でお話した通り、たくさんの思い出、作りました」

くーちゃん「遠足だって、休み時間だって、お休みの日だって、修学旅行だって、全部楽しかったです」

くーちゃん「でも、くーちゃんが修学旅行先の沖縄で海を見て」

くーちゃん「また丸太に乗ろうとすると全力で止めてきました」

医師「そりゃ止めるよ」

くーちゃん「ハナちゃんは心配性なんです」

医師「僕でも止めるよ」
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:19:59.54 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「まあでも、そろそろゆきます」

くーちゃん「最後になりますので、今度こそ」

くーちゃん「ハナちゃんと、やくそくしてます」

医師「やくそく?」

くーちゃん「くーちゃん、そろそろお引越しするので」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:22:00.50 ID:Ppk08Rtz0


ハナ「小型船舶の免許って、難しかった?」

くーちゃん「まあ、ぼちぼちです」

ハナ「でも、上手だね、くーちゃんの操縦」

ハナ「ダンさんよりうまいかも」

くーちゃん「ダンさん?」

ハナ「海のおじさん」

ハナ「海野男って、書いて、ウミノダンさん」

くーちゃん「本当に海の男だったんですね」

くーちゃん「ただの変なおじさんだと思ってました」

ハナ「くーちゃんに言われたくないと思うよ」
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:24:01.45 ID:Ppk08Rtz0
ハナ「運転免許は?」

くーちゃん「落ちました」

ハナ「なんかごめん」

くーちゃん「12かいおちたので、やめました」

ハナ「わざわざ言わなくていいよ、大丈夫だから」

くーちゃん「くーちゃんは陸より海の方が向いてるようです」

くーちゃん「それに自動車免許、引っ掛け問題が多すぎます」

くーちゃん「なんですか、夜は気を付けて運転をしなければいけないとゆう問題で」

くーちゃん「答えがバツだなんて。ふざけてます」

くーちゃん「昼も夜も気を付けて運転しなければいけないなんて」

くーちゃん「くーちゃんは一休さんじゃありません」

ハナ「その問題は私も理不尽だと思う」
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:25:37.46 ID:Ppk08Rtz0
ハナ「くーちゃんは、本当に、島で、暮らすの?」

くーちゃん「はい。大楠さんとの約束です」

くーちゃん「畑とか、漁については、色々準備をしています」

くーちゃん「自給自足とゆうのは、結構大変らしいので」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そっか」

354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:26:45.99 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「ハナちゃんは、卒業してどうするか、決めたですか?」

ハナ「…そうだな…」














ハナ「私も、島、行こうかな」

355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:28:29.85 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「だめです」

ハナ「え、だ、だめ?」

くーちゃん「全然だめです。一緒に島なんて、ありえません」

ハナ「ど、どうして? 一緒に、旅だって、したし」

くーちゃん「一緒に旅、したからです」

くーちゃん「くーちゃんは大楠さんとの約束、交わせました」

くーちゃん「くーちゃんは、自分の人生、決めたんです」

くーちゃん「ハナちゃんも、ちゃんと自分で決められるはずです」
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:30:39.36 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「ハナちゃんの喋る量、少しだけ増えました」

くーちゃん「でも、言葉にしない情報の方が、ハナちゃんのことがわかります」

くーちゃん「苦しそうな顔の人と、島で一緒に暮らすことはできません」

くーちゃん「ハナちゃん。本当にやりたいこと、ないですか?」

 ちゃぷん



                    ちゃぷん


          ちゃぷん

ハナ「くーちゃん」

くーちゃん「はい、なんでしょう」

ハナ「喋りたいことがあるの」
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:32:14.46 ID:Ppk08Rtz0
ハナ「旅に出たいの」

くーちゃん「…とてもすてきです」

くーちゃん「くーちゃんは、ハナちゃんの旅を応援してます」

ハナちゃんの旅の目的は、特に尋ねませんでした。

もちろん興味はありました。

でも、ここで深堀して、言葉にさせてしまうと

せっかくのハナちゃんの持ち味が台無しになるって思ったんです。

言葉にする大切さがあれば、言葉にしない大切さを知ってるハナちゃんには、よい配慮と思いませんか?

