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【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】
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49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/07/31(月) 04:12:34.32 ID:30pynNrF0
>>48
うん、それで大丈夫だと思うよ。
勝手に入って来た船が沈められる描写見たいなぁw
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/07/31(月) 23:35:13.63 ID:1JjlwiYq0
>>49
同感
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/08/10(木) 00:29:43.31 ID:sNlKa2QD0
ニコちゃんにちょっと質問。提督から何してもいいとお墨付きをもらった上でもし、提督の(元)家族に会ったら何する?
52 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:50:32.41 ID:K02IvjQwo
今回登場のメディウムたちはこちら。
・アマナ・バキュームフロア:掃除機を持ち歩くメイドさんメディウム。床にバキュームを設置し、近づく人間を吸い寄せる罠。
散らかったお部屋を綺麗にするのが好きなメイドさん。今の魔神は元から散らかさないためか、掃除に少し物足りなさを感じている。
・リサーナ・キラーバズソー:バニーさんメディウム。丸鋸を壁から射出して、切りつけた人間をそのまま壁まで運んで叩きつける罠。
配膳用の丸盆と思いきや、丸鋸を手にした危険なバニーガール。明るく朗らかでおしゃべりが好きで、静かなところは嫌いらしい。
・ベリアナ・ブラックホール:悪魔というかサキュバスなメディウム。ブラックホールで周囲の人間を吸い込んで、上空から吐き出す罠。
ボンデージビキニのセクシーな悪魔。思わせ振りなセリフで人間だけでなく魔神も誘惑しようとする。人肌が恋しいのか一人は苦手。
・イブキ・ヒートブレス:丈の長い学生服を纏った応援団のような風貌のメディウム。熱波を吹き付けて人間を丸焼きにする罠。
熱を扱う罠に相応しい熱血娘。声も大きければ行動も豪胆、下着代わりのさらしもあらわで、恥じらいというものには少々疎い様子。
・ヨウコ・メガヨーヨー:戦隊ヒーローものを思わせる衣装のメディウム。巨大なヨーヨーが回転しながら人間を弾き飛ばす罠。
悪い人間に正義の鉄槌を下す、メディウム戦隊がひとり、メディ・ピンク! 残り4人は募集中。性格はレッド(リーダー)適正あり。
・アカネ・ブラストボム:お団子ヘアにミニ浴衣姿の元気な少女メディウム。いきなり爆発を起こして人間を吹き飛ばす罠。
お祭り大好き、騒ぐのも大好き。騒いでときどき神殿内を壊したりするお騒がせ娘。いくらなんでも屋内で花火するのはやめなさい。
・ヴァージニア・クイーンハイヒール:威厳漂う女王のメディウム。ハイヒールを履いた巨大な女性の足が人間をぐりぐり踏みにじる罠。
いかにも豪奢な特注の椅子に座って踏ん反り返る、尊大な女王。メディウムの王たる魔神にも、それ相応の威厳と態度を求めている。
・イサラ・スパークロッド:ぼさぼさの長髪が静電気で広がった引き籠り少女メディウム。発雷するロッドが電撃フィールドを作る罠。
メディウムの中では珍しい、一人に慣れてる引き籠り。臆病で構ってもらえるのは嬉しいが、熱すぎる相手にはついていけない。
・チェルシー・スイングアンカー:水兵メディウム。船の錨を振り子のように往復させ、軌道上の人間を引っかけて高所から落とす罠。
船の上が好きで、わざわざ寝床を船の上に作るほど。細身のわりに足腰は強く、ちょっとやそっとじゃ押しても引いても動かないとか。
紹介文、このスレが終わるまでに全員分書き切りたい。
それでは続きです。
53 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:51:17.32 ID:K02IvjQwo
* 墓場島 西岸 *
軽巡棲姫「コレガ今回、海域ニ侵入ッテキタ船ヨ」
提督「2隻あんのかよ……しかもまたボロ船か。こいつらも盗掘目的か?」
伊8「今回は武器のほうが多く積んでありますね。それに思ったよりボロでもないです」
提督「ん? 擬装してるってことか?」
伊8「はい。しかも、この船の上空を哨戒機が飛んでたみたいです」
提督「哨戒機? 人間のか?」
伊8「そうです、人間の乗った軍用機でした。なんとなくですけど、難民を装った便衣兵による侵攻? のように思えます」
伊8「ちなみに哨戒機は、この船2隻が島の海域に入ったのを確認して、引き返したあたりで深海棲艦の攻撃機に撃墜されてます」
提督「船の周囲に艦娘は?」
伊8「いませんでしたね」
提督「その哨戒機、どこから飛んできたかわかるか?」
軽巡棲姫「向カッタ先ニ、ソノ国ノ空母ガイタラシイワヨォ? ソイツト同ジヨウニ、ソノ辺ノ誰カニ沈メラレタラシイケドネェ?」
提督「その辺の誰か……って、誰だ?」
伊8「その海域を縄張りにしている深海棲艦らしいです。私たちとは無関係の」
提督「文字通りの見知らぬ誰かかよ」
54 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:52:17.65 ID:K02IvjQwo
伊8「ちなみに、はっちゃんの積んでる水上偵察機で、空母が轟沈させられてるところを確認しました」
軽巡棲姫「私ニ同行シタ、ヨ級タチカラモ、同ジ話ヲ聞イテルワヨ」
提督「今の御時世、艦娘を連れずに海に出るのは自殺行為だってのに、何考えてんだ」
伊8「この鎮守府の深海棲艦が、人間を攻撃してこないと思ってたんじゃないですか?」
提督「そうだとしても、普通の武器担いで艦娘や深海棲艦と戦おうとするか……? ちょっと浅はかっつうか短絡的な気もするな」
伊8「うーん……確かに、考えにくいですかね?」
軽巡棲姫「他国ノ艦娘ニ、協力ヲ要請デキナイヨウナ、後ロ暗イ企ミガアッタ、トカ、ジャナイノ?」
提督「ああ、なるほど。艦娘を連れてない国が、日本海軍や他国を出し抜いて、この島を軍事的に掌握したかったってか」
提督「そうだな……このボロ船の連中を脱走兵に仕立てて、そいつらを空母で追ってきた、ってシナリオならあっても良さそうか?」
提督「最初からこの船の連中は処罰する、もしくは殺すこと前提で、俺たちにお近づきになるために困ってるふりをして近づいてきた……」
提督「自国で艦娘を用立てられないなら、この島の艦娘たちと親密になればいい……って考えてたとか、な」
伊8「そのために、この船の人たちを生贄にするんですか。だとしたら胸糞ですね」
提督「俺の想像だけどな。ま、無断でうちの領海に入ってきたんだから、それに近い考えなんじゃねえかと思うが」
軽巡棲姫「結果的ニハ、良カッタンジャナイノ? メディウムタチニトッテハ、都合ノイイ生贄ナンデショ?」
55 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:53:02.95 ID:K02IvjQwo
軽巡棲姫「ツイデニ空母ノ人間モ、生贄ニデキレバ良カッタノカモ、シレナイケド?」
提督「空母の乗組員って言ったら普通に数百人単位じゃねえか? しかも軍人相手じゃ、いくらメディウムでも骨が折れるな」
軽巡棲姫「面倒カシラ?」ウフフ
提督「面倒だな……」
伊8「今の話だと、この船の乗員も軍人の可能性がありません?」
提督「ん? それもそうか……それで片付けられたんなら、メディウムを過小評価してたことになるな」
軽巡棲姫「私タチダッテ、不意ヲツカレタラ罠ニカカルンダカラ、関係ナインジャナイ?」
アマナ「魔神様ー!」(←船の上から手を振り)
リサーナ「マスター! お出迎えに来てくれたのー!?」
提督「! おう、また船内の掃除をしてくれたのか?」
アマナ「はい! こちらの船は綺麗になりましたよ! 元からの汚れは取れませんでしたけど!」
提督「構やしねえよ、どうせこの船もバラすしな」
ベリアナ「ねえねえ魔神様〜? わたしも頑張ったのよ? だからぁ、御褒美が欲しいなあ〜?」ウシロカラピトッ
イブキ「あ、ベリアナ!? お前、こっちの船はまだ後始末終わってないぞ!」(←別の船の上から)
アカネ「もう、どこ行ったのか探してたのにー!」ウニュー!
56 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:53:47.21 ID:K02IvjQwo
リサーナ「ええー!? ベリアナだけ抜け駆けするなんてずるーい!」
ベリアナ「なによぅ、一番乗りして乗員全部ブラックホールに閉じ込めろなんて無理言い出したのイブキじゃなーい」
イブキ「言ったけど! ってか、やりゃあできるんじゃねえか!」
ベリアナ「あんな船に100人以上乗ってるなんて聞いてないわよ〜!?」
提督「100人!? そんなにいたか!? それを一人で相手したのか!?」
アマナ「魔神様、信じちゃダメですよ! ベリアナったら人数盛り過ぎです! それでも50人程度はいたと思いますが」
イブキ「それに一人じゃ手一杯だからって、アマナに助けを求めてたしな!」
提督「二人いたって50人も相手したんなら十分大変だよ。手間もかかるし魔力も使うんだろう?」
アマナ「はい! 魔神様が、私たちに魔力を回復できる魔法石を多めに持たせてくださったのが本当に助かりました!」
リサーナ「ニコちゃんはご機嫌斜めだったけどねー!」
ベリアナ「うふっ、ご主人様からは指輪まで貰っちゃったしぃ、これはもう、愛よね! 愛!」キャッ
伊8「……帰還の指輪のことですよね」ドロッ
ベリアナ「ひぃっ!? 目が怖い!?」ビクッ
57 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:54:33.32 ID:K02IvjQwo
軽巡棲姫「即座ニ、テレポートデキル道具ナンテ、便利ヨネェ」
提督「メディウムしか使えないとはいえ、そういう便利なもんがあるなら使うべきだ。下手打って帰ってこられなくなるより全然いい」
提督「とはいえ、魔法石にしても帰還の指輪にしても、ニコがこれまで余らせた魔力を使ってこつこつ作って貯めてたものだ」
提督「こうやって今回みたいに、それなりの見返りと言うか、成果がないと無駄遣いになるからなあ。使いどころは考えねえと……」
ヴァージニア「まったくその通りだ。あれほどの人数を踏み潰さねばならぬとは……!」ヌッ
ヴァージニア「この私としたことが、不覚にも『まだいるのか』と思ってしまったぞ……!」
提督「よう、ご苦労さん。後始末は終わったのか?」
ヴァージニア「ああ、終わったぞ。終わらせたが、イブキとアカネよ……貴様たちはなぜこんなところで油を売っている?」ヌゴゴゴゴ…
アカネ「やばっ、すっごい怒ってる……!?」
ヴァージニア「そもそも! なぜこの私が! こんな貧相な船の掃除を引き受けねばならんのだ!!」ウガー!
ヴァージニア「普段大声で騒ぎ立てている貴様たちより、引き籠りのイサラのほうが今の今まで働けているというのはどういうことだ!?」
イサラ「うう、やっと終わったっス……早く帰って引き籠りたい」フラフラ
アカネ「え、えへへへ……」
イブキ「いやあ、その……面目ねえ」
58 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:55:17.65 ID:K02IvjQwo
ヴァージニア「ベリアナに至っては、あるじにくっつきたいが故に、人間どもの掃討が終わってすぐ指輪の力で帰還する始末!」
ヴァージニア「後始末のために、掃除を生業にするアマナがいる船に3体、こちらの船に5体を割り振ったというのにだぞ!」
提督「その言い分が本当なら、ヴァージニアの怒りもごもっともだ。申し開きはあるか?」
ベリアナ「えっ、で、でもぉ、あの船に最初に潜入して疲れちゃったのは本当だしぃ……」
軽巡棲姫「潜入ノタメニ、アナタタチヲ載セテ、船ノ中ニマデ入ッタノハ、私ヨォ?」
提督「やれやれ……ベリアナ、お前には別の『御褒美』くれてやってもいいんだぞ?」ワキワキ
ベリアナ「わ、わかったわよぅ! ご主人様の意地悪っ!」ピャッ
ヴァージニア「あるじよ、何をやっている! さっさとその小悪魔の頭を握り潰してしまえ!」
伊8「提督のアイアンクロー、いつの間にメディウムたちの間でも有名になったんですか」
提督「生憎と、何回かやらざるを得なくてなあ……」
軽巡棲姫「魔神サマモ大変ネェ」ウフフッ
提督「ところで、確か8人いるんだよな? あと1人はどうしたー?」
リサーナ「ヨウコなら、チェルシーを呼びに行ったわよー?」
提督「んん? アマナだろ、リサーナ、イブキ、アカネ、ヴィクトリカ、イサラ、ベリアナ、ヨウコ、チェルシー……1人多くねえか?」
伊8「はっちゃんが追加でチェルシーさんを連れて行きました」キョシュ
提督「追加?」
59 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:56:02.22 ID:K02IvjQwo
ヨウコ「とうっ!!」バッ!
伊8「おお、噂をすれば。船の上から跳んできた」
スタッ!
ヨウコ「メディウム戦隊、メディ・ピンク参っ上! 司令、今回の任務は完了だ!」ビシッ!
