侑「ポケットモンスター虹ヶ咲!」 Part3

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33 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:15:57.50 ID:fZboHQww0

そういえば、そんな話を歴史の授業で聞いたような、聞かなかったような……。


せつ菜「確かに建築物には多少当時の様式が使われている場所もあるそうですが……ダリア、セキレイ、ローズの3都市は近年で大きく姿を変えた都市と言われています」

侑「確かに栞子ちゃんの写真だと……全然街並みが違うもんね」
 「ブイ」

栞子「そ、そんな……それじゃ、宝珠がどこにあるか……」

せつ菜「……困りましたね」

栞子「すみません……」

歩夢「うぅん、大丈夫だよ♪ この街のどこかにはあるんだよね?」

栞子「お、恐らくは……」

歩夢「じゃあ、みんなで一緒に探せばきっと見つかるよ♪」

栞子「はい……」


というわけで、私たちがダリアシティで宝珠探しを始めようとした──そのとき。

──pipipipipipipi!!!


歩夢「きゃっ!?」
 「シャボ…」


歩夢のポケットから大きな音が鳴り始める。

この音って……。


侑「図鑑の共鳴音……!?」

歩夢「う、うん……!」


私たちがキョロキョロと周囲を見回していると──


 「──侑せんぱーい!! 歩夢せんぱーい!!」


元気な声をあげながら、女の子がこっちに向かって駆け寄ってきているところだった。

その子はもちろん──


かすみ「リナ子とせつ菜先輩まで!! お久しぶりですぅ〜〜〜!!」


かすみちゃんが嬉しそうに私に抱き着いてくる。


侑「おとと……!」

かすみ「侑せんぱ〜い!! 会いたかったですぅ〜!!」

侑「うん……! 久しぶり、かすみちゃん! 元気だった?」

かすみ「はい! かすみん、元気満タンです〜!」


子犬だったら、千切れんばかりに尻尾を振っていそうなテンションで、かすみちゃんがにこにこ笑う。

そして、その後ろから遅れて、


しずく「皆さーん!!」

歩夢「しずくちゃん!」


しずくちゃんが駆けてくる。
34 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:18:53.82 ID:fZboHQww0

しずく「こんなところでお会いできるなんて……!」

かすみ「うんうん!! 図鑑の共鳴音が鳴り始めたときはびっくりしちゃいました……!」

せつ菜「すごい偶然ですね……!! まさか、こんな形で5人揃うなんて……!」

しずく「はい! 私たち、今さっきダリアに着いたところなんですが……」

侑「ダリアに何か用事があったの?」

かすみ「今流行りの限定スイーツを買いに来たんですよ〜! これです! ダリアコットンアイス!」


そう言いながら、かすみちゃんがお菓子の箱を見せてくれる。


せつ菜「あ! もしかして、最近雑誌とかでも特集が組まれているやつですか!?」

歩夢「それ私も気になってたんだ……! アイスなのにわたあめみたいにふわふわだって評判のやつだよね!」

かすみ「そうですそうです! あのあのあの! 多めに買ったので、もしよかったら侑先輩たちも一緒にどうですか!?」

侑「いいの!?」


私たちは再会を喜びながら、思わずいつものような賑やかな雰囲気になる。

そんな中、


栞子「え、えっと……」


栞子ちゃんは突然のことに面食らって、動揺していた。


歩夢「あ、ご、ごめんね栞子ちゃん」

栞子「いえ……お知り合いの方たちなんですね?」

侑「うん! 私たちと同じように、ヨハネ博士から図鑑をもらった仲間のかすみちゃんとしずくちゃんだよ!」


私が栞子ちゃんに二人を紹介する。


しずく「初めまして、しずくと言います」

かすみ「あ、かすみんは〜超絶プリティーポケモントレーナーのかすみんですぅ〜♪」

栞子「初めまして、栞子と申します」


しずくちゃんと栞子ちゃんが恭しく頭を下げて挨拶しあう中、


かすみ「ふんふん……歳は同じくらいっぽい?」


かすみちゃんが栞子ちゃんをジロジロと観察し始める。


しずく「かすみさん……初対面で失礼だよ」

栞子「い、いえ……私は大丈夫なので……」

かすみ「栞子……じゃあ、しお子だね! よろしくね、しお子!」

栞子「しお子……?」

しずく「また勝手に変なあだ名付けて……。栞子さん、嫌だったら嫌って言って大丈夫だからね?」

栞子「い、いえ、大丈夫です」


栞子ちゃんはかすみちゃんの勢いにやや気圧され気味になっていた。


かすみ「っと……それよりもコットンアイスが溶けちゃう前に早く食べちゃいましょ〜!」

せつ菜「そうですね! ポケモンセンターのレストスペースをお借りしましょう!」
35 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:19:53.11 ID:fZboHQww0

そう言いながら、かすみちゃんとせつ菜ちゃんがポケモンセンターに駆けていく。


しずく「……なんか、すみません。急にお誘いしちゃいましたけど……お時間大丈夫でしたか?」


言われてみれば、時間にすごく余裕があるわけじゃないけど……。


侑「そうだ……! せっかくだし、しずくちゃんたちにも手伝ってもらえないかな……?」

しずく「え?」





    🎹    🎹    🎹





侑「──というわけで、私たちは今ランジュちゃんって子を追いかけてるところなんだ」

しずく「……そんなことになっていたんですね」


ポケモンセンターのレストスペースで、かすみちゃんとしずくちゃんに、今起こっている事態の説明をする。

もちろん、栞子ちゃんの前なので、薫子さんの話は伏せているけど……。


かすみ「はぁ〜〜〜♡ コットンアイス絶品すぎますぅ〜〜〜♡」

しずく「かすみさん……話聞いてた?」

かすみ「聞いてた聞いてた。要はそのランジュ先輩って人を止めればいいんでしょ?」

しずく「わかってるならいいけど……」

栞子「あ、あの……よ、よろしいんですか……? 今出会ったばかりなのに、手伝っていただくなんて……」

かすみ「でも、しお子困ってるんでしょ? なら、かすみんがどうにかしてあげる! かすみん凄腕トレーナーだから!」

しずく「千歌さんには負けちゃったけどね」

かすみ「ちょっと、しず子ぉ!! 余計なこと言わないでよ! 四天王には勝てたから、次の挑戦でかすみんがチャンピオンになるんだから!」

栞子「ありがとうございます……」


ペコリと頭を下げる栞子ちゃん。


かすみ「それよりも! しお子、アイス食べないと!! 溶けちゃうよ!」

栞子「え、あ、はい」


栞子ちゃんは手に持ったカップを見つめながら──


栞子「あ、あの……そのまま食べればいいんですよね……?」


そう言って首を傾げる。


かすみ「? うん」

栞子「わ、わかりました。いただきます……!」


そう言って、スプーンでコットンアイスを掬って口に運び──


栞子「……!」


目をぱぁぁぁっと輝かせる。
36 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:20:27.99 ID:fZboHQww0

栞子「冷たくて甘くておいしいです……! 外では、こんな食べ物があるんですね……!」

かすみ「え? もしかして、アイス……食べたことなかったの?」

栞子「はい……!」


栞子ちゃんはおいしそうにアイスをぱくぱくと食べ、


栞子「あ……もう、なくなっちゃいました……」


そう言ってしゅんとする。


かすみ「……そんなにおいしかったんなら、もう1個食べる?」

栞子「え……!? で、ですが……それは悪いです……」

かすみ「かすみん1個は食べたし、アイスもおいしそうに食べてくれる人に食べて欲しいと思うから♪ はい!」


かすみちゃんはそう言いながら、栞子ちゃんの前にアイスのカップをポンと置く。

栞子ちゃんは戸惑っていたけど、


歩夢「ふふ♪ よかったね、栞子ちゃん♪」

栞子「……は、はい……///」


歩夢がニコニコしながら頭をポンポンと撫でると、少し照れ臭そうに、アイスを食べ始めた。


栞子「……私、こんなことをしていて、いいのでしょうか……」

せつ菜「何を為すにしても、英気を養うのは必要ですよ! おいしいものを食べると、元気になりますから!」

栞子「それは……そうかもしれません」

歩夢「ただ、宝珠がどこにあるのか、考えながらがいいかもね」

栞子「はい……ただ、どこにあるのか……」

せつ菜「王家の所有していた建造物が残っていれば良かったのですが……」


確かに王宮が残っていないなら、そこに保管されていたものは他に移動しているはずだ。

私たちはこれからそれに頭を悩ませる必要があるわけだけど……。


しずく「王家に関係している場所なら、ありますよ」


その疑問に答えたのはしずくちゃんだった。


栞子「ほ、本当ですか……!?」

しずく「はい。ダリアの大時計塔はダリア王家がダリアのシンボルとして作ったと言われています」

せつ菜「え……!? ダリア王家が滅んだのって数百年以上前ですよね……!? その時代からあったんですか……!?」

しずく「ダリアの大時計塔は現在でもどうやって作ったかは謎とされています。所謂オーパーツの一つですね。ですが、今でも寸分違わぬ精度で時を刻み続けています。ですので、ダリア王家はかなり高度な技術を持っていたとされているんです」

かすみ「じゃあ、時計塔に宝珠があるってこと?」

しずく「それはわからないけど……図書館の倉庫とかにしまってあったりするのかな……」

かすみ「でもそれってちょっと不用心じゃない〜?」


そこでふと──ダリアの大時計塔には不思議な空間があったことを思い出す。

そんなことを考えていると、ちょうどせつ菜ちゃんと目が合う。
37 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:21:24.02 ID:fZboHQww0

せつ菜「なら……あそこしかないんじゃないでしょうか」

侑「……うん!」

歩夢「……そっか! 確かにあそこなら……!」

かすみ・しずく「「あそこ……?」」


次の目的地が決まった。


侑「とにかく、ダリアの大時計塔に行ってみよう!」

栞子「は、はい! わかりました……!」





    🎹    🎹    🎹





──ダリア大時計塔。

私たちは時計塔内の図書館に入ると、そのまま最上階を目指す。


かすみ「どんどん上に行ってますけど……どこ行くつもりですか〜?」

せつ菜「? ……かすみさんも、ジムバッジは8つ持っているんですよね?」

かすみ「え? はい。持ってますけど……?」

せつ菜「??」

かすみ「???」


せつ菜ちゃんとかすみちゃんの間でハテナが飛び交っている。

確かにダリアジムを攻略していれば、どこに行こうかわかりそうなものだけど……?


しずく「あ、もしかして……そういうことかな……」

侑「しずくちゃん?」

しずく「かすみさん……実はダリアのジム戦は無理言って、にこさんと戦っているので……。……確か、本来だと別の課題があったんですよね……? だから、私たちはそれが何か知らなくて……」

せつ菜「そ、そんな裏技が……!?」

かすみ「ちょっとぉ……! なんか、かすみんがずるしたみたいじゃん!」

侑「あはは……一応図書館だから静かにしようね……」


上の方の管理はポケモンがしているから、叱られるってこともないんだけど……。


歩夢「栞子ちゃん大丈夫? 疲れてない?」

栞子「はい。問題ありません。ありがとうございます、歩夢さん」

歩夢「病み上がりだから、無理しちゃダメだよ?」

栞子「お気遣い感謝します。辛いときは言いますので……」

歩夢「うん、約束だよ♪」

栞子「はい」


6人で図書館の最上階にたどり着く。

最上階は今日も人気がなく、静まり返っている。
38 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:25:49.02 ID:fZboHQww0

侑「確か、こっちだよね」

せつ菜「はい!」


オトノキの史書コーナーに足を運び、背表紙の色が浮いている本『叡智の試しの至る場所』というタイトルの本を押し込むと──

──ガコン! という音が鳴る。


かすみ「ぴゃぁ!? な、なんですか……!?」


そして、上から降りてくる折り畳み式の階段。


栞子「隠し階段……」

しずく「こんなところに……」

侑「この上だよ」


私はみんなを引き連れて、上の階へとのぼっていく──





    🎹    🎹    🎹





私たちが上の階にたどり着くと、


花丸「──チャレンジャー……じゃないね。侑ちゃんたち、久しぶりだね」


花丸さんは読んでいた本をパタンと閉じて、こちらに目を向ける。


侑「お久しぶりです!」

せつ菜「こうしてここを訪れるのは本当に久しぶりな気がします!!」

かすみ「あ、あれ……? マル子先輩……? どゆこと……?」

花丸「ここはダリアジムだよ。マルはジムリーダー。確かかすみちゃんは、にこさんとジム戦したんだったよね」

しずく「……ダリアジムはバトルの実力だけではなくて、それ以外の知恵も試すと言っていたのはそういうことだったんですね……」

かすみ「……どゆこと……?」

しずく「えっと……だから実はダリアジムは謎解きの要素があって……」


飲み込みの早いしずくちゃんが、かすみちゃんに説明する中、


栞子「あ、あの……!」


栞子ちゃんが前に出る。


花丸「こんにちは。貴方は?」

栞子「私、栞子と申します。……こちらにダリア王家が保管していた宝珠があるのではないかと思い、伺いました」


栞子ちゃんのその言葉を聞いて、


花丸「もしかして……翡翠の民の子ずら?」


花丸さんはそう返す。
39 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:35:39.72 ID:fZboHQww0

栞子「……! 翡翠の民をご存じなのですか!? 私は翡翠の巫女です……!」

花丸「なるほど。やっと、役割を果たすときが来たってことだね」


そう言いながら、花丸さんは本を置きながら、立ち上がる。


侑「役割を果たす……? どういうことですか……?」

花丸「こっちに来てくれるかな」


そう言いながら、花丸さんは壁際の方へと歩いて行き……壁中に敷き詰められている本棚の中の本を1冊押し込むと──下の階で見たのと同じように、ガコンと音がする。

直後、ゴゴゴと音を立てながら、本棚が横にスライドしていく。


せつ菜「隠し部屋の中にさらに隠し通路が……!?」

花丸「栞子ちゃんが探しているものは、この先にあるよ」

栞子「本当ですか……!」


花丸さんに言われたとおり、隠し通路の中へと歩いて行くと……その中には小さな部屋があった。


歩夢「あの……花丸さん。ここは一体……?」

花丸「ここは大時計の時計盤の裏側だよ。そして……ダリア王室の隠し宝物庫だった場所ずら」

しずく「隠し宝物庫……」

せつ菜「花丸さん、先ほど役割を果たすときが来たと仰っていましたよね? 一体、貴方は……?」

花丸「えっと、なんて言えばいいのかな……? マルは門番みたいなものなのかな?」

侑「門番……?」

花丸「マルは、ダリア大学に入学したあと、ずっとここの図書館で働きながら研究をしてたんだけど……ある日、史書の整理をしてるときに、この部屋の存在に気付いたんだ。そして、ここにある本を読んで驚いた。大昔にあった大戦時のことが書かれた本が大量に見つかった。……そこには焚書されたと思われたものもたくさん」

かすみ「ふんしょ……?」

しずく「言論統制や検閲のために、本を焼却することだよ」

せつ菜「つまり……隠された歴史がここにある……ということですか……?」

花丸「そういうこと。その中には……翡翠の民と翡翠の巫女の話も出てきてた」

栞子「それでは……」

花丸「ここには、オトノキ地方にかつて栄えたダリア王家と、翡翠の民たちの歴史と……失われたディアンシー伝説、龍神伝説の真実が記されているずら」

侑「伝説の……真実……?」

花丸「実際に、見て確かめてみるといいよ。マルは外で待ってるから」


そう言って花丸さんは、小部屋から出て行こうとする。


栞子「あ、あの……花丸さん、貴方はどうしてここを守っていたんですか……?」

花丸「んー……たぶん、これが外に漏れると、情報が検閲されちゃうんじゃないかって思ったからかな。ジムリーダーになって、ここをポケモンジムに改修したら、誰も手を出せないと思って、ここにジムを構えたんだ。だから、ここの部屋の存在はマル以外のリーグの人間は誰も知らないよ」

侑「そういう……理由だったんだ……」


花丸さんは随分手の込んだジムリーダーだと思ったけど……本当はそういう理由があったんだ……。


花丸「あ、でも、ジムリーダーとしての責任はちゃんと果たしてるよ? トレーナーたちの知恵を試すジムが必要だと思ったのも本当だし!」

栞子「どうしてそこまでして……」


栞子ちゃんは埃一つ被っていない手入れの行き届いた古書を見ながら呟く。

それに対して花丸さんは、
40 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:36:21.64 ID:fZboHQww0

花丸「いつかその本に記されたことを求めてやってくる人がいると思ったからかな。……本は誰かに伝えるためにあるもので、それが失われるのが嫌だったから」

栞子「花丸さん……」

花丸「だから、その本たちがちゃんと必要としている人たちに届いたみたいで安心ずら♪ ちゃんと読んであげてね」


そう残して、花丸さんは小部屋から出て行くのであった。





    🎹    🎹    🎹





隠し部屋の中にはたくさんの本が所狭しと詰め込まれていた。

私たちはそれを1冊ずつ手に取って中を確認する。


かすみ「……ねーねー」

しずく「何?」

かすみ「かすみんたち……宝珠を探しに来たんでしょ? 本読んでる場合なの?」

栞子「恐らく……今、宝珠がどこに行ったのかも記されていると思います。それに……ここに記されていることは、私たち翡翠の民でも知らなかったようなことが記されています……。……今、全て読むのは不可能かもしれませんが、ある程度目を通しておいて損はありません」

かすみ「しお子は真面目だなぁ……」

せつ菜「……いえ、栞子さんの話を聞いていて思ったのですが……私たちの歴史は思った以上に、誰かの意思によって都合のいい形に事実を塗り替えられている気がします。私たちも、この地方で何があったのか……知るべきなのかもしれません」

栞子「……そうですね。龍神様を追う以上……皆さんも龍神様と、この地方にあったことを……知っておいた方がいいのかもしれません」


栞子ちゃんはそう言って私たちの顔を順に見回す。


栞子「過去に、この地方で何があったのか……龍神様と人間の間に何があったのか……翡翠の民がどうして龍神様との間を取り持っていたのか……それをお話しします」


そう前置いて、栞子ちゃんはオトノキ地方の歴史を話し始めるのだった。





    🎹    🎹    🎹





栞子「この地方はディアンシー様が各地に輝きをもたらしたことから始まった輝きの地方と言われています」

せつ菜「もともとは今で言うところのローズシティ以南がオトノキ地方だったんですよね? ウテナは最近出来た人工都市ですし、ヒナギクとクロユリは元は独立した集落だったと聞いたことがあります」

歩夢「オトノキ地方で特に古い町って言うと……アキハラ、ウラノホシ、コメコ、ダリアだったかな……。セキレイとかローズが発展したのは結構最近だったって聞いたことあるかも」

栞子「はい。そして、その地方の中で人々はディアンシー様に貰った輝きを糧に発展していきます。ディアンシー様の光は人々やポケモンの心を勇気付け、そのエネルギーによって、地方の中心には雲よりも高い……大きな大きな樹が時間を掛けて成長していきました」

侑「それが音ノ木だよね」

栞子「そうですね。……そして、音ノ木の頂上には、いつしか龍神様が住みつくようになりました」

かすみ「龍神様って、もともとこの地方に居たポケモンじゃないんだ」

栞子「はい。龍神様はもともと成層圏に生息しているので……標高の高い音ノ木は龍神様にとって、居心地がよかったのでしょう。そんな神様たちのもとで……音ノ木を中心とした輝きの地方は、オトノキ地方と呼ばれるようになります」

歩夢「そこまでは、ディアンシー伝説でもあったよね」

栞子「そして、このオトノキ地方を統治していた方たちが、後にダリア王家となります。そして、地方全体が一つの共同体として纏まりを見せ始めた時期に……事件が起きます」

しずく「ディアンシーを巡って……戦争が起こった」

栞子「そのとおりです。ディアンシー様の光は、今で言うヒナギクの辺りには届いていませんでした。さらにヒナギク以北……グレイブマウンテンの向こうには大きな国があったそうです」
41 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:39:05.77 ID:fZboHQww0

栞子ちゃんは本のページを捲りながら言う。


栞子「非常に肥沃な土地だったそうです……。……そのため、発展していて武力にも秀でた国……。……そんな大きな隣国が、まだ国が発足して間もないダリアの国を襲いました」

かすみ「待って待って、しつもーん!」

しずく「もう……話の腰を折っちゃ、めっだよ?」

栞子「いえ、大丈夫ですよ。わからないことには、適宜答えていった方が理解も深まると思います。なんですか?」

かすみ「その隣国って、グレイブマウンテンの向こう側だったんだよね?」

栞子「はい。正確には戦時中に独立集落として存在していたヒナギクも飲み込んで、グレイブマウンテンの南側まで拡大することになるんですが……」

かすみ「でも、グレイブマウンテンの向こう側ってめっちゃ寒いって聞いたよ?」

せつ菜「言われてみれば……。……決して肥沃な土地ではないですね。点々と集落が存在するだけで、人が生きていくにはあまりにも厳しい場所だと言われています」

栞子「それについては……オトノキ戦争の話をする必要がありますね。北の大国がディアンシー様を奪うためにダリア国に侵略を始めました。カーテンクリフやクリスタルケイヴのような自然の城壁があったため、侵略は一筋縄では行きませんでしたが……それでも、相手は大国……ダリア国は窮地に立たされます。ですが、そのとき……龍神様がお怒りになられました。そして、ディアンシーを奪おうと武力を持って押し寄せる隣国を……圧倒的な力で滅ぼしました」

侑「滅ぼした……?」

栞子「はい。それは本当に圧倒的な力だったらしく……気候が変わってしまうほどだったそうです……」

せつ菜「……肥沃な土地が、氷に閉ざされてしまうような気候変動すら引き起こせる力だった……ということですね」

リナ『レックウザは気候を司るポケモンとも言われてる。本気を出したら、そうなるのも無理ないかも』 || ╹ᇫ╹ ||

栞子「龍神様の圧倒的な力によって敵を退けたダリア国では、まさに英雄である龍神様を讃えるようになります」

せつ菜「それがこの地方の龍神伝説の始まりということですね」

栞子「はい。当時はまだ、ポケモンのこともよくわからず、人々にとって畏怖の対象でしかなかったポケモンたちでしたが……龍神様に国の窮地を救われた人々は……龍神様を崇め奉るようになります」

しずく「それが……翡翠の民──栞子さんのご先祖様ってことだね」

栞子「そのとおりです。そして、翡翠の民たちが龍神様への信仰を始めたのと同時期に、ダリアを統治する王が生まれました。ダリアは龍神様の加護を受けたこの地で……大きく発展していきます。……その後、100年程は安定していたと言われています。……が、それも永遠には続きませんでした」

かすみ「何が起こったの?」

栞子「……人々がポケモンと共に力を合わせて生きるようになりました」

侑「え……? それの何が問題なの……?」

栞子「それだけなら問題ではなかった……ですが、人々はポケモンを武力として使うようになったんです」

せつ菜「その言い方だと……ポケモンバトルというほど、規律のあるものではなかったんでしょうね」

栞子「はい……。……力を持った集落が、ディアンシー様の力の恩恵をより多く求めて……地方内の各地で争いが起きたんです。ダリア王家はそれを諫めようと東奔西走したそうですが……広いオトノキ地方を管理しきることは出来ず……人にもポケモンにも……多くの犠牲が出ました。……特にポケモンの犠牲は多かったそうです」

歩夢「……酷い……。……人が始めた戦争なのに……ポケモンを代わりに戦わせてたってこと……?」

栞子「……はい。……そして、その人々の行為は、龍神様の怒りを買いました」

かすみ「え、それってオトノキ地方が滅ぼされちゃうじゃん!?」

栞子「……実際その直前まで行ったそうです。各地を龍神様が攻撃し、争いをする余裕もなくなりました。……気候がおかしくならなかったのは……龍神様が、この地方を気に入られていたからこその慈悲だったと言われています。私たち翡翠の民は、龍神様の怒りを鎮めるために、人身御供として、一生を龍神様のお世話に費やす存在である翡翠の巫女を龍神様のお傍に置き、龍神様と共に……朧月の洞という結界の中から、この地方を俯瞰して見る立場となりました」

歩夢「じゃあ、栞子ちゃんは……」

栞子「……はい。私は本来であれば、死ぬまで龍神様にお仕えするだけの人生のはずでした……」

歩夢「……そう、なんだ……」

栞子「……話を戻します。龍神様は地方のポケモンたちを守るという名目で、多くの人間の命を奪いました。……その結果、龍神様を討伐する考えを持った人間たちが現れました」


そこでなんとなくピンとくる。

恐らくそれが……薫子さんの言っていたリーグの前身組織を形成することになる人たちということだろう。
42 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:40:19.97 ID:fZboHQww0

栞子「ですが、龍神様をやっとの想いで鎮めたというのに……そんな人たちが現れたら、次こそ、この地方は滅ぼされかねない。そう思った翡翠の民は……ダリア王家に彼らを抑えることを求めたんです」

しずく「……話が見えてきました。だから、ダリア王家によって、焚書が行われたんですね」

かすみ「へ? どゆこと……?」

しずく「龍神様が地方を救った英雄譚だけ残し、オトノキ地方の人たちの命を奪ったという事実をなかったことにして……龍神信仰への反発を抑えようとしたんだよ」

栞子「はい……。……実際それは今のオトノキ地方を見れば成功したと言えます。……まさか、こんな形で焚書を逃れた書物が王家の遺した地にあるとは思いませんでしたが……」

せつ菜「確かにそれは妙ですよね……王家からしたら、自分たちで管理していたとはいえ、こんな事実が手元に残っていることは都合が悪いはずなのに……」

歩夢「……怖かったんじゃないかな」

侑「怖かった……?」

歩夢「……王家の人たちは……龍神様が落ち着いてくれても……何かの拍子に滅ぼされちゃうんじゃないかって……だから、こういうことがあったことを完全に忘れちゃうのが……怖かったのかなって……」

