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P「あいつらに会いたい」
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7 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:07:21.85 ID:jb5TYrq40
春香「プロデューサーさん? どうしました」
P「春香、みんなの声が……」
貴音「しかし、主役を演じるには相応の覚悟と決意が必要なようですね」
伊織「そうね、まったくプロデューサーも律子も人が悪いわ。
よりによってこんな役を私たちにやらせようなんて」
律子「あらそう? 大切なものを知っているあなたたちだからこそ、
ぴったりな役だと思うけど」
亜美「わー、りっちゃんがわっるい顔してる」
真美「そんな子に育てた覚えはないのにぃ……」
P「……聞こえる」
春香「はい、聞こえますけど?」
P(……本当に疲れているのか、俺……)
春香「プロデューサーさん?」
P「や、なんでもないんだ。気にしないでくれ」
春香「はあ……」
8 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:08:32.59 ID:jb5TYrq40
美希「あっ! いいこと思いついたの! ハニーが主役をやればいいって思うな!」
P「お、俺?」
伊織「なんでプロデューサーがミュージカルに出演するのよ! それも主役で!」
美希「主人公のハニーは愛するヒロインのミキと離れ離れになって、
ミキの大切さをあらためて実感するの。
そして再会した二人は永遠の愛を誓い合うの!」
雪歩「そ、それはちょっと……」
響「話はともかく、仮にプロデューサーが舞台に立ったらブーイング間違いなしだぞ」
9 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:10:04.39 ID:jb5TYrq40
春香「で、でも、プロデューサーさんが相手なら私もその話やってみたいな〜、なんて……」
あずさ「私もやってみたいわ〜。プロデューサーさんが相手なら熱演できちゃいそう」
真「ボ、ボクもプロデューサーとラブストーリーやってみたい!」
亜美「いやいや、まこちんの場合、男二人の友情物語になるっしょー」
真「なっ!」
伊織「わ、私も立候補してあげてもいいわよ!
別にプロデューサーとのラブストーリーなんてぜんっぜん興味ないけど?
女優としての演技の幅は広げたいし?」
真美「ま、真美もやってみたい……」ゴニョゴニョ
美希「ち、ちょっと! これはミキとハニーのラブストーリーなの!
ヒロインはミキの指定席って決まってるんだから!」
千早(その前に、ミュージカルは
プロデューサーとのラブストーリーではないのだけれど……)
貴音「ふふ、罪な方ですね、あなた様は。皆、あなた様をお慕いしているようですよ」
P「はは……」
やよい「プロデューサーは大切なものってありますかー」
P「俺? 俺の大切なものは……」
律子「ほうら、あなたたち、馬鹿なこといってないで、
これからオーディションの説明するからちゃんと聞いてなさいよ」
………
……
…
10 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:13:06.59 ID:jb5TYrq40
高木「やあ諸君、お疲れ」
P「社長、お疲れさまです」
高木「アイドルたちは皆帰ったようだね。
彼女たちがいなくなると祭りの後のように事務所が静まり返るなあ」
小鳥「そうですね、少し寂しいくらい」
律子「デスクワークをするにはこのくらい静かな方が捗りますけどね」
高木「そのデスクワークが終わるならこの後どうかね。
ミュージカルの前途を祝して一杯でも。もちろん私が奢るよ」
小鳥「わあ、いいですね。お二人は終わりそうですか」
律子「私の方はもう。プロデューサーは?」
P「俺はまだ終われそうにないな。
どうしても今日中に未来たちのプレゼン用の資料を作っておきたいんだ」
律子「でしたら私も手伝いますよ」
P「律子はまだ正式なプロデューサーじゃないだろ。
これからミュージカルも重なってより忙しくなるだろうし、
今日くらい思いっきり羽根を伸ばしてこいよ」
律子「でも……」
P「気持ちだけ受け取っておくよ。社長、折角ですが俺は事務所に残ります」
高木「そうか。では、キミとはまた違う日に一杯やろう」
P「はい、その時を楽しみにしています」
小鳥「それではプロデューサーさん、お先に上がらせてもらいますね。
最後、戸締りよろしくお願いします」
律子「プロデューサーもあまり無理しないでくださいね。お先に失礼します」
P「ああ、お疲れ」
ガチャッ バタン……
P「……さて、もうひと踏ん張り」
………
……
…
11 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:14:58.84 ID:jb5TYrq40
P「くあ、疲れたぁ……って、もうこんな時間か」
P(これは帰る頃には日を跨いでるな……)
P「ふぅ……」
P「……」
P(ミュージカルの台本……)パラパラ
P(……駄目だ、どうしても思い出せない。
なにを失くしてどんな結末を迎えるんだっけ……)
やよい『プロデューサーは大切なものってありますかー』
P(俺の大切なもの……そんなもの、考えたこともなかったな)
P(たかが二十年あまりの人生だけど精一杯生きてきた)
P(辛いことも楽しいこともそれなりに経験してきたけれど、
大切なものを見つけようだなんて、なに一つしてこなかった)
P(アイドルたちは皆、大切なものを共有しているみたいだけど、
それは一体なんなんだろう……)
P「大切なものかぁ」
P(俺の大切なものってなんだろう……)
P「おれの、たいせつな……」ウトウト
P「……」スースー
……………………
………………
― ― ―
…………
……
12 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:17:17.95 ID:jb5TYrq40
「プロ―――」
「――さん、プロデューサーさん、起きてください」
P「……ん」
「もう、また徹夜したんですか」
P(……しまった、寝落ちしてしまったか。あと少しで資料ができたっていうのに)
「駄目ですよ。無理が祟って身体を壊したら元も子もないですよ。
ただでさえ不規則な業界なんですから、ちゃんと身体を休めてください」
P「はい、すみません、音無さ……」
P「…………」
「ほら、顔を洗ってきてください。みんなもそろそろ来ますよ」
P「あ、あの……」
「はい?」
P「どちらさまでしょうか」
「……寝ぼけてるんですか」
P「い、いえ、本当にどなたなのか……」
13 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:18:20.21 ID:jb5TYrq40
ガチャッ
「おはようございます」
「あら、おはよう、凛ちゃん。今日は早いのね」
14 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:20:17.94 ID:jb5TYrq40
凛「おはよう、ちひろさん。ちょっと卯月と未央と約束があってね」
凛「おはよう、プロデューサー」
P「……」
凛「プロデューサー? どうしたの」
ちひろ「プロデューサーさん、また徹夜してちょうど今目覚めたばかりなの。
まだ頭が覚醒してないみたい。ただ今お寝ぼけ中なの」
凛「また?」
P「……」
凛「プロデューサー、私たちには体調管理を怠るなって口酸っぱくいうくせに、
自分の体調には無頓着過ぎるよね。
こういうのって人にとやかくいう前に、まず自分ができてからじゃないの」
ちひろ「凛ちゃんのいうとおりです、プロデューサーさん。肝に銘じてください」
P「……」
凛「プロデューサー?」
15 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:21:54.56 ID:jb5TYrq40
P(……なんなんだ、誰なんだこの二人は。ここは一体どこなんだ)
P(俺は765プロの事務所にいたはず。こんな所、俺は知らない)
P(なにが、一体なにがどうなっている……!?)
16 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:26:30.98 ID:jb5TYrq40
ちひろ「ちょっとプロデューサーさん、本当にどうしちゃったんですか。
なにか様子が変ですよ」
P「……ドッキリですか」
凛「ドッキリ?」
P「そうか……、番組の企画かなにかでしょう。
きっと、どこかに隠しカメラがあって……!」
ちひろ「ち、ちょっと、プロデューサーさん?」
P「なあ、そうなんだろ律子! どこかの部屋から見てるんだろ!
ああ、こんなイタズラ企画なんだから真美と亜美のコーナーか?
二人がどこかに隠れてプラカードなんか持ってたりして!?」
凛「プロデューサー」
P「もうバレてるんだ、早く姿を見せてくれよ!!」
凛「プロデューサー!」
P「……!」ビクッ
凛「どうしちゃったのプロデューサー、なにを混乱してるの?
さっきからプロデューサーがなにをいってるのか全然わからないよ……」
ちひろ「落ち着いてください、プロデューサーさん。深呼吸して。
今、お水をお持ちしますから」
P「……」ハァ ハァ
17 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:28:58.14 ID:jb5TYrq40
凛「リツコって誰のこと? それにマミ、アミって……」
P「……待ってくれ。その前に、君は一体誰なんだ」
凛「誰、って……」
P「きっとどこかのプロダクションのタレントなんだろうけど、
そろそろ種明かしをしてくれないか」
凛「……本気でいってるの?」
P「すまない、ひどく混乱してて……。ええと、どこかで会ったことあるかな。
それともうちのアイドルたちの知り合いとか……」
凛「……」
P「あ、あの……」
P(なんだ、どうしてそんな悲しそうな顔をする……?)
18 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:31:04.42 ID:jb5TYrq40
ちひろ「プロデューサーさん、水をお持ちしましたよ。さあ、飲んで……」
ちひろ「凛ちゃん? どうしたの」
凛「プロデューサー、私が誰だかわからないって……」
ちひろ「……」
ちひろ「それは本当なんですか、プロデューサーさん」
P「え……」
ちひろ「悪ふざけだったら怒りますよ」
P「わ、悪ふざけもなにもイタズラを仕掛けられているのは俺の方ですよね?
とにかく、ここはどこで、あなた方は誰なのか、状況の説明がほしいのですが……」
ちひろ「……」
P(……なんなんだ、どうしてそんな目で俺を見る?)
19 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:33:06.25 ID:jb5TYrq40
ちひろ「……もう一度確認しますが、
私のことも、凛ちゃんのことも、本当にわからないんですか」
P「は、はい」
ちひろ「……」
P「と、取り敢えず、765プロに連絡させてください! 話はそれから――」
凛「ナムコプロ?」
ちひろ「どこかの芸能プロダクションですか。
そんなプロダクション聞いたことありませんけど……」
P「え……」
P「765プロですよ……! ほら、天海春香! 星井美希! 如月千早! それから――」
凛「知らない……」
P「……っ」
ちひろ「私もナムコプロなんて初耳です」
P(そんな馬鹿な……。765プロを知らないなんて今ではそうはいないはず……)
20 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:34:30.11 ID:jb5TYrq40
P「じ、冗談ですよね? お願いですから、本当に種明かしをしてくれませんか。
このままじゃ埒が明かな――」
P(そうだ、携帯。律子に連絡を……)ピッ ピッ
P(あれ……、なんでだ、律子のアドレスがない? いつの間に消えたんだ)
P(音無さんのアドレスは……ない。社長は……アイドルたちのアドレスは……)
P(……ない! なんでだ? 事務所の電話番号も消えている……)
ちひろ「凛ちゃん、ちょっとプロデューサーさんを見ていてくれる?
私、社長に連絡入れて、プロデューサーさんを病院に連れていくから」ヒソヒソ
凛「う、うん……」
P「くそっ!」ダッ
凛「あっ、待ってプロデューサー!」
ちひろ「プロデューサーさん!」
21 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:35:35.60 ID:jb5TYrq40
未央「でさでさー、そしたら美嘉ねえがさー、プクク」
卯月「未央ちゃん、いう前から自分で笑ってますよ」
未央「だ、だって、美嘉ねえったら……って、あれ、プロデューサー?」
卯月「おはようございます、プロデューサーさん」
未央「おっはよ〜! プロデューサー!」
P「……!」
卯月「どうしたんですか、血相変えて……」
未央「これこれ、廊下は走らないって学校で習わなかったかな、プロデューサーくん?」
P(また知らない……)
卯月「プロデューサーさん?」
凛「卯月! 未央! プロデューサーを捕まえて!」
卯月「凛ちゃん?」
未央「捕まえ……? あ」
凛「プロデューサー待って!」
22 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:36:56.52 ID:jb5TYrq40
P「はぁ……はぁ……」
P(取り敢えず、外に出た……)
P(大きなビルだ。うちの事務所が入っている雑居ビルとは比べものにならない)
P(『シンデレラガールズプロダクション』……。
初めて聞くな。芸能プロダクションなのか?)
