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【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】
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149 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:01:00.97 ID:f+WBbV1Vo
妙高「ちなみに、こちらが曽大佐の写真です」
提督「ふーん」
軽巡棲姫「……暑苦シイ顔ネエ?」
N特尉「今はその写真より一回り筋肉がついて、ごつくなってるらしい」
提督「やる気見せて巻き込んでる感じか? マジで暑苦しい奴だな」
軽巡棲姫「同ジ感想ヲ抱イテクレルノォ? 嬉シイワァ」スリスリ
提督「……」
N特尉「……提督、お前、大和と言う艦娘がいるのに、なんでこう……」
軽巡棲姫「ナニカ文句アルノォ?」ヌラァ
N特尉「ナンデモアリマセン」ビクッ
妙高「N提督も余計なことを言わなければいいのに……」
提督「お前も威嚇すんな、少し落ち着け」ナデナデ
軽巡棲姫「ハウゥ……!」ウットリ
磯波(姫級が猫みたいに……!?)
150 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:01:45.93 ID:f+WBbV1Vo
妙高「ところで提督。来週早々に政府との面談があると聞きましたが」
提督「おう。こっちはまあ、形式的な挨拶を交わして、あいつらの言いたいことを聞くだけになると思ってる」
提督「これまでの情報を考えても、おそらく曽大佐がそれを邪魔しに来るだろう」
妙高「政府の要人が来るのです。そこまでするでしょうか……?」
提督「だからこそやると思ってる。さっきN特尉も言ってたが、極端に振り切れてる奴が、まともな手段で止めに来るとは思えねえ」
提督「最悪、政府の船を攻撃して、俺たちに罪を擦り付ける可能性もある。というか、そういう手を堂々と使ってきそうで、鬱々としてるぜ」
磯波「い、いくらなんでも、悪く考えすぎでは……」
提督「甘えよ。お前たちだって特別警察の仕事をしてるんなら見てきただろ? くっそ汚え人間の裏っ側てやつをよ」
磯波「……」
提督「人間同士でも絶句するような黒い悪だくみをしてる連中がいるんだ」
提督「相手が人間じゃなくて人間の権利を持ってない相手なら、なおのこと欲望を抑えようとしない奴が現れると思ってるけどな?」
妙高「……」
提督「ましてや、悪と決めつけている深海棲艦が相手なら、極端な悪者に仕立てることに躊躇なんかしねえだろ」
N特尉「暴走する可能性が高い、か」
提督「これが成功したら、目の前にいる深海棲艦を無条件で殺せなくなる。それが嫌なら、どんな手を使ってでも邪魔しに来ると思うがな」
151 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:02:45.69 ID:f+WBbV1Vo
N特尉「それは……人を犠牲にしてでも、か?」
提督「当然。むしろ人間が犠牲になったほうが、奴には好都合だろ」
N特尉「……考えたくはなかったが、やはりそうなるのか……!!」
提督「今回はあくまで形式的な挨拶をかわすだけになるだろうが、それでも、政府にとっては大きな前進であることに変わりはねえ」
提督「だからこそ、曽大佐は『次の機会』なんてものが絶対に発生しないように、決定的な亀裂を入れようとしてるんだろうさ」
N特尉「頭が痛いな……!!」
提督「ま、そういうわけなんで、せいぜい曽大佐の動向は注視しとけ。俺たちは俺たちなりのやり方で迎撃させてもらうからよ」
妙高「曽大佐の艦娘と、一戦交えることになると……?」
提督「いまのままなら、多分そうなる。そうならねえようにしたいが……連中が素直に言うこと聞くとは到底思えねえ」
提督「どうにかして足止めしておとなしくさせて、その間に交渉、ってのが最善手になるだろうな。できなきゃ、捕縛しとくしかねえ」
提督「俺たちも使える手段もそんなにねえし、時間ももうねえしな」ハァ…
妙高「……」
磯波「……」
152 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:03:31.37 ID:f+WBbV1Vo
N特尉「……とんでもない問題にかかわることになったなあ……」ガックリ
妙高「N提督!? ぶっちゃけすぎですよ!?」
N特尉「……そんなこと言われてもなあ……」
タ級「コイツ、ナンデコンナニ、ガックリシテルンダ?」
提督「この島へ攻めてくるであろう、艦娘の司令官のところに行って、捕まえてこなきゃなんねえだろうから、だな」
タ級「ソウナノカ!? ソレナラ早ク行ケ!」
提督「それが、今の海軍のルールだと出来ねえんだよ。ただ艦娘を出撃させるだけなら、それを抑止することもできねえし」
提督「各地で暴れている深海棲艦の討伐は、いまの海軍のメインの任務だ。それを否定したら海軍の存在自体を否定することになる」
提督「今の時点で俺たちに被害が出ないと、おそらくそいつを捕まえていい、って指示は飛んでこねえだろうし」
提督「その指示がない以上はN提督も動きようがねえ。相手がやらかしたあとでねえと、越権行為される可能性もあるからな」
タ級「ムー……メンドウクサイナ」
N特尉「提督、そこはひとつ訂正させてくれ。我々海軍は何のために存在するか……それは国民の人命と財産を守るため、だ」
N特尉「誰かを殺したり滅ぼしたりするのが正しいから、力を行使するわけじゃない。そこは誤解のないように頼む」
提督「……」
153 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:04:15.94 ID:f+WBbV1Vo
N特尉「確かに、いまの海軍の主な任務は深海棲艦の討伐ではあるが……」
N特尉「本来の我々の本分を省みるならば、深海棲艦との和睦も大いに結構。戦いをなくし、犠牲を減らせるのは良いことだと思う」
N特尉「しかし、感情的にであっても、それを拒む者がいるのは、やはりこれまでの……失われた命の重さが、そうさせているんだろう」
N特尉「君たちがそれをやったわけじゃないとしても、それを簡単に割り切れない人たちもいるからな……」
タ級「……」
ヲ級「……」
軽巡棲姫「綺麗事ネ」フン
N特尉「……そうかもしれないな」
提督「……」
N特尉「しかもおそらく、深海棲艦以上に、人間も深海棲艦を無数に討伐してきた……殺してきた」
N特尉「その我々が、深海棲艦と歩み寄れるか、などと上から目線で言うのは、きっとおこがましいんだろう」
N特尉「だが、やらなければ、また殺し合いだ。お互いのためにも、やらなくてはならないんだ」
N特尉「だからこそ、海軍のいち大佐が、日本政府と深海棲艦の和平交渉の邪魔をするのを、放っておくわけにはいかない……!」
提督「……」
154 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:05:15.79 ID:f+WBbV1Vo
N特尉「そのためにも、協力的な上官を増やしたいところなんだが……せめて大将格がもう数人くらい賛同してくれないものかな」
提督「こっちの理解者は、H大将くらいか?」
N特尉「いや、大湊と呉の大将殿も協力的なほうだ。あとは少し苦言を呈されたり、一任するというか静観するというか」
ヲ級「マルナゲ、カ」
N特尉「身も蓋もないな!?」
タ級「デモ図星ダロウ?」
N特尉「た、確かに、そんなところだ……未だに君たちを信用していいのかどうか、疑心暗鬼の大将もそれなりにいる」
N特尉「同様に中将や少将の見解も、五分五分で拮抗しているな」
提督「ま、仕方ねえだろうな。深海棲艦と今更和解できるか、って意地張ってる連中とか」
提督「この話し合いが侵略の足掛かりになるんじゃないかって疑ってる連中だっていそうだしな」
N特尉「ああ、言われたよ。これが罠じゃない保証がどこにあると、H大将がなじられる一幕もあった」
提督「それにしても、いいのかよ? そんなことまでべらべら喋って」
N特尉「中将の息子の件といい、J少将の件といい、海軍の暗部と言うか恥部というか……」
N特尉「言い逃れできないような不祥事ばかり見てきたお前に、今更、海軍の建前で話をしてもしょうがなくないか?」
提督「……半ばやけくそになってないか? 大丈夫かよ」
155 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:06:00.79 ID:f+WBbV1Vo
妙高「いまのお仕事を始めてから、少し愚痴っぽくはなりましたね」
N特尉「……今の仕事は、同じ海軍の仲間の仕事の、あら捜しをしているようなものだからな」
N特尉「私が働いたから深海棲艦からの襲撃が減ったとか、そういう成果を生み出せる仕事じゃない」
N特尉「むしろ同じ仲間の足を引っ張るような仕事だ。仲間を捕まえれば、その分、外敵から人間を守る者が減る」
N特尉「そう考えると、俺の仕事は……いまやっていることは、本当に正しいことなのか、悩ましく思うときもある」
N特尉「長期的に見れば正しいのかもしれないが、いまも悩み苦しむ一般人がいることを考えるとな……」ハァ…
提督「……」
N特尉「……いや、本当に悪い。こんな愚痴まで零すつもりはなかったんだ」
N特尉「ましてや、提督に同調して人を襲うことをやめた深海棲艦たちに聞かせる話でもなかったな。私も、まだまだ未熟だ……」
提督「……あの村は今どうなってる?」
N特尉「……どうなってるだろうな。どうなっているか、怖くて連絡も取っていない」
提督「けっ、連絡くらいしろよ。あんたの守りたいものなんだろ?」
N特尉「……そうだな……ああ、そうだ……」
妙高「……」
磯波「……」
156 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:06:45.73 ID:f+WBbV1Vo
*
妙高「提督、お気遣いいただきありがとうございます」
提督「何の話だ」
妙高「最後に、N提督に親に連絡しろと仰ってたではありませんか」
提督「別にそんなつもりで言ったつもりはねえよ。村が再興しなきゃ、朧や初雪がああなった意味がねえってだけだ」
妙高「そうであってもです。N提督も、ご自身の仕事で悩んでおいででしたから。一度、お休みしてもいいのではないかと……」
提督「そういうのは、お前が言えば良かったんじゃねえの?」
妙高「私が甘やかすのもどうかと思いまして」
提督「そうか? あいつの手綱握ってんのはお前だろ?」
磯波(私も妙高さんがN提督を甘やかしていいと思いますけど……)ウンウン
妙高「……磯波さん?」
磯波「いえ……むしろ妙高さんがN提督に甘えるのもありかも……?」ブツブツ
妙高「磯波さん?」
磯波「さっきだって、提督さんに軽巡棲姫が甘えてたのを見てぼやいていたんだし……」
磯波「N提督も、妙高さんに頼られたいと思っているんでは……」ブツブツ
妙高「磯波さん?」
磯波「……あ、はい。妙高さん、どうしました?」
妙高「今のお話、少し詳しく聞かせてもらえますか」ニコリ
磯波「……」ゾワワッ
157 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:07:45.59 ID:f+WBbV1Vo
提督「聞くほどのもんかねえ」ボソッ
妙高「提督?」ジロリ
提督「なんだよ。俺に凄むなよ、面倒臭え」
妙高「……」
提督「茶化すつもりはねえぞ。何でも言わなきゃ伝わらねえ。人が何を考えてるかなんて、所詮他人にはわからねえんだ」
提督「あいつがお前たちに何をして欲しいのか、直接あいつの口から吐かせろよ」
提督「俺だって、艦娘や深海棲艦たちが何を望んでいるかがわからねえから、逐一訊いてんだぞ?」
提督「いま、N提督に直接的に力になれるのはお前たちだけなんだぞ。そんなんでやっていけてんのかよ」
妙高「……っ! し……失礼します!」クルッ スタスタスタ…
提督「……」
磯波「あ、あの……提督さん、デリカシーがないって、よく言われません?」
提督「みんな知ってるから誰も言わねえよ」
磯波「……」
提督「つうか、妙高もなんであんなにプリプリしてんだよ。心配ならアドバイスしてやりゃあいいじゃねえか、わけわかんねえ」
磯波(……ああ、この人、恋愛事に疎い朴念仁タイプなんだ……)タラリ
158 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:08:31.26 ID:f+WBbV1Vo
* 政府との会談予定日 前日夜 *
* 日本 某港 *
蒼龍改二「……ここが集合地点で良かったのよね?」
綾波改二「はい! 間違いないですよ!」
飛龍改二「もー、蒼龍ってばその質問、何回目?」
天龍改二「しょうがねえって、飛龍さん。なんせもう1時間以上待ってんだぜ? 本っ当、遅っせえよなあ……ちゃっちゃと準備しろよ」
霧島改二「念には念を入れて準備するのは悪いことではないでしょうけど……確かに、いくら何でも遅すぎね?」
コロラド「……気に入らないわ……!」
飛龍改二「? 気に入らない、って、なにが?」
蒼龍改二「待たされてるのが気に入らないんじゃない?」
コロラド「ビッグセブンであるこの私がいるのに、どうして奇襲じみたアタックを仕掛けなきゃいけないのよ……不服だわ!」
蒼龍改二「そっち!?」
飛龍改二「まあまあ、そう怒んないでよ。そもそも今回の私たちは支援艦隊だよ?」
コロラド「そこもよ!」
蒼龍改二「待たされるのはいいんだ……」
159 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:09:15.73 ID:f+WBbV1Vo
天龍改二「お! やっと来たみたいだぜ……!」
ザザァ…
大和改二「曽大佐艦隊、旗艦、大和。以下、榛名、陸奥、赤城、由良、朝潮。ただいま推参しました……!」
コロラド「やっと来たわね……私は川提督艦隊の旗艦、コロラドよ! こっちは飛龍、蒼龍、霧島、天龍、綾波よ!」
大和改二「……予定より大幅に遅くなり、大変申し訳ございません。このたびの川提督艦隊のご協力に感謝いたします」ペコリ
大和改二「それにしても、川提督のところに海外艦が所属していたとは、存じませんでした」
コロラド「川提督が私のことを隠してたのよ。ヒミツヘイキ? と言っていたかしら。ここぞという場面で出番が来るようにね!」
コロラド「それにしても、大和のいる艦隊とこんな重要な場面で協力ができるなんて思わなかったわ!」
コロラド「同じビッグセブンの陸奥もいるし、戦力は十分ね!」
天龍改二「十分ってなあ……あっちの艦娘、全員指輪してやがるぜ?」ヒソヒソ
綾波改二「練度も雰囲気も違いますからね。私たちは下手に出しゃばらずに、サポートに徹したほうが良さそうです」ヒソヒソ
大和改二「それでは早速、今回の作戦ですが……私たちは、あの島の深海棲艦を撃滅するため、島の西から南へ回って、敵拠点へ向かいます」
蒼龍改二「西? 敵の拠点が島の東にあるのに、遠回りするの?」
大和改二「島の北にある海底火山の影響で、あの島の近海の潮流が特殊だということです。噴火したことで若干変わったとは思いますが」
大和改二「島の西を通って反時計回りに回り込んだ方が、潮流に邪魔されず速やかに進軍できると思われます」
蒼龍改二「な、なるほどぉ……?」
160 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:10:01.34 ID:f+WBbV1Vo
大和改二「そしてこれから出立した到着予定時刻に合わせて、政府高官を乗せた艦艇が、島の東沖に停泊する予定です」
飛龍改二「え!?」
大和改二「私たちは、その艦艇を背にして敵本拠地を叩き、深海棲艦の拠点を崩壊させます」
大和改二「政府の人間に、深海棲艦との交渉など不要であるということを、この戦いで見せつけるのです……!」
霧島改二「ほ、本気ですか!? もし深海棲艦が反撃して、その流れ弾がそちらに向かったら……!」
大和改二「そうなればなおのこと、交渉どころではなくなるでしょう?」ニコッ
霧島改二「……」ドンビキ
綾波改二(ぶっ飛んでますね……)
天龍改二(手段を選ばねえ気かよ。狂ってやがんな)
大和改二「連携に関しては先週打ち合わせた通りですので、ここで改めて話すことはないと思いますが……」
天龍改二「あ、悪ぃ、俺からひとつ質問していいか?」
大和改二「はい、なんでしょう?」
天龍改二「曽大佐の艦隊じゃあ、長門さんが滅茶苦茶強えって聞いてたんだけどよ」
天龍改二「先週うちに連絡が来た時も思ったんだけど、今回の作戦に長門さんが参加していないのはなんでなんだ? 殲滅戦だろ?」
大和改二「……私たちが選ばれたのは、これから攻め込むあの島の鎮守府にいる艦娘と、同じ艦娘だからです」
161 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:10:45.83 ID:f+WBbV1Vo
天龍改二「同じ? 向こうの鎮守府に誰がいるかわかってて、それに合わせたってことか? なんでわざわざそんなことを?」
大和改二「曽大佐のお考えです。これから深海棲艦と一緒に住まう艦娘と同じ艦娘なら、相手の動揺を誘えるかもしれない、と……」
天龍改二「ふーん、そういうことか……確かに、俺も演習で龍田がいるとやりづれーな」
綾波改二「自分と同じ顔の艦娘を、躊躇なく撃って沈めようものなら、向こうの鎮守府の艦娘もいい気分にはならないでしょうね」
大和改二「はい。ただ、向こうの艦娘がそこまでのナイーブさを持ち合わせているかどうかは疑問ですが」
飛龍改二「で、でも、その理屈だと、大和さんたちも同じなんじゃないの?」
大和改二「いいえ……! そんなことは、断じてありません……!」
飛龍改二「!」ビクッ
大和改二「忌むべき存在である深海棲艦に与し、正義を執行する海軍に背く愚か者が同型艦にいる事実は、恥でしかありません」ギラッ…!
