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男「旧校舎の伝わる六つの暗号?」
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130 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:31:28.72 ID:9tOKrB/Y0
ヴーン ヴーン ヴーン ヴーン
男「!!」
男「もしもし女ちゃん?」
女『男さん……』
男「その、黒髪さんは……どうだった?」
女『もってあと数日……いつどうなってもおかしくない状況だって……』
男「あ……」
女『……』
男「女ちゃんは今どこに?」
女『お父さん、お母さんと帰ってきました……』
男「じゃあ黒髪さんは今病室に一人?」
女『お医者さんができるだけ誰かそばに居るようにって……だから今日は親戚の人が一緒に泊まってくれてます……』
男「そっか……」
131 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:32:09.26 ID:9tOKrB/Y0
男「黒髪さんはずっと意識がない状態?」
女『いえ、たまに起きるけど……ずっと朦朧としてて……声も出せなくて』
男「食事は?」
女『とってないみたいです』
男(黒髪さん……声も出せないほど衰弱してるのか……)
女『男さんは……何かわかりましたか?』
男「うん。メッセージが示す桜の木は旧校舎にあった」
女『旧校舎に……?』
男「どの辺にあったかは……明日、学校の図書室に行かなきゃわからない」
女「明日……」
132 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:32:46.63 ID:9tOKrB/Y0
男「掘り出す作業は……夜になると思う。だから黒髪さんに届けるのはどんなに早くても明後日に……」
女『……』
男「俺は黒髪さんを信じてるよ。待ってるって約束してくれたから」
女『……』
男「だから女ちゃんも黒髪さんと一緒に待っててくれるかな?」
女『……』
男「……」
女『わかり……ました……』
男「ありがとう、じゃあ……また連絡するよ」
女『はい……』
133 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:45:57.63 ID:9tOKrB/Y0
十一日目 金曜日
――図書室
友「これこれ、この本に写真が載ってたよ」スッ
男「ああ」
友「じゃあ俺用事があるから行くけど、何かあればまた頼ってくれよな!」
男「友……サンキューな」
友「はは、じゃあね!」
男「ああ、また後で」
男「さて……」パサッ
男「……」ペラッ
男「……」ペラッ
男「あ!!」
男(あった!旧校舎と桜の写真!もっと別角度からのものはないか!?)ペラッ
男「……!」
男(これは……俺がよく夕焼けを見てた窓際の下か……)
男(ケータイで写真を撮っておこう)
134 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:46:36.51 ID:9tOKrB/Y0
――放課後 教室
男(大体の場所は把握できた)
男(あとはいつ掘り出すかだが、やはり人がいなくなった夜にするのが無難だろう)
男(今日が終われば夏休みが始まる)
男(それでも部活で残る生徒はいるだろうし、教師はもっと遅くまで残るだろう)
男(一旦帰宅して準備してから夜中に忍び込むか?)
男(それともこのまま旧校舎に身を隠しておくか?)
男(旧校舎に身を隠すのは……少しばかり勇気がいるけど……)
男(でも……)
男「よし!」
135 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:47:33.30 ID:9tOKrB/Y0
――旧校舎 3-1
男「今日が晴れでよかった……」
男(よく考えたら夕焼けを見るのも今日で最後だもんなぁ)
男(夕焼けまで時間もあるし、久しぶりに読書でもするかな)ゴソゴゾ
男「……」ペラッ
男「……」ペラッ
男(ダメだ、本の内容が全然入ってこない)パタン
男(そりゃそうだ、以前とは状況が全然違うわけだし)
男「……」
136 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:48:24.39 ID:9tOKrB/Y0
――――
――
男「……」チラッ
男「おお、綺麗な夕焼けだ……」
男「……」
男(懐かしいな)
男(つい最近のことなのに、随分懐かしく感じてしまう)
男(あの時も夕焼けを見てて、帰ろうと振り返ったら……泣いてる黒髪さんがいて……)
男(もしかしたら……)
男(今振り返ればまた……)
男「……」
男「……」クルッ
シーン
男「はは、だよなぁ」
ギシッ ギシッ
男「え……」
男(床の軋む音!?)
