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【シャニマス×ダンガンロンパ】シャイニーダンガンロンパv3 空を知らぬヒナたちよ【安価進行】Part.1

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15 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:33:17.41 ID:UjM5Y6Sh0

にちか「な、なにこれ……?!」

ルカ「メ、メカ……?!」

私たちの体躯の数倍はありそうな青の機体に、ガトリングやら破砕機並みのアームやらが取り付けられたロボットが、待ち構えていた。

ルカ「や、やばい……逃げるぞ!」

にちか「えっ、ちょっ……先行かないでくださいよ!」

私たちは思考するよりも先に足が動き出していた。とにかくこいつから逃げなくちゃ、そのことで思考がいっぱいになる。
私たちの靴音に裏拍を合わせるようにして地響きが鳴る。後ろを振り返れば、案の定さっきの機械の猛追。
立ち止まっている時間はない、とにかく急がないと……!

ルカ「おい! こっちだ!」

にちか「は、はい……!」

一心不乱にただ生き残ることだけを考えて走った。
16 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:34:28.37 ID:UjM5Y6Sh0

『あら? こっちに逃げてきちゃダメよ〜?』

ルカ「マジか……くそ、一体だけじゃねーのかよ!」

にちか「斑鳩さん、道変えましょう! 道!」

途中敵の増援が現れ、逃げ惑う場面もあったけれど、なんとか命からがらその場所へと辿り着く。
スチール製のスライドドア。上下左右にどっしりと広く壁を構えた、ドーム式の形状。
幼少期よりよくよく見慣れたその造形で、一眼にこれが体育館であると理解する。

ルカ「はぁ……はぁ……クソ、ひとまずここに退避するぞ」

にちか「は、はい……早いとこ隠れましょう!」

流石に今回ばかりは仇敵に向けるはずの敵対心も忘れ、二人でいっせーのーでで息を合わせて扉を動かした。
重厚な音を立てながら扉は開き、その中へと私たち二人を誘った。

誘われた先で、待ち受けていたのは……
17 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:36:22.89 ID:UjM5Y6Sh0
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【体育館】

「あれ? にちかちゃん、にちかちゃんだ! おーい! 大丈夫? 怪我はない!」

私の名前を呼び、大きく両手を振る少女。
仰々しい天井の光に照らされ、いつも以上にその金髪のツインテールが輝く笑顔には見覚えがあった。

にちか「あ、あれ……?! 八宮さん……?!」

同じ事務所に所属しているアイドルの、【八宮めぐる】その人だった。
ただ、私たちを待っていたのは彼女だけではなかった。

「……!」
「ほわっ……灯織ちゃん、どうしたの……?」
「う、うん……その、前に話した……」

ルカ「……おい、どういうことだよコイツは」

私の所属している事務所のアイドルたち、全26名のうち……私とルカさんを含めた16名がこの場に集まっていたのである。
その全員が口をまごつかせ、不安そうな表現を浮かべている。
おそらく全員が全員状況は同じ。ここに呼ばれた理由も、ここがどこなのかも分かってはいないのだろう。
18 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:38:39.50 ID:UjM5Y6Sh0

夏葉「二人とも、早くこちらへ。あの機械たちはどうやらこの体育館の中には入ってこないようだから」

樹里「にちかとルカさんを入れて……これで16人か」

凛世「もうこれ以上……どなたも逃げてはこないのでしょうか……」

集められているメンバーはまちまちだ。
特に人選に明確な規則性は見当たらない。年齢もバラバラで、ユニットによっては全員が集まっていないところも見受けられる。

にちか「あ、あの……美琴さんを誰か見ませんでしたか?!」

そして、ユニットのメンバーが揃っていないのは私も同じことだ。
体育館を見渡してみても、あの頼り甲斐のある長身に、眉目秀麗な容姿を携えたパートナーの姿はない。
ロッカーに閉じ込められていたところから、体育館に逃げ込むまで。斑鳩さん以外の人間の姿は影も見ちゃいない。
救いを求めるように、みっともなく狼狽えた。

しかしながら、絶叫虚しく、芳しい返事は帰ってきはしなかった。
全員沈痛な表情を浮かべたまま、顔を伏せる。
19 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:39:51.11 ID:UjM5Y6Sh0

にちか「……そんな」

夏葉「今は無事を祈るほかないわ……外に出ればあの機会が待ち受けている、今の私たちはここから出られないようだし」

にちか「で、でも……今こうしてる間にもあの機会に捕まってたりしたら……!」

思わず掴んだ両肘。
有栖川さんの両肘は震え、視線を落とせば指先が手のひらに食い込むほどに力が篭っていた。

夏葉「堪えてちょうだい。果穂と智代子の姿がなくて……私だって本当は探しに行きたいの」

夏葉「でもここで一人の判断で扉を開けて、万が一にでもあの機械がここに入ってくればそれこそ袋のネズミになってしまうわ」

にちか「……うぅ」

ルカ「……チッ」

有栖川さんだって、大切に思っていた年下たちの姿がない。
不安に思うのは当然だし、どうしようもないもどかしさを必死に抑えている。
誰しもが今、自分の中の衝動を殺すので精一杯なのだと理解した。
20 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:41:29.21 ID:UjM5Y6Sh0

甜花「千雪さん……大丈夫、なのかな……」

甘奈「ダメ……携帯も繋がらない……それに、そもそも圏外になっちゃってる……」

あさひ「……あれ?」

愛依「どしたん、あさひちゃん?」

あさひ「……何か聞こえるっす。地響き? いや、これは……」

あさひ「上からっす!」

芹沢さんが叫んでから数秒と経たず、それは舞い降りた。



【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】



ガシンガシンガシン!!

いや、そんな柔らかな着地ではないか。
猛烈な重量に、硬い触感が床にぶつかって、振動が私たちの体にまで伝播。
内臓を内側から揺さぶられるのは言いようもなく不快な感じがした。
21 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:42:37.14 ID:UjM5Y6Sh0

『おう、全員集まっとるようやな!』

『集合時間が守れてみんなえらいなぁ。オイラなんか今朝24時間寝坊しちゃったよ』

『あら? 今朝は集合時間きっかりにきたじゃない』

『予定の日にちを一日間違えた上に、一日寝坊しちまってプラマイゼロってところか! 最高にロックだなッ!』

『……』

私たちの前に姿を表したのは、ついさっきまで校内で追い回してきたあの巨大なメカ。
しかもそれが5体も一度に現れ、立ち塞がったのである。

甜花「ひ、ひぃん……『勇者たちは逃げ出した…… しかし回り込まれてしまった』ってこと……?!」

恋鐘「ふぇ〜〜〜〜〜?! こ、こい体育館は安全じゃなかったと〜〜〜〜?!」

円香「全部筒抜けだったんでしょうね。あえてこの体育館に誘導していた……ここで一網打尽にするつもりでしょうか」

めぐる「そ、そんなことはさせない!」

甘奈「で、でもどうすればいいのかな……あんな、強そうなロボット……」

あさひ「武器も何もないっすね」

透「やば。休してるじゃん、万事」

樹里「クソッ、逃げ道もねーぞ……!」

動揺と不安の揺籠、天井と繋がっていた鎖は突然に切り落とされた。
漠然としていた恐怖が具現化し、再び私たちは生命の危機に瀕することとなったのだ。
22 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:44:19.20 ID:UjM5Y6Sh0

『ん? キサマらどうしたの? そんなに揃いも揃って雑誌の袋とじを開けるの失敗しちゃった時みたいな顔して』

『きっとみんな緊張しちゃってるのよ。多感な時期のシャイガールばかりなのよ』

『ミーの圧倒的なカリスマ性に腰を抜かしちまってんのさッ!』

『アホか! ワイらがエグイサルに乗ったままやから警戒しとるんや! 段取りのこともあるしさっさと降りるで!』

『……』

ただ、死の象徴はそれすら嘲笑う。
目の前に突きつけられた命の危機の囀ることしかできない私たちを馬鹿にするような問答をスピーカーで垂れ流したかと思うと、
素っ頓狂なSEに素っ頓狂な演出と共に、



______素っ頓狂なマスコットたちが姿を現した。



23 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:45:28.99 ID:UjM5Y6Sh0

モノタロウ「オイラの名前はモノタロウ! 赤色なんだ、赤ってすっごくすごいんだ」

モノファニー「アタイはモノファニー。モノクマーズの紅一点よ! ……あれ? アタイも赤?」

モノスケ「ワイはモノスケや。モノクマーズの頭脳であり司令塔。ワイがおらんと回らんことで有名やで」

モノキッド「ミーはモノキッド! キサマらに極上の地獄を提供してやるぜ!」

モノダム「モノダム……ダヨ。ミンナ、ヨロシク」


『5人揃ってモノクマーズ!』


あの巨大かつ殺意に満ちていたメカから降りてきたとは思えない、ずんぐりむっくり体型で間の抜けた5人組。
彼らは私たちの緊張と不安を他所に、間の抜けた言葉で混迷ばかりを引き起こす。
24 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:47:50.46 ID:UjM5Y6Sh0

にちか「……は? いやいやいやいや……な、なにこれ……?」

並び立つ私たちは揃いも揃って口をぽかんと開けて唖然の表情。
現実がすぐには受け止めきれず、思わず頭を掻きむしった。

あさひ「すごい! 動くぬいぐるみだ〜!」

ルカ「なんの悪夢だコイツは……どうやって動いてんだこれ……」

モノスケ「ただのぬいぐるみやあらへんで。ワイらは最新鋭のありったけの技術をこれでもかと注ぎ込まれた新時代のニューウェーブやからな」

モノファニー「自分の力で考えて喋れるのよ。シンギュラリティを体現しているのよ」

甜花「すごい技術……デトロイトでも、こんなの中々ない……」

甘奈「この前お仕事で見させてもらったAIも凄かったけど……この子たちはちょっとレベルが違うよ……?!」

モノタロウ「えっへん! どうだ! すごいんだぞ!」

愛依「わ〜、でもなんか喋り方かわいいじゃん〜! 1個ぐらい持って帰りたいかも〜!」

モノスケ「あかん、あかんで。ワイらを家に招きたいんやったらそれ相応の用意が必要や」

モノスケ「まずユニットバスは絶対にNGや。そうじゃないとモノキッドが浴槽を汚して敵わんからな」

モノキッド「ヘルイェー! 浴槽だけで済むと思ったら大間違いだぜッ!」

モノスケ「それに加えて、子供部屋もとい自己研鑽部屋は必須やな。男にもプライバシーは必要なんや」

モノファニー「やあねぇ、こんなところで下ネタなんて。女の子を前にしてやることじゃないわ」

モノスケ「ハッ、女の子やから下ネタを言うんやろがい!」

モノタロウ「大変だ! モノスケの言動から加齢臭がひどいよ!」
25 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:50:45.27 ID:UjM5Y6Sh0

初めこそ動揺に慌てふためいていた私たちだったが、モノクマーズと名乗るぬいぐるみたちの問答を眺めているうちに徐々に冷静さを取り戻しつつあった。
いつまで経っても会話を前に進めようともせずに、無意味極まる時間が過ぎていくことに苛立ちすら覚えた頃、樋口さんがその口火を切った。

円香「……ちょっと、いい加減にしてくれる? 私たちが今置かれている状況、説明してくれるんじゃないの?」

モノファニー「そんな眉間に皺を寄せちゃダメよ。若いうちから皺を寄せていると、歳をとった時酷いんだから」

モノタロウ「えっ! ひどいってどうなるの!? 死んじゃうの?!」

モノファニー「そんなことないわ。でも他の人よりもシワクチャのボロ雑巾みたいになる確率が五割増しらしいわ」

モノタロウ「な〜んだ良かった! 死なないんだったらモーマンタイだね! オイラ、ガンガン皺寄せちゃうもんね!」

円香「だから、そういう意味もないやりとりをやめて」

モノファニー「もう、言われちゃってるわよ。そろそろいい加減にお話を進めましょう?」

霧子「ぬいぐるみさん……あなたたちが、私たちをここに連れてきたんですか……?」

モノキッド「おう、ミーたちがキサマらをこの血塗られたパーティに招待してやったんだぜッ!」

モノスケ「クックックッ、こっからオモロイオモロイパーティの始まりなんや」

にちか「……パーティ?」

ぬいぐるみの口からこぼれた、聞き馴染みのある言葉が妙に耳についた。
私のよく知る意味合いでその言葉が用いられていないのが明白だったから、
そしてその裏にある意味合いがおおよそ私たちのとって良いモノでないことも透けて見えていたからだろうか。
26 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:52:06.66 ID:UjM5Y6Sh0




