【安価スレ】堕ち行く光

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142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 21:55:46.62 ID:RwbwFD4EO
ミミルと何を話すかを↓1にどうぞ。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/09(火) 22:33:22.69 ID:UGSyC+CFO
ミミルはどんな研究を?
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 23:03:00.44 ID:DKnXKfFAO
色々な意味でとんでもない逸材のギムレイン嬢をしばいてしまったことを内心謝罪しつつ、次の話題へシフトさせる。
このままここにいない人の話で盛り上がっても、リヒトに何のメリットも無いのだ。

「ミミルはどういった研究をしてるんだ?モルモットを飼ってたってことは、薬関係か?」

「再生医療です。生命への干渉を可能とする生命魔法と、傷病を治療する医学を併用し、人命を救う技術です」

「すごいな。その再生医療とやらは、どこまで治せるんだ?」

「まだ臨床試験もしていない…志願者がいないので、動物実験の成果のみになりますが…。両前脚と消化器官を摘出したモルモットを完治することに成功しています」

「…完治?腕も内臓もそっくり再生したってのか?」

「ええ。貴方に埋葬していただいた子が、その被験体でした」

「…なるほどな」

下劣な輩によって命を奪われた数匹のモルモット。散乱していた内臓の量からして、彼女の言葉を真とするならば、確かに再生していたのだろう。それだけの量の内臓が、あの部屋には散らばっていた。

「…尤も。研究がこれ以上進むことは無さそうですが。彼らにとっては、人命よりも自信の悦楽の方が重要なようです」

あれほど陰湿な仕打ちを受けているのだから、彼女の現在の状況も想像がつく。
大方、このツンツンしている少女に惚れた男が、フラれた腹いせに嫌がらせをしているのだろう。
嬲ったりせずにネチネチと姑息な手を使っているのを、最後の良心が残っていると言うか卑怯者と言うか評価は別れるが、人間性が悪いことに変わりはない。

「…あの時の俺なら、有無を言わさず殺してただろうな」

世界に絶望しきり、破滅的な生活を送っていた時期が、リヒトにはあった。
当時の自分であれば、こんな話を聞いていたら即座に手を出していたことは想像に難くない。
昔と比べたら随分と堪え性があるものだと、自嘲気に笑う。

「一人で何笑ってるんですか。気持ち悪いですよ」

そして、刺々しい毒を浴びた。
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 23:04:03.19 ID:DKnXKfFAO
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ミミルとのファーストコンタクトを終了します。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/09(火) 23:19:43.48 ID:8JIaHbQuo
ここはいったん終了

(再生ってミェンと繋げられるんかなーって思ったけど尻尾どころか耳の事情さえ聞いてなかったわ厳しいか)
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/10(水) 01:15:22.62 ID:uzE1s5b8O
学院中央に聳え立つ巨大な時計塔に視線を移すと、扮装してからきっかり30分が経過していることを示していた。
あと数十分もすれば目を覚ますだろう。それまでに事を済ませねばならない。

「俺はもう失礼するわ。後生だから通報だけは…」

大人が自分より年下の女の子にぺこぺこ頭を下げる情けない姿。それを見ながら、ミミルは首を横に振った。

「私はギムレインさんと話をしただけです」

そんなことを言って、彼女は口を閉ざした。目も瞑っており、見ざる聞かざる言わざるを決め込んでいる。
この態度が明確な返答であり、彼女の優しさとも取れた。

「…サンキュ」

リヒトは頭を下げ、音もなく姿を消す。気配が無くなったのを感じ取り、目を開く。
そして、溜め息混じりに言葉を漏らす。

「人を救いたい。その無垢な思いは、人の欲望一つで無惨に踏み躙られるべきものなんでしょうか」

少女の独白は、虚空に溶けた。
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/10(水) 01:16:10.89 ID:VcuADvnDO
ミミルの元から遁走したリヒトは、学院正門まで戻って来ていた。タイムリミットは刻一刻と迫っているので、無駄な時間は過ごせない。
効率よく内部を調べねば、と意気込み、一身に浴びる視線を無視して学院内を走り回った。それはもう走りまくった。
翌日からは『俊足の奇行師』などと呼ばれかねない不幸なギムレイン嬢に、後ほどお詫びのお菓子を差し上げよう。そう心に決めた。

そんなこんなで爆走していると、近くの保健室から人の気配がした。

「………」

ベッドに横たわり、虚な目で天井を見つめる緑髪の少女。カバンからはぼろぼろの手紙が顔を出しており、枕元にも同様に傷ついた書物が置かれている。

彼女以外に人の気配は感じられない。保健医さえも、この場にはいないようだ。利用者を置いてどこかに行くなど職務怠慢な気がするが、却って好都合なので黙っておく。

「けほ…」

咳き込む少女の顔は赤く、息は荒い。もしかしなくても風邪を引いている。

「最後に風邪引いたのいつだっけな」

ふと気になり記憶を辿るも、風邪を引いた記憶は欠片も無い。そもそも、病気にかかった記憶が無い。
昨日だってあれほど濡れたのに、熱っぽさは一切無い健康体だ。頑丈な身体を持っててよかった。
そんな場違いなことを考えていると、窓が開かれた。

「…誰ですかぁ!?」

「おわぁぁぁぁっ!!?」

突然の大声に驚いたリヒトは窓際から墜落するが、光の翼を生やして何を逃れる。
真っ黒な包帯を巻いて骸骨付きの杖を持った変態からさらに光輝く羽が生えた変態にランクアップした変態を見て、少女は絶句する。
どう弁明するか悩むリヒトだったが、もう手遅れなことに気がついた。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/10(水) 01:17:12.25 ID:VcuADvnDO
ウィンディと何を話すかを↓1にどうぞ。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/10(水) 01:35:48.65 ID:HjvcNx8nO
自分のことは誤魔化しつつ、水や薬や氷枕など必要なものがないか訊いてみる
151 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/08/11(木) 03:10:25.34 ID:2FUsnFcC0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 03:18:44.68 ID:T1bfsHiBO
空中で腕を組み、仁王立ちをしたリヒトは、威風堂々とした覇気を纏い、威勢よく吼えた。

「今は俺が誰かなんてどうでもいい!!!!」

「よくないです!ぜんっぜんよくないですよ!!?」

少女は首と手をぶんぶんと振り否定するが、リヒトは知ったことかと無視を決め込む。

「うるせぇ!今の君に必要な物があるならなんでも持ってきてやるから言えってんだ!!!!!」

「言ってることの割に語気が強すぎる!優しいのか怒ってるのか分かんない!…お水と身体を冷やせる物をお願いしますぅ」

「合点承知」

要望を聴き受けるや否や、放たれた矢の如くリヒトは駆け出す。呆気に取られているのも束の間、光と共に不審者は帰還した。

「速すぎません?」

「速いと困ることがあるんですかぁ!?」

「逆ギレ!?」

荒々しい言葉遣いの不審者に病人は狼狽えてばかりだが、これもリヒトの思惑の内だったりする。
自身のことを訊かれないように、ツッコミどころを量産して誤魔化す姑息な手である。
思惑通り、少女はリヒトの正体について問うことはしなかった。代わりにげっそりしているがたぶん大丈夫だろう。

「…えと。少し失礼しますね」

濡れたタオルと水筒を受け取り、少女は頭を下げながらカーテンを閉めた。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 03:19:25.60 ID:T1bfsHiBO
ウィンディと何を話すかを↓1にどうぞ。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/11(木) 12:03:54.95 ID:nOIEdly5o
保健医はいないのか聞く
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 14:18:46.20 ID:mEegrHlLO
「お見苦しいところをお見せして失礼しました」

数分後、カーテンを開けた少女は恭しく謝罪をした。気にするなとリヒトは答え、頬を掻く。
ベッドに腰掛け、窓を見る少女。『ウィンディ・ヴァルマンウェ』と名乗っていた彼女は、なおも謝罪を続ける。

