先輩「不老不死になりました」 後輩「はぁ」

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1 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/12(火) 22:52:34.12 ID:xbGiBxwf0
百合です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1573566753
2 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/12(火) 22:55:03.60 ID:xbGiBxwf0





先輩「よっと。よいしょ……」

先輩「よし……、こっちのがサバで〜」

先輩「こっちのイカが、にぃ、しぃ、ろぅ、はち……」

先輩「アジにツブ貝にマグロ――……、……うん?」

先輩「……?」

先輩「ん〜……?」

先輩「店長ぉ〜、ちょっといいっスか店長〜」

店長「はい、はいはい。はいよ、どうしたん?」

先輩「いやぁ、これなんですけど」

店長「これ?」

先輩「えぇ。なんかマグロのケースに、違うの混ざっててぇ」

3 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/12(火) 22:56:12.64 ID:xbGiBxwf0
店長「ありゃ。向こうの出荷ミスかな」

先輩「な〜んスかね、これ。白身の……、何だろ?」

店長「あんたね、もうこの店も長いんだから。パッと切り身を見たら、これは何の魚だって、サッと言えるようにならんと」

先輩「はぁ……。で、何スか、これ?」

店長「これはね」

先輩「……」

店長「……」

先輩「……」

店長「……ん〜〜?」

先輩「ちょっと。ちょっと店長」

店長「いや〜、何かしらね、これ。初めて見たかも……」

先輩「まあ、何でもいいんですけど。どうします、これ? お店には出せないっスよね」

店長「まぁねぇ……、何の魚か分からんもん、お客様に出すのは、さすがにねぇ……」

先輩「ですよね」
4 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/12(火) 22:56:55.13 ID:xbGiBxwf0
店長「う〜ん……」

先輩「あ、じゃあこれ、私もらっちゃってもいいですか?」

店長「え。いいけど、どうするん?」

先輩「今日のまかないに食べてやろうと思って」

店長「うえぇ、本気で言ってんのあんた……。何か分からない切り身見て、よくそんな気起きるわねぇ」

先輩「もしかしたら、メチャクチャ美味しいかもしれないじゃないっスかぁ」

店長「はぁ……、好きにしたらいいけどさ。アタっても自己責任だよ。労災出ないからね」

先輩「分かってますってぇ。えへへ、ゴチでぇ〜っす!」






5 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/12(火) 22:59:00.97 ID:xbGiBxwf0






先輩「……――ってな感じでな」

後輩「はぁ」

先輩「まぁ、あれが世に言う、人魚の肉ってやつだったんだろうなぁ……」

後輩「先輩……、留年しすぎて、ついに気まで〇っちゃったんですね」

先輩「うは、後輩ちゃん辛辣っ! いやいや! マジなんだって! 大マジのマジで!」

後輩「大マジの……不老不死?」

先輩「不老不死」

後輩「……お医者さん行きます? 心の」

先輩「少しは信じろよ〜! すごいんだぞ〜! 何かな、怪我とかしても、すぐ治っちゃうんだよ! ジュワワワ〜ッってなって!」

後輩「ワインとステーキでも山ほどやったんですか?」

先輩「ビスケット・オリバじゃねーのよ、私は」
6 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/12(火) 22:59:47.60 ID:xbGiBxwf0
後輩「……じゃ、不老の方は?」

先輩「あ?」

後輩「キズが治るのは、もし本当なら、何となく不死? 感ありますけど……。不老なのは、どうやって分かったんですか?」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……なんか、若々しい気分になった、感じがする。気持ち的に」

後輩(バカだ……)

先輩「ま、人魚の肉をな、食べた当人には、何となく分かんのよ。感覚的に」

後輩「ちなみにお味は」

先輩「薄味のブリ?」

後輩「はぁ……。悪くもねぇ感じですね」

先輩「なんつーか、お前、アレだな。水族館とか行ったら、泳いでる魚見て『うわ〜♪ 美味しそ〜♪』とか言っちゃうタイプだな」

後輩「ほっといてください」
7 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/12(火) 23:01:22.35 ID:xbGiBxwf0
先輩「はぁ……。ま、やっぱり実際に目にしてみねーと、理解(ワカ)ってもらえねぇんだろうなぁ」チキチキチキ

後輩「うわっ、何してんですかちょっと! 何でカッターなんて持ってるんですか先輩っ!」

先輩「そりゃ、もしもの時の防衛手段だろ。乙女のたしなみだろうが」

後輩「そんな乙女いません」

先輩「いいか、よく見てろよ? カッターでちょっと指切ったくらいなら、あっという間に治っちゃうんだからよ」グッ

後輩「うゎ、わわ! や、やめましょうって、先輩ぃ……」

先輩「黙って見てろい! ちょっと指切ったくらいなら……」

後輩「う……」

先輩「ちょっと指を……」グ

後輩「……」

先輩「ちょーっと……」ググ

後輩「……」

先輩「……」ググッ

後輩「……先輩」

先輩「どわぁ!? バカお前っ! やめろよ! 急に声かけんなよなっ!」

後輩「どヘタレじゃねえか」
8 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/12(火) 23:03:26.34 ID:xbGiBxwf0
先輩「いや……まぁ、治るってわかっててもさぁ、いざ自分でやろうと思うと、ふんぎりがさぁ……」

