結標「私は結標淡希。記憶喪失です」

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46 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:04:29.15 ID:hun+MW17o


同日 15:00

-第七学区・街頭-


一方通行「……あァ、クッソ。ふれあい広場遠すぎンだろ面倒臭せェ」ガチャリガチャリ

打ち止め「でも家からは徒歩15分位だったような気がするんだけど、ってミサカはミサカは前回クレープ屋さんへ行ったことを思い出してみたり」

円周「だらしないなあ。日頃の運動不足がこういうところで影響するってよく分かる模範になれるね」

一方通行「俺杖突きオマエら五体満足オッケー?」

打ち止め「そんなに面倒なら能力使えばいいのに。そしたらすぐに着くしミサカたちも楽しめるしでの一石二鳥だよ、ってミサカはミサカは四文字熟語を混じえて知的アピールをしてみたり」

一方通行「その程度の四文字熟語馬鹿でも使えるぞ。つゥか、そンなポンポン能力使えるかってンだ。いつどこで何があるか分からねェっつゥのによォ」

円周「テロリストの軍勢に襲われたりしたら大変だしね。アクセラお兄ちゃんなんて能力使用モードで30分経ったらただのサンドバックと化するし」

一方通行「オマエをサンドバックに見立ててブン殴りてェが、言ってること自体間違ってねェからなァ」

円周「そいつは危ない危ない。この前数多おじちゃんにもサンドバックにされそうだったからね。もしかしたら私はサンドバック回避能力に長けた『木原』かも」

一方通行「随分とくだらねェ能力だな。つゥか、ガキ相手に何やってンだあのオッサン」

打ち止め「ふふふっ、そりゃミサカたちのイタズラが常に絶えない職場だからね。キハラもサンドバックを殴りたくもなるよ。実際ミサカも結構ゲンコツ食らったし、ってミサカはミサカは頭をさすりながら思い出してみたり」

一方通行「木ィィ原クゥゥン!! ガキを手を上げるたァどォいうつもりだクソ野郎がァ!! スクラップ確定だゴミクズがッ!!」

打ち止め「もう落ち着いて! 別にそんな大したことじゃないから大丈夫だよ! ってミサカはミサカは相変わらずの過保護ぶりに呆れてみたり」

円周「いやあ、これはもうあれですなあ。過保護というよりろりこ――おっとアクセラお兄ちゃん冗談だよ冗談。やだなー冗談だから電極のランプの色を赤色にするのはやめよう」

一方通行「……何つゥかただでさえ歩いてて疲れるってのに、さらにクソガキ二人に囲まれたら10倍ぐらい疲れる気がすンだけど」

円周「それは気のせいだと思うよ。なんたって癒し系ヒロインの円周ちゃんが一緒にいるんだからね。毎ターンSP10%回復だよ」

一方通行「オマエが癒し系だったら、通学路とかでやけに吠えてくるクソ犬でさえ癒し系に思えてくるな」

打ち止め「おっと、元気系マスコットポジションのミサカも忘れてもらっては困るぜ、ってミサカはミサカは元気のないあなたに元気100倍的パワー込めた視線を送ってみたり」キラキラ

一方通行「やっべェ、やべェよ元気100倍光線。俺の気力をガンガン破壊していきやがる」

円周「…………何か物足りないなあ」

打ち止め「何が? ってミサカはミサカは唐突に話題を変えたエンシュウに問いかけてみたり」

円周「キャラ濃いメンバーで構築されたパーティーだけど、決定的に足りないものがあると思うんだ」

打ち止め「ふーん、それは?」

円周「おそらく『ツッコミ』ッ!! もともとアクセラお兄ちゃんがその役目を持っていたけど今じゃこのザマさ」

一方通行「誰がツッコミだ」

打ち止め「おおったしかに一理ある! 何となく感じてたこの感じはツッコミ不在の恐怖ということか、ってミサカはミサカは頷きながら納得してみたり」

一方通行「だったら結標でも呼ンでこい。アイツなら頼めば小さなボケからボケじゃないところまできっと全部ツッコンでくれるからよォ」

円周「だが残念。淡希お姉ちゃんは今お友達とショッピング中というリア充状態。私たちみたいな日陰ものとは縁のないところにいるから呼べないんだよねー」

一方通行「本当だよなァクソ。休みを有意義に過ごしやがって……、何が楽しくて日曜の休日にこンなクソガキどもの子守なンてしなきゃいけねェンだ」

打ち止め「またまたー。そんなこと言って本当は楽しいくせにこのこのー、ってミサカはミサカは肘で小突いてみたり」

一方通行「叩き潰されたくなかったらその俺の癇に障ることは一切やめろ」ギロッ

円周「と、言いつつも内心ウハウハ状態のアクセラお兄ちゃんなのでしあたたたたたたたたたたたたっ!! ふぉっぺたふぃっぱるのふぁめてえええ!」


47 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:05:15.97 ID:hun+MW17o


一方通行「次減らず口叩いたらその邪魔臭せェ頬肉引き千切ンぞ」

円周「そんなことになったら、ほのぼのハートフル日常ストーリーから一転してC級スプラッター映画に早変わりだね」

一方通行「もしこれが本当にほのぼのハートフル日常ストーリーだったら、俺のイライラが止まらねェなンてことないンだよなァ……」

円周「うーん、でも最近はそういう感じの話が増えてきて食傷気味なんだよなあ……やっぱりこういうときはツッコミキャラを投入してキレのあるギャグ展開にっ!!」

一方通行「オマエが何を言ってンのか分かンねェが、とりあえずオマエが黙れば全部解決すンだろォなってことはよォく分かった」

円周「よし。だったら次にすれ違った人をこのパーティーのツッコミ役として抜擢しよう。そうすればマンネリ化を防げるね」

打ち止め「おおっ! あれだね桃太郎的な展開のあれだね! クレープをエサに仲間を増やしていく王道の展開だよね、ってミサカはミサカは古典的な物語を現代風に置き換えてみたり」

一方通行「オイ面倒ごとあまり増やしてンじゃねェぞクソガキども。大体クレープ買いに行くだけでマンネリとかわけ分からねェよ」

円周「マンネリだよ。私たちがおちょくってアクセラお兄ちゃんが殺すぞ的な一言で一蹴するパターンの繰り返し。こんな展開誰も望んでいないと思うよ」

一方通行「やっぱりオマエらが黙ればイイだけじゃねェか。よし黙れ。そォすりゃマンネリ解消みンな幸せハッピーエンドを迎えるわけだ」

打ち止め「ええっー! それじゃあミサカたちがつまんなーい! ってミサカはミサカは文句たれてみたり」

一方通行「だったら俺もつまンねェからオマエら大人しくしてくれ」

円周「おっ、そんなこと言ってる間に通行人A発見。まあ通行人というより行き倒れっぽいかも……まあいいや。早速クレープエサにツッコミ役として引き抜きだあ!」

一方通行「勝手なことしてンじゃねェぞクソガキィ! ……あァ? 行き倒れだと?」



禁書「……ううっ、おなか空いたんだよ」グッタリ



一方通行「」

打ち止め「あっ、あれはインデックスだ! おおーいインデックスー!! ってミサカはミサカは手を振りながら大声で呼びかけてみたり!」

禁書「……ん? あっ、らすとおーだー! それにあくせられーたまで! こんにち……うっ、空腹が……」

一方通行「……こンなところで何やってンだクソシスター。とっとと家に帰れ」

禁書「まさか出会ってすぐにそんな辛辣な言葉をかけられるとは思わなかったんだよ……」

円周「ヘイ彼女! 私たちと一緒にクレープでもどうだーい? 今ならクレープに加えてクレープもつくYO!」ピーガガガ

禁書「えっ、クレープ!? 行く行く行くんだよ!!」キラキラ

円周「というわけでYOUはツッコミ役ネ。それじゃトゥギャザーしようぜ!」

一方通行「オイ、コイツ今誰の人格データ使ってンだ? 見たことねェよこンな奇天烈キャラ。つゥか、いろいろ混ざってンだろこれ」

打ち止め「さあ? ミサカもこればかりは分からないなー、ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

一方通行「オマエはこれの親友じゃなかったのかよ」


―――
――



48 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:05:49.24 ID:hun+MW17o


同日 15:15

-第七学区・ふれあい広場-



ワイワイガヤガヤ



禁書「私の名前はインデックス、っていうんだよ。よろしくねえんしゅう」

円周「よろしくねーインデックスちゃん。では早速……いやあ、しかしアツはナツいねーインデックスちゃん」

禁書「アツ? ああ、おでんの厚揚げのことだね! おいしいよね厚揚げ! 汁がたっぷり染みてると最高かも」

打ち止め「クレープ屋の行列に並んでるときにおでんの話はどうなのかな、ってミサカはミサカは……いや、もしかしたらおでんとクレープがコラボするというびっくり仰天の展開への伏線なのかも!?」



キャッキャキャッキャ



一方通行「何でツッコミ要因補充してンのにボケが増えてンだよ! つゥか、何でまたよりによってこンな面倒なガキが一人増えてンだよふざけンなッ!」

円周「おっ、予想通りアクセラお兄ちゃんがちゃんとツッコミに回った。ふふふ、このためにわざわざボケを一人動員したんだよ」

禁書「ぼけ?」

打ち止め「さすがエンシュウだね。でもツッコミに回るインデックスとかも少し見てみたかったかも、ってミサカはミサカは新たな路線の開拓に努めてみたり」

禁書「つっこみ?」

一方通行「こンな話の流れがまるで汲み取れてねェヤツがツッコミなンて出来るわけねェだろォが」

禁書「むぅ、何かあくせられーた。私のことをそこはかとなく馬鹿にしてるね?」

一方通行「おォよく分かってンじゃねェか。オマエ話の流れ読めてるじゃねェか。やるじゃン」

禁書「えっ、ま、まあね。エッヘン!」

一方通行(困惑した表情のままでドヤ顔してやがる。器用なヤツ)

打ち止め「そういえばインデックスはどうして道端で倒れてたの? ってミサカはミサカは素朴な疑問で話題を転換させてみる」

禁書「うーん話せば長くなるんだけど――」

一方通行「三下。昼メシを作り忘れる痛恨のミス。新たな食料を求めてたびに出た暴食シスター、って感じのいつもの流れだろどォせ」

禁書「ふっ、甘いんだよあくせられーた!」

一方通行「あァ?」

禁書「私はお昼を食べたあと冷蔵庫を開けておやつがないことを早々に気付いたから外に出たんだよ。お昼がないからとかそんな安直じゃないんだよ」

一方通行「なぜ昼メシ食ったあとにおやつがないことに気付けるのか、俺にはどォしても理解が及ばねェよォだ」

円周「アクセラお兄ちゃんアクセラお兄ちゃん」

一方通行「ンだよ」

円周「展開がつまらないからテコ入れしたはいいけど、そしたらメインヒロインの私が空気になってきちゃった。どうしよ」

一方通行「誰がメインヒロインだって? 空気は空気らしく黙って隅っこにでもいろ」

打ち止め「うんうん分かるよエンシュウ。こういう濃いキャラが現れるとミサカたち常識人は一瞬で空気になっちゃうよね、ってミサカはミサカは頷きながら同意してみたり」

円周「だよね。常識人はツライよねー」

一方通行「常識人って言葉を一度辞書で引いてみろよクソガキども」


49 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:06:16.37 ID:hun+MW17o



ワイワイガヤガヤ



円周「……うーん、しかしなかなか前に辿りつけないね。クレープってこんなに人気のあるスイーツだったの?」

禁書「お腹空いた……早くくれーぷが食べたいんだよ!」

一方通行「つゥか、オマエは昨日の昼散々分厚いステーキを、そのブラックホールみてェな口に放り込ンでたっつゥのにもォそンな戯言が言えンのかよ。普通は明日一日何にも食わなくてもイイって展開になるンだがな」

禁書「えっ、そうなの? 普通に生活してたから分からなかったんだよ。あっ、でも晩ご飯のおとうふがとても美味しく感じたんだよ!」

打ち止め「はっ、あまりに脂っこいものを食べ過ぎたからそういうあっさり系が余計においしく感じたんだね、ってミサカはミサカは的確な分析力を遺憾なく発揮してみたり」

一方通行「その前に何で晩メシ食ってンのかをツッコめよ」

円周「ちなみにどのくらいステーキ食べたの?」

禁書「いっぱい食べたんだよ!」

円周「わあー同年代の娘がその場の情景をまったく思い浮かべることが出来ない説明をするとは思わなかったよ」

禁書「?」

円周「というわけで解説要員のアクセラお兄ちゃん。はよ」

一方通行「利益が出てるはずなのにシェフが半泣きになるくらいは食いやがった」

円周「まったく情景を思い浮かべないけどすごいことはわかったよ。さすがアクセラお兄ちゃん!」

禁書「あくせられーた嘘はいけないんだよ。店員さんはちゃんと笑顔で見守っててくれてたよ」

一方通行「オマエから見たらそォ思うかもしれねェな。オマエから見たらな」

円周「ふむ。その小さな体の中の一体どこに大量の食料を詰め込める場所があるのか非常に気になるね。強力な胃酸を持っているのか、それとも一瞬で食べ物を原子力エネルギーに変換してるのか……」

打ち止め「エンシュウがヨシカワみたいなこと言ってる」

一方通行「及第点に達していなくても変態科学者一族の一員ってことか」

円周「ファイブオーバー・モデルケースインデックスとか作ってみようかな? クレージーゴンみたいなの。あっ、でもインデックスちゃんレベル5じゃないや」

一方通行「何を言ってるのかは分からねェが、こンな怪物をこれ以上増やそォとすンじゃねェ」

禁書「怪物はさすがに傷つくんだよ……ただ食べることが好きなだけなのに……」

一方通行「……さァて、いつになったらクレープ買えるかなァと」

禁書「ちょっと無視しないで欲しいんだよ! スルーされるのはつらいものがあるんだよ!」

円周「分かる。分かるよインデックスちゃん。渾身のネタをスルーされたときの虚しさったらないよね」

禁書「えっ、別に冗談とかで言ったわけじゃ……」

円周「いやあ、しかしアツはナツいねー」

禁書「? 厚焼き玉子は私は甘いより少ししょっぱいほうが好きなんだよ!」

円周「…………」

打ち止め「わおっ、華麗なスルーっぷり。というかスルーというよりは自分のネタとして変換しているっ!? ってミサカはミサカはあまりに高度なボケについていけないことを悔しく思ったりぃ!」

禁書「?」

一方通行「何やってンだこのクソガキども……」


50 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:07:07.14 ID:hun+MW17o


一方通行「……しかし、真面目に全然店前にたどり着かねェな。たかが日曜日ってだけでこの多さは異常だろ。どンだけ甘いモンに飢えてンだ学園都市のヤツらは?」

円周「さあ? もしかしたら今学園都市ではクレープが大ブームなんじゃない? 私テレビとか見ないから知らないけど」

一方通行「俺もテレビ見ねェから知らねェ」

打ち止め「テレビ見るけど知らないよ、ってミサカはミサカは流れに乗じてみたり」

禁書「私も毎日てれび見ているんだよ! とくにカナミンが面白いから好きなんだよ!」

一方通行「オマエのテレビの趣味なンざどォでもイイ。テレビしか見てねェクソガキがブームじゃねェっつゥンなら何かキャンペーンでもやってるってことか?」つチラシ


『卒業シーズン!! ラヴリーミトンのゲコ太とピョン子の卒業バージョンのストラップをプレゼントキャンペーン中!!』


一方通行「…………」ギロッ

打ち止め「あ、あははー、何のことやらー、ってミサカはミサカは口笛を吹いてごまかそうと口を尖らせてみるけどできない現実に絶望してみたり」スヒュースヒュー

一方通行「チッ、端からこれが目当てで俺を連れ出しやがったか。ふざけたクソガキだなァオイ」

打ち止め「べ、別にいいじゃん! もともとおやつに甘いものを食べたかったわけだし、そのオマケにストラップが付いてるくらいで本来の目的からはズレてないし!」

一方通行「オマエの場合その本来の目的っつゥのはそのカエルの人形だろォが」

円周「知ってる? 食用のカエルって鳥のささみみたいな味がするらしいよ」

禁書「へ、へーさすがの私もカエルは食べようとは思わないかな?」ジュルリ

一方通行「とりあえずよだれ拭いとけよ」つポケットティッシュ

打ち止め「うっ、そ、そんな話をしたところでミサカの決意は決してゆ、揺るがないかも……、ってミサカはミサカは頭に浮かんだ食用カエルを必死に消そうと抗ってみたり」

禁書「鳥のささみっていうことは唐揚げとかにしたらおいしいのかな?」

円周「世の中には活造りにして食べてる人たちもいるみたいだよ。やっぱり水辺の生き物だから刺し身が美味しいのかなあ?」

打ち止め「……おえっ」

一方通行「とりあえずそこの馬鹿二人。これ以上ゲテモノトークを繰り広げるつもりなら叩き潰してすり身にすンぞ」

円周「うーん、ここは話の流れに乗じて『オマエらを活造りにすンぞ』みたいに言ってくると思ったけど予想と違ったね。まだまだアクセラお兄ちゃんのこと分かってないようだなあ」

一方通行「どォでもイイことを人の理解の判断基準にしてンじゃねェ」

禁書「うん、やっぱり今の気分はクレープなんだよ! 鳥のささみの気分ってじゃないんだよ!」

円周「この『鳥のささみ』という単語はそのままの意味なのかはたまた例のブツを表す隠語なのか気になるよねー。打ち止めちゃん」

打ち止め「……正直どうでもいいよ、ってミサカはミサカは話の発端であるエンシュウを睨みつけながら切り捨ててみたり」ジロッ

円周「打ち止めちゃんがドMの豚野郎が喜びそうな蔑んだ目で親友の私を見てくる……」

一方通行「チッ、しかしこのチラシを見てから、何つゥか、胸騒ぎというか嫌な予感がすンのは何でだろォな」

打ち止め「たぶんインデックスがものすごくクレープを食べて大変なことになるからじゃない? ってミサカはミサカは一番に思いついた予想を言ってみたり」

一方通行「いや、そンな単純なことじゃねェ。そもそもインデックスの常識外れの食欲は、もはや俺の中で常識になっているからどォでもイイ」

円周「これは近年よく見るアクセラお兄ちゃんのデレだね。つまりあれだよインデックスちゃん。今日は好き放題クレープ食べてもいい日ってことだよ」

禁書「えっ、ほんと!? じゃあじゃあメニューの端から端まで――」

一方通行「とりあえず殺すぞクソシスター」


51 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:07:56.16 ID:hun+MW17o


一方通行(しかし本当にこの胸騒ぎは何なンだ? チラシを見てから……いや、正確にはチラシのカエルのストラップを見てからだ)

一方通行(クレープ、カエルのストラップ、クソガキが大好きなストラップ、正確には妹達(シスターズ)全員が好き、つまり元のオリジ……あっ)

一方通行(……いやいやいやいや、そンな安易な展開二度もあるわけねェだろ。もし神様ってヤツがいンならこンな面白みのねェことを繰り返すわけ――)


??「――あっれー? 何で今日に限ってこんなに混んでるわけ? まさかみんなゲコ太ストラップ目当てでッ……!?」


一方通行「神様ってホントクソだと思わねェか!? なァ超電磁砲(レールガン)ッ!?」

美琴「えっ!? いきなり何……って一方通行ぁ!? 何でアンタがこんなところに!?」ビクッ

打ち止め「あっ、お姉様だ! やっほーお姉様ー! ってミサカはミサカは久しぶりの再会に喜びを覚えてみたり!」

円周「ここで超電磁砲が登場かー。シナリオ的には悪くないかな」

禁書「ん? 何でこんなところに短髪が……」

美琴「……というかまたこの面子なわけね。何か新しい子が一人増えてるみたいだけど」

一方通行「超電磁砲。頼むから俺の前から消えてくれ」

美琴「なっ、何でアンタなんかに指図されなきゃいけないわけ!?」

一方通行「オマエアレだアレェ、もォこのネタ前にもやっただろォが! これ以上続けて『お 約 束』とかにされてもこっちが困るンだっつゥの」

美琴「はあ? 知らないわよそんなの! アンタの勝手な事情を私に巻き込まないでよ!」

一方通行「見えてンだよオチがよォ、ちょうどオマエの番になってクレープが売り切れる未来がなッ」

美琴「ふん、今回は50ポイント集めるとかじゃないし、そんな都合よくベタ展開が起こるわけ――」チラッ


禁書「……何? 私の顔に何か付いてるのかな?」


美琴「…………」

禁書「?」

美琴「お願い一方通行ぁ!! 列の順番代わって!!」

一方通行「面倒臭せェ」

美琴「そこを何とかっ! お願いっ!!」

円周「アクセラお兄ちゃんが第三位の頭を下げさせてる。さすが第一位だね」

打ち止め「この場合あの人じゃなくてインデックスの存在が一番大きいんじゃないかな、ってミサカはミサカは冷静に状況を分析してみたり」

一方通行「つゥかよォ、今回はオマエの言う通りストラップを手に入れるために50個クレープを頼む必要がねェ。なのに何でオマエはこォも食い下がってきやがるンですかねェ?」

美琴「普通に考えたらそうだけど、よくよく考えたらこのチビシスターがいるんだったら話は別よ! 50個近いクレープを平然と平らげるようなヤツが目の前にいて売り切れを危惧しない馬鹿はいないでしょ!」

一方通行「ンだァ? さっきとは打って変わった意見じゃねェか。『ベタな展開』は起こるわけねェンだろ? だったら大人しく待ってりゃイイだろォが」

美琴「……え、えっと、その。ど、どうしても……だめ?」チラッ

一方通行「……ハァ? 何だよその上目遣いはァ? クソガキといいこの俺がそンな低能な真似でなびくと思ってンじゃねェよ」

美琴「ぐっ、別にそんなのしたつもりまったくなかったけど何かムカつくッ!」

円周「さすがアクセラお兄ちゃん。女子中学生の上目遣いには少しも反応しない、まさにロリコンのかが――」


ゴッ!!


一方通行「さて、そろそろ俺らの番だな」

円周「あれ? おかしいなあ? 事実を言ったのはずなのに頭が痛いぞ?」ジンジン

打ち止め「エンシュウ。何かすごい目であの人がこっち見てきてるからそれ以上変なこと言わないほうがいいよ、ってミサカはミサカは忠告してみる」


52 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:08:24.38 ID:hun+MW17o


店員「――次の方どうぞ!」


禁書「あっ、私たちの番なんだよ! 早く早く!」

一方通行「チッ、分かってるからハシャイでンじゃねェようるせェ」

打ち止め「わーい、何にするエンシュウ? ミサカ的にはカスタードと生クリームとチョコを合わせたダブルクリームチョコがいいと思うんだ! ってミサカはミサカは提案してみる」

円周「いやーどうかなあ? バレンタインのせいでもうチョコは懲り懲りなんだよねー。ここはフルーティな感じなのがいいなあ」

禁書「どれも美味しそ……いや、美味しかったんだよ!」

打ち止め「さすが完全記憶能力保持者! 前ほとんどのメニューを平らげたからできる断言だ!」

円周「へー、インデックスちゃんって完全記憶能力なんて持ってるんだ。珍しいねえ」

禁書「ふふん。暗記関係のゲームで私の右に出るものはいないんだよ!」フフン

円周「でもそんな優秀な能力があってもそれを活かせるオツムがなかったらなあ……」

禁書「何だか知らないけど、ものすごく残念そうなものを見る目をしてるねえんしゅう」

一方通行「くだらねェこと言ってねェでさっさと食いたいモン選べ。オマエらみてェなのがいるから無駄に後ろのヤツらの待ち時間が増えンだよ」

円周「でも後ろには別に誰もいないよね?」

一方通行「あン?」

打ち止め「そうだよ。お姉様は何にするのー? ってミサカはミサカは問いかけてみる」

美琴「えっ?」

打ち止め「えっ、じゃなくてクレープ食べるんじゃないの? だったら一緒に頼んで食べようよ、ってミサカはミサカはスイーツタイムのお誘いをしてみたり!」

円周「そうそう。どーせ全部アクセラお兄ちゃんの奢りなんだから好きなの頼めばいいよ」

一方通行「は? 何で俺がコイツのまで面倒見なきゃいけねェンだよ」

打ち止め「どうせ一緒に食べるんだからお会計も一緒にしたほうが早いし効率がいいでしょ? ってミサカはミサカは当然のことを言ってみる」

一方通行「チッ、めんど――」

円周「いつも効率効率言ってそうなアクセラお兄ちゃんがまさかこの案を断るわけないよね?」

一方通行「…………」

円周「だってあれだよね。面倒臭いってようするに無駄なことはしたくない=効率よくしたい、ってことだもんね」

禁書「なるほどー。たしかにあくせられーたの口癖は面倒臭いなんだよ」

一方通行「……ハァ、クソが。好きにしろクソガキども」

美琴「一方通行……」

円周「よしデレた。これはもうアクセラお兄ちゃんは完全に私たちの配下に――」



ガッ!!



