渋谷凛「アイドルで」北条加蓮「大河ドラマ」神谷奈緒「源平物語!」

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6 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:46:13.50 ID:wJoYvkKh0
クラリス「戦いは既に終わりました。この上、人の命を奪うなどあってはならないことです。み仏もお許しにはなりませんよ」アーメン

つかさ「こ、これはお義母さま……」


凛「お義母さま?」

P「そう、クラリス演じるこの女性は清盛の父の正室つまり正妻である、藤原有信の娘こと宗子。この時はもう出家していて池禅尼(いけのぜんに)だ。清盛からは義母の関係になる」

加蓮「出家って? 家出とは違うの?」

奈緒「違うよ! 旦那さんが亡くなったから、髪を切って尼さんになるってことかな」

P「この池禅尼が、頼朝の命を奪うことに大反対をした」


つかさ「けど、もしも将来、頼朝が……」

クラリス「都から遠いところに追放し、その上で監視をつければ良いのです。なにも命を奪うことはないではないですか」

つかさ「うーん……でも万が一ってこともあるわけじゃない? 失敗は成功の母ってゆーし、この負けを源氏が糧にしてさ」

クラリス「命だけは助けてあげなさい」

つかさ「でも……」

クラリス「……そうですか、わかりました」

つかさ「え? わかってくれたの?」

クラリス「この池禅尼、あなたが頼朝の命を助けてくれるまで……断食をします!」

つかさ「がっくぜえーん! え? あ、あの腹ぺこで有名なお義母さまが断食を!?」
7 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:46:53.44 ID:wJoYvkKh0
凛「これ本当にこんなやりとりがあったの?」

奈緒「こんなだったかはともかく、池禅尼が頼朝の助命嘆願の為に断食をしたのは本当なんだよな」

加蓮「クラリスさん、アタシが勢いで頼んだポテトを手伝って軽く片づけてくれたりするぐらい食べる人なのに、断食なんて大丈夫?」

P「この断食はすさまじくてな」


つかさ「さーて、今日も朝からチーズカツカレー食べてお仕事がんばるかなー♪」

クラリス「おはようございます」キュルルルル

つかさ「うおわっ! こ、これはお義母さま……んっ? なんの音コレ?」

クラリス「恥ずかしながら私のおなかの音です」グギュルルルル

つかさ「あの、断食はもうやめたら……」

クラリス「では頼朝の命、助けてくれますか?」グー

つかさ「いやーそれはちょっと」

クラリス「……」ギュイーンギュインギュイーングルルルルルル

つかさ「そ、そのバイクみたいな腹の音、ホントに大丈夫なのかよそれ」

クラリス「頼朝の命、助けてくれるまで私は断食を続けます!」ギュンギュンギュンギュイーンギュインギュイーン

つかさ「あのーアタシこれからモーニングタイムなんだけど」

クラリス「どうぞ私に構わず、お召し上がりください」ドルッドドドドルッドドド

つかさ「そ、そう? じゃあ失礼して」アーン

クラリス「……」パララパララパララパララパラリラパラリララー

つかさ「そのお腹の音、目茶苦茶気になるんだけど!」

クラリス「……」ドドドドドドドドドドドドド

つかさ「ジョジョ立ちはやめろって、ジョジョ立ちは! あーもうわかった。助けるって、頼朝」

クラリス「本当ですか!」

つかさ「その代わり、伊豆に流すからな。そんで北条一族に監視させっから」

クラリス「よろしいですとも。み仏のご加護がありますように」アーメン

つかさ「じゃあこれで心置きなくチーズカツカレーを……あれ?」

クラリス「ごちそうさまでした」アーメン

つかさ「……」
8 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:47:38.82 ID:wJoYvkKh0
P「こうして美嘉こと源頼朝は伊豆に流されることになったんだ」

凛「じゃあいよいよ美嘉の登場だね」

P「ああ。当時の伊豆の国は別段田舎というわけではなかったが、やはり京の都からは距離があった。そこへ京育ちの源氏の御曹司が流人とはいえやって来ることになったわけだ」

奈緒「頼朝って美男子で、和歌を詠んだりできる教養もあって、それでもって弓矢の腕も良かったらしいんだよな?」

加蓮「そんでもって源氏の御曹司……ってものすごいチートじゃない?」

P「じゃあ舞台は伊豆に移動するぞ。番組ナビゲーター役の保奈美、頼む」

加蓮「え? 保奈美ちゃん?」

凛「手に持ってる楽器は……なに?」

奈緒「これが琵琶だよ。保奈美ちゃんが、琵琶法師の衣装でナレーションやナビゲーションをしてくれるのか」

西川保奈美「そうなんです。それではみなさん。次なる舞台の地、1160年頃の伊豆に、行ってらっしゃい」ベベン

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪ ウォワォオイェ〜ェ、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪」ベンベン

加蓮「うわ、いい声」
9 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:48:11.91 ID:wJoYvkKh0
奥山沙織「あれが源氏の御曹司の頼朝が。あんたきれいな服、見だごどねぁね。メイクもなに使ったらあんたにビシッど決まるんだべが?」

工藤忍「そったのんきなごどしゃべってぢゃまいねよ。わんどはあの頼朝ば監視すて、何かがあった時ゃ、都の平家さ報告すねばまいねんだはんで」


奈緒「いや待て待て待て! 沙織さんと忍ちゃんはこれ、誰の役なんだよ!!」

P「沙織が北条宗時(むねとき)で、忍はその弟の義時(よしとき)だが?」

奈緒「なんであんなに訛ってるんだよ! そもそも流されたのは伊豆なのに、なんで東北訛りになってるんだよ!!」

凛「プロデューサーが、さっき伊豆の国は京の都からは距離があった、って言ったから?」

加蓮「伊豆って京からどのくらい離れてるの?」

奈緒「京から伊豆まで馬で10日かかった、と当時の書物には書かれてるみたいだな」

凛「けっこう離れてたんだ」

加蓮「この兄弟が、美嘉ちゃんを監視する役割なの?」

P「そう。しかし実は北条氏一族も困っていて」
10 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:48:48.86 ID:wJoYvkKh0
沙織「何かがあったら、って何があったら報告すればええのがな?」

忍「それは……どうなんだびょん?」

沙織「例えば他の源氏とか東国の武士ば集めで、頼朝が挙兵どがしたどしてもだよ、討ぢ取ってしまってもえのがな?」

忍「いやそれは……そもそもわんど、頼朝さ監視すろって命令されでらだげで、命取れども取るなども命令されではいねえす……」

城ヶ崎美嘉「やほー★」

沙織「きゃっ!」

忍「あ、よ、頼朝……」

美嘉「お世話になるみたいで、これからよろしくね★」

沙織「あ、ええど……流人どはいっても、あんだは清和天皇の血ばひく源氏の御曹司。監視はさせでもらうんだども、不自由ばさせねぁがら」

美嘉「おけまる★」キラッ!

沙織(なんかこのふと……キラキラしてら。なんだべこの雰囲気)

忍(都会……じゃなぐで都の貴人ってみんなこった風なのがな……憧れでまるな)

P「伊豆の国に入った頼朝は、次第にお目付役である北条家から尊崇の目で見られるようになった。頼朝の人品のなせるわざだな」

加蓮「さっすが美嘉ちゃん」
11 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:49:37.42 ID:wJoYvkKh0
沙織「それで? 頼朝は、なにすてるの?」

忍「うん。毎日、書物を読んだり時々鷹狩りとかして暮らしてるよ」

沙織「義時!? その言葉遣いはどうしたの!?」

忍「あ、わかっちゃった? 実は最近、頼朝さんに都会の喋り方を教わってさ」

沙織「よぐ見れば着でるものも!」

忍「あ、これ? いや、頼朝さんがさ」


美嘉「レディース用のアウターも、やっぱりおしゃれに着こなしたいじゃない?」

忍「あ、そそそ、んだの。あるよねそった時」

美嘉「でもアウターって種類がいっぱいあってどれがいいのか分からないってことない?」

忍(アウターってなにがな? 直垂のごどがな? 狩衣?)

美嘉「すっぽりと足元まで隠してくれるロングコートは、真冬でも暖かく便利なアイテムなんだよね。春や秋であれば、トレンチコートも今年は長めのものがトレンドだし、ロングコートは、縦のラインが強調されるので大人っぽく上品な着こなしを簡単に作ることができるんだよ。それにブラウスやスカート、ニットといった女性らしさ満点のコーデにプラスすれば、王道の女性らしいコーディネートになるし、インナーやボトムスを敢えてボーイッシュなアイテムで作って、ロングコートでおしとやかさをプラスするのもバランスが取れるのでおすすめかな★」

忍(言葉の意味はわがねばって、とにがぐすごぇなあ頼朝は)

美嘉「そういえば義時さ」

忍「え?」

美嘉「そのメイク前から気になってたんだけど。義時の場合アイラインはね、こう黒目の上部分を太く強調すると、瞳の縦幅が大きく見えてスッキリ&パッチリした印象になると思うよ。こう……こう、ね。それにリキッドアイライナー以外にも、こっちの密着力が高く落ちにくいジェルアイライナーもおすすめだよ★ ほら、鏡見て。鏡★」

忍「わい……? こぃがわー?」

美嘉「義時は元がいいんだから、もっとメイクにも気をつかった方がいいよ?」

忍「頼朝さん、こぃがら色々教えでけ!」ゲザ
12 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:50:27.94 ID:wJoYvkKh0
忍「ってことがあってね」

沙織「こんなごど、都の平家になんて言って報告すればええの!?」

忍「あ、都? 私、行こうか? 今なら私、都でも通用するし」グーパン

沙織「報告でぎねぁっつってらの! もう……頭の痛ぇごどばりだわ」

忍「そういえば姉上のことはどうするの?」

沙織「そのごどよ……どうしたものがしら……困った妹ね」


加蓮「姉上? 妹?」

奈緒「宗時にとっては妹、義時にとっては姉となる姫……北条政子だよ」

凛「なんか聞いたことあるかも」

奈緒「教科書にも載ってる人物だからな。その意味では、兄弟である北条宗時や北条義時よりも有名人かもな」

P「この時代、姫は政略結婚の対象で家と家、一族と一族を結びつける存在だったんだが北条政子は……」
13 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:51:04.83 ID:wJoYvkKh0
佐久間まゆ「いやですよぉ。まゆ、いつか出会う運命の人が現れるまで結婚はしませんからねぇ」

沙織「いや、そっただことでは困るって」

忍「北条一族の発展と繁栄のために、お願いだから有力な家へ嫁いで欲しいの」

まゆ「いやですよぉ」


凛「あのさ、まゆが演じてるのは北条政子なんだよね?」

加蓮「自分のこと、まゆって呼んじゃってるけどいいの?」

P「実は北条政子の本名がなんだったのかは、わかってないんだ」

凛「え!?」

奈緒「政子って名前は、江戸から明治時代ぐらいに呼ばれ始めた名前で、どうも本当の名前じゃないらしいんだよな」

加蓮「本当の名前じゃないって、教科書にも載るような人なのに!?」

奈緒「忌み名といって、この頃の女性は世間に本名を名乗ったりしないらしいんだ。それは、本名を知られると霊的に攻撃されたりするって思想かららしいんだけど」

P「わかりやすく言うと、本名はパスワードでそれを知られるっていうのはパスワードがネットに流出すること……って感じだ」

凛「なるほど、ちょっとわかったかも」

加蓮「じゃあ政子さんの本名もわかってないんだ」

P「なのでここでは通名は北条政子だが、一人称はまゆでいく」

奈緒「いいのかよ、それ……」
14 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:51:53.01 ID:wJoYvkKh0
まゆ「まゆはぁ、運命の人に出会うまで誰ともおつき合いはしませんからねぇ」

美嘉「はろー★」

まゆ「!」

美嘉「あれ? 誰だっけ?」

まゆ「……うふ」

美嘉「?」

まゆ「運命の人、見つけちゃいましたぁ////」

沙織「えええっっっ!?」

忍「いや、さすがにそれは……」

まゆ「お名前を、聞かせてもらってもいいですかぁ?」

美嘉「アタシ? アタシは源頼朝。あ、もしかして美人で有名な北条の政子姫? 本当に噂通りの美人だね★」

まゆ「まあ、それで婚礼はいつにしますかぁ?」

美嘉「え?」

沙織「駄目駄目駄目!!!」

忍「私たち北条氏は一門ではないけど平家の血筋、その北条氏の姫が源氏の御曹司と恋仲になるなんて……」

美嘉「アタシは気にしないけど?」

沙織「わだすが気にするんだって! 絶対にだみだんてね、政子」

忍「姉上、都の平家一門に知られたら北条は敵とみなされて滅ぼされてしまうかも知れないんだよ!?」

まゆ「頼朝さまぁ」

美嘉「政子は可愛いなあ」

沙織「話を聞げ、って!」

忍「頼朝さんだけは駄目だって!」
15 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:52:26.94 ID:wJoYvkKh0
沙織「よりにもよって、源氏ん御曹司と結婚はさせられんど」

忍「と言っても、どうするの兄上?」

沙織「実は政子は、伊豆目代の山木兼隆と結婚させようち思うちょっと」

忍「伊豆目代の山木……平家にかなり近い血筋だから、それはその婚儀がまとまれば北条は安泰だけど、肝心の姉上があれじゃあ」

沙織「無理矢理んでも……手足と口を縛って箱にとじ込めて婚礼に送っことにすっわ。婚儀が終わればもうどうにもできんやろ、政子も」

忍「縛って箱にとじ込めて、って……誰がそれをやるの!?」

沙織「義時、頼んだでね」ポン

忍「えー! 私ーー!?」
16 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:53:06.08 ID:wJoYvkKh0
まゆ「ムー!!!」

忍「山木の家に着いて婚礼が終わればほどいてくれるから、それまでおとなしくしていて! お願い!!」

まゆ「ムー!!!」

忍「箱に入れて背負って……と、うわめっちゃ箱の中からカリカリしてる……ごめんね姉上。さあ、山木兼隆の領地へ!」

まゆ「ムー!!!」


忍「ありがとうございます。Uber伊ー豆です、花嫁をお届けに参りました。ここ置きますね。あ、生モノなんで本日中に婚礼にしてくださいね。それじゃあここに花押を……はい、ありがとうございましたー!」

忍「ふう。今夜には婚礼だろうし、姉上には悪いことしたけどさすがに頼朝さんは……源氏の御曹司と北条の姫は結婚させられないから。ごめんね」
17 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:53:54.31 ID:wJoYvkKh0
保奈美「その夜 嵐となった頼朝が済む山中の家」ベンベンベン


忍「というわけで、姉上は山木兼隆と今頃婚礼の最中のはずなんだ」

美嘉「……そう。流人の身のアタシにはどうすることも……」

忍「や、やっぱり頼朝さんは姉上のこと、真剣に好……」

ドンドンドン

美嘉「? 誰かな?」

忍「こんな夜更けの嵐の日に、山の中に……」

ドンドンドン

忍「はいはーい。どなたですか……って、ええっ!?」

まゆ「頼朝さまぁ」

美嘉「政子! どうして? 山木へ嫁いだんじゃ……」

まゆ「婚礼の前に帰ってきちゃいましたぁ」

忍「帰ってきちゃいました、って……あれだけきつく縛って、箱に詰めて、しかもこの嵐の夜中の山道を……あ」

忍(姉上、びしょ濡れの上に手も足も傷だらけで……)

美嘉「よく戻ってきてくれたね。もう離さないから」

まゆ「あ、頼朝さま。まゆ、泥や血で今汚れてて……」

美嘉「政子!」ギュッ

まゆ「……頼朝さまぁ!」ギュッ

忍「……」

忍(良かったね。姉上……)
18 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:54:34.32 ID:wJoYvkKh0
沙織「いや良うなかって。もう一回、山木へ政子を送りなおさんな!」

忍「無駄ですよ、兄上」

沙織「え?」

忍「2人は伊豆山権現に預けてきたから」

沙織「伊豆山権現って、あそこは僧兵ん力が強かで……」

忍「兄上でも手が出せないでしょ?」


奈緒「うわー抱き合って……うわー! す、すすす、すごいな!!」

加蓮「縛られて閉じ込められて、それでも明かりもない嵐の山に帰ってくるとか、すごいね」

凛「うん。でも、まゆならやりそう……かな」

加蓮「シンデレラガールズのプリンセス天功だ」

奈緒「今と違って明かりもない、嵐の夜は怖かったろうなあ」

凛「だから義時も、2人を応援してくれるようになったんだね」

加蓮「2人はこの後もずっと伊豆山権現にいたの?」

P「いや、しばらくすると北条の館に戻ってきた」
19 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:55:08.49 ID:wJoYvkKh0
沙織「絶対に2人ん仲は認めんでね、わだすは!」