大和改二「ですから、私たちが『敵』に手心を加えるようなことはあり得ません。ご安心ください」ニコ…
コロラド「……そ、そう!? さすがね!!」ナミダメ
飛龍改二(めっちゃ怖かった……!)ナミダメ
霧島改二(コロラドさん、よく気圧されませんでしたね……)ビクビク
天龍改二「こりゃあ最初から全力で潰す気だな」ヒソヒソ
綾波改二「気を抜く間はなさそうですね」ヒソヒソ
天龍改二「……よぉし、よくわかったぜ。気掛かりもなくなったし、他になけりゃ、そろそろ出発すっか」
コロラド「そ、そうね! 私たちが先行するわ! ツユバライ? は、任せておきなさい!」
大和改二「ありがとうございます。では、参りましょう……!」
162 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:11:30.82 ID:f+WBbV1Vo
今回はここまで。
ここからは少しペース上げて落とせるかもです。
>131
ありがとうございます。
ただ最近は、仁提督を丸くしすぎたかな? と思ってますので、またどこかでガハハ笑いさせたいと思います。
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 22:38:09.81 ID:GijeE8il0
さあさあ面白くなってまいりました!!!!
ついに動き出した曽提督!洗練された艦娘たちが、墓場島へと牙を向く!
迫る魔の手をへし折って、無事に会談を終えられるのか?立ちはだかるは無数の深海棲艦と攻められこその罠娘、メディウムたち。最強の艦隊は最凶の守りを突破することはできるのか!?
艦娘、深海棲艦、メディウム、人類、四つの種族を巻き込んだ混沌の大勝負。
波乱万丈の会談が今始まる!
164 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:33:31.30 ID:QNJUjz5Qo
今回初登場のメディウムはこちら。
・エレノア・メイデンハッグ:ちょっとパンクスタイルなシスターのメディウム。アイアンメイデンが人間を取り込み体中を刺し貫く罠。
派手な修道服を着た女性。鋼鉄の処女を模した大きなとげ付き盾を持つ。大の酒好き。仲間思いでリスキーな行動も躊躇わない女傑。
>163
残念ながら提督は(艦娘に甘いせいで)極力戦闘を避けようとしてますので、
口上のご期待に添えられないかもしれません。
それでは続きです。
165 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:34:31.38 ID:QNJUjz5Qo
* 政府との会談予定日 当日早朝 *
扉<コンコンコン!
大淀「提督、N特務大尉より連絡です!」チャッ
提督「やっぱり、来やがったか……!」
大淀「曽大佐の艦隊と思しき艦娘12名が、この島に向けて出港したとの通信が入りました!」
提督「2艦隊か……ぎりぎり隠密行動できそうな人数だな。思ったより少なくて何よりだぜ」
エレノア「それにしても、会談を邪魔されるのは想定済みとはいえ、こんなに素直に釣られてくれるものなのかしら」
提督「やるんなら今しかないだろうからな。戦争を回避できる可能性があることで、今だけは海軍も深海棲艦討滅に慎重になってる」
提督「かつ、会談をなるべく早い時期に設定すれば、妨害する側も思うように動けず準備不足にもなるだろう」
提督「そうなると、妨害の仕方は多少強引にならざるを得なくなるはずだ」
提督「俺はそいつらの落ち度を突いて追い返し、海軍へ事の顛末を報告して、二度と妨害できないようにしてもらう」
エレノア「魔神様が攻めてくる奴らと話し合うの?」
提督「ああ。政府の船には会談の予定時刻より前に赴いて、いま起こっている不測の事態について話をして、退避してもらう」
提督「予定外のことが起こって、あいつらがなにか焦ってやらかしてくれりゃあ、責められるのは海軍と曽大佐だ」
大淀「正当防衛が認められるように立ち回る、ということですね」
提督「俺たちが戦争の起点になりたくないからな。後から責任追及されたくねえし」
166 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:35:15.82 ID:QNJUjz5Qo
エレノア「私たちを倒そうとしている奴らが、政府の船と一緒にやってくる可能性はないの?」
提督「政府の艦艇の護衛は、中将や与少将の関係者で固めてくれとお願いした。護衛に部外者が入らないようにも頼んである」
提督「そもそも、H大将の決定に背いて離反したばかりの曽大佐の評価は、以前よりも下がってるってN特尉の報告書にもあった」
提督「その状況下で、中将が主体となって編成する政府艦艇の護衛艦隊に加えてもらおうとしても、断られるのがオチだろう」
提督「そんなことが起きないように、事前にX大佐経由で特別警察隊へ調査と警戒を依頼したわけだしな」
エレノア「用意周到ね、それでこそ魔神様だわ。穏便にってところ以外は」
提督「ま、それでもどうなるかはわからねえからな……あいつの艦隊そのものは実力もある。力押しで来られたら、やばいのは変わらねえ」
大淀「正直に申し上げて、ここまで提督の思い通りなのが不思議ですね。曽大佐は、もっと柔軟に動けなかったんでしょうか」
提督「……そう動かざるを得なくなった、引っ込みがつかなくなったのかもな。他人に厳しい奴は自分の失敗を認めたがらない」
提督「自分が間違っていないことを証明するため、自分の考えている通りの現実にするため、無理を通そうとしている……とか」
提督「あるいは、自分が絶対的に正しいと確信していて、海軍も政府の人間も、深海棲艦に丸め込まれた奴を皆殺しにしたがってるとか」
大淀「いくらなんでもそれは……」
提督「わかんねえぞ。政府の人間が来るタイミングで戦闘仕掛けようって時点で、狂ってることには違いないからな」
エレノア「人間の分際で、傲慢極まりないわね?」
提督「あとは、海軍が深海棲艦を許容した事実を信じたくないのかもな。理想にしがみつきたいだけとも考えられる」
167 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:36:00.79 ID:QNJUjz5Qo
提督「でもまあ、これで不祥事になるのは確実だし、曽大佐やその模倣犯がこれ以降絡んでくることもないと思いたいな」
提督「ついでに、政府にも、深海棲艦との交流を妨害しようとする獅子身中の虫がいるってことを自覚させるのに丁度いい」
大淀「……提督は、政府と海軍の間に亀裂を入れたいんですか」
提督「そんなことはねえよ。雨降って地固まって欲しいぜ?」
エレノア「白々しいわねえ……」
扉<コンコン
敷波「おはよーございまーす」ガチャ
初雪「おはよう、ございます」
ヲ級「……オハヨウ」
提督「よう、大丈夫そうか?」
敷波「まあね。メディウムのみんなは大丈夫なのかな」
提督「さっき俺が叩き起こしてきた。エレノアはすでに準備出来てたがな」
エレノア「あらかじめそういう約束だったものね。たまには、朝のすがすがしい空気を吸うのも悪くないし」
提督「とりあえず、支度ができ次第、出発してもらうぞ」
* * *
* *
*
168 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:36:45.57 ID:QNJUjz5Qo
* それからしばらくして *
* 墓場島沖 北西の海域 *
赤城改二「ここからが、あの島の領海です。まずは遠巻きに島の南側へ向かい、島の南東から領海に侵入します」
大和改二「何があるかわかりません。気を引き締めて進みましょう」
陸奥改二「支援、よろしく頼むわね」
綾波改二「はい! 皆さんも、お気を付けて!」
コロラド「……ねえ、少し待って。この景色……おかしくない?」
霧島改二「どうかしましたか?」
コロラド「なんていうか、これまでの海域と雰囲気が違いすぎないか、って言ってるのよ」
飛龍改二「んー、まあ……確かにそうねぇ」
コロラド「これまで戦ってきた大物の深海棲艦のいる海は、どこも黒い雲に覆われて暗かったでしょう?」
コロラド「ブキミって、そういう雰囲気のことを言うと思ってたんだけど、この島の海域は全然そんなことなくて、いい天気よね」
綾波改二「確かに、まるで鎮守府近海のような穏やかさですねえ」
コロラド「情報が間違ってるとは思わないけど、本当にこの島に深海棲艦のBossが棲んでるの……?」
朝潮改二「この島に深海棲艦が海域に与える影響が弱い、ということでしょうか……?」
169 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:37:30.96 ID:QNJUjz5Qo
榛名改二「もしかしたらですが、この島に巣食う深海棲艦の力がそれほどではないのかもしれません」
天龍改二「だとしたら、いまがチャンスだってことだよな!」
コロラド「……」
榛名改二「もちろん、この雰囲気自体が罠だという可能性も十二分にあります」
陸奥改二「そうね。くれぐれも油断せず、慎重にね?」
赤城改二「さあ、参りましょう……!」
ザザーン…
霧島改二「……それでは、私たちも支援可能な場所へ移動しましょう」
蒼龍改二「そうだね。ねえ飛龍、偵察機、飛ばしとく?」
飛龍改二「そうね」バシュッ
彩雲<バウーン…
飛龍改二「……」
蒼龍改二「……」
飛龍改二「……ねえ。すっごい穏やかなんだけど。艦載機を警戒されてる感じもないし」
蒼龍改二「うーん、もうちょっと飛ばしてみてよ?」
170 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:38:15.74 ID:QNJUjz5Qo
飛龍改二「……」
蒼龍改二「……」
飛龍改二「……島の西岸に到達。でも、深海棲艦らしい敵影は全然……あれ? 南のほうへ誰か歩いてる」
蒼龍改二「南に?」
飛龍改二「うん、男の人がひとりで、てくてくと」
天龍改二「男? あの島、確か住んでる人間はそこの提督だけっつったよな? なんか、普通じゃねえって聞いてるけど」
綾波改二「ああ、何回か死にかけた、って話でしたっけ?」
飛龍改二「それ以外になにかあったような気がするんだけど……」
蒼龍改二「とりあえず、曽大佐艦隊にも、誰かが出歩いてる話を展開しておきましょ」
霧島改二「島の様子も大事ですが、私たちも曽大佐艦隊について支援するのですから、つかず離れず追いかけましょう」
コロラド「……」
綾波改二「コロラドさん?」
コロラド「……あ、ごめんなさい。どうにも納得できなくて……」
天龍改二「わからなくはねえけどよ。一応は敵の領海内なんだ、慎重に行こうぜ?」
コロラド「……そうね」
171 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:39:01.07 ID:QNJUjz5Qo
* 墓場島 南岸 *
提督「……偵察機……」
提督「ってことは、南を回って艦隊が近づいてるってことか」
提督「……」メヲツムリ
提督「……侵入者は2艦隊、12人だったな……ほぼ全員が第二改装済みか」
提督「所属は……曽大佐と……川提督? 誰だ? 曽大佐の協力者か?」
提督「……なるほど」メヲヒラキ
提督「それにしてもやべえな、この『魔神の目』の力は。この島の海域に入った奴らの能力が見えるってのは、ちょっと便利すぎる」ハァ…
提督「いろいろ、見えたくないものまで、見えちまうぜ……」
(提督がそう呟いて、北東沖の政府専用艦艇の方角を睨みつける)
172 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:39:46.33 ID:QNJUjz5Qo
* 墓場島 北東沖 *
* 政府専用艦艇 搭乗口 *
敷波「よいしょっと。お邪魔しまーす」
初雪「……大丈夫?」
ヲ級「……」コク
ザワザワ…
「あれが深海棲艦……」ヒソヒソ
「本当に対話できるのか……」ヒソヒソ
「こんなに間近で見られるなんて……」ヒソヒソ
敷波「……」ムッ
ヲ級「……」
初雪「……なんか、好き勝手言われてる?」
敷波「気にしなくていいからね」
ヲ級「……」コク