137 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:50:03.92 ID:9tOKrB/Y0
ギシッ ピタッ
男(床の軋む音が……この教室の前で止まった……!)
男「……」ゴクリ
ヒョコ
女「あ、よかった〜……居なかったらどうしようかと思ってました」
男「え……女ちゃん……?」
女「お邪魔します」ギシッ
男「はぁぁぁ」グター
女「ふぇ!?どうしました!?」
男「いや……ちょっと気が抜けただけだよ」
女「??」
男「ていうか、どうしてここに?」
女「男さんのことだから、もしかしたらって思ったんです」
男「もし俺がいなかったらどうするつもりだったのさ?」
女「その時は連絡してすぐに来てもらうつもりでした!」
138 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:52:59.51 ID:9tOKrB/Y0
女「わぁ……綺麗……」
男「……」
女「間に合ってよかった……今日で見納めですからね」
男「黒髪さんは?一緒に待っててって言ったよね?」
女「学校が終わってからすぐ会いに行きましたよ!」
男「え?」
女「おばあちゃんに、男さんのお手伝いしてくるねってちゃんと伝えました」
男「でも……夜まで、下手したら夜中までいる事になるんだよ?」
女「今日の病院のお泊まりはうちの両親なので、時間は大丈夫です!」
男「はぁ……」
女「ご迷惑でしたか?」
男「いや……一人だと心細いから正直かなり助かります」
女「それなら良かったです」ニコッ
139 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:54:08.97 ID:9tOKrB/Y0
男「でも女ちゃんも怖いんじゃないの?」
女「そりゃ怖いですよ、めちゃくちゃ怖いです」
男「それならなんで――」
女「おばあちゃんの為に私も出来る事をしたくて」
男「ああ……そっか」
女「それに……男さんと一緒なら……」
男「……」
女「……」
男「えと……もう少し日が落ちたら屋上に行こうと思ってる」
女「屋上?」
男「うん。屋上なら外だし暗くなっても怖くないかなって」
女「いいですね、大賛成です」
男「あまり明るいとバレちゃうかもしれないから、もう少し暗くなったら移動しよう」
140 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:54:59.78 ID:9tOKrB/Y0
――旧校舎 屋上
男「まだ本校舎の職員室は明かりがついてるな」
女「わぁ……見てください!夕焼けも綺麗でしたけどこの景色もすごく素敵です……」
男「たしかに……これはこれで趣きがあっていいね」
女「ふふっ、新たな発見ですね」
男「でも見つかる可能性があるから目立つ行動は控えるように!」
女「はーい」
男「じゃあしばらくここで待機で」
女「あ、お菓子持ってきたんですけど一緒に食べませんか?」ガサガサ
男「いいね、遠慮なく頂こうかな」
女「はいです!」
141 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:56:40.09 ID:9tOKrB/Y0
――夜 旧校舎 屋上
男(本校舎の電気は消え、校門の施錠もされた)
男(恐らく今帰った人が最後の一人のはず)
男「よし、これで人はいなくなった。一階に降りよう」
女「き、旧校舎の中を通るんですよね?」
男「うん、途中で保健室に寄るけど平気?」
女「保健室に??なんでです!?」
男「理由は不明だがスコップが置いてあるんだ。それを拝借しようと思ってね」
女「うぅぅ……わ、わかりました……」
男「もう人もいないし懐中電灯を使おう。そうしたら多少怖さも和らぐはず」
女「うう……それはそれで逆に怖いと思います!」
男「じゃあ、えと……俺の腕でよければまた貸すけど……」
女「あ、あの!手も……お借りして、いいですか?」
男「手?」
女「は、はい……ダメ、ですか……?」ウルッ
男(そんな目で見つめられたら断れないっての)
142 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:57:18.22 ID:9tOKrB/Y0
――夜 旧校舎 裏庭
男(手を繋いだままさらに腕にしがみつかれ、なんとか一階まで辿り着くことができた)
男「女ちゃん、そろそろ離れてもらっていいかな?」
女「あ!ご、ごめんなさい!!」
男「ううん、気にしないで」
女「はぅ……」
