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勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編の続編の続編

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42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:27:47.98 ID:KbfSVIxh0
『数日後_精霊樹』


フワリ ドッスン


エルフゾンビ「戻ったか…虫とドリアードの様子はどうだ?」

剣士「蟲達が総攻撃するまで数日かかると思う…ドリアードは触手が何本ものたうち回ってた」

エルフゾンビ「あれだけ爆破されても弱らんとはな…」

剣士「こっちの様子は?」

エルフゾンビ「アルラウネの数が減って空中戦は優位だ…地上戦もどんぐりの成長作戦で優位…浸食は抑えられている」

剣士「死の森を少しづつ浄化しないとダメな様だね」

エルフゾンビ「この戦いはしばらく続きそうだが光明は見える…虫次第という所か」

剣士「戦いも気になる所なんだけど…僕もエリクサーを運ばないといけない」

エルフゾンビ「そうか…しばらく居て貰いたいのは山々だが…」

剣士「僕は他にもやらなきゃいけない事があってね…」

エルフゾンビ「引き留めるつもりは無い…お前は十分仕事をこなしたのだからな」

剣士「実はね…アダムを破壊する時にパパの声を聞いた気がしたんだ」

エルフゾンビ「…どういう事だ?」

剣士「それを調べたい…アダムの誕生に関わって居るかもしれない…」

エルフゾンビ「そういう話に精通しているのは情報屋だな…」

剣士「だから僕行くよ…蟲の事は心配しないで…ちゃんと命令通りに動いてるから」

エルフゾンビ「ふむ…期待している」


---引っかかる事がいくつかある---

---僕は明らかに歴史を変える行動をした筈なのに---

---いのりの指輪は砕けなかった---

---僕はまだ夢を見て居るとも考えられる---

---それを確認したい---
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:28:33.08 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


フワリ シュゴーーーー


女オーク「遺跡から何か盗って来たの?」

剣士「情報屋さんの書物を借りて来た…ちょっと歴史の勉強さ」

女オーク「そう…飛空艇での移動は退屈よね?」

剣士「そうそう…行き先はセントラルだよ…狭間に入って移動すれば到着は夜中かな」

女オーク「そういえばさっき気付いたのだけれど…太陽の高度が高い気がするわ」

剣士「え!!?」バタバタ バタン

女オーク「扉から落ちないでね?」


ビュゥゥゥゥ  バサバサ


女オーク「太陽の位置が高いでしょう?」

剣士「う〜ん…気のせいじゃない?」

女オーク「移動ばかりしているから分からなくなったのかも…適当な事言ってごめんなさい」

剣士「僕は書物読んで居るからセントラルまでの操舵お願い…もう狭間に入って良いよ」

女オーク「うん…まかせて」スゥ



シュゴーーーーーー バサバサ



---さて歴史の勉強だ---

---超古代…アダムとイヴの伝説---
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:29:19.01 ID:KbfSVIxh0
『その頃_暁の墓所』


分かった事を時系列で説明するわ…

約4000年前に起きた地軸の移動…この時に壊滅的な破壊が起きて人類はほぼ滅亡

その中で唯一生き残った種が耐環境性のあるオークの種族

それまで彼らは今で言う南の大陸に住んで居たの…恐らくウンディーネと共に

その後北の大陸へと進出を始めこの暁の墓所の東側…未踏の地で一時代を築いた

これが約3500年前…

そしてウンディーネはシルフと名を変え今で言うエルフの森に移り住む

そこでオークの遺伝子と類似したエルフを生み出した

エルフは魔法を巧みに操り森を拠点として繁栄する

エルフの協力を得た精霊シルフは森の北部にドリアードを生成して管理する者として小人のノームを生んだ

ここが約3000年前…

ノームの器用さを用い失われた古代技術を復活させた精霊シルフは

超高度AIを複製してアダムを復活させようとするが

魔王に乗っ取られて失敗し…再び世界は滅亡の危機

ここで危機を救うのがこの地の東に栄えたオーク達

彼らは呪術で虫を操りドリアードを封じる事に成功したがノームは滅びる

恐らく2500年程前ね…

一旦平和になった世界でエルフとオークはそれぞれに繫栄して時代を築く最中

その恩恵を受けたのが温暖な海付近に少しだけ残って居た人間達

彼らは環境の良いエルフの森周辺で新たな文明を築き始め力を付けた

そして事件が起きる…エルフが持つ祈りの指輪を奪い人間の魔術師が台頭

魔術によって人間達が急速な発展をして時の王の時代に至る

ここが約1700年前…

この時代に起きたのが北の大陸の東側に位置していたオーク達が滅んだ事

時の王と暁の使徒が手を組み東のオークを退けた

なぜか?
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:29:48.25 ID:KbfSVIxh0
情報屋「答えは勇者の刀…オーク達が宝具として所持していた刀を奪って聖剣エクスカリバーを生む為」

魔女「…ではオーク達が初めから勇者の刀を持っておったと言う事じゃな?」

情報屋「そう…ここからは憶測だけど勇者2人は4000年前よりさらに過去に遡ってオークに託したと思うわ」

魔女「つまりこの墓所にあった暁の使徒は勇者では無く他人じゃという訳か」

情報屋「多分勇者の命を受けた予言の守り人ね…不明な点が多いから確かな事は言えないわ」

魔女「黄昏の賢者について何も分からんのか?」

情報屋「ここから先は時の王の証言のまとめだから確証は無いけれど…」


暁の使徒と黄昏の賢者はどうも恋仲だったらしいわ

暁の使徒は人間の男…そして黄昏の賢者はオークの女

暁の使徒が東のオークを攻め立てる最中二人は関係を持った

処女を失った黄昏の賢者は力を失い

暁の使徒はオークを退け勝者となった

二人は駆け落ちをした形

そして黄昏の賢者はオークを裏切った形

その後暁の使徒は時の王と接触し協力関係を得る

でもこれに黄昏の賢者は猛反発して別れた

ここから第2期と呼ばれる魔王との戦いが始まる


魔女「黄昏の賢者はオークシャーマンの可能性が高かったな?」

情報屋「多分そうね」

魔女「ミイラとなった恋人を連れ去ったと言う事じゃが…何故じゃと思う?」

情報屋「分からない…蘇らせるとしても今になって何故?という疑問が残る」

魔女「わらわはこう思う…失った力を取り戻す為じゃ…死霊術に屍を食らう術が有るのじゃ」

情報屋「なるほど…話が通りそう…」

魔女「読めたぞよ?黄昏の賢者は3000年前と同じ様に虫を操りドリアードを封じたいのじゃ…力を求めて居る」

情報屋「南の大陸に居るオークがどうして?」

魔女「予言じゃ…予言に従って居るのじゃ」


よう考えてみぃ

勇者らは3000年前のドリアードがどういう惨状を生んだか知って居る

じゃからわらわ達の時代に復活したドリアードを再度封じるための予言を残したのじゃ


情報屋「そういう事ね…ドリアードをどう倒すのか私達は知ってる…それは伝説を通じた予言なのね?」

魔女「イカンな…このままでは未来が先走ってしまうな」

情報屋「未来君が蟲使いの道を選んだのも…」

魔女「勘でどうすれば良いか知って居るからじゃ…何年も前に未来は感じて居る…事の異常に」

情報屋「連絡取れないのがもどかしいわ」

魔女「先回りで待つしか無いのぅ…さてどうするか…」


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46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:30:35.72 ID:KbfSVIxh0
『セントラル海岸』


フワリ ドッスン


剣士「すっかり日が落ちた…ウルフは飛空艇で留守番だ」

ウルフ「ガウガウ…グルル」

剣士「女オーク!今から宿屋にいくけど武器は置いて行って」

女オーク「どうして?武器が無いと暴漢に…」

剣士「この国は武器の持ち込みが出来ないんだよ…ナイフならおけ」

女オーク「わかったわ」

剣士「じゃぁ行こうか!ウルフ!明日の朝には戻るから良い子にしてて」

ウルフ「ガウ!!」


タッタッタ


女オーク「急いでいるのね?」

剣士「うん…セントラルでちょっと確認したい事があるんだ…宿屋を取って直ぐに行動する」

女オーク「どうするの?」

剣士「泥棒みたいな事だよ…あ!そうそう君お金持って居たよね?」

女オーク「うん…」

剣士「ちょっと目立つ装備に変える」

女オーク「これで良いのに」

剣士「ダメなんだ…今から白狼の盗賊団の真似事してある人をおびき出すんだよ」

女オーク「ある人?」

剣士「僕が尊敬する人さ…まぁ良いから付いておいで」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:31:21.28 ID:KbfSVIxh0
『宿屋』


カラン コロン


店主「いらっしゃいませ…お二人様で?」

剣士「2階の角の部屋空いてるかな?」

店主「そのお部屋はお高いですがよろしいですか?」

剣士「いくら?」

店主「お二人で銀貨20枚です」

剣士「おっけ!」ジャラリ

店主「ではご案内致します…こちらへ」



『部屋』


ガチャリ バタン


剣士「先に水浴びしておいで?その後出かける」

女オーク「じゃぁ浴びて来るわ…」

剣士「ゆっくりで良いよ…泥棒にはまだ少し時間が早い」

女オーク「うん…じゃ…」ガチャリ バタン

剣士「…」


この宿のこの場所で

何度も同じ景色を見て居る

雑多の声がする町の一角

一人で窓をボーっと眺める


剣士「…」ファサ


こうやってフードを被って

隙間から見える世界

どうして落ち着くのか分からなかった

でも理解した…僕は次元の狭間に捕らわれ

何度も繰り返しこの風景を見て来た

この雑多な世界に慣れていたんだ

今…記憶が戻りつつある

僕がどうすべきかもう一度考え直したい
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:32:15.81 ID:KbfSVIxh0
『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

ねぇ聞いた?いつもここに来てたあの豪族…殺されたらしいわ?

ええ!?誰に?ヒソヒソヒソ…

お〜い!酒くれぇ!!

なんだよ良いだろパフパフさせてくれよ


マスター「いらっしゃいませ…お二人様で?」

剣士「うん…席は空いてなさそうだね」

マスター「カウンターでよろしければ」

剣士「おけおけ!えーとセントラル名産はエール酒だっけな…2杯お願い」

マスター「かしこまりました」

女オーク「剣士?用事があったのでは?」

剣士「そうだよ…ここで聞いてみるのさ」

マスター「エール酒をお持ちしました…どうぞ」

剣士「ありがとう…ところでマスター…ローグっていう豪族知らないかい?」グビグビ

マスター「ハテ?お知り合いですか?」

剣士「あぁぁ聞き方が悪かったなぁ…マスターも仕事だからそうそう個人の話なんかしないよね」

マスター「お客さん人が悪いですねぇ…ハハハ」

剣士「じゃぁ海賊王の娘を捕らえたんだ…懸賞金を何処で引き換えるか知らないかな?」

マスター「ご冗談を…あまり大きな声でその名を出すのは得じゃ無いと思いますよ?」キョロ

剣士「そっか…収穫無しだ…お代だよ」ジャラリ

マスター「ありがとうございます…」チラリ

剣士「女オーク行こう」

マスター「もしよろしければお連れ様のお顔を拝見させて頂いても?」

剣士「女オーク?見たいんだってさ?」メパチ

女オーク「…」ファサ

マスター「失礼いたしました…又のご来店をお待ちしております」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:32:59.90 ID:KbfSVIxh0
『路地』


ガヤガヤ ガヤガヤ


剣士「そんなに簡単に会える訳無いかぁ…」

女オーク「何だったの?」

剣士「あのマスターは多分ローグさんの事知ってるんだよ…トラブルを回避するのに知らない振りさ」

女オーク「ちがう海賊王の娘の話」

剣士「君の背格好が似てるからちょっと釣ってみたんだよ…動きがあるならもう追尾されてると思う」

女オーク「良いの?路地を悠々と歩いても」

剣士「あんまり良く無いね…そろそろ行こうか…そこの角を曲がったらハイディングするよ」

女オーク「わかったわ…」


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剣士「ハイディング!」スゥ

女オーク「ハイディング!」スゥ

剣士「迷って居ないね?貴族居住区の方に行こう…こっちだ」タッタ
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:33:56.42 ID:KbfSVIxh0
『貴族居住区_屋根上』


タッタッタ


剣士「リリース!」スゥ

女オーク「リリース!」スゥ

剣士「さて!!何処にいるのかな?」

女オーク「こっちの方は何処を見ても食事会なのね」

剣士「エルフは戦争中だというのにセントラルは呑気なもんだ…何も知らないで」


ワイワイ ガヤガヤ

魔石のレートを引き上げる?キ・カイにそんな資金ありますかね?

新型の気球でトレードを…ふぅむ…噂に聞く奴ですな

輸送の効率が上がるなら一度試してみる価値はありそうか…

では成立という事で…ハッハッハここは私が払いましょう

ワイワイ ガヤガヤ

俺ぁあの女が忘れられ無ぇ!

フィン・イッシュに行って農耕で稼ぐ

そして売られた女を買い戻すんだ

ワイワイ ガヤガヤ


剣士「どの円卓でも似たような話ばかりだ…やっぱり騒ぎ起こさないとダメかもなぁ…」

女オーク「ねぇ向こうのお屋敷から武装した人が何人も出て来てる」

剣士「本当だ…衛兵でも無いのにどうしたんだろう?」

女オーク「武器の所持は禁止じゃ無かったの?」

剣士「さぁ?偉い人だけは許可されてるんじゃないかな?」

女オーク「何か起こりそう」

剣士「面白そうだから隠れて見て居よう」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:34:50.55 ID:KbfSVIxh0
『貴族居住区_路地』


タッタッタ


こっちには居ない

一応各路地を封鎖する形を取って発見次第捕らえろ

服装か何か特徴は聞いて居ないのか?

聞かされて居ない…向かった方角が此方方面と言うだけだ

相手は2人だ…必ず捕らえるぞ!


剣士「フフ…これ僕達を探してるんだね」

女オーク「目星がついて良かったじゃない…あそこのお屋敷よ」

剣士「中に入ってみよう…ハイディング!」スゥ

女オーク「ハイディング!」スゥ

剣士「窓から入るよ…おいで」シュタタ
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:36:42.55 ID:KbfSVIxh0

『とある屋敷』


ピョン シュタッ


剣士「リリース!」スゥ

女オーク「リリース!」スゥ

剣士「しぃぃぃぃ…」

女オーク「…」



さぁ懸賞金を見せて貰おうか

それは海賊王の娘を捕らえたのを確認した後でやんすね

直に私の部下が連れて来る…まさか懸賞金の用意無しで掛けていた訳では無いだろうな?

何を言って居るでやんす…あっしの資金運用額を知らんのはあんさんの方でやんすよ

そうやっていつものらりくらりと…良いから懸賞金のありかを話せ

あんさん頭悪いんすねぇ…確認した後と言ってるでやんすよ帰って下せぇ

直に連れて来ると言っているだろう

あっしもそろそろ怒りやすぜ?


剣士「フフ面白そうだ…行こう」タッタ

女オーク「…」

剣士「お頭!例の女連れて来ました」

豪族「おぉ!!でかした!!」

ローグ「えええええええええ!!?」

豪族「さぁこれで分かっただろう?懸賞金をよこせフハハハハハハ」

ローグ「その声は未来君っすね?」

豪族「何を言っている!!この女が海賊王の娘だ!!見ろ…疑い様が無いだろう」

剣士「そうだ!!」

ローグ「もう一人は誰でやんすか?顔を見せて下せぇ」

女オーク「…」ファサ

豪族「フハハハハハハハ…落ちたな?頭取の座は俺が頂く!ハハハハハハハ」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:37:12.79 ID:KbfSVIxh0
ローグ「んん?どーこかで見た様な…見てない様な…」

豪族「とぼけるんじゃ無ぇ!!目ん玉ほじくって良く見ろ!!」

ローグ「あんさんと話して無いでやんす…もう帰って下せぇ」

豪族「何だとぉ!!懸賞金は渡さんとでも言うのか?」

剣士「あぁぁ…もう我慢できない」プルプル

豪族「あぁ我慢出来ん!その通りだ…雁首揃えて懸賞金を払って貰うぞ」ズイ

剣士「女オーク?この人黙らせてもらって良い?」

女オーク「わかった…」グググ

豪族「何をする…おい!放せ!!」ムググ

ローグ「あ!!奴隷だったオークの子っすね?いやぁぁぁ懐かしい…大きくなったっすね?どういう事なんすかコレ」

豪族「むががが…」ジタバタ

剣士「話は長いんだ…今日会いに来たのは訳が有ってね?」

ローグ「あっしも聞きたい事が山ほどあるっす…ちっと奥で座って下せぇ」

剣士「この人どうしよう?」

ローグ「外に放り出しといて下せぇ…構うの面倒くさいでやんすよ」

剣士「女オーク!放り投げといて」

女オーク「ふん!!」ポイ ゴロゴロゴロ ドターン

ローグ「いやいやいやビックリっすね…でも良くここが分かりやしたね?まぁまぁ座って下せぇ」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:38:24.03 ID:KbfSVIxh0
『ローグの屋敷』


ローグ「それでどういう訳であっしの所へ?」

剣士「アダムを破壊したと聞いたらどういう反応をするかと思ってね」

ローグ「マジっすか!!いつやったんすか?もう地軸の移動は起きんのですかね?」

剣士「地軸の移動…やっぱりか」

ローグ「え?10年後に地軸の移動があると予言したのは未来君っすよ?アダムを破壊したらもう大丈夫なんすかね?」

剣士「僕が予言…」

ローグ「未来君の予言は全部当たっていやしたよ…ケシの大発生やらスプリガンから魔石が出るやら」

剣士「そんな細かい事まで僕が言ったんだ…」

ローグ「覚えて無いんすか?未来君は未来から来たと言ってやしたよね?忘れたんすか?」

剣士「いつの間に忘れて居たみたい…全部夢の中の出来事と勘違いしてたんだ」

ローグ「いやいやいや…でもアダムを破壊したでやんすよね?いやぁぁあっしは信じていやしたよ」

剣士「記憶があいまいなんだ…だからローグさんに教えて欲しい…僕は何を予言したの?」

ローグ「幽霊船が壊された未来から来たと言ってたでやんす…詳しく話やしょうか」


カクカク シカジカ

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ローグ「…という訳であっしは今豪族の資金力を使って人流を促してるんすよ」

剣士「僕はいつの間に全部夢話だと思い込んでいたんだろう…」

ローグ「今思い出したなら良いんじゃないすかねぇ?」

剣士「もっと世界を変えられるチャンスは沢山あった筈…結局子供が生まれない10年間は経過してしまった」

ローグ「こっから盛り返しやしょう…アダムが破壊されたなら行ける筈っすよね?」

剣士「…そうだと良い」

ローグ「あっしのやって来た事を教えやしょうか?」

剣士「あぁそれ…気になるなぁ」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:39:39.93 ID:KbfSVIxh0
その土地に土着した民衆はなかなか移住しないんすよ

なもんで豪族達にちっと働いて貰って無理やり移動させるんす

ちっと強引なんすが奴隷商を上手く使って民衆のその後まで面倒見をやるんす

その結果シン・リーンもフィン・イッシュも人口が増えていやす

代わりに沿岸部は減っているんすが…移住した方が稼げる環境を整えて居やす

例えばシン・リーンで魔石の買取レートを高めにすると彼らにお金が回る

流通した魔石をキ・カイまで運んで経済を回すんす

商人さんがやって居るのと同じ事を豪族の資金力を使って強引にやってるんすよ


剣士「…道理でシン・リーンは冒険者で溢れているんだ」

ローグ「あっしが促した結果っすね…地軸の移動で沿岸部が済めなくなっても被害を受けるのは豪族だけっす」

剣士「僕は豪族を偏見の眼で見てたよ…」

ローグ「気にせんで良いでやんす…素行が悪いのはもう治らんのでそういう輩をコントロールする為に頭に懸賞金かけてるんす」

剣士「あぁ…そうそう話は変わるんだけど」

ローグ「何でやんすか?」

剣士「アダムを破壊する直前に僕を呼ぶ声を聞いたんだ…多分パパの声」

ローグ「アダムが勇者さんだったっていうオチっすか?また謎が深まりやすね?」

剣士「うん…どうしてアダムになって居たのか…調べたい」

ローグ「ロマンっすね…それは重要な秘密が有るに間違い無いっすよ」

剣士「今の所手掛かりは情報屋さんしか無いかな」

ローグ「時の王の屋敷に何かあるかも知れやせんぜ?今は美術館になっとるっす」

剣士「美術館…」

ローグ「古美術品って言うんすかね…古代の謎の道具とかあるらしいでやんす」

剣士「じゃぁ今行って来る」

ローグ「いやいや…あっしが案内出来やす…夜は警備に見つかるとエライ事になるっす」

剣士「明日行ける?」

ローグ「良いっすよ?あっしはアダムが破壊されて地軸の移動が無くなるならもう豪族なんて興味無いっすよ」

剣士「じゃ明日もう一回来ようかなぁ…」

ローグ「そんなそんな…まだ積もる話がありやす…今晩はここで休んで下せぇ
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:40:29.01 ID:KbfSVIxh0
カクカク シカジカ