まゆ「叔父上、大きな声を出さないでくださいねぇ」

沙織「え?」

まゆ「って、この子が言ってますよぉ」サスサス

沙織「お腹をさすて……まさか、あ、あかちゃん……が?」

美嘉「いやー……あはは★」

忍「うわあ、良かったね……って兄上……兄上?」

美嘉「立ったまま気を失ってるみたいだね」

まゆ「あらあらぁ、叔父上はあなたの存在を認めたくないみたいですねぇ」ナデナデ

沙織「わ」

忍「あ、気づいた」

沙織「わだすは、絶対に認めもはんでね!!!」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2022/01/09(日) 08:55:24.92 ID:Pb20PcbDO
大姫の悲劇の原点を発見やな
21 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:56:01.52 ID:wJoYvkKh0
保奈美「それから8ヶ月後」ベベン


沙織「おー、よしよし。大姫はむぜねぇ。ほーら、叔父上ちゃまですどお」

大姫「キヤッキャッ」ニコニコ

忍「大姫が生まれたら、コロッと変わるんだもんなあ兄上」

沙織「あはは……なあ義時、わだすは決めたじゃ」

忍「なにを?」

沙織「北条は、頼朝どのにお味方いたす。今後は源氏再興に力を貸し、目指すは打倒平家じゃ」

忍「兄上……ついに決意を」

美嘉「ありがとうございます」

まゆ「よかったですねぇ頼朝さまぁ。大姫ぇ」
22 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:56:36.42 ID:wJoYvkKh0
奈緒「こうして平家の血筋であった北条家は頼朝を助け、打倒平家を目指すことになったんだ」

凛「結局全部、つかさ……清盛が心配してた通りになったんだ」

奈緒「そうなるよな。でも」

加蓮「え?」

奈緒「このことは、平家にはすぐに伝わらなかった」

加蓮「まあ監視役が北条家なんだし、その北条家が黙ってたらわからないか」

P「そして頼朝の決起もまだ先のこととなる」

凛「ここからすぐに、都を目指すわけじゃないんだ」

奈緒「さて、じゃあもう一人の主人公の登場だな」

加蓮「それって……そうか!」

奈緒「池禅尼が頼朝の助命をしてくれたことで助かった人が頼朝以外にもいる」

凛「もうわかった。義経だね」

奈緒「そう。兄で源氏の頭領を継ぐ立場の頼朝ですら許されたんだから、弟も自然な流れで命は救われることになった」

加蓮「頼朝こと美嘉ちゃんは伊豆に流されてたけど、義経こと莉嘉ちゃんはどこに流されたの?」

奈緒「義経というかこの時はまだ牛若丸と呼ばれてたんだけど、彼は京都のお寺に預けられたんだ」

加蓮「え? 京にいさせてもらえたんだ」

P「といっても寺に入れられたということは、俗世とは縁を切った……ことにされたわけだ」

凛「されたわけだ……ってもしかして頼朝みたいに義経も、源氏を率いて決起することになるの?」

P「まあそこは、おいおい見ていくことになる」

加蓮「じゃあ次の舞台は、京の都へ行ってらっしゃい。だね?」

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪ ウォワォオイェ〜ェ、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪」ベンベン

凛「本当にいい声だよね」
23 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:57:11.23 ID:wJoYvkKh0
莉嘉「え? アタシお寺に入れられるの?」

つかさ「そう。僧になるんだぞ……You are my僧! 僧! いつも監視の目ある♪ ゆずれないよこの条件だけは♪」

莉嘉「えー。アタシ、父上やお姉ちゃんみたいな立派な"武士(ギャル)"になりたい」

つかさ「だから! 源氏はもう"武家(ギャルサー)"としての身分じゃねーから。な、大人しく鞍馬山の鞍馬寺に入ったら命は助けてやるから」

莉嘉「山ー? アタシ行きたくない」

つかさ「……山にはカブトムシとかいっぱいいるぞ」

莉嘉「行く☆」
24 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:57:57.21 ID:wJoYvkKh0
莉嘉「とは言ったけど鞍馬山ってこんな大変なトコなの? 朝からずっと登ってきてもうアタシ疲れたよー!」

鞍馬天狗「ちょっと待つっス」


奈緒「いや誰だかわかるけど誰なんだよ、このジャージ着て天狗のお面かぶってるのは!?」

凛「? ちゃんと鞍馬天狗ってテロップ出てたよ?」

加蓮「演じてるのは、比奈さんだよね?」

奈緒「2人とも、こういう時だけ理解が早すぎる!!」


莉嘉「? あなた誰?」

荒木比奈「清盛に命じられた牛若丸で間違いないな?」

莉嘉「え? うん」

比奈「牛若丸、お前は兄が打倒平家を掲げて挙兵したらどうする?」

莉嘉「アタシもお姉ちゃんのもとに馳せ参じる☆」

比奈「判断が速い!」ピンポンピンポンピンポーン

莉嘉「当然だよ。アタシ、まだ会ったことないけどお姉ちゃんのこと大好きだもん☆ それよりあなた誰?」

比奈「アタシはこの鞍馬山の鞍馬天狗っス。源氏の御曹司であるあなたに、武芸を教えるために待ってたっス」

莉嘉「え? じゃあアタシを“武士(ギャル)”にしてくれるの?」

比奈「そうっス。あなたは源氏嫡流の血筋ゆえ、“武士(ギャル)”としての才能に恵まれてるっス。それをアタシが磨いてあげるっス」

莉嘉「やったー☆ あ、でも大変そうなのはヤだよ?」

比奈「大丈夫っス。ここ鞍馬山は個別指導でみるみる成績が上がると評判っス」

莉嘉「成績?」

比奈「今ならキャンペーンで、入会金は無料のうえ受講生を紹介してくれたらキャッシュバックもあるっス」

莉嘉「キャンペーン? 受講生? キャッシュバック?」

比奈「ともかく、アタシが教えればあなたのギャル力はめちゃくちゃ上がるっスから」

莉嘉「うん☆ よろしくー☆」

保奈美「こうして牛若丸は、鞍馬山で武士としての力すなわちギャル力を磨いていったのです」ベンベン
25 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:58:32.75 ID:wJoYvkKh0
凛「この天狗って、本当に天狗なの?」

奈緒「色んな説があるけど、今回はどの説なんだろう?」

加蓮「どうなのPさん」

P「それはおいおいわかる。それからしばらくして、京の都で事件が起こる」

加蓮「事件?」


「聞いたか? 最近、洛中に現れる辻斬りの話」

「ああ、なんでも本を持ってるとおそわれて、その本を奪われちゃうそうだな」

「五条大橋の辺りに出没するらしいぜ」


鷺沢文香「本……もっと本を……本を……」


26 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:59:19.47 ID:wJoYvkKh0
莉嘉「ふー。久々の都の洛中であちこちのお店からシール集めてたら遅くなっちゃったな。でもシール帳がシールでいっぱいだよ☆」

文香「本……」

莉嘉「? 誰?」

文香「その本、こちらに渡して……ください」

莉嘉「え? これ? これはダメだよ、アタシの大事な……」

文香「渡さないと言うのなら……力ずくで……」

莉嘉「うわっ! す、すごい力!!」

文香「本を求めて倒した相手は……既に、九百九十九人。あなたで千人目でその本が千冊目……もっと本を……私に本を……」

莉嘉「この人、見た目は華奢なのにすごい力!!! こうなったら……えいやっ☆」

文香「! 一瞬でこんな距離を跳ぶなんて……何者!?」

莉嘉「えい! えい!! えいっ!!!」

文香「す、すごい早さで移動して……ど、どこに……」

莉嘉「そこだあっ☆」

文香「きゃっ! ……参りました。とうてい私の敵う相手ではありませんでした……あなた様はいったい……」

莉嘉「アタシ? アタシは牛若丸☆ 今はまだ修行中の身だけど、お姉ちゃんが決起したらアタシも一緒に“武士(ギャル)”として戦うんだ」

文香「源義朝の八男の名が確か、九郎牛若……では源氏の御曹司。どうりで……その戦い、私も連れて行っていただけませんか?」

莉嘉「え?」

文香「私は武蔵坊弁慶。あなた様の家来になります」

莉嘉「家来? アタシの? アタシはそんなのいらない」

文香「そんな……」

莉嘉「家来じゃなくて、仲間ならいいよ☆」

文香「家来ではなく……仲間……?」

莉嘉「うん! 一緒に平家と戦おうよ、それならおっけー☆」

文香「なんという本の分厚さ……いえ、器の大きさ。わかりました、あなたについて行きます」
27 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 08:59:53.14 ID:wJoYvkKh0
比奈「お見事っス」

莉嘉「あ、天狗さん」

比奈「鞍馬山での修行、こうした力のある部下……いや仲間を得たことで終了っス。もう教えることはないっス」

莉嘉「え?」

比奈「これからあなたは、奥州に行くといいっス」

莉嘉「欧州? ヨーロッパ?」

文香「奥州とは東北の地……なるほど、話は見えました。あなたは奥州の藤原氏の者ですね?」

比奈「そうっス。源氏の御曹司を鍛え、平家と戦ってもらいたいんス」

莉嘉「よくわからないけど、アタシ実力がついたならお姉ちゃんのいる伊豆に行きたい!」

比奈「それはまだ早いっス。頼朝様がお立ちになられた時、1人じゃなくてこの弁慶みたいな仲間を他にもたくさん引き連れて行った方が、頼朝様も喜ばれるはずっス」

莉嘉「えー。でも……」

文香「東北には……大きなカブトムシがたくさんいますよ」

莉嘉「行く☆」
28 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:00:26.71 ID:wJoYvkKh0
奈緒「なるほど今回のお話の鞍馬天狗は、奥州から使わされた説か」

凛「奥州の藤原氏っていうのも、教科書で読んだ気がするね」

加蓮「この時代の有力な勢力だったんだ」

P「藤原氏は平家でも源氏でもないから、このまま平家だけの世になるとやがて平家から狙われるという危機感があった」

奈緒「残る武家勢力で有力なのが藤原氏だったわけだもんな」

凛「それで莉嘉を味方にしようと動いたんだ」

加蓮「じゃあ今度の舞台は東北だね?」

奈緒「それではさっそく、舞台は平泉へ行ってらっしゃい」

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪ ウォワォオイェ〜ェ、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪」ベンベン

奈緒「いやホントいい声だよな」
29 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:02:17.53 ID:wJoYvkKh0
土屋亜子
「おカネおカネ♪ おカネおカネ♪
 おカネおカネおカネ〜♪

 お金さえあれば〜♪
 何でも手に入る〜♪
 刀♪ 甲冑♪ 立派な馬や馬具〜♪
 館♪ 荘園♪ 寄進の立派な寺社〜♪
 牛車御輿自家用遣宋使船〜♪
 強飯猪の肉醍醐に蘇〜♪

 お金さえあれば〜♪
 幸せなれる〜♪
 我ら奥州藤原氏一族〜♪
 オーレイ♪」

莉嘉「うわすごい。このお堂、全部黄金でできている」

文香「奥州では砂金がとれるとは聞いていましたが、これほどとは……」

亜子「や、どーもどーも。ようこそ来てくれたなあ、アタシこの奥州を支配する藤原秀衡(ひでひら)やで。よろしゅうな」


奈緒「いやもうあんまりツッこむ気はないんだけどさ、伊豆の北条氏が東北弁だったのに東北の藤原氏が関西弁なの、なんか頭がバグるよな」

凛「そう?」

加蓮「いつもの亜子じゃん」

奈緒「2人ともこういうとこ、柔軟だよな……」
30 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:02:50.82 ID:wJoYvkKh0
亜子「奥州は、黄金だけやあらへんで。武士にとって大事なモンがあるんや」

莉嘉「武士にとって大事なもの?」

文香「“馬(ウマ娘)”……ですか?」

亜子「せや! 奥州は“最上名馬(SSRウマ娘)”の産地なんや」

利嘉「そういえば来る途中で見かけた“馬(ウマ娘)”、みんなすごく立派だった」

亜子「ちなみに“馬(ウマ娘)”に乗ったことは?」

利嘉「まだない」

亜子「牛若丸ちゃん。いや元服して義経ちゃん、ここ奥州の馬で“馬術(ウマ娘プリティーダービー)”の腕を鍛えて、一流の“競合他社ゲームプレイヤー(トレーナー)”……やなかった。一流の“武士(ギャル)”になるとエエから」

莉嘉「うん☆ アタシ、がんばる!」
31 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:03:46.24 ID:wJoYvkKh0
亜子「ではアタシが“馬術(ウマ娘プリティーダービー)”の基本を、教えるで。まずは“選馬(リセマラ)”からや!」

利嘉「“選馬(リセマラ)”?」

亜子「エエ“馬(ウマ娘)”を選んで“愛馬(推しウマ娘)”にするんが兎にも角にも先決や」

莉嘉「それってアタシが選んでいいの?」

亜子「せやで。最初は“最上馬(SSR)”や“良馬(SR)”を引くまで何回選びなおしてもエエから」

莉嘉「じゃあアタシ、この子!」

亜子「へ? いやリセマラいうんはそういうんとちゃうで。それにこの“馬(ウマ娘)”は、実力はあるんやけどどうにも垢抜けへんトコがあってな……あ?」

莉嘉「アタシ、源義経。よろしくね☆」

“太夫黒(ユキノビジン)”『よろしく』

文香「今、この“馬(ウマ娘)”、しゃべっ……た?」

亜子「ほんまかいな!? 義経ちゃん、アンタ本当にすごい“武士(ギャル)”やで。エエわ、その“馬(ウマ娘)”アンタのモンや」

莉嘉「えへへー☆」

保奈美「こうして九郎牛若丸は、奥州で元服し名を改め源九郎義経と名を変え、この地で武士としての実力を磨いていくことになるのです」ベンベン
32 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:05:32.20 ID:wJoYvkKh0
加蓮「ねえねえPさん、これ面白いよ。私も出たいよ。出してよ」

P「いいぞ」

奈緒「いいのかよ!?」

P「まだ撮影途中だし、別にいいぞ。加蓮は……そうだな、平知盛(とももり)役はどうだ?」

奈緒「ええっ!? 新中納言、加蓮がやるのかよ!!」

凛「有名な人なの?」

奈緒「これから先の平家側の、中心的人物だよ」

P「平知盛は、相国入道……つまり平清盛の最愛の子と呼ばれていて、要するにそれだけ清盛はこの知盛に期待をかけていたんだ」

凛「奈緒が言っていた、新中納言っていうのは?」

奈緒「この時代、女性が本名で呼ばれなかったように男性も名前じゃなくて、官位や官職で呼ばれるのが普通だったんだけどさ」

加蓮「常務とか専務って呼ばれるみたいに?」

P「そう。この時、中納言の役職に四人就いていて、しかもそれが全員平家の人間だったから『中納言』とか『平家の中納言』って言われても、誰のことかわからなくなる」

奈緒「それで一番最近、中納言になったこの知盛は新中納言と呼ばれていたんだ」

凛「なるほど、中納言ね」

奈緒「凛、中納言がどのぐらい偉い人なのかわかってるのか?」

凛「当然だよ。中納言は少納言の上で、大納言の下の位でしょ?」

奈緒「そうだけど、そういうことじゃなくてさ!」

P「今の感覚で言うと中納言は……大臣クラスかな」

凛「えっ? 大臣? 加蓮、大丈夫!?」

奈緒「具体的な偉さがわかって、急に不安になったな凛」

加蓮「だいじょーぶだよ。アタシにまかせてって」

奈緒「えー、加蓮が新中納言かよー。いいないいなー。Pさんあたしもなんかやらせてくれよー」

凛「うん。私もやりたい」

P「よし。じゃあ、凛は平重盛で奈緒は平基盛だ」
33 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:07:03.23 ID:wJoYvkKh0
加蓮「父上、お呼びですか?」

つかさ「とーもーもーりー! 会いたかったー!! うんもう、とーーーもーーーもーーーりーーー!!!」ナデナデナデナデ

加蓮「はいはい、わかりましたから。それで今日はどのようなご用で?」

つかさ「今日もメイク、バッチリじゃん。もうほんと目に入れても痛くないわー。入れようか? とーもーもーりー!」ナデナデナデナデナデナデナデナデ

加蓮「用件は!?」

つかさ「あーん。ちょっと怒った顔も、超キメキメ。いや、用は平家の今後についてさあ」

加蓮「そういうことは、父上の跡継ぎで一族の宗主である宗盛(むねもり)兄様に……」

つかさ「いや、もちろんさ。事の順序はそうだけどさ。そういう序列的なことはキチンとした上で、大事なことは知盛に託しておきたいんだよ」

加蓮「まあ……宗盛兄様も本来は三男ですもんね。平家一門も何があるかはわからないとこあるよね」

保奈美「この時清盛の長男、平重盛。そして次男の平基盛は既にこの世を去っており、三男の宗盛が跡取りとなっていました」チーン


凛「ちょっと!」

奈緒「あんまり出番のない役でしかも、ナレ死かよ!」

P「すまん……加蓮を新中納言に推すのに、俺のツテとコネを全部使ってしまって……」

奈緒「いや、まだ撮影途中って言ってたじゃないか!!!」

凛「もう。こうなったら加蓮、私たちの分も大河ドラマ内で輝いてよ!?」

加蓮「任せて♪」
34 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:08:02.53 ID:wJoYvkKh0
つかさ「宗盛もさあ、悪いやつでも無能でもないんだよ」

