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侑「ポケットモンスター虹ヶ咲!」

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418 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 15:40:14.15 ID:pCSsxJZL0

 「…ロト」


それと同時にロトムが私の後ろに隠れる。

恐らく……ロトムに反応したのだろう。


しずく「あの……オハラ博士にお話がありまして……」

使用人「……そちらのポケモンについてですね。かしこまりました。こちらへ」


皆まで説明するまでもなく、奥に通してもらえる。

……やはり、このロトムは……。


しずく「行きましょうか」

 「…ロト」


ここまで来ると観念したのか、ロトムは逃げることなく、大人しく後ろを付いてくる。

メイドさんに案内され、奥の部屋の扉の前に辿り着くと、


使用人「こちらが、博士の研究室です」


メイドさんはそう説明しながら、扉をノックする。


女性の声『──入っていいわよ』


扉の奥から声が返ってきたのを確認すると、メイドさんは、


使用人「失礼します」


と言いながら、戸を開ける。すると中では金髪の女性が机に向かって何かの作業をしている真っ最中だった。


使用人「博士、お客様です」

女性「お客……? 特に約束はなかった気がするけど……」


そう言いながら振り返ったこの研究所の主──オハラ・鞠莉博士は私たちを見て、首を傾げた。


鞠莉「あら……あなたたちは確か……善子のところから旅立った子……よね?」

かすみ「かすみんたちのこと知ってるんですか!?」

鞠莉「ええ、簡単に教えてもらった程度だけど……。……あ、わたしは鞠莉。このオハラ研究所の所長よ」

しずく「私はしずくと言います。実は、オハラ博士に……」

鞠莉「ふふ、オハラ博士なんて堅苦しい呼び方しなくて大丈夫よ。マリーって呼んで?」

しずく「えっと……それじゃ──鞠莉博士にお聞きしたいことがあって……」

鞠莉「なにかしら?」

しずく「……出てきてください」


私が背後に声を掛けると、


 「…ロト」


ロトムが言われたとおり、前に出てくる。
419 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 15:43:41.31 ID:pCSsxJZL0

鞠莉「……!? ロトム!? あなたどこに行ってたのよ!?」

 「…ロト」

しずく「やはり……鞠莉博士のポケモンでしたか……」

かすみ「え? なになに? どーいうこと? ロトムってしず子のポケモンじゃなかったの?」


そういえば、かすみさんに説明するのをすっかり忘れていた。


鞠莉「……はぁ、ごめんなさい。しずく……だったわね? どこでこの子を?」

しずく「フソウ島の自動販売機で見つけました。ポケモンセンターで聞いたら、既に持ち主がいるとのことだったので……」

鞠莉「そうだったのね……。……ごめんなさい。わたしの手持ちが迷惑を掛けたみたいね」

しずく「いえ……持ち主のもとへ送り届けることが出来て何よりです」

鞠莉「ロトムのせいで何か困ったこととかなかった?」

しずく「あ、えっと……実は最初、ロトムと戦闘になって……そのときにポケギアが……」

鞠莉「なるほど……そういうことなら、ポケギアは弁償させてもらうわ。すぐ手配するから」

しずく「え!? そ、そこまでしていただかなくても……!」

鞠莉「いいえ、こんなんでもわたしのポケモンだから。責任は取らせて」


そんな鞠莉博士の言葉を受けてか、


 「ボ、ボクはしずくちゃんの手持ちロト」


ロトムがそんなことを言い出した。


しずく「は、はい……?」

 「ボクはもうしずくちゃんの手持ちロト!! マリーの手持ちには戻らないロト!!」

しずく「いや、えっと……」

鞠莉「ロトム。バカなこと言ってないで……」

 「しずくちゃんもボクが手持ちから抜けたら、すごく戦力が落ちるロト!!」

しずく「えぇっと……」


まあ、確かにレベルだけ見るなら、ロトムは群を抜いて高いけど……戦闘にはほぼ使っていなかったし……。


鞠莉「たぶん、その心配はないと思うわよ」

 「ロト…?」

鞠莉「しずくの手持ちから、強いエネルギー反応があるから」

しずく「え?」

鞠莉「さっきから、ここの機器が反応しているわ」


確かに鞠莉博士の目の前の機械が何やらランプを点滅させている。さらに──腰につけたボールが2つ。僅かにブルブルと震えていることに気付く。

メッソンとココガラのボールだ。

2匹をボールから出してみると、


 「メ、メソ…」「ピィィィ…」


2匹はブルブルと身を震わせながら、目を瞑っていた。


しずく「メッソン、ココガラ……どうしたの……?」
420 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 15:47:11.41 ID:pCSsxJZL0

目線を合わせようと、腰をかがめた瞬間──2匹はカッと眩い光を放ち始めた。


しずく「!?」

かすみ「こ、これって、キモリのときと同じ……!?」

しずく「進化の……光……!!」


進化の光に包まれたメッソンとココガラは──


 「──ジメ…」「──カァァァ!!!」

しずく「進化した……!」

鞠莉「経験値が溜まっていたのかもしれないわね。メッソンはジメレオンに、ココガラはアオガラスに進化したわ」

しずく「ど、どうしてわかったんですか!?」

鞠莉「この研究所はポケモンの道具や、それに関連した進化の研究をしているからね〜。ちょうどこのマシンが進化のエネルギーを観測検知するためのものなのよ」

しずく「な、なるほど……!」

鞠莉「見たとおり、しずくはトレーナーとしてちゃんと成長している。ロトム、あなたの出る幕はないんじゃないかしら?」

 「ぐ、ぬぬぬ…ロト」

鞠莉「意地張ってないで戻ってきなさい。いつまでもヒトサマに迷惑かけるんじゃありまセーン」

 「絶対にイヤロトーーー!!!!」


ロトムは大きな声をあげると共に、“でんきショック”で周囲に火花を散らせる。


かすみ「ち、ちょっとぉ!? 危ないじゃん!?」
 「ガゥガゥ!!!」

鞠莉「っ!? や、やめなさい、ロトム!?」


ロトムは放電しまくりながら、暴れまわったあと、


 「出て行けって言ったのはそっちロト!!!! 絶対マリーのところになんか戻ってやらないロトーーー!!!!」


そう捲し立て、室内から飛び出して行ってしまった。


鞠莉「ああ、もう……二人とも大丈夫?」

かすみ「は、はいぃ……なんともないですぅ……」
 「ガゥ」

しずく「…………」

鞠莉「しずく?」

しずく「え? あ、はい、なんともありません」

鞠莉「そう? ならいいけど……いや、良くはないか。……全くロトムにも困ったものね」

かすみ「というか、しず子なんであんなにバチバチしてたのに平然としてられるの……?」


かすみさんが電撃に驚いて身を屈めている間──私は立ち尽くしていた。

何故なら──ロトムは誰も狙っていなかったから。


しずく「…………」

鞠莉「ごめんなさい。昔から“なまいき”な子で……。あのボディ、しずくの図鑑よね?」

しずく「あ……はい」


そういえば、まだ自分の図鑑に入ったままだったことを言われて思い出す。
421 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 15:51:42.13 ID:pCSsxJZL0

鞠莉「あとで捕まえて図鑑から追い出すから……それまでは待っててもらえるかしら? ……お詫びと言ってはなんだけど、研究所内を好きに見てもらっていて構わないから」

かすみ「え、いいんですか!?」

しずく「すぐにロトムを追いかけないんですか?」

鞠莉「ちょっと、手が離せないことをやってる最中でね……。これが終わったらすぐに向かうから。本当にごめんなさい」

しずく「あ、いえ……! むしろ、そんな忙しいときにすみませんでした」


私はペコリと頭を下げる。


しずく「それでは……少しの間、研究所内を見学させてもらいますね」

鞠莉「ええ。何かあったら、所内にいる使用人に言ってくれればいいから」

しずく「わかりました。かすみさん、行こ」

かすみ「うん! この研究所、入り口だけでも可愛いポケモンがいっぱいいたから、見て回るの楽しみかも〜♪ 行こ、ゾロア!」
 「ガゥガゥ♪」


私はジメレオンとアオガラスをボールに戻しながら、鞠莉博士の部屋を後にする。


かすみ「さて……どこから見て回る?」


ノリノリなかすみさん。対して、私は、


しずく「……私は、ちょっとロトムを探してみるよ」


そう答える。


かすみ「え? でも、あとで博士が捕まえてくれるんでしょ?」

しずく「まあ、そうなんだけど……」


私はなんだか、ロトムの態度に少し引っかかりを感じていた。

……短い間とはいえ、一緒にいたから、情が湧いたというのもあるのかもしれない。


かすみ「何か気になるの?」

しずく「まあ、うん……ちょっと……だから、かすみさんは一人で見て回ってていいから──」

かすみ「なら、かすみんも一緒に探してあげる!」

しずく「え? いいの?」

かすみ「だって、気になるんでしょ? 二人で手分けして探した方がきっと早いし!」

しずく「かすみさん……ありがとう。それじゃ、お願いしていい?」

かすみ「任せて! 行くよー! ゾロア!」
 「ガゥガゥ!!」


かすみさんはゾロアと一緒に、元気よく駆け出して行った。

私もかすみさんに続くように、ロトムを探しにアワシマ内を歩き始める──



422 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 15:55:24.69 ID:pCSsxJZL0

    💧    💧    💧





……が、結論から言うと、かすみさんの助力はそこまで必要がなかった。

研究所から外に出て、真っ直ぐ行ったところにある浜辺に、


 「……ロト」


ロトムはいた。

ただ、かすみさんの姿は見えないので、恐らく今頃、違う場所を駆け回っているんだと思う。


しずく「ロトム」

 「ロト…しずくちゃん…」

しずく「本当に鞠莉さんのところには戻らないつもりなんですか?」

 「さ、最初からそう言ってるロト…!! 絶対に戻ってなんかやらないロト…!!」

しずく「なら、どうして──アワシマまで付いてきたんですか?」

 「ロ、ロト…!? だ、だって嫌がるボクをここまで連れて来たのはしずくちゃんロトよ!?」

しずく「……貴方が本気で抵抗したら、逃げるのなんて訳なかったんじゃないですか?」

 「……ロト」

しずく「でも、貴方は逃げませんでした」

 「……」


正直、途中から薄々気付いていたことだけど……ロトムは口で言うほど、“おや”のもとに戻ることにあまり抵抗していなかった。

私はいつでもどこでもロトムを捕まえられるような準備が出来ていたわけではないし、ロトムが本気で抵抗してきたら、恐らく私にもかすみさんにも止めることは出来なかっただろう。


しずく「本当は──鞠莉さんのところに戻りたいんじゃないんですか?」

 「……う」

しずく「う?」

 「う、うるさいロトーーー!!! ボクは絶対に戻らないロトーーー!!!!」


ロトムはそう大声をあげながら、海の上をピューンと飛び去って行ってしまった。


しずく「ロトム……」


どうして、あそこまで頑ななんだろうか。

『本当は戻りたい』というのは、そこまで外していない気がするのに……。

うーんと一人で考えていると──


 「ガゥガゥ!!!」
かすみ「こっちから、声が聞こえました!! ……って、しず子じゃん」

しずく「かすみさん……」


声を聞きつけたかすみさんが、こちらに駆けつけてくる。
423 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 16:00:35.23 ID:pCSsxJZL0

かすみ「ロトム、こっちにいなかった!? 今、ロトムの声が聞こえたんだけど!」

しずく「ああ、うん。海の方に飛んでいっちゃった」

かすみ「ええ!? しず子、捕まえるんじゃなかったの?」

しずく「うーん……強引に捕まえたいわけじゃないんだよね……」

かすみ「……? どゆこと?」


結局のところ、無理やり鞠莉さんのもとに戻されても、根本的な問題が解決していない気がする。

たぶん……ロトムは戻りたいと思っている気がする。だけど、それを頑なに拒否している理由がわからないとどうにもならないような……。

再び、考え出した矢先、


かすみ「──ひ、ひぃぃ!? な、なんか出てきた!?」

しずく「……え?」


かすみさんが急に悲鳴をあげ、私の腕にすがるようにしながら、海の方を指さす。釣られて、私も海の方に目を向けると──何かが海の中から這い出て来るではないか。


しずく「あれ……人……?」

かすみ「え……? 人……?」


かすみさんは目をぱちくりとさせながら、改めてその人影に目を向ける。


かすみ「……ホントだ……女の人だ」


冷静に見てみればなんてことはない。そこにいたのは、ウェットスーツを身に纏った女性だった。

紺碧のポニーテールから水をしたたらせながら、陸に上がってくる。


女の人「あれ……? もしかして、お客さん? 珍しいね、こんなところに……?」

しずく「えっと……私たち、鞠莉博士に……なんというか、ポケモンを届けにきたというか……」

女の人「鞠莉に? ……あ、もしかしてロトム?」

しずく「は、はい」

女の人「さっき、ロトムっぽい声が聞こえた気がして上がってきたんだけど……気のせいじゃなかったんだね」


どうやら、この女の人はある程度事情を知っている人らしい。


女の人「それで、これから鞠莉のところに行く感じ?」

しずく「いえ……博士とはさっきお会いしたんですが……」

女の人「? ……ってことは、結局また仲直り出来ずに逃げ出したってこと……? はぁ……相変わらずだなぁ……」

かすみ「相変わらず? じゃあ、あのロトムってよく脱走してたんですか?」

女の人「割と頻繁にね。……今回ほど、長くいなかったのは初めてだったんだけどさ」

しずく「鞠莉博士やロトムのことに詳しいんですね」

女の人「まあね。もうかれこれ10年以上の付き合いだから……鞠莉とも、ロトムともね」


博士やロトムと旧知の仲。この人だったら……もっと詳しい事情を知っているかもしれない。


しずく「あの……よかったら、ロトムのこと、詳しく教えてもらえませんか……?」

女の人「詳しく? それは別に構わないけど……よかったら、先に名前を教えてもらえるかな?」

しずく「あ、すみません……私はしずくと言います」

かすみ「かすみんはかすみんです!」

女の人「しずくちゃんと……かすみんちゃん……? 変わった名前だね?」
424 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 16:03:05.31 ID:pCSsxJZL0

女性は首を傾げる。


かすみ「かすみんはかすみんです!! かすみんちゃんじゃありません!!」
 「ガゥガゥ!!」

しずく「えっと……この子の名前はかすみさんです……」

女の人「ああ、そういうあだ名ね。了解」

かすみ「あだ名じゃなくて愛称……まあいいや」

果南「私は果南。ここで海洋調査をしてるんだ」

かすみ「研究所の人ですか? ……じゃあ、博士の助手ってこと?」

果南「助手……とはちょっと違うかな。鞠莉みたいな研究目的の調査とはちょっと違うというか……まあ、趣味みたいなもんかな?」

かすみ「へー……いろんな趣味があるんですね」

しずく「それで、果南さん……ロトムのことなんですけど」

果南「ああ、そうだったね。何が聞きたいの?」

しずく「どうして、ロトムは……ここを飛び出して行ってしまったんですか?」

果南「鞠莉とケンカしたんだよ。えっとね……」


果南さんは事の顛末を話し始めた。



──────
────
──


鞠莉「──ロトム!! あなたなんてことしてくれたの!?」


怒声が研究所内に響き渡ってきて、私は「またか」と思いながら、手を止めて、鞠莉の研究室に赴く。

鞠莉の研究室のドアを開けると同時に、


 「!! 果南ちゃん助けてロトーー」


ロトムが飛び付いてくる。


果南「おとと……鞠莉、またやってんの……?」


ロトムを受け止めながら、溜め息混じりに言うと、


鞠莉「今度という今度は許さないわ……! 果南、ロトムをこっちに渡して!!」


鞠莉は肩を怒らせながら、こちらに迫ってくる。


果南「何があったのさ……」

鞠莉「ロトムが環境再現装置の電力を勝手に食べちゃったのよ!! お陰で半年掛けた研究が一瞬でパーよ!」

果南「……なるほどね」


確かに、ここしばらく鞠莉はこの研究に付きっ切りだったし、怒るのもわからなくはない。
425 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 16:04:45.69 ID:pCSsxJZL0

果南「ロトム、どうしてそんなことしたの?」

 「ロト…」

鞠莉「どうせ、ロクな理由じゃないわよ! いつものしょーもないイタズラに決まってるわ!」

果南「鞠莉、決めつけるのは……」

 「…そんなんだから、善子ちゃんも花丸ちゃんも研究所を辞めちゃうんだロト」

鞠莉「んなっ!? ひ、人が気にしていることを……!!」

 「優しくしないとボクもいなくなっちゃうロト」

鞠莉「別にいいわよ! むしろ、いない方が研究が捗って清々するわ!」

 「!? それでも“おや”ロト!?」

鞠莉「そんなに嫌なら、好きに出ていきなさいよ!」

 「い、言ったロトね〜!? もうマリーなんて知らないロト!!」

鞠莉「でも、出ていくなら図鑑ボディは置いていきなさいね? それはあなたのものじゃないから」

 「上等ロト!!! こんなマリーのチューンしたポンコツボディ、こっちから願い下げロト!!!」

鞠莉「はぁ〜!?」

 「マリーのバーカバーカ、ボクがいなくなって寂しくなっても知らないロトからね〜!!」


ロトムは捨て台詞を残し、図鑑ボディーから飛び出して、研究所を飛び出していった。


果南「はぁ……鞠莉、これ何回目……?」

鞠莉「……知らない」

果南「いいの? ロトム、どっか行っちゃったよ?」

鞠莉「どうせ、半日くらいしか持たないわよ。根性無しなんだから」

果南「まぁ、別にいいけどさ……」

鞠莉「……しばらく、外で頭を冷やせばいいのよ!」


──
────
──────



果南「ってことがあって……」

しずく「それでフソウまで……」


海を渡っての移動だから、結構時間も掛かっただろう。

だから、空腹を満たすために、自販機で電気を食べていたわけだ。

そして、それを邪魔しようとした私に襲い掛かってきた、と……。


果南「ただ、鞠莉も言い過ぎたって反省はしててさ。むしろ、何日も戻ってこないから心配してたんだよ。迷子ポケモンとして届け出を出すか迷ってるくらいだったし」

かすみ「そう考えると鞠莉博士は優しいですねぇ。かすみんだったら半年も頑張ったことを台無しにされたら、絶対に許せませんよ!」

しずく「かすみさんがそれ言うの……?」


イタズラ常習犯で年がら年中叱られていたのに……。


果南「まあ……あれで、鞠莉はロトムに甘いところもあるから」

かすみ「そうなんですか?」

果南「何せ、あのロトムは鞠莉にとっての初めてのポケモンだからね」

しずく「初めてのポケモン……」
426 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 16:07:30.32 ID:pCSsxJZL0

私にとってのマネネ、かすみさんにとってのゾロアと同じような、昔からの友達のポケモンということらしい。


果南「ただ、最近はケンカしてばっかだったからね。……付き合いが長すぎて逆にって感じかな。昔はロトムと一緒にイタズラしてばっかりで、鞠莉のご両親も手を焼いてたくらいなのになぁ……」

かすみ「え、鞠莉博士も、一緒にイタズラしてたんですか!?」

果南「そりゃもう……イタズラのスケールがデカすぎて、ダイヤなんかよく泣かされてて……。っと……これはダイヤから言うなって言われてたんだった。今のなしで」

しずく「昔は本当に仲良しだったんですね」

果南「うん。名コンビって感じだったよ」

かすみ「大人になって、だんだん考えが合わなくなっちゃったんですかねぇ……」

果南「ロトム自体ゴーストタイプだし、人を驚かせたり、イタズラするのが好きなところがあるからね。感性は子供の頃の方が近かったのかもしれないなぁ」

しずく「……」


私は思わず、腰につけたマネネのボールに触れる。

マネネも人の真似をしたがる、少し子供っぽい、種族の気質がある。

そして、かすみさんも同様、


かすみ「? どしたの、しず子? かすみんの顔見つめて?」
 「ガゥ?」


ゾロアもイタズラ好きの子供のような気質だ。

私たちも大人になるにつれて、相棒たちと気持ちが離れて行ったりしてしまうのだろうか。

それは少し……いや、すごく寂しいことのような気がする。


しずく「どうにか……してあげられないかな」


少なくとも、本人たちの価値観がすれ違っているだけで、決して仲違いがしたいわけじゃないだろうし……。


果南「まあ、人間とポケモンだと心の成長の仕方が違うってことなのかもね……」

かすみ「でも、あのロトム、人の言葉を喋りますよね?」

しずく「あのロトムがというか……機械に入ったロトムは人の言葉を喋ることが出来るだけだよ、かすみさん」


ガラルに1度でも行ったことがあればわかることだけど、あの地方ではあちこちでロトムが生活をサポートしていて、喋る姿を見ることが出来る。

だから、あのロトムが喋ることもそこまで不思議なことではないはず。


果南「いや、鞠莉のロトムは特別だよ」

しずく「え?」

果南「ガラルとかで喋るロトムやロトミは、機械側にロトムの言葉を翻訳するプログラムが組み込まれてるらしいんだ。だけど、鞠莉のロトムはそういうプログラムを介さずに人の言葉を喋れる」

しずく「つまり、人の言葉を正確に理解してる……?」

果南「そういうこと。だから、図鑑ボディじゃなくても、音声の出せる機械ならどれに入っても喋れるんだよ」


……確かに、考えてみれば自動販売機やポケギアに、ロトムのための翻訳プログラムが組み込まれているとは考えにくい。

あまりに自然に喋るから勝手にそういうものなんだと思い込んでいたけど……どうやら、あのロトムは機械音声をちゃんと考え、人の言葉に組み立てて喋っていたということだ。


かすみ「もしかして……あのロトムって、めちゃくちゃすごい?」

果南「少なくとも、普通のロトムとは、ちょっと違うかな」
427 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 16:09:52.49 ID:pCSsxJZL0

人の言葉を解すポケモンは確かに存在する。ラプラスなんかは有名だし、それこそロトムも人の生活に密接故、頭の良いポケモンに数えられるだろう。

とはいえ、人語を完全に理解するのは普通のことじゃない。

人間だって、外国の言葉を習得するには、大変な労力が必要なわけで……。

どう考えたって、ロトムは最初から人の言葉がわかっていたわけじゃないだろうし、それはつまり──自らの力で習得したということだ。

多大な労力を払って。


しずく「どうして、そこまでして……」


ポケモンがそこまでする理由が私にはピンと来なかったけど、


かすみ「え? そんなの簡単じゃない?」


逆にかすみさんはすぐに理解出来たようだった。


かすみ「そんなの、人とお話ししたかったからに決まってるじゃん!」

しずく「……確かに」


そのお話ししたかった人って……どう考えても、


しずく「鞠莉博士と……お話しするために……」

果南「……そうだね」


鞠莉さんのために種族の壁を超えて、人の言葉を覚えたロトム。

そんな絆を持った人とポケモンが、すれ違ってしまうのは……有り体に言えば、なんだか嫌だった。


しずく「果南さん」

果南「ん?」

しずく「もう少し……詳しく教えてもらえませんか。ロトムと……鞠莉博士のこと」

果南「……そうだなぁ。それじゃ、鞠莉とロトムの出会いのこと、話すね。私も鞠莉から聞いたことまでしかわからないけど……──」





    💧    💧    💧





果南「──……ってわけで、ロトムは鞠莉のポケモンになったんだ」

かすみ「……なんだか、すごくドラマチックな話だった」

しずく「うん……」


果南さんから聞いた話は、鞠莉博士とロトムの結びつきを確かに感じられる素敵なお話だった。


かすみ「なんか、こんな話聞いちゃったら……かすみんも鞠莉博士とロトムに仲直りして欲しいって思っちゃいます……」

果南「まあね……。心の奥では、お互いのことを大事に想ってるのは間違いないんだよね」

かすみ「昔のことすぎて、忘れちゃったんでしょうか……」

果南「そうかもね……出来事としては覚えていても、気持ちはあのときと比べて薄れちゃったのかもね」
428 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 16:13:18.41 ID:pCSsxJZL0

なんだか、それもわかる気がした。

小さい頃大好きで毎日抱きしめて寝ていたぬいぐるみも、気付けばベッドの隅にあるインテリアになってしまったり。

大好きで一生遊んでいたいと思っていたおもちゃも、気付けば倉庫の中。

成長していく過程で、いろんなものを見て、知って、子供の頃、一番大切だったものよりも、さらに大切なものが見つかったり、好きなものが増えて、相対的に価値が薄まって行ったり……。

それは寂しいことであると同時に、成長しているということ。やむを得ず、そしてありふれた当たり前のこと。


しずく「…………」


でも、確かにあったことなんだ。ロトムと鞠莉博士の間には。確かにあった出来事で、大切な思い出で、大切な絆のはず。

だから、


しずく「……忘れないで欲しい」

かすみ「しず子……」

果南「そうだね。……でも、人は忘れる生き物だからさ」

しずく「なら……思い出させてあげましょう」

果南「え?」

かすみ「思い出させる……?」

しずく「ロトムにも、鞠莉博士にも、そのときの気持ちを思い出してもらいましょう。私に考えがあります」


私は二人に耳打ちをする。


果南「……なるほど」

かすみ「しず子らしいね! いいと思う!」

しずく「ただ、お二人にも協力していただくことになってしまいますが……」

かすみ「もう! 何、水臭いこと言ってんの! かすみんとしず子の仲でしょ?」

果南「ま、世話の掛かる幼馴染のためだからね。いいよ、私も協力するよ」

しずく「ありがとうございます! それと──ゾロアも協力してね?」

 「ガゥ?」


私はロトムと鞠莉博士のために、あることを実行するための準備を始める。





    💧    💧    💧





──その晩。


しずく「すみません果南さん……お家に泊めていただいてしまって」

果南「いいっていいって。アワシマって、鞠莉の研究所か私の家くらいしか寝泊まり出来る場所もないしさ」

しずく「ありがとうございます。お陰で集中して作業が出来そうです……!」


そんなに時間の余裕がないので、集中して早めに終わらせてしまいたい。
429 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 16:17:41.32 ID:pCSsxJZL0

かすみ「しず子、何か手伝えることある?」

しずく「うぅん、大丈夫だよ。かすみさんは先に寝ちゃってて?」

かすみ「でも……」

しずく「むしろ、明日は朝早くから覚えてもらうことになるから……早めに寝ちゃった方がいいと思う」

かすみ「……わかった。それじゃ、先に寝るね」

しずく「うん、おやすみ。かすみさん」

かすみ「おやすみ、しず子。ゾロア、行くよ」
 「ガゥ」


かすみさんが寝室に行くのを見送る。


果南「それじゃ、私も先に寝ようかな……しずくちゃんもあんまり遅くならないようにね」

しずく「はい。私も早めに終わらせて、すぐに寝るので」

果南「ん、そっか。おやすみなさい」

しずく「おやすみなさい」


果南さんも部屋を出ていき、残ったのは私一人。


しずく「よし……やるぞ」


気合いを入れて、机に向かおうとすると、


 「マネマネ!」


マネネが、ぴょんぴょんと跳ねながら机によじ登ってくる。


しずく「マネネ?」
 「マネマネ」


マネネは、机に転がっていたペンを持つと、小さな体でノートの端に線を書き始める。

恐らく私の真似をしているんだろう。


しずく「ありがとう、マネネ。手伝ってくれるんだね♪」
 「マネ♪」


お礼を言いながら頭を撫でてあげると、マネネはご機嫌な様子。

ニコニコ笑うマネネを見ていると、それだけで心がほっこりとする。

大好きなポケモンと何気なく触れ合う時間。この時間は失くしたくない。

もしかしたら私も、大人になったら……この気持ちを忘れてしまうのかもしれないけど……。


しずく「もし忘れちゃうんだとしても……思い出して欲しいよね」
 「マネ?」

しずく「うぅん、なんでもない」
 「マネ」


そのためにも、絶対に成功させなくちゃ……!