P(いや、それよりも携帯のGPS……現在地は……)
P(よし、765プロからそう遠くない。タクシーかなにか捕まえて……)
………
……
…
23 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:39:21.32 ID:jb5TYrq40
P「着いた……」
P「……」
P(あれ、うちの事務所が入ってる3階の窓の『765』の文字が消えている……?)
P(……考えるのは後だ。取り敢えず事務所の中へ)
タッタッタッタッ……
P(入り口の社名まで消えている。どうして……)ガチャッ
P「あ、あれ? 開かない?」ガチャ ガチャ
P(合鍵は……今は持ってない)
P「誰か! 誰かいないか!」ドン ドン
P「律子! 音無さん! 社長! 春香!」
――――
P「くそっ」ドンッ!
P(誰もいないのか? まるで人の気配がない……)
P「…………」
P「たるき亭……!」
24 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:40:57.15 ID:jb5TYrq40
タッタッタッタッ…… ガラッ
P「あの、すみません!」
小川「あら、お客さんですか。まだ開店時間では……」
P「小川さん、うちの事務所、今誰もいないみたいなんですけど、
なにか俺宛に言伝とか預かってませんか」
小川「……」
小川「失礼ですが、どちらさまでしょうか。どうして私の名前を……」
P「え……」
P「俺ですよ! ほら、3階の! 765プロのプロデューサーの……!」
小川「ナムコプロ?」
P「お昼時にはよく音無さんと一緒に食べに来てるじゃないですか!」
小川「んー……、覚えがないなぁ」
小川「常連さんの顔は覚えてるはずなんですけど……、
そのオトナシさんという方は男性ですか、女性ですか」
P「……」
小川「それに3階はもう何年も前から空き屋のはずですけど」
P「あ、空き屋?」
小川「はい。でしたら、部屋を開けて確かめてみますか。
店長から3階の合鍵借りてきますけど、どうします?」
25 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:42:56.49 ID:jb5TYrq40
カチッ ガチャッ
小川「どうぞ」
P「……な、なんだ、これ……」
P(空っぽだ)
P(俺のデスクも、スケジュールが書かれているホワイトボードも、
アイドルたちがいつも座っているソファーも、雪歩の愛用の急須も、
なにもかもがなくなっている……)
P(765プロが、なくなって……)
凛『ナムコプロ? 知らない……』
ちひろ『私もナムコプロなんて初耳です』
小川「あの、大丈夫ですか。顔真っ青ですけど……」
P「う、嘘だ……」フラッ
小川「あ、ちょっと! どこ行くんですか!」
26 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:44:52.61 ID:jb5TYrq40
タッタッタッタッ……
P「はぁ、はぁ!」
P(嘘だ……嘘だ……!)
P「あの、すみません!」
「はい?」
P「765プロという芸能プロダクションを知りませんか!?」
「……さあ、知りませんけど」
P「秋月律子というアイドルに覚えは!?」
「いいえ……」
P「じ、じゃあ、菊地真は!?」
P「萩原雪歩は!?」
P「高槻やよいは!?」
P「水瀬伊織は!?」
P「双海真美、亜美は!?」
P「三浦あずさは!?」
P「我那覇響は!?」
P「四条貴音は!!? 本当は知ってるんでしょ!!!」
「し、知りませんってば! もうやめてください!」ドンッ
P「……っ」
「なんなのあの人、気持ち悪い……」
「関わらない方がいいよ」
「頭イッちゃってんじゃないの」
P「…………」
P(どうして、どうして誰も765プロを知らない?)
P(みんなどこへ消えてしまったんだ。春香は? 千早は? 美希は?)
P「……は、はは、は、は……」
P(もう、なにがなんだかわからない。俺は夢でも見ているのか?)
P(夢なら覚めてくれ。こんな、こんな……)フラフラ
――バタッ
「きゃー!」
「人が倒れたぞ!」
「おい君、大丈夫か!? 誰か、救急車!」
27 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:45:47.71 ID:jb5TYrq40
志希「ふっふ〜、いい薬品……もとい、いい香水の材料が手に入っちゃった!
早くガレージに戻って調合せねば……くふふ」
志希「んんっ? 前方に人混みゴミゴミ発見」
志希「……にゃはっ」
志希「はーい、ちょーっと失礼ー。どいてどいてー、ちょいちょい、ごめんねっと」
志希「なにかな、なにかなー。みんな、なににキョーミ深々なのかなー?」
志希「…………え」
………
……
…
28 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 00:46:34.80 ID:jb5TYrq40
続き多分昼頃投稿
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/20(火) 08:20:10.27 ID:NDphlVnbO
おつ
続き気になるね
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/10/20(火) 09:17:59.32 ID:zYOs4Xd/0
おつ期待
31 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:05:20.13 ID:sMbggPpm0
美嘉「プロデューサーが行方不明?」
卯月「はい、事務所を飛び出したきり連絡が取れなくて……」
莉嘉「Pくんのケータイは?」
未央「駄目。全然繋がらない」
アナスタシア「どうしたんでしょう、プロデューサー。とても心配です」
蘭子「我が友よ……」
楓「その、プロデューサーが凛ちゃんを覚えてないってどういう……」
凛「私にもよくわからない。プロデューサーすごく混乱してて、
私のこともちひろさんのことも誰なのかわからないって」
愛梨「プロデューサーさんがそういったの?」
凛「うん……」
未央「私としまむーのことも困ったような顔で見てたよ。
まるで初対面の人を見るような……」
美嘉「演技とかじゃなくて?」
凛「とてもそうは思えない。
真に迫るものがあったというか、あんな怯えてるプロデューサー初めて見た」
32 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:08:37.66 ID:sMbggPpm0
杏「ねえ、それって記憶喪失ってやつじゃない?」
卯月「記憶喪失? まさか……」
愛梨「記憶喪失って突発的になるものなの?」
杏「杏だって詳しくは知らないけど、凛ちゃんや未央の話を聞くに、
記憶喪失の症状と似てるんじゃないの」
アナスタシア「確かに……」
杏「プロデューサー、一人事務所に残って徹夜してたんでしょ。
その時にプロデューサーの身になにかあったんじゃ……」
莉嘉「Pくんの頭にでっかいたんこぶとかあった?」
未央「うーん、怪我とかは特にしてなかったと思うけど……」
まゆ「……」スッ
楓「まゆちゃん、どこへ行くの」
まゆ「プロデューサーさんを捜しに行きます」
美嘉「捜しに行くって、まゆちゃん、これから撮影があるんでしょ」
まゆ「そんなのどうだっていいわ。
まゆにとってプロデューサーさん以上に優先すべきことなんて
なに一つとしてないもの」
卯月「だ、駄目ですよそんな、お仕事にはちゃんといかないと……」
愛梨「どこか捜す当てでもあるの?」
まゆ「それは……ありませんけど」
美嘉「プロデューサーが心配なのはわかるけどさ、
まゆちゃんが仕事にいかないと
結果的にプロデューサーに迷惑かけることになるんじゃないの。
それはまゆちゃんの本望じゃないでしょ」
まゆ「……でも、プロデューサーさんの身にもしものことがあったらまゆは……」
楓「事務所の人たちが総出でプロデューサーを捜してくれているのだし、すぐに見つかるわよ。
大丈夫、私たちはいつも通り仕事をこなしましょう。
プロデューサーもきっとそれを望んでいるはず」
33 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:11:23.48 ID:sMbggPpm0
凛「ねえ、ナムコプロって聞いたことある?」
未央「ナムコプロ? なにそれ」
アナスタシア「ニェート、聞いたことないです。どこかの芸能プロダクションですか」
凛「プロデューサーがいってたの。ナムコプロに連絡させてほしいって」
愛梨「ナムコプロ……」
蘭子「そのような組織、我が記憶には存在しない……」
未央「うちと同じアイドルがいる事務所なのかな」
凛「多分。プロデューサー、女の子の名前を口にしてたし」
まゆ「……女?」
凛「リツコにマミ、アミ。それから……ハル…カ? だっけ」
卯月「その子たちがそのナムコプロ? というところのアイドルなんでしょうか」
莉嘉「じゃあ、Pくんはそのナムコプロってところに向かったってこと?」
まゆ「すぐにそこの住所を調べましょう! まゆが迎えに――」
凛「なかった」
杏「なかったって?」
凛「さっき、ネットで検索してみたけど、ナムコプロなんて一つも引っかからなかった」
美嘉「それってどういう……」
34 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:13:35.54 ID:sMbggPpm0
ガチャッ
幸子「おはようございまーす! カワイイボクがカワイく出社しましたよ!」
幸子「おや、みなさん、朝から神妙な顔をされてどうしたんですか。
それにプロデューサーさんの姿が見えませんね。
今日はプロデューサーさんが仕事に同伴してくれるから
楽し……みになんかしていませんけどね!」
ちひろ「みんな、プロデューサーさんが見つかったそうよ!」
卯月「本当ですか!?」
幸子「え?」
ちひろ「たった今、志希ちゃんから連絡があったの。
プロデューサーさんが道端で倒れていたところに偶然居合わせたらしくて、
さっき病院に搬送されたって」
愛梨「倒れてた!?」
まゆ「どういうことですか!」
幸子「え? え?」
ちひろ「詳しいことはわからない。私はこれから社長と一緒に病院へ行って
プロデューサーさんの容態を確認してくるわ」
まゆ「まゆも連れていってください!」
凛「私も行く」
莉嘉「アタシも行きたい!」
蘭子「わ、私もっ」
ちひろ「駄目よ。アイドルが大勢で病院に駆けつけるなんて、
そんなことマスコミに嗅ぎ付けられでもしたら面倒なことになり兼ねない」
ちひろ「みんなはいつも通り仕事に行くこと、いいわね?」
ガチャッ バタン……
まゆ「待つことしかできないなんて……!」
凛「……」
幸子「ちょっと、え? なにがあったんですか!? ボクだけ置いてけぼりなんですけど!!」
………
……
…
35 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:16:47.09 ID:sMbggPpm0
ガチャッ
志希「お疲れー」
美嘉「志希ちゃん!」
まゆ「志希さん、プロデューサーさんは大丈夫ですか!? ご容態は!?」
志希「ああ、うん。ただの貧血だって。倒れた拍子に軽い打撲と擦り傷を負った程度」
卯月「そ、そうですか。よかったぁ、大事なことにならなくて……」
志希「……」
アナスタシア「志希? どうしました」
志希「……それはあたしが聞きたい。プロデューサー、一体どうしちゃったの」
志希「あたしのこと、誰だかわからないって」
未央「それって……」
凛「……」
志希「最初、なにかの冗談かと思ったけど、会話がまるで噛み合わないし、
プロデューサー、今にも泣き出しそうな顔をして――」
P『もうやめてくれ。俺は君のことなんて本当に知らないんだ。頼むから、もう……』
志希「――って、いわれちゃった」
36 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:18:59.34 ID:sMbggPpm0
志希「いやはやぁ、
プロデューサーから拒絶されることがこんなにもきっついとはねぇ」
蘭子「……」
志希「ちひろさんから聞いたけど朝からこんな調子だったって?
