【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」吹雪「その4です!」

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168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/16(土) 09:21:33.33 ID:OXuxv8tu0
乙です。大淀ェ…
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/07/16(土) 20:11:34.16 ID:UcJut+Kl0
むっちゃん少しずつ警戒心溶けていってるの自覚なく困惑してるのカワユス
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/16(土) 23:49:44.20 ID:p/xvmNrb0
アゲガイジがわざと荒らしてるの確定だな
学習能力が病的に足りな過ぎる
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/17(日) 09:28:18.60 ID:WVh0gUZB0
みんなコメントしたいのわかるけどするならE-mailのところにsageって入れてくださいまじでうざい
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/29(金) 20:09:30.83 ID:+Fbg2ZLRO
准尉好き好き勢の艦娘達が提督の布団に潜り込む順番どうやって決めてるのか気になる…
潜り込みたい娘達で集まって協議してるのだろうか。
ベッドが変わってから毎晩2人で潜り込んだりはしないのだろうか
173 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/07/31(日) 23:27:30.29 ID:WpzCN6QYo
>168
大淀はむっつり+へたれ+ラッキースケベのジャ○プお色気系漫画主人公路線で
行くことにしました。その方が面白そうだから。

>170-171
あくまでお願いですので。
私自身はスルーすると宣言したので、ぶっちゃけ楽です。

>172
実はその辺、あまり深く考えてなかったり……。
ただ、2人以上で潜り込むケースはありだと思ってくださって結構です。

で、肝心の本編が全然書けねえ……できたところまで投下します。
174 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/07/31(日) 23:28:31.33 ID:WpzCN6QYo

 * 某所 *

クルー4「買収!? うちの会社がですか!?」

クルー6「ど、どういうことっすか……!?」

部長「さっき役員会議で決定したんだ。かつてバブルの時代に、親会社の番組制作部門が分社化で別々の会社に分かれただろ?」

部長「うちもかつてはその部門の一つだったんだが、景気が悪くて採算が取れなくなったから、買収してもらうことになったんだ」

クルー4「じ、じゃあ、俺たちは……」

部長「一応希望を取るが、ほぼ全員、親会社である在京の○○テレビに移籍することになる。社長は退職するけどな」

クルー4「え!?」

部長「今回の騒動でスタッフも死んだし、表向きはその責任を取る形でな」

クルー4「……」

クルー6「……」

部長「あまり重く受け取らなくていいぞ? もともと社長も隠居したがってたんだ。むしろ一番心配なのは留父さんだ」

クルー6「ど、どういうことっすか?」

部長「留父さんが海軍のお偉いさんと大親友だってのは聞いてただろう?」

クルー6「は、はい」
175 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/07/31(日) 23:29:16.69 ID:WpzCN6QYo

部長「そのお偉いさんが、海軍のイメージアップのためのアイデアを求めて留父さんに相談したのがきっかけで……」

部長「そこからうちの親会社、またそこからうちに企画書が回ってきて、じゃあ長期間のロケをやろうってことになって……」

部長「それで、臨時のスタッフを募集して君を雇ったわけだ」

クルー6「はい」

部長「で、ロケの主役として白羽の矢を立てたのが、留父さんの息子である留氏だったんだが」

部長「これが蓋を開けてみたら、とんでもない問題児だった。ここまではいいな?」

クルー6「はい、大丈夫っす」

部長「聞くところによるとあのバカ息子、婦女暴行未遂も何度かやらかしてるらしいな」

クルー4「ええ……」

クルー6「俺たちとんでもない人に付き合わされていたんすね……」

部長「でだ、留父さんが海軍の人たちと親会社の専務を引き連れて、うちの社長に土下座しに来ててなあ」

クルー6「土下座!? 留父さんがですか!?」

クルー4「それで会議室に近寄るなと」

部長「ああ。弊社としては、うちのスタッフの起こした問題だ。俺たちが頭を下げるべきなんだが、留父さんも引き下がらなくてなあ」

部長「お互いかばい合ってるというか、罪の所在を奪い合ってる、ちょっと変な空気になったんだ」
176 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/07/31(日) 23:30:02.61 ID:WpzCN6QYo

クルー4「……俺たちのせいじゃない、と、言ってくれてるんですか?」

部長「ありがたいことにそういうことだ。とはいえ、責任は誰かが取らなきゃならんが、留父さんに取らせるわけにはいかんのだ」

部長「それで、うちの社長が、自分が辞職することで手打ちにして欲しいと提案したんだよ」

クルー6「俺、会ったことないんすけど、すごい社長さんなんすね……」

部長「とにかく、これから謝罪会見を開いて、留父さんと親会社の専務から、説明してもらうことになった」

部長「ま、ちゃんと責任を取る形で会見すれば、視聴者からはそこまで厳しく追及してこないだろう」

クルー4「最近じゃあ、下手に秘密にしてごまかした方が炎上しますからね……」

部長「それから、今回不祥事を起こした留氏とうちのスタッフは、更生のため、一定期間海軍で訓練や奉仕活動に参加させることも決まった」

クルー4「はー……」

クルー6「何やらされるんでしょうね……」

クルー4「軍隊だろ? 何をやらされるか知らんけど、厳しいんだろうなあ……」

部長「そのついで、と言ってはなんだが……」

部長「これまで親会社は、うちへ外注する形で番組制作を依頼していた。が、昨今の情勢を鑑みるに、その必要もないと判断した」

部長「統廃合することで余計な経費を抑え、これを機に余計な膿を出すこともできる」

クルー4「……ということは」
177 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/07/31(日) 23:30:46.24 ID:WpzCN6QYo

部長「海軍居残りになったあいつらとは、これを機に社員契約を打ち切ることで決定した」

クルー4(良かった……あのとき思い留まって本当に良かった……!!)

部長「お前たちには、このまま一緒に親会社へ行って欲しいと思っているが、その辺の意思確認をしたい」

クルー4「お、俺……じゃない、私は、引き続きこの仕事を続けたいと思っています!」

部長「よし。君はどうする? バイトで入ったとはいえ、あの中で悪い連中に流されなかったのは評価できる」

部長「このまま続けてもらうのも悪くないが?」

クルー6「……俺は、当初の予定通り、契約が終わったら、また別の仕事を探そうと思います」

クルー4「お前……!?」

部長「そうか。残念だが、君がそう言うのなら仕方ない」

クルー4「いいのか……!?」

クルー6「いいっす。すごく貴重な経験をさせてもらいましたけど」

クルー6「さすがにこういうのがずっと続いたりするのは、俺にはちょっとしんどいっす……」

クルー4「そっか。残念だけど、まあ、あわないんならしょうがない」

クルー6「すいません……」
178 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/07/31(日) 23:31:31.14 ID:WpzCN6QYo

部長「ああ、それから……あの島で見た話は、口外無用だそうだ」

部長「あの島に関わったこと自体がその人の不幸になる、という、御大層な物言いで釘をさしてきたから、余程の秘密があるんだろう」

部長「そういうわけなんで、あの島の話は、あとでじっくり聞かせてくれ」ニヤリ

クルー6「」ガクッ

クルー4「何こけてんだよ」

クルー6「……そ、それ、いいんすか」

部長「テレビマンが興味と好奇心を失ったら終わりだぞ?」

クルー4「ははっ、まあ、部長ならそう仰るんじゃないかと思いましたよ」

クルー6(笑い話じゃないと思うんだけどなあ……やっぱり俺には合わないな、この世界)

部長「……あとは、死んだ奴らの家族にどう説明するかなんだが」

クルー4「ああ……」

部長「あいつらがなんで死んだのかは海軍が調査中。一応、死因と調査結果を連絡してもらうことになってるんだが」

部長「お前の話だと事故死による溺死だったな? 海に落ちたんだって?」

クルー4「は、はい。夜中、外に出て行って、喧嘩して海に落ちた、っていうのが、その場の見解でした」
179 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/07/31(日) 23:33:00.90 ID:WpzCN6QYo

部長「謀殺された線はないのか?」

クルー4「どうですかね……あのときは留さんや俺たちがマークされてて見事に嵌められたんですけど、殺されるって感じじゃなかったし」

クルー4「6は最初からなにもなかったんだっけか?」

クルー6「そ、そうっすね。5さんと一緒に館内を歩いてた時も、誰もいなくてびっくりしましたし。見張られてた感じなんかも全然なかったっす」

クルー6「つうか、3さんと5さんが殺されたとしたら、どんな理由で殺されたんですかね?」

クルー6「最初から全員口封じする気なら、俺たちだけになった時点で始末したっていいじゃないすか」

クルー6「なんだかんだで風呂入れてもらったり、晩酌のおつまみまで作ってもらったりして、悪くはない思いさせられてますよね」

クルー4「そういやそうだな……?」

クルー6「留さんや1さんたちもあれだけのことをしてても殺さないで、大した怪我もさせずに捕まえてますし」

クルー6「それに俺、あの島にいたときも言いましたけど、准尉が一人で管理させられてたわけっすよね?」

クルー6「あの島、マジでなにかあるんじゃないっすか? 俺、艦娘死んでたのもびっくりしましたもん」

クルー4「そうだよな……俺もあの島の艦娘が、人間の言うことに逆らったって言う話を聞いて愕然としたし。普通じゃないよな?」

部長「ありがちな話だと、化け物を飼ってる、とかか」

クルー4「え!?」

クルー6「化け物!?」
180 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/07/31(日) 23:35:15.96 ID:WpzCN6QYo

部長「海軍があの島に近づくなと言うのが、何かしらの秘密を抱えているからだとしたら……」

部長「その口封じのために事故死に見せかけて殺された線は考えても良いだろう」

クルー6「外でその化け物を見た、ってことっすか?」

部長「俺は最初からそうじゃないかと思ってたんだが。化け物じゃなくても、海軍としてどうしても隠しておきたい何かがあるとしか……」

部長「あの島にいる人間も、若い下っ端提督が一人だけだったんだろ? 普通だったらもっと上の階級の将校がいてもいいはずだ」

部長「そうじゃないんなら、危険すぎて誰も近寄れないような化け物の見張り番をやらされている、とか思ったんだが」

クルー4「うわ……」

部長「不祥事を起こして左遷されて、問題があったら日本に帰るのが遅れるから、お前たちに帰れと必死に訴えた、とかじゃあないのか?」

クルー4「そう考えると、辻褄あいますね……」

クルー6「……マジでやばかったんすね、俺たち」

部長「ともかくだ、海軍からは二人の死因についてあとから連絡を貰うことになってるんだが……」

部長「実は二人とも一人暮らしで、身内の連絡先をこれから調べなきゃならないんだよ」

クルー4「あー……3は両親いないんじゃないんでしたっけ? で、5は家出してきたって言ってたような」

部長「誰かその辺詳しい奴はいないのか?」

クルー4「1さんは知ってると思いますけど……」
181 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/07/31(日) 23:36:16.03 ID:WpzCN6QYo

部長「じゃあ、あいつに届け物もあるし、訊きに行くか。4も横須賀まで付き合ってくれ」

クルー4「え……わ、わかりました、けど……」

部長「会いづらいだろうが我慢しろ。最後の義理だと思え」

クルー6「……届け物、って、差し入れでも持っていくんすか?」

クルー4「退職っつうか、馘の通知とかじゃないか? 持って行きづらいなあ」

部長「それもあるが、1の奥さんが離婚調停起こしててなあ。その内容証明が届いてるんだよ」

クルー4「」

クルー6「」

部長「裁判やりたいらしいんだが、1は当分海軍施設に軟禁だろ? だったらまず離婚届にサインさせろと言う話になってなあ」

部長「破かれてもいいようにと、弁護士から10枚ほど押し付けられてきた」

クルー4「ますます行きづらいですね……」

部長「だからこの話は一番最後……いや、クビの話が最後か」

クルー6「……あ、あの、離婚って、何が原因なんすか?」

部長「家庭内暴力だと。経済的DVも込みだそうだ」

クルー4「うっわ……」

クルー6「あの警棒、ファッションじゃなかったんすね……」

クルー4「……言うなよそういうこと! 今になって怖くなってきたぞ!? 洒落になんねーよ、会いたくねーー!!」
182 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/07/31(日) 23:40:04.98 ID:WpzCN6QYo
というわけで今回はここまで。

