侑「ポケットモンスター虹ヶ咲!」 Part2

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692 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 12:54:06.70 ID:5MWtUFJH0

璃奈「……愛さん」

愛「ん?」

璃奈「……私は、ウルトラスペースについて、研究をするべきだと思う。お父さんやお母さんの言うとおり、世界のエネルギーが高次元空間に漏れているって言うなら……それはウルトラスペースのことだと思うし……それが漏れ続ける原因を知ることが、私たちの研究の目指すべき場所」

愛「……だね」

璃奈「私たちは、自分たちでホールを作り出す方法も見つけてる……なら、今後も同じようにホールを発生させて、ウルトラスペースを調査する必要があると思う」

愛「……ただ、そのためには必要なものがあるかな」

璃奈「必要なもの……?」

愛「戦う力だよ」

璃奈「どういうこと……?」


私は愛さんの言葉に首を傾げてしまう。


愛「これ、記述の中にさ……現れたウルトラビーストによって、大きな被害を受けた国とか島がいくつもあったでしょ」

璃奈「う、うん……」


確かに愛さんの言うとおり、現れたウルトラビーストによって、人口の大半を失った国や沈んでしまった島もあった。


愛「私たちは確かにウルトラスペースに繋がるホールを自分たちで開ける術を見つけたけど……逆を言うなら、またウルトラビーストを呼び寄せる可能性もある。今回現れたマッシブーンがたまたま無害だったからよかったけど……もし、狂暴なウルトラビーストが現れてたら……プリズムステイツがなくなってたかもしれない」

璃奈「……確かに」


知らなかったとは言え、私たちは随分と危ない橋を渡っていたのかもしれない。


愛「となると……ウルトラビーストが現れても対抗出来るだけの戦力が必要になる」

璃奈「で、でも……私……戦闘は……」

愛「わかってる。だから、強い人たちに協力を仰ごう」

璃奈「協力……? どうやるの……?」

愛「それは、簡単だよ。アタシたちは──研究者なんだからさ」





    📶    📶    📶





──愛さんが取った方法は、確かに簡単なことだった。

ウルトラスペースに繋がるホール──即ちウルトラホールの存在を学会に発表することだった。

最初は懐疑的に捉えている人も多かったけど……開いた瞬間の映像と、大量の統計データ、さらに伝承の資料などを提示されたら、さすがに学会も信じざるを得なかった。

それと同時に……私はお父さんとお母さんが唱えていた、世界からエネルギーが失われている説の発表をした。

そして──これ以上、世界からエネルギーが流出することを防ぐための研究をしているということも……。

この話は瞬く間に学会中に知れ渡り……なんと……。


璃奈「──プリズムステイツ政府から、政府研究機関に指定……」

愛「発表内容が内容だけに、政府が動いたね」

璃奈「予算も政府からたくさん下りた……なんだか大事になってきた」

愛「それだけ期待されてるってことだね。……なんせ、世界を救うことに直結する問題だからね。でも、研究所側も調子いいよね……実際、りなりーに所内の管理権限ほとんど与えてなかったのに、調子よくテンノウジ所長なんて発表しちゃって……」

璃奈「まあ、それはいいかな……。……実際、任されても管理は出来ないし……。……でも、これで前より自由に研究出来るようになった」

愛「それにアタシたちが狙ってた目的も達成されたしね」
693 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 12:55:08.47 ID:5MWtUFJH0

──狙っていた目的……それは即ち、ウルトラビーストに対抗する戦力のこと。


愛「来週には、プリズムステイツの警備隊が、この研究機関に統合される……。……特にアタシたちの護衛には、その警備隊のトップ2の人たちが付いてくれるらしいし、これで戦力面はちょっと安心かな……」

璃奈「うん。……でも、どんな人なんだろう……。……怖い人じゃないといいけど……」

愛「どうだろね……。……話に聞いた感じだと、向こうは16歳の女の子らしいけど」

璃奈「歳は私たちとほとんど変わらない……でも、若くて強い人たち……すごく厳しかったりするのかな……」

愛「なくはないけど……こればっかりは会ってみてからだね。大丈夫! もし怖い人だったとしても、りなりーのことは愛さんが守るからさ♪」

璃奈「愛さん……。……わ、私も、愛さんに頼ってばっかりじゃなくって、仲良く出来るように頑張るね! これから一緒に頑張ってく仲間なんだから……」

愛「お、いいね! その意気だよ、りなりー♪」

璃奈「うん……!」





    📶    📶    📶





愛「りなりー、準備いい?」

璃奈「うん」
 「ニャァ〜」

愛「ニャスパーも準備万全だね〜♪」

 「ニャ〜」


あっという間に、警備隊から来る二人との顔合わせの日が訪れた。


璃奈「璃奈ちゃんボードも持ってきてる……出来る限り使わないように頑張るけど……」


二人はこれから一緒にやっていく仲間になる人だから……出来るなら、素顔のまま話せた方がいい。……出来ればだけど……。


愛「まあまあ、気楽に行こう。今日は挨拶するだけだからさ♪」

璃奈「うん……」
 「ニャ〜」


二人で応接室に、待ち合わせ時間ピッタリに到着する。

愛さんが扉を押し開けると──中にはすでに、警備隊から来た二人らしき人たちが待っていた。


愛「お、もう着いてたんだね。待たせちゃったみたいで、ごめんね!」

璃奈「は、初めまして……」


ペコリと頭を下げて挨拶をし、それを見て二人が立ち上がる。


果林「──この度、プリズムステイツ警備隊から統合される形で配属されました、アサカ・果林です」

彼方「同じく、コノエ・彼方です〜」


果林さん、彼方さんと名乗る二人。

果林さんは整った顔立ちに、長身ですらっとしている。全体的にクールな印象を受ける人だった。

彼方さんはゆるふわなロングヘアーに、優しそうな垂れた目……果林さんとは対照的で、喋り方も相まって、すごくゆったりした人に見える。

二人の形式ばった挨拶に対して、


愛「あ、いいっていいって、これから一緒にやってく仲間なんだし、そういうの堅苦しいのは無しで! 歳も近いらしいしさ! もっとフランクな感じでいーよ!」
694 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 12:57:35.67 ID:5MWtUFJH0

愛さんはお得意の一気に距離感を詰める切り出し方をする。


果林「は、はぁ……」

愛「あっと……名乗ってなかったね。アタシはミヤシタ・愛! んで、この子はりなりー!」

璃奈「えっと……て、テンノウジ・璃奈です……」
 「ニャァ〜」

璃奈「この子は……お友達のニャスパー……です……」


また、ペコっと頭を下げながら、自己紹介をする。


果林「……えっと……それじゃ、ミヤシタさんとテンノウジさん……」

愛「愛でいーよ! りなりーもファーストネームでいいよね?」

璃奈「うん。ファミリーネームは長いし……ややこしいから、璃奈でいい」


テンノウジはお父さんとお母さんの名前でもあるから……何かと公式な場で使うとややこしくなりかねないし……何よりファーストネームの方が呼ばれ慣れている。


果林「……わかったわ。愛と……璃奈ちゃん」


果林さんは頷いて私たちの名前を呼んだあと、


 「ニャー」

果林「それと……ニャスパーね」


軽く膝を折って、私に抱っこされているニャスパーに目線を合わせながら挨拶してくれる。

それだけで……少なくともポケモンには優しい人だというのは十分わかった。


果林「それなら、私たちのことも下の名前で呼んで頂戴。良いわよね、彼方」

彼方「うん〜、もちろん〜。よろしくね〜、愛ちゃん〜、璃奈ちゃん〜」


彼方さんは間延びするような口調で喋りながら、


彼方「あ〜あと、この子は彼方ちゃんの親友のウールーだよ〜」
 「メェ〜〜」


足元に居たウールーを抱き上げながら、紹介してくれる。


愛「うん、よろー! カリン! カナちゃん! ウールーも!」

璃奈「よろしく、お願いします……果林さん……彼方さん……ウールー……」


顔を上げて、二人の顔を見ようとしたとき──果林さんと視線がぶつかる。

態度には出さないようにしているけど……果林さんはさっきから、私たちを見定めようとしているのがなんとなくわかった。これから、一緒にやっていくのに相応しい人間なのか……観察しているんだと思う。

私は彼女のその眼力に負けて、思わず愛さんの後ろに隠れてしまう。

隠れてしまってから──失礼なことをしたかも……と思った瞬間、


彼方「果林ちゃん、璃奈ちゃんが怖がっちゃってるかも……」
 「メェ〜〜」


彼方さんが果林さんに向かってそう言う。


果林「……彼方、それはどういう意味か説明してくれる?」

彼方「冗談だってば〜。璃奈ちゃん、もしかして緊張してるのかな〜?」
695 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 12:59:29.53 ID:5MWtUFJH0

彼方さんはそう言いながら、私に優しく微笑みかけてくれる。

……もしかして……フォローしてくれたのかな……。


愛「あはは……りなりー緊張しいなんだよね。やっぱり、ボードあった方がいいんじゃない?」

璃奈「……初対面だから……素顔の方がいいと思ったけど……。……そうする」


やっぱり、私はまだ素顔のコミュケーションは苦手かもしれない……。だけど、誤解はされたくない。仲良くしたいから……。


璃奈「あ、あのね……私……人の顔を見て喋るの……緊張しちゃって苦手で……だけど、怒ってないし、怖がってないよ……」 || ╹ ◡ ╹ ||


璃奈ちゃんボードで、怖がってないことを伝える。


彼方「あはは〜よかったね果林ちゃん、怖がられてないって〜」

果林「彼方……」

彼方「だから、冗談だって〜」

果林「はぁ……全く……。……これから一緒に頑張りましょう。私たちも早く貴方たちを理解できるように努力するわ」

璃奈「果林さんも彼方さんも優しそうな人でよかった。私もこれから一緒に頑張りたい。璃奈ちゃんボード「やったるでー!」」 || > ◡ < ||
 「ニャー」

愛「じゃ、これから、今後の活躍を祈って、もんじゃパーティーでもしますか〜!」

彼方「え、もんじゃってあのもんじゃ〜!? 今どき作れる人がいるなんて珍しい〜! 彼方ちゃんにも作り方教えて教えて〜」

愛「あははっ♪ 愛さん、もんじゃを作る腕には自信あるからね! 何を聞かれても、もんじゃいない! なんつって!」

璃奈「愛さん、今日もキレキレ!」 ||,,> ◡ <,,||

愛「どんなもんじゃいっ! あははは〜!! そんじゃ、アタシたちの部屋へレッツゴ〜!」

彼方「お〜♪」
 「メェ〜」


楽しそうに笑う愛さんは彼方さんを引き連れて、私たちの部屋へ向かって歩き出す。

果林さんは、その様子を眺めながら、


果林「なんだか、賑やかになりそうね」


やれやれと言いたげに、肩を竦めたのだった。


璃奈「果林さんも……行こ?」 ||,,╹ᨓ╹,,||

果林「ええ」


こうして、私たち4人のチームが始まったのだった。





    📶    📶    📶





璃奈「空間歪曲率上昇。ウルトラホール、展開」


あれから、幾度と実験を重ね……ウルトラホールを開くのもだんだん成功率が上がり、今ではホールを開くだけなら、かなりの精度になっていた。

ボールもホール開閉のための特別なものを作り、放出されるエネルギーをある程度制御出来るものを開発した。


愛「おっけー、ホール安定。このまま維持するよ。ベベノム、苦しくない?」

 『ベベノ〜』『ベベノ〜』
696 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:00:18.95 ID:5MWtUFJH0

愛さんがボール内と話すために作った端末でベベノムのバイタルを確認する。こちらも異常無し。


果林「それにしても……ベベノムがウルトラビースト……ねぇ……」

彼方「ベベノムって、街外れの丘にたくさんいるからね〜……。“虹の家”の外でもたまに見かけてたよね」


やっぱり果林さんたちも、ベベノムがウルトラビーストというのは未だに信じられない様子だった。

確かに、すごくポピュラーなポケモンだから、あの子たちが特別な存在だったと言われても、ピンと来ないのは仕方がない。

私たちも、最初はまさかベベノムがそんな特異なポケモンだなんて、考えてもいなかったわけだし……。


彼方「……すやぁ……」

果林「彼方、寝ないの」

彼方「えぇ〜……だってぇ〜……毎回、こうやってホールを見てるだけなんだもん〜……」

果林「私たちは万が一に備えてここに居るのよ」

彼方「わかってるけど〜……」


果林さんたちの目的は私たちの安全確保。

そのため、実験をするときは絶対に同席してもらうんだけど……ウルトラビーストが現れたのは、私たちが最初の実験でホールを開いたときの1回だけ。

だから、二人は実験中ただ座って、じっと実験の光景を眺めるだけの毎日が続いていた。

今日も同じように、ホールのデータだけ取って終わりかな……。……そう思った、まさにそのときだった。


璃奈「……! ホールにエネルギー反応!」


ホールのエネルギーの数値が急に跳ね上がった。

私は端末を操作して、エネルギーの出力を絞るけど──ホールは閉じようとしない。


愛「この数値……!? ヤバイ!! りなりー、ホール閉じて!!」

璃奈「もう、やってる……! けど……ホールが外側からこじ開けられてる……!」


焦る私たちの様子を見て、


果林「な、なに……!?」


果林さんも立ち上がる。

直後──研究室内のホールがカッと光り、


 「──フェロ…」


気付けば実験室内に──真っ白な上半身と、黒い下半身をした、細身のポケモンが立っていた。

それを見て、果林さんが「綺麗……」と呟くのが聞こえた。

あのポケモンは──


璃奈「ウルトラビースト……フェローチェ……!」


自身の美しさで人やポケモンを魅了する力と、瞬足の攻撃で都市一つを壊滅させた……そんな伝承が残っている、ウルトラビースト・フェローチェとよく似た特徴を持っているポケモンだった。


愛「カリン!! 直視しちゃダメ!! ウルトラビーストには人を操る力を持った奴がいるから!!」

果林「え……?」


愛さんが果林さんにそう注意を促すのと同時に、
697 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:01:27.65 ID:5MWtUFJH0

 「フェロッ!!!」


──ガシャァンッ!! と音を立てながら、フェローチェが実験室のガラスを突き破って、果林さんに飛び掛かる。

そこに割って入るように、


彼方「ネッコアラっ!! “ウッドハンマー”!!」
 「コァッ!!!」

 「フェロッ…!!」


彼方さんのネッコアラが丸太を使って、フェローチェを弾き返した。


彼方「果林ちゃん、平気!?」

果林「あ、ありがとう、彼方……!」


彼方さんに声を掛けられて、果林さんが頭を振る。


愛「私も戦う……! りなりー! 下がってて!」

璃奈「う、うん……ニャスパー、隠れるよ」
 「ニャァ」


戦えない私は、机の影に隠れ、愛さん、果林さん、彼方さんがフェローチェと相対する。


 「…フェロッ」

果林「いいわ、暴れるって言うなら……貴方が私を魅了するよりも早く……倒してあげるから……!」

愛「カリン、カナちゃん! 気を付けてね!!」

彼方「防御は任せて〜!」

 「フェロッ」


実験室内にて、ウルトラビーストとの戦いの火蓋が切って落とされたのだった──





    📶    📶    📶





──カツーンッ!

ビーストボールが床に落ちて、特有の音を響かせた。


果林「……はぁっ…………はぁっ…………」

愛「し……死ぬかと思ったぁ……」

彼方「……かなたちゃん……もう……うごけないぃ…………」

果林「……どうりで……戦力を欲しがるわけね……」


先ほどまでずっと響いていた大きな戦闘音が落ち着いたところで、身を隠していた私が顔を出すと──実験室内はボロボロになっていた。

実験室のガラス張りが吹き飛んでいるのは当たり前として、ひしゃげた壁、破壊された機材、天井の照明も一部が破壊され配線が剥き出しになり、スパークしている。

よくこの実験室内で戦闘を収束させられたと思ってしまうくらいには破壊されていた。

そんな中で愛さんたちは、息を切らせながらへたり込んでいる状態だった。


璃奈「みんな……大丈夫……!?」
 「ウニャァ〜」
698 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:02:04.73 ID:5MWtUFJH0

その惨状を見て、私は物陰から飛び出し、みんなのもとへと駆け寄る。


彼方「ど、どうにか〜……」

愛「平気だよ……カリンとカナちゃんがいなかったら、さすがにやばかったけどね……」


そうは言うけど……3人とも、大怪我こそしていないものの、ところどころ切り傷や擦り傷、それに服に血も滲んでいるところもあって、とにかくボロボロな状態だった。


璃奈「今、医療班を呼んでくるから……!」


急いで医療班を呼びに行こうとしたとき──ふと、


璃奈「あれ……?」


視界の端──実験室の中に、何かの影が見切れた。


愛「りなりー?」

璃奈「……ウルトラホールがあった場所に……まだ、何か……いる……?」

果林「……!?」


果林さんが私の言葉を聞いて、身構えたけど──


 「ピュィ…」


そこにいたのは……小さな小さな、紫色の雲のようなポケモンだった。





    📶    📶    📶





愛「……なんだこれ……」

璃奈「……」

 「ピュィ…」


私と愛さんは、小さな雲のようなポケモンの持っているエネルギー量を調べてみて絶句した。


愛「……持ってるエネルギー量が……フェローチェやベベノムの比になってない……」

璃奈「……」

愛「りなりーどう思う……?」

璃奈「仮説だけど……。……ウルトラスペース内に溢れるエネルギーを吸収してるんだと思う……さすがに一個体のポケモンが作り出せるエネルギーとは思えないというか……」

愛「もうちょっと、詳しく調べてみる必要があるね……」


愛さんがそう言って、触ろうとすると──


 「ピュィ──」


そのポケモンが急に……消えた。
699 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:02:56.50 ID:5MWtUFJH0

愛「……え!?」

璃奈「……!?」

愛「え、う、嘘……!? 今、ここいたよね……!?」

璃奈「に、逃げた……!?」


二人で焦る中、


 「──ひゃぁぁ!? え、なになに!? 君、いつのまに彼方ちゃんのお洋服の中に……!?」


研究室の外から、彼方さんの悲鳴が聞こえてきた。


璃奈「……“テレポート”……」

愛「……こりゃー、一筋縄じゃいかなさそうだね……」


どうやら、あの雲のようなポケモン……ワープする能力があるらしい。


果林「ちょっと、愛ー!? あのポケモン、彼方の服の中にいるんだけどー!?」


果林さんが、彼方さんの手を引きながら、研究室に入ってくる。


彼方「もしかして、この子……男の子なのかな?」
 「ピュィ…」


そう言いながら、彼方さんが襟元辺りを引っ張りながら、自分の服の中を覗き込むようにしていた。恐らくそこに、あのポケモンが潜り込んでるんだろうけど……彼方さんの着こなしは、もともとちょっとルーズだから……なんというか、すごく際どい感じになっていた。


果林「やめなさい……男の人が通ったらどうするのよ……」

愛「カナちゃんって、ちょっと警戒心薄いよね……」

果林「ホントに……心配になるわ……」

彼方「えぇー? そうかなぁー?」


肩を竦める愛さんと果林さんの反応を見て、彼方さんは少し不服そう。


璃奈「……極端に憶病なポケモンなんだと思う……。彼方さんが一番守ってくれそうだから……彼方さんのところに逃げたんだと思う。……たぶん」

彼方「おぉー、この子、人を見る目があるよ〜♪」
 「ピュィ…」

愛「ポケモンからの好かれやすさってあるもんねー。確かにカナちゃんって、ポケモンに好かれる方だよね。……逆にカリンは……」

果林「……何が言いたいのよ」

愛「おっと……何でもない何でもない」

璃奈「とりあえず、何か情報がわかるまで、呼び名があった方がいいかも。いつまでも“あのポケモン”とか“この子”とかって呼ぶのもわかりづらい」

愛「カナちゃんが付けてあげたら?」

彼方「んー……それじゃ、雲みたいだから“もふもふちゃん”で〜」
 「…ピュイ」


めでたく、このポケモンの名前が“もふもふちゃん”に決定した。


果林「……それより、頼まれてたもの、持ってきたわよ」
 「バンギ」

彼方「あ、そうだったそうだった〜。カビゴン、ここに置いて〜」
 「カビ」

愛「あっと……本来の頼み事を忘れるところだった」


果林さんのバンギラスと、彼方さんのカビゴンが、抱えていたコンテナを室内に下ろす。
700 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:03:57.88 ID:5MWtUFJH0

愛「サンキュー二人とも!」

璃奈「すごく助かる」


愛さんと二人でコンテナを開けると──中には大量の本が詰まっていた。

そう、二人に持ってきたもらったものは……本だ。国の図書館から借りてきたもの。


果林「それにしても……すごい量の本ね……」

彼方「これ、全部読むのー?」

愛「ウルトラビーストについては、なんだかんだで記述を見つけられたからね……。改めて検索してみたら、そのポケモンの情報もあるかもしれないって思って」

彼方「おぉ〜なるほど〜」
 「ピュィ…」

愛「もしかしたら、見落としがあった可能性もあるし」

璃奈「さすがに図書館の中で検索するには時間の限界もあったから……こうして、国から借りられたなら、もっと精密に情報の検索が出来る」


前回と違って、政府公認の研究機関になったため、今回はなんと国の図書館から資料を大量に借り出すことが出来た。

私はさっき突貫で組み立てた装置の中に本を数冊置いてみる。


璃奈「スキャン開始」


──ムォォォンと音を立てながら、装置が本をスキャンし始める。


果林「あれ……何してるの……?」

愛「りなりーが開発した、本の情報を抽出検索する装置。なんかインクの反応を調べて、そこから文字情報を抽出するんだってさ」

果林「随分、前衛的な読書ね……」

彼方「璃奈ちゃんの周りだけ科学技術が数十年進んでる気がするね〜」

璃奈「でも、読めるのは一度に3冊まで。スキャンが終わるまではひたすら、出して入れてを繰り返すことになる」

果林「……そこはローテクなのね」

璃奈「自動で出し入れする機構も考えたけど……問題が発生して本を破損するとまずいから……こういうのは手作業でやるしかない」

愛「機械はどうしてもエラー起こすときは起こすからねー……よいしょっと……」


そう言いながら、愛さんが本を装置の傍に運び始める。
701 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:04:32.25 ID:5MWtUFJH0

果林「わかった……。手伝うわ」

彼方「それじゃ、彼方ちゃんはお昼寝してるから頑張ってね〜」

果林「貴方も手伝いなさい」

彼方「や、やだよ〜」

璃奈「とりあえず、出来るだけ早く終わらせちゃおう……」
 「ウニャァ〜」「ベベノ〜♪」「ベベノ〜♪」

璃奈「ありがとう。みんなも手伝ってくれるんだね」

果林「ポケモンですら、率先して手伝ってくれるのに……こんな情けない姉の今を知ったら、遥ちゃんもガッカリでしょうね……」

彼方「……!?」

果林「……あ、もしもし、遥ちゃん?」

彼方「果林ちゃんやめてっ!? 遥ちゃんにだけは言わないでっ!?」

果林「じゃあ、今すぐ運ぶのを手伝いなさい」

彼方「り、了解であります! 軍曹!」

果林「誰が軍曹よ……」

愛「二人とも、コントやってないで手伝ってよ〜!」





    📶    📶    📶





さて、検索結果が出るまで、実に数週間の時間を要した。

その結果……。


璃奈「……あった。この伝承に出てくる絵。このポケモンにそっくり」

愛「どれどれ……“星の子”……か……」

璃奈「浴びた光を際限なく吸収して、そのエネルギーで成長する……。名前は……コスモッグって呼ばれてたみたい」

彼方「君、コスモッグって言うんだ〜」
 「ピュイ…」

果林「一気にエネルギーを放出すると、空間に穴があいた……? これって……」

璃奈「たぶん、大昔の人が見たウルトラホールのことだと思う……」

果林「じゃあ、貴方……ウルトラホールをあけられるのね」


果林さんが話しかけると──


 「ピュ」


コスモッグはそっぽを向く。


果林「……相変わらず“なまいき”な子ね……」

 「ピ、ピュィィ…」
彼方「あーほら〜、果林ちゃんが怖い顔するから、もふもふちゃんがびっくりしちゃったよ〜?」

果林「すぐ彼方に隠れるんだから……」


もふもふちゃん──もといコスモッグは随分人に慣れたものの……果林さんには一向に懐かず、“なまいき”な態度を取っていた。
702 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:05:03.66 ID:5MWtUFJH0

璃奈「……大量のエネルギーを溜め込み成長するが……取り込んだエネルギーを全て放出しきると、休眠状態になってしまう……」

彼方「無理させると、すやぴしちゃうんだ〜?」

愛「まあ、そういうことだね」

璃奈「……このポケモンはエネルギーを溜め込む性質がある……」

愛「? りなりー?」


私はふと、あることが気になった。


璃奈「愛さん、ウルトラホールからのエネルギー放射データってすぐ出せる?」

愛「出せるけど……どしたん?」


愛さんが出したデータに目を通す。


璃奈「……もし、コスモッグにエネルギーを溜め込んだり、放出したりする能力があるとしたら……。……私たちの研究は異次元に進む可能性がある」

彼方「異次元……?」
 「ピュイ?」


私たちの研究は──コスモッグの存在によって、次なるステージに進もうとしていた。





    📶    📶    📶





璃奈「…………」


私は無心で紙に計算を書き連ねていた。


果林「ねぇ、愛……璃奈ちゃん、もう3日くらいあの調子よ? 大丈夫なの?」

愛「休むようには言ってるんだけどね……スイッチ入っちゃうと、アタシでも止められないんだよね……」

彼方「研究が異次元に進むって言ってたよね……どういうことだろう?」


璃奈「……やっぱりだ……」


彼方「あ、ペンが止まった」

愛「りなりー? 何かわかったの?」

璃奈「愛さんっ!!」

愛「わっ!? な、なに?」

璃奈「今から設計図作る……!! 手伝って!!」

愛「せ、設計図……? なんの……?」

璃奈「ウルトラスペースを渡る船──ウルトラスペースシップの設計図……!!」

愛「へ……?」


愛さんはポッポが豆鉄砲を食らったような顔になる。
703 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:06:11.75 ID:5MWtUFJH0

