ワイルド・ハニーは砕かない

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

257 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:07:34.47 ID:jBOGtbqc0
――……『崖』があった。

そこまで高くない崖だが……落ちたら大怪我では済まないだろう。
その切り立った崖を覗き込むと、少し下に……『花』が咲いていた。
名もない、小さな、綺麗な花だ。……(なんという名前だろう?)……。

静・ジョースターと有栖川メイは、二人でその花を見た。
258 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:09:24.18 ID:jBOGtbqc0
静「……子供のころの話よ」

メイ「……」

静「綺麗よね、あの花。……とても、綺麗で……おじいちゃんに、あげたかったのよ。……あの花を」

14歳の静・ジョースターにとっては、多少の危機はあるだろうが、難なく花を採ることは出来るだろう。
しかし、幼い頃であれば……その危険は計り知れない。
259 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:10:37.15 ID:jBOGtbqc0
メイ(何?……し……『知らない』……)

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

メイ(わたしが共に歩んだ人生に、その『記憶』はない……こ、これは……?)
260 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:11:37.13 ID:jBOGtbqc0
手を伸ばし、静は花を手にした。
黄色い花弁が、凛として美しい花だった。

静「……『花』を採ろうとして、落ちかけたの。……『冒険ごっこ』をしている時」

メイ「……『冒険』……」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

メイ(『冒険』なんて『していない』……『危険』はわたしが守ったのに!何故、その『記憶』が――……?)
261 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:12:41.21 ID:jBOGtbqc0
静「その時、落としちゃって……壊したの。……『サングラス』」

メイ「……『サン――』……」ハッ

静「…………」
262 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:13:57.63 ID:jBOGtbqc0
ウェェエン……

エエン……

…………
263 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:15:04.10 ID:jBOGtbqc0
…………

『うえ〜〜ん!ええーん……!』

『どうかしたのかの?……静や……?』

『こわしちゃった……あたし、あたし……こわしちゃったの。大切な……サングラスを……!』

『静……静や。……落ち着くんじゃ。……静や』

『大切な!……大切だったのに!……』

『……壊したものはのう……もう戻らないのじゃ』

『……』
264 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:16:40.97 ID:jBOGtbqc0
『だから、これから先、同じことがあったらのう……もう、壊さないように。しっかり守るんじゃぞ、静や……』

『……うえええええん……』

…………
265 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:17:47.86 ID:jBOGtbqc0
静「……その時、おじいちゃんは泣き止まないあたしを見かねて……新しいサングラスをくれた。おじいちゃんのお母さんが愛用していた、サングラスを……」

メイ(こ――『これ』は……この『記憶』はッ!)

静「単純だった子供のころのあたしは、その時すぐに泣き止んだ。……ジョースター家のものをもらって、嬉しかった……ん、だと思う」
266 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:18:33.10 ID:jBOGtbqc0
静「だけど……だけどね。あたしは……壊したサングラスが欲しかった。……とても、とても後悔しているわ」

メイ「……」

静「冒険したことも、おじいちゃんに花を贈ろうとしたことも……後悔していない。あたしは、自分の行動に後悔はしない」

メイ(これは……『ルーツ』……!)
267 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:19:07.88 ID:jBOGtbqc0
静「あたしの後悔は、大切なものを守れなかった事。だから――……あたしは二度と。大切なものは失わないって……決めたの」

・ ・ ・ ┣¨ ┣¨ ┣¨

メイ「……し……静、その『記憶』はッ!」
268 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:20:25.06 ID:jBOGtbqc0
メイ(『静・ジョースター』を作る根本にして『信念』ッ!!それは、精神の奥そこに刻まれた『魂の記憶』ッ!!わ、わたしは……)

静「……ねえ、メイ……」

ス ッ ……
269 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:21:28.67 ID:jBOGtbqc0
静「……なんであたし……『子供のころのサングラスをまだつけてるのかしら?』」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

メイ(わたしは、静を『冒険』という危ないものから遠ざけたのにッ!!彼女の魂は!それを叫んでいる!!わたしの『素晴らしきこの世界』が――……『素晴らしくない』!!と!!……言っている……静は!!声高らかにッ!!)

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
270 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:22:30.85 ID:jBOGtbqc0
静「メイ……あたし……なんだか、『あたしじゃあないみたいだわ』……」

メイ「静……ハァ、ハァ!わ……わたしを……」
271 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:22:58.11 ID:jBOGtbqc0
メイ「信じて……わたしを――……ハッ!!」

静「?……え?」
272 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:23:36.37 ID:jBOGtbqc0
……静・ジョースターの握っていた『花』が……
いつの間にか、『紙』に変わっていた……。

くしゃくしゃの『紙』に……!!
273 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:24:29.61 ID:jBOGtbqc0
メイ「わ……わたしは……わたしは!!……わたしを……!!」

ハァーハァー

メイ(負けない……負ける訳がないッ!わたしは、『神』なのよ!世界はすでにわたしのもので、あとは彼女……静だけッ!!彼女を危険から遠ざけて、しっかり守って愛したのに!!……それを、こんな……ちっぽけなウスら汚い『紙』がッ!!わたしと静の甘美なる、神聖な時を……完全な世界を!!……壊せるわけがないッ!!)

ハァー!ハァー!
274 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:25:21.28 ID:jBOGtbqc0
メイ(あと一歩……もう『一歩』なのよッ!『信じて』って……『あなたの勘違いよ』って!!……『そんなボロい紙がなんだっていうの?』って鼻で笑うだけで!わたしは……静と『友達』になれるッ!真の『友達』にッ!!い……今さら……)

ギリッ!
275 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:26:16.48 ID:jBOGtbqc0
メイ(しぼりカスみたいなスタンドパワーが、今さらになって何だっていうの!?わたしが過ごした静との追体験はッ!70億人の追体験はッ!!貴方と静の一年にも満たない世界よりも、遥かに広大で!!強大でッ!!壮大なのよ……負けるはずが――負けるはずが――……)

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

静「……この『紙』は――……」



ペラ――……
276 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:27:02.52 ID:jBOGtbqc0
メイ「その『紙』を見るんじゃあないッ!!静ァァア――ッ!!」