男「たしかこの辺りだと思うけど……」
男「それらしき跡がなにもないな」
女「そうですね……」
男「手当たり次第掘るしかないか……女ちゃんは地面を照らしてくれるかな?」
女「は、はい!」
男「よし、やるか!」
143 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 14:58:10.37 ID:9tOKrB/Y0
ザク ザク
ザク ザク
男「はぁはぁ……暑っつ!!」ダラダラ
女「男さん!私代わります!」
男「はぁはぁ、いや、大丈夫、だよ」
女「でも……」
男「結構広い範囲を掘ったはずなのに見つからないな」
女「そう、ですね……」
男「場所が違うのか?それかもっと深いところにあるのか?」
ガシャン
女「!?」
男「どちらにしろ手当たり次第掘るしかなさそうだ」
女「お、男さん!!」クイクイ
男「?」
女「誰か来ます!」
男「ええ!?」
144 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 15:01:24.35 ID:9tOKrB/Y0
男「女ちゃん、明かり消して」ボソッ
女「は、はい」カチ
男(こんな夜遅くに一体誰が!?)ドクンドクン
女「お、男さん……」ギュッ
男(まさか誰かが見回りに?いや、そんなはずは……)ドクンドクン
スタスタ スタスタ
男(足音が近付いてくる……)ドクンドクン
男(教師か?工事関係者か?それか肝試しにきた若者か?)
女「……」ビクビク
男「女ちゃん……」
男(気を強く持て、こんな時に俺がしっかりしないでどうする!)
??「誰だ?こんな所で何をしている!?」ピカッ
男「くっ!」
男(懐中電灯を向けられて相手の姿を確認できない……!)
145 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 15:02:11.44 ID:9tOKrB/Y0
??「何をしていると聞いているだろうが!」ピカッ
男「眩しいので照らすのを辞めてもらえますか?」
??「……お、お前は……それにその子も……」
男(え??)
男「女ちゃん、懐中電灯を貸して!」
女「は、はい!」スッ
カチッ
男「!」
男(白髪の……老人?)
男(学校関係者ではなさそうだけど……)
老人「お前ら……何故ここを掘っている?」
男「それは……」
女「わ、私たちは!おばあちゃんに頼まれて暗号を解いていただけです!」
老人「おばあちゃん……?暗号……?」
老人「……」
146 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 15:03:22.33 ID:9tOKrB/Y0
男(この老人……もしかして)
男「……」
女「男さん……」ギュッ
男「この子の言う通り、僕たちは旧校舎に残された六つ暗号を解いています」
老人「……それで?」
男「『桜の下』に何かがあるのまでは突き止めましたが、肝心な桜がどこにあるのかわからなくて」
老人「なるほど、だから闇雲に掘っていたというわけだな?」
男「はい」
老人「その制服……ここの学校の生徒か?」
男「彼女は違いますが、僕はここの学校に通っています」
老人「そうか……」
女「??」
男(会話の運びがスムーズだ)
男(やはりこの老人は……)
147 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 15:04:16.46 ID:9tOKrB/Y0
老人「ここを掘ってみるといい」スッ
女「え!?」
男「わかりました」ガッ
女「ええ!?」
ザクッ ザクッ
男(あれ……他の場所違って掘りやすい……)
ザクッ カツ
男「あ……何かに当たった」
女「ほ、本当ですか!?」
男「うん。今取り出してみるよ」サクサク
グイッ
男「これは……」
女「木箱……?」
男「…………」
女「これがおばあちゃんがずっと探し求めてたモノ……?」
老人「では私はこれで」スタスタ
女「え?」
148 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 15:05:04.93 ID:9tOKrB/Y0
男「待ってください!」
老人「……」ピタッ
女「男さん?」
男「ずっと疑問だったんです」
男「保健室に置かれたスコップも」
男「校長室の床に貼り直された“紙”も」
老人「……」
男「単刀直入に聞きます。暗号を作ったのはアナタですよね?」
女「ええーーー!!?」
老人「……どうしてそう思った?」
