邪神ちゃん「100日後に死ぬヘビ」

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22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:41:01.18 ID:OoTzgBfJ0
〜4日目〜



邪神ちゃん「よ、よし……」ゴクリ

邪神ちゃん「今日こそ魔界役所に連絡してみますの……」


プルルル… プルルルル……


邪神ちゃん「はぁ…! はぁ……!」ドックンドックン


プルルル… プルルルル……


邪神ちゃん「はぁ…! はぁ…! はぁ……!」ドックンドックンドックン


プルルル… プルルルル…… ピッ


???『こちらは、魔界役所です』


邪神ちゃん「ひいっ!? あああああ……あのっ……」アタフタ
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:42:28.42 ID:OoTzgBfJ0
>>22 訂正



ゆりね「……もうすぐ、なによ?」

邪神ちゃん「な、なんでもねーですの……」

ゆりね「?」

邪神ちゃん(あっぶね……自分からバラすとこでしたの……)

ゆりね「……ま、これからは長時間留守にする時はちゃんと連絡してちょうだい」

ゆりね「黙って居なくなられると──」

邪神ちゃん「居なくなられると、どうなんですの?」

ゆりね「……別に。なんでもないわよ」プイ

邪神ちゃん(何なんだよ……いったい……)



死まであと97日
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:43:08.68 ID:OoTzgBfJ0
〜4日目〜



邪神ちゃん「よ、よし……」ゴクリ

邪神ちゃん「今日こそ魔界役所に連絡してみますの……」


プルルル… プルルルル……


邪神ちゃん「はぁ…! はぁ……!」ドックンドックン


プルルル… プルルルル……


邪神ちゃん「はぁ…! はぁ…! はぁ……!」ドックンドックンドックン


プルルル… プルルルル…… ピッ


???『こちらは、魔界役所です』


邪神ちゃん「ひいっ!? あああああ……あのっ……」アタフタ
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:44:32.93 ID:OoTzgBfJ0
音声ガイダンス『──申し訳ありませんが、現在たいへんお電話が込み合っています。後ほどおかけ直しください』


邪神ちゃん「はあーっ…! はあーっ……! ぜー…! はぁーっ……!」ドキドキ

邪神ちゃん「な、なぁんだ……おどかしやがって……」ホッ


邪神ちゃん「──うぷっ!?」

邪神ちゃん「うおぼろろろろろろろろ……!」ビチャビチャ


邪神ちゃん「ま、まただ……また謎の吐き気と眩暈……」クラクラ

邪神ちゃん「今日はもう電話はいいや……何もやる気が起きませんの……」

邪神ちゃん(てことは、明日もこの気が狂いそうな気分を味わうのか……)

邪神ちゃん(いや! 明日明後日は土日だから役所は休みでしたの! 電話しなくていい……しなくてもいいんだ……!)

邪神ちゃん「うわーい♪ ちょっとだけ元気が出ましたの!」

邪神ちゃん「………」

邪神ちゃん「……情けねえ」ボソッ



死まであと96日
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:45:32.17 ID:OoTzgBfJ0
〜7日目〜



邪神ちゃん「この二日間、せっかくの土日だってのに生きた心地がしなくて全く楽しめなかった……」

邪神ちゃん「私は毎日が日曜日だけど、それはさておきこんな気分をいつまでも引きずってるなんて御免ですの」

邪神ちゃん「今日こそは魔界役所にちゃんと確認してやるっ!」


プルルル… プルルルル…… ガチャ


下級悪魔A『お電話ありがとうございます。こちらは魔界役所健康推進課です』

邪神ちゃん(一発で繋がっちまった!)ドキン


邪神ちゃん「……あ、あのっ、私ですの。邪神ちゃんですの」

下級悪魔A『……』

下級悪魔A『……はい。お世話になっております、邪神ちゃん様。本日はどのようなご用件でしょう?』

邪神ちゃん(あ、あれ……? 私の名前を聞いた途端に声がトーンダウンしたような……)
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:46:13.68 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「そ、その……ちょっとお尋ねしたい事があるんですの……」

下級悪魔A『はい。どういったお問い合わせでございますか?』

邪神ちゃん「この間受け取った魔界健康診断の結果なのだけど、ちょっとおかしな点があるので間違いがないか確認して貰えないかと……」

下級悪魔A『……はぁ』

邪神ちゃん(溜息?)

下級悪魔A『邪神ちゃん様、はっきり申し上げますが、それはありえません』

邪神ちゃん「だ、だけど……!」

下級悪魔A『いいですか? 我々の業務は常に万全を期しています。手違いなど起きようはずがありません』

邪神ちゃん「そんな取りつく島もない! 万にひとつという事もあるだろう? 調べてみてくれたって──」

下級悪魔A『必要ありません!』ガチャン

邪神ちゃん「お、おいっ!」


ツーツー…


邪神ちゃん「待ってくれよ……」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:46:57.67 ID:OoTzgBfJ0
下級悪魔A「やれやれ……」

下級悪魔B「どちら様からだったのですか?」

下級悪魔A「……邪神ちゃん様ですよ」

下級悪魔B「うげっ! それは災難でしたねぇ」

下級悪魔A「魔界健康診断の結果に納得いかないとかイチャモンつけてきたんで、ビシっと言ってやりましたよ」

下級悪魔B「あの人、以前も生活保護貰おうとして魔界役所に難癖つけてきたらしいですね」

下級悪魔A「ええ。役所のブラックリストにも載っています。ほら、彼女の為の対応マニュアルまでありますよ」

下級悪魔B「なになに……『理不尽な要求には一切応じず、強い姿勢でつっぱねましょう』 はは、なるほど」

下級悪魔A「さ、気を取り直して善良な市民の皆様の為にお仕事お仕事!」


邪神ちゃん様(嗚呼……やっぱ間違いじゃなかった……)

邪神ちゃん様(私……本当にもうすぐ死ぬんだ……)チーン



死まであと93日
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:49:37.49 ID:OoTzgBfJ0
〜10日目〜



・花園家前


メデューサ「邪神ちゃーん! いい加減出てきてよぉ!」ピンポーン

メデューサ「今日は邪神ちゃんの好きなフレッシュムーン買ってきたんだよ。一緒に食べよう?」ピンポーン

メデューサ「せめてお顔だけでも見せて欲しいな……」ピンポンピンポーン

メデューサ(このところ毎日様子を見に来てるけど、邪神ちゃんは一度も顔を出してくれない……)ピンポーン

メデューサ(きっと塞ぎ込んでるんだろうな……あんな宣告受けたんだから無理もないけど……)ピンポンピンポンピンポーン


ゆりね「……鍵、開いてるんだけど」ガチャ

メデューサ「ゆ、ゆりねさんっ!? 居らしてたんですか……」


メデューサ「てっきり学校に行ってる時間かと……うるさくしてごめんなさい……」

ゆりね「かまわないわよ。邪神ちゃん、ちょっとここ数日体調悪いみたいで寝込んでて。それで私も今日は念のため大学を休んだの」

メデューサ(やっぱり。邪神ちゃん大丈夫なのかな……)

メデューサ「そ、そうですか。それなら私はこれで……」

ゆりね「悪魔特有の病気とかかしら……メデューサ、何か心当たりない?」

メデューサ「!?」ギクッ
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:50:22.79 ID:OoTzgBfJ0
メデューサ「い、いえっ……! そのぉ……」アタフタ

ゆりね「?」

メデューサ(邪神ちゃん……あれほどゆりねさんには伝えるなって……言ったら絶交だって……)

メデューサ(だ、だけど……)

ゆりね「──ああ、なるほど。そういう事か。察しがついたわ」

メデューサ「え、ええっ!?」

メデューサ(ゆりねさん鋭すぎ……! どうして分かっちゃったの……?)

ゆりね「気まずい思いさせちゃって悪かったわねメデューサ。私が無神経だったわ」

メデューサ「こ、こちらこそごめんなさい。私、なかなか言い出せなくて……」

ゆりね「無理もない事よ」

ゆりね「そっか……そうよね。邪神ちゃんも、一応あんなでも女の子ですものね……」

メデューサ「はい。きっと辛いと思います……」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:51:03.05 ID:OoTzgBfJ0
ゆりね「いえね、私も前から気にはかけていたのよ?」

メデューサ「ま、前から……?」

ゆりね「だけど、あの子の方からは何も言ってこないし、今までそういう様子もなさそうだったし」

ゆりね「かといって、私の方から聞くのもどうかと思うじゃない?」

ゆりね「いくら遠慮なく拳を交わせる関係とはいえ、その点は私だってデリカシー持って接するわよ」

メデューサ「いえ、デリカシーとかそういう問題でもないかと……」

ゆりね「あの子、実は何千年も生きてるわけだし、もしかしたらとっくに上がっちゃってるのかとも思ったし……」

ゆりね「でも、考えてみればそうよね。何千年も生きるってことは、人間との周期も違って当然よね」

メデューサ「えっと、ゆりねさんは先程から何の話をしているのでしょう……?」オロオロ

ゆりね「何って……」

ゆりね「“あの日” なんでしょ、邪神ちゃん。わざわざ言わせないで欲しいわ……」

メデューサ「っ///」

ゆりね「ま、そういう事ならあまり心配はいらなそうね」

メデューサ(ど、どうしよう……ゆりねさんに変な勘違いさせちゃった……)



死まであと90日
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:52:44.01 ID:OoTzgBfJ0
・花園家 押入


邪神ちゃん「あー……」

邪神ちゃん「何日くらいこうやって寝込んでるんだっけ……」


邪神ちゃん(魔界役所に電話してから一週間……余命宣告されてからはもう二週間くらいか……?)

邪神ちゃん(押入の天井もいい加減見飽きましたの……)


邪神ちゃん(つーか、こんだけ何もしないでいるのに、ゆりねのヤツはどうして文句ひとつ言ってこないんですの?)

邪神ちゃん(食事も用意してくれるし、最近のあいつ、妙に私に優しいんだよなぁ……)

邪神ちゃん(なんだか知らんが、変な形の折り畳んだ紙も沢山くれたし。何なんですの、これ?)ツンツン

邪神ちゃん(確か、玄関でメデューサと何やら話してた日から態度が変わったような……)


邪神ちゃん「──まさか、メデューサの奴!?」ガバッ


邪神ちゃん(……い、いや。あそこまで釘を刺したんだ。メデューサが言うはずない)フルフル

邪神ちゃん(だって、私に絶交なんかされたらあいつの方こそ死んじまうだろ?)


邪神ちゃん「それにしても、反射的にとはいえ久し振りに身を起こしたな……」ムクリ

邪神ちゃん「貴重な残り寿命を寝たままで浪費するなんて私らしくないか。よっこらせっと……」モゾモゾ
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:53:12.10 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「まぁ、起きたところで結局テレビ見て菓子食いながらゴロゴロするだけなんだけどな」ボリボリ

邪神ちゃん(……そーいや、寝込んでる間にちょっと思いついた考えがある)

邪神ちゃん(私の残り寿命があと100日……)

邪神ちゃん(じゃなくてもう80日ちょっとか。やべぇ、落ち込むのが長すぎた。もったいない……)

邪神ちゃん(ま、まぁ済んじまったことは仕方がありませんの。とにかく、死ぬ日が決まってるワケだよな?)

邪神ちゃん(と、いう事はだ……逆に言えばそれまでは何をしても死なないんじゃねーですの?)

邪神ちゃん(だって理屈だとそうだよな? 映画版デスノートのLとか、ジョジョ5部のミスタとかそんな感じだったし)

邪神ちゃん(つまり、私は残り80日ちょっとの間は無敵状態って事になるのでは……?)