もしかして記憶障害ってやつ? だとしたらなにが原因?」
凛「わからない。わからないけど一つ、プロデューサーが気になることをいってて」
志希「気になること?」
凛「ナムコプロって聞いたことある?」
志希「ナムコプロ? なにそれ、どっかの芸能プロダクション?」
凛「だと思う。けど、調べてみてもそんなプロダクションどこにも載ってなくて」
莉嘉「でも、Pくんいってたんだって。ナムコプロに連絡させてくれーって」
志希「……ふーん、ナムコプロ……」
未央「プロデューサーが倒れてた場所近くにそんな事務所はなかったの?」
志希「……さあ、居酒屋ならあったけど」
37 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:21:00.93 ID:sMbggPpm0
楓「プロデューサーはまだ病院に?」
志希「うん、このまま検査入院するって」
幸子「え……」
志希「なので、しばらくは別のプロデューサーの元で仕事をすることになるから、
各自そのつもりで」
幸子「えっ!」
志希「以上、ちひろさんからの伝言でしたー」
志希「ってことで、あたしは帰る。今日はもう色々ありすぎてにゃにがにゃんだか……」フラフラ
ガチャッ バタン……
楓「志希ちゃん大丈夫かしら」
卯月「プロデューサーさんにいわれたこと、相当ショックだったんでしょうか」
愛梨「私も同じことをいわれたら立ち直れないかもしれない……」
美嘉「凛は大丈夫?」
凛「大……丈夫でもないかな。私も結構くるものがあった」
莉嘉「Pくん、本当に記憶失くしちゃったの?」
美嘉「わかんない……でも」
杏「凛ちゃんや志希ちゃんのことがわからないってことは、
杏たちのことも多分……」
まゆ「……」
愛梨「これからどうなっちゃうのかな。私たちも、プロデューサーさんも……」
蘭子「まるで悪夢を見ているよう……」
アナスタシア「夢……。これが夢だとしたら、一体誰の夢なんでしょうか。
アーニャたち? それとも……」
凛「……」
――――――――――――
――――――――
――――
――
38 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:23:31.20 ID:sMbggPpm0
卯月「過度なストレスによる記憶の改ざん?」
ちひろ「ええ。主治医の先生がおっしゃるには一種の現実逃避だそうよ。
現実と空想を入れ替えることでストレスから自分を守ろうとしているって」
ちひろ「プロデューサーさんの場合、架空のプロダクションを作り上げて
そこで働いていると記憶をすり替えてしまっているの」
未央「架空のプロダクションって……、
つまり、ナムコプロはプロデューサーの妄想だったってこと?」
楓「それじゃあ検索してもどこにも引っかからないわけね」
志希「……」
美嘉「ち、ちょっと待ってよ! 過度なストレスって……、
プロデューサー、この仕事がそんなにも辛かったってこと?」
ちひろ「今となってはわからないわ。
あんな状態のプロデューサーさんから聞き出すなんて到底不可能だもの」
アナスタシア「この事務所で10人以上のアイドルを担当しているのは
私たちのプロデューサーだけです。
13人ものアイドルを同時にプロデュースするのは
とても大きなプレッシャーだったのかもしれません」
ちひろ「社長も反省されてたわ。彼一人に背負わせ過ぎたって」
卯月「そういえば、プロデューサーさんが弱音を吐いたり、
辛そうにしてる素振りって一度も見たことない……」
未央「馬鹿だよプロデューサー! いっつも私たちの心配ばかりするくせに、
自分がおかしくなってちゃ世話ないじゃん……」
幸子「プロデューサーさん、どうしてなにもいってくれなかったんでしょう。
ボク、プロデューサーさんとは強い絆で結ばれてるってずっと思ってたのに、
それってボクの勝手な思い込みだったんでしょうか……」
莉嘉「もしかしてPくん、アタシたちのこと嫌いだったのかな……」
まゆ「そんなこと!」
美嘉「ないって、今じゃ自信持っていいきれないよね」
まゆ「……」
39 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:25:05.03 ID:sMbggPpm0
杏「……私のせいかな」
楓「杏ちゃん?」
杏「だって、この中でプロデューサーに一番迷惑かけてるの私だし、
いっつも面倒くさい、働きたくないって駄々こねて、
その都度プロデューサーを困らせて……」
杏「私のせいで、プロデューサーが……」ジワッ
楓「泣かないで杏ちゃん。杏ちゃんのせいじゃないわよ」
愛梨「そうだよ。杏ちゃん口ではいってもお仕事は人一倍頑張ってるじゃない」
蘭子「……わ、私も」
蘭子「私も痛いこととか意味不明なことばかりいってるから、
プロデューサー、きっとそれが苦痛になって……!」
未央(い、痛いって自覚あったんだ……)
40 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:27:23.06 ID:zqLOwnlh0
凛「違うって。二人のせいなんかじゃないよ」
杏「で、でも……!」
凛「ちひろさん、治療法は、プロデューサーの記憶を元に戻す方法はあるの?」
ちひろ「残念だけど、確実な治療法はないそうよ」
まゆ「そんな……」
凛「確実でなくても方法はあるんでしょ。それを教えて」
ちひろ「変わる前の記憶と同じ経験をさせることだと先生はおっしゃっていたわ。
繰り返し同じ経験をさせ、繰り返し語りかけることで記憶を再統合させると」
楓「変わる前の記憶……私たちのプロデュース……?」
莉嘉「じゃあ、また一緒にお仕事すればいいってこと?
ちょー簡単じゃん! きっとPくん、アタシたちのことすぐに思い出すよ!」
ちひろ「でも、それにはまず、現実を受け入れるだけの
安定した精神状態を取り戻すことがなによりも大事なの」
ちひろ「だからもうしばらくの間、プロデューサーさんは休職させることになったわ」
アナスタシア「プロデューサーは今どちらに? まだ病院ですか」
ちひろ「今はもう自宅に戻られてるわ。どのみち長期休暇は避けられないし、
普通に生活する分には支障ないから、自宅療養の方が本人も安心できるだろうって」
未央「でも、プロデューサーって一人暮らしでしょ。大丈夫なの? その、一人にして……」
ちひろ「心配ないわ。田舎の方からプロデューサーさんのお母さまが来てくださっているの」
まゆ「あのっ、プロデューサーさんのためにまゆにできることはありますか」
ちひろ「今はそっとしておいてあげて。
なにもしないことが、一番プロデューサーさんのためになるの。
復帰の目処が立つまでは接触や連絡は控えるようにしてね」
まゆ「……わかりました」
美嘉(復帰の目処……)
美嘉(もし、プロデューサーのストレスの原因がアタシたちにあるとしたら、
記憶が戻ったその時、プロデューサーはアタシたちのプロデューサーとして復帰してくれるの?)
美嘉(それとも……)
……………………
………………
…………
……
41 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:29:55.91 ID:zqLOwnlh0
P「確か、この近くに……」
P(……あった! 『天海』!)
ピンポーン
『はーい、どちらさまですかー』
P「私、765プロダクションの者ですが、春香さんはご在宅でしょうか」
『ハルカ、ですか。うちにそのような名前の者はいませんけど……』
P「……」
P「そうですか。突然にすみませんでした、失礼します」
P(最後の望みも潰えたな……)
P(ここも同じ、天海家から春香という人間が消えている……)
P(残る訪問先は貴音の家だけだが、俺は貴音の現住所を知らない。
トップシークレットだからと彼女は教えてくれなかった)
P(こんなことになるなら無理にでも聞き出せばよかった)
P(あいつなら俺の前にひょっこり現れて、
この現状を打破してくれそうな気がするんだけどな)
P(貴音、俺は本当に面妖な事態に陥ってしまったよ)
………
……
…
42 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:33:03.86 ID:zqLOwnlh0
P「ただいま」
「お帰りなさい。遅かったじゃない、心配したのよ」
P「ああ、ごめん」
P「……」
P(アイドルたちが消え、律子が消え、音無さんも社長も、スクール生たちさえも消えた)
P(テレビやネット、雑誌などにも目を通してみたが、
765プロに関する情報を見つけ出すことはできなかった)
P(本当に、765プロの存在そのものが消えてしまったんだな……)
P「……」
P(俺の名刺……)ペラッ
P(肩書きが『765プロダクション』ではなく、
『シンデレラガールズプロダクション』のプロデューサーとなっている)
P(携帯も765プロに関するアドレスが消え、
CGプロに関係するものと思われるアドレスが複数登録してある)
P(写真立てには今年の春に765プロのみんなで行った花見の集合写真ではなく、
どこかのライブ会場だろうか、そこには俺と、
華やかな衣装で着飾ったCGプロのアイドルらしき女の子たちが写っていた)
43 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:35:30.70 ID:5eRET9RW0
P「……」
P「なあ、母さん。もう一度確認するけど、俺が勤めているのは
シンデレラガールズプロダクションという芸能事務所なんだよな」
「ええ、そうよ」
P「この写真に写っている子たちは」
「あなたがプロデュースしているアイドルたちよ」
P「この長髪の二人の女の子のことは知ってる?」
「ええ。この子は凛ちゃんというの。
あなたが初めて担当することになったアイドルだって
前にあなたがいってたわ」
「こっちの子は確か……、志希ちゃんだったかしら。
新しくアイドルになった子らしいから私も詳しくは知らないけど……」
P「そう……」
P(知らなかったとはいえ、二人には傷つけることをいってしまったな……)
「ねえ、これからどうするつもり?」
P「どうするって?」
「この仕事、まだ続けるつもり?」
P「それは……」
「記憶を変えてしまうくらい辛い仕事だったんでしょう。
無理して続けることなんてないじゃない。
辛い記憶ならそのまま忘れてしまった方が幸せかもしれないわよ」
P「……」
P(違う……)
P(断じて記憶の改ざんなんかじゃない。
765プロは、春香たちは確かに存在していたんだ)
P(だが、誰が信じる、こんな荒唐無稽な話。
俺自身でさえ、この現実を受け入れられずにいるというのに)
P(俺だけが、知っている……)
……………………
………………
…………
……
44 :
◆f.u4U0IDAPaX
[sage]:2020/10/20(火) 12:36:09.88 ID:5eRET9RW0
続き夜投稿
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/20(火) 13:20:06.18 ID:n/h10diIO
わくわく
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/20(火) 13:42:21.27 ID:Zfdm5T8U0
346プロではないのか
まぁシンデレラは公式事務所設定は無いもんね
47 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 19:49:45.92 ID:jb5TYrq40
ガチャッ
凛「お疲れさ――」
まゆ「いやです!!」
凛「……」
ちひろ「まゆちゃん……」
まゆ「どうしてまゆがプロデューサーさんの担当から外されなければいけないんですか!」
愛梨「私もいやです!
プロデューサーさん以外の人からプロデュースされるなんて考えられません!」
莉嘉「アタシだって絶対Pくんがいい!」
凛「……どうしたの」
卯月「凛ちゃん……」
未央「私たち、プロデューサーの担当から外されるって」
凛「え……」
美嘉「凛だけを残して、ね」
凛「私だけ?」
48 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 19:53:39.15 ID:jb5TYrq40
ちひろ「……ごめんなさい、でも社長が決めたことなの。
今後、一人のプロデューサーに10人以上のアイドルを担当させるのは禁止するって」
まゆ「だからってどうして凛ちゃん一人だけなんですか!」
幸子「そうですよ、納得できませんよ!
