女「私は鼻が効きますから」

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188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:13:56.55 ID:/9lDkpLY0
――1週間後

男「……」ゴロン

男(どれだけの時間が経てば忘れられるんだ?)

男(時間が経つほど考えるのは女さんの事ばっかで)

男(同じ教室にいるのに話せない)

男(辛そうにしてるのに何も出来ない)

男(一緒に出かけたショッピングモールも今では遠い昔に感じる)

男「はぁ」ゴロン

男「女さんに会いたい」ボソ
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:17:05.81 ID:/9lDkpLY0
――放課後

友「男、帰ろうぜ」

男「ああ」

ガラガラ

後輩「失礼します!」

女「!」

友「あれは後輩ちゃん?」

後輩「すみません、男先輩お借りしてもよろしいですか?」

友「え?あ、別にいいけど……」

男「……」

友「そういえばお前、後輩ちゃんとも仲良かったよな」

後輩「ね、先輩!デートしませんか?」

友「!!?」

男「……」

友「あれぇ?男くぅん?どういう事かなぁ?」

後輩「先輩ってば聞いてます!?」

男「なんの用?」

後輩「だからデートですって!ね、行きましょう」グイッ

男「あーもう、わかったから引っ張るなって」

後輩「女先輩、男先輩お借りしますね」

女「!?」

男「女さんは関係ないから」

後輩「ふーん。ま、いいや!行きましょ」ギュッ

友「腕組みっ!?男てめー!羨ましいぞチクショー!!」

男「……」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:19:01.94 ID:/9lDkpLY0
――――
――

男「もう腕はいいだろ」

後輩「え?いいんですか?男子ってこういうの好きっていいません?」ギュッ

男「そうみたいだな」

後輩「これは相当重症ですね」パッ

男「それで、わざわざ芝居までしてなんの用だ?」

後輩「デートです!」

男「はぁ……そういう気分になれないから」

後輩「どこか落ち着ける場所に行きましょうか、先輩」

男「……」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:20:35.29 ID:/9lDkpLY0
――公園

ギコ ギコ

後輩「あははっ久しぶりにやると楽しー!」

男「……」

後輩「先輩もどうですか?」

男「遠慮しておくよ」

後輩「ブランコ楽しいのに……よいしょっと!」ズサッ

男「……」

後輩「隣、失礼します」ストン

男「……」

後輩「最近、女先輩と一緒にいませんよね?」

男「やっと本題か……」

後輩「朝も昼も放課後も、一緒にいるのを見かけてません」

男「それは……あの期間だけが特殊だったんだ」

後輩「なにかあったんですか?」

男「何もないよ……元に戻っただけ」

後輩「ふーん」

男「……」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:22:16.88 ID:/9lDkpLY0
後輩「先輩、ちょっといいですか?」

男「?」

後輩「ジッとしててください」

男「はい!?」

男(後輩が女さんみたいな事言うとは……驚いた)

後輩「この辺かな?」スッ

男「!!?」

後輩「……」スンスン クンクン

男「え、えぇ!?な、な、なんで……!!」

後輩「んー?よく分かんないなぁ」スンスン

男「ど、ど、どういう事だ!?」

後輩「どういう事って……こういう事ですよ」ニコ

男「えぇぇぇ……」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:23:59.26 ID:/9lDkpLY0
後輩「あれは、一週間くらい前の事です」

後輩「お昼休みの時に、ハンカチを口に当てて急いで生活指導室に入る女先輩を見ました」

男「あの時か……」

男(最後に会話した、あの日)

後輩「ほら、私って目が良いから離れてても良く視えるんです」

男「ああ、言ってたね」

後輩「なんだか具合が悪そうだったので心配になっているところに男先輩が慌てて後を追いかけて」

男「……」

後輩「悪意はなかったんですが、尋常じゃない様子だったので聞き耳を立ててしまいました。すみません」ペコ

男「いや、いいんだ。続けて」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:26:37.36 ID:/9lDkpLY0
後輩「あの時の先輩、具合悪そうな女先輩に“匂いを嗅ぐ?”と言っていましたよね?」

男「」コクン

後輩「女先輩は、先輩に向かって“空気清浄機”とも言ってました」

男「ああ」

後輩「二人の会話を一部始終盗み聞きした私は、真っ先にあの日の動画を見返しました」

男「動画……!!」

後輩「全てのピースが噛み合うかのように、私の中の疑問は解決しました」

男「……」

後輩「あの時の動画に映った行動は、女先輩が男先輩の匂いを嗅ぐ行為……だったんですね?」

男「ああ、その通りだ」

後輩「やっぱり、そうだったんだ」

男「騙すような真似してごめん」

後輩「いえ、いいんです」

男「……」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:28:29.24 ID:/9lDkpLY0
後輩「ここからは私の憶測になります」

男「うん」

後輩「女先輩は嗅覚が人よりも優れていて、他人の臭いが苦手なのでは?」

男「そうみたい、だね」

後輩「でも例外がいました」

男「……」

後輩「誰も寄せ付けず、人と距離を置いて過ごしてきた女先輩が唯一……普通に接する事ができた人物」

男「……」

後輩「それは……男先輩!アナタです!!」ビシッ

男「……」

後輩「今の名探偵みたいでカッコ良くないですか!?」

男「そうだね」

後輩「女先輩にとって、男先輩の匂いの恩恵は計り知れないものがあったと考えます。空気清浄機と呼ぶくらいですから」

男「うん」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:30:48.85 ID:/9lDkpLY0
男「でも、もう俺の役目は終わったんだ」

後輩「そもそも!そこが納得いきません!!」

男「え?」

後輩「なんであの時、素直に身を引いちゃったんですか!?」

男「あの時……」

後輩「女先輩に“放っておいて”と言われてなんでその通りにしちゃったんですか!!?」

男「はあ!?女さんからああ言われたら従うしかないじゃないか!」

後輩「抱きしめて『俺がずっと側にいる』くらい言えないんですか!?」

男「相手の気持ちを無視してそんな事言えるわけないだろ!!」

後輩「相手の気持ちじゃないです!大事なのは自分の気持ち!前に先輩が私に言った事じゃないですか!!」

男「!!」
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:32:18.94 ID:/9lDkpLY0
後輩「そもそも、恋愛対象外って言われたのっていつでしたっけ?」

男「それは……親しくなる前……」

後輩「ずっと人を避けてきた女先輩のその言葉をいつまで鵜呑みにしてるんです?」

男「今後もありえないってハッキリ明言されたら誰だって身動き取れなくなるだろ!」

後輩「“ありえない”事がありえないんです!!」

男「あ……」

後輩「人の心は変わります!良い方向にも悪い方向にも」

男「そうか」

後輩「はぁ……しっかりしてくださいよ」

男「ご、ごめん」

後輩「情けない先輩に一つ、とても重要な事を教えてあげます」

男「重要な事?」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:34:36.21 ID:/9lDkpLY0
後輩「なんで女先輩が男先輩を遠ざけたのか考えたことありますか?」

男「それは……独り立ちしたいから?」

後輩「やっぱり分かってなかったんだ……」

後輩「鈍感なのもそこまでいくと犯罪レベルですよ?」

男「うぐっ……じゃあなんでだよ!?」

後輩「あの日のお昼、私達はどこで食事をしましたか?」

男「中庭」

後輩「女先輩がいた場所は?」

男「生活指導室…………」

男「あっ!!」

後輩「私たちのやり取りを女先輩が見ていた可能性を考えなかったんですか!?」

男「でも……それって……それじゃあまるで!!」

後輩「ずっと孤独に生きてきた女先輩です。きっと初めての感情だったんだと思います」

男「…………」

後輩「悔しいけど私じゃダメなんです」

後輩「男先輩じゃないと……だから……」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:39:39.56 ID:/9lDkpLY0
男「ありがとう、後輩」

男「今すぐ行ったら迷惑……かな?」

後輩「はぁ……そんな大事なこと自分で考えて決めてください」

男「思い立ったが吉日、って言うしな……うん、行くよ」

後輩「はい」

男「本当にありがとう」

後輩「お礼はいらないです!その代わりなんでもお願い聞いてください」

男「ああ、ここまでしてくれた後輩の為だ。出来る範囲の事ならなんでもするよ!」

後輩「約束ですよ!じゃあ行ってあげてください!」

男「ありがとう!」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:41:47.54 ID:/9lDkpLY0
――――

男「はぁはぁ」

男(情けない!自分の情けなさに反吐がでる!)

