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【シャニマス×ダンガンロンパ】シャイニーダンガンロンパv3 空を知らぬヒナたちよ【安価進行】Part.1
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75 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/29(月) 22:20:36.65 ID:vbqLOX8I0
____鉄格子。
76 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/29(月) 22:22:10.69 ID:vbqLOX8I0
にちか「……は?」
思わず周りをぐるりと見渡した。鉄の梁は私たちの頭上をアーチ状に取り囲み、その根本は遥か遠く。
その事実は私たちはドームの形をした、極めて広大な面積の何かの内に閉じ込められていることに他ならなかった。
【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】
モノファニー「うーん、やっぱり太陽の光は気持ちいいわねー!」
モノキッド「ソーラーパワーでビンビンだぜッ!」
モノスケ「あかん! モノキッドのモノがキッドキドになっとる!」
にちか「ちょ、ちょっと……何これ!? どうなってんの?!」
モノタロウ「ど、どうしたの?! そんなに慌てて!」
にちか「慌てるも何もないって……! 学校の外……これどうなってるわけ?!」
モノスケ「どうなってるもこうなってるもあらへん。キサマラの今見とるのが全てや」
ルカ「あ?! 意味わかんねーよ!」
モノファニー「これ以上もこれ以下もないのよ。これがキサマラの世界のすべてなんだから」
モノダム「……」
(はぁ……? こんなのが、世界の全て……?)
足元がぐらぐらとしはじめた。はじめこそ地震かと思ったけど、これは私の膝から力が抜けていく感覚。
コレで脱出、そうウマい話なんかないだろうとは思っていたけど、待っていたのはもっと酷い現実だった。
モノクマーズたちが口にする言葉の意味を噛み砕こうとすればするほど、置かれている状況の異常さが色濃くなっていく。
私たちはただ拉致監禁されたんじゃない。
___私たちは世界を奪われたんだ。
77 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/29(月) 22:25:10.88 ID:vbqLOX8I0
モノタロウ「まあ安心してよ! 才囚学園は今も工事の真っ最中! どんどん拡張していく予定だからね!」
モノファニー「キサマラにとっても居心地のいい空間になっていくと思うわ!」
モノスケ「せやからそう肩を落とさんといてや! この学園での暮らしをレッツエンジョイやで!」
【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】
ルカ「……大丈夫か?」
意識が遠のくほどの虚脱感に満たされている私の方にルカさんが手をかける。
そばに支えてくれる人がいてよかった、そうでもなければ私はここで膝から崩れ落ちているところだった。
ルカ「……どうやら、すぐに出れるような希望は今は持てないみたいだ」
にちか「……みたいですね」
ルカ「いま私たちにできるのは、この現実を見定めることだけだ。この学園の全貌をつかまない限りはどうしようもない」
にちか「で、ですよね……!」
ルカ「まだ話をしてないやつもいるみたいだしな。とりあえずはいろいろ巡ってみよう」
にちか「はい……!」
------------------------------------------------
【寄宿舎】
【藤棚】
【噴水?】
【プール前】
【裏庭】
上記より選択
↓1
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2023/05/29(月) 23:33:45.46 ID:vPCXZIwE0
寄宿舎
79 :
コンマ46
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/30(火) 20:45:47.72 ID:TTxBWQMX0
【寄宿舎】
当面の寝泊まりはここでしろってことらしい。
校舎に向き合うような形で建てられた円柱状の建物には、その円周をなぞるようにして二階層にいくつも部屋が並んでいる。
部屋の扉の上には、それぞれの姿を模したドット絵がついているけど、表札がわりということなのだろうか。
???「ん? あれ、お初のヒトじゃね?」
にちか「こ、こんにちは……」
先客は、派手な髪色をした女性だった。
こんがりと日焼けしたような肌は天然由来のものなのかは分からないけど、ネイルやメイクの凝り具合からしてそうではないと見るのが正しそう。
少し前の言葉で言うのなら、彼女のことはギャルと称するのがいいんだろう。
……まあ、派手さで言うなら斑鳩さんも負けちゃいないんだけど。
???「よかった〜! こんな状況だもん、ちょっとでも仲間は多い方がいいもんね!」
にちか「で、ですね……」
???「うわっ、てかちょ〜カワイイ〜! めっちゃ目、クリンクリンじゃん!」
にちか「え、あ、どうも……」
???「てかお姉さんめっちゃかっこいい〜! すごい、なんかちょーパンクって感じ! それ、どこのブランドのか聞いてもいい系?」
ルカ「お、おう……そうだな」
(ルカさんが気圧されてる……ギャルのコミュ力恐るべし!)
80 :
凛世の分の希望のカケラを入れています
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/30(火) 20:47:48.43 ID:TTxBWQMX0
にちか「あ、あの! 先に自己紹介してもらっても!」
???「え? あ、ごめんごめん! うち、つい嬉しくなっちゃって!」
愛依「うち、和泉愛依! 超研究生級の書道家……なんだって!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
超研究生級の書道家
和泉愛依
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
これほどまでに才能と見てくれがチグハグな組み合わせもないと思った。
あまりにも開放的すぎる胸元は伝統文化の奥ゆかしさには不釣り合いだし、止まらない饒舌さは墨擦りの静謐さをあまりにも乱しすぎる。
愛依「あ、その目線……才能に書いてあるの、疑ってるカンジっしょ?」
にちか「え? あ、いやいや……そんなんじゃ……!」
愛依「いいっていいって、どう見えてるかはうちが一番わかってる!」
愛依「あんね、うち昔っからばあちゃんと一緒に住んでて……ちっちゃい時からよく習ってたんだ!」
愛依「それで時々賞とか出して……まあたまにいい奴貰ったり?」
ルカ「へー、すげえじゃんか」
愛依「アハハ、でもそんなショクギョーにするほどのもんでもないけどね!」
(人は見た目によらないなぁ……)
愛依「とりまよろしく! うち、あんま頼りになんないかもだけど……精一杯のことはするから!」
そういって愛依さんは私の手を握った。
ギャルってすごいな……と痛感させられた。
たったコレだけのやり取りなのに、この人は表裏のない人だとわかっちゃったんだもん。
【コンマ判定 46】
【モノクマメダル6枚を手に入れました!】
【現在のモノクマメダル枚数…35枚】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラ…10個】
------------------------------------------------
【藤棚】
【噴水?】
【プール前】
【裏庭】
上記より選択
↓1
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2023/05/30(火) 22:53:45.14 ID:RNGGKdmL0
藤棚
82 :
コンマ14
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:36:35.96 ID:V32uVhix0
ちょっと思ったように進行できていないので、
今日は自レスでコンマ判定もやってとりあえずプロローグ終わらせるところまでやります。
------------------------------------------------
【藤棚】
校舎と寄宿舎の間の空間にはいくつかベンチが並んで、その上には庇のようなものがついている。
よく公園なんかで蔦が張り巡らされて天然の日除になっているそれだ。
おばあさんなんかが腰掛けてパンクズ振り撒いているよなーなんてことを思っていると、そんな和みとは正反対な容姿の女性に話しかけられた。
???「なあ、アンタたちもここに連れてこられた感じか?」
にちか「……! は、はい……!」
どことなく粗暴な口調に、陽光をぎらつかせる金髪。
瞬間脳内に走った言葉は……「ヤンキー」。
ルカ「そうだけど……アンタは?」
そんな私の緊張を感じ取ったのか、斑鳩さんが一歩前に出て、対話を引き受ける。
樹里「アタシは西城樹里。……そんなビビんないでくれ、別に取って食ったりなんかしねーよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
超研究生級のサポーター
西城樹里
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
西城さんは指でエクボをなぞるようにしながらはにかんだ。
樹里「まあ髪を染めちゃいるけどよ……何も悪い付き合いなんかはしてないから、安心してくれ」
どうやら私のように警戒をむき出しにするような反応には慣れっこらしく、途端に柔らかな雰囲気を醸し出してくれた。
ぱっと見の印象で反応をとってしまったことを少し恥じる。
83 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:38:06.68 ID:V32uVhix0
にちか「す、すみませんつい……」
樹里「気にしなくていいよ、慣れっこだからな」
ルカ「アンタ、サポーターって?」
樹里「ああ、スポーツ観戦が趣味みたいなところあるから……そこからか?」
にちか「ふーん……野球とか、サッカーとかですか?」
樹里「ああ、野球は結構好きでチケットもたまに自分で取ったりしてるな」
ルカ「ふーん……」
にちか「西城さん、運動神経良さそうですけど自分ではやらないんですか?」
樹里「あー……前までは、バスケもやってたんだけど……」
にちか「今はやってないんです?」
樹里「まあ……色々な」
ルカ「……人には人の事情が色々あんだろ、詮索はやめとこう」
樹里「ははっ、ルカさん……だっけ? アンタも見た目に似合わず結構優しいんだな」
ルカ「ハッ、お互い様だね」
(おっ、もしかしてこの二人結構相性いいのかも?)
