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女「私は鼻が効きますから」
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88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 00:58:35.16 ID:/LehkniF0
友「ま、いっか、行こうぜ」
男「うん」
スタスタ
後輩「待って下さいっ!」
友「え!?」
男「?」
後輩「先輩に大事な話があります!」
友「えっ!マジか!ついに俺にも!!みたかっ男!」
男「おー」
友「ふっ、僕になんの用かな?」
後輩「違います!こっちの先輩です!」
友「えぇ!?こいつ」
男「……」
後輩「はい!お付き合い頂けますか?」
友「ぬおぉぉ!!また男かよっ!!どうなってんだよ!ガッデムッ!!」
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 01:00:20.29 ID:/LehkniF0
男(突然の呼び出し……なんだろう嫌な予感しかしない……もうこれ以上はお腹いっぱいだよ……)
後輩「聞いてますか!」
友「おい、こら!返事しろ男!」
男「……今日は疲れてるからまた今度で」フラッ
後輩「バラしますよ、女先輩との事」ボソ
男「!!!」
友「?」
後輩「ね、先輩、お話に付き合ってくれません?もちろん二人きりで」
男「わかった。行こうか」
後輩「はいっ」
男「そんなわけで、ごめん友」
友「こんなの……俺の知ってる男じゃないっ!!うわぁぁぁん!!」
ダダダダダ
男「……はぁ」
後輩「誰にも邪魔されない、イイ場所知ってるのでそこでゆっくりお話しましょ?せーんぱいっ」
男「……」
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/06/23(火) 01:04:49.85 ID:/LehkniF0
一旦終わりで続きは明日にでも
こちらに投稿するのは初めてですが、暇つぶしに読んで頂ければ幸いです
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/23(火) 03:19:45.79 ID:fg9nz94DO
おつです
これは面白い
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:35:58.64 ID:/LehkniF0
――放送室
男「放送室……初めて入った……鍵があるはずなのにどうやってここに」
後輩「ふふーん、それなら答えは簡単です!私は放送部員なのです!いぇい!」
男「へー」
後輩「そ・ん・な・こ・と・よ・り」
男「……」
後輩「アナタ……女先輩の何なんですか!?」
男「はい?えと……クラスメイト、かな」
後輩「お付き合いをされてるんですか!?」
男「いや、ないない」
後輩「そうですよね!女先輩とアナタじゃ全っ然釣り合ってないです!!」
男「はあ、俺もそう思ってます」
後輩「じゃあアナタは一体何なんですか!!」
男「ふぇ?」
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:37:09.10 ID:/LehkniF0
後輩「今まで浮ついた噂が一切無かった女先輩に、今朝から変な噂が流れはじめて……」
男「朝のやつか……あれはちょっとしたケンカで」
後輩「まずそこがありえないんです!全く人と関わろうとしない女先輩がケンカ?言い寄ってきた相手を一言で切り捨てるあの女先輩がケンカ?」
後輩「絶対ありえないんです!」
男「はぁ……そうですか……」
後輩「それに私、見たんです!お昼休みに女先輩と二人で生活指導室に入っていくのを!」
男「……一緒に昼飯を食ってただけだよ」
後輩「それこそ更にありえないんですっ!!」ズイッ
男「……」
後輩「普段、女先輩は生活指導室で“一人”で食事をしてます。誰かと一緒に食事なんて今まで見たことがありませんっ!!」
男「ていうかどんだけ女さんのこと見てるんだよっ!」
後輩「そりゃ見ますよ!お昼の日課ですから!」
男(サラッとすごい発言したな、おい)
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:39:00.28 ID:/LehkniF0
後輩「あの時、生活指導室で何をされてたんですか?」ズイッ
男「なにって……食事を……」
後輩「嘘です!私、見たんです!」ズイッ
男「な、な、なにを……」
後輩「先輩と女先輩が……その……だ、だ、抱き合って、き、き、き、キスしてるところを!!」
男(やっぱりその事かぁぁぁ!!!)
男「ちょっ、バラすってそのことか!?」
後輩「はい」
男「カーテンも閉まってたはずなのにどうやって……」
後輩「中庭側の窓のカーテンにほんの少し隙間が空いてましたよ?」
男「マジで!?ていうかそれって覗きじゃん!」
後輩「それがどうかしましたか?校内でイヤらしいことさせてる先輩には言われたくありません!」ズイッ
男「ちょ、近い!近いから!」
後輩「はっ……」スッ
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:40:11.45 ID:/LehkniF0
男「ちょっと待て、まず君は色々誤解してる!」
後輩「してません!証拠だってあります!」
男「証拠??」
後輩「はい、動画におさめました」
男「盗撮じゃねーか!!」
後輩「言い逃れはできませんよ、アナタは女先輩の弱味に付け込んで無理矢理イヤらしいことを強要しているんです!罪を認めたらどうですか?」
男「だーかーらー!それが誤解だっつってんだろ!まずその動画とやらを見せてくれなきゃ話にならない」
後輩「どうぞ、ご覧になって下さい」ポチポチ
男「……」
後輩「ほら」スッ
男「……」
男「…………」
男(あれ?カーテンで俺の姿が見切れてる)
男(女さんの姿と俺の足だけが映ってる状態で……なるほど、女さんの動きでそう捉えられたのか……)
男(中庭の雑音で音声も拾えてないし……うん、イケるな)
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:41:38.60 ID:/LehkniF0
男「これが証拠だと?俺の姿が映ってないが?」
後輩「でも女先輩はバッチリ映ってます。あとアナタの足と、女先輩に回された腕とかもバッチリ映ってますよ?」
男「はっ、とんだ言い掛かりだな。話にならない」
後輩「……へぇ……ではどんな言い訳をしてくれるんですかねぇ?話くらいなら聞いてあげますよ」
男「……」
男(よし、食い付いた)
後輩「黙ってるってことは事実なんですよね?」
男「たしかに事故で抱き合った。でもキスはしていない」
後輩「なんですか、その苦しい言い逃れは」
男「言い逃れじゃなく事実だ」
後輩「ふーん……では続きをお聞かせください」
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:42:41.46 ID:/LehkniF0
男「女さんが体勢を崩して転びそうなところを、座ってる俺が抱き止める形で支えたんだ。抱き合ってたわけじゃない」
後輩「ふーん。じゃあキスの件はどう説明するんです?」
男「その時に顔が近付いてしまって、二人して動揺して暫く動けずにいたんだ」
男(この言い訳はさすがに厳しいか……)
後輩「ぐぬぬ……」
男(え?通用してる?)
後輩「それにしても長時間くっついてる様子でしたけど……あと途中で体勢が変わって更に密着してた感じですが?それについてはどう説明しますか?」
男(めんどくせぇぇぇ!)
男(もういっそ本当のこと打ち明け――いや、それはダメだ。女さんの事を俺からベラベラ喋るわけにはいかない)
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:43:42.45 ID:/LehkniF0
男「面倒だが、1から動画を見ながら解説しよう」
後輩「はあ……それならどうぞ」スッ
男(動画には俺の姿はほぼ写ってなくて、女さんの姿だけだ……これを利用すれば……)
男「まず事の発端……動画のここの部分」トントン
男「最初は抱き合ってなかった。俺のワイシャツの首元に糸屑が付いてるのを女さんに取ってもらってたんだ」
後輩「糸……くず?」
男「ああ。その時に女さんが体勢を崩して、俺が受け止めた。それがここの場面」トントン
後輩「……続けてください」
男「ここで暫く動けなかった理由は……この時に女さんは腰を痛めてしまったから」
後輩「え!?」
男(これは厳しいか?ええい!押し通せ!)