男(後輩にここまでしてもらってようやく気付くなんて!)

男(女さんの気持ちも、俺の気持ちも)

男「はぁはぁ、つ、着いた」

ポチポチ

男「頼む、出てくれ!」

プルルルル プルルルル

男「……」

プルルルル プルルルル

男「……」

プルルルル プルルルル

女『もし……もし?』

男「あっ!女さん!」

女『男くん……どうしたの?』

男「大事な話がある。とても、とても大事な話が」

女『え……でも』

男「今、女さんの家の前にいるんだ」

女『えええ!?』

男「待ってるから。それじゃあ」

プチ
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:43:09.89 ID:/9lDkpLY0
男(強引だったか?でも、ああでもしなきゃ出て来てもらえない可能性もあるし)

男(出てきてくれるのを信じて待つ。それだけだ)

男「……」

男「…………」

男「………………」

ガチャ

男「!!」

男「女さん……」

女「どういうつもり?急に家の前まできて」

男「よかった、出てきてくれた」

女「返事を待たずに切られたら出て行くしかないでしょ?」

男「これから少し時間をもらってもいいかな?」

女「それは……いいけど……ココじゃ落ち着かないわ」

男「そうなると……噴水公園は?少し歩くけど」

女「問題ないわ」

男「じゃあ行こう」

女「……」
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:44:37.13 ID:/9lDkpLY0
スタスタ スタスタ

男「時間は大丈夫?」

女「ええ。この時間はいつも一人だし……」

男「そうなんだ」

女「……」

男「……」

スタスタ スタスタ

男(あれ、いつ話せばいいんだ?歩きながら話すことでもないよな)

女「あ、そうだ」

男「?」

女「これ」スッ

男「体育の後に貸したタオル……」

女「その、返すタイミングが掴めなくて……遅くなっちゃったけどありがとう」

男「ううん、いいよ」

スタスタ スタスタ
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:46:28.73 ID:/9lDkpLY0
女「言っておくけどちゃんと洗ったからね!」

男「あはは、ありがとう!」

男「あ、本当だ。女さんの匂いがする」クンクン

女「別に何もしてないから!」

男「そうじゃなくて、女さんが使ってる柔軟剤の匂い」

女「そ、そういうことね」

スタスタ スタスタ

男(懐かしいなぁ、こうやって話すのも)

男(久しぶりなのにこの雰囲気はやっぱり落ち着くというか)

男(さっきまで緊張してたけど、女さんの顔を見て話しただけで解れるなんて)

男(単純だなぁ)

スタスタ スタスタ

女「着いた」

男「うん、向こうのベンチに行こう」

女「」コクン
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:47:48.74 ID:/9lDkpLY0
――噴水公園 ベンチ

男「電話でも伝えたけど大事な話があるだ」

女「…………」

男「まずは謝らせて」

女「え?」

男「ごめん、女さん」

女「ど、どうして……?」

男「女さんはその体質のせいで、ずっと苦労して生きてきた」

女「……うん」

男「女さんと仲良くなる前は、その事も知らずに勝手に女さんのイメージを作り上げてたんだ。周りと同じように」

女「周り……」

男「崇高な存在。孤高の存在。色んな呼ばれ方があるのは知ってた?」

女「うん」

男「俺もその一人。決して交わる事のない人だって思い込んでた」

女「……」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:50:04.77 ID:/9lDkpLY0
男「女さんにとって俺の匂いが癒しになると知ったとき、女さんの体質を知ったとき、俺は舞い上がってた」

男「あの女さんを俺が救うことが出来るんだ!ってね」

女「……」

男「その後、女さんがどれほど苦労して生きてきたか思い知らされるんだけど」

女「あのケンカした時のこと?」

男「うん」

男「あの時から、女さんは崇高な存在なんかじゃない、普通の女の子なんだって思うようになった」

女「……」

男「でも実際は……思てなかった。ほんのついさっきまで女さんを崇高な存在としてみていた」

女「ええ!?」
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:51:48.72 ID:/9lDkpLY0
男「女さんとは日に日に距離が縮まっていく実感はあった。少なくとも俺はそう感じていた」

女「うん」

男「でも心のどこかでブレーキをかけている自分もいて」

男「それは女さんを一人の女の子としてみていなかったから」

男「崇高な女さんに対して引け目を感じていたからなんだ」

女「そ、そんな……」

男「だからその事を謝りたい。ごめん」

女「……」

男「実はそれを気付かしてくれたのは後輩なんだよ」

女「あの子が!?」

男「うん」

男「はは、自分の情けなさに嫌気が差したよ」

女「……」
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:53:39.43 ID:/9lDkpLY0
女「……」

男「でもそのおかげで自分の正直な気持ちに気付けたんだ」

女「……」

男「しかも不思議なことに気付いたらどんどん溢れてくる」

女「……」

男「ふぅ……」

男「よく聞いててね、女さん」

女「は、はい……」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:01:53.17 ID:ryF6UHI00
男「俺は女さんの事が好きだ」

女「……!!」

男「一人の女の子として、女さんの事が好きなんだ」

女「……」ジワッ

男「!」

男(女さんが涙を……)

女「うっ……ううう……」

男「言うの遅くなっちゃってごめんね、泣かないで女さん」

女「お、とこ……くん……うっ……うぅぅ」

男「些細な事で笑って、喜んで、驚いて、怒る女さんを近くで見ていたい」

女「うっ……ぐすっ……うぅ」

男「女さんが今まで出来なかった事、諦めてた事を側で見守りたい」

女「ぐすっ……うぅぅ……」

男「ダメかな?」

女「そ……そんなの……ぐす、男くんが、いなきゃ……うぅ……できない」

男「うん。だから俺と付き合ってくれない?」

女「ず、るい、よ……うぅぅ……断れない、じゃん……うぅ……ぐす」

男「しかも嗅ぎ放題の特典付きだよ」

女「ば、か……」ギュッ

男「!?」

女「お、とこ、くん……」ぎゅっ

男「大好きだ、女さん」ぎゅぅぅ

女「わ、わたしも、大……好き……」ぎゅぅぅ

男「ああ……ぐすっ……よかったぁ」
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:03:45.93 ID:ryF6UHI00
――――

男「落ち着いた?」

女「うん……」スンスン クンクン

男「こんな時でも匂い嗅ぐんだ?」

女「うん……」スンスン クンクン

男「ははは」

女「……」パッ

男「あれ?もういいの?」

女「これからは……好きな時に嗅げるし……」カァァァ

男「おお……!」

女「なに驚いた顔してるのよ」

男「いや、破壊力が凄いなぁと」

女「なにそれ、ふふっ」

男「あっ!」

女「ん?」

男「俺が自分の気持ちを抑えてたのは女さんにも原因があるんだよ」ジト

女「え?私に?」
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:05:01.81 ID:ryF6UHI00
男「だって最初の頃に言ってたから」

