結標「私は結標淡希。記憶喪失です」

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1 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:39:09.88 ID:J2dUQG+b0


1スレ目
一方通行「バカみてェな三下を顔面パンチしたら記憶喪失になった」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1328838816/
2スレ目
結標「何でコイツと同じクラスなのよ!?」一方通行「それはコッチのセリフだ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1331555151/
3スレ目
一方通行「もォ今年も終わりか」結標「何だかあっという間よね……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1335711061/
4スレ目
結標「わ、私が……」一方通行「超能力者(レベル5)だとォ!?」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363437362/

スレタイ通りあわきんが記憶喪失になってる、一方さんとあわきんコンビのラブコメ?です

※注意事項

>>1の勝手な想像で物語が進むので、設定改変・キャラ崩壊・ご都合主義しかない

新約11巻くらいまでで止まってる知識

基本台本形式

週一更新できるといいね


もうオワコンかもしれないけどシコシコやっていくわ





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1625323149
2 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:40:39.52 ID:J2dUQG+bo


風が吹き荒れる中、二人の能力者が相対していた。



一人は少年だった。

触れたら折れてしまいそうな華奢な体。
透き通るような白い肌を持ち、肩まで伸ばした髪の毛は、それに同調するよう黒をそのまま脱色させたような白色をしていた。
中性的な顔立ちからして、知らない人間が見れば白人の女性と見間違える人がいてもおかしくないだろう。
全体的に白で統一された容姿だが、瞳は真紅に輝いていて、彼の圧倒的存在感を助長させていた。


一人は少女だった。

腰まで伸びる長い赤髪を二つに束ねて背中に流している、歳相応の顔付き、体付きをした至って普通の少女、いや、至って普通と形容するのは間違えだと感じる。
彼女の右手には軍用懐中電灯という、その姿に似付かわしくない物が握られているからだ。
警棒を兼ねることが出来るそれは使い方によっては凶器にもなるようなもの。
そのような暴力を、まるで手に馴染んだシャーペンを気軽さに持っているかのように、手に持っているからなおさらである。


「――つーかよォ」


白い少年が呆れた様子で口を開いた。


「オマエみてェな格下がこの俺に楯突こォなンざ、本当に面白れェ話だよなァ? ホント馬鹿みてェなヤツだなオマエって女はよォ」


「…………ふふっ」


神経を逆撫でするような言葉を受けても少女は特に気にする様子もなく、不敵に笑う。


「そんなこと言っちゃってもいいのかしら? 今の貴方の置かれてる状況っていうのはお分かり?」


「あァ? 何言ってンだオマエ?」


「……やっぱり分かっていないようね。本当に理解できるような人なら、普通貴方みたいな口答え出来ないはずだもの」


一呼吸を置き、少女は勉強を楽観視する成績不振の生徒へ現実を告げる教師のような口調で語りかける。


「最初はお互いたくさんの仲間達がいたわ。もちろん貴方にも、一人一人が頼もしくて力になってくれるような仲間がいたわけよ。……でもその頼りになる貴方の仲間たちは次第に数が減っていった。一人減ってはまた一人、って具合にね」


手持ち無沙汰になったほうの手で、軍用懐中電灯を適当に触りながら少女は続ける。


「それに比べて私たちは誰一人欠けていないわ。当たり前よね。そういう風になることは、最初から誰もが分かっていたことなのだから。これはそういうものなんだって」


「…………」


少年は特に反論もすることなく少女の方へ顔を向けていた。


「……つまりは多勢に無勢、いや、そういうレベルを明らかに超えてる絶望的な状況……そうね。まさしく貴方は今絶体絶命の状況へ陥っているってわけ」


少女が言った多勢というのは嘘でも妄言でもない。たしかに彼女の周りにはたくさんの人影があった。
その人影は獲物を逃がすまいと少年を取り囲むようにと広がっている。
絶体絶命。彼女が言ったように少年は端から見ればそういう状況にある。


3 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:42:03.87 ID:J2dUQG+bo


少女の言葉を聞いた少年は、周りの人影をぐるりと見渡した。
そして、


「…………ぎゃはっ」


笑った。泣くこともなく、驚くこともなく、怒ることもなければ絶望することなく。
少年はただ、不気味な笑みを浮かべて笑った。


「ったく、グダグダと何を話すつもりなのかと思ったがただの状況説明かよ、くっだらねェ」


少年は呆れながらため息をつき、続ける。


「たしかに俺は一人だ。仲間と言えるよォなヤツらがいたことも事実だ。オマエにはたくさんの仲間っつゥのがいるってのも現実だ。だけどよォ、違うンだよなァ……オマエは根本的な部分を間違ってンだよ」


「間違っている……? 一体どこを間違っているというのかしら?」


「その考え方だよ」


頭をクシャクシャと掻きながら少年は続ける。


「状況的に考えりゃオマエは有利な状況にあるだろォよ。誰が見てもそれは明白だ。これを見てどっちが勝つか賭けようぜ、って話になったら大穴狙いの馬鹿以外は全員オマエが勝つって方にベットするってぐれェ圧倒的な有利だ」


彼が言っていることはまさしくその通りだ。
例えるなら将棋で全ての駒が揃っている万全な状態と、王将以外の駒全て落とされた危機的な状態、パッと見てどちらが勝つでしょうと言われているようなものである。
大多数の人間は数が多い方が勝つと予想するだろう。それが将棋のルールを詳しく知らない人でもだ。
それくらい当然のことを彼は言っている。


「じゃあ有利、っつゥのは何だ? オマエらに勝ち筋が出てくるっつゥことか? 場の勢いってのがソッチに流れるっつゥことか? ……いや、もっと単純に言ってやる。オマエ自身が強くなるっつゥことか?」


「……そうね。流れってのは結構あると思うわよ。スポーツだってプロの世界もアマの世界も必ず流れがある方が勝つわ。格下が格上に勝ったって事例結構聞くけど、結局それは格下側に流れがあったに過ぎないわ」


「そォだな。オマエの言ってることは本当に間違ってねェ、至極真っ当なことだ。だからこそ違うンだよ」


首を左右に揺らしポキポキと音を鳴らしながら少年は指摘する。


「たとえ流れっつゥのが全部オマエ側にあるとして、オマエが人生の中で最高潮といえる場面で、最高の力を発揮できる最強の状態にあったとしてもよォ――」


少年の呆れた表情が一変し、口元を引き裂くような笑みを浮かべた。



「別にこの俺が弱くなったわけじゃねェだろォが!! どンな状況だろォと覆らないその根本的な部分をわかってねェンだよオマエはッ!!」



「…………そうね。貴方の言うとおりかもしれないわ」


少年の咆哮を受けて少女は肯定する、が。


「でも勝負ごとにはもしかしたら、ってことがあるのよ? 全部が全部、貴方の言うようになるとは思わないことね」


その瞳には敗北の色など一つも見えていなかった。


「チッ、くだらねェ。奇跡なンてモン崇拝したところで何も変わンねェってこと、この俺が分からせてやるよ」




4 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:42:49.18 ID:J2dUQG+bo


両者が身構える。瞬間、音を上げながら吹き荒れていた風が止んだ。
まるで二人の威圧に怖気付いたかのように。
数秒間、両者の睨み合いが続いた。二人の口が一斉に開く。


「「…………勝つのは――」」


少年と少女の姿が一瞬にして消えた。




































一方通行・結標「「――俺(私)たちドロボウ(ケイサツ)だッ(よッ)!!」」







5 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:43:32.82 ID:J2dUQG+bo


シュバッ! バッ! ドッ! ズァン!!


吹寄「……何ていうか、別格、よね?」

姫神「うん。私たちがあの二人に割って入るなんて。逆立ちしても無理」

青ピ「これもはやケイドロやないやろ。もうこれただのドラゴンボールやん。出たり消えたりまさしくヤムチャ視点ですやん」

土御門「なぁにカミやんなら余裕で付いていけるだろ。さぁカミやん、ゴー・トゥ・ヘル!」

上条「付いていけるかッ!! そもそも俺からしたらアレはヤムチャ視点どころじゃねえからな? 戦闘力5のおっさん視点だぞ舐めるな!」

青ピ「またまた謙遜しちゃってー、チャパ王クラスの力はあるんでしょー?」

上条「誰だよそれ!? つーか絶対そいつヤムチャより弱いポジションのキャラだろ!? 結局駄目じゃねーかよ!」

吹寄「ちょっとうるさいわよドロボウども!! 捕まったんだから円の中で大人しくしときなさい!!」

上条・土御門・青ピ「「「はーい」」」

姫神「……でも。青髪君が言ってることもよく分かる」

青ピ「おおっヒメやんの同意をいただいたっ!? これはアレですわ、ヒメやんルート確定のフラグが……!」

土御門「そのフラグ差す穴、すでにセメントか何かで埋め立てられてないかにゃ―?」

姫神「いつも通りの日常だったら。何てことないことで笑い合えるような。私たちと何も変わらない感じだけど。『能力有りケイドロ』みたいな『能力』が関わるだけで距離を感じるというか……別人みたく感じる」

上条「そうか? 別に何も変わらないと思うけど? 一方通行は一方通行、結標は結標だろ?」

吹寄「たしかにそうだけど、別人みたいってのは分かるわ。だって――」


一方通行「あはっ、ぎゃはっ! オイオイ遅せェ遅せェぞ格下ァ!? せっかくハンデで反射切ってやってンのによォ、そンなンじゃ百年経っても追い付きゃしねェぞォ!!」

結標「ぐっ、今に見てなさい……すぐに取っ捕まえてその格下呼ばわり辞めさせてやるわよ!!」


吹寄「二人とも、何というか楽しそうに笑ってる気がするわ。あたしたちと一緒のときとはまた別のベクトルの笑顔」

青ピ「まあアクセラちゃんに限っては同意や。能力使ってるときの笑顔はホント恐怖を覚えるわ」

上条「そりゃお前がいつも馬鹿やってアイツ怒らせてるからだろ」

吹寄「ま、だからと言って別に何かが変わるわけじゃないんだけどね」

姫神「そうだね。何も変わらない」

土御門「…………」

上条「どうした土御門? そんなシリアスな顔して?」

土御門「いや、別に何でもないんだぜい。てか何だよシリアスな表情って? そんなものこんな状況でするわけないにゃー」

青ピ「つっちーがシリアスぅ? あはははははっ、なにそれすごぉ似合わなさそうやなー!」

土御門「……よーし、あとでシリアスごっこしようか。タイトルは『突然の仲間の死』。もちろん死人役はお前だ青髪ピアス」

青ピ「ぎゃあああああああああああああっ!! 土御門君がシリアスな顔で手の骨パキポキ言わせとるぅー!? ヘルプカミやん!!」

上条「大人しく死人役になればいいんじゃないかな?」

青ピ「誰にでも手を差し伸べることに定評があるヒーローに見捨てられたっ!? 話が違うでカミやん!!」

上条「誰だよそんな評価してるヤツ」

吹寄「どうでもいいけどあんまり暴れるんじゃないわよ。今はケイドロ中だから」

姫神「と言っても。もうすぐ終わる時間」

土御門「さて、超能力者(レベル5)の第一位(首位)と第八位(最下位)が本気でやり合ったらどちらが勝つのか、って言っても考えるまでもないかにゃー」


―――
――



6 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:44:32.54 ID:J2dUQG+bo


1.上条当麻補習回避大作戦


February Third Friday 15:40 〜帰りHR前休み時間〜

-とある高校・一年七組教室-



ワイワイガヤガヤ



結標「――だーかーらー、あれは絶対に触れてたわよ! だから私の勝ちよ!」

一方通行「あァ? 何言ってンだオマエ? 指の神経ついにイカれちまったンじゃねェの?」

結標「いやたしかにあれはタッチ出来てたわよ! 未だに指に感覚が残ってるし……」

一方通行「一瞬でも俺を出し抜けられた喜びが大きすぎて、脳内で有りもしない感覚を勝手に生み出したってだけの話だろ」

結標「ぐ、ぐぬぬ……絶対、絶対触れてたわよ……」

一方通行「いつまでもよく分からねェ勝敗に拘りやがって。ガキかなンかなのかオマエは?」

吹寄「そこで気を使って勝利を譲ってあげないあなたも十分子供だと思うけど?」

一方通行「ハァ? 何言っちゃってくれてンですかねェこのアマは? アレはどォ考えたって俺の勝ちだろォが」

吹寄「ほらっ、やっぱり子供」

一方通行「……チッ、うぜェ」

姫神「拗ねてる……やっぱり子供?」

一方通行「子供じゃねェ!」

土御門「まあ別にいいんじゃないか? あれは正直どっちが勝ったって言ってもおかしくないくらいギリギリ限界の勝負だったぜい」

青ピ「せやなぁ、まさしく紙一重ってヤツやったな」

上条「たしかにな。実際の勝敗はどっちなのか分かんねえけど、最後はお前に届くか届かないかのところまで追い詰めたのは事実なんだ。そこだけは認めてやってもいいんじゃねえか?」