樹里「先行きのわからないこんな状況なんだ。何かあれば手貸すぜ」
【コンマ判定 14】
【モノクマメダル4枚を手に入れました!】
【現在のモノクマメダル枚数…39枚】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラ…11個】
84 :
そういえば選択肢が一つ抜けてた…
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:39:38.57 ID:V32uVhix0
【広場】
校舎を出てまっすぐ進む。
空を覆うアーチ状の格子の根本を見たいと思ってのことなのかもしれないし、ひとまずこの世界とやらの全貌を見定めたかったのかもしれない。
当てのない歩みは、ある一定のところで行き詰まった。
にちか「ここ……広場、ですかね」
ルカ「……なんだか未開拓って感じだな」
斑鳩さんの指摘通り、辺りを見渡すとそこかしこで工事の作業風景が目に止まる。
瓦礫が積み上がっていたり、ドリルを掘り進めるような音が響いたり。いったいここで何が行われていると言うのだろう。
???「……あ、あの」
にちか「はぁ……そんなに新しいモノぽんぽん作って、私たちに何をさせたいんですかねー」
ルカ「マジで意図が読めねえな……何だってんだ」
???「す、すみません……っ」
にちか「何作られてもこっちは長居なんかする気ないんですけどねー」
???「あ、あの……っ!」
にちか「わ、わぁっ?!」
???「す、すみません……驚かせちゃいました……よね……?」
ルカ「え、えっと……アンタは?」
真乃「さ、櫻木真乃……超研究生級のブリーダー……だそうです」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
超研究生級のブリーダー
櫻木真乃
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
85 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:41:27.10 ID:V32uVhix0
工事作業の轟音の中私たちを呼び止めるために張り上げた大声は、よほど不慣れなことだったのだろう。
私たちが振り向いてなおその手は震えていた。
櫻木さんは肩を縮こまらせて、眉も寄せている。今の追い込まれている状況に相当萎縮している様子だ。
にちか「ご、ごめんなさい……私、気づかなくて!」
真乃「い、いえ……私こそ、すみません……っ」
ルカ「大丈夫か、随分と不安がってる様子だけど」
真乃「ありがとうございます……確かに、不安なんですけど、今ちょっと人探しをしてて……」
にちか「人探し……です? どなたかお知り合いでもいたんですか?」
真乃「あ、いや、その……正確には、人じゃなくて、鳥さん……なんですけど」
ルカ「……鳥?」
真乃「私のお友達で、ハトさんのピーちゃんって言うんです。確かあの時も一緒にいたと思うんですけど……」
にちか「ああ、ペットのハトを探してるんですね! いや、すみません、私もちょっと見てないですねー」
真乃「そ、そうですか……」
ルカ「……というか、この敷地内で鳥は見た覚えがないな。あの天井の檻のこともあるし……どうなんだろうな」
にちか「すみません、お力になれなくて……」
真乃「いえ……こんな状況で、惑わせるようなことを言ってしまってこちらこそすみませんでした……」
櫻木さんはすっかり肩を落とした様子。
確かにペットを持っている人からすれば誘拐された状況って不安で仕方ないだろう。
私だってそうだ。お姉ちゃんが今頃どれだけ慌てているか……それはちょっと滑稽かもしれないけど。
【コンマ判定 57】
【モノクマメダル7枚を手に入れました!】
【現在のモノクマメダル枚数…46枚】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラ…12個】
86 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:42:40.95 ID:V32uVhix0
【噴水?】
広場の中から唯一通じている道を通ると、屋内に設けられた噴水に行き当たる。
やたら筋肉質な人体に、モノクマーズたちによく似たクマの頭部が突き刺さったような不細工な彫刻から滝のように水が流れている。
……異質な空間だ。
???「こんにちは……」
にちか「あ、こんにちは……」
妙な空気感に満ちた空間で、消え入りそうなほどに淡く儚い雰囲気の女の子は却って目を引いた。
奇妙な存在感に惹きつけられるようにして、私たちは邂逅する。
???「あの、自己紹介……いいですか?」
ルカ「ん、いいよ。そっちから頼める?」
霧子「幽谷霧子です。よろしくお願いします……」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
超研究生級のドクター
幽谷霧子
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
幽谷さんは白衣のような服を身に纏い、手足のあちらこちらに包帯や絆創膏をのぞかせている。
少し痛ましい姿に、言葉に詰まっていると、幽谷さんの方から申し出た。
霧子「ごめんね……怪我をしているわけじゃないの……これは……生きている証……だから……」
にちか「はぁ……」
87 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:44:31.29 ID:V32uVhix0
ルカ「まあ、ファッションみたいなもんなんだろ。深く突っ込む必要もねーって」
にちか「まあ才能が『ドクター』なんですもんね……そのキャラ付けの一環みたいな感じです?」
霧子「えっと……時々、病院で子供たちのお相手をするお手伝いをしてて……」
霧子「お医者さんになる道に向けて勉強も頑張ってるんだ……」
にちか「え、医学部志望です?! めちゃくちゃ頭いいんじゃないですか!」
ルカ「おー……そうなるのか」
にちか「そうですよ! 斑鳩さんは高卒で養成学校行きだから分かんないかもしれないですけど!」
ルカ「……悪かったな」
霧子「全然、そんな……普通だよ……?」
にちか「いやいや! なんか幽谷さん知性ある感じしますもん! 納得だなー……」
ルカ「それより……霧子、アンタはここを調べてたんだよな。この噴水は何のためにあるんだ?」
霧子「ううん……ごめんね、私も今さっき見たところで……」
霧子「でも、他の部屋と違う雰囲気がしてて……この部屋は、これで終わるんじゃないと思う……かな」
にちか「これで終わりじゃない?」
霧子「うん……もっと別の何かが眠っている……そんな気がして」
幽谷さんが察知しているものの正体はわからないが、確かに言いようのない雰囲気が立ち込めているのは事実だ。
私たちのことを見定めようとしているような彫刻もそうだし、妙に整然と綺麗にまとまった内装もそうだ。
厳かさの裏には何か底知れぬ悪意のようなものを感じずにはいられない。
にちか「……なんか嫌な場所ですね」
ルカ「チッ……他のところ、行くか」
【コンマ判定 95】
【モノクマメダル5枚を手に入れました!】
【現在のモノクマメダル枚数…51枚】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラ…13個】
88 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:45:58.33 ID:V32uVhix0
------------------------------------------------
【裏庭】
校舎の裏をぐるりと回ると、鉄製の扉で閉じられた大きなボックス。
そこから校舎に向かって血管のようにパイプが伸びて接続している。校舎の空調設備の類なのであろうことはそこで予測がついた。
???「これだけ大きな設備……ランニングコストだけでも洒落にならないと思うけど……」
ボックスの中は案の定太いパイプがそこかしこに張り巡らされて、中央のボイラーが堂々と傲慢な表情をしていた。
その前で顎先に指を当てて、考え込む様子の女性。私よりも年の程は少し上のように見える。
ルカ「なあ、アンタ。今ちょっといいか?」
???「……あら、あなたたち……ごめんなさい、深く考え込んでいて気づかなかったみたい」
夏葉「有栖川夏葉よ。超研究生級の文武両道……だそうよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
超研究生級の文武両道
有栖川夏葉
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
いよいよ才能に具体性が伴わなくなってきたけど、本人の放つ威厳がそれを補って余りある。
私たち二人を見定めるその視線には本人の自信と気迫が携り、凛とした佇まいには思わず見惚れてしまうような気品が滲んでいる。
ルカ「アンタ、随分と冷静なんだな。私たちと同じで誘拐されてここに来たんだろう?」
夏葉「ええ。冷静そうに見えるのなら、それはそう取り繕っているだけよ。私だってこんな状況、今にも逃げ出したいもの」
夏葉「でも、そんなことをしても何も変わらないじゃない? 今は自分のできる範囲で対策を練る……それが今は状況の分析というだけ」
ルカ「こいつは……頼りになりそうな女だ」
にちか「で、ですね……すごいちゃんとした方……!」
夏葉「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいわ。ただ、私も条件は全て同じ……ここでは何も特別なものは持っていないわ」
夏葉「お互い協力してこの状況の打開を目指しましょうね」
にちか「はい! よろしくお願いします!」
89 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:47:11.05 ID:V32uVhix0
ルカ「……ところでなんだが、アンタ随分と鍛えてんだな」
夏葉「あら、分かってしまうかしら」
ルカ「まあな、私はここに来る前からアイドルの研究生やってて……人の筋肉のつき具合なんかは割とぱっと見でわかる」
ルカ「アンタのはそれなりの時間かけて熟成された肉体美だろ」
夏葉「ええ……ええ! そうなの、そうなのよ、ルカ!」
ルカ「う、うおおおお?!」
夏葉「学業の傍ら、己の肉体を磨き上げることを抜かすことを信条としているの! 評価してもらえて嬉しいわ、ルカ!」
ルカ「ちょ、ちょっと……一回手離せ!」
夏葉「あら? そういうあなたもよく鍛え上げられているわね……一見細身に見えるけれど無駄のない肉付きで、入念なトレーニングの跡が見て取れるわ」
ルカ「そりゃアイドルの研究生やってるからだよ! ……ってか離せ!」
夏葉「ルカ、このあと時間があったら一緒にトレーニングはどうかしら。同じ筋肉道を歩むものとして、高めあいたいの」
(……斑鳩さん、ご愁傷様です)
どうやら有栖川さんには妙なツボがあるらしく、そこから暫く斑鳩さんにつきまとってトレーニングをせがんでいた。
さっきまでの品格ある姿とのギャップもまた、彼女の魅力なんだろうけど、トレーニングとは無縁の私からすれば圧倒されるばかりだった……
【コンマ判定 33】
【モノクマメダル3枚を手に入れました!】
【現在のモノクマメダル枚数…54枚】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラ…14個】
90 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:48:56.53 ID:V32uVhix0
------------------------------------------------
【プール前】
校舎に横付けになっているドーム上の建物。
通常なら体育館なのだろうけど、どうやらこの学校は事情が違うらしい。
にちか「屋内プール……ですか」
ルカ「どうやら長いこと使われてないみたいだけどな」
斑鳩さんの指摘通り、建物の中に入ろうとも、植物が入り口周辺を塞ぐほどに生い茂っているのでとてもじゃないが進めない。
それにガラス扉の向こう側も電気が灯っていないし、人の出入りがあったような気配もない。まるで廃墟のような様相だ。
???「初めましての人やね、自己紹介ばしてもよか〜?」
にちか「わっ、こ、こんにちは……!」
(す、すごい訛り……!)
恋鐘「うちは月岡恋鐘、超研究生級の料理研究家ばい!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
超研究生級の料理研究家
月岡恋鐘
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
突然に話しかけてきた月岡恋鐘と名乗る女性は、大人と子供のちょうど中間のような女性だった。
体つきや顔つきは私よりも幾分か成熟している様子だけど、声のトーンや、その話し方や立ち居振る舞いはあどけなさや幼さのようなものを感じさせる。
それに、きっと方言混じりの喋り方も加わって垢抜けていない印象を抱かせているのだろうと思った。
91 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:49:49.81 ID:V32uVhix0
恋鐘「さっきからずっと歩いて人を探し回っとったんやけど、やっと出会えたば〜い! こいはどこ〜〜〜?!」
にちか「それが……私たちもサッパリで」
ルカ「うちらもアンタと一緒だよ。あのクマ連中から聞いた話以上の情報は持ってない」
恋鐘「うう……なんが起こっとるかサッパリばい……」
にちか「あの、月岡さんってこっち……東京の女じゃないですよね?」
恋鐘「うん! うちは長崎! 長崎で実家の小料理屋ば手伝うとるんよ!」
ルカ「長崎……随分と遠いんだな」
にちか「他の人は割と東日本に固まっている感はありますけど……なんで急に長崎なんでしょう」
恋鐘「そがんこと言われてもうちが一番知りたかよ! 急にアイドルになれって言われても困るばい!」
恋鐘「まあ、アイドルやること自体は悪い話ではなかけど……」
(あ、そこは割と受け入れてるんだ……)
【コンマ判定 53】
【モノクマメダル3枚を手に入れました!】
【現在のモノクマメダル枚数…57枚】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラ…15個】
92 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:51:09.71 ID:V32uVhix0
【キーンコーンカーンコーン……】
一通り敷地内の探索をし終えた頃、タイミングを狙い澄ましたかのように鳴り響くチャイム。
まるで平然と日常を綴るかのように、それは突然に始まった。
モノタロウ『お待たせ! 入学式の準備が整ったよ!』
モノキッド『最高にクールでブラッドでマッドネスな入学式がキサマラを待ってるぜッ!』
モノスケ『ここからが才囚学園の本域や! 覚悟しときや!』
モノファニー『押さず、走らず、喋らず。おはしで体育館までやってきてちょうだいね』
モノダム『……』
モノタロウ『待ってるよ〜!』
プツン
93 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:52:28.95 ID:V32uVhix0
ルカ「……何かが始まる、みてーだな」
にちか「い、斑鳩さん……どうしましょう」
ルカ「どうするもこうするも……行くしかないだろ。今の私たちはあいつらの手の中。争ったところでろくな展開は待っちゃいないだろうしな」
にちか「……そう、ですよね」
ルカ「……」
ルカ「あー! そう不安そうな顔すんなって! 大丈夫、私がついてる!」
にちか「斑鳩さん……」
ルカ「私の方がちょっと年上で……同じ部屋に拉致られてた縁もある。ここにいる間ぐらいは私のことも頼ってくれていいから」
ルカ「んな不安そうな面してんじゃねー、ほら。行くぞ」
斑鳩さんは照れくさそうに顔を背けて、私に右手を差し出した。
流石にこれをとって一緒に歩くほど私も幼くはないが、それでも流石は彼女の持つカリスマ性だ。
その背中は今は何よりも頼り強く、心強い存在として映っている。
きっと斑鳩さんがいなければ、私は今にも不安に潰されていただろうから。
その感謝の意を込めて、パンと私の手を重ね合わせた。
にちか「はい、行きましょう……ルカさん!」
ルカ「……ハッ」
94 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:54:36.00 ID:V32uVhix0
------------------------------------------------
【体育館】
校舎の奥まったところにある体育館には、自己紹介を済ませて顔見知りになった面々がすでにあちこちに集まっていた。
ある程度のコミュニティはできつつあるらしい、数人単位で固まっているところが随所に見られる。
私とルカさんは二人で部屋の壁にもたれかかり、時間の経過を待った。
そして暫くしてから、一人の少女が声を上げた。
あさひ「……来る」
めぐる「どうしたの、あさひ?」
あさひ「何か……近づいてきてるっすよ。遠くから……ここに!」
初めは彼女だけが聞き取っていたそれは次第に他の人間にも感知され始める。
微細な音は振動となって実感に結びつき、そしてやがて自分たちの近くに影という予兆の存在を認める。
今ここに、頭上より、何かが降り注ぐ!
ドシーン!