邪神ちゃん「ああ! きっとそうだ! これは嬉しい発見ですの!」

邪神ちゃん「よぉーし! どうせ死ぬなら無敵のパワーでゆりねを倒し、故郷の魔界に錦を飾ってから死んでやるっ!」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:53:45.49 ID:OoTzgBfJ0
ゆりね「ただいま。おかゆの材料買ってきたから支度するわ……あら?」

ゆりね「よかった。起き上がれるようになったのね」

邪神ちゃん「うむ。ご苦労であるぞ、ゆりね」

ゆりね「は?」ビキッ

邪神ちゃん「思えば、ここ数日のお前の献身的な態度は、無意識に私の無敵パワーを感じ取り、畏れていたが故だったんだな」

ゆりね「……あんた、まだ熱あるんじゃないの?」

ゆりね「ちょっとおでこ出しなさい」ツカツカツカ

邪神ちゃん「バカめっ! 無敵の人に不用意に近づきすぎだっ!」

邪神ちゃん「今の私に恐れるものなどない……だからこんなマネだって出来るのさっ!」

邪神ちゃん「くらえええええ! 新必殺! 小学生男子ばりのF・O・S・M(フルオープンスカートめくり)じゃあああああい!!」


バッサァァァ!!


ゆりね「んなっ…///」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:54:18.23 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「あひゃひゃひゃひゃwwwwww 柄にもなく赤くなってやんの〜wwwwww」

邪神ちゃん「そんなもっさいかぼちゃパンツ、見えたところで別に構わないだろ〜wwwwww」


ゆりね「………教えてあげるわ」

邪神ちゃん「──!?」ゾクッ


ゆりね「この下着はね……かぼちゃパンツじゃなく、ドロワースって……言うの、よっ!!」ボッゴォ!!

邪神ちゃん「どろわっ!?」


ゆりね「……あんた病み上がりだから、今回は特別にこれだけで許してあげる」

ゆりね「ま、しょーもない悪さが出来る程度には回復したみたいね。待ってなさい、今おかゆ作るから」

邪神ちゃん「う……うぐぇぇぇ……」ピクピク
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:55:42.88 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん(あ、危うく三途の川を渡るところでしたの……)

邪神ちゃん(くっふぅ〜…! なんだよ! フツーに死にかけたじゃねーか! とんだ殴られ損だよ!)

邪神ちゃん「……まったく。こちとら死期が近いってのに、ゆりねと居るといつもの調子に戻っちまいますの」クス

邪神ちゃん「……」

邪神ちゃん「……なにちょっと和んでんだよ私。気持ち悪っ」



死まであと86日
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:56:19.48 ID:OoTzgBfJ0
〜18日目〜



・人生シアター


邪神ちゃん「あ〜、やっぱ私にゃコレだよなぁ♪」

邪神ちゃん「打ってる間だけは全てを忘れてパチに没頭できるから、嫌なこと考えなくて済みますの」

邪神ちゃん「しかも今日はめちゃくちゃ調子いいし。んっふっふ♪」

邪神ちゃん「──って言ってる間にまた揃ったぁ! おいおい、連チャン止まんねーぞ!」

邪神ちゃん「いやぁ〜、久し振りに大勝ちできそうだなぁ〜wwwwww」

邪神ちゃん「そしたら欲しい物買ってぇ〜、したいこと好きなだけしてぇ〜♪」

邪神ちゃん「えっとえっとぉ、まず何から買っちゃおっかなぁ〜♪」

邪神ちゃん「……えっと」

邪神ちゃん「……」

邪神ちゃん「し、してみたかった事といえばあれだよなぁ〜!」

邪神ちゃん「ほら……あれ……」

邪神ちゃん「……」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:57:28.57 ID:OoTzgBfJ0
隣のおっさん「くそっ! くそっ! 全然こねーぞこの台!」  

邪神ちゃん「おっさん、おっさん」チョイチョイ

隣のおっさん「あ゛あ゛ん゛!?」

邪神ちゃん「私もう帰るから、よかったらこの台打ちますの」

隣のおっさん「えっ! いいの!? さっきからめちゃくちゃ連チャンしてたじゃねえか!」パアアァァ

邪神ちゃん「いいんですの。店員呼ぶと色々めんどくせーから、今入ってる玉も全部あげますの」

隣のおっさん「あ、あんがとよ! ヘビの姉ちゃん!」

隣のおっさん「いやぁ、こういう人情ってすっかり失われちまったと思ってたけど、あんたみたいな奇特な人もまだ居たんだな!」

邪神ちゃん(奇特…… キトク…… 危篤……!?)ドクン

邪神ちゃん「……そ、そんじゃ、私はこれで」フラフラッ

隣のおっさん「おう! あんた、今に絶対いいことあるぜ!」ニカッ

邪神ちゃん「はは。だといいけどな……」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:58:12.47 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「はぁ……」トボトボ

邪神ちゃん「何やってんだろ私……」

邪神ちゃん「にしても、外明るっ!」

邪神ちゃん「ああ、なんだ。まだこんな時間なのか……」

邪神ちゃん「……早めに帰ってゆりねの好物でも作っといてやるかな」

邪神ちゃん「って、財布の中身こんだけかよ!?」

邪神ちゃん「あー、しくったぁ〜……やっぱあん時の出玉だけでも交換しとくんだった……」

邪神ちゃん「ほんっと、何やってんだろ私……」



死まであと82日
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:58:41.37 ID:OoTzgBfJ0
〜20日目〜



邪神ちゃん「はぁ〜……今までに輪をかけて何もする気が起きねえ……」ゴロゴロ


ピンポーン♪


邪神ちゃん「ったく。誰だよ……」

邪神ちゃん「はーい。今開けますの」ガチャ


遊佐「ごめんください」

氷ちゃん「」オッス


邪神ちゃん「お前らか。生憎だがゆりねは出かけてますの」

遊佐「いえ、今日はあなたに用がありまして……」

邪神ちゃん「おや、そりゃ珍しい。まぁ上がれよ」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:59:11.70 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「んで、私に用ってなんですの?」

遊佐「それなんですが……」

氷ちゃん「」ジーッ…

邪神ちゃん(──はっ!?)

邪神ちゃん(ま、まさか浩二のヤロウ……この間イジメたこと姉にチクリやがったな……!)

氷ちゃん「」ジーッ…

邪神ちゃん(くっふぅ〜…! またしても命の危機ですの! なんだよ! お迎えがくるまで穏やかに過ごさせてくれよ!)

遊佐「その……あなたの寿命のこと、メデューサさんから聞きまして……」

邪神ちゃん「なっ……!?」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:59:56.19 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「メデューサが……お前らにバラしたのか……!?」

遊佐「バラしただなんて……そんな言い方は……」

邪神ちゃん「あいつめ〜! 人のヒミツをペラペラとぉ〜!」

遊佐「も、もちろんゆりねさんには伝えないようにとも言われています! その点はご安心ください」

邪神ちゃん「当たり前だ!」

遊佐「……メデューサさん、あなたの事を本当に心配なさっているのですよ」

遊佐「きっと一番の親友同士なのですね。見ていれば分かります……」

邪神ちゃん「ふん! あんなヤツたった今キライになりましたのっ!」プイ

遊佐「またそんな事を……」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:00:33.72 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「……んで、それを知った上で何の用があって来たんですの?」

遊佐「で、ですから……」

邪神ちゃん「ハッ! くたばる前に私の惨めなツラでも拝んどこうってか?」

邪神ちゃん「まぁそうだよな。お前ら姉妹にゃ今まで散々イジワルしてやったし」

邪神ちゃん「浩二ぃ〜、おめーも内心ほくそ笑んでるんだろぉ〜? いい気味だって思ってるよなぁ〜?」ウリウリ

氷ちゃん「…っ! …っ!」フルフル

邪神ちゃん「嘘つくんじゃねえ!」

遊佐「やめてください! そんな理由でわざわざ訪ねてきたりしません!」

邪神ちゃん「じゃあなんだよっ!? まさか私が心配で来たとでも言うつもりかっ! この偽善者どもめ!!」

遊佐「どうか落ち着いてください……!」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:01:20.54 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「くっそぉ……! なんで上級悪魔である私がこんな無様に死に脅えなきゃいけないんだ……!」

邪神ちゃん「死ぬなら存在価値のないお前みたいな下級悪魔でいいだろうがっ!」グリグリ

氷ちゃん「…っ! …っ!」イヤイヤ

遊佐「妹をいじめないで!」

邪神ちゃん「そうだ。偽善者のお前らにぴったりな人間界でのシノギを教えてやるよ」

邪神ちゃん「まず、コイツに食事を与えず徐々に弱らせるんだ」ウリウリ

氷ちゃん「…っ! …っ!」ヤメテ

邪神ちゃん「そんで“100日後に死ぬモグラ”とかいって感動ポルノ路線でグッズ展開していけばガッポガッポですのwwwwww」

氷ちゃん「…っ! …っ!」シクシク

遊佐「言い過ぎです! それ以上妹を侮辱するなら、例え老い先短いあなたでも容赦は──」

邪神ちゃん「ほほぅ……面白れぇ。やってみろよ! こっちも暴れたくてウズウズしてきましたの!」

遊佐(可哀そうに……なんて荒んだ目をしているのでしょう……)

邪神ちゃん「どーした? いつもみたいに私を氷漬けにしないのか?」

遊佐「……よしましょう。今のあなた、とても見ていられません」

邪神ちゃん「ケッ! やっぱ偽善者じゃねーか」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:01:52.33 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「浩二、お前はどうなんだ?」

氷ちゃん「?」

邪神ちゃん「今の衰弱した私なら、下級悪魔のお前でもワンチャン倒せるかもしれねーぞ?」

氷ちゃん「」フルフル

邪神ちゃん「ふん! せっかくこれまでの雪辱を晴らせるというのに。姉妹揃って根性無しが!」

氷ちゃん「」ゴニョゴニョ

邪神ちゃん「……なに? 『そうじゃなくて、やつれたお前になんか勝っても嬉しくない』?」

邪神ちゃん「『ちゃんと医者に診て貰い、滋養をつけろ。万全な状態まで回復したら受けて立ってやる』 ……だとぉ!?」

邪神ちゃん「きっさま───っ!! 下級悪魔の分際でこの私に情けをかけるつもりかぁ───っ!?」

遊佐「くす。妹は本心ではそこまであなたの事を嫌ってはいませんよ」

邪神ちゃん「っぐ///」

邪神ちゃん「う……うっせえ! 不器用な優しさを垣間見せんなっ!!」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:02:42.44 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「お前……! ほんっと不愉快なガキだな! 二度と不器用な優しさを垣間見せんなっ!!」

氷ちゃん「」ゴニョゴニョ

遊佐「なぁに? ええ、ええ……」

遊佐「妹が『ついさっきと同じ事を言っている。記憶障害も併発しているのでは?』と心配していますが……」

邪神ちゃん「ナチュラルにディスってんじゃねえええぇぇぇ!!」

邪神ちゃん「帰れっ! 帰れえええええええ!!」 

遊佐「わかりました。少し元気になられたようでなによりです」

氷ちゃん「」ニヤリ

邪神ちゃん「くっふぅ〜…! なんだ貴様! その意味ありげな微笑は!?」

遊佐「さ、もう行きましょう」

氷ちゃん「」コクコク

邪神ちゃん「いいかてめーら! これだけは言っておく!」

邪神ちゃん「あれ……? なんて言おうとしたんだっけ…… そ、そうだ!」

邪神ちゃん「不器用な優しさを垣間見せんなっ!!」

遊佐「ぶふっww」

邪神ちゃん「なにが可笑しい!?」

遊佐「す、すみません……三度目は……さすがに不覚だったもので……」プルプル

邪神ちゃん「帰れええええええええええええええええええっ!!!」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:03:17.88 ID:OoTzgBfJ0
・数分後