実は話を書いてる途中までは、4も6も全員助からないストーリーで書いていました。
どこでどう変わるかわからないですね。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/01(月) 12:18:58.47 ID:bmUzSuFB0
乙です。クルー1救えねぇ屑だなホント。
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/17(水) 14:11:27.00 ID:9oQOxs/p0
乙です。1さんえぇ……
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/19(金) 01:32:55.02 ID:Pwv93iz20
やっと追いつきました。これからも更新期待してます。
186 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:15:50.87 ID:gHWMKc/ro
>183-184
前スレの、牢屋で古鷹に諭されているシーンを見直してからだと、なお味わい深いですよね。


今回はムナクソ回ということで、
不愉快な表現が多々ありますので【閲覧注意】とさせていただきます。

続きです。
187 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:17:01.85 ID:gHWMKc/ro

 * ??? *

 ブロロロ…

クルー7「窓のない護送車で運ばれるなんて初めてですよ」

クルー1「ここ、どの辺なんだろうな……」

留提督「スマホも取り上げられたせいで、退屈すぎてしょうがないよ……」

クルー2「スマホどころじゃないっすよ。服も下着まで着替えさせられてますからね、まるで……」

クルー7「まるで?」

クルー2「言わせんな、バカ」ペシッ

クルー7「いてっ! じょ、冗談っすよ! つうか、海軍は俺たちをどうする気なんですかね」

クルー2「そんなの、俺が知りてえよ……」

 ガクン ゴウゥゥン…

クルー1「……? 停まった……のか?」

留提督「……エレベーターかな、これ。下に降りてる」

クルー1「下ですか……?」

 ガシャン! ギィ…

クルー2「ドアが開いた……!」
188 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:17:46.80 ID:gHWMKc/ro

クルー7「ここで降りろってことか……あ、見てください、あそこ! 誰かいますよ!」

クルー2「行くしか、ないですよね?」

クルー1「そうだな……」

留提督「……」

 *

眼鏡の男「ようこそ。お待ちしていましたよ」

クルー7「ち、ちわっす……!」

クルー2「なにのんきに挨拶してんだよ」

クルー7「や、つ、つい……」

クルー1「あなたは……?」

眼鏡の男「私はここで艦娘の研究をしております」

クルー2「研究?」

眼鏡の男「ええ。実はこちらに、新たに発見された艦娘がにおりまして」

眼鏡の男「その艦娘が人と触れ合ってどうなるかを、モニターさせていただきたいんですよ」

クルー7「新しい、艦娘……?」
189 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:19:02.47 ID:gHWMKc/ro

眼鏡の男「これまでどこの鎮守府にも着任していない艦娘が4体……ちょうどあなた方と同じ人数おりまして」

眼鏡の男「お好みの艦娘をひとりずつ選んでいただいて、しばらく一緒に生活して問題ないかを検証したいのです」

クルー1「……」

眼鏡の男「御存知の通り艦娘は女性ですので……合意の下であれば、まあ、『そういうこと』があっても、我々は関与致しません」

眼鏡の男「ただ、あくまでモニタリングが目的ですので、あなた方の行動のすべてを記録させていただくことになります」

眼鏡の男「それだけはご承知おきください」

留提督「そういう気分じゃないんだけどな……」ボソッ

眼鏡の男「勿論、この建物のなかで起こった出来事の一切は、外部に漏らしません。我々の秘密も多々ありますのでね」

眼鏡の男「今回、一緒に生活していただく艦娘はこちらの部屋におります。どうぞお入りください」

クルー1「……入らないって選択肢もあるのか?」

眼鏡の男「ええ、それも結構です。断るというのであれば、北極圏での活動を想定した戦闘訓練に参加していただくことになっておりますが」

クルー7「うげっ!? や、やめときましょうよ!? お、俺は行きますよ!」

留提督「どんな娘かは知らないけど……まあ、いいよ」スッ

クルー2「1さん……」

クルー1「行くだけ行ってみるか……」

 扉<ガチャッ バタン

眼鏡の男「……」
190 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:19:46.92 ID:gHWMKc/ro

 *

クルー2「なんだこの部屋? 入ったらまたドアだけしかないぞ?」

クルー7「見てくださいよ、さっき入ったドアのノブ、こっち側はついてないですよ!?」

クルー1「一方通行ってことか」

クルー2「行くしかないですね……って、なんだこりゃ。次の部屋もドアしかないぞ?」

クルー1「こっちのドアもノブはこちらだけか……」

クルー7「……ありゃ? 奥の部屋のドアノブが回らないっすよ!?」

クルー1「もしかして、こっちのドアを閉めないと開かない仕組みになってるんじゃないか?」パタン

留提督「ああ、本当だ。すごい厳重体制だね……」ガチャー

クルー7「どんだけいかつい艦娘がいるん……お、おおぉお!!」

クルー2「っ!!」

黒髪艦娘「ああ、やっと来てくださいましたね」

幼女艦娘「お待ちしていました……ふふふ」

青髪艦娘「ほーんと、待ってたんだから!」

金髪艦娘「ふぅん、この人たちが……」
191 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:20:32.38 ID:gHWMKc/ro

クルー1「……あ、こいつら……」

クルー2「やっべえ……あの金髪、モロ好みだ……!」

クルー7「あ、あの! こっちの小さい子は俺が受け持ちますから! いいっすよね!?」

クルー1「いいよいいよ、俺たちはそこまでロリ好みじゃねえし」

留提督「こっちの二人は決まりだね……」

クルー1「じゃあ、残りの二人は……どうします」

留提督「僕はどっちでもいいよ、好きな方を選びなよ」

黒髪艦娘「好き……?」キラッ

黒髪艦娘「いま、好きって言いました?」ズイッ!

留提督「え、あ……」

黒髪艦娘「私、あなたと一緒に行きます! いいですよね?」

留提督「え……まあ」

黒髪艦娘→迅鯨「良かった! 私、迅鯨って言います! これから末永くよろしくお願いしますね!」

留提督「え、あ、んん……」
192 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:21:16.82 ID:gHWMKc/ro

迅鯨「さっそく執務に取り掛かりましょう! さあ、こちらへ!」グイッ

留提督「ちょっ、ちょっと待っ……!」

クルー1「留さん!?」

金髪艦娘「それじゃ、私たちも行きましょうか?」

クルー2「!」

金髪艦娘→ホーネット「ああ、自己紹介、まだだったわね。私は、USS CV8 Hornet. 覚えておいて」

クルー2「は、はいっ!」

幼女艦娘→対馬「海防艦、対馬です。こちらへどうぞ……」ニィッ

クルー7「はーい!」

クルー1「お、おい!?」

青髪艦娘「ふふっ、やっぱり、こうなるのね」ニコッ

クルー1「え?」

青髪艦娘「大丈夫よ、心配しなくても。それより、私たちも行きましょ? ほら、そんな他人行儀にしなくたっていいんだから!」

クルー1「い、いや、君は一体……」
193 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:22:02.03 ID:gHWMKc/ro

青髪艦娘→ゴトランド「……え? もしかして……ゴトのこと、忘れちゃったの?」

クルー1「わ、忘れた!?」

ゴトランド「あなたは覚えてないの!? 私はあなたのこと、何でも知ってるのに……」

クルー1「お、覚えても何も初対面……」

ゴトランド「19XX年X月XX日、XXX市の出身で」

クルー1「!?」

ゴトランド「小学校はXX小でしょ? 中学はXXX中、陸上部だったんだよね?」

クルー1「!?!?」

ゴトランド「それからXXX高校からXX大学に行って、XXサークルでパフォーマーになって」

ゴトランド「そこからメディアに入って、いろんな企画に携わって……」

クルー1「な、何で知ってるんだ!?」

ゴトランド「もう、だからさっきから、ゴトはずっとあなたと一緒だったって言ってるじゃない!」
194 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:22:46.62 ID:gHWMKc/ro

ゴトランド「忘れたの? 幼稚園に入る前に、ゴトと遊んだこととか」

クルー1「!?」

ゴトランド「ほら、XX小学校のそばの公園で、私が転んだところに手を差し伸べてくれたでしょう?」

クルー1「!?!?」

クルー1(なんだ? 確かにそんなことがあったような……でも、あれはこいつだったか!?)

ゴトランド「忘れちゃってるなんて、寂しいな……でも、いいわ。これからたくさん思い出を作っていけばいいんだから!」

クルー1「い、いや、おかしいだろう!? 30年前のことをどうしてお前が……」

ゴトランド「だから、さっきから言ってるじゃない。ゴトはずーっと、あなたと一緒だった、って」

クルー1「!?!?」

ゴトランド「ほら、あなたがくれた指輪。ちゃあんと持ってるんだから」

クルー1「……え?」

ゴトランド「ほら、行きましょう? 私たちの愛の巣、執務室へ!」

クルー1「…………え?」
195 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:23:32.28 ID:gHWMKc/ro

 *

迅鯨「ふんふん〜♪」

留提督(……半ば強引に連れ去られてきたけど)キョロキョロ

留提督(通路の扉が全部、鉄でできてる。この施設、どう考えても怪しいよなあ……)

留提督「この建物、窓はないの?」

迅鯨「……ええ、ありません。ここは、新任の提督が訓練するための施設……」

迅鯨「私たち、艦娘の存在は、一般の人たちには知られてはいけないって言われてるんです」

迅鯨「だから窓もないし、海へ出ることもまだできないんです」

留提督(それはおかしいな……この前から艦娘もテレビに出るようになったのに。施設の中にいるせいで情報が古いのか?)

迅鯨「あ、ここです! ここが私たちのお部屋です!」

留提督(なんだろう……すげえ嫌な感じがする……部屋に入ったら、二度と出られない気が……!)

迅鯨「も、もう、このお部屋の鍵、硬いんだから……っ」ガキガキッ

留提督「……」キョロ

留提督(逃げるなら……)

 ガチャッ

迅鯨「開いた!」

留提督(今しかねえ!!)

 ダッ!

迅鯨「……え?」

迅鯨「……」

迅鯨「……」

迅鯨「……え?」ハイライトオフ
196 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:24:16.82 ID:gHWMKc/ro

 *

 タタタタッ…

留提督(あの女はヤバい! 勘でわかる! どこか……隠れる場所か、匿ってくれる人を探さないと!)

留提督(もと来た道を辿れば……って、誰かいる!?)

鹿島「……! だ、誰ですか!?」

留提督「うわっ!? し、静かにしろ!!」ガッ

鹿島「もがっ!?」

留提督「……ふう、見つかってないよな?」キョロキョロ

鹿島「……」プルプル

留提督「……あ、ご、ごめん! 俺、ちょっと追われてて! ……大声、出さないでくれる? この通り! お願いだから!」ペコペコ

鹿島「も……もう、今回だけですよ……!」ウルッ

留提督「あ、ありがとう……あの、きみ、鹿島だよね? 練習巡洋艦の」

鹿島「わ、私を知ってるんですか? 光栄です……!」

留提督(良かった……素直そうな艦娘だ。この子になら頼めるかも……)
197 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:25:03.74 ID:gHWMKc/ro

留提督「あの……いきなりで悪いんだけど、俺、この建物から出たいんだ。君は出口を知らないかな?」

鹿島「出口……ですか? え、ええと……一応、知ってます」

留提督「マジで!? 良かった……! ごめん、案内してもらえないかな? お願い、頼むよ!」ペコペコペコ

鹿島「え、ええ、わかりました」コクン

鹿島「それじゃ、ついてきてください」

留提督「ありがとう……!」

 スタスタ…

留提督(良かった……これで一安心かな)

留提督(それにしても)

鹿島「……」スタスタ…

留提督(改めて見ても、短いスカートだよなあ。お尻がチラチラ見えてんだけど)

留提督(さっきのか細い声も可愛かったなあ。あっちの鹿島みたいに気を張ってる感じじゃないし、細くて素直そうで……)ムラッ

留提督(ヤベ、ちょっと襲いたくなってきた。あーダメだダメだ、今はそれどころじゃない。早くこの変な建物から逃げなきゃ……)

鹿島「あの……」

留提督「な、なにかな!?」ギクッ
198 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:25:46.70 ID:gHWMKc/ro

鹿島「私、出口を知っているんですが、ちょっと出るのが大変なんです……それでも、大丈夫でしょうか」

留提督「え? ああ、ちょっとくらいなら大丈夫! 出られるんだよね?」

鹿島「はい……あ、ここです、このお部屋です。ついてきてください」チャッ

留提督(ここは木の扉なんだ……厳重な感じじゃないんだな)

 ガジャン!

