商人「夢に染まる林檎の果実」

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170 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:25:52.78 ID:GJOYYYEh0
商人「私の妹と」

少女「あ、どうも」ペコッ

商人「その他です」

巫女「……まぁいいです」

武士「……」

商人「すみませんイクサ、助かりました……イクサ?」

武士「……」カタカタカタカタ

武士「は……」

武士「はじめてひときっちゃいました」ガクガクガクガク

商人「クソ戦い慣れしてなさそうだと思ったらそういう事か……」

171 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:26:25.04 ID:GJOYYYEh0
武士「だだだだだだだってきったらいたいから……」ブルブルブルブル

巫女「はいはい……で、林檎ちゃんこの状況は何ですか」

商人「見ての通り野盗に襲われてたんですよ」

巫女「そちらの女性は」

剣士「気にするな、敵ではない」

商人「味方でもないですけど……まぁ今は味方です」

巫女「訳わからないんで後で説明お願いします。でも今は……」

商人「現状の打開って事で……」

剣士「いいだろう」

武士「お、おっしゃー!!かかかかかかってこいやー!!」

172 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:26:59.52 ID:GJOYYYEh0
……

少女「オエー、血なまぐさい……」

商人「ごめんなさい、こんなもん見せてしまって」

剣士「雑兵はこんなものか」

武士「ゼーハーゼーハー」プルプルプル

巫女「雑魚の集まりでしたね。こんなの相手によく数日もかかりましたね」

商人「上手いこと行動封じられていたんですよ。そっちの娘も怪我してましたし」

少女「あれ、ホントだ……ちょっとみせてもらってもいい?」

剣士「……?」

少女「あ、ホントだ。でも氷で固定してあるし、まだ……」

剣士「お前……」スッ

少女「?」

173 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:27:56.40 ID:GJOYYYEh0
剣士「迷子か?」

少女「ファッ!?」

商人「ッ!!」

少女「いやいやいや、どうしたらそう見える!?お姉ちゃん探しに来たんだから逆にそっちが迷子だよ!?」

剣士「……そうか、そうだな」

商人「……」

巫女「何を言っているのですか。とりあえず……イクサちゃん、いつまで震えてるんですか」

武士「あうあうあうあわわわ……」

巫女「……ダメ見たいですね」

174 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:28:24.41 ID:GJOYYYEh0
商人「……」

商人「一つ教えてください」

剣士「なんだ」

商人「なぜあの娘が迷子だと思ったんですか」

剣士「見たままだ。分からんのならわからんでいい」

商人「……」


「あ……ぐ……」


武士「ヒッ!?やらなきゃやらなきゃやらなきゃやらなきゃやらなきゃ」

巫女「待て殺すな」ビシッ

武士「あうっ」

175 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:28:59.09 ID:GJOYYYEh0
巫女「コイツはウチがワザと生かしておいた奴です」

剣士「仲間を呼ばれるかもしれん、とっとと始末すべきだろう」

巫女「ハァー、これだから学の無い奴は困ります」

剣士「ふむ、お前の考えを教えろ」

巫女「おや、挑発に乗らないのは中々……ウチとしてはコイツの親玉の話を聞きたかったんで」

武士「えぇー、聞きだしてどうするの」

巫女「ウチにはウチのやり方があるんです。さてお兄さん、あなた方の情報を色々とお聞きしたいのですが……」

176 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:29:28.90 ID:GJOYYYEh0
商人「……」

少女「お姉ちゃん……」

商人「ごめん、心配かけた」ナデナデ

少女「うん、凄く心配した」

商人「それより、どうしてここへ?」

少女「兎ちゃんが森に野盗が出たって情報が入ったからって」

商人「あーそれでか……」

少女「普段のお姉ちゃんなら大丈夫だと思ったんだけど、でも帰りも遅かったし」

商人「うん、助かった」

少女「もう私を置いてこんな危険な事しないで……」

商人「危険な事じゃなかったハズなんだけどなぁ」

少女「言い訳しない!!」

商人「はい……」

177 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:30:04.78 ID:GJOYYYEh0
「へへ……お前らもう終わりだぜ……」

武士「な!なんですと!?」

「ウチのボスは狡猾で残忍だ……お前ら程度の小娘なんてすぐに……」

巫女「その小娘に負けておいてよく口が回りますね」

「俺から喋る事なんて一つも……おぐっ!?」

巫女「別に情報を引き出せる事は期待してないです」

「へ?」

巫女「可能なら聞きだす。それだけです」

巫女「イクサちゃん、ちょっとコイツそこの木に縛り付けてください」

武士「あ、うん……」ギュッ

「お、おい何を……」

巫女「大丈夫、殺しはしません、ただ」





巫女「もうまともな人生送れないと思ってください」

178 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:30:42.14 ID:GJOYYYEh0
「アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