53 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:08:56.03 ID:hun+MW17o


打ち止め「じゃあじゃあお姉様クレープの食べ比べとかしようよ! ってミサカはミサカは提案してみたり!」

美琴「え、ええいいわよ」

円周「うむ、すごく頭が痛い。これは頭に痛みが長時間残るような絶妙な角度と力で殴られてる。何という悪質なレベル5だ……」

一方通行「オマエのほうが圧倒的に悪質でうっとォしい存在だと思うンだけどなァ……」

打ち止め「どれにしようかなー、ってミサカはミサカはメニュー熟視しながら考えてみたり」

美琴「……打ち止め」

打ち止め「何? ってミサカはミサカは振り返りながら返事をしてみる」

美琴「……ありがとね」

打ち止め「んーん、別にミサカは何もやってないよ、ってミサカはミサカは本当のことを言ってみる」

一方通行「これ冷静に見るとガキに助けられる超能力者(レベル5)の第三位様っていう非常に面白い光景なわけだよなァ……」

美琴「……うっさい」

禁書「じゃあ私はメニューのここからここまでを――」

一方通行「オマエはイイ加減遠慮というものを覚えろ。一個だ一個」

打ち止め「さて、いろいろな問題も解決したところだし、これで安心してゲコ太のストラップをゲットできるぜ、ってミサカはミサカはわくわくどきどきが止まらなかったり!」

美琴「そ、そうね。正直クレープよりこっちがメインだし……!」

一方通行「オマエらあとでクレープ顔面に投げつけてやるから覚えとけよ」


店員「も、申し訳ございません。今回のキャンペーンの品は最後の一つしか残っていませんでして……」


美琴「……えっ?」

打ち止め「な、なんだって……?」

円周「何というベタな上にお約束な展開」

禁書「? 何で二人は絶望の淵に立たされたような顔をしてるの?」

一方通行「アレだ。オマエもクレープが食べられる寸前で、実は売り切れでしたってことになったらこンな顔すンだろ?」

禁書「えっ!? クレープ売り切れちゃったの!?」

一方通行「いや、オマエにこの例えをするのは間違いだったな」


54 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:09:31.04 ID:hun+MW17o


店員「ありがとうございましたー!」


一方通行「……で、この一つだけのカエルのストラップはどォすりゃイインだ?」

打ち止め「……ど、どうするお姉様? ってミサカはミサカは恐る恐る尋ねてみたり」

美琴「ほ、本当にどうしようか……」

打ち止め「お、お姉様がもらってよ。知ってるよ、お姉様ゲコ太グッズすっごい集めてるんでしょ? ってミサカはミサカはミサカネットワークの情報を引っ張ってみたり」

美琴「なっ、何でそんな変な情報まであるのよそのネットワークッ!?」

円周「へー。常盤台のエース超電磁砲にそんな趣味があったのかあ。知らなかったなあ」

一方通行「ホントガキ臭せェ趣味だよな。いや、別にまだガキだからイイのか?」

美琴「ガキとか言うな子供扱いすんな!」

禁書「まあでも人形集めはいい趣味だと思うよ。うちの業界にもそういう人形集めてる(魔術的な意味で)人たくさんいるし」モグモグ

美琴「えっ、アンタの知り合いにゲコ太グッズを集めてる猛者とかいるのッ!?」キラキラ

禁書「うーん、そのげこたぐっずってヤツを集めてる人は知らないんだよ」

美琴「……そっか」シュン

一方通行「何だこの食付きよォは? そして落ち込みよォ」

円周「たぶんあれだよ。一人寂しくオタクをしてる人が他の人とそれについて語り合いたい、って感じのアレ」

美琴「……でも打ち止め。このストラップはアンタだって欲しいんでしょ?」

打ち止め「う、うんそうだよ。そのためにここに来たと言っても過言じゃないし、ってミサカはミサカは正直な気持ちを暴露してみたり」

美琴「だったらこれは打ち止めがもらうべきだと思うわ」

打ち止め「で、でもミサカはお姉様みたいなゲコ太コレクターじゃないよ! いわゆるニワカってヤツだからお姉様が持つべきだと思う!」

円周「ここは間を挟んで私がもがもが」

一方通行「オマエは大人しくクレープでも食ってろ」グイグイ

美琴「……ううん、打ち止め。やっぱり私じゃなくてアンタが持つべきよ」

打ち止め「で、でもお姉様」

美琴「こういうのは私みたいにコレクションするみたいな邪な考え持ってる人より、アンタみたいな純粋に欲しいと思ってる子が持つべきなの」

打ち止め「そ、それはお姉様だって同じでしょ? お姉様だって純粋にゲコ太が大好きで――」

美琴「私はアンタたちのお姉様よ。だから少しぐらいいいところ見せたっていいでしょ?」

打ち止め「お姉様……」

美琴「だから受け取ってよ……打ち止め」

打ち止め「……分かった。じゃあこれはミサカがもらうよ! ありがとうお姉様! ってミサカはミサカは笑顔でお礼を言ってみたり!」パ

美琴「どういたしまして」ニコッ


55 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:10:42.10 ID:hun+MW17o



ワイワイガヤガヤ



美琴「…………」

一方通行「よかったのか。クソガキにアレを渡して」

美琴「いいわよ。だって私はあの子たちの姉よ? だから妹のためを想うのは当然よ」

一方通行「チッ、ガキが背伸びしやがって」

美琴「が、ガキ言うなし!」

禁書「短髪!!」

美琴「な、何よ突然?」

禁書「短髪の妹を、らすとおーだーを想うその気持ち。とてもとっても素敵だと私は思うんだよ!」

美琴「……はい?」

禁書「きっとあなたのした良い行いはいつかきっと自分のところに返ってくるから」

美琴「……唐突に何を言い出したかと思えば……アンタってそういうキャラだっけ?」

禁書「むぅ、見くびらないで欲しいかも。私だってシスターなんだから」

一方通行「シスターってそンなカウンセラーみたいな仕事だっけか?」

禁書「かうんせらー? 何それ?」

一方通行「オマエには絶対になれない職業のことだ」

禁書「むむむ、またあくせられーたが私のことをそこはかとなく馬鹿にしてる気がするんだよ」

一方通行「あはっぎゃはっ、ソイツはどォだろォなァ?」

禁書「その悪意のある笑い方は絶対にそうなんだよ!」

美琴「……ふふふっ」

禁書「こ、今度は短髪まで私を笑い始めたんだよ」

美琴「ふふ、ごめんごめん。あまりにアンタたちのやり取りが面白くてね」

禁書「別に面白いことしてる覚えはないかも。変な短髪」

美琴「というかいい加減その『短髪』っていうのやめてもらえない? 私には御坂美琴って名前があるのよ。わかった……『インデックス』?」

禁書「……うん! 分かったんだよ『みこと』!」

一方通行「……チッ、くっだらねェ」


??「――おーい、こんなところで何やってんだよ一方通行!」


56 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:11:49.58 ID:hun+MW17o


一方通行「あァ?」

禁書「あっ、とうまだ!」

美琴「えっ!?」

上条「ん? インデックスに御坂まで……何だこの集まりは?」

一方通行「知らねェよ。気付いたらこンなクソみてェな面子が集まってたンだよ」

禁書「とうま! 今日の私のおやつを忘れてるなんてあまりにもひどい仕打ちだと思うんだけど」

上条「はあ? たしか冷蔵庫にプリンが一個余ってなかったか?」

禁書「えっ? あれってお昼のデザートじゃなかったの?」

上条「既に食ってたんかい! そりゃあるわけねーよなおやつ!」

一方通行「これはひどい」

上条「……で、いつものごとくここにいる一方通行様という神にその手に持つクレープを奢ってもらったと」

禁書「そうなんだよ!」

上条「……昨日のステーキといいいつも本当にすみません一方通行様」

一方通行「もォお礼とか別にどォでもイイっつゥの。このやり取りも何回目か分かったモンじゃねェ」

美琴「……ね、ねえ!」

上条「お、おお御坂。何だよ突然」

美琴「ところでアンタはこ、こんなところで何やってるわけよ。ここら辺にはアンタが行くような場所はないと思うけど」

上条「ひどい言われようだな。まあ、上条さんにもきちんした理由というものがあってだな――」


御坂妹「それはミサカがクレープを一緒に食べましょうと誘ったからですよ、とミサカは会話に割って入ります」


美琴「なっ、何でアンタがこんなところにっ!?」

御坂妹「さっき理由言ったばかりでしょうがきちんと聞いてろよ、とミサカはボヤきながらため息をつきました」

打ち止め「あっ、10032号だ! ってミサカはミサカは突然の下位個体との遭遇に驚きを覚えてみたり」

御坂妹「ちっ、やはり上位個体も一緒だったか。一方通行いるところに最終信号あり、やはりこの言葉は本当だったんですね、とミサカは再度ため息をつきます」ハァ

一方通行「コイツ何か口悪くねェか? 教育方針間違ってンじゃねェか冥土帰し」

円周「おお、気付いたら超電磁砲(オリジナル)、欠陥電気(レディオノイズ)、最終信号(ラストオーダー)と勢揃いになってる。あと第三次製造計画(サードシーズン)の個体がいれば完璧だね」

一方通行「あァ? 今何か言ったかクソガキ」

円周「別に何でもないよー」

一方通行「…………」


57 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:12:37.82 ID:hun+MW17o


美琴「……ほぉ、つまりアンタたちは二人で楽しくデートしてたってこと?」ビリビリ

上条「あれ? 御坂さん何かものすごく怒ってらっしゃるように見えるのですが……?」

禁書「ふーん、そうなんだ。とうまは私がおやつがなくて飢えていたときに、おいしいくれーぷを食べていたと」キラン

上条「それは自分のせいだろッ!」

御坂妹「その通りですよお姉様。あなたがグズグズしてる間にペンダントの時みたく、ミサカはこうやってイニシアティブを取ることが出来るのですよ、とミサカは不敵に笑ってみせます」フフッ

美琴「……ふふふふふ、言ってくれるじゃない妹よ」ビリビリ

御坂妹「待ってるだけじゃ何も始まらないんですよ。これがミサカとオリジナルの差ですよ、とミサカは分かりやすく説明します」

上条「ちょっと待てぃ!! よく分かんねえけどこんなところでケンカはやめろ!」

御坂妹「ケンカなんかしませんよ。そんなことよりミサカはこの手に入れたばかりのこれを愛でる作業に早く戻りたいです、とミサカは本音を吐露します」スッ

美琴「そ、それは……!?」

御坂妹「おや、やはりお姉様もご存知のようですね。『クレープハウスrablun』期間限定キャンペーンで配布される『ゲコ太&ピョン子 卒業式ver』のストラップです、とミサカは懇切丁寧に説明しました」

美琴「…………」

御坂妹「? 何ですかそのリアクションは? お姉様もここにいるということは手に入れたんじゃなかったんですか……あっ、とミサカは驚異的な洞察力で察します」

美琴「しょ、しょうがないじゃない! 最後の一つしかなかったんだし! それなら打ち止めに譲るしか無いじゃない!」

御坂妹「……そうなんですか? とミサカは上位個体へ尋ねてみます」

打ち止め「う、うんそうなんだ。できればミサカはお姉様に譲りたかったけど、でもお姉様に恥はかかせられないし……」

御坂妹「そうですか。それは悲しい出来事でしたね、とミサカはイニシアティブとか言って勝ち誇ってた自分に恥ずかしさを感じました」

一方通行「何だこれ? ストラップ一つでここまで一つになれンのかよ」

円周「さすが遺伝子レベルで同じ姉妹だねー」

上条「ん? 何であの三姉妹は全員どんよりしてんだ?」

一方通行「オマエは会話を聞くってことをしろよ」

上条「いやー、正直それどころじゃなかったからな」ダラダラ

禁書「ふー! ふー!」ガジガジ

一方通行「おやつ一つでこの扱いか……」

上条「で、今どういう状況なんだよ?」

一方通行「あァ、あのクレープ屋の限定でストラップ配ってただろ。アレ、ちょうど俺らのところでなくなってな。クソガキはもらえたが超電磁砲はもらえなかった、っつゥオマエによくありそォな不幸話だ」

上条「たしかに俺にとってはよくある話だな。へー、御坂もあれ欲しかったんだな。あんな顔した御坂見たことねえもん」

一方通行「ま、しょうがねェったらしょうがねェ話だ。オマエがどォにか出来る話じゃねェよ」

上条「……別にそんなことはないんじゃねえか?」

一方通行「あァ?」


58 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:13:42.59 ID:hun+MW17o


美琴「…………」ドヨーン

上条「おい御坂!」

美琴「……何よ?」

上条「お前も何というか俺みたいな不幸な目にあったみたいだな」

美琴「……不幸というかこれは自業自得よ。あれくらいならいつでももらえるでしょ、って思って最終日の今日に来たっていう自分への罰よ」

上条「別にそんな自分卑下することはねえと思うぞ。最終日の今日をお前が選んだのだって何か理由があんだろ? 例えば期間中に何か用事とかがあっていけなかった、とか」

美琴「っ、べ、別にそんなことなかったわよ」

上条「そうなのか? お前はそういうのは初日に行って確実に手に入れるようなヤツだと思ってたけど……まあ、違うなら違うで別にいいさ」

美琴「…………」

上条「お前がストラップを手に入れられなかったのは運が悪かっただけだよ。『不幸』の申し子上条さんが保証してやるよ」

美琴「……もしかしたら慰めてるつもり? そんなことして私が喜ぶと思ってるわけ?」

上条「思わねえよ。だからさ、ほらっ受け取れ」ポイッ

美琴「!? 何よいきなり――ってこ、これはっ!?」パシッ

上条「『不幸』の申し子上条さんからのプレゼントだよ。ありがたく受け取るこったな」

美琴「……『ゲコ太&ピョン子 卒業式ver』のストラップ、な、なんでアンタが……?」

上条「御坂妹と一緒にクレープ屋に行ったから、って理由があるけど別にそんなことどうでもいいだろ? これでお前は『不幸』じゃなくなったんだからな」ニコッ

美琴「……あ、ありがとう」

打ち止め「よかったねお姉様! ってミサカはミサカは自分のことのように喜んでみたり!」

御坂妹「おのれお姉様め、結局美味しいところ全部持って行きやがって、と思うところがありますが同志の喜びは祝福しなければなりませんね、とミサカは拍手を送ります」パチパチ

禁書「おめでとうみこと! きっとみことの気持ちが神の下へと届いていたんだよ!」

美琴「……ふふっ、そうね。アンタの言うとおりちゃんと良いことが帰ってきたのかもね。神様も馬鹿に出来ないわね」

一方通行「……チッ、さすがは三下、いやヒーロー様っつゥことか。くっだらねェ」

円周「…………か」ピーガガガ

一方通行「あ?」


円周「カッコイーッ!! 惚れちゃいそーだぜ当麻お兄ちゃん!!」


美琴「えっ!?」

御坂妹「ッ!?」

禁書「……とうま?」ギロッ

上条「ひぃっ、殺気ッ!?」

円周「やだなあ、冗談だよ冗談。そんなみんな真剣な目をしなくてもいいのに」

一方通行(この場のかき乱し方。コイツ、また『木原』の人格データを取り入れやがったか)

上条「あ、あははは。あまり大人をからかうもんじゃないぞー、どこの誰かは知らないけど」

円周「うーん、それは逆だと思うよ? 『子供』という一番『大人』を掻き回せる立場だからこそ精一杯掻き回さないと」

上条「……えっと、何なんでせうか? いつも昼ドラでも見てそうなこのバイオレンスっ子は?」

一方通行「ただの馬鹿だ。気にする必要ねェよ」


―――
――



59 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:14:19.62 ID:hun+MW17o


同日 16:45

-第七学区・街頭-


打ち止め「いやー、みんなといろいろ話してたらすっかりこんな時間になっちゃったねー、ってミサカはミサカは楽しかったことへの満足感を得てみたり」

一方通行「そォかよ。ソイツはよかったな」

円周「しかしやっぱり外はいいよね、いろいろな経験ができる。今日もいろいろな人を『観察』することが出来たし」

一方通行「あァ? 観察だァ?」

円周「おっと間違えた。いろいろな人と『会えた』だね。日本語がおぼつかなくてごめんねー」

一方通行「……ああ」

打ち止め「ほんと分かるよー、日本語って難しいよね。でも大丈夫! 分からないことがあればミサカのようなきちんと学習装置で日本語を学んだプロフェッショナルに聞けば大丈夫だよ、ってミサカはミサカは自分の胸を拳で叩いてみる」ドン

一方通行「一番おぼつかねェヤツが何言ってンだか」

円周「……そういえば今日って何曜日だったっけ?」

一方通行「突然何だよ? 日曜日だろ」

打ち止め「日曜日……はっ!? ただ今の時間は『16:50』です、ってミサカはミサカはミサカネットワークから時報データを受信してみたり!」

一方通行「何だってンだァ? 急に時間を気にし始めやがって」

打ち止め「大変だよ! 日曜五時は『そげぶマンV 雪原に立つ戦士達編』が始まる時間だぜ、ってミサカはミサカは見たいテレビの放送時間を述べてみたり!」

円周「ようするに、早くテレビの前に正座してアバンタイトルが始まるのを待ってなきゃいけないのに、未だにこんなところ歩いてるのが不味いってことだよね」

一方通行「そォだな。今から走っても必ず五時には食い込むだろォよ」

打ち止め「これはマズイよ。そげぶマンファンとしては是非とも前回のあらすじだろうとアバンは見逃す訳にはいかないのだ、ってミサカはミサカは熱く語ってみたり!」

一方通行「面倒臭せェ。ケータイのテレビ機能でも使って見てろ」

円周「ええー? いくら画質が良くてもこんなちっぽけな画面じゃあの迫力は出せないよ。やっぱり大画面のテレビじゃないとね」

一方通行「注文の多いクソガキどもだ。つまり何が言いてェンだ?」

打ち止め「能力使って早く家まで連れて行って! ってミサカはミサカは手を組んで上目遣いになりながらお願いしてみたり」ウルウル

円周「アクセラお兄ちゃんのチカラを使えばあんな距離3分もいらないよね? カップラーメン作ってから向こうに着いても、少し待ってからフタを開けないといけないくらいの時間には着くよね?」

一方通行「…………」

打ち止め「お願いアクセラレータ!」ウルウル

円周「お願いアクセラお兄ちゃん!」

一方通行「……ハァ、分かったよ。連れて行きゃイインだろ連れて行きゃあ」カチッ

打ち止め「おおっ、早い! あなたがここまで早く承諾してくれるなんて思わなかったよ、ってミサカはミサカはあなたの成長ぶりに驚いてみたり」

円周「本当だね。いつもならこのやり取りをあと3パターンほどしてからじゃないと許してくれないのにね」

一方通行「チッ、うるせェな。ただ俺もさっさと帰ってソファーに寝転びてェだけだ。利害の一致っつゥヤツだよ」

円周「……と訳の分からないことを供述しておりますが、実際はただデレてるだけで――」



ゴガッ!!



60 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:14:53.68 ID:hun+MW17o


一方通行「おらっ、さっさと掴まれクソガキども! 振り落とされても知らねェぞ!」カチッ

打ち止め「じゃあミサカはお姫様だっこがいいー! ってミサカはミサカはあなたの前から飛びついてみたり!」ピョン

一方通行「ケッ、勝手にしろ」

円周「うぉぉぉ、これ確実に脳みそ割れてるよね? 右と左に真っ二つに。名付けるなら右脳と左脳……あれ? 最初から割れてるじゃん」

一方通行「わけ分からねェこと言ってねェでオマエもさっさと掴まれクソガキが!」



ドンッ!!



打ち止め「わっほーい!! すっごい飛んでるー!! ってミサカはミサカは興奮を隠しきれなかったり!!」

一方通行「喋ってンじゃねェ舌ァ噛むぞ!」

円周「ふむふむ。一見脚力や風力がメインに見えるけど、一番は重力かな? あとは状況によって……」ブツブツ

一方通行「……後ろのガキは何ブツブツ言ってやがる」

円周「別にー。下を歩いてる人が今何人いるか数えてるだけだよ」

一方通行「あ、そォ」

打ち止め「ねえねえ、一回ものすごく高く飛んでみてよ。できれば学園都市全体を見下ろせるくらいに、ってミサカはミサカはお願いしてみる」

一方通行「別に構わねェがあまりに高くてションベンちびらせて、学園都市に黄色い雨を降らせても知らねェぞ」

打ち止め「うえっ、それを言われると何か嫌だな。実を言うと今すごくトイレ行きたいから今回はやめとく、ってミサカはミサカは断念してみたり」

円周「あっ、そういえば今って反射働いてるの?」

一方通行「あァ? そりゃ能力使用モードなンだから当たり前だろ」

円周「ふーん、よっと」ガン

一方通行「……何やってンだよ」

円周「一回反射ってのがどんなのか試してみたくて……うん、骨にすごく響くね。強制的に急ブレーキをかけさせるのに近いのかな? これ」ガンガン

一方通行「地表200メートルから振り落とされたくなかったら、あンま余計なことすンじゃねェぞコラ」

円周「はあい」



ワイワイガヤガヤ



一方通行(……チッ、本当に今日はうっとォしいクソガキどもに振り回される厄日だったなクソッタレが)


――――――


61 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:17:59.61 ID:hun+MW17o
今見てると円周のキャラこんなだっけって思うけど前スレでクソガキキャラにしちゃったからままええやろの精神

次回『卒業したくないんだけど』
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/15(木) 17:17:00.05 ID:tS2W0pDHo
なっつ
過去スレ読み返すか
63 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:00:26.35 ID:LptKL4w+o
1スレ目から見直すとキャラとかブレまくっててあああああああってなる(今もブレていないとは言っていない)

投下
64 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:02:30.03 ID:LptKL4w+o


3.卒業したくないんだけど


February Forth Wednesday 15:00

-第七学区・とある喫茶店-



芹亜「卒業したくないんだけど」



鞠亜「……突然呼び出されたと思ったらいきなり何なんだ? せめて前置きくらいないと会話にならないよ」

芹亜「別にこの言葉に深い意味なんてない。ただ卒業したくないんだけど」

鞠亜「まず主語を言え。何から卒業したくないのさ? 自堕落なニートみたいな私生活か? それとも女の子の純潔的なアレか?」

芹亜「……妹よ。お姉ちゃんはお前をそんな歪曲した発想しか出来ないような人間に育てた覚えはないけど」

鞠亜「そんなセリフはきちんと姉の役割をこなしてから言って欲しいんだが。妹に部屋の掃除をさせる姉のどこに育てられる要素があるのか……」

芹亜「いいじゃないか。お前の掃除スキルアップする私の部屋綺麗になる。まさしくWin−Winの関係ってヤツなんだけど」

鞠亜「あんなもんでスキルがアップするわけないじゃないか。『1+1』を何億何万と解いたところで数学が得意になるわけないだろ? むしろ嫌いになる」

芹亜「『塵も積もれば山となる』という言葉があるけど」

鞠亜「積もるような塵さえ出てこないってこっちは言ってんだよ! 適当なこと言って誤魔化そうとすんなあ!」

芹亜「妹が反抗期に入ったっ……!? お姉ちゃんショックで泣きそう……」

鞠亜「反抗期以前の問題だろ。この流れがこれからも続くなら白寿を迎えても同じリアクションをする自信が私にはあるよ」

芹亜「まあ話は戻るけど、卒業したくない」

鞠亜「だから主語を言えって言ってんでしょーが! ここから以下ループとかいうネタでもぶっ込むつもりか!?」

芹亜「-50年後-」

鞠亜「……乗らないぞ。そんなくだらないネタには絶対に乗らないぞ」

芹亜「これがネタじゃなくてマジだったらどうだ? 今私たちは6X歳と6Y歳いうことになるわけだけど」

鞠亜「いつから時間操作の能力者になったんだ? というかネタかマジかなんてないから。議論の余地皆無なのは周知の事実だから」

芹亜「ふふっ、それを分かるのは私たちだけだ。もしかしたら別の視点から見ている人たちは本当に50年の時が経ったと思っているかもしれないけど」

鞠亜「誰だよそいつら? わけの分からないこと言ってないで本題に戻れ」

芹亜「話を逸らしてるのはそっちだろ。律儀なツッコミは話のテンポを悪くさせるだけだけど」

鞠亜「誰がそうさせているんだ誰が……!」

芹亜「人のせいにするのはお姉ちゃんよくないと思うぞ。ツッコむかツッコまないかの決定権は自分にあるわけだし」

鞠亜「その状況を作り出してるのは間違いなくアンタだろうがな」

芹亜「まあまあ。そんなことより私が今いる学校を卒業したくない、っていう悩みの相談に乗って欲しいんだけど」

鞠亜「だから主語を……あれっ!? 主語があるっ!? なぜっ!?」

芹亜「同じネタを繰り返すのにはさすがに見ている人たちも飽きるだろ。きちんとそういうところも配慮しないとな」

鞠亜「本当に誰だよそいつら! というか、さっきから変なコトばっか言ってて気持ち悪いぞ……」

芹亜「そんなマジトーンで気持ち悪いと言わないでくれ。本気で傷つく」

鞠亜「本気で傷ついてるヤツがそんなこと真顔で言ってくるか!」


65 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:03:33.22 ID:LptKL4w+o


鞠亜「しかし卒業って学校のことだったのか。意外だったよ、私が絶対に思い浮かべない答えだ」

芹亜「えっ、普通卒業って言ったらソッチ方面にならない? 少なくとも一般的にはそうだと思うんだけど」

鞠亜「いや、単純に『青春』っていうものから対局の位置にいる姉が、そういうことは絶対言ってこないだろうと思ってたからな」

芹亜「青春真っ盛りのJKに向かって何たることを言っているんだこの妹は?」

鞠亜「ほとんど学校に行かず暗い部屋の中で、ブツブツ言ってるのが青春だっていうのならごめん。私の姉は青春そのものだったよ」

芹亜「……いや、別に引きこもりってわけじゃないけど。引きこもりって言われない程度には学校には行ってるけど」

鞠亜「何でそこで折れちゃうわけ? そこまで来たら引きこもり貫けよ。せっかく引きこもり=青春っていう公式成り立ったのに」

芹亜「どんな公式が成り立とうが、私が卒業したくないという事実には変わりはないのだけど」

鞠亜「……というか卒業したくないのならしなかったらいいじゃん」

芹亜「どゆこと?」

鞠亜「前言ってたじゃん。『私はクラスも分からなければ学年も不明の超絶先輩キャラの巨乳美人女子高生!! つまり、私はどの学年にいてもおかしくないということなのだけど!』って」

鞠亜「よく分からないけどその言葉が本当なら『実は二年生でしたー』って感じに言ってもう一年延長してもらえるってことだろ? というかG死ね」

芹亜「……ふふっ、そうだな。たしかにそう言えばもう一年スクールライフを延長、なんてことも可能だよ……以前までの私ならな」

鞠亜「以前までの? 何か変わったっけ?」

芹亜「私の通う学校には昼休みにたまに学内ラジオというものが放送される」

鞠亜「ラジオぉ? 随分と変わったことをする学校だな」

芹亜「私はそのラジオにゲストとして出演してしまったんだ。一時の気の迷いってヤツだけどな」

鞠亜「たしかに迷いまくってるな。引きこもりがそんな青春染みたことするなんてなあ」

芹亜「そのときのパーソナリティーの娘が二年生の放送部の部長だったんだ。あとは分かるな?」

鞠亜「分かるかっ。意味深なことを言えば何でも通じると思うなよ? あと予測出来ても自分の口では絶対言わないからな!」

芹亜「察しの悪い女子は嫌われるよ。女子高生の会話なんて言葉の裏の意味を常に考えながら繰り広げないと、すぐに置いて行かれてしまうからな」

鞠亜「そんな日本語もまともに使えないヤツに嫌われてもどうでもいいよ。だから早くどうなったのか言いなよ」

芹亜「……言ったんだ。二年生の部長が私のことを『雲川先輩』と。ラジオという公衆の面前でな……」

鞠亜「別にいいんじゃないの? その一言で何かが変わるわけじゃないだろうに」

芹亜「変わるさ。これで私は完全無敵の『三年生の先輩』と認識されてしまったのだけど」

鞠亜「そ、そうなのか?」

芹亜「そうだ。今までは『何となく先輩ってのは知ってるけど何年生なのかわからないなぁ』という認識だった。つまりそれはもしかしたら二年生だったという可能性が残されていたということだけど」

芹亜「しかしここで二年生の部長はハッキリと『先輩』と言ってしまった。それで皆の認識は『ああ、雲川先輩って三年生だったんだ』に変わってしまったんだけど」

鞠亜「でもそれってあくまで認識の話だろ? 自分で二年生と名乗ってしまえば問題ないだろ」

芹亜「それはもう無理だな」

鞠亜「何でさ?」

芹亜「私は部長対して圧倒的な先輩オーラを放ちながら接してしまったんだ……」

鞠亜「……あーそりゃアウトですなあ」

芹亜「アウトなんだよ。これでもう私の女子高生ライフは幕を閉じてしまうんだけど」

鞠亜「あっ、でもまだチャンスはあるぞ! 留年してしまえばまだオッケー!」

芹亜「そんな頭の悪いマネは私のプライドが許さない」

鞠亜「……たしかに、プライドを適度に傷つけることを信条としている私もそれはないわ」

芹亜「ところで私卒業したくないんだけど」

鞠亜「もう諦めろとしか言い様がないね。私みたいな才能あふれる天才でもどうしようもない」


66 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:04:25.18 ID:LptKL4w+o


芹亜「まあ、そんな話は置いといて」

鞠亜「そんな話って何だよ! 何かマジな感じだったから真面目に話を聞いてた私に謝れ!」

芹亜「この前常盤台に研修行ったってマジ? 研修なんて興味なさそうな格好してるくせに」

鞠亜「たしかに行ったけどその言い方はムカつくな。私はこう見えても真面目だぞ? こう見えても学校では成績トップだぞ? だからこう見えても研修にはちゃんと行くぞ?」

芹亜「まあ真面目ちゃんなのは分かったから。で、何でまた常盤台になんて行ったんだ?」

鞠亜「ああ、あれだよ。本当は別のクラスメイトが行く予定だったんだけど急遽別の研修が入ったみたいで、その代わりに暇だった私が行ってきたってわけ」

芹亜「ふーん、で感想は?」

鞠亜「頭がいい、いわゆる天才レベルが集まる学校って聞いてたけど正直拍子抜けしたね。能力の強度が強いだけでただの世間知らずのお嬢様ばかりだ」

芹亜「そりゃあの学校は能力至上主義だからな。凡人だろうが天才だろうが、無能力者(レベル0)だろうが超能力者(レベル5)だろうが何でも来いのウチとは違ってな」

鞠亜「でもあれはあれでプライドがいい感じに傷つけられてよかったよ。あの偉そうなくせに虫程度で阿鼻叫喚なお嬢様たちにこき使われる感じは」

芹亜「……もしかして妹よ。お前ってMなのか?」

鞠亜「ぶっ!? な、何を言っているんだこの姉はあ!?」

芹亜「いや、だって嬉しそうにプライド傷つけられたとか言ってるからてっきりそうなのかと」

鞠亜「わ、私はプライドを傷つけることによって窮地に対しての免疫をつけてるだけで、決してそういうのに心地よさを覚えてるわけじゃないからな!」

芹亜「はっ!? つ、つまりドMだということか……?」

鞠亜「ちーがーうー!! だからそうじゃないってー!!」

芹亜「まあ、妹を軽くキャラ崩壊させたところで本題に入るけど」

鞠亜「……待てよ。このやり取りはこのやり取りで私の経験値アップの糧となっているんじゃ……?」

芹亜「いいから話聞けよマゾメイド」

鞠亜「本題って何? もう卒業うんぬんの話の時点でもう本題は終わってると思ったんだけど」

芹亜「第五位には会ったか?」

鞠亜「第五位? 食蜂操祈のことか? ……あー、会ってはないけど見かけはしたなあ」

芹亜「どんな様子だった?」

鞠亜「うーん、別に普通に派閥の人たちと楽しそーにお茶会してたよ。まったくのんきなもんだよね」

芹亜「そうか。ありがとう」

鞠亜「……何だ? その第五位さんが何かしたっていうのか?」

芹亜「いや、たしかにアイツはムカつくことしかしてないけど、今のところは何もないけど」

鞠亜「じゃあ何でそんな様子とか聞きたがっちゃうのさ?」

芹亜「何もしてないってことがおかしいってことだけど。アイツの場合はな……」

鞠亜「?」

芹亜(そろそろこの年度も終わって新学期が始まる。このタイミングであの性悪女が動かないわけがない。もし動くとしたら一体どういう手で出てくるのか……)

鞠亜(何か難しいことを考えてる顔してる。これは別に大したことは考えてないな)ズズズ

芹亜「……まあとにかく」

鞠亜「うん?」

芹亜「卒業したくないんだけどどうすればいい?」

鞠亜「結局ループネタやるのかよ!」


―――
――



67 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:06:18.98 ID:LptKL4w+o


February Forth Thursday 12:20 〜昼休み〜

-とある高校・一年七組教室-



キーンコーンカーンコーン



<よっしゃあ昼休みだっ!! <購買部に突撃だああああああっ!! <今日こそ焼きそばパンゲットだぜっ!!



