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【安価スレ】堕ち行く光
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42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/03(水) 01:26:30.12 ID:v8Wl41ec0
眠っている少女
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/03(水) 01:31:32.24 ID:Ch8eusDyo
何らかの魔翌力を秘めた宝珠
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/03(水) 01:39:24.30 ID:AR8yVPK8o
代々伝わるめちゃくちゃ美味い料理のレシピ
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/03(水) 01:46:42.30 ID:wPJ2/mIiO
全部スカなので↓2までのコンマで再判定
↓1は00を除いて三等分、↓2は二等分して、それぞれのコンマの大きさに対応したものを選びます。
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/03(水) 01:48:03.43 ID:v8Wl41ec0
連取りありなら
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/03(水) 06:39:11.75 ID:OZv5ZrZgo
お
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/03(水) 12:24:09.39 ID:Yma5WwEOo
>>42
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 02:25:38.13 ID:a37F8p4WO
undefined
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 02:26:08.23 ID:a37F8p4WO
扉を開けると暗黒に満ちた宝物庫が姿を見せる。一寸先は闇、と比喩でよく言われるが、実際に現象として目にすることになるとは思わなかった。
見えない。何も見えない。マジで見えない。自分の手を眼前まで近づけても、全く見えないのだ。光の概念がこの場所だけ存在していないのかと錯覚を覚えてしまう。
流石に暗闇の中を手探りで行動するのは無謀だ。二人とも暗視の手段は持っているが、それは星の元でしか使えないし何でもかんでもはっきりと認識出来るわけではないのだ。
リヒトは光の短剣を数本作り、石畳や天井に突き刺した。ほうら明るくなったろう、とでも言いたげだが、数が多すぎて逆に眩しいまである。
「…まぁ、予想はしてたよ。この人たちも辛かっただろうな」
光が戻った視界に映るのは、朽ち果てた衣類と亡骸。そして、大事そうに守られた三つの宝箱。
遺体が身につけている宝飾品からして、亡くなられたのは城主夫妻と、その親衛隊の騎士だということは容易に想像出来た。死因はおそらく餓死。
机に置かれた手記には、臣下を置いて病魔の蝕む地上から逃げたこと。そして、病に苦しむ臣下と共に逝けぬ自分の不甲斐なさなどに対する謝罪と後悔が記されていた。
当時の情勢が分からないので憶測でしかないが、本気で逃げ出すのなら城から出るだけで良かった。
にも関わらず、わざわざ脱出口が無い宝物庫に逃げ込んだということは、そういうことだろう。
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 02:27:23.37 ID:a37F8p4WO
「…見捨てることが出来なかったんだろうね。病に苦しむ兵士たちを置いて逃げることが出来ず、かといって同じ苦しみを味わう覚悟が足りず。だから…」
「だから、この人たちはこの場所で、命を終えることを選んだ。同じようには逝けなくとも、せめて、同じ場所で。共に生きてきたこの城で終わりたかったから。…哀しいね」
原因も不明な疫病で国が滅ぶことなど、短い人類の歴史を辿ればままあることだ。集落単位になればなおさら。
だが、これは。こんな終わり方は哀しすぎる。理不尽すぎる。
「まぁ、それはそれとして。お宝を拝見させていただくか」
「ムードもへったくれも無いね。人の心は無いのかい?」
「人の心があるから宝に惹かれるんだろ」
先程までの陰鬱な雰囲気は霧散し、彼らが命を賭して遺した未知のお宝への興味が場を支配する。どこからか、呆れた溜め息が聞こえた気がした。
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 02:27:54.88 ID:a37F8p4WO
鍵の掛かった宝箱を開けるのに一番手っ取り早い方法は何か。道行く人々に訊ねれば、様々な答えが返ってくるだろう。
盗賊に頼む。鍛冶屋に頼む。なんかいい感じに鍵だけ壊すなどなど。
幽者の答えはこれだ。
「箱を解体すれば良いんだよぉ!!!!!」
リヒトは聖剣を取り出し、一つ目の宝箱を斬り刻む。幾度も閃光が走り、鞘に収められた瞬間、宝箱はバラバラになって中身を露出させる。
果たして、ヴォルグス城の至宝の正体とは。
「『は ず れ』」
と古代語でデカデカと書かれた羊皮紙が、至宝の正体だったらしい。なるほど、このガッカリ感がお宝というわけか。
お宝をくれた返礼として、この城は跡形もなく滅ぼさなければならない。
聖剣が色を変え魔剣となる緊急事態が発生しているが、シルヴィアは意に介さず残りの宝箱を物色する。パカっと、何の抵抗もなく開いた。
「は?!?」
「最初から鍵は掛かってなかったよ。鍵チェックも無しに実力行使に出るリヒトくんが私は怖いよ」
「いや普通宝箱には鍵が掛かってるって思うだろ!?」
「鍵が空いてたのは事実なんだから逆ギレされても」
雑談の間に、魔剣はまた聖剣へと戻る。ヴォルグス城消滅の危機は避けられた。
シルヴィアの吐息と共に宝箱から取り出されたのは、紫紺に染まった透明な宝珠と、古代語がびっしりと書かれた羊皮紙の束だった。
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 02:28:28.73 ID:a37F8p4WO
「おぉっ!なんかそれっぽいやつじゃん!」
「それっぽいっちゃあそれっぽいけどね。君が思ってたであろう金銀財宝とは程遠いよ?」
「この際人を小馬鹿にした書き残しじゃなければなんでもいいわ!」
先程上げて落とされたことに対する恨み節を溢すリヒトは、羊皮紙を手に取る。が、すぐに目を背けた。
「古代語なんて読めねぇよ」
「もし君が読めても興味は無いだろうけどね」
シルヴィアが大事そうにカバンに入れたそれは、ヴォルグス城に伝わる極上料理。そのレシピだった。レシピの題名は『気になるあの人も即死!?胃袋を掴んで離さぬメチャウマビーフシチュー』である。物騒な題名で怖い。
もう一つのお宝は、シルヴィアをしてよく分からんと漏らす謎の魔力が秘められた宝珠だ。彼女が言うには、リヒトの魔力に似た波長を感じるらしい。
「まぁ、たまたま見つけた廃墟での収穫と考えれば悪くはないんじゃないかい?レムカーナはもうすぐだ。早いとこ用事を済ませようじゃないか」
「…その前に、少し時間をくれ」
収穫に満足し宝物庫を出ようとするシルヴィアを、リヒトは決意を秘めた表情で止めた。
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 02:29:03.33 ID:a37F8p4WO
「…これでよし」
目に見えた亡骸を全て、ヴォルグス城の中庭に移動させる。
リヒトが光魔法で発破を掛け、ぽっかりと空いた二つの穴に、亡骸を分別して埋めていく。ちなみに、左が城主夫妻を入れた穴で、右がその他の遺体を入れた穴だ。
遺体を入れ終わったら、土で穴を完全に埋める。そして最後に。
『ヴォルグス城の城主、苦楽を共にした臣下と此処に眠る』
『ヴォルグス城に生きた者、敬愛する城主と此処に眠る』
と、リヒトが慣れない手で文字を彫ったお手製の石碑を建て、埋葬は終了した。
「お優しいことで」
「…別にそんなんじゃない。放置してどっか行くのは、墓荒らしみたいな気がして嫌だったんだよ。かといって、城主だけ埋めても中途半端だしな」
所詮これは、ただの自己満足だ。こんなことをしても、犯した罪は消えない。死者の眠りを妨げた事実は変わらない。だけど。
「…俺、この城に来れて良かったと思うよ」
人知れず滅んだヴォルグス城を。滅びゆく中で未知の脅威に怯えながらも、懸命に生きた者の覚悟と生き様を。互いに想い合っていたことを知れたから。
「…そうだね。君がそう思ったら、死んだ人も浮かばれるよ。きっと」
眠ったままの小さな妖精を抱き、二人はヴォルグス城を後にした。
夜な夜な談笑する声が聞こえる廃城を見つけたら、決して近づいてはならない。
死ぬほど美味い(物理)ビーフシチューを振る舞われて、二度と戻ってこれなくなるから。
そんな噂が冒険者の間で広まるのは、また別のお話。
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 02:29:31.31 ID:a37F8p4WO
道中イベント 判定↓1コンマ
01〜15:魔物の群れが現れた!