女『私は貴方に対して好意はありません』
女『今後抱く事もありえません』
女『貴方が今後、私に対して特別な感情を持ってもそれには応えられません』

男「って」

女「そ、それは……!」

男「それは?」

女「だってその時は好きじゃなかったし……」

男「なかったし?」

女「まさか自分が人を……好きになるなんて思わなかったし」

男「ほうほう」

女「つ、付き合うなんて以ての外じゃない?」

男「なんで?」

女「私こんな体質だし、絶対面倒臭いじゃない」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:06:54.92 ID:ryF6UHI00
男「女さんは自分の魅力に気付いてないの?」

女「魅力?外見は昔から言われてたから、理解してるけど、それくらいじゃない?」

男「その外見だけであらゆる障害を受け入れられるのが男の性ってやつなんだよ」

女「それはなんか嫌ね……見た目で寄ってくる人が一番嫌い」

男「あぁ……苦労してそうだもんなぁ」

女「まさか男くんも……私の見た目だけで?」ジト

男「見た目が魅力的なのももちろんあるよ!でもそれはあくまでもキッカケで!」

女「へぇ?」

男「俺が女さんを好きな要素の一つでしかない」

男「だって容姿も含めて女さんでしょ?」

女「男くん……」

男「今ではそのちょっと面倒くさい内面も愛おしいって思ってるよ」

女「!?」

女「面倒くさいってなにそれ!?普通そういうこと面と向かって言う!?むー!!」

男「あはは!さっき自分で面倒臭いって言ってたじゃないか」

女「あれは体質!性格なんて一言も言ってません!」

男「あはは、ごめんごめん」

女「もう!」
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:08:55.53 ID:ryF6UHI00
男「ところで女さんはいつから俺の事を意識してたの?」

女「えぇ!?私!?」

男「うん。聞かせて欲しいな」

女「私の場合は……」

男「うん」

女「少し話を変えてもいい?」

男「ん?」

女「実は男くんの匂いに気付いたのって結構前なの」

男「!?」

女「元々クラスの中にいる事は分かってたけど、それが特定できたのはって意味ね」

男「え、それっていつ頃?」

女「あの日は雨が降って湿気も多くて、私にとっては最悪な日だった」

女「しかも電車は遅延してて女性専用車両に乗れないくらい人が溢れてた」

男「遅延……それってかなり前じゃない?」

女「ええ」

女「なんとか乗った車両にクラスメイトの男子がいて、しかもその人は私が探し求めてた匂いの持ち主」

男「あの時か……ぎゅうぎゅう詰めで全然わからなかった」

女「貴方の目の前にいたけどね」

男「うそ!?」

女「でもそのおかげで雨の日の満員電車なのに、快適に過ごす事が出来たわ」
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:10:56.01 ID:ryF6UHI00
男「まさかその時から意識を?」

女「いえ、全然」

男「あ、そうですか」

女「もう一度匂いを嗅ぎたくなって、でも自分から話しかける勇気がなくてしばらく葛藤して過ごしてたわ」

男「結構長い間、葛藤してたんだね」

女「仕方ないじゃない……人との接し方がわからなかったから」

男「そうか。そうだよね」

女「匂いを嗅ぎたいって欲求が上回ったのかしらね、思わず呼び止めてしまったわ」

男「それが一番最初の日か……」

女「最初は匂いを嗅がれることに戸惑っていた貴方は、次の日以降……私を助けようとしてくれた」

男「余計なお世話かもって思ったけど……」

女「ううん、すごく助かったしすごくありがたかった。でもその優しさを素直に受け入れられない自分もいたの」
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:14:57.08 ID:ryF6UHI00
男「人に慣れてない故……か」

女「ええ。そして私は男くんの優しさに疑問を抱くようになって、私はつい感情的になってしまった」

男「あのケンカした日?」

女「うん」

女「男くんの事は徐々に意識してたんだけど、決定的に意識し始めたのは……やっぱりあのケンカした時からかな」

男「そうだったんだ」

女「あの時の男くん、なんて言ったか覚えてる?」

男「恥ずかしい言葉を色々吐いてたような気がする」

女「ええ。『今の女さんは一人なんかじゃない、俺がいるだろ!』って」

男「うわぁぁぁ!思い出さないで!」///

女「嬉しかった……あんな事言ってくれた人、男くんが初めてで」

男「女さん……」
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:16:34.10 ID:ryF6UHI00
女「恋愛感情をハッキリ自覚したのはショッピングモールに行った日の朝、貴方が遅刻してきた時よ」

男「えぇ!?嘘でしょ!?どこに惚れる要素があった!?」

女「ふふ、自分でも驚いたわ」

男「どういう事?聞かせて」

女「前日からショッピングモールに行ける事にワクワクしてたの、遠足前の子供のようにね」

男「うん」

女「服は散々迷ったあげくシンプルなものにした。男の子と出掛けるのなんて初めてで……でも気合い入れるのもなんだか恥ずかしいじゃない?」

男「ああ、それは凄いわかる」

女「でもせめて髪型だけはって思って」

男「あ!あれめっちゃ可愛かった!普段より大人っぽく見えて」

女「うん、それを褒めてくれた時に……自覚したの」

男「え?」

女「私はこの人にそう言ってもらう為にお洒落してたんだなぁって。可愛いって思われたいんだなぁって」

男「お、おおぉぉ!」

女「ふふ、改めていうと照れちゃうね」//

男「でもそれ以上に俺は嬉しいよ!今絶賛感動中!!」

女「ふふふっ」
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:17:53.60 ID:ryF6UHI00
男「あれ?でもモールで腕を組んだ時……匂いを嗅ぐためでイヤイヤだったんじゃ?」

女「匂いを嗅ぐためっていうのは確かにあったわ。でも好意もない人にそんな事するはずないじゃない」

男「えーでも犠牲だの仕方なくだの言ってたじゃないか」

女「う……あれは照れ隠しよ。でもくっつきたかったの!モールでテンション上がってたのもあるけど……思い返して家で悶絶したわ」

男「俺はてっきり勘違いするなよって釘を刺されたのかと……」

女「あら、私って誰でも腕を組むような軽い女に見えるのかしら?」

男「そんな事は御座いません」

女「ふふ……でもね、幸せな感情だけじゃなかった。戸惑いもあったの」

男「戸惑い?」

女「ええ、色んな事考えたわ」

女「男くんの行動が善意でくるものなのか、好意でくるものなのか分からなかったし」

女「このまま男くんに依存していくのも怖かった」

男「……」
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:18:56.04 ID:ryF6UHI00
女「そして休み明けの朝、後輩さんがお昼を誘ってきた日」

男「あー……」

女「後輩さんが男くんを好きなのかもってずっと思ってたの」

男「それは違うって前も言ったよね?」

女「ええ。男くんは否定してたけど、ほら貴方って鈍感だし」

男「ぐぬぬ……」

女「でもいい機会だと思った。私みたいな面倒な人間よりも、可愛らしい後輩さんの方が男くんも楽しいはずって」

男「だからあの時、お昼を後輩と二人で過ごさせようとしてたのか……女さんは俺に興味ないと思って軽くショックだった」

女「……」

男「……?」

女「ごめんなさい、男くん」

男「え?」

女「実はお昼の光景を覗き見しちゃったの」

男「あー…………うん」
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:19:47.63 ID:ryF6UHI00
女「楽しそうに二人で並んでる姿を見て……胸が締め付けられた」

女「後輩さんが男くんにくっついてるのを見て、呼吸が止まるほど苦しくなった」

女「嫉妬してる自分が酷く醜く思えて……男くんを拒絶してしまった」

男「……」

女「幻滅したでしょ?私は男くんが思ってる以上に面倒な女なのよ」

男「全然!むしろ嬉しくて飛び上がりそうな気分だよ」

女「え?だって私、醜く嫉妬して男くんを遠ざけて……」

男「それくらい俺を好きだってことでしょ?」

女「そ、それは……うん……」

男「なら、これ以上嬉しい事なんてないよ」

女「男くん……」
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:21:38.15 ID:ryF6UHI00
男「情けない事にそれに気付かせてくれたのは後輩なんだけど、ははは」ポリポリ

