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ワイルド・ハニーは砕かない
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157 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:20:34.92 ID:N+roWYgH0
そこに現れたのは――……一組の男女だった。
一人は金色の巻毛の男で、もう一人は団子にした髪を、三編みでまとめた女……。
静「……」
女「……ちっさ……高校生じゃあないの?今……」ボソ
男「なんでもありなんでしょう。ここでは……」
女「……」
静「…………」
158 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:23:13.08 ID:N+roWYgH0
女「……ねえ、何探してんの?ここで……さ」
静「……よ……」
男「……」
静「……四つ葉の、クローバー……探してるの。友達に……メイにあげるために」
女「……『メイ』」
男「…………手伝おうか?ぼくらも」
スッ
159 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:24:39.41 ID:N+roWYgH0
静「!!」
女「何年ぶりかな、こんなことすんの……ていうか、したことあったかな……」
静「……」ジーッ
男「……どうしたんだい?」
静「!」
男「ぼくらが……どうかした?」
静「いえ!あの……」
160 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:26:34.73 ID:N+roWYgH0
静「……踏まないんだ、って……思って」
女「……?」
男「?……!……ああ、そうだね」
女「?……??」
男「……あ、これ……四つ葉なんじゃあないか?」
静「!……あ……」
161 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:27:38.27 ID:N+roWYgH0
プツッ
男「ほら……」スッ
静「あ……ありがとう。これで、これを……メイに、友達にプレゼント出来る」
女「……」
男「……これは……ぼくらが……」
静「?……」
162 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:28:49.57 ID:N+roWYgH0
男「ぼくらが、言うことではないのかもしれない。君にとっては、部外者のぼくらが……」
静「……」
男「だけど――……」
女「……静、アンタのそのクローバーは……『メイに渡すものなの?』」
静「……え……」
163 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:30:07.44 ID:N+roWYgH0
男「静、きみの『友』は――……」
バシュウ
164 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:31:58.90 ID:N+roWYgH0
静「……え?」
キョロキョロ
165 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:33:18.25 ID:N+roWYgH0
突如、男女の姿は消えた。
そして――……
166 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:34:47.41 ID:N+roWYgH0
メイ「……ハア、ハア!ハア……ハァ……」
ザッ
静「……メイ?」
メイ「ハァ、ハァ……ハァ……」
静「メイ、ちょっと……大丈夫?」
メイ「ええ、ええ……大丈夫……大丈夫よ……静」
167 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:36:10.93 ID:N+roWYgH0
メイ(まさか……私の『ワンダフル・ワールド』の中で自由に動くとは!……『矢』の力かしら。ジョルノに、徐倫……あなどれないわね)
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ(しかし……これでもうおわり。私のワンダフル・ワールドは無敵なの。誰にも……邪魔されない。全ての生き物は眠り、夢を見て……世界中みんなが、『友達』に……ふふ……)
168 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:38:02.48 ID:N+roWYgH0
メイ「ふふ……ウフフフフ……フハハ……」ユラリ
静「ちょ、待……メイ、あの――……『四つ葉』――……」
メイ「なあに?」クルリ
静「……い、いえ……なんでもないわ。なんでも……」
メイ「?……おかしな静。ふふっ」
静「……」
169 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:40:29.18 ID:N+roWYgH0
静(メイ……見たこと無いわ。今まで、そんな『顔』……)
静(あたし……あたしは、ただ……メイに、『四つ葉』が……綺麗な顔に、四つ葉がきっと、合うと思って……)
静(なのに……あたし、何で?……『恐怖』?……メイに……?)
170 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:45:08.73 ID:N+roWYgH0
ガサッ
静「……え?」
171 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:46:23.66 ID:N+roWYgH0
静が右手で握っていた『クローバー』は……
いつの間にか……『紙』に変わっていた。
172 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:48:18.83 ID:N+roWYgH0
静「こ、『これ』は……(何年前?もうずっと、ずっと、ずう〜〜っと昔に、同じようなのを見た。……なのに、何でだろう……)」
静(つい昨日か、一昨日のように新鮮で……懐かしくて……)
静「……『暖かい』」
173 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:49:40.52 ID:N+roWYgH0
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
静「……」ガサリ
174 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:50:37.67 ID:N+roWYgH0
『つかえ』
静「……(覚えてる……確か、前に書いてあったのは……)」
静「……『あたま』……」
静「……」
静(『あたま』……『つかえ』?)