果林「ウルトラ……?」

彼方「スペースシップ……?」

愛「え、ちょ……ちょっと待って、りなりー……順を追って説明して……?」

璃奈「コスモッグはウルトラスペースのエネルギーを溜め込んだり、放出したり出来る。そのエネルギーがあれば、ウルトラスペース内の強いエネルギーを中和して、活動出来る……!」

愛「……ま、マジ!?」

璃奈「そもそも、ウルトラビーストはなんで高エネルギーに満ちてるウルトラスペースで生存できるのかがわからなかったけど……自身が溜め込んだエネルギーを放出して、中和してる……! コスモッグはその中でも、余剰にエネルギーを溜め込む性質があるから、それを使えば人間もウルトラスペースで航行出来るはず……!!」

愛「じゃあ、ウルトラスペースシップってのは……!」

璃奈「コスモッグのエネルギーを借りて、エネルギー中和と推進力を生みだすことで、ウルトラスペース内の探索が理論上可能……! 高次元からの観測が出来るようになったら、どういう風に私たちの世界からエネルギーが消失してるのか、そのエネルギーがどこに行ってるのかまで全部計測出来る……!!」


つまり、まさに私たちの研究のステージは──文字通り、異次元に突入するということだ。


愛「わかった……! りなりーは設計のたたき台を作って! さすがにその規模だと二人じゃ無理だから、工学系の研究室とかに応援頼めないか聞いてくる!!」

璃奈「わかった!! お願い……!!」


愛さんが研究室から飛び出し、私はウルトラスペースシップ設計のたたき台に取り掛かる。


果林「どうやら……話が進むみたいね」

彼方「置いてけぼりだけど……なんか、そうみたいだね〜」

果林「邪魔しちゃいけないし……私たちは別の部屋に居ましょうか」

彼方「うん、そうだね〜」


そのとき──prrrrと彼方さんの方から端末が鳴った。


果林「貴方に連絡してくる子と言えば……」

彼方「もちろん、愛しの遥ちゃ〜ん♪ 実は遥ちゃん、ここの入所試験受けてたから、それの結果が出たのかも!」

果林「いつの間に……」

彼方「もしかしたら、近いうちにここで一緒に働けるかも〜♪ もしもし〜遥ちゃん? どうしたの〜?」


彼方さんは心底幸せそうな笑顔で通話に応じたけど──


彼方「……え?」


その声のトーンが、急に今まで聞いたことのないような重いものになった。


璃奈「……彼方さん……?」


あまりに聞き覚えのない重い声に、集中していたはずの私も振り返ってしまった。


果林「彼方……?」

彼方「………………果林ちゃん……。…………お母さんが……倒れたって……」


彼方さんは青い顔をして、果林さんにそう伝えたのだった。





    📶    📶    📶





──ウルトラスペースシップの設計が始まって、早くも1ヶ月が経とうとしていた。
704 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:06:59.72 ID:5MWtUFJH0

愛「……この調子なら……来週には着工出来そうだね」

璃奈「うん、順調」

愛「造船についてはもう話付けておいたし、設計計画が完成すれば、すぐにでも始められると思う」

璃奈「ありがとう、愛さん」

愛「いやいや、アタシよりも……この短時間で設計図を完成させたりなりーの方がすごいって……。……とりあえず、休憩しよっか。お茶でも淹れるよ」

璃奈「うん、ありがとう」


とりあえず、私たちはひと段落するところまで来ていた。

愛さんにお礼を言いながら、私たちが休憩室に戻ると──頭を抱えている人が居た。


果林「……た、助けてぇ……愛ぃ……」

愛「ま、またぁ……? 今日のは何……?」

果林「防衛部隊の予算計画書なんだけど……何度やっても数字が合わないのよぉ……っ……彼方って、こんなに難しいことしてたの……?」

愛「……研究所で算数レベルの話、教えることになるとは思わなかったよ……」

璃奈「果林さん、私も一緒に考えるね」

果林「ありがとう〜……璃奈ちゃん……」

愛「はぁ……。……アタシたちに泣きつくくらいなら、引き受けなきゃいいのに……」

果林「ダメよ……彼方は今は……院長先生──お母さんと一緒にいるべきだもの……」


──彼方さんは、ここ1ヶ月ほどの間、倒れたお母さんのお見舞いに行くため、頻繁に部隊を空けている。

その間は臨時で、果林さんが攻撃部隊と防衛部隊の両方の隊長を兼任しているみたい。

ただ、隊長には隊長の執務がある。そうなってくると、彼方さんの執務も果林さんがやることになるんだけど……果林さんはそういう作業が滅法苦手だった。意外な弱点。


愛「隊長って言っても、実際にウルトラビーストクラスの敵と戦えるのって、カリンとカナちゃんくらいしかいないんだから、もう部隊から切り離してもらったら……?」

果林「私もそれは思ったことはあるけど……後進育成も必要だって、彼方に言われて……」

愛「あーまあ……カナちゃんなら言いそう」

果林「それに元は警備隊なわけだからね……私たちがこっちで動いてることが多いだけで、組織自体は今でもプリズムステイツの治安維持は並行して行ってる……有事の際には私たちも出向いてるわけだし……」

愛「そっちはそっちで大変そうだねぇ……」

果林「そうなのよ、大変なのよ……だから、助けて……」

愛「別にいいけど……カリン、普段自分の隊の執務はどうしてんのさ……」

果林「全部、隊の他の人に任せてる……」

愛「あー……なるほどねー……」

璃奈「とりあえず……ここ、計算間違ってる」

果林「え……?」

愛「先は長いなぁ……」





    📶    📶    📶





──あれから5ヶ月が経過した。


愛「……ウルトラスペースシップ……完成したね」

璃奈「……うん」
705 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:09:31.34 ID:5MWtUFJH0

竣工したウルトラスペースシップを見上げながら、愛さんの言葉に頷く。


愛「……本来なら、喜んでたんだろうけどね……」

璃奈「……そう……だね……」


──ちょうど今朝、連絡があった。

彼方さんのお母さんが……亡くなった、と。

果林さんと彼方さんは……お葬式に行ったため、今ここにはいなかった。


璃奈「……家族が死んじゃうのは……悲しい……」

愛「……そうだね」


俯く私の頭を、愛さんがぽんぽんと撫でる。


愛「……そういう悲しいを、少しでも減らすために……アタシたちは頑張ってるんだ」

璃奈「…………うん」

愛「……大丈夫。アタシたちは……前に進んでる。……りなりーも、カリンも、カナちゃんも……」

璃奈「…………うん」


辛くても……前に進まなくちゃいけない。……私たちは、みんなの未来を、背負っているから……。





    📶    📶    📶





──数日後。


彼方「ただいま〜」

果林「……戻ったわ」

愛「おかえり! カリン! カナちゃん!」

璃奈「おかえりなさい」


二人が研究所に復帰した。


璃奈「彼方さん……大丈夫……? 無理しないでね……」

彼方「ありがとう、璃奈ちゃん。でも、彼方ちゃん、くよくよしてられないから〜」

果林「……私たちがいない間に、シップ……完成したんでしょ? 見に行きたいわ」

愛「随分やる気じゃん、カリン」

果林「……気合いが入ったのよ。……私たちは、何がなんでも世界を救わなくちゃいけないんだから。……そうでしょ?」

璃奈「……うん。そのとおり」

彼方「これ以上、悲しむ人を増やさないためにも……」

愛「そうだね。案内するよ!」



706 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:10:28.21 ID:5MWtUFJH0

    📶    📶    📶





──そして、あっという間に……ウルトラスペースへと旅立つ時がやってきた。


璃奈「エネルギー充填完了。エンジン稼働正常。ウイング稼働正常」

愛「レーダーOK. 装甲へのエネルギー循環100%だよ」

彼方「コスモッグ、苦しくない〜?」
 「ピュイ♪」

彼方「コスモッグの準備も大丈夫そう〜」

愛「検知結果来てる〜?」

璃奈「うん、コスモッグ暫定エネルギー量63%」

果林「……やることがないわ」

愛「カリンはなんも触んないでね。シップが沈んだら全員お陀仏だから」

果林「一応、指揮は私が執ることになってるんだけど……」

愛「だから、出発前のメディア対応お願いしたじゃん。カリンはアタシたちの顔だよ♪」

果林「調子いいんだから……」

璃奈「全点検終了。……予定通り、10分後に発進シークエンスを開始する」

愛「了解。さぁーて、いよいよだねー」

璃奈「……その前に、みんなに聞いておきたいことがある」

果林「聞いておきたいこと?」

彼方「なになに〜?」


私はみんなの顔を順番に見回す。


璃奈「……ここから先は……人類未踏の世界。……命の保障が出来ない。……だから──」

果林「降りるなら、今が最後のチャンスだって話かしら?」

璃奈「うん。……この先はずっと、死と隣り合わせになる」

愛「……ま、アタシはもちろん行くけどね。聞くだけ野暮ってやつだよ、りなりー」

彼方「まあ、危ないなら尚更、一緒に行かなくちゃだよね〜」

果林「貴方たちを危険から守るために、私たちがいるんでしょ。……今更、仲間外れにしたら、怒るわよ?」

愛「ま、カリンは準備段階で軽く仲間外れみたいになってるけどねー」

果林「……怒るわよ?」

愛「冗談だって〜♪ ま、そーゆーことだからさ。みんな行くよ」

璃奈「愛さん……彼方さん……果林さん……」

彼方「もう、これは璃奈ちゃんだけの夢じゃないよ。みんなの夢」

果林「私たちはもう……4人で1つのチームでしょ」

愛「みんなで世界、救いに行こう♪」

璃奈「……うん!」


みんなの頼もしい言葉に、私は力強く頷く。
707 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:11:18.43 ID:5MWtUFJH0

果林「そういえばチームで思い出した」

彼方「え、なになに〜?」

果林「今メディアが私たちのことなんて呼んでるか知ってる?」

愛「なんかあんの?」

果林「……『異界の海へと潜り行く美姫たち』……って意味を込めて──“DiverDiva”って呼ばれてるみたいよ」

璃奈「“DiverDiva”……」

愛「へー! いーね、それ! たまにはメディアもセンス良いこと言うじゃん!」

彼方「美姫か〜なんか照れちゃいますな〜」

璃奈「……ちょっと……恥ずかしいけど……嫌いじゃない」

愛「そんじゃ、リーダー! 発進前に、一発気合いの入るの言ってよ!」

彼方「お、いいね〜。そういうノリ、彼方ちゃん嫌いじゃないぜ〜?」

璃奈「果林さん。お願い」

果林「突然言わないでよ、もう……。……みんな、世界を救いに行くわよ! この4人──“DiverDiva”で……!!」

璃奈「うん!」
愛「あいよー!」
彼方「任せろ〜!」


私たちの──異界での旅が、幕を開けたのだった。





    📶    📶    📶





──さて、ウルトラスペースの調査が本格的に開始し……私たちは少しずつウルトラスペースのあちこちを旅しながら、いろんなことを知ることになる。

まずウルトラスペースの中には、私たちの世界のように、いろいろな世界が存在していることがわかった。

私たちは世界を見つける度に、そこに降りて調査を行った。

そして……世界によっては──新たなウルトラビーストに出会うこともあった。


────
──


例えば……巨大な電気を帯びた樹木が張り巡らされた世界……。


 「──ジジジジ」

果林「みんな!! 姿勢下げて!!」

愛「雷……雷無理、雷怖い、無理無理無理……」

璃奈「あ、愛さん、しっかりして……!」

彼方「おー……愛ちゃんの意外な弱点だ〜……」


────
──
708 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:12:12.67 ID:5MWtUFJH0

例えば、一面に広がる砂漠の世界……。


 「──フェロッ!!!!」

果林「こっちよ!!」
 「フェロッ!!!」

 「フェ、ローーチェ!!!!」

愛「カリン!! 一人じゃ無茶だって!?」

果林「フェローチェの速さに対抗出来るのは、フェローチェしかいないでしょ!! 任せなさい!!」


────
──


宝石のような輝く鉱物があちこちに生えた洞窟の世界……。


 「──ジェルルップ…」「──ジェルル…」「──ジェルップ…」

璃奈「……ウツロイド……。……強力な神経毒を持ってるウルトラビースト……」

愛「寄生されたらアウトだからね……慎重に調査しないと……」

果林「彼方……いざとなったら、無理やりにでも手引っ張って逃げるからね……。貴方、走るの苦手なんだから……」

彼方「えへへ〜……果林ちゃん頼りになる〜」


────
──


例えば巨大なジャングルのような世界……。


 「マッシブーーーーーンッ!!!!!!」

果林「……っ……!!」

愛「カリン!! 逃げて!!」

璃奈「果林さん!!」


──ボフッ。


 「…ッシブッ!!?」

彼方「ダメだよ……果林ちゃんは、彼方ちゃんの大切な家族なんだから……傷つけさせない」
 「──メェェェェ…!!!!」

果林「かな……た……」

愛「ウールーが……」

璃奈「進化……した……!」


────
──


例えば、巨大な遺跡の世界……。


彼方「この模様……なんだろ……?」

果林「太陽と……月……かしら……?」

愛「……かつて文明があったのかな……」

璃奈「人が住んでたのか……他の世界から持ち込まれたのかはわからないけど……。……ただ、もうこの世界に知的生命体は生息してないと思う。……あまりに世界規模が小さすぎる……」

 「──ピュィ…」
709 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:14:48.11 ID:5MWtUFJH0

────
──


本当に……いろんな世界を見て回った。

そして、私はその中で、世界はそれぞれ違う規模を持っていることを突き止めた。

加えていろいろな世界を巡る中で──私たちは、ウルトラビーストを何種類か捕獲することに成功した。

テッカグヤ、デンジュモク、カミツルギ、ズガドーン……そして、2匹目のコスモッグ……。

ただそれなりの数の世界を見て回ったけど──知的生命体による文明が進行形で築かれている世界へは、たどり着けなかった。





    📶    📶    📶





調査を続ける中で……久しぶりに研究所に戻ってきていた私は、考えていた。

──結局何故、私たちの世界からはエネルギーが漏れ出してしまっているのだろうか?

各世界にある物質の放射性年代測定から見るに……誕生から時間が経過している世界ほどエネルギー状態が不安定だった。

それが指し示すのは……この現象は世界そのものに起こっている経年劣化のようなものと考えるのが妥当……?

世界はエネルギーの風船のようなもので……その風船のゴムの表面が徐々に弱まって、エネルギーが逃げ出していくと仮定して……。

そうだとしてエネルギーはどこに……?

スペース内でエネルギーに偏差が観測出来るってことは、エネルギー自体は流動しているってことだから……。

そうだ……期間ごとの放射誤差のデータと、周辺スペースのエネルギーの飽和状態を見れば……!

私は、集めたデータを見比べる。……やっぱり……ウルトラスペース内に、エネルギーの圧力のようなものが存在しているんだ……。

私は一人、頭の中で理論を整理していく。


彼方「それにしても……これだけ世界を見て回ったのに……人が住んでる世界って、ないもんなんだねー……」

果林「そうね……。……でも、文明がある可能性が高い世界はあったんでしょ?」

愛「まあね。……エネルギー観測によると、アタシたちの世界よりも大きな規模の世界が1個だけ見つかったから。そこにはもしかしたら……文明があるんじゃないかって考えてるけど……」

彼方「エネルギー……ちょっとくらい分けてくれないかな〜……」

愛「それが出来ればなんだけどね〜……」


エネルギーを分ける……?


璃奈「……!」


私はそのとき、あることに気付き、椅子を跳ねのけるようにして、立ち上がった。


愛「り、りなりー? どうしたの? 何かひらめいたん?」

璃奈「………………わかった」


もし、周辺のウルトラスペースのエネルギー圧が小さいほど、エネルギーが流出するのなら、自分たちの世界の周辺のエネルギー圧を上昇させるのが答えになる。

そして、そのための方法があるとしたら……。


彼方「わかったって……何がわかったの〜……?」

璃奈「世界を………………救えるかも……しれない……」

果林「ホントに……!?」


私の言葉を聞いて、果林さんが私の両肩を掴みながら、
710 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:20:47.70 ID:5MWtUFJH0

果林「一体どういう方法なの……!? 璃奈ちゃん……!!」


血相を変えて訊ねてくる。

強い力で肩を掴まれていたため、肩に果林さんの指が食い込んでくる。果林さんはそれくらい強い力で私の肩を掴んでいた。


愛「ちょ、カリン……!」

璃奈「……か、果林さん……い、痛い……」

果林「あ……ご、ごめんなさい……」


果林さんは謝りながら、掴んでいた手を離す。


愛「……カリンが人一倍気持ちが強いのは知ってるけど……そんな風に詰め寄ったら、りなりーが困っちゃうからさ……」

果林「そう、よね……ごめんなさい……」

璃奈「うぅん……大丈夫」

彼方「それで……どういう方法なの……?」


彼方さんに訊ねられるけど……。


璃奈「……それは……」


私はこれを口にしていいものか……悩んでしまった。

もし自分たちの世界の周辺をエネルギーで満たすということが意味していることを考えると……。


璃奈「…………言っていいのか……わからない」


安易に言っていいものなのかわからなかった。


果林「言っていいのか……? わからない……?」


私の言葉に果林さんが眉を顰める。


果林「世界を救う方法があるんでしょ……? それを言っていいのかわからないって、どういうこと……?」

璃奈「そ、それは……。……でも、今この場では……教えていいことか……私だけじゃ判断しかねる……」

果林「なによそれ……。……ねぇ、璃奈ちゃん……貴方も世界を救いたいんじゃないの……?」


果林さんの語調が強くなる。


彼方「か、果林ちゃん、落ち着いて……」

愛「…………何か思うことがあるってことだよね」

璃奈「……うん」

愛「わかった。……ただ、私たちは政府から託されて研究してるから……」

璃奈「……わかってる。……報告しないわけにはいかない……」


最終的には、可能性であっても、報告の義務がある。

政府がどれだけ私たちに投資しているかを考えれば……私一人の意思で、研究の中で見つけた事実を発表するかしないかを決めていいわけがない。

それを聞いて果林さんは、


果林「なら、ここで言ってもいいんじゃないの?」


再び強い口調をぶつけてくる。
711 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:22:04.28 ID:5MWtUFJH0

璃奈「……ご、ごめんなさい……」

愛「カリン、やめて。りなりーが困ってる」

果林「私たちは仲良しごっこしてるんじゃないのよ? 世界の命運を懸けて戦ってるの」

愛「……」

果林「……」

彼方「ふ、二人とも落ち着いて! 果林ちゃん、焦って聞いても彼方ちゃんたちにはよくわからないだろうし、ちゃんと報告した後にわかりやすく纏めてもらった話を聞こう? ね?」

果林「…………わかった」


彼方さんが宥めると、果林さんは私に背を向けて椅子に腰を下ろす。


璃奈「……ほっ」

愛「りなりー、大丈夫?」

璃奈「……うん」

彼方「ごめんね……果林ちゃんも悪気があって言ってるわけじゃなくて……最近、調査進捗とかメディアから詰め寄られることが多くって……だから、ちょっと焦っちゃってるだけで……」

璃奈「うん、理解してる。果林さん、ごめんね、すぐに言えなくて……」

果林「……私こそ……ごめんなさい……。……ちょっと、頭を冷やすわ……」


果林さんの焦りも理解出来る……。……矢面に立って、一番せっつかれているのは間違いなく果林さんだ。

……それも、人前に立つのが苦手な私の盾になってくれている。

だから、煮え切らない態度を取ってしまったことに申し訳なさはある。


愛「……それじゃ、アタシとりなりーで一旦理論を纏めてくるから……」

果林「ええ……お願いね」


とりあえず、愛さんに相談して……どう上の人に伝えるかを纏めないと……。

愛さんと一緒に執務室に移動する。


愛「それで……聞いていいかな」

璃奈「…………。私たちの世界がエネルギー的に委縮を続ける理由は……恐らく世界の持つ根本的な寿命なんだと思う……。高次元との間の境界面が、時間と共に薄くなって……そこからエネルギーが流出していく」

愛「じゃあ……どうしようもないってこと……?」

璃奈「うぅん……。もし境界面が薄くなったとしても……周辺にあるエネルギーが多ければ問題ない。問題なのは、世界の周辺のエネルギーが不足して、エネルギーの圧力のようなものが下がってるから」

愛「……なるほど。内外で圧力差が生じるから、外にエネルギーが逃げちゃうのか」

璃奈「うん。なら……周辺のエネルギー圧を上げればいい……」


問題はその方法だ。


璃奈「エネルギーはウルトラスペース内で流動してる。……ということは、どこかで巨大なエネルギーの爆発を起こせば……その余波で、私たちの世界の周辺のエネルギー圧も上昇するはず……」

愛「まあ、単純な話だよね……。少ない場所にエネルギーを供給するには、溜め込んでる場所から持ってくればいいもんね」

璃奈「でも……たくさんのエネルギーを溜め込めるのは……恐らく、世界そのもの」

愛「……世界がエネルギーを溜め込む風船みたいなイメージだよね」

璃奈「うん。……つまり、より大きな風船を割ると……よりたくさんのエネルギーがウルトラスペースに還っていく……」

愛「確かにそう……。……え?」


愛さんも気付いたようだ。
712 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:23:09.52 ID:5MWtUFJH0

愛「…………」

璃奈「でも、より大きなエネルギーを持った世界には……恐らく文明がある。……人が、ポケモンが……たくさん生きてる文明がある……。それを壊すってことは……その世界の人やポケモンたちを……犠牲にするってこと……」

愛「…………なるほど……こりゃ、確かにアタシでも言っていいのか迷う……」


愛さんは片手を頭に当てて、椅子に腰を下ろした。


愛「……でも、果林たちは何か方法があることを知っちゃってる……。……上への報告を一切しないのは無理かな……」

璃奈「ごめんなさい……。……もっと熟考してから、口にするべきだった……」

愛「いや、りなりーは悪くないよ……。ただ、これは……そのまま、上には伝えられない」

璃奈「うん……」


こんな非人道的なことをするとは考えたくないけど……もしわかった上でやるとなったら……取り返しがつかない。


愛「……それっぽい理屈で、方法はあるけど、危険だから出来ないって説明をしよう」

璃奈「それしかないよね……」


私たちはどうにか嘘を吐かない範囲で、研究報告を作り始めるのだった。





    📶    📶    📶





──後日。私たちは政府の役人や実行部隊の司令官の集まる席での、口頭での発表をお願いされた。


璃奈「まさか、呼び出されると思わなかった……」

愛「書面だけじゃなくて、ちゃんと説明しろってことかねー……」


やっぱり内容が内容だけに、書面で伝わりづらいニュアンスも解説することを求められているのかもしれない。

ちなみに私たちが出した研究報告書はざっくり言うと──『世界からエネルギーが流出するのは世界の寿命が迫っているから。それを遅らせるには、私たちの世界周辺のエネルギー量を増やすことが必要だが、それをする方法は現在調査中』という形で提出した。

嘘は吐いていない。


愛「りなりー、ボード持ってきてる?」

璃奈「うん」


やっぱりまだ緊張するから……ボードは使っている。私の発表の方法は割と知れ渡っているから、こういう堅い場でも使うことが許されているのは助かる。


愛「んじゃ、行こうか」

璃奈「うん」


もうすでに人が揃っている会議室内へと足を踏み入れる。

中には……十数人ほどの政府役員、所内の管理者や、実行部隊の司令官が揃っていた。


愛「失礼します。ミヤシタ・愛です」

璃奈「テンノウジ・璃奈です。よろしくお願いします」 || ╹ ◡ ╹ ||

政府役人「待っていたよ。……それでは、早速だが研究の報告を改めてお願いしてもいいかな?」

璃奈「はい」 || ╹ ◡ ╹ ||


そのとき、ふと──
713 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:24:51.78 ID:5MWtUFJH0

 「ネイ」


部屋の隅にネイティが居ることに気付いた。

……そういえば、今までも役人の人たちとお話するときには、いつもお部屋にネイティがいた気がする。

役人の人の中にネイティを好きな人がいるのかな……?

