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【シャニマス×ダンガンロンパ】シャイニーダンガンロンパv3 空を知らぬヒナたちよ【安価進行】Part.1

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115 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 20:56:20.14 ID:cAvrZtli0

モノクマたちが姿を消してからも、私たちはその場に硬直していた。
コロシアイとやらを受け入れるつもりはない。
ただ、今の自分たちの前にはそこから逃れる術など何もなく、所在のない不安だけが胸を埋め尽くす。
その吐口を求めるように、互いを見つめ合うことしかできずにいた。
静寂が続くこと、数分。
一人が、口を開いて膠着を破った。

円香「……いつまで、こうしているおつもりですか?」

透「ん……樋口、どった」

円香「別に。このまま見つめあってても状況は好転しないし、どうしようもない」

円香「せめて自分たちの置かれている状況を改めて確認するぐらいした方がいいんじゃないかと思っただけ」

にちか「樋口さん……」

夏葉「そうね、円香の言う通りだわ。あんな要求に応じる必要はない。だけど出来るだけの対策はしておくべきね」

ルカ「……こうなったもんは仕方ねーな」

一人が動き出したことで、少しずつだが冷静さが戻ってきた。
何も追い込まれているのは一人じゃないんだ。自分でこの不安を抱えこみ続ける必要はない。
116 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 20:58:15.23 ID:cAvrZtli0



灯織「……待ってください」



だけど、その不安を誰かと共有する必要もない。
その誰かはまだ、信用に足るとも決まっていないのだから。

灯織「先ほどの話からすると……ここから出るために他のいずれかの殺害をすでに企んでいる方がいる可能性も捨てきれませんよね」

樹里「お、おい……そんなこと……」

灯織「でも、無いとは言い切れませんよね」

あさひ「わたしもそう思うっす。誰がどう思ってるかなんて、どうやってもわかんないっすから」

夏葉「待ちなさい、ただでさえこんな状況なのに自分勝手な行動をすればバラバラになってしまうわ!」

灯織「自分勝手な行動ではなく、自分を守るための行動です。すみません」

風野さんは私たちに最後まで猜疑の目を向けたまま、体育館を一人後にした。
117 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 20:59:30.92 ID:cAvrZtli0

残った私たちにも、彼女の行動は波紋を起こした。
一度結びかけた協力を改めて見つめ直し、
その強度を図りかねる者、もっと強く信用できる繋がりに逃れる者、どうすればいいのか分からず当惑して立ち尽くす者。
集まりは、空中分解の様相を呈していた。

甘奈「ごめんなさい……ちょっと、今は甜花ちゃんと二人にさせてもらうね……」

円香「浅倉、いくよ」


あさひ「ここでじっとしてても何も変わんないっすね」


凛世「少し、部屋で休ませていただきます……」


一人、また一人と体育館からは人が減っていき、残ったのははじめの半分ほどだろうか。
その残った人間も、信頼を向け合っているわけではなく、身の振り方に悩んでいるだけの段階だ。
118 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 21:00:27.36 ID:cAvrZtli0

霧子「これから……どうしようか……」

ルカ「ひとまず、改めて脱出する術がないか探索する……か。アイツらの言いなりにはなりたくない」

夏葉「……ええ、そうしましょう」

めぐる「わたしは、風野さんたちにも協力してもらえるように説得に行ってみる! きっと不安で仕方なくて、あんなことを口走っちゃってるだけだろうから……!」

ルカ「だとしたら一人よりも複数人で行った方がいいだろ……えっと、櫻木……」

真乃「櫻木真乃、です……!」

ルカ「あんたも一緒に行ってやってくれるか?」

真乃「は、はい……っ!」

なんだかんだでルカさんが指揮をとる流れになっているあたりは流石のカリスマ性だ。
本人にとってそれが自覚のあるものかどうかは分からないけど。

ルカ「にちか、オマエは私と一緒についてきてくれるか?」

にちか「え、いいですけど……」

ルカ「ここじゃ一番最初に出会ったのがオマエ……私からすれば一番信用できるのはオマエなんだよ」

(もう……そんな言い方をされると弱い)

にちか「分かりました! お供します!」

ルカ「よし、それじゃあ各自探索と説得。とりあえず今日のところはそれで行こう」

ルカさんの指示に従って私たちは散開した。
目立った反発もなく従ったのは、頭を働かせたくなかったから。
コロシアイを課せられている非現実、それを噛み砕いて自分の領域に入れることに抵抗を抱いていたから。
何か別のことをして気を紛らわしていたかった。

ただ、どれだけ探そうとも脱出の糸口などは見つからず。
私たちは靄の中を闇雲に歩き回るだけに終始した。
119 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 21:02:07.11 ID:cAvrZtli0
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【寄宿舎 にちかの部屋前】

ルカ「……お疲れ。今日のところは、とりあえず休もう。オマエも訳のわかんないことが連続してまだパニックだろ」

にちか「はい……正直、寝て起きたら全部夢であってほしいって思っちゃってます」

ルカ「ハハ……だよな」

にちか「……あの、ルカさん」

ルカ「……ん?」

にちか「ルカさんは私より年上で……他のみんなを引っ張ろうと、守ってしてくださってるんだと思うんですけど……」

にちか「あの、無茶はしないでくださいね! ここではルカさんも私たちと同じ立場の、仲間なんですから!」

私の申し出にルカさんは一瞬虚をつかれたようで、黒目がきゅっと小さくなった。
そしてすぐに頬をにへらと緩めて、右手で私の頭を撫でた。

ルカ「サンキュー。辛くなったらにちかを頼る」

にちか「え、えへへ……」

ルカさんの手は指が長くて、それでいて暖かくて、ずっと撫でられていたいような気がした。
目を覚ましてからずっと強張ってばかりだった私を初めて、ときほぐしてくれた接触に、足先から蕩けてしまいそうだった。

ルカ「じゃあな、ゆっくり休めよ」

にちか「はい、おやすみなさい!」
120 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 21:03:46.30 ID:cAvrZtli0
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【にちかの部屋】

モノキッド「ヘルイェー! 今のやりとり、マジでお笑いだな!」

にちか「う、うわああああああ?! な、なんでいるの?!」

モノキッド「何でも何もミーたちモノクマーズは学校の敷地内ならどこでも行けちまう権限持ちだからな!」

にちか「うーわ最悪……」

モノキッド「それよりキサマに朗報だ! クローゼットを見てみな!」

にちか「はぁ……?」

促されるまま、部屋の脇にあるクローゼットを開ける。
その瞬間、絶句。今私が着ている制服と全く同じものが何セットも取り揃えられているではないか。

モノキッド「これで着替えにも困らないな!」

にちか「どこで集めてきたの……気色悪……」

私の制服があるということは、本当に私は選ばれてここにいるということだ。
全国の女子高生を無作為に選んで誘拐したんじゃこうはいかない。
その意味と価値……あの時のモノクマの言葉が何度も頭に浮かび上がっては消えた。
121 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 21:04:48.52 ID:cAvrZtli0

にちか「ねえ……あなたたちは本当に何が目的なの? なんで私たちがコロシアイをしなくちゃいけないの……?」

モノキッド「……! おっと、そろそろ夜伽の時間だッ! 遅刻は厳禁、それじゃ失礼するぜッ!」

にちか「ちょ、ちょっと! 気色悪い理由で逃げんなー!」

にちか「……行っちゃった」

本当に文字通り神出鬼没だ。
どこから入り込んだのか、どこに消えたのかも分からないのはなかなかにこちらも神経を使う。

にちか「……はぁ」

でも、もうどうでもいい。
私は全てを投げ出してベットに倒れ込んだ。
目を覚ましてからあまりにも多くのことが起きすぎた。
これまでの人生の十数年、そのいずれよりも衝撃的で凄惨で、受け入れられない現実。
生きるか死ぬかなんて、ここ数十年は無縁の概念だと思っていたのに。

にちか「いや、意味わかんないし……」

眠気が湯水のように湧いてくる。
多分その源は諦観。いくら私が思考を張り巡らせたところで事態を好転させる手など思いつくはずもない。
時間が流れるのだけを待つのに、瞳を開けておくのは退屈すぎた。
シーツの匂いを嗅ぎながら、クッションに体がのまれていくのを感じながら



……ゆっくりと、意識を手放した。


122 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 21:06:45.78 ID:cAvrZtli0
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【School Life Day2】
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【にちかの部屋】

「夢……なわけないよね」

目を開けた瞬間待っていたのは自分の寝床からすれば上等すぎるつくりの天井。
ベッドだっていつもの数段ふかふか。
照明もボタンひとつで簡単につけたり消したりできる快適っぷり。

まあ……ここで私を待ち受けている運命には不快以外の何ものも存在してはいないんだけど。
ベッドからようやっと身を起こして鏡の前へ。

決して眠れなかったということはない。
頭も体も疲れ切って、睡眠も十分に取れているはずだ。
それなのに頬がこけて見えるのは、精神的なモノなのだろう。
いまも胸に何か冷たいものが突き刺さったようで、息苦しさを感じている。
123 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 21:07:43.73 ID:cAvrZtli0

【キーンコーンカーンコーン……】

モノタロウ『おはっくまー! 朝の放送だよ〜!』

モノスケ『キサマラ、ちゃんと起きとるか? こんな時こそちゃんとした生活習慣を維持せにゃいかんのやで』

モノファニー『気を抜いた瞬間に乙女はおばさんに変わっちゃうんだから! ぶくぶくぶよぶよになってから後悔しても遅いんだからね!』

モノキッド『ミーはちょっとくらいふっくらしてる方が好きだけどなゲヘヘヘ』

モノファニー『やーん、ちょっとまだカメラ回ってるでしょ? そういうのは後にして』

モノキッド『ちょっとくらいいいじゃねーかよ、ゲヘヘヘ』

モノダム『……』

プツン


朝からかなり最悪な放送を見させられた。
どうやら朝晩には決まってモノクマーズの放送があるらしい。
こんな空間でも規則正しい生活を、ということだろうか。
私たちから日常を奪っておいて、いいご身分だと思う。
嫌気を掻き出すように歯ブラシを口に突っ込んで、朝の支度をした。

ひとまず、この学校での生活からは逃れられないのだ。
適応する気こそないが、取り残されないように、人として最低限度の営みぐらいはやっておかないと。
124 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 21:18:30.41 ID:cAvrZtli0

ピンポーン

洗顔にヘアセットと一通りの朝の支度をし終えようかというタイミングでインターホンが鳴った。

にちか「は、はい!」

ルカ「おはよ、もう起きてたか?」

ルカさんは昨日の今日だというのに、気丈に笑顔を見せてくれた。
きっと私に不安を抱かせないためなんだと思う、どこかその口元にはぎこちなさを感じた。

ルカ「昨日は寝れたか? 環境も違って……落ち着かないだろ」

にちか「んー……そうですね、部屋自体は完全防音で、物音もしなくて静かなので寝ることは寝れました」

ルカ「そっか、そんならよかったけど」

にちか「ルカさんは?」

ルカ「私は……すぐには寝れなくてさ、あたりをぶらついてたよ」

ルカ「どっかに出れる場所がないかって、そんな期待しても無駄なのは分かってんのにさ」

にちか「ルカさん……」

そう言ってルカさんは自嘲して肩を窄めた。
ルカさんだって私と数えるほどしか年は変わらない。
彼女だって不安を抱いているはず、私にそれを見せないように取り繕っている。
そのことが余計に負荷になるのが、嫌だった。

にちか「ルカさん! 朝ごはん! 朝ごはん食べに行きましょう!」

ルカ「え? お、おう……どうした、急に」

にちか「もうお腹ぺこぺこなんですよー! 飢え死に寸前! さ、早く行きましょう!」

ルカさんの手を強引にとって駆け出した。
不意をつかれた手には一切の抵抗の力がこもっておらず、痩身のルカさんは私でも軽く引いて行けた。
掌から伝わってくるルカさんの冷えと震えを、強引に握り込んでいた。
125 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 21:25:29.62 ID:cAvrZtli0
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【食堂】