175 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:51:38.55 ID:N+roWYgH0
静「どういう――……」
ド ヒ ュ ゥ ウ ウ
静「う……」
176 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:52:17.04 ID:N+roWYgH0
…………
『いつまで寝てるんだ?お前は』
…………
177 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:53:14.80 ID:N+roWYgH0
風で目を閉じた静の瞼の裏に
知らない男の姿が、映る。
学生服で、眼鏡をかけた――……。
178 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/07(木) 21:54:37.81 ID:N+roWYgH0
静「……誰?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……
…………
179 :
◆eUwxvhsdPM
[sage saga]:2021/01/07(木) 21:56:17.76 ID:N+roWYgH0
今回はここまでです
レスありがとうございます。励みになります
180 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:00:38.73 ID:/2fOk0s80
…………
ブクブクブクブク……
静「……ガボ……ゴボ!……ガボボ!!……く……」
ボコボコボコ
静「……助け……けえ……ボコ……」
ボココ
181 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:03:04.65 ID:/2fOk0s80
――『水の中から見る太陽って――……』
……『ユラユラしてて、案外面白いのね』
静・ジョースターは、水底に沈みながら、ノン気にそんな事を考えた。
182 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:05:08.39 ID:/2fOk0s80
どうして、あたしは溺れてるんだろう?
どうして、あたしは悲しいんだろう?
どうして、あたしは……なんだか心がカラッポになっちゃった、って、考えてるんだろお?
静「…………ゴボ……」
ゴボゴボゴボ……
…………
183 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:06:16.68 ID:/2fOk0s80
…………
『五日目』
…………
184 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:08:28.02 ID:/2fOk0s80
…………
ジョセフ『『静』、じゃ。この娘の名前は、『静・ジョースター』』
承太郎『…………』
185 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:10:38.65 ID:/2fOk0s80
ジョセフ『どうじゃ?承太郎。ピッタリの名前だと思わんか?ン?』
承太郎『まだアメリカの地を踏んでねえのに、気の早いジジイだぜ……』
ジョセフ『知ってるモン、わし。日本では『善は急げ』って言葉があるんだもんのーッ。かわいらしい名前だと思わんか?昔見た日本のアニメキャラも同じ名前だったかのーっ。まあそれは関係ない話じゃが』
赤子『きゃっ♡きゃっ♡』
ジョセフ『お、ほれ見ろ承太郎!喜んどるぞこの娘!うーん、かわいいのーっ』
承太郎『……』
186 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:12:10.97 ID:/2fOk0s80
承太郎『……『おしとやか』にでも育ってほしいのか?この娘に』
ジョセフ『ん?』
赤子『あばーっ?』
承太郎『いや……日本の名前ってのは漢字に意味があってな……静って名前は、『おしとやか』だとか『穏やか』だとか……そんな意味合いがあるってだけの話だぜ』
赤子『……ういー……』
ジョセフ『うーむ、難しい事を言うのう。『意味』か……確かに、おしとやかな大人のレディーに育つと良いかもしれんのう……』
187 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:14:35.43 ID:/2fOk0s80
ジョセフ『しかし、そうじゃあのう……『穏やか』という意味があるのなら、わしはこの娘に……『穏やかな人生』を送ってもらいたいもんじゃ』
承太郎『……』
ジョセフ『わしらが命をかけて作った、安全な世界で……何者にも害されず、穏やかにのう』
赤子『ぶーっ……』
承太郎『……そうか』
ジョセフ『しかしの、承太郎。……わしはこうも思うのじゃ』
188 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:16:02.69 ID:/2fOk0s80
ジョセフ『名前とは重要じゃ。この世で唯一無二を表す記号。皆それをつけられて産まれてくる。……だがのう、『名前の意味を決めるのは、その子自身なんじゃ』』
承太郎『……』
189 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:16:59.24 ID:/2fOk0s80
ジョセフ『『静』という名前を聞いて、おしとやかな大人のレディーや、穏やかな人生を送っている娘を思い浮かべるかもしれん。……だが、この娘が大きくなった時……『静』という名前に、活発元気でハツラツな娘や、危険を承知で誰かのために動ける娘という意味が、イメージとしてついているかもしれん』
承太郎『……』
ジョセフ『わしはな、この娘……『静・ジョースター』の『名前』が……どう『成長』していくか、今からとても楽しみなんじゃ。『静・ジョースター』と聞いて、皆が何を思い浮かべるようになるかを、な……』
赤子『……アハハ♡』
ジョセフ『……』ニコリ
190 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:18:51.48 ID:/2fOk0s80
『だから、わしは名付けるんじゃよ。この娘の名前は――……』
『……静・ジョースター』
…………
191 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:20:54.12 ID:/2fOk0s80
…………
静「!!――……ガボ……」
朦朧とした意識の中で見た、今の光景は――……ただの『夢』なのかもしれない。
赤子であった自分が名付けられた時など、誰も覚えていないだろう。
しかし――……
192 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:21:50.45 ID:/2fOk0s80
静(なぜあたしは……泣いてるんだろう?)
