【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】

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577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/06/01(土) 20:01:59.27 ID:VeSaVRJ20
まってた
578 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:43:31.53 ID:+ekmNVAbo
>576-577
すみません、お待たせしております。

短いですが続きです。
579 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:44:18.38 ID:+ekmNVAbo

 * 鎮守府内連絡通路 *

朝潮「迷子ですか?」

由良「そう。そういうわけで、その深海棲艦を保護したんだけど」

提督「迷い込んできた深海棲艦……なあ」

朝潮「もしかして、外海の深海勢力からの使者でしょうか?」

由良「そういうわけでもないみたい。ただ、こちらに害意はないから、食堂の外のウッドデッキに案内して、休んでもらってるんだけど」

由良「提督さん、とりあえず会ってもらえないかしら。拍子抜けするくらい友好的だから」

提督「……まあ、そういうことなら話は早そうだな」


 * 食堂外 テラス席 *

軽巡棲鬼「コレ、オイシーー!」モグモグ

マーガレット「それは良かったです! いっぱいありますから、たくさん召し上がってくださいね!」

提督「……あいつか?」

由良「はい、この前海軍からいただいた資料によれば、あの個体は軽巡棲鬼と呼ばれている深海棲艦ですね」

由良「ただ、髪型がちょっと違ってて……資料の写真には髪をまとめてお団子にしてるんですが、あの軽巡棲鬼にはそれがないんです」
580 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:45:16.14 ID:+ekmNVAbo

提督「ふーん……なんつうか、深海棲艦らしくねえ深海棲艦だな?」

朝潮「朝潮も同感です。あんなににこにこ笑ってる深海棲艦は珍しいと思います」

提督「……まあいいや。ちょっと邪魔するぞ」

朝潮「失礼いたします!」

マーガレット「あっ、マスター!」

軽巡棲鬼「ワァ!? 艦娘ト……人間ノ提督サン!? 深海棲艦ガイルノニ!? ココッテ、ドウイウトコロナノ!?」

提督「俺は提督。こっちは今日の秘書艦の朝潮だ」

朝潮「駆逐艦、朝潮です!」ビシッ

提督「この島にはちょっと特殊な事情があって、深海棲艦と艦娘の両方が暮らしてる。俺はそのまとめ役みたいなもんだ」

マーガレット「私たちメディウムのマスターで、魔神様ですよ!」エッヘン

提督「ややこしくなるから、そっちの話はあとでな。で、お前は一体何者だ? とりあえず名前は?」

軽巡棲鬼「私、最新鋭深海棲艦ノ、阿賀野デース!」

提督「阿賀野? 軽巡級にそんな名前の艦娘がいたな……?」

朝潮「しかも、最新鋭深海棲艦、と言いましたね」
581 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:46:00.87 ID:+ekmNVAbo

提督「とりあえず、阿賀野……でいいのか? お前が何でこの島に来たのかを知りたいんだが、話せるか?」

軽巡棲鬼「ハーイ、エーットネェ……アレ? 阿賀野?」

提督「うん?」

軽巡棲鬼「……イマ、私、自分ノコトヲ、阿賀野ッテ言ッタノヨネ?」

提督「ああ、言ったな」

軽巡棲鬼「エエエ!? アレ? ドコカラ出テキタンダロ……」オロオロ

提督「……大丈夫か?」

朝潮「自分で言ったことに混乱しているんですか?」

軽巡棲鬼「チョ、チョット待ッテ……エット、ウン、ダンダン、ナントナク、ワカッテキタ……ドコカラ話シタライイノカナ」

提督「覚えてるところからでいいぞ。順番は後で整理すりゃいい。話せるだけ話してみてくれ」

軽巡棲鬼「ウン……私、今ハ深海棲艦ナンダケド、艦娘ダッタコロノコト、少シ覚エテテ」

提督「は? 艦娘だったって!?」

軽巡棲鬼「ソウナノ! 確カ……私、事故カナニカデ両足ガ動カナクナッチャッテ、スッゴイ落チ込ンデタノ!」
582 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:46:46.00 ID:+ekmNVAbo

提督「事故? どんな事故だ?」

軽巡棲鬼「ソコマデハ覚エテナインダケド。デモ、杖? ヲ、ツイテタコトハ覚エテテ」

軽巡棲鬼「背中モ痛クテ、歩ケルカドウカモワカラナイ、ッテ言ワレテタヨウナ、気ガスル」

軽巡棲鬼「ソレガスゴク悲シクテ、夜、海ノ近クデ泣イテタコトハ覚エテルノ」

提督「……そのあとは?」

軽巡棲鬼「ソノアトガヨク覚エテナクッテ……気付イタラ海中ニイテ、苦シクテ、意識ガ真ッ暗ニナッテ……」

軽巡棲鬼「イツノ間ニカ、コウナッテタ気ガスルノヨネー」

提督「お前が覚えているのは、そのあたりの記憶と、名前だけか?」

軽巡棲鬼「ソウネエ? ホカニ覚エテルコト……ウーン、スグニハ出テコナイカナア?」

提督「そうか。まあ、無理に思い出さなくていいぞ。忘れたってことは思い出したくない過去なのかもしれねえし」

軽巡棲鬼「ソウ? ソレジャ、マタ、ケーキ食ベテイイ?」

提督「……いいけどよ……切り替え速すぎんだろ」

由良「なんだか、いつもの質問、聞かなくても良さそうですね?」

提督「そうだなっつうか、すでに一回死んでるようなもんだしな……ん? お前、脚がないのか?」
583 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:47:31.04 ID:+ekmNVAbo

軽巡棲鬼「ア、コレ? 心配シナクテモ大丈夫ヨ? コレ、モトカラダシ、私、浮イテ移動デキルカラ」

提督「どうなってんだそれ……」

軽巡棲鬼「ン−トネ、ヨイショ、ット……コウナッテルノ。見エル?」グイ

提督「……脚の切り口っつうか、断面がなんかの噴射口みたいだな? ここから何か噴き出して浮いてるってか」

軽巡棲鬼「ソウナノ。タダ、ソノセイカ、移動スルダケデ、スッゴイエネルギー使ッチャウミタイデ、疲レルノヨネ〜」

提督「それ、艦娘のときに脚を怪我してたことが由来してんのか……?」

由良「いえ、軽巡棲鬼はもともとこういう見た目ですね。フロート船みたいに海の上を浮いて滑走してるようです」

提督「もとからなのか」

軽巡棲鬼「タブン、ソウヨ〜。私、自分ノ姿ガオカシイトカ思ワナカッタモン」

提督「なるほど……昔のことはとりあえずそこまででいいか。じゃあ今は今で、どうやってこの島に来たんだ?」

軽巡棲鬼「……ウーント、海ノ中デ気ガ付イテ、フラフラ〜ット海面ニ顔ヲ出シテ。デモ、誰モイナクテ……オカシイナ、ッテ思ッテテ」

軽巡棲鬼「キット私、イツモ誰カト一緒ニイタノヨ。艦娘ダッタ頃ニ、一緒ニイタ人ガ、イッパイイタハズナノ!」

由良「ってことは、どこかの鎮守府に所属していた、ってことですよね?」

提督「そうっぽいな。で、それからどうしたんだ?」

軽巡棲鬼「ソノアトハ、ヒトリナンダ〜ッテ思イナガラ、コレカラドウシヨウ、ッテ。ボンヤリシテタラ、オ腹ガ鳴ッチャッテ……」ポ
584 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:48:15.88 ID:+ekmNVAbo

軽巡棲鬼「行ク宛テモナイシ、仰向ケニ水面ニ浮イテ、波間ヲ漂ッテタノ。オ空ガ綺麗ネ〜トカ、オ腹スイタナ〜トカ思イナガラネ」

軽巡棲鬼「デ、プカプカ浮イテタラ、イツノ間ニカ、コノ島ニ流レ着イテテ。ソコデ出会ッタ潜水艦ノミンナニ見ツケテモラッテ……」

提督「潜水艦?」

軽巡棲鬼「ソウソウ。イキナリ魚雷ヲ構エラレチャッテ、ビックリシタケド、待ッテ待ッテーッテ叫ンダラ、ワカッテクレテ!」

軽巡棲鬼「モー、同ジ深海棲艦ダカラ撃タレナイト思ッテタノニ、ソンナコトナインダモン。ドウナルコトカト思ッタワヨ〜」

提督「お前、どこかの深海勢力に所属してるとかはないのか」

軽巡棲鬼「所属? ソウイウノ、深海ニモアルノ?」

提督「ああ。ここだと泊地棲姫が深海棲艦のまとめ役だな」

軽巡棲鬼「フーン、ソウナンダ? 挨拶トカ、シテキタ方ガイイ?」

提督「そうだな。この島の立ち位置が他の拠点とだいぶ違うから、面通しはあったほうがいいな。つうか、さっきいたはずだが」

由良「あれ? 泊地棲姫ってさっき厨房に……」

泊地棲姫(可愛いエプロン装備)「コーヒーヲ持ッテキテヤッタゾ」

軽巡棲鬼「キャーー、アリガトーーー!」

由良(ほぼ裸みたいな姿にフリフリヒラヒラのエプロン姿……この前までエプロンなかったのに)タラリ
585 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:49:01.18 ID:+ekmNVAbo

朝潮「……どうして厨房から泊地棲姫さんが?」

提督「好きなことやっていいぞ、って言ったらこうなってな……そういや朝潮はコーヒー飲めないんだっけか」

朝潮「はい、そもそも間食を控えていたため、こちらに来る機会を逸しておりました!」

提督「そこまでガチガチに真面目にならなくていいんだぞ?」

朝潮「司令官がお食事以外はお水しか口にしておられませんでしたので、それに倣っていました!」

提督「……俺もたまにこっちに来るか」

泊地棲姫「アア、来ルトイイ。歓迎スルゾ?」ククッ

マーガレット「泊地棲姫さんは、今やこのカフェのマスターですよ!」

軽巡棲鬼「エ、一番偉イ人ガ、カフェノマスター、ヤッテルノ? スゴーイ、格好イイ!」キャー!

泊地棲姫「コーヒー専門ダガナ」フフン

マーガレット「お茶菓子は、私や間宮さんが担当です!」エヘン!

提督「なんでかんで間宮も馴染んだみたいだな」

朝潮「ちゃんと役割分担ができてて、朝潮も感心しました!」
586 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:49:45.98 ID:+ekmNVAbo

提督「それにしても、艦娘のときの記憶を持った深海棲艦なんて、初邂逅だな。丁度いい、泊地棲姫も話を聞いてくれ」

泊地棲姫「ナンダ?」

提督「さっきお前がコーヒーを出した深海棲艦……」

泊地棲姫「軽巡棲鬼ネ?」

提督「ああ。どうやら、元艦娘だってのは間違いなさそうだ」

提督「怪我してたとか、他の誰かと一緒にいた、って話してたから、もともと人間社会にいたことは違いない」

提督「その後、何があったかはわからないが、おそらくあいつは何らかの形で轟沈してると思っていいだろう」

朝潮「司令官? これまでは艦娘が轟沈して砂浜に打ち上げられても、みんな艦娘のままだったと思うのですが……」

提督「そこはおそらくなんだが、そいつらは轟沈してからそんなに時間をおかずに浜に打ち上げられたんじゃないか、と思うんだ」

提督「由良にしても朝潮にしても、一度は沈んだとはいえ、そこまで長時間海底に沈んでたわけじゃねえだろ?」

由良「うーん、わからないけど……そういうことになるのかな」

提督「それ以外にも、川提督んとこの蒼龍に言われたんだよ」

提督「轟沈した艦娘が深海棲艦になるというのなら、どうして埋葬した艦娘たちは深海棲艦にならなかったのか、って」

提督「ある程度、時間が経たないと深海化しないとすれば、泊地棲姫が目撃したことがない、って言う話の裏付けにもなるんだけどなぁ」

泊地棲姫「ソコハソウダナ」
587 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:50:31.60 ID:+ekmNVAbo

由良「……その理屈だと、潜水艦の子たちは大丈夫なのかしら」

提督「そこは妖精たちが対策取ってんじゃねえか? でなきゃ今頃、世界中の潜水艦娘が深海化してるはずだ」

提督「その妖精たちの取った対策が、攻撃を受けて崩されて……加護がなくなって沈むと轟沈、って扱いになるんじゃねえかな」

提督「その状態で、艦娘が海底に留まり続けていると深海棲艦化する……ってのが、俺の考えてる説なんだが」

泊地棲姫「ソウダナ……アリ得ナイ話デハナイカモシレナイ」

由良「!」

泊地棲姫「深海ノ特ニ暗イトコロ……多クノ艦ガ、沈ンダ海域カラハ、強イ深海棲艦ガ現レルコトガ多イ」

泊地棲姫「ソコニ轟沈シタ艦娘ガ迷イ込ンダトシタラ……」

朝潮「し、深海棲艦になるんですか?」

泊地棲姫「……カモシレナイナ。ソレカ、ソコニ棲ム深海棲艦ノ餌ニナルカ……」

朝潮「餌……ですか」

泊地棲姫「餌ニナッタ艦娘ノ特徴ヲ引キ継イダリスレバ、転生シタヨウニモ見エソウジャナイ?」

由良「ぞっとしないわね……」

泊地棲姫「タダ、ソレモアクマデ、私ノ想像ダ。ソウイウケースヲ、ジカニ見タワケデハナイカラナ」

朝潮「……そう考えられる、ということですね?」
588 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:51:16.13 ID:+ekmNVAbo

泊地棲姫「タブンネ。ソノ話ヲサテ置イテモ、人間ニ対スル憎悪ヤ反感ヲ抱イタ深海棲艦ガ、鬼級ヤ姫級ニナッテイルノダカラ……」

泊地棲姫「ソウイウ『素養』ノアル艦娘ガ、ソウイウ海域デ沈メバ、ソウイウ深海棲艦ニナル、トイウノハ、アリ得ルカモシレナイ」

提督「けどよ、今回の軽巡棲鬼……阿賀野の場合は、阿賀野自身が人間に対して憎く思ってた感じじゃないよな?」

泊地棲姫「ソウ……ソコガワカラナイ。ソモソモ、深海棲艦デアリナガラ、アンナ風ニ明ルク振舞エル者ハ、私モ初見タコトガナイ」

マーガレット「あのぉ……でしたら、一度、魔神様があの人の魂を見てみたらいいのではないでしょうか?」

提督「……それしかねえかなあ」

泊地棲姫「アラ、躊躇シテルノ? アノ大和タチノ頭ノナカモ、イジクッタンデショウ?」

提督「敵だったからな。そうでもない他人の頭ん中を覗き見するのは、やっぱりちょっとなあ」

泊地棲姫「訊イテミレバイイジャナイ。軽巡棲鬼?」

軽巡棲鬼「モグモグ……エ? ワタシ?」

提督「なあマーガレット、あいつに出したケーキ、何個目だ?」

マーガレット「えっと、今のでホールケーキまるっと1個分ですね!」

提督「……」アタマオサエ
589 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:52:01.56 ID:+ekmNVAbo

泊地棲姫「トリアエズ、訊クダケ訊イテミレバ?」

提督「ああ……食ってる途中で悪いが、お前の昔のことを知りたい。協力してもらえないか?」

軽巡棲鬼「ンー、イイケド、私、アマリ覚エテナイヨ?」

提督「とりあえず、昔のことを調べるのは問題ないんだな?」

軽巡棲鬼「イイワヨー。私モ、私ノ昔ノコトハ知リタイシ!」

提督「よし、同意を得られたな」ガシッ

軽巡棲鬼「エ?」アタマツカマレ

 ズヴュッ!