凄まじい轟音と舞い上がる埃。
防衛本能から閉じた瞳をゆっくりと、細い水平線が開いていく中で、それを見る。
95 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:55:31.62 ID:V32uVhix0
【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】
人の首を掴めばトマトのようにへしゃげてしまうだろうし、
ハンマーを振り下ろせば根本から折れてしまうだろうし、
どんな鉄製品も踏み潰せばただの鉄屑に還ってしまうだろう。
そんな見立てが即座に走るほどに、絶対的な暴力。
暴力を体現した悪魔とでも言うべき5体が私たちの前に降臨したのである。
『ねえねえビックリした? ビックリした?』
『ヘルイェー! この姿を見るのは、今のキサマラは初めてだもんな!』
『ワイら最強最悪の破壊兵器エグイサルや! どうや、思い知ったか!』
恋鐘「ふぇぇぇぇ?! な、なんねこれ?!」
夏葉「みんな、離れて! 距離をとりなさい! 何をしてくるかわからないわ!」
あさひ「すごいっすー! あんな機械、見たことないっすー!」
灯織「言った側から……! 芹沢さん、自分勝手な行動は控えて!」
エグイサルと呼ばれる重機は一歩一歩ジリジリとこちらに近づいてくる。
武器も持たない生身の私たちは自然と身を寄せ合う形に。
それでも対抗策は何一つない。
……万事休すだ。
96 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:56:44.64 ID:V32uVhix0
『ぐへへへ……どいつからぶっ殺してやろうか……まずはその細い胴体を握りつぶして内臓をデロデロ吐き出させてやる……』
『ちょっと、アタシグロいのダメなのよ……もっと平和的に行きましょう?』
ルカ「て、テメェらの目的はなんなんだ……! なんのつもりだよ……!」
透「あー、死にたくないなー」
恋鐘「もういかんばい! お先真っ暗ば〜〜〜い!」
紛糾することしかできずにいた私たち。
一寸先に見える結末に怯え、絶叫する他なかった狂乱の渦中で。
海を割るように、その一言が鳴り響いた。
『民よ、争いはおやめなさい』
『こ、この声は……!』
『お、お父やん?!」
ほんのわずかな言葉なのに、耳に入った瞬間に全身を虫が這い回ったような不快感。
胃の底に溜まった澱みがせり上げてくるような言い知れぬ黒々とした感情が湧き上がってくる。
今まで私たちが直面してきた『最悪』、今まさに陥っている『最悪』、そんなものを鼻で笑い飛ばしてしまうような、
もっと強大で劣悪で、醜悪な『最悪』がすぐそこにまで迫っているという実感だった。
97 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:58:06.31 ID:V32uVhix0
『争いは何も生みません……何かを生み出すことができるのは、生命と生命の尊き交わりのみなのですから……』
『く、来るわよ! キサマラも衝撃に備えなさい!』
樹里「お、おいおい! 何が起きるってんだ?!」
霧子「すごく……胸がざわざわします……」
全員が促されるままに体育館の奥、エグイサルの向こう側へと視線をやった。
この学校の校章とおぼしき垂れ幕が見下ろす先には校長が登壇するであろう台があった。
ただ一つ、理解不能なことがあるとすれば、その台はガタガタと音を立てて【蠢いている】こと。
真乃「来ます……っ!」
バビューン!!!
花火玉のように、黒い影をした何かが射出された。
ずんぐりむっくりした影は妙に緩やかに落下して、私たちに向けて首を傾げた。
98 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 20:59:13.49 ID:V32uVhix0
「グッモーーーーーーーーニン! 超お久しぶりじゃん、オマエラ元気〜〜〜〜〜?!」
99 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:00:50.21 ID:V32uVhix0
これまで私たちの前に何度と姿を表したモノクマーズ、それらの個体を一回り大きくしたような白黒ツートンカラーのぬいぐるみだった。
愛依「な、なにあれ……なんか増えたんだけど……」
円香「……最悪」
モノクマ「ボクの名前はモノクマ、この才囚学園の【学園長】なのだー!」
モノクマと名乗るぬいぐるみは傲慢なまでにふんぞり変えると、そのままとてとてとこちらに向かってくる。
エグイサルに登場していたモノクマーズも、彼に続く形で機体から降り、一つの隊列のようになった。
モノクマ「自己紹介が遅くなって申し訳ない……でも、その間にみんなはもう自己紹介は済んだんだよね?」
モノタロウ「うん! オイラたちもバッチリ顔見知りだよ!」
モノクマ「えらいね〜、相互理解はコミュニケーションの第一歩ですぞ!」
円香「異議あり。こっちは全然そっちのことを理解してない」
モノファニー「あれ? お名前はちゃんと伝えたわよね?」
凛世「逆に……お名前以外のことは全く存ぜず……」
灯織「どうして私たちを拉致監禁しているのか、その理由もはぐらかされたままです」
甜花「甜花たちを、ここから出して〜……!」
モノキッド「おいおい! キサマラの耳が遠いのを棚に上げてミーたちを悪く言うつもりか?!」
モノスケ「才囚学園は一人前のアイドルを育成するための学校や。それ以上でもそれ以下でもないで」
ルカ「そこなんだよ。元から研究生やってる私はともかく……にちかとか、他の連中はなんでここに呼ばれてる」
100 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:02:06.23 ID:V32uVhix0
モノクマ「オマエラには未来があるからだよ」
101 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:04:44.62 ID:V32uVhix0
甘奈「み、未来……? たしかに、甘奈たちはまだまだ未来はあると思うけど……それはみんなおんなじじゃないの……?」
モノクマ「いいや違うね。オマエラの持つ未来と、その他有象無象の持つ未来。その意味と価値には雲泥の差があるんだ」
モノクマ「だからこそこの学園で育まれる未来は美しく、尊く、儚い」
樹里「要領を得ねーよ、もっと分かりやすく言ってくれ」
モノファニー「キサマらは選ばれたのよ! スカウトされたって言ってもいいわね!」
(す、スカウト……?! 私が?!)
モノキッド「そう、キサマラは才能の原石なんだ! この学園を出る頃には立派なダイヤモンドになっていることだろうぜッ!」
夏葉「……話が堂々巡りしていないかしら。あなたたちは結局私たちに何をさせたいの?」
甜花「そ、そう……アイドルになるって具体的には何をすれば……いいの?」
灯織「別にアイドルになることに賛同したつもりもないですが……」
モノクマ「よし、それじゃあこの才囚学園での【アイドル育成プログラム】についてご説明いたします! モノクマーズのみんな、準備はいいかな!」
【はーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】
102 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:05:41.49 ID:V32uVhix0
モノタロウ「@キサマラにはこの才囚学園で共同生活を送ってもらいます。期限は【一生】! 長い時間を友達と一緒に過ごすことでその魅力は一層磨き上げられることでしょう!」
(……は?)
にちか「ちょ、ちょっと待ってよ……! 今何て……?」
モノクマ「ちょっと! うちの子が今発表してるところでしょうが! 邪魔しないでちょうだいよ!」
にちか「いや、だって……」
モノファニー「A学園生活内での活動に特に制限はありません。校内設備を自由に探索しても構いませんが、夜時間中の食堂と体育館は出入り禁止となります。また、現状では立入不可の区域もあります」
モノキッド「B才囚学園の学園長であるモノクマへの暴力はかたく禁じられています。校内設備に損害を与える行為も基本的には禁止です」
モノスケ「C校則に違反する行為を行なった生徒はエグイサルによって粛清されます。規則を守って、清く正しい学園生活を送りましょう」
モノダム「……」
モノタロウ「以上だよ!」
103 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:07:07.05 ID:V32uVhix0
(……は? な、何言って……)
ルカ「ざけんな! 何が期限は一生だ……そんな道理が通用するかよ!」
夏葉「私たちには元々の生活があるし……親族だっている、そんな長期の共同生活など受け入れられないわ!」
モノクマ「よしよし、オマエラいい子だね〜! 一言も噛まずに全部言えたじゃないか〜!」ペロペロペロペロ
モノタロウ「うわ〜! お父ちゃん恒例の愛のペロペロシャワーだ〜!」
モノファニー「あんなところからこんなところまで舐め回されちゃうわ〜!」
樹里「クソ、んだアイツ……こっちのことまるで聞いてねーぞ!」
モノクマ「ああ……舌ったらずでまだヨチヨチ歩きな我が子たちがこんなにも一生懸命になってボクのために頑張ってくれる……こんなにも幸せなことがあるだろうか……!!」ペロペロペロペロ
モノスケ「あかん! お父やん、そこはあかんで〜!」
モノキッド「禁断のッ! 禁断の扉が開いちまうッ!」
モノダム「……」
モノクマ「そんな恨めしそうな眼をしなくてもいいんだよ! むしろ何もせずとも愛を受けられるモノダムのその幸運さが可愛らしい!」ペロペロペロペロ
樹里「おい、いい加減にしろ! さっさとここから出しやがれ!」
104 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:08:15.83 ID:V32uVhix0
モノクマ「……もう、なんだよ。せっかく我が子との団欒を楽しんでたところなのに水を差しやがってさ」
甜花「団欒っていうか……舐め回してただけ……だけど」
モノクマ「何? 何が不満なわけ? オマエラみたいな没個性で何も持たない、この先世界の誰にも名前を覚えられることもなく消えていくはずだった存在を掬い上げてもらって、むしろ感謝の言葉はないの?」
(……!)
【没個性】……そんなことは何よりも自分が一番わかってる。
アイドルなんてテレビの向こう側の存在。煌びやかな芸能界なんて、私とは対極の場所。
自分だって理解しているし、人生とはそういうモノだと受け入れている。
そのはずなのに、こうも他人に面と向かって言われると腹立たしく感じるモノなのか。
モノクマ「オマエラという日常の奴隷に非日常をプレゼントしてやってるんだよ! アーッハッハッハッハ!」
にちか「うるさい……!」
ルカ「にちか……?」
にちか「あんたが人の価値を勝手に決めるな……! この先数十年ってある私たちの未来を勝手に値踏みして、こき下す権利なんてあんたにはないでしょ……!」
モノクマ「……ボク、さっき言ったよね?」
モノクマ「オマエラには未来があるって。確かに今は他の日常の奴隷と変わりないオマエラだけど……この学園で過ごすことでオマエラはその【輝かしい未来】を手にすることができるんだ」
モノクマ「よーし、それじゃあモノクマーズ! 次のステップのイントロダクションにいっちゃおー!」
【はーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】
105 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:09:16.41 ID:V32uVhix0
モノタロウ「あのね! この学園生活の期限は一生なんだけど、途中で卒業をすることができる制度があるんだ!」
モノファニー「それは【学級裁判】! 他の生徒を殺害したクロとそれ以外の生徒のシロで学級裁判を行って、クロがシロを欺き通すことができれば見事卒業になるのよ!」
モノキッド「ヘルイェー! クロが卒業になった際にはそれ以外のシロ全員がおしおきになっちまうぜ!」
モノスケ「逆にクロとバレてしもうたらクロだけがおしおきで残った生徒で学園生活継続や」
モノダム「……」
106 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:10:02.68 ID:V32uVhix0
にちか「……え?」
言葉の全てが宙をすり抜けた。
そんなの、テレビや小説、作り物の世界でしか聞いたこともないし、自分で口にしたこともない。
辞書での意味ぐらいは知っているけど、逆に言えばそれぐらいにしか実感がない言葉。
本当に、この世界に存在する概念なのかも疑わしいような言葉を、前提として持ち出されたことに頭がまだ追いついていなかった。
107 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:11:12.05 ID:V32uVhix0
真乃「ちょ、ちょっと待ってください……っ! さ、殺害ってどういう意味ですか……?」
モノキッド「どういう意味もこういう意味もないぜッ! 文字通りキサマが他のキサマラの中の誰かをぶっ殺すって意味だ!」
モノスケ「包丁でブッ刺してもええし、縄で首を絞めたっていい。殺し方は問わへんで」
モノファニー「うぅ……グロい殺し方だけは勘弁ね。私グロいのダメなのよ……」
ルカ「……殺す殺されるもそうだけど、気になることを言ってたよな。学級裁判ってのはなんだ?」
モノタロウ「よくぞ聞いてくれました! この学級裁判が、このコロシアイ強化週間におけるキモだからね!」
モノファニー「あのね、キサマラの間で殺人事件が起きた場合、誰が殺害した犯人なのかを議論して話し合って決めてもらうの」
モノスケ「要は犯人当てっこやな! それに成功すればクロだけがおしおきで、失敗すればそれ以外全員がおしおきや!」
モノキッド「おしおきは平たく言えば処刑のことだ! 絞首に転落、釜茹で、刺殺、火葬になんでもござれだ!」
モノダム「……」
108 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:12:05.68 ID:V32uVhix0
誘拐されるよりも、少し前。
私の日常の確かな記憶。
バイト終わりに、お姉ちゃんがまだ帰っていないアパートで、食事当番のためにシチューを煮込んでいた。
人参は細かく切らないと火が通らないよなーとか、たまにはいいお肉食べたいなーとか、そんなことを考えながら、なみちゃんの歌を鼻歌で誦じながらお玉を回して。
そういう日常と私が今いるここは同じ地続きなんだろうか。
本当の私はトラックに轢かれて病院のベットの上で昏睡状態とか、そんなことだったりしないだろうか。
そんな現実逃避をしないと、どうにかなってしまいそうな程に、狂っていた。
人の命をどこまでも軽んじて、ゲームとして興じて、嘲笑う。それを行なっているのは自分よりも小さなクマの人形たち。
それなのに、言葉に説得力と強制力を抱かせる要素の数々。エグイサルに広大な施設、そして確かに存在する誘拐された時の記憶。
にちか「……あはっ」
膝は砕け、手のひらでなんとか地面を受け止めた。
頭の中がぐるぐると洗濯機みたいに掻き乱されて、世界はどんどんと傾いて行く。
私の中の常識は今や、何の役にも立たない。
109 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:13:42.46 ID:V32uVhix0
ルカ「……ざけんなッ、ざけんなよ……! 何がコロシアイだ、学級裁判だ……意味わかんねえ……!」
モノスケ「当然やけどキサマラに拒否権はあらへん。それに、キサマラは今日であったばかりの初対面同士。殺し殺されにも対して抵抗ないやろ?」
愛依「そんなわけないじゃん! うちらはみんな……ただの女の子なんだよ!?」
夏葉「人が人を殺めるなんて重罪よ……そんなこと、出来るはずがないわ」
モノクマ「ジューザイ? なにそれ、元気出していけばいいの?」
夏葉「はぁ……?」
モノクマ「あのね、オマエラが理由にしてる法律とか倫理とか、それって他の他人に定義された社会や世界の箱の中でしか通用しない概念なんだよ」
モノクマ「現代社会が成立するよりずっとずっと前……ムラ社会だった頃は略奪に殺害はつきものだったし、戦争ではたくさん殺した人間こそが英雄だったんだよ」
モノクマ「現代では誰しもが牙を抜かれてしまって、ありとあらゆる場面から暴力が退けられるようになってしまった」
モノクマ「でも、それって生物の営みからすれば退化に他ならないんだよね。今こそ人類は原始の時代に立ちかえるべきだとボクは思うね!」
霧子「歴史を理由にするのは……違うと思います……」
霧子「人は、たくさんある道のうち……何度も過ちながらでも……正しい道を選んで……今日まで来たと思うから……」
110 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:14:54.17 ID:V32uVhix0
モノクマ「それにオマエラの目指す芸能界だってそうだよ! 他の人間を食ってかかる、蹴落としてやろうっていうバイタリティがないと生き残れない世界だからね!」
樹里「ちょっと待て! 問題はそこなんだ!」
モノクマ「はぬ?」
樹里「なんで……どこからアタシたちが【アイドルになる】なんて話が湧いてきたんだ? アタシたちが選ばれたとか何とか言ってたけど、そんなの身に覚えがないんだよ」
凛世「凛世も……アイドルのことはよく存ぜず……」
愛依「そりゃ憧れっちゃ憧れはあるけど……うちは、こんなだしさ……?」
モノスケ「なんやコイツら変なことを言うとるで」
モノファニー「本当ね、おかしな子達だわ」
モノキッド「クククッ、おかしすぎて笑えてくるぜッ!」
恋鐘「な、なんね?! 何を笑っとるとよ!?」
モノクマ「このコロシアイはオマエラじゃなきゃダメなんだよ……そしてオマエラもその理由も、意味もちゃんと知っている……」
モノクマ「それなのに、どうしてそんなことを言うのかな?」
(……は?)