侑「……」

栞子「……こればかりは、この書物を遺した人にしかわかりません……。……歩夢さんの言うとおり、畏れだったのかもしれませんし……花丸さんのように書物や歴史は残されるべきと考えた人がいたのか……それはもう今となっては誰にもわからない。……わかるのは、誰かがこれをいつか誰かが知るために遺した……それだけです」


栞子ちゃんはそう言いながら、手に持った本を撫でる。


栞子「龍神様はその後も……地方内のポケモンの命が、人間の手によって脅かされそうになると、度々ポケモンたちを救う為に……人を滅ぼそうとしました。時に私たち翡翠の民が、命を懸けて怒りを鎮めたり……時に勇敢なトレーナーが力を示し、龍神様を抑え込んだこともあったと聞きます。ですが……今回、こんなことになってしまいました……」


こんなこと──つまり、ランジュちゃんがレックウザを解き放ってしまったことを指しているのだろう。


侑「……ランジュちゃんはどうして、レックウザを解き放ったりしたんだろう……」

栞子「わかりません……」

かすみ「あのあの、そもそも今回この騒動を起こしてるランジュ先輩と……ミア、先輩? って何者なんですか?」

栞子「ランジュは私の幼馴染なんです……。翡翠の民は基本的に隠れ里に住んでいるんですが……翡翠の巫女は幼少期に巫女修行としてポケモンと共に異国の山に籠もるんです。……そのとき、同じ師のもとで修業をしていたのがランジュでした。彼女は当時からポケモンの扱いに長けていて……一緒にいたのは1年ほどでしたが……私はランジュと一緒にいろいろな経験をしました……」

歩夢「……大切な、お友達だったんだね」

栞子「……はい。……だから、ランジュがどうして急にこんなことをしたのかが、理解出来なくて……」

せつ菜「ランジュさんは翡翠の巫女のことを知っていたんですか……?」

栞子「……一度だけ、ランジュには話したことがあったんです。……無闇矢鱈に話すものではないとはわかっていましたが……修行が終わって、お互いの故郷へ帰る日に……。……きっと、ランジュには私のことを忘れて欲しくなかったんだと思います……」

侑「栞子ちゃん……」

栞子「でもまさか……それが、こんな事態を招くことになるなんて……。……すみません……」

歩夢「栞子ちゃんのせいじゃないよ……そんなに気に病まないで」


歩夢はそう言って、栞子ちゃんの頭を撫でる。


栞子「歩夢さん……。……ありがとうございます……」

歩夢「とにかく、どうしてこんなことをしたのか……それはランジュちゃんに直接聞かないとだね」

栞子「はい……。……ですが、もう一人……ランジュに協力しているという……ミアさんについては、私は何も知らなくて……」


栞子ちゃんはそう言って目を伏せるけど、


せつ菜「いえ、ミアさんのことなら、知っていますよ。ミア・テイラーさん」

しずく「え……? テイラーってまさかあの……?」


せつ菜ちゃんとしずくちゃんの反応を見て、私もほぼ確信する。


侑「やっぱり……あの有名なテイラー一家だよね」

せつ菜「はい」


せつ菜ちゃんは私の言葉に首を縦に振る。
43 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:41:17.66 ID:fZboHQww0

かすみ「え? なんですか? 有名人なんですか?」

歩夢「わ、私も知らない……」

侑「テイラーって……外国で有名なポケモントレーナーの一家があるんだよ」

しずく「世界でも有数のトレーナー一家で……私も詳しいわけではないので、ミア・テイラーさんについてはわかりませんが……テイラー夫人はポケモンミュージカル女優としても有名な方なので、私は映像で何度も見たことがあります……!」

侑「テイラー家は家族全員がいろんな世界の大会で結果を残してるくらいすごいトレーナーなんだ。私はオトノキ地方のリーグばっかり見てるから……そんなにバトルそのものを見たことはないんだけど……」

せつ菜「……ミアさんはそんなバトル一家の中でも、ポケモンブリーダーとして名を馳せている方なんです。……各地のポケモンのバトル施設において、ポケモンの貸し出しというものがありますが、その半分ほどがミアさんが育てたポケモンとまで言われるくらいポケモン育成に長けた人と言われています」

侑「ミアちゃんはブリーダーなんだ……」

せつ菜「はい。しかも、年齢はまだ14歳……」

かすみ「14歳!? 年下じゃないですか!! 先輩なんて呼んで損した!」

しずく「そういう基準なの……?」

かすみ「それにしても、なんでそんなすごいのがランジュ先輩に手を貸してるんですかね?」

栞子「それも、わかりません……」

侑「やっぱり、なんにせよランジュちゃんたちに会って話してみるしかないね……」

栞子「はい……」

かすみ「んじゃ、そのために宝珠探さないと! どっかに書いてないの?」

栞子「それなら、こちらの書物に記述がありました」

かすみ「あったの!? 見せて!!」

栞子「はい、こちらです」


そう言いながら、栞子ちゃんが開いたページをみんなで覗き込む。


侑「これって……地図……?」

栞子「はい。ダリアシティの真下にある地下壕に隠し宝物庫があるそうです。これはそこの地図です」

しずく「ダリアの真下にある地下壕ってことは……」

かすみ「叡智のゴミ捨て場じゃん!?」

しずく「また行くことになるとはね……あはは」

かすみ「……まあ、行くとわかったら、ちゃっちゃと行ってちゃっちゃと帰ってきましょう!!」

侑「そうだね。それじゃ、次はダリアの地下だ……!」


私たちは次の目的地を目指す。





    🎹    🎹    🎹






──叡智のゴミ捨て場は6番道路から入ることが出来た。

ゴミ捨て場というだけあって……入るためのドアを開けた瞬間、酷い臭気が漂ってきた。
44 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:43:36.42 ID:fZboHQww0

歩夢「…………ぅ…………」

侑「歩夢、大丈夫……?」

歩夢「……うん……大丈夫……」

リナ『歩夢さんは人より五感が鋭いから……ちょっと臭いがきついかもね』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「辛いなら、外で待っててもいいよ……?」

歩夢「大丈夫……行こう」

栞子「歩夢さん……無理なさらないでくださいね」

歩夢「うん、ありがとう……」


歩夢に気を配りながら、ゴミ捨て場に入ると──もぞもぞと何かが動いているのが目に入る。


せつ菜「ポケモンでしょうか……?」

しずく「ここには大量のヤブクロンが生息しているんです……」

かすみ「あーもう!! 邪魔邪魔!! ダストダス、行くよー!!」
 「──ダストダァス!!!!」

 「ヤブゥー!!!?」「ヤブクー!!!?」


かすみちゃんのダストダスが大きな腕を振り回して、ヤブクロンたちを蹴散らしながら、突き進んでいく。


かすみ「今までいじめられた分、100倍にして見返してやりましょう……ニシシ……」
 「ダストダァァァス!!!!!」

歩夢「なんか……楽しそう……」

せつ菜「かすみさん、頼もしいですね!!」


私たちは奥へと進んでいきます。





    🎹    🎹    🎹





リナ『さっきの地図通りなら、場所はこの辺りだと思う』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんのガイドに従いながら、該当の場所に到着したけど、


かすみ「何もないよ……?」


確かに、周囲はゴミ袋が積まれているだけの空間だ。


しずく「まあ、さすがに……宝物庫をそのまま置いているとも思えないので……」

せつ菜「となると……床下でしょうか」

侑「わかった。イーブイ、“きらきらストーム”」
 「ブイッ」


イーブイがフェアリータイプの風を吹かせる。

“きらきらストーム”は周囲の毒気も中和できるから、これなら歩夢も苦しくないだろうしね。

“きらきらストーム”によって、足元の塵やゴミを吹き飛ばすと──その下から、取っ手らしきものが出てくる。
45 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:46:15.33 ID:fZboHQww0

せつ菜「ビンゴですね!」

かすみ「ダストダス! 引っ張って!」
 「ダストダァッ!!!」


その取っ手をダストダスが思いっきり引っ張ると──鉄板が持ち上がり、そこに階段が現れる。


侑「きっとこの先にありそうだね……! 行こう!」

栞子「はい!」


みんなでゆっくりと階段を降りていくと──小さな空間の中に高そうな壺や、絵画が飾られている小さな部屋があった。


しずく「まさしく……と言った感じですね」

かすみ「ねぇ見て見てー!! 王冠!! これ本物かな〜!? かすみん、初めて見ました〜!!」

しずく「持ってっちゃダメだからね……?」


ぴょんぴょんと飛び跳ねながら王冠を眺めるかすみちゃんを傍目に、私たちは宝物庫を奥へと進んでいく。

すると──奥に小さいけれど、まさしくな宝箱があった。


歩夢「栞子ちゃん」

栞子「……はい」


栞子ちゃんがその箱を開けると──中に翠色に輝く珠が納まっていた。


栞子「これが……“もえぎいろのたま”……」

かすみ「わ、きれーっ!」

侑「この珠なら龍脈からエネルギーを集められるんだよね……?」

栞子「はい、そうなんですが……」


栞子ちゃんは少し困った表情をする。


せつ菜「……これがここにあるということは、ランジュさんはどうやって龍脈のエネルギーを集めるつもりなんでしょうか……?」


そう、私たちはランジュちゃんがこの“もえぎいろのたま”を持ち出している可能性を考えて、珠を探していたわけだけど……この宝珠は結局この場にあったわけで……ランジュちゃんはここに来ているわけじゃないらしい。


かすみ「とにもかくにも、それは必要なんでしょ? とりあえず、それ持ってさっさと外に出ない?」

栞子「……そうですね」


栞子ちゃんがかすみちゃんの言葉に頷きながら、珠を手に取ると──パァァァァと輝き出す。


かすみ「わ、光った……!?」

栞子「この珠は龍脈に近付けば近付くほど強い光を発します。ですので、この珠を持ったまま珠が強く光る場所を探せば、龍脈を見付けることが出来ると思います」

せつ菜「となると次は……」

栞子「はい……。もしランジュも龍脈を探しているなら……これの反応従って、私たちも龍脈の在り処を目指しましょう。きっと、そうすればランジュの行き先にかち合うはずです……!」


私たちは“もえぎいろのたま”の光を頼りに、ランジュちゃんを追って、龍脈探しへと進むのであった。



46 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:48:13.14 ID:fZboHQww0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【叡智のゴミ捨て場】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回●    . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口
47 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/13(金) 12:48:49.50 ID:fZboHQww0

 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:270匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.68 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.64 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.64 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:249匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.84 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.77 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.75 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.74 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.75 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:294匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.68 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.68 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.68 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.68 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.68 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:276匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:197匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.70 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.68 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.68 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



48 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:08:15.31 ID:p9JQiW5R0

 ■Intermission🔔



ランジュ「──やっとこの宝珠の反応の仕組みがわかってきたわ! ジジーロン! あっちよ!」
 「ジーロン…」


ランジュはジジーロンの背に乗りながら、目的の方向を指差す。


ミア「Finally? 随分時間が掛かったじゃないか」

ランジュ「仕方ないでしょ、使ったことないんだから」

ミア「ま、別にいいけど……。……んで、どうすんの?」

ランジュ「この宝珠は龍脈に近付けば近付くほど、光が強くなるみたいよ! そして、光がより強くなるのは──あっちよ!」


ランジュは、南の方を指差す。


ミア「There is ... a forest?」

ランジュ「ええ、コメコの森って言うそうよ!」

ミア「ふーん……」


ランジュたちは龍脈を目指して移動を始めたのだった──


………………
…………
……
🔔

49 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:09:06.32 ID:p9JQiW5R0

■ChapterΔ004 『決戦の森』 【SIDE Yu】





──叡智のゴミ捨て場から出た私たちは、


栞子「反応が強くなっているのは……恐らく東方向です」

せつ菜「では、東に向かって移動しましょう! エアームド、出番ですよ!」
 「──ムドー!!」

栞子「ウォーグル、出てきてください」
 「──ウォーグ…」

侑「ウォーグル、お願いね」
 「──ウォー!!」

しずく「出てきて、アーマーガア!」
 「──ガァァァ!!!」


それぞれ飛行用のポケモンをボールから出す。


侑「それじゃ、歩夢」

栞子「歩夢さん」

歩夢「うん♪ また、お願いね、ウォーグル♪」
 「ウォーグ…」


歩夢は私が声を掛けるよりも早く、栞子ちゃんに手を引かれて、ヒスイウォーグルの背中に乗る。


侑「あれ……また、そっちに乗るんだ」

歩夢「うん、栞子ちゃん……この地方のこと、あんまりわからないみたいだから……私が見ててあげた方がいいかなって」

侑「確かに……。……それじゃ、お願いね、歩夢!」

歩夢「うん♪」

栞子「すみません……ご迷惑をおかけしてしまって……」

歩夢「気にしないで♪」

栞子「ありがとうございます。……ウォーグル、飛んでください」
 「ウォー…」


──バサッバサッと音を立てながら、ウォーグルが飛び立つ。


侑「…………」
 「ブイ…?」

せつ菜「侑さん? どうかされたんですか?」

侑「え? あ、いや……いっつも歩夢と一緒に空を飛んでたからかな……歩夢と一緒にいるのに、一人で飛ぶのにちょっと違和感があるというか……」

せつ菜「寂しいのでしたら、私のエアームドに一緒に乗ってもいいですよ! 二人くらいなら楽勝で飛べますから!」

侑「あはは、そんな大袈裟な話じゃないって♪」

せつ菜「そうですか? なら、私たちも急ぎましょう!」

侑「うん、そうだね!」


かすみ「……ねぇ、しず子……あれ、大丈夫なの……?」

しずく「……うーん……」

リナ『……まあ、たまにはいい薬だと思う』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

しずく「……それもそうかもね」

かすみ「困った人たちですね……」
50 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:09:47.66 ID:p9JQiW5R0

侑「リナちゃん、もう飛ぶよー? 腕にくっついててー?」


リナ『はーい』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||


かすみちゃんたちと話していたリナちゃんが、私の腕に装着される。


侑「かすみちゃんたちと何話してたの?」

リナ『世の中には、自分の気持ちにもなかなか気付けない人がいて大変だなってお話』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「……? そうなんだ……?」

リナ『うん』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「まあ、いいや……! のんびりしてると栞子ちゃんたちを見失っちゃう……!」
 「ウォーーッ!!!!」

せつ菜「そうですね! 行きましょう!」
 「ムドーーー!!!!」

しずく「かすみさん、ちゃんと乗った?」

かすみ「おっけー!」

しずく「了解。アーマーガア、飛んでください!」
 「ガァーー!!!」


私たちは栞子ちゃんを追いかけて、空の移動を始める。





    🎹    🎹    🎹





歩夢「……少しずつ、光が強くなってるね」

栞子「はい。恐らく、順調に龍脈に近付いているんだと思います」

せつ菜「この方向ですと……先にあるのは──」

侑「コメコの森……」


私たちの飛ぶ先には──コメコの森が広がっていた。


しずく「森の上からだと、木が邪魔で降りられませんね……」

リナ『一旦降りて地上を移動した方がいいかも』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「そうだね……。みんな、一旦地上に降りよう」

栞子「わかりました。ウォーグル」
 「ウォー」


全員で森の入り口へと降り立つ。


かすみ「ホントに光が強くなってるね」

栞子「はい。恐らく、この森の中に龍脈があるんだと思います……行きましょう」

歩夢「うん!」


栞子ちゃんの手に持った宝珠の光を頼りに、私たちはコメコの森の中へと入っていく──



51 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:11:09.40 ID:p9JQiW5R0

    🎹    🎹    🎹





コメコの森に入ると、栞子ちゃんの持っている宝珠はより強く輝きを増していく。

そして、その光に導かれるようにたどり着いたそこは──いつの日か、エマさんが教えてくれた苔むした岩のある場所だった。


栞子「恐らく……ここが、龍脈の地です」


そう言う栞子ちゃんの手に乗せられた“もえぎいろのたま”は、眩く光を放っていた。

そして、私たちが到着するのとほぼ同時に──


ランジュ「あら……?」


私たちが来たのとは逆側から、ランジュちゃんとミアちゃんが現れた。


栞子「ランジュ……! やっと見つけましたよ……!」

ランジュ「栞子……追ってきたの?」


そんなランジュちゃんの手の上には──栞子ちゃんの持っている“もえぎいろのたま”とよく似た宝珠が光を放っていた。


栞子「ランジュ……それは……!?」

ランジュ「ああ、これ? ランジュが作った“みどりいろのたま”よ!」

栞子「“みどりいろのたま”……!? 作ったとは、どういうことですか……!?」

ランジュ「言ったとおりの意味よ。オリジナルの珠が見つからなかったから、この珠を作る研究だけを行う研究所を設立して、作らせたの。世界中から、優秀な研究者を雇ったんだから! それでも、オリジナルよりは龍脈探知の能力が弱いみたいだけど……」


そう言いながら、ランジュちゃんが栞子ちゃんの持っている宝珠と自分の宝珠を見比べる。

確かに、ランジュちゃんの持っている宝珠は栞子ちゃんのものに比べて、少し輝きが弱かった。


ランジュ「作るのに苦労して……これ1個完成させるのに3年も掛かっちゃったけど……ただ、これでも龍脈からエネルギーを集めるのには問題ないわ!」

栞子「そこまでして……貴方は何をしようとしているのですか……?」

ランジュ「もちろん、レックウザを捕まえるつもりよ」

栞子「……やめてください。龍神様をこれ以上、刺激しないでください……」

ランジュ「大丈夫よ、栞子。ランジュがちゃんと捕まえて従えてあげるから! レックウザが暴れ出すことはもうなくなるのよ!」

栞子「そういう話をしているのではありません……!! ランジュ、お願いですから、もうこんなことはやめてください……!」

ランジュ「栞子、全部ランジュに任せておけば無問題ラ! 安心しなさい!」

栞子「ランジュ……!」


栞子ちゃんは必死にランジュちゃんを説得しようとするけど──


かすみ「まるで聞いてませんね……」

歩夢「ランジュちゃん……! 龍神様の力は危ないの……!」

ランジュ「あら、貴方無事だったのね、よかったわ♪ でも、そんなことを言われてもランジュはやめないわ。ランジュがレックウザを捕まえて従える。これは既に決定事項なの!」

ミア「ランジュに何言っても無駄だよ。ランジュの強引さは、度を越えてるから」

栞子「ランジュ……」


ランジュちゃんはまるで聞く耳を持たない。
52 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:11:50.54 ID:p9JQiW5R0

歩夢「侑ちゃん……どうしよう……」

侑「……。……ねぇ、ランジュちゃん」

ランジュ「何かしら?」

侑「……もし、私たちがレックウザを捕まえるって言ったら、どうする?」

ランジュ「……なんですって?」

歩夢「ゆ、侑ちゃん……?」


歩夢が困惑した声をあげる。私はそんな歩夢に、目配せする。私に任せて、と。


ランジュ「ダメよ、レックウザは私が捕まえるって、もう決まってるんだから!」

侑「でも、レックウザは野生のポケモンだよね? 野生のポケモンなら、誰にでも捕まえる権利があるはずだよ」

ランジュ「それは……確かに、そうかもしれないけど……。でも、ランジュが捕まえるって決めてるの! 貴方たちが捕まえるのはダメよ!」

侑「でも、私たちも龍脈のエネルギーを集める手段を持ってる。早い物勝ちなのは構わないけど、ランジュちゃんに私たちを止める権利もないはずだよ」

しずく「──なるほど……」


しずくちゃんは私の意図にいち早く気付いたらしい。


しずく「もし早い物勝ちなんだとしたら……オリジナルの“もえぎいろのたま”を持っている私たちが、先にレックウザにたどり着くことになりそうですね、侑先輩♪」

侑「うん」

ランジュ「ちょっと待って!! それは困るわ……!! それこそ平等じゃないじゃない……!!」

侑「だから、こうしない? レックウザを捕まえるのは──より強いトレーナーが相応しいと思う」

ランジュ「……貴方たちがランジュよりも、優秀なトレーナーだって言いたいの?」

侑「それを決めようって話。私たちと戦って、強い方がレックウザに挑戦する権利を得る。どうかな」

ランジュ「……いいわ。その話乗ってあげる」

ミア「ランジュ、いいのかい?」

ランジュ「どうせ私が勝つわ。全員相手してあげるから、まとめて掛かってきなさい」


ランジュちゃんは自信満々に言うけど、


せつ菜「さ、さすがにそれは出来ません……! 戦うなら一人ずつにしましょう!」


せつ菜ちゃんが困ったように声をあげる。


かすみ「ちょ……せっかく全員で戦えそうなのに……!」

しずく「かすみさん、ポケモンバトルで強い方を決めるならフェアに行かないと、めっだよ?」


しずくちゃんの言葉を聞いて、今度はミアちゃんが口を開く。


ミア「フェアって言うけど……まさかランジュと5人がそれぞれ戦って、そのうち1人でも勝ったらランジュの負け、なんて言うんじゃないよね」

ランジュ「別にランジュはそれでもいいんだけど?」

ミア「いや、ダメだ。ボクの育てたポケモンを使う以上、そのルールは認められない」


確かにミアちゃんの言うとおり、私たち全員が順番に戦って1回でも勝てば、こちらの勝ちなんてルールだとランジュちゃんが不利になりすぎる。


侑「こっちには5人のトレーナーが居るから、1人1戦ずつ……全部で5戦のうち、3勝した方が勝ちって言うのはどうかな」

ミア「……いいだろう。ただ、使用ポケモンは3匹でいいかな? ランジュはボクが育てたポケモンを使うんだけど、ボクのポケモンは基本的に3vs3のルール用にチューンされてるんだ。6vs6用のポケモンだと準備に少し時間が掛かるんだけど……」
53 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:12:35.24 ID:p9JQiW5R0

確かにバトル施設用のポケモンは3vs3を想定されていることが多い。今回はあくまで試合として申し込んでいる。

それに……ランジュちゃんは1人で戦う以上、使用ポケモンは被らせたくないだろうし、毎回6匹を選ぶのはさすがに負担も大きいからこその提案だろう。


侑「わかった。じゃあ、お互い使用ポケモンは3匹で」

ミア「あと同じ種類のポケモンの使用と、道具の使用はなし。持ち物はありだけど、同じ持ち物を持たせるのは禁止。ポケモンの交換は自由。これでいいかい?」

侑「うん、それで大丈夫」

ランジュ「それじゃ、誰が最初の相手かしら?」

侑「それは、ちょっと相談してもいいかな……?」

ランジュ「ええ、構わないわ。誰が出てきてもランジュが勝つだけだから!」

侑「うん、ありがとう、ランジュちゃん」


私はランジュちゃんにお礼を言って、みんなと共に作戦会議を始めた。





    🎹    🎹    🎹





侑「……ごめんね、勝手に決めちゃって」

せつ菜「いえ、素晴らしい機転だったと思います!」

歩夢「あのままだと、絶対に何も聞いてくれそうになかったもんね……」

侑「しずくちゃんも……フォローありがとう。助かったよ」

しずく「いえ、お力になれたようでなによりです」


私たちはレックウザを捕獲するつもりはないけど……ランジュちゃんに諦めてもらうにはこれしかなかった。


栞子「すみません……皆さんにまたご迷惑を……」

かすみ「もう、そういうのはいいの! とにかく、しお子は解決することだけ考えてれば!」

栞子「は、はい……! ありがとうございます……かすみさん」

かすみ「とりあえず、勝てばいいんだよね! あの人に!」

しずく「そうだね……私たち図鑑所有者5人で、3勝……」


しずくちゃんの言葉に対して、


かすみ「5人で3勝って言いますけど……もちろん、3勝するためのメンバーは決まってます!」


かすみちゃんがそう答える。


かすみ「かすみんと侑先輩とせつ菜先輩で、さっさと3勝して終わりにしましょう!」

せつ菜「確かに、この5人の中でバトルが得意なのは、私、侑さん、かすみさんですからね!」

リナ『じゃあ、まず誰が戦う?』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんの問いに、


かすみ「まずは、かすみんが1勝もぎ取ってきますよ!」


かすみちゃんが名乗り出た。
54 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:13:11.06 ID:p9JQiW5R0

侑「わかった! かすみちゃん、お願いね!」

栞子「かすみさん……よろしくお願いします……!」

かすみ「はい! まあ、軽く勝ってきますよ!」

せつ菜「ポケモンに持たせる道具は私が持っているものをお貸しします!」

かすみ「ありがとうございます! せつ菜先輩!」


かすみちゃんはせつ菜ちゃんからアイテムを受け取り、バトルの準備を始める──





    👑    👑    👑





ランジュ「最初の相手は貴方ね?」

かすみ「かすみんは貴方じゃないです! かすみんです!」

しずく「えっと……この子はかすみさんって言います。申し遅れましたが、私はしずくと言います」

ランジュ「かすみとしずくね。……私が倒すことになる子たちの名前。覚えておくわ」

かすみ「……ムッカ……! めっちゃ失礼ですねこの人……! いつまで、その余裕が続きますかね!」


かすみん、ボールを構えます。


ミア「ランジュ、今回のポケモン」

ランジュ「ありがとう、ミア」


ランジュ先輩はミア子からボールが3つ収められたケースを受け取り、こちらに向き直ります。


ランジュ「始めても良いかしら?」

かすみ「ええ、いつでもかかってきやがれです!!」

ランジュ「それじゃ、始めましょうか。露一手给你们看看」


2つのボールが放たれ……かすみん率いる図鑑所有者チームの先鋒戦、開始です!!





    👑    👑    👑





かすみ「行きますよ、ブリムオン!!」
 「──リムオンッ!!!」

ランジュ「ハッサム。行くわよ」
 「──ハッサムッ!!!」


かすみんの1番手はブリムオン、ランジュ先輩の1番手はハッサムです……!