食堂には朝目覚めてから行き場もなく、ひとまずで行き着いたであろう他の人たちの姿もあった。
とはいえ、全員が全員ではない。
昨日の話の後に、保身のために別行動を選んだ人たちの姿はなく、他にも数名まだ目覚めていないのか、抜けている人員がある。

真乃「お、おはようございます……っ」

にちか「お、おはようございます……」

ルカ「よっす……流石に、全員じゃねーんだな」

樹里「まあ、昨日の今日だしな……これでも集まった方だと思うぜ?」

夏葉「……やはり心配ね、あの後単独行動をしていた人たちもちゃんと睡眠は取れたのかしら」

ルカ「ていうか朝飯は……自分で用意する感じか?」

霧子「ううん……モノクマたちが用意している献立もあるみたいではあるんだけど……」

霧子「朝になると、食糧庫に材料が追加されるみたいで……今は、恋鐘ちゃんが……」

ルカ「恋鐘……ああ、あの長崎の」
126 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/01(木) 21:26:04.19 ID:cAvrZtli0

夏葉「彼女が全員分の朝食を作ってくれているみたいなの」

にちか「ぜ、全員の?! めっちゃ大変じゃないです?!」

めぐる「うん、わたしたちも手伝うよー!って言ったら、自分が好きでやってることだから気にしないで!って」

樹里「元々実家の小料理屋で厨房を手伝ってたらしくてさ、腕にも自信があるんだってよ」

夏葉「ええ、だから先に私たちで今この場にいない人たちを呼んでこようと思って」

にちか「ここにいないのって……」

真乃「風野さんに、杜野さん、大崎さんたちに、芹沢さん、和泉さん、浅倉さんと樋口さんだね……っ!」

樹里「そんじゃ分担して探すか。寄宿舎にいるとも限らねーだろうしな」

にちか「ルカさん、一緒に声かけに行きましょう!」

ルカ「ああ、いいけど……どいつにすんだ?」

にちか「えっとですね……」

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【親愛度が微増する選択肢です】

1.灯織
2.凛世
3.甘奈・甜花
4.あさひ
5.愛依
6.透・円香

↓1
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/02(金) 02:35:56.96 ID:4zq4o6PP0
4.あさひ
128 :数日空けてすみません、ゆっくりでも更新したいと思います ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:20:53.08 ID:4+ogcrc90
4 あさひ選択

【図書室】

ルカ「……あ、いたぞ! やっと見つけた……」

にちか「はぁ……なんで朝からこんな埃っぽいとこにいるんですかね、この子……」

私とルカさんは二人で芹沢さんに声をかける係を引き受けた。
寄宿舎に呼びに行くだけの簡単な任務だと思いきや、インターホンを鳴らしても応答はなし。
そこからどこか校内をぶらついてるんだろうと軽い気持ちで探し始めて……数十分。
まさかと思って地下に来てみてやっとその姿を見つけた。

あさひ「……? あれ、どうしたんっすか? 二人とも」

芹沢さんは私たちに気づくとキョトンとした様子で首を傾げた。

にちか「どうしたもこうしたもないよ……今、みんなで朝ごはん食べようってことになってて、それで食堂に集まってない人に声かけてたとこなんだよ」

あさひ「ふーん、大変っすね」

にちか「ふーん……ってなんでそんな他人事みたいな言い方出来るんですかね……」

ルカ「おい、オマエも一緒に食うんだよ。早く着いてこい」

あさひ「えー……? わたし、別にいっすよ。適当に自分で食べるんで」

ルカ「わがまま言うな、こんな状況なんだから集団行動には応じてくれ」

あさひ「……」

ルカさんがすごんで見せると、少し気圧されたのか芹沢さんは渋々こちら側へと歩いてきてくれた。
一応は朝食会に参加してくれるらしい。
本人としてはあからさまに納得してないらしく、ずっと唇を尖らせて不服を示していた。

にちか「にしても芹沢さん、なんで図書室なんかにいたの?」

あさひ「んー……本が読みたかったからっすね!」

ルカ「本だぁ? そんな読書家なのか、テメェ」

あさひ「あはは、わたしこれでも【超研究生級の博士ちゃん】っすから」

……まあ、図書室にいたってんならそれぐらいしか理由はないよね。
そう納得した。納得したはずなんだけど……

私たちが彼女の姿を見つけた時、その手には何も本なんか持っていなかったし、彼女はじっと奥の本棚を見つめていただけだったような気がするんだよね。

……思い違い、なのかな。

【芹沢あさひの親愛度が上昇しました】

【現在の親愛度レベル…0.5】
129 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:23:08.73 ID:4+ogcrc90
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【食堂】

なんとか説得の甲斐あって、全員が食堂に一堂に会することはできた。
……とはいえ、単独行動していた人のほとんどは嫌々。席にも積極的に着こうとはしていない。
例外的なのは、ただ寝坊気味だった愛依さんだけだ。

夏葉「あなたはそこで……あなたはこっちに……それぞれ間に入るように座ってもらえるかしら」

灯織「……えっと」

甘奈「甜花ちゃん、こっち座ろう……いっしょに」

甜花「う、うん……」

円香「浅倉」

透「んー」

空気は重たい。
信頼という言葉がどこまでも空虚な空間で、心を開かせる言葉など見つかるはずもない。
全員が口をまごつかせる歯痒い時間ばかりが過ぎた。

恋鐘「みんな〜! ご飯ばできたけん配膳手伝って〜!」

月岡さんの言葉にみんな救われた様子で、すぐに厨房の方に集まった。
自然と一列に連なる形になり、月岡さんが一人一人にご飯をよそった。
130 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:24:14.36 ID:4+ogcrc90

あさひ「何も変なものは入ってないっすよね」

恋鐘「あさひは好き嫌いがあると?」

あさひ「いや、毒とか入ってたら全員恋鐘ちゃんに殺されちゃうっすよね?」

にちか「……っ!?」

恋鐘「そ、そんなことせんよ〜〜〜!! あさひ、なんてことを言い出すばい!」

あさひ「……そっすか! それなら安心っすね!」

(こ、この子……とんでもないことを言い出すな)

途中空気が凍る場面はあったけど、食事をいざ始めると少し緊張が解けた様子。
ぽつりぽつりと自己紹介や交流をし始める光景が目に入り、ホッと胸を撫で下ろす。
131 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:27:26.11 ID:4+ogcrc90

めぐる「ねえねえ、同い年だし……下の名前で呼んでもいい? わたしのこともめぐるって呼んでくれていいから!」

真乃「う、うん……わかった……えっと、めぐるちゃん……!」

灯織「……まだ、会って2日目だから」

めぐる「ご、ごめんね! 無理にそう呼ぶ必要はないから!」

灯織「……私のことは、好きに呼んでくれていいよ」



樹里「……アンタ、昨日はちゃんと眠れたか?」

凛世「い、いえ……」

樹里「その……不安だし、寂しいだろうし……色々と心細いだろうけどさ、アタシでよければ相談とか乗るよ。寄宿舎の部屋もたまたま隣り合ってるしな」

凛世「……はい」



愛依「あさひちゃん、あさひちゃん昨日はどうだった? ちゃんと眠れた?」

あさひ「ん? 寝たっすけど……それがどうかしたっすか?」

愛依「いや、うちさ〜なんかムナサワギっつーのかな……中々寝付けんくてさ〜、今日もちょいじり貧なんだよね」

あさひ「へー」

愛依「だからさ、あさひちゃんもキツかったら辛いよなーと思って。そうじゃないんなら大丈夫!」

あさひ「?」
132 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:28:37.66 ID:4+ogcrc90

夏葉「みんな、少しいいかしら」

緊張が解けつつある中で、有栖川さんが立ち上がり、周りの注目を集める。

夏葉「これからこの学園で生活を続けるにあたって、この朝食会は最低限義務づけるのはどうかしら」

夏葉「毎朝顔を突き合わせることで犯行の抑止にもなるし……交流は精神的にもプラスに働くはずよ」

めぐる「さんせーい! 毎朝他の誰かの顔を見れたら、それだけで安心するもんね!」

円香「……殺人事件が起きていないかの確認もできますし、異論はありません」

甜花「あ、あう……甜花、ちゃんと起きられるかが心配……」

愛依「アハハ……うちもちょい自信ないかも……」

樹里「決まった時間に食堂に来なかった人は、集まっている人で起こしに行く。今日と同じスタイルでいいだろ」

今の無秩序で満ちた状況で、彼女の提示した秩序は何よりも頼もしく見える。
全員で非武装をしようという有栖川さんの提案は特に抵抗なく受け入れられた。

133 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:29:53.48 ID:4+ogcrc90

あさひ「あ、そういえばなんっすけど」

愛依「ん? どったん、あさひちゃん」

あさひ「昨日、夜時間に学校を探索してたんっすけど裏庭で変なのを見たんっすよ」

霧子「あさひちゃん……夜に一人は、危ないよ……」

ルカ「それはさておいて……変なのってなんだ?」

あさひ「なんかマンホールのフタって言うのかな、下に通じる穴みたいなのがあったっす」

(……!)

真乃「そ、それって……もしかして脱出できるかもしれないってことですか……?」

甘奈「そ、そんな美味しい話……あるのかな」

透「下水道からの脱出ってスパイ物じゃ定石じゃんね」

灯織「ライフラインとして水道は必須ですし……外部と繋がっている可能性は大いにありますね」

談笑を俄かに割った芹沢さんの話は注目を集めた。
自分の身も危機にさらされている今、脱出の糸口というワードは何よりも関心を惹く。
134 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:31:08.57 ID:4+ogcrc90

あさひ「フタは重たくてわたしじゃとても開けられなかったんで、中がどうなってるかは知らないっすけど……ここにいる人たちで協力すれば開くんじゃないっすかね?」

樹里「ああ、スポーツ経験者も体を鍛えてる奴もいる……みんなで行けばマンホールのフタくらい訳ないだろ」

凛世「しかし、そのように脱出を試みても良い物なのでしょうか……コロシアイを強いているモノクマさまたちに見咎められは致しませんでしょうか……」

円香「その点は心配いらないんじゃない?」

霧子「校則でも学校の探索自体は禁止されてないし……きっと、問題ないよ……!」

夏葉「ええ、試してみる価値はありそうね。腕が鳴るわ!」

ルカ「よし、飯を食ったら各自裏庭に集合だ。そのマンホールのフタってのを開けてみるぞ」

にちか「は、はい……!」

マンホールという降って湧いた希望に私たちは露骨に食事を口に運ぶ速度が増した。
一人、また一人と食事を片付けて、足早に食堂を後にする。

(……あれ?)