私は胸中で意気込んで、再び机に向かうのだった。



430 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/17(木) 16:18:22.49 ID:pCSsxJZL0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【アワシマ】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :   ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       ●‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口


 主人公 しずく
 手持ち ジメレオン♂ Lv.17 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      マネネ♂ Lv.16 特性:フィルター 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アオガラス♀ Lv.18 特性:はとむね 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      スボミー♂ Lv.15 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:103匹 捕まえた数:7匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュプトル♂ Lv.17 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロア♀ Lv.17 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      ジグザグマ♀ Lv.14 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニーゴ♀ Lv.16 特性:のろわれボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:93匹 捕まえた数:6匹


 しずくと かすみは
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2022/11/17(木) 19:34:59.01 ID:z/VaWhqHo
ポケモンSV発売記念
▽過去の自分を取り戻す生放送。

『ポケモンプラチナ金ネジキ
世界記録91連勝/一発勝負配信』
(18:31〜放送開始)

https://youtube.com/watch?v=Rf8uZtijqzo
432 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/11/18(金) 02:43:33.61 ID:gOIoLU6b0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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433 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:13:55.41 ID:/fdwqF8y0

■Chapter021 『ロトム 後編』 【SIDE Shizuku】





──翌日。時刻はお昼過ぎ。場所はアワシマ島内の浜辺。

ちょうど今、目の前でかすみさんが果南さんとポケギアで連絡を取り合っている真っ最中。


かすみ「しず子! 鞠莉博士は果南先輩が連れてきてくれるって!」

しずく「そっか、よかった……それじゃ、あとは私たちがロトムを見つけるだけだね」


こちらの準備は整った。あとは、ロトムを見つけるだけだが……当のロトムがなかなか見つからない。


かすみ「さっきから、島中歩き回ってるのに全然見つからないぃ……」

しずく「島はひととおり見て回ったし……外にはいないのかな……」

かすみ「もし海の上とかだったらどうしようもないよぉ……」

しずく「うーん……ずっと飛んでるのも疲れるだろうから、海の上ではないと思いたいけど……」

かすみ「ねぇ〜……しず子〜……ロトムの電波をビビビッとキャッチできる道具とかないの〜……?」

しずく「そんなものがあったらとっくに使って……。……あれ、そういえば……?」

かすみ「え、ホントにあるの……?」


よくよく考えてみれば、ロトムは今……私のポケモン図鑑に入っているから……。


しずく「かすみさんの図鑑で位置を調べられるんじゃ……」

かすみ「……あ! 言われてみればそうじゃん!」

しずく「なんか、前にもこんなことあったよね……」

かすみ「あ、あのときは知らなかっただけだもん!」


忘れていた今回は尚悪いような気もするけど……。まあ、忘れていた私も、人のことは言えないかな……。


かすみ「あ、結果出たよ! しず子!」

しずく「どこにいるかわかった?」

かすみ「えっと……ここ」


言いながら、かすみさんが図鑑の画面を見せてくる。

場所は──研究所の中だった。


かすみ「って、ロトム研究所内に戻ってるじゃん!?」

しずく「……でも、ずいぶん奥まった場所だね」

かすみ「とりあえず、行ってみよ!」

しずく「うん、そうだね」


私たちは地図の表示に従って移動を開始した。



434 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:15:44.37 ID:/fdwqF8y0

    💧    💧    💧





──辿り着いたそこは、研究所の地下の部屋。


しずく「ここ……倉庫かな……?」

かすみ「うぅ……埃臭い……」
 「ガゥゥ…」


いかにもな様相の倉庫だった。

長いこと人が訪れていないのだろうか、置かれているものは埃を被っている。

その中に、


 「…ロト」


ロトムはいた。大きな埃を被ったテレビの前で、止まったまま浮いていた。


しずく「ロトム、ここにいたんですね」

 「しずくちゃん…」

しずく「そのテレビ……もしかして……鞠莉博士と初めて出会ったときのテレビですか?」

 「? どうして、しずくちゃんがそのことを…?」


やっぱり、ロトムは……鞠莉博士のことを今でも……。

なら、尚更だ。


しずく「ロトム。来てください」

 「ロト…ボクは戻るのは…」

しずく「いいから。見せたいものがあるんです」

 「ロト…?」





    💧    💧    💧





ロトムを引き連れて、私たちは果南さんの家に戻ってきた。


果南「しずくちゃん。待ってたよ、ロトムは?」

しずく「はい、ここに」

 「ロ、ロト…果南ちゃん…」

果南「ロトム、中に入って待っててくれる?」

 「ロト…」


急な展開にロトムが動揺しているのがわかったけど、


しずく「ロトム。お願いします」
435 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:16:56.28 ID:/fdwqF8y0

私がお願いすると、


 「…わかったロト」


ロトムはそれ以上は何も言わず、中に入ってくれた。


果南「これで、準備は完了だね。……ごめんね、広い屋内ってここくらいしか用意できなくて」

しずく「いえ、十分です。──演じることは身一つあれば出来ますから。かすみさん、準備はいい?」

かすみ「もちろん! ゾロアも準備万端!」
 「ガゥガゥ!!」

しずく「それでは──オウサカ劇場……開演です!」





    ✨    ✨    ✨





鞠莉「……さて、何が始まるのかしら」


果南に割と強引に連れてこられて、待つこと数十分。

今、私が待たされている薄暗いコンテナ倉庫の中は、いつもの水上バイクやら小型船舶が運び出されて、随分と広々としている。

そこに簡素なパイプ椅子が2つ置かれていた。恐らく座って待っていろということだと思ったので、黙って座って待っているけど……。


鞠莉「いい加減、研究に戻りたいんだけど……」


そんな中、コンテナの入り口の方から──


 「…マ、マリー…」

鞠莉「……ロトム」


ロトムが中に入ってきた。

なるほど……何かはわからないけど、わたしとロトムに何かを見せたいらしい。


 「…ロト」

鞠莉「……ふよふよ浮いてないで、そこの椅子に降りたら?」

 「ロト…」

鞠莉「わたしたち……これから、何か見せられるみたいだから」

 「ロト…?」


困惑しながらも、ロトムが私の隣のパイプ椅子に図鑑ボディのまま降り立つ。

程なくして──急に目の前で強い光が点灯する。


鞠莉「まぶし……」


目を慣らしながら、ゆっくりとその光の方を見ると──


しずく「…………」

鞠莉「しずく……?」

 「しずくちゃん…?」
436 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:20:01.18 ID:/fdwqF8y0

そこにはしずくが立っていた。

光は“スポットライト”を当てるように彼女を照らしていた。

光源を追って上を見てみると──


鞠莉「Lanturn...?」


ランターンが、まさに“スポットライト”でしずくを照らしているところだった。

そんな中、


しずく『──はぁ〜ぁ……今日もこのおやしきの中ですごすのかぁ……』


しずくは急に大きな、通る声で喋り始めた。


しずく『毎日毎日……おやしきの中でたいくつ……。どうして、パパもママもわたしが外に出るのをゆるしてくれないのかしら』


これ……もしかして……演劇……?


しずく『まどの外には鳥ポケモンもいるけど……見てばっかりじゃ、やっぱりたいくつ……わたしも外であそびたい』
 『カァ〜〜カァ〜〜』


アオガラスがパタパタと飛んできて、屋内を軽く飛んだあと、捌けていく。


しずく『……でも、外に出たらおこられるしなぁ……。……はぁ、今日もおやしきの中をたんけんしようかな』


しずくはパントマイムをするように、ドアを開ける仕草をする。恐らく、登場人物は今部屋を出て、お屋敷の中を探検し始めたのだろう。

そして、そんなしずくの前に、


かすみ『お嬢さま〜探検ですか〜?』


メイド服に身を包んだかすみが現れて、声を掛ける。

……というか、あれ……わたしの使用人のメイド服じゃないかしら……。


しずく『うん。でも、もう2階も3階も4階も5階もたんけんしきっちゃったから……どこに行こうかな……』

かすみ『あとは〜……地下階くらいですかね』

しずく『地下か〜……うん、じゃあ今日は地下をたんけんしてみよ』

かすみ『いってらっしゃいませ。何かあったら呼んでくださいね』

しずく『うん。ありがとう』


しずくは再び歩き始める。程なくして、目的地にたどり着いたようだ。


しずく『ここが地下……何かおもしろそうなもの……あるといいな』


しずくは、ドアを開け、


しずく『うーん……なんにもないわね』


首を振りドアを閉め、他の部屋のドアを開けては、


しずく『ここにも……とくにおもしろそうなものはない』


また首を振って閉める。そんなことを何度か繰り返す。


しずく『……はぁ……ここには、わたしのたいくつをまぎらわしてくれるものは何もなさそう……』
437 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:20:52.88 ID:/fdwqF8y0

心底がっかりしたような溜め息を吐きながら──次のドアを開く。

すると、


しずく『わ、なにここ……!』


急にしずくが目を輝かせる。それと同時に──何やらガラクタらしきものが、しずくの目の前に運ばれてくる。

コンテナ内の端の方に目をやると……暗がりの中に薄っすらプルリルの姿が見えた。恐らく、プルリルの“ポルターガイスト”だろう。


しずく『すごいすごい! いっぱいものが置いてある!』


しずくは無邪気に笑いながら、ガラクタたちを手に取って、眺め始める。

手に取って、じーっと見つめたあと、首を傾げたかと思うと、それを置いて今度は別の物を手に取る。

そしてまた手に取った物に飽きたら、次の物を手に持ち、興味深そうに眺める。

そんな中で、


しずく『……! なにこれなにこれ!』


──ガラクタの中に、何かを見つけた。

しずくの台詞と共に──周囲のガラクタが、サーっと捌けて、“スポットライト”が彼女とその何かを照らす。


鞠莉「え……」

 「ロ、ロト…!?」


あれは──


しずく『もしかして……テレビ……かな? でも、すっごくおっきい……』


それは大きな大きなブラウン管のテレビ。ただ、そのテレビには見覚えがあった。

今でも研究所の倉庫にあるはずの……テレビ。


しずく『お部屋のテレビはもっと薄かったけど……後ろに何か入ってるのかな?』


しずくは画面を手で払ってみたり、軽く叩いたりしている。

すると次の瞬間──画面がブンと点き、


 『ロトロトトトトト!!!!!!』


甲高い鳴き声と共に──画面から激しい光が漏れ、甲高い鳴き声の中に耳障りな雑音が流れ出し、さらに周囲にバチバチと“でんきショック”が走る。

普通の子供だったら……いや、大人でも驚くような光景の中、しずくは──


しずく『わぁ♪ なにこれなにこれ!! すごいすごい!!』


大喜びしていた。
438 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:21:43.87 ID:/fdwqF8y0

しずく『これ、あなたがやってるの!?』

 『ロト…??』

しずく『もしかして、あなた……ポケモン!?』

 『ロトロトト』

しずく『えっと……なに言ってるのかよくわかんないけど、きっとポケモンなのよね!』

 『ロト? ロトト?』

しずく『わたしね、ポケモンとお話しするのはじめてなの!』

 『ロト』

しずく『あ……でも、わたしがポケモンとお話ししてるって、パパやママがしったら……おこられちゃうかな。もしかしたら、おいだしちゃうかも……』


しずくが心配そうに言っている場所に──


かすみ『お嬢さま〜? 今何か大きな音がしましたけど……』


少し離れた場所から、かすみが声を掛ける。


しずく『わ……! い、いけない……かくれてかくれて!』

 『ロト?』

しずく『見つかったらおこられちゃうから! おねがい!』

 『ロト』


しずくがそう言うと共に、テレビの光が消え、それと同時にかすみがしずくのもとに駆け寄ってくる。


かすみ『お嬢さま? 先ほどこちらから大きな音がしましたが……』

しずく『ごめんなさい、ちょっとつんであったものをくずしちゃって……』

かすみ『え、ええ!? お怪我はございませんか!?』

しずく『うん、だいじょうぶ、ありがとう。もんだいはないから、さがって平気よ』

かすみ『そ、そうですか……あまり危ないことはなさらないでくださいね』

しずく『はーい』


かすみが部屋から出ていくと。


しずく『もういいよ!』


しずくは再び、テレビに向かって話しかける。

すると、再びテレビの画面が映って、


 『ロト』


ポケモンが鳴き声をあげる。
439 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:22:59.95 ID:/fdwqF8y0

しずく『言うこときいてくれて、ありがと! ポケモンさん!』

 『ロト』

しずく『あなたはそのテレビをあやつってるんだよね?』

 『ロト?』

しずく『もし、いやじゃなかったら……テレビからでてきて、あなたのすがたを見せてくれないかしら?』

 『ロト』

しずく『わたしね! あなたとおともだちになりたいの!』

 『ロト』


しずくの言葉を聞くと、ポケモンはそのテレビから──飛び出した。


 『ロト』


小さな丸い体にとんがった頭頂部を持ち、体の表面に薄緑色のオーラのようなものを纏った、オレンジ色のポケモン──ロトムだった。


しずく『それが、あなたのすがたなのね!』
 『ロト』

しずく『お名前はなんて言うの?』
 『ロト』

しずく『ロト? ……ロトって言うんだ!』
 『ロト』

しずく『よろしくね、ロト! 今日からわたしとあなたはおともだちだよ!』
 『ロト』


かすみ『──お嬢さま〜? やっぱり、そこに何かいるんですか〜?』


しずく『わっ! 今日はこれいじょうここにいると、見つかっちゃうかも……。また明日くるから、ちゃんとここにいてね!』
 『ロト』

しずく『やくそくだよロト! また明日ね!』


そう言って、しずくは部屋から駆け出して行き、場面が暗転する。

そして、再び“スポットライト”がしずく一人を照らす。


しずく『──これが、わたしとロトの出会い。わたしはこの日を境に、毎日のように地下にある倉庫のロトに会うため、ここを訪れた。ロトはわたしが来るたびにその姿を現して、音と光と電気でわたしをもてなしてくれた。わたしもそれに応えるように、精一杯今日何があったか、どんなお勉強をしたかをロトに教えてあげた。毎日のお勉強で使っている教科書とか、好きなご本とかも持っていってたくさん読み聞かせたりして……。私自身、お勉強をしているうちに、目の前のポケモンの名前がロトじゃなくてロトムだと知ったときは、少しばつが悪かったけど……。でも、それを話したらロトムはおかしそうに笑っていた。それに釣られて、わたしもたくさん笑ってしまった。……ロトムと一緒に過ごす時間は、退屈なわたしの日常を一変させてくれた。……そんな日々がしばらく続いたんだけど……ある日、恐れていたことが起こった──』


しずくのいる室内に、一人の人間が入室してくる。


果南『しずく』

しずく『ママ? どうしたの?』


どうやら、果南は母親役らしい……。
440 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:25:22.64 ID:/fdwqF8y0

果南『貴方、最近地下倉庫によく行っているそうですね』

しずく『う、うん……』

果南『何をしているのですか?』

しずく『え、えっと……お、おそうじ?』

果南『……はぁ。……貴方、ポケモンと会っていますね』

しずく『!? 会ってない!! 会ってない!! ポケモンなんていないよ!』

果南『嘘を吐かない。パパに頼んで、もう倉庫内は調べてもらいました』

しずく『え!?』

果南『あの古いテレビ……ロトムが棲んでいたのですね』

しずく『え、いや……その……』

果南『貴方にはまだ、ポケモンは早いです。今後は倉庫には近づかないようにしなさい』

しずく『…………』

果南『返事は?』

しずく『……はい』

果南『よろしい』


それだけ伝えると踵を返して出ていこうとする母親。


しずく『ま、まって!』

果南『なに?』

しずく『ろ、ロトムは……どうするの……?』

果南『どうって……追い出すに決まってます』

しずく『お、おいだすって……! やめてあげて! あそこはロトムのおうちなの!』

果南『いいえ、ここは私たちの家ですよ』

しずく『……っ』

果南『あのね……ロトムはすごくイタズラ好きな、人に迷惑を掛けるポケモンなんですよ』

しずく『そ、そんなこと……ないもん……』

果南『いいえ、研究者のパパがそう言っていたんだから間違いないわ。そして、そんなポケモンと遊ぶのは貴方の教育にもよくない』

しずく『そんな……』

果南『……ロトムのことは忘れなさい』


最後にそう残すと、今度こそ母親は部屋から出て行った。


しずく『……ダメだよ』


しずくは絞り出すように言う。


しずく『ぜったいに……おいださせたりなんか、しない』


しずくが駆けだし、場面が暗転する。


しずく『ロトム!!』
 『ロト』

しずく『よかった……!! まだぶじだったんだね……!!』


そう言いながら、しずくは辺りにあるガラクタをドアの前に動かし始める。
441 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:26:22.08 ID:/fdwqF8y0

 『ロト…?』

しずく『あのね、このままじゃロトムがおいだされちゃうかもしれないの……だから、ここにろうじょうしよう!』
 『ロト』

しずく『ママったら、ひどいの……あなたはきょういくによくないって……だから、おいだすって……』
 『ロト』

しずく『あなたはイタズラ好きのわるいポケモンだって……そんなことないよね』
 『ロト』

しずく『うん……わたしの言ってることがわかる、かしこいポケモンだもんね。あのね、人のことばをりかいできるポケモンってすくないんだよ。だから、ロトムはきっとすっごくかしこいポケモンで、ぜったいきょういくにわるいなんてことないもん!』
 『ロト』

しずく『だから、わたしはそれをパパとママにわかってもらうまで、ここでろうじょうする!』
 『ロト』

しずく『ぜったい、ロトムをおいださせたりなんかしないからね!』
 『ロト』


そのとき──ドンドンドン!! と激しくドアを叩くような音が鳴り響く。


果南『開けなさい!! 開けて出てきなさい!!』

しずく『イヤ! ロトムがきょういくにわるいポケモンじゃないってわかってくれるまで、外に出ない!』

果南『聞き分けの悪い子ですね……こうなったら実力行使です』


──ガン!! 扉を叩く音がさらに強くなる。

恐らく何かしらのポケモンの力で扉を壊そうとしているのだろう。


しずく『……っ……だいじょうぶだよ、ロトム。わたしがロトムのことぜったいおいださせたりなんか、しないから……!』
 『ロト』


──ガンッ!! さらに扉を打ちつける音が大きくなる。

しずくは、


しずく『……だいじょうぶだよ……っ……』


ポロポロと涙を流しながら、ロトムを抱きしめていた。


 『ロト…』


でも、結局、扉が破られるのは時間の問題で──バァン!! という大きな音と共に、扉が無理やりこじ開けられたしまった。

そして、中に入ってくる母親。


果南『観念しなさい』

しずく『イヤ……!』

果南『理解して。その子は貴方にとってよくないポケモンなの』

しずく『そんなことないもん!! ロトムはわたしのことばをりかいできる、すっごいかしこいポケモンなんだもん!! きょういくにわるくなんかないもん!!』

果南『そう思っているのは貴方だけですよ。適当に相槌を打つように鳴いているだけで……ロトムは貴方の言葉なんて理解していません』

 『ロト…』

しずく『そんなこと……ないもん……』
 『ロト…』


そのとき、抱きしめられたロトムが急にしずくの腕をすり抜けて──


しずく『あ!? ロトム……!?』
442 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:27:10.91 ID:/fdwqF8y0

──ヒュン、とテレビの中に入り込んでしまった。

そして、次の瞬間──ブンとテレビが点き、


 『…………マ…………リー…………』

しずく『え……?』


──名前を呼んだ。


果南『え……』

しずく『ロトム……?』

 『………………マ、リー…………ナカ……イ、デ…………』


ブツブツの機械音声で、ロトムが、


 『…………ナカ…………ナイ、デ…………』


ロトムが、喋っていた。


果南『嘘……』

しずく『ロトム……わたしのことば……わかるの……?』

 『…………ワカ……ル…………』

しずく『……うん……っ……』

 『…………ボ、ク…………マリー……スキ……イッショ、イタ……イ……』

しずく『うん……!』


しずくはその言葉聞いて、立ち上がり、


しずく『ママ! ロトムは、わたしのことば、りかいしてるよ!! これでも、この子はきょういくにわるいポケモンなの!?』

果南『そ、それは……』

しずく『ねぇ、ママ……おべんきょうもちゃんとする、言うこともちゃんときく……だから、ロトムを──わたしのおともだちを、うばわないで……』

 『マリー……トモダ、チ……』

果南『…………はぁ。わかりました……今回はママの降参です』


そう言いながら、母親は両手を挙げて降参するのだった。
443 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:28:19.47 ID:/fdwqF8y0

しずく『こうして、ロトムは──わたしの友達は、改めてこの家に迎えられることになりました。どうやら、ロトムは……わたしが持ち込んだ教科書や好きな本を見て、言葉を覚えていたらしい。パパも驚いていたけど……それ以外には考えられないって言っていたわ。世界には……稀に人の言葉を扱えるようになるポケモンがいるらしく、嘘か真か……ニャースが言葉を喋るなんてことがあったりなかったりするとか、そんなことも言ってたかな。……まあ、そんなことは置いておいて。……わたしはこうして、大切な友達と離れ離れにならずに済んだのでした』

しずく「──あれから、何年も経ってしまったと思います。……それでも、鞠莉さんにとって、ロトムは今も大切な友達なんじゃないですか? あのときの気持ちが消えてなくなったりなんて、してないですよね……?」