ランジュ「“バレットパンチ”!!」
 「ハッサムッ!!!」


ハッサムが目にも止まらぬスピードで飛び出してきますが──
55 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:13:52.10 ID:p9JQiW5R0

かすみ「“サイコキネシス”!!」
 「リムオン!!!」

 「ハッサムッ…!!」


ブリムオンは周囲にサイコパワーを展開して、押し返す。


ランジュ「へぇ……!」


侑「先制技の“バレットパンチ”を防いだ……!」


かすみ「防御することだけを考えて展開すれば、狙いを定める必要がない分、速く展開出来ます!」


これも果南先輩に教わった戦法の一つ。

相手が高速の一撃を使ってくるとわかっている場合は、あらかじめ自分の周囲に強引に技を展開しておけば、防げるという寸法です!

名付けて力任せ防御! (もちろん、果南先輩命名ですよ?)


ランジュ「面白いことするじゃない!」

かすみ「どんどん行きますよ!! “マジカルフレイム”!!」
 「リムオンッ!!!!」


ブリムオンの周囲に出現した紫色の炎がハッサムに向かって飛んでいきます。


ランジュ「“しんくうは”!!」
 「ハッサムッ!!!」


ハッサムはそれを“しんくうは”で的確に撃ち落として行く。


かすみ「むむ……当たれば弱点なのに……!」

ランジュ「少しは楽しめそうな相手で安心したわ!」


そう言いながら、ランジュ先輩が耳に掛かった髪をかき上げると──そこには小さな宝石のようなものが。

あれって……!


かすみ「“キーストーン”……!」

ランジュ「ハッサム! メガシンカ!!」
 「ハッサムッ!!!」


ハッサムが光に包まれ──巨大なハサミを持ったメガハッサムへと姿を変える。


かすみ「め、メガシンカしても弱点は変わらないもん!」
 「リムオンッ!!!」


ブリムオンの周囲に再び“マジカルフレイム”が出現します。

ですが、メガハッサムはそれが飛び出すよりも前に突撃してきて──


ランジュ「“とんぼがえり”!!」
 「ハッサム!!!!」

 「リムオン…!!!」


ブリムオンに体当たりを食らわせながら、衝突の反動を使ってノックバックする。


かすみ「逃がしません!!」
 「リムオンッ!!!」


体勢を崩しながらもブリムオンは“マジカルフレイム”を発射しますが、
56 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:14:27.33 ID:p9JQiW5R0

ランジュ「ロトム! 受け止めなさい!」
 「──ロトー!!」


“とんぼがえり”でボールに戻ったメガハッサムの代わりに、洗濯機の姿をしたロトムが、“マジカルフレイム”を真正面から受け止める。


しずく「かすみさん!! ウォッシュロトムにはみずタイプがあるから、ほのお技の効果が薄いよ!!」


かすみ「わかってる!! “サイコショック”!!」
 「リムオンッ!!!」


ブリムオンは今度はロトムの周囲にサイコキューブを出現させるけど──


 「ロトト!!!」


ロトムは急に電撃を纏って飛び出し──その勢いを乗せたまま電撃を放ってくる。


ランジュ「“ボルトチェンジ”!!」
 「ロトト!!!!」

 「リムオンッ…!!!」


ロトムは電撃の塊をブリムオンにぶつかた後、ボールに戻っていく。


かすみ「また交換技……!?」


そして、ロトムの代わりに──


 「ハッサムッ!!!」


再び飛び出してきたメガハッサムが“サイコショック”を代わりに受け止める。

もちろん、はがねタイプのメガハッサムにはエスパータイプの“サイコショック”は効果が薄い。


ランジュ「全然効いてないわよ!」

かすみ「ぐ、ぐぬぬ……」


せつ菜「“とんぼがえり”と“ボルトチェンジ”を使って攻撃しながら、自分の苦手なタイプの攻撃を交換先が受け止める……よく考えられています」


かすみ「せつ菜先輩、何感心してるんですかぁーーー!?」


せつ菜「あ、すみません……つい……」


ランジュ「ふふ、オーディエンスもランジュの華麗なバトルに魅了されてるみたいね♪」

かすみ「なら、どっちにも通りやすいタイプで攻撃するだけです!! ブリムオン、“ぶんまわす”!!」
 「リムオンッ!!!!」


ブリムオンが頭に付いている触手を“ぶんまわす”。


ランジュ「ハッサム! こっちも“ぶんまわす”よ!」
 「ハッサム!!!」


伸びてくるブリムオンの触手を、メガハッサムのハサミが弾き返す。

距離を置いて牽制しながら──


かすみ「“シャドーボール”!!」
 「リムオン!!」


ハッサムにもロトムにも通る“シャドーボール”を発射する。
57 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:20:47.76 ID:p9JQiW5R0

ランジュ「“バレットパンチ”!!」
 「ハッサムッ…!!!」


ランジュ先輩は、影の球を弾丸のような拳で相殺しようとしますが──“ぶんまわす”の相殺をした直後で判断が少し遅れたようです。

“シャドーボール”を散らし切ることが出来ず、影の球がハッサムのハサミを飲み込むように包み込んだあと、爆発して、


 「サムッ…!!!」


ハッサムにダメージを与える。


かすみ「よし、いいよ! ブリムオン!」


手応えありです……!


しずく「……っ……!」


しず子が息を飲む声が後ろから聞こえてくる。


かすみ「ふふ……どうですか、かすみんの華麗な作戦でオーディエンスを魅了し返してやりましたよ!」


しずく「……かすみさんが……っ……複雑なタイプ相性を理解してる……っ……」


かすみ「何に感動してんの、しず子ぉーーー!!!?」


かすみんのオーディエンスは失礼な人しか居ないんですか!?


ランジュ「確かにあくタイプやゴーストタイプなら、ハッサムにもロトムにも通るけど……」
 「ハッサムッ!!!!」

ランジュ「それじゃ、威力が足りないわ!」
 「ハッサムッ!!!」


ハッサムが再び突っ込んでくる。

また、“とんぼがえり”……! でもやってくることがわかるなら──


かすみ「サイコショック!!」
 「リムオンッ!!!」


最初からロトムに向かって使う技を準備しておくだけ……!!

だけど、メガハッサムが使ってきたのは──


ランジュ「“アイアンヘッド”!!」
 「ハッサムッ!!!」

 「リムオンッ…!!?」
かすみ「“とんぼがえり”じゃない!?」


アイアンヘッドに吹っ飛ばされるブリムオン。

一方メガハッサムは、遅れて襲い掛かってくる、“サイコショック”を難なく耐える。


ランジュ「そんな単調な攻撃しないわ!」

かすみ「く……」
 「リ、リムオン…ッ」

ランジュ「あら……? 弱点の攻撃なのに耐えたのね……。……“リリバのみ”ね」


“リリバのみ”ははがねタイプの攻撃を1回だけ半減する“きのみ”です。

持たせておいてよかった……。
58 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:21:44.36 ID:p9JQiW5R0

ランジュ「でも、“リリバのみ”が使えるのは一回きり。もう次はないわよ!」
 「ハッサムッ!!!!」


ハッサムが突っ込んでくる。


かすみ「力任せ防御ですぅ〜!」
 「リムオンッ!!!」


突っ込んでくるメガハッサムをサイコパワーで無理やり押し返す。

今回は“とんぼがえり”だったらしく、メガハッサムがボールに戻り、


 「──ロトト」


再びロトムが飛び出してくる。


ランジュ「ふふ、その防御、確かにすごいけど……連発出来ないのかしら?」

かすみ「……ギクッ」

ランジュ「やっぱり図星みたいね」


確かに、この力任せ防御は、文字通り力任せにサイコパワーを解放する分、かなり無駄も多い。

防御範囲は広いけど……連発すると、すぐにブリムオンがバテちゃうという欠点があります。


かすみ「でも、かすみん考えましたよ!! そもそも、こっちの攻撃が遅いのが原因なんです!! 上さえ取っちゃえば、関係ありません! “トリックルーム”!!」
 「リムオンッ!!」


周囲の空間が歪み始める。


かすみ「こうすれば素早さは逆転です!! ブリムオン──」


逆転した素早さで、攻撃に転じようとした──そのとき、


ランジュ「“ハイドロポンプ”!!」
 「ロトーーーーッ!!!!!」

 「リムオンッ…!!!?」
かすみ「……!?」


ブリムオンが強烈な水流によって、吹っ飛ばされた。


かすみ「ぶ、ブリムオン……!!」


かすみんは吹っ飛ばされたブリムオンに駆け寄りますが──


 「リ、リム…オン…」


ハッサムの攻撃によって、体力を削られていたこともあって……耐えきれずに戦闘不能になってしまいました。


かすみ「そ、そんな……」

ランジュ「確かに、対抗策としては間違ってないけど……“トリックルーム”は展開するのには隙がある。その間に大技を撃ち込ませて貰ったわ。少し判断が遅かったわね」

かすみ「……ぐぬぬ……」


かすみんはブリムオンをボールに戻しながら立ち上がります。


かすみ「相手はウォッシュロトム……それなら、とにかく相性がいいので速攻片を付けますよ!! ジュカイン!!」
 「──カインッ!!!!」
59 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:22:17.31 ID:p9JQiW5R0

かすみんは2匹目にエースのジュカインを投入します。

でも、


せつ菜「かすみさんっ!? 今、ジュカインはまずいです!!?」


後ろから、せつ菜先輩の声が響く。


かすみ「へ?」


しずく「かすみさん!! まだ、“トリックルーム”中……!!」


かすみ「…………しまった……!?」


“トリックルーム”の中では遅いポケモンほど速く、速いポケモンほど遅くなる。

そして、ジュカインは──とびきり速い、高速アタッカー。


ランジュ「ここでミスなんて、勝つ気あるのかしら? ロトム!! “ボルトチェンジ”!!」
 「ロトトトトッ!!!!」

 「カインッ…!!!」


ジュカインが“ボルトチェンジ”を受け、そして代わりに出てきたハッサムがボールから飛び出す──

それと同時に──かすみんは思わずニヤッと笑ってしまった。


かすみ「ミスなんて……──してるわけないじゃないですか〜♪」


直後、攻撃を食らったジュカインの姿がブレる。


ランジュ「……なっ!?」

かすみ「“かえんほうしゃ”!!」
 「──ゾロ、アーーーーークッ!!!!!!」

 「ハッサムッ…!!!?」


ジュカインもとい──ゾロアークが噴き出した“かえんほうしゃ”が交代先のメガハッサムに直撃した。


ランジュ「ジュカインじゃなくて、ゾロアーク……!? く……!! ハッサム……!!」
 「ハッ…サムッ!!!!」


とびきり苦手な炎の中から、ハッサムが気合いで飛び出してくる。

──もちろん、それも想定済み。

この技の切りどころは──ここです……!!


ランジュ「“バレットパンチ”!!」
 「ハッサムッ!!!」

かすみ「“みきり”!!」
 「ゾロアークッ!!!!」


ゾロアークがハッサムの拳を、掠めるように回避し、


かすみ「“ナイトバースト”!!」
 「ゾロアーーークッ!!!!」

 「ハッサムッ…!!!?」


メガハッサムにトドメの一撃を食らわせたのでした。

“かえんほうしゃ”を受けた直後に、ダメ押しの“ナイトバースト”を食らったメガハッサムは──
60 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:32:23.61 ID:p9JQiW5R0

 「ハッ…サムッ…」


さすがに耐えきれずに崩れ落ちたのでした。


ランジュ「う、嘘でしょ……」

かすみ「いやぁ〜良い顔になったじゃないですか!」

ランジュ「……ちょっと驚いただけよ」


そう言いながらランジュ先輩は、


 「──ロトト!!!」


再びロトムを繰り出す。


ランジュ「まだ、“トリックルーム”は継続中よ……!」


確かにロトムの方がゾロアークより遅いポケモンなので、このままだと、ロトムの方が“トリックルーム”の中では速く動けることになりますが──


かすみ「ん〜、でもでも〜、そのゾロアークはどこに行っちゃったんでしょうかね〜?」

ランジュ「え……?」


ランジュ先輩はかすみんの言葉にハッとする。

気付けばゾロアークがフィールド上から姿を消していた。


ランジュ「ゾロアークはどこ……!?」
 「ロ、ロト…」

かすみ「正解は〜……森の中でーす♪」

 「──ゾロアークッ!!!!」


ゾロアークがロトムの横にある木の陰から勢いよく飛び出す。


ランジュ「!?」
 「ロトッ!!!?」

かすみ「“はいよるいちげき”!!」

 「ゾロアーーークッ!!!!」

 「ロトトッ…!!!」


猛スピードでロトムの背後を取ったゾロアークが鋭い爪で切り付ける。

ロトムは怯みながら、ゾロアークから離れる。


かすみ「タフですね〜……」


よく見たらロトムは“オボンのみ”を食べて回復を試みていた。

どうりでタフなわけです。


ランジュ「なんでそんなに速いの……!? “トリックルーム”はまだ続いてるはずなのに……!?」

かすみ「自分で使うのに、“トリックルーム”の生かし方をわかってないわけないじゃないですか〜♪」


逃げるロトムを、


 「ゾロアーークッ!!!!」
61 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:33:09.51 ID:p9JQiW5R0

ゾロアークが、猛スピードで追いかける。


かすみ「“ナイトバースト”!!」

 「ゾロアーークッ!!!!」

ランジュ「“じゅうでん”!!」

 「ロトトッ!!!」


ロトムは咄嗟に“じゅうでん”し、自分の特防を高めて、“ナイトバースト”を受け止めますが、


かすみ「“うっぷんばらし”!!」

 「ゾロアーーークッ!!!!!」

 「ロトッ…!!!」


今度は“うっぷんばらし”を叩き付ける。

“うっぷんばらし”は直前に能力を上げた相手への威力が倍増する技です!!

ですが、ロトムはかなりタフで──


 「ロ、ロトト…!!!」


満身創痍ながら、どうにか耐えて逃げ出す。

それと同時に──周囲の歪んだ空間が元に戻る。

“トリックルーム”の時間が終わったらしい。それと同時に、ゾロアークの動きが遅くなる。


かすみ「おっとと……それじゃ、“こうそくいどう”!!」

 「ゾロアーークッ!!!!」


遅くなった素早さをフォローするように、“こうそくいどう”で素早さを上げて、再びロトムを猛追し始める。


ランジュ「ロトム!! “ほうでん”!!」
 「ロトト!!!」


追いかけるゾロアークに対して、範囲攻撃の“ほうでん”で牽制してきますが──さっき食らわせた“はいよるいちげき”の効果で特攻が下がっていることもあり、ゾロアークの勢いを止めるに至らない。


ランジュ「く……!!」

かすみ「さぁ、決めますよ……!!
 「アーーークッ!!!!」


ゾロアークがロトムに向かって飛び掛かり、


かすみ「“ナイトバースト”!!」
 「ゾロ、アーーーークッ!!!!」

 「ロトーーーーッ…!!!?」


ロトムに暗黒の衝撃波を直撃させる。

度重なる攻撃によって、


 「ロ、ロト、ト…」


ロトムは力尽きて墜落したのでした。


ランジュ「……ロトム、戻りなさい」
62 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:34:07.67 ID:p9JQiW5R0

ランジュ先輩はロトムをボールに戻しながら、悔しそうにする。


ランジュ「……貴方のゾロア―ク……妙に遅かった。……“ルームサービス”ね」

かすみ「そーゆーことです!」


かすみんはえっへんと胸を張ります。

“ルームサービス”は“トリックルーム”の中に入ると発動して、自分の素早さを下げてくれる道具です。

“トリックルーム”の中で素早さが下がるということは……つまり、“トリックルーム”の中で速くなるということ。

欠点としては、“トリックルーム”が切れたあとも素早さが下がりっぱなしだってことなんですけどね……。


ランジュ「……あの“トリックルーム”の中で間違えてジュカインを出したように言ったのも演技……。……騙されたわ」

かすみ「ふふん♪ どんなもんですか〜♪」


かすみん、果南先輩に稽古を付けてもらって、パワーファイトが出来るようになりましたけど、やっぱり一番得意なのは化かし合いなんですよね〜♪

さぁ、これでランジュ先輩の手持ちは残り1匹です……!





    🎹    🎹    🎹





せつ菜「かすみさん……すごいです……! 一瞬で劣勢を覆してしまいました……!」

しずく「かすみさんの戦い方は心臓に悪いです……」


確かに危なっかしい戦い方に見えるけど……かすみちゃんは劣勢の中でも諦めないどころか、逆転の展開を作り出せる。

半年前に比べて、その戦い方にさらに磨きが掛かっている気がする。


侑「なにはともあれ、これでランジュちゃんのポケモンはあと1匹……!」


そんな中、ミアちゃんが、


ミア「……ランジュ。何苦戦してるんだよ」


ランジュちゃんに向かって文句を口にする。


ランジュ「ちょっと油断したわ」

ミア「……まさか、負けるなんて言わないよね」

ランジュ「まさか。それこそありえないわ」


そう言って、ランジュちゃんは3匹目のボールをフィールドに向かって放り投げた──





    👑    👑    👑





かすみ「さぁ、この調子で勝ち切るよ! ゾロアーク!」
 「ゾロアーークッ!!!」


さぁ、ランジュ先輩の3匹目は……!
63 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:34:57.12 ID:p9JQiW5R0

 「──ラティ…」

かすみ「……ん……」


見たことがないポケモンだった。

青と白のボディで長い首と滑空出来そうな大きな翼が特徴のポケモン。

ただ、他のみんなはあのポケモンが何か知っていたようだった。


しずく「ラティ……オス……?」

侑「う、うそ……」

せつ菜「ラティオス……!? 伝説の……ポケモン……!?」


かすみ「え? 伝説のポケモン……!?」


かすみんは図鑑を開いて確認する。

 『ラティオス むげんポケモン 高さ:2.0m 重さ:60.0kg
  見た ものや 考えた イメージを 相手に 映像として
  見せる 能力を 持つ。 腕を 折り畳むと 空気抵抗が
  減って ジェット機 よりも 速く 空を 飛ぶことが出来る。』


ランジュ「そうよ。半年前からこの地方に現れ始めた、伝説のポケモンの1匹よ!」

かすみ「で、伝説だかなんだか知りませんけど……! かすみんたち、ウルトラビーストも倒したことあるんですからね!! 行くよ、ゾロアーク!!」
 「ゾロアーークッ!!!」


かすみんの指示で、ゾロアークが飛び出します。

ですが──


 「ラティ…!!!」


ラティオスは、まさに目にも止まらぬスピードで飛び出し、飛び掛かるゾロアークを避けながら、空に飛び立っていきます。


かすみ「逃がしちゃだめ!! “スピードスター”!!」

 「ゾロアーーークッ!!!!」


空に逃げるラティオスに向かって、星型のエネルギー弾を発射する。


ランジュ「“ラスターパージ”!!」

 「ラティッ!!!!」


ですが、ラティオスが眩い光を放つと、その光に飲み込まれるようにして、“スピードスター”は掻き消えてしまう。

そして、空にいるラティオスの口に──ドラゴンのエネルギーが集束を始める。


かすみ「や、やば……!?」

ランジュ「“りゅうのはどう”!!」

 「ラーーーティィッ!!!!!」


空から猛スピードで“りゅうのはどう”が降ってくる。

避ける余裕もなく──


 「ゾロアーーークッ…!!!!」


ゾロアークに攻撃が直撃した。
64 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:35:58.60 ID:p9JQiW5R0

かすみ「ゾロアーク……!?」

 「ゾロ…アーーク…」


連戦のダメージもあったせいか、ゾロアークは一撃で戦闘不能になってしまった。


かすみ「も、戻って……!」

 「ゾロ、アーク…──」

ランジュ「さぁ、これでイーブンね」


かすみんは3匹目のボールに手を掛ける。

ただ、3匹目はゾロアークが“イリュージョン”をしていた時点で、確定しています。


かすみ「行くよ、ジュカイン!」
 「──カインッ!!」

かすみ「メガシンカ!!」


“メガブレスレット”を光らせ、ジュカインをメガシンカさせる。


 「カァァインッ!!!!」


まずは地面に叩き落とす……!!


かすみ「ジュカイン!!」
 「カインッ!!!」


ジュカインは周囲の木を猛スピードで登り──木のてっぺんから、ラティオスに向かって踏み切る。

飛び掛かってくるジュカインに向かって、


ランジュ「ラティオス!! “りゅうのはどう”!!」

 「ラーーティィッ!!!!」


先ほどと同じ技の“りゅうのはどう”。


かすみ「ならこっちも“りゅうのはどう”です!!」

 「カァーーーインッ!!!!!」


ジュカインも口から“りゅうのはどう”を発射し、空中でお互いのドラゴンエネルギーが衝突する。

お互いのエネルギーが空中で爆ぜ、空気を震わせる中──


 「カァインッ!!!!」


ジュカインは空中で身を捩って、尻尾をラティオスに向け──


かすみ「“リーフストーム”!!」

 「カインッ!!!!」


“リーフストーム”を纏ったしっぽミサイルを発射する。

爆発する“りゅうのはどう”が目くらましになったのか──


 「ラティッ…!!!」
65 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:36:37.39 ID:p9JQiW5R0

しっぽミサイルがラティオスに直撃し、体勢を崩させる。

さらに畳みかける……!!

ジュカインはさらに身を捻り──


かすみ「“ソーラーブレード”!!」

 「カァインッ!!!!」


特大の陽光剣を横薙ぎに振るう。


ランジュ「ラティオス!! “サイコキネシス”!!」

 「ラティィッ!!!!」


だけど、ラティオスはサイコパワーで力場を発生させ、無理やり“ソーラーブレード”を押し止める。


ランジュ「“れいとうビーム”!!」

 「ラァァーーーティィィィッ!!!!!」

かすみ「い……っ!? それはヤバイです!? ジュカインっ!!」

 「カインッ…!!!」


ジュカインは“ソーラーブレード”を解除し、背中にある空気の詰まったタネを爆発させて、空中で無理やり軌道を変えて、“れいとうビーム”を回避する。

外れた“れいとうビーム”は森の木に当たって、一気に凍り付かせていく。


栞子「ら、ランジュ……!! 自然を傷つけてはいけません!!」


ランジュ「ええ!? バトル中に無茶言わないでよ!?」

かすみ「大丈夫だよ、しお子!!」

 「カインッ!!!」


着地したジュカインが、背中のタネを凍り付いた木に投げつけると──メキメキと音を立て、表面の氷を割り砕きながら急成長を始める。

そして、その木はそのまま空中のラティオスを絡め取る。


 「ラティ…!!!?」

ランジュ「な……!?」

かすみ「さぁ、捕まえましたよ……!! ジュカイン!!」
 「カインッ!!!!」


ジュカインが集束“ソーラーブレード”を作り出す。

ランジュ先輩はそれが大技だと一瞬で判断したのか──


ランジュ「ラティオス!! “りゅうせいぐん”!!」

 「ラティッ…!!!」


ラティオスが“りゅうせいぐん”を降らせ、自身を絡め取っている木を流星で破壊し始める。

ジュカインはその間に、再び木を駆け上がり──集束“ソーラーブレード”で流星を斬り裂きながら、ラティオスへと迫る。

あと、少しで届く……!! そんな距離に迫ったところで、


 「ラティッ…!!!」


拘束から逃れたラティオスが、ジェット機のようなスピードで飛び出し、ジュカインの攻撃をギリギリのところで回避する。
66 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:37:18.87 ID:p9JQiW5R0

かすみ「逃がさない……!! “スケイルショット”!!」

 「カァインッ!!!!」


ジュカインが全身から鱗を発射する。


ランジュ「“ラスターパージ”!!」

 「ラティッ!!!!」


逃げるラティオスに迫っていく鱗が、“ラスターパージ”で蹴散らされる。


かすみ「逃がさないって言ってんでしょ!!」

 「カァインッ!!!!」


ジュカインが森の樹上から、特大の“ソーラーブレード”を縦薙ぎに振るう。


 「ラティッ…!!!?」


──やっと捉えた……!!