提督「おう、お疲れ。チェルシーはなんでこの船に乗ったんだ?」
ヨウコ「あれ? チェルシーは司令が呼んだんじゃないの?」
チェルシー「あー、やっぱり船はいいなあ! あ、キャプテーン! この船の操縦、楽しかったですー!」
提督「チェルシーも出て来たか。はっちゃんと一緒に行って乗り込んだんだって?」
チェルシー「はいっ! 潜水艦もいいですけど、あたしはやっぱり波を感じられる船のほうがいいですねー!」
提督「チェルシーは何してたんだ?」
伊8「船の人間を全滅させたら、その船を引っ張ってこないといけないですよね」
伊8「それなら、船の操縦ができる人にまかせたらいいんじゃないか、ってことで、試しに行ってみようと」
提督「それでチェルシーに白羽の矢が立ったってか」
60 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:56:47.26 ID:K02IvjQwo
ヨウコ「そうそう! ぶっつけ本番だったけど、うまくいってびっくりしたよ! さすが司令、見事な作戦指示だね!」
提督「いや、今回は俺は指示してねえぞ。チェルシーがそういう技能持ってるって把握してなかったからな」
ヨウコ「そうなの!?」
提督「さっき、チェルシーがなんでこの船に乗ったかを訊いただろ……」
軽巡棲姫「ヨ級タチモ、曳航スル船ガ減ッテ楽ニナッテ助カッタ、ッテ言ッテタワヨ?」
提督「だとしたら、今後も頼んだほうが助かるか……その辺は相談だな」
ニコ「やあ、魔神様。また人間を退治したんだね」
提督「おう、メディウムたちのおかげでな。はっちゃんと軽巡棲姫たちにも手伝ってもらった」
ニコ「ありがとう、助かるよ。ぼくたちも海の上では思うように身動きが取れないからね」
伊8「……それにしても」
ヨウコ「?」
伊8「この船の乗組員は全員メディウムが殺して、いまは無人なんですよね」
提督「まあ、そうだな」
61 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:57:32.55 ID:K02IvjQwo
伊8「魔の海域ってあるじゃないですか。その海域に入った船の乗組員が忽然と消えたり、飛行機なら謎の墜落事故が多かったり」
提督「ああ……あれか、バミューダトライアングルみたいなもんか?」
伊8「はい。起こってる事態が、それみたいだな、って。ふと思いました」
軽巡棲姫「ソウイウ扱イニナッテモラッタホウガ、私タチモ過ゴシヤスイカモシレナイワネェ?」
提督「誰も近づこうとしない、というのなら、一番いいかもな。メディウムの存在も有耶無耶にできそうだ」
ヨウコ「なにそのなんとかトライアングル? なんかかっこいい技名みたいだね!」
チェルシー「いやいや、そういう呑気なのじゃないから」
提督「さて、さっさと戻るか。船の曳航、東岸までもうひと頑張り頼むぜ」
軽巡棲姫「フフフ……任テオイテ。帰ッタラ、ワカッテルワヨネェ……?」ニィ…
提督「……俺が対応可能な範囲でな?」
軽巡棲姫「フフフ……」キラキラ
伊8「……」キラキラ
ニコ「魔神様も大変だね?」フフッ
提督「……なんか、さっきも聞いたな? そのセリフ」
62 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:58:17.55 ID:K02IvjQwo
* 東岸 鎮守府工廠前資材置き場 *
明石「ええ、確かに、再利用できそうな廃材はこちらにお願いします、と言いましたけどね?」
軽巡棲姫「ハァァ……」テイトクニダキツキー
提督「……」ダキツカレテナデナデ
軽巡棲姫「ンッ……フゥウ……」ウットリ
明石「なんで私はここで提督がイチャつくところを見せつけられなきゃいけないんですかねえ?」
提督「仕事してきたんだから、労ってるだけだぞ」
明石「金剛さんに、時間と場所を弁えろと、さんざん言われてきませんでしたか?」
提督「そういうあいつのが率先して抱き着いてきてたぞ、定期的に。むしろ抱き着けとまで言われたし」
明石「なんですかそのお約束過ぎる『おまいう』は!!」
伊8「それより早く代わってください。後が支えているんです」
軽巡棲姫「ソ、ソレジャ、次ハ腰ニ手ヲ回シテ……?」
提督「こうか?」グイ
軽巡棲姫「!! アァ……!!」ゾクゾクッ
伊8「早く代わってください」ギラリ
明石「……」アタマカカエ
63 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 15:59:02.34 ID:K02IvjQwo
リサーナ「うわぁ……ね、ねえ、私たちにも同じことするの?」ドキドキ
提督「お前が望むんだったらな。まあ、こういうのはあんまり良くねえのかもしれないが……」
明石「良くないと思うんだったら止めたらいいじゃないですか」
伊8「明石さん何か言った……?」ドロリ
明石「ひぃっ!? 目が怖い!?」ビクッ
リサーナ「なんか、さっきも聞いたわそのセリフ」
提督「なんでもとはいかないが、これじゃないと嫌だって言うんだからご希望通りにするだけさ。軽巡棲姫、そろそろおしまいだ」
軽巡棲姫「……名残惜シイワァ……」ションボリ
伊8「はっちゃんの番ですね」キラキラキラッ
明石「……はあ。まあ、いいですけど……」チラッ
アカネ「あ、あわわわ……」セキメン
イブキ「ご、御褒美ってそういう……!?」セキメン
イサラ「か、帰ってもいいっスか……!?」ガクガク
明石「ほらー提督ー、慣れてないメディウムの皆さんが怖気ついちゃってますよー?」
提督「いや、あくまで希望者だけだぞ? 別に何か欲しいものがあればそっちを優先するし」
64 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 16:00:02.04 ID:K02IvjQwo
ベリアナ「私はご主人様のハグがいいわぁ〜! そういうの、たくさんちょうだ〜い!」キャー!
提督「あ、ベリアナとイブキとアカネは後半サボったから、ハグとかお願いはなしだぞ」
ベリアナ「なんでよぉ!?」イヤーン!
イブキ「良かったのか悪かったのか……」
アカネ「……イサラちゃんはハグしてもらえるんだねー」
イサラ「ファッ!? ま、まだそうと決まったわけじゃないッス……!!」オロオロ
アマナ「私はどうしましょう……新しいお掃除道具も欲しいし……」ウーン
チェルシー「私も個人的な船が欲しいなあ……でもあの御褒美もちょっと……」ポ
ヨウコ「興味はあるわけだね?」
チェルシー「ま、まあね……?」テレッ
ヴァージニア「やれやれ、これがあの恐れ多いと言われた魔神の姿とは……あるじよ。貴様は部下に対して甘やかしすぎだ」
提督「そうか? やってることは戦争だからな。まともに戦えない俺の代わりに出向いてくれてんだぜ? 労いは必要だろう」
提督「お願いがあるならそれなりに聞いてやらなきゃ、不義理ってもんじゃねえか」
ヴァージニア「む……」
65 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 16:00:47.07 ID:K02IvjQwo
提督「よし、はっちゃんもこのくらいでいいか?」
伊8「堪能しました。また、お願いしますね?」ムフー
提督「おう。さて、それじゃあ一番働いてたヴァージニアに最初に訊くか。お前の希望は?」
ヴァージニア「……無い。施しを受けるのは下々の者がすることだ」プイ
ヨウコ「ヴァージニア!? 司令に向かってなんてことを!」
提督「んじゃあ、下々の者らしくするかね……」グイ
ヴァージニア「わ、私の右手を……な、何をする……!?」
提督「……こうするのさ」ヒザマズキ
ヴァージニア「っ!!」
伊8「あー……なるほど」
リサーナ「ヴァージニアの右手の甲にキスを……!」
軽巡棲姫「アア、ソレモイイワネェ」ポヤーン
明石「うわー、そう来るかあ! もう、なんなのこの人! 普段朴念仁のくせに、こういうときだけわかってるっぽいことする!?」
提督「お前の場合、物をあげたり頭撫でたりすんのも失礼なんだろうからな。これで容赦してくれ」
ヴァージニア「っ……お、おのれ、この粗忽者め……!」セキメン
アマナ(そういう割には嬉しそうですね……)
66 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 16:01:49.29 ID:K02IvjQwo
ベリアナ「ずるい! ずるーい! ご主人様、私にもチューしてぇええ!」
提督「……」ムゴンデテノヒラワキワキ
ベリアナ「ひぃっ!?」タジロギ
チェルシー「そんなに怯えるほどのものなの?」
リサーナ「すごかったわよ〜? ベリアナが掴まれてるところをみたけど、本気で痛がってたもん」
ヨウコ「さすが司令だね! 力も強いなんて、頼もしい……はっ!? もしや司令、あなたがメディ・レッド……!?」
提督「いや、俺はブラックかブルーあたりじゃねえか? レッドなんて暑苦しいのは俺のカラーじゃねえ」
伊8「真面目に返すんですね、それ」
提督「ヨウコは冗談を真に受けるタイプだろうから、ストレートでいいんだよ。洒落た冗談返すのも面倒だしな」
提督「つうか、そもそも俺はヒーローってガラでもねえしな。俺は裏方でいいから、目立つ役目はヨウコに任せるぜ」
ヨウコ「司令……あたしを、信頼してくれてるんだね!? よぉし! これからも正義のために、頑張るよ!!」ウオオオ!
提督「ほどほどでいいからな? 適度に力抜けよ?」
67 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 16:02:32.16 ID:K02IvjQwo
明石「……まったく、相変わらず優しいんだか突き放してるんだかわかんないですね?」
提督「俺としちゃあ、この島の住人が気分よく快適に過ごしてもらうために働いてるわけだからな」
提督「俺にできないことは最初から断ってるだけだ。どっちにしても、問題があるなら次から改めるが」
明石「いいえ、ああは言いましたけど、その辺のバランスがあってこの鎮守府が続いてるわけですし」
明石「いろいろとまどろっこしく思いますけど、提督の感覚で対応してもらって大丈夫だと思いますよー」
提督(微妙に棒読みくせえな……)
*
イサラ「……」カオマッカ
提督「お前の髪の毛、すげえ帯電してんだな。体質……というより、メディウムの能力によるところか、これ」シャッシャッ
イサラ「あ、あの、ま、魔神さん、静電気、痛くないっスか」
提督「おう。大したことねえよ」
イサラ「ま、まさか、魔神さんに髪の毛を梳いてもらえるなんて……」
提督「こんだけ常々帯電していると毛先も痛むんじゃねえかと思って、ちょっと気になっただけだ」
68 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 16:03:17.26 ID:K02IvjQwo
提督「お前自身の能力に差し支えるならやめとくが、このくらいの手入れくらいはしてもいいだろ」
イサラ「め、めっちゃありがたいっス……ナンシーからは、せめてもう少し短くしたほうがいいって言われるっスけど」
提督「そりゃ前髪とか野暮ったく見えるせいだろうな。でも、お前はこのままのほうがいいんだろ?」
提督「枝毛が出来てたりしたらさすがに話は別だが、まあ好きにしていいと思うぞ」シャッシャッ
イサラ「好きに……いいっスか。うへへ……」
提督「よし、こんなもんでいいか。そういえばイサラ、お前、櫛って持ってたか?」
イサラ「い、いや、持ってないっス……」
提督「んじゃ、これやるよ。ついさっき、酒保から買ってきたばかりだから新品だ」
イサラ「い、いいんスか」
提督「おう。使うときは使ってくれ。いらないときは捨ててくれりゃいいし」
イサラ「そそそそんなことは! あ、あの、ありがとうっス……んふ、んふふふ……」ニヤニヤニヤ
チェルシー「なるほど……私も髪の毛、伸ばそうかな……」フムフム
アカネ「アマナちゃん、まだ立ち直れないの?」
アマナ「……」クテェ…
イブキ「そんなに強烈なのか? 魔神様の『耳掃除』ってやつは……」ブルリ
明石「こうやって犠牲者が増えていくのねー。知ってはいたけど」
チェルシー「犠牲者って……」タラリ
69 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 16:04:03.01 ID:K02IvjQwo
伊8「そういえば明石さんも提督にマッサージしてもらってるとき、すごい声出てますよね」
明石「ちょっ!? 聞こえてたの!?」カオマッカ
伊8「ヴァージニアさんも提督にマッサージしてもらったらどうです? 気持ちいいですよ、提督の足裏マッサージ」
ヴァージニア「!?」
チェルシー「ねえ、もしかして犠牲者増やそうとしてない?」タラリ
伊8「そんなことないですよ? みんなに提督がとってもいい人だってことを知って欲しいだけです」デロリ
チェルシー「ひぃい! 笑顔が怖い!!」
明石(朝潮ちゃん並みの狂信者がもう一人……)アタマオサエ
提督「さてと、それじゃあヨ級やカ級たちのところにも行ってくるか。あいつらの望みってなんだろなあ……」
伊8「提督、泳げないんだから一人で行こうとしないでください」
軽巡棲姫「心配ダカラ、私モ行クワネェ?」
チェルシー「私も行こうかなあ……」
ゾロゾロ
明石「……提督が一人になりたい時間があるっていうのも、あれを見てるとなんか納得しちゃいそうだなあ」
ヴァージニア「馬鹿め。この島のあるじが、独りでいては危険極まりないだろうが」
ヴァージニア「衛兵の一人や二人、常に侍らせておくのが当然なのだ。まったく、不用心が過ぎる……!」ブツブツ
明石「……あなたもついて行きたかった口ですか」
ヴァージニア「んなっ!? そ、そんなわけがあるか!?」
70 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/08/16(水) 16:04:47.75 ID:K02IvjQwo
というわけで今回はここまで。
アマナとヨウコの名前は一時期、アマラとヨーコと勘違いしていました。反省。
>48
ご協力ありがとうございます。
スレッドの順番で上にいると、ごくたまに荒らし目的の書き込みがくるときがあります。
幸いにして、これまでそういった書き込みには遭遇していません。
>49-50
丁度その話になりましたが、こんな感じになります。
沈めると言うより鹵獲か掠奪と言ったところでしょうか。
船体から人の魂まで全部奪って無駄にしない精神。
>51
ここで喋らせてもいいけど、どこか作中で言わせるべきか……?
今回は保留で。
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/09/01(金) 22:30:49.88 ID:XPOS/0R/0
死体も遺品も無駄にしないってオバロみたいだな。
72 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:07:16.68 ID:5Y/XF1Bxo
今回登場のメディウムはこちら。
クリスティーナ・ライジングフロア:ダンサーのメディウム。床がせり上がり人間を真上に高く飛ばす罠で、ロック系も飛ばすことができる。
誰よりも高く飛ぶことを目指す孤高のダンサー。日頃から練習に明け暮れる努力家ゆえに無理しがち。休みには紅茶を嗜む優雅な性格。
カトリーナ・スイングハンマー:ガテン系メディウム。巨大な石槌で人間を跳ね飛ばす罠で、柱や石像も軽々とへし折ったり動かすほど。
巨大なハンマーを担いだ屈強な女性。見た目同様豪快な性格だが、裁縫や料理など一通りの家事も不器用なりに練習する実直さも持つ。
エミル・トイハンマー:お人形のような可愛いドレス姿の幼女メディウム。巨大なピコピコハンマーが、思い切り人間を叩いて辱める罠。
巨大なおもちゃのハンマーを担いだ少女。メディウムの中でも特に幼い外見だが可愛いと言われるのを嫌う。見栄っ張りで意地っ張り。
オリヴィア・クエイクボム:巨漢ヒール女子プロレスラー姿のメディウム。局地的な地震を引き起こし、人間の動きを封じてしまう罠。
ルチャスタイルの女性レスラー。痩せやすい体質で普段から食事に気を遣っている。痩せた姿とどちらが本来の姿なのかは不明。
続きです。
73 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:08:01.30 ID:5Y/XF1Bxo
* 本営 *
中将「政府から、××島への使節団派遣の詳細が届いた。交渉日は、最速で×月×日を希望しているということだ」
X大佐「来月ですか。かなり早いですね」
中佐「政府も、こういったケースを想定してしていたのだろう。もしかしたら君と同じ考えの人間がいるのかもしれん」
X大佐「だとすればありがたいですね。では私は早速、提督と日程を調整して参ります」
中将「うむ、頼むぞ。それから、警告しておいた彼の弟についてだが、彼も官僚の一人として乗船は許してほしいと言ってきた」
中将「その代わり、提督との交渉の席には一切姿を見せないことを保証するということだ」
X大佐「ほかの官僚のサポート役をさせようと言うことですかね……承知しました、その件についても提督に連絡いたします」
中将「うむ……それからもうひとつ。海軍は、今頃になって深海棲艦との対話の是非に悩んでいるようだ」
中将「儂も懸念してはいたが……深海棲艦が『人』ではないからこそ、海軍としても容赦ない攻撃ができていたというところは否めん」
X大佐「……」
74 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:08:46.25 ID:5Y/XF1Bxo
中将「そして同じく、艦娘も『人』として扱われなかったからこそ、これまで我々が戦い続けられた、というのも、ないとは言い切れない」
中将「皆の不安は様々だ。深海棲艦と対話できるようになって、これまでの我々の戦いを咎められないか」
中将「深海棲艦からどんな恨み節を聞かされるか。なぜ、今更になって深海棲艦と話ができることが分かったのか」
中将「深海棲艦が艦娘と仲良く国を作るとなれば、これまで艦娘の力を借りて……」
中将「否、艦娘に頼りきりだった深海棲艦との戦いは、どう変わってしまうのか」
中将「そして、艦娘にも人権が生まれるのではないか。艦娘が、本当に危険ではないのか」
X大佐「……」
中将「彼らの不安ももっともだ。ある意味、これまでがいびつで、我々にとって都合が良すぎたとも言える」
中将「彼女たち艦娘が、我々海軍に唯々諾々として従っていたのを、何の疑問も持たずに迎合して、利用してきたツケが回ってきたのだ」
X大佐「中将閣下。それは違うと思います」
中将「……」
75 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:09:31.26 ID:5Y/XF1Bxo
X大佐「彼女たちは……艦娘は、純粋に人の助けになるために現れたと考えています」
X大佐「深海棲艦という、人間に対する悪意に対抗するために現れた、人間の善意、善性とも言える存在だと考えています」
X大佐「僕たちが彼女たちを裏切ることがない限り、彼女たちは僕たちに協力してくれるはずです。これまでだってそうだったのです」
中将「……」
X大佐「それから、かつての深海棲艦とは話ができたとは思えません。彼女たちは、我々に対し悪意と敵意をむき出しにしてきました」
X大佐「なんらかのきっかけがなければ、提督とはいえ彼女たちとの交流は成し得なかったはずです」
X大佐「都合の良い考えかもしれませんが、我々が深海棲艦と理解し合うためには、時間が必要だったのです」
X大佐「もちろん、後腐れなく、なんて都合のいい話はあり得ないでしょう。人間同士の戦争ですら、そうなのですから」
X大佐「彼女たちが抱えていた悪意を我々が正しく理解し、艦娘とともに共栄できる道を探していくことが大事だと、そう、考えています」
中将「……そうであってほしいものだ」
中将「不確かな情報だが、彼以外にも深海棲艦と内密に交流している海軍提督がいるらしい」
中将「あの島の深海棲艦たちと対話が進めば、他方の深海棲艦とも交流が期待できるかもしれん」
中将「海に平穏を取り戻すため……くれぐれもよろしく頼むぞ、X大佐」
X大佐「はっ!」ケイレイ
76 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:10:46.79 ID:5Y/XF1Bxo
* 墓場島 東沖 *
* 海軍巡視船内 会議室 *
金剛「テェェェェトクゥゥゥゥ!!」ダキツキー!