あさひ「……」



ただ、そんな中でも……話題を持ち出した当の張本人だけ、食べる速度が変わらずにいたのがなぜか目についた。
135 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:33:04.64 ID:4+ogcrc90
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【裏庭】

めぐる「あさひ! 見つけたマンホールっていうのはどこかな?」

あさひ「えっと……生い茂ってる草で隠れてるんっすけど……こっちっすね」

食事を終えた私たちは高揚のままに裏庭に介する。
一人背丈の低めな少女を取り囲み、彼女の動向を見守った。

あさひ「あった……これっす!」

夏葉「なるほど……確かにマンホールね」

芹沢さんがしゃがみ込んだところには、植物で身を埋めるようにしているので分かりづらくはなっているが、確かに丸い鉄板があった。
年季も入っていて、結構な厚みと重量がありそうだ。

透「持ち上げんの? これ」

ルカ「フタの縁にいくつか窪みがあるな……何人かちょっと手を貸してくれ」

夏葉「ええ、勿論よ」

樹里「おっし……行くか」

めぐる「はいはい! わたしもやるよ!」

四人で窪みに指をかけ、いっせーのーでで力を込めた。


ガタ……


コンクリートが擦れる音が聞こえたかと思うと、ゆっくりとマンホールのフタは持ち上がり、真っ暗な洞穴がその姿を現した。
長く閉ざされていた黒からは、カビたような、ジメジメと苔むしたような臭いがする。
あまりいい臭いではない。
136 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:35:18.39 ID:4+ogcrc90

樹里「……開いたな」

あさひ「んー……上からじゃ、下がどうなってるのかはよく見えないっすね」

円香「壁伝いに上り下りができるように取っ手はついてるみたいですけど、どうします?」

樋口さんの呼びかけに、少しの沈黙が訪れた。
脱出の可能性という甘言に呼び寄せられこそしたものの、
いざ目にしてみるとその穴は底が見えぬほどに深く、闇は全てを飲み込んでしまいそうなほどに深淵の様相を呈している。
これに飛び込んでいけるほどの勇気は、そう簡単に持てるものでは無い。


ルカ「……私は降りてみる」


そんな中、ルカさんは一歩進み出た。

にちか「ルカさん……」

ルカ「このままコロシアイに応じるつもりなんか毛頭ない。それ以外の手段で外に出るための方法を模索しなきゃならないんだ。見えている可能性は一通り全部確かめなきゃだろ」

額に寄せた皺からしても緊張は明らか。
ここまで来て引き下がれないという面子から来る蛮勇なのかもしれない。

夏葉「ルカ、私もついていくわ。あなただけを危険な目に合わせるわけにはいかないもの」

恋鐘「うちも行くばい! 赤信号もみんなで渡れば怖くなか〜!」

めぐる「わたしもついていく! いっしょに行く人が多い方が危険を避けられる可能性も高くなるもんね!」

にちか「私も、行きます! ルカさん、お供させてください!」

それでも、彼女から目を離せなくなってしまうのはカリスマ性の為せる技なのだろうか。
彼女の気高さと儚さに、寄り添いという気持ちが私にも湧いてくる。
人を惹きつける魅力とはそういうことを指すんだろうと思った。
137 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:36:11.96 ID:4+ogcrc90

透「……マジか、どうする?」

円香「……行かない理由も、ないんじゃない」

透「んー……そっか」

円香「今のところは……目立つ行動はすべきじゃない。他の人たちに合わせておいた方がいいと思う」

透「うっす」



灯織「……櫻木さんはどうするつもり?」

真乃「えっと……わ、私も……行ってみようかな……っ」

真乃「他の人が頑張っているのに黙って見ているのは……辛いよ」

灯織「……わかった、私もついていく」

真乃「灯織ちゃん……」

灯織「正直私は八宮さんみたいに即断もできないし、櫻木さんみたいに強くあろうとする気持ちも持てない」

灯織「この期に及んで怯えてる……だから、これはその自分を打ち破るための挑戦」

灯織「私は、私の意思で降りることにするよ」

真乃「灯織ちゃん……」


138 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:37:58.38 ID:4+ogcrc90

愛依「あさひちゃん、うちが先に降りるからその次に降りておいで!」

あさひ「……? いいっすけど、なんでっすか?」

愛依「そしたらあさひちゃんが手滑らせてもうちらでどうにかなるかもじゃん?」

あさひ「……なんで、そんなにわたしのことを気にかけるんっすか? わたしとは昨日会ったばかりっすよね?」

愛依「え〜? なんでだろ……うち、弟とか妹がいるから……年も近いし?」

あさひ「よくわかんないっすけど、まあわたしは順番とか気にしないっすよ」



甘奈「甜花ちゃん、無理はしなくていいからね! 危ないかもしれないし……甘奈だけで下は見てくるよ?」

甜花「ううん……なーちゃんだけに、危険な真似はさせられない……甜花は、お姉ちゃん……だから……!」

甘奈「甜花ちゃん……うん、いっしょに頑張ろう! 頑張って脱出してみせようね☆」

甜花「う、うん……ファイト……!」


樹里「アンタ、着物だと降りづらいよな……大丈夫か?」

凛世「はい……足を踏み外さぬよう……注意いたします……」

樹里「や、無理してついてこなくてもいいって意味なんだけど……」

凛世「上で一人で待つ方が、凛世は怖いのです……」

樹里「……そか」



カツンカツンという音を鳴らしながらマンホールを下っていった。ルカさんに続く形で結局全員、降りてきているみたいだ。
足を踏み外さないように、自分より前の人の手を踏んでしまわないように。
慎重に慎重に下ったので時間はかかったが、そう深いところではなかったように思う。
最終的に行き着いたのは、思っていたよりも広い空間だった。
139 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:39:14.63 ID:4+ogcrc90
------------------------------------------------
【裏庭 マンホール下 地下空間】

にちか「つ、着いた……」

真乃「マンホールの下に……こんな場所が……」

甜花「ひぃ……ひぃ……甜花、降りるだけで結構、疲れちゃった……」

霧子「慣れない運動をすると筋肉が張っちゃうから……揉んでマッサージ……してあげるね……」

昔社会科の授業で見たことがある。東京の地下に設けられた水害に備えて設けられたコンクリートの空洞の空間。
それによく似た部屋だ。体育館をゆうに凌ぐ広さと高さを備えた空間には、大樹のようなコンクリートの柱が連立している。
そしてその部屋にはチョロチョロと小川のように下水道が流れており、部屋に横付けになった穴へと向かっている。

ルカ「ビンゴ……あの穴から出ていけそうだな」

円香「……あそこ通るんですか? なんというか、悪臭がしそうなんですが」

夏葉「しかし外に通じている可能性が一番高いのは事実よ。避けては通れないわ」

円香「……はぁ」

あさひ「あはは、なんか探検みたいでワクワクしてきたっす!」

灯織「……大丈夫なのかな、何か仕掛けられたりとかしてないといいけど」

めぐる「大丈夫だよ! もし何かあったとしても、みんなで助け合えば乗り越えられるはず!」

恋鐘「うんうん、うちらの友情パワーで完全攻略しちゃろ〜!」

霧子「お、おー……!」

日常から真っ暗闇に突き落とされていた私たちの前に突然現れた、小さな希望の兆し。
私たちはそれに怯えながらも、どこか湧き立つ気持ちを抱きながら突き進むことになる。

脱出して、これまでを取り戻す。
今までと何一つ変わらない生活を送る。
淡い希望にのぼせながら、一歩一歩と突き進んだ。
140 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:40:12.86 ID:4+ogcrc90





その先には、より真っ黒な壁しか待っていないと知らずに。





141 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:42:17.80 ID:4+ogcrc90

____結果として、あれは罠だったんだと思う。
誰かがマンホールを発見して、私たちがそれに飛びつくことも織り込み済みの罠。

下水道を突き進む道中、落とし穴やせり出す壁、警備のドローンによるエアガンの掃射……
身体に外傷を負うようなことはしてこなかったものの、思うように進めないという感覚は少しずつ、また少しずつと私たちの精神を蝕んでいった。

失敗を繰り返すたびに、理性は正常を取り戻していく。
これだけ苦労して進んだところで、本当に脱出ができるのかの確証もないという気づかないようにしていた当たり前の事実にも気づき出す。
そうなれば、動いていたはずの手と足が止まるのも当然のことだった。

ルカ「……チクショウッ! またダメだった……! あとちょっと……あとちょっとなのに……」

ルカ「おい! 次行くぞ、次! 今度こそ……超えられるはずだ!」


凛世「……」

甜花「……」

ルカ「お、おい……どうしたんだよ、急に」

142 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:43:39.53 ID:4+ogcrc90

真乃「……ご、ごめんなさい。体が……もう限界で……」

霧子「少し、休んだ方がいいみたい……」

ルカ「な、何言ってんだ……あとちょっとのところまで来てるんだよ、これを逃したら機はもうないかもしれない……!」

灯織「斑鳩さん、お一人で挑戦してみては」

ルカ「……テメェ」

あさひ「他のみんなはもう限界っすよ。ルカさんはこれ以上みんなを振り回して、みんなの体を壊したいっすか?」

ルカ「はぁ? ち、違ェ……!」

夏葉「ルカ……一度冷静になりましょう。あなた、少し入れ込みすぎよ。今は個人でやっているわけじゃなくて、16人のチームで挑戦している」

樹里「……他のみんなの気持ちが折れちまってる、今のままじゃクリアできるもんもクリアできない」

にちか「ルカさん……」

ルカ「……で、でも」

???「やあやあ! みんなして楽しんでくれてるようで何より!」

にちか「こ、この声は……!?」

嫌な予感がした。下水道に仕掛けられている罠は、時々パターンを変えているような場面があった。
それはつまり、私たちの行動は全て筒抜け。
脱出を目指してここに挑んでいることさえも、その全てが黒幕の掌の上である。
それを証明せんとばかりに、私たちの背後に彼らは仁王立ちしていた。

ルカ「モ、モノクマ……!」
143 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:46:14.64 ID:4+ogcrc90

モノクマ「いやぁ、しかし2日目でこの絶望のデスロードの存在に気づくとは……優秀優秀!」

モノクマ「オマエラを信じた甲斐があったってもんだよ! これでみんなも喜んでくれるよね!」

あさひ「……?」


【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】


モノタロウ「キサマラお疲れさまー! 大丈夫? 腕とか脚とか腹とか胸とか背中とかパンパンになってない?」

モノスケ「やっぱ難易度が高すぎたんとちゃうか? 全然クリアできそうな気配がないで」

モノファニー「そうね、ずっと砂漠の緑化運動を眺めている気分だったわ」

モノスケ「植えたそばからラクダがむしゃ食いってことやな!」

モノキッド「努力が全部報われるばかりが人生じゃないッ! ミーはそれを知っているから努力をしないッ!」

円香「全てあなた方の想定のうち、だったということですか」

モノタロウ「ごめんね。そうなんだ。この脱出ルートはキサマラに僅かな希望を与えて、それをへし折るっていうお父ちゃんの斬新なアイデアで作られたモノなんだ」

モノクマ「うぷぷぷ……楽しんでもらえたかな? 」

愛依「ひどいじゃん!? どんだけ頑張っても出れないなんて……!?」

モノクマ「いや、それは誤解だよ。確かにゴールは明確に存在しているし、そこから脱出はできる。まあ、そこに辿り着くなんて、天文学的な確率を潜り抜けなきゃダメだろうけどね!」
144 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:46:59.18 ID:4+ogcrc90

油絵の具が壁に乱雑にぶっかけられた時のようだ。
でろりと大粒の雫が垂れ下がっていき、最終的に壁には一本の線が引かれてしまう。
それがあちこちから、どんどんと。

リーダーシップを発揮して、ここまで連れてきた人間に向けたはずの信頼。
築きかけていた絆。そういうものを改めて丁寧に分断するように、上塗りされた絶望が、線を引いていく。

モノクマ「それでも挑戦するってんなら止めはしないけどね! 他のやりたくない人も強引に引き連れてどうぞ!」

モノキッド「いのちぞんざいに! ガンガンいこうぜ!」

陰湿なやり口だ。
私たちの前に餌をぶらさげては、それをすんでのところで奪い去る。
残された私たちの虚無感と虚脱感は他の全ての一切を飲み込んでしまう。

モノクマ「まっ! それじゃせいぜい脱力感を噛み締めて! アデュオス!」


【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】


真っ白になった私たちを見て満足したのか、モノクマはそのまま姿を消した。
苛立っていたルカさんだけが、汚い言葉をその去り際にぶつけていたが、うまく聞き取れなかった。