バァ――ン
277 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:27:49.29 ID:jBOGtbqc0
静「…………」
278 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:28:22.59 ID:jBOGtbqc0
有栖川メイが叫んだ時には……すでに静は、くしゃくしゃの『紙』を開いていた。
そこに書かれていたのは、ただ『一文字』……。
279 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:29:27.77 ID:jBOGtbqc0
『に』



静「…………あ」

ゴォォォオオォオォオ……
280 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/09(土) 22:30:16.33 ID:jBOGtbqc0
風が頬をなぜる。
静・ジョースターは……

……涙を流した。



…………
281 : ◆eUwxvhsdPM [sage saga]:2021/01/09(土) 22:30:57.94 ID:jBOGtbqc0
今回はここまでです
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/09(土) 22:49:30.12 ID:OSwfouxB0
双馬とメイの静かなる戦いからの、本心で『世界すべてを愛し、諦めず、見捨てない』と言えるまでに成長したメイ。
精神的に成長したからこそ、ちっぽけな紙切れを早々に奪い捨ててしまわず、双馬との戦いを選んだのかもしれないな
最後は静への大きすぎる感情の戦いという感じもして

怒涛の展開なんて安っぽい言葉じゃあ、言い表せないくらい圧倒的なクライマックス……
興奮でうまく日本語にできないので、せめて支援を……
最後の最後まで応援してます

https://imgur.com/rpARi2W
283 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:00:09.40 ID:664efG6d0
…………

静「うええ……うう……ええ……」

静・ジョースターは……泣いていた。
暖炉の前だ……『思い出』の……。

(『思い出』?何故そう思ったのだろう?静・ジョースターは訝しむ)
284 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:00:52.19 ID:664efG6d0
ジョセフ「おお、よしよし……泣くのはおよし、静や……静」

静・ジョースターは、ロッキングチェアに座るジョセフ・ジョースターの膝にすがりついて泣いていた。
もうすぐ九十にもなろうというジョセフは、やさしく、彼女の頭を撫でる。
285 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:02:02.26 ID:664efG6d0
ジョセフ「静や、静……何故泣いておるんじゃ?」

静「わからない……わからないの。ただ……あたし、何か……」
286 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:02:41.39 ID:664efG6d0
静「何か、大切なものを……『忘れた』気がして……」

ジョセフ「忘れた、のう……」

……パチパチ……
287 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:03:16.97 ID:664efG6d0
ジョセフ「それでも静、お前には『友達』がおるじゃあないか。『メイ』という……」

静「『友達』……」

ジョセフ「忘れたとしても、『友達』がおれば、安心なんじゃあないかのう」

静「……うん。……だけど、ううん」

ジョセフ「?」
288 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:03:59.67 ID:664efG6d0
静「あたしが忘れたものは……もっと、大切なものだと思うの」

ジョセフ「……ふむ。『メイ』よりもかの?」

静「うん。……なぜだか、わからないけど……」

ジョセフ「……大切な『友達』よりも?」

静「……うん。大切な……『友達』よりも」

ジョセフ「……そうか……」
289 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:04:42.97 ID:664efG6d0
ジョセフ「わしにはの、『友達』がおらんからの」

静「…………」

静・ジョースターは顔を上げた。
今までしっかりと目を見れていなかった事に気付く。
ジョセフ・ジョースターの目は、少年のように輝いていた。

『さっきまでおじいちゃんの目は、こんなに輝いていたかな』

頭の中にかかっているモヤが、だんだんと晴れていく感覚がする。
290 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:05:30.15 ID:664efG6d0
ジョセフ「不動産業に手をつけてからは、会う人み〜〜んな商売敵と金狙いのヤツばっかりのようなもんでの〜〜ッ。あの頃は辛かったもんじゃ!ガッハッハッハッハー」

静「うそだあ。だって、おじいちゃんは……」

ジョセフ「うむ?」

静「いるじゃん。『友達』ィ〜〜。ほら!よく聞かせてもらった!冒険、していた頃の……」

ジョセフ「ああ……」
291 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:06:01.95 ID:664efG6d0
ジョセフ「あいつはのォ……良き友であった。付き合った時間は短いが、共に修行に励み、共に戦い、共に怒り、共に笑い……そして、わしは、涙を流した」

静「…………」

ジョセフ「今でも大切な『友』じゃよ。しかし……そうじゃのう。あいつは……『親友』じゃからのう」

静「……」
292 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:06:35.01 ID:664efG6d0
静「……『しんゆう』……」ズキリ

ジョセフ「口に出して確認したことはないが、全てが終わった今……心からそう思う。どこかに遊びに行ったことも、盃をかわして飲みあったことも、女性の趣味について語ったこともないヤツじゃ」

静「……」
293 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:07:04.64 ID:664efG6d0
ジョセフ「それでも、言葉にしなくとも……伝わるものはある」

静「……」
294 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:07:31.74 ID:664efG6d0
ジョセフ「わしにはの、夢があるんじゃよ。天国に行ったらのー、思いっきりあいつの顔ぶん殴ってやるんじゃ!『カッコつけて去りやがって、バカヤロー!お陰でこっちに来るまでウン十年もかかっちまったわい!』っての……ガハハ!ちょっぴり不謹慎かの〜〜ッ」

静「……」

ジョセフ「……静には、おるのかの?そんな人が……」

静「……あたし……あたしは……」

……パチパチ……
295 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:08:00.36 ID:664efG6d0
静「あたしは、メイが『友達』で……」

ジョセフ「…………」

静「なんでかって言うと、メイは『友達』だって、何度も言ってくれて……優しいし、守ってくれるし、本当に良い『友達』……」

ジョセフ「…………」

静「…………『だけど』……」
296 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:08:32.61 ID:664efG6d0
静「あたしの頭の中に……まるでイカスミパスタのソースが、水の入ったコップの中に飛んだみたいな……ボンヤリした色で……」

ジョセフ「……『姿』が見えるの。そいつは……口が悪くていつもあたしをバカにして、まったくもって優しくなくて、エラソーで……」

ジョセフ「……」

静「……だけど……」

ポロッ……
297 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:09:04.11 ID:664efG6d0
静「……いざって時には、守ってくれて……じ、実は……結構やさしくて……さ、さみしがりやで……」