女「後輩さん……か」

女「むぅ……」ジト

男「?」

女「なんでお昼休みの時、後輩さんは男くんにくっついてたの?」ジト

男「あれは、向こうが俺をからかってきただけで深い意味はない!」

女「そのわりには貴方、鼻の下伸ばしてたけど?」ジト

男「ないない!そんな事あるわけないって!」

女「今日も後輩さんとデートしてたんでしょ?」ジト

男「あ、あれはデートじゃなくて……説教?」

女「腕組まれて嬉しかった?後輩さんって私より胸大きいもんねぇ」ジトーー

男「ぐ……俺は女さんと腕を組んだ時の方がドキドキしたし、嬉しかったよ」
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:22:56.09 ID:ryF6UHI00
女「ふふっ」

男「え?」

女「私がこんな事思うなんて……自分でもビックリ」

男「ははは、良いと思うよ」

女「本当に?面倒くさくない??」

男「全然!!」

女「なら良かった……」

男「……」

女「……」

男「そういえば、ちゃんと返事もらってなかったよね?」

女「返事って?」

男「付き合っての返事」

女「それは……でも私も好きって伝えたじゃない」

男「そうだけど……まぁいいや!もう一度告白させて!そんでちゃんと返事ちょうだい!」

女「えぇ!?う、うん、いいけど……」
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:25:50.99 ID:ryF6UHI00
男「では、ゴホン」

女「……」ドキドキ

男「俺は女さんのことが好きです」

女「うん」

男「ずっと大切にします」

女「うん」

男「だから俺と……付き合ってください」

女「はい、こちらこそよろしくお願いします」

男「女さんっ!」ギュッ

女「!!?」

男「ははっ、やっと堂々と抱き締めることができる」ギュッ

女「うん、私も同じ気持ち」ギュッ

男「二人でさ、色んなところ行こうよ」

女「うん」

男「女さんが行きたかった場所とか、やりたかった事とか、沢山しよう」

女「うん……いっぱい、あるよ?」ジワッ

男「女さんとならきっとどんな事も楽しめるよ」

女「ぐすっ……うん」
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:27:16.79 ID:ryF6UHI00
男「ねぇ、女さん」

女「なに?」

男「大人になって、こんな事があったなぁって二人で話し合えたらさ」

女「……!!」

男「それってとても素晴らしい事だと思わない?」

女「うん……うん!」ポロポロ

男「愛想尽かされないように頑張るよ」ギュッ

女「うん」ポロポロ

男「だから、出来るだけ長く一緒にいれたらなって思う」

女「ぐすっ、そこは、ずっと一緒にいよう……でしょ」

男「あはは、それはちょっと重たいかなぁ……なんて」

女「重たくない……うぅぅ……重たくないよぉ……」

男「俺はずっと女さんの側にいたい。だからずっと一緒にいてくれ」

女「ううぅ……こちらこそ、ぐすっ……よろしくお願いします……」
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:28:34.39 ID:ryF6UHI00
―――朝 電車

ガタンゴトン ガタンゴトン

男(うわぁぁぁああぁぁああぁぁ!!)

男(うわぁぁぁ!!女さんに会うの気まずいぃぃぃ!)

男(いや、嬉しいんだけどね!めちゃくちゃ嬉しいし、早く会いたいんだけどね!)

男(でも、恥ずかしいぃぃのぉぉぉぉ!!)

男(恋人になって初めての登校……うわぁ!うわぁぁ!!)

男(ぁああぁぁ!!昨日はその場の勢いでかなり恥ずかしい事を……おぉぉぉ!!)

『まもなく〇〇、〇〇でございます』

男「!」

男(女さんが……くるっ!!)
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:29:51.21 ID:ryF6UHI00
プシュー

男「!!」

女「!!!」カァァァ

男(ああ……)

男(ひと目見た瞬間恥ずかしさとか全部吹き飛んだ)

男(だってあの女が、俺以上に照れた表情を浮かべてるから)

女「お、おはよう、男くん」モジモジ

男「おはよう、女さん」ニコ

男(とりあえず今はこの幸せを存分に満喫しておこう)
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:31:17.25 ID:ryF6UHI00
――通学路

後輩「あ!先輩と女先輩っ!」

男「おはよ、後輩」

女「後輩さん……」

後輩「その様子だと上手くいったんですか!?」

男「それは……」チラッ

女「……」///

後輩「なんですかっ!!その甘酸っぱい雰囲気は!!」

男「うん、ありがとう後輩」

後輩「!!」

後輩「ライバルにアシストするなんて……私とした事が不覚でした」

女「え?ライバル?アシスト?」

後輩「あれ?男先輩、私の事話してないんですか?」

男「俺から言うのは違うと思って」

後輩「それでよく誤解が解けましたね……え?解けてますよね?」

女「??」
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:32:52.44 ID:ryF6UHI00
後輩「女先輩!!」

女「は、はい!」

後輩「もしかして私が男先輩の事を好きだと思ってます?」

女「……」コク

後輩「今もですか?」

女「それは……」コクン

後輩「はぁ……もうお二人が付き合ってるからぶっちゃけますけど」

女「?」

後輩「私が好きなのは男先輩じゃなくて、女先輩!アナタです!!」ビシッ

女「えぇぇぇぇ!?」

男「でた、そのポーズ」

後輩「かっこ良くないですか?これ」ビシッ

男「ああ、うん、そだね」

後輩「なんですかその適当な相槌は!!」
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:34:04.08 ID:ryF6UHI00
女「そっか……そういう事だったのね」

後輩「はい」

女「後輩さん、貴女の気持ちは嬉しいわ。でもごめんなさい」

後輩「……」

女「でもね、私達がこうなる事ができたのは貴女のおかげよ。ありがとう後輩さん」ペコ

後輩「いいんです!女先輩は男先輩しかダメみたいですし」

女「……え?」

後輩「男先輩の匂いじゃなきゃダメなんですよね?」

女「ええ!?ってそんな事まで知ってるの!?」

後輩「ふふーん」

男「俺は何も言ってないよ?」

女「貴方が秘密を軽々しく話す人ではない事くらいわかってるわ」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:35:18.52 ID:ryF6UHI00
後輩「私が独自に調査して判明したんです!」ドヤ

男「ストーキングしてただけだろ」

後輩「ひどいっ、散々私の身体を堪能したくせに……」

女「」ピクッ

男「女さん、わかってると思うけど……今のは後輩の冗談だからね」

女「ええ、わかってるわ」ムス

後輩「男先輩……忘れてないですか?」

男「なんだよ」

後輩「私の為になんでもお願いを聞いてくれるって事……」

男「そ、それは、うん。できる範囲でなら」

女「そんな約束したの!?」

男「うん。後輩にはそれくらい感謝してるんだよ」

後輩「そうですよ!私は自分の身を引いて二人の仲を取り持ったんですから!」
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:36:38.15 ID:ryF6UHI00
男「んで、何をお願いする気なんだ?」

女「……」

後輩「それは……沢山ありすぎてまだ絞れてないんですよねー、えへへ」

男「言っておくけど俺にできる範囲だからな」

後輩「わかってますよ」

後輩「あ!じゃあ!お願いできる回数を増やしてくださいっ!」

女「却下します」

後輩「えぇ!?なんで女先輩が却下するんですか!?」

女「それは不公正でしょ」

後輩「でも一つだけなんて言ってなかったです!」

女「それでもダメなモノはダメです!」

男「あははは」
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:37:35.26 ID:ryF6UHI00
――教室