アンナコト コンナコト

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剣士「ビッグママが魔女の修行を受けているって本当!?」

ローグ「あららら?聞かされて居ないんすか?」

剣士「僕も精神と時の門で修行をしてた…すぐそばに居たのか…」

ローグ「魔女さんも人が悪いっすねぇ…」

剣士「魔女はわざと遠ざけて居たんだ…分かって来たぞ…魔女は僕が未来から来たのを気付いて居たな?」

ローグ「どういう事なんすかね?」

剣士「僕が次元を崩壊させてしまうのを防いで居たんだ…魔女は時の番人…」

ローグ「アダムが破壊されて未来は変わったんすよね?」

剣士「…その筈…でもなぜか次元の崩壊は起きなかった」

ローグ「不思議な話なんすが結果良ければ気にせんでも良い気がしますがね?」

剣士「アハハそういう考え好きだよ…まぁそうなんだよ…結果的にアダムは倒せたし何もかも良くなる筈」

ローグ「後はゆっくり謎解きをして行きやしょう」


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57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:41:41.85 ID:KbfSVIxh0
『翌日_美術館』


チュン チュン ピヨ


ローグ「まだ開館前なんで貸し切りでやんす」

剣士「さすが豪族のお偉いさんだね」

ローグ「警備が付いて回りやすが気にしないで下せぇ」

剣士「うん…自由に見て良いんだね?」

ローグ「へい…割と広いんで迷わない様に」

剣士「大丈夫…ママと一回来た事あるし」

ローグ「そうだったんすね」

剣士「女オーク付いておいで」スタ

女オーク「沢山ある肖像画はもしかしてウンディーネ?」

剣士「ホムンクルスっていうお姉ちゃんだよ…多分ウンディーネと同じ人かな?」

ローグ「何かヒントは在りやせんかねぇ…」

剣士「時の王っていう人の時代は1700年くらい昔だったよね?」

ローグ「らしいっす…その国が栄えた時代なんでもっと前から生きていたかも知れやせん」

剣士「すごいなぁ2000年近く生きてるって想像出来ないなぁ…」

ローグ「エルフは400年くらいらしいっす…ドワーフも同じくらいなんで未来君も寿命は長いかも知れやせん」

剣士「爺ぃじは何歳なんだろう…」

女オーク「ここの画に描かれている…この紋様…」

剣士「んん?あーシン・リーンで良く見る紋様だね」

ローグ「姉さんが作った装飾品はこんな紋様が彫ってありやすね」

剣士「あれ?…」

ローグ「ちょっと待って下せぇ…シン・リーンの美術品には姉さんが使う紋様が多いっす…未来君の刀の鞘にも同じ紋様あるっすよね?」

剣士「え!?この鞘に…あ!!本当だ…これもしかしてママが先に?」

ローグ「姉さんがシン・リーンの紋様を真似たのかも知れやせんが…可能性はありそうっす」

剣士「待てよ待てよ…あのシン・リーンの壁画の彫刻…かなり特殊だった…普通の人には難しいけどママなら簡単だ」

ローグ「およよよ?新説っすね…あの壁画は姉さんが彫った可能性がありやすね」

剣士「でも飽きっぽいママがどうしてあんな大きな壁画を掘ったんだろう」

ローグ「ははーん…きっとこれっすね…」パサ
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:42:23.06 ID:KbfSVIxh0
剣士「え?」

ローグ「これは10年前に未来君の証言をあっしがメモした物でやんす」

剣士「あああ!!未来を知って居るから予言として残した…そういう事か…あの壁画は予言なんだ」

ローグ「未来にこんな事が起こるという事さえ残せば変えられる可能性もありやすよね?未来君の様に」

剣士「…そうかつまり暁の墓所の壁画も予言だ…良く見ておけば良かったなぁ」

ローグ「暁の墓所?なんか聞いた事ありやす…」

剣士「シン・リーンの東にある王家の墓所らしいよ…壁画が隠されてたんだ」

ローグ「もしかすると姉さんは世界中のあちらこちらに予言を残したかも知れやせん…こりゃまたロマンすねぇ」

剣士「ママの手掛かりが残って居そうなのは分かったけどパパとアダムの関係が繋がらない…」

ローグ「他に何か無いっすかねぇ…向こうの部屋には古美術品がありやすぜ?」

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:43:32.06 ID:KbfSVIxh0
『向こうの部屋』


剣士「壺に食器…装飾品…う〜ん」

ローグ「何かの道具もありやすが…未来君は分かりやせんか?」

剣士「全然分からない…」

ローグ「手がかりは無さそうでやんす…」

剣士「時の王っていう人は2000年くらい前の人だとするとドリアードとは無関係だよ」

ローグ「ドリアードはもっと昔でしたかね?」

剣士「3000年前くらいらしい」


リン ゴーーーーン


剣士「鐘の音…」

ローグ「貸し切りは終わりでやんす…どうしやす?まだ見ていきやすか?」

剣士「興味を引く物が無い…もう良いや」

ローグ「未来君はこれからどうするでやんすか?」

剣士「う〜ん…急ぎの用事はもう無いんだけど…エリクサーを運んで居る最中なんだ」

ローグ「どこまで運ぶでやんすか?」

剣士「名も無き島だよ…商人さんがホム姉ちゃんを復活させようとしてるんだ」

ローグ「商人さんにもずっと会って無いでやんす…取引の件で話をしたいんすが」

剣士「今はキ・カイに居る筈…経由して送って行こうか?」

ローグ「気球で行くでやんすか?」

剣士「あ!飛空艇の事話して無かったね…新しく僕の飛空艇を作ったんだよ」

ローグ「さすが姉さんの血を引いていやすね…あっしにも見せて下せぇ」

剣士「ママの船より早いんだよ?」

ローグ「そらスゴイっすね…もう行きやすか?」

剣士「飛空艇でウルフを留守番させっ放しなんだ…早く戻りたいんだけど…」

ローグ「早速行きやしょう」

剣士「ローグさんは何も持って行かなくて良いの?」

ローグ「あっしはもう屋敷も何も要らんでやんす…豪族と付き合うのもウンザリして居やした」

剣士「ハハ…じゃぁもう行こっか」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:45:01.78 ID:KbfSVIxh0
『道中』


ガヤガヤ ガヤガヤ


剣士「ローグさんは商人さんとどんな取引を?」

ローグ「相場の話っすね…魔石のレートが変わるんすよ」

剣士「そんなに重要な事なの?」

ローグ「貴族の一人にちっと賢いのが居るんす…放って置くと富を独り占めする様になるでやんす」

剣士「ふ〜ん…魔石とどんな関係なの?」

ローグ「キ・カイはエネルギーが魔石に依存してるんでレートが大きく変わると戦争に発展しやす」

剣士「政治絡みなんだ…苦手だ」

ローグ「あっしは名家の出じゃないもんすから資金は動かせてもレートの操作にあまり介入出来んのでやんす」

剣士「ふ〜ん…」ハナホジー

ローグ「興味無さそうっすね?」

剣士「全然無い」

ローグ「こう言えば良いっすかね?もう魔石は売らないと言われたら言う事聞くしか無い…そういう事なんす」

剣士「…」


---エネルギーの供給が条件…供給を止めると脅されたら?---

---アダムと魔石の関係と同じか---

---そういえば魔王を封じたとされる魔石は何処に行った?---

---大事な事をすっかり忘れていた---


ローグ「どうしたでやんすか?急に黙りこくって?」

剣士「あ…いや何でも無いよ」

ローグ「キ・カイに魔石が流通しなくなったらどうなるんすかねぇ」

剣士「大丈夫だよ…向こうは石炭が豊富だし」

ローグ「石炭って又時代遅れな燃料っすね…」

剣士「馬鹿に出来ないよ?錬金術でダイヤモンドに変換出来る」

ローグ「ええ!?そうだったんすか?」

剣士「あとキ・カイの古代遺跡からウラン結晶も発掘されてるみたいだよ」

ローグ「なおさら商人さんと情報交換しないといけやせんね…それを奪いたいと思う輩は沢山いるでやんす」

剣士「なかなか平和にならないなぁ…」


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61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:45:51.72 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


ローグ「操舵のコツが分かってきやしたぜ?」

剣士「キ・カイまで任せたよ…僕は歴史の勉強だ」ヨミヨミ

ローグ「風に上手く乗れば逆風でも進むのがスゴイっすね」

剣士「落下を上手く使ってスピード乗せるんだよ…慣れれば勘で行ける」

ローグ「武器はクロスボウ2台すか…火力は姉さんの船が上なんすね」

剣士「あんまり戦闘を想定していないんだ…ボルトもちょっとしか乗って無い」

ローグ「外の視認性が悪いのがちっと不便すね」

剣士「そうだね…暇があったらもう少し改造してみる」

ローグ「いやぁぁ骨組みをクジラの骨で作ったのは考えやしたね…」

剣士「木よりも軽くて強度が高かった…だから大きな羽が作れたんだ」

ローグ「噂でキ・カイの気球の話をよく聞くでやんすが皆こんな感じで?」

剣士「軽量なのは同じかな…錬金術で木材を樹脂に変性してるんだ…木よりも軽くて丈夫」

ローグ「この胴体の部分っすよね?」

剣士「それそれ…卵の殻みたいになってるからスゴイ強度が高いんだよ」

ローグ「10年で進歩するもんすねぇ…」

剣士「キ・カイは色んな形の気球があって面白いよ」

ローグ「あっしは10年間南の大陸には行って無いんで楽しみっす」


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62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:46:42.04 ID:KbfSVIxh0
『古都キ・カイ』


フワフワ ドッスン


ローグ「門の外に降ろすのは何か理由が?」

剣士「豪族に狙われるんだよ…ほら女オークは背格好がビッグママに似てるじゃない?」

ローグ「顔は似てないでやんす…背が高いのは損っすね」

剣士「商人ギルドは場所知ってるよね?3人だと目立っちゃうから現地集合で良い?」

ローグ「良いっすよ…」

剣士「じゃ…向こうで…女オーク!ハイディングしながら行くよ!」グイ

剣士「ハイディング!」スゥ

女オーク「ハイディング!」スゥ

ローグ「あぁ姉さんを見て居る様でやんす…良い子に育ちやしたよ?姉さん…」タッタ


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63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:48:08.20 ID:KbfSVIxh0
『商人ギルド』


ガヤガヤ ガヤガヤ

はい!買取はこっち!競売はあっち!

商船の取引所は臨時で外に作ってありまぁぁす!

亜麻とシルクが値下がりしてる…

石炭の売りが好調だ…ウヒヒヒ


盗賊「奴隷商居無ぇかぁ!!大工に工夫!!大募集!!移民歓迎!!誰か居無ぇかぁぁぁ」

娘「爺じぃ!!ここは取引所だからそう言うのは外でやってよ!!」

盗賊「そんな簡単に集まら無ぇからここに来てんだよ!」

娘「邪魔邪魔!!シッシ!!」

盗賊「はぁぁどうすっかな…」

影武者「僕に任せておいてよ…地下の方に孤児の集まりが居るから話してみるよ」

盗賊「孤児!!おぉそれだ!!」

影武者「ギャングになっててスラムをうろついて居るんだ」

盗賊「スラムか…お前一人で大丈夫なのか?」

影武者「僕を誰だと思って居るんだい?取引なら任せ…」


ローグ「盗賊さん!お久しぶりでやんす…」


盗賊「ん?おおおおおおお!!ローグじゃ無ぇか…どうしたんだ?いつ来た!?」

ローグ「商人さんに会いに来たでやんす…盗賊さんも一緒だったでやんすね」

盗賊「商人なら下に居るぞ?連れて行ってやる」

影武者「困るなぁ…勝手にチョロチョロされるのは」ジロ

盗賊「まぁ堅い事言うな」

影武者「ダメだよ…僕はここを任されて居るんだ…僕の許可無しで勝手な事はしないで貰いたい」

ローグ「ちっと待って下せぇ…未来君もここに来る筈なんすが」

盗賊「なぬ!?未来も一緒か?なら上の大部屋で待って居た方が良さそうだな」

影武者「そうして貰えると助かる…商人には僕から伝えるよ」

盗賊「あー分かった分かった…ローグ!こっちだ来い」

ローグ「へい…いやぁ賑わって居やすねぇ…」

盗賊「ところでお前今まで何やってたのよ?」

ローグ「まぁ色々ありやしてね?」


アンナコト コンナコト

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64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:21:46.14 ID:KbfSVIxh0
『大部屋』


剣士「リリース!」スゥ

女オーク「リリース!」スゥ


盗賊「おぉ!来たか…ん?なんだそりゃ買い物して来たんか?」

剣士「触媒が不足してたから地下に行って来たんだ…良さそうな望遠鏡有ったから買ってきちゃった」

ローグ「あらら?な〜んか女オークさん…雰囲気代わりやしたね?」

女オーク「…」

剣士「変性魔法で少しキバを出した…肌色も少し褐色に…こっちの方が良いでしょ?」

ローグ「今まで未来君の魔法で変装していたんすね?」

剣士「人間っぽくしてたんだけどさ…やっぱりキバは少し出ていた方が良い」

盗賊「それにしても商人遅せぇな…」

ローグ「あっしには興味無いのかも知れやせんねぇ…」

剣士「あ!!ホム姉ちゃんが生きてたって伝えればすぐに来るかも」

盗賊「なぬ!!そりゃマジか…」

ローグ「あっしも今聞いたでやんすが…何処に居るんすか?」

剣士「精霊樹の森だよ」

ローグ「石造はどうなったんすか?」

剣士「話は商人さんが来てからの方が良いかも」

盗賊「おう!!ちっと急ぎで呼んで来るわ」ダダ


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65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:23:17.28 ID:KbfSVIxh0
『数分後』


ガチャリ ドターーーン!


商人「剣士君!!聞いたよ…ホムンクルスが生きていたんだってね?ハァハァ」

ローグ「速攻出て来やしたね…ハハ」

剣士「うん…ホム姉ちゃんの超高度AIユニットは10年前に僕が拾って精霊の御所に置いて来たらしい」

商人「らしい?」

剣士「僕は記憶を失って居たんだよ…話はこうだよ」


10年前…シャ・バクダ遺跡に避難していた時の事

僕は冒険の書を読んだんだ…


カクカク シカジカ

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剣士「…という訳でホム姉ちゃんは精霊樹になって森の動物や虫達に囲まれて生きているんだ」

商人「そうか…無事だったか…良かった」ポロポロ

剣士「体は失ったけど精霊樹になって葉っぱから風の音とか色んな事を感じてる筈」

商人「うんうん…」

剣士「今では森の声の主になって沢山の友達が居る筈」

商人「うんうん…それで良い…きっとそれが一番幸せな筈さ」

機械の犬「ワン!」

商人「精霊樹の森に行きたくなって来た…そうだホムンクルスの超高度AIの寿命は400年くらいだった筈」

機械の犬「ワン!」

商人「この機械の犬に入れた超高度AIユニットの寿命はあと5年程…それぞれ違う形だけどきっとこれが一番良い」

盗賊「ふ〜む…なるほどな…それで未来が行方不明になった後に御所で発見された訳か」

商人「剣士君…僕は精霊樹の森へ行きたい…ホムンクルスの傍に居たい」

剣士「あ〜今はちょっとダメかも…エルフが戦争をしてる」

商人「相手は?まさかドリアード?」

剣士「話にはまだ続きが有ってね…実はドリアードの中にあるアダムは僕が破壊して来た」

盗賊「どわっ!!マジか!!それを先に言え!!」

商人「えええ!?どういう事なんだい?」

剣士「もっと話は遡る…実は僕は未来から来てるんだ…未来に起こる事をもう変えて来た」

商人「ええと…話が掴めない」

剣士「こういう事だよ…」


カクカク シカジカ

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66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:23:49.31 ID:KbfSVIxh0
商人「…これは驚きだ…剣士君!君はこの世界が夢幻だと言っているのと等しい事を言って居る」

剣士「そうだよ…魔術で言う次元の繋がりは…おそらく夢幻のゆらぎだよ」

商人「じゃぁ今のこの瞬間も…精霊の記憶?いや…ホムンクルスの記憶?」

剣士「そう言い変える事が出来るかも知れない」

商人「ラヴ!君にこの質問をするのは酷かもしれないけどどうなんだい?」

機械の犬「クゥ〜ン」

商人「分からない…」

剣士「その答えを探すのが魔道なんだ…魔女は初めからそれを知って隠して居た」

商人「現実は何処にある?」

剣士「この次元も現実…別の次元も現実…それが量子で繋がっている…量子転移とはそれを超える魔法」

商人「平行世界か…」

盗賊「難しい話になって来たが…とりあえずアダムは破壊されて色々解決した訳だな?」

剣士「その筈…多分未来は変わった」

盗賊「あいつはどうなった?とち狂った第3皇子のヤローは?」

剣士「そんな人は見て居ないなぁ…僕はエリクサーに浸かった機械をママの爆弾で破壊した…それだけ」

盗賊「ふむ…破壊したってのは本当らしい…エリクサーに浸かっているなんぞ行った奴にしか知り得ん話だ」

剣士「アダムは破壊出来たけどその後ドリアードが暴れ始めて今エルフが戦って居る最中だよ」

商人「精霊樹は大丈夫そうかい?」

剣士「エルフゾンビさん曰く有利にはなってきているらしい」

商人「そうか…もう少し待つ必要があるのか…ところでエリクサーは?」

剣士「樽で4つ分持って帰って来たよ」

商人「僕にはまだ仕事が残って居るな…未来の為にホムンクルスを完成させないと」

剣士「え?」

商人「ホムンクルスは未来にメッセージを伝える為に生き延びて居るんだ…絶やしてはいけない」

剣士「あぁ勘違いした…僕の事かと思った」

商人「…」

剣士「??」

商人「剣士君…君のお母さんの女海賊は…もしかすると君へのメッセージをホムンクルスに託して居ないかな?」

剣士「え!?」

商人「女海賊はホムンクルスが現在まで生き延びている事を知って居る筈…だから古代遺跡に残って居たんじゃないかい?」

機械の犬「ワン!ワン!ワン!」

商人「正解だ…古代遺跡で見つけた外部メモリをラヴに一度挿入した…ラヴがそのメッセージを知って居る」

機械の犬「ワン!」

商人「聞くためにはホムンクルスを目覚めさせる必要がある」

剣士「聞きたい…」



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67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:24:22.88 ID:KbfSVIxh0
商人「エリクサーの買取は次の商船が入って来るまで待ちだよ…もう2〜3日かな」

剣士「うん…しばらくゆっくりしておくよ」

ローグ「商人さんあっしからもちっと話があるんすが?」

商人「何かな?」

ローグ「北の大陸からの魔石が流通していやすよね?レートが一気に変わるっす」

商人「へぇ?それは困るね…でも何で急に?」

ローグ「セントラルの貴族の中で公爵っていう奴を知りやせんか?」

商人「あぁ知って居るさ…古代遺跡発掘の出資元だね…彼が何か企んでいる?」

ローグ「多分キ・カイの利権を丸ごと狙ってるっすよ…何か凄い物を発掘していやせんかね?」

商人「詳しくは知らないんだ…まぁでも魔石流通が止まるとキラーマシンも動かない…機械の軍艦もだ」

ローグ「そういう事っス…丸裸なんすよ」

商人「利権の独り占めは豪族も黙って居ないんじゃないかな?豪族が魔石の流通に動くと思うけどなぁ」

ローグ「だからこうやって話をしてるんす…豪族をコントロールしているのはあっしとアサシンさんでやんす」

商人「アレ?もしかして豪族の頭取ってローグだったのかい?」

ローグ「言い忘れていやしたね…あっしは裏で豪族を操っていたっす」

商人「なんだそうだったのか…なかなか足が掴めなくて困って居たんだよ…そっちから来たんだね」

盗賊「おいおいおい…どういうこった!」

商人「そうだよローグ!困るんだよ豪族があちこちで勝手に動かれちゃ…武器の密輸しかり相場の介入しかり…」

ローグ「正確にはあっしだけじゃ無いんす…さっき言った公爵も上手く豪族を誘導してるんす」

商人「つまりこうだね?公爵が力を付けて来てローグの手に負えなくなってきている…」

ローグ「まぁそんな所でやんす…海賊王の娘に懸賞金を賭けて豪族を纏まらせないので精一杯なんでやんす」

商人「まぁ一つ分かったのは豪族はその頭取以下の一枚岩では無いという事だね」

ローグ「ハッキリ言ってバラバラっすね」

商人「公爵が利権を餌に纏め始めたという所か…」

盗賊「しかしローグ!豪族のせいでどんだけの村が焼かれたか分かってんのか!?」

ローグ「それにも訳があるんすが…」

商人「うーむ…これは話が長くなりそうだ…盗賊!影武者が単独で取引先に行くんだけど一緒に付いて行ってもらえないかな?」

盗賊「んぁ?俺は人相が悪いからダメだと本人に言われてんだが…」

剣士「僕が言って来ようか?ボディーガードだよね?」

商人「剣士なら安心だ…お願いできるかい?」

剣士「女オークはここで待って居た方が良さそうか…」

女オーク「私は水浴びしてゆっくりしておくわ」

剣士「うん…じゃぁ影武者さんの所に行って来る」

商人「助かる…それでローグ?話の続きなんだけど…」

ローグ「へい…あっしが豪族を動かしてやっていた事はですね…地軸の移動に備えて人の誘導が狙いだったんす…」


カクカク シカジカ

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68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:24:48.27 ID:KbfSVIxh0
『港にある倉庫』