留提督「え」フリムキ

留提督(……う、裏側が鉄の扉……? カモフラージュされてた!?)

 ガシッ

留提督「ぐえっ」エリクビツカマレ

鹿島「さあ、こっちですよ」ニタァ

留提督「!?」グイッ

留提督(さ、さっきまでと雰囲気が違う! こいつ……ネコ被ってやがった!?)ヨタヨタ

留提督(くそ、すげえ力で引っ張られる! どこに連れていかれるんだ!)

 鉄扉<ガチャ ギィィ…

留提督(う……なんだここ)
199 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:26:33.64 ID:gHWMKc/ro

部屋の隅に拘束されている男「う……うう……」

ベッド上の全裸の男「……た、たすけて……」

留提督「こ、ここは一体……?」

鹿島「あなたの望んだ出口ですよ? ここは、この施設で提督業を続けられなくなった人が最後に来るお部屋です」

鹿島「ここで私から最後の研修を受けていただいて、それが終わったらここから出られるようになっています」

留提督「け、研修……?」

鹿島「はい。こうやって……」ゴムテブクロソウチャク

ベッド上の全裸の男「や、やめ……ぎゃひいいい!」

留提督「……」

鹿島「あはははっ! もう一滴も出ないみたいですね! こんなに苦しそうにびくびくしてるのに!!」

留提督「……」

鹿島「おわかりいただけます? こんな風に、ア〇ルに指を突っ込まれただけで無様に果てられるよう、『教育』させていただいているんです」

留提督「……うそ、だろ……鹿島は、そんなこと、しないはずだ……!」

鹿島「信じる信じないはあなたの自由ですが、あなたがいま目の当たりにしている現実を否定しても、何も変わることはありませんよ?」
200 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:27:17.03 ID:gHWMKc/ro

留提督「っ……そ、そうだけど、なんで鹿島がこんなことを……!!」

鹿島「任務ですから」

留提督「……にん、む……!?」

鹿島「はい。善良な国民を守るために必要な、重要な任務を、私は仰せつかっているんです」

留提督「……な、何を言ってるんだ」

鹿島「そうですねえ……例えば果物を育てるとき、たくさん実がついていれば、その分だけ供給される栄養は分散されますよね?」

鹿島「栄養が分散すると、各々に十分な栄養が行き渡らず、実が大きく育たなかったり、弱って病気になりがちになったり……」

鹿島「結果的に量はたくさん採れても、質として立派なものが育つ確率は少なくなるでしょう?」

鹿島「逆に実がひとつしかついていなければ、栄養はそのひとつの実に集中することで、病気にもならない丈夫で立派な果実が期待できます」

鹿島「私は社会のために、その立派な果実が育つよう、余分な実を間引いて環境を整えるお手伝いをしているんです」

留提督「……間引く、って、人間相手にか!? なんだよそれ……!」

鹿島「なんだと言われましても……あなたがたがこの施設に連れてこられた原因を顧みれば、適切なのでは?」

留提督「……」

鹿島「あなた方は、自身を選ばれた人間だと勘違いし、同じ人間を自らの欲望のまま、穢し、貪り、辱め、食い散らかしてきたでしょう?」

鹿島「そんな個体が上位種として蔓延れば、人はじきに獣以下の存在になり下がり……やがて文明も腐って、種の存続すら危うくなる」
201 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:28:01.66 ID:gHWMKc/ro

鹿島「故に、私の『提督』さんは、人間の未来を案じた結果、こう判断しました」

鹿島「人間の社会を崩壊へ導く異物がこれ以上繁殖できないよう、野に放逐する前に生殖機能を奪う必要がある、と」

鹿島「私たち艦娘が守るのに相応しい人間だけが、子孫を残せば良い、と」

留提督「……っ」

鹿島「だから……」グリグリグリッ

ベッド上の全裸の男「ぎゃああああああ……!!!」

 ガクッ

鹿島「私がこうやって、摘果してあげているんです」ニコッ

留提督「……っ!」ジリッ

鹿島「うふふっ、屈辱ですよね? こんな小娘に、イきたくもないのにさんざんイかされて、性への恐怖を植え付けられるなんて」

鹿島「でも、この人に同情なんかしなくていいですよ。この人がここへ来る前にしてきたことを考えれば、当然の報いです」

鹿島「国会議員の息子という地位を傘に、何の罪もない善良な国民の平穏を脅かし、挙げ句、艦娘にも手を出そうとしたんですから」

留提督「な……?」

鹿島「知ってますよね? この人。あなたの、おともだち……で・す・よ?」ニタァ…

留提督「あ……っ!」ゾワワワッ!
202 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:28:46.59 ID:gHWMKc/ro

鹿島「ちなみに、私の研修が終わり次第、病院での検査、一般教養の座学などを経て、社会へ復帰することになっています」

鹿島「罪を犯した皆さんが心を入れ替え、いち国民としてこれ以上他者に迷惑をかけないように教育してあげるのが、私の務めです」

鹿島「そういうわけで、次の研修生の皆さんをこちらに控えてさせていたんですが……」チラッ

拘束されている男「ひ……!」

鹿島「そうですね、一刻も早くここから出たいというのであれば、予定を変更して、あなたから教育しても良さそうですね……!」

留提督「う……!!」

鹿島「さあ、怖がらないで。しっかり教育しなおして差し上げますから……うふふっ」

留提督「く、来るな! 来るなあああ!!」

 <ガゴォン!

留提督「!?」ビクッ

鹿島「……あら。見つかっちゃいましたね?」

留提督「み、見つかっ……?」

鹿島「あれは表の扉の音ですね」

 鉄扉<ガチャ ギィィ…

迅鯨「……見つけたぁ」

留提督「う、うわああああ!?」
203 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:29:31.60 ID:gHWMKc/ro

鹿島「うふふっ。見つかっちゃいましたね」

迅鯨「……あなたが、彼を誑かしたの?」ジロッ

鹿島「いいえ、誑かすなんて、そんなことは。私は、彼が出口を探していたので、私が知っている出口へ案内しただけですよ」

迅鯨「そう……『手』を出してはいないのね?」

鹿島「はい。もう少し遅ければ、その限りではありませんでしたけれど」

迅鯨「……」ギロリ

鹿島「うふふっ、怖い怖い」

留提督「……」

迅鯨「……」クルリ

留提督「ひっ」

迅鯨「……どうして、逃げるんですか?」

留提督「……」ガタガタ

迅鯨「好きって言ってくれたじゃないですか」

留提督「……っ」ゾワワッ
204 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:30:16.66 ID:gHWMKc/ro

鹿島「迅鯨さん? この手錠、使います?」ジャラッ

迅鯨「……要らないわ。そんなものがなくても、私たちは大丈夫」ニィッ

鹿島「そうでしたね。差し出がましいことをしました、ごめんなさい」ニコッ

迅鯨「さあ、行きましょ? 私たちの執務室に」ガシッ

留提督「う、うああ……た、たす、たすけ……」

鹿島「助けて? うふふっ、そうやって許しを請う女性を、あなたは何人手籠めにしたんでしたっけ?」ニタァ

留提督「……っ!」

鹿島「迅鯨さん。その人、絶対に手離さないでくださいね」

迅鯨「……ええ、勿論」ニタァ

留提督「い……嫌だ、助けて……助けてくれええ!!」

 鉄扉<ギィィ…ガジャン!

 <タスケテクレエエエエ!

 <ガジャン…!

鹿島「あーあ。行っちゃいましたね、楽しくお仕置きできるかと思ったのに」

鹿島「……さあて、それじゃあ皆さん! 教育を再開しましょうか!」クルリ

部屋にいる男たち「ひ、ひいいい!!」
205 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:31:01.55 ID:gHWMKc/ro

 * *

 鉄扉<ギィィ…

ホーネット「Com'in.」

クルー2「あ、ああ。ありがと……!?」

クルー2(なんだこの部屋……鉄アレイとかバーベルとか、めちゃくちゃ置いてあるぞ!?)

ホーネット「さて。改めて、私はホーネットよ。よろしくね」

クルー2「よ、よろしく……それにしても、すごい部屋だなあ?」

ホーネット「ここは私の部屋じゃないんだけれど、普段は……寝るとき以外はいつもここにいるわね」

クルー2「あ、ホーネットの部屋じゃないのか……ジムみたいなところか?」

ホーネット「ええ。もっとも、ここを利用しているのは私だけのようなものなのだけれど、ね」

クルー2(一緒に気持ちよく汗を流そう、って言ってたのはそういうことか……)

クルー2(いや、でも、一緒にトレーニングしていい雰囲気になれば……!)

ホーネット「そうね……それじゃさっそく、日課のトレーニングを始めようかしら。あなたもやるでしょう?」

クルー2「!?」

クルー2(冗談だろ? ウエイトリフティング用のウエイトを、フリスビーみたいにひょいひょいと……)
206 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:31:47.47 ID:gHWMKc/ro

ホーネット「どうしたの? ほら、早くこっちに来て……」

クルー2(おおお、セリフの色気がやべえ……どうせなら同じセリフをベッドの上で聞きたいぜ)

ホーネット「じゃあ、あなたはこれを使って」スッ

クルー2「え? これ、って、50キロおぉおおお!?」ズシーッ

クルー2「ちょっ、待っ……重、げほっ! と、取って! 取り除いてくれええ!!」ベシャア

ホーネット「え? この程度のウエイトに押し潰されるなんて……あなたちょっと、か弱すぎない?」ヒョイ

クルー2「げ、げほっ、げほっ……し、死ぬかと思った……」ゼーゼー

ホーネット「仕方ないわね。それじゃこっちをあげるわね」スッ

クルー2「って、ちょっと待っうぐおおおおお!?」ズシーッ ベチャ

ホーネット「えええ? 嘘でしょう? 40キロも耐えられないの?」

クルー2「こんなもんいきなり渡されても無理だ! 無理!! 殺す気か!? 俺を死なせる気か!!」

ホーネット「冗談はやめて。そんな弱さで海軍でやっていけると思ってるの? いくらなんでもひどすぎるわ」

クルー2「じょ、冗談はあんたのほうだろ!? 俺は海軍でやってくなんて一言も言ってないぞ!?」

ホーネット「……なんですって?」

クルー2「俺は軍人なんかにならねーよ! ここへも無理矢理連れてこられたんだぞ!?」
207 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:32:31.79 ID:gHWMKc/ro

クルー2「あんたも聞いてんだろ!? 俺たちは、新しい艦娘のモニターになれって言われただけなんだ!」

クルー2「それなのに、勝手に提督になったことにされて……なんでこんなバカみたいなトレーニングをさせられなきゃなんないんだ!」

ホーネット「……」

クルー2「そういうのは正式に海軍に入ったやつにやってくれよ! 俺は違うんだぞ!」

ホーネット「あなた、それ、本気で言ってるの……?」ザワッ

クルー2「ああ本気だよ!!」

ホーネット「……それじゃ、あなたは一体何者なの?」ザワザワザワッ

クルー2(な、なんだ!? ホーネットの髪の毛が逆立って……なんだこの息苦しさは?)

ホーネット「やっと、私の提督が見つかったと思ったのに……あなたは、この海を守ろうというつもりはないの?」ギンッ

クルー2「そ、そんなものは艦娘が自主的にやってくれよ! もういいだろ!? 早く家に帰してくれ!!」

ホーネット「……ふざけないで……!」

クルー2(な、なんだ……!? ホーネットがどんどん青ざめて……背後に、でかくて透明な魚のような……鯨!?)

ホーネット「そんな軟弱な人間に……私は……ワたシは……!!」

ホーネット「ア、アぁあア……二度ト、何者ニも負けナイタめニ、ワタシハ……アァァアアアア!!」ゴォッ!