剣士「……気の毒に」

武士「あうあうあうあわわわ……」

少女「」

商人「見ちゃダメ見ちゃダメ」

商人「しかしよく私のいる場所が分かりましたね」

武士「あ、うん。なんか空に光るものが見えたのが決定打だったよ」

剣士「アレは役に立ったみたいだな」

商人「結果的に……ですけど。すれ違いにならなかっただけヨシとするか」

少女「それは大丈夫だったかな」

商人「ん?」

179 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:31:40.78 ID:GJOYYYEh0
少女「これ」ヒョイ

商人「なっ!?魔方位磁針!?何で貴女が!?」

少女「お姉ちゃんが他所のお店で見つけたやつだよ。買ってきたの」

商人「それで私の持ってるマーカーを辿ったのか……よくやった!!流石私の妹だ!!」

少女「えへへ……って言いたいんだけど」

商人「はい?」

武士「それ買おうとしたら不当に値段釣り上げられちゃって……」

少女「うん、私が急いでたから足元見られちゃったみたいで」

商人「あぁん!?そんな太てぇ野郎が商売してたのか!?ちょっと待ってろ、私がお礼参りに行ってやる!!」

少女「落ち着け、話を聞け」

180 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:32:10.75 ID:GJOYYYEh0
巫女「ウチが値切り交渉してタダ同然の値段で手に入れたんですよ、褒めてください」

商人「あ!?お前が!?なんで!?」

巫女「もう二度と商売出来なくなるかそれを明け渡すかの二択を迫っただけです」ニマァ

武士「正直怖かった」

少女「敵に回しちゃいけない人がハッキリしたよ」

商人「お、おう、なんでかしらんが一応感謝はしとく……」

181 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:33:52.64 ID:GJOYYYEh0
商人「あぁ、それはいいですけど。何か聞きだせましたか?」

巫女「はい、色々とゲロってくれました。まぁどっち道一斉検挙するつもりだったので有益な情報だろうと何だろうと構わなかったんですけど」

商人「……兎ちゃん、貴女何者ですか」

武士「市場の人に脅しをかけたり、なんか薙刀強かったり」

少女「あの指輪の値段もすぐに妥当だって判断したのも気になってたけど……ただの商人じゃないよね?」

巫女「御明察、ウチはただの兎ちゃんではありません」

巫女「ウチは冒険者ギルドの幹部の一人、月鏡(つきがみ)兎と申します。一応神様の血筋だったりします」

商人(やっぱりか……)

182 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:34:56.73 ID:GJOYYYEh0
武士「ぼうけんしゃギルド?」

少女「かみさまのちすじ?」

剣士「随分と私を放置するんだな……まったく、話に混ぜろ」

巫女「混ざりたければどうぞ」

剣士「冒険者ギルドというのは最近立ち上がった民間の組織だ」

武士「一応話は聞いた事があるような無いような……」

剣士「ただの浮浪者共……もとい、冒険者に仕事を斡旋し成功すれば報酬を渡す……簡単に言えば職業紹介事業だろう?」

巫女「少し語弊がありますが概ねその通りです、博識ですね」

剣士「何度か冒険者に襲われた事がある。そこで調べた」

武士(このヒト襲われる側なのか……)

183 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:35:42.45 ID:GJOYYYEh0
巫女「有望な冒険者に仕事を与え、経済を回します。連中は普通の人達じゃ受けないような仕事も受けてくれるので、こちらとしては大助かりしてます」

巫女「何よりそういう身元も碌な連中ではない者の集まりですし、潰しも効いて使い勝手がいいんですよ」

巫女「一応人と成りをみて与える仕事の判断はしていますけど」

剣士「通称死の商人共だ。戦乱があればそこにはコイツらが確実にいる」

巫女「そう呼ばれても仕方ないですね」

商人「しかしそんな偉そうなお方が何故地方にブラブラとしてるんですかねぇ、商人まで騙(かた)って」

巫女「偽っているつもりはありません。何も物を売り買いするだけが商売ではありませんので。あなたもそれくらい分かるでしょう」

巫女「この野盗を追っていたのもありますが……まぁ、貴女たちに話したように、ほとんど私用ですが」

商人「それが黄金の果実って訳だ」

巫女「ええ」

184 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:36:08.88 ID:GJOYYYEh0
少女「神さまの血筋ってのは?」