“ソーラーブレード”によって、森に墜落するラティオス。

今すぐ追撃をと思い、地上に降りてきたジュカインと一緒に走りだろうとした瞬間──


 「ラティッ!!!!」

 「カインッ…!!!?」


ラティオスは低空飛行で森の木々を掻い潜りながら、ジュカインに突撃してきた。


 「カインッ…!!!」


突き飛ばされながらも、ジュカインは受け身を取るけど──


ランジュ「“ドラゴンクロー”!!」

 「ラティッ!!!」


ラティオスはそこに畳みかけるように、竜の爪で引き裂こうとしてくる。


かすみ「“リーフブレード”!!」
 「カインッ!!!」


──ギィンッ!! 硬い物がぶつかり合う音が森の中に響き渡る。


 「カインッ…!!!」
 「ラティッ…!!!」


2匹の斬撃が鍔迫り合う中、


 「ラティッ!!!」


ラティオスが、口を開く。


ランジュ「“りゅうのいぶき”!!」
 「ラーーーティィィッ!!!」

 「カァインッ…!!!?」
かすみ「ジュカイン!?」
67 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:38:13.17 ID:p9JQiW5R0

顔に“りゅうのいぶき”を直撃させられ、体勢を崩したジュカインは“ドラゴンクロー”に弾かれるようにして、地面を転がる。


ランジュ「“サイコキネシス”!!」
 「ラーーーティィィッ!!!」


そして、そこに畳みかけるようにサイコパワーが衝撃波となって、ジュカインに襲い掛かってくる。が、


かすみ「集束ッ!!!」
 「カインッ!!!!」


ジュカインは受け身を取って立ち上がり、すぐさま集束“ソーラーブレード”を構える。


かすみ「諦めなければッ!! 斬れないものなんてないッ!!!!」
 「カインッ!!!!!」


ジュカインは、“サイコキネシス”を──真っ向から斬り裂いた。


ランジュ「嘘……!?」
 「ラティ…!!!?」


まさか、“サイコキネシス”という実態のないものを、斬り裂かれて無効化されると思っていなかったであろうランジュ先輩とラティオスは、驚きの表情を見せる。


かすみ「そのまま、斬り裂けぇッ……!!」
 「カインッ!!!!」


ジュカインが集束“ソーラーブレード”を構えて、ラティオスに斬りかかる。


ランジュ「ラティオス!! 加速しなさい!!」
 「ラティ…!!!」


ラティオスは逃げるどころか、ジュカインに向かって急加速し──


 「ラティッ!!!」


ジュカインの太刀筋を掠めるように、身を逸らしながら、横を通り過ぎる。

が──


 「ラティッ…!!」


ラティオスが苦悶の表情を浮かべながら墜落し、地面を滑る。

ジュカインの太刀を躱しきれなかったらしく──翼に斬り傷が入っていた。


ランジュ「ラティオス……!」
 「ラ、ラティ…!!」


翼に斬撃を受けたラティオスはもうさっきみたいに自由に飛べない。


かすみ「これで……終わりです!!」
 「カインッ!!!!」


ジュカインがラティオスに最後の一太刀を振り下そうとした──瞬間。


 「カ、インッ…!!!」
かすみ「……え……!?」


ジュカインの体を──上から何かが押しつぶした。


 「カ、カイ…ン…」
68 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:40:40.66 ID:p9JQiW5R0

それが決定打となり──ジュカインはその場で倒れてしまったのだった。


かすみ「え、な、なに……?」

ミア「……未来に攻撃してたみたいだね」


ミア子の言葉で、なんとなく何をされたのかを理解した。


かすみ「“みらい……よち”……」


ランジュ先輩は、逃げ回っていたように見えて……ラティオスに攻撃を設置させていたということだ。


かすみ「……あと……ちょっとだったのに……」


私は、思わず膝をついてしまった。

……そのとき、


ランジュ「……かすみーっ!!」

かすみ「わひゃぁっ!!?」


ランジュ先輩が抱き着いてきた。


かすみ「え、なに!? なんですか!?」


意味が解らず、目をぱちくりとさせてしまう。


ランジュ「かすみ、すごかったわ!! このランジュがこんなにギリギリの戦いを強いられるなんて思わなかった!! すっごく楽しいバトルだったわ!!」

かすみ「え……は、はぁ……」


ランジュ先輩は目をキラキラと輝かせながら、最初の態度が嘘のように、かすみんのことを賞賛していた。


ランジュ「ねぇ、またバトルしましょう! かすみとなら、また楽しいバトルが出来ると思うわ!」

かすみ「え、えっと……は、はい……?」


──ランジュ先輩は心の底から、またかすみんとバトルがしたいと言っていた。

なんというか……あまりに天真爛漫というか、無垢というか、その素直な言葉は……嘘というものを全く感じさせないものだったんです。


かすみ「……あ、あの……ランジュ先輩……そろそろ離してください。……かすみんたち、敵同士なんですから……」

ランジュ「あら、ランジュはもう敵とは思ってないんだけど……こんなに楽しいバトルが出来るなら、ランジュはかすみとお友達になりたいわ!」

かすみ「…………」


なんか調子狂いますねぇ……。


かすみ「とにかく……離してください……」

ランジュ「もう……仕方ないわねぇ……」


やっとの思いでランジュ先輩を引き剥がすのと同時に、かすみんたちのもとに──


しずく「かすみさん……!!」


しず子たちが駆け寄ってくる。
69 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:41:26.02 ID:p9JQiW5R0

せつ菜「かすみさん! ナイスファイトでした!」

侑「うん! すっごく熱いバトルだったよ! すっごくときめいちゃった!」

かすみ「でも……負けちゃいました……」

歩夢「大丈夫だよ、かすみちゃんの頑張り……ちゃんと伝わったから!」

かすみ「皆さん……」

栞子「かすみさん……全力で戦ってくれて、ありがとうございました」

かすみ「うぅん……ごめん。負けちゃって……」

栞子「いえ……そんな……気に病まれないでください」


かすみん、勝ちをもぎ取ってくるって言ったのに……さすがにちょっと凹みます……。


ミア「何はともあれ、まずはランジュの1勝だ。異論はないね」

かすみ「……認めたくはありませんけど……。……かすみんの負けです……」

ランジュ「それじゃ、次は誰が相手してくれるのかしら?」

ミア「あれだけのバトルの後に連戦するつもりか? 今日はここまでだ」

ランジュ「ええ? なんでよ? ランジュ、まだ戦えるわよ?」

ミア「ベストコンディションで戦えた方が、ランジュも楽しいだろ?」

ランジュ「……それもそうかもしれないわね」


ランジュ先輩はミア子の言葉に納得して頷く。


ミア「というわけで、次の試合は後日でいいかい?」

侑「わかった」

せつ菜「では、次の試合の場所と日取りは……」

ミア「なら次の龍脈の地にお互いがたどり着いたタイミングでどうだい? どうせ、お互い龍脈を巡る必要があるんだし」

侑「……わかった。みんなもそれでいいかな?」


侑先輩の確認に、全員が頷く。


ミア「それじゃ、また後日。龍脈の地で第二試合ってことで」

ランジュ「次のバトルも楽しみにしてるわ!」


そう残して、二人は森をホシゾラシティ方面へと歩いて行ってしまうのでした……。





    👑    👑    👑





せつ菜「そういえば龍脈の地というのは複数あるんですよね? 私たちとランジュさんたちで、別々の場所に行ってしまったりしないんですか?」


せつ菜先輩の疑問に、


栞子「いえ……龍脈には順番があるので、ここの龍脈エネルギーを集めきった宝珠は次の龍脈を指し示すはずです」


しお子がそう答える。
70 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:42:01.82 ID:p9JQiW5R0

かすみ「それじゃ、とりあえず次の龍脈を探しますか……?」

侑「いや……さすがに今日はもう休んだ方がいいかな。かすみちゃんもあのバトルの後に探索はきついだろうし」

歩夢「それじゃ、今日はコメコに泊まろっか」

リナ『それがいいかもしれないね』 || ╹ ◡ ╹ ||

せつ菜「私、ひとっ走り行って、宿がないか探してきますね!!」


言うが早いか、せつ菜先輩はコメコシティに向かって走り出してしまった。


侑「あ、せつ菜ちゃ……行っちゃった」

歩夢「私たちも行こっか」

かすみ「そうですねー……」


みんなでぞろぞろと移動しようとした、そのとき、


しずく「あ、ちょっと待ってください」


しず子が声をあげる。


かすみ「どしたの? しず子」

しずく「えっと……私とかすみさんは、少し用事があるので、先に行ってもらってもいいですか?」

かすみ「え?」


用事……? そんなのあったっけ……?


侑「構わないけど……暗くなる前には、コメコに来るんだよ? 夜の森は危ないから……」

しずく「はい、心得ています」

栞子「それでは……お先に失礼します」

歩夢「二人とも、また後でね」


皆さんは、かすみんたちを残して、コメコに向かって行ってしまった。


かすみ「……んで、用事って何? なんかコメコの森でやることなんてあったっけ?」


かすみんが小首を傾げながら訊ねると──急にしず子に抱きしめられた。


かすみ「し、しず子……?」

しずく「……もう、大丈夫だよ」

かすみ「いや、だから、何が……」

しずく「私しか居ないから」

かすみ「……ぇ……」

しずく「ホントは……泣くほど悔しいのに、我慢してることくらい……わかってるから」

かすみ「………………ぁ」


しず子にそう言われた途端──意識して考えないようにしていた感情が、どんどん胸の奥底から溢れ出してきて、


かすみ「…………ぅ…………ぐす…………」


ポロポロポロポロと涙が零れ出す。
71 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:42:40.99 ID:p9JQiW5R0

かすみ「…………かす、みん…………っ…………ホントは……勝たなきゃ……いけなかったのに……っ…………ひっく…………っ…………」

しずく「…………うん」

かすみ「…………みんなのため、に……勝たなきゃ…………いけなかったのに……っ……」


大事な初戦だったはずなのに……。


かすみ「…………わた、し……まけ、ちゃった……っ……」

しずく「…………でも、かっこよかったよ……」

かすみ「…………かた、なきゃ……っ、だめだったのに……っ」

しずく「…………よしよし…………大丈夫だよ…………」

かすみ「…………わた、し…………まだ、よわ、くって……っ」

しずく「そんなことないよ……かすみさんは強い……私が保証する」

かすみ「…………ぅ……ぇぐ……っ……ぃっぐ……っ……」

しずく「……よしよし……」

かすみ「…………ぅぇぇぇぇぇ……っ……」


静かな静かなコメコの森に……かすみんの泣く声が、静かに響くのだった──





    🎹    🎹    🎹





コメコシティに着くと、


せつ菜「皆さーん!!」


せつ菜ちゃんがこちらに駆けてきた。


せつ菜「ちょうど3人部屋が2部屋だけ残っていました! 運がよかったです!」

リナ『ギリギリだったね。コメコは宿が少ないから……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||


そういえば、前も宿探しには困ったことがあったっけ……。


侑「ありがとう、せつ菜ちゃん」
 「ブイ♪」

せつ菜「いえ! どういたしまして!」


とりあえず、宿は確保出来た……。

そんな中──


栞子「…………」


栞子ちゃんがしきりに周囲をキョロキョロと見ていることに気付く。
72 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:43:26.34 ID:p9JQiW5R0

歩夢「栞子ちゃん? どうかしたの?」

栞子「あ、いえ……。……この町には随分ポケモンが多いなと思いまして……」

せつ菜「確かに、コメコは町中にいるポケモンがすごく多いところかもしれません」

侑「この町は、ポケモンと一緒に生活してる町だからね」
 「イブィ」

栞子「ポケモンと一緒に……ポケモントレーナーがたくさんいるということですか?」

歩夢「うぅん、そうじゃなくて……ポケモンと一緒に農業をしながら毎日暮らしてるんだよ」

栞子「い、今でもですか……?」

歩夢「うん、そうだよ。町の北側に行くと、大きな農業地帯と牧場があって、そこだともっと多くのポケモンが人と協力して毎日頑張ってるんだよ♪」

栞子「ほ、本当ですか……?」


栞子ちゃんは目を丸くする。


栞子「……今の時代は……人と関わるほとんどのポケモンが、モンスターボールに入って、人に従っているんだと思っていました……」

歩夢「そんなことないよ? 私の家も、一緒に住んでる子たちは常にボールの外に居たし……」

せつ菜「人とポケモンは、お互いこの地方に生きる仲間ですからね。私の住んでいるローズシティみたいに、ポケモンが街中に居ない方がむしろ特殊なくらいです」

リナ『コメコはローズとは真逆かもね。この町は何百年も前から、ポケモンと共に生きてきて、その形が今も続いてる町だから』 || ╹ ◡ ╹ ||

栞子「そう……なのですね……」


栞子ちゃんはそう言いながら、町中を歩いているドロバンコを目で追いかけている。


歩夢「……気になるなら、今からコメコ牧場に行ってみる?」

栞子「え、い、いいのですか……!?」

歩夢「うん♪ コメコ牧場は私も好きだから、栞子ちゃんにも知って欲しいなって♪」

せつ菜「確かに、見られるときに見ておくのはいいことだと思いますよ」

侑「そうだね。せっかく、朧月の洞の外に居るんだし……この機会に、この地方のいろんなものに触れてみるのもいいかもしれないね」

栞子「……はい。あの……よ、よろしくお願いします……歩夢さん……!」

歩夢「うん♪ それじゃ私、栞子ちゃんと牧場まで行ってくるね!」

せつ菜「それでは私は夕食の準備をして待っていますね!!」

歩夢「……みんなでコメコ牧場まで行こっか♪ 牧場の搾りたての“モーモーミルク”を使ったメニュー、エマさんにたくさん教えてもらったんだ♪ 私がみんなに作ってあげるね♪」

せつ菜「え……? 急にどうされたんですか……?」

リナ『今、しずくちゃんにメッセージ送っておいた。コメコ牧場集合って』 ||;◐ ◡ ◐ ||

歩夢「うん、ありがとうリナちゃん♪ それじゃ、せつ菜ちゃん、コメコ牧場に行こっか♪」

せつ菜「歩夢さん……? どうして、私の腕を引っ張るんですか……?」
73 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:44:21.31 ID:p9JQiW5R0

歩夢がせつ菜ちゃんをぐいぐいと引っ張りながら、コメコ牧場の方へと歩いて行く。


リナ『……危うく死人を出すところだった……』 ||;◐ ◡ ◐ ||

侑「……? 歩夢、どうかしたのかな……?」

リナ『知らない方がいいこともある』 ||;◐ ◡ ◐ ||

侑「……?」

栞子「え、えっと……それでは、私たちも参りましょうか」

侑「……まあ、うん。そうだね」


私たちは、社会見学がてら……コメコ牧場へと向かうのであった。


せつ菜「は……! 歩夢さん!! 私今、“モーモーミルク”を使ったとびっきりのメニューを思いつきましたよ!!」

歩夢「うん♪ 私が見てるから、絶対に、一緒に作ろうね♪」



74 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:44:55.47 ID:p9JQiW5R0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【コメコシティ】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___●○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口
75 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/14(土) 11:45:30.40 ID:p9JQiW5R0

 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:271匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.68 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.64 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.64 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:250匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.84 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.78 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.75 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.74 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.76 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:295匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.68 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.68 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.68 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.68 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.68 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:276匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:198匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.70 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.68 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.68 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



76 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:15:53.93 ID:E7iRZ/bz0

■ChapterΔ005 『漣の戦場』 【SIDE Yu】





──翌日。


歩夢「栞子ちゃん。方向は……やっぱり、東?」

栞子「はい……。……“もえぎいろのたま”の反応は……まだ東方面ですね……」


コメコの森で龍脈のエネルギーを吸収した“もえぎいろのたま”は、コメコの森よりもさらに東に反応を示していた。

今はすでにホシゾラシティを飛び越えて、スタービーチまで来ている。


しずく「となると……行き先はフソウ島でしょうか」

せつ菜「そうですね……。スタービーチより東となると、フソウ島くらいしかありませんから」

リナ『海の底という説を除けばそうなるね』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「リナ子……怖いこと言わないでよ」

侑「それじゃ、とりあえずフソウタウンを目指そうか」
 「ブイ」

歩夢「そうだね」


私たちは目的地をフソウタウンに設定して、次の龍脈に向かいます──





    🎹    🎹    🎹





──フソウの港に降り立つ。

するとすぐに出店が見えてくる。


栞子「なんだかすごく人が多いですね。今日はお祭りがあるのでしょうか?」


行き交う人々とポケモンを見て、栞子ちゃんがそんな風に言う。


せつ菜「いえ、フソウはいつもこんな感じですよ」

栞子「え?」

かすみ「フソウは毎日お祭りみたいな町ですからね〜」

しずく「毎日ポケモンコンテストの大会が開催されていて、観光地としてとても有名な場所なんです。今日は大きな大会がないから、控えめなくらいで……」

栞子「こ、これで控えめなんですか……!?」


栞子ちゃんがコメコのとき同様、目を丸くする。


歩夢「ふふ♪ せっかくだから、一緒に屋台回ってみる?」

栞子「い、いえ……! そんなことをしている場合ではありません! 早く龍脈を見つけないと……」


と言いながら、栞子ちゃんの視線はバニプッチアイスの屋台に惹かれている。
77 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:16:28.15 ID:E7iRZ/bz0

かすみ「しお子、バニプッチアイス気になるの?」

栞子「え? い、いえ、その……。……コットンアイスとどう違うのかなと思っただけで……」

かすみ「屋台は気になったら、とりあえず買って食べるのが一番いいんだよ! 行こう♪」

栞子「え、えぇ!?」

かすみ「おじさ〜ん♪ バニプッチアイスくださ〜い♪」


かすみちゃんが栞子ちゃんの手を引いて、駆け出して行く。


歩夢「私も栞子ちゃんとかすみちゃんのこと、ちょっと見てくるね」

侑「うん、お願いね、歩夢」

歩夢「はーい♪」

 「ブイブイ」
侑「え、イーブイも行きたいの?」

歩夢「ふふ♪ それじゃ、イーブイも一緒に行こっか♪ おいで♪」
 「イブイ♪」


イーブイは私の頭からピョンと跳ねて、歩夢の胸に飛び込む。


侑「ごめん、歩夢。イーブイもお願いね」

歩夢「うん、任せて♪」
 「ブイ♪」


歩夢はイーブイを抱きかかえながら、栞子ちゃんとかすみちゃんの後を追って、賑やかな出店通りへと歩いて行く。

その背中を見送りながら、しずくちゃんが口を開く。


しずく「よかったんですか? 栞子さんの言うとおり、龍脈探しをした方がいい気もしますけど……」

侑「まあ、場所はこの島で十中八九間違いないだろうし……龍脈を見つけても、ランジュちゃんたちが来るまでは何も出来ないしね……。向こうがもうたどり着いてる可能性もあるけど……」

せつ菜「確かに昨日の様子を見る限り、バトルで決着をつけることには前向きでしたしね。こちらがよほど待たせない限り、約束を反故にされることもない気はします」

しずく「それは確かに……」

侑「それに……かすみちゃんに気晴らしをさせてあげたいというか……」

しずく「……あはは……さすがに気付きますよね……」


かすみちゃんは昨日の負けが相当堪えたみたいだった。

もちろん、本人は隠しているつもりだろうけど……やっぱり、いつもよりも声に張りがないと言うか……。


侑「せっかく、お祭りの町に来たわけだしね」

しずく「お気遣い、ありがとうございます……侑先輩」

侑「うぅん、私もかすみちゃんには元気で居て欲しいし……それに、栞子ちゃんもこの町に興味を惹かれてたし、ちょうどいいかなって」


歩夢なら、二人を見守るのには最適だろうしね。


リナ『なら、私たちは待ってる間に、次の戦いのことを話しておいた方がいいかもね』 || ╹ᇫ╹ ||

せつ菜「そうですね。次は誰が戦いましょうか」

しずく「あの、それなんですが……次は私に戦わせて貰えませんか……!」


しずくちゃんが自ら、次の戦いに名乗りをあげる。


しずく「私……かすみさんの仇を討ちたい……」

侑「しずくちゃん……」
78 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:17:21.58 ID:E7iRZ/bz0

確かに……しずくちゃんはかすみちゃんのこと、すごく心配していたし……もしここでしずくちゃんが勝てば、かすみちゃんも勇気付けられるかもしれない。

だけど、


リナ『でも、ここで負けたら私たちは追い詰められることになる』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんはあまり積極的でない様子。


しずく「それは……」

リナ『むしろ、感情的に決めない方がいいと思う。ランジュさんは強いし……それに、しずくちゃんは冷静なときの方が強い』 || ╹ᇫ╹ ||

しずく「リナさん……。……確かに、私……今は少し頭に血が上っているのかもしれません……」

せつ菜「そうですね……可能なら、戦うのはベストコンディションで臨める時の方が良いかもしれません」

しずく「そう……かもしれませんね……。……今の気持ちのまま戦っても……自分らしい戦いは出来ないかも……」

せつ菜「しずくさんは自分のステージさえ作り出せれば、本当にお強いですから! 自分の力を100%発揮出来るタイミングなら、ランジュさんにも劣らないはずですよ!」

しずく「……せつ菜さん……。ありがとうございます……わかりました、今回は見送らせてもらいます」

侑「わかった。それじゃ……どうしようか……」


私か、歩夢か、せつ菜ちゃんということになるけど……。


リナ『初戦を落としてる以上、2戦目を落とすと追い詰められる。精神的にも、ここは確実に白星が欲しいところだと思う』 || ╹ᇫ╹ ||

しずく「確かに、そうですね……。この後の試合のプレッシャーも考えて……」

侑「確実に勝ちを取りに行くとなると……」


全員の視線が──せつ菜ちゃんに集中する。


せつ菜「……なるほど。……そう言うことならば、期待にはお応えしなければいけませんね!」


せつ菜ちゃんが頷きながら、拳をぐっと胸の前で握る。


せつ菜「不肖、ユウキ・せつ菜……皆さんのために必ず勝利してみせます!!」


五番勝負──次鋒はせつ菜ちゃんが戦うことに決定した。





    🎀    🎀    🎀





栞子「バニプッチアイス……冷たくて甘くておいしいです……」

かすみ「しお子、コットンアイス食べたときと同じこと言ってる……」

栞子「す、すみません……こういうときの感想があまり思いつかなくて……。……ですが、こちらのアイスはふわふわしていないんですね」

かすみ「あれはアイスとわたあめが合体したやつみたいな感じだからね〜」

栞子「わたあめ……?」

かすみ「え、しお子、わたあめも知らないの!?」

栞子「す、すみません……」

かすみ「もう、仕方ないなぁ〜、お祭りマスターのかすみんが、しお子にお祭り屋台の極意を教えちゃうんだから!」

栞子「よ、よろしくお願いします!」
79 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:18:06.61 ID:E7iRZ/bz0

かすみちゃんが栞子ちゃんの手を引っ張りながら、あちこちの屋台を見て回っている。

私はそれを後ろから見守りながら、イーブイと一緒にゆっくりと追いかける。


歩夢「ふふ♪」
 「ブイ?」

歩夢「二人とも楽しそうだなって思って♪」
 「ブイ♪」


特にかすみちゃんはすごく落ち込んでいたから心配だったけど……いい気晴らしになっているみたいで安心する。


栞子「歩夢さん……! このふわふわ、すごく甘くておいしいです……!」

歩夢「ふふ♪ よかったね、栞子ちゃん♪」

栞子「はい!」

かすみ「しお子ったら、どれでも喜んでくれるから、かすみんも教え甲斐があります〜♪」

栞子「昨日歩夢さんが作ってくれた、ふれんちとーすとと、ぐらたんもおいしかったですし……外の世界にはいろんな食べ物があるんですね……!」

かすみ「そうだよ〜? そして、屋台もまだまだ続きます……! コンプリート目指して頑張るよ!」

栞子「はい!」

歩夢「あはは……食べすぎないようにね」


張り切るかすみちゃんに苦笑しながら、出店通りを歩いていると、


 「シャボ…」


サスケが屋台から漂ってくる良い匂いに反応して、目を覚ます。


歩夢「サスケ、おはよう。何か食べたいの?」
 「シャボ…」

歩夢「えっと……それじゃあ……」


キョロキョロと屋台を見回して──


歩夢「あっ、あれならよさそう」


ポケモン用のベビーカステラの屋台を見付ける。


歩夢「すみません、ベビーカステラ……えっと、とりあえず6袋ください」

屋台のおばさん「はいよー」


大雑把に買って、みんなで分けようかな。

余っても、サスケが全部食べるだろうし。

購入したミニカステラを受け取ると、


 「シャボ!!」
歩夢「あっ、こら、サスケ……!」


サスケは貰った紙袋の一つに頭を突っ込んでカステラを食べ始める。


歩夢「もう……サスケったら……食いしん坊なんだから……」

屋台のおばさん「ははっ、元気のいいアーボだねぇ!」


屋台の人に笑われてしまう。

もう恥ずかしいなぁ……。
80 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:18:59.36 ID:E7iRZ/bz0

 「ブイ…」

歩夢「イーブイも食べたいよね。はい♪」


袋からベビーカステラを一つ摘まんで、イーブイにあげる。


 「ブイ♪」


すると、イーブイは嬉しそうにベビーカステラを食べ始める。


歩夢「おいしい?」
 「ブイ♪」

歩夢「ふふ♪ よかった♪」


ポケモンたちにおやつをあげていると、


栞子「歩夢さん……それは……?」


栞子ちゃんが不思議そうな顔をしながら訊ねてくる。


歩夢「これはね、ポケモン用のお菓子なんだよ」

栞子「ポケモン用の……お菓子……?」

歩夢「そうだ、栞子ちゃんのポケモンにもあげてみたらどうかな♪ はい♪」


そう言いながら、ベビーカステラの入った紙袋を一つ手渡す。


栞子「いいんですか?」

歩夢「うん♪」

栞子「えっと……それじゃ、ピィ」
 「──ピィ」


栞子ちゃんがピィをボールから出し、足元に飛び出してきたピィの前にしゃがみこむ。


栞子「ピィ、ポケモン用のお菓子だそうです」
 「ピィ?」


ピィはベビーカステラを受け取って小首を傾げるけど──それを口に運ぶと、


 「ピィ♪」


ご機嫌になる。


栞子「おいしいですか?」
 「ピィ♪」

歩夢「ふふ♪」

かすみ「かすみんもポケモンたちのおやつ買おうっかなぁ……」

歩夢「かすみちゃんの分もあるよ♪ はい♪」

かすみ「わ、いいんですか!? さっすが歩夢先輩〜♪ ちょっとあっちのベンチでポケモンたちにあげてきますね〜!」

歩夢「うん」


さすがに屋台通りで大きなポケモンは出せないからか、かすみちゃんはベンチがある近くの広場へと走っていく。


栞子「……これ、ポケモン専用なんですか……?」

歩夢「んー……人が食べても問題ないけど、味が薄いから、あんまりおいしくないかも」
81 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:19:37.32 ID:E7iRZ/bz0