145 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:49:15.36 ID:4+ogcrc90

樹里「……そんなイライラしても仕方ねえよ、とりあえずのところは戻ろうぜ」

ルカ「……ああ、クソッ」

むしゃくしゃで肩を振るわせるルカさんを他の人たちは遠巻きに、なんだか冷めた視線を向けていた。
ついさっきまで一つになってゴールを目指していた集団とは思えないほどに、その温度には開きがある。



あさひ「ルカさん、気持ちはわかるっすけど個人の判断で何回も他の人を危険に晒すのはやめてほしいっす」



にちか「ちょ、そんな言い方……!」

そして、その重篤な温度差はルカさんの肌に亀裂を走らせる。

あさひ「一回挑んでダメだって分かっても……そこから無策に何度も突っ込んで……体力ない人だっているのに」

あさひ「わたしだってもうクタクタっすよ〜、今日は帰ってもう寝たいっす」

芹沢さんの無邪気さは、他の人たちが理性で押さえていた不満の堰を切ってしまう。
遠慮で口にするのを控えていた言葉が、徐々にところどころで漏れていく。
146 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:50:35.07 ID:4+ogcrc90

灯織「もっと……他の方法を探す時間に当てたほうがよかったのかな」

樹里「……おい、大丈夫か?」

凛世「鼻緒で少し……指の間を痛めてしまったようです……」

甜花「もう、甜花……体ボロボロ……帰るのも、しんどい……」

甘奈「甜花ちゃん……服も汚れちゃってるね……上に出たら洗濯してあげるね」

誰もルカさんのことを悪く言っているわけではない。みんな横並びで、責任も等分されて然りの筈だ。
それなのに、ただ殿を務めたというだけで、他のみんなのことを思って動いてしまったがために、ルカさんは針の筵の感覚を味わってしまった。

ルカ「……ッ!」

ダッ

にちか「あ、ル、ルカさん……!」

ルカさんは逃げるように一人でまた横穴に駆けていってしまった。
私たちの視線から逃れるように、自分の罪と向き合おうとするように、こちらには一瞥もくれなかった。
147 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:51:50.03 ID:4+ogcrc90

夏葉「……ルカも、次でダメだったら諦めて上がってくるでしょう。私たちはひと足先に撤退しましょう」

真乃「は、はい……」

恋鐘「みんなが疲れが溜まっとるばい、梯子登るのも大変やけん休み休み戻らんね」

ルカさんを残し、他の人たちはどんどんマンホールを登っていく。
その足取りには露骨に落胆の色が見え、会話が交わされる様子もない。あるのはせいぜいため息程度。

愛依「あり? にちかちゃんはまだ残るカンジ?」

にちか「あ……はい、ルカさんが戻ってからにしようかなって」

愛依「……そっか、だったらうちも____」

あさひ「愛依ちゃん、早く来るっすよー!」

愛依「あー……」

にちか「大丈夫です、先行っちゃってください! 私とルカさんの二人で戻るので!」

愛依「……うん、ごめんね。それじゃあルカちゃんにこれだけ伝えといて」

愛依「誰もルカちゃんが悪いとか思ってないから、気にしないで」

にちか「はい、もちろんです」
148 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:53:01.80 ID:4+ogcrc90

それから私は一人でルカさんが戻ってくるのを待ち続けた。
最後の愛依さんが梯子を登る音もしなくなってから、十数分と経った頃だろうか。
ようやっと横穴の方から靴でコンクリートを叩く音が聞こえてきた。
リズムが不揃いな音はフラフラとした足取りを想起させる。
そして実際姿を現したルカさんは、先ほど以上に疲弊し切った様子で、格好もボロボロ。
肌が露出している部分にはどこかで擦れたのか血が滲んでいる箇所もあった。

にちか「……ルカさん、無茶しすぎですよ。あれだけの人数いてクリアできなかったのに、一人で挑んだりして……」

ルカ「……ハァ……ハァ」

言葉も返せないほどに息が上がっているのか、息で返事をした。
手の甲で口元を拭ってから、キョロキョロと見回して、安堵した表情で座り込む。

ルカ「他の連中は……帰ったか」

にちか「です……みんな、諦めて」

ルカ「ん。それが賢明だよ」

達観したような表情には自嘲も覗かせた。
多分、最後の挑戦は半ばヤケクソだったんだろう。
失敗に悔しがる様子もない。
149 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:54:37.31 ID:4+ogcrc90

にちか「……ルカさん、どうしてそんなにもみんなを引っ張ろうとしてくれるんですか?」

ルカ「……あ? なんだよ、急に」

にちか「出会った時からそうじゃないですか、ルカさんは私たちの矢面に立ってモノクマと話したり、危険がありそうなところには真っ先に飛び込んだり」

にちか「私たちって昨日会ったばかりの初対面なんですよ? そんなルカさんが体張るような必要全然……」


ルカ「勘違いすんな」


にちか「え……」

ルカ「私は、私のためにやってるだけ。私はここにいる誰よりも元いた場所に帰りたいから、その一心で動いてるだけなんだよ」

にちか「それって……前に言ってた【相方さん】のことです?」

ルカ「……ああ、アイドルになること以外何も眼中にないって感じのやつでよ。三度の飯を食ってる暇があるならレッスンしたいって言い出すレベル」

にちか「す、すごい人ですね……」

ルカ「……【あいつ】の隣に立てるのは私しかいない。私じゃなきゃ、いけないんだ」

ルカ「今こうしてる間にもあいつに取り残されちまうかもしれない……そう思うと、一分一秒が惜しくてたまらなくなる」

ルカ「帰るために足掻けるなら、私は無限に足掻くよ」
150 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:55:24.42 ID:4+ogcrc90

危ういと思った。
相方さんへの執着を語るルカさんの瞳は目を背けたくなるほどにギラついていて、その想いには代償を伴うと思ったから。
他の何かを捨て去ってでも縋りたい。退廃的という言葉さえ当てはまってしまうような、そんな激しく燃え盛るような情動を感じてしまったから。

にちか「……っ!」

私は一瞬、言葉を失ってしまった。
ルカさんに気圧されてしまったから、それもあるけれどそれ以上に、この人についていけるほどに私は【強くない】と自覚してしまったから。
私という一人の人間の物語はこういうものだと定義して、諦めてしまっていた。
そんな型に押し込んだ日常に飼い慣らされている私が向き合うには、斑鳩ルカという人間はあまりにも大きすぎる。

ルカ「……つっても、当然コロシアイに乗じるつもりはないよ」

ルカ「ちょっと私も意固地になってたみたいだ……付き合わせて悪かったな、にちか」

そんな私のことに気づいてか、それとも熱くなりすぎた自分のことに気づいてか、ルカさんは少し小っ恥ずかしそうに弁解するのだった。

にちか「い、いえ……大丈夫です」

ルカ「……腹減ったな、上で飯でも食うか」

にちか「……はい」
151 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:57:15.90 ID:4+ogcrc90
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【食堂】

地上に戻ってからルカさんと二人で食堂に向かった。
随分と長い間地下にいたらしく、すでに日は半ば沈みかけていた。
といっても、ここでの生活に朝も夜もあったものでは無いような気もするけれど。

霧子「あ……斑鳩さんに、にちかちゃん……」

恋鐘「二人とも、大丈夫ばい?! あんまり遅いけん心配しとったとよ〜!」

ルカ「え? あ、おう……悪かった、大丈夫だよ……」

恋鐘「二人の分もご飯用意するけん、ちょっと待っとって! それまで霧子に診てもらうとよか!」

にちか「え? 診てもらうって……」

霧子「病院で少しお手伝いをさせてもらってるから……今日の脱出の挑戦で怪我してないかだけ、ちょっと診させてもらうね……」

他のみんなもそうしてもらったのだろうか、食堂の机の上には救急箱が置かれ、慣れた手つきで幽谷さんは私たちの体を診ていった。
特に怪我に覚えはなかったので、大した処置もされなかったけど、ルカさんは相当に痛めつけていたらしい。
幽谷さんに包帯をぐるぐる巻きにされていた。
骨折とかではないって笑ってたけど、その笑顔もなんだか痛々しかったな。

152 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:58:19.40 ID:4+ogcrc90
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノファニー『なんだか今日は疲れちゃったわ……手足がダル重……』

モノスケ『骨折り損のくたびれもうけってやつやな! ええこと一個もなしや』

モノスケ『あっ、でも骨を折ったら労災は下りるんとちゃうか? 金が湧いてくるんとちゃうか?』

モノスケ『おっしゃ、そうと決まったらガンガン骨を折るんや! ボッキボッキ、ガッポガッポでウッハウハや!』

プツン

結局のところ、今日はほとんど進展も何もなし。
体に疲労を溜め込んだばかりで、慣れない動きをしたことで筋肉痛も始まりつつある。
シャワーを浴びたら、そのままベッドに引き摺り込まれてしまった。

不思議なことに、体はクタクタでも目は冴えていた。
寝付くまでに何度も体勢を変えた。
右に左に体を向けたし、暗闇に目が慣れてきて家具の配置が透けて見えてきてしまった。

それは多分きっと、ルカさんの中にみた焔が原因なんだと思う。
あのルカさんにそれほどまでの強い執着を抱かせる相方さん……一体どんな人なんだろう。
想像したところでわかるはずもない。
私には程遠い全くの別世界のお話なんだから。
そう自分に何度も諦めるように促す言葉を投げかけ続けた。

……一体私が、何を諦めるというのだろう。
自分自身に投げかけた言葉の所在が分からなくて、息が詰まった。


153 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 21:59:06.31 ID:4+ogcrc90
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【School Life Day3】
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノタロウ『うぅ……モノスケ……痛々しくて見ていられないよ……』

モノキッド『モノスケのやつ……無茶しやがって……』

モノタロウ『ヤム……モノスケェーーーー!!』

モノファニー『だから言ったのよ……あんな化石みたいになっちゃって惨めでグロいわ……』

モノダム『……』

プツン

三日目の朝。昨日の下水道での挑戦が尾を引いているらしく、手足が普段よりも数倍重たく感じた。
まだまだ若々しい肉体だとは思っているし、多分これは睡眠の質の問題。
緊張の解けない状況に置かれて、慣れない寝台の上。
熟睡なんてできるはずもなく、疲労を満足に回復させるような睡眠はとれちゃいなかった。

「……とりあえず、食堂行かなきゃだよね」

154 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 22:00:33.25 ID:4+ogcrc90
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【食堂】

重たい鉄の棒みたいになっている足を引きずって食堂へ。
つい昨日取り決めたばかりの約束ということもあり、さすがに出席率は高く、風野さんや芹沢さんの姿もあった。

にちか「……肝心の有栖川さんがいないですけど」

樹里「あー……なんか、本当は朝に弱いとかなんとか言ってたな……」

円香「……あの方が毎朝集まろうと言い出したのでは?」

樹里「だよな……本人が寝坊してちゃ意味ねーっつーの……」

凛世「凛世が、起こして参ります……」

樹里「あ、アタシも行くよ!」

西城さんは何かと杜野さんを気にかけているみたい。
杜野さんが一人で出て行こうとするのを呼び止めて、続いて出て行った。

ルカ「にちか、こっち来いよ!」

にちか「あっ、はい!」

二人を横目に見送りながら、私はルカさんの隣の席についた。
ルカさんは昨日幽谷さんに巻いてもらった包帯を右手にしたまま。
食事に支障はないのかと聞くと、ただの打ち身だと笑った。
155 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 22:01:57.53 ID:4+ogcrc90