モノタロウ「うん! ここにいる、顔も名前も知らない【初対面の人同士】でとびっきりエキサイティングなパーティをやっちゃうよ!」

灯織「……え?」



27 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:53:31.05 ID:UjM5Y6Sh0

モノダム「……」

円香「顔も名前も知らない……そんなことはないけど」

樹里「おい、どういう意味だ! アタシたちは283プロダクションの所属アイドル……全く初対面なんかじゃねーぞ!」

モノスケ「おい、モノタロウ……キサマ、やったんとちゃうやろな」

モノタロウ「え? アレアレ? 今回も、記憶操作の係ってモノファニーじゃなかった?」

モノファニー「もう、モノタロウがやりたいってアタイから係を奪い取ったんでしょ? あの時のジャンケンを忘れたとは言わせないわ!」

愛依「なんか……段取りをミスしちゃってる系?」

夏葉「……一体、何の話をしてるのかしら」

モノキッド「道理でコイツら【華がありすぎる】と思ったんだ! ミーは今回、何の華もない陰キャラだけでヤるって聞いてたから違和感ビンビンだったぜッ!」

(……華が、ありすぎる?)
28 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:55:07.00 ID:UjM5Y6Sh0

モノタロウ「もう、みんなして責めないでよ!」

モノスケ「ってことはキサマらは自分らに何の【才能】が当てがわれとるかも知らんってことか?」

にちか「才能? そんなの……そんなもの……」

(才能なんてものがないことは私が一番よく知ってる。そんなものがあれば、私はこんなにも苦しむこともなかったし……)

モノキッド「オイ! 誰でもいいから答えな! キサマらは何者だ!?」

恋鐘「な、なんね急に! うちらはアイドル! 283プロダクションのアイドルばい!」

モノスケ「あーあ、こりゃ完全にクロや。モノタロウ、大クロもんやで」

モノタロウ「うう……本当に記憶になかったんだよ……」

モノスケ「まあええ、お父やんにバレへんかったら問題はあらへんからな。さっさと手続きだけ進めてまうで」

夏葉「……! みんな、何か来るわ! 離れて!」

モノタロウ「大丈夫! 何か危害を加えるわけじゃないから!」

モノファニー「そう、ちょっと居眠りをしてもらうぐらいのものよ!」

モノスケ「まあ、寝とる間にキサマらはちょっと大事なものを色々と失ってしまうんやけど」

モノキッド「目が覚めればそれでもお釣りが来るぐらいに楽しい楽しい【コロシアイ】の世界だぜッ! ヘルイェー!」

にちか「は、はぁ?! こ、コロシアイ?!」

モノダム「ソレジャ、ミンナ、マタアトデ……ダヨ」


つらつらと並べられた理解不能な言葉の数々。
混迷の奔流に飲み込まれ、それでも必死に現状を理解しようと、何か明確な解答に縋ろうと、そんな弱々しい気持ちで右手を伸ばした。

その瞬間に、1秒もかからずに、私の視界は閃光に飲まれた。
目も開けていられないほどの眩く、白い、光。
指先から全身を一瞬にして光が飲み込んだかと思うと、その光は神経を這い回り、脳髄に到達。
ホワイトアウトしていく視界と共に、私の思考もまた白く、ボケていき……
29 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:55:42.93 ID:UjM5Y6Sh0





……夢の中に、溶け出した。





30 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:56:13.45 ID:UjM5Y6Sh0
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PROLOGUE

if(!ShinyColors)



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31 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:57:39.39 ID:UjM5Y6Sh0





_____私はまだ、何者でもない。





32 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 21:59:24.26 ID:UjM5Y6Sh0

ずっと、日陰の中で生きてきて、テレビの中の住人たちに身分不相応な憧れを抱いて、萎びていくばかりで、

名前なんて持っていない。

他の誰かに認識される。
他の誰かに記憶される。
アイデンティティとは、そうやって生み出されるものだ。
個人を決定づけるはずのものなのに、単独では完成し得ない矛盾を孕んだ要素こそがアイデンティティなのだ。
だから私は、必死に手を伸ばした。
この手の中に自分自身のアイデンティティがほしくて。
誰かにこの手を握ってほしくて。

でも、その手は宙で何も掴むこともなく、ただ真っ黒な闇にぶつかった。
闇は平坦で、反り立っていて……



私自身を飲み込んでいる。




「……え?」




______いつから、閉じ込められていた?


33 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:00:36.21 ID:UjM5Y6Sh0

私はそこでようやっと置かれている状況に気づいた。肌から伝わってくるひんやりとした感覚、息を吸うたびに喉にまとわりつく埃。
そして何より、手も足も曲げ伸ばしが自由にできないほどに窮屈であるということ。

「な、なんで……?!」

壁を壊そうと握り込んでハンマーのように何度もぶつける。
ゴンゴンと大きな音が響き渡り、そしてやがて……


バーン!


やっと、外に出た。
34 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:02:17.83 ID:UjM5Y6Sh0

「……痛た」

突然に解放されたことで、体重と勢いそのままに床に倒れ込んだ。

このお間抜け丸出しのちんちくりんが私。
ごくごく普通で、それ以外に表する言葉が何もない……ただの【一般人】。
テレビのインタビューなんかに捕まることすらなく、雑踏の一言で片付けられてしまう、



世界規模で言えば塵みたいに矮小な存在の七草にちか、16歳。




こんにちは、私。
この滑稽で物哀しい物語の、お粗末な主人公さん。
35 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:03:17.48 ID:UjM5Y6Sh0

「なにこれ、監禁……?! 私なんか拉致ってもビタ一文出ないだろうに……」

落ち着きを徐々に取り戻した私は、打ち付けた肘をさすりながら立ち上がった。
自分が監禁されていたのは金属製のロッカー。
あまり使われていないのか埃が溜まっている様子。
幸い、中に雑巾付きの箒なんかはなかった。
ばっちいじゃなくて、薄汚い止まりだったことにわずかに感謝をしつつ、視線を周囲に移す。

……机が群生している。
机が生えてくる畑でもあればまさにこんな光景なんだろうなというぐらいに机が並んでいる。
それと向き合うようにして壁に取り付けられた黒板。その上には太陽のような顔してスピーカーが取り付けられている。

ああ、ここは教室なんだなと理解した。
自分の通っている学校よりはいささか設備が綺麗で、ちょっとばかしモヤモヤする。

でも、なんで教室に?

近くにあった椅子に腰掛けて、ロダンの考える人みたいな格好しながら、記憶を必死に呼び覚ました。
私がここに監禁される前の、確かな記憶……
36 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:03:59.31 ID:UjM5Y6Sh0
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

確か、バイト帰りじゃなかったっけ。
店でポップ作りに勤しんでて、知らず知らずのうちに随分と熱中。遅くまで残っていた。
ああ、明日の宿題まだやってなかったなとか、昨日の数学の先生マジでうざかったなとか、そんなことを考えながら、ぼーっと道を歩いていた。
まさか私なんぞに目をつけるような物好きもいないだろうし、この国の治安にすっかりを心も許していたし、その時の私は無警戒に尽きた。

ただぼーっと、歩いていた。

そしたら突然後ろの方から急ブレーキの音が聞こえて、慌てて振り返ったら

「〜〜〜〜〜っ?!」

口に布を当てられて、あれよあれよと車に押し込まれて……

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
37 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:05:36.09 ID:UjM5Y6Sh0

ああ、だめだ。結局なにも思い出せてないのと変わりない。
自分の記憶をいくら掘り起こしても出てくるのは使い物にならないものばかり。
私がここにいる理由、そしていつからここにくるのか。
その答えはいくら考えても出てきそうになさそうだ。

「はぁ……」

自分の無力さを噛み締め、あまりの使い物にならなさを嘆いていてため息をついた。



その時だった。



ガタガタッ

「……え?」

私が入っていたのとはまた別のロッカーが揺れ始めたのだ。
強風に煽られているように右に左に大きな音を立てながら。中に入っている住人はよっぽどの大暴れをしているらしい。

「や、やば……」

鬼が出るか蛇が出るか。なにが出てくるのか皆目見当もつかないロッカーに思わず後退り。
そんな私の恐怖はつい知らず、ロッカーのガタガタは扉のドンドンへと変わっていき、目的のない乱暴は脱出を目指した手段へと変わっていき、



やがてその扉は開かれた。
38 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:07:06.38 ID:UjM5Y6Sh0

ダンッ!

ロッカーから吐き出された人物は、随分と目立つ見た目をしていた。
まんまるな頭に黒い髪、その中にはアクセントとして黄色いラインが走っている。
私のように地味な生き方をしている人間とは、おおよそ交わりそうもない世界に生きているような女性。最初の印象はそんな感じだった。

「痛た……クソッ、一体なんなんだよ」
「だ、大丈夫ですか……?」
「ん? あ、おう……大丈夫だと……思う、怪我はないよ。ありがとな」

とっつきづらそうだという当初の印象とは裏腹に、屈託のない明るい笑顔を浮かべて私の言葉を受け取った。
差し出した私の掌を掴むと、ゆっくりと立ち上がる。
39 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:08:26.78 ID:UjM5Y6Sh0

「えっと……あんたは? ここは……教室?」
「あ、はい……多分、そうだと思います」
「多分?」
「あの、私も一緒なんです。あなたと同じくロッカーに閉じ込められてて、訳もわからず脱出したばかりで」
「あんたもか……」

おそらく私より少し年上なのだろう。
背の程は数センチほど高く、さっきまでとは違って既に冷静さを取り戻しているように視える。
私の言葉に耳を傾けながら周りを見定める佇まいに、頼り強さを感じさせる。

「私とあんた……じゃ会話もしづらいよな。自己紹介でもしようか」
「あ、はい! えっと……」

ひとまずの協力関係を築こうと、彼女が私に向かって右手を差し出す。私も迷わずその手を取ろうと、左手を伸ばした。

その瞬間



【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】



間の抜けた調子の声と共に、どこからともなく5体のクマのぬいぐるみが姿を表した。

40 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:10:23.10 ID:UjM5Y6Sh0

にちか「わあああああああ?!?! な、何……?! 」

???「おはよう! 清々しい朝だね!」

???「まるで生まれ変わって別人になったみたいに、気持ちのいい目覚めだわ」

???「ヘルイェー! 調子はどうだ、ベイベー! さっきまでとは大違いだろ?!」

???「おう、何をいつまで鳩がヘッドショット食らったみたいな顔しとんねん。ワイらと会話をしてくれんと困るで! Z世代はこれだからあかんわ」

???「コミュニケーションコミュニケーション! オイラたちとお話ししてよ!」

???「おい……これはなんの冗談だよ……なんでぬいぐるみが喋ってんだ……?」

???「このトンチキな反応は成功なんじゃねえかッ?!」

???「ねえねえキサマら、オイラたちの名前わかる?」

にちか「は、はぁ? し、知らないよ……あなたたちみたいなクマの人形なんか見るのも聞くのも初めてだよ!」

???「じゃあキサマの隣にいる女の子の名前は分かるかしら?」

???「いや……知らない。今から自己紹介をするとこだったんだよ」

???「やったー! 今度こそ成功だね! ちゃっきーん!」

???「一時はどうなることかとヒヤヒヤしたぜ……だが、これでもう問題ないなッ! 始めちまっていいんだなッ?!」

???「せやな、まずはワイらも自己紹介から始めなあかんな。学生も社会人も後期高齢者も、初対面の時は自己紹介からと相場が決まっとるからな」
41 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:11:45.61 ID:UjM5Y6Sh0

モノタロウ「あのね、オイラはモノタロウ! 体が赤いからモノタロウって覚えるといいよ!」

モノファニー「アタイはモノファニー。虫も殺せぬか弱い女の子よ。例外的にゴキブリだけは素手でも触れるわ!」

モノキッド「ミーはモノキッドだ。用を足すときは便座の上で仁王立ちのスタイルだぜッ!」

モノスケ「ワイはモノスケや。趣味はそろばん勘定。愛読書は計算ドリルや、よろしくな」

モノダム「モノダム、ダヨ。ミンナ、ヨロシク」

モノタロウ「オイラたち、5人合わせてモノクマーズだよ! しっかり覚えてね!」

一方的に押し付けられた自己紹介。
まるで一つの人格が備わっているかのような口ぶりに私たちはキョトンとするばかり。
コミュニケーションといった割に、こちらが理解できているか否かはもはや彼らは気にもとめていなかった。
42 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:14:06.43 ID:UjM5Y6Sh0

モノタロウ「キサマらに今この状況のことを説明してあげなくちゃだね! キサマら、ポケットに手を突っ込んでみて!」

にちか「は? え、えっと……」

もはや抗う気も失せた。
言われるがままポケットに手を突っ込む。本来あるはずの空洞、指先が何かにぶつかった。

???「ンだこれ……タブレット?」

モノキッド「そいつは電子生徒手帳! この学園での暮らしをサポートするタブレットだ。個人情報も入ってるから落としちゃならねーぜ」

にちか「学園……ってことは、やっぱりここって学校なの?」

モノスケ「ここは才囚学園。キサマらのために作られた、【アイドル養成用の学校】なんや」

???「才囚学園……聞いたことねーな」

にちか「ん……ちょ、ちょっと待って! 今なんて言った……?! 【アイドル養成用の学校】……?!」

モノファニー「そうよ。キサマらはこれからの時代を引っ張る新時代の【アイドルの候補】として選ばれたのよ」

(は……!? ど、どういうこと……!?)

