邪神ちゃん「100日後に死ぬヘビ」

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141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:28:21.14 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「ちっげーよ! ベタなボケかましやがって! なんでそんなに私のこと見損なってるんだっ!」

邪神ちゃん「その金はな! ぺこらに紹介してもらったバイトでコツコツ稼いだんだよっ!」

メデューサ「えっ……? アルバイトしてたんだ、邪神ちゃん……」

メデューサ「で、でもどうして……? お金なら、今まで通り私に言ってくれれば……」

邪神ちゃん「はぁ……ほんっとニブいヤツですの」

邪神ちゃん「それとも、額が少なすぎて気付かなかったか? 一応それ、今までお前から借りた金の返済のつもりなんだけど」

メデューサ「ええっ!?」

邪神ちゃん「そんな驚くなよ。まぁ、確かに借りた額の100分の1くらいにしかならねーけどさ……」

メデューサ「い、いいんだよそんな事! 邪神ちゃんが返すって約束覚えてくれてて私すごく嬉しい!」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:28:56.12 ID:OoTzgBfJ0
メデューサ「でも私……こんなお金受け取れないよ……」

邪神ちゃん「なんだ。やっぱ耳を揃えてじゃなきゃ不満か?」

メデューサ「違うよ! だって、邪神ちゃんが大切な時間を削って手にしたお金だよ? 邪神ちゃんが使うべきだよ!」

邪神ちゃん「受け取ってくれよ。私、自分で働いてみて分かったんだ……」

邪神ちゃん「今までお前は、私の為にその大切な時間を割いてくれてたんだ、って」

メデューサ「邪神ちゃん……」ホロリ

邪神ちゃん「欲をいえば、後ぐされなく全額返済といきたかったんだけどさ……」

邪神ちゃん「雇い主に土下座までして数十年分の給料前借りできないか交渉したんだけど断られたわ」

メデューサ「さ、流石にそこまでダイナミックな前借りは難しいんじゃないかな……」

邪神ちゃん「ま、全然足りなくて恐縮だけど、そーいうワケだからそんだけで勘弁してくれや」

邪神ちゃん「盛大な借りパクになっちまって詫びの言葉もないが……」

メデューサ「いいよ……いいんだよ……! もう充分すぎるくらい、お返しもらったよ……!」ポロポロ
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:29:33.74 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「その落とし前ってワケじゃないけど、私……もうすぐ死ぬからさ……」

メデューサ「そんな言い方しちゃダメだよ! 邪神ちゃんは絶対死んだりなんてしないもん!」

邪神ちゃん「慰めはよしてくれ!」

邪神ちゃん「分かるんだ……! 自分の身体が蝕まれていくのが……! 吐き気と眩暈も、日を追うごとに酷くなってるし……」

メデューサ「きっと大丈夫だから……いったん落ち着いて、ね?」


邪神ちゃん「うえっぐ……」ポロポロ

邪神ちゃん「ゆりねぇ……! 私まだ死にたくねぇ…… 死にたくねぇですのおおおおおおおおおおおおおおおっ……!!」ガバッ


メデューサ「邪神ちゃん……」

メデューサ(可哀そう……私をゆりねさんと間違えるほど取り乱して……)
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:30:23.67 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「ひっぐ……うえっぐ……きっと、お前にイジワルばっかしてたからバチが当たったんだ……」ポロポロ

メデューサ「よしよし。そんな事ないから……」

邪神ちゃん「いいや、きっとそうですの……」

邪神ちゃん「借金を返そうとしたのだって……本当はお前に恨まれたまま死んでいくのが怖かったからで……」

メデューサ「心配性なんだから。私が邪神ちゃんのこと恨んだりするワケないでしょ?」

邪神ちゃん「お前が恨まなくても、神様は私のこと絶対怒ってますの……だからこんな残酷な罰を与えるんですの……」ポロポロ

メデューサ「ふふっ。ぺこらちゃんと遊んでるうちにすっかり宗旨替えしちゃったんだね」

メデューサ「いい? もしも、こんなよい子の邪神ちゃんに酷い罰を与える神様がいるなら、私が怒鳴り込んでビシっと言ってあげる」

メデューサ「『あなたは、その全てを見通せるとかいう目で、いったい何を見ていたんですか!?』ってね♪」

邪神ちゃん「メデューサぁ……!」

邪神ちゃん「……でも、メデューサじゃあ怒っても迫力不足ですの」ゴシゴシ

メデューサ「えー? そうかなぁ? 私、怒ったらけっこう怖い自信あるよ?」

邪神ちゃん「ふふ。そーいやそうでしたの」

メデューサ「あは。よかった。やっと笑顔が戻ったね♪」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:31:37.01 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「メデューサ……その、悪かった。みっともなく取り乱したりして……///」ゴニョゴニョ

メデューサ「気にしなくていいよ。私になら、いくらでも弱さを見せてくれていいんだからね」

邪神ちゃん「よ、弱いなんてことがあるか! 私はベリーストロングな悪魔なんですのっ!」

メデューサ「ほら、また強がりが始まった」

邪神ちゃん「うぅ……」

邪神ちゃん「と、とにかく今日のことは気にしなくていいからな。てか、こっぱずかしいから出来るだけ早く忘れてくれ」

メデューサ(忘れろと言われても……)