提督「どわっ!?」ガッシィ!
陸奥「ちょっと金剛!?」
金剛「うう……寂しかったデース! 逢いたくて逢いたくてたまらなかったデース……!!」スリスリスリスリ
朧「金剛さんは相変わらずですね」
X大佐「どこの金剛も熱烈だよね」
提督「冷やかすなよ……それはそうと、この前の船とは違う船で来たんだな。おかげで深海棲艦たちがざわついてたぜ」
X大佐「あの船は医療船だからね。便利ではあるけど、特に診るべき患者がいないのなら、ここにそれで来る理由はないよ」
X大佐「それで、あの島の再建は順調かな?」
提督「まあ、いまのところは順調だな。もうじき、人間を受け入れて話し合う場所も出来そうだ」
提督「ただし、あくまで話し合いの場だ。飯を出すくらいはしても、寝泊りできるような設備まではこっちじゃ作れねえ」
X大佐「あの島では、食材の自給自足も難しいだろうからね」
提督「ああ。その辺は残念ながら燃費の悪いやつしかいねえんでな……」ハァ…
77 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:11:33.18 ID:5Y/XF1Bxo
X大佐「食糧支援はしばらく必要になるということだね?」
提督「あんまり世話になりたくねえんだが……当分は資源や鉱物との物々交換で頼む」
金剛「No probrem... これからのテートクのsupportは、全部私に任せて All Okey デース」ホオズリホオズリ
提督「お前なあ……」
青葉「本当に金剛さんは司令官が大好きですねえ」
島風「提督、ただいまー!」
提督「よう、おかえり……って、お前たちだけか? 武蔵や比叡や白露とかも戻ってくる予定だっただろ?」
青葉「武蔵さんは那智さんと一緒に与少将のところで、もうしばらく勉強したい旨の連絡がありました!」
青葉「比叡さんはW大佐のところの榛名さんにくっつかれているそうで、離れるまでもう少し時間がかかりそうです」
提督「あー……あっちの榛名も比叡の件は相当泣きじゃくってたからな。んじゃ、しゃあねえか」
島風「それから白露も、第二改装が適用できそうだって話で、本営で診てもらってるんだけど……」
島風「今の艤装を改造した経緯? ってのを細かく聞かれてるらしくて、まだ戻ってきてないんです」
提督「あの魔改造、そんなに深刻なのか? 仁提督んとこの明石は、白露の艤装になにしてくれてんだよ」
島風「あっちの明石さんは悪くないですよー、あの改造は白露の希望通りにしてくれた結果ですし!」
提督「そりゃあそうかもしれねえけどな……」
78 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:12:32.09 ID:5Y/XF1Bxo
島風「超がつくほど改造好きなのは問題かもしれないですけど、島風たちには優しかったですよ?」
島風「もともと仁提督が駆逐艦に興味なかったせいで、最低限の駆逐艦しかいなかったって言うのもあるんですけど」
島風「あの明石さんも駆逐艦が好きらしくて。どれだけ最高の駆逐艦を作れるか、って、長門さんと夜通し話し込んでたって聞いてます!」
提督「やべえ奴じゃねえか……!?」
島風「そうかなあ? 島風の艤装とか、すっごい念入りにメンテナンスしてくれましたし、悪い人じゃないと思いますけど」
提督「あいつんとこの長門が問題児だからな……そいつと馬が合う明石とか、想像したくねえ」ウヘェ…
青葉「いろいろ思うところはありますが、青葉的にはさっきからずっと抱き着いて離れない金剛さんもなかなかのものだと思いますよ?」
提督「……昔、10分間は抱き着いてもいいってルール作ったこともあるしな。ま、このくらいは黙認してやるよ」ナデナデ
金剛「うへへへ、テートク、愛してマース……!」ンチュー
提督「調子乗んな」アタマガシッ
金剛「ひっ」ビクッ!
島風「ん−、でも、しょうがない感じはありますよね、さっきの話を聞いちゃうと」
提督「ん? どういうことだ?」
島風「金剛さん、あっちの鎮守府で追い掛け回されたんですって!」
朧「は?」
79 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:13:16.28 ID:5Y/XF1Bxo
青葉「なんでも、そこの男性に求婚されてたらしいんですよ」
提督「なんだそりゃ。相手はQ中将の後釜の新しい提督か?」
金剛「No ! 違いマース! あちらの鎮守府の新しい提督は、すでに結婚済みで、落ち着いた人デース!」
金剛「私を追いかけてきたのは、その提督の息子さんデス……!」アオザメ
朧「金剛さんが青ざめるほど、嫌な要素があったんですか?」
金剛「Yes...! いくら私でも、小学生と結婚するのは無理デース!!」
提督「はあ?」
朧「しょうがくせい?」
青葉「Q中将の後釜についた提督の息子さんが、金剛さんを気に入ってしまったらしいんですよ」
青葉「大きくなったら金剛お姉ちゃんをお嫁さんにする、とか言って、とにかくくっついてきてたらしいんです」
金剛「私も子供自体は嫌いじゃありまセン。But !! 未成年者とのLoveを育むのはお断りデェース!!」
提督「金剛の倫理観がいまいちよくわからねえ」
島風「なんか、未成年者の略取誘拐罪っていうのに抵触するーって、金剛さんが言ってましたけど本当ですか?」
提督「その辺の法律はわかんねえっつうか知らねえよ」
80 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:14:01.16 ID:5Y/XF1Bxo
陸奥「子供の言うことなんだし、適当に流してあげてもいいんじゃないの?」
金剛「子供だからこそ真面目に返してるデース!! 彼が二十歳になるのに11年も待ってられまセン!」
提督「ここのつ、か」
青葉「ここのつ、だそうです」
金剛「最近の小学生はマセすぎデス! 一緒にお昼寝しようとか言い出して胸とか触ろうとするんデスヨ!?」
朧「うわ、確かに触られるのは嫌だなあ……」ウーン
金剛「それに、どこで仕入れたかわからない変な知識を、変な口調でお構いなしに喋り出シテ! 私だって反応に困りマス!」
提督「なんつうか、自分に興味持ってほしくて必死になってる感じか?」
青葉「そんな感じでしょうねえ。とにかく自分を見てほしいんでしょう」
提督「そんな齢の話なんて忘れちまうだろ。陸奥の言う通り適当にあしらっちまえよ」
金剛「No、子供であるほど冗談は通じないものデスヨ? 仮に子供の約束でも、その子が本気なら無碍にはできまセン」
金剛「それに、自分が子供であることを利用して、冗談と本気のギリギリの間を攻めてくるような子供に、中途半端な答えは禁物デス」
金剛「スマホを隠し持って、録音までしようとしてたくらいデスから」
提督「録音とはまた……スト−かーかモラハラ気質になりそうなガキだな。そりゃ将来が思いやられるぜ」
81 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:14:46.55 ID:5Y/XF1Bxo
X大佐「注意喚起が必要だね」
提督「よせよせ。親になったことのねえ奴が、他人の子育てに口出ししても、ろくな事にならねえよ。放っとけ」
X大佐「そういう意味じゃなくてね。子供が勝手に鎮守府内をスマホをもって歩き回ることに、だよ」スクッ
提督「!」
チャッ パタン
陸奥「X大佐がどこかへ行っちゃったんだけど」
青葉「X大佐が怒ってるところ、初めて見ましたねえ?」
島風「あれ、怒ってたの?」
青葉「目は笑ってませんでしたね。なるほど、X大佐は怒ると真顔になるんですねえ」
提督「さては新しい提督を始末しに行ったか?」
朧「始末……そうかもしれませんね」
島風「提督は怒らないんですか?」
提督「関わるのが面倒臭え。これ以上、艦娘に害が及ばない限りは俺はどうでもいいや。現にX大佐が動いてるしな」
82 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:15:31.96 ID:5Y/XF1Bxo
金剛「私はひどい目に遭いマシタヨ?」
提督「拒絶して逃げおおせてきたんだろ? もう行く必要がねえなら、それで縁切りでいいじゃねえか」
提督「そのガキが島に来ようものなら、メディウムに歓迎してもらうだけだ」
金剛「……Q中将の奥様が心配デス」
提督「鎮守府の外で会えばいいだろ。っつか、鎮守府勤め自体辞めてもいいんじゃねえか? 海軍の直接の関係者ってわけでもねえんだし」
金剛「そうかもしれマセンネー……」
陸奥「それより、金剛はもう10分以上抱き着いたままだと思うんだけど」
金剛「Hey, 陸奥……? これまで1か月近く提督のもとを離れていたんデス、ちょっとくらい大目に見まセンカ?」
陸奥「2週間くらいじゃなかった?」
金剛「どのくらい誤差デース! テートクから離れていた私のカラダは、テートク分を求めているんデース!!」
提督「なんだその提督分ってのは」
金剛「艦娘に必要な成分のひとつデス。不足すると艦娘の活動に支障をきたす物質で、シレイニウムとも呼ばれていると聞きマシタ!」
提督「なんだそりゃ??」
83 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:16:16.50 ID:5Y/XF1Bxo
金剛「とにかくこうやってテートクにくっついて、テートク分を私の体に補充してるデース!」ヒシーッ!
陸奥(わかる気がする……)
朧(わかる気がする……)
扉<ガチャー!
伊58「ゴーヤもわかるでち!!」
提督「うお、びっくりした。誰だお前」
伊58「あ、はじめまして、伊58です! X提督の潜水艦娘だよ! ゴーヤって呼んでもらってるんだ!」
X大佐「今日は彼女に秘書艦をしてもらっててね」
伊58「X提督、最近はずーっと海外艦と一緒だったから、秘書艦は久し振りなんでち!」ピトッ
X大佐「ゴーヤ、お客さんの前なんだから、あまりくっつきすぎないようにね?」
伊58「えー、なんでー? あっちの金剛さん、ゴーヤよりくっついてるよー?」
提督「金剛。お前、あっちの潜水艦娘よりべったりくっつきすぎだ。見苦しいから少し恥を知れ」
金剛「」
島風「言い方きっつーい!」
84 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:17:16.41 ID:5Y/XF1Bxo
青葉「それでX大佐、あちらの提督には釘を刺したんで?」
X大佐「彼の上官に連絡を取ったよ。彼は新婚で息子はいないはずと言っていたから、親戚の子を預かったのかもしれない、だって」
朧「それ、完全に部外者じゃないですか……?」
X大佐「今頃、特別警察が動いてるだろうね。彼が提督業を続けられるかどうかも審査することになりそうだ」マガオ
青葉「釘どころじゃないものがブッ刺さりましたか……」アタマオサエ
島風「良かったですね金剛さん! 二度と会わなくて済みそうですよ?」
金剛「」
朧「提督に突き放されてそれどころじゃないみたいだね……」
陸奥「今のうちに物理的にも引き剥がしとく?」
伊58「こんなにべったりくっつきたがる戦艦さんは初めて見たでち」
X大佐「……ゴーヤといい勝負だと思うけどなあ。君だって隙あらば膝の上に座ってくるじゃないか」
伊58「それは最近X提督がゴーヤたちと向き合ってくれないからでち」
陸奥「あらあら。X大佐も隅に置けないわね」クスクス
X大佐「場を弁えてほしいんだけどね……」
85 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:18:01.40 ID:5Y/XF1Bxo
陸奥「まあ、それもそうね。ほどほどにしておかないと……」チラッ
金剛「私は見苦しくないデース!」ダキツキーッ!