まあ、いいや……。

私たちは研究内容の報告を始める。

もちろん、報告書で書いたとおりの内容でだ。


璃奈「──ですので……報告書にも書いたとおり、その大量のエネルギーをどこから持ってくるかは研究中です」 || ╹ᇫ╹ ||

政府役人「当てはあるのかな?」

璃奈「あくまで現状では理論がわかっただけなので……そちらに関してはこれから考えるつもりです」 || ╹ᇫ╹ ||

政府役人「現状では、具体的な方法には見当が付いていないと……?」

璃奈「……はい」


私は役人の言葉に頷く。

そのときだった、


 「ネイティー」


ネイティーが──鳴いた。


愛「……!」

政府役人「聞き方を変えよう。……何か私たちに報告していないことがあるんじゃないかい?」

璃奈「……? ……ありませ──」

愛「りなりー、ダメだ……!!」


愛さんが急に私の口を手で塞ぐ。それと同時に──


 「ネイティー」


また、ネイティーが鳴いた。


璃奈「あ……愛さん……?」


何が起こったのかわからず困惑していると、


愛「……普通、そこまでする?」

政府役人「…………」


愛さんはそう言いながら、政府の役人たちを睨みつける。


璃奈「え、えっと……ど、どうしたの……?」

政府役人「君たち研究者は、研究を政府から拝命しているにも関わらず、自分たちの倫理道徳観に従って、結果を隠すことがあるからね……」

愛「研究に主観や研究者の願いが含まれるのは当然でしょ!? 研究者だって、人間なんだよ!?」

政府役人「だから、それをクリアするための措置だ……。……君たちに求められていることは、一刻も早く世界を救う方法を見つけ出すこと……違うかね? 政府がどれだけ君たちの研究に、予算と人員をつぎ込んでいると思ってるんだ?」

愛「だ、だとしても……こんな騙し討ちみたいな方法……!」

璃奈「あ、愛さん……! どういうこと……?」
714 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:26:44.40 ID:5MWtUFJH0

私は突然役人の人と口論を始めた愛さんに説明を求める。

すると愛さんは、苦々しい顔をしながら──


愛「……最初から、この人たちはアタシたちの報告を信用なんてしてなかった……。……だから、嘘発見器まで置いて……」

璃奈「嘘……発見器……?」


ハッとする。


 「ネイ」

璃奈「まさか……あの……ネイティ……」

愛「アタシたちが……嘘や虚偽の発言をしたとき……鳴いて知らせるように、訓練されてる……」

璃奈「……嘘」


私の手から……璃奈ちゃんボードが滑り落ちて、パサっと音を立てながら床に落ちた。


政府役人「さぁ……報告を続けて貰おうか」

愛「……だから、今は調査中です。これ以上、報告出来ることはありません」


愛さんが睨みつけながら言葉を返す。


政府役人「“さいみんじゅつ”で吐かせることも出来るんだ。……手荒な真似をさせないでくれ」

愛「…………」

璃奈「……愛さん、話そう」

愛「りなりー……!?」

璃奈「ここまで、強引な手を使ってくるってことは……言わないと、何されるかわからない。……私たちだけじゃなくて……果林さんや彼方さんにも……」

愛「…………」


恐らく……ここで突っぱねても、強引に吐かせられるか……何かしらの罰が、私たちだけじゃない……チームの連帯責任として、課されるなんてことは想像に難くない。

私の言葉を聞いて、


司令官「……」


実行部隊の司令官さんが目を逸らした。

恐らく、そういうことだろう。


政府役人「それだけ……我々も必死なんだ。世界のために……」

愛「だ、だからって……恥ずかしくないの……!?」

璃奈「愛さん。言ってもしょうがない……。……組織の合理性を考えたら……研究者に研究内容を秘匿させないのは……間違った選択じゃない……」

愛「……っ」

璃奈「ただ……この方法は、完全に人道に反する。……私たちは一切推奨しないし、今も他の方法をしっかり模索し続けていることは理解して欲しい」

政府役人「……いいだろう」


そう前置いて──私は、世界にエネルギーを溢れさせる方法を……話し始めた。



715 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:27:53.27 ID:5MWtUFJH0

    📶    📶    📶





愛「……くそ……」

璃奈「……ごめんなさい」

愛「りなりーは……悪くない……。……あんな卑怯なことされたら……」


とりあえず……本日のところは、報告をしただけで会議は終わった。

ただ……方法の一つに──他世界を滅ぼすということがあるのは完全に知られてしまった。

今後具体的にどうするかは、政府で検討したのち、私たちに次の指示を出す、とのこと……。


愛「でも、アイツら……検討するなんて思えない……」

璃奈「…………」


確かに、もうすでに研究者に対する人道は損なわれている。


愛「りなりー……研究を……放棄しよう……。……これ以上は、いくらやっても政府に利用されるだけになる……」

璃奈「……それは出来ない」

愛「なんで……!」

璃奈「今放棄しても……今いる実行部隊をウルトラスペースに送り込んで無謀な調査を続行するとしか思えない……。……そうしたら、他の世界の人たちどころか……私たちの世界の人たちまで無駄に死ぬことになりかねない……」

愛「それは……」


政府からしてみれば……メディアに大々的にアピールもしてしまっている……他国からも多額の支援を受けてしまっている。

もうプリズムステイツ政府も、十分に切羽詰まっているのだ。

そう考えると……今後どういう方針で動いていくことになるのかは……わかっているようなものだった。


璃奈「今の政府の考えを止めるには……もう、私たちに選択肢は一つしか残されてない……」

愛「一つ……?」

璃奈「……政府が動き出すよりも前に……より良い代替案を見付けるしかない──」





    📶    📶    📶





──だけど、代替案はなかなか思いつかず……。

その最中にも、何度か会議が行われた。
716 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:29:01.73 ID:5MWtUFJH0

愛「だから、仮に他世界を滅ぼして、ウルトラスペースにエネルギーを溢れさせても、また数百年、数千年もすれば同じことが起こるんだって!!」

璃奈「エネルギーは流動する……。……エネルギーの固定方法を考えるよりも、移住を考える方が現実的かもしれない」 || ╹ᇫ╹ ||

政府役人「だが、数百年数千年我々の世界は守られる。それに今更になって、この世界を捨てると世界中に説明しろと?」

璃奈「現実的な問題の話をしてる。……今、貴方たちが計画してることは侵略。世界間で戦争になる可能性だってある。それに勝利したとしても、また時間が経てば同じ問題が起こる」 || ╹ᇫ╹ ||

政府役人「なら、そのときはまた戦うしかない。人はずっとそうしてきたんじゃないかい?」

愛「だからそれじゃ、根本的な解決にならないって言ってんでしょ!?」

璃奈「愛さん……落ち着いて……」

政府役人「……話にならんな」

愛「それはこっちの台詞だよ!!」

政府役人「君たちの聞き分けがあまりに悪いため……今後は組織の全指揮系統を実行部隊に渡すことにした」

愛「はぁ!?」

政府役人「今後は研究の方針や予算の割り振りも、実行部隊が管理する。今後はそちらの指示で動いてもらう」

愛「ふっざけんなっ!!」

政府役人「……実際に航行エネルギーとして扱う星の子、コスモッグと言ったな。……あのポケモンはすでにこちらで確保させてもらった」

愛「はぁ……!?」


愛さんと私は、同席している実行部隊の司令官に視線を向ける。


司令官「……果林と彼方には上からそういう指示があったと言って回収した」

愛「……いつの間に……」


先手を打たれたということだ……。

果林さんたちは私たち以上に上下のある組織をベースに動いている。

そうなると、上からそういう指示があれば、それには従うだろう……。


政府役人「2匹のコスモッグは今後、実行部隊で管理する」

愛「……横暴だ……!」

政府役人「ポケモンの扱いに長けた実行部隊がポケモンを管理するのは合理だと思うが?」

璃奈「……本当にそう思うんですか? ポケモンの扱いに長けた人がコスモッグの管理をするのが適切と」 || ╹ᇫ╹ ||

政府役人「当然だ。あれは君たちのポケモンではない。世界を守ろうと考える全ての人間の中で公平に扱われるべきポケモンだ。他に何か合理的な異論でもあるのか?」

璃奈「ない。その理屈は正しい」 || ╹ᇫ╹ ||

愛「り、りなりーっ!」

璃奈「ただ、ポケモンの扱いに長けた人間に渡すという理屈を是とするなら、実行部隊に2匹とも渡すのは筋が通ってない」 || ╹ᇫ╹ ||

愛「え……?」

政府役人「……何?」

璃奈「……この組織全体で見ても、愛さんのポケモンの扱いはトップ2には間違いなく入ってる」 || ╹ᇫ╹ ||

政府役人「……そうなのか?」


役人の人が司令官さんに確認を取る。


司令官「……確かに摸擬戦の結果では、果林は愛博士とは同程度の実力ですが……彼方は明確に負け越しています」

政府役人「……」

璃奈「なら、少なくとも2匹のコスモッグのうち1匹は愛さんの手に渡るはず。それが合理と言ったのは貴方」 || ╹ᇫ╹ ||


役人の人は私の言葉に、黙り込み、眉を顰めていたけど──さすがにこれだけの地位にいる人間が、簡単に言っていることを覆すことは出来ないだろうという私の読みどおり、
717 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:31:51.82 ID:5MWtUFJH0

政府役人「……わかった、いいだろう。では、改めて組織内でポケモンの扱いに長けた2名──アサカ・果林、ミヤシタ・愛に、コスモッグの管理権を渡す」


コスモッグは愛さんと果林さんの手に渡ることになった。


政府役人「辞令は追って出す」

璃奈「わかりました」 || ╹ᇫ╹ ||





    📶    📶    📶





危うく全権剥奪されかねないところだったけど……どうにか、首の皮1枚繋がった感じだ……。

そして後日──正式に愛さんに“SUN”、果林さんに“MOON”という階級称号が与えられた。

今後は、この二人がそれぞれコスモッグを管理することになる。


璃奈「愛さんに渡されるコスモッグは、彼方さんが持ってた子みたいだね」

愛「まぁ……カナちゃんの持ってたコスモッグは、カリンとは仲悪かったからね……」


愛さんと話しながら研究室に戻っていくと、ちょうど中から果林さんたちの話し声が聞こえてきた。


果林「──それにしても……なんで“SUN”と“MOON”……太陽と月なのかしら……?」


恐らく、果林さんたちも辞令について話しているんだと思う。

そこに愛さんがドアを開けながら、


愛「文献を見つけたからだよ」


果林さんの疑問に答える。


果林「愛……」

彼方「文献って?」

璃奈「2匹目のコスモッグを見つけた世界で、石板があったの覚えてる?」

果林「あったような……なかったような……」

愛「まあ、あったんだけどさ。その石板にあった碑文をりなりーが言語解析プログラムにずっと掛けてたんだけど……それの結果が出たらしくってね」

果林「それが太陽と月だったの?」

愛「コスモッグは成長すると、太陽の化身もしくは月の化身へと姿を変えるんだってさ」

璃奈「日輪と月輪が交差する場所で、交差する時に、人の心に触れ、太陽の化身もしくは月の化身に姿を変えるって記されてた」

彼方「あーだからか〜……太陽と月をそれぞれ授けるぞ〜ってことだね〜」

璃奈「そんな感じ。強いトレーナーの傍に居ればいつか覚醒して、私たちの力になってくれるだろうって考えてるみたい」


ただ、果林さんが本当に聞きたかったのは、命名理由というよりも……どういう基準で選ばれたかということみたいだったらしく、


果林「……“SUN”は貴方よね、愛」


愛さんに向かって、そう訊ねてくる。
718 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:35:35.99 ID:5MWtUFJH0

愛「……まーね」

果林「上の人と揉めてるの……?」

愛「……」


急な辞令だし……私たちのことは最近何かと噂になっている。果林さんも何かしら、察しているんだと思う。

愛さんは果林さんの言葉を受けて、気まずそうに頭を掻く。


愛「……大丈夫、ちゃんとチャンスは貰ったから」

果林「チャンス……?」

愛「世界……救える理論、ちゃんと見つけてみせるからさ」

璃奈「……私たち頑張る! 璃奈ちゃんボード「ファイト、オー!」」 || > ◡ < ||


果林さんは心配そうにしているけど……私たちにはまだ、やれることがあるはず。

現状の方針を覆すためにも……私たちはとにかく調査を続けることにした。





    📶    📶    📶





愛「……つってもなぁ……。……他の方法かぁ……」


愛さんが頭を抱える。


璃奈「……何か方法はきっとあるはずだから……」

愛「……うん。……ってか、りなりーさっきから何してるの?」


さっきから私が弄っている端末を、後ろから覗き込んでくる。


璃奈「……ウルトラスペース内のエネルギー流動シミュレーション」

愛「……流動シミュレーション……?」

璃奈「……エネルギーには偏差がある。それは常に空間そのものが運動している証拠。……一生空間が運動し続けるんだとしたら……」

愛「ウルトラスペースは……ある基点を中心に回転してる……?」

璃奈「うん。その可能性が高い」


ある一方向に進み続ければいつかはエネルギーが尽きてしまう。

なら、可能性としては円運動をしていると考える方が論理的だ。


璃奈「そして、その中心点には……エネルギーが集中してるはず。……そこを見つけ出して、エネルギーを抽出する方法が見つかれば……もしかしたら……」


私はより大きなエネルギーが存在する場所を、今持っているエネルギーの流動情報からシミュレーションで導き出そうとしていた。


愛「……りなりー、シミュレーション手伝う。データ回して」

璃奈「うん、お願い」



719 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:36:31.79 ID:5MWtUFJH0

    📶    📶    📶





──愛さんと二人で、シミュレーションを始めて約数週間……。

睡眠以外ほぼ不休で進めていた検証の結果……。


璃奈「……あった……」


私たちは──探していたウルトラスペースの中心……即ち特異点の存在の予兆を、探り当てていた。


愛「問題は距離か……。……航行エネルギーが足りない……」

璃奈「……それも、どうにか出来るかもしれない」

愛「どういうこと?」

璃奈「エネルギーが中心に集まってるのは……中心に向かってエネルギーが引き寄せられてる……つまり、中心点には強い重力が存在してるから。だから、近くの世界の重力に捕まらなければ、基本的に中心点に向かって引き寄せられていくはず」

愛「なるほど……。向こうが引き寄せてくれるなら、推進にエネルギーを使い続ける必要がない……」

璃奈「私たちは何も特異点の中心に行こうとしてるわけじゃない。一定以上のエネルギーさえあれば──コスモッグがエネルギーを吸収する性質を利用して、回収出来るかもしれない」

愛「回収したら、行きで使わなかった分の推進力を使って、重力圏から脱出する……」

璃奈「そういうこと」

愛「これなら……行けそう……! 他の世界を犠牲にしなくても、世界が救える……!!」

璃奈「うん。今すぐ、この結果を上に報告しよう」

愛「……だね!」


私たちは、やっと希望を見出した……。ただ……現実は無情だった。





    📶    📶    📶





政府役人「……却下だ」

愛「なんで……!?」

政府役人「それはあくまでもシミュレーションによって得られた仮説なんだろう?」

璃奈「だけど、理屈は筋が通ってる。十中八九エネルギーが集中するポイントがあると思われる」 || ╹ᇫ╹ ||

政府役人「だが100%ではない」

愛「そりゃ……そうだけど……」

政府役人「君たちのその理論だと……推進エネルギーに使うコスモッグと、エネルギーの回収に使うコスモッグが必要ということだろう?」

璃奈「……確かに必要」 || ╹ᇫ╹ ||

政府役人「それによってコスモッグを失わないと保証できるのか?」

璃奈「……そればっかりはやってみないとわからない」 || ╹ _ ╹ ||

政府役人「もし失敗して2匹ともコスモッグを失った場合……我々は確実に滅亡する」

愛「それは……」

政府役人「……推論の段階で、貴重なコスモッグを2匹とも向かわせるわけにはいかない」


確かに現状では理屈上あると考えられるだけで、観測すら出来ていない。

政府側の主張では、そんな見切り発車で、全ての希望であるコスモッグを2匹とも使わせるわけにはいかない……ということらしかった。
720 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:38:56.71 ID:5MWtUFJH0

政府役人「安全が保障されていないなら、この話は到底許可出来ない。それならば、今ある確実な方法を進めるべきだ。我々には時間も多くは残されていない」

愛「…………っ」

璃奈「……なら、私たちだけで行きます」 || ╹ᇫ╹ ||

愛「……りなりー……?」

璃奈「実際に観測を行って……その上で、改めてエネルギー回収のための安全を確保した理論を完成させたら……この作戦を許可してもらえますか? その間、こちらでは今ある方法を進めていてもらっても構わない」 || ╹ᇫ╹ ||

政府役人「……ああ、それなら構わない」

愛「りなりー……でも、アタシたち二人で行くのは……危険だよ」

璃奈「そんなことは百も承知。……だけど、行かないわけにいかない」

愛「……りなりー」

璃奈「みんなが望む平和を、幸せを……みんなの想いを、未来に繋げるために……誰かが誰かと繋がる世界を守るために……私たちの研究はあるから」


誰かが犠牲になる世界じゃない。誰もが誰かと繋がれる、そんな世界のために……私はずっと研究を続けてきたから。


璃奈「その可能性が目の前にあるなら……私は諦めずに手を伸ばしたい」


私の言葉を聞いて、


愛「……わかった」


愛さんは頷いてくれた。


愛「一緒に行こう……そんで、全部守って……繋げよう」

璃奈「うん」





    📶    📶    📶





愛さんと二人でウルトラスペースへ発つことも決定し……研究室で、もろもろの準備を行っている最中のことだった。


彼方「──りーなちゃん♪」

璃奈「彼方さん?」


彼方さんが私に声を掛けてくる。

それと同時に──


璃奈「……良い匂い……」


すごく甘くて、良い匂いがしてくる。


彼方「実はね〜スフレを作ったんだ〜♪ 一緒に食べない〜?」

璃奈「うん! 食べたい!」

彼方「よかった〜♪ 休憩室で食べよ〜♪」

璃奈「うん!」
 「ウニャァ〜」「ベベノ〜♪」「ベベノ〜♪」

彼方「ニャスパーとベベノムたちも一緒に食べようね〜♪」


彼方さんに誘われて、休憩室に移動する。
721 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:39:39.14 ID:5MWtUFJH0

璃奈「……いただきます!」
 「ニャ〜」「ベベノ♪」「ベベノ〜♪」

彼方「召し上がれ〜♪」


彼方さんの作ってくれたスフレは……一口食べるだけで、ふわっとした食感と共に、甘さが口の中に広がり、すごく幸せな気持ちになる。


璃奈「おいしい♪」
 「ゥニャァ〜〜」「ベベベノノ〜〜♪」「ベベノ〜♪」

彼方「ふふ、よかった〜♪」


ポケモンたちにも大絶賛。

彼方さんはそんな私たちを見てニコニコ笑う。


彼方「ねぇ、璃奈ちゃん」

璃奈「なぁに?」

彼方「……愛ちゃんと二人で……危険な調査に行くんだってね」


彼方さんの言葉に──フォークが止まる。


彼方「果林ちゃんに聞いたんだ。……果林ちゃんは愛ちゃんから聞いたって言ってたけど」

璃奈「……そっか」

彼方「……ごめんね」

璃奈「どうして彼方さんが謝るの?」

彼方「……彼方ちゃんたちは……璃奈ちゃんたちを守るためにここにいるはずなのに……何もしてあげられないから……」

璃奈「そんなことないよ……。……私も愛さんも……彼方さんたちに何度も助けられた……」

彼方「璃奈ちゃん……」

璃奈「大丈夫、絶対に帰って来るから。待ってて」

彼方「……うん」

璃奈「彼方さんの作ったお菓子……もっとたくさん食べたいから、絶対に帰って来る」

彼方「ふふ……わかった〜。帰ってきたら、璃奈ちゃんの好きなもの、いくらでも作ってあげるよ〜♪」

璃奈「やった〜!」
 「ウニャァ〜」「ベベノ〜」「ベベノ〜」


彼方さんは、私の傍に来て、私を抱きしめる。


彼方「……絶対……絶対だからね……。……彼方ちゃん……もう……大切な家族がいなくなるのは……嫌だからね……」

璃奈「……うん。約束する」


私を……家族と言ってくれる彼方さんを悲しませないためにも……私たちは、絶対に戻ってくる。そう胸に誓って……。



722 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:41:06.82 ID:5MWtUFJH0

    📶    📶    📶





璃奈「──エネルギー充填完了。エンジン稼働正常。ウイング稼働正常」

愛「レーダーOK. 装甲へのエネルギー循環100%」

璃奈「コスモッグにも異常なし」
 「ピュイ♪」

愛「ポケモンたちの安全確認もよし……」
 「ベベノ〜」「ベベノ〜」「ニャ〜」

愛「よし、そんじゃ発進シークエンスに──」


発進シークエンスに移行しようとした、そのときだった。


璃奈「待って、通信。……繋ぐね」


通信が入った。

その相手は──


政府役人『……テンノウジ博士、ミヤシタ博士。聞こえるかな』


まさかのあの政府の人だった。


愛「……まさか、ここまで来てイヤミでも?」

政府役人『……作戦の無事を祈って、一言言わせてもらおうと思ってな』

愛「へー……どういう風の吹き回しなんだか」

政府役人『我々は、君たちを嫌っているわけではない』

愛「どうだか……」

政府役人『我々が君たちの考えに賛同出来なかったのは、優先順位の問題だ。……今回の観測調査が成功し、君たちの望む未来が実現することを祈っている』

愛「……そりゃ、どーも」

璃奈「激励、感謝する」


通信はそこで終了する。


愛「ホント……何考えてんだか……」

璃奈「意外だったけど……応援してくれてるのかな」

愛「どうせ、アタシたちがうまく行った場合に調子よく話を進めるためでしょ……」

璃奈「……観測が成功した際、こちらに傾いてくれるのなら、それはそれで助かる」

愛「まあね」

璃奈「どちらにしろ……私たち次第」

愛「……だね。……そんじゃ行くよ、りなりー!」

璃奈「うん!」
 「ニャ〜」「ベベノ〜」「ベベノ〜」

愛「発進シークエンス開始!」


発進シークエンスが開始し──


璃奈「……ウルトラスペースシップ……発進」
723 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:42:18.94 ID:5MWtUFJH0

私たちは──全てを懸けた観測調査を開始したのだった。





    📶    📶    📶





──シップで旅に出て、数週間ほどが経過した。


愛「景色変わらないねぇ……」


ウルトラスペースシップ内からは、ウルトラスペースの景色しか見えないから、進んだところであまり代わり映えしない。

たまに遠方に他の世界への入り口が見える程度だ。


璃奈「でも、確実に相対速度は上昇してる」

愛「エンジン推進を切ってから、それなりに経つもんね」

璃奈「慣性だけじゃない証拠……ちゃんと加速してる」


今はメインエンジンはほぼ稼働していない。使うとしても、誤差修正用のスラスター噴射くらいだ。

それは即ち……中心にある巨大な引力に少しずつ引き寄せられていることを意味していた。


愛「りなりーの理論は……間違ってなかったってことだね……」

璃奈「うん。あとは……十分なエネルギーを持った領域まで辿り着いて……その観測結果を持ち帰れば任務完了」

愛「やっと……ここまで来たんだね……」

璃奈「……うん」


あと一歩……。あと一歩で……私たちの目的は達成される。

お父さんとお母さんの研究が……完成する。誰かの想いを未来を……繋げていく、そんな二人の意志が……。


璃奈「愛さん……ありがとう。愛さんが居てくれたから……ここまで来られたよ」

愛「もう……りなりー、まだ終わってないぞ〜?」

璃奈「わかってる。だけど……今、お礼を言いたくなった」

愛「……そっか」


愛さんは微笑みながら、私を抱き寄せる。

すごく温かかった。


璃奈「……私ね……ずっとずっと……ずーっと……一人で──独りで研究していくんだと思ってた。だけど……気付いたら、周りにいろんな人が居て……果林さんが……彼方さんが……。……愛さんが」

愛「うん」

璃奈「未来の私がこんな風になれるなんて……全然想像してなかった。……愛さんがあのとき……私を見つけてくれたから……今の私がある」

愛「……大袈裟だって。アタシがしたことなんて大したことじゃない。りなりーがお父さんとお母さんを信じて頑張ってきたから、今があるんだよ」

璃奈「愛さん……」

愛「りなりーから始まったんだ。りなりーの気持ちが、想いが、アタシを動かして……カリンやカナちゃんが仲間になって……どんどんどんどん、大きくなって……」

璃奈「……うん」

愛「りなりーが繋げたんだよ……」


愛さんの言葉が嬉しかった。

私がお父さんとお母さんを信じてやってきたことは……何一つ無駄じゃなかった。そう言ってくれることが。
724 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:43:00.88 ID:5MWtUFJH0

璃奈「……あ、あのね……愛さん……」

愛「んー?」

璃奈「私ね……新しい夢が……出来たんだ……」

愛「新しい夢!? なになに、聞かせて聞かせて!」

璃奈「えっとね……わ、笑わないでね……」


私はそう前置いて、


璃奈「私ね……この研究をしていて、いろんな人と知り合って、協力して、手を合わせて、前に進んできて……誰かと繋がることって、こんなに嬉しいことなんだって……知ったんだ」

愛「うん」

璃奈「……だからね、私の次の夢は──研究を通して、全世界の人たちと……こんな風に繋がれたら……もっともっと、嬉しいんじゃないかなって……」


自分の次の夢を、口にした。


璃奈「……ど、どうかな……?」

愛「…………」

璃奈「……やっぱり、全世界なんて……無理かな……」


愛さんが無言だから、少し大それたことを言いすぎたかなと思ったけど──


愛「……めっちゃいい……。……それ、めっちゃいいよ、りなりーっ!! あんまりに壮大すぎて、びっくりしちゃった……!!」


愛さんは心の底から嬉しそうな声で、反応を示してくれる。


璃奈「出来るかな……?」

愛「出来るよ!! りなりーなら絶対出来る!!」


そう言ってまたぎゅーっと抱きしめてくれる。


愛「これから先……りなりーを心の底から大事に、大切に思ってくれる仲間がたくさん出来るよ……! いろんな人と繋がっていけるよ……アタシが保証する……!」

璃奈「……愛さんが保証してくれるなら……心強い」

愛「その繋がりを一つ一つ大切にして、増やして行けば……いつか、全世界──うぅん、全宇宙の人とだって、繋がれる……」

璃奈「……それは大それた夢だね」

愛「でも、きっと出来るよ! りなりーなら!」

璃奈「……うん。愛さんがそう言ってくれるなら……出来る気がしてきた」

愛「でしょでしょ! ……あ、でも……」

璃奈「……?」

愛「りなりーがたくさんの人と繋がれたら本当に素敵だと思うけど……みんなにりなりーを取られちゃったら……ちょっと、寂しいかも……」

璃奈「大丈夫。……愛さんはずっと私の1番だから」

愛「りなりー……! うん! アタシの1番もずっとりなりーだけだよ!」

 「ウニャァ〜」「ベベノ〜!!!」「ベベノ〜!!!」

璃奈「わわ……」

愛「あはは♪ 仲間外れにするなって♪」

璃奈「ニャスパーも、ベベノムたちも大好きで、大切」
 「ウニャァ〜」「ベベノ〜♪」「ベベノ〜♪」


そのとき──ガコンッと音を立てながら、シップが大きく揺れる。
725 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:44:21.91 ID:5MWtUFJH0

璃奈「わっ……!」
 「ウニャ〜」

愛「とっとと……りなりー、大丈夫?」
 「ベベノ〜?」「ベベベノ〜?」

璃奈「うん……平気、ありがとう」


愛さんが私とニャスパーを抱き留めてくれる。

ベベノムたちは浮いてるから、平気そう……。


愛「……今の揺れ……何……?」

璃奈「……確認する」


私はコンソールを弄りながら、機体の状態を確認すると──


璃奈「……まずいかも」

愛「え?」

璃奈「……メインエンジンが……損傷したかも……」

愛「……なっ!?」


メインエンジンの異常アラートが確認出来た。

ただ、実際に見てみないと端末からだけでは状況の把握が出来ない。


璃奈「ちょっと様子を見てくる」

愛「船外用のスーツ、用意する……!!」

璃奈「お願い」





    📶    📶    📶





私が船外に出て、直接確認を行う──


愛『りなりー! どう……!?』

璃奈「……メインエンジンの噴出口がひしゃげてる……これじゃ、使い物にならない」

愛『……ま、マジか……』


メインエンジンは……目に見えてわかるくらいに損傷を受けていた。

エネルギー推進のための噴射口がひしゃげていて、とてもじゃないけどこれを使って航行することが出来ないのは間違いない。


璃奈「…………」


私はそれを見て考え込む。

恐らく、さっき揺れたときに何らかの損傷を受けたんだとは思う。

デブリか何かがぶつかった……?