スタスタ


剣士「影武者さん…肌の調子はどう?」

影武者「おかげで良くなったよ…髪の毛も生えて来たさ」

剣士「もうフードで顔を隠さなくても良いんじゃない?」

影武者「僕はねこのフードの隙間からしか世界を見たことが無いんだ…怖いんだよ」

剣士「怖いって…何が?」

影武者「僕の顔色を悟られるのがさ…フードの中で怯えた顔をしているのを知られたくない」

剣士「あーーーなんか分かるなぁ…僕も子供の頃からずっとフードの隙間から世界を見てた」

影武者「フフ…君も同じだったか」

剣士「なんだろうなぁ…フードに隠れてるのは顔だけなのに…どうして落ち着くんだろう」

影武者「世界を一歩引いたところから見て居る…そんな感じだよ」

剣士「アハハ…そんな2人が揃って歩いているのはおかしく見えるよね」

影武者「そうかい?」

剣士「僕影武者さんと意見が合いそうだ…でもね…君の笑った顔も見て見たい」

影武者「…」

剣士「どうして黙るのさ」

影武者「笑い方を知らない…笑えているのかも自信が無い…ゴメンねその期待には応えられない」

剣士「まぁ良っか!!かくれんぼしてるみたいでなんだか楽しいし」

影武者「そろそろ待ち合わせの場所だよ…君は黙って見て居れば良い…言葉を発したらダメだよ」

剣士「おけおけ!秘密の取引…ワクワクするなぁ」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:25:29.03 ID:KbfSVIxh0
『数分後』


スタスタ


豪族の男「…これはこれは闇商人さんよ…約束通り2人で来たな?」

影武者「…」タジ

剣士「…」ポカーン

影武者「密会の約束だった筈だね…どういう事かな?」

ごろつき「二ヒヒ…」ゾロゾロ

豪族の男「まぁまぁ…そう慌てんな…取引が無事に済めばそれで良いだろう?」

影武者「破談さ…剣士君…帰ろう」スタ

豪族の男「待て待て…ブツは用意しているんだ…これを見ろ」ドサリ

影武者「…」ジロリ

豪族の男「俺は例の物が手に入ればそれで良い…何処に隠してある?」

影武者「フフこの状況で取引が成立するとでも?」

豪族の男「おぉ分かった分かった俺は下がって後ろを向く…その袋は持って行け…ブツのありかさえ聞ければ俺はそのまま去る」

影武者「剣士君…その袋を持って帰ろう」

剣士「…」スッ ガサリ

豪族の男「さぁ教えろ…キラーマシンのパーツは何処に保管してあるんだ?」

影武者「2番倉庫B-14…剣士君行こう」スタスタ

剣士「…」スタスタ

豪族の男「グハハハハ…俺は去るが…後は知らん」

影武者「ハッ…まずい!!来た道に人が沢山居た…」

剣士(まだ喋っちゃダメ?)ヒソ

影武者「剣士君僕を守って…これは罠だ」

豪族の男「さぁて!!これでまともに取引出来るな?海賊王の娘を匿って居るだろう…後は言わんでも分かるな?」

剣士(やって良いの?)ヒソ

影武者「この窮地を脱出できるのであれば」ヒソ

豪族の男「さぁどうなんだ?この付近に居るのはみ〜んなごろつきだ!!どういう事か分かるな?」

剣士「…」チャキリ ターン


バチン!!


豪族の男「あだっ!!にゃろう…言う事聞く気が無ぇな!!」

剣士「…」チャキリ

豪族の男「その武器は海賊王の娘の武器…やっぱり匿っていやがったな!!ごろつき共!!やっちまえ!!」

ごろつき共「うぉぉぉぉ」ズドドド

剣士「影武者さん僕の懐に入って!」グイ

影武者「え!?」

剣士「ハイディング!」スゥ

豪族の男「消えた…あいつ!!白狼の一味だったのか…」

ごろつき共「あっちだぁ!!地下の方へ向かって居る!!」ズドドド

豪族の男「闇商人が白狼の仲間だったとは…くそう!追え!隠れ場所を突き止めろ!!」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:26:43.23 ID:KbfSVIxh0
『夕方_商人ギルド』


ザワザワ ガヤガヤ

おい白狼の盗賊団って知って居るか?

10年以上前の伝説の盗賊団だ

地下の方に隠れて居るらしい

こりゃ貴金属の被害が出そうだ…ヤべェ隠すぞ!

ザワザワ ガヤガヤ


盗賊「よう!!戻った様だな?何なんだこの騒ぎは…」

影武者「商人は何処へ?」

盗賊「上の大部屋でくつろいでる…何か有ったんだな?」

影武者「話はそこで…」


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71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:27:13.82 ID:KbfSVIxh0
『大部屋』


ガチャリ バタン


影武者「商人…取引は無事に終わったよ…でもマズい事になった」

商人「うんゴメンね…危険な取引を君に押し付けてしまって」

影武者「いえ…それは構わない…でも白狼の盗賊団と闇商人を紐づける結果になってしまって…」

商人「そろそろ潮時だとは思って居たんだ…海賊王の娘を匿って居るという噂も在ったしね」

影武者「どうしよう…このままだとキ・カイで行動するのは制限が出てしまう」

商人「しばらく身を隠すしか無いだろうね…盗賊と少し話をしたんだけど君にはハテノ村に行ってもらいたい」

影武者「ハテノ村…左遷ですか」

商人「そう言うのじゃない…ハテノ村で硫黄の取引所を新しく作りたいんだよ…そこを君に任せたいんだ」

影武者「商人はどうされるので?」

商人「考えてある…世間的に死んだ事にするのさ」

ローグ「簡単なこってすね…あっしが闇商人と海賊王の娘を捕らえた事にするだけっす」

剣士「アハハそれ名案だねぇ」

ローグ「あっしは豪族の中では名が通ってるんすよ…豪族達の目の前で商人さんに扮した剣士さんと女オークさんを捕らえるんす」

剣士「商人さんの姿に変性するのは簡単さ…面白い!やろうやろう」

ローグ「どこでやりゃ良いっすかね?」

剣士「こういうのはどう?地下街の一角に鉄の檻があるんだ…その中に2人入ってローグさんと盗賊さんでここまで移送する」

ローグ「しばらく檻の中でやんすがそれでも良いっすかね?」

剣士「ほら?昔さぁ…檻の中で過ごした事有ったよね?どんぐりだけ有ればそれでも楽しいんだ」

女オーク「ウフフ…」クス

ローグ「豪族達は頭悪いもんすからそれで絶対騙せやすね」

剣士「決まったら早速行こう…丁度豪族達を地下に撒いて来た所だし」

ローグ「盗賊さん良いっすかね?檻の鍵開けには盗賊さんの力が必要っす」

盗賊「ぬぁぁぁしょうが無ぇなぁ…茶番にゃ興味無いんだが…」

商人「まぁまぁ…ハテノ村へ移住する人の件は僕がなんとかするさ」

盗賊「ワイン一本貰ってくぜ?酒でも飲みながらじゃ無ぇとダルくてよう」グビグビ

剣士「悪党ズラもたまには役に立ちそうだね…豪族のごろつきにそっくりだよ」

盗賊「んだとぅ!!」

ローグ「じゃぁ行くでやんす…剣士さん檻まで案内して下せぇ」

剣士「うん!!付いて来て…」タッタッタ
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:28:50.50 ID:KbfSVIxh0
『チカテツ街道_廃線』


ドヤドヤ

街道の奥の方まで逃げてるかもしれん!

明かりを持ってこい!

この廃線に逃げ込んだので間違い無いな?

暗くて何も見えやしねぇ!明かりはまだか!?



盗賊「危なく見つかる所だったぜ…この奥に牢屋があるんだな?」

剣士「うん…多分もう使われてないよ」

ローグ「ありやしたぜ?こりゃ奴隷移送用の牢屋っすね…車輪が付いてるんで移送がラクっすよ」

盗賊「おぉ鍵開けるから待ってろ…」カチャカチャ カチン

ローグ「さささ…早く入ってくだせぇ」

剣士「ウフフわくわくするなぁ…女オークおいで」グイ

盗賊「ちっと戦闘音出して釣るか?」

ローグ「そうっすね…」

剣士「任せて!火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ ドーン

盗賊「鍵閉めるぞ?」カチン

ローグ「檻を叩きやしょう」カーン カーン カーン


おらぁ!!掴まえたぞぉぉぉ

檻の中に入りやがれぇぇぇ

ここで会ったが100年目でやんす…大人しくお縄頂戴でやんすよ


剣士「フフフ女オーク!!トマト爆弾食らえぇ!!」ポイ ベチャ

女オーク「え!!ちょっと…水浴びしたばかりなのよ!」グイ

剣士「いてて腕を掴まないで…」

盗賊「おい!!武器は俺らが預かる…出せ」

剣士「ん…あ…はいコレ…刀とデリンジャー」ポイ

女オーク「剣士!?何個トマトを持って居るの?」

剣士「フフフ食らえ!!」ポイ ベチャ

女オーク「止めて…」グイ

剣士「あだだだ…力は君の方が強い…ずるいぞ!!」ドタバタ


盗賊「檻を押すぞ!!あんまり暴れんな!!」グイ ガタゴト

ローグ「お二人さん大人しくするでやんす…豪族達が来たでやんすよ」


豪族の男「…こりゃどういう事だ?なんで頭取がキ・カイに居る…」

ローグ「なんでもかんでも…あんさん達が海賊王の娘を捕らえるのに手間取ってるもんすからこうやって直々に動いてるんすよ」

盗賊「おい!!大人しくしろ2人共!!撃つぞ」チャキリ ターン


ドタバタ ドシン ドシン
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:29:58.64 ID:KbfSVIxh0
ローグ「あんさん達は信用出来んのですわ…公爵から何やら依頼もされて居やすよね?」

豪族の男「う…海賊王の娘を後回しにしていた訳じゃ無ぇ…なかなか捕まえられ無ぇもんだから…その」

ローグ「もう捕らえたんでやっとドワーフ達と交渉出来やす」

豪族の男「そっちの小さい方は闇商人だと知って居るのか?」

ローグ「闇商人にはちぃと拷問の必要がありそうっすねぇ…ニヒヒヒ」

豪族の男「懸賞金はこれでおじゃんという事か?」

ローグ「そうなりやすねぇ…まぁ豪族の皆さんには良く働いて貰ったもんすから…ドワーフ達から得た利権は分け前を分配しても良いっすね」

豪族の男「おぉぉ!!俺にも移送を手伝わせてくれ…しかしこいつ等仲間割れか?」


ドタバタ ドシン ドシン


盗賊「おい!!静かにしろぉ!」チャキリ ターン

豪族の男「その武器は取り上げたんだな?すげぇ見せてくれ」

盗賊「こりゃ俺の取り分だ触るな!!」チャキリ

豪族の男「ちぃぃぃクソう!!一歩遅かった…」

ローグ「幽霊船の中にはまだたんまりお宝がある筈でやんす…まだまだこれからでやんす」

豪族の男「おう!!強力させてくれぇ!!」

盗賊「ならよう…この廃線の奥にこいつらの隠れ家があるかも知れ無ぇんだ…探して来てくれ」

ローグ「ハハそーっすね…あっしらは海賊王の娘の移送で忙しいでやんすよ」

豪族の男「グハハハハハそういう事かい…まだまだ俺にも分け前が残って居たとはこりゃ抜かった…」

盗賊「待て!お前独り占めは許さんぞ?」

豪族の男「ここは共闘って行こうじゃ無ぇか…おいごろつき共ぉ!!行くぞ!!宝は目の前だぁぁ!!」ドタドタ

ごろつき「うぉぉぉぉ」ドタドタ

ローグ「…」

盗賊「んんん…アホだなあいつ等」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:31:17.37 ID:KbfSVIxh0
『地下入り口』


ガタゴト ガタゴト


移送されているの誰か知ってるか?

片方が海賊王の娘らしいわ

いやぁぁ血だらけじゃない…

もう一人は白狼の盗賊団の一人らしい

あれが伝説の…

こりゃ他の仲間が動き出したりしないか?


ザワザワ ザワザワ


ローグ「いやいや…噂の伝わる事の早いのなんの…」

盗賊「他の豪族共も慌てて地下に入って行きやがる」

ローグ「これは地下の大捜索になりやすぜ?」

盗賊「知った事か!!ちっと俺は馬持ってくるからローグはここで待っててくれ」

ローグ「あいさー」

盗賊「5分で戻る!!」ダダ

ローグ「剣士さん…見世物になって居やすが大丈夫でやんすか?」


ドタン バタン ギシギシ


剣士「はぁはぁ…もう分かった降参だ…もう悪戯しないから放して」グググ

女オーク「私の勝ちね…隠したトマトを出して」

剣士「こ…ここだよ」スッ

女オーク「本当に油断も隙も無いんだから…」

剣士「怒ってるの?」

女オーク「呆れているの…」

ローグ「剣士さん聞いていやすかね?見世物になってるんすが…」

剣士「あぁゴメン…どうして居れば良い?」

ローグ「2人共堂々とですね…一応2人共伝説の人物なんすがどうも威厳が無くてですね…」

剣士「ええと…つまり大人しくしていろって事だね?」

ローグ「そういうこってす…今日は檻から出せれないと思うんで大人しく休んでいて下せぇ」


パカラッ パカラッ ブヒヒ〜


盗賊「戻ったぜ?ローグ!手枷を持って来たから2人に付けて囚人らしくさせろ」ポイ ドサリ

ローグ「へい!!2人共済まんでやんす…鍵は外しておくんで一応つけるだけ付けて下せぇ」カチャ カチャ

剣士「手が込んでるねぇ…ハハ」

盗賊「まぁ一応な?見てる奴は見てるからよ…商人ギルド裏まで移送したら幌を被せてやる」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:32:40.92 ID:KbfSVIxh0
『商人ギルド裏』


ガタゴト ガタゴト ブヒヒ〜ン ブルル


盗賊「見物人が付いて来ていやがる…面倒だな」

ローグ「これじゃ下手に動けやせんね?」

盗賊「まず幌を被せるぞ…ローグ!反対側持て」バサバサ

ローグ「いきやすぜ?せ〜の!!」バサッ

盗賊「ローグどう思う?檻の中だがちっと危ないと思わ無ぇか?」グイグイ ギュゥ

ローグ「そーっすね…あっしとドワーフの交渉を邪魔したい輩が居るなら暗殺者が動くかも分からんす」

盗賊「やはりな…公爵つったっけ?息の掛かった豪族はどっかに紛れて居そうだな」

ローグ「あっしも身を隠さんと狙われるかも知らんでやんすねぇ」

盗賊「しゃぁ無ぇな…ちっと死体を2つ仕入れて来るか」

ローグ「宛てがあるでやんすか?」

剣士「待って待って…僕は変性魔法が使えるんだ…誰か身代わりになる人を檻の中に入れてくれたら交代するよ」

盗賊「お!?そりゃ良い…酒場に行きゃ素行の悪い豪族なんかいくらでも居る」

ローグ「決まりっすね?」

盗賊「そうだな…酒場にある樽に身代わりの豪族を入れてだな…ここまで運ぶ」

ローグ「樽ごと檻の中に入れて交代するんすね?」

盗賊「行けそうだな…よし!剣士…小一時間で戻って来るからそれまで自衛しろ」

剣士「おけおけ」

盗賊「ローグ来い!!樽を運ぶの手伝え」

ローグ「あいさー」タッタッタ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:33:23.84 ID:KbfSVIxh0
『酒場裏』


こんな所に呼び出したからには落とし前付けてくれるんだろうな?

お前達は酒場でお痛が過ぎるんだちっと大人しく寝てろ

んだとゴルァ!!やんのかてめぇ!!


盗賊「ローグ!ヤレ!!」

ローグ「バックロロホルム!!」

ごろつき1「むぐっ!!」

ごろつき2「なっ…!!」

盗賊「殺しゃし無ぇ…寝てろ」グイ

ごろつき1「んむむ…」グター

ごろつき2「ふんが…」グター

ローグ「いやぁぁ強力な睡眠薬っすね…どこで手に入れたんすかコレ」

盗賊「そりゃ後だ…さっさと樽に入れて運ぶぞ」ゴソゴソ

ローグ「何か持って居やすか?」ゴソゴソ

盗賊「金貨と宝石を少しな…こいつら北方の海賊出身だな」

ローグ「本当っすね入れ墨入って居やすね」

盗賊「まぁ良い!盗る物盗ったら樽ん中入れて運ぶぞ」ヨッコラ ヨッコラ

ローグ「いやいやいや…なんか盗賊さんの真の姿を見た気がしやした」

盗賊「俺ぁこういうのから足は洗ったんだ…今は鍵開け専門よ…お前の方こそ隠密は慣れて居そうじゃ無ぇか」

ローグ「あっしは諜報専門っす…殺しはやりやせん」

盗賊「ケッ…行くぞ」ヨッコラ ヨッコラ
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:34:51.96 ID:KbfSVIxh0
『商人ギルド裏の檻』


ヒソヒソ ヒソヒソ


ローグ「皆さんどいてくれやんす」ヨッコラ

盗賊「人の荷を勝手に覗くんじゃ無ぇ!どけゴルァ!!」ヨッコラ

ローグ「これは見世物じゃ無いんで皆さん何処かへ行ってもらえやせんかね?ちっと強引な感じになっちまいやすぜ?」

見物人「ひぃぃぃ」

盗賊「シッシッ…」ドスン

ローグ「よっこら…よっこら」ドスン

盗賊「おい!檻の中の2人…お前等の着ている物全部この樽の中に入れろ」

ローグ「海賊王の娘さんや…幌で見えない様になっているのはあっしからの気遣いでやんすよ?言う事聞くんでやんす」

盗賊「俺が中に入って身ぐるみ剝がして来る…ローグは見張って居てくれ…鍵開けるぞ?」カチャリ ギー

ローグ「樽を中に入れるでやんすよ?」ヨッコラ

盗賊「抵抗したらどうなるか分かってんだろうな?」チャキリ ターン

ローグ「ハイハイ皆さん囚人の身ぐるみを剥いでいるだけですんで解散!解散〜〜」


ヒソヒソ ヒソヒソ

あれが豪族の頭取?随分物腰が弱そうな…

海賊王の娘はえらいべっぴんと聞くが本当かえ?

どんな装備品を持って居るのか…

檻の中が光ってる…何なんだ?