加蓮「そうだよね。細かい気遣いもできるし、みんなに優しく接してくれるし、調整能力はあるし」

つかさ「太平の世に生まれてたら、平家一門をうまくまとめていってくれるとは思うんだけどな」

加蓮「涙もろいのが玉に傷だよね」

つかさ「あとほら、デカいじゃん? 器というか、なんというか……」

加蓮「あー。おっきいよねえ、器というか……ん?」

つかさ「どこからともなく懐かしいヒット曲の歌声が……森口博子さんに寄せた歌声のこの曲は……」

加蓮「兄上のテーマ曲、夢がMORI MORI!」

有浦柑奈(“琵琶法師(シンガーソングライター)”)
「胸がMORI MORI てんこMORI MORI♪
 おさまりきらないほど♪
 胸がMORI MORI てんこMORI MORI♪
 今夜は胸がいっぱい♪」

?「とももりしゃあああん!」

つかさ「来たな。噂の主」

加蓮「会う度に泣かれるのはちょっと困るんだけどね」
35 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:08:53.70 ID:wJoYvkKh0
大沼くるみ「知盛しゃん、ようこそおいでくだしゃいましたあ」

加蓮「うん。久しぶり、兄上」ジー

つかさ「元気そうで……なにより。うん」ジー

くるみ「?」

加蓮(やっぱ大きいよね)

つかさ(デカ過ぎんだろ……)

くるみ「知盛しゃん、どうかこれからもこの宗盛をしゃしゃえていってやってくだしゃい」

加蓮(平宗盛……名は体を表すって言うけど、ホント胸盛りってカンジ)

つかさ(平らなのに胸盛りとはこれいかに、ってカンジだよな)

くるみ「あの……知盛しゃん? 父上?」

加蓮「あ、う、うん。任せておいて」

つかさ「伊豆に流した頼朝に関しては北条からなんの報告もないんだけど、んー……どうなんだろな」

くるみ「東北の藤原氏の動きも気になりましゅ」

つかさ「だな。あそこは表向き平家一門に従順なんだけど、どうも怪しいんだよな」

くるみ「各地の平家に味方する者たちに、動静の報告をさせた方がいいと思いましゅ」

加蓮「そうとなったら早速。諸国の平家縁の者達に文を書かないとね。えーっと……あ、墨を摺ってなかったけど……いいか」グハッ

くるみ「知盛しゃん!」

加蓮「え?」ツー

つかさ「その吐血で文書くクセ、やめろって言ってるだろ。前から!」

くるみ「身体に悪いでしゅよぉ!」

加蓮「あー……う、うん。つい、ほら」

つかさ「知盛は頭はいいし、武芸にも秀でてるんだけど、身体は弱いからな。それが心配だよ」

加蓮「大丈夫だって。じゃあ文を……」グハッ

くるみ「知盛しゃん!!」

つかさ「大丈夫かな、平家のゆく末……」

森久保乃々「あ、あの、ちょっとご報告がある……んですけど」

つかさ「おお、維盛(これもり)じやねーか」
36 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:09:49.21 ID:wJoYvkKh0
凛「乃々が出てきた! けど、維盛って?」

奈緒「平維盛は、清盛の長男である重盛の子供だから、清盛からは孫にあたる人物だな」

凛「重盛ってどこかで聞いたような……あれ? 私!?」

奈緒「そうだよ! 凛が演じる役だよ。まあ、ナレ死してたけどw」

P「ナレ死してたのは、奈緒もだけどなwww」

奈緒「Pさんの配役だろ!!!」

凛「乃々が私の子供役……がんばって!!」


加蓮「報告って?」

乃々「あの……以仁王(もちひとおう)が、お手紙を書いていまして……」

つかさ「へー。以仁王が手紙を」

くるみ「誰にでしゅか?」

乃々「誰に……というかですね」

加蓮「? 誰?」

乃々「特定の誰かだけ、ということではなくて……」

つかさ「まさか、維盛。以仁王が手紙を書いた相手、っていうのは……」

くるみ「え?」

加蓮「諸国の源氏の縁者に、決起を促す手紙を書いてるってこと!?」
37 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:11:03.42 ID:wJoYvkKh0
凛「以仁王って誰?」

P「つかさ演じる清盛は、平家の政治力を万全にするために自分の娘を時の帝である高倉天皇に嫁がせていた」

凛「するとどうなるの?」

奈緒「清盛自身が時の天皇の義父になるんだよ。それに平家一門も、天皇と親戚になるわけだからそれが権威にもなる」

P「この清盛が自分の娘を入内、つまり天皇の奥さんにしたことで割を食ったのが以仁王だ。この方は高倉天皇の異母兄で、清盛が高倉天皇のバックについて、更にその子を天皇にしたことで、自分が天皇になることができなくなった」

凛「なるほど。それで自分が天皇になろうと、各地の源氏縁者に決起を促したんだね」
38 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:11:36.28 ID:wJoYvkKh0
望月聖「おもちもちもちもちもちおもち〜♪ 私は以仁王。この令旨を全国の源氏や東国武者のみなさんに届けてください、源行家」

一ノ瀬志希「かしこまり〜にゃはは」

聖「私が帝となることができたあかつきには、協力してくださった"武士(ギャル)"のみなさんには“馬鈴薯蒸し潰し捏ね揚げ(コロッケ)”を恩賞としてさし上げますから!」

志希「いやあ〜普通に所領とか官位の方がいいと思うよ?」

聖「ではそうします。"武士(ギャル)"のみなさんによろしく……あれ?」

シーン

聖「もういない……」
39 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:12:16.39 ID:wJoYvkKh0
忍「頼朝さん! 以仁王様から文が届いてるよ」

美嘉「以仁王……後白河法王の皇子からなんの……」

まゆ「頼朝さぁん? なんて書いてあるんですかぁ?」

美嘉「……平家を倒せ、という令旨だよ」

忍「平家追討を!? じゃ、じゃじゃじゃ、じゃあ!!」

まゆ「ついに決起するんですかぁ!?」

美嘉「……ううん。行かないよ、アタシは」

志希「え? ……なんでなんで? 立って決起しちゃおうよ。あたしと共に源氏の世を作らない?」

美嘉「今はまだ、その時じゃない」


奈緒「安徳天皇が即位したことで、以仁王は天皇になることができなくなったから、この以仁王は、諸国の源氏に平家を倒せという令旨……つまり指示を出した。当然この令旨は頼朝にも届いた」

凛「安徳天皇は、つかさ演じる清盛がバックについてるから、源氏を頼ったんだね」

奈緒「ところがさっき見た通り、このことは平家に知られてしまって、以仁王は宇治で平家と戦うことになって敗死してしまう」

凛「じゃあ美嘉、決起しないで正解だったんだ」ピンポーン

P「ところが事態は、そう簡単には治まらなかった」

凛「え? どうなるの?」

奈緒「以仁王は敗れてしまったんだけど、平家を倒せという令旨を出しまくっていたことは平家に知れ渡ってしまったんだ」

P「これにより、頼朝は立場が危うくなる」
40 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:13:08.44 ID:wJoYvkKh0
つかさ「以仁王は排除したけど、やっぱそうだよな。平家に対抗しようとすると、みんな源氏を頼るよなー……やっぱ源氏は倒さないと」

くるみ「どうしゅるんでしゅか?」

つかさ「とりあえず、以仁王の令旨を受け取った者は全員処罰な」

くるみ「はぁい」


忍「頼朝さんも、令旨を受け取ってたから……」

佐織「処分は免れないということに……」

美嘉「アタシだけならまだいいんだけど、令旨を受け取ってた源氏に心を寄せる人たちがアタシを頼ってきている……」

志希「あたしとかね〜」

忍「行家さん……あなた、以仁王と一緒に戦ったんじゃなかったっけ?」

志希「途中で逃げ出して来ちゃった。にゃは」

沙織「……」ジロ

忍「それでどうするの、頼朝さん」

佐織「私たち北条はもう、頼朝さんとともにいくと決めてますけど」

美嘉「……このまま座っていても、平家から攻められるだけ。決起するしかないかな」

忍「おおっ!」

佐織「その言葉、待っていました!」

美嘉「東国の源氏に号令の文を出すよ。その上でアタシたちは平家一族、山木兼隆を討つ☆」

志希「やっちゃえ、やっちゃえ〜」

沙織「……」ジロッ
41 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:13:52.21 ID:wJoYvkKh0
加蓮「ねえねえ、山木兼隆ってどこかで聞いたような気がするんだけど」

凛「うん。えっと……あ、もしかしてまゆと結婚しそこなった」

奈緒「そう。婚礼からまゆが逃げ出してきたあの山木兼隆だよ」

P「北条一族も平家の一族ではあったんだけど、やはり末族で。それでそもそも宗時はより平家と縁を深めようと、最初に山木兼隆と政子を結婚させようとしてたんだ」

凛「じゃあこの山木兼隆って人は、まゆに逃げられて結婚ではきなかった上に、そのまゆと結婚した相手と戦うことになるの?」


まゆ「頼朝様ぁ。絶対に負けないでくださいねぇ」

美嘉「うん。それに……山木兼隆にはアタシも思うトコあるから」

まゆ「え?」

美嘉「政子の元フィアンセ、アタシが倒してくるよ」

まゆ「頼朝様ぁ////」


加蓮「こういうのいいなあ、ちょっと憧れるなあ」

奈緒「な! な!! なあ!!!」

凛「美嘉が演じてるんだけど、男らしいよね。当然、勝つんだよね? 頼朝は」

P「うむ。頼朝が決起したことで諸国の源氏ゆかりの武士が集まり、山木兼隆は倒されてしまう」

加蓮「じゃあここから美嘉ちゃんの連戦連勝の天下取りが始まるんだ」

奈緒「いやー……それが」

凛「え?」

P「頼朝はこの後、相模国……今の神奈川にいた平家の家臣、大庭一族に破れて敗走する」

加蓮「えー負けちゃうの?」

凛「加蓮は平家一門を演じてるのに、残念がるんだ」

加蓮「アタシ、美嘉ちゃん好きだもん」

奈緒「その美嘉だけど、敗走して山中に身を隠していた。平家側も必死で頼朝を探したんだけどその役目を担ったのが……梶原景時」

凛「あ、最初に奈緒とプロデューサーが言ってた」
42 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:14:45.52 ID:wJoYvkKh0
赤城みりあ「視線関知いい感じ♪ うーん。ここにもいないかあ、カン違い。じゃあ次の……あれ? こんな山中に洞穴が。よーし、入ってみようっと」

美嘉「義時、戦いに敗れ宗時を亡くして……ごめんね」

忍「兄上は、いえ北条は頼朝さんに賭けたんです。それにまだ一戦負けただけ、最後に頼朝さんが天下を取れば、北条も勝ちです」

美嘉「……そうだね。ここから巻き返さないと……」

忍「あれ、そういえば行家さんは?」

美嘉「気がついたらいなかったよ。逃げちゃったのかもね」

忍「いつも気がつくと、いなくなるんだよね。あの人」

美嘉「私の叔父に当たる人ではあるけど、父上が清盛にやられた時も逃げちゃってたそうだからね。あの人……! 誰か来る!」

忍「平家側の者!?」

みりあ「おじゃましまーまさかこんな所に源氏の“棟梁(カリスマ)”はいないかな……あ!」

美嘉「……」

忍「……」

みりあ「……その白の“具足(ルーズソックス)”は源氏の……」

美嘉「……」

忍(いざとなったら、私が差し違えても……)

みりあ(この人が源氏の“棟梁(カリスマ)”頼朝……)

美嘉「……」ニコッ

みりあ(!!!)

みりあ「……ここには、だーれもいなかったなあ」

忍「え?」

みりあ「って、大庭様には言っておくね」

美嘉「それであなたは大丈夫なの?」

みりあ「うん。それでもしまた頼朝さんが戦えるようになったら、みりあを“家臣(いつメン)”にしてね」

美嘉「いいよ★」

みりあ「じゃあ……さよなら」

忍「た、助かったあ……」

美嘉「まだ会ったことないけど、アタシの弟もあんな感じなのかな」

忍「え?」

美嘉「ふふっ、なんでもない★ さあ、ここから巻き返すよ」

忍「はい!」

保奈美「この言葉通り、ほどなく梶原景時は大場の下を去り、頼朝の家臣として合流することになるのです」ベンベン
43 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:15:25.00 ID:wJoYvkKh0
奈緒「頼朝こと美嘉は、ここから安房国(あわのくに)まで船で逃げる」

凛「安房国って、徳島県?」

P「それは阿波。安房国は今の千葉県南部だな」

奈緒「ここで頼朝は各地の源氏ゆかりの者に書状を送り、源氏の勢力が結集した」

加蓮「どんな勢力なの?」

奈緒「今の千葉県にいた上総氏や千葉氏に、神奈川の三浦氏とかだよ」

凛「へえ、今の千葉県に上総とか千葉って一族がいて、神奈川に三浦って一族がいたんだ」

加蓮「すごい偶然だよね」

奈緒「いや、逆だよ! 住んでる土地の名前を一族の名前にしたんだよ!!」

P「頼朝は鎌倉を拠点と定めて、武士を集めて勢力の地盤を整えた。後の鎌倉幕府の礎だな」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2022/01/09(日) 09:16:03.70 ID:Pb20PcbDO
井上孝司氏が「平」な「胸盛り」とか言ってたな……
45 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:16:18.93 ID:wJoYvkKh0
莉嘉「お姉ちゃんが決起した!? ホントに!?」

亜子「いや待ちや、義経ちゃん。まずはアタシの話を聞き」

莉嘉「えー、なに?」

亜子「アンタの兄の頼朝はんは今、鎌倉で地盤固めをしとる」

莉嘉「鎌倉だね? わかった!」

亜子「だから待ち、て。今はまだ行ったらアカン」

莉嘉「やだ!」

亜子「あんな、板東の武者たちは続々と頼朝はんに忠誠を誓うていっとる。けど、そうでない者もおる」

文香「常陸の佐竹……などですね」

亜子「せやで。あんな義経ちゃん、今平家は大軍を頼朝はんに差し向けようとしとる。佐竹らはあわよくば平家と呼応して、頼朝はんを挟撃して討つつもりなんや」

莉嘉「なら、なおのこと急いでお姉ちゃんを助けに行かないと!」

亜子「それで義経ちゃんまで死んでもうたら、源氏嫡流の血筋はどないなってしまうんや!」

文香「! 申し訳ありません……」

亜子「へ?」

文香「私はあなたを、機会があれば自分のいいように義経様を使う気ではないかと……疑っていました」

亜子「謝らんかてエエて。半分はそんな気やったし」

文香「まあ……!」

亜子「けど今はちゃうで。義経ちゃんを鍛えてて、ようわかったわ。あの八幡太郎義家の血筋は、伊達やないわ」

文香「義家様は、陸奥での戦いで有名ですから、あなたはよく……ご存じなのですね」

亜子「八幡太郎はおそろしや、ゆうてなあ」

莉嘉「あのー……もうアタシ、鎌倉に行ってもいい?」

亜子「だからアカンて。頼朝はんと義経ちゃん、2人とも平家と佐竹に挟まれたらどないすんねん!」

莉嘉「別にどうもしないよ?」

亜子「へぇ?」

莉嘉「その時は、一緒に戦って……戦って……戦って……もし負けちゃったらお姉ちゃんと一緒に死ぬ☆」

文香「!」

亜子「一緒に、て……死ぬ、て……あ、あんな義経ちゃん。死んだら終わりやないですかぁ?」

莉嘉「お姉ちゃんと一緒なら、それでアタシはいい☆」

文香「……ふ」

莉嘉「え?」

文香「うふふふふふふ。そうですね、死んだらその後どうなるかなど、死んでしまえばどうでもいいですものね」

亜子「んなアホな。死んで花実も咲くモンやないで?」

莉嘉「行くったら、行く☆」

亜子「アタシは許さへんで」クルッ

莉嘉「あれ……行っちゃった?」

文香「許さないけど、止めない……そういうことですよ。きっと」

莉嘉「そっか……今までありがとう。このご恩は、決して忘れないから☆」ペコリ

文香「では行きましょう……」
46 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:17:18.25 ID:wJoYvkKh0
莉嘉「もうそろそろ鎌倉?」

