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タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part7

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254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/08/10(月) 21:36:33.45 ID:LAcrkc2c0
タイトル「飛車のソナタ」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/14(金) 16:26:02.89 ID:qKTTYZqIO
タイトル「動く人形」
タイトル「或る老婆の話」
タイトル「666号室」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/16(日) 09:20:31.95 ID:b5SrDXMi0
タイトル「泥団子の絆」
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/19(水) 18:57:53.47 ID:aiy7sCC30
タイトル「星も見えない夜」
タイトル「何もなかった」
タイトル「遠い家路」
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/23(日) 16:47:22.93 ID:l8To7LbA0
タイトル「パラレルフィーバー」
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/28(金) 20:40:59.61 ID:nZwsj+wJ0
タイトル「黒い糸」
タイトル「クロイイト」
タイトル「廃戦」
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/30(日) 15:03:13.16 ID:6bW8TQC80
タイトル「ジェンガリングジャングル」
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/02(水) 12:57:40.54 ID:X8n2WH1K0
タイトル「精神世界探索ロボ」
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/04(金) 01:25:37.82 ID:HIeYnz1cO
タイトル「キラワレモノ」
タイトル「ヤッカイモノ」
タイトル「すべてが逆の世界」
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/05(土) 17:46:54.02 ID:elcRWPa60
タイトル「角は斜めに縦横無尽」
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/06(日) 15:30:38.15 ID:W4A1/Ksh0
タイトル「ドラエモソvsアソパソマソ」
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/09/06(日) 18:20:33.60 ID:KyLIRQh40
タイトル「ドラフト2位の即戦力」
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/06(日) 18:33:20.62 ID:4oQXxdY70
>>250
「学校の墓場」

ここは学校の墓場。ボロボロの建物のようなものが地平線の彼方まで延々と敷き詰められている。
今日もまた、役割を終えて廃校となった学校が落ちてくる。
最近は特に多い......

ある日、一つの学校が光に包まれながら天に昇っていった。
その学校は、どこか嬉しそうな表情をしているようだった。




こんなのしか書けなくてスマンソ
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/06(日) 18:49:50.89 ID:4oQXxdY70
>>259
「黒い糸」

私はあるときから黒い糸が見えるようになった。
それが何かは分からないけど他の人には見えないらしく、それはいわゆる赤い糸のように人の薬指についていて、どこか遠いところ繋がっているようだ。
私の指にも繋がっていて、どこかに伸びている。
この世界は黒い糸で一杯だ。
あっちこっちに張り巡らされていて、触れることはできないけど動きづらい。
これがいわゆる運命の糸、とかだったら良いんだけどね。


ある日の朝出勤した時に、お隣の仲良し夫婦の指の間に黒い糸が繋がっているのが見えた。
それに、夫婦だけじゃなくて夫さんの指から子供の指にも繋がっている。
両端を見たのは初めてだ......

その日、会社の帰り道でバスに乗り込んでからネットニュースを見ると、私は衝撃的な物を見つけた。
お隣の仲良し夫婦の家で、奥さんと子供が亡くなっているのが発見されたらしい。
犯人は.........夫。
なんで.........あんなに仲が良かったのに.........
その時、私は朝仲良し夫婦の指の間に黒い糸が繋がっていたのを思い出した。
あれは、あの黒い糸は、もしかして本当に運命の糸で、その運命って、もしかして........

『次、止まります』

ふと、私は指に繋がっている黒い糸の先を見てみた。
その糸はバスの運転手さんに繋がっていて、バスの運転手さんの指にはたくさんの黒い糸が結び付けられていた。
その黒い糸は、乗客のみんなにまっすぐ、ピンと繋がっていた。

バスが停留所を通り過ぎた。
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/06(日) 18:54:12.16 ID:4oQXxdY70
>>259
「黒い糸」

私はあるときから黒い糸が見えるようになった。
それが何かは分からないけど他の人には見えないらしく、それはいわゆる赤い糸のように人の薬指についていて、どこか遠いところ繋がっているようだ。
私の指にも繋がっていて、どこかに伸びている。
この世界は黒い糸で一杯だ。
あっちこっちに張り巡らされていて、触れることはできないけど動きづらい。
これがいわゆる運命の糸、とかだったら良いんだけどね。


ある日の朝出勤した時に、お隣の仲良し夫婦の指の間に黒い糸が繋がっているのが見えた。
それに、夫婦だけじゃなくて夫さんの指から子供の指にも繋がっている。
両端を見たのは初めてだ......

