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侑「ポケットモンスター虹ヶ咲!」
- 953 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:48:29.72 ID:A5BOh9Vw0
-
理亞「“ふぶき”!」
「バーニラ♪」「バニーラ♪」
かすみ「んぎゃーー!! さ、寒いぃぃぃ!!」
「ヤ、ヤブゥゥ…!!!」
かすみ「ヤブクロン、“ドわすれ”……!」
「ヤブゥ……」
寒さを忘れて凌ぎ切ります。
さ、先にかすみんがダメになりそうですけど……が、頑張る!
理亞「ボーっとしてていいの? “れいとうビーム”」
「バニーラ♪」「バニーラ♪」
それぞれの頭から“れいとうビーム”が発射され──ボーっとしているヤブクロンに直撃する。
「ヤブ──」
直撃したビームは一瞬でヤブクロンを氷漬けにしてしまう。
理亞「寒さを忘れて防ぐことが出来るんだとしても……凍らせれば関係ない」
かすみ「ぐぬぬ……」
確かにそのとおりです。あれはあくまで寒さを忘れるだけで、物理的に凍らされることを防ぐことは出来ません。
ただ、凍った状態を脱する方法も考えています……!
──ジュゥ……。
理亞「……? なんの音……?」
──ジュー……ジュゥゥゥゥ……。
何かが焼けるような音が響く。
理亞「……ヤブクロンの方……? まさか……」
かすみ「ふふん、凍らされても溶かせばいいんです! “アシッドボム”!」
「──ヤブクゥ…」
寒さは“ドわすれ”で防いで、凍らされても落ち着いて“アシッドボム”で溶かす!
完璧です!
あとはゆっくり“どくガス”なりなんなり、体力を削る手段で──
理亞「“ぜったいれいど”」
「バニーラ♪」「バニーラ♪」
──パキリ……と音を立てながら、ヤブクロンが氷漬けになった。
かすみ「んなぁ!?」
理亞「“ぜったいれいど”は命中率が低い技だけど、動かない相手にはさすがに当たる」
かすみ「やややや、ヤブクロン!! “アシッドボム”で溶かしてぇ!?」
理亞「無理。“ぜったいれいど”は一撃必殺。“アシッドボム”すら使えないくらいに、完全に氷漬けになって気絶してるから」
かすみ「ぅ、ぅぅぅぅぅぅ!! 戻って、ヤブクロン!!」
かすみん、ヤブクロンをボールに戻します。
あっけなく2匹目が戦闘不能に……。
- 954 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:49:02.61 ID:A5BOh9Vw0
-
かすみ「サニーゴ!! 行きますよ!!」
「……サ」
かすみ「“パワージェム”!!」
「…………ニ」
輝くいわタイプのエネルギーが発射される。
理亞「“ラスターカノン”!!」
「バニーラ♪」「バニーラ♪」
対するバイバニラは、“ラスターカノン”で“パワージェム”を迎撃してくる。
ただ、バイバニラはさっきから避けようとしない。
マニューラと違って、スピードにはそんなに自信がないことがわかる。
かすみ「なら、これならどうですか!! “ナイトヘッド”!!」
「……ゴ」
サニーゴの目が怪しく光ると──
「バ、バニーラ…」
バイバニラの片側が苦しみ始める。
“ナイトヘッド”は直接攻撃を飛ばしたりする技と違って、相手に恐ろしい幻を見せて攻撃する技。
これなら相殺は出来ませんし、さらに──
「バ、バニーラ…」「バ、バニバニ」
バイバニラは図鑑の説明通りなら、お互いの意見が一致しないと技がうまく出せなくなるはずです……!
かすみ「最初からこうすればよかったですね……バイバニラ攻略です!」
と、思った瞬間、
理亞「“ボディパージ”!!」
「バ、ニーーーラッ!!!!!」
バイバニラは──“ナイトヘッド”受けている片側の頭を、サニーゴに向かって発射してきた。
かすみ「うそぉ!?」
飛んできたバイバニラの頭は──ボスッ! と音を立てながらサニーゴに直撃し、サニーゴの体がバイバニラの頭に埋まってしまう。
かすみ「ちょ、何やってるんですか!?」
理亞「バイバニラの脳は完全に独立してる。片方が溶けても、問題なく生きられるし、溶けてもそのうち戻る」
かすみ「それ逆にどうなってんですか!?」
理亞「ついでに“ボディパージ”をしたら、速くなるから」
「バニーーーラ!!!!」
素早い動きで、飛んできたバイバニラは──さっき飛ばしたもう半分の頭に合体し、元の形になる。
即ち──サニーゴを完全に体内に取り込んだ形になる。
- 955 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:49:34.82 ID:A5BOh9Vw0
-
かすみ「ちょっとぉ!?」
理亞「バイバニラの体温はマイナス6度……あとは氷漬けになって、戦闘不能になるのを待つだけ」
かすみ「そ、そんなぁ……」
理亞「これで3体目……もうサニーゴにこの状態を脱する手段がない。今のうちに、4匹目の準備をしておいたら?」
かすみ「…………」
こおりタイプによる場の支配力が強すぎます……。……強すぎますけど……。
「──バ…!!?」「──ニーラ…!!!?」
急にバイバニラが奇声をあげた。
理亞「な……!? なに……!?」
かすみ「確かに、氷漬け……怖いですけど……──“こおり”を溶かす技もあるんですよ!!」
理亞「……!?」
むしろ、動きがノロノロなサニーゴでどうやって、接近するかを考えていた。
相手から、自分の体内に取り込んでくれるなら、むしろ好都合です!!
かすみ「“ねっとう”!!」
「ニー……ーゴ」
「バ、バニィィィィ…」「ィィィィィラ…」
内側から高温のお湯で溶かされたバイバニラは、ドロドロに溶けて、その場にべしゃりと音を立てて、落っこちた。これはさすがに戦闘不能でしょう。
かすみ「ふふん♪ 3匹目の準備をしてください?」
理亞「……戻れ、バイバニラ」
理亞先輩が戦闘不能になったバイバニラをボールに戻す。
理亞「モスノウ、出てきて」
「──スノォ…」
次に出てきたポケモンは、モスノウ。
しずく「かすみさん! モスノウはユキハミの進化系だよ!」
かすみ「ユキハミ……ヨハネ博士の研究所に居たやつだよね……」
『モスノウ こおりがポケモン 高さ:1.3m 重さ:42.0kg
はねの 温度は マイナス180度。 冷気を 込めた りんぷんを
雪の ように ふりまき 野山を 飛ぶ。 野山を 荒らすものには
容赦せず 冷たいはねで 飛びまわり 吹雪を 起こし 懲らしめる。』
かすみ「マイナス180度!?」
理亞「“ふぶき”!」
「スノォ…」
モスノウが“こおりのりんぷん”をまき散らしながら、“ふぶき”を発生させる。
かすみ「さ、さっむ……!!」
「サ……」
冷たいのはあくまで翅の温度で、“ふぶき”自体がマイナス180度あるわけじゃないだろうけど──それでもあの冷たい翅から繰り出される“ふぶき”は猛烈に寒い。
しかも、バイバニラが降らせた“ゆき”もフィールド全体を覆いつくすのに一役買っている。
- 956 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:50:08.49 ID:A5BOh9Vw0
-
かすみ「こ、このままじゃ、サニーゴが凍っちゃう……! “ねっとう”!」
「ニ、ゴー……」
口から“ねっとう”を吐き出し、自分の身体が氷漬けになるのだけは防いでいるけど──“ねっとう”はサニーゴから少し離れたら、すぐに凍って落ちてしまって全然前に飛んでいかない。
理亞「それじゃ攻撃、届かないけど?」
かすみ「ぐぬぬ……で、でもでも、防御は出来てますもんね!!」
あの冷たい翅で直接触られない限り、いくら“ふぶき”をされても“ねっとう”で氷を溶かし続ければ、簡単にはやられません!
今のうちにどうにか、反撃の一手を──
理亞「なら……“まとわりつく”」
「スノォ…」
モスノウがゆったりとした動きで、こちらに羽ばたいてくる。
かすみ「ぎゃー!? こっち来ないでくださいー!? “パワージェム”!!」
「サ……」
またしても、いわエネルギーの光を集束させて発射する。
理亞「……! “オーロラビーム”!」
「モスノォー」
かすみ「おろ……?」
サニーゴが“パワージェム”を発射すると、モスノウは近付くのを中断して、“オーロラビーム”で迎撃を始めた。
かすみ「もしかして……“パワージェム”には当たりたくない感じですか?」
しずく「──かすみさん! モスノウはこおり・むしタイプだから、いわタイプにはかなり弱いはずだよ!」
かすみ「なるほど……! そういうことなら、連打連打です! “パワージェム”!!」
「サ、コ……」
──サニーゴから発せられた輝きが、モスノウに襲い掛かります。
理亞「“オーロラベール”」
「スノォ」
が、モスノウに当たった輝きはオーロラの輝きにかき消されて霧散してしまった。
かすみ「わ、わあぁぁぁぁ!? かき消すなんてずるいですぅ〜!!」
「サ、コ……」
理亞「ずるくない」
かすみ「こ、こっちこないでー!? “パワージェム”!! “パワージェム”!!」
どうにか追っ払おうと、“パワージェム”を連打するけど──全部“オーロラベール”にかき消されてしまう。
ゆったりサニーゴの眼前に迫ったモスノウは、
理亞「“まとわりつく”」
「スノォ……」
今度こそ、マイナス180度の翅で、サニーゴを包み込む。
かすみ「さ、サニーゴ!!」
「サ……」
- 957 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:50:41.44 ID:A5BOh9Vw0
-
翅で触れられると、サニーゴの体がみるみるうちに凍り始める。
かすみ「ね、“ねっとう”!!」
「サ……」
咄嗟に、モスノウに向かって“ねっとう”を噴射する。
ただ、モスノウの翅の冷たさは常軌を逸していて、“ねっとう”すらも一瞬で凍りつかせていく。
かすみ「が、頑張って、サニーゴ!!」
「サ、コー……」
かすみんが声を掛けると──サニーゴの噴射の勢いが少しだけ強まり、凍った“ねっとう”がどうにかモスノウを押し返す。
かすみ「よ、よし! 今のうちに逃げ──」
理亞「られるわけないでしょ」
「スノォ……」
でも、当然と言わんばかりにまたモスノウが“まとわりつく”。
かすみ「うぅ、“ねっとう”!!」
「サ……」
噴き出す“ねっとう”──もとい氷の塊で押し返しては、またまとわりつかれて、凍りそうになり、それをまた“ねっとう”で溶かして押し返し……だ、ダメです……! このままじゃ、ジリ貧です……!