文香「いいえ……ここはまだ、下野国……」

莉嘉「まだー……もう!」

文香「それにしても秀衡様、ああ言いながら私たちの手勢に……と、騎馬の武士を後から送ってくださったのには感謝……ですね」

莉嘉「最初、追っ手かと思って戦うとこだったよね☆ でもそっか、やっぱり仲間とか連れて行かないと会ってもらえないもんなんだ」

文香「手勢なり、手土産を持参は弓矢の家の習わしですから……ですがもう少しなにか、腕に覚えのある者でも加えたいですね……」

莉嘉「えー? 今からそんな人、探せないよ」

文香「いえ……下野国には確か、弓の腕で有名な一族がいたはず」

莉嘉「そうなの?」

文香「確か一族の名は……那須(なす)……」

水野翠「呼びましたか?」

莉嘉「え? あの、もしかして那須……さん?」

翠「そうです。弓にかけては並ぶ者なし、那須。私は資隆(すけたか)」

莉嘉「ホントに!? “僥倖(ラッキー)”アタシと一緒に平家を倒そうよ☆」

翠「……」

莉嘉「ダメ?」

翠「……いえ。あなた様は、源氏の方ですか?」

莉嘉「うん☆ アタシは頼朝お姉ちゃんの弟、義経☆」

翠「では源氏の御曹司……大変失礼をいたしました。私の息子が1人、既に富士川の源氏方に向かいました」

莉嘉「え? なんの話?」

翠「平家の官軍が頼朝征伐に出陣し、頼朝様も東国の武者を集めてもうすぐ合戦だと……違うのですか?」

莉嘉「もう始まるの?」

文香「急ぎませんと……!」

莉嘉「那須資隆さん、教えてくれてありがとう。じゃあ、アタシいそぐから!」

翠「あ……お、お待ちください!」

莉嘉「え?」

翠「私の息子を、郎党にお加え願えませんか」

莉嘉「え?」

文香「今ご子息は、富士川に向かわれた……と」

翠「その弟がおります」
47 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:20:05.26 ID:wJoYvkKh0
福山舞「那須与一宗隆(むねたか)です。与一(よいち)とお呼びください。よろしくお願いします!」ペコッ

莉嘉「え? アタシも小柄だけど、まだ小さい」

文香「資隆様……失礼ですが、この子は……」

翠「心配は無用にございます。見た目で判断なされますな。私の息子たちの中で、一番の弓の射手がこの与一です」

莉嘉「11人も兄弟がいて、この子が一番すごいの!? うわあ!! アタシと一緒に平家を倒そうね☆」


凛「なんで兄弟の人数が11人って、莉嘉はすぐわかったの?」

奈緒「与一って名前は、11を意味してるからだよ」

加蓮「なんで?」

P「1から10までがひとまとまりとして、それにさらに1を与えるから……かな」

奈緒「まあだいたいこの頃の武士は、生まれた順に何々郎って名前をつけるから」

凛「えっ!?」

奈緒「なんだよ凛、急に」

凛「さっき亜子が源氏の誰だかのことを、八万太郎って言ってたよね!?」

加蓮「じゃあその人、八万男なの!? 八万人兄弟!?」

奈緒「八万太郎じゃないよ!! 八幡太郎だよ、源義家は!!」

加蓮「そういえば、私も気になってたんだけど」

P「なんだ?」

加蓮「莉嘉ちゃんの義経は、九郎って名乗ってたじゃない」

凛「うん。九郎牛若丸とか、九郎義経って」

加蓮「でも確か五条大橋のシーンで文香さんの弁慶が、義朝の八男の名前が九郎牛若とかって言ってたじゃない。あれ台本が間違ってるなら、早めにリテイク出した方がいいよ」

奈緒「いや、義経は八男で合ってる」

加蓮「え?」

凛「じゃあなんで、九郎なの?」
48 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:20:39.79 ID:wJoYvkKh0
奈緒「頼朝や義経からは叔父さんにあたる人、つまりお父さんの弟だな、それに為朝(ためとも)って人がいたんだ」

P「有名な、鎮西八郎為朝だ」

加蓮「凛、知ってる?」

凛「全然」

奈緒「まあ、あたしも椿説弓張月でしか知らないしな」

P「歌舞伎の演目にあるんだが、とにかくものすごい豪傑で、ものすごい弓の射手だったんだ」

奈緒「で、その叔父さんとおんなじ八郎はちょっと恐れ多い、ってことで八郎は飛ばして九郎にしたらしいんだ」

保奈美「※諸説あります」

加蓮「でも義経も、後に名前が残るようなすごい武士になったんだから、八郎でも良かったかもね」

凛「まあ生まれた時にはまだ、その子がどんな大人になるかなんてわからなかっただろうから」

P「そうか、あれだ。九郎って名前をつけられたから義経は苦労するようになったのかもな。ははははは」

加蓮「……」

凛「……」

奈緒「……」

P「あ、あれ? よ、よし保奈美。物語に戻るぞ」

保奈美「……」

P「保奈美ー! 進行! ナビゲーション!」

保奈美「……それでは下野国那須の鷲子山上神社へ……行ってらっしゃい」

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪ ウォワォオイェ〜ェ、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪」ベン

加蓮「なんだか心なしか、声にハリがないよね……」

P「……」
49 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:21:21.21 ID:wJoYvkKh0
莉嘉「うわ、風つよーい!」

文香「義経様、お気をつけてください……こんな崖の上でなにを……」

翠「与一の腕の程をお見せいたします。ここ鷲子山の崖より、私がまず矢を射ます。次いで与一が私の射たその矢を射落とします」

文香「え!? うった矢を射落とす……とは、飛んでいる矢を狙って射るということですか!?」

莉嘉「そんなことできるの!?」

翠「はい」

文香「ものすごい早さで動いている的を当てることになりますよ!?」

翠「はい」

文香「後から射るということは、先の矢よりも速く矢が飛ばねばなりませんよ!?」

翠「はい」

文香「この不規則で強い颪の中で……ですよ!?」

翠「はい」

文香「まさしかし……そんな……」

莉嘉「じゃあ与一くん、やってみせて☆」

舞「はい!」

文香「あの……なぜ与一さんは、目を閉じているのですか……?」

翠「私が射る所を見ていたら、その飛び具合や方角、距離から射落としても当たり前ですから」

文香「いえそれ、全然当たり前ではないですけど……」
50 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:22:11.95 ID:wJoYvkKh0
翠「ではいきますよ、与一……はっ!」

保奈美「父、資隆の射た矢は、ひゅっという音を発し中空へと飛びます。その音を聞いた与一、カッと目を見開くと飛んでいる矢を見据えます」

舞「ひいふっ!」

保奈美「目を見開き、矢を見、つがえていた矢を放つまで刹那ほどもあったでしょうか、風に巻かれるように飛ぶ父の矢を、与一の矢は襲うように一直線に飛び、そして!」

カッ

文香「当てた……射落とした……本当に……」

莉嘉「すっごーい☆☆☆ すごいすごいすごい」

舞「あぁん!?」

文香「……え?」

舞「私の腕前なら当然でしょう!?」

莉嘉「な、なになになに? どうしたの急に目つきも口調も変わって」

翠「すみません。与一は弓の腕は間違いないのですが、兄の影響か弓を引くとしばらく、人格が変わるのです」

文香「なんと……」

莉嘉「うーん。でもそれも面白いから、ごうかーく☆」

翠「ともあれ、ご覧の通りの腕前です。義経様、どうぞこの子を郎党にお加えください」

莉嘉「ロート? よくわかんないけど、アタシと一緒に平家を倒してくれるんでしょ? 与一くん」

舞「……っ」

文香「?」

舞「そ、そうです」

莉嘉「やったあ☆ これからろしくね、与一くん」

翠「必ずや義経様の元で働き、源氏の世を作るのですよ」

舞「……わ、わかりました」

文香「……」
51 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:23:12.69 ID:wJoYvkKh0
保奈美「さて、時は少し戻り京の都。頼朝決起の報は平家にも届きます」ベベン

つかさ「だから言ったんだよ! 禍根は断つべき、って。ああ……あの時、頼朝はやっぱり……」

加蓮「まあまあ。今更しょうがないよ」

くるみ「とにかく頼朝をなんとかしないとぉ」

つかさ「よし。維盛!」

乃々「は! はいぃ……?」

つかさ「行って、頼朝をやっつけてこい」

乃々「はいいいぃぃぃ!?」


乃々「いきなり大軍の大将とか、むりくぼなんですけど……あうぅ」

上田鈴帆「心配はなかよ。維盛しゃんは、ドーンと構えちょればよかばってん」

乃々「なかなかそういう気持ちにはなれないんですけど、伊藤忠清さんがいてくれて頼もしいんですけど」


P「平家物語ではこの時、維盛は七万の兵を率いていた、と書かれている」

加蓮「な、七万!? さいたまスーパーアリーナでもそんなにお客さん入らないよ!?」

奈緒「SSAはキャパどのぐらいだっけ?」

P「約3万7千人だから、ほぼ倍だな」

凛「これなら乃々も楽勝だよね?」

奈緒「ところが」

凛「えっ?」

P「この維盛の軍は、出発の時に」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2022/01/09(日) 09:23:41.52 ID:Pb20PcbDO
みりあが広常を殺すのかよ
53 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:23:57.97 ID:wJoYvkKh0
つかさ「さあて、じゃあ兵も集めたし出陣を……あれ? 維盛?」

くるみ「維盛しゃんは、侍頭の忠清しゃんが今日は日が悪いって言ったら、じゃあ日を改めて……ってどこかに隠れちゃいましゅた」

つかさ「日を改めて、って……あのな! 兵はもう集まってるんだぞ!! 糧秣だって要るし士気も下がるだろ!!!」

くるみ「そう思って探すんでしゅけど、どこにもいなくて……」

つかさ「ああ、もう!」

P「こうして維盛軍は、出発が遅れた」

凛「で、でも遅れたからっていっても七万も兵がいたら大丈夫だよね? ね?」

奈緒「それが結果的にはこの遅れが致命的な失敗になるんだよ」

凛「どうして!?」

P「平家の兵が来る前に、頼朝が東国で勢力を回復して、そして大軍を集めていることがあちこちの武士達に伝わった。それにより、平家につかずに様子見をしたり頼朝に味方する者が続々と現れた」

加蓮「急いで行った方が良かったんだ」

奈緒「ここらへん、後で出てくると思うけど義経が強かったひとつの要因との差なんだよな」

凛「あのさ、もしかして乃々は負けちゃう……の?」

P「じゃあそれを見ていこうか。舞台は……」

保奈美「富士川、今の静岡県になります」ベンベンベン
54 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:24:35.14 ID:wJoYvkKh0
乃々「それにしても、都を出たときは七万いた兵がずいぶんと減った気がするんですけど」

鈴帆「途中で逃亡したり頼朝に寝返る兵が出たばってん、今は正味二千ほどに」

乃々「それで対する頼朝軍は……」

鈴帆「東国の有力武者が集まって、およそ四万」

乃々「……そうですか」

鈴帆「ばってん、寄せ集めん七万より今いる兵の士気は」

乃々「明日はどうなるのか、不安なんですけど……」

鈴帆「維盛様……」


鈴帆「都1の“鷹戦士(イケメン)”と称された維盛様のあげな顔はみたくなか。この上は、この忠清の体を張ったギャグで笑顔を取り戻してもらうばい……ん?」

鈴帆(誰ばい、こげな川の中に入ってくる者どもは……あれは平家の“武士(ギャル)”やなかな。どれ……近くば行って誰何しちゃるばい)

白菊ほたる「逸見光長さん、ちゃんと……いる? 暗くてよく見えなくて……」

関裕美「うん。ちゃんといるよ、武田信義さん。私たち、姓は違うけど双子の兄弟なんだよね」

ほたる「説明的なセリフ……とってもナイスです。光長さんがお兄さんで、私が……弟。甲斐源氏として源氏の嫡流である頼朝様の目の前で……」

裕美「うん。私たちが手柄を立てて、源氏内で功名をうちたてようね」

ほたる「その為に平家の背後を突こうと、今私たちは夜襲を……たくさんいる水鳥に紛れようとこうして翼も身につけて……あれ?」

裕美「誰かいるのかな?」

鈴帆「じゃーん!」
55 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:30:05.42 ID:wJoYvkKh0
https://i.imgur.com/hJZ6Qce.jpg
伊藤忠清
56 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:30:42.18 ID:wJoYvkKh0
ほたる「き……」

鈴帆「お前さんらは、誰やと?」

裕美「きゃあああーーーっっっ!!!」

ほたる「み、水鳥のおばけえええーーー!!!」

鈴帆「いや、鳥のカッコしとるんは、同じやなかじゃ……」

裕美「いやあああぁぁぁーーーっっっ!!!」

ほたる「きゃあああぁぁぁーーーっっっ!!!」

鈴帆「そ、そんなに騒ぎよったら水鳥が……」

バサバサバサバサバサーーー!!!

鈴帆「ほれみいいいーーーっっっ!!!」

裕美「いやあああぁぁぁーーーっっっ!!!」

ほたる「うわあああぁぁぁーーーっっっ!!!」

バサバサバサバサバサバサバサバサバサーーー!!!

乃々「な、ななな、なんですか!? なにごとですかなんですか!? も、もしかして源氏の……頼朝の夜襲ですか!?」

バサバサバサバサバサバサバサバサバサーーー!!!

乃々「に、逃げるんですけど! 都に……全軍で逃げるんですけど!!!」

保奈美「こうして水鳥の羽音に驚いた平家の官軍は、戦わずして撤退。初めて平家の本軍と相対した頼朝は、戦わずして勝利を収めたのでした」ベンベン
57 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:32:01.68 ID:wJoYvkKh0
加蓮「え? 戦わずしてって、これで終わり? 富士川の戦いってこれで終わりなの? 美嘉ちゃんと平家の官軍との直接対決」

P「そう。富士川を挟んで対峙した両軍だったが、平家側は水鳥の羽音に驚いて逃げ出してしまった」

凛「対峙した時にはかなりの兵数の差があったんだよね? それなら下手に戦わずに逃げて正解かも知れないけど、乃々はこの後京まで無事に逃げられるの?」

奈緒「それは後で見ていくことになると思うんだけど、実はこれが頼朝が直接平家軍と対峙した最後の戦いになったんだよな」

加蓮「最後? じゃあもう美嘉ちゃんは平家とは戦わないの?」

奈緒「直接は、な。この後、平家軍と直接戦っていくのは頼朝の弟になるんだよ」

加蓮「あ、莉嘉ちゃんか!」

奈緒「まあ他にもいるんだけどな」

凛「?」

P「この富士川の戦いの直後、戦いには間に合わなかったが義経が奥州から駆けつけてくるんだ」

加蓮「待ってました、利嘉ちゃん!」

P「では舞台はこのまま富士川から少し移動した黄瀬川で、物語を進めるぞ」

凛「乃々……無事でいて、乃々……」

保奈美「ベンベン」
58 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:32:52.05 ID:wJoYvkKh0
利嘉「だーかーらー! アタシはお姉ちゃんの弟なんだって!」

忍「? どうしたの? 陣の外が騒がしいみたいだけど」

みりあ「あのね、頼朝さんの弟だって言い張ってる人が来てるんだって。でも、手勢もわずかでとてもそうは見えないって話なんだよ」

忍「頼朝さんの弟……それって前に頼朝さんが言ってた……ちょっと見てくるね」


利嘉「どーして信じてくれないのー! もう、お姉ちゃんに会わせて、って!!」

文香「義経様……ここは、私にお任せを……」

利嘉「え? あ、うん」

文香「陣前の皆々様方にはお役目ご苦労様に存じます! こちらにおわすは……」

忍「確かさっきの声は、こっちの陣門から……あれかな?」

文香「清和の帝第六の皇子貞純親王の皇子六孫王より七代目、相光院八幡太郎義家より長家を御守りたるよし。過ぐる保元平治の乱に非業の死を遂げた源氏の嫡流義朝が一子、八男の九郎牛若丸が元服をして今は九郎義経。ご長兄頼朝様の挙兵に一臂の与力をせんとはせ参じました。何卒、お目通りをお願いいたします……!」

忍「堂々とした名乗り……間違いないね。頼朝さんの弟さんかあ、確かにちょっと似てるかも。あー、えっと義経さんだっけ。こちらへどうぞ」

利嘉「会わせてくれるの!? でもなんで? アタシが同じこと言ってもダメだったのにー」

文香「言っている内容は同じでも……言い方が違ったのですよ……きっと。ふふっ」

莉嘉「そういうもの? ま、いいや☆」

忍「? さあ、共の方も一緒にこちらへ」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2022/01/09(日) 09:33:25.30 ID:Pb20PcbDO
(実際に頼朝軍側は攻撃を仕掛けてないのはわかっているが、水鳥云々はフィクションとも言われている←情報ソースが勝った側のそれなんでね)
60 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:33:32.47 ID:wJoYvkKh0
美嘉「弟が!? 九郎がアタシに会いに!? アタシの挙兵を知って、駆けつけてきてくれたの!?」