その日、会社の帰り道でバスに乗り込んでからネットニュースを見ると、私は衝撃的な物を見つけた。
お隣の仲良し夫婦の家で、奥さんと子供が殺されているのが発見されたらしい。
犯人は.........夫。
なんで.........あんなに仲が良かったのに.........
その時、私は朝仲良し夫婦の指の間に黒い糸が繋がっていたのを思い出した。
あれは、あの黒い糸は、もしかして本当に運命の糸で、その運命って、もしかして........

『次、止まります』

バスのボタンが押された音で、私は顔をあげた。
私はふと、指に繋がっている黒い糸の先を見てみた。
その糸はバスの運転手さんに繋がっていて、バスの運転手さんの指にはたくさんの黒い糸が結び付けられていた。
その黒い糸は、乗客のみんなにまっすぐ、ピンと繋がっていた。

バスが停留所を通り過ぎた。
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/08(火) 18:55:19.65 ID:GsPd1RT40
>>266
何か、考えさせられるものがありますね。
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/08(火) 19:27:45.55 ID:ANzhFlJYO
タイトル「推定寿命測定機」
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/08(火) 21:18:11.36 ID:Pw/ICKoY0
タイトル「警察戦隊タイホマン」
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/11(金) 22:44:05.49 ID:lsggck9P0
タイトル「角道を開けないで、飛車先を突かないで」
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/19(土) 17:08:55.97 ID:ugh9hCQ9O
タイトル「将来の夢は日本の大統領になることです」
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/20(日) 20:16:54.86 ID:teppnn5r0
タイトル「或るタイムトラベラーの日常」
タイトル「迷い列車」
タイトル「レイコさん」
タイトル「白紙の辞書」
タイトル「女神の野神さん」
タイトル「可笑しなお菓子」

結構浮かんでしまった
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/22(火) 23:00:06.78 ID:WkxOIHSC0
タイトル「千葉県出身の福島さん」
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/24(木) 01:38:20.30 ID:AT3RRyPd0
>>274
「白紙の辞書」


やあ。僕は詩人...いや、見習い...志望......もどき......まあ、詩人ということにしておこう。
とにかく詩を書いて食っていきたいんだけど、いかんせん全然売れない。今回も編集さんに言われちゃったよ。

「君ねぇ、感性は悪くないが......いかんせんボキャブラリが足りんよ!ボキャブラリが!」ってね。

なんとかして語彙を増やしたいんだけど、これがなかなか上手くいかない。
色んな本を読んだり、辞書を端から端まで読んでみたりしたけどやっぱりダメだ。
そうやって古書店でいつもどおり古本漁りをしていたある日、僕はそいつと出会ったんだ。


「なんだこれ? 『白紙の辞書』......?」

「『これは普通の辞書ではありません。あなたが言葉を書き、意味を書くことで完成していく世界にひとつだけの辞書です』......へえ、面白そうじゃん」

そいつは表紙まで真っ白で、表紙と背表紙には金字で題名が入っていた。これに知った言葉を書き込んでいけば「ボキャブラリ」って奴も身につくかな。
レジに行くと、店主のおじいさんは何も言わずに会計してくれた。でもいざ本を僕に渡すというときに、ただひとことだけ言った。絞り出すように。

「お客さん。それに正しくないことを書いてはなりませんよ」

家の近くの筈なのに、僕はその店の存在を知らなかった。


四畳半の自宅に帰ると、いつもと変わらない物書き机が僕を迎えてくれる。それ以外何もないって?そうともいうかもね。
買ったばかりの辞書はサラサラして、そのページはまるで絹のように見えた。これを見て何も書かなきゃ詩人が廃るさ。
取り出したるは愛用の万年筆。どうせならやっぱり辞書風にと、こう筆を走らせた。