誰だって喋りたいことを喋ればよいんです。

喋りたくないことなんて、喋らなくてよいんですよ。
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:33:12.84 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「反対されても気にしなくてよいです」

くーちゃん「だって、海の男、突き落として」

くーちゃん「船、ジャックしたです」

くーちゃん「ハナちゃん、なんだってできますよ」

ハナ「それ言うのやめてくれない⁉」

そう言ってハナちゃんとくーちゃんは、笑いあいました。

そして、卒業してからくーちゃんとハナちゃんは

離れ離れになりました。
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:34:17.24 ID:Ppk08Rtz0
また明日ノシ
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/17(土) 10:06:10.62 ID:gTinn2ZxO
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:47:12.35 ID:KdntX8IL0
TRACK14 沼の底

くーちゃんとハナちゃんは、それからずっと、長い間会うことはありませんでした。

お互いその頃携帯電話は持ってませんでしたし、手紙を書く習慣もなかったので

繋がる手段が、なかったんです。 

くーちゃんは島での暮らしを始めました。

慣れない畑作業や、海の男の漁の手伝いをしながら

くーちゃんは毎日、大楠さんのところへ行ってました。

そして、くーちゃんは大楠さんに抱き着いて、あのトンネルの世界の奥へ進んでいました。

相変わらず暗くて大きくて、さみしくて、でもどこか居心地のよい、不思議な場所でした。
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:52:49.05 ID:KdntX8IL0
くーちゃん「…沼、もっと大きかったはずなんですけど」

くーちゃん「小さな水たまりになってますね」

ぴちょん

くーちゃん「沈むほど、深かったはずですけど」

くーちゃん「においも、なくなりました」

くーちゃん「でも」

くーちゃん「あなたは変わらずいるのですね、大楠さん」


363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:53:59.54 ID:KdntX8IL0
くーちゃん「ねてるのですか? おきてるのですか?」

くーちゃん「前みたいに、何かを求める感じでもないですね」

くーちゃん「どうしてでしょう。なにもわかりません」

くーちゃん「ただそこにいるだけって感じですね」

くーちゃん「…あの、よかったら」

くーちゃん「歌でも、歌いましょうか?」
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:56:28.18 ID:KdntX8IL0
くーちゃん「これから、毎日うたいます」

くーちゃん「毎日、違う歌です」

くーちゃん「くーちゃん、きっと大楠さんより早く死んでしまいます」

くーちゃん「大楠さん、これからも、とても長く長く、生きてゆくことでしょう」

くーちゃん「だから、毎日、たくさん歌を届ければ」

くーちゃん「大楠さん、当分の間、退屈しないでしょ?」

くーちゃん「それくらいなら、くーちゃんでもできそうです」

くーちゃん「大げさかもしれませんが、くーちゃんのトンネルを感じられる力」

くーちゃん「このためにあったんですね」
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:59:20.99 ID:KdntX8IL0
毎日毎日

そんなことを続けていたのです。

たまに海の男の漁、手伝って

食料やお金をもらったり、畑の作業、しながらですけど。

それでも、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、
何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も
何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も
何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も

ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと







くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ」














くーちゃん「なんか」

くーちゃん「トンネルの外、出るの、めんどくさくなりましたね」

366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:00:37.04 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「大楠さん、しゃべりたいことあります」

くーちゃん「くーちゃんが島で暮らし始めたのは、あなたに歌を届けるためでした」

くーちゃん「とゆうことは、このトンネルから出ても」

くーちゃん「よいことはありません」

くーちゃん「もともとくーちゃんの、あの旅は」

くーちゃん「あなたの呼び声にこたえて、現実に見切りをつけるのが目的でした」

367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:02:10.44 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「でも、ハナちゃんの言葉や、チョコレートで」