173 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:40:31.01 ID:QNJUjz5Qo
ブリジット(敷波の艤装に搭乗)「むう……敷波殿はそう仰るものの、いい気分はしないでありますな!」ヒソヒソ
イサラ(初雪の艤装に搭乗)「……早く帰りたい」ヒソヒソ
エレノア(ヲ級の艤装に搭乗)「ほんと、気に入らないわね……お酒の匂いもしないし、話なんかささっと済ませて早く帰りましょ」ヒソヒソ
敷波「……みんな、こっちから手を出しちゃ駄目だからね?」
ブリジット「はっ! 重々承知であります!」
タタタッ
船員「よ、ようこそおいでくださいました……君たち……いや、あなたがたが、あの××島の代表……ということで良かったのでしょうか?」
敷波「うん。あたしの名は敷波です」
初雪「初雪、です……」
敷波「で、こっちは深海棲艦の空母ヲ級ちゃん」
ヲ級「……」チラッ
船員「おお……か、歓迎いたします。我々は日本政府より派遣された使節団です」
敷波「あー、握手はいらないよ。ヲ級ちゃんが握手できないから」
船員「あ、そ、そうか、これは失礼を……こほん、失礼しました」ピシッ
初雪(……気合入れ直したっぽい)
174 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:41:17.23 ID:QNJUjz5Qo
敷波「あたしたちが、司令官の代わりにあなたたちの話を聞きに来たんだけど……あなたが代表?」
船員「いえ、私はあなた方に船内を案内するよう仰せつかっています」
船員「本来ならば鎮守府の東沖まで、もう少し南下してからご挨拶に伺う予定だったため、我々の準備が整っておりません」
船員「恐れ入りますが、しばらくお待ちいただきたいのですが……」
敷波「あ、悪いんだけど、今回は話し合いはできないから、資料だけもらいたいんですけど。お願いできますか?」
船員「話し合いができない? それは、どういうことです?」
敷波「知ってるかもしれないけど、この島の南側の海に、ある海軍大佐の艦隊が、私たちと戦うために展開してるの」
船員「な……!? では、戦闘が……!?j
敷波「あ、まだ戦ってないし、私たちも戦う気はないよ。だけど、あっちがやる気満々らしくて、物々しい雰囲気になっててさ」
敷波「戦わずにどっか行ってくれれば一番いいんだけど、万が一でもこっちに流れ弾や魚雷が来たら問題になるじゃない?」
船員「え、ええ、問題ですね……そもそも今の状況下で艦隊を出すこと自体、大問題ですが」
敷波「この船の人たちはあくまで話し合いに来てるんだから、戦闘を回避したいなって考えてるんだけど、その保証がないからさ」
敷波「巻き込まれる前にすぐ退避できる準備をしておいてもらえないかな、って。それで早めに来てお願いをしに来たんです」
船員「なるほど……承知しました、使節団の代表にその話を伝えて判断を仰ぎますので、少しお待ちいただけますか」スマホトリダシ
敷波「わかりました、よろしくお願いしまーす」
175 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:42:00.50 ID:QNJUjz5Qo
エレノア「へー、ちゃんと話ができる人間もいるのね。まあ、そうじゃないと魔神さんが困るんだけど」
初雪「! 誰か来た……」
ビスマルク「Guten Morgen ! あなたたちがあの島の代表ね? ずいぶん早かったわね、あの提督は来ていないの?」
敷波「来てないですけど、えーっと……あなたは?」
ビスマルク「ああ、自己紹介はまだだったかしら。私はビスマルク、X大佐の艦娘よ」
敷波「ああ、X大佐の! お世話になってます、私は敷波です」ペコリ
初雪「初雪、です。あの、さっき、海でも海外艦娘に会ったけど……」
ビスマルク「ああ、レーベたちのこと? 彼女たちもX大佐の艦娘よ」
ヲ級「……」
ビスマルク「あなたと顔を合わせるのも、初めてだったかしら?」
ヲ級「……オソラク、ソウネ」
ビスマルク「そう、それじゃ、初めまして、ね。それにしても、本当に深海棲艦が話し合いの場に現れるなんて……感慨深いわ」ニコッ
ビスマルク「残念ながら、私はこの船の警備を任されているから、話し合いの場には参加できないけど」
ビスマルク「あなたたちの話し合いが、良いものになることを祈っているわ! また後で会いましょう!」ビシッ!
敷波「うん、ありがとねー……って、今日は話し合いはできないんだけどさ」フリフリ
176 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:42:45.66 ID:QNJUjz5Qo
初雪「……X大佐もこの船にいるのかな」
敷波「かもねー」
ヲ級「……」
初雪「……大丈夫?」
ヲ級「? ナニガ大丈夫ナンダ?」
初雪「こんなにたくさん人がいて、緊張しないか、って思って」
ヲ級「……ソレハ、心配ナイ。ムシロ、オマ……アナタタチノホウコソ、人間ノ視線ガ気ニナラナイノ……?」
敷波「あー……」
初雪「……」
「こちらも不知火とかいう艦娘を頼りにしてるとはいえ、駆逐艦を使いに寄越すのか……」ヒソヒソ
「我々は国を代表してここに来たというのに……」ヒソヒソ
「それより、本当に深海棲艦と一緒にいるような艦娘を信用していいのか……?」
敷波「ま、いいんじゃない? 好きに言ってればいいよ、ふんっ」
ブリジット「実に大人の対応でありますな……!」
177 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:43:30.91 ID:QNJUjz5Qo
イサラ「つか、この距離で会話を拾えるとか、艦娘って、耳がいいんスね……」
初雪「……それより、ヲ級ちゃんが、いきなりお前呼びじゃなくなったのが、びっくり……」
ヲ級「少シ、思イ出シタダケヨ。『余所行キ』ノトキノ、立チ回リ方ヲ、ネ」フフッ
敷波「……」
初雪「……笑うと可愛い」ヒソッ
敷波「うん……美人」ヒソッ
ヲ級「?」
男1「なんだ、あいつの顔が拝めるかと思ったのに、拍子抜けだな」
男2「お前、会うなって話じゃなかったのか」
男1「方針が変わったんだよ。代表も変わったんだし、直接話もしないんだから、いいだろ?」
男1「それよりあの人選を見てみろよ? よりにもよって駆逐艦娘だぞ? あいつは誰かの上に立つような人間じゃないんだ」
男3「しーっ! こ、声がでかいぞ! 聞こえてたらどうする!」
男1「聞こえるかよ。あんな判断をする指導者が身内なんだぞ? 俺の気持ちもわかってくれよ」
エレノア「……ちょっと、あの人間、もしかして」
178 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:44:15.61 ID:QNJUjz5Qo
敷波「ん?」チラッ
イサラ「いま、身内とか言ってなかったっスかねえ……?」
敷波「ああ、だとすると、あれが司令官の弟さん?」
男1→提督弟(以下弟)「!」
敷波「反応したってことはその通りみたいだね」
初雪「うん……ぶっちゃけ、どうでもいいけど」
ヲ級「……」コク
イサラ「い、いいんスか」
敷波「放っておけばいいよ。どうせ口だけだもん、無視無視」
弟「ど……どうでもいいだと!?」
男2→使節団員1「お、おい! 落ち着け!」
男3→団員2「やっぱり聞こえてたんじゃないか! その、大変申し訳ない! どうか今の話は忘れていただけないか……!」
敷波「はぁ? そっちの都合なんか知らないよ。あたしたちは、この船での出来事を全部、ありのままに司令官に伝えるだけだし?」ハァ…
初雪(……けだるそうなところが、司令官そっくり……)
179 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:45:01.05 ID:QNJUjz5Qo
弟「こいつ……っ!」ギリッ
団員1「船の中に戻るんだ! もともとお前はこの船に乗る予定自体が……」
弟「わかっている!!」
クルッ スタスタ…
団員2「本当に、申し訳ない……!」
敷波「……なんなんだろーね、あれ」
ブリジット「一発誤射してやりたかったでありますな!」プンスカ!
初雪「来るなって言われなかったのかな……」
敷波「さあ? 自分の都合のいいように受け取ったんじゃないの?」
船員「お待たせしました」スッ
敷波「あ、おかえりなさい。どうでした?」
船員「南の海上に艦娘が確認できました。こちらに近づいてきているとのことですので、すぐ退避できるよう回頭することにしました」
船員「ですので、多少揺れるかもしれませんが、ご容赦いただければと思います」
180 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:45:45.15 ID:QNJUjz5Qo
ヲ級「……近ヅイテ、キテイル……?」ジッ
船員「っ! そ、そうですが……!」ビクッ
ヲ級「ソウカ……」
船員「……心配、ですか?」
ヲ級「……」コク
船員「申し訳ないのですが、この船に武装はありません。この船を警護している艦娘にも、極力戦闘に参加しないよう伝えてあります」
ヲ級「ワカッテイル。私タチモ、コノ船ヲ、戦イニ巻キ込ム気ハナイ。最悪ノ事態ニナレバ、逃ゲルシカナイ……ナ?」
船員「そ、その通りです……! とりあえず、お渡しする予定だった書類を、いまこちらへ運んでおります」
船員「私共の代表もこちらに参上しますが、急がせますので今少しお待ちいただけますでしょうか」
敷波「はーい」
ヲ級「……」
初雪「大丈夫かな……」
ヲ級「心配ナラ、偵察機ヲ飛バソウカ」
初雪「……ううん、やっぱり、いまはいい。気が散っちゃうし、話が終わってからにする」
181 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:46:31.54 ID:QNJUjz5Qo
ヲ級「……!」
ゾロゾロ…
代表「おお!! やあやあ、お待たせした。君たちがあの島の代表でやってきた艦娘だね? 私が派遣団の代表だ」
敷波「あなたが? あたしの名は敷波」
初雪「初雪、です……」
敷波「こっちは深海棲艦の空母ヲ級ちゃん」
ヲ級「……」
代表「そうかねそうかね、是非是非よろしく頼むよ」
敷波「あー、握手はいらな……」
代表「いやいや、そう言わずに。国際的にも握手は重要だからね」ニコニコ ガシッ
敷波「あー……」ギュ
代表「君もだね」ガシッ
初雪(……この人、強引)ギュ
ヲ級「……」
182 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:47:16.18 ID:QNJUjz5Qo
代表「さて、今回は生憎、話す時間がないということだが、我が国は、あなたがたとは友好的な関係を結びたいと思っている」
代表「まずは、ぜひ、その旨をあなたがたの代表である提督に伝えていただきたい」
代表「そして、次回は是非に、顔を合わせて会見できることを期待している。歴史的な第一歩を踏み出す場になるだろうからね!」
敷波「……」
初雪「……」
ヲ級「……」
代表「しかし、いくら艦娘とはいえ、君たちのような子供たちには条約の締結は難しいのではないかな?」
代表「次はそういった情報に詳しい、大人たちを呼んでくれたまえ」ニコニコ
敷波「……別に、わからなくないんだけどなあ」ボソッ
代表「それから、締結に向けた書類はこちらに用意した」
代表「これを持ち帰ってもらって、提督に前向きに検討していただくよう、是非にお願いしたい」
敷波「……提督、読むかな?」ヒソヒソ
初雪「面倒って言いそうだけど……多分、読むと思う」ヒソヒソ
183 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:48:00.74 ID:QNJUjz5Qo
代表「では、こちらもお渡ししよう。こちらの二人に書類の入ったアタッシェケースを渡してくれ」
団員3「はっ!」
団員4「こちらをどうぞ!」
敷波「……」ウケトリ
初雪「……」ウケトリ
ヲ級「私ガ鎮守府マデ空輸シヨウカ」
敷波「そんなことできるんだ?」
初雪「お願い、していいの……?」
ヲ級「任セテ……」ウケトリ
深海艦載機<シュパァァ…!
