先輩「不老不死になりました」 後輩「はぁ」

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68 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:26:33.77 ID:xfZunq6b0
後輩「……♪」


後輩(次は何頼もっかなぁ)

後輩(お揚げと漬物……)

後輩(いやいや、まずは刺身のお勧めの引いてもらって……)


後輩「……」ハッ


後輩(……って、違う違う!)

後輩(今日は店長さんの動向を、調べないと!)

後輩(そのために来たんだってば!)


後輩「……っ」ジー

後輩「……」

後輩「……」キョロ


後輩(……お勧めはホンビノスの酒蒸しかぁ……)


後輩「……!」ハッ


後輩(違うってば私ーーー!!!)





69 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:27:12.70 ID:xfZunq6b0





先輩「はい4卓様おかえりでーす!」


アリガトーゴザイマシター!

アリャーシタァァー!!


先輩「……ふぅ」

先輩「……お」


先輩(あいつ、まだ飲んでたんだ)


先輩「……」

先輩「……?」







後輩「……」

後輩「……」ジー







先輩「……」


先輩(何だ? 何かジッと見て……?)
70 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:28:22.85 ID:xfZunq6b0
先輩「……」ヒョイ


店長「またお越しくださーい、ありがとうございましたー!」ニコニコ

後輩「……」


先輩「……?」


先輩(……店長?)

先輩(何だってアイツ、店長のことなんてジロジロと――……)


先輩「……あ」


先輩(そういや、後輩……)

先輩(この前店に来た時も、店長のこと……)


先輩「……ほほーん」

店長「ちょっと先輩ちゃん! 何突っ立ってんの! 席かたしちゃって!」

先輩「あ、サーセーン」





71 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:29:03.17 ID:xfZunq6b0





〜後日・大学〜


キーンコーンカーンコーン


後輩「……ふぅ」


後輩(……あれから)

後輩(何度か、お店に行ってみたけど……)

後輩(これといった手ごたえもなく……)


後輩「……」


後輩(店長さんが先輩をジッと見ていることは、確かに何度となくあった)

後輩(でも、単なる仕事上の目配りと言ってしまえば、それまでで……)


後輩「……」


後輩(怪しむ理由にはなりませんよね)

後輩(でも、疑いを晴らすほどの根拠もありません……)
72 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:30:07.12 ID:xfZunq6b0
後輩「……はぁー」


後輩(これ以上、お店に顔を出しても、この状況が進展する気はしないし……)

後輩(そして何より――……)


先輩「おーっす後輩ー!」

後輩「あ……、先輩。どうもです」

先輩「あれ、お前、次この教室?」

後輩「法学棟ですよ。ちょっと疲れたんで、休んでただけです」

先輩「あっはは、飲み疲れだろ、どうせ」

後輩「ですかねー……」

先輩「そうだって。ここのとこ連チャンじゃん。おっさんかよ」

後輩「否定できないのがムカつく……」

先輩「んで? 今日はどうする? また一人で飲み来ちゃう?」

後輩「……――ません」

先輩「ん?」

後輩「行け、ません……。もう無理ですよ……」
73 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:31:10.80 ID:xfZunq6b0
先輩「何だよ」

後輩「お金ないんですよぅ……!」

先輩「あっはははは!」

後輩「笑い事じゃないんですよっ」

先輩「あははは!そりゃだって、お前、あんな毎晩あれだけ飲み食いしてりゃさぁ!」

後輩「お店のメニューが美味しいのが悪いんですよ……」

先輩「お前がアホなだけだろー?」

後輩「うっさいですっ!」

先輩「あははは」

後輩「……先輩、念のため聞きますけど……」

先輩「金なら貸さねーぞ」

後輩「ですよね……」


後輩(……まさかこの歳になって、親に仕送りの前借りを頼むハメになるとは……)

後輩(こうなっては、お店でこっそり探りを入れることもできません)

後輩(いったい、どうしたら……)
74 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:31:43.10 ID:xfZunq6b0
後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……な、なぁ、後輩さ。お前さ、最近よく来るのって、やっぱ店長が――……」