くーちゃん「沼に沈むのはやめて」

くーちゃん「現実であと少し、生きようと思ったんです」

くーちゃん「でも、今、ハナちゃんいません、どこにいるのか知りません」

くーちゃん「きっと、ハナちゃん、くーちゃんのことなんかすっかり忘れて」

くーちゃん「幸せな人生、歩んでます」

くーちゃん「そこに、くーちゃん、もういらないのです」

368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:04:46.59 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「離れ離れになった時、思いました」

くーちゃん「心のどこかは、離れてても、つながってるって」

くーちゃん「でも、わからないのです」

くーちゃん「植物さんのトンネルだと、いろいろと感じられるので、ほっとするのですが」

くーちゃん「人間にはトンネルがないのです」

くーちゃん「心、見えないんです」

くーちゃん「お話をして、顔を見ないと、感じられないんです」

くーちゃん「だから、くーちゃんはにんげんがこわいのです」

くーちゃん「きらいとゆうより、こわかったんです」

 
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:06:44.29 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「それに、現実に戻らず、ここにずっといたほうが、大楠さんもうれしいはずです」

くーちゃん「ずっとここにいれば、あなたに毎日、思いついた時に、いつだって歌を歌えます」

くーちゃん「別に、沼の底に沈むなんて大げさな話じゃありません」

くーちゃん「ようするに、このトンネルで、ずっとずっといれば」

くーちゃん「現実のこと、全部全部忘れて」

くーちゃん「あなたのことだけ考えられます」
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:08:15.34 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「大楠さん、二転三転しましたが」

くーちゃん「こういうのはどうでしょう」

くーちゃん「一緒に沈まないと言いましたが」

くーちゃん「くーちゃん、ここにずっと、いても、差支えないでしょうか?」

水たまりから生えてる大楠さんに、くーちゃんは抱き着きました。

湿った木の空気が、くーちゃんの乾いた肺を満たしてゆきます。

あの時の、沼の底の懐かしいにおいが、漂ってきました。

気が付けば抱き着いているくーちゃんの体を、ぬめぬめした液体が沈めてゆきます。


くーちゃん「…あ」

それは、あの時の沼でした。

371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:09:01.12 ID:BXJMuESK0
もう沈むことはないと思っていた沼に、くーちゃんはまた沈み始めてたんです。

あの旅の果てで、くーちゃんは沼の底を望んでいました。

あの時選ばなかった、沼の底への道をたどる。

理想の世界の扉を開けられる。

ああ


素晴らしい人生です。
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:09:49.03 ID:BXJMuESK0































くー





















あっ

















373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:10:32.33 ID:BXJMuESK0
あと2回

また明日

ノシ
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/18(日) 11:55:50.11 ID:5Tz9o532o
おつ
くーちゃん一人にしたら駄目な子だ
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/18(日) 14:19:45.85 ID:WJ0HkjWDO
何歳くらいになったんだろう
でも喋り方は変わらない
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:10:26.78 ID:BXJMuESK0
くー

「くーちゃん」

くーちゃん(…だれのこえでしょう)

くーちゃん(おとこのひとです。とても、なつかしい、もうきこえない)

くーちゃん(たいせつな、こえです)


377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:12:07.31 ID:BXJMuESK0
 くー

「ほら、くーちゃんだ」

くーちゃん(…くーちゃん)

くーちゃん(すごく、かわいいなまえです)

「こんなに小さいのに、自分で自分の名前をつけられるなんて」

「天才的な頭脳だ」

?「大げさね、お腹が鳴っただけじゃない」

「いいんだよ」

「人生大げさなくらいがちょうどいいんだよ」

くーちゃん(…そうでした)

くーちゃん(だからくーちゃんは)

