他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
魔王「勇者殺人事件」
Check
Tweet
17 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:34:02.07 ID:48w/jaUq0
弓兵「じゃ、次は私の番デスネ」
神官「弓兵、あんたまで……!」
弓兵「神官サン、私は勇者サンが亡くなった理由を知りたイ。
事件が迷宮入りのままジャ、気になってエルフの森に帰れまセーン」
魔王「感謝する」
『弓兵のステータス』
──
「弓兵」Lv54 種族 エルフ 年齢 125
名前 アグラリエン・ルィン
職業 射手、狩人、シーフ
HP 650
MP 500
攻撃力 400
魔法攻撃力 450
防御力 300
特殊スキル 鷹の眼、古代魔法詠唱者
──
魔法使い「へえ、結構年いってたんだね」
弓兵「失礼ナ! エルフの中ではまだまだ若輩デスヨ」
18 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:35:49.81 ID:48w/jaUq0
魔王「さて、残るは二人か……どうする?」
魔法使い「……しょうがないね。いいよ、僕もステータスを見せてあげる」
神官「……」
『魔法使いのステータス』
──
「魔法使い」Lv48 種族 人間 年齢 16
名前 ブレンダ・ツインパイル
職業 白魔道士、黒魔道士、次元魔道士、天候魔道士
HP 400
MP 840
攻撃力 55
魔法攻撃力 700
防御力 18
特殊スキル 飛び級
──
魔王「ほう。その若さでこれほどの職を修めているとは」
魔法使い「……嫌味? あなたと比べたらマンティコアとケットシーくらいの差があるよ」
魔王「だが、これは紛れもなくお主の努力によるものだろう?
多少才能の分があるとはいえ、人の身でよくここまで頑張ったな」
魔法使い「……!」ポロッ
ゴシゴシ
魔法使い「ほ、褒めても何も出ないから」
魔法使い(初めてだ……こんな風に言われたの)
19 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:38:35.90 ID:48w/jaUq0
神官「……魔王、ウチもステータスを開示する」
魔王「ほう、お主だけは断ると思っておった」
神官「皆が開示してるのにウチだけしないなんてアンフェアやろ?
それにウチだって、あの時なにが起こったのか知りたいんよ」
魔王「了解した」
『神官のステータス』
──
「神官」Lv60 種族 人間(光の民) 年齢 17
名前 レイ・ハヤサカ
職業 ヒーラー、白魔道士、巫女
HP 800
MP 450
攻撃力 850
魔法攻撃力 300
防御力 15
特殊スキル 完全浄化
──
弓兵「攻撃力850……!? 見かけによらず力持ちなんデスネ」
神官「う、うっさい。そこは触れんといて」カアッ
魔王(ふむ。注目すべきは、全員が勇者を殺せるだけの戦闘能力を備えている、という点だな)
20 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:40:12.65 ID:48w/jaUq0
魔王「では次に、勇者が死ぬ前後の状況を知りたい。証言してくれるか」
騎士「だったらいいものがある」ゴソ
魔王「それは?」
騎士「録音の魔法陣を刻んだレコーダーだ。
有効範囲は私を中心に半径10メートル。旅の音声は全て録音されている」
魔王「ふむ。好都合だが、なぜそのようなことを?」
騎士「勇者に頼まれたんだ。魔王を倒すまでの活躍をあとで記事にしてもらうから、記録しておけと」
魔王「ほう……」
魔王(だいぶ虚栄心の強い人物だったようだな)
21 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:41:52.91 ID:48w/jaUq0
魔王「聞かせてもらおう。
途中何度か質問を挟むことがあると思う。その時は一時停止してもらえるか」
騎士「了解した」
カチッ ジー
──
勇者『もう録れてるのか?』
騎士『ああ』
勇者『よし。ではこれより、魔王討伐の旅に出発する。
足引っ張るんじゃねえぞ、お前ら』
──
カチッ
騎士「これは始めの方だったな、失礼した。
えっと、この場所の名前は?」
魔王「謁見の間だ」
騎士「なら、謁見の間に入る直前まで飛ばしても?」
魔王「ああ。そうしてもらえると助かる」
キュルルルル……カチッ
──
ギャハハハ!
勇者『魔王様バンザーイ、だってよ。
どいつもこいつも死ぬ直前に叫びやがって。だっせ』
22 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:42:56.28 ID:48w/jaUq0
神官『どうやら魔王はずいぶん慕われてるみたいやな。
もっと恐怖政治を敷いてるのかと思ってた』
勇者『どうでもいいさ。どうせ俺には敵わねえんだから。そうだろ?』スリスリ
神官『ちょっと、触らんといてくれる』バシ
勇者『気ぃ強えなあ。ケツくらい触らせろよ、減るもんじゃねえし。お前の妹の方がよっぽど大人しいぜ』
神官『悪かったな気ぃ強くて』
魔法使い『……』
勇者『あーん? なんだよ魔法使い、なんか文句あんの』
魔法使い『別に、ないけど』フイ
勇者『……ハッ』
ドンッ
魔法使い『きゃっ』ドサッ
23 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:44:05.71 ID:48w/jaUq0
神官『ちょっとあんた、なにしてんの!』
騎士『大丈夫か? 魔法使い』サッ
勇者『一度寝たぐらいで彼女づらとかマジでうぜぇ。調子乗ってんなよ。
お前程度、パーティから抜けたってなんも困らねえんだからな?』
魔法使い『……っ』
タッタッタッ
弓兵『ヘイ皆サン、この先に広い空間があるみたいデスヨ。
いよいよ魔王と……オヤ? 何かあったのデスか?』
勇者『なんでもない。行こう』ニコッ
スタスタ……
──
カチッ
魔王「……」
ゴゴゴ……
24 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:45:39.40 ID:48w/jaUq0
騎士「あの……魔王」
魔王「……なにかね」
ゴゴゴゴゴ……
騎士「その……黒いオーラが出ていて、皆おびえている」
魔王「! おっと」
フシュウゥ……
魔王「これは失礼した」
魔王(しかし、勇者がこれほど虫唾の走る男だったとはな。奴との戦いを楽しみにしていた我が馬鹿みたいではないか。
何よりも許せないのは、仲間に対する敬意の無さだ。
これほどの人材が揃っているにもかかわらずあの不遜な態度……。自分以外はおまけ程度にしか考えていないのだろう)
フウ……
魔王(我が奴の立場なら、あらゆる手を尽くして人材の流出を防ぐだろう。あのような態度は全く理解できぬ)
魔王「すまなかったな。続けてくれるか」
騎士「分かった」
カチッ ジー
25 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:47:31.35 ID:48w/jaUq0
──
カツーン カツーン
神官『でっかい広間やな。先が全く見えへん』
弓兵『照明がたくさんあるのが救いデスネ。これで真っ暗闇だったらと思うと、ゾッとシマース』
カツーン カツーン
魔法使い『……っ』
騎士『どうした魔法使い。具合でも悪いのか』
魔法使い『う……実は……』
勇者『放っとけよ。どーせいつもの仮病だろ。
いいか。お前のせいで遅れをとったら承知しねえし、お前のために休んだりもしねえからな』
騎士『おい勇者、そんな言い方』
魔法使い『いいよ。僕は……大丈夫、だから』
グイッ
勇者『いいか? お前はもう喋るな。黙ってついてこい。
立ち止まりやがったら、今度こそ本当に殺すからな』ヒソヒソ
魔法使い『……っ』
26 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:49:00.47 ID:48w/jaUq0
スタスタ
勇者『ちっ、無駄に広い空間作りやがって』
神官『すごい数の電灯やな。普通、魔王の城って松明とか使うもんちゃうんか?
……もう大分来たはずやけど、まだなにも見えな──』
ブツンッ
勇者『!? なんだ、明かりが消えたぞ!』
神官『突然暗くなるなんて罠かもしれん。皆、動いたらあかんで』
騎士『魔法で明るくするのは?』
神官『光に興奮するタイプのモンスターが召喚された可能性もある。少し様子を見た方がええ』
騎士『了解した。周囲の警戒を続ける』
…………
……
…
キャアアアア!