43 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:17:24.90 ID:UjM5Y6Sh0

モノダム「電子生徒手帳ヲ、起動シテミテ」

アイドル、という甘言に導かれるままに私は指先で画面を叩いた。
すぐにタッチに反応してパッドは立ち上がり、画面上に私の名前と見慣れぬ文字列を映し出す。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



超研究生級の音楽通

七草にちか



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

にちか「超……研究生……級?」

モノスケ「早速【才能】に気づいたようやな。これはキサマらをアイドルとして売り出す際に、【どんな路線で売り出すべきか】をキサマらの来歴や潜在能力から導き出したものや」

モノファニー「緑色の髪をしたキサマは昔からレコードで音楽を聴くのが好きで、CDショップでアルバイトを続けているところからも選ばせてもらったわ」

研究生という言葉と共に自分の名前が並び、更には私には才能が備わっているとも言われた。
自覚こそまるでなかったが、褒められれば嫌な気持ちもしないし、不思議とどこか高揚してくる部分もあった。
拉致でもされていなければ、完全に心を許してすらいたかもしれない。
44 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:20:09.58 ID:UjM5Y6Sh0

モノタロウ「他の人にも一人に一つずつ才能は割り振られているから、気になる人は聞いてみるといいよ!」

???「他の人って……私たちだけじゃないのか?」

モノダム「ウン、コノ学園ニハキサマラ以外ニモ、14人……計16人ノ研究生ガ集メラレテイルンダ」

モノキッド「おいッ! 勝手に喋ってんじゃねーッ! モノダムが喋るとガソリン臭くなっちまうだろうがッ!」

モノダム「……」

にちか「16人……結構な数ですね」

モノファニー「まだ始業式までには準備に時間がかかるから今のうちに自己紹介をしておくといいと思うわ。もうみんな目を覚ましてきっと校内を探索中よ」


【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】


モノクマーズと名乗るぬいぐるみたちは、そのままどこへともなく姿を消してしまった。
私たちに一方的に疑問だけを抱かせ、答えは何も与えてはくれない。
探索と自己紹介を促すあたり、自分で見つけ出せということなのだろうか。どっちにしても、碌でもないやり口なことだけは確かだ。
45 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:21:14.51 ID:UjM5Y6Sh0

???「……行っちまったな」

にちか「はい……なんだったんでしょう」

残された私たちにばつの悪い静寂が訪れる。
思えば、目を覚ましてから、訳の分からない展開続き。この人とも出会って数分と経っていないぐらいだ。

???「あいつらに従うみたいで癪だけど……まずは自己紹介、ってところか」

にちか「で、ですね……!」

ルカ「私の名前は斑鳩ルカ。今はアイドルの研究生をやってんだ。よろしく」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



超研究生級のカリスマ

斑鳩ルカ



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ルカ「なんか才能ってのは……『カリスマ』って書いてあるな。全くピンとこないけど」

にちか「か、カリスマ……」

本人はまるで心当たりがないと言った感じだが、私にはどこか納得ができた。
初めてその姿を見た時から目を奪われた艶やかな黒髪、その中に走る金髪がアクセントで、整った顔立ちも相待って目が離せなくなる。
それでいて少し荒っぽいながらも優しく、頼り甲斐のある口調には追随していきたくなるような魅力を感じていた。
46 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:22:04.33 ID:UjM5Y6Sh0

ルカ「私は元々……ここにくる前からアイドルの研究生やってんだ」

にちか「え、そうなんですか?!」

ルカ「ああ、もう何年になるかな……まあ、ずっと燻ってんだけどよ。相棒みたいな奴がいてさ、そいつが辞めてくれねーから私も退けなくて……な」

にちか「道理で……なんだかキラキラしてるって思ってましたよ」

ルカ「ハッ……そんなことないよ。まあそう見えたんならきっと……そりゃ相棒のおかげだろうな」

ルカ「あいつが頑張る姿に憧れて、必死に後を追おうって踠いてるだけだから」

そういって笑って見せた斑鳩さん。
あまりに無邪気な表情から、よほどその相棒さんのことが好きなのだろうと読み取った。
全幅の信頼を抱いて、他の人に話すのに臆す様子もない。そんな存在、私にも欲しいものだ。
47 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:23:40.41 ID:UjM5Y6Sh0

ルカ「それで、あんたは?」

にちか「あ、はい! えっと……七草にちか、高校一年生です! 超研究生級の……音楽通らしいです! 全然! いやもう全然! そんなことないですけど!」

ルカ「ああ、なんかさっきクマが言ってたな……レコード、好きなんだって?」

にちか「いや、もうホントちょっと齧ってるぐらいなんですけどね?! そんな、本物の音楽業界に生きてらっしゃる方の前で烏滸がましい……!」

ルカ「そんな謙遜することねーよ。私も音楽業界の端にいるかいないかみたいな存在だし、レコードのことなんかさっぱりだ」

にちか「レコードが好きっていうか……身近にあったんです。【八雲なみ】っていう……ちょっと前のアイドルのものなんですけど」

ルカ「……へぇ」

にちか「なみちゃんの歌い方がすごく好きで……これを聞いていると、私もどこまでも行けるような気がしてくるみたいで……」

にちか「プツ……プツ……っていうレコードならではの雑音も不思議と聞いていると落ち着くんですよね」

ルカ「なんだ、ちゃんと音楽通してんじゃん」

にちか「い、いやいや……!? こんなの大したことないですって!」

ルカ「音楽通って言っても別に知識が豊富であることだけが条件じゃないだろ? あんたが音楽が好きだってのは今の話だけでも十分伝わってくる」

ルカ「それに、CDショップでアルバイトってことは日常的に音楽を聞く生活をしてるってことだ。胸を張っていけよ」

にちか「い、斑鳩さん……」

私のようなひよっこに音楽通なんて仰々しい言葉を使われているというのに、嫌な顔一つせず、励ましてまでくれる。
やっぱりこの人はカリスマになるだけの資質があるんだと思う。
さっきまで気を張っていたのが嘘のように力が抜けて、私はすっかり斑鳩さんに気を許していた。
48 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:24:49.82 ID:UjM5Y6Sh0

ルカ「さて、お互いのことも分かったことだしとりあえずは探索してみるか」

にちか「ですね! 私たち以外の14人……どんな人たちなんだろう」

ルカ「他の奴らもアイドルの研究生……なんだよな」

にちか「あ……斑鳩さんの相棒さんも?」

ルカ「どうだろうな。ここにはまともな方法で連れてこられてねーんだ。いてもいなくても、どっちがいいとも限らねーさ」

にちか「それは確かに……そうですね」

ルカ「そもそも、私たちだってこれからどうなることなのか。まあロクなことにはならねーだろうけどよ」

ルカ「ま、行くぞ。時間は有限だからな」

ルカさんは少々強引に私を引き連れて先へと導いた。

教室を出ると校舎内は異様な数の植物で満たされていた。
床や壁には蔦が絡み、足元から膝まではあろうかという高さの雑草がそこかしこから生えている。
学校という形状は保ちつつも、私たちの持っている認識からはどこかずれ込んだ不和を感じずにはいられない。
49 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/27(土) 22:27:01.10 ID:UjM5Y6Sh0

ルカ「さっきの電子生徒手帳にある程度の地図はあるみたいだな、これを見ながら探索するぞ」

にちか「はい! どこから見てみます?」

ルカ「おう、そうだな……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

さて、お久しぶりです。
毎度恒例の探索パートとなっています。
今回は今までのシリーズと違って初対面の方々との出会い、なんだか新鮮でございますね。
探索する場所はスポットでいくつか提示させていただきますので、どこにどなたがいるのか想像しながらお選びください。
今回も選択コンマの末尾を参照して、それに応じた数のメダルを獲得できる仕様になっています。
末尾が1なら1枚、末尾が9なら9枚、末尾が0なら10枚でございます。

それではあなたさまの学園生活に幸多からんことを……

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【2F 才能研究教室-音楽通-】

【1F 食堂】
【1F 倉庫】

【B1F 図書館】
【B1F ゲームルーム】

上記から選択

↓1
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/05/28(日) 10:51:34.07 ID:UNjy6DbC0
【2F 才能研究教室-音楽通-】
51 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/28(日) 21:13:54.28 ID:ZAIzuKyx0
------------------------------------------------
【2F才能研究教室-音楽通-】

マップ上で見慣れない表示のされ方をされているのがこの部屋だ。
他の部屋よりも比較的多くの面積を有しているけれど、その名前にあまり聞き馴染みがない。
学園の施設というよりはどこかの研究施設のような文字の並びに、思わず首を捻る。

???「うーん、開かないよー!」

その部屋の前にはノブを仕切に動かしては廊下中に響き渡るような声量で叫ぶ金髪のツインテールの女性。
そのスタイルの良さはどこか日本人離れしたものを感じさせる。

にちか「あ、あのー……」

???「へ? わー! わ、わたし以外にも人がいたんだね、こんにちは!」

ルカ「あんたもここに拉致られた口か?」

???「うん……学校帰りに車に押し込まれた記憶はあるんだけど……それ以降はサッパリ。ここがどこなのかも見当がつかないし……建物の中を探索してたところなんだ」

にちか「えっと……お名前伺ってもいいです?」

???「うん、もちろん!」

めぐる「わたしの名前は【八宮めぐる】! 超研究生級のスポタレ……スポーツタレントってことらしいよ! よろしくね!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



八宮めぐる

超研究生級のスポタレ



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そう言って彼女は溌剌とした笑顔と共に右手を差し出した。
拒絶されることなんか一切考えていない、迷いのない手のひら。
不思議と惹きつけられて、私も思わず手に取る。
52 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/28(日) 21:15:57.47 ID:ZAIzuKyx0

にちか「スポーツタレント……確かになんか運動できそうなオーラがめっっちゃありますね!」

めぐる「えへへ……そうかな?」

にちか「待ってください、当てます! ……バスケ部?」

めぐる「惜しい! あのね、わたしは色んな部活の助っ人をやってるんだ!」

ルカ「助っ人……?」

めぐる「うん、頼まれたらつい断れなくて……色んな部活で試合の数合わせなんかで参加することも多いんだよね」

にちか「すごいですね……わたし、運動とかからっきしなんで憧れちゃいます」

めぐる「ううん、全然! ただみんなと一緒に楽しくやってるっていうだけだから! 本気で全国行くぞー!って目指してる人たちとはまるで比べものにならないし……」

ルカ「だとしても色んなスポーツの経験があるってのはそれだけで強みだ。アイドルやるんだったら動きの引き出しは多いに越したこともないしな」

めぐる「あ、アイドル……」

にちか「あはは……やっぱりあのクマたちの言ってたことまるでピンとこないですよね」

めぐる「うん……わたしも、どこにでもいる普通の女子高生だから……」

(……このスタイルの良さと笑顔の溌剌さといい、到底普通の女の子とは思えないけど)

53 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/28(日) 21:16:49.96 ID:ZAIzuKyx0

めぐる「でも……ここって本当にアイドルを育成する学校なのかな? もっとこうダンススタジオとか、ボイストレーニングのお部屋とか、そういう感じなのかと思ったら……案外普通の学校だよね?」

にちか「普通の学校……ではないですけど」

ルカ「アイドル向けの設備らしい設備が見当たらないのは違和感だな……」

めぐる「うーん、この部屋はそれっぽいと思ったんだけどなー」

にちか「才能研究室、ですもんね。才能って私たちにあてがわれてるこれのこと……ですよね?」

めぐる「うん! 私たちの才能って、アイドルとして活動をする時の方向性……みたいなことなんだよね? だったらこの研究室ならそれっぽい設備があるのかなーって!」



【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】



モノタロウ「いい推理だよ! うんうん、実にいい推理だよ!」

めぐる「わー! 突然出てきたー!」

モノキッド「ワー! 突然爆乳の女が現れたー!」

モノファニー「ダメよ、そんな直球のセクハラなんか」
54 :ルカの分の希望のカケラを入れてます ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/28(日) 21:18:56.28 ID:ZAIzuKyx0