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:45:17.32 ID:/LehkniF0
男「俺は起こそうとしたんだけど、女さんは動けず……痛みが落ち着くまで待っていた。その場面がこれ」トントン
後輩「……」
男「女さんが自力で起きようとして、少し上に移動してるのがわかるだろ?」
男(実際は俺の首元から鼻にクンクンシフトしてるだけだけどね)
男「この時に腰に痛みが走った女さんは、俺にしがみつくような形になってしまった」
男「ほら、ここの場面」トントン
後輩「……」
男「続けるぞ?さらにこの時、顔と顔が急接近して二人して動揺して硬直してしまった」
男「女さんに限っては腰の痛みまである」
男「これこそが君がキスと勘違いした場面だ!」
男「そして動揺と痛みが落ち着いた頃、はい!ここ!注目っ!」トンッ
男「女さんが勢いよく離れただろ?」
男「君の言うように、抱き合ってチュッチュッしてラブラブ〜って関係ならこの行動はおかしくない?」
後輩「た、たしかに……」
男「これが事の顛末。つまり真相だ!!」
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:46:19.67 ID:/LehkniF0
後輩「……」ジトー
男「う……」
後輩「たしかに筋が通った言い訳ですけど……でも、やっぱり信用できません」
男(え?筋通ってた?まぁいいや)
男「よく考えてみろ」
後輩「はい?」
男「あの、高潔を体現してる女さんが、なにも取り柄のない俺にそんな事すると思うか?」
後輩「それは弱味を握ったからで……」
男「女さんに詳しい君に尋ねたい。弱味ってなんだ?そもそも女さんに弱味なんてあるのか?」
後輩「そ、それは……うぐぐ……」
後輩「ともかくアナタは二度と女先輩に近付かないで下さい!そうしたらこの動画のこと、黙っててあげます!」
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:47:02.40 ID:/LehkniF0
男「俺は別にいいけど……女さんから俺に接触してきた場合はどうするんだ?」
後輩「そんなことはありえません。女先輩は孤高の存在なのです!」
男(少し前の俺もそう思ってたんだけど、実際はそうならざる得ない理由があったんだよな)
男「それは君が勝手に作り上げた女さんのイメージだよ」
後輩「で、でも女先輩が誰かと一緒にいるところなんて今まで一人も……」
男「そもそも!俺や女さんが誰とどう過ごそうが君には関係ないじゃないか!」
後輩「はうあっ!!」
男「……」
後輩「関係なくないもんっ!」
男「は?」
後輩「関係なくなくないもんっ!」
男「なくなくないもん……って何?」
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:48:11.94 ID:/LehkniF0
後輩「女先輩は私にとって憧れの人なんです!」
男「あー、うん。なんとなくわかってた」
後輩「気品溢れるあの姿に威風堂々とした振る舞い……」
男「……」
後輩「伏し目がちな儚い表情も……はぁ、全てが素敵です」
男(臭いのを我慢してるときの表情です)
後輩「そんな女先輩が誰かと……しかも異性と仲良くするなんて……そんなの許せない!」
男「ええと……つまり君は俺に嫉妬してるってこと?」
後輩「は??なんで私がアナタに嫉妬しなきゃいけないんですか!?」
男「もう……面倒臭い……帰りたい……」
後輩「アナタが女先輩に近づかないって約束してくれるなら帰してあげますよ?」
男(なんで偉そうに指図されなきゃならないんだ)イライラ
男「だから!それこそ俺らの自由だろ!いちいち干渉するなっての!」
後輩「なら私のこの発言も自由ですよね!?私は嫌なんです!女先輩が誰かと――」
男「じゃあ君は女さんにずっと一人でいろって言うのか!?」
後輩「!!」
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:49:04.93 ID:/LehkniF0
男「女さんが孤独であり続けることが君の望みなのか!?」
後輩「っ!そ、そんなことは……」
男「自分の理想や憧れを勝手に女さんに押し付けるな!!」
後輩「っっ!!」
男「それに女さんは、俺を求めてくれてる」
男(人としてじゃなく、匂いとしてだけど)
男「そんな女さんに今後も俺は応えてあげたいと思ってる」
後輩「……」
男「話は終わりだ。じゃ俺はこれで」スタスタ
後輩「待って下さい」ガシ
男「はぁ……まだなにか?」
後輩「まさかとは思ってました。でもそんな事はありえないし、あって欲しくないとも思ってました……」
男「へ?」
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:50:00.07 ID:/LehkniF0
後輩「本当に嫌だけど、絶対認めたくないけど……」
男「何が言いたいんだ?ハッキリ言ってくれ」
後輩「女先輩がアナタに惚れてるってことです!!」ビシッ
男「あ、それはないから安心していいよ」
後輩「でもそう考えると全て辻褄が合うんです!」
男「それは以前にハッキリ否定されてるから」
後輩「お昼のこと……女先輩とアナタが抱きあったあとの事、覚えていますか?」
男「あとの事……?」
後輩「声は聞こえなかったけど、女先輩のあの表情……真っ赤になって照れた顔……」
男「あ……それは、不慮の事故であんな事になって恥ずかしかっただけだよ」
後輩「女先輩のあんな顔初めて見ました。それだけじゃない!アナタには色んな表情を見せていました!」
男「だから違うって、女さんは俺の事なんとも思ってないから」
後輩「その根拠は!?本当にそうなら示してください!!」
男(この子本当めんどくせぇぇぇぇ!!!)
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:50:45.42 ID:/LehkniF0
男「はぁ……」
後輩「……」
男「もうどう受け取ってくれても構わないよ」
後輩「……わかりました」
男「じゃあ……そろそろ帰っていいかな?」
後輩「女先輩がアナタに惚れてるなら……」
男「はぁ……」
後輩「私がアナタを惚れさせてみせますっ!!」
男「えぇぇぇ!!?なにがどうなって何故そうなるんだっ!!」
後輩「私にとって最悪な事態はアナタと女先輩がくっつくことです……」
男「だからね、それはないから落ち着いて」
後輩「これは私からの宣戦布告です!!」ビシッ
男「どうしてそこまで……異常だ……」
後輩「異常?たしかにそうかもしれませんね、同性を好きになるなんて……」
男「はい……?」
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:51:39.88 ID:/LehkniF0
後輩「ええ、そうですとも!私は女先輩の事が好きなんです!!ライクじゃなくてラブの方です!」
男「………………」
後輩「変なのは自覚してます!おかしいですよね!?笑たきゃ笑えって感じです!」
男「やっぱり……」
後輩「なんですか!?」
男「やっぱり俺に嫉妬してたんじゃねぇぇかぁぁ!!!!」
後輩「はぅ」ビクッ
後輩「い、いきなり大声出さないでくださいっ!」
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 10:52:16.14 ID:/LehkniF0
男「別に誰が誰を好きになろうがそんなの関係ない!!それこそ自由だろうが!!」
男「だから君が女さんを好きだろうが俺はなんとも思わない!だけど、だけどなぁ!」
男「なにが宣戦布告だ!?そんな宣言されて俺がお前に惚れるとでも!?」
男「だったら逆に宣言してやる!」
男「俺はお前に絶対に惚れない!」
後輩「……」
男(人のことなんだと思ってんだ……この子も女さんも)イライラ
男「ったく、俺はモノじゃねぇっつーの」
後輩「……」
男「もう帰るからな。じゃあな」
スタスタ スタスタ
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:14:16.11 ID:/LehkniF0
――――
――
男「なんでついて来てるんだ?」
後輩「駅に向かってるだけです」
男「放送部は?」
後輩「今日は元々お休みです」
男「……はぁ」
後輩「……」
スタスタ
スタスタ
後輩「先輩は……その……気にしないんですか?」
男「なにが?」
後輩「私が……えと……女先輩を好きだってこと」
男「別に気にしてない。それこそ後輩の自由だろ」
後輩「でもやっぱりおかしいですよね?」
男「自分がおかしいって思うならおかしいんじゃない」
後輩「どういうことです?」
男「自分自身を認めてない人間を、世間が認めるとでも?」
後輩「……」
男「まずは自分自身を認めるところからだろ」
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:17:23.97 ID:/LehkniF0
後輩「でも一般的には受け入れがたい事じゃないですか?」
男「さっき、君は“女さんのことが好きだ”とハッキリ俺に告げたでしょ?」
後輩「……はい」
男「俺がそれを難なく受け入れられたのは、君が本気で伝えてくれたからだ」
後輩「……」
男「……」
スタスタ スタスタ
後輩「やっぱり先輩は要注意人物です」
男「はぁ……勝手にそう思っててくれていいよ」
後輩「……」
男「……」
スタスタ スタスタ
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:20:35.40 ID:/LehkniF0
後輩「はっ!」ピタ
男「ん?どうした立ち止まって」
後輩「先に行ってて下さい!私の女先輩レーダーが反応してます!」
男「なんだそのレーダーは……。そもそも女さんはとっくに帰ってるぞ?」
後輩「あそこの駅前にあるベンチを見てください」
男「いや?遠すぎて全然見えないんだけど……」
後輩「ほらよく見て下さい!あそこに座ってるの女先輩ですよ」
男「いやいや、どんだけ距離あると思ってんの?……全然見えないから」
後輩「私、目がいいんです!」
男(あれ……なんか既視感が……)
後輩「悔しいけど……多分、先輩に用事があって待ってるんだと思います」
男「用があるなら帰り際に言ってくるだろ。女さんが俺に用事なんて……」
男(まさか……また匂い関係か?でも今日はハンカチ持ってたし……いや、でも……)
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:25:29.16 ID:/LehkniF0
後輩「何か思い当たる節が有るんですか?」
男「……」
男「てか後輩こそ、好きなら接触するいいチャンスなんじゃないか?」
後輩「好きだからこそです!女先輩の前でアナタといる所を見て誤解されたくないんです!」
男「まぁ……どっちでもいいけど。じゃあ帰るからな」ヒラヒラ
後輩「はい」
スタスタ スタスタ
男(女さんは嗅覚が良くて、後輩は視力が良いときたか……)
男(まさかっ!残りの四天王もっ!)