後輩「だったらやらなきゃいいじゃないですか……」

先輩「あっ、そうだ! 後輩ちゃんやってよ!」

後輩「はぁ!? 何で私が!」

先輩「いいだろー! そもそもお前が信じようとしねえから、証拠見せてやるって言ってんじゃん! お前が疑ってかからなきゃ、こんなことしなくたっていんだからなっ! ほらっ、分かったら早く!」

後輩「何で私のせいみたいになってるんですか……。まったく……、分かりましたよ」チキチキ

先輩「ちょっとだからな! ちょっと切るだけでいいんだからな!」

後輩「はいはい。じゃ、せーのっ――……」グイッ

先輩「うわぁぁ!? バカバカ!」バッ

後輩「わっ! 何ですか! 暴れないでくださいよいきなり……」

先輩「いやお前……、お前なんでノータイムで人刺そうと出来るんだよ!? 怖ぇわ! シリアルキラーか! バッファロー・ビルか!」

後輩「先輩がやれって言ったんじゃん」
9 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/12(火) 23:04:19.31 ID:xbGiBxwf0
先輩「いや、せめて5カウントくらいからさぁ……、頼むよ……こっちにも心の準備ってもんがあるんだからよ」

後輩「うるさいなぁ、もう……。分かりましたよ。じゃ……5、4……」グッ

先輩「ぅぐ……」

後輩「3、2……」

先輩「……っ」

後輩「1」グイッ

先輩「ああああダメダメ!!!! やっぱちょっと待って!!!!」ジタバタ

後輩「何なんですか! 何なんですかマジでもう!!」

先輩「怖ぇぇぇ! マっっっジでおっかねぇ! うわぁ……、ちょっと……、やば……」

後輩「こんなクソダサい不老不死がいてたまるか」

先輩「いや、ごめんて……。ちゃんとやるから」

後輩「はぁ……、もう。次でラストですからね?」

先輩「ウ、ウス」
10 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/12(火) 23:05:20.59 ID:xbGiBxwf0
後輩「……そうだ。じゃあ、こうやって……、後ろから……」ギュ

先輩「え、いや……後輩ちゃん?」

後輩「こう……、身体を、先輩が逃げないように、押さえつけながらですね」ガシッ

先輩「いやっ、ちょっ、無理ムリこれ怖ぇ! 待って! 怖いから! 怖いからこれ!」

後輩「へっへっへ、そんな暴れても無駄ですよ……。大人しくしてくださいよ……」

先輩「うぅぅぅ〜〜〜〜っっ」ギュウッ

後輩「行きますよ、先輩……。イタいのは最初だけですからね」

先輩「こ、後輩ぃ……っ!」

後輩「……」チクッ

先輩「ひっ!」

後輩「……」チクチク

先輩「きゃひっ!……お前っ! お、おま、お前なぁぁ……っ」

後輩「はぁぁぁぁ……、先輩が私の腕の中で、小さくなって震えてる……。まるでいたいけな子犬の様に……、あの先輩が……」ゾクゾクッ

先輩「性癖イカツいんだよお前ぇ……!」
11 : ◆UhQaGpUR76 [sage saga]:2019/11/12(火) 23:06:47.18 ID:xbGiBxwf0

こんな感じで、何も起きません
今日の所はここまでです
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/13(水) 12:26:55.20 ID:bIXZCbf2o
おつ
きたい
13 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:20:35.38 ID:IYqJZyLx0
後輩「……っ!」プツ

先輩「ぎゃっ」

後輩「あっ……!」

先輩「……」

後輩「すみません、ちょっと深くいきすぎ――……」

先輩「……」

後輩「ぁ……」

先輩「……」

後輩「血が……、止まって……」

先輩「……」

後輩「……傷、塞がってる……」

先輩「……」

後輩「嘘……」

先輩「……ふ。驚いたろ?」グス

後輩「半ベソじゃねーですか」
14 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:21:35.30 ID:IYqJZyLx0
先輩「ほっとけ! それより! 見たな! 見ただろ後輩! 嘘じゃなかっただろーが!」

後輩「はぁ、まぁ……」

先輩「なー! これで信じるだろ! なぁ! 信じるだろ不老不死!」

後輩「まぁ……、さすがに実際に目の当たりにしちゃうと、信じないわけには……」

先輩「そーだろそーだろ! か〜っ! 得ちゃったんだよなぁ〜! 永遠に尽きない命! そして絶対に傷つかない体ってヤツをさぁ〜〜っ! かぁ〜〜〜っ!!」

後輩(急にウザくなったな……)

後輩「絶対に傷つかな――……あっ」

先輩「あ?」

後輩「……」カプ

先輩「ふぁぁぁ!?」ビクン
15 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:22:08.36 ID:IYqJZyLx0
後輩「……」チュゥゥゥ