ポロポロ……ポロ……

静「あたし……あたし、なんも出来ない、子供なのに……あたしの力を、信頼してくれる……」

ポロポロ……

静「すごく、腹立つヤツなのに……い、いっしょにいると、心が……落ちついた。二人で、足りないところを支え合ってるみたいで……あたし……あたしは……!」
298 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:09:50.21 ID:664efG6d0
静「なんで……忘れてたんだろう」

ポロポロ……

ジョセフ「…………大切な人、なんじゃのう」

静「……うん……うん。大切よ。アイツは、そう思ってないかもしれないけど……グレートに、さ」

ジョセフ「……静よ。決まったのかのう?心は……」

静「……うん。……大丈夫……大丈夫。決まってるの。あたし……あたし……」
299 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:10:37.55 ID:664efG6d0
静「戦うから……戦って、言いに行かないと。一言……たった『一言』だけ……」

ポロポロ……

ジョセフ「……そうか。……なら――……」
300 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:11:14.94 ID:664efG6d0
ジョセフ「――いつまでもメソメソ泣いてんじゃあねーぜっ!おれの娘がよ――ッ!!」

バ ン

静「――!?」
301 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:11:44.54 ID:664efG6d0
……そこには、年老いたジョセフ・ジョースターの姿は無かった。
筋骨隆々で、若々しく、生命のエネルギーに溢れる……。

全盛期、18歳のジョセフ・ジョースターがそこにいた。
302 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:12:20.34 ID:664efG6d0
静「……え?」

ザッ
303 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:12:56.93 ID:664efG6d0
……『魂の全盛期』は『エネルギー』となる。
そう。これは『夢』……。

『ワンダフル・ワールド』という『夢の世界』……。
304 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:13:26.65 ID:664efG6d0
静から漏れ出した『全盛期のエネルギー』は……。
この世界に漂う『全盛期の魂』を呼び集めた。
305 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:14:02.38 ID:664efG6d0
『空条承太郎』!

『東方仗助』!

『ジョルノ・ジョバァーナ』!

『空条徐倫』!
306 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:15:34.97 ID:664efG6d0
……『ジョジョ』が、そこにいた。
307 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:16:04.92 ID:664efG6d0
ジョセフ「このJOJOの娘なら、ムツカシーッこと考えんじゃあねーッ!悪ィーヤツはブン殴ってからでいいのよブン殴ってからで!ウシシ!」

静「え?おじい……え?え??」
308 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:16:50.68 ID:664efG6d0
承太郎「……やれやれだぜ。夢の中とはいえ……若いじじいを見ることになるとはな……うっとーしいのは苦手だぜ」

仗助「……あれじじいかよ……グレートっスねぇ〜〜」

静「じょ、承太郎さん……兄さん……!」
309 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:17:29.81 ID:664efG6d0
承太郎「……静。……泣き虫で、守ってやる立場だと思っていたが……成長したな」

静「!……」

承太郎「お前がジョースター家で、本当に良かった……」

静「……あ、ありがとう。……あ、ございます」
310 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:18:24.46 ID:664efG6d0
仗助「やかましい妹がいきなり出来た時は『正気か!?承太郎さんはよ〜〜ッ!?』って思ったが……今じゃあ静。お前のいねぇー生活は、考えらんねえから……よ」

静「……」

仗助「戦って!勝って!あの生活をよ……取り戻してくれ。な?静」

静「……うん。任せて」
311 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:18:59.84 ID:664efG6d0
ジョルノ「……なんだがぼくらは部外者みたいで、居心地が悪いですが……」

徐倫「ぼく『ら』って何だ、『ら』って。バリバリ身内だ、あたしは」

静「……あなた達は……幼い時、いや、さっき……あれ?いつだっけ?出会ったような……」

ジョルノ「すみません。静・ジョースター。ぼくらはこの、ちっぽけな世界を守ろうとして……敗れてしまいました」

静「……」
312 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:19:50.53 ID:664efG6d0
ジョルノ「全盛期の姿をした魂の欠片は喋れても、本当の魂は未だ、敵スタンドの支配下にあります」

静「?……??」

ジョルノ「託します。貴女に、全てを。……だからといってヘンに肩に力入れたりしないで下さいね?ただ、いつも通り……」

静「……」

ジョルノ「……貴女は貴女の『世界』を愛して下さい。……いいですね?」

静「……うん。よく、わからないけど……」
313 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:20:34.54 ID:664efG6d0
徐倫「あー……さっきはバリバリ身内って言ったけどさ、よく考えたらキチーンと顔合わせたことは無かったか〜〜ッ……」

静「……ええと……?」

徐倫「ま!深く気にしないで。アンタはアンタの思う通りにすりゃあいいのよ。女は強く……ね!」

静「……」

徐倫「女『だって』メソメソ泣いていいし、女『らしく』敵をブン殴りゃあいいのよ。結局はモノサシなんて自分で決めな」

静「……」

徐倫「『自分らしく』前に進むのよ。一番大事なんだから。それがさァー」

静「……『自分らしく』……」
314 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:21:31.11 ID:664efG6d0
静「……ありがとう」

もう、頭にかかっていた『モヤ』は無い。
静は理解していた。

ジョースターの血統を……『ジョジョ』の名を。
心で……『魂』で理解していた。

静「皆……みんな……ありがとう。あたし……」
315 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:22:12.24 ID:664efG6d0
静「行ってきます」ニコッ

笑って、静は駆け出した。
もう、振り返らないと決めた。
316 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:22:46.99 ID:664efG6d0
ちょっと前まで、自分が欲しくて欲しくてたまらなかった、『ジョースターの血統』……。
なんで、あんなに欲しかったんだろう。
317 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:23:23.18 ID:664efG6d0
血液や、肌の色や、身長や、顔の形や……。
なんで、あんなにもまぶしかったんだろう。
318 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:24:13.04 ID:664efG6d0
自分の全てが、おじいちゃんと違うかった。
自分の全てが、承太郎さんと違うかった。
自分の全てが、兄さんと違うかった。

とてもうらやましかった。
319 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:24:43.67 ID:664efG6d0
だけど……。