鞠莉「…………」
 「ロト…」

鞠莉「…………ロトム」
 「ロト…?」

鞠莉「……わたし、まだあなたに聞いてないことがあったなって」
 「聞いてないことロト…?」

鞠莉「どうして……装置の電気を食べたの?」
 「そ、それは…」

鞠莉「装置が止まったら、研究が止まること……わかっていたわよね。でも、どうして装置の電気を食べたの?」
 「…ロト」

鞠莉「怒らないから、聞かせて」
 「…………マリー…あの研究を始めてから、寝る間も惜しんで、頑張ってて…何度もうまくいかないって、すごく苦しそうで…だから、ボク…マリーがそんなに辛いなら…いっそ…って…」

鞠莉「…………そっか」


だから、“もうわたしが、これ以上苦しい研究をしなくてもいいように”装置を止めたんだ。


鞠莉「…………ごめんね、ロトム。わたし、あなたのこと……全然見てあげてなかった……」
 「…ロト」

鞠莉「本当は……イタズラしてくるのも、わたしが研究にかまけて、あなたの相手をしてあげなかったからだったって……気付いてた」
 「……」

鞠莉「ほんっとうに……酷い“おや”だね、わたし……っ……」
 「マリー…」

鞠莉「ごめんね……ロトム……っ……」
 「マリー…ナカナイデ…」


ロトムが──しずくの図鑑から飛び出して、わたしの頬にその身を摺り寄せてくる。


 「ロト、ロトトロト」
鞠莉「ふふ、今回は許してあげる……。でも、次からはちゃんと、言葉にして教えてね……?」

 「ロト、ロトロ、ロトトロトロト」
鞠莉「うん、これからは昔みたいに……いっぱいお話しして、伝え合おうね……」


果南「一件落着……みたいだね」

かすみ「やったね、しず子」

しずく「……うんっ」





    💧    💧    💧





──オハラ研究所。


鞠莉「はー……まさか、あんなことしてくるなんて思ってもみなかったわ……」

しずく「す、すみません……。ロトムと出会ったときの気持ちを思い出せば……仲直り出来るんじゃないかなって思って……」

鞠莉「……いいえ、むしろお礼を言わせて。ありがとう、しずく。……お陰で、初心を取り戻すことが出来た気がするわ」


そう言いながら、鞠莉博士はロトムを撫でる。
444 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:29:44.53 ID:/fdwqF8y0

 「ロト」
鞠莉「なんのためにポケモンの研究をしているのか……見失うところだったわ。人とポケモンがもっとよりよく付き合っていくために研究しているわたしが、ポケモンの気持ちをないがしろにしちゃいけないわよね……」

果南「ま、たまにはいい薬だったってことだね」

鞠莉「む……なんか果南に言われると、素直に反省出来ないかも」

果南「えーなんでさ」

鞠莉「だって、マリーとロトムの秘密を勝手に教えたの、果南でしょ」

果南「いいじゃん、減るもんでもないんだし」

鞠莉「はぁ……相変わらず大雑把なんだから……」


博士は果南さんの態度に呆れたように溜め息を吐く。


鞠莉「それにしても……しずく、あれ1日で考えたの? ポケモン演劇ってやつよね?」

しずく「は、はい! 私、スクールではポケモン演劇部に所属していたので……こうすれば、昔の気持ちを思い出してくれるんじゃないかと思って……」

かすみ「しず子はポケモン演劇部のエースだったんですよ!」

鞠莉「どうりで……素晴らしい舞台だったわ」

しずく「あ、ありがとうございます……!」

鞠莉「そういえば……あのロトム役なんだけど……」

かすみ「もっちろん、かすみんのゾロアですよ! ねー、ゾロア♪」
 「ガゥガゥ♪」

鞠莉「“イリュージョン”を応用して、ここまで出来るなんて大したものだわ」

かすみ「テレビを再現するのになかなか苦労しましたけど……本番前に実物を見られたからどうにかなりました!」
 「ガゥッ♪」


日々、学校の用具に化けて、イタズラを繰り返していたからこそ出来たであろうということは、今日は黙っておくことにしよう。

ゾロアには本当に助けられたわけだしね。


鞠莉「あと、あの機械音声……どうやって作ったの?」

しずく「えっと……かすみさんのポケモン図鑑の音声再生機能から、1文字ずつ……地道に録音して作りました」

かすみ「あれ、大変だったよね……間違えて違う部分録音しちゃってやり直しになったり……」

鞠莉「Oh...努力のタマモノデース……」


ある意味今回用意するものの中で、一番大変だったかもしれない……。

まあ、苦労した分、納得の行くものが出来てよかったけど。


鞠莉「ところで、しずく」

しずく「なんでしょうか?」

鞠莉「ロトムの懸念も一応払拭しておこうと思って」
 「ロト?」


そう言いながら、博士は──ボールを1個私に向かって差し出してきた。


しずく「えっと……これは……?」

鞠莉「今日のお礼……ってことで、受け取ってもらえないかしら。研究所のポケモンなんだけど。きっと戦力になると思うから」

しずく「い、いいんですか?」

鞠莉「むしろ受け取ってもらわないと、ロトムが納得してくれないわ」
 「ロト」

しずく「そういうことでしたら……!」


私は博士からボールを受け取り、すぐにボールを放って、外に出してみる──
445 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:30:54.43 ID:/fdwqF8y0

 「…キル」
しずく「このポケモンは……!? キルリア!!」

かすみ「わぁ、可愛い〜!!」

しずく「本当にいいんですか!?」

鞠莉「ええ、大切に育ててくれると嬉しいわ」

しずく「ありがとうございます!!」

かすみ「……なんか、しず子、いつにも増してテンション高くない?」

しずく「だって……! キルリアの進化系は、あのカルネさんの切り札のサーナイトなんだよ! この地方にはラルトスがあんまりいないから、手に入れられないと思ってたのに……! まさかこんな形で手に入るなんて!!」


期せずして、憧れの人の手持ちと同じポケモンを手に入れることが出来て、思わずテンションが上がってしまう。


鞠莉「それなら……一緒にこれも渡しておくわね」


鞠莉博士がさらに私に、“どうぐ”を2つ、手渡してくる。

一つは不思議な色をした珠。もう一つはブローチのようなものの中心に先ほどのよりも小さな珠が埋まったモノだ。


しずく「これは……?」

鞠莉「“キーストーン”と“メガストーン”よ」

しずく「え!? それってまさか……!」

鞠莉「ええ、メガシンカに使うためのアイテムよ。小さい珠が埋まっているのはメガブローチ。トレーナーが身に着けるもので、一回り大きい方の珠はサーナイトをメガシンカさせるための“サーナイトナイト”よ」

しずく「あ、ありがとうございます! こんな貴重な物を……!」

かすみ「えー!? しず子ばっかりずるいずるい!!」

鞠莉「もちろんかすみにも。はい」


そう言いながら、博士はかすみさんにも、“どうぐ”を手渡す。


鞠莉「かすみにはその“メガブレスレット”を。……“メガストーン”は、たまたまわたしが“サーナイトナイト”を持っていただけだから、かすみの手持ちに対応したストーンを探してもらうことになっちゃうけど……」

かすみ「いえ! “キーストーン”が貰えただけでも、かすみん大満足です!」

鞠莉「ふふ♪ それなら、よかったわ♪」

果南「ところで二人とも、次はどこに向かうの?」

かすみ「あー、えーっと……どこに向かうの?」

しずく「なんで、かすみさんが知らないの……。……えっと、またジムを巡るので、一旦ホシゾラに戻って、コメコ方面を目指すことになると思います」

鞠莉「それなら、ウチウラシティまでビークインで送ってあげるわ。宿の手配もしておくから、今日はウチウラシティに泊まるといいわ」

果南「アワシマに泊まるよりも、動きやすいだろうしね」

しずく「なにからなにまで……ありがとうございます」

鞠莉「気にしないで、世話になったのはこっちもだから。それじゃ、行きましょうか」

かすみ「はーい! よろしくお願いしまーす!」

しずく「お願いします」


私たちは、研究所を後にし、ウチウラシティへ──



446 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:31:49.00 ID:/fdwqF8y0

    💧    💧    💧





──ウチウラシティ。


鞠莉「それじゃ、二人とも気を付けてね」

果南「私たちは大抵アワシマにいるからさ。会いたくなったら、また来てよ」

しずく「はい、ありがとうございます。お世話になりました」

かすみ「次会うときはきっとメガシンカを使いこなしてますからね!」

鞠莉「ふふ、楽しみにしてるわ」


鞠莉博士と果南さんに挨拶をし……そして、最後に。


しずく「ロトム」
 「ロト」

しずく「短い間でしたし、迷惑も掛けられましたが……今思えば、楽しい旅路でした」
 「ロトト」

しずく「何度か助けられたこともありましたね。ありがとうございました」
 「ロト」

しずく「鞠莉博士とこれからも仲良くしてくださいね」
 「ロトト♪」


もう図鑑ボディもないため、人の言葉は喋っていないけど……なんとなく、何を言っているのかはわかる気がした。


しずく「それじゃ、かすみさん、行こっか!」

かすみ「うん! 旅の続きへ!」

しずく「まあ、とりあえず今から向かうのは宿だけどね……あはは」


フソウ島で出会ったロトムを無事“おや”である鞠莉博士に送り届け、また新たな目的地に向けて……私たちの旅は続くったら続く──



447 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/18(金) 14:32:54.80 ID:/fdwqF8y0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ウチウラシティ】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :   ||
  ||.  | |          ̄    |.       :   ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         ● .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口


 主人公 しずく
 手持ち ジメレオン♂ Lv.17 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      マネネ♂ Lv.17 特性:フィルター 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アオガラス♀ Lv.18 特性:はとむね 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      スボミー♂ Lv.15 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      キルリア♀ Lv.20 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:107匹 捕まえた数:8匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュプトル♂ Lv.17 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロア♀ Lv.19 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      ジグザグマ♀ Lv.15 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニーゴ♀ Lv.16 特性:のろわれボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:97匹 捕まえた数:6匹


 しずくと かすみは
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



448 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:44:31.11 ID:tV2B+qbY0

■Chapter022 『再会! ホシゾラシティ!』 【SIDE Yu】





侑・歩夢「「──お世話になりました!」」


早朝のコメコの森の中、二人でお礼を言いながら、頭を下げる。


エマ「もう、行っちゃうんだね……」

彼方「花陽ちゃんが戻ってくるまでゆっくりしてればいいのに〜……」

遥「お姉ちゃん、そんなこと言ったら侑さんたち、行きづらくなっちゃうよ。……私も寂しいけど」


エマさんも彼方さんも遥ちゃんも、名残惜しそうだけど……。


侑「二人で話し合って決めたので……。今は前に進もうと思います」

歩夢「ジムへの再挑戦は、旅の中でもっと強くなってからにしようって……」

侑「もちろん、歩夢と二人でね」

歩夢「うん♪」

リナ『二人ともすっかり仲直りしてくれて、私嬉しい。リナちゃんボード「ハッピー」』 || > ◡ < ||

彼方「まあ、そういうことなら仕方ないか〜……」


彼方さんは、そう言いながら肩を竦める。


侑「彼方さん、本当にありがとうございました。彼方さんのお陰で大切なことに気付くことが出来ました」

彼方「うんうん。これからも、その気持ちを忘れずに頑張るんだよ〜」

侑「はい! 遥ちゃんもいろいろありがとう!」

遥「とんでもないです! この先の旅も、頑張ってくださいね!」

侑「うん!」


私は二人から激励を貰い、感謝の言葉を返す。


エマ「歩夢ちゃん。疲れたときは、またコメコ牧場に来てね♪ いつでも大歓迎だから!」

歩夢「はい! また遊びに行きます!」

エマ「わたし、歩夢ちゃんはきっと、すっごいトレーナーになれると思ってるから……! 応援してるね!」

歩夢「えへへ……ありがとうございます……!」


歩夢もエマさんから激励を受けて、嬉しそうだ。

……さて、いつまでもこうしていたら、別れが名残惜しくて先に進めなくなっちゃう。


侑「穂乃果さんと千歌さんに、よろしく伝えておいてください」

彼方「うん、わかった〜。伝えておくよ〜」


結局、私が滞在している間、千歌さんは帰ってこなかったし、穂乃果さんは今日も今日とて、朝からロッジを空けていた。

二人とも忙しくて、しっかりとお話が出来たわけじゃないけど……チャンピオンたちと出会ったということ自体が良い刺激になったと思う。


侑「それじゃ、行こうか! 歩夢! リナちゃん!」
 「ブイブイ」

歩夢「うん!」

リナ『次の目的地に向けて出発進行〜!』 ||,,> 𝅎 <,,||
449 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:45:25.60 ID:tV2B+qbY0

私たちはお世話になった彼方さんたちと別れて──再び、旅への一歩を踏み出した。





    🎹    🎹    🎹





明るいうちに進むコメコの森はすごく歩きやすく、1時間もしないうちに森を抜けることが出来た。

森を抜け、3番道路を抜けた先に──


侑「……ホシゾラシティだ!」
 「ブブイ〜」

歩夢「うん!」


新たな町が広がっていた。


リナ『ホシゾラシティは北の流星山、南のスルガ海、西のコメコの森、東のスタービーチに囲まれた、自然の町だよ』 || ╹ 𝅎 ╹ ||

歩夢「確か……石材の切り出しとか加工をやってる町なんだっけ?」

リナ『うん。ここで切り出されて加工された石材は、オトノキ地方中に出荷されてくんだよ』 || ╹ ◡ ╹ ||


どうやら、コメコに続いて、この町も自然産業の町のようだ。

確かにリナちゃんや歩夢が言うとおり、町のところどころに切り出された石材が並べられている。

自然の町だけど、コメコシティとは雰囲気が全然違い、新しい町にやってきたんだという実感が湧いてくる。


リナ『そういえば二人とも、この後はどうするの?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「あー……どうしようか」
 「ブイ?」


ホシゾラシティにもポケモンジムはあるけど……今朝の時点で花陽さんが帰ってきていなかったということは、たぶん凛さんもまだジムを空けたままな気がするけど……。


侑「……とりあえず、一度ジムに行ってみようか。今挑戦するかはともかくとして、もし戻ってきてるなら凛さんに挨拶くらいしたいし。歩夢もそれでいい?」

歩夢「うん。それじゃ、ジムに行ってみよっか」

リナ『わかった。じゃあ、ジムへの道案内を始めるね』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「よろしくね、リナちゃん」


リナちゃんの案内に従って、私たちはホシゾラジムを目指すことにする。

──町中を歩くこと数分。ジムまではさほど掛からずに辿り着く。


リナ『──あそこにあるのがホシゾラジムだよ』 || > ◡ < ||


リナちゃんの言うとおり、いかにもポケモンジムらしい建物が見えてくる。

そのとき突然、歩夢の方から──pipipipipi!! と音が聞こえてくる。


侑「? 何の音?」

歩夢「え?」


どうやら、音は歩夢の上着のポケットから鳴っているようだった。

歩夢がポケットに手を入れると──


歩夢「ポケモン図鑑が鳴ってる……?」──pipipipipipipi!!!
450 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:46:17.78 ID:tV2B+qbY0

歩夢が自分のポケモン図鑑を見て小首を傾げながら、図鑑のボタンを押すと、すぐに音が鳴り止む。


歩夢「あ、止まった……」

侑「なんだったの?」

歩夢「うーん……わかんない……」


どうやら、歩夢にもなんで鳴っていたかに心当たりがないらしい。

……けど、その理由はすぐにわかった。

少し離れたところ──ジムの方から、同じように、pipipipipipi!!!! と音が聞こえてきたからだ。

音のする方に目を向けると、二人の女の子の姿。


女の子1「わわっ、急になになに!?」──pipipipipipipi!!!
 「ガゥゥ…?」

女の子2「これもしかして……」──pipipipipipipi!!!

女の子1「何か知ってるの……? ってか、しず子のも鳴ってんじゃん!」──pipipipipipi!!!

侑「あれ……!?」

歩夢「もしかして……!」

侑「うん!」

リナ『?』 || ? ᇫ ? ||


歩夢と頷き合って、ジムの前にいる女の子たちに駆け寄り、声を掛ける。


侑「かすみちゃん! しずくちゃん!」

かすみ・しずく「「え?」」──pipipipipipi!!!


名前を呼ぶと、女の子たち──もとい、かすみちゃんとしずくちゃんがこちらに振り返った。


かすみ「え!? 侑先輩に歩夢先輩!? なんでなんで!? なんでここにいるんですか!? ってか、これうるさいんだけど!」──pipipipipipipi!!!
 「ガゥガゥ♪」

しずく「かすみさん、図鑑のボタンを押せば止まるよ」

かすみ「……あ、ホントだ」


しずくちゃんが言ったとおりに、かすみちゃんが図鑑のボタンを押すと、音が鳴り止む。


かすみ「これ、なんの音だったの……?」

しずく「図鑑の共鳴音だよ。同じセットの3つの図鑑が揃うと鳴るって聞いていたけど……こういう感じなんだね」

侑「へー……ポケモン図鑑にそんな機能が……」


どうりで歩夢の図鑑も鳴っていたわけだ。


歩夢「それにしても……ちょっと会わなかっただけなのに、久しぶりに会ったみたいな気がするね。私たち、今さっきこの町に着いたところで、とりあえずジムに来てみたら、二人がいてびっくりしちゃった」

しずく「そうだったんですね。私とかすみさんも、今さっきこの町に戻ってきたところでして……」

侑「戻ってきた? 前にも一度来たってこと?」

しずく「あ、はい! 前に来たとき、ジムが開いていなかったので、一旦ウチウラシティ方面に行っていたんです」

かすみ「でも、結局ハズレみたいですぅ……ちょっと間を空ければ再開すると思ってたんですけどぉ……」


言われてジムの扉を見ると──確かに、『ジムリーダー不在のため、ジム戦の受付を停止しています』との張り紙がしてあった。
451 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:47:12.43 ID:tV2B+qbY0

歩夢「やっぱり、凛さんもまだ戻ってなかったね」

侑「まあ、わかってたことだから、仕方ないね」


となると、次は私たちもウチウラシティ方面かな……などと考えていると、


リナ『……侑さん、そろそろこの二人のこと紹介して欲しい』 || ╹ᇫ╹ ||


私の目の前にリナちゃんが下りてくる。


侑「ああ、ごめんね。そういえばリナちゃんはまだ会ったことなかったね。この二人はかすみちゃんとしずくちゃん。歩夢と一緒に図鑑を貰った子たちだよ」

リナ『なるほど。一緒に旅に出たお友達なんだね』 ||,,> ◡ <,,||

かすみ「あれれ? 侑先輩の図鑑もロトム図鑑だったんですか?」

侑「かすみちゃん、ロトム図鑑のこと知ってるの?」

しずく「実は私たち、いろいろあって、少しの間ですが、ロトム図鑑と一緒に旅をしていたんですよ」

歩夢「そうだったんだ。今はもういないの?」

しずく「はい、もともと私のロトムではなかったので……持ち主にお返ししました」


事情はよくわからないけど、ロトム図鑑のことを知っているなら話が早い。

……リナちゃんは実はロトム図鑑じゃないから、言う前にロトム図鑑だと納得してくれるならそれに越したことはない。変に誤魔化さないで済むしね。


リナ『かすみちゃん、しずくちゃん、初めまして。私はロトム図鑑のリナって言います』 || > ◡ < ||

かすみ「こっちのロトム図鑑はニックネームが付いてるんですね! じゃあ、リナ子だね! よろしく!」

しずく「また勝手にあだ名付けて……。よろしくね、リナさん」

リナ『よろしくね、二人とも』 || ╹ ◡ ╹ ||


挨拶もそこそこに。


歩夢「とりあえず、ジム戦は出来なさそうだし……どこか落ち着ける場所に移動しない?」

しずく「そうですね! お互い、積もる話もあるでしょうし……! 近くに落ち着いた感じのカフェがあったので、そこはどうでしょうか?」

歩夢「わぁ! いいかも! 行こう行こう♪」


歩夢としずくちゃんが、ガーリーな会話をしながら盛り上がっている。

まあ、一旦腰を落ち着けて話したいのは確かだよね。


侑「私たちも行こうか、かすみちゃん」


歩夢たちに倣って、カフェに行こうとした、そのとき、


かすみ「ちょーーーっと待ってください!!」


かすみちゃんが大きな声をあげながら、私たちを制止する。


しずく「何? かすみさん、カフェに行かないなら置いてっちゃうよ?」

かすみ「カフェには行く! でも、その前にやることがあるでしょ!」

歩夢「やること……?」

かすみ「ここにはポケモントレーナーが4人もいるんですよ! ポケモントレーナー同士、目が合ったらやることは1つじゃないですか!!」


なるほど、そういうことか。
452 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:48:12.94 ID:tV2B+qbY0

侑「ポケモンバトル……だね!」
 「ブブイ!!」

かすみ「そうですそうです! さっすが侑先輩!」
 「ガゥガゥ!!」

かすみ「さぁさぁ!! しず子と歩夢先輩も準備してください!!」


かすみちゃんが歩夢としずくちゃんにもバトルを促すと、


歩夢「え、えっと……バトルもいいんだけど……私はみんなとお話がしたいかなぁ……あはは」

しずく「私も……お話ししてからじゃダメかな……?」


二人とも、バトルよりも早くカフェに行きたいようだった。


かすみ「えぇー……もういいです! 侑先輩! 二人でバトルしましょう!」

侑「いいよ! イーブイ! お願い!」
 「ブイ!!!」

かすみ「ゾロア!! 行くよ!!」
 「ガゥッ!!!」


すでに外に出ていたイーブイとゾロアが飛び出して向かっていく。


かすみ「ゾロア! “ひっかく”!」
 「ガゥゥッ!!!」

侑「イーブイ! “とっしん”!」
 「ブブイッ!!!」


2匹がぶつかり合う、その瞬間だった。ゾロアとイーブイの間に──突然、小さな何かが降ってきた。


侑・かすみ「「!!?」」

侑「イーブイ、ストップ!?」

かすみ「ゾロア、止まってぇっ!?」

 「ブイッ!?」「ガゥゥッ!!?」


咄嗟にそれを巻き込まないようにストップを掛ける。

突然の指示だったけど、どうにかイーブイもゾロアも、ギリギリで止まることが出来た。


侑「あ、危なかった……」

かすみ「ちょっとぉ!? なんなんですかぁ!?」


改めて、落ちて来たモノに目を向けると──


 「…ニャァ」

侑「……え?」


ニャスパーがこちらをじーっと見つめていた。


かすみ「って、なんですかなんですか!! この可愛いポケモンは!!」

歩夢「あ、あれ……? このニャスパーって、もしかして……?」

リナ『また、このニャスパー……』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「もしかして……ここまで付いてきたの……?」

 「ニャァ」
453 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:49:19.20 ID:tV2B+qbY0

相変わらず表情の読めないニャスパー。理由はわからないけど……ドッグランからさらに、ここホシゾラシティまで追いかけて来たらしい。


しずく「付いてきたって、どういうことですか?」

歩夢「えっとね……最初は7番道路で会ったんだけど……」

しずく「7番道路……カーテンクリフの麓ですね」

歩夢「うん……。そこから、ダリアシティ、ドッグランでも会って……」

しずく「えぇ……? それって随分な距離ですよね? 野生のポケモンが移動する距離ではないような……」

歩夢「私もそう思うんだけど……」


しずくちゃんの言うとおり、どう考えても普通の野生ポケモンの移動距離ではない……。となると、


侑「やっぱり、私たちを追いかけてきてる……?」

リナ『そう考える方が、自然かも……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

 「ニャァ」


相変わらず、私の方をずっと見つめてるし……。


かすみ「あのあのあの!! 侑先輩!!」

侑「? どうしたの、かすみちゃん?」

かすみ「この子、野生のポケモンなんですよね!?」

侑「う、うん……たぶん」

かすみ「じゃあ、かすみんが捕まえちゃっていいですか!? いいですよね!!」

侑「え? え、えーっと……?」

しずく「ちょっと、かすみさん! 侑先輩たちの話聞いてたの!?」

かすみ「聞いてたって〜。つまり遠くまで侑先輩たちを追いかけてきた野生のポケモンってことでしょ?」

しずく「ま、まあ……それは、あってるけど……」

かすみ「そして、偶然その場にかすみんが居合わせたわけです! これって運命だと思わない!?」

しずく「……自分にとって都合の良い解釈過ぎるような」

かすみ「いやいや! こんな可愛いくて、かすみんにゲットされるために生まれてきたようなポケモン、捕まえないとむしろ失礼です!」

 「ニャァ」

しずく「歩夢さん、侑先輩……かすみさんを止めてくださいぃ……」


暴走するかすみちゃんに、早くも白旗を上げるしずくちゃん。……確かにかすみちゃん思い込みが激しいところあるからなぁ。


歩夢「うーんと……えーっと……。……でも、野生なら誰かのポケモンってわけじゃないし……」

侑「文句を言うのもおかしいよね……」

リナ『確かに。野生ポケモンの捕獲機会は全てのトレーナーにとって、平等であるべき』 || ╹ᇫ╹ ||

しずく「え、ええ……。……まあ、侑先輩たちがそれでいいなら、私はいいんですけど……」


しずくちゃんの言わんとしていることもわかるけど……。なんというか、かすみちゃんを止める理由もないというか……。


かすみ「話は付きましたね! それじゃ、行きますよ!」

 「ニャァ?」

かすみ「モンスターボール!!」


かすみちゃんが、空のモンスターボールをニャスパーに向かって投擲する。

相手は全く動かず、私の方をじーっと見つめているだけのニャスパーだ。外すわけもなく。
454 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:50:09.49 ID:tV2B+qbY0