  いのち【命】 一瞬の煌めき。

「ふふっ、なーんて――――――」
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/24(木) 07:24:17.45 ID:mAhCZIdU0
えっ、まさか、一瞬で終わるようになっちゃったのか?(汗
しかし、人基準じゃなくて宇宙基準なら、まだ間違ってないからワンチャンある、かな?
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/24(木) 13:42:23.22 ID:YuGpf/Dv0
タイトル「じぇじぇじぇの鬼太郎」
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/25(金) 20:32:35.39 ID:p37A7Ctq0
タイトル「或る怪談師の話」
タイトル「地球寒冷化問題」
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 01:30:51.98 ID:tqoH58JtO
タイトル「黒ギャル天王」
281 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2020/09/26(土) 02:23:32.39 ID:/nTb7MJf0
>>279「或る怪談師の話」


「なあアンタ、怪談を話すのが仕事なんだろ? ならアンタの知ってる『一番怖い怪談』を教えてくれよ」
「『一番怖い』というのはありませんよ。どれも一番怖いですからね...『一番聞きたくない怪談』ならありますが」
「暇つぶしになるなら何だって良いよ。ここのメシ代でどうだい」
「あなたはきっと『聞きたくなかった』と思うでしょうが、本当に聞きたいですか?」
「そう言われちゃ余計聞きたくなるのが、人間ってものだろうさ」
「絶対に後悔しない?」
「しつこいな、もちろんしないとも」
「......いいでしょう」


  これは私がうんと若い頃、当時の師匠に聞いた話ですがね。大昔ある所に、ジョークを作るのが上手い男がいました。
 で、同じ街には胡散臭いと評判の霊能力者がおりまして、占いが当たるとか当たらないとかというのが人々の専らの話題だったそうです。
 男も占ってもらったわけですが、結果は見事に大外れ。「やっぱり霊能力なんてあるわけないじゃないか」と男が早速霊能力者を冷やかすようなジョークを作るのですが、
 酒場で一度話せば、瞬く間に町の人々へ広がりました。これのせいで霊能力者は大恥をかかされたわけです。
  霊能力者は何とかして男に報復しようとしました。そこで色々試行錯誤して、ついに「話を聞いた人間は死ぬ」という恐ろしい呪いを完成させました。
 もちろん彼はこの呪いを件のジョークにかけまして、とたんに街の人々は――それこそ噂が広がるような速さで――バタバタと倒れていったという話です。


「しかも『この話』にも、彼が発明した死の呪いがかかっているそうな。そして何よりも恐ろしいのは......」
「...アハハ、アハハハハハハハ!! いやあ、面白いなあ!」
「何がですか?」
「そりゃアンタ、これ自体も巧妙なジョークってことだろう? よくできた話じゃないか」
「この怪談は本物ですよ。呪いのこともね」
「そりゃあ嘘だぜ。本当なら良かったかもしれないけどな。でも、もしそうならなんでアンタやお師匠さんは死んで――――」