初雪「おお、早い……」
代表「……だ、大丈夫なのかね?」
敷波「ヲ級ちゃんも任せてって言ってくれてるし、大丈夫だと思うよ。どうもお世話になりました」ペコリ
代表「お、おお」
184 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:48:45.66 ID:QNJUjz5Qo
敷波「よし、それじゃ帰ろっか」
代表「は、早いな! それでは、あなたがたの提督にくれぐれも……」
敷波「ビスマルクさんは警護中かな……あれ、さっきの案内役の船員さん、どこいったのかな?」
初雪「? どこだろ……」
ヲ級「アノ人、ジャナイ?」
敷波「あ、ほんとだ!」タタッ
代表「お、おい! ちょっと待ってくれ!」
ヲ級「ナニカ……?」
代表「い、いや、その、君ではなく……」
ヲ級「……」
敷波「船員さーん」
船員「おや? もう話が終わったんですか」
敷波「うん、書類ももらって、艦載機で鎮守府に送ったし」
船員「艦載機? ああ、なるほど。彼女は空母でしたね」
185 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:49:30.19 ID:QNJUjz5Qo
初雪「? ヲ級ちゃん……代表の人と話してたの?」
ヲ級「イイエ。話ハシテイナイ」
代表「し、敷波? と言ったね、鎮守府の連絡先を……!」
敷波「え? 私?」
ヲ級「スコシ、イイカシラ」
代表「!」ビクッ
ヲ級「……アナタ」ユビサシ
船員「わ、私ですか?」
ヲ級「ソウ。アナタ……私ガ、コドモニ見エル? ソレトモ、オトナニ見エル?」
船員「子供? い、いえ……あくまで私の感覚ですが、子供には見えないですね」
船員「背丈というか、目線が私とあまり変わらないですし、私の国の成人女性の平均より、やや高いくらいだと思います」
ヲ級「……ソウ」
敷波「ヲ級ちゃん、どうしたの?」
ヲ級「コチラノ男ガ『コンナ子供ヲ使イニ寄越スナ、大人ト代ワレ』ト言ッテイタデショウ。私モソウナノカ、問イタカッタダケヨ」
代表「……そ、そういう意味では」
186 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:50:15.60 ID:QNJUjz5Qo
ヲ級「私ガ子供ニ見エナイト言ウノナラ、ナゼ私ト話ソウトシナカッタ? 最初カラ、深海棲艦ト話ス気ハ、ナカッタノ?」
代表「い、いや……それは」
ヲ級「ソレトモ、私ガ、オソロシイ……?」ジロリ
代表「うっ……い、いやいやいや」
船員「代表殿? 深海棲艦も対話ができると、あれほど……!」
初雪「……ああ、やっぱり」
敷波「なんとなくそんな気はしてたんだよね。この人、私たちしか見てなかったし」
ヲ級「コチラノ彼ハ、オソラク、コレマデ深海棲艦ト戦ッテキタコトノアル、海軍ノ関係者ジャナイカシラ」
敷波「!」
ヲ級「警戒シツツモ、デキル限リ、普段通リニ努メテイタ……ソウ、見エタケレド」
船員「……ええ、そうです。艦娘を率いたことはありませんが」
ヲ級「ソウ……皮肉ネ。海軍ハ、私タチヲ『敵』トシテ扱ッテイタトイウノニ」
ヲ級「政府ノ……内地ノ人間ハ、私ヲ『敵』トシテモ、認メヨウトシテイナイノダカラ」
ヲ級「海軍ハ、イッタイ『何』ト、戦ッテイルノカシラネ……」ウツムキ
船員「……」
187 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:51:00.78 ID:QNJUjz5Qo
ヲ級「先ニ、降リテルワ」
コツコツ…
敷波「……私たちも、戻ろうか」
初雪「うん……あ、そうだ。船員さん、名刺、貰っていい?」
船員「……わ、私の、ですか?」
初雪「うん」
敷波「そうだね、こっちの人より、お兄さんと話す方がいいなあ。ね、今度は一緒にお話ししようよ」
船員「……わかりました、お渡ししましょう。力になれるかはわかりませんが」スッ
初雪「なにか、あったの?」
船員「私も元海自ですので、いろいろと……正直なところ、深海棲艦には、あまりいい思いというか、良い感情はありません」
敷波「あー、そっか……それじゃあ、私たちのことも」
船員「い、いえ、そういうわけでは……」
初雪「私は、どっちでもいい。ちゃんと、私たちとも、ヲ級ちゃんとも、話をしてくれたし」
船員「……」
敷波「それ、大事かもね。ほら、深海棲艦の怖さを知ってる人じゃないと、ちゃんと話ができない気もするし」
188 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:51:45.26 ID:QNJUjz5Qo
敷波「とにかく話をしようってのはわかんなくもないけど、あんまりぐいぐい来られても困るからさ」チラッ
代表「……」
敷波「司令官も、どっちかって言うと、積極的に交流、じゃなくて、どうやってつかず離れずにするか、って考えだし、ね?」
船員「つかず離れず……ですか」
敷波「人に迷惑をかけないように、静かに暮らしたいんだって」
初雪「……そろそろ、戻ろう。ヲ級ちゃん、待たせたくないし」
敷波「うん。じゃ、また次があったらよろしくね! ビスマルクさんにもよろしく伝えてね!」ブンブン
初雪「お邪魔、しました」ペコリ
タタタッ…
船員「……」
代表「……我々は、嫌われてしまったか」
船員「いえ。あの艦娘は、次があったらと言ってくれました。これが初めての会談にならなかったことを喜ぶべきでしょう」
船員「これまで、生存している深海棲艦とここまで近づいて、殺されずに生き残った人間は、おそらく他に、そうはいないはず」
船員「それどころか、あの深海棲艦は、この船を戦闘に巻き込む気がない、とまで言っていました」
189 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:52:30.56 ID:QNJUjz5Qo
船員「あの島の深海棲艦たちが対話に応じようとしているというのも、あながち嘘ではないように思えます」
代表「……」
船員「私の名刺も持っていきました。なにかしら次があるかもしれないと……望みをつなぐこともできたのかもしれません」
船員「これで意識を改めて次に臨むこともできるでしょう」
代表「では……!」
船員「……ですが」
代表「!」
船員「事前に話をしたでしょう! 小さい子供の姿をしていても、彼女たちは船の魂を持つ艦娘だと!」
船員「あの深海棲艦を前にして怖気づくのは仕方ないにしても、なんなんですか、子供だと思ってあの態度は!」
船員「自分も人のことを言えた立場ではありませんが、あの振る舞いは完全に良くありませんよ!?」
代表「あ、いや、すまない……」
船員「そもそも、なんで艦娘と話をしたこともないあなたが、交渉の前日になって突然抜擢されたんです!?」
船員「もともと来るはずだった担当者はどうしてこの土壇場で外されたんですか! 特に彼とは何度も話し合ってきたというのに……!」
船員「使節団のメンバーも大幅に入れ替えになって……方針が変わったんですか!?」
代表「う、うん……そうだな……その、彼は、仕方ないんだ……」
190 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:53:15.89 ID:QNJUjz5Qo
船員「……? なにか、御存知なんですね」ヒソッ
代表「……他言は控えてくれ」ヒソッ
代表「彼等は、暗殺されかけた」
船員「!? ……それは、深海棲艦との和解を拒む団体によるものですか?」
代表「わからない。ただ、そういう状況だった、としか聞いていないし、誰がやったかすら見当がつかないらしい」
代表「彼だけではなく、艦娘に造詣の深い者が狙われ、結果、本来この船に乗るはずではなかった者たちも、乗らざるを得なくなった」
船員「なんのために……!?」
代表「私も、それ以上は本当に知らないんだ。本当だ……!」
船員「……」
191 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:54:00.74 ID:QNJUjz5Qo
* 墓場島 東沖 洋上 *
イサラ「はー……いろんな意味で我慢するのが大変だったっス」
敷波「みんな黙っててくれてありがとね。とりあえず目的は達成できた感じかなー」
エレノア「なら良かったわ。最後に出てきた奴にちょっとむかついてたんだけど、なかなかいい意趣返しができたんじゃない?」
初雪「うん……握手、いらなかった」
ヲ級「……ソレヨリ、南ノ敵艦隊ガ、気ニナルワ」
ブリジット「もしや、それが心配で、航空部隊で書類を届けたでありますか」
ヲ級「……」コク
敷波「司令官がそっちに話をしに行くって言ってたんだよね」
エレノア「そうね。話が終わったらすぐ引き上げる予定だって言ってたけど」
敷波「それなら、少しだけ様子を見に行こう。戦闘が発生したら、すぐに救援を要請して、艦隊を出してもらわなきゃ」
初雪「うん……」
イサラ(……帰りたかったのに、そうもいかなくなったっス……)ガックリ
192 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:54:51.13 ID:QNJUjz5Qo
といったところで、今回はここまで。
193 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:45:46.48 ID:zrumdKJWo
今回登場のメディウムはこちら。ちょい役です。
・ソニア・スプリングフロア:バドミントン選手のような風貌の少女のメディウム。床が斜めにせり上がり、少し遠くに人を跳ね飛ばす罠。
ツインテールが可愛らしい快活な少女。交流のため、戦わない時は罠の名前で呼ばず、名前で呼ぶようニコたちにお願いしている。
・クレア・スマッシュフロア:テニスプレーヤーのような衣装の女性のメディウム。床が斜めにせり上がり、遠くに人を跳ね飛ばす罠。
姉妹の中では自分が一番いけていると思っているお転婆娘。人を呼ぶときの呼び方が少々独特。軽率な失言が多いことを自覚している。
ちなみにフロア3姉妹は長女ユリア・カタパルト、次女クレア・スマッシュフロア、末妹ソニア・スプリングフロアの3人。
おまけでアロー4姉妹は長女ノイルース・ファイアーボール、末妹ミリーエル・アローシューター。
真ん中のディニエイル・コールドアローとグローディス・サンダージャベリンは、どちらが姉かは明確になっていません。
それでは続きです。
194 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:46:30.95 ID:zrumdKJWo
* 墓場島 南沖 *
由良改二「あの建物は、壊さなくて良かったんですか?」
赤城改二「良かったと思いますよ。あの屋敷はもぬけの殻、無駄に弾薬を消費する必要はありません」
赤城改二「資材が置いてあるわけでもない無人の建物を破壊したところで、敵の警戒が強まるのがが関の山」
赤城改二「このまま敵本拠地を目指しましょう」
由良改二「それにしても……本当に、生き物の気配がありませんね」
赤城改二「ええ、不気味なほど静かですね。敵影らしい敵影もまったく見えません」
榛名改二「先程、川提督の艦隊から島の南に、この島の提督らしき人影があったと報告がありましたが……」
大和改二「……」
陸奥改二「敵の司令官を討つか、放っておいて敵の拠点を潰すか……どちらがいいかしら」
朝潮改二「私は、敵拠点を潰したほうが良いと考えています。活動拠点を……」
ボーン!
朝潮改二「!? 砲撃です! 9時の方向、近距離からの夾叉弾です!」
赤城改二「そんな!? 敵影はどこにも……!」
砲弾<ポチャッ
陸奥改二「明らかに当てる気がないとはいえ……誰かしらが私たちを狙っていて、いつでもやれるぞという脅しのつもり?」
榛名改二「撃ってきた方角は、報告にあった人影がいるという方角に合致していますね」
赤城改二「これは……来いと言うことでしょうか」
大和改二「……仕方ありませんね。誘いに乗るとしましょう。皆さん、くれぐれも油断しないように」
195 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:47:15.74 ID:zrumdKJWo
* 墓場島 南岸 *
パシャパシャッ
提督「よう、連中がこっちに向かって来てるようだな」
クレア(イ級に騎乗)「あぶなかったよ〜、もしかしたら素通りするかもしれなかったから!」
ソニア(ロ級に騎乗)「私たちを無視して館に向かわれたら、艦隊を出す気だったんでしょ?」
提督「まあな。再建途中の鎮守府を壊されたらたまったもんじゃねえ。余計な苦労はしたくねえから、丸め込めりゃあいいんだが」
提督「とりあえずお前たちはもうしばらく隠れててくれ」
提督「深海棲艦にメディウムが乗れば完全に潜んでいられるとはいえ、連中の力量もどれほどのもんかわからねえし」
提督「罠を発動するときはそれも定かじゃないから、くれぐれも慎重にな」
クレア「オッケー!」
イ級「リョウカイ」
ソニア「それじゃまたあとでね!」
ロ級「カクレルー」
パシャッ
シーン…
提督「……さてと。来やがったな……」
196 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:48:00.71 ID:zrumdKJWo
ザザァ…
提督「ったく。この辺りで戦闘すんな、って取り決めたはずなんだがな。なんで臨戦態勢で、艦載機まで飛ばしてやがんだ?」
赤城改二「……」
提督「大和、陸奥、榛名、赤城、由良、朝潮だな? 全員第二改装済みか」
陸奥改二「……」
提督「なんだ、だんまりかよ。まあ、装備に関しちゃあ守秘義務とかだって言うんなら、それはそれでいいけどよ」
提督「で、お前らはどこの鎮守府の艦隊で、この領海で何してんだ?」
榛名改二「……」
提督「俺たちは海軍の大将と話をつけて、そのうえで非交戦地域としてたはずだったんだけどなあ? 聞いてねえのか?」
朝潮改二「……」
提督「なんで俺が一方的に喋らなきゃなんねえんだ。おい、用がないならとっとと帰れや」シッシッ
大和改二「……あなたは、この島にあった鎮守府の提督ですね?」
提督「ああ、そうだ、元××島鎮守府の提督だ。今は少尉だが、中佐になって退役する予定だ」
赤城改二「敵の総大将がお出迎えですか」
提督「おいおい、もう敵扱いかよ……確かに海軍からは離れるが、別に海軍と事を構えたつもりはねえぞ?」
197 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:48:46.23 ID:zrumdKJWo
朝潮改二「人間に害をなす深海棲艦と密約を結び、海軍を裏切っておいて、事を構えるつもりはない……?」
由良改二「おまけに中佐になるとか、何を寝ぼけたことを……!」
提督「は? お前らこそ寝ぼけんな。いつ俺が海軍を裏切った? それより海軍の連中がここで何をしようとしてたか知らねえのかよ」
陸奥改二「……話にならないわね」イラッ
提督「そりゃこっちのセリフだ。最初から勝手に敵だと決めつけて聞く耳持たねえんじゃ、その辺の野良の深海棲艦と一緒じゃねえか」
朝潮改二「深海棲艦と一緒にするか……っ!」
提督「話ができないって点じゃあ同類だろうが。ったく、なんでそんなに血の気が多いんだよ、くそが」
赤城改二「……あなたが、わざわざ我々の前に現れたのは何故です」
提督「俺は話をしに来た」
由良改二「話を……!?」
提督「ああ、どういう事情でこの島の領海に入ったのか、お前らの言い分を聞きに来たんだ」
提督「この辺で暴れられちゃ迷惑なんで、その警告も兼ねてな」
提督「さっきも言ったが、俺たちは海軍と交渉した結果で、この海域を非戦闘海域にしてる」
提督「ここへ来た理由が、俺たちが納得できる言い分なら、聞ける分は聞いてやるさ。じゃなきゃ、海軍へ報告だな」
陸奥改二「偉そうに……何の権限があって海軍と話せると思ってるのかしら」ボソッ
198 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:49:46.92 ID:zrumdKJWo
提督「何やらぶつぶつ言ってやがるが、名乗る気も話をする気もないならとっとと帰れよ。ったく、どこの野良艦娘だ? お里が知れるな」
朝潮改二「言わせておけば……!」
大和改二「我々は曽大佐の鎮守府の艦娘です。中佐と名乗りましたね? であれば大佐麾下である我々の命令に従いなさい」
提督「断る。俺は今、この島の統治を最優先事項にしている。大将も了承済みだ、お前らの感情に任せた私的な命令を受け付けることはできない」
大和改二「統治……!? どういう意味です、あなたの企みを白状なさい。一体何のために、深海棲艦を率いているのです?」
提督「率いる……? そんなつもりはねえんだが……俺の庇護下にいるわけだから、その言い方もあながち間違いじゃねえか」
朝潮改二「なにを独りでぶつぶつと……!」
提督「ちゃんと齟齬がねえように確かめてるだけだ。で、俺の目的は、平たく言えば艦娘と深海棲艦の保護だ」
由良改二「保護?」
提督「そうだ。深海棲艦の中で、人間や艦娘と戦う気のない連中を保護してる」
提督「そのために、この島の海域を海軍に言って非交戦海域にして、面倒を避けてる。それだけだ」
榛名改二「……戦う気のない? 深海棲艦が?」
赤城改二「これまでさんざん海の安全を脅かしてきた深海棲艦を信用しろと?」