試しに一つ食べてみるけど──


歩夢「……うん、やっぱり、あんまり味がしない気がする」

栞子「わ、私も食べてみます……」


そう言いながら、ベビーカステラを口に運んだ栞子ちゃんは、


栞子「…………確かに、味がしません……」


そう言って顔を顰める。


歩夢「ふふ、でしょ?」

栞子「じゃあ……本当にポケモンのためだけに作られたおやつなんですね……」
 「ピィ♪」


栞子ちゃんはおいしそうにベビーカステラを食べるピィを見ながら言う。


歩夢「栞子ちゃん?」

栞子「……人は……こんなにもポケモンのことを、大切にしているんですね……」

歩夢「そうだね……。人もポケモンも、この地方で……一緒に生きる仲間同士だもん」

栞子「一緒に生きる……仲間……」


栞子ちゃんは私の言葉を反芻するように言う。


栞子「…………」

歩夢「人とポケモンがこうして仲良くしてるの……意外だった?」

栞子「…………はい……。……本音を言うと……そう思っています」

歩夢「……そっか」

栞子「私……ずっと、イメージでしか、外の人を見ていなかったのかもしれません……」


栞子ちゃんは、生まれてからほとんどの時間を朧月の洞で過ごしていた。

だから、自分の中にあったイメージと現実のギャップで混乱しているのかもしれない。

……でも、だからこそかな……。


歩夢「栞子ちゃん」

栞子「……なんでしょうか」

歩夢「今は大変なことになっちゃってるけど……きっと、良い機会なんだと思う」

栞子「良い機会……」

歩夢「栞子ちゃんの目で……この地方でみんながどう暮らしてるか、確認してみたらどうかな」


知らない世界をちゃんと知るのはきっといいことだと思うから。


栞子「……はい」


栞子ちゃんは私の言葉に頷く。


栞子「自分の目で……しっかり、確認しないと……。この地方の……人と……ポケモンを……」


まるで自分に言い聞かせるように、そう言葉にするのでした。



82 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:20:41.10 ID:E7iRZ/bz0

    🎹    🎹    🎹





──フソウのコンテスト会場をすぐ傍に臨む中央公園のベンチで待っていると、


歩夢「侑ちゃーん!」
 「イブイ♪」

侑「あっ、歩夢〜! こっちこっち〜!」


歩夢たちが私たちを見つけ、手を振りながら駆け寄ってくる。


かすみ「先輩たち、ここに居たんですね〜!」

侑「うん。3人とも出店回りは楽しめた?」

栞子「はい……! かすみさんにいろいろ教えてもらいました!」

かすみ「聞いてくださいよ〜……侑せんぱ〜い……せっかくかすみんが『トサキントすくい』のお手本を見せようと思ったら、歩夢先輩が全部すくっちゃって……」

栞子「あれは、すくうというより……トサキントたちに群がられていたというか……」

歩夢「私……近くにいただけなんだけど……」
 「ブイ」

侑「あはは……歩夢、昔にもそんなことあったよね……」

歩夢「あ……もしかして、6番道路での花火大会のときのこと? 懐かしいなぁ……そのとき私、たくさんのトサキントにびっくりして泣いちゃって、侑ちゃんが泣き止むまでずっと手を繋いでてくれたんだよね♪」

侑「あったあった……」


あのときからすでに、歩夢のポケモンに好かれる体質は片鱗を見せていたということだ……。


かすみ「んで……しず子はまたヨウカン食べてるんだ。来るたびに食べてるよね」

しずく「だって、好きなんだもん。この絶妙な甘さと舌触り……いつか、シンオウに行ったら本場のを食べてみたいなぁ……」


しずくちゃんはそう言いながら、ベンチに座ってさっき買ってきた“もりのヨウカン”を食べている。


かすみ「……ん、確かにおいしけどさ〜……毎回同じのばっかで飽きないの?」

しずく「全然飽きないよ。はい、かすみさん、あ〜ん♪」

かすみ「あーん。……もぐもぐ……おいひぃ〜♪」

しずく「でしょ♪」

リナ『3秒前と言ってることが変わってる』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「あはは……」

栞子「それはそうと……せつ菜さんは、先ほどから何をされているんですか?」


栞子ちゃんがベンチから離れた場所で、立ったまま胸に手を当て、目を瞑っているせつ菜ちゃんを見て言う。


せつ菜「…………すぅー…………。…………ふぅー…………」


せつ菜ちゃんは、目を瞑ったまま、何度も深呼吸を繰り返していた。
83 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:21:25.26 ID:E7iRZ/bz0

侑「精神統一だってさ」

かすみ「精神統一?」

しずく「あれをすると、集中出来るそうなんです。大事な戦いの前にはいつもああしているそうですよ」

歩夢「大事な戦い……それじゃ……」

侑「うん。次の試合はせつ菜ちゃんにお願いしようってことになったんだ」

せつ菜「──……そう言うわけです」


せつ菜ちゃんが目を開けて、私たちのいるベンチへと歩いてくる。


侑「あ、ごめん……邪魔しちゃったかな?」

せつ菜「いえ、これくらいにしておこうと思っていたときに、ちょうど私の話をしているのが聞こえてきただけですよ。準備は整いました」


そう言うせつ菜ちゃんの表情は──普段の天真爛漫な雰囲気から一変、鋭さを感じさせる雰囲気を纏っている気がした。

バトルモードということかもしれない。


栞子「それでは、龍脈の場所へ移動しましょう」

侑「そうだね」

せつ菜「よろしくお願いします、栞子さん」


私たちは龍脈の場所へと移動を開始する。





    🎹    🎹    🎹





フソウ島は、北側に港があり、そこから南に進んでいくと、ちょうど島の中央にポケモンコンテストのフソウ会場がある。

フソウ会場からさらに南に行くと、ホテルが立ち並ぶ宿泊施設の密集地があり──さらに、その南には……。


かすみ「海です〜〜〜!!」


かすみちゃんが目の前に広がる砂浜をご機嫌になって走り出す。


しずく「かすみさーん! 走ると危ないよー!」

かすみ「大丈夫大丈夫〜……わぁっ……!?」

しずく「言わんこっちゃない……」


早速、砂浜に足を取られて転ぶかすみちゃんを見て、しずくちゃんが肩を竦めながら、かすみちゃんの方へと駆けて行く。

私たちがやってきのは──フソウビーチと言われるフソウ島の南にある大きな砂浜だ。


歩夢「龍脈はこっちなんだよね?」

栞子「はい」


栞子ちゃんは“もえぎいろのたま”の輝きを見ながら頷く。


せつ菜「とりあえず、反応にしたがって進んでみましょうか」

侑「そうだね」


私たちは砂浜沿いに島の南東方面へと進んでいく。
84 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:22:08.49 ID:E7iRZ/bz0

かすみ「……どこまで行くの」

栞子「わかりません……」

かすみ「まさか、本当に海の底じゃないですよね……」

侑「さすがにそれは困るね……」


まあ、海の底で戦うことはないだろうから、バトル自体は近くの海岸ですることになるとは思うけど……。


しずく「そういえば……フソウビーチには、パワースポットがあった気がします」

せつ菜「パワースポットですか……?」

しずく「はい。ビーチの東端に、漣の洞窟という海から入れる洞窟があるんです」

歩夢「あ、私も聞いたことある! 青の洞窟だよね!」

しずく「はい!」

かすみ「青の洞窟……?」

リナ『石灰質の白い海底と、太陽光の影響で、海が青く輝いて見えるっていう海食洞のことだね』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「へー……? なんか青いってこと?」

リナ『まあ、だいたいそれでいいよ』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||


確かにこのまま進んでいくと、ビーチの東端にたどり着きそうだ。


しずく「そこの奥に、青く光る岩があると……」

侑「そこがパワースポットになってるってことだね」

しずく「もちろん、パワースポットがイコールで龍脈なのかはわかりませんが……」

栞子「とりあえず、反応に従って進んでみましょう」

歩夢「そうだね」


私たちはフソウビーチを進んでいく。





    🎹    🎹    🎹





しずくちゃんの言うとおり、ビーチを進んでいくと、洞窟が見えてきた。


栞子「反応は……洞窟の方ですね」

かすみ「洞窟の入り口、完全に水に浸かってますね……」

せつ菜「“なみのり”で行く必要がありますね。スターミー、出てきてください」
 「──フゥ」

歩夢「トドゼルガ、お願い」
 「──ゼルガ…」

栞子「イダイトウ、出番ですよ」
 「──ダイトウ…!」


3人がみずポケモンをボールから出す。
85 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:23:35.07 ID:E7iRZ/bz0

かすみ「イダイトウ……? 見たことないポケモン……」

しずく「……私も、知らないポケモンです」

歩夢「その子もヒスイのポケモンなの?」

栞子「はい、ヒスイのバスラオが進化した姿なんです」

せつ菜「バスラオに進化した姿があったんですか……!?」

リナ『かつて、しろすじのバスラオって種類がいたと言われてる。そのバスラオはイダイトウに進化してた』 || ╹ᇫ╹ ||

リナ『イダイトウ おおうおポケモン 高さ:3.0m 重さ:110.0kg
   生まれ育った 川に 遡上するときに 志半ばに 散っていった
   仲間達の 魂が 憑りつき 進化した 姿。 憑りついた 魂から
   推進力を 得て 泳ぎ 河川に おいて 敵なしと 言われる。』

栞子「ヒスイ地方ではこのポケモンの力を借りて、海を渡ったそうですよ」

侑「確かに、この大きさなら、一度にたくさんの人を運べそうだね……!」
 「ブイ」

かすみ「あ、えっとー……かすみんたち、みずタイプのポケモンを持っていないのでー……」

栞子「はい、一緒に乗ってください」

しずく「すみません、お世話になります」

歩夢「侑ちゃんはトドゼルガに乗ってね♪」

侑「うん。お願いね、歩夢」
 「イブイ」


私はフィオネは持っているけど……フィオネは私が上に乗って泳げるほど体が大きくないし、ここはありがたく歩夢を頼ろう。


せつ菜「それでは皆さん、行きましょう」
 「フゥ」


スターミーの上にサーフィンのように立つせつ菜ちゃんが先導する形で、洞窟を奥へと進んでいく。

洞窟の中に入ると──どうして青の洞窟と言われているのかがすぐわかった。

洞窟内の海面は、まさに青く輝いていて、青い世界の中を泳いでいるような、そんな世界が広がっていた。


かすみ「……きれい……」

侑「……すごい……」


その美しさに思わず圧倒されてしまう。


リナ『入り口からの太陽光の差し込み方、海底の色、水の透明度とか、いろんな条件が重なるとこうなるって言われてる』 || ╹ ◡ ╹ ||

しずく「これは……パワースポットと呼ばれるのも頷けますね……」

栞子「はい……すごく、幻想的な光景です……」

歩夢「なんだか……こんなに綺麗だと、目的を忘れちゃいそう……」

せつ菜「ですね……」


青の世界を進んでいくと──洞窟内に上がれる陸が見えてくる。


侑「栞子ちゃん、宝珠の反応は?」

栞子「……奥に進むほど、強くなっています」

侑「わかった、このまま進もう」


私たちは陸に上がり、洞窟を奥へ進んでいくと──開けた空間に出る。

そしてその奥に──薄ぼんやりと青く光る大岩が鎮座していた。
86 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:24:15.44 ID:E7iRZ/bz0

かすみ「しず子……! あの岩光ってるよ!」

しずく「本当にありました……」


それと同時に──栞子ちゃんの手に持たれた宝珠が強く光る。


栞子「……“もえぎいろのたま”が……より強く反応しています。……ここが龍脈です」

せつ菜「まさに、ビンゴでしたね……!」

侑「ランジュちゃんたちは……」


辺りを見回してみるけど、特に人影はなかった。

恐らく、まだたどり着いていないのだろう。


せつ菜「となると、ここでしばらく待つことになりそうですね」

侑「そうだね」

かすみ「それにしても……あれ、なんで光ってるんですかね」

リナ『詳しい理由はわからないけど……“みずのいし”によく似た反応がある。自然エネルギーが蓄えられてるのかもしれない』 || ╹ᇫ╹ ||

歩夢「太陽の花畑のサンフラワーみたいな感じなのかな?」

リナ『恐らくは』 || ╹ ◡ ╹ ||


不思議な空間だった。

閉鎖的な空間ではあるけど……圧迫感はあまり感じないというか。

これも自然エネルギーが満ちているからなのかな……?


歩夢「なんだか……落ち着くね」

侑「……うん」


リラックスした気分になっていると──


ランジュ「──あーー! ランジュよりも早く着いてるじゃない!!」


ランジュちゃんの声が洞窟内で反響する。


栞子「ランジュ……」

ランジュ「もう! ミアがもたもたしてるからよ!」

ミア「はいはい……」


ランジュちゃんは遅れてきたのが悔しかったのか、ミアちゃんに向かってふくれっ面になる。

ミアちゃんは慣れっこなのか、適当に流しているけど……。


ランジュ「……まあ、いいわ。それじゃ、さっさと二戦目、始めましょうか。今度は誰が相手してくれるのかしら!」


そう言うランジュちゃんの前に、


せつ菜「……今回は私です!」


せつ菜ちゃんが歩み出る。
87 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:24:58.85 ID:E7iRZ/bz0

ランジュ「せつ菜、貴方ね!」

せつ菜「はい! 正々堂々、お互い良い勝負にしましょう!」

ランジュ「望むところよ! ミア!」

ミア「ん。これが今回のポケモン」


前回同様、ミアちゃんがランジュちゃんにボールが3個入ったケースを手渡す。


栞子「せつ菜さん……よろしくお願いします」

せつ菜「お任せください! それでは、始めましょう……!」

ランジュ「ええ!」


二人のトレーナーが同時にボールを放って──五番勝負の次鋒戦が始まった。





    🎙    🎙    🎙





せつ菜「行きますよ!! ウインディ!!」
 「──ワォンッ!!!」


私は1番手に相棒のウインディを繰り出す。

対するランジュさんは──


ランジュ「行くわよ、バシャーモ!」
 「──バシャーーーモッ!!!」


バシャーモを繰り出してくる。それと同時に、耳に掛かった髪をかき上げ──


ランジュ「メガシンカ!!」


輝きと共に、バシャーモの頭部のツノが1本に、冠羽が立派に成長し、腕から噴き出す炎もさらに立派になり棚引いている。

バシャーモがメガシンカした姿──メガバシャーモだ。


 「バ、シャァモッ!!!!」


メガバシャーモに進化すると同時に、強靭な脚力を使って飛び出し──


 「バシャァモッ!!!!」


ウインディの側頭部を蹴り飛ばす。

──が、


 「ワォン…」


ウインディは微動だにしていなかった。


ランジュ「咦!?」

せつ菜「それじゃあ、威力が足りていませんよ……!! “ずつき”!!」
 「ワォンッ!!!!」

 「バシャモッ…!!!」
88 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:25:57.05 ID:E7iRZ/bz0

メガバシャーモを“ずつき”で追い払う。

ただそれ自体は大したダメージではなく、吹っ飛ばされたメガバシャーモは受け身を取ってすぐに起き上がり、片足を上げて特有の構えを取る。


ランジュ「……驚いたわ、“アイアンヘッド”にそんな使い方があったなんて……」

せつ菜「気付かれましたか……! さすがですね……!」


そう、ウインディは攻撃が当たる瞬間だけ、頭部を“アイアンヘッド”で硬質化して、攻撃を防いだ。


ランジュ「でも、そんな小細工いつまで続くかしらね……!!」
 「バ、シャァモッ!!!!」


再び飛び出してくるメガバシャーモ。

恐らく次は──


せつ菜「飛び込んでくるように見せかけて」

 「バシャッ…!!!」

せつ菜「ウインディの目の前で“フェイント”をしかけて、横から攻撃──」


私はトントンとステップを踏みながら、ウインディの左側に歩を運び──ウインディの目の前で、“フェイント”を掛けるメガバシャーモの重心が左に揺れたのを一瞬で判断し、


せつ菜「左!! “ねっぷう”!!」
 「ワォンッ!!!!」

 「シャモッ…!!?」


メガバシャーモに触れられる前に、ウインディの左側に放った“ねっぷう”で押し返す。


ランジュ「読まれてる……!? バシャーモ……!!」

 「バシャッ…!!!」


メガバシャーモは後退りながらも、脚力をバネにし──“かそく”しながら、飛び掛かってくる。

だが、


せつ菜「“じゃれつく”!!」
 「ワォンッ!!!」

 「シャーーモッ…!!!?」


飛び掛かってくるメガバシャーモに向かって前足を振り上げ、巻き込むようにして叩き落とす。

前脚で押さえつけたバシャーモに向かって──


せつ菜「そのまま、“サイコファング”!!」
 「ワォンッ!!!!」


牙を立てようとするが、


ランジュ「“けたぐり”!!」
 「バシャモッ!!!!」


ランジュさんは咄嗟の判断で、“けたぐり”を指示──メガバシャーモは押さえ付けられながらも、脚を伸ばして、ウインディの後ろ足を薙ぎ払う。


 「ワォンッ…!!?」


急な足払いを受けて、ウインディの体が傾いた瞬間、


 「バシャッ!!!」
89 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:26:40.46 ID:E7iRZ/bz0

メガバシャーモは自分を押さえ付けていたウインディの前足から逃れ、そのまま全身のバネを使って跳ね起きの要領で跳び上がり──身を捻って、


ランジュ「“ブレイズキック”!!

 「バシャァァモッ!!!!」


燃える蹴撃をウインディの側頭部に向かって放ってくるが──


 「ワォンッ!!!」


ウインディは体勢を崩しながらも、再び蹴りを“アイアンヘッド”によって硬質化した頭部で受け止め──


 「ワォンッ!!!」

 「バシャッ…!!!」


そのまま頭を振り下ろし、メガバシャーモを吹っ飛ばす。

メガバシャーモはまたしても、受け身を取りながら、ウインディから距離を取る。


せつ菜「無理な体勢から攻撃しても、通りませんよ!」


体重を乗せられない蹴りなんて怖くもなんともない。


ランジュ「みたいね……!」
 「シャモッ!!!!」


さらに“かそく”したメガバシャーモは、姿が一瞬で掻き消える。

次は恐らく──


せつ菜「ウインディ!!」
 「ワォンッ!!!!」


ウインディが勢いよく、後頭部を引くように頭を上に向けると──ウインディの顎下スレスレをメガバシャーモの振り上げた足で振り抜かれる。


ランジュ「……!」

せつ菜「顎……狙いますよね……!」


“アイアンヘッド”で硬くできるのは頭頂や側頭──つまり頭の上の部分。

さすがに顎まではカバーしきれない。

なら次は顎を狙うはず。私の読みどおりランジュさんはしっかりと顎を狙ってきてくれたお陰で、回避に成功する。


ランジュ「バシャーモ!! 一旦距離を取りなさい!」

 「シャモッ…!!!」


バシャーモは反撃を食らう前に飛び退いて、ウインディから距離を取る。


ランジュ「……悉く読まれてるわね」


ランジュさんは優秀なトレーナーだ。

それは、かすみさんとの戦いを見ていただけで十分わかった。

咄嗟の判断もさることながら、技の選択や狙いが合理的な戦い方をしている。

言うなれば、戦い方の精度が高すぎるせいで、逆に読みやすいとでも言うのだろうか。

ただ……。
90 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:27:16.25 ID:E7iRZ/bz0

ランジュ「バシャーモ……!!」
 「シャモッ!!!!」


メガバシャーモは今度こそ、目にも止まらぬスピードで動き出す。

“かそく”によって、どんどん速くなり続け、もう目で捉えるのは不可能に近い。


せつ菜「……さすがに時間を掛け過ぎましたね……!」


もともと相手がとんでもなく速い相手だというのはわかっていたので、最初から反撃重視の戦い方を選んでいましたが、反撃から技を決めようとしても、それをいなす技術も一流だったため、決定打を決め切る前に、“かそく”しきってしまった。

なら── 一旦仕切り直し……!!


 「シャァーモッ!!!!」


メガバシャーモがウインディに飛び掛かってくる瞬間に合わせて──


せつ菜「“ほえる”!!」
 「ワォォォンッ!!!!!!!」

 「シャモッ…!!!?」


大声で吠え掛ける。それと同時に、メガバシャーモが無理やりボールに戻され──代わりのポケモンが飛び出した。


 「──ヴァァァァッ!!!!!」


ボールから出てきたのは、バチバチと電撃の音を立てながら羽ばたく、鳥ポケモンの姿。


せつ菜「……! サンダー……!!」


でんげきポケモン、サンダーの姿。


ランジュ「……2匹目、引き摺りだされちゃったわね……!」

せつ菜「やはりラティオス以外にも捕まえていたんですね……! こんなところで、伝説のポケモンと戦えるなんて……光栄です!! 行きますよ、ウインディ!!」
 「ワォンッ!!!!」


バトルは次のステージへ。

対するは伝説のポケモン、サンダー……!


ランジュ「サンダー! 10まんボルト!!」
 「ヴァァァーーーッ!!!!!」

せつ菜「“しんそく”!!」
 「ワォンッ!!!」


ウインディの姿が掻き消え──先ほどまでウインディが居た場所に電撃が迸る。

電撃攻撃を掻い潜ったウインディは一瞬でサンダーに肉薄し──


ランジュ「“ほうでん”!!」
 「ヴァァァァーーッ!!!!」

 「ワォンッ…!!!」


──たが、全方位の電撃によって、止められてしまう。

“しんそく”は確かに読んで字のごとく神速の一撃だが、全方位に電撃を放たれると、そもそも近付くのが難しくなってしまう。


せつ菜「“かえんほうしゃ”!!」

 「ワォンッ!!!!」
91 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:28:21.13 ID:E7iRZ/bz0

ウインディが火炎を噴き出すが、


ランジュ「サンダー! “みきり”よ!」
 「ヴァァァ」


サンダーは攻撃を見切って、ひょいと炎を回避し、


ランジュ「“10まんボルト”!!」
 「ヴァァァァーーーッ!!!!!」


再び電撃を放ってくる。


せつ菜「ウインディ!! 走って!!」
 「ワォンッ!!!」


狙い撃ちされないように、“こうそくいどう”で走り回りながら、どうにか落ちてくる電撃を回避するけど──そもそも、でんきタイプの攻撃というのはいなすのが難しい。

回避もずっとは続けられないし、早く策を講じて、倒してしまわないと……!!

そう思った矢先──ぴちょ。

顔に冷たいものが落ちてきた。

ハッとして、顔を上げると──洞窟内に雨雲が発生していた。


せつ菜「“あまごい”……!? いつの間に……!?」

ランジュ「“打雷”!! “かみなり”よ!!」
 「ヴァァァァーーーッ!!!!!」


頭上の雨雲が光った瞬間、


せつ菜「“だいもんじ”!!」

 「ワォォォンッ!!!!」


真上に向かって、“だいもんじ”を発射する。

“かみなり”は“だいもんじ”に直撃し、爆ぜるようにして周囲に稲妻を爆ぜ散らせながら──爆発した。


 「ワァオンッ…!!!」

せつ菜「くっ……!!」


だが、爆炎の中を貫くように、


 「ワォンッ…!!!!?」


一筋の“かみなり”がウインディを直撃する。


せつ菜「ウインディ……!!?」


ウインディはよろけこそしたものの、


 「ワ、ワォンッ…!!!」


足を踏ん張り持ちこたえる。

よかった……倒れてない。


ランジュ「この雨の中で、よくほのお技で“かみなり”の威力と撃ち合えたわね」


ランジュさんの言うとおり、雨が降っているせいで、ほのお技は威力が半減してしまう。
92 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:29:03.81 ID:E7iRZ/bz0

ランジュ「でも、相殺出来てやっとじゃ、こっちが優勢よ!! “かみなり”!!」
 「ヴァァァァーーーッ!!!!!」


再びの落雷。だけど──ピシャァァァンッ!!! と音を立てながら、“かみなり”はウインディとは全く関係のない場所に落ちる。


ランジュ「……!?」

せつ菜「雨が降って不利になるなら……晴らせばいいだけです」

ランジュ「“にほんばれ”……!」


洞窟内なせいで、日差しこそ照ってくることはないが、“にほんばれ”を使えば雨雲を掻き消すことは可能だ。

雨雲がなくなれば、“かみなり”の命中精度は激減する。


ランジュ「サンダー! “あまごい”!」
 「ヴァーー」

せつ菜「ウインディ! “にほんばれ”!」
 「ワォンッ!!!」


雨が降り始めたかと思えば、その雨雲がすぐに払われる。


ランジュ「天気の取り合いをしようって言うのね……! いいわ……! “10まんボルト”!!」
 「ヴァァァァーーー!!!!」

せつ菜「ウインディ!!」
 「ワォンッ!!!」


ウインディが私の指示で、口の中に炎を溜め、


せつ菜「“かえんほうしゃ”!!」
 「ワォンッ!!!!!」


火球にして、発射する。

空中で、“10まんボルト”に直撃し、電撃を爆ぜ散らせながら、火炎弾が爆発する中──再び雨粒が振り始める。


せつ菜「“にほんばれ”!!」
 「ワォンッ!!!」


すぐさま、雨雲をかき消した直後、また洞窟内に“かみなり”が落ちる。

一瞬でも雨雲を維持させたら、必中の“かみなり”にやられる……!


ランジュ「サンダー!! “でんげきは”!!」
 「ヴァァァァ!!!!」

 「ワォンッ…!!!」
せつ菜「くっ……!!」


超高速の電撃攻撃が、防御を許さない。

速度を重視した攻撃である分、威力は大したことがないのが救いだが、その隙にもまた雨が降り出し、それを“にほんばれ”で無効化する。


ランジュ「ジリ貧なんじゃないかしら!! “10まんボルト”!!」
 「ヴァァァァーーー!!!!!」

せつ菜「“かえんほうしゃ”!!」
 「ワァァァォンッ!!!!」


またしても、火球を発射し、“10まんボルト”を相殺する。


ランジュ「感電しないように、わざわざ火球にしたり、工夫はすごいと思うわ! でも、手数が足りてない!」

せつ菜「っ……!」
93 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:30:18.88 ID:E7iRZ/bz0

ランジュさんの言うとおり、サンダーの速さと火力に翻弄されて、防御で手一杯になり、攻撃をうまく通せるチャンスがない。

炎は通電性が高いため、感電しないように、防御策を通常の“かえんほうしゃ”ではなく、火球状にしているのは防御の手段としてうまく行っているが、これはあくまで防御のための技。

攻撃に転じるには、どこかで無茶を通さないといけない。

問題はどこで通すかだ。

だが──先に仕掛けてきたのはランジュさんだった。


せつ菜「……!?」


急に何かに引き寄せられるような感覚がして、身体が前のめりになる。

ハッとしたときには──目の前に風の渦が成長を始めていた。


せつ菜「まさか、“ぼうふう”……!?」


“ぼうふう”も“にほんばれ”状態では命中精度が下がる技だが──


 「ワォンッ…!!!」


風に引き寄せられ、ウインディの足が止まる。

それと同時に、


リナ『わぁぁぁ!!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「り、リナちゃん!? 腕にくっついてて!?」
 「ブ、ブィィィ…!!!」

かすみ「と、飛ばされちゃいますぅぅ!!?」

しずく「かすみさん、頑張って……!!」

歩夢「栞子ちゃん! 私から離れないで……!」

栞子「は、はい……!」


背後から聞こえる、かすみさんたちの悲鳴。

気付けば洞窟内全体に強風が吹き荒れ始めていた──攻撃範囲が広すぎる……!