 「ニャッ」


ボールは──コンとニャスパーの頭にぶつかったあと……弾かれて、地面を転がる。


かすみ「……あ、あれ……??」

しずく「ボールに……入らない……?」

かすみ「ど、どうして……!? もう1回……!!」


かすみちゃんは再びボールをニャスパーに向かって投げつけるが、


 「ニャッ」


弾かれて──テンテンテンと音を立てながら、地面を転がるだけだった。


かすみ「なんでですかぁ……っ……?」

侑「……? どういうこと……?」

しずく「もしかして……誰かの捕獲済みのポケモンなんじゃないでしょうか」

歩夢「捕獲済みのポケモン?」

しずく「はい、前にも同じようなことがあって……すでに誰かが捕獲したポケモンは、他の人間が捕獲することは出来ないんです」

侑「そうなの?」


思わずリナちゃんに確認を取ると、


リナ『うん。モンスターボールとポケモンは紐づけされるから、“おや”以外がボールに入れることは出来なくなる』 || ╹ᇫ╹ ||


とのこと。


かすみ「じ、じゃあ……かすみんはこの子を捕獲出来ないってことですか……?」

 「ニャァ」

リナ『そうなる』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

かすみ「そんなぁ〜……」


かすみちゃんはガックリと項垂れてしまう。


歩夢「そうなると、この子にはすでに“おや”がいるってことになるけど……」

 「ニャァ」

侑「……その“おや”って誰……?」

 「ニャァ」


……やっぱり、ニャスパーはこっちをじーっと見つめたままだし。


かすみ「……実は侑先輩が“おや”なんじゃないんですか……。……ずっと、侑先輩のこと見てるし」

侑「いや、まさか……」


ニャスパーを捕まえた覚えはないしなぁ……。

一応試しては見るけど……。

ボールを手に持って、ニャスパーに近付き。


侑「ちょっとごめんね」

 「ニャァ?」
455 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:50:56.48 ID:tV2B+qbY0

ボールを手に持ったまま、ニャスパーにボールを押し当ててみる。


 「フニャァ〜…」


しばらく押し付けてみるけど……。


侑「やっぱり、ボールには入らないよ……」


私でもボールに収めることは出来なかった。


しずく「となると……迷子のポケモンかもしれませんね」

歩夢「どこかから逃げ出しちゃった子ってこと……?」

しずく「はい……恐らくは」

歩夢「それだと、トレーナーの人……今頃、探してるかもしれないね」

侑「そうだね……」

 「ニャァ?」


ニャスパーは私たちの話がわかっているのか、いないのか……無表情のまま小首を傾げている。


侑「……とりあえず、一度ポケモンセンターに連れて行ってみようか」

しずく「それが良いかもしれませんね。もしかしたら、捜索願いが出ているかもしれませんし」

侑「うん。ニャスパー、ちょっとポケモンセンターまで行こうね」

 「ニャァ?」


腰を屈めて、ニャスパーを抱き上げる。

……ここまで、近付いてボールを押し付けても逃げたりしなかった辺り、大丈夫だとは思っていたけど……ニャスパーは私が抱きかかえても全く抵抗しなかった。


リナ『ポケモンセンターへ案内する』 || ╹ᇫ╹ ||


私たちは一旦、ポケモンセンターへと向かう──





    🎹    🎹    🎹





──ポケモンセンターにて。


侑「はい、そうですか……ありがとうございます」


私が代表して、ジョーイさんに捜索願いが出ているかを訊ねてみたけど……。
456 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:52:00.13 ID:tV2B+qbY0

しずく「侑先輩、どうでしたか?」

侑「うぅん……特にそういう届け出はポケモンセンターには来てないみたい」

歩夢「“おや”の人は探してないのかな……?」

しずく「ですが、ボールに入らない以上、逃がされたポケモンではないはずなので……。この子の持ち主の方がなんらかの理由で探せない状態にある……とかでしょうか」

 「ニャァ?」

かすみ「トレーナーの人が病気で動けないとか?」

リナ『確かに、そういう可能性はあると思う』 || ╹ᇫ╹ ||

しずく「あと可能性としては……すでに──」


しずくちゃんは、そこまで言い掛けて、


しずく「……いえ、こういうことはあまり言うべきではありませんね」


最終的に、言葉を濁す。


リナ『まあ……可能性として、なくはない』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

かすみ「え? なになに? どういうこと?」

しずく「なんでもないよ、かすみさん」

歩夢「とりあえず……このニャスパーをどうするかだね」

 「ニャァ?」

侑「……私はこの子のトレーナーを探してあげた方がいいと思う」


ポケモンがトレーナーと離れ離れになるなんて……もし、それが自分のことだったら、すごく寂しいだろうし。


かすみ「かすみんも同感です! こんな可愛い子、理由もなくほったらかしにしてると思えませんし!」

しずく「となると……一旦ボールに入れてしまった方が良いかもしれませんね。連れ歩きをし続けるのは、何かと不便もあるでしょうし……」

リナ『そうだね。また逃げ出す原因にもなる』 || ╹ᇫ╹ ||

歩夢「でも、ボールに入れられないんじゃないの?」

しずく「ポケモンセンターでなら、ボールの移動が出来ますよ。まあ、強いて問題があるとしたら……」

リナ『誰のボールに入れるか』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

かすみ「じゃあ、かすみんが連れて行きます!」

しずく「ほら……」


しずくちゃんは、案の定とでも言いたげな顔で、溜め息を吐く。


かすみ「なんで溜め息吐くの!?」

しずく「私はかすみさんよりも、侑先輩が連れていくべきだと思います。このニャスパー、理由はわかりませんが、ずっと侑先輩を意識している気がしますし……」

 「ニャァ?」

歩夢「私も侑ちゃんと一緒の方がいいと思う……」

かすみ「えぇー……侑先輩、かすみんが連れていっちゃダメですかぁ……?」


かすみちゃんが瞳を潤ませながら、おねだりするように上目遣いでお願いしてくる。


侑「ええっと……」
457 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:52:51.61 ID:tV2B+qbY0

ただ、私に委ねられても、ちょっと困ってしまう。

確かにニャスパーはよく私のことを見ているけど、私にはこのニャスパーとの繋がりになんら心当たりがない。

そう考えると、誰が連れていっても、出来ることはそんなに変わらないような……。

……こうなったら、本人──というか、本ポケモンに聞くべきだ。


侑「ニャスパーは誰と一緒がいい?」

 「ニャァ?」


でも、ニャスパーは訊ねても小首を傾げるだけだ。

困ったなぁ……。そんな中で、


リナ『私から提案がある』 || ╹ ◡ ╹ ||


リナちゃんがフワリと前に躍り出る。


リナ『せっかくトレーナー同士なんだから、バトルで決めればいいと思う』 || ╹ 𝅎 ╹ ||

しずく「なるほど……一理ありますね。一緒に旅をするなら、より強いトレーナーのもとにいた方が安全ですし」

かすみ「その話乗りました! 侑先輩! バトルで決めましょう!」

侑「わかった。このまま悩んでても決まらなさそうだしね」


どっちにしろ、かすみちゃんとはバトルしたかったしね。


歩夢「ニャスパーもそれでいい?」


歩夢が訊ねると、


 「ニャーニャー」


ニャスパーは頭上のリナちゃんの方を見ながらぴょんぴょん飛び跳ねていた。


かすみ「ニャスパーも賛成みたいですね!」

しずく「動くリナさんに目を引かれて、飛び跳ねてるだけのような……」

侑「あはは……まあ、一応OKということで」

歩夢「それじゃ……侑ちゃんとかすみちゃんが、全力でバトル出来るように、広い場所がいいよね?」

リナ『それなら、3番道路の流星山の麓がいいと思う。案内する』 || ╹ 𝅎 ╹ ||


リナちゃんがいつものように、ふわふわと飛びながら道案内を始める。


歩夢「ニャスパーはしばらく、私と居ようね」

 「ニャァ?」


歩夢がニャスパーを抱き上げて、私たちは移動を開始した。



458 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:53:34.62 ID:tV2B+qbY0

    🎹    🎹    🎹





──3番道路。流星山の麓までやってきた。

辺りは岩肌が露出している開けた場所。確かにここなら、思う存分戦うことが出来そうだ。


かすみ「そういえば、侑先輩はポケモン何匹持ってるんですか?」

侑「私の手持ちは今は3匹だよ」

かすみ「なら、かすみんも3匹で戦いますね!」

侑「いいの?」

かすみ「はい! 正々堂々勝たないと、気持ちよくニャスパーと冒険出来ませんから!」

侑「わかった。それじゃ、お互い使用ポケモンは3匹ね」

かすみ「それ以外のルールはありません! とにかく、相手のバトルポケモンを全部倒した方が勝ちです!」

リナ『シンプルなルール。侑さん、頑張ってね』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「うん!」


お互い、ボールを構える。


歩夢「侑ちゃーん! 頑張ってねー!」

侑「うーん! 頑張るー!」


少し離れたところで観戦している歩夢に手を振る。


しずく「侑さーん! かすみさんに負けないでくださいねー!」

かすみ「ちょっとぉ!? しず子はかすみんを応援する流れでしょ!?」

しずく「はいはい、かすみさんも頑張ってねー」

かすみ「ぐぬぬ……いいもんいいもん! かすみん勝っちゃいますからね!」


両者、ボールを振り被って──


リナ『……バトル──スタート!!』 || > 𝅎 < ||


最初のポケモンを繰り出した。──バトル、開始!



459 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/19(土) 15:54:16.53 ID:tV2B+qbY0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【3番道路】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○_●.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口


 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.30 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ワシボン♂ Lv.27 特性:はりきり 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.28 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:62匹 捕まえた数:3匹

 主人公 歩夢
 手持ち ラビフット♂ Lv.24 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.22 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホミル♀ Lv.20 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:90匹 捕まえた数:12匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュプトル♂ Lv.18 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロア♀ Lv.19 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      ジグザグマ♀ Lv.16 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニーゴ♀ Lv.17 特性:のろわれボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:98匹 捕まえた数:6匹

 主人公 しずく
 手持ち ジメレオン♂ Lv.18 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      マネネ♂ Lv.17 特性:フィルター 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アオガラス♀ Lv.18 特性:はとむね 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      スボミー♂ Lv.17 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      キルリア♀ Lv.20 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:108匹 捕まえた数:8匹


 侑と 歩夢と かすみと しずくは
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2022/11/20(日) 13:15:17.58 ID:grcQQ0/FO
長時間配信(寝休憩あり)

『ポケモン新作・SVクリアするまで
飯も食わないし息もしない』Part.1
(土)15:00〜放送開始

https://www.twitch.tv/kato_junichi0817
461 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:00:44.93 ID:uk513V0l0

■Chapter023 『決戦! ライバル・かすみ!』 【SIDE Yu】





──お互いが最初のポケモンを繰り出す。


侑「行くよ、ワシボン!」
 「ワシャァッ!!」

かすみ「サニーゴ! 行くよ!」
 「……」


私の1番手はワシボン。

相手はサニーゴ……いや、なんか随分血色が悪いような。


侑「まあいいや……ワシボン! “ブレイククロー”!!」
 「ワッシャァッ!!!」


先手必勝! ワシボンが飛び掛かるようにして、サニーゴに爪を立てるように切り付ける……が、サニーゴの角を狙って振り被った足爪は、


 「ワシャッ!!?」


──スカッ! とすり抜けてしまった。


侑「!? すり抜けた!?」

かすみ「サニーゴ! “かなしばり”!」
 「……」

 「ワシャッ!!?」


攻撃を空振って、動揺しているワシボンを“かなしばり”で縛り付けてく──“かなしばり”……!?


侑「え!? サニーゴってみず・いわタイプじゃ……!?」

かすみ「そのまま、“ちからをすいとる”!」
 「…………」

 「ワ、ワシャ…」


そのまま、パワーを吸い取られて、攻撃力を奪われてしまう。


侑「……! あのサニーゴ、普通のサニーゴじゃない……!」

リナ『侑さん! あのサニーゴはガラルサニーゴ! ゴーストタイプの姿だよ!』 || >ᆷ< ||

侑「ゴーストタイプ……!?」


どうりで、ノーマルタイプの“ブレイククロー”が効かないわけだ……! 確かによく見たら、あのサニーゴちょっと浮いてるし……もっと相手をよく観察しなくちゃ……!


侑「一旦交代!! 戻ってワシボン!」
 「ワシャ──」

侑「行け! ライボルト!」
 「ライボッ!!!」


試合開始早々、選手交代。2番手はライボルト!


侑「“10まんボルト”!!」
 「ライボッ!!!!」

かすみ「“シャドーボール”!!」
 「……」
462 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:02:14.00 ID:uk513V0l0

電撃とゴーストタイプのエネルギー弾が空中でぶつかり合う。


侑「でんきタイプとゴーストタイプなら、相性は五分のはず……!!」


しかもこっちは進化系のライボルト……! 単純な攻撃のパワーなら迫り勝てる……!


 「ライボォッ!!!!」

かすみ「あ、あわわ!? 押されてるよ!? サニーゴ!?」
 「…………」

侑「いっけぇ!!」


ライボルトの電撃は“シャドーボール”を撃ち抜き──そのまま、サニーゴに電撃が直撃し、バチバチと音を立てながらサニーゴにダメージを与える。


 「…………!」
かすみ「さ、サニーゴっ!?」


しばらく、電撃をその身に受けたあと──サニーゴはポトッと地面に落ちてしまった。


侑「よし! まず1匹……!」
 「ライボッ!!!」

かすみ「サ、サニーゴ……」
 「…………」

かすみ「……な〜んちゃって〜♪」


かすみちゃんがペロリと舌を出す。


侑「!?」


直後、グラグラと地面が揺れ始め──ボンッ! と音を立てながら、ライボルトの足元が爆発した。


 「ライボッ…!!?」
侑「な、何!?」

リナ『“だいちのちから”!? まだ、サニーゴは戦闘不能になってない!?』 || ? ᆷ ! ||

侑「……っ!?」

かすみ「表情が読めないのが、役に立つこともあるんですよ〜♪ さぁ、畳みかけますよ!」
 「……」


再びサニーゴがふわりと浮くと同時に、またゴゴゴと地鳴りが聞こえてくる。


侑「また、“だいちのちから”……!? なら……! “でんじふゆう”!!」
 「ライボ…!!」


ライボルトが電磁力によって、ふわりと浮き上がる。

これで、じめんタイプの技は避けられるはず……!


かすみ「さすが抜かりないですねぇ……でも、これはじめん技じゃないですよ!」

侑「え!?」


確かに、地面からの攻撃はいつまで経っても来ない。ただ、地鳴りはまだ聞こえてくる。……でも、


侑「音は山側から……!?」


地鳴りの音源が、すぐ傍の山側からだと気付き、目を向けると──大岩がこっちに向かって大量に転がってきていた。
463 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:08:27.90 ID:uk513V0l0

侑「“いわなだれ”!?」

かすみ「“しぜんのちから”をお借りしましたよ!」

リナ『岩場での“しぜんのちから”は“いわなだれ”になる!? 侑さん、避けて!?』 || ? ᆷ ! ||


避ける……!? 無理だ……!?

この量の岩じゃ、“でんじふゆう”していても飲み込まれてしまう。こうなったら、


侑「ライボルト!! 電撃を一点集中!!」
 「ライボッ!!!」


一か八か……!! 自分たちに向かってくる分だけ、撃ち抜いて破壊する!! 急速に“じゅうでん”を始めたライボルトは、ギリギリまで引きつけてから、岩に向かって集束した電撃による防御、


侑「“チャージビーム”!!」
 「ライ、ボォォォォ!!!!!」


眩く閃光が迸る。ギリギリまで引き付けたおかげで、光線はどうにか岩を穿ち、大きな岩の直撃だけはどうにか回避する。


侑「あ……あっぶな……!」
 「ラ、ライボッ…!!」


でも、全てを捌き切ることは出来なかった。小さな石の礫や塊は、ライボルトに直撃していた。

そのため、体力的にもうそろそろまずい。


かすみ「! やりますね、侑先輩!」


かすみちゃんの声に視線を前に戻すと──サニーゴの姿が見えなかった。


かすみ「でも、これで終わりですよ! “パワージェ──」

侑「──“かみなり”!!!」
 「ライボッ!!!!!」


空から、ライボルトに向かって、一筋の“かみなり”が迸った。


かすみ「んなぁ!?」


かすみちゃんの驚きの声と共に──ひゅーんとサニーゴが落っこちてきて、地面を転がった。


 「………………──」
かすみ「さ、サニーゴぉ!?」

侑「さすがに、今度こそ戦闘不能だよね……」


ここまでの戦闘でダメージも蓄積していただろうし、大技が直撃したんだから、これで倒れてくれないとさすがに困る……。


かすみ「ちょ……なんで、サニーゴのいる場所がわかったんですかぁ!?」


サニーゴの居場所──それは、頭上。ライボルトの真上だった。


侑「“いわなだれ”の処理でサニーゴを目で追えてなかったけど……。逆に言うなら、サニーゴからしても周りの岩が邪魔で攻撃しづらいからね」


そうなると、空を飛べるサニーゴにとって絶好の攻撃ポジションはどこか?
464 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:09:37.42 ID:uk513V0l0

侑「そうなったら、頭上に位置取るかなって思って」

かすみ「ぎ、逆に誘い込まれたってことですかぁ……?」

侑「ふふ、まあね♪」

かすみ「ぐぬぬ……や、やるじゃないですか……!」


かすみちゃんの戦い方は、とにかく相手を攪乱しながら、自分のペースに巻き込んで、動揺したところに確実に攻撃を加えていくスタイルだ。

学校でイタズラを叱られて逃げるときも、自分たちの隠れ場所とは別の場所で音を鳴らして、注意が逸れた隙に逃げたりしていたし……恐らく、今回の戦闘でも同じような感じで、私の視線を誘導してくると思った。

だからこそ、あまり予想しづらい上空から攻撃をしてくると読めたということ。

本来相手に行動を予想させないはずの作戦だけど、付き合いの長さが仇になったわけだ。


かすみ「サニーゴ……戻って」
 「……──」

かすみ「……次、行きますよ!! ジュプトル!!」
 「──プトルッ!!!」

侑「次はジュプトル……! キモリの進化系!」


──ただ、この試合前にかすみちゃんは、ゾロアをボールに戻している。

ということは、


侑「“ほうでん”!!」
 「ライボッ!!!!」


あれはゾロアが化けている姿……!

周囲一帯を範囲攻撃で迎撃する。攻撃を食らったら“イリュージョン”は解けてしまうからだ。


侑「さぁ、これで──」


電撃によって、化けの皮を剥がされたゾロアが姿を現す──と思った、瞬間だった。


 「──プトル…!!」

 「ライッ!!?」
侑「!?」


すでに目の前に肉薄していた、ジュプトルが腕の刃を構えているところだった。


かすみ「“リーフブレード”!!」
 「プトルッ!!!!!」


── 一閃。至近距離から袈裟薙ぎに斬り裂かれたライボルトは、


 「ラ、イ…ッ」


そのまま、力尽きて倒れてしまった。


かすみ「侑先輩知らないんですか〜? くさタイプにはでんきタイプは効果いまひとつなんですよ〜?♪」

侑「ぞ、ゾロアじゃない……!?」

かすみ「“イリュージョン”は無理に使わなくても、手持ちにいるだけで、相手を騙せちゃうんですよね〜♪」


逆に決め打ちしすぎて、裏の裏を掛かれた……。さすがに一筋縄ではいかない……切り替えなくちゃ。


侑「ありがとうライボルト、戻って。もう一度行くよ! ワシボン!」


ライボルトをボールに戻して、再度ワシボンを繰り出す。
465 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:10:22.99 ID:uk513V0l0

 「──ワッシャァ!!!」


ボールから飛び出すとともに、ジュカインに向かって肉薄する。


侑「“ダブルウイング”!!」
 「ワッシャァッ!!!」


一方かすみちゃんはそれを迎撃する形で、


かすみ「“リーフブレード”!!」
 「プトルッ!!!」


ジュプトルの両腕の刃で、攻撃を受け止める。

2匹の攻撃がぶつかると同時に弾け、その勢いのまま両者が後退する。


侑「勢いを殺さずに畳みかけるよ! “ブレイククロー”!!」
 「ワシャァッ!!!」


旋回しながら、勢いを保って、再び近接攻撃の姿勢に。

爪を突きだし、空中から飛び掛かる。一直線にジュプトルに向かって行く中で、


かすみ「“やどりぎのタネ”!!」
 「ジューーープッ!!!!」


ジュプトルは空中に向かって、“やどりぎのタネ”を吐きだしてきた。

もちろん、一直線に飛んでいたため、


 「ワシャッ!!?」


回避は出来ず直撃するが、


侑「怯まないで!!」
 「ワ、ワシャァッ!!!!」


そのまま、爪を使って、ジュプトルに斬撃を与え、再び空中へと離脱する。


 「ジュ、ジュプトッ!!!」
かすみ「これくらいなら誤差です! “グラスフィールド”!!」

 「プトルッ!!!」


かすみちゃんの指示と共に、ジュプトルを中心に辺りに草が生い茂り始める。


リナ『“グラスフィールド”は地上にいる間、HPが回復し続ける技だよ!』 || ˋ ᇫ ˊ ||

かすみ「さらに、“こうごうせい”です!」
 「ジュプトォ!!!」


“こうごうせい”も回復技……。まずい持久戦に持ち込むつもりだ。

私の苦手な展開……。いや、だからこそ冷静に……!


侑「1個ずつ対策するよ! まず、“あまごい”!!」
 「ワシャァッ!!」


──ポツポツと雨が降り始める。


かすみ「って、わわわ!? なんてことするんですかぁ!?」

リナ『雨が降ってると、“こうごうせい”の効果は半減する! 良い対策!』 || > ◡ < ||
466 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:11:16.38 ID:uk513V0l0

恐らくかすみちゃんが持久戦を選んできた理由は──


侑「ジュプトルは相性的に有効打が少ないからだよね……!」

かすみ「ギクッ」


積極的な撃ち合いを避けるんだったら、私にも考えがある。


侑「ワシボン!! “エアスラッシュ”!!」
 「ワシャシャッ!!!」


ワシボンが風の刃を連続で放つ。


かすみ「あーもう!! “れんぞくぎり”!!」
 「プトルルルッ!!!!」


一方で、ジュプトルはそれを的確に斬撃で相殺してくる。

──でも、それでいい。


 「ワッシャァッ!!!」

 「プトォルッ!!?」
かすみ「!? 突っ込んで来たぁ!?」


“エアスラッシュ”は目くらましだ。

撃った“エアスラッシュ”を追いかけるようにして、飛び込んでいったワシボンはそのまま、


 「ワシャッ!!!」


猛禽の爪でガッチリとジュプトルの両肩を掴む。


侑「そのまま飛ぶよ! “フリーフォール”!!」
 「ワシャァッ!!!!」

 「ジュ、ジュプト!!!」


ジュプトルは、ジタバタともがくが、ガッチリとホールドされている上に、空中に運び出されて自由が効かない。

さらに空に持ち上げてしまえば、“グラスフィールド”による回復の効果もなくなる。


かすみ「そ、それで回復を封じたつもりですか! まだ“やどりぎのタネ”があるもん!」


──確かにかすみちゃんの言うとおり、これは時間稼ぎであって根本的な解決にはなっていない。

“フリーフォール”だって、いつまでも持ち上げ続けているわけにはいかない。

だけど、“フリーフォール”は防御のためだけの技というわけではない。これはあくまで攻撃技だ。

ぐんぐん上空へと上昇したあと──


 「ワシャッ!!」


ワシボンは食いこませた爪をパッと放す。


 「プ、プトォッ!!」


もちろん、ここまでは相手も予想済みだろう。


かすみ「ジュプトルーーーー!!! 受け身取ってーーーー!! 受け身ーーー!!」

 「プ、プトォッ!!!!!」
467 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:12:16.55 ID:uk513V0l0

上空に向かって叫ぶかすみちゃん。数秒と経たないうちに重力に引かれて地面に墜落したジュプトルは、接地と同時にゴロゴロと転がりながら、落下のダメージを殺す。


 「プ、プトォ…ッ…」
かすみ「せ、セーフ……! “グラスフィールド”があって助かりました……」


草の生い茂る地面のお陰か、どうにか立ち上がるジュプトル。さすがの身のこなしだ。

だけど、上空から叩きつけられたのは、小さくないダメージのはず。

そして──私が本当に狙っていたのは、この次だ。


 「プ、プトォ…!!?」


急に、ふわっとジュプトルの体が浮く。


かすみ「へ!? な、なに!?」

侑「わざわざ雨にしたんだから、利用しなくちゃ!!」


雨の中、上空に残ったワシボンは激しく翼を羽ばたかせながら、大きな風の渦を作り始めていた。


かすみ「!!? た、竜巻ぃ!!?」


竜巻のような大きな風の渦がジュプトルを引き寄せるようにして、宙に持ち上げていた。

普段はなかなか成功率が低いけど……風雨の中では一気に技を出しやすくなる大技……!!