いや、このメインエンジンの損傷の仕方は……外側から、何かがぶつかったというより……内側から力が掛かっているように見える。

内側からってことは……。
726 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:45:09.98 ID:5MWtUFJH0

璃奈「…………」

愛『りなりー!! りなりー!? 返事して、りなりー!!』


気付けば、無線通信の向こうで愛さんが声を張り上げていた。


璃奈「あ……ごめん。……ちょっと考え事してた」

愛『……よ、よかった……返事がないから、何かあったのかと思った……』

璃奈「とりあえず、一旦中に戻る」





    📶    📶    📶





愛「りなりー……! メインエンジン直りそう……?」


戻ると、愛さんが駆け寄ってきて、そう訊ねられる。


璃奈「たぶん、無理。完全に噴出口がひしゃげてる。無理に使ったら、エンジンそのものが耐えきれなくなって、最悪爆散する」

愛「そんな……」

璃奈「とりあえず、メインエンジンへの全てのエネルギー供給を遮断して、サブエンジンに送り込む」

愛「わかった……!」


とりあえず、使えないものに期待してもどうしようもない。

まさか、ウルトラスペース内で修理するわけにもいかないし……。

メインエンジンへのエネルギー供給を完全に遮断して、機能を停止させる。

だけど──あまりに間が悪すぎる。

今シップは……中心特異点の重力圏に捕まりつつある。

メインエンジンの推進力は全体の7割以上を占めている。

サブエンジンはあくまで微調整用のものでしかない。

もちろんメインエンジンの推進力をサブエンジンに回す分、サブエンジンの推進能力は上昇するけど……。

メインエンジンと同じだけのエネルギーを送り込んだら、間違いなくオーバーヒートして使い物にならなくなる。


璃奈「…………」
 「ウニャァ〜…」


ニャスパーが鳴きながら心配そうに、私に身を摺り寄せてくる。


愛「りなりー!! メインエンジンへのエネルギー供給、完全に遮断して、サブエンジン側に切り替えた」

璃奈「ありがとう、愛さん」

愛「……でも、どうする? サブエンジンだけだと、スラスターを推進補助に使ったとしても、今の重力圏から逃げ切れるかどうか……」


愛さんも同じことに気付いている。

……そう、あまりにも間が悪すぎる。

いや……これは……──悪すぎる間で起こるようになっていたとも言える。
727 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:46:04.31 ID:5MWtUFJH0

璃奈「……私に考えがある」

愛「マジ……!?」

璃奈「一旦倉庫に行ってくる。愛さんはサブエンジンを稼働してて、もちろんオーバーヒートしないギリギリの範囲で」

愛「わかった!」

璃奈「それじゃ、行ってくる」


私が駆け出そうとすると──


 「ウニャァ…」


ニャスパーが私の足にしがみついてきて、


璃奈「……ニャスパー、ここで待ってて」
 「ウニャァ…」


でも、ニャスパーは離れようとしない。

……ポケモンは、人よりもずっとずっと……勘が鋭い。

──私はニャスパーを抱き上げ、


璃奈「愛さん。ニャスパー、預かってて」


ニャスパーを愛さんに預ける。


愛「わかった。ニャスパー、りなりーは今忙しいから、アタシと一緒にいよう」
 「ウニャァ〜…」


嫌がるニャスパーを愛さんが抱きしめる。


璃奈「愛さん、ニャスパーのこと……お願いね」

愛「ん、任せろ♪」

 「ベベノ…」「ベベノ…」
璃奈「ベベノムたちも……ここで待っててね。それじゃ、今度こそ行ってくる!」

愛「頼んだよ、りなりー!!」


愛さんは私を信用して──送り出してくれた。




璃奈「──…………ごめんね。…………愛さん」





    📶    📶    📶





──シップの後部にある倉庫に入り、持ち込んだ端末で倉庫内のコンソールにアクセスする。


璃奈「……倉庫をロック。装甲循環エネルギーを一時的に倉庫外壁に集中」
728 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:47:40.63 ID:5MWtUFJH0

私は……あることに気付いていた。

突然起こった……メインエンジンの破損。

あれは……どう見ても──人為的な破壊のされ方だった。

つまり……これは……。


璃奈「……私が……ここに来るって言ったからだね……」


私はよくわかっていなかったのかもしれない。

世界というのは……思った以上に、大きな力で、大きな意思で……動いていた。

私たちが何かを言ったところで……変えることなんて……出来なかったのかもしれない。

──私は紙を取り出し、手書きで計算を始める。


璃奈「今の相対速度と、サブエンジン、スラスターによる推進力から考えると……必要な加速度は──」


微妙な軌道計算をしている暇はない。とにかく最低限の推進力の確保が必要。


璃奈「……出来た」


計算は出来た。私は端末に目を向ける。

倉庫の外壁に集中させていたエネルギーは十分溜まった。


璃奈「…………」


私は端末から──シップにある指令を送った。

直後──


愛『り、りなりー!!』


愛さんから通信が入る。


愛『なんか、シップ全体が急に一切の命令を受け付けなくなった……!? ど、どうしよう……!!』
 『ウニャァ〜…』

璃奈「うん。私が倉庫からクラッキングして、全操作権を奪った」

愛『え……』

璃奈「装甲出力をシップ後部に集中する」


本来デブリなどから防ぐためのエネルギーを後部に集中させる。これでシップは背部からの衝撃に対して強くなる。


愛『な、なにしてるの……!? りなりー!?』

璃奈「今から、後部倉庫をパージして──爆発させる」

愛『な……っ!?』


今しなくちゃいけないことは、推進力の確保と、機体重量を落とすことの二つだ

後部倉庫を切り離し……爆発の勢いで装甲を強化したシップを押し出すことによって、この二つを同時にクリアする。
729 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:48:26.02 ID:5MWtUFJH0

愛『待って……待ってよ……今、りなりーどこにいるの……?』

璃奈「…………」

愛『まさか……後部倉庫じゃ……ないよね……?』

璃奈「……正しい軌道でシップを押し返すには、手動で計算して、スラスターで誤差を微調整してから爆破させないといけない」

愛『……何……言ってんの……?』

璃奈「……二人とも助かる可能性は……ゼロ。でも、これなら……愛さんは助けられる」

愛『……っ……!!』


愛さんが席を立ったのが音声越しでもわかった。

恐らく、私のいる後部倉庫まで来るつもりだと思う。


璃奈「無理だよ。ブリッジから出るための隔壁を全て閉鎖したから、そこからは出られない」

愛『なんで……!! なんでこんなことするの!! りなりー!!』
 『ウニャァァ〜…』

璃奈「……これはきっと……私のせいだから……」

愛『意味わかんないよ……!! いいから、ここ開けて!! 今すぐそこから戻ってきて!! りなりーっ!!』


──ガンガンッと……無線越しでも、愛さんが隔壁を叩いているのがわかる。


璃奈「大丈夫、隔壁は時間で開くようになってる。通路に最低限の食料と水を出しておいた。……少しでも重量を減らすために、本当に最低限だけど」

愛『そんなこと聞いてるんじゃないっ!! りなりーっ!! 今すぐ戻ってきて!!』

璃奈「…………愛さん」

愛『何!?』

璃奈「……今まで、ありがとう。愛さんに会えて……私……幸せだった。ニャスパーも良い子にするんだよ」


私は端末から──外部倉庫のパージ命令を送った。

ガコンッと揺れながら、外部倉庫がシップから切り離される。


愛『ダメだッ!! りなりーっ!!』
 『ウニャァ〜…』


パージと共に、倉庫の位置をスラスターで微調整し始める。

その際──目の前に紫色のポケモンが現れた。


 「ベベノ!!」
璃奈「……! ベベノム……付いてきちゃったの……?」


紫色のベベノムだけ……私に付いてきてしまっていたらしい。

白光のベベノムは……姿が見えないから、まだシップ内にいる……はず。


 「ベベ」
璃奈「もう……切り離しちゃったよ……」

 「ベノ♪」
璃奈「……ウルトラビーストだから……もしかしたら、ウルトラスペース内に放り出されても……生き残れるかな……」

 「ベベノム♪」
璃奈「……うん」


もうどっちにしろ……後戻りは出来ない。


愛『り────りー──……──な、りー──』
730 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:49:12.29 ID:5MWtUFJH0

切り離されてもうほとんど聞こえない通信に向かって、


璃奈「……愛さん。……もし……もしさ……生まれ変われるなら……」


最期の願いを、


璃奈「私…………次は……世界中の……うぅん、宇宙中のみんなと……繋がりたいな……っ」


伝えて。

──倉庫を……爆発させた。





    📶    📶    📶





──ああ……。

……誰かと繋がるのって……難しいな……。

みんな同じ世界で生きているのに……みんな違う想いを抱えていて……みんな違う正義を持っていて……。

……そんなみんなと……どうすれば……繋がれるかな……。……どうすれば……繋がれたのかな……。

わからない。

……そういえば私……どうなったんだろう……。

……あれから……どれくらい……経ったんだろう……。

……ここ…………どこ……なんだろう…………。

…………よく……わからないや……。

……………………。

…………………………愛さん、無事かな……。

……………………愛さん。

…………会いたいよ。


 『──…─………………────………』


……?

何……?


 『────……──…──…………──』


……何かの……信号…………?

……誰か……いるの……?

………………私…………ここに……いるよ……。

…………もし……私に……まだチャンスがあるなら……。

……繋がりたい……。


私は──自分の意志の欠片を……そこに向かって、飛ばした。


──
────
──────
────────

731 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:49:50.72 ID:5MWtUFJH0

    📶    📶    📶





リナ『その信号が、やぶれた世界に現れた果南さんのポケモン図鑑の信号だった。あとはみんなの知ってるとおりだよ』 || ╹ ◡ ╹ ||


──長い長い物語を……話し終える。


侑「…………璃奈ちゃんにとって……愛ちゃんは……すごくすごく……大切な人だったんだね。……そして、それは今も……」

リナ『うん』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「話してくれて、ありがとう……」

リナ『うぅん、私も久しぶりにちゃんと思い出せて……懐かしかった』 || ╹ ◡ ╹ ||


あのとき、仲間たちと共に戦った日々を思い出せて……。


リナ『なんか……思い出したら、羨ましくなっちゃったけど』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「羨ましい……?」

リナ『仲間たちと……手を取り合って前に進む……侑さんたちが』 || ╹ ◡ ╹ ||


私が……あのとき失ってしまったものを、侑さんたちが持っていることが……すごく、すごく羨ましかった。

もう……私には……戻ってこないものを持っている、侑さんたちが──


かすみ「何言ってんの!!」

しずく「そうですよ、リナさん」

リナ『え……?』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「リナ子はとっくの昔に──かすみんたちの仲間じゃん!!」

リナ『……!』 || ╹ _ ╹ ||

しずく「むしろ……今まで仲間と思ってもらえていなかったんだとしたら……ショックです」

リナ『あ、あの、そういうわけじゃ……!?』 || ? ᆷ ! ||


私は思わずあたふたしてしまう。


歩夢「リナちゃんはずっと前から、私たちの仲間だし……大切なお友達だよ」

せつ菜「今もこうして、共に同じ目的に向かって進んでいるんです。それを仲間と言わず、なんと言うんですか!! わ、私が言うと……ちょっと説得力がないかもしれませんけど……」

歩夢「ふふ♪ そんなことないよ、せつ菜ちゃん♪」

リナ『歩夢さん……せつ菜さん……』 || ╹ _ ╹ ||


そして、侑さんが私の目の前に立って、


侑「ねぇ、リナちゃん……私がここまで旅をしてこられたのは……歩夢が居て、イーブイが居て──リナちゃんが居てくれたからだよ」
 「ブイ♪」


そう言った。そう、言ってくれた。


リナ『侑……さん……』 || 𝅝• _ • ||

侑「私の最高の相棒だよ。リナちゃんは」


そう言って、侑さんが私のボディに触れた。

──そっか……そうだったんだ、
732 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:51:23.01 ID:5MWtUFJH0

かすみ「リナ子!」

しずく「リナさん♪」


──私は……私には……。


歩夢「リナちゃん♪」

せつ菜「リナさんっ!」


──とっくの昔に……。


侑「リナちゃん!」
 「ブイ♪」


──こんなに素敵な仲間たちが……また、出来ていたんだ……。

──『これから先……りなりーを心の底から大事に、大切に思ってくれる仲間がたくさん出来るよ……! いろんな人と繋がっていけるよ……アタシが保証する……!』──


リナ『やっぱり……愛さんが保証してくれただけ……あった』 ||   _   ||


なんだか──胸が熱かった。

私にはもう、身体はないのに。

機械の体なのに──胸が熱くて、嬉しくて泣いてしまいそうだった。


侑「──私たちみんなで……守ろう……!」

リナ『……うん! ツナガル──未来を……!』 || ╹ 𝅎 ╹ ||


私は胸の熱さに突き動かされるように──未来を守ることを決意した。侑さんたちと──仲間たちと一緒に。



733 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:52:03.67 ID:5MWtUFJH0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【暁の階】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.●⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口
734 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/08(日) 13:52:41.35 ID:5MWtUFJH0

 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.77 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.75 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.76 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.73 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.73 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.71 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
      コスモウム Lv.75 特性:がんじょう 性格:ゆうかん 個性:からだがじょうぶ
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:258匹 捕まえた数:11匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.65 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.65 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.64 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.63 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.62 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.71 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      コスモウム✨ Lv.75 特性:がんじょう 性格:なまいき 個性:ひるねをよくする
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:227匹 捕まえた数:20匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.78 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.73 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.72 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.71 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.72 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.72 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:253匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.66 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.65 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.65 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.65 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.65 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.65 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:225匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ダクマ♂ Lv.15 特性:せいしんりょく 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.86 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.81 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.84 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.79 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.82 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:50匹 捕まえた数:9匹


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



735 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:21:32.10 ID:jK0Y5xHa0

 ■Intermission👏



愛「…………」


ウルトラスペースの中を、アーゴヨンがアタシの身体を掴んだまま、3匹の伝説のポケモンたちと一緒に突き進んでいく。

ただ──ここウルトラスペースの景色は……何度見ても、あの日のことを思い出す。

りなりーを失った……あの日のことを──



────────
──────
────
──


愛「りなりーっ!!!! りなりーっ!!!!!」


ただ、通信先に向かって、りなりーの名前を叫ぶ。


璃奈『────あ……さん』
 「ニャァァ〜…」


ノイズだらけの音声が聞こえてくる。


愛「りなりー……っ!!」
 「ニャァ〜…」

璃奈『……もし……──……生まれ──われるなら……』

愛「だ、めだよ……りな、りー……」
 「ニャァァ〜…」

璃奈『──……次──世界中……うぅん、宇宙中のみん──と……繋がりたいな……っ』


その言葉の直後──シップを強烈な揺れが襲い、アタシとニャスパーは壁に叩きつけられる。


愛「ぐ…………!」
 「ウニャァァァ〜…!!」


──しばらく揺れが続いた。立ち上がることもままならず、ニャスパーを抱きしめる。


愛「…………っ……」
 「ウニャァ…」


しばらく揺れに耐え……やっと、揺れが収まるの同時に──シュンと音を立てながら、ブリッジから通路への隔壁が開いた。


愛「………………りなりー……」
 「ニャァ…」


アタシはよろよろと立ち上がり──後部倉庫へと向かって駆け出す。

きっと……これは、何かの悪い冗談なんだ……。

そんなこと……そんなことあるはずない。……あっていいはずがない。

後部倉庫への道の途中──


 「ベベノ…」
736 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:22:37.88 ID:jK0Y5xHa0

白光のベベノムが床に転がって目を回していた。さっきの揺れで壁に叩きつけられて、気絶してしまったのかもしれない。

アタシはベベノムを抱き上げて……再び駆け出す。

後部倉庫の前にたどり着くと──……部屋の前には食料と水の入ったコンテナが置かれていた。

アタシはそれを避けて──


愛「りなりー……」


倉庫のドアを叩く。


愛「ねぇ、りなりー……」


叩く。


愛「りなりー……開けてよ……りなりー……っ……」
 「ニャァ…」


何度戸を叩いて、名前を呼んでも──りなりーは返事をしてくれなかった。





    👏    👏    👏





その後……アタシは抜け殻のようになったまま、自分たちの世界へ戻るシップの中で過ごしていた。

自動操縦で戻っていくシップの中で……死なない程度に食料と水を摂取していた。

……あと、もう1匹のベベノムが居ないことにも途中で気付いて探したけど……結局、見つけることは出来なかった。

何度か後部倉庫の扉を叩いて、りなりーの名前を呼んだりもしたけど──返事が戻ってくることはなかった。

ただ、現実感がなくて……ぼんやりと過ごしていた。

気付いたら──シップはアタシたちの世界へと戻ってきていた。

ハッチが開いたので、覚束ない足取りでシップの外に出ると──


果林「──愛……! よかった……!」


カリンとカナちゃんが駆け寄って来た。

フラフラな身体を、カリンに支えられる。

──きっとそのとき……よほど酷い顔をしていたんだと思う。


彼方「あ、愛ちゃん……?」


カナちゃんがアタシを見て、不安そうな声をあげた。


果林「……愛……? ……璃奈ちゃんは……?」


アタシは……ちらりと、シップを見た。

シップは──後部倉庫がなくなっていた……。


愛「──………………ちゃった……」


絞り出すような声で、


愛「……りなりー…………いなく……なっちゃった…………」
737 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:23:30.03 ID:jK0Y5xHa0

カリンたちに、そう伝えた。





    👏    👏    👏





とりあえず、帰還後すぐに医務室に運び込まれ、点滴を打たれる。

点滴を受けている最中、天井を見ながら、アタシはぼんやりと考えていた。


愛「……りなりー…………いなく……なっちゃったんだ…………」


なくなった後部倉庫を見て……嫌でもその事実と向き合わざるを得なかった。


愛「……りなりー……っ……」


りなりー……どうして……あんなことしたの……。

アタシ一人生き残ったって……りなりーがいなくちゃ……。


愛「………………」


改めて──どうして、りなりーがあんなことをしたのかが、疑問に思えてならなかった。

メインエンジンの損傷を確認しに行く、つい数刻前まで……りなりーは未来のことを話していたのに……。


愛「…………なんか…………おかしい…………」


りなりーがいなくなった事実を直視せざるを得なくなったからなのか──りなりーの行動に突然一貫性がなくなったような気がしてならない。

それも……メインエンジンを確認してから、急に……。

そういえば……りなりー……おかしなことも言っていた気がする。

──『……これはきっと……私のせいだから……』──


愛「……私の……せい……?」


なにが……私のせいなんだ……? りなりーは……メインエンジンを確認したときに……何かに気付いた……?


愛「……まさか」


ある可能性が頭を過ぎった。

アタシはベッドから跳ね起き、駆け出そうとする。

もちろん、点滴中だったので管に引っ張られガシャリと音を立てながら点滴台が付いて来ようとする。


愛「……邪魔……!」


無理やり点滴の針を引っこ抜く。

すると、医務室にいた看護師たちが騒ぎ出す。


看護師「み、ミヤシタ博士……!?」
738 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:24:19.13 ID:jK0Y5xHa0

でも、今は構っている場合じゃない。確認しないと……今すぐ……。

アタシはウルトラスペースシップの離発着ドックへと走り出した。





    👏    👏    👏





離発着ドックに着くと、整備士たちがたくさん居て、


整備士「──み、ミヤシタ博士……!? お身体は……」


突然現れたアタシに驚いていたけど……。


愛「ごめん、確認したいことがあるから、通して」


押しのけるようにしてシップへと近付く。

そしてシップの裏側──メインエンジンを確認して、目を見開いた。

アタシは勝手に、デブリがぶつかった等のアクシデントによる破損だと思い込んでいたけど──


愛「……完全に……内側から……壊されてるじゃん……」


メインエンジンの壊れ方は……外から何かがぶつかったようなものではなく──ブースターそのものを内側から爆破されたような壊れ方をしていた。

つまり、これは──


愛「……まさか……爆弾……?」


方法は至って原始的だった。それも、エネルギー噴射に反応せず、ある程度ウルトラスペースを航行した先で起動する、時限式の物。

ウルトラスペースシップの航行エネルギーは熱噴射ではなく、あくまでコスモッグから取り出したエネルギーの噴射だから、C4爆弾のような外力で爆発しないものを使えば十分可能だ。

手間の掛かるものではあるが……用意さえしてしまえば、取り付けるだけで良いから時間は掛からない。

でも、そんなものいつ付けた? 発進直前の点検では、そんな不審なもの確認出来なかった。


愛「……あ」


──『……テンノウジ博士、ミヤシタ博士。聞こえるかな。……作戦の無事を祈って、一言言わせてもらおうと思ってな』──


愛「あの……と、き……」


発進前点検を終えたあと、どうしてあの政府役人から激励の言葉なんてあったのかが……やっと理解出来た。


愛「なに……が……作戦の無事を祈って……だって……?」


思わず握り込んだ拳が、怒りで震えていた。

これは──仕組まれていた。

最初から、アタシとりなりーを事故で済ませて消すために、仕組まれていたんだ。

通信に気を取られている隙に……役人の息が掛かった整備士が……。


愛「……誰だ……。……誰が、付けた……答えろ……」
 「──リシャン…」


アタシはリーシャンをボールから出しながら、整備士たちを睨みつける。
739 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:25:46.66 ID:jK0Y5xHa0

整備士「み、ミヤシタ博士……?」

愛「……答えろ」

整備士「ヒッ……」


殺気を込めた視線に驚いた整備士たちが、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

──わかってる。どうせ、犯人が問われたところで自分から名乗り出るはずがない。


愛「……こんな、やつらのせい、で……っ……りなりーが……りなりー……が……っ……!!!」


腸が煮えくり返るという感覚を、生まれて初めて味わっている気がした。


愛「……りなりーが何したって言うんだ……っ……!!! 世界を……みんなを守ろうとしてただけじゃんか……っ……!!!」


──あんなに臆病だったりなりーが、勇気を振り絞って、見ず知らずの誰かの未来を守るために、戦っていたのに。

こんな形で振り払われることがあっていいのか? いいわけあるか……!! あってたまるか……!!