後輩「……あ、はい? ごめんなさい、何です?」

先輩「い、いや、だからさ。お前、店長を――……」


キーンコーンカーンコーン


後輩「あっ、やば! 授業始まった! ……すみません! またです!」ダッ

先輩「あっ……」


タッタッタッ


先輩「……」

先輩「……ほーん」





75 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:32:36.41 ID:xfZunq6b0





〜夕方・居酒屋〜


店長「〜♪」トントン

店員1「大根こっちオッケーでーす」

店長「あんがと〜、そこ置いといてー」

店員1「うぃっすー」

店員2「店長〜!」

店長「はいはーい」

店員2「お客さんですけどぉ〜」

店長「へ? 私?」

店員2「あの何でしたっけ? 先輩ちゃんとこの……」

店長「……後輩ちゃん?」




76 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:33:12.18 ID:xfZunq6b0





後輩「……」


後輩(来てしまった……)

後輩(いや、でも……、もう探りを入れてもラチがあかない)

後輩(そもそも、もう懐も余裕がない)

後輩(だとしたら、もうこの際、仕方がない……)

後輩(イチかバチか! 直接聞いてみるしかない……っ!)


後輩「……」

後輩「……何やってんだろ、私……」


店長「あ〜、ごめんごめん」

後輩「あっ」

店長「や!」

後輩「ど、どうも……」ペコリ
77 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:33:46.35 ID:xfZunq6b0
店長「どしたのー。まだお店開かないよー?」

後輩「す、すみません、忙しい時に……」

店長「いやぁ、いいんよいいんよ。それで? どしたん?」

後輩「……あの。実は、先輩の、ことで……」

店長「うん? 先輩ちゃん……?」

後輩「……へ、ヘンな話、なんです、けど……。あの、先輩が……、店長さんに……」

店長「うん」

後輩「……ふ、不老不死、って……」

店長「……」

後輩「あの話……、店長さんは、その、そ、率直に言って、どう思――……」

店長「……ぶっ!」

後輩「え?」

店長「あっっはははははっ! あはははははっっ!!」

後輩「あ、あの……」

店長「あははははっ! ひぃ……っ! ははっ、な、何もぉ! 後輩ちゃんもグルなん? あのしょうもないネター!」

後輩「え、あ……」
78 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:34:14.16 ID:xfZunq6b0
店長「ドッキリ……ってか、モニタリング? あの子もアホだよねー!『店長……、私、死ねない体になった……』ってさあ……クッ、クックク……」

後輩「ドッキリ……」

店長「ハイハイ、っつって流したけど、後輩ちゃんまで仕掛け人なのは……ぶふっ……あははは! あー、駄目だぁ、アホすぎて笑っちゃう!」

後輩「え、えっと……、あ、あー……、あははー、ば、バレてましたかぁー」

店長「あったりまえでしょー! 今時ね、もうちょっとヒネらないと! あんなん、小学生でも引っかからんよー」

後輩「で、ですよねー」

店長「後輩ちゃんもね、あのアホの子に付き合って、しょうもないことやってたらいけんよ? 冗談の通じない相手だったら、カーッていかれてんよ?」

後輩「ご、ごめんなさい」

店長「んっふふ……、私は大丈夫だけど! 面白かったから全然オッケー! はー、久しぶりにアホ見た」ケラケラ

後輩「……」


後輩(……やっばい)

後輩(めちゃくちゃ恥ずかしい……)

後輩(もう絶対、お店飲みに行けない……)
79 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:34:51.77 ID:xfZunq6b0
後輩「……はぁぁ」

店長「ま、アンタたちがこんな、仲良しカップルなのはね、お姉さん的にも見てて嬉しいけどね」

後輩「か、カップル……」

店長「あら、違った?」

後輩「違っては〜……、いやまぁ、そういうのじゃ……、まぁ何か、腐れ縁……っていうかぁ、いやま、そのぉ……」

店長「……あ、へぇ。う〜ん」

後輩「……え、何です?」

店長「ああ、ごめんね。後輩ちゃんね」

後輩「はい」

店長「好きでしょ? 先輩ちゃんのこと」

後輩「ぶっ!」

店長「違うん?」

後輩「違っ…………」

店長「……」

後輩「……く、ないです」
80 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:35:24.28 ID:xfZunq6b0
店長「……」