友「おうおう男さんよぉ」

男「あ、おはよ」

友「昨日は後輩ちゃんとデートで、今朝は両手に華で登校か?」

男「あー、話せば長くなるからまた今度な」

友「話せば長くなるぅぅ!?」

友「第一に、フラれたお前がなんでまた女さんと登校してるんだ!?」

女「あら、別にフった覚えなんてないけど?」

ザワ ザワ ザワ

友「え……」

友「ど、ど、どういう事だ、男!」

男「そういう事……かな」

友「おま……まさか、うそだ、そんなことありえない」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:39:15.40 ID:ryF6UHI00
男「女さん、言っちゃってよかったの?」

女「別に隠す必要ないでしょ?アレを見られて変な噂立てられるのも面倒だし」

男(アレ……あぁクンクンのことか)

女「それに私は男くんとなるべく一緒にいたいの」

友「え、え、え!?」

男(匂い的な意味でね)

女「堂々と一緒にいるためにも宣言した方が好都合だと思うんだけど、どうかしら?男くん」

男「宣言!?それってわざわざする事!!?」

女「男くんがイヤなら無理強いはしないわ」

男「イヤなんて、とんでもない!」

女「ふふっ、じゃあよろしくね」

ザワザワ ザワザワ

友「え?ドッキリとかじゃなくて、マジなやつ?」

男「うん」

友「く、我が友の巣立ちの時か……いいぜ、聞かせろ、覚悟はできた」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:41:45.22 ID:ryF6UHI00
男「では、ゴホン」

男「この場を借りて挨拶させてください」

男「先日から女さんお付き合いさせていただいてます!暖かく見守ってくれれば幸いです!」

ザワザワ

「キャーー!」
「えぇ!?嘘だろ!?」
「女さんが男くんと!?え?なんで!?」
「マジか……ショックなんだけど、なんであいつと!?」

男「あは……は、やっぱりこうなるよね……」

女「ふふ」ウデギュッ

男「え!?」

!!!!

ザワザワ ザワザワ

女「ついでに聞いて下さい。余計な詮索は禁止で、私たちの事はそっとしておいてくれると助かるわ」

女「噂を広めるのは結構です。ご自由にどうぞ」

女「以上です」

男「……」

女「ふふふ、ご苦労さま男くん」ポンポン

ザワザワ ザワザワ
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:43:13.59 ID:ryF6UHI00
男「ごめんね、友。事後報告みたいになっちゃって」

友「……うぅ」

男「?」

友「おめでとう、男……まさかあの女さんとそうなるなんて……今だに信じられねぇぜ」

女「ちょっと、“あの女さん”っていうのやめてくれない?」

友「ふぇ!?」

女「男くんの友人だからこれから交流することもあるかもしれないし、そんな他人行儀じゃなくても結構よ」

友「おおお、女さんっ!!アナタから後光が見えるっっ!!」

女「……はぁ」

男「はは、友はそういうやつだから気にしないで」

女「まぁいいけど」

友「それにしても一大事だ!こりゃ荒れるぞ!」

男「なんで?」

友「四天王の一人が熱愛発覚だぜ?しかも校内NO.1嬢だ!裏サイトが荒れないわけがない!」

女「ん??なんの話??」

男「……くだらない話だよ、気にしないで」

女「??」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:44:57.46 ID:ryF6UHI00
――放課後

女「……」ムス

男「女さん帰るよ」

女「ん」ムス

男「あれ?なにかあった?」

女「別に」

男「??」

女「……」ムス

男「どうして不機嫌なの?」

女「不機嫌じゃないです」ムス

男「あ、今日匂い嗅げなかったから?」

女「」ピクッ

男「やっぱりそうか」

女「だって恋人宣言したのに教室じゃ嗅がせてくれないし」

男「いや、だってそれはダメでしょ……」

女「首くらいなら他の人からイチャイチャしてる様にしか見られないでしょ?」

男「首も十分際どいかと」
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:46:10.69 ID:ryF6UHI00
女「そもそも他人の目なんて私はどうでもいいし」

男「モラルは遵守しないと。それに体質の事バレちゃうよ」

女「バレてもいいもん」ムス

男「……」

女「お昼も嗅げなかったし」ムス

男「ああ、後輩がきちゃったからね」

女「あの子は気にしないって言ってたわ」

男「気にしないって言っても……後輩の前で嗅がせるわけには……」

女「あの子はむしろ見たがってたわ」

男「それを行うには俺の経験値が圧倒的に足りてないわけで」

女「……」ムス
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:47:39.57 ID:ryF6UHI00
男「女さん」

女「なによ」

男「嗅ぎ放題の特典付きって言ったの覚えてる?」

女「うん」ムス

男「女さんさえよければ……俺の部屋へご招待したいんだけど」

女「……え」

男「ごめん、付き合ったばかりなのに嫌だよね?」

男「落ち着いて匂いを嗅がせてあげられる場所ってそこしか思い付かなくて」

女「行く!絶対行く!!今すぐ行く!!」パァ

男「あ、一応言っておくけど下心があって誘ったわけじゃないから」

女「別にあってもいいわ。付き合ってるんだもの」

男「!!?」

女「それより男くんの部屋って……夢にまでみた匂いの宝庫だわ!!」

女「早く行きましょ!ほらほら!」グイッ

男「おわっ!」
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:49:13.45 ID:ryF6UHI00
――――帰り道

男「女さん……通学路で腕組むのは、ちょっとまだ恥ずかしかなぁ〜なんて……」

女「なんで?モールではずっとこうしてたじゃない」ギュッ

男「同じ学校の生徒に見られるのとじゃ訳が違うというか」

女「いいじゃない、お互い余計な虫がつかなくて都合がいいし」ギュッ

男「そんな事しなくても俺はモテないから大丈夫!」

女「あら?私には勿体ないくらい魅力的よ」

男「恋は盲目とはよく言ったもんだ……」

女「褒めてるんだから素直に受け取ること!」

男「あざまっす!」

女「でもさぁ、こういうのって普通嬉しいもんじゃないの?男くんってシャイなのか大胆なのかたまに分からなくなるわ」

男「はは、大胆ではないかな」

女「そう?たまに強引なところもあるよ?」

男「え?」
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:50:38.69 ID:ryF6UHI00
女「女性専用車両に並ぶ私を強引に連れて行ったり、告白前の呼び出しもそうだったし」

男「……」

女「だけどそうね……腕組むのが恥ずかしいなら止めてあげる」パッ

男「あ、うん」

女「じゃあ、はい」スッ

男「?」

女「手出して」

男「手?」スッ

ギュゥ

女「さ、行きましょ」

男「……」

女「どうしたの?」

男「ぷっ……」

男「あっははは!」

女「え?なに??」

男「いやぁ、女さんには敵わないなぁって思って、あははは」

女「??」

男「ごめんね、女さん」

女「え?え?」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:51:58.30 ID:ryF6UHI00
男「恋人になって意識しすぎてたのかも」

女「意識?」

男「それに……環境の変化にちょっと萎縮しちゃってた」

女「そうね……今日一日素っ気なかったし」ムス

男(あ……)

男(匂いを嗅げなかったから不機嫌だったわけじゃなくて、匂いを嗅がせなかった俺の態度で拗ねてたのか)

男「そっか寂しい思いさせちゃったよね」

女「うん」

男「女さん」

女「なに――」

ぎゅぅぅぅ

女「!?」

男「そうだよな……俺は女さんの恋人だ。萎縮する必要なんてなかった」

女「男くん……でも、恥ずかしいんじゃ……」

男「もう吹っ切れた」ギュッ

女「男くん……」ギュッ

後輩「道のど真ん中で何してるんですか?」ジト

男「!?」バッ

女「!?」
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:53:09.92 ID:ryF6UHI00
後輩「まさかお二人がこんな所で抱き合うなんて……」