先輩「〜〜〜〜〜っっっ!?!?!?」バシッ

後輩「あうっ!」

先輩「ば、バカっ! や、やめろって言ってんじゃん首! やめろって! いっつもいっつもぉ!」

後輩「首筋、アホみたいに弱いですよね、先輩」

先輩「っ!」ゲシッゲシッ

後輩「あうっ! あっ、すみませっ、すみませんっ! 痛い!」

先輩「バーカ! バカ後輩! どうすんだよお前、また痕残ったら!」

後輩「残してるんですよ」

先輩「バカぁぁ! お前なぁ、人が毎度毎度、どうやって隠そうと――……あ」
16 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:22:41.12 ID:IYqJZyLx0
後輩「……」

先輩「あ〜……」

後輩「……」

先輩「……消えた?」

後輩「消えた」

先輩「……ぉーん」

後輩「……はぁぁぁぁぁ」

先輩「いやいや」

後輩「はぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜……」ガックリ

先輩「こんなことでそこまで萎える?」





17 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:23:20.62 ID:IYqJZyLx0





〜大学構内〜


後輩「……」

後輩「……ふぅん」ペラ

後輩「……」


後輩(昔、ある漁村の娘が――……)

後輩(そうと知らずに、人魚の肉を食べてしまった――……)


後輩「……」ペラ

後輩「……」


後輩(以来、娘は不老不死の体となり――……)

後輩(八百年の歳月を生き、やがて八百比丘尼と呼ばれるようになった――……)


後輩「……はぁ」
18 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:24:01.38 ID:IYqJZyLx0
後輩(八百年かぁ……)

後輩(言うほど永遠の命感はないな)

後輩(鶴は千年、亀は万年だぞ)


後輩「……」


後輩(まぁ、でも……)

後輩(八百年は……)

後輩(長い、かな……)


後輩「……」パタン

後輩友「おいっすー! なになに? 何読んでんの?」

後輩「ああ、友か……。別に、何でもないよ」

友「ん〜?『人魚の民話』……、アンタ民俗学なんて取ってたっけ?」

後輩「何でもないったら。ただ、暇つぶしに読んでただけ」

友「ほぉ〜ん? ま、いいや。今日道場行く?」

後輩「ああ。……行くよ」

友「んじゃ、一緒に行こー!」

後輩「はいよ」





19 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:24:39.34 ID:IYqJZyLx0





後輩「あのさぁ」

友「ん?」

後輩「もしさ、不老不死になれるとしたら……、友、なりたい?」

友「は? 何じゃそりゃ」

後輩「いや、ただの世間話」

友「あぁ、さっき読んでた本の話? 人魚の肉ってやつでしょ?」

後輩「ま、そんなとこ」

友「ん〜、どうかなぁ。そうだねぇ……。正直、私は絶対ノーサンキューって感じかな」

後輩「そう?」

友「そりゃそうよ。別に長生きしてまで、やりたいことないし」

後輩「意外とドライよね、友ちゃんさ」

友「ほっとけ。それにさぁ、人に知られたりしたら、絶対ヒドい目にあうでしょ」

後輩「ヒドい目?」
20 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:25:33.23 ID:IYqJZyLx0
友「たとえばほら、怪しい研究機関にさらわれて、謎の人体実験されたり」

後輩「……」

友「カルト宗教の団体に監禁されて、謎の儀式のイケニエにされたり」

後輩「は、はは……、ま、まさか……」

友「カブトガニ工場みたいな目にあったり!」

後輩「カブトガニ工場……」

友「だって不老不死だよ? どんな手使ってでも研究したい、調べたいって人なんて、山ほどいるに決まってるじゃん」

後輩「……」

友「それ考えたらさぁ、ただの小市民として、分相応に生きてくのが一番……ん? どした後輩?」

後輩「……別に。何でも」

友「そう? ……あ」
21 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:26:00.98 ID:IYqJZyLx0
後輩「ん?」

友「あそこ、駐車場に停まってるレクサス」

後輩「ゲ、今日師範いるんだ」

友「はぁ〜。まーたシゴかれるよ。目ぇつけられてんのよ私、あのババアに」

後輩「ま、ドンマイ」

友「はぁぁ〜……」





22 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:26:38.73 ID:IYqJZyLx0





〜剣道場〜



後輩(人体実験……、儀式のイケニエ……)

後輩(……確かに、不老不死なんて知れたら、放っておかれるはずがないよな……)

後輩(先輩……)



正面に礼ー!

神前に礼ー!


アザッシターー!!!