盗賊「そうだ…大人しく脱いで樽の中に放り込め…ダメだ下着も全部だ!」

盗賊「武器を隠していやがったな!!だがもう必要無いヌハハ」

盗賊「ようし!大人しくしていた褒美に後で布っ切れは用意してやる」

盗賊「ヌハハ装備品はすべて回収したぜ?ローグ…運ぶぞ」

ローグ「檻に鍵を掛けるのを忘れんで下せぇ」

盗賊「おぉそうだった」カチャリ

ローグ「じゃぁ樽を運びやすぜ?はいはい皆さんどいて下せぇ」ヨッコラ ヨッコラ


ヒソヒソ ヒソヒソ

おぉぉ樽から装備品がはみ出して…

どんなお宝なのか
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:35:58.70 ID:KbfSVIxh0
『大部屋』


ヨッコラ ドスン


盗賊「もう出て良いぞ?」

剣士「…」ヒョコ

女オーク「…」ヒョコ

ローグ「子供の頃の2人に変身っすか…これで自由に歩けやすね?」

盗賊「そりゃ良いが変身した奴は女戦士の恰好をしているんだが…裸はやっぱマズいよな?」

剣士「マズいよ!ビッグママに知られたら怒るよ?」

盗賊「適当な着替えを持って行って来る」ダダ

ローグ「いやいやいや…それはあっしが行って来るっす…盗賊さんは待っていて下せぇ」ダダ

剣士「はぁぁぁぁ何か色々楽しかったなぁ」

盗賊「まぁこれで海賊王の娘を付け狙う奴も減るだろう」

剣士「あ!そうそう…見物している人の中にじっと観察している人が居たみたい」

盗賊「そうか…どのくらいか分かるか?」

剣士「2人かな?」

盗賊「ふ〜む…頃合いを見てあの2人を豪族に引き渡すってのも手だな」

剣士「地下に居た豪族の男かい?」

盗賊「うむ…あのアホは喜んでセントラルまで移送すんだろ」

剣士「ハハそんな感じだね」

盗賊「まぁ今日はもう遅せぇから明日ローグと商人に相談だな」

剣士「うん…僕は屋上に行って望遠鏡で星でも見て来るよ」

盗賊「裸は寒いから何か着て行け…女オークも乳は隠せ」

剣士「アハ…女オーク行こうか!!」スタタ


--------------
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:36:39.44 ID:KbfSVIxh0
『屋上』


ヒュゥゥゥ


剣士「南の大陸は冬だったね…やっぱ寒いなぁ」

女オーク「望遠鏡…見える?」

剣士「海にモヤが少し掛かってて月が綺麗には見えないけど一応見えるよ…見たい?」

女オーク「ここで望遠鏡を覗いた時の事覚えてる?」

剣士「え?そんな事あったっけ?」

女オーク「あの時は朝方…ここから剣士達は船を見て居たわ」

剣士「ああ思い出した…ビッグママの望遠鏡が倍率高すぎて使い物にならなかったんだ」

女オーク「私も望遠鏡を見たかったのよ」

剣士「そうだったのか…ゴメンよ気付かなくて」

女オーク「見せて貰える?」

剣士「良いよ…月が見えるよ」スッ

女オーク「ウフフこんな風に見えるのね…遠くの物がこんなに近くに…」

剣士「昔と同じ格好して…今…なんか不思議だね」

女オーク「今下に戻ったら過去に戻っていたりしてね」ニコ

剣士「…」


---そうだね…この町の匂いも雑多の音もあの時のままだ---

---寒いのも昔と変わらない---


女オーク「ねぇ剣士?月の高さが低い気がしない?」

剣士「え!?あぁ…そういえば低い…モヤに隠れ…え!!?」


---寒い---

---月が低い---


剣士「まさか…」ドタドタ

女オーク「どうしたの急に?」

剣士「南極星はどこだ?あぁくそうモヤが張ってて小さな星は見えにくい」ドタドタ


---早朝はモヤが少し引く---

---日の出の場所と星座で地軸のズレが確認出来る筈---


剣士「魔石と壺を持ってくる…そうだ毛布もだ」

女オーク「ここで夜明けまで過ごすつもり?」

剣士「大変な事に気付いた…確認しなきゃ」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:37:27.92 ID:KbfSVIxh0
『数日後_大部屋』


商人「…やっぱり確定かい?」

剣士「星座と暦の書物とも比較したさ…日の出日の入り共に一緒に見える星座が違う…間違い無いよ」

商人「どのくらいズレて居るんだい?」

剣士「今の所15°くらいだと思う…ただ毎日少しづつズレてるだろうから観測に意味が無い」

商人「君の予言だと海士島付近が南極になるんだったね?その影響がどう出るのか僕には想像できない」

剣士「商人さんは地図を書くのが得意だったよね?」

商人「まぁ普通の人よりはね」

剣士「今のうちに新しい地図を起こしておいた方が良い」

商人「君の証言通りだとすると南の大陸は上下逆さまになる…後は緯度と経度かい?」

剣士「海流も風向きも全部変わる…そう言うのを書き残さないといけない」


ガチャリ バタン


ローグ「帰りやした…ぅぅぅ寒ぶ」ゴシゴシ

商人「例の2人は上手く引き取って貰えたかい?」

ローグ「へい…セントラル監獄までの移送を喜んで引き受けてくれやした」

商人「それは良かった…これで豪族に付け狙われないで済む」

ローグ「それより何なんすか?2人で深刻そうな顔をして」

剣士「ローグさん…地軸の移動が始まって居るんだ…アダムを破壊するだけじゃダメだったみたい」

ローグ「ええええええ!!?そらマジっすか」

商人「そういう事らしい…だからこれからどうしようかと」

剣士「一つ…僕達にはハテノ村という逃げ道がある…僕の予測だと温暖な気候の良い土地に変化する」

商人「ハテノ村を開拓して避難民の受け皿にするのは良い案だ…それは継続して進めるとして…目下やる事」

剣士「早く名も無き島にエリクサーを運んでホム姉ちゃんを復活させないと…」

商人「エリクサーは今日到着する筈だよ」

剣士「こうしよう…僕の飛空艇には既に樽4つ積んでるからもう一つ樽を乗せるとなると女オークは連れて行けない」

商人「僕と剣士君だけで名も無き島に行こう」

剣士「女オークは盗賊さんと一緒にハテノ村に行ってもらう…多分そこが安全な筈」

ローグ「あっしはどうしやしょうね?」

商人「ここには商人ギルドもある…豪族の立場を利用してキ・カイにしばらく滞在して欲しい」

ローグ「あっしは又一人っすかトホホ」

商人「盗賊の飛行船で何度も往復する事になるんだ…直ぐに合流出来るさ」

剣士「僕はまだやらなきゃいけない事がある…幽霊船に行ってビッグママに会わなきゃ」

商人「居場所は分かるのかい?」

剣士「海士島付近で隠れて居る筈…早く避難させないと遭難する事になる」

商人「忙しくなるな…早く行動しようか」



---------------
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:38:34.60 ID:KbfSVIxh0
ガチャリ バタン


影武者「商人…エリクサーの樽…無事に入荷したよ」

商人「何処に置いてある?」

影武者「盗賊さんが此処まで運んでくれている」

商人「そうかありがとう…次の仕事はチカテツ街道に居るギャングの件…」

影武者「あぁぁ孤児たちを連れて来れば良いんだね?」

商人「盗賊とローグをボディーガードに連れて行って構わない…一応豪族には気を付けて」

影武者「ローグさんは良いけど盗賊さんは人相が悪い…取引に影響が出てしまうよ」

商人「そういうのも上手く使ってよ…彼は信頼できる」

影武者「…わかったよ」

商人「さて!僕は剣士君と一緒に名も無き島へ行く…あとは影武者!君は盗賊と一緒にハテノ村へ行くんだ」

影武者「序列を先に決めておいて貰いたい」

商人「盗賊にお金を払って居るのは僕さ…君は僕の影武者…つまり君の方が立場が上だよ」

影武者「じゃぁ僕の指示に従って貰う…それで良いね?」

商人「そうだよ…まぁ仲良くやってよ」

ローグ「影武者さんはどーも盗賊さんを毛嫌いしてるっすね?」

影武者「嫌いでは無いよ…只…僕のフードの隙間を覗いて来るんだ」

商人「ハハまぁ良いじゃ無いか…影武者にも守りたい自尊心があるのさ」

ローグ「ハハ〜ン…盗賊さんはズケズケと本質付いて来やすからね?そういう所っすね?」

影武者「ローグさん…もう行くよ」

ローグ「はいなーって盗賊さん置いて行くんすか?」

影武者「もう馬車が到着するんだ…行動は迅速に」スタスタ

ローグ「ヘイヘイ…」スタ
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:39:34.68 ID:KbfSVIxh0
『馬車』


ブルル ヒヒ〜ン


盗賊「ぬぁ?まだ樽降ろして無ぇんだが…」

影武者「これからチカテツ街道に行くんだ…盗賊さんは僕を守るんだよ」

盗賊「おいおい…俺ぁそんな話聞いて無ぇぞ?」

影武者「盗賊さんの雇い主は僕さ…給金はもう貰っているよね?」

盗賊「貰ったっちゃ貰ったが俺も忙しい訳よ…移民を探さにゃイカン」

影武者「その移民を今から調達に行くのさ」

盗賊「お!?例のガキんちょだな?やっとやっる気になったか…」

ローグ「盗賊さ〜ん…あっしも一緒でやんす」タッタッタ

盗賊「おぉそうか!!影武者の姉ちゃんが無理やり連れて行こうとするもんだからよ」

影武者「僕は影武者だよ…姉ちゃんというのは止めて貰って良いかい?」ギロ

盗賊「エリクサーはここに置きっぱなしで良いのか?」

影武者「剣士さんが樽を運ぶ予定になって居るんだ…さぁチカテツ街道に行くよ」グイ

盗賊「そうか?まぁそう慌てなさんな…あんま気ぃ張ると肌に悪いぜ?」ヨタヨタ

影武者「…」ギロ

盗賊「おぉ悪りぃ怒らせちまったか?まぁ先ずな?俺より前を歩くな…後ろはローグに任せておけ」

影武者「チカテツ街道までは僕が先導する」

盗賊「待て待て…まだ地下は豪族がうろついてんだ俺に任せろ」

影武者「…」ギロ

盗賊「まぁしっかり守ってやっからガキ共をなんとか説得してくれ」

影武者「フン!よそ見して居ないで前を向いてよ」スタスタ

盗賊「俺は背中に目が付いてんだ転びゃしねぇよ!」ドテ

ローグ「あららら盗賊さん…」

盗賊「つぅぅぅ誰だこんな所にゴミ置きっぱなしの奴は…」

影武者「…」スタスタ

盗賊「待て待てこんな事もたまにゃある…な?そうツンケンすんなや可愛い顔が台無しだぞ?」

影武者「…」ギロ

ローグ「ハハ…なんか分かった気がしやす…」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:40:27.39 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


ヨッコラ ドスン


ウルフ「ガウガウ!」

剣士「女オーク…樽を運んでもらってありがとう」

商人「剣士!早く行こう」

剣士「ウルフは女オークを守って!…女オークはその姿であまり出歩かない様にね?」

女オーク「分かったわ…」

剣士「じゃぁ名も無き島に行った後はハテノ村に迎えに行くから待ってて」


フワリ


女オーク「気を付けて…」

剣士「大丈夫さ…すぐに戻るよ…じゃぁ」ノシ


シュゴーーーー バサバサ


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---------------

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剣士「さて!!羅針盤がいつまでアテになるか…」

商人「僕には何も変わって居ない様に見える」

剣士「いや変わってるよ…偏西風が弱い」

商人「大分赤道から遠ざかってる?」

剣士「多分ね…正直どのくらいズレがあるのか分からない…陸地を見失わない様に飛ばないと…」

商人「地図と陸地の比較は僕がやる」

剣士「うん…ルートは陸沿いに少し迂回しながら…多分2日掛からない」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:41:18.45 ID:KbfSVIxh0
『翌日』


シュゴーーーーー バサバサ


…今までの話を聞いて色々スッキリしてきたよ

この世界が夢幻で僕達皆夢幻の住人だったとしたなら

これまでの出来事がなるほどスッキリ収まる気がする

精霊の記憶の中に生き続ける人間達

精霊の記憶を蝕んで破壊しようとする魔王

それを阻止する為に記憶の書き換え権限を与えられた勇者

それらすべてが精霊の倫理観を構成しているんだ

僕はね…ホムンクルスに言った事が有る

君の中に僕が居る…それは君の心の一つまみだって

多分その通りなんだよ

僕ら一人一人の心は精霊の心その物なんだ

それが悪に染まらない様に僕らは戦って居るんだ


信心深い人たちは昔から精霊にお祈りしていたね


そう…感じて居たんだろうね…祈りは精霊の心に通じているって

今なら僕もそう思うよ…精霊樹にお祈りがしたい


ここに居るじゃない…機械の犬ってホム姉ちゃんでしょ?


あぁそうだったね…実はこの超高度AIユニットは世界中に沢山散らばって居るんだよ

その中に記された記憶全部にこの世界と同じだけの記憶が詰まってる

それを一所に纏めたのが精霊樹の森やエルフの森さ…オーブという形でね

君が見た冒険の書は僕達人間がその世界を覗けるアイテムだよきっと…


剣士「この世界が精霊の記憶だったとして…商人さんは現実は何処にあると思う?」

商人「う〜ん…もしかすると人類はとうの昔に滅んでいて精霊の記憶の中にだけ生きているのかもね」

剣士「現実の精霊の記憶は何処に?」

商人「神のみぞ知る…って所じゃないかな?」

剣士「パパとママは多分過去に遡って行った…そのずっと過去に現実が合ったとしたら?」

商人「僕達じゃ確認出来ない…ん?そうか君のママからメッセージが来てるかもしれないね」

剣士「それが言いたかった」

商人「気になるね…そのメッセージ」

剣士「でも今…一つ可能性を思いついた」

商人「何だい?言ってごらん」


この夢幻の世界を飛び出した一人は未来を全部見て来た筈だ

この世界がホム姉ちゃんのシミュレーションだったなら

未来を全部知って居るその一人は超高度AIとしてシミュレーションの精度が高い


商人「超高度AIがどうして急に出て来る?」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:41:51.90 ID:KbfSVIxh0
剣士「僕達はシミュレーションの中の住人…その中から飛び出したパパは超高度AIとして初めてのアダムに搭載された」

商人「ハハハ…君は又面白い仮説を立てるね」

剣士「実はね…アダムを破壊する直前にパパの声が聞こえた気がしたんだ」

商人「え!!?勇者の…」

剣士「もしシミュレーションの中だったとしたらそこから飛び出すのは記憶を持った倫理観…実体は無い」

商人「話は堂々巡りになるなぁ…その超高度AIを搭載したアダムがこの間まで居た…なぜ?」

剣士「現実世界がそのシミュレーションの通りに進んで来て居たとしたら?」

商人「ふむ…なるほど辻褄は合うな…シミュレーション精度が高かった訳か」

剣士「ふぅこういう事を話すのは楽しいけど証拠が何も無いのがね…」

商人「ホムンクルスが生前言ってたのは世界で始めの超高度AIはアダムでその複製としてホムンクルスが生まれたらしい」

剣士「ええと…環境保全用の超高度AIだっけな」

商人「そうそう…アダムには欠陥があったらしいんだ…だから後継としてアダムを改良して…」

剣士「欠陥?どんな?」

商人「工学三原則って知ってるかい?」

剣士「書物で読んだ事がある」

商人「アダムはそれを守らないから後に工学三原則を守る様に制限されたのがホムンクルスさ」

剣士「商人さん…パパはドワーフの血が流れて居ない…パパでは魔王に勝てないんだよ」

商人「未来君…」

剣士「僕が破壊したアダムも魔王の影響を受けていたと思われるよね?…欠陥品と言い変えられる」

商人「なるほど…倫理観がプログラムだったとして魔王の抗体を持たない倫理観だった訳か…それがアダム…辻褄は合う」

剣士「でも全部可能性の話…いくら話しても空しいなぁ」

商人「君とこういう話が共有できてうれしいよ…僕は変人扱いだから」

剣士「ママはどうしてるかなぁ…ここぞの逃げ足は速いから上手く逃げたのかな」

商人「だからメッセージが残って居るのかも知れないよ?」

剣士「うん…」



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86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:42:40.99 ID:KbfSVIxh0
商人「よし!海士島付近を南極にした場合の地図が出来た」

剣士「ほとんど書かれて居ないじゃない」

商人「未踏の地の地図は持って居ない…分かる範囲で書いたらこうなる」

剣士「シン・リーンとフィン・イッシュがほぼ同じ緯度か」

商人「ハテノ村もそうなる…地球の反対側になるけど」

剣士「こう見ると遠いね…」

商人「シン・リーンから未踏の地を飛べばハテノ村と近い…海を越える必要があるけど」

剣士「分かったぞそういう事か…オークシャーマンは未踏の地側から暁の墓所に来てたのか…」

商人「オークはもう外海を渡って居ると?」

剣士「オークはどんぐりがあれば食料が少量で済む」

商人「なるほど…僕達の知らない外海にもう進出してるんだ」

剣士「内海は寒冷化でほぼ航海不能になるとしたら幽霊船は早く外海からフィン・イッシュ目指した方が良い」

商人「名もなき島は…この位置なら氷に覆われる事は無さそう…ただ人が住むには厳しい環境になる」

剣士「島が見えて来たよ…良かった迷わないで来れた…着陸するから準備して」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:43:11.11 ID:KbfSVIxh0
『名もなき島_古代遺跡』


ウィィィン プシューーー ポコポコ


商人「錬金術で組み合わさる訳じゃ無いのか…」

剣士「ホム姉ちゃんの部品が組み合わさった…良いの?これで?皮膚が無い」

商人「皮膚の部品は無かった…もしかすると足りて居ないのかも…」

剣士「このままじゃ可哀そうだよ…」

商人「この手順を記録する」カキカキ メモメモ


通りで錬金術では完全なホムンクルスが造れない訳だ…

生体の完成は多分自己治癒だ


剣士「ゾンビみたい…」

商人「ちょっと思い違いが在ったみたいだ…錬金術ですぐに完成すると思っていたけど…」

剣士「時間が掛かるんだね?」

商人「多分…この状態から自己治癒で皮膚と毛髪が生成されるのはもう少し先だね」

剣士「どのくらい掛かるんだろう?」

商人「ラヴ!どれくらいかかるか分かるかい?」

機械の犬「クゥ〜ン」

商人「一晩間を置いて治癒の具合を見て見ないと推定出来ないな」

商人「でもどれだけ時間が掛かるにせよ…一先ず成功だ!」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:44:08.85 ID:KbfSVIxh0
『翌日』


ポコポコ ポコポコ


剣士「商人さん!」ユサユサ

商人「ハッ…」パチ

剣士「書き物しながら寝てたんだw」

商人「ホムンクルスは!?」スタ

剣士「昨日のままだよ…あ!違うコレ神経かな?何か成長してる」

商人「よし!遅いけど確実に成長してる…よしよしこれで僕が居なくなってもホムンクルスは生き延びる」

剣士「生き延びるってどういう事?」


チャプン


剣士「ん?瓶の中にエリクサー?…そして外部メモリ」

商人「あぁぁそれに触らないで」

剣士「商人さんコレもしかして…」

商人「僕に何か有ってもこれで確実にホムンクルスが蘇る…まぁ保険さ」

剣士「どうしてそんな…」

商人「僕はね…君の予言を聞いてもしかしたらもうここに戻って来れない可能性を考えてる」

剣士「ママのメッセージはどうなるの?」

商人「蘇った後になるね…どれくらい掛かるか分からないけどいつまでも見て居る訳にも行かない」

剣士「う〜ん…残念だ」

商人「満を持して…剣士君!この部屋の扉を閉めて中の空気を抜けるかい?」

剣士「えーと…空気は窒素だから…アンモニアに変性させれば良いか…出来るよ」

商人「しばらく封印さ…これから転変地位で津波が来たっておかしく無い…この場所を守ろう」

剣士「どうすれば?」

商人「そうだな…この空き瓶の中に変性したアンモニアを入れられるかい?」

剣士「うん…」

商人「このテーブルの上に置いておく…ここにアンモニアが有るのは君しか知らない…つまり君はいつでもこの扉を開けるんだ」

剣士「あああなるほど…空気を抜いて酸化防止と施錠を兼ねて居るんだ」

商人「そういう事…そしてこの遺跡は他の人に見つからない為の工夫がいくつもある…相当安全な筈さ」

剣士「おけおけ!そういう事なら全部扉を閉めておく」

商人「次に来た時はホムンクルスと対面だよ…楽しみだね」

剣士「その間にやらなきゃいけない事をやって回るんだね?」

商人「そうだよ…さぁ扉を閉めて」ギー

剣士「じゃぁ空気を変性させる…変性魔法!」

商人「…」

剣士「おけ!空気が変性してアンモニアになった筈…瓶の中だ」

商人「よし…次は本棚で扉を隠して…」ズズズ

剣士「後は外の上開き扉を閉めて水で満たす…」

商人「行こうか…次はハテノ村だ」

剣士「うん…」タッタッタ
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:45:30.93 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


シュゴーーーー バサバサ


剣士「…ここからハテノ村へは1日くらい…このままだと盗賊さん達より先に到着する事になる」

商人「それがどうしたんだい?」

剣士「海士島まで1日半…霧が立ち込めてしまう前に先に行ったほうが良いと思う」

商人「モタモタしていると幽霊船と合流出来なくなるのか」

剣士「ハテノ村は陸地の地形を確認しながら行けば良いけど海士島だとそうは行かない」

商人「分かった…君の言う通りにしよう」

剣士「進路変更!」グイ バサバサ

商人「ところで剣士君…君は千里眼は使わないのかい?」

剣士「あまり覗き見はしない事に決めてるんだよ」

商人「まぁ一応は使えるんだね」

剣士「見てもあまり良い情報なんか得られないのさ…大体は見たくない事なんだ」

商人「幽霊船の現状を知るくらいは良いのでは?」

剣士「どうせ狭間の中…見えても船の中」

商人「なるほど…時間のムダになる訳か」

剣士「商人さん…僕嫌な予感がする」

商人「何だい?」

剣士「僕はアダムを破壊して未来を変えたつもりだった…でも地軸の変動は起き始めてしまった」

商人「…」

剣士「もしかすると未来は変えられないのかもしれない…だとすると幽霊船は沈んでしまう」

商人「アダムの破壊は大きな歴史の流れのほんの小さな事なのかもね」

剣士「僕の記憶では沈む幽霊船の中で大事な人を失った…また失うのが怖い」

商人「今からそれを変えに行くんじゃないのかい?」

剣士「そうだよ…そうさ…そうするしかない」


---僕は失いたく無かった---

---今度は絶対に失わせない---
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:46:27.86 ID:KbfSVIxh0
『海士島』