軽巡棲鬼「ア゜ェッ?」ビクッ

朝潮「!?」

提督「……んー……」

軽巡棲鬼「……」ビクビクッ

由良「ねえ、今の音って何……?」タラリ

泊地棲姫「……フーン、ソウヤッテ頭ノ中ヲ見テイルノネェ」

 ズリュッ

軽巡棲鬼「オ゜ッ?」
590 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:52:45.88 ID:+ekmNVAbo

提督「……ふう、なるほど」

軽巡棲鬼「」シロメ

由良「何をしたんですか……」

提督「魔神の力で、魂の色とこいつの過去を探ってみた」

泊地棲姫「ナニカワカッタノ?」

提督「阿賀野はどこかの鎮守府で療養中だったみたいだな。事故で背骨をやったらしくて、そのリハビリ中だったようだ」

提督「けど、リハビリも難航してたらしく、松葉杖つきながら港に来て自分を責めて泣いて……そこで足を滑らせて海に落ちたらしい」

提督「そのまま意識を失って、沈んだところに深海棲艦の魂が入ってきて、今の姿になったみたいだな」

朝潮「深海棲艦の魂が!?」

提督「まあ、深海棲艦とは言ったが、いわゆる戦争時の戦没者の無念の魂みたいなんだ。それも、飢えの苦しみを味わった者たちのな」

由良「飢え、ですか……」

提督「そういう無念の魂が寄り固まって生まれるのが、深海棲艦……ってことなんだろうな、多分」

泊地棲姫「私モ、ソウナノカ……?」

提督「そりゃわからねえが、お前もお前で、人間に対する恨みというか、嫌な思いはあったんじゃねえか?」

泊地棲姫「確カニ、ソンナ感情モ、アッタヨウナ……」
591 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:53:31.32 ID:+ekmNVAbo

提督「で、あいつの頭の中っつうか、魂を見てみたんだが」

提督「ここでまともなもの、と言うよりケーキみたいな贅沢品が食えたのが幸いしたんだか、思ったより魂の色が穏やかな色調だった」

提督「あいつが深海棲艦になり得る感情ってのも、自分の無力さとか肝心な時に動かない自責の念からくる自己嫌悪が大部分みたいだったし」

提督「軽巡棲姫と比べても暗い色の魂がかなり少ないから、姿こそ深海棲艦だが、かなり艦娘寄りと言えそうだったな」

泊地棲姫「見タ目ダケガ深海棲艦、トイウ感ジカ?」

提督「そこまで……いや、そう言ってもいいかもしれねえな。とりあえず、しばらくの間は様子見しようと思う」

朝潮「承知しました!」ビシッ

マーガレット「あのぉ、魔神様? さっきからこの人の意識が戻ってきてないんですが……」

軽巡棲鬼「」シロメ

泊地棲姫「オイ提督、オ前ノヤッタコトダロウ」

提督「わかってるよ……おーい、阿賀野ー?」ユサユサ

軽巡棲鬼「……ハウッ!? コ、ココハドコ!? 私ハ最新鋭!?」

由良「こんなときにまで最新鋭にこだわるの!?」

軽巡棲鬼「ナ、ナンカ、イマ、阿賀野ノ大事ナトコロニ、ハイラレタヨウナ気ガ、シナイデモナインダケド!?」モジモジ

朝潮「……」

由良「……」

泊地棲姫「思ワセ振リナ、言イ回シダナ」
592 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:54:16.35 ID:+ekmNVAbo

提督「あー、それよりもだ。軽巡棲鬼……っつうか、お前のことはどう呼んだらいい? 阿賀野って自覚があるなら阿賀野と呼ぶが」

軽巡棲鬼→深海阿賀野「エ? ソウネェ……ソレジャ、阿賀野デオ願イシマース!」

提督「おう、んじゃこれからよろしく頼むぜ」


朝潮「司令官。今度、あの阿賀野さんに先程やったことと同じことを、朝潮にも試してみていただけますでしょうか」キリッ

マーガレット「え、あの頭の中を見るあれですか!?」

提督「別に試す必要ねえだろ……」アタマカカエ

朝潮「司令官には、この朝潮のことをもっと深く知っていただきたく!」ズイッ!

提督「わかったわかった……そのうちな、そのうち」ガックリ

軽巡棲姫「私ハ、ヤッテモラッタコト、アルワヨォ?」ヒョコッ

朝潮「本当ですか!!」

由良「……」

提督「お前もいきなり出てきて煽ってくれてんじゃねえよ……」アタマカカエ
593 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/07(金) 23:55:01.08 ID:+ekmNVAbo
ということで、今回はここまで。
594 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:05:33.68 ID:OUf9SW8Ho
ルート的にこちらに行っていいものか、ものすごーーく悩みましたが……続きです。
595 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:06:16.70 ID:OUf9SW8Ho

 * 夜 提督の寝室 *

提督「ふー……毎日いろいろあり過ぎだ」

 扉<チャッ

如月「ふんふんふーん♪ あら、司令官! 今日もお疲れ様でした」

提督「……」

如月「どうしたの? 司令官」

提督「いや……俺の部屋に誰かしらいるのも、なんだか当たり前になっちまったなあ、って、しみじみ思っちまってなあ」

如月「……嫌だったかしら?」

提督「まあ……一人になる時間がない、って点では、少しな」

提督「あとは、俺はもともと他人に依存しなくてもいいように過ごしてきたからな。いまも単純にこれでいいのか、って戸惑ってる」

提督「けど、よく考えりゃ、これまでずっと妖精と一緒だったわけだしな……独りじゃ、なかったんだよな、俺は」

如月「司令官……」

提督「とはいうものの、毎日誰かが日替わりで部屋にいるっつうのも、それはそれでどうなんだ?」

如月「そうかしら?」

提督「なんか、まるで俺がお前たちを毎日とっかえひっかえしてるみたいでなあ……傍から見たらくそみたいな男って感じがしないか?」

如月「私たちが好きで押しかけてるんだもの、そうはならないわよ」フフッ

提督「そうだと嬉しいけどな……」アタマガリガリ
596 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:07:02.08 ID:OUf9SW8Ho

如月「嬉しいの!?」パァッ

提督「いや、嬉しいっつうか……」

如月「違うの……?」

提督「んー、まあ、なんだ。単純に喜べてないのは、俺がはしゃいで調子に乗ってしまいそうで怖いんだ」

提督「嬉しいことは嬉しいんだよ、これまでにないことだったし。それで舞い上がってお前たちに嫌な思いさせたくねえ、ってだけで……」

提督「あと、これまで厳しめに突き放してきてたのに、その態度をひっくり返してるわけだからなぁ。俺、結構な勢いで拒絶してたろ?」

如月「そうねえ……でも、いまはそうでもないんでしょう?」

提督「まあ、いまはな……」

如月「ふふっ、なら、それでいいじゃない。司令官は、これまで死ぬつもりでいて、だからこそ私たちとの関わりを避けてたんでしょう?」

如月「避ける理由がなくなったんだもの。変わって当然だと思うわ」

提督「変わって当然か……なあ、如月?」

如月「なあに?」

提督「俺って、そんなに変わったか?」

如月「ええ、昔に比べたらだいぶ変わったわ。柔らかくなった、っていうか、素直になったって言うか」

提督「んじゃあ、少し前に船の上で肩を並べて話をした時の俺と、今の俺の雰囲気は同じか?」

如月「? それだと、そこまで変わったように思えないけど……それってどういう意味?」クビカシゲ

提督「この前のエフェメラの襲撃で、魔神の魂が目覚めちまっただろ? そのせいで、俺の言動や行動が変になってないか……」
597 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:07:46.65 ID:OUf9SW8Ho

提督「お前から見て、俺の本質的なところが変わってないか、違和感ないかってところを確認したかったんだよ」

如月「ふぅん……そういうことなら、司令官は変わってないと思うわ。だって……」スッ

提督「……!」ダキツカレ

如月「……ほら。こうやって不意に抱き着くと、どぎまぎしてすぐに抱き返してくれないところは、これまでの司令官と一緒よ?」

提督「なるほど……」タラリ

如月「司令官は、自分が変わるのが嫌なの?」

提督「……俺の変化が魔神の力のおかげだと思いたくないってだけさ」

提督「魔神の力を得たから強くなったんじゃなく、お前たちと信じあえる仲になったから……って思いたいだけだよ」

提督「でなきゃ、こうやって如月を受け入れる資格もあったもんじゃないだろ?」ナデ

如月「……司令官って、本当に真面目よね」

提督「こういうのは真面目にならなきゃ駄目だろ? 如月だって冗談のつもりはないんだろうし」

如月「そうね……」

提督「如月……?」

如月「……それじゃあ、司令官? 今日こそは、私の気持ちも、冗談にしないで受け取ってくれる?」ギュ…

提督「っ!」

如月「私は、あなたが答えてくれるのを、ずっと待っていたんだけれど?」

提督「……」
598 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:08:31.14 ID:OUf9SW8Ho

如月「……」

提督「それってつまり……」ポ

如月「……」ポ

提督「そう……だな。あれだけのことを言って、この期に及んでちゃんと向き合わねえのも、どうかしてるな」アタマガリガリ

如月「!」

提督「受け止めきれるかわからねえが、努力はする……それでもいいか?」ダキヨセ

如月「司令官……!!」ヒシッ

提督「ただ、ちょっと、トラウマ持ちなんでな……その、できるだけ、みっともないことにならないようにするけどよ」ムムム…

如月「わ、わかってるわよぅ。私だって、初めてなんだし、ちゃんとできるかわかんないけど……」セキメン

提督「……お、俺だって、至らないところも多々あるっつうか、まともにわかってねえから……き、気負わなくていいんだからな?」セキメン

如月「……」

提督「……」

如月「ねぇ……お風呂、行きましょ?」マッカ

提督「……そ、そうだな」マッカ

 * * *

 * *

 *
599 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:09:16.40 ID:OUf9SW8Ho

 * 翌朝 食堂外 テラス席 *

如月「……」ポヤー

電「き、如月ちゃん? どうしたのですか?」

如月「……」ポヤー

電「……如月ちゃん?」ホッペツンツン

如月「! きゃっ!? ど、どうしたの!?」

電「それは電の台詞なのです。さっきからぼんやりしてて……」

如月「そ、そうね……ちょっと、寝不足っていうか……ふふ、うふふっ」ニヘラ

電「……」

扶桑「ああ、こっちにいたのね。如月さん?」

如月「は、はい?」

扶桑「ちょっとお話があるのだけれど……少しだけ、お時間、いいかしら?」テマネキ

如月「? なんでしょう?」

電「寝不足……」

電「……」ポクポクポク

電「……」チーン

電「なのです!?」ズギャーーン!

由良「電ちゃんはどうしたの?」

敷波「さあ?」
600 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:10:01.21 ID:OUf9SW8Ho

 * ランドリールーム *

扶桑「……」ニコニコ

如月「ええと、扶桑さん? お話と言うのは……」

扶桑「昨晩のことなのだけれど……」

如月「……!」

扶桑「お誘い、うまくいったのね?」ニコニコ

如月「……そ、それは……」セキメン

扶桑「うふふ、ごめんなさい、どうしてもそれを訊きたくて」ニコニコ

扶桑「ねえ、如月さん? 今後の参考のためにも、そのこと、あとで詳しく聞かせてもらえるかしら?」

如月「あ、あとでですか?」

扶桑「ええ。どういうアプローチをしたとか、提督に何をすると喜んでくれるのか。私のほかにも、知りたい人がいると思うの」チラッ

 コソッ

扶桑「ふふっ、はっちゃんも隠れてなくていいのに」

伊8「……ばれてましたか」コソッ
601 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:10:46.28 ID:OUf9SW8Ho

扶桑「はっちゃんのお部屋のお泊り日は明後日だったかしら。だとすると、はっちゃんには先を越されてしまいそうね、うふふっ」

伊8「いよいよ決戦です」フンス!