後輩「……好き、です」

店長「だーよねー! でさでさ、それって、ちゃんと先輩ちゃんにも言ってる?」

後輩「そ、それはぁ〜……」

店長「……」

後輩「でも、わ、わざわざ言うこともないっていうか……。一緒に生活してますし、なんやかんや、いっつも一緒ですし、それも中学から一緒だし、それに――……」

店長「言ってないん?」

後輩「……えっと、あの……」

店長「……」

後輩「……」コクン

店長「あ、違うんよ。責めてるとか、駄目よって言ってるわけじゃ、なくてね?」

後輩「は、はい……」

店長「ただねぇ……。ほら、アホでしょ、あの子」

後輩「はい」

店長「まぁまぁのアホでしょ」

後輩「はい」
81 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:36:39.87 ID:xfZunq6b0
店長「だからね……。もし後輩ちゃんが、あの子のこと大好きで、大切に思ってても……」

後輩「……」

店長「近くにいるのが当たり前すぎるとね、その気持ちに気付けないことって、きっとあると思うんよ。……先輩ちゃんみたいな子は、特にね」

後輩「当たり前……」

店長「そう、当たり前。……一緒にいるのが当たり前だから、一緒にいるのか。好きだから一緒にいるのか……」

後輩「……」

店長「……同じ一緒でも、きっと、ちょっと違うの」

後輩「……」

店長「もし、あなたたちに何か、ちょっとしたトラブルが――……たとえば、たとえばよ?」

後輩「はい……」

店長「何かを試されるような、そんなことが起きたとして」

後輩「……」

店長「そのピンチを救ってくれるのって――……、きっと、そういうちょっとした違いだったりするんよね」

後輩「……店長さん」

店長「……なんてね。ちょっと説教はいっちゃった? ごめんね!」

後輩「い、いえ……」
82 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:37:20.33 ID:xfZunq6b0


後輩(……店長さん……)


店長「……、……バツイチの言葉は重いなって思ったでしょ」

後輩「お、思ってない! 思ってません!」

店長「あっはは! ……ね、後輩ちゃん」

後輩「はい……」

店長「私ねぇ、後輩ちゃんと先輩ちゃん、あなたたちのこと、本当に大好きなの」

後輩「……」

店長「二人にはずっと仲良しでいてほしいし、二人でずっとアホやって、笑っててほしいし、暇なときは二人で、私のお店に来て、そんで山ほど飲んでほしいわけ」

後輩「……」

店長「だからさ、二人が苦しそうだったり、気まずそうにしてるところは、見たくないんよ……」

後輩「店長さん……」
83 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:38:00.24 ID:xfZunq6b0
店長「……でもね、そんな風になっても、きっとあなたたちは、何やかんや乗り越えて……」

後輩「……」

店長「それで、またアホみたいに笑かしてくれるって」

後輩「……」

店長「そう思ってるよ、私は。本当に」

後輩「はい……」

店長「応援してるんよ、私。これでも」

後輩「……店長さん」

店長「……」ニッコリ

後輩「ありがとうございます」ペコリ

店長「んふふ、真面目よねぇ、後輩ちゃんは!」




84 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:40:19.06 ID:xfZunq6b0





〜後日・大学〜


先輩「……ふぁ、ねむ」ファー

先輩「……っ」ノビー

後輩「せーんぱいっ!」ダキッ

先輩「うわぁ! びっくりしたぁ!」

後輩「ふふっ、もう、ビビりすぎですよぉ」クスクス

先輩「やめろよ、お前……、心臓止まるかと思っただろ……」

後輩「おっ、不老不死ジョークですね? いやぁ、キレてますねぇ、今日の先輩!」

先輩「……今日は機嫌いいわね、後輩ちゃんよ」

後輩「え〜、そうですかぁ? いつもと変わんないと思いますけどぉ」ギュー

先輩「めっちゃひっついてくるじゃん……」

後輩「えへへ……、当たり前ですよぉ」

先輩「当たり前なのかよ」

後輩「でも、当たり前じゃないんですよ」

先輩「……は? 禅問答か?」
85 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:40:56.24 ID:xfZunq6b0
後輩「……ふふ、あのね、先輩」

先輩「何だよ」

後輩「……あ、あー、でもやっぱり、今じゃない方がいっかぁ……。もうちょっと、やっぱり、雰囲気とか……、せっかくだし……」ゴニョゴニョ

先輩「あ、何て?」

後輩「な、何でもないですっ」パッ

先輩「……後輩?」

後輩「また今度、ちゃんとお話しします! ……とっても、大事な話」ニコニコ

先輩「……」

後輩「じゃ、先輩! またでーす」タッタッタッ

先輩「お、おー……」


先輩「……」


先輩(……どうしちゃったんだ、アイツ?)