ドサッ
27 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:50:07.49 ID:48w/jaUq0
神官『! 弓兵の悲鳴……?』
騎士『こっちだ!』
タタッ
騎士『弓兵、どうした!』
弓兵『わ……分かりまセン、でも近くに敵がいマス!』
騎士『神官!』
神官『もう限界やな、今明かりを点けるわ。「聖なる──」』
パッ
神官『!? 明かりが戻った……なんやったんや……』
弓兵『! あ、アア……っ』ガクガク
28 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/12(水) 20:51:39.57 ID:48w/jaUq0
神官『? ……! ゆ、勇者!?』バッ
騎士『一体何が……!』
魔法使い『いや、勇者さま……勇者さまああああああ!』
ズゴゴゴゴゴ
魔王『ふはははは! よくぞ我の眼前まで辿り着いたな人の子らよ。
喜ぶが良い。儚い命を散らすのが、他でもない我の手によるものであることを……む?』
──
カチッ
騎士「以上が城の中で起きたことだ」
魔王「……」カアッ
騎士「魔王? どうした、顔が赤いようだが」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/13(木) 02:24:03.23 ID:ywNrzt9DO
乙
面白いけど虫酸が走るww
30 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/13(木) 20:43:07.91 ID:NDYum09h0
魔王「う、うむ……なんでもない」
魔王「今の録音を聞いて、いくつか新たな謎が生まれた」
神官「聞かせてほしい。うちらの視点からは見えへんものが、あんたには見えるかも」
魔王「……」
神官「魔王?」
魔王「その前に1つ聞きたい。
お主らにとって勇者とはどういう存在だったのだ?」
皆「……」
魔王「先程の録音を聞いただけでも、唾棄すべき男であることは明白だ。
正直、たとえお主らの中に殺人者がいたとしてもなんの不思議もない。
しかし、お主らは勇者の死の真相を知りたいという。その思いはどこから来ているのだ?
仲間意識か? 友情か? あるいは恋愛感情か?」
……アハ、
アハハハハハハ!
魔法使い「仲間? 恋愛感情? そんなわけないじゃないか!」
31 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/13(木) 20:44:30.16 ID:NDYum09h0
神官「魔法使い……あんた」
ポタ……ポタ
魔法使い「知ってたよ。勇者が、僕のことを道端に生えてる薬草程度にしか見てくれてないって。
それでもいつか変わると思ってた。僕が優しさを教えてあげられたらって、そう……思ってたのに……っ」ポロポロ
神官「……」ギュッ
魔法使い「……う、うう……っ」グスッ
騎士「確かに勇者はクズだった。しかしそれでも、幼い頃から共に修行した同志だった。
あるいはこの旅が、奴のねじ曲がった性格を変えてくれるのではないかと……淡い期待をしていた」
弓兵「私は単純に、弓術と遠距離魔法の腕を買われて、一番最後に参加しまシタ。
でも……勇者サンがあんな人だったなんて知らなかった。
自信過剰な面は多々ありましたけれど、私の前ではある程度ちゃんとしてるように見えましたカラ。
さっきの録音を聞いて本当に驚きまシタ。本性を知っていたら勇者の誘いは断っていたでしょう」
魔王(なるほど。勇者には皆それぞれ、思うところがあったのだな)
32 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/13(木) 20:46:27.54 ID:NDYum09h0
魔王「理解した。では、我の考えを聞かせよう。
現状、謎は大きく分けて三つある。
1、停電の原因
2、弓兵を襲った者の正体
3、勇者に何が起こったか」
『1、停電の謎』
魔王「まず1つ目、停電について検証してみよう。コレクサ、先程の停電の原因は?」
ポン
コレクサ『停電は起きていません』
魔王「む?」
神官「電気が来てなかったんやろ? コレクサの電源自体入っていなかったんと違う?」
魔王「いや、それはあり得ぬ」
弓兵「何故デス?」
魔王「コレクサは魔力と電気両方を動力源としているからだ。仮に電力の供給が止まっても、魔力の元である我が生きている限り停止することはない。
コレクサが無かったと断言する以上、本当に停電は無かったのだろう」
騎士「しかし、確かにあのとき……」
魔法使い「……」
弓兵「どうしたんデス魔法使いサン。さっきから黙りこくって」
33 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/13(木) 20:48:07.26 ID:NDYum09h0
魔法使い「えっ……ううん、大丈夫」
神官「なあ、ずっと考えてたんやけど、『暗闇のワナ』」が仕掛けられてたんと違うかな」
魔王「うむ。我もその可能性は考えていた」
騎士「暗闇のワナ、というのは」
魔法使い「……魔法陣に何者かが足を触れると発動するワナで、周囲から数分間光を奪い、暗がりにする魔法だよ」
騎士「おお! ぴったりじゃないか」
魔王「だが一つ問題がある。誰がそのワナを仕掛けたのか、ということだ」
神官「つまり魔王、アンタは仕掛けて──」
魔王「無い。そもそも、この魔王城にワナは一つも仕掛けられておらぬ」
神官「一つも? それって不用心ちゃうか。普通は大量に仕掛けて侵入者を撃退するやろ」
魔王「魔王という至高の存在の根城に、余計な小細工など不要だ。
というより、そもそもここは我の居城。そこかしこにワナが仕掛けてあっては住みにくくて仕方なかろう?」
34 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/13(木) 20:49:35.87 ID:NDYum09h0
騎士「た……確かに」
魔法使い「トイレしようとしたら槍が降ってくるとか、考えただけで面倒くさい」
神官「魔王本人は仕掛けてないとしても、部下が仕掛けた可能性は?」
魔王「それもない。この城の守護を担っていたのは副将軍のジアスだが、奴は重度の暗闇恐怖症で就寝時も明かりをつけっぱなしにするほどだ。
そんな男が敵の侵入を防ぐためとはいえ、暗闇のワナを仕掛けるなどあり得ない」
弓兵「……もしかして、この城がやたらと明るいのハ……」
魔王「副官の趣味だ。我としてはもう少し薄暗いほうが好みなのだが、奴が怖がるとあっては仕方がない。
部下が働きやすい環境を作るのも上司の努めだからな」
神官(経営者の鑑……!)
魔王「まあその副官が死んだ今となっては、もう少し暗くしても文句は言われんだろう。
我としては明るいままでも良かったのだが、な……」シュン
皆「うっ」ズキン
35 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/13(木) 20:51:52.14 ID:NDYum09h0
騎士「せ、整理するぞ。魔王サイドは突然の暗闇について何もしてない、ということでいいのか?」
魔王「うむ」
弓兵「ウーン、振り出しに戻っちゃいまシタネ。魔法使いサン、何か思いつきませんカ?」
魔法使い「え、僕?」
弓兵「ハイ。アナタはパーティで一番の、魔法のスペシャリストですカラ」
騎士「確かに! 停電に関して何か心当たりはないか?」
魔法使い「そうだな……光を奪う魔法はいくつかある。
まずさっき出た『暗闇のワナ』。
それから『光避け』。生活魔法で、主に太陽光を遮断するときに使う。
あとは『視野交換』。文字通り、対象二人の見ている景色を入れ替える魔法」
騎士「視野交換?」
魔法使い「今回の場合でいえば、片方が目をつぶっている、もしくは暗い部屋にいた場合、まるで停電したように錯覚させられる。
……それくらいかな」
魔王「……」ピクッ
36 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/13(木) 20:53:21.25 ID:NDYum09h0
神官「へえ、『視野交換』なんて初めて聞いたわ」
魔法使い「超マイナーだからね。僕も実際使ったことはないんだ」
騎士「私なんて、今聞いた魔法全部知らなかったぞ」フフン
弓兵「それ全然自慢になってないデスヨ……」
魔王「……。
……魔法使いよ」
魔法使い「……!」ビクン
魔王「少し話がある。お主が望むなら、我とお主、二人きりで話すことも可能だが」
魔法使い「……」
騎士「え……なんだ二人共、なんの話だ?」
魔法使い「……はあ……。やっぱり魔王には敵わないなあ。
ここで大丈夫。皆にも聞いてほしいから」
神官「どういうことや」
魔王「光を奪ったのは魔法使い、お主だな」
37 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/14(金) 19:13:42.81 ID:wI2fq1Np0
皆「!?」
魔王「先程魔法使いが挙げた魔法は三つ。だが、実際はもう一つ存在する。
『暗がりの眼』。対象の目に魔法をかけ、一定時間光を感じなくさせる。
しかも先に挙げた三つと違い、術者の力量次第で何人にでもかけられる危険な魔法だ」
神官「そんな魔法があったなんて、全く知らんかった……」
魔王「それは仕方がない。この魔法は人道に反するということで数十年前に禁止されているからな。
知っているのは一握りの魔法研究家くらいのものだ」
騎士「なら、魔法使いが知らなくても無理ないだろう? 別にわざと言わなかったわけじゃ」
魔王「いや、彼女はわざと言わなかったのだ」
38 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/14(金) 19:15:36.66 ID:wI2fq1Np0
騎士「どうして言い切れる?」
魔王「先程、我々は停電の原因について議論していたな。そのとき、それぞれ異なった言い方で闇を表現していた。
停電、暗闇、光を奪うなど、ありきたりな言葉を我らが使う中、魔法使いだけが『暗がり』と表現した」
──
魔法使い『……魔法陣に何者かが足を触れると発動するワナで、周囲から数分間光を奪い、「暗がり」にする魔法だよ』
──
魔王「その時我は、彼女が『暗がりの眼』を知っているのだと思った。あまり他で使う言葉でもないからな。
だが、彼女が挙げた魔法の中にそれはなかった。そのときに仮説を立てたのだ。
どうやら魔法使いは『暗がりの眼』の存在を隠そうとしている。なぜか。
考えられる最もありそうな理由は、彼女自身が『暗がりの眼』を使い、光を奪った張本人だから、ということだろう。むろん、単なる推測に過ぎないがな」
騎士「……本当なのか、魔法使い」
魔法使い「……」
こくり
騎士「! なら、お前が勇者を殺したのか。あんなに慕ってたのに、どうして……」
39 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/14(金) 19:16:44.67 ID:wI2fq1Np0
魔法使い「違う! 僕は殺してない。光を奪ったのは、別の理由があったからだよ」
神官「別の理由?」
魔法使い「……暗くなる前、僕の様子がおかしかったの覚えてる?」
騎士「ああ。私は具合でも悪いのかと聞いて……お前はなにか答えようとしたが、勇者に遮られたのだったな」
魔法使い「実は僕、あのとき……──かったんだ」ゴニョ
弓兵「……!」ピクッ
騎士「ん? なんだって?」
神官「声が小さくて全然聞こえへん」
魔王「すまぬが魔法使い、もう少し大きな声で頼む」
弓兵「あ、あの皆サン、あんまり追い詰めたら……」
魔法使い「……っ。
だから、僕はあのとき、トイレに行きたかったんだ!」
40 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/14(金) 19:18:00.65 ID:wI2fq1Np0
シーン
神官「……トイレ?」
魔法使い「そうだよ! ずっと我慢してたんだから」
騎士「そんなの、その辺にある柱の影とかですればいいじゃないか」
魔王(一応我の家なのだが……)
魔法使い「そんなはしたないことできないよ! だって勇者様がいたんだよ!?