(コロシアイをこのメンバーでやることの理由と、意味……?)
どこまでも心当たりのない問いを一方的にぶつけられて、私たちは全員立ち尽くす他なかった。
奥歯で憎悪と怒りを噛み潰しながら、コロシアイという言葉を振りかざすモノクマたちを睨みつけるしかなくて。
111 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:15:40.12 ID:V32uVhix0
_____無力にも、この運命に身を委ねるしかないのだった。
112 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:17:00.00 ID:V32uVhix0
-------------------------------------------------
PROLOGUE
if(!ShinyColors)
END
残り生存者数16人
To be cotinued...
-------------------------------------------------
113 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/05/31(水) 21:20:19.05 ID:V32uVhix0
というわけでプロローグまで投稿させていただきました。
早速進行がグダってしまってすみません。
どうかまたお付き合いただければと思います。
明日6/1(木)21:00前後よりまた1章を更新していこうと思います。
よろしくお願いいたします。
以下今回のコロシアイ参加者
-------------------------------------------------
【超研究生級のブリーダー】櫻木真乃
【超研究生級の占い師】風野灯織
【超研究生級のスポタレ】八宮めぐる
【超研究生級の料理研究家】月岡恋鐘
【超研究生級のドクター】幽谷霧子
【超研究生級のギャル】大崎甘奈
【超研究生級のストリーマー】大崎甜花
【超研究生級の文武両道】有栖川夏葉
【超研究生級の大和撫子】杜野凛世
【超研究生級のサポーター】西城樹里
【超研究生級の博士ちゃん】芹沢あさひ
【超研究生級の書道家】和泉愛依
【超研究生級の映画通】浅倉透
【超研究生級のコメンテーター】樋口円香
【超研究生級の音楽通】七草にちか
【超研究生級のカリスマ】斑鳩ルカ
114 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 20:55:28.58 ID:cAvrZtli0
------------------------------------------------
CHAPTER 01
ガールビフールフールガールズ
(非)日常編
------------------------------------------------
115 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 20:56:20.14 ID:cAvrZtli0
モノクマたちが姿を消してからも、私たちはその場に硬直していた。
コロシアイとやらを受け入れるつもりはない。
ただ、今の自分たちの前にはそこから逃れる術など何もなく、所在のない不安だけが胸を埋め尽くす。
その吐口を求めるように、互いを見つめ合うことしかできずにいた。
静寂が続くこと、数分。
一人が、口を開いて膠着を破った。
円香「……いつまで、こうしているおつもりですか?」
透「ん……樋口、どった」
円香「別に。このまま見つめあってても状況は好転しないし、どうしようもない」
円香「せめて自分たちの置かれている状況を改めて確認するぐらいした方がいいんじゃないかと思っただけ」
にちか「樋口さん……」
夏葉「そうね、円香の言う通りだわ。あんな要求に応じる必要はない。だけど出来るだけの対策はしておくべきね」
ルカ「……こうなったもんは仕方ねーな」
一人が動き出したことで、少しずつだが冷静さが戻ってきた。
何も追い込まれているのは一人じゃないんだ。自分でこの不安を抱えこみ続ける必要はない。
116 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 20:58:15.23 ID:cAvrZtli0
灯織「……待ってください」
だけど、その不安を誰かと共有する必要もない。
その誰かはまだ、信用に足るとも決まっていないのだから。
灯織「先ほどの話からすると……ここから出るために他のいずれかの殺害をすでに企んでいる方がいる可能性も捨てきれませんよね」
樹里「お、おい……そんなこと……」
灯織「でも、無いとは言い切れませんよね」
あさひ「わたしもそう思うっす。誰がどう思ってるかなんて、どうやってもわかんないっすから」
夏葉「待ちなさい、ただでさえこんな状況なのに自分勝手な行動をすればバラバラになってしまうわ!」
灯織「自分勝手な行動ではなく、自分を守るための行動です。すみません」
風野さんは私たちに最後まで猜疑の目を向けたまま、体育館を一人後にした。
117 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 20:59:30.92 ID:cAvrZtli0
残った私たちにも、彼女の行動は波紋を起こした。
一度結びかけた協力を改めて見つめ直し、
その強度を図りかねる者、もっと強く信用できる繋がりに逃れる者、どうすればいいのか分からず当惑して立ち尽くす者。
集まりは、空中分解の様相を呈していた。
甘奈「ごめんなさい……ちょっと、今は甜花ちゃんと二人にさせてもらうね……」
円香「浅倉、いくよ」
あさひ「ここでじっとしてても何も変わんないっすね」
凛世「少し、部屋で休ませていただきます……」
一人、また一人と体育館からは人が減っていき、残ったのははじめの半分ほどだろうか。
その残った人間も、信頼を向け合っているわけではなく、身の振り方に悩んでいるだけの段階だ。
118 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 21:00:27.36 ID:cAvrZtli0
霧子「これから……どうしようか……」
ルカ「ひとまず、改めて脱出する術がないか探索する……か。アイツらの言いなりにはなりたくない」
夏葉「……ええ、そうしましょう」
めぐる「わたしは、風野さんたちにも協力してもらえるように説得に行ってみる! きっと不安で仕方なくて、あんなことを口走っちゃってるだけだろうから……!」
ルカ「だとしたら一人よりも複数人で行った方がいいだろ……えっと、櫻木……」
真乃「櫻木真乃、です……!」
ルカ「あんたも一緒に行ってやってくれるか?」
真乃「は、はい……っ!」
なんだかんだでルカさんが指揮をとる流れになっているあたりは流石のカリスマ性だ。
本人にとってそれが自覚のあるものかどうかは分からないけど。
ルカ「にちか、オマエは私と一緒についてきてくれるか?」
にちか「え、いいですけど……」
ルカ「ここじゃ一番最初に出会ったのがオマエ……私からすれば一番信用できるのはオマエなんだよ」
(もう……そんな言い方をされると弱い)
にちか「分かりました! お供します!」
ルカ「よし、それじゃあ各自探索と説得。とりあえず今日のところはそれで行こう」
ルカさんの指示に従って私たちは散開した。
目立った反発もなく従ったのは、頭を働かせたくなかったから。
コロシアイを課せられている非現実、それを噛み砕いて自分の領域に入れることに抵抗を抱いていたから。
何か別のことをして気を紛らわしていたかった。
ただ、どれだけ探そうとも脱出の糸口などは見つからず。
私たちは靄の中を闇雲に歩き回るだけに終始した。
119 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 21:02:07.11 ID:cAvrZtli0
------------------------------------------------
【寄宿舎 にちかの部屋前】
ルカ「……お疲れ。今日のところは、とりあえず休もう。オマエも訳のわかんないことが連続してまだパニックだろ」
にちか「はい……正直、寝て起きたら全部夢であってほしいって思っちゃってます」
ルカ「ハハ……だよな」
にちか「……あの、ルカさん」
ルカ「……ん?」
にちか「ルカさんは私より年上で……他のみんなを引っ張ろうと、守ってしてくださってるんだと思うんですけど……」
にちか「あの、無茶はしないでくださいね! ここではルカさんも私たちと同じ立場の、仲間なんですから!」
私の申し出にルカさんは一瞬虚をつかれたようで、黒目がきゅっと小さくなった。
そしてすぐに頬をにへらと緩めて、右手で私の頭を撫でた。
ルカ「サンキュー。辛くなったらにちかを頼る」
にちか「え、えへへ……」
ルカさんの手は指が長くて、それでいて暖かくて、ずっと撫でられていたいような気がした。
目を覚ましてからずっと強張ってばかりだった私を初めて、ときほぐしてくれた接触に、足先から蕩けてしまいそうだった。
ルカ「じゃあな、ゆっくり休めよ」
にちか「はい、おやすみなさい!」
120 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 21:03:46.30 ID:cAvrZtli0
------------------------------------------------
【にちかの部屋】
モノキッド「ヘルイェー! 今のやりとり、マジでお笑いだな!」
にちか「う、うわああああああ?! な、なんでいるの?!」
モノキッド「何でも何もミーたちモノクマーズは学校の敷地内ならどこでも行けちまう権限持ちだからな!」
にちか「うーわ最悪……」
モノキッド「それよりキサマに朗報だ! クローゼットを見てみな!」
にちか「はぁ……?」
促されるまま、部屋の脇にあるクローゼットを開ける。
その瞬間、絶句。今私が着ている制服と全く同じものが何セットも取り揃えられているではないか。
モノキッド「これで着替えにも困らないな!」
にちか「どこで集めてきたの……気色悪……」
私の制服があるということは、本当に私は選ばれてここにいるということだ。
全国の女子高生を無作為に選んで誘拐したんじゃこうはいかない。
その意味と価値……あの時のモノクマの言葉が何度も頭に浮かび上がっては消えた。
121 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 21:04:48.52 ID:cAvrZtli0
にちか「ねえ……あなたたちは本当に何が目的なの? なんで私たちがコロシアイをしなくちゃいけないの……?」
モノキッド「……! おっと、そろそろ夜伽の時間だッ! 遅刻は厳禁、それじゃ失礼するぜッ!」
にちか「ちょ、ちょっと! 気色悪い理由で逃げんなー!」
にちか「……行っちゃった」
本当に文字通り神出鬼没だ。
どこから入り込んだのか、どこに消えたのかも分からないのはなかなかにこちらも神経を使う。
にちか「……はぁ」
でも、もうどうでもいい。
私は全てを投げ出してベットに倒れ込んだ。
目を覚ましてからあまりにも多くのことが起きすぎた。
これまでの人生の十数年、そのいずれよりも衝撃的で凄惨で、受け入れられない現実。
生きるか死ぬかなんて、ここ数十年は無縁の概念だと思っていたのに。
にちか「いや、意味わかんないし……」
眠気が湯水のように湧いてくる。
多分その源は諦観。いくら私が思考を張り巡らせたところで事態を好転させる手など思いつくはずもない。
時間が流れるのだけを待つのに、瞳を開けておくのは退屈すぎた。
シーツの匂いを嗅ぎながら、クッションに体がのまれていくのを感じながら
……ゆっくりと、意識を手放した。
122 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 21:06:45.78 ID:cAvrZtli0
------------------------------------------------
【School Life Day2】
------------------------------------------------
【にちかの部屋】
「夢……なわけないよね」
目を開けた瞬間待っていたのは自分の寝床からすれば上等すぎるつくりの天井。
ベッドだっていつもの数段ふかふか。
照明もボタンひとつで簡単につけたり消したりできる快適っぷり。
まあ……ここで私を待ち受けている運命には不快以外の何ものも存在してはいないんだけど。
ベッドからようやっと身を起こして鏡の前へ。
決して眠れなかったということはない。
頭も体も疲れ切って、睡眠も十分に取れているはずだ。
それなのに頬がこけて見えるのは、精神的なモノなのだろう。
いまも胸に何か冷たいものが突き刺さったようで、息苦しさを感じている。