巫女「単純です、ウチは神さまの血を引いているんですよ」フフン

少女「へー」

武士「すごいねー」

剣士「ふぅん」

商人「次行きましょう次」

巫女「全員興味なさそうなのでこの話はまたとっておきます」

185 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:36:44.00 ID:GJOYYYEh0
巫女「森の外にウチが呼んだギルドの増援がいますので事後処理はこちらでやっておきます」

武士「……あのヒトどうするの?」


「」チーン


巫女「処刑まではするつもりはないので彼には第二の人生を強く生きてもらいましょう」

剣士「もしかしたら死んだ方がマシだったかもしれんな」

少女「……」

商人「見ちゃダメ見ちゃダメ」

186 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:38:02.32 ID:GJOYYYEh0
巫女「ともかく……皆さんお疲れさまでした。ギルドの代表として感謝します」ペコッ

商人「ハッ、ったく体よく手伝いさせられたと思うと煮え切らんね。タダ働きだよこっちは」

武士「ははは……ちちうえははうえにいさま方ねえさま方……イクサはひとをころしてしまいました……あははは」

剣士「……ハァ」

巫女「そうそう、こいつらギルドで指名手配してた連中なので皆さんには報酬金が出ますよ」
商人「ハッハッハ!兎ちゃんこの後用事ある?一緒に飲みに行かない?」ガバッ

巫女「離れろ行間を開けろ近い暑苦しい」

武士「美味しいもの沢山食べにいこ兎ちゃん!!」パァァ

剣士「なんだか知らんが貰えるものは貰っておくぞ」



少女「なんて現金な人達なんだ」

巫女「お金絡むとヒトはこんなもんです。一つ大人になれましたね」
187 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/14(日) 19:38:39.85 ID:GJOYYYEh0
小休止
188 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:03:46.92 ID:xHJy0M/N0
再開
189 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:04:16.42 ID:xHJy0M/N0
……

巫女「という訳で、お金だけ渡すのも味気ないと思いましてウチの奢りで今日は豪勢に行きたいと思います」


商人「オイてめぇ誰の許しを得て喰ってんだ!?部外者だろ!?あ!?それ私の!!」

剣士「あのウサギとやらに誘われたんだ、断るのも忍びないだろう」モグモグ

武士「おいひい……おいひい……」モグモグ


巫女「聞いてないですね。まぁ楽しんでください」

少女「ほ、本当にいいの?こんなに……」

巫女「連中には手を焼いていたのでこれくらいは。まぁこれはギルドから出た調査費ですのでウチの財布は傷まないです」

少女「それって横領……」

190 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:04:42.71 ID:xHJy0M/N0
武士「でも驚いたよー。兎ちゃんがまさかなんか変な組織の幹部だったなんて」モグモグ

巫女「変な組織言わない。真っ当なお仕事してます」

剣士「んぐ……真っ当というのなら何故ギルドの連中は私を襲った。そこのところ聞きたいのだが」

巫女「さっき言ってましたね。襲われたことがあるって」

巫女「調べたら貴女指名手配されてましたよ」

商人「オイ」

剣士「しらん」

巫女「本人が知らんとは何事だ」

191 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:05:10.78 ID:xHJy0M/N0
剣士「なんだ?ここで捕まえるか?」チャキ

巫女「そんな野蛮な事はするつもりはありませ。それよりも取引しませんか?」

剣士「言ってみろ」モグモグ

巫女「簡潔で助かります。ギルドと契約して冒険者登録を行ってウチの専属になりませんか?」

商人「私兵か?そりゃまた大きく出たもんだ」モグモグ

武士「やっぱこういうのって腕の立つ人はスカウトされるもんなんだね」モグモグ

巫女「そう大袈裟なものじゃありません。ただギルドの依頼をウチ経由で優先的に回すってだけです」

巫女「見たところ食いっぱぐれるような事が無ければ貴女も変な行動は起こさないでしょう」

剣士「考えておこう。いつまでに返事をすればいい」モグモグ

巫女「一応ウチがこの街を出るまで……まだ期間は十分あるのでいい返事を待っています」

192 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:06:16.46 ID:xHJy0M/N0
少女「逆に飲まなかったら指名手配犯のままだよこれ……」