先輩(近頃妙に、思いつめた顔してると思ってたら……)

先輩(急にアホ面で、ニヤニヤしちゃって……)


先輩「ほーん……」


先輩(とっても……、大事な話……)


先輩「ほほーん……」




86 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:41:40.60 ID:xfZunq6b0





〜夜・居酒屋〜


先輩「4卓オッケーでーす!」

店員2「ウェーイ」

先輩「洗いもん、手伝いますー」

店員2「ウェイ、サンキュー」

先輩「ウェーイ」

店員2「……」ジャブジャブ

先輩「……」ガチャガチャ

店員2「……」ジャブジャブ

先輩「……」

店員2「……あ、そういやさぁ」

先輩「はい?」
87 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:42:25.84 ID:xfZunq6b0
店員2「何つったっけ? 先輩ちゃんといっつも一緒のさ、あの子」

先輩「後輩?」

店員2「あ、そうそう。後輩ちゃん」

先輩「アイツ、どうかしました?」

店員2「何かさ、こないだお店に来てたよ」

先輩「あー、最近ちょくちょく来てますよね。一人で」

店員2「いや、そうじゃなくてさ。開店前に」

先輩「へ? 開店前? ……何スかそれ?」

店員2「それがさぁ、店長に話したいことがあるとか、何とかってさ」

先輩「……」

店員2「何か、真剣っつーか、こう……、思いつめた顔してて」

先輩「……な、何の用だったんすかねぇ〜……?」

店員2「いや、話の内容までは分かんなかったんだけど」

先輩「……」
88 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:42:57.43 ID:xfZunq6b0
店員2「でもさ、店長、戻ってきたら妙にニコニコしちゃっててさぁ!」

先輩「……そっかぁ」

店員2「そっかぁ、じゃないでしょ。どーすんのアンタ」

先輩「どー、って、何をどうするんですか」

店員2「だってさぁ!」

先輩「だっても何も、別に私ら、付き合ってるわけでもねーですし」

店員2「えっ!?」ガッシャン

先輩「うわっ! ちょっ……!? 割れた!?」

店員2「割れてない割れてない! セーフ! ……セェーッフ」

先輩「ちょっとぉ……」

店員2「え、ていうか、真面目に? 恋人じゃないの?」

先輩「違いますって」
89 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:43:58.87 ID:xfZunq6b0
店員2「でも、同棲してんじゃん」

先輩「ルームシェアですって」

店員2「セックスだって」

先輩「!?」ガッシャン

店員2「あっ! ちょっ!?」

先輩「割れてない割れてない!!」

店員2「セェーフ……」

先輩「はぁ……」

店員2「……」

先輩「……何で知ってんスか」

店員2「だってアンタ、たまに首にキスマーク……」

先輩「うぁー……」

店員2「それで付き合ってないってのはさ、ちょっとアレでしょ」

先輩「アレですか」

店員2「アレだよー」
90 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:44:32.32 ID:xfZunq6b0
先輩「……でも実際、お互い告白とか、そういうのもしてねぇですし」

店員2「や、告白とかは、別になくてもいいっしょ」

先輩「恋人っぽいこととかも、まぁ、全然」

店員2「何それ、たとえば?」

先輩「えー? 何だろ……クリスマスデートとか?」

店員2「しないんだ」

先輩「しませんよ」

店員2「バレンタインは?」

先輩「あ、それは友チョコ的なのを」

店員2「あぁ、へぇ……」
91 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:45:03.13 ID:xfZunq6b0
先輩「……だから、アイツが店長とどうにかなったって、別に私に、とやかく言える筋合いはないってワケでしてね……」

店員2「そうかなぁ、筋とか別に、関係ないと思うけどなぁ……」

先輩「リーダー、実は割とイケイケですよね……」

店員2「えぇ〜、そんなことないと思うけど〜――……」


3名様ご来店でーす!