愛「……りなりーを……っ……返してよっ!!!!」
 「リーーーシャーーーーッ!!!!!!!!」


リーシャンがアタシの怒りに呼応するように──周辺一帯を“ハイパーボイス”で吹き飛ばす。


愛「……ふざけんな……ふざけんなふざけんなふざけんなぁぁぁぁっ!!!!!!」
 「リシャァァァァァァンッ!!!!!!!」


手当たり次第に、攻撃をまき散らし、ドックを破壊し、逃げ惑う整備士たちを吹っ飛ばす。


愛「──あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
 「リシャーーーーンッ!!!!!!」


叫びながら、目に付くもの全てを吹き飛ばす。

そうでもしないと、気がおかしくなりそうだった。いや、そうしていても、おかしくなりそうだった。

自分が今まで感じたことのないような、怒りと憎しみから生まれる破壊衝動。

そんな暴走をするアタシのことを聞きつけたのか、


彼方「あ、愛ちゃん……!?」

果林「愛っ!? 何やってるの!?」


カリンとカナちゃんがドックに飛び込んできた。


愛「──りなりーを……っ!!! りなりーを返せぇぇぇぇぇっ!!!!!」
 「リシャァァァァンッ!!!!!」

果林「──彼方!! ドックを守って!! 消火も!!」

彼方「わ、わかった!! バイウールー! パールル!」
 「──メェ〜〜〜〜」「──パルル」

果林「キュウコン、“かなしばり”!!」
 「──コーーンッ!!!」

 「リシャンッ…!!?」


カリンたちが暴れまわる、アタシたちを止めに入ってくる。


果林「愛っ!! やめなさいっ!!」


キュウコンがリーシャンを動けなくし、カリンがアタシを後ろから羽交い絞めにする。
740 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:26:44.73 ID:jK0Y5xHa0

愛「りなりーをぉっ、かえせぇぇぇぇぇっっ!!!!!! かえせぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

果林「っ……!」


ただ、アタシには──ぼんやりと遠くにカリンたちの声が聞こえる気がする……そんな認識だった。


果林「……フェローチェ……!」
 「──フェロッ」

果林「“みねうち”……!」
 「フェロ」

愛「がっ……!?」


急に腹部に衝撃を受け──


愛「……りな……りー……」


アタシの意識は──ゆっくりと闇に沈んでいったのだった……。





    👏    👏    👏





──その後、目を覚ましたときには、りなりーと一緒に過ごしてきた……自室に居た。

部屋の鍵を外から掛けられ……見張りも付けられ……ポケモンも全部没収されている状態だった。

所謂、軟禁状態。

最初はあの事故の原因が、政府の陰謀だったとカリンたちに伝えることを考えた。

だけど……完全に手を打たれていて、カリンたちと話したいと何度言っても、二人がアタシのもとに訪れることはなかった。

たぶん……アタシたちが最後に行っていた調査内容は……握りつぶされ、他世界への侵略が計略されている頃合いだろうか。


愛「………………」


何もする気が起きなかった。

食事は定期的に運ばれてくるけど……正直、食べる気なんてこれっぽっちも起きなかった。

……このまま、餓死でもしてやろうかな。そんな風にさえ思っていた。

政府は、誰もが助かる遠回りよりも、誰かから奪って自分たちが生き残る近道を選んだ。


愛「…………馬鹿馬鹿しい…………」


世界は……なんて、馬鹿馬鹿しいんだ……。


愛「……りなりー……」


りなりーの名前を呼ぶ。……もちろん、りなりーの返事は……ない……。

りなりーは恐らく……ウルトラスペースの高エネルギーの中で……情報レベルでバラバラになった。

通常領域ならまだしも……あそこはもう中心特異点の重力圏内だ。

エネルギー密度の濃い空間では……生身の人間の身体なんて耐えられるはずがない。


愛「…………そういえば…………りなりー…………それについての論文……書いてたっけ…………」
741 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:28:12.28 ID:jK0Y5xHa0

生物が高エネルギー次元でどうなるかの論文だ。

のそのそと起き上がって──りなりーの机にあったファイルの中から、論文を探す。


愛「……あった……」


そこにはご丁寧に、計算式とともに、生物が生命維持出来ず、情報レベルでバラバラになることが示されていた。


愛「…………」


アタシはなんとなく、それを開いたまま──ペンを持って、紙に計算式を書き始める。

もしかしたら……この式のどこかが間違っていて……りなりーは実はまだ生きているかもしれないなんて……そんな希望的観測にすがりながら。

──1時間経った。間違いは見つからない。

──2時間、3時間、4時間……。間違いはやっぱり見つからない。

──半日が経った。1日が経った。2日経って、3日経って……。

アタシは……ペンを落とした。


愛「…………間違ってるわけ……ないじゃん。……これ……りなりーが作った……理論なんだから……っ、間違ってるわけ……ないじゃん……っ」


りなりーのすごさは、アタシが一番知っている。

アタシも天才だなんて持て囃されていたけど……りなりーは別格だ。天才の中でも、一際飛びぬけた天才……。

そんな、りなりーが作り上げた理論に……間違いなんてあるはずなかった。

仮に間違いがあったとして……アタシにそれが見つけられるわけなかった。

──ポロポロと涙が零れて、大量の式を書き連ねたメモ紙が滲んでいく。

りなりーが作り上げた理論が……りなりーの死を……証明していた。


愛「……りなりー……っ、……りなりーっ、」


アタシは……どうするべきだったんだろうか。

わからない……。……わからない。





    👏    👏    👏





ひとしきり泣いた。

ただ、何日も何も食べていない身体では、泣く体力もあまり残っていなかったらしく、気付けばぐったりしていた。


愛「………………このまま…………終われるかな…………」


空腹と疲労で頭がぼーっとしていた。目を瞑る。

このまま……りなりーの居る場所に……いけるかな……。


愛「…………りな、りー…………」


──『……愛さん……』──


りなりーの声が、聞こえた。

幻聴かな……。でも……いいや……りなりーの声が聞こえるなら……。
742 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:32:56.59 ID:jK0Y5xHa0

──『……愛さん。……もし……生まれ変われるなら……』──

──『……次は……世界中の……うぅん、宇宙中のみんなと……繋がりたいな……っ』──


愛「……………………」


ゆっくりと目を見開く。


愛「……………………」


アタシは起き上がって、先ほど自分の涙で濡らしたメモ紙と、りなりーの論文を見た。


愛「……………………りなりーは…………死んだんじゃない…………バラバラになったんだ…………」


なら──


愛「…………りなりー以外も…………宇宙全部が…………バラバラになれば…………りなりーは…………みんなと、繋がれる…………。……あはは。……あはは、あはははははは、あははははははははっ!!!!!」


アタシの笑い声が──部屋中に響く。


愛「そうだ……!!!!! まだ、りなりーの夢は死んでない……!!!!! アタシが……アタシが叶える……叶えるんだ……!!!!!! りなりーの夢を……っ……!!!!!」


このときから──狂気の歯車が、アタシの中で、動き出し始めてしまった。





    👏    👏    👏





数日後……カリンが、逃げ出したカナちゃんとその妹の遥ちゃんを乗せたウルトラスペースシップを……撃墜したという噂が流れてきた。

あまりに衝撃的な内容だったのか、見張りが交替の際に話しているんだから、嫌でもわかってしまう。

噂が聞こえ始めて、数日もしないうちに──


果林「──……愛、入るわよ」


アタシの部屋の中に、カリンが強引に押し入ってきた。


愛「……や、カリン。来ると思ってたよ」

果林「もっと落ち込んでると思ってたわ……」

愛「アタシもカリンはもっと落ち込んでると思ってた。……聞いたよ、カナちゃんの乗ったシップ……カリンが撃墜したんだってね」

果林「…………」


カリンはアタシを一瞥すると──手に持っていたチョーカーをアタシの首に着け始める。

そのとき見たカリンの目は──酷く濁っていた。

ああ、アタシと同じ目だ。

自分の目的のためなら──全てを捨てる覚悟をした人間の……目。


果林「……愛……私に協力しなさい……」

愛「…………ああ、これが首輪ってわけか。逆らったときは電撃? それとも、首でも飛ぶ?」

果林「電撃よ……。死なれたら困るわ……貴方には、やってもらわないといけないことが、たくさんあるからね……」

愛「アタシがこんなおもちゃで言うこと聞くと思ってんの?」
743 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:34:11.73 ID:jK0Y5xHa0

挑発するように言うと、カリンは躊躇なく、手に持ったリモコンのスイッチを押し込む。

直後──


愛「っ゛、ぁ゛!!?」


首に着けられたチョーカーから電流が走り、アタシは痺れて床に転がる。

そんなアタシを見下ろすように、


果林「……もう一度言うわ、愛。私に協力しなさい……」


カリンがそう──命令してきた。


愛「……っ゛……。……まあまあ、カリン……そう、焦んないでよ……」

果林「…………」

愛「……言うこと聞くつもりはないんだけどさ……協力はしてやってもいいよ……」

果林「……は?」


カリンはアタシの言葉に怪訝な顔をする。


愛「……その代わり……カリンもアタシに協力してよ……」

果林「……この状況で交渉しようって言うの?」

愛「どっちにしろ、アタシの頭が必要なんでしょ? いーよ、アタシの頭脳でよければ貸してあげるよ。ただ──アタシにもやりたいことが出来たから、それはやらせてもらう」

果林「…………」

愛「どーせこのおもちゃに発信機も付いてんでしょ? カリンの監視範囲内でアタシはアタシのやりたいことをやる。アタシはカリンの求める知恵と技術を提供する。それでお互いWin-Winっしょ?」

果林「……わかったわ」


カリンはアタシの言葉に頷いた。


愛「交渉成立だね〜♪ これからはカリンの駒として、せっせと働いてあげるよ」

果林「……信用してるわ、愛」

愛「へいへい、任せろ〜」


信用……ね。

アタシも信用してるよ、カリン……。

こうして──新生“DiverDiva”の計画が、始まったのだった。





    👏    👏    👏





……アタシはりなりーを失った。カリンはカナちゃんを……。

完全に政府の方針と一致した動きを見せていたカリンの発言権は強く、アタシもカリンに首輪を嵌められていたこともあって、すぐに軟禁は解除された。

──まあ、その日のうちに構造を完全に理解して、いつでも外せるようにはしてたんだけどね。

そうしたら、ポケモンたちもみんな戻ってきた。……ただ、ニャスパーはどこにもいなかった。

りなりーがいなくなったことを知って……この場から去ってしまったのかもしれない。
744 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:36:19.29 ID:jK0Y5xHa0

愛「……ベベノム」
 「ベベノ」

愛「……みんな……いなくなっちゃったね……」
 「ベノ…」

愛「……でも、アタシは……全部取り戻すよ」
 「ベノ…!!」

愛「……アタシに力を貸してくれる?」
 「ベベノムッ♪」

愛「ありがとう……愛してるよ、ベベノム」
 「ベベノ♪」


──その後、アタシたちは政府が滅ぼすと決めた世界へと移動し……そこで計画を始めた。

アタシはアタシで──どうやって、宇宙全てを情報レベルに分解するかを考え続けながら……ありとあらゆる情報機関にクラッキングし調べた結果──ディアルガ、パルキア、ギラティナというポケモンの伝承にたどり着いた。

時間の神、空間の神、反物質の神が揃えば……恐らく、特異点を強引に発散、インフレーションさせることが可能だろう。

なんせ3匹の力を合わせれば、時空を歪め、重力すら反転出来るのだ。特異点からエネルギーが発散されれば……全宇宙にエネルギーが押し寄せ……飲み込まれることになるだろう。

そして、その理論を思いつくと同時に……グレイブ団の首領・聖良が、その3匹を探し求めていたことにたどり着く。

彼女はあくまでディアンシーに会うのが目的だったため、アタシは目的が達成された後はその3匹を貰うというのを交換条件に、技術協力と資金提供を行った。

カリンには、彼女が世界を混乱させている間に計画を進行させるとか適当なことを吹いたら、割とあっさり信じてくれた。

まさか……彼女の計画が、勇敢なポケモントレーナーたちの手によって、あっという間に収束してしまったのには驚いたけどね……。

──こんな、全てを利用してやると決めたアタシにも……人の心が残っていたのか、本格的に自分たちが動き出す際──彼女の病室に忍び込んでまで顔を見に行ったのは、自分でも意外だった。

もちろん、表向きの理由としては、ディアルガ、パルキア、ギラティナの有益な情報を持っていないかを確認しに行ったつもりだったけど……冷静に考えれば病室にそんなものが転がっているわけもないので、きっとあれは……アタシが最後に見せた人の顔の感情だったんだと思う。同情という名のね……。


愛「……待ってて、りなりー……すぐにりなりーのところに行くからね……」


──
────
──────
────────



愛「もうすぐ……もうすぐ、一つになれるよ……りなりー……待っててね……」
 「アーゴヨンッ!!!」


アタシは──特異点の中心へと、突き進む……。





    🎹    🎹    🎹





──だんだん東の空が白んできた。


しずく「もうすぐ……暁時ですね」

かすみ「な、なんか緊張してきた……」

せつ菜「私たちは……離れていた方がいいですかね」

彼方「そうだねー。儀式をするのはあくまでコスモウムたちと、その主人だからー」


彼方さんの言葉に、歩夢と顔を見合わせて頷き合う。
745 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:41:09.96 ID:jK0Y5xHa0

侑「……歩夢」
 「────」

歩夢「うん」
 「────」


二人で、遺跡の中でも一際高い場所にある祭壇を見る。


果林「……まさか、コスモッグたちを進化させるのが……“SUN”でも“MOON”でもないとはね……」

彼方「ホントにね〜」

リナ『侑さん、歩夢さん。コスモウムは日輪と月輪が交差する場所で、交差する時に、人の心に触れ、化身へと姿を変える……きっと、二人の心に反応して、太陽の化身か月の化身へと進化するはずだから』 || ╹ ◡ ╹ ||

エマ「頑張ってね! 二人とも!」

侑「はい、行ってきます」
 「────」

歩夢「行ってきます」
 「────」


私は歩夢と手を繋いで──祭壇を上り始めた。





    🎹    🎹    🎹





侑「……ねぇ、歩夢」

歩夢「なぁに?」

侑「私たち……なんか、すごい所まで来ちゃったね」

歩夢「……そうだね」


祭壇から見た景色は── 一面雲海に覆われている。……まるで、空の上にでもいるかのようだった。


侑「太陽の化身か月の化身だってさ」

歩夢「そうだね」

侑「どっちになると思う?」

歩夢「……リナちゃんが言ってたとおりなら……私たちの心に反応して、姿を変える……ってことだよね」

侑「そうなるね」


二人で手を繋いで、祭壇の頂上へ立つと──雲海の向こうから、日が昇り始める。

──暁時だ。

それと同時に──


 「────」
 「────」


2匹のコスモウムが激しく私たちの周囲を飛びまわり、輝き始める。

進化の時だ。


歩夢「侑ちゃん」

侑「ん」

歩夢「私たちの心の中にあるのが、太陽なのか、月なのか……それならもう、決まってるよ」

侑「決まってる……。……そうだね」
746 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:42:29.00 ID:jK0Y5xHa0

私は歩夢の言葉に頷いた。


侑「──歩夢は、私の太陽だから」

歩夢「──侑ちゃんは、私の太陽だから」

侑・歩夢「「私たちは……お互いがお互いの──太陽だから」」

 「────」「────」


暁の光に照らされて──朝と夜が入り混じるこの時、この場所で──2匹のコスモウムは──


 「──ガオーレッ!!!!」「──ラリオーナッ!!!!」


『光り輝く白銀の太陽』と『赤く燃える赫灼の太陽』へと姿を変えたのだった。





    🎹    🎹    🎹





 「──ガオーレ…」「──ラリオーナ…」

リナ『ソルガレオ にちりんポケモン 高さ:3.4m 重さ:230.0kg
   別世界に 棲むと いわれる。 全身から 無尽蔵の 光エネルギーを
   放出し 闇夜も 真昼のように 照らす。 遥か 大昔の 文献に
   太陽を 喰らいし 獣と いう 名前で 記録が 残っている。』

歩夢「太陽を喰らいし獣……」

侑「ソルガレオ……」


私たちはコスモウムが進化したポケモン──ソルガレオを見上げる。


果林「まさか……どっちも太陽の化身になるなんて……」

彼方「なんか……勝手にどっちかが太陽でどっちかが月だって思い込んじゃってたね……」


結果はどちらも太陽の化身──白銀の太陽と真っ赤な太陽だった。


 「──ガオーレ…」「──ラリオーナ…」


ソルガレオたちが、身を屈める。


侑「うん、ソルガレオ……!」

歩夢「行こう……愛ちゃんを止めに……!」


私たちは、ソルガレオの背に乗る。
747 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:43:33.55 ID:jK0Y5xHa0

かすみ「かすみんも乗りたいです〜!!」

せつ菜「私も乗ってみたいです!!」

果林「ダメよ、突入するのはあの二人だけ」

彼方「ウルトラスペースは生身で行くのは危険な場所だからね〜……何人も相乗りするのは危ないから〜」

かすみ「え……じゃあ、かすみんたちなんでここまで付いてきたんですか!?」

せつ菜「まさか……お見送りのため……ではないですよね……?」

果林「私たちには私たちで、やることがあるのよ」

しずく「やること……ですか……?」

姫乃「これから、ソルガレオたちの力によって……大きなウルトラホールが開くことになります」

遥「そこからは恐らく……ウルトラビーストが飛び出してきます」

かすみ「……なるほど、そういうことですか」

しずく「侑先輩たちが帰って来るまで……私たちは、そのウルトラビーストを捌き続ける」

せつ菜「確かに……1匹たりとも通すわけにはいきませんからね」

果林「そういうことよ」

エマ「か、果林ちゃん……! わたしも手伝うね……!」

果林「ええ、お願いね。でも、無茶はしちゃダメよ? エマは私の傍から離れずに戦うこと……いいわね?」

エマ「うん♪」

姫乃「……距離が……近い……」

果林「姫乃も、頼りにしてるわ」

姫乃「……! は、はい!! お任せください!!」

しずく「……はぁ〜……」

かすみ「しず子……何、うっとりしてんの……」

彼方「遥ちゃんは、お姉ちゃんから離れちゃダメだよ〜?」

遥「うん! もし負傷しても、私が皆さんを治療します!」

彼方「よろしくね〜遥ちゃん〜♪」


そして、果林さんが私たちに向き直る。


果林「侑、歩夢。貴方たちの帰る場所は……私たちが死守する。だから、愛のこと……よろしくね」

侑「はい!」

歩夢「絶対に愛ちゃんを止めて……帰ってきます」


私たちは、果林さんの言葉に頷いた。


侑「イーブイ、振り落とされないようにね」
 「ィブイ♪」

歩夢「サスケも……今日はお昼寝しないでね?」
 「シャーボッ!!!」


自分たちのポケモンに声を掛け──最後に、


侑「リナちゃん!」

リナ『うん!』 || > ◡ < ||


私がリナちゃんの名前を呼ぶと、飛んできて私の腕に装着される。
748 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 00:44:26.32 ID:jK0Y5xHa0

侑「行こう……! 愛ちゃんの居る場所へ! リナちゃんの想いを……伝えに……!」

リナ『うん! 侑さん、歩夢さん、私全力でサポートするね!』 ||,,> ◡ <,,||

歩夢「うん、お願いね、リナちゃん♪」

侑「頼りにしてるよ!」
 「ブイ♪」


私たちを背に乗せた白銀と赫灼の太陽が、


 「──ガオーレッ!!!!」「──ラリオーナッ!!!!」


“おたけび”を上げると──目の前に大きなウルトラホールが口を開く。


侑「歩夢」

歩夢「侑ちゃん」

侑・歩夢「「行こう! 愛ちゃんを止めに……!!」」


私たちは、最後の戦いへと──2匹の太陽と共にウルトラスペースを、走り出した。


………………
…………
……
🎹

749 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:48:00.64 ID:jK0Y5xHa0

■Chapter073 『ツナガル未来の為に』 【SIDE Yu】





「ガオーレッ!!!!」「ラリオーナッ!!!!」


──2匹の太陽は、光の速さでウルトラスペース内を駆けて行く。

猛スピードで流れる景色の中、他の世界へ繋がっているであろうウルトラホールを傍目に見ながら、私たちは進んでいく。


歩夢「す、すごいスピード……」

リナ『ソルガレオが持ってる光のエネルギーを速度に変換してるみたい!』 ||,,> ◡ <,,||

侑「この速さなら……愛ちゃんに追い付ける……!!」
 「ブイッ!!」

リナ『ただ、ソルガレオから絶対に振り落とされないようにね。ソルガレオの周囲にはエネルギー場が発生してるから、侑さんたちに影響がないだけで……ウルトラスペースが生身で耐えられる環境じゃないのには変わりないから』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「了解! 歩夢、気を付けてね!」

歩夢「うん♪ 侑ちゃんも」


歩夢がニコリと笑って返してくる。

そんな私たちを見て、


リナ『二人とも……旅立ちの頃に比べると、すごくたくましくなったね』 || ╹ ◡ ╹ ||


リナちゃんが、そんなことを言う。


歩夢「え、そ、そうかな……?」

リナ『特に歩夢さん! 最初はバトルは怖いって言ってたけど……今はすっかり頼もしくなった』 || > ◡ < ||

歩夢「……きっと、そうなれたのは……侑ちゃんが隣にいてくれたからだよ」

侑「歩夢……」

歩夢「……これまでずっと侑ちゃんが守ってくれたから、助けてくれたから。でも、これからは私も侑ちゃんを支えられるように、もっともっと強くなって……今度は私が侑ちゃんを守るんだって決めたから。侑ちゃんを隣で守るためなら、もう戦うのも怖くない」


歩夢はそんな風に言う。だけど──


侑「私はずっと前から……歩夢に助けられてばっかりだよ」


最初は私が歩夢を守らなくちゃいけないなんて息巻いて……空回りしたこともあったけど──いつの間にか、歩夢と一緒に戦うようになっていて、私も歩夢に背中を預けるようになっていて……。


侑「私も……歩夢が隣に居てくれるから戦える。歩夢が居てくれるから、勇気が湧いてくる。立ち向かえるんだ」

歩夢「侑ちゃん……」

侑「私は一人で戦ってるんじゃない。歩夢が、リナちゃんが、イーブイが……みんながいるから戦えるんだ」
 「イブイ♪」

歩夢「うん……私も、侑ちゃんが、リナちゃんが……サスケやみんながいるから戦える」
 「シャボ」

リナ『侑さん……歩夢さん……。……うん!』 ||,,> ◡ <,,||

 「ガオーレッ!!!」「ラリオーーナッ!!!!」


──ここまで旅をしてきて……出会ったポケモンたち。出会った人たち。いろんな出会いがあったから……今、私はこうして戦えている。


侑「そして……これからも、いろんな人たちと、いろんなポケモンたちと……新しい出会いを、新しい冒険をしたいから……」

歩夢「うん。……そうだね……。これからも、きっとたくさん、楽しいこと、わくわくすること……たくさんあるはずだから……」

リナ『誰かと誰かが繋がっていく明日のために……!』 ||,,> ◡ <,,||
750 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:48:34.91 ID:jK0Y5xHa0

──私たちはそんな当たり前の未来を守るために……。


侑「世界を……救おう!」
 「ブイ♪」

歩夢「うん♪ 私たちで!」
 「シャボ」

リナ『リナちゃんボード「ファイト、オー!」』 ||,,> ◡ <,,||

 「ガオーレッ!!!」「ラリオーーナッ!!!!」


愛ちゃんのいるところまで──あと、少し……!





    👑    👑    👑





──侑先輩たちがウルトラスペースに入っていって……。


しずく「侑先輩、歩夢さん、リナさん……どうか、ご無事で……」

かすみ「大丈夫だよ、しず子。侑先輩たちなら……絶対、愛先輩を止めて帰ってきてくれるって!」

せつ菜「ですね! 今は私たちに出来ることをしましょう!」

しずく「かすみさん……せつ菜さん……。……はい、そうですね」

果林「……なんて言ってる間にも」

彼方「お出ましみたいだね〜」


 「──ドカグィィィィッ!!!!」


エマ「わ……!? す、すっごい大きなウルトラビーストさん……!?」

遥「アクジキング……!」

姫乃「よりにもよってですね……」


ウルトラビーストの中でも一際大きな強敵……! ですが──


かすみ「前は苦戦しましたけど……今のかすみんは、あのとき以上に強いですよ!!」

しずく「私も、ウルトラビーストについてはたくさん研究したんです……!」

せつ菜「今更、この程度の相手、造作もありません!!」

 「ドカグィィィィィッ!!!!!」


侑先輩、歩夢先輩、リナ子……!

ここはかすみんたちが食い止めます。だから、世界を……お願いします……!