侑「“ぼうふう”!!」

 「ワシャァァァァァ!!!!!!」

 「ジ、ジュプトォォォォ!!!?」


そのまま、ジュプトルは再び上空へと巻き上げられる。


かすみ「じ、ジュプトルー!!?」


上空にいるワシボンの場所まで打ち上げられた無防備なジュプトルに攻撃を加えるのはなんてことはない。


侑「“つばさでうつ”!!!」

 「ワシャァァァァァァッ!!!!!!」

 「プットォルッ!!!?」


上から思いっきり翼を叩きつけての一撃!

一気に落下して、ズドンと地面に叩きつけられたジュプトルは、


 「プ、プトォ…」


“グラスフィールド”による落下ダメージの軽減があっても耐え切れず、2度目の落下で今度こそ戦闘不能になった。


かすみ「も、戻ってジュプトル……」

侑「さぁ、残り1匹だね」


ただ、ワシボンも結構な時間、“やどりぎのタネ”で体力を吸われていた。そろそろ、HPも限界が近いだろう。


侑「戻ってワシボン」
 「ワシャ──」


一旦ワシボンは引かせる。そして、
468 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:13:39.45 ID:uk513V0l0

侑「イーブイ! 最後、決めるよ!」
 「ブイ!!」


私の傍でずっと出番を待っていたイーブイが、フィールドに踊りだす。


かすみ「むむむ……ピンチです……。でも、かすみん負けるつもりはないですよ! ゾロア!」
 「──ガゥッ!!!」

侑「やっぱり、最後はゾロアだね……!」


恐らくかすみちゃんが最も信頼しているであろう相棒、ゾロア。だけど、“イリュージョン”は使っていないから、真っ向勝負だ……!


かすみ「ゾロア! “ちょうはつ”!!」
 「ガガゥッガゥガゥッ♪」

 「…ブイ?」


ゾロアがベロっと舌を出しながら、尻尾を振ってイーブイを“ちょうはつ”してくる。

イーブイは明らかに不機嫌そうな顔でゾロアを睨みつける。

“ちょうはつ”は相手の戦意を刺激して、補助技を使わせなくする技だ。


侑「望むところだよ! こっちは最初から搦め手で戦うつもりなんてないし! イーブイ! “でんこうせっか”!!」
 「ブイッ!!!!」


飛び出すイーブイ。一方ゾロアは、


かすみ「“みきり”!!」
 「ガゥッ!!!」


初っ端から“みきり”での回避。


侑「最初から使っちゃっていいのかな!!」


“みきり”は使えば使うほど、成功率が下がっていく技だ。

それに隠しておいた方が便利な技でもある。だけど、かすみちゃんは最初からその札を切ってくる。


侑「2度目は外さない!! もう1度──」

かすみ「“いちゃもん”!!」
 「ガゥガゥッ!!!」

 「…ブイ」


今度は文句を付けるように、激しく吠える。イーブイはさらに不機嫌そうな顔になりながら、攻撃の足を止めてしまう。


リナ『“いちゃもん”されると同じ技が連続で出せなくなっちゃう!』 || > _ <𝅝||

侑「っ……! また、補助技……!」

かすみ「動きを制限した今のうちに! “わるだくみ”!!」
 「ガゥ! シシシッ」


今度は自身の特攻を強化する、“わるだくみ”。

こっちの動きを制限しながら自分を強化して、有利に戦闘を運ぶつもりのようだ。


侑「相手を自由にさせちゃダメだ! “スピードスター”!!」
 「ブーーイッ!!!!」


イーブイから星型のエネルギー弾が発射される。

“スピードスター”は相手を追跡する、必中技……!
469 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:14:34.70 ID:uk513V0l0

かすみ「遅いですよ! こっちの準備はもう十分です! “あくのはどう”!!」
 「ガーーゥッ!!!!!」


ゾロアを中心に一気に、黒い波動が広がり、“スピードスター”を飲み込み──


 「ブ、ブィィ!!?」


さらにそのまま、イーブイに襲い掛かる。


侑「イーブイ、大丈夫!?」
 「ブ、ブイ!!」


攻撃は直撃したものの、“スピードスター”で威力を殺せた分もある。

お陰で致命傷にはならなかったけど……。


侑「……相手の能力が上がってる分、攻撃が力負けしてる……!」


なら……。


かすみ「次の攻撃は回避したいって思いますよね!」

侑「!?」

かすみ「“みきり”は使わせませんよ! “ふういん”!!」
 「ガゥッ!!!」

 「ブ、ブイ!?」
侑「し、しまった……!?」


ゾロアが鳴くと、イーブイが一瞬ビクリと竦む。見た目にはほとんど変わりはないけど──“ふういん”は自分が覚えているのと同じ技を使えなくする技だ。

つまり、いくら私が“みきり”を温存しても、ゾロアが覚えている以上、この技は使えないということになる。


かすみ「ついでに“スピードスター”も使えませんよ〜? 貴重な遠距離攻撃技がなくなっちゃいましたね〜!」

侑「……」


確かに、イーブイは本来、進化後にいろんな姿になる分、進化前のエネルギーを蓄えている間は、技のバリエーションが少ないポケモンだ。

だけど──私の相棒は違う。


かすみ「さぁ、畳みかけますよー!!」
 「ガゥッ!!!!」


ゾロアから再び、黒いエネルギーが漏れだそうとした瞬間、


侑「“びりびりエレキ”!!」
 「ブーーイッ!!!!」


イーブイの体毛がパチパチと音を立てながら──電撃を放った。


かすみ「!?」
 「ガゥッ!!?」


かすみちゃんは急なことに面食らい、ロクに指示も出せないまま、ゾロアに電撃が直撃する。


 「ガ、ガガガガゥ!!!?」

かすみ「えぇーー!? な、なんで、イーブイが電撃撃ってるんですかぁ!!? ゾロア、大丈夫!?」
 「ガ、ガゥ…」


ダメージはあるものの、ゾロアは倒れてはいない。ただ、痺れてしまって、明らかに動きが鈍っている。
470 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:15:47.77 ID:uk513V0l0

かすみ「ま、“まひ”しちゃったってことですか!? な、なんてことを……!」


“まひ”してしまえば、こっちのものだ。


侑「“すくすくボンバー”!!」
 「ブーーィッ!!!!」


イーブイが尻尾をブンと振ると、種子が飛び散り、それが地面に埋まって── 一気に巨大な蔦状の樹が成長し始める。

そして、蔦から巨大なタネがゾロアに向かって複数落下する。


かすみ「な、な、なんですかー!? それー!?」
 「ガ、ガゥゥ…」


麻痺して、満足に動けないゾロアは、予想外の攻撃を防げず、


 「ガゥゥゥッ!!!」


降ってきたタネの直撃を受けて、地面を転がった。


 「ガ、ガゥゥゥ…」


そして、力なくその場に倒れ込んだ。


リナ『ゾロア、戦闘不能。侑さんの勝利』 || > ◡ < ||

かすみ「そ、そんなぁ……。補助技に集中しすぎましたぁ……。……というか、なんですかさっきの技ぁ……っ……」

侑「えっと、“相棒わざ”って言う特別な技なんだけど……」
 「ブイ」

かすみ「そんなの聞いてませんよぉ……! ずるいですぅ……っ……」

侑「あーえーっと……」


かすみちゃんが涙目で詰め寄ってくる。

確かに初見殺しなところはあったかもしれないけど……。


しずく「でも、負けは負けだよ、かすみさん」

かすみ「しず子までぇ……」

歩夢「侑ちゃん、やったね!」

侑「うん。ありがとう、歩夢」


戦闘が終わって、歩夢としずくちゃんもこちらに寄ってくる。


しずく「それでは、最初に決めたとおり、ニャスパーは侑先輩が連れていくということでいいですね?」

かすみ「そんなぁ〜……」

侑「……そういえば、そうだった」


バトルに夢中で忘れてた……。


侑「ニャスパー、それでもいい?」


最後に、歩夢が抱きかかえたままのニャスパーに訊ねてみるも、


 「ニャァ」
侑「……相変わらず何考えてるか、わからないね……」
471 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:16:51.86 ID:uk513V0l0

ニャスパーは無表情のまま鳴くだけなので、やっぱりよくわからなかった。


リナ『嫌がってるわけでもなさそうだから、それで問題ないと思う』 || ╹ᇫ╹ ||

 「ニャァ〜」

侑「……そうだね。それじゃ、ポケモンセンターでボールに入れる手続きしてこようか」

しずく「ですね。ほら、かすみさん、いつまでしょげてるの?」

かすみ「うぅ……わかったよぉ……。侑先輩、ニャスパーのこと、お願いしますね……」

侑「うん、任された」


というわけで、ニャスパー争奪戦(?)は私の勝利でとりあえず落ち着いたのだった。





    🎹    🎹    🎹






──さて、ポケモンセンターに戻ってきて、早速ニャスパーのボール移動をお願いしたのはいいんだけど……。


侑「時間がかかる……?」

ジョーイ「はい……普通だったら1時間も掛からないはずなんですが……」


預けてから、言われたとおり1時間後くらいにまた受付のジョーイさんのもとに受け取りにきたら……まだ時間がかかると言われてしまった。


しずく「何かトラブルでもあったんですか……?」

ジョーイ「トラブルと言いますか……元のボール情報の解析にてこずっていまして……」

かすみ「元のボール情報ってなんですか?」

リナ『ポケモンをボールから移動する際、元のボールに紐づけされた情報の解除が必要になる。それの解析のことだと思う』 || ╹ᇫ╹ ||

ジョーイ「はい……。それが、あまり見ないボール情報でして……」


どうやら、ニャスパーの“おや”の人がもともと入れていたボールが特殊なものだったらしい。

そのボールが具体的にどういうものなのかはわからないけど……。


歩夢「どれくらい掛かりそうなんですか?」

ジョーイ「……さすがに明日までには終わると思います」

かすみ「明日ですかぁ……」

侑「となると、今日はここで泊まりだね」

歩夢「うん、その方がよさそうだね」

ジョーイ「すみません、お待たせしてしまって……」

侑「あ、いえ! こちらこそ、急にお願いしちゃって、ごめんなさい……」

ジョーイ「いえいえ、それもポケモンセンターの仕事なので。もうしばらく、お待ちくださいね」

侑「はい、お願いします」


──というわけで、今日は一日ホシゾラシティで過ごすことになりそうだ。

まあ、そうは言っても……。
472 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:17:56.68 ID:uk513V0l0

しずく「久しぶりに会ったわけですから、積もる話もありますし」

かすみ「ですです〜! せっかくですから、侑先輩と歩夢先輩の旅であったこと、聞かせてください〜!」

歩夢「私たちも、かすみちゃんとしずくちゃんの旅であったこと聞きたい!」

侑「うん! 早めに宿を探して、みんなで旅の報告会しよっか! 二人がどんなポケモン捕まえたのかも見てみたいし!」

かすみ「それじゃ、善は急げです! ちゃちゃっと宿を見つけちゃいましょ〜!」

侑・歩夢・しずく「「「おー!」」」


私たちは、お互いの旅の進捗を報告し合うために、意気揚々と宿を探しに町の探索に行くのだった。





    🎹    🎹    🎹





──その晩。4人部屋で取った旅館の一室。


侑「しずくちゃんはもう手持ちが5匹もいるんだね……」
 「ブイ?」「ワシャ」「…ライ」

かすみ「そうなんですよぉ……しず子ばっかりずるいと思いませんか?」
 「ガゥガゥ!」「…プトル」「ザグマ」「……」

しずく「あはは……なんというか、巡り合わせがよかったというか……。かすみさんもすぐに仲間が増えると思うよ」
 「マネマネ」「ジメ…」「カァカァ♪」「スボ」「…キルリ」

歩夢「私と侑ちゃんはまだ3匹だもんね……。……あ、でもニャスパーがいるから、一番手持ちの数が少ないのは私になるのかな……」
 「シャボ…」「ラフット」「マホミ〜♪」

侑「う、うーん……? ニャスパーは私の手持ちになるというわけでもないからなぁ……」


まあ、一応便宜上、私が連れ歩くことにはなるけど……。


しずく「それにしても……これだけポケモンがいると、広めの部屋でも、狭く感じますね……」

侑「人間4人に、ポケモン15匹だからね……」


お互い手持ちを見せ合うために、みんなをボールから出しているせいで、広い部屋を取ったのに随分手狭な感じになっていた。

そんな中、


 「マホミ〜♪」
歩夢「マホミル? どうしたの?」


マホミルがみんなの荷物をまとめている壁際にふわふわと近寄っていく。

そして──かすみちゃんのバッグに顔を突っ込み始める。


歩夢「え、ち、ちょっとマホミル!?」

かすみ「あれれ〜? 歩夢先輩、かすみんのバッグから物を盗ろうなんて、躾がなってないんじゃないですか〜?」

歩夢「ご、ごめんね! マホミル、ダメだよ!」
 「マホミ〜?」


歩夢に叱られるも、よくわかっていないのか、きょとんとするマホミル。
473 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:18:53.63 ID:uk513V0l0

リナ『マホミルは甘い匂いが好きだから、バッグの中に何か甘いものがあるのかも?』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「甘い物……なにか入れてたかな……?」

しずく「そういえば、かすみさん。フソウ島でいろいろスイーツとか買ってなかった?」

かすみ「……あ、そうだった! いろいろ買い込みましたし……そういえば、侑先輩と歩夢先輩へのおみやげも買ったんだった!」

侑「え、おみやげがあるの!?」

かすみ「はい! ちょっと待っててくださいね〜……」

 「マホミ〜?」


かすみちゃんはマホミルに見つめられながら、バッグを漁る。


かすみ「はい! これ、おみやげです!」


そう言ってかすみちゃんが取り出したのは──


歩夢「わぁ♪ これ、もしかして“アメざいく”?」

かすみ「ですです〜♪ すっごく可愛かったんで、たくさん買っちゃったんです〜♪」


様々な形をした、可愛らしい“アメざいく”だった。

いちごにハート、ベリー、よつば、おはな……とにかくたくさん種類があった。


侑「本当にたくさん買ったんだね」

かすみ「はい♪ その中でも、侑先輩にはこの“スターアメざいく”をあげちゃいます♪ 歩夢先輩にはこの“リボンアメざいく”をどうぞ!」

歩夢「ありがとう、かすみちゃん♪」

侑「ありがとう、かすみちゃん」

かすみ「どういたしましてです〜♪」


受け取った“アメざいく”はビニールを被せているのに、すごく甘くて良い匂いがする。

確かに職人たちの手で作られた“アメざいく”たちは可愛らしく、いつまでも見ていられるけど──ぐぅぅ……。良い匂いに食欲がそそられたのか、お腹が鳴る。


侑「……た、食べてもいい、かな……?」

かすみ「え、えぇー!? 食べちゃうんですか!?」

侑「う、うん……ダメかな……? すごい良い匂いするし……」

しずく「確かフソウ島の“アメざいく”は原料にも凝っているという話だった気がします。見た目もさることながら、味も絶品だったはずですよ」

かすみ「え、そうなの?」

しずく「なんで買った人が知らないの……」

かすみ「で、でもでも……そんな可愛い“アメざいく”食べちゃうのは勿体なくないですか……?」

しずく「かなり日持ちするとは思うけど……ずっとそのままにしておいても悪くなっちゃうだろうから、おいしい間に食べてもらっちゃった方がいいと思うよ?」

かすみ「……まあ、それはそうだけどぉ……」

侑「それじゃ、いただきまーす!」


袋を開けて、星型の“アメざいく”を口の中に放り込むと──まろやかな甘さが口いっぱいに広がる。


侑「おいひぃ……♪」

歩夢「侑ちゃん、よかったね♪」

侑「うん……♪ かすみちゃん、ありがとう……♪」

かすみ「いえいえ、気に入っていただけたなら何よりです! 歩夢先輩はどうします?」

歩夢「うーん……私はすぐに食べちゃうのは勿体ないって感じちゃうなぁ……」
474 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:19:42.44 ID:uk513V0l0

そう言いながら、歩夢が悩んでいると──


 「マホミ〜♪」


マホミルが歩夢の手に乗っている“アメざいく”を袋ごとかっさらっていく。


歩夢「あ、マホミル〜……」
 「マホミッマホミ〜♪」


マホミルは“リボンアメざいく”を手に持って、匂いを嗅ぎながら幸せそうにしている。


リナ『きっと、匂いがすごく好みなんだと思う』 || ╹ ◡ ╹ ||

かすみ「だから、かすみんのバッグを漁ろうとしてたんですね」

歩夢「まあ……好きな匂いなら仕方ないかな……。よかったね、マホミル」
 「マホミ〜♪」


どうやら、歩夢はこの“アメざいく”をマホミルにあげることにしたようだった。


しずく「さて……それでは、今度は私の話を聞いてもらえますか? かすみさんが屋台巡りをしている間に出会った、不思議なロトムの話をしようかなと」

侑「不思議なロトムの話? 聞きたい聞きたい!」

かすみ「あ、その話、実はかすみんも気になってたんだよね」

しずく「少し長い話になりますが……」

歩夢「それじゃ、私お茶淹れるね♪」


──友達とわいわいしながら喋る旅の話はかなり盛り上がり、旅館の一室は夜遅くまでその灯りをともしたまま、夜が更けていくのであった。



475 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/20(日) 17:20:18.42 ID:uk513V0l0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ホシゾラシティ】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.●_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口


 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.30 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ワシボン♂ Lv.27 特性:はりきり 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.28 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:69匹 捕まえた数:3匹

 主人公 歩夢
 手持ち ラビフット♂ Lv.24 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.22 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホミル♀ Lv.20 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:96匹 捕まえた数:12匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュプトル♂ Lv.20 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロア♀ Lv.21 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      ジグザグマ♀ Lv.16 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニーゴ♀ Lv.18 特性:のろわれボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 1個 図鑑 見つけた数:101匹 捕まえた数:6匹

 主人公 しずく
 手持ち ジメレオン♂ Lv.18 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      マネネ♂ Lv.17 特性:フィルター 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アオガラス♀ Lv.18 特性:はとむね 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      スボミー♂ Lv.17 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      キルリア♀ Lv.20 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:110匹 捕まえた数:8匹


 侑と 歩夢と かすみと しずくは
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



476 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:01:58.34 ID:1bK8AB/x0

■Chapter024 『決戦! ホシゾラジム!』 【SIDE Yu】





──ホシゾラシティでみんなと再会した翌日。


かすみ「ん〜……! 良いお天気ですねぇ〜!」


かすみちゃんが旅館から出て日光を浴びながら伸びをする。

確かにかすみちゃんの言うとおり、今日は雲一つない快晴。ぽかぽか陽気で、まさに最高の冒険日和だ。


しずく「それにしても……随分ゆっくりなチェックアウトになってしまいましたね」

歩夢「昨日は、かなり遅くまで盛り上がっちゃったもんね……あはは」

リナ『みんな、起こしても全然起きる気配がなかった。ぐっすりだったね』 || ╹ᇫ╹ ||


しずくちゃんたちの言うとおり、昨日は夜遅くまでみんなで旅の話をしていたため、全員揃って朝寝坊。

チェックアウトを済ませた今は、すでにお昼前くらいになっていた。


かすみ「でも、これならさすがにニャスパーのボール移動も完了してるはずですよね!」

侑「そうだね。とりあえず、ポケモンセンターにニャスパーを迎えに行こう」
 「ブイ」

リナ『リナちゃんボード「レッツゴー!」』 || > 𝅎 < ||


私たちはポケモンセンターへと足を向ける。





    🎹    🎹    🎹





ジョーイ「──お待たせしました! こちらのボールになります!」

侑「ありがとうございます」


ニャスパーの入れられたモンスターボールを受け取り、ジョーイさんにお礼を言って、待っている歩夢たちのもとへと戻る。


歩夢「ニャスパー、受け取れた?」

侑「うん。出ておいで、ニャスパー」


早速受け取ったボールから、ニャスパーを出してあげる。
477 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:02:56.51 ID:1bK8AB/x0

 「ニャァ」

かすみ「きゃぅ〜ん♡ やっぱり、可愛いですぅ〜♡」

 「ニャァ?」

侑「ニャスパー。ボールの中は居心地悪くない?」
 「ニャァ」

侑「……相変わらず、無表情で何考えてるのかわからない」

歩夢「あはは……」

しずく「ただ、嫌がっているわけでもなさそうなので……」

侑「うん。ニャスパー、これがしばらくの間、君のお家だからね?」
 「ニャァ」

侑「すぐに君のトレーナー、見つけてあげるからね」
 「ニャァ」

侑「……わかってるのかな……?」

リナ『暴れたりしていなければ、とりあえず問題はないと思う……』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

 「ニャァ」

侑「あはは……とにかく、早く“おや”のところに帰してあげないとね」


とりあえず、ニャスパーの様子だけ確認して、ボールに戻す。


侑「ちゃんと、ボールにも戻せるっと……」


ボールの移し替えに手こずっていると聞いたときは少し心配だったけど、無事に出し入れどちらも出来ることを確認出来て一安心だ。


しずく「ニャスパーも無事ボールに入れられましたし……この後はどうしますか?」

かすみ「ジム戦! かすみん、ホシゾラジムに行きたいです!」


まあ確かに、凛さんが花陽さんと一緒に出掛けてから3日くらい経つし、今日くらいには戻ってきていてもおかしくないはずだ。


侑「それじゃ、一度ホシゾラジムに行ってみようか。歩夢もそれでいい?」

歩夢「うん、わかった」


歩夢は頷いたあと、


歩夢「……」


一瞬、何か考える素振りをする。


侑「歩夢? どうかした?」

歩夢「あ、うぅん! なんでもないよ!」

侑「気になることがあるなら、言って欲しいな……」


以前のこともあるし……。


歩夢「えっと……ちょっぴり考え事してるだけだよ。考えがまとまったら、ちゃんと侑ちゃんにも説明するから!」

侑「……そう? わかった」


少なくとも、前みたいな悩み方とは違うようだ。

なら、歩夢の方から言ってくれるのを待とうかな……。
478 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:03:57.63 ID:1bK8AB/x0

かすみ「それじゃ、ホシゾラジムに向かってしゅっぱ〜つ♪」

リナ『お〜♪』 || > 𝅎 < ||


意気揚々と走り出した、かすみちゃんの背中を追って、私たち一行はホシゾラジムへと移動する。





    🎹    🎹    🎹





到着したホシゾラジムの扉には──昨日のようなジム休業中の張り紙はなくなっていた。


かすみ「張り紙がない……ということは……つまり……!!」

しずく「ジム、再開してるみたいだね」

かすみ「やりました、ついにやりましたよ! たのもぉーー!!」


かすみちゃんはそのまま我先にとジムの中へと入っていく。

私たちもそれに続くようにして、ジムへと入る。

──ホシゾラジムの中は板張りの床で、まるで格闘道場のような内装になっている。さすが、かくとうタイプのポケモンジムなだけはある。

そして、その奥には──


凛「にゃ? 挑戦者かな?」


凛さんの姿。


かすみ「はい!! かすみん、セキレイシティから来ました! ジム戦してください!」

凛「いいよいいよ〜! えっと、一緒に来てる子たちは応援──……って、あれ?」


そこで、凛さんと目が合う。


凛「あ、あれれ? 侑ちゃんと歩夢ちゃんだよね?」

侑「はい!」

歩夢「えっと、こんにちは」

凛「二人とも、ホシゾラジムに来てくれたんだね! 嬉しいにゃ〜!」


凛さんが本当に嬉しそうに、こちらに手を振ってくる。


凛「もしかして、二人もホシゾラジムに挑戦かな!? 凛、また二人とはバトルしたかったんだ〜!」

かすみ「ちょっとちょっと待ってください〜!! 先にジム戦への挑戦を申し出たのはかすみんですよ〜!!」

凛「あ、そうだったね、ごめんごめん。……まあ、順番は誰が最初でも構わないんだけど……」

かすみ「侑先輩っ!! 1番はかすみんに譲ってください!! かすみんこれが3度目の正直なんですぅ……」


かすみちゃん、ジムリーダー不在でなかなか挑戦出来なかったみたいだからね……。
479 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:04:38.70 ID:1bK8AB/x0

侑「最初からそのつもりだよ。思う存分、バトルに集中して! 私は応援してるから!」

かすみ「やった〜!! さすが、侑先輩わかってますね〜!! ……と、言うことでかすみんが1番最初に挑戦します!!」

凛「それじゃ、挑戦者かすみん! 持ってるバッジはいくつ?」

かすみ「1つです!」

凛「わかった。それじゃ、使用ポケモンは2匹。全てのバトルポケモンが戦闘不能になった時点で決着だよ!」

かすみ「はい! わかりました!」


かすみちゃんと凛さんがそれぞれ、バトルスペースへと移動する。

私たちも、その間にかすみちゃんの後ろの観戦用の席に腰を下ろす。

そして、お互いが手にボールを構える。


凛「ホシゾラジム・ジムリーダー『勇気凛々トリックスター』 凛! 正々堂々、勝負だよ!!」


両者のボールが同時に宙に舞った──バトル、スタート……!!