先輩「いらっしゃいませー」

店員2「ラッシャッセェェーッッ!!」

先輩「……掛け声イカつすぎません?」

店員2「そんなことないと思うけど〜……」




92 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:45:36.84 ID:xfZunq6b0





先輩「お先失礼しまーす」


お疲れさまー

お疲れー


ガラララ バタン


先輩「……ふぅ」

先輩「……」


先輩(……後輩)


先輩「……そっかぁ」

先輩「……」
93 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:46:23.85 ID:xfZunq6b0
先輩(……ちゃんと)

先輩(言っとけばよかったなぁ……)

先輩(ちゃんと……、思ってること……)


先輩「……無理じゃんね、もう」

先輩「……死ねない身体なんかじゃ、ね……」

先輩「……」

先輩「……はぁ」

先輩「……」




94 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:47:20.29 ID:xfZunq6b0





〜後日・後輩宅〜


先輩「……」ペラ

先輩「……」


先輩(八百比丘尼は――……)

先輩(その長い生涯を経たのち……)

先輩(福井にあるお寺で、入定を果たしたという――……)


先輩「……」ペラ

先輩「……」

先輩「福井かぁ……」

先輩「越前ガニだな……」ペラ

先輩「……」パタン

先輩「よし」
95 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:48:59.21 ID:xfZunq6b0
先輩「準備オッケー」


先輩(……悪いな、後輩)

先輩(黙っていくなんて、申し訳ないけど……)


先輩「……」

先輩「これでいいんだ、これで……」

先輩「……行くか」スッ


ドタドタ ガチャン


後輩「ただいまです〜! は〜、疲れ――……」

先輩「あっ」

後輩「え?」

先輩「……」

後輩「……あの」

先輩「お……、おかえり」
96 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:50:17.55 ID:xfZunq6b0
後輩「はぁ。ただいまです。……お出かけです?」

先輩「あー……まぁ、その……」

後輩「ってか、何ですかその大荷物。旅行行くんじゃない……ん……で――……」

先輩「……」

後輩「……先輩?」

先輩「あー、コホン」

後輩「……」

先輩「んー、後輩」

後輩「はぁ」

先輩「店長と……、仲良く、な」

後輩「はぁ?」

先輩「じゃ」ピッ
97 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:51:25.82 ID:xfZunq6b0
後輩「ちょ、ちょっ、ちょ……っ! じゃ! じゃないんですよ! 何訳わかんないこと言ってるんですかアンタ」ガシッ

先輩「ふぎゃっ」ガクン

後輩「何なんですかいやマジで! 店長さんと仲良くって、どういうことですか! ってかそもそも、どこに行く気なんですかぁ!?」

先輩「ふ、福井……」

後輩「何で福井! 越前ガニでも食べ行く気なんですか! アホなんですかアンタは!」ガッチリ

先輩「うーるーせー! はーなーせー!!」ジタバタ

後輩「やーあーだー!!」


ドタバタ! ドタン! バタタン!!

ドスン!



先輩「ぎゃんっ」

後輩「はぁ……はぁ、ふー……、ふぅー……っ」

先輩「はぁ、はぁ、はぁ……」
98 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:52:11.82 ID:xfZunq6b0
後輩「先輩……」

先輩「ちょ……、退きなさいよ、重……」

後輩「どこに行く……つもりだったんですか」

先輩「……福井のお寺にな、八百比丘尼が最期をむかえたお洞があってな……」

後輩「な……」

先輩「……そこで過ごすのさ。この永遠の命が尽きるまで、ひっそりとな……」

後輩「アホじゃん」

先輩「んだとー!」

後輩「いやアホですよ! アホそのものー! そんなの先輩絶対無理ですから! 一人で一日もいられない寂しんぼのくせに!」

先輩「う、うるせーうるせー!」

後輩「お寺なんて、美味しいもんも何もないんですよ! お酒だって飲めないし!」

先輩「うっ……、飲めないのは……、うぅん……」
99 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:53:06.55 ID:xfZunq6b0
後輩「だいたい! 何のつもりでそんなアホなこと思いついたんですか。小学生の家出じゃあるまいし」