邪神ちゃん「んじゃ、私はこれで帰りますの」

メデューサ「うん。あまり弱気になっちゃダメだよ?」

邪神ちゃん「……またな」スタスタ


『ゆりねぇ……! 私まだ死にたくねぇ…… 死にたくねぇですのおおおおおおおおおおおおおおおっ……!!』


メデューサ「……」

メデューサ「……よし!」



死まであと10日
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:32:23.94 ID:OoTzgBfJ0
〜93日目〜



・花園家


ピポーン


ゆりね「はーい」

ゆりね「あら、メデューサ。なんだか久し振りね」

メデューサ「こんにちはゆりねさん。ご無沙汰しています」

ゆりね「生憎だけど、邪神ちゃんにはちょっとお遣いに行って貰ってるのよ」

メデューサ「ええ、知っています。だから来ました」

ゆりね「えっ……?」

メデューサ「ゆりねさん、大切なお話があります──」



死まであと7日
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:33:19.25 ID:OoTzgBfJ0
〜94日目〜



・アパート前


ぴの「ふぅ。満開の桜は美しいけれど、管理人としては舞い散る花びらの掃除が厄介ですわね……」サッサッ

ぴの「終わりのない単純作業の繰り返し……これではぺこら様を笑えませんわ」

ぴの「そうですわ! ここはひとつ、新たな試みを取り入れましょう♪」

ぴの「ふふふ。実はこれ、お掃除中にずっとやってみたいと思っていましたの」

ぴの「だ、誰も見ていませんわよね……?」キョロキョロ

ぴの「……すぅ」

ぴの「おっでか〜けで〜すかぁ〜♪ レッレレ〜の──」サッサッサッ

ゆりね「……いえ。いま帰ったところです」

ぴの「ひっ!?」ギクッ
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:34:22.12 ID:OoTzgBfJ0
ぴの「は、花園さん…! お帰りなさいまし……い、今のはですねぇ……///」アタフタ

ゆりね「はぁ……」

ぴの(あ、大丈夫そう。なんだかうわの空ですわ……)

ゆりね「それでは……」

ぴの「花園さん、なんだか足取りがおぼついていませんわ。階段、お気をつけて──」


ゆりね「……あ」ツルッ

ぴの「花園さんっ!?」


ドンガラガッシャーン!!


ぴの「あいたたた……」

ゆりね「か、管理人さん!? ごめんなさい! 私ったら考え事を……!」

ぴの「いえ……平気です。元天使とはいえ、人間より体は丈夫ですから……」

ぴの「それより、花園さんにお怪我がないか心配ですわ!」

ゆりね「いえ。私はどこも……」

ぴの「外傷だけでは分かりません! あなたはわたくしのかけがえないボディーガード! なにかあっては困ります!」

ぴの「さっ! 早くわたくしのお部屋へ!」グイッ

ゆりね「あ〜れ〜」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:35:18.17 ID:OoTzgBfJ0
・管理人部屋


ぴの「そうですか……邪神ちゃんさんのこと、とうとうお知りになったのですね」

ぴの「ごめんなさい。実はわたくしも知っていたのに、お教えできなくて……」

ゆりね「いえ、そんな……むしろ、邪神ちゃんの希望に添ってあげて頂いてありがとうございます」

ぴの「……その、どうです? やはりショックでしたか?」

ゆりね「うーん……なんて言えばいいのかな……」

ゆりね「メデューサから話を聞いて最初に感じたのは、罪悪感でした」

ぴの「罪悪感、ですか……」

ゆりね「邪神ちゃんは、私が帰還の呪文の用意もせず興味本位だけで呼び寄せてしまった悪魔なんです」

ぴの「ええ。そのように聞いていますわ」

ゆりね「正直責任は感じてるけど、でも、魔界に帰す手段がないから何もしてあげられないし……」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:35:52.12 ID:OoTzgBfJ0
ぴの「それにしても、彼女も難儀な運命ですわね。健康診断の結果で余命宣告を受けるとは……」

ぴの「寿命が減っていく恐怖をひしひし感じながら日々過ごすなんて、わたくしならきっと発狂してしまいますわ……」ガタガタ

ゆりね「邪神ちゃんも、あれでメンタルお豆腐なんですよ」

ゆりね「それがこんな事になってしまって……あの子、きっと今まで以上に魔界に帰りたがってる……」

ゆりね「もうすぐ寿命って……それもこんな一週間前になってから急に知らされて、どう接すればいいのよ……!」

ぴの「花園さん……」

ゆりね「あの子と私は、友達でもなんでもない。それどころか、邪神ちゃんに言わせれば宿敵同士なんです」

ゆりね「事情を知ったからって優しくなんて出来るワケない……そんなの、今更どの面下げて……」

ゆりね「ううん。それでも最期は精一杯優しく接することが、せめてもの償いになるのかしら……?」

ぴの「……」

ゆりね「ねぇ、管理人さんは元天使なんでしょう? 私……どうすればいいのかしら……?」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:36:25.63 ID:OoTzgBfJ0
ぴの「……花園さんも、そんな目をすることがあるのですね」

ゆりね「えっ」

ぴの「わたくし達の業界では、そういう目をした方を“迷える子羊”と呼ぶのですわ」

ゆりね「そんな目、してるかしら……」

ぴの「さて、なんでしたっけ。花園さんがこれからどうすべきか、でしたか……」

ぴの「申し訳ありませんが、それはわたくしには分かりません」

ゆりね「元天使様でも分からないの……?」

ぴの「ええ。だって、邪神ちゃんさんとの付き合いは、わたくしなどより花園さんの方がずっと長いでしょう?」

ぴの「そのあなたが接し方を測りかねているのに、わたくしに答えが分かる筈ありません」

ゆりね「そう、よね……」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:37:05.33 ID:OoTzgBfJ0
ぴの「ですが、及ばずながら、ごくありふれたアドバイスをひとつ」