くーちゃん(このなまえが、だいすきだったんです)
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:13:45.02 ID:BXJMuESK0
くー

パチ

くーちゃん「…あ」

くーちゃん「…ここは」

くーちゃん「…現実です」

くー

くーちゃん「…おなか」

くーちゃん「…すきましたね」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:30:01.66 ID:BXJMuESK0
TRACK15 おにぎり

海の男の家

海の男「…ずいぶんひさしぶりだな」

海の男「漁も畑も手伝わねえで、なにしたんだお前さん」

くーちゃん「お前さん違います。くーちゃんです」

海の男「おまえもう30も半ばだろ。いい年してまだくーちゃんか」

くーちゃん「くーちゃんは、この名前が大好きなんです」

くーちゃん「誰かにこの名前を呼ばれるのも大好きなんです」

くーちゃん「だから、何歳になってもくーちゃんです。後期高齢者になっても同じ感じでゆきます」

海の男「相変わらずいい性格してるな」

くーちゃん「ありがとです」

くーちゃん「それより海の男」

くーちゃん「くーちゃんとおにぎり食べませんか?」
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:31:21.59 ID:BXJMuESK0
海の男「おにぎり?」

くーちゃん「お米はもってきました」

海の男「炊いてないじゃねえか。うちには飯盒しかねえぞ」

くーちゃん「知ってます。貸してください」

くーちゃん「くーちゃんはおなかがへりました」
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:33:11.74 ID:BXJMuESK0
小一時間後

くーちゃん「我ながらきれいににぎれました」

海の男「ふん、うまいじゃねえか」むぐむぐ

海の男「てっきり、お前さんのことだから、トンネルの向こうの沼から」

海の男「行ったきり、もう戻ってこねえんじゃないかって思ったぜ」

くーちゃん「沼の底でも、腹は減るんです」

くーちゃん「おなか、減って死んでしまえば、歌、届けられません」

くーちゃん「会いたい人、会えなくなってしまいます」

くーちゃん「くーちゃん、それは嫌だなって、思っただけです。それだけの話です」

382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:34:33.80 ID:BXJMuESK0
海の男「お前さん、大楠さんはいいのか?」

海の男「大楠さんがさみしがるだとか、そんなこと言ってなかったか?」

くーちゃん「だいじょぶです。大楠さん、くーちゃんと一緒にいたいわけじゃないのです」

海の男「来てほしいって言われたんじゃねえのか」

くーちゃん「しょくぶつのトンネルで、ことばはきこえないんです」

くーちゃん「だからあれは」

くーちゃん「くーちゃんのこえだったんです」

くーちゃん「多分、一緒に沈みたかったの、大楠さんじゃなくて」

くーちゃん「くーちゃんだけだったんです」
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:36:02.42 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「だから、くーちゃんが現実に見切りをつけたとき」

くーちゃん「沼に沈みだしたのは、くーちゃんの意志とゆうことです」

海の男「…そうか」

海の男「なあ」

くーちゃん「なんですか?」

海の男「今度、飯作ってやるよ」
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:38:06.55 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「どしたんですか、急に」

海の男「お礼だよ」

くーちゃん「おにぎりのですか?」

海の男「ちげえよ」

くーちゃん「じゃあなんですか」

海の男「秘密だ」

くーちゃん「海の男なのに、隠し事して、よいですか?」

海の男「言わない大切さもあるんだよ」

いつも屁理屈ばかりの海の男ですが、たまには筋の通ったことを言うものです。

睨まないでください。冗談ですよ。

いつもありがとうございます。
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:39:47.77 ID:BXJMuESK0
海の男「ついでにギターも教えてやろう」