16〜30:ならず者が現れた!
31〜70:何も起きなかった!
71〜85:行商人が現れた!
86〜99:何かが起きた!(自由枠)
00:???
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 02:32:29.12 ID:aSx416AA0
a
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 03:00:47.83 ID:uTc78J9QO
長い旅が終わりを迎えレムカーナが目前に迫ったところで、問題に直面することになった。
「…チッ。楽には行かせてくれねぇか」
聖剣を肩に担ぐ勇者は不快気に舌を打ち、前に出る。賢者は妖精を背負い、一歩後ずさった。
眼前にいるのは、強固な鎧を纏ったミノタウロスの群れ。おそらく種族はアークミノタウロスだ。
本来であれば、人里から遠く離れた洞窟などに居住しているはずなのだが、何故ここにいるのだろうか。
「腹でも空かせてるんじゃないの?人を喰ったミノタウロスはアグレッシブだからね」
なるほど。人の味を覚えて、わざわざ人が多く住むレムカーナまで来たというのか。
欲を満たすためなら苦労は厭わない。素晴らしい精神性だ。
リヒトは群れの先頭に立つミノタウロスの獲物を凝視する。返り血と臓物がべったりと塗れたそれは、数多の命を刈り取ったことを物語っている。
先程から鼻を突く屍臭の正体に気づき、気分が悪くなる。
そんなことは知らねーと、ミノタウロスは咆哮と共に突進を仕掛けた。
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 03:04:44.30 ID:+MoV9pGPO
戦闘 判定↓1コンマ
01〜05:リヒトピンチ。
06〜25:シルヴィア&マナピンチ。
26〜45:戦闘膠着。
46〜75:有利。
76〜90:ミノタウロス隊撤退。
91〜99:ミノタウロス隊全滅。
00:???
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 03:44:17.06 ID:FECU2vr1o
_
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 09:51:19.51 ID:BJb5QkE4O
ミノタウロスの号令と思しき怒号が聞こえ、群れが一斉に突進を始めた。
ムッキムキの上半身と妙に貧弱な下半身から生まれる推進力は伊達ではなく、筋肉の波濤と形容しても差し支えがないほど、その突進には迫力と重圧があった。
現役時代にアークミノタウロスと戦り合った経験が無いため、どういう出方をするか分からない。
ので、まずは小手調べとして牽制を行うことにした。
リヒトが『光絶(スプライト)』と呼ぶ、魔力を用いた極小範囲の空間切断。数多の戦闘の中で体得した、効率的に戦力を減らす殺戮の化身たる魔法は、悉くが避けられた。
「初見で避けられるかっ…!」
リヒトは即座に小手先の技は通用しないと判断し、シルヴィアとマナに逃走の指示を出す。
はっきり言って、お荷物な二人を守りながら挙動からしてかなりの手練れである魔物の軍勢を処理するのは、幽者であるリヒトでも苦労するものだ。
「ーーーー!!!!」
「下位種相手の対策が通用するか分からねぇが!!」
光の魔力を纏った双掌で地面を突く。魔力が大地に満ち、無数の光剣が突き立った。
致死性の悪路を形成し、突進を妨害する。騎兵にも転用出来る突進対策の効果は果たして。
「ーーーーっ!!!!!!」
効果ナシ。枯れ枝を折るようにパキパキと折られては、なけなしのプライドも傷つくと言うものだ。
というか、本当にあのミノタウロスの上位種なのだろうか。明らかに耐久性などが段違いで高いのだが。似た外見の別種だったりしないだろうか。
そんな疑問が浮かんでくるほど傍若無人な振る舞いをするミノタウロスは半数がリヒトに押し寄せた。
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 09:52:12.88 ID:BJb5QkE4O
ミノタウロスとリヒトが揉みくちゃになっている頃、シルヴィアとマナはただひたすらに逃走していた。
「ひぃ…!ひぃ…!インドア大賢者にランニングは厳しいって…!」
「うし、きた」
「分かってるよぉ…!」
ヘロヘロな走りを魅せるシルヴィアに、呆れながらも魔法を掛けるマナ。
妖精の齎す祝福で身体能力が上がっているのだが、悲しいかな。0に何を掛けても0なのだ。
「クソゥ!私が魔力を封じられてなかったら、あんな筋肉ダルマ秒で消し飛ばせるのに!」
悪態を吐くシルヴィアを慮ることなく、筋肉ダルマは獲物を構え距離を詰めた。
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 09:56:07.38 ID:aJC0rZfWO
死亡判定 判定↓1コンマ
01〜10:シルヴィア死亡
11〜20:マナ死亡。
21〜30:シルヴィア負傷。
31〜40:マナ負傷。
41〜55:リヒトはみがわりをつかった!
56〜95:妨害成功。
96〜99:ピンチはチャンス。
00:???