今はただ……そんなことより。
『有栖川メイ』と、話したいな。
320 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:25:25.69 ID:664efG6d0
静・ジョースターは、そう考えて、笑った。

静「……そっか。あたしって……『静・ジョースター』なんだ……」

ザッ
321 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:26:12.67 ID:664efG6d0
「うぇ……うええええええん……ええん……うわああああああん……ああん……!」

静「!!……」
322 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:26:53.76 ID:664efG6d0
赤ん坊がダダをこねるような泣き声だった。
いつの間にか、静の目の前に、有栖川メイが立っている……。

静「…………」

メイ「うええん…………ひっく、ひっく……!」

静「……『メイ』……」

メイ「……やめてよ、静……!」

静「……」
323 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:27:56.48 ID:664efG6d0
メイ「『友達』でいいじゃあないの。あなたも……私もッ!『友達』なんて、いなかったんだから……!!」

静「……」

メイ「こうして、私とあなたは子供の頃、『友達』だったッ!一緒に遊んで、かくれんぼや鬼ごっこをしてッ!」

静「……」

メイ「一緒に笑って、泣いて、怒って、暮らしてッ!!」

静「……」
324 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:29:00.43 ID:664efG6d0
メイ「ふたりとも、『友達』だったッ!!それで……それでいいじゃあないの……」

静「……」

メイ「うう……お願い、静……!」

静「……」
325 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:29:31.98 ID:664efG6d0
メイ「私を一人ぼっちにしないで……あああ……うう……」

ヒック……ヒック……

静「……メイ、あたし……」
326 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:30:00.82 ID:664efG6d0
静「知れて良かった、って思うの」

メイ「……」

ヒック……ヒック
327 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:30:42.51 ID:664efG6d0
静「寂しかったのよね。アンタは……あたしと同じよ」

メイ「……」

静「だから、『友達』になろうとした。みんなと……みんなと『幸せ』になりたかったのよね」

メイ「……」
328 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:31:19.48 ID:664efG6d0
静「あたしが透明になって見えなくなって、世界中の誰もがあたしを見失っても……」

メイ「……」

静「アンタはあたしを見つけてくれる。……そのくらい、アンタは『優しい』人」

メイ「……ええ。ええッ!そうよ!私は――……!!」

静「だけどね、メイ」

メイ「!!……」
329 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:31:58.07 ID:664efG6d0
静「自分の『幸せ』をつかむために……他人を踏みにじっちゃあいけないのよ」

メイ「!――……」

チラリ
330 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:32:31.26 ID:664efG6d0
二人は、一面のクローバー畑にいた。
静は地面の上に立ち、

メイは……三つ葉のクローバーを踏んでいた。
331 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:33:13.86 ID:664efG6d0
メイ「……静……」

静「……」

メイ「……静……静ッ!わたしは、わたしは――……!!」
332 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:34:06.32 ID:664efG6d0
静「日常を守るの」

メイ「ッ!……」

静「……アンタが作ろうとした眩しい世界と比べたら、ちっぽけで、きたなくて、こわくて、危ない……そんな、世界なんだけど」

メイ「……」

静「それが、あたしにとっての『日常』なの。とってもひどい世界だけど……」
333 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:34:45.03 ID:664efG6d0
静「四つ葉のクローバーが、綺麗だからさ」

メイ「……」

静「だから……あたし、行かなきゃ」

メイ「……うう……ああ……やめて……やめてよ、静……!!」
334 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:35:30.61 ID:664efG6d0
静「……会いに行くわ。あなたに」

メイ「……」

グス……ヒック……

静「……」クルリ
335 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:35:58.67 ID:664efG6d0
泣きじゃくるメイに背をむける。
静は、自分の手のひらを見つめた。

静「……『アクトン・――』……」

静「……」
336 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:36:24.78 ID:664efG6d0
自分のスタンド、『アクトン・ベイビー』の名を呼ぼうとして……。
首を振る。
337 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:36:59.68 ID:664efG6d0
『違う』

『そうじゃあない』

『あたしは――』

『今のあたしの力は――……』
338 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:38:02.59 ID:664efG6d0
静「……『ワイルド・ハニー』」
339 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:38:55.95 ID:664efG6d0
カ ッ



…………
340 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:39:34.91 ID:664efG6d0
…………

『あたま』

『つかえ』
341 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:40:09.46 ID:664efG6d0
使おうとして、考えた。
結果、何も出なかった。
342 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:40:47.98 ID:664efG6d0
最後の1ピースが足りなかったのだ。

『に』

……脳の中で、パズルがピタリとはまる。
343 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:41:18.67 ID:664efG6d0
『あたま』

『つかえ』

『に』……
344 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:41:56.03 ID:664efG6d0
『あたま』

『に』

『つかえ』……!!!
345 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:42:42.80 ID:664efG6d0
ゴウッ
346 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:43:18.34 ID:664efG6d0
世界が、溶けていく。
全てが白い光となり、静・ジョースターは落ちていった。
347 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:43:59.37 ID:664efG6d0
消えていく。

消えていく。

世界が、どんどん、消えていく……。
348 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:44:30.15 ID:664efG6d0
静「……さようなら、おじいちゃん……さようなら、メイ……さようなら……みんな」

ゴ オ オ 

  オ オ オ 

      オ オ オ

静(消えていく……あたしの世界が、消えていく……)
349 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:45:16.53 ID:664efG6d0
『……静……おい、静……!』

静「……!!」
350 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:45:55.22 ID:664efG6d0
『……っ、たく……起きるのが遅いんだよ、お前は、さ……』

静「……あ、ああ……!!」

『……お前が決めたんなら……それで良い。……曲げるなよ。僕は……僕は、さ。……満足、してるんだ』

ゴ  オ

  オ オ

     オ  オ
351 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:46:36.95 ID:664efG6d0
『静。僕は……お前に会えて、良かった。本当に……本当に!そう思ってる。心からそう思ってるんだ』

静「ま――待って!!」

『……』

静「……あ……」
352 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:47:11.06 ID:664efG6d0
静「……――……」

ゴ     オ

             オ     オ

                              オ

『……同じことを、言おうと思っていた。……』
353 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:48:00.32 ID:664efG6d0
『君の未来に、幸せがあらんことを。願っている。静。……心から、本当に!……願っているよ』

