貴方「僕がヒロインを攻略するまどか☆マギカ…オカルト?」マミ「それは終わったわ」

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667 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/11(火) 00:26:04.35 ID:Z314tfrJ0


 あすみが横から何かを言いたそうな、呆れたような目で見ていました。


あすみ「いつもそんなテンションなの?」

なぎさ「え? まあ……マミとはいつもこんな感じですけど、あすみと一緒のときはこういうのはなかったですね」


 言われてみると、なぎさも前より少し変わっていることに気づきます。


なぎさ「あすみはこういうの好きじゃないかもしれないですが、やってみると気合が入るものですよ?」

あすみ「マミ、アンタも?」

マミ「そ、そうね。こういうふうに言ってくれるのは助かってるわよ。気合が入るし、自分の力で人助けできるんだって思えば恐怖だって薄らぐから」

あすみ「あぁそう」


 三人いれば使い魔が出てきてもすぐに倒せます。

 順調に進みながら、段々と深層へ近づきつつあすみがマミに問いました。


あすみ「……ねえ、アンタってたまには一人でも魔女狩りに行ってるの?」

マミ「一人ではないわよ?」

あすみ「まだ過保護してんの? マミももう一年くらいでしょ? 新人でもないのに」

なぎさ「そう言っても……せっかく仲間がいるんですし、なぎさのほうが師匠です。マミのことはなぎさが守るって言いましたから」

なぎさ「それはいつまでも変わらないのです!」

あすみ「……」


 足を進め、たどり着いた小部屋の奥には、広い空間と魔女と思わしき姿がありました。

 それを取り囲む使い魔たちも。


 ひと呼吸の後、いよいよその奥へと踏み入れます。


あすみ「確かに戦い方はマシになってるように見えるけど、最初に見た時からやっぱ変わってないね」

マミ「……?」

なぎさ「え?」


 あすみの言葉がきになりましたが、今は魔女に集中です。

 ――広間に足を踏み入れた瞬間、魔女がこちらを見てけたたましい鳴き声を上げます。

668 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/11(火) 00:44:09.12 ID:Z314tfrJ0
------------------
ここまで
次回は12日(水)20時くらいからの予定です
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 22:24:46.56 ID:YmhiDaZ90
何があったんだ?
670 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/12(水) 23:45:08.19 ID:e3/XKApQ0


 「!」


 それを合図に、使い魔が一斉になぎさたちのほうに目を向けます。

 前方から襲い来る影多数。

 数を相手にするならこちらも数。ラッパを構えて吹きます!


なぎさ「そっちから来るなら早いのです! シャボンでおでむかえしてあげるのですよ!」


 虹色に光るシャボンは足止めにも攻撃にもなります。

 新しいシャボンがぷくぷくと浮かんでは弾け、使い魔とともに消えていく。タイミングや威力の調整も今では完璧に操ることができるようになったのです。


 一気に残り少なくなった使い魔の軍勢に、ついに奥で構えていた大型の魔女が動き出します。

 ――思ったよりも速い動き。


なぎさ「マミ、まずは魔女の動きを封じちゃってください!」

マミ「ええ!」


 あすみがすかさず突進してきた魔女の動きを殺すように頭を一発重い鉄球で殴りつけ、よろめいた隙にマミのリボンで完全に確保。

 
 あとは煮るなり焼くなり、というやつです。

 二、三発さらにあすみが攻撃を入れると魔女はグリーフシードを残して消えました。


 ほっと一息つきます。すべては順調でした。今日も誰も傷つくことがなく終わってよかった。


なぎさ「やりましたね、あっという間でしたよ! みんなの力です!」

あすみ「ちなみに参考までにさ、マミだけでトドメを刺すとしたらあれからどうしてたの?」

なぎさ「マミにはリボンで縛ったあと魔力をこめて爆発させる、『フィナーレ』って技があるのですよ! リボンもほどけちゃうので本当に最終奥義なのですけど」

なぎさ「まあそれで終われなくてもなぎさがいるので大丈夫なのです。なぎさがいるかぎりぜったいに傷つけさせませんから」

あすみ「……ふーん」


 聞いておいてなんだか興味なさそうな返事です。

 まあ、あすみはいつもこんな感じなのですが。

671 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/12(水) 23:47:53.65 ID:e3/XKApQ0


あすみ「でもそれ、前にも聞いたけど、一人のときはどうするの?」

あすみ「いざ追い込まれてどうしても一人で戦わなくちゃいけなくなった時は、全力で戦えるの?」

あすみ「……それとも、死ぬの? 逃げるの?」

マミ「それは……」

なぎさ「……なんでそんなことを? それでも今なら戦えますよ。きっと。たくさん練習してきたし、一緒なら戦えてるのですから」

あすみ「私が変わってないって言ったのはそういうことだから。わざわざ手合わせなんて試さなくてもわかるの」

あすみ「年月以上に、その覚悟の違いって大きいよ? いざという時を経験してきてない人に負けることなんてないって」

なぎさ「そんなの、経験する必要なんてないです!」

あすみ「まあそうかもしれないね。守ってもらって生き延びられるなら、それでもきっと間違ってはないんでしょうよ」



 ……あまやかしてる、のかな?

 でもやっぱり、一人で戦う意味なんてないし、それが良いことだとも思いません。


 なぎさは強くなれました。魔女に苦戦することもそうそうありません。マミを傷つけさせることがないように守ることができるのです。

 それは師匠としての、なぎさの役目ですから。



――――――
――――――
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/12(水) 23:49:22.27 ID:pHGsJJM40
12日ギリギリ来てくれましたねw

やっぱりマミは攻撃手段がリボンだけか・・・
サポート役に徹しれば強いけどソロだと火力が無くてキツそうだなぁ
673 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/13(木) 00:40:03.70 ID:ntiGv1dh0



 ――――魔女狩りを終えて、さっきまで三人で歩いていた道を一人で歩く。


 なぎさが提案してきたマミと一緒の魔女狩り。三人といっても、戦ってる時には二人のときとほとんど大差はなかった。

 補助的な拘束能力は強いかもしれないけど、動きを止める手段も叩きのめす手段もすでに足りている。ある程度強くなれば大抵は身につくものだ。

 マミのことはなぎさが過保護なほどに気にかけているとは思っていたが、イマイチ主体性が見えてこなくてあまり興味が持てなかった。


あすみ(いや……もともと任せるつもりだったんだし、私が口を挟むことでもないな)

あすみ(あいつがどんな魔法少女になろうが勝手だ。少なくとも悪事に手を染める方向に走ってないだけかなりマシな部類)

あすみ(ただ、そういうのがあまり好きになれないだけ)


 一方で、なぎさは強くなってた。

 それにマミのことやら街のことやら、『守りたいもの』とやらができたからか。



あすみ(……まだ、明るい。これからどうするかな)



 なんとなく歩いてみて、なんとなくまたあの教会に向かってることに気づいた。

 一応、好きに出入りしていいと言われた場所。

 ヒマではあるが雨風しのげて、人気がない分落ち着いて過ごせる場所ではあった。

 扉を開ければ優しく出迎えてくれる。そんな場所が他にないというのも事実で。



 ……教会の人たちもあれこれと事情を聞いてくることはない。ただ、どんなふうに思われているかは察しはつく。

674 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/13(木) 00:44:29.82 ID:ntiGv1dh0
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ここまで
うーん、開始も終了も遅くなって申し訳ない…
次回は15日(土)18時くらいからの予定です
675 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/16(日) 00:00:53.56 ID:WA9aFN+R0



杏子「ただいまー! あ、今日も来てくれてるんだ」

あすみ「来ていいって言われたから来てるだけだよ。どこにいても暇なのは変わんないけど、同じ暇ならこのくらい人気がないほうが落ち着けるし」


 そう言うと、人気がないってのに引っかかったのか複雑そうな顔をする。


あすみ「……あぁ、皮肉言ったつもりはなかったんだけどね? 今日もまた布教とやらをしてきたの?」

杏子「まあそうなんだけど……ダメだったよ」

あすみ「そっか」

杏子「いきなり話しても怪しまれるから街で困ってる人がいたら助けて、そのついでに……っていうふうにしたんだけど、話そうとした途端逃げる人ばっかりで」

杏子「ひどい人だと暴言まで吐かれちゃって、ちょっと参ってきちゃったよ」

あすみ「まあー……そうだろうね」


 それは私だってそうする。

 関わり合いになりたくないと思えば必要以上にキツい言葉を言ってでも断って逃げる人がいるのもわかる。

 けど、善意を仇で返されるのはそりゃまあ堪えるだろう。


杏子「でもたしかに、下心ありきで助けるのは良くない気もしたんだ。どうしたらいいと思う?」

あすみ「私に聞かれてもな」

杏子「そこをなんとか! 信者じゃない人から意見を聞いてみたくて!」


 杏子が切実に頼んでくるものの、少し考えてみてもまともなアイデアは浮かばなかった。


あすみ「……敷居が高いのはしょうがないよ。断って逃げる人はどう接したって興味持たないだろうし、話に乗る人ってのは大体最初から興味を持ってる人だけだ」

あすみ「いきなり増えやしないよ、洗脳でもしない限りは」

杏子「魔法の力でもないと無理ってこと?」

あすみ「どうかな、現実的にも洗脳ってあるもんだよ? 拉致って囲んで信じるまで説得する宗教団体もあるって聞くけど」

杏子「そんなのがしたいわけじゃないよ。うちはそんなのとは違うし!」

あすみ「……魔法だったらクリーンなわけでもないでしょ」


 取り繕っても仕方ないと率直に言ってやれば、杏子は目に見えて落胆した。

 そこに、「無理を言って困らせるものじゃない」とやりとりを見ていた神父がなだめに入る。



 ……よく見れば、みんな最初に見た時よりもやつれていた。

676 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/16(日) 00:52:17.70 ID:WA9aFN+R0



 遅くなりすぎないうちに立ち上がる。

 ここの人たちは、探ってはこないがあれこれと世話を焼くのが好きな人たちだ。

 あまり居座ってたら自分たちの分もろくにない物をまた分けてこようとしかねない。



あすみ「いつのまにか私みたいなのが一人で居座る場所になってて悪いね? なんだか貧乏神みたいになってきちゃってるかも」

神父「構わないよ。ここを居場所に思ってくれるのなら、何者だって拒まないさ」


 私の魔法で洗脳はできないが、私の力は『呪い』だ。人を害するためのもの。そう考えれば、この場所はなんて私には似つかわしくない場所だろうか。

 ……果たしてそれを知ってもこの優しい神父と家族は拒まないのだろうか?



 教会を出れば、再び煩雑とした街中へと戻っていく。


 そんな日が数日続いて――――。


 教会の家族の顔色は日ごとに酷いものになっていった。

677 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/16(日) 01:03:25.00 ID:WA9aFN+R0
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ここまで
18時とはなんなのか…
次回は16日(日)できれば夕方に…!
678 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/16(日) 20:12:27.06 ID:WA9aFN+R0


神父「――――どうしてこんなことをしたんだ!」


 ある日の教会は珍しく騒がしかった。

 まったくいい意味じゃない。神父が怒ってて、シスターが泣いてた。

 どうやら杏子が何か食べ物を盗んできたらしい。

 ……私からすればちっぽけな悪事だけど、神父にひっついて世の中を良くするだとかなんとか言ってたアイツが、ねえ。


神父「こんなことをして私達が喜ぶと思ったのか? 人様に迷惑をかけてまで腹を満たしたいなど思わない! もしバレなかったらどうするつもりだったのだ!?」

神父「私達の神はいつでも見ている。盗みを働き、嘘をつき、神を裏切ったまま平気な顔をして過ごすつもりだったのか!」

杏子「……」

モモ「お姉ちゃん……」

夫人「私は悲しいわ……杏子がこんなことをするようになるなんて……こんなことをさせてしまうなんて」


 私は冷めた目で見ていた。神なんていやしないし、ましてや助けてくれるわけがない。

 こんな場所だというのに、わかりやすいほどにそれが証明されていた。そりゃこんな場所に信者は増えない。

 やつれて見えたのは勘違いなどではなく、本当に限界だったのだ。もちろんそれは行動を起こした杏子に限ったことじゃない。


 ――でも本当に餓死したほうがマシ? プライドのために死ぬなんて馬鹿らしくない? 相手はそれで死ぬわけでもないのにさ。

 杏子の行動は綺麗事言って怒ってる神父サンより理解できた。なんの力もない人間がこの状況で、こうするしかなかったってわけだ。


神父「反省していなさい」

杏子「……はい」


 杏子は祈りのポーズでうつむいている。あれが懺悔とやらのつもりなんだろうか。

 なぎさならこんなカワイソウな家族を見れば、汚れのひとつもない魔法のケーキでもポンと差し出してやったりするだろうか?

 私にはそんなことはできない。



あすみ「なんかやらかしてきたの?」

杏子「……聞かれてたんだ。幻滅したよね。これじゃ父さんの教えを広める資格もない」

あすみ「そう? 私はよく知らないけどさー……バレないようにやればよかったのに」

杏子「あ――あんたも物盗んできたことあるの!?」

あすみ「さあねー」

679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/16(日) 21:06:38.82 ID:2jwCK4oX0
説法だけではお腹は膨れないからなぁ・・・
状況的にそろそろキュウベェが営業しに来そうだけど。
680 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/16(日) 22:01:18.12 ID:WA9aFN+R0


 杏子はまだ疑うような目で見ている。


あすみ「あーあ、この場所もそろそろおしまいか。せっかく気兼ねなく足を休められる場所ができたと思ってたんだけど、仕方ないか」

杏子「ど……どうして!? あたしのせいでそこまで!?」

あすみ「いやいや、それ以前の問題だよ。こんなガタガタでこれ以上続けてられないでしょ?」

あすみ「強いて言うなら、家族のために盗んでこなきゃ食える物もないような状況になる時点でもうおしまいってやつ」

杏子「そんな……」

あすみ「そもそも、なんでこうなったわけ? 最初からこうだったら生きてこれてないだろうし」

杏子「……もともとうちは今とは違うもっと大きい宗派だったんだ」

杏子「でも父さんはどうしたら世界がより良くなるかって考えて、本部の教えにないことも言い始めるようになって……そしたら本部から破門されて、人も離れた」

あすみ「ふーん、あぁそう……難しい世界なのね」


 もとより私は教会も神父も善とは見ていない。所詮人間だし、ソイツらの中身なんてわからないからだ。

 大きな組織ともなれば何かしがらみでもあったんだろう。足並み外れたことをしはじめるのは大抵気に入られないものだ。


あすみ「まー、ダメだったならしょうがない。ちゃんと頼めば少しは国も面倒見てくれるみたいだよ。早めにこの教会と下手なプライドを捨ててそうするように言ってみたら?」

杏子「いやだ……そんなのいやだ」

あすみ「でもアンタはプライドよりも生きることを考えたから盗みに手を出したんじゃないの?」

あすみ「祈ったってなんにも起きないよ。ていうか、誰かが助けてくれる、誰かがなんとかしてくれるって思いながらなんにもできない弱い人たちって――――……」

あすみ「私は嫌いなんだ」

杏子「……!?」


 ……むっとした感情が伝わってくる。

 まだ悪意ってほど強いわけでもないけど。

681 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/16(日) 23:31:36.58 ID:WA9aFN+R0

あすみ「ま、私を恨まないほうがいいよ? これ以上不幸になりたくはないでしょ?」

杏子「は……? なにそれ」

あすみ「私がアンタたちの世界をよく知らないように、アンタにも知らない世界があるってことかなあ」


 私が煽ったせいで悪い事が起きるのは面白くないので一応それとない忠告をしてみる。が、よくわからなそうな様子だ。

 わからないならそれでもいい。……あるいは。もしかしたらこいつにも素養はあったりして?

 それならそれで、自力で生きられるようにはなるかもしれない。死も身近にはなるけど。


あすみ「私のこと、他に居場所がなくていつも一人でいるカワイソウな子供だと思ってたんだよね? まあ……どう思われるのかくらいは察してたさ。そんなに間違ってはないし」

あすみ「見下してるつもりはないのかもしれないけど、自分よりか弱いと思ってた相手に強く出られると『なんでアンタなんかにそんなことを言われなきゃいけないんだ』って思っちゃうものだよね」

杏子「そんなつもりじゃ!」

あすみ「嘘だ、図星って顔してるもん。まるで心の中で思ったセリフを読み取られたみたいにさ?」

杏子「いや……なんでそんなこと言われなきゃいけないんだとは思ったよ。でも、そうだな、あたしには……なにもできないな」


 ……怒った後は落ち込んだ。

 忙しいやつ。


あすみ「……どうせなるようにしかならないもんだよ。その中で後悔しないように選ぶしかないわけじゃん」


 とはいえ、杏子には選ぶことすらできないのかもしれないけど。

 これからどうするかを一番に握っているのはあの神父サンだ。綺麗事の真綿で自分たちを締め続けるような理想をどこまで追いかけるつもりだろうか。


――――――
――――――
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/16(日) 23:55:14.48 ID:2jwCK4oX0
まぁ、杏子の父親が貧困の元凶・・・じゃない原因なのはあすみもわかってるか、さすがに
683 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/17(月) 00:17:23.51 ID:rQjth1so0


 ふわふわと浮かぶシャボン。

 そこを次々とリボンが切り裂いていきます。――――今日もマミとの訓練。小さな動く目標に狙いをつけるトレーニングです。


なぎさ「今日の狙いも正確ですね! 前よりも短い時間でシャボンをすべて割れるようになってます!」

マミ「ええ!」

なぎさ「これならもぎせんとーでなぎさに勝つ日も近いかもですね〜」


 最初の頃はなかなか狙った場所にリボンを当てられなかったものでした。

 マミのノートには狙う位置やコツなど、その時感じたことが細かく注意書きしてあります。このノートはこれまでの経験の積み重ねなのです。


 訓練に一区切りがつくとマミはノートを見返して、それからなぎさに聞いてきました。


マミ「私、ちゃんと強くなってるわよね」

なぎさ「当然なのですよ! これだけ訓練してますし、実際にいろんなことができるようになってるじゃないですか」

マミ「ええ。そうよね」


 『わざわざ手合わせなんて試さなくてもわかるの。いざという時を経験してきてない人に負けることなんてないって――』


 ――……あの時あすみに言れた言葉。あれをまだ気にしているのでしょうか。


なぎさ「じゃ、今日も魔女退治に行くのですよ!」

なぎさ「終わったらお茶会にしましょう! あと……ちょっと今日の宿題も見てほしいところがあるのです」

マミ「ええ、あとで一緒にやりましょうか」



 二人で陽々と訓練場所を離れていきます。

 最初の頃のマミは、魔女退治となると緊張で顔をこわばらせていました。

 でも今はにこやかで楽しげ。それに安心します。

684 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/17(月) 00:23:15.16 ID:rQjth1so0
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ここまで
次回は18日(火)20時くらいからの予定です
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/17(月) 00:27:02.56 ID:N/zcfhgU0
うーん、マミさんは原作のような挫折を経験してないからちょっと危なげかな?
といってもなぎさ編でも多分なぎさが付きっ切りになってたと思うから、この話だとどうなるんだろうか
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/17(月) 00:29:39.95 ID:N/zcfhgU0
乙でした

杏子の実家の方もですが、一見順調に行ってるように見えるなぎマミ組の方も不安が見えかくれしますね
687 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/18(火) 23:29:59.32 ID:tKjpxPlg0
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今日は無理そうですね…(日付変わるまで30分)
次回は19日(水)夜に。多分。
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/18(火) 23:31:21.04 ID:tfqEfo320
スレ主さん、お忙しいのでしたらご無理はなさらずにー
689 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/19(水) 22:40:27.29 ID:eJ3A4uvo0
うーん、今日も時間がないですねぇ…
今週平日はとれなさそうなので多分次は休日になります。
690 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/22(土) 19:48:30.67 ID:UEEFsOu20



 ――――街を回り、その先で出会った魔女や使い魔を倒し、そろそろ帰ろうかと思い始めた時のことです。

 見覚えのある友の姿を見つけて手を振ります。



あすみ「……ああ、奇遇」

なぎさ「あすみ! あすみも魔女退治なのです?」

あすみ「いや、別に。散歩?」

なぎさ「一人でお散歩ですか?」

あすみ「そうだけど悪いー? 暇つぶしにやるこことしちゃ健康的だと思うけど」


 まあ、一人の暇つぶしといえばゲームや漫画などのインドアなものが浮かぶので、それよりは健康的かもしれませんが。

 ……それにしても、それだけというのもどうにも違和感があるわけです。


なぎさ(そういえば前の時も……)


なぎさ「あっちに用事があったのです?」

あすみ「まあ少し。じゃ、引き続き頑張って」

なぎさ「じつは、こっちもそろそろ終わろうかと思ってたところなのです」

あすみ「ああそうなの」

なぎさ「この後マミの家でお茶会する予定なのですよ! 用事が終わったならあすみもどうです?」

あすみ「私はいい」


 相変わらずつれない返事です。でも、珍しくあすみのことが少しだけわかりました。

 この辺には何もないと思ってましたが、あすみの来た方向を見てみると立派な教会の建物があることに気づきます。


なぎさ「教会……?」

マミ「え?」

なぎさ「ああ、いえ。あすみ、あっちから来たのかなって」

マミ「ええ、多分そうね……」

なぎさ「ちょっとだけ見てみてもいいですか?」

マミ「教会を?」

なぎさ「あ、イヤなら先に帰っていてもいいのですよ! ちょっと気になっただけなので!」

マミ「嫌ってことはないのだけど……でも少し帰りに買い足したいものがあるからそっちを見てきてもいいかしら?」

なぎさ「もちろんです。なぎさも長居はしないと思うので!」


 そう言って、マミと別れます。


 ……なぎさも少し興味が沸いただけです。いつも何かとドライなあすみが通うところはどんなところなのだろう、と。

 同時に、怪しいところではないんだろうとも思いましたから。

691 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/22(土) 20:52:39.60 ID:UEEFsOu20


 とはいえ、扉はしまっています。教会というと自由に出入りできる場所かとは思っていたのですが……勝手に開けちゃってもいいものなんでしょうか。

 どうしたらいいものかと思っていると。


「あれ? ……お客さん?」


 箒を持ったお姉さんが中から出てきて、声をかけられました。シスターさん? って格好にも見えませんが。


なぎさ「は、はい! といってもちょっと気になって来ただけで、とくに祈りにきたとゆーわけではないのですが……!」

「あ、あぁ……ああ! 構わないよ! うち、そうそうお客さん来ないしさ……! でもできれば父さんの話も少しは聞いてってほしいな」


 お姉さんはすごく嬉しそうにして、父さん……こと、神父さんを呼びに行きました。

 ……うーん、気軽に来てよかったのかな? ちょっと寄ってみるくらいのつもりだったので、あまり遅くなるとマミを待たせてしまうかもしれません。


 それにしても、気になることがあるのです。


なぎさ「あの……、ちょっといいですか?」

「?」

なぎさ「顔色がよくないように見えるのです。どこか具合が悪いのですか?」

「……」

なぎさ「ちゃんと食べてますか……?」

「……いや、最近余裕がなくて」

なぎさ「……あ、そうだっ、よかったらどうぞです! もらいものですが、食べきれなくて困っていたのです!」

「えっ……!?」


 もちろん理由は嘘ですが、カバンに入るくらいのエクレアを魔法で作って差し出してみました。

 するとお姉さんは目を輝かせます。


「えっ、いいの!?」

なぎさ「はい!」

「ありがとう!」


 こうしてここに来たのは偶然ですが、喜ばれるのは嬉しいものです。

 しかし、わざわざ家族を呼んで小さなエクレアを分けている姿を見ていると……なんともいえない気持ちがこみ上げてきました。


なぎさ「……」



 神父様はお礼にと心を込めてお話してくれましたが、正直難しくて内容はよくわからないところもあります。

 神様が本当にいるかもなぎさにはわかりません。それでもきっと。


なぎさ(…………魔法は人を助けるためにあるのです。それなら、こういう使い方だってアリですよね!)



 ……教会から出た後、そっと、メッセージを添えて教会の裏に箱を置いていきました。



――――
――――
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/22(土) 21:22:02.93 ID:qQnfB1g90
お、続き来ましたね!
なぎさの魔法なら魔力さえあればお菓子類は出せるからね
とはいえご飯ではないから栄養が偏るなぁ
693 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/22(土) 22:12:40.59 ID:UEEFsOu20


なぎさ「マミ、遅くなってごめんなさいなのです!」


 マミの家につくと、エントランスからマミを呼び出してみましたが、返事がありません。


なぎさ「……あれ? まだ帰ってないのかなあ」

マミ「なぎさちゃん、もしかして待たせちゃった?」


 携帯を取り出して連絡しようかと思ったところで、ちょうどマミが来ました。


なぎさ「なぎさも今来たところなのです」

マミ「どうだった? 私、教会って行ったことないから」

なぎさ「なぎさのほうはですね――――」



 マミと話しながら上にあがって、お茶会をはじめます。

 こっちも思ってたより遅くなってしまいましたし、マミも買い物が長引いたのかなとしか思ってませんでした。



なぎさ「マミのほうはどうでしたか? 時間かかってたみたいですが、どこまで買い物に行ってたのです?」

マミ「そんなに遠くには行ってないけど……ちょっと、魔女を見つけたから倒してたの」

なぎさ「魔女……一人でですか!?」

マミ「え、ええ。大丈夫よ。前は怖かったけど、今はなぎさちゃんのおかげでもう戦い方もわかるようになったから」

マミ「なぎさちゃんや神名さん……他の魔法少女も普通は一人で倒すんでしょう?」


 一人でも今ならきっと大丈夫。

 この前あすみと話したときにはそう言いましたが、今までずっと二人でやってきたから、驚いたのです。


なぎさ「そうですね……も、もうベテランさんですからね。うーん」


 大丈夫……とは言いましたが。やはり心配になってしまうものです。

 一人で戦うほうが危険なことには代わりはないし、仲間がいるなら危険を冒す必要はない、というのはマミも最初の頃から言ってたものですから。

 とはいえ、マミももう契約したてではありません。あの頃から今までで、何かしらの心の変化があったのかもしれません。

 もしかしたら、やっぱりこの前あすみに言われたことも気にしているのかも。


なぎさ「で、でも! 何かあったらすぐになぎさを呼んでくださいね!?」

マミ「……ええ。わかってるわ」


――――――
――――――
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/22(土) 22:52:49.89 ID:qQnfB1g90
うーん、そこはかとなく不安が・・・
695 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/22(土) 23:14:35.32 ID:UEEFsOu20



 まだ太陽の光が差す午後、私はまたあのみすぼらしい家族の住む教会に向かってみて、そして――――。

 ここ数日の空気とは違い、いつになく元気な声に出迎えられた。


モモ「あっ、あすみだ! いつも気になってたの! 今日こそ一緒に遊ぼうよ!」

杏子「お姉ちゃんが遊んでやるから迷惑かけちゃダメだよ。ほら、いつもの丘の木まで競争するか?」

モモ「うん!」

神父「ようこそ。賑やかで悪いね。驚かせちゃったかな。前はいつもこんな感じだったんだけどね……」


 相変わらず人気はないが、青白く痩せこけた顔で、力の入らない声で語るよりはよほどご利益がありそうな場所になった。


あすみ「いや? 元気そうでなにより」


 それより私が気になったのは、微かに魔力を感じたことだ。


 ……まさか、こいつが契約した?

 そう思って杏子を見る。


杏子「? ……一緒に遊ぶ?」

あすみ「かけっこ? そんなの……」


 魔法少女がやれば勝負にならないことだ。まあ、こいつはそれでもおねーちゃんだから手加減するんだろうけど。

 私は身内でもないヤツ相手に手加減してやったって楽しくない。


あすみ「……違う。箱?」


 魔力の元はあれだ。ちょうど、夫人が持ってきた箱に目を移す。そこからよく知った魔力を感じた。


夫人「また今日も贈り物よ。わたしたちの女神様……から」

あすみ「女神様ぁ――!?」

杏子「何? またケーキ?」

モモ「甘い匂い! ケーキだよ!」

杏子「でも、本当に神様からなのかな? ていうか、うちにいるのって女神様だったんだ?」

神父「人がやることにしては不自然な点はある。ケーキは傷みやすいはずだが、外に置かれていても傷んでもいないし、そもそも直接渡せるならそのほうが早いからね」

神父「なんであれ、感謝していただかなければいけないね。さあ祈りを捧げよう」


 …………呆れた。

 どこでここのことを知ったのかは知らないが、よりによってこんな形で施しを与えるなんて。なぎさのやつ。

696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 23:57:35.33 ID:XyxjtxieO
あすみからしたら偽善に見えるのかねー
問題の解決にはなってはいないわけだし
697 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/23(日) 00:26:14.58 ID:1n00ondX0


杏子「……もしかしたら、昨日来た子って関係ないかな」

モモ「エクレアくれた子のこと?」

杏子「箱を見つけたのってあの子が来てからだし、あの時もらったのも生菓子……考え過ぎかな」

夫人「ありえない話ではないけど、でもさっき言ったみたいに不自然なところはあるし、あの子の家がもしケーキ屋さんだったとしてもこう立て続けには無理じゃないかしら?」

夫人「あの子が女神様でもない限り……ね」

あすみ「……」

神父「よかったら、君も一緒にどうかな?」

あすみ「……私はいい。今日は帰る」


 来た早々で帰る私は、遠慮しているようにでも見えたかもしれない。

 しかし、あいつの仕業なら私が食べる意味なんて本当にないからだ。


あすみ(……こんなことしたところで自分たちで何もできないんじゃその場しのぎだ。結局何も解決しない)

あすみ(まさかずっと面倒見るつもりか?)