後輩「あざっしたー」

後輩「……」


後輩(もし、先輩が……)

後輩(悪い連中につかまっちゃったら……)

後輩(それで、人体実験なんてされて……)





23 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:27:15.71 ID:IYqJZyLx0





先輩『ひぃィっ……! な、何すんだよぉ! やめろよぉ!』

先輩『お、おい……、何だよソレ……。そんなドリルなんて、何に使――……うわぁぁっ!』

先輩『いやだ! いやだよぉ! カブトガニみたいなことしないでよぉ!』







後輩「……」


後輩(……先輩)

後輩(泣いちゃうだろうな。ヘタレだし……)


後輩「……」


後輩(それはちょっと……、可哀想だな……)
24 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:27:42.63 ID:IYqJZyLx0
後輩「……」

友「おつ〜……」

後輩「おつかれ、友」

友「あのババア、いつか絶対泣かす」

後輩「イジめられたね、今日は」

友「ほんとクソ。……あ、この後どうする? メシでも行く?」

後輩「あー、ごめん。今日これから飲み」

友「お、合コン?」

後輩「まさか」

友「じゃ、あの先輩さん?」

後輩「……ま、ね」
25 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:28:18.12 ID:IYqJZyLx0
友「いやぁ〜、ま〜たですかぁ? おアツいことで、結構でございますなぁ! ヒューヒュー!」

後輩「うっさい。ヒューヒューは古い」

友「まったくぅ、いーっつも先輩さんじゃん。妬けちゃうわっ、もうっ」

後輩「何でちょっとオネエ入ったの今」

友「あのクールな後輩が、こんなにベッタリになる人がいるなんてねぇ……。高校の時の下の子たちが見たら、腰抜かすわよ」

後輩「別に、ベッタリってわけじゃ……」

友「はいはい。ま、たまには友ちゃんとも遊んでよねぇ?」

後輩「分かった分かった。じゃ、またね」

友「うい、おつかれ」





26 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:28:53.50 ID:IYqJZyLx0





〜駅前〜


先輩「いつもんトコでいいか?」

後輩「ええ、はい」

先輩「おっし、行くかぁ」

後輩「……」


後輩(……先輩)


先輩「空いてっかなぁ、今日〜」

後輩「……」チラ


後輩(もし、不老不死のことが、周りに知られたら……)

後輩(……うっかりバレちゃいそうだしな、先輩アホだし……)


先輩「なーんか」

後輩「へっ?」ビクッ
27 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:29:52.85 ID:IYqJZyLx0
先輩「今日元気ねーね、後輩ちゃん」

後輩「そ、そうですか? 別にそんなこと……」

先輩「や、何となく」

後輩「……稽古が厳しかったんで、ちょっと疲れてるんですよ。それだけ」

先輩「ふーん? ま、無理すんなよ」

後輩「どうも……」


後輩(アホだけど……、優しいところもあるし……)

後輩(この人が、可哀想な目にあうのは……)

後輩(ちょっと……、いや、それなりに、結構……、だいぶ……)

後輩(……いやだな)


後輩「……」チラ

先輩「〜〜♪」
28 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/23(土) 19:30:20.95 ID:IYqJZyLx0
後輩(私が守らなくちゃ)

後輩(私が助けなくちゃ)

後輩(私が――……)


先輩「あっ! 待って、お金おろしてねぇ!」

後輩「ちょっとぉ……、コンビニ過ぎちゃいましたよ?」

先輩「ちょ、ちょい待ってて! すぐ行ってくるから」ダッ

後輩「もう……」


後輩(私が……、先輩を――……)





29 : ◆UhQaGpUR76 [sage saga]:2019/11/23(土) 19:32:13.51 ID:IYqJZyLx0
今日はここまでです
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/23(土) 20:26:19.07 ID:rHn3iYKQo
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/25(月) 11:18:55.24 ID:eRNNHKpYo
おつ
32 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:22:06.58 ID:Ud6Zs9i30





〜居酒屋〜


イラッシャイマセー

ラッシャッセー!!!


店長「いらっしゃー……って、なんだ、先輩ちゃんかぁ」

先輩「えっへっへ……、店長どうも。席あいてる?」

店長「ちょうどよかった! ちょっとあんた、手伝ってきなさいよ! 今日はもうてんてこまいなんよー!」

先輩「えぇ〜〜」

店長「いいじゃない、一時間だけでいいからさ、ねっ。どうせ暇してて飲みに来たんでしょ?」

先輩「やですよ、今日は客っス。ほれ、ツレもいるし」

後輩「ど、どうも」ペコリ

店長「あーらまあ、後輩ちゃんじゃない! 久しぶりー!」

後輩「ごぶさたしてます……」

店長「あっはっは、そんなにかしこまんないでぇ! ま、ゆっくりしてってよ」

後輩「は、はぁ」

先輩「この扱いの差よ……」

店長「当たり前でしょー! ま、後輩ちゃんが一緒ならしゃーないかー。はい、2名様ごあんなーい!」


ヨロコンデー

ヨーコンデェェイイ!!!