「見ず知らずの貴方の手を煩わせてしまったことも詫びなければなりませんね。他人に迷惑を掛けてばかりの自分が嫌になります」

「迷惑には思ってないけどな。たかがお使い程度で機嫌を損ねるほど、俺は子供じゃないつもりだ」

と、つっけんどんな態度を取っているが、これが照れ隠しでしていることなのは本人も自覚している。
仕事柄、感謝を受けることには慣れていたのだが、素直に受け止めるのが苦手な難儀な性格をしたお子ちゃまであることも自覚していたりする。どうせ矯正は出来ないと諦めているが。

「…んで、何故ここには保健医がいないんだ。病人がいるのに留守にするなんて、おかしいだろ」

「昨日に雨が降ったからです。雨が降った翌日は、決まって体調を崩してしまうので。私みたいな人の面倒を見たくないんでしょう」

「だから、いつもここにいる時は一人ですよ。貴方が気にすることではありません。私も気にしてないですし」

「…そうか」

そう呟き笑うウィンディの顔は、あまりに儚くて見るに堪えなかった。
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 14:19:29.54 ID:mEegrHlLO
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ウィンディとのファーストコンタクトを終了します。
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/11(木) 14:41:07.25 ID:R0P2SG5S0
他に体のことを気遣ってくれる友人や教師はいないのか聞く
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 20:18:34.04 ID:xJ52IN+MO
「いるわけないですよ?」

身体のことを気遣ってくれる友人や教師はいないのか。試しに質問をしたリヒトだったが、猛烈に後悔している。
いくらなんでも返答が速すぎる。それが当然の摂理かのように、ウィンディは答えた。

「私みたいなすぐ身体を壊す魔法だけが取り柄の病弱体質の面倒を見てくれる優しい人なんている方がおかしいですよ。貴族の方たちの嫌がらせを現在進行形で受けているので厄介事に巻き込まれたくない人は私を避けてます。つまりぼっちです。まぁこれは入学当初から変わってないんですけど」

「速い速い」

捲し立てるように喋り続けるぼっちに、不審者は頭痛がしてきた。このまま不幸話を続けさせても気が滅入るだけなのだが、何故かウィンディはハイテンションである。
熱で頭がおかしくなっているのかもしれない。

「唯一こんな私を慮ってくれてた先生が一人だけいたんですけど、去年から手紙がぱったりと届かなくなって。何度も何度も何度も何度も何度も何度も送っているんですけど、現在も音信不通だしその人は反逆罪で死刑になったとかもっぱらの噂だし。やっぱり私に関わった人は皆不幸になる運命なんですかね…」

乾いた笑いを浮かべるウィンディ。リヒトはただ、押し黙っていた。
血の繋がった家族からすらも愛されず、存在を抹消されかけた彼は、理不尽に苦しむ者に掛ける言葉を見つけられない。知らない。
故に、口を噤んでしまった。どんな言葉をかけても意味がないと解っていたから。
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 20:20:32.64 ID:xJ52IN+MO
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ウィンディとのファーストコンタクトを終了します。
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/11(木) 20:27:38.45 ID:qkcwoMZ9o
もし、願いさえすればこの状況を壊せるとしたらどうするか聞く
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 20:32:38.84 ID:F+zgE8OQO
願望 判定↓1コンマ


奇数:願ったところで…
偶数:終わるのだとしたら…
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/11(木) 21:06:42.18 ID:gcAkZ5+CO
どうなる
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 23:03:23.45 ID:UOJKgfR1O
「…実を言うと私、この学院にいたくないんです。何をしても嫌がらせばかりされて、誰にも認められないで。ここから逃げることも考えました。けど…。見ての通り、私は弱々しいので。学院の外に出たとしても、魔法使いとしてお役に立つことなんて出来ないから…」

故に、心ない罵声を浴びて精神を磨り減らしていてもこの学院に留まっている。抜け出せずにいる。
そんなに嫌なら逃げればいいと、悪魔の囁きをするのは簡単だ。だが、それで逃げられるのならどれほど楽なのだろう。
彼女の言う通り、逃げられずどうしようもないから、彼女はこうして苦しみ、精神を摩耗させながら生きているのだ。
甘い言葉で唆し学院から去らせたところで、彼女に良い影響は無い。もがきながらも必死に生きている少女の今までを否定するのと同義だ。
彼女自身の意志で選ばせる必要がある。束縛から解放され世界に反旗を翻す、修羅の道を。

「…もしも。願うことで状況が変わるとしたら。この苦しみを終わらせることが出来るのなら。ウィンディ・ヴァルマンウェ。君はどうする?」

「変革を願い、苦難の待ち受ける修羅の道を征くのか?それとも、腐りゆく世界の中で、終わりが来るのを祈りながら耐え忍ぶのか?」

故に、問う。彼女の答えを。心の叫びを。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 23:03:59.21 ID:hDBjF32UO
包帯を外したリヒトは、その紅い眼差しを少女に向けた。意志を、魂を見定める紅眼は紅玉のように煌めき、それでいて闇を孕んでいる。

「わ、私、は…」

温度が急低下した視線を受け、ウィンディは微かに震える。風邪の影響もあるだろうが、その主因は恐怖だ。
心の奥底に押し込めていた、真なる感情。それを見抜かれているような錯覚を感じており、恐怖を覚えていた。

だが、不思議と忌避感は感じられなかった。躊躇いこそ心中にあるのだが、打ち明けてしまおうという意志の力が少しずつ勝っていく。
まだ、つい最近会ったばかりの変人にして、学院に不法侵入している不審者だというのに。
心のどこかでは、彼を信用してもいいのかもしれないと、警戒心を緩めている自分がいるのかもしれない。

「…変えられるのなら、変えたいです…っ。壊してしまいたいです…っ!こんな、人を踏み躙って快楽に溺れるのが是とされるような、世界なんて…」

「そして、こんな世界に圧し潰されているのに、仕方がないって諦めてる自分…も…!!!」

涙でぐちゃぐちゃになったなりながらも、ウィンディは必死に言葉を紡ぐ。嗚咽混じりではあったが、だからこそ。彼女の真意を聞き届けることが出来た。

「君の勇気に感謝を」

勇気を振り絞った勇敢な少女に、幽者は柔らかな微笑みで応えた。
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 23:05:23.18 ID:SQPap6frO
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ウィンディとのファーストコンタクトを終了します。
また、継続する場合は今回の会話がファーストコンタクト最後の会話となります。
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/11(木) 23:17:12.82 ID:nOIEdly5o
周囲に自分たち以外誰もいないことを確認し、素顔を晒して真の名を名乗る
167 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/08/13(土) 03:25:34.16 ID:uIQIfXwr0
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168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:48:51.09 ID:uFvyl4yAO
undefined
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:49:18.73 ID:uFvyl4yAO
勇気を以って応えられたなら、こちらも勇気を以って応えるのが道義というものだ。
先日のことを思い若干逡巡を見せるが、迷いをすぐさま断ち切り、ウィンディを見る。