 人がやることにしては不自然ってのは神父サンも言ってた。

 魔法でやったことだからだ。今のなぎさの魔法なら腐らないようにすることも出来るだろうし、薬すら作れるのだから栄養だってコントロールできる。


 魔法を施しに使うのはまだいい。わざわざ神を名乗って、人間技じゃできないことをやって――――。


あすみ(……こりゃタイヘンなことになるかもね)


698 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/23(日) 00:29:14.54 ID:1n00ondX0
-------------------------------
ここまで
次回は23日(日)夜の予定
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/23(日) 00:34:07.56 ID:R/S5IPfJ0
乙です。

あすみが危惧したことって大抵起こるんだよなぁ・・・
あすみがなぎさに今回の件、どう始末をつけるのか問い詰めそう
700 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/23(日) 21:45:21.04 ID:1n00ondX0


 いつもの場所に寄れば、すぐに訓練してる二人の姿を見つけられた。


あすみ「…………」

なぎさ「あっ、あすみ! 来てたなら声をかけてくれればよかったのに」

あすみ「まだ見てただけ。用ができたら声かけるよ」

なぎさ「それなら、気が済むまで見ていってくださいなのです!」


 訓練の内容は二人での組み手のようだった。

 なぎさのほうがだいぶ余裕で、師匠らしくアドバイスなんかしてる。

 私と一緒の時には見えないような姿だ。師匠と弟子なのだから当然ではあるが、それ以外にも私の知らないような世界はあるんだろう。


 出会った頃からいろんな敵と戦って、目的を持って、なぎさは確実に成長してる。でも変わらないところもある。良い部分も、悪い部分も。

 むしろ目的持ってからさらに青臭くなった部分だってありそうだ。


あすみ「ねえ、なぎさ」

なぎさ「はい!?」


 仕切り直して二戦目をはじめた途中で声をかけられて、なぎさは半分こちらに意識を向ける。まだ余裕そうに澄ましてる。


あすみ「教会の奴らのこと……余計なことするのやめておいたら」

なぎさ「なっ、なんのことやら!」

あすみ「私にはごまかせないのわかってるでしょ。あくまで“女神様”の仕業にしたいってつもり?」

なぎさ「それでいいのですよ。見えないところでも人助けするのが、なぎさの思う魔法少女の役目なのです」

あすみ「……まだ続けるんなら、最後まで責任持ちなよ。どんなことになっても」

なぎさ「……!?」


 どう思ったのか、なぎさはまだ真剣な表情で訓練を続けてる。


あすみ「なぎさ……こっちから見るとパンツ丸見え!」

なぎさ「ふわあっ!?」


 気が逸れたであろう瞬間を狙うようマミにアイコンタクトしといた。

 すると、不意打ちの拘束は成功したように見えたが、

 縛り上げる前にいつのまにやら仕込んでいたシャボンが次々にぶくぶくと膨らんでリボンを破って弾けた。


あすみ「……こんくらいじゃ隙は突けなかったか。つーまんない。残念だったね、マミも」

なぎさ「丸見えなわけないじゃないですか!? 変なこと言わないでください!」

あすみ「あれ、じゃーもっと生々しいの攻めたほうがよかったかな? パンツなんて水着と変わんないし、子供だましって思っちゃうか」
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/23(日) 21:57:02.11 ID:R/S5IPfJ0
なぎさちゃんの魔法少女衣装は元々パンツは見えないようなw
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/23(日) 22:12:18.46 ID:+lEja0lfO
あすみは契約したのか云々言ってたから杏子が素質持ちだと気づいてるくさいか?
703 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/23(日) 23:28:18.54 ID:1n00ondX0

なぎさ「そういう意味じゃないんですけど……っていうか、マミだってそんなことでなぎさに勝ってもうれしくないですよ」

マミ「え、ええ。まあ……そうね?」

あすみ「本当に? まぐれでも一回くらい勝ちたくないの? まだ勝ったことないんでしょ?」

マミ「魔法少女同士で競うのは本来の目的でもないし、なぎさちゃんは師匠なんだから私より強くて当然よ。仕方ないわ」

あすみ「そう? 純粋な実力なんて、本当の戦いじゃ覆ることはいくらでもあるけどね」

あすみ「……要は機転ってやつだって。頭使って、一回くらい本気で勝ちにいってみなよ。負けっぱなしの試合なんてつまんないじゃん?」


 なぎさも過保護だがマミはマミで真面目だから、今までこんな感じだったのかもしれない。


あすみ「で、なぎさならさらにその細工をも捻り潰してみせるんだろうね」

なぎさ「あ、あたりまえです! 師匠ですから! ……なので、マミも遠慮せず来てくださいなのですよ?」

マミ「……ええ。遠慮はしてないわよ?」


 ……まあでも、真面目なほうが寿命は長いのかもしれないな。

 徹底して守られてるのなら、いざっていう時だって来ないんだろう。


 二人を突っついて、ちょっとだけ忠告をして、深くは関わらずに去っていく。


 これがいつもどおりの距離感だった。

 これからどこへ行こうか。まだ明るい。また教会に戻るにも早いし、時間を潰せることといえば魔女狩りに街を見て回るくらいだ。


なぎさ「……」



 …………去り際を見つめるなぎさは少し寂しそうな目で見ていて、でもそれに気づくことはなかった。

 いや、そんなの気づいていたって無視していた。


704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/23(日) 23:41:54.99 ID:R/S5IPfJ0
あすみの方から歩み寄ることはよほどのことがない限り無理だと思うけど・・・
なぎさと関わりを持たないことが悪影響を生んでるよね、多分
705 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/24(月) 00:20:07.27 ID:T9pvnxi10


 だって、私ならアンタのほうが心配だって返すだろう。

 一応、心配はしてるんだろうな。


あすみ『……とりあえずケーキの件、正体バレるような滑稽なことにはなるなよって言っておく』



 姿は見ないまま、最後に気にかかってたことをテレパシーで伝えてから行った。



――――――



なぎさ「――――――……また言いたいことだけ言って、行ってしまいました」

マミ「なんだか、自由そうよね。神名さんって。あんなに思ったこと言うことってできないもの」

なぎさ「自由そう、ですか…… たしかにそう言うことも出来ますけど」


 もっと一緒にいろんなことしたいのに。もっとあすみのことも知りたいのに。

 あすみにはずっとモヤモヤとした気持ちを抱いていました。

 だって、ゼッタイ困ってるのはわかってるのです。


なぎさ「マミは何か言いたいこと、我慢してるのですか?」

マミ「えっ? いえ、そういうわけではないんだけどね?」

なぎさ「そうですか? それならよかったのです」


 些細な雑談でマミと笑い合って、それからまた少し訓練をして。

 そうして、夕焼けを見ながら帰り道を歩きます。

 なぎさにとってはこれがかけがえのない日常です。



なぎさ(そうだ。あすみの話でケーキがちゃんと届いてるのはわかったけど、みんなが元気にしてるか今日も見に行こう!)


706 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/24(月) 00:51:55.56 ID:T9pvnxi10




 それからも教会の人たちの顔色は良くなってて、みんな元気そうで、安心します。

 またちょっとむずかしいお話を聞いて、年の近いお姉さんたちとは普通の雑談をしたり、遊んだりもしました。

 女神様の話もしてくれました。本当はなぎさのことなので、ちょっと照れくさい気分になったけど……。



――――
――――



 ……顔を合わせて会いに行くのはたまにですが、毎日こっそりとケーキは置きに行っています。

 腐ることがなくて、できるだけ栄養満点のものをと念じて。

 それが終わると、文房具を取り出して今日もいつものメッセージを添えます。



なぎさ(見えないところでも人助けするのが魔法少女の役目……)

なぎさ(……そうですよね。感謝されたくてするわけじゃないから、こうして正体を隠しているのです。今日も見られないうちに――)



 その時、誰もいないと思っていた教会の裏――この場所に足音がして、声がしました。



「女神様……?」

707 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/24(月) 00:54:55.90 ID:T9pvnxi10
-------------------
ここまで
次回は24日(月)夜からの予定
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/24(月) 01:01:36.19 ID:jTbVHQ9v0
乙です

あーあ、あすみの危惧通りばれちゃったか・・・
佐倉家が原作みたいな流れにはならないとは思うけど拗れはしそうだなぁ
709 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/24(月) 22:02:28.95 ID:T9pvnxi10


なぎさ「ええっ!?」


 驚きました。そして……何かしなくてはと考えます。

 しかし、戸惑ったところでなぎさには人目をごまかす魔法なんてありませんし、都合よく忘れさせる魔法もないのです。

 そんなのは、たしかに、考えるまでもなく…… とっくにわかってたことでした。


なぎさ「い、いえ! なぎさですよ! 一緒に遊んだ……! 知ってますよね!?」

モモ「知ってる、けど…… 見たもん。なぎさ、なんでそんなほうに行くんだろうなって、また遊びに誘おうかなって思ってたら……」

モモ「キラキラ光って箱が出てきたの。なぎさが女神様なんでしょ!?」

なぎさ「それは……――――」


 そこまで見られてしまっては言い逃れができません。


 仮面のヒーローの素顔がバレるのは、いつかあすみが言ってたように『こっけい』なことでしょうか?

 それどころか今のなぎさは…… この人たちにとっては女神様、なのです。

 感謝されたくてしてたわけじゃないですが……。


モモ「あのね! 女神様に会ったら、ずっと言いたかったことがあるの!」

なぎさ「な、なんでしょうか?」

モモ「いつもおいしいケーキをありがとう……ございます! 私たち家族のことをいつも見てくれて、見捨てないでくれて……!」

なぎさ「そ、そんな、改まらなくても……!?」

モモ「だって、神様なんだもん! これからもどうか……!」

なぎさ「は――はいっ! これからももちろん、なぎさの助けが必要ならお助けしますので!」


 ……頬が熱くなります。

 感謝されたくてするわけじゃなくても、感謝されるのは悪いことじゃないんじゃないか――そう思ったのでした。



――――

――――
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/24(月) 22:42:11.15 ID:jTbVHQ9v0
即効でバレましたなぁ・・・
このなぎさちゃんはすみみとの事とかで心に余裕がないせいか、色々と隙がありますね
711 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/24(月) 23:34:08.49 ID:T9pvnxi10



 約束通り、次の日もマミとの訓練の前に教会へケーキを置きにいきます。


 バレてしまったものはしょうがありません。見られたのはモモだけですが、一家に広まってたらと思うとどうしたらいいか。

 それでも前よりも気を張らなくてよくなったぶん、気分的には楽になりました。

 こっそり、っていうのも意外と疲れるのです。



なぎさ(今日はチョコレートケーキ……)


 ケーキの入った箱を置いて、文房具を取り出していつものメッセージを書きます。

 それから戻ろうとすると、待っていたようにモモがいました。


なぎさ「あのっ、なぎさのことって他のみんなにも話しました?」


 モモは首を横に振ります。ちょっとホッとしました。

 さすがに一家の全員から女神様と崇められたら気後れしてしまいます。


なぎさ「じゃあ、ヒミツにしててくれませんか? みんなと会うときのなぎさは、ただのなぎさだと思ってほしいのです」

モモ「女神様ってすごいです! こんなによくしてくれるのに謙虚で。本当に今日もありがとうございます!」

なぎさ「えへへ……」


 ……他の人からは女神様と呼ばれないで済むみたいですが、モモの態度は元には戻らなさそうです。


モモ「これからはもっとお祈りを頑張るので……!」

なぎさ「は、はい」

モモ「……明日はモンブランがいいな、なんて」


 何かかしこまった雰囲気と思ったら。


 これも、すがおがバレたっていうのでしょうか。

 たしかに見られてしまったけど、ホントのなぎさは女神様ではないのです。

 でも、女神じゃなくても魔法で叶えることはできます。なぎさの得意な、幸せのお菓子の魔法。


モモ「あ! ごめんなさい、わがまま言っちゃって!」

なぎさ「いえいえ、そのくらいならお安い御用なのですよ! 女神様にまかせなさいなのです!」

712 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/25(火) 00:35:04.91 ID:LUNAnkwB0

モモ「もう行っちゃうんですか?」

なぎさ「はい、これから予定があるので…… それが終わったらまた来るのです!」

モモ「はい! いつでも待ってます!」


 ふかぶかとお辞儀をする姿に手を振り、訓練場所へと行くことにします。

 ――……その時、なぎさの背後では、モモの姿を探して杏子が外を見に出てきていました。


杏子「……モモ、そんなとこでなにやってんの?」

モモ「ううん、ヒミツ! それより今日も裏見てみてよ。女神様に感謝の祈りを捧げなきゃだよ!」

杏子「お、今日も来てるんだ! 今日は何かな?」



 素直に喜んでいた杏子でしたが、なぎさの行ったほうを見て、少しだけ不可解な表情を浮かべます。

 とはいえ、その場を見ていない杏子にはすぐに正体と結びつけることは出来なかったのですが――――というのは、なぎさの知らない部分のおはなし。



――――



なぎさ「マミ、遅くなってごめんなさいなのです!」

マミ「いえ。でも、最近少し来るのが遅いことが多いけど……もしかしてまた教会に?」

なぎさ「ま、まあそうですね!」

マミ「お祈りでもしてるの? そんなにハマるような場所なのかしら……?」

なぎさ「え、ええと! お祈りもしてませんし怪しいものにハマったとかっていうわけじゃないのですよ!? むしろなぎさが祈られてるっていうか……」

マミ「……え?」

なぎさ「なんでもないのです! さあ訓練訓練!」



 半ば強引にごまかすように訓練に移ります。

 マミは同じ魔法少女ですし、モモに女神様……なんて呼ばれてることは、なんとなく恥ずかしいので知られたくありませんでした。



 ――――モモにも言ったので、訓練が終わったらまた教会に向かいます。今度はただのなぎさとして。



なぎさ(あ。あすみ……?)


 扉を開けた途端にまず目に入ったのは、教会の家族ではなくあすみの姿でした。

 ガラ空きの椅子の端にぽつりと座っていて、なんだか寂しそうに映ります。

 そうでした。最初にここに来たのもあすみがきっかけだったことを思い出します。

 特に何をしている様子でもなく、ただそこにいるだけ。


あすみ「…………」


 あすみもこちらに気づいただろうに、目を合わせてくれません。

 話しかけるなオーラと言いましょうか……意図的に無視している雰囲気を感じました。



なぎさ(さすがになぎさもそのくらいは読めますけどね……)


 そうしていると、あすみが席を立ちました。なぎさと入れ違いになるように去っていくつもりみたいです。

 モモたちがいるので厳密には一人じゃないですけど、一人になりたかったんでしょうか……? そんな感じにも見えました。

713 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/25(火) 00:40:23.58 ID:LUNAnkwB0
------------------------------
ここまで
次回は27日(木)夜の予定です
714 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/28(金) 00:52:16.44 ID:5lUs1dkn0


 しばらくあすみのことを考えてましたが、声をかけられます。


夫人「あら、ようこそ。今日もきてくれたのね」

モモ「わあ! いらっしゃい!」


 ひときわ明るい声で寄ってきたモモの手には分厚い本があります。勉強中だったのでしょうか?


なぎさ「むずしそうな本を読んでるんですね〜」

杏子「まあそうだね。これは聖書だよ。だから、神様の勉強。なんだかモモったら急に精を出しててさ。今日なんて遊ぶより勉強するって言うから驚いたよ」

神父「あのケーキのこともあって、目覚めたのかもしれないね。もちろん私としては嬉しい限りだ」

モモ「うん! だって今こうしているのも全部神様のおかげなんだもん!」


 モモはそう言って満面の笑みをなぎさに向けます。

 それは、なぎさを神様と思ってのことです。


なぎさ「ふふ。あ、あんまり無理はしなくて良いのですよ」


 ――なんて、ちょっと調子にのって言ったら、モモ以外からは『?』というような反応を返されてしまったのですが。


神父「まあ、ずっと本を読んでいたら目を悪くしてしまうかもしれないし、小さい頃は外で遊ぶことも大事だね」

神父「せっかくなぎさちゃんも来てくれたんだし、一緒に遊んできてもいいんだよ」

モモ「うん。じゃあ、遊びに行きましょう! めが……、なぎさ!」

なぎさ「は――はい!」



 それから、今日は暗くなるまでモモと杏子と一緒に三人で遊びました。

 学校の友達との遊びとなるとゲームなどのインドアになることが多いので、めいっぱい身体を動かす遊びはむしろ新鮮に感じます。

 もちろん、手加減はしなくちゃならないのですが……。


 魔法少女になってから近い年の子と遊ぶこと自体減ってしまったので、一緒に遊ぶ時間は楽しい時間でした。

715 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/28(金) 01:00:48.86 ID:5lUs1dkn0
-------------------------------------------------------
亀更新すぎるんですがとりあえーず1レスだけ投稿しつつ…
次回は28日(金)夜からの予定です
716 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/28(金) 23:19:05.45 ID:5lUs1dkn0
――――――



あすみ「…………」


 ……なんとなく暫く外から眺めてたら、なぎさと教会の娘らが飛び出していくのが見えた。


 ケーキの件からなぎさがここの奴らに関わってることは知ってた。

 飢えなくなって多少賑やかになってからも私一人だとまだ静かだが、なぎさが来たら空気はまるで別物へと変化してしまった。


 なぎさはああいうやつだから。マミが来てから余計に元気になってるみたいだし。

 あの空気の中にいる気はなかった。忠告ならこの前に済んでる。



あすみ(寂しい? 違う。別にそんな感情を埋めるために立ち寄ってたわけじゃない)



 ――だけど、なんか。

 なにかが気に入らなくて、立ち去った。


――――――
――――――




モモ「め…… なぎさ、ちょっとあっちで話せる?」



 ――――また次の日も教会に行くと、みんな歓迎してくれて、とくにモモはリクエストのモンブランのケーキを喜んでくれました。

 本当にすごい、ありがとうって。

 わざわざモモは教会の裏で感謝を伝えてくれたのです。


 でも、なんだか、昨日よりも少し元気がないようにも見えました。


なぎさ「あっ、またリクエストあったら聞きますよ?」

モモ「えっと、じゃあ、すっごくひさしぶりに豆腐じゃないホンモノのお肉とかも食べたいなぁ……って」

なぎさ「あ……それはできないのです。ごめんなさいなのですが……実はなぎさ、お菓子しか出せないのです。それもチーズを使ってないお菓子だけで……」

モモ「えっ、い、いいえ! ケーキ大好きです! こちらこそわがままを言ってしまってすみませんでした!」

717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/28(金) 23:35:40.23 ID:z3gxEXvB0
なぎさはお菓子しか出せないからね
ケーキばかりなのは流石にね

あとあすみが何か複雑な感情抱いたね、嫉妬?
あすみも意地張らないで少しでもなぎさに歩み寄れればねぇ・・・
718 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/29(土) 01:14:39.12 ID:TAt5j0GZ0


モモ「……本当にごめんなさい、女神様。全然信仰を増やせなくて……。こんなに良くしてくれてるのになにもできてないです」

なぎさ「そ、そんなの、全然気にしてないのです……! ――――あ、というか……」


 なんと言っていいかわからず、言いかけた言葉を引っ込めます。それと同時に胸が痛みました。

 こうやって申し訳なさそうにされると困ってしまいます。

 なぎさは本当は女神様じゃないから……。


モモ「このままじゃうちは教会じゃなくなってしまうかもしれません……だから、少しでいいので、協力してもらえませんか?」

なぎさ「ええと、なぎさはなにをすれば……?」


 モモのことは今ではただ純粋に、なぎさのお友達だと思ってます。

 だから、神も魔法少女も関係なく、できることなら協力はしたいと思うのです。……でも、何か嫌な予感がします。


モモ「『神様として』布教を手伝ってほしいんです!」

なぎさ「でも、それは……」

モモ「お願いします! こんなにすごい神様がいるんだって知ってもらえれば、みんなも信じてくれるはずだから……!」


 いつになくモモは食い下がります。

 当たり前です。自分の家の命運がかかっているのですから、そう簡単には引けません。

 なぎさが『神様として』魔法少女の力を見せつければ、信仰してくれる人は増えるかもしれません。モモの家は教会を続けていけるかもしれません。


なぎさ「……………あの、ですね」


 ……でも、もう限界だと思いました。

 これ以上自分を神様だなんて言い続けたら、人を騙してるのと同じ。



 そう思って言いかけた言葉は、不意に表のほうから響いた声のせいで遮られました。


719 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/29(土) 01:18:30.05 ID:TAt5j0GZ0
>>718 【訂正】 数行抜けてる!
------------------------------


モモ「……本当にごめんなさい、女神様。全然信仰を増やせなくて……。こんなに良くしてくれてるのになにもできてないです」

なぎさ「そ、そんなの、全然気にしてないのです……! ――――あ、というか……」


 なんと言っていいかわからず、言いかけた言葉を引っ込めます。それと同時に胸が痛みました。

 こうやって申し訳なさそうにされると困ってしまいます。

 なぎさは本当は女神様じゃないから……。


モモ「みんなが話を聞いてくれないのは、きっと、神様なんていないと思ってるからです。神様はこうしてちゃんといるのに」

モモ「今日は、学校でも神様のこと馬鹿にされてモモの家がヘンだって言われて……すごく悔しかったんです」


 今まで見たことがない怒りの表情を見せます。それにきっと、その怒りはなぎさのためでもあるのです。

 モモが元気がないのはそのことがあったせいでした。


モモ「このままじゃうちは教会じゃなくなってしまうかもしれません……だから、少しでいいので、協力してもらえませんか?」

なぎさ「ええと、なぎさはなにをすれば……?」


 モモのことは今ではただ純粋に、なぎさのお友達だと思ってます。

 だから、神も魔法少女も関係なく、できることなら協力はしたいと思うのです。……でも、何か嫌な予感がします。


モモ「『神様として』布教を手伝ってほしいんです!」

なぎさ「でも、それは……」

モモ「お願いします! こんなにすごい神様がいるんだって知ってもらえれば、みんなも信じてくれるはずだから……!」


 いつになくモモは食い下がります。

 当たり前です。自分の家の命運がかかっているのですから、そう簡単には引けません。

 なぎさが『神様として』魔法少女の力を見せつければ、信仰してくれる人は増えるかもしれません。モモの家は教会を続けていけるかもしれません。


なぎさ「……………あの、ですね」


 ……でも、もう限界だと思いました。

 これ以上自分を神様だなんて言い続けたら、人を騙してるのと同じ。



 そう思って言いかけた言葉は、不意に表のほうから響いた声のせいで遮られました。


720 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/29(土) 01:21:49.91 ID:TAt5j0GZ0
---------------------------------------
ここまで
次回は30日(日)夜からの予定
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/29(土) 01:22:44.43 ID:XlhuLAgC0
あすみが危惧した通り、なんかめんどくさい展開になってきましたね
722 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/30(日) 21:30:57.29 ID:J12IF2ye0



*「ここがアイツの家? こんな町外れのド田舎みたいなとこにホントーに住んでるヤツなんていたんだな!」

*「おい、嘘つきモモ! きてやったぞ! 歓迎しろよ!」


 なにやら乱暴な声です。

 モモと一緒に表に駆け寄ってみると、モモと同じくらいの年の男の子二人がいました。


モモ「あ、あんたたち…… 何しに来たの!?」

*「お前がクラスの人みんなに『お願いだから来てください〜』って頼んでたから見にきてやったんだよ」

*「てかマジで来たのオレらだけ? オレらってやさしー。みんなモモの家はおかしいから近づいちゃいけませんって言われてるもんな」

モモ「みんな? そんなはずない!」

*「ホントだよ。モモと違って嘘つきじゃないし。モモには言わないだけだよ」

なぎさ「あ、あなたたちはバカにするためにここまできたのですか……?」


 ムッとして尋ねます。興味がないなら来なければいいのに。

 モモは学校でも広めようとしてたみたいです。モモを馬鹿にした人たちというのはこの二人なのでしょう。


 表で騒いでいたのに気づいたのか、神父さんと杏子も出てきました。


神父「何やら声がしたが、お客さんかね……?」

杏子「あんたたちモモのクラスメイト?」

*「あ、嘘つき宗教の神父だ! 逃げろー!」

*「神父さん! 信者を増やすためなら嘘言ってもいいんですか?」


 嘘……。さっきも『嘘つき』って言われていました。

 もしかして、それなぎさのしたことが関わっているのでしょうか。


神父「嘘……とは何のことかな? 嘘はもちろん良くないよ。娘たちにもそう言って聞かせているが」

*「じゃあこの教会に困ったときに助けてくれる女神様って本当にいんの? 女神様が毎日ケーキくれて、願いを聞いてくれるって!」

神父「ああ、ケーキのことは心当たりがあるが、願いというと……――」

モモ「本当だよ! 今日のモンブラン、私がお願いしたんだもん」

杏子「モモ、それホントに!? 偶然とかじゃなくて?」


 モモの言う願いとは、あのリクエストのことだったのです。

 なぎさは大した事はできませんし、大したことをした気もありませんでした。でもモモにとっては十分すぎるほどの奇跡で――。


モモ「女神様、お願いします! 嘘つきじゃないって証明してよ!」

723 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/30(日) 23:18:39.75 ID:J12IF2ye0


なぎさ「………………」


 なぎさがここで何もしなければ、モモは嘘つきって言われ続けるのでしょう。

 もしかしたら神父さんや杏子にも怒られてしまうかもしれません。


なぎさ「…………」


 それに……、

 モモからは『見捨てられた』と思われてしまうでしょう。そう思うといても立ってもいられず――。


 ……ソウルジェムから魔力を練りました。


なぎさ「……これ、明日の分のケーキなのです!」

杏子「な、何もないところから!」

神父「なんと…… 人の力ではないのかもしれないとは薄々思っていたが、君が…… いや、貴女が……」

なぎさ「き、気づいてると思いますが、腐ったりしませんので……受け取ってください」


 メッセージはないけれど、いつもと同じ箱入りのケーキです。


*「う、嘘だろ!? なんかの手品だよな!?」

*「いやいや……信じらんないけど、これ手品とかじゃないって! 神様って本当にいたんだぁ……」

なぎさ「……」

モモ「あ、ありがとうございます! ほら、わかったでしょ!? 嘘つきなんかじゃないんだから!」

*「あ、あの……神様? お、オレらのこと祟ったりしないですよね?」

なぎさ「……きょ、今日のところは許しててあげるのです。ただし、これからモモのことをバカにしたら許しません」


 男の子たちは、ぺこぺこと謝って帰っていきました。


 ……やってしまいました。これでもう、モモ以外からも今までのように接してもらえなくなるかもしれません。

 でも、騙したままじゃ、やっぱりダメだと思うのす。


杏子「モモは知ってたんだな」

モモ「うん。たまたま見ちゃって……」

なぎさ「あの、モモ。また少し話してもよろしいでしょうか……?」

モモ「?」

724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/30(日) 23:34:59.17 ID:+oCQ2JHR0
魔法バレしちゃったか
725 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/31(月) 00:41:05.49 ID:g+caFouE0


 教会の裏。ふたりになると、なぎさは決心します。


なぎさ「実は……なぎさは神様ではないのです」

モモ「え……!? で、でもっ、ケーキを出してずっと助けてくれたじゃないですか!? さっきだって!」

なぎさ「あれは魔法なのです!」

モモ「魔法……?」


 こんなことを急に言われたって混乱するでしょう。

 モモの前にソウルジェムを見せます。手に乗せて差し出した宝石をモモは呆然と見ていました。

 思い切って変身してみせると、更に驚いた表情になりました。


なぎさ「今まで隠しててごめんなさい。なぎさは……魔法少女なのですよ。今見せた宝石が魔力のモトで、こうやって変身して魔女と戦って街の平和を守っているのです」

なぎさ「なぎさもただの人間なのです。キュゥべえと契約すればみんな魔法少女になれるのですよ」

モモ「み、みんなって、モモもなれるの……? モモもケーキを出せるように……?」

なぎさ「ケーキを出したのはなぎさの願いから生まれた魔法です。キュゥべえが願いを叶えてくれて、その代わりに戦うことになるのです。だから、そう願えば……」

なぎさ「……お、怒ってませんか? 騙してたこと!」

モモ「ごめんなさい…… まだ混乱してて…………」

なぎさ「そ、そうですよね! こんなこといきなり言われても困ってしまいますよね……」

モモ「…………」

なぎさ「では……もう行きますね。みんなの前で話す勇気はなくて。でもモモには知っていてもらいたかったのです」



 ……落ち着かない気持ちのまま変身を解いて表のほうに向かい、教会から離れていきました。

 みんなと今なんて話したらいいのかわかりません。

 明日からどうすればいいのでしょうか。


726 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/05/31(月) 00:52:59.00 ID:g+caFouE0
---------------------
ここまで
次回は2日(水)夜の予定です
727 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/03(木) 22:48:22.10 ID:pVwAJIwe0
――――――
――――――