結標「上条君……」

青ピ「あっ、カミやんがまた一級建築士の力を遺憾なく発揮しようとしとる!」

吹寄「上条当麻……貴様……!」

上条「あれ? 何かよく分からない理不尽がそこにある気がするぞ!?」

一方通行「……いや、別に俺は別に結標の実力を認めてないわけじゃねェよ。俺の移動する位置を完璧に予測してそこに飛んできたわけだからな」

結標「そ、そうなんだ……ちゃ、ちゃんと認めてはくれてたのね……」

一方通行「だが俺が勝ったっつゥ事実は揺るぎ無ェけどな」

結標「……はぁ、わかったわよ。今回は貴方の勝ちよ。もともと触れたか触れてないかなんて曖昧なことをせずに腕を鷲掴みとかにしとけばよかった話だし」

青ピ「どちらが大人か子供かひと目で分かる瞬間やったな」

一方通行「今すぐ捻り潰してやるよオマエ」ニヤァ

青ピ「で、出たッ! アクセラちゃんのデススマイルや! ボクの寿命がマッハで縮んでいくぅ!!」


ガラララ


小萌「はいはーい! 皆さん帰りのホームルームを始めたいと思いますのでとっとと席に着いちゃってくださーい!」


青ピ「よっしゃ天使降臨や! アクセラちゃんに削られた寿命を一瞬でベホマズン!!」

上条「無駄にMP消費させてんじゃねえよ、ホイミでいいだろホイミで」

一方通行「チッ、うっとォしい……」


7 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:45:16.91 ID:J2dUQG+bo


小萌「――ええと、来週から三学期の勉学を締めくくる期末考査が始まりますが、皆さんテスト勉強はバッチリ出来ているでしょうかー?」


<ナ、ナンダッテー!! <そ、そんな理不尽なことがあるっていうの!? <ああ神よ…… <ふっ、楽しい人生だったぜ……


結標「……あっ、そういえばそんなのあったわね。すっかり忘れてたわ」

一方通行「くだらねェ」

結標「クラスが阿鼻叫喚状態だけど貴方は相変わらず余裕そうね」

一方通行「そりゃそォだろ。俺はそンなどォでもイイテスト如きでうろたえるよォな馬鹿じゃねェよ」

結標「前の期末テストでひどい点数を取ってしまって、冬休みの半分を補習で過ごした一方通行様のセリフじゃないわよね?」

一方通行「そンな記憶、脳みそから刹那で消え去った」

結標「随分と都合のいい脳みそね……」

一方通行「つゥかよォ、まず心配すべきなのは俺じゃなくてアイツだろォがよ」

結標「アイツ……?」


上条「……完ッ……全ッに、わ・す・れ・て・た……!」ガクリ


結標「あっ……、そういえば上条君も補習メンバーの一人だったわね」

一方通行「補習レギュラー言われてるくらいだ。今回もあえなく撃沈して惨めな補習ライフを受けるンだろォな」

結標「……まあ、たしかにただでさえ短い春休みを根こそぎ持っていかれるわけだから惨めと言ったら惨めよね」


小萌「――そういうわけなので、皆さんしっかりテスト勉強をしてから本番に望んでくださいねー」

小萌「あ、あともちろん赤点なんて取ったら問答無用で補習ですからねー。というわけで春休み中の予定は空けといてくださいね上条ちゃん?」


上条「何か既に俺の補習確定してるみたいな口ぶりなんだけど!? まだ戦いは始まってすらいないのに!?」

土御門「そりゃカミやんはこの一年間全ての補習に参加した、不名誉な皆勤賞受賞候補者だからにゃー。もはや補習回避する未来のほうが考えられないぜい!」

青ピ「カミやんが補習を回避するとき、すなわちそれは学園都市が崩壊を起こすときやで!」

小萌「あっ、ちなみに今回のテストはどの教科の先生も難しめに作ると言ってましたので、土御門ちゃんや青髪ちゃん、その他諸々の皆さんも勉強頑張ってくださいねー」

青ピ「なっ、何やって……? 何でこんな時に限って本気出してんここの教師陣……? 人から休日を奪う気満々じゃないですかやだー!!」

土御門「糞ッ! 迂闊だった! 前回のテストがチョロかったから今回も余裕だと思っていたのに……! あの難易度の低さは年末だったからか!!」

上条「…………小萌先生ッ!!」

小萌「!? は、はい何ですか上条ちゃん!?」ビクッ

上条「いいぜ、テメェが俺の春休みが補習で潰れるなんて本当に思っているんなら……、ますはその幻想をぶち――」



ゴッ!!



上条「ころふぁっ!?」

吹寄「先生をテメェ呼ばわりしてるんじゃないわよ!! この馬鹿者がッ!!」

結標「……し、締まらないわね」

一方通行「つゥか、幻想じゃねェからあの右手じゃ壊せねェだろ……」


―――
――



8 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:46:11.76 ID:J2dUQG+bo


同日 16:00

-とある高校・一年七組教室-



上条「――というわけで俺に勉強を教えて下さい!! 神様仏様第一位様ッ!!」



一方通行「ハァ? 何で俺がそンなことしなきゃいけねェンだよ? つゥか月詠に啖呵を切ろォとしたヤツのセリフとは思えねェよなァ」

上条「そこを何とか頼んます!! お願いしますよアクセラえもーん!!」

一方通行「ぶっ殺されてェのかオマエはァ!?」

上条「マジお願いッ!! このとおーり!!」ドゲザ

一方通行「何だこのヒーロー!? プライドの欠片もねェ!?」

結標「……別にいいじゃない。教えてあげれば?」

一方通行「面倒臭せェ。つゥか、コイツ端から自分のチカラで切り抜ける気ねェから気に入らねェ」

吹寄「たしかにアクセラの言うとおりにね。普段からきちんと勉強してたらこういう自体には普通陥らないもの」

姫神「自業自得。というやつ」

上条「……ようするに自分で勉強して切り抜けろ、と?」

青ピ「せやな」

土御門「そうだぜいカミやん。もしかしたらアクセラちゃんに教わるよりは自分で頑張ったほうが赤点回避率上がるかもしれないぜい」

一方通行「あァ? そりゃどォいう意味だ土御門クン?」ピキッ

土御門「アクセラちゃんの頭は理数系を全て百点を取るという素晴らしいものだけど、同時に文系の教科は悲惨な結果を生み出してしまう、残念なものでもあるんですたい」

一方通行「誰の頭が残念だってェ!?」ピキピキ

結標「まあまあ落ち着きなさいよ。現代文で残念な点数だったのは事実だからしょうがないじゃない」

一方通行「そンな記憶はまったくないンだけどよォ」

結標「そのセリフを言うたびに、どんどん残念になっていくような気がしてならないんだけど……」

土御門「ま、そういうわけで国語の能力が低いアクセラちゃんに教わるくらいなら、素直に教科書見てたほうが能率が上がるかもって話だにゃー。ようするに頼む相手を間違ってるって話」

青ピ「そうやでカミやん。大人しく成績優秀な女子連中に頼みぃ」

上条「……うーん、でも別にそんなお前らが言うようなヤツじゃねえけどな一方通行。前に冬休みの宿題見てもらったときもわかりやすく解説してくれたし……理数系限定だったけど」

一方通行「どちらにしろそれじゃ理数系しか点数取れねェじゃねェか」

吹寄「あっ、ついにあの黒歴史を認めた」

姫神「これも一種の成長?」

一方通行「成長もクソもねェよ。文系の科目は教えンのが面倒なだけだ」

青ピ「何言うとんアクセラちゃん。単に分からないから教えられなぎゃああああああああベクトル操作で髪引っ張るのやめ、禿げ、禿げちゃううううううううう!!」


9 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:48:27.56 ID:J2dUQG+bo


一方通行「そォいうわけで他ァ当たるンだな。俺以外に適任者がいンだろ、このアホが言うみてェにそこの女三人」

吹寄「そんなこと言われてもこっちも勉強しなくちゃだし、上条当麻を全教科赤点回避出来るまで仕上げてたら自分の足を掬うわ」

姫神「手伝ってはあげたいけど。今回は私も少し余裕がない」

結標「私は別にいいわよ。最終調整なんて前日にぱぱっとやれば大丈夫だし」

吹寄「さ、さすがレベル5。言ってることはただの一夜漬けと意味は変わらないんだけど、余裕感のようなものを感じるわ……」

一方通行「じゃ、決まりだな。勉強はコイツに見てもらえ。よかったな、心強い先生が見つかって」

上条「お、おう。よろしく頼むよ結標」

結標「ええ、任せて。必ず補習回避させてあげるわ!」

青ピ「だったらせんせー! ボクも今回デッドゾーンなんで勉強教えてくらさーい!!」

土御門「にゃー! オレもオレもー!! このままじゃ貴重な休日を地獄のような補習で潰されてしまうんだぜい!!」

結標「え、えっと、さすがに三人同時はちょっとキツイかなー、何て」

吹寄「そうよ馬鹿ども。アンタたちはまだ上条の馬鹿よりはマシなんだから一人で何とかしなさい!」

青ピ「ええっー!? 何を言うとん吹寄さん! ボクらは三馬鹿、デルタフォースやで!!」

土御門「マシなんて言葉は通用しない! オレたちはクラスの最底辺、もはやそういうレベルじゃないんですたい!」

上条「さっきまで散々俺のことを補習レギュラーとか罵ってたくせに、こういう時だけ同レベル宣言かよ!」

結標「うーん、できればみんな補習は回避しては欲しいんだけど。うーん……はっ」ピコン

一方通行(何か知らねェが嫌な予感がする……)




結標「私にいい考えがあるわ――」




結標淡希。超能力者(レベル5)の第八位。能力名『座標移動(ムーブポイント)』。
彼女は5ヶ月以上前の思い出が無い、いわゆる記憶喪失だ。
思い出がない、その頭の中にすっぽりと開いた穴を埋めるために、彼女は思い出作り的なイベントには積極的に参加する『イベントならとりあえず参加しとこ脳』である。
それはクリスマスやバレンタインといった勝手に始まる受動的なイベントはもちろん、自分からイベントを起こして参加したりもする。
つまり――




結標「――どうせだからみんなで勉強会とかしてみない?」



一方通行(――面倒臭せェ女だっつゥことだよクソったれが)



―――
――



10 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:49:04.29 ID:J2dUQG+bo


February Third Saturday 09:30

-第七学区・とあるファミレス-


一方通行「……ハァ、休日だっつゥのに、何でこの俺がこンなところに出張らなきゃいけねェンだよクソが」

結標「いいじゃない別に。どうせ家に居たって寝転んでるだけでしょ?」

一方通行「あァ? 俺がいつも寝てるだけで休日を過ごしてる思うなよ? 例えば缶コ――」

結標「缶コーヒーを堪能するでしょ? 毎日のように飲んでるのだから今日ぐらいいいじゃない」

一方通行「日頃の鍛錬ってモンは毎日続けるからこそ力がつく。だが一日でもそれを怠ると精度が下がっちまうンだよ」

結標「いつから缶コーヒーを飲むことが鍛錬になったのよ? 貴方はコーヒーソムリエでも目指すつもりかしら?」

一方通行「ケッ、何言ってンだオマエ? 缶コーヒーの飲み比べなンてしたところで、そンな大層なモンになれるわけねェだろォが」

結標「ムカつく! わざわざこっちが話合わせてやったのに、哀れみの目で見てきてるコイツすごくムカつく!」

一方通行「ハイハイ。……つゥかよォ、勉強会とかいうクソくだらねェ行事ってたしか10時からじゃなかったか?」

結標「うん、そうだけど」

一方通行「何で集合時間30分前だってのに俺らはここにいンだよ。オマエの時計だけ30分狂ってンのか?」

結標「ん? 何か問題でもあるかしら? 別に遅れてるわけじゃないからいいじゃない」

一方通行「そォいうことじゃねェンだよなァ。30分も早くここにいる意味を聞いてンだよ俺は」

結標「別に意味なんてないけど」

一方通行「……オマエ、30分あったら何が出来ると思う?」

結標「んーと、何だろ? ……いざ考えてみると思いつかないわね、何なのよ?」

一方通行「決まってンだろ、睡眠だ」

結標「えぇ……」

一方通行「何だその『コイツつまらね』みてェな目は?」

結標「いや、だってあまりに予想通りかつ別に30分使ってやることじゃないだろ、って答えが返ってきたから」

一方通行「オマエ分かってねェよ。睡眠時間30分延長することの重要さについてをよォ」

結標「知らないわよ……あっ、二人来たわ」

一方通行「あン?」


吹寄「おはよっ、早いわねお二人さん!」

姫神「おはよう。まさかもう来てるとは思わなかった」


結標「おはよっ二人とも。別に早くはないわ、さっき来たところよ」

一方通行「さっきっつっても、集合時間の30分前とかいうアホみてェな時間には来てたわけだけどな」

吹寄「時間に遅れないように心掛けるのはいいことよ」

一方通行「限度っつゥモンがあンだろォが」

姫神「別に。30分ぐらい許容範囲じゃ?」

一方通行「チッ、30分の重要性が分からねェのかオマエらは?」

吹寄「分からないことはないけど、別にそれとこれとは話は別じゃないかしら?」

姫神「起きる時間は基本的には毎日変わらない。だから関係ない」

結標「残念ね一方通行。ここに貴方の理解者はいなかったようね」


11 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:49:42.90 ID:J2dUQG+bo


一方通行「チッ、くっだらねェ。オイ店員!」ギロッ


ウェイトレス「は、ハイっ!?」ビクッ


一方通行「コーヒー一つ。ドリンクバーのじゃねェぞ?」

ウェイトレス「か、かしこまりました!」スタター

結標「……何て顔して頼んでいるのよ?」

一方通行「あァ? 別に普通だろ」

吹寄「逃げるようにこの場を去っていったわね」

姫神「明らかにウェイトレスさんを睨みつけてた」

吹寄「……そういえば今回の主賓である馬鹿三人はまだ来てないようね」

一方通行「そりゃまだ集合時間来てねェからな」

吹寄「でも教えてもらうって立場なんだから、普通は早く来てそれなりに準備とかするんじゃないかしら?」

一方通行「そンなことするヤツらがテスト直前で泣き付くみたいな真似するかよ」

結標「まあ、待ってるのも何だし私たちだけでも先に始めちゃう?」

姫神「賛成。時間は有効活用しなくちゃいけない。時は金なりと言うし」

吹寄「じゃあ結標さん数学教えて! 今回証明とかあって結構難しくて」

結標「いいわよ。じゃあ教科書とかの簡単な問題から慣れていきましょ?」

一方通行「……あァ、眠っ」フワァ

姫神「アクセラ君」

一方通行「ンだよ?」

姫神「現代文とか勉強しとかなくてもいいの? 前回の結果からして。苦手な科目なんでしょ?」

結標「そうよ一方通行。また現代文のせいで補習なんて展開にしないためにも、きちんとやっときなさいよ」

一方通行「面倒臭せェ。今さら何やろォが待ってる結果は同じだ。だったら無理に知識詰め込む必要ねェだろ」

吹寄「ちょっとアクセラ! もしかして諦めるって言うつもり!?」

一方通行「ハァ? 諦めるゥ? 俺がかァ?」

吹寄「さっきの口ぶりからしてそうにしか聞こえなかったんだけど……」

一方通行「何言ってンだ吹寄? そもそも俺に諦めるっつゥ選択肢なンて存在しねェだろォが」

吹寄「えっ?」


一方通行「俺はそンな悪あがきしなくてもよォ、補習なンてモンに参加することはまずありえねェンだよ」


吹寄「…………」

姫神「…………」

結標「…………」

一方通行「?」



三人(ダメだコイツ。前回のテストから何一つ学んでない……!)