モノスケ「キサマラにその教室について説明をせんといかんな」

モノタロウ「その教室は【才能研究室】。お察しの通りキサマラにあてがわれてる才能を伸ばすための設備がいっぱいいっぱいなんだ!」

にちか「ってことはボイトレとかダンスとか……?」

モノファニー「少し違うわ。キサマラの持ってる才能によって伸ばすべき能力は違うから、それに応じた設備になっているもの」

モノキッド「今キサマラが手をかけている部屋は【七草にちか】、キサマの才能研究室なんだぜ!」

にちか「わ、わたしの……?」

モノスケ「キサマの好きなアイドルもんのレコードを大量に収める予定や! 耳がすりごまになるぐらい聞きこんで後学にするんやで!」

モノダム「……」

モノタロウ「今はまだ入れないけどね! もう少ししたら扉の鍵も開けてあげるから楽しみにしててね!」


【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】


めぐる「行っちゃった……」

にちか「わたしのための……部屋……」

ルカ「あの口ぶりだと、他の全員にも専用の部屋があるみたいだな」

めぐる「ってことはわたし向けに体をいっぱい動かせる部屋もあるってことだよね!」

めぐる「う〜ん! 楽しみになってきたぞ〜!」

(アイドルのレコードがいっぱい……か。こんな状況じゃなきゃ心から楽しむこともできたんだろうけど)

(……しばらくしたら、また来てみよう)

------------------------------------------------
【コンマ判定07】

【モノクマメダル7枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…7枚】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラ…2個】
------------------------------------------------

【1F 食堂】
【1F 倉庫】

【B1F 図書館】
【B1F ゲームルーム】

上記から選択

↓1
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/05/28(日) 23:18:23.71 ID:UNjy6DbC0
【1F 食堂】
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/05/29(月) 15:55:50.02 ID:EsxwACxJ0
【1F 食堂】
57 :コンマ71 ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 20:33:00.31 ID:vbqLOX8I0
------------------------------------------------
【食堂】

学校の食堂といえばもっと萎びた場所のイメージだ。使い古された長机に、埃が溜まって足が不揃いになった丸椅子。
ガタガタと音を立てながら居心地の悪さを噛み締めながら嚥下する場所というイメージがある。
この学校の食堂はそのイメージからすると革新的。清潔感ある楕円形の机に、柔らかな背もたれの備わったパイプの椅子。
逆に、これまで人が使っていなかったのだろうと実感させるだけの子綺麗さに不気味さすら感じさせる。
そんな食堂にはすでに先客が2名。片方が腹をさすりながら、空腹を訴えている様子だ。

???「アイムハングリー」

???「……ノー、ドントタッチ」

???「えー……いいじゃん。缶だし、セーフセーフ」

???「毒でも注入されてたらどうするわけ?」

にちか「なんか……呑気な雰囲気ですね」

ルカ「ああ……だけどアイツら、口ぶり的に顔見知り同士なのか?」

斑鳩さんの指摘通り、目の前の二人の間には一定の関係値があるように見えた。
軽いやりとりをするのでも、必ず相手から返球があるとわかっている信頼……そんな感じだ。
58 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 20:34:25.81 ID:vbqLOX8I0

にちか「あ、あの! こんにちは!」

???「あ、どーも」

ルカ「アンタらも拉致られてここまでやって来た口か? 自己紹介と洒落込もうじゃねーの」

???「だって。どうする?」

???「あー……」

透「浅倉透。アイムセブンティーン」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



超研究生級の映画通

浅倉透



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

一言で言えば華がある人だなという印象だ。
顔立ちが整っていて、スタイルが抜群に良いことは勿論なのだけど、
ぼうっと黙って立っているだけでも他の人たちとは何か違うものを持っていることが透けて見えるのだ。
同じ星の元に生まれた存在とは思えない……いっそ宇宙人ですと言われた方がスッキリ飲み込めるような不思議なオーラがある女性だった。

透「なんか才能は映画通らしいです。よくわかんないけどさ」

ルカ「ふーん……詳しいのか?」

透「さあ? サブスクでたまに見ることぐらいはあるけど」

ルカ「適当だな……」
59 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 20:36:02.24 ID:vbqLOX8I0

???「まあ、あの才能というのは随分と曖昧な概念のようですし気にしても仕方ないのでは?」

にちか「あ、あの……」

???「ああ、私……」

円香「樋口円香です。浅倉とは幼馴染です」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



超研究生級のコメンテーター

樋口円香




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

浅倉さんと幼馴染という割に雰囲気は対照的な印象を受けた。
過ぎるほどに落ち着き払って、今置かれている状況にも一歩引いた立場から静観している。
だからこそ却って幼馴染として成立しているのかなとも思った。
彼女も浅倉さんに引けず劣らず、華を持った女性だ。
着飾ったような美しさではない、ありのままの美しさ。そういうものがあると感じさせる。

ルカ「幼馴染……オマエらは一緒に誘拐されてきたのか?」

透「え、どうだっけ」

円香「……いや、そうではなかったと思います。それぞれ別で、学校帰りに後ろから襲撃されたような記憶が」

透「だってさ」

にちか「じゃあ、ここにいるのは偶然の一致……なんですかね?」

円香「……さあ、犯人の目的もわからないうちは推測しかできないですし」
60 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 20:37:32.56 ID:vbqLOX8I0

透「あ、そういえば二人は小糸ちゃんと雛菜見ませんでしたか?」

ルカ「ん? 誰だ……そいつら」

円香「……彼女たちも幼馴染なんです。私たちよりひと学年下なんですが、姿が近くになく」

(ルカさんと同じだ……近しい関係性の人が欠けている)

透「こんぐらいちっちゃな子と……えっと、なんかすごく元気で、クリーム色な子なんすけど」

ルカ「いや……悪い、見てない」

円香「……無事だといいけど」

冷静そうに見える樋口さんも、流石に言葉尻に不安を滲ませていた。
何もわからぬ今の状況なんだもん、当たり前だよね。
とにかく、この二人も悪い人じゃなさそうだ。

【コンマ判定 71】

【モノクマメダル1枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…8枚】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラ…4個】
------------------------------------------------

【1F 倉庫】

【B1F 図書館】
【B1F ゲームルーム】

上記から選択

↓1
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/05/29(月) 21:46:33.48 ID:vPCXZIwE0
1F 倉庫
62 :コンマ48 ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 21:50:37.67 ID:vbqLOX8I0
------------------------------------------------
【倉庫】

よく週末お昼の情報番組なんかで、郊外にできた海外企業のスーパーマーケットを見ることがある。
壁も柱もとっぱらった、ドームみたいな佇まい。
見上げてもはるか先の天井に少しでも近づこうとせんばかりに堆く積み上げられた商品の数々。
一体どうやって取り出してカートに載せるんだってその時も思ってたけど、まさか学校で同じ感覚を味わうことになるとは。
いち学校の倉庫というにはあまりに壮大すぎる設備。
スポーツ用品、実験器具、生活雑貨……大型スーパーを名乗れるぐらいには所狭しと品が並ぶ。これも全て学校の備品の扱いなのだろうか。

にちか「フェンシングの防具とか生で見るの初めてですよ、わたし」

ルカ「私もだ……スケートのシューズとかもあるけど、学校にアイスリンクなんかねーだろ……」

もはや呆れに到達している私たち。
その存在に気づいたのか、倉庫の奥の方から誰かがこちらにやってくる。

タタタタ…

???「あれ、お姉さんたち誰っすか? この学校の人っすか?」

にちか「え? えっと……」

女の子は随分と鼻息を荒くしながら、こちらに質問を投げかけてきた。
ツヤツヤとした綺麗な髪色は銀髪ともブロンドともつかない、その中間のような色合いをしている。

ルカ「私たちは誘拐されてここにいる。オマエはどうなんだ?」

???「んー、そうっすね。わたしもここにどうやって来たのかよく分かってないんっすよね」

にちか「あなたも……状況は同じなんだね」

???「はいっす! それじゃあ自己紹介するっすよー!」

あさひ「わたし、芹沢あさひっす! 中学二年生っす、よろしくっすー!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



超研究生級の博士ちゃん

芹沢あさひ




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
63 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 21:52:32.49 ID:vbqLOX8I0

中学二年生と自称するだけあって、幼めな印象を受ける容姿をしていた。
背の程も私より少し小さく、着用している制服は少し袖を余らせている。
それでいて表情はあどけなく、感情を覆い隠す術を知らないように、純真無垢な視線を真っ直ぐにこちらに向けていた。

にちか「博士ちゃん……ってどういうことです?」

ルカ「バラエティとか見ないのか? 時々やってるよ、子供なのに一分野に特化して詳しい奴をそうやって褒めたりする番組」

にちか「うーん……彼女の場合は……多分、知識欲ってところなんじゃないですかね。あれ」

ルカ「……あ」

私たちに自己紹介をしたと思ったらすぐに少女は私たちの前から姿を消していた。
私たちに対する興味を失ったのか、それとももっと強い関心を寄せたのか。
私と斑鳩さんで話しているうちに少女は向こうに抜けて、今や棚の上に高くつまれたお菓子のようなものを取ろうと梯子をよじ登っている。

ルカ「ちょ、ちょっと待て……! 落ち着け! まだ話が終わってないだろ……!」

あさひ「んー……? あ、ごめんなさいっすー! お腹が空いちゃってたんでー!」

にちか「じ、自由奔放すぎる……」

私と斑鳩さんは芹沢あさひと名乗る少女をなんとか梯子から引き摺り下ろすと、彼女に自己紹介を加えた。

あさひ「ふーん、にちかちゃんに、斑鳩さんっすか! よろしくっす!」

にちか「わ、わたしはちゃん付けなんだ……」

ルカ「アハハ、まあ年も近いしいいだろ別に」

あさひ「なんかにちかちゃんはにちかちゃんって感じっす! 七草さんって感じがしないっす!」

にちか「な、何それー……」
64 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 21:53:37.34 ID:vbqLOX8I0

ルカ「で、あさひ。オマエもあのクマたちから話は聞いたか?」

あさひ「あー、ここはアイドルを育てる学校なんっすよね? 話は聞いたっす」

あさひ「それよりあのモノクマーズ?! すごいっすよね! あんなふうに動くぬいぐるみ初めて見たっす!」

にちか「た、確かにものすごい技術だよね……」

あさひ「わたし、あんなの初めて見たっすよー! どうやって動いてるのか気になるなー!」

ルカ「あんまりアイツらに気を許すんじゃねーぞ。私たちを拉致した側の存在なのは間違いないんだからな」

あさひ「了解っす!」

(……めちゃくちゃいい返事。絶対聞く気ないでしょ)

ちょっと話しただけでわかる。この子は本当の意味で表裏がない子だ。
感情のまま、意思のまま、それを言動に移すことができる存在、できてしまう存在なんだ。
彼女の純真な表情には眩しさと共に危うさを感じる。そう思わずにはいられなかった。

【コンマ判定 48】

【モノクマメダル8枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…16枚】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラ…5個】
------------------------------------------------

【B1F 図書室】
【B1F ゲームルーム】

上記から選択

↓1
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/05/29(月) 21:57:32.25 ID:Wg+nXa3G0
【B1F 図書室】
66 :コンマ25 ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 22:02:47.10 ID:vbqLOX8I0
------------------------------------------------
【B1F 図書室】

学校の地下、やけに下るなと思ったけれど扉を開けた瞬間に納得した。これだけの蔵書なら、空間が必要なのだ。
私が二人縦に並んでもなおまだ収まりきらないだろうほどに高くつまれた本。
多くのものはかなり長い年月をかけて保管されているのだろう、部屋はカビたような時間が止まった匂いが充満している。
きっとここの本を全て読んでいたら人生が丸二周できてしまうんだろうな、とぼんやりと考える。

???「……!!」

そんな本の海の中に、一人の少女が立っていた。
黒く美しい長髪で、華奢な出立をしている。

???「だ、誰ですか?!」

少女は片手を胸元に当てて、半身引いてこちらを見据えた。
警戒している。目尻には力をこめて、奥歯を噛むような動作。

ルカ「多分あんたとおんなじだ、警戒しなくていい」

にちか「はい! 危害を加えたりとかはないです! 拉致されてここにやってきただけなので……」

両手を開いて呼びかけることでやっと心を許してくれたのか、少女はゆっくりと口を開き始めた。

???「……あなた方も?」

にちか「ですです! さっき目を覚ましたばかりで……ここがどこかもわかってないんですよ」

ルカ「状況もまるでわかってないんだ。情報共有をしたいんだけど……いいか?」

???「……わかりました」

灯織「……風野、灯織です。高校一年生です」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



超研究生級の占い師

風野灯織



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

私と同い年なんだ……
そう思わずにはいられないほど風野さんは大人びていた。
整った顔立ちに、口元の黒子が妖艶な魅力を醸しているところから抱く印象が大きいんだと思う。
67 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 22:04:35.69 ID:vbqLOX8I0

灯織「お二人のお名前をお伺いしてもよろしいですか?」

ルカ「おう、私は斑鳩ルカ……二十歳だ」

にちか「七草にちかです! 風野さんとは同学年で……高校一年生です!」

灯織「斑鳩さん……七草さん……ありがとうございます」

(……ん? 手にわざわざメモした?)