せつ菜「これじゃ……“にほんばれ”で命中が下がっても関係ない……!」

ランジュ「それだけじゃないわ」


直後──ポツポツと雨が降り始める。


せつ菜「ウインディ!! “にほんばれ”を!!」


私は“にほんばれ”を指示するが──


 「ワ、ワォン…」

せつ菜「ウインディ……!? どうしたの……!?」


“にほんばれ”が発動しない。


ランジュ「持久戦で、サンダーに勝とうとしたのが間違いだったわね! PP切れよ!」

せつ菜「PP……しまった、“プレッシャー”……!?」
94 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:31:44.48 ID:E7iRZ/bz0

戦ったことがないポケモンだったから完全に失念していた。

サンダーの特性は“プレッシャー”。相手の技のパワーポイントを多く削る特性。

つまり──


ランジュ「もう……“にほんばれ”は使えないわ! “かみなり”!!」
 「ヴァァァァァーーー!!!!!!」

せつ菜「“だいもんじ”!!!」
 「ワォォォォォンッ!!!!!!」


再び、“かみなり”を相殺するための“だいもんじ”を真上に放つ。

稲光が洞窟内に迸り、ウインディや私のすぐよこを走り抜けていく。


ランジュ「再一次! “かみなり”!!」
 「ヴァァァァァァ!!!!!」

せつ菜「“だいもんじ”ッ!!!」
 「ワォォォォォンッ!!!!!」


空中で衝突し、ほのおとでんきのエネルギーが爆ぜ散る。

すでに相手の狙いはわかっている。防御を強いて、こちらのパワーポイントを削ってきている。

わかってはいるけど──防御を止めたら直撃だ。

もう仕掛けるなら──ここしかない……!!


せつ菜「ウインディ!! “しんそく”!!」
 「ワォォォンッ!!!!!」


ウインディが地を蹴って飛び出す。

この大雨の中、“かみなり”は必中だ。

なら──“かみなり”に撃たれるよりも早く、攻撃を決めるしかない。


 「ワォォンッ!!!!」


ウインディが目にも止まらぬスピードで、サンダーに肉薄し、前足を伸ばした瞬間──


ランジュ「“放电”!」
 「ヴァァァァァッ!!!!」

 「ワォンッ…!!!?」


サンダーが全方位に放たれる電撃で、ウインディの攻撃を阻止した。


せつ菜「……!? “ほうでん”……!?」

ランジュ「貴方が仕掛けるなら──ここよね、せつ菜」


完全に読まれた。

飛び掛かりを阻止され、無防備になったウインディに向かって──


ランジュ「“打雷”!!」
 「ヴァァァァァァ…!!!!」


“かみなり”がウインディに向かって、真っすぐ降り注いだ。


せつ菜「ウインディ……!!」

 「ワ、ワォ…ン…」
95 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:36:18.27 ID:E7iRZ/bz0

“かみなり”の直撃によって黒焦げになったウインディの体が揺れ、倒れ──


 「ワォンッ…!!!!」


──なかった。


ランジュ「真的假的!? 嘘でしょ……!? 直撃したのよ……!?」

せつ菜「まだ、倒れませんよ……私の自慢の相棒ですから……!!」

 「ワォォォォンッ!!!!!!」

ランジュ「やるじゃない……!! でも、これで本当に終わりよ!!」
 「ヴァァァァァーーーーッ!!!!!」


再度、ウインディの直上に落ちてくる、“かみなり”。

迸る稲光は──ウインディに当たる直前に弾かれるようにして、地面に突き刺さる。


ランジュ「な……!」

せつ菜「温まってきましたね……ウインディ!!」
 「ワォォォォォーーーーンッ!!!!!!」


ウインディの“とおぼえ”が洞窟内に響き渡る。

気付けばウインディの周囲には陽炎が揺らめき、大量の熱量によって、空気がボッボッと燃えて、踊るように周囲を舞っている。


せつ菜「炎熱のエネルギーで“かみなり”を弾き飛ばしました……」

ランジュ「……嘘みたいだけど……ホントみたいね」


当たり前の話だが、ほのおポケモンは炎熱によって活性化する。

そしてその炎熱の源は──戦って使う自分自身のほのお技だ。ほのお技を使えば使うほど、自身の体温を上昇させる。

冷たい雨が降りしきる洞窟内だが──準備は整った。


 「ワォォォォォォーーーーーンッ!!!!!!」


ウインディが雄叫びをあげると同時に、一気に熱波を解放し──周囲の雨を一気に蒸発させていく。


ランジュ「サンダー……!! “みきり”!!」
 「ヴァァァァァッ…!!!!」


大技の予兆を察し、ランジュさんが回避の択を切ってくるが──ここまで温まったウインディには、もはや関係ない。


せつ菜「ウインディィィ!!! “だいふんげき”!!!!」
 「ワォォォォォォォォォーーーーーンッ!!!!!!!!!」


ウインディを中心に──激しい炎が、フィールド全体を焼き尽くさんばかりに膨張する。


 「ヴァァァァァァ…!!!?」
ランジュ「サンダー……!?」


“みきり”も関係ない。

炎熱に焼かれ、苦悶の鳴き声をあげるサンダーを、


 「ワォンッ!!!!!!」

 「ヴァァァッ!!!?」
96 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:36:51.57 ID:E7iRZ/bz0

炎を纏って暴れまわりながら、ウインディが飛び掛かり、地面に叩き落とす。

そして、そのまま──ゴォォォォッ!!!! と激しい音と共に、爆炎によって、至近距離からサンダーを焼き尽くした。

燃え盛る炎が、晴れる頃には──


 「ヴ、ヴァ、ァ……」


サンダーは黒焦げになって、戦闘不能になっていた。


ランジュ「く……! 戻りなさい、サンダー!」

せつ菜「やりました……! ウインディ!」


サンダー撃破……! 喜びと共に小さくガッツポーズをした直後、


 「ワ、ォォン…」


ウインディもフィールドに崩れ落ちた。


せつ菜「ウインディ……!?」

ランジュ「……相討ちみたいね」

せつ菜「……そうですね……。戻って、ウインディ」
 「……ワォォン──」


ウインディをボールに戻す。


せつ菜「ありがとう、ウインディ。ゆっくり休んで」


限界ギリギリの体力の中、全力の炎でサンダーを倒してくれた相棒に労いの言葉を掛ける。


ランジュ「……まさか、サンダーを1匹で突破されると思わなかったわ」

せつ菜「私も、自慢の相棒を1:1交換で持って行かれるとは思いませんでした。お互い様ですよ」

ランジュ「ふふ、言うじゃない」


これでお互い残りポケモンは2匹ずつ。

両者共倒れで仕切り直しだ。

そのとき、後ろから声が聞こえてきた──


かすみ「あ、あちち、熱いですぅ!!?」

侑「かすみちゃん、じっとしてて!? 今消火するから!?」
 「フィオーーーッ!!!」

かすみ「うぴゃぁぁぁ!!?」

歩夢「だ、大丈夫……かすみちゃん……?」

かすみ「助かったけど……ずぶ濡れですぅ……」


気付けば、背後では大騒ぎになっていた。


せつ菜「……あー……えっと、かすみさん、すみません……」


しずく「せつ菜さん! お気になさらず! 私たちは無事なので、引き続き全力で戦ってください!」

かすみ「かすみん、全然無事じゃないんだけど!?」

侑「あはは……」

リナ『問題ないから、せつ菜さんはバトルに集中して』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||
97 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:37:34.33 ID:E7iRZ/bz0

せつ菜「わ、わかりました!」


さすがに背後に気を遣いながら戦って勝てる相手ではない。

申し訳ないけど、そこは各々で対処してもらうことにしよう……。


ランジュ「さぁ、次よ!!」

せつ菜「……はい!!」


お互いの次のポケモンがフィールドへと繰り出された。





    🎙    🎙    🎙





せつ菜「行きますよ、ゲンガー!!」
 「──ゲンガァーーー!!!」

ランジュ「ナットレイ、出てきなさい!」
 「──…ナット」


こちらはゲンガー、ランジュさんはナットレイ。

これでランジュさんの手持ちは3匹目まで割れたことになる。


せつ菜「ゲンガー! メガシンカ!!」


私は“メガバングル”を構え、ゲンガーをメガシンカさせる。


 「ゲンガァァァァァ!!!!!!」

せつ菜「ゲンガー! “おにび”!!」
 「ゲンガァーー!!!!」

 「…ナット」


まずは“おにび”でナットレイを“やけど”状態にする。

対するナットレイは、


ランジュ「“やどりぎのタネ”!」
 「…ナット」

 「ゲンガ…!!」


“やどりぎのタネ”を発射し、ゲンガーに植え付ける。

お互いまずは補助技の応酬から始まる。


せつ菜「“たたりめ”!!」
 「ゲンガァーーー!!!!!」


呪いの力で攻撃をするが──


 「…ナット…」


ナットレイは微動だにしない。


せつ菜「……く……硬い……!」
98 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:38:14.30 ID:E7iRZ/bz0

ナットレイは受けに特化したポケモン。その硬さはポケモンの中でも随一な上に──ナットレイは攻撃を受ける合間に“たべのこし”を食べながら攻撃を受け止めている。

完全に受けの姿勢──なら、


せつ菜「ゲンガー、“ふしょくガス”!」
 「ゲンガァーーー!!!!」


ゲンガーが吐き出した、腐食性のガスによって、ナットレイの食べていた“たべのこし”が溶解を始める。

“ふしょくガス”は相手の持ち物を使えない状態にする技だ。

耐久型のポケモンにとって、回復ソースは生命線になる。

これは相手にとって痛手になると思ったが──


ランジュ「ナットレイ、“つるぎのまい”よ!!」
 「…ナット」


ランジュさんが作戦をスイッチする判断も速かった。


せつ菜「攻撃態勢……!? ゲンガー! “たたりめ”!!」
 「ゲンガァーーー!!!!」


相手が攻撃へ舵を切ってきたと判断し、すぐさま倒しきる姿勢に入るが──


 「…ナット」


“たべのこし”がなくなった程度では、ナットレイの頑丈な防御を崩しきれず、


ランジュ「“パワーウィップ”!!」
 「ナット…」


3本の触手を伸ばしながら叩き付けてくる。


 「ゲンガッ…!!!」
せつ菜「く……速い……!」


本体は緩慢な動きなのに、攻撃は俊敏で、回避が間に合わない、それどころか──叩き付けてきた触手の先にあるトゲをゲンガーの周囲の地面に突き刺し、


ランジュ「“ジャイロボール”!!」
 「ナット…」


触手を巻き取るようにして、猛スピードで転がりながら、突っ込んでくる。


せつ菜「……ゲンガー……!! 避けてください……!!」
 「ゲンガ…!!!」


真っ向から猛スピードで突っ込んでくるナットレイ。

それに対してランジュさんは、


ランジュ「──避けられないわけ、ないわよね?」


そう、私に向かって言ってきた。それと同時に、


 「…ナット」


ナットレイがゲンガーの目の前で──急カーブした。


ランジュ「口で避けるように指示しながら──本当は“みちづれ”を狙ってることくらい、気付いてるわ!」

せつ菜「……っ!?」
99 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:39:12.65 ID:E7iRZ/bz0

黒いオーラを纏うゲンガーの目の前を横切ったナットレイは“みちづれ”を回避し、“みちづれ”の効果が切れると同時に、地面に突き刺した触手を引き抜きながら──それを“ぶんまわす”。


 「ゲンガッ…!!!!」
せつ菜「ゲンガー!?」


まるでモーニングスターのように振り回される触手がゲンガーを突き飛ばし、


ランジュ「さぁ、トドメよ!!」

 「…ナット」


今度こそ、方向転換をし“ジャイロボール”で突っ込んでくる、ナットレイ。


せつ菜「ゲンガー……!!」


このタイミングなら、ギリギリ間に合う……!!


 「ゲンガッ…!!!」


ゲンガーが再びぼわっと“みちづれ”の黒いオーラを身に纏う。


ランジュ「だから……読めてるわ!」

 「…ナット」


ナットレイが今度はゲンガーの目の前で飛び跳ねた。


せつ菜「……っ……!」

ランジュ「まあ、もうそうするしかないものね」


飛び跳ねたナットレイは攻撃タイミングを僅かにずらし、ゲンガーに向かって落ちてくる。


ランジュ「“アイアンヘッド”!!」

 「…ナット」

 「ゲンガッ…!!!!」


ナットレイの鋼鉄の体をぶつけられたゲンガーは、


 「ゲン…ガァ…」


その場に倒れ、戦闘不能になってしまった。


せつ菜「ゲンガー……戻って……!」
 「ゲンガ…──」


まずい……。……ペースを崩された。

もっと相手の防御と攻撃の切り替えに素早く対応しなければいけなかったのに……。

思わず唇を噛み締めたそのとき、


侑「せつ菜ちゃーん!! 頑張ってー!!!」

かすみ「相手もダメージ蓄積してますよー!! まだ行けますー!!」


後ろから聞こえてくる応援を聞いて、私は頭を振る。

──反省は後だ。今はバトルに集中。
100 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:39:54.22 ID:E7iRZ/bz0

ランジュ「さぁ、これで貴方の残りは1匹ね」

せつ菜「……はい。ですが……負けません……!!」


私はボールをフィールドに向かって、投げ込んだ。





    🎙    🎙    🎙





せつ菜「ウーラオス!! 行きますよ!!」
 「──ラオスッ!!!!」


最後の1匹、ウーラオスをフィールドに繰り出す。

そして、相手が動き出す前に──


せつ菜「“ばくれつパンチ”!!」
 「ラオスッ!!!!!」

 「ナット…!!!!」


動きの鈍いナットレイに、超威力の拳を叩き付ける。


 「ナット…」
ランジュ「戻りなさい、ナットレイ」


3匹目の繰り出しと共に、あっけなくナットレイを倒されたという割に、ランジュさんは淡泊な表情でナットレイをボールに戻す。

ナットレイはかすみさんの言うとおり、削りダメージを十分に受けていたし、恐らくここで倒されるのは想定内なのだろう。


ランジュ「バシャーモ!! 決めるわよ!!」
 「──バシャーーーモッ!!!!」


メガバシャーモが再びフィールドに躍り出る。

さぁ、泣いても笑ってもこれが最後のマッチアップだ……!


ランジュ「バシャーモ、“ブレイズキック”!」

せつ菜「ウーラオスッ!! “あんこくきょうだ”ッ!!」


メガバシャーモの燃える蹴撃と──ウーラオスの闇を纏った“ふかしのこぶし”がぶつかり合う。


 「ラオスッ!!!!」

 「シャモッ…!!!」


威力では──こちらが優勢……!!!

振りかぶった足を弾かれ、バランスを崩したところに畳みかける。


せつ菜「“インファイト”!!」
 「ラオスッ!!!!」

ランジュ「こっちも“インファイト”よ!!」
 「シャーーモッ!!!!」


両手両足を使った乱打に対し、メガバシャーモもすぐに体勢を立て直しながら対抗してくる。

振り上げてきた脚に対して腕を上げて防ぎ、顔に飛んでくる拳に対しては首を曲げて躱し、腹部に刺してくる拳を手の平で受け止める。

肉薄し、一進一退の格闘戦が繰り広げられる中、
101 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:40:31.27 ID:E7iRZ/bz0

ランジュ「バシャーモ!!」
 「バシャァーッ!!!!」

せつ菜「ウーラオス!! 引いて!!」
 「ラオスッ!!!!」


── 一瞬の判断。メガバシャーモが口を開いた瞬間、ウーラオスは後ろに飛び退き、


 「シャーーモッ!!!!」


メガバシャーモの口から噴き出される“かえんほうしゃ”を、身を捻って回避する。


ランジュ「そこよ!! “ブレイズキック”!!」
 「シャーーーモッ!!!!」


身を捻って体勢の悪いところに追い打ちの燃える蹴撃。

だが、


せつ菜「“あくのはどう”!!」
 「ラオスッ!!!」

 「シャモッ…!!!」


ここで接近は許さない。“あくのはどう”で怯ませながら、ステップを踏み、


せつ菜「そこです!! “あんこくきょうだ”!!」


拳を構えて──今度は逆にメガバシャーモの隙に、強烈な拳を突き出す。


 「ラオスッ!!!」


この位置関係──もう回避は間に合わない……!!

ウーラオスの拳がメガバシャーモの顔面を捉えた──と思った瞬間、メガバシャーモの上半身が掻き消える。


せつ菜「な……!?」


──掻き消えた……違う……!?

メガバシャーモは、その場で上体を後ろに逸らし、ブリッジのような状態から、


ランジュ「“ブレイズキック”!!」
 「シャーーーモッ!!!」

 「ラオスッ…!!?」


サマーソルトでもするかのように、ウーラオスの顎を炎を纏った脚で蹴り上げる。

ウーラオスの体がそれで浮き上が──


 「ラオスッ!!!!!」


──りそうになった瞬間、ウーラオスは震脚し、堪えながら、


せつ菜「“かわらわり”!!」
 「ラオスッ!!!!」

 「シャーーモッ…!!!?」


体を戻す勢いを乗せたチョップをメガバシャーモに叩き付ける。


 「シャモッ…!!!」
102 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:41:41.72 ID:E7iRZ/bz0

メガバシャーモの体が跳ね、そこに向かって──


せつ菜「“メガトンキック”!!」
 「ラオスッ!!!!!」


蹴りを繰り出す。

が、


 「シャーーーモッ!!!!」


メガバシャーモは体勢を崩しているはずなのに、飛んでくるウーラオスの蹴撃を、自分の脚で上からはたくようにして叩き落とし──さらに、叩き落とした反動を使って、身を捻りながら、


 「シャーーーモッ!!!!」

 「ラオスッ…!!!?」


ウーラオスの顔面に蹴りを叩きこんでくる。


せつ菜「く……!? あの体勢から“にどげり”!?」


二撃目の蹴りを直撃させ、ウーラオスが怯んだ隙に着地したメガバシャーモは、


 「シャーーーモッ!!!!!」


“かそく”したスピードで、掻き消える。

次の瞬間──


 「シャーーーモッ!!!!」


ウーラオスの左側に脚を引きながら現れるメガバシャーモ。


せつ菜「“みきり”!!」
 「ラオスッ!!!」


ウーラオスは腕を上げ、ギリギリでメガバシャーモの蹴りをガードし、


せつ菜「“いわくだき”!!」
 「ラオスッ!!!!」

 「シャモッ…!!!」


ガードしたのとは逆の拳をメガバシャーモに叩きこむ。


 「シャモォッ!!!」


“いわくだき”は決して威力の高い技ではないので、メガバシャーモは受け身を取ってすぐに立ち上がり、構えを取ってくる。


せつ菜「はぁ……はぁ……」


息もつかせぬ攻防とはまさにと言った戦いに、気付けば肩で息をしていることに気付く。

そしてそれは──ランジュさんも同じだったようだ。


ランジュ「はぁ……! はぁ……! やるじゃない、せつ菜……!」

せつ菜「ランジュさんこそ……!」
 「ラオスッ…!!!」


ウーラオスが拳を引き、黒いオーラを纏う。
103 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:42:13.80 ID:E7iRZ/bz0

 「シャーーモッ!!!!」


メガバシャーモの脚に炎が灯る。

この激しい攻防──恐らく次で決着がつく。


 「ラオスッ!!!!!」

 「シャーーーモッ!!!!」


2匹が同時に地を蹴って飛び出した。


せつ菜「“あんこくきょうだ”ッ!!!!」

ランジュ「“ブレイズキック”!!」

 「ラオスッ!!!!」

 「シャァァァァーーモッ!!!!!」


ウーラオスの闇の拳と、メガバシャーモの炎の脚が──ぶつかり合う。

お互いの攻撃がぶつかり合った瞬間、あくのエネルギーとほのおのエネルギーが爆ぜ散りながら、迫り合いを始める。


せつ菜「いっけぇぇぇぇ!!!! ウーラオスッ!!!!」

ランジュ「バシャーモ!!! 決め切りなさい!!!」

 「ラオーーースッ!!!!!!」

 「シャァーーーーモッ!!!!!!」


2匹の雄叫びと共に、2種類のエネルギーが膨れ上がり──

周囲に衝撃波を発生させる。


せつ菜「くっ……!!」

ランジュ「きゃぁ……!!」


衝撃波は強風となり、トレーナーの私たちは腕で顔を覆う。

衝撃が止んだとき、そこには──


 「ラオォォス…!!!」

 「シャァァァモ…!!!」


満身創痍の2匹の姿。


せつ菜「ウーラオス……!!」
 「ラォォォスッ!!!!!」


ウーラオスがメガバシャーモよりも先に脚を踏み出した──が、


 「ラオ…」


直後、ウーラオスの体がぐらりと揺れて──

地に伏せったのだった。


せつ菜「…………ウーラオス」

ランジュ「……ウーラオスが持ってた持ち物……“いのちのたま”よね」
104 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:42:53.44 ID:E7iRZ/bz0

──“いのちのたま”。自分の体力を攻撃のエネルギーに変換する持ち物だ。

例え相手がメガシンカポケモンだったとしても、渡り合えるようにと持たせたものだったが……。


ランジュ「……パワーは完全に互角だったわ」

せつ菜「……“いのちのたま”で失った分の体力が……明暗を分けたようですね……。……ウーラオスお疲れ様、戻ってください」
 「…ラオ、ス…──」


私はウーラオスをボールに戻しながら、ランジュさんの方へと歩を進める。


せつ菜「ランジュさん」

ランジュ「せつ菜」


お互い真正面で向き合い、手を振り上げ──


せつ菜「いいバトルでした!! ありがとうございます!!!」

ランジュ「该说的是我! 楽しい試合だったわ!!」


お互いの健闘を称え合い、固く握手を交わしたのだった。


せつ菜「ですが、次は私が勝ちますよ!!」

ランジュ「望むところよ。まあ、何度やっても勝つのはランジュだけどね!」


お互いが健闘を称え合い、次の試合に対する意気込みを交わし合っていると──


ミア「次の試合は置いておいて……。とりあえず、これでランジュの2勝だ」


と言いながら、ミアさんが私たちのもとにやってくる。


せつ菜「2勝……? ……あ……!!」


熱い勝負に胸を躍らせていて、完全に忘れてしまっていた。

私が敗北したということは──私たちは五番勝負で、早くも追い詰められたことを意味していた。





    🎹    🎹    🎹





侑「せつ菜ちゃん、お疲れ様!」
 「ブイ♪」

せつ菜「……すみません……。……あれだけのことを言ったのに……負けてしまいました……」

侑「うぅん、全力で戦った結果だから、仕方ないよ」

せつ菜「侑さん……」


私がせつ菜ちゃんを労っていると──


かすみ「いやいや、そんなこと言ってる場合ですか!? かすみんたち追い詰められちゃいましたよ!?」


かすみちゃんが青い顔をしながら言う。
105 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:43:51.68 ID:E7iRZ/bz0

せつ菜「す、すみません……」

しずく「こら、かすみさん!! そんな言い方したら、めっだよ!!」

リナ『そもそも、かすみちゃんも負けてる』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

かすみ「ちょ、リナ子ぉ!!」

栞子「お、落ち着いてください、かすみさん……!」

かすみ「で、でもぉ……」

侑「勝負には時の運もあるからさ……」

せつ菜「そう言っていただけると……助かります……」

侑「うん、あんまり気にしすぎないで」

せつ菜「はい……!」


かすみちゃんの言いたいこともわかるけどね。


侑「とりあえず、今日はもう休もう」
 「ブイ」

歩夢「そうだね……せつ菜ちゃんも疲れてると思うし」

せつ菜「いえ、私はまだまだ行けますよ!」

しずく「そう言いながら、膝が笑ってますよ、せつ菜さん」

せつ菜「え? お、おかしいですね……」

栞子「あれだけの戦いの後なんです……ご無理はなさらないでください」

かすみ「はぁ……仕方ないですねぇ……かすみんがひとっ走り行ってきて、ホテルを予約してきますよ!」


そう言って、かすみちゃんが駆け出して行く。


しずく「え、あ、ちょっとかすみさん! ……行っちゃった。かすみさん、泳げるポケモンいないのに、どうやってここから出るんだろう……」

栞子「そ、そうでした……! かすみさんが溺れてしまいます!?」

しずく「いや……たぶん、海の前で手をこまねいてるだけだと思うけど……」

歩夢「とりあえず、外に出よっか」

侑「そうだね……」

リナ『ちなみにネット予約出来たから、部屋は今確保した』 || ╹ᇫ╹ ||

せつ菜「おぉ!! さすがですね、リナさん!!」

リナ『海の見えるリゾートホテルだよ♪』 || > ◡ < ||

歩夢「あ、ちょっと楽しみかも♪」

しずく「フソウのリゾートホテルでバカンス……いいですね……♪」

侑「せつ菜ちゃん、行こうか」

せつ菜「はい!」


私たちはフソウのホテルを目指して、漣の洞窟を後にする。

五番勝負にて、今後の試合で全勝しなければいけなくなったという、課題を背負いながら──



106 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:44:22.52 ID:E7iRZ/bz0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【漣の洞窟】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     ●  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口
107 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/15(日) 12:45:04.43 ID:E7iRZ/bz0