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 10:06:03.04 ID:QAXhO8330
あ
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 10:36:55.43 ID:KgSlAMPMO
ああ、これは駄目だ。眼前に迫るアークミノタウロスを見て、シルヴィアは諦観した。
リヒトが筋肉ダルマ包囲網を抜け出すのにおよそ10秒掛かる。そんな時間があれば、どちらかが確実に死ぬ。
「…私に、他人を踏み台にしてまで生きる強かさは無いのでね」
人肉を求めてレムカーナまで来たのなら、妖精のマナは興味の対象外のはずだ。そう予想を付けたシルヴィアは一歩、前に出た。
「どうしようもない人生だったが、まぁ。君といた時間は、存外悪くなかったよ。リヒトくん」
「私の夢は既に託している。必ず実現させてくれたまえ。…頼んだよ」
人を疑い、見限ることが出来なかったが故に、翼を失った。他人を踏み台に出来なかったが故に、命を失う。
大賢者の末路としては三流の悲劇だと、シルヴィアは小さく笑い、命を散らした。
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 10:37:38.05 ID:KgSlAMPMO
人々の羨望を集めた大賢者は、人知れず凶刃に斃れた。
飛び散る鮮血は、惨たらしくも、美しい。
力なく倒れたシルヴィアの遺体を、涎を垂らしたミノタウロスが鷲掴む。
己が非力だったばかりに、死ぬ必要のない者が死んだ。その事実は甘んじて受け入れる。
が、今はまだ、悔やむ時間ではない。
そして何より、目の前の魔物は大事な遺体を喰らおうとしている。そんなこと、絶対にさせるわけにはいかない。
悪夢からようやく解放されたのだ。何人たりとも、その永い眠りを妨げることなど許されない。だから。
「その薄汚い手で、シルヴィアに触れんじゃねぇぇっ!!!!!!」
何度味わったか知れない喪失感と共に、魔剣の力を解き放った。
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 10:40:11.04 ID:qLF5kPxPO
戦闘 判定↓1コンマ
01〜05:マナピンチ。
06〜15:戦闘膠着。
16〜40:有利。
41〜65:ミノタウロス隊撤退。
66〜99:ミノタウロス隊全滅。
00:???
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 10:50:36.89 ID:k4dGG/FL0
たあっ
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 11:41:04.09 ID:8Dgzlt0WO
黒光の流星。死の閃光。そう形容するしかない、禍々しい光が、戦場を斬り裂いた。
血と臓物を散らし、生ぬるい風が吹き荒れる。屍臭の混じったそれは命が無造作に刈り取られた証左であり、圧倒的な暴力に捩じ伏せられた結果だ。
「いっつもこうだ。なんで、俺は喪うんだよ。大切な物ほど、あっけなく失くしてしまう。手から零れ落ちてしまう」
膨れ上がる憎悪は、魔剣の刀身に纏わりついて。深淵の如き光を湛える。
光でもあり闇でもある。度重なる絶望によって目醒めてしまった、リヒトが冥光と呼ぶ破滅の魔力。それが、獲物を見定め、放たれる時を待っていた。
相対するミノタウロスは、死の予感を敏感に感じ取る。これには勝てないと。命が惜しくば、戦利品を捨てて逃げろと。
耳を劈く咆哮が大地を震わせ、ミノタウロスの軍勢は回頭して逃走を始める。
だが、幽者にそれを見逃す理由は無かった。
冥光を纏った魔剣の横薙ぎ。たったそれだけで、命全てが無へと帰した。
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 11:41:51.10 ID:C28H3fo7O
生命の消え去った戦場に立つのは、勝者にして敗者の幽者。そして、無感情な妖精。
虚な表情で遺体を麻布に包む幽者は、皮肉にも遺体の回収の手際が良かった。
「ほかのいのちをころすのにころされるのはいやなのね?」
「…生き物はそういうものだ。そこらの魔物も、同じことをやってるだろ」
世界に苦しめられたとは思えないほどに穏やかな顔をしたシルヴィアを抱え、剣を虚空に戻す。
勇者のみが持つという聖剣を見せびらかす意味は、あまりにも大きいからだ。
「にんげんだけよ。たのしむためにいのちをうばうのは」
「…そうだな。それだけは、俺も同意するよ」
人の闇を知っているリヒトはマナの言葉を肯定し、レムカーナへと入った。
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 11:42:12.07 ID:EaOI1lKEO
レムカーナへと至ったリヒトは、まずは教会に向かった。遺体を抱えたまま行動するのは、悪目立ちしてしょうがない。
「…はい。名前は『シルヴァ・レナ』でお願いします。はい。ありがとうございます」
棺を見繕い、金銭を支払う。かなり重い買い物ではあるが、躊躇うものではないので即決で購入した。
棺の受け取り日を決め、教会を出る。あれほど口うるさかった賢者の声が、不思議と今は懐かしく、恋しく感じる。
王亡き都『レムカーナ』。国王と宰相が『不慮の事故で死亡した(リヒトが殺した)』ため、内政が不安定な大都市である。
そのため、ならず者の数が増えスラムが広がり、と治安悪化の一途を辿っているわけだが、リヒトは心底どうでもよかった。
重要なのは、ここで仲間が増えるか否かだ。シルヴィアもそれを望んでこの場所を選んだのだ。
是が非でも仲間を見つけなければならない。
「…人が一人減っただけで、こんなに寂しくなるもんなんだな」
宿屋の食事を食べつつ、リヒトはそんなことを溢した。
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 11:42:46.08 ID:EaOI1lKEO
何をするかを↓1にどうぞ。
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 12:34:18.97 ID:b2tJ47Mb0
協力的な者を探す
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 12:46:30.65 ID:F0UVP+VLO
兎にも角にも人手が足りない。とにかく足りない。全くもって足りない。
幸いにも、ここレムカーナは人だけはいるものだ。その内容は置いといて。
「マナ…は…どうするか。正直いてもいなくても変わらないんだよな。かと言って、同行させたら目立つし」
妖精という存在自体、人里ではまずお目にかかれないものだ。そんなのを引き連れたぼっちの人間など、どう足掻いても注目を浴びてしまう。
それに、無気力な彼女にいったい何が出来るのか。甚だ疑問である。
「…とりあえず、この部屋に待機しておいてくれ。くれぐれも、他の人に見つかるなよ?」
「…わかった」
どこか寂し気なマナを見つつ、リヒトは部屋を退出する。外から、雷の音が聞こえてきた。
「…そろそろ一雨降るかな。その前に用事は済ませたいもんだ」
コートに穴が空いていないか確認し、宿屋を出た。
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 12:48:51.39 ID:F0UVP+VLO
判定↓2までのコンマ
どこを探索するかを記載してください。どこを探索するかが記載されているレスのコンマで判定します。
01〜30:いない
31〜99:いた
00:???