男(いやいや、まさかな)
スタスタ スタスタ
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:30:33.25 ID:/LehkniF0
男「……本当にいた……」
女「!」
女「遅い!遅すぎる!!」
男「え?何してんの?」
女「見てわからない?貴方を待っていたのよ」
男「ええぇぇぇ!!?」
女「ちょっと緊急事態でね。貴方にお願いがあって」
男「緊急事態?」
女「ええ。それは後で話すわ。ところで帰宅部の貴方がこんな時間まで何してたの?」
男「え?ええと……」
女「……」じー
男「そ、それは……」チラッ
後輩「!」
女「??」クル
女「あ――あの子は」
後輩「も〜〜!!」タタタタタ
男「あ……」
後輩「なんでこっち見てるんですか!?」ボソボソ
男「何してたのかって聞かれてつい……ごめん」ボソボソ
後輩「だからって普通こっち見ます!?」ボソボソ
男「君こそ、わざわざこっちに来たら余計誤解されると思うけど」ボソボソ
女「……」じー
後輩「はぅ!」ビクッ
女「……私、お邪魔だったかしら?」
後輩「いえ!!」
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:33:46.34 ID:/LehkniF0
後輩「は、は、初めましてっ!わ、私、後輩といいます!」
女「初めまして。よくお昼に廊下で見かけるから初めてって感じはしないけど」
後輩「え!?」
女「二人一緒だったから遅かったのね。ごめんなさい、お邪魔しちゃって」
男「いやそれは――」
後輩「お邪魔だなんてとんでもないです!!女先輩のことでお話があっただけで……あうぅ」
女「私?」
男「…………」
後輩「あの、その……腰はもう大丈夫ですか??」
男「ぶはっ!!」
女「???」
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:36:53.35 ID:/LehkniF0
男「ゴホン!ちょっと俺から説明させてもらえるかな?」
後輩「え!?で、でも!」
男「大丈夫、余計な事は言わないから」ボソボソ
後輩「…………」
男「女さん」
女「なに?」
男「帰りが遅くなったのは、後輩と話してたからなんだ」
女「ええ、それはもうその子から聞いたわ」
男「今日の昼、生活指導室でのこと、“たまたま”後輩が見かけたんだって」
後輩「あ……」
女「今日のお昼……え……それって……ええ!?」カァァァ
後輩「」ピクッ
男「中庭側にある窓のカーテンの隙間から偶然見えちゃったらしくてね」
女「中庭……」
男「でもほら、隙間からだから中途半端にしか見えてなくてそれで誤解されちゃったんだ」
女「ご、誤解って?」
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:39:55.83 ID:/LehkniF0
男「俺と女さんが抱き合ってキスしてたって」
女「違っ!!アレはそういうのじゃ!!」
男「大丈夫、ちゃんと誤解は解いておいたから」
後輩「……」
男「ほら、あの時……俺の首元の糸くずを取ろうとして腰痛めちゃったじゃない?」じーー
男(気付いて!女さん!アナタなら気付ける!)じーー
女「!!」
女「そうね。あの時はごめんなさい。しばらく動けなくて男くんには迷惑かけちゃったわね」
男「うんうん」
女「今はもう大丈夫よ」
後輩「そうでしたか!それなら良かったです!」
女「そんな事を確認するために男くんを呼び出したの?」
後輩「そ、それは……はい」
女「まぁ……あんな現場を見てしまったら勘違いしてしまうのも無理はないわね」
後輩「は、はい。私はてっきりお二人がお付き合いしてるのかと……」
女「ふふっ、それはありえないわ」
後輩「そう、なんですか?」
女「ええ。私と彼は……利害関係が一致して一緒にいるだけ」
後輩「じ、じゃあ女先輩は男先輩のこと好きってわけじゃ……」
女「……ええ」
女「残念ながら、そういった感情は持ち合わせてないわ」
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:42:47.97 ID:/LehkniF0
男「ほら、俺は散々言ってただろ?」
後輩「そっか……そうだったんだぁ」ホッ
男(ああ、なるほど……後輩は後輩で、女さんは俺に惚れてると思い込んでたからな)
男「だから安心していいぞ」
後輩「そ、そういう事は女先輩の前で言わないでください!///」ボソボソ
女「……」じー
後輩「はっ!そ、そういうわけで私はお先に失礼しますねっ!」
男「うん、じゃあ気を付けて帰ってね」
後輩「はい」ニコ
女「……」じー
後輩「女先輩も、その、失礼します!」
女「うん、またね」
タタタタッ
男「ふぅ……」
女「……」
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:45:02.63 ID:/LehkniF0
男「口裏合わせてくれてありがとう!よくアレでわかったね、凄いよ女さん!」
女「あの部屋のカーテンはほぼ閉まってたから、隙間があるっていってもほんの少しでしょ?ハッキリ見えていたとは思えないわ」
男「うん、実際に見えてたのは女さんの姿と座ってた俺の足だけだったみたいだし」
女「ふーん……」
女「それにしても良かったじゃない、誤解が解けて」
男「ん?ああ、そうだね。抱き合ってキスしてる噂が流れたらお互い大変だし」
女「そんな事じゃなくて」
男「うん?」
女「彼女は今頃、ライバルが一人減って安心してるんじゃないかしら」
男「ライバル?」
男(待てよ……後輩にとってライバルは俺だろ……女さんの発言になんか違和感が……)
女「良かったわね、あんな可愛い子に好かれて」
男「………………」
男(うわぁぁぁ!そういう感じに受け取られたかーーー!!!)
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:48:08.57 ID:/LehkniF0
男「いや、それは違う!それこそ誤解だ!」
女「そう?彼女、お昼の出来事を目撃して居ても立ってもいられなくなったから貴方の所に確認しに来たんでしょ?」
男「いや、いやいや!もし仮にそうなら、惚れてる俺じゃなくて女さんの所に聞きに行かない?」
女「でも私が好きじゃないって知ったときのあの顔とか……照れながら貴方に耳打ちしたりとか」
男(そ・れ・は!後輩は女さんが好きなんです!!とは俺の口からは絶対言っちゃいけないやつ!)
男「女さん」
女「なに?」
男「俺は女さんの体質のことを秘密にする為に、後輩に無茶な説明をして強引に納得させた」
女「そうね。感謝してるわ」
男「女さんに秘密があるように、後輩にも秘密があるんだよ」
女「ふーん」
男「それは俺の口からは決して言えないけど……」
男「それを踏まえた上で、俺が後輩に好かれてることは断じてありえない。ハッキリそう言える」
男「それだけは信じてほしい……かな」
女「……」
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:50:56.79 ID:/LehkniF0
男(なんで俺は必死に誤解を解こうとしてるんだ?これじゃあまるで……)
男(いや違うな。誤った事実を正したいだけだ。後輩のためにも……)
男(……ほんのちょっぴり俺のためにも)
女「まぁ私は別にどっちでもいいけど」
男「……」
女「今後、貴方の匂いを嗅ぎ辛くなるのは……嫌かな」
男「!」
男「後輩は俺のこと虫ケラくらいにしか思ってないから大丈夫だよ!」
女「む、虫ケラ?」
男「それに俺がそんなモテるように見える?」
女「……ぷっ、それを自分で言う?」
男「自慢じゃないけどモテたことなんて過去に一度もない」
女「ふふふ、そうね。納得したわ」
男(はい、納得されました)
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:56:39.15 ID:/LehkniF0
男「ところで、緊急事態ってなんのこと?」
女「あ!」
男(緊急事態……女さんに一体なにが……)
男(わざわざ待ってたってことは余程の事なんだろう)
女「明日って学校お休みでしょ?買い物に付き合って欲しいんだけど」
男(え!?それってデートってこと!?それじゃあ俺の方が緊急事態になっちゃうよぉぉ!)