ブクブクブク……
静(満たされない……満たされない。メイが……『友達』がいるのに)
ボコボコボコ……
193 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:22:46.97 ID:/2fOk0s80
静(そう。あたしは……一人ぼっち。溺れても、だあれも助けてくれない……)
ボコボコボコ……
静(あたしは――……『一人』だ……)
194 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:24:17.19 ID:/2fOk0s80
――ガッ!
ザパアッ!!
195 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:25:28.22 ID:/2fOk0s80
静「!!――……ゲホ!ゴホ!ゲェーホ!……おえ……!」ハァハァ
メイ「静……静!ねえ、大丈夫?……な、なんで溺れて……!」ハァハァ
静「……め、メイ……?」
メイ「ええ、ええ!私よ……静!」
196 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:26:35.73 ID:/2fOk0s80
静「……たすけて……くれたの?」
メイ「当たり前じゃあないの!『友達』……なんだから!」
チャプチャプ……
静「……『友達』……」
メイ「……な……(何故……?)」
197 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:27:50.69 ID:/2fOk0s80
メイ(ここは『ワンダフル・ワールド』……私の幸せの世界なのにッ!何故静が……こんなひどい目にッ!?)
静「……ごめん、ね。……メイ」
メイ「?」
静「あたし、さ……アンタみたいな、最高の『友達』がいるのに……なんでだろう?……『悲しい』の」
メイ「……」
198 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:29:35.58 ID:/2fOk0s80
静「心にドーナツみたいな穴が、ポッカリ空いたみたいで、さ……」
メイ「!!……」
静「……幸せよ。アンタといると。だけど……あたし、なんだか……弱くなった感じがする。……『元気』じゃあなく、『おしとやか』に、さ」
メイ「静……静……!」
199 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:31:13.20 ID:/2fOk0s80
メイ「……いいじゃあないの。『おしとやか』で……貴女はもう、戦わなくて良いんだから……」
静「……」
メイ「私が……私が、守るわ。静……わかったの。私は……貴女なしではいられない」
静「……」
200 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:32:22.89 ID:/2fOk0s80
メイ「なんでだろう……そう思うの。世界中のみんなも好きだけど、それでも貴女は……私と同じにおいがする」
静「……」
メイ「……大切なの。貴女が」
静「…………ごめん。メイ……あたし、アンタのこと……疑ってた。本当に……ごめん」
201 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:34:11.78 ID:/2fOk0s80
静「今の言葉……本心だって、わかるわ。こんなあたしにも、ね……」
メイ「……」
静「きっと、この海は……あたしなのよ」
メイ「……『あたし』?」
202 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:35:36.73 ID:/2fOk0s80
静「『あたし』なの。あたしの……『心』……あたしの弱さが生んだ、『心の闇』なの……」
グシャ……
メイ「?……!!……し、静……その、ポケットに入っている……チラリと覗く、その……『紙』は?」
静「え?……」
203 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:36:39.67 ID:/2fOk0s80
静「……これ……なんだろう。わからない。拾ったんだけど、なぜか……捨てられなくて」
メイ「……これは……この『紙』はッ!!」
…………
204 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:37:40.09 ID:/2fOk0s80
…………
メイ「……『双葉双馬』……」
ビ ュ ゥ ウ ウ ウ ゥ ウ
カサカサ……パラパラ……
205 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:39:23.54 ID:/2fOk0s80
杜王町の、闇の中。
有栖川メイは、数多の紙と対峙した。
地面をふきすさぶ、ボロボロの紙切れに……。
206 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:40:49.90 ID:/2fOk0s80
メイ「『執念』とでも言うの?……貴方の『執念』が……私の天国を壊そうとしているの?……ちっぽけな!!」
ゥ ゥ ゥ……
メイ「……いえ、『ちっぽけ』ではないわ。貴方の能力は恐ろしい。文字通り、人を超えた私の世界に、死んだ貴方が……いえ、死んだからこそ、貴方が介入するなんて……」
ペラペラ……ペラ……
207 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:42:27.14 ID:/2fOk0s80
メイ「……けれど、もう……おしまいよ。貴方は」
ペラ……ペラ……