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 13:05:18.99 ID:ttv+IH4/0
酒場
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 13:05:25.08 ID:q6ZafedYo
邸宅街
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 13:17:45.99 ID:qjxbjpYOO
仲間を一人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 13:39:43.07 ID:FECU2vr1o
【名前】ミェン
【人種】猫の獣人
【性別】女
【魔法】身体能力強化魔法
猫耳しかない獣人。その耳も片方は半分千切られている。
尻尾がないため故郷で迫害され、耳もその時に傷つけられた。行く宛もなく流れ着いたこの街で隠れつつ生き延びている。人間のコミュニティのなかでは獣人は珍しくため普段は帽子で隠している。
ただ、境遇に反して本人はとてもポジティブ思考。……あるいはもう壊れてしまっているのか
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 19:55:22.57 ID:Z+7Z4j6n0
まだ募集してるなら
【名前】アルカ・レジーナ
【人種】人間
【性別】女
【魔法】錬金魔法、全属性(失敗率99%)
見た目は普通の町娘。魔法使いを目指して修行の旅に出たが、使う魔法は失敗ばかりで自分には才能がないと思っている。錬金魔法に関してはこれまでの歴史の中でも指折りの才能を持っているが、本人はまったく気がついておらず、使う気もまったくない。
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 19:57:26.82 ID:J0UTnyZnO
まずリヒトが足を運んだのは冒険者であれば誰もが利用する施設。いわゆる酒場だ。
冒険者=酒場中毒だということは昔から認知されているし、それは間違ってない。
いつ死ぬか分からない難儀な商売なので、気軽に楽しめる娯楽が人気なのも頷ける。
「…狙い目はあの娘だな」
酒場に入るや否や、リヒトは客を一瞥して目星を付ける。
自身も同じ経験をしているが故に、リヒトには排斥された同類が感覚で解るのだ。
酒場の隅っこでコソコソと小さなジャーキーを齧る女の子は浮浪児のようにも見えるが、素性などどうでも良いのだ。
重要なのは、役に立つかどうか。あと、自分を愛してくれるか。どっちが欠けてもならない。
いっそ清々しいまでにリヒトは自分の欲望に忠実だったが、その原因が彼の置かれた境遇だと知って、それでも罵倒出来る者がいるのだろうか。
もしいるのなら、それは何にも苦労することが無かった、全てに恵まれた人だけだろう。
「やぁお嬢さん。もし嫌でなければ、隣に座ってもよろしいですかな?」
営業スマイルを浮かべ、明るい声で問いかける。少しは警戒されることを想定して返答をいくつか用意していたのだが、それは全てドブに捨てられることになる。
「ボクの隣?いーよっ!」
にぱっと、太陽のような笑みを浮かべた少女は、隣の椅子を指差した。
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 19:58:30.99 ID:J0UTnyZnO
会話の話題を↓1にどうぞ。
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 20:08:36.51 ID:MhupgxLc0
大事な仲間を亡くしたので、悲しさを紛らわす為に誰かと話したかったと語る
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 20:28:48.20 ID:uR50DJ9yO
内心呆気に取られながらも、平静を保ったまま席に座る。ウェイトレスに安酒を頼み、会話を試みた。
「それで、どうしてボクの隣を選んだの?他の席もまだまだ空いてるよ?」
キョトンとした表情で首を傾げる少女は、小動物のように愛くるしい。
ごもっともな質問にリヒトは頷き、憂鬱そうに答えた。
「君の言う通り、他にも席はある。けど、座る気は無かったよ。面白おかしく話したい時もあるけど、今はそうじゃなくてね」
酒を運んできたウェイトレスに謝辞を述べ、グラス内の氷を指先で弾く。その光景を眺める瞳には、昏い闇が見え隠れする。
「…レムカーナに到着する直前。魔物の軍勢に襲われて、大切な仲間を亡くしたんだ。夢を語り合い、共に為そうと誓い合った、とても大切な仲間をね」
「こんな世界だ。仕方ないことだと割り切りたいさ。けど…どうしても、悲しさだけは消えないから。少しでも紛らわせようと、そう思ったわけだ。…こうして言うと、仲間の代わりに利用してるみたいだね。ごめん」
頭を下げるリヒトに、少女は首を横に振った。その表情からは、慈愛が溢れていた。
「ううん、気にしなくていいよ。…そうやって他人に頼りたくなるくらい辛かったんだね。ボクとお話しして少しでも気が楽になるのなら、喜んで」
「…ありがとう」
今にも泣き出しそうな顔で笑うリヒトに、少女も破顔した。
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 20:29:22.93 ID:uR50DJ9yO
会話の話題を↓1にどうぞ。
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 20:39:22.73 ID:F01D8y200
彼女の苦労話を聴く
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 21:07:49.49 ID:spJmStW+O
歓声が飛び交い賑わう酒場の片隅で、ゆったりとした雰囲気の中で会話をする男女のペア。
なにかを感じ取ったのか冷やかしに来る人はおらず、それはリヒトとしても都合が良かった。
ムードは上々。演技がバレているようにも見えない。このまま行けば友好的な関係が築けそうだ。と、自分の観察眼が確かなことに安心する。
「ところで、君もかなり苦労したんじゃないかな?」
「え?」
少し話の流れが強引すぎたか、と内心臍を噛む。が、このまま突っ切ってしまえばいい、と押し通すことにする。
「…いや、俺も苦しんできたことがたくさんあってね。爪弾きにされたり、裏切られたり。だから、解るんだ。同じように苦しんだ人が」
それが声を掛けた理由だと、心中で付け加える。その意図は見抜かれなかったようで、『ミェン』と名乗った少女は驚いた表情をする。
「ボク自身、今は全然気にしてないけど。昔は結構痛い目に遭ったかなぁ。お兄さんにとっては面白くないかもだけど、聴く?」
「もちろん。こっちの話を聴いてくれたんだ。俺も話を聴くのが道理ってものさ」
「分かった」
それから、ミェンは本当に気にしてない風に話をした。何故か、自分が惨めに思えた。
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 21:08:25.85 ID:spJmStW+O
「ボクは元々、遠い山に住む一族の出身なんだ。でも、ボクだけ他の人と見た目が違ってて。色々なことをされたよ」
色々なことがなんなのか。大体予想はついているが、敢えて聴かないことにした。その詳細を聞くことに意味は無い。
今回の会話で肝要なのは、過去の苦しみを共有して打ち解けることだ。苦労話に理解を示し、同情する。
それは、見ず知らずの他人と仲良くなるのに手っ取り早い方法だ。
「それで、故郷を追い出されてここまで逃げて来たんだ。知らないことをいっぱい知れたから、故郷の人を恨んでなんかないよ」
「…そっか。強いな、君は」
「そう?褒められると照れちゃうな…えへへ…」
頬を上気させたミェンは、もじもじしながらはにかんだ。
その可愛らしい仕草は、下劣な連中が見たら劣情を抱かせるに充分な破壊力を持つ。
なんでこんな娘が、ここレムカーナで明るくいられるのか。不思議でしょうがない。
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 21:09:29.23 ID:spJmStW+O
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ファーストコンタクトを終了します。