提督「そこは信用しろとしか言えねえな。これでも平和的に話し合いをしたんだぞ、X大佐所有の医療船の甲板上で」
提督「そこで、俺と、ここにいる深海棲艦と、海軍の将官たちとで、この島を割譲してもらうよう交渉して取り決めたんだ」
199 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:50:31.13 ID:zrumdKJWo
陸奥改二「深海棲艦がどうしてそんなことを?」
提督「戦いたくないからだって言ってるだろ。だから、こうして海軍に協力する姿勢を見せてんじゃねえか」
赤城改二「そんなことをすれば、深海棲艦からは裏切り者として扱われるのでは?」
提督「そう思う奴らもいるかもしれないが、それ自体は別に構わねえな」
陸奥改二「構わない? 想定内だってこと?」
提督「そういうことだ。俺たちは自衛したいだけであって、なにも海軍や艦娘がすべての深海棲艦を攻撃するなと言ってるわけじゃねえ」
提督「俺たち、つまり、この島に住む深海棲艦が、海軍と戦わないようにしたい、って言ってんだよ」
朝潮改二「そんな都合のいい話があるか!」
提督「その都合をつけようって話じゃねえか。人間だって同じだろ?」
提督「異なる国家間で武力衝突が起こらないように、条約なりなんなり結んでるじゃねえか。それと同じだ」
榛名改二「それでは、ほかの海域の深海棲艦はどうなっても構わないと?」
提督「そうだな。少なくとも今の時点で、余所の海域の深海棲艦を俺たちが守る義理はない。何の約束もしてねえし、今は俺たちだけだ」
提督「ただ、こうやって俺たちが海軍と取引することで、他にも海軍と交渉を望む深海棲艦が現れるかもしれないし」
提督「逆にそれが気にくわないからと攻撃を仕掛けてくる深海棲艦が現れるかもしれない。お前たちみたいになあ?」ジロリ
榛名改二「!」
200 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:51:16.21 ID:zrumdKJWo
提督「人間に対する深海棲艦の悪意の度合いが分かって、それで戦いを避けることができるとなれば、それはいいことだと思わねえか?」
提督「俺たちの考えを理解してくれてる海軍のお偉方は、おそらくそういう効果を期待してるんだろう」
提督「俺もそうなって欲しいと思ってる。そうなりゃあ、俺たちも戦わずに済むようになるからな」
提督「もちろん、笑顔で近づいて騙し討ちを図る連中も出てくるだろう。深海棲艦からも、人間からも」
朝潮改二「我々海軍を侮辱するか!!」
提督「そこは誰もお前らのことだなんて言っちゃいねえよ。これまでの人間の歴史を顧みても、その可能性は十分あり得るだろうが」
提督「俺もこれまで海軍にいて、いろんな救いようのねえ人間を見聞きしてきた。だからこそこうやって警告してやってんだ」
朝潮改二「海軍に、そんな人間がいるわけがない!!」
提督「いやいや、それがまあ、情けないことにそれなりにいるんだよ……例えば、艦娘にセクハラ仕掛けて逃げられた奴とか」
陸奥改二「は?」
提督「上官に手柄を取らせるために、手前のところの艦娘に囮になって死ねと命じた奴とか、艦娘を売春させようとした奴とか」
赤城改二「……」
提督「余所の鎮守府の艦娘を騙して拉致しようとしてた奴とか、艦娘を使って趣味の悪い実験してた奴とか」
由良改二「なによそれ……」
201 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:52:00.64 ID:zrumdKJWo
提督「そういう阿呆が海軍で艦娘の指揮を執ってたりしてたんだよ。知らねえのかよ」
朝潮改二「……嘘だ……っ!」
提督「ほかにも、鎮守府間でマネーロンダリングしてた奴らもいれば、手前の出世のために親を殺そうとした屑もいるし」
提督「そんな連中の不正を暴こうとして消された奴もいれば、拉致されそうになった部下の艦娘を庇って殺された奴もいるそうだ」
艦娘たち「「……」」
提督「揃いも揃って初めて聞いた風な顔してやがんな」
榛名改二「……よくもそんな出鱈目を」
提督「お前らが戦場にしか目を向けてねえから、内地で何が起きてるか全然知らねえってだけだろう? 曽大佐だって知ってるはずだ」
提督「実際に、うちに流れ着いた艦娘のなかには、死ぬまで戦わされて轟沈した艦娘もいるからな。お前も同じ目に遭いたいと思うか?」
榛名改二「構いませんよ。一体でも多くの深海棲艦を沈められるのなら、私は本望です」
提督「……」
赤城改二「なんです、その顔は」
提督「いやいや……なるほどこりゃ駄目だ。話にならねえ」ハァ…
赤城改二「話をしに来た相手が、話を放棄しようというのですね」
提督「そういう意味じゃねえよ。可哀想な連中だなって感想を抱いただけだ」
朝潮改二「なっ……!? 私たちを愚弄するか!!」
202 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:52:45.67 ID:zrumdKJWo
提督「いやいや、可哀想じゃねえか。戦争で戦って勝つ以外の喜びや楽しみを、お前らは知らねえってことだろ」
提督「日頃の飲食だってそうだ。面白い本を読んだり、歌を聴いたりしないのか? 他愛のない雑談はしないのか?」
提督「新聞は見てるか? 世の中で人がどんな事件を起こしてるか、どんな歌が流行ってるか、知ってるか?」
提督「余所の鎮守府の艦娘が、普段何をしてるか知ってるか?」
由良改二「なんでそんなものを知る必要があるの?」
提督「お前らは、平和のためなんて大仰な大義名分掲げてやがるが、その平和ってのが具体的にどんなものか、分かってねえだろ?」
提督「世の中の人間が言う『幸せ』ってもんを、少し勉強してこいって言ってんだよ」
由良改二「私たちは艦娘よ。そんなもの、知る必要はないわ」
提督「そんなもの呼ばわりかよ……お前ら、戦争が終わったらどうする気だ?」
赤城改二「戦争が終わってから考えます。今からそんなことを考えさせてどうしようというのです?」
提督「戦うことしか知らない奴は、戦う以外の行動をしない。知識にない、知らないことを実行することはできないからな」
提督「俺はここの艦娘や深海棲艦に、戦う以外の世の中の普遍的な幸せを与えて、余計な争いを起こさせないようにしようとしてんだよ」
大和改二「それこそ余計な真似というものです。深海棲艦の本質は戦争と破壊」
大和改二「海を破壊する深海棲艦を殲滅することこそ、私たち艦娘の使命であり、人類の幸せにつながると……」
提督「だからそれしか言えねえのかよ……少しは違うことを言え、この無菌室育ちが」アタマオサエ
榛名改二「無菌室……っ!?」
203 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:53:31.87 ID:zrumdKJWo
提督「無菌室だろうが。戦争以外の何も知らねえ純正培養の箱入り戦闘狂どもめ」
提督「むしろ、お前らこそ戦場しか見ようとしてねえな? おそらく曽大佐から『雑念が入らないように』とか言われてんだろうが……」
提督「娯楽とか、世俗のあらゆる浮ついたものを、自分には不要なもの、下衆なものだと考えてんじゃねえのか?」
提督「そういう欲求めいたものを我慢して、滅私奉公している手前の姿が崇高で誇らしいと思って、他人を見下してんじゃねえのか!?」
赤城改二「馬鹿なことを……根も葉もない想像の話でしかありませんね」
提督「だったらもうちょっとマシな反論しろよ。自分の正当性をちゃんと言葉で表現しろってんだ」
提督「まともに言い返せねえから、結局は言葉で返さず暴力で自分の正当性を海軍に認めさせようとしてるってことじゃねえか」
提督「ったく、ここまで話が平行線になるとは思ってなかったぜ。これだから狂信者は面倒臭え……」ハァ
大和改二「狂信者で結構。深海棲艦を迎合し、人の世を破壊しようとしているあなたよりは、狂っているとは思いません」
提督「あぁ?」
大和改二「曽提督は、現状を憂いておられます。海軍の中に、深海棲艦を許容するような流れが作られたのでは、人類に未来はないと」
大和改二「海は、元通りにならなければなりません。深海棲艦が跋扈する海に、平和は永遠に訪れません」
大和改二「だというのに、かつて海軍に身を置きながら、深海棲艦に肩入れして保護しようとする。血迷った判断と言わざるを得ません」
大和改二「私たちは、そのような誤りを正し、海軍の模範として、ありとあらゆる深海棲艦を撃滅し」
大和改二「争いのない平和な海を取り戻すことが至上命題であると、私たちの力をもって知らしめなければならないのです!」
204 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:54:15.77 ID:zrumdKJWo
提督「……何が何でも深海棲艦を殲滅するってか」
大和改二「理解できたなら投降しなさい。深海棲艦に与することが人間にとってどれほど害悪かを知らない愚か者め!」ジャコン
提督「同じこと何度も言わせんな。俺に砲を向けるより先に、その話を海軍の上層部の人間に言って聞かせて頷かせるのが筋じゃねえのかよ」
大和改二「ここで私たちが成果を出せば、寝ぼけ眼で判断に悩んでいる上層部も、すっきりと目を覚ましてくれるでしょう」
提督「つくづく駄目だなこりゃ……思った以上に狂ってやがる。可哀想に」
朝潮改二「っ!! いい加減に……!!」
提督「うるせえな。少なくとも上の決定や判断を無視してここに来てる時点で、お前らは命令違反じゃねえか」
提督「その時点で、どれだけ上の人間を馬鹿にしてるか、理解してるか? お前らは海軍と言う組織に反抗したって見なされるんだぜ?」
大和改二「……」
提督「ここで引き返せばまだ厳重注意で済むかもしれねえぞ。逆に、撃てばその時点で曽大佐が責任を取ることになるだろう」
提督「それにだ。丁度、政府の役人があっちの東の沖に来てるってのに」ユビサシ
提督「その船を盾にして戦おうなんて考えてる奴らのどこが狂ってねえって言うんだ?」
大和改二「……何を根拠にそのようなことを。詭弁ですね」
提督「詭弁だとしたら、そもそも今日この日に、政府の船に帯同しないでここへ来るわけがねえよな?」
大和改二「……」
205 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:55:00.76 ID:zrumdKJWo
提督「俺も悪人はいろいろ見てきててなぁ、それなりにそいつらの考えってもんを知ってて、それなりに想像できるんだ」
提督「自分のやってることを正当化するために、自分なり弱者なり誰かをわざと被害者に仕立て上げて、暴力を振るっていい理由を作る」
提督「狡い悪党の常套手段だ。今まさにお前らが、政府の人間を被害者に仕立てて、戦争に利用しようとしてるじゃねえか」
朝潮改二「そ、そんなわけがあるか!!」
提督「だったら今すぐ帰れよ。あの艦艇を護衛しに来たわけでもねえお前らが、この場所にいること自体が場違いで間違いだろうが」
提督「国民の人命と財産を守るのが海軍の使命だって言ってた奴がいる。政府の人間だって、お前らの守るべき国民だろう」
提督「その国民を、万が一にも戦闘に巻き込まないようにするのが、軍人としての務めでありあるべき姿、ってやつじゃねえのか」
提督「俺みたいな素人に指摘されて、恥ずかしくねえのかよ。それとも、ここで力づくで口を封じるから問題ないとでも?」
大和改二「フッ……妄想もそこまでいくと哀れですね」
提督「なんだそりゃ。図星突かれた奴の台詞じゃねえか。ますますもって曽大佐以外の人間と話をしたことがねえんだな?」
大和改二「……」ムッ
提督「こっちはその辺含めて海軍本営に根回し済みなんだよ。俺たちに手を出して曽大佐の立場が良くなることは絶対にねえぞ」
陸奥改二「あなたが本営に直接根回しできるというの!?」
提督「取れるに決まってんだろ? 本営の中将麾下の艦娘がわざわざこっちに連絡員として来てくれてんだぞ?」
206 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:55:45.81 ID:zrumdKJWo
陸奥改二「なんでそんな、あなたの都合のいいようにことが動いてるの!?」
提督「そもそもこの島がこうなったのは、J少将が俺を巻き添えにして大将たちの暗殺を企てたからだ」
提督「暗殺されかけたのはかつてのお前らの上官のH大将たちだが、ここで俺も含めて深海棲艦に命を助けられた」
提督「だからこそ、あの頭の固そうなH大将が俺たちの提案を受け入れてくれてるんだ。それを裏切っただのなんだのと……ひでえ言い草だ」
大和改二「そんなところから腐り始めていたというのですか……!」
提督「腐ってんのはお前らだろうが。深海棲艦の情報をアップデートできずに古い頭で思考停止しやがって」
提督「根拠があるにもかかわらず、自分の考えを押し通そうとするから、こういう恥ずかしい事態になってるって理解しやがれ」
提督「とにかく。もしお前らがこの場で俺たちを攻撃しようものなら、特警隊がお前らの海軍への翻意を疑い、鎮守府に押し寄せるだろう」
提督「仮にあの船の人間に被害が出たとしても、その怒りの矛先が必ずしも俺たちに向くとは思わないほうがいい」
提督「少なからず、余計なことをした曽大佐の判断が間違っていたと言う奴が出てくるはずさ。そうならないうちに、おとなしく帰んな」
提督「俺たちは、これでも上の連中とはできる限り穏やかに事を済まそうとしてきたんだ。平和的解決を望んでるのに、邪魔すんなよな」クルリ
赤城改二「どこへ行くつもりです!」
提督「帰るんだよ。話は終わりだ、だからお前らも帰れ。帰ってお勉強してから話し合いに来い」シッシッ
由良改二「戦わないっていうの……!?」
提督「おう、どっかの誰かさんに倣って、立ち入っただけなら……一発までなら誤射ってことにしとくさ。だから、次はないと思っとけ」
207 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:56:30.90 ID:zrumdKJWo
陸奥改二「どうするの? 曽提督が話していた以上に、向こうは私たちの情報や事情を把握してるみたいよ」
由良改二「これは、曽提督に急ぎ報告する必要がありますね……」
赤城改二「ええ。いまの話が本当なら、この場の行動も慎重にならざるを得ません」
朝潮改二「敵総大将を目の前にして、みすみす見逃すことになるなんて……!」
榛名改二「大和さん、どうしましょう……?」
大和改二「……」
提督「……!」ピクッ
陸奥改二「?」
由良改二「なに? いきなり振り向いて……」
提督「おい……お前ら、早く島から離れたほうがいいぞ。お前らの別動隊もだ」
大和改二「どういうことです?」
提督「南から、やべえのが近づいて来てやがる……おい赤城! お前も偵察機があるなら南に飛ばせ!」
赤城改二「は!? 誰に向かって……!」
提督「いいから南を警戒しろ! 俺たちも艦隊を出す!」
提督「話だけは聞いていたが……『視』たのは初めてだ。あれがレ級か!」
陸奥改二「レ級……!?」
208 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:57:16.06 ID:zrumdKJWo
* 墓場島 南沖 *
* 川提督の支援艦隊 *
霧島改二「通信を聞く限り、話し合いで終わってしまったようですが……」
コロラド「……なんだか、戦いたくないって話に聞こえなかった?」
飛龍改二「みたいですね。それから、南がどうとか聞こえたような」
蒼龍改二「南って……島の反対側?」クルッ
シャァァアアア…
綾波改二「えっ!? み、みなさん! 魚雷が……か、回避を!!」
天龍改二「それだけじゃねえ! 上からも来やがった!!」
深海艦載機<ゴォォォ…
飛龍改二「やばっ、発艦が間に合わな……」
霧島改二「早く回避を!」
天龍改二「不意打ちかよ! ちっくしょうがああ!!」
209 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:58:00.78 ID:zrumdKJWo
* 墓場島南岸 *
提督「間違いねえ……あれは戦艦レ級だ!」
ドーン…
由良改二「あの音は……川提督の艦隊!?」
提督「おい赤城、お前も見えたか!? あの深海棲艦は戦艦レ級だろ!?」
赤城改二「……話ができすぎていますね。あなたが最初から仕組んだのでは?」
提督「んなわけあるか! 罠だったら最初っからその辺に潜ませてる! あいつらよりお前ら直接狙ってな!」
朝潮改二「赤城さん、本当に戦艦レ級が来たんですか!?」
赤城改二「……まだ敵影を確認できていません。そして、なぜ彼がレ級だと分かったのかも理解できません」
由良改二「だとしたら、やっぱりあいつが嘘を……!」
提督「おい。あのレ級、顔にでけえ傷があるぞ」
赤城改二「傷……!?」
提督「ああ、右眉の上から左の頬にかけて、引き裂いたような傷だ。お前ら、心当たりはねえか?」
陸奥改二「……ねえ、大和? それってもしかして……」
大和改二「先週、南方で仕留め損ねた個体だとでも……!?」
210 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:58:48.04 ID:zrumdKJWo
赤城改二「偵察機からの報告がきました……どうやら、そのようですね」
提督「知ってんだな?」
流星<バウーン!