男「え……そ、そんなこと急に言われても……その……」モジモジ
女「はぁ……貴方に相応しい言い方に訂正するわ」
男「?」
女「人混みの環境に入るために空気清浄機が必要なの、利用してもいいかしら?」
男「あ、そういう事でしたら是非使ってやってください」
女「ふふ、ありがとう」
男「こちらこそ、ご利用ありがとうございます」
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 15:59:53.62 ID:/LehkniF0
女「えーと待ち合わせは……」
男「あ、そうだ!女さんさえよければ携帯の番号交換しない?」
女「番号交換?」
男「そう!だめ?」
女「……だめ……じゃないです」
男「じゃあ……はい、これが俺の番号ね」サッ
女「……」
男「?」
女「……これ、どうしたらいいの?」
男「ん?登録すればいいんだけど……」
女「……」
男「もしかしてスマホ持ってない?」
女「失礼ね!持ってるわよ!ほらっ!」サッ
男「うん、じゃあ登録お願い!」
女「……」
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:09:05.18 ID:/LehkniF0
男「……あ、嫌なら嫌ってそう言ってくれれば……」
女「ち、違くて!その……やり方がわからないの……」
男「え!?」
女「仕方ないじゃない!今まで必要なかったんだし……」
男(そうだ……女さんはずっと人を遠ざけて、人と距離をおいて過ごしてきたんだった)
男「じゃあさ、俺の番号に電話かけてもらっていい?」
女「それくらいなら余裕よ」
男「はい、これが俺の番号ね」スッ
女「うん……ええっと……」
男「……お、きたきた!もう切っていいよ」
女「はい」
男「じゃあ今度は俺が」ササ
女「あ……きた!」
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:12:44.92 ID:/LehkniF0
男「それが俺の番号ね。じゃあそこのボタン押してみて」
女「こ、こう?」
男「そうそう、そしたら新規登録ってあるでしょ?そこから登録できるから」
女「うん……えーと」
男(その間に俺も登録してっと)
女「ねぇねぇ。名前ってどうしたらいい?」
男「ん〜、人によって様々だからなぁ。空気清浄機とかでいいんじゃない?」
女「空気清浄機って……貴方はそれでいいの?」
男「だって……実際そうでしょ?」
女「そうだけど。ちなみに男くんはどんな名前で登録した?」
男「俺は、女さんのフルネーム」
女「じゃあ私もそうしよっと」ポチポチ
男「……」
女「出来た!どう?ちゃんと出来てるでしょ!?」
男「……おお!バッチリだ!」
女「ふふーん。ま、実際やってみたら大したことなかったわ」
男(チラッと見えてしまった。女さんのケータイの連絡帳……登録されてたのは多分、家族だけだ)
男(今までその体質のせいで連絡先の交換ですら断ってたのか……)
男「よし、女さんと番号交換した記念にクレープでも奢るよ」
女「あら、気が効くじゃない」
男「うむ、なんでも好きなのを頼むがよい」
女「何個でも?」
男「う、お手柔らかにお願いします」
女「ふふ、冗談よ」
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:15:24.77 ID:/LehkniF0
――電車内
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
女「クレープご馳走様」
男「いえいえ」
女「買い食いなんて初めてしたわ。こういうのも中々良いものね」
男「そうだね」
女「あ、今可哀想なやつって思ったでしょ?」
男「そんなこと、ないよ?」
女「ふふ」
男「でも緊急事態だなんて、ビックリしたよ」
女「いつもはネットで済ませちゃうんだけど、今回私が欲しいモノは店頭でしか販売してないからどうしてもね」
男「へぇ」
女「そういう時は親に頼んで買ってきてもらうんだけど、今回は都合がつかなくて」
男「あーなるほど。それで緊急事態だったわけか」
女「うん」
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:16:38.33 ID:/LehkniF0
男「明日はショッピングモールだっけ?」
女「そう。移動はバスになるわ」
男「バスか……じゃあ待ち合わせ場所は……どうする?」
女「噴水公園の前でどう?私たちの最寄駅の中間くらいだし」
男「あー、そこなら歩いて15分くらいの距離だ」
女「私は10分くらい歩けば着く距離よ」
男「……」
女「……」
男「そう考えると俺らって結構家近いんだね」
女「そうね、私も同じこと思ってたわ」
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:20:08.39 ID:/LehkniF0
――自宅
男「ふわぁぁぁ」ゴロン
男「風呂入って筋トレもオッケー」ゴロゴロ
男「それにしても……今日は一段と疲れたなぁ……」グデー
男「朝から女さんと喧嘩して、昼に仲直りして、放課後は後輩に絡まれて」
男「うへぇ……疲れたぁ……」
男「…………」
男(ちょっと待て!!)
ガバッ
男(よく考えたら明日ってデートみたいなもんじゃん!!)
男(服とかどうしよう)
男(朝から匂うように……それは筋トレしたから大丈夫か)
男(それにしても)ゴロン
男(女さんと休日におでかけ……)ゴロゴロ
男(楽しみだな)ウトウト
男「zzz」
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:22:19.77 ID:/LehkniF0
男「はっ!!」パチッ
男「え!?朝!!??」ガバッ
男「今何時だ!?」キョロキョロ
男「ヤバっ!!約束の時間10分前!!」
男「ヤバイヤバイ!!!服は……これでいいや!!」ガサガサ
男「せめて歯磨きだけでも速攻で終わらす!!」シャカシャカ
男「寝癖っ!!ダメだ時間がないっ!!もういいやこのままで!!」
男「あと5分っ……走れば間に合うか!?いや、間に合わせるっ!!」
男「急げ!!俺!!」
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:24:52.36 ID:/LehkniF0
――――
――
男「女さんっ!!!」
女「あ、おはよう……って、どうしたの!!?」
男「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」
男「はぁ、走って……はぁ、きた」
女「すごい汗!ちょっと待ってて!」ガサガサ
男「はぁ、はぁ、……?」
女「ほら、ジッとしてて」フキフキ
男「え……ハンドタオルで……ダメだ女さん、汚れちゃうよ」
女「何言ってんのよ……汗だくのままバスに乗るつもり?」フキフキ
男「そ、それは……」
女「いいから。はい!体の方は自分で拭いてね」スッ
男「あり、がとう……」
フキフキ フキフキ
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:25:50.22 ID:/LehkniF0
女「どうして走ってきたの?」
男「寝坊して、遅刻しそうだったから……」
女「呆れた……。連絡くれればよかったじゃない」
男「それは、そうだけど……」
女「あ〜髪もボサボサだし!あっちの水道のとこ行きましょう」
男「は、はい」
男(情けないし……カッコ悪いし……どうしようもないな……俺)ズーン
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:27:17.31 ID:/LehkniF0
女「はい、これで良しっと」
男「寝癖くらい自分でできたのに……」
女「私がやった方が早くて確実じゃない」
男「そうだけど……はぁ、自分が情けなくて嫌になる」ズーン
女「そう?変に格好つけてる人より自然体でいいと思うけど」
男「フォローありがとう」ズーン
女「全く……」
女「頼りになるんだか、ならないんだか」
男「あ、ハンドタオルありがとう。洗濯して返すよ」
女「別にそのまま返してくれて結構よ」
男「いや、でも……流石にこれは――」
女「じゃあ乾くまで持っててくれない?」
男「うん?いいけど」
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:29:09.21 ID:/LehkniF0
男(ふぅ、汗も引いて落ち着いてきた)
男(改めて見ると……女さんの私服姿って新鮮だな)ジー
男(デニムのパンツに白いシャツ、薄いカーディガンを羽織ってて……特に目立った服装ではないけど)ジー
男(雑誌のモデルみたいに着こなしてて格好いいな)ジー
女「なに?」
男(身長はそんな高くないのにスタイル良く見えるのは小顔だからか?)ジー
女「ねぇ、なんなの?」
男(ていうかなんだこの髪型、可愛すぎるだろ)ジー
女「ねえってば!」グラグラ
男「あ、ごめん、女さんに見惚れてた」
女「へっ!?」
男「私服姿って初めてみたからさ」
女「……」
男「女さんって顔小さいし、スタイル良いから何着ても似合うんだろうなぁって」
女「……」
男「?」
女「男くんってたまにサラッと恥ずかしいこと口にするよね」
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:31:05.71 ID:/LehkniF0
男「いやいや、流石に照れ臭いことは言えないし、言わないよ」
女「そう?」
男「うん」
女「ふーん」
男「あ、てかその髪型どうやってやってんの?いつもそんなクルクルしてたっけ?」
女「これはコテで巻いてハーフアップにしてるだけで、そんなに難しい事はしてないよ」
男「コテ??え、じゃあココとかどうなってんの?」
女「これは……こうやって、くるりんってしてるだけ」サッサッ
男「うおぉぉ!すげぇぇ!」
女「そんなに驚くような事?」
男「だって初めて見たからさ!すごい可愛いし、普段と違う髪型の女さんも新鮮だし!」ニコニコ
女「…………」
男「?」
女「……」
男「あれ?俺、また変な発言した?」
女「別にしてないわ」
女「さ、もう行きましょう」
男「??」
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:33:04.08 ID:/LehkniF0
――バス 車内
男「なんとか二人席を確保できたね」
女「……うん」
男「ちゃんと中和できてる?」
女「……うん」
男(?なんか様子がおかしいな)
男「どうかした?」
女「隣に座っただけで男くんの匂いに包まれてて……その……」
男「あ〜、走っていっぱい汗かいちゃったからかぁ」
女「……」
男「でもそれって他の人からしたら汗臭いんじゃ」
女「ううん……なんだろう、言葉にするのは難しいんだけど……」
女「それは平気だと思う」
男「??」
女「それよりも……もうちょっと近くで嗅ぎたい……だめ?」
男(そんな可愛くおねだりされたら)
男「いいよ」
男(って答えちゃうよなぁ)
女「じ、じゃぁ」スス
女「……」スンスン
女「!」
男「どうしたの?」
女「朝なのに放課後の時みたいな匂い!」
男(そ、それは喜んでいいのか?)
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:35:14.45 ID:/LehkniF0
女「また昨日みたいに止まらなくなったらどうしよう……」
男「あ、あはは、バスの中ではさすがに……」
女「ね、男くん……ちゃんと止めてくれる?」
男(う、上目遣いでお願いですか……)
男「エスカレートしそうになったら止めればいいんでしょ?」
女「うん」
男「じゃあ、どうぞ」
女「ん」スッ
男(首元に顔を近づけてきた。よかった鼻とかじゃなくて)
女「……」スンスン
男(てか女さん、俺の匂い嗅ぐとキャラ変わるよなぁ)
女「ん……んっ……」
スンスン クンクン
男「こ、声は少し抑えたほうが……」
女「ん……はぁ……」スンスン
男「…………」
女「……ん……男、くん……」スンスン
男(そ、そんな艶かしい声で俺の名前を囁かないでくれぇぇぇぇ!!!)
女「ん……んんっ……はぁ……」
スンスン クンクン
男(これ、もうそろそろ止めるべきか?)