ぴの「迷った時は、心の声に耳を傾けるのです」

ゆりね「心の声……」

ぴの「花園さんは、本当はどうしたいのですか?」

ゆりね「だから……それが分からないから……!」

ぴの「そうでしょうか? 本当はあなた、進むべき道が見えているのではありませんか?」

ゆりね「──!?」

ぴの「どうやら、当たりのようですわね」

ゆりね「だって……そんなの……」

ゆりね「そんな事……したところで……!」

ぴの「分かります。本心の叫びの他に、いくつもの葛藤の声も聞こえるのですよね」

ぴの「後悔……したくないですか?」

ゆりね「したくないわ……当然じゃない!」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:37:45.89 ID:OoTzgBfJ0
ぴの「そうでしょうね。ですが、それは無理な相談なんです」

ぴの「もうじき、ひとつの命が失われようとしている」

ぴの「そして、あなたは少なからずその命に責任を持ってしまった……」

ゆりね「……」

ぴの「どんな道を選んだところで、必ず悔いは残ります」

ぴの「だからこそ、己の心の声に耳をすまし、そして決めるのです」

ぴの「残された悔いに、少しでも自分で納得できるように……」

ゆりね「……」

ぴの「さぁ、答えなくてもいい。よく考えてみてください」

ぴの「──花園さんは、本当はどうしたいのですか?」

ゆりね「わ、私は……」



死まであと6日
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:38:33.83 ID:OoTzgBfJ0
〜95日目〜



・花園家


邪神ちゃん(残り寿命……たったの5日か……はは。蝉以下とか……)

邪神ちゃん「──うぷっ!」

邪神ちゃん「お……おげえええぇぇぇ……!」

邪神ちゃん「はぁ…はぁ……もう吐瀉物さえ出りゃしねぇ……」


邪神ちゃん「あ〜…… なーんもする気が起きませんの……」

邪神ちゃん「だけど、ジッとしてると死への恐怖で狂いそうになる……」


邪神ちゃん「よっこらせ……昨日もやったばっかだけど、表の掃除でもしてくるかな……」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:40:03.19 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「あっ」ガチャ

メデューサ「あ……」


邪神ちゃん「おう! メデューサよく来てくれたな! ささ、お茶淹れるから上がりますの♪」

メデューサ「ふえっ!? 邪神ちゃん、怒ってないの?」

邪神ちゃん「怒る? なんで?」キョトン

メデューサ「私、どうしても謝っておきたくて来たんだけど……えっ……?」

メデューサ「昨日、ゆりねさんと話し合ったりしなかったの……?」

邪神ちゃん「ゆりねと今更なんの話するってんだよ?」


メデューサ「えっ?」

邪神ちゃん「えっ?」


メデューサ「そ、そんな……もしかして、ゆりねさんまだ何も言ってこないの……!?」

邪神ちゃん「お、おい……まさかとは思うが……メデューサお前……!」

邪神ちゃん「ゆりねに全部喋ったんじゃないだろうなっ!?」
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:40:54.39 ID:OoTzgBfJ0
メデューサ「ふえええぇぇぇ……! ゴメンねゴメンねゴメンねっ!」ペコペコペコ

邪神ちゃん「お前! あれほど言っただろう! ゆりねにだけは言うなって!!」

メデューサ「ぐすん……本当にゴメン……」

邪神ちゃん「もし喋ったら絶交だとも言ったよなぁ!?」

メデューサ「うぅ……分かってるよ……でも、やっぱり良くないと思ったから……」

メデューサ「たとえ絶交されても、ゆりねさんには教えておくべきだと思ったの……」

メデューサ「邪神ちゃんには……ゆりねさんが必要だと思ったのぉ!!」

邪神ちゃん「な、なんだよそれ……」

邪神ちゃん「ゆりねなんかどうでもいいんだよ! 私にはお前やミノスが居てくれりゃいいんだ!」

メデューサ「そんな事ないもん!」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:42:00.47 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「そんな事あるって私自身が言ってんだろうがっ!」

メデューサ「そんな事ない! 邪神ちゃん、自分のこと分かってないよ!」

メデューサ「私の方が……邪神ちゃんより私の方が邪神ちゃんのこと理解してるもんっ!!」

邪神ちゃん「え……? え……? なんだって……?」

邪神ちゃん「私が……お前で……お前が俺で……?」

邪神ちゃん「いかん……頭こんがらがってきた……また眩暈がしますの……」クラクラッ

メデューサ「あぅ……大きな声出してごめんね……」

邪神ちゃん「てか、お前そんな強情なヤツじゃなかっただろ?」

メデューサ「こればっかりは、譲るわけにはいかないんだよ……」

邪神ちゃん「そーかい……」

メデューサ「うぅ……絶交……だよね……?」ウルウル

邪神ちゃん「あ?」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:43:24.89 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「……いーよいーよ、もう」