ゆりね「──遊佐さんたち来てたの? さっきそこで見かけたけど」

邪神ちゃん「……ああ。たった今帰ったとこですの」

ゆりね「ふぅん。何の用だったの?」

邪神ちゃん「え、ええっと……それはぁ……特に何の用ってワケでもなさそうだったけどぉ……」シドロモドロ

ゆりね「?」

邪神ちゃん「ひ、冷やかし……じゃないカナ〜……?」

ゆりね「冷やかし?」

邪神ちゃん「そ、そう……氷族だけに……冷やかし。なんつって……」

ゆりね「……」

ゆりね「……流石にそれはつまんないわ」

邪神ちゃん「あ、はい。精進しますの……」

邪神ちゃん(こいつの笑いのツボはいまだによく分からない……)



死まであと80日
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:03:50.08 ID:OoTzgBfJ0
〜26日目〜



・アパート前


邪神ちゃん「今日は皆さんに、糞ダルい朝のゴミ出しが一瞬で楽しくしなっちゃう裏ワザを紹介しますの♪」

邪神ちゃん「方法はいたって簡単」

邪神ちゃん「両手にゴミ袋持って、小走りで収集所に向かいながら、脳内では映画『コマンドー』の冒頭に出てくるおっさんになりきるんですの」

邪神ちゃん「できれば収集車が見えてから走り出すのが激アツなんだが、前にそれやったら間に合わなかったからな……」

邪神ちゃん「小心者の私は余裕を持って捨てるとしますの」ドサッ


メデューサ「あ……」

邪神ちゃん「あっ」


メデューサ「ひ、久し振りだね……身体はもう良くなったの?」

邪神ちゃん「そりゃ、もうすぐ死ぬ者に対してのイヤミか?」

メデューサ「あぅ……」シュン
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:04:25.57 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「お前さ、私に言わなきゃならない事があるよな?」

メデューサ「う、うん……邪神ちゃんの寿命のこと、皆に話しちゃった……」

邪神ちゃん「皆に!? 遊佐達にだけじゃないのかよ!?」

メデューサ「ひゃうっ!」ビクッ

邪神ちゃん「いったい誰と誰に喋ったんですの!?」

メデューサ「えっとぉ……あとは……天使の皆と、キョンキョン達と、芽依さんと……」

邪神ちゃん「つまり、知り合い全員かよ」

メデューサ「で、でも……ゆりねさんにだけはくれぐれも言わないようにって、ちゃんと全員に念押ししてるよ?」

邪神ちゃん「なんかもう、それだとゆりねだけハブってるみたいでちょっと胸が痛いんだが」

メデューサ「や、やっぱりダメだったかな? ゴメンね……」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:05:18.67 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「いや、ダメっつーかなんつーか……う〜ん……」

メデューサ「だって、何も知らされないままお別れになんてなったら、皆きっと悲しむと思ったから……」

邪神ちゃん「お別れ……」ズーン

メデューサ「はっ!?」

メデューサ「そ、そうじゃなくてね! 皆に相談できたら何か助かる方法が見つかるかもと思ったし……」アタフタ

邪神ちゃん「取り繕わなくていいっつーの」

メデューサ「ゴメンなさい邪神ちゃん……勝手なことして。怒ってるよね……?」

邪神ちゃん「──別に」

メデューサ「え……」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:05:49.16 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「言っちゃった事はどうしようもないし、ゆりね以外のヤツに話すなとも言ってなかったし」

邪神ちゃん「そもそも、最近なんかもう怒る気力も湧かないんですの……」

メデューサ「ホント? 本当に怒ってない?」

邪神ちゃん「私の為を思ってやってくれたんだろ? それくらい分かってますの」

メデューサ「邪神ちゃん……!」パアアァァ

邪神ちゃん「ただし! くれぐれも言うがゆりねにだけはっ!」クワッ!

メデューサ「うん。お口チャック、だね♪」

メデューサ「でも、どうしてゆりねさんの事となるとそこまで……?」

邪神ちゃん「お前には関係ねーことですの」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:06:34.70 ID:OoTzgBfJ0
メデューサ「そうだ! はい、これ。仲直りのしるしにお金下ろしてきたんだよ♪」ニコッ

邪神ちゃん「おい! そんな名目で渡されたら気持ちよく使えないだろ。もっと言い方に気ぃ遣えや!」

メデューサ「あ……ゴメン」

邪神ちゃん「まぁいい。せっかくだから受け取っておく」ゴソゴソ

邪神ちゃん「………そんじゃ、この金でお前の好きな物でも食べにいきますの」

メデューサ「いいの!? 嬉しい……///」

邪神ちゃん「おう。私の奢りだから遠慮なく食え」

メデューサ「えへへ。でも、それって奢りって言うのかなぁ?」

邪神ちゃん「言うだろぉ〜。だって、貰った時点で理屈では私の金だもん」

メデューサ「そっか。それじゃあご馳走になるね、邪神ちゃん♪」



死まであと74日
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:07:05.32 ID:OoTzgBfJ0
〜29日目〜



邪神ちゃん「どうですの? 今日の夕飯は」

ゆりね「うん。相変わらず美味しいわね。あんたの作る料理」モグモグ

邪神ちゃん「特に今日のは自信作だからな。百点満点の出来を自負している!」

ゆりね「うーん…… 惜しいわね。98点よ」

邪神ちゃん「なんだよその2点分。いったいどの辺が物足りないってんですの?」

ゆりね「いえ。具体的にどこが不満ってワケじゃないのよ。ただ……」

邪神ちゃん「ただ?」

ゆりね「あんたにはこれで慢心して欲しくないし、私もこれで満足したくない」

ゆりね「この料理、まだまだ改善の余地はある筈。その将来性に期待して、あえての2点減よ」

邪神ちゃん「将来性……?」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:07:49.54 ID:OoTzgBfJ0
ゆりね「あんた、この先まだまだ何千年も生きる予定でしょ?」

ゆりね「せっかくの料理の才能なんだから、これからもコツコツ経験を積み重ねて精進なさい」


邪神ちゃん「……」ジワッ

ゆりね「……どうかした?」

邪神ちゃん「はっ!」


邪神ちゃん「……な、なんでもありませんの」

邪神ちゃん「まったく、ゆりねは私に家事やらせといてこの言い草だから参るよなーww」

ゆりね「……珍しく褒めてあげたんだから素直に受け取っておきなさい」

邪神ちゃん「へーへー」

邪神ちゃん「……いよぉーしっ! 私の将来は明るいぞおおぉぉーっ!!」

ゆりね「何よ。急に大きな声出して。へんな子ね」

邪神ちゃん「そうか? いやぁ、最近なんか感情のコントロールが難しくてさぁ〜ww」

ゆりね「そんな情緒不安定なヤツとの同居はゴメンだわ。早く治してちょうだい」


邪神ちゃん(やっべ。なんか知らんが泣きそうになった……)ゴシゴシ



死まであと71日
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:08:21.42 ID:OoTzgBfJ0
〜32日目〜



ミノス「邪神ちゃん! メシまだだろ? 今からあたしと焼肉行こうぜ!」

邪神ちゃん「……お前はいつも唐突だよな」

邪神ちゃん「ひょっとしてアレか? スピンオフ漫画の為のネタづくり?」

ミノス「えへへ。当たり♪」

邪神ちゃん「ま、そーいう事なら付き合ってやりますの。ただし、全部お前の奢りな」

ミノス「へいへい。もちろん奢らせていただきますよ」

邪神ちゃん「うむ。それならよろしい」

邪神ちゃん「……ま、そーだよな」

邪神ちゃん「今のうちに私をゲストで登場させとかないと、しばらくしたら呼べなくなっちまうもんなww」

ミノス「またそういうこと言って……」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:08:55.79 ID:OoTzgBfJ0
・焼肉店


ジュウゥゥゥ… ジュウウゥゥゥゥ……


ミノス「うんめぇ〜っ! この店は当たりだなっ♪」ハフハフ

邪神ちゃん「……」ツンツン

ミノス「──どうしたんだよ? さっきから全然食ってねーじゃん」

邪神ちゃん「へっ……? い、いや。食べてるぞ?」

ミノス「嘘つけよ。ずっと箸止まってる」

邪神ちゃん「う゛」ギクッ

ミノス「ひょっとして、まだ調子悪いのか……?」

邪神ちゃん「い、いや……そういうワケじゃないんだが……」

邪神ちゃん「その……柄にもないとかって笑うなよ?」

ミノス「?」

邪神ちゃん「なんつーか、この牛たち、食用にされる為に殺されたワケだろ?」

ミノス「そりゃまぁ、だからこの場に並んでるんだろうけど……」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:09:50.63 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「だからその、コイツらも絶対死にたくなんてなかったろうし……」

邪神ちゃん「死ぬ瞬間は、すっげぇ怖かったかもしれないし……」

邪神ちゃん「そういうこと考えてたら、なんか……感情移入しちゃったっつーか……///」ゴニョゴニョ

ミノス「……」

邪神ちゃん「な、なんだよっ! 悪かったな! らしくないこと言って!」

ミノス「……いや。そうじゃねえよ」

ミノス「こっちこそ悪かった。邪神ちゃんの心境とか、全然考えてなかったな」

邪神ちゃん「謝るなよ……」

ミノス「どうする? もう店出ようか?」

邪神ちゃん「おいおい、私を誰だと思ってるんだ」

邪神ちゃん「命は粗末にしても、食べ物だけは粗末にしない邪神ちゃんですの!」

邪神ちゃん「頼んだ分はしっかり食べて、せめてもの牛への供養にしないとな」

ミノス「……ああ。あたしも付き合うぜ!」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:10:29.04 ID:OoTzgBfJ0
ミノス「もっもっも……」パクパク

邪神ちゃん「もっもっも……」ムシャムシャ


ミノス「なんか、お通夜みたいな雰囲気になっちまったな……」

邪神ちゃん「そんじゃ、景気づけに私が一曲歌ってやりますの」

ミノス「おっ! いいな。テンション上がるやつ頼むぜ」

邪神ちゃん「おっほん。それでは……」


邪神ちゃん「ドナドナド〜ナ〜ド〜ナ〜♪」

ミノス「ぶほっwwwwww」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:10:56.63 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「子牛を乗〜せ〜て〜♪」

ミノス「あはははっ! 曲のチョイスwwwwww」

邪神ちゃん「ドナドナド〜ナ〜ド〜ナ〜♪」

ミノス「わ、笑わすなよ……他のお客さん引いてるし、下手すりゃ営業妨害……くくっww」

邪神ちゃん「荷馬車がゆ〜れ〜るぅ〜♪」


店員「お、お客様……もう少しお静かに……」

店員「せめて、歌われるにしても他の曲にしていただけないかと……」


ミノス「す、すみません!」

ミノス「邪神ちゃん、ストップ! お店の迷惑になってるよ!」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:11:36.89 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「も〜し〜もぉ〜翼が〜あ〜ったな〜ら〜ばぁ〜♪」

邪神ちゃん「楽し〜ぃま〜き〜ば〜に帰れるも〜のぉ〜を〜♪」


ミノス「聞いちゃいねえ……」


邪神ちゃん「ドナドナド〜ナ〜……うっぷ!?」

邪神ちゃん(む、無理して食ったからまた吐き気が……)

ミノス「邪神ちゃん?」


邪神ちゃん「うぉぼろろろろろろろろろろろろ……!!」ゲロロビチャビチャ


ジュウウウゥゥゥゥゥ……!!!