海の男「お前さんの歌もいいが、楽器があると、より引き立つ」

くーちゃん「船に積まれてたギター、あれ飾りじゃなかったですか」

海の男「自分で言うのもなんだが、そこそこ弾けるんだぞ」

ハナちゃんはたしか高校時代、音楽の授業をとってたので

ギターが少し弾けたことを思い出しました。

海の男「そうだ。お前さんに会ったら渡しておくもんがあったんだ」
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:46:17.58 ID:BXJMuESK0
海の男「ったく、お前さんの荷物、いい加減お前さんの家に届くようにしろよ」ごそごそ

くーちゃん「あの島の家より、海の男の家の方が、郵便屋さん、とどけやすいです」

海の男「変なところ気遣ってんな…あったあった」

海の男「こいつだ」

海の男が持ってきたのは、大きな茶封筒でした。

中は少しだけ膨らんでます。

触ってみると、本のような角ばった感触がしました。
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:55:03.03 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「だれからですか?」

海の男「それが送り元が空欄でな」

くーちゃん「ふむ」びりっ

くーちゃん「あ」

くーちゃん「えほんです」

くーちゃん「タイトルは…」

くーちゃん「しかの、かぞく」

くーちゃん「とても、かわいい題名です」

くーちゃん「表紙の絵も、とても素敵です」

その独特な色使い。忘れるはずありません。

 
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:55:38.14 ID:BXJMuESK0
内容を簡単にゆうと、こんなお話です。

木でできた鹿さんたちが、離れ離れになった自分の家族と出会う、とゆうものです。

そのお話は、くーちゃんのとても大切なお友達の絵で描かれてました。

たくさんの花や植物に囲まれてる、鹿さんの家族には、何十色も、見たことのない色が使われてます。

ところどころ、グルグルしてたり、びよんびよん伸びてたり、

たくさんの小さい丸や大きい丸があったりして、

まるで踊ってるみたいな絵です。

その絵はきっと、最高の笑顔で描かれたのでしょう。

きっとそうだと思います。海の男じゃなくても、

くーちゃんにはわかります
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:04:03.29 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「これが、やりたいことだったですね」

パタン

くーちゃん「あ」

くーちゃん「海の男、お願いあります」

海の男「なんだ?」

くーちゃん「電話、貸してもらえないですか?」

 絵本の裏に、たくさんの色を使って描かれてたのは、電話番号でした。
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:04:49.36 ID:BXJMuESK0
海の男の携帯電話を借りて、番号を入力しました。

今の時代は便利です。くーちゃんもこれをきっかけに、携帯を契約しようと思ったほどです。

来週くらいにしようと思います。

毎回海の男に貸してくださいと言うのも、めんどくさいので。

そろそろ電話代を要求されそうな気がします。
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:05:27.08 ID:BXJMuESK0
話を戻しましょう。

三回ほど、プルルルルと、音が鳴ったあと、ハナちゃんは出てくれました。

久しぶりに聞いたハナちゃんの声は少しだけ大人っぽくなってたですけど、

いつもみたいに、優しい声で、チョコレートの味を思い出しました。

それはもう、最高に最高に、ぜんぶぜんぶうれしくて

、胸はずっと、ドキドキしてました。
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:06:09.57 ID:BXJMuESK0
いろいろなお話をしました。

天気の話、海の男の話、くーちゃんの暮らしの話、大楠さんのトンネルの話、とかです。

あ、でも、ハナちゃんがあれからどんな旅をしてたのかとゆう話が最初でしたね。

絵本の鹿でピンと来た人もいるでしょうが、ハナちゃんは、あの鹿のお兄さんを探してたんです。

しかも探し方がすごいんです。

日本中の山を探してたんです。

無謀すぎます。ハナちゃん、もう少し考えてから動いたほうがよいです。本当に。

冗談です。くーちゃんにだけは言われたくないですよね。
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:06:46.47 ID:BXJMuESK0
ただ、それなら絵本を直接島に届けに来てくれたらよいものを、と思いますよね。