 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.82 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.79 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.80 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.77 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.78 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.74 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:275匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.68 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.69 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.64 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.64 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:254匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.84 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.78 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.75 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.74 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.76 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:298匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.68 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.68 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.68 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.68 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.68 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:279匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.79 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.87 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.83 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.85 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.81 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:202匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.11 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.71 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.70 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.68 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.68 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



108 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:35:09.00 ID:xLULnzaZ0

■ChapterΔ006 『雪山の争闘』 【SIDE Yu】





かすみ「ねーしお子〜……まだ飛ぶの〜……?」

栞子「はい……反応はずっと、北西方面なので……」


──フソウで一晩を過ごした私たちは、今は北西に向かって飛行中。

そろそろカーテンクリフ上空に差し掛かろうという頃合だ。


歩夢「この方向だと……」

侑「グレイブマウンテンかな……」
 「ブイ」

栞子「恐らくは……」

しずく「となると……一度ヒナギクで降りる感じでしょうか」

せつ菜「そうですね。補給無しで山に入るのは危ないでしょうし」

侑「それじゃ、一旦ヒナギクを目指そう」


私たちはヒナギクへと進路を定める。


栞子「……ヒナギクシティ……」

歩夢「? 栞子ちゃん……?」

栞子「いえ……なんでもありません」

歩夢「そう……?」





    🎹    🎹    🎹





──ヒナギクシティへ到着し、降り立った途端、


かすみ「へっくちっ!!」


かすみちゃんが可愛くくしゃみをする。


しずく「かすみさん、大丈夫……!?」

かすみ「う、うん……。……でも、寒すぎますぅ……」


確かにかすみちゃんの言うとおり、ヒナギクシティは凍えるほど寒かった。

今も雪がパラついているし……。


かすみ「前来たときはこんなに寒くなかったのにぃ……」

しずく「前って言っても、もう半年前だからね……」

リナ『あの時期だと、だいたい初夏くらいだったからね。そろそろ冬になるから、さすがに寒くて当然』 || ╹ᇫ╹ ||


全員耐寒用のコートを羽織ってはいるものの……それでも、寒いものは寒い。


せつ菜「一度装備を整えた方がいいかもしれませんね」

歩夢「うん……グレイブマウンテンに入るなら尚更だよね。栞子ちゃん、反応ってやっぱりグレイブマウンテンの方からなのかな?」
109 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:35:49.89 ID:xLULnzaZ0

歩夢が問いかけるけど──


栞子「……」


栞子ちゃんは雪がパラつく町の中で、行き交う人々をボーっと眺めていた。


歩夢「栞子ちゃん?」

栞子「え……? あ、す、すみません、なんでしょうか」

歩夢「龍脈の反応は、どっちにあるのかなって……」

栞子「あ、龍脈ですね……!」


栞子ちゃんは手に持った“もえぎいろのたま”を見つめる。

ぱぁぁぁと輝く宝玉は、栞子ちゃんがグレイブマウンテンの方に向けてかざすと、少しだけ光が強くなる。


栞子「……北方面ですね」

侑「となると……やっぱり、グレイブマウンテンかな」

せつ菜「ですね!」

かすみ「それはわかったので、とりあえずどこか入りましょうよぉ〜……かすみん、寒くて凍えそうですぅ〜……」

侑「じゃあ、まずはポケモンセンターかな。ポケモンたちも山に入る前に休ませたいし」

歩夢「そうだね」

かすみ「早く温かいエネココアが飲みたいですぅ〜!!!」


そう言って、かすみちゃんが一人駆け出す。


しずく「あ、ちょっとかすみさん……行っちゃった……」

せつ菜「よほど寒さが辛かったのかもしれませんね」

しずく「すみません……協調性がなくて……」

リナ『走ると身体もあったまるし、ちょうどいいんじゃない』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「私たちも急ごうか」


暖かい場所に行きたいのは、私たちも同じだからね。

かすみちゃんを追って、みんなでポケモンセンターを目指して歩き始める。

そんな中、


栞子「…………」


栞子ちゃんはまた町の様子を見て、ボーっとしていた。


歩夢「栞子ちゃん?」

栞子「え、あ、はい、すみません……! 移動するんですよね!」

歩夢「大丈夫……? もしかして、どこか具合悪い……?」


歩夢が心配そうに訊ねる。


栞子「い、いえ……! その……ちょっと、町の様子を見て、驚いてしまって……」

歩夢「驚く……?」

栞子「はい……この町──」


栞子ちゃんが話そうとしたところで、
110 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:36:41.73 ID:xLULnzaZ0

かすみ「──もうーーーー!!! 皆さんも早く来てくださいーーーー!!!」


かすみちゃんが声を張り上げて、ポケモンセンターの前でぴょんぴょんしていた。


侑「とりあえず、移動しよう」

歩夢「あ、うん、そうだね! 栞子ちゃん、行こ♪」

栞子「は、はい!」


歩夢が栞子ちゃんの手を握って、歩き出す。

歩夢に手を引かれて歩く間も、


栞子「……ここが……ヒナギクシティ……なんですね……」


栞子ちゃんはヒナギクの町をぼんやりと見つめながら、そう呟いていた。





    🎹    🎹    🎹





かすみ「はふぅ〜……。生き返るぅ〜……」


みんなで温かい飲み物を飲みながら一息吐く。


せつ菜「ポケモンたちもみんな預けてきました!」


ポケモンたちを預けるために、センターのポケモン預け口まで行っていたせつ菜ちゃんも戻ってきて合流する。


侑「ありがとう、せつ菜ちゃん。ごめんね、全員分お願いしちゃって……」

せつ菜「いえ! お気になさらないでください! 6人分バラバラに預けるとジョーイさんも大変だと思うので!」

歩夢「ふふ、ありがとうせつ菜ちゃん♪ これ、せつ菜ちゃんの分のエネココアだよ♪」

せつ菜「頼んでおいてくれたんですね! ありがとうございます!」


せつ菜ちゃんも席に着き、今後の話をしたいところだけど──その前に、


歩夢「それで、栞子ちゃん。驚いたって言うのは……」


さっき、栞子ちゃんが言いかけたことの続きが先かな。


栞子「あ、はい……。……その……ヒナギクは、龍神様のお怒りの余波を受けて……雪に閉ざされてしまった町と聞いていたので……」

かすみ「? 今も見たとおり雪に閉ざされてるじゃん……?」

栞子「ですが……行き交う人々には、活気が感じられました……」

しずく「確かに……特有の活気はあるかも……」

リナ『この町は、活気の性質が濃すぎるところあるけどね』 ||;◐ ◡ ◐ ||


確かにこの寒さなのに、窓の外を見ると、いかにもなオカルトガールやサイキッカーが出歩いている。
111 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:37:22.53 ID:xLULnzaZ0

せつ菜「この町にいる方たちは、皆熱い気持ちを持っていますからね!! 私も以前、町ゆく人にお話を伺ったことがあります! 言い知れぬ力を感じると言っていました!」

栞子「言い知れぬ力……!? まさか、この町の方たちは龍脈を感じ取る力のようなものがあるのですか……!?」

せつ菜「はい!! 龍脈ではありませんが、彼女たちは『私たちには見えている……』と、仰っていました!!」

栞子「す、すごいです……! やはり、この町にいる方たちは、特別なんですね……!」

かすみ「しお子〜……間に受けちゃダメだよ〜……」

栞子「え?」


栞子ちゃんがきょとんとする。


かすみ「せつ菜先輩もしお子に変なこと教えないでくださいよ! 説明がめんどくさいんですから!」


まあ、確かに……栞子ちゃんには、この町の人たちを説明するのは難しいというか……。

栞子ちゃんは特別な力を持った翡翠の巫女だから、尚更……。


せつ菜「変なこと……? 私、何かおかしなことを言ったでしょうか……? この町の方たちには不思議な力があるんじゃないんですか?」

かすみ「……マジですか」

歩夢「せつ菜ちゃん……! 変な人に勧誘とかされても、絶対付いて行っちゃダメだよ……!」

せつ菜「……? わかりました……?」


せつ菜ちゃんはせつ菜ちゃんで心配かも……。


しずく「えっと……それで、栞子さんはこの町の活気が気になったの?」

栞子「あ、はい!」


しずくちゃんがズレてしまった話を戻す。


栞子「正直なことを言うと……龍神様の力の被害を最も受けた場所と言っても過言ではないので……ここに来るのは少し気が引けていたんです……。でも……いざ実際に町を見ていたら、思った以上に活気のある町になっていて、驚いてしまって……」

歩夢「そういうことだったんだね……」

せつ菜「この町は確かに他の町に比べると、少し厳しい環境かもしれませんが……それでも、ここにいる方たちはしっかりと生活していますからね」

しずく「ヒナギクはいろんな人たちが、ポケモンと力を合わせて開拓した町と言われています」

リナ『近年で最も発展した町なんて言われることもあるね』 || ╹ᇫ╹ ||

栞子「そうなんですね……」

かすみ「確かにすごいですよね〜。かすみん、こんな寒い場所に頑張って住もうなんてなかなか思えませんもん……」

せつ菜「確かにそう考えると、この町からは人やポケモンの逞しさを感じますね……」

歩夢「ふふ♪ 人とポケモンが力を合わせれば、案外住めない場所なんてないのかもしれないね♪」

栞子「人とポケモンが……力を合わせれば……。……そう、ですね……。……そうなのかもしれません」


栞子ちゃんはそう言ってから、しばらくの間、ボーっと……窓の外から見える、雪の積もったヒナギクの町を眺めていたのだった。



112 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:38:41.25 ID:xLULnzaZ0

    🎹    🎹    🎹





──あの後、私たちはポケモンたちを預けている間に、雪山に入るための装備を整え、


かすみ「……あっつ……。……脱ぎたい……」

しずく「これから寒い場所に行くためでしょ……」

せつ菜「これなら、寒さは問題なさそうですね!」


これで、山に入るための準備は万端だ。


歩夢「ねぇ侑ちゃん……この帽子、もこもこで可愛かったから買っちゃったんだけど……どうかな……?」

侑「うん! すっごく可愛いよね、その帽子! 私も最初に見たとき歩夢が被ったら絶対似合いそうって思ってたよ!」
 「ブイ♪」

歩夢「えへへ……♪ ありがとう♪ 嬉しい♪」

せつ菜「食糧も十分に持ちましたし、これでグレイブマウンテンへ行けますね!」

リナ『それはそうと……決めておかなくちゃいけないことがある』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「決めておかなくちゃいけないこと?」

侑「……次に誰が戦うかだよね」

リナ『うん』 || ╹ ◡ ╹ ||


私たちはここまで2戦2敗。

あと1敗したら、それで負けが確定してしまう。


歩夢「これ以上負けちゃったら……ランジュちゃんを止められなくなっちゃう……」

侑「どちらにしろ、ここから求められるのは全戦全勝だけど……」

歩夢「わ、私も勝たなきゃってことだよね……」

せつ菜「すみません……私が負けてしまったばっかりに……」

歩夢「あ、うぅん! せつ菜ちゃんが悪いんじゃないよ……!」

リナ『とにかく、侑さん、歩夢さん、しずくちゃんの3人で全部勝つためには……その場その場でコンディションや、フィールドの環境に一番噛み合った人が戦うのがいいと思う』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「環境に噛み合った人……」


確かにこれから向かうのはグレイブマウンテン──つまり、雪山だ。

そういう場所で戦うなら……。


侑「……私は雪山で戦った経験がある」
 「ブイ」


理亞さんとの戦闘の経験がある。


リナ『確かに雪山なら、ライボルトで電気を集束したりも出来るから、侑さんは相性がいいかもしれない』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「じゃあ、次の試合は──」


──私と言おうとした、そのとき、


しずく「あの……! 次の試合は私に戦わせてくれませんか!」


しずくちゃんが名乗りを上げた。
113 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:39:35.72 ID:xLULnzaZ0

かすみ「しず子……?」

しずく「グレイブマウンテンとのフィールド相性と言うなら……私もあそこで捕まえたツンベアーを持っています。それに侑先輩は残りの3人の中では確実に1番強い……。……なら、私と歩夢さんどちらも勝算が見込めない場をお任せしたいです」

リナ『……それは確かに』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「わかった。そういうことなら……しずくちゃん、お願いできる?」


私の問いに、


しずく「はい! お任せください!」


しずくちゃんは力強く頷くのだった。





    🎹    🎹    🎹





──さて、“そらをとぶ”でグレイブマウンテンに入って数十分。


栞子「この辺りですね。ウォーグル」
 「ウォーグ…」


全員で雪に覆われた山へと降下していく。

場所としては中腹くらいだろうか。

私たちが降り立った場所には──氷で覆われた岩が鎮座していた。

触ると自分まで凍りそうな冷気を放っている不思議な岩だった。


リナ『この岩から、“こおりのいし”に似たエネルギーを感知出来る』 || ╹ᇫ╹ ||

しずく「ここで間違いなさそうですね」

栞子「はい。“もえぎいろのたま”も龍脈のエネルギーを吸収し始めています」

せつ菜「となると……後はランジュさんたちが来るのを待つだけですね」


とりあえず前回同様、先に到着出来たので、あとはここで準備をしながら待つだけだ。


かすみ「…………」

歩夢「かすみちゃん?」

しずく「……やけに大人しいね、かすみさん」


そこでふと、かすみちゃんがやたら大人しいことに気付く。
114 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:41:14.87 ID:xLULnzaZ0

かすみ「……むしろ、皆さん怖くないんですか……」

栞子「恐い……とは……?」

かすみ「冬の雪山ですよ……かすみん知ってますよ、おっきな声とか出すと、雪崩が起こって大変なことになるんです……。……前回も雪崩で大変なことになったし……」

しずく「あれはフリージオが起こした“ゆきなだれ”だし……。……かすみさん、映画の見過ぎだよ?」

かすみ「え、しず子がそれ言う……?」

歩夢「映画でよく見る、大声で雪崩が起こるのはフィクションだから大丈夫だよ」

かすみ「へ? そうなんですか……?」

せつ菜「人の声くらいのエネルギーでは、さすがに雪崩を発生させることは難しいですからね」

かすみ「……でも、せつ菜先輩の大声なら、雪崩くらい起こせそう」

せつ菜「……確かに、私は声が大きいとよく言われます。……そう言われると、もしかしたら、出来るんじゃないかって気がしてきました……!!」


せつ菜ちゃんはスゥーーーっと思いっきり息を吸い込み、


せつ菜「私はーーーチャンピ──……もがっ!」


大声を張り上げようとしたので、栞子ちゃん以外が一斉にせつ菜ちゃんの口を塞ぐ。


せつ菜「……むー。……むー」

侑「ご、ごめん……。せつ菜ちゃんなら、本当に雪崩起こしかねないと思って……」

しずく「……わ、私も……ありえないってわかっているのに、せつ菜さんならやってしまいそうだと……」

かすみ「き、肝が冷えましたよ……勘弁してください……」

歩夢「人の声くらいじゃ起こらない……。起こらない……よね……?」


逆の意味で、せつ菜ちゃんへの信頼感がすごい私たちだった。


せつ菜「わかりました。雪崩チャレンジはまた今度にします!」

かすみ「一生やらないでくださいっ!!」

侑「あはは……」


思わず苦笑してしまう。本当にそのうち、声で雪崩を起こすのに成功しそう……。


侑「とりあえず……ランジュちゃんたちが来るまでどうしようっか」

せつ菜「じっとしていると身体が冷えてしまいそうですね……」

かすみ「あ、なら、かまくらでも作りますか? かすみん結構得意なんですよ〜♪」

栞子「かまくら……? なんですか、それは……?」

かすみ「え、しお子、かまくらも知らないの!? ……仕方ないなぁ〜……かすみんが雪遊びのなんたるかを教えてあげますよ〜」

栞子「は、はい! お願いします!」

歩夢「それじゃ、私は雪うさぎ作ろうかな……♪」


みんながかまくら作りの話をし始める中、


しずく「……すみません。私……少し、席を外しますね」


しずくちゃんは、私たちに背を向けて歩き出す。


かすみ「しず子……? どこ行くの……?」

しずく「……ちょっと、試合の前に、気持ちを落ち着けたいなって……そんなに離れた場所に行くわけじゃないから、心配しないで」
115 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:41:56.53 ID:xLULnzaZ0

そう残して──しずくちゃんは、行ってしまった。


かすみ「しず子……やっぱり、緊張してるのかな」

せつ菜「……そうですね。ランジュさんが強敵だと言うことは、しずくさんも理解しているでしょうし……負けられないというプレッシャーもありますから……」

かすみ「……かすみんたちが勝ってれば……」

せつ菜「……今更言っても仕方ありません。今はしずくさんを信じましょう」

かすみ「はい……」





    💧    💧    💧





しずく「…………」


目を瞑って──ゆっくりと呼吸する。

雪山の冷たい空気が肺に入ってきて痛いくらいだけど……お陰で頭も一緒に冷やされて冷静になれる気がした。


しずく「…………大丈夫」


自分に言い聞かせるように言葉にする。


しずく「私が……かすみさんの分まで……頑張るんだ」


プレッシャーはある。

私は積極的にバトル──特に試合形式のものはしてこなかった故に、不安もある。

だけど……私も、ここまで旅をしてきた、図鑑所有者の一人なんだ。


しずく「……大丈夫……」


もう一度自分に言い聞かせながら目を瞑る。

でも──ドックン、ドックンと、心の臓が音を立てていた。


しずく「……大丈夫……」


もう一度、自分に言い聞かせるように言った──そのとき、


歩夢「──……大丈夫だよ」

せつ菜「──しずくさんなら、大丈夫です」


いつの間にか私の隣に居た歩夢さんとせつ菜さんが、私の手を握りながら言う。


しずく「歩夢さん……せつ菜さん……」


目を開けると──二人が優しく私の手を握りながら、私を真っすぐ見つめていた。


せつ菜「前にも言いましたが……しずくさんは、自分のステージを作り出せれば、ランジュさんにも劣らない実力を持っています。自信を持ってください!」

しずく「せつ菜さん……」

せつ菜「自分で言うのもあれかもしれませんが……しずくさんは、私に一杯食わせたんですよ? あのときの力を出せば、きっと勝てますから!」

しずく「……はい」
116 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:43:44.44 ID:xLULnzaZ0

せつ菜さんの言葉に頷く。


歩夢「しずくちゃんは、私の大切なもの……全部守ってくれた……。……しずくちゃんも怖かったはずなのに……全部全部守ってくれたから……。……しずくちゃんの勇気と芯の強さがあれば、誰にも負けないって信じてるよ」

しずく「歩夢さん……」


あのとき、ウルトラディープシーで共に過ごした二人からの激励の言葉に、


しずく「……はい。……はい……!」


私は力強く頷いた。

気付けば──ドクン、ドクン、と激しく主張していた心の臓は、少しずつ落ち着きを取り戻していた。


しずく「歩夢さん、せつ菜さん」

歩夢「ふふ、なぁに?」

せつ菜「なんですか?」


微笑みながら訊き返してくる二人に、


しずく「勝ってきます」


そう伝える。


歩夢「うん♪」
せつ菜「はい♪」


頼もしい二人の言葉に応えられるように、私は覚悟を決めたのだった。





    💧    💧    💧





あれから、小一時間ほど経った頃に──ランジュさんたちは現れた。


ランジュ「また、先に着けなかった……」

ミア「それより……ボク寒いんだけど……」


二人とも、ちゃんと防寒装備はしてきているけど、ミアちゃんは寒そうに腕をさすっている。


かすみ「ふっふっふ……特別にかすみん特製かまくらの中に入れてあげてもいいですよ〜?」

ミア「Huh? そんな雪で作ったものの中に入っても、余計寒いだけだろ……」

かすみ「騙されたと思って入ってみるといいですよ!」

ミア「……はぁ……なんなんだよもう……」


そう言いながらも、ミアさんはかまくらの中に足を運ぶ。


ミア「……確かに暖かい」

栞子「はい! 私も入ってみて驚きました! 雪で出来ているのに、不思議です!」

ランジュ「ちょっとミア! ポケモン渡してからにしてよ!」

ミア「そうだった……」
117 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:44:44.98 ID:xLULnzaZ0

ミアさんはかまくらから出て、ランジュさんにボールの入ったケースを渡し──そそくさとかまくらに戻っていく。

結構気に入ったのかもしれない。


かすみ「ふんふん! しお子もミア子も素直でよろしい!」

ミア「ミア子……? 勝手に変なあだ名付けるなよ」

かすみ「えーでも、年下なんでしょー? ミア子がちょうどいいって!」

ミア「なんなのこいつ……」

歩夢「ケンカしちゃダメだよ? 仲良くね♪」

ミア「いや、一応ボク敵陣営なんだけど……。……ま、いいけどさ……」


さて、オーディエンスたちの準備は良さそうだ。

私はランジュさんの前に歩み出る。


ランジュ「今回は貴方なのね。しずくだったかしら」

しずく「はい。よろしくお願います」


ランジュさんにペコリと頭を下げる。


ランジュ「ええ、かすみやせつ菜みたいな、楽しい勝負が出来ること……期待してるわ」

しずく「ご希望に応えられるよう、全力で戦わせてもらいます」


両者、ボールを構え──フィールドに向かって投げ放つ。

さぁ、中堅戦──開演です……!!





    💧    💧    💧





しずく「ツンベアー! お願い!」
 「──ベァァッ!!!」


私の1番手は、ここグレイブマウンテンの環境で育ったツンベアーだ。

一方、ランジュさんは、


ランジュ「行くわよ、グライオン!」
 「──グライ!!!」


グライオンだ。

グライオンはじめん・ひこうタイプのポケモン。こおりタイプは大の苦手なはずだ。1番手は出し勝ってる……!

しかも今回ツンベアーには少しでもパワーを高めるために、“いのちのたま”を持たせている。

グライオンを一気に突破して、数的有利が取れれば……!


しずく「ツンベアー! “つららおとし”!!」
 「ベァァッ!!!!」


ツンベアーがこおりのエネルギーをグライオンの頭上に飛ばし、そこからつららが生成されて降り注ぐ。

一方、ランジュさんは、


ランジュ「グライオン、“まもる”!」
 「グライ!!」
118 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:45:23.45 ID:xLULnzaZ0

まずは様子見の防御技。

グライオンが頭上にハサミを掲げながら、つららを弾いて防御する。

それと同時に──グライオンが首に提げていた紫色の球が鈍く光る。

あの持ち物は──


しずく「……! “どくどくだま”……!」


持っているポケモンを“もうどく”状態にするアイテムだ。

そして恐らく、あのグライオンの特性は“ポイズンヒール”。

本来ダメージ受けるはずの“どく”状態で、逆にHPが回復していく特性だ。

相手は受け特化のグライオン……!

受けの姿勢を作らせちゃダメだ……!


しずく「“つららおとし”!!」
 「ベァァァッ!!!!」


“まもる”は連続では使えないはず……!

今度こそ攻撃を直撃させようと同じ攻撃を狙うが──つららが落ちるよりも早く、


ランジュ「“とんぼがえり”!!」
 「グライッ!!!」

 「ベァァ…!!!」


グライオンがツンベアーに突撃し、その反動を利用してボールに戻っていく。

そして代わりに出てきた──


 「──…ヤドラーン」


ヤドランに向かって、つららが降り注ぐ。

だけど──ヤドランはみず・エスパータイプ。

こおりタイプは効果がいまひとつでダメージが少なく、顔色一つ変えていない。

さらに──


ランジュ「ヤドラン! メガシンカよ!」
 「ドラーン」


ヤドランが光に包まれ──尻尾に噛みついているシェルダーが巨大化し、ヤドランの全身を覆うサイズになる。

メガヤドランは極端なほどに防御が向上するメガシンカだ。

要塞とも言える防御力に手を焼くトレーナーも多いが──対策はある。


しずく「“ぜったいれいど”!!」
 「ベァァァーーーッ!!!!!」


それは一撃必殺だ。

一撃必殺は、命中に難はあるが──防御主体のポケモンに対しては撃つ回数が確保できるため、防御崩しの手段として用いられる。

広がる冷気が、メガヤドランに向かって飛んでいくが──冷気はメガヤドランを外して、見当外れの場所を凍てつかせる。

冷気が強力過ぎる故に、相手を捉えるのが苦手な技だ。ここは割り切って回数を稼ぐしかない。


しずく「もう一度……!」


再び、“ぜったいれいど”を撃とうとしたそのとき──
119 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:46:05.61 ID:xLULnzaZ0

ランジュ「“定身法”!」
 「ドラーン」


メガヤドランの目がカッと光り──


 「ベァ…!!」


同時に“ぜったいれいど”が不発する。

これは──


しずく「くっ……“かなしばり”ですか……!?」


“かなしばり”で“ぜったいれいど”を封じられた。

相手も受け崩しを理解して対策を打ってくる。

さらに、


ランジュ「“ねっとう”よ!」
 「ドラーーン」

 「ベァァッ…!!!?」
しずく「ツンベアー……!?」


技が不発し、動揺したところに、メガヤドランが噴き出した“ねっとう”が襲い掛かる。

しかも──


 「ベ、ベァァ…」
しずく「一発で“やけど”……!」

ランジュ「あら、運が悪いわね、しずく」

しずく「くっ……戻って、ツンベアー!」


一旦ツンベアーを戻す。何もメガヤドラン対策は一撃必殺だけじゃない……!