「まずは、君にだけ名乗らせて、自分だけ名乗っていなかった無礼を謝罪しよう」

「あ、いえ。それは大丈夫です。不審者が名前を名乗るってそれはそれでおかしいですし」

不審者であることは否定しようがないのだが、ここまではっきり言われると対応に困るものだ。
リヒトは苦笑しつつも、台無しになりかけていたシリアスな雰囲気を取り戻す。

「…俺が謝りたいことは素性を伝えていなかったことだけじゃない。レムカーナの現状は、俺が招いたと言っても過言じゃないんだ」

「えっ…!?」

今明かされる衝撃の事実。少女は自身の耳と正気を疑い、頬を抓る。痛みを感じ現実だと理解したようで、目を白黒させていた。

「う、嘘ですよね?」

「嘘じゃない。国王と宰相らの不審死…それに関わってた…いや、この言い方は逃げだな。二人を弑したのが俺だ」

「特級指名手配犯…『光燿の勇者リヒト』。その名が示すのは俺自身であり、俺こそが嘗て、勇者の名声を欲しいままにしていた英雄の残穢なんだよ。輝かしい功績ばかり語り継がれていた英雄の…真実の姿がコレなんだ。失望しただろ?」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:49:50.60 ID:uFvyl4yAO
憂いを帯びた笑みを浮かべたまま、リヒトは聖剣を取り出す。これこそが勇者たる証であり、背負いし罪の象徴である。
白銀の刀身に金色の装飾があしらわれ、光の魔力が剣から溢れ出して空へと還っていく。
神聖さすら感じさせる風貌をした剣だが、その輝きは夥しい数の命を喰らった証左だ。
首を刎ね命を喰らう度に輝きを増した聖剣は、魔剣へと堕ちるに足る素質を持っていた。
故に、リヒトが混沌に堕ちると同時に聖剣も魔剣へと転じた。
ちなみに、聖剣と魔剣が表裏一体の同一の存在であることを知っている人はもうこの世に一人しかいない。
とは言っても、その一人とは聖剣(魔剣)の所有者である勇者(幽者)リヒト本人だけなのだが。

聖剣の存在をウィンディの目に焼き付けさせ、直ちに虚空へ格納する。部外者への身バレを防ぐための措置だ。
どうせバレてしまうことではあるが、可能な限り人数を最小限に抑えておきたい。今後の活動が面倒になっては敵わないのだ。

「…時間だ。俺はもう行くよ」

やるべきことは終わった。そう胸中に吐き出したリヒトは、姿を消した。
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:50:28.75 ID:uFvyl4yAO
レムカーナ城から広がる水路の脇。まず人が通らないであろう静寂の広がる場所に、全身を縄で縛られた魔法使いが倒れていた。言うまでもなく事件である。

「う…ううむ…」

意識を取り戻した魔法使いは、身体を倒したまま周囲を見渡す。身動ぎ一つ出来ないが、特に慌ててはいない。これもまた、彼女の日常なのだ。
自身の身体に目を移すと、素肌が露わになっていた。普段身につけている包帯がそこにはなく、全身に刻まれた刻印が存在を主張している。

「ふむ?頭は痛いがそれ以外に不調は無し。暴行に遭ったのだろうが、純潔を散らしたわけでもない、か。むむむ?」

現状を把握すればするほど納得がいかなくなる。身体目当てで暴行を加えたのかと思ったが、そういった形跡は無い。服が盗られただけだ。ついでに言うなら杖も無くなっているが、どういうわけか猛スピードでこちらに接近している。所有者の手元に戻ってくるような魔法は掛けていないのだが。
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:50:55.79 ID:uFvyl4yAO
首を傾げていたギムレインの元に、この問題行動を引き起こした首魁が戻ってきた。

「おっ。目が覚めてたか。結構強めに叩いちまったんだが、存外強靭だな」

「被害者の元にわざわざ戻ってくるとは。豪胆だね」

紙袋を片手に持っている男性は、特に焦った様子も見せず平然としたまま近づいてくる。
僅かに警戒するギムレインだったが、それはすぐに解かれた。

「お詫びの品です。どうぞお受け取りください」

「?????」

杖と包帯一式、オマケに出来立てのクッキーが詰まった袋が差し出されたのだ。意味がわからない。本当に意味が解らない。

「意味が解らないならそれでいいんだ。じゃあな!!!!!」

ギムレインが疑問に唸っているとそこで初めて、犯人は慌てた様子で逃走する。あまりに速く逃げられたせいで、逃げ始める瞬間を見逃してしまった。

「…よく分からないけど、私に何かしたのならちょっと呪いを掛けとこう」

膨れっ面のギムレインは、杖を片手に魔法を詠唱した。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:51:27.98 ID:uFvyl4yAO
翌日。腹痛と下痢に苦しんでいるリヒトは、げっそりとした表情で食事をしていた。
死にかけているリヒトを見かねたマナが祝福を与えているが、快方には向かっておらず、なおも瞳は濁ったままだ。

「…なんだこれ。新手の呪いかよ…。呪いなんて掛けられるようなこと、した覚え無いんだけどな…」

腹をさすりながら、リヒトは備え付けのカレンダーに目を通す。
レムカーナに滞在して、既に数日が経過していた。

リヒトがレムカーナに辿り着いてから、様々な事件が発生している。見張りが闇討ちに遭って一週間の入院生活を余儀なくされたり、レムカーナ王立魔法学院に在籍している魔法使いが暴行を受けたのちにお菓子をもらって釈放されたり、学院に不審者が侵入してゴミ掃除や病人を介抱したり。その犯人が誰かは言うまでもないだろう。
警備の目も厳しくなっている。そろそろ、偽名を使っていようと正体に勘付かれる頃合いだ。

「潮時、か…」

今日の夜。それがタイムリミットだと、リヒトの勘が告げていた。
後悔しないように、為すべきことを為さねばなるまい。
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:52:51.23 ID:uFvyl4yAO
何をするかを↓1にどうぞ。
↓1コンマが奇数ならレムカーナから撤退、偶数ならあと一回だけ行動権があります。
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/13(土) 22:40:18.94 ID:q++EbvOWo
魔法学院の半壊を手土産にウィンディを共に来ないかと迎えに
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:18:42.58 ID:wVQj5y0dO
BGM:Critical Drive
https://youtu.be/9iMyp7k53Rs
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:19:18.60 ID:wVQj5y0dO
快晴だった空模様が打って変わり、瀑布の如き雷雨が降り注ぐ。その雨はまるで、天が、神々が嘆いているようで。
レムカーナの住人は不安に思いつつ、家に籠もっていた。それでも健気に巡回を続ける兵士たちの愛国心には脱帽する他ない。

そして、雷雨の中を一筋の光が駆けていた。

「…ふぅ」

これから始まるお祭り騒ぎに備え幽者は臓腑に溜まっていた息を吐き出し、魔力を研ぎ澄ます。

もう、後戻りは出来ないのだ。恐れるな。自身の為すべきと思ったことを、為し遂げろ。他人の都合など考えずに、己の意志で。
今までだって、そうしてきたのだろう。
行為の正しさを自問自答し、決意を固める。

シルヴィアがいたなら、大爆笑していただろう。『たった一人の子供のために、またレムカーナを敵に回すのかい。君は頭のネジが外れまくってるねぇ』と。
反論のしようがない。全くもってその通りだ。
だが、こうも言うだろう。『君が望むのならそうしたまえ。才能を摘み取る愚を犯すような学院、滅んだとしても誰も文句は言えないさ』と。

「…くく。つくづく俺は、大切な人を喪ってきたな」

『慈愛の聖女クロエ・フィアリス』。『彼岸の大賢者シルヴィア・レイナス』。他に喪った人は数えきれない。
喪ったものは決して戻らない。だから、その喪失は無駄ではなかったと。必要なものだったと。割り切るしかない。たとえ、割り切ることが出来ない不条理な死だったとしても。
彼女たちの死に意味があったのだと、信じたいから。

「俺はどうせ、地獄に堕ちる。君たちはきっと、天国からここを見てるんだろう。なら、見届けてくれ」

勇者と慕われた者の末路。三流にも劣る悲劇の結末を。もう、会話など交わせない。だから、これが。この無様な生き様こそが餞だ。
漆黒の意志を秘めた双眸が、黒天の空を見上げた。
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:19:47.27 ID:wVQj5y0dO
200年もの由緒ある歴史を持つレムカーナ王立魔法学院。邸宅街の二割の占める敷地を所有している世界でも有数の魔法学院は今、未曾有の危機に瀕していた。
誰もが勘弁してくれと懇願しやつれること必至の、紛う方なき大災害が冗談抜きで突然襲い掛かった。