男「僕たちを見た時の反応とアナタの年齢から判断しました」
老人「……」
149 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 15:06:10.08 ID:9tOKrB/Y0
女「おばあちゃんの手紙を隠した人……」
老人「……」
男「僕はともかく、彼女は似てますから。若い頃の黒髪さんに」
老人「……」
男「黒髪さんをご存知ですよね?」
女「……」
老人「ああ。君の言う通りだよ」
女「!!」
老人「黒髪宛の手紙を隠し、暗号を作ったのは私だ」
男「やはりそうでしたか」
女「……」
男「今、この場にいるという事は……この木箱を回収しにきたんですよね?」
男「明日になれば取り出すことが不可能になってしまうから……」
老人「ああ、そうだよ」
150 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 15:07:26.74 ID:9tOKrB/Y0
老人「そうか、君が黒髪の孫か」
女「あ……は、はい」
老人「そして少年、君は……名前を伺ってもよろしいかな?」
男「“男”です」
老人「なるほど……奇妙な巡り合わせだな」
女「??」
男「あの……ありがとうございました」
老人「え?」
男「アナタのおかげで見つけることができました」
老人「なぜ礼を……元を辿れば私が――」
男「あの暗号のおかげで黒髪さんと、女ちゃんに出会えました」
女「男さん……」
男「アナタの学生時代の悪戯が六十年以上の時を超えて人と人を繋ぎあわせたんです」
老人「……」
男「そりゃ褒められた行為ではないですけど……少なくとも僕は感謝しています」
老人「……」
男「なので、ありがとうございました」ペコ
女「あ!えと、ありがとうございました」ペコ
老人「……!!」
151 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 15:10:48.08 ID:9tOKrB/Y0
老人「はっはっは、長生きはしてみるもんだ!」
老人「恨まれるならまだしも……まさか感謝をされるとはな」
女「恨むなんてそんな事……」
老人「気を使わなくても結構、黒髪も思う事があったから君たちに頼んだんだろう?」
男「そうですね」
女「でも!当時はわからないですけど、今は恨んでなんかいません!」
老人「……」
男「あの――」
老人「では私は先に失礼するよ」
女「え?」
老人「暗号を解いてくれてありがとう」ペコ
スタスタ
女「あ……」
男「……」
女「行っちゃいましたね」
男「うん」
152 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 15:12:33.64 ID:9tOKrB/Y0
女「男さん、あのおじいさんはなんで回収しにきたんですか?」
男「これは俺の推測なんだけど、罪悪感があったんじゃないかな」
女「罪悪感?今までずっとですか?」
男「それはわからないけど……暗号を解いてくれる人を待ち続けていたんだと思う」
女「……」
男「校長室の“紙”もそうだし、なによりも……この木箱だ」
女「木箱?」
男「六十年以上前に埋められたにしては綺麗だと思わない?」
女「ほ、本当だ!」
男「本来は別の箱に入っていたんだろうけど……六十年も経てば腐食してる可能性もある」
女「あのおじいさんが木箱に移し替えた……?」
男「うん。実際にこれを掘り出すとき土が柔らかかったんだ」
女「……」
男「定期的に確認しにきてたんだろう。保健室に置いたスコップを使ってね」
女「それでスコップがあったんですね……」
153 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:12:46.64 ID:9tOKrB/Y0
男「はぁぁぁぁ」ストン
女「えっ!?大丈夫ですか!?」
男「いや、ちょっと気が抜けちゃって……」
女「そっか……男さんはずっとおばあちゃんの為に頑張ってくれてましたからね」
男「むー」
女「お疲れ様です」ニコッ
男「疲れた、腹減った、シャワー浴びたい、眠い」
女「え?」
男「そして親に友達の家に泊まると言った手前、家には帰れない」
女「ええぇぇ!?」
男「とりあえず家まで送るから女ちゃんは帰った方がいいよ」
女「あ、あの!」
男「ああ、それは断る」
女「まだなにも言ってませんけど!?」
男「家に招待する気だろ?俺はネカフェに泊まるから大丈夫だよ」
女「え、でも年齢制限とかありませんでしたっけ?」
男「……」
女「??」
男(し、しまったーー!!)