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 21:14:59.79 ID:MhupgxLc0
終了する
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 21:42:17.43 ID:qOrRIBPbO
ある程度の友好関係を築けたところで、交流を打ち切る。欲張っては損をするだけなのは、痛いほど身に染みている。
リヒトは時計をチラリと見やり、グラス内の酒を飲み干した。
「そろそろ夜も更けたので、俺は失礼するよ。ミェンも不審者にお気をつけて」
「もう行っちゃうんだね。じゃあ、ここでお別れだ」
酒場に入る前と比べて、幾分か晴れやかな表情を作ったリヒトは席を立った。
ミェンはヒラヒラと手を振り、店を出るリヒトを見つめ続けていた。
「初動は上手くいったかな。この調子で進めばいいが…」
軽く酔いの回った頭を押さえながら、貴族の住まう邸宅街を目指す。案の定見張りがいたので、必殺のステルスアタックに沈んでもらった。
一時間ほど人捜しをするも、成果が得られずがっくりと項垂れたリヒトだった。
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 21:42:48.94 ID:qOrRIBPbO
翌朝。やれ襲撃だ。やれ強盗だ。とてんやわんやの邸宅街は、人だかりに溢れていた。
治安の悪い平民街はともかく、見張りや衛兵が常駐する邸宅街は、暴力沙汰が皆無なのだ。
そこで気絶している見張りがいたとなれば、話題になるのも宜なるかな。
「あむ…」
頑なに食事を摂らないマナに近所の青果店で購入した果物を与え、冷や水を飲む。
眠気覚ましにはその刺激がちょうど良く、はっきりと意識が覚醒した。
レムカーナに何日いるかは決めていないが、拠点に戻るからには、何か成果が欲しいものだ。
シルヴィアとの約束を脳内で反芻し、ヴォルグス城で入手したレシピを撫でる。
「…古代語、教えてもらえばよかったかな」
後悔先に立たず。そんなことわざをふと思い出し、瞑目した。
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 21:43:18.91 ID:qOrRIBPbO
何をするかを↓1にどうぞ。
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 21:50:04.73 ID:q6ZafedYo
マナをコートに隠して観光しつつ、妖精の目線で協力者探しを手伝ってもらう
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 22:04:57.43 ID:x+OHSZc+O
「…へんなにんげん」
「今更だ」
降り頻る雨の中、コートを身につけ外に出る。雨で人通りが少なくなり、絶好の観光日和となった。身体が濡れることに目を瞑れば、だが。
フードを被るリヒトの首元。そのすぐ隣から、ひょっこりと小さな頭が顔を出す。
道行く人々の視線は、特に集まっていない。コート様々である。
「マナ。お前目線で利用出来そうな人がいたら教えてくれ」
「わたしはりひとのやることにきょうみない」
「そう言うな。食いたい物があれば奢ってやるから」
「いらない」
「頼むよ。一生のお願いだ」
「…ならやる」
「サンキュ」
気まぐれな妖精に頭を抱えながら、雨天のレムカーナを練り歩く。
何か、面白いものでもあればいいが。
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 22:06:59.31 ID:x+OHSZc+O
どこを観光するかを↓1にどうぞ。
マナチェッカー 判定↓2コンマ
01〜45:きょうみない
46〜99:きょうみある
00:???
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 22:12:54.92 ID:GqXuWNwCO
高台の庭園
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 22:15:14.32 ID:Mz9BpWQY0
え
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 22:46:12.50 ID:UpFCM8+ZO
城下に続く長い階段。昔を思い出しながら登っていると、雨は勢いを増していく。
空を見上げてみると雲は更に厚さを増し、帷が降りたように真っ黒だった。
このままだと濡れ鼠だと、リヒトは足早に駆け上がる。振り落とされないように首を掴む、マナの手が割と痛かった。
城門のすぐ側に設置された高台には、庭師が丹精込めて手入れした庭園が広がっている。
色とりどりの花や草木が咲き乱れ、殺風景な城を彩っている。のだが。
「…ひとがつくったしぜんは、ただのにせもの。おもしろくなんてない」
マナのお気に召さなかったようだ。自然と共に在る妖精らしい意見を戴いた。
「これなら、りひとのいえのあたりのほうがまだまし」
「ほう。お褒めいただき光栄でありますマナ嬢」
「………」
マナは無表情を僅かに崩し、悔しそうに頬を膨らませた。その姿は、餌を頬張るリスにどことなく似ていた。
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 22:46:56.50 ID:UpFCM8+ZO
何をするかを↓1にどうぞ。
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 23:16:56.39 ID:FECU2vr1o
濡れ続けるのもアレだしハイオクで雨宿り
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 23:17:26.76 ID:FECU2vr1o
ハイオク→廃屋
すまん
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 23:17:56.10 ID:EMz1N6vkO
馬か何か、移動手段を手に入れよう。
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 23:32:44.63 ID:G/8aIQwfO
空模様は悪化し続け、雨量も増し続ける。視界も塞がる土砂降りの中、リヒトは雨宿りの場所を探していた。
濡れた階段を勢いよく滑り、目についた建物に駆け込もうとするが、どこもかしこも満員御礼だった。
「−−−−♪」
鼻歌交じりのマナは上機嫌だが、さもあらん。雨は自然の恵みだ。それを浴びている現状は、彼女にとって心地良いのだろう。
「うぅ寒い寒い。早く雨宿りしないと風邪引いちまう」
それは妖精にとっての話で、人間からすればいい迷惑なのだが。
コート越しに身体を打ち据える豪雨が、ひたすらに体温を奪っていく。このままじゃまずい、とリヒトはとにかく走った。
そしていつしか、スラム街まで来てしまっていた。
放置されている廃屋のおかげで雨露を凌げるが、スラム街の様子など知らないので不安だ。
願わくば、お馬鹿な悪党に絡まれませんように。
そんなリヒトの祈りは届くのか。当の本人は露ほど期待しちゃいなかったりする。
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/07(日) 23:33:20.38 ID:G/8aIQwfO
何をするかを↓1にどうぞ。
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/07(日) 23:56:29.02 ID:IkVY/dy8o
ここを根城にしていたミェンが帰ってきたので勧誘する
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 00:44:57.76 ID:Rd/H027sO
「あれ」
「おや、昨日ぶりだね」
雨が止むのはいつなのか、と光魔法で鳥を作ったりして遊んでいると、突然声を掛けられる。
想定していたお馬鹿な悪党ではないようで一安心というものだ。もし彼女が悪党なら、それはそれとして遠慮なくぶちのめすが。
「リュクスさんがなんでここに?てっきり宿屋にいるかと思ったよ」
「雨宿りしたくてね。ついでに、スラムがどんなところか見物に来たんだ」