 中に戻ってみると、みんなまだ女神様――なぎさからもらったケーキの箱を神妙な表情で眺めてた。


神父「神様は私達を見捨てないはずだとは信じていたが……こうして目に見える形で姿を現すことがあるとは、正直思っていなかったな」

夫人「そうね。でも、目の前で見てしまったもの。まさか本当にあの子が女神様だったなんて……」


 まだみんな不思議そうにしてるみたい。

 人の力じゃありえないこと。それを神の力だと思っていたけれど、さっきの話はそれを否定した。


モモ「おねえちゃん」

杏子「モモ、どうした? そういえばなんか話してきたの?」

モモ「うん。……ちょっと」



 みんなより一足先に部屋のほうに戻っていく。そこでお姉ちゃんにさっきのことを話してみた。

 まだ整理がつかないから、まずは聞いたことをそのまま。



杏子「実はさ、前にモモが裏で話してるの知ってからちょっと怪しい気はしてて、もしかしたらなぎさが女神様なんじゃないか……とか考えたりはしてたんだ」

杏子「だって、あんなタイミングよくなぎさが来てすぐケーキ見つけるって普通ないでしょ。……でも、ホントに合ってたって思ったら今度は魔法少女って」


 今も信じられない。でも、そんな変な嘘つく意味もない。

728 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/03(木) 23:36:10.26 ID:pVwAJIwe0

モモ「女神様だと思ってたなぎさは魔法少女で……じゃあ女神様は本当はいないの?」

杏子「あのメッセージに書いてあった『女神様』はいないだろうけど、神様はいるよ。最近熱心に祈ってたのもきっと無駄じゃないさ」

モモ「う、うん。そうだよね……」

杏子「それにしても、人間と魔法の力を与える契約なんてするやつがいるっていうのか……?」


 そしたら、このプライベートな空間で聞くはずのない知らない声とともに小さな影が現れた。


「うん。いるよ」

杏子「わ、わぁっ!?」

モモ「も、もしかして……」

QB「僕がなぎさの言ってたキュゥべえだよ。魔法の使者さ。願い事があれば叶えてあげることができる」

杏子「……」

モモ「……」



 お姉ちゃんと二人で顔を見合わせる。そのときわたしたちが思いついた願い事は“ふたつ”だった。



――――――

―――
―――



なぎさ「み、みなさんこんにち……あ、あれ? お客さん?」


 あれからなぎさは気まずくて、昨日はついに顔を出しませんでした。

 あの時は渡したのは『翌日の分』でした。だから、まだ今日の朝までは足りているはずなのです。


 今日はちょうどお休みなので、朝に来てみました。

 だって、助けてほしいというのはモモからの頼みでもあるのです。今から見捨てるわけになんていきません。


 ――――でも、そこにあったのはいつもとは違う光景で。


神父「ちょうどよかった。……どうぞお入りください」

なぎさ「ふえ……?」

神父「日曜日は礼拝の日。皆様は神様……いえ、『貴女』のためにお集まりいただいているのです」

なぎさ「……ふぇぇ!?」


 中にいるのは決して大人数ではありませんが、今までと比べれば多い人数です。

 子連れの家族も多く……あの時の男の子も来ていました。

 その視線が一斉にこっちに向きます。


729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/04(金) 00:08:15.73 ID:Q8p8joRH0
あー、杏子がひょっとしたらモモっも契約しちゃったのか・・・
この話だとなぎさは魔法少女の真実知らないままだし、こりゃとんでもないことになりそう
730 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/04(金) 00:22:20.27 ID:DRJfaEhv0


*「この子がその!?」

*「信じられない……見た目は普通の子供なのに! でもそれも聞いたとおりだわ……」

*「お祈りすれば私達にも奇跡が起こるの!?」


 たしかになぎさの魔法で、ここのみんなのことは助けることができました。

 でもなぎさはこんなに多くの人の『神様』にはなれません。どう答えようか迷っていると、神父さんが制しました。


神父「静粛にお願いします。お祈りや信仰とは下心を持ってするものではありません」

神父「『していただく』のではなく、神の為、人の為――ひいては世の中の為に自らが奉仕すること。そう考えているからこそ神様は目を向けてくださるのだと信じています」

神父「……そう、ですよね?」

なぎさ「は、はい。なぎさもそう思います」

なぎさ「すぐにみなさんの悩みが解消するわけじゃないかもしれませんが……きっと、良いことしてればいつかは報われると思います」


 ……結局なぎさは曖昧なことしか言えませんでしたが、みんなは納得してくれたみたいでした。


*「今日はお試しのつもりだったけど、これからもお祈りしてみようかな……」

*「でも……女神様? 怒られるかもしれませんが今は本当に困ってるんです。これから大事なピアノの発表会が控えてるのに指を骨折してしちゃって」

なぎさ「おケガですか……それくらいなら、なぎさの力でも治せるかも」

*「ほ、本当ですか!?」

なぎさ「――はいっと、これでどうでしょう?」


 女の子の差し出した手を包み込み、その中で見えないようにソウルジェムを具現化して魔力を使いました。


*「あ、あ! 治ってる! ありがとう、ありがとうございます!」


 その言葉に教会内は一斉に沸き立ちました。

 ……なぎさの魔法を見た男の子もいるし、戻れないのは今更です。でも。

 治ってよかったという安堵と、文字通り神様のように称賛されるてれくささ。それと同時に、騙しているという罪悪感が膨らみます。


モモ「…………」


 モモのほうを見ると目が合いましたが、すぐに隣にいる杏子のほうを見てしまいました。

 二人は何を考えているのでしょうか。それはなぎさにはわかりません。


――――
――――
731 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/04(金) 00:25:45.05 ID:DRJfaEhv0
--------------------------
ここまで
(水)はちょっと仮眠とろうとおもったら朝まで寝てました
次回は5日(土)夜からの予定です
732 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/06(日) 00:14:20.79 ID:Zsqn73UJ0


 礼拝が終わるとお客さんが神父さんと話しにきました。この前見た男の子も一緒にいますし、その子の母親なのでしょう。

 なんとなくやりとりを見ていると、何かを渡して頭を下げてから帰っていきました。


 ……なぎさは今日は、初めて見る人たちに注目されてすっかり疲れてしまいました。しかし、ここにきた目的を忘れるわけにはいきません。


神父「神様――いえ、本来ならこうして直接話すことすらおこがましいのですが……」

なぎさ「そ、そんなにかしこまらなくてもいいのです……! それで、なんでしょうか?」

神父「うちの教会にもあれからこうして私達の教えを聞いてくれる人がきてくださるようになりました」

神父「一昨日のことがあってから、あの男の子が広めてくれたみたいでね……モモから聞いた話だと、あの子たちはクラスでも発言力の高いガキ大将だったらしい」

神父「あの子たちの友達、親、そのつながりから興味を持ってもらえたようで、あのご婦人は息子がモモをいじめてすまなかったとお詫びまでしてくれて……」

なぎさ「そうだったのですね……」


 あの時神父さんや男の子たちの目の前で力を使ったことがきっかけでこんなことになるなんて。

 みんなを騙してしまうことにはなりましたが、めでたし……なのでしょうか?


神父「なんと感謝すればいいのか……。これからはなんとか暮らしていけそうです。貴女のおかげで私達は、生活していける力まで手に入れることができました」

なぎさ「! そ、そうですかっ。よかったのです!」

神父「これからもどうか私達を見守りください」


 そんなとき、向こうから家族を昼食に呼ぶ声がしました。

 今までずっと魔法のケーキを差し入れてきましたが、ついになぎさが何かをしなくてもよくなったのです。


 あの時は叶えてあげられませんでしたが、モモもやっと本物のお肉を食べられます。

 ……すれちがいざま、モモはこっちを見てそっとつぶやきました。



モモ「……ありがとう」



 真実を知っているのはモモだけ。

 モモはまだなぎさが話したことは胸に留めたままのようです。少なくとも、神父さんには話していません。

 これからもずっと、本当のことは知られないままなのでしょうか……?

733 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/06(日) 00:17:47.84 ID:Zsqn73UJ0
-------------
次回は6日(日)夜に…
734 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/06(日) 21:04:20.12 ID:Zsqn73UJ0
――――――
――――――


 ――――……わたしたちが思いついた願い事は“ふたつ”だった。


モモ「……ぜんぶ叶っちゃったね」

杏子「……そうだね」


 ひとつは、なぎさのようにたべものを生み出す魔法を手に入れること。なぎさは本当は神様じゃなくてモモたちにもできるなら、モモたちがやるべきだ。

 そしてもうひとつは、うちが教会を続けていけるようにすること。


 結局その時にはまだキュゥべえには願わないで、その次の日になったら、なぎさが力を見せつけたときの話が広まってた。


モモ「早まらないでよかったの、かな?」

杏子「じゃあ……他の願いにする?」

杏子「まだ叶えられるんだよね。どんなことでも」

モモ「他のこと……」


 あの時すぐに浮かんだのはふたつで、他のこととわれるとすぐには浮かばなかった。

 美味しいものを食べたり、キレイなお洋服を着たり、たくさんのお金をもらったり……とか。

 今よりさらにイイ思いをすることもできるんだろうけど、そのために願うってどうなんだろう? なんだか、ズルしてるような気がした。


モモ「お姉ちゃんはなにか思い浮かぶの?」

杏子「いや……。でも」

モモ「?」

杏子「なぎさのことも契約のことも、父さんたちに話さないでいいのかな。あたしたちだけで抱えていていいことじゃない気がするんだ」

モモ「…………」


――――――
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/06(日) 22:32:56.17 ID:SbtzUd9Q0
杏子たちはまだ契約してなかったのか
話さないと原作同様に禄でもないことになりそう・・・
まずはあすみに話して欲しいなぁ
736 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/06(日) 23:24:39.18 ID:Zsqn73UJ0


 あれからはなぎさも毎日教会に行くことはなくなって、今までどおりマミと訓練したりパトロールに行ったりして過ごしました。


なぎさ(思えば最近は訓練で見てられる時間も減ってしまってて……マミには申し訳ないことをしてしまいました)

なぎさ(今日も訓練しようってマミにメールしてみますか。でも、たしか今日は――)


 一週間ぶりの礼拝の日。みんなは元気にやれているのでしょうか。

 マミとの予定は午後にして、あの教会のある街の外れのほうに向かうことにします。


 すると、その途中であすみと鉢合わせます。そしてなぜか……引き止められてしまいました。


あすみ「……今あいつらに近づかないほうがいいよ」

なぎさ「な、なんでですか?」

あすみ「教会は閉まってる。畳むことにしたんだってさ」

なぎさ「え……!? そんな、どうして? この前ちゃんと人も来てたのに?」

あすみ「人は来てるよ。だからアンタが近づいたらヤバいことになるんだって」


 あすみはそう言いますが、なぎさにはなにがなんだかまったくわかりませんでした。

 でも、わからないままにしたくはありません。


なぎさ「……何かが起きているのですね。もしかしたら、それってなぎさのせいでしょうか?」


 わからないなりに思い至ったのは、なぎさの嘘がバレる日が来てしまったのかもしれない――ということでした。

 なぎさにもみんなを騙してた自覚はありました。おそらく、それがみんなにバレた時には良くないことが起こるだろう、ということも。


なぎさ「そうだとしたら、なぎさがなんとかしないとです! もちろんそうでなくても……何かあったら助けるって約束しました」

あすみ「…………」


 あすみの横を抜け、さらに道を進んでいきます。

737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/06(日) 23:29:33.77 ID:SbtzUd9Q0
あ、これは・・・
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/06(日) 23:51:26.83 ID:wu2qOrfTO
なーんか杏子の父親の矛先がなぎさに向かいそうだな
739 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/07(月) 00:37:29.53 ID:0B5p2dYf0


*「あ、女神様だ!」

*「女神様!」

なぎさ「え?」


 教会の建物の前にはたしかに人が集まっていて、それを見た時なぎさは責められるんだと覚悟していました。

 でも、その反応は予想と違いました。この前と変わらない照れくさくなるような呼ばれ方。バレてはいないのでしょうか?


 そう思った時、扉にある大きな貼り紙が目に入ります。


なぎさ「これは……」


 『申し訳ございません。私達は皆様を騙してしまいました。
  女神と名乗った者は神などではありませんでした。魔女だったのです。
  償いとして今日でこの教会は終わりにします』


 貼り紙には目立つ赤い文字でこう書かれていました。

 正体がなぎさたちが倒すべき“魔女”として書かれているのには悲しみを覚えましたが、ますます疑問がわきました。


なぎさ「どうしてこれを読んだのに、みんな……?」

*「女神様でも魔女様でも本当に力はあるなら教会なんてどうでもいいわ。もともと神なんか信じてたわけでもないもの」

*「そうだそうだ。あいつらなんか何もできないくせに!」

なぎさ「…………」


 ……教会に来てくれた人たちは魔法の力で起きた奇跡に興味を持ったのであって、教えに興味を持っていたのではなかったのです。

 それならもう、これで神様ごっこはちゃんと終わりにすることにします。


なぎさ「みなさん、まだ騙されてますよ。……ここまでバレちゃったらしょうがないから言いますけど!」

なぎさ「傷が治ったなんてサクラです! ほんの冗談だったのですよ。魔女っていうのは……たぶん、『嘘つき』って意味なのです」

なぎさ「……だから、ごめんなさい。魔法なんてあるわけないのですよ」


 みんなしばらくざわめいていましたが、なぎさにそう言い張られては仕方ないと思ったのか、次第に興味をなくしたように帰っていきます。

 ……良くも悪くも、彼らの多くは目に見えるものしか信じようとしない人たちでした。

 教会という大人の関わる組織がついていればまだしも、なぎさだけでは神というにも魔女というにも、常識を覆すには説得力が欠けるというものです。


 結局最後の最後まで、なぎさは嘘つきになってしまいました。でも神父さんたちだけが悪く思われたままになるのはあんまりだと思ったのです。

740 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/07(月) 00:40:42.06 ID:0B5p2dYf0
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次回は8日(火)夜の予定
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/07(月) 00:43:20.65 ID:4MRhPWBD0
やっぱりこんな感じになったか
>>738の通り神父がなぎざに何か言いそうだなぁ・・・
742 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/08(火) 23:22:51.29 ID:YTdhnism0


 やがて表は静かになって、なぎさはしばらく扉の前に立ち尽くしていました。

 いつもは開放されていたはずの扉でしたが、今は鍵がかけられているようです。


なぎさ「…………」


 もう一度貼り紙の字に目を向けます。

 なぎさはもう、ここには来てはいけないのでしょう……。友達だと思っていたモモとも、もう……。


 そんな時、中から声がしました。


モモ「……なぎさ、外にいるんだよね?」

なぎさ「! ……モモ?」

神父「やめなさい……モモ」


 もう一つ聞こえてきたのは、それを制止する神父さんの声でした。


神父「あの子は神を騙った。許されない事だ。それに、その力は神の力ではなかった」

神父「私達は日々祈っている。しかしそれは、すべてが叶えられるわけじゃない。世の為に奉仕する行為こそが重要なのだ」

神父「聞くところでは、例の契約は『何でも叶える』のだろう? 彼女が何を願ったかは知らない。だが、もし平和のための布教を願ったらどうなる?」

神父「文字通り、叶えられるのだろう。だがそこにはなんの過程もない。どんなに良いことを願ったとしても、自らの思い通りになる奇跡など……私達にとっては邪悪でしかないんだよ」

なぎさ「…………っ」


 神父さんたちからすればなぎさたちは卑怯に見えるのでしょう。

 しかし、そう言い切られてしまうと何かモヤモヤとした気持ちが沸き起こりました。

 ……怒りでしょうか、悲しみでしょうか。なぎさは叶えてもらったことに後悔なんてしてないから。でも、なんと言い返せばいいのかわかりません。


神父「得体の知れぬ存在に望みを叶えてもらう契約なんて、古より伝わる悪魔に魂を売り渡す契約と何も違わない」


 キュゥべえは得体の知れない存在だなんて……――そう口に出そうと思いましたが、

 よく考えればキュゥべえについて知ってることなんてほとんどありませんでした。


神父「そして、そんな力に頼らなくては誰も寄り付かぬ教会など……もう私達も諦めるべきだったんだ」

なぎさ「こ、これからどうするのですか?」

神父「仕事でも探すさ。君が心配することではないよ」


 なぎさは突き放されたのでしょうか。

 しかし、神父さんの声は悲しげでありながらもどこか吹っ切れたようにも聞こえました。


 ……多分、なぎさはもうこの家に関わることはなくなるのです。

743 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/09(水) 00:21:44.00 ID:Qe7EciPy0


あすみ「邪悪な力だとしてもそれに命拾われたのは事実だろーが! なんて思っててもいいけどまずはそれに感謝するのが人の心じゃーないわけ?」

あすみ「でも一応やっと現実見たみたいで良かったよ! 現実見えてない正論振りかざすとことか嫌いだった!」

なぎさ「へっ?」

あすみ「……ヒトツだけアドバイスしとくと、そういうとこ直さないと次の職場でも浮いちゃうよ?」


 なぎさがしんみりしていると、急にあすみが割り込んで扉に向かって言い放っていきました。最後のチャンスとばかりに……。

 いつのまについて来てたんでしょう?


なぎさ「あ、あすみ……!?」

あすみ「いこっ」


 ……あすみの物言いはキツいですが、なぎさが言葉にできなかったモヤモヤがちょっとすっきりしました。

 あっけにとられてましたが、ようやくなぎさも教会に背を向けようとします。

 そのとき、背中のほうから再びモモの声が聞こえてきました。


モモ「……この前も言ったけど、ありがとう! なぎさは神様じゃなかったけど助けてくれたし助けようとしてくれたよね……」

杏子「ああ、あんな美味しいケーキなんて食べたことなかったし夢のようだったよ。あれがなかったら……」

杏子「なぎさと会えてよかった。思えばそれだって奇跡だ。だから、モモもさ、神様に祈ってたのは無駄じゃなかったんだよ」

モモ「うん!」


 奇跡……キュゥべえに願ったものじゃない、ホンモノの奇跡。

 考えたことはなかったですが、人との出会いも奇跡なのでしょう。だったら、きっとなぎさは恵まれています。



神父「確かに、そういう考えも出来るね。 ……ありがとう」



 ……少し遅れて、神父さんの声も聞こえました。

744 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/09(水) 00:26:12.27 ID:Qe7EciPy0
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ここまで
次回は12日(土)夜の予定です
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/09(水) 00:29:56.99 ID:B0Fag+980
あすみ、なぎさについて来てくれてたのか
言ってることはキツくても、あすみはなぎさや佐倉家のことちゃんと気にかけてくれてたんだね
アニメ本編とは違い心中にならなくてよかった・・・
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/09(水) 19:08:54.64 ID:8FuU47DdO

佐倉家、これはこれで救いのある終わり方かな?
あすみがしっかりなぎさをサポートしてるのも良し

747 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/12(土) 20:42:59.14 ID:BrQl52Dp0
――――――



 “あなたたちの女神より”……手書きで可愛らしいメモ帳に書かれたメッセージは拙く、

 上等な造りの箱とその中身のケーキがなければ、子供のイタズラとすら思いかねないようなシロモノだった。


 ……神? そんなのいないから代わりにやってるんだ。何もしてない神に感謝されることになっても。

 でも『女神』なんて、どうしてちょっとだけ自分を出すような書き方をしたんだ。神を名乗るならただ神とだけ書けばいいのに。


あすみ「本当は最初からさ、感謝されたいって気持ちもあったんじゃないの? 『神様』って讃えられるのはイイ気持ちだったでしょ?」

あすみ「やり方だってずさんだよ。身を隠すのに特化した魔法を持ってるわけでもないんだし、毎日コソコソ置きにいってたらそりゃいつかバレる」


 きっと、深く考えていなかったんだろう。助けたらどうなるかもバレた時のことも、あの家族の前で神様を名乗る意味も。


なぎさ「……そうですね。ちょっと浮かれてたとこはありました。でも、段々と騙してるって気持ちのほうが大きくなりました」

あすみ「まー、感謝されていいようなことしてるんだからそう思うのは当たり前なんだけど」

あすみ「良いことしても上手くいかないもんだよね? 恩が仇で返ってくるようなことだってあるしさ?」

あすみ「私は優しさなんて誰かに付け入られるだけの『弱み』だと思ってたよ。今も思ってる」

なぎさ「だからですか? あすみがなぎさたちとは離れて活動しているのって」

あすみ「……」


 たまに通りがかりにでも訓練場に顔を出すようにはしたり、露骨に避けたりしてないつもりだったけど、さすがにそう思われてたんだ。


なぎさ「前はよく一緒にいろんなことしてたけど、今はあすみがどうしてるのか全然わからなくて」

なぎさ「そんなときあすみがあの教会に行ってたことを知って、なぎさも行ってみたのです。そしたらちょっとわかるんじゃないかって」

あすみ「私のことを知るために……?」

なぎさ「はい。あすみはどうして行ってたのですか? お祈りにきてたわけではないのですよね?」

748 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/12(土) 22:08:11.72 ID:BrQl52Dp0


 そう問われると答えに困った。

 最初は傘がなかったからって流れ的に。それからは……他に行くとこがないからだった。しいていうなら。


あすみ「そうだね、なんとなく? 何も言われなかったし」

なぎさ「なんとなくで教会に通いますかね……」


 さすがにこんなんじゃ納得しないかな、と思ってたらなぎさはこんなことを言いはじめた。


なぎさ「……でも、何も言われないからっていうのは納得しました。前見かけたとき、そんな感じがしたのです」

あすみ「あぁ、そう? 納得してくれたならいいけど……」

なぎさ「もしかしたら…… 今、そういう場所がほかにないってことですよね」

あすみ「!」

なぎさ「あすみが自分のことを言わないのは前からでした。でも今は携帯も使えなくなったって言うし本当に心配で」

なぎさ「もしかしたら出会う前から何か抱えてたのかもしれないけど……何かが起きてるんじゃないですか?」


 やめてよ、見透かされたくない。

 人を見透かすのは得意だけど見透かされるのは嫌いだ。なんだかみじめな感じがする。

 でも、そんな心まで読んだかのようになぎさは言う。


なぎさ「あすみは前、『いざというときに頼れるのが友達』だって言ってくれましたよね。今がそうなんじゃないですか? だったらもっと、頼ってほしいのです!」


……そりゃ読めちゃうか。

 もう付き合いも長いし、『友達』――って認めちゃったんだから。諦めるしかないようだ。


あすみ「言ったとこでなんもできないと思うよ? 嫌な気持ちになるだけだよ? それでも聞きたいの?」

なぎさ「それでも何も知らないままよりいいはずです!」

あすみ「もう、仕方ないなぁ」


――――
――――
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/12(土) 22:23:37.32 ID:DwGpGjmC0
あすみの過去はなぎさにはキツいだろうな
それと魔法少女の真実も話すかね?
そろそろ知っておかないとヤバいだろうし
750 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/13(日) 00:29:06.46 ID:IsKfL80Q0


 契約する前のこと、契約してからのこと……――――



あすみ「多分まぁ私のもありふれた不幸だよ。心読んでみると家庭環境とかやべーのってたまに見たし。そのほうがキュゥべえがつけ入りやすいでしょ」

なぎさ「つけ入るって……あすみも神父さんが言ってたようにキュゥべえを悪魔みたいに思ってるのですか?」

あすみ「あぁ、あれに関してはほぼ同意だったよ。神父サンやってたからかしんないけど、そこそこ真に迫ってるなぁと思ってた」


 そんな前置きをして。


あすみ「私もお母さんいないってのは言ったじゃん。そのときにキュゥべえは来なかったってのも」

なぎさ「そうですね……聞きました」

あすみ「私の場合、お父さんも最初から家にいなかったんだ。じいちゃんばあちゃんもいない。だから、わけわかんないとこに飛ばされた」

なぎさ「ま、まさかそれでロトーに!?」

あすみ「……結論は合ってるんだけどね。さすがにそんなに簡単には路頭に迷わせられないかなー。おせっかいなことに、子供には大人が必要だってことでどっかにはあてがわれるから」

なぎさ「け、結論は合ってるのですか……?」

あすみ「うん。マミくらい大きくて家に金があれば一人暮らしもできたんだろうけど、私は無理だった。……私の場合は、父親がテキトーに友人に手を回したんだって」

あすみ「私からすれば知らない人。父親でさえよく知らないのに。向こうからしても、知らない子供なんてサンドバッグ兼ダッチワイフが手に入ったくらいにしか思ってなかったわけね」


 ……そのことはごくざっくりとだけ。

 特にあの男のことなんか詳細に話しても嫌な気持ちになるどころじゃないし、大して話したくもない。


あすみ「しかもその時の私って暗かったから友達もいなかったんだ。前まで普通に話してた人まで離れるどころかいじめる側に回った」

あすみ「そうなるともう、目に入るもの全部、醜いなー……って思って。だから、そいつら全員『不幸』になるようにって呪って契約してやった」

なぎさ「呪いって……どうなったのですか?」

あすみ「あの男は魔女に食われて死んだ。私も途中で『口づけ』に気づいて見送ったよ。念入りに他の魔法少女がいないことも確かめて」

あすみ「いや、私が助けなきゃ助けられるはずないんだよね。それが不幸というものだから。他も……事故に遭った奴とかいたかな。全部の末路は知らないけどね」

なぎさ「殺されそうになって殺したって……そういうことだったのですね……」

あすみ「そう。心を削るような暴力も、いじめも、見殺しも立派な殺しだよ。それで私は今晴れて路頭に迷ってるとこ」

あすみ「でももちろん前よりはいいよ。あの家に居続けたくもないし、あの街の魔法少女と醜い小競り合いしてるよりはアンタみたいなのに出会えた分よかったと思う」


 誰かにこんなこと話すのははじめてだった。

 なぎさがどう思ってるのか気になる。でも、魔法で覗きたくはない。

751 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/13(日) 00:31:56.19 ID:IsKfL80Q0


あすみ「家にあったもの持ち出してこっちに来たんだけど、そろそろ色々と使えるものがなくなっちゃってさ」

あすみ「それに心置きなく休める居場所ってのも結構大事だったんだなって思った」

なぎさ「居場所……ですか…… あと携帯やお金?」

あすみ「不便だけど、携帯はなければないで慣れるよ。前まで携帯なんて持ったことなかったし」

なぎさ「たしかにとりあえずお金とおうちのほうが重要ですよね……うーん」


 なぎさはあれこれと考えているようだった。

 なんとかしようと考えてるのか? どうせ何も出来ないって言ったのに。


なぎさ「でも、居場所なら…… 訓練場所は好きにいてくれて構わないのですよ。訓練中も気にしませんから。たまにアドバイスとか、参加してくれたりすると嬉しいですし!」

なぎさ「そうでした。今日もマミに訓練しようって誘ったんでした。多分もうすぐ……」



 ……私達はいつも訓練に使ってる場所からも少し離れたところにいた。

 もしマミが偶然ここに来たりしても大丈夫なようにと思って選んだ場所だ。もちろん関係ない人がよく通る場所でも話しにくいし。



なぎさ「ここからちょっとですし、あすみも来ませんか? マミのことだしちょっと早くにきて訓練はじめてると思うのですよ!」

あすみ「……まあ、いいけどさ」



 行く場所もないし、行ってやってもいいか。

 ――――……そう思ってついていったが、なぎさの予想に反してマミの姿はまだなかった。

752 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/13(日) 00:35:43.16 ID:IsKfL80Q0
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ここまで
次回は13日(日)夜の予定です
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/13(日) 00:57:18.59 ID:cKhhSFlT0
乙です

あすみの事情、なぎさにはまだ理解できないところがあるのはどうしようもないですからボカして正解かな、と
マミはなぎざにマンツーマンで訓練受けてたから、もう弱くはないとは思うけど逆に無理しちゃうかも?
754 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/13(日) 22:01:17.43 ID:IsKfL80Q0


あすみ「私達だけみたいだね」

なぎさ「うーん、予想はずれちゃいましたねー……」


 それならそれで、訓練中しててもそうじゃなくても居るだけなら関係ない。

 すると、なぎさは思いついたように言い出した。


なぎさ「そういえば、さっきの話を聞いてもわからなかったことがあるのですが……」


 ……なんだ。もしかしてダッチワイフってなんですかとでも言うつもりか。

 そんなことを考えたが、それも違うようだった。


なぎさ「結局どうしてキュゥべえのことを嫌ってるのです? あすみは神父さんのような理由では嫌わないんじゃないかと思ったのです」

あすみ「あー……」


 どう返したものかと悩む。そういえばそこには一切触れていなかった。その真実自体は、『私の過去』ってわけじゃないから。

 たしかに私は心を読むまで、キュゥべえのことは助けてくれた恩人だとすら思っていた。


あすみ「……まあそれもいつか、話すよ」



 私が話すのと自ら知ってしまうのと、どっちが早いだろうか。

755 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/13(日) 22:10:45.55 ID:IsKfL80Q0
――――――



 約一年。……それは、私が契約してからの期間だった。

 でもそんなの、特に実感は沸かない。その間に私の中で何かが変わったとも思ってなかった。

 たしかに一人の生活は大変で、今でもたまにまだ心細くなる。でもそんなとき――――私は本当の意味で一人じゃなかったから。


 自分より経験の長い人しかいない中で、自分がベテランだとも思えない。

 でも――。


 最初の頃に感じていた“死と隣合わせの恐怖心”というものはいつしか薄れ始めていた。

 ずっと訓練してきたし、魔女とも戦ってきた。確実に強くはなれている。



 『年月以上に、その覚悟の違いって大きいよ? いざという時を経験してきてない人に負けることなんてないって』



 だから、この言葉に反感を抱いていたんだと思う。

 そろそろ自分の腕を試してみたい気持ちもわき始めていたんだと思う。


 ずっと大事に守られてきた。でも、頼ってばかりじゃなくてもう一人でもやれるんじゃないかって。やってみたいって思った。


 ――――……多分それは覚悟なんかじゃなくて、慢心だったんだ。

756 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/13(日) 23:33:39.12 ID:IsKfL80Q0


 甲高い笑い声が結界内に響き渡る。

 それは倒すべき魔女の声。今私は結界の奥地にまでたどりつき、頭に角を生やした大柄な魔女と対峙していた。


 その姿をもう一度確認して、手に持った斧の他に攻撃手段がないことを確認する。


マミ(大きいのに動きはすばしっこいのね……セオリーからは外れてるわ。でも、縛ってしまえばこっちのものよ)


 手から出したリボンで攻撃を受け流しつつ、相手の隙をうかがう。

 比較的攻撃の軌道は読みやすい。それに、振るった後は隙が必ず生まれる。敵の動き自体が速めだから僅かな時間だけど、狙うならそこしかない。


マミ(今!)