12 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:50:29.69 ID:J2dUQG+bo


一方通行「ま、そォいうわけでオマエらは俺に気にせず勉強してろ」


ウェイトレス「――お、お待たせいたしました。特製コーヒーです」カチャリ


一方通行「ン」スッ

一方通行「…………」ズズズ

一方通行「あァ、コーヒーうめェ……」


結標「……そうだ。私たちも何か頼む?」

吹寄「とりあえずドリンクバーは絶対にいるわね。まだ食べ物って気分じゃないから食べ物はいいと思うけど」

姫神「うん。食べ物はお昼になってからでいい」

結標「了解。じゃあウェイトレスさんドリンクバー三つで」

青ピ「あっ、あとお姉さんのスマイル一つで」

ウェイトレス「……えっ?」

結標「…………」

姫神「…………」

一方通行「…………」ズズズ

青ピ「……ん? あれ? 何この空気?」



ズガシャッ!!



青ピ「ほげぇ!?」

吹寄「ど、どっから湧いてきたのこの馬鹿者ッ!!」

姫神「おはよう青髪君。相変わらず唐突に待ち合わせ場所に現れるね」

結標「もしかして青髪君って空間移動能力者(テレポーター)? それとも光学操作系の能力者かしら?」

青ピ「ボクは正真正銘ただの無能力者(レベル0)だす。そんな高度のことできないだす」

一方通行「喋ってねェと影が薄いだけじゃねェのか? あと、その気持悪りィ口調今すぐやめろ」

姫神「アクセラ君!!」

一方通行「ッ!? な、何だ? いきなり声を張り上げて」ビクッ

姫神「青髪君レベルで!! 影が薄いなんて!! 言っては!! 絶対に!! いけない!! 絶対にッ!!」

一方通行「お、おォ悪りィ」

吹寄「次からは普通に現れなさいよ? このアホ髪バカスが」

青ピ「ふふふっ、ここで『YES』と言ったらボクがボクじゃなくなるんやで? あとバカスのところをエロスにしてもらえると興――」



グリシャッ!!



結標「あっ、ウェイトレスさん。ドリンクバーもう一つ追加で」

ウェイトレス「は、はいかしこまりました」


13 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:51:14.13 ID:J2dUQG+bo


同日 10:10


吹寄「さて、バカアホマヌケが来たからあと二人ね……ってもう集合時間過ぎてるじゃない!!」

青ピ「吹寄さん。もはや原型を留めてないんですけど」

一方通行「おそらく上条は、インデックスの昼メシとか作ってるだろォから時間には間に合わないな。隣人の土御門もそれに巻き込まれる可能性は高い」ズズズ

結標「別にご飯なんて作らなくてもここに連れてくればいいのに。ここにいる限り空腹に困ることはないと思うし」

姫神「結標さん。それは上条君には絶対に言ってはいけない。色々な意味で号泣すると思う」

青ピ「そういや姉さんら今なんの勉強してん? 数学?」

結標「そうそう。吹寄さんが証明が難しいって言うからね」

吹寄「どうせアンタも分からないでしょ? 結標さんの講義聞いたら?」

青ピ「ちょっと待ってや? 証明なんてテスト範囲にあったっけ?」

吹寄「はぁ……何というかテスト勉強以前の問題ね。まずはテスト範囲を確認するところから始めなさい!」

青ピ「せやな。戦いに勝つにはまずは敵を知ることが大事やしな。ええっと、テスト範囲テスト範囲……ってそんなもん持ってへんで!」

吹寄「……もう帰れば?」ジトー

姫神「一体今日は何をしにここに来たのか。まったくもって分からない」ジトー

青ピ「おっふっ、イイッ!! イイィッ!! 美少女たちの視線がボクに突き刺さるぅぅ!!」



ゴキリッ!!



青ピ「」バタリ

一方通行「うるせェ。俺の昼寝の邪魔をしてンじゃねェよクソゴミが。つゥかイイ加減この流れ飽き飽きしてンだよ」

結標「貴方も貴方で何でファミレスまで来て昼寝をしてるのかしら? というか今はどちらかと言ったら朝よ」

一方通行「来たくて来たわけじゃねェからな。することがねェならもォ、そりゃあ……寝るしかねェじゃねェか」

結標「大人しく苦手科目でも勉強しときなさいよ」

一方通行「俺に苦手科目なンて存在しねェ」

吹寄「……はぁ、何というか男連中は全員やる気を感じられないわね」

姫神「しょうがない。これだからいつもテストでいい結果が出ない」

一方通行「オイ姫神。俺をあの三下どもと一緒にすンじゃねェ」

姫神「学年平均40点強の現代文で10点。その教科だけ学年順位最下位を取った人がいるらしい」

一方通行「……さて、昼寝の続きでもすっか」ゴロン

結標「逃げたわね……というか店の椅子に寝転んでんじゃないわよ! 行儀が悪いでしょうが!」

一方通行「ハイハイわかったよ。いちいちうっせェヤツだな」ボソッ

結標「何?」

一方通行「何でもねェ」

吹寄「もう! 結標さん、やる気がない人は放っておいってあたしたちだけでやりましょ?」

結標「……そうね。じゃあまず証明の基本的なところから――」



上条「――って待てえぇい!!」ダッ



14 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:52:16.76 ID:J2dUQG+bo


吹寄「……あら上条当麻。何しに来たの?」

上条「何しに、って勉強を教わりに来たに決まってんだろうが!! じゃねえとこの金無し上条さんがファミレスなんてところ来るわけねえだろ!!」

吹寄「あっ、そう。勉強をしに来たの、へえ……」

上条「つーか、もともと勉強を教えてくれって頼んだの俺なのに、何で『お前ここにいるのおかしくない?』的な目で見てきてんだよ!! おかしいだろ!!」

土御門「そりゃカミやんは遅刻しちまったからにゃー。時間に厳しい吹寄様にそんな目で見られてもおかしくない。かくいうオレもそういう目で見られてるんですたい!」

結標「……ところで上条くんたちはどうして遅れたの? やっぱりインデックスちゃん絡み?」

上条「そ、そうなんですよ結標さん。あんにゃろう俺の作った昼食を朝食と間違えて片っ端から食べていくという暴挙に出やがったんですよー」

土御門「それを横で漫画読みながら眺めてたから遅れました! オレは悪くないでーす!」

上条「ふざけんな土御門ッ!! 大体テメェが『目玉焼きって何となく朝食べるイメージ大きいんだぜい』とか言わなかったら、あの大量の卵料理を壊滅させられることはなかったんだぞ!!」

吹寄「それは貴様が昼食に目玉焼きを作るからいけないんでしょ? そもそもインデックスがちゃんと分かるように導いてあげれば済んだ話じゃない?」

上条「導く? あはは……それができれば苦労はないとですよ……うふふ」

土御門「……ところで」


青ピ「」

一方通行「Zzz……」


土御門「コイツラは一体ここで何をしているんだ? 徹夜明けか?」

吹寄「やる気のない馬鹿者どもの成れの果てよ」

上条「そうか。俺らがひどい扱いを受けてるのはコイツらのせいか」

姫神「遅刻した事実は変わらない」

結標「ま、まあこれで全員揃ったわけだし。今から数学やるけど二人はどうする?」

土御門「もちろん受講させていただくぜい! 数学なんてなにそれおいしいの状態だからにゃー!」

上条「聞くまでもねえだろ結標先生! 俺に完璧にこなせる教科なんて一つもないんだからな!」

吹寄「自分で言ってて悲しくならないわけ?」

上条「……言わないでくれ」

結標「それじゃあ始めるわよ。まずは教科書の189P開いて――」


青ピ「」

一方通行「Zzz……」


―――
――




15 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:53:04.45 ID:J2dUQG+bo


同日 11:30


結標「――つまり、ここはこういう風に考えれば分かりやすいわ」

吹寄「へー、なるほどね。さすが結標さん、丁寧かつ分かりやすい解説」

姫神「うん。おかげで演習問題もスラスラ解ける」

土御門「やっぱりレベル5はパネェっすわ。もはや頭の出来が根本的に違うんだにゃー」

結標「いや、別にそんなことないわよ。普通よ普通」

姫神「この高い解説能力で普通。それなら有名予備校とかの講師は一体どんなレベルになるのか」

吹寄「そんなに謙遜しなくてもいいと思うわ。誇ってもいいんじゃない結標さん?」

結標「もう! そんなに褒めても何も出ないわよ!」テレ

土御門「オレたちは事実を言っているだけだぜい。ほら、あの補習レギュラーのカミやんさえもこの通り――」



上条「先生ッ!! 問1が……というか全部さっぱり分かりません!!」



土御門「――オラァ!!」ズゴッ

上条「ぐほっ!? な、何しやがるテメェ!!」

土御門「お前姉さんの話絶対聞いてないだろ? ここの問題はさっき言ってた条件を当てはめればそのまま解けるぞ?」

上条「えっ、この条件ってここで使うのか。へー、勉強になるなー」

吹寄「……何というか。もう補習受けたらいいんじゃないの?」

上条「えっ!? 何でいきなりそんな辛辣な言葉をかけられなければならないんでせうか!?」

姫神「たぶんこの調子ならあと一週間猶予があったとしても。赤点は免れないと思う」

土御門「諦めるんだ上条当麻。もう楽になればいいさ」

上条「勉強を始めて1時間でこんなにボロカス言われるとは絶対誰も思わないだろうな……」

吹寄「逆にその1時間本当に勉強したのか問い詰めたくなるほどひどいってことよ」

結標「ま、まあまだ時間はあるしじっくりやっていこ? ねっ、上条君?」

上条「め、女神がおる……! 敵しかいないこのファミレスに救いの女神様が微笑んでくださっておる……!」

結標「じゃあ、こっちの問題やってみて。さっき私が言ったことをそのまますれば解けると思うから」

上条「ええっと…………、な、何だったっけそれ?」

結標「……あ、あはは、じゃあもう一回説明するわね」

土御門「さすがの女神様もこれには苦笑い」

姫神「これはひどい」

吹寄「何となく結標さんの顔に後悔の色が見えてる気がする……じゃなくて見えてるわ」


青ピ「……う、うーん。……こ、ここはドコ? 私はダレ?」


16 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:53:59.65 ID:J2dUQG+bo


姫神「……。唐突に何?」

吹寄「あれ? 青髪ピアスってここに来てたの?」

青ピ「何やこの扱いッ!? 首をゴキッ、とやられてさっきまで生と死をさまよってて奇跡的に復活したボクに贈られる言葉やないで!?」

土御門「カミやんの常軌を逸した馬鹿さ加減で呆れてるからにゃー。ここでお前みたいなヤツが来たらそうなるだろ?」

青ピ「来るも何も結構早い段階からここにおるんやけどなぁボク。キミらが来るよりよっぽど早く」

吹寄「どうでもいいけど勉強しに来たならさっさと教科書なり何なり広げなさいよ」

青ピ「あ、はい……というかちょっとええ?」

吹寄「何よ?」

青ピ「やけにボクだけ責められとるようやけど、そこの白髪はなんなん?」


一方通行「Zzz……」


青ピ「みんなで楽しくお勉強会しとるのに一人端っこで眠っとるやん!? 明らかにボクよりやる気ないって大々的にアピールしとるやん!?」

吹寄「……いや、だってアクセラは普通に頭いいし。ねえ?」

姫神「100点とか普通に取っちゃうくらい普通に頭はいい」

青ピ「えっ、何なんこの扱いの差? 差別やん差別。くっ、イケメンと三枚目ではこれほどの差が生まれてしまうのか……」

吹寄「はぁ? あなた三枚目を名乗れるほど面白いことしてたかしら?」

土御門「さすが吹寄っ! 容赦なく急所を抉っていくぅ!」

青ピ「てか、よくよく考えたらさっきの頭いい発言おかしくない!?」

姫神「えっ?」

青ピ「えっ? やないやろ、だって現文10点やろ10点? 真面目にやってそんな点数取れるんかって、頭にハテナマーク浮かべる10点。やばっ、思い出しただけで笑えてきた。10点ってぷぷっじゅ――」



一方通行「10点10点うるせェぞ、脳みそ10点野郎」ゴガッ



青ピ「ぎゃああああああああああっ!? 頭が割れりんぐぅぅぅぅ!?」ジタバタ

姫神「おはようアクセラ君」

吹寄「いつの間に起きてたの?」

一方通行「あァ? 今起きた……いや、起こされたっつゥのが正解か。アホがゴチャゴチャ騒いでやがったせいでな」

青ピ「ぐぉぉぉぉ、さ、さすがやでアクセラちゃんっ。勉強会中に寝るわ、人をストレス解消の道具にするわ、ホンマやりたい放題やな自分ん」

一方通行「ハァ? 勉強会つってもオマエらが勝手にやってるだけだろォが。あと別に俺はオマエをストレス解消の道具にしてるわけじゃねェよ。蚊を見かけたら叩き潰すことと同じことをしてるだけだ」