青ピ「おおっ、今日もみんな気合十分やなぁ。よっしゃあボクらも購買部に行くでぇっー!」

土御門「今日もいつもどおりカミやんを盾に群衆に突っ込む、『カミやんメイン盾作戦』で行くぜいっ」

上条「ふざけんなっ! たまにはテメェらも盾になりやがれっ! いっつもいっつも良いパンゲットしやがって、たまには俺だって食ってみたいんだよ焼きそばパン、ソーセージパンetc」

一方通行「くっだらねェ。あらかじめコンビニとか買っとけよ焼きそばパン、ソーセージパンetc」

上条「そんな高いコンビニのパンなんか買えるかっ! 貧乏学生舐めるなよ!」

一方通行「たかだかニ、三十円の違いだろ」

上条「そのニ、三十円が大きいんだよっ! わかんねえだろうなぁ、このブルジョアめっ!」

青ピ「ん? というか何やっとんアクセラちゃん、自分の席でのんきにくつろいだりしてぇ。さっさ購買行くでぇ?」

一方通行「ハァ? 何で俺がそンな豚の餌場に行かなきゃいけねェンだよ」

土御門「豚の餌場か。ひどい例えだにゃー」

青ピ「そんなの決まっとるやろアクセラちゃん! ボクらはスクエアフォースやろ? いつでも四人で一つ、だから購買にも四人で行くのが常識なんやでぇ」

一方通行「だからオマエらと一緒にすンじゃねェっつってンだろ。つゥかオマエらも見ただろォが、期末試験の結果をよォ。見事な百の羅列だったろうが」

土御門「まあ、勉強ができるからと言っても、そいつが本当に馬鹿じゃないかどうかなんて分からないんだけどにゃー」

一方通行「……何が言いたいのかな土御門クゥン?」ピキピキ

土御門「おっ、効いてる効いてる。そこでイラつくってことは、少しは自覚があるってことじゃないのかにゃー?」

上条「お、おい馬鹿何いってんだつち――」

一方通行「ブチ殺す」カチッ

土御門「にゃっはっー、にっげろー! カンカンに怒ったアクセラちゃんが襲いかかってくるぞーっ!」

青ピ「よし、ここで『カミやんメイン盾作戦』を開始っ! 行けっ、カミやんっ! キミに決めたっ!」

上条「ふっざけんなお前らっ!! 俺を巻き込んでんじゃねぇ!!」

一方通行「安心しろォ。オマエら三馬鹿仲良く全員、愉快なオブジェにしてやっからよォ!」



ワイワイギャーギャードカドカガッシャーン!!



吹寄「……はぁ、また馬鹿四人の馬鹿騒ぎが始まったわ」

姫神「平常運転」

結標「あはは、まったく毎日毎日よく飽きないわよねー」

女子生徒「あのぉ、アクセラ君まだ教室にいる?」

吹寄「うん? まだ居るけど。後ろを見ての通り」

結標「どうかしたのかしら? 一方通行に何か用?」


68 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:07:18.21 ID:LptKL4w+o


女子生徒「えっと、アクセラ君にお話があるって人が来てるんだけど」

姫神「アクセラ君に話?」

女子生徒「うん。ほらっ、教室前の入り口のところ」

吹寄「ええっと、たしかあの人は……」


芹亜「…………」ニヤニヤ


姫神「……雲川先輩?」

結標「えっ? 雲川先輩ってあの『クラス・学年共に不明の謎の美人先輩』で有名な雲川先輩?」

姫神「そう。その雲川先輩」

結標「何でその雲川先輩が一方通行を?」

女子生徒「さあ? 何か大事な話があるから連れてきてほしいって言ってたけど」

結標「話? 一体何の話なのかしらね?」

姫神「雲川先輩は謎に包まれたミステリアスな先輩。まったく予想できない」

吹寄「……まさか」

結標「まさか? 何かわかったの吹寄さん?」

吹寄「わざわざ教室まで異性を呼びに来てする大事な話なんて、あたしに思い付くのは一つしかないんだけど」

姫神「……吹寄さん。まさか……っ!」

吹寄「そうっ、そのまさかだと思うわ!」

結標「? ちょっとずるいわよ二人だけわかった顔して。なになに教えてよー」

吹寄「……結標さん。心して聞いてちょうだい」

結標「う、うん。何なのそんな深刻なことなのかしら?」

吹寄「そう。もしかしたら雲川先輩は一方通行にこく――」


女子生徒「あっ、わかった! 雲川先輩はアクセラ君に愛の告白をしようとしているんだぁっ!


結標「…………」

姫神「…………」

吹寄「…………」

女子生徒「…………?」




結標「ってえええええええええええええええええっ!?」




一方通行「……あァ? 何ハシャイでンだあの馬鹿女はァ?」


上条「」ピクピク

青ピ「」ピクピク


―――
――



69 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:07:58.86 ID:LptKL4w+o


同日 12:40 〜昼休み〜

-とある高校・屋上-


芹亜「……わざわざこんなところまでご足労頂き感謝するけど第一位」

一方通行「チッ、まったく心のこもってねェ感謝の言葉だな。うっとォしィ」

芹亜「感謝の言葉なんてこんなものだよ。この世に社交辞令という名の、心の一つもこもってない感謝の言葉がどれだけ溢れているか。知らないお前じゃないだろ?」

一方通行「そンなくだらねェ雑談を延々と繰り広げるつもりなら今すぐ帰るぞ俺ァ。一体何の用だ、統括理事会の一人、貝積継敏のブレイン雲川芹亜」

芹亜「ふーん、まさかお前なんかに正体をバレているなんて、私も結構有名になってきたみたいだけど」

一方通行「ンなわけねェだろォが。俺ァ以前はクソみてェな掃き溜めで生きてきたンだ。知らねェわけがねェ」

芹亜「あんな浅い暗部にちょっと居ただけで一端の裏の住人面してるなんて、井の中の蛙を見事に体現している男だなお前は」

一方通行「……オマエ、俺を誰だか分かって口ィ聞いてンだよなァ?」

芹亜「ああ、そのつもりだけど?」

一方通行「だったらさァ、今すぐそのよく回る舌をぶち抜いて口から赤い液体を吐き続けるマーライオン状態にすることなンざ、余裕で出来る男を目の前にしてるってことを理解しているはずだァ」

一方通行「なのになァ、そこンとこわかってるヤツの態度には見えねェンだよなァ俺にはよォ」

芹亜「……まあたしかに、お前にはそんな芸当が容易にできるようなチカラを持っていることも理解してるし、そのようなことをされたら私は無事ではいられないことだってきちんと理解してるつもりだけど」

一方通行「だったら不必要な発言は控えることだなァ、命が惜しいンだったらな」

芹亜「ま、でもその前にお前も理解、いや気付くべきことがあるってことを知ったほうがいい」

一方通行「あァ? どォいうことだ?」

芹亜「私に呼ばれて教室を出たお前のことが気になって、ここまでついてきている女子生徒が三人いる」

一方通行「……何だと?」バッ

芹亜「屋上の入り口で隠れてこちらの様子を伺っているのは、お前の友達じゃないのか?」

一方通行(姫神に吹寄、それと結標かッ……)

芹亜「やはり気付いていなかったようだな。そんな状態で私をマーライオンなんかにしたら、それこそお前の日常が跡形もなく砕け散ってしまうところだったってわけだけど」

一方通行「…………」

芹亜「まあそれをしてしまえば、お前の憧れる深い深い闇の部分にどっぷりと浸かることができるかもしれないな」

一方通行「俺は……そンなモンに憧れてなンかいねェ。あンなクソみてェな掃き溜めに、二度と戻ろォなンて思っちゃいねェよ」

芹亜「そうだったのか。すまない、てっきりそうなのだと思っていたのだけど」

一方通行「……まァでも、どォしてもその選択肢を選ばなきゃいけねェ時が来たっつゥならよォ」


一方通行「喜ンで堕ちてやるさ、暗部だろォが何だろうがよォ」ニヤァ


芹亜「じゃあ、そんなどうでもいい世間話は置いといて、さっそく本題に移りたいんだけど? そんな時間もないし」

一方通行「……チッ、そォだな。俺としても一刻も早くオマエとの茶番を終わらせてェ」


70 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:08:42.34 ID:LptKL4w+o


-屋上入口付近の物陰-


吹寄「……うーん、一体何を話しているんだろ?」

姫神「ここじゃあ距離がありすぎて。会話の内容まで聞こえない」

結標「ねえ、これって不味いんじゃないの? 盗み聞きだなんて……」

吹寄「そんなこと言って気にならないの? 二人が何を話しているのかを」

結標「き、気にならないわけじゃないけど……」

姫神「まあでも。あの様子からして告白してるってことは。なさそうに見える」

吹寄「たしかにそうね。もしあれが告白のシーンならば、二人してあんな邪悪な笑顔浮かべないもの」

結標「邪悪って……まあ否定はしないけど」

吹寄「……しかし耳を澄ませてみても全然会話が聞こえないわね」

姫神「読唇術でも使えれば。会話の内容がわかるんだけどね」

吹寄「近付こうにも、見事に屋上には隠れる場所なんてないときたものよ」

結標「でもほんと、何の会話しているんだろうね、あの二人」

姫神「あの二人の共通点と言ったら。学内ラジオで次回のゲストとして呼んだ側と呼ばれた側」

吹寄「たしか雲川先輩がゲストに呼ぶためにアクセラの携帯に電話したのよね?」 

結標「うん」

吹寄「てことは雲川先輩はアクセラの番号を知っていた、つまりもともと知り合いだったんじゃないかしら?」

結標「うーん、それはないんじゃないかな?」

吹寄「どうして?」

結標「たしかあの時かかってきた電話は非通知での電話だったわ」

姫神「それってつまり。雲川先輩が何らかの手段でアクセラ君の番号を手に入れて。自分の番号がわからないように非通知でかけたってこと?」

結標「うん。そうだと思う」

吹寄「じゃあ知り合いって線も薄くなっちゃうのかー」

姫神「でも。あのときの電話の内容からしたら。アクセラ君は雲川先輩のこと知ってそうだった」

吹寄「だったらやっぱり知り合い? うーん、謎が謎を呼ぶわね」


71 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:09:33.90 ID:LptKL4w+o


芹亜「――つまり、かくかくしかじかで卒業したくないんだけど」

一方通行「……あァ? 今何つった?」

芹亜「だから、かくかくしかじかなわけで、卒業したくないわけなんだけど」

一方通行「分かんねェよ。何だよかくかくしかじかって。ンなモン通じるのは創作の世界だけだ」

芹亜「えっ、ここって創作物の世界じゃなかったのか?」

一方通行「ンなわけねェだろ。現実だ現実ゥ、残念だったな」

芹亜「不便な世界なんだけど」

一方通行「まァでも、言いたいことは何となく分かる。この学校を卒業したくない、そォ言いてェンだろ?」

芹亜「おおっ、さすが第一位! 何という察しの良さ。お前は察しの良さでも第一位だったのか」

一方通行「いや、明日この学校の卒業式だろォが。そンな時に卒業っつゥ言葉聞いたら誰でもそれを連想すンだろ」

芹亜「素晴らしい。私の中でお前の好感度が3ポイントほど上昇したけど」

一方通行「いらねェよオマエの好感度なンてよォ。つゥか、上限何ポイント中の何ポイントだよ」

芹亜「65536ポイント中3ポイント」

一方通行「ゴミみてェなポイントじゃねェか」

芹亜「まあでも、察しが良くて助かっているのは事実なのだけど。また昨日みたいなやり取りをするのは正直疲れるからな」

一方通行「知るかよ。で、俺はそれを聞いてどォすればイインだ? 『あっ、そォ』って言ってやるのが俺的最適解だと思ってンだが」

芹亜「ふむ、では言い方を変えよう。卒業したくないんだけどどうすれば良いと思う?」

一方通行「黙って卒業して行けばイイと思います」

芹亜「やだ」

一方通行「ガキみてェなこと言ってンじゃねェ。つゥか、こンな相談卒業式前日にすることじゃねェだろ。もォ既に卒業式の練習も終えて、卒業する準備も万全っつゥ日だぞ?」

芹亜「私的には全然万全じゃない」

一方通行「誰もオマエのことを言ってンじゃねェよ。この学校全体の動きについて言ってンだよ。今頃準備されている卒業証書の中には、オマエの名前が記入されているモンもきちンとあるだろうよ」

芹亜「……でもそれっておかしくないか?」

一方通行「何がだ?」

芹亜「私は『クラスも分からなければ学年も不明の超絶先輩キャラの巨乳美人女子高生』ということで通っているんだぞ。生徒だけではなく教員に対しても」

芹亜「そんな状況で勝手に私の卒業証書が作られるわけがないんだけど」

一方通行「どォでもイイけどよォ、オマエってこの学校にちゃンと籍置けてンのか?」

芹亜「…………」

一方通行「オーケーオーケー、面白れェこと教えてやるよ不法侵入者」

芹亜「不法侵入者じゃないけど聞こう。何だ?」

一方通行「卒業証書に学年と組を書く欄はねェ。だから、名前だけ知っときゃ卒業証書なンざ作り放題だ」

芹亜「なっ、何でそんなことをお前が知っているんだ!?」

一方通行「卒業式の練習のときにチラっと見えた」

芹亜「あれは確か練習用のレプリカ品のはずだけど。卒業太郎みたいな適当な名前が入ったやつ」

一方通行「ああ、確かにそンな名前だったなァ。まァでも、記入されている名前が違うレプリカ品でもレイアウトは同じはずだ。よって本物も同じレイアウトな可能性が高い」

芹亜「ふ、ふんっ、まあ仮にその話を鵜呑みにするとしよう。だが私はクラスも学年も不明な女っ、それなら卒業生のリストに入っていない可能性が高いけど」

一方通行「ああ、そりゃ簡単な話だ」

芹亜「か、簡単な話だと? 一体どんなっ……?」


72 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:10:11.36 ID:LptKL4w+o


一方通行「オマエ、自分が卒業するって確信してるからこンなところで泣き言吐いてンだろ? じゃねェと俺みてェなヤツをここに呼び出す理由がないからな」

芹亜「…………」

一方通行「…………」

芹亜「ところで、私はどうすれば卒業しなくて済むんだ?」

一方通行「勝手に卒業しとけよ。サヨナラセンパイ」ガチャリガチャリ

芹亜「まあ待て。まだ私のターンは終了していないんだけど」ガシッ

一方通行「離せコラ。オマエのターンはもォ既に終わってンだよ、学校生活っつゥなァ。黙って卒業してろクソババァ」

芹亜「私はこんな面白い学校を離れたくないんだけど。私はこんな面白い学校を離れたくないんだけど。大事なことだから二回言ったぞ?」

一方通行「百回言ってもオマエの卒業は覆らねェよ。……つゥかよォ、そンなに残りてェンなら留年すりゃイイじゃねェか。オマエの権力使えば余裕だろ?」

芹亜「そんな留年なんて馬鹿みたいなことするのは、私のプライドがゆるさない。てか、昨日も同じようなこと言った気がするけど」

一方通行「オマエの昨日喋った内容なンて、俺が知るわけねェだろォが」

芹亜「チッ、学園都市最強の第一位様でも、ウチのマゾメイド妹と同じ結論か。所詮はその程度のモノだったというわけだけど」

一方通行「そのマゾメイドの妹さンは相当優秀なヤツなンだろうな。この俺と同じ結論が出るなンてよォ」

芹亜「ただのドMの変態だけど。……つまり、お前もドMというわけか?」

一方通行「ンなわけねェだろ。そォいや一つ気になったンだが」

芹亜「何か?」

一方通行「留年をプライドが許さないって言ってたが、俺みてェなクソ野郎に泣き付くのはオマエ的にオッケーなのかよ?」

芹亜「別に泣き付いてない。ただ相談しているだけだけど」

一方通行「似たよォなモンだろォが! てか、いつになったら俺ァ開放されるンだァ!?」

芹亜「私がこの面白い学校から離れなくても良い手段、つまり卒業しなくてもいい方法を見つけ出すまで」

一方通行「つまり一生ここで過ごさなきゃいけねェわけか? 詰みだ詰み」

芹亜「詰んではいないだろ。何か良い解決策があると思うんだけど」

一方通行「そォ思うンなら自分で考えろ。俺を巻き込ンでンじゃねェよ」

芹亜「良い案が出るまで昼休みをとってはいけません」

一方通行「給食を残した児童を、昼休み使ってまで完食させようとするクソ教員かオマエは?」

芹亜「へー、暗い過去を持つお前でもそういうネタがあることは知っているんだな」

一方通行「うるせェよ、そンなことどォでもイイから早く俺を……ン? 待てよ」

芹亜「どうかしたか?」

一方通行「いい方法を思い付いた。まあ、俺にとっては全然良くはねェンだけど」

芹亜「唐突だな。そんなあっさり出てきたアイデアなんて信用に値しないと思うけど」

一方通行「妙案っつゥのは、99%のひらめきと1%の努力で生まれるモンだ。だから唐突に閃いてもおかしくねェだろ」

芹亜「パーセントが逆だ逆。まあでも、本来の意味を考えればそれでも間違いではないけど」

芹亜「で、何なんだその画期的なアイデアっていうのは? 期待せずに聞いてやるけど」

一方通行「どこまでも偉そうなヤツだなァオマエは。まァイイ、その方法っつゥのはなァ――」


73 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:10:48.19 ID:LptKL4w+o


一方通行「――っつゥわけだ。こォすれば『卒業』は回避出来ねェが、『学校から離れたくない』っつゥ願いは叶えられる」


芹亜「……なるほど、その発想はなかった」

一方通行「笑えねェ冗談だな。統括理事会メンバーのブレインのオマエが、この手段を思い付かねェわけねェと思ってンだが」

芹亜「私のような一般的な女子高生には難しい話だと思うけど」

一方通行「オマエが一般人を名乗るなら、俺も一般人を名乗らなきゃいけなくなるだろォが」

芹亜「お前のような一般人がいるか」

一方通行「その言葉、そっくりそのまま返させてもらう」

芹亜「……まあでも、たしかに私好みのいい案だ。何で私がこれを思いつかなかったのか、という話になると、卒業シーズンという空気感が私の思考能力を低下させたのだろう」

一方通行「似合わねェな。そンな玉じゃねェだろうに」

芹亜「そうでもないさ。ブレインなんてものをやっていても、所詮はちっぽけな一人の人間に過ぎない。だから、ちっぽけなことで右往左往するけど」

芹亜「お前も私と同じようなことを思っているんじゃないか? 学園都市最強の超能力者君」

一方通行「……チッ、くっだらねェ」

芹亜「ひとまずお礼を言わせてもらうけど。これで私の動くべき道が定まったというわけだ」

一方通行「卒業式前日に進路の方向性が決まるなンざ、馬鹿みてェな話だな」

芹亜「なあに。ここから先は、せいぜいブレインとしての権力を乱用させてもらうけど。……それにしても」

一方通行「あァ? まだ何か問題でもあンのか?」

芹亜「いや、君たちをこの学校へ引き抜いてよかったと、ちょっと思っただけだけど」

一方通行「……オマエだったのか。このくだらねェ生活に俺や結標を引き入れやがった張本人は」

芹亜「楽しい生活だろ? お礼を言ってくれてもいいけど」

一方通行「楽しくねェよ」

芹亜「噂通りの素直じゃなさだな」

一方通行「黙れ。つゥか用が終わったンなら帰ンぞ? いつまでもこンな所でグダグダしたくねェからな」

芹亜「ああ、ありがとう。貴重な睡眠時間を奪って済まなかったな、いやコーヒーブレークか? 違うな。お友達との他愛のない時間、かな?」

一方通行「言ってろ」ガチャリガチャリ


74 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:11:15.90 ID:LptKL4w+o


結標「……あっ、何か話終わったみたいよ!」

姫神「付いてきたのはいいけど。とくに得られる情報はなかった」

吹寄「てか早く戻ったほうがいいんじゃない? さすがにアクセラに覗き見してたのバレるわけにはいかないもの」

結標「そうね。ってもうこんな時間っ!? お昼食べる時間あるかしら……」

姫神「急いで戻らないと」

一方通行「そォだな。飯どころかコーヒーを飲む時間さえ消え去っちまう」


三人「「「!?」」」


一方通行「おォーおォー、予想通りのリアクションお疲れさン」

吹寄「なっ、き、気付いていたのっ!?」

一方通行「……まあな」

姫神「気付いた上で。ここまで泳がせていたという。ずいぶんと意地悪ねアクセラ君」

一方通行「盗み聞きしてるオマエらほどじゃねェと思うがな」

結標「わ、悪かったわよ。ちょっとした好奇心でやっちゃったのよ」

吹寄「でも安心して頂戴。距離がありすぎて全くと言っていいほど話聞こえなかったから!」

一方通行「そォかよ。そりゃ残念だったな」

姫神「どうせ盗み聞きがバレてるのだから聞くけど。一体何の話をしていたの?」

結標「あっ、それ気になるわ……ま、まさかこ、告白とかじゃないわよね……?」

一方通行「厚かましいヤツらめ。オマエら絶対ェ謝る気も反省する気もねェだろ。あったらそンなくだらねェ質問してこねェはずだからな」

吹寄「そんなことないわよ。本当に悪いと思ってる。だけどまあ、気になるものは気になるというか」

姫神「そう。それ」

結標「は、早く言っちゃいなさいよ一方通行」


キャッキャキャッキャ


一方通行「……ハァ、頭痛てェ」


―――
――



75 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:12:00.68 ID:LptKL4w+o


February Forth Friday 12:00 〜卒業式・終了後〜

-とある高校・校門付近-


ワイワイガヤガヤ


上条「さーて、終わった終わった。早く帰ってインデックスの飯作ってやらなきゃいけねーなー」


モブ卒業生A「Bちゃんっ! 卒業してからも毎日連絡するからね!」

モブ卒業生B「うん! ときどき会って遊ぼーね!」


モブ在校生A「Cセンパイっ! 絶対に次の大会では一番になってみせるッス」

モブ卒業生C「おうっ! あ、あとは頼んだぞ後輩よおおおおおおおおおっ!」


上条「……やっぱ卒業式だから盛り上がってんなあ。まあ俺は仲いい先輩とかいないからなー」

上条「ま、早く帰れるって考えれば得っちゃ得だな」

上条「……まあ、それはそれで寂しい気がしないでもないな」


芹亜「や、やあ上条」


上条「ありゃ? 雲川先輩じゃないっすか……ってえっ、雲川先輩その格好……?」

芹亜「そう。お前の思ってる通り、今日私はこの学校を卒業したわけだけど」

上条「雲川先輩って三年生だったんすか。何か知らないけど勝手に二年生だと思ってた」

芹亜「……うん。私も本当はそうしたかったんだけど、世界の不条理には逆らえなかったわけだ」

上条「?」

芹亜「……ごほんっ。というわけで、私は卒業しました。だから、何か感動的なシーンを一つでもどうぞ」

上条「そんなこと言われてやっても、ただの茶番になること請け合いだな」

芹亜「まあ私もそんな茶番好きじゃないから、別にやってくれなくて結構だけど」

上条「じゃあ何で言ったんだよ……」

芹亜「いや何となく。でもあれだ、その場のノリって大事だけど」

上条「滅茶苦茶だよこの人。……まあいいや、ごほんっ、じゃあ感動的じゃないけど一つ」


76 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:13:17.24 ID:LptKL4w+o


上条「先輩卒業おめでとう。時々する先輩とのよもやま話、結構楽しかったぜ」ニコッ


芹亜「……おっふ。これはなかなか強烈な一撃なんだけど。クリティカルなんだけど」クラッ

上条「お、おいおい大丈夫か先輩? そんなにふらついて……」

芹亜「だ、大丈夫だ。問題ない。ただの立ちくらみだけど」

上条「もしかして卒業式緊張でもしてたんすか? 終わったから急に気が抜けてってやつ?」

芹亜「そういうわけじゃないけど。まあいい、実は私もお前に一言言っときたいことがあるんだけどな」

上条「一言? 何すか?」

芹亜「そんな大したことじゃないんだ。ただこれをお前に言っとかないと、今日ここにきた意味がなくなるけど」

上条「何じゃそりゃ。あっ、もしかしてあれか? 卒業を機会に愛の告白とかしてくれちゃったりして?」

芹亜「ごほっ!? お、お前はいきなり何を言い出すんだっ!」

上条「えっ、いや冗談すよ冗談。卒業式ジョークですよ」

芹亜「……まあでも、お前がそれを望むのならしてやってもいいけど」

上条「えっ、いまなんて……?」

芹亜「しかし、今この場所このタイミングでそれをやってしまうと色々と問題がありそうだけど。だから、またそれは別の機会でやらせてもらうよ」

上条「つまり、どういうこっちゃ?」

芹亜「ごほんっごほんっ。じゃあ、私が一言言いたいっていうくだりに、話を戻すけど」

上条「あっ、どうぞどうぞ」

芹亜「上条。私は今日ここを卒業していなくなるわけだけど」

上条「うん」

芹亜「だが、私は必ずこの学校、そしてお前の目の前に再び姿を現すけど」

上条「何かやられちまった第一の魔王みたいなこと言ってんなー」

芹亜「勝手に変なツッコミを入れないで欲しいんだけど。まあ良い、だから上条当麻っ、だからそれまで私のことを忘れるんじゃないぞ!」

上条「あ、はい」

芹亜「絶対だぞ!」

上条「大丈夫ですって。だいたい忘れたくても忘れられないって、先輩存在感すごいし」

芹亜「むっ、何か気になる言い回しだけどまあいい。それじゃあ、さよならはもちろん言わない。また会おう上条」スタスタ

上条「お、おう。また」


上条「…………」

上条「一体何だったんだ? 言ってることが半分くらいわからなかったぞ?」

上条「……まあいいや。本人が会えるっつってんだから、また会えるんだろ」

上条「ほいじゃ、ま、帰りますか」スタスタ


――――――


77 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/16(金) 22:16:19.29 ID:LptKL4w+o
雲川先輩めっちゃ頭いいけど書いてる僕くんが無能やからそれと同等かそれ以下の知能しか発揮できないの悲しいね