灯織「……すみませんが、私もつい先ほど目を覚ましたばかりで情報という情報は」

ルカ「ああ、いや……気にしないでいい。それよりさっきの反応を見るに、自分以外の人間に会ったのは私たちが初めてか?」

灯織「ええ……まあ。もしかして、他にも?」

にちか「はい、だいたい同年代の女の子たちが集められてるみたいですー」

ルカ「アイドル候補として集められたとか何とか……意味わかんねーよな、ったく」

灯織「……アイドル? ああ、そういえばそんなことをあのクマたちも」

にちか「あ、聞きました?」

灯織「はい……でも、別に私アイドルなんて……なりたいとも、普段からそう聞いたりもしないですし」

ルカ「まあ……連中の言うことをどこまで信用していいかもわかんねーんだ。とりあえずは信頼できるもの同士で協力しようぜ」

不安がる風野さんを慮って、斑鳩さんは優しい言葉を投げかけた。
さすがは超研究生級のカリスマ、私に向けたのと同じように優しく温かい笑顔と共に、その手のひらを風野さんに差し出す。
この状況なんだもん、仲間は一人だって多い方がいい。
68 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 22:06:04.33 ID:vbqLOX8I0

当然、風野さんも私たちを信頼してくれる……そう、思ったんだけど。

灯織「……どこまで信用していいか分からないのは、斑鳩さんと七草さんも同様です」

ルカ「……ん?」

灯織「私と状況は同じ……口で言うのは簡単ですが、実際のところがどうなのかは確かめようがないです」

灯織「すみません……まだ斑鳩さんの手を取る気には」

ルカ「え……あ……おう」

灯織「……私は自分の手でこの学校をもう少し調査します。それでは失礼します」


スタスタ…



にちか「……行っちゃいましたね」

斑鳩さんは宙ぶらりんになってしまった右手をバツ悪そうに頭の後ろに引っ込めた。ポリポリと後頭部を描く仕草が痛々しい。

ルカ「まあ……ああいう反応もあるよな、私は気にしてない」

にちか「斑鳩さん……」

ルカ「さ、次行くぞ次。まだ見てない部屋はあるんだからな」

(……風野さん、なんかあんまり感じ良くない人かも)

【コンマ判定 25】

【モノクマメダル5枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…21枚】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラ…6個】
------------------------------------------------

【選択肢が残り一つなので自動進行します】

【モノクマメダルの獲得枚数のコンマ判定を行います】

↓1
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/05/29(月) 22:11:49.78 ID:OqqnPGT90
えいやー
70 :コンマ78 ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 22:15:24.38 ID:vbqLOX8I0
------------------------------------------------
【B1F ゲームルーム】

こんな教室が存在するのってフィクションの中でしかないと思っていた。
屋上での昼ごはん然り、権力の大きな生徒会然り。学校は勉強するところという味気なく退屈な固定概念に囚われた建造物だとばかり。
私たちの眼前に広がるのは「さあ遊んでください」と言わんばかりのゲーム機の数々。
惜しむらくはそのチョイスがイマイチだというところ。見るからにレトロゲームといった感じで私の趣味じゃない。

???「すごい、ダウトランにスパルタムX……これ、めっちゃレアなやつ……!」

___こういうのは、オタクが好きなやつだ。

ルカ「なあ、おい。アンタらちょっと話いいか?」

???「ひゃ、ひゃい?! だ、誰……?」

???「て、甜花ちゃん……こっち……」

にちか「え……ふ、双子……?」

レトロなゲーム機に鼻息を荒くしていた女の子の脇から、もう一人の女の子が姿を現したのだけど、見た瞬間に驚愕。
二人は全くの瓜二つなのだ。
身長に髪の長さ、瞳の色。
明確な違いは髪の分ける方向ぐらいだろうか。初対面の私からすればまるで区別がつかない。

???「あ、自己紹介……しなきゃ、だよね……?」

甜花「大崎、甜花……でしゅ……甜花の方が、お姉さん……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



超研究生級のストリーマー

大崎甜花



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


71 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 22:16:54.82 ID:vbqLOX8I0

???「じゃあ次は甘奈が自己紹介するねー!」

甘奈「大崎甘奈です、甜花ちゃんとは双子で高校二年生! よろしくお願いします!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




超研究生級のファッションモデル

大崎甘奈




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

にちか「す、すご……本当にそっくりです……」

甘奈「えへへ、ありがと☆ よく言われるんだー!」

甜花「にへへ……甜花となーちゃんは生まれた時からずっと、一緒……!」

ルカ「……ここに拉致られんのも一緒、か」

甜花「ひぃん……」

にちか「でも、本当にそっくりですね……どっちがどっちかすぐ分からなくなっちゃいそう……」

甘奈「えへへ、大丈夫! すぐ簡単にわかる見分けかたがあるんだよ☆」

甜花「うん……これで、誰でも一発……!」

にちか「えー、なんです? クセとか、仕草とかですー?」

甘奈「めっちゃかわいいのが甜花ちゃん☆」

甜花「す、すごくかわいいのがなーちゃん……!」

ルカ「……なんとなく、言動で判別つけるか」

にちか「あはは……」


【コンマ判定 78】

【モノクマメダル8枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…29枚】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラ…8個】

72 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 22:17:45.87 ID:vbqLOX8I0

ガララララ…!

私と斑鳩さんが探索を行っていると、遠くの方で大きな音がした。
シャッターが上がったような音……もしかして。

ルカ「玄関ホールに落ちてたシャッターが上がったのか……?」

にちか「さっきまでは鉄格子みたいなシャッターがあって通れなかったですもんね!」

ルカ「確か学校の正門……出入り口もあったはずだ。望みは薄いが、行ってみた方がいいだろーな」

にちか「行きましょう! ダッシュですー!」

私と斑鳩さんは走って玄関ホールへと向かった。
73 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 22:19:04.49 ID:vbqLOX8I0
------------------------------------------------
【1F 玄関ホール】

にちか「あっ、やっぱり!」

つい先ほどに通りがかった時とは光景が違えていた。
鉄格子が降りていたために迂回を余儀なくされた空間は解き放たれ、自由に出入りができるようになっていた。
観音開きの大きな扉、その手すりにもいよいよ手が届く。

???「もし……お二人とは、はじめましてで……ございますよね……」

と、そこで、脱出を逸る私たちを背後から呼び止める声。

にちか「え、あ、はい……えっと……あなたは……」

ただでさえ理解不能な状況なのに、それに加えてタイムスリップでもしてしまったのかと思った。

令和社会の今日この頃。
街中を歩いていて、そうそう和装に身を包んだ女の子など見ることもない。せいぜい観光地の試着ぐらいだろう。
しかし目の前の女の子はそれが彼女にとっての日常であるかのように、違和感一切なく身に纏い、そしてそれに伴うだけの気品を備えていた。
彼女の放つ不思議な時間の流れに絡め取られる。

???「申し遅れました……」

凛世「杜野凛世にございます……お見知り置きくださいませ……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



超研究生級の大和撫子

杜野凛世



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

才能に銘打たれるだけあってか、これまでに会ってきたどれとも違った雰囲気ある人だった。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。そんな言葉を用いるべき人はこういう人のことを指すのだろう。

ルカ「……すごいなアンタ、もしやいい家柄のお嬢様か?」

凛世「いえ……特に……凛世の生まれはただ、田舎の離れということなだけ……」

凛世「ごくごく普通の……じぇいけいにございます……」

(じ、じぇいけいと来たかー……!)
74 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 22:20:05.53 ID:vbqLOX8I0

凛世「お二人は、シャッターが上がる音を聞いて……?」

ルカ「ああ、さっきまでは通れなかった場所だからな……」

にちか「それに、ここって出入り口ですよね!? もしかして、脱出できるのかも!」

凛世「……凛世は、すでにその扉を一度開けてしまいました」

にちか「へ……」

凛世「止めは致しません……ただ、過ぎる希望は持たぬ方がよいものかと……」

にちか「な、なんですかそれ……」

ルカ「……とりあえず、開けてみよう。話はそれからだ」

杜野さんの意味ありげな言葉が引っ掛かりつつも、私は扉の引き手に手をかける。
妙な汗をかく。今私たちが陥っているこの状況に何か一つの回答が欲しい。そう逸る気持ちが指の間を伝った。

にちか「いけーーーー!」

空元気にも似た衝動を口から吐き出しながら、一思いに扉を引いた。

私たちを待ち受けていたのは、さっきまでの閉塞感ある校舎とは全く別のひらけた空。
ずっと遠くに青く澄み渡り、風に雲を流す、あの見慣れた空。

その空の合間を縫うようにして、
75 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 22:20:36.65 ID:vbqLOX8I0





____鉄格子。





76 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 22:22:10.69 ID:vbqLOX8I0

にちか「……は?」

思わず周りをぐるりと見渡した。鉄の梁は私たちの頭上をアーチ状に取り囲み、その根本は遥か遠く。
その事実は私たちはドームの形をした、極めて広大な面積の何かの内に閉じ込められていることに他ならなかった。


【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】


モノファニー「うーん、やっぱり太陽の光は気持ちいいわねー!」

モノキッド「ソーラーパワーでビンビンだぜッ!」

モノスケ「あかん! モノキッドのモノがキッドキドになっとる!」

にちか「ちょ、ちょっと……何これ!? どうなってんの?!」

モノタロウ「ど、どうしたの?! そんなに慌てて!」

にちか「慌てるも何もないって……! 学校の外……これどうなってるわけ?!」

モノスケ「どうなってるもこうなってるもあらへん。キサマラの今見とるのが全てや」

ルカ「あ?! 意味わかんねーよ!」

モノファニー「これ以上もこれ以下もないのよ。これがキサマラの世界のすべてなんだから」

モノダム「……」

(はぁ……? こんなのが、世界の全て……?)

足元がぐらぐらとしはじめた。はじめこそ地震かと思ったけど、これは私の膝から力が抜けていく感覚。
コレで脱出、そうウマい話なんかないだろうとは思っていたけど、待っていたのはもっと酷い現実だった。
モノクマーズたちが口にする言葉の意味を噛み砕こうとすればするほど、置かれている状況の異常さが色濃くなっていく。
私たちはただ拉致監禁されたんじゃない。


___私たちは世界を奪われたんだ。

77 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/29(月) 22:25:10.88 ID:vbqLOX8I0

モノタロウ「まあ安心してよ! 才囚学園は今も工事の真っ最中! どんどん拡張していく予定だからね!」

モノファニー「キサマラにとっても居心地のいい空間になっていくと思うわ!」

モノスケ「せやからそう肩を落とさんといてや! この学園での暮らしをレッツエンジョイやで!」


【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】


ルカ「……大丈夫か?」

意識が遠のくほどの虚脱感に満たされている私の方にルカさんが手をかける。
そばに支えてくれる人がいてよかった、そうでもなければ私はここで膝から崩れ落ちているところだった。

ルカ「……どうやら、すぐに出れるような希望は今は持てないみたいだ」

にちか「……みたいですね」

ルカ「いま私たちにできるのは、この現実を見定めることだけだ。この学園の全貌をつかまない限りはどうしようもない」

にちか「で、ですよね……!」

ルカ「まだ話をしてないやつもいるみたいだしな。とりあえずはいろいろ巡ってみよう」

にちか「はい……!」

------------------------------------------------

【寄宿舎】
【藤棚】
【噴水?】
【プール前】
【裏庭】

上記より選択

↓1
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/05/29(月) 23:33:45.46 ID:vPCXZIwE0
寄宿舎
79 :コンマ46 ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/30(火) 20:45:47.72 ID:TTxBWQMX0
【寄宿舎】

当面の寝泊まりはここでしろってことらしい。
校舎に向き合うような形で建てられた円柱状の建物には、その円周をなぞるようにして二階層にいくつも部屋が並んでいる。
部屋の扉の上には、それぞれの姿を模したドット絵がついているけど、表札がわりということなのだろうか。

???「ん? あれ、お初のヒトじゃね?」

にちか「こ、こんにちは……」

先客は、派手な髪色をした女性だった。
こんがりと日焼けしたような肌は天然由来のものなのかは分からないけど、ネイルやメイクの凝り具合からしてそうではないと見るのが正しそう。
少し前の言葉で言うのなら、彼女のことはギャルと称するのがいいんだろう。