「変な人だね。普通、レムカーナのスラムと言ったら誰も近寄らないのに。…まぁ、だからボクが居座れるんだけど」
ミェンはぼろぼろの椅子を引っ張り出し、それを指差した。どうやらここに座ってもらいたいようだ。
断る理由もないので、リヒトは椅子に座った。ミシミシと音を立てている脚が折れないか心配である。
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 00:45:39.64 ID:ukfcFGrGO
「それで、ボクに何をしてほしいの?知り合いでも、お代はきっちり頂くからね」
「は?」
「え?」
ミェンの口から出た言葉はあまり気分の良いものではなかった。
浮浪児の少女が一人で生きるのならそういうことをしているのだろう、と予想はついていたが、いざこうして言われると、なかなか来るものがある。
「お客さんじゃないんだね。ごめん、今のは忘れて」
よりによって、彼女の返答がこれだ。隠す気がさらさらなくて、もう笑うしかない。
「…まぁ、そういうことをしてるんじゃないか、とは思ってたが。なるほど、この廃屋で待つのが合図なわけか」
「忘れてよぅ」
ぷりぷりと怒るミェンに小さい笑い、廃屋の並ぶ通りを見つめる。微かに人の気配がするから、どこかに潜んでいるのだろう。
「雨、止まないな」
「こんなに曇ってたらね。おかげで、今日の稼ぎが台無しだよ」
パンの切れ端を齧るミェンは、どことなく哀愁を漂わせている。スラムに住む貧困層など皆こんなものだと言われれば、そうなのだが。
天井を見つめ思考を纏めたリヒトは、意を決したようにミェンを見やり、口を開く。
「なあ、少しいいか?」
「んん?」
パンを飲み込んだミェンは、幽者の声に反応し、顔を向けた。
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 00:46:13.02 ID:8F5nP2eyO
我ながら馬鹿正直に答えたものだと。のちにリヒトが激しく後悔するミェンの勧誘。
それを聴いていたミェンは、茶化すでもなく、ただ黙々とリヒトの言葉を聴き、意味を咀嚼していた。
「君の知ってる俺とは話し方が違うだろうが、それはご容赦いただきたい。…俺には素性を隠す理由があるもんでな」
「気にしないよ。続けて」
「助かる。俺はリュクスなんて名前じゃない。本名はリヒトつってな。指名手配されてる有名人にも同名の奴がいるだろ?あのリヒト本人だ」
言外にリヒトの正体を言いふらしたらどうなるかを示しているのだが、そこまで伝わっているかは定かではない。
まぁ伝わっていようがいまいが、勧誘することには変わらないが。
「昨日話した、死んだ仲間との約束。内容は言ってしまえば至極単純でな。『出生や性差等に囚われない、正しく才能や努力を評価される国を作る』。他の人には馬鹿にされるような荒唐無稽な夢さ。笑ってくれて構わないよ」
「笑うわけないよ」
真っ直ぐにこちらを見つめるミェンに心中で感謝しつつ、リヒトは手を差し伸べる。
「俺の夢には、足りないものが多すぎる。だから、君さえ良ければ、俺に力を貸してほしい。俺も出来る限りの支援をする。だから、どうか」
二人の視線が交錯し、無言の空間が広がる。瞑目ののちに、ミェンははっきりと答えた。
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 00:47:06.86 ID:8F5nP2eyO
ミェン勧誘 判定↓1コンマ
本レスよりコンマが高ければ成功です。
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 00:52:41.09 ID:fOAR2VFvO
難易度高いなあ
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 00:56:59.19 ID:fQORAuivo
コンマさんは主人公がお嫌いのようだ……
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 01:06:45.16 ID:XVk1W2XpO
「ごめん」
示されたのは、明確な拒絶の意志。ここまできっぱりと言われては、いくら食い下がっても無駄だろう。
「ボクにそんな大役は似合わないから。もっと他に、君に相応しい人がいるはずだよ」
「ごめんね。君は勇気を出してボクを誘ってくれたのに袖にしちゃって…」
「…いや、いい。俺みたいな奴に、普通命なんて預けられないよな。仲間一人守れなかったような、指名手配されてるような奴に。見通しの甘さが知れただけでも収穫だ」
「…じゃあな。風邪、引くなよ」
「うん。君も、体調を崩さないようにね」
頃合いを見計らったように雨が弱まる。リヒトは逃げるようにスラムを去り。
幽者を見送った少女は、最後のパンを口に含んだ。
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 01:07:28.04 ID:XVk1W2XpO
何をするかを↓1にどうぞ。
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 01:16:35.86 ID:fQORAuivo
かわいそうに思ってくれたのか、マナの手が後頭部を撫でる
(こういうのでもいいですか?)
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 01:20:05.62 ID:YuqHsaUgo
勧誘がここまで大変となると初めから同志だったシルヴィアの死がかなり痛いな。心情的にも労働力的にも
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 01:20:44.70 ID:2gOGWv6WO
今回はそのまま進めますが、リヒト主体の行動だと助かります。
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 01:35:47.72 ID:fQORAuivo
分かりました
すみません
ありがとうございます
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 01:46:52.21 ID:NSom125XO
夕方。宿屋に戻り椅子に腰掛けると同時に、雨がまた降り出した。ここまでひっきりなしに降るとは、明日は快晴になってもおかしくない。もしかしたら、逆に槍や矢でも降ってくるかもしれない。
雨音を聴きながら、ただ時間が過ぎるのを待つ。盛大に勧誘をしくじった今、何もする気が起きない。
食事が運ばれたが、それに手を付けることもせず微動だにしない。石像のように、リヒトは静かにしていた。
数刻後、ゆっくりと船を漕いでいたリヒトは、不意に目が覚めた。机には冷め切った料理が残っており、ランプの灯は既に消えていた。
「…いつのまにか寝てたか」
凝り固まった身体を解すべく立ち上がろうとするが、違和感に気づく。妙に肩が重いのだ。
「おきた」
「んぁ…?なんだ、マナか」
人様の肩に座り込んだ妖精は、その小さな手で人間の頭を撫でていた。あり得ない行動に、リヒトは顔を顰める。何か悪いものでも食べたのか。それとも、頭でもぶつけたのか。
「わたしがねるとき、しる?ぃあはいつもこうしてた。ただそれだけ」
リヒトの疑念を感じ取ったのか。マナは無表情なまま、口を開いた。
「おきたならもうしない。ねる」
そして、それだけ述べると布団に包まり、寝息を立て始めた。
「…情けねぇなぁ、俺…」
誰にも聞こえないほど小さな声量で、幽者は己の無力さを嘆いた。
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 01:47:34.06 ID:NSom125XO
何をするかを↓1にどうぞ。
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 02:03:53.69 ID:iNsBmo4DO
魔法学院というのがあるならそこへ
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 12:24:50.21 ID:gZ37uU54o
幾らシルヴィアが死んで傷心だったからといって昨日会った子にいきなり勧誘は急すぎたんだ
もっと段階を踏むか危機を救うとかすれば判定コンマは易化すると思うんだ(多分)
何が言いたいかというと早まった申し訳ない!