 手足からすばやく絡め取ることに成功する。斧が手から落ちたのを見て、私は勝利を確信した。

 でも時間をかけるわけにはいかない。

 そこに魔力を集中していく。なぎさちゃんと一緒に考えた必殺技。絡め取った相手を爆発四散させる技。


マミ「――――『フィナーレ』!」


 技を打つ魔力を充填し、これで仕留められたはず……だった。

 しかし再び斧は振りかぶられる。


マミ「つっ……――!? え…… どうしてまだ動けるの?」


 いつのまにか斧はまた魔女の手の中にあって。私の渾身の必殺技にも、ものともしてないみたいだった。

 避けきれなくてできた傷が痛んだけど、それも気にしてる場合じゃない。思えば、なぎさちゃんと一緒に戦ってた時はケガなんてほとんどしたことがなかった。



 『アンタも気をつけなよ? 今は怖い怖いって思ってるかもしれないけど、いずれは力の使い方に慣れて、気づいたらすっかり染まってないように』


 ――――これまで魔法少女の力があっても悪いことはしていない。私たちには目指す道があるから。

 でも、力の使い方に慣れたことで変わってしまっていたことに気づいたのは、再び『死と隣合わせの恐怖心』を味わってからだった。


757 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/14(月) 00:16:50.11 ID:oFrl1bZU0
-----------------
ここまで
次回は15日(火)夜からの予定です
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/14(月) 01:29:59.57 ID:RPhOmzOzO

ここまで順調過ぎたのが慢心になっちゃったわけか
リボンだけだと火力低いまんまくさいな
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/14(月) 20:50:40.51 ID:Jf2wKIYq0
乙です

やっぱりあすみにとってなぎざは特別な存在なんだと改めて思いました。
このあすみが過去を話すなんてとても考えられないことですからね・・・

>>私が話すのと自ら知ってしまうのと、どっちが早いだろうか。

なんか嫌なフラグが立ってるような・・・マミさん、ピンチだから早く助けてあげて!
760 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/15(火) 23:40:46.75 ID:rDoTqNWE0


マミ(私の必殺技は一度使えば拘束が解ける。もう一度縛ってもこんなにすぐ回復されるんじゃ……)


 実際にやってみれば一人で魔女を倒すことはあっけなくできていた。

 そこで薄れはじめていた恐怖はほとんど消えてしまってた。


マミ(……最初に抱いた恐怖はいつでも持ってなきゃいけないものだったのよね)

マミ(もしここで負けたらどうなるの? ……誰にも気づいてもらえないの?)


 ケガをリボンで止血する。

 魔女は攻撃のペースを緩めない。小細工でどうにかなる相手じゃない。

でも、きっとこんな時でも――。


 なぎさちゃんがいてくれれば。いつもならちょっと苦戦することがあったって最終的にはなんとかなってた。

 それってきっとすごいことだったんだ。


 一人前になったつもりで突っ走ったのは私なのに。


マミ(ダメだわ……いくら隙を狙ってもこのくらいじゃ全然倒せない。こっちは怪我を治す暇もないのに)

マミ(ダメ元で、もう一度大技を当ててみましょうか……?)


 でも、それで勝てればいいけどもし倒せなかったら。

761 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/16(水) 00:06:04.05 ID:wR508BNU0



 リスクの高い選択のほかに、もう一つ浮かんだのは逃げるということ。

 ……すごく情けないし、よくないことだというのはわかっているけれど。


 逃げてなぎさちゃんに連絡したほうが戦いも長引かず、犠牲が出る前に決着がつけられるかもしれない。

 ここで私が負けたって街の人を危険に晒すのは同じだもの。


 結局、勝てなくて悔しいのはプライドの問題で……他に考えなきゃいけないことはたくさんあって。

 それに、私はもちろんまだ死にたくない。こんな形で死んだら死んでも死にきれない。


マミ(それにしても……重そうな見た目に反して軽々振り上げてるのに、攻撃の重さは見た目通りだなんて反則だわ)

マミ(大技でも効かなかったのに、ちょっと攻撃を当てたくらいじゃすぐに回復されて……)


 まるで『実体がない』かのよう。


マミ(――?)


なぎさ「――――あすみ、ちょっと魔女縛っててください!」

あすみ「はいよ、言われなくても」


 …………私が逃走を決めたその直後、突然声がして、鎖が“斧だけを縛り上げていった"。


なぎさ「あっ、やっぱり見分けついてました?」

あすみ「とーぜん。私の魔法なんだと思ってんの。それよりアンタのほうが『そんな』魔法もないのにさすがじゃん」

なぎさ「伊達に見滝原のヒーローやってないのですよ!」


 それはついさっきまで絶望感溢れる戦場だったこの場に似つかわしくない声だった。

762 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/16(水) 00:29:19.08 ID:wR508BNU0
----------------
次回は16日(水)夜からの予定です

比べやすい戦闘なのでわかると思いますが、このマミは本来のマミより戦闘面でもメンタル面でも弱いです。
というより、強くなる必要がなかった…というある意味平和な姿です。
あくまでこの話はあすみとなぎさがメインということで…。
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/16(水) 09:19:10.22 ID:splyNrO0O

斧の魔女だったか
マンガ同様風見野から流れて来たのかね?
764 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/16(水) 22:40:06.50 ID:wR508BNU0
――――――
――――――



なぎさ「って、マミ! 怪我してるじゃないですか! 下がっててください!」

マミ「え、ええ……」


 武器を取り上げられた魔女はシャボンの中に溺れてもがき、

 斧――不快な呪いを発する魔女の本体は即座に鉄クズと化した。


あすみ「いくら擬態したって魔女なんて“ダダ漏れ”で駄目だね。茶番に付き合ってやる気なんてないよ」

あすみ「マミが苦戦するくらいには身体能力も高……く見せかけてるみたいだけど? ハリボテ殴って鍛えるならなぎさとやってたほうがまだマシ」


 グリーフシードを手の上で回しつつつぶやく。


 マミが遅いせいでついに特訓なんてものに巻き込まれ、こんなところにまでついてくるハメになったのだから機嫌は悪い。

 こいつがマミの家まで迎えに行くなんて言い出さなければ念願の原っぱで昼寝でもしてたんだけど。


なぎさ「じゃあもう一回やりますか!?」

あすみ「当分いい」


 最近この街も平和だし、スポーツみたいなものとはいえなぎさと全力でやりあってみるのは興味がなくはなかった。

 ……けど、敗因があるとしたら最終目標が『拘束』だったことかな。呪いをぶつけ合う戦いしかしてこなかったから。



 ふとなぎさとマミのほうに目を向けてみれば、手当てされてたマミはまだ呆然としていた。



なぎさ「よしよしっ、治ったのですよ! もう痛いとこないですか?」

マミ「ありがとう、なぎさちゃん。二人が助けに来てくれてよかったわ。もう駄目だと……」

なぎさ「もー、なぎさも心配したのです! これからは無理しちゃ駄目です! 一緒に戦いましょ!」

あすみ「……」


 ……相変わらず過保護だなあという感想しか出てこない。

 いつのまにか親鳥の巣から抜け出そうとしてた雛は、今回の一件でまた巣に籠もるのだろう。

 でもそれは悪いことじゃない。仲良しのまま一緒に暮らしていくのもきっといいことだ。ここは厳しい野生ではないのだから。


あすみ「……じゃ、戻るよ。まあ、私はただあの場所に居座るだけなんだけど」

なぎさ「はいっ! 行きましょ!」


――――
――――
765 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/17(木) 00:06:47.68 ID:BilfRiJR0



 それから訓練場所に戻って、私は言ったとおり何もせず二人の様子を眺めてた。

 教会と違ってひとつ難点なのは、ここが野外だってことか。雨風を凌ぐには良い条件じゃない。


 二人はまた前みたいに模擬戦をやっていた。


なぎさ「さてっ、ぜひとも破って近づいてみてくださいなのですよ! なぎさはここからでも捕まえられるのです!」


 大量のシャボンに阻まれると近づくのも難しい。

 ああ見えて結構器用なコントロールまでやってたらしいから、油断してると誘導されてとっ捕まりかねない。攻撃範囲の広さは大きいメリットだ。


 私なら力任せに破って突き進めるけどマミには難しいだろう。そもそも見てた限りじゃ……あいつのリボンは狙いが読みやすすぎる。

 ――そろそろまた負けるかと思っていた矢先に魔力の小爆発が起きて、シャボンの群れが一気に弾けていった。


なぎさ「!」

マミ「毎回敵を縛って安全を確保してからじゃ、本当に最後にしか使えない。それに、『最後』になるかもわからないわよね」

マミ「だから、遠くからでも必殺技が使えないか考えてみたの。名前はまだつけてないけど……」


 どうやら、先に魔力を込めたリボンの塊を作っておいてパチンコのように跳ばしたらしい。

 なぎさの態度からして、いつもマミに危険が迫る前になぎさがなんとかしてるんだろう。

 さっきの戦いでマミは何かを考えたらしい。……巣立つことはできなくても、無駄な経験にはならなかったようだ。


マミ「はじめて近づけたわ!」

なぎさ「ありゃ、でも近づけたからって終わりじゃないのですよ? 勝負はこれからです!」


 なぎさはというと、拘束のリボンを寸手で回避。

 そりゃそうだ。私相手に勝っておいて、接近戦に持ち込まれたくらいで負けてもらっちゃ困る。



あすみ(……まあでも、思ったよりは面白い試合が見れたかな)


766 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/17(木) 00:10:44.12 ID:BilfRiJR0
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
次回は17日(木)夜からの予定。多分あと少しのはず。
767 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/06/17(木) 02:49:05.37 ID:10BBjVZ80
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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768 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/17(木) 23:10:13.51 ID:BilfRiJR0


 ――――しばらくすると、真上にあった太陽はいつのまにか傾いていて、二人ももう訓練をやめにして帰る支度をはじめているところだった。


 平日だったらもう少し遅くまでやってただろうか。今日は礼拝の日の予定だった日曜日だ。長いこと曜日なんて気にしてなかったけど。

 なぎさは家族の時間を大切にしたいと言ってたし、最近はあの教会のことばかり気にかけていたからさっさと日常に戻ったほうがいいんだろう。


あすみ「……ねえ、アンタもこれから帰るんでしょ。いつも一人で何してんの」

マミ「えっ? そうね……授業の予習をしたり、紅茶に合うおやつを作ってみたりとか」

あすみ「ふーん」


 聞いてはみたものの、こいつとも違いすぎた。


なぎさ「あすみったらいつもこうなのですよ。聞いておいて興味なさそうにするのです!」

あすみ「私そんな高尚な趣味ないし」

マミ「やってみたら楽しいと思うのだけどねぇ……」

なぎさ「あ、でも今度久しぶりに一緒に料理してみるのはどうです?」

あすみ「私はいい。マミに聞けばいいでしょ」

なぎさ「たしかにマミはいっぱいおいしくて見た目もキレイな料理を知ってますが……なぎさはただ、またあすみとも一緒に色んなことしたいだけなのですよ」


 ……確かに言われてみれば、マミが来てから暇でしょうがない時間が増えたんだった。

 だからって別にマミを疎んだり、拗ねてるわけじゃない。

 ただ、一年前のほうが居場所がないとか、何をするか悩むような暇もなかったのかもしれないな。


あすみ「はあ。……じゃあ今度ね」

なぎさ「! ホントですか! 約束ですよ!」

769 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/17(木) 23:39:48.75 ID:BilfRiJR0


 そんな約束をして、なぎさは帰っていく。するとこの場に残ったのは私とマミだけだった。


マミ「……神名さんはまだいるの?」

あすみ「そっちこそ」


 私がマミを見かける時は大体なぎさも一緒にいた。

 こいつと二人になるのって最初の契約したての時以来かもしれない。


あすみ「私はこれでもアンタのこと一応は認めてるよ。なぎさがついてるからってのもあるだろうけど、クズにはならなかったみたいだし」

マミ「ええ、私もできるだけこの力はいい事に使いたいしね……。でもあなたは私のことはあまり認めてくれてないのかと思ってたわ」

あすみ「あいつが張り切って甘やかしすぎてんのよ。自分が守るんだって。何でも危険を摘み取ってやってたらそりゃ、自分以上になるわけないじゃん」

あすみ「でも、今日はちょっとだけ自分で戦いの中から何か掴んだみたいね」

マミ「あの新技のこと? あなたにそう言ってもらえると嬉しいわ。本当に褒められてるって気がするから」

マミ「なぎさちゃんにはありがたいと思ってるわよ。今日のことは本当にどうしようかと思ったもの……」


 今日の戦いでも魔女の正体に気づかずチンタラやってたようだけど、本当に一人だったらいつか自分で気付けるポテンシャルはあったかもしれない。

 でも、やっぱりそうはいかずに死んでたかもしれない。今となってはわからないことだ。


あすみ「で? まだ一人で訓練でもすんの?」

マミ「いえ、そこまではいいかしら。私もそろそろ帰るわね」


 少しだけ話してからマミも帰っていく。

 ……――みんなそれぞれの道へ帰っていった。



あすみ(私はもう少し暗くなるまでここにいるかな)



 明日からはまた平日だ。なぎさも少しは暇になるだろう。

 そしたらさっきの約束でも果たしに行ってやろうか?


 私の生活はこれから大きく変わることはないだろうけど、その時のことを考えたら少しは暇つぶしになった。




―『続々・なぎさとあすみとマミの見滝原』END―
770 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/17(木) 23:49:15.71 ID:BilfRiJR0
--------------------------------------------
ここまで
次回は21日(月)夜からの予定

『続々』まで無事終了
これからどうするか(続きor別の、もしくはカットされたあすみVSなぎさの詳細みたいなおまけパートとか)は次回までのレスの流れ見て決めますー。
引き続きの場合は時間が飛びます。もう過去ではなくなるのでさすがに最後になると思います。
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/18(金) 20:01:32.75 ID:zCR/Y+H9O

一先ず続けて欲しいけど、カットされたあすみVSなぎさを見たいね
でもそんなシーンあったっけ?
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/20(日) 19:54:49.09 ID:hY/gRfvi0
遅くなりましたが『続々』終了おつかれさまです。

あすみとなぎさの関係やっぱり強い感じですね。
さぎさは神様がいなくても頑張ってますし、あすみもマミも事も一応認めたとかあすみ編のときよりも若干まるくなってうかな?


自分も続きを希望しますが、次は原作時間軸かな?
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/20(日) 20:31:46.06 ID:e1CGrOq+o
おつ
実はそろそろ安価に戻りたい
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/21(月) 08:39:24.53 ID:h0QDMqAQO
あすみVSなぎさってマミを助ける前の模擬戦のことか
続きの前にそのカットされた模擬戦を見たいね
775 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/22(火) 00:27:04.96 ID:FZ0SctsH0
----------
日付変わってた。今日はもう寝よう…
次回は22日(火)夜の予定ですー、おまけからで。
776 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/06/22(火) 02:54:16.91 ID:BgKaeewY0
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777 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/22(火) 23:09:59.90 ID:FZ0SctsH0
---------------------------------------------
おまけ * あすみとなぎさの模擬戦のようす
>>755 あたりの二人のほうの視点
---------------------------------------------


 人目につかない訓練場所。

 いつもなら私の代わりにこの場にいたマミがまだ来てないから、この場所はいつになく静かだった。


 両者ともにまだ動きはない。


あすみ「で、合図は? こっちはいつでもいーよ」


 余裕を醸し出して笑む。

 私もなぎさも素早さに自信のあるタイプではないが、わずかでも先行して動けたほうが有利なのは変わらない。

 ただ、余裕がないと思われるのは癪だった。……いまさら、こいつ相手にそんなこと気にする意味もないかもしんないけど。


なぎさ「なんだか余裕そうなのです! これは今のところ模擬戦不敗のなぎさも負けてはいられませんね」


 それに対するなぎさの調子はいつも通り。


 ――これまで一緒に魔女や不届き者と戦ったことならあったが、武器を構えて向かい合うのは初めてだった。

 特訓と言うが、マミが来るまでの暇つぶしの一つだ。マミの面倒を見るのは興味がないが、なぎさとだったらやってみてもいい。

 戦いは好きだし得意なほうだと思ってる。私のほうは、もちろん“模擬戦”なんて初めてなんだけど。


なぎさ「それならふかーく息を吸い込んで……1,2の3ではじめるのです!」


 カウントがはじまる。

 きっかり三秒―――ののち、虹色をした小さな球体が視界を飛び回って吹き出してきた。


あすみ(へえ、こんなに出せるようになってたんだ……ちょっと驚き)


 数は多いがシャボンの一つ一つは小さめで、魔力に任せた物量作戦というわけでもないのだろう。

 そのシャボンができるだけこちらに届かないうちに、踏み出した勢いを止めることなくなぎさとの間合いを詰める。

778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/22(火) 23:28:26.86 ID:6DKrrd4Y0
なぎさは遠距離、あすみは近距離型。
互いにシャボンと鎖で牽制が可能だしこの2人が組むと普通に強いよね
779 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/23(水) 21:57:37.45 ID:+atVmq5q0


 虹色に包まれた幻想的な景色を突き進む。


あすみ(勝負を仕掛けるなら――このタイミング!)


 途中で足を止めて鉄球を振りかぶると、破裂音とともに虹色は破れ、空気を裂くように鋭く正面へと鎖が伸びていく。

 小さく密度の高いシャボンは相手に届かせることを重視した牽制だろう。攻撃の勢いまで防げるものじゃない。

 一度勢いをつければ私が足を止めても鉄球は加速したまま前へ進む。うまくいけば一発で拘束を決めることもできるかもしれない。


 どうせシャボンはこれから増える一方。鉄球が当たれば簡単に破れるとしても、妨害にはうってつけの武器だ。囲まれるのは厄介。


あすみ(……なら、速いうちに)

なぎさ「あわわっ、思ったよりも強引に突破してこれるんですね〜……!?」


 なぎさは飛び退いて避けると、こちらに向けていたシャボンをその場に留めて守りを固め、さらにシャボンを追加してくる。

 さっきと同じ小さいシャボン。これならまだ次を打てる。


 そう思った瞬間、周りのシャボンが次々と弾けていく。小さいけれど、鎖を巻き込んで爆発されると狙い通りの軌道にならない。

 ……正直ちょっと、油断してた。鎖の軌道を曲げるほど的確に位置やら弾けるタイミングやら調整できると思ってなかったから。


あすみ「ま、こんなに早くは決まらないか」


 武器を引いて鉄球を戻す。その過程でもできるだけシャボンは破って“道”を作る。ますます囲まれたら厄介ってわかったし、それだけでも収穫としておこう。

 そして、鎖を巻取り――――鉄球が柄の先にカチリとはまる音がした。

 離れた位置から狙うには繊細なコントロールが必要だ。だったら、さらに自ら距離を詰めればいい。フレイルは最後の一手のためにとっておく。


あすみ「インファイトのがやっぱ燃えるでしょ?」


 さらに踏み込む。勝つのに必要なのは、自分のペースを作ること。

 それはなぎさにとっては相手をできるだけ多くのシャボンで囲って安全な位置まで遠ざかること――私は逆だ。

 中距離くらいまでなら戦えるが、なぎさの得意としてない接近戦に持ち込んだほうが隙は突ける。


 もちろんシャボンにも囲まれやすくはなる。でも、こんなのちまちまと破ってたらいつまでたっても勝てない。

 この戦い、長引かせたほうが不利になるのは最初に思った通りみたいだから。


あすみ(――それにしても)


 ――戦術を考えながらふと思った。いつもなら『聞こえてくるもの』が今はない。

 いくら遊びったって、『ミスしろ!』くらい思ってもいいもんなのに。


あすみ(久しぶりに静かな戦いだな)


――――――
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/23(水) 22:02:53.10 ID:QOhlLJQL0
なぎさにはあすみへの悪意がないわけだから、あすみの固有魔法は発動しないのは当然か。
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/23(水) 22:11:33.35 ID:VF64MWBbO
ここでなぎさがトランペット超音波出したら意表をつけそうだな
あすみが超音波知らなければだけど
782 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/23(水) 23:05:58.21 ID:+atVmq5q0
――――――



 シャボンを敷き詰めて遠ざけるつもりが予想に反して、あすみはこちらへ急接近してきました。

 鎖のないモーニングスターを携えて。


あすみ「インファイトのがやっぱ燃えるでしょ?」


 ……いや、やっぱりこういう大胆な戦い方があすみらしいのかもしれません。

 とはいえ、接近戦の間合いに入られるといくらか焦ります。新しくシャボンを出して位置を調整するのにも時間はかかるわけですし、戦いづらいのです。

 あすみとの間にあったシャボンはいつのまにかキレイに消されています。


 あすみはダイナミックにバトンでも扱うかのごとく鉄球を振り回します。

 攻撃に巻き込まれたシャボンはあっけなく破られ、避け続けるのは長くは持たないでしょう。さっきみたいに鎖を狙って軌道を曲げることもできません。


 どうやらなぎさは、このままではちょっとまずい状況のようです。ですが、このままでいる気もありません。


なぎさ「いーえっ――悪いですが、それはおことわりなのですっ!」


 重い武器を振りかぶるタイミングを見計らって、脇をすり抜けます。

 懐に潜り込むというのは一番に接近する瞬間でもあります。あすみもむしろ、このタイミングは狙ってくるでしょう。

 同時になぎさはいっぱいに息を吹き込み、いつもの笛の音とともにシャボンの嵐を吹かせます。……これを至近距離で聞かせるのも、もしかしたら集中妨害になるでしょうか。


 重い武器を振るうのはただでさえ体制を崩しやすい瞬間。なぎさの狙い通り、足元で起こった『小さな衝撃』にあすみはバランスを崩します。


あすみ「なっ……!」


 最初のよりもさらに小さいシャボンを混ぜたのです。威力はありませんが作るのも狙った位置にすぐに届かせられますし、注意をそらして忍ばせやすいのです。


 それに……怪我をさせるほどの威力がないからこそ、安心してぶつけられます。

 さすがのあすみもこんな小さなシャボンにやられるとは思っていなかったでしょう。

 今まで手早さ重視の小さいシャボンしか作っていませんでしたが、やっと人一人覆えるくらいの大きなシャボンを作る暇ができました。


なぎさ「これでかくほ! なのです!」

あすみ「…………あーあ、参りました」



 あすみは負けても余裕そうでした。そこになんだか安心します。

 ――――こうしてあすみとの初めての勝負は決着がついたのでした。

783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/23(水) 23:18:27.44 ID:QOhlLJQL0
なぎさ、こうやって勝ったのか。
あすみはちょっと油断してたのと悪意が聞こえないので少し調子が狂ったかな?
784 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/23(水) 23:48:43.59 ID:+atVmq5q0


あすみ「接近戦に持ち込めれば勝てると思ったのになぁー」

なぎさ「そういえば、あすみはさっきの戦いでも心を読んでたのですか?」

あすみ「……いや。そんな手もあったね。でもそんなヒマなかったよ」

なぎさ「意外と集中力が必要だったりするのです? 最後のは割と思いつきでしたが、それでもあすみなら途中で読めてれば対応できた気もするのです」

あすみ「買いかぶり過ぎじゃない?」

なぎさ「そうでしょうか?」

あすみ「まあ、読むのはやろうと思えばできたかもね。……勝手に読めるのは悪意だけ。いつもはそれで十分だから」


 あすみもさすがにあの棘鉄球で殴ろうとしてたわけじゃありませんし、余計に大ぶりに動く必要があったのも見て取れました。

 きっと、本当はあすみにとっては殴り倒す戦いのほうが早いのでしょう。


 ……でも、これは特訓なのです。お互いに。


あすみ「ていうかまだあいつ来ないじゃん。また暇になっちゃったね」

なぎさ「そうですね……ちょっと遅すぎるのです。家に行ってみませんか?」

あすみ「えー、私は別に」

なぎさ「そんなこと言わずに! なぎさのほうが勝ったんですし、ちょっとくらいわがまま聞いてくださいなのですよ!」

あすみ「そんな約束してないし。……はあ、しょうがないな。確かにこれはなんかあったかもね?」

なぎさ「な、何かあったら困るのです! マミ、今迎えに行くのですよ!」


―END―

>>761に続く…
785 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/23(水) 23:52:05.98 ID:+atVmq5q0
---------------------
ここまで
次回は26日(土)夜からの予定です。
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/23(水) 23:58:23.23 ID:QOhlLJQL0
乙です。

次はあすみ・なぎさコンビの続きですかね?
またあすみにキリカが傷物にされて織莉子はしばかれるのか・・・w
契約しなかった杏子が再登場してくれたらうれしいかも。
787 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/26(土) 21:02:45.04 ID:YdAb+cdf0
――――――――――――――――――
――――――――



 そういえば、いつ何をきっかけで知ったのかすらもう覚えていないものが多いのですが……。

 長いこと魔法少女をやっているなら知っていて当然の知識というものがいくつかあります。

 最初の頃は魔法少女はなぎさ一人だったのでそういうのに疎く、あすみに世間知らずだってばかにされることも多かったのですが。



なぎさ「あすみは『ワルプルギスの夜』って知ってますか?」

あすみ「……何、どうしたのさ急に?」


 これもいつかの会話。

 みんなが揃ういつもの訓練場所で、ふと口にしたことでした。


なぎさ「あ! あすみもこれは知らないのです?」

あすみ「知ってるよ。結界を持つ必要がないくらい強い超弩級の魔女――とかいうやつのことでしょ」

なぎさ「なーんだ、やっぱり知ってたのですね」

マミ「私は聞いたことないんだけど、そんな魔女がいるの?」

なぎさ「噂ですけどね。過去に世界で起きた大災害がホントはこれの仕業だって……ホントなんですかね」

あすみ「さあね。私はキュゥべえから聞いたし存在自体は疑ってないけど、どれがそうだってのは眉唾だよ」

なぎさ「じゃあワルプルギスの夜の弱点って知ってます?」

あすみ「それは知らないけど」

なぎさ「実は…… 」


 そう言って溜めると、二人は食いついてきました。


なぎさ「なぎさも知らないのです!」

あすみ「はぁ〜、呆れた。昼寝するから起こさないでくれる?」

マミ「……訓練、再開しましょうか」

なぎさ「いや、そんなにがっかりさせる気はなかったのですよ!? みんなで考えてみたら面白いかなって!」



 ……これが『こわいはなし』なら怪物の弱点までセットになっていることは珍しくはありません。

 今まで戦ってきた魔女も、どれだけ強い敵だと思えても探ってみれば弱点があったりしたのです。




――――――――――――――――――


 最終・なぎさとあすみの見滝原


――――――――――――――――――
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/26(土) 21:59:21.24 ID:sKOM2Egb0
ワウプルギスの名前が出たと言うことは原作時間軸に突入ですね。
あすみはまだ野宿してるのかな?
789 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/26(土) 22:51:36.23 ID:YdAb+cdf0


*「なぎさちゃん、これからわたしの家で遊ばない? **ちゃんと***ちゃんも来るって」

なぎさ「ごめんなさい、今日も予定があるので」


 ――――今日も学校での一日が終わりました。

 せっかくのお誘いですが、今日もお断りの返事をかえします。


*「ああ、それならいいの。なぎさちゃん忙しそうだもんね」

なぎさ「また休みの日にでも!」


 予定とはもちろん訓練のことです。マミと出会ってからずっと続けてきたそれは、今でももちろん続いています。

 それに今はあすみもよく訓練場所に来てくれるのです。

 学校のお友達と遊ぶことは少なくなったものの、みんなで一緒にいる時間はなにより安心する時間になっていました。


 この見滝原の街にあすみがやってきて、マミと仲良くなって――――あれからなぎさたちはほとんど変わらない毎日を過ごせています。

 しかし、今までであった魔法少女はそれだけではありませんでした。


 縄張りを奪おうとする魔法少女。ちょっとだけ話すことのあった他の町の魔法少女。それに、守れなかった新しい魔法少女。

 訓練にさそったりしてみても、考え方の違いでそれを拒まれたり、最初のうちは来てくれてもいつのまにか来なくなることもありました。

 その結果が、今の『変わらない毎日』になっているのです。


なぎさ(あれ? マミからメッセージが……)



 そして今日、久しぶりにその日々が少し変わりそうな予感がしました。


790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/26(土) 23:32:32.72 ID:sKOM2Egb0
いきなりまどかとさやかを助けてほむほむと遭遇した知らせかな?
もしくはあすみが危険な存在(キリカ)を連れてきたとか?
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/26(土) 23:40:09.89 ID:Fxizy5N8O
あすみ・なぎさ・マミと戦力的にはそうそう引けを取らない面子だよな
なぎさとマミが魔女化の事とか知らないのは不安要素だけど
あとそろそろ安価欲しいね
792 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/27(日) 00:20:31.88 ID:y9P6nhPt0
――――
訓練場所



 訓練場所にやってくると、マミの隣に見知らぬ人がいることに気づきます。

 マミと同じ制服。きっと見滝原中学校の生徒なのです。


なぎさ「マミ! メッセージに書いてあった子って……!」

マミ「ええ、この子よ。今朝契約したんだって。学校で会ったの」

まどか「はじめまして。わたし、鹿目まどかっていうの」

なぎさ「よろしくなのです! マミ、後輩ができましたね!」

マミ「え、ええ。そうね」


 まだ挨拶だけですが人当たりの良さそうな人です。これからも一人で危ないことをせず、訓練に来てくれるといいのですが……。

 すぐに来てくれなくなったりした人のことを思うと不安もあるのです。

 その人たちが全員どうなったかは知りません。会っていませんから。でも、表向きに『行方不明』となってしまった人もいました。


なぎさ「まどか、魔法少女のことはキュゥべえやマミからどのくらい聞いていますか?」

まどか「魔女と戦わなくちゃいけないってことくらいかな。まだ魔法も使っていからワクワクしてるの!」

マミ「自分の衣装が気になるって言ってたわ。まずは変身してみましょうか。私も初めてのときはいきなりで戸惑ったから」

なぎさ「そうですね! なぎさもまどかの変身した姿気になりますし!」


 まどかはマミと違って怖がったりするよりも、希望でいっぱいみたいです。なぎさも最初の変身のときはワクワクしたことを思い出します。

 まず変身してもらったり、魔法の力でできそうなことを一通り披露してもらっていると、奥の木陰のほうからあすみがこちらを覗いていたことに気づきます。

 多分訓練がはじまるより前に来ていたのでしょう。そういうことも多いみたいですから。

793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 00:26:01.79 ID:oZjs2SHsO
いきなりまどか契約してて草w
このまどかが最初のまどかならまだ大丈夫なんだが
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/27(日) 00:30:47.61 ID:Ot4TgdU50
>>793
ほむらがメガほむならまだ手遅れじゃないんですけどね・・・
あすみが木陰からジッと見てるのが不安感バリバリで怖い・・・

>>まだ魔法も使っていからワクワクしてるの!