提督「!」
島妖精A(in流星)「提督、艦隊出撃したぞ! 戦闘班と救助班のため2艦隊だ!」
提督「よし、追い払えれば御の字だ! 無理はするなと伝えろ!」
流星<バウーン…
朝潮改二「い、いま、妖精さんと話していたような……!」
由良改二「本当? なんでそんな人間が深海棲艦の手先に……!」
ザザァ…!
大和「提督! 私たちがこれから南沖の艦隊の救助に向かいます!」
提督「おう! とにかく保護を頼むぞ!」
榛名「お任せください!」
那珂「行ってきまーす!」フリフリ
山城「なんで私が……」
朧「空母の皆さんがいないから、代わりに索敵をお願いするんです!」
如月「行ってくるわねー!」
211 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 20:59:31.95 ID:zrumdKJWo
大和改二「なるほど……あれがこの島の艦隊の大和ですか」
泊地棲姫「ナルホド……アレガ第二改装ノ大和、カ」ザッ
(不意に提督の背後に現れる泊地棲姫)
大和改二「……!」
提督「泊地棲姫……! 来てるとは聞いてたが、お前どこに隠れてた?」ヒソッ
泊地棲姫「オヤ、気付カナカッタノカ?」
提督「……なるほど、ニーナか」
ニーナ(in泊地棲姫の艤装)「はい、私の力で隠れておりました」
大和改二「こそこそと、日陰者同士で何を企んでいるのやら……!」
泊地棲姫「オ前タチノヤリ取リ、一部始終ヲ聞カセテモラッタ。コノ男ニ危害ヲ加エル気ナラ、タダデハ帰サナイゾ……?」ニヤリ
ザザァ…
提督「なんだ? 泊地棲姫んとこの深海棲艦が出撃してんのか? 軽巡棲姫にタ級、ヲ級、ツ級、ヘ級……ル級もか!」
提督「同じ深海棲艦だってのに、相手して大丈夫なのか?」
泊地棲姫「アレハ私タチノ仲間ジャナイ。話ガ通ジナイカラナ」
提督「ってことは……」
泊地棲姫「敵トシテ、処理シテイイゾ」
提督「そうかい。じゃあ、遠慮なく沈めさせてもらうか……説得は簡単じゃなさそうだしな」
212 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 21:01:15.63 ID:zrumdKJWo
大和改二「……私たちもレ級を迎撃しましょう」ザァッ
赤城改二「大和さん……!?」
由良改二「レ級の撃破に手を貸すと言うんですか!?」
大和改二「ええ。もとは私たちが仕留めきれなかった艦です。落とし前と言う意味でも、この場で後顧の憂いを断つとしましょう」
大和改二「そのついでに……『あれら』がこの島の主力艦隊だというのなら、この場で沈めます」
大和改二「仮に主力でなかったとしても、私と同じ顔の裏切り者がいるというのは、この上なく不愉快です」ギリ…ッ
榛名改二「それは同感ですね」
陸奥改二「あらあら……涼しい顔して激しいわね。うまくやれるの?」
大和改二「あの男自身が言っていたでしょう、『一発までなら誤射』だと」
大和改二「あの偽物を沈めることで、あの男の醜い本性が曝け出せられれば、いろいろとやりやすくなります」
赤城改二「それに乗じてあの男を討てれば上々、ということですね」
大和改二「ええ、好きに砲撃できる丁度良い理由ができました……これこそまさに天の采配」
大和改二「千載一遇のチャンスです。うまく立ち回りましょう、我らが曽提督の本懐のために」
大和改二「そのためにも多少の犠牲はつきものです。川提督の艦隊も、覚悟の上でしょう……!」
213 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 21:02:00.71 ID:zrumdKJWo
* 墓場島 南沖 *
ザザザザ…!
天龍改二(中破)「来やがったぞ……!」
レ級「……!」ニタァ
綾波改二(中破)「あれは……レ級じゃないですか!?」
天龍改二「上等じゃねえか、ここは俺が……!」
コロラド「俺がじゃないわよ! 私が出るわ、中破した艦は後方に下がってなさい!」
天龍改二「あぁ?」
コロラド「霧島! 大丈夫!? いける!?」
霧島改二(小破)「ええ、いけます!」ジャコン
コロラド「さあ、蹴散らすわ!! Fire !!」
ドガァン!
レ級「!」ギョロ!
レ級「」ブンッ!
ガガァン!
飛龍改二(大破)「なにあれ!? 尻尾で砲弾を振り払った!?」
214 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 21:02:45.82 ID:zrumdKJWo
コロラド「……まずいわ、全然ダメージになってないじゃない!」
霧島改二「そんな馬鹿な……っ!」
レ級「…!」ギロリ
レ級「」グワッ…ドババババ!
蒼龍改二(中破)「な、なんなのあの尻尾!? 滅茶苦茶魚雷を吐き出してるんだけど!?」
コロラド「いいから避けて!! 距離を取るのよ!!」
魚雷<シャアァァァアッ
蒼龍改二「や、やばっ……!!」
霧島改二「危ない!!」
ドガァン!
霧島改二(大破)「く……っ!」
蒼龍改二「き、霧島さんっ!」
霧島改二「……わ、私は大丈夫です、早く避難を」
コロラド「何を言ってるの!? 大丈夫なんかじゃないわ! 霧島も避難するのよ!!」
215 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 21:03:32.64 ID:zrumdKJWo
レ級「」ザシャァァ
コロラド「ほら! あいつが来る前に、早く行って!! ここは私が持つわ!!」
レ級「」ジャキッ
コロラド「!」
ドガァン!!
レ級「!?」ビクッ
天龍改二「い、今の砲撃は誰だ!?」
砲弾<ゴォォォ!
レ級「!?」ドガァン!
大和「敵艦、レ級に命中……ぎりぎり間にあったみたいですね」
コロラド「えっ? や、大和!?」
蒼龍改二「な、なんで改二以前の装備になってるんですか!?」
綾波改二「……もしかして、この島の艦娘の皆さんですか?」
ル級「大和! 私タチガ足止メスルカラ、早ク、ソイツラヲ海域カラ逃ガシナサイ!」ザザザァッ
大和「ええ! そちらはお願いするわね!」
216 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 21:04:15.59 ID:zrumdKJWo
飛龍改二「……本当に、深海棲艦と共闘してるんだ……」
榛名「さあ、早く離脱しましょう!」
那珂「……ねえ、あのレ級、こっち睨んでなーい?」
タ級「ダッタラ、コッチヲ向カセルダケダッ! オラッ、コッチ見ロ!!」ドガァン!
天龍改二「……くそ、なんか、あいつとは気が合いそうだぞ」
山城「ほら、私たちはとっとと退くわよ。もたもたしない!」
如月「急ぎましょ!」
* 墓場島 南岸 *
提督「……」
泊地棲姫「浮カナイ顔ダナ。ドウカシタカ」
提督「……向こうの大和のツラが気に入らねえ。うちの大和と似ても似つかねえな」
泊地棲姫「……」
提督「しかも思想も過激と来てやがる。多分、その育ちが顔に出てるせいで可愛げがねえんだろうけどよ」
提督「あいつら、本当に俺たちの艦隊と同道させて大丈夫なんだろうな?」
泊地棲姫「……抑エロ。私ガ、ココニイルノハ、オ前ヲ守ルタメダ」
泊地棲姫「アイツラノ一番ノ狙イハ、オ前ダ。誰ガ傷付イタトシテモ、冷静デイロ。ソレガ司令官トイウモノダ」
提督「……」
泊地棲姫「メディウムタチモ、イルカラナ。アイツラノ能力ハ、私モ認メテイル」
泊地棲姫「トニカク、少シ我慢シロ。オモシロイモノガ、見ラレルカモナ」ニヤリ
提督「あぁ?」
217 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 21:05:00.44 ID:zrumdKJWo
* 墓場島 南沖 *
ヲ級艦載機<ピシュンピシュンピシュン!
レ級艦載機<ババババババッ!
ヲ級「……制空権ガ、取レナイナ。対空、任セタ」
ツ級「……!」ガガガッ
タ級「今度ハ魚雷カ!」
ヘ級「!」バシュバシュッ!
ドガガァン!
軽巡棲姫「魚雷ニ魚雷ヲブツケテ相殺シタノ……!?」
タ級「トニカク助カッタゾ!」
ル級「……アイツ、マダ、コッチヲ見テナイワネ」
タ級「アア、アレデコッチヘノ攻撃ハ、片手間ッポイナ! ムカツク!」プンスカ!
大和「構いません、攻撃を継続して!」ザザァッ
ル級「大和!? ドウシテコッチニ来タ!」
218 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 21:05:45.79 ID:zrumdKJWo
大和「あのレ級の狙いは私のようです……!」
レ級「」ジロリ
ル級「大和トナニカアッタノカ?」
大和「私はありません。あったとしたら余所の鎮守府の大和と、でしょうね……!」
タ級「来ルゾ!」
レ級「」ドォン!!
大和「あれは……!」
ル級「榴弾……三式弾!?」
ドガァァァン!
大和「くぅ……驚いたけど、被害は……」
タ級「意外ト、ソレホドデモ、ナイナ……!」
軽巡棲姫「ダトシテモ、ナンデ、ソンナモノ装備シテルノヨォ……!!」
ツ級「チクショウ、メンドウナノハ……キライ……!」ボソッ
ヘ級「チッ……アブネエナア……!」イラッ
ヲ級「」
タ級「」
ツ級「……ナニ?」
タ級「ガラ悪ッ!」
ヲ級「アナタガ言ウ?」
ル級「余所見シテル場合ジャナイゾ!!」
219 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 21:06:30.50 ID:zrumdKJWo
レ級「ギシャァァアア!!」ゴォッ!
ル級「奴ガ突ッ込ンデクルゾ! 迎撃!!」
大和「全砲門、構えっ!!」
ツ級「シカタナイ……!」
ヘ級「ヤッテヤルッ……!」
タ級「ブットバセエエ!」
朧「……!」ギョッ
山城「朧? 何を見て驚いてるの?」
那珂「ちょっとあれ! あっちの大和ちゃんが!!」
陸奥改二「まとめてやってしまっていいのね?」ニヤッ
大和改二「ええ、一網打尽にしてあげましょう。敵艦補足……全主砲。薙ぎ払え!!」
ドドドドォン!!
大和「……え?」
ドガドガドガドガァァン!!
大和「きゃあああああ!?」
220 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 21:07:15.79 ID:zrumdKJWo
* 墓場島 南岸 *
泊地棲姫「アイツラ……大和マデ巻キ添エニシテ撃ッタノカ!?」
提督「マジでやりやがったのか……やるんじゃねえかと思ってたのに! 予測できてたってのに……くそが……っ!!」
泊地棲姫「提督!!」
提督「……おい。あのレ級は、そこまでダメージ負ってねえな?」
泊地棲姫「……ソウダナ」
提督「あいつと大和たちが一緒にいるとまずい。あいつだけこっちにおびき寄せられるか?」
提督「曽大佐の艦娘へのお仕置きはそのあとだ……これ以上、流れ弾に見せかけた攻撃をやらせるわけにはいかねえ!」
泊地棲姫「ナルホド……従オウ」バッ
深海艦載機<ゴォォォッ!