にちか「ルカさん、今日も昨日の下水道に行くんです?」

ルカ「いや……流石にな。他の連中も行くつもりはないんだろうし……わざわざ一人で行ったりはしねーよ」

にちか「よかった……ちょっと安心しましたよ」

ルカ「ハッ……そんなに向こう水な奴だって思われてたのか? 私は」

にちか「まあ……それなりに」

ルカ「とりあえずのところは今日は探索だな。まだ学校の全部も見てはないし、何かのヒントになるものがあるかもしれない」

にちか「ですね! まだ未開拓のところとかあるかもです!」

ルカ「オマエも私に無理に合わせなくて、好きなように行動していいからな。慕ってくれてんのは嬉しいけどよ」

にちか「あはは、ご忠告痛み入りますー」

暫くして、西城さんたちが寝ぼけ眼の有栖川さんを連れてきたことで朝食会がようやく始まった。
全員その顔には疲労の色が見える。やっぱり昨日の下水道でのことで、みんな無理をしていた部分はあるんだろう。
それを悟ってか、ルカさんはなんだか少し静かだ。
156 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 22:03:21.95 ID:4+ogcrc90

恋鐘「今日はどげんせんね? また昨日みたいに下水道ば挑戦すると?」

甜花「あ、あう……甜花、ちょっとパス……筋肉痛で、腕が動かない……」

めぐる「うーん、別の方法を考えてみるのもいいかも! ほら、他にも脱出できる場所はあるかもしれないし!」

円香「……というか、外の助けを待つんじゃダメなんですか? いい加減警察とかも動き出しそうな気がしますけど」

真乃「もうこれで丸三日……になるんだよね」

甘奈「そうだよ! パパとかママとか……学校だって、きっと心配してるって!」


【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】


モノスケ「ここでキサマラに残念なお知らせや」

モノキッド「警察自衛隊その他もろもろの救世主はここにはやって来ないんだぜッ!」

モノファニー「残念だけどそれが運命なのよ……受け入れるしかないのよ……」

樹里「出やがったなモノクマーズ……!」
157 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 22:05:41.36 ID:4+ogcrc90

甜花「あ、あれ……? 黄色いモノクマーズって骨折してたんじゃ……」

モノスケ「おう、心配してくれておおきに!」

モノスケ「でもよう考えたらワイらはぬいぐるみだもんで骨なんかなかったわ! そもそも折る骨がなかったっちゅーこったな!」

モノファニー「つまり純粋なくたびれもうけだったってことね!」

円香「……そんなのどうでもいいから」

透「来ないの? けーさつ」

モノタロウ「うん! 才囚学園に警察が来ることは100%あり得ないよ! オイラウソつかないもん!」

灯織「……随分と強く言い切るんですね」

モノスケ「そらそうや、ゼロに何をかけようがゼロのまま。どう足掻いても外からの助けなんて来る可能性はないんやで」

夏葉「……私たちが今拉致監禁されている才囚学園。その場所には確かに誰も心当たりはないわ」

夏葉「でも、だからといって可能性がゼロとは断言できないでしょう……? それにこれだけ大きな施設設備……そう簡単に隠匿できるものとも思えないのだけれど」

モノタロウ「ううん! 絶対に来ないよ! ごめんね!」

ルカ「頑なだな……」
158 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 22:06:52.47 ID:4+ogcrc90

モノスケ「余計な希望は持つなっちゅーことや。そないなことして傷つくのはキサマラの方なんや、ワイはむしろ菩薩のような心で諭してやっとるんやで」

あさひ「でも、確かにガラス越しにも空を飛行機が飛んだりしてるのは見たことないっす」

霧子「私たちの住んでいる国の中じゃない……とかなのかな……」

透「そもそもの前提が違うとか。うちらの知ってる世界じゃなくて、別の世界」

透「イセカイテンセーって奴」

円香「いや、ないでしょ」

モノタロウ「まあとにかくそういうことだから! 余計な希望は持たないほうがいいよ! オイラ嘘だけはつかないからね!」


【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】


にちか「まーた言いたいことだけ吐いていきましたね……」

外からの助けは来ない。犯人側としては確かにそれを主張するだろうけど、随分な念の押しようだ。
一体何の確証があってあそこまで強く言えるというのだろう。

甘奈「甘奈たちがいなくなってること、みんな気づいてるよね……?」

樹里「あいつらの言うことなんか信用する必要ねーよ、この人数が一気に消えてるんだぞ。流石に全国的に話題になってんだろ」

めぐる「うん、大丈夫だよ! 大丈夫! 今は外の世界の人たちのことを信じよう!」

甜花「なーちゃん、大丈夫……! 甜花はそばにいるから……!」

甘奈「うん……ありがとう、ごめんね」

ルカ「とにかく、今はやれることをやるだけだ。外のことは分からないし、今はこの学園の謎を少しでも解き明かさないと」

灯織「そうですね……まだ材料が足りません。この学校のことも、私たちのことも」

夏葉「改めて探索ね、昨日の疲れもあるでしょうからそれぞれ無理をしないように」

モノクマーズたちの意味深な言葉が気にかかりつつも、前向きな締めくくりで朝食会は幕を下ろした。
私たちに立ち止まっている時間はない。

前に進むしかない……それ以外のことを考えている余裕も、ないんだ。

159 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/04(日) 22:08:27.72 ID:4+ogcrc90
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【にちかの部屋】

とりあえずは自分の部屋に戻ってきたけど……どうしようかな。
学校の探索をしなきゃだけど、一人だと見落としとかあるかもしれないし……
他の誰かを手伝うほうが良さそうかな。
まだ他の人たちとも知り合って間もないし、お互いのことを知るいい機会かも。

______よし、そうしよう。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
またまたお久しぶりです。
今回も自由行動パートのお時間がやってまいりました。
今まで同様、ご学友の皆様と交流を深めることで、学級裁判を有利に進めるためのスキルや、またそのスキルを購入するための希望のカケラを入手することができます。
親愛度の最高値は「12」となっており、最高に到達した際にスキルが獲得できます。
なお、最高値に到達してからも交流を続けることでその先に進めることも可能で……?
ぜひお試しください。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

1.交流する【交流相手の名前指定】
2.購買に行く
3.休む(自由行動をスキップ)

【現在のモノクマメダル枚数…57枚】
【現在の希望のカケラ…15個】

↓1
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/05(月) 17:54:22.87 ID:YAS3G9G10
2
161 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/05(月) 21:04:43.29 ID:DFVRTUYq0
2 選択
【購買】

一応この学校にも購買らしき部屋はあるみたいなんだけど、まさかリアルマネーを使う訳じゃないよね?
お財布も携帯も手元にない。現金はおろか電子マネーすら使えない無一文の状態の私たちに、何も使い物にならない施設を用意するとも思えないし……

チャリン

やっぱり、学校の探索中に見つけた【これ】を使うんだろうな。

購買の中にはやたらと目を引く【ガチャガチャマシーン】と、【自動販売機】の二つがあるみたい。
えーっと、なになに……?

□■□■□■□■□■□■□■□■
☆購買についてはこれまで通り、【ガチャガチャマシーン】と【自動販売機】の二つの設備を使用することが可能です。
【ガチャガチャマシーン】はモノクマメダルの消費枚数を指定すると、その数ぶんコンマの判定を行い、コンマの値と同じ番号に割り振られたプレゼントが手に入る仕組みです。本家V3のプレゼント番号01~100が排出されます。(101以降のものは省略)
【自動販売機】では学級裁判で役立つアイテムとスキルを購入することができます。アイテムの購入にはモノクマメダル、スキルの購入には希望のカケラがそれぞれ必要となります。
なお、自動販売機については後のに登場する予定のシステムの都合上商品を前シリーズより縮小しています。予めご了承ください。
□■□■□■□■□■□■□■□■
------------------------------------------------
【自動販売機】
≪消耗品≫
【ヒーリングタルト】…5枚
〔誰の口にも合いやすいマイルドな口当たりの優しい甘さ。裁判中に使用すると発言力を2回復できる〕

【ヒーリングフルーツタルト】…10枚
〔フルーツをトッピングして満足感アップ。裁判中に使用すると発言力を4回復できる〕

【プロデュース手帳】…15枚
〔これは彼と彼女たちが過ごしてきた美しき日々の証。誰よりも理解者たる彼は、いつだってそばで戦ってくれる。裁判中に使用するとノンストップ議論・偽証ミスディレクション・反論ショーダウンを無条件クリアする〕

≪希望のカケラで獲得できるスキル≫
【ノー・ライフ】希望のカケラ…15個
〔発言力の最大値が+2される〕

【私をときめかせて】希望のカケラ…20個
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕

【チョコ for Y♡U】希望のカケラ…15個
〔体力回復を行った際効果が増幅する(自動回復は除く)。〕

【UNCHARTE:D】希望のカケラ…15個
〔発掘イマジネーションの文字がある程度埋まった状態で始まるようになる〕

【浪漫キャメラ0号】希望のカケラ…20個
〔発言力の最大値が+3される〕

------------------------------------------------

【現在のモノクマメダル枚数…57枚】
【現在の希望のカケラ…15個】

1.ガチャガチャマシーンを回す(枚数指定安価)
2.自動販売機を使う(購入する物品・スキル指定)
3.やっぱやめる
(1、2は同時指定可)

↓1
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/06(火) 05:48:02.69 ID:wZ9Rwlv40
1でガチャ17枚

自由行動増えるのはアドだけどまだ枚数足りてないから希望のカケラ集まったら【私をときめかせて】交換したいな……
163 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 19:55:39.97 ID:poeVK48I0
1 選択

【モノクマメダルを17枚使ってガチャガチャマシーンを回します】

【直下より17回連続でコンマを参照してその数値に応じたアイテムを獲得します】

↓1〜17
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/06(火) 20:00:04.21 ID:0VjRhXAf0
やあっ
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/06/06(火) 20:10:59.46 ID:yb+IUdfp0
【空気中のスパイクタンパク汚染に気をつけましょう】

スギ花粉や様々な化学物質に対して過敏な方がおられるように
スパイクタンパクに対し過敏な方がおられます

特に二価ワクチンを接種された方に遺残した
オミクロン対応の
mRNAから生成されるスパイクタンパクは
従来の武漢対応のものと比べ
60〜70倍人体に結合しやすくなっており
シェディング被害は甚大なものになっています

また一部の方に感じる臭いに関しても
酸化したPUFAの代謝産物であるアルデヒドの可能性も否定できません

科学的証明は難しい案件ですが
徹底したシェディングング対策や
イベルメクチンやグルC点滴などで
改善することから
臨床的に起こっている事案は
化学物質過敏症やスパイクタンパクそのものでしか説明できないものばかりです

スパイクタンパクが体内に侵入すると
自覚症状が無くても
徐々に毛細血管レベルでは
血栓を形成する恐れがあり
酸素や栄養素が
細胞全体に十分行き渡らなくなる可能性があります
これは老化の促進を意味し
新たな病気が発生する素因にもなります

既接種者で
コロナ後遺症やワクチン後遺症になった方は
非接種者に比べ
シェディング被害を被りやすくなっています
そのため治療が難渋している可能性もあることに留意してください
166 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:13:55.17 ID:poeVK48I0
セルフでコンマ判定進めますね

加速
167 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:14:43.20 ID:poeVK48I0
ksk
168 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:15:37.50 ID:poeVK48I0
ksk
169 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:16:17.35 ID:poeVK48I0
ksk
170 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:17:33.73 ID:poeVK48I0
ksk
171 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:18:40.02 ID:poeVK48I0
ksk
172 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:20:20.21 ID:poeVK48I0
ksk
173 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:20:47.60 ID:poeVK48I0
ksk
174 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:22:36.88 ID:poeVK48I0
ksk
175 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:23:31.95 ID:poeVK48I0
ksk
176 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:23:59.03 ID:poeVK48I0
ksk
177 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:24:36.92 ID:poeVK48I0
ksk
178 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:25:19.19 ID:poeVK48I0
ksk
179 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:26:03.93 ID:poeVK48I0
ksk
180 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:26:45.94 ID:poeVK48I0
ksk
181 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:27:35.00 ID:poeVK48I0
らすと
182 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 21:35:42.03 ID:poeVK48I0

【モノクマメダルを17枚消費しました】

【タピオカジュース】
【しょうが湯】
【誰かの顔の餃子】
【クリスタルバングル】
【ストライプのネクタイ】
【がんじがらめブーツ】
【クロの章】
【レイヤーキャリーバッグ】
【絵本作家ですのよ】
【三度サンドバッグ】
【猿の手】
【死亡フラッグ】
【生存フラッグ】
【お助けヤッチー君】
【ホームプラネット】
【占い用フラワー】

【以上のアイテムを手に入れました!】
【現在のモノクマメダル枚数…40枚】

「うわぁ〜……なにこれ、こんなのどう使えっての?」

ガチャマシーンから排出されたのはどれもみるからにガラクタだらけ。
使い道もまるで分らないけど……こんなものを喜んでくれる人はいるのかな……?