123 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 21:07:43.73 ID:cAvrZtli0
【キーンコーンカーンコーン……】
モノタロウ『おはっくまー! 朝の放送だよ〜!』
モノスケ『キサマラ、ちゃんと起きとるか? こんな時こそちゃんとした生活習慣を維持せにゃいかんのやで』
モノファニー『気を抜いた瞬間に乙女はおばさんに変わっちゃうんだから! ぶくぶくぶよぶよになってから後悔しても遅いんだからね!』
モノキッド『ミーはちょっとくらいふっくらしてる方が好きだけどなゲヘヘヘ』
モノファニー『やーん、ちょっとまだカメラ回ってるでしょ? そういうのは後にして』
モノキッド『ちょっとくらいいいじゃねーかよ、ゲヘヘヘ』
モノダム『……』
プツン
朝からかなり最悪な放送を見させられた。
どうやら朝晩には決まってモノクマーズの放送があるらしい。
こんな空間でも規則正しい生活を、ということだろうか。
私たちから日常を奪っておいて、いいご身分だと思う。
嫌気を掻き出すように歯ブラシを口に突っ込んで、朝の支度をした。
ひとまず、この学校での生活からは逃れられないのだ。
適応する気こそないが、取り残されないように、人として最低限度の営みぐらいはやっておかないと。
124 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 21:18:30.41 ID:cAvrZtli0
ピンポーン
洗顔にヘアセットと一通りの朝の支度をし終えようかというタイミングでインターホンが鳴った。
にちか「は、はい!」
ルカ「おはよ、もう起きてたか?」
ルカさんは昨日の今日だというのに、気丈に笑顔を見せてくれた。
きっと私に不安を抱かせないためなんだと思う、どこかその口元にはぎこちなさを感じた。
ルカ「昨日は寝れたか? 環境も違って……落ち着かないだろ」
にちか「んー……そうですね、部屋自体は完全防音で、物音もしなくて静かなので寝ることは寝れました」
ルカ「そっか、そんならよかったけど」
にちか「ルカさんは?」
ルカ「私は……すぐには寝れなくてさ、あたりをぶらついてたよ」
ルカ「どっかに出れる場所がないかって、そんな期待しても無駄なのは分かってんのにさ」
にちか「ルカさん……」
そう言ってルカさんは自嘲して肩を窄めた。
ルカさんだって私と数えるほどしか年は変わらない。
彼女だって不安を抱いているはず、私にそれを見せないように取り繕っている。
そのことが余計に負荷になるのが、嫌だった。
にちか「ルカさん! 朝ごはん! 朝ごはん食べに行きましょう!」
ルカ「え? お、おう……どうした、急に」
にちか「もうお腹ぺこぺこなんですよー! 飢え死に寸前! さ、早く行きましょう!」
ルカさんの手を強引にとって駆け出した。
不意をつかれた手には一切の抵抗の力がこもっておらず、痩身のルカさんは私でも軽く引いて行けた。
掌から伝わってくるルカさんの冷えと震えを、強引に握り込んでいた。
125 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 21:25:29.62 ID:cAvrZtli0
------------------------------------------------
【食堂】
食堂には朝目覚めてから行き場もなく、ひとまずで行き着いたであろう他の人たちの姿もあった。
とはいえ、全員が全員ではない。
昨日の話の後に、保身のために別行動を選んだ人たちの姿はなく、他にも数名まだ目覚めていないのか、抜けている人員がある。
真乃「お、おはようございます……っ」
にちか「お、おはようございます……」
ルカ「よっす……流石に、全員じゃねーんだな」
樹里「まあ、昨日の今日だしな……これでも集まった方だと思うぜ?」
夏葉「……やはり心配ね、あの後単独行動をしていた人たちもちゃんと睡眠は取れたのかしら」
ルカ「ていうか朝飯は……自分で用意する感じか?」
霧子「ううん……モノクマたちが用意している献立もあるみたいではあるんだけど……」
霧子「朝になると、食糧庫に材料が追加されるみたいで……今は、恋鐘ちゃんが……」
ルカ「恋鐘……ああ、あの長崎の」
126 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/01(木) 21:26:04.19 ID:cAvrZtli0
夏葉「彼女が全員分の朝食を作ってくれているみたいなの」
にちか「ぜ、全員の?! めっちゃ大変じゃないです?!」
めぐる「うん、わたしたちも手伝うよー!って言ったら、自分が好きでやってることだから気にしないで!って」
樹里「元々実家の小料理屋で厨房を手伝ってたらしくてさ、腕にも自信があるんだってよ」
夏葉「ええ、だから先に私たちで今この場にいない人たちを呼んでこようと思って」
にちか「ここにいないのって……」
真乃「風野さんに、杜野さん、大崎さんたちに、芹沢さん、和泉さん、浅倉さんと樋口さんだね……っ!」
樹里「そんじゃ分担して探すか。寄宿舎にいるとも限らねーだろうしな」
にちか「ルカさん、一緒に声かけに行きましょう!」
ルカ「ああ、いいけど……どいつにすんだ?」
にちか「えっとですね……」
------------------------------------------------
【親愛度が微増する選択肢です】
1.灯織
2.凛世
3.甘奈・甜花
4.あさひ
5.愛依
6.透・円香
↓1
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/02(金) 02:35:56.96 ID:4zq4o6PP0
4.あさひ
128 :
数日空けてすみません、ゆっくりでも更新したいと思います
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:20:53.08 ID:4+ogcrc90
4 あさひ選択
【図書室】
ルカ「……あ、いたぞ! やっと見つけた……」
にちか「はぁ……なんで朝からこんな埃っぽいとこにいるんですかね、この子……」
私とルカさんは二人で芹沢さんに声をかける係を引き受けた。
寄宿舎に呼びに行くだけの簡単な任務だと思いきや、インターホンを鳴らしても応答はなし。
そこからどこか校内をぶらついてるんだろうと軽い気持ちで探し始めて……数十分。
まさかと思って地下に来てみてやっとその姿を見つけた。
あさひ「……? あれ、どうしたんっすか? 二人とも」
芹沢さんは私たちに気づくとキョトンとした様子で首を傾げた。
にちか「どうしたもこうしたもないよ……今、みんなで朝ごはん食べようってことになってて、それで食堂に集まってない人に声かけてたとこなんだよ」
あさひ「ふーん、大変っすね」
にちか「ふーん……ってなんでそんな他人事みたいな言い方出来るんですかね……」
ルカ「おい、オマエも一緒に食うんだよ。早く着いてこい」
あさひ「えー……? わたし、別にいっすよ。適当に自分で食べるんで」
ルカ「わがまま言うな、こんな状況なんだから集団行動には応じてくれ」
あさひ「……」
ルカさんがすごんで見せると、少し気圧されたのか芹沢さんは渋々こちら側へと歩いてきてくれた。
一応は朝食会に参加してくれるらしい。
本人としてはあからさまに納得してないらしく、ずっと唇を尖らせて不服を示していた。
にちか「にしても芹沢さん、なんで図書室なんかにいたの?」
あさひ「んー……本が読みたかったからっすね!」
ルカ「本だぁ? そんな読書家なのか、テメェ」
あさひ「あはは、わたしこれでも【超研究生級の博士ちゃん】っすから」
……まあ、図書室にいたってんならそれぐらいしか理由はないよね。
そう納得した。納得したはずなんだけど……
私たちが彼女の姿を見つけた時、その手には何も本なんか持っていなかったし、彼女はじっと奥の本棚を見つめていただけだったような気がするんだよね。
……思い違い、なのかな。
【芹沢あさひの親愛度が上昇しました】
【現在の親愛度レベル…0.5】
129 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:23:08.73 ID:4+ogcrc90
------------------------------------------------
【食堂】
なんとか説得の甲斐あって、全員が食堂に一堂に会することはできた。
……とはいえ、単独行動していた人のほとんどは嫌々。席にも積極的に着こうとはしていない。
例外的なのは、ただ寝坊気味だった愛依さんだけだ。
夏葉「あなたはそこで……あなたはこっちに……それぞれ間に入るように座ってもらえるかしら」
灯織「……えっと」
甘奈「甜花ちゃん、こっち座ろう……いっしょに」
甜花「う、うん……」
円香「浅倉」
透「んー」
空気は重たい。
信頼という言葉がどこまでも空虚な空間で、心を開かせる言葉など見つかるはずもない。
全員が口をまごつかせる歯痒い時間ばかりが過ぎた。
恋鐘「みんな〜! ご飯ばできたけん配膳手伝って〜!」
月岡さんの言葉にみんな救われた様子で、すぐに厨房の方に集まった。
自然と一列に連なる形になり、月岡さんが一人一人にご飯をよそった。
130 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:24:14.36 ID:4+ogcrc90
あさひ「何も変なものは入ってないっすよね」
恋鐘「あさひは好き嫌いがあると?」
あさひ「いや、毒とか入ってたら全員恋鐘ちゃんに殺されちゃうっすよね?」
にちか「……っ!?」
恋鐘「そ、そんなことせんよ〜〜〜!! あさひ、なんてことを言い出すばい!」
あさひ「……そっすか! それなら安心っすね!」
(こ、この子……とんでもないことを言い出すな)
途中空気が凍る場面はあったけど、食事をいざ始めると少し緊張が解けた様子。
ぽつりぽつりと自己紹介や交流をし始める光景が目に入り、ホッと胸を撫で下ろす。
131 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:27:26.11 ID:4+ogcrc90
めぐる「ねえねえ、同い年だし……下の名前で呼んでもいい? わたしのこともめぐるって呼んでくれていいから!」
真乃「う、うん……わかった……えっと、めぐるちゃん……!」
灯織「……まだ、会って2日目だから」
めぐる「ご、ごめんね! 無理にそう呼ぶ必要はないから!」
灯織「……私のことは、好きに呼んでくれていいよ」
◆
樹里「……アンタ、昨日はちゃんと眠れたか?」
凛世「い、いえ……」
樹里「その……不安だし、寂しいだろうし……色々と心細いだろうけどさ、アタシでよければ相談とか乗るよ。寄宿舎の部屋もたまたま隣り合ってるしな」
凛世「……はい」
◆
愛依「あさひちゃん、あさひちゃん昨日はどうだった? ちゃんと眠れた?」
あさひ「ん? 寝たっすけど……それがどうかしたっすか?」
愛依「いや、うちさ〜なんかムナサワギっつーのかな……中々寝付けんくてさ〜、今日もちょいじり貧なんだよね」
あさひ「へー」
愛依「だからさ、あさひちゃんもキツかったら辛いよなーと思って。そうじゃないんなら大丈夫!」
あさひ「?」
132 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:28:37.66 ID:4+ogcrc90
夏葉「みんな、少しいいかしら」
緊張が解けつつある中で、有栖川さんが立ち上がり、周りの注目を集める。
夏葉「これからこの学園で生活を続けるにあたって、この朝食会は最低限義務づけるのはどうかしら」
夏葉「毎朝顔を突き合わせることで犯行の抑止にもなるし……交流は精神的にもプラスに働くはずよ」
めぐる「さんせーい! 毎朝他の誰かの顔を見れたら、それだけで安心するもんね!」
円香「……殺人事件が起きていないかの確認もできますし、異論はありません」
甜花「あ、あう……甜花、ちゃんと起きられるかが心配……」
愛依「アハハ……うちもちょい自信ないかも……」
樹里「決まった時間に食堂に来なかった人は、集まっている人で起こしに行く。今日と同じスタイルでいいだろ」
今の無秩序で満ちた状況で、彼女の提示した秩序は何よりも頼もしく見える。
全員で非武装をしようという有栖川さんの提案は特に抵抗なく受け入れられた。
133 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:29:53.48 ID:4+ogcrc90
あさひ「あ、そういえばなんっすけど」
愛依「ん? どったん、あさひちゃん」
あさひ「昨日、夜時間に学校を探索してたんっすけど裏庭で変なのを見たんっすよ」
霧子「あさひちゃん……夜に一人は、危ないよ……」
ルカ「それはさておいて……変なのってなんだ?」
あさひ「なんかマンホールのフタって言うのかな、下に通じる穴みたいなのがあったっす」
(……!)