メデューサ「えっ……?」

メデューサ「いいって……まさか許してくれるのっ!? 絶交しない!?」パアアァァ

邪神ちゃん「ああ……なんかもう……なんつーかもう……いいわ……」

メデューサ「わぁーい♪ 邪神ちゃん大好き♡」

邪神ちゃん「はぁ〜……調子のいい奴……」

邪神ちゃん「お前、怒ってないから今日はもう帰れ」

メデューサ「えっ……でも……」

邪神ちゃん「頼むからそうしてくれ。一人で考えたいことがあんだよ」

メデューサ「あ、そうか。私がゆりねさんに話しちゃったから……」シュン

邪神ちゃん「その通りだけど、もう気に病むな。とにかく今日のところは帰っとけ」

メデューサ「わ、分かったよ。またね、邪神ちゃん」


邪神ちゃん「あ〜……もうっ……!」ワシャワシャ

邪神ちゃん「メデューサの奴……おとなしい顔してとんでもない事してくれるよなぁ……」



死まであと5日
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:44:15.91 ID:OoTzgBfJ0
〜96日目〜



・花園家 夕飯時


ゆりね「もっもっも……」モグモグ

邪神ちゃん「もっもっも……」モグモグ


ゆりね「──邪神ちゃん」

邪神ちゃん「な、なんですの?」ビクッ

ゆりね「……お醤油とって」

邪神ちゃん「お、おぅ……ほらよ」

ゆりね「ありがと」


邪神ちゃん「もっもっも……」モグモグ

ゆりね「もっもっも……」モグモグ


邪神ちゃん「──ゆりね」

ゆりね「ど、どうしたの?」ビクッ

邪神ちゃん「私も使うから醤油返して」

ゆりね「そ、そうね……ごめんなさい……」

邪神ちゃん「さんくす」


ゆりね「もっもっも……」モグモグ

邪神ちゃん「もっもっも……」モグモグ



死まであと4日
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:45:07.38 ID:OoTzgBfJ0
〜97日目〜



邪神ちゃん「花見だぁ〜?」

メデューサ「うん。ちょうど満開の時期でしょ?」

邪神ちゃん「う〜ん……正直、あんまり花見にいい思い出ないからなぁ〜」

メデューサ「心配しないで。場所取りなら私がやるから」

邪神ちゃん「ま、それならいいか。で、いつやんの?」

メデューサ「ちょっと急なんだけど三日後に。どうかな?」

邪神ちゃん「三日後って……ああ」

メデューサ「み、皆も参加するからおいでよ。ね!」

邪神ちゃん「なるほど。私のお別れ会ってワケですの」

メデューサ「そ、そういうワケじゃないよ!」

邪神ちゃん「いやいや、そこは認めようぜ〜ww」

邪神ちゃん「そうじゃなきゃ、お前ら全員、私の命日にただドンチャン騒ぎしてる薄情者集団になっちまうじゃねーか」

メデューサ「ええええっ……!? そ、それは困るよぉ……」

邪神ちゃん「ふふ。つくづくからかい甲斐のあるヤツですの」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:46:19.83 ID:OoTzgBfJ0
メデューサ「だ、だけど……本当にそんな悲しい集まりにするつもりないから」

メデューサ「みんなでお花見て、美味しいもの持ち寄って、楽しくお喋りして……」

メデューサ「終わってからも、その次の日も、その先もずっと、みんな仲良しだよって……そういう……お花見に……」ポロポロ

邪神ちゃん「……今すぐ泣き止まないと花見なんて行ってやらねーぞ」

メデューサ「ううっ……! 泣き止むよ……泣き止むからぁ……!」ゴシゴシ

邪神ちゃん「冗談だよ。私が主役の集まりだってのに参加しねーワケないだろ」

メデューサ「邪神ちゃん……! ありがとぉ……!」

メデューサ「絶対だよ……絶対来てね……!」ポロポロ

邪神ちゃん「……まーた泣く」

メデューサ「えへ。そうだ! お花見のお弁当もいっぱい作って来てよ。久し振りに邪神ちゃんのお料理食べたいな」

邪神ちゃん「そーいや、この頃はお前らに料理してやれてなかったもんなぁ……」

邪神ちゃん「よっしゃ! 私の全身全霊込めた究極のお花見弁当持参で行ってやりますの!」

メデューサ「わぁーい! 楽しみにしてるね♪」

邪神ちゃん「……ああ。楽しみにしとけ」



死まであと3日
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:46:50.70 ID:OoTzgBfJ0
〜98日目〜



近所のオバちゃん「あら邪神ちゃん、お出かけ? あんまり無駄遣いするんじゃないよ」



近所の爺ちゃん「まぁ〜たお前は締まりのない顔してからに。若いもんが昼間からフラフラしてるんじゃない!」



近所のコンビニ店員「邪神ちゃんさん、一回ハマった商品があると暫くそれしか買わなくなるから、レジ打ちが楽でいいっスわ」



近所のパチ屋の店員「最近全然来てくれないじゃないですか。ここだけの話、邪神ちゃんさんけっこう隠れファン多いんですよ?」



近所の小学生「ちぇ〜! 今日は邪神ちゃんに先に挨拶されちゃったかぁ〜」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:47:24.03 ID:OoTzgBfJ0
芽依「こら〜! 大蛇丸〜! いたいけな小学生に声掛けする不審なヘビはお縄につきなさぁ〜い!」



ぽぽろん「肉じゃが! お花見の日にカラオケ対決で決着つけるよ。ハルマゲドンの再来ってワケね!」



キョンキョン「邪神ちゃん、このあいだ魔導書の中巻なら見つけたヨ!」

ランラン「最期まで希望を捨てちゃダメだからね!」



ぺこら「あ、ちょうどいいところに。この近くでやってるバイトの人出が足りないのですか……」



遊佐「明後日ですね。私達はかき氷を出店予定なので、屋台との掛け持ち参加で恐縮ですが」

氷ちゃん「」サシイレスルカラ



ぴの「邪神ちゃんさん! お花見の日にお料理勝負ですわ! ハルマゲドンの再来── えっ? ぽぽろんと台詞が被っているですって?」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:48:10.91 ID:OoTzgBfJ0
ペルちゃん「邪神ちゃん! 今日こそ徹夜でゲーム大会やろうよ!」