まだ魔法も使っていないからワクワクしてるの!、かな?
795 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/27(日) 01:03:18.40 ID:y9P6nhPt0


なぎさ「あっ……、あすみもいたのですね。居るならこっちに来てくださいよ! 新しい仲間なのですよ!」

あすみ「新しいやつね。……あー、うん。よろしく」

まどか「うん。よ、よろしく」


 あすみは見定めるような目で見ています。

 あすみが新人を見て快い反応をすることって、前からあんまりありません。


あすみ「またずいぶん浮かれてるのが来たけど、『大丈夫そう』なの?」

なぎさ「……さっそくなのですが、まどかにお願いがあるのです。出来るだけでいいので訓練は来てほしいのです」

なぎさ「それと……一人では戦わないでほしいのです。危ないですから」


 多分マミと出会う前に会った魔法少女も含めて、マミと他の魔法少女との違い……――――。

 それは、戦いへの考え方だと思うのです。


 魔法の力って、ワクワクするほどすごいです。特に慣れかけの頃ほど、魔女なんて軽く倒せるのが当たり前なんじゃないかって気がします。

 でもマミは最初から『魔法少女』も『魔女』も怖がっていました。戦いも力も、軽く考えたことはなかったのです。


まどか「うん、わかった。約束するね。訓練にもたくさん出るようにするから!」

なぎさ「はい! 約束ですよ!」



 あすみはきっと忠告をしようとしていたのです。思っているより危険だぞって。

 ――――それから今日は基礎的な戦いの訓練だけをして解散としました。


796 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/27(日) 01:05:49.44 ID:y9P6nhPt0
-------------------------------
ここまで
次回は27日(日)夜からの予定です
797 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/27(日) 22:14:27.03 ID:y9P6nhPt0


あすみ「新人はまだ連れて行かないんだ」


 この場所を発とうとするなぎさたちを見てあすみが声をかけてきました。


なぎさ「まだやっと魔法の使い方がわかったくらいですから。急に戦えっていわれてもきっとなにをしていいかわからないと思うのです!」


 これからなぎさたちは魔女退治に出かけます。

 まどかも……次くらいには一緒につれていってみましょうか。頭の中で計画を立てます。


あすみ「そういうもんかね…… いや、あいつも戦いとか得意そうには見えなかったな。今まで見た中でも大分どんくさそうな部類じゃない?」

なぎさ「はじめてならしょうがないのですよ。きっと、要領を掴んだら立派に戦えます」

あすみ「また甘いんだから。でも後輩増えたらさすがに一人で全員の面倒見なくてもいいんじゃない? 魔女退治行くにもそろそろ多いでしょ」

なぎさ「! ……じゃあ、あすみが見てくれるのですか?」

あすみ「え、やだよ。そんなことは言ってないって。じゃなくて、後輩の世話は後輩に任せてみたらってこと」

マミ「……私が?」

あすみ「新人ももっと慣れてからのほうがいいだろうけど、二人もいれば前みたいなことになっても安全に逃げられるくらいの余裕はあるでしょ」

あすみ「てか、あれからだってもう……――たしか一年くらい? その時よりは強くなってんでしょ」

なぎさ「訓練ではそれもいいですけど、実戦のほうはまだ無理にしなくても……」

マミ「いえ、私もちょっと頑張ってみたいわ。後輩ってはじめてですもの」

あすみ「なぎさにばっかり先輩としてイイとことられたくないよね?」


 ……またあすみは焚きつけるようなことを言います。

 それに今回はマミも乗り気みたいです……これは困りました。大丈夫でしょうか?


なぎさ「で、でも。それはもうちょっと、まどかが戦えるようになってからなのですよ」

あすみ「まあそうね。それよりまずはバックレないで来てくれることが条件だよね。今度のこそ」


 たしかにそれはずっと気にしていたことでした。一緒に戦う仲間になるという以前のことです。

 あすみは軽く言いましたが……。


なぎさ「とりあえず、まどかとは約束ができましたから! この前の子とは出来なかったですけど……」

なぎさ「まどかは素直そうな子ですし、きっと大丈夫ですよ。なぎさが守ってあげられます」

あすみ「…………」


 そう言うと、あすみは少しだけ何か考えるようにしましたが、こう言いました。


あすみ「まあ、そうかもね」

なぎさ「はい!」



 それから、今日の魔女退治に出発しました。


798 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/27(日) 23:13:11.59 ID:y9P6nhPt0
――――
――――


 まどかと出会った次の日も――そのまた次の日も。

 同じように訓練は続き、まどかは来てくれました。……心配事は杞憂に終わりました。最初に信じた通りだったのです。


 そして、まどかもなぎさたちと一緒に戦いに参加できるようになった頃でした。

 あすみが提案したように、マミとまどかが二人で魔女を倒してきたというのです。

 しかしそれは偶然のことでした。通学路で襲われてた人がいたから。なんでもそれはまどかのクラスメイトだそうで。


なぎさ「それで、二人が無事なのは本当によかったと思うのですが…… ほむらも魔法少女になりたいのです?」

ほむら「いっ、いえ、まだそこまでは……!」


 ……ほむらには素質があるのだそうです。

 魔法少女と会ったことはありましたが、その『候補』と顔を合わせるのははじめてです。

 どう話せばいいのでしょう?


ほむら「でも、鹿目さんと巴さんに話は聞いて。……力になれたらとは、思います」

なぎさ「そう言ってくれるのはうれしいですけど……」


 正直、そう言われてもしてもらいたいことが何も思い浮かばないのです。

 なぎさは魔法少女の新人のことを守らねばならぬ立場です。魔法少女ですらない人を危険に巻き込むのは言語道断。



1力になれることはありません
2だったら契約してください
3あすみに助けを求める
4自由安価

 下2レス
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 00:41:57.05 ID:e3WHPiY1O
確固たる願いがないなら契約をさせる訳にはいかない、と諭す+3
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 01:30:33.91 ID:GM47767zo
魔法少女になりたいわけじゃないなら引き返すべきだ
1
801 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/28(月) 02:17:54.34 ID:L5dej0rZ0

なぎさ「無理なのです。力になれることはありません」

ほむら「え……っ」


 ハッキリ告げるとほむらは表情を引きつらせました。


ほむら「も、もちろん鹿目さんや巴さんのように戦うことはできないとは思いますけど……こう、武器とか持ってきたりしたら、少しくらいは……」

なぎさ「武器って、そのへんで調達してきたものが魔女に効くわけないじゃないですか!」

ほむら「そ、そうなんですか……」

なぎさ「いいですか? まどかとマミだってまだ二人だけで戦わせるのは不安だったのです! これ以上不安を増やさないでください! 引き返して!」

あすみ「あははははは! なぎさ、よく言ってやったじゃん! ていうかアンタ面白いこと言うね〜、そんなこと言い出すやついると思わなかった」

まどか「ほむらちゃんって意外とアグレッシブだったんだね!」

マミ「心意気はいいけれど……ちょっと無謀だと思うわよ。身体強くないんでしょう?」

ほむら「うう……」

なぎさ「強かったとしてもダメですよ」

ほむら「…………はい」


 シュンとしてしまいましたが、仕方ないです。曖昧に言ってついてこられても困りますから。きっと強く言うことも必要だったのです。

 あすみは他人事みたいに面白そうに笑っています。


ほむら「そうですよね。今日少し動いただけでめまいがしたのに、私なんかじゃ、契約したってきっと……鹿目さんたちみたいには」


 ……しかし、ちょっと落ち込みすぎてしまったでしょうか?

 契約したときのことならさっきのこととはまた関係のない話になるのですが。


 そんなときキュゥべえがなぎさの肩の上に飛び乗って、存在をアピールするようにひょこりと顔を出します。そういえばついてきていたんでした。


QB「まあまあ、そんなに邪険にすることないじゃないか。このまま戦うのは無謀だけど、ほむらだって契約すれば戦えるようになるよ」

QB「魔法少女になれば契約前より強くなれるし、身体を強くすることを祈ったっていいんだからね。なんなら、今ここで叶えることだってできるよ?」

ほむら「……いえ、やめておきます。今はまだ……。変なこと言ってすみませんでした」


 ほむらは縮こまるように頭をさげると、卑屈そうにトボトボと去っていきます。

 その後ろ姿にまどかが声をかけました。


まどか「ほむらちゃん! 契約のことは関係ないとして、これからも仲良くしようね! 戦いについてこなくてもここには来ていいから!」

まどか「今は考えてなくても魔法少女のことだって無関係じゃないでしょ? 訓練の風景とか見てたってきっと損はないよ!」


 まどかの言葉に、ほむらは足を止めます。

802 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/28(月) 02:21:03.23 ID:L5dej0rZ0
-------------------------
ここまで
次回は30日(水)夜の予定
803 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/30(水) 21:20:45.62 ID:SMw/4MZs0


あすみ「おい、バカ!」

まどか「え……?」


 あすみが嗜めるように口を挟むと、まどかは困惑したような声を上げました。

 ダメなこと言っちゃったかなって感じの顔です。

 ……まあ、あすみの考え方からして、新人が増えてほしくないんだろうなってことはわかります。繋がりを持たせるようなこともしたくないのでしょう。


ほむら「…………」


 ほむらは背を向けて立ち止まったままです。


あすみ「勝手に余計なこと言わないでくれない? ココ以外でどれだけ仲良くしてたって構わないけど、ここはそういう場所じゃないから」

まどか「えっと、じゃあどういう……?」


 しかしまどかが困惑するのも無理はありません。

 ここは『訓練場所』ですが、こう言ったあすみ本人が訓練せず専らぼーっとしてたり、読書をしてたりするのですから。


あすみ「なぁに? 新入りがいっちょ前に口答えしないの」

まどか「ご、ごめんなさい。でもさっきも言ったとおり、いつか契約するかもしれないんだし見てる分にはいいんじゃないかなって」


 まどかも負けていません。

 物腰は柔らかいですが、威圧だけで適当に丸め込めるタイプじゃないみたいです。


マミ「確かにそれもそうよね。ここは秘密の場所だし一般人に見られたら困るけど、暁美さんはもうこの場所のことも魔法少女のことも知っちゃったんだもの」

なぎさ「うーん、なぎさもここは同感ですかね。戦いは危険ですが、見る分には安全なのです。訓練中はなぎさが見てますし、危険なことはさせませんから」


 ……そう言うとあすみの鋭い視線が突き刺さりましたが、見なかったことにします。


ほむら「……は、はい。ありがとうございます」


 ほむらはこちらを振り返ると、消え入りそうな声で言いました。

804 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/30(水) 22:18:22.50 ID:SMw/4MZs0


あすみ「――そもそもなんでもここに連れてくればいいと思ってんのが悪い」


 ほむらの姿が見えなくなってからあすみが言いました。

 あすみはまだ不機嫌なようすです。


あすみ「候補者なんてただの一般人でしょ?」

なぎさ「でも……『ただの』では、ないのでは?」

あすみ「同じだよ。というか、どうせただの一般人でいたほうがいいんだよ。せっかく願いもないってのに、下手にこっちの世界に引き込んだせいで契約する可能性が出てくる」

まどか「それって悪いことなのかな?」

あすみ「悪いよー。まどかが増えてうちの縄張りももう4人。今までみたいに余裕はないよ?」

マミ「グリーフシード……ね」

あすみ「それにさ、この場合、単純に興味持ってとかよりそういう状況に追い込まれてする可能性のほうが大きいしヤバいと思うけど」

あすみ「たとえばこの中の誰かがちょっとでもピンチになったりしたらそれが契約理由になるかもしれないんだから。アンタら人の命運背負えんの?」


 あすみは損得だけでなく、もっと重いことを考えていたんだとわかります。

 でも、そういうことなら。


なぎさ「それなら大丈夫なのですよ! みんなのことはなぎさが守りますから!」

なぎさ「だから…… やっぱりまだマミもまどかも別行動で魔女とは戦わないでください。信じてないとは言いませんが、心配なのです」

マミ「ええ……そうね。今回みたいに上手くいくとも限らないものね」

まどか「で、でも、今回のこともわたしたちが駆けつけるのが少しでも遅かったら……」

マミ「それは……緊急のときには仕方ないわね」

なぎさ「じゃ、じゃあそういうときはマミと一緒なら。でもやっぱり一人はダメです!」


 もちろん街の人を守ることは大事な役目です。

 ……だけど、マミもまどかも、なぎさにとってはどちらも大事な弟子ですから。



――――――
――――――
805 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/30(水) 23:49:30.80 ID:SMw/4MZs0



 その翌日、マミとまどかの二人の後ろにくっついてくるようにほむらはやってきた。


 マミとまどかは同じ学校だ。これまでも一緒に来ることが多かった。

 さらにまどかとほむらは同じクラスだと言う。まどかは関わらせる気みたいだし、三人一緒にくるようになるのは必然というべきか。


ほむら「…………」


 同じく訓練を傍観してる位置にいるが、私とはまた離れたとこにいる。

 ちょっとだけつつきにいってみる。せっかくだからいびってやる。


あすみ「ねえ、なんでついてきたの?」

ほむら「つ……ついてきていいと言われたから」

あすみ「いつか契約するかもしれないからってやつ? ……でもアンタってハナから契約する気なんてないでしょ?」

あすみ「コンプレックスがあってもその解消のために契約はしないし、よほどのことがなきゃ契約なんて選択肢にもないくせに」

あすみ「アンタはここに居ても自分が契約することなんて考えてない。考えたとしても子供じみた妄想程度。ただ漠然と『すごいなあ』って思って憧れてるだけ」

ほむら「…………」

あすみ「そうじゃない? 昨日なぎさも言ってたとおり、アンタに出来ることなんてないんだよ。だからついてくる意味なんてないの」

ほむら「……お見通し……なんですか」

あすみ「そう。アンタのチープな野次馬根性なんてお見通し」


 多少のぞかせてもらったが、ほとんど予想通りだった。

 それもそのはず。契約したって自分が戦えると思ってないんだから。『すごい人』にくっついて回りたいだけだ。

 『すごい人』に守られながら横で地味な応援だけして、その一員として役立ってるつもりになりたかったんだろう。


ほむら「……どうしてみんな、あんな怪物を目の前にして戦えるんですか? いくら魔法があったって、私には無理な気がして」

ほむら「契約する前から勇敢だったの? 私なら絶対に足がすくんでしまう。どうせみんなの足を引っ張ることになる……」

あすみ「そんなの人によるんじゃない。そう思うんなら帰れよ」


 とはいえ、どんなに臆病でもいつかは慣れるし、何かがきっかけで思い切ることもある。

 最初はビビってたマミだって今は戦えてる。……それに、私だって。

 だから万が一よほどのことが起きて思い切ってしまう前に離れさせる必要があるのだ。


なぎさ「あれ? あすみ、ほむらと仲直りしたのですか?」

あすみ「するわけないでしょ」


 訓練に区切りをつけたらしいなぎさがこっちに来る。

 ……いびるだけのつもりがこれ以上親近感を抱かれても困る。読書に専念することにした。

806 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/01(木) 00:11:47.03 ID:6/xnKkRA0


あすみ(さて、どこまで読んだっけな…………)


 暇で暇で堪らない日々の中で、読書は新しく身に着けた趣味といえるものだった。

 時間はつぶせる。金もほぼかからない。場所も取らない。


 そういえば学校に通っていた頃は、よく図書室に通っていたと思い出す。

 お母さんは遅くまで仕事してて暇だった。その時も暇つぶしに本を読んでいたんだ。


 ぼんやりと訓練の風景を遠目に捉えつつ、本の世界に入り込もうとする。その時、隣から声がした。


ほむら「その本……」

あすみ「……何? 本?」


 まさか今度は向こうから、またこいつに話しかけられるとは。


ほむら「いえ、読んでたなって……」

あすみ「そう。ネタバレしないでね」

ほむら「あ、もちろんです! ネタバレは一番つまらないので!」

ほむら「でも、下巻のほう読んでないんですよね……。休憩室にシリーズがあったけど、読まないうちに退院しちゃったから……」


 ……そういや身体弱いとか言ってたっけ。

 入院中か。それはまた暇そうだな。口には出さず、心の中でだけ思う。



 ほむらはそれ以上話してくることはなかった。でもたまにこっちを見ている視線を感じた。



 まさか、そんなことで話しかけてくるとは思わなかった。

 そんなことを話す相手がいるとも思ってなかった。でも、こっちが親近感を抱くわけにもいかない。……目を合わせず、冷たく対応することにした。



――――
――――
807 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/01(木) 00:15:44.64 ID:6/xnKkRA0
----------------------
ここまで
次回は3日(土)夜からの予定です
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/01(木) 03:44:44.99 ID:8vTVAGRUO

あすみとメガほむの絡みは新鮮だな
まさかのあすほむ来るのか?
809 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/03(土) 23:55:53.51 ID:JTXJbJf+0


 それからというもの、まどかに加えて一般人のほむらまで常連になった。

 ……なってしまった。私としては不本意なんだけど。


 しかし、この日は何か揉めてるらしかった。


なぎさ「――――じゃ、じゃあ、今はもう治ったんですね?」

まどか「うん。終わったあと、魔法で治せるってキュゥべえに教えてもらったから」

なぎさ「で、でも、怪我したのですよね!?」

まどか「でも本当にそんなに大したものじゃないの。怪我はちょっとつまづいて転んじゃったってだけだから!」


 まどかが怪我したとかなんとか。でも問題の中心はそこじゃなく。


なぎさ「結界の中で危険なのは使い魔や魔女だけじゃないのです! 足場が悪かったり罠があることだってあります!」

なぎさ「ただ転んだのとはわけが違うのですよ。戦うなら絶対にいっしょにって約束したのに……」

まどか「そ……そう思ってたんだけど、でも……」


 この前改めて言いつけられてからほんの数日だというのに、まどかがソッコーで約束を破ったってのが問題ってとこだろうか。

810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/04(日) 00:05:57.13 ID:XselvCV60
ベテランの忠告を聞かないとかこのまどか、舞い上がっちゃってますね。
811 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/04(日) 01:03:57.06 ID:V77CPZQ70


マミ「どうして一人で魔女と戦ったの?」

まどか「友達が操られてたんです。それに、他の人も……いっぱいいて、集団自殺しようとしてました。わたしが戦わないと間に合わないんじゃないかって」

マミ「なるほどね……」

なぎさ「……だ、だからって…………」


 なぎさが第一印象で素直そうと評してた通り、私もまさかこいつがこんなに早く――とは思ったけど。

 一応納得できるほどの理由はあったらしい。なぎさは口ごもった。


まどか「や、やっぱり、わたしが戦うのをためらったせいで誰か傷つくと思ったら見逃せないよ……せっかく魔法少女になったんだから」

なぎさ「!」


 なぎさに反発して仲間になることを拒否した魔法少女たちとはまどかは考え方が違った。

 その考えは、むしろ人を助けるのが魔法少女だと正しさを謳ってたなぎさたちに近いはずだった。



あすみ(なんか面倒そうなことになってるな)


 私はその修羅場じみた光景をまだ遠巻きのまま見ていた。私は人助けのためなんて考えたことないし。同じ立場では話せない。



ほむら「やっぱり……、魔女と戦うのって危険がつきものなんですね……」

あすみ「……まあ、そりゃね。怪我くらいすることはあるよ」


 こいつも傍観しかできない立場だ。だからって、話に入れないからって私に話しかけないでくれないか。


ほむら「どうしたらいいんでしょうか……?」

あすみ「さあね。私に聞かないでくれる?」


 しょぼんとした、陰気臭い空気を横から感じる。……傍観者だからって『同じ』じゃない。

812 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/04(日) 01:08:57.18 ID:V77CPZQ70
--------------------
ここまで
次回は4日(日)夜からの予定
813 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/04(日) 23:40:57.90 ID:V77CPZQ70
――――――
――――――


 まどかから言われたことにハッとしてしまい、なぎさは言葉を返せませんでした。

 街を守るのが魔法少女の役目。なぎさはずっとそう思ってたつもりでした。――しかし、本当にそうだったのでしょうか。


 もうひとつ、なぎさには大きな役目があります。

 確かに魔女を倒すまでの時間が早いほど誰かが操られたり取り込まれたりする危険はなくなりますし、なぎさもいつでもすぐに駆けつけられるわけではありません。

 それでも弟子たちには一人で戦わせたくないと思うのです。危ない目に遭ったときになぎさが守ってあげられないから。


 知らず知らずのうちに、マミやまどかの安全と街の人の安全を天秤にかけていたのでしょう。


なぎさ「……それなら、友達を連れて逃げたっていいのです」

まどか「でも、それじゃ他の人は」

なぎさ「一筋縄で倒せない魔女だっているのです! 魔法少女であるまどかが死んでしまったら終わりなのですよ!」

なぎさ「それでも一人で戦うのなら……戦う前に連絡してください。そしたらなぎさも助けることができるかもしれません……もし、まどかに『何か』があったとしても」

なぎさ「約束を守ってくれれば、なぎさはまどかのことを絶対に守ってみせます。……でも、破るのなら守れないかもしれません。それも一つの考え方ですから、仕方ないです」

まどか「……あ……えぇと…………うん、ごめんね」


 まどかははっきりと何かを言い返すようなことはしませんでした。まだ色んなことを考えているのかもしれません。

 けど、どうして謝ったのでしょうか。

 再び同じ状況に立った時、なぎさにはまたまどかは同じ行動を取るのではないかと思えてしまいました。


なぎさ「……じゃあ、今日も訓練しましょう!」


 なぎさの合図で今日も訓練をはじめます。

 訓練中はいつもと変わりませんでした。まどかが来てから久しぶりに新人に教えるのは新鮮です。

 まだまだ教えなきゃいけないことはたくさんあります。



 ……ちゃんと、教えたいことを全部教えられるでしょうか。


814 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/11(日) 22:22:30.37 ID:oDu01kcW0


マミ「鹿目さんの弓って不思議ね」

まどか「そうですか?」

マミ「ええ。弓って扱いが難しそうだけど、思ったとおりの場所に飛んでいくんでしょう? 軌道が読みづらいのよね」

マミ「鍛えればいい武器になると思うわ」

まどか「はい。がんばります。マミさんのもすごいですよね」

マミ「少し狙い方は似ているのかしら? このリボンも狙う先を意識すると上手くいくの」

マミ「最初は私も上手く行かなくて苦労したのよ。たとえばさっきの一撃は――――」


 訓練ではマミとまどかが手合わせすることもあります。その延長で直接指導することも増えました。

 普段から同じ学校の先輩として接しているのでしょう。

 こういう時のマミを見ていると、なぎさに勉強やお料理を教えている時のような、頼もしくて優しいお姉さんの顔です。


 もちろんなぎさも見ています。もっとこうしたらいいんじゃないかって口を挟むことだってあります。

 でも、段々とそんな機会も少なくなってきている気がするのです。


あすみ「マミが巣立ってくみたいで寂しい?」


 ……気づいたらあすみが横に居ました。


なぎさ「は、はい。まあ少し……」

あすみ「私もあいつは一生コバンザメのようになぎさについてくのかなって思ってたけど、弟子ができたら意識も変わるよね。しかも同じ学校の後輩でもあるんでしょ?」

あすみ「……まあでも、本当の意味で離れてっちゃうようなことは多分ないよ」


 いつになくあすみが優しいです。いえ、出会ったときからしたらすでに大分トゲトゲは減っているのですが。

 直球で優しいをかけることは今でもあまりないのです。あれ、これってもしかして。


なぎさ「もしかして、なぎさを慰めようとしてくれてるのです?」

あすみ「……だって、ハブられたみたいな顔してたから」

なぎさ「そ、そんな風に見えてたのですか?」


 あすみは魔法がなくても心を読むのは上手です。間違いでもないのかもしれません。


あすみ「でもさ、こう思うようになってきてない? 自分の言うことを聞く人は守るけど、聞かない人はどうなっても仕方ない……って」

なぎさ「だ、だって……なぎさがどんなに守ろうとしたって限界はあるのです。まどかみたいな理由ははじめてだったけど……」

あすみ「現実的だとは思うよ。なんかちょっとらしくないなって思ってたけど……まあ、それも成長したってことなんでしょ」

なぎさ「…………」


 ……だって。どうしたらいいのでしょうか。

 みんなを死なせないためには、なぎさの手が届く範囲に居てもらうのが一番なのです。


――――
――――
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/11(日) 23:22:33.75 ID:8TcoY0VC0
お、続き来た!
816 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/12(月) 00:12:45.60 ID:iCqshFtl0


 ――――まどかとほむらが訓練の場に加わりましたが、それだけではありません。

 ついでにその後のお料理のトックンにも二人が加わりました。


マミ「――――湯煎してたチョコレートはもう溶けた?」

まどか「はい! こんな感じで大丈夫ですか?」

マミ「ええ。バッチリよ」

なぎさ「こっちも生地の準備出来てますー」

まどか「みんなでお菓子作りするのって楽しいですね」

ほむら「はい。自分たちでこんなにお菓子や料理を作れるなんて、魔法みたいですね」


 訓練後は魔女退治に向かうことも多いのでたまにですが、魔法少女の関係ないことにはほむらも参加してます。

 その代わり、相変わらずあすみはこういうのには来ないです。


 まどかはあまり遅くまでいられないので、一緒に過ごすのはティータイムだけです。

 それもあって、最近ではお菓子を作ることが増えました。

 今ではなぎさがおうちでも家事を任せられるくらいには上達したから――というのもあるのですが。


マミ「そういえば、鹿目さんと暁美さんにはまだ言ってなかったかしら。なぎさちゃんは魔法でお菓子も出せるのよ」

ほむら「戦うだけじゃなくて、そんな魔法もあるんですね……」



 マミは自分のことのように誇らしげに言いました。



 今のところはみんな無事で、問題は起きていないです。――だからって、安心していいわけじゃありません。



 まどかに対する、また約束を破るんじゃないかという不安。

 『破るのなら守れなくても仕方ない』――あすみの指摘どおりあの時まどかに言い放ったのはそういう真意があって、なぎさは心の底でその覚悟をしてたはずでした。

 でも、まどかはいい人です。これ以上仲良くなったら、そんなに簡単に切り捨てることなんてできなくなってしまいそうなのです。

817 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/12(月) 00:50:07.44 ID:iCqshFtl0