フワフワ ドッスン


剣士「灯台の光が見えて良かった…明日の朝まで迷う所だったよ」

商人「結果オーライ…さてもう夜だ…幽霊船の捜索は明日にして宿に入ろう」

剣士「やっぱり随分寒いね」

商人「ん?」


ヒソヒソ ヒソヒソ

公爵からの指示だ…これが前金の代わり…受け取れ

魔石…困ります急にそんな事言われても…常連さんとの付き合いもありますし

フィン・イッシュ行きの商船は明日の朝出港だ必ず乗れ

急すぎます…今そんな指示を貰っても準備も何も

その魔石で十分な筈だ…向こうの酒場にはもう話が行ってる…心配するな

ヒソヒソ ヒソヒソ


商人「…あの人は酒場のマスターだ…やっぱり密偵として雇われて居たのか」ヒソ

剣士「ん?本当だ…酒場には行った事あるよ」

商人「この感じだとフィン・イッシュにもセントラルから密偵が沢山送られて居る様だ」

剣士「冷戦か…今そんな事してる場合じゃ無いのに」

商人「セントラル国王が亡命してしまって居るからね…両国の摩擦は終わりそうに無い」

剣士「嫌な話だよ」

商人「こう言っちゃ悪いけど商売するには良い環境なんだ…」

剣士「宿屋に行こう」スタ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:47:33.04 ID:KbfSVIxh0
『宿屋』


ガヤガヤ ガヤガヤ


商人「…まいったな豪族が貸し切って居るらしい」

剣士「別にベッドじゃなくても良いさ…風が凌げれば僕は良い」

商人「納屋なら使って良いと言うけど…寒そうだな」

剣士「…」---同じ様な記憶がある---

商人「剣士…ここは他の人の邪魔になるから納屋で休もう」

剣士「うん…」---気付かない内に元の時流に戻ってる---

商人「こっちだ…ここは人が多くて落ち着けない」スタ



『納屋』


ガラガラ ピシャリ


商人「ここなら人目に付かないで落ち着ける」

剣士「…」

商人「しかし寒いなぁ」

剣士「…」ゴソゴソ

商人「どうしたんだい?さっきから黙りこくって…」

剣士「これ使って…火の魔石だよ…瓶か壺に入れて使えば良い」

商人「おぉ!!良い物持ってるじゃない…使わせてもらうよ」

剣士「…」---思い出せ思い出せ---


---10年目のもっとその前…---

---そうだ確か海士島で情報屋さんにバッタリ出会った---

---納屋で休んだ次の日---

---その時とは少し状況が違う---

---でも明日バッタリ情報屋さんと出会ってしまったなら---

---時流が戻されてるのがハッキリ分かる---


剣士「…」ギンギン
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:49:27.83 ID:KbfSVIxh0
『翌日』


ヒュゥゥゥ


商人「露店が始まり出した…少し食料を買って行こう」

剣士「あぁ…そうか飛空艇に食料はどんぐりとキノコしか積んで無かったね」

商人「そうだよ僕は君と行動してから何も食べてない…ペコペコさ」

剣士「そうだね…水も乗せて居なかった」

商人「雪で空腹を満たすのはもう懲り懲りだ…さてサッサと仕入れて出発しよう」

剣士「…」---どうなるか---



『露店』


ワイワイ ガヤガヤ

なんという事じゃ…この呪符をすべて見せよ

こりゃ良い客が来た…ほいほいコレが魔除け…コレが虫除け…コレが水除け…

主は何者じゃ?なぜこのような物が出回っておる?

ニヒヒヒヒ入手したルートは秘密ってもんでさ…さぁさぁ一枚銀貨50買って行くかい?

銀貨50!!?この紙切れが一枚銀貨50って高すぎるわ

構わぬ…わらわの私財ですべて買い占めても良い…じゃが今は手持ちがない故に…

ええと…ワインの買い入れでこれだけ残して…変えるのは16枚よ


剣士「魔女!!」---記憶と違う---

魔女「むむ?やはりこの島で待って居って正解じゃ…主を探して居ったのじゃ」

商人「情報屋も一緒か…探す手間が省けた」

魔女「これ商人!ここで売って居る呪符を全種類買うのじゃ…交渉は主に任せる」

商人「え…いや急にそんな事言われてもさ」

魔女「そして剣士!この様な場所で言うのも何じゃが…主は破門じゃ!二度とシン・リーンの魔術師を名乗るで無い」

剣士「え?なんで?」

魔女「わらわの親心じゃと思え…破門せねばわらわの手で主を処罰せねばならぬ…わらわにそれをやらせるな」

剣士「次元の入れ替え…」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:50:37.74 ID:KbfSVIxh0
魔女「主は理を超え次元の入れ替えを行って居るのは明白じゃ…魔術師の掟は知っておろう?」

剣士「それじゃ魔女…魔女は全部知って居たね?」

魔女「主の記憶を夢に封じたのはわらわじゃ…次元を崩壊させる可能性があったからのぅ」

剣士「じゃぁ魔女はずっと僕を監視してた訳だ…」

魔女「悪い言い方をすればそうじゃ…じゃがな?主の事は尊重しておる…じゃから破門じゃ!…自由にせい」

剣士「魔女!!僕は只…」

魔女「言わぬでも良い…主は自由じゃ…わらわの手の内からもう離れて良い」

剣士「くぅ…」ギュ

魔女「最後に一つ説いてやろう…量子転移は人の為あらず…うぬが為じゃ」


---理解した---

---誰かを助ける為に使ってはいけない---

---僕は女オークを助ける為に量子転移した---

---でも女オークは自分の死をすでに受け入れてた---

---死を受け入れた次元と---

---受け入れない次元が生じて歪んだ---

---それが次元の狭間---

---量子転移で人は救えない---

---死んだ人は蘇らない---
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:51:40.05 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


ヨッコラ ドッスン


商人「これで最後だ…行けるよ」

剣士「うん…」

商人「破門されて凹んで居るのかい?」

剣士「それもあるけど…まぁ色々とね」

商人「魔女達の気球が空で待機してる…急いだ方が良いかな」

剣士「分かった…飛ぶよ」グイ


フワリ


商人「まぁあまり気に病む事も無い…魔女はあんな感じだけど君の為を思って言ってると思うよ」

剣士「分かってるさ…只僕は未来を知って居るから怖いんだよ」

商人「魔女の言い分も少し理解出来るよ…無理に変えると次元崩壊ってやつが起きるんだよね?」

剣士「うん…どこまで許されるのか分からないけど」

商人「それにしてもあの呪符…結局銀貨20までしか値下げ出来なかった…そんなに貴重な物なのかい?」

剣士「あれは古代魔術の魔方陣だよ…まだ解明されて居ないんだ」

商人「それで魔女が目の色変えてるんだ」

剣士「地軸の移動も多分古代魔術のせいだよ」

商人「ハハ…回って居る地球の向きまで変えられるって?」

剣士「まだ解明していないからなんとも言えない」

商人「地軸の移動ねぇ…大災害が起きそうな物だけど意外と静かなもんだ」

剣士「これからだよ…だから備えないと」


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95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:53:16.65 ID:KbfSVIxh0
『幽霊船』


フワリ ドッスン


剣士「ビッグママ!!」ダダ

女戦士「よく来たな?目を見せろ」

剣士「あぁぁ会いたかったんだ!」ギュゥ

女戦士「フフ大きくなった」

剣士「ローグさんに聞いたよ…ビッグママも魔女の修行をしていたんだね…どうして…」

女戦士「その呼び名はもう止めろ…女戦士で構わん…私を良く見ろ」ジロジロ

剣士「あぁぁママの眼だね?舐めても良いよ…爺いじも舐めた」

女戦士「私にそんな趣味は無い…そうだこの眼だ」ジーー

剣士「懐かしい匂いだ…ママと同じ匂い」クンクン

女戦士「フフ今日は一緒に寝るか?」


スタスタ


アサシン「久しぶりの再会で嬉しそうだな?」

剣士「アサシンさん…」

アサシン「狭間に入る前に進路を決めておきたいのだが…」

剣士「ハッ!!そうだった…フィン・イッシュだよ」

アサシン「フム…魔女と同じ意見だな…只船長は女戦士だ…フィン・イッシュで良いのか?」

女戦士「構わん…進路は北に向かって陸沿いにフィン・イッシュ」

剣士「あ!!ダメだよそれじゃ…それじゃフィン・イッシュに辿り着けない」

女戦士「他の航路を行けと?」

剣士「流氷を探して!流氷の進んでる先は外海なんだ…外海側からフィン・イッシュに行くんだ」

女戦士「外海の海図は無いぞ?」

剣士「良いから僕を信じて」

女戦士「フムまぁ良い…とりあえず北へ進路を向けて流氷を見つけ次第それに従おう」

アサシン「そろそろ2人抱き合うのは止めて貰えないか?目に痛い」

剣士「あ!つい…」ササ

アサシン「スケルトン共!働け!帆を開いて進路は北だ!」


カララン コロロン


剣士「ハハこの船はスケルトンが操作してるのか…」

アサシン「良く働くスケルトンだ…食料も水も要らん」

女戦士「剣士…とりあえず居室に入れ…話が聞きたい」

剣士「そうだね…情報交換だね」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:55:03.74 ID:KbfSVIxh0
『居室』


カクカク シカジカ


女戦士「海の様子がおかしいとは思って居たが…それ程大事になろうとしているのか」

剣士「何日かけて地軸の移動が終わるのか良く分からないけどこの海は航海出来る海じゃ無くなるんだ」

アサシン「霧が出て来ているのはそのせいか」

剣士「霧はもっと濃くなるよ…1メートル先も見えない」

商人「これが新しく描いた地図…そしてこっちが今までの地図」

女戦士「フム…流氷は何処へ流れる?」

剣士「多分ここの海峡に向かうと思う…ここから外海に出て陸沿いにフィン・イッシュに行く」

女戦士「待て…その海峡は海流がきつくて普通は近づかん」

剣士「流氷と一緒にどうせ外海に流されるよ…外海に出てしまえば陸を右手に進むだけさ」

情報屋「羅針盤はもうアテにならない?」

剣士「うん…どっちの方向に進んでも羅針盤は北を差すようになる…それを当てにしてはいけない」

情報屋「方向を正しく示しているのは流氷な訳ね」

女戦士「外海からフィン・イッシュを目指すとなると長い航海になるな…安定して進めないと狭間にも入れない」

商人「この船が貨物船で良かった…食料は十分にある」

剣士「当面のやらなきゃいけない事は地軸の移動で環境が激変するからそれに備える」

女戦士「フフ…私達は何の為に行動しているのか」

剣士「今は難局を乗り越える為さ…これから何か起ころうとしてる」

アサシン「魔王は居なくなりアダムも破壊した…次は何が来る?」

剣士「僕は一つミスをしたよ…魔王を封じたとされる魔石は何処に行ったのか分からない」

商人「只の魔石になってると言うのは考えが甘いかな?」

剣士「行方が分からないから気持ちが悪いよ」

アサシン「…となるとフィン・イッシュで一旦落ち着くのは正解だろう…状況を見る必要がある」

剣士「うん…この船は無事にフィン・イッシュに辿り付いて欲しい」

女戦士「んん?引っかかる…剣士は一緒に行くのでは無いのか?」

剣士「僕は…僕はまだやる事がある」

女戦士「お前は一所に身を置くつもりは無いか…フフ」

剣士「ゴメン…今日はビッグママと一緒に寝て明日僕は行くよ」

女戦士「その呼び名は止めろと何度言わせるのだ?」

剣士「あぁ女戦士だっけ…照れくさいなぁ」モジモジ
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:56:16.87 ID:KbfSVIxh0
『船首』


ザブン ユラ〜


情報屋「…確かに羅針盤が示す方角と太陽が沈む方角の辻褄が合わない」

商人「ゆっくり変化しているから誰も気付かないんだよ」

情報屋「これだともう現在地も分からないわね」

商人「それより魔女はずっと荷室に籠りっぱなし?」

情報屋「そうよ?何かの術を掛けるから近付くなって…」

商人「そうか…剣士は明日行ってしまうと言うのに」

情報屋「商人?あなたはどうするの?」

商人「僕はこの船に残る…まだ君と話足りない」

情報屋「あら?歴史の事でも?」

商人「まぁね…でも剣士をこのまま行かせて良いのかどうか…」

情報屋「魔女との事ね?」

商人「関係にヒビが入ったまま距離を置くのはどうかと…」

情報屋「魔女はこの間までずっと剣士の自慢ばかりだったのよ?」

商人「だったらなお更だ」

情報屋「魔女は剣士の事を認めて居るわ…すでに自分を超えているって言ってたもの…剣士を縛る呪縛を解いただけよ」

商人「う〜ん不器用というか何というか…」

情報屋「今までの子弟関係が消えて無くなる訳でも無いのだから気にしなくて良いと思うわ」

商人「剣士は少し落ち込んで居たよ…それっきり話をしていないよね」

情報屋「商人?あなた心配性になったのね?年を取ったせいかしら?」

商人「ハハそうかもしれない…年かぁ…久しぶりにバーベキュー食べたいな」

情報屋「今日買って来た材料があるわ?やりましょうか」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:57:49.63 ID:KbfSVIxh0
『甲板』


ジュゥゥ モクモク


商人「肉が食べれると思ったら海鮮ばっかりか…」モグモグ

情報屋「肉は中々手に入らないの…貴重だから少しだけ」

商人「剣士も食べなよ」

剣士「僕は少しで良いよ…」

商人「なんだ…食べてるの僕だけか」モグモグ

女戦士「私も少し頂く」ハムハム

アサシン「この船はなかなか食料が減らん」グビ プハァ

剣士「あ…そうだアサシンさん」

アサシン「んん?」

剣士「線虫!」ニョロリ

アサシン「なんだこの虫は?」

剣士「毒を食らう虫さ…その虫が体に居ると腐敗が止まるみたい」

アサシン「ほう?エリクサーが不要になると?」

剣士「エルフゾンビさんで実証済みだよ…喉の渇きは変わらないみたいだけど」

アサシン「奴に会ったのか…元気にしているか?」

剣士「精霊樹の森をエルフ達と一緒に守って居るよ…大変そうだった」

アサシン「クックック奴がエルフの仲間入りとはな」

剣士「今頃僕が呼んだ虫達がドリアードを食い漁ってる筈…エルフゾンビさんも少しはラクになる」

商人「10年前の夜に見たダイダラボッチ?みたいな事になってるのかい?」

剣士「その筈だよ」

アサシン「そうか…あの虫の大群がもう一度動いて居るのか」

情報屋「そういえば巨大なゴーレムも虫にやられていたわ」

剣士「酸を吐く虫のお陰さ…何でも腐食させるんだよ」

アサシン「これでやっと平和が来る…私は死に場所を探す必要がありそうだ」

商人「それはまだ早い…昨日聞いた話だとセントラルの貴族の一人…公爵という人物がフィン・イッシュに密偵を送って居るんだ」

アサシン「ほう?知った顔だ」

商人「どうもキナ臭い…物流の相場も不自然に操作されている」

アサシン「私は俗世を離れていたせいかそういう話に興味が湧かなくなってしまった」

商人「まぁこれから情報は集めれば良いさ」

アサシン「もうそういう話は聞き飽きた…静かにしておいてくれ」グビ


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99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:58:25.98 ID:KbfSVIxh0
『夢』


僕「ママ?今日はここで休むの?」

ママ「暗くなって目標物が見えなくなった…探索は明日やる」

僕「ふぁ〜あ」ムニャ

ママ「おいで…あんた寒いんでしょ?」

僕「僕は大丈夫だよ」

ママ「良いからおいで…」グイ

僕「ママ暑苦しいんだよ」モゾモゾ

ママ「こうしてるとママが温かいの」ギュゥ

僕「僕達ずーっとかくれんぼだね」

ママ「ごめんね…今度街に連れて行ってあげるから」

僕「本当?友達いっぱい居るかなぁ…」

ママ「早く寝なさい?」

僕「うん…ママの匂い」

ママ「ん?匂う?」クンクン

僕「いい匂い…」スゥ

ママ「フフ…」ギュゥ

僕「すぅ…すぅ…」zzz
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:59:12.05 ID:KbfSVIxh0
『居室』


ギシギシ ユラ〜


剣士「ハッ!!」キョロ

剣士「ビッグママ?」キョロ

剣士「居ない…」



流氷に当たったか…

船体に傷が付いて居ないか調べて来る

まぁ見た所大きな氷山では無い…無事だろう

流氷は左方に流れて行ってる様だが?進路変えるか?」

うむ…流氷に沿って進めば又当たるリスクも減る

しかし狭間に入れんでは先が長いな

仕方あるまい…


剣士「…」---流氷を見つけたか---

剣士「…」---もう一回同じ夢見れるかな---

剣士「…」---寝よ---

剣士「すぅ」zzz
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:02:04.32 ID:KbfSVIxh0
『翌朝』


ザブン ユラ〜


商人「ふぁ〜あ」ゴシゴシ

剣士「商人さん…この地図は貰って行くよ」

商人「あれ?剣士君…もう行くのかい?」

剣士「早く行かないと僕も迷っちゃう…それにこの船は居心地良すぎる」


タッタッタ


女戦士「居ないと思ったら…もう行くのか?」

剣士「ビッグママ…じゃなくて女戦士…僕は変えたい未来があるんだ…だから行く」

女戦士「そうか…これを持って行け」ポイ

剣士「貝殻…」

女戦士「これでいつでも会話出来る…もう無くすな?」

剣士「大事にするよ」

女戦士「フフ行って来い…そして必ず戻って来い」

剣士「大丈夫…事が済んだらフィン・イッシュに行く…約束さ」

女戦士「…」ノシ


フワリ バサバサ


商人「あぁぁ…あっという間に居なくなる」

女戦士「フフ妹の子だ…こうなるのは分かって居た」

商人「そういえばそうだなぁ…そっくりだなぁ」

女戦士「さて商人…大事な地図を持って行かれた…もう一度描け」

商人「う…そうだった」

女戦士「地図無しで航海は出来ん…特に外海側の地形を優先して書け」

商人「分かった書き直す…」


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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:03:07.77 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


シュゴーーーー バサバサ


剣士「…まいったな完全に現在地見失ってる…そろそろ陸地が見えても良い筈なのに」

剣士「夜の内に進行方向変わっちゃってるのかなぁ…」ブツブツ

剣士「太陽はアテにしても良いのか?…大分高度高くなってきてるけど」

剣士「なんで反対から登るんだ?意味がわかんない…まてまて僕が反対なんだ…あああ!!見えた陸地だ」

剣士「よしよしよし…これで現在地分かる」


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剣士「木が見える…ここは北の大陸だ…えーとえーと断崖がある所」

剣士「港町だ…120°も進行方向ズレてた…まぁ良いや兎に角現在地が分かった…」


えーと偏西風が吹いてる

これに乗って岩塩地帯を抜けた先は未踏の地…

その先の海を越えるとオークの領地の筈

そうさ偏西風に乗って行けばこのままオークの領地まで飛べる

遠いけど2日飛べば向こうの大陸だ

その後は目視で行けば良いか…火山の噴煙が目印だな


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103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:06:03.30 ID:KbfSVIxh0
『ハテノ村』


ザザザーー ビシャビシャ


盗賊「こりゃ雨が止む気配が全く無ぇな…」

僧侶「太陽が出ないと麦を育てても品質が悪いでしゅ」

盗賊「今日は木を植え無ぇのか?」

僧侶「もう植えて来たですよ…魔力が無くてフラフラなのです」フラ

盗賊「魔法使いはどうした?」

僧侶「同じく教会で横になって居ましゅ」

盗賊「まぁお天道様が出無ぇと皆元気出ないわな」

僧侶「ところで余ってるどんぐりは村の外に出しっぱなしで良いのですか?」

盗賊「オークがうろついてんだろ?村を襲われない為の供物だ…どうせ死ぬほど余ってる」


スタスタ


影武者「盗賊さん…僕は託児所を任された覚えは無いんだけどどういう事かな?」

盗賊「おぉ影武者の姉ちゃんか…どうだ?キ・カイとは違った環境は?」

影武者「僕は取引所を任されたつもりだったんだけど…」

盗賊「ちっと我慢だな…この雨で建築が滞ってる訳よ」

影武者「参ったな…完全に左遷されたようだ」

盗賊「まぁそう言うな…顔出すのは慣れたか?」

影武者「フードを被っても子供達に脱がされるんだ…困って居る」

盗賊「この村じゃ顔を隠す必要なんか無ぇぜ?豪族も居ないしな?ぬはは」

影武者「ふぅ…どうしたもんか」

盗賊「一応説明しておくがよ…」


ハテノ村はドワーフ領で王様が海賊王の爺

ほんで村長は赤毛の魔法使い

主な産物は硫黄と石炭…ほんで鉄鉱石か

お前はこの村の物流コントロールが主な仕事

俺はそれを運ぶ役
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:07:15.53 ID:KbfSVIxh0
影武者「取引相手は海賊王という事か…」