扶桑「そういうわけだから、今夜お部屋にお伺いしてもいいかしら?」

如月「え、ええ、構いませんけど……その、どうしてわかったんですか?」

扶桑「私は、洗濯した提督のお召し物を、毎日お部屋まで届けてるんだもの。お部屋の匂いで気付くわ?」

如月「ああ……そ、そういうことですか」ポ

伊8「ていうか、扶桑さんも、知らないふりして抜け目ないですよね」

扶桑「そうかしら? はっちゃんだってそうだったでしょう? ずっと提督に迫ってたと思っていたんだけど」

伊8「確かにそうですけど、一番手は如月ちゃんか大和さんあたりだと思って、自分からは一応遠慮してましたよ?」

如月「えっ」

扶桑「そこはそうねえ……でも、その次あたりに、あなたかル級さんあたりが来るんじゃないかって思ってもいたんだけど」

如月「えっ」
602 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:11:31.36 ID:OUf9SW8Ho

伊8「そんなに押しが強く見えましたか……あ、はっちゃんはみんなと争う気はありませんよ?」

伊8「提督のそばにいられればなんでもいいです。それこそ、セフレでもペットでも○○○でも構わないです」

扶桑「まあ、大胆。でも提督は、仮にはっちゃんが望んだとしても、ペットとか○○○扱いはしないんじゃないかしら」

扶桑「提督のことですもの、艦娘の人格や尊厳を損なうようなことは、たとえお遊びの場でも忌避すると思うわ」

伊8「うーん……多分、そうなるでしょうね、逆はあったとしても。如月ちゃんも、昨晩はすごく大事にされたんでしょ?」

如月「えっ!? え、ええ、その……すごく、気を使ってもらったっていうか」セキメン

扶桑「あら、今はダメよ、詳しい話はまた夜に、ね?」

伊8「……わかりました」ウナヅキ

扶桑「それじゃ如月さん、よろしくお願いね」フリフリ

如月「は、はい」

 スタスタ…

如月「……」

如月「……な、何を聞かれちゃうのかしら」ポッ
603 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:12:16.41 ID:OUf9SW8Ho

 * 一方の執務室 *

電「司令官さんっっ!?」トビラバーーン!

提督「!?」

霞「い、電!?」

ジュリア「な、なんですの!? なにごとですの!?」

防空巡棲姫「チョット、ウルサインダケド」

早霜「……」

電「司令官さんは! 『ああいうこと』が苦手ではなかったのですか!?」

提督「あ?」

霞「? ああいう……?」

ジュリア「何の話ですの?」

防空巡棲姫「意味ワカンナイ」

早霜「電さん。ああいうことというのは、どういうことでしょう?」

電「どういうこと、って、司令官さんは……あの、その」カオマッカ

提督「……!」ピクッ

早霜「……フフ、フフフ」ニヤリ
604 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:13:01.11 ID:OUf9SW8Ho

防空巡棲姫「ネエ、ナンノ話?」ハヤシモツンツン

早霜「電さんは、司令官のナニを問い詰めたいのかしら……?」

電「そ、それは、その……」カオマッカ

早霜「おそらく、司令官が昨晩、如月さんとナニをしていたか……ということですよね?」クリッ

提督「こっち見んな」ポ

早霜「つまり、昨夜はお愉しみだったということですね? 男と女のやることの、最後まで行ったということですね? フフフ……!」

霞「ちょっ……えええ!?」カオマッカ

防空巡棲姫「アア、ソウイウ……ヘー、提督サンモ、スミニオケナインダ」ニヤリ

ジュリア「は、は、破廉恥ですわぁぁぁぁ!!?」ハリセンスパーーーーン!

霞「あ、あ、あんた、何考えてんのよーー!!」

防空巡棲姫「? ……意味ワカンナイ。ソンナニ大騒ギ、スルホドノコトナノ?」

提督「とりあえず、霞も電もジュリアも落ち着け……」アタマカカエ

霞「落ち着いてなんていられないわよ!」

防空巡棲姫「……ソレ、マジデ意味ワカンナイ。ナンデ落チ着ケナイノ?」

霞「えっ!? そ、それは……」
605 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:13:48.17 ID:OUf9SW8Ho

早霜「まあまあ、それはさておいて……それで、司令官は、無事にことを終えたのですか?」ニチャァ…

提督「……一応はな。恥はかかさずに済んだ……と、思いたい。つうか、あまり追及してくれるな、くそ恥ずかしい」セキメン

電「はわわわ……ほ、ほんとうに、ほんとうなのですか……!?」カオマッカ

霞「だとしても、馬鹿正直に答えてるんじゃないわよ……」アタマカカエ

提督「言えばそれきりだ、言い淀んで変な想像を広められたくねえ。俺だってこれ以上話す気はねえぞ」

防空巡棲姫「フーン……提督サン、ソウイウ話、嫌イナンダ」

ジュリア「艦娘とスキンシップが多い割には、その反応は意外ですわね?」

提督「そういう希望が多いから、希望通り対応してるだけだ。俺の方から頼んだりはしてねえよ」

提督「そもそも俺は、学生ん時にひっでえ現場見ちまったショックで、男の能力が不能になっちまったからな」

防空巡棲姫「酷イ現場?」クビカシゲ

霞「知らないほうが幸せよ。とにかく、それであいつはそういう話を忌避するようになったってこと」

提督「ま、そういうことだ。で、この島に来た艦娘も、だいたいが人間に嫌な思いをさせられた艦娘ばかりだった」

提督「とくにセクハラされて逃げてきたような艦娘にとっては、俺がそういう行為のできない人間であるほうが都合がいいだろ?」

早霜「そのせいで、男性不信の艦娘にも、安心してくっつかれていたと」ニヤリ

提督「……まあ、そういう面もあったかもな。とにかく、それを別にしても、艦娘たちには好意的に接してもらえたし……」
606 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:14:32.22 ID:OUf9SW8Ho

提督「一部の艦娘には、しょっちゅうくっつかれたおかげで、多少克服できたというかなんつうか……」セキメン

防空巡棲姫「慣レチャッタンダ」

提督「……まあ、そうだな。すっげえにこにこしながら、くっついて来るんだ。それに俺が癒されてたのも、結果的には事実なんだ」

提督「とにかく、気分を悪くしなくなっても俺のコレが治ったわけじゃなかったから、俺はそれまでのスタンスを保つつもりでいたんだよ」

提督「それが、メディウムがやってきて、魔力槽に入れられて、体のほうも治っちまった。残りは俺の覚悟の問題だった、ってことだ」

ジュリア「魔力槽……キャロラインとの一件ですわね」

早霜「そして、今のままでは嫌だと熱烈に迫られて陥落した……ということですね?」

提督「間違っちゃいねえが、できれば『受け入れる覚悟を決めた』とか言って欲しいけどなぁ。俺が臆病だったのが悪いのは確かだけどよ」

防空巡棲姫「フーン……」

早霜「それで、司令官? 昨晩は、トラウマによる体調不良はなかったんですね?」

提督「そこはまあ、ありがたいことにな」ハァ…

防空巡棲姫「良カッタジャナイ。ナンデ、嬉シソウジャナイノ?」

提督「俺の体が好転したって点ではそうかもしれないが、こういうシモの話って、べらべら話していいもんか? 普通秘めとくもんだろ?」

ジュリア「お堅いですわ……」

防空巡棲姫「貞操観念ガッチガチダネ」
607 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:15:16.13 ID:OUf9SW8Ho

霞「……あああ、もう! とにかく!! まさかあんたが、よりによって駆逐艦に手を出すとは思ってもなかったわ!!」

霞「もうちょっと節度のある男だと思ってたけど、私の思い過ごしだったみたいね!! 見誤ってたわ!!」

提督「ま、ロリコン扱いされんのは当然だとは思うけどよ。如月放っておいて他の奴に手を出すのも、それはそれでちょっとなあ」

霞「!」

提督「確かに、見た目的な意味で、大和とか金剛とか他に適任がいたかもしれねえが……」

提督「なんでかんで俺はあいつに一番心配してもらって、一番世話になってんだ。真っ先に応えなきゃならねえ相手だと思ってたんだが」アタマガリガリ

電「……司令官さん……!」

霞「ああ、そう……で? 今後はどうするの? このことが皆に知れたら、艦娘どころか深海棲艦やメディウムも放っておかないでしょ?」

提督「そうなるだろうな。ま、向き合うしかねえだろ。ひとりひとり」

ジュリア「ひとりひとり? 魔神様をお慕いしている者が何人いるとお思いですの? 両手を使っても足りないのではなくて?」

提督「それでもだよ。逆にまとめて相手しようとするほうが嫌がられねえか? 横着してるように思われそうだろ」

防空巡棲姫「ドッチニシテモ、提督サンノ体力ガ心配ダネ」フフッ

提督「……つうか、霞や電に聞かせる話じゃねえと思うんだが」タラリ

霞「ほんっと今更過ぎるわね!!」マッカ

電「はわわわわ……」マッカ
608 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:16:01.23 ID:OUf9SW8Ho

早霜「私は、そうじゃないと言うの……?」

提督「お前は動じてねえどころか興味津々じゃねえか、言わせんな」

早霜「……フフフ、そうね。よく見てるわね、司令官……」ニマァ…

提督「ぶっちゃけ電もこの話で赤面するようなタマじゃねえと思ってたんだがな。しょっちゅう、あのマリッサにちょっかい出されてんだろ」

電「そ、それはそうなのですけどぉ……」

提督「お前の場合はマリッサが誰かに余計な手出しをさせないために、自分が囮になろうとしてたと思ったが……さては楽しくなってきたか?」

電「そそそそんなことないのです!?」

防空巡棲姫「ツマリ、コノ場デ一番純情ナノハ、コノ艦娘ダッテコトダネ」ジッ

霞「んなっ!? そ、そんなこと……!」

提督「いや、純情って言うのかそれ? どっちかっつうと、この鎮守府で一番常識的でしっかりしてるから、そういう反応なだけだろ?」

霞「……っ!」

ジュリア「あぁら、そうでしょうか。彼女はこの中で一番お子様だと思われたくないんでは?」

提督「ああ? わざわざ厭味ったらしく言い換えてんじゃねえよ、そういう貶めるような言い方すんなよな」

提督「霞が一番分別があるって話で、考え方が大人で節度があって、ちゃんと恥じらいがあるからこその反応だってんだろが」

霞「……っ」プルプル

電(霞ちゃんの顔が真っ赤なのです……)

早霜(ほめ殺しですね)
609 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:16:46.15 ID:OUf9SW8Ho

防空巡棲姫「ジャア、コノ艦娘トハ、性交シナインダ?」

霞「ちょっ、何言ってんのおおお!?!?」

提督「お前、もうちょっと言い方ってもんがあるだろ……」アタマオサエ

電「そう言いますけど、司令官さんも普段の言動はこのくらい無遠慮でストレートなのですよ?」ジトッ

提督「そりゃ悪かったよ、くそが……」

ジュリア「ええと……魔神様? それで、今後は本気で、真面目にひとりひとりお相手するつもりですの?」

提督「ま、当人から希望があればな。何事も、当事者が俺に言わない限りは動かねえってスタンスは、今後も変える気はねえぞ」

防空巡棲姫「フーン……」

早霜「そうだとすると、今夜以降も司令官は夜の個人面談で大忙しですね……フフフ」

霞「どういうことよ」

早霜「確か、今夜は大和さんで、次がル級さんだったはずですね」

電「ああ……絶対、逃してもらえなさそうなのです」

提督「……」

早霜「そのあとの順番で行くと、伊8さん、軽巡棲姫さん、朝潮さん、扶桑さん、榛名さん、泊地棲姫さん、大淀さん……」ユビオリカゾエ

霞「……」

電「いろいろと洒落が通じなさそうな人たちばかりなのです……」
610 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:17:31.30 ID:OUf9SW8Ho

提督「その中だと、楽に構えてられそうなのが朝潮と大淀くらいしかいねえ」アタマオサエ

霞「朝潮姉に手を出したら承知しないわよ!?」ギロリ

提督「出さねえよ。そもそもあいつ、本当に肩を並べて寝てるだけでにこにこしてるから、むしろ俺が癒されてるほうだぞ」

防空巡棲姫「元ル級モソウダケド、姫級ノ二人ハ前カラ提督ニ御執心ダッタシ。マ、ソウナッチャッテモ、ショウガナイヨネ」

ジュリア「本っ当に、魔神様のお体は大丈夫なんですの?」

提督「そこはもう、腹を括るしかねえんじゃねえの」

霞「いいから責任取ってあげなさい。朝潮姉も含めて、私にはどうやっても止められない人たちばかりだわ」マガオ

電「霞ちゃんが匙を投げたのです……」

早霜「明石さんへ、酒保に精力剤でも置くよう進言しましょうか」

提督「変な方向に気を利かすんじゃねえよ……行くなら俺が行く」

早霜「否定はしないのね。フフフ……」

提督「……」

ジュリア「魔神様、しゃきっとなさってくださいませ?」

提督「わかってるよ……ったく」
611 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/06/21(金) 22:18:16.29 ID:OUf9SW8Ho
今回はここまで。
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/06/23(日) 00:06:55.82 ID:BIdsH9zZ0
うぽつ、ゆうべはおたのしみでしたね
613 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:09:47.94 ID:bjkl9tyOo
おたのしみでしたねえ。
さてさて、待ち受けるは修羅場修羅場……。
続きです。
614 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:10:32.92 ID:bjkl9tyOo

 * その夜 居住区内のとある一室 *

如月「……って感じで……」テレテレ

扶桑「あらあら」ニコニコ

伊8「ふむふむ……」

早霜「フフフ……」ニマニマ

軽巡棲姫「……アァァア……提督、提督ゥウ……早ク、早ク逢イニ行キタイ……!」ウズウズプルプル

戦艦水鬼改「我慢シナサイ。アナタノ順番ハマダデショ?」

軽巡棲姫「ナンデ……ナンデオ前ノホウガ、先ナノヨォォ……!」

ニコ「……」カオマッカ

ヴェロニカ「……ちょっと、ニコ? こういう話が苦手なら、どうして聞きに来ようとしたのよ」

ニコ「ぼ、ぼくは、お姉ちゃんとして、魔神様がどうしてるのか、心配だから聞きに来たんだよ……!」ワタワタ

ヴェロニカ「私はあなたのほうが余計に心配なのだけれど?」ハァ…

ノイルース「……」マッカ

オボロ「……」マッカ

ヴェロニカ「というか、なんであなたたちも縮こまってるの。後学のためとか言ってたくせに、その有様で何か学べると思って?」
615 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:11:17.67 ID:bjkl9tyOo