クルー2「ひぐっ!?」ビクッ

クルー2(い、息ができない……!? なんなんだこの、体全体を押し潰すような圧力は……!)グラッ
208 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:33:20.22 ID:gHWMKc/ro

クルー2(……体が動かないし、うすら寒いのに汗が止まらない……重たい……!!)ベタッ

ホーネット?「……オ、マエ、ハ……」ジャキッ

 (土下座のような恰好でうずくまるクルー2の頭に艤装の銃口を突き付けるホーネット)

ホーネット?「答エロ……オマエハ、提督デハ、ナイノカ?」

クルー2(これ……嘘でもいいから、提督だって言わないと……俺、殺されるんじゃ……?)

クルー2「……っぐ、う……」

クルー2(駄目だ、息が……体が重くて顔も上げられない……)

ホーネット?「答エラレナイノナラ……」

クルー2(もう、駄目……だ……)


 ドパァン!!

 ビチャッ ビチャビチャッ


クルー2(……)

クルー2(……)

クルー2「あ、あれ……?」
209 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:34:01.82 ID:gHWMKc/ro

クルー2「体が……動く!?」

クルー2「な、なにがあったん……」ミアゲ

 (クルー2に銃口を向けたまま仁王立ちしているホーネットの頭の上半分が吹き飛んでいる)

クルー2「ひ!?」

 (力を失ったホーネットの手からライフルが落ちて、ガシャンと重い音を立てる)

 (それとともに、ホーネットの身躯がぐらりと傾いて)

クルー2「う……ぁ」

 ドチャァ! (クルー2のほうへ前のめりに倒れこむ)

クルー2「っっ!!」クチヲパクパク

クルー2「」

クルー2「」

クルー2「」

クルー2「」バタッ
210 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:34:46.46 ID:gHWMKc/ro

 * ??? モニタールーム *

 (気絶したクルー2の姿を映すモニターを、研究者風の男性3人が眺めている)

眼鏡の男「やれやれ。なかなかうまくいかないもんだな……」

白衣の男「いきなり頭がぶっ飛んだな。何か仕込んでたのか?」

眼鏡の男「対象に対する反抗心が一定以上になったときに、頭部を破壊するよう爆弾を埋め込んである」

スーツの男「なあ、あのサンプル俺にくれよ。深海化した艦娘のサンプルなんて貴重なもの、捨てるとか言ったりしないよな?」

眼鏡の男「好きにしてくれ。俺もあの個体がなんで深海化したのか、原因を知りたい」

スーツの男「っしゃあ! まあ任せとけ、こいつを足掛かりに一気に仕組みを解明してやるぜ」

白衣の男「それにしても、だ。まだ特別海域でも発見できていない、未知の艦娘の建造なんて、結構な成果じゃないか」

眼鏡の男「ガワができたってだけだ。先行して建造できても、生まれてくるのが頭のおかしい欠陥品じゃ意味がない」

眼鏡の男「連中にあてがった試作型も、これまでの失敗作を元にセッティングしたんだが、どうもな……」

白衣の男「金髪以外も問題があるのか?」

眼鏡の男「いろいろ設定を誤った。もともとの性格がわからないから、初期設定を誤ると暴走しやすくなるんだ」

スーツの男「そういうもんなのか?」
211 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:35:46.67 ID:gHWMKc/ro

眼鏡の男「例えばあの小さい艦娘だが、ああいうタイプはどこまで精神を大人にしてやるかの調整が難しい」

眼鏡の男「性格の設定を幼くし過ぎるということを聞かないし、大人っぽくすれば今回みたいにただのマセガキになる」

スーツの男「なるほど……」

眼鏡の男「黒髪のやつは、命令をきくように、設定を『提督』への好意に振ったんだが、どうも偏らせすぎたみたいで逆に危うくなった」

眼鏡の男「金髪のやつは、黒髪のやつの失敗をもとに、逆に好意を抑えて任務に備えさせるように設定したんだが、まああの有様だ」

白衣の男「……忠誠心を減らしすぎた、ってところか?」

眼鏡の男「そうだな。貴重なサンプルではあるが、外部からの『お客様』を怪我させるわけにもいかないし、爆殺処分もやむなし、と」

スーツの男「青い髪のやつは?」

眼鏡の男「あれは試験的に『提督』と認めた対象の脳波を読み取る能力を備えさせた実験作だ」

眼鏡の男「見た目が陰気臭そうな雰囲気の個体だったから、少し積極的にかかわらせようと思ったんだが、それも裏目になった」

スーツの男「なるほどねえ……個体の性格なんて見た目からなんてわかんねえしな。そういう話なら、俺たちだって失敗してただろうよ」

スーツの男「とはいえ……本当に良く見つけたもんだ。輸送ワ級が艦の魂を運搬してるとか、聞いただけだと意味が分からなかったぞ」

眼鏡の男「あのワ級が珍しいサンプルだったからな。これまでよりも慎重に調査したら、見たことのない分析結果が出てきてくれただけだ」

白衣の男「かつての軍艦の因子を海底からサルベージして、深海勢力として利用する……か」

スーツの男「因子というか、艦の魂というか、深海棲艦や艦娘を構成する核のようなものだった、と……」
212 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:36:32.05 ID:gHWMKc/ro

白衣の男「ワ級がその因子を運搬することで、海域的に無関係なはずの艦娘がそこに現れる、か。説としても面白いな」

眼鏡の男「とにかく、形を作るところまではできている。あとは中身……従順さだ」

眼鏡の男「無条件に人間に平伏して体を差し出すくらいのサンプルを作れないと、売り物にもならないしお前らの研究にも使えないだろう?」

白衣の男「まあな。そのレベルで協力的なモルモットができてくれれば、俺としてもありがたい」

スーツの男「その『設定』ってのは、今はどうしてるんだ?」

眼鏡の男「建造中の人口音声による刷り込みだ。今はそれである程度はいじれているが、これ以上何をすればいいのかわからなくてな」

眼鏡の男「艦娘を率いている現職の提督の音声も使ったりしているが、それでも、対象に適度な好意を抱くように、と言うのが難しい」

眼鏡の男「設定にしくじると、エゴの強すぎる個体ができることが多くて、使い物にならないんだ」

スーツの男「かといってその設定を控えめにすると、今度は対象に対して暴力をふるうようになるってか」

眼鏡の男「ああ、さっきの金髪みたいにな」

スーツの男「微調整が難しい、か。そいつはどうしたもんかな……」

白衣の男「……あまり、気が進まないんだが……」

眼鏡の男「なんだ?」

白衣の男「この前告発された、洗脳ツールがあっただろう。妖精の音声の波長を利用したとかいう……」

スーツの男「ああ、あったな、そういえば」
213 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:37:16.84 ID:gHWMKc/ro

白衣の男「妖精なんて目にも見えないもの、俺は信じたくはないんだが……そのツールが使った音を利用する、というのはどうだ」

眼鏡の男「……悪くないな。試してみる価値はありそうだ」

白衣の男「聞いたどころか見たこともない妖精の声なんて不確かなもの、個人的には勧めたくないが……」

スーツの男「だが艦娘を洗脳できてる実績はあるからな。俺も見たことがないから言うが、本当に妖精なんているのか?」

眼鏡の男「一部の人間には妖精の姿が見えるらしいぞ。血縁が海軍の関係者だったり、今の『提督』や関係者の子供だったり……」

眼鏡の男「もともとの艦船や、艦娘に関わることが多い人間の縁者に、その兆候が良く見られるそうだ」

スーツの男「そうなのか? だったら俺たちにも見えてくれて良さそうなもんだが」

白衣の男「やめてくれ。俺たちに妖精が見えたら、俺たちが研究材料にされちまう」

スーツの男「ハハッ、確かにそりゃ勘弁だ」

眼鏡の男「海軍はそういった人間を『提督』に据えているわけだが、妖精の声が聞こえるのは、さらにその中の一握り、稀有な存在と言われている」

眼鏡の男「どんなやつなのか、一度お目にかかってみたいものだが……」

白衣の男「ああ、できれば数体連れてきて欲しいな」

スーツの男「で……結局、妖精の存在は疑わしいが、否定はできない、ってことか?」

眼鏡の男「その認識でいいだろう。じゃなきゃ、この施設内に妖精感知センサーなんてものがついたりしていないからな」

白衣の男「どこまで役に立っているのか、わかったもんじゃないがな……」
214 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:38:01.64 ID:gHWMKc/ro

眼鏡の男「とにかく試してみるか。意外と良い方法かもしれない」

 ピピピッ

眼鏡の男「ん? ……何のメールだ?」

 ピッ

眼鏡の男「お、新しい余剰品の入荷の目途が立ったようだぞ」

スーツの男「おお、やっとか!」

白衣の男「この前送られてきた分もそろそろ在庫切れになりそうだったし、助かる。今度はどこのだ?」

眼鏡の男「呉で左遷される奴の艦娘がフリーになるそうだ。生憎と珍しい艦娘は引き抜かれてるが、数はそこそこ揃うらしい」

スーツの男「借金が原因じゃねえだろうな? この前の連中みたいに借金のかたがどうのこうのみたいな三文芝居見せられるのは御免だぞ」

眼鏡の男「今回は純粋に不始末らしいな。そこの提督が駆逐艦娘と駆け落ちを狙ってたらしい」

白衣の男「おやおや……幼女趣味とは業が深いな?」

眼鏡の男「どこの国も同じようなもんさ。日本はそれでもまだマシな方だが……」

スーツの男「へっ、そいつぁどうかねえ?」

 ポチッ

スピーカー『うふふ……こんなところを踏まれて、嬉しいんですか?』

スピーカー『ふおおおお!? ありがとうございますぅぅ!』
215 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:38:46.51 ID:gHWMKc/ro

スピーカー『危険ですね……こっちは、もっと危険……!』

スピーカー『あっ!? ああ、ああああぁぁぁあ!?』

スピーカー『危険がいっぱい……うふふふ……』

 ポチッ

スーツの男「ぶははは、駄目じゃねえか」

眼鏡の男「ふざけてるようならお前に艦娘は回さないぞ?」

スーツの男「んくく、すまんすまん……ひひっ」

白衣の男「ま、見捨てられた艦娘なら、扱いやすいだろう。観念もしてるだろうしな」

眼鏡の男「ただでさえ、解体やら近代化改修やらでなかなかこっちに艦娘を回してもらえないからな。有効利用しろよ?」

白衣の男「ああ。次にいつ来るか、わかった物じゃないしな」

スーツの男「そういや、お前の作ったあの失敗作、いつ処分するんだ? このまま使い続けるわけじゃないんだろ?」

眼鏡の男「ああ、だいたい一か月か二か月ってとこだな。今回の客もそのくらいで帰すらしい」

スーツの男「あの客ども、依存して離れられなくなったりしないか?」

眼鏡の男「解体して首だけにでもなった姿を見せてやりゃあ目も覚めるだろう」

眼鏡の男「所詮は作り物だ、作り物でいいって言うならダッチワイフと結婚すりゃあいい」

スーツの男「あの銀髪は?」

眼鏡の男「鹿島か? しばらくはあの役割で使い続けるつもりだ。珍しく俺の言うことなら何でも従う成功例だしな」

スーツの男「へえ……なんでもするのか」

眼鏡の男「ああ、豚の真似も喜んでやるくらいだ、死ねと言えば喜んで死ぬだろうな。ただ、俺以外の人間の指示はまったく受け付けん」

眼鏡の男「俺以外の命令も聞くような個体が量産できなきゃ意味がない。その開発ができるまでは、せいぜい有効利用させてもらうさ」
216 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:40:02.84 ID:gHWMKc/ro

 * J少将鎮守府 執務室 *

K中佐「……報告は以上になります」

J少将「ほう……新造した艦娘が深海棲艦になったと」

K中佐「はい」

J少将「では、人為的に艦娘を深海棲艦にすることも可能である、と言えるわけだな」

K中佐「はい。できるはずだ、と」

J少将「そうか。ようやく、光明が差したか」

K中佐「……」コク

 (海の見える窓の前に立ち、水平線を眺めるJ少将)

J少将「ふふ……ふふふふ!」ニヤリ…

J少将「この海は我々が護ってきたものだ。あんな小娘もどきや、化け物どもに、誰が譲ってやるものか……!」ググッ

K中佐「……! 閣下、失礼を……!」スッ

J少将「どうした」

K中佐「今、海に何者かが……!」

J少将「なんだと!? あれは……艦娘か? 勝手に海を出て、なにをしているか……!」

K中佐「至急確認致します」クルッ タッ

J少将「ん、任せる」

 チャッ パタン

J少将「……」

J少将「……」

J少将「見せしめが……要るか」ギリッ
217 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/08/27(土) 11:41:01.65 ID:gHWMKc/ro
と言うわけで今回はここまで。
笑いながらおぞましい話をする狂った悪役を描くのは楽しいですねえ!