……まあ、派手さで言うなら斑鳩さんも負けちゃいないんだけど。

???「よかった〜! こんな状況だもん、ちょっとでも仲間は多い方がいいもんね!」

にちか「で、ですね……」

???「うわっ、てかちょ〜カワイイ〜! めっちゃ目、クリンクリンじゃん!」

にちか「え、あ、どうも……」

???「てかお姉さんめっちゃかっこいい〜! すごい、なんかちょーパンクって感じ! それ、どこのブランドのか聞いてもいい系?」

ルカ「お、おう……そうだな」

(ルカさんが気圧されてる……ギャルのコミュ力恐るべし!)
80 :凛世の分の希望のカケラを入れています ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/30(火) 20:47:48.43 ID:TTxBWQMX0

にちか「あ、あの! 先に自己紹介してもらっても!」

???「え? あ、ごめんごめん! うち、つい嬉しくなっちゃって!」

愛依「うち、和泉愛依! 超研究生級の書道家……なんだって!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



超研究生級の書道家

和泉愛依



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

これほどまでに才能と見てくれがチグハグな組み合わせもないと思った。
あまりにも開放的すぎる胸元は伝統文化の奥ゆかしさには不釣り合いだし、止まらない饒舌さは墨擦りの静謐さをあまりにも乱しすぎる。

愛依「あ、その目線……才能に書いてあるの、疑ってるカンジっしょ?」

にちか「え? あ、いやいや……そんなんじゃ……!」

愛依「いいっていいって、どう見えてるかはうちが一番わかってる!」

愛依「あんね、うち昔っからばあちゃんと一緒に住んでて……ちっちゃい時からよく習ってたんだ!」

愛依「それで時々賞とか出して……まあたまにいい奴貰ったり?」

ルカ「へー、すげえじゃんか」

愛依「アハハ、でもそんなショクギョーにするほどのもんでもないけどね!」

(人は見た目によらないなぁ……)

愛依「とりまよろしく! うち、あんま頼りになんないかもだけど……精一杯のことはするから!」

そういって愛依さんは私の手を握った。
ギャルってすごいな……と痛感させられた。
たったコレだけのやり取りなのに、この人は表裏のない人だとわかっちゃったんだもん。

【コンマ判定 46】

【モノクマメダル6枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…35枚】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラ…10個】
------------------------------------------------

【藤棚】
【噴水?】
【プール前】
【裏庭】

上記より選択

↓1
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/05/30(火) 22:53:45.14 ID:RNGGKdmL0
藤棚
82 :コンマ14 ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:36:35.96 ID:V32uVhix0
ちょっと思ったように進行できていないので、
今日は自レスでコンマ判定もやってとりあえずプロローグ終わらせるところまでやります。
------------------------------------------------
【藤棚】

校舎と寄宿舎の間の空間にはいくつかベンチが並んで、その上には庇のようなものがついている。
よく公園なんかで蔦が張り巡らされて天然の日除になっているそれだ。
おばあさんなんかが腰掛けてパンクズ振り撒いているよなーなんてことを思っていると、そんな和みとは正反対な容姿の女性に話しかけられた。

???「なあ、アンタたちもここに連れてこられた感じか?」

にちか「……! は、はい……!」

どことなく粗暴な口調に、陽光をぎらつかせる金髪。
瞬間脳内に走った言葉は……「ヤンキー」。

ルカ「そうだけど……アンタは?」

そんな私の緊張を感じ取ったのか、斑鳩さんが一歩前に出て、対話を引き受ける。

樹里「アタシは西城樹里。……そんなビビんないでくれ、別に取って食ったりなんかしねーよ」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




超研究生級のサポーター

西城樹里



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

西城さんは指でエクボをなぞるようにしながらはにかんだ。

樹里「まあ髪を染めちゃいるけどよ……何も悪い付き合いなんかはしてないから、安心してくれ」

どうやら私のように警戒をむき出しにするような反応には慣れっこらしく、途端に柔らかな雰囲気を醸し出してくれた。
ぱっと見の印象で反応をとってしまったことを少し恥じる。
83 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:38:06.68 ID:V32uVhix0

にちか「す、すみませんつい……」

樹里「気にしなくていいよ、慣れっこだからな」

ルカ「アンタ、サポーターって?」

樹里「ああ、スポーツ観戦が趣味みたいなところあるから……そこからか?」

にちか「ふーん……野球とか、サッカーとかですか?」

樹里「ああ、野球は結構好きでチケットもたまに自分で取ったりしてるな」

ルカ「ふーん……」

にちか「西城さん、運動神経良さそうですけど自分ではやらないんですか?」

樹里「あー……前までは、バスケもやってたんだけど……」

にちか「今はやってないんです?」

樹里「まあ……色々な」

ルカ「……人には人の事情が色々あんだろ、詮索はやめとこう」

樹里「ははっ、ルカさん……だっけ? アンタも見た目に似合わず結構優しいんだな」

ルカ「ハッ、お互い様だね」

(おっ、もしかしてこの二人結構相性いいのかも?)

樹里「先行きのわからないこんな状況なんだ。何かあれば手貸すぜ」


【コンマ判定 14】

【モノクマメダル4枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…39枚】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラ…11個】


84 :そういえば選択肢が一つ抜けてた… ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:39:38.57 ID:V32uVhix0
【広場】

校舎を出てまっすぐ進む。
空を覆うアーチ状の格子の根本を見たいと思ってのことなのかもしれないし、ひとまずこの世界とやらの全貌を見定めたかったのかもしれない。
当てのない歩みは、ある一定のところで行き詰まった。

にちか「ここ……広場、ですかね」

ルカ「……なんだか未開拓って感じだな」

斑鳩さんの指摘通り、辺りを見渡すとそこかしこで工事の作業風景が目に止まる。
瓦礫が積み上がっていたり、ドリルを掘り進めるような音が響いたり。いったいここで何が行われていると言うのだろう。

???「……あ、あの」

にちか「はぁ……そんなに新しいモノぽんぽん作って、私たちに何をさせたいんですかねー」

ルカ「マジで意図が読めねえな……何だってんだ」

???「す、すみません……っ」

にちか「何作られてもこっちは長居なんかする気ないんですけどねー」

???「あ、あの……っ!」

にちか「わ、わぁっ?!」

???「す、すみません……驚かせちゃいました……よね……?」

ルカ「え、えっと……アンタは?」

真乃「さ、櫻木真乃……超研究生級のブリーダー……だそうです」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



超研究生級のブリーダー

櫻木真乃



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
85 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:41:27.10 ID:V32uVhix0

工事作業の轟音の中私たちを呼び止めるために張り上げた大声は、よほど不慣れなことだったのだろう。
私たちが振り向いてなおその手は震えていた。
櫻木さんは肩を縮こまらせて、眉も寄せている。今の追い込まれている状況に相当萎縮している様子だ。

にちか「ご、ごめんなさい……私、気づかなくて!」

真乃「い、いえ……私こそ、すみません……っ」

ルカ「大丈夫か、随分と不安がってる様子だけど」

真乃「ありがとうございます……確かに、不安なんですけど、今ちょっと人探しをしてて……」

にちか「人探し……です? どなたかお知り合いでもいたんですか?」

真乃「あ、いや、その……正確には、人じゃなくて、鳥さん……なんですけど」

ルカ「……鳥?」

真乃「私のお友達で、ハトさんのピーちゃんって言うんです。確かあの時も一緒にいたと思うんですけど……」

にちか「ああ、ペットのハトを探してるんですね! いや、すみません、私もちょっと見てないですねー」

真乃「そ、そうですか……」

ルカ「……というか、この敷地内で鳥は見た覚えがないな。あの天井の檻のこともあるし……どうなんだろうな」

にちか「すみません、お力になれなくて……」

真乃「いえ……こんな状況で、惑わせるようなことを言ってしまってこちらこそすみませんでした……」

櫻木さんはすっかり肩を落とした様子。
確かにペットを持っている人からすれば誘拐された状況って不安で仕方ないだろう。
私だってそうだ。お姉ちゃんが今頃どれだけ慌てているか……それはちょっと滑稽かもしれないけど。


【コンマ判定 57】

【モノクマメダル7枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…46枚】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラ…12個】
86 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:42:40.95 ID:V32uVhix0
【噴水?】

広場の中から唯一通じている道を通ると、屋内に設けられた噴水に行き当たる。
やたら筋肉質な人体に、モノクマーズたちによく似たクマの頭部が突き刺さったような不細工な彫刻から滝のように水が流れている。
……異質な空間だ。

???「こんにちは……」

にちか「あ、こんにちは……」

妙な空気感に満ちた空間で、消え入りそうなほどに淡く儚い雰囲気の女の子は却って目を引いた。
奇妙な存在感に惹きつけられるようにして、私たちは邂逅する。

???「あの、自己紹介……いいですか?」

ルカ「ん、いいよ。そっちから頼める?」

霧子「幽谷霧子です。よろしくお願いします……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



超研究生級のドクター

幽谷霧子




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

幽谷さんは白衣のような服を身に纏い、手足のあちらこちらに包帯や絆創膏をのぞかせている。
少し痛ましい姿に、言葉に詰まっていると、幽谷さんの方から申し出た。

霧子「ごめんね……怪我をしているわけじゃないの……これは……生きている証……だから……」

にちか「はぁ……」
87 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:44:31.29 ID:V32uVhix0

ルカ「まあ、ファッションみたいなもんなんだろ。深く突っ込む必要もねーって」

にちか「まあ才能が『ドクター』なんですもんね……そのキャラ付けの一環みたいな感じです?」

霧子「えっと……時々、病院で子供たちのお相手をするお手伝いをしてて……」

霧子「お医者さんになる道に向けて勉強も頑張ってるんだ……」

にちか「え、医学部志望です?! めちゃくちゃ頭いいんじゃないですか!」

ルカ「おー……そうなるのか」

にちか「そうですよ! 斑鳩さんは高卒で養成学校行きだから分かんないかもしれないですけど!」

ルカ「……悪かったな」

霧子「全然、そんな……普通だよ……?」

にちか「いやいや! なんか幽谷さん知性ある感じしますもん! 納得だなー……」

ルカ「それより……霧子、アンタはここを調べてたんだよな。この噴水は何のためにあるんだ?」

霧子「ううん……ごめんね、私も今さっき見たところで……」

霧子「でも、他の部屋と違う雰囲気がしてて……この部屋は、これで終わるんじゃないと思う……かな」

にちか「これで終わりじゃない?」

霧子「うん……もっと別の何かが眠っている……そんな気がして」

幽谷さんが察知しているものの正体はわからないが、確かに言いようのない雰囲気が立ち込めているのは事実だ。
私たちのことを見定めようとしているような彫刻もそうだし、妙に整然と綺麗にまとまった内装もそうだ。
厳かさの裏には何か底知れぬ悪意のようなものを感じずにはいられない。

にちか「……なんか嫌な場所ですね」

ルカ「チッ……他のところ、行くか」


【コンマ判定 95】

【モノクマメダル5枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…51枚】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラ…13個】
88 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:45:58.33 ID:V32uVhix0
------------------------------------------------
【裏庭】

校舎の裏をぐるりと回ると、鉄製の扉で閉じられた大きなボックス。
そこから校舎に向かって血管のようにパイプが伸びて接続している。校舎の空調設備の類なのであろうことはそこで予測がついた。

???「これだけ大きな設備……ランニングコストだけでも洒落にならないと思うけど……」

ボックスの中は案の定太いパイプがそこかしこに張り巡らされて、中央のボイラーが堂々と傲慢な表情をしていた。
その前で顎先に指を当てて、考え込む様子の女性。私よりも年の程は少し上のように見える。

ルカ「なあ、アンタ。今ちょっといいか?」

???「……あら、あなたたち……ごめんなさい、深く考え込んでいて気づかなかったみたい」

夏葉「有栖川夏葉よ。超研究生級の文武両道……だそうよ」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



超研究生級の文武両道

有栖川夏葉




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

いよいよ才能に具体性が伴わなくなってきたけど、本人の放つ威厳がそれを補って余りある。
私たち二人を見定めるその視線には本人の自信と気迫が携り、凛とした佇まいには思わず見惚れてしまうような気品が滲んでいる。

ルカ「アンタ、随分と冷静なんだな。私たちと同じで誘拐されてここに来たんだろう?」

夏葉「ええ。冷静そうに見えるのなら、それはそう取り繕っているだけよ。私だってこんな状況、今にも逃げ出したいもの」

夏葉「でも、そんなことをしても何も変わらないじゃない? 今は自分のできる範囲で対策を練る……それが今は状況の分析というだけ」

ルカ「こいつは……頼りになりそうな女だ」

にちか「で、ですね……すごいちゃんとした方……!」

夏葉「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいわ。ただ、私も条件は全て同じ……ここでは何も特別なものは持っていないわ」