提督「いい加減にしろっつってんだ!」アイアンクロー
金剛「Nooooooooo !!」メキメキメキ
伊58「うわあ……」ヒキッ
陸奥「ああなっちゃうかもしれないし、ね?」
青葉「普通はならないと思います」タラリ
朧「提督は普通じゃないですから」
X大佐「そうとは聞いてるけど……戦艦が痛がるとか、いったいどんな握力してるんだ」タラリ
伊58「あの人はツ級の生まれ変わりでちか……」ガクブル
青葉(半分深海棲艦だというのは当たってるから、ノーと言いきれないのが複雑ですねえ)
朧「そういえば、X大佐は金剛さんとは邂逅してないんですか?」
X大佐「できてないんだよなあ。金剛型どころか、戦艦自体と縁がなくてね。大型建造でも伊401が建造できたくらいだし」
X大佐「初めて来た戦艦がビスマルクで、次がローマなのは僕だけなんじゃないかな?」
青葉「それはX大佐しかいないでしょうねえ……」
86 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:18:46.24 ID:5Y/XF1Bxo
* 墓場島 南西に新築された屋敷 *
* 屋敷の中央の大広間 *
島風「うわ、ひっろーい! ここで交渉が始まるんですね!」
提督「まだテーブルや椅子が入ってねえけどな。海軍が友好を示すために寄贈するとか言ってて、あとでここに運んでもらう予定だ」
電「派手な飾りもないのに、立派なお部屋なのです。ここにお客さんをお招きするのですね」
提督「まあ、招くっつうか堰き止めるっつうか……」
吹雪「堰き止めるって、水門みたいな言い方しますね!?」
提督「実際そうなんだよなあ。この島自体が俺たちの家みたいなもんで、この屋敷がいわば客間だ。長崎の出島みたいなもんだ」
提督「この島に住むのは、穏やかに過ごすことに賛成してくれた連中だ。面倒ごとからは遠ざけたい」
電「メディウムのみなさんもここにいるということは、このお屋敷で戦うことも想定しているってことですか?」
エミル「ぼくはどっちでもいいけどね。ここから奥に入ってきたら、誰だろうととっちめるだけだし!」
オリヴィア「ああ、そうだね。身の程を弁えない、生意気な奴はアタイがのしてやるよ!」
カトリーナ「あたしだって! アニキの敵は、全部ぶっとばしてやるぜ!!」
電「……いささか、血の気が多すぎる気がするのです」
クリスティーナ「そうね。罠なんだから、息を潜めることも大事よ? 血気ばかりが逸るのはどうかしら」
吹雪「そこはそういう意味じゃないと思うんだけど……」
87 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:19:31.12 ID:5Y/XF1Bxo
提督「まあ、必ずしも善人だけがここに来ると決まったわけじゃねえからな。残念ながら」
提督「そもそも、メディウムが手を出さない条件は、この島の鎮守府に所属したことのある艦娘を連れていることだ」
エミル「最上とかが連れてきた人間は殺しちゃダメだってことだよね!」
電「加減……は、難しいんでしたね」
カトリーナ「電が殺しちゃ駄目だって言うんなら、ちょっとくらいは考えて戦ってもいいけど、あたしの武器で加減ってのはなあ」
電「確かに、難しそうなのです」
提督「それに、下手に加減すると、勝てると勘違いして向かってくる馬鹿もいるからな」
提督「どうしても、ってんなら、先に電がその相手に会って、信じられるかどうか判断するしかねえんじゃねえか?」
電「かもしれませんね……」
オリヴィア「アタイらの経験上、人間はズルいだからねえ。お人好しの電を騙すかもしれないよ?」
カトリーナ「そんな不届きな奴だったら、なおのこと、あたしが世界の果てまでぶっ飛ばしてやるぜ!!」
提督「なんだ、やけに気合入ってんな」
カトリーナ「あたし、電にはいろいろ世話になってるからさ。その、飯の作り方を教えてもらったりもしてるし……」
電「カトリーナさんのハンマーを勝手に持ち出したこともありましたので、電のできる範囲でやってるだけなのです」
88 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:20:18.72 ID:5Y/XF1Bxo
提督「ふーん……お前たち、そこまで仲良くしてたのか。ちょっと意外だな」
オリヴィア「カトリーナはこれでも素直だからねぇ。みんなは単純だなんて言うけど、そこがいいところだとアタイは思うよ?」
カトリーナ「な、なんだよいきなり……照れるじゃねえか」セキメン
オリヴィア「アタイはあんたのことを認めてんだよ。純粋なパワーでアタイに太刀打ちできるメディウムは少ないからねえ」
提督「なるほどなあ……パワー自慢のメディウムって確かに少ねえって、誰かも言ってたな?」
島風「スピードなら負けない!!」
クリスティーナ「高さなら負けないわ!!」
エミル「うぐぐ……ち、ちくしょー! ぼくだって、ぼくだってえええ!!」
提督「張り合うな、って言いたいところだが……まあ、得意分野のひとつやふたつは開拓してもいいかもしれねえな」
エミル「ほんと!? じゃあ、ぼくは何が得意だといいかな!?」
提督「そこは俺に訊くなよ、自分の好みから好きに選べ。こういうのは誰かから押し付けてもらうもんでもねえだろ」
エミル「好み? 好みかあ……うーん」
89 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:21:16.74 ID:5Y/XF1Bxo
島風「ねえねえ提督? 思ったんですけど、この部屋の柱、走り回るのになんだか邪魔じゃないですか?」
提督「いや走るなよ……まあ、確かに部屋の見通しは良くねえな?」
カトリーナ「ああ、その柱なら、あたしがハンマーでぶっ倒して下敷きにできるように立ててもらってるんだよ」
島風「はい?」
電「ぶっ倒すんですか?」
吹雪「この柱を?」
提督「そう来るか……」アタマオサエ
カトリーナ「なんなら壁でも天井でもぶっ倒すなりぶち落とすなりして下敷きにしてやっていいんだぜ!」
電「というか、倒したら建物が崩れたりしないのですか?」タラリ
クリスティーナ「柱を抜いただけで天井が落ちてくるほど、やわな造りにはしてないって聞いてるけど」
オリヴィア「それに天井を落としたいなら、フォールニードルのナンシーがいるじゃないか」
カトリーナ「あ、それはそうだな!」
提督「屋敷をぶっ壊す気かよ。元に戻すのが大変すぎるだろうが」
90 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:22:17.10 ID:5Y/XF1Bxo
カトリーナ「そうは言うけど、あたしたちが柱をぶっ倒さなきゃならない時点で、敵さんだってなりふり構ってらんねえだろ?」
カトリーナ「抵抗するときでも逃げるときでも、この屋敷を壊さないように、なんて考えたりしないんじゃねえかなあ」
カトリーナ「窓どころか、壁をぶち破ってでも出て行こうとするかもしれねえぜ?」
提督「それもそうか。命の危険を感じてるときに、余所の屋敷の心配する奴はいねえな」
吹雪「……あの、司令官? ちょっと思い出したんですけど」
提督「ん?」
吹雪「メディウムが一番最初に鎮守府を乗っ取ったときのこと、覚えてますか? 私たちはロビーでメディウムの皆さんと戦ったんですけど」
吹雪「その時、アローシューターみたいな矢や、ファイアーボールとかローリングボムみたいな炎や爆発物が飛び交ってたんです」
吹雪「でも、戦い終わってロビーに戻ってみると、例えば矢が刺さった痕跡とか、燃えたり爆発してできた焼け跡とかがなかったんですよ」
提督「……そういやそうだったか?」
クリスティーナ「それは私たちメディウムがつけた傷だからでしょうね」
クリスティーナ「私たちは気付かれずに人間たちを殺さなきゃいけないから、現場に痕跡が残らないようにしてるの」
提督「それも魔力でか?」
クリスティーナ「そういうことになるわね」
91 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:23:01.11 ID:5Y/XF1Bxo
提督「随分都合がいい能力だな」
クリスティーナ「当然じゃない。私たちの都合のいいように力を使っているんだもの」
クリスティーナ「私のライジングフロアを発動させるたびに、床に穴をあけてたらきりがないわ」
提督「ああ……それもそうか」
クリスティーナ「さすがに、ライジングフロアで飛ばした人間が壊した天井とかは、復元できないけどね」
オリヴィア「まあ、柱に関しては別にアタイたちだけじゃなく、人間にとっても都合が良かったりするんじゃないかい?」
オリヴィア「逃げ回るときに柱がこのあれば、弾除けくらいにはなるだろうしさ」
提督「深海棲艦だって馬鹿力が多いぞ。ハンマーで倒れちまうような柱が役に立つのか?」
カトリーナ「そうならないように、人間は深海棲艦のご機嫌を取らなきゃいけないんじゃないのか?」
エミル「え? そうなの? ぼく、てっきり、ここで暴れた奴らは、人間でも深海棲艦でも全員やっつけるんだって思ってたけど」
吹雪「ちょっ!? だ、駄目だってば!」
オリヴィア「いや、意外とアリだねえ。話し合う場だって言ってんのに、従わないんじゃあ示しがつかないね。違うかい、アミーゴ?」
提督「確かに、暴れて建物壊されるよりは、そのほうがいいかもしれねえな。そうなったら一番手は、この中からだとエミルか?」
エミル「えっ!? ぼくなの!?」
92 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:23:46.42 ID:5Y/XF1Bxo
提督「暴れようとした相手に、警告として軽く一発どつく分には、エミルのトイハンマーか、ジュリアのハリセンが適任じゃねえか?」
提督「複数人の動きを封じるって点ではクエイクボムがいいだろうな」
エミル「やったあ! ぼくが一番乗りなんだ!!」
クリスティーナ「私のほうが適任だと思うけど……」
提督「罠としての発動の速さならな。お前の攻撃を避けられる奴はそうそういねえだろう」
提督「けど、ここでお前のライジングフロアで吹き飛ばしたら、そいつは天井に激突するだろ? 脅しの初手にしては重すぎる」
提督「それにライジングフロアは意外と範囲が広い。一人だけ暴れた時は、ピンポイントにそいつだけ叩きたいとなると、難しいだろ?」
クリスティーナ「……そういうことなら、仕方ないわね」
提督「歯向かうのが一人だけならエミルかシャルロッテ、団体様ならジュリアかオリヴィア、ってとこだろうな」
吹雪「司令官、だんだんと罠の扱いに慣れてきてますね……」
提督「うーん、なんでだろうな? なんとなく、直感でこの罠はこう使う、ってのがわかるんだよな……」
エミル「魔神様なんだから当然じゃないの?」
オリヴィア「そうだよ、アミーゴはアタイたちのことを知ってなきゃおかしいんだ」
カトリーナ「アニキがいるから、ここの艦娘たちと仲良くなれてんだぜ?」
93 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:24:31.66 ID:5Y/XF1Bxo
クリスティーナ「もう少し自信を持って、私たちを率いてもらわないと困るわね」
提督「……ま、善処するよ」
電「どう見ても面倒臭がってるのです」
提督「ぶっちゃけ、メディウムが活躍するような事態にはなって欲しくねえってのはあるがな」
クリスティーナ「……まあ、平穏を望むのなら、そうあって欲しくもあるわね」
扉<ギィッ
青葉「おお、こちらが会議室ですか! なかなか広いですね、このお部屋は!」
金剛「Hmm... 椅子とテーブルがまだだとは言え、Simpleでいいと思いマス」
提督「よう、お前たちが見てきた客間はどうだった?」
金剛「ン−、客室としては本当に最低限、と言う感じデスネー。あまり居心地が良くても問題でショウけど」
提督「準備するだけの控室だからな。全身映せるでかい鏡と化粧台、水回りを置いただけでも、この島の施設としては上等なもんだ」
提督「間違っても人間どもを寝泊まりさせるような設備は置きたくねえし、そもそも居座って欲しくねえ」
青葉「そこは大丈夫ではないでしょうか? 今もお近づきになりたくない人がいるくらいには、忌避されている島ですから」
提督「だといいけどなあ」
94 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:25:16.47 ID:5Y/XF1Bxo
青葉「もっとも、このお屋敷をわざわざ鎮守府から一番遠いところに置いたあたりからも……」
青葉「人と関わりたくないからじゃないかと、感じられるところはありましたけどね」
金剛「ところで、このお部屋にメディウムの皆さんがいるということは……」
オリヴィア「アタイたちも部屋の間取りの下見だよ」
オリヴィア「いくら連中のために用意したとはいえ、暴れるようならアタイたちにお呼びがかかるわけだからね」
提督「とはいえ、暴れるのが人間とは限らねえ。この島は、人間と深海棲艦の交渉の場として使われる」
提督「人間を騙し討ちしようとする深海棲艦が来るケースも想定しとかなきゃいけねえんだ。むしろそっちの方が可能性は高い」
金剛「!」
吹雪「そ、そっか……最近、深海棲艦と仲良くしてたから、気が緩んでました」
提督「その時はメディウムだけじゃなく、艦娘の力も借りねえと駄目だ。特に避難誘導とかは艦娘にしか任せられないからな」
金剛「Yes ! そういうことなら、私たちに任せるネー!」
提督「頼むぜ。マジで頼りにしてんだからな……」フゥ…
クリスティーナ「? そういう割にはテンションが低いというか、落ち込んでるように見えるわね?」
電「あ、それは、単に司令官さんが面倒臭がってるだけだと思うのです」
クリスティーナ「」
95 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:26:01.09 ID:5Y/XF1Bxo
青葉「各国の代表を受け入れるとなれば、その受け入れ準備とか会場設営とか警備の手配とか、やることは山ほどありますからねえ」
エミル「人間たちの意味でおもてなしが必要なのかあ……それは嫌だね?」
提督「んっとに、マジでやってらんねえ……面倒臭えし、結局お前たちに苦労かけてるし」ガックリ
金剛「Hey, テートク? 私たちがテートクと島のために働くことは当然のことデス。お手伝いするからしっかりするデース」
吹雪「そうですよ、私たちに任せてください!」
提督「んあー、悪いな……」
*
青葉「ところで司令官? 来月、政府との交渉を決めたそうですが、こちらのお屋敷でやるんですか?」
提督「いや、まだこっちは使わねえよ。そもそも海軍が調度品持ってくるのが来月だし、準備してたら多分間に合わねえ」
提督「つうか、その話は俺たちと政府の対話だからな。こっちの屋敷を使うまでもねえ」
提督「あいつらが船を出して、そこの一室を会場にしたいって言ってきてるから、今回はそれに乗っかるつもりでいる」
青葉「なるほど……そこへ司令官が直参すると」
提督「俺が行くかどうかはまだ決めてねえな」
青葉「そうなんですか?」
提督「今回は向こうの要求を聞くだけだ。何が望みか、何がしたいのかを一通り聞いて、突っぱねるものと受け入れるものを明確にしたい」
提督「だから、あっちの話を聞くのと、必要な資料をまとめてこっちに送る準備をしとけとだけ言っておいた」
提督「それから、あいつらが真面目に俺たちと話そうとしてるかも確かめたいから、その場には深海棲艦にも同行してもらおうと思ってる」
青葉「となると、出向くのは泊地棲姫さんですかねえ……?」
提督「さすがに姫級じゃあいつらもビビるだろ。ル級あたりがいいんじゃねえかな? 良いと言ってもらえたら、だけどな」
提督「できるだけ話のわかる奴がいいな。誰にしようかねえ……」ウーン
96 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:27:43.59 ID:5Y/XF1Bxo