「ぎゃー!」

剣の一振りで光の奔流が波濤のように押し寄せ、なんとか反撃しようとしたら得物が光の刃で切断される。不可避の理不尽がやりたい放題をしていた。
レムカーナ王立魔法学院の取り壊しという暴挙をやらかしている下手人の配慮なのか、はたまた命の責任を取りたくないだけなのか。
派手に盛大に吹き飛ばされている警備兵や生徒は、目立った外傷も見られず命に別状は無い。ただ全身が痛くて動けないだけだ。

「とっ止めろー!どんな手を使ってもいいからこの大馬鹿野郎を止めるんだー!!!」

貴族の連中があたふたしながら指示を飛ばす。その場にいた全員がマジかよお前といった視線で睨んでいた。
取り巻きの数人がやる気を感じられない魔力の鎖を放つ。リヒトはそれを甘んじて受け入れ。

「ふんっ」

小手先の技など使わず、圧倒的なパゥワーで引き千切った。
貴族に向けられていた呆れを含んだ視線は、何故かリヒトに向けられる。

「無理矢理『魔力の鎖(マジックチェーン)』を引き千切るって…。えぇ…?」

「もしや蛮族か何かでいらっしゃる?」

「こんな蛮族いるわけねぇだろ」

知性を疑う質問を一蹴し、リヒトは作業を再開した。
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:20:14.97 ID:wVQj5y0dO
騒ぎと爆音を聞いて駆け付けた教師陣による高威力の魔法の雨霰。それを光の翼で耐え、カウンターに百を超える光弾をお見舞いする。
知識を身に付け、ただただ研鑽を重ねた強大な魔法は、膨大な魔力量に裏打ちされたごり押しと言う名の暴力で無へと帰した。やはり力は全てを解決する。
増援が到着するや否や、光弾を浴びて地べたに大の字で寝そべっていく光景はいっそ喜劇的に見える。

大講堂が爆発四散し破壊作業が一区切り付いたところで、ある生徒が口を開いた。

「あの剣…勇者が持ってるっていう聖剣なのでは?」

生徒の発言で空気が凍る。リヒトとしては、この行動を起こす時点で正体バレは確定だと思っていたので、特に気にしていない。
寧ろ、肯定した方がより騒動が大きくなり、衛兵たちもやりにくくなるだろうと考えていた。ので、首肯を以って答えとする。

「ゆゆゆ勇者ぁ!?!!!!国王たちを殺したっていうあのイカレポンチじゃないですかぁ!!!」

「無理!そりゃ止められるわけない!」

「貴族の首が欲しいならどうぞ持っていってください!だからどうか私たち一般庶民は見逃して!」

「俺を売るのかよ!?お、俺を殺したって王殺しほどの悪名は得られないぞ!!!」

好き勝手に物を言う観客に辟易し、リヒトは営業スマイルを浮かべて恐怖心を和らげさせるように言う。

「この学院を潰す以外に目的は無いから安心してくれ」

観客が全員、涙を流しながら蜘蛛の子を散らしたように逃散した。寛大な慈悲に感謝していたのだろう。たぶん。
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:20:40.87 ID:wVQj5y0dO
爆音轟音が鳴り止んだ後。保健室をリヒトは訪れる。予想通り、彼女がいた。

「あ、リヒトさん」

素顔を見せたままのリヒトを見て、素性を隠す必要は無いのだと判断したウィンディは、臆することなく名前を呼んだ。

例によって保健医は逃げ出しており、ここなは二人しかいない。絶好の機会と言う他ない。
だが、どう誘えばいいのか。リヒトは頭を悩ませる。
ミェンという失敗例があまりにも大きいため、リヒトの決心は足踏みしていたのだ。

こういう時こそシルヴィアがいればとも思うが、たらればを言っても現実は変わらないことは解っている。

「リヒトさん?」

小動物のように首を傾げる少女と、暗い表情をしている絶賛逃走中の指名手配犯。
誰も関わりたくない光景が、そこにはあった。
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:23:11.73 ID:wVQj5y0dO
ウィンディ勧誘 判定↓1コンマ
本レスよりコンマが高ければ成功です。
また、↓3までにウィンディに投げかけたい言葉を募集します。


願望成功補正:↓1コンマに+20
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 10:36:23.83 ID:2JZNfRGmo
今一度、問おう
変革を願い、狂った幽者と共に茨の道を征く覚悟はあるか?

いや、天災……そう天災が学園を蹂躙しただけ、君を虐めている暇も余裕も貴族方からは無くなったろう、少しは過ごしやすくなる、このままお別れの方がいいかな


(素のコンマさん厳しい、が補正と回数で頼むクリアしてくれろ!)
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 10:53:08.40 ID:KcpE+OW5O
やったぜ。
ミミルとできればギムレ嬢も勧誘したい(強欲)
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 11:08:35.53 ID:jrxHb48ao
どんな者でも当たり前に愛されることができて、出生や性差等に囚われない正しく才能や努力を評価される世界を作りたい。前半は俺だけど、後半部分は大切な仲間から託された夢なんだ。
俺は……俺たちは、その為に戦っている。
まあ、今実働してるのは俺だけなんだけどな。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 11:18:16.40 ID:wVQj5y0dO
ちょうど良さそうなのでこの二つで〆にします。
あと、ギムレインは仲間になりません。名前があるだけのモブなので。
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 12:59:07.81 ID:cswshFRDO
あら残念
モブの割にはキャラが濃かったからなんかあるのかと思ってた
おつ
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 14:31:17.16 ID:wVQj5y0dO
「…その、なんだ。俺がここまで来たのは、君と雑談をするわけじゃない。それくらいは見て分かるだろうが」

「…はい。漂っている魔力から解ります。無茶なことをしましたね」

保健室周辺は意図的に攻撃範囲から外していたので傷一つない綺麗な姿を保ったままだが、外はそうもいかない。
勇者と謳われたリヒトの光魔法で、それはもうすごいことになっている。建築者も草葉の陰で嘆いているだろう。
別にリヒトからすれば無茶でもなんでもない、昔を思い出す大立ち回りをしただけなのだが、言うだけ野暮なので黙っておく。

外から足音が少しずつ近づいている。おそらく、姿を消した自分を捜しているのだろう。
余計な会話は省き本題に入らねば。と、意識を切り替える。

「どんな者でも当たり前に愛されることが出来て、出生や性差等に囚われない、正しく才能や努力を評価される世界を作りたい。前半は俺だけど、後半部分は大切な仲間から託された夢なんだ」

忌み子にだって愛される権利がある。ならば、誰にだって愛される権利があるはずだ。
それを形にするべく、自身を心の底から愛するべく、リヒトは行動していた。

出生や性差で差別され、排斥されてきた者たち。それを、彼女は知っていた。
この世に蔓延る理不尽を変革し、誰もが希望を抱けるように。シルヴィアはそう願い、歪んだ世界を正そうとしていた。

「俺は…。俺たちは、その為に戦っている。まあ、今は俺だけなんだけどな」

志半ばに斃れた者がいると、言外に示す。どうやら伝わったようで、ウィンディは沈痛な面持ちをしている。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 14:31:46.54 ID:wVQj5y0dO
「今一度、問おう」

剣を床に突き立て、右手を差し伸べる。そして、言葉を紡ぐ。

「変革を願い、狂った幽者と共に茨の道を征く覚悟はあるか?」

過去の希望に満ち溢れていた勇者はいない。絶望に狂った幽者だけがここにいる。それは、本人が一番自覚している。
それでも、彼には背負ったものがある。誓ったものがある。託されたものがある。願ったものがある。
故に、歩みを止めるつもりは無い。たとえ両の脚が折られ、断ち切られようとも。芋虫みたいに這いずってでも進んでみせる。リヒトにはそんな覚悟がある。