剣士「その時はその時だ。私はそれでもかまわんが」モグモグ

商人「要するにこの狂犬放置してたら返り討ちにあう冒険者が多いからギルドで飼っておこうって事でしょ?」モグモグ

巫女「そう大っぴらに言わんでもいいでしょう」

商人「事実だろ。貴女としては他人に飼われるのはプライドが許さないんじゃないですか?」モグモグ

剣士「そんなものは捕え様だ。飼い犬と言えばそうだろうし、雇われと言い張ればそうなる。考え方は人によって変わる」モグモグ

剣士「どちらにせよ、食うに困らなくなるんだ。選ぶ選ばんは私の自由だが、余程の理由が無い限り断るヤツもおるまい」モグモグ

剣士「さて、その飼い犬は果たして忠犬か狂犬のままか……まぁ、試せば分かるだろう」モグモグ

商人(言動よりは馬鹿ではないんだなこの娘は)モグモグ


巫女「咀嚼(そしゃく)音が気になって段々イライラしてきました」

193 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:06:42.81 ID:xHJy0M/N0
武士「兎ちゃんは食べないの?」

巫女「食べてます。あなたたちが食べ過ぎなんです」

巫女「大体意地汚いんですよ……貧乏人と無職と没落貴族が」ボソッ

商人「オイてめぇ聞こえてるぞ誰が貧乏人だゴルァ!!」

剣士「否定は出来ん」

武士「私の家没落してないからね!?」

少女「まぁまぁ……」

194 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:07:09.42 ID:xHJy0M/N0
巫女「さて、これだけの料理で釘づけになっている所申し訳ありませんが林檎ちゃん」

商人「んあ?なに?」

巫女「貴女なんであの森に居たんですか」

商人「〜♪」ピュー

巫女「ワザとらしく誤魔化すな。飯食った以上は喋ってもらいますよ」

商人「ギルドの金だろ……ったく」

武士「そうだよ林檎ちゃん!!もしかして私達に店番任せてる間に一人で黄金の果実探しに行ってたの!?抜け駆けだよ!!」

商人「チッ、バレちゃあ仕方ないですね。そうですよ、私がお宝を独り占めするためにちょいとね」

武士「酷い!!」

195 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:07:35.91 ID:xHJy0M/N0
商人「だってそりゃこんな短期間で二人も眉唾なお宝狙ってたってなったら誰だって存在するかどうか気になりますよ」

商人「だが結果がこれだ……もう懲りたよ」

武士「むぅ」

巫女「そうは言っても冒険で見つけたものはその発見者が所有する権利があります。早い者勝ちは悪いことじゃないですよ。いい気はしないですけど」

武士「そりゃまぁ……」

商人「……騙す事になっちゃって申し訳ないです……ごめんなさい」ペコッ

巫女「素直に頭を下げるとは、余程反省しているんですね。仕方ない、今回だけですよ」

武士「しょうがないなぁ。でももし探すなら今度から私も誘ってよ!」

商人「二人とも……」



商人(ハッハー!!騙されてやんの!!反省してませーん!!)プークスクス

少女(息を吐くように嘘と嘘を重ねて喋ってるヒトが今私の目の前にいる……)

196 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:08:04.09 ID:xHJy0M/N0
巫女「それで?何か森で見つけたものは無かったんですか?」

商人「特には……あーまぁ……」

剣士「おい、あれは何だったんだ?動く木だ」

商人(まぁそこに触れるわな……)

武士「ん?なにそれ?」

巫女「動くとは?」

剣士「私とコイツが戦っている最中に足場が崩れて地下洞窟まで落とされたんだ」

商人「それが二日前、私が街から出た日です」

巫女「で、そこから丸一日寝てたと」

商人「流石にあの高さから落ちればね……」

武士「何故林檎ちゃんは軽症でもう片方は足が折れてるの……」

剣士「そいつが頑丈なだけだろう」

197 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:08:32.18 ID:xHJy0M/N0
商人「目が覚めた後私の弁当がヤツの腹に消えたあと、そのまま洞窟の中をさまよっていました」

巫女「不要な情報は喋らないでください」

剣士「その先で大きく開けた空間があった。その中央に動く木があったのだが……」

少女「なに?クネクネと動いてたの?」

商人「そんなポップな感じじゃないですよ」

武士「むしろ怖いよそれ……」

剣士「私達が近づくと逃げるように、地形ごとだ。地形ごとアレは場所を変えていった」

巫女「偶然足場が崩れた……などではなく?」

商人「そこまでは分かりません。んでも、私達にはアレが逃げたように見えたってだけです」

198 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:09:03.01 ID:xHJy0M/N0
剣士「それよりも、お前はアレを"みつけた"と言って必至こいて追いかけていったが、何だったんだ?」