プロデューサーさんの記憶を戻すにはボクたちが必要だったんじゃないんですか!」
楓「まさか、プロデューサーを辞めさせるつもりですか」
ちひろ「それは誓ってないわ。
プロデューサーさんはCGプロを覚えていないというだけで、
これまでに培ってきたプロデュース術までもが失われたわけじゃない」
ちひろ「彼ほど優秀なプロデューサーを失くしたくはない、と
社長はおっしゃっていたわ」
49 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 19:56:03.42 ID:jb5TYrq40
愛梨「なら、どうして!」
ちひろ「でもね、それほどの人でも、
13人ものアイドルを同時にプロデュースするには限界があったの」
ちひろ「確かにみんな一緒ならプロデューサーさんの記憶は元に戻るかもしれない。
けど記憶が戻ったその時、プロデューサーさんは
またみんなの担当に戻りたいと思うのかしら」
卯月「……どういう意味ですか」
幸子「プロデューサーさんの記憶を変えてしまった原因は
ボクたちにあるっていいたいんですか!」
杏「……」
蘭子「うぐっ……」ジワッ
未央「そんなの、プロデューサーに訊いてみないとわかんないじゃん!」
ちひろ「ごめんなさい、そのとおりね。いやないいかたをしたわ。
でも、記憶を変えてしまった最大の要因がわからないからこそ、
プロデューサーさんにかかる重圧を少しでも減らしてあげたいの」
ちひろ「そうしなければ、今度こそ本当に取り返しのつかないことになりかねない」
50 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 19:58:07.30 ID:jb5TYrq40
莉嘉「で、でもっ! そうならないようにみんなでPくんを支えあえば……!」
アナスタシア「一つ、教えてください。私たちの中、どうして凛が選ばれたのですか」
凛(アーニャ……)
ちひろ「それは……」
まゆ「まゆも知りたいです。ちひろさん、教えてください」
美嘉「……アタシも知りたい」
ちひろ「……」
アナスタシア「ちひろ」
ちひろ「……プロデューサーさんが最も信頼しているアイドルが凛ちゃんだから」
凛「……」
まゆ「それは、プロデューサーさんがそうおっしゃったのですか」
ちひろ「いいえ。でも、見ていればわかるわ。
凛ちゃんはプロデューサーさんが初めて担当したアイドルだもの。
CGプロがアイドル部門を立ち上げて間もない最も苦しい時を
ずっと二人三脚で頑張ってきたのよ」
ちひろ「他のプロデューサーたちも口々にいってるわ。
二人はプロデューサーとアイドルの最も理想的な関係だって」
51 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 19:59:26.14 ID:jb5TYrq40
まゆ「……なんですかそれ。
そんなのただの客観的な印象でしかないじゃないですか。
まゆは認めませんよ」
まゆ「凛ちゃんの方が少しだけ長くプロデューサーさんと一緒にいられただけじゃないですか。
まゆにだってプロデューサーさんを支えられましたし、
たったそれだけの理由で凛ちゃんが選ばれるなんておかしいですよ」
まゆ「まゆはプロデューサーさんの傍にいられるからアイドルをしているんです」
まゆ「それなのに、それを、まゆの幸せを奪おうというのなら」
まゆ「まゆは……まゆはアイドルを辞めます」
52 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:01:14.71 ID:jb5TYrq40
楓「まゆちゃん、それはあまりにも身勝手すぎるわ。
今やあなたもCGプロを代表するアイドルの一人なのよ。
気に入らないからと放り出すなんて、そんな無責任なこと、
子どもだからって許されることじゃない」
卯月「そ、そうですよ。
それにまゆちゃんが辞めてしまったらファンのみんなが悲しみます!」
まゆ「ではお二人は、凛ちゃんが選ばれたことを素直に認められるというんですか」
卯月「そ、それは……」
まゆ「思うところが一つもないなんて、そんなこと、絶対にいわせませんよ」
楓「……」
まゆ「とにかく、まゆがプロデューサーさんの担当に戻されるまで、
お仕事を休ませていただきます」
まゆ「もし、戻されないというのなら、その時は……!」クルッ
卯月「ま、待ってください、まゆちゃん!」
凛「まゆ!」ガシッ
まゆ「離してっ!!」
凛「……っ」ビクッ
まゆ「どうして、あなたなんかが……!」
凛「……」
ツカツカツカ…… ガチャッ バタン!
未央「しぶりん……」
凛「……大丈夫」
志希「……」
53 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:03:49.01 ID:jb5TYrq40
アナスタシア「凛、まゆのこと、許してあげてください。まゆは優しい子です。
きっとさっき口にしてしまったことを後悔しているはずです」
凛「許すもなにも、私にまゆを責める資格なんてないよ」
凛「正直、私が残ると聞かされてほっとしてる」
凛「まゆだけじゃなく、みんなも辛いはずなのに、私だけ密かに嬉しがってた」
凛「最低だ、私」
美嘉「……誰だってそうなるよ。アタシだってもし自分が選ばれてたら絶対喜んでたもん」
美嘉「こんなことになって思い知らされた。
アタシにとってプロデューサーの存在がどれだけ大きかったか。
アタシが今まで頑張ってこれたのはプロデューサーがいつも傍にいてくれたからだって」
美嘉「だけど、それももう……」
美嘉「アタシも、アイドル辞めるかもしれない」
凛「美嘉……」
美嘉「アーニャはこれからどうする?」
アナスタシア「私は……アイドルを続けます。私をここまで導いてくれた
プロデューサーの苦労を無駄にしたくはありません」
アナスタシア「それに、プロデューサーと約束しましたから。
必ず、アイドルの頂点に立つと」
美嘉「そっか。強いね、アーニャは」
美嘉「志希ちゃんは?」
志希「んー」
志希「取り敢えずは一度プロデューサーと会ってみて、それからかな、判断するのは」
凛「……ねえ、ずっと気になってたんだけど、志希は――」
美嘉「プロデューサー……!」
54 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:05:52.46 ID:jb5TYrq40
凛「えっ……」クルッ
P「……」
凛「プロデューサー!」
美嘉「ど、どうしてここに? もう事務所に来て平気なの?」
P「……」
美嘉「あ……ごめん。わかんないんだよね、アタシたちのこと……」
P「……いや」
P「知ってる。城ヶ崎美嘉っていうんだろ」
美嘉「え……う、うん」
P「隣の君はアナスタシア」
アナスタシア「ダー。そうです」
P「家に飾ってあった写真に二人が写ってたよ。そっちの二人も」
凛・志希「……」
P「渋谷凛と一ノ瀬志希、だよな」
P「この間はすまない。二人のこと、傷つけてしまったかな」
凛「傷つけるなんてそんな。私たちのことわからなかったんだもん、仕方ないよ」
凛「それより、どうして事務所に……」
P「これから社長と面談があるんだ」
アナスタシア「面談、ですか」
P「ああ。そろそろ仕事に復帰しようと思って」
美嘉「そろそろって……、まだ休んで3日も経ってないじゃん」
P「まあ、家にいても仕様がないし」
美嘉「仕様がないって……」
凛(そういうところだけは変わらないんだから……)
55 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:08:12.57 ID:jb5TYrq40
P「ところで、俺が担当しているという他のアイドルたちにも会ってみたいんだが、
今日はまだ事務所にいるかな」
凛「……」
美嘉「プロデューサーが担当してるのは凛だけだよ」
P「え? いや、でも、他にも確か……」
アナスタシア「みんな外されたんです。プロデューサーの負担を減らすために」
P「そう、だったのか……」
P「ひょっとして、みんなはすでに他のプロデューサーの元で仕事をしているのか」
美嘉「うん……」
P「……そうか」
P「……」
P「でも日は経ってまだ浅い」
P「なら、みんなの担当を俺に戻してもさして問題はないよな」
凛「え……」
P「わかった。社長に話をつけてくる」
美嘉「ま、待ってよ! 担当を戻すって本気!?」
P「ああ、そうだけど」
P「もしかして、俺がプロデューサーじゃ嫌だったか」
美嘉「嫌なわけないじゃん! アタシたちずっと一緒だったんだよ?
戻れることなら戻りたいよ。でも……」
アナスタシア「みんな、不安なんです。プロデューサーがまた無理をされて、
今度こそ取り返しのつかないことになったら……」
P「取り返しのつかないこと、か」
P「けど、俺は取り返したいんだ」
美嘉「プロデューサー……」
56 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:09:06.27 ID:jb5TYrq40
志希「……」スンスン
P「……えっ?」
美嘉「し、志希ちゃん! なにしてんの!?」
志希「……よかった」
志希「なにも変わってない、キミの匂い。あたしの好きな……」
P「……?」
志希「いってらっしゃい。いい知らせ待ってる」
P「あ、ああ」
凛(志希……)
………
……
…
57 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:11:09.47 ID:jb5TYrq40
幸子「ボクたち、プロデューサーさんの元に残れるんですか!?」
ちひろ「ええ。私がプロデューサーさんを全面的にバックアップをすることを条件に
社長の了承を得られたわ」
莉嘉「やったー!」ピョンピョン
愛梨「よ、よかったぁ……」
楓「ほっ……」
P「みんなには多大な迷惑をかけたばかりか、
俺の勝手な都合でまたみんなを俺の担当に戻してしまい、
本当にすまなく思っている」
アナスタシア「ニェート、勝手ではありません。
私たちだってプロデューサーの元に残りたかったんですから、
気持ちは同じです」
美嘉「そうだよ。それにアタシ嬉しかった。
プロデューサーが取り返したいっていってくれて」
美嘉「記憶、絶対取り返そうね」
P「……ああ」
58 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:12:38.81 ID:jb5TYrq40
まゆ「プロデューサーさん、私、佐久間まゆといいます」
P「ああ、知っているよ。これからよろし――」
まゆ「まゆは、まゆは本当に嬉しいです!
記憶が変わってもプロデューサーさんはまゆを連れ戻してくれました。
やっぱり、まゆとプロデューサーさんは
運命の赤いリボンで結ばれているんですね……」ウルッ
P「リ、リボン?」
卯月「プロデューサーさん、私は島村卯月といいます。
もし困ったことがあればなんでも気兼ねなくいってくださいね」
未央「私は本多未央! もちろん私も協力するから一緒に記憶を取り戻そうね!」
蘭子「あ、わ、私――」
幸子「ボクは輿水幸子です!
まったく、カワイイボクを忘れるなんて罪な人ですね、プロデューサーさんは!