33 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:22:44.02 ID:Ud6Zs9i30





先輩「かんぱーい」カチン

後輩「かんぱーい」チン

先輩「……」グビグビ

後輩「……」グビグビ

先輩「……っぷはぁー!」

後輩「……っぷはぁ……」

先輩「はぁ……、シメサバ頼む?」

後輩「頼みます」

先輩「あとどうしよっかなぁ……」

後輩「っていうか、先輩」

先輩「あん?」

後輩「その後、変わりないです?」

先輩「え? あぁ、相変わらずよ。完全無欠の不死身っぷり」

後輩「そっかぁ……」
34 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:23:48.20 ID:Ud6Zs9i30
先輩「昨日なんかな、机のカドに、太腿ガツーンって、まあまあエグめにぶつけちゃったのに、アザもあっという間に消えちゃってさぁ」

後輩「バカ丸出しじゃないですか」

先輩「ほっとけ! いやぁ、しかし便利なもんだなぁ、不老不死ってのはさ」

後輩「不死はすごいですけど……、でも不老の方は、言ってもたかだか、八百年くらいなんでしょ?」

先輩「おん?」

後輩「屋久島の杉の木は千年ですよ、千年」

先輩「いや、屋久杉はすげーけどさ……、八百年って何よ」

後輩「ほら、八百比丘尼って」

先輩「……後輩ちゃんね」

後輩「はい?」

先輩「『八百』っつーのはさ、古い言葉だと『めっちゃいっぱい』くらいの意味よ?」

後輩「え、そうなの?」
35 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:24:29.62 ID:Ud6Zs9i30
先輩「そうだよ。ほら、あるじゃん。『八百万』とか、『ウソ八百』とか」

後輩「八百屋とか……?」

先輩「そう……、あ、いや、それは、どうだろ。分からんけど」グビ

後輩「でも、私の読んだ本だと、八百年生きたから八百比丘尼って……」

先輩「ま、諸説あります、って感じ?」グビグビ

後輩「じゃあ、八百年以上……先輩は生きるってこと?」

先輩「知らねぇよ。参考事例もねぇんだし」グビ

後輩「……そっかぁ」

先輩「つーか、いちいちそんなの調べなくても――……ん……?」

後輩「……どうかしました?」

先輩「……」グビグビグビ

後輩「ちょっと、そんな一気にいったら……、先輩弱いんだから……」

先輩「けふっ。……ん〜〜?」
36 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:25:19.74 ID:Ud6Zs9i30
後輩「先輩?」

先輩「これ、ビールか? 本当に」

後輩「そりゃそうでしょ」

先輩「いやだって、全然酔わない、これ。ノンアルじゃねーの?」

後輩「まさかぁ……。ちょっとください」

先輩「ほいよ」

後輩「……」グビグビ

先輩「あっ、飲みすぎ! おいっ」

後輩「けふっ」

先輩「……どうよ」

後輩「……どうって、普通にビールですね。普通の」

先輩「あっれ〜? ……っかしいなぁ、普段なら一杯目から、まあまあ気持ちよくなるはずなんだけど……」

後輩「……あ。あれじゃないですか? 不老不死だから」

先輩「だから?」

後輩「毒が効きません、的な理屈で、アルコールにも耐性ができてる、みたいな」

先輩「あー」

後輩「とか」
37 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:25:52.15 ID:Ud6Zs9i30
先輩「なるほどね」

後輩「適当ですけど」

先輩「いや、それっぽい! ってことはあれか! 今ならシコタマ飲みまくっても、酔いつぶれねーし、二日酔いにもならないってことかぁ!」

後輩「い、いや、それは分からな――……」

先輩「いやっほう! いやー、前からやってみたかったんだよな! バカ強い酒を浴びるほど飲むやつ!」

後輩「ちょっと……、そんな、無理しない方が……」

先輩「すみませーん!」


ハーイ


後輩「もう、先輩……」

店長「はいはい」

先輩「お、店長。注文ね! シメサバとー、イカとー……」

店長「はいよ」

先輩「……あと、このジンを、ストレートで」ニヤリ

後輩「はぁ……、アホだ……」
38 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:26:33.74 ID:Ud6Zs9i30
店長「ちょっとあんた、こんなの頼んで大丈夫なわけ? いくら不老不死だからって……」

後輩「え」

先輩「だーいじょうぶ、だいじょーぶ! 酒の毒も効かねーの、不老不死だから!」

後輩「ちょ――……」

店長「いいけど、お店で吐かんでよ? ……あ、後輩ちゃんも、飲み物頼む?」

後輩「え、いや、え? あ、あの……」

店長「?」

後輩「……な、生で」

店長「はぁーい! ご注文いただきましたぁー!」


スタスタ

39 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:27:05.51 ID:Ud6Zs9i30
後輩「……ちょ、あの……先輩?」

先輩「大丈夫だっつーの! マジで全然酔わねえんだから!」

後輩「じゃなくて……。あの、なんで店長さんが、知ってるんですか。その……」

先輩「不老不死のこと?」

後輩「えぇ……」

先輩「なんでって……、言ったから」

後輩「は……はぁぁぁ!?」ガタッ

先輩「わっ、なんだよ」

後輩「ど、どういうつもりなんですか! どうしてそんな大事なこと、軽々しく他人に――!」

先輩「当然だろー、健康上の問題なんだから、勤め先の責任者には、一応伝えとくってのが一般ジョーシキだろ」

後輩「いやいや……」

先輩「何かあったら、お店にだって迷惑が掛かるんだしな。バイトっつっても、そういうとこはしっかりしねーとさぁ」
40 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:28:12.92 ID:Ud6Zs9i30
後輩「だ、だけど……、もし他の人にバレたり、噂が広まったり……」