かすみ「ど、どうにか……どうにかしないと……」
でも、“ねっとう”すら一瞬で凍り付かせる冷気に対抗する術が……。
かすみ「……! そうだ、氷だ!!」
かすみん、やっと反撃の一手をひらめきました……!
かすみ「サニーゴ、“あまごい”!!」
「サ……」
理亞「“あまごい”……?」
理亞先輩が怪訝な顔をする。
“ゆき”を降らせていた雪雲が── 一気に雨雲にとってかわり、大粒の雨を降らせ始める。
大粒の雨が降ったところで、モスノウの冷気が全てを凍らせてしまうけど──それでいい……!!
理亞「悪あがき……モスノウ、トドメを」
理亞先輩が、サニーゴにトドメを刺そうとした、そのとき──
「ス、スノゥ…!?」
モスノウが突然、地面に叩き落とされた。
理亞「な……!?」
かすみ「ふっふっふ……この“あまごい”は──攻撃技です!!」
そう、これは攻撃です……!!
理亞「!? まさか……!? 凍った雨粒が、翅に刺さってる……!?」
- 958 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:51:28.05 ID:A5BOh9Vw0
-
そのとおりです! 大粒の雨は降ったそばから、凍り付いて──大粒の雹に変わるんです!!
翅や体の軟らかいモスノウは、上空から叩きつけてくる大量の雹に耐えられず、落っこちる!
そして、
「サ……コ」
硬い体のサニーゴなら、問題なく耐えられる……!!
理亞「天候を“ゆき”に戻して……!」
「ス、スノォ……」
理亞先輩はすぐさま、“あまごい”を再び“ゆきげしき”で上書きして、態勢を立て直そうとするけど──もう遅いです!
かすみ「サニーゴ!! “ハイドロポンプ”!!」
「サ、コー……」
サニーゴの口から、強烈な水流が発射され、それは冷気によって一瞬で凍り付き──
「スノォ……」
急激に成長する氷の柱が、真正面から、モスノウをぶっ飛ばしました。
理亞「モスノウ……!」
「ス、スノォ……」
大きな氷の塊を叩きつけられたモスノウは、吹っ飛ばされた先で転がって、ついに戦闘不能になったのでした。
かすみ「さぁ、これで形成逆転ですよ!!」
かすみんの残りは2匹、理亞先輩は残り1匹です!
この勝負、貰いましたよ……!!
と、思った瞬間──ゴトっと何か重いものが落ちるような音がする。
かすみ「へ?」
何かと思って、音のした方に目を向けると──
「サ……」
サニーゴが──でかい氷柱を口元にくっつけたまま、地面に落下していた。
かすみ「ってぇ!? サニーゴと氷がくっついてる!?」
理亞「この氷点下で“ハイドロポンプ”を使ったら、普通そうなるでしょ。オニゴーリ」
「──ゴォーーリ!!!!」
理亞先輩が、最後のポケモン──オニゴーリを繰り出す。
かすみ「わーーー!! ちょっとタンマ!! タンマです!!」
理亞「待たない。“フリーズドライ”」
「ゴォーーリ!!!!」
氷柱の重さで動けないサニーゴは、波状に飛んでくる冷気の直撃を受け。
「────」
- 959 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:52:10.71 ID:A5BOh9Vw0
-
完全に氷漬けになって、戦闘不能になってしまった。
かすみ「あぁーー!? サニーゴーー!?」
理亞「意表を突くのもいいけど……その後まで考えてやった方がいいんじゃない?」
かすみ「ぐ、ぐぬぬ……返す言葉がない……」
サニーゴをボールに戻しながら、相手を確認する。
『オニゴーリ がんめんポケモン 高さ:1.5m 重さ:256.5kg
氷を 自在に 扱う 力を 持ち 岩の 体を 氷の よろいで
かためている。 空気中の 水分を 一瞬で 凍らせる 力で
獲物を 冷凍し 動けなくなったところを バリバリと 頂くのだ。』
かすみ「またおっかないポケモンですね……」
そんなオニゴーリに対抗する最後のポケモンは──
かすみ「行くよ! テブリム!」
「──テブリッ!!!」
手に入れたばっかの新顔、テブリムです!
理亞「まさか、ここまで追い詰められると思ってなかった……。オニゴーリ、メガシンカ!」
そう言いながら、理亞先輩の腕にあるブレスレットが眩く光り──
「ゴォォォォーーーーリ!!!!!!!!!」
雄叫びと共に、メガオニゴーリへと姿を変える。
大きく開いた口から、冷気が溢れ出し、周囲を凍結させる。
距離は十分にあるはずなのに、刺さるような冷気が伝わってくる。
理亞「オニゴーリ、“ふぶき”!」
「ゴォォォォーーーーリッ!!!!!!!!」
大きく開いた口から、強烈な冷気が“ふぶき”となって襲い掛かってくる。
フィールド全体を巻き込むような、強烈な寒波。だけど、
かすみ「“サイコキネシス”!!」
「テブッ!!!」
テブリムは自分の周囲に球状のサイコパワーを展開し、メガオニゴーリの“ふぶき”から逃れる。
この子は巣でもこうやって、霧を払っていたんです!
それが霧から冷気に変わっただけ!
理亞「へぇ……これ、防げるんだ」
かすみ「当然です! さらに、こんなことも出来ちゃいますよ!」
「テブ!!」
テブリムが前方に手をかざすと──紫色の炎がぽぽぽぽっと発生する。
かすみ「“マジカルフレイム”!!」
「テーブゥッ!!!!」
その炎を一気に発射する。
- 960 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:52:51.62 ID:A5BOh9Vw0
-
理亞「“こごえるかぜ”!!」
「ゴォォーーーリッ!!!!」
かすみ「か、かき消された!? 炎なのに!?」
理亞「炎だから、温度が低すぎれば消える」
かすみ「なら、“サイコショック”!」
「テブッ!!!」
今度はオニゴーリの周囲に、サイコパワーで生成したキューブが現れ──それが一気にオニゴーリに襲い掛かる。
「ゴォォーーリ…!!!!」
かすみ「そのでかい図体じゃ避けられませんよね!」
今度は問題なく技が直撃する。相手の氷の鎧が硬いのか、致命傷にこそなっていませんが、
かすみ「このまま、攻め攻めで行きますよ!」
「テブッ!!!」
テブリムのサイコパワーなら攻防同時に展開できる!
これなら一方的に、有利が取れると思った矢先、
理亞「遠距離からちまちまやられるのは面倒……! オニゴーリ、“ころがる”!!」
「ゴォーーーリッ!!!」
メガオニゴーリはゴロゴロと転がりながら、こっちに迫ってくるじゃないですか……!
かすみ「ちょ、動けるの!?」
理亞「動けないなんて言ってない」
かすみ「テブリム!」
「テブッ!!!」
テブリムは髪の毛の房を使って──跳ねる。
かすみ「かすみんのテブリムはジャンプも得意なんですよ!! 転がってたら、空中には手を出せませんよね!!」
「テブッ!!」
さぁ、上から攻撃して、今度こそ──テブリムが攻撃を構えた、そのときだった。
突如前方に、大きな柱のようなものが現れ──それがテブリムに向かって勢いよく振り下ろされた。
「テブッ!!!?」
かすみ「テブリム!? な、なに!?」
テブリムはそれに押しつぶされるような形でフィールドに叩きつけられる。
その柱の根本を辿ると──
「ゴォォォーーーリ…」
それは、メガオニゴーリの体から伸びているものだった。
理亞「オニゴーリは空間内の水分を自在に凍らせられる。相手がどこにいようが、関係ない」
「ゴォォォーーリ!!!!」
そして、テブリムを押しつぶした氷の柱を一旦持ち上げてから──
- 961 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:53:31.06 ID:A5BOh9Vw0
-
「ゴォォォーーーリッ!!!!」
理亞「これで終わり……!」
再度、テブリムに向かって、勢いよく振り下ろしてきた。
──ガシャァンッ!! とド派手な音がジム内に響き渡り、衝撃で雪や氷の欠片が舞い上がって、フィールド内を真っ白な煙が包み込む。
かすみ「…………」
理亞「……これで──」
かすみ「……終わりじゃありません!」
理亞「……!?」
煙の中で──
「テブッ!!!」
テブリムは立っていた。
理亞「な……!?」
目を見開く理亞先輩。そりゃ、無理もありません。
だって──先ほどテブリムに向かって振り下ろされた氷柱は、中央辺りでボッキリ折れていたんですから!
理亞「ど、どうやって!?」
かすみ「殴って折りました!!」
「テブッ!!!」
理亞「はぁ!?」
テブリムのサイコパワーは確かに強力ですけど──やっぱり、一番の自慢はあのパンチ力です!!
テブリムは腕を組み、頭の房でのっしのっしと歩を進めながら──
「テブッ!!!!」
メガオニゴーリから伸びている、砕けた氷柱を、真正面から殴りつける。
──ゴッ!! と鈍い音と共に、氷柱がバキバキと音を立てながらひび割れ、その衝撃は氷柱の根本にいたメガオニゴーリ本体まで吹っ飛ばす。
「ゴ、ゴォォォーーリ…!!!!」
理亞「お、オニゴーリ!?」
さらに追撃と言わんばかりに、
「テブッ!!!!!」
折れて転がっていた、氷柱の片割れをメガオニゴーリに向かって、殴り飛ばす。
理亞「う、受け止めろ!!」
「ゴォォーーリッ!!!」
メガオニゴーリは咄嗟に氷の盾を作り出して、キャッチしますが、
「テーーーブッ!!!!!」
- 962 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:54:18.12 ID:A5BOh9Vw0
-
テブリムはその氷の盾に向かって、間髪入れずに飛び掛かり──拳を叩きつける。
──ビキッ!! 1撃目で強烈な拳でヒビが入る。
──バキッ!! 2撃目でさらにヒビが広がり、
──バギンッ!! 3撃目で氷の盾を粉々に粉砕した。
理亞「嘘……!?」
「テブッ!!!」
かすみ「テブリム!!! いっけーー!!!」
砕け散る氷が舞う中、メガオニゴーリの脳天目掛けて──テブリムが両拳を合わせて、叩きつけた。
「ゴォォォーーーリ…!!!!」
至近距離から、脳天に向かって振り下ろされた拳は、メガオニゴーリの全身の氷の鎧にヒビを入れるほどの威力で、
「ゴ、ォォォ…リ…」
その破壊力に耐えられず、メガオニゴーリは目を回して、戦闘不能になったのでした。
「テブッ!!!!」
かすみ「やったー!! テブリムー!!」
かすみん、思わずテブリムに駆け寄っちゃいます。
そして、ハグ──しようと思ったら。
「テブッ!!!」
テブリムはぴょんと跳ねて、かすみんの頭に飛び乗ってきました。
かすみ「わっとと……!!」
「テブッ!!!」
そして、いつものように腕を組んで鼻を鳴らす。
かすみ「あ、相変わらずかすみんは子分扱いなんだね……」
「テブッ」
まあ、いいんだけど……ちょっと複雑です。
そんな私たちのもとへ、
理亞「まさか……最後にパワー負けすると思わなかった」
理亞先輩が近づいてくる。
かすみ「ふふんっ! かすみん自慢のテブリムですからね!」
「テブテブッ!!!」
理亞「負けたのは悔しいけど、貴方の強さは認めざるを得ない。これ……“スノウバッジ”」
そう言って、理亞先輩は雪の結晶を模したジムバッジを手渡してくる。
かすみ「はい! ありがとうございます! やったね、テブリム!」
「テブテブッ!!」
- 963 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:55:27.53 ID:A5BOh9Vw0
-
こうして、かすみんたちは、理亞先輩との激戦を制し──無事に6個目のジムバッジを手に入れたのでした!