    👑    👑    👑





かすみ「行くよ! ジュプトル!」
 「ジュプトーール!!!」

凛「コジョフー! 行くにゃ!」
 「コジョッ!!!」


かすみんの1番手はジュプトル! 対する、りん子先輩の1番手はコジョフーです!

さあ、まずは相手の様子を伺って──


凛「“ねこだまし”!!」
 「コジョッ!!!」

かすみ「!?」
 「プトルッ!!?」


と思った瞬間、ジュプトルの目の前でコジョフーが、両手を叩いて“ねこだまし”してくる。

唐突な攻撃に怯むジュプトル。そして、そこに向かって、


凛「“とびげり”!!」
 「コッジョッ!!!」

 「プトッ!!?」


顔面に炸裂する“とびげり”攻撃。ジュプトルはそのまま、後ろに吹っ飛ばされる。


 「ジュ、プトルッ…ッ!!!」


が、自慢の身のこなしで受け流すように、バク転しながら、ダメージを少しでも殺す。


かすみ「い、いきなり何するんですかぁ!?」

凛「コジョフーのバトルスタイルは先手必勝! もたもたしてると、一気に勝負がついちゃうよ!」

かすみ「むむむ……スピードなら、こっちも負けてないもん! “こうそくいどう”!!」
 「プトルッ!!!!」


ジュプトルは飛び出しながら、一気に加速する。
480 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:05:26.08 ID:1bK8AB/x0

凛「こっちも“こうそくいどう”だよ!」
 「コジョッ!!!」


2匹が同時に“こうそくいどう”を始め、フィールド内を走り回る。


かすみ「う……向こうも速い……」


お互いがある程度距離を取りながら、間合いを測っているため、自然とフィールド内を大きな円を描きながら回る形になる。

いつまでも追いかけっこをしているわけにもいかないし、どこかで距離を詰めないと……!


かすみ「仕掛けるよ! ジュプトル!」
 「プトォールッ!!!!」


かすみんの掛け声と共に、ジュプトルが強く踏み込みながら、フィールドを旋回中のコジョフーに向かって一直線に飛び出す。

一気に肉薄したジュプトルは、腕の刃をコジョフーに向かって振り下ろす。


かすみ「“リーフブレード”!!」
 「ジュプトォッ!!!!」


上から一閃する斬撃はそのまま、コジョフーを捉え、


 「コジョッ!!」

かすみ「やった! 直撃です!」


これで形勢は逆転──と、思ったら、


 「コジョォ…!!!」


コジョフーはその場で足を踏ん張り、攻撃を耐えていた。


かすみ「んな!?」

凛「“こらえる”から──“ローキック”!!」
 「コッジョッ!!!!」

 「プトォル!!?」


至近で攻撃を耐え、そのまま足払いを食らわされて、バランスを崩して前につんのめるジュプトル。

そのまま、体勢を崩したジュプトルに向かって、コジョフーは両手を添え、


凛「“はっけい”!!」
 「コジョッ!!!!」

 「プトォッ!!!?」


気功のエネルギーで吹っ飛ばした。


かすみ「じ、ジュプトル!?」
 「ジ、ジュプト…ッ」


壁際まで吹っ飛ばされるジュプトル。どうにか立ち上がるものの、ダメージが大きい。
481 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:06:14.37 ID:1bK8AB/x0

かすみ「ぐ、ぬぬ……防御はそんなに高くなさそうだから、押し切れると思ったのに……」

凛「その程度のスピードじゃ、簡単に見切れちゃうよ」

かすみ「むむむ……」

凛「それに、“ローキック”で素早さが下がった上に、“はっけい”には相手の筋肉を痺れさせる効果のある技にゃ。これでもうジュプトルは、スピードでコジョフーには追い付けないよ」
 「コジョッ!!」

かすみ「……っ」

凛「さぁ、トドメだよ! コジョフー!!」
 「コジョッ!!!」


コジョフーが床を蹴りながら、拳を構えて飛び掛かってくる。


 「プトル…ッ」


肉薄するコジョフー、構えた拳が当たる瞬間──ジュプトルの姿が突然掻き消えた。


 「コジョッ!!!?」
凛「にゃ!?」


驚きの声をあげる、りん子先輩とコジョフー。


かすみ「ニッシッシ……誰がもうコジョフーに追い付けないんですか〜?」
 「──プトルッ!!!!」


気付けば、コジョフーの背後に回ったジュプトルが刃を振るう、


凛「こ、“こらえる”!!」
 「コジョッ!!!」


間一髪で振り向き、腕で攻撃を防ぐ。


かすみ「やりますね! でも、何度も堪えられませんよ!」
 「プトルッ!!!」


再び、掻き消えるジュプトル。


かすみ「さぁ、追いつけますか!! かすみんのジュプトルに!!」

凛「な、なんで、こんなスピードが……!? と、とりあえずコジョフー!! 一旦フィールドの中央まで、逃げ──」

かすみ「遅いです!! “アクロバット”!!」
 「プトォーーールッ!!!!」


高速機動でフィールド内を縦横無尽に跳ね回っていたジュプトルは、狙いを定めて、コジョフーに尻尾を振り下ろした。


 「コジョォッ!!!?」


余りに速すぎるジュプトルの攻撃に対応しきれず、コジョフーはあえなく戦闘不能となりました。


かすみ「ナイス、ジュプトル!」
 「プトルッ!!」

凛「……戻って、コジョフー」
 「コ、コジョ…──」


りん子先輩がコジョフーをボールに戻す。
482 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:07:27.68 ID:1bK8AB/x0

凛「なんで、“まひ”したはずのジュプトルがあんなスピードで……」

かすみ「ふっふ〜ん、実は最初から状態異常は対策してたんですよ〜♪」

凛「対策……? ……“きのみ”」

かすみ「そのと〜りです! ジュプトルには予め“ラムのみ”を持たせていました!」

凛「そして、“まひ”を回復すると共に、“かるわざ”を発動させて、素早さを逆転された……」

かすみ「ですです〜♪ バトルは準備段階から始まってるんですよ〜!」

凛「そのとおりだね……。いい奇襲作戦にまんまとやられちゃった」

かすみ「いえいえ、それほどでも……こっちも“はっけい”での“まひ”がなかったら、かなりやばかったですから……。……とはいえ、もうここまで体の温まったジュプトルがいれば、2匹目も楽勝でしょうけどね〜♪」
 「ジュプトォル!!!」


もはや、このスピードのジュプトルに追い付けるポケモンがいるとは思えない。

これで、かすみんの勝利は約束されたようなものですね!


凛「確かに……その速さはピンチかも。……でも、勝負は最後までわからないよ! 行くよ! ゴーリキー!」
 「──ゴォーリキッ!!!」


りん子先輩の最後のポケモンはゴーリキー。これまた、かくとうタイプらしい、かくとうタイプのポケモンが出てきました。


かすみ「さぁ、ジュプトル! このまま、決めちゃうよ!」
 「プトルッ!!!」


ジュプトルが床を蹴って飛び出した。

一気に肉薄し、ゴーリキーに向かって、腕を振り下ろす。


かすみ「“リーフブレード”!!」
 「プトォル!!!!」

 「リキ…ッ!!」


あまりのスピードに回避もままならず、攻撃が直撃し、うめき声をあげるゴーリキー。


凛「“からてチョップ”!!」
 「リキッ!!!」


ゴーリキーも負けじと、攻撃を返してくるけど、


 「プトル!!!」
かすみ「そんな攻撃当たりませんよ〜!」


ヒット&アウェイで離脱するジュプトルはなんなく攻撃を回避する。


かすみ「ふっふ〜ん♪ これは楽勝な流れですね〜!」
 「プトルッ!!!」


再び接近し、ヒット&アウェイを狙った“リーフブレード”を振り下ろした、瞬間──ゴーリキーが自分から前に出てきた。


かすみ「!?」
 「プトルッ!!?」


まさか前に飛び出してくると思わなかったため、ジュプトルの縦薙ぎの攻撃は、ゴーリキーの肩辺りに振り下ろされる。

ジュプトルの腕は──ガッと音を立てながら、ゴーリキーの肩に上からぶつかり、


凛「そこっ!!」
 「リキッ!!!」

 「プトルッ!!?」
483 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:08:26.82 ID:1bK8AB/x0

ゴーリキーは自分の肩にぶつかった、ジュプトルの腕をがしりと掴んだ。


かすみ「え!? や、やば!?」

凛「“あてみなげ”!!」
 「ゴーーーリキッ!!!!」

 「ジュプトォ!!?」


ゴーリキーは身を捻りながら、ジュプトルを背負い投げして、地面に叩きつける。


 「プ、プトォッ…!!」


地に伏せったジュプトルに向かって、


 「リキッ!!!!」


ゴーリキーが腕を引く。


かすみ「やばっ!!? ジュプトル、回避!! 今すぐ起きて!!」
 「ジュ、プ、トォッ!!!」

凛「“メガトンパンチ”!!」
 「リキィッ!!!!!」


猛スピードで振り下ろされる拳を、跳ね起きの要領でギリギリ回避する。

──先ほどまで、ジュプトルがいた場所には、拳が突き刺さり、床板に風穴が空く。


かすみ「あ、あっぶな……!」


当たってたら間違いなく倒されてた……! ジュプトルはそのまま、ゴーリキーから一旦距離を置く。


かすみ「近付いたらダメかも……。じゃあ、遠距離攻撃に変更! “タネマシンガン”!!」
 「プトルルルルルッ!!!!!」


近接攻撃でカウンターを狙われるなら、遠距離から攻撃しちゃえば問題ないはず……!!


凛「“ビルドアップ”!!」
 「ゴーーリキッ!!!!」


りん子先輩の指示と共に、ゴーリキーはボディビルのようなボーズをしながら、筋肉に力を入れる。

力が籠もって、大きく盛り上がった筋肉は、飛んできた“タネマシンガン”をその身で弾きながら、


 「リキ」


少しずつ前進してくる。


かすみ「き、効いてない……!? 遠距離攻撃じゃ威力が足りてないってことですか!?」

凛「もう、逃げ回らせないよ。“じならし”!!」
 「ゴーリキッ!!!」


ゴーリキーがダンッと床に向かって、震脚し、地面を揺らす。


 「ジ、ジュプトッ」
かすみ「わ、わわわ……!?」


もう体力が限界に近いジュプトルは踏ん張るのも限界だったのか、一瞬揺れに足を取られる。

その一瞬を見逃さず、ゴーリキーが走り出した。
484 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:09:28.79 ID:1bK8AB/x0

かすみ「こ、こっち来たぁ!?」
 「ジ、ジュプトッ…!!」


足をもつれさせる、ジュプトルに迫るゴーリキー。


 「リキィ!!!」


再び腕を引き、振り被る。絶体絶命のこの瞬間、かすみんは──


かすみ「ジュプトル!! ゴーリキーの顔を見てっ!!」
 「プトッ!!!」

かすみ「“りゅうのいぶき”!!」
 「プトォォォルッ!!!!」


ジュプトルの口から青い炎が音を立てながら吹き出した。


 「リ、リキッ!!!」


顔面に“りゅうのいぶき”を浴びたゴーリキーがよろける。


かすみ「こ、これで倒れてください……っ!!」


顔面という急所に直撃させ、この一撃で決着してくれることを祈る──が、その祈りは届くことはなく、


 「リキ…」


ゴーリキーはまだ、ジュプトルの目の前に立っていた。


かすみ「……っ……!」

凛「“からげんき”!!」
 「ゴォォォォリキィ!!!!」


全力のパワーを載せたチョップが、足を取られ床で蹲るジュプトルに直撃した。


 「ジュ、プトォ…」


さすがに、この一撃は耐え切れず。ジュプトルは戦闘不能になって気絶してしまった。


かすみ「戻って、ジュプトル……ありがとう」
 「ジュ、プ…──」

凛「今度はこっちが“りゅうのいぶき”の“まひ”を利用させてもらったにゃ」
 「リキ」

凛「“からげんき”は状態異常になると威力が倍増する技。さらにゴーリキーの特性は“こんじょう”。状態異常になった今、攻撃力はさらに増大してるよ」

かすみ「…………」


さっきと状況が逆転してしまった。苦し紛れに放った“りゅうのいぶき”が却って悪い方向に働いてしまいましたね……。

もともとジュプトルで勝ち切るつもりだったから、結構ピンチな状況に見えますけど……。


かすみ「……ふっふっふ……この勝負、貰いましたよ」

凛「にゃ?」

かすみ「かすみんには対かくとうタイプ用に残しておいた秘策があるんですよ!」


かすみんはフィールドに向かって、最後のポケモンを繰り出す。
485 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:10:11.80 ID:1bK8AB/x0

かすみ「行くよ! サニーゴ!!」
 「──…………」

凛「サニーゴ……その見た目、ガラルサニーゴだね」

かすみ「さすがジムリーダーですね! そのとおり、この子はガラルサニーゴです! つまり、ゴーストタイプです!」

凛「……なるほど、ゴーストタイプには、かくとうタイプの攻撃が通らないね」

かすみ「そういうことです! メインの攻撃手段を失ったゴーリキーにどこまで出来ますかねぇ〜?」

 「リキ」


ゴーリキーがのっしのっしとサニーゴの方に近付いてくるけど、出来ることなんてほとんどないはずです。

あとはじわりじわりと攻めていけば勝ちは盤石──


 「リキ…」


ゴーリキーは拳を握りしめたまま、前進を続ける。


かすみ「気合い十分なのはわかりますよ〜。でも、効かない物は効きませんから!」

凛「“きあいパンチ”!!」
 「リ、キィッ!!!」

かすみ「だから〜、サニーゴにかくとうタイプの技は──」


──ヒュンと何かが、かすみんの真横を横切る。


かすみ「へ?」


後ろを振り返ると──サニーゴがジムの壁に突き刺さっていた。


かすみ「へ!? ちょ、な、なんで!?」


何故か、かくとうタイプが効かないゴーストタイプのサニーゴに攻撃が直撃していた。


凛「確かに、かくとうタイプの攻撃はゴーストタイプには効かない。……だけど、それを破る技があるんだよ」

かすみ「へぇ!? な、なんですかそれぇ!?」

凛「“みやぶる”。この技を使えば、ゴーストタイプの正体を見破って、かくとうタイプやノーマルタイプの攻撃が当たるようになるにゃ」

かすみ「う、うそぉ……!」


……や、やばいです……完全に計算が狂いました……。

完全に狼狽えるかすみん。

ですが、いつの間にかはまった穴から抜け出したのか、ふわ〜っとサニーゴが近付いてきました。


かすみ「さ、サニーゴ……?」
 「………………サ、コ」

かすみ「!」


仲間になってから初めて、サニーゴが鳴き声をあげました。


かすみ「……もしかして、やる気ってこと……?」
 「…………」


今度はスーっと、かすみんの前に躍り出る。

この絶体絶命なシチュエーションの中、どうやらサニーゴは戦意を失っていないようだった。
486 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:11:04.74 ID:1bK8AB/x0

かすみ「……わかった。サニーゴ、信じるよ!」
 「…………」

かすみ「“シャドーボール”!!」
 「…………サ」


影で出来た弾がゴーリキーに向かって撃ちだされる。


凛「“からてチョップ”!!」
 「リキッ!!!」


ゴーリキーはそれを直接チョップで叩き落とす。


かすみ「ち、直接殴って防いでくるなんて……! なら、数で勝負です!! “パワージェム”!!」
 「…………コ」


今度は宝石のようなきらめく光が複数発射される。


凛「“クロスチョップ”!!」
 「リキィィ!!!!」


今度は、腕をクロスにしたチョップで、一気に薙ぎ払う。


かすみ「……っ! これも、ダメ……っ……!」

凛「いつまでも、遠距離技に付き合うつもりはないよ!!」
 「リキィ!!!」


カイリキーが再び、手刀を構えながら迫ってくる。


かすみ「サニーゴ! 逃げ──……るのは無理かも……」
 「…………」


相手が“まひ”しているとはいえ、動きが絶望的にのろのろなサニーゴが迫ってくるゴーリキーから逃げるのは無理……!


かすみ「なら、迎え撃つしかない……!!」

凛「“からてチョップ”!!」
 「リキィッ!!!!」

かすみ「“てっぺき”!!」
 「………………ニ」


──ゴッ!! と硬いモノを叩く音と共に、チョップが炸裂する。

真上からの強烈な一撃に、浮いていることもままならず、サニーゴを床に叩き落とされ、そのまま床板にめり込んでしまう。


凛「さぁ、トドメ……!!」


再び、ゴーリキーが手を振り上げた瞬間──ゴーリキーの動きが止まった。


凛「……!? ゴーリキー!? なんで、攻撃しないにゃ!?」
 「リ、リキ…」


いや、止まったんじゃない。ゴーリキーは腕を“振り下ろせなくなった”だけ。


かすみ「今、触りましたよねぇ〜?」

凛「にゃ……?」

かすみ「触れられたら、たまーに発動するんですよ……この子の特性は……!!」

凛「特性……? まさか、“のろわれボディ”……!?」

かすみ「そのとーりです!! サニーゴの特性は“のろわれボディ”!! 直接触った部位に呪いを掛けて技を使えなくしますよ!! もう、ゴーリキーの拳は封じました!!」
487 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:12:08.66 ID:1bK8AB/x0

これはかなり大きなアドバンテージです……!! 拳を封じた今のうちに、次の策を──


凛「──“メガトンキック”!!」
 「リキィッ!!!!」


──考える間もなく、サニーゴは蹴り飛ばされて、


かすみ「……あ」


バゴッ!! と音を立てながら、再びかすみんの背後の壁にめり込んでいた。


凛「拳が使えないなら、蹴ればいいよ」
 「リキッ!!!」

かすみ「…………」

 「………………ゴ」
かすみ「……! サニーゴ……!」


まだ、サニーゴは戦闘不能じゃない……! 壁から抜け出して、ふらふらしながら飛んでいる。


凛「すごいタフさだけど……もう、さすがに限界みたいだね。今度こそ、トドメだよゴーリキー!」


りん子先輩の指示で歩き出したカイリキーは、


 「…リ、キッ」


急に膝を突いた。


かすみ・凛「「……え!?」」


二人で同時に驚きの声をあげる。

だって、サニーゴの攻撃はほとんど有効に通ってなかったのに、どうして……!?

サニーゴが何かをしたのかと思って、振り返ると──


かすみ「……っ!!!?」


サニーゴの虚ろな目の奥に──他に形容しがたいような、不吉な炎を宿したような光が見えた。

まるで何かを恨めしく呪うような──


かすみ「……あ」


そこで、気付いて思い出す。以前見た図鑑説明の文章を──

 『サニーゴ(ガラルのすがた) さんごポケモン 高さ:0.6m 重さ:0.5kg
 急な 環境の 変化で 死んだ 太古の サニーゴ。 大昔
 海だった 場所に よく 転がっている。 体から 生える 枝で
 人の 生気を 吸い 石ころと 間違えて 蹴ると たたられる。』


かすみ「……サニーゴを蹴っとばしたから、呪われたんだ……!」


つまり──今のゴーリキーは“のろい”で体力が削られ続けている状態だから、膝を突いたということ……!!


凛「ご、ゴーリキー!! あと少しだから……!!」
 「リ、リキ…」


ただでさえ、ジュプトルとの戦いでHPを削られていたゴーリキーは、“のろい”のダメージも相まって満身創痍。


 「………………サ、ニ、ィ、ゴ、ォ……!!!!!!」
488 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:12:50.85 ID:1bK8AB/x0

そこに向かって、サニーゴが今まで聞いたことのないようなおどろおどろしい鳴き声をあげると──


 「……リ、キ……ッ……」


急にゴーリキーはビクンと震えるように痙攣したあと──その場に大の字になって倒れ込んでしまったのだった。


かすみ「……へ」

凛「……うそ」

かすみ「……も、もしかして、勝ったの……? 私たち……?」

凛「……ゴーリキー戦闘不能……よって、チャレンジャーかすみんの勝利にゃ」

かすみ「…………や、やったぁぁぁ!! なんか、わかんないけど、勝ちましたーー!!!」
 「…………サ」


気付けば、かすみんの近くに飛んできていたサニーゴを抱きしめる。


かすみ「ありがとうーー!! サニーゴ!! お陰で勝てたよー!!」
 「…………ニ」

凛「最後の攻撃は“たたりめ”だね……。状態異常の相手に使うと威力が倍になる技だよ。“まひ”してたのもあったし、とてもじゃないけど耐えられなかったにゃ……」


りん子先輩はゴーリキーをボールに戻しながら、話を続ける。


凛「まさか、蹴ったことが原因で呪われるなんて……」

かすみ「かすみんも驚きました……完全にラッキーだったというか……」

凛「でも、負けは負けだね……。その実力を認めて、この──“コメットバッジ”を進呈するにゃ」


そう言って、りん子先輩は取り出した隕石の形をしたジムバッジをかすみんに手渡してくれました。


かすみ「ありがとうございます!! えへへ〜♪ やりましたよ〜! しず子〜! 侑先輩〜! 歩夢先輩〜!」
 「………………ゴ」


サニーゴを抱きかかえたまま、観戦していた、しず子たちのもとへと走る。


しずく「やったね、かすみさん! すごかったよ!」

歩夢「うん……! 特にサニーゴの逆転劇、すごかった……」


今回ばかりは素直に褒めてくれるしず子と、いつもどおり優しい歩夢先輩。そして──


侑「かすみちゃん!!」

かすみ「うわぁ!?」


侑先輩が目を輝かせながら、顔を近づけて来た。


侑「今のバトル、ほんっとうにすごかった!! 全然予想出来ない展開に、形勢が何度も入れ替わって……そして、最後のどんでん返しの大逆転!! 私、すっごくときめいちゃった!!」

かすみ「えへへ〜♪ それほどでもありますけど〜♪」
 「………………サ」

かすみ「かすみんのことばっかじゃなくて、この子も褒めてあげてください♪」

侑「うん! サニーゴ! ホントすごかったよ!!」

 「……………………ニ」
かすみ「うんうん♪ サニーゴも褒められて喜んでますね♪」

しずく「そうなの……?」

歩夢「ふふ♪ きっと、喜んでるんだと思うよ♪」
489 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:13:46.76 ID:1bK8AB/x0

仲間たちと勝利の余韻を味わっていると──


凛「さて……それじゃ、次は侑ちゃん? それとも、歩夢ちゃんかな?」


りん子先輩が、こちらにやってきて、そう問いかけて来た。


歩夢「あ……えっと……」


迷う素振りを見せる歩夢先輩。そんな歩夢先輩に、


侑「──歩夢、どうしたい?」


侑先輩がそう訊ねた。その顔は──すごくすごく優しい表情だった。





    🎀    🎀    🎀





歩夢「侑ちゃん……?」

侑「歩夢は、どうしたい?」

歩夢「私は……」


侑ちゃんがすごく優しい口調と表情でそう問いかけてくれる。


歩夢「……私は──ちゃんとやり直したい」


あのとき、うまく出来なかったことを、出来ないまま、終わりにしたくない。私の答えを聞くと、


侑「うん! 歩夢なら、きっとそう言うと思ってたよ!」


侑ちゃんはニッコリと笑って、そう返す。


侑「凛さん、ジム戦についてなんですけど」

凛「?」

歩夢「……凛さんと花陽さんの二人とマルチバトルでやらせてもらえませんか」

凛「……!」


凛さんは私たちの提案を聞くと、少し驚いたような顔をしたけど、


凛「そうだね、再戦が違う形だと歩夢ちゃんも侑ちゃんもすっきりしないもんね!」


すぐに納得してくれたようで、笑顔で頷いてくれた。


凛「でも、かよちんにも予定があるから、それだとすぐには出来ないから……後日ってことになるけど、いい?」

歩夢「はい!」

侑「もちろんです!」

凛「ありがとにゃ! それじゃ、かよちんがこっちに来られる日に都合がついたら、二人に連絡するよ!」

歩夢「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
490 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:14:28.84 ID:1bK8AB/x0

私と侑ちゃんは、凛さんとポケギアの番号を交換する。

再戦は後日──ホシゾラシティで、凛さん、花陽さんと戦う。

侑ちゃんと一緒に……!