 「おい!車が窓際の席に突っ込んだぞ!」
 「と、取り敢えず救急車呼べ! 誰か早く!!」

「本当だから困っているんですよ」


数百年後

「しかも『この話』にも、その霊能力者の作った呪いがかかってるんだと。そんでもって一番恐ろしいのが......」
「......やっぱりそいつは三流でね。中途半端だったのさ」
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 02:24:27.47 ID:/nTb7MJf0
>>281
酉ミスすまぬ...
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/28(月) 11:28:11.44 ID:LANZ3eJCO
タイトル「芸人探偵山田さん」
タイトル「ミツドモエ」
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/29(火) 16:35:25.28 ID:X13nj2D2O
>>262の者
こっちの方がいいかも↓
タイトル「界世の逆がてべす」
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/02(金) 12:43:20.78 ID:uzxDtr2n0
タイトル「あらゆる魔術の教書抜粋」
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/02(金) 17:31:30.19 ID:WOZhHJFL0
タイトル「座敷わらし、お貸しします」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/03(土) 15:22:52.87 ID:XLLzeLPA0
undefined
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/04(日) 19:57:35.39 ID:r/5aZE7mO
タイトル「ストレイ・ガールズ」
タイトル「ストレイ・ボーイズ」
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/05(月) 12:36:41.90 ID:ePhW9ZiJ0
タイトル「涼宮ハルヒの興奮」
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/05(月) 12:39:12.82 ID:65jbmrFF0
タイトル「進撃のゴキブリ」
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/06(火) 08:50:54.53 ID:tcrpylY00
タイトル「目黒の斬魔」
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/07(水) 12:35:54.56 ID:t++L5amr0
タイトル「五反田のかつお」
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 19:20:20.52 ID:xHtv7s4xO
タイトル「シニモノグルイ」
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 21:19:34.46 ID:0x2Q5Gg+0
タイトル「Dead Eyes」
タイトル「死のサイコロ 〜Die Dies〜」
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 22:29:02.53 ID:gu9172850
>>137「廃人の街」

 ピカピカの石鹸みたいなモノレールが、清潔な面持ちの労働者を乗せ、ウエハース風のビル群へとゆっくり滑っていく。その窓は浅葱色の摺りガラスで、車内から眼下を伺うことも、外部から内部をさぐることもできない。そこに乗っている彼らの姿を想像することは、モノレールを見上げるダウンタウンの人々の娯楽とはなり得なかった。すでに絶望的な状況に追い込まれているダウンタウンでは、成功者をコケにして笑うことは、あまりにも心の余裕と逼迫感を求めるものだった。ダウンタウンの人々は、逼迫した生活すら失われた頽廃的な日々を、合法の概念すらない快楽を自堕落に求めて生きていて、それ故に心の余裕などあるはずもなかった。
 彼らは頭上を走る、ほうき星のようなレールを見て、嫉妬心を抱くことを見越して建てられたと思うだろうか? 決してそんなことは考慮されていない、と彼らも、それを建てた行政府すらそう答えるだろう。そのように両者とも彼らを無視し、濁った茜色の底へ沈めているのだ。滅多に拭かれない赤塗れの体の酸っぱい異臭が充満し、ところどころで出しっぱなしで洗い流されずに残る精液の臭い、質の悪い煙草の脂と適当に混ぜ合わされた粗悪な麻薬が溶け合う唾液の臭いが、彼らの窪んだダウンタウンを猖獗し、いっそう彼らを不健康に落とし込める。
 彼らの多くは、生まれついてのDowntownerだ。ずっと、劣等地で育ち、劣位の人々の価値を内面化し、腐臭を纏い続けている。また、その空気の中に押し込まれる、ウエハース風ビル群の元労働者は、誰も彼もがひと月も経たぬ間にその雰囲気にのまれ、生まれついてのDowntownerと見分けがつかなくなる。それを知っていて、行政府は手出しをしない。頽廃したままでいてくれれば、彼らの生活支援さえしておけば文句が出ないのだから。それは誰もが知っている。誰も這い上がらない、その力のない廃人しかいないから、そのダウンタウンは廃人の街として延々瀰漫し続けるのだ。
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/09(金) 18:06:44.05 ID:0ujAs6Mw0
タイトル「赤息吐息」
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/09(金) 22:44:20.93 ID:0ujAs6Mw0
タイトル「仮面ライダーモハ」
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/09(金) 23:47:06.23 ID:FkQLCUDQ0
>>146「瞳の中の私」

 白いブラウスに青いスカート、そしてよく磨いた大理石のように艶やかな足が、夜風をむしろ煽るようになめ豊かな美しさを保ち、ぼうと竹が内部からの発光にさらされているように闇に映えている。
 はるかに遠くにいるようでいて、その艶やかな姿はさも右手を伸ばすとすぐ届く30pのところにいるようだ。まるで石膏像、宝物のように取っておきたい。颯爽と彼女は自宅へと向かう。仕事終わりの夜中であるにもかかわらず、彼女は意気揚々としていた。というのも、明日明後日明々後日と仕事がないのだった。しかも祝日とも関係ない、ひと月前の休日出勤の代休である。有休を消化せずにもたらされた休み、しかもほとんど仕事をする必要がなかった休日出勤の代わりとあって、休みが一日、合法的に増えたと喜んでいたのだ。美しい彼女だが、その実かなりの出不精で、この三日は思う存分家でゴロゴロ、ダラダラするつもりである。三連休を、有意義に使わず、ひたすら怠けるというのは実は最も贅沢で、有意義ですらあると考えていた。好きなようにだらけよう。
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/09(金) 23:47:49.74 ID:FkQLCUDQ0
>>299 続き