静「……」

『……さよならだ。……『親友』』



  オ  オ  オ 

       オ   オ  オ オ
354 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:49:00.27 ID:664efG6d0
静は……『双葉双馬』が、
よく似た背格好の男と一緒に……

……草原にいる二頭の馬の所へ。

向かっている光景を見た。
355 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:49:49.55 ID:664efG6d0
『……ありがとう』
356 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:51:07.12 ID:664efG6d0
静「……さようなら。双馬。……あたしの大切な……『親友』」



  オ

    オ

      オ

        オ

          オ……
357 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:51:50.29 ID:664efG6d0
……「……『ありがとう』」
358 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:53:09.94 ID:664efG6d0
バァアアァァア――……



……

…………
359 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:54:05.95 ID:664efG6d0
…………

「……やはり……ふたりでひとり、だったのかも……しれないな」

「――……幸……わせ、に…………」

…………
360 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:55:17.06 ID:664efG6d0
…………

杜王町の空に、光が差す。
七回目の、朝日だ。

有栖川メイは……黒いドーム越しに、その光を見た。
361 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:56:09.66 ID:664efG6d0
メイ「……変わるわ。世界が」

・ ・ ・

メイ「静、それに……世界中の人間が」

・ ・ ・

メイ「……『友達』になるの。唯一無二の」

・ ・ ・

メイ「あは、あはははははははははは」

・ ・ ・

メイ「あは、あは、あは……」
362 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:56:53.22 ID:664efG6d0
メイ「……なんでかしらね、静」

・ ・ ・

メイ「どうしてこんなにも……むなしいのかしら」

・ ・ ・

メイ「ここが……私の『天国』なのに」
363 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:57:26.15 ID:664efG6d0
ズリッ
364 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:58:10.66 ID:664efG6d0
ズリッ

「……長い……長い道のりだったわ」

メイ「……」

ズリッ
365 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 21:58:58.14 ID:664efG6d0
「皆に支えてもらわなければ……」

ズリッ

「あたしは……ここに立つことは出来なかった……」

メイ「……」

ズリッ
366 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:00:03.09 ID:664efG6d0
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

「あたしは……ここで、アンタと向かい合う事が出来なかった」

メイ「…………」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
367 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:00:54.00 ID:664efG6d0
メイ「……」クルリ
368 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:01:43.99 ID:664efG6d0
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

静「…………」ズリッ!!

メイ「なッ!!」
369 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:02:18.66 ID:664efG6d0
静「『ワイルド・ハニー』……自分の『記憶』を『透明』に……『クリア』にしたッ!!!」

ド ン

メイ「なッ……な、な……!!」タラリ

静「アンタに書き加えられた『記憶』は……『もう無い』ッ!!!」

バ ン

メイ「な――な――……!!」
370 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:02:58.43 ID:664efG6d0
メイ「なんですってええええええええええええエエエエエッッ!!?」
371 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:03:32.94 ID:664efG6d0
ド ラ

   ド ラ

     ド ラ ド ラ

        ド ラ ド ラ ド ラ
372 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:04:20.69 ID:664efG6d0
静「ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
  ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
  ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
  ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ!!!」

ワイルド・ハニー『ドラドラドラドラドラドラドドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
  ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
  ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
  ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ!!!』
373 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:05:22.21 ID:664efG6d0
静「ドォぉぉおおおおオオラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
  ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
  ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
  ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラァァァアアアあああッ!!!!」

メイ「イイイイイイイイイイイイあああああああああああああああ!!!!!!!」

ドォ――z__ン!!!
374 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:06:12.42 ID:664efG6d0
バ キ ィ ン
375 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:06:53.92 ID:664efG6d0
……『ワンダフル・ワールド』が……

杜王町を覆う『ドーム』が――……
376 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:07:19.80 ID:664efG6d0
――破壊されたッ!!!
377 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:07:59.94 ID:664efG6d0
カ ッ

メイ「!!!――……」

ジュッ
378 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:08:38.18 ID:664efG6d0
……朝の日差しが、杜王町を照らす。

有栖川メイは、光に抱かれた。
379 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:09:18.11 ID:664efG6d0
メイ(……ああ、なぁんて……)

メイ(…………温かい光……)

メイ(……私が、最後に……)
380 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:10:05.21 ID:664efG6d0
メイ(……見る光……)

サァァアア――ッ……

…………
381 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:10:48.18 ID:664efG6d0
…………

バァァ――ッ……

静「――ハア!……ハァ、ハア!……」

「……」

……アア……
382 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:11:28.80 ID:664efG6d0
静「……ハァ、はぁ……ハァ〜〜ッ……まだ、頭がガンガンする……」

「……」

静「一生分殴った気分よ。ああ……しんどォ……」

「……」
383 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:12:20.52 ID:664efG6d0
静「…………」

「……」

静「……けど!杜王町に光が戻って良かったわ。ホント。にしても……光の中では生きられないってェーのに、これからどうするつもりだったの?」

「……」

静「ず〜〜ッと暗い世界にするつもりだったのかよ?ねえ?……」
384 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:13:06.44 ID:664efG6d0
静「……『メイ』」

「…………」
385 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:13:40.24 ID:664efG6d0
ム ク ッ ・ ・ ・

メイ「…………どうして……わ、私は……太陽に……?……??」

バン
386 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:14:15.75 ID:664efG6d0
静「『ワイルド・ハニー』……気付いてないの?アンタの身体、『透明』にさせてもらったわよ」

ド ン

メイ「!!」
387 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:14:55.63 ID:664efG6d0
静「『透明』ってのは光が当たらないってことだからさ〜〜ッ。けどあれ、全身透明にしても目はキチーンと見えてんの、どういうことなのかしらね?アイツも言ってたけど、目ってのは光が当たって……あんま深く考えるとアタマいたくなんのよね。この能力」

メイ「……何を……してるのよ……」

静「ン?」
388 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:15:27.05 ID:664efG6d0
メイ「私は……人を何人も殺したッ!世界をムチャクチャにして……世界を、自分のものにしようとしたのよッ!?」