男「……忘れてくれると嬉しいんだけど」

後輩「周りを見てください……バッチリ撮影されてますよ」

男「!?」キョロキョロ

女「別にいいじゃない。減るもんじゃないし」

後輩「おお!女先輩って肝が座ってますよね!恥ずかしく
ないんですか?」

女「まぁ……恥ずかしくないといえば嘘になるわね」

後輩「あ、一応恥じらいは持ってるんですね」

女「ええ。でも、それ以上に男くんとくっついてる恩恵の方が遥かに上回ってるの」

男(そういえば女さんって前からそういう人だったなぁ)

後輩「なるほど……好きな人の側に居れて幸せー!匂いも嗅げて最高ー!って感じなんですね」

女「まぁ……うん……そういう事に、なるのかな?」///

男(やべぇ……女さんの恥じらうポイントが全くわからない……)
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:55:27.79 ID:ryF6UHI00
後輩「はぇ〜……あっ!」

後輩「そういえば!お願い事、考えてきましたっ!!」

男「ん?」

女「どんなの?」

後輩「お二人の結婚式で友人代表のスピーチをやらせてください!」

男「は?けっこん、しき……?」

後輩「はい」

男「誰の?」

後輩「もちろん男先輩と女先輩のです!」

女「……なるほど」

女「いいんじゃない?それで」

男「えええ!?だってそんな将来のこと……この先どうなるのか分からないのに……」

後輩「先輩、別れる前提でお付き合いしてるんですか?」ジト

男「ちがっ――」

女「私……捨てられちゃうの?」シュン

男「いや!そうじゃなくて!俺が女さんに愛想尽かされるかもしれないだろ?」

後輩「そこのところ、どうですか女先輩?」

女「ありえないわ」

男「即答!?」

後輩「おおお!!」

女「男くんがよほどクズな行いをしない限り、私から男くんを手放すなんて考えられないわ」

後輩「はわぁ〜……愛されてますね、男先輩」
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:57:04.15 ID:ryF6UHI00
女「快然たる香りの持ち主の男くんに恋するなんて、奇跡としか言いようがないじゃない」

後輩「かいぜん?なんですかそれ」

女「気になるなら調べてみては?」

男(懐かしいなこのやりとり)

後輩「かいぜん……かいぜんっと」ポチポチ

男(ていうか快然たる香りの持ち主だからこそ俺に惚れたんじゃ?)

男(それしか価値がないし……)ズーン

後輩「ふむふむ」

後輩「なるほど、そういう意味でしたか!」

女「ええ」

後輩「すみません、すごく失礼な事をお聞きしますが……」

女「?」

後輩「快然たる香りの持ち主なら男先輩じゃなくてもよかったんじゃないですか?」

男「」ピク

男(後輩よ……なぜ今俺の考えていた事を質問する?)
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:58:28.65 ID:ryF6UHI00
女「愚問ね」

後輩「えっ!?」

女「質問で返して悪いけど、貴女の好みのタイプは?」

後輩「え!?私ですか!?」

後輩「ん〜……面食いなのでカッコいい人とかキレイな人がタイプです!」

女「じゃあ貴女はイケメンだったら誰でもいいの?」

後輩「そんなこと――あっ……」

女「そういう事よ」

男「女さん……」ジーン

後輩「変なこと聞いてすみません……」

女「それとも私ってそんな軽率な女に見えるのかしら?」

後輩「見えません!見えないからこそ気になったんです!」

女「匂いがキッカケになったのは間違いないわ。でもそれを含めて彼だもの」

女「私が男くんを好きな要素の一つでしかないってことよ」

男「あれ……そのセリフどこかで……」

女「昨日、男くんが私に言ってくれた言葉よ」

男「あ、女さんの容姿について言った言葉か!よく覚えてるね」

女「ふふ、それだけ嬉しかったのよ」

後輩「うわぁ……すごい甘々です。わたあめの様です」

男「微妙に上手い言い回しだな」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:00:31.63 ID:ryF6UHI00
女「それにしても後輩さん、よく考えられた願い事じゃない」

後輩「えへ?バレちゃいました??」

男「へ??」

女「ええ。とても素敵な願い事だと思うわ」

男「どういうこと?結婚式だなんて突拍子もない事のように思えるけど」

女「わからない?私達二人の結婚式の友人代表スピーチ。つまりそれは――」

後輩「私が決死の覚悟で身を引いたので別れるなんて絶っっっ対に!!許しません!!一生添い遂げる義務があります!」

後輩「そして……ついでにこれからは私もお二人と仲良くさせてニャン♪」

後輩「って事です!」

男「おお〜なるほど……だから友人代表スピーチか」

後輩「そんなわけで、今後とも私をよろしくお願いしまっす!」

女「こちらこそよろしくね。体質の問題もあるから男くんがいる時になってしまうけど」

後輩「全然いいです!むしろ最近は男先輩もお気に入りなので!」

男「……」

女「へぇ、よかったわね。男くん」ニッコリ

男「とてもよくないです」

後輩「あはは!では邪魔者は去ります!長々と失礼しましたっ」ペコリ

女「うん。またね後輩さん」

男「気を付けて帰れよー」

後輩「はい!それでは!」タタタタ

男「女さん、アレは彼女なりのジョークで」

女「わかってるわ。でもあの子すごくいい子ね」

男「うん。本当、感謝してもしきれないよ」

女「さ、私たちも行きましょうか」

男「そうだね」
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:02:44.04 ID:ryF6UHI00
――自宅

女「驚いたわ」

男「なにが?」

女「私、他人の家って苦手なのよ」

男「あー、家の匂いってあるよね」

女「ええ。ある程度予想はしていたけど男くんの家は全然不快にならないわ」

男「それはよかった」ニコ

女「ふふ、きっと遺伝子レベルで相性がいいのね」

男「遺伝子!?」

女「と、ところで男くんのお部屋はまだかしら?」ドキドキ

男「えーと、ここが俺の部屋だよ」

女「い、いよいよ本丸ね」ドキドキ

男「そんな大袈裟な」

女「ね、早く入りましょ!」ウキウキ

男「ははっでは一名様ご案内です」

ガチャ
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:04:09.49 ID:ryF6UHI00
女「わぁ……!!!」スンスン

男「どう?大丈夫そう?」

女「す」

男「?」

女「す、すごいよ!!男くん!!」クンクン

男「臭くない?」

女「」ブンブン

男「ならよかった」

女「すごい……男くんの匂いに包まれてるみたい……」

女「私ここに住みたい!!」

男「え……いや、それは色々と問題が……」

女「ね、ね、ベッド!嗅ぎたいんだけどダメ?お願いっ!」

男「いいよ」

女「やった!」

女「で、では……失礼します」ペコリ

男「どうぞどうぞ」

ポフッ

女「〜〜〜っっっ!!!」バタバタ
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:05:59.16 ID:ryF6UHI00
男(こ、これは)

男(女さんが俺の部屋にいるだけでドキドキするのに……)

男(制服姿の女さんが……俺のベッドに寝そべって……)

女「〜〜♪」バタバタ

スンスン クンクン

女「はぅぅ……」

男(無防備すぎるっ!!スカートから足がっ!太ももがっ!!!)

女「んっ……すごい……」

スンスン クンクン

男(こ、これは……目のやり場に困るっ!!)