次回『雛祭り』
78 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:20:12.72 ID:muhtgmcKo
今の所週一ペースは守れてるね 偉いね

投下
79 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:20:45.37 ID:muhtgmcKo


4.雛祭り


March First Saturday 13:00 〜雛祭り前日〜

-黄泉川家・リビング-



黄泉川「――というわけで、これから明日の雛祭りの準備をするじゃん」



打ち止め「おーっ、ってミサカはミサカは高々と拳を突き上げてみたり」

結標「うふふ、楽しみね」

芳川「……はぁ、めんどくさいわ」

一方通行「奇遇だな。珍しくオマエと同意見だ」

黄泉川「そこのローテンション二人組っ! そういうことは思っていても口には出さないっ!」

打ち止め「そうだそうだー、そういうのが場の空気を悪くするんだぞー! ってミサカはミサカは流れに乗じて口出ししてみたり」

結標「そうよ。それに一方通行に関してはいつもいつも面倒臭い面倒臭い言っているんだから、たまには『やったるでー!!』とかを口癖にしたらどうなのよ?」

一方通行「オマエそれキャラ崩壊とかいうレベルじゃねェぞ。俺のアイデンティティー崩壊だ崩壊」

黄泉川「そんなもんをアイデンティティーにしちゃいけないじゃんよ。そんなんじゃ将来本当に駄目な大人になってしまうじゃん」

芳川「ま、言ったところでもう手遅れかもしれないけどね」クスッ

一方通行「うるせェぞ芳川ァ。つーかよォ、大体何で俺が雛祭りの準備なンざしなきゃいけねェンだ? アレはたしか女の行事だっただろォが」

黄泉川「たしかに女の子が主役の行事ではあるよ? でも、別に男が参加しちゃいけない決まりなんてないじゃん?」

一方通行「屁理屈かよ。そンなモンで俺が動くと本気で思ってンのか?」

黄泉川「おう、もちろん!」ニッコリ

一方通行「…………」ギロッ

黄泉川「…………」ニコニコ

一方通行「……ハァ、ったく。わかったわかったやりゃイインだろやりゃあ?」

打ち止め「おおっ、あっさりだっ! ってミサカはミサカはあなたの聞き分けの良さに少し驚いてみたり」

一方通行「張り倒すぞクソガキが」

結標「でも打ち止めちゃんの言う通りよ? どうしたの今日はやけに素直じゃない?」

一方通行「誰が素直だって? これはそォいうンじゃねェよ。これ以上は拒否する方が面倒だ、っつゥことで了承しただけだ。実質強制されたよォなモンだ」

結標「あら、やっぱりいつもの一方通行だったわね」

打ち止め「そうだねー、素直じゃないツンデレータだ! ってミサカはミサカは同意してみる」

一方通行「言ってろ」

芳川「うん? そろそろツンデレ劇場は終わったのかしら」ピッピッ

一方通行「……ところでオマエは何をやってやがンだ?」

芳川「タブレットでネット。キミのいつものやり取りを見るのも飽きてきたから、その間の暇つぶし」スイースイー

黄泉川「へー、お前そんなもん持ってたのか」

芳川「この前バイト代で買った」

一方通行「ほォ、そォか。そォいやいつものやり取りっつったら、この俺の勘に触りやがった馬鹿にはよォ、制裁を加えてやるっつゥのも定番のやり取りだったよなァ?」カチッ

芳川「やめておきなさい一方通行。もしこれを壊されでもしたら、私は少なくとも半年間は部屋に引きこもってやる自信があるわ」

打ち止め「うわっ、駄目だ大人だっ! ってミサカはミサカは素直にオブラートに包むことなく指摘してみる」


80 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:21:13.92 ID:muhtgmcKo


黄泉川「はいはい、それじゃあテキパキやって、とっとと終わらせるとするじゃん。明日が雛祭りだからあんま時間は残ってないぞ」

芳川「……というか愛穂? そもそもひな祭りをやるなら、あらかじめもっと前に準備しておくのが普通じゃない?」

黄泉川「えっ、そうなの?」

芳川「そうよ。もともと雛人形は春分、ようするにニ月四日から二月中旬までくらい飾り付けるのが一般的よ?」

芳川「遅くとも、三月三日の一週間前には終わらせとかないといけないわけ。つまり、前日に準備だとだいぶ遅れていることになるわ」

黄泉川「はえー、そうなのかー」

結標「詳しいですね芳川さん」

芳川「さっきググった」

一方通行「どォりでスラスラ言葉が出てきたわけだ」

芳川「いや、勘違いしてもらってわ困るわ。私が調べたのは最低ラインだけよ。一般的にいつ飾れば良いのかは最初から知ってたわ」

一方通行「どォだか」

結標「……ところで黄泉川さん。飾る時期を知らなかったとしても、何で今日準備するんですか? もっと前から準備できそうな日あったと思うんですけど」

黄泉川「おっ、いいことを聞いてくれるじゃん。実はこの雛祭りのセットって全部もらいものじゃんよ」

打ち止め「もらいもの? ただでもらったってこと? こんな高そうなものを? ってミサカはミサカは率直な疑問を浮かべてみる」

黄泉川「おう。これはな、もともと第一三学区で私の知り合いが運営してた養護施設にあったものじゃん」

黄泉川「だけど、その養護施設が退っ引きならない事情で閉園してしまってさぁ。それでそこの施設のものを整理しているときに、この雛祭りセットがあってどうしようかって話になってな」

黄泉川「そんでその知り合いに冗談でちょうだい、って言ったら本当にくれたわけじゃんよ。ちなみにそれが昨日の出来事」

芳川「……要するに、貴女はもともと雛祭りなんてやるつもりなかったけど、たまたま昨日雛祭りセットが手に入ったから急遽雛祭りをやることになって今に至る、って言いたいわけね?」

黄泉川「そうそう」

一方通行「そこはリサイクルショップにでも売っとけよ経営者ァ。施設がぶっ潰れて金も必要だろォによ」

黄泉川「いいじゃん別によー、くれるって言ったんだからさあ。それに打ち止めがいるんだから、雛祭りの一つや二つ、やってやらなきゃなー」

打ち止め「おおっー! さすがヨミカワ! ミサカイベント大好きありがとー! ってミサカはミサカは素直にお礼が言えるいい子!」

黄泉川「あと淡希もそうじゃん。記憶喪失だから雛祭りなんてやった記憶ないだろうし」

結標「そうですね。たしかに記憶にはないです。……まあでも、同級生のみんなはこの歳じゃやらないわよー、って言ってたから素直に楽しめるかわかりませんけど」アハハ

芳川「別にいいんじゃない。雛人形を飾るのに年齢制限なんて存在しないわけだし」


81 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:21:47.38 ID:muhtgmcKo


黄泉川「ほいじゃ始めますか。私と桔梗で台座を組み立てるから、他三人は飾り付けの準備をするじゃん」

打ち止め「了解っ! ってミサカはミサカは背筋を伸ばしてしっかり敬礼してみたり」

結標「はーい」

芳川「ちょっと待って。何で私が台座の組み立てとかいう重労働をしなきゃいけないのよ? こういうのは男の仕事じゃないかしら? ねえ一方通行?」

一方通行「あァ? 杖突の身体にナニ重労働させよォとしてンだオマエはァ?」

芳川「何のための電極よ? こういう人の役に立つときに使わないと、電池がもったいないんじゃないかな?」

一方通行「そンな誰でも出来る作業に能力使うなンてよォ、役不足にも程があンだろうが」

打ち止め「だったら能力使用モードに制限かけてあげようか? それなら持続時間も伸びるし、ってミサカはミサカはアドバイスしてみたり」

一方通行「余計なこと言ってンじゃねェぞクソガキ」

黄泉川「まあ別に台座組み立てるくらい二人いれば十分だし、一方通行にそこまでしてもらう必要ないじゃん」

芳川「でも愛穂。正直台座の組み立てなんていう重労働、疲れるからやりたくないんだけど」

黄泉川「この前、バイト始めたから体力ついた、とか言ってたじゃん? その体力を活かすときが来たじゃんよ」

芳川「今日はバイトの休みの日、つまりその失った体力を回復させている日なのよ。それなのに体力を使うなんて――」

黄泉川「つべこべ言わず手、動かすじゃん」ニコッ

芳川「アッハイ」


打ち止め「おっ、話が付いたみたいだね、ってミサカはミサカは飾りを箱から取り出しながら解説してみたり」

一方通行「解説でも何でもなかったけどな」

結標「えっと、男雛様に女雛様、三人官女に五人囃子、随臣と仕丁。へー、総勢十五人か。すごい人数ですね」

打ち止め「よくできたお人形さんだね。材質とか良さそうだし、ってミサカはミサカはいじくりながら分析してみる」

一方通行「ガキの遊ぶお人形さンじゃねェンだ。あンま無茶して壊すンじゃねェぞ」

打ち止め「ぶー、わかってるよそんなことー、ってミサカはミサカはふくれてみたり」

結標「でもホントこれ高そうよ。こういう本格的な雛人形っていくらくらいするのかしら?」

芳川「ピンキリだけど、いいものだと四百万くらいするみたいね。通販サイトを見る限り」サッサッ

結標「よ、よんひゃっ!?」

打ち止め「す、すごいね。も、もしかしたらここにある雛人形もそれくらいするのかな? ってミサカはミサカは恐る恐る尋ねてみたり」

芳川「さあ? まあ安いのでも五万六万するみたいだし、決して安いものではないと思うわ」

芳川「それにここにある雛壇はね、何でか知らないけど十段あるのよ。市販品は七段までしか置いてないにもかかわらず」

芳川「つまりここにあるのは特注品。まあ、あとはご想像におまかせするわ」

結標「……触るのに手袋とかしたほうがいいかしら?」

一方通行「別にイイだろ、転売目的で扱うわけじゃねェンだからな。きっちり雛祭りに使って、くたびれさせてやったほうがお人形さンのためっつゥわけだ」

黄泉川「こらこらー、お前たち口ばっか動いて手が動いてないぞ―。桔梗に至っては堂々とネットサーフィンするのはやめとこうじゃん」

打ち止め「……あっ、見てこれ! ミサカはどうせ雛祭りをやるならこれが欲しいっ! ってミサカはミサカはタブレット端末を使いこなしてみせつつ懇願してみたり」

芳川「何勝手に私の持ち物使っているのよ」

一方通行「あン? 何だこりゃ、『ゲコ太とピョン子の雛祭りセット』だァ? こンなところまで展開してンのかこのカエルどもは」

打ち止め「ミサカこれがあれば雛祭りを通常の三倍、いや百億倍楽しめる気がするんだっ、ってミサカはミサカは購買欲をそそらせるアピールをしてみたり!」

一方通行「ここにわざわざ本物が置いてあンだから別にいらねェだろ。却下」

打ち止め「ぶーぶー」

一方通行「……しかしこの雛人形、どっかの超電磁砲は持ってそォだよなァ、何となく」


82 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:22:19.18 ID:muhtgmcKo


-常盤台中学学生寮・二〇八号室-



美琴「――へっくちっ!」



黒子「あらお姉さま、もしかして風邪ですの?」

美琴「んー? 別に身体に異常はないし、ただのクシャミでしょ」

黒子「いけませんわお姉さま。そういう油断が病を誘き寄せることに繋がりますのよ」

美琴「ただの風邪でしょ? 平気よ平気」

黒子「だからそれがいけないのだと言っているのですのよ? 大体お姉さまはいつもいつも自覚のある行動を――」

美琴「あー、ちょっと黒子。説教なら後にしてくれる? 私今、この『ゲコ太とピョン子の雛祭りセット』を眺めるのにひっじょーに忙しいから」キラキラ

黒子「……はぁ、またそんなファンシーグッズを買って。ましてや雛人形なんて、そういうのは小学生で卒業するものと思ってましたが」

美琴「黒子。アンタのその常識は間違えているわ。雛祭りに年齢制限なんてないのよ!」

黒子「いや、それは知ってますのよ。ただ、わたくしの周りに雛祭りをやろうなんて人、お姉さま以外いないから言っているんですの」

美琴「そんな狭い範囲の常識、全然常識じゃないでしょ」

黒子「……はいはいわかりました。そういうことにしておきましょう」

美琴「何か引っかかる言い方ねえ……」

黒子「そんなことないですの。それじゃあわたくしはこれからジャッジメントの仕事に行きますので。門限までには帰られると思いますが、何か用があったら連絡してくださいな」

美琴「ほいほーい。……あーかわいっ」キラキラ

黒子「……はぁ、ではいってまいりますの」ガチャ

美琴「いってらー」キラキラ


83 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:22:51.26 ID:muhtgmcKo


-黄泉川家・リビング-


黄泉川「――よし、これで土台は完成。あとは飾り付けだけじゃん」

芳川「疲れた。しばらく働きたくないわ」

黄泉川「よくそんなんでコンビニバイト続けられてるじゃんね」

芳川「あれは金銭が発生するから頑張れるのよ。この土台を組み立てる作業に金銭が発生しないのだから、頑張れないのは当然じゃない」

黄泉川「ほーん、じゃあこれあげるから引き続き頑張れじゃん」つ100円玉

芳川「……そんな金額じゃ幼稚園児しか動かせないわよ」

黄泉川「お金はお金じゃん」


打ち止め「おおっー、いつの間にか台ができてるー! 大っきいー、ってミサカはミサカは見上げながら感動を覚えてみたり」

黄泉川「おっ、そっちはどうじゃん? 準備できたか?」

結標「はい、組み立てなきゃいけないものは全部組み立てたと思います」

一方通行「つゥか、人形より他の部品のほうが多くねェかコレ? 人形じゃなくてこっちがメインみてェに見える」

結標「部品って味気ない言い方ね。飾りって言いなさいよ」

一方通行「別に変わらねェだろ」

芳川「飾りの数が多いのはあれね。普通は七段で解決するところを十段もあるわけだから、その分飾り過多になっているのでしょうね」

黄泉川「それじゃあぱぱっと飾り付けして、準備を終わりにするじゃん」

結標「……というかほんと大きいなあこの雛壇。軽く二メートルは越えてるわね」

打ち止め「ひゃあー、こりゃ上のほう飾るのきつそうですなぁ、ってミサカはミサカは自分の身長の低さに歯噛みしてみたり」グヌヌ

芳川「大人の私だって台がないとキツイのだから、別に悔しがることはないんじゃないかしら」

黄泉川「そうじゃんね。ちょっとイスでも持ってくるじゃん」


一方通行「……つーかよォ、結標が全部テレポートさせて飾り付けすりゃイイだろォが」


打ち止め「…………」

芳川「…………」

黄泉川「…………」

結標「…………」


一方通行「?」


打ち止め「おおっ、そういえばアワキお姉ちゃんはテレポーターだったね、ってミサカはミサカは再認識してみる」

芳川「ああ。テレポート使ってる場面なんて全然見ないから忘れてたわ」

黄泉川「あははー、ほんとじゃんねー」

結標「しょ、しょうがないですよ。私もこんな場面でテレポートが活用できるなんて思ってなかったんですから」

一方通行「オマエ本当にレベル5かよ? てか、オマエも散々俺に日常生活で能力を使えって言ってくるくせによォ、自分自身も活かせてねェっつゥンだったら話になンねェよなァ?」

結標「い、いやアレよ? ちゃんと遅刻しそうなときとかにテレポート活用してるから」

一方通行「しょうもない使い道だな」

結標「あ、貴方も似たような物でしょうに……」


84 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:23:46.32 ID:muhtgmcKo


結標「そ、それじゃあテレポート使って飾り付けしまーす」

打ち止め「がんばれー! ってミサカはミサカはお煎餅を片手に応援してみたり」ボリボリ

芳川「何かあったら呼んでちょうだい。私タブレットでゲームしているから」チャラチャラ

黄泉川「今日の晩御飯は何にしようかなーと」ガチャ

一方通行「オマエら一気にやる気なくなったな。結標に全部任せとけばイイってなった瞬間から」

結標「別にいいわよ。こんな能力が役に立つっていうのなら、それはそれで嬉しいし」

一方通行「そォかよ。俺には分かンねェことだな」

結標「……ところでこれってどれどう飾ればいいのかしら。説明書が見当たらないのだけど」

一方通行「そォいやそォだな。これだから中古は」

結標「だったらこれ、どういう風に飾ればいいのよ? わからなきゃテレポートの使いようがないわよ」

一方通行「あー、たしかアレだ。一段目に男雛と女雛、その左右にこの街頭みたいなヤツを一本ずつ。男雛と女雛の間にこのお供えに使うよォな台を置く。で、後ろに屏風を置いて終わりだ。次に二段目――」

結標「ちょ、ちょっと待って!」

一方通行「あァ?」

結標「あ、貴方知ってるの!? この雛人形の飾り方!?」

一方通行「まァな」

結標「へ、へー見かけによらずそういう知識はあるのねー」

一方通行「……何か勘違いをしているよォだが、俺はたださっき芳川のタブレットに映ってた雛壇の画像を見て覚えてただけだ。それを思い出しながら口に出しているだけに過ぎねェ」

結標「よくあの一瞬でそれだけのことが覚えられるわよね」

一方通行「オマエもそれくらい出来るだろ?」

結標「いや、普通に無理」

一方通行「……よし、なら訓練をしてやる」

結標「訓練?」

一方通行「そォだ。これから雛人形の並び順を最初から最後まで説明するから、それを全部記憶してみろ」

結標「ええっー、十段もある雛人形よ? 絵で見て覚えるならまだしも、口説明で十通りの組み合わせを一発で覚えろなんて無理よ」

一方通行「安心しろ。俺も知ってるのは七段目までだ。そこから下は情報がねェから適当にやるしかねェ」

結標「それでも七段か。やっぱし何かきつそう」

一方通行「そりゃアレだ、本気で覚えようとしてねェからだろ。オマエくらいの脳みそなら余裕で出来るはずなンだがなァ」

結標「それ本気で思ってる?」

一方通行「ああ」

結標「……ふふっ、わかったわ。何か出来そうな気がしてきたわ」

一方通行「単純かよ」

結標「うるさいわね。早く説明言いなさいよ」

一方通行「ああ。えーまず一段目から――」

一方通行「――で、この火鉢を二つ並べる、これで以上だ」

結標「ふむふむ、なるほどね」

一方通行「あと残ったヤツは適当に八、九、十段目に配置しろ。オマエのセンスに任せる」

結標「最後だけすごい雑ね。まあいいけど」

一方通行「それじゃあ答え合わせだ。覚えたとおりに飾り付けしてみろ」

結標「わかったわ。よっ」ブンッ

85 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:25:29.45 ID:muhtgmcKo



シュン、ストトトトトトトン



結標「……ど、どうよ?」ドキドキ

一方通行「……おう。正解だ。どォやら間違いなく覚えられたよォだな」

結標「そ、そう。よかったわ」ホッ

一方通行「まあ、欲を言えば男雛をもう左に八ミリのところに置いとけば、きっちり左右対称の位置に持ってこられてたンだがな」

結標「それは知らんがな」


打ち止め「おおっー、ミサカがアニメを見ている間に雛人形の飾り付けが終わってるー! ってミサカはミサカは巨大な雛壇を眺めながら興奮を覚えてみたり」

芳川「あら終わったのね。へー、すごいわね。これはウン百万とか言われても何も驚かないくらい豪華ね」

黄泉川「ほー、こりゃ壮観じゃんねー。これを見ながら飲む白酒はうまそうじゃん」

芳川「愛穂……貴女もしかして美味しいお酒を飲むために……?」

黄泉川「へ? い、いやそんなわけないじゃんよ。ちゃんと打ち止めと淡希の為を思って雛祭りをしようと思ったじゃん。ま、まあたしかに雛祭りといえば白酒が風流でいいなあ、とか思ってたけどさ」

打ち止め「へー、雛祭りではシロザケっていうのを飲むんだねー。ミサカも飲みたーい、ってミサカはミサカはお願いしてみる」

一方通行「ガキには二十年早ェ」

打ち止め「ぶーぶー」

芳川「そうね。でも安心しなさい打ち止め。実は子供でも飲めるお酒があるのよ?」

打ち止め「えっ、そうなの!? 何それ何それ、ってミサカはミサカは興味津々なワードに目を光らせてみたり」キラキラ

芳川「甘酒って言って、アルコール度が1%未満だから未成年でも飲むことのできるお酒よ。ま、分類上ソフトドリンクっていう扱いになるんだけどね」

打ち止め「へー、それはそれは名前からして甘そうなものですなぁ、ってミサカはミサカは期待で胸を躍らせてみたり」

結標「甘酒かー、飲んだことないから楽しみね」

一方通行「ケッ、くだらねェ」

結標「逆に貴方は絶対に飲まなそうね」

一方通行「当たり前だ。そンなモン飲むくれェなら泥水すすった方がマシだァ」

芳川「どうでもいいけど、よくブラックコーヒーのことを泥水とか言っている人いるわよね」

一方通行「どォいう意味かな芳川クゥン?」

芳川「別に意味はないわ」

黄泉川「ほいじゃー、とりあえず準備は終わったということで解散するじゃんよ。晩飯準備できたら呼ぶから待っててくれ」

結標「了解でーす」

打ち止め「アワキお姉ちゃーん、一緒にゲームしよー、ってミサカはミサカは暇つぶしの方法を提案してみる」

芳川「はぁ、やっと終わったわね。部屋に戻ってネットしよ」

一方通行「オマエタブレット買ったンだろ? それでやりゃイイだろォが」

芳川「馬鹿ね。タブレットはあくまで部屋を離れる用、自室にいるのならPC使ったほうがいいに決まってるじゃない。使いやすさは雲泥の差よ」

一方通行「知るかよ」


―――
――



86 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:26:05.94 ID:muhtgmcKo


March First Sunday 18:00 〜雛祭り当日〜

-黄泉川家・リビング-



黄泉川「――それじゃあ料理もできたことだし、雛祭りを始めるとするじゃん!」


打ち止め「よっしゃああっ! やっと始まったぜ、ってミサカはミサカは待ち焦がれたイベントの開始に歓声をあげてみたり!」

円周「うおお」


一方通行「うるせェぞガキどもッ!! つーか、何で木原のクソガキまでここにいやがるッ!!」

芳川「キミも十分うるさいけどね」

円周「科学あるところに『木原』ありっ! イベントあるところに『円周』ありっ! つまりそーいうことだよ」

一方通行「帰れ」

結標「別にいいじゃない一方通行。人数多いほうが楽しいし」

一方通行「オマエコイツをパーティーを楽しくする人数にカウントしねェほうがイイぞ? プラマイゼロどころかマイナスの10くらいだ」

結標「それもう人数ゼロになっちゃうじゃん……」

一方通行「ゼロどころかマイナスだ。ただ負の感情しか生まねェ」

結標「どういう状況よそれ」

一方通行「……朝礼の校長の長話中とか」

結標「マイナスしょぼっ!?」


打ち止め「ところで雛祭りって何をやるのー? ってミサカはミサカは率直な疑問を投げかけてみたり」

芳川「雛祭りに特に決まってやることなんてないわ。雛人形飾った後は、雛祭りの定番の料理で適当にパーティーとかするのが一般的かもね」

黄泉川「ちらし寿司にはまぐりのお吸い物、デザートに雛あられに菱餅を用意したじゃん」

芳川「見事なテンプレねえ。というか雛あられと菱餅ってデザートと言えるのかしら?」

黄泉川「何じゃん? そんな文句言うなら食わなきゃいいじゃんよー」

芳川「誰も文句なんて言ってないわ。ただ疑問に思ったから質問しただけで」

円周「うーんたしかに雛あられって、デザートというよりおやつって感じだねー」ボリボリ

打ち止め「たしかにそだねー、ってミサカはミサカは同意してみる」ボリボリ

黄泉川「あっ、お前ら夕食前にお菓子を食べるなじゃん」

芳川「別にいいでしょパーティーなんだから。好き放題食べれば」


87 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:26:45.09 ID:muhtgmcKo


黄泉川「さーてさっそく豪華な雛人形を眺めながら、白酒で晩酌と行くじゃんよ」トクトクトク

一方通行「まァたババァが酒で暴走すンのか……」

黄泉川「何だ一方通行? 私と一緒に酒飲みたいのかー?」

一方通行「オマエまだシラフだよなァ? 教育者がそンなこと言ってイイのかっつゥの」

黄泉川「あははー、冗談じゃん冗談っ! ……んっ、かぁーうめぇー!」ガタン

一方通行「始まった始まった」ハァ

打ち止め「ところでミサカもお酒が飲みたいんだけど。昨日言ってたアマザケってやつー、ってミサカはミサカは要求してみる」

芳川「甘酒はこれよ」ゴトッ

打ち止め「おおっー、ヨミカワが飲んでるやつと違ってなんか白い! あれ? ヨミカワが飲んでるのはシロザケだけど透明で、これはアマザケってやつで白くて……あれ?」

円周「打ち止めちゃん深く考えちゃだめだよ。これはあれだよ、コンパンとトランセルの進化先が実は逆だった! みたいなヤツだよ」

一方通行「何言ってンだこのガキ」


結標「へー、これが甘酒かー。なかなかおいしいじゃない」

打ち止め「おおっ、甘いー! ジュースとかとはまた違った感じがするねー、ってミサカはミサカは食レポしてみたり」


円周「飲み物飲んだレポートって食レポっていうのアクセラお兄ちゃん?」

一方通行「知るか」

円周「何かつれないねー、せっかくの雛祭りだよ? もっと楽しそうにしてもいいのに」

一方通行「オマエがいなけりゃもォ少しは楽しめるだろォよ」

芳川「何嘘言っているのよ。いてもいなくてもキミはこんな感じじゃない」

一方通行「精神衛生上の話だ」

円周「うーん、アクセラお兄ちゃんなかなか心を開いてくれないねー。どうしたらいいのかなー桔梗おばちゃん?」

芳川「そうね、悪いけど私じゃわからないかな。この子ちょっと頭おかしいから。あと円周ちゃん? 『桔梗おばちゃん』じゃなくて『桔梗お姉さん』よ」

一方通行「誰が頭おかしいだって? つゥかナニ無様な若さアピールしてンだオマエ? 『桔梗ババァ』じゃないだけマシだと思ってろよ」

芳川「よろしい。ならば戦争よ」クワッ


黄泉川「きっきょーう!! 楽しんでるうううううっ!?」ガシッ


88 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:27:40.12 ID:muhtgmcKo


芳川「あっ、愛穂!? 貴女もう出来上がっちゃっているの!? ペース早っ!?」

黄泉川「あっれれー桔梗? もしかして全然飲んでないじゃーん? こんな楽しい日に飲まないなんて損じゃん! こっち来て一緒にのもーぜ!」

芳川「い、いや私明日朝からバイトだし。ちょっとアルコールは控えときたいんだけど」

黄泉川「なーに固いこと言ってるじゃんよ? 安心しろ、私も明日はお仕事じゃん!」

芳川「それ何の解決にもつながってないんだけど。そんなセリフ聞いてもまったく飲もうとか思えないんだけど」

黄泉川「つべこべ言わずこっちに来て飲めー! 私のお酒が飲めないのかー!」

芳川「……はぁ、わかったわよ。一杯だけよ?」

黄泉川「よーぅし、それでこそ桔梗じゃん!」

一方通行(アイツはもォ終わったなァ……明日のバイト)