メイ「スタンドパワーなんて、ノミの足先の毛ほどにしか感じない。たとえ貴方が何か出来たとしても……彼女に送れるのは、たったの『一文字』程度のはずよ」
……ペラペラ……
208 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:44:26.08 ID:/2fOk0s80
メイ「……貴方は、偉大だったわ。私は……正直、貴方が怖い」
……ペラ……
メイ「……けれど……わかったわ。私にも。……自分より誰かを優先する、その心。……すなわち、『愛』」
……バサバサ……
メイ「私は、愛する。……世界中全ての人を。そして……静・ジョースターを」
……
メイ「私は……彼女を、そしてこの世界を……失うわけにはいかないの」
209 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:45:27.46 ID:/2fOk0s80
バササッ
メイ「…………」
メイの足元に、風に吹かれ、数枚の紙が飛んだ。
ミミズののったくったような文字が、書かれている……。
210 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:46:38.97 ID:/2fOk0s80
『ほ』
『んし』
『ん』
『か』
『?』
メイ「…………『本心か?』ですって?……見ていなさい。双葉双馬……もうすぐ夜は終わり、朝が来る。……六回目の朝よ」
211 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:48:03.11 ID:/2fOk0s80
メイ「その太陽が沈み、月が出て、その月が沈み……また太陽が出た時。……見せてあげるわ。双葉双馬。私の……思い描いた幸せな世界を」
……
メイ「もう、私も、静も、世界中の誰も!……傷つかない世界を……本当の天国にいる、貴方に」
……
212 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/08(金) 21:49:21.96 ID:/2fOk0s80
メイ「『素晴らしきこの世界』は、近い……!!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
…………
213 :
◆eUwxvhsdPM
[sage saga]:2021/01/08(金) 21:50:46.29 ID:/2fOk0s80
今回はここまでです
214 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:01:51.08 ID:jBOGtbqc0
…………
その日――……
世界は『闇』に包まれ、完全に『沈黙』した――……。
…………
215 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:04:46.69 ID:jBOGtbqc0
…………
『六日目』
………
216 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:06:24.41 ID:jBOGtbqc0
…………
「メイ」
「メイちゃん」
「有栖川くん」
「メイさん」
「メイちん」
「有栖川さん」
「メイ」
「アリスっちぃ」
「メイくん」
「メイちゃん」
「メイ」
217 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:08:00.41 ID:jBOGtbqc0
「「「有栖川……メイ!」」」
218 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:09:53.88 ID:jBOGtbqc0
……沈黙した世界の中。
人々は……『夢の中』で、口々にその名を呼ぶ。
219 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:12:04.51 ID:jBOGtbqc0
メイ「……ありがとう。わたしは、あなたの……『あなた達』の、『友達』よ」
ニコ
220 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:15:08.67 ID:jBOGtbqc0
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ「これが『世界』……『素晴らしきこの世界』」
ゴ ォ ォ オ オ ァ ァ ア ア
221 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:16:33.27 ID:jBOGtbqc0
「メイ」
メイ「あなたは、『タケシ』……子供の頃、虫取りをしたわね。……夏の暑い日、あなたが熱中症で倒れた時はびっくりしちゃったわ」
「メイちゃん」
メイ「あなたは……『ナンシー』……父親と仲が悪くて、よくわたしの家に泊まりに来たわね。今は仲良くしてるみたいだけど……いつでも頼っていいのよ?」
「アリスガワ」
メイ「『リン』……妹の事大切にしてる?あなたの可愛がりっぷりといったら、わたしがうらやむくらいだわ……フフ……」
222 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:20:42.41 ID:jBOGtbqc0
「メイ」
「メイちゃん」
「メイさん」
「メイ」
メイ「たった……たった70億、よ。70億人の人生に、わたしが立った。それだけ……それだけの事よ。愛してるわ。みんな……」ハァ、ハァ……
223 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:22:03.54 ID:jBOGtbqc0