154 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:15:52.70 ID:9tOKrB/Y0
――深夜 女宅
男「ごめん女ちゃん……図々しくシャワーまで借りちゃって」
女「全っ然!気にしないでください!!」
男(着替え持ってきておいて良かった……)
男(お互いシャワーを浴びて、コンビニの弁当を食べて、今に至るわけだが……)
女「?」
男(寝巻き姿の女ちゃんがとても可愛らしい……なんて口が裂けても言えない)
女「落ち着いた所で、木箱の中身を確認しちゃいましょう!」
男「うーん、勝手に見ていいのかな?元々黒髪さんに贈られたものだろ?」
女「孫の私がいいって言ってるからいいんです!」
男「それなら……いいのかな?」
女「じゃあ開けますよ?」
男「うん」
女「せーのっ!」パカッ
男「!」
155 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:20:18.30 ID:9tOKrB/Y0
女「これは……手帳、ですかね?」
男「ああ、随分と年季が入ってるな……ってそりゃそうか」
女「あの……隣に行ってもいいですか?」
男「ああ、一緒に見よう」
女「で、では失礼します」ストン
男「……じゃあ見てみようか」
女「はい、ご開帳です……!」ペラッ
男「え!?」
女「?」
男「う、嘘だろ……」
女「どうかしましたか?」
男「まさか……そんな事が……」
女「???」
男「はは、そうか……だから似てるって……少し考えれば分かる事だったのに……」
女「え……?この名前って、もしかして……」
男「ああ」
男「この手帳は……」
男「俺の祖父ちゃんの物だ」
156 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:21:47.80 ID:9tOKrB/Y0
女「男さんのお祖父さんって……今もお元気ですか?」
男「いや、もう亡くなってる」
女「あ……ごめんなさい」シュン
男「ううん気にしないで、俺が生まれる前にはもう亡くなってたから」
女「……」
男「とても寡黙な人だって聞いた事があるが……まさか黒髪さんと繋がりがあったとは」
女「だから旧校舎で会った人は『奇妙な巡り合わせ』って言ってたんですね」
男「ああ……」
女「……」
男「じゃあ続きを読もうか」
女「はい!」
157 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:23:02.04 ID:9tOKrB/Y0
――――
――
男(祖父ちゃんの手帳は、最初こそ取り留めの無い日常だったが)
男(黒髪さんと出会ったことを境に、次第に心惹かれていく心情が事細かく書かれていた)
男(祖父ちゃんは……迫る別れの日を惜しみ、同時に黒髪さんの幸せを心から願っていたんだ)
女「……」ポロポロ
男「……」
女「うう……切ないです……」ポロポロ
男「まぁ当時のことを考えれば仕方ないよ」
女「でも……グスッ」
男「それに二人が結ばれなかったおかげで、俺らが生まれたわけだから結果オーライということで」
女「グスッ……男さんって……」
男「ん?」
女「冷めてますよね」
男「うぐっ……現実的といってくれ」
158 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:24:09.45 ID:9tOKrB/Y0
女「明日、朝一でこれをおばあちゃんに届けましょう!」
男「……ああ」
女「おばあちゃん……喜んでくれるかな……」
男「……」
女「この手帳を見せたら、一気に回復ー!なんて、都合がいいですかね?」
男「……」ピト
女「ふぇ!?」
男「……」
女「お、男さん……ど、どうしたんですか……?」チラッ
男「zzz」
女「……あ、あれ?」
男「zzz」
女「寝ちゃった……?」
男「zzz」
女「……」
男「zzz」
女「……ずるいなぁ男さんは……」
女「あんなに一生懸命頑張って……すごく頼りになって……」
男「zzz」
女「ね、男さん……また、手を握ってもいいですか?」
男「zzz」
159 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:25:49.79 ID:9tOKrB/Y0
十二日目 土曜日
――朝 女宅
男「はっ!」パチッ
男「え?あれ?俺いつのまに……」
女「んん……」モゾ
男「!!」
男(す、すぐ隣で女ちゃんが……!)