J少将や研究者たちの話を覚えてない方は、
こちらのその2スレの374あたりからをご参照ください。
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529758293/374
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/28(日) 14:15:33.32 ID:cGtLK6c80
乙です。イカれ具合ハンパないねJ少将
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/31(水) 11:05:44.36 ID:JwobcyOg0
次墓場島来るの誰かなーと罠だらけと並べて読んでます
220 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:30:13.87 ID:IsSLY4A+o
今回はちょっと閑話休題的なお話です。

続きです。
221 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:31:02.63 ID:IsSLY4A+o

 * 2か月後 *

 * 墓場島 執務室 *

提督「……」カリカリ(←書類整理中)

千歳「……」カリカリ(←書類整理中)

敷波「……」(←ソファで読書中)

提督「んー……っ」ノビーッ

千歳「お疲れ様です、提督」

提督「少ないとはいえ、やっぱ書類仕事は体が固まっていけねえな……」ウデヲグルグル

千歳「提督は、執務中にお茶とかお召し上がりにならないんですか?」

提督「まあな。特に飲む習慣もないし、年中夏みたいな気候だし。どうせ氷で薄まるなら水でいいか、ってな」

千歳「それで水筒に氷水なんですか。せっかくの秘書艦ですし、張り切ってお茶くみしようと思ってたんですけれど」

提督「いや、別に気にしなくていいぞ?」

千歳「いえいえ、気にしますよ? この鎮守府の最高司令官であるあなたに気持ちよくお仕事をしていただいて……」

千歳「そして一番いいパフォーマンスを発揮できるようにサポートするのが、秘書のお仕事だと思っていますので」

千歳「あなたが艦娘のみんなに対して普段からしていることと同じです。そのくらいはサービスしますよ?」
222 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:31:47.41 ID:IsSLY4A+o

敷波「そうやって気を使われたり、お世話されたりするのが苦手だもんね、司令官って」

千歳「あら、そうなの?」

敷波「そうだよ。むしろ艦娘の誰かの役に立とうとしてる時のほうが、司令官はやる気出てる感じだしね」

敷波「あとは、例えば司令官は渋めのお茶とか好きなんだけど、それだと出してくれた人も同じお茶を飲むわけじゃない?」

敷波「でも、駆逐艦の子なんかは渋いお茶が好きな子、少ないでしょ? 自分の好みを押し付けたくなくて、遠慮してるんだよ」

千歳「あらあら。そうなんですか?」

提督「……まあ、そうだな……」

敷波「そういえば。司令官ってさ、食べ物は薄味が好きなのに、お茶やコーヒーは渋めとか濃いめが好きって、どうなの?」

千歳「うーん、食べ物は口の中に残るけど、飲み物はすぐに通っていくから、とかかしら?」

敷波「あ、それ、なんか納得できるかも」

千歳「それで加古に酔い潰されたんでしたよね? 薄まるのが嫌だからってストレートのウイスキー飲んで」ニヤリ

提督「……まあな……」ハァ…

千歳「どうせなら私ともご一緒してくださいませんか? 良かったら今晩にでも……」

提督「俺は下戸だっつってんだろ。また酔い潰されるのは御免だ」

千歳「もう、つれないですね。頑固なんだから」
223 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:32:32.05 ID:IsSLY4A+o

 扉<コンコン

電「失礼します! 司令官さん、長門さんたちから海域の突破に成功したとの連絡が入ったのです!!」ガチャー

提督「ん……! 全員無事か?」

電「はい! 古鷹さんが中破した以外は、皆さん損傷軽微と聞いているのです!」

提督「よし、若葉がいるから大丈夫だと思うが、油断せずに気を付けて帰ってくるよう伝えてくれ」

提督「それから明石と、厨房にも連絡頼むぞ。いい知らせだ、いいもの用意して待っててやらないとな」

電「了解なのです!」ビシッ

 タタッ パタン

提督「……そういや、新しい海域の突破も久し振りだな」

敷波「千歳さんが発破掛けてくれたおかげだね」

千歳「そうかしら? この鎮守府の艦娘のみんなの力なら、突破自体は私が言わなくてもできてたと思うけど?」

敷波「そこは司令官が過保護だからねー」

提督「過保護? どこがだよ」

敷波「過保護だよ? さっきのお茶の話とかもそうだし、普段から私たちに自由にやらせたいって感じがすっごいし」

敷波「出撃も最低限でいいって言うし、私たちってばこれ以上なく好きにやらせてるじゃない?」
224 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:33:16.56 ID:IsSLY4A+o

千歳「そうね、規律って意味では、ここって甘々のゆるゆるよね。提督、少し甘やかしすぎじゃありません?」

提督「……そうか?」

千歳「そうですよ? 海域の攻略をほったらかして、艦娘に好きにさせてる鎮守府なんて、そうそうありませんよ?」

千歳「波大尉もそういうところがあったから、ときどきつついてあげないといけなかったんですよね」

敷波「波大尉……って、千歳さんが前にいた鎮守府の司令官?」

千歳「そうそう。民間からいきなり連れてこられた人だから、軍隊のぐの字もわからない人だったのは仕方ないんだけれど……」

千歳「民間から来た人たちって、とにかく被害を出すのを嫌がるのよ。小破してもすぐ引き返して修理、みたいな運用する人が多くって」

千歳「だから、これくらいなら行けますよ! って感じの指針を示してあげて、少し強引なくらいに引っ張ってあげないと駄目だったのよね」

千歳「そういう意味では私たちのことをすごく心配してくれてたのよね〜。懐かしいなあ、ふふっ」

敷波「あー……そっか、この鎮守府、前に出て引っ張ってく感じの人が少ないんだ」

敷波「朧や吹雪はやる気あるほうだけど、意外と司令官の言うこと素直に聞いちゃうし」

敷波「長門さんとか龍驤さんとかも、やると決まったら勢い付くんだけど、意外と慎重派で腰が重たいんだよねー」

敷波「若葉とか五月雨は、どっちかというと海域の解放より自分の練度を上げるほうが優先度高いし。川内さんもそういうとこあるかな?」

敷波「あとは、最近入った五十鈴さんや那智さんもやる気出してるけど、もともと新しい海域へ挑める練度じゃないみたいだし」

敷波「今までいなかったんだよ、千歳さんみたいにここへ行きましょう! って言ってくれる人」

千歳「うーん……これはある意味、問題ね」
225 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:34:16.47 ID:IsSLY4A+o

敷波「まあ、司令官の考えもわかるんだけどさ。海域を順調に突破しすぎると、上に目を付けられるのが嫌だ、とか?」

敷波「ル級さんが知り合いだから、余所の海域とはいえ同じ顔の深海勢力を倒すのがちょっと気が引ける、とか」

千歳「そうなんですか?」

提督「……まあ、否定はしねえよ。けど、新しいチャレンジってのも必要ではあるからな」

提督「いつまでも一歩引いたところで見物しちゃいられねえ、とは思ってるさ」

提督「長門が慎重なのも、下手にうちの懐事情を知ってるせいで、試しに突っ込んで資材を無駄にしたくないと思ってるせいだな」

提督「足柄と隼鷹が経験があって協力的だし、行けそうだって確信が持てそうなら長門も遠慮しねえだろう」

提督「龍驤が気にかけてる艦載機の問題も、千歳と隼鷹のおかげで解消でき始めているし……」

提督「お前たちの後押しのおかげで、霧島や鳥海が新海域の攻略と解析にやる気を出してるのもいい傾向だ」

提督「なんだかんだで千歳たちが入ってくれたおかげで、艦隊に新しい活力が生まれたのは確かだ。そこはありがたいと思ってる」

千歳「あら、そうですか? ふふふ、そう言っていただけると光栄です」

提督「ただな、嬉しいことがあるとすぐに酒飲みに誘うとこは何とかなんねえのか」ハァ…

千歳「ん−、そこは私が可能な限り善処しますね」ウフフ

敷波(あ、これ絶対やらないやつだ)

 …タッタッタッ

足柄「入るわね!」ガチャー
226 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:35:01.30 ID:IsSLY4A+o

千歳「足柄!?」

足柄「みんな、これ見て、これ! この週刊誌の記事!」バサッ

千歳「どうしたの、ノックもなしにそんなに慌てて……」

提督「んん……なに? 『留父氏、芸能界を電撃引退』……?」

千歳「この人がどうかしたの?」

足柄「忘れたの!? 私たちと一緒に来てた芸能人の一日提督の留提督! あの人のお父さんよ!!」

千歳「えええ!? この人が!?」

提督「……なんか、見たことあるな。映画とかテレビのCMとかで見た記憶がある」

敷波「え、司令官、映画館とか行ったことあるの?」

提督「映画館の前のポスターに、こいつの顔がでかでかと出てたんだよ。別に入って見たわけじゃねえ」

敷波「なーんだ」

提督「けど、随分老けた感じがするな? 俺が最後に見たのが3年前としても、頭が真っ白じゃねえか」

千歳「そうね、少し前は真っ黒だったんだけど、染めてたのかしら」
227 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:36:01.97 ID:IsSLY4A+o

足柄「それよりも! 下のほうに留提督のことが書いてあるのよ! ほら、ここ!」

千歳「……はあ? 書類送検!? ……3年前に婦女暴行!?」

足柄「息子の不祥事に激怒して遺産相続はさせず、留父氏は所有する財産を海軍と病院に寄付だって」

提督「ふーん……ま、どうでもいいな」

足柄「いいの!?」

提督「もう関わることのねえ他人だからな。今更どうなろうと、どうでもいいさ」

足柄「うーん、提督にはさほど重要じゃなかったみたいね?」

提督「ま、あの馬鹿が二度と来ることがなさそうな状況だってことが分かったのはいいニュースだな。わざわざ悪いな」

足柄「ええ、とりあえず報告は以上よ! それじゃ、荷下ろしに戻るわね!」

 タタタタ…

提督「……こういう週刊誌、まともにこうやって見るのは初めてだな」ペラリ

千歳「お嫌いですか?」

提督「好きとは言えねえな。面白けりゃ何を書いてもいいって考えてる奴らが作った本だからなあ」

提督「中には事実も確かめずに、憶測か妄想書き散らしただけの自己満記事もあるっつうしな。そんなもんに金なんか出したかねえ」

千歳「ふむふむ、そうですか」
228 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:37:02.27 ID:IsSLY4A+o

敷波「……」ペラリペラリ

記事『特集 政治とカネ 艦娘の裏で蠢く巨額の政治資金の行方』

記事『……艦娘は「提督」と呼ばれる特定の能力を持つ人間によって指揮されており……』

記事『能力を持った提督を引き入れるため、多額の賄賂を支払ったと言われる■■議員は……』

敷波「……」ペラリ

記事『少女に迫る魔の手! 現代人が背負った屈折した心の闇』

記事『……先週、少女誘拐の容疑で逮捕された自称テレビカメラマンの〇〇容疑者は……』

記事『警察の調べに対し「小さい女の子に踏んで欲しかった」などと供述しており……』

敷波「……」ペラリ

記事『ついに脱いだ! 美しすぎる美少女アイドル△△のヌード解禁!!』

敷波「うへえ……」ペラリ

敷波「……こんなの、どこがおもしろいんだろ。不祥事とか犯罪とか嫌なことばっかじゃん」ポイ

千歳「政治家さんは結構気にするみたいよ? こういう本から不祥事を追及して、敵対組織の要職の幹部を攻撃したりね」

敷波「ふーん……」

提督「その手の雑誌は、人間の悪意を集めて煮詰めた毒みたいなもんだ。俺は読むのはおすすめしねえぞ」

千歳「世の中の動向を見るのには丁度いいかと思ったんですけど」

提督「事実だけ書いてありゃあいいんだよ、余計な味付けはいらねえんだ。そう言う点でも新聞の方がましだな」ハァ

敷波「そうだね……そもそも、司令官はこういうの嫌いだもんね」ヌードページペラリ

提督「ああ、鼻くそも出ねえな」

千歳「さすがに二人とも達観しすぎじゃないかしら」タラリ
229 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:37:46.28 ID:IsSLY4A+o