にしし……これは侑先輩たちより早くジム攻略しちゃったかもしれませんね〜? これは、ローズでの結果報告が楽しみですね〜♪
👑 👑 👑
理亞「それじゃ、私はグレイブガーデンに行くから」
かすみ「はい! ジム戦ありがとうございました!」
ペコっと頭を下げると、理亞先輩はひらひらと手を振りながら、グレイブガーデンの方へと消えていった。
かすみ「ホントに朝夕欠かさず、お墓参りしてるんですね……」
しずく「みたいだね」
というわけで、気付けば夕方です。
かすみ「そういえば……しず子、グレイブマウンテンに行きたいって言ってたよね? クマシュンだっけ? そのポケモンに会いたいって」
しずく「あ、うん。……でも、今から山に入るのはちょっと難しいだろうから……グレイブマウンテンは明日かな。それよりも、ちょっと町を観光しない?」
かすみ「言われてみれば、あんまり観光出来てなかったね……。よーし! じゃあ今日は夜までヒナギクシティを巡ろ〜!」
しずく「うん♪」
夕日に照らされるヒナギクの町で、かすみんたちはのんびり一息つくことにしました♪
明日はしず子のために山登りですから! 今のうちに英気を養いますよ〜♪
おいしいモノとかあればいいな〜♪
るんるん気分で、町へと繰り出す、かすみんなのでした!
- 964 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/14(水) 12:56:28.02 ID:A5BOh9Vw0
-
>レポート
ここまでの ぼうけんを
レポートに きろくしますか?
ポケモンレポートに かきこんでいます
でんげんを きらないでください...
【ヒナギクシティ】
口================== 口
||. |○ o /||
||. |⊂⊃ _回/ ||
||. |o|_____. 回 | ⊂⊃| ||
||. ●____ | | | |__|  ̄ ||
||. | | 回 __| |__/ : ||
||.○⊂⊃ | ○ |‥・ ||
||. | |. | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ||
||. | |. | | | ||
||. | |____| |____ / ||
||. | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o ||
||. | | | | _. / : ||
||. 回 . |_回o | | : ||
||. | |  ̄ |. : ||
||. | | .__ \ : .||
||. | ○._ __|⊂⊃|___|. : .||
||. |___回○__.回_ _|‥‥‥: .||
||. /. 回 .| 回 ||
||. _/ o‥| | | ||
||. / | | | ||
||. / o回/ ||
口==================口
主人公 かすみ
手持ち ジュカイン♂ Lv.51 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
ゾロア♀ Lv.47 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
ジグザグマ♀ Lv.44 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
サニーゴ♀ Lv.45 特性:のろわれボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
ヤブクロン♀✨ Lv.44 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
テブリム♀ Lv.44 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
バッジ 6個 図鑑 見つけた数:183匹 捕まえた数:9匹
主人公 しずく
手持ち インテレオン♂ Lv.38 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
バリヤード♂ Lv.35 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
アオガラス♀ Lv.38 特性:はとむね 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
ロゼリア♂ Lv.38 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
サーナイト♀ Lv.38 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
バッジ 0個 図鑑 見つけた数:191匹 捕まえた数:12匹
かすみと しずくは
レポートに しっかり かきのこした!
...To be continued.
- 965 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/15(木) 02:49:24.30 ID:J+r4F7N00
-
■Intermission🍊
──結局、天睛の火道から飛び出して、叡智のゴミ捨て場にたどり着いた時には、すでにウルトラビーストの反応は消えていた。
穂乃果さんも同様だったらしく、フソウに到着すると同時にパタリと反応が消えてしまったそうだ。
そして、私は……あの後すぐに、天睛の火道に戻ってきたんだけど……。
そこに、せつ菜ちゃんの姿はもうなかった。
千歌「せつ菜ちゃん……様子がおかしかったよね……」
それはわかっていたんだけど……私もウルトラビーストのもとへ急行しなくちゃいけなかったし、完全にテンパってしまっていた。
意識して、使わないようにしていたZ技まで使っちゃったし……。
千歌「せつ菜ちゃんに悪いことしちゃったな……」
結果として、私がダリアの方に行く意味はなかったわけだし……。
まあ、どちらにしろ放っておくわけにはいかなかったけど……。
千歌「今度会ったら、ちゃんと謝らなくちゃ……! そんでもって、せつ菜ちゃんが満足出来るまで、バトルに付き合ってあげよう!」
私はそう心に決めて──天睛の火道を後にし、もう一つの目的地に飛ぶことにした。
🍊 🍊 🍊
──ローズシティ、ローズジム。
真姫「はい、ルガルガン」
千歌「ありがとうございます、真姫さん」
私はローズシティの真姫さんのもとへ訪れていた。
理由はもちろん、ルガルガンを手持ちに戻すためだ。
真姫「ルガルガン、どこも異常なく健康だったわ」
千歌「はい、ありがとうございます!」
心身共に問題もないそうで、これで抜けたルカリオの穴も埋まったし、一安心。
真姫「そうだ、千歌……」
千歌「なんですか?」
真姫「最近、せつ菜に会ったりした……?」
千歌「え!?」
ちょっとタイムリーな名前が出てきて、思わず驚きの声をあげてしまう。
- 966 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/15(木) 02:49:57.43 ID:J+r4F7N00
-
真姫「……会ったの?」
千歌「え、えっと……まあ……その……バトルを申し込まれたんですけど……急用で中断することになっちゃって……」
真姫「……そう」
千歌「でもでも、今度会ったらせつ菜ちゃんの気が済むまでバトルするつもりなんで!」
真姫「そう……。……そうしてあげてくれると嬉しいわ」
千歌「はい! ……っと、もうこんな時間……早く帰らないと……」
彼方さんが今日は何かと振り回されて、疲れただろうからって、ご馳走を振舞ってくれると言っていたし、みんな待っているはずだ。
千歌「それじゃ、真姫さん! ありがとうございました!」
真姫「ええ。気を付けて帰りなさいね」
千歌「はーい!」
私は元気よく返事して──ムクホークに乗り、コメコの森を目指すのでした。
………………
…………
……
🍊
- 967 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:27:23.32 ID:eLOLjL7n0
-
■Chapter048 『決戦! クロユリジム!』 【SIDE Yu】
侑「歩夢! リナちゃん! 見えてきたよ!」
「イブィ♪」
歩夢「うん!」
リナ『やっと到着だね!』 ||,,> ◡ <,,||
侑「うん! クロユリシティ!」
「ブイブイ♪」
歩夢「結局ローズから、ここまで来るのに2日も掛かっちゃったね……」
侑「ちょっとクリスタルレイクでのんびりしすぎたからね……あはは」
──クリスタルケイヴで夜の虹を見たあと、私たちは洞窟で話していたとおり、再びクリスタルレイクまで登り、湖面の夜空を鑑賞。
ついでに朝日に照らされて輝くクリスタルレイクの時間まで起きて、クリスタルレイク三景をしっかり見た。
……そんな夜更かしをした結果、その日私たちが起き出したのは、昼下がり頃……。
もともと、クリスタルレイクからクロユリシティに行くのにも、16番道路と18番道路の2つの道路を経由しなくちゃいけないこともあって、どうやってもその日のうちにクロユリに到着するのは無理だった。
そんなこんなで、私たちはローズを発ってから、次の町にたどり着くまで2日間掛かってしまったというわけだ。
歩夢「でも、クリスタルレイク……すっごくキレイだったから、見られてよかったかな……えへへ」
侑「ふふ、そうだね♪ 夜の虹も、湖面の夜空も、朝日の湖も、最高だったよ!」
「イブィ♪」
歩夢「うん♪」
リナ『思い出に残る経験が出来たみたいで、私も嬉しい! リナちゃんボード「ハッピー」』 ||,,> ◡ <,,||
クリスタルレイクでは本当に良い経験が出来た。
そして、そんな経験を経て、たどり着いたここクロユリシティでの目的はもちろん──
侑「さぁ……! 今からジム戦だ!」
歩夢「頑張ってね、侑ちゃん! イーブイも♪」
侑「任せて!」
「イブィ♪」
リナ『侑さん! 頑張ろうね! 私も全力でサポートする! リナちゃんボード「ファイト、おー!」』 ||,,> 𝅎 <,,||
侑「うん! よろしくね、リナちゃん!」
いざ、クロユリジムへ!
- 968 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:36:07.96 ID:eLOLjL7n0
-
🎹 🎹 🎹
クロユリは非常に自然豊かな町で──雰囲気としては、林の中に点々と民家が建っている、そんな印象を受ける町だ。
侑「なんだか、今まで来た町とは全然印象が違うね……」
リナ『クロユリは、自然を大切にする町だからね。むしろ、自然の中に住まわせてもらってるって考え方みたい』 || ╹ᇫ╹ ||
歩夢「人口も少ないんだよね。……確か、オトノキ地方の町の中だと……今はヒナギクよりも少ないんだっけ……?」
リナ『うん。地方の中では、住んでる人が一番少ない町のはずだよ』 || ╹ᇫ╹ ||
侑「でも、この町は強いトレーナーが多いんだよね! 住んでる人ほとんどがトレーナーらしいよ!」
歩夢「そうなの?」
リナ『これだけ自然に囲まれてると、町中でも野生のポケモンが出るからね。そういう環境で暮らしてると自然とポケモントレーナーとして戦えるようになってるみたい』 || ╹ ◡ ╹ ||
そして、そんな町で生まれ育った強者……それが、オトノキ地方最強のジムリーダー・英玲奈さんだ。
侑「英玲奈さんと戦えるなんて……想像しただけでときめいちゃうよ……!」
リナ『ときめくのはいいけど、油断しないでね』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||
侑「大丈夫大丈夫! バトルは全力でやるから!」
みんなで話しながら、林の間を抜けていくと──間もなくクロユリジムが見えてきた。
侑「よし……たのもー!!」
ジムの扉を押し開けて入る。
すると、ジムの中央で、目を瞑って待っている人が一人。
もちろん──
侑「ほ、本物の英玲奈さんだ……!」
英玲奈「……挑戦者か」
侑「は、はい! 侑って言います!」
英玲奈「私はクロユリジムのジムリーダー・英玲奈だ。ジムバッジはいくつだい?」
侑「5つです!」
英玲奈「わかった。難しい言葉は必要ないな。自らを語るよりも、お互いポケモン勝負をした方が早いだろう。バトルスペースにつくといい」
侑「は、はい!」
噂通りのストイックな感じ……! なんかドキドキしてきちゃった……!