と言うわけで今回はここまで。
>71
無人島ですので、使える物は使わないと、ですね。
これから起こる交渉のシーンや、曽大佐艦隊とのやりとりは
ある程度できているので、このあとのシーンが書き切れれば
それなりのスピードで投下できるかもです。
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2023/09/10(日) 11:21:47.43 ID:oe6HCyRL0
乙です
9児にして盗聴とはなかなか…
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/09/18(月) 20:35:33.91 ID:ZMlzCDNW0
うーんこれはなかなか、、、
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/09/19(火) 14:08:18.78 ID:9EFzw5F50
あかん9日経ってから気づいたけどsage忘れてた
100 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:54:50.55 ID:n94mTdCVo
今回登場のメディウムはこちら。名前だけ出てくる子もいます。
・リンダ・ローリングボム:ボーリング選手のような風貌のメディウム。ボール状の爆弾が床を転がり、触れた人間を爆風で吹き飛ばす罠。
何故か関西弁でボケ倒す、おしゃべり大好きねえちゃん。人を笑わせたいのか気を引きたいのか……というより、そういう性分なのかも。
・ニーナ・ペンデュラム:胸当てとドレスを身に纏ったメディウム。巨大なペンデュラム(振り子)の刃が往復して人間を切り刻む罠。
花のお世話が趣味のお淑やかな女性。魔神を守る騎士を名乗るだけあって真面目で誠実。細身の体に似合わず巨大な鎖鎌を振り回す。
・ブリジット・ガトリングアロー:陸軍系の軍人っぽいメディウム。ガトリングガンから矢を連射して、人間を蜂の巣にする罠。
規律正しい軍人と思いきや、実は趣味のコスプレ姿。実戦経験に乏しいので、その場の勢いやテンションの高さで誤魔化している。
・タチアナ・トリックホール:キャリアウーマン風のメディウム。深い落とし穴が突如現れ、足元がお留守な人間を嵌めてしまう罠。
スーツ姿に眼鏡をかけた、お仕事大好きな真面目さん。書類仕事はお手の物、魔神のためにメディウム運用の効率化まで考えるほど。
・ノイルース・ファイアーボール:エルフのような長い耳を持つ魔導士のような姿のメディウム。火の玉が飛んできて、人間を燃やす罠。
杖を携え炎を操る、長身のエルフの女性。四姉妹の長姉らしく、物腰柔らかく落ち着いた雰囲気を持つが、炎の話になると饒舌になる。
・キャロライン・ニードルフロア:金髪碧眼で着物姿、海外留学生風なメディウム。とげ付きの床がせり上がり、人間を串刺しにする罠。
魔神をダーリンと呼び慕う、天真爛漫でアメリカナイズな女の子。生け花を嗜むが正座は苦手で、しょっちゅう足を痺れさせている。
・ケイティー・チャペル:花嫁衣裳のメディウム。教会の鐘が落ちてきて人間を閉じ込める罠。外から衝撃を与えると鐘の音で追撃できる。
少々とは言えないほど独占欲が強すぎる女性。自分以外に魔神に近づく者をすべて排除し、鐘の中で二人きりになろうと企んでいる。
それでは続きです。
101 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:55:34.97 ID:n94mTdCVo
* 鎮守府内 執務室 *
提督「それで推薦されてきたのが、時雨を見つけてくれたお前か。さっきまでも島の哨戒任務してくれてたんだってな」
ヲ級「……」コク
由良「ずっと哨戒任務を引き受けてくれてるし、この海域に迷い込んだ深海棲艦も保護してくれてるそうです」
提督「そんなことまでしてたのか? お前、すげえな」
ヲ級「……ソウカ? 誰カガ、ヤラナケレバナラナイコトダ。駆逐艦タチニモ手伝ッテモラッテイル」
提督「なんにせよ協力してくれてるのはありがたいぜ。そこに余計な仕事まで押し付けるようで悪いな」
提督「どんな話かは泊地棲姫から聞いたか? いきなり人間たちと話し合えって言われて、戸惑ってないかと思ってたんだが」
ヲ級「イヤ、ソレ程デモナイ。オ前ト話スヨウナモノダト、認識シテイル」
提督「……俺と、ねえ」
ヲ級「ナンダ? ソノ表情ハ」
提督「いや……海軍の人間も言ってたんだが、普通の人間にとって深海棲艦は脅威なんだ」
提督「実際に、お前の持ってる艦載機を使えば人間は殺すのは簡単だろ? お前以外の深海棲艦も砲撃なりなんなりの攻撃手段がある」
提督「何より、お前たち深海棲艦が、敵意を持って人間に触れると、その体が壊死するっつうか、朽ちていくとか言う話もあるし……」
102 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:56:18.93 ID:n94mTdCVo
提督「それがどういう理屈なのかはうまく説明できないが、それが事実なもんで、人間たちは深海棲艦をひどく恐れている」
ヲ級「触レルト……? 提督ハ、ナントモナイノカ?」
提督「魂が半分深海棲艦なせいか、俺の身には特に何も起きてねえな。というか、すでに人間じゃないからかもしれないが」
提督「ただまあ、そういう理由があるんで、お前と話す人間たちからそれなりに怯えられたり、嫌がられたりすると思うんだ」
提督「特に、来月乗り込むであろう船には、いろんな奴が乗船してると思う。深海棲艦が嫌いで、あからさまな態度の奴もいるはずだ」
提督「最悪、乗船した艦娘に威嚇されたり攻撃されるかもしれねえ。そういう状況下で落ち着いていられるか、その辺を確認したいんだ」
ヲ級「……イマノ時点デハ、ドウナルカハ想像デキナイ」
提督「うーん、まあ、それもそうだよな……」
由良「ねえ提督さん? その交渉に一緒に行く艦娘は誰にするか、決めてるんですか?」
提督「いや、そっちも決めてねえんだ。朧を候補にと考えてたんだが、露骨に嫌な顔されて断られた」
由良「そうなんですか? それじゃ、扶桑さんや陸奥さんは? 落ち着いてるし、話を聞くのは上手そうですけど」
提督「その二人だと、どっちも頷くと思えねえなあ。あれで扶桑は山城たちから離れたがらねえし」
提督「陸奥もちょっと人間嫌いなところがあってな。大勢の人間の前に立ちたいとは思ってねえんじゃねえかな」
提督「肝が据わってるって点では比叡なんだが、ちょっと素直過ぎて丸め込まれねえか不安だし、何よりまだこっちに戻ってきてねえ」
103 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:57:05.37 ID:n94mTdCVo
提督「ほかに適任そうなのは長門や霧島だが、余所の鎮守府に馴染み始めてるし、ここであの二人を頼っても後々うちのためにはならねえ」
由良「いま、この島にいる艦娘の中から選ぶのが賢明、ってことですね」
提督「そういうことだ」
ヲ級「……人間ハ、私タチト、話ガシタイノカ?」
提督「ん? 一応、そうだって言ってきているが」
ヲ級「仮ニ、私ト、艦娘ノ誰カト、提督ガ向カッタトシテ、私ニ声ヲカケテクルダロウカ?」
由良「!」
ヲ級「私ガ……深海棲艦ガ、人間ニ怖ガラレテイルト言ウノナラ、私ガ行ッテモ、提督ヤ艦娘トシカ話サナイコトニナルト思ウガ」
提督「……そうだな。いくらか慣れてる海軍の人間でも、深海棲艦との対話となると、多少なりともビビったりするはずだ」
提督「お前の言う、深海棲艦と艦娘と俺の面子だと、おそらく俺にしか話しかけてこないだろうな」
由良「艦娘にも話しかけてこない、ですか?」
提督「だと思うぜ。俺が島のことを仕切ってるわけだし、だとすれば、連中も俺以外と話をしようなんて思わないだろ」
提督「最悪その場で言質を取ろうと画策してくるかもしれねえ……となると、俺は出ないほうがいいんじゃないか、とも思えるな」
由良「……うーん」
104 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:57:49.39 ID:n94mTdCVo
提督「まあ、どっちみち、初回はあくまで顔合わせで済ませたいんだ」
提督「話を聞いて資料をもらって、あとはこっちで持ち帰ってから回答する、で終わらせたい」
提督「ただ、今回が単なる顔合わせだとしても、必ず深海棲艦が関わってくるぞ、って印象付けておきたいとは思ってる」
提督「俺たち全体があいつらに避けられること自体は構わねえが、深海棲艦だけが除外されて扱われるようなことは避けたい」
由良「そうですね。国交の話になると、資料とか山ほどあるでしょうし、その中でおかしな文言が入ってないか確認が必要ですよね……」
ヲ級「……」
提督「そういうわけなんで、まずはあいつらの社交辞令を適当に受け流してもらいながら、睨みを利かせてほしい、っていう難しいお願いだ」
提督「あいつらの無礼もある程度我慢してもらわねえといけなくなるはずだ。嫌な役割だが、頼めないか?」
ヲ級「……構ワナイ。引キ受ケル」
提督「本当に助かる。悪いな」ニコ
由良「……提督さん? 艦娘の出席者も決めないといけないですよね? ねっ?」
提督「そうだな」
由良「でしたら、ゆ」
ヲ級「私カラ、希望シテモイイカ?」
提督「ああ、もちろんだ。誰か一緒に行きたい艦娘がいるのか?」
105 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:58:34.62 ID:n94mTdCVo
ヲ級「誰、トイウノハ、ナイガ……艦娘ハ、駆逐艦ヲ連レテイキタイ」
由良「ええっ!?」
提督「……その理由は?」
ヲ級「駆逐艦ハ、人間ノ幼体ニ似テイルノダロウ? 成体ガ私ダケナラ、私ニ話シカケザルヲ得ナイ状況ニナルト思ウガ?」
提督「なるほど。確かに、駆逐艦娘は子供扱いされそうだな」
ヲ級「ソレカラ、イマノ話ニ少シ興味ガ湧イタ。オ前ノ言ウ、私タチニ怯エテイルノニ、軽視シタ態度ヲトル人間ガイノルカ、見テミタイ」
提督「そっちはあまり感心しない理由だな……」
ヲ級「ソウナノカ?」
提督「面白半分でやると痛い目見そうだからな。やるなとは言わないが、人間が用意した席での交渉ごとだ、油断だけはしないでくれ」
ヲ級「……ワカッタ」コク
由良(由良が行って褒めてもらおうと思ったのに)ションボリ
提督「さて、それはいいとして、朧以外に候補と言うと……朝潮は素直過ぎるし、若葉もいねえし、誰がいいかねえ」ウーン
由良「えっと……如月ちゃんは駄目なんですか?」
提督「人間に、肉体的に嫌な思いさせられてるからな。できればそういうトラウマが少なさそうな艦娘を選びたい」
106 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:59:19.23 ID:n94mTdCVo
由良「それなら……」
扉<コンコン
敷波「しれーかーん、入るよー!」ガチャー
初雪「お邪魔します……」
敷波「水路のことで相談が……って、ごめん、取り込み中だった?」
由良「ううん、大丈夫よ。丁度良かった、提督さん、敷波ちゃんはどうですか?」
敷波「へっ?」
* *
敷波「ふーん。いいよ」
提督「マジか。敷波は、こういうのは嫌がるもんだと思ってたんだが」
敷波「うん、好きじゃないけどね。でも、話としては、相手に適当に愛想良くして、書類をもらってくる、ってことでいいんでしょ?」
由良「そ、その通りだけど……」ウーン
敷波「由良さんさー。多分だけど、あたしのこと、可愛げがなくなったとか思ってない?」
由良「……以前はもう少し、言い方が柔らかかったって言うか、そこまでずけずけ言わなかったんじゃなかったかな、って」
107 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:00:06.98 ID:n94mTdCVo
敷波「今更だと思うんだけど」
由良「提督さんのせいですよ?」ジロッ
提督「そんなこと言われてもなあ……」
敷波「もー、由良さんてば、電のこともそうだけど、あたしのこと心配しすぎだって。ヲ級ちゃんもいるんだし、大丈夫だって」
ヲ級「……ヲキューチャン? 私ノコトカ?」クビカシゲ
敷波「あ、なんか違う呼び方のほうがいい?」
ヲ級「……イヤ、オ前タチガ呼ビヤスイナラ、ソレデイイ。私ノ名前ヲ訊カレテモ、思イ出セテイナイカラ」
初雪「名前?」
提督「俺たちは深海棲艦をル級とかヲ級とか呼んでるけど、それは海軍に発見された順につけられた、便宜上の名前だろ?」
提督「もともとはこいつもどこかの国の航空母艦で、その名前が思い出せないまま蘇ったのがこの姿なんじゃないか、って」
ヲ級「ソウイウ話ヲ、提督ト、シテイタ。モトモト私タチハ、人間ニ遭遇スルマデ、名前ナンテ意識シテイナカッタカラ」
敷波「……それじゃあ、そのうち名前を思い出すかもしれない、ってこと?」
提督「そこはわからねえな」
敷波「ふーん。どっちにしても『ヲ級ちゃん』は仮の名前だね」
初雪「メイメイカッコカリ……?」
108 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:01:04.53 ID:n94mTdCVo
ヲ級「タシカ……ソウイウノヲ、愛称ト、呼ブンジャナカッタカ?」
初雪「アイショウカッコカリ……!」
提督「そこにカッコカリはいらねえだろ」ツッコミ
リンダ「ええ感じのツッコミが聞こえたでぇ!」ガチャバーン!
提督「……」ムゴンデアタマツカミ
リンダ「へっ!? ちょ、にいさんちょっとタンマ! タンマや!!」アタマツカマレ
提督「ああ、ちなみにだが、お前たちが政府の連中と会うときには、一応だがメディウムも乗せてってもらうからな?」
敷波「はーい」
リンダ「はっ!? も、もしかしてにいさん、うちにそういうお役目を……」
提督「お前は駄目だ。半ば潜入任務みたいなもんだってのに、お前は1分と黙ってられねえだろ」メキッ
リンダ「ひ、ひいい!? そ、そないなことあらしまへんよ!? ううううち、こう見えてヤマトナデシコでございますやし!?」オタオタワタワタ
提督「滅茶苦茶怪しくなってんじゃねえか。そんなんで任せられるか、っての」パッ
リンダ「!」
提督「あまり話を脱線させるなよ。お前はボケられればそれでいいのかもしれねえが、話の邪魔はすんじゃねえ」
リンダ「えへへぇ……その、堪忍な?」
109 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:01:49.96 ID:n94mTdCVo
提督「とりあえずだ。敷波とヲ級に行ってもらうことにして、もう一人くらいついて行ってもらえると助かるな」
敷波「ふーん……初雪、一緒に行かない?」
初雪「え。いや……いいけど」
リンダ「いいんかーい!」ツッコミ
提督「初雪がやる気になるなんて珍しいな。大丈夫か?」
初雪「うん、まあ。面倒そうなことは、答えなくていい、なら」
提督「あー……そういう意味では適任か。確かに、ぱっと行って、ぱっと帰ってくるだけの話だしな」
由良「とにかく、会見の実績だけ作っておく、ということですね」
リンダ「なんや、せっかく行くのに挨拶だけで帰るん?」
提督「深海棲艦が政府の船に乗り込んで、書状を受け取って帰るってだけでも、向こうにしてみりゃ大前進だろ」
リンダ「いやいやー、どうせなら派手に一発……」
提督「そういう面倒臭え真似はよせっつってんだろ」テノヒラワキワキ
リンダ「ひっ! いや、いややなあ、ほんの冗談やぁて、冗談? な?」
110 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:02:33.98 ID:n94mTdCVo
提督「ま、向こうに落ち度があるんだったら、ぶちかましてもいいけど……かますにしても、ある程度落ち着いてるメディウムがいいな」
リンダ「はいはーい! うち! うちが」
提督「お前は駄目だっつったろ」
リンダ「ぎゃふーん!!」ズコー!