黄泉川「おっ、一方通行ぁ! お前も楽しんでるかー!」

一方通行「酔っ払いが。静かにしろ近所迷惑だろ」

黄泉川「このマンションは防音設備しっかりしてっから安心じゃんよー。それよりオマエもこっちきて飲め飲めぇー!」

一方通行「だから俺は未成年だっつってンだろォが。イイ加減にしやがれクソ野郎が」

黄泉川「ほーん、ならこれ飲めこれ飲め甘酒ぇ! これなら子供でも安心して飲めるお酒、いやジュースじゃん!」

一方通行「俺は言わなかったか? そンなクソみてェな飲みモン飲むくれェなら泥水すすったほうがマシだってよォ」

芳川「うるさーい! つべこべ言わずに貴方も飲みなさーい!」

一方通行「芳川ァ。オマエソッチ側に行くの早すぎンだろ」

芳川「黙りなさい。こうなってしまったら、もうとことん飲むしかないのよ!」

黄泉川「おおっーよく言った桔梗ー! いいぞいいぞー!」

一方通行「ヤケになってやがる。これがヤケ酒ってヤツか」

芳川「いいから早くこっちに来て飲みなさい! こうなったら貴方も道連れにしてあげるわ!」

一方通行「うっとォしいッ! この酔っ払いどもめェ!」


円周「……へー、ああいうふうになったら第一位でも困っちゃうんだねー。これは面白いなあ」ピーガガガ


89 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:28:13.77 ID:muhtgmcKo


打ち止め「どうしたのエンシュウー、ってミサカはミサカはうきうきな気分で話しかけてみたり!」

円周「別にー。それより打ち止めちゃん、何か心なしか楽しそうだね」

打ち止め「そりゃ楽しいに決まってるよー! だってパーティーなんだしー、ってミサカはミサカはアマザケが入ったグラスを掲げながら返答してみたり!」

円周「……へー、甘酒っておいしい?」

打ち止め「甘くておいしいよー。コーラやオレンジジュースと違った優しい甘さというか何というか……とにかく変わった味なんだ、ってミサカはミサカはアマザケを飲みながら説明してみる」

円周「ふーん」

打ち止め「そんなに気になるならエンシュウも飲んでみたら? ってミサカはミサカは勧めてみる」

円周「いや、やめとくよ。これを飲んで楽しむより、この状況を『観察』したほうが楽しそうだからねー」

打ち止め「そっかーおいしいのになー、ってミサカはミサカはアマザケをコップに注ぎながら残念がってみる」

円周「……ちなみに打ち止めちゃん、その甘酒何杯目?」

打ち止め「うーんと、五杯目っ! ってミサカはミサカは手のひらを広げてパー作ってみたり!」

円周「へー、面白いから止めないけど飲みすぎじゃないかなあ?」

打ち止め「えー、そんなことないよ! アワキお姉ちゃんだって同じくらい飲んでると思うよー、ってミサカはミサカは普通アピールをしてみる」

円周「よくわからないけど、甘酒を五杯飲むのは普通の子供じゃないんじゃないのかなあ」

打ち止め「ええっー? ってミサカはミサカは驚きつつコップを口へ運んでみる」

円周「……よし、面白そうだから淡希お姉ちゃんの様子でも見に行ってみよう。淡希お姉ちゃあん!」テクテク


結標「あら? どうかしたの円周ちゃん」

円周「……あれ? 何か普通だなあ」

結標「普通? 一体何を期待して私に話しかけたの?」

円周「いやあ、打ち止めちゃんがいつもの三割増しでテンションが高いから、淡希お姉ちゃんもそれくらい変化してるかなあ、って」

結標「それってパーティーしてるからじゃないの? あの子イベント大好きだから」

円周「明らかにそーいう感じじゃないんだよなあ」

結標「ふーん」ゴクゴク

円周「あっ、甘酒だ。おいしい?」

結標「うん。何か変わった感じのジュースよね。変わった感じがするのは、お酒っていう名前があるからそのプラシーボ効果的な感じなのかしらね?」

円周「ちなみに今何杯目?」

結標「さあ? 数えてないから覚えてないわ」

円周「そんなに数えないほど飲んで飽きないの?」

結標「まだ飽きてはこないなー。ほら、今日の料理って塩辛いのが多いじゃない? だからそれで相殺されているんじゃない?」

円周「その理屈はおかしい気がするけどまあいーや。それじゃあ淡希お姉ちゃん、面白くなってきたらまた教えてねー」

結標「面白い? 今も十分面白いと思うけど?」

円周「面白いと楽しいは違うんだよなあ。私は行くよ。またね」タッタッタ

結標「……変なの」


90 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:29:01.99 ID:muhtgmcKo



〜1時間後〜



一方通行「……おェッ、や、やっと解放された」

一方通行「あのクソババァども、何つゥモン飲ませやがった。甘すぎンだろ気絶するかと思った」

一方通行「クソが、甘酒なンて二度と飲むかよ」


円周「アクセラお兄ちゃあん!」タッタッタ


一方通行「あン? オマエまだ居たのか」

円周「面白いよねー雛祭りって。いやあ、参加してよかったよ」

一方通行「は? どこにそンな面白い要素があるっつゥンだ?」

円周「うーん、みんなの面白い一面が見れるところかな?」

一方通行「面白い一面だァ? 何を言って――」


打ち止め「アマザケウメー! ってミサカはミサカははがないをゃしりケみマアらザみた飲で」ケラケラ


一方通行「あン? 何だありゃ?」

円周「打ち止めちゃん」

一方通行「いや、それは見りゃ分かる。クソガキの様子がおかしいことについて聞いてンだよ」

円周「あれはねー、酔っ払っているんだよ。あそこで面白いことになってる愛穂おばちゃんや桔梗おばちゃんみたいにね」


黄泉川「あっはっはっはっはぁー!! よく見たら雛人形の顔面白っ! めっちゃ面白っ!」ケラケラ

芳川「……おえっ、もう飲めない。勘弁……」グター


一方通行「何だと? まさかあのババァどもガキに酒盛りやがったのか!?」

円周「うーん、半分正解で半分不正解かな?」

一方通行「どォいうことだ?」

円周「まず甘酒って何かわかる?」

一方通行「甘い未成年でも飲める酒だろ? それが何だってンだ」

円周「そう。アルコール度が1%未満なら法的には未成年でも飲んでだいじょーぶ、って感じなんだけどそこに罠があるんだよねー」

一方通行「……1%未満っつってもアルコールは入っているっつゥことか?」

円周「そおそお理解が早くて助かる助かる。甘酒には米を原料にするものと酒粕を原料にするものがあるんだ。前者だとアルコール度は0だけど後者だといくらか入っちゃうんだよねー」

円周「ちなみに今ここにあるのは後者のほう。ラベル見る限りは1%未満になってるねー。さっきちょろっと舐めてみたけど、大体0.92%ぐらいかなーって思うよ」

一方通行「黄泉川ァ……あの野郎買うモン間違えやがったなァ」ギリリ

円周「いや正解でしょ。こっちのタイプの甘酒を買ってきてくれたおかげで、こんなに面白い状況になっているんだから大正解だよ」

一方通行「それはオマエが『木原』だからそォ思ってンだろォが! 一般人からしたら迷惑極まりねェンだよ!」

円周「そーともいうねー」


91 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:29:31.92 ID:muhtgmcKo


一方通行「チッ、とにかくあのクソガキを落ち着かせるか。さてどォすっか――」



結標「あっくせられーた♪」ダキッ



一方通行「ッ!? 結標ェオマエもか!?」

結標「あっれー? 何かたのしくなさそーねー一方通行?」

一方通行「そりゃなァ。こンな面倒臭せェ状況になって楽しめるほど人間出来てねェンだ。つーか離れろくっつくンじゃねェ!」

結標「えー? やだー? 一方通行も一緒にたのしもーよー」

一方通行「オマエが離れりゃ楽しンでやるよ」

結標「うっそだー、どーせ私が離れたらどっか逃げるつもりでしょ? 淡希お姉さんはわかってますちゃーんとわかってますよ」

一方通行「チッ、うっとォしい。イイから離れやがれクソがッ!」

結標「あーまたそんな汚い言葉遣いしてー、そんな悪い子にはメッ、ですよ!」

一方通行(こ、コイツは黄泉川、いやヤツ以上に厄介だ。これがアルコールのチカラっつゥことか……!)

結標「……そーだ! ねーねえ一方通行ー!」

一方通行「何だよ」


結標「――キス、しよ♪」


一方通行「ッ!?」

結標「……ねえねえしよーよー?」

一方通行「…………」

結標「むー、なーに黙っているんですかー? ……! そうだ、だった無理やりちゅーしちゃうぞー!」

一方通行「……オイオイ、ソイツァ洒落にならねェぞ。やめろ」

結標「あっ、これってあれだ! ツンデレだツンデレ! ってことはしてほしーってことだよね? りょーかいりょーかい!」

一方通行「ふざけンなっ! こンなときにくだらねェこと言ってンじゃねェ酔っ払いがっ!」

結標「酔ってませーん、それじゃあいきまあーす!」


一方通行(……ぐっ、仕方がねェ。使いたかねェが能力を……ッ)スッ



92 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:30:28.70 ID:muhtgmcKo


結標「…………」

一方通行「……あン?」

結標「…………Zzz」

一方通行「……はァ、寝やがったか」

結標「…………むにゃ」Zzz

一方通行「……とりあえず部屋ァ運ぶか」カチッ


打ち止め「ああっー! アクセラレータがアワキお姉ちゃんをお姫様だっこしてるーあははははははっ、ってミサカはミサカは笑しをてみ指りさ大たしてい!」ケラケラ


一方通行「こっちはこっちでアルコール入るとムカつき度が十割増しだな」

打ち止め「ミサカもいひひ、お姫様抱っこしてー! ってミサカはミサカはて願懇みしりた」

一方通行「オマエも大人しく夢の世界に行きゃあやってやるよ」

打ち止め「わーい、それじゃあミサカもれっつごーどりーむふふっ、ってミサカはミサカはZzz」

一方通行「……雛祭り、最悪のイベントだったな」

円周「そう? いろいろ楽しめたけどなあ?」

一方通行「それはオマエだけだろ。つーかとっとと帰れ」

円周「はいはいー。打ち止めちゃんも寝ちゃったし、私がいる意味あんまなさそーだしね。帰るとするよ」

一方通行「そりゃよかった。光の速さで出ていけ」

円周「そんなことしたら地球どころか銀河系がヤバくなっちゃうよ……あっ、そうだアクセラお兄ちゃん」

一方通行「何だ?」

円周「いくら淡希お姉ちゃんが酔い潰れてるからって、寝込みを襲っちゃたりしちゃダメだよー」

一方通行「するかよ」

円周「ありゃあ? 今のアクセラお兄ちゃんなら、面白いリアクションをしてくれると思ったんだけどなあ」

一方通行「そりゃ残念だったな。つーわけで帰れ」

円周「はいはーい、帰りますよー。またねアクセラお兄ちゃん!」タッタッタ

一方通行「二度と俺の前に面ァ見せンなよ」


円周「…………」

円周(……ふふふ、ありがとーね乱数おじさん。おじさんのおかげでなかなか楽しい雛祭りになったぜー)ピーガガガ



―――
――



93 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:30:55.61 ID:muhtgmcKo


March First Monday 07:00 〜次の日〜

-黄泉川家・結標の部屋-



結標「Zzz……」



ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!



結標「Zzz……んん? あ、朝?」

結標「…………」

結標「……私、いつの間に寝てたのかしら?」

結標「昨日、甘酒飲んだりしてたときから記憶が……ッ!?」ズキッ

結標「あー、何か頭痛がすごいわ。昨日はしゃぎすぎたのかしらねー」

結標「…………んー、なーんか忘れてる気がするのよね」

結標「昨晩、とてつもなくすごいことをやったような、やってないような……」

結標「…………」

結標「まあいいや。今日は学校だし、おーきよ」



-黄泉川家・リビング-


ガラララ


結標「おはようございまーす」

黄泉川「おおっ、おはようじゃん淡希!」

結標「元気そうですね黄泉川さん。昨日あんなに騒いでたのに」

黄泉川「ま、ちょっと体調不良って感じはするけどなー。伊達に酒をいつも飲んでないってね」

結標「すごいですねー。私なんかなぜだか昨日の後半くらいから記憶がないんですよねー」

黄泉川「へ、へー、そうなのかー。ま、それはそれだけ楽しんだってことじゃん?」

結標「そうなんですかねー?」


94 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:32:05.40 ID:muhtgmcKo



ガラララ



一方通行「…………」ガチャリガチャリ

黄泉川「よお一方通行! おはようじゃん!」

一方通行「おォ。相変わらず朝からうるせェヤツだ」

黄泉川「元気が取り柄だしなー」

一方通行「そォかよ」ガチャリガチャリ

結標「あっ、一方通行おはよう」

一方通行「……おォ」

結標「……うん? 何で目を逸らして挨拶しているのよ?」

一方通行「別に。いつも通りだろ」

結標「そうだっけ?」

一方通行「そォだろ」

結標「……嘘ね」

一方通行「嘘じゃねェ」

黄泉川「…………」



黄泉川(あ、あははー、昨日あったことは黙っといたほうがいいじゃんかねー? あの子たちのためにも)



結標「……ねえ、やっぱり目を合わせてくれないわよね? 私何かしたのかしら?」

一方通行「さァな」

結標「?」

黄泉川「あははー……」


――――――


95 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/23(金) 23:32:59.25 ID:muhtgmcKo
ひな祭りやったことないからこれがひな祭りで合ってんのかは知らん

次回『漫画ではよくあること』
96 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:33:25.42 ID:5PKNHSI4o
前回までが前スレ書き終えたあとくらいに書き溜めてたやつを直したやつで今回からのは禁書3期が放送してるときに書き溜めたやつの直したやつ

投下
97 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:34:10.47 ID:5PKNHSI4o


5.漫画ではよくあること


March First Wednesday 12:30

-とある高校・校門付近-



ワイワイガヤガヤ



結標「さーて、学校終わった終わった。今日は午後の授業が先生の会議だからなしなんて、ラッキーよね」

一方通行「そォだな。平日の昼間っから昼寝に勤しめるなンて、今日はイイ日だな」

結標「たまには別のことしなさいよ。趣味を作るとか」

一方通行「そォいうオマエは何か趣味あンのか?」

結標「えっ、ええっと……ど、読書とか?」

一方通行「どォせファッション誌か漫画だろォが。そンなモンが読書って言えンのか?」

結標「うーん、あっ、あとテレビ鑑賞とか!」

一方通行「バラエティとかドラマしか見てねェだろ」

結標「ゲームとかもやるわ!」

一方通行「クソガキのセーブデータのレベル上げの作業しかしてねェだろォが。つゥか、いつまであのゲーム続けるつもりだ? いい加減何か新しいの買えよ」

結標「いや、まだクリアしてないし」

一方通行「真面目かよ。……はァ、オマエの挙げた趣味、どれもこれも俺の昼寝と大差ねェよォな気がするのは気のせいなのかァ?」

結標「ぐっ、そ、そんなことないわよ。少なくとも昼寝よりは有意義だと思うのだけど……」

一方通行「俺にとって昼寝は有意義なものだと思ってンだがなァ」

結標「ぐぬぬ」

一方通行「大体なァ、趣味っていうのは個人の――ッ!?」ゾクッ

結標「? どうかした?」

一方通行「……いや、何か急に悪寒っつゥか、寒気っつゥか、そンな感じのモンを感じた」

結標「やだ、もしかして風邪? たしかにまだ季節的にも寒いし」

一方通行「いや、そォいうのとはまた違うンだけどよォ……」


98 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:35:14.72 ID:5PKNHSI4o



<しまっていこー!! <おおおおおおおおおっ!!



結標「あら? もうこんな時間から野球部が練習をやっているわよ」

一方通行「この時間じゃロクにメシを食えてねェだろォに、ご苦労なこった」

結標「あれじゃない? 十秒チャージ」

一方通行「あンなモンで足りるのか?」

結標「いっぱい食べたとか?」



カキーン!! <あぶないでーす!! 気を付けてー!!



一方通行「おそらくそれ、腹ァ壊すぞ」

結標「それじゃあカロ〇ーメイト的なものを一緒に……って一方通行あぶな――」

一方通行「ああ」カチッ



キュイーン、ポーン!!



<うわっなんか球が跳ね返ってきたぞ!? <どうなってんだ!?



結標「……ふう、何だ気付いてたのね。野球部が打った特大ホームランがこっちに飛んできてたの」

一方通行「オマエじゃねェンだから当たり前だ」

結標「私だってちゃんと気付いて危ないって知らせようとしたじゃない」

一方通行「俺は打球の音が聞こえた瞬間こっちに来ると確信していた」

結標「どんな耳してるのよ貴方」

一方通行「別に。普通だろ」



99 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:36:29.80 ID:5PKNHSI4o


-第七学区・通学路-


結標「……しかし、打った打球がピンポイントにこっちに飛んでくるなんて、まるで漫画みたいな展開よね」

一方通行「そォなのか? あンま読まねェから知らねェンだ」

結標「うん。よく土手とか歩いていると飛んでくるみたいなのがあるわね。ギャグ漫画なら頭に当たって気絶したりするわ」

一方通行「ンだァ? あのまま脳天に直撃して気絶したほうが面白かったみてェな言い方だな」

結標「そんなこと言ってないわよ。バトル漫画やスポーツ漫画ならノールックで取ったり避けたりしてるし」

一方通行「あっそ」

結標「すごく興味がなさそうね」

一方通行「すごく、じゃなくてまったく、だな」

結標「どう違うのよ?」

一方通行「0か1かっつゥヤツだ」

結標「私との世間話は興味ゼロってことですかい……まあ知ってたけど」ハァ

一方通行「ま、そォいうこ――」



むぎゅ



一方通行「あァ?」



つるーん!



一方通行「――ごぱっ!?」ドカッ


結標「一方通行ぁ!?」

一方通行「ごはっ、ごほっ、がはっ!」

結標「ど、どうしたのよ一体? いきなり大リーガー並のオーバーヘッドキックを見せたと思ったら背中から地面に叩きつけられるなんて……」

一方通行「丁寧な説明アリガトウ。どォやら、何か変なモンを踏ンじまったよォだ」ピキピキ

結標「何かを踏んだ……? これって……」



バナナの皮『靴裏から摩擦を奪った』



100 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:37:28.61 ID:5PKNHSI4o


結標「……見ての通り、バナナの皮ね……ぷぷっ」

一方通行「オマエ今間違いなく笑っただろ?」

結標「いえ……別に……ぷふっ」

一方通行「オマエには後で制裁を加えるとして、まずこのゴミクズにやってやる必要があるよなァ」カチッ



ドグシャッ!!



バナナの皮『』



結標「おー、バナナの皮が木っ端微塵に消え去っていったわ」

一方通行「ったく、一体どこの誰がこンなモン捨てやがったンだ。そもそもお掃除ロボは一体何やってやがンだ」

結標「おそらくあれね。私の話を興味ゼロとか失礼なことを言った罰よ」

一方通行「それはアレか? オマエが俺の足元にバナナの皮をテレポートさせた、っつゥことを自首したととっても構わないンだよなァ?」

結標「やだなー冗談よ冗談。……そういえばこれもそうよねー」

一方通行「あン? 何がだ?」

結標「バナナを踏んですってんころりん、っていうのも漫画とかでよく見るわね。まあ、漫画に限らずの定番ネタだけど」

一方通行「チッ、そンなクソみたいな展開が二度も続くなンてなァ。今日はツイてねェ」

結標「あっ、そうだ。ちょっと銀行寄っていきたいんだけどいい?」

一方通行「あァ? 金下ろすだけならコンビニで十分だろ」

結標「何か最近キャッシュカード調子が悪くてね。だから新しいの再発行しようと思って」

一方通行「学園都市製のキャッシュカードをぶっ壊すなンて、どォいう使い方してやがンだオマエ」

結標「べ、別にそんな変な使い方してないわよ! 何もしてないのに壊れたのよ、っていうかまだ壊れてないし!」

一方通行「それは機械をよく壊すやつの常套句なンだよなァ」

結標「ぐっ、と、とにかく銀行寄るから! 付き合ってちょうだい!」

一方通行「ヘイヘイ、わかったよ面倒臭せェなァ」


101 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:38:10.86 ID:5PKNHSI4o




ワーワーキャーキャー!!




結標「あら、何の騒ぎかしら? 用水路の橋のところが賑やかね」

一方通行「さあな。どっかの馬鹿が飛び込みショーでもして盛り上がってンだろォよ」



幼女A「わー!! 幼児Aくんが川に落ちたー!!」

幼児B「あいつ泳げないんだぜ!? やべえよやべえよ」

幼児C「誰か男の人呼んでー!!」



幼児A「……あぼっ、……かぼっ、た、たすけ……」バシャバシャ



結標「あっ、大変! かわいい男の子が用水路で溺れてるわ!」

一方通行「……チッ」カチッ

結標「えっ、ちょ、一方通行!?」



ドン!



結標「…………」



幼児B「わーすげえアイツ! 水の上に走ってるよ!」

幼女A「私知ってるー! あの人シノビだよー! NARUT○で見た」

幼児C「白髪で目が赤いからあれだ、カカシ先生だ!」



102 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:39:09.95 ID:5PKNHSI4o



幼児達「「「「ありがとうカカシ先生!」」」」



一方通行「誰がカカシ先生だ! 気を付けて遊べよ! 次はねェからなガキどもが!」



結標「…………」

一方通行「待たせたな。行くぞ」ガチャリガチャリ

結標「……ねえ」

一方通行「何だ?」

結標「珍しいわね。自分からああいうことするなんて」

一方通行「……そォだな。自分でもそォ思う」

結標「じゃあ何でやったのよ?」

一方通行「知らねェよ。何かカラダが勝手に動きやがったンだよ、悪りィか」

結標「別に悪いなんて言ってないわ。むしろ良いことだと思うわよ」

一方通行「チッ、何か喉が乾きやがった。そこの自販機でコーヒー買ってくる」ガチャリガチャリ

結標「あっ、私も何か買おうかな」タッタッタ


-自販機の前-


一方通行「…………」

結標「ん? どうかしたの? 買わないの?」

一方通行「何だァ? このクソみてェな自動販売機はァ? ブラックコーヒーだけピンポイントに売れ切れてやがる」

結標「あら本当ね。もしかしたら貴方みたいな人が買い占めていったのかもしれないわね」

一方通行「ハァ? 俺はそンなことしねェよ。こンな複数の種類を全部買い占めるなンて無駄なことするわけねェ。普通はお気に入りを一つ決めて買い占めるモンだ」

結標「買い占めはするのね……」

一方通行「チッ、次の自販機行くぞォ……」ガチャリガチャリ

結標「あっ、ちょっと待ってよ!」タッタッタ


-次の自販機の前-


一方通行「は? またブラックコーヒーだけ売り切れだとォ!?」

結標「うわぁ、すごっ。よっぽどブラックコーヒーが好きなのね、これを買った人」

一方通行「クソが、次だァ!」ガチャリガチャリ


-次の次の自販機の前-


一方通行「オイッ!! またかクソ野郎がッ!!」ガンッガンッ

結標「ちょ、ちょっと自販機叩かないでよ! 防犯センサーに反応したらどうするのよ!?」

一方通行「何ですか何なンですかァ!? この三下みてェな展開ィ!? もしかして俺の右手に能力無効機能追加されてンじゃねェか!?」

結標「いや、もしそうなら貴方能力使えないでしょ」


103 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:39:50.59 ID:5PKNHSI4o


一方通行「……あァ、コーヒー飲みてェ」ガチャリガチャリ

結標「諦めて別の缶コーヒーを買えば? 微糖とか。おいしいわよ?」←さっきの自販機で買った

一方通行「そンな甘ったるいモン飲めるかってンだ。あれはコーヒーへの冒涜だ」

結標「それならコンビニで買ってくればいいんじゃない?」

一方通行「残念ながらここらへんにコンビニはねェ。あるとしたらもォ、オマエの目的地の銀行の近くにしかねェ。だったら大人しくまっすぐ目的地に向かったほうがイイ」

結標「そうね。そのほうが私も助かるし」

一方通行「あァーイライラするゥー」

結標「貴方ってそこまでカフェイン中毒者だったっけ?」

一方通行「いつもなら何てことねェ。だがこの飲みたいって時にねェのが腹が立つ」




ブルルルルルルルルルルン!!




結標「うん? 何かバイクか何かのエンジン音が近づいてくるわね」

一方通行「あァ?」




女性「きゃああああああああっ!! ひったくりよおおおおおおおおっ!!」


風紀委員「何だって!? 貴様ぁ!! まてえええええええっ!!」タッタッタ


ひったくり「ひゃっはああああああああっ!! 俺のバイクに追いつけるヤツはいねェぜええええええええええッ!!」ブルルルル




結標「うわっ、ひったくりだ。初めて見た」

一方通行「…………アハッ」カチッ

結標「あっ……」





ドンッ!! ガシャーン!! ドカッ!! バキッ!! ゴシャ!!





結標「うわぁ……」



104 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:40:59.59 ID:5PKNHSI4o



ひったくり「」

バイクだったもの「」プスプス



女性「ありがとうございました!!」

風紀委員「ご協力感謝します!」



一方通行「チッ、ストレス解消にもならねェな」ガチャリガチャリ

結標「無茶苦茶するわね。わざわざあんなにしなくてもいいんじゃないかしら?」

一方通行「アレくれェやらなきゃヤツに恐怖を植え付けられねェだろォが。二度と犯罪を起こそうなンて微塵も思わせねェくれェの恐怖をよォ」ニヤァ

結標「あはは……」

一方通行「……しかし、さっきから変なことばっか巻き込まれてる気がすンなァ」

結標「たしかにそうね。今思えば、川でおぼれているこどもを助ける、ひったくり犯に遭遇してそれをとっちめる、どちらもよく漫画とかで見る光景ね」

一方通行「あと欲しい飲み物が売り切れ続出してンのも、漫画とかにあるネタか?」

結標「うーん、飲み物に限らなければそういうのもあるかなー?」

一方通行「一体何が起こってンだ? まさかこれが全部ドッキリとかで、あとからプラカードを持った木原クンでも現れるンじゃねェか?」

結標「何で木原さん? まあでも、ドッキリ疑ってもしょうがないくらいには事件が集中しているわよね」

一方通行「何か嫌な予感しかしねェな。もしかしてさっきの悪寒はこの事態を察知してたからなのか?」

結標「ベクトル操作って未来予知もできるの?」

一方通行「できるわけねェだろ」



ポツン



一方通行「あン?」




ポツン、ポツン、ザアアアアアアアアアア!!



結標「ちょ、やだ雨!? しかも結構強い!!」

一方通行「今日の降水確率0%じゃなかったか?」

結標「うん、たしかそう。って言ってる場合じゃないわ。どこかで雨宿りしましょ!」

一方通行「ちょうどイイところに屋根付きのバス亭があるじゃねェか。あそこに行くぞ」カチッ

結標「了解!」シュン



105 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:42:12.88 ID:5PKNHSI4o


-屋根付きバス亭-




ザアアアアアアアアアアアアアア!!