なぎさ「あの……ほむらはまだ契約って考えてないんですよね?」

ほむら「……。はい。まだ今は…………」


 オーブンをセットしてケーキを焼く間、ほむらにも聞いてみました。

 ほむらはずっと訓練についてきてはいますが、こうして話すのは今までほとんどありませんでした。


なぎさ「もし魔法少女になったら、ほむらはなぎさとの約束を守ってくれますか?」

ほむら「一人で戦わないこと……ですよね。守ると思います。私は一人で戦えるほど勇敢じゃないから」

なぎさ「そうですか……」


 ほむらはそう言いましたが、ちょっと疑問を抱いたのが出会って初日のあの発言があるから。

 ……契約しないまま武器持って魔女退治についてこようとした人の言葉とは思えません。

 それを指摘してやると、ほむらは慌てたようにして答えました。


ほむら「あっ、あれは勇敢なんかじゃなくって……むしろ逆です。みんなについていくだけだから。守ってもらえるから平気だと思ってたんです」

ほむら「本当は戦う覚悟なんてなかったくせに……それがどれだけ危険なことか、みんなに迷惑をかけるか考えてなかっただけなんです」

なぎさ「契約についてはゆっくり考えてくれればいいです。危ないことはしなくていいですからね」

まどか「うん。応援してくれる気持ちだけで十分助かってるよ」

ほむら「ちが……――、違うんです。私はそんなに立派な気持ちでここにいるわけじゃ……」

まどか「――?」


 話しているうちに、オーブンの電子音が聞こえます。

 ケーキが焼き上がりました。

818 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/12(月) 00:53:58.77 ID:iCqshFtl0
------------------------------
ここまで
次回は16日(金)夜から
819 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/16(金) 23:32:12.37 ID:frUFj8kf0



 出来上がったチョコレートケーキはなめらかで、今日も見事な出来でした。

 マミの淹れてくれた紅茶をお供にティータイムははじまります。紅茶の淹れ方もみんなで見させてもらっていました。

 今ではなぎさもマミと同じくらい上手に紅茶を淹れることができます。でも、二人のときは大体マミに任せています。

 紅茶でも料理でも……なぎさが完璧に覚えたと思っても、マミはよく今まで知らなかったようなことを見つけてくるので、マミにはずっと敵わない気がします。

 飽くなき探究心を感じるのです。


まどか「見た目も綺麗だし、ちょうどいい甘さで美味しいです! 今度家でも作ってみます!」

マミ「ええ。ご家族に作ってあげたらきっと喜ぶわよ」


 まどかは教わったレシピをノートにまとめていて、それを見たマミがメモを書き加えたりもしています。

 その光景にマミと訓練をはじめたての頃を思い出します。

 マミの訓練ノートはさすがに今は書き込む頻度は少なくなりましたがまだ続いています。そういえばまどかにも見せていました。


ほむら「私も練習したら作れるようになるのかな……」

マミ「こういうのって、やってみたらできるものよ。料理って出来るようになったら楽しいんだから」

まどか「ほむらちゃんも一人暮らしなんだよね」

ほむら「で、でも、全然こんな…… 巴さんみたいに立派じゃないです」

マミ「暁美さんもそうだったのね。それならこのあとお夕飯も一緒にどうかしら? 教えるわよ?」



 ……ふと、思いました。あすみは訓練や魔女退治のこと以外でも、こうして魔法少女と必要以上に関わるのにはまだ反対してるんだって。


 あのときなぎさはこう言いました。

 『大丈夫なのですよ! みんなのことはなぎさが守りますから!』 ――――でも。

 『破るのなら守れないかもしれません。それも一つの考え方ですから、仕方ないです』


 これじゃ大丈夫って、言えませんよね。

820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/16(金) 23:58:25.39 ID:p3cTHUAB0
なぎさはなぎさ編と違って芯が定まってない感じですね
821 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/17(土) 00:37:43.72 ID:i3/HN3aL0


まどか「――――今日はありがとうございました。あの……っ 訓練、なぎさちゃんにも認めてもらえるようにもっとがんばるから!」

なぎさ「なぎさに……?」


 ティータイムが終わって、まどかが帰る時間になります。

 すると、帰り際にまどかが言いました。


まどか「うん。なぎさちゃんがわたしたちに一人で戦ってほしくないのって、安心して任せられないって思ってるからなんだよね?」

まどか「わたしは新人だしまだまだみんなより弱いけど、いつかはちゃんと肩を並べられるようになりたいの」

まどか「……なぎさちゃんとあすみちゃんみたいに」


 なんでここであすみの名前が? ――そう思いましたが、すぐに納得しました。

 一応魔法少女としてはなぎさのほうが少し長いとはいえ、出会ったときからあすみはなぎさの弟子だったことはありません。

 大切な『友達』ですが、『守らなければならない存在』と考えたことはありませんでした。


 マミとまどかは弟子で、守らなければならない存在です。

 でもそれって、二人のことを対等に見ていない、認めていないってことでもあるんじゃないか――そう、思わされてしまいました。


 ……なんだか、まどかの言葉にはハッとさせられることが多いです。


マミ「そうね。いつかはそうならなくちゃね」


 もちろんまどかは契約したてですし、今すぐに認めるわけにはいきません。

 でも、いつかは一人前に。信じて任せられるようにするのは師匠のつとめでもあるのです。


822 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/17(土) 01:56:58.57 ID:i3/HN3aL0



 まどかも帰ると、今日は三人になります。

 さっき話してた通りほむらもまだ残っていました。


ほむら「さっきのこと……なんですけど」

なぎさ「さっきのこと?」

ほむら「はい、ケーキ作りの時に話してたこと……みなさんは私に契約について考えるためについてきていいって言ってくれるけど、本当は全然そういうの考えてないんです」

ほむら「誰かと一緒に過ごしたり、おうちに招いてもらったり、そういうのって初めてで……それが嬉しくて」

ほむら「私はただ……ついてきてるだけ…… 本当はよくないですよね」


 ほむらはいつもよりさらに自信なさげに話します。

 契約する気がまったくないのなら遊び半分で覗かれるのはたしかにあまりよくありません。

 それに、遊び半分にしても訓練中はあまり構ってあげられるわけではありませんし、少し寂しそうにしてたのは見えていました。

 かえって疎外感やプレッシャーを与えてしまっていたかもしれません。


マミ「……そうだったの。それじゃ、私達の訓練についてくる必要はないわね。今後は暁美さんに合った特訓をするようにしましょう」

なぎさ「えっ? どういうことなのですか?」

マミ「暁美さんには、今日から私が先輩として料理を教えてあげるわ! どう? 私の弟子になってみない?」

マミ「なぎさちゃんも私の弟子なの。暁美さんは二番弟子ね」

なぎさ「!」


 マミは悪戯っぽく笑って言います。……料理の方でも、なぎさについに弟子ができるのでしょうか。


ほむら「……は、はいっ。よろしくおねがいします!」



 とりあえず、早くも『免許皆伝』を望んでいるまどかにはとくに厳しく鍛えるしかないのです。

 まどかのことを信じられるように。……『大丈夫』っていえるように。



 魔女には新人が一人で倒せるものから、ベテランでも危険な相手までいっぱいいます。相性にもよります。

 ――――でも、ベテランも相性の良し悪しも関係なくすべてを覆す最悪の『敵わない相手』は、それからほどなくしてやってきてしまうのでした。


823 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/17(土) 02:11:04.75 ID:i3/HN3aL0
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次回は17日(土)夜からの予定
>>820 なぎさ編は色々と端折ってきてるので葛藤とかはあまりないですね
824 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/07/17(土) 03:07:35.15 ID:3Kx4qjCo0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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825 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/18(日) 20:56:15.46 ID:nTZUtAnh0



 その前触れは本当に唐突で。



――――
――――



なぎさ(せっかくの休みの日なのに朝からお空がご機嫌ななめです…… 風、止むどころか強くなってるみたいですし)


 朝ご飯を準備していたところに外から放送が聞こえてきて、お父さんにつれられて一緒にここまで避難してきました。

 天気も悪そうなので、せっかく今日は訓練もなしにしてゆっくりとご飯を食べてお家で過ごそうと思っていたところだったのですが。

 予想していたよりもさらに天気が悪かったようです。


 ……いえ、本当はその前にやろうと思っていたことがありました。


なぎさ(家にいたときから感じていた魔力、ここまで来ても変わりませんね)

なぎさ(結界が近くにあったからというより、ここ一帯が包まれているような……それも段々と濃くなっているような気さえします)


 一帯を包み込むような魔力。それに併せたような災害。

 そんな魔女のことをなぎさは知っています。キュゥべえから聞いただけではありますが。


なぎさ「お父さん、ちょっと離れていい? お友達もここに来てるみたいだから!」

「あぁ、ずっとじっとしてるのもヒマだよね。でも絶対外には出ちゃダメだよ」


 おそらくあすみもマミもまどかも気づいてるはず。……そういえば、みんなもここに来てるのでしょうか?

 ただの台風じゃないのだから、元凶を退治しなければおさまりません。

 もしかしたら、もうそっちに行ってる可能性もあります。


なぎさ(お父さんにはダメと言われたけど……)


 なぎさは魔法少女だから。みんなを守るためです。

 覚悟を決めて外に出ようとすると、携帯から音が鳴りました。



――――――
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/18(日) 22:16:31.46 ID:3S/bqI7C0
いきなりワルプル戦ですか!?
827 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/18(日) 23:05:08.66 ID:nTZUtAnh0
――――――


 たぶん、朝?

 外が騒がしくて目を覚ました。スタッフが宿泊者全員に避難を呼びかけてるとか。


あすみ(ワルプルギスの夜……か)


 巻き込まれないうちにと早々に外に出てきて、私は宛もなく歩き始める。

 魔力の気配には起きてすぐ気づいてた。風は強さを増している。



*私は……
1魔力が強くなる方を目指して歩き始めた
2みんなが向かう方に歩き始めた
3魔力が弱くなる方に歩き始めた

 下2レス
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/18(日) 23:17:36.45 ID:3S/bqI7C0
2のみんなとは宿泊客のことで行き先は避難所かな?
避難所にはなぎさが居るみたいだけど、どうせ外に出てると思うので1。
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/18(日) 23:23:57.69 ID:O8G4lmM+O

ていうかまたホテルに潜り込んでたのかよ
830 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/18(日) 23:53:39.26 ID:nTZUtAnh0


 道行く人はみんな一つの方向を目指してる。多分避難所の方向なんだろう。

 でもそんなの意味がない。本当に避難したいなら今からでも街から遠ざかるべきだ。


あすみ「まあ、でも。そんな伝説級の存在、姿も見ないうちにビビって逃げちゃうのももったいないよねー」


 なにより無様だ。

 相変わらずどこへ向かうのかはわからないものの魔力が強くなる方向を目指して歩くと、街を使い魔が闊歩してた。

 簡単に倒せたし反撃すらしてこなかったけど、こんな動物が普通にいるはずもないし使い魔なんだろう。

 こいつら見るようになってからは風の勢いも更に荒れている。このあたりになると、人の姿もめっきりなくなった。


 すでにかなり中心部に来たはずだが、大ボスらしき姿が見当たらない。


 一旦足を止めて建物の上から見渡していると、空に強い力を持つ魔法陣が描かれ、人影――といっていいのかわからない巨大な影が現れた。

 一見ヒトのような顔、手足、胴があるが、大きなスカートの中からは歯車が覗いている。しかも、なぜか上下逆さに浮かんでいた。


あすみ「……そういうわけね」


 あの使い魔はショーの前座のようなもの。

 いつのまにか使い魔の姿も消えていた。



 ――――腕試しといこうか。



――――――
831 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/18(日) 23:57:41.84 ID:nTZUtAnh0
---------------------------
【訂正】>>830 「手足」はなかったわ
腕、くらいに脳内変換しといてください
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/19(月) 00:04:08.93 ID:Yvx1ZKeP0
>>831
足なんて飾りです!偉い人にはそれがわからんのですよ!
833 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/19(月) 00:33:32.63 ID:ytMEaxz10
――――――



 着信の相手はマミでした。マミも同じように魔力を感じ取っていて、避難所に行こうか迷っていたということでした。

 マミにはまだ近づかないように言いつけつつ、まどかとも話しておかなければなりません。


なぎさ(まどか、先走って向かってたりしなければいいのですが……)


 そんな心配をしましたが、その直後にまどかからも連絡がきました。

 まどかも家族と一緒に避難所に来ていたそうでした。まずは避難所の中で二人で合流しました。


なぎさ「まどか! ご無事でなによりなのです」

まどか「うん、なぎさちゃんも……! ところで、この魔力ってなんなのかな? 外に魔女がいるなら倒しにいかないと」

なぎさ「そのことについて話そうと思ってたのです。なぎさも実際に見たことはないのですが……――――」


 結界を持たない魔女、『ワルプルギスの夜』のことをまどかに話しました。


まどか「た、大変! そんなのが現れたなんて……! そうだ、マミさんとあすみちゃんは!?」

なぎさ「マミは外にいます。でもまだ暴風の中心部には近づかないように言っています。あすみのことは……わかりませんが」

まどか「倒しにいかないとだよね」

なぎさ「……」


 相手は伝説の魔女です。普通の魔女ならなぎさと一緒に戦う分には問題ありませんが、新人のまどかをできるだけ危険には晒したくありません。

 しかし、どのくらいの強さかもわからないとなると戦力が多いほうが助かるのも事実……。


1倒しに行きましょう
2待っててほしい

 下2レス
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/19(月) 00:39:27.68 ID:Y1GKM08LO
1
まどかは待てと言われても勝手に動きそうだからなぁ
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/19(月) 00:47:01.49 ID:Yvx1ZKeP0
ここは1かな?

1週目のまどかはアニメ本編でも魔法少女になったのが誇り云々言ってたし、ぜったい付いてきそうなんだよなぁ・・・
どうせ一緒に戦うことになるなら最初から身近に居てくれた方がいいよね、多分
836 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/19(月) 00:59:55.29 ID:ytMEaxz10
-------------------------
ここまで
次回は21日(水)夜からの予定
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/19(月) 01:10:41.85 ID:Yvx1ZKeP0
乙です。

>>828は2の方が良かったかな?
なんかあすみだけ先走っちゃった結果に・・・
838 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/21(水) 23:55:22.35 ID:FmB5ZX2f0


なぎさ「はい、行きましょう! では今からマミに連絡するのです!」


 ……まだまどかは未熟です。

 ですが、戦う意欲だけは人一倍あるのです。力にならないことはありません。

 でも。


なぎさ「……でも、とても危険な相手です。危ないと思ったときには逃げるのですよ」

まどか「……うん。頑張るから、みんなで倒そうね」


 ……そう言っても、少し不安の残るところはあります。

 するとその時、こちらに一人近づいてきました。

 覚悟を決めて外に出ようとしていたところを呼び止められます。


ほむら「鹿目さんに、なぎさちゃん……二人も来てたんですね」

ほむら「なんとか一人で避難してきたんですけど、心細くて」


 ほむらは一人暮らしですから、一人でここまで来て、それからもずっと一人でいたのでしょう。

 外は暴風、そんな中なぎさたちを見つけて安心しているのがわかります。

 でも、ついていてあげたい気持ちはやまやまですが、今に限ってはそれはできないのです。


まどか「ほむらちゃん、これからわたしたちがこの風を止めて来るから」

ほむら「え……? そんなことが……?」

まどか「これは、ワルプルギスっていう悪い魔女が起こしてる災害なの。だから倒さなきゃいけないの」

まどか「ほむらちゃんはここで待ってて」


 また不安そうな表情に戻ってしまったほむら。


なぎさ「……大丈夫です。ちゃんと帰ってきますよ」


 なぎさたちはそう告げて、避難所の出入り口のほうへと歩いて行くのでした。

839 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/22(木) 00:27:29.61 ID:ffQxHaM70


 外に出た時、わたしたちは驚きました。避難してきた時にはなかったはずの、魔女の姿があるのです。

 まだ遠くて、小さくしか見えないのですが……その魔力の強大さ、禍々しさたるやこれまでの魔女とは比べ物になりませんでした。


 それからマミと合流し、三人で目標へと目指していきます。

 魔力だけを頼りに近づくよりは姿が出ているほうがわかりやすいのですが、

 既に魔女が動き回るたびに被害が出ているようなので、急がなくてはなりません。


マミ「私も驚いたわ……。いきなり空に魔女が現れて、そこから明らかに魔力も風も強くなるのを感じたの」

マミ「それに、遠目に見ていたけれど、ビルくらいなら軽々となぎ倒しているみたいよ……恐ろしい相手だわ」

まどか「あすみちゃんは大丈夫なのかな……?」

なぎさ「! 誰か、もう戦ってる……!?」


 魔女に近づくにつれて、その周りを飛び回っている人の姿や、

 その攻撃によって、宙を舞うワルプルギスの夜の動きに不自然な動きが加わっていることも目に入りました。

 おそらくは、あれが……。


なぎさ「あすみならそう簡単にやられたりしないのです……! ですが、こっちも急ぎましょう! これ以上被害を出さないために!」



――――――
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/22(木) 00:43:52.90 ID:HNammaBE0
あすみは反転したワルプルギスをも倒す呪いカウンターがあるけど、ゆまちゃんとは会ってないみたいだから使えないよねぇ・・・
841 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/22(木) 01:09:52.13 ID:ffQxHaM70
――――――



 走る。


 ちょっと油断してると魔女との距離は開く一方だし、遠くから鉄球をぶつけるにも距離が開けば開くほど威力は弱まる。

 もっとも、全力でぶん殴ってやった時にも大したダメージを与えた手応えは得られなかった。


あすみ「あぁ……ッ、クソ……!!」


 元々私は足が速くない。

 普段から身軽さよりも武器の威力を重視するスタイルだし、物理的にも発育不良気味の短い子供の手足じゃ速度が出るはずもなかった。

 それでも普段の戦闘では戦い方でカバーするから気にならなかった。今になってコンプレックスを刺激されて腹が立つ。


 こんなに苦戦する魔女なんてはじめてじゃないだろうか。久しぶりにイライラが湧き出てきた。


 ただ走るだけでは宙を飛ぶ魔女には追いつけない。

 街の脇に立つ電柱に鎖を伸ばして巻き付け、巻き取りながら一気に飛び上がる。

 平面で追いつけないなら立体的な動きを交えるしかなかった。


あすみ「うらッ!」


 距離を詰めたところでワルプルギスの夜に向けて鉄球を振りかぶり、叩き落としたところで、

 更に長く鎖を張って地面に縛り付けては魔女の歯車部分に乗ってガンガンと殴り続ける。


あすみ「壊れちゃえ! 壊れちゃえ! このガラクタッ!」


 これまでに何本のフレイルを無駄にしたんだろう。ストックには余裕があるものの消費も馬鹿になってない。


 ――下からこちらを覗いてくる魔女と目が合った。いや、正確には目はないが、見据えられたのがわかった。

 直後にほとばしる熱気。


あすみ「バカかったくね……なんなのこいつ。さすが伝説の魔女っていうだけあるか」


 退避には成功したものの結局はまた振り出し。

 追いかけて殴って、どれだけ効いてるのかもわからない。飽きかけてきたな、なんて思った時、向こうから声がした。


なぎさ「あすみ! やっぱりもう戦ってたのですね!」

まどか「わたしたちも一緒に戦うから!」

マミ「それにしても、こうして見るとすごい状況ね……」


 知ってる声の勢揃い。どうやらまだ抜けるわけにもいかなさそうだった。

842 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/22(木) 22:47:09.58 ID:ffQxHaM70


 さっきと同じことの繰り返しに、三人の力が加わる。


 マミがリボンで足場を作り、まどかが離れたところから矢を打ち込み、

 できるだけ近づいたところでさっきみたいに強力な一撃で動きを止める。


 なぎさも範囲攻撃ではあるがシャボンじゃ着弾までに時間がかかりすぎるから、結局至近距離まで行くか、動きをとめないと当たらない。

 あれほどの巨体を包み込むのは難しいんだろう。炎を吹き出す頭だけでもシャボンで閉じ込めようとしてたが、一発分しか持たなかった。



 こちらの攻撃の手は増えた。しかし、まだ魔女の様子に変化は見られなかった。



なぎさ「あすみ……そういえば、ワルプルギスの夜の心も読めてたりするのですか?」


 戦いの途中、なぎさが聞いてきた。

 たしかに魔女は悪意の塊だし、超弩級のこいつの悪意はそれ以上だ。


あすみ「心っつーのかな……そう言えるほど単純じゃないよ。表現するなら、こいつ自身があらゆる悪意が絡み合った呪いの塊って感じかな」

なぎさ「な、なんと禍々しいのでしょう……!」


 いつもなら呪いに反応する私の『呪い』も、こいつには効いてるのかもわからない。意識しすぎれば気分が悪くなりそうだ。

 本気でやろうとすればやれるだろうか? しかし、上手くできる自信もなかった。

843 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/22(木) 22:53:58.82 ID:ffQxHaM70


 ――魔女の様子にまだ変化は見られない。それに引き換え、こちらはどうだ。



 見渡してみても、傷ついてない人はいなかった。

 風に乗って、細かい石や建築物の破片、車なんかがぶつかってくる。

 私は元々細かい攻撃は避けずに攻撃を優先したほうがいいと思っている。しかし、今の状況じゃ避けようと思っても避けきれないくらいだ。

 気にしてたら動けなくなる。みんなもその傷や疲労は蓄積していってる。


あすみ「……ねぇ、もう撤退しない?」

なぎさ「な、何を言うのですか!?」

あすみ「これ以上やると、私たち無事じゃなくなるかもよ」

なぎさ「……!」


 なぎさだって気づきつつあっただろうに。


マミ「でもそれじゃ、街が……!」

まどか「そ、そうです! 魔法少女のわたしたちが逃げたりしたら!」

なぎさ「いえ、でも、そうです…… だって、なぎさはここに来る前」


 なぎさが何かを言いかける。しかし、強い風が吹き抜けたと同時に異変に気づいた。


あすみ「! それより上……!」


 頭上から影が落ちてくる。魔女の攻撃によって破壊されたビルだ。

 私の合図と同時になぎさがシャボンを膨らませてガードを張る。

 それでも重みに耐えきれず、足元から崩落していくのがわかった。多分、ガードもこれ以上持たない。


なぎさ「みんな逃げてください!!」


 戦ってる最中に、飛んできた細かい石や建築物の破片、車なんかがぶつかることはよくあった。

 もはや気にしていられないくらいに。しかし、みんなその傷や疲労は蓄積していたのだろう。


 退避する準備ができていたのは私となぎさくらいで、元々攻撃の範囲にいなかったマミを除けば……、

 まどかがまだ対応しきれずにいた。


 それに気づいたなぎさは。


なぎさ「マミ、まどかの足場を!」

マミ「!」


 まどかを力強く突き落とし、身代わりとなっていた。

844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/22(木) 23:07:54.08 ID:HNammaBE0
うーん、神様もいないしあすみもゆまと会ってなさそうだから劣勢だなぁ・・・
845 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/22(木) 23:18:38.23 ID:ffQxHaM70


まどか「うっ…… な、なぎさちゃんは!?」

なぎさ「なぎさなら大丈夫ですよ。やっぱりまどかは逃げてください」


 まどかはマミのリボンによって受け止められていた。

 けど、なぎさは……瓦礫と瓦礫の間に挟まれ足を潰されていた。


まどか「で、でも……!」

なぎさ「いいから! あすみの言うとおりこれ以上は危険です! 言いましたよね、危険だと思ったら逃げてって……!」

なぎさ「マミもです……! 今、まどかを守れてよかった。でももうきっと次は守りきれないから」

まどか「ま、待って。見捨てられないよ……」

なぎさ「まどかが死んだら、ほむらは契約しますよ。まどかのために。まどかはほむらの命運を背負えますか」

まどか「……!」

なぎさ「なぎさは怪我はしましたが、足を治せば戦えますよ。こんな時くらい先輩に任せるのです……!」

マミ「…………行きましょう、鹿目さん。私達じゃ足手まといよ」


 後ろ髪をひかれるような表情を浮かべながらも、まどかはマミに連れられて遠ざかっていく。

 マミまで返しちゃってよかったのだろうか。しかし、万が一にも弟子を失うことを恐れるなぎさからしたら当然の判断か。


あすみ「わかってるの? 私はともかく、なぎさだってほむらと仲良くしてたくせに」

あすみ「私達だけでも勝てると思う?」


 なぎさを瓦礫から引っ張り出す。治癒は得意じゃないから、あとのことはなぎさ任せだ。


なぎさ「……わかりません。でも、なぎさはやるしかないですよ」

なぎさ「まどかとマミは任せてくれたのです。負けちゃったらきっと、二人は戻ってくると思うのです。だから」


 広範囲に潰された足を治すにはそれなりに時間がかかるらしい。

 魔女はまだ気まぐれに街を破壊してる。

846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/22(木) 23:33:16.43 ID:452182+oO
なぎさとあすみの2人だけになったか
847 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/23(金) 00:03:04.57 ID:e+k4D98V0


 私は魔法少女だから魔女を倒さなくちゃ――とか、街や人々を守らなくちゃ――なんて思ってるわけじゃない。

 もともとコイツに挑んだのも腕試しのようなもので、生きるか死ぬかの命がけで戦うつもりもない。


 正直に言えば、なぎさと出会ってからはちょっとくらい感化されてたところはある。

 ずっとわかった気で達観してたけど、私が思ってたのは全てじゃなくて、世界は、人間は思ってたほど汚いものばかりじゃないって気づいたから。

 あの男や私を虐めたクラスメイトは、きっと人間未満のナニカだったのだろう。

 私だって“いい人”になりたい。……でもみんなとは優先順位が違った。だって、私なんかが今更どうやったって偽善者にしかなれないじゃん?