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:37:01.43 ID:/LehkniF0
男「ね、女さん」トントン
女「?」
男「一旦ストップで」
女「……うん」ウル
男(綺麗なお目目が少し潤んでるのは気のせいですか?ていうかなんで見つめてくるんですか?)
女「男くん……」じー
男「な、なにかな?」
女「あ、あのね……」ウルウル
男「……」
女「もう少しだけ――」
男「ダメです。そもそも止めてと言ったのはアナタでしょうが」
女「う〜〜」
男「そんな目で見てもダメなもんはダメ」
女「だって首だけでこんないい匂いなのに、それが鼻だったらと思うと……」
男「ま、まさか、ココでそれをやるつもりだったの?」
女「ほんの一瞬だけ、ね?お願い」
男(おいおいおい、どうなってんだ!!)
男(キャラが変わるどころの話じゃない!)
男(完全にキャラ崩壊を起こしてるじゃないかっ!)
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:38:43.29 ID:/LehkniF0
男「女さん、落ち着きましょう」
女「……」ススス
男(!?俺の鼻にゆっくり近づいてきてる!強引にくる気か!)
男(だがそうはさせん!ギャラリーのいる中で鼻の匂いを嗅ぐ行為だけはダメだ!)
男「女さん」ガシ
女「む〜!!」
男「あとで思う存分嗅いでいいから、ここは我慢して」
女「あと……で?」
男「そう、あとで」
女「……むぅ」
男「その頃には今以上に熟成されている、そう思いませんか?」
女「熟成……」
男「お楽しみは最後に取っておいた方が格別かと」
女「……」
男(この場を取り繕うために何を言ってるんだ俺は)
女「それもそうね、一理あるわ」スッ
男(冷静になってるし!)
女「ふふっ」ニヤ
男(完全に獲物を捕食する目にっ!!)
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:40:41.90 ID:/LehkniF0
――ショッピングモール
女「着いた!」キラキラ
男「朝なのにかなり人いるね」
女「どっかの誰かさんの身支度で遅れちゃったからね」
男「う……、ごめんなさい」
女「ま、そのおかげでいい匂いになってるんだし問題ないわ」
男「ならよかった……のか?」
女「さ、行きましょう!」ウズウズ
女「〜〜♪」
男「女さんご機嫌だね」
女「当たり前でしょ?今まで来たくても来れなかったんだから」ウキウキ
男「例のハンカチがあれば大丈夫なんじゃないの?」
女「あれはあくまでもその場凌ぎよ。長時間は無理」
男「そうだったんだ」
女「それよりも全部回るのに時間足りるかしら……」
男「全部!?」
女「ん〜時間が惜しいわ、早くいきましょう!」
男「う、うん」
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:42:39.99 ID:/LehkniF0
女「ねぇ、なんで離れようとするのよ!」
男「だって、女の子と寄り添って歩くなんて……」モジモジ
女「この後に及んで何恥ずかしがってるのよ……それじゃ意味ないじゃない!」
男「そうはいっても……慣れてないし、恥ずかしいし」
女「空気清浄機としての役割を全うしなさい!」
男「別に近くにいるだけで中和できるでしょ?」
女「できてないから言ってるの!」
男「え?なんで……」
女「それに周りなんて他人よ、気にするだけ無駄」
男「でも、もし誰かに……」
女「あーもう焦ったいなぁ」グイッ
男「!!!」
男(え、なにこれ……俺の腕に女さんの腕が絡まって……)
男(恋人同士がよくやってるあの腕組み……)
女「あ!これ、いいかも!自然に男くんの匂いを嗅げる!」ぎゅっ
スンスン クンクン
男「あわわわわわ!!」
女「ん、……これ、いい……」ぎゅぅぅ
スンスン クンクン
男(俺の左腕に女さんが密着して……その崇高なお胸の膨らみがっ!!)
男(制服とは厚みが違ってその尊い感触がぁぉぁ!!)
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:44:32.74 ID:/LehkniF0
男「お、女さん、いくらなんでもこれは……くっつき過ぎじゃない?」
女「くっつかなきゃ嗅げないじゃない」
男「そうだけど……でも……」
女「全ては匂いを嗅ぐためよ。ある程度の犠牲は払うわ」
男(犠牲!?なんか酷くない!?)
男「むぅぅ……」
女「あのねぇ、私だって仕方なくしてるのよ?」
男(まぁ、犠牲ってハッキリ言ってたし)
女「この場で匂いを嗅げないことは死を意味するの、わかる?」
男「死!?」
女「まぁ、それは大袈裟かもしれないけど、私にとってはそれくらい辛い環境なの」
男「さっき言ってた中和できてないってどういう事?近くにいれば中和されるんだよね?」
女「そうね。そこだけは私の認識が甘かったわ」
男「?」
女「人とすれ違ったり風向きが変わると、貴方の香りも流されてしまうの」
男「あ、そうか……人が行き交う室内だと特に……なるほど」
女「それなら匂いの元を嗅ぐしかないじゃない。お分かり頂けたかしら?」
男「……」コクコク
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 16:46:08.63 ID:/LehkniF0
男「でもくっつき過ぎると、その……」
女「男くんは私にくっつかれると嫌?」
男「俺は全然いいんだけど、なんか女さんに対して申し訳ない気持ちになる」
女「そんなの一々気にしたらキリがないし、キブ&テイクの精神でいきましょ」
男「ギブ&テイク……」
女「私が男くんにギブできてるか疑問だけど、そこは多目にみてくれると助かるわ」
男(いやいやいや、十分過ぎるほど与えてくれてますよ!)
男「わかった!今日を楽しむために俺も協力は惜しまないことにする!」
女「ええ、ありがとう男くん!じゃあ早速……」ぎゅっ
スンスン クンクン
男(こちらこそありがとうございますっ!!)
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/06/23(火) 16:50:48.05 ID:/LehkniF0
一旦休憩で夜から再開します
思って以上に長くなってしまって申し訳ないです
暖かく見守って頂けたら幸いです
それでは
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 22:37:22.72 ID:/LehkniF0
――ショップ
女「あ!あった!」
男「財布……?」
女「大量に入荷してるって情報は本当だったのね!少し遅れちゃったから不安だったけど、残っててよかったぁ」
男「ああ、欲しかったのって財布だったんだ」
女「うん。期間限定のコラボ品!ショップに行かないと買えないから困ってたのよね」
男「コラボ品?」
女「ほら、ここ見てみて」
男「お?おぉ……さり気なくあの有名なキャラが」
女「そう!そのさり気なくがポイントなの!可愛いよねー」ぎゅっ
スンスン クンクン
男(ふっ、君の方が可愛いよ)
男(なんてセリフは流石に言えません)
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 22:38:50.24 ID:/LehkniF0
女「じゃあ、そろそろハンドタオル返してくれない?」
男「タオル?ああ、でもこれは洗って返したいんだけど」
女「いいから、返して」
男「??……はい」スッ
女「どれどれ……」クンクン
男「!?」
女「んー……ふむふむ」クンクン
男(俺の汗が染み込んだハンドタオルを……マジか……)
女「じゃ、買いに行ってくるからその辺で待ってて!」
スタスタスタ
男(身体とか脇とかも思いっきり拭いちゃったのに……いや、拭いちゃったからよかったのか?)
男(まさか、女さんの例のハンカチって……女さんの体臭を染み込ませた……?)
男(いやいや、まさか……でも俺が嗅いだとき……めちゃくちゃ照れてたよな……)
男(人工的じゃない匂い……)
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 22:40:03.72 ID:/LehkniF0
女「お待たせ!ってどうしたの?何か考えごと?」
男「女さん、そのタオルの匂いどうだった?」
女「うーん……妥協点かな。でもやっぱりこっちには敵わないね!」ギュッ
スンスン クンクン
男(ああ、俺は幸せ者だ……)
男(じゃなくて!!)
男「例のハンカチってもしかして……女さんの匂いを染み込ませたモノ?」
女「…………え?」
男「汗とか体臭とか」
女「違っ!!違わないけど!!違うの!!」
男「あ、ここじゃ迷惑だから、一旦お店の外に!」
女「う、うん」
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 22:41:27.95 ID:/LehkniF0
――
女「あ、あれは、色々な黄金比があって!」
男「黄金比?」
女「洗剤と柔軟剤の量とか!それを毎回寝るときに肌身離さずにくっつけて、数日経ってから完成するの!」
男「くっつける?」
女「うぅぅ……とにかく!そんな感じなの!」
男「体の匂いがするところ……くっつける……もしかして」
女「違う!!聞いてないけど、絶対違う!!」
男「じゃあどこに??」
女「首の後ろとか!……上半身……とか……」
男「上半身?」
女「うぅぅ」
男「…………」
男「そ、そんなに恥ずかしがることないよ!俺はすごくいい匂いだと思ったし」
女「だから恥ずかしいのよ!」
男「大丈夫、俺も匂い嗅がれるの恥ずかしいけど今じゃ慣れてきたし」
女「はぁ……もういいわ。次のお店行きましょう」グイッ
男「おわっ!」
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 22:42:49.07 ID:/LehkniF0
男(服屋、靴屋、雑貨屋、また服屋)
男(つ、疲れた……まだ昼なのに……本当に全店舗回るつもりなのか?)チラッ
女「〜〜♪」ギュッ
男(まだまだ衰える気配は……ないな)
男(匂い嗅ぐ時とかテンション上がる時とか、腕に抱きついてくるし)
男(いいんだけどさ!全然いいんだけどさ!)