商人(迂闊に行動し過ぎたな。こいつがここまで口が軽いとは)

武士「まさか黄金の果実!?」

商人「ええ……あ、いえ。実の方は確認していないんで分かりませんが、私はあの木がもしかしたら……と思っただけで」

巫女「ぷっ……」

商人「ん?なーに笑ってんだ?」

武士「今の話に笑いどころあった?」

巫女「フフ……いえいえ、お二人とも少し勘違いを起こしているようで」

武士「へ?」

199 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:09:40.30 ID:xHJy0M/N0
巫女「黄金の果実はそう呼ばれている神器の名称であって、本当に果実という訳ではないんですよ。まぁ形状自体は本当に果実らしいですけど」

武士「???」

商人「あぁ……」

少女「どういう事?」

商人「あくまで黄金の果実という神器であって、それは木の実という訳ではない。木に生っている訳ではなく漠然と存在している物……って言いたいんでしょ?」

巫女「その通りです」

武士「あー、神様が果実を作ったんだから木に生ってる訳がないのか」

剣士「そうなのか?」

商人「そういうもんなんですかね」

200 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:10:11.02 ID:xHJy0M/N0
少女「実際どうなのお姉ちゃん?」

商人「言われてみりゃ確かにその通りだ。アレは神の創った果実であって木から自生した訳じゃない」

商人(だが侮るなよ、神器は人知を凌駕する)

巫女「それじゃあこの話は一旦終わりですね。ウチも引き続き森の探索はしますけど」

商人「ギルドからヒト出すのか?」

巫女「いえ、今時そんな古い伝承の神器を探してる物好きはそんなに居ません。私が冒険者の一人として個人的に探索するつもりです」

少女「イクサちゃんはどうするの?」

武士「私も探したいのはやまやまなんだけど……」

商人「オラ、借金返せよ」

武士「いつの間にか、食事代が借金扱いになってて……」

巫女「この世の悪の塊ですねこのヒト」

商人「HAHAHA☆」

201 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:10:37.03 ID:xHJy0M/N0
巫女「なんならウチが立て替えましょうか?」

武士「ほんと!?」

商人「オイまて余計な事すんな、ウチの店番が居なくなるだろ」

少女「出たな本音」

武士「んー……やっぱりいいよ」

巫女「なぜ?この女に関わってるとケツの毛一本残らずむしり取られますよ」

武士「けッ……兎ちゃん結構下品だよね……」

202 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:11:05.87 ID:xHJy0M/N0
武士「借金の方は大した額じゃないから今回の報酬でほとんど支払えたし」

武士「残りは林檎ちゃんのところでアルバイトして返そうかなって」

武士「私、今日までの事で色々と学ぶことが多くて……自分がいかに世間知らずだったかってのを思い知らされた気がして」

巫女「ですね」

武士「肯定は割と心に刺さるからやめて」

武士「妹ちゃんとも仲良くなれたし、私はしばらくこのままでいいかなって……」

少女「イクサちゃん……」

商人「いい話風に締めようとしてっけど早く返さねぇと利子で膨れ上がるぞ」

武士「悪魔!!!!!!!!!!!!」

商人「ハッハッハ、かつてないほど力強いセリフだ」

203 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:11:33.50 ID:xHJy0M/N0
少女「私もイクサちゃんが居てくれると助かるな」

武士「というわけで、この林檎ちゃんたちが街から出るまでの間はお世話になるよ。あ、でも私も黄金の果実は探しに行くからね!!」

商人「分かってるよ。抜け駆けしちゃった身としてはそこは文句は言いません」

巫女「それで、貴女は?」

剣士「行くアテがないし足も折れてて何も出来ん」

少女「足折れてんのに一番暴れてた気がするのですがそれは」

商人「おっと忘れてた、ちょっと待ってな」ゴソゴソ

204 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:12:01.50 ID:xHJy0M/N0
商人「またちょいと足見せて」

剣士「ん」

商人「失礼!」グサッ

剣士「ッ……それはなんだ?」

商人「治癒魔法を通すための器具です。さっき私が治すって約束したのほっぽりだしてましたからね」

巫女「ほう……随分と変わった物を持っているんですね」

商人「これも色んな地方を回ってる時に買ったものです。あぁ、動かない動かない、そのままそのまま」

205 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:12:42.15 ID:xHJy0M/N0
武士「治癒魔法は使える人が限られているって聞くけど」