 とはいえ。


あすみ「あんたがそう言うなら、私ももう少し付き合ってやるしかないかな」


 なぎさを見捨ててここを去ることは、どうしてもできなかった。


なぎさ「治療、終わりましたよ! またずいぶん離されちゃいましたけど……いきましょう!」

あすみ「うん、行くか」


 私達は再び走り出す。武器を携えて。


 暴風が起こされれば吹き飛ばされてしまうから過信はできないものの、短い距離であればシャボンを足場にも出来る。

 駆け上がり、距離をつめてなぎさがシャボンを吹き出す。更に私が勢いをつけた一撃をお見舞いする。

 次の瞬間には再び裂けた笑みを浮かべた顔がこちらを見た。


あすみ「鬱陶しいな」

なぎさ「大丈夫、閉じ込めてやるのですよ!」


 顔を包むシャボンはやはりすぐに破られたが、一発でも耐えられるなら上出来だ。

 その間にもう一発入れてやることが出来るんだから。


なぎさ「そろそろ引き時ですかね」

あすみ「ああ、また回り込むよ」



 ここまできたら、やれる限りはやってやる。人数は減ったがさっきみたいに未熟な仲間を庇う心配もなくなった分戦いやすくもなった。

 どうせこれ以上に強い魔女になんて会うことはないんだろうから。



あすみ「…………まったく、この風も鬱陶しいね。防ぐ手段でもありゃいいんだけど」

あすみ「どっから来るのか予測もつかないし、砂利と瓦礫のオマケまでついてくる。ま、ある程度気にしてらんないけど、さ――――」


 振り返る。


あすみ「――――」




――――
――――
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/23(金) 00:10:03.32 ID:rHeU85zy0
うわっ、なんか嫌な引きだけどどうなった!?
849 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/23(金) 00:30:34.95 ID:e+k4D98V0
---------------------------
ここまで
続きは23日(金)夜に。
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/23(金) 00:40:02.76 ID:rHeU85zy0
乙です。

うーん、流石にワルプルギスが相手となるとなぎさとあすみの2人でもキツイですよね。
ていうか、価値筋が全く見当たらないしほむらにとって1番最初の時間軸だと当然神様もいないからなぁ・・・
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/23(金) 00:49:04.65 ID:A90Fc1dXO

ここからどんでん返しが来るか?
852 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/23(金) 22:52:34.12 ID:e+k4D98V0


まどか「……ごめんね、ほむらちゃん」

ほむら「ううん、二人に何もなくてよかった。無事に帰ってきてくれただけでも嬉しいんです……!」

マミ「なぎさちゃんたちがきっと倒してくれるから。私達はここで祈りながら待っていましょう」

まどか「……そうですね。わたしたちが出来ることといったら、応援……くらいですよね」


 避難所の中はさらにざわついていた。

 暴風は強さを増し、施設や建造物が破壊され、人々の生活の中にも影響を及ぼしていた。


マミ(それにしても…… 風、まだ強まるのかしら)

マミ(屋内に居るのにわかる風の音……。それに、魔力も――)


 ――その時、天井から砕けるような嫌な音がした。


ほむら「ひっ……――――!?」


 破壊されるような音は続けざまに響き、ついに突き刺さった何かが顔を出す。

 人々のざわめきは悲鳴にも変わっていた。


マミ「近くで戦ってるの……?」

ほむら「こ、ここは本当に大丈夫なんですか……!?」

853 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/23(金) 23:32:19.48 ID:e+k4D98V0


 ほむらが抱いた疑問は避難所にいる全員が持ちはじめていた。

 ひとたび空いた穴をはじめにいずれは全て崩れ去ってしまいそうだ。

 民衆に混乱と絶望が渦巻くのを感じ取り、まどかは声を上げた。


まどか「あ、あの! 今ので怪我人はいませんか!?」


 こんな小さな女の子に話してどうなるといのか。まだ頼ろうとする人はいない。


まどか「ここにいたら危険です……! 隣町のほうまで逃げてください! わたしがみんなのことを守るから!」

マミ「……鹿目さん!」


 まどかはみんなの前で衣装を纏い、その力を、意思をアピールする。

 そして、はじめはあっけに取られていたマミもその意思を理解した。


マミ「……ええ、そうね。こんな時まで隠していたって仕方がないわ」

マミ「私達が守らなきゃ! 怪我人は私達が治します!」


*「お前たちは誰なんだ!」


 民衆の誰かが言う。


マミ「私達は――――魔法少女よ!」


 その時、二人の元にある親子がやってくる。そのうちの子供のほうが叫んだ。


*「あっちに落ちてきた瓦礫で怪我した人がいるの……! 治してあげて……!」

まどか「うん! 任せて!」

マミ「鹿目さん、お願い! 私は外を警戒しているわ!」


 二人の言葉が本当だとわかると民衆はついに動き出した。


*「……やっぱり、嘘なんかじゃなかったんだ」


 ……二人のもとに最初にやってきた子供がつぶやく。

 それは、なぎさが前に教会で指を治した少女だった。

854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/23(金) 23:53:14.15 ID:rHeU85zy0
杏子の実家での話が伏線ときましたか。
855 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/24(土) 00:06:17.10 ID:yfDpyaAx0



 宙に浮かぶ魔女の姿は、かつて避難所があった場所の真上にあった。



 マミとまどかが防衛戦をはじめてから間もなく避難所は半壊し、大きな瓦礫と化した。

 暴風が吹くたびにそれは巻き上げられて小さく砕け、削り取られていく。


 幸い、逃げていく民衆を狙い撃ちにするほどの小賢しさは魔女にはない。

 しかし、この戦いには違和感があった。


マミ「おかしいわ…………」

マミ「……どうしてワルプルギスの夜がここにいて、なぎさちゃんと神名さんがどこにもいないの」


 ワルプルギスの夜を食い止め、その被害から守ることに必死になっていた時には考えないようにしていたことだった。


まどか「そんな……まさか……」


 まどかも同じことはずっと感じていた。

 その答え合わせとばかりに、無機質な声は告げる。



QB「死んでしまったよ。戦えるのは君たちだけだ」



 到底受け入れられない答え。

 しかし、ずっと薄々感じていたこと。


マミ「え…………」

856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/24(土) 00:25:38.10 ID:NjvX638m0
えええええ・・・
キュウベェは嘘はつかないんだよなぁ・・・
857 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/24(土) 00:35:40.22 ID:yfDpyaAx0


まどか「マ、マミさん! 今は戦いに集中しましょう……!」

マミ「で、でも、なぎさちゃんと神名さんがやられちゃったのよ。私達だけじゃ、きっと……」

まどか「それでも…………わたしは戦います。わたしたちしかいないなら……」


 後輩の強い思いに、マミも頷いた。


マミ「ええ………… そうね」

マミ「私はなぎさちゃんに守ってきてもらってたけど、こんな時くらいは……なぎさちゃんのためにも」



 ――――二人が決意を固めかけた瞬間、鋭い罵声が割り込む。



「おい!! 適当なことばっか言いやがって! 死んでねぇよ!!」


 しかし、二人は息を呑んだ。


QB「…………」

まどか「あすみちゃん、それ……」

あすみ「生きてるだろ! ……私もなぎさも」



 二人の知ってる、いや、『知っていた人』は、血の気が失せたなぎさをそっと地面に下ろした。



――――――
――――――
858 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/24(土) 00:38:27.56 ID:yfDpyaAx0
-------------------------
ここまで
次回は24日(土)夜からの予定
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/24(土) 01:18:33.83 ID:NjvX638m0
乙です。

なぎさはほぼ死人同然の傷をおったからかな?
確かにキュウベェは嘘は言ってないよね。
『2人共』死んだとは言ってないね、安定のミスリードだけど。
860 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/24(土) 23:49:48.33 ID:yfDpyaAx0
少し前




 瓦礫の山で目を覚ます。



あすみ「――……うー」


 長く寝過ぎてしまった朝のような感覚だった。

 爽快な目覚めには程遠い。私は痛みをなくした身体で久々の倦怠感を覚えていた。


 僅かな間、寝ぼけたように意識が遠くにあった。意識が落ちる直前の記憶に思考を巡らせる。



あすみ『――――』


 何気なく振り返り、言葉を失った。

 なぎさは私なんかよりも身を守る術にも長けているし、勘も鋭い。

 まだまだ負ける気なんてなかったのだ。私は。


 人は脆い。少し当たりどころが悪かっただけであっけなく死んでしまう。

 どこから何が来るかなんかわかりようのない状況。勘だけじゃ防ぎきれない攻撃。

 運が悪かったって一言だけで片付けられる。


 私は違う。でもなぎさは――。


あすみ「……そうか」


 私はたぶん、動揺していたんだ。負ける気はなかったが、一人で戦う気もなかった。

 今までのような戦意はもう保てなくなっていた。



 ――――そこからは覚えていない。一人で戦って、いつのまにか瓦礫に埋もれてこのざまだ。



 意識のないなぎさの身体を抱きかかえて歩き始める。

 ワルプルギスの夜は随分と遠くの景色になっていた。


861 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/24(土) 23:55:06.31 ID:yfDpyaAx0
――――
――――



 ……やっと仲間を見つけたと思ったら、何という目で見られなきゃいけないんだ。



マミ「い、息をしていないわ。それに、もうかなり時間が経っていると思う。言いにくいのだけど……」

あすみ「生きてるよ」

マミ「あ、あのね……」


 頭のイカれた奴を宥めるみたいな。死んだことに気づいてない死者を宥めるみたいな。

 現実から目を背けるのは私が嫌いなことのひとつだ。


あすみ「私だって生きてるんだから、今更じゃない?」


 右の頭に手をやる。丸い形を描くはずの感触がなくなり、歪な線をなぞる。


あすみ「なんか、右の目が見えてないんだよね。ていうか触った感じ半分くらい頭が潰れてるんじゃないかと思うんだけど」

あすみ「息もうまく吸えない。鼻に血かなんかが詰まってるみたいで変な音がする」

まどか「あ……あすみちゃんは生きてるの……?」

あすみ「幽霊なんか私は信じないよ。目の前で喋ってる相手が生きてなかったらなんだっていうのさ」

マミ「生きてるにしても……。そんな状態で平気そうに喋ってられるなんて」

あすみ「私は痛みも切り離してるから。そのまま眠りこけちゃったのは、単純に欠損が大きいのとちょっと気が滅入ってたからかな」

あすみ「どんな攻撃食らったかわかんないけどさ、私に比べたらなぎさはまだ綺麗なもんでしょ」

あすみ「そもそもソウルジェムが無事なんだから死んでない。……そろそろなんとか言えよ、インキュベーター」


 黙りこくって様子を眺めてたキュゥべえに話を振る。

 すると、やはり悪びれた様子もなく言った。


QB「べつに嘘をつく気はなかったんだけどな。僕が確認した時点では二人共死んでたし、戦えるのはマミとまどかだけだった」

あすみ「魂のこと知ってる私がそのまま死んでやるわけないじゃん! ふざけるのもいい加減にしてくれる?」

QB「……なぎさは死んだと思い込んでいる状態だね。直接刺激を与えてみればじきに起きるだろう。本人の生きる意思にもよるけどね」

あすみ「生きる意思? 簡単な問題で良かった。それをアイツがあっけなく手放すわけがない」


 こいつは言い訳をするが、どう見ても確信犯だ。

 しかしさすがに観念したらしく、問い詰めればあっさりと態度を変えた。

 ……こうなるなら、半端な思いやりなんて持たずにちゃんと話しておくべきだった。いつから私はこんなに甘くなったのだろうか。

862 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/25(日) 00:50:45.90 ID:P910e1XH0


 キュウべえがソウルジェムに触れて何かの処置を施す。

 すると、なぎさは目を覚ました。


なぎさ「……ここは? あれ!? どうしてみんな!」


 しかし、その一部始終を見ていた二人の反応は、やはり死者を見るような目だった。


あすみ「おはよう。ちょっとの間死んでたんだ。仮死状態ってやつ」

なぎさ「菓子状態……ですか。おいしそうですね」

あすみ「……まだ寝ぼけてるんじゃない? それか死んでる間に脳みそ腐ったか」


 出会った頃からいくつか学年も上がって、年上とばかり接することの多かったなぎさは最近になって特にマセてきていた。

 ちょっと小難しいこと言うようになったというか。

 だから、これは久しぶりに気の抜けたやりとりだった。


 やっと目が覚めたらしいなぎさは、お前に言われたくないよって感じの険しい顔で私を見る。……アンタもか。

 もっとも、別に脳みそが腐ったって私達には何も問題はない。


あすみ「詳しいことは後。それより、そっちはどうなったの?」

マミ「見ての通り、ここは避難所があった場所よ。危なくなったから街の人は逃したの」

なぎさ「そうですか……街の人はみんな守れたわけですね! よくやりましたよ!」

まどか「でもまだワルプルギスの夜が……」

なぎさ「人々を守れたのなら、もう無理して戦わなくていいです。なぎさとあすみで勝てなかった魔女です。これ以上は……きっと勝ち目はありません」

なぎさ「街が壊されるのは悲しいですが、命を守ることが最優先ですよ」

マミ「でも放っておいたら、また街を襲いに行くんじゃないの?」

なぎさ「キュゥべえ。今までに現れた『ワルプルギスの夜』の伝承、最後にはどうなりましたか?」

なぎさ「きっと、物語のように誰かが倒して綺麗に終わりを迎えるだけではなかったのですよね?」

QB「……そうだね。今まで大勢の魔法少女が挑んだけど、勝てたケースが多いとはいえないね」


 思わぬところで話を振られたキュゥべえは渋々答える。


なぎさ「それでもワルプルギスの夜は、世界に破壊の限りを尽くす『魔王』ではなく『災害』……災害はいつか通り過ぎるのです」

なぎさ「今考えつきましたよ。『ワルプルギスの夜』の弱点。それはきっと、飽きっぽいところです!」

なぎさ「なぎさたちが戦うとすれば、再び人が危険に晒された時です。その時は再び人々を逃がすために戦いましょう!」

863 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/25(日) 22:16:46.44 ID:P910e1XH0


あすみ「その弱点いいじゃん。実を言うと、こっちも飽きてきてたとこだったしねえ」

なぎさ「もう一度言うけど、街の人を逃してくれたのは本当によくやりましたよ! 誇りを持ってください!」

あすみ「私達も逃げるよ」


 戦うにもすでに万全じゃない。魔力に余裕があるわけでもない。

 前までと違って縄張りに人が増えたことも多少響いてた。今後もあるし、余りは怪我の回復に当ててほしいところだ。


まどか「……うん!」

マミ「ええ、そうね」


 破壊された街の残骸を振り返る。これからどこへ向かおうか。

 私はこのまま人前には出られないが、敵地でゆっくりともしてられない。



 空高くに浮かぶワルプルギスの夜を眺めて、この場所に別れを告げた。


864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/25(日) 22:54:54.74 ID:orEn5TOe0
確かにワルプルギルを天災だと思えばやり過ごすのもあいですよね。
一般人を逃がすことが出来れば無理にたたかう必要も倒す必要もないわけですから。
あすみはこのままおさらばしちゃうのかな?それはそれで寂しい・・・
865 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/25(日) 23:16:36.10 ID:P910e1XH0

――――
――――



 嵐が去った場所で、私達は再びバラバラになった。

 まどかとマミは、離れた避難所に行った家族や一人で待ってるほむらに会いに行ったらしい。

 家族や学校のみんなにもバラしちゃったんだから何と言われるか気にならないことはないが、それは私の問題じゃない。


あすみ「……で、アンタはなんでこっちにいるの? さっさと家族んとこ行きなよ」

なぎさ「そうなのですけど……少しは治してからにしないと、その姿をうっかり見られでもしたら」


 なぎさは顔色が戻って生者らしい姿になっているものの、今の私の姿じゃ言われたとおりゾンビにしか思われない。

 なぎさだって治療が得意な方ではあるものの、それに特化してるわけじゃない。

 完全に回復するにはそれなりに消費も時間も必要だろう。


なぎさ「結局なぎさたちの身に何があったのです? あとで話してくれるって言ってたのです」

あすみ「こうなったカラクリは簡単だよ。魔法少女の本体はソウルジェムで、これが無事なら本来死ぬことはないってだけ」

あすみ「身体が死んで、心まで死んだ気になってたから一時的に死んだようになってたけど、ようは気の持ちようってこと」

なぎさ「……前から知ってたのですか?」

あすみ「うん。魔法少女になったばっかりの時に知ってたけど?」


 けろっと言ってみせる。

 その真実は、本当に私にとってなんでもなかったから。


あすみ「そのおかげで嫌な感覚を切り離せるんだって。だから私にはちょうどよかった」


 他の少女は絶望することもあるって、そんな気持ち私にはわからない。

 こんな身体なんかどうでもいいし、死ぬことなく安全に戦えるほうがいいに決まってる。

 けど、言ったらどうなるかってことは考えないわけじゃなかった。それに私が騙されたと思ったのは『もう一つ』だ。


あすみ「本来って言ったのは、死ぬ条件はもう一つあるんだ。心が死んだら私達は死ぬから」

あすみ「それが私達が狩ってる、『魔女』ってやつ」
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/25(日) 23:24:23.73 ID:KfppxChBO
ここで魔女化バラして大丈夫か?
867 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/25(日) 23:54:14.37 ID:P910e1XH0


 それでも、それを知った時の私の心に大して響くことはなかったけど。


なぎさ「……!?」

あすみ「『心が死ぬ』ってのは、絶望するってことらしい」

あすみ「死は大抵の人にとって絶望だから。死ぬことが唯一の救い、ってレベルまで来ちゃってもそれはそれで絶望的だしねえ」

あすみ「でも、絶望したから契約したはずなのにおかしい話だと思った」


 契約したばかりの頃に思ったことをぽつりぽつりと話していくと、なぎさは納得したようにこれだけ言った。


なぎさ「なぎさは絶望してなかったから助かったんですね!」

あすみ「……まあ、そうなるね」


 きっと、響いていないなんてことはない。どうでもいいと思ってる私とは違う。

 でもなぎさはそれ以上に、そんなことじゃ揺るがないような『何か』を持ってるんだろう。

 それは私が出会った頃のなぎさは持っていなかったもので、そして――



 その『何か』は、私にも今ならわかる気がした。



なぎさ「……あすみはいつも無頓着なのです」

あすみ「別にいいじゃん。片目見えないのはちょっと不便だけど他に困ることもないよ。見た目もどう見ても死んでるってとこから脱せられればいい」

なぎさ「色んなことが終わって余裕が出来たら、いつかちゃんと治します」

あすみ「『ちゃんと』は治んないよ」

なぎさ「それも……いつか」

あすみ「………」

なぎさ「あすみのとこにもまた戻ってきます。だから、いつまでもこんなところでひとり寂しく隠れていないでください」

868 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/26(月) 00:18:51.51 ID:CUOtmzlr0


 ……どういう意味で言ったんだろうか。

 契約する前から元々ある傷はずっと癒えない。たとえ魔法で消せても本当の意味で消したと言えるだろうか。


 傷があるから恨みは消えない。恨みを忘れないから『呪い』は続く。


あすみ「――さて、と」


 なぎさの姿を見送って、ポケットに手を突っ込んだ。


あすみ「本の続きでも読むかな……」


 何年も住んでやっと落ち着けたと思った街は、伝説の魔女なんてものによってたった数時間で壊された。

 いつも本を読んでた訓練場所にももう当分は戻れないだろう。


 それでも私はずっと前から、同じように暇つぶしをしてる。

 全てを解決するような素敵な打開策なんてなくて、なるようにしかならないし、失ったものは戻らないし。

 でも。



あすみ(――……この日常まで失わなくてよかったかな)




―『最終・なぎさとあすみの見滝原』END―
869 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/26(月) 00:22:26.62 ID:CUOtmzlr0
---------------------
ここまで
次回は30日(金)夜からの予定
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/26(月) 19:14:45.14 ID:BeQRVJm8O

倒す方法ないから仕方ないけどなんかあっけない幕切れだな
871 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/31(土) 00:14:44.11 ID:wY+7NR7m0

いつかのはなし
――――――――

――――


 …………ワルプルギスの夜の襲撃以降、自分たちの街――見滝原は大きく変わってしまった。

 以前の訓練場所も使えなくなったから、適当な空き地を使うようになった。

 見滝原には人の居ない荒れ地がたくさんできたし、逃げた先の風見野は自然の多い町だ。使える場所はいくらでもあった。


 もちろん、本当は早く元の見滝原に戻るのがいい。それでもいつもの仲間と共に過ごす、変わらぬ日常はあった。

 魔力の余裕はなかなかできなかった。

 余裕が出来たなら、優先すべきは魔力の回復と負傷の回復へ――折角逃げきれたのに魔女になっては元も子もない。伝説の魔女との戦いで負傷したのは全員だった。

 『脳みそ半分なくなっても人は生きてられるんだって』と、多分本から得た雑学をあすみは披露した。

 『でもそもそも人じゃないし、痛くないしどうでもいいから』と、あの日あすみと約束したことは本人の言葉によって先延ばしに先延ばしになっていた。



 それからついに人々の生活も落ち着いて余裕を取り戻してきたある日、あすみはいつしか姿を見せなくなった。

 影のようにひっそりふわふわと街の中を生きてきた彼女は、元からいなかったかのように消えてしまった。



 ……でもまさか、あすみが簡単に消えることも、見捨てて去ることもないって。なぎさにはそれも、お見通しだったのですからね?

 あすみは結局他の人とは距離を取って深く関わることはしなかったけれど、なぎさにとっては一番付き合いの長い『戦友』ですから。



なぎさ「……これで約束は果たせましたよね? あすみ」

あすみ「まぁ、そう思っていいかもね。私はもう、人でも魔法少女でもないけれど――」

なぎさ「そんなことはどうでもいいのですよ! あすみの心は死んでないし、絶望もしてない。それが重要なのです!」

あすみ「そうだね。じゃあ、見えてないとこも確かめてみる?」



―――――――――
872 : ◆xjSC8AOvWI [sage saga]:2021/07/31(土) 00:21:44.71 ID:wY+7NR7m0
---------------------------
なんだかんだここまで書いて完結。
次スレでやることを決めつつ、1000まではこっちのおまけでも書きます。
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○今までのおはなし


【続編開始/指定場所からロード】
・なぎさ編【続編:あすみ編後から再開。あすなろ編】
・杏子編【続編:あすなろか安価】
・キリカ編2【続編:小話・ワルプル後新展開】
・あすみ編【続編:小話・ワルプル後新展開】
 ・+かずみ編【続編:小話・ワルプル後新展開】
・桐野編【キリカルート続編:小話】


○新しい話

★まどマギのほかに、おりマギ本編・かずマギ・漫画版まどマギ・TDS・PSP・劇場版のネタを含みます。
 それ以外からのネタは出さないか考慮しませんが、知ってるとより楽しめるネタはあるかもしれません。

★主人公は作品中のモブやオリキャラも可。

★同キャラでも前提設定やルートによって大分話が変わるので2回以上選択も可能。
 ただし同キャラで未完結が増えすぎても困るので前の話が完結している場合のみとします。

☆誰が何をする話、とかざっくりでもOK

☆マギカシリーズ外の作品の設定や世界観借りるみたいのもOK(作者が知ってるネタだけになるけど)
※もしかしたらキャラの設定とか個性が原作から崩壊するかもしれないけど、根底にある性質を大幅に変えてしまうことはしません
 あくまで持ち味を活かせる形で!


↓5レス程度来たらなんかかんがえる
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/31(土) 01:44:14.45 ID:4lUPWJHS0
乙です。

なぎさとあすみ、なんだかんだでもこの後見滝原でたくましく生きていきそうですね。

次は小巻を希望。
織莉子の陰口や嫌がらせが陰湿でイジメをしていた連中に堪忍袋が切れて暴力沙汰を起こしてしまう。



874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/31(土) 13:44:13.79 ID:lm8Xmf5so
見滝原市周辺で起きる事件を調査している滝中生徒会が巻き戻りを繰り返す魔法少女ほむらに利用され
ワルプルギスの夜討伐まで付き合わされるif

そもそも見滝原中学校に生徒会ってないのかな・・・原作見ても必要だと思うんだがな
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/31(土) 19:09:30.26 ID:6aqCU5MFO
小巻はまだやった事ないからありかな?
>>873だと退学というより織莉子絡みで事を大きくしたくない学校側がなあなあで済ましそう
それに小巻が呆れ果てて自主退学して見滝原に転校とか?
この場合織莉子に一緒に来ないかと声をかけて一緒に転校したら契約しないかも
876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/01(日) 18:04:13.46 ID:eqZuzjfSO
小巻ならあすなろ参戦を見てみたい
877 : ◆xjSC8AOvWI [sage saga]:2021/08/01(日) 19:41:20.85 ID:HkLCZvpB0
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4レスですが、流れ的につぎは小巻主人公ですかね。
>>873の経緯で>>875のように見滝原に転入する話とかならいい感じに原作と違う展開になりそうな気がします。
>>867だと、見滝原に住んでるっぽい小巻があすなろに行く理由付けがほしいところ…
見滝原の魔法少女なのにマミが知らないのもおかしいので、このスレだと他の地区と掛け持ちしてるとかの設定にしてましたが。
用事で通りかかったらソウルジェム奪われかけた…みたいな感じになりますかね。小巻一人であの街をどうにか出来るかはかなり不安が残るけども。

次スレ候補

小巻「見滝原中に転入したわ」

小巻「あすなろの魔法少女?」

 これも下3レスくらいで決定。新しい内容・スレタイ候補があればどうぞですー。

※これまでの通し番号タイトルはわかりやすかったのですが味気なく、新規お断り感が出てくる気がしたので
1レス目でサブタイトルくらいの位置に載せるようにしようかなと思ってます
878 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/01(日) 20:11:43.58 ID:HkLCZvpB0
>>867って何やねん、>>876だった
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/08/01(日) 21:49:16.61 ID:pR2qZ4VI0
次スレですが、小巻「見滝原中に転入したわ」に1票。
織莉子も一緒に転校となるとまどかは安全かもしれませんが、ほむプルギスの方が心配だなぁw
マミさんとはGS泥棒の杏子とやりあってる時に出会ったというのはどうですかね?
マミさんが来たとなると杏子は引くだろうし、そのままやりあっても負けてたと思うのでそこから知り合いになるとか?

あすなろの方はかずみ編と同じでかずみトランクを小巻が見つけて、ユウリに襲われてあすなろの戦いに巻きこまれるって感じかな?

880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/01(日) 22:57:59.88 ID:eqZuzjfSO
理由考えるの面倒だから見滝原転入で
あすなろに関わるならかずみの入ったトランク拾うのが手っ取り早いよね
881 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/01(日) 23:56:11.27 ID:HkLCZvpB0
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次スレは小巻の見滝原中転入に決定。
多分次の休みくらいにはやります。

かずみin見滝原系は何回かやってネタがつきかけてるのと、かずみに主人公取ってかれそうな気がするんだ…
あと小巻があすなろ参戦というより、あすなろ組が見滝原の事情に参戦みたいになるかなって思った

・ここから「なぎさとあすみの見滝原」おまけ。
・登場したキャラの『その後』について書きます。
 下1レス(キャラ名指名)
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/08/02(月) 10:01:56.50 ID:ndpvVVoD0
あすみ。

次スレ楽しみにしております!
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/03(火) 09:41:01.72 ID:+jUMRxP30
小巻が転校すると取り巻きはどうなるんだろ?
確か小巻が魔法少女だと知ってる子いたよね
転校が原因でなんか拗らせたりしなきゃいいけど
884 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/05(木) 21:28:18.58 ID:bSZhhFMP0
おまけ ――後日談その@あすみ――




 ワルプルギスの夜が街を壊して、ついでに私が魔女になった後、それから何が変わったか。

 ……別に、私の生活は変わらない。


 見滝原の外の生きた街並みならどこでも似たようなものはあって、さらに瓦礫の街からは人が消えて、私からすれば好都合だった。

 私はその中の廃棄された建物を根城にしていた。


 周りを探せば物も出てくる。元が家だらけだったのだから、無事な状態の生活必需品もちょっとくらい拝借できた。

 ふと目に止まって、瓦礫の中からキラリと光る宝石のついたネックレスを拾い上げた。

 どうやら私以外にも、持ち主不明の品を盗みたがる火事場泥棒は沸いているようだ。そいつらが欲しがりそうなものだった。

 私はセコイ金稼ぎには興味はない。そんなことをしなくても生きていけるからだ。金の使い方なんて知らない。

 それに外見を飾り立てることにも。


あすみ(……今更私みたいのが飾り立てたって、綺麗になんかなれるっていうの?)


 たしかに私は最近までフードが必須だった。顔を覗いた人には驚かれた。その反応すらどうでもよかった。

 哀れみを向けられる分には無視して、不当な悪意には『呪い』の報復を。醜悪なものを前にすれば本性がわかりやすく表れる。無駄な皮を剥がして見極めるにはいい鏡だ。

 ――けど汚いのはそれ以前のことだった。


 だから魔力を食うばかりの私のことは後回しにさせたし、頭と顔面の傷どころか魔力の回復すら――――……一度は諦めたんだったっけな。


あすみ(そうだ)

あすみ(……今の私には傷はなくなったんだっけ)


 傷は消えた。だからって、過去が消えたわけじゃない。

 というか本当にコレはいらない。飾り付けるのならせめて自分のものにすべきだ。

 私にも泥棒にも似合いそうにない華美な宝飾品は、持ち主の元に届くか知らないが交番にでも持っていこう。


 ……うん、私は綺麗になった。見た目じゃなくて、心のほうはそう言ったっていいだろう。

 自画自賛に思われるかもしれないが、契約したての時は本当にクズになりかけてたし真っ黒に絶望してたんだから。

885 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/05(木) 22:51:33.57 ID:bSZhhFMP0


 皮肉にも、街が壊されたおかげで私は悪事を働かなくとも良くなった。

 希望自体はきっともっと前からあった。この街に来てから余裕ができて、緩やかに心は変わりはじめていたんだ。

 ワルプルギスの前と後では変わってないと思ってたけど――――たぶんそれが最後に引っかかってた部分で、それがなくなったから『こう』なったのだろう。



なぎさ「あれ? あすみ、奇遇ですね!」



 ――――瓦礫を抜けて歩いていると私の唯一の友人と出くわした。

 世の中は意外と狭いものだ。というか、今は街自体が狭くなってしまった。


あすみ「……ああ、奇遇だね」

なぎさ「これから訓練なのでよかったらあすみも来ませんか?」

あすみ「用事終わったらね」

なぎさ「はい! それとそれと……さらによかったら、その後のお茶会とお料理も。今日はマミが張り切っているのです」


 新入りのまどかと魔法少女じゃないほむらまで含めて、相変わらず訓練の後まで仲良くやってるらしい。

 ずっと前から、断られるとわかってるくせにこうしてたまに私にも誘ってくる。

 ……こいつらの能天気ぶりを見てると、意地張って一人だけ距離取ってるのも馬鹿らしくなってくるよな。


あすみ「いいよ」

なぎさ「や、やっぱりそうですよね――って、ええ!? ホントなのです!?」

あすみ「やっぱつまんないって思ったら帰るから」



 今更馴染めるとも思わない。けど、これからもこの街で生きていくんだから。

 なぎさの時と同じように、たとえ今から想像ができなくてもなるようにはなるとわかっているんだ。

 私なりの付き合いはしてみてやろう。

886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/08/05(木) 23:44:31.45 ID:QLc+f+L60
え、あすみ魔女になったの!?
あすみ編みたいに魔女から人に戻ったのだとしたら、願ったのはなぎさ?
887 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/06(金) 22:09:14.20 ID:ImYZyQpC0
――――
――――



 ……で、誘われて来てみた『お茶会』とやらなんだけど。

 訓練の話なら私にも突っ込めるとこはある。それ以外は思ってたとおり私の感性には合わなかった。


まどか「――そうなの! じつはうちでもこの前自分で作ってみて、そしたらパパが褒めてくれたの!」

マミ「よかったわね。今度はまた新しいレシピにも挑戦してみる?」

なぎさ「お菓子作りのレパートリーが増えますね!」


 まどかが話すことといえば学校の話か家族のホンワカ話ばっかだし、一番話しづらい相手。

 お菓子作りもやったことないし。


あすみ「……ふぁ〜あ」


 ついでに、やっぱり味覚にも合わなかった。覚悟はしてたがなんか変な感じだ。記念日でもないのに。こんなお菓子も茶も今まで馴染みがない。

 気取った香りとか、そもそもお茶なのに甘くするって発想がズレてる。もちろん甘くしなきゃイイって言いたいわけじゃない。

 砂糖入れてもニガイのも問題だ。茶はジュースにはなれない。


 ……所詮貧乏舌。もっとチープなのでじゅうぶんなんだ。私にとっての『ごちそう』は今でも駄菓子や甘いジュースだった。

 あと出した後の茶葉を一回で捨てるのももったいない。まだ使えそうじゃん。飲みたくはないけど。


あすみ(ジュースってないのかな?)