夏葉「お互い協力してこの状況の打開を目指しましょうね」

にちか「はい! よろしくお願いします!」
89 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:47:11.05 ID:V32uVhix0

ルカ「……ところでなんだが、アンタ随分と鍛えてんだな」

夏葉「あら、分かってしまうかしら」

ルカ「まあな、私はここに来る前からアイドルの研究生やってて……人の筋肉のつき具合なんかは割とぱっと見でわかる」

ルカ「アンタのはそれなりの時間かけて熟成された肉体美だろ」

夏葉「ええ……ええ! そうなの、そうなのよ、ルカ!」

ルカ「う、うおおおお?!」

夏葉「学業の傍ら、己の肉体を磨き上げることを抜かすことを信条としているの! 評価してもらえて嬉しいわ、ルカ!」

ルカ「ちょ、ちょっと……一回手離せ!」

夏葉「あら? そういうあなたもよく鍛え上げられているわね……一見細身に見えるけれど無駄のない肉付きで、入念なトレーニングの跡が見て取れるわ」

ルカ「そりゃアイドルの研究生やってるからだよ! ……ってか離せ!」

夏葉「ルカ、このあと時間があったら一緒にトレーニングはどうかしら。同じ筋肉道を歩むものとして、高めあいたいの」

(……斑鳩さん、ご愁傷様です)

どうやら有栖川さんには妙なツボがあるらしく、そこから暫く斑鳩さんにつきまとってトレーニングをせがんでいた。
さっきまでの品格ある姿とのギャップもまた、彼女の魅力なんだろうけど、トレーニングとは無縁の私からすれば圧倒されるばかりだった……


【コンマ判定 33】

【モノクマメダル3枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…54枚】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラ…14個】
90 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:48:56.53 ID:V32uVhix0
------------------------------------------------
【プール前】

校舎に横付けになっているドーム上の建物。
通常なら体育館なのだろうけど、どうやらこの学校は事情が違うらしい。

にちか「屋内プール……ですか」

ルカ「どうやら長いこと使われてないみたいだけどな」

斑鳩さんの指摘通り、建物の中に入ろうとも、植物が入り口周辺を塞ぐほどに生い茂っているのでとてもじゃないが進めない。
それにガラス扉の向こう側も電気が灯っていないし、人の出入りがあったような気配もない。まるで廃墟のような様相だ。

???「初めましての人やね、自己紹介ばしてもよか〜?」

にちか「わっ、こ、こんにちは……!」

(す、すごい訛り……!)

恋鐘「うちは月岡恋鐘、超研究生級の料理研究家ばい!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



超研究生級の料理研究家

月岡恋鐘




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

突然に話しかけてきた月岡恋鐘と名乗る女性は、大人と子供のちょうど中間のような女性だった。
体つきや顔つきは私よりも幾分か成熟している様子だけど、声のトーンや、その話し方や立ち居振る舞いはあどけなさや幼さのようなものを感じさせる。
それに、きっと方言混じりの喋り方も加わって垢抜けていない印象を抱かせているのだろうと思った。
91 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:49:49.81 ID:V32uVhix0
恋鐘「さっきからずっと歩いて人を探し回っとったんやけど、やっと出会えたば〜い! こいはどこ〜〜〜?!」

にちか「それが……私たちもサッパリで」

ルカ「うちらもアンタと一緒だよ。あのクマ連中から聞いた話以上の情報は持ってない」

恋鐘「うう……なんが起こっとるかサッパリばい……」

にちか「あの、月岡さんってこっち……東京の女じゃないですよね?」

恋鐘「うん! うちは長崎! 長崎で実家の小料理屋ば手伝うとるんよ!」

ルカ「長崎……随分と遠いんだな」

にちか「他の人は割と東日本に固まっている感はありますけど……なんで急に長崎なんでしょう」

恋鐘「そがんこと言われてもうちが一番知りたかよ! 急にアイドルになれって言われても困るばい!」

恋鐘「まあ、アイドルやること自体は悪い話ではなかけど……」

(あ、そこは割と受け入れてるんだ……)


【コンマ判定 53】

【モノクマメダル3枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…57枚】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラ…15個】
92 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:51:09.71 ID:V32uVhix0



【キーンコーンカーンコーン……】



一通り敷地内の探索をし終えた頃、タイミングを狙い澄ましたかのように鳴り響くチャイム。
まるで平然と日常を綴るかのように、それは突然に始まった。

モノタロウ『お待たせ! 入学式の準備が整ったよ!』

モノキッド『最高にクールでブラッドでマッドネスな入学式がキサマラを待ってるぜッ!』

モノスケ『ここからが才囚学園の本域や! 覚悟しときや!』

モノファニー『押さず、走らず、喋らず。おはしで体育館までやってきてちょうだいね』

モノダム『……』

モノタロウ『待ってるよ〜!』

プツン
93 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:52:28.95 ID:V32uVhix0

ルカ「……何かが始まる、みてーだな」

にちか「い、斑鳩さん……どうしましょう」

ルカ「どうするもこうするも……行くしかないだろ。今の私たちはあいつらの手の中。争ったところでろくな展開は待っちゃいないだろうしな」

にちか「……そう、ですよね」

ルカ「……」

ルカ「あー! そう不安そうな顔すんなって! 大丈夫、私がついてる!」

にちか「斑鳩さん……」

ルカ「私の方がちょっと年上で……同じ部屋に拉致られてた縁もある。ここにいる間ぐらいは私のことも頼ってくれていいから」

ルカ「んな不安そうな面してんじゃねー、ほら。行くぞ」

斑鳩さんは照れくさそうに顔を背けて、私に右手を差し出した。
流石にこれをとって一緒に歩くほど私も幼くはないが、それでも流石は彼女の持つカリスマ性だ。
その背中は今は何よりも頼り強く、心強い存在として映っている。
きっと斑鳩さんがいなければ、私は今にも不安に潰されていただろうから。
その感謝の意を込めて、パンと私の手を重ね合わせた。

にちか「はい、行きましょう……ルカさん!」

ルカ「……ハッ」

94 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:54:36.00 ID:V32uVhix0
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【体育館】

校舎の奥まったところにある体育館には、自己紹介を済ませて顔見知りになった面々がすでにあちこちに集まっていた。
ある程度のコミュニティはできつつあるらしい、数人単位で固まっているところが随所に見られる。
私とルカさんは二人で部屋の壁にもたれかかり、時間の経過を待った。
そして暫くしてから、一人の少女が声を上げた。

あさひ「……来る」

めぐる「どうしたの、あさひ?」

あさひ「何か……近づいてきてるっすよ。遠くから……ここに!」

初めは彼女だけが聞き取っていたそれは次第に他の人間にも感知され始める。
微細な音は振動となって実感に結びつき、そしてやがて自分たちの近くに影という予兆の存在を認める。
今ここに、頭上より、何かが降り注ぐ!



ドシーン!



凄まじい轟音と舞い上がる埃。
防衛本能から閉じた瞳をゆっくりと、細い水平線が開いていく中で、それを見る。
95 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:55:31.62 ID:V32uVhix0


【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】


人の首を掴めばトマトのようにへしゃげてしまうだろうし、
ハンマーを振り下ろせば根本から折れてしまうだろうし、
どんな鉄製品も踏み潰せばただの鉄屑に還ってしまうだろう。

そんな見立てが即座に走るほどに、絶対的な暴力。
暴力を体現した悪魔とでも言うべき5体が私たちの前に降臨したのである。

『ねえねえビックリした? ビックリした?』

『ヘルイェー! この姿を見るのは、今のキサマラは初めてだもんな!』

『ワイら最強最悪の破壊兵器エグイサルや! どうや、思い知ったか!』

恋鐘「ふぇぇぇぇ?! な、なんねこれ?!」

夏葉「みんな、離れて! 距離をとりなさい! 何をしてくるかわからないわ!」

あさひ「すごいっすー! あんな機械、見たことないっすー!」

灯織「言った側から……! 芹沢さん、自分勝手な行動は控えて!」

エグイサルと呼ばれる重機は一歩一歩ジリジリとこちらに近づいてくる。
武器も持たない生身の私たちは自然と身を寄せ合う形に。
それでも対抗策は何一つない。

……万事休すだ。
96 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:56:44.64 ID:V32uVhix0

『ぐへへへ……どいつからぶっ殺してやろうか……まずはその細い胴体を握りつぶして内臓をデロデロ吐き出させてやる……』

『ちょっと、アタシグロいのダメなのよ……もっと平和的に行きましょう?』

ルカ「て、テメェらの目的はなんなんだ……! なんのつもりだよ……!」

透「あー、死にたくないなー」

恋鐘「もういかんばい! お先真っ暗ば〜〜〜い!」

紛糾することしかできずにいた私たち。
一寸先に見える結末に怯え、絶叫する他なかった狂乱の渦中で。
海を割るように、その一言が鳴り響いた。




『民よ、争いはおやめなさい』




『こ、この声は……!』
『お、お父やん?!」

ほんのわずかな言葉なのに、耳に入った瞬間に全身を虫が這い回ったような不快感。
胃の底に溜まった澱みがせり上げてくるような言い知れぬ黒々とした感情が湧き上がってくる。
今まで私たちが直面してきた『最悪』、今まさに陥っている『最悪』、そんなものを鼻で笑い飛ばしてしまうような、
もっと強大で劣悪で、醜悪な『最悪』がすぐそこにまで迫っているという実感だった。
97 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:58:06.31 ID:V32uVhix0

『争いは何も生みません……何かを生み出すことができるのは、生命と生命の尊き交わりのみなのですから……』

『く、来るわよ! キサマラも衝撃に備えなさい!』

樹里「お、おいおい! 何が起きるってんだ?!」

霧子「すごく……胸がざわざわします……」

全員が促されるままに体育館の奥、エグイサルの向こう側へと視線をやった。
この学校の校章とおぼしき垂れ幕が見下ろす先には校長が登壇するであろう台があった。
ただ一つ、理解不能なことがあるとすれば、その台はガタガタと音を立てて【蠢いている】こと。

真乃「来ます……っ!」



バビューン!!!




花火玉のように、黒い影をした何かが射出された。
ずんぐりむっくりした影は妙に緩やかに落下して、私たちに向けて首を傾げた。
98 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 20:59:13.49 ID:V32uVhix0





「グッモーーーーーーーーニン! 超お久しぶりじゃん、オマエラ元気〜〜〜〜〜?!」





99 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:00:50.21 ID:V32uVhix0

これまで私たちの前に何度と姿を表したモノクマーズ、それらの個体を一回り大きくしたような白黒ツートンカラーのぬいぐるみだった。

愛依「な、なにあれ……なんか増えたんだけど……」

円香「……最悪」

モノクマ「ボクの名前はモノクマ、この才囚学園の【学園長】なのだー!」

モノクマと名乗るぬいぐるみは傲慢なまでにふんぞり変えると、そのままとてとてとこちらに向かってくる。
エグイサルに登場していたモノクマーズも、彼に続く形で機体から降り、一つの隊列のようになった。

モノクマ「自己紹介が遅くなって申し訳ない……でも、その間にみんなはもう自己紹介は済んだんだよね?」

モノタロウ「うん! オイラたちもバッチリ顔見知りだよ!」

モノクマ「えらいね〜、相互理解はコミュニケーションの第一歩ですぞ!」

円香「異議あり。こっちは全然そっちのことを理解してない」

モノファニー「あれ? お名前はちゃんと伝えたわよね?」

凛世「逆に……お名前以外のことは全く存ぜず……」

灯織「どうして私たちを拉致監禁しているのか、その理由もはぐらかされたままです」

甜花「甜花たちを、ここから出して〜……!」

モノキッド「おいおい! キサマラの耳が遠いのを棚に上げてミーたちを悪く言うつもりか?!」

モノスケ「才囚学園は一人前のアイドルを育成するための学校や。それ以上でもそれ以下でもないで」

ルカ「そこなんだよ。元から研究生やってる私はともかく……にちかとか、他の連中はなんでここに呼ばれてる」
100 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:02:06.23 ID:V32uVhix0





モノクマ「オマエラには未来があるからだよ」





101 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:04:44.62 ID:V32uVhix0

甘奈「み、未来……? たしかに、甘奈たちはまだまだ未来はあると思うけど……それはみんなおんなじじゃないの……?」

モノクマ「いいや違うね。オマエラの持つ未来と、その他有象無象の持つ未来。その意味と価値には雲泥の差があるんだ」

モノクマ「だからこそこの学園で育まれる未来は美しく、尊く、儚い」

樹里「要領を得ねーよ、もっと分かりやすく言ってくれ」

モノファニー「キサマらは選ばれたのよ! スカウトされたって言ってもいいわね!」

(す、スカウト……?! 私が?!)