  彼はそれを知って喜んでいた。彼は彼女がお気に入りで、現在住む部屋も彼女を一方的に見られるからだった。手元には無数の写真があり、無防備な姿がさらけ出されている。ベッドに寝転がって薄着でポテトチップスを食べている姿、風呂上がりすっぴんで風に当たる姿、おもちゃを使って喘ぐ姿。中にはカメラ目線のものですら。私は当然そのことを知らなかったしどこからかのぞかれるとも思っていないから、その姿を恥知らずながら見せつけていたわけだ。私を撮っている人の眼には、誰にも見せない私の秘部が映っているはずだった。恥ずかしい、知られるなら信用している人であってほしいものだ、しかしそれでも勝手につかまれたその私が実際の姿かもしれない。俺は喜んでそれを撮っていたが、ふと、この姿を撮っているのは俺なのだろうかと思った。俺が撮っているのは俺の求めているものであって、俺の力で切りとったものではないだろう。圧倒的人工的構成。それは、カメラ目線でありながら、こちらに気づいていないあの女の不自然さにもつながる。
 あの女はおれを知らないだろう、事実前述のあの女の語りはあの女の語りではなく、形式的にこの作者があの女の語りを借りて語ったものであるからだ。一方で俺の語りはある程度俺の語りだが、あの女の語りなどは俺じゃなく作者が便宜的に俺の語りを則ったに過ぎない。話を戻そう、その自覚のないカメラ目線の前では、俺は面食らった。あのような底抜けのイノセントな目がかつてあったか? ない。あの眼には、盗撮のエロティシズムの代わりに、俺の垢だらけの酸味がかった汚い顔が投影されているのだ。だから彼女の眼が逆説的にイノセントなのだ。垢の塊があの中に入れば、そのほかは一切無垢なのだ。眼の中で、俺たちの正体が現れるのだ!
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/10(土) 00:33:57.18 ID:eB1Byk5WO
タイトル「インチキおじさんとぼく」
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/10(土) 15:13:40.01 ID:ePqzRusX0
タイトル「適当に作った長い話」
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/12(月) 18:39:06.93 ID:pn/NKGRMO
タイトル「宝があった島」
タイトル「或るセールスマンの話」
タイトル「或る探偵の話」
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/15(木) 10:56:20.22 ID:NG3DUiO40
タイトル「ニンゲンホイホイ」
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 14:40:37.25 ID:896s+tUFO
タイトル「笑う壺」
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/17(土) 22:25:14.55 ID:08sYOQwl0
>>148「はじめての世界」

 右を見て、上を見て、左を見た。12月のような寂しさもあるし、5月のような映ゆさもあり、また8月のような激しさもあるように思われる。
彼はあるときは佇みあるときは速足で路地を抜け、何度も振り返ったり灌木の裏や陰を覗いたりしていた。そしてこう考えた、

『ここはどこだ?』

 非常に驚き怯えて、背中じゅうを冷や汗が微細な蛇のように這っていた。盛りの季節の柿の木の隣に、板塀越しに立ち竦んだ。彼は人とすれ違うこともできなさそうな狭隘な路地に入り込んで、開けた道路に出なければならない状況に追い込まれていた。出口の左右は塀によって囲まれ、真正面しか見えないようになっている。