けど大丈夫! ボクと一緒なら――」
莉嘉「アタシは城ヶ崎莉嘉! 美嘉お姉ちゃんの妹なんだよ!」
幸子「……ボクと一緒なら記憶――」
愛梨「私は十時愛梨といいます」
幸子「ボクと一緒ならぁ! 記憶なんてすぐに――」
楓「私は高垣楓です」
幸子「記憶なんてすぐ戻りますからあぁぁっ!!」
未央「さっちーうるさい」
蘭子「……」シュン
杏「……」
P「みんな、あらためてこれからよろしく頼むな」
一同「はい!」
59 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:14:06.13 ID:jb5TYrq40
P(手掛かりがあるとしたら、もうここしかない)
P(765プロダクションが消え、突如現れたCGプロダクション)
P(所属アイドルは190人を超え、
日本を代表するトップアイドルが数多く在籍する
業界最大手の芸能プロダクションだという)
P(そして俺が担当するアイドルたち)
P(島村卯月、渋谷凛、本多未央、双葉杏、高垣楓、城ヶ崎美嘉、莉嘉、
神崎蘭子、十時愛梨、佐久間まゆ、輿水幸子、アナスタシア、一ノ瀬志希)
P(13人……、奇しくも律子を含めた765プロのアイドルと同じ人数)
P(偶然とは思えない。きっとなにか理由があるはず)
P(必ず取り返すんだ。765プロを、春香たちを……)
P(俺は……俺は765プロのプロデューサーなんだ)
――――――――――――――――
――――――――――――
――――――――
――――
――
60 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:51:11.75 ID:jb5TYrq40
凛「プロデューサー、準備できたよ」
P「……ああ。それでは千川さん、
渋谷たちとアミューズメントミュージックの収録に行ってきます」
ちひろ「はい、気をつけていってらっしゃい」
凛「プロデューサー、また――」
未央「よーし、今日も張り切ってお仕事頑張ろー! おー!」
卯月「はい、頑張ります!」
凛「ち、ちょっと未央、押さないでよ」
61 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:53:38.35 ID:jb5TYrq40
P「……」
卯月「どうしたんですか、プロデューサーさん。事務所を見上げて」
P「……いや、ほんとに大きな事務所だな、と思って」
未央「まあねー、都内一等地に50階建ての高層ビルだもん。
芸能プロダクションでここまで大きな事務所を構えてるとこなんて
うちくらいなもんだよ」
卯月「施設もすごく充実してますしね。
撮影スタジオにトレーニングルーム、
コンビニ、レストラン、カフェ、バー……」
未央「ヘアサロンにエステ、おまけにスパにサウナにプールまで入ってるし、
もういうことないよ。いっそここに住みたいくらい」
P「それに、エレベーターも故障してない」
未央「ぷっ、なにそれ。エレベーターが壊れてるとこなんてそうはないでしょ」
P「……そうだな」
凛「三人とも、お喋りはそこまでにして。今日は生放送なんだから遅れたらまずいよ」
未央「わかってるよー」
P(……)
P(あれからひと月が経った)
P(俺はCGプロのプロデューサーとして仕事をこなす傍ら、
僅かな時間を割いてでも765プロの手掛かりを探すことに注力した)
P(しかし依然、765プロに繋がる手掛かりはなにも掴めず、
ただ徒に過ぎていく時間が不安を募らせるばかりだった……)
………
……
…
62 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:54:57.67 ID:jb5TYrq40
『ニュージェネレーションズのみなさんです』
卯月・未央・凛『よろしくお願いします!』
P「……」
「よお、あんたか」
63 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:56:33.84 ID:jb5TYrq40
P「天ヶ瀬冬馬……!」
冬馬「なんだよ、その面食らったような顔は」
P「俺を覚えているのか?」
冬馬「ああ? なに寝ぼけたこといってんだ。
あんたんとこのアイドルとは何度も共演してるじゃねえか。
その都度、顔を合わせてるだろ」
P「アイドル? まさか、はる――」
冬馬「今、モニターに映ってるニュージェネレーションズ」
P(……ああ、そういうことか)
64 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 20:59:54.47 ID:jb5TYrq40
冬馬「ところで、こんなところでなにしてんだ。
プロデューサーがスタジオ内にいなくていいのかよ」
P「そっちこそ。
確かジュピターもアミューズメントミュージックに出演していたな。
出演者がこんなところで油を売っていていいのか」
冬馬「俺たちは別スタジオの特設ステージで歌うんだよ。出番までまだ時間がある」
冬馬「それより聞いたぜ。あんた、ぶっ倒れたんだってな。大丈夫なのかよ」
P「……さすがは961プロ。いや、さすがは黒井社長か。
競合他社の情報は全て筒抜けというわけか」
冬馬「あんた、黒井のおっさんのこと知ってんのか」
P「知ってるもなにも、黒井社長には幾度となく妨害――」
P(……そうか。黒井社長が敵対する高木社長……765プロがなくなった今、
現CGプロのプロデューサーである俺とは面識がないのか……)
冬馬「なんだよ、妨害って」
P「いや、なんでもないんだ」
冬馬「……まあ、いい。それじゃあな。身体には気をつけろよ」
P「ああ……」
P「……」
P「待ってくれ!」
冬馬「ん?」
P「765プロという芸能プロダクション、聞いたことないか」
冬馬「ナムコプロ? ……さあ」
P「……」
冬馬「それがどうかしたのかよ」
P「……いや、知らないならいいんだ。わるいな、引き留めて」
冬馬「……ふん」
P「……」
65 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 21:02:54.61 ID:jb5TYrq40
凛「プロデューサー」
P「渋谷……」
凛「はぁ、また“渋谷”。“凛”でいいって何度もいってるじゃん」
P「……すまない」
凛「ずっとスタジオにいないと思ったらこんなところにいて、
私たちのステージちゃんと観てくれた?」
P「あ、ああ。ここのモニターから観てたよ」
凛(……こんな小さなモニター……)
凛「……プロデューサー」
凛「プロデューサーは記憶を取り返したいって、本当にそう思ってる?」
P「それは……」
凛「私にはそうは見えない。プロデューサーの目には今も――」
未央「あ、いた! プロデューサー!」
卯月「プロデューサーさーん」
P「二人とも」
未央「もー、心配したじゃん。
収録終わったのにプロデューサーったら一向に戻ってこないんだもん。
……って、どうかしたの?」
P「や、なんでもないんだ。すまなかったな、心配かけて。挨拶回りをすませて帰ろう」
卯月「は、はい……」
凛(……)
……………………
………………
…………
……
66 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 21:04:54.05 ID:jb5TYrq40
P「渋谷のシークレットライブ、ですか」
ちひろ「はい。CGプロでは年に一度、その年に最も輝いたアイドル、
『シンデレラガール』を決める祭典が開かれるんです」
ちひろ「初代シンデレラガールには愛梨ちゃんが、二代目には蘭子ちゃんが、
そして今年の三代目に――」
P「渋谷が選ばれた」
ちひろ「ええ。それを記念してのシークレットライブだったんですが、
プロデューサーさんの記憶障害で
凛ちゃんもライブに臨めるような精神状態ではなかったので、
企画段階だったということもあり、ライブは凍結されました」
P(俺のせい、か)
ちひろ「ですが、このまま凍結させたままというわけにはいかないと思います」
ちひろ「愛梨ちゃんの時も蘭子ちゃんの時もライブはしています。
凛ちゃんだけやらないというわけには……」
P「ファンは納得しないでしょうね」
ちひろ「それに、誰よりも凛ちゃん自身が一番ライブを楽しみにしていましたから」
P「……」
67 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 21:07:38.42 ID:jb5TYrq40
凛「シークレットライブ……」
ちひろ「そう、ようやく凍結を解除することが決まったの。
それで明日には会議を開くから凛ちゃんにも参加して……」
凛「……」
ちひろ「どうしたの、嬉しくないの?」
凛「ううん、嬉しいよ。嬉しいけど、プロデューサーは……」
ちひろ「大丈夫。このひと月のプロデューサーさんの仕事ぶりを見る限り、
記憶を改ざんする以前と比べても遜色ない」
ちひろ「私たちスタッフも全力で凛ちゃんとプロデューサーさんをサポートするから
なにも心配することはないわ」
凛「……うん」
……………………
………………
…………
……
68 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/20(火) 21:08:49.13 ID:jb5TYrq40
続き多分明日の昼に投稿
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/20(火) 21:12:46.31 ID:Iqec6dBDO
乙
さて、いつ爆発するかな(どっちとは言わないが)
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/20(火) 22:55:05.52 ID:rmOcSeHGo
まぁ目の前のアイドル達は見えてないからなぁ
71 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 14:44:57.86 ID:TfgXVv+K0
P「……ですが、3曲もダンスナンバーが続くと渋谷の体力が不安になりますね」
ちひろ「でしたら、間にバラードを入れて緩急つけてみるとか」
P「バラード入れるならその後も――」
愛梨「プロデューサーさん、ちひろさん」
ちひろ「あら、愛梨ちゃん」
愛梨「私、ケーキ作ってきたんです。よかったらみんなで一緒に食べませんか」
ちひろ「まあ、ケーキ?」
P「すまないが今打ち合わせ中なんだ。
また機会があったらその時は一緒にさせてもらうよ」
愛梨「そ、そうですか。じゃあ、お二人の分は冷蔵庫に入れておきますね……」
ちひろ「休憩しましょう、プロデューサーさん」
P「え……」
ちひろ「話も行き詰まっていましたし、
このまま実りのない時間を浪費するのはもったいないですよ。
一旦休憩を挟んで、頭をリフレッシュさせましょう」
P「しかし……」
ちひろ「プロデューサーさん、記憶が変わってから
愛梨ちゃんのケーキをまだ食べたことないですよね。
すっごく美味しいんですよ。食べればなにか思い出せるかもしれませんし」
P「……」
ちひろ「それに一人で食べるより、みんなで食べる方がずっと美味しくなると思いませんか」
愛梨「わ、私もプロデューサーさんと一緒に食べたいです!」
P「……わかりました。それじゃあ休憩にしましょう。
十時、一緒にケーキご馳走になるよ」
愛梨「……はい!」
72 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 14:46:10.74 ID:TfgXVv+K0
美嘉「あ、プロデューサーたちが来たよ」
莉嘉「Pくん、こっちこっち!」
楓「お疲れさまです、プロデューサー」
幸子「お疲れさまです!」
P「ああ、お疲れ」
ちひろ「わあ、可愛い! 見てください、プロデューサーさん。
ハート形のチョコレートケーキですよ」
P「へえ、すごいな。これを十時が?」
愛梨「えへへ、プロデューサーさんに食べてほしくて頑張って作っちゃいました」
美嘉「ほらほら二人とも、立ってないで座った座った」
愛梨「それじゃあ、みんな揃ったし、食べよっか」
莉嘉「いただきまーす!」
楓「いただきマングローブ」
73 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 14:47:56.30 ID:TfgXVv+K0
ちひろ「ん〜、美味しい!」
美嘉「うん、美味しい」
莉嘉「美味しいよ、愛梨ちゃん!」
愛梨「ありがとう」
愛梨「プロデューサーさんはどうですか」
P「……美味しいよ。まるでパティシエが作ったみたいだ」
楓「そういってくれると嬉しいです」
幸子「えっ、なんで楓さんがいうんですか!?」
P(そういえば、十時はケーキ作りが趣味なんだっけ……)
P「十時はケーキ以外にも作れるものがあるのか」
P「……たとえばクッキーとか、ドーナツとか」
愛梨「うーん、作れないこともないと思いますけど、
リクエストがあるならなにか作ってみましょうか」
P「い、いや、別に作ってほしいわけじゃないんだ。
ただ、聞いてみたかっただけで……」
莉嘉「アタシ、オムライスが食べたい!」
愛梨「オムライス!? お菓子じゃないんだ?」
楓「じゃあ、私は芋焼酎」
愛梨「芋焼酎!!? つ、作れるかな……」
幸子「愛梨さん、真に受けなくていいですから」
美嘉「あはは」
P(……)
P(時々、この子たちに春香たちの面影を重ねてしまう)
P(似ているんだ。春香たちに、765プロの光景に)
P(この子たちと一緒なら、
きっとなにか手掛かりが掴めるんじゃないかって、そう思ったんだが……)
74 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 14:50:22.43 ID:TfgXVv+K0
莉嘉「じゃーん! Pくん、見て見て!」
P「この写真は?」
莉嘉「Pくんと一緒に写ってるの色々持ってきたの! なにか思い出せるかなーって」
美嘉「色々っていうか……、これうちにあったの全部じゃない?」
愛梨「わぁ、沢山あるね」
莉嘉「これは一緒にカブトムシを取りに行った時の写真でー、
こっちがライブ打ち上げの時の写真」
ちひろ「あら懐かしい。これ、莉嘉ちゃんの初ライブの時の写真じゃない」
幸子(プロデューサーさんと腕組んでる。羨ましい……)
愛梨「あ、これって去年のクリスマスパーティーの時のだよね。
ふふ、プロデューサーさん、口の端にクリームがついてる」
75 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 14:52:45.76 ID:TfgXVv+K0
楓「……これは?」
莉嘉「それはPくんがうちに来――」
美嘉「莉嘉! それは誰にも見せちゃダメだって前に……」
P「……」
美嘉「プロデューサー? どうしたの」
莉嘉「Pくん、なにか思い出せた!?」ガタッ
P「……いや、特にはなにも」
莉嘉「そっかぁ……。あ、そーだ!」
莉嘉「とっておきがあるんだった! Pくんのケータイのカバー取ってみて」
P「俺の?」カパッ
P「……これは」
幸子「ツーショットのプリクラじゃないですか! いいなぁ!」
楓「頬くっついてるわね」
愛梨「プロデューサーさん、照れてる……」
莉嘉「デートした時に撮ったの!