英玲奈「使用ポケモンは4体。全て戦闘不能になった時点で決着だ。構わないね?」
侑「はい! よろしくお願いします!」
私はボールを構える。
英玲奈「クロユリジム・ジムリーダー『壮烈たるキラーホーネット』 英玲奈。さぁ、存分に戦おう」
私と英玲奈さん、両者が同時にボールを放って──バトル、開始です!!
- 969 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:38:24.87 ID:eLOLjL7n0
-
🎹 🎹 🎹
英玲奈「行け! ヘラクロス!」
「──ヘラクロッ!!!」
英玲奈さんの1番手はヘラクロス。
私の1番手は、
侑「ドロンチ! 初陣だよ!」
「ローンチ」
ドロンチだ。
英玲奈「……頭に乗せたタマゴは降ろした方がいいんじゃないか?」
侑「え? あ、そうだった……! ドロンチ、タマゴこっちに頂戴!」
「ローンチ…」
侑「そんな不機嫌そうな顔しないで! バトル中だけだから! ね?」
「ローンチ…」
渋々渡してくれたタマゴを受け取る。
侑「歩夢! バトル中、預かってて!」
歩夢「あ、うん」
セコンドスペースにいる歩夢にタマゴを預けて、大急ぎでバトルスペースに戻る。
侑「し、失礼しました!」
英玲奈「いや、構わない。それでは、始めようか」
「ヘラクロ!!!」
リナ『ヘラクロス 1ぽんヅノポケモン 高さ:1.5m 重さ:54.0kg
一直線に 敵の 懐に 潜り込み たくましい ツノで すくい上げ
投げ飛ばす。 ものすごい 怪力の 持ち主で 自分の 体重の
100倍の 重さでも 楽に ぶん投げる。 甘いミツが 大好き。』
リナちゃんの解説を聞きながら考える。
このマッチアップは悪くない。肉弾戦主体のヘラクロスだけど、ゴーストタイプのドロンチなら多くの攻撃を透かせる。
英玲奈「ヘラクロス!! “メガホーン”!!」
「ヘラクロッ!!!」
侑「ドロンチ! まずは飛ぶよ!」
「ローンチ!!」
ツノを下げて、前傾姿勢で突っ込んでくるヘラクロスに対して、ドロンチはフワリと浮き上がる。
侑「とにかく、空中戦で行こう!」
「ローンチ!!」
英玲奈「なるほど、悪くない作戦だ。だが、ヘラクロスにも翅はあるぞ!」
「ヘラクロッ!!!」
ヘラクロスが翅を広げて、飛び立ち──ツノをドロンチに向けたまま、突っ込んでくる。
侑「“かえんほうしゃ”!!」
「ローンチッ!!!!!」
- 970 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:39:18.63 ID:eLOLjL7n0
-
真正面から突っ込んでくるドロンチに向かって、火炎で迎撃する。
当たり前だけど、むしタイプのヘラクロスはほのおタイプに弱い。
翅があるから、空中まで追ってくることは出来るけど、地上と違って踏ん張りが効かない分、パワーも落ちる。
遠距離から弱点の技を選んで立ち回れば、ヘラクロスは攻略出来るはずだ……!!
だけど、
英玲奈「ヘラクロス!! 突っ込め!!」
侑「え!?」
英玲奈さんは怯むことなく、ヘラクロスを突っ込ませてくる。
“かえんほうしゃ”の中を真正面から突っ切り──
「ヘラクロッ!!!!」
「ロンチッ!!!?」
ドロンチの首元辺りにツノを突き立てる。
侑「ドロンチ!?」
英玲奈「畳みかけろ!!」
「ヘラクロッ!!!!」
ヘラクロスは、怯んだドロンチの上に回り込み──
英玲奈「“10まんばりき”!!」
「ヘラクロッ!!!!!」
真上から、思いっきりツノを振り下ろして、
「ロンチッ!!!?」
ドロンチを地面に向かって叩き落とす。
「ロン、チッ…!!!」
ドロンチは下方に吹っ飛ばされながらも、地面スレスレで体勢を立て直して、どうにか再び飛行に移行する。
侑「とにかく、距離を取らなきゃ……!」
地面スレスレを飛びながら逃げるドロンチに向かって、再びヘラクロスが、ドロンチの真上に並ぶようにして、追いかけてくる。
侑「く……追いかけてくる……! なら、“りゅうのはどう”!!」
「ロンッ!!!」
飛行しながら、体を捻って真上を向き、口から“りゅうのはどう”を発射した──直後、ヘラクロスの姿が急に掻き消えた。
侑「え、消え……!?」
「ロンッ!!?」
ヘラクロスを見失って、動揺する私とドロンチ。
その直後、
- 971 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:40:47.08 ID:eLOLjL7n0
-
英玲奈「“つばめがえし”!!」
「ヘラクロッ!!!!」
「ロン、チッ!!!?」
いつの間にか、真横に回り込んでいたヘラクロスがツノを叩きつけて、ドロンチを吹っ飛ばした。
消えたんじゃない……! “つばめがえし”で急に軌道を変えられたから、一瞬見失ったんだ……!
「ロ、ロンッ…!!!」
侑「ドロンチ……!!」
さすがに飛行を維持出来ず、地面に墜落するドロンチ。
器用に尻尾を振るいながらバランスを取って、すぐに体勢を復帰させるけど、
「ヘラクロッ!!!!」
ヘラクロスはもうすでにドロンチの眼前に迫っていた。
英玲奈「“じごくづき”!!」
「ヘラクロッ!!!」
「ロンッッ!!!!!!!」
ヘラクロスのツノが、ドロンチの胸部に突き立てられ、その勢いでドロンチはジムの壁まで吹っ飛ばされた。
──ドンッと大きな音を立てて、壁に叩きつけられるドロンチ。
侑「ドロンチ……!!」
「ロ、ロン…」
侑「……ありがとうドロンチ、戻って」
ドロンチ戦闘不能……。私はドロンチをボールに戻す。
──全く手も足も出なかった……。
パワーもスピードもテクニックも、どれも一級品だ。
これが、最強のジムリーダー……英玲奈さん……。
英玲奈「……確かに、ヘラクロス相手に近接戦を挑まないようにする立ち回りは悪くない。定石と言ってもいいだろう」
侑「……」
英玲奈「が、この私に対して、そんな消極的な戦い方で勝てると思っているなら、随分と舐められたものだな」
侑「……!」
そうだ……私はチャレンジャーなんだ……。安全安心な勝ち方なんて、最初から考えちゃいけない。
ジム戦用に使用ポケモンのレベルを合わせてくれているとはいえ、相手は百戦錬磨の最強のジムリーダー。
定石での戦いを仕掛けてくる相手への対策だって、知り尽くしているだろうし、私が見聞きした程度で知っている作戦なんかじゃ通用しなくて当然だ。
私が今やるべきことは、教科書通りの試合運びなんかじゃない……!
侑「……英玲奈さんの想像を超えた戦いをしなくちゃ……!」
英玲奈「……ふ。……さぁ、次のポケモンを出したまえ」
侑「はい! 行くよ、ライボルト!!」
「──ライボッ!!!!」
ボールから飛び出すと同時に、ライボルトが走り出す。
- 972 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:42:29.93 ID:eLOLjL7n0
-
侑「“ニトロチャージ”!!」
「ライボッ!!!!」
ライボルトは加速しながら赤熱し、ヘラクロスの周囲をイカズチのように走り回る。
そして、周囲を走り回りながら、
侑「“ほうでん”!!」
「ライボッ!!!!!」
全方位から、電撃を浴びせる。
「ヘラクロッ…!!!」
英玲奈「ヘラクロス、怯むな!! “じならし”!!」
「ヘラッ!!!!」
ヘラクロスが勢いよく四股を踏むと──グラグラと地面が揺れ、
「ラ、ライボッ!!?」
ライボルトが揺れでバランスを崩し、足をもつれさせる。
英玲奈「そこだ!! “メガホーン”!!」
「ヘラクロッ!!!!」
侑「……っ!! “でんじふゆう”!!」
「ライボッ!!!」
ライボルトは咄嗟に浮遊し、ヘラクロスの突撃を間一髪で躱す。
英玲奈「なるほど、それなら足をもつれさせても関係ないな! だが、無防備に浮いたら隙だらけだぞ!!」
「ヘラクロッ!!!」
ヘラクロスが再び翅を開いて、ライボルトに飛び掛かってくる。
英玲奈「“インファイト”!!」
「ヘラクロッ!!!」
侑「組みつかせちゃダメだ!! “オーバーヒート”!!」
「ライボォッ!!!!」
「ヘラクロッ…!!!」
近距離で決しようとしてきた、ヘラクロスを全方位に発される熱波で押し返す。
だけど、隙だらけなのはそのとおりだ。
侑「“でんじふゆう”解除!!」
「ライボッ!!!」
自分に纏わせていた電磁力を解除して、地に戻る。
英玲奈「“10まんばりき”!!」
「ヘラクロッ!!!!」
またしても突っ込んでくるヘラクロス。
“ほうでん”程度じゃ怯まない気迫で突っ込んでくる。
なら……!!
- 973 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:46:33.99 ID:eLOLjL7n0
-
侑「“ライジングボルト”!!」
「ライボッ!!!!!」
「ヘ、ヘラクロッ!!!!?」
ヘラクロスの足元から──電撃が立ち上って、ヘラクロスを感電させる。
強烈な電撃がヘラクロスの足を完全に止める。
英玲奈「!? 威力が大きすぎる!? ……! まさか、さっきの“ほうでん”は攻撃のためだけじゃない……!!」
そのとおり……! フィールド全体に“ほうでん”しまくっていたのは、攻撃のためだけじゃない!