由良「普通、そうなるわよね、ね」
初雪「……司令官のリアクションが分かっててボケてる気がする」
敷波「ていうかさ、連れてったら、絶対うるさくて気が散るよね」
ヲ級「私モソウ思ウ」ウナヅキ
リンダ「なんでや! リンダちゃん泣いてまうで!?」ウルウルッ!
提督「ところで水路の件って何のことだ?」
リンダ「無視かーい!?」
敷波「あー、それさ、周りの建物のせいだと思うんだけど、一部の水路が直角に曲がってるんだよね」
敷波「そのせいで、曲がり切れずに怪我する深海棲艦がいてさ?」
ヲ級「……ソウイエバ、イ級タチガ、カラダヲブツケテタ」
初雪「海水が飛び散って、ビニールハウスの近くや花壇とかに入っちゃうから、見直してほしい……」
111 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:03:19.23 ID:n94mTdCVo
提督「あの水路、かなり頑丈に作ってたはずだな……作り直しができるか、タチアナや泊地棲姫に相談してみるか。最悪封鎖だな」
提督「ちょっと行ってみるか。リンダ、悪いが留守番頼む」
リンダ「へっ? にいさん……遂にうちを頼ってくれるん? しょうがないなあ、うちにまかしときや!」
リンダ「こう見えて待つのは得意なんやで? こう、ローリングボムを当てる! っちゅう、集中力ってえの?」
リンダ「百発百中のうちの腕前は、こう、待つことから始まるよってな? 隙を見つけたらこう、ズバーッと!」
リンダ「ズバーッと、て、うちの武器は刃物やないけど、鋭く投げる! こう! こうやで! な?」フリムキ
シーン
リンダ「って、誰もおらんのんかーい!!」
リンダ「うう、寂しいなあ、あんまりやで、この仕打ち。なんでうちひとりで喋り続けてなきゃあかんねん……あ」
リンダ「ちょっと。そこの画面の前のきみ! そう、きみや! ちょーっと、うちとおしゃべりせぇへん?」
リンダ「あっ、ちょっと、スクロールするのやめてもろて! うちが消える! 消えるて!」
リンダ「ちょ、待ってえなーーー!」
* 鎮守府 埠頭 *
那珂「メタネタは、使用上の注意をよく読み、用法、用量を守って正しくお使いくださいっ!」ビシッ!
山城「那珂ちゃん? 突然何を言ってるの……!?」
112 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:04:04.20 ID:n94mTdCVo
* 工廠 *
明石「あ、提督! こちらにいらっしゃるなんて珍しいですね?」
提督「よう。忙しそうだな」
明石「いえいえ、いまはそうでもありませんよ? 怪我と言っても、みんな戦闘以外でできた大したことない怪我ばかりですから」
提督「今のところは一応、平和なわけか」
明石「そうですねえ。まさかル級さん以外の深海棲艦も診てほしいとか言われるなんて、思いもしませんでしたけど」
プール内のイ級「」チャプチャプ
プール内のロ級「」チャプチャフ
ヲ級「駆逐艦ノ傷ハ、スグ、治リソウカ……?」
明石「はい、大丈夫ですよ! もうすぐ修理完了です!」
提督「つうか、深海棲艦も診られるようになったこと自体もすげえな」
明石「ええ、もっと褒めてください!」ドヤッ!
提督「お前なあ……まあ、いいか。調子に乗ってもいいくらいの仕事をしてるしな。なんか入用なもんがあるなら、遠慮なく言えよ?」
明石「あれ、いいんですか? それじゃあ……」テマネキ
提督「ん?」
113 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:04:48.95 ID:n94mTdCVo
明石「マッサージ用のお部屋をひとつ作ってください。遮音性が効いてるお部屋で……!」ヒソヒソ
提督「……それ、今更じゃねえか?」
明石「今更でもいいんですぅー! 提督、お願いしますよ!?」
提督「お前の場合、自分で作れそうだけどな……まあいいや、あったほうがいいことは確かだし、予定には入れとくか」
ニーナ「遮音性と仰るのでしたら、神殿の中で行ってもよろしいかと思いますが」
提督「うお!?」ビクッ
明石「ひえっ!?」ビクッ
ニーナ「あ、申し訳ありません、驚かせてしまいましたか」
提督「くそ、お前ら気配の消し方うますぎんだよ……」
ヲ級「隠レテタノカ」
ニーナ「はい。時々練習しませんと、いざと言うときに力を出せませんので」ニコ
敷波「遮音性って何の話?」
明石「あ、いえいえ、なんでも……」
提督「内密な話をするときに聞き耳立てられないようにしたいんだよ。そういう場所が欲しいってだけだ」
由良「そうなんですか?」
114 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:05:49.06 ID:n94mTdCVo
敷波「ふーん?」
初雪「怪しい……」
ヲ級「……?」クビカシゲ
提督「揃いも揃って疑いの目を向けるなよ。別にいいけどよ」
明石「いいんですか」タラリ
提督「とりあえず、ニーナの申し出は悪くねえが、その前に艦娘を神殿に招き入れること自体は問題ないのか?」
ニーナ「はい、問題ないと思います。以前、魔神様が体を痛めた時に、赤城さんに連れてきていただいていますし」
提督「ああ、俺が魔力槽に入ったときか……」
ニーナ「それから、一番最初に捕縛した如月さんを治療するときにも、入っていただいています」
ニーナ「もちろん、入ってはいけないお部屋も神殿内にはありますが、そうでなければニコさんも何も言わないでしょう」
敷波「入っちゃいけない部屋?」
提督「いろいろ仕掛けのある危ない部屋があるんじゃなかったか。確か、あっちの世界じゃ人間に攻め込まれてたんだろ?」
敷波「危ないものが置いてあるお部屋じゃなければ、入ってもいいってこと?」
ニーナ「はい、そうですね。ただ……」
敷波「ただ?」
ニーナ「よく考えたら、危ないものが置いていないお部屋のほうが少ないですね?」
明石「それじゃ駄目じゃないですか」ガクッ
115 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:06:34.29 ID:n94mTdCVo
ニーナ「私が一緒なら、危険な場所は回避できますよ」
提督「そうかもしれねえけど、それじゃ神殿内に一人で入るな、と言ってるようにしか聞こえねえぞ」
初雪「うん……危ないなら入りたくない」
奥の扉<ガチャッ
ブリジット「自分も入る機会はない方が良いと思うであります!」ビシッ!
ニーナ「あらっ、ブリジット? ここにいたの?」
明石「結構な頻度で来てますよ? ここにある使ってない装備を見せてほしいとお願いされてまして」
ブリジット「様々な装備品がありますので、今後の参考にさせていただいているであります!」
ニーナ「そういえば、隼鷹さんたちがいた時も、飛行機を嬉しそうに眺めてたわね……」
敷波「へー、なんか参考にできるもの、あったの?」
ブリジット「残念ながら、自分の武器は簡単に刷新できるわけではありませんので、眺めて想像するだけであります……」ショボン
明石「そういえば、メディウムの皆さんの武器の強化って、どうするんです?」
ニーナ「私たちの武器で強化できるのは、純粋な威力だとか発動回数、再発動までの時間短縮などです」
ニーナ「あとは、私たちの武器が通用しない相手がいますので、そういった相手の不意を打つ力であったり……」
ニーナ「連撃や複数回攻撃を当てることで、強制的に相手の装甲を破砕する力を、私たちの武器に付与することは可能です」
ブリジット「自分のガトリングアローには、連撃によるアーマーブレイクの力が備っているであります!」エッヘン!
116 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:07:19.12 ID:n94mTdCVo
ヲ級「……オ前カ」セキメン
ブリジット「はい?」
ヲ級「アノ時、私タチヲ丸裸ニシタノハ、オ前カ……!」ゴゴゴゴ…
ブリジット「ひいっ!? んななな、何事でありま……あ! も、もしや、貴殿はあの時の……!?」
ニーナ「そういえば、ブリジットは隼鷹さんの流星に乗せてもらっていただったわね。その時に敵空母群に大打撃を与えた、って……」
ヲ級「オ前ノセイデ、私タチハ恥ズカシイ目ニ……!」ズイッ
ブリジット「ひええ! ご、ごめんなさいごめんなさいっ!」
提督「落ち着け落ち着け。何があったかは後で聞く、まずは落ち着け」ワリコミ
ヲ級「……!」
提督「ブリジットも心当たりがあるんだな?」
ブリジット「は、はいであります。おそらく、自分はその航空母艦の深海棲艦殿と交戦し、装甲というか、衣装を破砕したのでは、と……」
提督「衣装を破砕?」
ヲ級「……」ナミダメ
提督「……こりゃ、何も聞かないほうが良さそうか?」
明石「かもしれませんねえ……」
117 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:08:04.83 ID:n94mTdCVo
ブリジット「え、ええと、その、その節は、大変申し訳ないことを……」オソルオソル
提督「待て待て。むしろこの場合は俺が謝らなきゃならねえんじゃねえか? 俺が迎撃指示を出したわけだし」
ブリジット「!?」
ニーナ「魔神様!?」
明石「んー、でもまあ、それが一番すっきりしますかね。提督があの戦いの最高責任者であったわけですし」
提督「そういうわけなんで、ブリジットに対しては水に流してくれ。代わりに俺がお前たちの希望を聞くことで勘弁してほしい」
ヲ級「……」ジロリ
ブリジット「ひっ……そのぉ、本当に申し訳ないであります……」
ヲ級「……ワカッタ。責任ハ、オ前ニトッテモラウ」
提督「ああ。あとでもう一度、執務室に来てもらっていいか?」
由良「」ギラギラッ
ブリジット(こっちからも殺気が溢れてるであります!?)ビクッ
明石(うわあ……『責任』の一言で目の色が変わってる)
ニーナ(魔神様は魔神様で平然としすぎです……慣れておいでなのでしょうか)タラリ
118 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:08:51.72 ID:n94mTdCVo
敷波「由良さーん、目つき怖くなってるよー」ヒソッ
由良「えっ!? そ、そう?」
敷波「うん。落ち着いて」
明石(敷波ちゃんが落ち着きすぎてる……)
ニーナ(なんて頼もしい……)
初雪「……とりあえず、水路はどうするの」
提督「おう、すっかり話が脱線してたな。作り直せるようなもんか、見に行かねえと。明石にも話を聞きたいんだが、いいか?」
明石「あ、はい! わかりました!」
提督「ニーナはタチアナを連れてきてくれるか? 水路の設計にはあいつも一枚噛んでんだろ?」
ニーナ「そうですね。呼び出しますので、しばらくお待ちください」
提督「あとは泊地棲姫は……」
明石「最近は食堂にいますよ。最近は自分でコーヒーの焙煎を始めたみたいです」
提督「本格的だな……そのうちコーヒー畑でも作りそうだな」
初雪「そうなったら、紅茶派が黙っていなさそう」
119 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:09:34.37 ID:n94mTdCVo
* その後 *
* 執務室 *
タチアナ「水路の改修工事の件、承りました。あとはこのタチアナにお任せを」ペコリ
提督「ああ、頼むぜ。ところでお前、結構夜遅くまで書類仕事してるんだって? 無理はしなくていいからな?」
タチアナ「ありがとうございます。私は大丈夫ですので」
提督「大丈夫だからって言って無理する奴、数人、心当たりがあるんだよなぁ」ジトッ
タチアナ「そう仰る猊下こそご無理なさらぬよう、面倒ごとがありましたら、私どもにご下知いただければと」
提督「俺は最初から無理はしてねえよ。面倒なことも嫌いだからな。お願いしたいことがありゃあ、誰に対してもそれなりに頼ってるさ」
敷波「……今はね」ジトッ
提督「今は今でいいだろ。昔に戻ったほうがいいのか?」
敷波「それはよくないね。っていうか、いつ戻っちゃうか心配なんだけど」
提督「……」
タチアナ「あの……あまり猊下をからかうべきではないかと」
敷波「からかうつもりはないよ。自分で全部やろうとしたりしてほしくないだけ」
初雪「……それはそう」ウナヅキ
120 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:10:19.69 ID:n94mTdCVo
提督「まあ、そういうのをやめろと言われたからな。できる限り分配するっつうか……」
提督「今はさすがに忙しすぎて、協力してもらわねえと俺も休めたもんじゃねえ。勝手を知ってる艦娘が減って、新しい深海棲艦が増えて」
提督「顔覚えるのもそうだし、各々が衝突しないためのルールも決めていかなきゃならねえからな」
敷波「今後あたしたちが生活する場所だし、無関係じゃないんだからさ。あたしたちも司令官に倣ってるだけだよ?」
タチアナ「……異種族との共同作業と言うのは、往々にして衝突が発生します。それを克服しようとする猊下と、その艦娘……」
タチアナ「なんとも、その姿勢に感服いたします」
提督「そんなに堅苦しくなくていいぞ? 楽にしろ、楽に」
タチアナ「いえ、私はこれが普通ですので」
初雪「……朝潮と同じタイプっぽい」
提督「だな」
タチアナ「ところで、先ほどから不機嫌そうにしておいでのそちらのお二人はどうなさったのですか?」
由良「……」
ヲ級「……」
提督「ヲ級にはちょっとした補償をしてやらねえといけねえんだ」
タチアナ「補償……ですか?」
121 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:11:04.03 ID:n94mTdCVo
提督「ああ。さてと、待たせたな。ヲ級、とりあえずお前の希望を聞きたいんだが」
ヲ級「ナンデモ、イインダナ?」
提督「俺が出来る範囲でな」
ヲ級「……デハ」コホン
ヲ級「『御褒美』ヲ、ヨコセ」
敷波「……」
初雪「……」
由良「……」
タチアナ「……」
提督「……は?」
ヲ級「聞コエナカッタノカ。『ゴホウビ』ヲヨコセ、ト言ッタンダ」
提督「ごほうび?」
ヲ級「トボケルナ。オ前ハ、任務ヲ終エタ艦娘ニ、御褒美ヲアゲテイルト聞イタゾ」
提督「……どういうこった?」
122 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:11:49.19 ID:n94mTdCVo
初雪「あー……もしかして」
タチアナ「何か心当たりがおありで?」
初雪「頭撫でてあげたりする、あれのこと?」
タチアナ「……それが、御褒美ですか」
提督「それでいいのかよ」
ヲ級「ソレハ、ドンナモノダ?」クビカシゲ
提督「どんなものって……」
初雪「……私にやってみたらいいと思う」
敷波「あ、ずるい! あたしも!」
提督「……いいのか?」
敷波「いいんじゃない?」ニコニコ
提督「……」
ナデナデ…
敷波「ふふーん……♪」
初雪「んふぅ……♪」
タチアナ「……」
由良「……」
123 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:12:34.15 ID:n94mTdCVo
ヲ級「……コレガ、御褒美、カ?」
敷波「そうだよー」ニヒヒッ
ヲ級「私ニモ、ヤレ」
提督「いいのかよ……」
初雪「その、あたまの帽子? それって取れないの?」
ヲ級「外サナイト、ダメナノカ?」
初雪「外さなないと、効果は半減する」
ヲ級「……一応、外セル」カポッ
敷波「外せたんだ……!」
ヲ級「コレデイインダナ。サア、来イ、提督……!」キッ!