1.交流する【交流相手の名前指定】
2.購買に行く(済)
3.休む(自由行動をスキップ)

【現在のモノクマメダル枚数…40枚】
【現在の希望のカケラ…15個】

↓1
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/06(火) 22:18:52.65 ID:wZ9Rwlv40
1.愛依
184 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/06(火) 22:33:33.58 ID:poeVK48I0
1 愛依 選択

【超研究生級の音楽通の才能研究教室】

昨日の今日で体には疲れがたまっている。
今日の所はルカさんも下水道に無謀な挑戦はしないようだし、私も好きな音楽でも聞いて気を休めようかな……

ガラララ…

愛依「あ、あり? にちかちゃん? ア、アハハ……お邪魔してます」

にちか「愛依さん……どうしてここに?」

愛依「いや……なんか才能研究教室ってのどんなもんなんかな〜と思って! ご、ごめんね! にちかちゃんのショーダクも得ないで勝手に入って」

にちか「いやいや! 別に私の研究教室だからってそんな遠慮とか要らないんで! そ、それより……何か聞いていかれます? せっかくなんで、私のオススメとか……言っちゃってもいいですか?」

愛依「……! マジで?! 聞きたい、聞く聞く! てか、聞かせて!」

にちか「はい〜! 任せてください!」

愛依さんは他の人とも隔たりをまるで感じさせない人で、話しやすいな。
愛依さんと二人でレコードを聴いて過ごした……

-------------------------------------------------
プレゼントを渡しますか?

現在の所持品
【タピオカジュース】
【しょうが湯】
【誰かの顔の餃子】
【クリスタルバングル】
【ストライプのネクタイ】
【がんじがらめブーツ】
【クロの章】
【レイヤーキャリーバッグ】
【絵本作家ですのよ】
【三度サンドバッグ】
【猿の手】
【死亡フラッグ】
【生存フラッグ】
【お助けヤッチー君】
【ホームプラネット】
【占い用フラワー】

↓1
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/06(火) 23:35:31.47 ID:wZ9Rwlv40
しょうが湯
186 :進行速度的に、過去スレでやっていたような自由行動のセリフ指定安価は今回カットしようと思います ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 20:58:47.89 ID:zsw/61tI0
【しょうが湯を渡した……】

愛依「あ、これカラダ温まる奴じゃん! うわ、なんかなつかし〜! うちもビョーキした時によくばあちゃんが作ってくれたんだよね」

にちか「あはは、どこの家庭でもおなじみなんですね」

愛依「にちかちゃんちも看病してもらってた系?」

にちか「はい……うちの場合は姉ですけど」

愛依「そっかー、にちかちゃんにもお姉ちゃんがいるんだもんね。にちかちゃんによく似て綺麗なお姉さんなんだろうな〜」

にちか「そ、そんなことないですよ……地蔵みたいなもんです!」

愛依「も〜! そんな照れなくてもいいって!」

(まあ、普通に喜んでくれたかな)

【NORMAL COMMNICATION】

-------------------------------------------------

愛依さんと言えば、すこし話したかったことがある。
昨日の下水道からの脱出の挑戦、最後の最後まで私とルカさんのことを気にかけてくれたのは愛依さんだ。
そのことが、戻ってからもなおずっと気になっていた。

にちか「あの、愛依さん昨日は優しい言葉をありがとうございました」

愛依「え? 昨日? ……あー、もしかして、下水道の時の!? いや、別になんも変わったことはうちしてないし、てかトーゼンっしょ!」

にちか「正直昨日の失敗は結構険悪なムードになっちゃって、ルカさんもかなり追い詰められて……私も不安に当てられちゃってたんです。そんな中、愛依さんが気にかけてくれたのが嬉しくて」

愛依「アハハ……うち、ただ自分の気持ちを口にしただけだからさ……」

愛依さんは私の言葉に照れくさそうにえくぼの辺りを掻いた。
きっと本当に彼女の言う通り、あれは何か目的があって口にした言葉というよりも、勝手に口から飛び出したものだったんだろう。

愛依「やっぱ心配じゃん? ルカちゃんもセキニン感じちゃってたみたいだからさ……あんなの、全然誰も悪くないじゃんね?」

出会ってまだ数日と経ってもいないけど、愛依さんのこれまでの接し方を見ていると、その人となりは何となく掴めてきた。
愛依さんは心の底から誰かを思い、そして誰かと距離を詰めることに一切の抵抗がない人だ。

にちか「です……でも、やっぱりルカさんは自分が主導したと思ってたみたいで、ちょっと凹んだみたいですよ」

愛依「あらら……ルカちゃんマジすげーわ、こんな状況でもうちらのこと考えてくれてんだもんね。すごく強い姿ばっかり見せようとしてくれて……心の負担もエグイだろしなんかモーシ訳なくなってくる……」

にちか「それは愛依さんもですよ。こんな不安な状況なのに、私たちの事……特に芹沢さんのことをすごく気にかけてくれてるじゃないですか。愛依さんこそ、負担になってたりしないですか?」

愛依「ううん、それは全然! うち、年下の子の面倒見るのとかケッコー好きな感じでさ。今もコロシアイ?抜きにしたら結構楽しい状況なんだよ?」

愛依「ほら、あさひちゃんもにちかちゃんも……みんな可愛いじゃん?」

にちか「か、かわいい……ありがとうございます」

愛依「なんつーんかな、フセー?感じる的な感じ!」

にちか「多分逆だと思います……」

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【現在の愛依の親愛度レベル…1.5】

187 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:01:31.00 ID:zsw/61tI0
【にちかの部屋】

愛依さんと別れて、自分の部屋へと戻ってきた。
ちょっと昨日ことで愛依さんにはお礼を言おうと思っていただけなのに、随分と話し込んじゃったな。
愛依さんにはなんにでも話したくなるというか、何を話しても受け止めてくれる信頼があるというか……

とにかく、あの明るさに宛てられていると時間があっという間だ。

さて、まだ今日は時間があるみたいだし、他の人とお話してみようかな?

【自由行動開始】

1.交流する【交流相手の名前指定】
2.購買に行く(済)
3.休む(自由行動をスキップ)

【現在のモノクマメダル枚数…40枚】
【現在の希望のカケラ…15個】

↓1
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/07(水) 21:04:15.38 ID:IjXSQSHk0
1 千雪
189 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:06:38.89 ID:zsw/61tI0
すみません、今回のシリーズの登場キャラに千雪はいないので再安価にさせてください

人物指定再安価

↓1
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/07(水) 21:09:35.97 ID:Rw4nBgGP0
1.ルカ
191 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:16:00.16 ID:zsw/61tI0
1 ルカ選択

【倉庫】

ちょっと小腹が空いたし、お菓子でも調達しようかと思ってふらっと立ち寄った倉庫。
そこで私は、思わぬ人と出くわすこととなる。

ルカ「……! に、にちか……!」

にちか「ルカさん……? どうしたんですか? 今日はもう昨日のこともあるし部屋で休まれてるものかと思ってたんですけど」

ルカ「い、いや? なんでもねーよ?」

にちか「……? いま、ルカさん何か後ろに隠しました?」

ルカ「いや? そんなわけねーだろ! ほら、さっさと帰んな!」

にちか「じとー……怪しい……」

ルカ「ちょっ! 寄んなって……!」

_____
____
___

にちか「別に隠す必要なかったですよ? ルカさんが私より年上なのは分かってることですし」

ルカ「いや……でも、流石に未成年連中が山ほどいる中堂々と酒飲むわけにもいかねーだろ……」

にちか「そんな遠慮なんて要らないですって。うちでもお姉ちゃん私の事とかお構いなしに晩酌してますよ?」

ルカ「……まあ、今はとりあえずいいよ。また夜にでも飲む」

ルカさんはなんだか気恥ずかしそうにして、手に持っていた缶チューハイを棚へと戻した。

-------------------------------------------------
プレゼントを渡しますか?

現在の所持品
【タピオカジュース】
【誰かの顔の餃子】
【クリスタルバングル】
【ストライプのネクタイ】
【がんじがらめブーツ】
【クロの章】
【レイヤーキャリーバッグ】
【絵本作家ですのよ】
【三度サンドバッグ】
【猿の手】
【死亡フラッグ】
【生存フラッグ】
【お助けヤッチー君】
【ホームプラネット】
【占い用フラワー】

↓1
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/07(水) 21:19:52.31 ID:Rw4nBgGP0
【がんじがらめブーツ】
193 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:32:41.63 ID:zsw/61tI0
【がんじがらめブーツを渡した……】

ルカ「うおっ、なんだこれ……編み込みまで全部チェーンで出来てるブーツか……?!」

にちか「はい、私的にルカさんのイメージに合いそうなグッズを持ってこさせてもらいました〜! ほら、ルカさんのアバンキッシュな感じというか、ちょっとこう擦れたイメージにぴったりだと思うんですよね!」

ルカ「褒めてんのか貶してんのかいまいちわかんねーな……」

ルカ「うーん……でも、案外悪くねえかもな。流石に履くのはないにしても、こんだけ頑丈なつくりをしてるなら傘立てとかにすんのもありか」

ルカ「いや……いっそこれぐらい派手なのを取り入れればパフォーマンスも新しいものに……」

(なんだかルカさん、物思いにふけり始めたぞ……)

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより多めに親愛度が上昇します!】

-------------------------------------------------

にちか「ルカさんルカさん! せっかくなので、ルカさんの研究生時代の話を教えてもらえないですか?」

ルカ「あ? どうしたよ、やけに興味津々って面じゃねーの」

にちか「いや、よくよく考えたらアイドルの研究生さんだなんて別世界の住人さんとこうやって一緒に過ごせるってすごい貴重じゃないですか! なんでいろんなこと聞いてみたいんですよ!」

ルカ「んー、つってもな……何が聞きて―の? 苦労話か? それともドロドロの止み営業の話か?」

にちか「え……そ、そんなブラックな話題しかないんですか」

ルカ「……アハハ、冗談だよ。そんな身構えるほど後ろ暗い話、持っちゃいねーよ」

ルカ「つっても華々しい話題がないってのは事実かもな。実際今は基本集団レッスンで歌とダンスやって、経験値は他の先輩アイドルたちのバックダンサーやりながら積んでる最中」

にちか「あ、やっぱりそんな感じなんですね……いわゆる下積み、です?」

ルカ「おうよ。テレビで見るようなトップアイドルたちの足元には無数の下積みたちが眠ってる。私もその中の一人に過ぎないんだ」

(これだけの魅力あふれるルカさんが下積みなのか……アイドル業界って底知れないな)

ルカ「研修生で仲いい奴と組んでユニットもやってるし、そっちでSNS活動とかミニライブ出演とかもやってなくはないけど……まあ、まだまだだな」

にちか「それって前仰ってた相方さんの事です?」

ルカ「おう、あいつはもともと北海道の出身でよ。夢を追うために上京してきて……他の連中なんか目じゃねーほどの熱量でやんの」

ルカ「今はあいつについていくのでいっぱいいっぱいだよ」

(ルカさんにそこまで言わせる相方さん、一体何者なんだろう)

ルカ「ていうか、こんなことでよかったのか? もっとなんか面白い話題とか……」

にちか「いえ、ありがとうございます。貴重なお話が聴けて私も満足です!」

ルカ「まあ、にちかがいいならそれでいいけど……」

ルカ「……ハッ、あんたも案外ここでの【研究生】ってのまんざらでもないのかもな。そんだけアイドルに興味津々でございますって顔されたらそう思っちまうよ」

にちか「……え?」

ルカ「じゃあな、研修生! これからもよろしく頼むよ」

にちか「あっ、ルカさん!」

ルカさんがいなくなってからも、なんとなく私は自分の心に起きた波紋を測りかねていた。
私がアイドルに憧れている? いや、そんなのって……流石に身の丈にあって無さすぎる。
だって私は日常の中に買い潰される宿命を背負った、ただの一般人なんだよ?