バトルフィールド内を“エレキフィールド”状態にするためだ……!
リナ『“ライジングボルト”は“エレキフィールド”下だと、威力が倍以上になるよ!』 || > ◡ < ||
感電し、完全に足が止まったヘラクロスに向かって──
侑「“かえんほうしゃ”!!」
「ライボォーーー!!!!!」
火炎を噴き付けた。
「ヘ、ヘラクロォ…!!!!」
足が止まったヘラクロスには、さっきのように炎を突っ切る突進力もない!!
これで、決着かと思った、そのとき、
英玲奈「ヘラクロス!! “こんじょう”を見せろ!!」
「──ヘラクロォッ!!!!!」
侑「!?」
「ライボッ!!!?」
ヘラクロスが雄叫びをあげながら──ライボルトに突っ込んできた。
ヘラクロスは前傾姿勢になり、ライボルトの腹下に大きなツノを滑り込ませる。
侑「しまっ!?」
英玲奈「“メガホーン”!!」
「ヘラクロッ!!!!」
──ブンと風を切る音と共に、
「ライボッ!!!!?」
ライボルトは勢いよく、打ち上げられた。
侑「ライボルト……!!」
英玲奈「少々肝を冷やしたが……“かえんほうしゃ”は悪手だったな。“やけど”したお陰で“こんじょう”が発動出来たよ」
侑「…………」
“こんじょう”は状態異常になると、攻撃力が爆発的に上昇する特性だ。
英玲奈「さぁ、ヘラクロス。落ちてきたところを狙い撃ち、に……?」
- 974 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:47:24.41 ID:eLOLjL7n0
-
英玲奈さんは上を見上げて、目を見開いた。
何故なら──上空に大きな雷雲が出来ていたからだ。
ライボルトは、空気中の電気をたてがみに集めて、雷雲を作り出すポケモンだ。
英玲奈「しまった!? ヘラクロス、防御を──」
侑「もう遅いです!! “かみなり”ッ!!」
「ライボォォォッ!!!!!!!!」
天空からの“かみなり”はヘラクロスの1本ヅノ目掛けて、轟音を立てながら、迸る。
空気の爆縮で、ジム内を雷轟が響き渡り──
それが晴れた頃には、
「ヘ、ラク、ロ…」
“かみなり”に撃たれて丸焦げになったヘラクロスが、地に伏せっていた。
「ライボッ!!!」
そして、再び“でんじふゆう”で着地の衝撃を緩和しながら、ライボルトが地面に降り立った。
侑「やったー!! ナイスだよ、ライボルト!!」
「ライボッ!!!」
英玲奈「……やられたな……さっきの“かえんほうしゃ”はわざと“こんじょう”を発動させるためのものだったか」
侑「えへへ……はい!」
ヘラクロスの特性は“こんじょう”、“むしのしらせ”、“じしんかじょう”の3種類。
その中でも、“むしのしらせ”は少なくて、“こんじょう”か“じしんかじょう”が圧倒的に多い。
ただ、相手を倒したときに自分のパワーを上げる特性の“じしんかじょう”なら、ドロンチを倒した時点でパワーアップしていないとおかしい。
となると、十中八九“こんじょう”だと当たりを付けていた。
英玲奈「“こんじょう”を発動させたのは……“メガホーン”で少しでも、高く打ち上げて欲しかったからか」
侑「はい! 天井に近ければ、一気に電荷を放出して、バレずに雷雲を即座に作り出せますから!」
英玲奈「土壇場で技の選択を間違えたようだな……。私もまだまだだ」
英玲奈さんはそう言いながら、ヘラクロスをボールに戻す。
確かに、“メガホーン”以外の技で来られていたら、この作戦は成功していなかったけど……“メガホーン”はヘラクロスの代名詞とも言える技。
ヘラクロスというポケモンが咄嗟に使うとしたら、きっと“メガホーン”だって自信があった。
英玲奈「なら、こいつはどうだ……! 行け、アイアント!!」
「──アントーーー!!!!」
英玲奈さんが2匹目のポケモン──アイアントを繰り出す。
アイアントは飛び出すと同時に、ものすごいスピードで、ライボルトへと迫ってくる。
侑「は、速い……!? “10まんボルト”!!」
「ライボッ!!!!」
高速で迫ってくるアイアントに向かって──バチバチと音を立てながら、電撃が迸る。
侑「よし……! 当たった……!!」
- 975 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:50:43.32 ID:eLOLjL7n0
-
相手が速かったから少し焦ったけど、いくら速いといっても電撃以上のスピードではない。
でも……電撃が直撃したはずの場所に──アイアントの姿はなかった。
侑「!?」
消えた──わけない……!!
侑「ライボルト!! “でんじふゆう”!!」
「ライボッ!!!!」
英玲奈「よく気付いた!! でも、遅い!!」
英玲奈さんの言葉と同時に──
「アーーーントッ!!!!!」
ライボルトの足元の地面から、アイアントが勢いよく飛び出してきて、空中に逃れようとしていたライボルトの前脚に噛みついた。
侑「ぐ……! ライボルト! “ほうで──」
英玲奈「“シザークロス”!!」
「アントッ!!!!」
「ライボォッ…!!!!」
こちらが攻撃で引きはがす前に、アイアントが鋭い顎で、ライボルトを切り裂いた。
「ラ、ライ…」
侑「戻って、ライボルト……!」
ライボルト、戦闘不能だ……。
英玲奈「“あなをほる”にすぐに気付いたのには驚いたよ。普通は焦ってしまって、なかなか判断出来ないんだがな」
……それでも、回避するんだったら、私はもっと早く判断しなくちゃいけなかった。
いや……反省は後だ……! 切り替えなくちゃ……!
侑「イーブイ! 出番だよ!」
「イブィ!!!」
私の傍らで待っていたイーブイが、フィールドに足を踏み入れる。
英玲奈「さぁ、もう一度だ、アイアント!!」
「アントーーー!!!!!」
アイアントが今度はイーブイ目掛けて、猛スピードで飛び出してくる。
でもスピードには、スピードで張り合っちゃダメだ……!
侑「イーブイ、“いきいきバブル”!」
「イブィ!!!」
イーブイの全身からぷくぷくと泡が立ち、それがフィールド上に漂い始める。
英玲奈「……! アイアント、止まれ!」
「アントーー!!!!」
英玲奈さんは、漂う泡を見て、アイアントを停止させた。
- 976 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:52:29.59 ID:eLOLjL7n0
-
英玲奈「見慣れない技だな……だが、当たっていいものではなさそうだ。とはいえ、そんな動きの遅い泡では攻撃技とは言い難いな。狙いが他にあるな?」
侑「…………」
まずい、一瞬で看破された……。
もしイーブイの技でアイアントを倒すとしたら、“めらめらバーン”を直撃させるしかない。
でも、“めらめらバーン”は直接攻撃だし、素早いアイアントに狙って当てるのは至難の業だ。
そのため、“いきいきバブル”の泡を設置して、うまく誘導しようと思ったけど……さすがにこっちの思惑通りには動いてくれなさそうだ。
英玲奈「……ふむ、来ないか。なら、“あなをほる”だ。アイアント」
「アントーーー!!!!」
アイアントが地面に潜っていく。
英玲奈「これなら、地上にいくら技が設置されていても、足元から攻撃出来るから問題ないな」
侑「…………」
ど、どうにかしなくちゃ……!
努めて平静を装ってはいるものの、こっちは作戦らしい作戦を思いついていない。
何か策を──いや、とりあえず……!
侑「“みきり”!!」
「ブイ!!!!」
「──アントーーー!!!!」
足元から飛び出すアイアントの攻撃を見切って躱す。
攻撃を躱されると、アイアントはまたすぐに地面に潜ってしまう。
英玲奈「なるほど。それなら、そちらも攻撃は食らわないと言うことだな。だが、ジリ貧じゃないか? “みきり”は何度も使える技じゃないぞ」
そう、そのとおりだ。
連続で使えば成功率も下がるし……何より、この技はPPも多くない。
あくまで一時凌ぎにしかならない。
侑「“みきり”!」
「イブィッ!!!!」
「──アントッ!!!!」
侑「み、“みきり”!!」
「イ、イブィッ!!!!!」
「──アントーーーッ!!!!!」
英玲奈「さぁ、そろそろ苦しいんじゃないか?」
本当に策を考えないと、もう数回ほどで避け切れずに攻撃が直撃する……どうしよう……!
フィールド内は気付けば穴ぼこだらけだし……。
侑「ん……?」
……この穴、使えないかな……?
侑「イーブイ! “すくすくボンバー”!」
「! イブィ!!!」
イーブイがブンと尻尾を振るうと、樹がニョキニョキと生えてくる。
- 977 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:55:02.64 ID:eLOLjL7n0
-
侑「樹の上に避難!!」
「イブィッ!!!」
「アントーーーッ!!!!」
地面から飛び出してくるアイアントをギリギリで回避して、樹上に逃げる。
英玲奈「む……また、面妖な技を……」
侑「イーブイ! 穴を狙うよ!」
「イブィッ!!!!」
そして、樹から大きなタネを──アイアントが掘った穴目掛けて落とす……!
“すくすくボンバー”のタネが次々と、“あなをほる”の入り口を塞ぐように落下する。
英玲奈「……なるほど、自分たちは樹上に退避し、さらにアイアントの動きを制限するために穴の口を塞ぐというわけか」
侑「…………」
もちろん、それだけじゃない。この技は“やどりぎのタネ”だ。
そんなの初見でわかる人なんて……。
英玲奈「ただ、私にはこの面妖な技が、それだけの技のようには思えない」
侑「……!?」
英玲奈「“タネばくだん”のようなものか……いや、それならとっくに爆発させているだろう。……なら、“やどりぎのタネ”のようなものか……?」
う、嘘でしょ……!? どんだけ、勘がいいの!?
英玲奈「……どうやら“やどりぎのタネ”だと言うのは、図星のようだな」
侑「!?」
英玲奈「さっきから、ポーカーフェイスをしているつもりかもしれないが……君は考えていることが顔に出るタイプのようだね」
侑「ぅ……」
リナ『確かに侑さんは表情豊か』 || ╹ ◡ ╹ ||
歩夢「──侑ちゃんのそういうところ、私は大好きだから、大丈夫だよー!!」
侑「そう言ってくれるのは嬉しいけど、この場合フォローになってないってー!!」
歩夢もリナちゃんも、たぶん本気で言ってくれているんだろうけどさ……!