一方通行「……しかしすげェ雨だな。ゲリラ豪雨ってヤツか?」

結標「うわぁ、結構濡れちゃったなあ……貴方は大丈夫?」

一方通行「能力使ったときに全部反射したから問題ねェ」

結標「相変わらずの便利能力ね」

一方通行「ところで結標。こういう事態も漫画によくあンのか?」

結標「こういう事態? 突然雨が降ってきて雨宿りするっていうの?」

一方通行「それ以外ねェだろ」

結標「そうね。定番って言ったら定番ね。特にラブコメとか……はっ!」

一方通行「あン? どォかしたか?」

結標「い、いや、何でもない!」

一方通行「?」

結標「うーん、あとラブコメで突然の雨と言ったら服が濡れて下着が透けるとか……って私濡れてるやばい!!」サッ

一方通行「何ハシャイでンだオマエ?」

結標「……よし! 大丈夫ね。よかったわ、透けにくい紺色のセーラー服で」

一方通行「くだらねェ。そンなどォでもイイことで取り乱してンじゃねェっつーの」

結標「何よ? 乙女にとっては重要なことなんですー!」

一方通行「…………ふっ」

結標「……ちょっと。何で鼻で笑ったのよ?」

一方通行「さあな」

結標「……知ってる? 漫画とかで主人公の男の子が女の子にデリカシーのないこと言うと、たいていその女の子にぶん殴られるっていう定番ネタがあるのよ?」つ軍用懐中電灯




ポツン……ポツン……




一方通行「……おっ、雨止ンだ。馬鹿やってねェで行くぞ」ガチャリガチャリ

結標「あっ、ちょっと待ちなさい! 話はまだ終わってないわよ!」タッタッタ


106 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:43:04.31 ID:5PKNHSI4o


-銀行までの道中-


一方通行「……クソが。また売り切れてやがる」←自販機8連敗中

結標「すごいわね。これはもう偶然で片付けられる現象じゃないわ。やっぱりドッキリなのかしら?」

一方通行「だとすると相当手の込ンだイタズラだよなァ? 今日、俺らがこっちの方面に寄り道するのを分かってねェとこンなこと出来ねェぞ?」

結標「そうよね。この寄り道だって私が急に言い出したことだし」

一方通行「こンな芸当ができる暇人……、やっぱり木原の野郎しか思い浮かばねェな」

結標「どんだけ木原さんを疑ってるのよ。ドッキリを受けた経験でもあるのかしら?」

一方通行「別に。ただこォいうことをやりそうで、俺らの行動を予測できるやつなンざ木原しかいねェ。ただの消去法だ」

結標「へー、やっぱり木原さんってすごいのねー」

一方通行「さっきの説明で何でそンな感想が浮かぶのか、理解出来ないねェ」

結標「いや何となく」

一方通行「馬鹿かオマエは」

結標「むっ、馬鹿って言ったほうが馬鹿なのよ!」

一方通行「じゃあオマエも馬鹿っつゥことだ。残念だったな」

結標「かわいくないわね……ん?」


幼児弟「おにいちゃーん、じゃあ蹴るよー!」

幼児兄「よしバッチコーイ!」


結標「……はぁ、いいわぁ。サッカーでもしてるのかしら?」ウットリ

一方通行「は? 何言ってンだオマエ?」

結標「やっぱり触れ合うならああいう純粋な子がいいわよねー。貴方みたいなのと触れ合っても癒されないもの」キラキラ

一方通行「……よく分からねェがアンチスキルに通報しといたほうがよさそうだな」スッ

結標「ちょ、貴方は何か勘違いしているわ! もしかして私が邪な心であの子たち見てるとでも思っているの!? 違うわよ!」

一方通行「いや、挨拶しただけで通報される時代ですし」

結標「何じゃその理不尽! ……あっ、ボールが道路に飛び出していった」

一方通行「……まさか」



幼児弟「ボールボール!」トテトテ



自動車『ブウウウウウウウン!!』



幼児弟「よし、ボールとった……ッ!?」



自動車『キキイイイイイイイイイイ!!』




ガシャアアアアアアアアアアアン!!




107 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:43:51.47 ID:5PKNHSI4o



バタン!



運転手「うわっ!? やっちまった!! だ、大丈夫か!? ……ってあれ?」




車『』プスプス


一方通行「ったくよォ、まず道路に出るときは右左確認してから出やがれ」

幼児弟「う、うん。ありがとお兄ちゃん……」

幼児兄「弟ー! だいじょうぶかー!」トットット


運転手「あれ? たしかにぶつかったよなあ? あれー? 何で俺の車だけ壊れてんの?」


一方通行「ほら、ガキども、さっさと行け。車には気を付けろよ」


幼児兄「ありがとお兄ちゃん!」トテトテ

幼児弟「ありがうございました!」チテチテ


一方通行「……オイ、運転手」

運転手「はいっ!?」

一方通行「オマエはただ運転ミスで壁に突っ込ンで自損した。俺やあのガキどもは関係ねェ。イイな?」

運転手「はいっ! ありがとうございましたぁ!」

一方通行「じゃあな。安全運転しろよ」ガチャリガチャリ



結標「…………」

一方通行「……なァ、これも漫画みてェな展開か?」

結標「よくわかったわね。その通りよ」

一方通行「また勝手にカラダが動きやがった。気付いたらあのガキを助けに行っていた」

結標「……もしかして貴方、ヒーローとかに憧れてたりしない?」

一方通行「ハァ? 何で俺がそンなモンに憧れなきゃいけねェンだ?」

結標「だってさっきからヒーローみたいなことばかりしてるじゃない。カラダが勝手に動くのも深層心理ではヒーローに憧れてるとかで……」

一方通行「馬鹿馬鹿しい。俺にはヒーローなンて似合わねェよ。薄汚れた悪党がお似合いだ」

結標「そう? そんなことはないと思うけど」

一方通行「オマエは何も分かってねェ」ガチャリガチャリ

結標「あっ、ちょっと待ってよ。……あっ、分かった照れてるんでしょ? 褒められ慣れてないから!」

一方通行「ホンっト俺のこと分かってねェよなオマエッ!」


―――
――



108 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:44:41.57 ID:5PKNHSI4o


同日 13:00

-第七学区・某銀行-



ウイーン



一方通行「……はァ、やっと着いたか」

結標「そうね。何だかいろいろあったから長かった感じがするわ」

一方通行「もォさすがにねェよな? 漫画にありがちな展開なンてな?」

結標「うん。今のところ思いつくものは、これと言ってないわね。大丈夫だと思うわ」

一方通行「だったらとっとと手続き済ませてこい」

結標「はいはーい」タッタッタ

一方通行「……はァ、コーヒー飲みてェ」



〜10分後〜



結標「お待たせー。手続きは終わったわ。三日後くらいに新しいのがウチに届くらしいわ」

一方通行「……おォ」

結標「……どうしたの? そんな深刻そうな顔して。もしかしてカフェイン切れ?」

一方通行「違う。いや、たしかにコーヒーは早く飲みてェがよォ」

結標「じゃあ何なのよ?」

一方通行「気付かねェか?」

結標「何が?」キョトン

一方通行「この銀行に来てる客の中に、明らかに客じゃないですよ、っつゥ気配を放ってるヤツがいる」

結標「そんな人がいるわけ? ……あっ、わかった! あそこのイスで飲み物飲みながらくつろいでるおじさん。たぶんあれは仕事をサボる目的でここにいるわ」

一方通行「違うな。アレはおそらく呼び出し待ちのヤツだ。さっき番号札を持ってたのを見た」

結標「……だったら誰なのよ? ストレートに答えを教えなさいよ、もったいぶっちゃってさ」

一方通行「銀行に来る客や従業員以外のヤツなンざ、ほかに一つしかねェだろォが」

結標「?」



強盗A「おらっ、銀行強盗だ!! お前ら静かにしろ!!」つ拳銃

強盗B「おらっ、このカバンのありったけの金詰めろコラ!!」つ拳銃

強盗C「おらっ、お前は人質だ!! 来いガキィ!!」つナイフ

幼女「うわーん!! ママー!!」



109 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:46:23.16 ID:5PKNHSI4o


結標「……ああ、たしかにあったわねこういう展開」

一方通行「これも漫画か?」

結標「うん、あったあった。バトルものはもちろん刑事ものに探偵もの」

一方通行「やはりそォか。つゥかオマエどンだけ漫画読ンでンだよ、幅広いジャンル読みすぎだろ」

結標「まあ広く浅く手を出してるつもりではあるわ。何かで面白いって情報が入ったらとりあえず読んでみるみたいな」

一方通行「オマエみたいな人間の為に、ステルスマーケティングっつゥのがあンだろうな」

結標「何よそれ?」

一方通行「何も考えねェ馬鹿を釣り上げる為の宣伝方法」


強盗A「おい!! そこのガキども何くっちゃべってんだ!! 黙ってさっさとそっちの壁際に集まりやがれ!!」


結標「ところでこれ、どうするつもり? ヒーローさん?」コソコソ

一方通行「別にあの人数を制圧するのに一秒とかからねェ。だが、あの人質と武器が面倒だ」コソコソ

結標「何で? 一秒とかからないなら大丈夫じゃない?」

一方通行「馬鹿かオマエ。その一秒でヤツらが牙を剥かねェとは限らねェだろうが」

結標「そうか。あの拳銃なんて下手に撃たれたら危ないわよね」

一方通行「そォいうわけだ。オマエも協力しろ」

結標「……わかった。あの武器と人質の女の子をこっちにアポートすればいいのよね?」

一方通行「ああ、まず俺が前に出てヤツらの注意を集める。その後俺が後頭部を掻く振りをして電極のスイッチを入れる。それがアポートの合図だ」

結標「……了解」ゴクリ


強盗B「早く金詰めろオラァン!!」

銀行員「…………」コソコソ

強盗A「ん? ちょ、お前何やってんだ!?」

銀行員「ひぃ!?」ピッ



ウイーン、ウイーン!! ガラララララララ!!



警備ロボA『ピピピ、ヒジョウジタイハッセイ。ヒジョウジタイハッセイ』

警備ロボB『ギンコウゴウトウヲカクニン。ギンコウゴウトウヲカクニン』

警備ロボC『タダチニセイアツシマス。タダチニセイアツシマス』



結標「わっ、入り口のシャッターが閉まって、警備ロボが出てきた!」

一方通行「チッ、余計なことを……!」ギリリ


強盗C「ひっ、クソが近づくなッ! このガキがどうなってもいいっつーのかよ!!」

幼女「ふええええええん!!」


一方通行「クソっ、作戦変更だ。合わせろ」カチッ

結標「えっ、ちょ、待ってどういう――」


110 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:47:31.26 ID:5PKNHSI4o



ガッシャーン!!



警備ロボABC「」プスプス


強盗A「へっ? 何だ? いきなり警備ロボが吹っ飛びやがった? 一体何が……?」アゼン

強盗B「さ、さあ?」アゼン

強盗C「おらもわからんだ」アゼン

銀行員「俺も俺も」アゼン


結標「うわぁ、何やってるのよアイツ……」アゼン


一方通行「今だァ!! 結標ェ!!」


結標「あっ、なるほど! そういうことね」スッ



シュン!



強盗A「……あれ? 俺の拳銃どこいった?」

強盗B「あっ、俺のもどっかいった」

強盗C「ひえっ、俺にいたっては人質のガキまで消えやがった!?」


結標「おじさんたち?」


強盗達「「「うん?」」」


結標「捜し物はこちらかしら?」つ拳銃×2+ナイフ

幼女「ありがとお姉ちゃん!」



強盗達「「「なっ、なにいいいいいいいいいいいっ!?」」」



一方通行「……さてと」ガチャリガチャリ


強盗A「うわっ、何だお前体白過ぎ、キッモ」

強盗B「何だこいつヒョロガリじゃねえか、弱そっ」

強盗C「目ェ赤っ! 徹夜明けかな?」


一方通行「……はァ、何つゥか」



一方通行「スクラップの時間だァ、クソ野郎どもが」カチッ



―――
――



111 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:49:04.69 ID:5PKNHSI4o


同日 13:30

-第七学区・某銀行-



ドンドン!! ガシャーン!!



黄泉川「突入!!」


ドタドタドタドタ


鉄装「う、うおおおおおおおおおっ……って、あれ?」

黄泉川「どうしたじゃん鉄装?」

鉄装「あ、あれー? 何かもう制圧されているんですけど……?」

黄泉川「なっ、そんな馬鹿なっ! さっき通報があったばっかりじゃんよ」

鉄装「いやっ、たしかにそうなんですけど……」

黄泉川「まあいいじゃん。とにかく強盗を確保!」


警備員達「「「了解!!」」」



銀行員「……あ、あのー」


黄泉川「あっ、ここの職員の方じゃん? 一体何があったじゃん?」

銀行員「いやー、さっきまでここいたんですけどねー、二人の学生さんが強盗たち見事に制圧してくれましてねー」

黄泉川「学生? ジャッジメントか?」

銀行員「いえ、そんな感じではなかったと思うんですか……」

鉄装「ちなみにどんな子たちだったんですか?」

銀行員「ええと、二人とも高校生だと思うんですが、一人は白髪で線の細い少年でしたね。それなのに銀行強盗を一発でノックアウトしてしまうくらい強くてねー」

黄泉川「……もう一人は?」

銀行員「赤髪でおさげの女の子でしたね。見た感じ能力はテレポーターじゃないかなー?」

黄泉川「……ちなみにその子、変な懐中電灯持ってなかったじゃん?」

銀行員「あっ、そうそう持ってました持ってました!」

鉄装「……黄泉川さん、もしかしてその二人組のこと知っているんですか?」

黄泉川「えっ、ま、まあ知ってるというか何というか……」アセッ


黄泉川(あいつら一体なにやってんじゃん……!)


112 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:50:41.89 ID:5PKNHSI4o


-通学路-


一方通行「……どォなってやがる。まさかコンビニでも売り切れてやがるなンてよォ」

結標「これはもう呪いね。さんざん自販機でスルーされたブラック以外の缶コーヒーの」

一方通行「わけのわからねェこと言ってンじゃねェ」

結標「……ふう、しかしお腹空いたわ、お昼とっくに過ぎてるし。さっきのコンビニで何か買っとけばよかったな」

一方通行「寄り道なンかせずに帰ってりゃ、今頃ソファの上で寝転ンでいただろうな」

結標「そうだ。どうせだからどこかでご飯食べていかない? このまま帰ったら二時とかになってそうだし」

一方通行「オマエなァ、さっきから漫画みてェな事件に巻き込まれてるっつゥ状況で、よくそンなことが言えンなァ」

結標「どうせ貴方が解決してくれるんでしょ? だから大丈夫よ」

一方通行「俺の手に余る事件が起きたらどォするつもりだ?」

結標「そのときは私が手伝ってあげるわよ。さっきみたいにね♪」

一方通行「チッ、お気楽なヤツだ――ッ!?」ブルッ

結標「うん? 今度はどうしたの?」

一方通行「……いや、さっきからカラダにまとわりついてた悪寒が急に消え去りやがった」

結標「ふーん、ってことはもう事件は起きないってこと? たしか悪寒がするって言ってからよね? 事件が起き始めたの」

一方通行「かもな。まあ、油断は出来ねェがな」

結標「じゃあ大丈夫でしょ。ファミレス行きましょファミレス!」

一方通行「……しょうがねェな。付き合ってやるよ」

結標「おっ、珍しく素直?」

一方通行「ファミレスのコーヒーはあンま飲む機会ねェからな。まだ飽きてねェ」

結標「はいはいそうですね飽きてないですねー」

一方通行「チッ、うっとォしィ言い方だな」

結標「じゃあ早く行きたいからテレポートで行きましょ? もちろん貴方も一緒に連れて行ってあげるわ」

一方通行「ハァ? オマエそンなのでテレポート使うンだったら最初から使えよ。そォしたらもっとスムーズに移動出来ただろォが」

結標「いやいやテレポートだって疲れるのよ? 結構演算複雑だし。貴方の能力と違ってポンポン使えるものじゃないのよ」

一方通行「制限時間ねェくせに何言ってやがンだ。それにオマエのテレポートより絶対ェ俺のベクトル操作のほうが演算複雑だぜ?」

結標「わかったわかった、そういう話はファミレスに着いたらゆっくり聞いてあげるから、ね? 早く行きましょ?」スッ

一方通行「覚えてろよオマエ」




シュン!!




―――
――



113 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:53:08.59 ID:5PKNHSI4o


同日 同時刻

-第七学区・とあるビルの屋上-



上条「――いいぜ、テメェが何でも思い通りに出来るってなら、まずはその幻想をぶち殺す!」



バキン!!



魔術師「あべし!?」バタリ


上条「……ふう、やっと終わったか」

土御門「お疲れカミやーん!」

上条「これでよかったのか土御門?」

土御門「上出来上出来。これで術式は解除された。安心して日常生活を送ることが出来るぜい」

上条「ところで、こいつの行ってたすげえ魔術って、一体どんなヤツなんだ? 急にここに連れてこられたから聞いてなかったけど」

土御門「ああ、これは最近日本の魔術師によって作られた魔術でな。『またこの展開かよ前も同じの見たぞ?(テンプレストーリーズ)』っていう名前の魔術だ」

上条「……は? 何だって?」

土御門「だから『またこの展開かよ前も同じの見たぞ?(テンプレストーリーズ)』だ。要するに、漫画とかでよくあるような展開が実世界に及んでしまうっていう魔術なんだぜい」

上条「何か今まで見た魔術の中で一番しょぼそうな感じがするな」

土御門「ところがそうでもないぜい。世界の事象を捻じ曲げるなんて天使降臨レベルのパワーがないと出来ないからにゃー。夏休み中にあった『御使堕し(エンゼルフォール)』と同レベルだな」

上条「嘘くせー設定だな」

土御門「まあ、今回は簡易的な術式で、しかも照準もズレてたみたいだから、ハッキリとは言えないけどこの学園都市にいる誰か一人が、その影響を受けてたくらいで済んでるかもしれないにゃー」

上条「おいおい大丈夫なのかよ」

土御門「今のところとくに大きな事件が起きた、みたいなニュースが流れてないから大丈夫じゃないか?」

上条「楽観的だな。いいのかよそんなんで」

土御門「へーきへーき。まあ、いざとなったらカミやんがどうにかしてくれるだろ?」

上条「俺はそんな何でもできる人間じゃないっつーの。……ってか、さっきこの術式の照準がズレてたって言ってたよな? じゃあこいつは誰を狙ってどんな目的で魔術を使ったんだ?」

土御門「話によると、最近流行りの異世界転生ものに憧れて、自分を対象に魔術を使って異世界に行くつもりだったらしいぜい」

上条「あー、たしかに今じゃありがちな設定だな。つーか、そんなこと出来るなんてすげえ魔術だな……」

土御門「だから言っただろ? 『御使堕し(エンゼルフォール)』クラスだって」

上条「ああ、そりゃ納得だな」


114 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:55:49.62 ID:5PKNHSI4o


土御門「ま、とにかく助かったぜい。こいつの魔術を解除するには、魔術のプロフェッショナルが最低あと二人は必要だったからにゃー」

上条「しかし最近魔術師多くなってきたな。この前も学園都市の人間を全て雛人形にしてしまうとかいう魔術を使おうとするヤツとかいたし」

土御門「おう。実はカミやんが知らないところでも、結構魔術師がこの学園都市に侵入してるんだぜい」

上条「へー、まじかよ」

土御門「マジだぜい。例えばこの前のバレンタインの前日なんか、世界中のバレンタインを中止させる大型術式を使おうとするヤツなんかもいた。その時はたまたま一緒にいた魔術師と対応したが」

上条「何じゃそのくだらねえ魔術」

土御門「そいつも結構デカイ魔術だぜい。なんたって世界の行事を根本的に破壊する術式だからにゃー。仮に成功させられてたらどうなっていたか……」

上条「世界からバレンタインが消え去っちまってた……ってことか?」

土御門「そうそう。ま、こんな感じに魔術師が増えてきてて、オレだけで対応できるやつは対応してるけど、今回やひな祭りのやつみたいな強力な術式になると、どうもカミやん便りになってしまうんだにゃー」

上条「何で急に学園都市に攻め込んでくる魔術師が増え始めたんだ?」

土御門「さあな。だが何か大きな事件が起きる、その前触れじゃないかとオレは見ている」

上条「ふーん、大きな事件……」

土御門「そんなわけで現状オレ一人じゃなかなか厳しい状況ってわけだ。だからと言って、いつまでもカミやんに頼ってばかりじゃ悪いとも思っている」

上条「別に気にすんなよ。俺に出来ることがあるなら何でも言ってくれ」

土御門「サンキューカミやん。でもそうはいかない。だから、そんな状況を打破する対策を取ることにしたんだ。いたって単純な対策だけどにゃー」

上条「何だよそれ?」

土御門「ま、それはこれからのお楽しみってわけで……さて、腹も減ったし一緒に飯でも行こうぜい。もちろんカミやんのおごりでな」

上条「は? ふざけんな何で俺が……?」

土御門「さっき何でも言ってくれって言ったじゃないか。オレ今月ちょっと厳しいんだにゃー」

上条「俺だって厳しいんだよ! テメェに食い物おごれるほどの余裕なんてひとかけらもねえよ!」

土御門「えー? バイトしているんだろカミやーん?」

上条「そのうえで厳しいっつってんだよ、知ってて言ってるだろお前?」

土御門「オレラーメン食べたい!」

上条「おごらねえぞ? 絶対おごらねえからな?」

土御門「それは『押すなよ? 絶対に押すなよ?』的なやつかにゃー?」

上条「違うわ!!」


――――――


115 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/30(金) 22:58:53.06 ID:5PKNHSI4o
今更やけど1スレ目から見直そうって人いたらまとめサイトとかで見たほうが良いよ痛々しいレスしまくってるから
まあそもそもこのレスを見てるやつすらいるんか怪しいがね

次回『天草式』
116 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:28:45.47 ID:0ycj/yMOo
ゲームで忙しいンゴ

投下
117 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:29:21.40 ID:0ycj/yMOo


6.天草式


March Second Friday 15:00

-第七学区・とあるビルの屋上-


??1「……よし、ここまでは手筈通りなのよな」

??2「はい。魔術的な妨害と科学的な妨害、どちらも確認出来ません」

??1「じゃあ、あとは時間通りに目的地へたどり着くだけだ。この調子なら問題なく任務完了できそうなのよな」

??2「しかし油断は禁物です。ここは学園都市、言わば私たち魔術サイドから見れば天敵の本拠地。何があるかなんて私たちでは予想しきれませんよ」

??1「真面目だなー。大体そんなこと心配する必要、もうないと思うのよな」

??2「なぜですか?」

??1「そんなことが起きるっていうのなら、俺たちがここに侵入した時点で起きているとは思わないか?」

??2「……言われてみればそうですが」

??1「ということは、俺たちは歓迎されている、そうとも思わないか?」

??2「いや、その理屈はおかしいです」

??1「そうか、おかしかったか。ま、つまり何が言いたいのかというと、あんまり気を張りすぎているとすぐに参ってしまうぞ、ってことよな」

??2「ですが、油断をしていて隙だらけのところをグサリッ、なんてこと私は嫌ですよ?」

??1「誰も油断をしろとは言ってない。ほどほどに頑張ってろって言っているのよ」

??2「……はい。わかりました」

??1「それでいい。さて、それじゃあ再確認だ。一応、これは非公式で隠密な任務だ。現地人と接触するなとは言わないが、いざこざや騒ぎは絶対に起こさないこと」

??2「了解です」

??1「……ではそろそろ出発といくよな。時間に遅れてしまっていけないからな」

??2「はい」



ダッ!



―――
――



118 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:30:04.41 ID:0ycj/yMOo


同日 16:00

-とある高校・校門付近-


一方通行「さて、やっと学校が終わりやがった。さっさと帰って昼寝だな」

一方通行「……いや、まずコーヒーを一杯飲ンでからの昼寝だな」


上条「――おーい、一方通行ぁ!」タッタッタ


一方通行「あン?」

上条「あれ? 結標のヤツがいないな。どうしたんだ?」

一方通行「ヤツは吹寄や姫神と帰った。おかげで悠々自適と帰れるわけだ」

上条「ふーん」

一方通行「ところで俺に何か用か? わざわざアホみてェな大声上げながらこっちに来やがったンだ。それなりに重要な用に思えるが」

上条「えっ、そんなアホみたいに声出してたか?」

一方通行「そンな部分に食い付いてンじゃねェ。先に用を言え。それにオマエはアホみたいじゃなくアホだから問題ねェ」

上条「ひでえ言われようだな、まあいいや。一方通行、ちょっと買い物に付き合ってくんない?」

一方通行「買い物だァ? またおひとり様限定の特売か何かか?」

上条「そうそう。今日は何と豚ロースがタイムセールでお得なんだ! 何と300gで五円だぞ!? これはもう行くしかねえよな!」

一方通行「それ本当に豚肉なのか? クズどもの人肉でも売ってンじゃねェのか?」

上条「怖えこと言ってんじゃねえよ! あそこは信頼できる安心安全のスーパーなんですう!」

一方通行「知るか。どォでもイイわそンなモン」

上条「まあ、そういうことなんで買い物付き合ってくんね? 上条さんちの食卓の笑顔と財政の為にも」

一方通行「……はァ、まァどォせ暇だから構わねェが」

上条「さっすが一方通行様! ありがてえ!」

一方通行「ところで何か見返りがあンだろうな?」

上条「見返り……?」

一方通行「当たり前だろ。前回は家に上げてもらった上に、泊めてもらったっつー恩があったが今回は何もねェ。ただただ俺の帰宅時間を遅らせるだけのクソ作業っつーことになるわけだ」

上条「……つまり手伝う代わりに何かしろと?」

一方通行「当然だ」

上条「…………」

一方通行「…………」


119 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:30:42.68 ID:0ycj/yMOo


上条「……よし! だったら上条さんが肩たたきをしてやろう! 10分間! しっかり!」

一方通行「小学生からの親へのプレゼントかよ。いらねェよそンなモン、別のにしろ」

上条「じゃああれだ! 上条さんの超絶美術センスでお前の似顔絵を描いてやる!」

一方通行「だから小学生からの親へのプレゼントかっつってンだ! いらねェンだよそンなモン!」

上条「ええっと、じゃあ、じゃああれだ」アセアセ

一方通行「……はァ、面倒臭せェヤツだ。だったらアレだ、缶コーヒー一本奢れ。それで許してやる」

上条「なっ、缶コーヒー一本……だと?」

一方通行「ああ」

上条「おいおい缶コーヒーってあれだぞ。スーパーでも七十円くらいすんだぞ? キツイって」

一方通行「あァ? オマエ七十五円で豚肉が買えンだぞ? 安い買い物だろォよ……まァ、豚肉の相場知らねェから適当な発言だが」

上条「うーん、そうか。たしかにそう考えたら安いなー、って思ったけどそれって実質ただ働きじゃね? お前なら缶コーヒー一本買うくらい屁でもないだろし」

一方通行「……チッ、人がせっかく気ィ使ってやってるっつーのに水差しやがって。何でそォいうところだけ鈍感じゃねェンだオマエ?」

上条「鈍感? 俺が? 何で?」

一方通行「……はァ、だったら合理的な理由を一つ作ってやる。あれだ、よく言うだろ。他人の金で食うメシはうめェ、ってな。つまりそォいうことだ」

上条「よくわからんけど、お前がそれでいいんならそれで」

一方通行「……チッ、我ながら思うな。俺らしくねェことしてるってな」ボソッ

上条「ん? 何か言ったか?」

一方通行「死ねクソ野郎っつったンだよ」

上条「なんで!?」

一方通行「さァな」

上条「うーん、しかしおしいなあ」

一方通行「何の話だ?」

上条「ああ、もし結標が居たら三人分ゲットできたのになー、って思ってな」

一方通行「そォか。まァその場合は俺がその場に居ねェだろうから、結局二人分になるけどな」

上条「逃げる気まんまんかよ!」

一方通行「当たり前だ。誰があンな面倒臭せェ女とスーパーで買い物なンざするか」

上条「ひでえ言われようだな結標」


??1「……おっ、来たよな。おーい、上条当麻!」

??2「!!」ピクン


上条「えっ、た、建宮!? それに五和、だったっけ?」

建宮「久しぶりだな。イタリアの時以来よな」

五和「ご、ご無沙汰しております」ペコリ


一方通行(……何だこのクワガタ頭と地味女。一体何者だ……?)