巫女「それも、魔法が使える人材を迫害するようなこのご時世で……全く、もうそんな時代は終わるというのに」

巫女「しかしよくそんなものを見つけられましたね」

商人「それはまぁ……人のつながりって奴ですよ。私には私の大冒険がありましたからね。聞きたいですか?」

巫女「長くなるならいいです」

商人「でしょうね。私も易々とは話す気はないかな……気分はどうです?」

剣士「目が回る、吐きそうだ」

商人「えぇ……」

武士「もしかして不良品?」

剣士「冗談だ」

商人「ビックリした!!」

少女「……」

206 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:13:22.40 ID:xHJy0M/N0
少女「これ、いい道具だよ」

商人「ん?」

少女「これを揃えて作った人は、他の人が使いやすいように魔力を通す回路を丁寧に記している」

少女「お姉ちゃん、結構魔法の使い方が荒いから、治癒魔法がそんなに上手じゃないんだけど」

少女「でも、この道具はそれを補ってお姉ちゃんの魔力を通している」

少女「確かに、ちょっと高価な素材で出来てるけど、この道具を布教しようって思って精一杯コストダウン図ったんじゃないかな」

商人「……」

巫女「……」

武士「……」

剣士「……」

少女「ん?どしたのみんな」

207 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:14:06.29 ID:xHJy0M/N0
巫女(指輪の価値を一発で見抜いた辺りから気になってましたけど)

武士(この娘、どうやってそういう所見抜いてるんだろう)

剣士(意味ありげに黙ってみたが話が見えん)


商人「……この道具は、とても優しい女の子から買い取った物です。それも格安で」

少女「え?」

商人「その娘は、流行病で家族を失い、そして自身は魔法を使えるという事で周りから謂れのない扱いを受けていました」

商人「そんな娘が、多くの命を救いたいといって残したものがこの道具です。私は喜んでこれを買い取りました、私自身も色んな人に広めるためにね」

巫女「それ、ギルドでも取り扱いしたいのですが、製作者はどこに?」

商人「さぁ、もうこの世にはいないんじゃないでしょうかね」

巫女「訳アリみたいですね」

208 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:14:56.63 ID:xHJy0M/N0
商人「この道具を持っているのも私くらいですし、もう新しいものは望めないと思います」

少女「……その子は、幸せだったのかな」

商人「さぁ……私には分かりませんが」

商人「きっと幸せだったんじゃないでしょうか。ガラスの海で、愛する人を待つ彼女は……」

武士「あ、聞いた事ある。それって確か童話の話でしょ」

剣士「確か、優しい声は竜の……」

巫女「じゃあ林檎ちゃん、その道具を買い取らせてもらってもいいですか?」

商人「はい、勿論。まだ他にも備蓄は沢山ありますし、いいですよ」

209 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:17:48.08 ID:xHJy0M/N0
巫女「ギルドで量産できるのならそうした方がよさそうですね。中々いいものです」

商人「……」スッ

巫女「……?」

商人「……」ススッ

巫女「何ですかこの手は?」

商人「ライセンス料」

巫女「は?」

商人「私しか持ってない道具」

巫女「……林檎ちゃん?」

商人「くれよ」バァ――z___ン


少女「ハハ、ウチの姉悪魔だったって事忘れてたわ」

剣士「まったく悪びれる様子も無くああいう事を言えるヤツは初めて見た」

武士「上の流れ全部ぶち壊しだよ」
210 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:18:43.22 ID:xHJy0M/N0
小休止
この物語の主人公は基本的に悪魔
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/15(土) 15:12:28.42 ID:dXyScYcZo
2ヶ月
212 : ◆cZ/h8axXSU [sage]:2020/08/16(日) 00:55:21.86 ID:4hk+cMrl0
スマネェ…
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/16(日) 11:24:39.76 ID:inOBFsj2o
生きてたか
待ってるぞ
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/29(火) 18:17:55.87 ID:OMHDxVDl0
もうすぐ10月だな
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/15(日) 03:31:09.94 ID:r5wHB/UiO
6年以上この人のssの更新をせっついてる計算になる
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/10(日) 15:46:36.09 ID:AedzkFluO
まだかなーまだかなー
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/12/29(水) 01:52:06.70 ID:G/gNiSU1o
これは大作
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/02(金) 21:27:54.75 ID:gpT0EnXW0
保守








まもなく2年☆
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/02(金) 21:30:21.30 ID:uopqdnREO
間違えた…



もう3年………(ガクッ
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