一般人のまま終わる……つまらない女子高生、なんだもん。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【現在のルカの親愛度レベル…2.0】
194 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:35:28.05 ID:zsw/61tI0
------------------------------------------------
【寄宿舎前】

1日探索に当てたけど……目立った収穫はなし。
まあそれでも、他の人と一緒に過ごしたことで少しは親密になれたような気はするし、それを収穫としておこう。
探索からの帰り道、学校を出て自分の部屋へと戻ろうとしている時、遠くの方に人の姿が見えた。

背丈が同じくらいの三人……【櫻木さん、八宮さん、風野さん】だ。
風野さんの手をグイグイと八宮さんが引っ張っているのが目に入る。

めぐる「ねえ、灯織……今日は真乃と一緒に、お部屋でお話ししようと思ってるんだけど一緒にどうかな?」

灯織「え、ええ……?」

真乃「灯織ちゃんがよければ、なんだけど……今はこんな状況だけど、こうして知り合うことができて……」

真乃「お友達になれたら、嬉しいなって……めぐるちゃんと」

めぐる「わたしたち、同年代だし……灯織とわたしは同じ部屋に閉じ込められてた仲じゃない?」

どうやら櫻木さんと八宮さんが風野さんを誘っているらしい。
警戒心が強く、少し孤立気味だった風野さんを八宮さんはずっと気にかけている素振りを見せていたし、今のこれもその一つなんだろう。
195 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:37:14.52 ID:zsw/61tI0

八宮さんの呼びかけは純粋な善意だ。
誰しもが心細く、恐怖に打ち震えるこの学園生活で、少しでも身を寄り添える場所を作ろうというその一心なんだと思う。
その笑顔は、遠巻きに見ている私からしても眩しく映った。

灯織「いや……私はいいよ」

そう、あまりにも……【眩しく】。

灯織「八宮さんはもっと他人を疑った方がいいよ。こんな状況なんだし、いつ誰に足元を掬われるか分からないし……」

灯織「櫻木さんも……他の人に流されるんじゃなくて、自分がどうしたいかをもっと考えた方がいいんじゃないかな」

好意をそのまま呑み込めるような人ばかりじゃない。
それがコロシアイという猜疑心のジャングルの中なら尚更。
人が何を考えているのかなど、明け透けには分からないものだ。
天使の顔をして差し出しているその手を取ったが最後、地獄に引き摺り込まれないとも限らない。

風野さんはまだ、その【柵の中】にいた。

灯織「……! ご、ごめん……!」

思わず口から出てしまった冷徹な文句に風野さん自身少し驚いた様子。
キョトンとする二人に平謝りするような形で頭を下げ、そそくさと後にした。

にちか「あ、風野さん……!」

私の横をすり抜けて行ったのに、風野さんはそれに気づく様子もなかった。
196 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:38:38.39 ID:zsw/61tI0

めぐる「……行っちゃった」

真乃「灯織ちゃん……やっぱり、まだこの状況じゃ信じてもらえない……よね」

めぐる「ごめんね、真乃……悲しい思い、させちゃったよね」

真乃「ううん……大丈夫。私も、めぐるちゃんと気持ちは一緒……灯織ちゃんともっと仲良くなりたいと思ってるから」

真乃「また、めぐるちゃんの力にならせてもらってもいいかな……っ」

めぐる「うん、もちろんだよ!」

純粋に強いな、と思った。
私はあんなふうに拒絶されてなお、手を差し伸べようとは思えない。
櫻木さんと八宮さんが折れず、説得の意思を改めてしている様子を見ていると、胸がチクチクとするようだった。

それは、自分自身との残酷な対比に原因がある。
私は最後まで他の誰かに添い遂げる覚悟なんて持っていないし、反対に誰かの手を取る勇気も持っていない。

でも、普通そうじゃない?
高校生なんて年齢、これまでの人生、吹かれ流されしか経験してきてない。
この学園でも、私の近くには幸運にもルカさんという標がいてくれた。
だから私はなんとか両足で立っていられる。ただそれだけのことなんだ。

「……帰ろ」

櫻木さんと八宮さんが寄宿舎に戻ってくると、鉢合わせてしまう。
そうなる前に私も風野さんの後を追うように自分の部屋へと戻った。

197 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:39:57.68 ID:zsw/61tI0
------------------------------------------------
【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノキッド『おい! どこだ! どこに隠していやがる!』

モノファニー『アンタやめて、そんなに毎晩だったら体を壊しちゃうでしょ!』

モノキッド『うるせー! ミーはこの一家の大黒柱だぞッ! はちみつをいつ舐めようがどれだけ舐めようがミーの勝手だろうが!』

モノタロウ『わー! モノキッドのお決まりの禁断症状だよー!』

モノスケ『はち禁は2時間……記録更新やな』

モノキッド『さっさとはちみつ出さんかーい!』

モノダム『……』

プツン


部屋に帰る前に三人のやりとりを見たからだろうか、ベッドに横になってからも気が立っている感じがした。

多分、ルカさんにとって私はたまたま居合わせただけの存在で。外の世界に待っている相方さんの方がよっぽど大切な存在なんだ。
そんな当たり前で分かりきっている事実が何度も頭を巡っている自分が気色悪かった。

知りもしない人に嫉妬をしているのか?
身の丈に合ってない劣等感を抱いているのか?

いや、そんなんじゃない。
この学園に来てから出会った人たちがあまりにも自分より眩しくて。
そんな人たちが、自分と同じ『一般人』という呼称で定義されているのが苦しくて。
あの人たちが『一般人』なら私は何?

回答を得られるはずのない自問自答は無限に続いて、


_____有限の眠りに閉ざされる。


198 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:41:31.48 ID:zsw/61tI0
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【School Life Day4】
------------------------------------------------
【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

『…………』

『…………』

『…………』

(荒れたモノクマーズ基地で一人はちみつをしゃぶっているモノキッドが映っている)

プツン

この学園に来てから、自分らしくなく物思いに耽ることが増えた。
昨日もよくわからないことを考えているうちに眠ってしまっていたような気がする。
まあ、それは今までの人生がどれだけ頭空っぽに呆けていたかの証左に他ならないのだけど。
すっからかんの側頭部をコンコンと叩きながら眠気を削り落として、朝の支度をした。
199 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:42:59.09 ID:zsw/61tI0

……随分とうなされていたらしい。
何度か睡眠中に目を覚ました覚えもあったし、身を起こした時のベタつく感じは寝汗をかいていたことの証明だ。
今の季節がどうかは知らないけど、特段暑くも寒くもない環境下でこんなに跡がつくほどの汗は、やっぱり苦悶が滲み出たモノと言うほかない。
変色したシーツを撫でると、自分のものながら嫌悪の声が出た。
後でモノクマーズに呼びかけて交換をお願いした方が良さそうかな。

ピンポーン

……そんなタイミングでインターホンが鳴った。

ルカ「よう、にちか。……どうした、なんか昨日あんまり眠れなかった感じか?」

にちか「え? そ、そう見えますか……?」

ルカ「んまぁ……ちょっと目がとろーんとしてて、さっき起きたばっかなのかなって」

にちか「いや……大丈夫です。朝食会ですよね、急いで準備します!」

ルカ「ああ、別に急がなくていいけど……そうだ、朝食会の後なんだけど、【ちょっと時間あるか】?」

にちか「え? ああ……はい、大丈夫ですけど」

(……なんだろう? 周りをキョロキョロと見回して、私だけにしか聞かせたくない話とかなのかな)

ルカ「サンキュー。そんじゃ先に朝食会だ、準備できたら言ってくれよ」

ルカさんが私だけに、という言葉で少しだけ高揚するのをバレないように隠しながら朝の支度をした。
部屋の外で待っていてルカさんに声をかけてそのまま食堂へ。

朝ごはんの後、か……一体何の用事だろう?

200 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:44:06.65 ID:zsw/61tI0
------------------------------------------------
【食堂】

めぐる「あ、にちかちゃんだ! おはよー!」

にちか「あ、ども……」

めぐる「……あれ?」

昨日の夜のやりとりを盗み見てしまった気まずさからか、八宮さんの挨拶をおざなりに返してしまった。
少し違和感を持って受け取られたようだったけど、私は逃げるようにしてルカさんの隣に座った。ルカさんは私の混乱を意に介さず、平然としている。

甜花「今日で、四日目……まだ助け、来ないね……」

甘奈「そっか……もうそんなになるんだ……」

恋鐘「昨日モノクマーズが言うとったことが気になるばい……警察の人たちは本当に助けに来んとやろか?」

夏葉「連絡を取るための手段も取り上げられてしまっているし、外の状況もわからない……苦しい状況ね」

樹里「……いや、気を強く持て! 絶対に助けは来るって!」


【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】

201 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:45:33.69 ID:zsw/61tI0

モノスケ「性懲りも無く現実逃避に励んどるところ、お邪魔するでー!」

モノタロウ「現実から目を背けちゃダメだ! 今こそオイラたちは現実に向き合うべきなんだ!」

モノキッド「それこそがキサマラのユア・ストーリーなんだ!」

甜花「やだ……甜花はビアンカかフローラかで、ずっと悩んでいたい……!」

(……何の話?)

モノファニー「今日はキサマラにとっておきの情報があってやってきたのよ!」

モノスケ「アツアツドキドキのスペシャルなプレゼントや! 耳の穴ほじくり返してよう聞きや!」

にちか「とっておきの情報……?」

連中がほくそ笑みながら言い出している時点でどう考えても碌な情報でないことは明らかだ。
まあ、ぬいぐるみに表情の機微など無いのだけれど。
202 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:46:28.37 ID:zsw/61tI0

モノタロウ「さっきそこのお姉さんも言ってたけど、今日でキサマラが才囚学園に来てから丸四日になるんだよ! わーい!」

モノキッド「あのな……遅いんだよ! 遅すぎてあくびがでちまうぜッ!」

灯織「お、遅い……?」

モノキッド「さっさと一人でも二人でもぶっ殺しちまえってんだッ! せっかくのコロシアイなのに日和見すぎだぜッ!」

(……っ!)

ルカ「誰が……! 誰がコロシアイなんかしてたまるかよ!」

モノタロウ「わわわ! お、怒らないで! オイラたちは別にそのことで文句を言いに来たわけじゃないんだ!」

樹里「もう文句は言われたけどな……」

モノファニー「お父ちゃんが、そんなゆっくりスローペース50CCなキサマラのお尻を叩きにやってきてくれるのよ!」

真乃「それって……つまり……」


バビューン!!!