 つくづく紅茶という飲み物と私は合わないと思った。

888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/08/06(金) 22:31:55.91 ID:tX++SI9Q0
あすみは母子家庭で苦労した分舌が肥えてないいだよなぁ・・・
889 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/06(金) 23:04:04.28 ID:ImYZyQpC0


なぎさ「そうなのですよ! 今度はぜひあすみも!」

あすみ「そう、って、なにが? ジュース?」


 興味のない話がはじまって気が逸れかかってたところで、なぎさが唐突にこっちに話を振ってきた。

 なにか目を輝かせている。


なぎさ「いえいえ、あすみもお菓子作りに参加してみればいいのです! せっかくお料理できるんですから」

あすみ「それって見合うの? 料理は買うほうが高くつくけど、お菓子って大体自作するほうが手間も金もかかると思うんだけど?」

なぎさ「あすみはコスパばっかり気にするのです…… マミも何かお菓子作りのいいところを言ってやってください」

マミ「そうね? ……まず、自分好みの味にすることができるわ。市販品って万人受けを狙うのが多いけど、甘すぎたりすることあるじゃない?」

マミ「一発で成功はしないかもしれないけど、自分の好みを探すのも楽しみのひとつよ」

あすみ「好み……ねえ」


 そもそも口から物を食べるのってどのくらいぶり。

 今ならコスパが一番いいのは“魔力”だ。いつのまにか、他の人からしたら随分と味気ない生活を送っていたのだろう。

 縁の遠い言葉だ。私にも昔は好きな食べ物くらいあったけど、でも、それはもう……――。


なぎさ「……で、もしかしてジュースがほしいのです?」

マミ「あっ、そういえば前に紅茶苦手だって言ってたかしら……? 今日は何も用意してないわ」

なぎさ「あすみの好みって意外とおこちゃまなのですね!」

あすみ「そーいう問題じゃない。ただアンタたちとは合わないだけ」

なぎさ「じゃあどういう問題なのですか」

890 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/07(土) 00:12:49.12 ID:7UxVyEIi0


 いつもだったら飄々と流すけど、なぎさに言われるとちょっと腹がたつ……ってのは置いといてやる。

 あの頃から変わらないしこれからもきっと大して変わらないんだろう。


あすみ「まあでも、このまま何も口にしないといつかは味覚が消えてなくなりそうだしね?」

あすみ「……自分の好みってのはちょっとは考えてみてやってもいいよ。そしたら私に合わせてもらうことになるけど」

あすみ「今度から呼ぶならジュース用意しといてよ、やっすいのでいいから。……あとお菓子作るなら牛乳はあるでしょ。とりあえずそれちょうだいよ」

マミ「わかってたら最初からミルクティ用に作ったんだけどね。今度は一緒に見に行きましょうか」


 マミの考える『最適』ではないらしいが、一応、怒ったりするほどのこだわりはないらしい。

 仮に怒ったとしてもしらないし、無理に合わせてやるつもりはハナからない。


あすみ「そういや魔女って人間食ってたりするわけだけど、あいつらどんな感覚で食ってんだろうね? 味感じてんのかな?」

まどか「うう、急に生々しい話するね……」

なぎさ「結界自体に取り込むタイプもいますが、食べる魔女なら味もわかるんじゃないのです?」

マミ「そうでしょうね。生々しくて恐ろしい話だけど、美味しくなきゃ食べないと思うのよ」

あすみ「……美味しいのか。じゃあ私も食えたりすんのかな」

まどか「えっ!?」

あすみ「あっ、性的な意味じゃないよ」
891 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/07(土) 00:18:58.37 ID:7UxVyEIi0


まどか「えぇぇそんな補足はいらなくて…… どういうこと?」

マミ「どうせまた冗談かなにか……よね?」

あすみ「うん。冗談冗談」


 そもそも魔法少女が魔女になるってことも、私が魔女になったってことも知ってるのはなぎさだけだ。

 あの約束を、『叶えた』のは私らしいが『果たした』のはなぎさなんだから。

 当分はそれでいい。二人はなぎさがまだ『一人前』に鍛えあげてる最中で、いつか認めたらなぎさが教えるだろう。


 これもまた冗談って目で見られるんだろうけど。


あすみ「私は『奇跡』を叶える、良い魔女なんだから」


 クリーム色の水面を揺らしてカップを取り、口に含む。

 ……牛乳と砂糖をぶちまけたら茶っぽさはなくなった。ひとまず、これでよしとすることにした。


 『お茶会』はまだ続いていく。


 まどかがホンワカな話をして、マミがお洒落ぶった話をして、なぎさは……まあいつもどおりだけど、二人だけの時よりマミたち寄りの話し方。

 日が暮れたらまどかが帰って、ほぼ入れ違いにほむらが来た。マミが料理を教えてやってるらしい。


 みんなにとっての日常の一部。

 ――――……これから、もしかしたら私の日常の一部にもなるのかもしれない。



――後日談その@あすみ おわり――
892 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/07(土) 00:30:38.30 ID:7UxVyEIi0
----------------------------------
>>886
『いつかのはなし(>>871)』はかなり情報省いたけど、
一応『人でも魔法少女でもない』と言ってるんだ…

ところで、紅茶とスイーツ好きのキャラが多すぎると思うんだよね…一人くらい紅茶嫌いやスイーツ嫌いがいてもいいと思うんだ。そう言う筆者も貧乏舌寄り。



おまけA
・登場したキャラの『その後』について書きます。(※あすみ・なぎさ以外)

 下1レス
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/07(土) 13:17:56.09 ID:+VsUrElK0
なぎさがダメなら杏子
894 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/07(土) 22:10:24.04 ID:7UxVyEIi0
おまけ ――後日談そのA杏子――



 学校の帰り、玄関のドアを開けるとすぐに、リビングの奥で座ってる妹の姿が目に入った。



杏子「ただいまー」

モモ「お姉ちゃんおかえり!」

杏子「それ宿題? 勉強してたのか? えらいじゃん」

モモ「えらいでしょ! 聞きたいとこあるからあとでお姉ちゃんも見てよ」

杏子「ああ、後でな」


 制服から着替えに行く。

 4人で暮らすにはこの家の部屋は少ない。部屋なんてリビングと寝るところくらいだ。

 けど、夜になるまでは二人だけだし困るほどでもないか。

 今まではいつもみんな家にいたけど、今は外に働きにいっている。父さんだけじゃなくて母さんもだ。


杏子(最近モモの勉強も結構難しくなってきたんだよなぁ……こりゃあたしも力入れて頑張んないと)


 多分このほうが一般的なんだろう。

 代わりに面倒を見てやらなきゃいけないとこも増えた。気合を入れてからモモのとこに戻る。

895 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/07(土) 23:10:09.98 ID:7UxVyEIi0


モモ「そういえばこの前の強風の日、見滝原が大変なことになったんだって。今日学校で聞いたの」

杏子「……ああ、こっちも聞いたよ。かなりヤバかったらしいね」


 うちには今テレビも新聞もないけど、一応元教会の人間としては世間の情報に無関心になるのはよくないから、

 人より気にするようにはしてる。


モモ「教会があった場所って……いまどうなってるのかな」


 むかし教会があった場所はすでに売ってしまった。うちはもう教会をやめちゃったし、前のはただ住むだけには広すぎたんだ。


 街や学校でも見滝原の災害のことは聞いたし、たくさんの建物が倒れたらしいとも聞いた。でも想像はつかない。

 あの場所はもともと町外れだしずっと何も建ってなかったけど、ずっと暮らしてきたあの建物はもうない。

 ……それでも。もうなにもできなくても、あの場所が荒れ果ててるとなるといい気はしなかった。


杏子「でもさ、いいことも聞いたよ。死亡者や怪我人はほとんどいなかったんだって」

モモ「そうなんだ! 神様に祈りが通じたのかな」

杏子「そうかもね」


 もう教会もやってないし、あたしたち以外に父さんの教えを信じる人もいないけど――だからこそあたしたちは大事にしなきゃいけない。

 父さんがあたしたちや世の中のために思ってくれていることを。

 成功はしなかったけど、間違いではなかったんだって。

896 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/08(日) 00:42:56.20 ID:1tjKWCCC0


「ただいま。今日は何をして過ごしてたんだい?」

モモ「おかえりお父さん! 今日はね、お姉ちゃんに勉強教えてもらってたの」

「そうか。いい子にしてたんだね」


 しばらくモモと勉強してると、もう父さんと母さんが帰ってくる時間になってた。

 父さんが帰ってきてから少ししてから母さんも帰ってくると、あたしは立ち上がった。


「おなかすいたでしょう。今ご飯作るからね」

杏子「あたしも手伝うよ! 今日は何?」

「今日は生姜焼きよ。帰りにスーパーで半額のお肉が手に入ったの」


 それを聞くとみんなの顔がパッと明るくなった。

 美味しいご飯は人を元気にさせてくれる。きっと誰にだってそう。

 毎日ご飯が食べられる。特に困ってなければ当たり前のように感じることだけど、それはとてもありがたいことだ。


杏子「……モモ。今度さ、久しぶりに見滝原のほう行ってみない? 途中で前うちがあったとこにも寄れるし」

モモ「うん。気になる。あと、久しぶりになぎさにも会ってみたい。離れちゃったけど、友達だから」


 あたしもゆっくりと頷く。

897 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/08(日) 00:56:42.59 ID:1tjKWCCC0
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今回更新はここまで。多分本日中には新スレ出すと思います。おまけは引き続き並行で。
夏休みという特大チートが到来したので更新頻度増やせるといいな〜
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/08(日) 11:47:03.52 ID:EPcfftUJO

佐倉家は風見野だから被害は無しか
899 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/13(金) 00:40:07.91 ID:IrZxcVMF0
――――
――――


 あれから少し経った休みの日にバスで見滝原のほうまで出てみた。

 道路が壊された一帯があるせいでいくつかの路線は変わっていて、被害の大きかったところには行けなくなっていた。

 見滝原の街のほとんどを大きく迂回するようなルートだ。そんな状況を見ると街並みが壊されたって実感も沸いてくる。


 かろうじて前に教会があった街の堺のあたりまでは行けたから、そこで降りることにした。


杏子「うわ……木が倒れてる」

モモ「……ここで遊んだこともあったのに」

杏子「本当にここよりヒドいのか? 道路が壊されて、ビルが倒れるほどでしょ? 街のほうは……」


 教会の跡地や町外れを通り過ぎて、バスじゃいけなくなってる部分へと足を伸ばす。

 町外れのほうは破壊されてても面影くらいは残ってた。

 でも、進んだ先にあったのはただの瓦礫と更地。……そう表現するしかない光景だった。


モモ「なぎさちゃんは今どこにいるのかな? 街の人は無事なんでしょ?」

杏子「ああ、ほとんどは無事なはず……だけど」


 こんなのを見せられたら自信がなくなってきてしまう。

 それに、『ほとんど』って? 災害で怪我をした人が全くいないとは限らない。


杏子「……戻ろう。こんなの見てたら気が滅入る。さすがにこんなところには居るわけないんだから」


 行こうと言い出したのはあたしだ。でも、まさかここまでとは。

 被害の状況をこの目で見られただけ十分だ。……そう思うことにして去ろうとする。



あすみ「よう、久しぶりじゃん。ここ“私のうち”の近所だけど何か用でもあんの?」
900 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/13(金) 00:54:55.67 ID:IrZxcVMF0


 深くフードをかぶっているが、その声と姿はあたしたちの知っている人物のものだった。


杏子「うち? ここが?」

あすみ「そう。ここ一帯全部私のうちの近所。誰もいなくなったから私のものにしたの」


 あすみは冗談みたいなことを言いながら手を広げる。……本気なのか?

 ふとフードの中を覗き見ると、思わず驚愕した。


杏子「!!」

あすみ「……私が『ほとんど』に入れなかった怪我人だとでも思っとけばいいよ」

あすみ「でもなぎさのほうは無事だから。“あっちの荒れ地”にいるよ」


 方向感覚なんてなくなりそうな場所で、あすみは指を指す。


杏子「ホントに荒れ地に!?」

901 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/08/13(金) 01:45:27.00 ID:IrZxcVMF0


あすみ「うん。……んー、けど関わりすぎるのはよしときなさいよ」

あすみ「なんでそんな場所にいるかってーと、『普通じゃないこと』してるんだよ」

あすみ「アンタたちは絶対こっちの世界には関わらないでしょ。オヤジがああ言ってたもんね」

モモ「教えてくれてありがとう」

モモ「大丈夫! 魔法少女とかその前に、今日はただ、友達としてひと目会いたくなったの!」


 あたしも続いて礼を言って、“あっち”を目指すことにした。


杏子「ああ、あたしからも。 ありがと!」


 ……あすみはさらに深くフードを被ってしまった。

902 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/06/26(日) 20:41:37.97 ID:SiQ90L/v0


 進んでいくと、荒れ地の奥に多少開けた場所があることがわかった。

 人がいる。近づくほどにはっきり見えてくるのは、目を疑うような光景。『普通じゃないことをしてる』って言ってたから、確かにそうなんだろう。

 でも、前に父さんが言ってたような恐ろしさは感じなかった。印象でいえば――。


 『魔法少女』。アニメに出てくるようなそれだった。


なぎさ「あっ……!」


 瞬間、目が合った。

 あたしたちの存在に真っ先に気づいたのはなぎさで、それに合わせて他の人たちも振り返った。


「えっ、一般人!?」

「これってまずいんじゃ……?」


 金の髪の少女と、桃色の少女。なぎさとも雰囲気は似たようで違う系統の可愛らしい衣装を纏った二人。

 二人とも慌てた様子で、あたしたちは場違いなところに迷いこんでしまったのかもって思った。


 それでも、なぎさはあたしたちの知ってるなぎさだった。

903 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/06/26(日) 20:46:15.52 ID:SiQ90L/v0


なぎさ「モモ! それに杏子も! お久しぶりなのですー!!」

「知り合い?」


 金色の少女がなぎさに尋ねる。


なぎさ「はい。前に教会で知り合った人たちで…… でもどうしてここにいるってわかったのです?」

杏子「さっきあすみが教えてくれたから」

なぎさ「あすみが?」

モモ「今日はなぎさに会いにきたの。ほんとはもっと話したりしたかったんだけど、あれからすぐに引っ越しちゃったから全然機会がなくて」

モモ「このあたり、すごい災害があったでしょ? 無事でよかった」


 あすみの言ってたとおり、なぎさのほうは見た目も中身も変わらない。

 周りの景色は変わってしまったけど、それにひとまず安心した。


なぎさ「あすみもついてくればよかったのに。まったく、照れ屋さんもここまでくると困りますね!」

モモ「少しだけどあすみとも会えてよかったよ。でも、あすみは……」


 隠していた布の下を思い返す。『魔法でもなければ』治らないだろう、ひどい怪我を負っていた。

 なぎさは真剣な顔をして言う。


なぎさ「あすみのことはなぎさがいつか治します。あすみとそう約束したのです」

904 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/06/26(日) 20:49:34.47 ID:SiQ90L/v0


モモ「ところで、みんなとはここで…… 戦ってたの?」

なぎさ「なぎさたちはここで強くなるための特訓をしてるのです! でもマミ、まどか、今はちょっと休憩にしましょう!」

なぎさ「なぎさも久しぶりに話したいことがたくさんあります!」


 そして、今のなぎさはただの“なぎさ”ですから――そう言ってなぎさは魔法少女としての衣装を脱ぎ去った。

 もちろん、こんな場所で普通に服を脱いだわけじゃない。光ったと思ったら一瞬で変わってた。


モモ「私もなの! 聞いてほしいことたくさんあって……! なぎさのおかげでモモたちちゃんと暮らせてるんだよ」

モモ「学校から帰るとお姉ちゃんと二人で少しさみしいけど、でもみんな前よりも充実した顔してるの」

杏子「あたしもなぎさには感謝してる。それからあすみにも…… なんだかんだ、あのコがキツいこと言わなきゃ父さんの中でなぎさが悪者のままになってただろうし」


 ほかの二人も休憩となればいつのまにか普通の服装に戻ってた。

 やっぱりここにいるみんな、神でも魔女でも、そんな大層なものじゃないんだろう。


なぎさ「あすみに伝えておきます。あすみは素直じゃないけど、きっと喜ぶのですよ!」

モモ「そういえば二人が話してるとこって見たことなかったけど、なぎさはあすみとも仲良かったんだね」

なぎさ「はい! 教会で居合わせた時には避けられてましたけど…… これからあすみのことも話すのです!」




――後日談そのA杏子 おわり――
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/02(土) 13:47:47.27 ID:dKVr5q2kO
久しぶりの投稿おつです
早くあすみの傷治してほしい
つぎはマミかまどか視点の話かな?
906 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/07/15(金) 23:30:05.50 ID:Y/SO+aeC0
おまけ ――後日談そのBほむら――



まどか「じゃあ、ほむらちゃんも。また明日ね」

ほむら「うん。鹿目さん……また明日」


 放課後、通学路の途中で鹿目さんと別れる。

 学校も変わって、前とは環境が変わって、それでも私の周りが大きく変わることはなかった。


 鹿目さんは今日も訓練に向かうみたい。私がそれについていく必要はない。私がついていっても何もできないから。

907 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/07/15(金) 23:44:52.88 ID:Y/SO+aeC0


「それにしても今から習い事を増やすって大変ですわよね。でもまどかさん、なんだか充実してそうです」

「まどかは最近ツレないなあー。この後のショッピング、ほむらは来るでしょ?」


 それに、鹿目さんだけじゃなくてこうして他の人とも打ち解けることができた。


ほむら「はい。私も行きます」


 見滝原が壊滅した後、両親が迎えにきてた。このまま実家に戻ろうって。

 でも私はこっちに、鹿目さんたちと一緒にいることを選んだ。

 誰も知らなくても魔法少女のみんなは私の恩人で、やっと私にも大切な友達ができた。

 私がわがままを言うと両親はとても驚いていた。思えば今まで私が自分で何かを選ぶことって、あまりできなかったし、しなかったから。

908 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/07/16(土) 00:11:27.52 ID:f0iuklND0


 病室の外の世界は広くて、私の知らない人や物がたくさんあった。

 同年代の誰かと一緒にいることは何もかもが新鮮で、自分が変なことをしてないか不安になることもあるけど、そんな私でも受け入れてくれる人たちはいる。

 運が良かったのかもしれない。私の周りにいる人たちは優しかった。


 ――――みんなとのショッピングは、大体洋服や雑貨を見て回ったり、たまにCDや本を見たり。

 ふと立ち寄った書店で、二人が流行りの雑誌の話をしている傍ら、私は馴染みのある本のタイトルが目にとまっていた。


「ほむら、何見てんの? 欲しい本でもあった?」

ほむら「あ、いえ……」

「そう? ならいいけど」


 別に今買おうと思っていたものではなかった。けど…… 少し、ある人とした会話を思い出していた。

909 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/07/17(日) 20:29:19.22 ID:76ylTsDi0
お、続き来てる!
更新早くてうれしいです^^

まさかのメガほむ視点、メガほむと話した人って誰かな?
910 : ◆xjSC8AOvWI [sage saga]:2022/08/21(日) 23:35:02.36 ID:riBVnRo+0


 思い返す限り、私が見たのは冷たく素っ気ない態度。

 あのとき、あの子はきっと部外者の私をわざと遠ざけようとしていたんだろう。実際私はあの子のことをほとんど知らないままもう会うことがなくなっていた。


 一見何も同じところなんてなさそうなのに、小さな共通点を見つけて。でもそれから話なんて弾まなかった。


 病院で途中まで読んで、あれっきり結局また忘れていた本が偶然いま目の前にあった。

 彼女はもう最後まで読み終えたんだろうか?

911 : ◆xjSC8AOvWI [sage saga]:2022/08/21(日) 23:37:44.66 ID:riBVnRo+0


 ――――ショッピングの帰り際、みんなと別れてから携帯を見てみると、ちょうど巴さんから連絡がきてた。

 向こうの訓練も終わった頃みたい。


 巴さんは、魔法少女にならない私にも先輩になってくれた。魔法少女にならない私のために、私に合った訓練をしてくれるって。

 同じ一人暮らしだからって、お互いの家で集まって一緒にいて私に料理を教えてくれる。

 なぎさちゃんも。お母さんがいなくなって、お父さんは忙しくて、だからお料理を頑張るんだって。


マミ「いいじゃない。暁美さんも前と比べればかなり上達したわよね。手際がよくなったのがわかるもの」

ほむら「さ、最初は本当に何もできなかったし、ドジばっかりだったですから……」

マミ「慣れていなかっただけだったのよ」


 でもみんなと比べたら、私はどうだろう。

 たまに、私も同じだと思っていいのかな? とも考えてしまう。

912 : ◆xjSC8AOvWI [sage saga]:2022/08/21(日) 23:40:23.70 ID:riBVnRo+0


ほむら「……私、まだこの街にいてもいいんですよね?」

マミ「どうしたの? 急に」

ほむら「私がいま家に帰ったときに一人なのは、私が好きで選んだことだから」


 私は誰かの死を経験したことはないし、いざとなったら帰れるところがある。

 私がみんなと同じと言うには一人だけ『ずるい』気がしてしまって。


マミ「選べるっていいことよ。でももちろん、ご家族のことも大事にしてね」


 巴さんはいつもと変わらない穏やかな笑顔を向けてくれている。その言葉には重みを感じた。

 ……たしかにそのとおり。変なこと考えるよりも幸せだって思わなくちゃ駄目だ。それに心配かけさせないようにちゃんと連絡もしよう。


ほむら(さっそく、帰ったら電話してみようかな。今日のこととか話してみよう)

913 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/08/22(月) 00:25:17.34 ID:vpaYIlCZ0


 今日も色んな人と過ごして、帰り道は一人になる。


 スクールバッグのほかに手にあるのは小さな紙袋。

 ショッピングでは本屋にあった本を一冊買っていた。あのとき見ていた本だ。


 私があの子に会ったのは訓練についていかないことを決めた日が最後だった。

914 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/08/22(月) 00:41:29.92 ID:vpaYIlCZ0


 ワルプルギスの夜との戦いのとき、魔法少女のみんなと一緒にワルプルギスの夜と戦っていたらしい。

 それも鹿目さんたちが避難所に戻ってきた後も、なぎさちゃんと一緒に最後まで。

 それ以降もしばらく訓練には顔を出していたりしてたみたいだけど、大きな怪我を負っていて、それで……――。


 今はなぎさちゃんたちの前にも姿を見せなくなった、って。全部人から聞いたことだけど、私が知ってるのはそのくらい。

915 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/08/22(月) 00:50:43.12 ID:vpaYIlCZ0


 だから、

 今こうしてただの街角で、前と変わらない姿で、ちょうどそのことを考えた後で、

 彼女を見かけたのはきっとすごい偶然なんだと思った。


ほむら「え…………、神名さん……?」

あすみ「………………」


 私に気づいてもやっぱり冷たく素っ気なさそうだったけれど、

 珍しくどこか考え込んだような様子で何をするでもなく佇んでいるように見えたから少し不思議に思えた。

916 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/08/22(月) 00:59:19.02 ID:vpaYIlCZ0
-----------------------------------------
今回の投下はここまで、続きは多分今週中に
917 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/08/27(土) 14:48:48.87 ID:VCrEHp6i0
久しぶりの投稿乙です。

あすみとメガほむ、これまで関係は薄かったようですが何やら関わってきそうな感じですね。
お互い周りに関して疎外感を感じてる、自分から距離を置こうとしてる点が共通してるのがポイントですかね?
続きが楽しみです!
918 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/08/28(日) 19:58:42.40 ID:jYgpb0Nm0


ほむら「ひさしぶり……ですね」

あすみ「…………」

ほむら「なぎさちゃんたちとも最近は会ってないって聞きました。……なにかあったんですか?」

あすみ「べつに…………」


 やっぱりあの時と同じで、私となんか話したくないって思ってそうな雰囲気だ。

 でも、なぎさちゃんの名前を出したらたった一言だけどやっと反応してくれた。

919 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/08/28(日) 21:03:52.22 ID:jYgpb0Nm0


 少しの間沈黙が続いてから、気になっていたことを聞いてみる。あんまり自分からあれこれ話す気はないみたいだった。


ほむら「大怪我してたって聞きましたけど……」

あすみ「……あー、そんなことも聞いてたの」

ほむら「あ、はい。ちゃんと治ったんですね」


 私は見てないし、それがどの程度のものだったのかは知らない。

 とはいえ、魔法があってもすぐにどうにもできない程のものだったんだから、軽くはなかったんだと思う。


あすみ「私さぁ、ホントはもう会わないつもりだったんだよね。そのために行方眩まして……消えるハズだったのに、『怪我』治ったのも“奇跡”ってゆうか」

920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/08/28(日) 21:11:05.67 ID:VjW5mTyP0
やた!久しぶりのリアルタイム更新に立ち会えた!
921 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/08/28(日) 21:45:53.31 ID:jYgpb0Nm0


 神名さんは言いたくないことを言うみたいに話し始めた。


ほむら「……誰かに話したんですか?」

あすみ「もちろん誰にも話してないよ。追ってこられたって困るじゃん」

あすみ「詳細省くけど……『あぁもう長くないんだな』って思ってたのにさ」

ほむら「で、でも、なぎさちゃんも鹿目さんたちも……」

あすみ「……『心配してくれるのに』? だからこそって話でしょ」

ほむら「……それは……そうなのかもしれないけど」

922 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/08/28(日) 22:11:04.40 ID:jYgpb0Nm0


あすみ「……そんなの置いといてよ。それで、一回死んだと思って気づいたらなぜか生きてたの」

あすみ「気にしてたこと全部解決して、怪我も治って――――いや。自分のことだから何が起きたのかはわかるよ? にしたって、あんまりにも都合がよすぎ」


 私たちの会話はゆっくりと、ときに間も空けながらポツリポツリと紡がれていった。

 彼女は気難しいとこはあるけど、話し方はもっと雄弁だったように見えた。なのに今はどこかぎこちなかった。


 私には何があったかは詳しくわからない。でもこの問題はきっと、もっと簡単なことだ。

 タイミングを失ってしまったとか、予想と違う結果になって意地を張ってどうしようか迷ってるとか。それなら私にもわかる。


 見た目通りというか、意外と子供っぽいところもあるんだと思ってしまった。……こんなことを言ったら怒られそうだけど。


ほむら「今から会いに行きましょう」

923 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/08/28(日) 23:04:26.41 ID:jYgpb0Nm0

あすみ「……はぁ!? 今から?」

ほむら「遅くならないうちに」

あすみ「充分遅いでしょ。別に明日とかでも……」

ほむら「だって……重大なことじゃないですか。結果的には無事でも。私だったら早く会って無事だったって知りたいって思って」


 思い切って提案する。

 私も悩んでばかりだけど、誰かの心を押すくらいのことなら私にも手伝える。

924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/08/28(日) 23:16:01.76 ID:VjW5mTyP0
ほむらは一度決断すると頑固だからなぁ・・・
925 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/08/28(日) 23:36:10.23 ID:jYgpb0Nm0


 すると、神名さんは少し驚いた顔をして。


あすみ「…………はぁ、まあそうね。この先ずっと身を隠してくのもムリだし、一生離れるって選択肢なんかないんだから」

ほむら「一緒に行きますか?」

あすみ「一人で行けるっての! ……遅くなったら変なの沸くって聞いたことないの? 無防備にしてるといつか襲われたって知らないよ」


 突き放すようだけど、私のことも考えてくれているんだってわかった。


 また一人の帰路に戻ってから、そういえば本の話なんかできなかったな、と思い返す。

 私はもう『魔法少女』のことには関わらないって決めたけど、彼女もこの街にずっといるらしいからまた会う機会くらいあるだろう。



 こっちに来てから色んなことがあった。私の中や周囲の環境で、変わったところ、変わらなかったところ。

 街が壊れたりとか、決していいことばかりではなかったけれど……それでも今は幸せで恵まれてるって胸を張って言える。



ほむら「――――……うん」

ほむら「私はちゃんとやっていけてるよ。友達もできたの。料理だって習って作れるようになったんだよ。ちょっとずつだけど」

ほむら「だから心配しないで。……うん。お母さんも元気でね」



――後日談そのBほむら おわり――
926 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/08/28(日) 23:48:29.82 ID:jYgpb0Nm0
------------------------
きりがいいのでここまで
次で後日談は最後になると思います
927 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/08/30(火) 03:01:37.62 ID:m63ZmH8q0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/02(土) 11:48:16.21 ID:wildNdLrO
スレ主さん、もう続きは書かれないのかな?
お待ちしております。
929 : ◆xjSC8AOvWI [sage saga]:2024/03/17(日) 17:35:02.60 ID:jETTsTo80
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資格の勉強とかなんやらでなかなか時間とれてないですが、実はスレはちょこちょこきてます…!
とりあえずおまけ編締めくらいはやる!つもりはあるのでコメントは励みになります!
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