221 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 21:08:01.02 ID:zrumdKJWo
* 墓場島 南東沖 交渉艦隊 *
敷波「ちょっと、どういうことなの!? なんであっちの大和さんが、こっちの大和さんを撃ってんのさ!!」
ブリジット「が、ガチでやりあってるでありますか!?」
ヲ級「……アイツラハ、私タチノ、敵ナノ?」
敷波「わかんないけど、冗談じゃないよ!! 早く助けに行かなきゃ!!」
初雪「……どっち、行こう」
敷波「ど、どっち!? どっちって……」
初雪「……岸の方に、司令官がいる。泊地棲姫も」
イサラ「ま、魔神様がいるっスか!?」
敷波「えええ!? 司令官、なんであんなところまで出てきてるのさ!? 無理しないって言ってたのに!」
ヲ級「……提督タチハ、私ガ視ルワ。先ニ行ッテテ。間ヲ開ケテ、追イカケルカラ」
初雪「もしかして……ヲ級ちゃんが、撃たれるかもしれないから、離れて、って……こと?」
敷波「それは駄目! 私たちが一緒にいれば逆に攻撃されないかもしれないし!」
初雪「一緒に、行く……!」
ヲ級「……ワカッタ。援護シテ」
222 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/19(日) 21:08:45.86 ID:zrumdKJWo
今回はここまで。
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/11/22(水) 21:50:10.59 ID:Ni93M/+q0
ついに始まった曽大佐の艦娘の暴走!自身達の崇高な目的のために、提督や提督艦娘に牙を向けて突撃する!提督、果たしてどうする⁈そして提督の考えた作戦とは...
224 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 22:58:17.66 ID:OCCKtJGzo
>223
提督「作戦もなにもねえよ! もうメディウム出すしかねえだろ、くそが!」
というのがこの状況の提督の心境です。
が、提督の焦りとは全然関係なく、ここからはル級たちの見せ場になります。
そして今回登場のメディウムはこちら。残虐系の罠ばっかでございます。
・ゼシール・サーキュラーソー:暗殺者のような風貌のメディウム。上から丸鋸が降りてきて、人間の頭を切り裂いて弾き飛ばす罠。
斜に構えた中世の暗殺者風の女性。侵入者の排除を仕事と割り切るリアリスト。殺伐とした日常から空飛ぶ鳥の自由さに憧れる一面も。
・シエラ・デスサイズ:両手で扱う巨大な鎌を携えた、死神のような少女のメディウム。巨大な鎌が人間を無慈悲に刈り取る罠。
臆病で人前で話すのが苦手な少女。変身願望があり、手段を問わずどうにかして自分を変えたいと思っているようだが……先は長い。
・ナンシー・フォールニードル:美容師を思わせる風貌のメディウム。無数のとげのついた天井が落ちてきて、人間を蜂の巣にする罠。
いつでも明るくノリのいい、緊張感極薄ガール。一方で身だしなみには目を光らせており、特に寝ぐせを見つけるとすぐ直してくれる。
・オボロ・ブラッディシザー:両手に鉤爪を装備した忍者姿のメディウム。三対のハサミのような鉤爪が人間を捕らえて切り刻む罠。
床下に潜み魔神を守護する忍びの者。名前を呼べば床下から出て来てくれるが、床下のほうが過ごしやすいために落ち着くんだとか。
・ルイゼット・ギロチン:巨大な斧を携えた、シスターのメディウム。ギロチンの刃が上から落下して、人間の首や胴を両断する罠。
魔神の教えを正義と信じて異教徒を断罪する、過激で敬虔な修道女。魔神を絶対視しているため、融通が利かないところが玉に瑕。
では続きです。
225 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 22:59:16.82 ID:OCCKtJGzo
* 墓場島 南沖 *
大和(大破)「くぅ……っ!!」ボロッ
タ級(大破)「ナンダアイツラ!? 私タチマデ撃ッテキタゾ!?」
ル級(大破)「……アイツラニトッテハ、私タチモ敵ダトイウノネ……」
ヲ級(大破)「グ……」
軽巡棲姫(大破)「チョット、アナタタチ、大丈夫ナノ?」
ヘ級(中破)「フザケヤガッテェ……!」ビキッ
ツ級(中破)「オコラセルンジャナイヨ……ッ!」ビキビキッ
軽巡棲姫「一応、大丈夫ソウネェ……?」
ル級「……アイツハ、ドウシタノ……?」
深海艦載機<ピシュンピシュンピシュン!
レ級(小破)「ガァア!!」ブンブン
ル級「アレハ泊地棲姫ノ艦載機……?」
タ級「オイオイ、アレデ小破デ済ンデンノカヨ!?」
226 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:00:02.39 ID:OCCKtJGzo
軽巡棲姫「キット、大和ガ狙ワレタノヨ。ソレデ、被害ガ少ナカッタノヨォ……!」
大和「私を……!?」
軽巡棲姫「深海棲艦ト一緒ニ戦ッテルノガ、気ニ入ラナカッタンデショ……ッ!」ギリッ
ヲ級「私タチヨリ、タチガ悪イワネ……」
レ級「グゥ…!」ギロリ
大和「……いけない、レ級が……!」
レ級「ギシャアアアアアア!」
ザシャアアア!
ル級「姫ト提督ノホウニ向カッタノカ……!?」
大和「提督! 急がないと……くっ!」ヨロッ
軽巡棲姫「シ、シッカリシナサイヨォ!」ガシッ
タ級「チクショウ! アッチノ大和タチハ、素通リサセル気カ!?」
ヲ級「……ッ!」ザァッ
タ級「オイ!? オ前、艦載機ハ飛バセナイダロ……!?」
ヲ級「提督モ、姫モ……守ラナケレバ……私タチノ、帰ルトコロガ……!」ヨロ…ッ
ツ級「……!」
へ級「……!」
227 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:00:49.20 ID:OCCKtJGzo
大和「させません……そんなことは、決して……!」ヨロッ
ザザァッ!
榛名「ご無事ですか!?」
朧「早くここを離れましょう!」
大和「みんな……で、ですが、提督が!」
ル級「……大和。ココハ、下ガッテテ」
大和「何を……!?」
ル級「……私ハ、コノママデモイイト思ッテイタケレド。ソンナ甘イ考エガ、通ジル相手デハ、ナサソウネ……!」パッ
ゴボゴボ…(ル級が両手の艤装を手放し、そのまま艤装が海に沈んでいく)
如月「艤装を……!? 装備を捨てて、どうするの!?」
ル級「捨テハイナイ……安心シテ」
如月「え?」
ル級「ネエ、軽巡棲姫? アナタ、ソノ姿ニナッタノハ、弾丸ニサレタアトデショウ?」
軽巡棲姫「……ソウヨ」
ル級「永ク戦イ続ケタリ、自分ノ正体ヲ見ツケタリシタ者ガ『深化』スル……アナタノ場合ハ、後者ダッタ?」
軽巡棲姫「……マサカ……」
ル級「フフ……私ノ場合ハ、両方ニナルノカシラ?」ニッ
228 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:01:32.62 ID:OCCKtJGzo
* 墓場島 南岸 *
提督「くそっ……予定が大幅に狂っちまった。こりゃ、レ級か曽大佐の艦隊のどちらかにメディウムぶつけるしかねえぞ……!」
泊地棲姫「慌テルナ。マズハ、アイツヲ今ノ戦力デ、オトナシクサセルノガ先ヨ」
提督「できんのかよ、そんなこと……!」
泊地棲姫「アチラノ大和ヲ、ウマク利用デキレバナ……」
ザザザァ…!
レ級「…!」ギロッ!
提督「……ったく、本当に面倒臭えのが来やがったな。しかも、あっち側の奴の目をしてやがる」
泊地棲姫「アッチ側?」
提督「ああ。お前たちと違って話の通じない、イカレたくそ野郎どもの目さ。あっちの大和も、そういう目をしてたからな」
レ級「」クルッ!
提督「……なんだ? あいつ、あっちの大和を睨んでやがんのか?」
泊地棲姫「大和ニ因縁ヲ持ッテイル……トイウコトカ? ダトシタラ、好都合カモシレナイナ」
レ級「」ギリッ…!
陸奥改二「……レ級がこっちに気付いたみたいね」
229 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:02:16.96 ID:OCCKtJGzo
大和改二「構いません。一発だけなら誤射と言ったのは彼自身です……レ級もろとも、悪の権化を討ち滅ぼす好機です」ジャゴン!
泊地棲姫「アイツラ……マタ同ジ手ヲ使ウ気カ」
提督「泊地棲姫、あいつらの砲撃、しのげるか?」
泊地棲姫「……ソレハ厳シイカモナ」
提督「……メディウムたちを出すしかねえか?」
泊地棲姫「待テ。アレヲ見ロ」ニヤリ
深海艦載機<シュゴォォォオ!!
大和改二「後ろ……!?」
レ級「!!」
深海艦載機<バシュバシュバシュ!
レ級「!!」ザザァッ
由良改二「か、回避を!」バッ
大和改二「く……レ級もろともですか!」ザザッ
赤城改二「妙です。あの艦載機、私たちが避けられるぎりぎりのタイミングで攻撃してきましたね」
陸奥改二「攻撃を当てる気がない、ってこと? それってどういうことよ……?」
泊地棲姫「アノ艦載機ハ……私トハ別ノ姫級ダナ……!」
提督「姫級!? いったいどこからだ……!?」
230 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:03:02.77 ID:OCCKtJGzo
* 墓場島 南東沖 *
ヲ級→南太平洋空母棲姫「……コレデ、イイワ」
敷波「……ヲ級ちゃんが……」
初雪「……ヲ姉ちゃんになった……」
エレノア「ちょっと、いきなり変化しないでよ。びっくりするじゃない」
南太平洋空母棲姫「アア、ゴメンナサイネ……トニカク、アイツラノ気ヲ逸ラセルノニハ、成功シタミタイネ」
南太平洋空母棲姫の艤装『Grr...』ズォォ…
南太平洋空母棲姫「ヨシヨシ、イイ子ネ……」
敷波「その魚型の艤装って、あの帽子だったんだ……」
初雪「服もなんか変わっちゃってる……」
ブリジット「いつの間にかネクタイとスカートになってるであります。タチアナみたいでありますな!」
南太平洋空母棲姫「……サア、マダ油断シチャ駄目ヨ。提督タチノ安全ガ、確保サレタワケジャナインダカラ」
敷波「そ、そうだね。ヲ級ちゃんがいきなり変わっちゃったから、びっくりしちゃった」
初雪「うん……もっと余裕をもって驚きたかった」
南太平洋空母棲姫「フフッ……アトデユックリ、見セテアゲルカラ。今ハ……」チラッ
敷波「行こっか!!」キッ!
初雪「うん……みんな、助けに、行こう」グッ
イサラ「早く終わらせて帰りたいっス……」
231 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:03:46.86 ID:OCCKtJGzo
* 墓場島 南沖 *
飛龍改二「ちょ、ちょっと見て! 北東の方角! 新しい深海棲艦が……!」
蒼龍改二「一緒にいるの、初雪と敷波じゃない!?」
綾波改二「しき……ええええ!? ほんとだうわあああ姫級といっしょなのなんでえええ!?」パニック
コロラド「あれはもしや……ホーネット!?」
ル級「ホーネット? ……ヤッパリ、ソウイウコトナノネ」
大和「そういうことって……?」
ル級「泊地棲姫ガ言ッテタノヨ。ホラ、アナタタチモ、ワカルデショ……? 私ト一緒ニ、思イ出シナサイ……!」メキッ…!
(ル級の額の左側に一本の角が生える)
軽巡棲姫「……コノ気配……!」
ゴポッ
ゴポゴポッ…ゴボボボッ!
ザバァァァ!!(沈んだ艤装がル級の背後から、人型の艤装になって浮かび上がる)
軽巡棲姫「双頭ノ巨人ノ艤装……!」
ル級→戦艦水鬼改「……コレデ、イイワ……コレナラ、彼ヲ、助ケラレル……!」
戦艦水鬼改の艤装『ヴォオオオオオオ!!!』
232 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:04:31.94 ID:OCCKtJGzo
如月「ル級さんが……!」
綾波改二「せ、せ……戦艦水鬼に……っ!」ゾゾッ
戦艦水鬼改「水鬼? ……ソウ、呼バレテイルノ? マア、呼ビ名ハナンデモイイワ……」
蒼龍改二「ちょっと、これって私たちもやばいんじゃないの……!?」
戦艦水鬼改「フフ、心配シナイデ。アナタタチハ、怖ガラナクテ、イイノヨォ?」ニコッ
綾波改二「そ、そう、ですかっ……!」
天龍改二「へへ、頼もしいことこの上ねえな……!」
飛龍改二「敵だったら、絶望してたところよね……」
戦艦水鬼改「……サア、アノ姫ト、提督ヲ、助ケルワヨ。眠ッテル場合ジャ、ナイワヨネ……?」
ヲ級「ソウ……ソウ、ネ……!」ユラッ ザワザワザワッ
(ヲ級の帽子が宙に浮いて形を変えながら4つに分かれ、ヲ級の衣服がスカートに変わっていく)
ツ級「ヤルシカ、ナイカァ……ショウガナイ」バリバリバリ…ッ
(マスクを剥がしたツ級の大きな両腕が破れて、内から多数の砲塔のついた艤装と細い腕が現れる)
へ級「……ヤッテヤロウジャナイ」バキバキッ…
(ヘ級の底面の艤装が割れてそこから脚が伸び、弾けた破片がそのまま衣服となって再構築される)
233 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:05:32.67 ID:OCCKtJGzo
タ級「……オイ、少シ、思イ出シタゼ。ソコニイルノハ……『キリシマ』ダナ?」
霧島改二「!」
タ級「暴レラレナクテ、残念ダッタナ。アタシガ、代ワリニ、暴レテキテヤルヨォ……!!」バキッ…バキバキバキッ…!