先輩「そんなん、お前に話したのだって一緒じゃん」

後輩「そ、それは……、そう、です……けど」

先輩「だろー?」

後輩「……」

先輩「安心しろってー、話したのは店長と、あとお前だけなんだから」

後輩「……」

先輩「店長も、口カタい人だしな」

後輩「……」


後輩(……なんだ)

後輩(……私にだけじゃ、なかったんだ……)


後輩「……」

先輩「後輩ちゃーん? どしたのほんと。今日元気ねーね、マジで」

後輩「……何でも、ないです……」

先輩「そう?」
41 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:28:50.84 ID:Ud6Zs9i30
後輩「……それで、店長さんにも見せたんですか? あの傷がムニョムニョ治るやつ」

先輩「へ? 見せてないけど?」

後輩「え……」

先輩「いや〜、やっぱそういうとこ、お前よりか大人だわ、あの人」

後輩「……」

先輩「私が一言、こういうことなんで―っ! って伝えたら、店長もはいはい了解ーっ! ってなもんでな」

後輩「そ――……」


後輩(そんなこと……)

後輩(そんなことって、あるか、普通……!?)

後輩(本気にしてない、にしても……)


後輩「……」


後輩(いや、そもそも……)

後輩(ただの飲み屋に、人魚の肉なんてものが、どうして届いた……?)

後輩(どうして店長さんは、先輩が食べるのを、強く止めなかった……?)

後輩(何の魚かも分からないものを――……)



後輩「……」

先輩「? ……後輩?」
42 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:29:50.66 ID:Ud6Zs9i30
店長「おっ待たせしゃーした〜♪」

後輩「っ!」ビクッ

先輩「おっ、きたきた!」

店長「あんたはホント、ほどほどにしとくんよ?」

先輩「へいへ〜い」

後輩「……」ジッ


後輩(わざわざ店長さんが、自分で注文を持って……?)

後輩(いったい、何のために……?)



後輩「……」ジー

店長「……」

後輩「……」ジー

店長「あたしの顔、なんかついてる?」

後輩「へっ!?」ビクッ

店長「いやぁ〜、そんな情熱的に見つめられたら、オネーさん照れちゃうわあ♪」

後輩「いっ、いや! 別にっ、そういうわけでは……っ!!」ワタワタ
43 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:30:59.53 ID:Ud6Zs9i30
店長「あっはは、後輩ちゃんって、からかいがいあるよねぇ」

先輩「後輩ぃ〜、ちょっかい出すのもいいけど、この人旦那さんいるぜー?」

店長「今は! バツ! イチ! だっての! ――って、何言わすのあんたは!!」ペシッ

先輩「ってぇ!」

後輩「あ、あはは……」

店長「あ〜、あんたらと話してると飽きんわ、ほんと」ケラケラ

先輩「だからって店長、酒運んでまで遊びに来てたら駄目でしょー。真面目に働いてくださいよー」

店長「うっさい! 見に来たかったからいーの! あたしの店だからいいんだー!」ケラケラ

先輩「あっ、さてはまた飲んでやがるな、この人!」

後輩「……」ジー


後輩(店長さん、この人は一体……)

後輩(どこまでが本気なんだ……?)


店長「ごゆっくりどうぞ〜♪」スタスタ

先輩「やれやれ、仕事中に飲むなよなぁ、まったく……」グビグビ

後輩「……」

先輩「……っくぅ〜〜! ストレートは効くなぁ〜! 効かねぇけど!」
44 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/11/26(火) 22:31:35.45 ID:Ud6Zs9i30
後輩「……」

先輩「……後輩?」グビグビ


後輩(冗談のつもりなのか……)

後輩(それとも、何か……)

後輩(何か裏が……、隠してるものが……?)

後輩(もし……、そうだとしたら……)

後輩(私は――……)



先輩「……後輩」

後輩「え? あ、すみません。ちょっとボーッとしちゃって……」

先輩「あのさ……」

後輩「は、はい?」

先輩「ちっとも酔わないのも、割とつまんないのね、お酒って」

後輩「でしょうね」





45 : ◆UhQaGpUR76 [sage saga]:2019/11/26(火) 22:33:39.58 ID:Ud6Zs9i30
今日はここまでです
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/27(水) 07:29:27.36 ID:Sms3XiEAo
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/27(水) 12:29:08.33 ID:Td3SziCxo
おつ
48 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/12/10(火) 21:18:31.58 ID:hgHB/eFA0





ダッダッダッ


後輩『はっ……はっ、はぁ……!』タッタッ

先輩『ハッ、ハッ、ハ……』タッタッタッ


こっちだー!