男(女さんは目を引くような美少女で)
男(俺は平凡を絵に描いたような男で)
男(なんでこいつが?って顔でたまに周りの視線が痛い)
男「女さん」
女「なぁに?」
男「ちょっと休憩しない?」
女「んー、そうね。ちょうどお昼だし、そうしよっか」
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 22:44:01.96 ID:/LehkniF0
男「そういえば、ご飯の匂いとかは大丈夫なの?」
女「大抵の物は平気!あ、でもフードコートみたいに色んな食べ物の匂いが混じり合ってるのはちょっと……」
男「なるほど」
女「さっき通りかかったときヤバかったわ」
男「あー、だからずっと俺の匂い嗅いでたんだ」
女「うん」
男「女さんは好き嫌いある?」
女「基本的になんでもいけるわ」
男「ふーむ」
女「私、普段外食とかあまりしないから……どこかお勧めある?」
男「そうだなぁ……」
男「ではパスタなんて如何でしょう、お嬢様」
女「パスタ?あら、それはとても素敵ね!是非案内してちょうだい」
男「かしこましました」
女「ふふふ」
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 22:45:55.43 ID:/LehkniF0
――――
――
女「〜〜〜♪」ギュッ
クンクン スンスン
女「はぅ……」ギュッ
男(慣れねぇぇぇ!!もう結構長い時間この状況だけど!全っっ然!慣れねぇぇぇ!!)
男(なんだこの愛くるしい生き物は!!)
男(学校の奴らが知ったら卒倒するレベルだぞマジで!!)
女「パスタ!美味しかった!」
男「美味しかったね」
女「また食べに行きたい!」
男「そうだね」
女「〜〜♪」ギュッ スリスリ
男「……」
男(落ち着け、彼女は俺の“匂い”だけが目的なんだ)
男(勘違いしてはダメだ。俺は空気清浄機、人ですらない)
男(普段出来ないことが出来るようになって……)
男「そうか」
女「?」
男(当たり前のことができなかったんだ)
男(そりゃあテンションも上がるよな)
女「どうしたの?」
男「いや、次行こう次!」
女「?」
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 22:54:10.18 ID:/LehkniF0
――――バス 車内
男(つ、疲れた……)
男(すっかり日も暮れちゃったな……)
男「女さん、今日は満足できた?」
女「……うん」ウトウト
男「結局全部回れなかったね」
女「……うん」ウトウト
男「眠たいなら肩貸すよ?」
女「……ん」ポトン
男「着いたら起こすから」
女「……ん……」
男「疲れたけど……楽しかったなぁ」ウトウト
男「やべっ、俺まで寝たらダメだ」パチンッ
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 22:55:38.73 ID:/LehkniF0
――――噴水公園 ベンチ
男「目、覚めた?」
女「うん。恥ずかしい姿見られちゃったわね」
男「ははは、それこそ今更な気がするけど」
女「ふふっ、そうね」
男「もうすっかり暗くなっちゃったけど……家まで送ろうか?」
女「……」
男「女さん?」
女「約束は?」
男「へ?」
女「思う存分嗅がせてくれるって約束!」
男「えぇぇぇ……」
女「楽しみにしてたのよ!」
男「モールで散々嗅いだからいいでしょ?」
女「その時はほとんど服の上からじゃない!」
男「もう時間も遅いし……熟成してるかわかんねいし」
女「時間が経つごとに貴方の匂いは素晴らしいモノになっていたわ」ウットリ
男「そうですか……」
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 22:57:43.90 ID:/LehkniF0
女「じゃ、ちゃっちゃと済ませるね!」ススス
男「いきなり鼻ですか!?」
女「ちょっと黙ってて」スッ
男「あうぅぅ」
女「……」スンスン
女「!!!」
男「ど、どう?」
女「しゅ、しゅごい……」スンスン
男(しゅごいって……)
女「はぁ……」クンクン
女「ん……だ、だめ」スンスン
男(だめなら止めればいいんじゃない!?)
女「……んん……はぁ……」クンクン
女「!!」バッ
男「ど、どうしたの?」
女「はぁ……すごい……すごいよ男くん……」トロン
男「え?」
女「ドキドキするの……男くんの匂い嗅いでると……」トロン
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 22:59:15.76 ID:/LehkniF0
男「お、女さん?」
女「男くん……」スッ
クンクン スンスン
女「あ……んっ……」
男(な、な、なにが起こってる!?こ、これじゃあまるで……!!)
女「はぁ……男……くん……ふわぁ……んっ」
スンスン クンクン
男(まるで発情してるみたいじゃないかっ!!)
女「どうしよう……男くん……」スンスン
男「と、とりあえず離れた方が……」
女「やだっ!だめっ!」ぎゅぅぅぅ
男「!?」
スンスン クンクン
男(父さん、母さん……僕は今とんでもない美少女に抱き付かれて鼻をクンクンされています)
男(信じられますか?僕は信じられません)
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:02:24.31 ID:/LehkniF0
女「ん……はぁ……んっ……」スンスン
男(なんか女さん……モジモジしてるし……)
女「ふわぁ……ん……あぁ……」クンクン
男(え、エロ過ぎる……)
男「女さん、そ、そろそろお終い」
女「まだ……ん、足り、ないよ……男くん……」スンスン
男(これ以上は俺がヤバいっ!!強引にでも引き離さなきゃ)
男「ごめんね!」グイッ
女「!?」
男「女さん、これ以上は……色々とヤバいよ!」
女「やだやだ!」グイッ
男「うわっ!?」バタン
男(ベンチに押し倒されて、その上に女さんが……!!!)
女「……はぁ……」スンスン
男「お、おんな……さん……」
女「おとこ、くん……」ウルウル
男(ヤバイ!ヤバイ!!ヤバイ!!!)
女「んっ……」スンスン
女「あっ……んんっ……」クンクン
男(鎮まれぇぇぇぇ!!血液よ!一箇所に集まるなぁぁぁ!!!)
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:04:10.72 ID:/LehkniF0
女「はぁ……んっ……あっ……」
スンスン クンクン
男(引き離そうにも無理に起き上がろうとすると女さんがベンチから落ちるかもしれないし!)
男「あ!」
女「……んんっ……」スンスン
男「女さん、人が!」
イッヌ「わんわん!」
女「!?」ガバッ
主婦「あ、す、すみません!ほら行くよイッヌ!」
イッヌ「わんわん!」
スタスタスタ
女「あ、あ……」
男「と、とりあえず……落ち着こうか」
女「う、うん」カァァァ
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:05:03.36 ID:/LehkniF0
――――
男「落ち着いた?」
女「う、うん……私、どうかしてた……」
男「……なんか日を追うごとに、激しくなってる気がする」
女「多分……気のせいじゃなくて、そうだと思う……」
男「遅い時間は匂いが濃いから、かな?」
女「それもあるけど……匂い嗅いでると……」
男「……」
女「ううん、なんでもない」
男「……今日は遅いしもう帰ろう。送るよ」
女「うん、ありがとう」
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:05:58.97 ID:/LehkniF0
――自宅
男(うわぁ、足が棒だ)
男(それにしても……これ以上、女さんに匂いを嗅がせていいのだろうか……)
男(必要最低限で留めておいた方がお互いにいいと思う)
男(今日のアレは明らかにおかしかったし、あのまま止めてなかったら……)
男(ていうか……無理だ!!)
男(俺にはキャパオーバーだ!!なにもかも!!)
男(圧倒的に経験値が少な過ぎる!!)