 * 提督の私室 *

初雪「……」スヤァ…

 扉<キィ…

加古「んぉ? 先客がいる」

 タイマー<ピロピロピーー ピロピロピーー

加古「うおっ」

初雪「……んう……」ムクッ

加古「あー、びっくりした。目覚まし付けてたの?」

初雪「ん……おはようございます……それ、なに?」メヲコスリコスリ

加古「あー、これ? 抱き枕だよ〜」

加古「この抱き枕と一緒に、ここにあるベッドのシングルサイズを買ってもらったんだけど、こっちだけ先に届いちゃってさあ」

加古「だから抱き枕の使い心地を、こっちのベッドで試そうと思ってさ……ふわあぁ……お邪魔していい?」

初雪「うん……それじゃ、私は戻る……ごゆっくり」

加古「うん、ありがとねー。おやすみぃぃ……」ゴローン

加古「……すぴー……」

初雪(寝るの早すぎ……)タラリ
230 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:38:31.73 ID:IsSLY4A+o

 * 入渠ドック *

利根「……すまんな、明石」

明石「いえいえ。これはまあ仕方ないことですよ」チラリ

利根「うむ……」チラリ

隣の医務室で鼻に詰め物されてベッドに寝かされている筑摩「うふ、うふふふ……」

明石「で? 利根さん今度は何をしたんです?」

利根「それが……吾輩がちょっとよろけたところを、筑摩が支えようとして、その結果勢いよく抱き着いてしまっただけである」

明石「それだけですか?」

利根「うむ。それで筑摩が鼻血を噴き出して気絶したんじゃ。出会った時の筑摩からは想像できん有様で、正直戸惑っておる」

明石「ですねえ……利根さんに対する免疫力が、どうしようもないくらいに駄々下がりって感じですね」タラリ

明石「そういう利根さんは大丈夫ですか? 筑摩さんから、怪しい視線を感じたりしてません?」

利根「むう……時折、筑摩からそういう視線を感じることはあるが……なんというか、吾輩が怖いと感じる視線ではないな」

利根「吾輩をどうにかしたい、という目つきから、何かされるのを待ち望んでいるような目つきになったというか……」

利根「ただ、吾輩と向き合うときには、そういう目つきが消えておる。相当に我慢してくれているようじゃな……」
231 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:39:16.48 ID:IsSLY4A+o

明石「ということは、その我慢している影響で、利根さんの接触が嬉しくて仕方ない、という感じなんですかね?」

利根「かもしれんなあ……なんだか筑摩に無理を強いているようで、申し訳がないな」

明石「でも、それを許してしまうと今度は利根さんがおかしくなっちゃうんですから。自衛のためにも仕方ないことですよ」

明石「筑摩さんのせいで利根さんが壊れるのも、逆に筑摩さんのせいで利根さんが壊れるのも、みんな望んでいないでしょうからね」

利根「うむ……」

明石「それからついでにのお話なんですが。利根さんの火傷跡の治療、これ以上はなかなか難しくて……」

利根「以前話していた、特殊メイクみたいになる、という話だったか」

明石「そうですねえ。利根さんの場合、患部が、その……アソコとかじゃないですか。そういうもので全部覆い隠すわけにもいかないんですよ」

利根「……実は、吾輩も今、とある治療法を試しておる。生活習慣のようなものなのじゃが……」

明石「えっ!?」

利根「これをやることによって自然治癒を促すという、ごくごく自然的な方法を試しておるんじゃ」

明石「そんな治療法が!? い、いったいどんな治療法なんですか!?」

利根「今、吾輩は下帯を履いておらんのだ」

明石「」
232 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:40:01.68 ID:IsSLY4A+o

利根「胸のさらしは外しておらんが、あの火傷の跡を風にさらすことで免疫力を高められまいかと思って、数日前から試しておる」

明石「」

利根「腹も圧迫されんし、思いのほか快適での。当面はこのままで過ごそうと思っておる」

明石「」

利根「明石?」

明石「……下帯、って……」

利根「俗に言う、褌のことであるな」

明石「つまり、はいてない、と」

利根「うむ」

明石「……いえ、いいんですけどね……?」アタマオサエ

利根「ちなみに先日、提督にも見てもらったが、以前よりだいぶ良くなったと言ってくれた。これも明石のおかげである」

明石「提督に見せたんですか」

利根「うむ。これまでも何度か見せておる」

明石「何度か?」

利根「そのたびに眉間にしわを寄せてはいたが、今回は割と良い反応が……む? どうしたんじゃ」

明石「……いえ、いいんですけどねぇ……?」アタマカカエ
233 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:40:46.28 ID:IsSLY4A+o

 * 墓場島 埠頭 *

武蔵「……」ボロッ

長門「ル級、お前、また強くなったか?」

ル級「ソウ思ウ? オ前タチトハ何度モ演習シテイルカラネ。動キモ良クナッテ当然ダト思ウケド」フフッ

那智「謙遜かもしれないが、深海の戦艦はあんなに動けるのか? これでは砲撃を当てられる自信がないぞ」

長門「いや、あの動きができるのは、ここのル級だけだろう。外海の戦艦はもっと動きが緩慢というか、雑だからな」

鳥海「そうですね。私の計算外の動きをしていました」

ル級「伊達ニ長生キシテイナイカラネ」

武蔵「……ん? というと、お前たちは基本的に短命なのか?」

ル級「ソウネエ。私ガ知ル限リハ、発生シテ、スグ沈メラレル艦ノ方ガ多イカモシレナイ」

ル級「遠方ノ海ニハ、モット長生キシテイル艦ガイルト聞イテイルケレド。例エバ、オ前タチガ『鬼』ヤ『姫』ト呼ヨブ艦タチトカネ」

那智「そいつらはこちらに攻めてこないのか?」

ル級「ソレハ聞イタコトガナイ。深海棲艦ハ、自分ノ縄張リヲ大事ニスルカラ、塒ヲ放棄シテ移動スルナンテ、ナカナカナイハズヨ?」
234 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:41:31.71 ID:IsSLY4A+o

鳥海「なるほど……ということは、鎮守府近海の深海棲艦が弱いのは、私たちが見つけ次第駆逐しているからかもしれませんね」

鳥海「そうなると、仮に近海であっても戦闘せずに放置した場合、力を蓄えて強くなる可能性が……」

ル級「戦ワナイデ強クナル、トイウノハ、チョット疑ワシイト思ウケド?」

鳥海「そ、そうですか? 遠方の海域の深海棲艦が強い説明になるかと思ったんですが……」

那智「人の手が入りにくいせい……だとしても、それだと戦う回数がそもそも少ないという話になるか。説明しづらいな」

長門「ル級はもともと東オリョール海にいたんだったな?」

ル級「ソウネ」

長門「北方や南方には姫級がいると聞いているが、そちらに行ったことがないとすれば、ル級が知らないのも無理はないか」

武蔵「構わんさ。我々が力をつけて見に行けばいい話だ、まさかル級に見て来いと言うわけにもいくまいよ」

鳥海「そうですね。演習相手にまでなっていただける深海棲艦さんに、そのようなお願いはいささか厚かましいかと」

那智「そうだな……」

ル級(別ニ行ッテモイイケドネ。興味アルシ)
235 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/09(金) 21:42:22.91 ID:IsSLY4A+o
今回はここまで。

ちょっとこちらの続きが書けてないので、
次の投下までは少し時間がかかりそうです。
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/11(日) 11:46:48.17 ID:W40hLX/40
乙です。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/10/07(金) 05:47:32.61 ID:oITLXswV0
お待ちしてます。
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/07(金) 19:17:19.05 ID:TLpEPjzC0
sageてやるぜ
239 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 19:57:33.52 ID:KkxFXQkAo
やっと書けた!(陽炎並感想)

続きです。
240 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 19:58:17.83 ID:KkxFXQkAo

 * 別のある日 *

 * 休憩室 *

雲龍「……」

黒潮「……んふっ」

龍驤「……ぷくくっ」

 DVDプレーヤー<ゴメンクサイ! コラマタクサイ!

黒潮「く、くくっ」

龍驤「ふひっ」

 DVDプレーヤー<ワシャトマルトシヌンジャアア!

黒潮「ふひー!」

龍驤「うはははは!」

雲龍「……?」

吹雪「あれっ、今日はDVD鑑賞会ですか?」コヅツミカカエ

雲龍「ええ。笑い声で少しうるさくなるだろうから、このお部屋を借りてたの」
241 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 19:59:01.98 ID:KkxFXQkAo

雲龍「だけど、私にはちょっと意味が分からなくて」クビカシゲ

吹雪「お笑いのツボが違うんですかね……」

雲龍「でも、龍驤たちは楽しめてるみたいだし」ニコ

雲龍「……飲み物、持ってこようかしら」スクッ

吹雪「……」チラッ

 *

雲龍「……あら?」

 DVDプレーヤー<モガケバモガクホドクイコンデイクンヤー!

吹雪「ぷふーっ!」

黒潮「あっはっはっは!」

龍驤「ひー、ひー……!」

雲龍「吹雪はわかるのね。羨ましいわ」フフッ

 小包<オイテキボリデス

雲龍「……これ、大淀宛てね。代わりに持っていくわね」ヒョイ
242 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 19:59:47.80 ID:KkxFXQkAo

 * 通信室 *

大淀「届けてくださったんですか、わざわざありがとうございます」

雲龍「吹雪が持ってきたんだけど、途中で用事ができちゃったから」ニコ

大淀「そうでしたか。確か彼女も非番でしたね、あとでお礼を言っておきますね」ガサガサ

雲龍「……本を頼んだの?」

大淀「はい、有名棋士の指南本です。L大尉がこちらに来ることができなくなったと仰っていましたが、私はリベンジするつもりですので!」フンス!

 ドタドタドタ…

雲龍「あら?」

吹雪「ごめんなさああああい!!」キキーッ

大淀「吹雪さん? どうしたんですか?」

吹雪「ごめんなさい大淀さん! 私、大淀さん宛ての小包を……」

雲龍「それなら私が届けたわ」

吹雪「ズコー!?」ズデーン

大淀「!?」

雲龍「吹雪? 大丈夫?」
243 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:00:31.87 ID:KkxFXQkAo

吹雪「あ、いえ、大丈夫です! じゃなくって! 雲龍さんすみません! 本当が私が頼まれてたのに……!」

雲龍「構わないわ。面白かったんでしょう? あのDVD」

吹雪「は、はい……!」

雲龍「非番なのはお互い様だから。次からは、用事が済んでから、一緒に見てあげて」

吹雪「はいっ!! すみませんでした!!」ペコッ

 タタタ…

雲龍「……うーん」クビカシゲ

大淀「どうしました?」

雲龍「吹雪が『図工』って言って倒れてたでしょ。あれはなにかと思って」

大淀「あ、ああ……あの、雲龍さん? さっき、吹雪さんがDVDを見てたって言いましたけど」

大淀「もしかして、龍驤さんが買ったお笑いのDVDですか?」

雲龍「ええ、そうよ。龍驤と黒潮が見てたの」

大淀「ああ……それであのリアクションですか」

雲龍「?」
244 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:01:17.23 ID:KkxFXQkAo

 * また別の日 *

 * 執務室 *

伊8「……」ムスッ

提督「……」

龍驤「伊8はどないしたん?」

伊8「提督が、はっちゃんと一緒に温泉に入ってくれません」

龍驤「いや、それは普通やったらあかんやつやん」

雲龍「如月たちがいたら大変なことになってるわね」

提督「はっちゃんには、体にタオルを巻けって言ってんだけどな」

龍驤「巻いてへんのかい! もっとあかんやんか!」

雲龍「大胆」

伊8「タオルを湯船に入れてはいけません」

龍驤「いや、さすがに提督と入るんなら巻いときや? ちゃんと隠さんと」

雲龍「そうね。女性同士ならともかく、男性と入るとしたらそのほうがいいんじゃないかしら」
245 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:02:02.50 ID:KkxFXQkAo