ノイルース「いえ、何と言いますか……」

オボロ「うむ……ここまで甘露と言うか、甘々と言うか……」

ノイルース「ええ、聞いているだけで顔が火照ってくるような話は、なかなか経験できないと言いますか……」

オボロ「それがしも、まだまだ修行不足か……くっ!」

伊8「意外とメディウムのみなさんは集まりませんでしたね? もっと大挙して押し寄せてくるかと思ってたんですけど」

ヴェロニカ「傍にいるだけでいい、みたいなおこちゃまな子が意外と多いのよ」

ヴェロニカ「今だって坊やのお部屋に表立って定期的に通ってるの、キャロラインくらいでしょ?」

ヴェロニカ「マリッサやケイティーみたいにぶっ飛んでる子もいるけど、マリッサは最初からこの子の話を参考にはしないでしょうし」

ノイルース「それこそ我が道を行きますからね。それからケイティーは引き続き懲罰中です」

伊8「両極端ですね」

ヴェロニカ「そういう艦娘も、坊やに興味がある子が多い割には、これしか集まってないのは意外じゃないの?」

伊8「メディウムとは少し事情が違いますけど……まず、駆逐艦の子たちは呼ばないようにしていました」

早霜「私は、聞いていましたので……フフフ」

伊8「それから、榛名さんは聞きたくない、って言ってましたね。陸奥さんはわざわざ聞くまでもない、って」

ヴェロニカ「むっ……そうなの?」
616 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:12:02.92 ID:bjkl9tyOo

伊8「もしかしたらふたりは、事前に情報を仕入れることで、本番の楽しみを減らしたくなかったのかもしれません」

ヴェロニカ「……ふん、そう」ムスッ

伊8「ヴェロニカさんも、そうしておけば良かったって思ってます?」

ヴェロニカ「別に。そんなことはないわ」プイッ

軽巡棲姫「ソレヨリ、モット話ヲ聞キタイノダケレド……アノ人ハ、ドウシタラ悦ンデクレルノォ……?」ズイッ

如月「えっ? えっと……そうね、司令官は、意外と……ごにょごにょ……」

軽巡棲姫「……ソレ、本当?」

如月「そうだと思うわ……」

戦艦水鬼改「チョット、ナニヲフタリデコソコソ話シテルノ」ズイ

ノイルース「ええ、肝心なところが聞こえませんでしたよ」ズイ

扶桑「内緒は良くないわ? 何の話だったの?」ズイ

軽巡棲姫「」ビクッ

如月「え、えっと……司令官は、キスが好きなんじゃないか、って」

ヴェロニカ「あら」キラッ

オボロ「まことでござるか!?」キラッ

伊8「その辺、詳しくお願いします」キラッ

如月「え? え、ええ、その……実は司令官に……」

ニコ「……///」ミミマデマッカ

早霜「ニコさんも照れていないで、しっかりと聞いたほうがよろしいかと……フフフ」

ニコ「わ、わかってるってば……///」
617 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:12:47.23 ID:bjkl9tyOo

 * 一方 工廠 *

明石「それで、みんな如月ちゃんのところに話を聞きに行ったらしくて。今頃あっちは盛り上がってるんだろうなあ」

敷波「……明石さんは興味ないの?」

明石「うーん、ないと言えば嘘になるけど、別に提督とそういうことをしたいとは思ってないかな」

軽巡新棲姫「ヘー、ソウナンダ」

明石「っていうか、敷波ちゃんからそういう話題が出てくること自体、私的には結構衝撃なんだけど?」

敷波「まあ……あたしも、何にも知らないわけじゃないからさ。こういう相談できそうな人、明石さん以外に知らないし」ポ

ブリジット「……し、敷波殿は、意外と、進んでいたのでありますな」セキメン

敷波「別に、進んでもないし。っていうか、進んでるって何さ?」ムッ

ブリジット「あ、いえ、そのぉ……す、すみませんであります……」

軽巡新棲姫「フフッ、フタリトモ、ウブナンダネー」ニマニマ

ブリジット「……かくいう軽巡新棲姫殿は、余裕でありますな?」

軽巡新棲姫「マーネ。ワタシモ、ソウイウ経験ハ無イケド、知識ガ無イワケジャナイシ、ソウイウノガ嫌ダッテワケデモナイシ」

軽巡新棲姫「ッテユーカ、逆ニ、ワタシハ興味ハアルカナー。コノ前ハ、エロ触手ヲ、特等席デ見テタワケダシ?」

敷波「ああ……」セキメン

ブリジット「マリッサの件でありますな……」カオマッカ
618 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:13:32.90 ID:bjkl9tyOo

明石「? 何かあったの?」

敷波「この前、島に攻めてきたあっちの大和さんを、クラーケンがさ……」

軽巡新棲姫「ドロドロノ、デロデロノ、グチョグチョニ、シタンダヨネエ」ニヤニヤ

ブリジット「それを我々も見てしまったのであります……」ミミマデマッカ

明石「……」アタマカカエ

敷波「さすがにああいう普通じゃないのは、あたし、好きじゃないから。その、やっぱり、するんだったら普通のほうが……」モジモジ

軽巡新棲姫「ソレナラ、提督ト普通ニシテクレバ、イイジャナイ」

敷波「ほえっ!?」マッカ

明石「何を唐突に言い出すんですか……」ズツウ

敷波「そ、そんな、やらないよ……!?」

軽巡新棲姫「ソウナノ?」

敷波「その、好き同士ってわけでもないのに、体の関係持つのって変だよ……司令官もそうだと思ってるはずだし」カオマッカ

軽巡新棲姫「フーン。ダッタラ、彼女ニナッチャエバ、イイジャナイ」

ブリジット「押しが強すぎるであります!?」シロメ
619 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:14:17.17 ID:bjkl9tyOo

敷波「かの……っ!? そ、それだって気が早いってば!! 司令官とは、まだそこまでの関係じゃないし……」

敷波「っていうか、他の子もいるしさ? あたしはまだ、今の関係のままのほうが、いいっていうか……」

敷波「司令官ってなんでも背負っちゃうし、変にプレッシャーかけて司令官の重荷にもなるのも嫌なんだよね、なんていうか……」

明石(ああ、甘酸っぱいなあ……)

軽巡新棲姫「フーン。ソレジャ、アタシガ彼女ニ立候補シチャオッカナ」ニンマリ

敷波「!?」

ブリジット「一足飛びすぎであります!?」

明石「いやー、それはそれで大変だと思うけどなあ。だって、ライバルが如月ちゃんに、大和さんに、金剛さんに……」

明石「ル級さん……じゃなくて、今は戦艦水鬼か、あとは軽巡棲姫に泊地棲姫に……さらにはメディウムのみんなにも好かれてるでしょ?」

明石「仮に二股三股が許されたとしても、そこへ割り込んでいくには、相当に大変だと思うんだけど」

ブリジット「群雄割拠でありますな……」タラリ

軽巡新棲姫「ッテイウカ、ミンナ堅苦シク考エスギジャナイカナー。提督サンモ、含メテサ?」

敷波「……まあ、別に誰が彼女になってもいいけどさ。きっと司令官は、みんなを分け隔てなく受け入れてくれると思うよ?」
620 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:15:02.12 ID:bjkl9tyOo

敷波「でも……それで司令官に無理させて、司令官の身になにかあったら、あたし怒るけど。それはいいよね?」ギロッ

明石「……」

ブリジット「……」

軽巡新棲姫「……」

敷波「ちょっと、なんでみんな黙っちゃうの?」

軽巡新棲姫「エ、ダッテ怖イシ……」

明石「提督みたいな目つきしてたから……」

敷波「え、司令官みたいだった?」パァッ

明石「そこで嬉しそうな顔をするのは間違ってるからね?」

ブリジット「敷波殿も愛情が重いであります……」
621 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:16:02.27 ID:bjkl9tyOo

 * そして *

大和「提督、ついに契りを結ぶ日が来たのですね……!」

 * 次の日の夜 *

戦艦水鬼改「マサカ、コンナ日ガ、来ルトハネ……!」

 * その次の日の夜 *

伊8「ずーっと待ってました。待ちくたびれました」シタナメズリ

 * そのまた次の日の夜 *

軽巡棲姫「絶ッ対、逃ガサナインダカラァ……!!」

 * またまた次の日の(略) *

朝潮「司令官には、朝潮のことを、もっともっと知っていただきたく!!」ズイッ!

 * またまたまた次(略) *

扶桑「提督……やっと、あなたに救ってもらった御礼ができるのですね……」

 * またま(略) *

榛名「提督になら、榛名は何をしていただいても大丈夫です!!」ハダカリボン

 * (略) *

泊地棲姫「私ガ見込ンダ男……簡単ニハ、果テテクレルナヨ……?」

 * (ry *

大淀「明らかに寝不足です! ちゃんと寝てください!!」ウワーン!

提督「おう……そ、そうさせてもらうから泣くな」メノシタニクマ
622 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:16:47.18 ID:bjkl9tyOo

 * 翌朝 工廠 *

明石「それで大淀はなにもしなかった、と……」

大淀「……」

明石「まあ、お部屋に泊まりに行っただけでも大きな進歩だとは言えるけど……どうして何もなかったのに、目の下にクマができてるのよ」

大淀「……眠れなかったの」

大淀「提督の隣で寝て、静かな寝息を聴きながら……細いなりにごつごつした、血管の浮いた腕と手の甲と、細くて長い指を触ってて」

大淀「提督の寝顔とか寝息とか、その腕とか肌の感触を確かめてるだけで時間を忘れちゃって……気付いたら朝日が昇ってたの」ウフフ…

明石「ふーん」

大淀「それよりも提督が明らかに眠そうにしてるのがつらくって……ずっとお仕事で頑張ってるのに!」

大淀「それからあの部屋! 今やもう完全にヤ○部屋じゃない!! 雄と雌の匂いが微かにベッドに残ってるし!」

明石「ヤ○部屋とかオスメスって、大淀……」ヒキッ

大淀「いいえ由々しき問題です! いくら毎日シーツを洗ってたとしても、あれじゃベッドに匂いがこびりつくのも時間の問題……!」

大淀「あんな環境で、提督が安眠できると思えないわ。早くなにかしら手を打たないと!」

明石「まあ、それなら……一応、もう手を打ったっていうか、有志が動いたって言うか」

大淀「えっ?」

 扉<ギィィ…

大淀「!?」ビクッ
623 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:17:32.14 ID:bjkl9tyOo

敷波「……ただいま」ヌッ

明石「あ、おかえりー」

ブリジット「ただいま戻りましたであります」

軽巡新棲姫「Aloha〜」

ヴェロニカ「……邪魔するわよ」

明石「あら、ヴェロニカさんも一緒だなんて珍しい」

大淀「ね、ねえ明石、なんか、敷波ちゃんがイライラしてるみたいなんだけど……敷波ちゃん、何かあったの?」

敷波「あー、あたし? ちょっとさ……説教、してきたの」

大淀「説教?」

ヴェロニカ「ええ。この子が、坊やと『おいた』した子たちを全員呼び出して、もっと体を気遣ってやれ、って、ね」

軽巡新棲姫「目ツキガ、提督サンニ、ソックリデサ。アレ、駆逐艦ノ出シテイイ雰囲気ジャナイヨー」

ブリジット「ぶっちゃけ滅茶苦茶怖かったであります……自分は同席したニコさんと震えてたであります」ガタガタ

明石「まあ、鬼神と呼ばれた艦娘の妹艦だからねえ」

大淀「……」タラリ
624 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:18:17.29 ID:bjkl9tyOo

敷波「これで少しは、みんなが司令官を気遣ってくれるといいんだけど」ハァ…

軽巡新棲姫「Gallery モ大勢イタシ、コレカラハ、ミンナ気ヲツケルンジャナイ?」

明石「でも、ひとりひとりだと次に同衾できるまでのサイクルも長いし、一回一回の行為が濃くなっちゃうのは仕方なくない?」

敷波「そうであっても手加減なしは駄目だよ。結局、それで司令官は寝不足になって、大淀さんが司令官と何もできなかったんじゃない」

大淀「えっ!? いえ、その……まあ、私はまだ、いいん、です、けど……」カオマッカ

敷波「……大淀さんがそう言うなら、ま、いいけどさ」フゥ…

ヴェロニカ「そんなアンニュイな顔するくらいなら、お嬢ちゃんも坊やを襲えばいいのに。人に説教するくらいなんでしょう?」

軽巡新棲姫「野暮ナコト言ワナイノ。ソコハ、乙女ノ事情、ッテヤツヨー?」

ヴェロニカ「……ふん、わかってるわよ」フゥ…

ブリジット「こう言いはしますが、ヴェロニカも言うほど魔神様に迫ってるわけでもないでありますし……」ボソッ

明石「気にはしてるけど手は出せない……つまり敷波ちゃんといい勝負だと」ヒソッ

ヴェロニカ「なんですって?」ジロリ

敷波「何か言った?」ギンッ

ブリジット&明石「「いいえなにも!」」ビシッ!
625 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:19:02.32 ID:bjkl9tyOo

軽巡新棲姫「大淀ハ、次ニ期待ダネー」

大淀「ちょ、ちょっと待ってください、私が提督の部屋に入ったことも、それで何もしなかったことも、皆さん周知済みなんですか」

軽巡新棲姫「ミンナ知ッテルト思ウヨ?」

ヴェロニカ「騒ぎを見に来た子たちも含めてね」

大淀「」シロメ

大淀「」シロメ

大淀「」ヒザカラクズレオチ

明石「ちょっ、大淀!?」

軽巡新棲姫「ソンナンデ、次ハ大丈夫ナノカナー」

ヴェロニカ「駄目に決まってるでしょう、言うまでもなく」



明石「それにしてもさあ、提督をおもちゃにしたいヴェロニカさんと、提督をおもちゃにされたくない敷波ちゃんがさ」ヒソヒソ

明石「同じような理由で似たような溜息をつくのって、なかなか芸術点高いと思わない?」ニチャァ…

ブリジット「自分にはそこまで恋バナを愉しむ余裕はないであります……」ドンビキ
626 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/07(日) 22:21:14.72 ID:bjkl9tyOo
というわけで今回はここまで。
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2024/07/12(金) 17:23:34.63 ID:AZSXcyhM0
幼女か?いやアレね、頑張乙
628 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:47:48.54 ID:O6Y5narxo
もう一方、胸中穏やかではない方がおられるので。

続きです。
629 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:48:31.53 ID:O6Y5narxo

 * 一方 時雨の部屋 *

 (時雨のベッドの上で山城が時雨に抱き着いて眠っている)