ミノス「うわあああああああああっ!? ここの鉄板だけもんじゃ屋さんにっ!?」

店員「お、お客様あああああああああああああああっ!!」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:14:25.12 ID:OoTzgBfJ0
・数分後 店外


ミノス「くっそぉ〜! なにも出禁にする事ないじゃんかよっ!」プンスカ

邪神ちゃん「私はどのみち残り寿命的に来られそうにないからノーダメですのぉ〜wwwwww」



死まであと68日
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:15:00.63 ID:OoTzgBfJ0
〜36日目〜



・通学路


小学生A「こ、こんにちわー……」

邪神ちゃん「オッス! 気を付けて帰るんだぞ人間の子供よ!」

小学生A「あ、ありがとうございまーす……」ソソクサ


ぽぽろん「……何やってんのよ、あんた」

邪神ちゃん「おお、のえるさんか」

邪神ちゃん「いやぁ〜、最近の世の中もなかなかどうして捨てたもんじゃありませんなぁ〜♪」

ぽぽろん「はぁ?」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:15:35.35 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「こんな風に下校時間に意味もなく通学路を徘徊しているとな、すれ違う小学生達が挨拶していってくれるんですのよ♪」

邪神ちゃん「こうした日常のささやかな触れ合いが、心のトゲトゲ引っこ抜く。ビバ! らぶあんどぴーすわーるどっ!」

ぽぽろん「……いや。それってさ、怪しいやつ見掛けたら先に挨拶して牽制するようにって、最近は学校で教えてるんだよ」

邪神ちゃん「んなっ!? なにぃぃぃ!?」

ぽぽろん「ぷっww あんた不審者に見られてるんだ」

邪神ちゃん「バカな……割とここいらの子供の間では町のオモシロお姉さんとして慕われてる自負があったのに……!」


小学生B「こ、こんにちわー……」

邪神ちゃん「うっせぇ! 人を不審者扱いしてんじゃねーですのっ!!」

小学生B「ひいっ!? ごごご……ごめんなさいっ!」

ぽぽろん「一瞬で世界が荒んだわね……」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:17:15.48 ID:OoTzgBfJ0
ぽぽろん「……ところでさ、あんたの仲間から聞いたよ」

ぽぽろん「その、残り寿命のこと……」

邪神ちゃん「ああん? おめーには関係ないことですの」

ぽぽろん「関係ないって……それ本気で言ってんの!?」

邪神ちゃん「えっ……?」

邪神ちゃん「の、のえるさん……まさかお前……///」トクン

ぽぽろん「あんたに天使の輪っか食われたせいで、ぽぽろんちゃん天界に帰れないんだよ!?」

ぽぽろん「その責任も取らずに自分だけは早々と死ぬなんて勝手すぎ!」

邪神ちゃん「な、なんだ……そういう意味か……」ガッカリ
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:18:21.72 ID:OoTzgBfJ0
ぽぽろん「ねぇ、悪魔って死んだらどうなるの? 天国には行けるわけ?」

邪神ちゃん「行けるわけねーだろ。悪魔が行くとしたら地獄だと相場が決まってますの」

ぽぽろん「魔界と地獄って、どう違うのさ」

邪神ちゃん「よ、よく分かんねーですの……」

ぽぽろん「ふぅん……つまり、あんたはもう天国を見る機会が金輪際ないわけだ。哀れだね」

邪神ちゃん「なんだとぉ! さっきから妙なことばっか聞いてきやがって! 喧嘩売ってんのかっ!?」

ぽぽろん「──あんまり哀れだから、これあげる」スッ

邪神ちゃん「なんですの? この紙切れは……」

ぽぽろん「今度の週末に、天使のえるのライブをやるの」

邪神ちゃん「ライブ?」

ぽぽろん「しかも最前列だよ。ファンなら喉から手が出るほど欲しいチケットなんだから。ありがたく思いなさい」

ぽぽろん「楽しみにしておいて。生きてるうちに、あんたにも天国を見せてあげるから♪」

邪神ちゃん「の、のえるさん……! あんたって人は……!」ジーン



死まであと64日
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:20:11.00 ID:OoTzgBfJ0
〜38日目〜



・邪神ちゃん脳内会議 会議室


邪神ちゃんオリジン「急な呼び出しで申し訳ありませんの。この問題は私ひとりではどうにも決めかねたもので……」

邪神ちゃんコマンダー「水くさいですぞオリジン! 我々は元より一心同体!」

邪神ちゃんジーニアス「この頃のオリジンは、少々冷静な判断力を欠いている……」

邪神ちゃんジーニアス「脳内会議を開いたのは、むしろ賢明といえるでしょうな」

邪神ちゃんファイター「オリジンが弱気になりがちな今だからこそ、俺達がポジティブな意見を出してやるぜ!」

邪神ちゃんオリジン「皆……すまない。そんな風に気にかけてくれるなんて……」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:20:46.26 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃんSJ「ふわ〜ぁ……ねっみ……」ZZZ…

邪神ちゃんコマンダー「SJ! 貴様は少し空気を読んだらどうなんだ!」

邪神ちゃんSJ「だって、このところオリジンがいつもくよくよしてるせいで寝不足なんだも〜ん……」ZZZ…

邪神ちゃんオリジン「う゛」

邪神ちゃんジャスティス「やる気のない者は放っておけばいい! SJ抜きで会議を始めましょう!」

邪神ちゃんコマンダー「ふむ。それではジャスティス、まずは君の意見から聞かせて貰うとしようか」

邪神ちゃんジャスティス「はい! 私はやはり、残されるもの……ゆりねの事を第一に考えるべきだと思います!」

邪神ちゃんファイター「や〜れやれ、またジャスティスのいい子ちゃんブリッコが出たよ」

邪神ちゃんジャスティス「むっ……! なにが言いたいのですかファイター!?」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:21:37.75 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃんファイター「お前の意見は教科書通りの優等生の回答でつまんねーって言ってるんだよ」

邪神ちゃんファイター「いいか? たった一度の人生がもうすぐ終わろうって時にだ、お利口さんしてて何になるんだ?」

邪神ちゃんファイター「思うまま行動し、心残りなくこの世を去っていく。それが悪魔に相応しい生き方だって、俺は思うぜ!」

邪神ちゃんジャスティス「ぐっ……!」

邪神ちゃんコマンダー「二人ともありがとう。では、ジーニアスはどう思うね?」

邪神ちゃんジーニアス「ふむ……ファイター、基本的には君の意見に賛成だが、仮に君の言う通り、思いのままに行動するとしよう」

邪神ちゃんジーニアス「だが、その事でゆりねの怒りを買ってしまい、悲惨な結果を招く可能性を失念してはいないかい?」

邪神ちゃんファイター「そ、それは……」

邪神ちゃんジーニアス「つまり……」


邪神ちゃんエスプ「──つまり、こういう事だろう?」

邪神ちゃんジーニアス「ぐふっ!? の、脳があ…っ……!?」


キィィィ──ン…… ボンッ!!


邪神ちゃんジーニアス「ぴえっ!」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:22:10.96 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃんコマンダー「ジーニアス!? ま、またしても……」

邪神ちゃんエスプ「……俺もファイターに賛成だ。悪魔なら悪魔らしく、最後の時まで我を貫き逝くべきだと思う」

邪神ちゃんエスプ「罪悪感に耐え、欲望に忠実に生きてこそ味わえる旨味だってあるはずだ……」

邪神ちゃんエスプ「この機を逃せば、オリジンはその味を知らぬまま生涯を終えることになるんだぞ?」

邪神ちゃんオリジン「そ、それは嫌ですの……」

邪神ちゃんエスプ「そもそも、ゆりねはこの生あるうちに必ず打ち倒さねばならぬ宿敵」

邪神ちゃんエスプ「衝突を恐れてどうする? 奴の怒りを買うことなど、むしろ望むところのはずだ」

邪神ちゃんオリジン「そうか……そうでしたの……!」

邪神ちゃんエスプ「そんな肝心な事さえ忘れるほど弱気になられては困るな、オリジン」

邪神ちゃんオリジン「すまない……そしてありがとう皆!」

邪神ちゃんオリジン「私やるよ……! 最後の瞬間まで、悪魔らしさを貫いてやりますの!」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:23:16.84 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「……いよぉーし! みんなの後押しのおかげで決心がついたぞ〜♪」

邪神ちゃん「非常持出袋の中に眠ってる乾パンや缶詰……」

邪神ちゃん「ゆりねは『もしもの時の備蓄』って言ってたけど、実はずぅーっと気になっていた……」

邪神ちゃん「こういう物って、手の届く所にありながら完全にアンタッチャブルな存在だから余計に惹かれるんだよなぁ」

邪神ちゃん「今のうちに食っとかないと、もう味わう機会なさそうだし……」

邪神ちゃん「というワケで食〜べちゃお♪」パク


邪神ちゃん「うんめぇ〜! 乾パンうんめぇ〜っ!」

邪神ちゃん「ぺこらが気に入りそう! 絶対やらねぇけど!」

邪神ちゃん「缶詰もうまぁ〜っ♪」ムシャムシャ

邪神ちゃん「缶のままスプーン突っ込んで食ってると、海外ドラマのディストピアものっぽさも味わえちゃう〜♪」


邪神ちゃん「ふぅ……夢中で食べ切っちまいましたの。ゆりねが知ったら怒るだろうなぁ……」

邪神ちゃん「ま、代わりに古新聞でも袋に詰めとけば私が死ぬまでにゃバレないだろぉ〜wwwwww」



死まであと62日
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:23:59.41 ID:OoTzgBfJ0
〜41日目〜



・ライブ会場


ぽぽろん「みんなぁーっ☆ 今日は て・ん・ご・く 見せちゃうよぉーっ♪」


ドルオタ達「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


ぽぽろん「それじゃあ早速1曲目っ! “ミライドライブ”っ!!」


ドルオタ達「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


ぽぽろん「見上げた空はくもっりでぇ〜♪」

ぽぽろん「今日くらいは晴れてほしいよぉ〜♪」


ドルオタ達「のえるちゃあああああああああああああん!!!」


ぽぽろん「やる気スイッチを押すまでが面倒だけどぉ〜♪」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:24:36.36 ID:OoTzgBfJ0
ぽぽろん(ふふっ。肉じゃがのヤツ、きっと目を丸くしてるだろうな……)


ぽぽろん「やり〜たい事ばっかりじゃないしぃ〜♪ た〜め息ついてる〜ヒマなんてない〜♪」

ぽぽろん「目まぐるしく〜変わる世界でぇ〜♪」


ぽぽろん(あんたの心の雨雲だって、ぽぽろんちゃんの輝きの前では吹き飛んじゃうって証明してあげる!)


ぽぽろん「さぁ! みんないっしょにっ☆」

ドルオタ達「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


ぽぽろん(この後のサビで、会場がいっきにライトアップされる……)

ぽぽろん(ふふっ。肉じゃがのアホ面でも拝んでやるかなっ♪)


パアアァァッ!