120 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:31:33.15 ID:0ycj/yMOo


上条「あっ、紹介するよ。こっちの大男が建宮斎字。女の子のほうが五和だ」

建宮「君は上条当麻のお友達かな? 建宮だ。よろしく!」

五和「五和です。宜しくお願いいたします」

一方通行「……一方通行だ」

五和「あくせ……られーたさん?」

建宮「外国の方か? どこの国なのよ?」

一方通行「何で馬鹿どもは揃いも揃って同じリアクションしやがンだ?」

上条「いや、しょうがねえだろ。その通り名を名乗っている限りずっと同じようなことになるぞ」

建宮「通り名? あー、なるほどニックネームってことか。うんうんかっこいいニックネームよなアクセラレータって」

一方通行「馬鹿にしてンのか? このクワガタ野郎が」ギロッ

上条「落ち着けよ一方通行。そんな安い挑発、というかおちょくられただけで青筋立てるなっつうの」

五和「きょうこう……建宮さんもですよ。初対面の方にそんなちょっかいかけるのやめてください」

建宮「ちょっかいなんてとんでもない。ただ仲良くなろうとフレンドリーに接しているだけよな」

一方通行(……コイツ、土御門や青髪ピアスと同系統のヤツか。面倒臭せェ)

上条「ところで二人とも、何で学園都市に?」

建宮「ちょっと用があってな」

上条「用? お前らの言う用って言うと、何か嫌な予感しかしないんだけど……」

建宮「ああ、大丈夫なのよ。今回は事件があったから来た、ってわけじゃないからな。安心してくれて構わないのよな」

上条「そんなことを言われると、逆に安心できないのはなんでだろうな」

建宮「そりゃあれだけ事件に巻き込まれてたらそうもなるだろうよ」

上条「……てか用事はまだ終わってないんだろ? 俺となんかと喋ってていいのかよ?」

建宮「ああ。実は用事って言ってももう終わったようなもんなのよな。なあ五和?」

五和「は、はい。問題ないです」

建宮「だから時間が少し余ってな、どうせ学園都市に来たんだから、それならってことでお前に会いに来たってわけなのよ」

上条「へー、そうなのか」

建宮「ま、こっちが本命とか思っているヤツもいるのよな」

五和「ちょ、建宮さん!」

上条「?」


121 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:32:09.54 ID:0ycj/yMOo


建宮「ま、これでひと目お前に会えたんだから、あとは適当に観光でもして帰るとするよな」

上条「……ほう。つまり、お前らは今『暇』ってことだよな?」

建宮「特にすることがない、ってことが暇になるのならそうなのよな。何か他に用事あったっけ?」

五和「いえ。あとは学園都市から離脱するだけですが……」

上条「だったらさ、お前ら買い物に付き合ってくんない?」

五和「買い物、ですか?」

建宮「そりゃ別にいいけど何でなのよ? そんな人数が必要なくらい持ちきれない量の買い物をするのか?」

上条「違うんだ。実はスーパーで豚肉のタイムセールがあってな。何とお一人様限定で300g五円! それが欲しいんだ! たくさん!」

五和「……それ本当に豚肉なんでしょうか? いくら何でも安すぎるような気が……」

建宮「そんなもんにすがらなきゃいけないほどの財政状態なのか……?」

上条「…………まあな」ズーン

建宮「……あー、わかった手伝おう。学園都市のスーパーを観光するのも悪くないのよな」

上条「えっ、いいのか?」パァ

建宮「あ、ああ。別に行きたい所なんてないからな。なあ五和?」

五和「そうですね。私たちに手伝えることがあるのなら、是非」

上条「ありがてぇ……ありがてぇ……」


一方通行「……で、イイ加減話ィまとまったかァ?」


上条「うわっ、びっくりした! 急に喋りかけてくんなよ、つーかどうした? ずっと黙ってるなんて」

一方通行「悪りィが知らねェ人間、ましてや外部の人間を混じえて会話出来るよォな出来た人間じゃねェンだ俺ァ」

上条「別に気にしなくてもいいのに」

建宮「そうそう、気にしなくてもいいのよな」

五和「いや、私たちの立場的には気にしていただけるほうが助かると思うんですが……」

建宮「五和ぁ! お前ひどいやつなのよな」

五和「えっ、何で!?」

建宮「人見知りで輪の中になかなか入れなさそうな少年に救いの手を差し出す、それが俺たちのすべきことではないのか!」

五和「!」

一方通行「オイオイ何ですかこれはァ? 何で出会って五分も経ってねェよォな初対面のヤツに、いきなり人見知り判定されてやがンだァ?」

五和「……わかりました」

一方通行「あン?」


122 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:32:39.50 ID:0ycj/yMOo


五和「一方通行さん! さあこちらに来て一緒に談笑しましょう! 大丈夫です、心の殻は一人で破るものではありません、みんなで一緒に少しずつ割っていくものですから!」


一方通行「だから何で出会って五分のヤツにそンな励ましの言葉なンて泣けるセリフ吐かれなきゃいけねェンだ!」

上条「はっはっはっはっ!」

一方通行「何一人で大爆笑してンだこの三下はァ!?」

上条「えー? だってさ、さっきまで会話なんてできねえなんて言ってたくせに、普通に会話してんだもん。そりゃ笑うって」

一方通行「どこをどォ聞けば普通の会話に聞こえンだよ。耳が腐ってンのかオマエ」

建宮「……そういえば上条よお。さっき言ってたタイムセールってのは何時開始なんだ?」

上条「四時半だけど……ってやばい! こんなことしてる場合じゃねえ! 早く行っていいポジションを取らねば!」

五和「ポジション? 買い物に行くんですよね?」

上条「あれは買い物という名の戦いなんだ。五和も気を引き締めていったほうがいいぜ」

五和「わ、わかりました。頑張ります!」

一方通行「……つゥか上条よォ」

上条「何だよ?」

一方通行「この豚肉購入メンバーは今、ここにいる愉快でクソな二人組が増えたわけだろ?」

上条「クソではないと思うがまあそうだな」

一方通行「だったら俺、もォいらなくね?」

上条「何を言っているんだ一方通行ぁ! お前がいるだけで手に入る豚肉は1200g! 1kgを超える大台に乗ることが出来るんだぞ! その意味、わかるな!?」

一方通行「知るか」

上条「よおし、今日は豚肉を手に入れてぇ、しゃぶしゃぶパーティーだぁ!」

五和「しゃぶしゃぶですか……この時期でしたら菜の花とか春キャベツを入れるとおいしそうですね」

一方通行「オマエせっかく手に入れた大量の肉を一晩で消費するつもりかよ」

建宮「まあ上条さんちにはあのシスターさんがいるのよな」

一方通行「どのみち消える肉なら、豪華に消費してやろうって魂胆か……そンなだからすぐ財政が窮地に陥るンじゃねェのか」

上条「……うるせえな。いいからさっさと行きますよ。いざ行かん戦場へ!」

建宮「おーう!」

五和「お、おー!」

一方通行「何だこのノリ。ついていけねェ」


―――
――



123 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:33:45.60 ID:0ycj/yMOo


同日 16:30

-第七学区・とあるスーパー-


モブA「うおりゃあっ!! 邪魔をするなあっ!! 肉ぅうううう!!」

モブB「邪魔なのはあんたよ! うるさいしっ!!」

モブC「うるせえんだよ貴様らがあああっ!! ひゃっはああああっ!!」



ガシャーンガヤガヤガヤドパァン!!



上条「……くそっ、出遅れた!」

建宮「おーおー、こりゃすげえのよな」

五和「はい。言われた通り、本当に戦場のような迫力ですね」

上条「そうだ。蹴る殴るはもちろん、能力者による能力攻撃は当たり前。しかも店員でさえ、店に危害がなければいいよ、とさじを投げている。まさしくここは戦場だ」

上条「こんな戦場で豚肉を手に入れるなんて至難の――」


建宮「ほら、取ってきたのよ」つ豚肉

五和「同じくです」つ豚肉


上条「って早っ!? えっ、何が起こったの!? 俺が解説している最中に!?」

建宮「ま、戦場と言っても有象無象が勝手に暴れてるだけの、所詮はお遊びの場なのよな」

五和「人と人の間を気付かれないようにすり抜けて行けば、簡単に突破することができますよ」

上条「へーなるほどー。つまりこっそり近付いて、間をそーと抜けて、パパっと取れば楽勝っつーわけか」

建宮「そういうことなのよな。我らが天草式十字凄教にかかればこんなミッション、屁の河童なわけなのよ」

五和「ちょ、ちょっと建宮さん! ここでその名前は……!」

建宮「おっ、悪い悪い、つい口が滑ってしまったのよな」

五和「気をつけてください!」

上条「よーし、俺も同じようにしてゲットするぜ。まさしく忍のように……!」

五和「頑張ってください!」

建宮「骨は拾ってやるのよな」

上条「失敗する前提かよ! ……よし、行くぜ」ソー


モブD「おっ、何コソコソしてやがるウニ野郎!」

モブE「小僧! 俺と遊んでいこうぜ!?」ボキパキ


上条「oh……」



ドガッ、バキッ、メリッ、ガァン!!



上条「」ピクピク

五和「だ、大丈夫ですか!?」

建宮「ま、何の心得のないうえものすごーく不幸な上条当麻が俺たちと同じように出来るわけないのよな」


124 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:34:20.46 ID:0ycj/yMOo


一方通行「……おォおォ相変わらず馬鹿みてェにハシャイでンなァ、ここにいる連中は」ガチャリガチャリ


建宮「おっ、やっと来たか。随分と遅かったのよな」

一方通行「見ての通りの杖突だからな。当然だ」

建宮「おっと、そいつは失礼」

一方通行「で、今どォいう状況だ?」

五和「はい。私と建宮さんは目的のものは入手出来ました。しかし、上条さんは……」

上条「……我が人生に一片の悔いなし」

一方通行「いや悔いれよ。安物の豚肉欲しさに終える人生だぞ」

建宮「そういうわけで、あと必要な数は二つってわけなのよな」

五和「どうしましょうか? また私たちで取りに行きます?」

一方通行「いやイイ。俺が行く」ガチャリガチャリ

五和「えっ、そ、そんな無茶です! そんな身体であの中に割って入って豚肉を取ろうなんて!」

建宮「そうなのよな。ここは俺たちに任せて先に行くのよな」

五和「こんな状況でボケないでください建宮さん! てか、先ってどこに行けばいいんですか!」

建宮「いやーつい」

一方通行「まァ俺のことが心配だっつゥ考えを持ってンなら今すぐそれを捨てろ。この程度の状況、一つも問題ねェ」ガチャリガチャリ

五和「で、でも……」

一方通行「それにもォ一度、俺直々が再教育してやらねェといけねェからな」

五和「再教育? 一体どういう……?」

一方通行「せっかく俺が安心安全かつ友好的な買い物のやり方を教育してやったっつゥのによォ、たった一カ月でその恩を忘れて暴れまわってるなンて涙が出る話じゃねェか」カチッ

五和「……言っている意味がちょっと――ッ!?」ゾクッ

建宮「ッ!? コイツッ!?」ゾクッ



モブA「邪魔だ邪魔だ――うおっ!?」ゾクッ

モブB「これは私の肉よ――ひぃっ!?」ゾクッ

モブC「全部ぅ!! 破壊してや――あがっ!?」ゾク




一方通行「あはっぎゃはっ! 相変わらず面白れェことやってンじゃねェかオマエらァ!」




125 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:34:52.99 ID:0ycj/yMOo





モブD「あ、あの白い髪に赤い目、何かよくわからん機械の杖……間違いない、ヤツだ……!」ガタガタ

モブE「バレンタイン前日に颯爽と現れて、圧倒的なチカラでこの場を支配した化け物……!」ブルブル

モブA「や、ヤツは『バレンタインイブの白い悪魔』……! う、うわあああっ!?」ガタッ

モブB「う、嘘よ……あれは夢だったと思ってたのに……」ガクブル

モブC「うわああああああママあああああああああ!!」ドンドンッ





一方通行「さァて、補習の時間だァ。安心しろォ、1分間で分かるよォに丁寧に教育してやっからよォ」ニヤァ





〜1分後〜



モブA「はい順番でーす! 順番を守ってお肉をお取りくださーい!

モブB「やっぱり買い物は平和じゃないとね。こんなすがすがしい気持ち久しぶりだわ……」

モブC「やっぱり平和が一番だよなぁ……」



一方通行「……終わったぞ」つ豚肉×2

上条「お、おう。また何か恐ろしいことやったのか……」

一方通行「至って普通のことを言っただけだ。静かに皆様のご迷惑のかからないように買い物しましょう、っつゥ当たり前のことをなァ」

建宮「これはお見事なのよな。あれだけの連中を凄みと口だけで鎮圧するなんて、そう易々とできることじゃないのよな」

五和「…………」

一方通行「さて、用は済ンだンだ。さっさと帰る……いや、ちょっと帰り道に飲む用のコーヒーでも買って来る」ガチャリガチャリ

上条「お、おう」

五和「……あの、上条さん」

上条「何だ?」

五和「あの人、一体何者なんですか? 一般人があんな肌に突き刺さるような殺意、普通は出せませんよ?」

上条「あはは、まああれだ。只者じゃないって思ってくれれば大丈夫だ」

建宮「見た目からすでに只者じゃないのよな」

上条「いや、それはお前が言うなよ」

五和「……ふふっ」

建宮「あっ、何笑っている五和! お前だってたまにアレな恰好しているときあるのよな!」

五和「なっ、いや、あれたまたまあのときに最適な服の組み合わせがあれだっただけだからしょうがなくで、いつもあんなわけでは……!」

上条「アレな恰好ってどんなだよ?」

建宮「ああ、上半身の裸の上にブラウス一枚で――」

五和「ちょ、やめっ、ストップ!! ストップ教皇代理いいぃぃっ!!」


―――
――



126 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:35:38.40 ID:0ycj/yMOo


同日 17:00

-第七学区・とある公園-


上条「ほい、自販機で買ってきた飲み物だ。今回のお礼……になるかわからないけどな」スッ

建宮「おっ、ありがたくいただくのよな」

五和「ありがとうございます!」

一方通行「わざわざ自販機の高い飲み物買ってくれるなンて、優しさあふれるお礼だよなァ」

上条「ぐっ、つーかお前絶対のその缶コーヒーいらねーだろ! 何だそのレジ袋に入った大量の缶コーヒーはッ!?」

一方通行「あン? いるとかいらねェじゃねェンだよ。対価を得るにはそれ相応の対価っつゥモンが必ず存在する。ただで肉が手に入ると思うなよ」

上条「ぐぬぬぬ……くそー、スーパーでお礼の飲み物買い忘れるなんて……不幸だ」

一方通行「それはただの不注意だ」

上条「くっ、……そういや二人はいつまで学園都市にいるつもりなんだ?」

五和「時間もいいくらいですし、そろそろ離脱しようかと」

建宮「用事はもうないからな」

上条「……ところでお前らの用事って結局何だったんだ?」

建宮「うーん、まあもちろん秘密、禁足事項ってやつなのよな」

五和「すみません、私たちから話すことは出来ないことなんです」

上条「いや、別に謝ることはねえよ。ただ気になったから聞いた世間話みたいなものだし」

一方通行「……よくわからねェが、それは部外者である俺がこの場にいるから喋れねェのか?」

五和「いえ、……いや、それもたしかにあるんですが、もともとこれはまだお話することができない情報なので」

上条「一体何が起きるってんだ……? この学園都市に……!」

建宮「そんな身構える必要はないのよな。それを防ぐための任務ってわけだ」

上条「よくわかんねーけどあんま無茶はすんなよ? 何かあったら神裂が悲しむぞ」

建宮「へっ、それはお前もな、って言って欲しいのか?」

上条「何で俺? まあいいや、悪いけどちょっとトイレ行ってくるから、俺の荷物見ててくれないか?」

五和「わかりました。いってらっしゃい」

建宮「ほいほーい、それじゃあ荷物は命をかけて守るのよな」

上条「そんなもんに命かけんなよ。じゃ、行ってくるよ」タッタッタ


五和「…………」

建宮「…………」

一方通行「……オイ、上条がいねェ間にオマエらに聞きたいことがあンだが?」

建宮「何なのよ、そんな改まって」

一方通行「オマエら一体何者だ?」


127 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:36:05.89 ID:0ycj/yMOo


五和「……それはどういう質問なのでしょうか?」

一方通行「別に他意はねェ。そのまンまの意味だよ」

建宮「学園都市の外から来た正義のエージェント! なんて答えても、許してはくれなさそうなのよな」

一方通行「ソイツは今まで聞いた会話の内容からして何となく察しはついている。正義かどォかは知らねェがな」

五和「それ以上、何を答えればいいのでしょうか?」

一方通行「俺が聞きてェのはそンなどォでもイイことじゃねェ。俺が聞きてェのはオマエら自身のことだ」

建宮「そいつはどういう意味だ? 俺たちの個人情報でも聞きたいか? 五和のスリーサイズとかか?」

五和「えっ、何でそんなもの知っているんですか建宮さん!? いつ!? いつその情報を入手したんですか!?」ググッ

建宮「いやー冗談冗談建宮さんは何にも知らないのよな。だから首を絞めるのはやめてくれ……」

五和「だったらそんな笑えない冗談やめてください!」


一方通行「……この学園都市には超能力っていうチカラがある」


建宮「おっ?」


一方通行「薬品投与や頭に電極ぶっ刺して電気を流したりして、その末に得られる能力だ。まァ全員が全員満足にチカラを手に入れられるわけじゃねェがな」

一方通行「俺はそォいう能力者と何もやってない一般人。そいつらの感じ? 雰囲気? 何かそォいうので何となくわかる」

一方通行「あくまで何となくだから、そういう専門の能力者や機械、そういうモンに比べりゃ正解率は低いが、俺ン中ではそれなりに信用できる感覚だと思っている」

一方通行「その感覚がよォ、教えてくれてンだよ。オマエらが超能力者でもただの一般人でもない、何か別の存在だってことをよ」


五和「ッ」

建宮「ほう。その当てもない感覚で俺らをそういう別の存在だと決めつけてるというのか?」

一方通行「ああ」

建宮「……でもそれってあれよな? ここで俺らは別に普通の一般人です、って答えればどうなるんだ?」

一方通行「別にどォもならねェよ。ただそォですか、としか俺は言わねェ。深堀をするつもりも毛頭ねェ」

建宮「じゃ、そういうことで」

一方通行「うっとォしいヤツだな」

建宮「出会って一時間ちょっとで、そんなこと聞いてくるヤツよりはうっとおしくはないと思うのよな」

一方通行「チッ」

五和「……あの」

一方通行「何だ?」

五和「その感覚ってやつはどういうのなんですか? どういう感覚があなたの中で引っかかったんですか?」

一方通行「……答えづらい質問だな。あくまで感覚だから言葉にしづらいが……そォだな。例えるならオマエらは一般人過ぎる、っつゥ感覚だな」

五和「一般人過ぎる……? それって一般人ってことじゃないですか?」


一方通行「ああそォだ。だが一般人っつってもなァ、そいつらは一人一人違う考えを持ち、違うことをやっているから、千差万別の色がある。無理やりの言葉だが赤いヤツや青いヤツみたいな感じだな」

一方通行「だが、オマエらから感じるのは無色透明な一般人、まるで作られた一般人像を演じている、そォいう風に感じた」

一方通行「だから、オマエらはただ一般人を演じるための何かをやって、今ここに立っている、っつーように考えて、質問したっつゥわけだ」


五和「…………」

一方通行「ま、そりゃそンな顔するだろォよ。わかるよォに説明してるつもり皆無だからな」

建宮(……ほう、そんなことまでわかるのか。さすがは上条当麻の知り合いなだけあるのよな)


128 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:37:08.86 ID:0ycj/yMOo


〜10分後〜


一方通行「……そォいや上条のヤツ遅せェな」

建宮「たしかにそうだな。ウンコか?」

五和「……下品ですよ建宮さん」ジトッ

建宮「えっ、ウンコって下品なのか一方通行少年?」

一方通行「知るか」

建宮「冷たいのよな。……あっ、もしかしたらアレかもしれんのよな」

五和「アレ、とは?」

建宮「五和の隠れたエロスに気付いてそれを慰めよ――」



ドゴッ!!



五和「だから下品ですっ!! というかセクハラですよ!!」

建宮「ぐ、ぐおっ……は、鼻が……」ズキンズキン

一方通行「アホくさ」


〜さらに10分後〜


一方通行「……まだ帰ってこねェのか。本当に遅せェな」

建宮「あっ、これはアレだろアレ!」

五和「……また下品なネタですか?」ジトッ

建宮「違う違う。これは真面目な話だ」

一方通行「何だ? 言ってみろ」

建宮「上条当麻は不幸だろ? たぶんあいつあれだ、トイレで大をしてて紙がないことに気付いて、動けなくなっているのかもしれないのよな」

一方通行「……たしかにそれはありえるな」

建宮「だろ?」

五和「……でも、その場合救援要請をしてくるのではないでしょうか? 携帯電話とか持っているのですよね?」

一方通行「ちなみに携帯だが、上条の置いて行った鞄の中に入っているな」

建宮「二重の不幸だったってわけなのよな」

一方通行「そォと決まったら公園のトイレに向かうぞ。たしか外れのほうに一軒あったはずだ」ガチャリガチャリ

建宮「待ってろー上条当麻! 俺たちが神の救いの加護を与えに行くのよなー、紙だけに」

五和「……神を馬鹿にしてないですか教皇代理」

建宮「いやいや冗談なのよな。みんなを笑わせるためのゴッドジョークなのよな」

一方通行「つまんねェダジャレにカミサマを巻き込ンじゃねェよ」


―――
――


129 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:38:03.05 ID:0ycj/yMOo


-第七学区・とある公園外れのトイレ-


建宮「おーい、上条当麻ー! 助けに来たぞー!」


シーン


建宮「……あら? 返事がないのよな」

一方通行「つゥか、誰もトイレを使ってねェな。……ン? 何だこりゃ? やけに床が濡れンなァ」

建宮「うーむ、これは外したか? ほかに近くでトイレとかあるか?」

一方通行「コンビニとか行きゃあるだろォが、わざわざここを差し置いて行こうなンて思う距離にはねェ」

建宮「それにコンビニだったら、紙がなくても店員さんが気付いてくれるのよな」


五和「……念のために女子トイレも見てみましたが、誰もいませんでした」

建宮「五和。もし女子トイレにいたらどうしてたのよ?」

五和「ええっと、とりあえず謝ってここを後にします」

一方通行「そこは普通に通報しとけよ」


建宮「てか、トイレにいないとしたら一体どこに行ったんだ?」

一方通行「さァな。アレじゃねェか、誘拐とかでもされたンじゃねェのか」

五和「そ、それは本当ですか!?」

一方通行「真面目かオマエ。冗談に決まってンだろ」

建宮「まあでもあながち間違いじゃないかもな」

一方通行「どォいうことだ?」

建宮「アレよ。上条当麻が大好きなゲイストーカー的なヤツが一人のときを見計らって……みたいな?」

一方通行「そンなレアケースあるわけねェだろ。まだあの右手を研究したい研究者が、みたいな方がまだ現実味がある」

建宮「ははははっ、たしかにそうなのよな。まあそんなことあるわけ――」




五和「たっ、大変です!! 今すぐ助けに行かないと!!」クワッ




130 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:38:59.50 ID:0ycj/yMOo


建宮「……あのー、五和さん?」


五和「私は東の方面を探します! 建宮さんは北、一方通行さんは西の方を頼みます! 何かあればすぐに連絡をします! ではっ」ダッ


一方通行「……何だアイツ。あンな冗談を真に受けて……もしかして馬鹿か?」

建宮「あー、あれだ。恋は盲目、みたいな。ぶっちゃけると五和は上条当麻のことが好きなのよな」

一方通行「そォか。どこに上条が行ったかどうかの手がかりもないくせに、よくも分からず路地裏の方へ走っていくという馬鹿みたいな行為は、その恋のせいだと?」

建宮「しょうゆうこと」

一方通行「相変わらず手広いこったあの三下は」


上条「――おーいっ! みんなー!」タッタッタ


一方通行「あァ?」

上条「わりーわりー。遅くなっちまった」

建宮「うん? お前トイレに行ってたんだよな? 随分と時間がかかったのよな?」

上条「あー、ちょっと不幸があってな」

一方通行「不幸だ? やっぱ紙でも切れてたのか?」


上条「いやー、最初にここのトイレ来たら清掃中になっててさあ。次に近くのコンビニのトイレ行ってみたら行列が出来ててな。それを何回繰り返してたら遅くなっちまった」


建宮「そいつは災難だったのよな」

一方通行「……どォりでトイレの床がびしょ濡れになっていたわけだ」

上条「いやー、危なかったぜ。危うくこの歳になってウンコ漏らすところだったよ」

建宮「ほら、やっぱりウンコって普通に使うのよ。全然下品じゃないのよな」

一方通行「そりゃ野郎だけの会話に下品もクソもねェからな」

上条「? そういや五和がいないじゃん。どこ行ったんだ?」


一方・建宮「「あ……」」



―――
――



131 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:39:49.04 ID:0ycj/yMOo


同日 同時刻

-第七学区・路地裏-



タッタッタ



五和「くっ、まさか私たちがいながらあの人に危害を及ばせてしまうなんて」

五和「しかし、逆に私たちがいてよかった。必ず助け出してみせます、上条さん!」



ドン!



五和「ッ!? すみません! 大丈夫ですか!?」


スキルアウトA「痛ってえ!? 何だあ!?」

スキルアウトB「ん? 何だこの娘、結構かわいいじゃん」

スキルアウトC「ねえねえお姉ちゃんお暇? ちょっとお兄さんたちと遊ばない?」


五和「ごめんなさい、私ちょっと急いでて」

スキルアウトA「は? 人にぶつかっといてそれはないじゃん」

スキルアウトB「そーそー。こういうのは誠意を持った謝罪じゃないとねー」

スキルアウトC「誠意を持った謝罪と言ったらもう、あれしかないよねー」クイクイ


五和(くっ、この人たちが俗に言うスキルアウトというヤツらでしょうか? やっかいな連中と関わってしまいました……)


五和「本当に申し訳ございませんでした。申し訳ないのですが、私は本当に急いでて、急がないと私……」

スキルアウトB「そんなこと言ってー、本当はそんなに急いでないんでしょー?」

スキルアウトC「ちょっとだけ遊ぼうよー、そんな時間取らせないからさー」

スキルアウトA「つーかよお、人にぶつかっといてごめんなさいで済むわけねーだろうが! あいたたたぶつかったところが急に痛み出したー」

スキルアウトC「そいつはまずいなぁ。これはもう責任を取ってもらうしかなさそうですなぁ」ニヤニヤ


五和(ど、どうする私? 今なら誰も見ていない。ならば、一瞬で制圧すれば……いや、もし誰かに見られていたら)


建宮『騒ぎやいざこざは起こさないこと』


五和(だ、だったら逃げる……駄目だ、この人たち場慣れしてる。いつの間にか退路が断たれている……くっ、どうすれば)


スキルアウトA「おいおいどーしたぁ? 急に黙り込んでさあ!」

スキルアウトB「それってあれじゃん? つまりオッケーってことでしょ?」

スキルアウトC「そうかそうか。ならさっそく」ワキワキ


五和(……やるしか、ないのか……!?)キッ



??「――何だあ? この渋滞は?」



132 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:40:32.51 ID:0ycj/yMOo


五和(ッ!? だ、誰ッ……!?」


スキルアウトA「あん? 何だこのチビ?」

スキルアウトB「もしかして、俺たちと一緒に遊びたくなっちゃったかなー? おチビちゃん?」

スキルアウトC「いやいやすまねえなあ。テメェじゃまだ早すぎると思うぜチビ助」


??「……おいおい、何勘違いしてくれちゃってんだテメェら? 私は何でこんな人気のないはずの路地裏で、人が通れないような渋滞が起きてるんだって聞いてんだ」ピキピキ


スキルアウトA「ああんっ!? なに調子に乗ってんだクソチビィ!? ガキは手を出されねーと思って調子に乗ってんじゃねえぞ!!」

スキルアウトB「わるいねーチビちゃん。俺たちもあまり優しくないんだよねー」

スキルアウトC「つーわけだ。チビガキは少女漫画でも読んで発情してなぁっ!」


??「…………あン?」ピキピキ


五和(殺気ッ!? でもこの殺気って……ッ!?)



黒夜「チビチビうるせェンだよクソ野郎どもがァ!! 私には黒夜海鳥っつゥ名前があンだよ、あァン!?」ゴパァ





ドガガガガガガガガン!!