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 13:58:58.53 ID:wzhM8H4/O
どこの国にも、魔法を研究し学ぶ機関が存在する。魔法の歴史は人類の歴史であり、そこに隠された真理を探究することは、未来を照らす光明と成る。
レムカーナに存在する同様の機関は、邸宅街に設立されている『レムカーナ王立魔法学院』である。
『真理の果てに希望が在る』。この言葉と共に日進月歩していたのだが情勢悪化に伴い形骸化し、その様相は見る影も無くなった。
中には真面目に研究を進めている者もいるが、真理を追い求める魔法使いの集う神聖で高潔な聖域は貴族のお遊び会場になりかけているのが実情だ。
表向きは『才能さえあれば家柄や身分に囚われず探究を行える平等な学院』ということで通っているため、平民や流浪人、果てはスラム街の住人ですら、この学院に籍を置く者もいる。
内情ははっきり言って『クズの掃き溜め』、『現世に顕現した地獄』と呼ばれる程度には終わっているわけだが。
そのため、現状に鬱屈した感情を溜め込んでいる魔法使いはかなりの数に及ぶ。『誰かこのクソみたいな学院を壊してくんねーかな。私は真理を知りたいのであって、金持ちに媚を売りたいわけじゃないんだけど』と考えている人が大多数だ。
故に、リヒトとしても都合の良い場所だった。上手くいけばワンチャン仲間を増やすことが出来る。惜しむらくは。
「俺魔法使いじゃねーからな。どうやって潜入するべ」
そう。リヒトは戦闘の達人であって、魔法使いでは断じてない。普段使っている光魔法も、実際は理論など関係なしに魔力量で取り繕った、俗に言うごり押しで形にしている魔法なのだ。
尤も、その魔法で大概の敵は昇天したわけだが。やはり暴力は全てを解決する。
リヒトが戦争の中で知った真理。それは、力こそパワーであり圧倒的な暴力こそジャスティスだというあまりにもあんまりな結論だった。
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 13:59:41.63 ID:wzhM8H4/O
レムカーナ王立魔法学院で何をするかを↓1にどうぞ。
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 15:53:57.85 ID:Rmj79zvDO
燻ってる不満分子を見定める
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 20:49:14.70 ID:UlMAlwdBO
「悪いな。ちょっと眠っててくれよ」
運悪く幽者の目の前を通り過ぎた学院の生徒は、ボッコボコに殴られて夢の中にいる。
真っ黒な包帯を巻いていたり頭蓋骨が刺さった杖を持っていたりと色物感が否めないが、リヒトには却って好都合である。
素性を隠し堂々と学院に潜入する手段を得た。ならば、次にするべきことは。
この学院には火種が大量に燻っている。その原因は貴族の横暴なのだから、彼らがどうなっても自業自得と鼻で笑われるだろう。
だが、所詮は火種。派手に燃え上がっていない今は、水面下で慎ましく行動するしかない。
そういう後ろめたい隠しごとをしていれば、態度に僅かながらに表れるものだ。それを見抜けば良い。
恨むなら貴族を恨め。そう念じながら、生徒の身ぐるみを剥ぐ。意外なことに、風変わりな魔法使いは相当の美人だった。
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 20:51:02.96 ID:UlMAlwdBO
判定 ↓2までのコンマ
00〜40:見つからない
41〜80:個人発見
81〜99:コミュニティ発見
00:???
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 21:03:09.79 ID:a9u/Ga6ro
うーい
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 21:12:21.61 ID:36mqMJwQo
あ
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/08(月) 21:15:16.20 ID:xoNVfWUOO
仲間を二人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 21:18:06.65 ID:7dn/tNJhO
【名前】ミミル
【人種】兎の獣人
【性別】女性
【魔法】生命魔法
若くして魔法学院で研究者の立場に就く才媛で、生命力に干渉して回復や吸収、探知などを行う生命魔法と医学のエキスパート。
白い髪と赤い瞳、シミ一つ無い白い肌。兎の耳と尻尾。背丈や顔立ちは10代前半に見えるほどだが、豊かな胸やくびれた腰回りなど早熟な体つき。つり目がちな目付きと生意気そうな雰囲気がある顔立ち。
白衣と学院の制服。
プライドは高いが善良な気質の努力家で、研究の動機も医療で人命を救うためというもの。口調は丁寧だがかなりの毒舌家。
医療の道を志しているため流血やグロには耐性があり、いざという時には機転もきく。
彼女の研究は生命魔法と医学の併用による再生医療で動物実験の段階では四肢と臓器を失なった(抜いた)モルモットを完治させている。
しかし、ナンパしてきた貴族を袖にしたところ研究費の減少や妨害、嫌がらせなどが始まり現在研究は行き詰まっているため、貴族に怒りを抱いている。
なお、売女と陰口を叩かれているが、逃げ足が速く恋愛経験もないためいまだ清い体である。
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 21:20:08.46 ID:bG6xUggpO
【名前】ウィンディ・ヴァルマンウェ
【人種】人間
【性別】女
【魔法】風魔法
長い緑の髪を二つ結びにした小柄な少女。以前にシルヴィアの教えを受けていた魔法使いの一人
一見陰気だが、根には他者の痛みを理解して共感できる知性と優しさを持つ
また、魔翌力量が非常に大きく、魔翌力操作の精密性も極めて高い。反面体はとても弱く、頻繁に体調を崩す
風を操ることで空を飛ぶことができ、馬車一台分程度の荷物であれば空輸させることも可能。単独飛行はほぼ無制限に行えるが、荷運びはとても疲れため多用できない
平民の出であり、病弱なことや才能への嫉妬などにより他の魔法使い(主に貴族層)から嫌がらせを受けることが多い
シルヴィア失踪後は嫌がらせが一層増えたため学院を出ることも考えたが、何の後ろ楯もなしに病弱な自分が外で魔法使いとしてやっていけるとも思えず、毎日心身を磨り減らしながらなんとか生きている
こういった事情から、自身の人生や世の流れにはかなり悲観的
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/08(月) 21:46:51.42 ID:iNsBmo4DO
シルヴィア繋がりみたいなのは割と考えやすいね
良くも悪くも影響力強かったはずだし