ぽぽろん「ギリギリぃ〜♪ 笑ぁ〜……」

ぽぽろん「──って!? いねえええええええええええええええっ!?」ガビーン


ドルオタ達「へ……?」


シーン…
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:25:55.65 ID:OoTzgBfJ0
ドルオタA「の、のえるちゃん……?」ザワザワ…

ドルオタB「急にどうしちゃったんだろ……?」ザワザワ…


ぽぽろん「あ…あうぅ……」パクパク

ぽぽろん「い……イエエエエエエエエエ────イッッッ♪」

ぽぽろん「なんだかサビで急激にテンション上がっちゃったぁ☆」テヘペロ


ドルオタC「なぁんだそうだったのかぁwwwwww」

ドルオタD「のえるちゃんは相変わらずお茶目だなぁwwwwww」


ぽぽろん(あ……あんにゃろおおおおおぉぉぉぉ……!!)ビキビキビキ

ぽぽろん(あの流れで来ないとかありえないでしょ……! なに考えてんのよ……!?)
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:26:38.57 ID:OoTzgBfJ0
・その頃 花園家


邪神ちゃん「──ハッ!?」

邪神ちゃん「うわっ! やっべ……!」ガタッ

邪神ちゃん「ベランダに来てるスズメ眺めてたらすっかり夕方になってる……」

邪神ちゃん「いやぁ、時間を忘れるくらい和んじゃいましたの。そろそろ夕飯の支度しないと……」ヨッコラセ



死まであと59日
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:27:17.79 ID:OoTzgBfJ0
〜42日目〜



・ミノス家


テレビ『なんでやねぇ〜ん!』


邪神ちゃん「ははっ!!」

メデューサ&ミノス「!?」ビクッ


邪神ちゃん「……?」

邪神ちゃん「どうかしましたの?」


メデューサ「えっ……!? う、ううん……! どうもしないよ……?」

ミノス「き、気にせず続き見てろって」

邪神ちゃん「……おお」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:28:01.07 ID:OoTzgBfJ0
テレビ『あんたとはもうやってられませんわぁ〜!』


邪神ちゃん「ふふっ……」

邪神ちゃん「はははっ!!」

メデューサ&ミノス「!?」ギクッ


邪神ちゃん「なんだよお前らっ! さっきから私のリアクションにいちいち反応しやがって!」バンッ!

邪神ちゃん(てか、リアクションと反応って意味いっしょだなぁ……)


メデューサ「ご、ごめんね……」

ミノス「すまん。全然悪気とかないんだけど……なんつーか、さ……」ポリポリ


邪神ちゃん「まったく! 今日はもう帰りますのっ!」プリプリ

メデューサ「あ……邪神ちゃん……! 本当にゴメンねっ!」


邪神ちゃん(んだよ……! もうすぐ死ぬヤツがテレビ見て笑っちゃいけねーのかよ……)



死まであと58日
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:29:23.54 ID:OoTzgBfJ0
〜45日目〜



・公園


小学生「こ、こんにちはー……」ペコ

邪神ちゃん「おぅ。私みたいな不審者に気を付けて帰れよ」

小学生「は、はい……そうします……」

邪神ちゃん「キ──ッ! てんめぇーっ! そうしますたぁどういう意味だゴルァァァ!!」

小学生「ひいぃぃ!? ごごご……ごめんなさいっ!」


ぽぽろん「──ちょっと」


ぽぽろん「見苦しいからガキんちょイジメなんてやめてよね」

邪神ちゃん「止めてくれるな、のえるさん!」

邪神ちゃん「こういう糞ガキには礼儀ってもんを叩きこんでやるのが大人の役目なんですの!」

ぽぽろん「ふーん。人がわざわざチケットあげたライブに来なかったヤツが礼儀を語るんだ」

邪神ちゃん「ライブ……?」キョトン


小学生「さ、さようならー!」スタコラ
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:30:05.90 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「あーっ! すっかり忘れてましたの!」

ぽぽろん「……本当に忘れてたの?」

ぽぽろん「あんたの事だから、オークションでチケット売っ払ったりしたんじゃないでしょうね?」ズイッ

邪神ちゃん「そ、そんなワケないだろう!?」

邪神ちゃん(てか、そうすればよかった……そんな事も思いつかないなんて、私もヤキが回ったもんですの……)

ぽぽろん「本当にぃ〜? じゃあ、あげたチケットはどうしたのよっ!」

邪神ちゃん「え、ええっと……確か貰ってそのまま……」ゴソゴソ

ぽぽろん(蛇腹のその部分ポケットになってたんだ……)


邪神ちゃん「あ、ありましたの!」シワクチャ


ぽぽろん「……はぁ。もういいわ。ちょっと来て!」グイ

邪神ちゃん「ちょ! のえるさん?」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:31:18.43 ID:OoTzgBfJ0
・カラオケボックス


邪神ちゃん「おめー、ヤバイ奴だな。いたいけな悪魔をこんな薄暗い個室に無理矢理連れ込むなんて……」

邪神ちゃん「なんだか身の危険を感じちゃいますの///」ポッ

ぽぽろん「気色悪いこと言ってんな!」

ぽぽろん「ライブでぽぽろんちゃんの歌声を聞かせてやるつもりだったのに、あんたにドタキャンされたからずっと消化不良なんだよ!」

ぽぽろん「責任取って今日こそ聞いて帰って貰うからね!」

邪神ちゃん「え〜……ダルっ……」

ぽぽろん「贅沢いうな! アイドル独占カラオケライブなんて、ファンなら全財産積んでも実現したい夢のイベントなんだよ!?」

邪神ちゃん「私、別にお前のファンじゃねーし……」

ぽぽろん「ふふん。この新曲を聴いても同じことが言っていられるかなぁ〜?」ピッピッ

邪神ちゃん「てか、のえるさんの曲カラオケで配信されてるんですの? なにげにスゲーな」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:31:57.82 ID:OoTzgBfJ0
ぽぽろん「〜♪」

邪神ちゃん(う、上手い……! たかだか駆け出しアイドルの歌唱力と侮っていましたの……)

ぽぽろん「ご清聴ありがとうございました〜♪」ヒラヒラ

ぽぽろん「どうだった肉じゃが?」

ぽぽろん「これが、そう遠くない未来アイドル界にその名を轟かす、天使のえる様の歌声よっ!」

邪神ちゃん「ふ、ふふん……ま、まぁ……悪くないんじゃないか?」

ぽぽろん「なによ。素人が偉そうに」

邪神ちゃん「素人……? それは聞き捨てならんな」

邪神ちゃん「よし。なかなかの歌声を聞かせて貰ったお返しに、私も一曲披露しますの」ピッピッ

ぽぽろん「へぇ〜え。爬虫類に歌なんて歌えたんだ」

ぽぽろん「いいよ。休憩がてら一曲ぐらい聞いてあげる」

邪神ちゃん「くくく……休憩になればよいがなぁ……」ニヤリ


邪神ちゃん「それではお聞きください。なまものがかりで── 『イキる』」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:32:39.80 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「〜♪」

ぽぽろん(コブシの利かせ方……高音の伸び……こいつ、超上手いじゃん……!)

ぽぽろん(こんな身近に、しかも思いがけない所に、とんでもない実力者が居たってワケね……!)ウズウズ

邪神ちゃん「お粗末様でしたのぉ〜♪」

邪神ちゃん「いやぁ、アイドル様に素人の歌声なんか聞かせてしまってお恥ずかしい限りですのww」ニヤリ

ぽぽろん「ぐっ……! 素人は撤回するわよ……少しはやるみたいだね」

邪神ちゃん「そんなぁ〜、社交辞令なんてよしてくれよぉ〜」

ぽぽろん「……肉じゃが、あんたも早く曲入れなさい! 次は全力で勝負するよっ!」ピッピッピッ

邪神ちゃん「おいおい、いつのまにカラオケ勝負になったんだっつーのww」

ぽぽろん「いいからっ! 天使と悪魔、どっちの歌声が魅力的か、今ここで白黒つけようじゃない!」

邪神ちゃん「くくく……いいだろう。随分とこぢんまりしたハルマゲドンだが、受けて立ってやるっ!」



死まであと55日
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:34:01.28 ID:OoTzgBfJ0
〜47日目〜



・交差点


幼女「ふんふふ〜ん♪」

キョンキョン(おや、またあんな小さな子が一人で……お母さんとはぐれたか?)

幼女「〜♪」テクテク

キョンキョン(ちょ……!? まだ赤信号だヨ!)


トラック「ブオオオオオオオ───ッッッ!!」


キョンキョン「危ないっ!!」ガバッ


トラック「ブロロロロロ………!」バッキャローッ


キョンキョン「無事でよかったぁ……」ホッ

幼女「」ポカーン

キョンキョン「気を付けないと死んじゃうヨ!!」


邪神ちゃん「……なーにどっかで見たようなやり取りしてんだよ」

キョンキョン「邪神ちゃん!」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:34:34.65 ID:OoTzgBfJ0
・ドラゴン書房


キョンキョン「邪神ちゃん……その、大変なんだってメデューサから聞いた。大丈夫か……?」

邪神ちゃん「ん〜、まぁときどき謎の吐き気と眩暈に襲われるけど、今のところはこうして外出もできてますの」

ランラン(パンダ)「う〜ん……邪神ちゃんの肌の色ツヤとか見るに、もうすぐ死ぬ人のソレには見えないんだけどなぁ……」

邪神ちゃん「はは。嬉しいこと言ってくれますの」

ランラン「いや、別に気遣って言ってるとかじゃなくて、一度死んでる経験者として言わせて貰ってるんだけど……」

キョンキョン「お姉ちゃん! 邪神ちゃんはゆりねに心配かけないために無理して色々と繕ってるんだヨ! あまり変なこと言っちゃ駄目ネ!」

邪神ちゃん「べっ、別にゆりねの為なんかじゃねーしっ///」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:35:36.10 ID:OoTzgBfJ0
キョンキョン「だけど……邪神ちゃん……」ホロリ

キョンキョン「せっかく友達になれたのに……もうすぐ死んじゃうなんてあんまりだヨぉぉぉ!」ガバッ

邪神ちゃん「お、おい……」

キョンキョン「そうだ! 邪神ちゃん、もう一回キョンキョンに噛まれてみるネ?」

邪神ちゃん「へ?」

キョンキョン「キョンシーに噛まれた者もまた、キョンシーになる……」

キョンキョン「不死身になるからずっとずっと生きられるヨ?」

邪神ちゃん「いや、この下半身で常時ジャンプ移動は流石にキツ過ぎるわ。床が抜けてゆりねにシバかれるっての」

キョンキョン「ぜ、贅沢言わないネ!」

邪神ちゃん「つーか、前におまえに噛まれた時もすぐ元に戻っちゃったじゃん。だから、たぶんムダだわ……」

キョンキョン「そんなぁ……」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:36:07.53 ID:OoTzgBfJ0
キョンキョン「それならせめて、キョンキョンに出来ることはないか!?」

キョンキョン「分かった! お金か!? お金だなっ!?」

邪神ちゃん「お、おいおい……落ち着けって。そういうの、今ホント大丈夫だから……」

キョンキョン「邪神ちゃんがお金を欲しがらない!?」

ランラン「あー、前言撤回。もしかしたらホントに重症かもね、こりゃ」

邪神ちゃん「お前らなぁ……」

キョンキョン「な、何かやりたい事はないのか? 叶えたい夢とか……」

邪神ちゃん「夢なぁ……」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:36:49.39 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「そりゃ、せめて魔界に帰ってパパやママに見送られながらあの世に旅立ちたいとは毎日思ってますの……」