女「ん?あ……お、おはようございます……///」モゾモゾ
男「お、おはよう……」
女「……」ジー
男「な、なにかな?」
女「ふふ、朝から男さんがいるって変な感じー」モゾモゾ
男「!」バッ
女「?」
男「さ、準備して黒髪さんの所に行こう!」
女「う、うん!」
160 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:26:43.66 ID:9tOKrB/Y0
――病院
男「黒髪さんの容態は……悪いままなんだね?」
女「はい……朝お母さんに電話して確認しました……」
男「今黒髪さんの病室には女ちゃんのご両親だけ?」
女「親戚のおじさんとおばさんも来てるみたいです」
男「マジか……俺が行ってもいいのかな……?」
女「何言ってるんですか!約束したのは男さんですよ?男さんが渡すべきです!」
男「そうだな……うん」
女「それに、お母さん達が何か言ってきても私が説き伏せます!」
男「うん、頼りにしてるよ」
161 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:27:36.55 ID:9tOKrB/Y0
――病室前
男「ふぅ……」
男(いよいよ黒髪さんと対面か……)
男(実際の黒髪さんと会うのは初めてだな)
男(緊張するけど……黒髪さんは約束通り待っていてくれた)
男「よし、いいよ」
女「はい。まずは私から行きますね?」
男「ああ、任せた」
女「任されました!」
162 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:28:30.92 ID:9tOKrB/Y0
ガラッ
女「おばあちゃん!」
女母「ああ、きたのね。おばあちゃんは今寝てるから静かに」
女「ね、おばあちゃん聞いて、今日は素敵なお客さんを連れてきたよ」
女母「お客さん?」
男(扉越しに薄ら会話が聞こえる……)
女父「女、誰のことを言ってるんだ?」
女「皆……今からすることは黙って見守っててほしいの」
女母「は?あんた突然何言ってるの?」
女叔父「女ちゃん、どういうことだい?」
女「おばあちゃんの願いなの!だから何も言わずに見守ってて!」
男「ふぅ……」ドクンドクン
男(行くか)
163 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:29:57.46 ID:9tOKrB/Y0
ガラガラ
男「失礼します」ペコ
女父「誰だ君は!?」
女「お父さん!!」
男「大丈夫だよ、女ちゃん」ニコッ
女「男さん……」
男「えと、男と申します」
男「突然の事で疑問もあると思いますが……僕は黒髪さんに大事な物を届けに参りました」
男「どうか、少しだけ時間を下さい」ペコ
「……」
女「男さん、おばあちゃんの元へ!」
男「ああ」
スタスタ
男(この人が……黒髪さん……)
男(見るからにやつれてて……)
男「くっ……」ジワッ
男(耐えろ!約束を果たす為にきたんだろ!)
164 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:31:04.53 ID:9tOKrB/Y0
男「黒髪さん」スッ
黒髪「……」
男「俺です、男です」
黒髪「……」
男「初めまして……と言ったらなんだな変な感じがしますね」
黒髪「……」
男「約束を果たしにきました」
黒髪「……」ピクッ
女「!!」
男「旧校舎の暗号、全部解きましたよ」
黒髪「……」
男「く……」ゴシゴシ
女「男さん……」ジワッ
男「あれから、大変だったんですよ?」
黒髪「……」
男「でも……女ちゃんと協力して何とか見つけることができました」
黒髪「……」
男「……」
黒髪「……」スゥ
女「あ!!」
165 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:32:52.37 ID:9tOKrB/Y0
男「!!」
男(目が開いた……!)
黒髪「……」チラッ
男「黒髪、さん……」ジワッ
黒髪「……」スッ
男(黒髪の手が……俺の方に!)