なんでこんなまどろっこしいこと、したのかとゆうと、

どうやらハナちゃんは、くーちゃんの顔を見るのが少しだけ気まずかったみたいなんです。

あれほどくーちゃんのことを大好きだったハナちゃんが

くーちゃん以外に夢中になってしまうものを見つけて

それに没頭してしまったら

くーちゃんを、裏切ってしまった気持ちになったんですって。
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:07:22.06 ID:BXJMuESK0
ハナちゃんはずいぶんとつまらないことを気にしてたものです。

好きなものがたくさんあるのは、悪いことじゃありません。

それに、ハナちゃんがくーちゃんのことを大好きなのは、ちゃんと伝わってますから、

何も心配いりません。

お互いがお互いの道を進んだのは

きっと悪いことじゃなかったと思います。
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:07:51.98 ID:BXJMuESK0
すいません。強がりを言いました。

くーちゃんはずいぶんと偉そうなこと、言いましたが

くーちゃんは、ハナちゃんが近くにいないのはさみしかったので。

そのことを素直にハナちゃんに電話で言うと、大きな声で笑われてしまいました。
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:08:37.43 ID:BXJMuESK0
それから、しばらくしてハナちゃんと、鹿のお兄さんが、島に遊びに来てくれました。

大楠さんの前で一緒にのんびり過ごしました。

どんな遊びをして、どんなことをお話したか、今回は割愛します。

別に、他愛のないことばかりなので。

強いて言えば、それからもたまにハナちゃんは、遊びに来てくれるようになりました。

お兄さんと一緒の時もあれば

一人で来て、一緒にお酒を飲みながら大楠さんの前でのんびりと星空を見上げたりします。

すっかりくーちゃんたちは大人になってました。

いろいろと変わってしまったものもあります。でも、それでよいんです。

変わってゆくこと、きっと人生では大切なことなんです。
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:10:32.72 ID:BXJMuESK0
・・・・・・・・・・・ふう

こんな感じでよいでしょうか

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

多分、ちゃんと録れてるはずです。

では、みなさん。

続きは会場でお話しますね。

ありがとうございました。




…プツッ
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:11:29.02 ID:BXJMuESK0
次回、最終回

ノシ
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/18(日) 23:06:47.48 ID:1O9sV0O/o
おつおつ
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/19(月) 14:59:50.37 ID:YCxOLkbDO
最後はまったりとした感じで終わりそう
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:38:46.66 ID:fhKmTJaH0
えー、あー、あー、

テステス

ただいまご紹介にあずかりました。あまのくうです。

くーちゃんと気軽に呼んでください。

みなさんは、もう知ってますかね。

とゆうか、聞いてくれましたかね。くーちゃんのあの、長い長いお話を。

ハナちゃんはすごいです。

くーちゃんのスピーチをQRコードとやらにして、招待状で聞けるようにしてくれたんですから。
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:39:35.61 ID:fhKmTJaH0
ほんとはあのお話を、ここでしたかったところなんですけど、

海の男に、スピーチは長すぎず、短すぎずが一番よいと言われたので、

ああいう形になりました。

臨場感出すために、録音するとき、

ハナちゃんたちもこの会場を再現した場所に座ってたり、

お客さんというか、ご来賓、ですかね。

ご来賓の方たちがいるところに、鹿のお人形も代わりに設置してました。

おかげで録音中、くーちゃんは完全にここでスピーチを言ってるつもりで、喋れたはずです。

ですが、緊張して、喋り方が固くなりすぎたかもしれません。

もうちょっと普段のくーちゃんは、ふらんくです。
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:40:11.77 ID:fhKmTJaH0
なにはともあれ、あれが、くーちゃんの喋りたかったことです。

それにしても、驚きですよね。

まさかあのお兄さんとハナちゃんが結婚するなんて、予想外です。

たしかにあの旅で、お兄さんとハナちゃんは仲良くなってましたがね。

人生何があるかわからないものです。
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:40:42.79 ID:fhKmTJaH0
皆さん、一応これ、サプライズですよ? 