(タ級の艤装が巨大化し、髪の毛の色が2色に分かたれていく)
コロラド「……あ、あああ! み、みんなわかる……!!」ブルブル
如月「ね、ねえ、この人どうしちゃったの!?」
綾波改二「こ、コロラドさん、気を確かに! 落ち着いて!」
コロラド「お、落ち着いてなんかいられないわよ!? どうして私の仲間が……私の、U.S. Navyが、深海棲艦に……!!」
霧島改二「そ、それでは、さっき私に声をかけたのは……サウスダコタだというのですか!?」
コロラド「そうよ! きっとそう……!!」
234 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:06:16.99 ID:OCCKtJGzo
* 墓場島 南岸沖 *
由良改二「北東の海域に、新しい姫級の深海棲艦が……あれは、南方海域にいた、新型の空母棲姫!?」
陸奥改二「これは、一体何が起きてるっていうの……!?」
赤城改二「仲間を呼んだか、潜んでいたのか……いずれにせよ、あの男が関わっていることには違いありませんね」
大和改二「こうなれば、速やかにあの男を討滅せねばなりません!」
大和改二「だというのに、あのレ級め……南方海域のみならず、ここでも邪魔をしてくるなんて。なんて忌々しい!」ギリッ
レ級「ガァァァアアア!!!」ドバババババ!!
提督「あんにゃろう、魚雷撃つにも見境なしかよっ!」
泊地棲姫「提督ハ、早ク岸カラ離レロ!」グイッ
提督「うおっ」
砲弾<ヒュゥッ
レ級「!?」ドガァン!
榛名改二「レ級に着弾! い、いったいどこから!?」
陸奥改二「とにかく今のでレ級がひるんで隙ができたわ!!」
大和改二「今しかありません……目標、敵総大将!! 全砲門!」
235 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:07:02.56 ID:OCCKtJGzo
ヒュウウ…
朝潮改二「! こ、後方より砲撃です!!」
大和改二「なっ……!?」
ドガガガガァン!!
大和改二(中破)「ぐぅ……!? わ、わたしたちに、これほどのダメージを……!?」
榛名改二(中破)「あ、あれは……!?」
タ級→南方戦艦新棲姫「フフフ……ヨクモ、好キ放題シテクレヤガッタナァ!!」
ヘ級→軽巡新棲姫「サッキカラ、ヤルコトガウザインダヨォ! 覚悟シナサイナ!」
陸奥改二(大破)「な……姫級がこんなに……っ!?」
赤城改二(小破)「……いいえ! まだ! まだ行けます!」シュパッ
艦載機<バゥゥン!
ツ級→防空巡棲姫「アーア、出シチャッタカァ……無駄ダヨ。アタシガ全部、墜トスカラ」
南方戦艦新棲姫「墜トスノハ、アタシモ得意ダゼェ……!」
236 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:08:01.45 ID:OCCKtJGzo
朝潮改二(小破)「そんなこと、やらせるものかぁっ!!」
由良改二(中破)「突撃よ!!」
深海艦載機<ゴォヒュァァアアア!!
朝潮改二(大破)「きゃああああ!?」ドガァン
由良改二(大破)「な、なに!? 敵艦載機!?」ガガァン
ヲ級→深海海月姫「邪魔ヲスルツモリナラ……ワタシガ、相手ヲシテアゲルワネ……!」
飛龍改二「……艦隊が全員姫級に……!?」
朧「一人は鬼級ですよ」
山城「そこを冷静にツッコミ入れてんじゃないわよ!」
蒼龍改二「悪夢よ……悪夢だわ。うーん……」クラッ
榛名「蒼龍さん!? しっかりしてください!!」ガシッ
那珂「なんか、すごいことになっちゃったねえ!」アハハッ
天龍改二「あははじゃねえよ……笑い事じゃねえ」
コロラド「……ほんとよ、笑えないわ。よりによって、みんな……!!」グスッ
237 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:08:46.93 ID:OCCKtJGzo
* 墓場島 南岸 *
ドガァン!!
レ級「…ッ!!」ヨロッ
戦艦水鬼改「ホラ、オ前ノ相手ハ、コッチヨォ……?」
提督「お前……ル級か!?」
戦艦水鬼改「アラァ、提督……コンナ姿ニナッタノニ、私ノコトガ、ワカルノ? ウフフ、嬉シイワ」ニコッ
レ級「…」ギリッ
レ級「ガアアァァアアア!!」ジャキッ
戦艦水鬼改「モウ、終ワリヨ」
ドゴォン!!
レ級(大破)「…」ボロッ
戦艦水鬼改「コレデモ、マダ沈マナイノ? 呆レルクライ頑丈ネエ……早クアッチニ合流シタインダケド」ハァ…
レ級「ギシャアアアアア!!」グワッ
238 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:09:32.41 ID:OCCKtJGzo
提督「こいつ……いい加減にしろってんだ……!!」
イビルアッパー<ゴギャア!!
レ級「!?」フットバサレ
戦艦水鬼改「アラアラ、華麗ニオ空ヲ飛ンジャッテ……今ノ、提督ノ仕業ネ?」
提督「ああ、俺もいい加減、頭に来たからな。向こうをフォローするんだろ? こいつの始末は俺に任せてもらっていいか?」
戦艦水鬼改「フフ……ソレジャ、オ願イシテイイカシラ?」
提督「見せ場を奪うようで悪いな。二度と海に戻れないようにしておくからよ……おらっ、ぶっ飛べ!」
イビルナックル<グワッ!
レ級「」バギャッ!
提督「で、ここに落ちとけ!」
イビルスタンプ<グオッ!
レ級「」グシャア!
提督「さあ出てこい! 出番だぞお前たち!!」
ニーナ「はいっ、魔神様!!」
239 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:10:16.86 ID:OCCKtJGzo
オボロ「我らが彼奴めを切り刻んで見せます!」
ルイゼット「ご下知、賜りました……!!」
シエラ「や、やってやるデス……!」
ナンシー「やっちゃえやっちゃえー!!」
ペンデュラム<ブォン!!
レ級「!?」ドグシャアッ!
ブラッディシザー<ジャキジャキジャキン!!
ギロチン<ズガシャアッ!
デスサイズ<ズバシューーッ!
サーキュラーソー<ギュイイイイイ!!
フォールニードル<ズドシャーーッ!
レ級(瀕死)「アゥ…ガッ!?」ズベシャッ
ゼシール「残虐系メディウムの連撃だというのに、いくらなんでもしぶとすぎるな。まだ息があるぞ」
240 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:11:01.69 ID:OCCKtJGzo
提督「まだくたばらねえのか。それなら……!」
ブゥン…!
泊地棲姫「ナンダ? アノ、アイツノ下ノ地面ニデキタ渦ハ」
提督「……魔神の『頭』を呼び出すのさ」
魔神の顔<グォバァァァァアアア!!
レ級「ヒッ!?」
泊地棲姫「!?」
魔神の顔<ガブ!
レ級「ガッ!?」
魔神の顔<ガブガブガブ!!
レ級「ゲ…アギャ…!?」
魔神の顔<ガリ! ゴギン!! ゴシャッ!! ゴヂャッ!!
魔神の顔<ゴリュゴリュ!! マ゙ヂュザジュ!!
ルイゼット「おお、これは……魔神様のご尊顔が……!」オイノリ
泊地棲姫「……食ッタ、ノカ?」
241 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:12:16.95 ID:OCCKtJGzo
提督「んー、そのつもりでいたんだが……お前たち、ちょっと見ないでくれ」
魔神の顔<ベッッッ!!
レ級だったもの「」グチャッ
泊地棲姫「……」テイトクニメカクシサレ
提督「こういうのも吐瀉物っつうのかね。そういう汚えもんはあまり見せたくねえから、ちょっと我慢してくれ」
泊地棲姫「吐キ出シタノカ……」
提督「丁寧に?み砕いてから、な。味の方は残念ながら大して美味くなかった。お前らも見なくていいぞ?」
ナンシー「はーい、って言っても、あたしたちはそこまでダメじゃないけどぉ?」
オボロ「我らも屍は見慣れてますゆえ、ご安心召されよ」
提督「そうか? にしても、厄介な奴だったぜ。五月雨や若葉のカタキじゃなかったみたいだが……こんなやつ、何体も相手したくねえな」
ニコ「やあ、魔神様。頭まで召喚できるなんて、いよいよ本格的に覚醒できてるみたいだね」ニコニコ
提督「……ま、否応なしにな」
レ級だったもの「」シュウ…
提督「お、消え始めたな。魔力に還元したのか?」
ニコ「うん。これから使うでしょ?」
242 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:13:02.60 ID:OCCKtJGzo
提督「ああ。おーい、ル級!」
戦艦水鬼改「? ドウシタノ、提督?」
提督「あいつら捕まえるぞ。適当に弱まってるよな?」
戦艦水鬼改「エエ、大丈夫ミタイヨ」
泊地棲姫「……提督、ソロソロ、手ヲ放シテクレ」ポ
提督「ん? おう、悪いな」パッ
泊地棲姫「トニカクコレデ、最初ノ手筈通リ……プランBニ移行、ダナ?」
提督「ああ。頼むぜ」
泊地棲姫「ヨシ。任サレヨウ」
浮遊砲台たち「「ヴォ!」」フワワッ
泊地棲姫「6基操ルノハ初メテダガ……ヤッテミルカ」
243 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/27(月) 23:18:26.03 ID:OCCKtJGzo
というわけで今回はここまで。
やっとコーヒーのフラグを回収できた……。
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/11/30(木) 14:54:50.84 ID:p665YgE50
お疲れ様です
急展開ですね…伏線ははられていましたがそれでも吹き出してしまいました
ル級は…未実装のアメリカ戦艦の誰かと考えれば良いのでしょうか?
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/12/03(日) 09:01:36.00 ID:764IO3aa0
大和を目標に流れ弾として砲撃する曽大佐の艦隊。
そんな曽大佐の艦隊への怒りを持って提督と親しい深海棲艦たちは姫級や鬼級へと進化し曽大佐の艦隊と交戦す。
そして最後は提督によって滅されたレ級。
提督は弱った曽大佐の艦隊の捕獲命令を出す。
泊地棲姫、やり遂げられるか!
246 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/12/03(日) 20:05:22.48 ID:18ZKwdyZo
今回は大和さんの災難の回です。
初登場のメディウムはこちら。
・ジェニー・デルタホース:西部劇のガンマンのような姿のメディウム。下から三角木馬がせり上がり、人間を痛めつけつつ辱める罠。
さっぱりした性格のブロンドの女性。かつては群れずに一人で旅をしていたという。相棒の木馬シルバーエッジが潰した股間は数知れず。
・オディール・マンリキスピン:万力を手にしたバレリーナのメディウム。巨大な万力が人間を掴み、超高速で回転して目を回させる罠。
自意識過剰で自信過剰な筋金入りのナルシスト。みんなが目を回すほどの美しさを自称しているが、一番目が眩んでいるのは彼女自身。
・ハナコ・ウォッシュトイレ:学校で見た気がする、おかっぱ頭の少女のメディウム。温水洗浄便座のシャワーが人間を吹き飛ばす罠。
狭く静かなところが落ち着くらしく、そのためとある個室に引き籠り気味な少女。場所が場所だけに、存在自体に驚く人も多いとか。
・ディニエイル・コールドアロー:エルフのような長い耳を持つ、氷の弓矢を携えたメディウム。氷の矢が飛んできて人間を凍結させる罠。
アロー四姉妹の一人で、冷静で理知的なクールビューティー。しかし魔神のそばでは冷静さが吹き飛ぶようで、少々お熱が入り気味に。
・アーニャ・クレーン:釣竿を担いだ活発な少女のメディウム。大きな爪を持ったクレーンが人間を掴み、回転させてから放り投げる罠。
妹のミーシャと一緒に釣りをするのが大好きな、日焼け跡がまぶしいアクティブ娘。でもさすがに裸にオーバーオールはどうかと思う。
・マリッサ・クラーケン:ボディハーネスに身を包んだ女性のメディウム。海の怪物クラーケンの触腕が人間を締め上げながら辱める罠。
軍帽、目隠し、ボールギャグ、拘束具に鞭と、見た目でヤバさ満載の女性。言動もそれ以上に危険で卑猥な、苦痛も楽しむ性欲の権化。
・カサンドラ・アゴニーマスク:中世の剣闘士風のメディウム。通電している拷問用のマスクが落ちてきて、人間の視界を奪い苦しめる罠。
人に顔を見られるのが苦手な恥ずかしがり屋。戦いには勇ましく振る舞うが、武器のマスクは自分の顔を隠すため被ってしまっている。
フラグはどんどん回収しちゃいましょうねー。
というわけでちょっと短いですが続きです。
247 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/12/03(日) 20:06:04.76 ID:18ZKwdyZo
* 墓場島 南岸沖 *
南方戦艦新棲姫「コレデ、ヤットオトナシクナッタナ!」
防空巡棲姫「スッゴイ、面倒臭カッタ」ハァ…
軽巡棲姫「提督ミタイナコト、言ワナイデヨ……」
大和改二(大破)「く……っ! 屈辱だわ……!」
赤城改二(大破)「奇襲さえされなければ、こんなことには……!」
陸奥改二(大破)「どうにかして、退くしかないわね……」
由良改二(大破)「退くって、ど、どうやって……?」
深海海月姫「逃ゲルツモリ? 許サナイワヨ……!」ジロリ
榛名改二(大破)「どうにか、隙を作らないと……!」
朝潮改二(大破)「そうです、ここで沈むわけには……諦めるわけにはいきません……!」
防空巡棲姫「コッチハ、サッサト諦メテホシインダケド……」
軽巡新棲姫「ソロソロ、トドメ刺サナイト、コイツラカラ反撃ガ……ア」
防空巡棲姫「ドウカシタ……?」
軽巡新棲姫「トドメ刺シテ、イイミタイ」ニヤッ
榛名改二「なっ……!?」
248 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/12/03(日) 20:06:49.28 ID:18ZKwdyZo
朝潮改二「そんなこと、やらせま」
デルタホース<ガッシャン!!
榛名改二「ひぎゃああああ!?」ビウビクビクーッ
朝潮改二「!?」
大和改二「!?」
陸奥改二「な、なに!? 何が起こっ」
マンリキスピン<ガシャッ!
由良改二「え」ガキーン!
マンリキスピン<ギュイィィィィイインン!
由良改二「ちょ……あああぁああぁあ!?」ギュルギュルギュルーー!
ジェニー「やっとあたしたちの出番だね! 待ちくたびれたわよ!!」(On軽巡新棲姫の艤装)
オディール「お待たせした分だけ、いつもより多めに華麗にお耽美に回して差し上げますわ!!」(On防空巡棲姫の艤装)
大和改二「い、いったいなにごとです!? これは……」
ハナコ「あなた方は、この世の禁忌に触れたのです。その報いを受けるときが来ただけですよ?」(On大和の艤装)
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