男「……」ギュッ
黒髪「……」
男「初めて、触れ合えましたね」ツー
黒髪「……」
女「うう……」ポロポロ
男「切り取られた手紙は『桜の下』でした」
黒髪「……」
男「そしてそこに……この手帳がありました」スッ
黒髪「……」ピクッ
男「……グスッ」
男「俺の祖父ちゃんから……黒髪さんに……」ポロ
黒髪「……」
男「すごく長い間、待たせちゃいましたけど……うう……」
男「俺から代わりにお渡しします」ポロポロ
黒髪「……」
男「う……く……」ポロポロ
女「……うう……」ポロポロ
黒髪「……」
166 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:34:33.76 ID:9tOKrB/Y0
男「手帳の内容は、女ちゃんに読んでもらってください」ゴシゴシ
黒髪「……」
男「最後に少しだけ……グスッ……俺の気持ちを言わせてください」
黒髪「……」
男「黒髪さんに会えて良かった……」
黒髪「……」
男「旧校舎から一緒に眺めた夕焼けは、一生忘れません」
黒髪「……」
男「ありがとうございました」
黒髪「……」ギュッ
男「!!」
黒髪「……」ツー
男「う……あ……黒、髪さん……」ポロポロ
黒髪「……」ギュッ
男「女ちゃん、後のことはお願い」ゴシゴシ
女「うぅぅ……」コクコク
男「黒髪さん、俺は行くよ……旧校舎はもう無くなっちゃうけど……また夕焼けを一緒に見ましょうね」
黒髪「……」
男「それでは……その、失礼します」
「……」
男「あの、突然お邪魔してすみませんでした」ペコ
167 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:35:29.01 ID:9tOKrB/Y0
――――
――
男(こうして俺の過ごした不思議な十二日間は幕を下ろした)
男(そしてそれから数日後、訃報の知らせが届いた)
男(最後はとても穏やかな顔をしていたらしい)
男(俺はきっとこれから先も一生忘れられないだろう)
男(夏休み前までの十二日間を)
男(旧校舎の六つ暗号を)
男(そして、黒髪さんの事を)
168 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:39:52.27 ID:9tOKrB/Y0
――四月 第二グラウンド
男(始業式のおかげで午前帰宅だから、夕方までかなり時間があるなぁ)
男(こういう時は……)
男「」ゴソゴゾ
男「……」ペラッ
男「……」ペラッ
男「……」ペラッ
スタスタ
男「……」ペラッ
男「……」ペラッ
女「じゃじゃーーん!」バッ
男「いらっしゃい。久しぶりだね、女ちゃん」
女「え!?なんで驚かないんですか!?私、今日からここの生徒ですよ!?」
男「前に君のお母さんから聞いたんだよ」
女「ええ!?」
男「あ、これは言っちゃいけないやつだった」
女「えええ!!男さんを驚かせる為に必死で猛勉強して入学したのに!!」
男「うん。合格おめでとう、女ちゃん」ニコ
女「はぅ……」
169 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:46:16.17 ID:e4sMWgPlO
女「ていうか!私の家にきてるんですか!?」
男「ああ、ちょくちょく線香上げに行ってる」
女「なんで今まで黙ってたんですか!?」
男「だって前に……」
女『私、目標が出来たんです!!しばらくそっとしておいて下さい!!』
男「って言ってたじゃないか」
女「うぐぐ……たしかに言いましたけど……」
男「女ちゃんが頑張ってる事はご両親からよく聞いてたから、陰ながら応援してたよ」
女「いつの間にかウチの家族と仲良くなってるし……!」
男「まぁ……それだけ病室での一件がアレだったんだ」
女「皆ビックリしてましたからね」
男「……」
女「親戚の中で男さんは“黒髪婆さんが最後に愛した人”で有名ですし」
男「ああ、とても誇らしいよ」
女「む……」
170 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 16:49:57.12 ID:e4sMWgPlO
女「旧校舎……第二グラウンドになっちゃったんですね」
男「ああ、でもこれはこれで気に入ってるんだ」
女「毎日来てるんですか?」
男「うん、雨の日以外は」
女「一人で?」
男「うん」
女「…………」
男「哀れんだ目で見ないでくれないかな?」