ミノス「いいね。おもしろそーじゃん。そんじゃさ、ゲームが終わったらそのままジョギング大会に移行しようよ」

ミノス「──そう言うなって。徹夜明けの変なテンションなら、どこまでも走っていけそうな気がするだろ?」



メデューサ「いいなぁ……私も参加したいけど、今からお花見の場所取りがあるから」

メデューサ「甘いよ邪神ちゃん! 本格的な人達は、もう1週間前から場所取りしてるんだよ?」

メデューサ「──それじゃ、明後日は絶対来てね。邪神ちゃん」




邪神ちゃん「……」

邪神ちゃん「……少なくとも、私がここで生きてたって事実は消えはしないんだよな」



死まであと2日
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:48:49.78 ID:OoTzgBfJ0
〜99日目〜



・花園家 夕飯時


ゆりね「楽しかった? ミノス達との徹夜ゲームお泊り会」

邪神ちゃん「ああ、もちろん楽しかった」

邪神ちゃん「けど、その後行われた『第一回ハイテンション・ジョギング大会』の方が忘れられませんの」

ゆりね「なにそれ」

邪神ちゃん「徹夜明けの変なテンションに任せて三人で全力疾走してたら、いつの間にか山手線一周してたんですの」

ゆりね「青春してるわね……」

邪神ちゃん「おかげで、全身クタクタで死にそうなんですの……」

ゆりね「あまり無理してると身体を壊すわよ」

邪神ちゃん「ま、別にもう……壊れたところで……」

ゆりね「……」

邪神ちゃん「あ、いや……なんでもありませんの」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:49:21.68 ID:OoTzgBfJ0
ゆりね「……ごちそうさま。今日も美味しかったわよ」

邪神ちゃん「ん。お粗末さま」

邪神ちゃん「そんじゃ、片付けますの」

ゆりね「手伝うわ」

邪神ちゃん「お、おお……そうか。なら、私が皿洗ってくから横で拭いてくれ」


ジャブジャブ… カチャカチャ…


邪神ちゃん「……」

ゆりね「……」

邪神ちゃん「……あのさゆりね、ずっと言っときたかった事があるんだが、いま言うわ」

ゆりね「なにかしら」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:49:54.97 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「ジョギング中にさ、自転車が前走ってたり、追い抜いていく時があるんだけど」

邪神ちゃん「大抵は全然追いつけないんだが、たまにお婆ちゃんの自転車とかだと、一定の距離で付いていけたりするんだわ」

ゆりね「ああ。そういう時に限って行先もずっと一緒だったりするわよね」

邪神ちゃん「そう。下手に追い越すのも危なっかしいし、ひたすら後ろくっついていくだろ?」

ゆりね「ええ」

邪神ちゃん「そん時ってさ──」

邪神ちゃん「『ターミネーター2』でバイク追いかけてる液体ターミネーター(T-1000)の気分に浸れるんだよ」

ゆりね「……」

ゆりね「……なによそれ、すっごく面白そう」

邪神ちゃん「だろ? 不思議なことに、ターミネーターになりきってスタミナ切れも起こさなくなるんだ」

ゆりね「私も今度やってみなくちゃ」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:50:35.56 ID:OoTzgBfJ0
ゆりね「……それはそうと、邪神ちゃん」

邪神ちゃん「なんですの?」

ゆりね「明日のお花見、来るのよね?」

邪神ちゃん「……」

邪神ちゃん「……そりゃ、行かなきゃだろ。私の為の集まりなんだし」

ゆりね「そう。ならいいわ」

ゆりね「私、もう休むから」

ゆりね「おやすみなさい。邪神ちゃん」

邪神ちゃん「ああ……おやすみ」

ゆりね「……眠れそう?」

邪神ちゃん「………眠れるよ。眠らなきゃだろ」

邪神ちゃん「明日は早起きして皆の分の弁当こさえないといけないからな」

ゆりね「そうよね。楽しみだわ」

邪神ちゃん「………もう電気消すぞ」



死まであと1日
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:51:29.17 ID:OoTzgBfJ0
〜100日目〜



・公園


花見客「わいわいがやがや」

いつものみんな「わいわいがやがや」


メデューサ(邪神ちゃん……早く来ないかな……)ウキウキ

メデューサ「あ、ゆりねさん! こっちでーす!」


ゆりね「こんにちはメデューサ。今日はお招きありがとう」

メデューサ「あれ? ゆりねさん一人? 邪神ちゃんは……」

ゆりね「それなんだけど……これ……」ヒョイ

メデューサ「お弁当箱……?」


メデューサ「ま、まさか……!」

ゆりね「残念ながら……」

メデューサ「とうとう邪神ちゃんをから揚げにしてしまったんですかっ!?」

ゆりね「えっ、いや……起きたらそのお弁当箱だけ残して居なくなってたって意味なんだけど……」

メデューサ「な、なぁんだ……よかった……」ホッ

メデューサ「って! おおごとじゃないですか!?」ガビーン

ゆりね「メデューサ、キャラ変わったわね」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:52:20.01 ID:OoTzgBfJ0
メデューサ「そんな……居なくなったって……どうして……?」オロオロ