男「な、なにか飲み物とってくるから自由にしてて」

女「いらない」

男「え?」

女「男くんもこっちきて?」ポンポン

男「えぇぇ!?」

女「今日ずっと焦らされてたから……だめ?」

男「……わかった」

女「……」

ギシッ

男「えーと、ど、どうすればいいかな?」

女「……えいっ」グイッ

男「おわっ!?あぶなっ!!」

ギシ ギシ

男(女さんに、覆い被さる体勢に……)
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:07:58.82 ID:ryF6UHI00
男「女さん……」

女「男くん……」スッ

男(俺の首に女さんの腕が伸びて……)

女「……おとこくん……顔、もっと近くに……」

男「……」コクン

男(ああ……女さんの瞳に吸い寄せられていく)

女「……」スンスン

女「はぁ……すごい……」

スンスン クンクン

女「男くん……んっ……」

男「」ゾクゾク

男(ダメだ……この雰囲気に呑まれて俺も変なスイッチが入りそうだ……)

男(いや……うん)

男(それもたまにはいいか)

男(今まで散々好き勝手にやられてきたんだ、少しお返ししてやるっ!)
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:09:37.36 ID:ryF6UHI00
男「女さん、ちょっと体勢変えるね」ゴロン

女「あ……腕、重たくない?」

男「全然、女さんに腕枕できるなんて光栄だよ」

女「男くん……」

男「それに」グイッ

ギュッッ

女「!」

男「お互い横になってるこの体勢の方が、女さんを抱きしめることができる」ギュッ

女「はぅ……強引な男くん……」キュン

男「大好きだよ、女さん」ボソ

女「〜〜!!」///

男「このまま首の匂い嗅げる?」

女「う、うん」スンスン

女「ふわぁ……」クンクン

ギュッ

男「俺も好きにしちゃっていいよね?」

女「!?」
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:11:39.44 ID:ryF6UHI00
ナデナデ
男「女さんの髪、すごく綺麗だよ」

ススス
男「指通りも滑らかで」

クンクン
男「凄く良い匂いがする」

女「はぅ……」ゾクゾク

男「ほら、女さんも匂い嗅がなきゃ」

女「あぅぅ」

スンスン クンクン

女「んっ……はぁ……」

男「女さん」

ギュッ ナデナデ

女「あっ……んんっ……」スンスン

男「女さんの鼓動が伝わってくるよ」

女「うぅぅ……」クンクン

男「」ゾクゾク

男(ヤバい……何かに目覚めそうだ……)

男(もう止まらない……止まりたくない)
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:13:47.95 ID:ryF6UHI00
女「はぁはぁ……男くん……」

男「女さんが俺の動きで、俺の言葉で、可愛く反応するから……すごく愛おしい」

ススッ フニ

女「!!!」ビクッ

男「耳、敏感なの?」

女「……は、初めてだから……んんっ」

フニフニ

女「あっ……だ、だめ……」

男「匂いは嗅がないの?終わりにする?」

女「うう……」

男「首だけじゃ切ないよね?本当は鼻も嗅ぎたいよね?」

女「うぅぅ……男くん……イジワルだよぉ……」

男「イジワルなのは嫌?」ナデナデ

女「……すき……」

女「だけど」バッ

男「あれ!?」

女「はぁはぁ……ご、ごめん、男くん……」トロン

男「え?え?」

女「もう、私……私……!!」トロン

ガバッ

男「え!?えぇぇぇ!?」

男(女さんが馬乗りにっ!!!)

女「男くんっ!!」ギュッ

男「うわぁぁぁぁ!!」


男(このあと滅茶苦茶クンクンされた)
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:15:17.31 ID:ryF6UHI00
男「はぁはぁ」

女「はぁはぁ」

男「ごめん、調子に乗りすぎた」

女「ごめんなさい、私も嗅ぎすぎました」

男「いや、俺の方こそ途中でスイッチ入っちゃって……その……」

女「ううん……私、アレ……嫌いじゃない……」カァァァ

男「そ、そう。ならよかった……」
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:16:35.30 ID:ryF6UHI00
女「…………ぷっ」

男「くふっ」

男・女「「あはははは!!」」

女「はぁぁ……変なのー!可笑しいよ!ぷっ、くくく、あはははは!」

男「ぷっ、自分でも驚いてる……くくく」

女「はぁー、苦しーー!あっははは!」

男「こんな流れでこういうのも可笑しいんだけどさ」

女「ん?なあに?」

男「女さんとキスしたい」

女「…………ぷふっ!!あはははは!」

男「あっははは!わかってる!自分でもわかってる!」

女「あー、お腹痛い……こんな笑ったの生まれて初めて……」

男「はー疲れた」

女「それじゃあ……キス、しよっか」

男「うん、しよう」

女「貴女のおかげで最高のファーストキスになりそう……ぷっ」

男「はは、そのセリフ、そっくりそのままお返しするよ」

女「ふふふ」

男「じゃあ、いくよ?」

女「うんっ」

――――
――
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:18:01.06 ID:ryF6UHI00
――――――――

男「はぁぁぁぁ、疲れたぁぁぉ」グデー

女「お疲れ様、男くん」ポンポン

男「ああ、女もお疲れ様」

女「大変だったけど、中々充実した一日だったわ」

男「ニオイは大丈夫だった?」

女「コレのおかげでなんとかね」ヒラヒラ

男「この日の為に作った改良に改良を重ねた新ハンカチ……役に立ってよかった」

女「別行動が多かったからコレのおかげで随分助かったわ。でも半日もすると匂いも薄くなるし、まだ改良の余地ありね」

男「マジですか……」

女「男くんの匂いを直接嗅げればよかったけど、流石にあの場では……ねぇ 」

男「昔の女なら気にせず嗅いでただろうけど」

女「ふふふ、私も成長したってことで」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:19:12.04 ID:ryF6UHI00
男「それにしても……後輩があんないいスピーチをしてくれるとは思わなかった」

女「ええ……本当に。とても感動的なスピーチだったわ」

男「結局後輩の願い通りになったわけだ」

女「あら?後悔してるの?」

男「まさか!こんな綺麗な人と結婚できて俺は世界一の幸せ者だよ」ニコ

女「付き合ってから毎日一緒にいるのよ?私の容姿なんてとっくに見飽きてるでしょ」

男「ふっ、愚問だね」

女「へぇ……」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:20:33.66 ID:ryF6UHI00
男「容姿端麗。眉目秀麗。仙姿玉質」

男「とても一言じゃ言い表せないくらい綺麗な人だよ、女は」

女「そこまで言われると逆に嘘くさいわ」

男「実は高校の頃、まだ付き合う前に抱いてた“女さん”の印象だったりする」

男「もちろん今もそう思ってるよ」ギュッ

女「ふふっ、ありがと。素直に受け取っておくね」ギュッ

スンスン クンクン

男「女こそ、毎日嗅いでるのによく飽きないな」

女「それこそ愚問ね。飽きる飽きないの次元はとっくに超越してるのよ」

女「私が生きていく上で空気や水と同じくらい大切な要素なの」ギュッ

男「ははっ、素直に受け取っておくよ」ナデナデ

女「んっ……」
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:21:45.39 ID:ryF6UHI00
男「女……愛してるよ」

女「男くん……私も貴方を愛しています」

男「あの時、“女さん”と出会えてよかった」

女「ふふっ……男くん、私ね」

男「ん?」

女「ずっと奇跡だと思ってたの。この匂いの持ち主に出会って恋に落ちて……」

男「奇跡でしょ、俺はいつもこの出会いに感謝してるよ」

女「だけど最近は……男くんと出会えたことは偶然じゃなく必然だと思ってる」

男「必然??」

女「うん。もしあの時、男くんと出会っていなくても……」

女「いずれ私はこの匂いを辿って貴方に出会っていた。そう確信してる」
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 01:23:00.98 ID:ryF6UHI00
男「すごいな……どうしてそこまで言い切れるの?」

女「あら、男くんはあの日の言葉をお忘れですか?」

男「あの日?」

女「ええ、初めて話した日」

男「初めて……あっ!!そういう事かっ!」

女「ふふふ」

男「“女さん”、悪いけどもう一度言ってもらえるかな?」ニコ

女「ええ」ニコ

女を「何故なら私は……」


女「私は鼻が効きますから」



――終わり――
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/06/25(木) 01:28:35.77 ID:ryF6UHI00
終わりです!!長々とお付き合いくださってありがとうございました!!
途中書き溜めを消して絶望したりしましたがなんとか完結できてよかったです!!
結末迷った挙句、王道ど真ん中直球ストレートでゲームセットになりました!
実は後輩ENDも作りましたが……斜め上を行く結果になったのでお蔵入りです