真乃「そ、それって……もしかして脱出できるかもしれないってことですか……?」
甘奈「そ、そんな美味しい話……あるのかな」
透「下水道からの脱出ってスパイ物じゃ定石じゃんね」
灯織「ライフラインとして水道は必須ですし……外部と繋がっている可能性は大いにありますね」
談笑を俄かに割った芹沢さんの話は注目を集めた。
自分の身も危機にさらされている今、脱出の糸口というワードは何よりも関心を惹く。
134 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:31:08.57 ID:4+ogcrc90
あさひ「フタは重たくてわたしじゃとても開けられなかったんで、中がどうなってるかは知らないっすけど……ここにいる人たちで協力すれば開くんじゃないっすかね?」
樹里「ああ、スポーツ経験者も体を鍛えてる奴もいる……みんなで行けばマンホールのフタくらい訳ないだろ」
凛世「しかし、そのように脱出を試みても良い物なのでしょうか……コロシアイを強いているモノクマさまたちに見咎められは致しませんでしょうか……」
円香「その点は心配いらないんじゃない?」
霧子「校則でも学校の探索自体は禁止されてないし……きっと、問題ないよ……!」
夏葉「ええ、試してみる価値はありそうね。腕が鳴るわ!」
ルカ「よし、飯を食ったら各自裏庭に集合だ。そのマンホールのフタってのを開けてみるぞ」
にちか「は、はい……!」
マンホールという降って湧いた希望に私たちは露骨に食事を口に運ぶ速度が増した。
一人、また一人と食事を片付けて、足早に食堂を後にする。
(……あれ?)
あさひ「……」
ただ、そんな中でも……話題を持ち出した当の張本人だけ、食べる速度が変わらずにいたのがなぜか目についた。
135 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:33:04.64 ID:4+ogcrc90
------------------------------------------------
【裏庭】
めぐる「あさひ! 見つけたマンホールっていうのはどこかな?」
あさひ「えっと……生い茂ってる草で隠れてるんっすけど……こっちっすね」
食事を終えた私たちは高揚のままに裏庭に介する。
一人背丈の低めな少女を取り囲み、彼女の動向を見守った。
あさひ「あった……これっす!」
夏葉「なるほど……確かにマンホールね」
芹沢さんがしゃがみ込んだところには、植物で身を埋めるようにしているので分かりづらくはなっているが、確かに丸い鉄板があった。
年季も入っていて、結構な厚みと重量がありそうだ。
透「持ち上げんの? これ」
ルカ「フタの縁にいくつか窪みがあるな……何人かちょっと手を貸してくれ」
夏葉「ええ、勿論よ」
樹里「おっし……行くか」
めぐる「はいはい! わたしもやるよ!」
四人で窪みに指をかけ、いっせーのーでで力を込めた。
ガタ……
コンクリートが擦れる音が聞こえたかと思うと、ゆっくりとマンホールのフタは持ち上がり、真っ暗な洞穴がその姿を現した。
長く閉ざされていた黒からは、カビたような、ジメジメと苔むしたような臭いがする。
あまりいい臭いではない。
136 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:35:18.39 ID:4+ogcrc90
樹里「……開いたな」
あさひ「んー……上からじゃ、下がどうなってるのかはよく見えないっすね」
円香「壁伝いに上り下りができるように取っ手はついてるみたいですけど、どうします?」
樋口さんの呼びかけに、少しの沈黙が訪れた。
脱出の可能性という甘言に呼び寄せられこそしたものの、
いざ目にしてみるとその穴は底が見えぬほどに深く、闇は全てを飲み込んでしまいそうなほどに深淵の様相を呈している。
これに飛び込んでいけるほどの勇気は、そう簡単に持てるものでは無い。
ルカ「……私は降りてみる」
そんな中、ルカさんは一歩進み出た。
にちか「ルカさん……」
ルカ「このままコロシアイに応じるつもりなんか毛頭ない。それ以外の手段で外に出るための方法を模索しなきゃならないんだ。見えている可能性は一通り全部確かめなきゃだろ」
額に寄せた皺からしても緊張は明らか。
ここまで来て引き下がれないという面子から来る蛮勇なのかもしれない。
夏葉「ルカ、私もついていくわ。あなただけを危険な目に合わせるわけにはいかないもの」
恋鐘「うちも行くばい! 赤信号もみんなで渡れば怖くなか〜!」
めぐる「わたしもついていく! いっしょに行く人が多い方が危険を避けられる可能性も高くなるもんね!」
にちか「私も、行きます! ルカさん、お供させてください!」
それでも、彼女から目を離せなくなってしまうのはカリスマ性の為せる技なのだろうか。
彼女の気高さと儚さに、寄り添いという気持ちが私にも湧いてくる。
人を惹きつける魅力とはそういうことを指すんだろうと思った。
137 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:36:11.96 ID:4+ogcrc90
透「……マジか、どうする?」
円香「……行かない理由も、ないんじゃない」
透「んー……そっか」
円香「今のところは……目立つ行動はすべきじゃない。他の人たちに合わせておいた方がいいと思う」
透「うっす」
◆
灯織「……櫻木さんはどうするつもり?」
真乃「えっと……わ、私も……行ってみようかな……っ」
真乃「他の人が頑張っているのに黙って見ているのは……辛いよ」
灯織「……わかった、私もついていく」
真乃「灯織ちゃん……」
灯織「正直私は八宮さんみたいに即断もできないし、櫻木さんみたいに強くあろうとする気持ちも持てない」
灯織「この期に及んで怯えてる……だから、これはその自分を打ち破るための挑戦」
灯織「私は、私の意思で降りることにするよ」
真乃「灯織ちゃん……」
◆
138 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:37:58.38 ID:4+ogcrc90
愛依「あさひちゃん、うちが先に降りるからその次に降りておいで!」
あさひ「……? いいっすけど、なんでっすか?」
愛依「そしたらあさひちゃんが手滑らせてもうちらでどうにかなるかもじゃん?」
あさひ「……なんで、そんなにわたしのことを気にかけるんっすか? わたしとは昨日会ったばかりっすよね?」
愛依「え〜? なんでだろ……うち、弟とか妹がいるから……年も近いし?」
あさひ「よくわかんないっすけど、まあわたしは順番とか気にしないっすよ」
◆
甘奈「甜花ちゃん、無理はしなくていいからね! 危ないかもしれないし……甘奈だけで下は見てくるよ?」
甜花「ううん……なーちゃんだけに、危険な真似はさせられない……甜花は、お姉ちゃん……だから……!」
甘奈「甜花ちゃん……うん、いっしょに頑張ろう! 頑張って脱出してみせようね☆」
甜花「う、うん……ファイト……!」
◆
樹里「アンタ、着物だと降りづらいよな……大丈夫か?」
凛世「はい……足を踏み外さぬよう……注意いたします……」
樹里「や、無理してついてこなくてもいいって意味なんだけど……」
凛世「上で一人で待つ方が、凛世は怖いのです……」
樹里「……そか」
◆
カツンカツンという音を鳴らしながらマンホールを下っていった。ルカさんに続く形で結局全員、降りてきているみたいだ。
足を踏み外さないように、自分より前の人の手を踏んでしまわないように。
慎重に慎重に下ったので時間はかかったが、そう深いところではなかったように思う。
最終的に行き着いたのは、思っていたよりも広い空間だった。
139 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:39:14.63 ID:4+ogcrc90
------------------------------------------------
【裏庭 マンホール下 地下空間】
にちか「つ、着いた……」
真乃「マンホールの下に……こんな場所が……」
甜花「ひぃ……ひぃ……甜花、降りるだけで結構、疲れちゃった……」
霧子「慣れない運動をすると筋肉が張っちゃうから……揉んでマッサージ……してあげるね……」
昔社会科の授業で見たことがある。東京の地下に設けられた水害に備えて設けられたコンクリートの空洞の空間。
それによく似た部屋だ。体育館をゆうに凌ぐ広さと高さを備えた空間には、大樹のようなコンクリートの柱が連立している。
そしてその部屋にはチョロチョロと小川のように下水道が流れており、部屋に横付けになった穴へと向かっている。
ルカ「ビンゴ……あの穴から出ていけそうだな」
円香「……あそこ通るんですか? なんというか、悪臭がしそうなんですが」
夏葉「しかし外に通じている可能性が一番高いのは事実よ。避けては通れないわ」
円香「……はぁ」
あさひ「あはは、なんか探検みたいでワクワクしてきたっす!」
灯織「……大丈夫なのかな、何か仕掛けられたりとかしてないといいけど」
めぐる「大丈夫だよ! もし何かあったとしても、みんなで助け合えば乗り越えられるはず!」
恋鐘「うんうん、うちらの友情パワーで完全攻略しちゃろ〜!」
霧子「お、おー……!」
日常から真っ暗闇に突き落とされていた私たちの前に突然現れた、小さな希望の兆し。
私たちはそれに怯えながらも、どこか湧き立つ気持ちを抱きながら突き進むことになる。
脱出して、これまでを取り戻す。
今までと何一つ変わらない生活を送る。
淡い希望にのぼせながら、一歩一歩と突き進んだ。
140 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:40:12.86 ID:4+ogcrc90
その先には、より真っ黒な壁しか待っていないと知らずに。
141 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:42:17.80 ID:4+ogcrc90
____結果として、あれは罠だったんだと思う。
誰かがマンホールを発見して、私たちがそれに飛びつくことも織り込み済みの罠。
下水道を突き進む道中、落とし穴やせり出す壁、警備のドローンによるエアガンの掃射……
身体に外傷を負うようなことはしてこなかったものの、思うように進めないという感覚は少しずつ、また少しずつと私たちの精神を蝕んでいった。
失敗を繰り返すたびに、理性は正常を取り戻していく。
これだけ苦労して進んだところで、本当に脱出ができるのかの確証もないという気づかないようにしていた当たり前の事実にも気づき出す。
そうなれば、動いていたはずの手と足が止まるのも当然のことだった。
ルカ「……チクショウッ! またダメだった……! あとちょっと……あとちょっとなのに……」
ルカ「おい! 次行くぞ、次! 今度こそ……超えられるはずだ!」
凛世「……」
甜花「……」
ルカ「お、おい……どうしたんだよ、急に」
142 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:43:39.53 ID:4+ogcrc90
真乃「……ご、ごめんなさい。体が……もう限界で……」
霧子「少し、休んだ方がいいみたい……」
ルカ「な、何言ってんだ……あとちょっとのところまで来てるんだよ、これを逃したら機はもうないかもしれない……!」
灯織「斑鳩さん、お一人で挑戦してみては」
ルカ「……テメェ」
あさひ「他のみんなはもう限界っすよ。ルカさんはこれ以上みんなを振り回して、みんなの体を壊したいっすか?」
ルカ「はぁ? ち、違ェ……!」
夏葉「ルカ……一度冷静になりましょう。あなた、少し入れ込みすぎよ。今は個人でやっているわけじゃなくて、16人のチームで挑戦している」
樹里「……他のみんなの気持ちが折れちまってる、今のままじゃクリアできるもんもクリアできない」
にちか「ルカさん……」
ルカ「……で、でも」
???「やあやあ! みんなして楽しんでくれてるようで何より!」
にちか「こ、この声は……!?」
嫌な予感がした。下水道に仕掛けられている罠は、時々パターンを変えているような場面があった。
それはつまり、私たちの行動は全て筒抜け。
脱出を目指してここに挑んでいることさえも、その全てが黒幕の掌の上である。
それを証明せんとばかりに、私たちの背後に彼らは仁王立ちしていた。
ルカ「モ、モノクマ……!」
143 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:46:14.64 ID:4+ogcrc90
モノクマ「いやぁ、しかし2日目でこの絶望のデスロードの存在に気づくとは……優秀優秀!」
モノクマ「オマエラを信じた甲斐があったってもんだよ! これでみんなも喜んでくれるよね!」
あさひ「……?」
【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】
モノタロウ「キサマラお疲れさまー! 大丈夫? 腕とか脚とか腹とか胸とか背中とかパンパンになってない?」
モノスケ「やっぱ難易度が高すぎたんとちゃうか? 全然クリアできそうな気配がないで」
モノファニー「そうね、ずっと砂漠の緑化運動を眺めている気分だったわ」
モノスケ「植えたそばからラクダがむしゃ食いってことやな!」
モノキッド「努力が全部報われるばかりが人生じゃないッ! ミーはそれを知っているから努力をしないッ!」
円香「全てあなた方の想定のうち、だったということですか」
モノタロウ「ごめんね。そうなんだ。この脱出ルートはキサマラに僅かな希望を与えて、それをへし折るっていうお父ちゃんの斬新なアイデアで作られたモノなんだ」
モノクマ「うぷぷぷ……楽しんでもらえたかな? 」
愛依「ひどいじゃん!? どんだけ頑張っても出れないなんて……!?」
モノクマ「いや、それは誤解だよ。確かにゴールは明確に存在しているし、そこから脱出はできる。まあ、そこに辿り着くなんて、天文学的な確率を潜り抜けなきゃダメだろうけどね!」
144 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:46:59.18 ID:4+ogcrc90
油絵の具が壁に乱雑にぶっかけられた時のようだ。
でろりと大粒の雫が垂れ下がっていき、最終的に壁には一本の線が引かれてしまう。
それがあちこちから、どんどんと。
リーダーシップを発揮して、ここまで連れてきた人間に向けたはずの信頼。