ゆりね「ごめんなさい……もしかしたらこんな事になるかもって予感はしてたのに」

ゆりね「死期を悟った猫みたいなマネして……こんな事なら首輪でも付けとくんだったわ」

ミノス「あはは。邪神ちゃんのやつ、最後までやってくれるな〜」

メデューサ「ちょっとミノス! 最後だなんて言わないでっ!」

ミノス「おっと……そうだったな。悪ぃ」

ペルちゃん「でも、そんなに驚かないよね? 邪神ちゃんならやりかねないっていうか、正直フラグ立ってたし」

ぽぽろん「約束すっぽかすなんてお手のものなんだよ、あいつ!」プンスカ

ぺこら「おや、でもアルバイトには真面目に通っていましたよ?」

ぽぽろん「なによぺこら様、悪魔なんかの肩持つんだ?」

ぺこら「べ……別にぺこらは事実を言ったまでで……」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:53:02.64 ID:OoTzgBfJ0
キョンキョン「邪神ちゃんはあれでなかなかいい奴ネ。けっこう涙もろいとこあるヨ」

ランラン「お金にはかなり意地汚いけどねー」

遊佐「弱いものイジメも大好きですし」

氷ちゃん「」フンスフンス

遊佐「え? 『これからたっぷり仕返ししてやるつもりだったのに』?」

遊佐「やめておきなさい。そんな考えだと彼女みたいなダメな大人になってしまうわよ」

ぴの「料理の腕前と、どこか憎めないところがある事だけは認めて差し上げてもいいですけどね」

ミノス「はっはっは。賛否両論だなぁ」

芽依「そこがいいのよ、大蛇丸は」

芽依「基本ダメダメなくせに、ほんのちょっぴりの良心を往生際悪く抱えてるところが最高に可愛いわ♡♡♡」

ペルちゃん「それって、小心者だから悪者にもなり切れないってだけだよね」

芽依「そうなのぉー♡♡♡」

ミノス「おいおい、だんだん唯の悪口大会になっていってるじゃねーかww」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:53:44.48 ID:OoTzgBfJ0
ミノス「いやぁ〜、笑った笑った……ほんとスベらないよなぁ。邪神ちゃん……」

ミノス「あいつが居なくなっちまうなんて……全然信じらんねーよ……」

ぺこら「同感です。ぺこらは明日以降だって、あいつへの警戒を解いたりしませんよ!」

ぺこら「どこからでもひょっこり出てきそうで油断できませんよ。あの顔は」

ペルちゃん「最初にも言ったけど、邪神ちゃんって殺しても死にそうにないよね」

キョンキョン「そういえばお姉ちゃんも言ってたヨ。もうすぐ死ぬようには見えないって」

ミノス「つーか、あたしらの中で一番長生きしそうだよなww」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:54:26.47 ID:OoTzgBfJ0
ゆりね「……」

ゆりね「……ごめん、皆。私しばらく席を外すわ」スッ

メデューサ「えっ……何処へ行くんですか……?」

ゆりね「邪神ちゃんを探してくる」

メデューサ「そ、それなら私も!」

ゆりね「いえ。メデューサはここで待ってて。邪神ちゃん、もしかしたらこっちの方に現れるかもだし」

ゆりね「安心して。見つけたら息の根止めてでも引きずってくるから」

メデューサ「そ、それだと本末転倒になるので安心できません……」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:55:04.14 ID:OoTzgBfJ0
メデューサ(ゆりねさん……邪神ちゃん……)

ぴの「さっ、メデューサさんどうぞ。邪神ちゃんさんのお弁当ですわ」

メデューサ「ありがとうございます……」パク

メデューサ「美味しい……」

ぴの「本当に。せっかく先日のお菓子作りでつけた差を、あっさり埋められてしまいました」

メデューサ「きっと、邪神ちゃんのすべてが籠ったお弁当だから、こんなに美味しいんですね……」ジワッ

ぴの「ええ。邪神ちゃんさんが戻ったら改めて勝負を挑まねばなりませんわ」

メデューサ「うっ…ううっ…… 美味しい…美味しいよぉ……!」ポロポロ
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:56:20.24 ID:OoTzgBfJ0
・???


邪神ちゃん(約束破って悪いなメデューサ……)

邪神ちゃん(でも……皆に見守られて安らかに、なんて私の柄じゃないんだ。背中が痒くなっちまう……)


邪神ちゃん「そーいや、死ぬのって今日の何時なんだろ……」

邪神ちゃん「日付が替わるギリギリまでは生きられんのかな……」

邪神ちゃん「足がつきそうでスマホは置いてきちゃったから時間も分かりゃしませんの」


ゆりね「──まったく。そのせいで散々探させてくれたわね」

邪神ちゃん「ゆ、ゆりねっ!?」ギョッ


ゆりね「邪神ちゃん……私前にも言ったわよね? 連絡もせず突然居なくなるなって……」

邪神ちゃん「い、いいだろ別に! 何処へ行こうがゆりねにいちいち断り入れる筋合いありませんの!」

ゆりね「よくないっ! 黙って居なくなられると……心配するじゃない!」

邪神ちゃん「っ///」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:57:11.37 ID:OoTzgBfJ0
邪神ちゃん「そ、そんな事よりどうしてここが分かったんですの!?」