「それとも…。天災…そう、天災が学園を蹂躙し、君を虐めている暇も余裕も貴族方からは無くなっただろう。少しは過ごしやすくなるから、このままお別れの方がいいかな?」

自身が歩む修羅の道。鋭い茨に覆われた、数えきれない痛みに苦しみ道を。彼女に歩ませることを強制したくなかった。
己の意志で選ばなかった者を無理矢理連れて行っても邪魔になるだけだし、何より本人が苦しむ。マナは例外もいいところだ。
崩壊した学院の再建、犯人をみすみす取り逃がして失墜した権威の獲得に、貴族は追われることになる。
諸々の問題が解決するまで、ウィンディも学院で堂々と過ごせるだろう。

どちらを選ぶかは彼女次第。目を閉じて選択を待つリヒトの手が、不意に温かくなった。

「…私がここにいたのは、逃げ場が無かったからです。それを作ってくれるのなら、もう未練はありません」

「…これから、迷惑をいっぱい掛けるでしょう。そんな弱々しい私を、護ってくださいね?」

その言葉と笑顔が、何よりの答えだった。

「…ああ、任された」

少女の手を取り、幽者は翼を広げる。
鳥籠に囚われた少女は今、大空へと飛び立った。
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 14:33:59.06 ID:wVQj5y0dO
何をするかを↓1にどうぞ。
↓1コンマで拠点帰還時のイベント数を判定します。


01〜40:0
41〜80:1
81〜99:2
00:???
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 14:44:36.78 ID:0SgLQxiT0
当面の活動資金を調達する
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 15:18:17.96 ID:wVQj5y0dO
速やかに宿屋に帰還し、荷物を纏める。もう長居は無用だ。マナに指示を出し、フード内に匿う。

「え、妖精さん!?」

「ちょっと事故って面倒を見てるだけだ。人畜無害だから安心してくれ」

やる気無さ気にウィンディを見やり、マナは溜め息を吐いた。明らかにどうでもよく思っている。

「まだここにいるの?」

「そろそろ逃げる。まだやることが少しだけあるけどな」

「まだあるんですか?」

ある。地味だがとても重要なことが二つ残っている。
まず一つはシルヴィアの棺の回収。これは何があってもやり遂げなければならない。
もう一つは資金調達。これは帰り道でも出来るが、お金は多いに越したことはない。金の余裕は心の余裕なのだ。
ウィンディには解らないだろうが、リヒトは昔資金不足で非常に苦労したものだ。何度餓死しかけたか、想像しただけで冷や汗が止まらない。

「だからまず、安心出来るだけの金を集める。頑張って頑張って頑張りまくればたぶんどうにかなる!!!」

「根性論…」

最後は根性、成し遂げようとする意志が道を開くことをリヒトは知っている。勇者は意外と泥臭い。
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 15:20:57.43 ID:wVQj5y0dO
資金調達の方法を↓1にどうぞ。


A:冒険者に成りすまして金稼ぎ
B:盗賊を始末して金品強奪
C:キャラバンを襲撃
D:その他(自由枠)
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 15:21:45.88 ID:/TFz3EJ1O
B
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 18:07:36.46 ID:wVQj5y0dO
特級指名手配犯が出現したことが伝わり、レムカーナ全域に大量の兵士が投入された。窓から外を見ただけでも数十名の兵が目視出来、その本気度合いが伺える。

「…あのぅ。これ、本当に逃げられるんですか?」

雷雨の中でも悠々と巡回するドラグーン。空も大地も、どこを通っても警備の目から逃れることは出来無さそうだ。

「大丈夫…だと思う。ウィンディは空を飛べるか?」

自分一人なら余裕なのだが、一番の懸念点はウィンディの存在だ。彼女がどれだけ戦えるかによって、彼女自身の生存率は大きく変わる。

「あ、はい…。私一人なら、全然飛べます」

「なら大丈夫だ」

満足のいく答えが返ってきたので、リヒトは小さく笑った。
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 18:08:03.83 ID:wVQj5y0dO
「隊長!怪しい人物がそこの宿屋に泊まっているとのタレコミがありました」

「よぅし!なら勧告無しに爆破してしまえぃ!ドラグーンを全騎召集しろ!」

可能な限りの人員を集め、包囲を固める。ここまですればどうにかなると、根拠のない自信を基に。
この程度で捕縛出来るのなら、疾うの昔に処刑出来ているというのに。

宿屋の直上に三騎のドラグーンが待機し、その外側を四騎のドラグーンが囲む。
勇者には飛行能力があることは有名なので、空路を警戒するのは当然のことだ。
だが、何故彼らはリヒトたちが反撃しないと思っているのだろう。
無抵抗のまま捕まる道理など、彼らには無いのに。

「奴を捕らえれば、私は三階級特進…!晴れて将校よ!!!ふははははー!!!」

ドラグーンが駆る火龍の豪炎が、宿屋に降り注ぐ。爆音と共に、爆ぜた。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 18:08:52.59 ID:wVQj5y0dO
立ち込める黒煙が、爆発の規模を物語る。尋常の者ならまず、この攻撃を受けて生きてはいまい。
だが、生憎と勇者は尋常の域を超えている存在だ。強大な悪を打ち倒した者が、たかが炎に焼かれた程度で生き絶えるわけがない。

「はははははは!はは…は…?」

勝利は確定したと言わんばかりの大笑がはたと止んだ。黒煙の中に、神々しい光が蠢いているからだ。
突風が吹き煙が霧散する。同時に、空間を閃光が縫う。

「は…ぁ…!??」

不快気に鼻を鳴らす勇者が姿を現した。傷一つ、煤一つ付いていないその姿は微小なダメージすら受けなかったことを示しており、その剣からは光が漏れ出している。

ズン、と数度地面が揺れる。その正体は、墜落した火龍たちだった。出血し完全に沈黙しているが、致命傷ではない。気を失っただけのようだ。
勇者リヒトが放った剣閃は、空を縫い空中の龍たちを撃ち落とすに足る威力を持っていた。
なけなしの慈悲で即死はしていないが、ここで反撃をしていたら、龍の首が飛んでいる。
幸いなことに、一撃で気絶したおかげで一命だけは取り留めているわけだが。生きてるって素晴らしい。

「俺の邪魔をするなら、多少痛い目に遭っても」

勇者は聖剣を掲げ、魔力を解き放つ。

「仕方ないよな?」

言い切った刹那、空から光の剣が降り注いだ。
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 18:09:20.72 ID:wVQj5y0dO
包囲網を物理的に破ったリヒトたちは、最短経路で教会に向かう。その道すがらで。

「わ、私っていらない子だったんじゃ…」

「そうでもない」

ウィンディの自虐をリヒトは首を振って否定する。ウィンディがいなければ、あそこまで効率よく反撃に転じられなかったのだ。

ウィンディが詠唱した風魔法が、暴風の壁を作り出していた。それによって火龍の吐息は二人に届くことがなかった。
最初は防御から反撃まで全てリヒトが担当する予定だったのだが、これくらいならさせてほしいと助力を願ったので任せてみた。
その結果がコレである。なかなかどうして、素晴らしい才能を持っているようだ。
ウィンディが防御を引き受けてくれたおかげで、リヒトは攻撃にのみ集中出来た。
だというのに、彼女が必要無かったとは口が裂けても言えない。お互いにとって最善の結果である。
リヒトたちにとっても。兵士たちにとっても。

教会に着くとすぐさま、リヒトは扉を蹴破る。ヴォルグス城で同様のことをしてから、すっかり板についてしまった。
先程の戦闘音に怯えていたのか、神父や修道女(シスター)は椅子の影に隠れていた。別に取って食うつもりはないのだが、文句は言えない。

予め棺の受け取り日を決めていたため、既に棺が出されていた。手際が良くて大助かりだ。

「ありがとう」

謝辞を一言だけ述べ、棺を背負う。そのまま、二人は空へと逃走した。
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 18:12:17.31 ID:wVQj5y0dO
盗賊 判定↓1コンマ