751 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:49:19.49 ID:jK0Y5xHa0

    👏    👏    👏





──ここまで、長かった。

りなりーが居なくなってから……毎日が地獄のようだった。

世界の全てが灰色に見えた。朽ちているように見えた。……壊れているように見えた。

何度も何度も悔いた。自分の無力さを、非力さを嘆いた。

世界で一番大切な人すら守れない……自分を呪った。

それが、やっと……やっと、終わる。

だのに──


愛「……最後の最後まで……アタシを邪魔する人たちは……いなくならないんだね」


振り返ると──


 「──ガオーーレッ!!!!」「──ラリオーーナッ!!!!」


白銀と赫灼の太陽が、背後から迫ってきていた。





    🎹    🎹    🎹





侑「──愛ちゃんっ!!」


ウルトラスペースの中に──愛ちゃんと共に前を飛ぶアーゴヨンと、時空・空間・反物質の神たちを見付ける。


愛「……こんな場所まで、よく追ってこられたね……。……これから大事な用事が残ってる神たちを傷つけられたら堪ったもんじゃない……。一旦戻れ」
 「ディアガ──」「バァァル──」「ギシャラァ──」


愛ちゃんが神のポケモンたちをボールに戻しながら、私たちを睨みつけてくる。


歩夢「愛ちゃん……! こんなこと、もうやめて……!」

リナ『愛さん……!! こんなことしても、誰も喜ばない……!!』 || > _ <𝅝||

愛「それを決めるのは、お前じゃない……──りなりーだ……!!」
 「アーーーゴヨンッ!!!!」


愛ちゃんの言葉と共に──アーゴヨンのお尻の毒針が黄色く輝き始める。


愛「“ヘドロウェーブ”!!」
 「アーーーゴヨンッ!!!!」


その輝きは濃縮されたブライトカラーの一筋の毒液となって、私たちに向かって発射される。


歩夢「ウツロイド!! “ヘドロウェーブ”!!」
 「──ジェルルップ…」


歩夢がボールからウツロイドを繰り出し、同じ技で対抗するが──ウツロイドの出した紫色のヘドロの波動を橙色の輝くヘドロ液が貫いてくる。


 「──ジェルップッ…!!」
752 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:50:21.60 ID:jK0Y5xHa0

愛ちゃんの攻撃はウツロイドをいとも簡単に弾き飛ばし──


歩夢「……っ……!?」


背後に居た歩夢の眼前に迫る。


侑「歩夢っ!!」
 「ガォーーーレッ!!!!」


私は咄嗟に、ソルガレオと一緒に歩夢の前に飛び出す。

“メタルプロテクト”を身に纏ったソルガレオの鋼鉄の体なら、受け止められると踏んでの防御だったが──ソルガレオの側面に攻撃が当たった瞬間、ジュウウウウウッ!!! と音が立つ。


 「ガォーーーーレッ……!!!!」
侑「な……っ!?」

リナ『侑さん!? 防ぎきれてない!?』 || ? ᆷ ! ||


どくタイプの攻撃なのに、はがねタイプで防ぎきれない……!?


侑「く……ニャスパー!! フィオネ!!」
 「ウニャァーーーッ!!!」「フィォ〜〜」


私は咄嗟にニャスパーとフィオネを出し、


侑「ニャスパー!! “サイコキネシス”!! フルパワー!!」
 「ウニャァァァッ!!!!」


ニャスパーが真上から、一直線に突き刺さる、橙色のヘドロ液を真下に向かって捻じ曲げる。


 「ガォーーーレッ…!!!」


その隙にソルガレオはその場から退避し、


侑「フィオネ! “ハイドロポンプ”!!」
 「フィーーーオーーーッ!!!」


フィオネが激しい水流によって、ソルガレオの体に付着した毒液を洗い流す。

幸いそれで毒を洗い流すことはできたけど──ソルガレオの鋼鉄の装甲は、毒によって変形していた。


歩夢「侑ちゃん……!! ソルガレオ……!! 大丈夫……!?」

侑「こっちは大丈夫……! それよりウツロイドは!?」

歩夢「こっちもどうにか……」
 「──ジェルルップ…」


吹っ飛ばされたウツロイドも、ふよふよとウルトラスペースを漂いながら、歩夢の傍に戻ってきていた。


侑「よかった……。それにしても……ソルガレオの鋼鉄の体でも受けきれないなんて……」

リナ『キズナ現象によって強化された影響だと思う……』 || > _ <𝅝||


──直後、真上から、


愛「──そうだよ。ゆうゆと歩夢じゃ、今のアタシたちは……止められない」

侑「!?」

愛「“エアスラッシュ”!!」
 「アーーーーゴヨンッ!!!!!」
753 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:50:53.34 ID:jK0Y5xHa0

いつの間にか真上を取っていたアーゴヨンが巨大なオレンジ色に輝く風の刃を、私たちに向かって放ってくる。


歩夢「ソルガレオ!! “テレポート”!!」
 「ラリオーーーナッ!!!!」


咄嗟に歩夢がソルガレオごと私たちに突進し──直後に全員を巻き込んで“テレポート”する。

──視界がフッと切り替わり、次の瞬間には私たちの目の前を巨大な風の刃が真下に向かって通り過ぎて行った。


侑「あ、ありがとう、歩夢……」

歩夢「う、うぅん……でも……ソルガレオ2匹分だと、ほとんど移動できなかった……」
 「ラ、ラリォーーナッ…」

リナ『質量が大きいと“テレポート”の移動距離や精度は下がっちゃうから……でも、歩夢さんの判断がなかったら直撃してた……』 || > _ <𝅝||


それにウルトラスペースのような安定しない空間で使ったからか、歩夢のソルガレオには疲労が見える。回避には何度も使えないかもしれない……。


愛「へー……やるじゃん。アタシのリーシャンでも、ここじゃうまく“テレポート”出来ないのに……」
 「アーゴ…!!!」

侑「愛ちゃん……!! もうやめて……!!」

愛「……ここまで来て、やめてくださいって言われてやめると思ってんの? “エアカッター”!!」
 「アーーーゴッ!!!!」


またしても真上から風の刃が降ってくる。

だけど、今度はさっきのような大きな一刃ではなく──複数の小さな風の刃が降ってくる。


 「ウーニャァッ!!!!」


それに向かって、ニャスパーが飛び出し、耳を全開にする。


侑「イーブイ!! サポートするよ!! “どばどばオーラ”!!」
 「イッブイッ!!!!」


イーブイからオーラが発され──僅かに“エアカッター”のスピードが鈍ったところに、


 「ウニャァーーー!!!」


ニャスパーが全力“サイコキネシス”で“エアカッター”をどうにか逸らす。

それでも、全てを逸らしきることは出来ず、


 「ガオーレッ…!!!」「ラリオーナッ…!!!」

歩夢「きゃぁぁぁぁっ……!?」

侑「ぐ……っ……!」

リナ『侑さんっ!! 歩夢さんっ!!』 || > _ <𝅝||


体の大きなソルガレオに攻撃が被弾し──ギャ、ギャギャギャと、耳障りな音と共に、風の刃で鋼鉄の鎧の表面が抉られる。

攻撃を受け、その身を大きく揺するソルガレオたちに、私たちは必死にしがみ付く。


歩夢「ソルガレオ……!! “ワイドガード”……!!」
 「ラリオーーナッ!!!!」


そんな中、歩夢が咄嗟に防御技を指示すると、ソルガレオの真上に大きなエネルギーの壁が出現し、風の刃を弾き飛ばす。
754 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:51:48.05 ID:jK0Y5xHa0

歩夢「侑ちゃん、平気……!?」

侑「た、助かった……ありがとう……」

リナ『“エアカッター”なのに……すごい威力……』 || > _ <𝅝||


本来はそんなに強力な技じゃないはずなのに、キズナ現象によって強化されたアーゴヨンは、ソルガレオの鋼鉄の防御すら平気で貫いてくる。

そんな中、愛ちゃんは攻撃を防いだニャスパーを見下ろす。


愛「……そのニャスパー……ドッグランでアタシを助けたニャスパーだよね」

 「ニャ〜」

愛「……やっぱり……りなりーのニャスパーだったんだね……」

 「ニャ〜」

愛「ねぇ、ニャスパー……。……アタシは今から、りなりーのところに行くんだ……。……一緒に行こう……りなりーのところに……」


愛ちゃんはそう言うけど、


 「ニャァ〜」


ニャスパーはふるふると首を振る。


愛「……そっか……。……ニャスパーも……わかってくれないんだ……。……でも、大丈夫……みんな一つになるから……」

リナ『愛さん……もうやめて……! そんなことしても、何も戻らない……! 誰も望んでる結果にならない……!』 || > _ <𝅝||

愛「だから……それを決めるのは……りなりーだ……」

リナ『璃奈だって、こんなこと望んでない……!! 望んでるわけない!!』 || > _ <𝅝||

愛「この問答にこそ意味がない……君の言葉は……どこまで行っても、りなりーの言葉じゃないんだよ……」

リナ『愛さん……』 || 𝅝• _ • ||

愛「……こんなところまで追ってきて、説得しようなんて甘いこと考えてないでさ……。本当にアタシのやってることが間違ってるって思うなら……力尽くで止めてみなよ……」
 「アーーーゴ…!!!」

愛「アタシもアーゴヨンも……とっくに覚悟は決まってるんだ……!! “りゅうせいぐん”!!」
 「アーーゴヨンッ!!!!」


アーゴヨンの全身がカッと眩く光る。直後──ウルトラスペース内だと言うのに、大量の流星が私たちに向かって降り注いでくる。


侑「く……ソルガレオ!!」
 「ガオーーレッ!!!」


ソルガレオが“おたけび”をあげながら、自身の体に周囲のエネルギーを集束し始める。

それと同時に私はソルガレオから跳び下りて、


侑「ウォーグル!!」
 「──ウォーーーッ!!!」


ボールから出したウォーグルの脚に掴まる。


侑「“メテオドライブ”!!」
 「ガオーーーレッ!!!!!」


ソルガレオは、自身に集束したエネルギーと共に、隕石のように真っ向から突進し──“りゅうせいぐん”を割り砕きながら、突き進む。

確かにアーゴヨンのパワーはすごいけど……こっちだって、ウルトラビーストなんだ……!!


 「ガオーーーーレッ…!!!!!」


“りゅうせいぐん”を正面突破しているにも関わらず、ソルガレオは全く勢いを衰えさせることなく──愛ちゃんたちに突っ込んでいく。
755 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:52:21.95 ID:jK0Y5xHa0

愛「……! アーゴヨン!!」
 「アーーゴッ!!!」


愛ちゃんは、砕ける“りゅうせいぐん”の影から飛び出してくるソルガレオに気付き、すんでのところで“メテオドライブ”を回避する。

それと同時に、


歩夢「ウツロイド……! 侑ちゃんたちを守ってあげて……!」
 「──ジェルルップ…」


ウツロイドが歩夢の指示で、ウォーグルの背中に張り付く。

今は歩夢のソルガレオが近くにいるから大丈夫だけど……もし離れてしまったら、ウルトラスペースの環境に耐えられなくなってしまうからだ。

愛ちゃんが“メテオドライブ”を回避したことで、


 「ガオーレ…!!!」

 「ラリオーナ…!!!」


自然と、上下に位置した2匹のソルガレオで挟み撃ちの形になる。


愛「やっと攻撃してきたね……」

侑「……」

愛「来なよ……ゆうゆ、歩夢……! どっちの考えが正しいか……白黒付けようじゃん……!!」
 「アーーーゴッ!!!!」


──アーゴヨンが輝く翼をしならせながら、猛スピードで飛び出してくる。


愛「“りゅうのはどう”!!」
 「アーーーーゴッ!!!!」


アーゴヨンの口にドラゴンのエネルギーが集束され──バヂバヂと音を立てながら、私たちに向かって一直線に飛んでくる。


侑「ドラパルト!! “りゅうのはどう”!!」
 「──パルトッ!!!!」


ドラパルトも対抗するように“りゅうのはどう”を発射し、


歩夢「ウツロイド!! “パワージェム”!!」

 「──ジェルルップ…」


ウォーグルの背中の上から、ウツロイドが“パワージェム”を発射する。

でも、2匹掛かりでも、どうにか軌道を逸らすのが限界──


侑「くっ……!!」
 「ウォーーーグッ…!!!」


直撃こそ避けたものの、アーゴヨンの発射した“りゅうのはどう”が目の前を過ぎるだけで、その余波によって、私たちは吹き飛ばされる。


歩夢「侑ちゃん!!」
 「ラリオーーナッ!!!!」


歩夢のソルガレオが吹き飛ばされた私たちを追って、駆け出そうとするが、


愛「“ドラゴンダイブ”!!」
 「アーーーゴッ!!!!!」


畳みかけるように、アーゴヨンが猛スピードで迫ってくる。
756 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:53:06.46 ID:jK0Y5xHa0

リナ『侑さんっ!? 避けてっ!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「っ……!」
 「ウォーーグッ…!!!」


ウォーグルはすぐに体勢を立て直したが──相手が速すぎる。

回避は無理……!


侑「ならっ……!!」
 「ウォーーーグッ!!!!!!」「パルトッ!!!!!」


ウォーグルが爪を、ドラパルトが尻尾を、身を捻りながらアーゴヨンの上から同時に叩き付けるようにして──攻撃を逸らす。

──彼方さん直伝のいなし術……!


愛「……! へぇー……!」


攻撃を捌かれ、アーゴヨンがすれ違いざまに通り過ぎた……瞬間──グイッと足が後ろに引っ張られる。


侑「……!?」
 「ウォーーグッ!!!?」


何かと思って下に目を向けると──


 「ルリ…!!!」

侑「ルリリの尻尾……!?」


いつの間にか、愛ちゃんが右手に掴んでいるルリリの尻尾が、私の足に巻き付いていた。

そしてそのまま、尻尾が戻る反動を利用して、


愛「さぁ、もういっちょだ……!!」
 「アーーーーゴッ!!!!」


アーゴヨンが再び“ドラゴンダイブ”で突っ込んでくる。

しかも今回はルリリの尻尾が私の足に絡みついているため、さっき以上に高い精度で真っすぐ私に突っ込んでくる。


侑「く……っ……イーブイ!! “わるわるゾーン”!!」
 「イッブイッ!!!」


苦し紛れにイーブイがゾーンを発生し、本当に僅かにアーゴヨンの突進速度が緩んだように見えたが、


愛「焼け石に水って言うんだよ……!! そういうの!!」
 「アーーーーゴッ!!!!!」


アーゴヨンは“わるわるゾーン”の中をお構いなしに突っ切ってくる。

避けきれない……!! そう思った瞬間、


歩夢「ソルガレオ!! “てっぺき”!!」
 「ラリオーーナッ!!!!!」


私たちの間に赫灼のソルガレオが、身を硬めながら飛び込んでくる。

だけど──アーゴヨンの猛烈な突撃に、


 「ラリオーーナッ…!!!!」
歩夢「きゃぁ……!!」
757 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:53:41.92 ID:jK0Y5xHa0

ソルガレオがパワー負けして、こちらに押されてくる。

それどころか、“ドラゴンダイブ”を真っ向から受けた“メタルプロテクト”にビシリとヒビが入る。


愛「邪魔っ!!」
 「アーーゴッ!!!!」


アーゴヨンが突撃したまま、ガパッと口を開き──そこにドラゴンエネルギーが集束され始める。


歩夢「……!」


至近距離で“りゅうのはどう”を撃たれそうになった瞬間、


侑「ソルガレオッ!! “メテオドライブ”!!」

 「ガオーーーーレッ!!!!!!!」


真上から、ソルガレオが急降下してくる。


愛「ち……! あっちが先!!」
 「アーーゴッ!!!!」


アーゴヨンは咄嗟に上を向き、真上から迫ってくるソルガレオに“りゅうのはどう”を発射する。

だが、こちらも大技による突進──“りゅうのはどう”を真っ向から突っ切っていく。


愛「くっ……」
 「アーゴッ」


愛ちゃんたちはこれ以上の撃ち合いを不利と見たのか、2匹のソルガレオに対して放っていた、“りゅうのはどう”と“ドラゴンダイブ”を中断し、またしてもソルガレオの大技をすんでで躱す。

どうにか歩夢から引き剥がすことが出来た──けど、これじゃまだダメだ。

私の足にルリリの尻尾が絡みついている。

これがある限り、愛ちゃんはいくらでも私を捕捉出来る。


侑「なら……!!」


私は──ウォーグルの脚を掴んでいた手を……自分から放した。


リナ『侑さん!?』 || ? ᆷ ! ||


私は落っこちながらルリリの尻尾を手で掴み──


侑「フィオネ!! “ハイドロポンプ”!!」
 「フィーーーオーーーーッ!!!!」


小脇に抱えたフィオネの“ハイドロポンプ”を逆噴射させる。

ルリリの尻尾の戻る反動も使い、割って入って助けてくれた歩夢のソルガレオを飛び越えるようにして──

一気に愛ちゃんの方へと接近する。


愛「なっ……!?」


逆に利用されるとは思っていなかったのか、愛ちゃんが一瞬動揺する。

その一瞬の隙に、私はアーゴヨンのお腹の突起に手を掛けてしがみつく。


 「ブイッ!!!」


そして肩に乗っていたイーブイが愛ちゃんに向かって飛び出す。
758 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:54:17.27 ID:jK0Y5xHa0

侑「イーブイ!! “めらめらバーン”!!」
 「ブーーーイィッ!!!」


至近距離からの突撃──絶対に避けられない距離。

だと思ったのに、


 「ルーーリィッ!!!!」
愛「ちょ!? ルリリ!?」


ルリリが自分から愛ちゃんの前に飛び出して、攻撃を受けに出てきた。


侑「く……!?」

 「イッブィッ…!!!」


突撃の反動で跳ね返るイーブイを、


 「ウニャァ!!」


頭にしがみついていたニャスパーが、サイコパワーで私の元に引き寄せ救出。


愛「ルリリ……!!」
 「ルリィ…」


愛ちゃんは直撃を受け、瀕死になったルリリをキャッチしながら、


愛「離れろ……!!」


アーゴヨンにしがみついている私に蹴りを入れてくる。


侑「ぐっ……!?」


蹴り飛ばされ、私がウルトラスペースに放り出された──瞬間、


 「ガオーーーレッ!!!!!」


白銀のソルガレオが私の真下に滑り込み、間一髪で救出される。


歩夢「侑ちゃん、大丈夫!?」
 「ラリオーナッ!!!」

侑「な、なんとかね……」
 「ブィ…」


近寄ってきた歩夢と共に、再び愛ちゃんと相対する形になる。


愛「……生身で突っ込んでくるなんて……大した度胸だね。一歩間違ったら、ウルトラスペースの中に消えるところだったよ?」

侑「でも、お陰で……ルリリは倒せた……」

愛「……全くね。やるじゃん。正直……見くびってたよ……。……でも、もう遊びは終わり」
 「アーーゴッ!!!」


アーゴヨンが毒針をこちらに構える──


愛「“ヘドロウェーブ”!!」
 「アーーーゴッ!!!!!」


直後、橙色の毒液が毒針から噴き出す。

ただ、最初に使った集束された一本の毒液じゃない──3本の針から、辺り一帯を覆いつくすようなとんでもない範囲に毒液が発射され、それはまるで毒の壁のように私たちに迫ってくる。
759 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:54:47.99 ID:jK0Y5xHa0

侑「……!?」

リナ『こんなの避けられない……!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「じゃあ……!!」

歩夢「防ぐしかない……!!」


私は咄嗟に、ドラパルトとウォーグルをボールに戻し、


侑「歩夢!!」

歩夢「うん!!」

侑・歩夢「「“ワイドガード”!!」」

 「ガオーーーレッ!!!!!」「ラリオーーーナッ!!!!!」


2匹分の防御技で広範囲攻撃を防ぐ。

最初の集束されたものと違って、広範囲に散っている分、攻撃力は低いと踏んでの防御策。

目の前に展開した大きな防御壁に眩しい蛍光色の毒液がべったりと張り付き前が見えない。

もし、これを破られたら──全員毒まみれになることになる。恐らく一滴でも当たろうものなら致命傷になるような猛毒。

だけど──ここは私たちの読みが勝っていた。

次第に勢いが弱まり──“ワイドガード”をべったりと覆っていた毒液が徐々に下に落ちて流れていく。

ただ──


リナ『……!? 毒液の向こうから、超巨大なエネルギー反応!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「……なっ……!?」

歩夢「え……!?」


“ワイドガード”の向こう──アーゴヨンは、バヂバヂと周囲にエネルギーをスパークさせながら、超オレンジの光を放っていた。


愛「──“アルティメットドラゴンバーン”!!」
 「アーーーーゴッ!!!!!」


アーゴヨンの全身から、一気にエネルギーが発散され──それは空を飛ぶ一匹のドラゴンのような形になって──私たちに向かって超高速で突っ込んできた。

回避か防御かの判断すら間に合わず──直撃しそうになった瞬間、


 「──ジェルルップ」

歩夢「ウツロイドッ!?」


ウツロイドが私たちの盾になるように、“ミラーコート”を身に纏って、飛びだしていた。

が、もちろん攻撃を受け切れるわけもなく──ウツロイドを中心に、ドラゴンエネルギーが大爆発を起こした。


 「ガオーーーーレッ…!!!!」「ラリオーーーナッ…!!!!」


その爆発で、ソルガレオの巨体さえも軽々と吹き飛ばされ──


侑「ぐ、ぅぅぅぅぅ……っ!!!!」
 「ブィィィィィィッ!!!!!」「フィオーーーーッ!!!!!」「ウニャァァァァ〜〜〜!!!?」

歩夢「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

リナ『みんな!!!! 絶対手離しちゃダメ!!!! 耐えて!!!!!』 || >ᆷ< ||


私たちはポケモン共々必死にソルガレオにしがみつく。

だけど──余りの衝撃に、
760 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:56:01.33 ID:jK0Y5xHa0

侑「……あ」
 「ブイッ…!!!?」


私は手を──ソルガレオから離してしまった。

イーブイを肩に乗せたまま、ウルトラスペースに放り出されそうになった瞬間、


歩夢「侑ちゃんッ……!!!」
 「シャーーーボッ!!!!!」


歩夢の腕に尻尾を巻き付けたサスケが体を伸ばして、私の腕に噛みついた。


侑「っ゛……!!」


痛みを感じると同時に、私もサスケの体を掴む。


 「シャーーーーーボッ!!!!!」


サスケが全身の筋肉を使って、私を歩夢の方へと引っ張る。

それと同時に歩夢が私に向かって手を伸ばす。


歩夢「侑ちゃんッ!!!」

侑「歩夢ッ!!!」


伸ばした手が──ギリギリで、届いた。


歩夢「……っ!!」


歩夢がぐっと引き寄せ、私は歩夢に抱きしめられる形でどうにか難を逃れた。

歩夢にぎゅっと抱きしめられたまま──揺れるソルガレオの背の上で、じっと耐え続け……。


 「ラリオーーナッ…!!!」


やっとソルガレオが態勢を立て直す。


歩夢「ゆう……ちゃん……っ……」


揺れも衝撃もひとまず収まったけど……私を抱きしめる歩夢は、震えていた。


歩夢「…………ゆう……ちゃん……っ……」

侑「歩夢……もう大丈夫だよ……。私は……無事だから……」

歩夢「…………」

侑「ありがとう、歩夢……」

歩夢「……うん」


歩夢の背中を優しく叩きながら、二人で顔を上げる──

すると、


 「──ジェ…ル…」


私たちの近くを……ボロボロになったウツロイドが漂っていた。


歩夢「……っ……!! ウツロイド、戻って……!!」
 「ジェ…ル…ップ…──」
761 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:56:43.41 ID:jK0Y5xHa0

歩夢はすぐさまウツロイドをボールに戻す。


歩夢「ごめん、ごめんね……痛かったよね……ありがとう……っ……」


ギュッとボールを胸に抱きながら、ウツロイドへの謝罪とお礼を口にする。

ウツロイドが盾になってくれなかったら……私も歩夢も間違いなく、ウルトラスペースの彼方に吹き飛ばされていた……。


 「ガオーレッ!!!」


そこに、白銀のソルガレオが私のもとへと戻ってくる。


 「フィオーーッ!!!」「ウニャァ〜〜」


ソルガレオにしがみついていた2匹も無事で安心する。

……けど、


愛「──あっはは、間一髪だったね」

侑「……!」


気付けば──愛ちゃんがアーゴヨンと共に、目の前に来ていた。

爆風でかなり吹き飛ばされたはずなのに……。

恐らくアーゴヨンの猛スピードの飛翔能力で、吹っ飛ばした先から追い付いてきたのだろう。


愛「……見た? 今のZ技」

侑「Z……技……」

リナ『なんで、Z技が……』 || > _ <𝅝||


Z技は特別な道具を使って発動する超大技だ……。

でも、愛ちゃんはそんな道具を使った様子はなかった。


愛「Z技はね……ウルトラスペースに溢れる輝きのエネルギーと……ポケモンとのキズナを同調させて使うんだ。……本来はその同調に道具を使うんだけどね……アタシとアーゴヨンは……すでにキズナで繋がってる」
 「アーーーゴッ」


直後──アーゴヨンに再び超オレンジのエネルギーが集束され始める。


歩夢「に……二発目……?」


歩夢がソルガレオの上でへたり込む。


愛「……すごいと思うよ。あのとき出会った新米トレーナーたちが、ここまでアタシと張り合ったこと……誇っていいと思う」


愛ちゃんは私たちを見据えながら言う。


愛「でもね……ゆうゆや歩夢とじゃ……覚悟も、想いも、痛みも、強さも……積み重ねてきたキズナも……比べ物にならなかったってことだよ」


愛ちゃんはそう言うけど、


侑「そんなことないよ」
 「…ブイ」

愛「……?」

歩夢「侑……ちゃん……?」


私は──ぎゅっとイーブイを抱きしめて立ち上がる。
762 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:57:28.58 ID:jK0Y5xHa0

侑「覚悟はしてきた。大切な人たちを守りたい想いもある。戦うことの辛さも、失うことの痛みも知ってる。強さだって……ここまで旅して、いろんな経験をしながら……みんなと強くなってきた……」
 「ブイッ!!!!」