    🎹    🎹    🎹





──ホシゾラジムを後にして……。


かすみ「侑先輩たちはこれからどうするんですか?」

侑「うーんと……ホシゾラジムのジム戦はすぐに出来ないだろうから、一旦ウチウラシティの方を目指すことになるかな? 歩夢もそれでいい?」

歩夢「うん、大丈夫だよ」


というわけで、私たちの次の進路はウチウラシティだ。


歩夢「かすみちゃんたちはどうするの?」

かすみ「えーっと、次のジムは……」

しずく「西のコメコシティかな」

かすみ「じゃあ、そっちです!」

しずく「というわけで、コメコの森に行くことになりますね」


かすみちゃんたちは私たちが来た方向へと進むようだ。私たちとは逆回りで巡っていたみたいだし、予想通りではあるけど。


侑「それじゃ、ここでお別れだね」

かすみ「もうお別れですか……かすみん、寂しいですぅ……」

歩夢「きっとまたすぐに会えるよ♪」

しずく「ですね。旅をしていれば、またどこかですれ違うでしょうから」

かすみ「……侑先輩、次は負けませんからね!」

侑「望むところだよ! 私だって、次も負けるつもりないから!」

しずく「全員、次会うときはさらに成長した姿を見せられるように、邁進しましょう!」

歩夢「うん! そうだね♪」


4人みんなで笑い合って、


侑「それじゃ、またね! 二人とも!」

歩夢「何か困ったことがあったら、いつでも連絡してね?」

しずく「侑先輩、歩夢さん、道中お気を付けて」

かすみ「次会うとき、あんまりにすごくなったかすみんに腰抜かさないでくださいよ〜!!」


またそれぞれの旅路へと歩き出すのであった。



491 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/21(月) 15:15:04.91 ID:1bK8AB/x0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ホシゾラシティ】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.●_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口


 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.30 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ワシボン♂ Lv.27 特性:はりきり 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.28 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.25 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:71匹 捕まえた数:4匹

 主人公 歩夢
 手持ち ラビフット♂ Lv.24 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.22 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホミル♀ Lv.20 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:98匹 捕まえた数:12匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュプトル♂ Lv.23 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロア♀ Lv.21 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      ジグザグマ♀ Lv.16 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニーゴ♀ Lv.22 特性:のろわれボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:103匹 捕まえた数:6匹

 主人公 しずく
 手持ち ジメレオン♂ Lv.18 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      マネネ♂ Lv.18 特性:フィルター 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アオガラス♀ Lv.18 特性:はとむね 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      スボミー♂ Lv.17 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      キルリア♀ Lv.20 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:112匹 捕まえた数:8匹


 侑と 歩夢と かすみと しずくは
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2022/11/21(月) 21:00:51.72 ID:/NUk1Mszo
『適当に話ながらポケモン厳選する』
SVレート戦準備編#1
(19:02〜放送開始)

https://www.twitch.tv/kato_junichi0817
493 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:11:09.64 ID:lNytOG/10

■Chapter025 『スボミーの森』 【SIDE Shizuku】





──時刻はお昼を過ぎ、太陽が少しずつ傾き始めた頃。


かすみ「それじゃ、コメコシティに向かってレッツゴー♪」

しずく「日が暮れる前に森を抜けないとね」


3番道路を通過し、コメコの森に差し掛かった。

コメコの森は、オトノキ地方最大の森だけど、道さえ外れなければ抜けるのはさほど難しくない場所だ。

野生のポケモンの気性も大人しいポケモンが多いし、苦労することもないだろう。

そんな中、私の腰についているボールが1つ、震え出す。


しずく「ん……?」


どうやら、外に出たがっているようなので、ボールを投げて、外に出す。


 「──スボ…」
しずく「スボミーどうしたの?」

 「スボ…」


ボールから出たがっていたのはスボミーだ。スボミーは外に出ると辺りをキョロキョロ見回しながら、とてとてと歩き始める。


かすみ「そういえば、しず子のスボミーってこの森のポケモンだったんだよね?」

しずく「うん……まあ、そうだね」

かすみ「やっぱり、故郷の空気が恋しかったのかな」

しずく「……そうかもしれないね」


……とはいえ、結果として群れから追い出されてしまった子だから、自分から外に出たがるとは思っていなかったけど……。


 「スボ…スボミ」


スボミーは辺りをキョロキョロと見回しながら、歩いている。


かすみ「なんだろう……見回りでもしてるみたいかも」

しずく「もしかして……敵がいないか見張ってるの?」
 「スボ」

しずく「大丈夫だよ、スボミー。この森は大人しいポケモンが多いから……。……あれ……?」

かすみ「どしたの、しず子?」

しずく「いや……」


ふと、思う。……このスボミーが群れから追い出された理由は、ロトムの言っていたことが正しいのなら、外敵に自分から攻撃を仕掛けていたからだ。

しかし、この森のポケモンは基本的に大人しい気性のポケモンばかり。……じゃあ、スボミーは一体何と戦っていたんだろうか……?


しずく「…………」


もしかして……スボミーたちの外敵足りうる何かが、この森には潜んでいる……?

森の木々が風に揺れ、葉同士が揺れて擦れ合う特有の音が聞こえてくる。

普段だったら、平和の象徴のような、穏やかな自然のBGMも、そんな疑念のせいか、少し不気味な音に聞こえる気もする。
494 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:12:18.97 ID:lNytOG/10

しずく「考えすぎ……かな」


あたりを見回すと、


 「スボ…」「スボミ…」「ボミィ…」


いつのまにか、私たちを遠巻きに見つめるスボミーたちが、あちこちにいることに気付く。


しずく「スボミー……このスボミーが元居た群れの子たちかな……」
 「スボ」

かすみ「なんか、遠巻きに見てる……やっぱり怖がられてるみたいだね」

しずく「うん……」


ただ、スボミーはそんなことを気にも留めず、辺りをしきりに見回している。


しずく「スボミー……どうしたのかな……」

かすみ「やっぱり今でも、元居た群れの仲間たちが心配なのかもよ?」

しずく「……そういうことなのかな」


そういう理由なら、いいんだけど……。なんだが、スボミーの警戒の仕方に少しだけ異様なものを感じ始めた、そのときだった──


 「──フェロ」

かすみ「……え?」

しずく「……!?」


気付いたときには──細く、真っ白なポケモンが私たちの目の前に立っていた。

長身な人間くらいの高さで、透き通るような白い体躯の初めて見るポケモン。

姿を認めた次の瞬間──気付けば、私は尻餅をついていた。


しずく「……え?」


余りに自然に膝が折れて、尻餅をついている自分に驚いた。

それと同時に、身体が震えていることに気付く。

さらに、全身から嫌な汗を掻き始める。

──それは、生物としての本能だった。

理由はわからないけど、このポケモンは……まずい。脳が警鐘を鳴らしている。

咄嗟に、かすみさんにも視線を向けると、


かすみ「……あ、え……?」


かすみさんも同じような状態で尻餅をついていた。


 「フェロ…」


目の前のポケモンが、私に視線を向けて来る。目が──逢った。

視線が交わった瞬間──動けなくなった。


しずく「……だ、ダメ……」
495 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:13:49.25 ID:lNytOG/10

脳が本格的に危険信号を発し始めたが、身体が動かない。

そんな中、


 「スボォォォーーーー!!!!!」


スボミーが雄たけびを上げながら、そのポケモンに向かって飛び掛かって行った。


しずく「だ、ダメ……!? スボミー……っ……!」


私の制止も虚しく、


 「フェロ」

 「スボォッ!!!?」


スボミーは目の前の白いポケモンに足蹴にされた。

吹きとばされるスボミー。

ここからはほぼ反射だった。力の入らない身体を必死に動かして、


しずく「スボミー……ッ!!!」


飛んでくるスボミーに向かって、抱き留めるようにして飛び付き、スボミーを抱きかかえると──そのまま、視界が回った。

あまりに強い勢いで蹴られたスボミーを受け止めたせいか、威力が殺しきれずに一緒に吹き飛ばされていたのだ。

そのまま、地面を転がり、


しずく「……ぐっ……!!」


森の木に背中を打ちつける形でやっと止まった。


かすみ「し、しず子……ッ!!」

しずく「…………ぁ……ぐ……っ……」


かすみさんの声がずいぶん遠くに聞こえる……。

いや、恐らくそれくらい吹っ飛ばされたんだ。

痛みを堪えながら、


しずく「スボミー……だい、じょうぶ……?」


スボミーに向かって、安否を訊ねる。


 「ス、スボ…」


すると、私の胸の中で、スボミーが鳴き声をあげた。


しずく「無事……みたい、だね……よかった……」
 「スボ…」


やっとわかった。スボミーが戦っていた外敵は──あのポケモンだ。

そして、あのポケモンは危険だ。危険すぎる。

立ち上がって、逃げなくちゃ。今すぐに。

顔を上げると──


かすみ「し、しず子……っ……!」
496 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:14:55.33 ID:lNytOG/10

かすみさんがこちらに這いながら、寄ってきているところだった。

恐らくかすみさんも、目の前のポケモンの危険性には気付いている。

どうにか、逃げるんだ。

私も起き上がろうとした、そのとき、ふと──胸がドキドキと高鳴っていることに気付く。


しずく「……え?」


胸が高鳴っている。恐怖によるものではない。

気持ちが昂揚し、興奮しているときの、胸の高鳴り。

こちらに這って近付いてくる、かすみさんの先に──


 「フェロ」


先ほどのポケモンが私たちを見下すように立っていた。

そのポケモンを見て、思った──思ってしまった。


しずく「──綺麗……」


よく見ると、そのポケモンは美しかった。今まで見た、どんなポケモンよりも。

私がさっき視線を外せなかったのは、恐ろしかったからじゃない。

あのポケモンが美しすぎて、目を離せなかったんだ。

そんなことに気付いて、


しずく「……あは、あははは……♪」


何故か、笑いが込み上げてきた。


かすみ「し、しず子……?」

しずく「すごい……すごい……!! あのポケモン綺麗……今まで見たどんなモノよりも美しいポケモンだよ……」


なんだか、うっとりとしてしまう。


かすみ「ちょっと、しず子、どうしちゃったの!?」


やっと、私のもとに辿り着いたかすみさんが、私の両肩を掴む。


しずく「あ、か、かすみさん……あのポケモンが見えないよ……!!」

かすみ「しず子!? 何言ってるの!?」

しずく「もっともっと、目に焼き付けないと……♪」


私の顔を覗き込むかすみさんを避けるように、あのポケモンを視界に入れる。

──噫、美しい……♪ その透き通るように白くて、スラっとした細長い体躯は木漏れ日を反射しながら、輝いている。

見ているだけで、心が洗われるようだ。こうして視界に入れているだけで、幸福感が胸を満たしていくのがわかる。


 「スボォッ!!!」


そのとき、胸元で急にスボミーがボフンッ! と音を立てながら、花粉をまき散らした。


しずく「ぐ、げほげほ……っ……」
 「スボ、スボボ!!!」

しずく「あ……あれ……私……今……?」
497 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:15:55.25 ID:lNytOG/10

今、私……何言ってたっけ……?

頭の中におかしな靄が掛かっていたような……。


かすみ「しず子!! 逃げるよ!!」


かすみさんがフラフラしながら立ち上がり、私の手を掴んで走りだそうとする、が、


かすみ「……わっ!?」


まだ身体の自由が効いていないのか、すぐにバランスを崩して、転んでしまう。


しずく「か、かすみさん!? 大丈夫!?」

かすみ「……っ……そ、それはこっちの台詞だよ……っ!!」

しずく「え……?」

かすみ「って、あぁ!! こっちに来てる!!」

しずく「え?」


振り返ろうとした瞬間、


かすみ「見ちゃダメ!!」


かすみさんが、私の頭を抱えるようにしてハグしてきた。


しずく「か、かすみさん!?///」

かすみ「しず子は絶対あいつのこと見ちゃダメ!!」

しずく「え、ええ……?」


私が動揺する中、


 「スボッ!!!」


スボミーが私の胸元から飛び出していく。


しずく「あ、スボミー!?」


そして、それと同時にスボミーが眩く光り出した。


しずく「!? まさか、このタイミングで進化!?」


視界のほとんどがかすみさんで埋まっているせいで、ちゃんと確認は出来てなかったけど、一瞬視界の端で捉えたあの光は恐らく進化の光だった。


かすみ「スボミー……!! しず子を守るために……!!」

 「──ロゼェッ!!!!」


そして耳に届いてくるのは、スボミーが進化したポケモン──ロゼリアの鳴き声。


かすみ「今のうちに……!! 逃げるよ……!!」

しずく「待って!? ロゼリアが戦っているのに“おや”の私が逃げるわけにいかないよっ!!」

かすみ「ロゼリアが時間を稼いでくれてる間に逃げるの!!」
498 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:18:26.23 ID:lNytOG/10

二人で言い合いを始めた、次の瞬間には、


 「──ロゼェッ…!!!?」


ロゼリアは私たちのすぐ傍まで吹きとばされて、ぐったりとしていた。


しずく「ロゼリア……!?」
 「ロゼ…」

かすみ「だ、ダメです……っ……れ、レベルが違い過ぎます……」


私を抱きしめたまま、かすみさんが震え出す。

このままじゃ埒が明かない。


しずく「ごめん、かすみさん……っ!!」


かすみさんを引き剥がすようにして、


かすみ「きゃんっ!?」


両手でかすみさんを押すと、かなり弱い力だったのに、かすみさんは再び尻餅をついてしまった。

でも、このままじゃ全滅しかねない。

私は決意し、あの白いポケモンと対峙するために振り返った。


かすみ「見ちゃダメ、しず子っ!!」

 「フェロ」

しずく「……あ」


視界に入れた瞬間。全身の力が抜けて、再びへたり込む。


しずく「あ、えへへ……すごい……きれい……?」


あのポケモンの一挙手一投足を見ているだけで、脳が溶けるような気分になった。

一歩ずつ、一歩ずつ、私の目の前に迫り。


しずく「あ……?」


そのポケモンは、私の目の前で、その長い脚を振り上げた。


かすみ「しず子っ!!!!」


──あ、きっと死ぬ。

猛スピードで振り下ろされる脚が、何故かスローモーションのように見えた。

でも、自分が今際の際にいることすら、どうでもよく思えるくらい──美しかった。


 「──バイウールー!!! “コットンガード”!!!」


──が、その瞬間、私とそのポケモンの間に白いもこもことしたものが割り込んできて、ボフッと音を立てながら、蹴りを受け止めた。


しずく「……ぁぇ……?」

かすみ「しず子……っ!!」


かすみさんが飛びついてきて、再び抱きしめられる。
499 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:19:26.83 ID:lNytOG/10

かすみ「大丈夫!? 怪我してない!?」

しずく「?? ????? ???」

女性「──大丈夫!?」


知らない人の声が聞こえる。


かすみ「た、助けてくださいっ!! しず子が、しず子がおかしくなっちゃって……!!」

女性「ウルトラビーストの毒が回ってるね……遥ちゃん、診てあげて」

女の子「う、うん! ちょっと失礼します!!」


急に、かすみさんから剥がされて、視界に現れたのは明るい茶髪のツインテールの女の子の顔。


女の子「……瞳孔の動きがおかしい……かなり、毒が回ってる……」

しずく「?? ???」

かすみ「毒!? 毒ってなんなんですか!?」

女の子「えっと……あのウルトラビーストには、特殊なフェロモンで人やポケモンを魅了する力があるんです」

かすみ「フェロモン!? だから、しず子がおかしくなって……!!」

女の子「とにかく、戦闘はお姉ちゃんたちに任せて、一旦離れましょう!!」

かすみ「は、はい!! わかりました!!」

しずく「??? ????」


私の身体が、ツインテールの女の子と、かすみさんの二人掛かりで持ち上げられる。


かすみ「しず子!! 今、助けるからね!!」

しずく「??? ?????」





    🐏    🐏    🐏





──ウルトラビーストの反応がして、すぐに駆け付けたら、人が襲われている場面に遭遇した。


 「フェロ!!!」

彼方「もいっかい! “コットンガード”!!」


振り下ろされる脚を、さらに増量した毛皮でガードする。


 「フェロ…ッ」


攻撃がうまく通らず忌々しそうにするフェローチェの背後から、


穂乃果「ピカチュウ!! “アイアンテール”!!」
 「ピッカァッ!!!」


穂乃果ちゃんのピカチュウが飛び込んできて、横薙ぎに“アイアンテール”を炸裂させる。


 「フェロッ…!!!」


吹っ飛ばされながらも、フェローチェはその身のこなしで受け身を取り──
500 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:20:14.29 ID:lNytOG/10

 「フェロォ…!!!」


とてつもない、瞬発力で飛び回り始める。

このウルトラビーストは一瞬で時速200qにも到達する瞬発力を持っていて、目で追うのはほぼ不可能に近い。

でも、こんなスピードタイプ相手には──


穂乃果「千歌ちゃん!! 任せた!!」

千歌「了解です!! ルカリオ、行くよ」
 「グォゥッ!!!」


千歌ちゃんが、目を閉じる。

風を切りながら、森の中を飛び回るフェローチェの音──いや、気配を察知して、


千歌「……そこっ!! “いあいぎり”!!」
 「グゥォッ!!!!」


── 一閃した。


 「フェ、ロッ…!!!!」


高速機動をしながら、必殺の一撃で切り裂かれたフェローチェはそのままバランスを崩して、森の木にぶつかり、一瞬蹲ったあと──空中にあいた“穴”へと逃げていった。


穂乃果「おみごと! 千歌ちゃん!」

千歌「ふぅ……一発で成功してよかったぁ……」

彼方「それより、さっきの子たち……!!」

穂乃果「そうだった……!! 急ごう!!」

千歌「はい……!」


私たちは、遥ちゃんと一緒にいるはずの、さっき襲われた子たちのもとへと急ぐ。





    👑    👑    👑





しず子を二人掛かりで抱きかかえるようにして、少し離れた場所に逃げることが出来た。


かすみ「あ、あの……!! しず子は……!?」

遥「かなり……危ない状態です」


移動している最中に、遥と名乗った子はしず子の状態を確認しながら、そう言う。


かすみ「あ、危ないって……」

遥「フェローチェの毒は……感受性の強い人にとっては猛毒になります。……このまま毒が回りすぎると、精神汚染されてしまって……最後は……」

かすみ「精神、汚染……」


なんですか、その物騒なワードは……。


遥「とにかく、すぐに専門の治療をしないと……! 本部に連絡を入れます……!」


本部が何かはわからないけど……。
501 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:21:19.49 ID:lNytOG/10

かすみ「それって、すぐに来てくれるんですよね!? 間に合うんですよね!?」

遥「……わかりません。でも、出来るだけ急いでもらいます」

かすみ「そんな……」


それじゃ、このままじゃ、しず子は……。


しずく「……ぁ」


さっきまで、虚ろな目で黙っていたしず子が小さく声をあげた。


かすみ「しず子……?」

しずく「……さっきの、さっきのポケモンは、どこ? ねぇ、どこ? どこどこどこ!?」

かすみ「!?」

遥「い、いけません!? もう禁断症状が!?」


さっきのポケモンの姿を求めて、急に暴れ出すしず子。


しずく「もっと、もっと見てたいのっ!!! ねぇ、どこ、どこどこどこ!!?」


大声をあげながら、暴れるしず子に向かって、


かすみ「しず子っ!!!」


かすみんは大きな声で呼びかけながら、肩を掴んで顔を覗き込んだ。


かすみ「かすみんを見てッ!!!!」

しずく「ッ!!?」

かすみ「あんなのより、かすみんの方がずっと、ずーーーーっと!!! 可愛くて、美しくて、綺麗で、魅力的でしょ!!!?」

しずく「……ッ!!!?」

かすみ「毒だか、フェロモンだか知らないけどッ!!! あんなの変なやつに負けないでッ!!!! かすみんがいるからッ!!!!」


ただ、必死に叫ぶ。1秒でも早くしず子に──大切なしず子に、いつものしず子に戻って欲しい一心で、叫んだ。


しずく「……か、すみ……さん……?」

かすみ「!! しず子!! うん!! かすみんだよ!!」

しずく「……かすみ……さん……」

かすみ「しず子、大丈夫っ!! かすみんがいるから……っ!!」


ぎゅっとしず子を抱きしめると、


しずく「…………う、ん…………」


しず子は小さく返事をしたあと、かすみんの胸の中で、クタっとなってしまった。


かすみ「し、しず子!?」

遥「発作が……収まった……」

かすみ「あ、あのあのあの!? しず子がクタって……!?」

遥「大丈夫です、発作が落ち着いて、気を失っただけだと思うので……」

かすみ「へ……? そ、そっか……」
502 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:23:01.86 ID:lNytOG/10

かすみんも力が抜けて、しず子を抱きかかえたまま、へたり込んでしまう。

そこに──


 「おーい!! 遥ちゃーん!!」


さっきかすみんたちを助けてくれた、バイウールーのトレーナーのお姉さんが、向こうから駆けてくるのが見えた。


遥「お姉ちゃん!! こっち!!」


どうにか、撃退にも成功したようだった。

かすみんとしず子は……どうやら、九死に一生を得たことをここでやっと確信して、安堵するのでした。





    👑    👑    👑





あの後、気を失ったしず子をおんぶして、近くにあるロッジまで移動してきた。

どうやら、かすみんたちを助けてくれた人たちが借りているロッジらしい。

そこのベッドにしず子を寝かしつけ、遥──もといはる子が再び診察を始めた。


かすみ「あの……しず子は……」

遥「……とりあえず、症状は落ち着いてるみたいです。……目を覚ましてみないと、今後どうなるかわからないけど……すぐに大事に至ることはないと思います」

かすみ「ホント!? ホントに!?」

彼方「遥ちゃんが言うなら間違いないね〜。遥ちゃん、ずっとウルトラビースト症についてのお勉強してたから〜」

遥「……私は戦えないし、これくらいしか出来ないから……でも、症状が落ち着いてるというのは間違いないです。安心してください」

かすみ「……よかったぁ……」

遥「強く声を掛けたのが、よかったのかもしれません」


どうやら、かすみんの必死の叫びが届いたらしい。本当によかった……。

あとは、本部? とやらから、専門の治療をしてくれる人を待つだけですね……。


かすみ「あの、ところで……さっきから言ってる、ウルトラビーストってなんなんですか……?」

彼方「あ……流れで言っちゃった」

千歌「まぁ……巻き込んじゃった以上、説明しないわけにもいかないし、いいんじゃないかな」

穂乃果「緊急時どうするかは、私たちに任せられてるしね、へーきへーき」


……というか、しれっとこの地方のチャンピオンがいる気がするんですけど……簡単な自己紹介くらいならさっきしたとはいえ……結局なんなんでしょうか、この人たち。
503 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:24:24.92 ID:lNytOG/10

穂乃果「全部は説明出来ないけど……ざっくり言うと、この世界じゃない場所から来たポケモン、みたいな感じかな」

かすみ「この世界じゃない場所から来たポケモン……? なんですか、それ……?」

千歌「文字通り、ここじゃない場所から来た、めちゃくちゃ強いポケモンだよ。まあ、詳しいことはあんまりわかってないんだけど……たまにこっちの世界に迷い込んでくるのを、私たちが撃退してるんだけど……」

穂乃果「今回は、私たちが駆けつけるのが遅れたせいで、かすみちゃんとしずくちゃんを巻き込んじゃった……ごめんなさい」

かすみ「え、い、いや……それなら、穂乃果先輩たちのせいじゃないじゃないですか……謝らないでください」

穂乃果「えへへ……ありがとう。でも、こうならないために、私たちがいるんだから……反省はしないとね」

千歌「うん……そうだね」

穂乃果「あ、それと……これ本当は秘密にしなくちゃいけないことだから、他の人には絶対話さないでね? パニックが起きちゃうから」

かすみ「は、はい、わかりました」


つまり、詳しいいきさつはわかりませんが、超強いトレーナーたちが異世界から襲ってくるエイリアンポケモンたちを撃退していたけど、たまたまそいつらにかすみんたちが遭遇しちゃった……という感じみたい。


彼方「とりあえず、今日は疲れたでしょ? ここなら、彼方ちゃん含めて、めちゃくちゃ強いトレーナーが3人もいるから、安心して休んで〜」

かすみ「……はい、そうさせてもらいます……」


かすみんも緊張の糸が切れたのか、眠くなってきました……。ああ、でも……汗くらいは流さないと……うら若き乙女がお風呂にも入らず、寝るなんて言語道断です。


かすみ「ふぁぁ……お風呂、貸してください……」

遥「はい! こっちが浴室なので!」


はる子に案内されて、浴室へ向かう。

部屋から出ていく際、ベッドのしず子に目を向けると──


しずく「…………すぅ…………すぅ…………」


静かに寝息を立てながら眠っている姿に、再度安心して、今日の疲れを癒すために、お風呂を目指すのでした。

──あまりに疲れすぎていたせいか、湯船で寝かけて溺れそうになったのは、ヒミツですよ?