01〜30:何も無し
31〜70:小規模なアジトを確認
71〜95:大規模なアジトを確認
96〜99:謎の集落を確認
00:???
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 18:28:18.38 ID:2JZNfRGmo
今度は多勢でもいけるいける
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 19:10:00.79 ID:wVQj5y0dO
棺を背負ったままの逃避行はおよそ半日続き、レムカーナは地平線の果てに消え、疎に生えた雑草と露出した岩肌が彩る荒野に到達していた。

「………」

馬車が踏み慣らした道路を進む。人里からかなり離れてはいるが、人の痕跡は強く残っている。それがありがたい。
人が踏み入れた領域なら、そこまで強力な魔物は現れない。アークミノタウロスの群れは根本的な部分から違っていたため、レムカーナで遭遇してしまったが。

「大丈夫か?」

「はい。魔法で身体を動かすくらいなら、いくらでもへっちゃらです。まぁ、この距離を歩いていたら今頃倒れてましたけど…」

宙に浮いてついて来るウィンディを気にかけるが、特に様子は変わっていない。この調子なら、拠点まで戻れそうだ。

「拠点に行く前に少しだけ寄り道がある。すぐ済む用事だから、寄り道しても構わないか?」

「私に選択権は無いのでご自由にどうぞ」

後ろ向きな返事ばかりする同行者に頭痛がするが、こればかりは本人の気質の問題なので口を出すわけにはいかない。
口下手な自分を恨みつつ、足を進めるリヒトだった。
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 19:11:40.26 ID:wVQj5y0dO
盗賊への対処を↓1にどうぞ。


A:一人残らず鏖殺する
B:最低限の人数だけ生かす
C:全員捕縛する
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 19:12:19.12 ID:wVQj5y0dO
すみません。D:自由安価の選択肢も追加でお願いします。
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 19:39:05.04 ID:0SgLQxiT0
D:勇者の力を見せて脅し、金品を置いていけば命だけは助けてやると言う
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 21:09:54.18 ID:wVQj5y0dO
「やぁやぁやぁ。頼み事をしに来ただけなのに、随分と手洗い歓迎じゃないか」

リヒトは例によって営業スマイルを浮かべて極めて平和的な交流を試みる。心から笑えたのはいつだったか、もう憶えてないほど久しい。
作り物の笑顔の方が多いとは、皮肉なものだと自嘲する。

「剣を片手に頼み事とは物騒だねぇ」

荒々しい声をした巨漢が人混みの中から姿を現す。腕前は並。と、リヒトの勘が告げている。
値踏みするような視線に呆れつつ、リヒトは平然と頼み事をした。

「懐が寂しくてとっても困っててな。お前たちのことは見逃してやるから、金になるものをくれ」

ならず者の拠点を見つけたにも関わらず、お目溢ししてやるとは。なんと慈愛に満ちたことだろう。
神様がこの光景を見ていたら、感涙しながら祝福を1ダースほど与えてくれるに違いない。

「ひゃはははははは!!!!面白いこと言うじゃないか兄ちゃん!」

頭領と思しき巨漢は呵呵大笑し、相手をするのも面倒だからあっちに行け、という意思を込めたジェスチャーをする。

「まぁ兄ちゃんは見た目が良いからな。何人かのお相手をすればそれなりに稼げるんじゃないか?ぎゃははは!!!!!」

それは困る。生憎と、自分は同性愛者ではないのだ。リヒトは肩を竦め、剣を振り上げた。

近隣の森から突如立ち上る光の柱。柱と言うにはあまりにも太いそれは、頭上の雲すら突き抜ける。
発生地点にあった生命を悉く焼き尽くし、浄化した粛清の光は、残光を残すことなく消滅する。
後に残ったのは、底の見えない大穴だけだった。

「こんなことになるのは本意じゃないからさ。頼むよ。なっ?」

リヒトは頬をポリポリと掻き、申し訳なさそうに懇願する。

頭領は白目を剥いて卒倒した。
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 21:12:52.30 ID:wVQj5y0dO
ならず者のお恵み 判定↓1コンマ


01〜40:しばらく生活に困らない程度の金品
41〜80:+彼らが手に入れた貴重品
81〜99:+売りに出す予定だった奴隷
00:???
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 21:45:03.44 ID:2JZNfRGmo
おー
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 21:49:54.79 ID:wVQj5y0dO
ならず者が隠し持っていた貴重品を↓1にどうぞ。
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 21:58:34.40 ID:jrxHb48ao
世界樹の果実(というラベルの貼られた大きな果物)
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 08:05:09.88 ID:neXRGdrZO
「おっお頭ー!見かけによらず超が付くほど小心者のお頭が倒れたー!!!」

「なんであんな化け物がここにいんだよ!?ってかどうにかしろよコイツ目がマジだぞおい!このままじゃ全員ゴートゥヘブンされちまう!!!」

「許してくださいお願いします!まだ私たちは明るく楽しく生きていたいんです!!」

やいのやいのと騒いでいるが、こちらとしては困惑する他ない。出すものさえ出せば見逃すと、初めから言っているではないか。

「本当に見逃してくれるのか!?どれだけ献上しても『これっぽっちかよちょっとお前そこでジャンプしてみろほらまだ音がするじゃねーか全部よこせ』って根こそぎカツアゲする魂胆だろ俺は詳しいんだ!!!!」

「しねーよ!!!!」

勝手に極悪非道なゲス野郎にされ、リヒトは憤慨する。全部奪う気なら、端から交渉なぞしないで全員一息に殺している。
彼らにだって生活が懸かっているから配慮しているのだ。誰も不幸にならない平和な解決を望んでいるのだから、感謝してもらいたい。

「…そこまで言うなら…。どうぞお受け取りくださいませ!そして二度とここに来るんじゃねーぞ来ないでください!!!!!」

相当溜め込んでいたのか、山のように宝石や装飾品が積み上げられる。あまりの量にリヒトは辟易し、金品を一度だけ鷲掴みした。

「これだけでいいよ。しばらく金に困らなければいいんだし」

「何こいつ逆に怖いんだけど」

ひどい言われようだとリヒトは苦笑する。そのまま立ち去ろうとしたが、ならず者に呼び止められた。

「後でいちゃもんを付けられても面倒だからな。これも持ってけ」

ぶん投げられたのは、人の頭くらいの大きさをした赤い果実。『世界樹の果実』というラベルが貼られている。

「いつ食べるか楽しみにしてたんだが、死んだら元も子もない。ここまでしたんだからもうどっか行けよな」

「ありがとう。なら遠慮なく頂くよ」

果物を片手に、リヒトは軽く手を振る。気が向いたらまた来ることも伝えておく。

「絶対に来んなよバーカ!!」

ブーイングの嵐を受けながら、リヒトは笑顔のまま退散した。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 08:05:57.10 ID:neXRGdrZO
道中イベント 判定↓1コンマ


01〜15:魔物の群れが現れた!
16〜30:ならず者が現れた!
31〜70:何も起きなかった!
71〜85:行商人が現れた!
86〜99:何かが起きた!(自由枠)
00:???
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 08:23:19.41 ID:duko65xDO
何か起きろー
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 09:09:33.23 ID:N/uO3JDdo
魔物の群れとかいうトラウマイベントが怖すぎる…
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 09:22:05.34 ID:neXRGdrZO
「…何も起きませんでしたね」