──イーブイが、光を放つ。


愛「な……」

侑「キズナだって……!! ここにある……!!」
 「イッブィッ!!!!!」


ここまで何度も困難と立ち向かってきた。どんな苦しい戦いも、イーブイと一緒に切り抜けてきた。

Z技の条件が……この場であることと……特別なキズナの繋がりだって言うなら──


侑「私と相棒だって……特別なキズナで結ばれてる……!!」
 「イブィッ!!!!!」


イーブイの周囲に、8色の光の球が浮き上がり──そこから8本の光の筋がイーブイに向かって注がれる。


歩夢「……侑ちゃんと……イーブイの……Z……技……」

リナ『“ナインエボルブースト”……!?』 || ? ᆷ ! ||

 「イッブイッ!!!!!!」


イーブイの体に8つの光の力が注がれ強化される。

私は、8色の光包まれて輝くイーブイを抱いたまま、


侑「歩夢」
 「ブイ♪」

歩夢「侑ちゃん……?」


へたり込んでしまった、歩夢に手を差し伸べる。


侑「……私とイーブイを……信じて」
 「ブイ!!」

歩夢「……うん!」


歩夢が私の手を取って立ち上がる。

立ち上がって──私の抱きかかえるイーブイの頭を撫でる。


歩夢「……この光……あったかい」


絶望的な状況なのに、その光は不思議と──安心するあたたかい光だった。


愛「……この土壇場で、技を覚醒させるとは思わなかったけど……でも、それでアタシのアーゴヨンの技を超えられる?」
 「アーーーゴッ!!!!」


気付けば、アーゴヨンの全身から今にも溢れ出しそうなくらいに、エネルギーが充填されている。


侑「……勝てるよ。だって、イーブイとのこのキズナは……私一人の分じゃないから」

愛「一人分じゃ……ない……?」


──私はずっと考えていた。

どうして、このイーブイは──“相棒わざ”を覚える、この特別なイーブイが……私のもとにやってきてくれたのか。

それは──いろんな人と出会う喜びを、繋がるきっかけを、私に教えるためだったんじゃないかなって。
763 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:58:16.45 ID:jK0Y5xHa0

──せつ菜ちゃんと戦って覚えた“めらめらバーン”。

──愛ちゃんと共闘して覚えた“びりびりエレキ”。

──エマさんに教えてもらった憩いの場で“すくすくボンバー”を覚え。

──彼方さんに稽古を付けてもらっているときに“いきいきバブル”を。

──しずくちゃんとピンチを乗り越えるために“こちこちフロスト”が。

──かすみちゃんと決死の戦いの中で“きらきらストーム”を閃き。

──璃奈ちゃん……リナちゃんとの一騎打ちで“どばどばオーラ”を。

──果林さんとの死闘の中で“わるわるゾーン”を覚えた。


イーブイがその身に覚えてきたことは……全部、私が旅の中で経験した、誰かとの出会いと、人との繋がりの中で生まれたんだ。

そして……もう一人。


侑「……歩夢」
 「ブイ」

歩夢「うん」


私は歩夢の肩を掴んで抱き寄せる。

イーブイには……まだ閃いていない、私の旅を一番近くでずっと支えてくれた──歩夢との、繋がりとキズナが残っている。


侑「だからこれが──最後の“相棒わざ”だ」
 「ブイッ!!!!」


私の旅の出会いと、キズナと、繋がりを象徴するこの技は──

イーブイが眩い光に包まれる。


リナ『新しい……“相棒わざ”の……反応……。……イーブイが……今、覚えた……』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「うん。……私とイーブイ……歩夢とリナちゃんと……旅で出会った全ての人との繋がりとキズナがある……!! それは愛ちゃんにだって……負けたりしない……!!」
 「ブイッ!!!」

愛「……上等じゃん……」
 「アーーーゴヨンッ!!!!」


愛ちゃんとアーゴヨンが攻撃を構える。


愛「どっちの覚悟が、キズナが本物か……今ここで試してやろーじゃん!! アーゴヨンッ!!」
 「アーーーゴッ!!!!!」

愛「“アルティメットドラゴンバーン”!!」
 「アーーーーーゴッ!!!!!!」


アーゴヨンから超オレンジのエネルギーが放出され──1匹のドラゴンのような形となって、襲い掛かってくる。


侑「イーブイ」
 「イブイ♪」


イーブイに声掛けると、イーブイが嬉しそうに笑った。


侑「いっけぇぇぇ!!! イーブイ!! “ブイブイブレイク”!!」
 「イッブイッ!!!!」


イーブイが全身に光を纏って……ソルガレオの背を蹴り──猛スピードで飛び出した。

超オレンジのドラゴンと──キズナの力をその身に纏ったイーブイが、衝突し、周囲にエネルギーが弾け飛ぶ。
764 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:58:54.17 ID:jK0Y5xHa0

愛「そんなのただのすごい“たいあたり”でしょ!! アタシとアーゴヨンのキズナが負けるわけない!!」
 「アーーーーーゴッ!!!!!!」

侑「ただの“たいあたり”じゃない!! 私たちの今までの旅で見てきたもの、出会った人たちの想い、全部を乗せた“たいあたり”だよ!!」
 「ブゥゥゥゥゥィィィィィィィィィィッ!!!!!!!!!!!!!」


最後の“相棒わざ”とドラゴンのZ技が、ウルトラスペースの中で、轟音と衝撃波を発生させながら空間を揺らす。


 「ブゥゥゥイィィィィィッ!!!!!!」


イーブイの気迫はドラゴンのエネルギーの中を徐々に徐々に前に進んでいくが──


 「アーーーーーゴヨッ!!!!!!!!!!」


アーゴヨンも一歩も引かない。次から次へと自身のパワーを超オレンジに輝くドラゴンエネルギーに変換し、放出してくる。


 「ブ、ブィィィィィッ…!!!!」


一瞬、その勢いに飲み込まれそうになるけど──


歩夢「イーブイーーーー!! 頑張ってーっ!!」

 「イッブゥゥゥゥゥゥィッ!!!!!!!!」


歩夢の声援で、イーブイの纏う光が大きくなる。

このイーブイの力は──繋がりの力だから。


──あのとき、ゴルバットの攻撃に巻き込まれそうになった君を……助けたときから始まった。キズナの力だから。

あのときから……たくさん助け合って、ここまで来た。私と──私の相棒は、ここまでの全部を力に変えて、走ってきたから……!!


侑「イーブイッ!!!! いっけぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!」
 「イッブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥイッ!!!!!!!!!!」


イーブイの光がより一層大きく膨れ上がり──


愛「うそ……でしょ……」


超オレンジで大閃光するドラゴンを内側から──大爆発させた。

──轟音と共に、先ほどとは非にならないほどの衝撃波が私たちに向かって飛んでくる。


侑「ぐぅ……っ……!! 歩夢ッ!! 私から離れないで……ッ!!」

歩夢「う、うん……っ!!!」


二人で身を伏せながら、ソルガレオの背にしがみつく。


 「ラリオーーーナッ…!!!」


必死に衝撃波に耐える赫灼の太陽を、


 「ガオーーーレッ!!!!!!」


白銀の太陽が後ろから支える。


 「ウニャァ〜〜〜」「フィオ〜〜〜!!!!」

リナ『ニャスパーもフィオネも、あとちょっとだから耐えて〜〜〜!!!』 || >ᆷ< ||
765 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 17:59:40.53 ID:jK0Y5xHa0

揺れる空間の中で必死に耐え続けると……次第に衝撃波は収まり始め──


 「──ブィィィィィ……」

侑「……!! イーブイッ!!!」

歩夢「……侑ちゃん!?」


イーブイがこちらに向かって吹っ飛んでくる。

私はイーブイに向かって、一目散に駆け出して、


侑「イーブイッ!!」
 「ブィ…」


イーブイに跳び付くようにキャッチする──と、同時に浮遊感。


リナ『侑さん!? 跳んだら落ちる!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「!?」


イーブイを助けること以外、何も考えてなかった……!?

飛び出してしまった私の真下に──


 「ガオーレッ!!!!」


滑り込むようにして、白銀のソルガレオが救出してくれた。


侑「あ、ありがとう……ソルガレオ……」
 「ガオーーレッ」

歩夢「……ほっ……」


どうにか、無事助かった……。


愛「……あっはは、あはははははははははっ!!!!」

侑「……!!」

愛「はぁ……っ……はぁ……っ……強い……強いね、確かに強いよ……っ……ゆうゆ……っ。それは認めてあげる。だけどね──」
 「…アーーーゴヨッ…!!!」

侑「……うそ」

歩夢「……そん、な……」


愛ちゃんとアーゴヨンは──まだ、倒れていなかった。

すでにボロボロだけど……それでもまだ、しっかりと飛んで、私たちを見据えていた。


愛「最後に勝つのは──やっぱり、アタシたちだ……!!」
 「…アーーーゴッ!!!!」


アーゴヨンがその身からカッとオレンジ色の光を放つと同時に──引き寄せられるようにどこからともなく、“りゅうせいぐん”が降り注いでくる。

──向こうも満身創痍による攻撃だけど……ボロボロの私たちを倒しきるには、十分すぎる攻撃だった。


愛「これで……終わりだぁぁぁぁぁっ!!!」


迫る流星。

どうにか逃げられないか、避けられないか、考えたけど──数が、多すぎる。

いや──
766 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:00:51.93 ID:jK0Y5xHa0

侑「ソルガレオ!!」
 「ガオーーーレッ!!!!!」


白銀のソルガレオと一緒に──赫灼のソルガレオの前に踊り出す。


歩夢「侑ちゃん……!? だめぇッ!!!」


せめて、歩夢だけでも……!!!

そう思って前に出たけど──それは必要のないことだった。

突然、私たちの目の前に──


 「──アーーーーゴヨンッ!!!!!!!!」

侑「……!?」


紫色の影が躍り出てきたからだ。


侑「アーゴヨン……!?」


しかも、愛ちゃんの持っているアーゴヨンと違う──紫色のアーゴヨンだった。

私たちに向かって降り注いでくる“りゅうせいぐん”は──


 「アーーーゴヨンッ!!!!!!」


突然現れた紫色のアーゴヨンの“りゅうせいぐん”によって──私たちに当たる前に、全て流星同士の衝突によって……砕け散った。


愛「な……」
 「アーゴ…」

 「アーゴヨン…」

侑「な、なにが……起きたの……?」

歩夢「野生の……アーゴヨンが……助けて、くれた……?」

 「アーーゴヨンッ」
リナ『まさか……君は……』 || ╹ᇫ╹ ||

 「アーゴヨン…!!!」

愛「……なんで……お前まで……アタシを裏切るの……?」
 「アーーゴ…」

 「アーーゴヨンッ!!!!」

愛「……くっそぉぉぉぉ……!! アーゴヨン!! “りゅうのはどう”……!!」
 「アーーーゴッ…!!!!」


愛ちゃんのアーゴヨンが“りゅうのはどう”を口から発射するのと同時に──


 「アーーーゴヨンッ!!!!!!」


紫色のアーゴヨンも──同じように“りゅうのはどう”を放っていた。

愛ちゃんたちは……もう体力が限界だったんだろう……紫のアーゴヨンが放った攻撃は……愛ちゃんのアーゴヨンの“りゅうのはどう”を真正面から貫き──


愛「……!!」
 「アーーーーーゴォッ……!!!!!」

愛「……ぐぅぅぅぅ……っ……!!」


愛ちゃんのアーゴヨンに直撃したのだった。

──最後の一撃を受けた、愛ちゃんとアーゴヨンは、
767 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:01:26.77 ID:jK0Y5xHa0

愛「く……そ……。…………」
 「アー…ゴ…」


──揚力を失って……ふらりと落ちていく。


愛「……あは、は……。……や、っと……。……お、わ、れる……。……りな、りー……。……いま……そっちに……いく、よ……」


愛ちゃんたちが、ゆっくりとウルトラスペースに……落ちていく──


リナ『──ニャスパァァァァァァァーーーーッ!!!!!!!!! 愛さんをッ!!!!!! 助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!』 || > ᆷ <𝅝||

 「ウニャァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!」


ニャスパーが……ソルガレオの頭を踏み切って──落ちていく愛ちゃんたちに向かって、跳びはねた。

そして──


 「ウニャァァァァァァァッ!!!!!!!」


全力のサイコパワーで、愛ちゃんとアーゴヨンを“テレキネシス”によって、救出した。


愛「………………」
 「アー…ゴ…」


──こうして……最後の戦いは、終わりを迎えたのだった……。





    🎹    🎹    🎹





──あの後……紫色のアーゴヨンはいつの間にか、ウルトラスペースの彼方へと、消えてしまっていた。

恐らくあのアーゴヨンは璃奈ちゃんと愛ちゃんの……。


愛「………………」

侑「ボールは……これで全部かな」

リナ『……うん。間違いない』 || ╹ _ ╹ ||


ニャスパーが間一髪で助けた愛ちゃんは……今はソルガレオの上で、腰を下ろしたまま……黙って俯いていた。

……もう戦う力が残っていないのか……その気力がないのか……。先ほどまでの激しい戦いぶりが嘘のように、大人しくなっていた。

どちらにしろ、ディアルガ、パルキア、ギラティナ含め……愛ちゃんの持っている全てのポケモンのボールを回収した。

開閉スイッチも壊したから……自分から飛び出してくることもない。
768 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:02:26.87 ID:jK0Y5xHa0

愛「………………」

リナ『……愛さん』 || ╹ _ ╹ ||

愛「…………なんで」

リナ『…………』 || ╹ _ ╹ ||

愛「……なんで……助けたの……」

リナ『それは……』 || 𝅝• _ • ||

愛「……やっと……りなりーのところに……行けると思ったのに……」

リナ『…………』 || > _ <𝅝||

愛「……やっと終われるって……思ったのに……。……ねぇ……なんで……? ……なんで、助けたの……? ……ねぇ……!!」

リナ『…………』 || > _ <𝅝||

愛「答えてよっ!!」


激しくリナちゃんに向かって詰め寄る愛ちゃん。


愛「ねぇ……!!! 答えてよ!!!! なんで、助けたのっ!!!?」


詰め寄る愛ちゃんの前に──


歩夢「…………」


歩夢が歩み出て──

──パシンッ。

愛ちゃんの頬を叩いた。

私はその光景に……呆気に取られてしまった。


侑「……あ、歩夢が……人を……叩いた……?」


私はそんな光景を今まで一度も見たことがなかったため、心底驚いてしまった。

それは私だけではなく、


愛「…………ぇ……」


愛ちゃんも同様だったようで……。突然のことに目を丸くしていた。


歩夢「…………まだっ、……わからないの……っ……!!」


歩夢は怒っていた。大粒の涙を目に溜めながら……怒っていた。


歩夢「……リナちゃんが……璃奈ちゃんだからだよ……っ……!」

愛「……ぇ……」

歩夢「……前に愛ちゃんを助けたときと何も変わらない……っ!! リナちゃんが、璃奈ちゃんだからだよっ!! なんで、わからないのっ……!!」


歩夢の目から、ぽろぽろと涙が零れだす。


愛「…………変わら……ない……?」

歩夢「…………璃奈ちゃんが願ったことは……愛ちゃんと同じなんだよ……」

愛「……アタシと……同じ……? …………──……ぁ……」


歩夢の言葉に……何かに気付いて──愛ちゃんの目から、涙が零れだした。
769 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:03:25.31 ID:jK0Y5xHa0

愛「…………アタシ……りなりーに……生きてて……欲しかった……、……世界なんて……どうでもいいから……生きてて……欲しかった……」

リナ『愛……さん……』 || 𝅝• _ • ||

愛「…………そっ、か……りな、りーは……アタシに…………生きてて、欲しかったんだ…………」


それは鏡のようで──愛ちゃんが……心の底で願っていたことのように……。

璃奈ちゃんは──自分の夢だった、『みんなと繋がる』ことよりも……それ以上に……愛ちゃんに生きて欲しかった。

生きていて……欲しかった。

生きていて……欲しがった。

ただ……愛ちゃんに……この世界で生きていく未来を、選んで欲しかった。


愛「……ぁ、ぁぁっ……」


愛ちゃんが──泣き崩れる。


愛「……ぅ、ぅっ、ぁぁぁぁっ、……り、なりーっ、……りな、りーっ、……りな、りー……っ……ぅぅっ、ぁっ、ぅぁぁぁぁぁぁっ」


──しばらくの間……ウルトラスペースには、愛ちゃんの嗚咽が……静かに静かに……響いていたのだった……。





    👑    👑    👑





 「──ジ、ジジ……ジ……ジ……。……」


──ズウン、と音を立てながら、デンジュモクの巨体が崩れ落ちる。


せつ菜「……はぁ……はぁ……やっと……倒せました……」
 「ワォンッ…!!!」

かすみ「はぁ……はぁ……これで……何匹目……ですか……?」
 「カイン…ッ」

しずく「はぁ……っ……はぁ……っ……ご……50匹……くらいかな……」

彼方「さすがに……きついかも〜……」

果林「……数が……多すぎる……」


長い間続く、度重なる戦闘にかすみんたちはもう限界ギリギリでした。


エマ「み、みんな、大丈夫……!?」

姫乃「弱ったポケモンはこちらに……!!」

遥「怪我した方が居たら、すぐに診ます……!!」


後方で回復を任せていたエマ先輩とはる子、その二人の護衛をしていた姫乃先輩が駆け寄ってくる。


かすみ「侑先輩……歩夢先輩……リナ子……早く……帰ってきて……」


祈るように呟いた──そのときだった。

目の前のウルトラホールが眩く輝いて……その向こうから──


せつ菜「……! 皆さん!!」

しずく「……! あのポケモンたちは……!」
770 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:04:25.56 ID:jK0Y5xHa0

真っ白な太陽と、真っ赤な太陽が──こちらに向かって駆けてきているところだった。


かすみ「……侑先輩ーーー……! 歩夢先輩ーーー……! リナ子ーーー……!!」


気付いたら、私は走り出していました。





    🎹    🎹    🎹





──ホールから飛び出すと、


せつ菜「侑さーん!! 歩夢さーん!! リナさーーん!!」

しずく「皆さん……よくぞ、ご無事で……っ……」


せつ菜ちゃんが手をぶんぶん振りながら駆け寄り、しずくちゃんは口元を押さえて涙を堪えていた。


 「ガォーレ」「ラリォーナ」


2匹のソルガレオが身を屈め──私たちは、“暁の階”へと降りていく。

そんなに長い時間ではなかったはずなのに……すごく久しぶりに地面を踏みしめた気がした。

そして──


かすみ「ゆ゛う゛せ゛んぱ〜い゛……!! あ゛ゆ゛む゛せ゛んぱ〜い゛……!! リ゛ナ゛こ゛ぉ゛〜〜……!!」


かすみちゃんが涙でぐしゃぐしゃになりながら、私たちに抱き着いてくる。


侑「おっとと……」

歩夢「きゃ……」

リナ『かすみちゃん……』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「み゛んな゛、か゛え゛って゛き゛て゛く゛れて゛……よ゛か゛った゛よ゛ぉ゛〜……」


かすみちゃんはもうすでに涙でぐしゃぐしゃだった。


侑「ただいま……かすみちゃん」

歩夢「ごめんね……心配掛けちゃったかな……」

かすみ「し゛んぱい゛し゛た゛にき゛ま゛って゛る゛じゃな゛い゛です゛か゛ぁ゛〜〜〜……!! い゛っし゛ゅ゛うか゛んもも゛と゛って゛こ゛な゛い゛か゛ら゛ぁ゛……、ゆ゛う゛せ゛んぱいた゛ち゛、ま゛け゛ち゛ゃった゛んじゃな゛いか゛って゛ぇ゛……」

しずく「そうですよ……っ、どれだけ心配したと思ってるんですか……っ……」

侑「え……!?」

歩夢「い、一週間……?」

侑「私たちがウルトラスペースに居たのって……せいぜい半日くらいじゃ……」

リナ『……ソルガレオの力を使って亜光速で移動してたから……私たちが半日と感じていた間に、こっちでは一週間経過してたんだね……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「そ、そういうものなの……?」

リナ『そういうもの。むしろ、一週間くらいで済んでよかった』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||


そういうものらしい……。つまり、かすみちゃんたちは……一週間もウルトラビーストたちの猛攻に耐えながら、私たちを待ち続けてくれていたらしい……。
771 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:05:24.75 ID:jK0Y5xHa0

侑「ご、ごめんね……!! そんなことになってるなんて知らなくて……!!」

せつ菜「ですが……信じていました。きっと、お二人なら、帰ってきてくれると……」

歩夢「せつ菜ちゃん……」

かすみ「せ゛つ゛な゛せ゛んぱい゛す゛る゛い゛て゛す゛ぅ゛……!! か゛す゛み゛んか゛い゛お゛う゛と゛お゛も゛って゛た゛の゛に゛ぃ゛……!!」

せつ菜「え、あ……す、すみません……!」

しずく「はいはい……涙拭いてからにしようね。ほら、可愛い顔が台無しだよ?」

かすみ「か゛わ゛い゛く゛な゛い゛の゛や゛た゛ぁ゛〜〜……」

しずく「大丈夫だから、もう全部終わったからね……なでなで」

かすみ「し゛す゛こ゛ぉ゛〜……」

しずく「ちょっと今日は落ち着くまで、時間が掛かりそうです……」

せつ菜「それだけの戦いだったんです……今日くらいは存分に泣いても誰も文句は言いませんよ」

侑「うん。……ただいま、かすみちゃん」

歩夢「ただいま……待っててくれて、ありがとう」

かすみ「ひぐ……ひっく……っ……。……お゛か゛え゛り゛、な゛さ゛い゛〜……」


私たちが再会を喜び合う中、


彼方「3人とも……おかえり」

果林「……おかえりなさい」

エマ「侑ちゃん……歩夢ちゃん……リナちゃんも……よかった……っ……」

姫乃「……こっちでも、泣きださないでくださいよ……はい、ハンカチ……涙拭いてください……」

エマ「ご、ごめんね……ありがとう、姫乃ちゃん……」

遥「ふふ♪ ……おかえりなさい、侑さん、歩夢さん、リナさん」


彼方さんたちも、こちらにやってくる。


果林「無事に……終わったみたいね……」

侑「はい……!」

果林「それと……」


果林さんの視線が──


愛「…………」


やっと、ソルガレオの背から降りてきた、愛ちゃんに向けられる。


果林「……愛」

愛「…………」


果林さんは、愛ちゃんに歩み寄り──


果林「…………ごめんなさい」


愛ちゃんを抱きしめた。
772 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:06:07.38 ID:jK0Y5xHa0

愛「…………カリン……?」

果林「私……自分のことばっかりで……貴方の痛み……全然理解してなかった……」

愛「…………」

果林「……ごめんなさい……」


そして、


彼方「……愛ちゃん……ずっと一人にして……ごめんね……」

愛「……カナちゃん……」


彼方さんも愛ちゃんをギュッと抱きしめる。


彼方「……仲間がこんなに辛い思いしてたのに……わたしも……カリンちゃんも……自分たちのことでいっぱいっぱいで……、愛ちゃんの痛みに全然寄り添ってあげられなかった……」

愛「…………まだ…………アタシを……仲間って……言ってくれるんだね……」

彼方「……もちろんだよ……。途中で道は違えちゃったけど……わたしたちはずっと……4人で世界を救う為に……戦ってきたんだもん……」

果林「……私がしてしまった過ちは……元には戻らない……それでも……また、やり直したい……。……仲間として……」

彼方「……うん。……みんなで、やり直そう……」

愛「…………カリン…………カナちゃん…………。…………うん」


かつての仲間同士……抱き合う、3人を──


リナ『…………』 || ╹ _ ╹ ||

侑「リナちゃん」

リナ『……なぁに?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「行っておいで」

リナ『…………でも、私は……璃奈じゃ……』 || 𝅝• _ • ||

侑「大事なのは……姿形じゃないよ」

歩夢「本当に大切なのは……リナちゃんが、愛ちゃんたちを想う心……なんじゃないかな」

リナ『侑さん……歩夢さん……』 ||   _   ||


リナちゃんは少し考え込んだけど──


リナ『……私、行ってくる……!』 || > _ < ||


愛ちゃんたちのもとへと飛んでいった。


リナ『みんな……!!』 || > _ < ||

愛「……ぁ……」

果林「……璃奈ちゃん」

彼方「……ふふ……やっと4人、揃ったね」

リナ『……私……私も……またみんなと……やり直したい……。……こんな姿になっちゃったけど……。……ダメ……かな……』 || > _ < ||

彼方「……もちろん大歓迎だよ〜♪ ね、果林ちゃん♪」

果林「ええ……また4人で」


頷く彼方さんと果林さん、


愛「……ぁ……ぇっと……」
773 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:06:38.91 ID:jK0Y5xHa0