キョンキョン「邪神ちゃん……」

邪神ちゃん「でも、その為にはゆりねを倒さにゃならんし。でもそれだって、日ごと弱っていくこの身体ではとても……」

ランラン「ご両親のことは、友達に伝言頼んでこっち(人間界)に来て貰えばいいんじゃないの?」

邪神ちゃん「バカ言え! パパ達はとてつもなく忙しいんだ。私の事なんかでこれ以上心配も迷惑も掛けたくありませんの!」

ランラン「命の危機だって時にそんなこと言ってられないでしょー?」


キョンキョン「……よ、よろこべ邪神ちゃん!」

邪神ちゃん「なにを?」

キョンキョン「幸運なことに、ここは古本屋! つまり、古今東西の知識の宝庫!」

キョンキョン「店中の本をひっくり返して探せば、邪神ちゃんが魔界に帰れる方法もきっと見つかるはずだヨ!」

邪神ちゃん「お、おい……そんなのいいって……」

キョンキョン「よくない! 絶対助けてあげるから邪神ちゃんはここでゆっくりしてるネ!」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:38:02.37 ID:OoTzgBfJ0
・5時間後


キョンキョン「はぁ…はぁ……」

キョンキョン「邪神ちゃん! やったヨ! ついに見つけたんだヨ! 魔界に帰る方法!」

邪神ちゃん「な、なにぃぃぃ!?」ガタッ

キョンキョン「この本、本棚の奥で埃かぶってて見つけるのに苦労したヨ……」

キョンキョン「ほら、帰還の呪文って項目があるんだヨ。この魔導書上巻──」

邪神ちゃん「あ、もういい。オチ読めた」

キョンキョン「え、ええっ……!? どういうことネ!?」

邪神ちゃん「その本ならゆりねも持ってる。それには『下巻に続く』としか書いてませんの」

キョンキョン「ああっ!? ホントだ!」パラパラ


ランラン「ふっふっふ。諦めるのはまだ早いんじゃない?」

キョンキョン「お姉ちゃん!」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:38:41.48 ID:OoTzgBfJ0
ランラン「キョンキョンは詰めが甘いなぁ。本棚の更に奥、壁との隙間に挟まっていたんだよ……」

ランラン「この魔導書下巻がねっ!」ドヤッ

キョンキョン「ぜ、全然気づかなかったヨ! 流石はお姉ちゃん!」

ランラン「なになに……『帰還の呪文、それは──』」

邪神ちゃん「『たいへん複雑なので下巻に全てを書ききれず、残りは魔導書外典に記すとする』だろ?」

ランラン「なっ……! なんで分かったの!? 邪神ちゃんエスパー!?」

邪神ちゃん「はぁ……このくだりをもう一回やる羽目になるとはな……」

ランラン「てか、ダメじゃんこの本……」

キョンキョン「外典かぁ……もう少し探してみるネ?」

ランラン「う〜ん……すでにあれだけ探したんだし、多分もう何処にも……」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:39:59.76 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「はぁ〜っ……なんか今日はすっげぇ疲れましたの……」

キョンキョン「ご、ごめんネ邪神ちゃん! お役に立てなくて……」

キョンキョン「それどころか、貴重な時間をムダにさせちゃって……キョンキョンのせいだ……ううっ……」ウルウル

邪神ちゃん「……別に、ムダだなんて思ってませんの」

キョンキョン「ふぇ…?」

邪神ちゃん「お、お前らとゆっくり遊べたからなっ……///」

キョンキョン「邪神ちゃああぁぁん……」ジーン…

キョンキョン「邪神ちゃん! 絶対諦めちゃ駄目ネっ!」ガバッ

邪神ちゃん「うぐっ!?」

キョンキョン「キョンキョン達も諦めないヨ! 邪神ちゃんが魔界に帰れる方法……」

キョンキョン「ううん、死なずに済む方法だって絶対見つけてみせるからネ!」ギューッ!

邪神ちゃん「痛だだだだ…! 分かったから離れろっ! お前、自分が馬鹿みたいに力強いの忘れたのかよ!!」



死まであと53日
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:42:06.02 ID:OoTzgBfJ0
〜50日目〜



チュンチュン…


邪神ちゃん(単眼ちゃんが魔界健康診断の結果を伝えに来て、今日で50日目──)

邪神ちゃん(つまり、死への折返し地点……)

邪神ちゃん(残りはたった、50日の命……)


邪神ちゃん「──うぷっ」

邪神ちゃん「おげええええええええええええっ……!!」ゲロロロロ


邪神ちゃん「はぁ…はぁ……今日もやっちまった……」

邪神ちゃん「よぉ、さっき食った朝飯。こんな早くに再会できるとはな……」ゲッソリ

邪神ちゃん「うぅ……軽口叩いてもまったく心が晴れない……」

邪神ちゃん「不安だ……とても一人じゃ居られませんの……」

邪神ちゃん「ミノスたち、今日は居るかな……」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:42:46.01 ID:OoTzgBfJ0
・ミノス家


邪神ちゃん「ごめんくださーい」ガチャ

メデューサ「あ、邪神ちゃん……おはよう」

邪神ちゃん「あれ? なんだメデューサ、もう来てたのか」

邪神ちゃん「てか、集まってたなら何で私に声をかけねーんですの!」プンスカ

メデューサ「それが……」チラッ

邪神ちゃん「……?」


ミノス「ペルちゃん、大丈夫か?」

ペルちゃん「う、うん……少しは楽になったみたい。ありがとう……」フラフラ
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:43:29.24 ID:OoTzgBfJ0
メデューサ「ペルちゃんね、今朝から少し熱が出ちゃったの。それで色々と立て込んでて……」

邪神ちゃん「そ、そうだったのか……」

邪神ちゃん「まぁでも、二世の体調不良なんてもはや恒例行事みたいなもんだし、別段騒ぎたてる事でもないだろ?」

ミノス「いや。今回のはちょっとタチが悪いかもしれない……」

ミノス「ごめんなペルちゃん。あたしが無理に特訓に付き合わせちゃったせいだよな……」

ペルちゃん「やめてよぉ。全然ミノスお姉ちゃんのせいじゃないから」

邪神ちゃん「そうだそうだ。お前はいつも生意気だから、きっとバチが当たったんですの」

ペルちゃん「……ムカッ」

ペルちゃん「うん。その通りだね。日頃の行いが悪いとバチが当たっちゃうんだよね」

ペルちゃん「その証拠に、邪神ちゃんも──」


邪神ちゃん「あ゛あ゛ん゛!?」


ペルちゃん「……ご、ごめん。今のは流石に言い過ぎたよ」

邪神ちゃん「ああ! その通りだ! おめー、ガキだからって言っていい事と悪い事の区別もつかねーのか!?」グイッ

ペルちゃん「うっ…!? ごほっ……! げほっ…! ごほっ……! く、苦しっ……!」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:44:15.34 ID:OoTzgBfJ0
ミノス「おいっ!」

メデューサ「やめてよ邪神ちゃん! ペルちゃん熱があるって言ったでしょ!?」

邪神ちゃん「おーおー、なんだメデューサ。こいつの生意気が感染ったのか? 私のやる事に口出しするなんて」

ミノス「いい加減にしろよ邪神ちゃん! ペルちゃんすぐに謝っただろ!?」

ミノス「そもそも、先にイジワル言ったのお前の方じゃんか!」

邪神ちゃん「なんだよっ! お前ら二世の味方ばっかしやがって!」

メデューサ「そんな事ないってば……」

邪神ちゃん「いいや! そんな事ある!」

邪神ちゃん「なんだよ! 私だって今日は朝から調子悪いんだぞ!」

メデューサ「えっ、そうだったの? それは心配だね……」

邪神ちゃん「おお! 私の境遇の方が二世なんかよりよっぽど深刻なんだから、私の心配をするべきですの!」

ミノス「あのなぁ……」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:45:04.35 ID:OoTzgBfJ0
ペルちゃん「はぁ…はぁ……」

ペルちゃん「邪神ちゃん……体調悪いんだったら……今日はもう、帰った方がいいよ……」

邪神ちゃん「か、帰れだとぉ!?」

ミノス「……ああ。そうした方がいいかもな」

邪神ちゃん「ミノスまで!」

邪神ちゃん「おい、メデューサ! こいつらに何とか言ってやれ!」

メデューサ「ええっ?」ビクッ

メデューサ「わ、私も……今日はここに居ない方がいいと思う……だって、邪神ちゃん……」

邪神ちゃん「お、お前らぁ……!」ワナワナ

邪神ちゃん「ああそーかい! 分かったよ! 今日だけどころか二度とお前らとは遊んでやらねーよっ!!」

メデューサ「待って邪神ちゃん! 勘違いしないで!」

邪神ちゃん「バーカバーカバーカ! 金づる! ホルスタイン! スペランカーの主人公!」


バタン!


ミノス「はぁ……やれやれ。なにスネてるんだか……」ポリポリ

ペルちゃん「うぅ……頭痛いから大声出さないで欲しい……」

メデューサ「邪神ちゃん……」



死まであと50日
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:46:15.18 ID:OoTzgBfJ0
〜54日目〜



・花園家


ゆりね「あんた、最近メデューサ達と遊んでなくない?」

邪神ちゃん「ぎくっ」

ゆりね「あの子達と喧嘩でもした?」

邪神ちゃん「……あいつらが悪いんですの」ボソッ

ゆりね「いや、話聞かなくても分かるけど、絶対あんたが悪いパターンでしょ」

邪神ちゃん「なんだよぉ! 頭ごなしに決めつけてかかんなよ! 将来悪い親になるぞ!」

ゆりね「親になんかならない」

ゆりね「……で、いつになったら仲直りするつもり?」

邪神ちゃん「仲直りなんてしませんの! ゼッコーだよゼッコー!」

ゆりね「いいの? 友達いないと寂しいわよ?」

邪神ちゃん「いいんだよっ! 私にはゆりねが居るんだからっ!」


シーン…


ゆりね「はぁ?」

邪神ちゃん「………あ///」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:46:57.72 ID:OoTzgBfJ0
ゆりね「あんた……流石にそれは……」ドンビキ

邪神ちゃん「ちちち……ちげーよっ/// 今のはつい弾みで言っちゃっただけだっつーの!」

ゆりね「なんか、中学時代お母さんを友達にカウントしてた同級生思い出して悲しくなっちゃった……」

邪神ちゃん「話を聞け! てか、お前は私のお母さんのつもりでいるのかっ!?」

ゆりね「そこまで孤独に追い込まれていたのね……」

ゆりね「今夜は隣に布団敷いて寝たいとか言い出さないでよ?」

邪神ちゃん「言わねーよ! もういい! 出かけてくるっ!」ガチャ

ゆりね「ミノスの部屋?」

邪神ちゃん「散歩だよっ!」バタンッ!
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:47:30.86 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「あークソっ! とんだ恥かいた…」

邪神ちゃん「くっふぅ〜…! これも全部あいつらのせいだぁ〜っ!」プンスカ


芽依「あ」

邪神ちゃん「げっ」


芽依「大蛇丸ぅ〜〜♡♡♡」ガバッ

邪神ちゃん「う……うわああああああああああっ!?」


芽依「大蛇丸……あんたのこと、仲間の紙袋ちゃんから聞いたわよ? 可哀そうに……」オヨヨ

邪神ちゃん「そう思うなら今すぐ開放してくれぇぇぇ……!!」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:48:09.30 ID:OoTzgBfJ0
芽依「こぉ〜んなに可愛い大蛇丸が、もうすぐ居なくなっちゃうなんてぇ♡♡♡」スリスリ