山城「……」スヤ…

時雨「……」

 扉<コンコン

電「失礼、するのです」コソッ

吹雪「……時雨ちゃん、入っても大丈夫?」ヒソッ

時雨「うん、どうぞ」ムクッ

朧「それじゃ、お邪魔します」ソロッ

時雨「来てくれてありがとう、みんな座って。僕は、ここから動けないから、このまま話を聞かせてもらうけど」ベッドノフチニスワリ

山城「んむ……」

時雨「大丈夫だよ山城。僕はここにいるから」テヲニギリ

吹雪「……山城さん、相当ショックだったんだね、扶桑さんのこと」

電「今朝からこんな調子なのですか?」

時雨「これでも、だいぶ落ち着きはしたよ。それより、敷波の話を聞かせてくれる? どんな内容だったの?」

朧「うん。えーと、要は、提督に無理をさせるな、って話だったよね?」
630 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:49:16.07 ID:O6Y5narxo

電「なのです。司令官さんが毎日眠そうにしてたのは、結局そういうことだったので……」セキメン

吹雪「司令官が目に見えて弱ってたのを知ってたから、みんな反論しないで、おとなしく聞き入ってた感じだったね」

時雨「……そっか。鬼気迫るものを感じてたから、ひと騒動あるのかと身構えてたんだけど」

電「みんな調子に乗ってたのを自覚してたみたいだったのです。あと、敷波ちゃんの目つきと雰囲気が司令官さんそっくりだったのです」

朧「朧も、あんなに怖い敷波を見たのは初めてだったなあ。ブリジットさんが震えながら抱きついてたニコさんもちょっと気圧されてたし」

吹雪「由良さんも怯えてたもんね。初雪ちゃんだけ全然動じないで見てたのも、ある意味すごかったけど……」

時雨「そっか。見てみたかったなぁ。提督はどうしてたの?」

吹雪「今日はずーっと執務室にいるよ。寝ぼけててサインがぐちゃぐちゃになった書類が多いから、書き直すんだって」

吹雪「霞ちゃんが手伝いに行ったから、心配ないと思うけど」

朧「霞が? 提督と一緒にいて大丈夫なの? 朝潮のときの件で怒髪天になってたから、接触を避けさせてたと思うんだけど」

吹雪「あれは霞ちゃんの誤解だったってことで落ち着いたみたいだよ」

朧「誤解?」

電「あの日は、朝潮ちゃんが自分のことを魔神の力で全部見て欲しいと、司令官さんに迫ったそうなのです」

電「で、実際に見てもらったらしくて、そのあとも迫り続けたらしいのですが、司令官さんに窘められて、そこまでだったらしいのです」

吹雪「朧ちゃんが来る前に朝潮ちゃんがそういう話をしてて、それを聞いてた霞ちゃんが司令官のところに向かったんだよね」
631 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:50:00.93 ID:O6Y5narxo

朧「そうなんだ。じゃあ朧は、霞と入れ違いになったってこと?」

電「そういうことなのです」

時雨「霞が執務室に手伝いに向かったのは、提督へ勘違いのお詫びのためのついで、ってことかな」

電「だと思うのです」

時雨「でも、その様子だと、朝潮が提督とそういう関係になりそうなのは時間の問題に思えるね。根本的な解決には至らない気がする」

吹雪「そ、そうだね……」

 扉<トントン

那珂「時雨ちゃーん、入っていい?」

時雨「うん、どうぞ」

那珂「お邪魔しまーす……わあ、お客さんいっぱいだ」

吹雪「あ、那珂ちゃん!」

朧「どうして那珂さんが……あ、もしかして山城さんですか」

那珂「うん。まだ回復してないのかなーって」
632 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:51:00.47 ID:O6Y5narxo

朧「……ねえ、そろそろあたしたちは、おいとましよっか」

吹雪「そうだね。山城さんが起きるといけないし」

山城「起きてるわよ……」ボソッ

電「!」

朧「!」

吹雪「!」

那珂「山城ちゃん!」

山城「話は途中から聞いてたけど……あの邪知暴虐の限りを尽くすあの男を、止めようって話じゃなかったのね」ムクッ

吹雪「むしろ司令官が迫られてて困ってるんですけど……」タラリ

山城「あああ……扶桑お姉様を手にかけるだけに飽き足らず、艦娘どころか深海棲艦をも餌食にしてるだなんて……!」ワナワナ

時雨「山城、大袈裟だよ。深く考えすぎだって」

山城「何言ってるの時雨! このままじゃ、この鎮守府の女たちは全員あの男に食われるわよ!? なんて恐ろしい……!!」

吹雪(私はそれでもいいかなあ……)ポ

朧(……うん、嫌じゃないかも)ポ

電「はわわわ……」ポ

時雨「……みんな、満更じゃなさそうだね?」ボソッ

吹雪朧電「「!?」」
633 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:51:46.59 ID:O6Y5narxo

那珂「うーん、やっぱり山城ちゃんは考えすぎだと思うなあ。少なくとも那珂ちゃんは、提督さんとはそういう関係にはならないよ?」

山城「那珂ちゃん……そうね、那珂ちゃんは、私が守るわ……絶対、提督に渡すものですか」ギリギリギリッ

朧「うわぁ……」

吹雪「山城さん、そんなに扶桑さんが司令官に靡いたことが気に入らないんですか」ヒキッ

山城「ええ気に入らないわ。扶桑お姉様は、かつての鎮守府でこれ以上ない扱いを受けていたのよ……」

山城「あいつを……D提督を殺した後、扶桑お姉様は、自分の中に何もなくなってしまったと言っていたわ……」

山城「それほどまでに、耐え難い屈辱と怨嗟を抱えていた扶桑お姉様を支えることこそが、この山城の役目……だと言うのに!」

山城「よりによってあの男が! 扶桑お姉様の……お姉様の……ぅあああああ!!」アタマカカエ

那珂「山城ちゃん落ち着いてー!?」

吹雪「これは重症だね……」

時雨「これでも落ち着いたほうなんだけどね?」

電「山城さんは欲張りなのです」

山城「!?」

朧「ちょっと、電……?」

電「だって、そうなのです。山城さんは、扶桑さんにはずっと山城さんを見てて欲しいって考えてるように見えるのです」

時雨「……」
634 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:52:31.50 ID:O6Y5narxo

電「そのうえ、那珂ちゃんのことも、ファン1号だからってすごく熱心に追いかけてますし」

電「いまも、時雨ちゃんのことをそうやって独り占めしてるのです」

電「山城さんこそ、山城さん自身に都合の良い世界を作ろうとしてるのではないですか?」

山城「んなっ!? そ、そんなこと……!!」

電「だったら、扶桑さんや時雨さんを解放して欲しいのです。時雨ちゃんは、敷波ちゃんのことを気にかけていました」

電「でも、山城さんが心配だから、電たちに話の内容を聞かせて欲しいって頼んできたのです」

山城「私が……私が、時雨の邪魔をしてるっていうの……!?」

電「……」

山城「邪魔なんかじゃないわよ……私は、ただ……」

山城「私は、ただ、時雨と一緒にいたいだけよ……それが、悪いっていうの?」

山城「あのD提督のせいで、顔を合わせてもろくに話もできず! やっと一緒に出撃できたと思ったら、轟沈させられて!!」

山城「その上、時雨まであんな目に遭わせて……私は……私は、時雨と、何もできなかった。時雨のために、何もできなかった!!」

山城「その時間を取り戻したいだけよ……扶桑お姉様と……時雨と……あの時、どうやっても手に入らなかった、あの時間を……」ポロポロポロ…

山城「私は……扶桑お姉様と時雨の笑顔を、ずっと見ていたいだけよ……それだけなのよ……!!」
635 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:53:16.26 ID:O6Y5narxo

朧「……えっと、那珂さんは?」

山城「そんなの歌ってる那珂ちゃんの笑顔と歌声が最高過ぎてずっと見ていたいだけに決まってるじゃない」デロリ

吹雪(怖っ!?)

朧「い、いまの話に、那珂さんが出てこなかったから……」

山城「それとこれとは話が別よ? 区別して当然でしょう?」

山城「あんな不幸のどん底みたいなD提督鎮守府の思い出に那珂ちゃんを巻き込もうだなんて暴挙は絶対に許しておけないわよ?」

朧「そ、そういう意味ですか」

山城「そうでなくても那珂ちゃんがここに来るまで、どれほど不幸極まりなかったか……!」

那珂「山城ちゃん……!」

朧「……」

山城「……わかってるわよ。電の言う通りよ」

山城「こんなの、どうせ私の独り善がりだって。扶桑お姉様の笑顔が、私以外の誰かに向くのが、気に入らないだけ」

山城「那珂ちゃんの歌だって、私が聴きたいから。時雨にすがっているのも、私が甘えたいだけ……それが、私の幸せだから」

山城「……でも、扶桑お姉様にも、那珂ちゃんにも、時雨にも……幸せに、なって欲しいって気持ちは、本当よ……」ウナダレ

時雨「山城……」

吹雪「……」

朧「……」
636 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:54:01.42 ID:O6Y5narxo

電「……山城さん?」

山城「……なによ」

電「司令官さんも、みんなに幸せになって欲しいって気持ちは、一緒ですよ?」

山城「……」

電「司令官さんは、きっと、山城さんの幸せも叶えてあげようとするのです」

電「島にいるみんなに、笑顔でいて欲しいって……そのために、司令官さんはいつも行動しているのです」

山城「だからわかってるわよ、そんなこと……あいつが、それこそ邪知暴虐の限りを尽くして、人間たちを追い払って」

山城「どんな手を使ってでも、自分がどんな目に遭ってでも、私たちを幸せにしようとしてることくらい、わかってるわよ……!」

時雨「それで扶桑が提督を褒めるのが気に入らないだけだよね。実際山城が陣頭指揮取ってそういうことしたわけじゃないし」

山城「……うぐ……っ」

吹雪「あー……」

電「時雨ちゃん、核心を突いちゃったのです」

那珂「んもー、山城ちゃんったら、大人げないんだから〜」

山城「……うう、那珂ちゃんに言われたら返す言葉もないわ」グスグス
637 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:54:46.25 ID:O6Y5narxo

時雨「ねえ山城? 山城は、ずっと扶桑に見ててもらいたいの?」

山城「……そ、そうよ」

時雨「ふーん、そっか……ねえ、山城……?」

山城「なによ……」

時雨「僕じゃ、ダメかな?」テレッ

山城「!?」

時雨「山城がそうだったたように、僕も、扶桑や山城とのコミュニケーションを、ずっとD提督に邪魔されていたんだ」

時雨「それどころか、八つ当たりも同然の山城たちの悪口を、ずっとD提督から聞かされてて、不愉快で仕方なかったよ」

時雨「山城たちに嘘をついて、沈めたと聞いた時は立っていられなかった」

山城「……」

時雨「それで、D提督のところから逃げて、轟沈して。山城たちと出会った後も、僕はずっと、この島の様子を眺めてるだけだった」

時雨「すぐそこに山城も扶桑もいるのに、全然話が出来なくて、触れることもできなくて……すごく寂しかったんだ」

山城「時雨……」

時雨「こうやって、やっとみんなと触れられるようになった後も、山城からは避けられてた気がしたんだよね」
638 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:55:30.91 ID:O6Y5narxo

時雨「扶桑からは逆に思いっきり抱き着かれたけど。ねえ、山城はなんで僕とのスキンシップは避けてたの?」

山城「す、スキンシップって、お、おかしいでしょ!? 戦艦が、駆逐艦にべたべたしてたら……!」

時雨「今朝はそうでもなかったじゃないか。山城は、つらくなったから僕に頼りに来たんじゃなかったの?」

山城「そ、それは……」

時雨「ああ、もしかして扶桑に遠慮してたのかな? 僕は構わないよ。むしろ、もっと触って欲しいな」ニコ

山城「あ、あんた、何を言い出すの……!?」

時雨「僕の正直な感想だよ。扶桑が提督に靡いたことに落ち込んで、僕を頼ってきたのも、扶桑には悪いけど嬉しかったし……」ズイ

時雨「不貞寝するときに抱き枕にされたのも、悪い気分じゃなかった……っていうか、むしろ役得? って感じだったし、ね」テレッ

山城「……じょ、冗談は、やめなさいよ……」

時雨「冗談? それこそ冗談じゃないよ。そうじゃなきゃ、僕のベッドで山城を寝かせる理由がないと思うんだけど?」ズズイ

山城「……っ」

時雨「だからさ」オシタオシ

山城「っ!」オシタオサレ

時雨「僕はもっと山城に触れ合いたいんだ。山城も……僕のこと、もっと好きにしていいんだよ……?」オオイカブサリ

山城「……っっっ!!」ゾクゾクゾクッ
639 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:56:15.92 ID:O6Y5narxo

時雨「ふふっ、山城、耳まで真っ赤だ。恥ずかしいの? それとも……興奮してるの?」フーッ

山城「っ、ちょ、ちょっと待ちなさい時雨! みんな見てるでしょ!?」アセアセ

時雨「みんな?」フリムキ

 ガラーン

山城「」

時雨「みんななら空気を読んで部屋から出て行ってくれたよ?」

山城「……ウソデショ?」

時雨「僕の部屋に来て、ベッドに入って……ふたりっきり」ポ

山城「」

時雨「なんて顔してるのさ。朝に山城が訪ねてきたときだって、同じシチュエーションだったじゃないか」

時雨「山城……いいよね? 山城も好きにしていいから、僕も……」ニコ

山城「ちょ、待っ、しぐっ、こ、こころの、準備が……!!」

時雨「……嫌なの?」ションボリ

山城「えっ!? い、いえ、嫌じゃないけど……」

時雨「やったぁ」ニマァ

山城「ひっ」
640 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:57:00.81 ID:O6Y5narxo

 * 時雨の部屋の外 *

那珂「聞き耳立てちゃ駄目だよ?」

電「……気になるけど、仕方ないのです」

吹雪「時雨ちゃんも、山城さんのこと心配してたからね……」

電「荒療治が必要だって言ってたのです」

朧「だ、大丈夫なのかな……」タラリ

那珂「うーん、でも那珂ちゃん、山城ちゃんの気持ち、ちょっとわかるなあ」

電「そうなのですか?」

那珂「うん。だってほら、那珂ちゃんはアイドルでしょ? アイドルは恋愛禁止とか言われたりするじゃない?」

那珂「みんなに夢を与えて、みんなから愛される存在だからこそ、現実をにおわせるような行為は忌避されてるって言うか」

那珂「あんまり自分であまり言いたくないけど、ぶっちゃけアイドルって清廉さと言うか、処女性を求められてると思うんだよね!」

電「ぶっちゃけすぎなのです!?」

那珂「きっと山城ちゃんは、扶桑さんにもそういうのを求めてる気がするんだよねー」

朧「ああ……!」

那珂「山城ちゃんにとって、扶桑さんは支えなきゃいけない相手って言うのもあるけれど」

那珂「それ以上に憧れを抱いてる感じでしょ? 崇拝の対象になってる。だから神聖視して偶像化して……綺麗さを求めすぎてる感じ?」
641 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:57:45.94 ID:O6Y5narxo