それに、あのときはトイレしたいなんて言える空気じゃなかったし」
神官「だから光を奪ったんか? 隠れてトイレするために」
魔法使い「うん……『暗がりの眼』を使って皆の視界を奪っている間、離れた場所でトイレしてたんだ。
……戻ってみたら、勇者様が倒れてて……」
41 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/14(金) 19:19:33.85 ID:wI2fq1Np0
魔王「なるほど。では、勇者に何が起こったかは見ておらぬのだな?」
魔法使い「うん、柱の影にいたから……。こんな話信じてもらえないかもしれないけど……。
でも、僕は勇者様を殺してなんかない。それだけは信じて」ギュッ
ポン
騎士「信じるよ。よく考えたら、お前が勇者を殺すわけない。この中で一番、まっすぐにあいつを愛してたもんな」
弓兵「ま、あの状況なら仕方ありまセンネ。……それにしても、勇者があれホド酷い男たとハ……」
神官「そういうときは、今度からうちに相談してな。溜め込んだらアカン。ええか?」
魔法使い「うん。……あの魔王……さん」
魔王「うむ?」
42 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/14(金) 19:20:56.30 ID:wI2fq1Np0
魔法使い「城を汚してしまってごめんなさい。僕の話、信じてもらえないかもしれないけど……」
魔王「いや信じるぞ。先程確認もとれたしな」
魔法使い「えっ」
神官「確認?」
魔王「この城の汚れやゴミは、5分が経過すると消失するのだ。モンスターの死体と同様にな」
弓兵「そういえば、確かにチリ一つ落ちてまセンネ」
魔王「消えたゴミはリスト化されてコレクサが保管している。
先程確認したところ、確かに……まあ、あれだ……うん。
というわけで、魔法使いの証言は信用に値する」
魔法使い「……っ」カアアッ
魔王(まあ、トイレをしたのが事実とはいえ、勇者を殺していないとは言い切れぬが……な)
……ザワッ
43 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/14(金) 19:27:12.69 ID:wI2fq1Np0
魔王(む? なにか、我は大切なことを見落としている気がする……なんだ?)
騎士「魔王、どうしたんだ? 難しい顔で考え込んで」
神官「アホ、何か大事な考え事かもしれんやんか。邪魔してごめんな、魔王」ペシッ
騎士「いたっ。ご、ごめん」
魔王「ああ……いや、気にする必要はない」
魔王(ふむ……今思い至らぬということは、時が来るまで待て、ということだろうな)
魔王「……それにしても分からないのは、何故事前にトイレを済ませなかったかだ。
謁見の間に入る前、休憩ポイントがあったであろう? あそこにトイレを設置していたのだが」
神官「もしかして噴水の所? トイレなんてなかったで」
魔王「いや、噴水の前で『コレクサ、トイレ行きたい』と言えば、地下トイレへ向かう階段が──」
神官「んなもん分かるか!」
魔法使い「普通にトイレ設置すればいいじゃん!」
魔王「む、むう……すまない……?」
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/15(土) 02:06:52.29 ID:oMwy6P7DO
乙
胸糞悪いww
45 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/15(土) 20:51:46.00 ID:ZGoQ5r0h0
『2、弓兵を襲ったのは何者か?』
神官「ま、とにかくこれで停電の謎は解けたな」
魔王「うむ。次なる謎は、弓兵を襲った者の正体だが」
騎士「この部分だな」キュルル…
カチッ
──
キャアアアア!
ドサッ
神官『! 弓兵の悲鳴……?』
騎士『こっちだ!』
タタッ
騎士『弓兵、どうした!』
弓兵『わ……分かりまセン、でも近くに敵がいマス!』
──
魔法使い「それなら簡単に分かるんじゃない?」
魔王「ほう、何故だ」
46 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/15(土) 20:53:23.22 ID:ZGoQ5r0h0
魔法使い「だってここは魔王の城だよ? 固定魔法陣から召喚された雑魚モンスターとかじゃないの」
神官「確かにな」
弓兵「私もそう思いマス。あの感触は、明らかに人ではない何かでシタ」
騎士「じゃあ襲ったのはモンスターということでいいな。もしかすると勇者を殺したのもそいつかも」
弓兵「勇者ともあろうものが雑魚モンスターに遅れをとるでしょうカ?」
騎士「いくらあいつでも、視界を奪われた状態で不意打ちを食らったらどうだろうな」
魔法使い「……っ」シュン
騎士「あ……いや、違うぞ魔法使い。お前を責めてるわけじゃ──」
魔王「あー、盛り上がってる所悪いが、雑魚モンスターの可能性は皆無だ」
皆「えっ」
47 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/15(土) 20:55:06.51 ID:ZGoQ5r0h0
魔王「何故なら、この城内に雑魚モンスターは出現しない設定になっているからだ。
思い出してほしい。小ボス、中ボス以外で、モンスターは出現したか?」
騎士「い、いわれてみれば」
魔法使い「でもそれって変じゃない?