ゆりね「だから分かってないっての。町中探し回っただけよ」

ゆりね「そもそも何処よここ。昭和ライダーが戦う採石場みたいな……神保町にこんな場所ないはずでしょ?」

邪神ちゃん「な、何しに来たんですの!? 私をみんなの所に連れて行く気か!?」

ゆりね「そういう口実で来てるけど、本当は違うわ」

邪神ちゃん「なに?」

ゆりね「……決着を着けるわよ。邪神ちゃん」

邪神ちゃん「んなっ…!?」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:57:52.87 ID:OoTzgBfJ0
ゆりね「あんた、今日が人生最後の日なんですってね」

邪神ちゃん「ぐっ……! ああ、そうだよ。悪魔だから人生じゃないけどな」

ゆりね「……魔界に帰りたいわよね」

邪神ちゃん「は?」

ゆりね「帰りたいわよね?」

邪神ちゃん「そ、そりゃ当然ですの。ずっと言ってたことだろう……」

ゆりね「だから、その為のチャンスを与えてやるって言ってんのよ」

邪神ちゃん「こ、この場でお前を倒して魔界に帰れってのか……」

ゆりね「ええ。その通りよ」


邪神ちゃん「ま、待ってくれ……! このごろ私……本当に身体が弱ってて……」

邪神ちゃん「それに、今更お前とやり合う気になんてなれませんの……」


ゆりね「はぁ? なにそれ? 寝ぼけたこと言ってんじゃないわよ」

ゆりね「それとも、そうやって私に媚び売って同情引く作戦かしら?」

邪神ちゃん「そ、そんなんじゃねーよ!」

ゆりね「情けない……あんたプライドないわけ?」

ゆりね「ま、そうよね。あんた弱っちぃもの。そんな卑怯な手でも使わなきゃ、万に一つも勝ち目なんか無いわよね?」

邪神ちゃん「こ、こいつ……! 言わせておけば……!」ワナワナ
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:58:43.26 ID:OoTzgBfJ0
ゆりね「あら、怒ったの? それならさっさとかかって来なさい」

邪神ちゃん「で、でもよぉ……」

ゆりね「言っとくけど、あんたにその気がなくても、こっちは[ピーーー]気満々だから……」ゴゴゴゴ

邪神ちゃん「ひっ!?」

ゆりね「精々あと数時間の命でしょ? だったら少しくらい早く終わっても大差ないわよ。良心も痛まないわ」

邪神ちゃん「な、なぁ……やっぱ止めようぜ? いったん落ち着きますの……」


ゆりね「──お馬鹿っ! あんたは誇り高い悪魔でしょう!?」

邪神ちゃん「っ!?」


ゆりね「なによ! ビクビクしてみっともない!」

ゆりね「死ぬのが怖いの!? それとも私が怖いの!?」

ゆりね「そんなことで魔界のご両親に顔向けできるっていうのっ!?」

邪神ちゃん「おい! パパとママは今関係ねーだろっ!」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 23:59:47.41 ID:OoTzgBfJ0
ゆりね「関係大ありよ! あんた、このまま私にも勝てず、人間界で野垂れ死んで本当に平気なの!?」

邪神ちゃん「そ……それは……!」

ゆりね「もう一度言うわ。決着をつけましょう」

ゆりね「死ぬ運命が避けられないのなら、せめて宿敵を倒した誇りを冥途の土産に、魔界でご両親に看取られて安らかに逝きなさい!!」

邪神ちゃん「ゆりね……」


邪神ちゃん「感謝するぞ、ゆりね……戦士としての心遣い、痛み入りますの……」

邪神ちゃん「だがしかぁし! 手負いの獣ほど恐ろしいものはないっ! 私に挑んだことをあの世で後悔するがいい!」

ゆりね「やれやれ……あんたのやる気スイッチを押すのは本当に面倒だわ……」


邪神ちゃん「俺とお前は……戦うことでしか分かり合えない!!」

ゆりね「なんでここに来てネタにはしるかな……」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 00:00:25.68 ID:VBbf/r8O0
邪神ちゃん「うりゃああああああああああっっっ!!」

ゆりね「はああああああああああああああっっっ!!」



ドッカ──────ン!!



邪神ちゃん(い……勢いで挑んじまったものの……)

ゆりね「ほあたっ!」


ボコォ!


邪神ちゃん(やっぱアカン……! ゆりねは正真正銘、マジもんの化物や……!)

ゆりね「ふんっ!」


バキッ!


邪神ちゃん(しかもこいつ、本当に手加減しねーし……こちとら二つの意味で死にかけてんだぞ……!?)

ゆりね「ていりゃあああっ!!」


ドッゴォ!


邪神ちゃん(も……もう……残りライフが……)


クラクラ… バタッ…
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 00:01:06.22 ID:VBbf/r8O0
ゆりね「なによ、あっけないわね。もう終わり?」

邪神ちゃん「く、くそっ……もう指一本動かせませんの……」グッタリ

ゆりね「あんた、筋金入りの根性無しね」

ゆりね「もういい。苦しませるのは趣味じゃないし、トドメにしてあげるわ」

邪神ちゃん(嘘つけ……! いたぶるの大好きなドSのくせに……!)


ゆりね「はああああああああああああああああああああっ!!」

邪神ちゃん(くっ……! これまでか……!)


ドッゴォォォ…!!



邪神ちゃん「あ、あれ……?」


ゆりね「はぁ…! はぁ…! はぁ……!」ジンジン

邪神ちゃん「な、なに地面ぶん殴ってんだよ……?」


邪神ちゃん「まさかお前……ワザと外したのか……!?」

ゆりね「ち、違うっ……! ちょっと手元が狂って……」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 00:02:12.65 ID:VBbf/r8O0
邪神ちゃん「命をかけた戦いの最中で……情けをかけるなど……!」

邪神ちゃん「この私を……どこまで愚弄する気だああああああああああっ!!」


ボコォ!