忍「私が見て来たんだけど、確かに目もととか頼朝さんにそっくりだよ」

美嘉「九郎が……生き別れのアタシの弟が……アタシの為に……」

忍「こちらに通してもいいよね?」

美嘉「もちろん! はやく、はやくここへ!!」

忍「こちらが! 頼朝さんの弟君、義経さんだよ!」バーン

文香「……私は違いますよ?」

忍「え?」

美嘉「九郎! 九郎……なの? 九郎だよね!」

利嘉「お姉ちゃん!」

忍「え? あっち?」

文香「似てないでしょう……私は」

美嘉「よく来てくれたね! 会いたかった……会いたかったよ」

利嘉「アタシも会いたかったよ! お姉ちゃん☆」

美嘉「いつか会えるんじゃないかと思っていたよ!」

利嘉「うん! アタシもいつか会えると思って、奥州で修行してきたんだよ☆」

美嘉「奥州……そうか、藤原氏の元で修行を。そうだ、九郎に会わせたい人がいるんだ。義時、蒲の冠者は」

忍「蒲殿ですか? いつものように“鍛錬中(メイク中)”だと思いますけど」

利嘉「かばのかじゃ? かばどの?」
61 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:34:43.79 ID:wJoYvkKh0
P「さてここで、スペシャルゲストに来てもらっている」

奈緒「え? もしかして、話の流れからすると源範頼(のりより)役の娘か?」

凛「源っていうことは、源氏の誰かなんだよね?」

加蓮「でも今話題になってたのは、かばの冠者とかかば殿っていう人みたいだったけど」

奈緒「範頼は源義朝の六男なんだ。つまり、頼朝からは弟で義経からは兄にあたる人で通称が蒲殿」

加蓮「そのかば、っていうのは?」

P「範頼は遠江国蒲御厨……今の静岡県浜松市あたりで生まれ育ったんだ。蒲御厨(かばのみくりや)出身だから蒲の冠者とか蒲殿って呼ばれていたんだ」

凛「なるほど。浜松だから、蒲焼きで蒲なんだ」

奈緒「いや、違うぞ。範頼の蒲は地名であって、蒲焼きの蒲じゃないから」

加蓮「でも同じ蒲っていう字だよね?」

奈緒「そうだけど、蒲焼きは関係ないんだって!」

P「さて、ゲストの登場だ。蒲の冠者こと範頼役は……」

本田未央「はいはーい! 今回は源範頼役を仰せつかりました、本田未央でーす!! よろしくね」

凛「あ、未央がやるんだ。源なんとかの、蒲のなんとか」

未央「しぶりーん。私の演じる役ぐらいはおぼえてようー。範頼だよ、のりより。ノリがよい本田未央で、ノリよい範頼!」

加蓮「あ、確かにちょっと覚えられたかも」

未央「ありがとう、かれん。じゃあゴホウビと差し入れで……これ!」

凛「うな重? 食べていいの?」

未央「蒲焼き食べてもらって印象づける。蒲焼きだから、蒲の冠者! 蒲殿の私、本田未央をよろしく!」

凛「ほら、奈緒。やっぱり蒲焼きだからだって」

奈緒「いや、未央のその蒲焼きは名前を印象づけるためだろ!?」

未央「? さあさあ、かみやんもどうぞ」

奈緒「あ、ああ。確かに美味しそうだな……いただこうかな」

奈緒「ご一緒にポテトもいかがですかー」

加蓮「やった!」
62 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:35:28.35 ID:wJoYvkKh0
凛「未央、この範頼ってどんな人なの? なんで未央が演じることに?」モグモグ

未央「範頼って人は頼朝がお兄さんで、義経が弟なんだけど私もお兄と弟がいるから、そういうとこ共感できるかなって思ってるんだ」

加蓮「なるほど」モグモグ

未央「ドラマの中ではお兄の頼朝は武士のカリスマだし、弟の義経は戦の天才。そういう2人に挟まれた人物の心境を演じられたらって考えてます」

奈緒「話を聞いてたら、未央にぴったりな役な気がしてきたな」モグモグ

未央「じゃあ私の登場シーンから……どうぞ!」

保奈美「……」モグモグ
63 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:36:40.90 ID:wJoYvkKh0
嘉「あそこで“鍛錬(メイク)”してるのが、義経のもう1人のお兄さん、蒲の冠者こと範頼だよ」

未央「かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ、かばでぃ」

利嘉「……なんであのお姉ちゃんは、変な構えをして動きながらずっと『かばでぃ』って言ってるの?」

美嘉「アタシもよくはわかんないんだけど、天竺(※今のインド)から伝わった“肉体鍛錬(スポーツ)”なんだって。その名も、かばでぃ」

利嘉「あ、それでかばの冠者とか、かば殿って呼ばれてるんだ」

美嘉「そうそう★」


奈緒「歴史をねつ造するなー! 違うだろ!! 蒲の出身だから、蒲の冠者で蒲殿だろ!!!」

未央「え?」

奈緒「だいたい、この時代にカバディがインドから日本に伝わってるわけないだろ!」

未央「いやそうとも言い切れないよ。カバディは起源がマハーバーラタにあると言われていて、その成立は紀元前4世紀頃から紀元後4世紀頃だから、平安後期に日本に伝わっていても不思議はないんだよ」

奈緒「あー……そう言われると……」

加蓮「すごい。奈緒が言いくるめられている」

凛「あれが未央が時々見せる、成績常時優秀者としての一面だよ」

未央「あくまでドラマだから独自の解釈があってもいいし、私今回の役を通じて頼朝や義経に比べるとマイナーだった範頼を有名にしたいんだよ、かみやん」

奈緒「なるほど。そういう意気込みがあったんだな」

未央「なので範頼を演じるのはノリがよい本田未央で、ノリよい範頼。蒲の冠者だから好きな食べ物は蒲焼きで、特技はカバディ」

加蓮「じゃあ好きな動物は?」

未央「え? ラクダ?」

奈緒「なんでそこはカバじゃないんだよ!?」

未央「いやほら、カバが日本に初めて来たのは1911年だからさ。平安後期にはまだ知られてないと思うんだよね」

奈緒「そこはドラマだからの独自解釈はないのか……」

凛「ラクダはもうこの頃、知られていたの?」

未央「599年に百済から推古天皇にラクダが献上された、って記録が残ってるんだって」

凛「へえ、そうなんだ」
64 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:37:58.70 ID:wJoYvkKh0
莉嘉「お姉ちゃん、あんなにアタシに会えたら喜んでくれたよ☆」

文香「良かったですね。さすがに源氏の“棟梁(カリスマ)”と感じ入りました……」

莉嘉「とーぜんだよ、アタシのお姉ちゃんだし。それにもう1人お姉ちゃんがいて、やっぱり馳せ参じてたなんてちょっとアタシかんどー。あ、与一くん」

文香「……どこへ行っていたのですか?」

舞「あ、えっと……兄に会いに」

莉嘉「あ、そっか。与一くんのお兄さんも源氏側に参加してるんだっけ」

舞「はい。兄の十郎は、三浦様の元で働くようです」

文香「……与一さん、少しよろしいですか?」

舞「え?」

文香「気になっていたのですが、与一さんのお兄さんはどこにいるんですか……?」

舞「……」

莉嘉「もー聞いてなかったの? 弁慶くん。与一くんのお兄さんは、三浦の……」

文香「その他の……お兄さんは?」

莉嘉「え?」

文香「あなたは、与一。お兄さんは10人いるはず。他の……9人のお兄さんは、どちらに……」

舞「隠すつもりはありませんでしたけど、個人的なことなので黙っていました。他の9人の兄たちは、全員平家側にいます」

莉嘉「えー!?」

文香「やはり……少し前までは、源氏が再び立ち上がるなど、誰も思っていませんでしたからね……」

舞「はい。だけどここにきて風向きが変わりました」

莉嘉「ま、待って待って。与一くんはいいの?」

舞「兄と戦うことが、ですか? はい」

莉嘉「だってお兄さんと戦うなんて」

文香「義経様、すべては……那須の血を残すためです」

莉嘉「どゆこと?」

文香「敵味方に兄弟が分かれていれば、どちらが勝っても誰かは生き残ります」

舞「そして生き残った方は、敵に回った方の命乞いをします。たとえそれが叶わなくても……那須の血筋は残ります」

利嘉「えー? なんかヘンだよそれ。兄弟みんなで力を合わせた方がいいじゃん」

舞「……そうですね。でも世の中、本人達の思いとは別に敵味方になってしまうことはありますから」

利嘉「アタシとお姉ちゃんは、絶対にそうはならないけどね☆」

文香「……」

文香(もしそうなった時……義経様はどうされるのでしょうか……)
65 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:38:51.87 ID:wJoYvkKh0
みりあ「頼朝さんの実の弟……? 今まではみりあのことを『弟みたい』って頼朝さんは言ってくれていたのに、また本当の弟が……?」


奈緒「さて、凛。そろそろ凛が興味を持っている話題に戻るぞ」

凛「え?」

P「平維盛一同は、富士川から京の都へと敗走していったんだけど、。その間に従う武士たちは逃亡したりして散り散りに離ればなれになっていった」

凛「そうだった! 大丈夫なの……乃々、乃々!」

P「そしてここで、この物語の一編を担う人物が新たに登場する」

凛「この乃々の危機に!?」

加蓮「まあ乃々ちゃんはともかくとして、誰?」

奈緒「源義仲(よしなか)。一般的には木曽義仲として知られる人だよ」
66 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:40:07.70 ID:wJoYvkKh0
村上巴「殿、殿! 義仲様!!」

日野茜「ボンバー! 元気があれば、なんでもできる!! おお、これは巴ちゃん。なにごとですか!?」

巴「奥さんに向かって巴ちゃんはなかろうが。いや、知らせが入ったんじゃがあの平維盛が京へ敗走しとるけん、もうすぐ近くを通るげなけど、どげする?」

茜「平維盛が……至急、馬の準備を!」

巴「お、やるんかい? よし待っとりんさい。すぐに兵を集めるけえ」

茜「兵は要りません!」

巴「あ?」

茜「私の乗る馬だけ、用意してください!」


巴「あれが平維盛……なるほど、噂通りの“鯉戦士(イケメン)”じゃな」

茜「私よりもですか!?」

巴「アホぬかせえ。そげなわけなかろう。それよりどないするんじゃ? このまま指をくわえて見とるだけか?」

茜「指はくわえませんが、見てるだけです!」

巴「はあ? ほんなら何しに来たんじゃ」

茜「ライバルの首尾を見届けに来ました!」

巴「ライバルじゃと? あの、平家の維盛がか?」

茜「いいえ! ですが平維盛という方も、ついでに顔は覚えました!」

巴「ついで……て、ほんならライバルちゅうんは……あ、殿。行ってしまうで? ほんまに見過ごしてしまうんか? 討ち取ってしまえばよかろうに」

茜「そんなことをすると、怒られますから!」

巴「誰にじゃ?」

茜「ライバルにです!」

巴「だから誰じゃあ、そのライバルいうんは……あ、急に走り出さんで、殿!」

茜「どちらが源氏の大将として天下を取るか、勝負ですよ! ハイヤー!!」
67 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:40:55.12 ID:wJoYvkKh0
凛「無事で良かった……乃々。茜、グッジョブ」

加蓮「茜ちゃんが言ってたライバルって、話の流れからすると……もしかして美嘉ちゃん?」

奈緒「ああ。ここから打倒平家を成し遂げるのがどちらになるか、の熾烈なデッドレースが始まるんだよ」

凛「さっき源義仲って言ってたけど、源氏の嫡流って美嘉じゃないの?」

奈緒「源義仲はお父さんが源義賢(よしかた)で、この義賢って人は頼朝や義経の父親の義朝とは異母弟の関係になる」

加蓮「ということは……美嘉ちゃんや莉嘉ちゃんからはイトコになるの?」

P「そう。つまり義仲も、源氏の正統なる血筋であることには違いない。むろん嫡流は頼朝ではあるんだがな」

奈緒「巴ちゃんは、名前の通り巴御前役なんだな。なんかこういうの、ちょっと嬉しいな」

凛「義仲の奥さんなんだね」

P「うむ。この巴御前は、この時代の女性には珍しく馬に乗り、しかも戦でも薙刀で戦ったらしい」

加蓮「あはっ。巴ちゃんらしくてイイね」

凛「ともかく。乃々と闘わずに見逃してくれた茜には、感謝するしかないね」

奈緒「……」

P「……」

凛「なに!? 歴史に詳しいそこの2人のその沈黙!!」

奈緒「実は2人はこの後……3年後に対決することになるんだよ」

加蓮「茜ちゃんと、乃々ちゃんが?」

凛「ええっ!?」

P「倶利伽羅峠(くりからとうげ)の戦いという」

凛「え、ど、どうなるの? どうなるの!?」

保奈美「ではこの後、維盛がどうなったのかを見ていくことにいたしましょう」ベベン
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2022/01/09(日) 09:41:28.97 ID:Pb20PcbDO
大姫の悲劇か……義高は誰だ?
69 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:41:36.82 ID:wJoYvkKh0
乃々「都へ帰るのは許さない。ここで待てと言われてもう一ヶ月……こ、心細いんですけど」

鈴帆「いえ、ここまで帰り着けただけでも運が良かっちゅうもんで。なんせたどり着けたのは、十騎ばっかりやったもん……なに?!」

乃々「ど、どうしたんですか?」

鈴帆「都から、使者がやって来たばってん。ついに帰京が許されるんじゃなかかと」

乃々「使者……だ、誰でしょうか……知盛さんとか……まさか宗主である宗盛さんは来ませんよね……優しいから来てくれたら嬉しいんですけど」

鈴帆「誰やろかいな、使者として来るんは」

つかさ「アタシだよ」

乃々「うわあああ!!! お、おじいさま!?」

鈴帆「相国入道様!!! まさか直々においでとは……! 」

つかさ「維盛。戦わずに逃げ帰ってきたんだってな」

乃々「あ、は、え、よ、よくご存じで……。報告がいってた……んですね? もりくぼ、穴があったら入りたいんですけど……」

つかさ「報告はきてないけど、さ」

乃々「はいぃ?」

つかさ「そんなのくるまでもなく、諸国に知れ渡ってんだよ! 平家の官軍が源氏から戦わずに逃げ出した、ってな!!」

鈴帆「そ、そぎゃんこつが……」

つかさ「なあ、維盛。どうして頼朝が逃げるお前を追走しなかったのか、わかるか?」

鈴帆「言われてみれば……清盛入道の孫ば討ち取れば、抗争前の血祭りになりそうなもんやのに」

つかさ「わざとだよ」

乃々「ええっ?」

つかさ「平家は源氏におそれをなし、戦わずして逃げた。そう宣伝したくて、そう流布したくて殺さずに兵たちを逃げさせたんだよ」

乃々「……」

つかさ「どうする? このままでいいのか? お前舐められてんだぞ、源氏に」

乃々「もりくぼは……もりくぼは……」

つかさ「ん?」

乃々「次があったら……その時は……」

鈴帆「おおっ、維盛様の目がすわって!」

乃々「次に戦に出る時は、やるくぼですけど!」
70 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:43:24.11 ID:wJoYvkKh0
凛「出た! 乃々の、やるくぼ!! これでその倶利伽羅峠では大勝利だよね!?」

奈緒「……」

P「……」

凛「だから沈黙しないで!! どうなるの、倶利伽羅峠!?」

加蓮「あ、カンペ。えっとなになに……では、倶利伽羅峠の戦いのもう一方の主役、木曽義仲がどうなったのかも見ていきましょう♪ ベベン♪」

保奈美「加蓮さん、それ私の役目よ!」


忍「義仲は討つべきです! 当方から逃げ出した行家をかくまうなんて!」

美嘉「まあ義仲も、叔父である2人に頼られて仕方なく……なんだろうけどさ」

忍「とはいえこれは、我が鎌倉方に対する明確な反抗だよ! 見過ごすわけにはいかないよ」

美嘉「……確かにこのまま義仲が知らん顔してるなら、義時が言うように討つしかないかな」

忍「そうですとも……え? 使者? 義仲から? 違う? えっ!?」

美嘉「どうしたの? 義時」

忍「来たそうです。寸鉄も身につけず、丸腰で」

美嘉「……もしかして、義仲が? ここまで?」

忍「はい。どうします? この機会に討ってしま……」

美嘉「会うよ。こちらも“正装(最新コーデ)”で」
71 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:44:14.80 ID:wJoYvkKh0
茜「お初にお目にかかります! 義仲です!」

美嘉「うん。アタシが頼朝。先だってはありがとうね★」

忍「え?」

美嘉「平維盛を討たないでおいてくれて」

茜「討ったら怒られそうでしたから、素通りさせました! あれで良かったのですよね!?」

美嘉「うん★ おかげで諸国に平家が、武家として力が落ちているのを印象着けられたよ」

巴(ほんじゃあ、あの時に維盛を討たんかったんは……ほんならライバルゆうんは、この男……頼朝のことじゃったんか!)