逃がすなー!


後輩『……っ! こっちです、先輩……!』ダッ

先輩『お、おい、後輩!』タッタッ


ダッダッダッ

ダッダッ





49 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/12/10(火) 21:19:03.20 ID:hgHB/eFA0





後輩『あっ――……』

先輩『うぉ……っ』


ザザーン

ザーン


後輩『……』ハァハァ

先輩『嘘だろ……』ハァハァ

後輩『……』

先輩『崖かよ……、行き止まりじゃねえか……』


ザッ


黒服1『追い詰めたぞ』

黒服2『さぁ、大人しくその女を渡してもらおう』

後輩『……』

先輩『はぁ……、くそ……っ』
50 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/12/10(火) 21:19:48.58 ID:hgHB/eFA0


ザザーン


後輩『……先輩』

先輩『あ?』

後輩『先輩ひとりなら……、ここから飛んでも、生きて逃げられますよね……?』

先輩『お、おい……、どういう意味だよ、後輩……』

後輩『ここは私が食いとめます』

先輩『なっ……!』

後輩『私は大丈夫です! だから、どうか先輩だけでも!』

先輩『馬鹿やろ……っ! お前な――……』



『お、いたいた』



後輩『へ?』

先輩『は?』
51 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/12/10(火) 21:20:41.49 ID:hgHB/eFA0
店長『おーい。先輩ちゃーん』

先輩『あれ、店長ぉー』

後輩『な……っ!?』

店長『何してんのよ、もう。そんな危ないとこいないで、こっち来んさい、こっち』

先輩『えぇ〜? いやでもさぁ……、うぅん、まいったなぁ、もぉ』

後輩『せ、先輩! 駄目です! そいつらのところに行ったら……!』

店長『だーいじょーぶだってぇ。悪いようにはしないからさぁ』

先輩『うーん……、まぁ、店長がそういうなら……』スタスタ

後輩『先輩ぃ!』

先輩『悪ぃな、後輩。店長に言われちゃったらさぁ、ほら、しゃーないじゃん?』

後輩『そ、そんなぁ……!』
52 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/12/10(火) 21:21:11.01 ID:hgHB/eFA0
先輩『そんじゃな、後輩』

店長『そうそう、おいでおいで。あ、ついでに今日シフト入れる?』

先輩『え〜、それは勘弁っスよ、店長〜』スタスタ

店長『固いこと言わんでさぁ』スタスタ

後輩『せ……せんぱ……』ヨロッ


ガラッ


後輩『あっ!』


ガララッ!!


後輩『あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!』





53 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/12/10(火) 21:26:59.17 ID:hgHB/eFA0





ピピピピピピピピピピピピピピピ


後輩「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」ガバッ

後輩「っっ!?!?」


ピピピピピピピピヒ


ピッ


後輩「……」

後輩「……」

後輩「……夢?」

後輩「……」

後輩「……」ハァ


〜数日後・早朝 後輩のアパート〜


後輩(何つー夢だ……)


後輩「……」ハァァァ
54 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/12/10(火) 21:27:34.18 ID:hgHB/eFA0
後輩(結局、あの日の店長さんの真意は……)

後輩(考えれば考えるほど、分からなくて……)

後輩(ずっと悶々とした挙句……、こんなしょーもない夢まで……)


後輩「……」


後輩(……いや、ありえないんですけどね、普通に考えて)

後輩(こんな陰謀論じみた妄想、真剣に悩んでる方が、アタマおかしいです)


後輩「……」

後輩「……ぅん」

後輩「……うぅぅん」


後輩(けど……)

後輩(そもそも不老不死なんて、ありえないことが起こっている以上、何があったって不思議とは言えないわけで……)


後輩「うぅ〜〜ん……」ブンブン

後輩「いやぁ〜〜……」ブンブンブン
55 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/12/10(火) 21:28:12.93 ID:hgHB/eFA0
先輩「お、起きた」

後輩「あっ! お、おはよう……ございます……」

先輩「何してんの、お前」

後輩「え? あー、いや……、朝の……体操……?」

先輩「へぇ。起き抜けから大変ね、剣道ガール」

後輩「あ、あはは……」

先輩「つーかお前、結構うなされてたぞ? 大丈夫か?」

後輩「え」

先輩「何か、明け方ずっと、カブトガニぃ〜、って言ってた」

後輩「な、なな何ですかねっ!? 変な夢でも見たのかな!? あは、あははは……」
56 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/12/10(火) 21:29:03.70 ID:hgHB/eFA0
先輩「また変なストレス溜めてんじゃねーの?」

後輩「や、あの、別に、何ともないですから!」

先輩「そう?」

後輩「も、もちろん! 元気いっぱい! いっぱいいっぱい!」

先輩「いっぱいいっぱいなのかよ」



後輩(先輩……)

後輩(今、先輩に、妄想みたいな話をして……)

後輩(怖がらせたり、不安にさせたりするのは……)