伊8「提督とは何かあってもいいんです」

龍驤「……ああ、むしろそういうのを望んでるんか」

雲龍「それならタオルは無粋ね」

提督「お前ら速攻で掌返してんじゃねえよ」タラリ

伊8「そういうわけですから、提督ははっちゃんとお風呂に入ってください」

提督「……これまで3回くらい入っただろ……」

伊8「全然足りません。最上さんと三隈さんなんか、この短い間に温泉に10回くらい入ってます」

龍驤「え、そんなに入ってるんか」

提督「あいつらは仲が良いからいいだろ……そもそも最上が温泉好きだしな」

龍驤「あの温泉、最上たちが訓練中に見つけたんやっけ?」

提督「ああ。航空巡洋艦になって水上機が運用できるようになったから、って、飛ばしまくってたら見つけたって」

提督「だから作ったはっちゃんを呼び出して、他の艦娘が使っていいかを相談したわけだが……」

伊8「はっちゃん、あんなに大人気になるなんて思ってませんでした」

雲龍「ああいうプライベート空間って、大事よ」
246 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:02:47.11 ID:KkxFXQkAo

龍驤「ある意味、この島唯一の観光地みたいなもんやしなあ」

雲龍「私たちもありがたく使わせてもらってるけど、いい場所よ。提督、歓迎されてるんだから、もっと使ってあげたら?」

提督「いい場所なのはわかっちゃいるけどよ……一人で入りたいんだよ、俺は。鳥海だって一人で長風呂してるって聞いたぞ」

龍驤「そこは鳥海関係ないよ。作った当人の希望も聞いてあげなきゃあかんよ?」

提督「……」アタマガリガリ

伊8「じゃあ、今度提督が入るときにお邪魔しますね」

提督「……しゃあねえな……龍驤、雲龍、この話は他言すんなよ」

龍驤「んふふ、わかってるって」

雲龍「面倒なことになりそうだものね」ウフフ

 扉<コンコン

陸奥「提督、入るわね」

提督「おう」

陸奥「ねえ、龍驤、雲龍が……って、あら、ここにいたの?」チャッ

雲龍「何かあったの?」
247 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:03:32.19 ID:KkxFXQkAo

陸奥「工廠で明石が開発をしたいから手伝って、って。千歳や隼鷹も来てるから、いよいよ新しい艦載機の開発に本腰を入れるみたいよ」

龍驤「おおう、準備できたんか!」

陸奥「それから、伊8もいるなら丁度いいわ。千歳が甲標的の話をしたいんだって」

伊8「!」

龍驤「そういうことなら工廠に行こか。善は急げや!」

陸奥「ええ、お願いね」

雲龍「はっちゃんも、行きましょ?」

伊8「はい。それじゃ提督、さっきの話、よろしくお願いしますね?」

提督「わかったわかった」

 扉<ガチャ パタン

陸奥「……」

提督「……」

陸奥「……さっきの話って?」

提督「あいつが露天風呂作ったのは知ってるよな? 俺に一緒に入れとよ。他言すんなよ?」

陸奥「ふふっ。相変わらず、好かれてるのね」

提督「いいんだか悪いんだか」
248 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:04:17.07 ID:KkxFXQkAo

陸奥「悪いことではないと思うけど?」

提督「だといいがな……ところで、陸奥もだいぶマシになったように見えるが。気分は大丈夫か?」

陸奥「ええ。おかげさまで」

提督「だったらいいがな。くれぐれも無理はすんなよ?」

陸奥「ええ、わかってるわ」スッ

 (陸奥が提督に近づいて)

陸奥「このくらいでも……大丈夫よ」

提督「……マジで無理すんなよ? 震えてんじゃねえか」

陸奥「……」

提督「……また、背中向いたほうがいいか?」クルッ

陸奥「……」

提督「……」

陸奥「あなたが、言うほどでも……ないわよ」ス…

提督「!?」

 (陸奥が提督の背中に抱き着いて、後ろから手を回す)
249 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:05:02.54 ID:KkxFXQkAo

提督「む、陸奥……!?」

陸奥「何を、驚いてるのよ……」

提督「そりゃ驚くだろ……この前まで俺にだって怯えてたんだぞ」

陸奥「……どきどきしてる? 背中から、心音が聞こえてくるんだけど」

提督「まあ、な……」

陸奥「……そう……」ギュ…

提督「……」

陸奥「……」

提督「……」

陸奥「……」

提督「……陸奥?」

陸奥「ん……なに?」

提督「ああ……何も言わないから、どうしたのか気になっただけだ」

陸奥「照れてるの?」
250 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:05:48.87 ID:KkxFXQkAo

提督「……潮が俺の背中に寄りかかって、そのまま寝ちまったときがあったんだ」

陸奥「そうなの?」

提督「お前がそうなることはないと思うが……」

陸奥「そう……ね」

 扉<コンコン

提督「!」

陸奥「!」

朝雲「失礼しま……って、陸奥さん!?」ガチャ

陸奥「あら。どうしたの朝雲」

朝雲「それはこっちのセリフですよ!? 背中から抱きついたりしてるんだもの!」ドキドキ

陸奥「あらあら。ちょっと提督をからかってただけよ、うふふっ」パッ

朝雲「もー、陸奥さんったら……」

提督「……やれやれだな。朝雲はどうしたんだ」

朝雲「さっき、五月雨が書類持って畑に来たんだけど、ホースに足を引っかけて転んじゃったの! そのときにおでこを打ったらしくて」

提督「は? それで五月雨はどうしたんだ?」
251 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:06:32.26 ID:KkxFXQkAo

朝雲「大丈夫だとか言ってたけど、武蔵さんがドックに運んで行ったわ。それと、ホースの取り付け口の金具が壊れたみたいなの」

朝雲「水を出すと蛇口からホースが外れちゃって、水かけできなくて困ってるのよ」

提督「その辺の部品も明石が管理してたはずだな。俺もドックに行こう、朝雲も一緒に来てくれ」

朝雲「わかったわ!」

提督「陸奥、悪いが留守番頼めるか?」

陸奥「え? ええ、いいわよ」

提督「助かる。行くぞ、朝雲」

朝雲「ええ!」

 扉<パタン

陸奥「……」

陸奥(朝雲には、ばれなかったみたいね……)ホッ

陸奥「……」

陸奥(私……提督に……)

陸奥「……」カァァ…

陸奥(私、何をしてるのかしら……)ミミマデマッカ
252 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:07:31.93 ID:KkxFXQkAo

 * 工廠 *

五月雨「だ、大丈夫ですってば! 大袈裟です!」

武蔵「大袈裟なものか!? すごい音がしたぞ!」

明石「五月雨ちゃん、また受け身取らなかったんでしょ? ほら、おでこ出して!」

五月雨「ううう……」

明石「海の上ならいざ知らず、陸で転んで手もつかないとか、危ないにも程があるでしょ!?」

五月雨「書類で手が塞がってたんですよ……」

武蔵「書類なんぞよりお前の体のほうが大事だ、馬鹿者」

提督「おう、説教食らってるか。いい気味だ」

五月雨「提督!?」

提督「お前、自分より仕事を大事にするきらいがあるからな。特に秘書艦やってるときが一番そうなってる」

提督「書類なんて読めりゃいいんだよ、読めりゃ。武蔵の言う通り、お前の替えはねえんだから、そっちを大事にしろ」

五月雨「うう……」

提督「五月雨は任せるとして、明石、ホースの取り付け口の金具の替えはあるか?」

武蔵「それなら私が把握している」

提督「じゃあ、それだけもらって畑に行くか。五月雨はちゃんと治してもらえ、今日はもう仕事もねえしな」

五月雨「す、すみません提督……」シュン…

提督「面倒な仕事はお前が朝一に片付けてくれたからな。あとはまるっと休憩に充てて、のんびりしてな」

朝雲「ってことは、あとはいつもの散歩だけ?」

提督「まあ、そうだな。畑に行ったら、そこから丘に……いや、一旦執務室に戻るか。陸奥に留守を任せたまんまだしな」
253 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:08:16.98 ID:KkxFXQkAo

 * ビニールハウス内 *

 (ビニールハウス内の一角にビーチチェアとパラソルのセットが置いてある)

提督「……」

初雪「……」

提督「いつ来ても、ここにこれがあるのは変な感じだな……?」クビカシゲ

初雪「そう……?」クビカシゲ

提督「いや、景観的に違和感があるだけで、用途としてはベンチとかより、これのほうが適当なんだよな」

初雪「うん。横になりたいし」

山雲「司令さ〜ん?」トテテッ

提督「よう、山雲、そっちのハウスの水は大丈夫そうか?」

山雲「は〜い、大丈夫ですぅ〜」

提督「こっちのハウスも問題なしだ。壊れたのが取り付け金具だけでよかったぜ」

初雪「うん……広くしたのに、また、じょうろ使うことになると、大変……」

山雲「あー、そうだ、司令さ〜ん? ちょおっと、こっちで見てほしいものがあるんですけど〜」テマネキ

提督「なんだ?」
254 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:09:02.37 ID:KkxFXQkAo

山雲「こっち、こっちですう〜」

提督「……こっちって、なにかあったか?」スタスタ

山雲「あのですねえ〜、耳を貸してもらえます〜?」ヒソヒソ

提督「なんだ、お前の要件はハウス絡みじゃねえのか……」シャガミ

山雲「そうなんです〜。それでですねぇ〜……」

山雲「初雪ちゃんは〜、どうして、胸にさらしを巻いてるんですか〜……?」ハイライトオフ

提督「……」

山雲「……」ヌタァ…

提督「お前、また胸のでかい奴を目の敵にしてんのかよ……どうやったら気付けられるんだよ、ったく」ハァ…

山雲「しゃがんだときに〜、膝が胸にあたって、盛り上がっていましたから〜。ちなみに、気付いたのは最近ですよ〜?」ニコァァ…

提督「その濁った眼をしたまま、にこやかに笑うのはやめろ」アタマオサエ

山雲「えへへぇ〜、ごめんなさ〜い」ニタァァ…

提督「……初雪がそれを隠してる理由は、そういう悪目立ちする部分を変な目で見られたくないからだって聞いてる」

提督「吹雪型で胸がやたら大きい個体はいないらしい。ほかの奴と違うからってからかわれたくもないし、特別扱いも仲間外れも嫌なんだと」
255 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:09:47.03 ID:KkxFXQkAo

提督「だから隠して目立たなくして、波風立たないようにおとなしくしてんだよ、あいつは。つっても、すでに一回騒ぎが起きてんだけどな」

山雲「ふぅ〜ん……」

提督「端的に言えばそういうことだ。あいつも平穏を望んでんだから、これ以上、騒ぎになりそうなことはすんなよ?」

山雲「わかってます〜。だから、山雲も〜、最初に司令さんに訊いたんですよ〜?」ハイライトオン

提督「……」

山雲「なるほど〜、そういうことですかぁ〜」ウンウン

提督「あいつが出撃したがらねえのも、多分そのせいだな。中破して服が破けたら、ほかの奴にばれちまうし」

山雲「ん〜……でも、遠征なら〜……」

提督「遠征はもっと嫌がるんだよ。洗脳ツールを装備させられて、眠る間もなくずっと遠征し続けてたせいでな」

山雲「え、えー……!?」

提督「そうか、お前はその話は聞いてないのか。まあ、今は起きそうもない話だし、しょうがねえか」

提督「ともかく、初雪は出撃も遠征も嫌だから、せめてこっちで役に立とうって思ってくれてるって感じなんだろうなと俺は思ってんだ」

提督「練度は高いが、戦力として期待して欲しくないっつう、面倒臭い立ち位置だが……ま、あまり悪く思わないでくれ」

山雲「そ、そうですねぇ〜……」
256 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:10:34.65 ID:KkxFXQkAo

初雪「なに? どうかした……?」ヌッ

山雲「!」ギクッ

提督「ん? ああ、ちょっと話の流れで、初雪の練度が不自然に高いのがなんでか、って訊かれてたんだ」

山雲「!」

初雪「……あー……」

提督「洗脳ツールの話は、しても良かっただろ?」

初雪「うん……話してくれて、いいです……もう、寝ないで働くのは、嫌だし」

山雲「あ……それで、ハウスの中に、すぐ横になれるよう、ビーチチェアがあるのねぇ〜……」

初雪「おぉ……わかって、もらえた……!!」パァッ

提督「まあ、布団のありがたみは俺もよくわかってるつもりだしな」

初雪「睡眠、大事……!」フンス!