504 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/22(火) 12:25:01.56 ID:lNytOG/10

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【コメコの森】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回●__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口


 主人公 かすみ
 手持ち ジュプトル♂ Lv.23 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロア♀ Lv.21 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      ジグザグマ♀ Lv.17 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニーゴ♀ Lv.22 特性:のろわれボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:111匹 捕まえた数:6匹

 主人公 しずく
 手持ち ジメレオン♂ Lv.18 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      マネネ♂ Lv.18 特性:フィルター 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アオガラス♀ Lv.18 特性:はとむね 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロゼリア♂ Lv.19 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      キルリア♀ Lv.20 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:120匹 捕まえた数:9匹


 かすみと しずくは
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2022/11/22(火) 19:17:19.70 ID:KqqYGHRoO
『先着☆6テラレイドしまくる+配布会』
(16:32〜放送開始)

https://www.twitch.tv/kato_junichi0817
506 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/23(水) 12:28:33.84 ID:O3G9ZVHQ0

■Chapter026 『潮騒の町・ウチウラシティ』 【SIDE Yu】





──かすみちゃんたちと別れてから、2番道路を歩くこと数時間。


リナ『侑さん、見えてきたよ』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「うん! あれが次の町……!」
 「ブイ」

歩夢「ウチウラシティだね!」


次の目的地、ウチウラシティへと到着した。


リナ『ウチウラシティは東西を海に囲まれてる海の町だよ。海産資源が多くて、別名・潮騒の町って呼ばれてる』 || ╹ ◡ ╹ ||

歩夢「確かに、町の中でも、潮の香りがするね」

侑「コメコシティとかホシゾラシティでも近くに海はあったけど……この町は本当に海の町! って感じかも!」
 「ブイブイ!」


少し遠くを見渡せば、西側に傾き始めた太陽に照らされた海とビーチが見える。

ここからでは、ちょっと遠くて見えないけど……今見ているのと逆側にも、真っ直ぐ進んで行けば海があるはずだ。


侑「どっちにも海があるのって不思議かも……!」

リナ『ここウチウラシティから、半島の南端のウラノホシタウンまでを繋ぐ1番道路は別名「海の道」とも呼ばれてる』 || ╹ 𝅎 ╹ ||

歩夢「地図で見るとわかりやすいけど、海を割るように半島が突き出てるから、そう言われてるんだよね」

リナ『うん』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「へー! せっかくだから、ウラノホシタウンまで行ってみたいなぁ……」

リナ『でも、ウラノホシにはジムはないよ?』 || ╹ᇫ╹ ||

歩夢「ふふ、でも侑ちゃんは行きたいんだよね」

侑「うん! だって、ウラノホシタウンと言えば──千歌さんの出身地だもん! チャンピオンの生まれ育った町に行けば、千歌さんの強さの秘密が何かわかるかもしれないし!」

リナ『なるほど』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「あと、この近くには研究所もあるからね! 行ってみたい場所はたくさんあるよ!」


凛さんと花陽さんの都合が付くまで、少し時間も掛かるだろうし……その間に、この一帯をいろいろ見て回れればいいな。


リナ『それじゃとりあえず、ジムに行くの?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「うーん……もうそろそろ夕方になるし……。まずは宿探しかな」

歩夢「じゃあ、ジム戦は明日にする?」

侑「うん。たくさん歩いて、ポケモンたちも疲れちゃっただろうし」
 「ブイ」

歩夢「ふふ、侑ちゃんも……でしょ?」

侑「あはは、バレちゃった?」

歩夢「今日はゆっくり休んで、明日のジム戦に備えようね♪」

侑「うん! それじゃ、張り切って良い宿を探そう〜!」

リナ『今、宿の候補を検索するね』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「お願い、リナちゃん!」


いつもどおり、リナちゃんに検索をお願いして、私たちは宿を探し始めた。



507 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/23(水) 12:30:31.42 ID:O3G9ZVHQ0

    🎹    🎹    🎹





──あの後、海辺の旅館に宿を取って、腰を落ち着けた。


侑「はぁ〜……おいしかった〜♪」
 「ブイブイ♪」


晩御飯に出てきた海の幸を堪能出来て、幸せな気分。


侑「しかも、この後は温泉〜♪」

リナ『侑さん、ご機嫌だね』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「ご飯もおいしいし、温泉にも入れるって言われたら、そりゃご機嫌にもなるよ〜! イーブイたちも温泉でゆっくりしようね!」
 「ブイ♪」「ワシャー♪」

侑「ニャスパーもだよ」
 「ニャァ?」

侑「温泉、お風呂。わかるかな?」
 「ニャァ」


説明してみるものの、ニャスパーは興味なさげに自分のモンスターボールで遊び始める。……まあいっか、ニャスパーがマイペースなのは、いつものことだし。


侑「ライボルトは……」
 「…ライ」


部屋の隅で、身を伏せて目を瞑っている。温泉には興味なさそう……。

ライボルトはなんというか……孤高というか、あんまりスキンシップを取りたがらないんだよね……。


侑「ま、いっか……」


お風呂の準備をしようとしていると、


歩夢「よいしょ……」


何故か歩夢が、上着を羽織っていることに気付く。


侑「歩夢? 外に行くの?」

歩夢「あ、うん。ちょっと、お散歩しようかなって思って」

侑「もう暗いよ?」

歩夢「近くを歩くだけだから、大丈夫だよ」

侑「私も付いていこうか……?」

歩夢「……ちょっと一人でお散歩したい気分なんだ。大丈夫、すぐに戻ってくるから」

侑「そう……? 何かあったらすぐに連絡するんだよ?」

歩夢「うん、わかった」


歩夢は頷くと手を振りながら、部屋を出ていく。


リナ『歩夢さん、どうしたんだろう?』 || ? _ ? ||

侑「わかんない……」


ただ、歩夢が一人になりたいと言うなら、止めるのも違う気がするし……。
508 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/23(水) 12:32:09.73 ID:O3G9ZVHQ0

侑「まあ……サスケもいたし、手持ちのボールも持ってたから、大丈夫だと思う」

リナ『そうだね。いざってときでも、図鑑があれば位置もわかるし』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

侑「うん」





    🎀    🎀    🎀





私は一人、ウチウラシティの西にある浜を歩く。


歩夢「……もう、侑ちゃんったら、相変わらず過保護なんだから……」


そうやって、気に掛けてくれることが嬉しい自分もいるけど……。

でも、今は……そんな侑ちゃんの優しさに甘えてちゃいけないとき。


歩夢「ラビフット、マホミル、出てきて」
 「ラフット!!」「マホミ〜♪」


2匹をボールから出し、


歩夢「サスケも」
 「シャボ」


定位置にいたサスケも砂浜に降ろす。


歩夢「それじゃ、始めよっか」
 「ラフット!!」「マホミ〜♪」「シャーーボ!!」





    🎀    🎀    🎀





砂浜の砂を盛って、そこに拾った木の棒を立てる。


歩夢「──サスケ! “どろばくだん”!」
 「シャーーボッ!!!!」


その木の棒目掛けて、サスケが“どろばくだん”を放つ。

サスケの攻撃は木の棒を吹きばしたけど……それと同時に、盛った砂の山も吹き飛ばしてしまった。


歩夢「これじゃダメ……もっと的確に攻撃を当てないと……。サスケ、もう1回!」
 「シャーーボッ!!!」


いくつか作った砂の山に立てた木の棒に向かって攻撃を飛ばす。木の棒だけ狙い撃てればそれで成功だ。成功するまで、何度も繰り返す。


 「シャーーーボッ!!!」

歩夢「! やった! 今度は成功だよ! サスケ!」
 「シャボッ」

歩夢「それじゃ、次はラビフット!」
 「ラフット!!!」

歩夢「行くよ……! はい!」
509 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/23(水) 12:33:21.52 ID:O3G9ZVHQ0

同時に2つ放り投げた、小石を、


歩夢「“にどげり”」
 「ラビ、フット!!!!!」


的確に2つ蹴り飛ばす。


歩夢「うん! 上手だよ! もう1回!」
 「ラフット!!!」

 「──ふふ、特訓ですか?」

歩夢「っ!?」


急に声を掛けられて、ビクっとしてしまう。


歩夢「あ、えっと……」

女の人「あら……ごめんなさい。驚かせるつもりはなくて」

歩夢「い、いえ……」

女の人「こんな暗い中特訓なんて、精が出ますわね。ポケモントレーナーさんですか?」

歩夢「は、はい」


私に話しかけてきたのは、髪の長いお姉さんだった。

夜の砂浜は街灯もないため、髪が長いくらいの特徴しかわからないけど……とにかく、優しい声と柔らかい口調で喋る人だ。


女の人「技の命中精度を上げる特訓ですか……」

歩夢「はい。……少しでも、強くなりたくて」

女の人「ふふ、強くなるためには、焦りは禁物ですわよ? 実力というものはゆっくりと時間を掛けて身に着けても……」

歩夢「……私、近いうちに大事な試合があるんです」

女の人「……では、それに向けての特訓……ということですか」

歩夢「はい。……その試合、実は再戦で……今度は絶対に勝ちたいんです。それに、マルチバトルだから、一緒に戦ってくれる子の足を引っ張らないように、少しでも強くならないと……」

女の人「なるほど……。少し、ここで見ていてもいいですか?」

歩夢「え? いいですけど……きっと、面白くないですよ?」

女の人「いえ、頑張っている人を見るのが好きなので」

歩夢「は、はぁ……」


なんだか変わった人だなと思った。

でもまあ……本当に見ているだけなら、別に断る理由もないかな……。


歩夢「えっと……それじゃ、次はマホミル」
 「マホミ〜♪」


私はマホミルから少し離れた場所に移動して、


歩夢「マホミル! “アロマセラピー”!」

 「マホ〜〜」


マホミルの匂いが届くのを待つ。


歩夢「……えっと、じゃあ次はこっちに移動して……もう1回!」

 「マホミ〜♪」

歩夢「……うーん、ここだともう届かない……」
510 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/23(水) 12:34:13.85 ID:O3G9ZVHQ0

恐らく移動して、風上に来てしまったというのもありそうだ。


歩夢「そこから、もう少し“アロマセラピー”の範囲、広げられる?」

 「マホ〜〜〜!!!」


マホミルがさっきよりも大きな鳴き声をあげながら、“アロマセラピー”を発動すると、


歩夢「あ……ちょっとだけ、匂いが届くね! その調子!」


今度は私のもとに匂いが届いてきた。


女の人「なるほど……補助の得意なマホミルは少しでもサポート出来る範囲を広げるための特訓、ということですね」

歩夢「あ、はい」

女の人「ふふ、面白い特訓方法ですわね」


女の人は思ったよりも、楽しそうに私の特訓を観察していた。ホントに変わった人かも……。


歩夢「じゃあ、もう少し離れたところまで──」


私がマホミルの方を見ながら、少しずつ距離を取って後退していたそのとき、


歩夢「きゃっ!?」
 「──タマッ」


何かに躓いて背中側から転んでしまう。


歩夢「いたた……」

女の人「大丈夫ですか……?」


転んだ私を見て、女の人が駆け寄ってくる。


歩夢「は、はい、下が砂だったので、怪我とかは……。……突然、何かに躓いて……」


足元を見ると、


 「タマッ…」


青くて丸いポケモンが蹲っていた。


歩夢「ポケモン!? ご、ごめんね!? 怪我してない!?」
 「タマ…」


間近で見て確認をすると、少し怯えてこそいるものの、怪我はしていなさそうで安心する。


女の人「このポケモンは……タマザラシですわね」

歩夢「タマザラシ……? タマザラシって、寒い海にいるポケモンですよね?」

女の人「はい、ですからあまりこの辺りにはいないのですが……何分まだ泳ぐのが苦手なポケモンなので、たまにこうして流されて来てしまうことがあって……」

歩夢「そうなんですか……」


つまり、群れからはぐれてしまった子のようだ。


 「タマ…」


タマザラシは不安そうに、私に身を寄せてくる。
511 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/23(水) 12:35:31.97 ID:O3G9ZVHQ0

歩夢「お腹空いてるの? ……あ、“きのみ”があるから、ちょっと待っててね」


私はバッグから“フィラのみ”を取り出して、タマザラシに与える。


女の人「あ、その“きのみ”は……!」

 「タマ…♪」


タマザラシは“フィラのみ”を見ると、おいしそうに食べ始めた。


歩夢「ふふ、好きな味だもんね♪ まだ、たくさんあるからね♪」
 「タマ♪」

女の人「……あの」

歩夢「? なんですか?」

女の人「どうして、その子が辛い味が好きだとわかったのですか?」

歩夢「え?」

女の人「“フィラのみ”は強い辛味成分を含む“きのみ”で、苦手なポケモンは食べたら“こんらん”してしまうほどです……味の好みを完全に把握していないと、普通はあげられないのではと思いまして……」

歩夢「えっと……でも、この子、私に擦り寄ってきたので……“さみしがり”な子なのかなって。“さみしがり”な子は辛い味が好きで、すっぱい味が嫌いですし……」

女の人「この短時間で、初めて出会ったポケモンの性格を……」

歩夢「……?」

女の人「やはり、貴方は面白いトレーナーですわね」

歩夢「は、はぁ……ありがとうございます……?」


なんだかよくわからないけど……感心されてしまった。


女の人「そのタマザラシ、よかったら貴方が連れていってあげてください」

歩夢「え?」

女の人「群れからはぐれたタマザラシが元の群れに追い付くのは難しいでしょうし……“きのみ”をくれた貴方を信用しているようですから」

 「タマァ♪」

歩夢「……タマザラシ、私と一緒に冒険してくれる?」
 「タマ、タマァ♪」


問いかけると、タマザラシは嬉しそうに身を寄せてきた。


歩夢「うん。それなら、一緒に行こうか♪」
 「タマ♪」

女の人「ふふ、素敵なものを見せてもらったところで……わたくしはそろそろ帰りますわね」

歩夢「あ、はい。暗いのでお気を付けて……」

女の人「貴方も。……そうそう、貴方の特訓を見ていて思いましたが……」

歩夢「?」

女の人「貴方の持ち味は、鋭い攻撃や精度の高い技ではなくではなく……きっと、その優しさや愛情、ポケモンをよく見ている、その観察力にあると思いますわ。……なんて、余計なお世話かもしれませんが」

歩夢「……前にも、他の人から同じようなことを言われました」


少し言葉の選び方は違うけど……ニュアンス的にはエマさんが言っていたことに似ている気がする。


女の人「それを鍛えていくのではダメなのですか?」

歩夢「ダメ、というか……。……自信が欲しいんです」

女の人「自信、ですか……?」

歩夢「さっき大事な試合があるって言いましたよね。……その試合のことを考えると、まだ不安で。また負けちゃうんじゃないかなって……そんな風に考えちゃって……」
512 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/23(水) 12:36:34.11 ID:O3G9ZVHQ0

次こそは、胸を張って、自信を持って戦いたいと思うのに。どうしても、弱気な自分が顔を出してしまう。そんな状態から抜け出したくて、こうして侑ちゃんには秘密で特訓をしにきたわけだけど……。


女の人「今日の特訓で、自信は付きましたか?」

歩夢「……正直、あんまり」


技の精度や威力は、少しずつ上がっていっているのを実感している。でも……それでも、自分がまた負けてしまうんじゃないかという不安が頭から離れていってくれない。


女の人「そうですか……。……でしたら、最後にもう一つお節介を焼きますわね」

歩夢「?」

女の人「実戦で失った自信は、実戦でしか取り戻せないものです。その大事な試合とやらの前に、一度どこかで戦ってみてはどうでしょうか」

歩夢「どこかでバトルを……」

女の人「もちろん、決めるのは貴方自身ですが……。それでは、今度こそ帰りますわね」

歩夢「あ……すみません、引き留めたみたいになっちゃって……」

女の人「いえ、お気になさらず。……それでは、またお会いしましょう。おやすみなさい」

歩夢「はい、おやすみなさい」


女の人は小さく手を振ると、背筋を伸ばしたまま、夜の浜を後にして、町の方へと消えていくのだった。


歩夢「……? ……またお会いしましょう……?」


またどこかで会うのかな……? いや、社交辞令の一環みたいなものだよね……?


 「ラビフ!!」「シャボ」「マホミ〜♪」「タマァ」
歩夢「……そうだね、私たちもそろそろ戻ろうか」


あんまり長く続けていると、侑ちゃんも心配するだろうし……。

みんなを引き連れて、私も夜の浜辺を後にするのだった。





    🎹    🎹    🎹





歩夢が帰ってきたのは、散歩に出てから1時間くらいしてからのことだった。

特に変わった様子もなく、普通に戻ってきたから一安心……したんだけど。


 「タマ♪」
歩夢「タマザラシもお風呂入りたいの? こおりタイプでも、温泉って入って大丈夫なのかな?」

侑「歩夢の手持ちが増えてる……」

歩夢「あ、うん。さっき、そこの浜辺でお友達になったの」
 「タマ♪」


しかも、すごく懐いているし……。


歩夢「それじゃ、私お風呂行ってくるね」

侑「あ、私も!」

歩夢「え? 先に入ったんじゃ……」

侑「歩夢のこと待ってたんだ! ゆっくり温泉を楽しむなら、歩夢と一緒がいいなって思って」

歩夢「……ふふ♪ そっか♪」
513 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/23(水) 12:37:22.82 ID:O3G9ZVHQ0

歩夢は嬉しそうに笑いながら、


歩夢「じゃあ、早く行こ♪」


私の手を引く。


侑「わっとと、今行くから焦らないでって!?」

歩夢「ダ〜メ♪ 私いっぱい歩いて疲れちゃったから、早くお風呂でのんびりしたいの♪」

侑「そ、そうなんだ……? あ、イーブイ、ワシボン、ニャスパーもいくよー!」
 「ブイブイ」「ワシャ〜♪」「ニャァ?」

歩夢「みんなもおいで〜!」
 「ラフット」「シャボ」「マホマホ〜♪」「タマァ♪」


私たちは手持ちたちと一緒に賑やかな雰囲気のまま、一日の疲れを癒すために、温泉へと向かうのだった。



514 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/23(水) 12:37:56.31 ID:O3G9ZVHQ0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【ウチウラシティ】
 口================== 口
  ||.  |○         o             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         ● .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口


 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.30 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ワシボン♂ Lv.27 特性:はりきり 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.28 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.25 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
 バッジ 2個 図鑑 見つけた数:72匹 捕まえた数:4匹

 主人公 歩夢
 手持ち ラビフット♂ Lv.25 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.23 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホミル♀ Lv.21 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      タマザラシ♀ Lv.18 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:99匹 捕まえた数:13匹


 侑と 歩夢は
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



515 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/23(水) 23:08:39.11 ID:O3G9ZVHQ0

 ■Intermission🎹



──震えている女の子に、抱かれていた。


 「……おとうさん……おかあさん……」

 「こっちに来ちゃダメ……!」

 「逃げるんだ……!」

 「おとうさん……っ……おかあさん……っ……!!」


……直後、視界は眩い光に包まれて──ホワイトアウトする。



──ところ変わって……ご飯を食べる場所。


 「…………」

 「──もしかして、喋れないのかい……?」

 「…………」

 「そうかい……辛い思い……したんだね……」

 「…………」

 「おばちゃんで良ければ、頼ってね……ご飯を作ってあげることくらいしか出来ないけど……」

 「…………」


女の子は、頷いた。



 「…ニャァ」



──────
────
──



侑「……ん……ぅぅ…………?」


目が覚める。


侑「…………夢…………?」


なんだか……おかしな夢を見た。

あまりに身に覚えがない光景……。

いや、夢だから、そういうこともあるのかもしれないけど……。

内容はよくわからなかったけど……妙にリアリティがある夢だったような……。

ぼんやりと身を起こすと──


歩夢「…………すぅ……すぅ……」
 「ラビ…zzz」「…zzz」「マホ…zzz」「タマァ…zzz」


眠っている歩夢と、そのポケモンたち。


 「ブイ…zzz」「ワシャ…zzz」「ニャァ…zzz」「…ライボ」
516 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/23(水) 23:09:14.33 ID:O3G9ZVHQ0

私のポケモンたち。

そして、


リナ『侑さん……? どうかしたの? まだ早いよ?』 || ╹ᇫ╹ ||


リナちゃんが居た。


侑「あ、うぅん……ちょっと変な夢見て起きちゃっただけ……」

リナ『そう?』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「もうちょっと……寝ようかな……」

リナ『うん、その方がいいと思う。時間になったら起こすから』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「……うん、お願い……」


私は再び目を瞑って、眠りへと……落ちていくのだった。



………………
…………
……
🎹

517 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2022/11/24(木) 14:11:31.44 ID:ffPGApYk0

■Chapter027 『決戦! ウチウラジム!』 【SIDE Yu】





──ウチウラシティで一晩を過ごし、その翌日。


侑「あー……緊張してきた」
 「ブイ」


ウチウラジムを前に、緊張で跳ねる鼓動を落ち着けようと深呼吸をする。


歩夢「侑ちゃん、頑張ってね!」

リナ『侑さん、ファイト』 ||,,> 𝅎 <,,||

侑「うん、頑張る!」


歩夢とリナちゃんの激励を受けながら、覚悟を決めて、ジムの扉をくぐる。

ジムの中は学校の体育館のような内装で、その床にはバスケットコートの様に、ポケモンバトル用のフィールドを示すラインが引かれている。

ここウチウラジムはポケモンスクールが併設されているから、ジム戦がないときは体育館としても使っているのかもしれない。

そんなジム内を見回しながら、奥に目を向けると──赤い髪の女の子が一人。


侑「ウチウラジムのジムリーダー──ルビィさん……!」

ルビィ「……チャレンジャーの方ですか?」

侑「はい! セキレイシティから来た、侑って言います! ジム戦、お願いします!」

ルビィ「わかりました! バトルスペースについてください!」

侑「はい! 行くよ、イーブイ!」
 「ブイ!!」


セキレイ、ダリア、コメコ、ホシゾラに続いて訪れた5つ目のポケモンジムにして、私の3つ目のジムバッジを懸けた戦いが始まる。

未だに緊張で高鳴る胸を、深呼吸でどうにか落ち着かせながら、チャレンジャーのスペースに向かう。

その最中、


歩夢「侑ちゃん! 頑張ってね!」


私の背後のセコンドスペースから歩夢の声。

私は力強く頷いてみせてから、再びルビィさんの方へと振り返ろうとした、そのときだった。


 「──そのジム戦、少し待ってもらえませんか?」


凜とした声が、ジム内に響き渡った。


侑「え?」

歩夢「……あれ、この声……?」

ルビィ「ぅゅ……? お姉ちゃん……?」


ルビィさんの背後から、歩いてくる黒髪の女性の姿を見て、私は目を見開いた。


侑「う、嘘……!? あの人って、まさか……!!」


チャンピオン率いる、4人の最強ポケモントレーナー──四天王の1人。その中でも鉄壁の防御力を誇ると言われるくさタイプのエキスパート──
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