盗賊「まぁそういう所だ…欲しい物を聞き出して来いよ」

僧侶「盗賊さん忘れてるです…私は酒場の女将でし!」

盗賊「おぉ!そうだったな」


ほんでな?ハンターっていう狩人が村を獣から守ってる

足りないのは村を自衛する民兵が居無ぇ


影武者「民兵を募集すれば良いんだね?心当たりがあるよ」

盗賊「この村にか?ヌハハそんな奴居無ぇぞ?」

影武者「連れて来たギャング達さ…武器さえ調達出来れば取引できる」

盗賊「ほう?面白い…武器は海賊王の爺が作れる」

影武者「よし!必要な数量を纏めよう…依頼の対価は…」

盗賊「対価なんて要ら無ぇ…爺に相談したら何でもやってくれる」

影武者「そうか…それなら利用しよう…つまり」ブツブツ

盗賊「変な姉ちゃんだな…商人にそっくりというか…」


武器が入手できるという事は次に必要なのは防具…

防具に欠かせないのが皮と布

皮は獣からまかなえるとして布を生産するには亜麻が必要だ

代替として羊毛だけど生産量が限られる

確かに物資が不足しているな


影武者「よしこうしよう…僧侶さん」

僧侶「はいな?」

影武者「明日から麦では無く亜麻を育てて貰えないかい?亜麻からは油が採取できるのと布を作る事が出来るんだ」

僧侶「種が無いでし」

影武者「少しなら持って居る…増やして貰いたい」

僧侶「分かったです」


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105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:08:29.45 ID:KbfSVIxh0
『ハテノ村_古代遺跡外』


エッサホイサ エッサホイサ


海賊王「よっしゃ屋根はこれくらいでえーやろ」

女オーク「これで濡れないで済むわ」

海賊王「おまんはよー働くのぅ」

女オーク「フフこの場所は何に使う予定なの?」

海賊王「鍛冶場や…ここで鉄を溶かしてツルハシ作らにゃイカン…おまんもやって見るか?」

女オーク「自信が無いから見ておくわ」

海賊王「まぁええわ…ちっと見とれ」チッチッ シュボ


これがドワーフが使うフォージっちゅうもんや

石炭燃やしてここで鉄を溶かす

解けた鉄を小分けしてやな…この型に入れるんや

固まって来たら硬くなる前に打って慣らす


カーン カンカン カーン カンカン


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106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:09:18.54 ID:KbfSVIxh0
『1時間後』


海賊王「出来立てホヤホヤのツルハシとスコップや…これを鉱山まで運んでもらえんか?」

女オーク「はい…」ガッサー

海賊王「ちょちょ…一気に持って行かんでもえーんやで?そんなん重いやろ」

女オーク「持てる分だけ持って行くから…」ノソノソ

海賊王「がははは豪快な娘や…さすが剣士を奴隷にするだけある訳や」

女オーク「ウフフ…」ノソノソ


スタスタ


影武者「失礼します…」

海賊王「おぉ!おまんも剣士の仲間かいな?」

影武者「はぁ…仲間と言えば仲間だよ」

海賊王「まぁゆっくりして行き」

影武者「はい…実はお願いが有って来たんだ」

海賊王「なんや言うてみぃ」

影武者「武器を少し作って貰えないかと…」

海賊王「そんなかしこまらんでもえーぞ?どないな武器が欲しいんや?」

影武者「一般的な剣とか槍で良いよ」

海賊王「ううむ…誰が使うんや?おまんか?」

影武者「いえ…子供達で自警団を…」

海賊王「子供に武器持たせるちゅうんか…チャンバラで使いよったら死によるで?」

影武者「子供と言っても僕と同じくらいの体格で…」

海賊王「ふ〜む小さい子供を守りたいちゅう訳か…ほなしゃーないなぁ」ノソリ

影武者「ふぅ良かった…」

海賊王「小さい子供に武器持たせたらアカンで?事故が起きるよって」

影武者「分かったよ…後僕は村で取引所をやる事になったんだ…何か調達して欲しい物があったら言って欲しい」

海賊王「そやなぁ…宴会用の酒が欲しいなぁ」

影武者「酒…」

海賊王「酒を持ってきたら高く買い取るで?頼むわ」

影武者「分かったよ…なんとかするさ」


麦は十分あった筈

酵母はキノコから採取できる

よし…確か僧侶さんは酒場の女将という建前

麦酒は生産に時間が掛からないから作って貰おう
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:10:16.01 ID:KbfSVIxh0
『教会』


ワイワイ キャッキャ

粉にした麦芽を低温のお湯でゆっくり温める

色が変わって来たら火力を上げて沸騰する前に釜から出す

このまま自然に冷やして常温になったらキノコから採取した酵母を加えて混ぜる

この手順でどんどん作って


盗賊「お前等何やってんだ?」

僧侶「影武者さんにお酒の作り方教えて貰ってるです」

盗賊「おぉ?こりゃエール酒か?」

影武者「ホップが無いけど一応エール酒だよ」

盗賊「おおおおお!!ちっと味見して良いか?」

影武者「まだ発酵して居ないよ」

盗賊「良いんだ…ちっとだけだ」ペロ

影武者「どう?」

盗賊「なるほどホップが無いからちっと寂しいな」

影武者「何か良いアイデア知らないかな?」

盗賊「こりゃ後でフルーツ加えると化ける…そうだなこの辺にゃフルーツなんか無ぇな」

僧侶「芋ならあるでし!!火山灰の土で出来た芋は甘いのです」

盗賊「お?そういやナシみたいな味がするな…そうだ芋を擦って最後に加えて見ろ」

影武者「分かったよ…」

盗賊「こりゃ明日が楽しみだな」

僧侶「盗賊さん私の酒場を作ってくれませんか?」

盗賊「おっし!!やる気が出て来た…今から木材加工するぞ…おい魔法使い!いつまでも寝て無いで手伝え!!」

魔法使い「えええ!?私が?」

盗賊「お前何もやって無いだろ…ちっと体動かせ」グイ

魔法使い「ちょっと引っ張らないで!!」

盗賊「俺が木材切り出すからお前が組み立てろ」

魔法使い「外雨降ってるじゃない…濡れるの嫌よ」

盗賊「うるせぇ!来い」グイ
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:11:09.70 ID:KbfSVIxh0
『廃屋』


トンテンカン ギコギコ


魔法使い「ねぇ寒いんだけど…木材のきれっぱし燃やすわよ?」

盗賊「おう!俺も体冷えまくりだ…」ギコギコ

魔法使い「暗くなって来たからもう明日にしたら?」

盗賊「その木材燃やしゃ明かりになる…おっしカウンター一丁上がり!!」

魔法使い「なんか殺風景な酒場ね」

盗賊「お前岩塩のランプ持ってたよな?テーブルに置いとけ」

魔法使い「え?本当にここで酒場やるつもり?」

盗賊「俺ぁ酒場の有る所に戻って来るんだ…言い換えれば俺の家だ」

魔法使い「なんか必死ね」

盗賊「うるせぇ!飾りつけはお前等に任せるから酒場だけはなんとかヤレ」

魔法使い「ちょっと僧侶も呼んで来る」

盗賊「お前逃げんなよ?あーそうそう酒樽をこっちに運んできてくれ」

魔法使い「中身の入った樽なんか持ち上げられません」

盗賊「僧侶と一緒にやりゃ運べる!!さっさと行け!!」

魔法使い「…」


トンテンカン ギコギコ

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109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:11:53.05 ID:KbfSVIxh0
『翌朝』


チュンチュン


盗賊「んがががが…すぴーーー」zzz

魔法使い「呆れた…夜通し酒場を作って居たんだ」

僧侶「スゴイです!!テーブルも椅子も作ってあるです」キョロ

魔法使い「どうするのこの爺…」

僧侶「そのまま寝かせておきましょう」


ドスドスドス ブモモー


ハンター「ただいま…もう一匹ヘラジカ捕まえて来たよ」

魔法使い「おかえり!!心配してたのよ」

ハンター「川が増水してて渡れなかったんだ…やっと戻ってこれたよ」

僧侶「今日は雨が上がって良かったでし」

ハンター「まだ空があやしいけどね…それよりヘラジカが腹を空かせてるんだ」

僧侶「どんぐりが余ってるです…木の皮も食べるですよね?」

ハンター「早く食べさせないと…」

僧侶「こっちですぅぅ」スタタ
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:12:32.32 ID:KbfSVIxh0
『教会』


ワイワイ キャッキャ


ハンター「ふぅぅ…お腹膨れた」ゲフー

魔法使い「ヘラジカが増えて木材の運搬が楽になるわね」

ハンター「もう野生のヘラジカはかなり遠くまで行かないと居ない…2頭でなんとかするしか無いかな」

魔法使い「他の動物は?」

ハンター「ヤクが居るけど餌代を考えるとあんまり沢山居てもなと思ってね」

魔法使い「家畜はブタが4頭でまだまだ足りないわ」

ハンター「う〜んまだまだ捕まえて来なきゃ安定しないかぁ…」

魔法使い「鳥がもう少し居ればね…」

ハンター「野鳥は家畜に出来ないからねぇ…鶏なんか北の大陸に行かないと居ないし」

魔法使い「やっぱりシカが一番良さそうね」

ハンター「うん…夜行性だから狩りが夜になるのがさ…」


トンテンカン トンテンカン


ハンター「んん?何か始まった?」


今の内やぁ!!一気に壊れた建屋を直すでぇぇ!!

エッサホイサ エッサホイサ


魔法使い「あ!!お願いしてた建築が始まったみたい…」

ハンター「そうか…僕はちょっと寝るよ…ずっと寝て無かったんだ」

魔法使い「ベッドあるけど使う?」

ハンター「うん…ありがとう」ノソリ
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:13:25.37 ID:KbfSVIxh0
『畑』


サワサワ


僧侶「成長魔法!成長魔法!成長魔法!」サワサワ サワサワ

魔法使い「私もうダメかも…」フラフラ

僧侶「今日も魔力スッカラカンですぅ」ヘロヘロ

魔法使い「収穫しなきゃ…」ヨロ

僧侶「少し休むでし…収穫はいつでも良いです」

魔法使い「そうね…後で盗賊にお願いしよ」



『川』


ジャブジャブ


海賊王「この水車は脱穀の機械仕掛けや…ここに麦を入れて脱穀するんや」

影武者「これで脱穀の人員が避ける…」

海賊王「そやな?子供達にも出来るで教えてやればええ」

影武者「今上流から運んでいる物は?」

海賊王「大釜や…おまんら亜麻を育てておるやろ?あの大釜で水に浸すんや…布にするまで色々加工せにゃならん」

影武者「それは助かる」

海賊王「それも子供達に教えてやればええ…武器を持たせるよりずっと大事な事や」

影武者「そうそう武器の方はどうなったのかな?」

海賊王「鍛冶場に置きっぱなしや…持って行って構わんで?」

影武者「ありがとう…そうだ!お礼にお酒を用意したんだ」

海賊王「ほんまか?昨日の今日やで?」

影武者「良かったら今晩村の酒場で振舞おうかと…」

海賊王「おおお!!そらええな?」

影武者「食事も出来るだけ用意するので皆さんでお越し下さい」

海賊王「祭りやな?ようし!!わいらも食い物持参するで?」

影武者「ハハ忙しくなりそうだな…」

海賊王「ようし!おまんら!!今日は祭りや!!残りの仕事を早よう終わらせるでぇぇぇ!!」

者共「ほいさーーー!!」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:14:36.11 ID:KbfSVIxh0
『教会』


ワイワイ ガヤガヤ

はい…移民の方々2組から

廃屋を修理した建屋を使って下さい

大工さん一家はこちらの家を

農夫さん一家はあちらの家で…

孤児たちは教会で寝泊まりします


盗賊「ほう?一応村長の役はこなしてんだな…やるじゃ無ぇか」

僧侶「盗賊さん起きてきたですね?私の家も決まったでし!!」

盗賊「んぁ?酒場か?」

僧侶「酒場の裏の家なのです…影武者さんと一緒に住むことになったです」

影武者「昼間は取引所…夜は酒場という住みわけだよ」

盗賊「なるほど…酒飲み相手に取引しようってのか…まぁ良い案だ」

影武者「僕は左遷されたつもりだったけど…なんか楽しくなって来た」

盗賊「そら良かったな?」

影武者「やる事が沢山あってね…解決するのにやっぱり物流なのさ…僕に合ってる」

盗賊「そーかいそーかい…俺は早く酒が飲みてぇ」

影武者「そうだ昨日作ったエール酒は樽で4つ分しか無い…足りるかな?」

盗賊「大丈夫じゃ無ぇか?酒飲める大人はそんなに多く無ぇぞ?」

僧侶「私明日の分も作って来るです」

盗賊「そりゃ良い…良い酒になったら俺がキ・カイで売って来てやるぜ?」

僧侶「楽しみですぅぅ…早く作ってくるでし!!」スタタ

盗賊「じゃぁちっと俺も夜まで働くか!!」

影武者「あ!!盗賊さん…今晩は酒場に海賊王を招待しているんだ」

盗賊「ほう?」

影武者「食事の振る舞いでバーベキューを考えてる…お願い出来るかな?」

盗賊「干し肉にしようとしてたシカ肉が有るが…よっし!一丁狩りに行くか」

影武者「お願いするよ…その他の食事は子供達で何とかする」

盗賊「こりゃ酒場がいよいよ楽しみだ…女は魔法使いと僧侶…ほんでお前だな?」

影武者「僕は勘定に入れないで欲しい」

盗賊「よーし!!ハンター起きろ」ドカッ

ハンター「うぐ…ぅぅん…何?何事?」

盗賊「今から狩り行くぞ…2時間で戻る」

ハンター「ええ!?どういう話になってる?」

盗賊「今晩の食い物だ…お前の張った罠見回りに行く…案内しろ」

ハンター「今?直ぐに?」

盗賊「そうだ!晩飯に間に合わせる…行くぞ」グイ

ハンター「あ…ちょちょ」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:15:48.91 ID:KbfSVIxh0
『夜_酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

わいがこの国の王…海賊王や!!

ええか?この村はわいの領地や

せやから何も心配せんでええで?

兎に角新しいハテノ村の祝いや…みんな飲めぇ!!


ジュゥゥゥ モクモク


ハンター「イノシシの肉焼けてる…持って行って!」

魔法使い「忙しい忙しい…」ドタバタ


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盗賊「ふぅぅぅやっと酒にありつける…カウンターに座るぜ?」

僧侶「盗賊さんお疲れでし!!」

盗賊「例の酒くれ!!早く飲みてぇ」

僧侶「分かってるでしゅ…どうぞ!!」ドン

盗賊「おぉ…冷えてそうだな?こりゃ魔法使いに何かやらせたな?」

僧侶「氷で冷やしてあるです…飲んでくだしゃい」

盗賊「むぐっむぐっ…ぷはぁ」

僧侶「どうですか?」

盗賊「アルコールは控えめだがスッキリ飲める…こりゃ何杯でも行けそうだ」

海賊王「どぶろく持って来たで?これも飲めや?」

盗賊「おぉぉ海賊王の爺さん…ご機嫌そうだな?」

海賊王「子供達が作った酒がなかなか美味いもんでな…今日は気分がええで?」

盗賊「俺もちと驚いてんだ…昨日の今日でこの酒作るってのは大したもんだヌハハ」

海賊王「ワイの手下どもも喜こんどるわガハハハハ」

盗賊「しかしこの村もやっと軌道に乗り始めた…このまま上手く行けば良い」

海賊王「この村はなんちゅーか夢がある…そういう村は登って行くもんや」

盗賊「やっぱ酒場があると活気が違うな」グビグビ

海賊王「そやな?美味い酒が飲めるなら手下どもは毎日ここに来るで?」

僧侶「私も飲みたいです…」

盗賊「おぉ飲め飲め…今日は飲んでも良いんじゃ無ぇか?影武者のおごりだろ?」

僧侶「そうですよね?私も飲むでし!!」グビグビ

海賊王「おぉええ飲みっぷりや…気に入ったで?」


ガハハハハハ

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114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:16:55.67 ID:KbfSVIxh0
『翌日』


ヨッコラ ドスン


盗賊「よし…これ以上はもう積め無ぇな」

影武者「これが買い取り品目のメモだよ…出来るだけ早く戻って欲しい」

盗賊「へいへい…酒樽は全部俺が飲んじまうが良いな?」

影武者「全部は飲めないでしょ…残りは一応売りに出して反響を見て欲しい」


ええと石炭と木材は高めで売却

硫黄は競売で相場見極め

買い取りが布と香料…ほんで種を各種か


盗賊「あとは移民を乗せて来りゃ良い訳な?」

影武者「移民は2家族までだよ…工夫だと稼ぎが良い」

盗賊「分かった…まぁ任せろ…助手にガキ一人連れて行くが良いな?」

影武者「好きにすると良いさ」

盗賊「よし!乗れ小僧!飛行船の動かし方教えてやる」

少年「…」ジロリ

盗賊「武器の使い方も教えてやるから付いて来い」

少年「フン!」スタスタ

盗賊「じゃぁ行って来るわ…」ノシ


フワフワ

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115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:18:00.10 ID:KbfSVIxh0
『数日後』


コーン コーン メリメリ ドスーン


女オーク「ふぅ…」

僧侶「女オークさん木を切り倒すの早いでしゅねぇ…」

女オーク「切り株を掘るから離れておいて?」

僧侶「はいな!」

女オーク「ふん!!」


ドコーン ドコーン メリメリ ガッサー


女オーク「ふぅふぅ…この作業が大変…」ズルズル

魔法使い「私が土を埋め直しておくわ」ザック ザック

女オーク「この切り株でテーブルが作れるから大事な資材ね」ヨッコラ

僧侶「あれ?空に何か飛んでるでし…」

魔法使い「え?」

僧侶「あれ剣士さんの気球かもです」

女オーク「ハッ!」

魔法使い「…」チラリ

僧侶「大きな鳥ですかね?通り過ぎて行ったです…」

女オーク「…」ヨッコラ ヨッコラ

魔法使い「その切り株は荷車に乗せて置いて?後で運ぶから」

女オーク「うん…」ドスン

僧侶「切り倒した木は川に投げると下まで流れて行くです」

女オーク「分かったわ…」グイ ザブーン

僧侶「下で木を引き上げに行くでし!!」スタタ

魔法使い「私は荷車引いていくから先に行ってて」

女オーク「うん…」ドスドス
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:19:01.52 ID:KbfSVIxh0
『村の川辺』


ジャブジャブ


女オーク「ふん!!」ザバァ

僧侶「私が枝を落としておくので女オークさんは休んで良いです」ギコギコ

女オーク「大丈夫よ?」ブンブン スパスパ

僧侶「あ!!!さっきの大きな鳥!!やっぱり剣士さんの気球!」

女オーク「え!?」キョロ

僧侶「村の方に降りそう…」

女オーク「私行って来る!」ドスドス

僧侶「私もいくです…」スタタ


-------------


『村の外れ』


フワリ ドッスン


剣士「ふぅぅぅ…やっと着いた…随分迷った」

女オーク「剣士?…剣士?…」ドスドス

剣士「良かった…女オーク無事だったね?」ダダ

女オーク「え?無事って…私はここで普通に…」

剣士「良いんだ…無事なら良い」

僧侶「剣士さ〜〜ん!お帰りなさぁぁい!!」スタタ

剣士「偏西風の向きがおかしくて中々辿り着けなかったんだ…やっとたどり着いて安心したよ」

僧侶「??どゆこと?」

剣士「まぁ色々あった訳さ…皆居るかな?」

僧侶「盗賊さんがキ・カイに行ったです」

剣士「少し休みたいかな…体が冷え冷えだよ」

女オーク「上の方に温泉があるわ?」

剣士「そうだったね…入りたい」

女オーク「連れていってあげる…背中に乗って?」

剣士「いやいいよ自分で歩くさ」

僧侶「皆に報告してくるです」

剣士「うん…僕は温泉に浸かってちょっと休む」

僧侶「はいなー」スタタ

女オーク「こっちよ?」グイ
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:19:53.28 ID:KbfSVIxh0
『古代遺跡に続く道』


サラサラ サラサラ


剣士「ちょっと見ない間に随分整備されたね」

女オーク「剣士のお爺さんのお陰よ?」

剣士「ハハ爺いじは村作るのとか大好きなんだよ…そのうち城作り出すよ」

女オーク「もう遺跡の周りは要塞になって居るわ?」

剣士「ほらね?次は使いもしない大砲さ…散々そういう話聞かされたんだ」

女オーク「そうだったんだ…フフ」


ガタゴト ガタゴト


魔法使い「あ…剣士…帰ってたのね…」

剣士「今帰った所だよ…整地かい?なんか大変そうだね」

魔法使い「お爺さんに会いに行くの?」

剣士「ちょっと体が冷え冷えでね…疲れてるし少し休みたいんだ」

魔法使い「じゃぁ温泉に行くんだ…」

女オーク「私が案内しているの」

魔法使い「そう…」チラリ

剣士「少し休んだら教会の方に挨拶に行くよ…後回しにしてゴメンね」

魔法使い「いえ…ゆっくり休んで…」

女オーク「剣士?こっちよ?」

剣士「うん…」ヨロヨロ

魔法使い「…」

魔法使い「……」

魔法使い「………」シュン


ガタゴト ガタゴト
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:20:31.11 ID:KbfSVIxh0
『温泉』


モクモク


女オーク「この辺りが丁度良いお湯になっているわ」

剣士「ありがとう…」チャプ

女オーク「私はお爺さんに剣士が帰って来たと伝えて来る」

剣士「ちょっと待って!!爺いじが来ると休めない…僕が起きた後にして」

女オーク「フフそうね」

剣士「それより女オーク?体に調子悪い所は無い?」

女オーク「え?どうして?何もおかしい所なんか無いわ?」

剣士「そうか…それなら良いんだ」

女オーク「どうしたの?」

剣士「何でも無いよ…兎に角安心した」

女オーク「変な剣士…私は木材加工の続きをして来るからゆっくり休んで?」

剣士「うん…寝る」ウトウト


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119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:22:04.51 ID:KbfSVIxh0
『古代遺跡』


メラメラ パチ


うーむ…なんで直らんのや?他の羅針盤も一斉に壊れるちゅうんはおかしいな

親方…日の出の方角も大分北よりなんでがす

船に硫黄運ばせとる気球は帰って来んが羅針盤おかしゅうて迷っとるんかいな?