先輩「は……っ、定命の者には分からねぇだろうよ……。トコシエに生きる宿命の、その孤独なんて……」フッ

後輩「うっわ」

先輩「引いてんじゃねーこの野郎ー!」

後輩「……先輩、昔好きでしたもんね、そういう系の。ファンタジー? ラノベ? みたいなやつ」

先輩「やめろー! 昔の話はやめろー!」

後輩「なーにがジョーミョーノモノですか、アホのくせに賢ぶっちゃって……」

先輩「うるせっつーの! い、いいから、さっさとどけ! そんで店長のとこでも行ってこい!」

後輩「あ、それ!何なんですかそれ! なんで店長さんが出てくるんですか!」

先輩「いやだって、この間お前……、店来たんだろ? 開店前に。店長に会いに」

後輩「えっ、なぜそれを……」
100 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:54:13.70 ID:xfZunq6b0
先輩「で、言ったんだろ?」

後輩「へ?」

先輩「付き合ってください的なさ」

後輩「いえ?」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……告白……」

後輩「いやしませんし」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「え?」

後輩「え? 何で? 何でそうなるんです?」

先輩「い、いやだって、何か色々、雰囲気がこう……ゴニョゴニョ。……っつーか、だったらお前、何しに行ったんだよ、店長のとこなんて」

後輩「あ、そ、それは〜……、黒幕的な、色々、雰囲気がこう……、ゴニョゴニョ……」

先輩「何で泣きそうなんだよ、そこで」
101 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:55:13.43 ID:xfZunq6b0
後輩「と、とにかく! 全然違います! そんな話、全然してないんです!」

先輩「じゃ、どんな話したんだよ!」

後輩「それは――……」

先輩「あ?」

後輩「……」

先輩「……?」

後輩「……あぁ、そうか」

先輩「ん?」

後輩「こういうことだったんですね、店長さん……」

先輩「……後輩?」

後輩「先輩」

先輩「お、おう」

後輩「私、先輩に、どこにも行ってほしくありません」

先輩「……!」
102 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:55:43.28 ID:xfZunq6b0
後輩「ずっと一緒にいたいし、もっと近くにいたいし、いっぱい二人の時間がほしい」

先輩「こうは――……」

後輩「一緒にいて当たり前、だからじゃなくて。私が、そうしたいから」

先輩「……」

後輩「先輩のことが、好きだから……」

先輩「……っっ」

後輩「だから……、どこにも、行かないでください、先輩……」

先輩「……バカ」

後輩「お願い……」

先輩「……私、多分死なないんだよ?」

後輩「……はい」

先輩「だったら、ずっと一緒なんて、いれないじゃん……」

後輩「……」

先輩「……だから。だから……、私に、お前の隣にいる資格なんて……」
103 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:56:59.65 ID:xfZunq6b0
後輩「関係ないんです。先輩が何歳まで生きたって。私が死んじゃったって」

先輩「……」

後輩「それでも、離ればなれになんて、なりたくないんです。好きだから……」

先輩「……こ、後は――……」

後輩「……」

先輩「……い……」

後輩「……」

先輩「……いいのか?」

後輩「……」コクン

先輩「……不老不死だよ?」

後輩「……」コクン

先輩「お前がお婆ちゃんになっても、私、ピッチピチだったりするんだよ?」

後輩「お婆ちゃんになっても、一緒にいてくれんですね?」

先輩「……お前」

後輩「本当です。先輩が不老不死でも、人間じゃなくても、カブトガニでも……。私、先輩のこと、好きだって言えます」

先輩「……あはは」
104 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:57:47.30 ID:xfZunq6b0
後輩「……」

先輩「カブトガニは、ちょっと無理だろ」

後輩「ふふ……、そうかも」グスッ

先輩「……泣くなよ」

後輩「だってぇ……」グスグス

先輩「……ごめんな、後輩。……ありがとう」

後輩「……」

先輩「私もね、後輩のこと、好き。大好き。たぶん、ずっと前から」





105 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:58:14.15 ID:xfZunq6b0


106 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:58:51.79 ID:xfZunq6b0





後輩「……」

先輩「はぁ……」

後輩「……」

先輩「水いるか?」

後輩「あ、はい」

先輩「ほい」ヒョイ

後輩「どうも」

先輩「……ってかさぁ」

後輩「はい?」

先輩「マジでさ。店長のこと。何の用だったん?」

後輩「いやぁ〜……、別にその、本当、大したことじゃなくて……」

先輩「何だよもう」
107 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:59:17.31 ID:xfZunq6b0
後輩「いや何て言うか……、……あ! そう! 先輩のためだったんですからね!」