茜「では叔父の行家を匿ったこと、は帳消しにしてもらえますか!?」

美嘉「それはダメ」

巴「ほう……」スクッ↑

忍「妙なことしないでよ?」

巴「……わかっちょる」ストン↓

茜「では、それに対するお詫びとして……人質を出しましょう!」

美嘉「人質?」

茜「匿ったのは、頼られたからで頼朝さんを敵に回そうなんて思ってないという証拠に。嫡男の義高(よしたか)を」

忍「ええっ!? 嫡男を人質に……って、いいの?」

巴「ええわい。まさか粗末にはせんじゃろ?」

美嘉「……もちろん」

茜「じゃあ決まり……ですね!」
72 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:45:11.49 ID:wJoYvkKh0
忍「本当に、あれで良かったの? 頼朝さん」

美嘉「平家と戦う前に源氏同志で戦わなくても良くなった。うん、いいよ★」

莉嘉「よくないよー!」

美嘉「義経」

莉嘉「せっかく、アタシの“初陣(デビュー)”の戦になると思ったのに!」

美嘉「義経、あくまでもアタシたちの敵は平家だよ。でも……うん、もしも」

莉嘉「なになに?」

美嘉「もしも義仲が敵に回ったら、その時は義経にその相手を頼むから」

莉嘉「うん☆」


結城晴「人質かあ。なんかあったらこの首……切られちゃうんだろーな。あーあ、はかねえ人生だったよな」

まゆ「義高さん、あんなこと言ってますけど、どうなんですかぁ頼朝さまぁ」

美嘉「……」

まゆ「頼朝さまぁ?」

美嘉「あれはアタシだよ。意に添わぬ土地へ連れて行かれ、自由にならない暮らしと監視。昔のアタシと同じ」

まゆ「……そうでしたねぇ」

美嘉「でもそこに、政子がいてくれた」

まゆ「そうでしたねぇ」

美嘉「ねえ政子。大姫を、さ」

まゆ「? 私たちの娘の大姫を?」

美嘉「義高と夫婦にしたら、どうかな?」

まゆ「それは素敵なお話ですねぇ。人質じゃなくて、私たちの婿殿でしたら、家族ですからねぇ」
73 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:45:51.21 ID:wJoYvkKh0
晴「馬に乗ったり、弓矢の稽古をしたりしてもいい……って、頼朝ってのも意外と話のわかるやつだな。オレは体動かしてねーとだめだからなー」

喜多日菜子「はいどうぞ、これで汗を拭いてください。むふふ」

晴「お、サンキュー……って誰だよ!? お前!?」

日菜子「日菜子はここの姫で、みんなからは大姫って呼ばれています」

晴「大姫……って聞いたことあるぞ。頼朝と北条の間に生まれたっていう、あの噂の姫かよ!」


加蓮「美嘉ちゃんとまゆの間に生まれたあの赤ちゃんだった大姫が、成長して日菜子になるんだ」

奈緒「……」

凛「なんでまた奈緒は、沈黙してるの?」

奈緒「大姫については、あたしはあんまり話したくない」

加蓮「え?」

奈緒「なあPさん、このくだり別にドラマでやらなくてもいいんじゃないか?」

凛「奈緒がこんなに嫌がるとは……」

加蓮「わかった! 失恋とみた。きっと相手にされなくて泣いちゃったりするんだよ、大姫」

P「じゃあ続けるぞ」

奈緒「いや、続けない方がいいんじゃ……」
74 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:47:00.48 ID:wJoYvkKh0
日菜子「本物の白馬に乗った王子様……じゃなくて若武者様が……日菜子のもとに……むふ。むふふ」

晴「? おーい、大姫?」

日菜子「これからこの方と、あんなことやこんなことを……むふふふふふふ」

晴「なんだよいったい。でも……けっこう可愛いよな、この大姫って娘////」

保奈美「この時、木曽義高こと源義高12歳。大姫7歳。戦乱の世相の中に咲いた、小さな恋の始まりだった」ベベベン


凛「あれ?」

加蓮「なんかいい雰囲気じゃない?」

奈緒「……」

凛「だからなにか喋ってよ、奈緒」

加蓮「なにが奈緒を、ここまでかたくなに」

P「まあ義高と大姫の間になにが起こるのかは先の話として、ここから物語は倶利伽羅峠へと進んでいくことになる」

凛「そうだった! 倶利伽羅峠!」

加蓮「次の舞台はどこになるの?」

奈緒「まずは京の都だな」

凛「あ、奈緒がしゃべった」

加蓮「え? じゃあ私、出番?」

保奈美「では舞台は京の都にまた移ります」ベベベン

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪ ウォワォオイェ〜ェ、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪」ベンベン

P「この歌、CD発売してもいいんじゃないかな」
75 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:47:40.48 ID:wJoYvkKh0
加蓮「四国や九州の“武士(ギャル)”に、奈良でも“僧兵(スキンヘッズ)”が反乱? もう、追討しても追討しても収まらないじゃない」

つかさ「富士川で平家は戦わずして逃げた、って話が伝わって一気にきたな。まあ、予想してたけどな」

乃々「ぜんぶ、もりくぼのせいですけど……」

くるみ「維盛しゃん」

乃々「あ、む、宗盛様。申し訳ないんですけど……」

くるみ「最近、武芸に精を出しているそうでしゅね」

乃々「……はいぃ」

くるみ「それでいいんでしゅ。戦で失ったものは、戦でしか取り返せないんでしゅ。次にがんばればいいんでしゅ」

乃々「もったいないお言葉です。もりくぼ……次は、やるくぼですから!」

加蓮(3年の間、武芸に真剣に取り組んだ維盛。目が違うよね)

つかさ(宗盛も棟梁としての威厳が出てきたよな)

加蓮「え? 文が? どれどれ……父上、木曽の義仲が挙兵したそうです」

つかさ「きたか……源氏のもう一人の大将。それで? 頼朝は?」

加蓮「動いてない、って。協力はしないけど、ジャマもしないってカンジ?」

つかさ「そうか。あの2人が手を組んで攻めてきたら大変だったが、そういうことなら……維盛」

乃々「はいぃ」

つかさ「兵十万を授けるから、義仲を討て」

乃々「わ、わかりました!」

つかさ「今度は逃げんじゃねーぞ?」

乃々「やるくぼですから!」
76 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:48:32.46 ID:wJoYvkKh0
茜「後ろを襲われる心配はなくなりました! 北陸も平定しましたしいざ、上洛へボンバー!」

巴「おお、ライバルより先に京を攻め落とすんじゃ。じゃろ?」

茜「そうです!」

巴「ほんなら行こうかい。天下を取りに」

志希「お〜!」

巴「……また逃げたりせんやろな?」

志希「にゃはは」


凛「十万の兵!? さいたまスーパーアリーナのキャパの約3倍!! これなら勝てる!!!」

加蓮「対する木曽義仲軍の兵の数は?」

奈緒「正確な記録はちょっとないんだけど、五千騎ぐらいだったと言われてるな」

凛「20倍の差!? 圧倒的じゃない、乃々軍は!!」

加蓮「乃々ちゃんの軍じゃなくて、維盛軍だけどね。でも十万ってすごい兵力だよね」

P「そこは新中納言が、がんばった。各地の挙兵に対応しながら、これだけの兵と糧秣を集めて維盛に託したんだ」

凛「ありがとう、加蓮。本当にありがとう!」

加蓮「アタシなんにもしてないけど、どういたしまして!」

P「平家軍は途中で刃向かう敵を倒しながら北陸を攻め上がり、ついに倶利伽羅峠で義仲軍と対峙した」

保奈美「それでは舞台は倶利伽羅峠……今の富山県と石川県の境になります」」ベンベンベンベン

保奈美「ウォウォウヤァアヤァア、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪ ウォワォオイェ〜ェ、ヨォ〜ゥイェ〜ェ♪」ベンベン

凛「乃々……がんばって……」
77 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:49:08.01 ID:wJoYvkKh0
巴「雲霞のごとく、とはよお言うたもんじゃ。平家軍で山肌も見えんわい」

茜「十万の兵。勢力の衰えに加え、飢饉で食力不足と聞いていた平家がこれほどの大軍をまだ繰り出せるとは、計算違いでしたね!」

巴「そいでどうするんじゃ? 無理は承知でとにかく突っ込むんか?」

茜「いえ。夜襲をします!」

巴「……まあ、まともにぶつかって勝てるわけはないが、今度は逃げんじゃろ。平維盛」

茜「承知の上です!」


乃々「敵の動きは、なにかありますか?」

鈴帆「静かにしとるばってん、なんや怪しい動きがあるらしか。来るかも知れんばい」

乃々「夜襲……ですか。もう驚かないんですけど! 逃げないんですけど! やるくぼですけど!」

ドドドドド

乃々「やるくぼですけどどどどど……どどどどど?」

ドドドドド

鈴帆「なんの音じゃあ? この地響きみたいな音は」

乃々「夜襲……でしょうか? すぐに兵をまとめて臨戦態勢に……」

ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

鈴帆「あれは……!」

乃々「牛さん……なんですけどおおお!?」
78 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:49:43.04 ID:wJoYvkKh0
茜「手勢を7手に分けて、強襲します!」

巴「7手……て、こっちの手勢は5千騎しかおらんのじゃぞ!?」

茜「それでかまいません! それと、牛は確保できましたか!?」

巴「北陸中の牛を集めたわい。けど、なんに使うんじゃ牛なんぞ」

茜「すぐにわかりますよ! 名付けて、ファイヤー作戦です!」


鈴帆「あの牛、角に松明をくくりつけちょるばい!」

乃々「ものすごい勢いで、突進してくるんですけど!」

保奈美「木曽義仲は、燃える松明を角につけた100頭の牛の大群を平家軍に突進させました。荒れ狂う牛たちは、軍勢を追いたてていきます」ベンベン

茜「今です! 牛の勢いに乗って、平家軍をツツき回すように追走してください!」

巴「おお、おう。急峻な倶利伽羅峠じゃからのう、逃げとるうちに平家軍は次々崖に落ちていくわ」

鈴帆「そげな……そげなこつ……」

乃々「十万の兵が……」


つかさ「十万の兵が1夜にして壊滅……?」

くるみ「維盛しゃんは!?」

加蓮「命からがら逃げ帰って来た……って。まあ命だけは助かったみたいだけど。もう平家には大群を動かす余力が完全になくなっちゃった」

つかさ「十万の兵が……」

くるみ「父上?」

つかさ「壊滅……」

バタン

加蓮「父上ーーー!!!」
79 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:50:28.17 ID:wJoYvkKh0
くるみ「父上のご容態はどうなんでしゅか!」

加蓮「ものすごい熱で……」

乃々「もりくぼが負けたから……ですよね。あぅ」

加蓮「ううん。あれはそれだけじゃない、唐の国から渡ってきた悪い病じゃないかな」

くるみ「父上は、唐の国と交易してましゅたもんね」

加蓮「いずれにしてもあれだけの高熱……どうすればいいのか」

くるみ「お医者しゃんは、なんて?」

柳清良「アチョー!」

乃々「な……なんですか……!」

清良「私は宋の国からやってきた、華佗の法を学んだ医師です。ヨロシク、ホイコーロー」

くるみ「かだの法でしゅか?」

清良「華佗の法は、唐の国の進んだ医術なんですよ、カンシャオシャーレン」

加蓮「それで、父上は……」

清良「とにもかくにも、熱を下げないといけないです、オーギョーチー」

加蓮「具体的には?」

清良「玉石で作ったバスタブに、清水の冷たい湧き水をくんできてそれに漬けるしかないでカキゴーリ」

加蓮「わかった。すぐに用意する」
80 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:51:16.08 ID:wJoYvkKh0
柳瀬美由紀「だからね、何でも言われた通りのことばかりにこだわっちゃダメなんだよ」

水元ゆかり「はあ。ですが……」

美由紀「茶道具華道立花ぜんぶ型があってなりたってるの」

ゆかり『なるほど』

美由紀「押すなよ? 絶対に押すなよ! って言われた時、時実だったらどうするの?」

ゆかり「押さない……ですかね、父上」

美由紀「ちーがーうー! 押すの。そこは押すの!! ノータイムで!!! お約束ってそういうものなの」


奈緒「時実って、ゆかりちゃん平時実役なのか? じゃあ美由紀ちゃんは……時忠?」

加蓮「平家の人間なのは間違いないと思うけど、誰? 時忠って」

P「平家にあらずば人にあらず、って言葉を聞いたことあるか?」

凛「なんか……聞いたかも。平家の人が当時それぐらい驕ってたっていう代表的な言葉だよね」

奈緒「それを言ったとされるのが、平時忠なんだ」

加蓮「え? あれって清盛が言ったんじゃないの!?」

P「よく誤解されるけど、そうじゃないんだ」

奈緒「まあ時忠も、別に驕り高ぶって言ったわけじゃなくて、平家じゃないと高い官職には就けないっていう意味だったとか色々説はあるんだけどな」

凛「それでゆかりは、その子である時実なわけか」
81 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:52:13.17 ID:wJoYvkKh0
くるみ「石で作った“風呂桶(バスタブ)”を用意しましゅた」

加蓮「私は、比叡山から冷たい清水を汲んできたよ」

つかさ「いやちょっと待てよ。これメチャクチャ冷たそうじゃん」

清良「それはまあ、冷やすのが目的ですから。マーボードーフ」

くるみ「さあさあ父上。早く浸かってくだしゃい」

加蓮「どうそどうぞ」

つかさ「いや待てって、浸かるから。入るから。ただちょっと自分のペースで入らせろ、ってな! な!! な!!!」

美由紀「はーい」

つかさ「ゆっくり……ゆっくり入るから。ゆっくり……いいか、押すなよ? 絶対に押すなよ!」

ゆかり「はっ!」


美由紀「押すなよ? 絶対に押すなよ! って言われた時、時実はどうするの?」

ゆかり「押さない……ですかね、父上」

美由紀「ちーがーうー! 押すの。そこは押すの! お約束ってそういうものなの」


ゆかり「えいっ!」

ザッパーン

つかさ「うわあああああああああ!!!」

ジュウウウウウウウウウウ

くるみ「冷たいはじゅの、しゅみじゅがあ!」

乃々「たちまちグラグラ煮立って、玉の湯なんですけどお!」

加蓮「ちょ、ものすごい湯気っていうか、あのつめたい大量の清水が……全部蒸発しちゃったの!?」

美由紀「押すな、って相国入道様が言ってたのになんで押したの!?」

ゆかり「あの、それかお約束というものだと……」

美由紀「天然だなー時實は」

保奈美「ということで水に漬けても清盛の熱は下がらず、その年の2月4日……亡くなったのです。武家として武士として、初めて国政の頂点にたった偉大な平家の宗主の最後でした」ベンベンベンベン
82 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:52:53.74 ID:wJoYvkKh0
くるみ「父上亡き後、平家はどうしゅればいいんでしょうか……木曽の義仲は京に攻め上って来るでしょうし」

乃々「もう動かせる兵も、限られてるんですけど」

加蓮「大丈夫。手はあるから。策もある」

乃々「え?」

くるみ「ほ、本当でしゅか?」

加蓮「そもそも平家にはまだ、大軍が用意できなくても個々の能力の高い“武士(ギャル)”はいるからね。維盛」

乃々「あ、は、はい……」

加蓮「能登を呼んで」

乃々「能登……というと能登守(のとのかみ)、教経(のりつね)さんをですか……?」


加蓮「このシーンって私が呼んでるんだけど、能登守ってどんな人なの?」

凛「これからの平家を助けてくれる人なの?」

奈緒「能登守こと平教経は、平家最強と言ってもいい武士なんだ。能登守は官名で、清盛の異母弟の子供だから清盛からは甥になる人物だな」

加蓮「てことは、アタシのイトコか」

P「王城一の強弓兵と呼ばれていて、合戦で一度の不覚も取ったことがないと平家物語には書かれている」

凛「平家にまだそんな人材がいたんだ」

奈緒「平家は一門が栄えて全員の官位があがっていくことで、公家化していったから武一筋のこの教経も、平家の世が続いていたなら目立たなかった人物かもな」

加蓮「でも逆に言えば、平家の中にもまだそういう人物が残ってた、ってことでしょ?」

P「そうだな。この教経が、ここからの物語で平家側武力の最強カードになっていく」
83 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:53:30.05 ID:wJoYvkKh0
及川雫「新中納言様、およびですかー?」