那珂「神様みたいな存在だから、ずっと綺麗なままでいて欲しい、ずっと高嶺の花であり続けて欲しい、みたいな」

那珂「だからこそ、自分が触るのも恐れ多いのに、どうして提督さんが、って思ってるんだと思う」

吹雪「……綺麗なものを、ずっと綺麗なままで取っておきたい、ってことなのかな?」

那珂「そういうことだと思うなあ」ウンウン

那珂「扶桑さんに処女性求めてるってのもあるし、その扶桑さんを寝取られたのが悔しいってのもあるんだろうけど」

電「だからぶっちゃけすぎなのです!」

朧「でもそれじゃ、扶桑さんを縛ることになるんじゃ……あ、それで電が解放しろって言ってたのか」

電「なのです。司令官さんは好きにしろと突き放しますが、山城さんは逆なのです」

那珂「山城ちゃんは結構、独占欲が強いと思うよ? 那珂ちゃんのことも大事にしてくれるけど、ちょっと用心深すぎるってくらいだし」

那珂「握手するときも恐る恐る触ってる感じ? 腫れ物扱いじゃないけど、割れ物に触るような……大事にされてる感はすごかったなあ」

那珂「多分、時雨ちゃんに対しても、必要以上に気遣ってくれてる感じはするね!」

朧「気に入った人に対する過保護が過ぎる感じですかね……」

那珂「そういうところは提督さんとそっくりだよね、素直じゃないところとか、ベクトルが違うけど面倒臭いところとかも含めて!」

那珂「山城ちゃんは絶対認めようとしないだろうけど! あ、提督さんも認めたがらないかな?」

電「那珂さん今日はいろいろぶっちゃけすぎじゃないですか!?」
642 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:58:31.44 ID:O6Y5narxo

那珂「とにかく、山城ちゃんの扶桑さんに対する理想が崩れちゃったからこそ、時雨ちゃんに甘えたくなっちゃったんだろうね」

那珂「那珂ちゃんに抱き着くのは山城ちゃん的にはご法度みたいだし、だから時雨ちゃんに向かったんじゃないかな」

吹雪「そっかぁ……確かに山城さん、ちょっと潔癖なところもありますもんね」

電「……あの、いま思ったのですけど、まずくはないですか?」

吹雪「なにが?」

電「山城さんが時雨ちゃんにも清廉さや潔癖さを求めているとしたら、今まさに時雨ちゃんがそれをぶち壊そうとしてるわけですよね?」

那珂「……」

吹雪「……」

朧「……」

電「……」

那珂「那珂ちゃん的には、これ以上いい方法が思いつかないかなあ。頑張って! ってしか言えないなー」

吹雪「えっ」

朧「えっ」

電「いっそのこと、山城さんは一度、現実をしっかり見る必要があると思うのです」

那珂「電ちゃん厳しーい!」

吹雪「……山城さん、立ち直れるのかな」

朧「どうだろ……」アタマカカエ
643 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 12:59:16.57 ID:O6Y5narxo

 * 後日談 *

扶桑「……山城?」ジロリ

山城「ひっ!? ど……どうされました、扶桑お姉様」

扶桑「あなた、時雨と一緒のお布団でお休みしたんですって?」ジトッ

山城「はうっ! そ、それは、そのお、お休みと言いますか……」シセンオヨギ

扶桑「……時雨のお部屋のお布団で、抱き合って寝たと聞いたのだけれど?」ジトッッ

山城「ど、どこからそんな話が漏れたんですか……!?」

扶桑「やっぱりそうなのね……!? 山城ったら、私を差し置いて時雨と仲良くして……」

山城「……! ふ、扶桑お姉様? そ、それはですね……」

扶桑「山城ばかり、ずるいわ……!」

山城(扶桑お姉様が、私に嫉妬してる……!?)ゾクゾクッ

扶桑「山城? どうやって時雨と仲良くなったのか、教えなさい? 私、時雨にはちょっと避けられてるのよ?」ガシッ

山城「ふえっ!? ちょ、ちょっと待っ」

扶桑「どうなの? やーまーしーろー?」ズズイ

山城「ふあああ!?」

山城(ほほを膨らませて迫ってくる扶桑お姉様可愛いいいい!?)

提督「何やってんだ、あのふたり」

時雨「イチャイチャしてるだけだから、放っておいていいよ」
644 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/07/15(月) 13:00:00.52 ID:O6Y5narxo
というわけで今回はここまで。
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/07/16(火) 08:26:38.59 ID:/GQVRtUJo
那珂ちゃんさんのぶっちぎりな吹っ切れ具合たまらんねw
646 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:34:02.53 ID:P7OtzRTpo
お待たせしました、続きです。
今回はメディウムは別行動中です。
647 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:34:47.07 ID:P7OtzRTpo

 * 数日後 *

 * 墓場島 埠頭 *

 (墓場島沖で黒煙を上げながら沈む輸送船)

与少将「中将閣下あああああ!!!」ウワーン!

武蔵「少将殿、落ち着いてくれ! 私の水偵から、中将閣下が船から脱出されたとあった!」

与少将「本当かああああ!!!」ウワーン!

提督「うるせえな……無事だから安心しろ。ほれ」ユビサシ

 ザザァ…!

大和「提督! 中将閣下をお連れしました!」

中将「す、すまんな大和」ダキカカエラレ

与少将「おおお、よくぞご無事でぇぇぇ!!」ウワーーン!

提督「ご苦労さん。中将だけか?」

大和「はい、他の人たちはすでに逃げていたようで、船内には誰もいなくなってまして……」チュウジョウオロシ

提督「中将残して全員逃げたってか? ひっでえなそれ」
648 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:35:34.54 ID:P7OtzRTpo

武蔵「そんな状況で中将閣下は大丈夫だったのですか」

中将「儂は問題ない。が、他の者は、退避の指示を出すより先に、彼女らを見て一目散に逃げてしまってな……」ジメンニスワリコミ

提督「……まあ、無理もねえかな、この面子じゃ」

南方戦艦新棲姫「アイツラ、ビビリスギジャネ?」

欧州水姫「マッタクダ。コチラハ、手ヲ出シテモイナイ上ドコロカ、船ヲササエテ、助ケヨウトシテイタノダゾ」

防空巡棲姫「マァ、戦艦多イシ、迫力アッタンジャナイ。ナンカ、アタシ出ルマデモナカッタ感ジ?」

戦艦水鬼改「アノ船ガ沈マナイヨウニ、掴ンデタダケナンダケド……ネェ?」

戦艦水鬼改の艤装『グゥ……』ションボリ

陸奥「船体がメキメキと音を立ててたから、船そのものを潰されるんじゃないかって勘違いしたんでしょうね」

中将「それと、おそらく、船を支えた際に、砲口がこちらを向いてしまったせいだろうな」

戦艦水鬼改「ソレハ、タマタマ、ヨ? 提督ニ言ワレタ通リ、撃ツツモリハ、ナカッタンダカラ」

中将「申し訳ない。船員たちが、この鎮守府の事情をよく理解していなかったがゆえの失態だ」ペコリ

陸奥「それで提督? こっちの子たちはどうするの?」

提督「んー……そうだな」
649 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:36:17.06 ID:P7OtzRTpo

葛城「姫級と鬼級が合わせて4隻……」

瑞鳳「どうして深海棲艦に艦娘が随伴してるのぉ……!?」ビクビク

天津風「……い、いったいなんなのよ、あんたたち……!」

春風「み、皆様、油断なさらぬよう……!」

夕張「と、とにかく落ち着いて。刺激しないように、いまはおとなしく従いましょ……?」

南方戦艦新棲姫「イマハ?」ジロリ

夕張「ひっ」

欧州水姫「アマリ、カラカッテヤルナ」

南方戦艦新棲姫「ワルイワルイ」テヘペロー

夕張「」シロメ

提督「中将、こちらの5人の艦娘たちは?」

中将「彼女たちは、奈准将の艦娘だ。今回、我々の乗った輸送船の護衛任務を、奈准将配下のこの5名が請け負っている」

提督「奈准将? 聞いたことがねえな……」

中将「今回、海外の泊地に着任することになった提督たちがいるが、そのうちのひとりの上官だ」
650 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:37:02.08 ID:P7OtzRTpo

中将「奈准将も、問題行動の多い部下に困り果てていてな。今回の海外泊地への移籍の話で、その彼の部下も送り届けることになったのだ」

提督「なるほど……上官としての義理を立てて、艦娘を派遣したってことですか」

武蔵「それより、いったいなにがあったんです? 中将閣下の乗った船が、煙を上げていたように見えましたが……」

中将「この島の領海近くを航行中に攻撃を受けた。魚雷のようなのだが、どうも流れ弾らしいのだ」

武蔵「流れ弾ですか?」

中将「この海域の近くに差し掛かった時に、島の反対側から向かってきたらしい魚雷が艦底に複数被弾し、航行不能に陥った」

中将「ただ、随伴した空母の艦娘たちも、この近辺で戦闘の形跡はないと言う」

中将「状況的には、どこかの戦闘の流れ弾と考えるほかないのだが、直接の原因は残念ながら確認できなかった」

武蔵「それで救援要請が出ていたのですね」

中将「うむ。護送中の乗員を緊急用の脱出艇に乗せ、船員が追って脱出の準備をするところまでは持ちこたえていたのだが」

中将「いよいよ船が傾き沈み始めたところを、彼女たちに助けられたというわけだ」

戦艦水鬼改「チョット、危ナカッタワネェ」

中将「君たちのおかげで、儂も沈む船から脱出ができたと言えよう。感謝申し上げたい」
651 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:37:47.69 ID:P7OtzRTpo

中将「……ただ、先に言った通り、船員たちは彼女たちに襲われたものと勘違いしてしまってな」

武蔵「それで中将閣下が置き去りにされたと!?」

中将「船長である儂がしんがりを務めるのも想定内ではある」

武蔵「いえ、そう仰られましても……!」

中将「それに、彼らの胸中を考えれば致し方ない。儂が彼らとまともに顔を合わせるのも、今回が最初で最後であろうし」

中将「引退間近の儂に媚びを売ってもどうにもならんと思ったのだろう。自らの命を優先するのも、当然と言えば当然の判断ともしれん」

与少将「おいたわしや中将閣下ぁぁぁ!!」ウワーーーン!

提督「……ところで、奈准将は俺たちのことは知ってるんですか?」

中将「いや、そこは儂もよくわからん。そちらの艦娘たちにも、君たちのことについては何も話しておらんからな」

提督「奈准将がどんな人物かご存知で?」

中将「残念ながら、数回顔を合わせた程度だ。真面目そうな印象ではあったが、彼がどんな思想の持主かは、心得ていない」

提督「なるほど……おい、お前ら」

瑞鳳「ひっ!?」ビクッ
652 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:38:32.08 ID:P7OtzRTpo

提督「お前らは、この島のことについてどれだけ知ってる?」

春風「え……し、失礼ながら、どういう意味でしょう? わたくしたちは、この島がどういった場所なのか、皆目見当もつかないのですが」

提督「かつて墓場島と呼ばれていた島、って言えば、少しは知ってるか?」

葛城「はかばじま……?」

夕張「……うえっ! も、もしかして最近話題になった、深海棲艦に割譲した島!?」

天津風「えええ!? こ、ここが!?」アオザメ

春風「深海棲艦の領土、ですか……」マッサオ

葛城「み、みんなに手出しはさせないわよ……!」

瑞鳳「か、葛城さぁん!」ヒシッ

陸奥「そこまで怯えなくてもいいんだけど。どうなってるの? この島の評判」

提督「俺はこのくらいの反応返すくらいがいいけどな。おいそれとこの島に入ってきて欲しくねえし」

与少将「まあ、そこはあれじゃな。彼女らが怯えちょるんは、先日X大佐から、この島に関する少し物騒な文面の通知を出したせいじゃろ」

提督「ああ……確かにこの前、そんな話をしたばっかりだな。X大佐は仕事が早くて感心するぜ」
653 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:39:17.15 ID:P7OtzRTpo

武蔵「しかし提督よ、この島は、そこまで無差別に誰もかれも殺すような者たちばかりではなかったんじゃないのか?」

葛城「そ、そうなの……?」

提督「いや、残念ながら、今はそうでもねえぞ」

葛城「え」

武蔵「それは、他国から侵攻を受けているという話が原因か?」

提督「まあな。あとは盗掘目的の海賊もどきもたまに来る」

武蔵「海軍の支配下ではなくなったことで、無法地帯化しているという話は事実だったということか」

提督「ああ。だから、俺たちに話を通さず無許可で上陸しようとする連中は、例外なくすべて殲滅してる」

天津風「ちょっと待ってよ! それじゃ、護送中の人たちはどうなるの!?」

提督「中将と一緒にいたなら無事だったかもしれねえが、そうじゃなけりゃ命の保証はねえな」

瑞鳳「そんな……!?」

春風「あ、あの……そういった事情がありながら、わたくしたちもですが、中将閣下を助け出したのは、どうしてなのですか?」

提督「中将に関しては俺の元上官だからな」

春風「そうなのですか……!?」

提督「そのよしみもあって、事前にこの辺通るって話も聞いてたんだ。で、ここ一帯の海域の哨戒もして、万が一の出撃準備もして」
654 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:40:02.13 ID:P7OtzRTpo