先輩「はぁ? 何で私?」

後輩「先輩のために、私がどれだけ骨を折っていたか! 身も心も擦り減らして、懐も散々寒くして……」

先輩「あー、はいはい。どうせまたしょーもないことで、空回ってたんだろ? アホくさ」

後輩「なっ……、アホにアホって言われたくありませんー!」

先輩「いや、あはは、どう考えてもアホじゃんお前さー」

後輩「2留の方がアホじゃん」

先輩「だから2留以下じゃん。下の下じゃん。アホレースの一等賞じゃん。優勝ー、後輩ちゃーん」

後輩「〜〜〜〜〜っっ!!」ガブッ

先輩「ふぁぁぁっ!」ビクン

後輩「……」チュゥゥゥゥ

先輩「〜〜〜〜〜っっ!!」バシッ バシッ

後輩「あうっ! あうっ!」
108 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:59:46.06 ID:xfZunq6b0
先輩「首は! やめろって! 言ってるだろが! いいか! 首はダメ!」ハァハァ

後輩「ちぇ……、いいじゃん、どうせ痕消えるんだし……」

先輩「あのな、そういう問題じゃ――……」

後輩「……え?」

先輩「おい、聞いてんのかよ。人の話をなぁ――……」

後輩「待って! 先輩ちょっとストップ!」

先輩「なーんだよ! 話逸らす――……」

後輩「痕!」

先輩「あと……?」

後輩「……あと、消えない……」

先輩「……嘘」
109 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 01:00:23.50 ID:xfZunq6b0
後輩「……」

先輩「……ちょっと、鏡ある? 見せて?」

後輩「……」スッ

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……え」

後輩「……」

先輩「……消えて、ない」

後輩「……」

先輩「元に……、戻った……?」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……あは」

後輩「……ぷっ」
110 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 01:00:56.79 ID:xfZunq6b0
先輩「あは、あっははははは!」

後輩「ふっ、ぶふ、ふふふふふ! ふふふっ!」

先輩「あははははっ! あーっはっはっはは!」

後輩「ふふふ! あはははは!」

先輩「はははっ! お前、どうすんだよこれー! また人に見られたら恥ずかしいだろー!」ケラケラ

後輩「クスクス……。もっといっぱい付けてあげます」

先輩「にゃろー! 仕返しだっ、この!」カプッ

後輩「ひぁっ! やっ、ちょっと、駄目ですって! もう、バカぁ!」

先輩「ふ、ふふっ。……なぁ」

後輩「何です?」

先輩「……愛してるよ、後輩ちゃん」ギュ

後輩「バカ……。……私もですっ」ギュッ

先輩「んふふ……」




111 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 01:01:41.77 ID:xfZunq6b0


112 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 01:02:15.39 ID:xfZunq6b0


113 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 01:02:56.14 ID:xfZunq6b0





〜????〜

プルルル

プルルル


店長「あー、もしもし? 私わたしー」

店長「うん、そうそう、その話。……ま、簡潔に言うね」

店長「『研究所』からのレポートよ。被験者7は『不適合』」

店長「……そ。そういうこと。『教団』もすでに、彼女の監視を解いたわ」

店長「私たちも、早急に次のテストケースに移行すべきって、伝えといて」

店長「……」

店長「……ホッとしてる? 私が?」

店長「ふふっ……、どうかしらね。秘密よ、秘密」

店長「とにかく、次の『人魚の肉』は、早めに回してね。そうね、来週中にでも」

店長「『教団』にも、『研究所』にも、絶対に先を越されちゃいけないからね」

店長「『比丘尼計画』……、プロジェクトの主導権を握るのは私たち」

店長「……そう、我々『カンパニー』こそが、不死の謎を解き」

店長「そして、生命の真実を手に入れるのよ――……」

店長「ふっ……、ふふふ……っ! あーっはっはっはっはっは!!」




114 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 01:03:59.14 ID:xfZunq6b0


〜おわり〜


115 : ◆UhQaGpUR76 [sage saga]:2020/01/16(木) 01:05:02.99 ID:xfZunq6b0
これでこのお話は終わりです
お読みいただいてありがとうございました

……間空いちゃったり、急ぎ足になっちゃったりですみませんでした
それでは
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 07:17:23.21 ID:vxeRrYUBo

最後で回収するとはwwwwww
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 23:59:36.71 ID:ca6rgev8O
店長のカンパニー編始まるよね?
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