静「……」

メイ「それなのに、貴女は何故……!?こ……殺しなさいよ……能力を破られ、全てを失った私に……もう……」

静「……」
389 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:15:55.48 ID:664efG6d0
メイ「……生きる価値も、生きる目的もないわ……!!」

静「……ハァ〜〜ッ……」コキコキ
390 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:16:26.27 ID:664efG6d0
静「人を何人も殺して、世界をムチャクチャにして……あたしの親友も殺しといて、さ」

メイ「……」

静「……『ごめんなさい』の一言もなく、自分は勝手に消える気?」

メイ「……」

静「バカバカバカ、よ。ほんとバカ。許せる訳、ないじゃあないの」

メイ「…………」
391 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:17:20.78 ID:664efG6d0
静「……だけど、貴女は本当に……『幸せ』になりたくて、そして……」

メイ「……」

静「『幸せ』に『したかった』んだって……アンタの世界にいて、知ったわ」

メイ「……」
392 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:17:55.37 ID:664efG6d0
メイ「……けど、許されないわよね。……私は」

静「ええ。……世界はたぶんムチャクチャだし、アタマを下げりゃあいい訳ではない、わよね」

メイ「……」

静「だけど、それをあたし個人が、始末つけていいモンじゃあ、ないわ」

メイ「……」
393 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:18:39.17 ID:664efG6d0
静「生きて償いなよ。あたしは、アンタを殺せない。……甘チャンだからさ。あたしは」

メイ「……」

静「生きるのが辛くとも、死にたくなっても、アンタは、生き続けるべきよ。そして……アンタは、優しいから」

メイ「……」

静「別の方法で、みんなを幸せにしてあげなよ。……みんなを不幸にさせた、分ね」

メイ「……」
394 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:19:27.38 ID:664efG6d0
メイ「……また、間違うかもしれないわ」

静「かもね〜〜ッ」

メイ「また……別の道へ進むかもしれないわ」

静「ええ、そうね。アンタけっこー思い込むと、こう!な所、あるっぽいし」

メイ「……」
395 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:19:56.78 ID:664efG6d0
静「だけどさ、それでもアンタが、進もうとするのなら……」

メイ「……」

静「…………」

ス ッ 
396 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:20:31.04 ID:664efG6d0
静「……今日から始まる新しい世界で……最初の『親友』になってあげてもいいわよ」
397 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:21:25.76 ID:664efG6d0
メイ「…………は?」

静「『は?』じゃあねーわよ。……言っとくけど、こっちはかなりマジなんだから……さ」

メイ「…………」
398 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:22:10.01 ID:664efG6d0
メイ「…………バカ」

静「……」

メイ「……バカ、バカ、バカよ。貴女……本当、バカだわ」

静「……」
399 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:22:37.36 ID:664efG6d0
メイ「……人殺しの吸血鬼を!世界を支配しようとした吸血鬼をッ!!」

静「……」

メイ「『友達』ではなく、『親友』?アハハ……バ〜〜カ……」

静「……」
400 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:23:19.44 ID:664efG6d0
メイ「……」

静「……」
401 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:23:45.93 ID:664efG6d0
メイ「……バカ……」

ポロポロ……ポロ……

静「…………」
402 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/10(日) 22:24:20.75 ID:664efG6d0
バ ァ ァ ア ア ア ァ ァ ア ・ ・ ・

…………

……

403 : ◆eUwxvhsdPM [sage saga]:2021/01/10(日) 22:25:13.37 ID:664efG6d0
今回はここまでです
次回、最終回です
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/10(日) 22:46:37.56 ID:tYZ/SXGlO
乙一
ウォーケンの連載辺りからひっそりと追って待ち続けたがついに最終回か......感慨深いな
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/01/10(日) 23:48:31.50 ID:Fd7HhnA00
傑作に出会えると常々思うことがあるのです。
この作品を知らずに死ななくて、よかったと。
覚醒したワイルドハニーの能力の応用と言い、世界征服するのには全ての人間と友達になれば良いと言った発想……。
本当に静・ジョースターの奇妙な日常の【冒険】を見れて嬉しかったです。

最終回、期待を胸に待ち望んでます!
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/11(月) 04:15:22.75 ID:7vZ/pvDHO
夜勤の休暇中に読むんじゃなかった
少し泣いてしまった
ジョナサンとディオ、2人の義兄弟の戦いから始まった物語が本当の姉妹の和解で結ばれるのか
JOJOから託されたエンポリオとDIOの意思を引き継いだプッチ神父との戦いとはまた別の一つの決着
この話が読めて本当に本当によかった
407 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 20:59:15.95 ID:vqwhzSy50


……

…………
408 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:00:28.07 ID:vqwhzSy50
季節は春、新生活シーズン真っ盛り。
桜の木が立ち並ぶ川岸を、物凄い速度で走る車があった。

運転席に座るのは、凄まじく見事なリーゼントをした30代の男、『東方仗助』
助手席に座るのは、学校の制服を身にまとい、何故か奇妙にも似合うサングラスを額の上に掛けた、16歳の少女……

『静・ジョースター』
409 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:01:45.81 ID:vqwhzSy50
車内――

静「……あのさ、前にも同じことあったよね?丁度一年前だったかな……同じこと言いたくないなあ」

仗助「なんだよ静、カワイクねーぞその顔……まだ十分間に合うぜ。最近のスマホのナビ便利だよな〜〜。車にナビついてなくても良いルート教えてくれる」

ブゥゥゥゥーン!!!

静「なんで寝坊してんのよ、またッ!今日から『二年生』よ、あたしッ!クラス替え早く見てェ――のにさあー!!」
410 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:02:22.67 ID:vqwhzSy50
仗助「静……おれも寝坊したくてしてるワケじゃあねえんだぜ?しかし那由他ちゃんが小学校に入学となるとよォ、おれもなんか買ってやってお祝いしてえし。その『ついで』で億泰と酒飲むのは普通だよな……あ、ここまっすぐのが近いのか」

ブゥゥウーン……

静「あたしにはなーんも買ってくれないくせに!靴欲しいって言ったじゃん!見てよこれェー超カワイイの!スニーカーとサンダルのいいとこ取りでさ……お気に入りリストに入れてず〜〜っと見てんのよ?あたしッ!」
411 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:03:32.75 ID:vqwhzSy50
仗助「オメーは別に入学でもなんでもねえ進級じゃあねーか。それに昨日肉食ったろ、牛肉。高かったんだぜ?あれ」

静「兄さんが億泰んとこ行くから『二人』でサビシクねッ!ガッチガチにコゲた上に中がナマだったわ!せめて焼いてから行け、焼いてからッ!」

仗助「少しは料理の腕磨きやがれ!なーんにでもオニーサマに頼んじゃあねーッ!!」

ギャーギャー!