青ピ「ボクの存在ってそんな小さな羽虫と一緒なん!? 正直ショックやで!? というかこの勉強会ボクだけ扱い悪すぎやない!?」

土御門「気のせいだろ。いつもこんなもんだと思うぜい」

姫神「うん。至って普通の日常」

青ピ「これをいつも通りの日常と言えるキミらがボクは怖いでえ……」

吹寄「だったら少しは勉強をしようとする意思を見せなさいよ」


17 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:54:36.99 ID:J2dUQG+bo


一方通行「……あン? そォいやもォそろそろ昼か」

土御門「おっ、本当だにゃー。ひとまず昼休憩と行こうぜい!」

青ピ「ぼ、ボクは何にもやってへんで……それなのにもう休憩の時間なんか……?」

吹寄「今まで休憩してたみたいなものだから、みんながご飯を食べてる横で問題集でも解いてたら?」

青ピ「せんせー! 気絶は休憩に入らないと思いまーす!」

一方通行「そォだな。あァ、店員さンコーヒーおかわり」スッ

青ピ「ちょっとー! 何かツッコンで!? 会話の流れ止まっちゃうからー!!」

吹寄「ついでに昼食でも頼んどきましょ。あたしこの『ふわとろオムライス』で」

姫神「『和風ハンバーグ定食』」

土御門「ふふふっ、ここはテストへ向けての願掛けとして『トンカツ定食』を注文させていただくぜい」

一方通行「テストってたしか明後日からじゃなかったか?」

土御門「細けえことは気にすんなだぜい。願いに時間なんて関係ないにゃー」

青ピ「……ふむ。ではボクは――」

吹寄「えっ、青髪ピアスは昼返上で勉強するんじゃなかったの?」

青ピ「何でや! 食べるに決まっとるやろ! 生命活動を再開するのにもカロリーは必要なんやぞ!」

一方通行「ただの気絶で何言ってンだコイツは?」

青ピ「日常生活でただの気絶とかいうこと自体おかしいんやけどな……」

姫神「結構な頻度で気絶してると思うから。ある意味日常じゃないかな?」

青ピ「イヤやそんな日常!!」

吹寄「あっ、結標さんと上条当麻も何か頼んだら? どうせ上条はライス(小)とか言い出しそうだけど」


結標「……ぐ、ぐぬぬぬ、だ、だったら次の問題はっ!?」

上条「おおっ、これか!? わかったぞ! これはこの公式を使うんだな!? そうなんだな!?」

結標「その公式は別の章のやつで使うやつよ……」


一方通行「……何やってンだよ結標先生。顔色悪りィぞ?」

結標「あ、ああ一方通行起きたのね? 大丈夫よ、ちょっと疲れちゃっただけだから……」

土御門「か、カミやんのあまりの馬鹿さに耐え切れずに……!?」

吹寄「くっ、やはりレベル5の手を持っても扱い切れないということなの!? これが幻想殺し(イマジンブレイカー)……!」

姫神「実質まだ二時間くらいしか経ってないけど。何かもう一日中勉強したみたいな感じになってる」

上条「い、いやあれだよあれ。俺だって必死に頑張ったよ、でも駄目だったんだ。俺の脳みそってのはどうも数学ってやつを受け付けてくれないらしい」

吹寄「何か全力を尽くしてヒロインを守ろうとしたけど、結局駄目だった自分のチカラの無さを悔やむヒーロー風に言ってるけど、要するに数学は嫌いだからできません、ってことよね?」

上条「はい」


18 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:55:17.86 ID:J2dUQG+bo


姫神「補習決定の瞬間をこの目で見た」

青ピ「もうだめだぁ……おしまいだぁ」

土御門「もういい……! もう……休めっ………! 休め………っ! 姉さんっ!」

結標「……いいえ、そうはいかないわ。ここで私が倒れたら、上条君が……!」

上条「いや、土御門の言う通りだ結標。俺なんかのためにお前がそんな無茶する必要ねえんだよ」

一方通行「無茶させてる自覚があるなら、もっとまともに頭を働かせたらどォだ?」

上条「…………」スピー

一方通行「目ェ背けてンじゃねェよ。いろンなモンからよォ」

吹寄「と、とにかくお昼休憩にしましょ二人とも? 脳にブドウ糖を補給しなきゃ勉強も捗らないわ」

結標「そ、そうね。一度休憩をとってリフレッシュしないと頭も働かないわよね……あっ、そうか!」

青ピ「どうしたんやいきなり?」

結標「上条君、もしかして今日の朝ご飯食べてないんじゃないかしら!?」

上条「えっ、いや、食べたけど」

結標「そんなに多く食べられてないんじゃないかしら!?」

上条「ま、まあたしかに満足するほどは食べてないけど……」

結標「そうよ、そうよね! おそらく上条君は頭にブドウ糖が足りてなかったのよ! そうよ、だからあんなに……」ブツブツ

土御門「……おい、これ姉さん完全に病んでないかにゃー?」

青ピ「せ、せやな。何か目がヤンデレもののヒロインみたいな感じになっとるし」

姫神「上条君はもはやブドウ糖が足りてない。とかそんなレベルまで達してない。という現実を直視していない」

一方通行「つゥかよォ、そこの馬鹿二人さっさとメシ頼めよ。店員さンずっと放置されてて苦笑いしてンぞ」

ウェイトレス「あ、あはは大丈夫ですよ。ごゆっくりどうぞ」

結標「あっ、すみません。じゃあ私『シーザーサラダ』で」

上条「俺は……『ライス(小)』でお願いします」

結標「か・み・じょ・う・君!? そんなんじゃ全然足りないわよねぇ!? 定食とか頼みなさい定食とか!」

上条「ひっ、や、か、上条さんのお財布はそんな豪華なものを頼む余裕はないのことよ!?」

結標「じゃあ私がおごってあげるから!! 金銭面は貴方は何にも気にしなくていいのよ!? 勉強に必要な栄養分をここで摂取するのよ!! さあ!!」

上条「ひっ、ひぃぃぃ!?」ガクブル

土御門「ね、姉さんが完全にダークサイドに落ちてやがる! クソっ、このままじゃマズイぞ!」

一方通行「あン? 何か問題があンのか?」

青ピ「だってこのままじゃカミやん一人が昼食を奢られるっていうおいしい思いをするんやで!? 羨ましすぎるでホンマぁ!!」

吹寄「今気にすることは絶対そこじゃないでしょ! 結標さんのほうのことでしょ!?」

土御門「これを放置したら結標→カミやんという謎のヤンデレルートに突入してしまう! これは絶対に避けなければいけない状況だ!」

一方通行「馬鹿馬鹿しィ。訳分からねェこと言ってねェでさっさと注文を確定させろ。いつになったら俺はコーヒーが飲めンだよ」

姫神「アクセラ君」

一方通行「あン?」

姫神「ごー」

一方通行「ハァ?」

姫神「ごーとぅすとっぷ」ジー

一方通行「何で俺が……ハァ、わかったわかった。オーケーオーケーわかったよ」


19 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:56:05.31 ID:J2dUQG+bo


上条「……あのー結標さん? 奢ってもらうのはありがたいのですが、そんなんじゃ上条さんのお馬鹿は治らないですのよ?」

結標「そんなことはないわ上条君。貴方はやればきっとできる人。だからそのためにたくさんの栄養分を脳みそに送らなきゃ……」

上条「何かその言い回しすごく怖いんですが……」

結標「さあ頼むのよ! 定食とかそういうガッツリしたものを頼むのよ! 頼みなさい! さあ! さあ!! さ――」



ビシッ!!



結標「あいたっ!? な、何よ!?」

一方通行「オマエは馬鹿ですかァ? もしかしなくても馬鹿なンですかァ? やっぱり馬鹿だったりするンですかァ?」

結標「なっ、そんな馬鹿馬鹿連呼するのはやめてちょうだい!」

一方通行「馬鹿を馬鹿っつって何が悪りィンだっつゥの。大体よォ、上条クンは傍から見ても分かるよォな貧乏野郎だが、満足に食いモンが食えてねェから脳が働いてなくて勉強が出来ねェヤツじゃねェってことぐれェわかンだろ」

上条「ぐはっ……! じ、事実だけど地味にダメージが……!」

一方通行「世の中には貧乏生活を強いられながらも、必死に努力して上へ上り詰めた有能がいくらでもいるンだよ」

一方通行「勉学にそンなブドウ糖とか栄養だとか関係ねェ。所詮は才能と努力。今まで努力を怠ってきた三下が、今さら腹一杯メシィ食って大量のブドウ糖を頭に送ったところで何一つ変わンねェンだよ」

結標「…………」

一方通行「オマエはもォ十分頑張った。だから休め結標。昼休みはメシ食って休む時間だ、勉強なンてモンわざわざ休み時間潰してまでやるモンじゃねェンだよ」

結標「……わかった。そうするわ」

一方通行「チッ、手間ァかけさせやがって」

結標「ありがとね。一方通行」ニコッ

土御門「おおっー!! 姉さんが元に戻ったぁ!!」

吹寄「さすがアクセラね。伊達に結標さんといつも一緒にいるわけじゃないわね」

一方通行「ンだそりゃ? それだけ聞くと俺がいつもコイツと一緒にいる見てェな言い方じゃねェか」

吹寄「だってそうじゃない。一緒の家に住んでるわけだし」

一方通行「チッ、うっとォしい」

青ピ「もうこれだけ聞くと、傍から見たら同棲してるカップルにしか見えないんだよなぁ……」

結標「なっ……!?」

一方通行「ハァ?」

青ピ「だって一緒に住んでてお互いのことがよくわかってるんやで? これはもうこいび――」



ガゴン!!



青ピ「とろばぁ!?」ガシャーン

土御門「あ、青髪ピアスううううううううううううううううううっ!?」


20 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:57:00.62 ID:J2dUQG+bo


結標「わ、わわ、わ、私たちはべ、別にそんなんじゃないから!! 全ッ然、そんなじゃないから///」つ軍用懐中電灯


吹寄「お、落ち着いて結標さん!! みんな分かってるから、ただの馬鹿の妄言だから!!」

姫神「まあ。将来的にはうんぬん」

吹寄「ちょっと黙ってもらえるかしら姫神さん!?」

上条「…………」シクシク

土御門「で、カミやんは何で机に突っ伏して泣いてるんだにゃー?」

上条「……一方通行が、……真実という名の暴力を、……容赦なく振りかざしてくるからッ……!」グスン

土御門「メンタル弱っ!? いつもの並み居る敵を強引な説教で無理やり論破してきた鋼の心を持つヒーロー上条当麻は一体どこにいった!?」

上条「北極海に身を投げ出したい」

一方通行「……つゥかよォ」



ワイワイガヤガヤ



一方通行「早く注文終わらせろよ。いくら温和な店員さんでも、このままじゃ目からビームを出す戦うウェイトレスさンになっちまうぞ」


ウェイトレス「……いえいえごゆっくりぃ」ニコニコイライラ


吹寄「あっ、すみません! ええっと、頼んでないのはあと誰だっけ?」

姫神「たしか上条君」

上条「バリスティック・スライダーから身を投げ出したい」

土御門「面倒臭せえっ! カミやんが別のベクトルで面倒臭くなってやがるっ!」

吹寄「テスト週間という特殊な環境が上条当麻をここまで変えてしまったのね……いいわ、あたしがその腐った根性を叩き直して――」ボキボキ

姫神「待って吹寄さん。今の上条君がそんなの食らったら。真面目にひとたまりもないと思う」

一方通行「あァ面倒臭せェ。オイ三下ァ! オマエの今食いてェモンはなンだァ!? 『トンカツ定食』かァ!? 『焼き肉定食』かァ!? それとも『コーヒー定食』かァ!?」

吹寄「……『コーヒー定食』なんてあったっけ?」

結標「『コーヒー定食』=『コーヒー単品』。つまりいつもの一方通行のことよ」

姫神「なるほど」

上条「…………」

一方通行「どォなンだ? 答えてみろ三下ァ!!」

上条「…………ライス(小)」

土御門「結局そこに行き着くのかよ」


青ピ「」ピクピク


―――
――



21 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:57:49.95 ID:J2dUQG+bo


同日 13:00


結標「――さて、結標先生華麗に大復活っ!! さあ、勉強を再開しましょ?」

土御門「はーい!」

吹寄「数学は大方確認できたし、別の教科とかがいいわね」

姫神「それなら英語とかがやりたい。今回は文法とかが結構ややこしい」

上条「そうだな。上条さんも英語は全然駄目だからな」

結標「上条君。貴方はまだ数学の範囲全部見てないでしょ? だからもうちょっと数学頑張ってみよ? ね?」

上条「いや、でもこれくらいやれば赤点ぐらいなら回避できんじゃねえかな?」

吹寄「だったら試しにこのテスト勉強用に配られたプリントをテスト代わりにやってみたら? 自分がどれくらいの実力か分かるでしょ」

上条「よし、いいぜ。やってやるよ」ペラッ

姫神「とりあえず半分取れたらいい方。六割取れば安全圏ってところ?」

土御門「そうだにゃー。ウチは赤点のラインは三割未満だからそれくらい取れればまあ安全ぜよ」

上条「…………」

吹寄「あれ? どうしたの? ペンが止まってるけど」

上条「……さ、さっぱりわからないんだけど」

土御門「ふんぬッ!!」ゴッ

上条「ぐばっ!? ま、またかよ土御門っ!?」

土御門「だーかーらー、キミは今まで何をしてきたのかにゃー? 後半にある応用問題ならともかく、0点殺しと呼ばれる問1すらさっぱりとかナメてるとしか思えないんだぜい」

上条「分からねえんだからしょうがねえだろうが!」

吹寄「しょうがなくないわよ馬鹿者ッ!! 結標さんがどんな想いで貴様に勉強を教えていたと思ってるのっ!? 自分の精神を崩壊させながら!」

結標「いや、別に精神崩壊なんてしてないわよ」

姫神「あれは軽く精神崩壊してた」

結標「……と、とにかく上条君。もう一回最初からやりましょ? 現文とかは無勉でもまだ点数取りやすいけど、数学とかは分かってないと本当に悲惨な結果になっちゃうから。そうならないためにも」

上条「お、おう。頑張るよ」

一方通行「…………ハァ」

結標「……何よそのため息は?」

一方通行「オマエ、何にも分かってねェな。こンな無駄な努力いつまでも続けても一向に状況は変わらねェよ」

吹寄「どういうこと?」

一方通行「今のまま結標がいくら丁寧に教えたところで、コイツは何一つ知識を得ることなくテスト当日を迎えちまうってことだよ」

結標「えっ?」


22 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:58:28.28 ID:J2dUQG+bo


上条「ちょ、それは言い過ぎじゃないですかねー?」

一方通行「言い過ぎなわけあるか。三馬鹿の一人である土御門すら分かりやすいと言った結標の説明を聞いて、何一つ分からねェっつゥ言葉が出る時点オマエは終わりだろ」

上条「おうふっ」ガクッ

土御門「じゃあどうするんだにゃー? 他の人が教えるにしても結標以外の適任者がいないんだぜい」

吹寄「……そうね。正直結標さん以上に上手な説明、あたしにはとても無理よ」

姫神「同じく」

結標「……じゃあやっぱり私がやるしかないじゃない。よし、だったらもっと分かりやすい説明を考えて――」

一方通行「馬鹿。それが無駄な努力だっつってンだろ。大体適任者ならいるだろォが」

結標「適任者……? 一体誰よ。まさか小萌先生を呼ぶとか言うんじゃないわよね?」

一方通行「ンな面倒なことするわけねェだろォが。ここにいンだろォが、学園都市第一位の超能力者(レベル5)『一方通行(アクセラレータ)』。この俺が」ゴキッゴキッ

土御門「あ、アクセラちゃんだとっ!? 本気か!?」

一方通行「ああ」

吹寄「む、無理でしょ……だって現代文10点でしょ?」

姫神「とても人に勉強をうまく教えられるとは思えない」

一方通行「オマエら本当10点10点うるせェな。叩き潰すぞコラ」

結標「……でも貴方どうしていきなり? あんなに面倒臭そうにしてたのに」

一方通行「あァ? チッ、そンなの決まってンだろォが。意味のない茶番を見せ続けられるのがうっとォしいからだ」

姫神「意訳。『これ以上結標が苦しむ姿なンて見たくねェンだよ』。かっこいいよアクセラ君」

一方通行「姫神。ちょっと裏に来い。そのクソみてェな脳みそ頭蓋骨ごと吹き飛ばしてやるから」

姫神「断る」

土御門「でもさぁ、たしかに結標の姉さんがまた精神崩壊しても困るからアクセラにチェンジってのは分かるが、肝心のカミやんにうまく勉強をお前は教えられるのか? 姉さん以上に分かりやすく」