長い時間を掛けてとうとう拠点へと帰投した三人。人数は変わらないが、人は変わっている。
リヒトは荷物を下ろして棺を抱える。為すべきことを為すために。

「そういえば、その棺には誰が入ってるんですか?」

「…シルヴィア・レイナス。俺の仲間だった魔法使いだ」

「えっ」

ウィンディの表情が固まった。もう嫌な予感しかしない。

「嘘、ですよね?シルヴィア先生なんですか?本当に!?」

「…嘘か誠かは後で解るよ」

冷淡な声色でそう答え、リヒトは墓地へと向かった。
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 09:23:05.86 ID:neXRGdrZO
リヒトが墓地と呼ぶ拠点の一角には、手入れがされている綺麗な墓石が一つある。
墓標の傍には主の愛剣が突き立てられており、色鮮やかな一輪の花が添えられていた。
その隣に新しい墓石を設置し、地面を掘る。何も発することなく、黙々と。ただひたすらに。その間、ウィンディは口を出せずにいた。

「…無力な俺を赦してくれ」

棺を穴に入れ、杖を取り出す。教会の人たちが頑張ってくれたようで、シルヴィアの顔は見違えるように綺麗だった。
そういうことに疎いリヒトですら心を惹かれてしまうような、麗しい笑みを浮かべていた。
釣られて、リヒトも笑顔を浮かべる。気に召してくれるのなら何よりだと。

「あ…や…ぁ…!?」

そんなリヒトとは対照に、ウィンディの顔は青ざめていた。
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 09:23:39.01 ID:neXRGdrZO
何をするかを↓1にどうぞ。
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 09:27:19.28 ID:48vJsEdP0
教師だった頃のシルヴィアについてウィンディに聞く
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 10:05:09.92 ID:duko65xDO
復活の目ってあるんだろうか…
仮に果実にそんな効果があったとしても食えなきゃ無意味か
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 12:13:37.14 ID:neXRGdrZO
体調不良のウィンディを家に連れ戻す。拠点とは言ってもまだ家は一軒しかないので、同居になってしまうが我慢してもらうつもりだ。

「ありがとう…ございます……」

冷水一杯を振る舞うが、ウィンディは呆然とした表情のまま椅子に座ったままだ。口を付ける様子もない。
気持ちはよく解ると、内心でリヒトは同意を示す。親しい者が亡くなった時に襲い掛かる喪失感は果てしないものだ。彼も相当に苦しんだし、今もなお心を侵蝕している。

傷ついた心を癒すのは時間だけだ。今出来るのは、昔話をして気を紛らわせるくらいだろう。もしかしたら逆効果かもしれないが、彼女は意外と芯が強いので乗り越えられるはずだ。

「君さえ良ければ聴かせてくれないか?俺の知らない、シルヴィアの教師時代のことを」

気にかけてくれた先生がいた、という彼女の言とシルヴィアに対する呼称。そして、彼女のお人好しな性格を鑑みるに、ウィンディと文通をして色々と指導していたのはシルヴィアで間違いない。
そういったことをしていたのは初耳だが、同時に彼女ほどの傑物ならそうするだろうな、とも思っていた。
もう、シルヴィアと言葉を交わすことはない。だからせめて、他人と話をして彼女のことを知りたい。
誰にも語り継がれず忘却されることは、存在の消滅と同義だ。彼女が懸命に生きた証を、残し続けたい。

そんな意図を汲み取ったのか、暗い表情ながらもウィンディは口を開いた。
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 12:14:19.31 ID:neXRGdrZO
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220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 12:14:56.89 ID:neXRGdrZO
「最初は、新聞を見て知ったんです。とんでもない魔法使いが『フェルリティア』にいるって」

フェルリティア。レムカーナから遠く離れた魔法都と呼ばれる都市だ。彼女とは、逃避行の果てにそこで出逢った。
あれから一年。長いようで短い時間だったと回顧する。自分はシルヴィアのために何か出来たのか自問するが、何も出来ていないことに落胆する。

「そこで、駄目元で手紙を五通ほど送ったんです。住所なんて分からなかったので、宛先は全部公務庁にして。思えば、公務庁の方には迷惑でしたね」

苦笑するウィンディを見ながら、リヒトは頷く。確かに迷惑だっただろうが、それで二人は面識を持てたのだから結果オーライである。

「…そうですね。それで、シルヴィア先生に手紙が届いたみたいでして。そこから文通で指導を受けたり、お悩み相談だったり、世間話だったりをしてました」
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 12:15:24.73 ID:neXRGdrZO
カバンから取り出したのは、保健室でも見たぼろぼろと手紙と書籍だ。どことなく、シルヴィアの私物と似ている気がした。

「手紙は、シルヴィア先生が送ってくれたものです。踏み潰されたりインクを掛けられたりでもうマトモに読めないですけど、それでも、大切な物なので」

今では遺品になっちゃいましたけど。と付け加えるウィンディだが、表情は僅かに明るくなっている。少しずつ心の整理が出来ているのだろう。

「こちらの本は、先生のアドバイスを基に私なりに構築した理論を記載した写本です。先生に一度見てもらいたかったのですが、叶わない夢ですね」

「…すまない」

自分がいたのに護れなかったことを悔やみ謝罪する。それで過去が変わるわけではないが、怒りの矛先を向けるなりして、溜飲が下がるならそれでいい。
ナイフで刺されるくらいは覚悟していたのだが、ウィンディが行動に出ることは終ぞ無かった。

「怒りませんよ。怒る資格なんて無いです。私は、先生に会ったことすら無いんですから。リヒトさんほど強くても、護れなかったくらいに理不尽なことがあったのでしょう。貴方やマナちゃんが生きているなら、先生もきっと喜んでますよ」

「そうか…」

あの時、手遅れになる前に全力を出していたら、シルヴィアが命を散らすことはなかった。
油断していなかったのだが、魔物の力を見誤っていたのは事実だ。彼女の死は不可抗力ではなく、自身の怠慢が生んだ結果だ。
失態を咎められず慰められるだけというのも気分が悪い。これなら、徹底的に扱き下ろされた方が気が楽だ。
そんな思いを込め、リヒトは嘆息する。
ウィンディは遺品の手紙を、愛おしそうに抱き締めた。
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 12:16:03.99 ID:neXRGdrZO
何をするかを↓1にどうぞ。
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 12:22:24.61 ID:6LaNpk3LO
世界樹の果実を皆で食べ、お墓にお供えする
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 12:49:07.12 ID:neXRGdrZO
戦利品の赤い果実からラベルを剥がし、小さく切り分ける。中心にあった種はもったいないのでくり抜いて保管しておく。
サクサクと気味の良い音を立てながら切り分けていき、更に並べる。甘い香りが鼻を擽り、食欲を沸き立てる。

「それ、なんですか?」

「世界樹の果実」

リヒトの返答にウィンディは驚く様子を見せず、机に置かれているラベルに目を向ける。

「ただのおっきなリンゴですよね」

「そうとも言う」

世界樹の果実の正体は、アリフで栽培されているリンゴの品種の一つだ。一玉一玉が大きいためあまり数が採れず、結構お高い高級品なのだ。
それを無償で献上してくれたならず者には頭が上がらない。

「ほれ、食ってみろ」

「あむ。…あ、美味しい」

世界樹の果実を齧ったウィンディの顔が綻び、へにゃりとしただらしない表情になる。それだけ美味なのだろうとリヒトも一つ食べてみる。

「美味い」

口に入れた途端に広がる濃密な甘み。それでいて、爽やかな酸味が追い討ちを掛けることによってしつこさは無く、さっぱりとした味わいになっている。
繊維もシャクシャクと水気がありながら、ベタつくことはなく歯切れが良い。いくらでも食べてしまえそうだ。

墓に半分ほどお供えし、残りは三人で味わう。
珍しくマナが食いっ気を出し、三人の中で最も多く平らげた。
小さな身体によく入るものだと、二人は感心した。
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 12:49:47.22 ID:neXRGdrZO
何をするかを↓1にどうぞ。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 13:31:11.79 ID:dBL28EKyo
献上してもらった金品を生活物資に変えに近くの街へ
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 13:31:19.48 ID:s6RYBVdzO
同志集めのために情報収集
同じような思想を持つ人物ないしコミュニティを探す
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 13:38:55.47 ID:neXRGdrZO
目的地を↓2にどうぞ。