モノクマ「はいはい! 呼ばれて飛び出てジャバザハット〜〜〜!」

めぐる「わー! ま、またどこからともなくモノクマが現れたよー!」
203 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:48:08.14 ID:zsw/61tI0

モノクマ「話は聞かせてもらったよ! せっかくのコロシアイなのに、中々勇気が振り絞れない! 中々その一歩が踏み出せない! そんなお悩みですね?」

円香「誰もそんなこと言ってないし」

恋鐘「そっちが一方的にふっかけとるとやろ〜!」

モノクマ「そんな思春期のお悩み、ボクもよくわかります。最初の一歩を踏み出す時は、足がすくんだものでした」

モノクマ「だけど、一歩さえ踏み出せてしまえなあとは楽々! 坂道を駆け下りるようにどんどんコロシアイの連鎖に引き込まれちゃんます!」

灯織「それで、私たちに何の情報を渡すつもりなんですか?」

モノクマ「【動機】だよ」

にちか「ど、動機……?」

モノタロウ「過労死ラインの残業でもだんまりの役に立たない組織?」

モノスケ「それは労基や!」

モノファニー「じゃあ、営業が現場の状況を無視して取り付けてくる約束のことかしら?」

モノスケ「それは納期やっちゅーねん!」
204 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:50:18.06 ID:zsw/61tI0

モノクマ「そうだよね、オマエラはのこのこ温室育ちで人が人を殺すという現場に出会したこともないんだ。そりゃその一歩を踏み出すのも躊躇うってものだよね」

モノクマ「おっかしい! 地球の裏側では生まれて間もない子供が大人の仕掛けた爆弾で命を落としてるのに、まるで自分たちには生き死には関係ないですって顔してるんだもん!」

夏葉「……それは論点のすり替えよ」

霧子「そんな人たちが少しでも減ってほしいと、いつも私たちは願っています……」

モノクマ「まあそれはそれとして、オマエラが人を殺す上でハードルになっているものは何かをボクなりに考えてみました!」

モノクマ「それはずばり未知! 人を殺すってどうなんだろう? 学級裁判ってどうなんだろう? まだ経験したことがないことに飛び込むのは怖いもんね!」

モノクマ「なので、今回だけの特別サービス!」

モノクマ「ずばり、【コロシアイお試しキャンペーン】を開催します!」
205 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:51:11.66 ID:zsw/61tI0

モノクマ「これから最初に起きた殺人事件に関して、学級裁判でクロになった人はクロだとバレてしまった場合でも【おしおきを免除】されます!」


モノクマ「更に、もし学級裁判で他のシロを騙し抜くことに成功した場合は……そのまま【卒業もできちゃいます】!」


モノクマ「その場合でも他の【シロ全員のおしおきは免除】! クロもシロも傷つかない、まさに【学級裁判のチュートリアルモード】というわけなのです!」

206 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:52:18.34 ID:zsw/61tI0

モノクマ「ほら、このコロシアイって色々と工程があってめんどいじゃん? とりあえず一回通しでやってみれば要領もわかるようになるってもんだよ」

モノタロウ「習うより慣れろってやつだね! オイラこのことわざを知ってから全部説明書は破り捨てることにしてるんだ!」

モノスケ「保証書と領収書も併せてシュレッダーにかけとるで!」

夏葉「ふざけないでちょうだい!」

モノクマ「ん?」

夏葉「何が誰も傷つかない学級裁判よ……殺人事件が起きている時点でそんなの、矛盾しているじゃない!」

モノファニー「おっとこれは明確な矛盾を築かれてしまったわね、お父ちゃんはどう切り返すのかしら」

モノタロウ「お父ちゃん! キレキレの弁舌で切り返して見せてよ!」

モノクマ「あわわわわわわわわ」

モノファニー「大変! 泡を吹いてるわ!」

モノスケ「アカン、お父やんはレスバが弱すぎるんや! 毎度毎度飛行機を飛ばして対処しとるから、正面からの問答には向いてへんねや!」

モノクマ「……イワレテミタラソッ!」

バビューン!!

モノタロウ「わー! お父ちゃんが逃げたー!」
207 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:53:07.77 ID:zsw/61tI0

透「最後の捨て台詞何?」

ルカ「言われてみたらそう……どこまでも舐め腐ってんな」

モノスケ「まあそういうことや、コロシアイは今が始めどきってことやな」

モノキッド「スタートダッシュでライバルに差をつけろ!」

モノタロウ「今なら確定チケットももらえる!」

モノファニー「おしおきがなくなるならグロくならなくていいわ。ずっとこのままでいいのに」

モノダム「……」


【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】


にちか「行っちゃいましたね……」

モノクマからの動機の提示。
コロシアイが発生しない膠着状態の私たちに刺激を与える意味で提示されたおしおき免除の条件。
確かに犯行に伴うリスクはこれで取っ払われるわけだけど……
208 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:54:14.50 ID:zsw/61tI0

凛世「少し、拍子抜け致しましたね……」

甘奈「だね〜、コロシアイをもっと強要するような方法で来るのかと思ったけどこれなら心配しなくて良さそう!」

樹里「どこまでもおちょくってやがんな……学級裁判のおしおきがなくなるだ? そんなもんでアタシたちが靡くと思ったら大間違いだよ」

愛依「そもそもで人を殺す……とかマジで無理だしね」

真乃「とりあえずは安心してよさそうですね……!」

モノクマの揺さぶりは私たちにはまるで通じていなかった。
大前提において自分で誰かを手にかけるということがあまりにも現実味がなさすぎるため、その先の学級裁判なんて頭にほとんどなかったくらいだ。
みんなモノクマが去った後はあっけらかんとした様子で談笑をしていたし、私も気を緩めていた。

ルカ「……」

ただ隣のルカさんだけは、考え込む動作をしていたのが気になったけど。
209 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:55:34.91 ID:zsw/61tI0

そのまま朝食会はいつも通りに進み、食べ終わった人から食道を後にした。私とルカさんは意図的にゆっくりに食べ進め、最後に残った。
二人だけになったのを確かめると、ルカさんは私の近くに寄った。

ルカ「……もう、あんまり余裕はないかもしれねえな」

にちか「……えっ?」

ルカ「膠着状態に向こうが痺れを切らし始めた……やばい兆候だよ」

にちか「それって動機のことです? いやでも、おしおきの免除とか、正直それだけで何か変わりはしないでしょって思いますけど」

ルカ「それだけなら、な」

にちか「……え?」

ルカ「これで終わりだとは思えないんだよ。オマエも見ただろ、あのバカでかいロボット」

ルカさんが言ってるのは多分エグイサルのことだ。
体育館で姿を見せて以降は学園の整備のためにずっと稼働しているようだけど、あれは元々武力兵器の触れ込みだったはず。
210 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:56:22.15 ID:zsw/61tI0

ルカ「あいつらは私たちを簡単に蹂躙するぐらいの力は持ってる。コロシアイが起きない状態が続けば、危険が身に及ぶ可能性だって十分にある」

にちか「そ、そんな……!」

ルカ「……今のうちに対抗手段は考えておくべきかもしれないな」

にちか「そ、そんなの無茶ですって! 私たちであんなロボットにどう立ち向かえばいいんですか!」

私がルカさんの裾を取って泣き縋るようにして叫ぶと、キョトンとした顔をされた。
目を丸くして私をしばらく見た後、吹き出して笑う。

ルカ「アハハ、ちげーよ。戦うわけじゃない。私たちの基本方針を忘れたか? 基本はここから安全に脱出すること、だろ?」

にちか「あ、あはは……そっか、そうですよね」

ルカ「そのためにはまず学園の謎を解くことだ。この学園の真相に近づく情報を少しでも集めたい……それで、【オマエに見せたいもの】があるんだ」

にちか「見せたいもの……ですか?」

ルカ「ああ……ついてこい」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/06/07(水) 21:57:28.59 ID:Pu7SZLZp0
天安門事件 四五天安門事件 六四天安門事件 中国六四真相 六四事件 Tienanmen Massacre Tienanmen massacre
中華民國總統選舉 Taiwan 台湾問題 台灣問題 臺灣問題 台湾独立 台灣獨立 臺灣獨立 法輪功 Falun Gong 大紀元時報
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212 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:57:28.52 ID:zsw/61tI0
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【1F 女子トイレ】

ルカさんに連れられてやってきたのは女子トイレ。
個室が三つ並んで、後は掃除用具入れと手洗い場のごくごく普通の女子トイレ。
ここに一体何の用事があるというのだろう。

ルカ「そんな警戒すんなよ」

……なんとなくルカさんの容姿でこの場所だと詰められそうな感じがする。

ルカ「にちか、オマエを信頼できる相手だと見込んでの話だ。ここから先のことは口外禁止で頼む」

にちか「は、はぁ……」

口外禁止という重い言葉を浅い覚悟で飲み下す。
私が一応は首を縦に振るのを認めると、ルカさんはそのまま、女子トイレの用具入れの壁に右手をついた。
すると、そのまま……



ズズズズ……



壁は扉のように動いて、真っ暗な空間が姿を現した。

にちか「え、えええっ?!」

ルカ「シッ! 大きい声出すな! まだ他の誰にも話しちゃねーんだ、落ち着いてくれ」

にちか「は、はい……」

ルカ「いくぞ……ついてきな」

少し屈みながら、突如として現れた空間の中へルカさんは突き進んでいく。
何が起きているのかわからず動転している私は、ただ彼女の後ろに続くしかなかった。

中の空間はわずかな照明が点るコンクリートの通路だった。窓も何もなく、ただのっぺりとした道が続く。
歩いた感触で唯一わかるのは、少しこの道には傾斜がついている。緩やかながら、少しずつ、少しずつ下っている。
道を何度か曲がるようにして、先の見えぬ闇を下っていくと、また開けたところに出た。


213 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 21:58:51.92 ID:zsw/61tI0
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【???】

にちか「こ、ここは……?」

明らかに異質だった。
立ち入れた瞬間に、本能が全身の毛を逆立たせるほどに充満している悪意。
だがそれは今まさに精製されているものではなく、嘗てここに在ったであろう何かないしは何者かの残滓だ。

ルカ「さあな、今は使われていない部屋みたいだけど……こいつをみればその持ち主がクソッタレだったことは窺い知れんだろ」

そう言ってルカさんは部屋の一角に備えられた巨大な機械のガラス部分を手の甲でコンコンと叩いた。
ガラスの中には何かが沈んでいる。中の照明が落ちているし、機械自体にも電源が入っておらず故障している様子だ。

にちか「そ、それって何です……?」

促されるまま、近づいていく。
一歩一歩踏みしめるごとに喉が締められるような閉塞感を感じながら。

にちか「いやまさかそんなわけ……」

黒と白が目に入る。
直感が脳髄をチクリと刺した。



にちか「……なん、で」



予感が現実に変わった時、膝から力が抜け落ちるようだった。
私たちにとっての絶望の象徴、【モノクマの巨大な頭部】が闇の中に沈んでいたのである。
214 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/07(水) 22:00:21.29 ID:zsw/61tI0

にちか「な、なんなんですかこれ?!」

ルカ「……わからねえ」

肘を抱き寄せるようにしているルカさんは苦々しそうにそう返した。

ルカ「この部屋の正体も、こいつの正体も何もかもわからねえ。隅々まで探しては見たんだけど、何かに繋がる証拠もなかったよ」

ルカさんのいう通り。これほどの悪意を充満させていながらも、私が歩みを進めることができたのはその空虚さに由来する。
何かが並んでいたであろう棚はもぬけの殻だし、ゴミ箱を除けば得体の知れぬ砲丸が一つ転がるだけ。
後は喋りもしない、反応もしないモノクマの巨大な頭部の乗っかった機械が一つ。

ルカ「これを見つけたのはつい昨日のことだ。トイレで用を足してる時に偶然な」

ルカ「私が入った時にはもうこの状態……多分、私たちがこの学園に来る以前からこうだったんだと思う」

にちか「ですね……棚に埃が溜まってますし」

ルカ「だけど……私たちの前に姿を現してるモノクマたちとこれが無関係だとは流石に思えない」

ルカ「このデカいモノクマが……何か真実を握ってるんじゃないのか?」

にちか「これが……ルカさんが私に話したかったこと」

ルカ「ああ、それと……もう一つ」

にちか「もう一つ?」
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