ここは魔族の総本山、もっとたくさんのモンスターで固めるのが普通じゃないの?」
魔王「先程も触れたが、ここは我の居城だ。
想像してみよ。もし雑魚モンスターがいたら、食事や所要で移動するたび大量のモンスターとぶつかってしまうではないか。
我は仕事とプライベートは分けるタイプなのだ。
それに、数で攻めるという戦力は強力だが、面白みに欠ける。我の好みは少数精鋭、一騎当千。
もちろん状況が切迫すれば数に頼るのもありだとは思うがな」
神官「うーん……あくまでモンスターはいなかった、って主張するんやな」
魔王「断言する。あの時点で、魔王城に我以外のモンスターは存在していなかった、と」
弓兵「でも、あの感触は確かに人外のものでシタ。モンスターじゃないとしたら、一体……」
神官「うーん、可能性は低いと思うけど一応聞いとくわ。魔王、アンタが何かしたってことはないか?」
48 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/15(土) 20:56:37.87 ID:ZGoQ5r0h0
魔王「我が?」
神官「これまでの言動から考えて、アンタが意図的に弓兵を攻撃したってことはないと思う。
けど例えば無意識のうちに何かしたってことは? うっかり魔法でモンスターを生み出したとか──」
バッ
魔法使い「ごめんなさい! 神官に悪気はないんです、許してあげて!」
神官「え?」
クルッ
魔法使い「このバカっ! 無意識下で魔法を垂れ流すっていうのは、魔法を習い始めた新人だけがやるミスなんだよ。
ある程度修練を積んだ魔法使いなら絶対ありえないことなんだ」
魔王「!」
魔法使い「つまり君は、魔王にこう言ったのと同じなんだ……『あなたは魔法初心者ですか?』ってね!」
49 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/15(土) 20:57:47.59 ID:ZGoQ5r0h0
神官「!」
バッ
神官「ご、ごめんなさい魔王。仮にも魔法を極めた者に対して言うことやなかった。
言い訳にしかならんけど、神殿魔法はそもそもの成り立ちが違うから、ベテランでも魔法を制御できないことはたまにあるんよ。
神は気まぐれで、その時々で与えてくれる恩寵の強さも違うし……。
ホンマにごめん、許してください!」
魔王「……新人だけが……やるミス……」
神官「え?」
魔王「い……いや、なんでもない。うむ、許そう。間違いは誰にでもあることだ」
神官「魔王……」ホッ
魔王(どうしよう……我、ちょくちょく無意識下で魔法を行使してしまうのだが)
50 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/15(土) 20:58:56.32 ID:ZGoQ5r0h0
ごほん。
魔王「せ、整理するぞ。弓兵を襲ったのは我でも、我の手による者でもない。
しかし弓兵が嘘をついているとも思えぬ。
可能性を列挙するなら次の四つだ。
A、弓兵が嘘をついている
B、魔王が嘘をついている
C、どちらも真実を語っている
D、どちらも嘘をついている」
弓兵「私、嘘ついてまセン!」
魔王「我もだ。だがずっと仲間として旅してきた弓兵はともかく、今日初めて会った上に最強の敵でもある我を無条件に信じろとは、さすがに言えぬ」
神官「何か考えがあるんやな?」
魔王「うむ。相手の嘘を見抜く魔法、『真実の口』を魔法使い、お主に使ってもらいたい」
魔法使い「……えっ」
51 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/15(土) 21:00:07.69 ID:ZGoQ5r0h0
魔王「我も使えるが、これは他人にしか作用せぬからな。誰かにかけてもらう必要があるのだ」
弓兵「なるほど、それはいい考えデスネ。魔法使いサン、よろしくお願いしマス」
魔法使い「無理……」
魔王「ああ、『真実の口』を習得しておらぬのだな。心配するな、我が教えて──」
魔法使い「そうじゃなくて、無理なんだよ! 僕が扱える魔法ランクは4まで。『真実の口』はランク5の魔法なんだ。
どれだけ修練しても、僕はランク5の魔法は使えない……使えないんだよ……っ」グスッ
神官「魔法使い……」
弓兵「ランク4が使えるだけデモ十分すごいんデスけどネ……」
騎士「魔法のレベルを一瞬で上げる方法があればいいんだがな……」
52 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/15(土) 21:01:57.06 ID:ZGoQ5r0h0
魔王「あるが」
神官「あるんかい! まあ半分予想はしてましたけども!」
騎士「あれだろう? どうせ、レベルを上げるには大量の生贄が──とか言うんだろ」
魔王「いや、今回の対価はかなり軽いぞ。少なくとも誰一人犠牲にすることはない」
魔法使い「本当? なら是非僕に教えて」
魔王「もちろんだ。向上心は人が持つなによりの宝だからな、好ましいぞ。
ランク12『魔導の極意』。魔法レベルを一瞬で引き上げる魔法だ。対価はそれほどでもない。
対象の寿命70年分、それだけだ」
神官「ななっ……!」
53 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/15(土) 21:03:26.83 ID:ZGoQ5r0h0
魔法使い「是非お願いし──」
騎士「やめろ早まるな!」ガシッ
弓兵「考え直して下サイ! 70年なんて、長命のエルフですら即却下案件デスヨ!」ガシッ
魔法使い「極意を……僕に魔法の力を──っ!」
数時間後
テッテレーン
コレクサ『魔法使いのレベルが63に、扱える魔法ランクが5に上がりました。
「真実の口」を習得しました』
魔王「よくやった魔法使い。全てを出し切ったいい勝負であった」
魔法使い「ぜーっ、ぜーっ」ポタポタ
54 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/15(土) 21:04:51.80 ID:ZGoQ5r0h0
神官「結局単純な力押しでレベルを上げるとはな……」
弓兵「デモ考えてみればこれが一番の方法でしたネ。最強の魔法使いである魔王と何度も戦えバ、嫌でも経験値は稼げるわけですカラ」
騎士「……」ウズウズ
神官「ん? どしたんソワソワして」
騎士「いや、次は私の番かと思うと、武者震いが止まらなくてな」
神官「……うん?」
魔王「これをゆっくり飲むといい……落ち着いたか?」
魔法使い「はい、もう大丈夫です……これは? すごく美味しい」コクン
魔王「琥珀花のはちみつ入りアイスティーだ。今の修行で大分カロリーを消費したからな」
魔法使い(染み渡る……!)ゴクゴク
騎士「魔王! 次は私の修行を──」
55 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/15(土) 21:05:57.07 ID:ZGoQ5r0h0
魔王「いや、勇者の死の真相を突き止めるのが先だ」
騎士「あ……そう、だな」シュン
神官(そらそーやろ)
ポン
魔王「そんな顔をするな。全てが終わったあと、思う存分相手をしてやろう」
騎士「本当か!?」
魔王「魔王に二言はない。……さて魔法使いよ。準備はいいな?」
魔法使い「うん。ランク5「真実の口」」キンッ
魔王「我は弓兵が襲われた件に関与していない。モンスターを生み出してもいないし、我が動いたということもない……念の為確認しておこう。コレクサ、我にかかっている魔法を述べよ」
シーン
魔王「おっと……『コレクサ、魔王にかかっている魔法を教えて』」
コレクサ『了解しました』
神官(融通きかへんなーコレクサ)
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/15(土) 21:16:56.45 ID:YHjqYZaco
これ草
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/02/15(土) 21:56:37.15 ID:VCgHoqhJO
コレクサーww
58 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/16(日) 19:34:59.97 ID:Eidzes3X0
コレクサ『「防御最大」「魔法攻撃力最大」「真実の口」、以上です』
魔法使い「確かにかかってるね」
騎士「てことは弓兵が嘘を?」
弓兵「そ、ソンナ!」
神官「あほ、弓兵が嘘つく理由がどこにあんねん」
魔法使い「分かんないよ。実は犯人で、アリバイ工作の為に嘘ついたのかも」
弓兵「そんなコト! しまセン!」
魔王「弓兵よ。暗闇の中、本当にモンスターのような存在に襲われたのだな?」キンッ
59 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/16(日) 19:36:21.33 ID:Eidzes3X0
弓兵「確かデス。あの感触は確かにモンスターでシタ。信じてくだサイ!」
魔王「うむ、信じるぞ」
神官「ん? えらいあっさりやな」
魔王「『真実の口』を弓兵にもかけた。彼女は真実を語っている」
弓兵「い、いつの間ニ」
魔法使い(む、無詠唱でランク5を使えるなんて……!)クラッ
ぐううう……
魔王「む。なんだ、今の怪鳥の鳴き声のごとき音は」
魔法使い「多分お腹の音だよね……騎士?」
騎士「イメージで言ってないかイメージで」
スッ
60 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/16(日) 19:37:41.04 ID:Eidzes3X0
神官「ご、ごめん。ウチや」カアッ
弓兵「魔王城に入ってカラ何も口にしていまセンものネ。仕方ありまセン」
魔王「ここから先は食事をとってからにするか」
神官「魔族の食事、かあ……」
魔王「はは、生の人肉などは出て来ぬし、毒も入っておらぬから安心せよ。人間界の食事処とワームホールで直結している。好きなものを頼むがいい」
弓兵「そういえば以前、出てきた料理に毒が入っていたコトがありましたネ」
神官「あれは大変だったわ。皆に三日三晩回復魔法かけまくってクタクタになってな。
どんな毒でも消せる無敵の秘薬があればって、何度も思ったわ。そんな都合のいいもんあるわけないのに」
魔王「あるが」
神官「ぅあるんかい!」
魔法使い「世界は広いよね……」
61 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/16(日) 19:38:52.47 ID:Eidzes3X0
〜魔王城・食堂〜
ずずずっ
騎士「うまい! このシチューは絶品だな」
神官「コラ、スープは音をたてたらアカンっていつも言ってるやろ」