築きかけていた絆。そういうものを改めて丁寧に分断するように、上塗りされた絶望が、線を引いていく。
モノクマ「それでも挑戦するってんなら止めはしないけどね! 他のやりたくない人も強引に引き連れてどうぞ!」
モノキッド「いのちぞんざいに! ガンガンいこうぜ!」
陰湿なやり口だ。
私たちの前に餌をぶらさげては、それをすんでのところで奪い去る。
残された私たちの虚無感と虚脱感は他の全ての一切を飲み込んでしまう。
モノクマ「まっ! それじゃせいぜい脱力感を噛み締めて! アデュオス!」
【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】
真っ白になった私たちを見て満足したのか、モノクマはそのまま姿を消した。
苛立っていたルカさんだけが、汚い言葉をその去り際にぶつけていたが、うまく聞き取れなかった。
145 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:49:15.36 ID:4+ogcrc90
樹里「……そんなイライラしても仕方ねえよ、とりあえずのところは戻ろうぜ」
ルカ「……ああ、クソッ」
むしゃくしゃで肩を振るわせるルカさんを他の人たちは遠巻きに、なんだか冷めた視線を向けていた。
ついさっきまで一つになってゴールを目指していた集団とは思えないほどに、その温度には開きがある。
あさひ「ルカさん、気持ちはわかるっすけど個人の判断で何回も他の人を危険に晒すのはやめてほしいっす」
にちか「ちょ、そんな言い方……!」
そして、その重篤な温度差はルカさんの肌に亀裂を走らせる。
あさひ「一回挑んでダメだって分かっても……そこから無策に何度も突っ込んで……体力ない人だっているのに」
あさひ「わたしだってもうクタクタっすよ〜、今日は帰ってもう寝たいっす」
芹沢さんの無邪気さは、他の人たちが理性で押さえていた不満の堰を切ってしまう。
遠慮で口にするのを控えていた言葉が、徐々にところどころで漏れていく。
146 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:50:35.07 ID:4+ogcrc90
灯織「もっと……他の方法を探す時間に当てたほうがよかったのかな」
樹里「……おい、大丈夫か?」
凛世「鼻緒で少し……指の間を痛めてしまったようです……」
甜花「もう、甜花……体ボロボロ……帰るのも、しんどい……」
甘奈「甜花ちゃん……服も汚れちゃってるね……上に出たら洗濯してあげるね」
誰もルカさんのことを悪く言っているわけではない。みんな横並びで、責任も等分されて然りの筈だ。
それなのに、ただ殿を務めたというだけで、他のみんなのことを思って動いてしまったがために、ルカさんは針の筵の感覚を味わってしまった。
ルカ「……ッ!」
ダッ
にちか「あ、ル、ルカさん……!」
ルカさんは逃げるように一人でまた横穴に駆けていってしまった。
私たちの視線から逃れるように、自分の罪と向き合おうとするように、こちらには一瞥もくれなかった。
147 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:51:50.03 ID:4+ogcrc90
夏葉「……ルカも、次でダメだったら諦めて上がってくるでしょう。私たちはひと足先に撤退しましょう」
真乃「は、はい……」
恋鐘「みんなが疲れが溜まっとるばい、梯子登るのも大変やけん休み休み戻らんね」
ルカさんを残し、他の人たちはどんどんマンホールを登っていく。
その足取りには露骨に落胆の色が見え、会話が交わされる様子もない。あるのはせいぜいため息程度。
愛依「あり? にちかちゃんはまだ残るカンジ?」
にちか「あ……はい、ルカさんが戻ってからにしようかなって」
愛依「……そっか、だったらうちも____」
あさひ「愛依ちゃん、早く来るっすよー!」
愛依「あー……」
にちか「大丈夫です、先行っちゃってください! 私とルカさんの二人で戻るので!」
愛依「……うん、ごめんね。それじゃあルカちゃんにこれだけ伝えといて」
愛依「誰もルカちゃんが悪いとか思ってないから、気にしないで」
にちか「はい、もちろんです」
148 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:53:01.80 ID:4+ogcrc90
それから私は一人でルカさんが戻ってくるのを待ち続けた。
最後の愛依さんが梯子を登る音もしなくなってから、十数分と経った頃だろうか。
ようやっと横穴の方から靴でコンクリートを叩く音が聞こえてきた。
リズムが不揃いな音はフラフラとした足取りを想起させる。
そして実際姿を現したルカさんは、先ほど以上に疲弊し切った様子で、格好もボロボロ。
肌が露出している部分にはどこかで擦れたのか血が滲んでいる箇所もあった。
にちか「……ルカさん、無茶しすぎですよ。あれだけの人数いてクリアできなかったのに、一人で挑んだりして……」
ルカ「……ハァ……ハァ」
言葉も返せないほどに息が上がっているのか、息で返事をした。
手の甲で口元を拭ってから、キョロキョロと見回して、安堵した表情で座り込む。
ルカ「他の連中は……帰ったか」
にちか「です……みんな、諦めて」
ルカ「ん。それが賢明だよ」
達観したような表情には自嘲も覗かせた。
多分、最後の挑戦は半ばヤケクソだったんだろう。
失敗に悔しがる様子もない。
149 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:54:37.31 ID:4+ogcrc90
にちか「……ルカさん、どうしてそんなにもみんなを引っ張ろうとしてくれるんですか?」
ルカ「……あ? なんだよ、急に」
にちか「出会った時からそうじゃないですか、ルカさんは私たちの矢面に立ってモノクマと話したり、危険がありそうなところには真っ先に飛び込んだり」
にちか「私たちって昨日会ったばかりの初対面なんですよ? そんなルカさんが体張るような必要全然……」
ルカ「勘違いすんな」
にちか「え……」
ルカ「私は、私のためにやってるだけ。私はここにいる誰よりも元いた場所に帰りたいから、その一心で動いてるだけなんだよ」
にちか「それって……前に言ってた【相方さん】のことです?」
ルカ「……ああ、アイドルになること以外何も眼中にないって感じのやつでよ。三度の飯を食ってる暇があるならレッスンしたいって言い出すレベル」
にちか「す、すごい人ですね……」
ルカ「……【あいつ】の隣に立てるのは私しかいない。私じゃなきゃ、いけないんだ」
ルカ「今こうしてる間にもあいつに取り残されちまうかもしれない……そう思うと、一分一秒が惜しくてたまらなくなる」
ルカ「帰るために足掻けるなら、私は無限に足掻くよ」
150 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:55:24.42 ID:4+ogcrc90
危ういと思った。
相方さんへの執着を語るルカさんの瞳は目を背けたくなるほどにギラついていて、その想いには代償を伴うと思ったから。
他の何かを捨て去ってでも縋りたい。退廃的という言葉さえ当てはまってしまうような、そんな激しく燃え盛るような情動を感じてしまったから。
にちか「……っ!」
私は一瞬、言葉を失ってしまった。
ルカさんに気圧されてしまったから、それもあるけれどそれ以上に、この人についていけるほどに私は【強くない】と自覚してしまったから。
私という一人の人間の物語はこういうものだと定義して、諦めてしまっていた。
そんな型に押し込んだ日常に飼い慣らされている私が向き合うには、斑鳩ルカという人間はあまりにも大きすぎる。
ルカ「……つっても、当然コロシアイに乗じるつもりはないよ」
ルカ「ちょっと私も意固地になってたみたいだ……付き合わせて悪かったな、にちか」
そんな私のことに気づいてか、それとも熱くなりすぎた自分のことに気づいてか、ルカさんは少し小っ恥ずかしそうに弁解するのだった。
にちか「い、いえ……大丈夫です」
ルカ「……腹減ったな、上で飯でも食うか」
にちか「……はい」
151 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:57:15.90 ID:4+ogcrc90
------------------------------------------------
【食堂】
地上に戻ってからルカさんと二人で食堂に向かった。
随分と長い間地下にいたらしく、すでに日は半ば沈みかけていた。
といっても、ここでの生活に朝も夜もあったものでは無いような気もするけれど。
霧子「あ……斑鳩さんに、にちかちゃん……」
恋鐘「二人とも、大丈夫ばい?! あんまり遅いけん心配しとったとよ〜!」
ルカ「え? あ、おう……悪かった、大丈夫だよ……」
恋鐘「二人の分もご飯用意するけん、ちょっと待っとって! それまで霧子に診てもらうとよか!」
にちか「え? 診てもらうって……」
霧子「病院で少しお手伝いをさせてもらってるから……今日の脱出の挑戦で怪我してないかだけ、ちょっと診させてもらうね……」
他のみんなもそうしてもらったのだろうか、食堂の机の上には救急箱が置かれ、慣れた手つきで幽谷さんは私たちの体を診ていった。
特に怪我に覚えはなかったので、大した処置もされなかったけど、ルカさんは相当に痛めつけていたらしい。
幽谷さんに包帯をぐるぐる巻きにされていた。
骨折とかではないって笑ってたけど、その笑顔もなんだか痛々しかったな。
152 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:58:19.40 ID:4+ogcrc90
------------------------------------------------
【にちかの部屋】
【キーンコーンカーンコーン……】
モノファニー『なんだか今日は疲れちゃったわ……手足がダル重……』
モノスケ『骨折り損のくたびれもうけってやつやな! ええこと一個もなしや』
モノスケ『あっ、でも骨を折ったら労災は下りるんとちゃうか? 金が湧いてくるんとちゃうか?』
モノスケ『おっしゃ、そうと決まったらガンガン骨を折るんや! ボッキボッキ、ガッポガッポでウッハウハや!』
プツン
結局のところ、今日はほとんど進展も何もなし。
体に疲労を溜め込んだばかりで、慣れない動きをしたことで筋肉痛も始まりつつある。
シャワーを浴びたら、そのままベッドに引き摺り込まれてしまった。
不思議なことに、体はクタクタでも目は冴えていた。
寝付くまでに何度も体勢を変えた。
右に左に体を向けたし、暗闇に目が慣れてきて家具の配置が透けて見えてきてしまった。
それは多分きっと、ルカさんの中にみた焔が原因なんだと思う。
あのルカさんにそれほどまでの強い執着を抱かせる相方さん……一体どんな人なんだろう。
想像したところでわかるはずもない。
私には程遠い全くの別世界のお話なんだから。
そう自分に何度も諦めるように促す言葉を投げかけ続けた。
……一体私が、何を諦めるというのだろう。
自分自身に投げかけた言葉の所在が分からなくて、息が詰まった。
153 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 21:59:06.31 ID:4+ogcrc90
------------------------------------------------
【School Life Day3】
------------------------------------------------
【にちかの部屋】
【キーンコーンカーンコーン……】
モノタロウ『うぅ……モノスケ……痛々しくて見ていられないよ……』
モノキッド『モノスケのやつ……無茶しやがって……』
モノタロウ『ヤム……モノスケェーーーー!!』
モノファニー『だから言ったのよ……あんな化石みたいになっちゃって惨めでグロいわ……』
モノダム『……』
プツン
三日目の朝。昨日の下水道での挑戦が尾を引いているらしく、手足が普段よりも数倍重たく感じた。
まだまだ若々しい肉体だとは思っているし、多分これは睡眠の質の問題。
緊張の解けない状況に置かれて、慣れない寝台の上。
熟睡なんてできるはずもなく、疲労を満足に回復させるような睡眠はとれちゃいなかった。
「……とりあえず、食堂行かなきゃだよね」
154 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 22:00:33.25 ID:4+ogcrc90
------------------------------------------------
【食堂】
重たい鉄の棒みたいになっている足を引きずって食堂へ。
つい昨日取り決めたばかりの約束ということもあり、さすがに出席率は高く、風野さんや芹沢さんの姿もあった。
にちか「……肝心の有栖川さんがいないですけど」
樹里「あー……なんか、本当は朝に弱いとかなんとか言ってたな……」
円香「……あの方が毎朝集まろうと言い出したのでは?」
樹里「だよな……本人が寝坊してちゃ意味ねーっつーの……」
凛世「凛世が、起こして参ります……」
樹里「あ、アタシも行くよ!」
西城さんは何かと杜野さんを気にかけているみたい。
杜野さんが一人で出て行こうとするのを呼び止めて、続いて出て行った。
ルカ「にちか、こっち来いよ!」
にちか「あっ、はい!」
二人を横目に見送りながら、私はルカさんの隣の席についた。
ルカさんは昨日幽谷さんに巻いてもらった包帯を右手にしたまま。
食事に支障はないのかと聞くと、ただの打ち身だと笑った。
155 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 22:01:57.53 ID:4+ogcrc90
にちか「ルカさん、今日も昨日の下水道に行くんです?」
ルカ「いや……流石にな。他の連中も行くつもりはないんだろうし……わざわざ一人で行ったりはしねーよ」
にちか「よかった……ちょっと安心しましたよ」
ルカ「ハッ……そんなに向こう水な奴だって思われてたのか? 私は」
にちか「まあ……それなりに」
ルカ「とりあえずのところは今日は探索だな。まだ学校の全部も見てはないし、何かのヒントになるものがあるかもしれない」
にちか「ですね! まだ未開拓のところとかあるかもです!」
ルカ「オマエも私に無理に合わせなくて、好きなように行動していいからな。慕ってくれてんのは嬉しいけどよ」
にちか「あはは、ご忠告痛み入りますー」