加蓮「うん。能登守。維盛が撤退してくる間、宇治川を守ってくれてありがとう」

雫「いいえー。私は、こんなことでもないとお役にたちませんからー」

加蓮「……これからの平家は、戦いの日々が待ってる」

雫「承知してますー」

加蓮「頼むね。能登守……教経」

雫「この弓にかけてー!」


奈緒「おお、教経役は雫なんだ」

凛「確かに強そう」

P「性格的には穏やかな雫だけど、やはり大きな甲冑や弓がテレビ映えするな」

加蓮「ここから平家と茜ちゃん……木曽義仲との対決になっていくんだよね?」

P「そう。倶利伽羅峠で勝利した木曽義仲は、兵を率いて上洛を開始する。呼応した源氏ゆかりの者や反平家の者たちも土地中で加わり、京に迫る頃には大軍勢となっていた」

保奈美「それではその頃、都で平家の面々はどうしていたのか見ていきましょう」ベンベン
84 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:54:06.30 ID:wJoYvkKh0
くるみ「一門の中には、東国へ攻めあがろうという声もありましゅ。頼朝を打ち取ってしまおうというんでしゅ」

乃々「そんな。義仲も迫っているのに……」

雫「義仲、強いですよねー」

くるみ「義仲は強い上に戦じょうじゅでしゅ。京に攻め上ってくる義仲をどうすれば止められりゅのか」

乃々「あの……新中納言様はあるんですよね? 策が」

雫「ほんとですかー?」

乃々「前に……そんなような事を聞いた覚えがあるんですけど……」

加蓮「ハッキリ言って義仲を止める策はない。でもね、最終的に義仲を動けなくする策なら、ある」

雫「すごいですー! どうすればいいんですかー?」

加蓮「京の都を放棄する」

雫「え?」

加蓮「都は福原に遷都する。父上の作った福原に」

くるみ「け、けど結局、福原からまたこの京に戻ったんでしゅよ?」

加蓮「あの時とは事情が違う。なにより攻めやすく守りにくいこの京では戦えない」

乃々「京の都は、広い街道がいくつも通っていて……守るなら兵力を分散しないといけませんからね……」

加蓮「そして私たちは海が使える。義仲には海戦の経験がない。船もない。戦いにのってこなくても私たちには瀬戸内海がある。船から義仲軍を射かける手もあれば船で先回りして挟み撃ちにしたりできる」

くるみ「海があれば義仲を倒しぇるんでしゅね!」

加蓮「ううん」

くるみ「え?」

加蓮「義仲は、あえて放置」

乃々「意味がわからないんですけど……そんなことをしても、義仲の方はこちらを倒しに来るんですけど」

加蓮「大丈夫、義仲がそれどころじゃないような羽目に陥るよう仕向けるから。ともかく私たちは福原に遷都する。それしか考えられない」

くるみ「それ以外に策は、ありましゅか?」

加蓮「ない」

くるみ「ではそうしましゅか……そうしましょう」

加蓮「え? いいの?」

くるみ「新中納言が他に策はないと言うんでしゅ、ならやるしかないでしゅ! 一族総出で遷都の準備でしゅよ!」

加蓮「兄上……ありがとう」
85 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:54:44.42 ID:wJoYvkKh0
乃々「新中納言様……もりくぼは感動したんですけど」

加蓮「なにが?」

乃々「十万の軍がもりくぼのせいで壊滅して、平家の軍は半減して……清盛様がおられなくなってしまって……各地で反乱が起きている中で……あの義仲が攻め上がってきてきて……それなのにちゃんと策を用意しているなんて……」

加蓮「……維盛」

乃々「あ、は、はい?」

加蓮「アタシも自信なんてないんだ……それなのに一門の命運がこの身体の弱いアタシの肩にかかってる。こう見えても……必死なんだよ」

乃々「……も、もりくぼにも、なにかできることとはありませんか!?」

加蓮「じゃあ維盛は、瀬戸内の各勢力から船を集めて」

乃々「船……ですか? で、でも義仲は船は使わないと思うんですけど……」

加蓮「うん。でもこの先、海は大切な私たちの足場になる。きっと。だから今のうちに船を占めてしまって」

乃々「わ、わかりました……」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2022/01/09(日) 09:56:14.92 ID:Pb20PcbDO
そろそろ後鳥羽天皇が出るかしら(後白河法王のクーデター騒ぎも)
87 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:56:45.75 ID:wJoYvkKh0
保奈美「清盛が亡くなったという報は、鎌倉にも届きます」ベベン

美嘉「え……清盛が!?」

忍「都からの知らせだから間違いないよ。去る2月4日、相国入道清盛は身罷った……って」

美嘉「清盛が……身罷った……平家の宗主が……?」

忍「おめでとうございます、頼朝さん!」

未央「これはまたとない吉報ですよ、兄上!」

莉嘉「なになに? 清盛がどうしたの? みごもった?」

未央「みごもったんじゃなくて、みまかったんだって」

莉嘉「どういう意味?」

文香「亡くなった……という意味ですよ」

莉嘉「えっ!?」

忍「これはまさしく瑞兆だよ頼朝さん。敵の大将が、こちらがなにもしないのにいなくなってくれたんですから!」

未央「うんうん。これは今後の戦いでも、私たちは有利になったと思うよ」

美嘉「うん、確かにそうだよね。これで……」

莉嘉「うわあああんんん!!!」

美嘉「え? よ、義経?」

文香「義経……様?」

莉嘉「そんな……そんなあああ!!! 平清盛が……死んじゃったなんて……そんな……そんなああああああ!!!」

忍「ど、どうしたの? こんないい知らせがきたのに、“号泣(ギャン泣き)”なんかして」

未央「あまりの幸運に“うれし泣き(ドラ泣き)”しちゃうならともかく」

莉嘉「いい知らせなんかじゃないよ!!!」

忍「え?」

莉嘉「清盛は……平家の大将は、アタシが倒そうって、ずっと思ってたのに……」

未央「あ……」

莉嘉「父上のかたきは、アタシがこの手で取ろうと思ってたのに……アタシとお姉ちゃんたちを引き裂いた宿敵が、永遠に手の届かない所に……うわああああああんんん!!!」

忍「……」

莉嘉「お父さんーーーんんん!!! わーーーーーーんんん!!!」

未央「そっか……」

利嘉「清盛が、アタシが人生を、命をかけて倒そうと決意していた宿敵が、いなくなっちゃったよおおお!!! うわーーーーあああーーー!!!」

美嘉「義経……」

莉嘉「んんん」グズグズ

美嘉「気持ちはわかるよ義経、だけどこうなったからにはさ……」
88 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:57:41.63 ID:wJoYvkKh0
莉嘉「ま、でもしょうがないか」ガバッ

美嘉「へ?」

莉嘉「じゃあ、弁慶くん!」

文香「は? はい……」

莉嘉「次の宿敵を用意して」

文香「つ、次……ですか? おそらく平家一門を継ぐのは平宗盛だとは思いますが……平家で一番の剛の者は平教経……そしてなにより兵を率いれば戦場を掌握し、戦のない時にその準備を着々と進められるのは……」

莉嘉「一番スゴい人だね! 誰? 誰!?」

文香「平知盛……世に新中納言として知られる人物です」

莉嘉「わかった! 待ってろ新中華三昧!! アタシが相手だ!!!」

文香「……新中華三昧ではなくて、新中納言です」

莉嘉「それそれ☆」

美嘉「……」


美嘉「蒲の冠者、さっきの義経……どう思った?」

未央「え? ああ……なんていうか、可愛いなあって」

美嘉「……」

未央「大泣きしたかと思えば、コロッと泣きやんで『次の宿敵を』ってもうおかしくって」

美嘉「……蒲の冠者、じゃなくて範頼」

未央「え、あ、はい」

美嘉「あの子のこと、頼むね」

未央「えっと、それはどういう……」

美嘉「あの子はたぶん、強い。でもよくも悪くも幼子みたいなところがある」

未央「それは“いと(メッチャ)”わかるけど、でも私が? なにをすれば?」

美嘉「これからの戦、もうアタシは出ないつもり。鎌倉から東国をまとめつつ、“武家社会(ギャルサージャパン)”を作り上げる」

未央「てことは、つまり……」

美嘉「大将として、戦って範頼」

未央「大将!? 私が!?」

美嘉「信頼できる人間にしか頼めないの」

未央「うわ、わかった。やる……やります、やります!」

美嘉「頼むね★ 補佐として義経を付けるつもりだけど、さっきも言ったように……」

未央「うん! 私が助ける!! 弟を!!!」

未央(私が大将……お兄の名代として、私が戦うんだ……)
89 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:58:28.89 ID:wJoYvkKh0
凛「ところで今更なんだけどさ」

奈緒「なんだ? 凛」

凛「源氏と平家ってどうして対立しているの?」

加蓮「それはやっぱり、同じ武家同士ということでライバル関係だからじゃないの?」

凛「それにしても、なんだかそれ以上のものがあるような感じがして」

P「なかなかいい質問だな、凛」

加蓮「え?」

P「ここでちょっと時間を戻して、源氏と平家がどうして対立するようになったのかを見ておくことにしようか」

奈緒「お、じゃあ保元の乱だな。清盛の死の25年前だ」


つかさ「いや本当マジ強いよな、お前は。あの八幡太郎の直系だけはあるぞ」

向井拓海「いやいや、清盛こそ武道だけじゃなくて金勘定や政治にもあかるい、スゲーよ」

つかさ・拓海「あはははははは!!!」


凛「つかさと肩を組んで笑ってる拓海さんは、誰の役なの?」

P「源義朝だ」

加蓮「源っていうことは源氏!? それなのに平家の清盛と、あんなに仲よさそうに……あれ? 義朝って名前にはかなり聞き覚えが……あ!」

凛「頼朝と義経、つまり美嘉と莉嘉の」

加蓮「お父さん!?」
90 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:59:03.95 ID:wJoYvkKh0
つかさ「源氏は東国で根強い人気と支持があるから、心強いよ」

拓海「平家こそ、西国で勢力を誇ってるし、海戦につえーじゃねえか」

つかさ・拓海「あはははははは!!!」

つかさ・拓海(……こいつだけは、絶対に敵に回したくねえよな)


加蓮「なんか見た目通りに仲がいいだけ、ってわけじゃないみたいだけど」

凛「でもけっこう気が合う、って感じに見えるよね」

奈緒「同じ武家の名門の御曹司で、でも東と西という地盤や家風の違いがあって、認め合う間柄だったんだよ」

P「事実、力を合わせて戦ったこともある」

凛「それが奈緒の言っていた、保元の乱っていうの?」

奈緒「そう。この戦いは、後白河天皇と崇徳上皇の政治争いが発端なんだけど、清盛と義朝は共に後白河天皇側として戦った」

P「この戦いに勝って、後白河天皇の力は強力になる」

加蓮「でも確か、清盛は義朝と戦って倒しちゃうんだよね? なにがあったの?」

奈緒「保元の乱はさっき言ったように後白河天皇と崇徳上皇の争いで、後白河天皇側に平清盛と源義朝がついたんだけど、じゃあ崇徳上皇側に兵力として誰がついたのかと言うと」

凛「誰?」

P「平忠正(ただまさ)と源為義(ためよし)だ」

加蓮「あれ? 平と源……って、この2人は清盛と義朝とどういう関係なの?」

奈緒「忠正は清盛の叔父さんで、為義は義朝のお父さんなんだ」

凛「え!? じゃあ親戚とか親子で敵味方に分かれて戦ったんだ」

P「そもそも対立していた後白河天皇と崇徳上皇が弟と兄だったし、摂関家からも藤原忠通と藤原頼長も敵味方として関わっていたんだけどこの2人も兄弟だ」

奈緒「まあ敵味方に分かれたとはいえ、そこはやっぱり実のお父さんだから戦後に義朝も助命の嘆願をしたんだよ」
91 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 09:59:42.17 ID:wJoYvkKh0
拓海「アタシの“活躍(ゴン攻め)”に免じて、親父の命だけは助けてくれよ。この通りだ!」ゲザ


加蓮「あ、やっぱり別に憎み合って敵味方に別れたわけじゃないんだ」

P「そこはまあ、立場も違ったわけだしな」

凛「それでこの助命の嘆願は叶ったの?」

奈緒「残念ながら……」

P「ところがその一方で」


つかさ「よお義朝、どうしたんだよ暗い顔して」

拓海「お、おう。清盛」

つかさ「先の戦ではお互い大活躍だったよな。おかげでアタシ、播磨守に任じられたからな」

拓海「は、播磨守!?」

拓海(だってアタシは右馬寮にしてもらっただけだぞ!!)

奈緒「ここでちょっと解説しておくと、そもそも義朝は保元の乱より前に下野守に既に任じられていて、しかも馬寮は朝廷で使う馬の管理をする役職なんだけど、宮廷でも帯剣を許されていたし、検非違使っていう警察署長と裁判官ほ同時にこなす職の補佐をしたりもしていて、武士にとっては憧れの官職だったんだ」

凛「そんなに待遇に差があったわけじゃないってこと?」

P「いや清盛の播磨守は受領としては最上位だったし、それはつまり将来は公卿となることを約束されたことになる出世だった」

加蓮「やっぱり差があったんだ」

奈緒「ここらへん色々な説があるんだけど、見方によって差があったのかなかったのか意見がわかれるあたり、義朝が不満をもった可能性はやっぱりあるんじゃないかな」

P「そう。事実……」
92 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:00:17.76 ID:wJoYvkKh0
拓海「そもそもアタシも清盛も同時に昇殿を許されたのに、なんで清盛ばっかり後白河天皇……いや、今は上皇に呼ばれてるんだよ!」

奈緒「このあと平家は、清盛以外にもどんどん宮中で出世するようになる。もちろん政治的な才能のある清盛がそう動いてたのは間違いないんだけど、義朝はこれに焦りを感じた」

拓海「清盛が京を離れている今が“好機(チャンス)”だ。やるしかねえ、まずは清盛や後白河上皇の“背後(バック)”で動いてやがる信西ってあの“禿(太陽反射光線)”坊主からだ!」

つかさ「悲しいな……哀しいよ。義朝」

拓海「な……っ! テメー清盛」

つかさ「後白河上皇がさあ、義朝はきっと兵を興すって言っててさあ、待ち構えてたんだよ。。アタシも旧知の友を討つのは忍びないけど、命令だからさ」

拓海「清盛……それでいいのかよ! 今のままで……上皇の、朝廷の言いなりで……」

つかさ「安心してくれよ。アタシは、朝廷から政(まつりごと)を奪う」

拓海「なんだと……?」

つかさ「アタシのやり方で、ね」

拓海「清盛ーーー!!!」
93 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:01:32.37 ID:wJoYvkKh0
保奈美「清盛の強襲に、義朝は敗走します。その都落ちの最中、嫡男の頼朝に義朝は言い含めます」

拓海「いいか頼朝、政を朝廷から奪うんだ」

美嘉「朝廷から政を?」

拓海「朝廷から送られてくる受領は四年すればまた別の土地に派遣される。だから赴任地に愛着がない。けど、“武士(ギャル)”は違う。その土地に根付き生きていく存在だ」

美嘉「受領のひどさは、よく知ってます」

拓海「やつらはひどい税の取り方をする。それで困るから荘園が増える」

美嘉「荘園は免税ですから、土地の者は自分の土地を寄進して荘園にしてるんですよね」

拓海「荘園が増えたらそれを占める藤原らの摂関家は栄える。けど、その摂関家が行う政には収入が減ってる。馬鹿なやつらだ」

美嘉「荘園ばかりで、集められる税かないんですね」

拓海「朝廷の政はダメだ。“武士(ギャル)”だ。“武士(ギャル)”が政を行うんだ。頼朝、平家も同じ事を考えてるが負けるな。源氏の政をやるんだ」

美嘉「はい。父上」


P「この後は知っている通り、義朝も頼朝も捕らえられ、義朝は殺され頼朝は伊豆に送られる」

凛「つまり源平の対立は同じように武家として、どっちが武士をまとめて武士の政治をするかの対立なんだ」

奈緒「もちろん、宗主の義朝を殺された恨みとかもあるけれどな。でもこの時代は、完全に政治は行き詰まっていた。それをなんとかしようとしていたのが源氏であり、平家だったんだよ」

加蓮「それで父上……清盛は、朝廷から政を取り上げて自分が太政大臣になって、宋と貿易したりしてたんだ」

奈緒「まあそれもまだ清盛の志の道半ばだったんだけど、その清盛の死で平家も行き詰まっていく」

P「さあ話と時代をはじめとする戻すぞ。舞台は再び鎌倉だ」
94 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:02:24.33 ID:wJoYvkKh0
忍「蒲殿、少しいいかな」