アタシのスマホケースにもおそろいのが貼ってあるんだよ、ほら」
幸子「デ、デ、デ、デェェトォ!?」
美嘉「なにそれ!? アタシそんなの全然聞いてないんだけど!」
莉嘉「……あっ、ヤバッ! これ誰にもいっちゃいけないんだった!」
美嘉「莉嘉! 詳しく説明しなさいよ!」
キャー キャー
P「……」
ちひろ「プロデューサーさん、大丈夫ですか。さっきから少し様子が……」
楓「うわの空でスカイ?」
P「い、いえ、そういうわけでは……」
楓「……」
楓「あの、プロデューサー、今のはですね、
うわの空の『空』と英語の『スカイ』をかけていまして……」
幸子(ダジャレに気付かなかったプロデューサーさんに楓さん自らが解説してる……!)
……………………
………………
…………
……
76 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 14:55:46.87 ID:TfgXVv+K0
トレーナー「それじゃあ10分間休憩しましょうか」
凛「はぁ、はぁ……」
凛「……」
トレーナー「待ち人来ず、といったところかしら」
凛「え……」
トレーナー「さっきから扉の方ばかり気が向いて、いつもよりダンスが散漫だったわよ」
凛「……すみません」
トレーナー「プロデューサーさんが恋しいのもわかるけど、
覚えることは山ほどあるんだからもっとダンスに集中してほしいわね。
知った曲だからと高を括っていると痛い目見るわよ」
凛「べ、別に恋しいとかっ……」
トレーナー(とはいうものの、
プロデューサーさんがまだ一度もレッスンに顔を出してこないのも問題よね)
トレーナー(記憶障害に陥ったと聞いたけど、
それなら尚のこと、凛ちゃんのダンスを見て知ってほしいのに……)
……………………
………………
…………
……
77 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 14:57:25.37 ID:TfgXVv+K0
アナスタシア「見てください、プロデューサー。
ズヴェズダ……満天の星が輝いています」
アナスタシア「これが全てつくりものだなんて思えません。
まるでドーム全体が宇宙に包まれているよう……」
アナスタシア「プラネタリウムは初めてですが、私、とても気に入りました。
プライベートでもまた来たいです」
P「アナスタシアは星が好きなのか」
アナスタシア「……プロデューサー」
アナスタシア「ミーニャ・ザヴート・アーニャ」
アナスタシア「私のことは“アーニャ”と呼んでください、と前にもいったはずです」
P「あ、ああ。そうだったな、すまない」
78 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 14:59:05.15 ID:TfgXVv+K0
アナスタシア「……星は好きですよ。綺麗でしょ」
アナスタシア「前はよく天体観測をしていました。プロデューサーと二人で」
P「俺と?」
アナスタシア「ダー。よく晴れた日には事務所の屋上で」
アナスタシア「二人だけの秘密なんですから、みんなには内緒ですよ」
P「トップシークレットだな」
アナスタシア「トップシークレット? ふふ、そうですね。トップシークレットです」
P(……)
アナスタシア「プロデューサー、星に願いませんか」
P「願い?」
アナスタシア「プロデューサーの記憶が戻るように」
P「……けどこれは、本物の星じゃない」
アナスタシア「本物の星だって願いを叶えてくれるとは限りません。
ちょっとしたおまじないだと思って、さぁ」
P「……そうだな」
アナスタシア「……」(プロデューサーの記憶が戻りますように……)
P「……」(765プロのみんなにまた会え……)
P「……」
P(こんなことしたって……)
アナスタシア「プロデューサー」
P「ん?」
アナスタシア「いつの日か、また二人で天体観測をしましょう」
P「……撮影が始まる。そろそろ戻ろう」
アナスタシア「…………はい」
………
……
…
79 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 15:00:10.05 ID:TfgXVv+K0
トレーナー「ストップ。凛ちゃん、また同じところで間違えてる。
そこは卯月ちゃんがいないんだから下がる必要はないの」
凛「す、すみません……」ハァ ハァ
トレーナー(……些細なミスの連続。目に見えてモチベーションが下がってきてる)
トレーナー(あまりいい傾向じゃないわね。リハも予定より遅れだしているし)
トレーナー(普段は大人びて見えるけど、その精神は歳相応に幼い。
当然よね、まだ15歳の女の子だもの……)
トレーナー「もう一度、同じところからいくわよ」
凛「はいっ」
凛「……」
凛(今日も来ない……)
………
……
…
80 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 15:01:14.10 ID:TfgXVv+K0
ガチャッ
凛「お疲れさまです」
ちひろ「あら、凛ちゃん、お疲れさま」
凛「ちひろさん、プロデューサーはいる?」
ちひろ「プロデューサーさんならアーニャちゃんの付き添いで出てるけど、なにか用事?」
凛「ううん、いないならいいの。ちょっと寄ってみただけだから。じゃあ……」
ガチャッ バタン……
ちひろ「……?」
凛「……ばか」
……………………
………………
…………
……
81 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 15:02:20.53 ID:TfgXVv+K0
まゆ「プロデューサーさん、少し寄り道しませんか」
P「寄り道?」
まゆ「はい。時間は取らせませんから、お願いします」
P「……どこに行けばいい」
…………
P「ここって……」
まゆ「ゲームセンターです」
P「……」
まゆ「さあ、入りましょう」
82 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 15:04:02.89 ID:TfgXVv+K0
P「意外だな。佐久間はあまりこういうところには来ないと思っていたが」
まゆ「そうですね、ゲームはあまり嗜みませんね」
P「じゃあ……」
まゆ「これです」
P(プリクラ……)
まゆ「うふ、まゆとも一緒に撮っていただけますか、プロデューサーさん?」
P「知っていたのか、プリクラのこと」
まゆ「もちろんです。プロデューサーさん、莉嘉ちゃんとデートをしたそうですね。
その時にプリクラを撮ったとか」
P「……らしいな」
まゆ「まあ、莉嘉ちゃんはまだ子どもだし、
まゆの中ではそのデートはノーカウントですけど」
P(俺から見れば、佐久間だってまだ子どもなんだけどな……)
まゆ「けど、まゆは大人げないと思いつつも莉嘉ちゃんに嫉妬しちゃいました。
だって恋人のように写るお二人の姿を見せられたら……ねえ?」
P「……」
まゆ「まゆもプロデューサーさんに抱きしめられながら写りたいわぁ。
そしたら今回のことは不問にしてあげられる気がします」
P「不問もなにも、俺にはまったく身に覚えがないんだけどな」
まゆ「……」
P「あ……、す、すまん」
まゆ「いえ、まゆも軽率でした。ごめんなさい……」
P「……抱きしめるのは無理だが、一緒に撮るだけじゃ駄目か?」
83 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 15:06:20.43 ID:TfgXVv+K0
P「背景はこのリボンのでいいのか」
まゆ「はい……、あら」
まゆ「プロデューサーさん、ネクタイが曲がってます。まゆが直してあげる」
P「い、いいよ、自分で直すって」
まゆ「恥ずかしがらなくていいですよ。将来的にはまゆが毎日やってあげるんだから」
P「それは、どういう意味でしょうか……」
まゆ「そのままの意味です。なんの遠慮もいりません。
なんなりと申し付けていいんですからね。
貴方のためならまゆはなんだってするんだから」
まゆ「……そうよ。あの掛け替えのない日々を取り戻すためなら、なんだって……」
P「佐久間……」
まゆ「プロデューサーさん、過去が消えることは決してありません。
プロデューサーさんがCGプロで過ごされた日々は確かに存在していたんですから」
まゆ「だから、諦めないでください。記憶は必ず戻ります」
P「……」
まゆ「ネクタイ直りましたよ。さあ、撮りましょう。ほら、笑って」
P「……ああ」
『3・2・1……』
――カシャッ
P(渋谷と同じ、この子もきっと気付いてる)
P(俺が本当に取り返したいものは別のものだということに)
P(彼女たちが知る俺の過去と、俺が知る俺の過去には明らかな齟齬がある)
P(俺の知る過去は全て765プロの記憶)
P(ありもしないCGプロの記憶を取り返すことなんてできやしない)
P(だが、それをなんて伝えればいい?
本当のことを話せば彼女たちは信じてくれるのか)
P(結果的に、俺はこの子たちを騙している)
P(プリクラに写る俺の笑顔はあまりにも不器用で、とても笑っているようには見えなかった)
……………………
………………
…………
……
84 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 15:08:40.87 ID:TfgXVv+K0
未央「ふいぃ、やっと終わったぁ。この衣装あっつい……」
卯月「わ、私もぉ、中ぐっしょりですぅ……」
P「二人ともお疲れ。それを着替えたら中庭でインタビューを始めるから」
未央・卯月「はーい」
P(……こんなことをしていていいのか。
未だ、765プロの痕跡一つさえ見つけられずにいるというのに……)
P(だが、手は尽くした。もはやなにをどうすればいいのかわからない)
P(どうすれば、俺は……)
卯月「そういえば、凛ちゃんの様子はどうですか」
P「……様子?」
卯月「凛ちゃん、今はライブリハがあるから私たちとは別スケジュール組んでるじゃないですか。
それで最近全然会えてなくて」
未央「SNSとかで近況報告はしてるんだけど、
しぶりんって自分からはあまり語らない方だから」
未央「プロデューサー、しぶりんとはリハでいつも顔を合わせてるでしょ。
そのへん、色々知ってんじゃないの」
P「……いや、俺は――」
卯月「あ、どうせなら中庭に行くついでに凛ちゃんのリハを見に行きません?」
P「え……」
未央「そういえば通り道にあるもんね、トレーニングルーム。なら、行って確かめてみよっか」
P「ち、ちょっと待ってくれって。
二人はこれからインタビューがあるんだから記者を待たせては……」
未央「大丈夫、大丈夫。
ちょこっと見るだけだからさ、そんなに時間は取らせないって」
卯月「お願いします、プロデューサーさん」
P「いや、しかし……」
未央「ほらほら、着替えるんだからプロデューサーは出ていく!」グイグイ
ガチャッ バタン
P「……」
85 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 15:10:10.64 ID:TfgXVv+K0
トレーナー「こなれてくると小さく纏めようとするのは凛ちゃんの悪いクセよ。
ステージには凛ちゃん一人で立つんだから、もっと大きく動かないと」
凛「は、はい……」ハァ ハァ
ガチャッ
凛(……あ)
卯月(凛ちゃーん)フリフリ
未央(やっほー、しぶりーん)
凛(卯月、未央……)
P「……」
凛(プロデューサー……。そっか、二人が連れてきて……)
トレーナー(よかった、やっと来てくれた。これで凛ちゃんも……)
トレーナー「それじゃあもう一度、頭から通してやってみましょうか」
凛「はい!」
86 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 15:11:17.32 ID:TfgXVv+K0
トレーナー「ワン・ツー・スリー・フォー・ファイブ・シックス・セブン・エイト!」
凛「〜〜♪」
トレーナー(……悪くない。やっといつもの凛ちゃんに戻ったみたい)
未央「いい感じだね、しぶりん」
卯月「はい、ソロアレンジで踊る凛ちゃんかっこいいです!」
P「……」
P(なにやってんだろ、俺……)
凛(プロデューサー……?)