一方通行「無理だな」

吹寄「って駄目じゃないそれじゃ! よくそんなんで『これ以上結標が苦しむ姿なンて見たくねェンだよ』とか言えたわね」

一方通行「俺ァそンなセリフ一言足りとも発してねェぞ! それはそこの脳内バラ色野郎が勝手に言っただけだろォが!」

姫神「私は的確にアクセラ君の心情を言葉にした自信がある」

一方通行「チッ、勝手に言ってろ」

土御門「で、結局どうする気だアクセラ? 分かりやすく教えるのが無理なら、他に何か策があるんだろ?」

一方通行「……オマエら、冬休みに宿題が出てたのは覚えるよな? 結構な量のヤツ」

吹寄「長期休暇に宿題が出るのは当たり前なのだから、覚えてるのは当然でしょ?」

姫神「そういえばあれ。土御門君結局終わらせてなくて居残り勉強してたね」

土御門「にゃははっー、嫌なこと思い出させないでくれにゃー」

結標「あっ、でもその宿題、上条君は終わらせてたわよね? たしか貴方に手伝ってもらったって」


23 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/03(土) 23:59:09.15 ID:J2dUQG+bo


一方通行「そォだ。そこで勝手に絶望してる馬鹿は俺に宿題を『手伝って』もらうことによって終わらせた」


上条「…………」ゼツボーン


吹寄「ふん、どうせ上条当麻のことだから、難しいところはアクセラにやってもらって悠々と終わらせたに決まってるわ。だから、こんな馬鹿みたいな状況に陥ってるわけだし」

一方通行「いや、俺はアイツの宿題に一つも手を出してねェよ」

結標「えっ、どういうこと? 手伝ったんじゃなかったの?」

土御門「……まさか、そういうことか」

姫神「何か分かったの土御門君?」

土御門「昨日の放課後カミやんは最初誰に勉強を教えてくれと頼んだか覚えてるかにゃー?」

吹寄「ええっと、たしかアクセラでしょ? それがどうかしたの?」

土御門「頼んだ、ってことは一度教えてもらったことがあって、それが分かりやすかったってことじゃないかにゃー?」

姫神「そういえば。彼理数系限定なら分かりやすい教え方だとも言ってた」

吹寄「……まさか、いやそんなことありえないでしょ。いや、でも……」

土御門「そのまさかで合ってると思うぜい」

吹寄「アクセラ。あなたまさか上条当麻に勉強を教えて一人で宿題をこなさせた、ってことなの?」

一方通行「ご名答。アイツは俺の監視のもときっちり自分の力で宿題を終わらせた。これは事実だ」

結標「じゃ、じゃあやっぱり貴方は私より教え方がうまいんじゃないの? 私が教えても上条君には悪いけどこのざまなわけだし」

一方通行「それはありえねェよ。俺が丁寧に教えたところで、どォしても一人よがりな説明になっちまう。オマエみてェな相手に歩み寄るよォな説明俺には真似出来ねェ」

吹寄「じゃあどうやって……?」

一方通行「まァ見てろ。馬鹿に勉強を教えるのに最も必要なのは『豊富な知識』でも『猿でも分かるような丁寧な教え方』でもねェ――」




一方通行「――それはただの『恐怖』だ」ニヤリ




24 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:00:51.33 ID:BuzE8qjgo


上条「…………」ゼツボボーン


一方通行「おら三下ァ! いつまで呆けてやがる、とっとと勉強の準備しやがれ!」

上条「はっ、いけねえいけねえ。ちゃんとテスト勉強しなきゃ」

一方通行「上条クゥン、悪りィが今から講師の交代のお知らせだ。どンな馬鹿にも手を差し伸べる救いの女神様から、勉強なンて教える気がさらさらねェクソったれにな」

上条「お、結局お前が教えてくれるのか。つーか、教える気ねえのかよ!」

一方通行「それはオマエ次第だ。で、オマエは俺に赤点回避の手助けをして欲しいのか? 欲しくないのか?」

上条「そりゃして欲しいに決まってんだろ。頼むよ先生」

一方通行「よォし、じゃあ上条クン、まずオマエのテスト勉強をする目的を確認だ。自分の口で言ってみろ」

上条「そりゃ決まってんだろ。テストで赤点をゼロにして素晴らしい春休みを迎えることだよ」

一方通行「イイねェ、実に人間味溢れる目的だ。だがよォ、それだけじゃ足ンねェンだよなァ」

上条「足りない? まさか俺に100点を取れ、とか無理難題押し付ける気じゃねえだろうな? そんなのどう頑張ってもできねえよ」

一方通行「あァ? 別にそンな100点なンてアホらしい点数必要ねェよ。極論を言えば、全教科オール30点で問題ねェ」

上条「だったら一体何が足りないって言うんだよ?」

一方通行「そンなの決まってンだろォが。優雅な春休みを過ごすために赤点を回避するなンて普通な目的じゃ、一生オマエは赤点地獄の中っつゥことだ」

上条「?」

一方通行「さて、と」スッ つ携帯電話

上条「携帯電話? 一体どこに電話してんだ?」



プルルルルルルピッ!



??『……も、もしもしっ! か、かみじゅ、かみじょうですっ!』


一方通行「オマエはいつになったら電話応対がうまくなるンだァ? インデックスさンよォ?」


禁書『ん? その声はあくせられーただね? どうしたの? とうまなら出掛けてるけど』

一方通行「知ってる。目の前にいるからな」

禁書『そうなんだ。じゃあ何でここに電話を掛けたのかな? もしかして私に用?』

一方通行「そりゃそォだろ。オマエに用がなかったら電話なンてかける意味がねェだろォが」

禁書『別に用がなくて電話してきてもいいよ。私は毎日ひまで退屈な留守番生活を送ってるからね。あっ、でもあんまり長電話し過ぎるととうまに怒られちゃうかも』

一方通行「そンな心配する必要ねェよ。オマエと暇つぶしに長電話することなンざ一生ねェだろォからな」

禁書『むぅ、一生ってありえないかも。そもそも人生ってのは長いんだから、これからあなたの考えが変わって私に何の用もなくても電話を――』

一方通行「ない」

禁書『ぐっ、即答しなくてもいいと思うんだけど……。で、結局何であくせられーたは電話をかけてきたのかな?』

一方通行「ああ、そォだ。オマエアレだ、来週の週末、そォだな。土曜日ぐらい暇か?」

禁書『さっき言った通り私は毎日ひまで退屈な留守番生活を送ってるから、もちろんその日もひまなんだよ』

一方通行「何つゥか、まるでニートとでも話してるよォな気分だ」

禁書『にーと? 何それ?』


25 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:01:39.56 ID:BuzE8qjgo


一方通行「何でもねェよ。それじゃあその日、三下と一緒にメシでも食いに行こうぜ。店は高級ステーキ店とかでイイだろ」

禁書『えっ!? ごはん!? ステーキ!? お肉!? 行く行く絶対に行くんだよ!!』キーン

一方通行「チッ、いきなり声量上げてンじゃねェようるせェ。ま、なら決まりだ。詳しくはまた連絡するからそォいう予定があるってことだけ覚えとけ」

禁書『ふふん。完全記憶能力を持ってる私に覚えとけなんて言葉を言うなんて、かたはらだいげきつうなんだよ!』

一方通行「どこで覚えやがったそンなわけの分からねェ日本語……まァイイ。そォいうことだからな、じゃあ切るぞ?」

禁書『うん! すごく楽しみにしてるんだよ! またねあくせられーた』ピッ


一方通行「…………」

上条「……………」

一方通行「そォいうことだ上条クン」

上条「一応どういうことか聞いていいか?」

一方通行「来週の土曜日、俺とオマエとインデックスで高級ステーキ店に行く」

上条「勝手に決めんなよ! 俺にも予定っていうものが――」

一方通行「それなら問題ねェだろ。その日はオマエはバイトのシフト入ってねェから、どォせ予定もクソもない暇人だろ」

上条「何で関係者でもないのに俺のバイトのシフトの情報を知っているんでせうか?」

一方通行「関係者にリークしてもらえばその程度の情報いくらでも仕入れることができる」

上条「芳川さんか……」


一方通行「さァてゲームの時間だ上条ォ! もしオマエが全てのテストを赤点回避することが出来りゃ、その高級ステーキ店の代金は俺が持つ」

一方通行「だが、もし一つでも無様に赤点取って春の補習フルコースへ参加確定した場合は、オマエがその代金全部持て」


上条「ちょっと待て! 食欲の神インデックス様相手に少なかろう高かろうのステーキだぞ!? マジで洒落にならねえぞマジで!! おい!!」

一方通行「何をビビってンだ上条クゥン? 簡単なことだろ、テストで全部30点以上取りゃイインだ? そォすりゃオマエもただでステーキ食べ放題の天国を味わえるンだぜ」

上条「ぐっ、ち、ちなみにゲームの拒否権は?」

一方通行「そンなモンあるわけねェだろ。まあ、別に拒否してもイイが、その場合オマエ自身の口からインデックスの野郎にこの話はなくなった、ってことを伝えろ」

上条「そ、そんなっ! 間違いなく俺の頭蓋骨が粉砕するじゃねえか!!」

一方通行「前門の虎、後門の狼。いや、まだ前門の方は野良猫ぐれェだろォな。さて、オマエはクソネコと狼、どっちに挑むつもりだ?」

上条「くっ……いや待てよ?」ボソッ

上条(ここで赤点取っちまって奢るはめになっても、その日に何かしら急用を入れて逃げちまえば……?)

一方通行「あっ、言っとくが急用とか入れたところで日程が延長するだけだぞ? 純粋に逃走するってンなら、俺があらゆるベクトルを操ってオマエを追い詰める」

上条「Oh……」

一方通行「さて、10分間の暗記タイムだァ。数学の範囲の暗記項目を全部覚えろ。そのあとそれのテストだ」

上条「さ、10分っ!? 無茶言うんじゃねえ!! 絶対無理だろこれ!!」

一方通行「安心しろ。テストに出すモンは教科書に書いてる公式とかだけだ。何なら予めテスト問題を先に渡してやってもイイぜェ? ただオマエは覚えるだけだ。簡単だろ?」

上条「にしても10分って……それに何でテスト?」

一方通行「そンなの決まってンだろォが。オマエが覚えたかの確認に加えて、覚えてなかった場合の罰ゲームをするからだ」

上条「罰ゲーム? まさかステーキ奢る以外にも何かする気かよ!?」

一方通行「当たり前だろ。じゃねェとテストの意味がねェ。今回の罰ゲームはそォだな……もしテストで全問正解出来なきゃここのファミレスの代金全部オマエ持ちな?」


26 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:02:23.84 ID:BuzE8qjgo


上条「いいっ!? 何で全問正解!? 赤点は三割取れればオッケーじゃなかったのかよ!?

一方通行「あン? 予め答えが分かってるテストだぞ? そンなモンで合格ラインを100点未満で設定するわけねェだろ」

上条「あのーすみません一方通行様。今日全然手持ちないんですが……?」

一方通行「知らねェよ。だったら下ろして来い。それ含めてないンだったら皿洗いでも何でもして払え」

上条「無茶苦茶だっ!!」

一方通行「だったら大人しく全部覚えるこった。そォすりゃオマエには何の被害も被らねェよ」

上条「……不幸だ。どうしてこうなった……」

一方通行「何が不幸だ。全部オマエが自分で引き起こした事態だろォが。俺に助けを求めたことを含めて、な」ニヤァ


結標「…………」ポカーン

吹寄「……本当に無茶苦茶ね」

一方通行「馬鹿に勉強をさせるためにはこれくらいやらなきゃいけねェっつゥことだ」

姫神「スパルタ教育は。あまり効果がないと思うけど」

一方通行「人間の脳みそは本来スーパーコンピュータ以上の処理能力を持ってンだよ。それを全部扱えるかどォかは別としてな」

一方通行「そンな素晴らしいモンを持ってるっつゥのにそこの三下は残念ながら一つもそれを使おうとしねェンだよ」

一方通行「だったら無理矢理にでもそれを使ってもらうしかねェじゃねェか。どンな手を使ってでもよォ……」

土御門「ふむ、つまりあれかにゃー? ピンチの状態に追い込みに追い込みまくって、バトル漫画の主人公みたく覚醒させてスーパーカミやんを生み出そうっつー魂胆って感じか?」