弓兵「ステーキ美味しイ! こんないい肉は久しぶりデス!」ガブッ
魔王「良いのか? エルフは肉を食べないと聞いたが」
弓兵「私はエルフ族でも変わり者で有名なんデス。肉も魚もバンバン食べますヨー!」
魔王(ふむ。世の中は予想外のことばかりだ。面白い)
魔法使い「ダメ元で頼んだのに本当にあるなんて……フルーツパンケーキ6段生クリーム鬼盛り」キラキラ
神官「たこ焼き、うまっ」ハフハフ
62 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/16(日) 19:40:11.95 ID:Eidzes3X0
魔王「人間界で評判の食事処を複数直結させているからな。基本的にどんな料理でも取り寄せが可能だ。
ただし、夜11時以降は一部の酒場に限られるが」
弓兵「何故デス?」
魔王「食事処の営業時間があるからな」
神官「そんなん、魔王やったらいくらでも融通きかせられるやろ」
魔王「閉店時に無理やり作らせるのは我の主義に反する。
美味な料理を作るには相応の修行が必要であろう。ならば、その努力に敬意を払うのが筋というものだ」
弓兵(優シイ……)
神官「う、ウチが間違ってたわ……」
カチャッ……
騎士「ふう、食べた。……もし勇者がこの場にいたら、真っ先にお菓子を注文するだろうな」
魔王「菓子?」
騎士「ああ。あいつの大好物だ」
魔法使い「そうだったね。プリン、ゼリー、ソフトクリーム……いつも大量に頼んでたっけ」
弓兵「勇者サンのお墓参りのときハ、マカロンをお供えしてあげましょうネ。よくつまんでいましたカラ……」
63 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/16(日) 19:41:16.25 ID:Eidzes3X0
〜魔王城・謁見の間〜
魔王「腹が満ちたところで続きといこう。弓兵よ、お主が襲われたときのことを詳しく聞かせてほしい。辛いとは思うが……」
弓兵「平気デス。真相を明らかにスル為ですものネ」
カタカタ
魔王「……弓兵。無理をする必要はない」
弓兵「何がデス? 私は大丈夫で──」
ポン
神官「弓兵、あんた震えてんで」
弓兵「えっ」
ポン
騎士「心配するな、私達がついてる」
ポン
魔法使い「辛いなら辛いって言ったほうがいいよ。僕らがついてるから」
弓兵「……ごめん、なさい。
本当は私、とっても……怖かったんデス……」ポロッ
わあああん……
64 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/16(日) 19:42:31.21 ID:Eidzes3X0
──
魔王「本当に平気か?」
弓兵「もう本当に大丈夫デス。私には仲間がいてくれますカラ」
魔王「承知した。では聞かせてもらおう。
あのとき何があったのかを。……ゆっくりでよいぞ」
弓兵「周囲が暗くなったとき、私は皆より少し先に進んでいまシタ。
暗闇のときいつもスルように、立ち止まって嗅覚と聴覚に意識を集中させていたんデス。
すると背後から足音が聞こえてくるのに気が付きまシタ」
魔法使い「足音?」
弓兵「ええ。ブーツの靴音だったので、はじめは仲間の誰かが追いかけてきたんだと思いまシタ。
でも、振り返って『誰ですカ?』と聞いても応答が無くて……なんだか怖くなって、逃げようと踵を返したんデス。その時私のお尻を掴んだ手の感触を、鮮明に覚えていマス。
鋭い爪が生えた指が四本。手の表面は硬い鱗で覆われているようでシタ」
騎士「その特徴は……明らかに人間じゃないな」
65 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/16(日) 19:44:26.53 ID:Eidzes3X0
弓兵「ええ。でも、本当に怖かったのはその先なんデス。
私、相手を突き飛ばそうと両手を前に出しました。そしたら、右腕がぬるぬるした穴にずるり、と引きずり込まれたんデス。
モンスターに食べられたと思った私はパニック。ありったけの古代魔法をモンスターの体内に打ち込みましタ」
魔法使い「そっか、君は『古代魔法詠唱者』のスキル持ちだもんね」
騎士「古代魔法ってなんだ? 普通の魔法とは違うのか?」
魔法使い「古代魔法の呪文は、使用者の体内に刻まれているんだ。
呪文を唱えないと基本的には使えない現代魔法と違って、一瞬で行使できるのがメリットだね」
騎士「すごいな。ほとんど無敵じゃないか」
魔法使い「その代わり強い魔法は使えない。せいぜいランク1か、最大でもランク2まで……だったよね」
弓兵「その通りデス。私の使える古代魔法は三つ。全てランク1の基本的な魔法だけデス」
魔王「どんな古代魔法が使えるのだ?」
弓兵「『麻痺』、『電撃』、『弱毒』の三つデス。主に弓矢にかけて使いマス」
66 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/16(日) 19:45:47.98 ID:Eidzes3X0
魔王「ふむ」
弓兵「ただ、本来遠距離で使う魔法を直接叩き込んだので、多少は威力が上がっていたかもしれまセン。
その後モンスターは離れていったので、どこかへ逃げたんだろうと思ってまシタ」
魔王「……」
魔王(まさか……)
騎士「うーん弓兵の話を聞くと、やはりモンスターがいたとしか思えないな」
神官「召喚獣の可能性はないか?」
騎士「……そういえば、唯一召喚魔法を使えたのが勇者だったな」
神官「せやな。他の魔法はからっきしやったけど、召喚魔法だけは得意でよく使ってたわ。
普通召喚獣は気性が荒くて手懐けるのに苦労するんやけど、勇者が一撫でしただけですっと大人しくなってたな」
魔法使い「でも録音では、召喚魔法を詠唱してる声は聞こえなかったよね? いくら勇者でも無詠唱でランク4の召喚魔法は扱えないはずだよ」
魔王「……」
騎士「ん? どうした魔王。さっきから黙りこくって」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/18(火) 01:40:32.00 ID:7FneSLuDO
乙
コレクサ欲しいww
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/18(火) 06:58:07.42 ID:RBHItui9O
作者はミチクサしてないで続きを大量投稿するんだ待ってる
69 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 19:43:46.71 ID:gV06jpjD0
魔王「……2つ、質問したい。
1つ目。勇者は生前、毎晩歯を磨いていたか?」
神官「え? なんでそんなこと聞くん」
魔王「馬鹿げた質問に聞こえるかもしれぬが、大事なことなのだ。答えてほしい」
魔法使い「……そう言われてみると、歯を磨いてるところは一度も見たことないかも」
弓兵「私も見たことないデスネ…。騎士サンはどうデス? 幼馴染ですよネ」
騎士「うーんと……確か子供のころは一緒に磨いてたな。嫌々ではあったけど」
魔王「最近はどうだ」
騎士「……そういえば見てないな」
神官「魔法使いや騎士、弓兵とは夜によく洗面所で顔を合わせとったけど、勇者は……そういや一度も」
70 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 19:45:46.69 ID:gV06jpjD0
魔王「理解した。では、2つ目の質問に移ろう。
この中に、勇者の手のひらを見たことがあるものはいるか」
弓兵「手のひら、ですカ?」
神官「そんなの、ずっと一緒に旅してきたんやからあるに決まって……あれ?
そういやあいつ、ずっと手袋はめとったな」
魔法使い「今思い返してみると、勇者様は片時も手袋を外さなかったよね。騎士はどう?」
騎士「もちろんあるさ。……しかし、そう言われてみると、ある時から勇者は手袋をつけ続けるようになったな。
食事時は失礼だから外せと神官が何度言っても、頑として外そうとしなかった」
魔王「そのある時とはいつのことだ」
騎士「大体三年前くらいだな。……あれ? そういや勇者が武者修行から帰ってきたのも三年前だったな」
魔王「武者修行?」
71 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 19:47:18.40 ID:gV06jpjD0
騎士「ああ。勇者は二年ほど村を出て修行したことがあるんだ。帰ってきたらまるで別人みたいになってた。
眼光は鋭く、性格も厳しくなって……そのころから私や村人を遠ざけるようになった」
神官「よっぽど辛い修行やってんな」
騎士「ああ。数え切れない程のドラゴンを倒したって言ってたな」
魔王「! ……なるほどな。
少し調べたいことがある。30分ほどこの場を離れるが、よいか」
神官「えっ……そりゃもちろん、ええけど」
魔王「すまぬな。待っている間退屈であろう。音楽でも聴いているといい。『コレクサ、音楽かけて』」
スタスタ
コレクサ『了解しました。プレイリスト「魔王様のおすすめ」を再生します』
魔法使い(プレイリスト作ってるんだ……)
72 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 19:48:16.75 ID:gV06jpjD0
〜♪
弓兵「あれ? これ聴いたことありマス」
騎士「城下町で人気の曲だな」
神官「どんだけミーハーやねん。人類滅ぼす気ないやろあの人……」
騎士「ららら夢の中を駆け抜けてー♪」
神官「って歌うんかい! ごっつ上手いやんけ!」
──
スタスタ
魔王「待たせたな」
神官「あーおかえり。どこ行ってたん?」
魔王「図書室で調べ物をな。おかげで分かったぞ、弓兵を襲った何者かの正体が」
73 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 19:49:43.41 ID:gV06jpjD0
弓兵「えっ」
騎士「本当か!?」
魔王「ああ、分かった。……残念ながら、な」
神官「……まさか……」
魔王「コレクサ、勇者のステータスを表示して」
ヴウン
魔王「さて。これは先刻『究明』でスキャンしたものだが……ここを見てほしい」スッ
特殊スキル 魔を祓う者、光の王、『ドラゴンスレイヤー』
魔法使い「ドラゴンスレイヤーって、竜殺し……だよね。竜騎士とはどう違うの」
74 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 19:52:28.96 ID:gV06jpjD0
魔王「勇者の死体が消えた件でも説明したな。竜騎士は一定数のドラゴンを倒した者に与えられる、呪いの職だと。