未央「なーに? 義時さん」

忍「……」キョロキョロ

未央「?」

忍「実は……」ゴニョゴニョ

未央「えー!? 兄上が浮気!?」

忍「しーっ! 声が大きいよ!!」

未央「あ、ゴメン。でもそんな……ホント?」

忍「頼朝さんさ、流されてからずっと伊豆にいたのにその時々の都の情報に詳しかったり、以仁王からの令旨の時でも状況把握が適切すぎて」

未央「ふんふん。ん? それと浮気とどういう関係が?」

忍「つまり頼朝さんにはさ、私も……つまり監視役だった北条でも知らないような情報のリーク元を持ってるみたいなの」

未央「それが浮気相手、ってこと? いや、それはどうなのかな」

忍「実は先日、その送られてきた情報……書簡を見てしまいまして」

未央「書簡を?」

忍「これなんですけど」

未央「うわ、ピンクの和紙にあちこちちぎり絵でデコってる。すごい乙女な感じの文!」

忍「これは怪しいと思いませんか、蒲殿」

未央「確かにこれは、ただの文じゃないよね」

忍「もしかして頼朝さんの、都時代からの……」

未央「女性かも……え、い、いやなんでこれ私に?」

忍「他に相談できそうな人がいないんだよ! 義経さんとかに話したら『お姉ちゃんに聞いてみる!』とか言い出しそうじゃない?」

未央「容易に想像がつく……」

忍「中でも絶対に知られちゃいけないのが、姉上」

未央「御台様?」

忍「こんなことが姉上に知られたら……亀の前事件の再来だよ……」

未央「あの優しげな御台様に、なにがあったんです?」
95 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:03:00.21 ID:wJoYvkKh0
忍「あのね、前に亀の前という女性がいてさ」

まゆ「義時ぃ……」ポン

未央「あ、御台様」

まゆ「なんのお話ですかぁ? まゆ、気になっちゃいますねぇ」ギリギリ

忍「待って姉上、肩に置いた手に力入れないで、痛タタタ」

未央「いつからそちらに?」

まゆ「えっとぉ、義時が『蒲殿、少しいいかな』って言ったあたりからですかねぇ」

忍「メチャクチャ最初の方からじゃない」

まゆ「それでぇ? 義時」ニコォ

忍「……なんです? 姉上」

まゆ「都からの手紙がどうしたんですってぇ?」ギリギリギリギリ

忍「やめてまってほんとうにとめて! 砕ける!! 肩の骨が!!!」

未央「うわあ、ミリミリいってる音がここまで聞こえてくる……」

頼朝「なになに? アタシの家族が集まってなんの騒ぎ?」

まゆ「義時、肩に糸くずがついてますよぉ」パンパン

忍「あ、ありがとう……姉上……」

未央「……」

頼朝「今月も都から文が届いた。平家はやっぱり宗盛が棟梁に、そして軍の大勝は知盛になるみたいだ」

未央「あれっ?」

美嘉「ん?」

未央「そのピンク色の文……」

美嘉「あ、これ? 三善康信からの文だよ」

忍「三善康信……って確か、頼朝さんの乳母の妹の……子? だっけ」

美嘉「うん。その縁で伊豆にいるアタシに、毎月3度も文で都の情勢を知らせてくれてるんだよね。もうずっと……本当にありがたいよ」

忍「え? 文の相手は三善康信? じゃあ浮気じゃあ……」

まゆ「まあ。それはお優しいご友人ですねえ。いずれ鎌倉に呼んで、御家人として要職に就いてもらわないといけませんねぇ」

みか「ホントにね。それで? なにかあったの?」

未央「いや、別に……ね? 義時殿」

忍「そうそう。ね? 蒲殿」

まゆ「それじゃあまゆは、夕餉の支度をしますねぇ」

美嘉「うん。頼むね」
96 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:03:50.60 ID:wJoYvkKh0
保奈美「さて、その頃。京の都では」


くるみ「知盛しゃん……」

加蓮「ん? どったの、兄上。暗い顔して」

くるみ「それが……法皇様が、新中納言を呼べとお召しなんでしゅ」

加蓮「後白河法皇が? あのテキトー上皇がなんの用?」

くるみ「それはわからないんでしゅけど、火急のお召しということでしゅ」

加蓮「アタシ、忙しいんだけどなー」


宮本フレデリカ「うむ。く、苦しゅ……苦しゅうな、ない……苦しゅうないぞ。近う寄れ」

加蓮「どうしたの? その声。ガラガラでめっちゃ苦しそうじゃない」

フレデリカ「それがミーね、鳥羽殿で50日連続ライブを敢行しちゃってネー。喉が腫れて水も飲めない苦しさなんだよネー」

加蓮「そりゃ50日も歌い続けたら、そうなるでしょうね!」

フレデリカ「ミーは、喉には自信あったんだけどネー」

加蓮「はいはい、そうですか」

フレデリカ「なんでかな♪ なんでかな♪」

加蓮「だから当たり前だって」

フレデリカ「おかしいな♪ おかしいな♪」

加蓮「おかしくない!」

フレデリカ「次は東三条で船の上から40日連続夜間ライブを計画してるんだよネー」

加蓮「用件はなんですか!?」

フレデリカ「え?」

加蓮「私をお召しになった用向きはなんなんですか!?」

フレデリカ「……なんだっけ?」

加蓮(ホントこの人、上皇じゃなかったら弓矢の的にしちゃうのに)
97 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:04:25.71 ID:wJoYvkKh0
加蓮「用がないなら帰ります。福原遷都で忙しいので」

フレデリカ「あ! それそれ」

加蓮「え?」

フレデリカ「ミーは遷都、反対!」

加蓮「どうして!?」

フレデリカ「遷都はせんとこやないどすさかいどすどす♪」

加蓮「理由を述べよ! 簡潔に!! 140文字以内で!!!」

フレデリカ「京の都が好きだから♪」(残り文字数130字)

加蓮「木曽義仲の軍が迫ってるんですよ!?」

フレデリカ「うーん。でもそれは、ミーに関係なくない?」

加蓮「……平家と源氏の争いは、上皇の知ったことではないってこと?」

フレデリカ「上皇じゃなくて今はミー、法皇ね」

加蓮「あなたみたいな、なまぐさな法皇。私は認めません」

フレデリカ「それを認めるか認めないかは、新中納言ちゃんじゃなくない?」

加蓮「……」

フレデリカ「でもミーは、新中納言ちゃんを世に新中納言ちゃんと認めさせないようにできるよ?」

加蓮「いいよ。それで」

フレデリカ「ンー?」

加蓮「別にアタシは、中納言じゃなくなってもいい。新中納言がいなくなっても、平知盛は残る」

フレデリカ「そっか。残念だネー」

加蓮「……下がります。福原への遷都に忙しいので」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2022/01/09(日) 10:04:46.22 ID:Pb20PcbDO
政子の前に嫁と子どもがいたんだよね
99 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:05:51.00 ID:wJoYvkKh0
長富蓮実「あの、新中納言様」

加蓮「これはこれは皇太后様」

蓮実「そんな。私なんかに皇太后なんて呼ばれ方、もったいないです」

加蓮「いえいえ、藤原忻子(ふじはらの・きんし)様は後白河上皇の中宮であったわけですからやはり皇太后様とお呼びしなければ……」

蓮実「“武士(ギャル)”でありながら教養が深く、文才もおありになる新中納言様に私、個人的に敬意を抱いているんですよ。どうか今後とも仲良くしてやってください」ペコリ

加蓮「もったいないお言葉です」

加蓮(ホントあのテキトー上皇の奥さんとは思えない、おしとやかな方だよね)

蓮実「私のことは気軽に『忻ちゃん』って呼んでくださっていいですから」

加蓮「滅相もない!」

蓮実「なんでそーなるのかな!?」ピョン

加蓮(おしとやかではあるんだけど、この人もやっぱりちょっと変わってるよね……)

蓮実「ところでまた法皇が無茶を言って、新中納言様を困らせているんでしょう?」

加蓮「はあ、まあ……」

蓮実「実は私も、中宮ではありますけど、あの人とは気が合わなくて」

加蓮(そういえばお2人の間には、お子がおられないよね)

蓮実「なので私、あの人に遠ざけられていて……寂しく悲しい人生なんです」

加蓮「ご同情申し上げます」

蓮実「では聞いてください。そんな寂しい私を歌った。寂しい熱帯魚」

加蓮「え?」
100 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:07:48.14 ID:wJoYvkKh0
蓮実「私の〜♪ “思慕(想い)”を〜♪ “戯れ言(ジョーク)”にしないで〜♪」

加蓮「……え?」

蓮実「いかがでしたか? 私の歌?」

加蓮「は、はあ、まあ、お見事……でした」

蓮実「ありがとうございます! 私、こうした“和歌(懐メロ)”が大好きなんです!!」

加蓮「ああー……そうなんですね」

蓮実「でもあの人は、“今様(ニューミュージック)”が好きで」

加蓮(なるほど。音楽性の違いか)


凛「和歌と今様ってそういう位置づけなの?」

P「まあ当時の情勢としては近いものがある。後白河法皇は若い時から今様に熱を入れていて、その代わりというか和歌はてんで駄目だったらしい」

奈緒「藤原忻子って、後白河法皇の奥さんか。かなりマイナーな人物だよなPさん」

P「確かにあの後白河法皇の正妻だったにしては、資料もあまり残っていないんだが、今回のドラマではフォーカスを当てたいんだ」

加蓮「じゃあまだ出番あるんだ、蓮実ちゃん」


蓮実「実は新中納言様のお耳に入れたいことがあるんです」

加蓮「なに? あ、なんですか?」

蓮実「敬語でなくていいんですよ。……法皇は、なにか企んでおいでです」

加蓮「……みたいだね。私の官位を剥奪するみたい」

蓮実「いえ、もっとよくないことを考えておられるんです」

加蓮「え?」

蓮実「それがなんなのかは、私にもわかりません。ただ、気をつけてください。何度も院宣を出しておられます」

加蓮「院宣……わかりました。ありがとうございます」
101 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:10:35.86 ID:wJoYvkKh0
くるみ「院宣……でしゅか?」

加蓮「相手が誰なのか……義仲ではない、と思う。平家一門の誰かでもない」

雫「誰なんですかー?」

加蓮「逆に言えば、院宣を受け取るような相手は後はもう1人しか残っていない……」

乃々「え?」

くるみ「ましゃか」

加蓮「頼朝じゃないかと思うんだけど……」

美由紀「た、たたた、大変だよー!」

雫「どうしたんですか、時忠様ー」

美由紀「後白河上皇が、ご動座あそばされました!」

加蓮「へ?」

美由紀「北面武士も置き去りにして、いずこかへ立ち去られました」

雫「北面武士……たいして強くありませんし、人数も多くありませんけどーそれにしても法皇様を守る“武士(ギャル)”を置き去りに?」

加蓮「いや待って待って。動座してどうすんの? 福原に行きたくないならここにいればいいんだよ。京にいたいなら自分だけでずっといれば。帝は連れて行くけど」

美由紀「それも、帝もポツンと置き去りにして……」

乃々「帝もって……え?」

くるみ「安徳天皇をでしゅか!?」

加蓮「あんのテキトー上皇!!! 孫が、それも今上の帝がどうなってもいいっていうの!!!」
102 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:11:27.98 ID:wJoYvkKh0
蓮実「すみません、まさか法皇がこんなことを企んでいたなんて」

加蓮「いえ。私もまさか、孫である帝をほったらかして逃げ出しちゃうとは……」

蓮実「安徳帝は私にとっても、孫にあたります。本当に申し訳ないです」

加蓮「いずれにしても、もう木曽の軍勢が迫っている……戦わずして福原に退くつもりだったけど、一戦交えるしかなくなっちゃった……」

蓮実「私は法皇がどこに向かったのか、調べてお知らせしますから」

加蓮「お願いします!」


加蓮「というわけで、能登。私と木曽の先遣兵と戦って」

雫「望むところですー。強いんですよね、木曽軍は」

乃々「それはもう……ええ」

加蓮「でも維盛のおかげで、義仲の戦い方はわかった。名乗りもない、兵の士気は高く、突進力に優れている。でも……」

雫「?」
103 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:13:05.42 ID:wJoYvkKh0
加蓮「じゃあ能登、手はず通りに」

雫「心得ていますー!」

保奈美「平家一の豪の者として知られる教経、まずは木曽軍へと突進します」

雫「我こそは能登守平教経! この弓と刀を試したい者は、かかってきてくださいー!」

保奈美「さすがに王城一と名の知れた、教経の名乗りに、木曽軍も浮き足立ちますが、それも一瞬のこと。次々に教経に襲いかかります」

雫「ええいっ!」

保奈美「教経は当たるを幸いに、側に寄る木曽の武者を次々と切り捨てます。ならばと距離をとる木曽軍に、教経は並の武者なら3人がかりでないと引けない大弓を弾くように木曽軍に射かけます」

加蓮「さっすが伊達に王城一と呼ばれてないよね。でもさろさろ頃合いかな」

保奈美「それでも数に勝る木曽軍は、じりじりと教経に多勢で近寄ります。と、あっという間に教経は馬の口を変えると、一目散に逃げ出します」

加蓮「うんうん。きたね……まだだよ……まだ……」

保奈美「教経を追う木曽軍が林に入ると、そこには平家の軍勢500が潜んでおり、取り囲むように木曽軍に襲いかかります」

雫「まだまだ、私もいますよー!」

保奈美「そこへさらに、また向きを変え戻ってきた教経が襲いかかります。たまらず木曽軍は撤退を始めます」

雫「うまくいきましたねー」

加蓮「うん……これで時間がかせげる……かな。それにしても策は嵌まったけど、やっぱり木曽軍は屈強だね」

雫「戦いがいのある相手でしたー!」

加蓮「能登にしてみれば、一番のほめ言葉だね。ふふっ」
104 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:13:55.90 ID:wJoYvkKh0
巴「おどれら、そいでのこのこ舞い戻ってきたんか! それでも木曽組の若いモンか! ああ!?」

茜「巴ちゃん。静かに!」

巴「じゃけんど!」

茜「平家にもまだ人がいる……そういうことです! いえ、私も倶利伽羅峠の大勝で気が緩んでいたかも知れません!」

巴「そぎゃんことは……あ? 何事……なんじゃと?」

茜「どうしましたか!?」

巴「……客じゃと」

茜「また我々と共に京に入りたいという、武家ですか!?」

巴「いやそれが……法皇じゃと」

茜「……はっ!?」


蓮実「新中納言様」

加蓮「あ、皇太后様。すみません福原へ一刻も早く撤退するためにこのバタバタで」

蓮実「法皇の行き先がわかりました」

加蓮「……どこですか?」

蓮実「叡山です」

加蓮「比叡山延暦寺……ん? 比叡山には今……」

蓮実「はい。木曽義仲の軍勢が、逗留しています」
105 : ◆hhWakiPNok [saga]:2022/01/09(日) 10:15:30.73 ID:wJoYvkKh0
くるみ「なんで後白河法皇しゃまは、義仲の所へ」

加蓮「平家は見限られた、ってとこかな」

美由紀「そんな! こないだまで平家は官軍で、政も取り仕切ってたのに」

くるみ「どうしゅればいいんでしゅか」

加蓮「やることは変わらないよ。西国で平家は勢力を取り戻す。そうすれば、木曽とも対抗できるし、手も結べる」

乃々「え?」

加蓮「木曽義仲はもうすぐ、とんでもない羽目に陥る。その時に手を差し伸べたいの」

乃々「え? だって木曽は……敵である源氏じゃあ……ええっ?」

加蓮「兄上」

くるみ「なんでしゅか?」

加蓮「福原じゃなくて、屋島まで退きたいんだけど」

くるみ「屋島へでしゅか?」


奈緒「屋島は今の香川県にある島なんだ。島なんだけど、干潮時は浅瀬ができて馬で渡れる場所なんだ」

P「この島は、清盛の時代から軍事拠点として準備をされてきていたんだ」

加蓮「父上……じゃなかった、清盛は平家がこうして追い込まれることを予想していたの?」

凛「加蓮、ちゃんと清盛のこと父上って言ってるw ちゃんと役に入ってるんだ」

加蓮「まあねw」

P「こうなるかを予測していたかはわからないけど、確かに屋島は瀬戸内海に平家が睨みをきかせる格好の拠点となっていたんだ」

奈緒「本当は平家は九州まで引いてそこで勢力を取り戻すつもりだったんだけど、九州は九州で政情が不安定で諦めたみたいなんだよ」

保奈美「それではまた舞台はも比叡山延暦寺へと戻ります」
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