愛ちゃんはリナちゃんの言葉に目を泳がせていたけど──


果林「ほら……愛も」

彼方「……愛ちゃん」

愛「…………」


果林さんが愛ちゃんの背中を叩き、彼方さんが愛ちゃんの肩に手を置く。


リナ『……愛さん……』 || ╹ _ ╹ ||

愛「…………」


二人が向き合う。だけど──


愛「………………すぐには…………ごめん…………」


愛ちゃんはそう言って、目を逸らす。


リナ『……! ……だ、だよね……ごめんなさい……』 || 𝅝• _ • ||

愛「でも……」

リナ『……!』 || ╹ᇫ╹ ||

愛「…………少しずつ……受け止めていくから……。……あの子が選ばせてくれた未来を……受け止めていくから……」

リナ『……愛さん……』 || 𝅝• _ • ||

愛「だから……少しだけ……もう少しだけ……待ってて……──りなりー」

リナ『……!! 今……』 || 𝅝• _ • ||

愛「…………」


愛ちゃんはそれっきり、口を閉ざしてしまったけど──


リナ『うん……待ってる。待ってるね……!』 || > ◡ <𝅝||


リナちゃんには──うぅん、璃奈ちゃんには、ちゃんと伝わったようだった。


姫乃「…………」

エマ「姫乃ちゃんたちは……行かなくていいの……?」

姫乃「……入れませんよ……。……あそこは、あの4人の場所ですから……」

遥「はい……やっと……長いわだかまりが解け始めたんです……今は4人で……」

姫乃「……だから、邪魔……出来ませんよ」

エマ「……そっか。……偉い偉い」

姫乃「……頭撫でないでください……」

エマ「……ふふ、遠慮しなくていいんだよ♪」

姫乃「してません!!」

遥「ふふ、すっかり仲良しですね♪」

エマ「うん♪」

姫乃「あぁもう……。……まあ、いいですよ……今くらい……」


──こうして……長かった戦いは……終わったのだった。
774 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:08:36.37 ID:jK0Y5xHa0

歩夢「侑ちゃん」

侑「ん」

歩夢「帰ろっか」

侑「うん」


私たちはやっと……平穏な日常へと、帰っていく──



775 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:09:06.29 ID:jK0Y5xHa0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【暁の階】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.●⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口
776 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/09(月) 18:09:40.27 ID:jK0Y5xHa0

 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.79 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.76 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.76 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.75 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.74 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.73 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
      ソルガレオ Lv.77 特性:メタルプロテクト 性格:ゆうかん 個性:からだがじょうぶ
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:259匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.65 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.66 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.64 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.63 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.62 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ソルガレオ✨ Lv.77 特性:メタルプロテクト 性格:なまいき 個性:ひるねをよくする
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:227匹 捕まえた数:20匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.80 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.74 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.73 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.72 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.73 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.73 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:262匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.67 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.67 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.67 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.67 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.67 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.67 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:238匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ダクマ♂ Lv.38 特性:せいしんりょく 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.86 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.82 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.84 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.80 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.83 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:75匹 捕まえた数:9匹


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



777 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:14:24.67 ID:gpGK8xOx0

■Chapter074 『それから……』 【SIDE Yu】





 『──さん……侑さん……起きて、侑さん』

侑「…………ん、ぅ…………」


声がして、ぼんやりと目を開ける。


リナ『朝だよ、侑さん♪』 || > ◡ < ||

侑「……リナちゃん……おはよ……」

リナ『おはよう♪』 || > ◡ < ||


リナちゃんの挨拶と同時に──


 「ブィ♪」
侑「ぐぇ……」


イーブイがお腹に飛び乗ってくる。


侑「それやめてって言ってるのに……」
 「ブイブイ♪」

リナ『イーブイも早く起きろって言ってるよ♪』 || > 𝅎 < ||

侑「起きるから……」
 「ブイ♪」


イーブイをお腹の上から降ろして、ベランダへと出て行くと──


歩夢「──あ、おはよう、侑ちゃん、リナちゃん♪」
 「シャーボ」


いつものように、ベランダ越しに歩夢が待っていた。


侑「おはよ、歩夢。サスケも」

リナ『おはよう♪』 || > 𝅎 < ||

 「ブイ」


私が歩夢たちに挨拶をしていると、とことこと私の後を付いて部屋から出てきたイーブイが、器用にベランダの手すりに飛び乗って、歩夢の部屋へと歩いて行く。


 「ブイ♪」
歩夢「イーブイもおはよう♪」


歩夢が挨拶しながら、イーブイを抱っこすると、イーブイは嬉しそうに鳴く。


侑「落ちても知らないよ……」

歩夢「そのときは侑ちゃんが助けてくれるから平気だよね〜♪」
 「ブイ♪」

侑「歩夢……あんまり甘やかさないでよ〜……」


まあ……こんな会話が出来るのも……平和だからこそだけどさ……。
778 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:15:08.29 ID:gpGK8xOx0

リナ『歩夢さんは久しぶりのお家のベッドだったと思うけど……昨日はよく眠れた?』 || ╹ᇫ╹ ||

歩夢「うん、たくさん寝て、調子がいいくらい♪」

侑「やっぱり、自分の家のベッドが一番だよねぇ……病院のベッドはなんか気疲れしちゃうし……」

歩夢「あはは……そうだね。私はみんなでお泊りしてるみたいで楽しかったけど」


──なんで病院のベッドの話が出るかというと……私たちはつい最近まで、検査入院のため国際警察の持っている医療機関で過ごしていたからだ。

私、歩夢、かすみちゃん、しずくちゃん、せつ菜ちゃんの5人は戦いのために何度もウルトラスペース内を行き来していたため、“Fall”のような症状が出ていないかの検査をする必要があった。

幸い、誰にも症状らしい症状は出ていなかったし……特にかすみちゃんは、5人の中でも一番ウルトラスペースで過ごした時間が少なかったために、入院したのはたった1日だけで……。


かすみ『なんで、かすみんだけ一人ハブられてるみたいになってるんですかっ!』

しずく『退院出来るんだからいいでしょ……』


逆に文句を言って、しずくちゃんに呆れられていた。

私は最後の戦いで長時間ウルトラスペースに居続けたため、せつ菜ちゃんも長い間、別の世界で過ごしていたことから、1週間ほど掛けて精密検査を行った。

そして、異常がなかったため退院。

歩夢はウツロイドの毒の影響がないかなどを詳しく調べたため……さらに1週間長く入院していたけど……全く問題がなかったということで、昨日退院になった。

ただ……しずくちゃんはまだ入院中だ。


侑「しずくちゃん、元気だった?」

歩夢「うん。少しずつウルトラビースト症もよくなるだろうって」

侑「そっか……よかった……」


しずくちゃんは……フェローチェから受けたウルトラビースト症による後遺症が少し残っていた。

ただ、本人の意思の強さで、ほとんど克服しかけていたらしく……さらに、果林さんがフェローチェとフェローチェの知識を提供したことによって、快復も十分に見込めるとのことらしかった。


侑「……さて……今日はどうする……?」

歩夢「うーん……せっかくだし、9番道路の方にお散歩に行かない? 太陽の花畑に行きたいな♪」

侑「ふふ、わかった」

歩夢「じゃあ、私準備するから、侑ちゃんも朝ごはん食べたら来てね♪」

侑「了解」


歩夢がパタパタと部屋に戻っていく。


侑「……あ」

リナ『どうかしたの?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「イーブイ……歩夢が連れてっちゃった……」

リナ『……相変わらずどっちが“おや”なんだか……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「ホントにね……。……んー……」


私はベランダで軽く伸びをする。

空を見上げると──


侑「……今日も平和だね」

リナ『うん』 || ╹ ◡ ╹ ||
779 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:16:31.65 ID:gpGK8xOx0

青い青い空が広がっていた。

みんなで守った……どこまでも続く、青い空が──





    🎹    🎹    🎹





さて……あの後、みんながどうなったかを少し話そうかな。

まず、かすみちゃんとしずくちゃん。


かすみ「さぁ、行くよジュカイン! いざ、チャンピオンロードへ!」
 「カインッ!!!」

しずく「ふふ、張り切ってるね♪」

かすみ「もちろん! かすみん、このままチャンピオンになっちゃうかも!」

しずく「頑張ろうね♪ 応援してるよ!」

かすみ「うん! しず子、ちゃんと付いてきてね!」

しずく「もちろん。かすみさんとなら、どこまででも」

かすみ「じゃあ、しゅっぱ〜つ!!」
 「カインッ!!!」


かすみちゃんはしずくちゃんが退院後、またすぐに二人で旅に出たみたい。

あっちこっちのジムで本気のジムリーダーと戦ったり……今は四天王への挑戦もしているという話を聞いたり聞かなかったり。

しずくちゃんは、そんなかすみちゃんと一緒に、冒険を続けているみたい。

前にセキレイで会ったときに、しずくちゃんには旅の目的があるのか訊ねてみたら──


しずく『今は……かすみさんと一緒に、この楽しい旅を続けられたら……それだけで幸せなんです。……あ、これ、かすみさんには内緒にしてくださいね……? ……さすがに本人に知られるのは、恥ずかしいので……なんて♪』


そんな風に言って、いたずらっぽく笑っていた。

今も二人はこのオトノキ地方のどこかで、仲良く冒険をしている。



 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.81 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.75 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.73 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.72 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.73 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.73 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:269匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.67 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.67 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.67 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.67 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.67 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.67 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:256匹 捕まえた数:23匹



780 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:17:20.38 ID:gpGK8xOx0

    🎹    🎹    🎹





次にせつ菜ちゃん。せつ菜ちゃんには千歌さんの誘拐幇助の容疑が掛けられていたんだけど……千歌さんがこれを真っ向から否定。

頑なに、あれはたまたまバトル中に起こったアクシデントだったとリーグに主張し続け……果林さんからも、せつ菜ちゃんはあくまで自分が無理やり言うことを聞かせていたという証言から、完全にお咎めなしとまではいかなかったけど、リーグから厳重注意を受けるくらいに落ち着いた。

……ただ、せつ菜ちゃんもせつ菜ちゃんのご両親も、逆にそれでは納得がいかなったらしく……特にせつ菜ちゃん本人が、ちゃんとペナルティを科して欲しいとリーグに強く主張したらしい。

まさかの当事者からの申し出に海未さんは相当頭を悩ませたらしいけど……結局、3ヶ月間のトレーナー活動の制限及び地域への奉仕活動を言い渡され、ペナルティを受けたせつ菜ちゃんは何故か満足気だったとか……。

そして……せつ菜ちゃんの事実上の責任者だった真姫さんは責任を取って、ジムリーダーを辞め……るつもりだったらしいけど……これも、せつ菜ちゃんのご両親が反対し不問に……なるかと思いきや、これまた何故か当事者の真姫さんが、「それじゃ、示しが付かない」と海未さんに直談判。

悩みに悩んだ海未さんは、突然のジムリーダー辞職は街への影響も大きすぎるという理由から、辞職は受け入れず、3ヶ月間の謹慎ということに落ち着いたそうだ。

なんだか、せつ菜ちゃんと真姫さんの頑固さは……ある意味似た者同士なのかもしれない。

真姫さんが謹慎中は臨時で梨子さんがジムを見ていたそうだ。

そして、せつ菜ちゃんは今──


せつ菜「……これじゃ、全然ダメ」

菜々父「……これでダメなのか」

せつ菜「確かに硬い素材だとは思うけど……私のポケモンのスピードも乗せたら、簡単に壊せちゃうかな。硬度だけじゃなくて、もっと靭性を高めないと耐えられないと思う」

菜々父「わかった。改良しよう。……また、時間があるときに、意見を聴かせてくれ」

せつ菜「うん、わかった」

菜々母「二人ともー、お仕事の話もいいけど、いい加減ご飯にしましょうー?」

せつ菜「あ、お母さんが呼んでる……! 行こ、お父さん」

菜々父「そうだな。菜々」


以前のように、修行の日々を過ごしながら……時折お父さんのお仕事を手伝っているそうだ。

その内容は……ポケモンの攻撃にも耐えられる装甲や建材の研究。

ただ、前と違って、ポケモンと人とを断絶するものとしてではなく、人とポケモンがよりよく共存するために……ポケモンが苦手な人や小さな子供でも安心してポケモンと触れ合えるようにするための道具を研究しているそうだ。

最近はよくご両親とポケモンバトルの観戦に行くことも増えたらしく、この間会ったときにその話を嬉しそうに話してくれた。

すっかりわだかまりは解消され──前以上に笑顔が明るくて、元気で……そして、誰よりも強い、私が憧れたせつ菜ちゃんに戻ってくれて……本当に心の底から安心している。

もう、心配の必要はなさそうだ。



 主人公 せつ菜
 手持ち ダクマ♂ Lv.51 特性:せいしんりょく 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.86 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.82 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.84 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.80 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.83 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:143匹 捕まえた数:9匹



781 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:18:32.73 ID:gpGK8xOx0

    🎹    🎹    🎹





次は彼方さんと遥ちゃん。

あの戦いのあと……国際警察とオトノキのポケモンリーグは連携して、プリズムステイツ政府と交渉をしていくことになったようです。

そして、その間に立つのは彼方さんたち……なんだけど……。

彼方さんたちはプリズムステイツからは敵として認識されていたため、国際警察の護衛を付けた状態で、一旦プリズムステイツへ向かい、璃奈ちゃんの事故や……そもそも、世界を救うために政府がやろうとしていた他世界への侵略を公表。

詳しくはわからないけど……かなりいろいろあった中で、結局政府の代表や役員たちが更迭されることになったらしい。そして、組織も事実上の解体……。

今後どういう形になっていくのかはわからない。住民たちを移住させるのか、どうにか新しい解決方法を見つけるか……そこにまだ答えは出ていないけど……全てを一からやり直して、一歩ずつ一歩ずつ、誰もが笑える未来を目指して、こっちの世界と向こうの世界を行き来しながら日々奔走しているそうだ。

ちなみに、あの戦いが終わったあと、私と歩夢の2匹のソルガレオは彼方さんにお返しした。

もともと私たちのポケモンではなかったし……今後、世界間を行き来して、交渉をしていくには必要だと思ったからだ。

そして、リナちゃんも、たびたび知恵を貸すために彼方さんのところに呼び出されている。

そういえば……それについて、彼方さんのところを訪れた際に、こんな会話をした。


リナ『ディアルガたちの力を使えば、救えないかって?』 || ╹ᇫ╹ ||

彼方「うん……。愛ちゃんは爆発させようとしてたけど〜……うまく力をコントロールすれば出来るんじゃないかなって〜……」

リナ『……うーん。……出来るかもしれないし、出来ないかもしれない』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「伝説のポケモンでも、出来るかわからないの……?」

リナ『特異点への到達自体、今のままじゃ事実上の片道切符みたいなものだし……。それに、すごい力を持ってても、ただインフレーションさせることと、制御するのじゃ難易度も変わってくる。どれくらいの規模や制約があるのかをしっかり確認しないと……難しい。試してみる価値はあるけど、それは結局これからの研究次第かな……』 || ╹ᇫ╹ ||

彼方「そっか〜……なかなか簡単には行かないね〜……」

リナ『それに……理論を提唱していた私が言うのはおかしいかもしれないけど……どこかから無理やりエネルギーを持ってきても……結局どこかで歪みが生じちゃうんじゃないかなって……今は思ってる』 || 𝅝• _ • ||

侑「……」

リナ『規模が大きすぎてわかりづらいけど……結局、起こっているのは自然現象だから……無理やり仕組みを変えるんじゃなくて、どう折り合いを付けていくかを考えなくちゃいけなかったのかなって……』 || > _ <𝅝||

彼方「……それは……そうかもしれないね……」

リナ『もちろん、抜本的に解決出来る方法があるかもしれないし、それはこれからも探していく。自分たちの住んでいる場所はもう寿命だから諦めようって言われても、誰も彼もが「はい、わかりました」とはなかなかならないし……そういう考えの違いはまた争いを生む。そういう問題も含めて……私たちは向き合っていかなくちゃいけないんだと思う』 || ╹ _ ╹ ||

侑「……もし、私たちに何か協力できることがあったら、遠慮なく言ってください……! リナちゃんや彼方さんたちが私たちの世界を守ってくれたみたいに……私たちもそっちの世界を助ける何かが出来ればって思うから……」

彼方「ありがとう、侑ちゃん〜……その気持ちだけでも心強いよ〜」

リナ『うん! そのときはお願いさせてもらうね!』 || > ◡ < ||


果たして、世界の寿命というものが人の手にどうにか出来るものなのかはわからないけど……誰もが手を取り合える落としどころが見つかればと願うばかりだ……。

そして……これはいつか、私たちの世界にも訪れる問題だということも忘れないように……。



782 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:19:37.76 ID:gpGK8xOx0

    🎹    🎹    🎹





果林さんたちは、戦いのあと……本人たちもわかっていたように、国際警察に捕まり、収監されることになった。

ただ、他世界の住人というのは当たり前だけど前例がなく……扱いには困っている模様。

果林さんたちが罪を認めて、償う気で居るのが、ある意味救いかもしれない──


エマ「果林ちゃん、体調崩してない……? ご飯ちゃんと食べてる……? 朝はちゃんと起きられてる……?」

果林「……その話、先週の面会でもしたわよ。……大丈夫よ、ご飯は食べてるし、至って健康。……朝は……まあ、頑張って起きてる」

エマ「なら、いいんだけど……。……他の二人は……? 特に姫乃ちゃんは面会に来ても会ってくれなくて……」

果林「愛と姫乃もたまに会うけど……模範囚みたいよ」

エマ「ちゃんと出来てるんだね……! よかったぁ……みんな偉いよ……!」

果林「はぁ……悪いことして捕まったんだから、ちょっとまともなことしたって、別に偉くないわよ……」

エマ「そ、そんなことないよ……!」

果林「全く、エマ……そんなんじゃ、悪い人に騙されないかが心配だわ……」

エマ「だ、大丈夫だよ……たぶん」

果林「……あんまり心配しないで、エマ。私たち……少しでも早く外に出て、彼方や貴方と一緒に……やり直すつもりだから。待ってて」

エマ「果林ちゃん……。……うん、待ってる」


エマさんは……あの戦いのあと、牧場での仕事を辞め──なんと、ポケモンリーグの職員になったらしかった。

海未さんも事情を知っていたし、彼方さんや果林さんとの交友関係もあるエマさんから、二つの世界の橋渡しを手伝いたいと申し出があり、採用したらしい。

もちろん、そういう立場になるにはいろいろ準備も必要なので……今は職員として働きながら、勉強中だそうだ。

ただ、今でも牧場の仕事は好きらしく、休みの日にはコメコに帰って牧場のお手伝いをしているらしい。

あまりの働きぶりに、コメコの人たちも海未さんも少し冷や冷やしてるらしいけど……。エマさん本人は割とケロっとしている辺り、やっぱり山育ちの体力はすごいってことなのかな……たぶん。



783 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:20:10.66 ID:gpGK8xOx0

    🎹    🎹    🎹





そして最後に──


愛「……いらっしゃい、ゆうゆ、歩夢」

侑「……愛ちゃん」

歩夢「……元気?」

愛「あはは、困ったことに割と元気なんだよね……意外とご飯もおいしいしね。もんじゃが出てこないのはちょっと寂しいけど……」

歩夢「もんじゃ……差し入れが出来たらよかったんだけど……」

愛「冗談だって、真に受けないでよ。もう、歩夢ったら素直なんだから♪」


そう言って愛ちゃんはカラカラと笑う。


愛「あと……ゆうゆの背中に隠れてないで、出ておいでよ」

リナ『……こ、こんにちは』 || ╹ _ ╹ ||

愛「表情硬いよ。表情を豊かにするために璃奈ちゃんボードを考えたんだからさ、笑って──りなりー」

リナ『うん』 || ╹ ◡ ╹ ||


愛ちゃんにはこうして、リナちゃんと一緒に定期的に会いに来ている。

まだぎこちなさはあるものの……愛ちゃんもリナちゃんも……少しずつ、少しずつ、今の形を受け入れようと頑張っている。


愛「みんな……ありがとね。あんなしょーもないことしたアタシに……何度も面会に来てくれて」

歩夢「しょうもなくなんて思ってないよ」

侑「私たちも……ドッグランで助けてもらったし」

愛「あはは♪ あれを助けてもらったなんて言えるの、ゆうゆたちくらいだよ♪ お人好し過ぎて心配になっちゃうよ……」


愛ちゃんはそう言って笑うけど──


愛「……でも、りなりーが……そんな優しい人たちと出会えてよかったって……今は……心の底からそう思うよ」

リナ『愛さん……』 || 𝅝• _ • ||

愛「ほら、泣かないでって! 相手と楽しく話したいときは〜?」

リナ『リナちゃんボード「にっこりん」』 ||,,> ◡ <,,||

愛「そうそれそれ♪」

リナ『うん!』 ||,,> ◡ <,,||

愛「さってと……アタシはそろそろ戻ろうかな」

侑「もう行っちゃうの……?」

愛「心配して来てくれる人がいるだけで……アタシには十分すぎるよ」


そう言って、面会室から出て行こうとする際、


愛「あ、そだ……歩夢」


愛ちゃんが振り返って、歩夢を呼ぶ。
784 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:20:47.81 ID:gpGK8xOx0

歩夢「?」

愛「……もしまた、アタシがバカなことしそうになったら……引っ叩いて、目覚まさせてね」

歩夢「え、えっと……ご、ごめんね……叩いちゃって……」

愛「……くく♪ その返し……歩夢らしいや♪」


愛ちゃんは笑いながら、去っていくのだった。





    🎹    🎹    🎹





侑「──ん〜……良い天気……」
 「ブィィ…」

歩夢「そうだねぇ……」
 「シャーボ…zzz」

リナ『今日暖かいね、お外でお昼寝しても大丈夫そうなくらい』 || > ◡ < ||


花畑に歩夢と二人で寝っ転がっていると、リナちゃんの言うとおりぽかぽかしていて、眠ってしまいそうだ。


侑「……歩夢」

歩夢「んー?」

侑「次は……どこ行こうか……」

歩夢「ふふ……♪ 侑ちゃんと一緒ならどこへでも♪」

侑「……そういうのが一番困るんだけどなぁ……」

歩夢「だって……侑ちゃんとなら、どんな景色も……宝物なんだもん……♪」

侑「じゃあ……その新しい宝物……探しに行こうか……!」


私は起き上がって、歩夢に手を差し伸べる。


歩夢「うん♪」


歩夢が私の手を取って──


侑「イーブイ! リナちゃん!」
 「イブイッ♪」

リナ『うん!』 || > ◡ < ||

侑「歩夢!」

歩夢「うん♪ 行こう、侑ちゃん♪」

侑「新しい冒険の旅に……!!」


──また、ポケットモンスターの世界へ……!!

785 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:21:37.16 ID:gpGK8xOx0

 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.80 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.76 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.76 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.75 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.74 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.73 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:261匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.66 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.66 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.64 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.63 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.62 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.73 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:240匹 捕まえた数:24匹



786 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:22:10.13 ID:gpGK8xOx0

    🎹    🎹    🎹





 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...

 侑と 歩夢は
 レポートに しっかり かきのこした!



787 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:22:58.01 ID:gpGK8xOx0

    ☀    ☀    ☀





相談役「……穂乃果さん、ここまでありがとう」

穂乃果「いえ……今回は私……いいところなかったなぁ……」

相談役「ふふ、世代交代かしら?」

穂乃果「まだ、負けるつもりないですよー!」

相談役「冗談よ」

穂乃果「……それにしても……これ以上は、いいんですか……?」

相談役「……今回は結局、何も異常を確認出来なかったから……。……リーグ側からはひとまずね……」

穂乃果「……本当に……今回は見逃してくれただけ……なのかな……」


穂乃果「龍神様──レックウザは……」





    🔔    🔔    🔔





  「──ヴァァァッ…」


バチバチと稲妻をスパークさせながら、飛翔する鳥ポケモンに向かって、


 「精靈球!!」


精靈球──モンスターボールを投げつけると、そのポケモンはボールに吸い込まれ、カツーンと音を立てながら、地面に落下した。


 「それじゃ、ミア。あとはよろしくね」


そう言いながら私は、今しがたポケモンを捕まえたボールを投げ渡す。


 「I got it.」

 「さて……そろそろ始めましょうか……」


私は、この地方にある大きな大きな大樹──音ノ木を見据える。


 「待っててね……──栞子」


そう呟いて……。



788 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/10(火) 12:23:57.08 ID:gpGK8xOx0

    🔖    🔖    🔖





 「──────キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!!!!!!」

栞子「……ダメです…………。……ダメです……ッ……」

 「──────キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!!!!!!」

栞子「お願い……します……。……龍神様……」

 「──────キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!!!!!!!!!」


額を汗が伝う。

苦しい。だけど、今解き放つわけにいかない。

ウルトラビーストによる襲撃は終わっても……まだこの地方の危機は……去っていない。

今、怒れる龍神様を……解き放ってしまったら……。

オトノキ地方は──……壊滅する。





...Next EpisodeΔ


...To be continued.



789 : ◆tdNJrUZxQg [sage saga]:2023/01/11(水) 14:08:26.52 ID:mgX0GYuD0
残り分量的にこの板で終わらないのと、キリがいいので次スレに行きます。

次スレ
侑「ポケットモンスター虹ヶ咲!」 Part3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1673413466/
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2023/03/18(土) 12:53:21.06 ID:84Q7DkhpO
幕張イベまで10日連続
私生活垂れ流し配信/3日目【3/10】

「ポケモンORAS(オメガルビー)人生縛りをやる人」
(10:18〜)

https://www.twitch.tv/kato_junichi0817
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2023/03/19(日) 17:19:20.42 ID:2fT54XhjO
「ポケモンORAS/オメガルビー
人生縛りをやる人2日目」(後編)

▽vsナギ戦〜ストーリークリアまで
(10:31〜)

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