それでは失礼しました!!
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/25(木) 01:34:50.17 ID:ITb0NscDO
お疲れ様でした
良かったよおおお
その後の後輩がどうなっていくのかとかはちょっと気になる
斜め上ENDというのも気になる
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/25(木) 04:11:30.05 ID:uP/TYzak0
乙乙
直球ど真ん中も大好きです
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/25(木) 12:37:17.58 ID:ThEv81vGO
精子とかめっちゃクンクン嗅いでそう常にカピカピにしたティッシュを持ち歩いてたり
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 15:55:13.66 ID:ryF6UHI00
コメントあざまっす!
後輩END気になると言って頂けたので、番外編として投稿させていただきます!
>>187 から分岐して女ルートと後輩ルートを作ってたので多少分かりにくいかもしれませんがご了承ください
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 15:57:00.65 ID:ryF6UHI00
>>187 から再投稿です


男「帰ろうぜ」

友「今日バイトだわ」

男「マジか」

友「ははは!そーかそーか寂しいのか」

男「別にそんな事言ってないだろ!」

女「」スク スタスタ

男(前と同じような平穏な日常)


男「おはよう友」
友「おはようさん」

男「帰ろう」
友「おお、今日は――」

男(いつも通りの日常)
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 15:58:32.26 ID:ryF6UHI00
――半年後

後輩(私は狡猾な人間だ)

後輩(数ヶ月前、生活指導室にいる男先輩と女先輩の“最後の会話”を盗み聞きして……)

後輩(そこで二人の関係と二人が想い合ってる事を知った)

後輩(知った、というより確信したという方が正しいか)

後輩(はたから見たら両想いなのにすれ違う二人……見ているこっちがもどかしいくらい)

後輩(あの時、私が背中を押してあげていたら……先輩たちはきっと違う結末を迎えていただろう)

後輩(だけど女先輩を好きだった私には……どうしてもそれが出来なかった)
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 15:59:54.55 ID:ryF6UHI00
後輩「先輩っ!」ドンッ

男「あぐっ!!お前なぁ!背後から体当たりするなといつも言ってるだろうが!!」

後輩「先輩の背中から哀愁オーラが漂ってるから、こうやって吹き飛ばしてあげてるんです!」

男「余計なお世話だっ!それに背後からは危険だろ!!」

後輩「じゃあ正面だったらいいんですか??」

男「まぁ背後よりかは……って、まず体当たりするのをやめなさい!」

後輩「はーい!」

男「ったく」

後輩(一時期の男先輩は……抜け殻になっていた)

後輩(そして私は……事情を知りつつもあえて男先輩と一緒にいる時間を増やしていった)

後輩(二人はまだお互いを想い合っている)

後輩(キッカケさえあれば簡単にくっつくと思う)

後輩(でも、私がそれをさせない)

後輩(その為に先輩と一緒にいる)
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 16:01:09.17 ID:ryF6UHI00
後輩「ねぇ先輩」

男「ん?」

後輩「もうすぐクリスマスですね」

男「ああ」

後輩「どこか遊びに行きませんか?」

男「はい?」

後輩「クリスマスイブにデートしましょっ!」

男「え、いやいや、それはさすがに……」

後輩「こんな可愛い子の誘いを断る気ですか?」

男「自分で言うなよ。遊ぶなら友達でも誘って遊びなさい!」

後輩「むー!」

後輩(私の中で芽生えたこの感情に気付いたのはいつからだろう)

後輩(一緒にいる時間が増えるほど、私自身が満たされていく)

後輩(男先輩がそれを与えてくれる)
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 16:01:59.11 ID:ryF6UHI00
後輩「先輩、クリスマス誰かと過ごす予定あるんですか?」

男「いや……ない」

後輩「だったら練習しません?」

男「は?なんの??」

後輩「将来恋人ができたときに失敗しないようにデートの練習です!」

男「はあ!?」

後輩「なので24日空けておいてください!」

男「いやいや!デートの練習をイブにするってどうなの!?」

後輩「細けぇことは気にすんな!です!」

男「でもなぁ……」

後輩「同じ人に振られた人間同士、仲良くしましょう!」

男「……」
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 16:03:01.38 ID:ryF6UHI00
後輩「ねぇ、先輩」

男「ん」

後輩「私、先輩の気持ち痛いほどわかりますよ」

男「……」

後輩「傷の舐め合いでもかまいません」

後輩「私と一緒にいることで、少しでも先輩の気が紛れるなら……」

後輩「私の事を好きなだけ利用してください」

男「後輩……」

男「なんで……どうして、そこまでしてくれるんだ?」

後輩「それは……ふふっ」

男「?」
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 16:04:43.58 ID:ryF6UHI00
後輩(男先輩は気付いていない。未だに女先輩が、一緒にいる私に対して嫉妬している事を)

後輩(だけど先輩には教えてあげない。キッカケになったら困るもの)

後輩(それに……)

後輩「先輩、私の事だけを見てください」

男「え?」

後輩「もう女先輩の事を見ないでください」

男「な、なにを言ってるんだ?」

後輩「先輩、私の事だけを考えてください」

男「……」

後輩「もう女先輩の事を考えないでください」

男「いきなりなにを……」

後輩「そして私を好きになってください」

男「は?」

後輩「そして……私に至高の喜びを与えてください」

男「なんで……?」

後輩「わからないですか?」
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 16:06:36.19 ID:ryF6UHI00
後輩(いつから気付いたんだろう)

後輩(女先輩に嫉妬されることで自尊心が満たされていく)

後輩(女先輩の記憶に私が刻まれていくのがたまらなく嬉しい)

後輩(そのためなら私は……)

後輩「先輩」

ギュッ

男「……」

後輩「私、先輩が望むことならなんだって受け入れます」

男「……」

後輩「だから私の望みを一つだけ叶えてくれませんか?」

男「望み?」

後輩「はい」

ギュゥゥゥ

後輩「先輩、私と付き合ってください」

男「……」

後輩「私と恋人になってください」

男「……」

後輩「それが私の望みです」

男「後輩……」

後輩「叶えてくれますか?」

男「…………」

男「正直に言うと……いつも側にいてくれる後輩の存在に救われてた」

後輩「……」

男「完全に吹っ切れたかというと……まだ微妙なんだけど、それでもいいのか?」

後輩「はい、前に進むために私を利用しちゃってください」

男「てか、後輩こそ俺なんかでいいのか?」

後輩「先輩がいいんです……先輩じゃなきゃ、だめなんです」

男「それなら……うん、付き合おうか」

後輩「ありがとうございます!!」
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 16:07:53.16 ID:ryF6UHI00
後輩(私は狡猾な人間だ)

後輩(女先輩の初恋の相手を奪うなんて……これ以上の優越感はない)

後輩(女先輩……女先輩……好きです、大好きです)

後輩(ああ、女先輩……どうか私を妬んで恨んでください)

後輩(そして私を忘れないでください)


――終わり――
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 16:17:40.79 ID:ryF6UHI00
以上で番外編も終わりです!
後輩の、女→男への心変わりを書こうと思ったら、なぜかこうなってしまいました
お目汚し失礼しました!
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/26(金) 02:02:07.18 ID:7reU97xk0
おつんご
下手にくっつくよりこっちの方が個人的に好き
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/26(金) 03:05:40.45 ID:40QBvE1DO
おつおつ
思った以上に闇が深かった
また何か読めるの楽しみにしてる
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 02:06:43.46 ID:dMZ+yQPR0

どうしてこうなった
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