提督「いや、そんなに力まなくていいぞ? 肩の力を抜け」
ナデナデ…
ヲ級「……」
提督「……」
124 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:13:19.07 ID:n94mTdCVo
タチアナ「なんなんでしょう、この頭を撫でてるだけだというのに、微妙に張り詰めた空気感は」
初雪「由良さんのせいだと思う……」
由良「……」ヌゴゴゴゴ…
敷波「由良さんも司令官へのお願いがいろいろ遠回しすぎて、多分司令官には全然伝わってないんだよねー」
初雪「というか、如月や大和さん、金剛さんと比べて、アピールが弱すぎるんだと思う」
タチアナ「よく見てらっしゃいますね……」
敷波「まあ、いろいろとね?」
提督「これでいいのか……?」
ヲ級「……」ナデナデ…
ヲ級「ナルホド。悪クナイ」スッ
提督「!」
ヲ級「今日ハ、コノクライニシヨウ。マタ、貰イニ来ル」クルリ
スタスタ…
初雪「行っちゃった……」
敷波「満足したのかな」
125 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:14:04.67 ID:n94mTdCVo
タチアナ「げ、猊下、大丈夫なのですか?」
提督「俺は大丈夫だが……あいつの髪、ちょっとごわごわしてたな。なんかいいシャンプーでも見繕ってやらねえと」
敷波「そこを心配するんだ」
提督「みんな気にするんじゃないのか?」
敷波「しないとは言わないけどさ」
初雪「タチアナさんも、司令官に撫でてもらう……?」
タチアナ「はっ!? い、いえ、私は、そのようなことは! とても恐れ多い……」
敷波「して欲しいって言えばしてくれるよ? 遠慮すると損だよ?」
提督「まあ、いつも頑張ってるみたいだしな。頭撫でられるのが嫌な奴もいるだろうし、希望があるなら言っていいぞ?」
由良「……提督さん?」ゴゴゴゴゴゴ…
敷波「あ」
由良「由良も秘書艦の御褒美を前倒しでいただきますねっ! ねっ!」ガッシィ!
提督「うおっ!?」ダキツカレ
由良「しばらくこのままです! このままですから! ねっ!!」グリグリグリ
提督「鼻を押し付けてんじゃねえ! 犬を通り越して猪か、お前は!」
初雪「……由良さん……」ドンビキ
敷波「ため込みすぎるとこうなるんだよねー。タチアナさんは本当に大丈夫?」
タチアナ「はい……あそこまでひどいことに、ならないように努めます」タラリ
126 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:14:50.18 ID:n94mTdCVo
* 居住区 寮ロビー *
如月「……というわけで、来週以降の司令官のお部屋へのお泊りスケジュールは、この通りね」
ル級「来月マデ、予定ガ埋マッテイルノカ。スゴイナ」
軽巡棲姫「アア……待チ遠シイワ」モジモジ
伊8「……大淀さんも予定を入れてるんですか?」
陸奥「あら? これまで入れてなかったの?」
伊8「入れてませんでしたね。陸奥さんも入れてるんですか」
陸奥「私はこれまで遠慮してたんだけど、せっかくだから一回くらいは、ね」ウフフッ
扶桑「……由良は、まだ自分の名前を入れてないのかしら?」
伊8「夜を一緒にするのはちょっと違う、みたいなこと言ってたのを聞きましたけど?」
扶桑「変なところがお堅いのね……? 朝、留守になったあとの提督のベッドに、結構な頻度で飛び込んでいるのに」
陸奥「そんなこと、何で知ってるの?」
扶桑「毎朝、洗濯した提督のお召し物を届けに行ってるの。その時に、ね」
伊8「そんな役得があったんですか……!」
扶桑「届けに行ってるだけだから、残念だけど特に何もないわよ?」ウフフッ
127 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:15:34.03 ID:n94mTdCVo
大和「……さりげなくメディウムも入ってきてますね」
朝潮「キャロラインさん……ああ、あの剣山を持った金剛さんのような口調の人ですね」
吹雪「ニコちゃんは入ってないんだ。意外!」
ノイルース「失礼。お邪魔しますよ。この人だかりは何かありましたか?」
吹雪「あっ、あなたは確か……ファイアーボールの」
ノイルース「ええ、ノイルースです。それでこの張り紙はなんと……これは、何かの当番ですか?」
朝潮「こちらは、司令官のお部屋へのお泊りスケジュールになります!」
ノイルース「お泊り? 魔神様と、一夜を共にするということですか……?」
吹雪「ちょ、ちょっと朝潮ちゃん!? 話して良かったの? なんか、聞いてないみたいな反応なんだけど!」
朝潮「キャロラインさんが入っているから問題ないのでは?」
吹雪「いや、でも……!」
ノイルース「ふむ……面白そうですね。良ければ、私の名もそこに書き加えていただけますか」
吹雪「へっ?」
128 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:16:19.22 ID:n94mTdCVo
如月「最後になるけれど、いいんですか?」
ノイルース「構いませんよ。魔神様とは、一度ゆっくりとお話ししてみたかったので」ニコ
ノイルース「それ以上に、魔神様のプライベートスペースへお邪魔できると思うと……胸が熱くなりますね。昂ります」
如月(司令官の私室とはいえ、司令官の私物が着替えくらいしかないけれど……)ウーン
大和(むしろ私たちの私物のほうが多い気が……)タラリ
ノイルース「しかし……この話はもっと早くに聞いておきたかったですね。ニコさんは存じておいでなのですか?」
大和「知っていますよ。ニコさんがいるときにこの話をしたことがありますから、聞いていないということはありません」
ノイルース「ふむ。そこにキャロライン以外のメディウムの名前は載っているのですか?」
如月「載っているのはキャロラインさんだけかしら?」
ノイルース「そうでしたか。ではなぜキャロラインだけ……? ニコさんには改めて事情を伺うとしましょうか」
ル級「オ前以外ノ、メディウムモ、参加スルノカ?」
ノイルース「話せば何人かは興味を持つと思いますし、知らないだけなら参加する者はいるはずですよ」
129 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:17:19.33 ID:n94mTdCVo
ノイルース「もし、ケイティーがこの話を聞いていたとしたら、真っ先に入っていたと思いますが」
伊8「あ、ケイティーさんなら出禁になりましたよ」
ノイルース「……」
軽巡棲姫「順番ヲ無視シテ、イキナリ寝室ノ提督ニ襲イカカッテ、返リ討チニ遭ッタラシイワネ?」
伊8「飛び掛かったところを頭を掴まれて、そのまま片手でぐるんぐるんぶん回されてから地面に叩きつけられたとか」
如月「本当かどうかはわからないけど、その時一緒にいた人が巻き込まれそうになったから、司令官も相当怒ってるみたいだったわ」
大和「ニコさんも、お仕置き部屋に送ったって言ってましたね」
ノイルース「そういうことですか。そのせいで、ニコさんから我々に話が回って来なかったのかもしれませんね……やれやれ」アタマオサエ
陸奥「ところでノイルース? あなたというか、メディウムがこの寮を訪ねてくるなんて初めてじゃないかしら。なにかあったの?」
ノイルース「いえ、皆さんが普段どのような環境でお休みかと思いまして。勝手ながら興味本位でお邪魔いたしました」
陸奥「あら、そういうことなら案内するわ。炎は出さないように気を付けてね」
ノイルース「ええ、心得ております。よろしくお願いします」ニコ
ル級「ソウイエバ、メディウムガドンナ場所デ休ンデルカハ、見タコトナイナ」
軽巡棲姫「私タチト一緒ニイタトキモ、神殿ニ移動シテタワネ」
大和「どんなところで寝てるのかしら……」
130 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:18:35.63 ID:n94mTdCVo
というわけで、今回はここまで。
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/26(木) 11:50:16.76 ID:Q1BS4+xu0
漸く追い付いた。仁提督いいキャラしてて好きやで
132 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:43:31.29 ID:f+WBbV1Vo
今回登場のメディウムはこちら。
・ミリーエル・アローシューター:エルフのような長い耳を持つ、弓矢を携えた姿のメディウム。矢が飛んできて、人間を攻撃する罠。
エルフと呼ばれる森の民のような風貌の女性。四姉妹の末妹で特徴のない自分を未熟だと思っている。性格も真面目で素直な優等生。
・コーネリア・ギルティランス:黒いドレス姿のメディウム。壁から返しのついた多数の槍が飛び出し、人間を刺し貫いて引き寄せる罠。
無数の槍を背負いバトルマニアを自称する女性。好戦的だが戦い続けるためにも引き際は弁えている。他人に心配されるのが嫌い。
・グローディス・サンダージャベリン:エルフのような長い耳を持つ戦士のメディウム。帯電した槍が飛んできて、人間を刺し貫く罠。
四姉妹の一人で、その中では珍しい肉体派。性格も豪快で少々直線的。姉妹それぞれ美人だが、それを武器にするのは苦手の様子。
・セレスティア・ホットプレート:鉄板を持ったシェフ姿のメディウム。焼けた鉄板が足元に現れて、人間を焼いて飛び上がらせる罠。
メディウム随一の料理人。マーガレットを良きライバルと認識しているが、同時に彼女のつまみ食いと食べ過ぎも気にしている。
・スズカ・フライガエシ:ねじり鉢巻きをした和装のメディウム。巨大なフライ返しが、人間を空高く打ち上げひっくり返す罠。
お好み焼きでも焼いてそうな雰囲気の女の子。でもお好み焼きを知らない。調子に乗って大きなことを言うのが欠点、とは本人の談。
・マーガレット・フライングケーキ:パティシエのメディウム。飛んできたホールケーキが人間の顔にはりついて、視界を奪う罠。
暇さえあればケーキを作るケーキ好きの女の子。作ったケーキを残さず食べる上に運動不足のため、よく足がもつれて転んでいる。
というわけで、続きです。
133 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:44:16.25 ID:f+WBbV1Vo
* それから数日後 *
* 執務室 *
武蔵「そういうわけで、白露の体調と艤装の調査はもう少しかかるそうだ」
提督「……しばらくこっちには来られねえってか」
島風「だそうです」ショボン
大淀「白露さんは、そんなに体の具合がおかしかったんですか?」
島風「やっぱり無理してたのかなあ……」
提督「俺は本営の連中の我儘だと思うぞ。あの白露が個体として珍しいから手放したくねえんだろ」
提督「白露型に、島風に比肩する性能を持たせたんだ。仁提督の明石のところにも本営が出しゃばりそうだな」
大淀「そういえば提督も、医療船で本営のお医者様に、検査だなんだと迫られていましたね」
武蔵「ああ……それと同じことが白露の身に起きているということか」
提督「いくら轟沈してねえとはいえ、あいつらに好きにさせすぎたか……?」
武蔵「いや……むしろ好き勝手し過ぎたのは我々かもしれんぞ。ここでは艦娘が好きに出撃できているからな」
武蔵「同じ感覚で過ごそうとして、調査そのものが順調ではないのかもしれん」
134 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:45:01.44 ID:f+WBbV1Vo
提督「その理屈だと、島風も向こうで好き勝手してたことになるが」
島風「……」メソラシ
提督「……おい。冗談で言ったつもりなのに、本当かよ」
島風「だって、走り回っちゃ駄目とか言うんですもん」プー
武蔵「少しの間だけじっとしていれば、それで済むはずなんだがな」
提督「そのじっとしてるのが苦手だからな。それが理由なら長引くのもやむなしだが、そうだとしても適当に切り上げてくれねえかな」
武蔵「それは無理だろう。仕事に手を抜けと言っているようなものだぞ。それに……」
提督「あくまで艦娘は海軍が管理するものだから、全部知っておかなきゃいけないってか? 面白くねえな」チッ
神殿への扉<ガチャッ
ニコ「だったら、遠慮なく脅しをかければいいじゃないか。人間の言いなりになるなんて、魔神様らしくないよ」
ミリーエル「失礼いたします、魔神様」ペコリ
提督「ニコはまーた俺たちの話を聞いてたのかよ……話が早いからいいけどよ」
ミリーエル「あの、私も聞いていましたが、魔神様が人間にそこまで気を使われる理由は一体……?」
提督「んー……半分は、単純に白露が心配だから、だな」
提督「あいつの体が本当に何も問題ないのか、俺もその辺を確認したいっつうか、確証を得たい、保証して欲しいってのはある」
ニコ「……そう言われると仕方ないなあ」
135 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:45:45.79 ID:f+WBbV1Vo
島風「もう半分は面倒臭いからですよね?」
提督「まあな。余計なことを言って面倒を起こしたくねえ」
ミリーエル「しかしこれでは、まるで人質ではありませんか」
提督「こればっかりは仕方ねえよ。いまできることっつったら、白露に問題がないなら早く返せと言うくらいしかねえな」
大淀「X大佐に連絡を入れましょうか。政府との会談ももうすぐですし」
提督「そうだな……言うだけ言ってみるか。そのついでに、工作艦も増えてくれねえかな……」
大淀「工作艦……ですか?」
提督「ああ。明石もそれなりに忙しいし、明石以外の艦娘の艤装の面倒を見れる誰かの手を借りたいんだが……」
提督「ま、仮にいたとしても、都合よくこっちに来るとは思っちゃいねえけどよ」
ミリーエル「……魔力槽ではいけないのでしょうか」
提督「あれもあれで原理がよくわからねえし、別に何かを治そうって話でもねえからな」
提督「むしろ、あれに突っ込んだせいで白露が改装前に戻ったりしても問題だ。『元に戻す』と『治癒する』じゃ意味が違う」
ミリーエル「なるほど……」
提督「そういう意味じゃあ深海棲艦も心配なんだがな。深海棲艦の入渠ドックも作ってもらったが、面倒見てるのは艦娘の明石だし」
提督「というか、艦娘も深海棲艦も、ついでに酒保も明石に任せちまってるから、ちょっと負荷を減らしてやりてえな」
136 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:46:30.78 ID:f+WBbV1Vo
提督「ちなみに魔力槽はニコに全部任せててもいいよな?」
ニコ「うん。大丈夫、ぼくに任せてよ」
提督「ひとまず、島風は白露が心配なら、もう少し本営にいてもいいぞ。練習がてら、本営とこの島を結ぶ便の護衛哨戒をしてもいいし」
島風「うーん……わかりました。島風、いったん白露のところに戻ります。様子を見てから、決めてもいいですか?」
提督「おう、いいぞ。で、武蔵はもうしばらく与少将んところにいる気か?」
武蔵「ああ、この鎮守府と向こうの鎮守府ではいろいろ勝手が違うのでな。そのあたりの報告もさせてもらいたい」
提督「……いっそのこと、那智と一緒に向こうの鎮守府に転籍してもいいんじゃねえか?」
武蔵「な……!?」
提督「お前の話しぶりを見る限り、与少将にはよくしてもらってるみたいだしな。中将の引継ぎもしてるし、X大佐との連携も取れてる」
提督「お前が与少将の戦力になりそうなら、わざわざこっちに来て暇を持て余す必要もねえだろ。むしろこの島への案内役として適任だ」
ミリーエル「……」
大淀「どうかしましたか?」
ミリーエル「いえ……武蔵さんがこの鎮守府を離れるとなると、一部のメディウムが荒れそうだなと思いまして」
武蔵「……コーネリアとかか?」
ミリーエル「そうですね……グローディス姉さんとしょっちゅう演習という名目で模擬戦と言いますか」
137 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:47:15.59 ID:f+WBbV1Vo
提督「喧嘩してストレス発散してる、と」
ミリーエル「……有体に申し上げれば、その通りにございます」
提督「萎縮しなくていいぞ、好きにしろっつってんだし、死なない程度にやる分には構やしねえよ」
武蔵「確かに、その二人やオリヴィアやカトリーナと談笑できなくなるのは寂しいな。代わりにいろいろな土産話を用意せねばならないか」
提督「与少将に貸しを作りたいわけじゃねえが、いまの与少将の仕事はこの島に関わることも多いはずだからな」
提督「お前が働いてくれれば、この島のためにもなるだろう。こっちから直接外に手を出すのは控えたいしな」
武蔵「なるほど。私は実働部隊になるわけか」
提督「もちろん、なにかあったら俺たちも出るとこ出るつもりだ。メディウムも黙っちゃいないし、深海棲艦も手を貸してくれるはずだ」
ニコ「そうだね、この島に関わるんなら、ぼくたちも力を貸すよ」
扉<トントントン ガチャー!