一方通行「ああ。ゴキブリは命の危険性感じ追い込まれると、脳みそを活性化させて空を飛べるよォになるらしい。ゴキブリに出来て人間に出来ねェわけがねェだろ」

結標「ちょ、ファミレスでその名前を言うのはやめなさいよ……」

姫神「でも。ヒトとGは違う。そんなにうまくいく?」

一方通行「あァ? まァ、そりゃ人によるだろォな。そンな全員が全員覚醒なンてしたら世の中超人だらけだ」

吹寄「だったら上条当麻もそうなる可能性高いじゃない。普段から勉学から目を背けてたのだからなおさらよ。そんな都合のいいヒーロー物展開起こるわけないわ」

一方通行「そォだな。たしかにリアルってのは残酷だ……だが、残念ながらアイツはヒーローなンだよ」

吹寄「えっ、それってどういう――」



上条「――さいんえーぶんのえーいこーるさいんびーぶんのびーいこーるさいんしーぶんのしーいこーるにあーる」ブツブツ



吹寄「なっ、何ですって!? あ、あの上条当麻が真面目に暗記に取り組んでいるっ!?」

土御門「授業開始の号令から1分後には既に意識が窓の外にあるあのカミやんがかっ!?」

姫神「信じられない。まさかこんな光景に。立ち会う日が来るなんて……!」

結標「ひどい言われようね……」



上条「――ひつようじょうけんとはものごとがなりたつためにひつようなじょうけんじゅうぶんじょうけとはものごとがなりたつためにじゅうぶんなじょうけん」ブツブツ



一方通行「人間には火事場の馬鹿力っつゥモンがある。本当に危機的な状況に陥った人間が潜在的に眠っている力を発揮する、ってヤツだがそれは別に筋力に限った話じゃねェ」

一方通行「危機的状況で本当に頭を使わないといけねェよォになったら、どンな馬鹿でも必死に脳みそ働かせるっつゥことだ」

結標「危機的状況……?」



上条「――インデックスと高級ステーキはマズイインデックスと高級ステーキはマズイインデックスと高級ステーキはマズイインデックスと高級ステーキはマズイインデックスと高級ステーキはマズイ」ブツブツ



結標「……ああ、たしかにこれは危機的状況ね」


27 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:03:03.80 ID:BuzE8qjgo


一方通行「この方法で俺は一時的にだがコイツに知識を植え込ンで自力で宿題をさせた。俺の教え方が分かりやすいってほざいてたのはその影響で記憶が狂ったからだろォな」

姫神「ところでその宿題はきちんと出来てたの?」

一方通行「俺がひと通り見たところ中身の正解率はまァそこそこってところだったか。赤点なンてまず取らないだろォってレベルだ」

吹寄「……待って。だったら何で今上条当麻はこんな事態に陥ってるわけ? 冬休みのときにそれだけの勉強はしたってことなのに?」

一方通行「一時的にって言っただろ。生物ってのは使わねェところは次第に退化していってなくなるモンだ。普段からそンな知識を使わねェンだから忘れて退化すンだろ」

姫神「普段どれだけ真面目に授業に取り組んでないか。改めて分かる納得の説明」

土御門「カミやんェ……」

吹寄「あなたも大して変わらないでしょうが。ただマシってだけで」

一方通行「この要領で全教科の必要最低限の知識を身に付けさせる。そォすりゃ赤点回避なンざ余裕だろ」

結標「全教科って……それって貴方の大嫌いな現代文も含まれてるってことだけどいいの?」

一方通行「ああ」

結標「貴方が10点しかとれないのに?」

一方通行「オマエは本気で俺を怒らせたいらしいな」

土御門「でもアクセラちゃん、さっきのカミやんの発言からすると冬休みの宿題は理数系のヤツしか助けてなかったんだろ?」

一方通行「文系の問題に明確な答えなンざねェ。ウチの現文の教師のありがたい言葉だ。つまり、適当に書いときゃ別に問題ねェってことだよなァ?」ニヤリ

結標「駄目だこりゃ」

一方通行「まァそれは冗談だ。今回はさすがに宿題とはわけが違うからな、手始めに範囲内の暗記事項全部覚えさせる。それだけで1、20点取れンだろ」

吹寄「あと1、20点は?」

一方通行「教科書の内容をまるまる暗記させる。あと教師の板書もな」

結標「えっ、貴方ってノートとか取ってたの……? いつも寝ている様子だったから気付かなかったわ」

一方通行「いや取ってねェよ。ただ内容ぐらいは全部この頭に入ってる。それを俺自ら紙に書き出せば問題ねェ」

姫神「アクセラ君のチョーカーには。電極の他に睡眠学習装置でもついてるの……?」

吹寄「そういえばラジオに出たとき、半分寝てて半分起きてるから意識はあるとか何とか言ってったっけ?」

土御門「器用なヤツだにゃー」

一方通行「……ま、そォいうわけでコイツは無様に赤点を取って涙目で補習に行くことなンざねェよ。……ン?」

上条「つーか、これ絶対暗記無理だろ。10分どころか1時間あっても足りねえよ。クソ、ふこ――」ボソッ

一方通行「さて、腹も減ったところだし何か食いモンでも頼もォかなァ? 例えば一番高そォなこれとか」

上条「ッ!? さいんこさいんたんじぇんとさいんこさいんたんじぇんと」

一方通行「こォいう風に適度に『恐怖』で痛みつけてやれば、な?」ニヤァ


こうして一方通行の『恐怖という名のスパルタ教育』は日をまたぎ日曜日にも行われた。
徹底的に教育を受け、半ば廃人化した上条当麻(一方通行曰く『万全の状態』)はテスト当日を迎えるのだった。


結標「……よくよく考えたら、貴方もしかしてやる気満々だったんじゃないの? 暗記の確認用のテストまで用意してきてたし」

一方通行「気のせいだろ」ズズズ




青ピ「」ピクピク


―――
――



28 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:04:23.50 ID:BuzE8qjgo


February Forth Friday 15:40 〜テスト結果発表日・帰りHR前休み時間〜

-とある高校・一年七組教室-



ワイワイガヤガヤ



吹寄「……さて。おそらく今日のホームルームでひと通り全部のテストが返ってくるわね」

姫神「うん。あと残ってるのは化学と現文。どちらも私は自信がある」ニヤリ

青ピ「おおうっ神よっ!! 無勉のボクに赤点回避の点数をっ!!」

吹寄「今さら神様にすがってどうするのよ? というか無勉だったのあなた!?」

青ピ「だってぇー、ボクもぉー、結標先生の授業受けたかったのにぃー、いつの間にかお開きしてたんだもーん。もうやる気なくしてエロゲしかしてなかったわ」

姫神「……で。今のところの成果は?」

青ピ「今んところ赤点はギリギリ回避できとるでー! だから神様に祈ってるんやでっ!!」

吹寄「あっ、そう。そういえば肝心の上条当麻はどうなったのかしら?」

土御門「カミやんの結果は全部今日決まるんだぜい」

吹寄「どういうこと? もしかして今のところ全部回避してるっていうの?」

土御門「さあ? カミやんに聞いても『……今は戦争中だ。口を慎め土御門』って返されるだけだからにゃー。もちろんムカつくから一発ぶん殴っといたけど」

青ピ「何か知らんけどカミやんしばらく見ないウチにキャラ変わったよな。寡黙キャラというかクールキャラというか……中二病にでも発症したんやろか?」

姫神「それは大体アクセラ君のせい。青髪君はいなかったから知らないだろうけど」

青ピ「いなかったというか実際にはおったよな? 気絶してただけで普通にその場におったよな?」

吹寄「うーん、しかし気になるわね上条の途中経過。ちょっとあたしが脅したら教えてくれないかしら?」

土御門「吹寄ぇ、いつの間にお前はそんなジャイアンみたいなキャラになったんだにゃー」

吹寄「じょ、冗談よ! そんな馬鹿みたいな真似するわけないじゃない!」


一方通行「ま、でも例え脅したところでアイツは結果を言えねェよ」


青ピ「おっ、アクセラちゃんと姉さんおかえりー。身体測定(システムスキャン)やっと終わったんかいな」

結標「そうよ。はぁ、疲れたわ……頭痛い」

一方通行「つゥか、何でオマエそンなに疲れてンだよ? この程度の学校の測定なンかたかが知れてるだろ」

結標「何か知らないけど能力の限界ってやつを測られたわ。重さ、距離、正確性、他にも飛ばせるものの大きさとか……いつもより余計に演算したと思う」

一方通行「へっ、情けないヤツ。いつも手抜きして能力使ってるからこォなるンだよ。俺みてェに毎日全力で生きていけばこォはならなかっただろォな」

結標「似合わな過ぎて笑えないわよ、そのセリフ」

青ピ「……何という付いていけない会話。これが高位能力者……!」

土御門「お前がアホなだけだろ」

姫神「うん」

青ピ「ちょっと待って二人とも。冗談やで冗談、まさかあの程度でついていけないわけないやないかーい!」


29 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:05:14.73 ID:BuzE8qjgo


吹寄「ところでアクセラ、さっきの結果を言えないってどういう意味よ?」

一方通行「あァ? ああ、実はアイツのテストだけ結果発表日にまとめて返却するよォ月詠に頼ンでンだ」

吹寄「どうしてそんな面倒なことを?」

一方通行「考査中に返された解答用紙が赤点だったとしよォ。そォしたら確実にアイツは萎えてやる気がなくなるだろォが。それを防ぐためにだ」

土御門「でもそれってあんまり関係なくないか? どっちにしろ赤点の時点で補習確定なわけだからにゃー」

一方通行「ああ。たしかにこりゃ綺麗事かもしンねェな。でも赤点の数を出来る限り減らせば、少しでも補習の時間が短くなるかもしれねェじゃねェか」

青ピ「……アクセラちゃん」

一方通行「あン? 何だよオマエ」

青ピ「いつからそんな他人のことを思いやる優しいレベル5になったんや……ボクは嬉しいでぇほんま」

一方通行「何言ってンだオマエ気持ち悪っ。死ねよ真面目に」

青ピ「ひどっ!? というかトーンがマジやん」

一方通行「死ね」

結標「そういえば一方通行? 貴方のテストのほうはどうなのよ? 上条君の先生やってたけどあの様子じゃほぼ無勉でしょ?」

一方通行「知らねェ」
 
結標「知らないって何よ? はぐらかしてるつもり?」

一方通行「ンなつもりじゃねェよ。何か知らねェが上条のテスト返却の件を伝えに行ったとき、どォやら月詠の野郎が勘違いしたらしくな。未だに俺の解答用紙も返ってきてねェ」

吹寄「へー、ある意味問題児二人の結果が今日一気に決まるってわけね」

一方通行「俺をあの三下と一緒にしてンじゃねェ」

結標「文系科目に関しては同じようなものじゃない。特に今日返ってくる現代文とか」

一方通行「俺がそンなモンで手こずるわけねェだろォが」

青ピ「おっ、それもしかしてフラ――」



ゴシャ!!



土御門「またか青髪ぃぃぃぃ!?」

吹寄「相変わらず懲りないわね」

姫神「形式美なのだから。これはもうしょうがない」



ガラララ



小萌「はーいみなさーん! ホームルームを始めますので席につきやがってくださーい!」



30 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:06:12.87 ID:BuzE8qjgo




小萌「――というわけで今日は化学と現代文のテストを返しまーす! つ・ま・り、今回の期末テストの結果が今日分かってしまうということです!」



ワイワイガヤガヤ



吹寄「……よし! 今回のテストは乗り越えたわ!」化69点 現74点

姫神「今回は結標さんのおかげで数学も調子良かったし。上位はいただいた……!」化95点 現90点

土御門「よっしゃーっ!! これで補習回避ぃ!! 舞夏と甘いスプリングバケーション!!」化47点 現51点

青ピ「ありがとう神様!! やっぱり勝利の女神様はボクについてくれてたんやな!!」化34点 現39点

吹寄「神様に祈ったのか女神様に祈ったのかどっちかはっきりさせなさいよ。というか無勉で回避なんてすごくムカつくわね……」

結標「みんな、その調子だとうまくいったみたいね」化100点 現99点

青ピ「うわっ、化け物がおる」

土御門「姉さんこれで100点9つ目か……さすが超能力者(レベル5)っ!!」

姫神「やはり次元が違い過ぎる。私には上位なんて無理な話だった」

吹寄「いや、彼女だけおかしいだけだから。上位にはいけるでしょ……たぶん」

結標「自分の得点教えてあげただけで、まさか化け物とかおかしいとかって言われるとは……」


小萌「はいはーい! みなさん騒ぎたいのは分かるのですが一旦席に座ってくださーい!」



ワイワイガタガタ



小萌「えっと、これから本人たちの希望で上条ちゃんとアクセラちゃんのテストをまとめて返すのですよー」



<おおっーついに上条君たちの命運が決まるのね! <つーかコイツら冬休みの唯一の補習組じゃね? <どうせ補習だろ!



上条「…………」ゴクリ

一方通行「何ビビってンだ三下。オマエはやれるだけのことはやった、あとは胸を張って解答用紙を受け取りに行けばイイ」

上条「あ、一方通行……」

一方通行「まァ、一つでも赤点あったらステーキ奢りだけどな」

結標「さらにプレッシャー与えてどうするのよ」


31 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:07:29.90 ID:BuzE8qjgo


小萌「じゃあまず上条ちゃんから取りに来てくださいー!」


上条「……は、はい」ガタッ



ざわざわざわざわ



上条(やれることは全部やった。あとは神頼み……いや違うッ!!)