モノキッド「そう、キサマラは才能の原石なんだ! この学園を出る頃には立派なダイヤモンドになっていることだろうぜッ!」

夏葉「……話が堂々巡りしていないかしら。あなたたちは結局私たちに何をさせたいの?」

甜花「そ、そう……アイドルになるって具体的には何をすれば……いいの?」

灯織「別にアイドルになることに賛同したつもりもないですが……」

モノクマ「よし、それじゃあこの才囚学園での【アイドル育成プログラム】についてご説明いたします! モノクマーズのみんな、準備はいいかな!」


【はーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】

102 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:05:41.49 ID:V32uVhix0



モノタロウ「@キサマラにはこの才囚学園で共同生活を送ってもらいます。期限は【一生】! 長い時間を友達と一緒に過ごすことでその魅力は一層磨き上げられることでしょう!」



(……は?)

にちか「ちょ、ちょっと待ってよ……! 今何て……?」

モノクマ「ちょっと! うちの子が今発表してるところでしょうが! 邪魔しないでちょうだいよ!」

にちか「いや、だって……」

モノファニー「A学園生活内での活動に特に制限はありません。校内設備を自由に探索しても構いませんが、夜時間中の食堂と体育館は出入り禁止となります。また、現状では立入不可の区域もあります」

モノキッド「B才囚学園の学園長であるモノクマへの暴力はかたく禁じられています。校内設備に損害を与える行為も基本的には禁止です」

モノスケ「C校則に違反する行為を行なった生徒はエグイサルによって粛清されます。規則を守って、清く正しい学園生活を送りましょう」

モノダム「……」

モノタロウ「以上だよ!」
103 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:07:07.05 ID:V32uVhix0

(……は? な、何言って……)

ルカ「ざけんな! 何が期限は一生だ……そんな道理が通用するかよ!」

夏葉「私たちには元々の生活があるし……親族だっている、そんな長期の共同生活など受け入れられないわ!」


モノクマ「よしよし、オマエラいい子だね〜! 一言も噛まずに全部言えたじゃないか〜!」ペロペロペロペロ

モノタロウ「うわ〜! お父ちゃん恒例の愛のペロペロシャワーだ〜!」

モノファニー「あんなところからこんなところまで舐め回されちゃうわ〜!」


樹里「クソ、んだアイツ……こっちのことまるで聞いてねーぞ!」


モノクマ「ああ……舌ったらずでまだヨチヨチ歩きな我が子たちがこんなにも一生懸命になってボクのために頑張ってくれる……こんなにも幸せなことがあるだろうか……!!」ペロペロペロペロ

モノスケ「あかん! お父やん、そこはあかんで〜!」

モノキッド「禁断のッ! 禁断の扉が開いちまうッ!」

モノダム「……」

モノクマ「そんな恨めしそうな眼をしなくてもいいんだよ! むしろ何もせずとも愛を受けられるモノダムのその幸運さが可愛らしい!」ペロペロペロペロ


樹里「おい、いい加減にしろ! さっさとここから出しやがれ!」

104 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:08:15.83 ID:V32uVhix0

モノクマ「……もう、なんだよ。せっかく我が子との団欒を楽しんでたところなのに水を差しやがってさ」

甜花「団欒っていうか……舐め回してただけ……だけど」

モノクマ「何? 何が不満なわけ? オマエラみたいな没個性で何も持たない、この先世界の誰にも名前を覚えられることもなく消えていくはずだった存在を掬い上げてもらって、むしろ感謝の言葉はないの?」

(……!)

【没個性】……そんなことは何よりも自分が一番わかってる。
アイドルなんてテレビの向こう側の存在。煌びやかな芸能界なんて、私とは対極の場所。
自分だって理解しているし、人生とはそういうモノだと受け入れている。
そのはずなのに、こうも他人に面と向かって言われると腹立たしく感じるモノなのか。

モノクマ「オマエラという日常の奴隷に非日常をプレゼントしてやってるんだよ! アーッハッハッハッハ!」

にちか「うるさい……!」

ルカ「にちか……?」

にちか「あんたが人の価値を勝手に決めるな……! この先数十年ってある私たちの未来を勝手に値踏みして、こき下す権利なんてあんたにはないでしょ……!」

モノクマ「……ボク、さっき言ったよね?」

モノクマ「オマエラには未来があるって。確かに今は他の日常の奴隷と変わりないオマエラだけど……この学園で過ごすことでオマエラはその【輝かしい未来】を手にすることができるんだ」

モノクマ「よーし、それじゃあモノクマーズ! 次のステップのイントロダクションにいっちゃおー!」


【はーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】

105 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:09:16.41 ID:V32uVhix0


モノタロウ「あのね! この学園生活の期限は一生なんだけど、途中で卒業をすることができる制度があるんだ!」


モノファニー「それは【学級裁判】! 他の生徒を殺害したクロとそれ以外の生徒のシロで学級裁判を行って、クロがシロを欺き通すことができれば見事卒業になるのよ!」


モノキッド「ヘルイェー! クロが卒業になった際にはそれ以外のシロ全員がおしおきになっちまうぜ!」


モノスケ「逆にクロとバレてしもうたらクロだけがおしおきで残った生徒で学園生活継続や」


モノダム「……」


106 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:10:02.68 ID:V32uVhix0




にちか「……え?」




言葉の全てが宙をすり抜けた。
そんなの、テレビや小説、作り物の世界でしか聞いたこともないし、自分で口にしたこともない。
辞書での意味ぐらいは知っているけど、逆に言えばそれぐらいにしか実感がない言葉。
本当に、この世界に存在する概念なのかも疑わしいような言葉を、前提として持ち出されたことに頭がまだ追いついていなかった。
107 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:11:12.05 ID:V32uVhix0

真乃「ちょ、ちょっと待ってください……っ! さ、殺害ってどういう意味ですか……?」

モノキッド「どういう意味もこういう意味もないぜッ! 文字通りキサマが他のキサマラの中の誰かをぶっ殺すって意味だ!」

モノスケ「包丁でブッ刺してもええし、縄で首を絞めたっていい。殺し方は問わへんで」

モノファニー「うぅ……グロい殺し方だけは勘弁ね。私グロいのダメなのよ……」

ルカ「……殺す殺されるもそうだけど、気になることを言ってたよな。学級裁判ってのはなんだ?」

モノタロウ「よくぞ聞いてくれました! この学級裁判が、このコロシアイ強化週間におけるキモだからね!」

モノファニー「あのね、キサマラの間で殺人事件が起きた場合、誰が殺害した犯人なのかを議論して話し合って決めてもらうの」

モノスケ「要は犯人当てっこやな! それに成功すればクロだけがおしおきで、失敗すればそれ以外全員がおしおきや!」

モノキッド「おしおきは平たく言えば処刑のことだ! 絞首に転落、釜茹で、刺殺、火葬になんでもござれだ!」

モノダム「……」
108 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:12:05.68 ID:V32uVhix0

誘拐されるよりも、少し前。
私の日常の確かな記憶。
バイト終わりに、お姉ちゃんがまだ帰っていないアパートで、食事当番のためにシチューを煮込んでいた。
人参は細かく切らないと火が通らないよなーとか、たまにはいいお肉食べたいなーとか、そんなことを考えながら、なみちゃんの歌を鼻歌で誦じながらお玉を回して。

そういう日常と私が今いるここは同じ地続きなんだろうか。
本当の私はトラックに轢かれて病院のベットの上で昏睡状態とか、そんなことだったりしないだろうか。
そんな現実逃避をしないと、どうにかなってしまいそうな程に、狂っていた。

人の命をどこまでも軽んじて、ゲームとして興じて、嘲笑う。それを行なっているのは自分よりも小さなクマの人形たち。
それなのに、言葉に説得力と強制力を抱かせる要素の数々。エグイサルに広大な施設、そして確かに存在する誘拐された時の記憶。

にちか「……あはっ」

膝は砕け、手のひらでなんとか地面を受け止めた。
頭の中がぐるぐると洗濯機みたいに掻き乱されて、世界はどんどんと傾いて行く。
私の中の常識は今や、何の役にも立たない。

109 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:13:42.46 ID:V32uVhix0

ルカ「……ざけんなッ、ざけんなよ……! 何がコロシアイだ、学級裁判だ……意味わかんねえ……!」

モノスケ「当然やけどキサマラに拒否権はあらへん。それに、キサマラは今日であったばかりの初対面同士。殺し殺されにも対して抵抗ないやろ?」

愛依「そんなわけないじゃん! うちらはみんな……ただの女の子なんだよ!?」

夏葉「人が人を殺めるなんて重罪よ……そんなこと、出来るはずがないわ」

モノクマ「ジューザイ? なにそれ、元気出していけばいいの?」

夏葉「はぁ……?」

モノクマ「あのね、オマエラが理由にしてる法律とか倫理とか、それって他の他人に定義された社会や世界の箱の中でしか通用しない概念なんだよ」

モノクマ「現代社会が成立するよりずっとずっと前……ムラ社会だった頃は略奪に殺害はつきものだったし、戦争ではたくさん殺した人間こそが英雄だったんだよ」

モノクマ「現代では誰しもが牙を抜かれてしまって、ありとあらゆる場面から暴力が退けられるようになってしまった」

モノクマ「でも、それって生物の営みからすれば退化に他ならないんだよね。今こそ人類は原始の時代に立ちかえるべきだとボクは思うね!」

霧子「歴史を理由にするのは……違うと思います……」

霧子「人は、たくさんある道のうち……何度も過ちながらでも……正しい道を選んで……今日まで来たと思うから……」
110 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:14:54.17 ID:V32uVhix0

モノクマ「それにオマエラの目指す芸能界だってそうだよ! 他の人間を食ってかかる、蹴落としてやろうっていうバイタリティがないと生き残れない世界だからね!」

樹里「ちょっと待て! 問題はそこなんだ!」

モノクマ「はぬ?」

樹里「なんで……どこからアタシたちが【アイドルになる】なんて話が湧いてきたんだ? アタシたちが選ばれたとか何とか言ってたけど、そんなの身に覚えがないんだよ」

凛世「凛世も……アイドルのことはよく存ぜず……」

愛依「そりゃ憧れっちゃ憧れはあるけど……うちは、こんなだしさ……?」

モノスケ「なんやコイツら変なことを言うとるで」

モノファニー「本当ね、おかしな子達だわ」

モノキッド「クククッ、おかしすぎて笑えてくるぜッ!」

恋鐘「な、なんね?! 何を笑っとるとよ!?」

モノクマ「このコロシアイはオマエラじゃなきゃダメなんだよ……そしてオマエラもその理由も、意味もちゃんと知っている……」


モノクマ「それなのに、どうしてそんなことを言うのかな?」


(……は?)

(コロシアイをこのメンバーでやることの理由と、意味……?)

どこまでも心当たりのない問いを一方的にぶつけられて、私たちは全員立ち尽くす他なかった。
奥歯で憎悪と怒りを噛み潰しながら、コロシアイという言葉を振りかざすモノクマたちを睨みつけるしかなくて。
111 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:15:40.12 ID:V32uVhix0






_____無力にも、この運命に身を委ねるしかないのだった。





112 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:17:00.00 ID:V32uVhix0
-------------------------------------------------



PROLOGUE

if(!ShinyColors)

END


残り生存者数16人

To be cotinued...



-------------------------------------------------
113 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/05/31(水) 21:20:19.05 ID:V32uVhix0

というわけでプロローグまで投稿させていただきました。
早速進行がグダってしまってすみません。
どうかまたお付き合いただければと思います。

明日6/1(木)21:00前後よりまた1章を更新していこうと思います。
よろしくお願いいたします。

以下今回のコロシアイ参加者
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【超研究生級のブリーダー】櫻木真乃
【超研究生級の占い師】風野灯織
【超研究生級のスポタレ】八宮めぐる
【超研究生級の料理研究家】月岡恋鐘
【超研究生級のドクター】幽谷霧子
【超研究生級のギャル】大崎甘奈
【超研究生級のストリーマー】大崎甜花
【超研究生級の文武両道】有栖川夏葉
【超研究生級の大和撫子】杜野凛世
【超研究生級のサポーター】西城樹里
【超研究生級の博士ちゃん】芹沢あさひ
【超研究生級の書道家】和泉愛依
【超研究生級の映画通】浅倉透
【超研究生級のコメンテーター】樋口円香
【超研究生級の音楽通】七草にちか
【超研究生級のカリスマ】斑鳩ルカ
114 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 20:55:28.58 ID:cAvrZtli0
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CHAPTER 01

ガールビフールフールガールズ

(非)日常編




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