竜を倒すごとに自身の体が少しずつ竜化していく。体表の半分まで竜化が進んだときに追加されるのが、この『ドラゴンスレイヤー』という特殊スキルだ。
正の効果としては主に筋力向上、五感の発達、動物やモンスターが無条件に従う、などが挙げられる」
騎士「それだけ聞くといいこと尽くめだな」
魔王「確かに戦闘能力は大幅に向上するだろう。しかし負の側面も強い。
魔力・知力の低下、凶暴化など。最も辛いと思われるのが肉体面での変化だ」
魔法使い「竜騎士のときも言ってたよね、体が竜化していくって」
魔王「うむ。『竜騎士』による肉体の変化は、あくまで体表。しかし『ドラゴンスレイヤー』のスキルがつくとさらに竜化が進む。
例えば手の爪が鉤爪に変化する、などだな」
弓兵「……ちょっと待って下サイ。まさか」
魔王「そう。弓兵を襲ったモンスターの正体は、勇者だ」
75 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 19:54:25.52 ID:gV06jpjD0
魔法使い「そんな!」
神官「……」
騎士「勇者が弓兵を襲ったモンスター、か。強く否定できないのが悲しいところだな」
弓兵「ちょ、ちょっと待って下サイ。確かに私のお尻を触った手の鱗と鉤爪はそれで説明がつきマス。
でも、あのヌルヌルとした穴はどうですカ? あの感触、明らかにモンスターでしタ!」
魔王「それも説明がつく。神官よ、勇者が好んだという菓子の名を挙げてはもらえぬか」
神官「え? えっと……プリン、ゼリー、ソフトクリーム、マカロン」
魔王「これらの共通点は、柔らかいということだ。歯が一本もなくても食べられるほどに」
神官「! じゃあ勇者は」
魔王「歯がなかった、もしくはそれに近い状態だったと考えるのが妥当だろう」
76 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 19:55:17.42 ID:gV06jpjD0
騎士「歯を失くした原因はたぶん、虫歯だろうな。昔から甘いもの好きな割に歯磨き嫌いだったからなあ……」
弓兵「えっ……ナラ、私が腕を突っ込んだのっテ……」
魔王「うむ。勇者の口内である可能性が高い」
弓兵「……」フラリ
ドサッ
騎士「きゅ、弓兵!」
サッ
神官「大丈夫、脈はある。すぐ回復させたるからな」キンッ
魔王「……!」
77 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 19:56:23.26 ID:gV06jpjD0
弓兵「……はっ!」パチッ
騎士「おお……いつもながらさすがだな」
魔法使い「無詠唱で回復魔法使わせたら、神官の右に出る者はいないね」
神官「おだてすぎやって。ウチはこれくらいしか取り柄ないからな。
……大丈夫か、弓兵」
弓兵「……は、はい……ありがとう、ございマス……」
魔王「弓兵よ。まっすぐ行った突き当りに休憩所がある。一人になりたいであろう? しばらく休んでくるがいい」
弓兵「ハイ……」
ふら……ふら
騎士「……結果的に、勇者を殺したのは弓兵、ってことか。
何度も麻痺や毒を打ち込まれたら、ひとたまりもないよな……」
78 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 19:57:31.53 ID:gV06jpjD0
魔法使い「……」
騎士「怒らないのか?」
ふう……
魔法使い「怒んないよ。誰が見ても、悪いのは勇者様──勇者の方だもの。
弓兵は痴漢野郎を撃退しただけだ。
君こそどうなの? 幼馴染だったんでしょう」
騎士「うーん。勇者が死んだことは悲しい、それは確かだ。
でもまさか暗闇に乗じて性犯罪に手を染めるなんて……そんな卑怯な方法で性欲を満たそうとした男に、同情する気はない」
魔法使い「厳しいね。ま、分かるけど」
神官「なんでこんなことになったんやろな……昔の勇者は、あんなにいい奴だったのに」
79 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 20:02:53.50 ID:gV06jpjD0
騎士「そうだな。数年前、竜に襲われていたお前の村を救ったときが懐かしい。
あのときの勇者は本当にカッコよかった」
魔王「……『ドラゴンスレイヤー』の負の効果として、性欲の増大がある。
凶暴化・知力低下と組み合わさると、性的衝動を抑えるのは非常に困難だったろう。
仮に竜化が大幅に進んでいたとすれば、よく耐えたほうかもしれぬ」
神官「魔王……」
魔王「しかし、だからといって勇者の行為が許されるとは思わぬ。
勇者の死体は手袋をしていた。わざわざ手袋を外し竜化した手で犯行に及び、またすぐにつけ直したということは、罪を免れようとした可能性を示している。
さらに、例え完全に我を忘れていたのだとしても、弓兵が感じた恐怖や不快感を無くすことは不可能だ。
……願わくば、生きた状態で裁きを下したかったのだがな」
騎士「そうだな」
魔法使い「……」
80 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 20:05:07.11 ID:gV06jpjD0
──
魔王「さて、真相をまとめると次のようになる。
暗闇に乗じて痴漢をしてきた勇者に驚いた弓兵。抵抗するが、その際彼の口内に手を突っ込んでしまう。
モンスターの体内のごとき感触にパニックを起こした彼女は、ありったけの古代魔法を勇者の体内に打ち込んだ。
そのショックで心肺が停止、勇者は死に至った。
……なにか付け足すことはあるか」
魔法使い「ううん」
騎士「ないな」
魔王「神官、お主はどう思……どうした」
ぽた、ぽた
騎士「神官、お前……」
神官「なんで、やろな……ウチら勇者一行はただ、世界を救いたかっただけやのに」ポロポロ
騎士「そうだな。魔王を勇者の隠し奥義『星間爆殺』で倒して、世界を救うつもりだったもんな」グスッ
魔法使い「『星間爆殺』は魔王にしか効かない技で、相手の能力が高いほど威力を発揮するんだったよね。これなら絶対行けるって、皆で盛り上がった夜が懐かしいな」スン
魔王(盛大なネタバレを食らった気分だ)
81 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 20:06:22.06 ID:gV06jpjD0
魔王「……そういえばずっと気になっていたのだが、世界を救う、とはなんのことだ」
神官「えっ」
魔王「前回現れた勇者も、その前の勇者も似たようなことを言っていた。
魔族に村を滅ぼされた、とか、人間を奴隷にしているとか。
ずっと不思議だったのだ。何故なら、そのような事はありえないのだから」
神官「ありえないってどういうことや。現にウチの村はドラゴンに──」
魔王「それだ」
神官「?」
魔王「ドラゴンは魔族ではない。
『竜族』という別の種族で、魔族とは敵対関係にある」
騎士「!」
魔法使い「そ、そうなの!?」
82 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 20:08:20.60 ID:gV06jpjD0
魔王「うむ。闇の瘴気から生まれたのが我ら魔族、大地の気から生まれたのが竜族だ。
尊大で傲慢な種族でな。世界には自分たちドラゴンのみが君臨すべきだと考えている。
我のダイバーシティ(民族多様性)構想とは全くもって相容れぬ」
騎士「で、でも、知り合いの村がゴブリンの大群に襲われたって」
魔王「ゴブリンやオーガは亜人種であろう? 魔族ではないし、関わりもないぞ」
皆「……」
魔王「そもそも魔族は魔界でしか存在できぬ。一歩人間界との境界をまたいだ瞬間消滅してしまうのだ。
それは強大な力を持った魔王も例外ではない。
逆に言うと、我を倒す最も簡単な方法は、遠距離テレポーテーションで人間界に移動させることだ。
そうすれば自動的に消滅するからな」
神官「なんで……なんでそんな大事なこと教えるんや。ウチらはアンタを倒す為に来たんよ!」ポロポロ
魔王「お主らなら信頼できると、この数時間で確信したからだ。
きちんと説明し誤解が解ければ、必ず分かりあえると思った。
どうだ、まだ我を倒したいか?」
83 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 20:10:26.21 ID:gV06jpjD0
騎士「決まってる。もう私たちには戦う理由なんてない」
魔法使い「勇者の死の真相も明らかになったし、魔族の真実も理解できた。
もう僕らに敵対する理由はない。そうだよね?」
ごしごし
神官「……最初はアンタのこと、誤解してた。
人の命なんてなんとも思ってない、悪の化身やって……でも、アンタすごく優しい魔王なんやね。
勘違いしてた。ほんまにごめんなさい」
魔王「……優しい、か」ボソ
神官「え?」
魔王「いや、誤解が解けたなら何よりだ。
騎士、魔法使いよ。すまぬが弓兵を迎えに行ってはもらえぬか。
その間に、我と神官はお茶会の準備をしておこう」
騎士「お茶会?」
魔王「うむ。そろそろティータイムだからな……」
84 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 20:11:52.55 ID:gV06jpjD0
『真相』
魔王城裏庭 アトルムの庭園
スタスタ
魔王「古来よりお茶会では様々な話が交わされてきた。下世話な噂、高尚な議論。そして時には重大事件の真相が語られることもあった。
お茶会は不思議な場だ。思ってもいないことを言ってしまったり、胸のうちに秘めていた思いがポロリとこぼれ落ちたりする」
神官「……」
ピタリ
魔王「お主は先刻、我を優しいと言ったな。それは間違いだ。
なぜなら、我は今から事件の真相を暴くつもりだからな。それが例え、誰かの不利益になるとしても」
85 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/18(火) 20:13:59.43 ID:gV06jpjD0
ポウ……
神官「! ガーデンテーブルの上に、ひとりでに紅茶セットが」
魔王「テーブルに転移魔法陣が刻まれておってな。
ちなみにこの場所は完全防音、我とお主の二人しかおらぬ。
一足先にお茶会を始めるとしよう」
ピチチチ……
神官「小鳥が鳴いてる。それに、たくさん可愛い花が咲いてるんやな。魔界では毒々しい花しかないと思ってたわ」
魔王「他の場所はそうだ。だが、ここの空気は人間界に似せているからな」
神官「それで息がしやすいんやな。久しぶりや、こんなに清々しいのは」
魔王「勇者を殺したのはお主だな、神官」
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/19(水) 07:34:29.54 ID:0CkoXV4DO
乙
衝撃の展開!!