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/09(火) 12:42:01.15 ID:Zio9jdZWO
レムカーナ王立魔法学院の生徒に扮装したリヒトは、意気揚々と学院内を練り歩く。人選は間違っていなかったようで、特に怪しまれてはいない。
近くを横切っただけなのに『うわでた』だの『こわ…近寄らんとこ…』だの散々な言われようだが。本人の扱いが伺えるし、流石に同情する。
「………」
包帯に染み付いたお香のような匂いに精神的ダメージを受けながら、生徒の様子を観察する。
貴族のグループで談笑する女性たちの目は全員死んでいたが、それ以外に怪しいところはない。
早々に見切りを付け場所を変える。複数ある研究棟なら誰かいるだろうと淡い希望を抱いて。
果たして、その希望は成就することになる。
「…はぁ」
開きっぱなしのドアから、こっそりと内部を覗く。薬の匂いと学院に似つかわしくない血生臭い臭いが混ざり、本能が嫌悪する悪臭が漂っていた。
戦闘で培った胆力を以って不快感を抑え込む。が、それでも辛いものは辛い。
顔を顰めていたリヒトは、その惨憺たる光景に絶句した。
研究用に飼育していたと思しきモルモットは惨たらしく殺されており、趣味の悪いことに、モルモットから引きずり出された内臓で、罵詈雑言が書かれていた。犯人の性格が悪すぎて笑えない。
被害者は溜め息を吐き、黙々と遺体を壺に入れている。あまりに痛ましい姿は目に入れることすら憚られた。
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/09(火) 12:42:37.30 ID:Zio9jdZWO
ミミルにどういうコンタクトを取るかを↓1にどうぞ。
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/09(火) 12:46:06.36 ID:+an3nPpCo
遺体処分や清掃の手伝いを申し出る
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/09(火) 21:34:04.51 ID:if5Pl47CO
床にへばり付いた臓腑に薬品を掛け、布で丁寧に拭き取る。そんな地味な作業を泣き言や文句一つ言わず、健気に悪意の犠牲者を弔っていく。
見ているだけというのも気が引けたので、リヒトは手伝いを申し出ることにした。
「一人でこの数はしんどいだろ。俺も手伝うよ」
「…ギムレインさんの恰好なのにどうして男性の声がするんですか?????」
「やっべ忘れてた」
自分がレムカーナ王立魔法学院の生徒に扮装している不審者だということを忘れて。しかも、元の人物は変人かつ女性だ。
そんなのに成りすましている時点でどう取り繕っても変態にしかならない。つまり詰んでいる。
「…これにはそこまで深くない理由(わけ)があってだな。説明は後で必ずするから、まずはその死体をどうにかしないか?放っておいても臭いが染み付いたりで良いことないだろ」
「…それもそうですね。事が終われば通報しますのでそのつもりでお願いします」
「それは勘弁してください」
死人が大量に出てしまいます。と心の中で付け加えながら、リヒトは通報しないように懇願した。
ものすごく呆れた表情をしていたが、渋々といった感じで了承を得ることに成功した。
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/09(火) 21:35:15.92 ID:if5Pl47CO
「…随分と手慣れているのですね。嫌悪感は無いのですか?」
手際よくモルモットの死体を壺にぶち込んでいくリヒトに、訝しむように少女は問う。逡巡の後に、口を開いた。
「昔は色んな戦場を転々としていたからな。そりゃ、嫌でも慣れるものさ」
仲間だって何人も弔った。罪の無い人々の亡骸も、集団墓地に埋める最後の仕事まで務めた。それが、せめてもの償いだったから。
「そうですか。不躾な質問をしたこと、お詫びします」
律儀に頭を下げた少女だが、リヒトは気まずそうに頬を掻く。リヒトからすれば、別に気にされるようなことではないのだ。
「頭なんか下げんな。そもそも俺は不審者なんだから、気を遣う必要なんてねぇよ」
「なら今すぐ教師を呼んできますのでお待ちを」
「それだけはやめてくれ。流血沙汰になっても責任取らないからな」
誰の血が流れるのか。それだけは伏せておく。堂々と言えるほど、リヒトは図太くなかった。
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/09(火) 21:35:48.80 ID:if5Pl47CO
モルモットの詰まった壺を抱え、学院東部の人工林に入る。植生の研究も兼ねているようで、かなり立派な木が所狭しと生えている。
その中に、木の板で作られた簡素な十字架が立っていた。ここが何なのかは、見ただけで解る。
「…ありがとうございます」
地面を掘ると、両手では足りない数の壺が埋められていた。持参したものを同じ場所に供え、また埋め立てる。
少女は部屋に栽培していた花をそっと添える。柔らかい匂いが鼻を擽った。
「ご助力感謝します。私一人では、ここまで効率よく済ませられませんでした」
「別に。あんなのを無視するなんて、人としてどうかと思っただけだ」
「不審者のくせに何を言ってるんですか。今更すぎません?」
「うるせー…」
彼女には口喧嘩では勝てないとこの短時間の会話で察してしまった自分が悔しい。と、後にリヒトは語る。シルヴィアに勝つことも到底不可能だった口撃力0のリヒトに、勝てる相手がいるのか甚だ疑問だが。
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/09(火) 21:36:44.09 ID:if5Pl47CO
ミミルと何を話すかを↓1にどうぞ。
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/09(火) 21:42:00.59 ID:8JIaHbQuo
こいつ(服の持ち主)はどんなやつなんだ?
どうも避けられるんだが
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/08/09(火) 21:55:20.87 ID:RwbwFD4EO
「…ところでさ」
「はい」
「この服の持ち主どんだけやべー人なんだ?どうにも避けられてて気になるんだが」
自分を指差しながら問うリヒトに、ミミルと名乗った少女は呆れていた。
「ギムレインさんを知らないんですか。学院では有名な方ですよ」
「へぇ。どんな感じに有名なんだ?」
「呪詛魔法の研究者です」
なるほど。怯えられる理由が分かった。そりゃ近寄られたら怖いよな。リヒトはミミルの解答に疑問が氷解し、大きく頷いた。
「『自分にセクハラをした貴族や教師を呪死させた』、『魔法の研鑽のために故郷を呪って滅ぼした』との噂もありますよ。所詮は噂なので、確証はありませんが」
「………」
こんな噂が流れていて、平然と学院に通えるギムレイン嬢の精神力に、リヒトは心の底から震え上がった。
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