「……メイ、くん……」
メイ「……」
しわがれた声が聞こえた。
そこにいたのは、枯れ木のような老人であった。
メイ「…………」
224 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:23:27.36 ID:jBOGtbqc0
「…………」
うめき声が聞こえた。
銃弾を受けた兵士が、腹から血を流していた。
「〜〜〜〜」
つぶやき声が聞こえた。
少女は薬を大量に飲んで、口から泡をふいていた。
「――――」
泣き声が聞こえた。
赤ん坊が、汚らしい部屋の中で、最後の声をふり絞っていた。
225 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:24:22.51 ID:jBOGtbqc0
メイ「……わたしは……もう、奪わない。諦めない……切り捨てない」
今にも折れそうな手を
力なく落ちた手を
世界に絶望した手を
小さな小さな手を
有栖川メイは……
優しく、そして、強く握った。
226 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:26:16.73 ID:jBOGtbqc0
メイ「『カルロス』……あなたと出会えて、良かったわ。あなたが長い間歩んできた道は……素晴らしかった」
メイ「『キース』……辛かったわね。祖国のために、戦ってくれて……ありがとう」
メイ「『ソユン』……あなたのその行動を、止められなかった自分を恨むわ。もっと早く会いたかった……」
227 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:28:57.03 ID:jBOGtbqc0
メイ「そして……名前のない、終わりゆく未来。……あなたのことは、忘れない」
バ ァ ァ ア ア ア
228 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:31:09.04 ID:jBOGtbqc0
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ「――『神』とはッ!!」
ギラ
メイ「『ここ』にいるのよッ!今、この『地上』に立つのよ!!」
バァ――
229 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:32:21.38 ID:jBOGtbqc0
メイ「人々が懸命に手を合わせて!必死に祈る先――『天』にッ!!『神』はいるの!?それは……本当に人を救ってくれるというのッ!?『神』とは――……」
バ ン
メイ「それほどまでに偉いのかッ!!天上でふんぞり返り、苦しむ少女一人助けてくれないッ!!信じるものをたった一人でも、本当の意味で救えたのか!お前は――ッ!!」
ゴ オ ッ
230 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:33:25.87 ID:jBOGtbqc0
メイ「……わたしは『ここ』に立つ。人の死を……苦しみを!悲しみを消すことは出来ない。……それでも!!」
……男の姿があった。
彼は……口元に軽く笑みを浮かべ、背を向けて、有栖川メイから去っていった。
メイ(……これで、良いのよね?……『チェスタ』)
バッ
231 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:35:03.85 ID:jBOGtbqc0
メイ「わたしが人々の記憶にいることで……人々がわたしを愛し、わたしが人々を愛することでッ!!……わたしは、みんなの『マイナス』をやわらげる事ができる!!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
メイ「……もう、わたしや……チェスタのような、この世界から必要とされていない人間なんて……生み出させない」
232 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:36:29.18 ID:jBOGtbqc0
メイ「それが、『天国』……『素晴らしきこの世界』ッ!!」
ド ン
メイ「だから……静」
233 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:37:54.05 ID:jBOGtbqc0
メイ「あなたを、愛させて?」
ドヒュゥ――ゥゥ……
…………
234 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:39:15.01 ID:jBOGtbqc0
…………
メイ「…………」
有栖川メイは、森にいた。
アメリカだろうか?静の生まれ故郷の、近くの森に似ていた。
235 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:41:04.74 ID:jBOGtbqc0
メイ(……わたしの事を知らない、地球の裏側のみんなとは……すぐに仲良くなれるわ)
メイ(それこそ一日あれば、新しい人生を追体験出来る)
メイ(だけど、わたしに近い人ほど、じっくり新しい世界となじまなくてはならない……時間をかけて『友達』となる必要がある)
236 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:42:04.46 ID:jBOGtbqc0
メイ(そして……静。あなたは……わたしを知りすぎている)
メイ(……潜在意識でわたしの世界を拒否している……と、いうところかしらね。……難しい話だわ)
ヒ ュ ウ ウ ウ
メイ(だけど……『七日』ッ!太古の傲慢な神が出来て、新しい神であるわたしが出来ない道理はないッ!!わたしは――作るのよ、世界をッ!)