邪神ちゃん「ひぃぃぃ……! 気色悪いからやめろおおぉぉ!」

芽依「ぐすん。きっと毎日毎日、死への恐怖に脅えているんでしょうね……」

邪神ちゃん「今の方が1000倍怖いけどな」

芽依「水くさい……どうしてすぐに私のところに来てくれなかったの?」

邪神ちゃん「貴重な残り寿命をドブに捨てろってのか?」

芽依「そうよ! 今からでも遅くない。私のお家に行きましょ!」グイ

邪神ちゃん「よ、よせっ!」

芽依「嗚呼……/// これからは、毎日死の恐怖に脅える大蛇丸を観察できるのね……♡♡♡」ウットリ

芽依「ダメっ……/// 考えただけで鼻血吹き出しそう……///」ゾクゾクゾクッ

邪神ちゃん(やっぱコイツ真性のキ〇ガイですの……)
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:49:11.57 ID:OoTzgBfJ0
芽依「安心して! いつかこんな日が来ることに備えて、大蛇丸用の檻も首輪もとっくに用意済よ!」

邪神ちゃん(ああ……私の一生ってなんだったんだろ……)

邪神ちゃん(ある日とつぜん魔界から人間界に呼び出されて……)

邪神ちゃん(それでも、なんとか今まではそれなりに楽しくやってきたのに、今度は急に余命宣告されて……)

邪神ちゃん(結局宿敵のゆりねも倒せず、魔界にも帰れず、親友たちとも喧嘩別れ……)

邪神ちゃん(極めつけに、キ〇ガイ女に捕獲されて、僅かに残った残りの人生もたった今終了しましたの……)

邪神ちゃん(なぁーんかもう、どうでもよくなっちゃったなぁ……)
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:50:03.18 ID:OoTzgBfJ0
芽依「……大蛇丸?」

邪神ちゃん「──いいぞ、芽依。お前の部屋に連れてってくれ」

芽依「えっ」

邪神ちゃん「ほら。抵抗しないから、もうお前の好きなようにするがいいですの」

芽依「お、大蛇丸……あなた……」ワナワナ

邪神ちゃん(ふふ……妙な気分ですの。色々と諦めたら、心の負担がスッと軽くなって……)


芽依「こんのぉ……バカチンがあああああああああああっっっ!!!」


バチコーン!!!


邪神ちゃん「ぐっふぇぇぇええええええええええええっっっ!!?」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:50:38.50 ID:OoTzgBfJ0
芽依「大蛇丸……あなた、自分の価値をまるで分かっちゃいないわ!」

芽依「あなたはね、しっかりと自分を持ってるところが魅力なのよ!」

芽依「だからこそ、私の愛情を嫌がったり、抵抗したりする姿が最高に可愛いんだわ!」

芽依「なのに、どうしてしまったっていうの? あなた、まるで魂の抜け殻みたいになっているじゃない!」

邪神ちゃん(た、魂の抜け殻……? 他人の目にはそんな風に映ってるのか……)

芽依「悪いけど、今のあなたに私の愛情を受ける資格はない……ガッカリだわ……」

芽依「……それじゃ、任務に戻るわね」スタスタスタ
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:52:00.09 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「ええ……」

邪神ちゃん「なんか、すげぇ自分勝手な主張を振りまいて去っていったけど……」

邪神ちゃん「とりあえず、助かったって事でいいんですの……?」


芽依「──でも、せっかく無抵抗なんだし今のうちに私のフェロモンでマーキングしとこぉ〜っと♪」ギュゥゥゥーッ!

邪神ちゃん「ぎんにゃあああああああああああああああああっ!?」


芽依「チャオ♪ 大蛇丸♡♡♡」

芽依「今度会う時までに元のあなたに戻ってなかったら逮捕しちゃうゾッ☆」パキューン


邪神ちゃん(こ、こいつだけは本当に理解できませんの……)



死まであと46日
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:53:39.22 ID:OoTzgBfJ0
〜57日目〜



邪神ちゃん「最近遊び相手がいなくて退屈ですの……」

邪神ちゃん「と、言いつつミノスがバイトに出かけた時間を見計らって外に出る私……」ガチャ

邪神ちゃん「だって、まだ顔合わせるのが気まずいんだもん」

邪神ちゃん「……って、うわっ!?」


ペルちゃん「う、う〜〜ん……」バタンキュー

邪神ちゃん「に、二世!?」


ペルちゃん「邪神ちゃんか……久し振りだね……」

邪神ちゃん「なんだって廊下なんかで倒れてるんですの!?」

ペルちゃん「ミノスお姉ちゃん、忘れ物したままバイトに行っちゃったから、追いかけようとしたら眩暈がして……」

邪神ちゃん「お前……! まだ身体が良くなってないのか!?」

ペルちゃん「へーきへーき。ちょっと……横になってれば……治る……か、ら……」パタン

邪神ちゃん「二世!?」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:54:44.17 ID:OoTzgBfJ0
ペルちゃん「はぁ…! はぁ…! はあっ……! う、ううぅぅ……!」

邪神ちゃん「す、すごい熱……!」

邪神ちゃん「とにかく医者に診せないと……」

邪神ちゃん「二世! しっかりしろよ! 今すぐ病院に連れてってやるからな!」ヨッコラショ

ペルちゃん「う…うう〜〜ん……」

ペルちゃん「邪神ちゃん……お姉…ちゃん……」

邪神ちゃん「っ///」

邪神ちゃん「う……うおおおおおおっ!! 病院まで最短コースだああああああああっ!!」ダバダバダバ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:55:39.25 ID:OoTzgBfJ0
・病院


ミノス「ペルちゃん! まだ生きてるかっ!?」バターン!

メデューサ「ミ、ミノス……病院では静かにしないと……」


邪神ちゃん「あ……」

ペルちゃん「すー…… すー……」

邪神ちゃん「い、いま落ち着いて眠ったところですの……」


ミノス「よかったぁ……! てか、看護師さんが言ってた付き添いの人って邪神ちゃんのことだったのか」

メデューサ「『とても妹さん想いのお姉さんですね』なんて聞いたから、てっきりゆりねさんの方かと……」

邪神ちゃん「ぐっ……///」

邪神ちゃん「べっ、別にこれでこの間のこと許して貰えるとか思ってねーから。そんじゃ……」

ミノス「待てって」ガシ

メデューサ「許すもなにもないよ……」

邪神ちゃん「お、怒ってねーんですの……?」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:56:18.65 ID:OoTzgBfJ0
ミノス「よく言うよ。一方的に怒って出てったのはそっちの癖に」

メデューサ「うん。怒りはしないけど悲しかったな」

メデューサ「今はみんな、少しでも多く邪神ちゃんと長く居たいって思ってるのに、顔を見せてくれなくなっちゃうんだもん」

邪神ちゃん「そ、そっちこそよく言いますの!」

邪神ちゃん「この間は寄ってたかって私を追い出そうとしただろう! 忘れたとは言わせねーかんな!」

ミノス「はぁ……やっぱ勘違いしてたか……」

メデューサ「くす。邪神ちゃん、いつも最後まで話を聞かないから」

邪神ちゃん「な、なんだよぉ……」

メデューサ「ペルちゃんね、魔界風邪だったんだよ」

邪神ちゃん「魔界風邪……? そうだったのか。どうり治りが遅いはずですの」


※魔界風邪=人間界でいうインフルエンザみたいなもの
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:56:53.90 ID:OoTzgBfJ0
ミノス「魔界風邪ってさ、身体が弱ってるヤツだとそばにいるだけで簡単に感染っちゃうだろ?」

メデューサ「邪神ちゃん、あの日体調悪いって言ってたから、早く帰さなきゃと思って……」

邪神ちゃん「な、なぁ〜んだぁ……そうだったのかぁ……」フニャフニャ

邪神ちゃん「んもぉ〜、紛らわしいんだからぁ。てっきり嫌われたのかと思っちゃいましたの♪」

ミノス「あの程度の事でいちいち嫌いになってたら、邪神ちゃんの友達なんて勤まるかよ」

メデューサ「それに、ちゃんと優しい所もあるって知ってるから、みんな邪神ちゃんの事が好きなんだよ」

邪神ちゃん「よしてくれぇ〜///」


ペルちゃん「……うん。今回は邪神ちゃんの優しさに助けて貰った」

邪神ちゃん「わっ!?」


メデューサ「ペルちゃん。もう起きちゃって大丈夫なの?」

ペルちゃん「うん。だいぶ楽になった。皆、心配かけてゴメンね」

ミノス「いいって。あたしの方こそ、病気のペルちゃん置いてバイト行っちゃってゴメンな。どうしても休めなくてさ……」

ペルちゃん「それは仕方ないよ。こうしてお仕事中に駆けつけてくれただけで嬉しい」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:57:45.03 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「二世ぇ〜、意識が朦朧としてて覚えてないだろうがなぁ〜ww」ニヤニヤ

邪神ちゃん「お前、私のことお姉ちゃんって呼んでたんですのよぉ〜ww」ニヤニヤ

メデューサ「もう! 邪神ちゃん、からかわないのっ!」

ミノス「調子が戻った途端コレだもんなぁ……」

ペルちゃん「……うん。ちゃんと覚えてるよ」

邪神ちゃん「へ?」

ペルちゃん「だって私、邪神ちゃんの事だってお姉ちゃんだと思ってる。これ、前にも言ったよね?」

邪神ちゃん「い、言ってたけどさ……」

ペルちゃん「なんなら、もう一回呼んであげようか? 邪神ちゃんお・ね・え・ちゃ・ん♪」

邪神ちゃん「……っ///」プシューッ

メデューサ「くす。よかったね、邪神ちゃんお姉ちゃん♪」

ミノス「完全に一本取られてやんのww」

邪神ちゃん「や、やめろよお前そーいうのっ! 素直かっ!」

ペルちゃん「素直だよぉ〜。誰かさんと違ってガキじゃないも〜んww」ニヤニヤ

邪神ちゃん「くっふぅ〜! 身長の高さから突き落とすぞ! このスペランカーの主人公!」

ミノス「その罵倒、絶対言いにくいよな」



死まであと43日
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:58:21.50 ID:OoTzgBfJ0
〜59日目〜



・管理人部屋


ぴの「どうぞ。金色の衣を纏いし紅顔の美少年ですわ」コトッ

メデューサ「ありがとうございます。わぁ! 美味しそうなアップルパイ!」

ぴの「金色の衣を纏いし紅顔の美少年ですわ」

メデューサ「えっと……とにかくとっても美味しいです」

ぴの「それはよかった。あなたとは是非お近づきになりたいと常々思っておりましたのよ」

メデューサ「そうなんですか? 嬉しい……」

メデューサ「でも、どうして地味な私なんかと……?」

ぴの「あなたの石化能力は、使い方次第で来るべき天界の使者との戦いに大いに役立つからですわ♪」

メデューサ「来るべき戦い……? あの、私ケンカはちょっと……」

邪神ちゃん「やい、ぴの。私の分はねーんですの? 金色のガッシュベル」

ぴの「あら、そういえば邪神ちゃんさんも付いてきていたのでしたね」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:59:42.43 ID:OoTzgBfJ0
ぴの「生憎ですがあなた、もう余命いくばくも無いのでしょう?」

邪神ちゃん「う゛」

邪神ちゃん(のえるさんですら若干の気遣いを見せたのに、随分ストレートに言ってくれますの……)