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:07:06.18 ID:/LehkniF0
――朝 電車
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
女「……」スンスン
男「……」
女「ん……」スンスン
男「……」
女「どうしよう……また……」スンスン
男「!!」
女「男……くん……」スンスン
男(本当どうしよう……)
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:08:52.21 ID:/LehkniF0
スタスタ スタスタ
男「女さん、大丈夫?」
女「うん……」
男「でも朝からスイッチ入るのなんて珍しいね」
女「スイッチ……言い得て妙ね」
スタスタ スタスタ
女「男くんの匂いを嗅いでるとね、途中でスイッチが入っちゃうの」
男「でもショッピングモールでは平気だったよね?」
女「あの時は……周りの目もあったし、ほとんど服の上からだったから……」
男「スイッチが入り辛い状況だったわけか」
女「うん。直接肌の匂い嗅いじゃうと……ダメみたい」
スタスタ スタスタ
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:10:40.03 ID:/LehkniF0
男「スイッチが入りそうになったら止めるとかは?」
女「それが、さっき電車内で分かったんだけど」
女「スイッチ入る間隔が短くなってる気がする」
男「!」
女「というより、男くんの匂いに敏感になってると言った方が正しいかな」
スタスタ スタスタ
男「それでも……また嗅ぎたいって思うの?」
女「…………」コクン
男「これじゃあ本当に薬物みたいだ」
女「…………」
女「責任……とってくれる?」
男「え……それってどういう――」
後輩「おっはよーございまーす!」
男「」ビクッ
女「あら、おはよう」
男「ビックリした……なんだ後輩か」
後輩「なんだってなんですか、なんだって」
男「言葉通りだよ」
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:14:19.78 ID:/LehkniF0
後輩「むぅ……なんで二人で登校してるんですか!」ボソボソ
男「俺と内緒話してると女さんに勘違いされるよ?」ボソボソ
後輩「!!」
女「………………」ジー
後輩「お、女先輩!」
女「はい?」
後輩「今日も男先輩とお昼ご飯食べるんですか?」
女「え?あれはあの日だけで普段は一人よ」
後輩「じゃあお昼ご一緒してもよろしいですか?」
男(おお!攻めるなぁ)
女「……申し訳ないけどお昼は一人で食べる主義なの」
後輩「そう、ですか……」
男(どんまい、後輩)
後輩「じゃあ男先輩でいいや!一緒に食べませんか?」
男「は?俺!?」
女「………………」
後輩「聞きたいこともありますし」
男「いや、でもなぁ」
女「あら、折角誘ってもらってるのに断る気?」
後輩「断る気ですか!?」
男「えぇぇぇ」
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:16:20.45 ID:/LehkniF0
――教室
友「ニイチャンよぉ、随分偉くなったもんだなぁ」ガシッ
男「なにがだよ」
友「両手に花で登校とはいい御身分だな、ええ?」
男「偶然だ、偶然」
友「そんな偶然あってたまるか!!」
男「色々あるんだよ」
友「だから!その色々を俺はまだ聞いていない!」
男「それは……プライバシーに関わることだから言えない」
友「まぁ今はいい。だが昼休み、覚悟しておけよ」
男「昼休み……」
友「たっぷり問い詰めてやるぜ……くくく」
男「……」
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:18:28.68 ID:/LehkniF0
――昼休み
友「くくく……昼までの時間を有意義に過ごせたか?男よ」
男「あー、昼かぁ……悪いけど俺、先約があるから」
友「なに!?そんなのは許さんぞ!?女さん?また女さんなのか!!?」グラグラ
ガラガラ
後輩「失礼します!」
友「後輩ちゃん!?」
後輩「あ!先輩っ!」ヒラヒラ
男「じゃ、そういうことで」スク
友「どういうこと!!?」
女「………………」
友「おのれぇぇ打首じゃぁぁ!!」
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:20:23.87 ID:/LehkniF0
――中庭
後輩「あの後、女先輩なにか言ってましたか!?」
男「あの後……ってなんだっけ??」
後輩「駅前で会った時です!!」
男「あ〜」
後輩「なにか言ってましたか!?」ズイ
男「後輩は俺のこと好き。って勘違いされた」
後輩「うわぁぁん!!やっぱりそうでしたか!一番恐れていた事態がぁぁぁ!」
男「ち、ちゃんと誤解は解いたよ?」
後輩「当たり前です!!」
後輩「でも本当に解けたんですか!?」ズイ
後輩「まさか私の気持ち話しちゃったんですか!?」ズイ
男「ち、近いっ!!」
後輩「むぅ……」スウ
男「後輩の気持ちは伏せてるから大丈夫だよ」
後輩「……」
男「さすがに俺でもそれくらいは心得てるつもりだ」
後輩「それなら、いいですけど……」
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:21:55.37 ID:/LehkniF0
男「あのさ」
後輩「はい?」
男「なんで俺をお昼に誘ったの?それこそ誤解されるリスクがあると思うけど」
後輩「先輩にはどーーしても!確認しておきたい事があったんです!」
男「?」
後輩「先輩の気持ちです」
男「俺の、気持ち?」
後輩「先輩は……女先輩のことが好きなんですか??」
男「……それは……」
後輩「それは?」
男「上手く言えないけど、女さんの事はずっと手の届かない存在……一生関わることのない存在だと思ってたんだ」
後輩「わかります!!」
男「だから……好きっていうより憧れの気持ちの方が強いのかも知れない」
後輩「……」
男「恋愛感情を持つことすら恐れ多いというか」
後輩「ふーん。ま、そっちの方が私は都合がいいのでいいんですけどね」
男「うん」
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:22:53.39 ID:/LehkniF0
後輩「いずれ誰かに女先輩を取られても後悔しないんですか?」
男「あはは、そもそも俺は事前にハッキリ言われてるんだよ」
後輩「はい?」
男「そういう対象にならないし、今後もありえないって」
後輩「え……?」
男「だから妙な期待は持ってないよ」
後輩「…………」
男「女さんが将来どういう人を選ぶのかは凄い興味深いけどね」
後輩「…………」
後輩「ちなみにそれを言われたのはいつ頃ですか?」
男「女さんと親しくなる前かなぁ。でも最近の話だよ」
後輩「ふむ」
男「?」
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:24:22.60 ID:/LehkniF0
後輩「先輩!」
男「ん?」
後輩「先輩は……見た目は普通ですけどよく見ると整った顔してるし、性格はなんでも受け入れてくれそうでチョロ……包容力があるし」
男「チョロって言ってたぞ」
後輩「先輩の良さを分かってくれる人がいつかきっと多分現れます!だから落ち込まないで下さい!」
男「褒めてんのか貶してんのかどっちだよ」
後輩「頑張って褒めてます!」
男「ああ!そりゃどうもありがとうね!」
後輩「……」
男「後輩の恋愛対象は……昔からその、同性だったのか?」
後輩「同性は女先輩が初めてですよ」
男「え?そうなの?」
後輩「はい!だから自分でも戸惑ってましたけど、今はもう吹っ切れてます!」
男「そうだったんだ、俺はてっきり……」
後輩「今まで好きになった人は皆男子です。彼氏だっていましたし」
男「なんという恋愛強者!!」
後輩「でも男の子っていつもエッチなこと考えてますよね?私は普通にお話して一緒に過ごせれば満足なのに」
男(うぐっ、耳が痛い)
後輩「そんな男子は即バイバイです!」
男「ははは」
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:26:02.46 ID:/LehkniF0
後輩「男子に不信感を持ってる時に女先輩に出会いました」
男「……」
後輩「凛とした美しい姿に目が奪われて……最初は憧れだったんです。でも気付いたら好きになっていました」
男「なるほど」
後輩「先輩は女先輩のこと最初から諦めてるんですよね?」
男「うん、そうなるのかな」
後輩「じゃあ宣戦布告は撤回します」
男「あー、そんな事言ってたなぁ」
後輩「先輩を惚れさせる必要ないですもんね」
男「うむ。君には絶対惚れないから無駄なことはやめておきなさい」
後輩「むかっ!私こう見えてもモテるんですけど!?」
男「まぁ……可愛いし愛嬌もあるしモテるだろうなぁ」
後輩「!?」
後輩「な、な、なんですか急に!?」
男「え?」
後輩「べ、別に先輩に褒められても全然嬉しくないですから!」
男「褒めたっていうか、素直にそう思っただけだよ」
後輩「……」
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:28:35.58 ID:/LehkniF0
男「ま、それでも俺が後輩に惚れることはありえないけどね!」
後輩「ふーーーん」ニヤ
男「なんだよ」
後輩「そのわりには私が近付くと焦ってますよね?」ズイ
男「そんなことないぞ」
後輩「もしかして照れてるんですか?」ズイ
男「ち、ちが――」
後輩「私、可愛いんですよね?」ズイ
男「ほ、ほんとこれ以上は……」
後輩「これ以上なんですか?」ピトッ
男「!!!」
後輩「先輩の心臓、すごくドキドキしてますよ?」スッ
男「――!」パクパク
後輩「ね、先輩……私の心臓もドキドキしてるか確認してみますか……?」グイッ
男「うわぁぁぁ!」バッ
後輩「あっはははは!」
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:30:00.23 ID:/LehkniF0
男「お、おまっ!冗談でもやって良い事と悪い事があるだろ!!」///
後輩「顔真っ赤だー!先輩ったらかっわいいー!」
男「赤くない!断じて赤くない!」///
後輩「ふふーん、先輩堕とすの案外楽勝かも」ニヤ
男「それとこれとは話が別っ!!」
後輩「でもこんな事されると少しは意識しちゃいません?」
男「む……そんなことは……ない」
後輩「人の気持ちなんてちょっとしたキッカケで簡単に動くんです」
後輩「だから……“ありえない”なんて事はないんです」
男「あ……」
後輩「なので先輩が私に言った絶対惚れないって言葉に訂正を求めますっ!!」
男「うーむ……でもなぁ」
後輩「もう先輩ったら、まだ足りないんですかぁ?」ズイ
男「わ、わかった!訂正しますから!!」
後輩「よろしい!」
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:31:30.96 ID:/LehkniF0
――放課後
友「男よ、俺はこれからバイトがあるんだ」
男「うん?頑張ってね」
友「くっ、また男と話しができなかった!」
男「最近は……そうだね」
友「本当は女さんとか後輩ちゃんとかどうでもいいんだ……」
男「友……」
友「俺は……俺は……ただお前と!一緒に過ごしたいだけなんだっ!!」ガバッ
男「やめろ!気色悪いっ!」
友「なんで避けるんだっ!マイ・フレンド!」
男「やけにテンション高いな」
友「あ!わかる?」
男「うん」
友「今日バイトに新しく女の子が入るんだ。これがテンション上がらずにいられるかっ!」
男「単純な奴だな」
友「あはは!そういうわけでまた明日なっ!」
男「おう」
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:33:21.15 ID:/LehkniF0
男(さて、俺も帰るかな)
男(女さんは……)チラッ
女「」バッ
男(ん?あれ?)