『おれはあの間から娑婆に躍り出て、異邦人の裁きに晒されなければならない』

 そんな不吉な予感が彼を打った。塀の陰には無数のエージェントが控えてい、俺をすぐさま攫っていけるよう万端の準備を設えているかもしれない。エージェントは画一的で、俺の右手を掴んだやつが次の瞬間には俺に猿轡をかませる役を担い、俺を運ぶ運転手が瞬く間に俺の隣でしょうもない質問をいくつも投げかけてくることだってあるだろう。
 勇気を出して、路地から出てみる。明るかった。左右にまっすぐな道が果てしなく伸びていた。地球を一周して戻って来れそうだ。
 秘密法廷はなさそうだった。彼は安堵し、どちらに行くか迷っていたが、足元に子どもが立って見上げているのに気づき探索をやめて微笑みを湛え、話しかけやすいように見つめ返してやった。
 子どもはじっと見るばかりでなかなか話そうとはしなかった。自分が悪いのかと自信を無くしかけ、沈痛な思いで俯くこうとした途端子どもが口を開いた。もっと早く話し始めてくれ、と彼は思った。
「はじめまして」彼は次の言葉を待って黙っていた。「はじめまして」子供が繰り返す。

続く
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/17(土) 22:55:37.85 ID:08sYOQwl0
undefined
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/17(土) 22:56:39.92 ID:08sYOQwl0
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308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/17(土) 23:07:43.20 ID:08sYOQwl0
続き

「はじめまして、って言えばいいのかな」彼は言った。「はじめまして。これでいい」やや威圧的に言い子どもを打ち負かそうとした。しかし子供は気にする様子もなく、深々とした墨のような瞳を向けた。吸い込まれそうな雰囲気に彼は飲まれ、踵を翻した子供に自然とついて行くことになった。

 しばらく行くと、心落ち着く空気が訪れた。その正体を探るままに歩いて行くとその理由に気づく瞬間が訪れる。わかったぞ! 彼は無声で叫び、そして勝鬨を挙げた。「エウレーカ!」

 「よしきみ、ありがとう! ここがどこかわかったよ。君のお蔭かもしれないな、バイバイ!」彼は去ろうとした。しかし子どもはわれ関せず歩いている。不愛想なガキだなあ、と思っていたが、子供のあとに彼はついて行っていて、それに気づくまでに時間がかかっていた。

『おかしいぞ』彼は思った。

「おかしくないさ」と子どもが唐突に、判決を言い渡すように言った。「ここにいる以上はそうせざるを得ないんだ。気づいたならちょうどいいし、しょうがないな」
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/17(土) 23:08:37.03 ID:08sYOQwl0
続き

 固唾を飲む男に子どもははっきりと告げた。「君が自分の世界を失ったとき、この世界がはじめてつくられるんだ。僕らは〈はじめての世界〉って呼んでる。そこに来た人を回収するのが僕の役目だ」
 男は沈黙しせかせかと子供と同じペースで歩く。意志が先か、運動が先かわからなかった。「ここははじめてだと認識した状態でしか維持され続けない。君が思い出した途端にここは崩れ始め、消える。それはあまりに不憫だからね、僕らはそこにいる人を連れて行くんだ。あっでも、元の世界には戻れないよ。君が消えた時点で〈はじめての世界〉が切り出され、再構築される。もう戻る余地がないんだ。だから僕のあとについて、箱に収まっといて。身動きできないつまんないとこだけど、我慢して。そうするしかないんだよ、わかってね。拒否権はないよ。もっとも、最初からそんなものは与えてないし、だから君は心を奪われた状態で歩かされているんだけど……」

 彼は歩いている。しかし首はおかしな角度に曲がり、涎が垂れ白目をほとんど向き白痴の装いを現していた。
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/18(日) 17:56:31.58 ID:d7RI9MU9O
タイトル「I write Japanese」
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/18(日) 20:35:43.90 ID:VKHsYoXr0
タイトル「フライングチキン」
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 23:27:13.09 ID:65A3h+ed0
>>153「ローソンどきどき四丁目店」

(舞台には、コンビニだとわかるように会計、おにぎり・弁当の棚、パンと雑誌の棚を並べておくこと。隅には段ボール箱を、いかにも整理途中というふうにいくつか積んでおく。それと店員を二人ほど。二人は特徴的だが、人ごみに溶けてしまいそうな没個性感を持ち合わさせておきたい。彼らがいることをずっと印象づけられたし。店内には店員二人と棚を物色する客が一人。)