英玲奈「凡そ、穴の中で“やどりぎのタネ”のツタを伸ばして、捕まえようという魂胆だろう」
私は目を逸らす。
英玲奈「だが、無駄だよ。アイアントは岩石をも噛み砕く顎で、複雑に入り組んだトンネルを作ると言われている。いくら掘った穴にツタを張り巡らされても──常に新しい穴を掘り続けていれば問題ない」
侑「…………」
英玲奈「それに……君たちは、どうして樹上なら安全だと思い込んでいるんだ?」
侑「え?」
「ブイ?」
次の瞬間──急に樹がグラリと傾き始めた。
侑「な……!?」
ハッとして、樹の根本を見ると──アイアントが樹の根本を齧って伐採している真っ最中だった。
- 978 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:55:52.48 ID:eLOLjL7n0
-
「イ、イブィィィ!!!!」
傾く樹からイーブイが振り落とされ、
──ズシンッと、音を立てながら樹が横倒しになる。
侑「っ……! イーブイ、平気!?」
朦々と土埃の立つフィールドに向かって声を掛けると、
「イ、イブィ〜」
鳴き声が返ってくる。どうやら、無事なようだ。
英玲奈「さぁ、今度こそ逃げ場はないぞ」
侑「……それはお互い様です」
英玲奈「……何?」
侑「確かに、“すくすくボンバー”のタネは“やどりぎのタネ”です。でも──私たちは“やどりぎのタネ”で捕まえようとしてたんじゃない」
──土煙の晴れた先で、イーブイが“すくすくボンバー”のタネの前に立ち、
侑「“めらめらバーン”!!」
「ブイッ!!!」
そのタネに──自らの炎を着火した。
英玲奈「な……!」
侑「確かにツタの成長速度じゃ、地中のアイアントには追い付けません……でも、そのツタに引火した炎と熱から、逃げられますか!」
ツタに引火した炎は一気に穴の中で燃え広がり、仮にツタの長さが足りず炎が届かなかったとしても──穴が繋がっていれば、その熱は穴全体を蒸し焼きにする……!
「アーーーントーーーー!!!!?」
急な熱波に驚いて、穴から飛び出してきたアイアントに、
侑「そこだ……!! “めらめらバーン”!!」
「ブーーーイッ!!!!!」
「イアーーーントッ!!!!?」
今度は“めらめらバーン”を直接炸裂させた。
全身を炎に包まれながら吹っ飛んだアイアントは、
「ア、アイアン……」
大の苦手なほのおタイプの技によって、戦闘不能になったのだった。
英玲奈「く……戻れ、アイアント」
英玲奈さんがアイアントをボールに戻す。
英玲奈「……まさか、ほのおタイプの技まで持っているなんて予想外だ」
確かに、“相棒わざ”は初見だと対応が難しい。それは百戦錬磨の英玲奈さんでも例外ではなかったようだ。
……改めて、イーブイが“相棒わざ”を使えてよかった……。
- 979 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:57:10.66 ID:eLOLjL7n0
-
英玲奈「だが、ネタが割れれば、どうにでもなる……! 行け、メガヤンマ!」
「ヤーーンマッ」
英玲奈さんの3匹目はメガヤンマだ。
リナ『メガヤンマ オニトンボポケモン 高さ:1.9m 重さ:51.5kg
加速すると 衝撃波が 出るほどの 力強い はねを持っている。
アゴの 力は けたはずれ 高速で 飛んで すれ違いざまに
相手を かみちぎるのが 得意。 尻尾の はねで バランスを とる。』
相手はむし・ひこうタイプのメガヤンマ。それなら……!
侑「“びりびりエレキ”!!」
「ブーーイッ!!!」
イーブイが電撃で攻撃する。相性良好、効果抜群の技だ……!
が、
「ヤンマ──」
メガヤンマは一瞬で掻き消える。
侑「よ、避けられた!?」
英玲奈「“みきり”だ。やはり、まだ隠していたようだね」
しまった……読まれた……!?
英玲奈「さっきも言ったが、ネタが割れてしまえば、なんてことはない」
メガヤンマは──ブーン、ブーンと音を立てながら、どんどん“かそく”していく。
侑「まずい……!! これ以上“かそく”されたら、手が付けられなくなっちゃう……!? イーブイ、“いきいきバブル”!!」
「ブーイッ!!!!」
空中に向かって、ぷくぷくと泡を散布する。
さっきみたいにこれで、動きを制限出来れば……!!
が、
英玲奈「“ソニックブーム”!!」
英玲奈さんの指示と共に、音速の衝撃波がフィールド上に浮いた泡を片っ端から割っていく。
英玲奈「タネが割れればなんてことはないと言っただろう!」
侑「び、“びりびりエレキ”!!」
「イッブィッ!!!!!」
英玲奈「もう、メガヤンマは“かそく”しきった……! 当たらんよ!」
侑「ど、どうしよう……!? もう、速すぎて姿が見えない……!?」
英玲奈「さぁ、さっきの仕返しだ!! “きりさく”!!」
──超加速したメガヤンマがイーブイを切り付ける。
「イッブィッ…!!!!」
イーブイを吹っ飛ばす。
- 980 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 01:59:32.84 ID:eLOLjL7n0
-
侑「イーブイ!!?」
「イ、ィブ…!!!」
イーブイはフィールドを転がりながらも、どうにか立ち上がるけど……あのスピードから繰り出される攻撃だ。ダメージが尋常じゃない……!
もう何発も耐えられない……!
とにかく、あのスピードをどうにかしなきゃ……!!
メガヤンマ、メガヤンマの弱点、何か、何か……!!
でも、“かそく”しきったメガヤンマを止める方法なんて……!
侑「……そういえば……前、かすみちゃんが……」
もしかしたら、あれなら……? で、でも、メガヤンマ相手でも出来るの……!?
侑「いや……もう、やるしかない……!!」
──ヒュンヒュンと風を切る、メガヤンマ。
英玲奈「“むしくい”!!」
大顎を開けて突っ込んでくるメガヤンマに向かって──
侑「イーブイ!!! “しっぽをふる”!!! くるくる回してっ!!」
「イ、イブイ!!!!」
イーブイが背を向け、宙に向かって円を描くように、尻尾をくるくると回し始めた。
風を切る、メガヤンマは──
「──ヤン」
イーブイに噛みつく直前で、ビタッと空中で静止した。
英玲奈「なんだと!?」
侑「ホントに止まった!?」
リナ『なんで侑さんが驚いてるの!?』 || ? ᆷ ! ||
英玲奈「メガヤンマ!! 惑わされるな!!」
「ヤンマッ」
侑「今だ、イーブイ!! 飛び乗って!!」
「イッブィッ!!!」
イーブイは、一瞬動きを止めたメガヤンマの背中に、飛び乗ってしがみつく。
──直後、メガヤンマは再び“かそく”を開始し、飛行を再開する。
イーブイを乗せたまま、超スピードで風を切り始める。
英玲奈「く……! 振り落とせ!!」
侑「イーブイ!! 放しちゃダメだよ!! そのまま、“めらめらバーン”!!」
「ブーーーーイーーーッ!!!!!!」
イーブイの雄叫びと共に、空中に猛スピードで飛ぶ炎の塊が現れる。
「ヤーーーンマーーー!!!!!!」
背中の上から直接炎で焼かれたメガヤンマは火だるまになり、
- 981 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:00:20.71 ID:eLOLjL7n0
-
「ヤンマァァァァァァ……!!!!!!」
「ブィィィィィ!!!!?」
イーブイを背中に乗せたまま、フィールドに墜落した。
「ヤ、ヤン…マ…」
メガヤンマはもちろん戦闘不能。
イーブイは……。
「ブ、ブィ…」
よろよろと立ち上がるものの……もう、戦う力が残っているとは言い難かった。
侑「もう、大丈夫だよ、イーブイ……!」
私はイーブイに駆け寄って、抱き上げる。
侑「英玲奈さん、イーブイ……戦闘不能です」
英玲奈「……ああ、メガヤンマもだ。お互い戦闘不能。仕切りなおそうか」
侑「はい。ありがとう、お疲れ様、イーブイ」
「ブィ…」
今回イーブイはアイアントとメガヤンマを倒して、大活躍だった。試合が終わったらたくさん労ってあげないとね……。
私はイーブイを抱きかかえて、セコンドスペースへ走る。
侑「歩夢、イーブイのことお願い」
歩夢「うん、わかった」
歩夢にイーブイを預けて、バトルスペースに戻る。
侑「お待たせしました」
ボールを構えようとして、
英玲奈「ちょっと待ってくれ」
英玲奈さんからストップが入る。
侑「え? な、なんですか……?」
英玲奈「さっきメガヤンマを止めたのは……一体なんなんだ。あんな戦術見たことも聞いたこともないぞ……」
英玲奈さんはかなり困惑していた。確かにあんなこと試合中にする人、私も見たことない……。
侑「えっと……スクールにいたころ、かすみちゃ──……イタズラ好きな友達が、よくヤンヤンマの目を回す遊びをしてて……」
英玲奈「……確かにヤンヤンマのような“ふくがん”を持ったポケモンは、目の前で指を回されると、それが何かを認識するために本能的に動きを止める習性があるが……実戦で使うのは初めて見たぞ……」
そういう理由だったんだ……。さすがむしポケモンのエキスパートの英玲奈さんだ。
まあ、本音を言うなら、半ばヤケクソ気味だったけど……。メガヤンマでやったことなんかなかったし……。
- 982 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:01:02.98 ID:eLOLjL7n0
-
英玲奈「……ふむ。メガヤンマの視界について、もう少し研究をした方がよさそうだな……こんな弱点があるとは思わなかった」
侑「わ、私も驚いてます……」
英玲奈「とりあえず、メガヤンマのことはわかった。中断してしまって済まない。試合の続きに戻ろうか」
侑「あ、はい!」
気を取り直して、お互い最後のポケモンのボールを構える。
泣いても笑ってもこれが最後だ──両者のボールがフィールドに放たれた。
🎹 🎹 🎹
侑「行くよ! ワシボン!」
「ワッシャァ!!!」
英玲奈「行くぞ、スピアー!」
「ブーーーンッ!!!!」
英玲奈さんの最後のポケモンはスピアーだ。
対して私は、ここまで温存していたひこうタイプのワシボン。
相性的にはこっちが有利だけど──
英玲奈「スピアー、メガシンカだ!」
「ブーーーンッ!!!!」
英玲奈さんの“メガブレスレット”が光り輝き、
「ブゥーーーーンッ!!!!!!!」
スピアーのフォルムがより鋭角に、足も毒針に変わり、より攻撃的な姿へと変貌する。
リナ『メガスピアー どくばちポケモン 高さ:1.4m 重さ:40.5kg
両足も 毒バリに 変化。 足の 毒バリが 分泌する
毒は 即効性で 敵の 動きを 止めるために 使い
より強力に なった 尻の 毒バリで 止めを 刺す。』
英玲奈「スピアー!!」
「ブンッ!!!!」
英玲奈さんの声と共に──スピアーが目にも止まらぬスピードで突っ込んでくる。
そのスピードを乗せたまま、
「ブーンッ!!!!」
腕の針を突き出してくる。
侑「“ブレイククロー”!!」
「ワシャッ!!!!」
その針を上から押さえつけるようにして、爪を振るって、攻撃を逸らす。
英玲奈「ほう、防ぐか……!」
だけど、間髪入れず、
- 983 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:03:46.48 ID:eLOLjL7n0
-
英玲奈「“ダブルニードル”!!」
「ブーンッ!!!!」
両足の針が襲い掛かってくる。
侑「ワシボン!! 離脱!!」
「ワッシャァッ!!!!」
ワシボンは、押さえつけた針を踏み台の要領で反動にし、上昇──両足の針を間一髪で、回避する。
英玲奈「ふむ……メガスピアーの針の恐ろしさはわかっているようだな」
いくらこっちがタイプ相性で優っていても、相手はメガシンカしたポケモン。
パワーも毒の強さも普通のポケモンの比じゃないし、掠っただけで致命傷になりかねない。
だけど、もちろん逃げ回っているだけじゃ勝てるものも勝てない。
攻撃を捌きながら、確実に反撃をしないと……!