男(目を逸らされた?てかこっち見てた??たまたま?)
男「女さん」
女「なに?」
男「よかったら一緒に帰らない?」
女「……結構よ」
男「え?なにか用事でもあるの?」
女「いえ、特にないわ」
男「じゃあ一緒に」
女「……」
男「?」
女「あの子と帰るんじゃないの?」
男「あの子?友ならもう先に帰ったけど」
女「違う。ほらあの可愛い後輩の子と」
男「後輩?別に約束はしてないけど」
女「あらそう」
男「一緒帰ろ、女さん」
女「……」
男「女さん?」
女「ちょっと来て」
男「???」
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:35:33.56 ID:/LehkniF0
――生活指導室
女「座って」
男「う、うん」ストン
女「……」スッ
スンスン クンクン
男(いきなり鼻の横の匂いを)
女「ん……」スンスン
男(大丈夫か?またスイッチ入ったら……)
女「……」スンスン
ピタ
男「?」
女「……」
男「どうしたの?」
女「……帰りましょう」
男「え?もしかしてあんまり匂いしなかった?」
女「ううん、そんな事ないわ」
男「???」
女「またスイッチ入っちゃうと嫌だし、程々にしなきゃ」
男「まぁそうだけど……」
女「ほら行きましょう」
男「んん???」
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:36:26.33 ID:/LehkniF0
――翌朝 教室
男(昨日に続いて今日も女さんの様子がおかしい)
男(今日の朝の電車も……いつもより控え目だったし)
男(返事もどこか素っ気ないというか……)
男(スイッチが入ることに戸惑っていたから本格的に匂い離れしようとしてるのかな?)
男(そうなると俺と女さんの接点は……)
男(……)
友「おーい、戻ってこーい!」
男「え?」
友「体育だろ?着替えてないのお前だけだぞ!」
男「あ、うん」
友「?」
友「変な奴」
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:37:50.29 ID:/LehkniF0
――昼休み
男(女さん大丈夫か!?)
男(体育の後から例のハンカチをずっと当ててるし、顔色も悪い)
女「」スクッ
タタタ
男(やっぱり!!)
男(どうして俺を頼ってくれないんだ!?)
男(目すら合わせようとしない……余計なお世話なのか?)
男(いや、今はそんな事言ってる場合じゃないっ!!)
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:41:15.78 ID:/LehkniF0
――生活指導室
トントン
男「女さん、いる??」
トントン
男「開けるよ?」
ガチャガチャ
男「鍵が……いないのか?」
トントン
男「女さん!いるなら開けてくれ!」
カチッ
男(鍵が開く音!!)
ギィィ バタン
男「女さんっ!」
女「お、おとこくん……」ウル
男「やっぱり!大丈夫!?」
女「うぅ……平気だから……」
男「平気そうに見えないよ!ほら、早く匂い嗅いで!」
女「……」プイッ
男「なんで?辛いなら今すぐ――」
女「貴方は、空気清浄機なんかじゃない!」
男「…………え?」
女「男くんは一人の人間で、物じゃないの!」
男「え、ああ、うん。だけど!」
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:43:03.90 ID:/LehkniF0
女「本当は気軽に利用なんてしちゃいけないの!」
男「今更なにを……俺は気にしてないよ?」
女「私が気にする……」
男(え……これって……拒絶されてる……?)
女「だから放っておいて!」
男「でも!」
女「私は今まで一人でなんとかしてきた!」
女「ひと時の安らぎに身を委ねてたら、私はどんどん弱くなる!」
男「……それは……」
女「前までは耐えられた臭いも……今じゃ……」
男「そんな!まさか俺のせいで臭いの耐性が低くなってる!?」
女「それは……わからない……けど 」
男「けど?」
女「お願い、私の為を思うなら放っておいて……」
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:52:48.73 ID:/LehkniF0
男「……わかった。女さんがそこまで言うなら今はそっとしておくよ」
女「ありがとう」
男「これ、体育の時に使ってた俺のタオル」スッ
女「……!」
男「……」
女「……」
男「女さん?」
女「朝もこれからは別々にしましょう」
男「!!?」
女「今まで苦労かけてごめんなさい」
男「な、なんでそんなことを!?」
女「自分勝手に男くんを振り回して……本当にごめんなさい」
男「なんで謝るの?俺は別に……」
女「ごめんなさい、男くん……ごめんなさい」
男(やめてくれ、謝らないでくれ……)
女「貴方の優しさに甘えてたけど、それじゃあダメなの」
男「え…………」
女「だからもう……」
男(やめてくれ……なんでいきなりそんなこと言うんだ……)
女「そして」
男(やめてくれ!それ以上は――)
女「今までありがとう。言葉に言い尽くせないくらい感謝してます」ペコ
男「おんな……さん……」
男(ああ……そうか、もう終わり、なんだ……)
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/23(火) 23:56:39.10 ID:/LehkniF0
――放課後
友「男っ!今日こそは一緒に帰るぞっ!!」
男「ああ」
友「へ?」
男「帰ろう」スクッ
友「え?あれ??」
スタスタ
友「お、男!?」
男「……」
友「どうした?何かあったのか?」
男「何もないよ」
友「何もなくないだろ?話くらいは聞くぜ?」
男「ごめん、今は話す気になれない」
友「……なるほど」
友「そうか……ま、すぐ忘れられるさ!気にすんな!」ポンポン
男「なんだよそれ」
友「どうせ女さんに振られたんだろ?」
男「……別にそういうわけじゃ……」
友「ははは!強がるなって!振られ慣れてる俺の目は誤魔化せないぜ?」
男「……」
友「女の傷は女でしか癒せない、ってよく言うだろ?早く次の相手をみつけるのが一番さ!」
男「……」
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/06/24(水) 00:01:18.31 ID:/9lDkpLY0
一旦おしまいです
長々と失礼しました
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/24(水) 00:12:04.77 ID:k6d4skTDO
おつ
素になってる時の可愛い生き物っぷりがとても良い…
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/24(水) 00:26:39.71 ID:/9lDkpLY0
明日には完結すると思いますが、当初はこんなに長くする予定ではなかったです
力不足を痛感しています
ちなみにこのSSは“いい感じの女子に突如振られる”というよくある怪現象をコンセプトに作り始めたので、どういう結末にするか未だに迷ってます
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/24(水) 01:12:59.09 ID:vSQEPkLZ0
おつ
どんな形でも完結すればおけ
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/24(水) 23:05:55.98 ID:/9lDkpLY0
――自宅
男(あ、早く風呂入らなきゃ!……って)
男(もう匂いを嗅がれることはないのか)
男(寝る前の筋トレも、朝早く起きることも)
男「……」ピッ
男「ははは、番号交換したけど……結局一度も連絡しなかったな」
男「……」
男(体育のあと、タオルを差し入れするくらいは……)
男(いやでも……女さんは放っておいてって言ってたな……)
男「はぁ……だめだ」
男「どうしても女さんの事ばっか考えてしまう」
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/24(水) 23:06:58.07 ID:/9lDkpLY0
男「おはよ」
友「お、最近早かったのに今日は遅いな」
男「早起きはやめたんだ」
友「ははーん」
男「余計な詮索はやめてくれ」
友「ははは!おかえり男!」ポンポン
男「うっせ」
男(女さんは……)チラッ
男(いつもと同じように読書か)
男(前までの日常に戻っただけだ)
男(平穏な日常に)
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/24(水) 23:07:59.89 ID:/9lDkpLY0
友「男!帰ろうぜ」
男「ああ」
友「今日ゲーセン寄ってかない?」
男「いいね」
友「お前が付き合い悪い間に、俺は腕を上げたぞ?」
男「面白い、受けて立つ」
男(いつも通りの日常……それも悪くないよな)
男「おはよ」
友「おはよ!」
女「……」
男(いつも通りの日常)
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/24(水) 23:09:40.72 ID:/9lDkpLY0
友「いや〜疲れた!!最近暑くってきたから体育の時間が苦痛だぜ」
男「そう、だね」
男(女さんは……)チラッ
女「」スクッ
タタタタタッ
男(ハンカチを口に当てたままどこかに……)
男(大丈夫かな)
男(……いや、俺が行ったところでまた……)
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/24(水) 23:10:42.94 ID:/9lDkpLY0
男「帰ろうぜ」
友「今日バイトだわ」
男「マジか」
友「ははは!そーかそーか寂しいのか」
男「別にそんな事言ってないだろ!」
女「」スク スタスタ
男(前と同じような平穏な日常)
男「おはよう友」
友「おはようさん」
男「帰ろう」
友「おお、今日は――」
男(いつも通りの日常)
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