87 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/19(水) 20:09:07.01 ID:kWqaYFbl0
ピチチチ……
神官「うん。でも、なんで分かったん? 自分では上手いことやったつもりやってんけど」
魔王「実際、我も途中まで騙されていた。疑惑が確信に変わったのは、お主が弓兵に回復魔法を使ったときだ。
気づいたのだ。無詠唱で回復を行えるのであれば、本当に回復したのかどうか、傍目からは判断がつかない。
我は先入観に囚われていたのだと」カチャリ
コポコポ……
神官「いい香り」
魔王「最高級の茶葉を使っているからな」
カチャ コクリ
神官「! 濃い紅色やから苦味が出てるのかと思ったら……すごく飲みやすいな」
魔王「高地の涼しい場所で取れた葉には、芳醇な香りとすっきりとした甘みが備わる。見た目とは裏腹であろう。
……思えば我は最初から、お主の見た目に騙されていたのかもしれぬ」
88 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/19(水) 20:11:20.44 ID:kWqaYFbl0
神官「なんや人聞き悪いな。うちは騙したつもりちゃうけど」
魔王「分かっておる。全ては我が思い込んだだけのこと。神官は回復役に徹するものだ、とな」
神官「……」
魔王「まさか勇者が倒れてから『一度も回復魔法を使っていない』など、あの場にいた誰もが気づかなかった。仲間はおろか、我ですらも」
──
パッ
神官『!? 明かりが戻った……なんやったんや……』
弓兵『! あ、アア……っ』ガクガク
神官『? ……! ゆ、勇者!?』バッ
騎士『一体何が……!』
魔法使い『いや、勇者さま……勇者さまああああああ!』
ズゴゴゴゴゴ
魔王『ふはははは! よくぞ我の眼前まで辿り着いたな人の子らよ。
喜ぶが良い。儚い命を散らすのが、他でもない我の手によるものであることを……む?』
勇者『』
魔法使い『嘘……こんなの嘘だよねぇ!』
神官『なんでや、なんで死んでもうたん……勇者』ギュッ
──
神官「なんで回復魔法を使ってないって言い切れるん?」
魔王「計算が合わないからだ。先程コレクサに確認したところ、お主らがこの城に侵入してから使用された通常魔法の数は24。だが、もしお主が勇者に回復魔法を使ったとすれば、これより3、4回多くなるはずだ」
89 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/19(水) 20:12:38.75 ID:kWqaYFbl0
神官「……もう諦めてたって可能性もあるやんか。
どう見ても死んでる勇者を見て、ショックで体が動かなかったのかもしれんし。
それに、『誠実の誓い』で嘘がつけない騎士の証言もある」
──
騎士『……』
スッ
騎士『手首の脈が……ない』
弓兵『呼吸もしていまセン。残念デスが、勇者サンは……もう』
──
魔王「……コレクサ、神官のプロフィールを表示して」
コレクサ「了解しました」
ヴヴン
神官「いまさらこんなん出して、一体何を」
魔王「見るべきは、ここだ」トン
攻撃力 850
90 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/19(水) 20:14:13.51 ID:kWqaYFbl0
神官「!」
魔王「魔法攻撃力の数値は、その者の魔法ランクによって決まる。
対して攻撃力を決めるのは筋力だ」
神官「……」
魔王「攻撃力が高いということは、すなわち腕力が強い、ということ。
騎士が勇者の左手の脈を計ったとき、お主は勇者の左側の上半身に覆いかぶさっていたな。
人間種の脇の下を強く圧迫すると、一時的に脈を止められる、と以前読んだ推理小説に書かれておった」
神官(このミステリマニアめ……)
魔王「つまりあのとき、勇者は生きていた。窒息と麻痺に苦しみながらも、持ち前の生命力で耐えていたのではないか。
だが我々は勇者が死んだものと思い込み、彼をそのままにしてしまった。
勇者が本当に事切れたのは、恐らく我が回復魔法を使う数分前であろうな」
91 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/19(水) 20:15:49.57 ID:kWqaYFbl0
神官「なんでわかるん」
魔王「勇者の死体がダンジョンのルールに従って消えたとすれば、死亡してから5分後に消失が始まる。逆算すると、ちょうどその頃だろう」
魔王(あのとき……)
──
……ザワッ
魔王(む? なにか、我は大切なことを見落としている気がする……なんだ?)
──
魔王(あのときに気づくべきだったのだ。
勇者の消えたタイミングが通常よりも遅かったのは、モンスターと人が混ざっているからだと誤解していた。
ダンジョンは正常に処理していたのだ、勇者をモンスターだと認識して)
神官「……」
魔王「どうだ。ここまでで何か間違っているところはあるか」
92 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/19(水) 20:16:40.67 ID:kWqaYFbl0
神官「合ってんで。うちが勇者を見殺しにした。直接手を下したんと違うけど、似たようなもんやな。
……紅茶のおかわりもらってもええ?」
魔王「もちろんだ」カチャン
コポコポ
神官「おおきに。おっと」
ポトッ
神官「ごめん、スプーン草の上に落としてしもた」
魔王「よい、我が拾おう」スッ
神官「……」ゴソッ
ポチャン
93 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/19(水) 20:18:16.48 ID:kWqaYFbl0
魔王「『洗浄』」コオッ
神官「そんな生活魔法も使えるんやな」
魔王「我は魔法のエキスパートゆえな。攻撃魔法も生活魔法もそれぞれの良さがある。……使うがいい」スッ
神官「ありがと」
カチャッ クルクル
魔王「……一つ分からないことがある」
神官「ん?」
魔王「勇者が倒れたとき。彼の左手側に騎士が、右手側に弓兵がいた。お主は勇者の左肩に覆いかぶさっていたな。勇者の脈を止めるために」
神官「うん」
魔王「だが、お主の位置からでは左手の脈は止められても右手の脈はそのままになる。
結果として、右手側にいた弓兵は脈ではなく呼吸を確かめた為に、問題はなかった訳だが」
神官「なんで騎士が脈を、弓兵が呼吸を確かめるって事前に分かったのかって話か」
魔王「うむ」
神官「分かってなかったで」
94 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/19(水) 20:20:11.95 ID:kWqaYFbl0
魔王「なに?」
神官「単純に、もし脈をとるとしたら騎士しかあり得なかったんよ。弓兵が脈をとることは絶対にないって知ってたし」
魔王「それは何故だ」
神官「あんた、ホンマに人間界の種族に詳しくないんやな」
魔王「む……」シュン
神官「ううん、責めてるんとちゃうよ。魔界のことに知識が偏ってるのは、魔族の将来を真剣に考えてるからやろ。
あんたのそういうとこ尊敬してる」
魔王「そ、そうか」カアッ
神官「……弓兵はエルフや。エルフは長命な種族やから、脈もすごくゆっくりなんよ。
エルフが他者の生死を確かめるときは、呼吸を確認するのが伝統なんや。呼吸もゆっくりやけど、脈よりは分かりやすいから」
魔王「なるほど! それで右手の脈は無視できたのだな」
神官「そういうこと」カチャッ
コクリ
魔王「もう一つ聞いてもよいか」
神官「ええよ。でも、あと一つだけやで」
神官(それ以上は時間がもたへんやろからな)
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/19(水) 21:18:33.29 ID:xyd32M/40
金田一シリーズにも、脇を圧迫して脈を止めるトリックがあったな〜
96 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:16:10.43 ID:XBoWocTD0
魔王「推理小説において、読者に提示されうる謎は大きく分けて3つある。
1、誰が殺したのか(犯人)
2、どうやって殺したのか(方法)
3、何故殺したのか(動機)
1と2は判明した。残るは3つめ、何故勇者は殺されたのか?」
神官「動機、か……。わがままな話やけど、魔王だけの胸にとどめてもらえへんか。そしたら話すわ」
魔王「それは……」
神官「分かってる。そんなん内容によるもんな。聞いてから判断してくれてええよ」
フウ……
神官「勇者を殺そうと決めたんは、光が戻ったときや。
倒れてる勇者を見て、すぐ麻痺状態で息ができないんやって分かった。
このまま何も処置を施さなければ、数分で死に至るってことも」
97 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:17:49.15 ID:XBoWocTD0
魔王「やはり衝動的な犯行だったのだな」
神官「うん。弓兵はもちろん、騎士も魔法使いも関係あらへん。
偶然が重なって、奇跡みたいな状況が生み出されたんや。うちが何もしなければ、勇者が死ぬっていう」
魔王「よく勇者の状態を正確に診断できたな」
神官「神官は医師の役割も担ってるからな。患者の状態を診るのは慣れてるんよ」
魔王(ヒーラーである神官の言葉を信じ、勇者は死んだものと決めつけてしまうとは。我もまだまだ修行が足りぬ)
神官「……でもな。勇者にこの世から消えてほしいと思い始めたんは、魔王討伐の旅が始まる直前やったよ」
魔王「聞こう」
神官「神官てのは、代々勇者に仕えてきた家系でな。うちはもちろん、母も祖母もそうやった。
人生のすべてを勇者に捧げることが、神官の義務なんや。……身も心も、な」
魔王「……」