侑「急降下して、“ダブルウイング”!!」
「ワシャァァァァ!!!!」
空に離脱したワシボンはすぐに切り返すようにして、両翼を構えながら、スピアーに向かって急降下する。
が、
「ブーーーンッ」
スピアーは素早い軌道で、急降下してくるワシボンを回避する。
英玲奈「“はりきり”すぎだな! 軌道がわかりやすすぎて、当たらんぞ!」
侑「く……」
メガスピアーはパワーこそあれ、防御は薄いポケモンだから、当たりさえすれば勝機はあるのに……!
英玲奈「“ミサイルばり”!!」
「ブーーーーンッ!!!!!」
下方に飛んで行ったワシボンに向かって、撃ち下ろすように、スピアーの持つそれぞれの針から“ミサイルばり”が発射される。
侑「“エアスラッシュ”で迎撃!!」
「ワッシャァ!!!!」
ワシボンは身を捻り、上を向いて、空気の刃を“ミサイルばり”に向かって撃ち放つ。
が、“エアスラッシュ”が当たっても、“ミサイルばり”は軽く揺れる程度だ。
──相手の攻撃の威力がありすぎる……!!
侑「……! ワシボン、“ブレイククロー”!!」
「ワッシャァッ!!!!」
遠距離攻撃での相殺は無理だと踏んで、直接攻撃で受け流す作戦に切り替える。
「ワッシャァァッ!!!!」
1発目を爪でホールドするように受け止め──掴んだ“ミサイルばり”の反動を利用しながら、弧を描くようにして投げ返し、“ミサイルばり”同士を相殺させる。
英玲奈「いい対応力だ!! だが、全然手数が足りていないぞ!!」
- 984 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:08:57.76 ID:eLOLjL7n0
-
英玲奈さんの言うとおり、私たちが捌ききれたのは最初の2発だけで、
「ワシャッ!!!?」
3発目がワシボンの翼を掠り、それだけでワシボンはバランスを崩して、吹っ飛ばされる。
侑「ワシボン!?」
回転しながら、地面に落下したワシボンだが、
「ワシャァ…ッ」
咄嗟に爪で踏ん張りながら、羽ばたくことで、落下の衝撃をギリギリまで殺す。
だけど、相手の攻撃はそれでもまだ続いている。さらに追撃を掛けるように迫る、残り2発の“ミサイルばり”。
侑「“がんせきふうじ”っ!!」
「ワシャァッ!!!」
思いっきり爪を突き立て、フィールドを砕き割り、それを飛んでくる針に向かってぶん投げる。
が──針は岩石をいとも簡単に穿ち、
「ワッシャァッ…!!!!!」
そのままワシボンに直撃した。その衝撃で、ワシボンがフィールドを転がる。
侑「ワシボンッ!!」
「ワ、ワシャァ…ッ…!!!」
ワシボンは気合いですぐさま立ち上がるけど──もう満身創痍なのは、見るからに明らかだった。
そこに向かって──
「ブーーンッ!!!!」
メガスピアーがお尻の針を突き立てながら、猛スピードで突っ込んでくる。
侑「!? ワシボン!! 避けて!?」
私の叫びも虚しく──避ける間もなく、隕石のように落下してきた、メガスピアーは一直線にワシボンを串刺しにした。
侑「そ、そんな……」
圧倒的だった。圧倒的なメガシンカの前に、手も足も出なかった……。
──私が諦めかけたそのとき、
「ワッシャァァァ…!!!」
ワシボンの雄叫びが響く。
侑「!」
私はワシボンの声にハッとなって顔をあげると──
英玲奈「ほう……なかなかのガッツだな」
- 985 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:12:50.44 ID:eLOLjL7n0
-
ワシボンは、体をひっくり返し、両足の爪を使って、どうにかメガスピアーの突撃を受け止めていた。
それも間一髪。ワシボンの目と鼻の先には針の切っ先がある。
英玲奈「だが、これで終わりだ!! “ダブルニードル”!!」
「ブーーーンッ!!!!」
メガスピアーが両腕の針をワシボンに向かって、突き立て──た、瞬間。
「ワシャァッ!!!」
ワシボンは“ダブルニードル”を足蹴にして、離脱する。
侑「ワシボン……!」
英玲奈「まだ、そんな力が残っていたか……! “みだれづき”!!」
至近で繰り出される連続攻撃だけど、
「ワシャッ!!!! ワシャァァッ!!!!」
ワシボンは爪を、翼を、嘴を振るって、針を弾く。
もちろん、そんな超近距離で猛スピードの連打を完全に捌ききることなんて不可能だ。
逸らしきれなかった針が、翼を掠めて羽根が散り、力負けした爪がひび割れ、掠った頭に傷が付く。
でも、それでも、何度も、何度も、何度も何度も何度も、どれだけ針が襲い掛かってきてもワシボンは諦めない。
ずたずたに引き裂かれても、ワシボンは戦うのをやめない。
「ワッシャァァァァァ!!!!!」
もう策なんて何一つ残ってない。もはや、ただ我武者羅に抵抗しているだけだ。
英玲奈「その気合い、嫌いじゃない──だが、戦う意思を見せるなら、こちらも攻撃を止めることは出来ないぞ!!」
「ブーンブーーーンッ!!!!!!」
「ワッシャァァァァァァァ!!!!!!!」
──見ていられなかった。私はあまりに圧倒的な力で傷つけられていくワシボンを見ていられず、
侑「もういいっ!! ワシボンっ!! これ以上、戦わなくていい!!」
そう叫んだ。
侑「英玲奈さん!! もうやめてください!! 私、降参し──」
「ワッシャァァァァァァァアァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
侑「!?」
私の言葉を遮るように、ワシボンがジム内に劈くような、大きな声で鳴いた。
もう、ボロボロでそんな大きな声が出せるはずないのに。
なんで、そこまでするの……?
どうして、そこまでボロボロになってまで、戦ってくれるの……?
考えたけど……そんなの、簡単な話だった。
──ワシボンだって……負けたくないからに決まってんじゃん……!
「ワッシャァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
- 986 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:13:35.81 ID:eLOLjL7n0
-
スピアーの攻撃を捌きながら、ワシボンはもう一度大声をあげた。
今度は、私にぶつけるように。気持ちを示すように。
──指示を寄越せ!! まだ戦える!!