小萌「はい、では上条ちゃんどうぞ!」スッ


上条(神様……、この世界(テスト)がテメェの思い通りの(上条当麻が補習から逃れられない)システムで動いているってんなら――)



上条「まずはその幻想をぶち殺す!!」バッ



現代文  53点
古 文  39点
数 学  32点
英 語  31点
化 学  49点
物 理  40点
世界史  42点
日本史  47点
公 民  49点
家庭科  60点
保健体育 45点


上条「……えっ」

吹寄「……う、嘘っ」

土御門「か、カミやんが……」

姫神「……赤点を」

青ピ「か、回避したっ!?」




上条「や、やったあああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」




32 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:08:16.10 ID:BuzE8qjgo



<うおおおおおおおおやったな上条ぉ!! <まさか上条君が補習に出ない日が来るとはね…… <あれ? 俺ですら赤点取ってんだぜ……何で? <涙拭けよ



結標「……ふふふっ、さすが一方通行先生ね」

一方通行「チッ、当たり前だろォが。学園都市第一位が直々に指導してやったンだ、これで無様な結果だったら八つ裂きにしてたぞ」

結標「そうね。上条君すごく嬉しそう」

一方通行「そりゃそォだ。念願の補習回避に加えて俺の与え続けてきた『恐怖』を全部乗り越えたンだ。喜ばねェ方がおかしい」

結標「貴方……上条君にどれだけ罰ゲームを後付したのよ……?」


上条「っしゃーっ!! うっしゃーっ!! おぉうっしゃー!!」


小萌「上条ちゃん! 上条ちゃん!」

上条「ん? 何ですか先生、今俺は喜ぶので忙しいんですけど」

小萌「喜んでるところ悪いのですが、上条ちゃんは能力開発の単位が足りていませんのでどちらにしろ補習ですよー」

上条「…………………………………………ふぁ?」

土御門「なん……だと……?」

吹寄「くっ、そういえば忘れてたわ」

姫神「そんな……」

青ピ「け、結局こんなオチかーい!」


上条「……う、うそだろ先生……? 俺、俺赤点取ってないのに……」

小萌「…………」ニコニコ

上条「こんなのってねえよ……結局未来は変わらないって言うのかよ……、やっぱり俺じゃあ、幻想は殺せないってのかよ……」ガクッ


吹寄「上条当麻……」

姫神「上条君……」

土御門「カミやん……」

青ピ「カミやん……(あれ? 何この空気!? いつもなら『ぷげらwぷげらwざまぁwww』って感じなのにあれー?)」


結標「……残念ね。まさかあんな落とし穴があるなんて」

一方通行「そォか? どの辺りが残念なのか聞きたいね」

結標「ちょ、一方通行! さすがにそれは今言うべきセリフじゃないと思うんだけど!」

一方通行「いや、だってよォオマエ……上条の野郎はある意味補習を回避してンじゃねェか。ここは喜ぶべきだろォが」

結標「…………えっ」


33 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:09:02.96 ID:BuzE8qjgo


小萌「……上条ちゃん」

上条「……はい」

小萌「上条ちゃんは今回のテスト、このテストの結果を見る限りよっぽど頑張って来たようですね」

上条「…………」

小萌「先生正直びっくりしましたよー。どうせまた赤点を取って補習をしなきゃいけないのか、なんて先生が絶対思ってはいけないことを思っちゃってたのですよ」

上条「…………」

小萌「だから先生は反省しなきゃいけません。そしてこれからは上条ちゃんはやればできる子ですって、ちゃんと上条ちゃんを信じていきます」

上条「…………」

小萌「そういうわけで上条ちゃん?」


小萌「春休み。ゆっくりのびのびと楽しんで、たくさんの思い出を作るのですよー!」


上条「………へっ? い、今何て……」

小萌「あっ、でもちゃんと宿題はやってくるのですよー? もしやって来なかったら先生本気で怒りますからねー」

上条「……ちょ、ちょっとわけ分からないんですけど先生? 俺って春休みに補習があるんじゃねえのか?」

小萌「はい、そうですー。ちゃんと補習もやりますよー」

上条「じゃあ先生は何でそんな思い出とか何とか……」

小萌「ふふふっ、上条ちゃん? 今回の補習は上条ちゃんの頑張りに免じてなんとなんと!? 自宅で能力開発のプリント10枚なのですよー!」

上条「……ってことは……?」

小萌「はい。上条ちゃんは休み中にわざわざ学校に来る必要はありませーん! あっ、でも来たいのだったら別に来てもいいですけどー」

上条「やっ、やった……」



上条「補習回避きたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」



小萌「あっ、ちゃんと補習はありますよ! プリントですプリント! 回避できてませ――ふにゃっ?」

上条「ありがとうせんせええええええええええっ!! 俺担任が小萌先生で本当によかったよおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」ダキッ

小萌「ちょ、か、上条ちゃんこんなところでやめっ、というか私と上条ちゃんは教師と生徒であって……でも上条ちゃんが望むなら別に先生は///」



<おいあの野郎何勝手に小萌先生に抱きついてんだゴルァ!! <ぶち殺せ!! <アイツだけ事実上補習回避の上小萌先生とイチャつくなんて理不尽許されねぇ!!



34 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:10:06.49 ID:BuzE8qjgo


結標「……知ってたの? このこと?」

一方通行「イイや、別に」

結標「じゃあ何で貴方さっき補習回避してるとか言ってたの?」

一方通行「あァ? そりゃ決まってンだろ。月詠の野郎がいかにも私は嘘ついてますよ、って顔でニコニコ笑ってやがったからだ」

結標「えっ、別にいつも通りの笑顔だったような気がしたけど……」

一方通行「俺は今まで嘘で塗れた世界を生きてきたンだ。あの程度の分かりやすい嘘は余裕で見抜ける」

結標「そ、そう……」

一方通行「今回は大方アレだろうな。『今まで私にかけてきた迷惑のお返しですよー』っつゥ感じで勿体ぶってあンな茶番始めたンだろ」

結標「……まあでも、何だかんだ言ってよかったわね。上条君はこれでちゃんと春休みがあるってわけだし」

一方通行「そォだな。ステーキも結局俺が奢るっつゥことになって万々歳だろォな」

結標「それじゃあまた春休みも、みんなで集まってわいわいできるってことよね? ね、一方通行?」ニコッ

一方通行「…………」


吹寄「上条当麻ァ!! たしかに赤点を取らずにテストを乗り越えたのは喜ばしいことでしょうね。でもいくら嬉しくてもやっていいことと悪いことがあるでしょうが馬鹿者がッ!!」

土御門「オーケーカミやん。今から貴様は一年七組の敵だ。恨むなら自分の常識のなさを恨むんだな」

青ピ「イエスロリータ!! ノータッチ!!」

小萌「青髪ちゃん! 先生は大人なのですよー! その、えっと、ろ、ロリとかじゃないのですよぉ……」

姫神「やはり上条君は。もしかして上条君は。そういう趣味の変態ッ……!」ジトー

上条「ぎゃあああああああああっ!! 死ぬっ!! 本気で死ぬっ!! 楽しい春休み送ることなく死ぬっ!! そしてその蔑む目はやめて姫神ぃぃぃ!!」


結標「ふふふっ」

一方通行「…………ハァ」


結標淡希は記憶喪失である。だから積極的にイベントに参加して思い出を積極的に作ってやる、そういう少女だ。
そんな彼女と対局の位置にいる少年一方通行からすると、正直イベントなんてものに巻き込まれるのは御免である。
だから一方通行は彼女の笑顔を見てこう呟いた。



一方通行「……面倒臭せェ」



――――――


35 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/04(日) 00:11:28.57 ID:BuzE8qjgo


〜おまけ〜


上条「……ふ、不幸だ」ガタリ

土御門「ふん、初の補習回避ではしゃぎたい気持ちは分かるが、それはきちんと常識を考えたはしゃぎ方をするべきだったな」ゴキゴキ

青ピ「せやで。いくらフラグ建築士のカミやんやからて痴漢行為が許されるほど世界は優しくないんや」バキバキ

吹寄「ふう、……ん? そういえばアクセラの点数って結局どうだったのかしら?」

一方通行「あン? 何で俺のテストの結果なンて知りてェンだ? もォ上条の赤点回避っつゥ物語の山場は終わっただろォが」

吹寄「いや、一応ね? どういう結果になったか気になるわけよ」

姫神「うん。私も気になる。非常に」

結標「はっ、そうよ。よくよく考えたらコイツが現文10点取ってたら春休み何も出来ないじゃない……!」ボソッ

一方通行「……何で俺なンかのテスト結果そンなに気にしてンのか知らねェが、見たいなら見せてやるよ。そンな面白いモンじゃねェけどよォ」スッ


現代文  100点
古 文  100点
数 学  100点
英 語  100点
化 学  100点
物 理  100点
世界史  100点
日本史  100点
公 民  100点
家庭科  100点
保健体育 100点


土御門「えっ」

青ピ「えっ」

吹寄「えっ」

姫神「えっ」

結標「えっ」

上条「」ピクピク

結標「う、嘘っ……だって現文10点の一方通行よ……? 何か0が一個多いんですけど……」

一方通行「チッ、オマエらはいつまでくだらねェ過去に囚われてやがンだァ? くだらねェ」

結標「い、一体どんなトリックを使ったっていうのっ!? 一体どんなチートを使ったっていうのっ!?」

一方通行「ったくよォ、俺は第一位の一方通行だぞ? たしかに最初のテストは残念な結果になっちまったがなァ、一度どンなモンかっつゥパターンはそれで確認できたンだよ」

一方通行「確認した、っつゥことはそれに応じた対策を講じりゃそれではい楽勝、ってことなンだよ。分かったかなァ三下どもォ」

結標「た、対策? あ、貴方いつの間にテスト勉強したのよ!? だって、だってずっと上条君に付きっ切りだったじゃない!」

一方通行「は? テスト勉強? 何言ってンだオマエ? だいたいテストっつゥのは今までの授業の復習だろォが。だったら真面目に授業聞いて内容覚えてりゃ何の問題ねェだろォが」

一同「…………」

一方通行「?」



一同「あ、当たり前のことを一番言われたくないヤツに言われたっ!?」



――――――


36 : ◆ZS3MUpa49nlt :2021/07/04(日) 00:13:00.93 ID:BuzE8qjgo
久々の[田島「チ○コ破裂するっ!」]だから脇汗びっしょびしょだわ


次回『年下たちの恐怖』
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/07(水) 11:18:19.34 ID:4ySmm0vF0
前の好きで読んでたな懐かしい
38 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 21:57:04.01 ID:hun+MW17o
読んでる人いて草生えた
投下
39 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 21:58:26.86 ID:hun+MW17o


2.年下たちの恐怖


February Forth Sunday 12:00

-黄泉川家・一方通行の部屋-


一方通行「Zzz……」



<ワハハハハハハッ!! <ッテミサカハミサカハ



一方通行「Zzz……あン? うるせェな……今何時だと思ってやがる」ムクリ

一方通行「…………」

一方通行「あァ、もォ昼か……」

一方通行「面倒臭せェが一旦起きるか。俺の体がカフェインを欲してやがる」ガチャリガチャリ


-黄泉川家・リビング-



ワイワイガヤガヤギャーギャーワーワー!!



一方通行「……つゥか何だァ? このうっとォしいくらいの騒がしさは?」

一方通行「たしかに今は昼メシ時だろォが、これは異常だろ。どンだけハッスルしてやがンだあのガキは」

一方通行「まァ、俺には関係ねェからどォでもイイがな」



ガラララッ



打ち止め「うおおりゃああっ!! このミートボールはミサカのものだぜっ! ってミサカはミサカは山賊魂を燃やしながら強奪を謀ってみたりっ!」バッ

円周「ふん、甘いよ打ち止めちゃん! 甘々だよ大甘だよ! この程度のスキルで山賊宣言するなんて『木原』を舐めすぎっ!」ガキン


一方通行「…………」


打ち止め「あっ、やっと起きたみたいだね。おはよー! ってミサカはミサカは時間帯に合わない挨拶をしてみたり」

円周「おはよう、そしてお邪魔しちゃってますアクセラお兄ちゃん」


一方通行「…………」



ガラララッ



一方通行「……寝よ」ガチャリガチャリ


円周「あっ、何も見なかったことにして部屋に帰ろうとしてる」

打ち止め「逃すなぁ、追えぇ!! ってミサカはミサカは命令口調しつつ結局自分で追いかけてみたり!」ダッ


40 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 21:59:12.89 ID:hun+MW17o


-黄泉川家・食卓-


一方通行「……ハァ、何つゥか面倒臭せェ」ズズズ

打ち止め「人の顔見るなり面倒臭い発言はどうかと思うよ、ってミサカはミサカは至極真っ当な指摘をしてみたり」

円周「しょうがないよ打ち止めちゃん。アクセラお兄ちゃんはそーいう人だし」

一方通行「そォいう人、って評価されるほどオマエとそンな付き合いねェと思うンだけどよォ」

円周「そうかなあ? バレンタインのチョコを渡したりするくらいの仲だとは思ってたんだけど」

一方通行「それはオマエが一方的にそォ思ってるだけだろォが。つゥか、俺はオマエのプレゼント受け取った記憶ないンだが」

円周「あれー? そうだったっけー? あれれー?」

打ち止め「まああれはプレゼントというよりイタズラでしたからなー、ってミサカはミサカはポテトフライをかじりながら思い出してみる」モグモグ

一方通行「……その昼メシはコンビニか何かの弁当か。他のヤツらはどこにいった。そしてこのクソガキがここにいる理由はなんだ?」

打ち止め「ヨミカワはアンチスキルのお仕事で、ヨシカワはコンビニのバイト、アワキお姉ちゃんはお友達と遊びに行ってるよ、ってミサカはミサカは説明してみたり」

打ち止め「そしてミサカがここにいる理由、それはここに住んでるからとしか言い様がないのだ、ってミサカはミサカは胸を張って答えてみたり」エヘン

一方通行「オマエのことじゃねェよ。そっちの木原円周のことだ」

円周「えっ、クソガキって私のことだったの? まさか私までクソガキ扱いされてるとは思わなかったなあ」

打ち止め「というかあなたはいい加減二人称を分かりやすくしたほうがいいと思うよ。というわけでミサカのことはクソガキじゃなくちゃんとラストオーダーと呼ぶのだ!」ビシッ

一方通行「名前長いからクソガキでイイだろ」

打ち止め「わーいソッコー拒否されちまったぜ、ってミサカはミサカは自分の名前の長さを少しだけ恨んでみたり」

円周「ふーん、じゃあ私の名前はそこまで長くないから呼んでくれるってことだよね?」

一方通行「呼びづらいからクソガキでイイだろ」

円周「あれ? おっかしいなあ、私の名前は円周率みたいで呼びやすいってことに定評があるのに」

打ち止め「でもでもそれじゃあ駄目だと思う! 同じクソガキだったらこうやって二人でいると、呼ばれた瞬間二人同時に返事する事件が多発すると思うよ、ってミサカはミサカはこれからの展開を予想してみたり」

一方通行「だったらどっちか俺の前から立ち去れ。そォすりゃ問題ねェだろ」

円周「それは無理な提案だね。私たちは常に一緒にいる、いわば二人一つのような存在! これから私が白い服を着て打ち止めちゃんが黒い服を着て悪者をやっつけるような運命があるに違いないんだよ!」

打ち止め「おおっ! いいねえ、そういう展開結構燃えるところがあるかも、ってミサカはミサカはこれからの展開に少し期待をしてみたり!」

一方通行「アニメの見過ぎだクソガキども」


41 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 21:59:59.58 ID:hun+MW17o