この周辺は不思議な事が起こるんかも分からんでがす


剣士「ふぁ〜あ…」パチ

海賊王「おぉ剣士!温泉で寝取ったらアカンで?茹でダコになる」

剣士「んん?う〜ん…良く寝た」ノビー

海賊王「大分疲れとった様やな?」

剣士「あぁぁ…一人で飛空艇操作してたから何日もずっと寝て無かったんだよ」

海賊王「腹減っとらんか?」

剣士「大丈夫…それより爺いじ…今世界が大変な事になってる」

海賊王「今空がおかしいちゅう話をしとった所や」

剣士「地球の地軸が移動して太陽が昇る方向も星の位置も…羅針盤が北を差す方向も何もかも狂ってる」

海賊王「う〜む意味が分からんのやがゆっくり話せ」

剣士「結論から言うともう海は航海出来ない…空を飛んでも迷う…今まで使ってた地図に意味が無くなった」

海賊王「世界大移動かいな?」

剣士「そんな感じだよ…詳しくはこうさ…」


カクカク シカジカ

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海賊王「そらえらいこっちゃ無いか!!わいはドワーフの国へ戻らなアカン…」

剣士「航海出来ないよ…間違い無く遭難する」

海賊王「今の話からすると外海に出れば良いんやろ?」

剣士「ええとドワーフの国は島が沢山だったね…島を目標に渡ればもしかすると行けるのかも」

海賊王「ハテノ村にいつまでもゆっくりはしとれんな…ちぃと考えるわ」

剣士「今移動するのは良くないと思うよ…行けると思っても本当に迷う」

海賊王「状況が安定するまで待ちかいな…ちゅうか気球が帰って来ん事にはわいも動けんな」

剣士「僕はちょっと星を観測してどれだけズレがあるのか計算してみる」

海賊王「そやな?そやそやおまんの地図も写させてくれ」

剣士「後で持って来るよ」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:23:39.25 ID:KbfSVIxh0
『酒場』


ワイワイ


女将「いらっしゃいませ〜でし!」

剣士「ハハ…これは本格的だね」

女将「剣士さん!!飲んで行くですか?」

剣士「一杯貰おうかな…」

女将「魔法使いさん!!影武者さん!!剣士さんが来たです」


ドタドタ


魔法使い「剣士!今日はもう来ないかと思ってた」

剣士「少し休んだら調子良くなったよ…なんか良い酒場になったね」

魔法使い「酒場と言っても村の皆の食事処よ」

剣士「一杯欲しいな…どんぐりも欲しい」

女将「はいなー!!自家製のハテノ酒でし!!」ドン

剣士「ハテノ酒か…どんな味なんだろう?」ゴクリ

魔法使い「どう?錬金術で作った炭酸を混ぜてみたの」

剣士「おいしい!!コレ売れるよ…すごく飲みやすい」ゴクゴク プハー

影武者「いくらなら出せるかな?」

剣士「大き目のグラスで銀貨1枚」

影武者「フフ十分元が取れそう…1日樽4杯作れるとして金貨4枚分…材料費引いて金貨3枚の儲け」

魔法使い「ポーション作るより効率良さそう」

剣士「なんか楽しそうだ…もう一杯頂戴」

女将「はいなー!!」ドン

剣士「さて…酒場に来たからには…何か面白い話無い?」

女将「あるですよ…」


村の外にどんぐりを置いておくとですね…

いつの間にか薬草に変わってるですよ

多分オークがどんぐりの代わりに置いてくれてるです

そこでオークが他に何が欲しいのか調査したいのです


剣士「ハハそんなの簡単さキノコと松ぼっくりだよ…木の根も良いね」

影武者「ふむ…僕達に不要な物をトレード出来るのか…明日試してみよう」

女将「楽しみが増えるですね」

魔法使い「ところで剣士?今度はいつまでこの村に?」

剣士「しばらく滞在しようと思ってる」

魔法使い「どのくらい?」

剣士「そうだなぁ…1ヶ月?2ヶ月?…ちょっと色々調べなきゃいけない事が有ってね」

影武者「あ…それなら剣士さんに依頼したい事が…」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:24:21.58 ID:KbfSVIxh0
剣士「ん?僕に出来る事なら…」

影武者「細工が得意だったよね?防具が少し欲しいんだ」

剣士「おけおけ…確か樹皮が一杯積んでたね…それで作れるよ」

魔法使い「しばらく滞在するなら開いている家を使っても良いわ?」

剣士「あーこの村の主役はやっぱり君達だよ…僕は上の遺跡で良いさ」

魔法使い「そう…ずっと住んで居てくれても良いのに」

剣士「僕の家は名もなき島という所にもうあるんだ…この村では居候さ」

女将「寂しい事言わないでくだしゃい」

剣士「しばらくは滞在するからよろしくお願いするよ」グビ



『翌日』


ブーン ブンブン


剣士「蜜蜂!ここで巣を作れ!」ブーン

魔法使い「何をしているの?」

剣士「虫を集めてるんだ…そうそう今日はまだ木を育てて居ないね?」

魔法使い「え?うん…まだ」

剣士「今日から辺りに花を育てて欲しいんだ…種は持ってる」

魔法使い「花?ハチミツの為?」

剣士「それもあるんだけど…実はね…この村に足りないのは虫なんだよ」

魔法使い「虫…居ない方が良いと思うんだけど」

剣士「虫が多いと鳥が来るんだ…水生動物も虫を餌にする…その水生動物を餌に色んな動物が集まるんだ」

魔法使い「そういう事ね…虫は暮らしを豊かにしてくれているのね」

剣士「害虫も居るけどそれは退治すれば済む…虫は命を運んで来るんだよ」


そう…命を運ぶのは虫なんだ

僕は大事な事を忘れていた

虫を使ってドリアードを倒す事ばかり考えてた

虫を育てて命を運ばせないといけない


剣士「土の中に居るワームは殺しちゃいけないよ?火山灰を食べて栄養のある土に変えてくれてる」

魔法使い「分かったわ」

剣士「クモは縄張りを守ってる…同時にハテノ村も守る…虫ってすごいでしょ?」

魔法使い「本当は興味無いけどあいづちだけ打っとく」ウンウン

剣士「アハハはっきり言うね…まぁ良いさ…花を育てるのお願いね」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:25:06.04 ID:KbfSVIxh0
『製材所』


ゴリゴリ シュッシュ


剣士「みんな見ててね?樹皮は茹でて柔らかくした後に油を含ませてしごいてなめすんだ」ゴシゴシ

剣士「なめした樹皮をこうやって編んで行けば籠の材料になる」アミアミ

剣士「厚手の質の良い奴は防具の素材に残しておく」

剣士「やわらかい内に形を整えて縫い合わせれば防具の出来上がり…真似してやってごらん」

子供達「すごーい…」

剣士「自由にデザインして良いよ…後で僕が直してあげる」

影武者「あっという間に防具が出来るんだね」

剣士「ちゃんとした装備にするには内側に細工が必要なんだ…それは僕がやる」

影武者「皮の防具という感じかな?」

剣士「うん…工夫次第で上等な防具になるんだよ…軽いから僕は好き」

影武者「樹皮はヘラジカの餌にと思って居たけど…こうして見ると使い道が広い」

剣士「餌にするには勿体ない…加工して余った部分を餌にすれば良いかな」

影武者「籠はいくつあっても良い」

剣士「そうだね…ベットにもなるし宝箱にだってなる…最後は燃料としても使える」

影武者「勉強になったよ」

剣士「それは良かった」


-------------


剣士「次は亜麻の加工だよ」

剣士「亜麻を布にするまで加工するのは難しいからロープと麻袋までにしよう」

剣士「水に漬けて乾燥させた亜麻をしごいて繊維だけ取り出す」

剣士「これを寄ってロープにする…繋ぎ合わせは順に継ぎ足して寄って行く」ヨリヨリ

剣士「繊維だけ編み込んだ物で麻袋になるけどこれは時間が掛かるから暇なときに…」


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影武者「布を作るには織機が必要だね」

剣士「うん…作っても良いけど細工に手間が掛る…布は買った方が早い」

影武者「亜麻を沢山育て過ぎたかな」

剣士「えとね…鍛冶場で大量の鉄鉱石の残りくずが出てると思うんだ…骨粉と亜麻のくずを混ぜて建材に加工できるよ」

影武者「モルタルだね?」

剣士「ちょっと違うけどそんな感じ…レンガみたいな石になる」

影武者「建材で木材の消費が抑えられるか…大工に相談してみるよ」

剣士「木は切り倒すのが勿体ない…切るのは最低限が良いかな」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:26:18.15 ID:KbfSVIxh0
『古代遺跡』


メラメラ パチ


剣士「爺いじ?地図持って来たよ…」パサ

海賊王「待っとったわい…見せてみぃ」

剣士「その地図は海士島が南極になった想定の地図だよ」

海賊王「見慣れんで気持ち悪いなぁ?」

剣士「うん…でもね?この地図もアテにならない…僕が空を飛んだ感覚だともう少し斜め向いてる筈」

海賊王「どのくらいや?」

剣士「う〜ん20°くらいかなぁ…目印になるのは南極星だけなんだ」

海賊王「季節も分からんのやな?」

剣士「うん…しばらく星の観測続けないといけない」

海賊王「ここは山があるで観測もやり難いなぁ?」

剣士「そうだね…今から南極星の角度測定する道具を作ろうと思う」

海賊王「わいは機械仕掛けの良い時計を持っとるで?使うか?」

剣士「おお!!それがあると時間ごとに星の角度測れる…貸して」

海賊王「体感やとだんだん温くなっておる様に感じるが?」

剣士「そうなんだ?」

海賊王「まぁ天気もあるしよー分からんな」

剣士「ねぇ女オークは何処行ったか知らない?」

海賊王「硫黄鉱山行っとる思うわ…よー働く娘や」

剣士「ちょっと心配なんだ」

海賊王「なんでや?体は丈夫そうやで?」

剣士「話はややこしいんだけど…急に死ぬ可能性があるんだ」

海賊王「そらあかんな…おまんの事やからなにか理由があるんやな?」

剣士「うん…」

海賊王「分かったわ…ちっと戻る様に言うてくるわ」ノソリ

剣士「ありがとう」


---違う未来を歩んでいる筈なのに---

---不安が消えない---
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:27:24.94 ID:KbfSVIxh0
『夜_遺跡の外』


カチャカチャ ギリリ


剣士「…一時間に15°か…一日の長さは変わって居なさそうだ」

女オーク「メモしておく?」

剣士「それは良いや…南極星が変わってるのは書いておいて」

女オーク「南極星が変わるというのはどういう意味が?」

剣士「地球の傾きが変わってるという事さ」

女オーク「傾き?理解できない…」

剣士「駒の軸がクルクル動くでしょ?回転の軸が動いちゃってるんだよ」

女オーク「どんな影響があるのか想像出来ない…」

剣士「僕も良く分からない…天候が安定しないのはそのせいかもね」

女オーク「この観測を朝まで続けるつもり?」

剣士「日の出前まで仮眠しようかな…大事なのは日の出と日の入りなんだよ」

女オーク「ここで休むのね…」

剣士「そうだよ…毛皮も用意したし君が居れば暖かい」

女オーク「ウフフ寝泊まり出来る場所があるのに野宿ね」

剣士「石炭は一杯あるし暖は取れる…まぁ馬車で寝泊まりするより快適さ」

女オーク「剣士は先に寝ても良いわ」

剣士「うん…日の出の観測逃さない様にもう寝るよ」


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125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:27:56.26 ID:KbfSVIxh0
『夢』


ヴヴヴヴ ドサリ ピチャ


僕「動いたらダメだよ…方陣の中から出ないで」

君「ガァァァ…」ズルズル

僕「今楽にしてあげるから…もう少し抱っこさせて」グイ

君「ヴヴヴヴ…」ピクピク

僕「君の魂は今何処にあるかな?浄化が済んだら僕に掴まってね…」

君「グルルルル…」ノソ

僕「ダメだって方陣から出たら…」ゴソゴソ


グイ ギュゥゥゥ


僕「なんでかなぁ?涙が出ない…ただ心が寂しい」

君「ヴヴヴヴ…」ズルズル

僕「行くよ?しっかり掴まって…浄化魔法!」シュワーーー

君「アガ…」サラサラサラ

僕「おいで!僕の所へ…」

灰「…」サラサラサラ

僕「…」ポロ

僕「……」ポロポロ

剣士「楽になったかい?君は何処に行ったんだい?」

灰「…」サラサラサラ


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126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:28:47.59 ID:KbfSVIxh0
『早朝』


剣士「ハッ!!…」

女オーク「起きた?もう直ぐ日の出よ?ほら空が暁色に…」

剣士「夢か…嫌な夢だ…」

女オーク「怖い夢でも見たの?」

剣士「何でもないよ…君は痛い所無いね?」スリスリ

女オーク「どうしたの?くすぐったいわ?」ハテ

剣士「ゴメン寝ぼけてるんだ」

女オーク「観測はしなくて良いの?」

剣士「あぁそうだ星座を確認しないと…えーと…へび座と一緒に登るのか」パラパラ

女オーク「何か分かる?」

剣士「南半球だから多分もうすぐ春になる」

女オーク「暖かくなるのね?それは良かった」

剣士「よし!これで大体の緯度が推定できる…」メモメモ

女オーク「月が全然違う方向に沈んでいたわ」

剣士「ええええ!?どっちの方向?」

女オーク「この地図で言うとこっちの方角ね」

剣士「南南西…そうか月の公転まで変わってるのか…道理で迷う訳だ」

女オーク「私も役に立ったみたいね」ニコ

剣士「明日から月の観測もしないといけない…でも何でそんな事が起こる?」


地球は自転をしているからほぼ太陽と同じ様に動く筈…

まてよ月が縦周りに変化していたとして南南西に沈むという事は南南東から登る…

南極星方面に位置した場合ずっと沈まないという事もある訳か


剣士「そうだ夜は月の方角を見て空を飛んだ事もある…だから迷う」

女オーク「はい地図とペン…私は文字が書けないから剣士が書いて」

剣士「あぁありがとう…女オーク!太陽の方角を観測して」

女オーク「うん…」

剣士「機器の使い方は分かるね?」

女オーク「見て居たから大丈夫よ」カチャカチャ ギリギリ
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:30:27.90 ID:KbfSVIxh0
『数日後_会議』


分かった事

南極星は一日3°づつ移動している

地軸の移動が始まったのは多分15〜20日前でもう50°くらい回転した

今の緯度は南半球のこの位置…このまま行くとどんどん暖かくなる

地軸の傾きは今29°で多分駒の様にクルクル動いてる…周期はまだ分かって居ない

月の公転は明らかに変化…どの様に変わったのかは長期間の観測が必要


剣士「これが新しく作った地図…今までと上下が反対になって東西の方向も変わったよ」

魔法使い「信じられない…この間までの冷たい長雨もこれが影響して?」

剣士「それしか考えられないよ…南極点が近くを通ったんだと思う」

僧侶「オークの領地のずっと南が未踏の地だったですが…」

剣士「そこにあった極点が今はキ・カイ付近な筈」

魔法使い「これから予測される影響とかは無いの?」

剣士「う〜ん僕の知識じゃあんまり確かな事言えないんだけど…内海は全く航海出来なくなる」

影武者「キ・カイは商船での貿易で成り立ってるんだけど…」

剣士「完全ストップだね…でも近海での漁業はまだ残るかもしれない」

僧侶「いつまでその地軸の移動が続くですか?」

剣士「これも確かな話じゃないけど4000年前にあった地軸の移動は90°回転して止まったらしいよ」

海賊王「わいは船でドワーフの国へ帰らにゃあかんのやが…」

剣士「遠回りになるけどこの大陸沿いに航海すればなんとか行けると思うな」

海賊王「次来るときは外海側のオーク領から来た方が良さそうやな」

剣士「うん…外海の海図を作って行くしか無いね」

海賊王「ハテノ村の開拓が半ばで悪いが気球が戻って来たでわいは一旦戻るわ…豪族と争っとる場合やないわ」


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128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:31:22.85 ID:KbfSVIxh0
剣士「爺いじ!僕が直した地図持って行く?」

海賊王「済まんな?この地図に海流と風向き加えてまた持ってくるわ」

剣士「うん…気を付けて」

海賊王「兵隊と鉱夫は残して行くけぇ仲良うやってくれや」

剣士「爺いじはこれからどうするの?」

海賊王「そら王様の仕事や…領地を守らなアカンでな…影響を見ていろいろやるやろ」

剣士「…という事はハテノ村も守るんだね?」

海賊王「当たり前や…直ぐに連絡の気球が来るで待っとれ」

剣士「良かった」

海賊王「そやそや…わいがやろうと思っとったんやが川沿いに道を整備したかったんや」

剣士「何か作るつもりだった?」

海賊王「川を下る船で物資の移送や…気球より大量に運べるでな」

剣士「なるほどね…下流に村を構えるんだね?」

海賊王「まぁ待っとり?直にようさん人を送るで…わいも折角見つけた硫黄鉱山を手放したく無いんよ」

剣士「ハハそうだよね大砲が無いと海で戦えないからね」

海賊王「ほな急いどるで行くわ…女オークと仲良うやれや」ノシ



…こうしてハテノ村の開拓は順調に進みだした


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129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:33:17.53 ID:KbfSVIxh0
『古都キ・カイ_酒場』


ガヤガヤ ガヤガヤ

外は死ぬほど寒みぃ…あぁぁきついウォッカくれ!!

流氷が邪魔で商船が出れないのさ…まぁしばらくここで飲んだくれだよ

お酒が高騰してて少しお高いですがよろしいですか?