暫くして、西城さんたちが寝ぼけ眼の有栖川さんを連れてきたことで朝食会がようやく始まった。
全員その顔には疲労の色が見える。やっぱり昨日の下水道でのことで、みんな無理をしていた部分はあるんだろう。
それを悟ってか、ルカさんはなんだか少し静かだ。
156 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 22:03:21.95 ID:4+ogcrc90
恋鐘「今日はどげんせんね? また昨日みたいに下水道ば挑戦すると?」
甜花「あ、あう……甜花、ちょっとパス……筋肉痛で、腕が動かない……」
めぐる「うーん、別の方法を考えてみるのもいいかも! ほら、他にも脱出できる場所はあるかもしれないし!」
円香「……というか、外の助けを待つんじゃダメなんですか? いい加減警察とかも動き出しそうな気がしますけど」
真乃「もうこれで丸三日……になるんだよね」
甘奈「そうだよ! パパとかママとか……学校だって、きっと心配してるって!」
【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】
モノスケ「ここでキサマラに残念なお知らせや」
モノキッド「警察自衛隊その他もろもろの救世主はここにはやって来ないんだぜッ!」
モノファニー「残念だけどそれが運命なのよ……受け入れるしかないのよ……」
樹里「出やがったなモノクマーズ……!」
157 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 22:05:41.36 ID:4+ogcrc90
甜花「あ、あれ……? 黄色いモノクマーズって骨折してたんじゃ……」
モノスケ「おう、心配してくれておおきに!」
モノスケ「でもよう考えたらワイらはぬいぐるみだもんで骨なんかなかったわ! そもそも折る骨がなかったっちゅーこったな!」
モノファニー「つまり純粋なくたびれもうけだったってことね!」
円香「……そんなのどうでもいいから」
透「来ないの? けーさつ」
モノタロウ「うん! 才囚学園に警察が来ることは100%あり得ないよ! オイラウソつかないもん!」
灯織「……随分と強く言い切るんですね」
モノスケ「そらそうや、ゼロに何をかけようがゼロのまま。どう足掻いても外からの助けなんて来る可能性はないんやで」
夏葉「……私たちが今拉致監禁されている才囚学園。その場所には確かに誰も心当たりはないわ」
夏葉「でも、だからといって可能性がゼロとは断言できないでしょう……? それにこれだけ大きな施設設備……そう簡単に隠匿できるものとも思えないのだけれど」
モノタロウ「ううん! 絶対に来ないよ! ごめんね!」
ルカ「頑なだな……」
158 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 22:06:52.47 ID:4+ogcrc90
モノスケ「余計な希望は持つなっちゅーことや。そないなことして傷つくのはキサマラの方なんや、ワイはむしろ菩薩のような心で諭してやっとるんやで」
あさひ「でも、確かにガラス越しにも空を飛行機が飛んだりしてるのは見たことないっす」
霧子「私たちの住んでいる国の中じゃない……とかなのかな……」
透「そもそもの前提が違うとか。うちらの知ってる世界じゃなくて、別の世界」
透「イセカイテンセーって奴」
円香「いや、ないでしょ」
モノタロウ「まあとにかくそういうことだから! 余計な希望は持たないほうがいいよ! オイラ嘘だけはつかないからね!」
【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】
にちか「まーた言いたいことだけ吐いていきましたね……」
外からの助けは来ない。犯人側としては確かにそれを主張するだろうけど、随分な念の押しようだ。
一体何の確証があってあそこまで強く言えるというのだろう。
甘奈「甘奈たちがいなくなってること、みんな気づいてるよね……?」
樹里「あいつらの言うことなんか信用する必要ねーよ、この人数が一気に消えてるんだぞ。流石に全国的に話題になってんだろ」
めぐる「うん、大丈夫だよ! 大丈夫! 今は外の世界の人たちのことを信じよう!」
甜花「なーちゃん、大丈夫……! 甜花はそばにいるから……!」
甘奈「うん……ありがとう、ごめんね」
ルカ「とにかく、今はやれることをやるだけだ。外のことは分からないし、今はこの学園の謎を少しでも解き明かさないと」
灯織「そうですね……まだ材料が足りません。この学校のことも、私たちのことも」
夏葉「改めて探索ね、昨日の疲れもあるでしょうからそれぞれ無理をしないように」
モノクマーズたちの意味深な言葉が気にかかりつつも、前向きな締めくくりで朝食会は幕を下ろした。
私たちに立ち止まっている時間はない。
前に進むしかない……それ以外のことを考えている余裕も、ないんだ。
159 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/04(日) 22:08:27.72 ID:4+ogcrc90
------------------------------------------------
【にちかの部屋】
とりあえずは自分の部屋に戻ってきたけど……どうしようかな。
学校の探索をしなきゃだけど、一人だと見落としとかあるかもしれないし……
他の誰かを手伝うほうが良さそうかな。
まだ他の人たちとも知り合って間もないし、お互いのことを知るいい機会かも。
______よし、そうしよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
またまたお久しぶりです。
今回も自由行動パートのお時間がやってまいりました。
今まで同様、ご学友の皆様と交流を深めることで、学級裁判を有利に進めるためのスキルや、またそのスキルを購入するための希望のカケラを入手することができます。
親愛度の最高値は「12」となっており、最高に到達した際にスキルが獲得できます。
なお、最高値に到達してからも交流を続けることでその先に進めることも可能で……?
ぜひお試しください。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
1.交流する【交流相手の名前指定】
2.購買に行く
3.休む(自由行動をスキップ)
【現在のモノクマメダル枚数…57枚】
【現在の希望のカケラ…15個】
↓1
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/05(月) 17:54:22.87 ID:YAS3G9G10
2
161 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/05(月) 21:04:43.29 ID:DFVRTUYq0
2 選択
【購買】
一応この学校にも購買らしき部屋はあるみたいなんだけど、まさかリアルマネーを使う訳じゃないよね?
お財布も携帯も手元にない。現金はおろか電子マネーすら使えない無一文の状態の私たちに、何も使い物にならない施設を用意するとも思えないし……
チャリン
やっぱり、学校の探索中に見つけた【これ】を使うんだろうな。
購買の中にはやたらと目を引く【ガチャガチャマシーン】と、【自動販売機】の二つがあるみたい。
えーっと、なになに……?
□■□■□■□■□■□■□■□■
☆購買についてはこれまで通り、【ガチャガチャマシーン】と【自動販売機】の二つの設備を使用することが可能です。
【ガチャガチャマシーン】はモノクマメダルの消費枚数を指定すると、その数ぶんコンマの判定を行い、コンマの値と同じ番号に割り振られたプレゼントが手に入る仕組みです。本家V3のプレゼント番号01~100が排出されます。(101以降のものは省略)
【自動販売機】では学級裁判で役立つアイテムとスキルを購入することができます。アイテムの購入にはモノクマメダル、スキルの購入には希望のカケラがそれぞれ必要となります。
なお、自動販売機については後のに登場する予定のシステムの都合上商品を前シリーズより縮小しています。予めご了承ください。
□■□■□■□■□■□■□■□■
------------------------------------------------
【自動販売機】
≪消耗品≫
【ヒーリングタルト】…5枚
〔誰の口にも合いやすいマイルドな口当たりの優しい甘さ。裁判中に使用すると発言力を2回復できる〕
【ヒーリングフルーツタルト】…10枚
〔フルーツをトッピングして満足感アップ。裁判中に使用すると発言力を4回復できる〕
【プロデュース手帳】…15枚
〔これは彼と彼女たちが過ごしてきた美しき日々の証。誰よりも理解者たる彼は、いつだってそばで戦ってくれる。裁判中に使用するとノンストップ議論・偽証ミスディレクション・反論ショーダウンを無条件クリアする〕
≪希望のカケラで獲得できるスキル≫
【ノー・ライフ】希望のカケラ…15個
〔発言力の最大値が+2される〕
【私をときめかせて】希望のカケラ…20個
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕
【チョコ for Y♡U】希望のカケラ…15個
〔体力回復を行った際効果が増幅する(自動回復は除く)。〕
【UNCHARTE:D】希望のカケラ…15個
〔発掘イマジネーションの文字がある程度埋まった状態で始まるようになる〕
【浪漫キャメラ0号】希望のカケラ…20個
〔発言力の最大値が+3される〕
------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…57枚】
【現在の希望のカケラ…15個】
1.ガチャガチャマシーンを回す(枚数指定安価)
2.自動販売機を使う(購入する物品・スキル指定)
3.やっぱやめる
(1、2は同時指定可)
↓1
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/06(火) 05:48:02.69 ID:wZ9Rwlv40
1でガチャ17枚
自由行動増えるのはアドだけどまだ枚数足りてないから希望のカケラ集まったら【私をときめかせて】交換したいな……
163 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/06(火) 19:55:39.97 ID:poeVK48I0
1 選択
【モノクマメダルを17枚使ってガチャガチャマシーンを回します】
【直下より17回連続でコンマを参照してその数値に応じたアイテムを獲得します】
↓1〜17
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/06(火) 20:00:04.21 ID:0VjRhXAf0
やあっ
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2023/06/06(火) 20:10:59.46 ID:yb+IUdfp0
【空気中のスパイクタンパク汚染に気をつけましょう】
スギ花粉や様々な化学物質に対して過敏な方がおられるように
スパイクタンパクに対し過敏な方がおられます
特に二価ワクチンを接種された方に遺残した
オミクロン対応の
mRNAから生成されるスパイクタンパクは
従来の武漢対応のものと比べ
60〜70倍人体に結合しやすくなっており
シェディング被害は甚大なものになっています
また一部の方に感じる臭いに関しても
酸化したPUFAの代謝産物であるアルデヒドの可能性も否定できません
科学的証明は難しい案件ですが
徹底したシェディングング対策や
イベルメクチンやグルC点滴などで
改善することから
臨床的に起こっている事案は
化学物質過敏症やスパイクタンパクそのものでしか説明できないものばかりです
スパイクタンパクが体内に侵入すると
自覚症状が無くても
徐々に毛細血管レベルでは
血栓を形成する恐れがあり
酸素や栄養素が
細胞全体に十分行き渡らなくなる可能性があります
これは老化の促進を意味し
新たな病気が発生する素因にもなります
既接種者で
コロナ後遺症やワクチン後遺症になった方は
非接種者に比べ
シェディング被害を被りやすくなっています
そのため治療が難渋している可能性もあることに留意してください
166 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/06(火) 21:13:55.17 ID:poeVK48I0
セルフでコンマ判定進めますね
加速
167 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/06(火) 21:14:43.20 ID:poeVK48I0
ksk
168 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/06(火) 21:15:37.50 ID:poeVK48I0
ksk
169 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/06(火) 21:16:17.35 ID:poeVK48I0
ksk
170 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/06(火) 21:17:33.73 ID:poeVK48I0
ksk
171 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/06(火) 21:18:40.02 ID:poeVK48I0
ksk
172 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/06(火) 21:20:20.21 ID:poeVK48I0
ksk
173 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/06(火) 21:20:47.60 ID:poeVK48I0
ksk
174 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/06(火) 21:22:36.88 ID:poeVK48I0
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