提督「それで見送るだけだと思ってたんだが……それがまさかこうやって艦隊出す羽目になるとはな」

葛城「……私たちは本当に運が良かったのかしら」

提督「流れ弾か何かの魚雷食らって船を沈められてんじゃねえか。それを運が良いとは言えねえよ」

葛城「そ、それもそうね……」

天津風「あの、ちなみにそっちの女の人は……」

提督「本営の与少将だ。中将の後任で、X大佐と一緒にこの島の対応をしてもらってる。俺たちからすると、海軍との窓口役だな」

提督「で、こっちの武蔵は俺の部下なんだが、与少将のところに籍を移そうか検討中。だよな?」

武蔵「ああ、そうだ」

提督「で、与少将や武蔵がこの島に来たのは、今後の話をしたり、うちに貨物を輸送するためなんだが……」

提督「このタイミングでこの島に寄ったのは、中将の最後の仕事を見送りたかったから、だよな?」

与少将「そん通りじゃ! なんせ中将閣下の最後の仕事と聞いちょったからの! それがあのような目に遭われるとは……!」

葛城「それじゃ、中将はここの深海棲艦とも知り合いってことなの?」

提督「いや、中将と面識があったのは大和だけのはずだ」

戦艦水鬼改「私、コノ人間トハ、少シダケダケド面識アルワヨ?」

提督「そうなのか?」
655 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:41:02.11 ID:P7OtzRTpo

中将「む……すまない、儂は鬼級の深海棲艦とは初対面なのだが」

戦艦水鬼改「アア、アノ時ハ、ル級ダッタカラ、気付ケナイト思ウケド」

中将「ル級……? もしや君が、この島が焼けた時にあの海で出会った深海棲艦の一人だというのか」

南方戦艦新棲姫「ソレ、アタシタチモ、ソコニイタヨナ?」

欧州水姫「アア。ソコニイタ人間ノ顔ハ、アマリ見テイナカッタガ……我々モ、ソノ場ニイタコトハ、確カダ」

中将「……戦艦クラスということは、君たちはタ級かね……!」

欧州水姫「ホウ……覚エテイルノカ?」

中将「ああ、忘れられんよ。儂が初めて対話した深海棲艦だ。ル級が1人、タ級が2人、ヲ級が1人、ツ級が2人……覚えておるとも」

中将「もしや、そちらの君もそうなのかね」

防空巡棲姫「ンー、話シテナイケド、一応ネ。ツ級ッテ呼バレテタンダッケ、アタシ」

中将「なるほど、君もそうか……姫級や鬼級となるような者たちと仲良くしておるとは、提督は友に恵まれておるな」

与少将「おおお……中将閣下も、深海棲艦と対話を果たされておられたとは……!」

春風「そのようなお話、わたくしたちは初めて耳にしました……」

提督「俺たちのことは、あまり良いように言いふらさないで欲しいって頼んでるからな。興味本位で海域に出入りされても困るしよ」

葛城「でも、ここって、割譲する代わりに深海棲艦と人間が友好関係を結ぶための場所を設けてくれたんでしょ?」

提督「そういう場所だからこそルールは厳格にしとくもんだぜ。それに、そもそも俺は基本的に人間や海軍を信用してねえ」
656 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:41:46.90 ID:P7OtzRTpo

春風「そ、それではなおのこと、わたくしたちを助ける理由がなくなるのでは……?」

戦艦水鬼改「提督ハ、人間ガ嫌イナダケヨ。艦娘ヤ深海棲艦ハ別ナノ」

春風「そうなのですか……?」

武蔵「ああ。もともとこの島には轟沈した艦娘が良く流れ着く。その艦娘を助けてきたのがここの提督だ」

中将「轟沈した艦娘は深海棲艦になる、というのが海軍の通説だ。だが、彼はそれを承知で、儂に轟沈艦娘を運用したいと申し出たのだ」

中将「何より、捨て艦をはじめとした人道に反した艦娘の扱いに憤っておった。彼が深海棲艦に好かれるのも、彼の人徳ゆえだろう」

提督「……」アタマガリガリ

瑞鳳「そんなことがあったなんて……」

葛城「なんていうか、未だに信じられないけど……こんなに穏やかに深海棲艦たちと話せていること自体が、その証拠なんでしょうね」

夕張「し、信用していい、んですよね……?」

防空巡棲姫「シタクナイナラ、シナクテモイインジャナイ」

夕張「!?」

欧州水姫「ダカラ、アマリ、カラカッテヤルナト言ッテルダロウ」

防空巡棲姫「ンー、カラカッタツモリ、ナイケド」

南方戦艦新棲姫「アトランタハ、相手スルノガ面倒ナダケダロ?」ニヒヒ
657 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:42:32.17 ID:P7OtzRTpo

欧州水姫「……話ヲ、ヤヤコシクスルナ」アタマオサエ

提督「いや、俺も同意見だぞ。したくないなら、しなくていい」

防空巡棲姫「エ、ソウ? ヤッタネ、イエーイ」ピース

夕張「」

欧州水姫「……イエーイジャナイ」アタマカカエ

陸奥「ほらほら、あんまりこの子たちを困らせてあげないの。ごめんね、提督って去る者追わずな人だから」フフッ

欧州水姫「アノ男ハ、来ル者モ追イ返スヨウナ、勢イジャナイカ?」

南方戦艦新棲姫「面倒ゴトガ、嫌イダシナ」ニヒヒ

提督「さてと、俺は様子を見てくるか。ボートっぽいのが島に向かって流れてきてたし、そいつらもその辺に漂着してんだろ」

瑞鳳「……そ、それなら、私たちも、行かないといけなくない……かな?」

葛城「そ、そうかもね……」

提督「あ、それはやめとけ。お前らもこの島じゃ見ない顔だ。島の連中に敵認定されてうっかり殺されても困る」

瑞鳳「」

葛城「」
658 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:43:17.25 ID:P7OtzRTpo

提督「とりあえず、奈准将は俺たちのことをあまり知らないみたいだな。どんな奴なんだ?」

葛城「……ちょっと。『奴』って言い方はないんじゃない?」ムスッ

提督「ふーん……そういう反応返すってことは、まあまあ慕われてるみたいだな」

葛城「!」

提督「陸奥、悪いが中将たちを任せていいか? なんなら食堂に案内して茶でも飲んでいてくれ。俺は海岸を見て回ってくる」

陸奥「ええ、わかったわ。任せて頂戴」

武蔵「中将閣下。いま、与少将の船から車椅子を持ってきてもらっています。到着し次第、館内に入らせてもらいましょう。提督、いいか?」

提督「おう、この奈准将んとこの艦娘も一緒に案内して、楽にしててくれ」

中将「すまないな、提督」

大和「提督! 私は提督にご一緒してよろしいですか?」

戦艦水鬼改「私モ、着イテ行ッテイイ?」

提督「ん? 来てくれるなら助かるが……相手が相手だ、気分が悪くなるかもしれねえぞ?」

戦艦水鬼改「大丈夫ヨ、構ワナイワ」

提督「そうか? じゃあ頼む」

大和「さあ、参りましょう!」

 スタスタ…
659 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:44:01.76 ID:P7OtzRTpo

欧州水姫「フゥ……ノドガ渇イタナ。余モ Tea Time ニスルカ」

南方戦艦新棲姫「アア、Coffee break ダナ」

欧州水姫「……」ムム…

南方戦艦新棲姫「……」ニヤリ

防空巡棲姫「喧嘩シナイデネ。仲裁スンノ面倒臭イカラ」

欧州水姫「ワカッテイル。陸奥ヨ、余ハ先ニ行クゾ」

陸奥「ええ、いってらっしゃい、お疲れ様」ヒラヒラ

 スタスタ…

与少将「深海棲艦たちが漫才しちょるところを見られる日が来るとはのう」

中将「微笑ましい光景だ。触れ合うことが出来なくても、我々人間と艦娘、深海棲艦が、相争わず、あのように並んで歩ければ……」

武蔵「……ええ」ウナヅキ

瑞鳳「そ、そんな呑気なこと言ってていいんですかね……」ビクビク

天津風「……い、一体全体、なんなのよ、ここは……」アタマカカエ
660 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:44:47.11 ID:P7OtzRTpo

葛城「それよりさ、私たち、どうなるんだろうね」

夕張「それは、もうおとなしくしてるしかないんじゃ……」

葛城「そういう意味じゃなくて。仮に無事に戻ったとしても、私たち、任務失敗してるじゃない」

夕張「……」

春風「逃げた皆様がご無事であればよいのですが……」

中将「戻った後の事情は儂が説明しよう。少なくとも、君たちは己の責務を果たしている。差し出すのは儂一人の馘で良かろう」

与少将「何を仰いますか! あれは中将閣下のみの責ではありませぬ!」

武蔵「私の水偵も、上空から様子を撮影しています。その映像も出せば、提督たちが保護しようとしていた様子も確認できるでしょう」

中将「……すまんな、皆」

武蔵「ところで……この中では葛城が旗艦か?」

葛城「そうですけど……」

武蔵「奈准将とお前たちのことについて、道すがら教えてくれないか」

武蔵「我々も後で話をすることになるだろう。どんな人物か、お前たちはその鎮守府でどんな立場なのかを知っておきたい」

葛城「……わかりました」
661 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:45:32.15 ID:P7OtzRTpo

 * 食堂外 テラス席 *

間宮「あら? 陸奥さん、こちらの皆さんは?」

陸奥「中将の船を護衛していた艦娘のみんなよ」

間宮「……ということは、提督の計画通りに船を襲撃できたんですね?」ヒソッ

陸奥「そういうことになるわね」ヒソヒソ



那智「ここが食堂ですね」(←中将の乗る車椅子を押している)

中将「おお……深海棲艦もこのような住まいで暮らすことができているのか。これは興味深い」

あきつ丸(与少将配下)「……まさか、我々がこの島の内部にまで上陸するとは思わなかったであります」ダンボールカカエ

神州丸(与少将配下)「まったくであります。して那智殿、この荷物はどちらに?」ダンボールカカエ

那智「ああ、それはこちらの厨房の裏口まで頼む」

与少将「むう……わしが前に来た時は、こんな洒落たテラスはありゃせんかったぞ?」

武蔵「私もこれは初めて見るな。届けた木材はこれに使われたのか」

南方戦艦新棲姫「アレ? セレスティアタチハ居ナイノカ?」

泊地棲姫「人間ガ来タトイウカラ、出撃シタゾ。人間ノ来客モアルシ、イナイホウガ都合ガイイダロウ」

南方戦艦新棲姫「アー、ソウイウコトカ〜」
662 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:46:19.67 ID:P7OtzRTpo

葛城「泊地棲姫がエプロンつけてる……」

天津風「間宮さんと一緒に厨房にいるってどういうことなの……」

あきつ丸「……失礼するであります。この荷物は食堂に、とのことでしたが、どなたに預ければ良いでありますか」

泊地棲姫「私ガ受ケ取ロウ。コレハモシヤ、新シイ、コーヒーカ?」

あきつ丸「そうであります。それからこちらもお願いするであります」

神州丸「自分の箱は紅茶の茶葉であります。X大佐のところのウォースパイト殿に薦められた品であります」

欧州水姫「Lady ノ、オススメダト!?」キラッ!

泊地棲姫「欧州水姫、ソノ箱ヲ持ッテ、コチラニ運ンデクレ」

欧州水姫「任セヨ!」ヒョイッ

あきつ丸「……姫級の戦艦が、瞳を輝かせてスキップしながら持って行ったでありますな」タラリ

神州丸「帰って誰かにこのことを話しても、誰も信じなさそうであります」タラリ

与少将「ああも喜んでくれるとあっては、持ってきた甲斐があったというもんじゃ!」ニコニコー

夕張「姫級とかって、すっごい怖いイメージあったのに……」

瑞鳳「以前戦った戦艦棲姫とか、絶対あんな顔しなかったわよね?」
663 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:47:02.11 ID:P7OtzRTpo

時雨「あれ? やあ、武蔵じゃないか、久し振りだね」

武蔵「おお、時雨か。そっちにいるのは……誰だ? 村雨か?」

白露型イ級「?」

時雨「ううん、駆逐イ級だよ」

武蔵「は……?」

白露型イ級「ムサシ? ヨロシクネー」テヲフリ

武蔵「あ、ああ……イ級なのか?」

時雨「うん。提督が魔改造したと思ってくれればいいよ」

武蔵「……」アタマオサエ

 パシャパシャッ

水路に現れたヨ級「」ザパッ

春風「きゃっ! せ、潜水艦もいるのですね……!」

水路の縁に手をかけるヨ級「」ガシッ

夕張「……え? ヨ級って、腕の存在、確認されてたっけ……」

ヨ級「ヨイショット」ザバー

夕張「えええええ!? 下半身もあるうう!?」

春風「まるで艤装が浮き輪みたいに……」
664 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:47:46.97 ID:P7OtzRTpo

時雨「ああ、それも提督の仕業だよ。ほら、そっちのマスクを外してるカ級も、足が生えて普通に歩いてるし」

カ級「ン? ドウカシタ?」スタスタ

夕張「」

春風「」

武蔵「これは一体どういうことなんだ? 私がいたころは、こんなことはなかっただろう」

時雨「うーん、平たく言うと、深海棲艦たちが艦娘に近づいた、って感じかな」

武蔵「近づいた?」

時雨「うん。ちゃんとした理屈で説明はできないんだけど……例えば、艦娘の駆逐艦と深海棲艦の駆逐艦って、見た目が全然違うよね?」

時雨「深海棲艦は、人間に対して敵意や憎悪といった感情が強いって言うか、そういう感情だけで動いてる獣に近いって言うのかな」

武蔵「獣と言うよりは、怨霊のようなものかとも思えるが」

時雨「ああ、そう言ったほうがいいかも。そういう思念が先走ってるから、人の形をしていないって提督は考えてるみたいなんだ」

時雨「その提督が、イ級たちを労って頭を撫でてあげたのがきっかけなんだけど……」

時雨「人を理解するために、体も人に近づけようとして、こういう姿に変化したんじゃないかって考えてるみたいだよ」

武蔵「そうなのか?」

白露型イ級「ヨクワカンナイ! ケド、イマハ陸モ歩ケルカラ、イロイロ便利ッポイ! コトバモ、シャベリヤスイシ!」
665 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:48:32.02 ID:P7OtzRTpo