P「……」
凛「……っ」ギリッ
トレーナー(り、凛ちゃん?)
卯月「……あれ、なんだか凛ちゃんの動きが……」
未央「う、うん、なんか、あきらかに……」
……
…
87 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 15:12:35.89 ID:TfgXVv+K0
トレーナー「凛ちゃん、今のダ……、ち、ちょっと凛ちゃん?」
ツカツカ――
凛「プロデューサー、どうだった。私のダンス」
P「……え。あ、ああ……、よかったんじゃないか?」
凛「……」
未央「えっ、ち、ちょっとプロデュ――」
凛「いい加減にしてよっ!!!」
P「……!!」ビクッ
凛「ちっともよくなんかないよっ!! どこをどう見たらそうなるわけ!?
わざと手を抜いて踊っていたのがわからない!?」
P「え……あ……」
凛「ようやく来てくれたと思ったらなにも見てないじゃん!
こんなの来てないのと一緒だよ!!」
卯月「り、凛ちゃん、落ちついて……」
凛「私を見てよ! プロデューサーのアイドルは私なんだよ!!」
凛「ナムコプロなんて……!
そんな居もしないアイドルなんかにいつまでも囚われないで!」
未央「しぶりん!!」
凛「……!」ハッ
P「…………」
P「……悪い、二人とも、インタビューには二人だけで行ってくれ」クルッ
未央「プロデューサー!」
卯月「プロデューサーさん!」
ガチャッ バタン……
未央「しぶりん、いいすぎだよ……」
凛「……」
88 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 15:14:04.19 ID:TfgXVv+K0
P「……」
P(もう限界だ。なにを信じればいい、なにが本当の記憶なんだ)
P(いつかは渋谷たちと別れの時がくる。
彼女たちに感情移入をしてはならないと敢えて距離を置いてきた)
P(だが、本当にそうなのか?)
P(城ヶ崎に見せてもらった写真、そこに写るのは紛れもなく俺自身だった)
P(佐久間はいっていた。俺がCGプロで過ごした日々は確かに存在していた、と)
P(今でも鮮明に思い出せる765プロの記憶……。あれは全て、俺の妄想だったのか)
P(俺がいつも食べていたのは春香の作ってくれたお菓子じゃなくて、
十時が作ったケーキだったのか)
P(夜空を一緒に眺めたのは、貴音じゃなくてアナスタシアだったのか)
P(765プロは……俺の夢だったのか……)
89 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 15:14:37.67 ID:TfgXVv+K0
続き夜
90 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:03:26.89 ID:WLf+yO4T0
シュッ
P「うわっ! ……って、一ノ瀬?」
志希「……にゃはっ」
志希「いい香りでしょー、これ。あたしがブレンドしたお手製の香水。
リラックス効果のある成分が入ってるの。キミにあげる」
P「あ、ありがとう……」
P(……)
志希「もっと肩の力を抜きなよ」
P「え……」
志希「そんな強張ってちゃ疲れるでしょ。最近のキミ、ずっとそんな調子だよ」
P「……」
志希「気楽にいきなよ。そんな暗い顔してないで、希望を志さなきゃ」
91 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:05:06.62 ID:WLf+yO4T0
P「……希望なんて志せない」
P「わからないんだ。俺が本当に取り返したいものはなんだったのか。
なにを失くして、なにが欲しかったのか。どこを探して、誰を捜せばいいのか」
P「俺には、もう……」
志希「……そっか。キミは今、旅の途中なんだね」
P「旅……?」
志希「そそ。きっとさ、キミは今欲しいものが見つからなくて、
色んなところを旅してる最中なんだよ」
志希「でもさ、たまには旅もいいもんだよ。
そこで思いがけない薬品が手に入っちゃったり、
面白そうな実験材料見つけちゃったり。
それがいつか、キミの欲しかったものに変わるかもしれない」
志希「だからさ、今この状況に絶望しないで。
きっと……、ううん、キミなら絶対に見つけ出して取り戻すことができるから」
志希「そしてその時が、あたしたちの……」
P「一ノ瀬?」
志希「……みんな心配してる。記憶が変わる『前』のキミじゃなくて『今』のキミを」
志希「それだけは、嘘じゃない」
P「……」
P(……そうだよな。いつか、きっと……)スクッ
P「ありがとう、いちの……志希! 香水、大事に使わせてもらうよ!」ダッ
志希「いってらっしゃーい」
志希「……」
92 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:06:14.47 ID:WLf+yO4T0
タッタッタッタッ……
P(……馬鹿だ、俺は)
P(765プロ……、いや、自分のことばかりで渋谷たちを蔑ろにして目を背けて)
P(たとえ僅かな時間でも、彼女たちと接してきて感じていたはずだ)
P(CGプロのアイドルたちは765プロのアイドルたちに引けを取らないほど、
アイドルとしての情熱を持ち合わせていることに)
P(765プロのプロデューサーであろうとも、CGプロのプロデューサーであろうとも、
俺のやるべきことはなに一つとして変わらない)
P(アイドルを輝かせる、それが俺の仕事なんだ)
P(それにこのままでは765プロのみんなに顔向けできない)
P(春香、千早、美希、765プロのみんな……、もう少しだけ待っていてくれ)
P(今、ここで、やるべきことがあるんだ。だから……!)
93 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:07:29.19 ID:WLf+yO4T0
P(いた……!)
P「待ってくれ!」
凛「……っ」ビクッ
P「はぁ……はぁ……」
凛「……」
凛「……プロデューサー、さっきは、その――」
P「すまなかった!」
凛「……え」
P「君のいうとおり、俺は自分のことばかりで君たちのことをなにも見ていなかった。
自ら担当を戻しておきながら、その責任をなにも果たそうとしなかった。
プロデューサーとして、失格だと思っている」
凛「……」
P「君は俺に失望しただろう。どれだけ傷つけたかもわからない。
謝っても謝りきれない」
P「だけど、それでも、できることなら……」
P「どうか、もう一度だけチャンスをくれないか」
P「シークレットライブ、必ず君の望むステージにプロデュースしてみせる」
P「君の……凛の輝くその瞬間を、この目で確かに見たいんだ」
凛「プロデューサー、今、名前……」
P「このとおりだ、頼む……」
凛「……」
94 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:08:17.48 ID:WLf+yO4T0
凛「顔を上げてよ、プロデューサー」
P「……」スッ
凛「一つ、約束して」
凛「もう二度と、私から目を背けないで」
P「……あ、ああ! もちろん!」
凛「それじゃあ、今までのことは全部水に流してあげる」
P「ありが――」
凛「いっておくけど、次はないからね?」ジロリ
P「は……はい……」
凛「ふふ」
凛(やっと呼んでくれた、名前……)
凛「あっ、あのさ、一つ、ライブのことで提案があるんだけど……」
95 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:09:32.23 ID:WLf+yO4T0
卯月「凛ちゃんのシークレットライブに私たちが?」
P「ああ。みんなにはサポートメンバーとして
バックダンサーやコーラスを担当してもらいたい」
P「急な話ですまない。俺のせいでスケジュールが押し気味なんだ。
すぐにでもリハを始めてもらわないと当日に間に合わない」
P「みんなにはかなりの無理強いをさせることになると思う。
だが、それを承知で頼みたい。
どうか、凛と一緒にステージに立ってくれないか」
未央「そりゃあ、しぶりんの晴れ舞台なんだし、
私にできることがあれば喜んで協力するけど、でも……」
美嘉「本当にいいわけ?
凛がシンデレラガールに選ばれた記念ライブなんだよ。
定例ライブとは訳が違うのに、それをアタシたちが出たりして……」
楓「ライブの構成を変えてまで私たちを出す意味がわからないわ。
それこそ定例ライブになればみんなが出るんだし」
アナスタシア「なにか理由があるんですか、凛」
96 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:10:27.74 ID:WLf+yO4T0
凛「プロデューサーに見せてあげたいの。私たちの本当のステージを」
まゆ「プロデューサーさんに……」
凛「確かにシンデレラガールに選ばれたのは嬉しかったし、
ずっと待ち望んでいたシークレットライブだけど、
でもそれは全て、プロデューサーに恩返しをしたかったからなの」
P「……」
凛「今の私があるのは全てプロデューサーのおかげ……なんて、
そんなことをいっても今のプロデューサーに覚えがないのはわかってる」
凛「それでも私はプロデューサーに感謝してるし、
これからも一緒にトップアイドルを目指していきたい」
凛「だからそのためにも、プロデューサーには知っておいてもらいたいの。
私の……私たちアイドルが、どれだけの力を持っているのか、
それをシークレットライブで証明したい」
幸子「凛さん……」
凛「私の勝手なわがままだってわかってる。でも定例ライブまで待てない」
凛「お願いみんな。どうか、私と一緒にステージを……」
97 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:12:10.41 ID:WLf+yO4T0
愛梨「……私、凛ちゃんの気持ちよくわかる」
愛梨「私もシンデレラガールに選ばれた時、同じことを思ったもん。
これでやっと、プロデューサーさんに恩返しができるって」
蘭子(……)
愛梨「だから、私も凛ちゃんと一緒のステージに立ちたい」
幸子「やれやれ、仕方がないですね。このボクが出演してしまったら、
ボクの抑えきれないカワイイオーラで凛さんのファンを
たちまちボクのトリコにしてしまうかもしれませんが、
それでもというのならボクも出――」
莉嘉「はいはい、アタシも出る! ライブできるなんてチョー楽しみ!!」
志希「もちろんあたしも出るよ。ライブなんて刺激的なことを
みすみす逃すほど志希ちゃんは我慢強くないのだ!」
幸子「……ボクも――」
未央「私だって出るよ! ここで協力しなきゃ、
ニュージェネの名が廃るってもんよ! そうでしょ、しまむー!」
卯月「はい! 島村卯月、精一杯、凛ちゃんのお手伝いをさせてもらいます!」
まゆ「プロデューサーさんのためというのなら、まゆも喜んで協力するわ。
まゆだってプロデューサーさんに本当のステージを見せてあげたいもの……」
美嘉「ま、アタシたちを知るにはライブを見てもらうのが一番だしね。
いいよ、その話、アタシも乗った」
楓「……そうよね。私という人間を知ってもらうことはとても大切なことよね……」
未央「かえ姉さま……?」
楓「私も協力するわ。
プロデューサーとは一刻も早く、お酒を飲める間柄に戻りたいですもの」
未央「ええっ! そんな理由!?」
アナスタシア「私も……、私のことをプロデューサーに知ってもらいたいです。
私がどれだけプロデューサーを信頼して、感謝しているのか、
その想いを胸に、私も凛と一緒のステージに立ちたいです」
凛「みんな、ありがとう……」
98 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:12:50.87 ID:WLf+yO4T0
P(……おや)
杏・蘭子「……」
P「杏と蘭子はどうだ。凛と一緒にステージに立ってくれるか」
杏「……っ、は、はい!