後輩(それは……、いやだな……)


後輩「……」
57 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2019/12/10(火) 21:29:36.06 ID:hgHB/eFA0
後輩「って、ていうか、先輩、今朝は珍しく早いですね」

先輩「1コマ目出なきゃなんだよ、今日」

後輩「へぇ〜、すごい。ついに卒業する気になったんですね」

先輩「シバくぞこの野郎」

後輩「はは……」

先輩「ったく……」

後輩「……あの」

先輩「ん?」

後輩「先輩、今日バイトあります?」

先輩「あー? おう、7時から」

後輩「私、飲み行っていいですか、今日?」

先輩「別にいいけど。相手してやれねーぞ。金曜だから混むしな」

後輩「え、えぇ。大丈夫です。普通に飲むだけなんで……」

先輩「ほーん……?」

後輩「……」





58 : ◆UhQaGpUR76 [sage saga]:2019/12/10(火) 21:31:42.56 ID:hgHB/eFA0
今日はここまでです…
エタらねぇぞ…
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/10(火) 23:49:45.57 ID:Q77tlBLQo
舞ってたぜ
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/10(火) 23:49:55.68 ID:/fU2TgiPo
舞ってたぜ
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/10(火) 23:59:14.01 ID:Q77tlBLQo
ルーターの調子が悪くて連投になった
スマソ(´・ω・`)
62 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:20:34.84 ID:xfZunq6b0





〜夜・居酒屋〜


後輩「……」ガラッ


イラッシャイマセー!

ラッシャッセェェーイ!!


後輩「……うーん」


後輩(本当に混んでた……)


先輩「いらっしゃ……うわ、お前、本当に来たのかよ」

後輩「はぁ、すみません……。席、空いてます?」

先輩「空いてるけどさ。……カウンターでいいよな?」

後輩「ええ、全然」
63 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:21:42.12 ID:xfZunq6b0
先輩「んじゃ、そこの席な」

後輩「どうも。……って、あれ。予約席?」

先輩「取っといてやったんだろが。お前が来るっていうから」

後輩「うわぁ、何か、すみません。ありがとうございます」

先輩「つーか、マジで相手してやれねーからな、今日は」

後輩「わ、分かってますって」

先輩「生でいいかー?」

後輩「お願いします」

先輩「はいよー」

後輩「……」


後輩(……なんか、気ぃ遣わせちゃったな)

後輩(……まあ、とにもかくにも)


後輩「……」キョロキョロ
64 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:22:50.85 ID:xfZunq6b0
後輩(店長さん……)

後輩(あの人の様子を探って……)


後輩「……」


店長「はい、これ4卓様ー!」


後輩(……いた)


後輩「……」ジッ


後輩(もし店長さんが、先輩のことに、何か関係してるとしたら)

後輩(何か、怪しい動きがあるはず……)

後輩(先輩をこっそり観察していたり……、妙な態度を見せたり……)

後輩(何か、不自然なところが……)


後輩「……」ジーッ

店長「……」

後輩「……」ジーー

店長「……?」ニコ

後輩「あ」

店長「……」ヒラヒラ

後輩「……」ペコリ
65 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:23:45.33 ID:xfZunq6b0
後輩(……うーん)

後輩(……普通だ)


先輩「なーにボケっとしてんだよ」

後輩「うひゃあ!」

先輩「変な声出すなバカ」

後輩「せ、先輩……。な、何ですかもう……」

先輩「お前が何なんだよ。ほら、ビール」

後輩「あ、どうも……」

先輩「それと、お通し」

後輩「わぁ……」

先輩「これが山芋のたまり漬け。こっちがつぶ貝の甘辛煮で、あと豆あじのマリネな」

後輩「また、こじゃれたものを……」

先輩「店長の趣味だよ。……じゃ、あとはごゆっくり。飲みすぎんなよー」

後輩「分かってますよぅ……」
66 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:24:35.24 ID:xfZunq6b0
後輩「……」


後輩(……ふぅ)


後輩「……」グビ


後輩(店長さんは……)


後輩「……」


後輩(相変わらず、忙しそうだけど)

後輩(別に変ったところは……)


後輩「……」

後輩「……」ジー

後輩「……」グビ

後輩「……」


後輩(……山芋)


後輩「……」パクリ

後輩「……」シャキ モグ

後輩「……!」


後輩(美味しい……!)
67 : ◆UhQaGpUR76 [saga]:2020/01/16(木) 00:25:07.07 ID:xfZunq6b0
後輩「……」パクパク


後輩(ほのかに生姜の風味がきいてて……)


後輩「……」グビグビ


後輩(お酒にもよく合う……!)


後輩「……」プハ


後輩(……つぶ貝)


後輩「……」モグ


後輩(美味……っ)

後輩(柔らっかぁ……!)

後輩(どんな仕組みだこれ……!)


後輩「……」モグモグ

後輩「……」グビグビ

後輩「……」モグモグ

後輩「……すみませーん! 生ひとつー!」


ハーイ!!
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