山雲「……ねえねえ、司令さ〜ん? 今の話聞いてて思ったんだけど〜……」ヒソヒソ

山雲「なんだか〜、この島にこたつがあったら〜、初雪ちゃん、ず〜っと出てこなくなりそうじゃな〜い〜?」

提督「この島に冬が来なくて、良かったのかもな……ただでさえ働かざる者食うべからず的な空気もあるし」

初雪「?」クビカシゲ
257 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:11:16.92 ID:KkxFXQkAo

 * 執務室 *

陸奥「あら、おかえりなさい」

那珂「提督さん、やっと戻ってきた! さっきまでどこにいたの!?」

提督「工廠回って畑に行ってたんだが、どうかしたのか?」

那珂「んむー……提督さん、ここへ来る少し前に、怒ったり機嫌が悪くなったりした?」

提督「いいや? 俺は特に怒ったりはしてねえが……」

那珂「そう? んじゃ、どこからだろう……」

提督「とりあえず何の話かわかんねえぞ。何かあったのか?」

那珂「あ、ごめんなさい。以前、那珂ちゃんは、提督から深海棲艦の気配がする、って言ってましたよね?」

那珂「それと似たような気配を感じたんで、提督さんになにかあったのかと思って来てみたんです!」

提督「……あー……」

陸奥「? 何か心当たりがある顔ね?」

提督「それ、俺じゃねえや。山雲だ」

陸奥「!?」

那珂「へっ!? 山雲ちゃん!?」
258 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:12:01.91 ID:KkxFXQkAo

提督「そうだ。お前ら、あいつがなんで海で倒れてたかは知ってるよな?」

陸奥「ええ、敵の空母と接触事故を起こしたって……」

那珂「そ、そのせいなの!? 山雲ちゃんがここに運ばれてきたときは、そんな気配は感じなかったんだけど!?」

提督「そりゃ多分山雲が気絶してたせいだな。元気になってから、ここで少し雑談したときに……あー……」

陸奥「……」

那珂「……」

提督「雑談したときに……その、山雲が、落ち込んだっつうか、思い悩んでたっつうか……」ウーン

提督「まあ、なんだ。ちょっとよろしくねえ精神状態になって、そんときも深海棲艦っぽい雰囲気が山雲から出てたんだ」

陸奥「今の間はなんだったの」

提督「……それは訊くな」アタマオサエ

那珂「山雲ちゃんも、そうなんだ……」

提督「そうなったのも、空母棲姫に衝突事故をもらったせいだと俺は見てるんだ。ル級にも聞いたが、多分そうなんじゃないかって見解だった」

提督「明石にもほかに影響がないか調査はしてもらってるものの、特にこれといった異常もないから騒ぎ立てはしてなかったんだが」

提督「那珂は今日は装備の点検で埠頭にいたんだったよな?」

那珂「はいっ! 衣装チェックしてました!」
259 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:12:47.01 ID:KkxFXQkAo

提督「離れた場所にいたお前が気配を感じ取ってるようだと、あまり放置もできねえか?」

那珂「うーん……回数的には滅多に感じ取らないから、那珂ちゃんも気のせいかな? って感じで済ませてたんだけど、心配は心配ですね〜」

提督「そういうお前も大丈夫か? そこまで深海棲艦に対する感度がいいと、慢性的にストレス感じたりしてねえか心配なんだが」

那珂「那珂ちゃんなら大丈夫です! むしろこのくらい感度が良くないと、艦隊のセンターは務まりません!」

提督「そう言うんなら信じるけどよ。いくらアイドルでもオフの日があるだろ」

陸奥「まあまあ、那珂の自然体がこうだとしたら、無理にオフモードを押し付けなくてもいいじゃない」

陸奥「いつも背筋伸ばしてる朝潮とか、レディーな振る舞いの暁にも、同じこと言ってる?」

提督「……あー、まあ、それもそうか。あいつらあれが平常運転だもんな」

那珂「提督さんの言いたいこともわかりますけどねー。加古ちゃんとか、オフとオンの差がすごいし!」

那珂「那珂ちゃん、これでも適度に気を抜いてるんですよ? この鎮守府、カメラがありませんから!」

提督「あー……まあ、確かになあ」

那珂「大きな鏡を用意してくれたのはすごく嬉しかったですけどぉ、那珂ちゃん的にはやっぱりカメラ映りも気にしたいなあって思います!」

提督「……」

那珂「あ! ご、ごめんなさい! カメラは、そのぉ……」

提督「ああ待て待て、那珂は謝んな。お前が悪いんじゃねえんだから」
260 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:13:34.61 ID:KkxFXQkAo

陸奥「あら、カメラって鎮守府になかったの? カメラくらい買ってあげたらいいじゃない」

提督「買うつもりではいたんだよ。っつうか、申請もしたんだが、中佐の野郎に全部握り潰されてるんだ」

提督「テレビ局の連中が来たときも話題になったんだが、あいつはこの鎮守府の記録を取られるのを極端に嫌がってる」

提督「いま使えるのは、不知火が本営の中将から預かってる、轟沈した艦娘を撮影する用のデジカメくらいしかねえ」

提督「俺もカメラくらい買ってやりたいが、ちょっと裏ルートでも開拓しねえと無理そうなんだよなあ……」

那珂「那珂ちゃんもつい勢いで言っちゃいましたけど……買えなかったって話は、提督さんに前もしてもらってるんです」

提督「むしろそっちのほうが那珂にとっては迂闊に口に出るほどストレスなわけだな。どうすっかねえ……」

陸奥「……この前のテレビ局のカメラ、1台くらい隠して持っていけば良かったわね?」

提督「そうだなあ……あ、でも駄目だ。あいつらリスト作ってたから、どっちみち全部回収されてたな」

陸奥「あらあら、それじゃ駄目ね?」

提督「まあ、全然手を打ってないわけじゃねえんだ。限りなく望み薄なところに頭を下げてんだが……あまり期待はしていない」

那珂「いくら那珂ちゃんのためとはいえ、あんまり危ない橋は渡って欲しくないから、あまり変なことはしないでくださいねー?」
261 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:14:17.26 ID:KkxFXQkAo

提督「ああ……とりあえず、お前にしても他の奴にしても、穏やかじゃないなら早めに言ってくれよ。那珂の心配事はそれだけか?」

那珂「ん−と、そうですね! 那珂ちゃんからは以上でーす!」ビシッ!

提督「おう、報告ありがとな」

那珂「それじゃ、那珂ちゃんは現場に戻りまーす!」

 扉<チャッ パタン

提督「うーん……山雲はどうしてやるかな……」

陸奥「……ねえ、提督?」

提督「うん?」

陸奥「さっき、那珂が、提督から深海棲艦の気配がするとか言ってたけど……」

提督「ああ、それか。那珂が来たばかりのときに言われたんだよ、俺が深海棲艦なんじゃないかって。マジな目されて砲口向けられた」

陸奥「ええっ……!?」

提督「あいつがなんでそんなことを言ったのか、俺にもさっぱり心当たりがねえんだが……」

陸奥「……全然、そんな感じはしないんだけど」

提督「みんなそう言ってくれてんだけどな。ただ、那珂にしても根拠もなくそう言うとも思えねえ」
262 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:15:02.11 ID:KkxFXQkAo

提督「実際、轟沈したことのある艦娘からも同じ雰囲気を感じたって言ってたしな」

陸奥「……」

提督「俺が轟沈した艦娘を弔ってるからとか、轟沈艦を集めてるからとか、たまにとはいえル級と普通に一緒に過ごしてるからとか」

提督「そういう、普通の鎮守府じゃ起きてないことに関わってるからじゃねえのかな? って、考えてはいるんだけどな」

陸奥「……」

提督「ま、俺のことは後回しだ。山雲の治療っつうか、不安要素を取り除いてやるほうが先決だな」

陸奥「そうは言うけど……こんな話聞かされたら、提督も心配よ?」

提督「心配なんかいらねえよ。少なくとも人間が深海棲艦になるような話は、どこからも聞いたことねえしな」

提督「それに、俺に万が一があったらお前たちに撃ってもらえばいいだけの話だ」

陸奥「……」

提督「……ん?」
263 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:15:47.18 ID:KkxFXQkAo

陸奥「あなたは、どうしてそういうことを言うの?」

提督「いや、どうして、って……」

陸奥「簡単に撃てとか言うけど、お世話になった人に対して、何の躊躇いもなく撃てるわけないでしょ?」

陸奥「あなたが言うほど簡単に割り切れるものじゃないわ。そのくらい、もう少し考えて喋ってほしいんだけど?」ムスッ

提督「……」

陸奥「なによ?」

提督「……お前も、怒るんだな?」

陸奥「え?」

提督「ずっと怯えてた顔してたからな。お前のそういう顔を見るのは初めてだ」フフッ

陸奥「……!」

提督「ああ、別にお前を怒らせたくて言ったわけじゃないからな?」

陸奥「……提督って、そういう人よね」

提督「ま、こればっかりはな。そういうもんだと思ってくれ」ハァ…

陸奥(ため息つきたいのはこっちよ……私、いまどんな顔してるのかしら)セキメン
264 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/19(水) 20:16:31.93 ID:KkxFXQkAo
今回はここまで。
265 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:30:28.54 ID:1LUsbeXzo
こちらも続きです。
266 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:31:30.65 ID:1LUsbeXzo

 * 砂浜へ続く道中 *

隼鷹「ああ、提督、お疲れさん」

提督「よう。何を眺めてたんだ」

隼鷹「ちょっと、砂浜をね。ここ、綺麗な砂浜だよねえ……この浜に何人も打ち上げられてたなんて、聞かないとわからないよ」

提督「……」

隼鷹「どしたの?」

提督「ああ、こんなところで佇んでる奴がいるのが珍しいと思ってな。お前、最近は工廠にいなかったか?」

隼鷹「そうかもねぇ。最近は明石んところで艦載機の開発に付き合ってるほうが長いんだけど、散歩も結構好きだよ?」

隼鷹「ほら、軍港だとこういう砂浜とか、波打ち際とかお目にかかれないしさ。ゆっくり眺めていたくなっちゃってね」ニッ

提督「なるほど……」

隼鷹「こっちの砂浜も綺麗だけど、西側の崖もなかなか風情があって良かったねえ」

提督「崖? ……って、お前、西側に行ったのか!?」

隼鷹「え? 行っちゃまずかったの?」オロオロ

提督「いや、まずいっつうか、妖精たちも俺たちも西の林にはあまり立ち入ってねえんだよ。お前が怪我とかしてないならいいんだが……」

隼鷹「あ、そうなの? なんか見ちゃまずいもんがあるわけじゃないんだ?」
267 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:32:30.57 ID:1LUsbeXzo

提督「俺たちが見られて困るようなもんはねえな。この前、テレビ局の連中が林に入って人骨見つけたらしいけどよ」

隼鷹「人骨!?」

提督「ああ。この島がかつて戦場になってたなら、そこまで珍しいもんでもねえと思ってる」

提督「ただなあ、その死んだ理由が、例えば毒蛇だとか、落とし穴とか地雷みたいな罠だったりしたら嫌だろ?」

提督「そういうのにお前らが引っかかったら嫌だなって考えてたんだ」

隼鷹「あー……なるほどねえ」

提督「撤去しようにも安全を確認するための装備や、怪我したとき用の薬とかがないからな。下手に立ち入らずに探索しないことにしてたんだ」

提督「けど……そうか、お前には連絡が行ってなかったか。悪かったな、申し訳ない」

隼鷹「いやいや、いいってば。結果論だけど、こうやって五体無事なわけだし!」

提督「本当に結果論だけどな……ちなみに、その時にどのルート辿って西端へ行ったのか、あとで教えてくれ」

隼鷹「うん、いいよ〜。しっかしアレだねえ……この鎮守府の前任者ってどんな人だったんだろうねえ。引継ぎとかしてないの?」

提督「いや、引継ぎも何も、前任者とかいねえし。俺はここに何にも知らされずに連れてこられたんだぞ。妖精以外に誰もいなかったしな」

隼鷹「……」

提督「なんだよその顔は」
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