杏も協力させてもらいます! いえ、させてください!」
蘭子「わっ、私も精一杯頑張ります!」
P「あ、ああ、ありがとう……?」
P(……)
99 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:14:30.28 ID:WLf+yO4T0
幸子「ハイハイハイ! ボクも出ます!! ボクも出ますからね!?」
幸子「いっておきますけど!
ボクがステージに立つのは凛さんのためであって、
プロデューサーさんのためではないんですからね!
そこのところ、くれぐれも勘違いしないでくださいよ!」
P「ああ、わかってるよ。よろしく頼むな、幸子」
幸子「……」
P「どうした?」
幸子「い、いえ、その……、
プロデューサーさんに名前を呼んでもらうの、なんだか久しぶりだなって……」
未央「あ、ほんとだ。そういえばさっきもしぶりんのこと
“渋谷”じゃなくて“凛”って……」
未央「……はい、プロデューサーに問題です! 私は一体誰でしょーかっ!」
P「誰って、未央だろ」
未央「も……、もう3回呼んで?」
P「なんで」
莉嘉「PくんPくん、アタシはアタシは?」
P「莉嘉」
愛梨「じゃあ、私は?」
P「愛梨」
卯月「そ、それじゃあ、私は誰でしょうか!」
P「卯月……って、なんだこの流れ……」
まゆ「プロデューサーさん、どうか、愛を込めて私を呼んでみてください」
キャッ キャッ……
アナスタシア「プロデューサー、元気が出たみたいですね」
美嘉「だね。ようやくらしくなってきたって感じ。
これで記憶も戻ってくれたらいいんだけど」
美嘉「ねぇ、凛のおかげなんでしょ。プロデューサーが元気出たのって」
凛「……違う、私じゃない」
美嘉「凛じゃないの?」
凛「私はなにもしてない。プロデューサーが元気になった理由は私にもわからない」
美嘉「ふぅん、そうなんだ」
凛(……)
楓「プロデューサーは以前、私のことを“カエカエ”と呼んでいましたよ」
P「カ、カエカエ? 本当ですか!?」
幸子「そんなわけないじゃないですか……」
志希「にゃははっ!」
……………………
………………
…………
……
100 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:16:06.37 ID:WLf+yO4T0
美嘉『みんなーっ、楽しんでるーっ?』
オーディエンス『イェ――ッ!!!』
P「……」
ちひろ「よいしょ、っと。蘭子ちゃん分はこれで全部です」ドサッ
P「ありがとうございます」
ちひろ「それにしても本当に観るんですか、アイドルたちのライブ映像を全て。
一人分だけでもかなりの量ですよ」
P「ダンスの癖、歌の声質……、少しでも彼女たちの特徴を把握しておきたいんです。
ライブまで残り僅か。今更こんなことしたって
付け焼刃程度の知識にしかならないかもしれませんが、
それでも彼女たちの力になれるなら……」
ちひろ「ふふ、なんだか記憶が変わる前のプロデューサーさんに戻ったみたいですね」
P「変わる前?」
ちひろ「ええ。アイドルたちのことがなによりも大切で、
彼女たちを輝かせるためならどんな労力も惜しまない。
そんな人でしたよ、プロデューサーさんは」
P「……そうですか。それが、前の……」
ちひろ「でも、無理はもう絶対に駄目ですからね。
私の目が光るうちは徹夜なんてできないと思ってくださいよ」
P「はは、肝に銘じておきま――」
蘭子『フハハハ! 我が下僕たちよ!
今宵は漆黒の炎に焦がれ、魂が燃え尽きるまで宴を祝おうぞ!』
オーディエンス『ワァ――ッ!!!』
P「……」
……………………
………………
…………
……
101 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:17:34.00 ID:WLf+yO4T0
美嘉「……そう? ここはアタシたちのコーラスを入れるより、
凛がソロで歌った方がイイと思うんだけど」
P「俺もそう思う。それに今の構成だと凛だけのパートが少なすぎる。
これは凛のためのライブなんだから、
あくまでも美嘉たちはサポートメンバーとして考えないと」
凛「それは……わかってるけど、
でもソロで歌うのはCパートまでとっておきたいなって……」
ガチャッ
蘭子「闇に飲まれよ!」バーン
美嘉「蘭子ちゃん、お疲れー」
凛「お疲れさま」
P「お疲れ、蘭子」
蘭子「闇に飲ま……っ」ハッ!
P「やみにのま?」
蘭子「…………れます」
P(闇に飲まれます?)
………
……
…
102 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:19:31.21 ID:WLf+yO4T0
『今日のラジオゲストはCGプロのアイドル、
アナスタシアちゃんと神崎蘭子ちゃんです』
アナスタシア『よろしくお願いします』
蘭子『ククク……、福音を鳴らす聖なる暗室に招かれたこと、ここに感謝する』
『え、えっと……』
アナスタシア『ラジオのゲストに呼んでくれてありがとう、といっています』
『い、いえ、こちらこそ……』
P「……」
『――それじゃあ、その衣装は蘭子ちゃんが自分でデザインしたんだ』
蘭子『いかにも。我がグリモワールに記された堕天の衣。
天啓を授かり、幾つもの生贄を捧げ、
遠き過ぎさりし欠けた月の夜、ついに精製することができた……』
『え、ええと……』
アナスタシア『そうです、私のスケッチブックに描いた衣装です。
一生懸命考え、沢山お手伝いをして、
先月ようやく完成させることができました、
といっています』
『へ、へえ、そうなんだ……』
P「……」
P(なにをいってるのか、さっぱりわからない……)
………
……
…
103 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:21:01.94 ID:WLf+yO4T0
P「――それじゃあ、俺は杏の撮影現場に向かうけど、
蘭子は事務所に戻って引き続きみんなとリハを」
P「撮影が終わり次第、俺も杏と一緒に事務所に戻るから、
そしたらみんなでライブ衣装のチェックをしような」
蘭子「は、はいっ」
P「……蘭子が着ているその衣装は自分でデザインしたものなのか」
蘭子「え、あ、はい、そうです」
P「へえ、すごいじゃないか。よく似合っているよ」
蘭子「あ、ありがとうございます……」
P「蘭子は自分の特性をきちんと把握しているんだな。
衣装や言葉遣いにそれがよく反映されている」
蘭子(うっ……)ギクッ
P「特に言葉遣いは類を見ないというか、
俺には蘭子がなにをいっているのかわからないけど」
蘭子(う゛っ……)グサッ
P「でも、それがきっと蘭子の魅力なんだろうな。
蘭子が二代目シンデレラガールに選ばれた理由がわかる気がするよ」
蘭子「……」
蘭子(なにをいってるのか、わからない……)
………
……
…
104 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:22:11.86 ID:WLf+yO4T0
「それではCGプロさん、また機会があればよろしくお願いします」
P「こちらこそ、今日はありがとうございました」
杏「ありがとうございました!」
P「……さて、俺たちも事務所に戻るか」
杏「はい!」
…………
P「すまなかったな、杏。この数日、撮影の連続で疲れたろ。
リハもあるから仕事量を極力抑えてはいるんだが、
現状、維持するので精一杯なんだ」
杏「いえ、このくらい平気です!
杏はまだまだ働けます! 馬車馬のように働けます!」
P(馬車馬……)
P「そ、そっか。
まあ、無理を強いてる立場だから無理をするなとはいえないけど、
でも本当に限界を感じたら我慢せずにいってくれよ」
杏「お気遣いありがとうございます。けど、大丈夫です。
杏はアイドルのお仕事が大好きですから、
毎日が充実して疲れを感じる暇もありません」ニコッ
P「……そっか。そういってくれるとプロデューサーとして嬉しく思うよ。
杏のそのひたむきな姿勢は俺も見習わないといけないな」
杏「……いえ」
………
……
…
105 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:23:30.52 ID:WLf+yO4T0
蘭子「わぁ……!」キラキラ
P「どうかな、“魔法使い”がコンセプトになってるんだけど」
アナスタシア「なるほど。凛が“シンデレラ”なら、私たちは“魔法使い”なんですね」
未央「結構、本格的に“魔法使い”してるデザインだよね。
らんらんなんかは特に好きでしょ、この衣装」
蘭子「ら、らんらんいうでない!」
P「気に入ってくれたか、蘭子」
蘭子「ふぇ? ……あっ、はい。とても素敵な衣装だと思います……」モジモジ
卯月「すごいです、これ! スカート生地がフワフワです!」
まゆ「腰のリボンがいいアクセントになってますね」
莉嘉「お姉ちゃん見て見て、このちっちゃな三角帽子カワイイ!」
志希「楓さん、ステッキにマイクがついてるよ!」
楓「まぁ、それはそれは、なんて……」
楓・志希「素敵なステッキ!」ドッ
幸子(いうと思った……)
キャッキャッ……
106 :
◆nx90flyJCa6p
[sage]:2020/10/21(水) 20:24:59.76 ID:WLf+yO4T0
美嘉「へぇ、このブレスレット、呪文が彫ってあんだ。結構凝ってんじゃん」
蘭子「呪文……」
アナスタシア「どうしました、蘭子」
蘭子「……我らで呪文をつくり、
それを簡易刻印として身体に刻みつけるのはどうだろうか」
P(……?)
アナスタシア「ハラショー。それは素晴らしいアイデアだと思います」
美嘉「うん、イイと思うよ。まぁ、蘭子ちゃんの趣味全開の呪文にすると、
シンデレラに登場する魔法使いのイメージからは逸脱しそうな気もするけどね」
P「えっと……、蘭子はなんていったのかな」
蘭子「あ、その――」
美嘉「タトゥーシール。呪文をみんなでデザインしてさ、
それを腕とか顔につければ面白くないか、ってことでしょ」
蘭子「う、うむ。いかにも……」
P「なるほど、タトゥーシールか。それはいいアイディアだな。
グッズにもできそうだし、検討の余地があるよ」
アナスタシア「よかったですね、蘭子」
蘭子「しかし刻印だけではこの衣に眠れる真の力を呼び醒ますことは適わない。
我らが魔翌力を注ぎ込み、共鳴させることができればあるいは……」
P「……つまり?」
蘭子「あぅっ、つまり――」
アナスタシア「みんなでアイディアを出し合えばもっと衣装がよくなる、
そういいたいのですね、蘭子」
蘭子「そ、そのとおり……!」コクコク
P「そうだな。まだまだ改善の余地はありそうだ。
他に気付いたことがあればみんなも――」
蘭子「衣を漆黒から蒼へ染め上げ、背中に銀の十字の紋様を入れれば……」
美嘉「いや、だからそんな魔法使い、シンデレラには登場しないって」
P「……」
P(……今まで気付かなかったが)
P(蘭子、俺と他の子たちとでは話し方も表情もまるで違うんだな……)
…………………
………………
…………
……
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