「……ねえ……」
412 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:04:36.77 ID:vqwhzSy50
メイ「ケンカはやめましょう?静……仗助。仲良くしないとわたし、つらいわ……」

……後部座席にいた『有栖川メイ』が、口を開いた。
413 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:05:41.20 ID:vqwhzSy50
静「別にケンカしてるワケじゃあないわよ、メイ。こんなんいつものことよ……アンタってホント、心配性よねえ」

メイ「あら、ごめんなさい。そうだったのね……わたしったら、てっきり」

仗助「……ケッ!おい、静……オメーよお〜〜」ヒソヒソ

静「何?」
414 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:06:54.41 ID:vqwhzSy50
仗助「ホントぉ〜〜にコイツ、学校連れてく気かよ?正気か?オメーッ」ヒソヒソ

静「?……ガクセーはガッコー行くもんでしょ。クラス替えあるから不登校が急に学校来ても目立ちにくいし、良いタイミングだと思うけど?」

仗助「そういう事じゃあねえよ。それに……太陽どうする気だ?当たったらヤベーんじゃあねえのかよ?」

静「全部避けるってさ。ね?メイ」

メイ「ええ。影から影へ移動すればなんとかなるわ。練習したもの……ふふ」

静「それに、いざってなったらあたしが透明にするから。まあ問題ないんじゃあないの?」

仗助「……そう言うんなら、いいけどよォ〜〜」
415 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:07:50.36 ID:vqwhzSy50
仗助(って、おれはなんで吸血鬼の心配なんかしてんだ?調子狂うぜ……ケエ〜〜ッ!)

静「……あ、兄さんそこの桜の木の影でいいわ。止めて止めて」

仗助「ん……いいのか?まだちょっと距離あるぜ?」
416 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:08:47.50 ID:vqwhzSy50
静「影じゃあないとメイが車から降りられないし……ちょっと歩きたい気分だし」

メイ「仗助が送ってくれたから、時間は少し余裕あるわね……ありがとう。仗助」

仗助「仗助『さん』だ、『さん』」
417 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:09:33.22 ID:vqwhzSy50
キキッ

バタン

静「ん〜〜〜〜ッ!いい天気ねえ……気持ちがいいわ」ノビ~ッ

メイ「ええ、本当に……」

仗助「……おい、メイ」

メイ「?」

仗助「……いいか……」ヒソッ
418 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:10:30.81 ID:vqwhzSy50
仗助「おれはテメェを信用してねえからよ〜〜……おれの監視の目から外れるからって、好き勝手やんじゃあねえぞ、コラ。もし静を危険な目にあわせるような事があったら、絶対許さねえからな。この仗助くんは〜〜……」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

メイ「…………」
419 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:11:23.24 ID:vqwhzSy50
仗助「それと……ホイ」

グイッ

メイ「?……何?これは」
420 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:12:42.98 ID:vqwhzSy50
仗助「弁当だよ、ベントーッ。静の血を少し飲んでるだけじゃあ足りねえだろ?普段は遠慮してんのかそこまで食わねえみてーだが、これからは作ってやっから」

メイ「…………」

仗助「いらねえのか?……っていうか吸血鬼ってメシ食えんのか?昨日も肉食ってなかったみてーだが、ガリガリがさらにガリガリになってぶっ倒れんぞ、オメー」

メイ「食べる……食べるわ。……あ、ありがとう」

仗助「……フン!……車とか気ィつけろよ、静。メイ」

静「はーい」

メイ「……」
421 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:13:35.82 ID:vqwhzSy50
ブゥゥーン……

静「んじゃ、行こっか?メイ」

メイ「……」

静「……メイ?」

メイ「いえ、大丈夫……けど、少し……」

ガクガク
422 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:14:16.77 ID:vqwhzSy50
メイ「足……震えちゃって」

静「…………」

メイ「……あなたのお兄さんは良い人ね。わたしを許さないっていう敵意も感じるけれど……同じくらい、優しさも感じる」

静「……」

メイ「だけど、ちょっとの敵意で、わたし、怖がって……ダメね。本当」
423 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:15:18.86 ID:vqwhzSy50
メイ「これから、どれだけの敵意がわたしを襲ってくるのか……考えると、怖いわ」

静「……メイ」

メイ「……」
424 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:16:26.20 ID:vqwhzSy50
静「一歩、進みなさい」

メイ「…………」

静「アンタが一歩、進むなら……あたしは、二歩目から、歩いてやるわよ」

メイ「……」

静「アンタが決めるのよ。これまで無茶苦茶やった分を、前に進んで、帳消しにするため生きるのか。……ここでクルッと後ろ向いて、全てから逃げ出すのか」

メイ「…………」

ザ ッ
425 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:17:12.50 ID:vqwhzSy50
メイ「……逃げないわ」

静「……」

メイ「決めたもの。どれだけ泥にまみれても……わたしは、進む」

静「……そう」
426 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:18:11.68 ID:vqwhzSy50
メイ「……けど、まだ……震えてるから……」

静「……」
427 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:18:55.80 ID:vqwhzSy50
メイ「手……握ってくれる?」

静「……しょうがないなあ、もう」

ギュッ
428 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:19:39.63 ID:vqwhzSy50
サ ァ ァ ア ア ア ァ ァ ア ・ ・ ・

静「……風が気持ちいいわね、メイ」

メイ「ええ。……静」

静「んー?」
429 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:20:55.93 ID:vqwhzSy50
メイ「わたし……あなたに会えて、良かったわ」

静「……そうね。……なんか、あたし達……」

メイ「?……」
430 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:21:30.39 ID:vqwhzSy50
静「……こうして出会うために、産まれてきたのかもね」
431 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:22:37.66 ID:vqwhzSy50
メイ「……ふふっ!それは……素敵ね。とっても……とっても、素敵」