237 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:42:51.29 ID:jBOGtbqc0
メイ(そのためには、静――……)
シン……
メイ「……?……静?」キョロキョロ
サァァア……
238 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:43:44.86 ID:jBOGtbqc0
メイ(……静が、いない?……まさか!また――……)ドキリ
……ァァア……
メイ「!!……ン……」
…………サァァァ……
メイ「…………静?」
239 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:44:44.69 ID:jBOGtbqc0
メイ「そこの……木の陰……」
「……」
メイ「見えないけれど……静よね?静……そこに、いるの?」
「……」
240 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:46:02.99 ID:jBOGtbqc0
メイ「……静?」
「…………クッ、ククク……」
メイ「……?ねえ、静……」
「……クク……ふふ……」
241 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:48:00.19 ID:jBOGtbqc0
スゥーッ
静「アーッハッハッハッハ!驚いた?メイ!」
メイ「……ふふ……ハハ!ああ、驚いたわ、静!透明になってるなんて!」
静「アーッハッハッハッハッハ!メイ!」
メイ「フフ、ハハハハハハハハ!静!」
静・メイ「「アハハハハハハハハ!」」
242 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:49:44.86 ID:jBOGtbqc0
……二人は14歳の姿となって、夢の中にいた。
一年後、静・ジョースターは、杜王町へと旅立つ。
『六日目』にして、『最後の一年』……。
有栖川メイのスタンドは、静・ジョースターの『人生』を……。
ほとんど全て、変えていた……。
243 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:50:45.00 ID:jBOGtbqc0
メイ「静、あまりわたしを驚かせないで……心配したわ。本当に。あなたが消えていなくなっちゃったんじゃあないかと……」
静「大丈夫よ、メイ。いなくなったりしないわよ……あたし」
メイ「そう」ニコッ
静「それにしても、メイ!驚いたのは、あたしもよ!」
メイ「え?」
244 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:51:24.53 ID:jBOGtbqc0
静「『アクトン・ベイビー』で透明になったあたしを見つけるなんて……かくれんぼ、うまくなったんじゃあないのォ?」
メイ「……ふふ!あなたがどこに消えたって、見つけてみせるわ!だって、わたしたち……」
静「……『友達』?」
メイ「そう、『友達』」ニコッ
245 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:52:21.71 ID:jBOGtbqc0
静「……そうね!あたし達、『友達』だものね!」
メイ「そうよ!フフフ……かけ替えのない、『友達』ッ!!」
246 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:55:57.30 ID:jBOGtbqc0
静「『メイ』……アンタっていう、かけ替えのない『友達』……」
メイ「『静』……あなたは、かけ替えのない『友達』……!!」
247 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:57:28.86 ID:jBOGtbqc0
静「……フッフッフ」
メイ「……フフフ!」
静・メイ「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」」
248 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:58:58.83 ID:jBOGtbqc0
静「……ハァー……」
249 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 21:59:39.28 ID:jBOGtbqc0
静「……『友達』……かあ……」
ボソリ
メイ「!!……静……もしかして、あなた……また……」
250 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 22:00:22.08 ID:jBOGtbqc0
静「大丈夫……大丈夫よ、メイ」
メイ「静……」
そっと、メイは静を抱き寄せた。
胸に手をあてて、かるく、擦る。
251 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 22:01:20.09 ID:jBOGtbqc0
メイ「まだ、あなたの心には……『穴』が空いてるの?正体不明の『穴』が……」
静「……」
メイ「わたしでは、埋められない?」
静「……ううん。たぶん……『気のせい』なのよ。穴が空いてる『かも』って……それだけ」
252 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 22:02:27.62 ID:jBOGtbqc0
静「なにか、ね……大切なものを失ったような……」
メイ「……」
静「おかしいわよね?あたし、何も失ってないのに。……失ったのは、『一つだけ』なのに」
メイ「……」
253 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 22:03:04.94 ID:jBOGtbqc0
メイ「…………『一つ』?」
ォ ォ ォ ォ ……
254 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 22:04:23.70 ID:jBOGtbqc0
静「知ってるでしょう?メイ」
メイ「え、あ……そ、それは……」
静「……」
メイ「……も、もちろ――…………」
静「……」ジッ
メイ「……う、ううッ!……なッ……な――……」タラリ
255 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 22:05:34.63 ID:jBOGtbqc0
メイ「…………『何』?その……『一つ』って……」ボソリ
静「……」
メイ「……」ゴクリ
256 :
◆eUwxvhsdPM
[saga]:2021/01/09(土) 22:06:35.25 ID:jBOGtbqc0
静「――……森の奥に――……」
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