スキルアウト達「」プスプス


五和「…………」

黒夜「あっ、そこのおねーさん大丈夫? 何もされなかった?」

五和「は、はい。ありがとうございました」

黒夜「駄目だよー? こんな薄暗い路地裏に女の子が一人で通ったら。今みたいなクソ野郎どもが涎垂らしながら群れてきちゃうよ」

五和「す、すみません。気を付けます」

黒夜「ほんと危なかったねー。私が来なかったら今頃おねーさん、トラウマ確定の4Pが繰り広げられてたかもねえ。三穴責めも余裕だねー」

五和(……な、何なのこの子? 見た目は小学生なのに、何て下劣な発言、それに……強い……ッ)

黒夜「あ、あと一つ、お姉さんに忠告しとかなきゃいけないことがあるんだよねー」

五和「な、何でしょうか……?」

黒夜「お姉さん。外の人間でしょ?」

五和「ッ!? ……ど、どうしてそれを」

黒夜「わかっちゃうんだよねー、そういうのはニオイでさあ。まあ外部の人間ならなおさら言っとかなきゃいけないんだよね」

五和「…………」スッ



黒夜「……殺意っていうのはさあ、もっとちゃんと隠しとかないといけないよ? この学園都市ではさ」


133 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:41:22.87 ID:0ycj/yMOo


五和「さ、殺意……ッ!? な、何のことでしょうか」

黒夜「殺意っていうのはね、ちゃんと隠さないとすーぐ出てきちゃうんだよね。ちょっとこいつ死なないかな、なんて思ったらすぐ出ちゃう」

黒夜「お姉さんさっきの三人組のこと、少しでも殺ってしまおうって思わなかった?」

五和「……い、いえ、そんなこと」

黒夜「あれー? おかしいなあー、たしかに感じたんだけどなー。お姉さんから明確な瞬殺してやろう、っていう意思がさ」

五和「…………」

黒夜「ま、いいや。じゃ、私は行くとするよ。お姉さんもこんな汚い裏通りなんて歩かずに、ちゃんとキラキラした表通りを歩きなよ」

五和「は、はい。ありがとうございます」

黒夜「あ、あともう一ついい?」

五和「……何でしょうか?」



黒夜「そのショルダーバッグの中に隠してる槍、もーちょっと上手に隠した方がいいんじゃないかなー?」



五和「なっ……!?」

黒夜「次会うときは、助ける側と助けられる側じゃなくて、殺す側と殺される側になってることを祈ってるよ、強そうなお姉さん? じゃねー」テクテク


五和「…………」ダラッ

五和(な、何なんですかあの子……? あんな小さな身体で、鋭い殺意で、全てを見通してて……)


ピピピピッ! ピピピピッ!


五和「!?」ビクッ

五和「……な、何だ教皇代理からの電話か」ピッ

五和「五和です」

建宮『おっ、五和。今すぐ戻ってこーい、上条当麻が見つかったのよな』

五和「そ、そうですか。それはよかったです。すぐに戻ります」

建宮『うん? なーんか五和、声が震えてないか?』

五和「えっ、そ、そうですか? 自分じゃわかりません」

建宮『ほほう。もしやあれだろ? 上条当麻がヤバイことになってるのを勝手に想像してガクブル震えてたな? さーすが恋する乙女なのよな』

五和「す、すみません。気を付けます」

建宮『……わかった。すぐに戻ってこい。戻り次第学園都市を出るぞ』

五和「了解です。では……」ピッ


五和「……ふう」

五和(今回のことは、建宮さんには黙っておこう)

五和(何だか嫌な予感がする。もし、これを話したら何だかとんでもないことが起こりそう……そんな予感がする)

五和(……これが学園都市)


五和「……絶対に、負けない……!」ダッ


―――
――



134 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:42:02.09 ID:0ycj/yMOo


同日 18:00

-第七学区・とある公園-


建宮「ほいじゃ、今日はこれで帰るとするのよな」

上条「おう。肉の件ありがとな。助かったぜ」

建宮「あれくらいで礼を言ってくれるならお安いもんなのよな。まあ、インデックスと楽しいしゃぶしゃぶパーティーになるといいな」

上条「……ははっ、そうだな」

五和「…………」

一方通行「……オイ、五和っつったか」

五和「は、はい」

一方通行「オマエ、上条を探しに行ってから随分としおらしくなったじゃねェか。何かあったか?」

五和「い、いえ。特に何も……」

一方通行「そォか……」


建宮「それじゃあまた会おう!」

五和「失礼します」


上条「……行っちゃったな。嵐のように現れて、嵐のように去っていく、ってこういうことなんだろうな」

一方通行「は? 何か違うンじゃねェ?」

上条「えっ、違う?」

一方通行「俺からすれば、何事もなかったかのように現れて、何かクソみてェなモン抱え込ンで去って行ったよォに見える」

上条「? ……つまり、どういうことだ?」

一方通行「チッ、気にすンな。じゃあ俺も帰るぞ」ガチャリガチャリ

上条「おう、肉の件サンキューな。またな一方通行!」タッタッタ


一方通行「…………面倒臭せェ」


――――――


135 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/06(金) 22:44:45.45 ID:0ycj/yMOo
こんなところで天草式の人たち出してていうのもあれやがしばらく再登場しない、というかこのスレ内ではもう登場しません!w
というか再登場まで書くための気力保つのかよってくらい先やで

次回『ホワイトデー準備』
136 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/13(金) 22:00:29.97 ID:d6Ws/u/Ao
まだ読んでる人いたのか・・・(困惑)

投下
137 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/13(金) 22:01:18.75 ID:d6Ws/u/Ao


7.ホワイトデー準備


March Second Thursday 14:00

-黄泉川家・リビング-




テレビ『――さあて、今日も始まりました。今日もお得な情報いっぱいでお送りいたします』




一方通行「…………」ボー




テレビ『――何と、あの『脳を活性化させる一二の栄養素が入った能力上昇パン』に新作が登場!! その名は『脳を活性化させる一八の未元物質が入った能力上昇パン』です!! これで皆さんもレベル5!!』




一方通行「…………」ボー




テレビ『――最近流行りの健康法です!! その名も窒素健康法です!! 何かこれを行うと超健康になれると噂です』




一方通行「…………」ボー




テレビ『――某ラーメン屋の『大盛ラーメン一時間20キロ完食チャレンジ』とかいう無理ゲーがついにクリアされました。何とクリアしたのは中学生くらいの少女でしゅうどうふ――』




一方通行「…………」ボー




テレビ『――来週はいよいよホワイトデー。モテモテだったキミは準備は出来てるかなー? できてないキミにオススメの――』




一方通行「……ホワイトデーか」



138 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/13(金) 22:02:41.43 ID:d6Ws/u/Ao


同日 14:30

-黄泉川家・芳川の部屋-


一方通行「――つゥわけで、ホワイトデーってどォすりゃイインだ?」

芳川「……はぁ。まあ答えてあげてもいいんけど、一つ質問いい?」

一方通行「何だ?」

芳川「何でホワイトデーのことを私に聞くのよ? キミには上条君とか男の子のお友達がいるのでしょ? そっちに聞くのが普通じゃないかしら?」

一方通行「あァ? あンな馬鹿どもに聞いてどォするっつゥンだ。第一こンなモンで相談しよォモンなら絶対ェ舐めた態度取りやがる」

芳川「要するに、お友達に相談するのが恥ずかしいのね」

一方通行「そォじゃねェ。面倒臭せェことは避けるのは普通の考えだろォが」

芳川「はいはい、わかったわかったわ。で、何で私がその相談相手になったのかしら?」

一方通行「たまたまオマエだけがこの家に居たから」

芳川「……じゃあもし淡希が居た場合、そっちに行ってたのかしら?」

一方通行「そォなるな。まァでも、アイツは記憶喪失だからロクな情報引き出せねェかもしれねェな」

芳川「…………」

一方通行「どォした?」

芳川「いえ、私に相談しに来てよかったわね、って思って」

一方通行「……どォいう意味だ?」

芳川「さあね。で、ホワイトデーの何が聞きたいのかしら?」

一方通行「ホワイトデーで何をすりゃイイのかが分からねェ。いや、何となくプレゼントを送りゃイイのは分かるが……」

芳川「そこまでわかってるなら話が早いわね。バレンタインデーにもらったものに対するお返しがするのがホワイトデー。別名、お菓子会社の陰謀」

一方通行「面倒臭せェことしてくれやがったなァお菓子会社」

芳川「というか、キミはてっきりホワイトデーのこと知ってると思ってたのだけど」

一方通行「あァ?」

芳川「だってバレンタインで私がお返しをキミに要求した時、何の違和感もなく会話してたじゃない?」

一方通行「あー、アレはお返しなンて要求するなンざがめついヤツだな、って思っての発言だ。ホワイトデーのホの字も頭になかった」

芳川「あ、そう。まあいいわ、ということで私のお返しは学舎の園のあの店のチョコレートセットで」

一方通行「だから男の俺に入手困難なモン要求すンなっつーの」


139 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/13(金) 22:03:37.20 ID:d6Ws/u/Ao


芳川「……そうだ。これ知ってるかしら? ホワイトデーのお返しはバレンタインの金額の三倍の値っていうの」ニヤッ

一方通行「そうなのか。面倒臭せェルールだな、手作りのヤツとかどォ調べりゃイインだよ価格」

芳川「ちなみにあの店のチョコレートセットは私のコンビニで買ったヤツに比べれば、三倍どころか十倍くらい違うわ」

一方通行「どンだけ安物だったンだよオマエのチョコ」

芳川「いや、そこはあの店のチョコレートセットの金額が高い、ってリアクションするところよ」

一方通行「知るか」

芳川「というわけだから、あの店のチョコレートセットを買えばほとんど文句は言われないと思うわ」

一方通行「そォか。ソイツはイイこと聞いた。そこでまとめて買えばラクでイイ」

芳川「あっ、あとホワイトデーにはこんなルールがあるのよ」

一方通行「まだあンのか」

芳川「渡すお菓子の種類によって意味があるのよ。キャンディだったら『あなたが好き』、マシュマロだったら『あなたが嫌い』、クッキーだったら『友達でいましょう』。ほかにもあるけどこれがメインね」

一方通行「へー、本当に面倒臭せェイベントだなァ、ホワイトデー」

芳川「例えばだけど、淡希にキミからキャンディとか渡したら面白くなりそうだと思わない?」

一方通行「ハァ? そンなことしたら俺が結標のこと好きみてェなことにならねェか? 何が面白れェンだよ?」

芳川「淡希のリアクションとか。どんなリアクションするのか気にならない?」

一方通行「蔑まれながら飴玉を床にばらまかれて終わりだ。何も面白くねェよ。オマエからしたら面白いのかもしれねェが」

芳川「………はぁ」

一方通行「何だそのため息」

芳川「別に。ちなみにだけど、チョコレートは特に意味なんてないからキミみたいな人にはピッタリなプレゼントだと思うわ」

一方通行「……そォか。よォするに俺はクソ高いチョコレートをまとめ買いすりゃイイわけだな」

芳川「キミがそれでいいと思うならそうね」

一方通行「何か引っかかる言い方だな。まァイイ、俺の好きなよォにやる。もともと俺の問題だしな」

芳川「そう」

一方通行「ま、とりあえず礼は言っておく。……その、アリガトよ」

芳川「そんなツンデレありがとうはいらないわ。だからあの店のチョコレートセットが欲しいわ」

一方通行「どンだけ食いてェンだよあの店のチョコレート」


―――
――



140 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/13(金) 22:04:17.97 ID:d6Ws/u/Ao


同日 15:00

-黄泉川家・リビング-


一方通行「オイオイ、どォいうことだ。芳川の言うあの店っつゥのはおそらくコイツだろォが、通販を取り扱ってねェだと?」

一方通行「……つゥか、学舎の園の菓子屋がほとンど通販に対応してねェのかよ。男はどォやったらこの中の菓子を食えるンだよ」

一方通行「チッ、頼みたくねェがヤツを使うしかねェか」つ携帯電話



-第七学区・とある公園-



美琴「――ちぇいさっー!!」グルッ



ドゴッ!! ガコッ



美琴「……よし! ヤシの実サイダーゲット! 今日は何だかいいことありそうね」



<ハナテココロニキザンダユメモミライサエオキザリニシ-テ♪



美琴「ん? 電話……? げっ!?」ピッ

美琴「もしもし?」

一方通行『今さっき「げっ」っつゥ声が聞こえたのは気のせいか?』

美琴「き、気のせいじゃない? ところで何か用? わざわざアンタが電話してくるなんて珍しいわね」

一方通行『オマエにちょっと頼みてェことがあってな』

美琴「頼みたいこと?」

一方通行『ああ。これはオマエにしか頼めェことだ』

美琴「な、何よそんな改まって……」

一方通行『学舎の園の中にチョコレートで有名なあの店があるだろ』

美琴「……あー、たぶんあの店ね。それがどうかした?」

一方通行『ちょっとそこの店でチョコレートのセット買ってきてくれねェか? 二十セットくらい』

美琴「……何? もしかして私をパシリか何かにしようとしてる?」

一方通行『そォいうわけじゃねェよ。ちゃンと金は払う。何なら少し色を付けてもイイ』

美琴「大体、何で私がそんなことしなきゃいけないのよ? 自分で買いに行きなさいよ」

一方通行『それが出来りゃやってるっつゥの。学舎の園に男子禁制とかいうクソみたいなルールがなけりゃいくらでも行ってやるよ』

美琴「……! だったら良い案があるじゃない!」

一方通行『……オマエの言いたいことは大方予想できるが何だ? 言ってみろ』



美琴「アンタ、もう一回女装、やってみる?」キラキラ



―――
――



141 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/13(金) 22:05:06.11 ID:d6Ws/u/Ao

March Second Wednesday 17:30 〜ホワイトデー前日〜

-第七学区・学舎の園入口-


美琴「よし、じゃあ行くとしますか。ね、百合子ちゃん?」

一方通行(以下女装)「オマエは……ホント楽しそォだよなァ!? クソがッ!!」

美琴「そりゃそうよ。楽しくなけりゃ、アンタなんかを学舎の園の中へ入れる手伝いなんかしないっての」

一方通行「チッ、覚えてろよクソガキ……」

美琴「はいはい、それじゃあ早く入りましょ? 時間もそんなにないし」

一方通行「つーか今度は大丈夫なンだろうな?」

美琴「何が?」

一方通行「招待状だ。前みたいにまた仮の招待状で、ID求められても困るンだが」

美琴「大丈夫よ。ちゃんとVIP待遇のきっちりした招待状よ。ほら」スッ

一方通行「……本当に大丈夫なンだろうな、これで」

美琴「少しは信用しなさいよ。まあ、たしかに前のは本当に悪いとは思ってはいるけど……あ、そうだ。何なら一緒に入場してあげましょうか? それなら安心でしょ」

一方通行「付いてくる、っつゥ救済の案を挙げるってことは、何か不安要素があるっつゥ心理が働いてるからだ。違うか?」

美琴「……よーし、じゃあ行きましょー!」

一方通行「図星か。信用を得たいなら用意周到に、不安要素を全て潰さなきゃなァ」カチッ


-学舎の園・入口ゲート-


係員「――次の方どうぞ。あっ、御坂さん」

美琴「ど、どうもです」

係員「わざわざこっち側通らなくてもいいのに」

美琴「あ、あははちょっといろいろありましてね」ピッ

係員「? はい、次の方」

一方通行「……鈴科百合子だ。常盤台二年の御坂美琴、よォするにさっき通ったヤツの招待で来ました(以下姫神ボイス)」

係員「あ、御坂さんのお友達ね」

美琴「あはは、そ、そうですー」

係員「それじゃあ招待状を出してください」

一方通行「はい」スッ

係員「…………」

一方通行「…………」

美琴「…………」ゴクリンコ

係員「……はい、通ってだいじょうぶよ」ウイーン

一方通行「アリガトウございます」ガチャリガチャリ

美琴「……ふぅ」

係員「……あっ、そうだ鈴科さん?」

一方通行「あァ?」

美琴「!?」ビクッ

係員「次来るときはちゃんと制服で来た方がいいわよ? この中で私服って結構目立つから」

一方通行「はい。気を付けまァす」ガチャリガチャリ

142 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/13(金) 22:06:01.07 ID:d6Ws/u/Ao


-学舎の園・エントランス-


美琴「……はぁ、何だかすっごくドキドキしたわ」

一方通行「やっぱり確証がなかったンだな。そのリアクションを察するに」

美琴「う、うるさいわね。だって私招待なんてされたことないし」

一方通行「そりゃそォだな。だが仕組みくらいは知る機会ぐらいあると思うがな」

美琴「ぐっ……」

一方通行「まァイイ。で、目的地のあの店っつゥのはどこにある?」

美琴「ああええっと、たしか製菓店が集まってるエリアの結構奥側よ」

一方通行「そりゃまた面倒な立地だこった」

美琴「裏の方にひっそり建っている、みたいな感じだし。もしかしたら初めてじゃ見つかり辛いところにあるかもしれないわね」

一方通行「クソみてェな店ェ選びやがって芳川の野郎め……」

美琴「ま、そこんとこは安心しなさい。学舎の園の店は全部この頭の中に入ってるわ。隅から隅まで案内できるから、美琴センセーに任せなさい」

一方通行「そンなモン頭に入れるスペースがあンなら、招待状の仕組みの一つくらい入れとけっつゥ話だよな」

美琴「まだ言うか。アンタって意外と陰険でねちっこいのね」

一方通行「意外でもねェだろ。見た目通りのクソ野郎だろ?」


ピーンポーンパーンポーン♪


一方通行「あン? 何だこりゃ」

美琴「この音楽は呼び出しの放送ね」


放送『――常盤台中学二年御坂美琴さん。至急、常盤台中学第三能力開発室へ来てください。繰り返します――』


一方通行「……オマエ、何か呼び出し食らってンぞ」

美琴「私? 何で?」

一方通行「教室の窓ガラスでも割ったのか?」

美琴「割るか! てか割ったら素直にすぐ謝りに行くっての」

一方通行「自販機に蹴り入れてジュースパクってるヤツの言葉だ。信用ならねェ」

美琴「いや、だからアレは自販機のほうが悪いのよ! 私の万札を飲み込んだんだから!」

一方通行「どォでもイイが早く行った方がイインじゃねェのか? 至急って言ってただろ」

美琴「そうね。じゃあぱぱっと行ってくるから、ちょろっと待っててちょうだい」

一方通行「待たねェよ。どれだけ時間がかかるのか分からねェからな。先に店行っておく。何ならさっさと買い物を済ませてここから離脱する」

美琴「あっ、じゃあもし店にたどり着いたら私の名前を出してちょうだい。私の名前で二十セット予約しといたから」

一方通行「ほォ、オマエにしては気ィ利かせてンじゃねェか」

美琴「感謝しなさいよー、普通に行っても買えないんだからねー、あのチョコを二十セットなんてね」

一方通行「アリガトよ。それはそォと早く行って説教されて来た方がイインじゃねェか?」

美琴「だから私何もやった記憶ないって……、それじゃ行ってくる!」ダッ

一方通行「元気なヤツだ。さて、俺も行くか……いや、まだ行けねェよォだな」



一方通行「――隠れてねェで出てきたらどォだ? 第五位」


143 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/13(金) 22:06:50.14 ID:d6Ws/u/Ao


食蜂「……あらぁ、やっぱり気付かれちゃってたぁ? さすがの索敵力ねぇ第一位さん?」

一方通行「何の用だ? 俺は今から買い物しなきゃいけねェから忙しいンだよ」

食蜂「明日のホワイトデーの買い物かしら? 女装してまでこんなところに来るなんてアナタも大変ねぇ」

一方通行「そォいうわけだ。俺は急いでいるから行かせてもらうぞ」

食蜂「何だかつれないわねぇ、せっかくお邪魔虫さんがいなくなってくれたのだから、ちょっとだけお茶でもしない?」

一方通行「……さっきの放送はオマエの差し金か?」

食蜂「そうよぉ。たぶん御坂さんはあと一時間くらい戻ってこれないと思うから、少しくらい付き合ってくれてもいいんじゃない?」

一方通行「関係ねェ。ヤツが居ようが居まいが俺は買い物して帰るだけだ。オマエの存在を介入させる隙間なンてねェよ」

食蜂「そう、それは残念ねぇ。せっかく面白そうな話題を持ってきたっていうのにぃ」

一方通行「面白そうな話題だァ?」

食蜂「うん。アナタなら絶対に食い付くと思うわぁ」

一方通行「……言ってみろ」

食蜂「学舎の園にある隠れたコーヒーの店の話、とか」

一方通行「……くっだらねェ。そンなモンに食い付くわけねェだろ。大体、そンなモン知ったところで俺じゃ通えねェだろ」

食蜂「今女装して絶賛学舎の園に侵入している人のセリフじゃないと思うのよねぇ」

一方通行「今回も緊急事態だからやっているに過ぎねェ。そう何回もこンなことするかよ」

食蜂「うーん、だったらこの話題はどうかしらぁ?」

食蜂「学舎の園の絶景、パンチラスポット! とか?」

一方通行「……おォーおォーすげェすげェ、どっかのピアス付けたエセ関西人が聞いたら頭から飛び込ンで食い付きそうな話題だなァ」

食蜂「これならアナタも食い付くんじゃなぁい? 私の情報網からアナタがロリコンだってことはわかっているわぁ」

一方通行「何だその信憑性皆無の情報網はァ? 俺はロリコンなンかじゃねェっつゥの」

食蜂「えぇー? でもそんなこと言ってるけど実はー?」

一方通行「違うっつってンだろォがクソガキがッ! 大体よォ、仮に俺がロリコンだとしてもそンな情報もらっところでさっきと同じ理由で意味ねェだろォが」

食蜂「だから同じように女装してウォッチングすればいいんじゃないかしら?」

一方通行「生憎だが、俺は女装してガキのスカートの中覗き見るよォなクソ野郎じゃねェンだ。話にならねェよ」

食蜂「そう、ならばこれはどうかしらぁ」

一方通行「もうやめろ。いくらオマエが話題を出したところで俺が食い付くわ――」



食蜂「結標さんの記憶喪失について、とかどうかしら?」ニヤリ



一方通行「…………」ピクッ

食蜂「あっ、やっとまともな反応を見せてくれた。これに関しては興味深々のようねぇ」

一方通行「オマエ、アイツに一体何をするつもりだ?」

食蜂「話が飛躍してるわよぉ。別に私は彼女をどうにかしようなんて思ってないわぁ。ただ、彼女に関してちょっとお話がしたいなぁ、って思っただけだゾ☆」

一方通行「……イイだろ。案内しろ、その茶会の会場によォ」ギロッ

食蜂「ウフフ、そうこなくっちゃ♪」


―――
――



144 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/13(金) 22:08:37.07 ID:d6Ws/u/Ao


同日 18:00

-学舎の園・とある喫茶店-



ウエイトレス「――こちらエクレアとミルクティー、こちらがアイスコーヒーになります」ゴトッ



食蜂「ありがとう」

ウエイトレス「ではごゆっくり」

一方通行「…………」ズズズ

食蜂「あらぁ? ストロー使わないのぉ? 変な飲み方ねぇ」

一方通行「……そォいや、前に超電磁砲にも同じこと言われたな。これで別に問題ねェだろ」

食蜂「景観に配慮されてない飲み方だと思うのだけど」

一方通行「知るかよ。つゥか、そンなどォでもイイこと喋る為にこンなところに来たわけじゃねェだろ。さっさと話を進めやがれ」

食蜂「もぉ、せっかちねぇ。まあたしかにグダグダして御坂さんが戻ってきたら嫌だしぃ、急ぐに越したことないのよねぇ」

一方通行「ついでにそのうっとォしい喋り方もどォにかしてくれると助かるンだが」

食蜂「それは無理な話なんですケド。これが私の自然体で居られる喋り方なんだゾ☆」

一方通行「だったら敬語で話せ。年上は敬えよクソガキ」

食蜂「アナタが言うな、って言った方がいいのかしら?」

一方通行「チッ、話ィ始めろ」

食蜂「そうねぇ、じゃあまず手始めに、結標さんとは仲良くやってる?」

一方通行「仲が良いの定義が何だか知らねェが、別に何の問題もなく過ごしてるとは思っている」

食蜂「そ。なら、楽しい? その生活」

一方通行「……俺に相応しくねェモンだとは思うが」

食蜂「ふーん、つまり楽しいってことかなぁ? いいわねぇー楽しくて」

一方通行「何勝手なこと言ってンだオマエ」

食蜂「じゃあ楽しくないわけぇ?」

一方通行「…………」

食蜂「駄目よぉ、そんな遠回しな言い方でどっちつかずの答えを出して、話を逸らしても私にはアナタの考えてることが手に取るように分かるのよぉ?」

一方通行「チッ、分かったところで何だってンだ」

食蜂「別にぃ。あっ、一応言っておくけど特に言いふらしたりしないわぁ。言いふらしたところで何も面白くないのよねぇ」

一方通行「そォかよ。そりゃ残念だったな面白くなくて」

食蜂「じゃあそんな楽しい楽しい生活を送っている一方通行に質問です」





食蜂「いつまでこの『偽り』の生活を送っていくつもりなのかしらぁ?」




145 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/08/13(金) 22:09:34.25 ID:d6Ws/u/Ao


一方通行「……どォいう意味だ?」

食蜂「そのままの意味よぉ。アナタのこの日常はいずれ破綻することは確定しているわぁ。なのに流されるままこの日常に甘んじているアナタは一体、いつまでこれを続けるつもりのかなぁ? っていうコト♪」

一方通行「破綻する、だと?」

食蜂「ふふっ、本当は分かってるクセに、そうやって分からないフリをする。そうやって守っているのよね、アナタ自身を」

食蜂「だったらそんなアナタにきっちり説明してあげるわぁ。アナタの逃げ場をなくしてあげる」

一方通行「…………」

食蜂「まず、その話をするには結標さんの記憶喪失について説明しないとね」

一方通行「アイツの記憶喪失、だと?」


食蜂「そう。そもそも記憶喪失っていうのは三つのパターンがあるのよぉ。一つは元ある人格から記憶が消え去るパターン、まあこれが一番よくあるヤツよねぇ」

食蜂「例を言うならお酒の飲みすぎで昨晩の記憶がない、みたいなのがそうよねぇ。もっともポピュラーな記憶喪失かも」

食蜂「ちなみに、このパターンなら何かしらの刺激が脳に走ったら、もしかしたら記憶が蘇る可能性があるかもしれないわぁ」


一方通行「……二つ目は?」


食蜂「二つ目は記憶が跡形もなく破壊されるパターン。これはそのままの意味よぉ。脳に記憶そのものが跡形もなく消滅していまうのよ」

食蜂「身近な実例が思いつかないから省くけど、この場合は文字通り破壊されたことになるから、どんな刺激があろうと記憶が戻ることは決してないわぁ」

食蜂「これは滅多なことじゃ起きないから、一番珍しいパターンだと思う。ま、私の超能力を使えばそんなのも余裕なんですケドね」


一方通行「オマエそンなことやってンのかよ。趣味の悪りィヤツだ」

食蜂「出来ると言っただけでやったことがあるとは言ってないわよぉ。それに別に命を取るわけじゃないんだから、それくらいいいんじゃないかしらぁ?」

一方通行「人にとっては記憶は命と同価値足りえる場合だってある。やってることは人殺しに等しいぞ」

食蜂「それはアナタには言われたくないんですケドぉ」

一方通行「チッ、そォだったな。で、最後の三つ目は何なンだよ」

食蜂「最後の三つ目、これは結標さんに当てはまる症状よぉ」

一方通行「結標の?」


食蜂「三つ目は元の人格が記憶の奥底に押し込まれて、代わりの人格が意識を乗っ取る、っていうパターンよ」

食蜂「よく聞く事例だと、カッとすると周りが見えなくなって暴れだして、そのあと『自分はいったい何をやったんだ?』みたいな人いるじゃない? あれも一種の記憶喪失ってワケ」

食蜂「結標さんはそのロングバージョンってことになるのかしらぁ? 元の人格が記憶の引き出しの奥底に押し込まれて、代わりに今の人格が結標さんを演じているのよぉ」



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