A:荒廃した街 ソルド 道中イベント:2
B:普遍の町 アリフ 道中イベント:0
C:圧政の都 ゴルギュリオ 道中イベント:2
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 13:46:04.94 ID:s6RYBVdzO
ksk
安価ならC
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 13:55:50.04 ID:Mcg2d7GO0
B
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 14:38:36.67 ID:neXRGdrZO
魔物や盗賊に襲われるようなことも無く、平和な旅程でアリフに到着した。そういった手合いが滅多に出ない地域なので、当たり前と言えば当たり前なのだが。

「ほわぁぁぁぁ……」

レムカーナとはまた違った賑やかな町並みに、ウィンディは感嘆の息を漏らしている。
これから色々なものを見るのだからこの程度で驚かれては困る。とリヒトは苦笑し、道具屋へ駆け込む。

「らっしゃい。…おお、リュクスの兄ちゃんじゃないか」

「よぉおっちゃん。早速だがコレの換金頼むよ」

顔馴染みの店主に軽く挨拶をし、金品の詰まった麻袋をカウンターに提示する。
無精髭を摩りながら、店主は口を開いた。

「しかしまぁ。今日はえらい多いな」

「心優しい人が恵んでくれたものでね。ありがたく頂戴したわけだ」

「ほぅ。そんな良い人に俺も出逢いたいねぇ」

「旅でもすればいつか出逢えるんじゃないか?」

「そりゃ無理な話だ。俺にはもうおかみさんがいるから、この町を出られないんでな」

「…なんか、おかみさんが良い人じゃないって言ってるように聞こえるな」

「ばっ…!それ本人に言うなよ!?脳天かち割られちまう!」

「言わないよ、たぶん」

そんな談笑をしつつも、店主は金品の鑑定を進める。鋭い目つきは金品に集中し、僅かな傷すら逃さんとしている。
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 14:39:30.52 ID:neXRGdrZO
「…ふむ。ざっとこれくらいだな」

鑑定を終えた店主は、羊皮紙に全て売却した際の金額と内訳を記載する。
それを見たリヒトは満足気に頷き、羊皮紙にサインを書いた。

「契約成立だな。んじゃ、代金を受け取ってくれ」

「いつも助かるよ」

リヒトの謝辞を面倒そうにしながら受け取り、店主は新聞を手に取った。用が済んだなら帰れ、という合図だ。
もちろんリヒトも長居するつもりは無いので、そのまま店を出た。

「ご満悦ですね。そんなに儲かりましたか?」

リヒトの顔を見たウィンディはそう問い掛け、銀貨が詰まった麻袋を見て喉を鳴らした。
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 14:40:52.65 ID:neXRGdrZO
何をするかを↓1にどうぞ。
今回は換金がメインなので二回行動したらこの町を出ます。
生活物資への変換は自動で行われます。
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 14:45:09.14 ID:mX+jXJcGo
マナのために果物買ってやろう
青果市へ
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 15:15:52.95 ID:duko65xDO
リンゴかあ…
まあもし死者復活があるとしても盗賊なんかが持ってる物じゃなく代わりに誰かが死ぬくらいの危険を掻い潜らないと無理か
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 20:16:54.32 ID:neXRGdrZO
懐が潤って大満足なリヒトは、活動に必須な生活物資を一通り買い漁り、青果市場へ来ていた。
昼時なのでそれなりに商品が売れてしまっているが、追加分として先程採れた瑞々しい果物が売りに出されている。

「え?世界樹の果実かい?」

気の良さそうなおばちゃんに、マナががっついた逸品が置いてないか質問する。フードの中に隠れていたマナが、ピクリと動いた。

「置いてるわけないさね。もう今年に採れる分は完売したってそこにも書いてるよ」

おばちゃんが指差した先には、『今年分の世界樹の果実は完売しました。また来年お越しください』と書かれた看板がある。
どうやら、栽培しているのはその出店を所有しているリンゴ農家だけのようだ。
彼女から聞いたのだが世界樹の果実などと大仰な名前が付いてる理由は、品種改良していたらたまたまとんでもない大きさのリンゴが出来てしまい、どうせ本物なんて誰も見たことないんだからと言って名付けたかららしい。
神をも恐れぬ蛮行ではあるが、実際に本物を目にした者はいないので別にいいのだろう。美味いし。

無慈悲な宣告にマナは露骨に気落ちした。耳元で溜め息を十六連射している。普通に耳がくすぐったいので勘弁してもらいたいものだ。
このまま撤退するのはあまりに不憫なので、評判の良い果物をバスケットいっぱいに購入する。これで我慢してもらおう。

市場を出ながら考えていたのだが、ラベルが貼られているような果物が本物の世界樹の果実じゃないことに気づいてしまった。
ラベルを用意する程度には量産しているわけだし、そもそも本物だったらあんなならず者が持っているわけがない。争奪戦という名の戦争が現在進行形で起きていることだろう。
リヒトはまた一つ賢くなった。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 20:17:20.68 ID:neXRGdrZO
何をするかを↓1にどうぞ。
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 20:31:57.86 ID:A4gQcl6zO
馬か竜を買おう
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 21:37:13.30 ID:neXRGdrZO
「輸送力が足りない」

「ふぇ?」

採れたて果実をふんだんに使ったフルーツジュースを味わいながら、突然リヒトがそんなことを宣う。
ストローを口に入れたまま、ウィンディは首を傾げた。急に何を言ってるんですか、という目をしている。

「運べる荷物が少ないからな。俺は言うまでもないし、君だって沢山運ぶのは相当しんどいんだろ?」

「まぁ、はい。もう少し身体が頑丈だったら、大丈夫だったんでしょうけど」

同志になるにあたって、彼女の風魔法についてはある程度教えられている。風魔法による物資輸送も出来るらしいが、身体への負担が大きいそうだ。
輸送力は馬車一台分が限度で、輸送を終えたら二日は高熱と倦怠感で寝込んでしまうらしい。代償が大きすぎて、訊いた時は反応に困った。
リヒトは言うまでもなく輸送力が低い。大の大人二人分を持っていけるかどうかである。

「だから、馬か竜を買う!オマケに荷車が付いてくるからお得だしな!」

「お金は足りるんですか?」

「足りる。まぁほとんど使い切っちまうけどな…」

簡単に頭数を揃えられる馬なら二匹、比較的調教が難しい竜なら一匹飼えるくらいの残金だ。財政も厳しいのは本当に困る。0から始めているのだから仕方がないが。

「あとは、野生の馬や龍とかをとっ捕まえるかだな。俺に才能があるか分からんが」

自然界で悠々と暮らしている駿馬や龍種を調伏するには、彼らに認められる必要がある。
それを出来るかどうかは、試してみないと分からない。成功するか。はたまた失敗して骸になるか。それも同じく。
普段何気なく利用している生き物は皆、先人たちの努力と犠牲の賜物なのだ。
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/15(月) 21:44:19.37 ID:neXRGdrZO
どうふるかを↓2にどうぞ。


A:馬をX頭飼う(1か2のどちらかも記入すること)
B:竜を一匹飼う
C:野生のものを捕獲出来るか試す
D:保留


馬と竜の違い


馬より竜の方が輸送力は大きくタフで、戦闘もこなせる。が、その分効果。
馬は比較的安価で数を揃えやすく、非常に従順。


竜と龍の違い


竜は飛行能力を持たず、龍は飛行能力を持つ。というより、地上主体か空中主体かが違う。飛竜種と牙竜種の違いと思ってください。
どちらも主と認めた者にのみ従順になるので調教が大変。故に、龍騎士や龍使いは高級取りである。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/15(月) 21:47:53.35 ID:63mFq3oHo
龍も竜もある程度知能が有るってことか
ものは試しCで
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