女「でも、これからは私が一緒に夕焼けを見てあげます!」
男「いや……そっちも予定があるだろうし、気が向いた時にきたらいいよ」
女「嫌です、毎日来ます!」
男「ええ……」
女「あ!それとこれ」スッ
男「ん?日記帳?」
女「これからは放課後、ここで交換しませんか?」
男「交換……日記?なぜそんな事を?」
女「ほら、面と向かって恥ずかしい事でも文章なら伝えられるじゃないですか」
男「えーと……それはつまり、そういう事で?」
女「はい!私は六十年以上待つ気も待たせる気もありませんから」ニコッ
男「……」
171 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 17:01:18.06 ID:e4sMWgPlO
女「男さんは察しが良いので……とっくに気付いてましたよね?」
男「いや……さっぱりだ」
女「あー!嘘ついてる顔だー!」
男「まぁ、うん。薄々そうじゃないかなぁって思ってた」
女「私は男さんが何を考えてるのかさっぱり分かりませんけどね!」プクッ
男「俺は……うん、祖父ちゃん似らしいからね」
女「え?」
男「まぁ今の時代に敢えて交換日記するのも面白いかもしれないな」
女「え?それってつまり、そういう事ですよね?」
男「どう捉えてくれても構わないよ」
女「ふふっ、じゃあ好意的に受け取ります」
男「あ……」
女「??」
男「今の微笑んだ顔、黒髪さんにそっくりだった」
女「そりゃそうですよ!私はおばあちゃん似ですから」ニコッ
男「はは……うん、そうだな」
172 :
◆7O7c5wT9T.
[saga]:2020/08/23(日) 17:05:03.92 ID:e4sMWgPlO
男「ねぇ女ちゃん」
女「はい?」
男「爺ちゃんと黒髪さん……かつて二人はこの場所で過ごしたんだよね」
女「はい、なんだか不思議ですよね」
男「うん。本当に……不思議な出来事だった」
女「離れ離れになってしまった二人の孫が、今こうして同じ場所にいることについて……男さんはどうお考えですか??」
男「それは……まぁ、運命めいたモノを感じているよ」
女「私もです」
男「俺たちはこれから……ここから始めよう」
女「はいっ!!」ガバッ
男「わわ!どうしたのさ突然!?」
女「ダメでしたか?」ギュッ
男「ダメ……じゃないです」
「ふふっ」
女「え!?」
男「今のって……まさか……」
女「おばあちゃん!?」
男「黒髪さん!?」
――終わり――
173 :
◆7O7c5wT9T.
[sage]:2020/08/23(日) 17:06:01.43 ID:e4sMWgPlO
終わりです!
174 :
◆7O7c5wT9T.
[sage]:2020/08/23(日) 17:24:19.34 ID:e4sMWgPlO
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/08/23(日) 17:25:13.41 ID:0kPcVdEJ0
乙です
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/08/23(日) 17:51:13.77 ID:kMliN4RJo
乙
良い話だ
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/08/23(日) 20:04:37.23 ID:mJaSRqMao
乙
いい雰囲気だった
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/08/30(日) 12:45:28.24 ID:GfaQsj9y0
乙でした
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/27(日) 11:52:22.52 ID:qRIvGqWCO
推理物書きたいのか恋愛物書きたいのか分からないんだよなぁ
そもそも特定の人にしか幽霊が見えないのは都合良すぎるし婆の姿が若い時まで戻ってるのも意味不明過ぎる。
だったら最初から幽霊で良いだろうし、なぞなぞ作った爺が出てくるタイミング良過ぎる。反省してるならさっさと手帳渡せや。
フィクションに一々ツッコミ入れたくないけど文章がクッソ気持ち悪い。
姉友と結婚する為に工業高校から公務員目指したイキリ男の駄文並にキモい
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