間宮「す、すみません、どなたか手を貸してください!」
提督「んん? 何があった?」
138 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:48:01.05 ID:f+WBbV1Vo
* 厨房 *
タ級1「ケーキニアウノハ、コーヒーダ!」
タ級2「紅茶ノホウガ、オイシイ!!」
マーガレット「はわわわ……お、落ち着いて欲しいのです」
電「……私の口調を取らないで欲しいのです」
スズカ「しばらく一緒におったから、口調が移ったんかねえ?」
セレスティア「かもしれないわね……」
金剛「呑気なことを言っている場合ではありまセン」
比叡「そうですよ、早く止めないと」
金剛「紅茶こそが最高の飲み物であることを、皆さんにlectureしてあげないといけまセンネーー!!」
比叡「金剛お姉様!?」
泊地棲姫「マッタク……同ジ深海棲艦デ、同ジ戦艦クラスナノニ、コウモ好ミガ別レルトハネ」
セレスティア「確かあなたは、コーヒー派ではありませんでしたか?」
泊地棲姫「確カニコーヒーガ好キダケド、紅茶モ嫌イジャナイワヨ」
139 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:48:46.09 ID:f+WBbV1Vo
提督「なにを面倒臭え言い争いしてんだ」ヌッ
比叡「あっ、司令!」
提督「折角、間宮が以提督の鎮守府からこっちに来てくれたっつうのに、しょっぱな喧嘩してる奴があるかよ……」
タ級1「ダッテコイツガ、コーヒーヲ馬鹿ニスルカラ!」
タ級2「オ前コソ、紅茶ヲ飲ム私ヲ馬鹿ニシタダロウ!」
泊地棲姫「提督、私ノ身内ガ、スマナイナ」
提督「まあいいけどよ。こういう話で争えるのは平和な証拠だ。俺にしてみりゃ本当にどうでもいい争いだしなあ……」
間宮「だ、大丈夫なんですか、そんなこと言って」ハラハラ
タ級1「ソウイウ提督ハ何ヲ飲ムンダ? 何ガ好キナンダ」
提督「水」
タ級2「……」
比叡「司令は氷水があればいい人ですからね〜」
タ級2「……ジャア、比叡ハ?」
比叡「あ、私は緑茶が好きです! ケーキにもあいますよ!」
金剛「紅茶じゃないんデスカ……!」
比叡「こ、好みに嘘はつけませんよ!?」
140 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:49:30.43 ID:f+WBbV1Vo
提督「ちなみにお前たちはどうなんだ?」
スズカ「好きな飲み物なあ? いうたら、うちは麦茶じゃな!」
セレスティア「特にこだわりはありませんが……強いて言えばトマトジュースでしょうか」
マーガレット「私はホットミルクが好きです!」
電「好みまで同じなのです……」
提督「間宮はどうだ?」
間宮「えっ? わ、私は緑茶派なんですが……抹茶が一番好きですね」
提督「茶室でたてるようなやつか?」
間宮「はい」
提督「それなら、茶室も作るか」
間宮「えええ!? そ、そこまでは!!」
タ級1「見事ニ、バラバラダナ……」
泊地棲姫「コレダケ綺麗ニバラケルト、感動スラ覚エルワネ」
141 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:50:30.81 ID:f+WBbV1Vo
提督「ま、好みはそれぞれだからな。それこそ好き好きなんだ、押し付けるのも馬鹿にするのもやめとけ」
タ級1「ムー……」
タ級2「仕方ナイナ……」
提督「あ、でも、見た目とかが汚え飲み食いしてたときは注意していいぞ。そういうのは萎えるからな」
タ級1「ソレハ確カニ嫌ダナ」
タ級2「同意スル」
提督「そういえば、コーヒーはこの前ガンビア・ベイが買ってきてくれた奴をまた頼んでるが、紅茶はどうだ? まだあるのか?」
金剛「私のお気に入りのEarl grayを取り寄せてマース!」
タ級2「! 待テ。私ハ、フレーバーティージャナイホウガイイ」
金剛「!?」
提督(あ、これも面倒な奴だ)
金剛「What did you say ? Earl grayが美味しくないとでも……!?」
タ級2「ミルクティーヲ楽シム分ニハ、ベルガモットハ余計ダロウ。ダージリンノ茶葉ダケノ方ガイイ」
泊地棲姫「ミルクティー? 牛乳ヲ加熱シテ、ソコニ茶葉ヲイレテ作ルヤツカ?」
142 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:51:15.58 ID:f+WBbV1Vo
比叡「そっちはロイヤルミルクティーって呼ばれるほうですね。普通にお湯で淹れた紅茶にミルクを入れるほうが一般的じゃないかな?」
セレスティア「ラテとは違うのですか?」
間宮「ラテは確かエスプレッソコーヒーを使うものではなかったかと……」
タ級1「イロイロ、ヤヤコシイナ? ブラックデ、イイダロウニ」
マーガレット「ホットミルク派の私たちには、あまり関係のない話ですねー」
電「なのです」
スズカ「それはええけど、マーガレットの飲み方はちょっとなあ。なんでホットミルクに砂糖入れるんよ?」
マーガレット「えっ? おいしいですよ?」
電「え……お砂糖、入れるのですか……?」ヒキッ
マーガレット「ええ!? 何ですか、その反応!?」
タ級1「私モ牛乳ニ砂糖ハチョットナ……」
タ級2「イクラナンデモ、甘スギナイカ?」
金剛「ケーキに合わせるなら、なおのこと考えづらいデース……」
泊地棲姫「期セズシテ意見ガマトマッタナ」
143 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:52:00.59 ID:f+WBbV1Vo
提督「すげえなマーガレット」
比叡「それって、意見がまとまったって意味でですか? それとも、牛乳にお砂糖のほう?」
提督「両方」
比叡「ですよねー」
マーガレット「そんなあ! おいしいんですよ!?」
セレスティア「味はともかく、お砂糖を摂り過ぎなのでは?」
タ級2「ダト思ウゾ。アイツ、普通ニ、ケーキヲ食ベ過ギダト思ウガ」
タ級1「胸焼ケ起コシソウナレベルデ、タイラゲテルヨナ? モッタイナイ、トカ言ッテ」
セレスティア「ただでさえケーキを運ぶときに転んで何個も駄目にしているというのに、もったいないとは……」トオイメ
電「……」モニュッ
マーガレット「きゃあ!? きゅ、きゅうにおなかをつままないでください!」
電「……しっかりつまめるくらい、あったのです」ドンビキ
提督「健康のために走るとか言ってなかったか?」
スズカ「なんか、疲れたから今日はお休みー、ちゅうんがここ最近ずっと続いとったんじゃがの」
提督「三日坊主かよ」
144 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:52:45.54 ID:f+WBbV1Vo
マーガレット「は、走ってると、ケーキを作る時間がなくなっちゃうんですよ!」
比叡「しばらく作るの休んだらいいんじゃないかな?」
マーガレット「そんなあ!?」
提督「そうだ、せっかくだからうちの艦娘の練習に付き合え。島風がランニングしたいっつうから一緒に走ってこい」
マーガレット「あの足の速い子ですか!? 絶対おいていかれます!」
提督「んじゃ武蔵と一緒に畑仕事してこい。お前の作ってるケーキの原材料を育ててこいよ」
マーガレット「ケーキ作るのに、そんなことする人いるんですか!?」
金剛「本営で流れてた TV program で見ましたが、ラーメンを作るのに必要な小麦を育てる畑から作った人たちなら、いましたヨー」
電「畑!? って、土壌からお世話するのですか!?」
提督「マジか。じゃあそれやるか、畑も増やしたいし」
マーガレット「無理ですうううう!!」ナミダジョバー
タ級1「……コノ島デ、小麦ッテ育テラレルノカ?」
タ級2「サア……? デカイ農場ジャナイト、無理ジャナイノカ?」
145 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:53:31.59 ID:f+WBbV1Vo
提督「仮に作ったとしてもそんなに土地があるわけでもねえからな。この島の住人の消費量を考えると、少なすぎるかもなぁ」
タ級2「ダトスルト、畑仕事ヨリ、遠征デ資材ヲ調達シタホウガ、私タチハ役ニ立テソウダナ」
タ級1「駆逐艦ヲ連レテ、北方ニデモ行クカ?」
比叡「それならお弁当を用意しなくっちゃ!」
セレスティア「そうですね。予定をいただければ、それまでに準備しましょう」
タ級1「ア、ソウダ。オマエ、ワ級ニ乗ッテ、一緒ニ遠征ニ行クカ?」
マーガレット「ふえええええ!? なんで、わたしがー!?」
タ級2「ダメダロ、コイツガ運動スルワケジャナイシ」
タ級1「ア、ソウカ」
電「やっぱりこの鎮守府の中で体を動かしてもらうのです」ウンウン
マーガレット「決定なんですかああ!?」
セレスティア「健康のためよ、マーガレット。頑張って」
マーガレット「そんなああ!?」
間宮「……」アッケ
金剛「Hey, 間宮。ぼーっとしてどうしまシタ?」
間宮「いえ……本当に、深海棲艦の方々と、普通にお話してるのが信じられなくて。こちらの提督は、すごい方なんですね」
金剛「フフッ、それはもう、人間以外の誰にでも優しい人デスカラ」
146 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:58:46.18 ID:f+WBbV1Vo
* 政府との会談予定日 5日前 *
* 墓場島鎮守府 執務室 *
(執務室のソファに、提督と向かい合って、妙高、N特務大尉、磯波が座っている)
提督「なるほど。曽大佐もそれなりの血筋ってことか」ペラリ
妙高「そうですね。とりあえず、与少将からお預かりした資料は以上です」
N特尉「……」
磯波「……」ビクビク
ヲ級「ソンナニ、緊張シナクテモイイゾ」
磯波「は、はひっ」ガチガチ
タ級「ガチガチダナ。オイ、人間、緊張ヲ解イテヤレ」
N特尉「……はひっ!?」ビクーーッ!
軽巡棲姫「人間ガ、一番緊張シテルワネエ……」テイトクニウシロカラダキツキ
妙高「無理もありませんよ。ただの人間が深海棲艦にかなうわけがないというのに、こんなふうに囲まれているんですから……」
提督「……軽巡棲姫はいい加減、俺の背中から離れてくれねえか。書類が読みづれえ」
軽巡棲姫「ジャア、隣ニ座ッテモイイ?」
提督「読み物の邪魔さえしなきゃ、いいぞ」
軽巡棲姫「ソウ? フフフッ」ストン
147 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:59:31.23 ID:f+WBbV1Vo
N特尉「……なあ、提督。どうして執務室が深海棲艦ばかりなんだ? 艦娘はいないのか」
提督「今のタイミングで、たまたまそうだ、ってだけだぞ。深海棲艦がいなくて艦娘が寛いでるときもある」
N特尉「だ、だからって、どうして執務室に……」
タ級「ドウシテッテ、ココナラ、ソファニ座ッテ、コーヒーガ飲メルカラナ」ズズッ
N特尉「……そ、それでいいのか?」
提督「ああ、俺は自由にさせてる。ここが好きな奴は、艦娘、深海棲艦問わずいるんでな」
提督「俺が仕事してると静かにしてくれるし、聞き分けがいい奴が多くて助かってる」
ヲ級「静カナ場所ハ、好キダゾ。普段騒ガシイ艦娘モ、提督ガ仕事ヲシテイルト、静カニナルノハ、見テテオモシロイ」
ヲ級「ソレニ……カグワシイコーヒーノ香リト、波ノ音……深海ニハナイ、ヤワラカイソファ……」ウットリ
妙高「ああ……そういうことですね」
N特尉「な、なるほど。わかる気がするな」
提督「俺のそろばんの音がいろいろと台無しにしてるような気がするんだけどな」
ヲ級「ソレハソレ、ダ」
N特尉「おみやげは、せんべいより洋菓子のほうが良かったか……」
妙高「コーヒーに合わせるのでしたら、そのほうが良かったですね」
148 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:00:18.35 ID:f+WBbV1Vo
提督「とりあえず、曽大佐のことはわかった。軍人の家系の傍流ねえ……これだと、本家を見返してやりたいってタイプかもしれねえな」
N特尉「ああ……ちなみに彼は男一人、女六人の七人姉弟の五番目だそうだ」
N特尉「一応は長男だから、張り切っているんだろう。そのせいで張り切り過ぎて、極端に振り切れてる感じもするが」
提督「古い家だと、家を任されてる重圧なんてのも考えられそうだな」
N特尉「それで必死なのかもしれない……か。とにかく彼は、深海棲艦は撃滅せよの一点張り、そこは曲げられないと主張している」
N特尉「だから、艦娘が口答えしようものなら、すぐ解体処分を言い渡すくらいには苛烈と言うか極端と言うか、言ってしまえば過激派か」
提督「そんなんじゃあ、部下の艦娘に謀反でも起こされるんじゃねえか?」
N特尉「いや、結果も出しているだけあって、彼の考えに賛同している艦娘も少なからずいるようだ」
N特尉「崇高な使命を掲げ、覚悟を決めてかかっている姿に、ついていこうと共感しているんだろうな」
N特尉「実際、曽大佐は自分でも戦いたいらしく、鎮守府内のジムで毎日格闘訓練に励んでいて」
N特尉「そういった姿を艦娘に見せていることもあって、彼の方針は鎮守府内では比較的受け入れられているようなんだ」
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