ハナちゃんの旦那さんが、実はあの鹿のお兄さんでしたーってゆうやつです。

ここ、驚くところです。盛大な拍手をするとこです。

ありがとございます。

拍手を浴びるの、気持ちよいですね。

録音中は盛大な拍手を浴びれなかったので。

まあ、会場にたくさんある鹿の置物をみたら、みなさん察しますか。
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:41:20.78 ID:fhKmTJaH0
話を戻しましょう。

正直お兄さんとハナちゃんはお似合いです。

お兄さんと再会してから、ハナちゃんの絵は、より素敵になってるので。

きっとお兄さんとハナちゃんは、一緒になってよかったのでしょう。

もしハナちゃんを泣かせてたら、くーちゃんがお兄さんをあの日みたいに、

海へ突き落とすつもりでしたが、

その必要はなさそうです。
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:42:00.15 ID:fhKmTJaH0
でもハナちゃんもくーちゃんのことが好きすぎです。

あんな長い録音を、皆さんの招待状につけて聞かせた上に

会場でくーちゃんをさらに喋らせて

しかも、この後すぐに、くーちゃんの余興が入るんですよ? 

どこまでくーちゃんをこき使うつもりですか。ハナちゃん、悪い人です。

まあよいでしょう。だって、くーちゃんも、やりたいことですから。

くーちゃんは嘘が嫌いです。

だから、本当にハナちゃんにしたいことを、この場を借りて、好きにさせてもらいます。
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:42:56.01 ID:fhKmTJaH0
くーちゃん、別に自分の歌が上手だとか思ったことないんです。

けど、大楠さんに歌を歌ったとき、誰かのために自分で歌を作って歌うのって、

うれしいことだって気づいたんです。

照れくさいですけど、あれからくーちゃんが、歌のことを好きになって、

曲を作って、島や船で歌ったりしてると、

いろいろな人が、上手だって、言ってくれます。

巫女のまねごとをして褒められるより、うれしいものです。

きっと、それなりに聴ける歌とは思います。

ちなみに海の男のギターを一応持ってきたのですが、なんとなく今日はアカペラの気分なので、

アカペラでいきます。
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:43:46.13 ID:fhKmTJaH0
あ、でも、締めに何か気の利いたことを言うべきですね。

ここまでハナちゃんのことについてお話させてもらってあれですけど、

正直くーちゃんは、恋愛とか、結婚とか、よくわかりません。

恋愛や結婚で成功すれば人は幸せなんでしょうか。

大楠さんのトンネルのくだりで、そのあたりのこと、少し触れましたが、

くーちゃんは、あまりピンときません。
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:45:09.90 ID:fhKmTJaH0
ごめんなさい。結婚式でこんなこと言ってしまって。

だからでしょうか。王道の、どうかお幸せに、なんて言葉はしっくりこないんです。

だってハナちゃん、もう幸せそうです。ずっとにやにやしてます。

となると、ハナちゃんにとって、今回の結婚は、幸せなことなんでしょう。

今ハナちゃんが幸せなら、それがくーちゃんにとって、一番うれしいです。
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:46:16.23 ID:fhKmTJaH0
くーちゃんには、いろいろなこと、たくさんありました。

いいこと、嫌なこと、たくさんあったですけど、

ぜんぶぜんぶ、あってよかったです。

嘘だらけでも、巫女さんもどきのお仕事して、よかったです。

トンネル感じられる、不思議な力、あって、よかったです。

あの日、ハナちゃんに話しかけてよかったです。

ぜんぶです。ぜんぶ、ぜんぶ。ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ。よかったです。

よくなかったことなんて、なにひとつ、ありませんでした。

おおげさですかね? まあよいでしょう。

人生、多少大げさなくらいが、ちょうどよいんですよ。
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:47:24.74 ID:fhKmTJaH0












スーッ
















ハーッ











412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:48:25.23 ID:fhKmTJaH0









 ♩


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                              ♩