神官「もちろん死ぬほど嫌やった。好きでもない相手と、なんて拷問と同じや。でもこれも神官の務めやと我慢してた……あの日までは」
98 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:19:11.61 ID:XBoWocTD0
──
ライカ村 宿屋
勇者「ふう……おいなんだよ、もう行くのか」
神官「夜の祈りの時間やからな」シュル
勇者「ふうん、仕事熱心なことで。……なあ、そういえば何歳になったんだっけ」
神官「知ってるやろ一個違いなんやから。もう行くわ」ギシッ
勇者「ちげーよ、妹の方」
ピタッ
神官「……14やけど、何」
勇者「へえ、もうそんなになるか。子供の成長は早いねえ」
クルッ
神官「あんた、まさか……」
99 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:20:17.20 ID:XBoWocTD0
勇者「ん? ああ、心配すんな。別に今すぐってわけじゃねえよ。たださ、お前ら神官は俺の所有物みたいなもんだろ。どうせそのうち食うんだし、ちょっと味見するのも悪くねえかなって」ヘヘッ
神官「……」
勇者「遅れるぜ、お祈り」
──
魔王「……」ピキッ
ズゴゴゴゴ……
神官「魔王、小鳥たちが怯えてる」
魔王「おっと」
シュウウ……
魔王「なるほど、妹のために」
神官「……そうやったんかな。自分でもわからん。ほんまはただ、勇者を独り占めしたかっただけなんかも。
今となっては、もう……」ギュッ
100 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:22:18.55 ID:XBoWocTD0
魔王「そうか」
神官「きっと皆、うちのこと許さへんやろな。特に弓兵には謝っても謝っても足りん。
うちが勇者を治療していれば、一生消えない心の傷を負うこともなかった」
魔王「それは──」
弓兵「それは違いマス!」バッ
神官「弓兵!?」ガタッ
魔王「なっ……お主、どうやってこの庭園に入ったのだ。ここは隔離魔法で遮断していたはず」
魔法使い「ごめん魔王様。レベルがあがったおかげで魔法解除技術が飛躍的に伸びたみたいで……つい」テヘッ
魔王「抜かった……もっと高レベルの隔離をしておくべきだった。すまぬ神官」
弓兵「神官サン!」
ギュッ
101 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:23:26.91 ID:XBoWocTD0
神官「! なんで」
弓兵「許しマス。許しマスから……死なないで下サイ!」
魔王「死ぬ? 一体なんのことだ」
弓兵「前に話してくれましたよネ。神官は異教徒に捕まったとき用に、自害するための毒を隠し持ってるっテ」
神官「……」
弓兵「責任感の強い神官サンなら、もしかして使ってしまうのではないかと思ったんデス。
私が傷ついてると思ってるなら、それは誤解デス。勇者の言動を聞いて、マジ消えて良かったとすら思ってマス」
魔王(辛辣だな……)
神官「でも、うちは……皆を利用したんや。弓兵はもちろん、騎士も」
騎士「それはそうだな。勇者殺しの片棒を担がされたといっても過言じゃない」
102 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:24:21.54 ID:XBoWocTD0
弓兵「騎士サン!」
騎士「そういう訳だから、エール一杯奢ってくれ。それで勘弁してやる」
弓兵「騎士サン……」
魔王(勇者の命の軽さよ……まあ、仕方のないことか。それだけ奴の言動が最低だったということだろう)
神官「皆……おおきに」フラッ
ドサリ
弓兵「神官サン!」
騎士「お前まさか……!」
神官「さっき紅茶に入れて……飲んだんや。神に仕える神官が、人を殺すなんて……これがうちの、報いやな」
弓兵「……っ魔法使いサン!」
魔法使い「ごめん、無理だ。神官が持ってたのは白サソリの猛毒。どんな魔法でも助けられない……っ」
騎士「くそ、どんな毒でも一瞬で消える方法があれば!」
魔王「あるが」
103 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:26:20.68 ID:XBoWocTD0
神官「ぅあんのかぁい! ……っげほ、あかん、つい癖で……」ガクッ
弓兵「神官サーン!」
魔王「前に話したであろう、無敵の秘薬だ。
魔界の高地にしか生えない「アスクレピオスの髭」という薬草は、この世にある全ての毒を消すことができる」
騎士「くそ、今から取りに行ったんじゃ間に合わない」
魔王「いや、間に合っている」
皆「え?」
スッ
魔王「アスクレピオスの髭は2つの意味で有名なのだ。
一つは全ての毒を消す無敵の薬草として。そしてもう一つは、世にも美味な紅茶として。
神官は紅茶に毒を入れたのだろう。なら、完全に中和されているはずだ」
104 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:27:24.42 ID:XBoWocTD0
神官「そ、そういえば……もうとっくに死んでる時間なのに、うち……生きてる」
弓兵「神官サーン!」ギュッ
魔法使い「このバカっ!」ギュッ
騎士「良かった……良かった」ギュッ
神官「ふぐう」
弓兵「いいんデスよ」
神官「え」
弓兵「生きてても、いいんデス」
神官「……っ」
うわあぁああん……
──
魔王「さて。お主らに提案があるのだが……」
105 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:29:39.88 ID:XBoWocTD0
『エピローグ』
数年後
女勇者「もうすぐ魔王城最深部だ。気合を入れていこう」
剣士「おう、俺の剣技を魅せてやるぞ」
盗賊「おーおー、血気盛んだこと」ケラケラ
僧侶「怖いのは、未だ幹部クラスのモンスターが現れていない点ですね。
出てくるのは低級ばかり。罠かもしれません」
踊り子「アラ。相変わらず心配性ね、坊やは」クスッ
僧侶「そ、その呼び方はしないでって、何度も言ってるじゃ──」
フッ
皆「!」
女勇者「皆止まれ! 明かりが消えたということは、仕掛けてくる可能性が高い。
基本陣営をとれ。いつでも対応できるようにしろ!」
皆「了解!」
106 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:31:09.12 ID:XBoWocTD0
ゴゴゴゴ……
女勇者「なんだこの音。それにこの煙は一体」
僧侶「害はないようですが」
ズズズ……
女勇者「! 奴らは……!」
黒騎士Lv89「ほう、剣士がいるのか。久しぶりに楽しめそうだ」
闇の射手Lv90「後衛は任せて下サイ。今日もバンバン仕留めマスヨ!」
魔神官Lv91「ひいふうみい……ふうん、いいバランスのパーティやな」
暗黒魔道士Lv93「ここは魔王様が出るまでもない、僕たちだけでやるよ」
107 :
◆AhbsYJYbSg
[saga]:2020/02/20(木) 20:32:19.01 ID:XBoWocTD0
バサアッ
魔王「そういうわけにもいくまい。部下に全て任せたとあっては魔王の名が廃る」
ゴゴゴゴ……
僧侶「し、四天王と魔王が一気に!」
剣士「む、むう」
女勇者「狼狽えるな! 戦いは、ゴホ、臆したほうが負け、ゴホッ」
ズゴゴゴゴ……
魔神官「おっ? アカン、スモークが強すぎるみたいや」
魔王「おっと、それは失礼した。あーごほん。
『コレクサ、スモーク止めて』」
コレクサ『了解しました』
女勇者「!?」
end
108 :
◆AhbsYJYbSg
[sage saga]:2020/02/20(木) 20:33:48.85 ID:XBoWocTD0
ありがとうございました!
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/20(木) 20:36:05.23 ID:kcjbqcs6o
乙
こちらこそ、ありがとうございました
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/20(木) 20:37:50.08 ID:aNYYA/IDo
乙
面白かった
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/20(木) 21:12:21.10 ID:y7JbcXIJO
乙
面白かったよ〜
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/20(木) 22:11:48.11 ID:sm7nThjIo
おつ
よかった、ハッピーエンドや!
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/20(木) 23:22:48.25 ID:wGloYE57O
久々に面白かったな〜
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/20(木) 23:38:52.32 ID:I+ziHr1H0
いい読後感でした
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/21(金) 02:01:12.00 ID:Dti1okWDO
乙乙
面白かったまた頼む!
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage ]:2020/02/21(金) 06:34:28.39 ID:sE6lBPx+o
おつー
80.67 KB
Speed:0
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
新着レスを表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)