しずく「お願い、サーナイト!」
 「──サナ」


サーナイトを繰り出すと同時に──襟元に着けたメガブローチが光り輝く。


しずく「メガシンカ!!」


サーナイトの体が光に包まれ──


 「サナッ!!!」


メガサーナイトへとメガシンカする。


しずく「“10まんボルト”!!」
 「サナッ!!!」


サーナイトが電撃を放つ。

メガヤドランは防御こそ高いものの、特殊耐久は並程度だ。

しかし──


ランジュ「“まもる”!」
 「ドラーン」


メガヤドランはシェルダーの中に籠もって、電撃を受け流す。
120 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:46:44.65 ID:xLULnzaZ0

しずく「また“まもる”……!」


いや、焦るな、私……! “まもる”は連発出来ないんだ……!


しずく「もう一度、“10まんボルト”!!」
 「サーーーナァッ!!!!」


再び、電撃を放つサーナイト。

一方ランジュさんは、


ランジュ「戻りなさい」
 「ドラン──」


メガヤドランを控えに戻し──


ランジュ「行きなさい!! ラッキー!」
 「──ラッキー」


代わりに出てきたラッキーが“10まんボルト”を受け止める。

ラッキーは特殊耐久が極端に高いポケモンとして知られている。そのため、“10まんボルト”のダメージをほとんど受けていない。


しずく「今度は、特殊耐久のポケモン……!」


さっきから攻撃はしているはずなのに、うまく通らない。

いや、苛立っちゃダメだ……! 耐久ポケモンを倒すためには一つ一つ丁寧に崩して行かないと……!

特殊耐久が高いなら──


しずく「“サイコショック”!!」
 「サナッ!!!」


“サイコショック”は特殊技でありながら、特殊防御力では防ぐことの出来ないトリッキーな技だ。

これなら、特殊耐久が極端に高いラッキー相手でも有効にダメージを通していけるはず……!

動きの緩慢なラッキーは技を避ける素振りも見せず──


 「ラキッ…!!!!」


“サイコショック”によって発生したサイコキューブがラッキーに降り注ぐ。


しずく「やった……!」


有効にダメージを与えることに成功した。

だが、直後に──サーナイトの方に向かって、タマゴが飛んできた。


しずく「……!?」


──“タマゴばくだん”……!?


しずく「“スピードスター”!!」
 「サナッ!!!!」


直撃する前に、空中で撃ち落とそうと、星型のエネルギー弾で迎撃する。

“スピードスター”に撃ち抜かれた“タマゴばくだん”は、空中で爆散し、攻撃を防げたと思ったのも束の間──

爆散したタマゴの中から──大量の紫色の液体がサーナイトに向かって、降り注いできた。
121 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:47:22.05 ID:xLULnzaZ0

 「サナッ…!!?」
しずく「な……!?」


その毒液を頭から浴びたサーナイトは膝を突く。

まさか、今の技は“タマゴばくだん”じゃなくて──


しずく「“どくどく”……!?」


“もうどく”にされてしまった。これじゃ、相手は攻撃を防いでいるだけで、サーナイトも、すでに“やけど”状態になっているツンベアーも倒れてしまう。


しずく「く……! サーナイト!! “サイコショック”!!」
 「サナッ…!!!」


とにかく早く相手を倒さないと、時間がない……!!

再び、ラッキーの周囲にサイコキューブが出現するが──


ランジュ「戻りなさい、ラッキー!」
 「ラキ──」

しずく「また交換……!?」

ランジュ「グライオン!!」
 「──グライ…!!!」


ラッキーの代わりに飛び出してきたグライオンが、“サイコショック”を受け止める。

グライオンも防御力の高さがウリのポケモン。半面、特防には自信がないはず……!


しずく「“サイコキネシス”!!」
 「サナッ!!!」

ランジュ「“まもる”!」
 「グライ!!」

しずく「ま、また……!」


焦るな。苛立っちゃダメだ。そういう戦術なんだ……!


しずく「戻って! サーナイト!!」
 「サナ…──」


時間稼ぎに付き合って、“もうどく”で消耗させられる方がまずい。


しずく「“インテレオン”!!」
 「──インテ」


私は3匹目、インテレオンを繰り出す。

今回は“ピントレンズ”を持たせて、急所狙いに特化している。耐久重視のランジュさん相手には決して悪くない相性のポケモン。

ただ、ランジュさんは交代の隙を突いて──


ランジュ「“みがわり”!」
 「グライ!!」


グライオンが体力を使って、攻撃を肩代わりする“みがわり”を自らの目の前に作り出す。

防御戦術なら、“まもる”と“みがわり”を使った時間稼ぎは有名な戦術だ。

さすがに向こうがここまで徹底的にやってくるなら、私にだって対応策を打つことくらい出来る……!


しずく「“つららばり”!!」
 「インテッ!!!!」
122 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:47:53.64 ID:xLULnzaZ0

インテレオンが指先から、氷の針を連続で発射する。

発射された、つららは──“みがわり”を1発目で消滅させ、


 「グライッ…!!?」


その背後にいたグライオンに2発、3発と命中する。

4発目、5発目もグライオンを捉えたかと思ったが、


 「グライッ…!!!」


グライオンは身を捻って、ギリギリ最後の“つららばり”を回避し──


 「グライッ!!!!」


そのまま、インテレオンに向かって突っ込んでくる。


しずく「突撃してきた……!? “ねらいうち”!!」
 「インテッ!!!!」


インテレオンが飛び掛かってくる、グライオンに向かって、指先の銃口を構え──水銃を撃ち放った。


 「グライ…ッ」


水銃はしっかりと、グライオンを撃ち抜き、グライオンが崩れ落ちる──が、


 「インテ…!!!」


崩れ落ちながらも──グライオンの尻尾の針が、インテレオンの腹部に突き刺さっていた。


しずく「インテレオン……!」
 「インテ…!!」


大ダメージこそ受けていないようだが──インテレオンの顔色が悪い。

ここまでのランジュさんの戦い方からしても、もう何をされたか理解するのは容易だった。


しずく「“どくどく”……」


インテレオンも“もうどく”状態にされた。


ランジュ「さぁ、ラッキー、出てきなさい」
 「──ラッキー」


ラッキーによる時間稼ぎをするつもりだ。


しずく「戻って、インテレオン……!」
 「インテ…──」

しずく「ツンベアー……!」
 「ベァァ…!!!」


否応がなく、交換を強いられている状況の中、私の交換の隙を突いて、


ランジュ「“タマゴうみ”!」
 「ラッキー♪」


ラッキーが自身の生んだ栄養満点のタマゴで体力を回復する。

でもラッキーの防御力は低いんだ……!
123 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:48:26.47 ID:xLULnzaZ0

しずく「“ばかぢから”!!」
 「ベァァァ!!!!」


ツンベアーがラッキーに近付いて拳を振り下ろすが──


ランジュ「戻りなさい!」


ランジュさんは再びラッキーを交換──


 「──ドラーン」


代わりに出てきたメガヤドランが、ツンベアーの拳を硬いシェルダーの鎧で受け止める。


しずく「“ぜったいれいど”!!」
 「ベァーーーーッ!!!!!」


起死回生の一撃必殺は──またしても明後日の方向に飛んでいく。

そして、技を外した隙を突いて──


ランジュ「“サイコキネシス”!!」
 「ドラーーン」

 「ベァァ…!!!」


メガシンカによって強化されたサイコパワーで、ツンベアーを吹き飛ばす。


 「…ベァ…」


吹き飛ばされ、地面に叩き付けられ、さらに蓄積した“やけど”のダメージと、“いのちのたま”によって削れた自傷ダメージが重なり、崩れ落ちるツンベアー。


ランジュ「ふふ、さっきからツイてないわね」

しずく「……」


こちらの“ぜったいれいど”は2回とも外れ、1回の“ねっとう”で“やけど”状態にさせられた。

“つららばり”は5発中3発しか当たらないし、“ピントレンズ”を持っているのに、急所へのヒットもなし。

確かに、運が悪い。

だけど……それは結局試合の結果には関係ないし、負けたときの言い訳には出来ない。


しずく「インテレオン……!!」
 「──インテ…!!」


インテレオンをボールから繰り出し、


しずく「“あくのはどう”!!」
 「インテ…!!!」


メガヤドランに相性の良いあく技で攻撃をする。


ランジュ「ヤドラン、“ドわすれ”よ!」
 「ヤァン…?」


しかし、ランジュさんは“ドわすれ”で特防を上げることによって、時間稼ぎをしてくる。

その間にも、


 「インテ……ッ」
124 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:49:36.43 ID:xLULnzaZ0

インテレオンの体力は“もうどく”によって、どんどん削られていく。

早く……倒さないと……!!


 「インテ…!!!」


インテレオンが指の先に影の球を集束させながら、“ピントレンズ”を使って狙いを定める。


しずく「“シャドーボール”!!」
 「インテッ!!!」


インテレオンの指先から発射された“シャドーボール”は──


 「ヤァンッ…!!!?」


見事にシェルダーの鎧を避け、メガヤドランの頭部に直撃する。


 「…ド、ラン…」


急所に当たった。さすがにこれにはメガヤドランも堪らずダウンする。


しずく「これで……残り2対1……!!」


数の上では有利を取っている。

だが──


ランジュ「でも、ランジュの最後のポケモンは──ラッキーよ」
 「──ラッキー!!」


そう、ラッキーだ。


しずく「“ねらいうち”!!」
 「インテ…!!!」

 「ラッキー…!!?」


“ピントレンズ”と急所に当たりやすい技の“ねらいうち”でラッキーの急所を撃ち抜き、吹き飛ばすが──


 「…ラッキー!!」


ラッキーはすぐに起き上がる。

急所に当たっても全然ダメージになっていない……!


しずく「特殊防御が高すぎる……!」


恐らくラッキーが持っている持ち物は“しんかのきせき”。

まだ進化を残しているポケモンの防御と特防を著しく上昇させるアイテムだ。


ランジュ「それだけじゃないわ。ラッキー、“タマゴうみ”よ!」
 「ラッキー♪」


ラッキーは再び栄養満点のタマゴを産み、自らの体力を回復してしまう。

必死に急所を狙ってダメージの蓄積を狙うが──ラッキーの回復の方が速く……。

そして最終的には──


 「イン、テ…」
125 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:50:23.36 ID:xLULnzaZ0

“もうどく”のダメージの蓄積によって、インテレオンが崩れ落ちる。


しずく「……っ……。……戻って、インテレオン」
 「インテ…──」


インテレオンをボールに戻し──最後のポケモンのボールに手を掛ける。

手を掛けたところで──自分の手が、震えていることに気付いた。


しずく「…………っ」

ランジュ「さあ、早く最後のポケモンを出しなさい。……まあ、降参してもいいけど。もう、ほぼ詰みみたいな状態だし」


──降参。ランジュさんの口からそんな言葉が出てくる。


しずく「……しません」

ランジュ「じゃあ、早く出して」

しずく「……サーナイトッ!!!」
 「──サナ…!!!」


“もうどく”状態のメガサーナイトがボールから飛び出す。


しずく「サーナイト!! “サイコショック”!!」
 「サナ…!!!」

 「ラッキ…!!!」


“サイコショック”によって、有効的なダメージは与えられるけど──


ランジュ「“タマゴうみ”」
 「ラッキー♪」

しずく「……くっ……」

ランジュ「もう無理よ。ラッキーの回復は十分追い付いてる」


そう──多少は削れているかもしれないけど……ラッキーの体力を削り切る前に……サーナイトが“もうどく”で倒れる。


ランジュ「それとも──4.17%に賭ける?」


──4.17%

これは……一般的に、ポケモンの技が偶然急所を捉える確率と言われている。

確かに今、急所に当たりさえすれば……倒しきることが出来る。

でも……それを今狙うというには、あまりに絶望的な確率。

世の中には、狙って相手の急所を捉えることが出来る特別なトレーナーがいるらしいが……私にはそんな芸当は出来ない。

もしここに立っているのが歩夢さんだったら、それが出来たのかもしれない。

侑さんだったら多彩な技で潜り抜け打開をし、かすみさんだったら奇抜な発想で逆転をし、せつ菜さんだったらそもそも相手の思うように防御戦術を展開すらさせていなかったかもしれない。

でも──今の私には、ランジュさんの戦法を崩す術が……ない。


しずく「…………っ」


唇を噛む。


 「サナ…ッ!!!」
126 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:51:13.13 ID:xLULnzaZ0

今もサーナイトは必死に“サイコショック”を続けているのに──私にはもう何も出来ないの……? 何も出来ることはないの……?

このままじゃ、本当に、何も出来ずに敗北を待つだけ。

なんで私は──……こんなに弱いんだ。

みんなのために勝つって意気込んで、この場に立っているのに。戦っているのに。


かすみ「しず子ぉぉーー!! 頑張れーーーっ!!」

せつ菜「しずくさん!! まだ終わってませんよーーー!!」

侑「しずくちゃーん! 諦めないでー!!!」


かすみさん、せつ菜さん、侑さんが応援を飛ばしてくれる。


歩夢「…………っ……!」

栞子「……しずくさん……」


歩夢さんは祈るようにして、栞子さんは不安そうに、固唾を飲んで見守っている。

──そうだ。


しずく「……私は……負けるわけにいかない」


今、私が負けたら……全部終わりなんだ。

そのとき、ふと──あることを思い出した……。

半年前の……戦いのときのことを──



──────
────
──



──侑先輩と歩夢さんがウルトラスペースに飛び込んでから、3日ほど経ったときだ。


 「──フェロ…」

しずく「はぁ……! はぁ……!」


やっとの思いで、こちらの世界に現れたフェローチェを撃退した私たち。


彼方「ふぅ……。……しずくちゃん、一旦休憩しておいで〜」

しずく「いえ……! まだ、戦えます……!」

彼方「ダーメ、疲れが見えてるよ。後方で休憩しなさーい」

かすみ「しず子! こっちはかすみんたちがどうにかするから!」

せつ菜「はい! 休憩するのは大事ですから!」

しずく「……わかりました。……よろしくお願いします」


連日連戦が続いていたため、全員で交代で休憩を取りながらウルトラビーストと戦っている状態だった。

後方へ下がると──
127 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:51:49.70 ID:xLULnzaZ0

姫乃「しずくさん、どうされましたか」

遥「もしかして、お怪我を……」

しずく「いえ、休憩をいただいたところです」

遥「そういうことでしたら、ポケモン預かりますね! 回復させておきます!」

エマ「食事も作ってあるから、今持ってくるね! あっちのテントで待ってて!」

しずく「はい、ありがとうございます」


後方で炊事をしているエマさんと、ポケモンと私たちトレーナーの怪我の治療を行っている遥さん。そして、そんな二人を護衛している姫乃さんに出迎えられる。

とりあえず、軽く食事を取ってから、仮眠しようかな……。

そう思って、簡易テントの中に入ると──


果林「あら……しずくちゃん」


すでに休憩している果林さんが居た。


しずく「果林さん……」

果林「突っ立ってないで、座ったら?」

しずく「あ……はい」


促され、少し離れた場所に腰を下ろす。

しばらくすると──


エマ「はい! しずくちゃん、どうぞ♪」


エマさんがゴーゴートを支えにしながら、シチューを持ってきてくれる。


しずく「ありがとうございます。エマさん」

エマ「どういたしまして♪ それじゃ、ゆっくり休んでね♪」


そう残して、エマさんは再びゴーゴートと一緒に持ち場に戻っていく。


しずく「…………」

果林「食べないの?」

しずく「……食べます」

果林「そう」


果林さんと一言二言交わして、シチューを食べ始める。

疲れた身体に、シチューの温かさが沁みる。

ただ──正直、果林さんと二人きりというのは気まずさがあった。

何せ……歩夢さんを助けるためとはいえ、私は果林さんを騙していたわけで……。

今は利害の一致から味方ではあるものの……きっと果林さんも私のことはよく思っていないだろうし……。

チラチラと果林さんの様子を伺いながら、シチューをいただく。


果林「もう……何? さっきからチラチラ見て……」

しずく「あ……い、いえ……! なんでもありません……」


完全にバレていた……。

気まずくて目を逸らすと──
128 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:52:53.16 ID:xLULnzaZ0

果林「……それにしても、しずくちゃん……本当に克服しちゃったのね」


果林さんは突然、感心したように言う。


しずく「克服……?」

果林「フェローチェのこと。さっき、戦ってたんでしょ?」

しずく「……えっと……はい」

果林「貴方の目は……今でもちゃんと、フェローチェの毒に侵された人特有の目をしてるのにね」

しずく「そう……なんですか……?」

果林「ええ。長年フェローチェを使ってきた私が言うんだから間違いないわ。毒の因子は身体の中にまだあるのに……精神力で抑えつけてる。これってとんでもないことなのよ?」

しずく「……は、はい……。……えっと……はい」


盛大に気まずい。特にフェローチェの話は……。


果林「もう、そんなに緊張しなくていいじゃない。今は味方なんだし……私、これでもしずくちゃんのことは結構認めてるのよ?」

しずく「認めてるって……」

果林「貴方には、悪のカリスマがあるわ」

しずく「悪のカリスマ……」


なんだそれはと眉を顰めてしまう。


果林「ええ。目的の為なら、他者を騙すことも厭わないところとかね」

しずく「……嬉しくありません」

果林「そう? ごめんなさい」


謝りながらも、果林さんはくすくすと笑う。


果林「ただね、それはしずくちゃんの強みだと思うわ」

しずく「強み……ですか……?」

果林「普通、人って……誰かに嘘を吐いたり、ズルいことをするときに、どうしても遠慮しちゃうと言うか……ストッパーが掛かっちゃうものなのよ」

しずく「……私も人を騙すときは、良心を痛めていますよ?」

果林「そうかもね。でも……それでも、大切な人たちを助けるためなら、その良心の痛みに耐えられるんでしょ?」

しずく「それは……そうですけど……」

果林「それはね、きっと貴方の仲間たちには出来ないことよ。侑も、歩夢も、かすみちゃんも、せつ菜も……みんな素直過ぎるのよ。自分に嘘が吐けない良い子たち」

しずく「…………」

果林「だから……しずくちゃん。貴方のズルさが必要なときは、その力でみんなを守ってあげるといいんじゃないかしら」

しずく「そんなことが起こらないのが、一番いいと思います……」

果林「そうね。また悪い人が、お友達を利用するために連れ去っちゃったりしたら嫌だものね」

しずく「……ホントですよ」


ウルトラディープシーでの日々は……歩夢さんを助けるためとはいえ、すごく精神を消耗した。

出来ることなら、もうあんなことは起こらないで欲しい……。

もし起こったら……また同じことをするでしょうけど……。
129 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:53:23.25 ID:xLULnzaZ0

果林「ただ、そんなことをしちゃう悪〜いお姉さんから、アドバイスよ」

しずく「……」

果林「その信念は、きっとしずくちゃんの強さを支える重要な要素になる。だから、もし転びそうになったら、自分の強さはそこにあることを思い出してみて」

しずく「…………一応、覚えておきます」

果林「ふふ、よろしい♪ まあ何せ、この私をあそこまでコケにしたんだもの……簡単に忘れられちゃ困るわ」

しずく「果林さん……意地悪で言ってますよね」

果林「ふふ、どうかしらね?」


果林さんはイタズラな笑顔を浮かべながら、くすくすと笑うのだった。


──
────
──────



せつ菜さんは言っていた。

──『……しずくさんは、自分のステージを作り出せれば、ランジュさんにも劣らない実力を持っています。自信を持ってください!』──

ステージか……私のステージ──


 「サナ…ッ」


“もうどく”に苦しむサーナイトを見て──思った。

“こんなこと”をしたら……恐らく、相手を怒らせるだろう。

だけど──


栞子「…………」


ここで負けたら、栞子さんの願いはどうなる。


かすみ「しず子ーーー!!」

せつ菜「しずくさーーーん!!」

侑「しずくちゃーーーんっ!!」

歩夢「…………しずくちゃん……!」


私にこの場を託してくれた仲間たちの想いはどうなる。

このまま、何も出来ずに負けるくらいなら──私は少し……悪い子になってでも、最後まで足掻こう。

そう思って──胸いっぱいに息を吸い込んだ。

山の上の方に顔を向け──


ランジュ「什么?」

しずく「──あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


全身全霊の──大声を発した。



130 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:54:11.56 ID:xLULnzaZ0

    👑    👑    👑





──しず子が急に、山に向かってとんでもない大声を張り上げ始めて、かすみんたちは目を丸くする。


かすみ「し、しず子……!? ど、どうしちゃったの……!?」

せつ菜「す、すごい……声量です……っ!」

ミア「Too loud...」


あのせつ菜先輩さえも、耳を塞いで表情を歪めている。

実際、しず子の声の大きさはとんでもなくて、その声だけで山自体がビリビリと振動しているような気さえしてくる。


侑「え、演劇部が本気で声出すと……こんなすごいの……!?」

歩夢「で、でも、しずくちゃん……何してるの……!?」

栞子「わ、わかりません……!」


とんでもない叫び声の中──かすみんはふと思い出す。


かすみ「……もしかして……雪崩……?」

侑「え……?」

かすみ「しず子……大声で雪崩を起こそうとしてるんじゃ……!?」

せつ菜「まさか……それで、逆転を手繰り寄せようと……!?」

ミア「What?! Is she serious?!」

かすみ「しず子……」


しず子の叫び声は、かすみんたちが話している間もずっと続いている。


しずく「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」





    💧    💧    💧





しずく「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ランジュ「も、もう、一体なんなのよ……!?」


とにかく叫ぶ。力の限り。

喉の強さと声量には自信がある。

だけど──さすがにこんな無茶な声の出し方をするのは初めてだ。

冷たい外気と酸欠のせいか、すでに頭が痛い。

喉も──今にも潰れてしまいそうだ。

だけど──私は叫ぶ。

私が叫び続ける中でも──


 「サナ…ッ!!!」

 「ラッキー♪」
131 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:55:01.50 ID:xLULnzaZ0

“サイコショック”を撃つサーナイトと、それを“タマゴうみ”で回復するラッキーの姿。

もう──逆転の一手はこれしか残ってない。

だから──私は叫び続ける。


しずく「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛──ぁ……あ゛あ゛、あ゛……!!!!」


声が掠れる。


しずく「……っ゛……あ゛あ゛あ゛ぁ゛……げほっ、ごほっ……!!」


喉の痛みで、咳き込む。


しずく「ぁ゛、あ゛あ゛……ぁ゛……」


掠れるような声が、出る。……喉が……痛い……。頭も……。


かすみ「──しず子!! もういい!! やめてっ……!!」


かすみさんが、叫ぶ声が聞こえた。


しずく「あ゛……あ゛ぁ゛……っ……げほっ、ごほっ……!! ごほっ、げほっ……!!」


激しく咳き込んで、思わず膝を突く。


ランジュ「……興が醒めたわ。何がしたいの、貴方……」


ランジュさんが冷たい目を向けてくる。


しずく「……はぁ…………はぁ…………」

ランジュ「……憐れね。……かすみやせつ菜と違って……貴方とのバトルは……楽しくないわ」

しずく「……49.4%」

ランジュ「……?」

しずく「“サイコショック”をパワーポイント限界ギリギリまで使ったときに……1回以上急所に当たる確率です……」

ランジュ「……だから、何?」

しずく「……私と、ランジュさん……どっちの運がいいか……約2分の1です……!!」

ランジュ「……何を言い出すかと思ったら……。その前に貴方のサーナイトは“もうどく”で倒れるわ」

 「サナ…ッ」

ランジュ「今もそんなに苦しそうじゃない……」


そう言っている間にも、弾丸のように出現してはラッキーに襲い掛かる“サイコショック”。

そして、その度にラッキーは“タマゴうみ”で回復する。

1回──2回──3回──


ランジュ「……そろそろ、終わりね」


4回──5回──6回──


ランジュ「……え……?」


ランジュさんの顔色が、変わった。
132 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/16(月) 17:55:47.38 ID:xLULnzaZ0

ランジュ「なんで……!? なんで、倒れないの……!?」

しずく「……倒れませんよ」


倒れるわけがない。


しずく「私のサーナイトは──“もうどく”状態じゃありませんから」
 「サナ」

ランジュ「什么!?」


私がやっていたのは、決して分の悪い賭けじゃない。

確率約50%の五分五分の賭け……!!


しずく「サーナイト!! “サイコショック”!!」
 「サナッ!!!!」


通算16回目──パワーポイントギリギリ、最後の“サイコショック”が、


 「ラッキッ…!!!?」


ラッキーの急所を捉え──


 「ラ…キィー…」


ラッキーは、その一撃を受け──雪の上に倒れ込むのだった。


しずく「…………急所に当たりました。……ランジュさん──運が、悪かったですね」

ランジュ「……嘘……?」


ランジュさんが、信じられないものを見るような顔をしながら、その場にへたり込む。


ミア「ランジュが……負けた……!? 嘘だろ……!?」

かすみ「……え……何……どゆこと……?」

侑「しずくちゃんが……勝った……の……?」

せつ菜「え、っと……何が……起こったんですか……」


そして、オーディエンスたちも事態が飲み込めていないようだった。


かすみ「え、だって雪崩、起こってませんよ……!? 雪崩起こして、一発逆転狙ってたんじゃ……!?」

しずく「けほっけほっ……。……もう、かすみさん……けほっ……。……人の声じゃ……雪崩は起こせないって……言ったでしょ……」

かすみ「え、じゃあ……さっきの大声は……」

ランジュ「そ、そうよ……!! 確かにサーナイトには、ラッキーが“どくどく”を当てたはずよ!!」

しずく「……そうですね……。……けほっけほっ」


私が咳き込みながら、ランジュさんの言葉に頷いていると──


リナ『確かにメガサーナイトはラッキーからの“どくどく”で“もうどく”状態になった』 || ╹ᇫ╹ ||


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