もう、なにぼーっとしてるの。

ほら、こっちきて。

いっしょにやるよ。

ギター、音楽の授業でやってたんでしょ?
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:50:05.78 ID:fhKmTJaH0


               ♪           ♬


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414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:51:29.05 ID:fhKmTJaH0
 ふう。


 えへへっ


 もう、なにないてんの。ハナちゃんのなきむし。


 ねえ、そろそろ、ごはんたべよ。


くーちゃん、おなかがへりました。












おしまい
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:56:30.02 ID:fhKmTJaH0
ここまで読んでくれてありがとうございました。

久しぶりに長編小説書いたので、SSアレンジもしてみました。

くーちゃんは、実在するモデルがいます。

アラフォーで、一人で島で暮らしてて、毎日海や木に向かって、歌を歌います。

たまに海で拾い食いして死にかけてます。

その方に1年を通して取材した結果、こちらのおはなしができました。

おもしろいかどうかはわかりませんが、大切に書かせてもらいました。

フィクション実話入り混じる不思議な話になりましたが、久しぶりに長編が書けてたのしかったです。

ありがとうございました。

余談ですが過去作

http://esusokuhou.blog.jp/archives/26741266.html (海の男、でてきます)



416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/19(月) 20:59:10.56 ID:dgMs1fTEo

ssのために一年間取材!?
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/19(月) 21:04:33.55 ID:fhKmTJaH0
>>416
正確には小説が先です。
もともと物書きなんですがずっと長編小説が書けてなくて、もやもやしてたところ
くーちゃんのモデルの人と会いました
この人の物語を書かなきゃと思って、取材しました
小説版は公募に出して悲しくも落選したので、こちらにSSアレンジとしてのせることにしました
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/19(月) 23:03:09.86 ID:IH4/FjZCo
乙、面白かったよ
気が向いたらまた何か書いてくれると嬉しい
その時はぜひここにリンクでも貼って教えてくれると追いやすくて助かる
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/19(月) 23:12:39.44 ID:fhKmTJaH0
>>418
ありがとうございます!
過去作でしたらこんなんあります
http://morikinoko.com/archives/52163918.html
大切な幼馴染が変わってしまった話

http://esusokuhou.blog.jp/archives/28348559.html
虐待されて死ぬのをひたすら待ち続けた女子小学生がショタっ子に救われる話

http://esusokuhou.blog.jp/archives/29561253.html
姫が召使に自分を誘拐させる話
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/19(月) 23:17:37.22 ID:2OzjUwHGo
おつおつでした
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/19(月) 23:27:40.09 ID:fhKmTJaH0
>>420
ありがとうございます
くーちゃんモデルとの一年が少しでも伝わったら嬉しいです
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/20(火) 13:51:20.83 ID:YJcjFbft0
>>419
過去作紹介ありがとう、時間ある時に読ませてもらうよ
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/22(木) 18:02:18.56 ID:lOMXnk8DO
おつ
実在してるのか…
その人も幸せに暮らしてるなら何よりだけど
ハナちゃんとか他の登場人物はさすがに違うかな
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/23(金) 08:48:06.11 ID:oxuYJn3d0
>>423
ハナちゃんはいろんな人をミックスしてます。
くーちゃんモデルの人にはたくさんのお友達が今います。
その友達の名前にはすべて花に関する名前だったので、ハナとさせてもらいました。
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/23(金) 08:50:42.13 ID:oxuYJn3d0
>>423 ちなみにラストのセッションは、わたしとくーちゃんモデルの人とのセッションした場面を入れてます。
始めてその人のピアノを聴いた時、自分には手の届かない人だなと思っていたのですが
1年後、自分がピアノを弾いて、その人が歌を歌ってくれる場面がありました。
その時の最後に、ぼろぼろ泣いてしまって、泣き虫と笑われてしまいまして。そんなこんなであのラストができました。
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