ワシボンはそう言っていた。
言葉は通じないはずなのに──確かにそう言っていた。
英玲奈「いい加減、倒れた方が身のためだぞ──」
侑「“はがねのつばさ”!!!」
「ワッシャァァァァァァ!!!!!!」
ワシボンは針の間を掻い潜り──メガスピアーの針に、鋼鉄の翼を叩きつけて対抗する。
英玲奈「……!」
侑「ワシボンッ!! 最後まで戦い切るよ!!」
「ワッシャァァァァ!!!!!!!!」
侑「“インファイト”!!!!」
「ワシャワシャワシャワシャァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」
防御を完全に捨て、全身を使って、メガスピアーの連撃に対抗するように、全力攻撃を叩きこむ。
英玲奈「その根性、大したものだな!! なら、これはどうだ!! スピアー!!」
「ブーーンッ!!!!」
メガスピアーは一瞬距離を取り、
英玲奈「“いとをはく”!!」
「ブーンッ!!!!!!」
「ワシャッ!!!!?」
口から、ワシボンを絡め取るように糸を発射する。
英玲奈「スピードが下がってなお、受け切れるものならやってみろ……!!」
「ブーーーンッ!!!!!!」
“いとをはく”で糸が絡みつき、体がうまく動かせないワシボンに向かって──今度こそ、トドメと言わんばかりに突っ込んでくるメガスピアー。
「ワッシャァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
──うん。わかってるよ。
どうなっても、諦めない。
だって──
侑「負けたくないのは──私も同じだからっ!!!」
「ワッシャァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」
私とワシボンの“まけんき”が同調した、その瞬間──
ワシボンの体が、眩い光に包まれた。
「ブーーーーンッ!!!!!!!」
突っ込んでくるメガスピアーに向かって──大きな爪を振り下ろし、
「──ウォォォォォーーーーーー!!!!!!!!!!!」
- 987 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:14:12.87 ID:eLOLjL7n0
-
雄叫びをあげながら──ウォーグルが、メガスピアーの頭を猛禽の爪で地面に押さえ付ける。
「ブ、ブーーーーンッ!!!!」
英玲奈「なっ!? この土壇場で進化だと……!?」
侑「行け、ウォーグル!!」
「ウォォォォーーーーーー!!!!!!!!!」
ウォーグルは大声をあげながら、メガスピアーの頭をがっちり掴んで──飛翔する。
英玲奈「く……!? まだ飛行する体力が残っているのか!? “どくづき”!!」
「ブ、ブーーーーンッ!!!!!!」
スピアーは捕まったまま、針を伸ばして、突き刺してくる──が、
「ウォォォォォォォーーーーー!!!!!!!!!」
ウォーグルは怯まない。
ジムの天井付近まで上昇し……そこから、一気に──地面に向かって切り返す。
侑「いっけぇぇぇぇ!!! “ブレイブバード”!!!!」
「ウォォォォォォォ!!!!!!!!!!!」
メガスピアーを掴んだまま、猛スピードで急降下し──地表スレスレで低空飛行に移行、
「ブ、ブブ、ブブブブブブ!!!!?」
メガスピアーを地面に擦り付けながら、飛行し──
「ウォォォ!!!!」
そのまま、メガスピアーもろとも壁に突っ込んだ。
2匹の衝突で、大きな音と共に、ジムが揺れる。
英玲奈「……!! スピアー!!」
立ち込める土煙と共に──フィールドが静寂に包まれた。
静寂の中、ゆっくり、ゆっくりと煙が晴れると──
「ウォォォォォ!!!!!」
「…ブ…ブーン……」
メガスピアーは、ウォーグルに頭を掴まれ踏まれたまま、戦闘不能になっていた。
英玲奈「…………よもやよもやだ……」
侑「……か、勝った……?」
英玲奈「……スピアー戦闘不能。私たちの負けだ」
そう言いながら、英玲奈さんはメガスピアーをボールに戻す。
私は、一瞬信じられなくて固まってしまったけど──すぐに実感が湧いてきて、
侑「やった、やったぁぁぁ!! ウォーグル!!」
フィールドのウォーグルに向かって駆け出す。
と、同時に──
- 988 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:15:26.83 ID:eLOLjL7n0
-
「ウォー……」
ウォーグルの身がゆらりと揺れ──崩れ落ちた。
侑「ウォーグル……!?」
ウォーグルは──完全に気絶していた。
英玲奈「恐らく、気力だけで、立っていたのだろうな……」
侑「ウォーグル……ありがとう……お疲れ様」
私は、気を失ったウォーグルを優しく抱きしめる。
リナ『何度も致命傷を受けてた……なんで、こんなに戦えたのか……私も見ていてよくわからなかった……』 || 𝅝• _ • ||
英玲奈「稀に……ギリギリの戦いの中で、強い意志を持ったポケモンが、常識では考えられないような力を発揮することがある……」
侑「……それを、ウォーグルが……」
英玲奈「そして、それを引き出すのは……トレーナーとの強い絆だと言われている。……負けてしまったが、すがすがしい気分だ。良いモノを見せてもらったよ」
そう言って、英玲奈さんは懐から──ソレを取り出した。
英玲奈「その強さ、認めざるを得ないだろう。“スティングバッジ”だ。受け取ってくれ」
侑「……はい!!」
私は死闘の末──6つ目のバッジ、“スティングバッジ”を手に入れたのでした。
🎹 🎹 🎹
──さて、ジム戦のあと、さすがにくたくただったし、ウォーグルたちをしっかり休ませてあげるために、宿で一晩過ごした私たちは、
侑「よし! みんなも回復してもらったし、ローズに戻ろっか!」
「イブィ♪」
歩夢「うん♪」
クロユリシティを発って、ローズシティに向かおうとしていた。
リナ『ちゃんとストレート突破だったし、ジム攻略競争は私たちの勝ちかもね!』 ||,,> ◡ <,,||
侑「あはは、だといいなぁ」
かすみちゃんの方もうまく行っているといいけど……。
そんなことを考えていると──prrrrrrとポケギアが鳴る。
歩夢「誰から?」
侑「えっと……あ、かすみちゃんからだ」
噂をすればなんとやらってやつかもしれない。
向こうもジムが終わって、報告のために連絡をしてきたのかもしれない。
- 989 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:19:57.11 ID:eLOLjL7n0
-
侑「もしもし? かすみちゃん?」
かすみ『侑先輩っ!!』
侑「わぁ!?」
ギアからかすみちゃんの大声が聞こえてきてびっくりする。
侑「ど、どうかしたの……?」
かすみ『侑先輩、た、助けてください!! しず子が、しず子が……!!』
侑「え……? な、なにかあったの!?」
かすみ『おっきな音がして、しず子がクマシュンを助けるために飛び出しちゃって……!! でもかすみん、飛べるポケモンがいなくて……!!』
侑「かすみちゃん、一旦落ち着いて!」
かすみ『で、でもでも、すぐに助けないとしず子が……!』
……ダメだ、完全にパニックを起こしてる。
侑「場所はどこ!?」
かすみ『ぐ、グレイブマウンテンですぅ……っ!』
侑「わかった……! 歩夢! 電話代わって!」
歩夢「え!? う、うん、いいけど」
歩夢にポケギアを投げ渡し、
侑「ウォーグル!」
「ウォーーー!!!!」
ウォーグルをボールから出す。
侑「歩夢!! ウォーグルの背中に乗って!」
歩夢「う、うん! わかった! ──かすみちゃん、とりあえず一旦深呼吸しよっか!」
歩夢もすぐに、かすみちゃんがパニックを起こしていることに気付いたのか、電話口でかすみちゃんを落ち着かせるように言葉を選びながら、ウォーグルの背に乗る。
侑「リナちゃん、バッグに入って!」
リナ『わかった!』 || ˋ ᇫ ˊ ||
侑「ウォーグル、飛ぶよ!!」
「ウォーーーーッ!!!!!」
飛び立つウォーグルの脚を掴んで、そのまま飛翔する。
侑「歩夢!! 振り落とされないようにね!!」
歩夢「う、うん!」
侑「リナちゃん、グレイブマウンテンまでガイドして!!」
リナ『了解!』
侑「行こう!」
「イブィ!!!」
何があったのかわからないけど……しずくちゃんのピンチなのは間違いない……!
待ってて、すぐに駆け付けるから……!!
- 990 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:21:42.41 ID:eLOLjL7n0
-
>レポート
ここまでの ぼうけんを
レポートに きろくしますか?
ポケモンレポートに かきこんでいます
でんげんを きらないでください...
【クロユリシティ】
口================== 口
||. |○ o /||
||. |⊂⊃ _回/ ||
||. |o|_____. ● | ⊂⊃| ||
||. 回____ | | | |__|  ̄ ||
||. | | 回 __| |__/ : ||
||.○⊂⊃ | ○ |‥・ ||
||. | |. | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ||
||. | |. | | | ||
||. | |____| |____ / ||
||. | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o ||
||. | | | | _. / : ||
||. 回 . |_回o | | : ||
||. | |  ̄ |. : ||
||. | | .__ \ : .||
||. | ○._ __|⊂⊃|___|. : .||
||. |___回○__.回_ _|‥‥‥: .||
||. /. 回 .| 回 ||
||. _/ o‥| | | ||
||. / | | | ||
||. / o回/ ||
口==================口
主人公 侑
手持ち イーブイ♀ Lv.55 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
ウォーグル♂ Lv.56 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
ライボルト♂ Lv.52 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
ニャスパー♀ Lv.44 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
ドロンチ♂ Lv.51 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
タマゴ ときどき うごいている みたい。 うまれるまで もう ちょっとかな?
バッジ 6個 図鑑 見つけた数:190匹 捕まえた数:7匹
主人公 歩夢
手持ち エースバーン♂ Lv.47 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
アーボ♂ Lv.46 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
マホイップ♀ Lv.41 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
トドグラー♀ Lv.38 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
フラエッテ♀ Lv.36 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
バッジ 3個 図鑑 見つけた数:192匹 捕まえた数:17匹
侑と 歩夢は
レポートに しっかり かきのこした!
...To be continued.
- 991 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:23:26.89 ID:eLOLjL7n0
-
■Intermission⛄
──ローズシティ・ニシキノ総合病院。
真姫「──いらっしゃい、理亞」
理亞「真姫さん……。ねえさまの顔を見るだけだから、面会に付き合ってくれなくても大丈夫なのに……。今忙しいって聞いたし」
真姫「まあね。事後処理でバタバタよ。……でも、今聖良は私がいないと面会出来ないの」
理亞「……え、どういうこと」
そんな話は聞いていない。
理亞「まさか、ねえさまの容態が悪化して……!?」
真姫「悪化は……してないわ」
理亞「なら、どうして……」
真姫「たぶん、見てもらった方が早い」
理亞「……?」
真姫「……いい加減、黙っているのも限界が近いしね」
理亞「……わかった」
何かがあったことは理解出来た。私は黙って、真姫さんの後を付いていくことにした。
⛄ ⛄ ⛄
──ねえさまの病室。
聖良「………………」
理亞「これ、どういうこと……」
真姫「……見たとおりよ」
理亞「見たとおりって……」
ねえさまは……目を開けたまま、ベッドに横たわっていた。
目は開いているのに……微動だにしない。
真姫「今の聖良は……心がないの」
理亞「心が……ない……?」
真姫「目も見えてる、耳も聞こえる、触れられたらそれに気付く。……でも、意思がない。心がないから、それ以上の反応は示さない。情感を持った行動もしないし、喋ることもない……」
理亞「……そっか」
真姫「……思ったより、落ち着いているみたいね」
理亞「……なんとなく、こういうことが起こってもおかしくないんじゃないかって……ずっと思ってたから」
真姫「……そう」
ねえさまは……神様を怒らせたのだから。
悪しき心で……ディアンシーに触れたから……。
- 992 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/12/16(金) 02:24:12.75 ID:eLOLjL7n0
-
理亞「神様の中には……罰を与えるときに人から心を奪う神様もいるって……希さんが前に言ってた」
真姫「……」
そう言いながら私は、病室の棚に置かれている──ピンクダイヤモンドの欠片に目を向ける。
真姫「……ねぇ、理亞」
理亞「なに?」
真姫「もし、ディアンシーが聖良の心を奪ってしまったんだとしたら……どうするの?」
理亞「……わからない」
私は静かに首を振った。
理亞「ねえさまには帰ってきて欲しい……。……だけど、ねえさまがしたことは許されないことだったのは、わかってるつもり。その上で、ねえさまの心を返してなんて……ディアンシーに向かって言っていいのか、わからない……」
真姫「理亞……」
理亞「まぁ……どちらにしろ、今はディアンシーに会う方法がないし……」
ルビィも、ディアンシーに会ったのは、3年前のあのときが最後だって言っていた……。
クロサワの祠の“やぶれた世界”へのゲートも気付いたら消滅してしまっていたと聞く。
そうなると、ディアンシーとコンタクトを取るのはほぼ不可能と言っても過言ではない。
理亞「……真姫さん」
真姫「なにかしら」
理亞「しばらく……ねえさまと二人にしてもらっていい? おかしなことしないって約束するから」
真姫「そんな約束しなくていいわ。好きなだけ一緒にいて大丈夫だから」
理亞「……ありがと」
真姫さんは私の肩を優しく叩くと、そのまま病室を後にした。
理亞「ねえさま……」
聖良「………………」
理亞「ねえさま……っ……」
病室の中では、無機質なバイタルサインの音と──私がねえさまを呼ぶ声だけが、静かに響いていた。
………………
…………
……
⛄
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