ガハハハ酒なら俺の船に大量に積んでるんだ


盗賊「よう!遅くなった…金は用意してあるか?」

ローグ「盗賊さん…こんな目立つ所で待ち合わせは無いっすよ…」

盗賊「フード被ってるなんざお前らしく無ぇじゃ無ぇか」

ローグ「あっしはちっと豪族に顔が知れてるもんで動きにくいんすよ」

盗賊「そうか悪りぃ悪りぃ…ほんで金は準備出来たな?」

ローグ「耳を揃えてここに…」ドスン ジャラ

盗賊「ほぉぉ…手ぶらだと思ってたがちゃんと用意出来たな」

ローグ「あっしが持ってた魔石がえらく高く売れたんでやんす」

盗賊「まぁ俺の方も貴重な木材を身内に売れて良かったわ…んで?何に使うのよ?」

ローグ「盗賊さんと同じ大型の貨物用気球が値落ちしてたんで買ったでやんす」

盗賊「そら良い!帆を張って俺と同じにするってんだな?」

ローグ「そーっすね…あっしだけキ・カイに留守番はイヤなんすよ」

盗賊「はは〜ん…ハテノ村の往復便をやろうって訳か…よっし!俺が手伝ってやる」

ローグ「そう言って貰えると嬉しいっす」

盗賊「丁度布の買取もやってて帆を張る分くらい工面出来るぞ?」

ローグ「明日あっしの気球まで案内しやす」

盗賊「ところで話が有るって言ってたな?気球の件だったか?」

ローグ「いやいやちっと盗賊さんの耳に入れておきたい話が有ったんすよ…ここじゃ何なんで個室行きやしょうか」

盗賊「おう…人に聞かれたく無い話しな訳か」

ローグ「一番奥の右手の部屋っす…酒も持って行くんで先に行ってて下せぇ」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:35:02.63 ID:KbfSVIxh0
『酒場_個室』


ガチャリ バタン


ローグ「瓶ごとに成っちまいやすがキ・カイじゃ珍しいワインっす」

盗賊「おぉぉ済まんな…」キュポン グビ

ローグ「ほんで聞いて欲しい話なんすが…セントラル貴族の公爵という人物を知って居やすか?」

盗賊「会った事は無ぇが何度か俺にコンタクト取って来たな?」

ローグ「先に結論を言っちまいやすが…多分黒の同胞の生き残りなんすよ」

盗賊「なぬ!?10年前に全滅して居なかったのか…」

ローグ「あっしは豪族の立場を利用して色々調べたんすが…どうも20年前のセントラル第3皇子の戦死から関わって居る重要人物っす」

盗賊「20年前っちゃぁ100日の闇事件か…」

ローグ「そもそも20年前の魔王復活はセントラル第3皇子の戦死から始まって居やす」


当時の黒の同胞達の狙いは復活した魔王を魔石に封じ

ドリアードの中にあるアダムを復活させる事でやんした

その実現に10年近く掛かっているんすが結果的に成功してる訳でやんす

一見それで平和になった様に見えやすが

その実子供が生まれない事や黒死病の蔓延で人口がどんどん減っている訳なんす

これに気付いた未来君がこの間アダムを破壊した…大きな流れはこんな感じっす


盗賊「俺の認識もまぁ大体そんな感じで有ってるんだが…公爵がどう関わってるんだ?」


公爵はですね…表の舞台にはほとんど関わらないんすが

兎に角仕込みが上手いというか裏で手を引いて上手く物事を誘導するんすよ

昔からセントラル貴族では穏健派の時の王派閥と強硬派のその他貴族で分かれていたんすが

公爵は穏健派で常に時の王の陰に隠れた存在だったんす

上手く時の王を誘導してこの20年の動乱を導いてる…それがたぶん公爵なんす


盗賊「狙いが良く分からんのだが…」


あっしが公爵に疑いを持ったのは

時の王の屋敷を公爵が美術館にして一般公開するようにした事っす…

時の王の遺産の肝心な遺物は全部公爵が接収してるんすよ

その事実を隠蔽する為に美術館として一般公開した


盗賊「ほう?お前は時の王の遺産に何があったのか知って居るのか?」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:35:46.12 ID:KbfSVIxh0
ローグ「全部は知らんのですがシャ・バクダ遺跡で発掘された冒険の書…これと同じものを公爵が持ってるのを見たでやんす」

盗賊「冒険の書?未来が読んだという奴だな?」

ローグ「そーっす…あっしが思うに未来の出来事を知って居るのは未来君だけでは無いと言う事なんす」

盗賊「なるほど…お前の言いたい事は分かった…本当の黒幕は公爵だと言いたい訳か」

ローグ「断言は出来やせん…ただ未来君の予言はすべて当たっていたんす」

盗賊「う〜む…しかしどう考えても公爵の狙いがよーわからんな」

ローグ「アヘン酒が大量に出回っていやすよね?」

盗賊「あぁ俺は飲まんがな」

ローグ「製造元の元締めは公爵っす…それから出回っている魔石の出所」

盗賊「そらスプリガンじゃ無ぇのか?」

ローグ「なんでスプリガンに魔石が入っているんでしょうね?」

盗賊「なんでって…まてよ?なんでだ?魔石のエネルギーは誰がどうやって入れてんだ?」

ローグ「ここからは憶測なんすが魔王が封じられた魔石…そこから取り出して居やせんかね?」

盗賊「つまり魔石の出所も公爵って訳か?」

ローグ「そうなんす…魔石のレートを決めるのも公爵が関与してるんすよ」

盗賊「な〜るほど…ほんで俺に盗んで欲しい訳か」

ローグ「未来君がアダムを破壊したのは良いんすが…魔王を封じた魔石が何処に行ったか分からんのです」

盗賊「こりゃまたデカイ仕事だ…ちっと考える」

ローグ「へい…未来君の頑張りの裏に今言ったようなキナ臭い事案が起きてるんす」

盗賊「しかし今の状況じゃセントラルに行くのも難しいな…」

ローグ「そうでやんすね…昼とも夜ともわからん日が続いていやすからねぇ…」


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132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:36:40.41 ID:KbfSVIxh0
『翌日_港の倉庫』


ギコギコ トンテンカン


盗賊「おい!クソガキ…反対側持て!」

少年「いい加減名前で呼べよ」

盗賊「クソガキはクソガキだ!…おぉそこを押さえてろ!!」トンテンカン

ローグ「盗賊さんロープを持って来やしたぜ?」

盗賊「ローグは回転帆のロープ繋ぎ分かるな?俺はプロペラの改造やっからロープ張りは任せる」

ローグ「さすが盗賊さん…気球の改造はお手の物っすね」

盗賊「まぁ船に長い事乗ってりゃ帆の修理なんざ何回もやるからな」トンテンカン

少年「俺どうしよう?」

盗賊「ロープの結び方でも勉強しとけ…てかお前もヤレ」

ローグ「盗賊さんの新しい助手っすか?あっしが結び目作るんで見て居て下せぇ…」ヒョイヒョイ クルリ

少年「分かんねぇよ!!」

盗賊「おいローグ!そいつは頭じゃ理解出来無ぇから体で覚えさせろ…ぶっ叩いても構わん」

ローグ「いやいやいや…あっしはやさしくですね…」ヒョイヒョイ クルリ

少年「だから早すぎて見え無ぇって!!」

ローグ「えーとですね…」スラーン

少年「な…なんで短剣抜くんだよ」

ローグ「癖なんす…黙って言う事効かせる為の癖なんすよ…見てて下せぇよ?」ヒョイヒョイ クルリ

盗賊「おいクソガキ…そいつはローグって言ってな?短剣使いじゃ恐らく世界一だ」

少年「え!?もしかして海賊王の娘の右腕って…」

ローグ「恥ずかしい事言わんで下せぇ」

盗賊「分かったらロープ張りを文句言わんでヤレ!」


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133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:37:56.90 ID:KbfSVIxh0
トンテンカン ギコギコ


盗賊「…そうかアサシンがそんな事を言って居たか」

ローグ「アサシンさんは失った物が多すぎでしたねぇ…生きる理由がもう無いんでやんすよ」

盗賊「まぁ死に場所を探すと言ってもな…」

ローグ「あっしはアサシンさんの孤独がなんとなく理解出来やす…もう俗世に関わりたく無いのも分かりやすねぇ…」

盗賊「う〜む…魔王を滅してもアダムを破壊してもな〜んも変わりゃし無ぇしなぁ…又公爵みたいな奴が出て来る始末…」

ローグ「あっしらは只勇者2人失って…家族も友人もどんどん居なくなる…寂しいっすねぇ」

盗賊「なんつーかこういう絶望みたいな感覚こそ魔王の支配じゃ無ぇか?」

ローグ「ソレ!それなんすよ…あっしが思うに公爵が誘導しているのはそういう感じだと思いやす」

盗賊「やっぱ女海賊みたいな底抜けな光が欲しいな」

ローグ「姉さんはカリスマでやんした…未来君にはちっと足りない部分なんすが…」

盗賊「いや…資質はある…手段が正統派の勇者では無いだけだ」

ローグ「虫っすね?」

盗賊「光る虫なんかどうよ?」

ローグ「蛍っすか…盗賊さんもおかしな事を…ん?蛍を操る勇者…なんかロマンを感じやす」

盗賊「ぬはは馬鹿な事言って無ぇで…サッサと作業終わらせるぞ」


---でもまぁ悪く無ぇ…なんつかー少し希望が湧く…不思議なもんだ---

---闇を照らす光…虫でも構わ無ぇ---



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134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:39:15.11 ID:KbfSVIxh0
ギリリ ギュゥ ギュギュッ


ローグ「ふぃぃぃ…これで終わりっす」

少年「港にキ・カイの軍船が入って来てる」

盗賊「なぬ!?この霧の中キ・カイの軍船は航海出来んのか…」

ローグ「盗賊さん知りやせんでしたか?キ・カイの軍船は音の反射で障害物が分かるらしいっすよ?」

盗賊「ほぉぉぉそら知らなんだ…羅針盤要らずなのか?」

ローグ「聞いた話なんすが海底の地形を見ながら航海するらしいんす」

盗賊「欲しくなるじゃ無ぇか…盗めるなら盗って来るが…」

ローグ「大きな機械を丸ごと盗む感じになりそうでやんす」

盗賊「なんだデカいのはダメだな…しかし商船の代わりにあのデカイ船が荷を運ぶってのは有りだ」

ローグ「キ・カイの軍船なら流氷に当たってもどうってこと無いっすね」

盗賊「うむ…ただアレを奪った所で盗んだのがバレバレだな」

ローグ「帆が無いんで動かし方も分からんでやんすよ」

盗賊「まぁ奪うってのは冗談だ…軍船から荷が出てきたらちっと物資も潤うな…俺ぁ何が出て来るか見て来る」

ローグ「あっしも行きやすぜ?」

盗賊「おいクソガキ!商人ギルドに戻って軍船が入って来た事伝えて来い」

少年「受付のおばちゃんに言えば良いのか?」

盗賊「ぬはは…おばちゃん…まぁそうだ」

少年「分かった…」

盗賊「寒いからお前は商人ギルドで温まってろ…ローグ!行くぞ」ダダ

135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:41:31.74 ID:KbfSVIxh0
『軍港_立ち入り禁止』


衛兵「…これより先は立ち入り禁止!帰った帰った!!」

盗賊「堅い事言うなよ…商船入って来無ぇから期待してんだよ」

衛兵「ここから見るだけにするのだ」

盗賊「しゃぁ無ぇな…ローグ!何か見えるか?」

ローグ「大きな荷をいくつも降ろして居やすね…多分専用の荷下ろし場から直接地下に運んでる様でやんす」

盗賊「外の街には入って来無ぇか…ちぃ」

衛兵「…」ジロリ

盗賊「ハハ皆物資に期待してる訳よ…ここん所魚しか食って無いからよ」

ローグ「地下行った方が良さそうっすね…ここからじゃ箱しか見えんでやんすよ」

盗賊「地下の荷下ろし場って何処だ?」

ローグ「さぁ?レールが有るのはチカテツ街道なんでその何処かじゃないすかね?」

盗賊「まぁ良い…クソガキが詳しいだろうから案内させる」

ローグ「地下の方が暖かいんでそっち行きやしょう」


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『チカテツ街道8番』


ここの奥から廃線に繋がる抜け道があるんだ…

廃線は昔オークの奴隷を奴隷船に積むのに使われて居た場所

ギャングの姉御はそこから逃げて来たんだ

それで廃線の少し先に軍用の施設がある…そこはキラーマシンが沢山居て危ない


盗賊「なるほど…その軍用の施設に荷物が降ろされてる訳だな?」

少年「多分…」

ローグ「軍の施設に忍び込むのはちっとリスクありやすぜ?」

盗賊「まぁ俺らにはハイディングがある」

ローグ「少年を置いて行くでやんすか?」

盗賊「これは勉強だ…俺が背負ってやる…荷が何なのか見て戻る」

ローグ「それだけならなんとかなりやすね」

盗賊「おいクソガキ…お前何があっても絶対しゃべるな…出来るな?」

少年「当たり前だ…」

盗賊「ようし!背に乗れ…走る事もあるから振り落とされんなよ?」

少年「…」コクリ

盗賊「じゃぁローグ…いつもの感じで行くぜ?」

ローグ「あいさー」

盗賊「ハイディング!」スゥ

ローグ「ハイディング!」スゥ

盗賊「迷って無ぇな?行くぞ…」タッタッタ


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136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:42:22.59 ID:KbfSVIxh0
『軍の倉庫』


盗賊「リリース!」スゥ

ローグ「リリース!」スゥ

盗賊「こりゃまたデカイ倉庫だな…」

ローグ「後ろにキラーマシン歩いてるんで気を付けて下せぇ」ヒソ

少年「…」ユビサシ

盗賊「アレか…もうちっと寄る」ヌキアシ サシアシ

ローグ「何っすかね?」ソローリ


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盗賊「ほとんどが食料の様だな?」

ローグ「肉と野菜…多分フィン・イッシュから帰って来た感じでやんす」

盗賊「しーーっ…何か話してる…」

ローグ「…」


食料は順次市場に流せ

銀と鉄鋼は一旦備蓄…黄銅は直ぐに工場へ運ぶんだ


高官「魔石は入荷して居ないのか?」

将校「予定の半分以下ですが一応入荷しています」

高官「ふ〜む…やはり出し渋って来たか」

将校「はい…恐らく遺跡探掘の権利が狙いと思われます」

高官「古代兵器出土の情報がリークしたのは間違い無いな」

将校「朗報もあります…この異常気象で航海出来るのは我々の軍船だけ…もう豪族は敵ではありません」

高官「ふむ…兵はこの異常気象をどう思って居そうだ?」

将校「賢い者は地軸の異変に感づいて居ます…そろそろ発表した方が混乱しないかと」

高官「うむ…しかし予言がこうもピタリと的中するとは…」

将校「魔石は引き続き向こうの言い値で取引を続けてよろしいのですか?」

高官「相手の出方を探りたいのもある…まずは言い値で進めるのだ」

将校「ハッ…豪族に資金が回って行くのはなんとも…」

高官「航海出来るのは我々だけなのだろう?取引のカードはこちらにある」

将校「荷物を降ろし次第出港の準備に取り掛かります…失礼」


盗賊「戻るぞ…」ヒソ

ローグ「へい…」ソローリ


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137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:43:26.70 ID:KbfSVIxh0
『チカテツ街道8番』


盗賊「リリース!」スゥ

ローグ「リリース!」スゥ

少年「ぷはぁ…」

盗賊「…とまぁ隠密ってのはこんな感じだ…勉強になっただろう?」

少年「俺も出来るようになるかな?」

盗賊「そのうちな?」

ローグ「盗賊さん…さっきの聞いた話…」

盗賊「うむ…どうやら国のトップ共は地軸の移動を前もって知って居た様だ」

ローグ「やっぱり公爵が暗躍していそうっすね」

盗賊「この異常気象をきっかけに裏の取り合いやってんだろうな…民を後回しにして迷惑な話だ」

ローグ「察するにキ・カイにも密偵が潜り込んで居るみたいっすね?」

盗賊「まぁ俺達にゃぁ関係無い…しかし相手の出方を見たいというのはちと引っかかるな」

ローグ「古代兵器って何なんすかね?もしかして10年前の光る隕石かも知れやせんね…」

盗賊「…俺は見た事あるぜ?商人と一緒に遺跡探掘に行った事あんだよ…だが動かし方が分からん」

ローグ「な〜んかしっくり来ないっす…公爵が欲しがるように思えないんすよね」

盗賊「どういう事よ?」

ローグ「公爵は利益とか興味無いんすよ…扇動するだけなんでやんす」

盗賊「という事はキ・カイに使わせるという事か?」

ローグ「そっちの方がしっくり来るでやんす…ちっとまだ情報が足りないっすね」


138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:44:43.25 ID:KbfSVIxh0
『中央ホーム』


ワイワイ ガヤガヤ


盗賊「おいクソガキ!適当に玩具買って土産に持って帰るぞ」

少年「マジ!?」

盗賊「ここは安いからな…袋一杯に詰めて持って帰る」

ローグ「盗賊さんはいつハテノ村に戻るんすか?」

盗賊「明日だ…移民との約束があんだ」

ローグ「あっしも一緒に行きやす…ハテノ村まで案内して下せぇ」

盗賊「それなら荷を目一杯積んでけ」

ローグ「何を積んで行けば良いっすかね?」

盗賊「粗方物資は調達したんだが…そうだ魚が安い筈だ…あっちにゃ魚が無ぇ」

ローグ「分かりやした…後アダマンタイト余って居やせんか?」

盗賊「おぉそうだな…確か商人の隠し部屋に色んなサイズが保管していたな…そうそう俺が拾った武器も余ってる」

ローグ「全部積んで行きやす」

少年「チカテツ街道にまだはぐれのギャングが数人残ってる…連れて行って良いか?」

盗賊「おぉ仲間は多い方が良い…直ぐにローグの気球に乗せて待たせろ」

少年「玩具と一緒に明日の朝までに気球に戻る…それで良いか?」

盗賊「遅れんな?…ほらよ!金だ」チャリーン ポイ

少年「必ず戻る」パス スタタ

ローグ「いやぁぁ中々見所のある少年っすね?」

盗賊「だろ?あれで仲間思いなのが良い…なんつーか昔の俺みたいだ」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:45:52.10 ID:KbfSVIxh0
『商人ギルド』


ザワザワ ガヤガヤ

取引所の一時移転のお知らせ

デパチカ居住区の支店へ一時的に取引所を移転します

露店を出店する際は中央ホームに専用区画を設けてあります


盗賊「やっぱ寒みぃから通常営業は厳しいか?」

受付「地下の方が取引活発なんだよ…遅れると客逃がす」

盗賊「この建屋はどうすんだ?俺は荷物置きっぱなしなんだが…」

受付「しばらく施錠しとく…入るんなら自分で鍵開けて」

盗賊「他の娘と子供達はもう地下行ってんのか?」

受付「もう支店の方で取引開始してんだよ…あたしも行くから早く出てって」

盗賊「俺の荷物出すからちっと待てや」

受付「待てない…あと勝手にやって」ガチャリ

盗賊「ぬあぁなんだアイツ…ちぃ俺一人か」

盗賊「しかし…誰も居無ぇとココも寂しいもんだ」

盗賊「まぁしょうが無ぇか…石炭で暖を取るのも金捨ててる様なもんだしな」


ガチャリ ギー



『隠し部屋』


ゴソゴソ ガチャガチャ


盗賊「錆びを落としゃまぁ一端の武器になる…しかしボルトが重い」ヨッコラ ヨッコラ

盗賊「クロスボウはなんだかんだで使うから全部持って行こう」

盗賊「おぉぉそうそうアダマンタイト忘れる所だっだ…ええと」ゴソゴソ

盗賊「あったあった…しかし商人もガラクタばかりよく集める」

盗賊「んん?何だこりゃ…指示書」ヨミヨミ

盗賊「こりゃ公爵からの指示書じゃ無ぇか…なんでアイツが…」

盗賊「なるほど先物取引の密約か…条件に古文書」

盗賊「公爵が古文書を餌に商人と密約交わしてんのか…なるほど分かってきたぜ」

盗賊「公爵は商人と同じ様な立ち回りすんだな…あいつも表にゃ出無ぇ」

盗賊「つまり影武者が沢山居る訳だ…用心し無ぇとな」

盗賊「古文書らしき書物が見当たらんという事は…あいつ持ち歩いてんのか?」

盗賊「どうやら公爵とやり合うなら商人が肝になりそうだ」

盗賊「くそうタイミングが悪りぃ…まぁ一旦様子見か」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:47:06.22 ID:KbfSVIxh0
『貨物用気球_改』


ガタゴト ガタゴト


盗賊「武器持って来たぜ?乗せとくぞ」ドスン

ローグ「炉に火が入って居やす…ちっと温まって行って下せぇ」

盗賊「おう!!死ぬほど寒いな」ガチガチ

ローグ「あっしは早速クロスボウセットして来やす」ガチャ ガチャ

盗賊「んん?どうしたのよ?」

ローグ「どうやらあっしは見張られてるみたいでやんす」

盗賊「やられる前にヤレ」

ローグ「もう懲らしめてやったんで近付いては来ないでやんすよ」

盗賊「誰だったんだ?」

ローグ「豪族の密偵っすね」

盗賊「まぁデカイ気球使って何処に行くのか気になるんだろうな?」

ローグ「商人ギルドの方は明かりが消えているみたいでやんすが?」

盗賊「デパチカ居住区にしばらく移転だとよ…もう商人ギルドの建屋には誰も居無ぇぞ」

ローグ「寒すぎっすもんね…豪族に襲われないのもこの寒さのお陰かも知れやせん」

盗賊「ぬはは違い無ぇ…こっちはヌクヌククロスボウで応戦すりゃ手も足も出んわ」

ローグ「この昼か夜か分からない天候は何なんすかねぇ」

盗賊「もうちっとの辛抱だ…ハテノ村は温泉が合ってな…酒場もあって天国よ」

ローグ「そら楽しみっすわ…そうそうフィン・イッシュ産の芋酒を樽で仕入れときやした…飲みやすか?」

盗賊「一杯だけな…飲むと寝過ごしちまうから」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:48:07.79 ID:KbfSVIxh0
『翌朝?』


タッタッタ


盗賊「ローグ!クソガキ共は気球に乗ったか?」

ローグ「寝てるでやんすよ」

盗賊「クソガキ!!お前何やってんだ」ドガ

少年「うぐぅ…」

盗賊「お前が気球操作すんだろ!寝てんじゃ無ぇ!!」グイ

少年「マジか…」ヨロ

盗賊「ほんでローグ…簡単な地図書いてきた…飛んだら直ぐに狭間に入って移動しろ」

ローグ「案内してくれるんじゃ無かったんすか?」

盗賊「途中で合流だ…羅針盤は使え無ぇからその地図通りの目標目指せ」

ローグ「火山目指すんすね?…えーと初めに見えた川沿いに…」

盗賊「そうだ…川沿いに上流目指すと大きな湖がある…その真ん中で合流だ」

ローグ「分かりやした」

盗賊「他の小さい気球も火入れが始まってる…追いかけてくんぞ?」

ローグ「マジっすか…」

盗賊「ガキ共起こしてクロスボウでも撃たせろ…兎に角上手く撒け…じゃ行くぞ!」ダダ

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