ゆりね「ぐふっ!?」

ゆりね(い、怒りでパワーアップしている……!?)

邪神ちゃん「トドメだっ! タングルティーザァァァ──ッッ!!」


バキッ!


ゆりね「げっほぉ!?」

邪神ちゃん「トドメだっ! ロイヤルコペンハ──ゲンッッッ!!」


ドッゴォ!


ゆりね「ト、トドメは……どちらか一つにしておいてくれないかしら……」


クラクラ… バタッ…
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 00:03:09.53 ID:VBbf/r8O0
邪神ちゃん「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」ピカーッ

ゆりね「光った……!」


※邪神ちゃんは怒ると512分の1の確率で発光する。


邪神ちゃん「さぁ、ゆりね……! これこそが本当のトドメですの……!」

邪神ちゃん「くらええええええええ!! 己が命の炎を燃やして完成する究極の真奥義!!」

邪神ちゃん「ファイナル邪神ちゃんドロップキック!! グッバイ・マイ・ラアアアァァァァァイフッッッ!!!」


ゆりね「これが……邪神ちゃんの本気……!」

ゆりね「おめでとう邪神ちゃん…… “ひと足先に行って”…… 待ってるわよ……」



チュド─────────────ンッッッッ!!!!!
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 00:04:08.31 ID:VBbf/r8O0
ゆりね「…………」

ゆりね「……私、まだ生きてるわね」パチッ


ゆりね「あらあら、地面に大きな穴が……」


邪神ちゃん「うっ…ううっ……くっふぅ〜……!」ポロポロ

ゆりね「開けたのは、穴の中心で泣いてるあの馬鹿か……」


ゆりね「ちょっと、なに泣いてるの。こんだけ派手にかましたから尻尾が痛かった?」

邪神ちゃん「そ、そんなんじゃねーですの!」ポロポロ

ゆりね「ああ。土地の管理者への莫大な弁償費が怖いのか……」

ゆりね「大丈夫よ。返済義務もあの世までは追いかけてこないわ」

邪神ちゃん「違う! そんな事どうだっていい!」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 00:05:14.22 ID:VBbf/r8O0
邪神ちゃん「私は……ゆりねと……ゆりねともっと一緒に居たいんですのっ!」

ゆりね「──!?」

邪神ちゃん「それなのに……もう少しでお前と……お別れしなきゃいけないってのに……!」

邪神ちゃん「トドメなんか……させるワケがないだろう!!」


ゆりね「邪神ちゃん……」

ゆりね「あんた……やっぱ大バカよ……!」ギュ


邪神ちゃん「私……最後までゆりねと一緒に居るうぅぅぅ……!」

邪神ちゃん「びえええええええええええええん!! びええええええええええええええええん!!!」オーイオイオイ
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 00:06:50.49 ID:VBbf/r8O0
・そして……


ゆりね「……どうする? そろそろ皆のとこ行ってお花見する?」イチャイチャ

邪神ちゃん「ううん……桜の花より、もう少しここで百合の花咲かせてますの」イチャイチャ

ゆりね「ふふっ……なかなか上手いこと言うじゃない。98点」イチャイチャ

邪神ちゃん「だからなんで2点引くんですのぉ〜 もうひと声ぇ〜」イチャイチャ

ゆりね「ダメよ。まだまだ精進できるはずだわ」イチャイチャ

邪神ちゃん「もうゴールさせてくれぇ〜!」イチャイチャ

ゆりね「……ダメよ」
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 00:07:50.71 ID:VBbf/r8O0
・一方その頃 魔界区役所


下級悪魔A「あちゃー、やってしまいました」

下級悪魔B「どうしたのです?」

下級悪魔A「いえ、この間邪神ちゃんさんに渡した魔界健康診断の結果──」

下級悪魔B「ああ。彼女の残り寿命が100日という、たいへん喜ばしい結果の」

下級悪魔A「あれ、渡し間違いです」

下級悪魔B「ええっ!?」

下級悪魔A「確認したら、邪神ちゃん様のでなく、ジャッシー・チャン様のものでした」

下級悪魔B「ああ、あのアクションスターの。惜しい方を……確かにけっこうなご老体でしたものねぇ……」

下級悪魔A「若い頃の無理が祟ったのでしょうか……私も子供時代には彼に憧れたものです」

下級悪魔B「私もですよ。ジャッシー様のご冥福をお祈りしましょう」

下級悪魔A「それはそうと、邪神ちゃん様の方は思い込みが激しいから本当に体調が悪くなっていたりして……」

下級悪魔B「ありえますねぇ」

下級悪魔A「仕方ない……単眼ちゃん、恐縮ですが急ぎで人間界まで知らせに行ってあげてくれますか?」

単眼ちゃん「はっ! ちょっぱやで行ってまいります!」



(邪神ちゃん&ゆりねが)死ぬほど気まずくなるまであと100秒





おしまい


188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/05(日) 01:06:58.69 ID:+jNRmPSBo
めっちゃ面白かった、乙です。
オチが分かっててもいいものだ
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/05(日) 01:21:40.70 ID:mygcD0E70
うーん、好き。
ネタバラシされた後お互い演技だったのよとか言ってこ.ろしあいを始める展開が目に浮かぶよう。
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/13(月) 03:38:03.31 ID:ovbO/xGIo
邪神ちゃんそゆとこあるよね
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