メデューサ「あ、あのっ……! 今その話は……」アタフタ

ぴの「あら、話題を避けたところで着実に忍び寄る死まで遠ざけたりはできませんわ」

ぴの「とにかく、もうじき消えてなくなる役立たずのあなたを持てなす必要なんてどこにあるのです?」

邪神ちゃん「お前! ほんっと嫌なやつだな!」

ぴの「まぁ、貴重なポケモンが一匹減るのは悲しむべき事ですが、それがあなたで済んだのは不幸中の幸い……」

邪神ちゃん「どーいう意味だよ!」

ぴの「だって邪神ちゃんさん、見たところ仲間の悪魔の中で一番弱いでしょう?」

邪神ちゃん「な……なんだとコンニャロぉ──っ!! そんなワケあるかぁ──っ!!」

メデューサ(LV53)「そ、そうですよ。邪神ちゃん、私なんかよりずっとずっと強いもんね!」

邪神ちゃん(LV46)「お、おぅ……そうだとも……」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:00:25.56 ID:OoTzgBfJ0
ぴの「ま、そういう事にしておいてあげましょう」

ぴの「……くす。メデューサさんもご友人に色々気を遣って大変ですわね」

メデューサ(LV53)「?」

邪神ちゃん(LV46)「てんめぇーっ! もう許さんっ! 勝負だ! 表へ出ろっ!!」

ぴの「勝負……?」ピク

ぴの「そういえば、あなたとの決着がまだついていませんでしたね……」

邪神ちゃん「あれ? 私ら前にも勝負なんかしてたっけ?」

ぴの「忘れたのですか!? この間の世紀のお菓子作り対決のことですよっ!」

邪神ちゃん「ああ。アレか」

邪神ちゃん「あんなの、ただそれぞれが作ったケーキを持ち寄っただけじゃねーですの」

ぴの「な、なんですかその余裕は……! 天界お菓子作りコンテスト・グランプリのわたくしにあんな屈辱を味あわせておいて!」

邪神ちゃん「ケーキしか味あわせてねーっつーの」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:01:05.27 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「でもまぁ、確かに美味かったな。金色のガッシュベル」

邪神ちゃん「今日はイジワルされて食わせて貰えねーけど……」チラッ

メデューサ「邪神ちゃん、よかったら私の食べて?」

邪神ちゃん「いいのか? やったぁーっ♪」ヒョイパク

邪神ちゃん「う〜ん……やっぱ美味いぞぴの! 褒めてつかわすぅ〜♪」

ぴの「と、当然です! 言ったでしょう? わたくしは天界お菓子作りコンテスト・グランプリに輝いたほどの実力者ですわよ?」エッヘン

ぴの「しかも、金色の衣を纏いし紅顔の美少年は、これが本来の姿ではありません」

ぴの「今は間に合わせで紅玉を使っていますが、本来はエデンの園から取り寄せたリンゴ、通称エデリンを使用するもの……」

ぴの「完成形となった金色の衣を纏いし紅顔の美少年の美味しさは、今のソレとは比較になりませんのよ!」

邪神ちゃん「おおっ! それは是非とも食べてみたい!」

邪神ちゃん「そうだメデューサ! お前この間お土産にエデリン持って来てくれたよな!? あれ、どうした?」

ぴの「ええっ!? あの超人気予約待ち商品が手に入ったのですか?」

メデューサ「はい。200年ほど前に頼んでいたものが忘れた頃に……」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:01:39.04 ID:OoTzgBfJ0
メデューサ「でも、ゴメンね邪神ちゃん。流石にもう全部食べちゃったよ……」

邪神ちゃん「なんだとぉ!? なんでもしもの時の為に備蓄しておかないんですの!」

メデューサ「だ、だってナマモノだし……いくら冷蔵庫に入れておいても限度があるから……」

邪神ちゃん「はぁ……今から急いで注文しても、届くのは早くて200年後かぁ……」

メデューサ「最近どんどん人気が出てるらしいから、今はもっと掛かるだろうね」

邪神ちゃん「あーあ。死ぬまでに食ってみたかったなぁ。ぴのの自信作……」

ぴの「本当に、残念でなりませんわ……」

ぴの「このままでは、わたくしが負け惜しみしたままあなたに勝ち逃げされた形になってしまう……!」ギリリ

メデューサ「二人とも……」



死まであと41日
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:02:24.39 ID:OoTzgBfJ0
〜60日目〜



・エデンの園


メデューサ「そこをなんとかお願いしますっ!」ペコ

果樹園の悪魔(サイクロプス)「だから無理だって!」

メデューサ「無茶なお願いなのは分かっています! だけど、お友達の為にどうしても必要なんです!」ペコペコ

サイクロプス「あんたもしつこいな! 何度頭下げられたって無理なもんは無理だ。仕事の邪魔だから帰ってくれ!」

メデューサ「……お、お金ならいくらでもお支払いします!」

サイクロプス「なんだと……?」ピク

メデューサ「仰せなら全財産投げ出す覚悟です! 私、今日は本気で来ているんです!」

サイクロプス「ふざけんなっ! あんたが本気かどうかなんてこっちの知った事か!」

メデューサ「ひゃうっ!?」ビクッ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:03:03.76 ID:OoTzgBfJ0
サイクロプス「本気ってなら、俺らだって消費者の皆さんに喜んで貰う為に本気でリンゴ作りやってんだ! 金の問題じゃねえ!」

メデューサ「ご、ごめんなさい……軽はずみな事を言ってしまいました……」

メデューサ「でも、それでも私は……邪神ちゃんのために……!」

サイクロプス「はぁ……お嬢さん。さっき俺、金の問題じゃないって言ったよな?」

メデューサ「はい……」

サイクロプス「よく見りゃあんた、まだずいぶん若いじゃねえか。よし、これならいけそうだ……」ジロジロ

メデューサ「あ、あの……?」

サイクロプス「お嬢さん、身体を使う覚悟はあるかい?」

メデューサ「えっ」

サイクロプス「──あんたの本気と覚悟、見せてくれよ」ニタリ



死まであと40日
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:03:36.90 ID:OoTzgBfJ0
〜63日目〜



・商店街


邪神ちゃん「よっ! メデューサ。浮かない顔してどうしたんですの?」

メデューサ「あ、邪神ちゃん……」

邪神ちゃん「暇なら一緒にさぼうる行かねー?」

邪神ちゃん「もちろんお前の奢りで、なーんてな。それは冗談ですのーwwwwww」バシバシッ

メデューサ「痛っ……!」

邪神ちゃん「ありゃ? そんなに強く叩いちゃった?」

メデューサ「う、ううん……違うの。ちょっと腰を痛めてて……」

邪神ちゃん「おいおい、女の子は腰を大事にしなきゃいけないって家のママも言ってたぞ」

メデューサ「そ、そうなんだ……」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:04:38.99 ID:OoTzgBfJ0
メデューサ「ご、ごめん邪神ちゃん。私これから用事あるから……」

邪神ちゃん「えー? なんだよ、私の誘いを断るほどの用事って」

メデューサ「う、うん。ちょっとお仕事増やしたんだ……」

邪神ちゃん「ほほぅ。それは感心♪」

邪神ちゃん「んで、どんな仕事なんですの?」

メデューサ「ま、まだ内緒っ……」

邪神ちゃん「えー? なんだよそれ。ケチケチすんなよぉ〜 何処だかおせぇてよぉ〜」スリスリ

邪神ちゃん「せめてヒントくれよぉ〜 頭文字だけでもぉ〜」

メデューサ(頭文字くらいなら教えても大丈夫かな……)

メデューサ「えっと…… “エ”から始まる場所だよ」

邪神ちゃん「よっしゃ。考える楽しみが出来たぞ♪ 次に会った時は答え教えてくれよな」

メデューサ「う、うん……そろそろ時間だからもう行くね?」

邪神ちゃん「がんばれよぉー♪」


邪神ちゃん(途中からなんとなく察しがついたから、さりげなく探りを入れてみたが、やはりそうか……)

邪神ちゃん(メデューサのやつ…… “エッチなお店”で働いてんのか……)



死まであと37日
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:05:23.95 ID:OoTzgBfJ0
〜64日目〜



・エデンの園


サイクロプス「よぉーし! そっちの樹はもういい! 今度はこっちを頼む!」

メデューサ「は、はぁーい!」

サイクロプス「フハハハハハ! 働け働け!」

サイクロプス「繁忙期終了までに1000人は泣きながら辞めていく地獄のブラックバイトだ!」

サイクロプス「ちなみにたった1週間の期間を満了まで勤め上げた悪魔はまだ一人たりといない!」

サイクロプス「きっと、お前もすぐに根をあげることだろうよ!」

メデューサ「そ、そんな事ありません! 私……お仕事を途中で投げ出したりしない!」ヨロヨロ

サイクロプス「ほほぅ。よくぞ吠えた」

サイクロプス「だが、それは口先でなく行動で示せ!」

サイクロプス「もし期間満了まで無事生き残ることが出来たら、特別手当としてエデリンを一玉くれてやろう!」

メデューサ「ほ、ほんとうですか……!?」パアアァァ

サイクロプス「まぁ、万に一つもありえん事だがな。フハハ……フハハハハハ──ッ!!」

メデューサ(邪神ちゃん……待ってて……!)



死まであと36日
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:06:14.65 ID:OoTzgBfJ0
〜68日目〜



・花園家


邪神ちゃん「そろそろ3時のおやつにすっかなぁ……」ゴロゴロ

邪神ちゃん「戸棚になんかあったっけ……」


ピンポーン♪


邪神ちゃん「どなた?」ガチャ

メデューサ「はぁ……はぁ……邪神ちゃん、私……やったよ……!」ボロボロ

ぴの「お邪魔しますわ」

邪神ちゃん「ありゃ、メデューサとぴの? 最近ずいぶん仲がよろしいんだな」

邪神ちゃん「てか、メデューサはなんで満身創痍なんですの?」

メデューサ「えへへ……ちょっとね。そんな事より見てよこれ。ぴのさんに焼いてもらったんだ」

ぴの「ほら、これがあなたのプライドを完膚なきまでに叩き伏せる、わたくしの最高傑作──」

ぴの「金色の衣を纏いし紅顔の美少年・真実(トゥルー)ですわ!」


邪神ちゃん「こ、この神々しいまでの輝きは……!?」

邪神ちゃん「見える……見えるぞ……! 輝きの向こうに、金色の衣を纏いし紅顔の美少年の姿が……!」

邪神ちゃん「でも、つーことはエデリンが手に入ったのか……? いったいどうやって?」

メデューサ「どうだっていいじゃない、そんなこと。さっ、早速食べてみてよ」

邪神ちゃん「あ、ああ……」ゴクリ

邪神ちゃん「いただきまーす……」パク
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:07:05.88 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「──ハッ!?」

メデューサ「あ、邪神ちゃん。気が付いた?」


邪神ちゃん(な、なんだかデジャヴな光景ですの……)キョロキョロ

邪神ちゃん(そうか私……あまりの美味さに気を失って──)


邪神ちゃん「お、おい……! 私、今度はいったいどれくらいの間……」

メデューサ「安心して。ほんの30分くらいだよ」

邪神ちゃん「それでも30分もかよ……」

ぴの「ふふん。感想は……聞くまでもありませんわね」

邪神ちゃん「……ぴの」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:07:38.76 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「……正直恐れ入った。口では言い表せないほど美味でしたの!」

ぴの「ええ。そうでしょうとも」

邪神ちゃん「世界は広いんだな……悔しいが、私の完敗だ」

ぴの「あら、あっさり負けを認めてしまっては面白くありませんわ」

邪神ちゃん「え……?」

ぴの「あなたのチーズケーキだって、たいへん素晴らしいものでしたわよ?」

ぴの「ただ、まだまだ改善の余地はあるはず。現状に満足してしまわない事が、お菓子作りには何より肝心ですのよ」

邪神ちゃん「はは……」

邪神ちゃん(そういや、前にもゆりねに同じようなこと言われたっけな……)
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