武蔵「あちらの潜水艦たちも、そういうことか?」

時雨「理屈としてはそういうことだね」

夕張「ね、ねえ……その子、なんだか夕立ちゃんに似てない?」

時雨「それは多分、轟沈した艦娘の魂が影響してるせいじゃないかな。夕立だけじゃなく、白露型の要素が集まってる感じだね」

夕張「それってつまり、夕立ちゃんたちが轟沈したから、ってこと……!?」

時雨「残念だけど、そういうことだね。昔、捨て艦戦法が考案されて、たくさんの駆逐艦が沈んだ時期があったと思うけど……」

時雨「丁度その頃、この島の砂浜に艦娘の遺体がたくさん流れ着いてたからね。その時沈んだ艦娘の姿が色濃く出ている、と考えてくれていいよ」

春風「……」

武蔵「この島が墓場島と呼ばれているのも、提督が彼女たちを丘の上に埋葬して、墓標代わりの艤装が並んでいたから、だったな」

夕張「……」

春風「もしや、こちらの潜水艦のおふたりも、轟沈した艦娘なのですか?」

時雨「どうだろう? でも、あのカ級は髪を束ねたら伊168に似てるって、誰かが言ってた気がするから、もしかしたらそうなのかな?」

武蔵「なるほど、言われてみれば……そういえば、そのカ級の着ているあのスクール水着はどうしたんだ?」

時雨「あれは酒保で売られてる艦娘用の水着だよ」
666 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:49:16.97 ID:P7OtzRTpo

時雨「ここの潜水艦娘は伊8さんしかいないけど、サイズはいろいろ取り揃えてあるから、それを着てもらってるんだ」

武蔵「ふむ……ん? あのヨ級はビキニを着てるんだな」

カ級「ジュース持ッテキタヨー。アレ、水着変エタノ?」チャクセキ

ヨ級「ウン。アノ水着、チョット、胸がキツクッテ……陸ノ上ナラ、コウシテルト少シ楽ナノ」ノシッ

白露型イ級「ウワァ、テーブルノ上ニ、胸ガオ餅ミタイニ乗ッカッテル!」

時雨「」

夕張「」

春風「」

天津風「」

葛城「」

瑞鳳「」

あきつ丸「全員すごい表情になってるであります!?」

与少将「なにをやっちょるか……いやまあ、気持ちはわからんでもないが」アタマカカエ

武蔵「むう、私よりでかいな。雲龍といい勝負か」

時雨「見てなよ、僕だって改装すれば……」ムムム…

中将「……し、深海棲艦にも、人並みの悩みと言うものがあるのだな」

那智「中将閣下、無理にフォローなさらなくても大丈夫ですよ」

陸奥(この場に龍驤がいたら……でも、あの龍驤なら、さらっと受け流せるかしら)クスッ
667 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/04(日) 20:50:30.08 ID:P7OtzRTpo
というわけで、今回はここまで。

>645
この鎮守府の那珂ちゃんには、酸いも甘いも知っている強者感を出していきたいですね。
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/08/18(日) 20:57:21.44 ID:tFEUt7vU0
久しぶりに墓場島から読み返してるけど読みやすすぎて時間が溶ける。
続きが楽しみや
669 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/24(土) 23:21:01.53 ID:1RqAqzjro
今回出てくるメディウムはこちら。というか、戦闘シーンなので、無理矢理詰め込みましたがこれで全員登場です。
あとで説明分まとめとくか……。

・ミーシャ・ハンギングチェーン:釣竿を持つおとなしい少女のメディウム。足元に設置された虎ばさみが人間を捕らえ逆さ吊りにする罠。
  麦わら帽子をかぶったおとなしい少女。姉のアーニャ同様に釣り好きだが、ちょっと内気で日差しが苦手。完全防備しているので色白。
・ツバキ・カビン:丁半賭博の賭場にいるような、右肩を晒した着物姿のメディウム。上から花瓶を落として人の頭に被せて視界を奪う罠。
  時代劇か任侠映画の世界から出てきたような姉御肌の女性。胸元にはさらしを巻き、振り壺ならぬ花瓶を手に立ち向かう、肝っ玉姐さん。
・レイラ・マジックバブル:人魚を思わせる舞台衣装を身につけた女性のメディウム。大きな泡の玉が人間を閉じ込め窒息させる罠。
  豪奢なドレスを着たミュージカル歌手のような女性。自分が作る泡を使い舞台演出まで手掛けようとしている。肝心の歌の実力は不明。
・イーファ・スパイクボール:半人半獣のメディウム。とげ付きの鉄球が人間を刺し貫く罠。坂があれば転がって人間を巻き込みながら貫く。
  ヤマアラシを連想させる固い針のような体毛と尻尾を持つ少女。主さえも触れたら怪我させてしまいそうな自分の体を疎んでいる。
・サム・ヴォルテックチェア:執事の着る燕尾服を着た男装の麗人のメディウム。電気椅子が現れて、座った人間に強力な電気を流す罠。
  椅子を傍らに携える執事姿の優雅な女性。魔神に対し多分に毒を含んだ物言いが多く、隙あらばいたずらと称して電撃しようとする曲者。
・ウーナ・ヘルファイヤー:松明を持った野生児のようなメディウム。強力な火柱が立ち上がり、人間を燃やして吹き飛ばす罠。
  カタコトの言葉で話しかけてくる野生児メディウム。暗いところが苦手で常に松明を持ち歩く。火を消すのは夜空の星を眺める時くらい。
・リンメイ・メガバズソー:チャイナドレス姿のメディウム。刃のついた巨大なホイールが転がって、人間を切り裂きながら吹き飛ばす罠。
  自分の武器を回転ゴマにして操る曲芸師。さすがに自分もこのコマは怖いらしい。たまにすっぽ抜けてどこかに飛んでいくのもご愛敬?
・ティリエ・ゴウモンシャリン:動物着ぐるみパジャマ姿のメディウム。とげのついた車輪が転がり、人間を巻き込みながら弾き飛ばす罠。
  車輪を転がし駆け回るのが好きなシニカル少女。何かにくるまっていると落ち着くため、暑くても着ぐるみパジャマは脱がない主義。
・シェリル・ヘルジャッジメント:メタルロック歌手のメディウム。避雷針が落ちてきて、直後にその針に雷が落ちて人間を雷撃する罠。
  魂まで痺れさせる歌を目指して歌い続けるロッカー。硬派なイメージで売りたいようだが、部屋には可愛いぬいぐるみがわんさかある。


では続きです。
670 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/24(土) 23:21:46.19 ID:1RqAqzjro

 * 一方 島の北東部 かつての砂浜の岩礁地帯 *

提督「こっちに新しい足跡があるな。よし、お前たちはここで待機しててくれ」

大和「いえ、大丈夫ですよ?」

戦艦水鬼改「ココマデ来タンダモノ、一緒ニ行クワヨ」

提督「そうか、じゃあ……」

大和「さ、行きま」

提督「……いや、やっぱり待っててくれ」

大和「ええ!?」

戦艦水鬼改「ナニカアッタノ?」

提督「いや、特に何かあったわけじゃねえが……ここから先の俺は『人でなし』になるからな」ニガワライ

提督「あんまり見せたくねえんだ、俺のそういう顔」

大和「何を仰るんですか。これまでも提督とはずっと一緒に敵と戦ってきたではありませんか」

戦艦水鬼改「アナタノ悪イ顔ナンテ、サンザン見テキタワヨ?」

提督「いやあ……そうかもしれねえけどよ」ホッペポリポリ
671 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/24(土) 23:22:32.05 ID:1RqAqzjro

提督「やっぱり見せたくねえんだよ。人を殺すのも平気になったし、俺の容赦ない時の醜い顔ってのをさ……ほら、その、なんだ」

提督「お前たちのこと、好きになっちまったからよ……俺の嫌なとこ、見せたくねえんだ」セキメン

大和「提督……!」ポ

戦艦水鬼改「アラアラ……嬉シイコト言ッテクレルジャナイ」ポ

提督「だから、お前たちは」

戦艦水鬼改「ソレヲ聞イタラ、マスマス一緒ニ行カナイトネェ?」

提督「は? なんでだよ」

大和「いいところも悪いところも、理解しあえばいいではありませんか。それに、私たちはもう契りを結んだ、ただならぬ仲……!」ニヤァ

戦艦水鬼改「ソウイウコト。独リデ行カセタリナンテ、デキナイワヨネェ?」ニヤァ

提督「水鬼も大和もそういう悪い顔すんじゃねえよ……そうなって欲しくなくて、ここに留まって欲しいって言ってんのによ」

提督「でもまあ、今更か……仕方ない、一緒に来てくれ。先回りしてるあいつも止めてやりたいしな」

大和「? 誰か来ているんですか?」
672 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/24(土) 23:23:16.91 ID:1RqAqzjro

 * 島の北部 洞窟近くの岩礁地帯 *

提督「ああ、いたいた。おーい、如月」

如月「あっ、司令官!」

大和「如月さん!? あなたが来ていたの!?」

如月「はい、何かのお役に立てないかと思って」

提督「戦艦棲姫たちに伝えてもらうだけで十分だ。あとはメディウムたちに任せてくれ」

戦艦棲姫「マッタク、厄介ナコトヲ、シテクレルワネ。事情ハ、コノ如月ッテ艦娘カラ聞イタワヨ」

提督「悪いな、ちょっとだけ協力してくれ」

戦艦水鬼改「戦艦棲姫タチハ、コッチニ居ヲ構エテルンダッタワネ?」

戦艦棲姫「ソウヨ。私タチノ住処ニ、人間ドモガ侵入スルナンテ、考エタクモナイワ」

提督「道ができてるから、こっちに来ちまうんだろうなあ。岩か何かで隠したほうがいいか?」

戦艦棲姫「ドウシテ、ココニ住ンデル私タチガ、隠レナイトイケナイノヨ」

提督「それもそうだな。それなら、勝手に誰か入らないよう、しっかりした門と錠前と、ついでに表札も付けるか」
673 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/24(土) 23:24:01.56 ID:1RqAqzjro

大和「提督、それより先に侵入者をなんとかしませんと」

戦艦水鬼改「ムコウカラ、人間ノ気配ヲ感ジルワヨ」

提督「わかってるって。こうやって駄弁ってりゃ、声につられて寄ってくる奴がいるかも、って」

 <ドカーン!!

提督「思ってたんだが……!」

戦艦棲姫「アノ爆発音、マタカ……!」

提督「また? ってことは、すでに何回か起きてるのか」

戦艦棲姫「ソウヨ。騒々シクテ、カナワナインダケド」

大和「行ってみますか?」

提督「いや、その必要はねえよ。ほれ、向こうから来なさったぜ」

カビンを被った男「う、うう……」ヨロヨロ

戦艦水鬼改「アレハ、海軍ノ人間デハ、ナイナ?」

提督「あの船に乗ってた護送中の囚人のひとりだな」
674 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/24(土) 23:24:46.50 ID:1RqAqzjro

戦艦棲姫「私タチハ、手ヲ出サナクテ、イイノネ?」

提督「おう、眺めてていいぞ」

 バナナノカワ<チョコン

カビンを被った男「うわあ!?」ギュム ズデーン! ガシャーン!

戦艦棲姫「アノ人間ガ被ッテタ、カビンガ割レタゾ。イイノカ?」

提督「ああ、いいからまあ見とけ」

 ゴウモンシャリン<ガシャーン! ゴロゴロゴロ

男「ぐえっ!」ガラガラガラ…

戦艦棲姫「トゲ付キ車輪ニ、巻キ込マレタナ……」

 スイングハンマー<ブゥン!!

男「ぎゃああ!?」ガッシャーン!

戦艦棲姫「……アノ石柱、ドコカラ出テキタ?」

 ヘルファイヤー<ゴォォォオオオ!!

男「ぎぇ」ボワアァァァ!

戦艦棲姫「アノ炎モ、ドウヤッテ燃エテルノ」

提督「全部、俺の仲間の能力だ」

戦艦棲姫「……全体的ニ、オーバーキル、ジャナイノ?」タラリ
675 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/24(土) 23:25:31.41 ID:1RqAqzjro

提督「下手に生き延びたりされても困るからな。今回の相手はやり過ぎるくらいでいい」

ティリエ「おお? ご主人、来てたのか! 遅かったな!」タタッ

提督「よう、順調か?」

カトリーナ「おう! たくさん潜んでたけど、全員ぶっ飛ばしてやったぜ!」

ツバキ「残り少ないようでありんすが、親分さんにご来駕いただいたんじゃア、ますますやる気を見せンといけやせんなァ」

シャルロッテ「シャルロッテちゃんのステージはこれからも最高潮だよー! 見ててねマスター!」

ウーナ「リーダー! ウーナ、トドメさしたゾ! 見たかー!?」ガオー!

提督「ああ、見た見た。派手に転ばせたし派手に燃えてたな」フフッ

アカネ「わたしもどっかーん! って爆発させたよー! 綺麗だったでしょ!?」

提督「いや、お前のブラストボムは遠くて音しか聞こえてねえ」

アカネ「そんなあ!?」

提督「それより、残りはどうした? 人間どもは15人くらいいたんだろ?」

カトリーナ「アタシたちが仕留めたのが、これで3人だったっけ?」

ティリエ「そうだなー。いくつかの班に分かれて人間退治してるから、もうそろそろ終わるんじゃないか? ご主人、やっぱり来るのが遅いぞ?」

提督「お前たちの仕事が早いんだよ。いい仕事しやがって」フフッ

ウーナ「お? ウーナたち、褒められたか? えへへ……」テレテレ
676 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2024/08/24(土) 23:26:17.20 ID:1RqAqzjro

アカネ「こ、今度こそ、私の活躍を見てもらうんだから! 照れてないで、人間を探しに行くわよー!」ダッシュ!

カトリーナ「あっ、待てよ!」

ツバキ「……遠くに走ってっちゃあ、親分さんにお姿見せられんとちゃいますのん?」

ティリエ「アカネ、聞いてないみたいだぞ」

ウーナ「ヒトリは危ない! 追いかけるゾ!」

シャルロッテ「マスター、またね〜!」

 タタタタッ…

提督「アカネの走ってった方に敵の気配はねえんだけどなあ……」

大和「えっ、誰もいないほうに走って行ったんですか!?」

戦艦水鬼改「ソソッカシイノネェ……」

??「うわああああ! た、助けてくれええ!」

提督「ん?」

如月「あれは……あの人、司令官と同じ海軍の制服を着てるわ。海軍の関係者かしら」

提督「そうみたいだな。あいつは……」
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