一方通行「……結局どォしてオマエはここにいるってンだよ? 木原の方のクソガキ」

円周「一応名前が区別つくように努力はしてくれるんだね。結局クソガキだけど」

打ち止め「さすがツンデレ界の第一位だねー、ってミサカはミサカはあなたの成長に感心してみたり」

一方通行「誰がツンデレ界の第一位だ。ぶっ殺すぞクソガキ」

円周「まあまあ定番の流れは置いといて、アクセラお兄ちゃんのために私がここにいる理由を『木原』的に説明してあげるとするよ」

一方通行「普通に説明しろよ面倒臭せェ」

円周「ふーん、だったら普通に説明するよ。今日は従犬部隊の社員全員出張に出ててね。私だけ仲間はずれにされたんだよ。以上」

一方通行「……つまり、アレかァ? 今お隣さンは誰一人いなくて閉め出されたオマエは行く当ても無いからここにいると?」

円周「そうそう、さすが第一位だね。理解力がまともで助かるよ」

一方通行「理解力なンてクソほども必要ねェ話だったよォな気がすンだが……」

円周「まあこまけぇこたぁいいんだよ! ってことで一つよろしく!」

一方通行「……ハァ、本当に面倒臭せェ」

打ち止め「ん? 何でそんな露骨に面倒臭いアピールするの? この殺伐とした家にエンシュウが遊びに来たんだよ? 喜ぶべきじゃないかな?」

一方通行「別に元から殺伐となンかしてねェだろ。つゥか、このクソガキが遊びに来たせいで、逆に俺がここを殺伐とした雰因気にするかもしンねェな」ピキピキ

円周「まあまあ落ち着いて。ほら、あったかいお茶でも飲んで」つ旦

一方通行「余計なお世話だッ。てか、人の家のモン勝手に使ってンじゃねェぞクソガキ」

円周「うーん、こんなにおいしいのになあ」ズズズ

一方通行(……クソが、出来損ないでもやっぱり『木原』か。人の癇を障りに障りまくってきやがる)ギロッ

円周「? いやあそんな熱烈な視線を向けられてしまうとこちらも困るっていうかー」テレッ

一方通行「『木原』、マジでうぜェ……」ピキピキ

打ち止め「ぎゃあああっ!? 何か知らないけどとてつもなくキレてるぅぅ!? ってミサカはミサカは今にも電極のスイッチを押してしまいそうなあなたを制止してみたり」

円周「能力に頼らなければ女の子一人どうにかできないなんて、まさしく滑稽ってやつだねー」

一方通行「クソガキィ! よォく聞けェ! トモダチはちゃンと選べェ! こンなゴミクズ間違っても選ンでンじゃねェぞゴルァ!!」

円周「ひどい言われようだねー」

打ち止め「むー、突然何なの? ちょっとそれは言いすぎだと思うよ、ってミサカはミサカは友達を馬鹿にするあなたに少し憤りを感じてみたり」

一方通行「あァ!?」ギロッ

打ち止め「ひっ、……え、エンシュウは親友だもん! ってミサカはミサカは徹底抗戦の姿勢を見せてみる」

一方通行「コイツが……、親友だとォ!?」

円周「そうだそうだー! 親友だぞー!」

一方通行「へェー、こンなにうっとォしいゴミクズ野郎だっつゥのにか?」ピキピキ

打ち止め「そ、そうだよ! どの辺りがゴミクズ野郎なのかさっぱり分からないけど、ってミサカはミサカは肯定してみる」

円周「そうだー! ゴミクズ野郎だゴミクズ野郎だ……あっ、間違えた、親友だ親友だぞお!」

一方通行「……あァーもォ面倒臭せェ。勝手にしろォ。俺ァもォ寝る」ガチャリガチャリ

円周「おっ、デレたよ打ち止めちゃん。やったね私たちの勝利だあ」

打ち止め「いや、単にもう面倒になっただけだと思うけど。まあいいやミサカたちの勝利だわっしょーい!!」

一方通行「くっだらねェ」ゴロン


―――
――



42 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:00:44.09 ID:hun+MW17o


同日 14:30

-黄泉川家・リビング-


一方通行「Zzz……」


打ち止め「――ねえねえ、アクセラレータ! 起きてー! ってミサカはミサカは呼びかけながら揺すってみる!」ユサユサ


一方通行「Zzz……」


円周「アクセラお兄ちゃん! 朝だよー! 起きる時間だよー!」


一方通行「Zzz……」


打ち止め「うーん、やっぱり起きないねー、ってミサカはミサカは予想の範疇だけど少し残念がってみたり」

円周「おかしいなあ、時間的にレム睡眠のはずだから、すんなり起きるのだと思ったんだけど。もしかしていつも寝すぎて睡眠の周期が他の人とは異なるのかなあ?」

打ち止め「たしかにあの人はしょっちゅう昼寝してるからねー。たぶんあれだよね、昼寝し過ぎると夜眠れなくなるあれ! ってミサカはミサカは自信満々に発言してみたり」

円周「そういうのとは違うと思うけど。まあいいや、とりあえず違う方法で起こそう」

打ち止め「違う方法? ってミサカはミサカは繰り返してみる」

円周「うん。人を起こす方法は何も体を揺さぶったり大声で呼びかけるだけじゃないってことだよ」スッ

打ち止め「? スマホなんか出してどうするつもりなの? 大きい目覚まし音とか流したりするつもり?」

円周「違うよ。それじゃあ大声で呼びかけるのと何ら変わらないよ。私の場合はこうやって使うんだよ。……んっと、そうだなー」スイッスイッ

打ち止め「おおうっ、何という華麗な指さばき。まさしくスマートフォンだね、ってミサカはミサカはうまいこと言ってみたり」

円周「別にうまくも何ともないよ。……うん、そうだね。やっぱり安定の数多おじちゃんだよね」スイー

打ち止め「ん? 何でここでキハラの名前が出てくるの? ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」

円周「あっ、そうだ打ち止めちゃん。少し私から離れて身構えたほうがいいと思うよ?」

打ち止め「えっ、何で?」

円周「あなたにとってとても怖くて、気持ち悪くて、不快すぎるから、もしかしたら失禁とかしちゃうかもだからね」

打ち止め「失禁って何言ってるのえんしゅ――ッ!?」ゾクッ

円周「――うんうん、そうそうそうだよね数多おじさん。『木原』ならこういう雰囲気を自分で作り出さないといけないよね」ピーガガガ



ガタッ!!



一方通行「ッ!?」カチッ

円周「あっ、起きた起きた」


43 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:01:37.31 ID:hun+MW17o


一方通行「……木原、……円周……?」

円周「そうだよー。みんなのアイドル円周ちゃんだよー」

一方通行「……オマエ、一体何をやりやがった……!」

円周「うん? 何ってあれだよあれ、アクセラお兄ちゃんがあまりにも起きないから打ち止めちゃんと一緒に起こしてたんだよ。ね、打ち止めちゃん?」


打ち止め「えんしゅうこわいえんしゅうこわいえんしゅうこわいえんしゅうこわい――」ガタガタブルブル


円周「あら、やっぱりこうなっちゃったか。だから離れててって言ったのに」

一方通行「クソガキに……打ち止めに何をやりやがったオマエェ!!」

円周「そんな中二病的なシリアス顔にならなくもいいのに。別にただ『木原』的に純粋な悪意ってやつを放ってみただけだよ。ポ◯モンで言うあくのはどうみたいなの。二割の確率でひるむよ」

一方通行「ふざけてンじゃねェぞォ木原円周ゥ!! やっぱりオマエは俺たちを狙うよォに言われた上からの刺客だったっつゥことかァ!!」

円周「私はそんなんじゃないし。もう、はいはいやめやめ。一旦落ち着こうよアクセラお兄ちゃん。誰もこんなシリアス展開期待してないよ。これがドラマとかならチャンネル変えられちゃうよ……あっ、そうだ」スッ



パンッ!!



打ち止め「!? な、何っ!?」ビクッ

円周「やっと正気に戻ったね。ちょっとこのアクセラお兄ちゃんどうにかしてよ。今にでも私の血流を操作して心臓爆破しそうで怖いよ」

一方通行「……ら、打ち止めァ」

打ち止め「わっ、何そのとてつもなく怖い顔ッ!? 何だか知らないけどミサカなら大丈夫だから落ち着いてっ! ってミサカはミサカはとりあえず電極のスイッチを切ることを懇願してみる!」

一方通行「あ、ああ」カチッ

打ち止め「一体何があったの? ちょっとミサカ何があったかイマイチ覚えてないんだけど、ってミサカはミサカは少し痴呆症を心配しながら尋ねてみる」

円周「いやー、その外見で痴呆症はないでしょー。ただちょっと私のイタズラでビクビク状態になってただけだよ」

打ち止め「……よく分からないけどあなたが怒ってたのってそれが原因? ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

一方通行「チッ、ンなわけねェだろォが。ただそこの円周が調子に乗ってたからオシオキしてやろォと思っただけだ」

打ち止め「ふーん、まあ何にしてもありがとうね、アクセラレータ!」ニコッ

一方通行「ッ……くだらねェこと言ってンじゃねェよクソガキ」

円周「わあ、まさしくツ・ン・デ・レ・だ! いやあ、今まで何となくしか感じてなかったけどこれはもうツンデレ判定確定だね、うんうん」

一方通行「…………」カチッ


44 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:02:28.60 ID:hun+MW17o


円周「……あれえ? アクセラお兄ちゃん何で唐突にまた電極のスイッチを押したの? 私には理解できないよ」

一方通行「とりあえずオマエが敵じゃないっつゥのは信じてやろう」

円周「ほんと? それは嬉しい限りだね。でもそんなにあっさり信じちゃってもいいのかなあ?」

一方通行「別に今さらエネミー宣言したところでオマエみてェなガキ怖くねェからな。ま、この話は置いといてオマエが敵じゃないとしても……」


一方通行「とりあえずオシオキは確定っつゥことだ」ニヤァ


円周「……うんうん、分かってるよ数多おじさん。『木原』はこういうときは逃走するにかぎ――」ダッ



ズガン!!



一方通行「チッ、くだらねェ」カチッ

円周「」プスプス

打ち止め「わー、すごく痛そう、ってミサカはミサカは小学生並みの感想を言ってみたり」

一方通行「見た目が小学生だから別にイイだろ。……つゥか、結局オマエらは何でこの俺の至福の昼寝タイムを邪魔しやがったンだ?」

打ち止め「え、えーと何だっけ、ってミサカはミサカは記憶を少しさかのぼってみたり」

一方通行「どォでもイイことなら俺は昼寝を再開させてもらうぞ」ゴロン

打ち止め「えっ、ちょっと待って! えーと、えーと」アセッ

円周「これだよ打ち止めちゃん。このチラシこのチラシ」ピラピラ

打ち止め「おおっ、これだ! ありがとエンシュウ! ってミサカはミサカは素直にお礼を言いつつチラシを受け取ってみたり」

一方通行「チッ、無駄に回復力は高けェな」

円周「それは私が『木原』だからだよ。えっへん!」

一方通行「未元物質(ダークマター)でも体に埋め込ンでンのか……」

打ち止め「これだよこれ! これを食べに行きたくてあなたを起こしたの! ってミサカはミサカはチラシを渡しながら上目遣いで頼み込んでみたり」

一方通行「あァ? 何々……『クレープハウスrablun』ってまたクレープかよ! このネタ前もやっただろォが!」

打ち止め「それなら話が早い。ミサカたちをそこに連れて行ってクレープをごちそうして欲しいのだ、ってミサカはミサカは率直にお願いしてみたり」

円周「私前々からこのクレープ屋さんに友達と行ってみたかったの。お願いアクセラお兄ちゃん」

一方通行「白々しい嘘ついてンじゃねェ。つゥか、何で俺が連れて行かなきゃいけねェンだ、オマエらだけで行って来い」

打ち止め「ええっー、だってミサカたちお金ないしー」

一方通行「ンなモン俺がいくらでも渡してやるよ」

円周「そもそもこんなか弱い女の子二人でそんなところまで行け、って言うのが鬼畜だよね」

一方通行「オマエは中学生だろォが! 今どき学園都市、しかも治安が一番まともな第七学区を一人で歩けないとか言う中学生なンているわけねェだろ!」


45 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/07/09(金) 22:03:40.68 ID:hun+MW17o


円周「別にアクセラお兄ちゃんがそれでいいならそれでいいんだけど。もしかしたら私たちだけで外に出たら、打ち止めちゃんを狙ったテロリストがいきなり強襲してくるかもしれないよ?」

一方通行「そンな都合よくテロリストが現れるわけねェよ」

円周「ほんとに?」

一方通行「ああ」

円周「ちゃんと前例があるのに?」

一方通行「あァ?」

円周「学園都市のトップシークレットの暗部組織『メンバー』。一応聞いてるんでしょ? 前、従犬部隊のオフィスが狙われたこと」

一方通行「…………」

円周「以前は数多おじさんたちがいたからよかったけど、さすがの私一人じゃ守り切る自信はないよ。私、一応『木原』だけどそんなに優秀じゃないから」ニヤリ

打ち止め(何の話をしてるんだろ? ってミサカはミサカは指を咥えながら会話する二人を眺めてみたり)キョトン

一方通行「チッ、分かったよ面倒臭せェ。連れて行ってやるっつゥのクソったれがッ」ガチャリガチャリ

打ち止め「えっ、ほんと!? わーい、久しぶりにスイーツが食べられるぜ、ってミサカはミサカは普段はプッツンプリンしか食べられない不満を今日ここで発散することを心に決めてみたり!」トテチテ

一方通行「この前散々クソ甘いチョコレート食べてたのに何の不満があるってンだ……」

打ち止め「チョコレートとクレープは別腹ってやつだよ、ってミサカはミサカは女子的な返答をしてみたり!」

一方通行「欲望に忠実な胃袋様だな、クソが」ガチャリガチャリ


円周「…………」

円周(……ふふっ、ほんとはあの程度の暗部組織私一人で余裕だけど、やっぱりこう言えばアクセラお兄ちゃんは動いてくれるね)

円周(さすが数多おじさん。アクセラお兄ちゃんのことをよーく分かってるねー)ピーガガガ


一方通行「オイ、クソガキィ! 来るならさっさとしろォ! ボケっと突っ立ってンじゃねェよ!」

打ち止め「早くー! エンシュウー! ってミサカはミサカは己の欲望のために急かしてみたり!」

円周「はあい! すぐに行くよー!」



ガタン



―――
――



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