静「……なんからしくねー事、言っちゃったわね……あはは」
432 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:23:20.93 ID:vqwhzSy50
サ ァ ァ ア ア ァ ァ ・ ・ ・
433 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:23:59.57 ID:vqwhzSy50
風が、二人の髪を、なびかせる。
彼女たちの、左の首の付け根には――……
434 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:24:48.25 ID:vqwhzSy50
『星』の形に見えなくもない、奇妙な『アザ』が、光っていた。
435 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:25:36.82 ID:vqwhzSy50
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨



  ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨



    ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……



…………
436 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:26:16.56 ID:vqwhzSy50
…………





静・ジョースターの奇妙な日常――『ワイルド・ハニーは砕かない』

――『完』





…………
437 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:26:50.41 ID:vqwhzSy50
スタンド名―ワイルド・ハニー
本体―静・ジョースター

破壊力― A スピード―A 射程距離―C
持続力―C 精密動作性―C 成長性―完成

『ワンダフル・ワールド』が人々の魂に記憶を書き込む『鉛筆』のようなものだとしたら、
『ワイルド・ハニー』はそれを消す『消しゴム』のようなものである。
物質を透明にする能力は、有栖川メイの矢の力に呼応し、魂に作用するようになった。

しかし、彼女はそちらの能力は、もう二度と使う事はないだろう……。
438 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:30:02.75 ID:vqwhzSy50
……………………
439 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:31:05.55 ID:vqwhzSy50
……………………
440 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:31:48.80 ID:vqwhzSy50
……………………

…………

……

441 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:32:24.57 ID:vqwhzSy50
「……らーら、らー……らららら、らら……」
442 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:33:04.31 ID:vqwhzSy50
「ちょっと、変な歌うたわないでくれません?……ネムくなってくるんですよ、それ聞くと」

「そうかしら?素晴らしい歌だと思わない?」
443 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:33:50.58 ID:vqwhzSy50
「歌の良し悪しじゃあないですから。ハア……なんであたしがあなたなんかと……」

「不平不満を言ったって何もかわらないと思うわよ?それより、頑張ってお仕事しないと」

「うるさいですね。今、財団からの任務を確認してるんですから。黙ってください」

「……らーら、らー……」

「うたわないでッ!」
444 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:34:35.40 ID:vqwhzSy50
「あら、この歌には意味があるのよ?今回のお仕事内容……読んでみなさいな」

「ええと……『アメリカ、N州の○○○町にある教会で、神父に懺悔した者が』……『その日から眠れなくなった』?」

「だから、よ〜〜く眠れるように、わたしは歌をうたうの。らららー」

「……神父がスタンド使いなのか、それともスタンド使いに作られた物が、悪さをしているのか……何にせよとりあえず、神父に聞いてみることにしましょう」

「また能力使うの?ヒドい人ね、あなたって。神父様になんの罪もなかったらどうするの?ねえ……」
445 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:35:14.71 ID:vqwhzSy50
メイ「『虹村那由他』?」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

那由他(16歳)「その時は謝ります。もしもあたしに何かあったら、全力であたしを守りなさい。吸血鬼」

メイ「はいはい……ふふっ!」
446 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:35:52.72 ID:vqwhzSy50
メイ「退屈しないわね。……この『奇妙な日常』は」





⇐To be continued=・・・?
447 : ◆eUwxvhsdPM [saga]:2021/01/11(月) 21:37:04.83 ID:vqwhzSy50
8年近くもの間、応援と閲覧、ありがとうございました。
長年積もった言いたいことが山というほどありますが、
長くなるとイタいのでこのへんで。

これにて『静』の物語は終わりですが、双馬の話や10年後の話など、もう少し書いていくつもりです。
(10年後の話は本当に書くかはわかりませんが)
しかし、そこまで行くとジョジョの二次創作ではなく完全なオリジナルとなるので、掲示板では書かず、Twitterやpixivでやっていこうと思いますので。
興味のある方は是非に。
それでは。
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/11(月) 21:39:34.74 ID:uV3gf+1O0
無言の敬礼

支援 
https://i.imgur.com/X2YySY3.jpg
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/01/11(月) 23:11:34.80 ID:QwW0aEOZ0
乙。荒らしにもめげずよくぞここまで書き上げてくれたね
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/01/12(火) 01:06:30.74 ID:WzxEqSTI0
完結おめでとうございます!
ずっと待ち望んでいた物語を忘れなくて良かった、諦めずに良かったとしか言いようがなくて……。
ああ、もう、いっぱい伝えたいことはあるのですがただ一言にまとめます!

本当ありがとうございました! 次回作、心待ちにしてます!
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/01/12(火) 19:33:20.27 ID:goxQA5tuO
願わくは、このssに触発された読者がまた別の世界線の
見た目も性格も異なる静ジョースターの物語を作るようになればいいな
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/16(土) 02:05:39.51 ID:mjpt4htf0
完結おめでとうございます。
私は、以前の最終回でsageのルールをよく知らずにコメントしてしまった者です。
私のせいで白玉様に多大な迷惑をおかけした事を、この場を借りて謝罪させていただきます。
本当にすみませんでした。
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/16(土) 22:30:37.35 ID:tUIzDDPk0
何年も追ってきたからこその感動があった
ジョジョのSSとして非常に高い完成度ながら、歴代ジョジョが全員登場するという「ジョジョらしくない」王道少年漫画のような展開をあえてやり、そしてハッピーエンドに駆け抜けた、実にすばらしい作品でした
この作品に出会えてよかった。おつかれさまでした
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/03/26(金) 23:20:21.89 ID:laLtmRdZ0
本当に…ありがとう…それしか言う言葉が見つからない…
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 15:24:02.22 ID:ZMo7hHBW0
消しゴムとエンピツ
『星』を求めた者と『泥』の中で生きてきた者
ジョースター家と吸血鬼
昔なら一緒になることは出来なかったけれど、静はジョースターの血統ではなかったからこそ、手を取り合うという『道』を歩くことができたのかな...?
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/01/12(木) 00:03:58.75 ID:BvrEXpJsO
読了
130.54 KB Speed:0.3   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)