店員A:……(黙ってレジの中で立ち、客が来るのを待っている。小柄でもじゃもじゃ頭。性別はどちらでも構わない)
店員B:……(品出しを一人で行っている。Aがレジに立っているのをとがめないで黙々と。客が質問をしに来ないかと多少気を張ってはいるが、あえて考えないようにしている。)
(客、何も買わず出て行く。上手に消える。)
A・B:ありがとうございました、またお越しください!
(沈黙)
B:なあ、手が空いてるなら手伝ってくれ。お客もいないし、暇だろう?
A:ううん……もう何分かしたら、揚げ物を作らなきゃいけないんだ……ほら、あと4分で10時だよ(と、時計の方を見やる。Bはそれにつられかけるも、それを振り払う)。
B:4分もあるじゃないか。それだけあれば、ちょっとはできるだろう。
A:それは、怪しいんじゃないかな。案外、時間がかかってしまうものだよ。早まる分にはいいけど、遅くなるのはなんとかして避けなきゃ。
B:なら、今から作り始めてしまえばいいじゃないか。終わったら品出しやってくれよ。
A:ああ、そうすればいいな……。

続く
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 23:50:31.26 ID:65A3h+ed0
>>312続き

(客がやって来る。上手から、店内を伺うように。派手なワンピース。絵本の中でしか存在しなさそうな、メルヘンチックな女だ。)
客A:……(背をこごめ、下手に出て店員を見つめる。A、B両氏はそれに気づいて同じような挙動で彼女を見る。)
A、B:いらっしゃいませ!
(客A、会釈して店内へ。棚を物色。)
A:来ちゃったな……揚げ物、揚げ物。
B:(Aを見て憮然とする。品出しを実質押しつけられた上にレジ対応も任されたも同然なのが理由だが、それは舞台上では明らかにしない。)
(しばらく個々の作業を続けること。自然な擦過音はかき消さないように)
客A:あの……(Bに話しかける)
B:はい、何でしょう(まるで気にせずにこやかに努めるが、それは彼自身の本性ではないことに注意されたし。)
客A:すみません、牛乳は置いてないでしょうか。
B:牛乳ならありますよ、ほら、そこです。(と、おにぎりの棚の隣の棚の下手側を指さす。)
客A:いえ、あれじゃないんです。
B:あれじゃないって? 銘柄にこだわりでもおありですか。
客A:そうでもありません。ただ、あの……ここって、牛乳屋さんではないんですか。
B:はい?(A、振り返る。気になり始めて、揚げ物をしながら聞き耳を立てる。)
客A:え……だって、表にはおっきく牛乳の絵があるじゃないですか……看板に偽りありですか……。
B:ああ、あれですか……ただのロゴマークですよ、それはとんだ勘違いです。(B、優しい笑顔のつもりの苦笑い。)

続く?(展開が思いつかないので、どうしましょう?)
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/20(火) 18:05:22.58 ID:pyJvrB120
タイトル「牢村」
タイトル「老村」
タイトル「楼村」
タイトル「或る落語家の話」
タイトル「水神祭」
タイトル「或る講談師の話」

だいぶ浮かんだわ
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/21(水) 16:37:51.15 ID:YUtQZnicO
タイトル「ここはVIPですか? − いいえ、こここはSS速報です」
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/21(水) 20:02:37.76 ID:YUtQZnicO
タイトル「平仮名戦隊あマン」
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/21(水) 20:03:14.72 ID:YUtQZnicO
書き直し
タイトル「平仮名戦隊あレンジャー」
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/22(木) 23:11:37.70 ID:I8AvyKja0
タイトル「モンスターグランプリ」
タイトル「或る漫画家の話」
タイトル「或る兵士の話」
タイトル「或る料理人の話」
タイトル「或る絵師の話」
タイトル「或る画家の話」

結構浮かんだ
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/23(金) 18:22:38.54 ID:fI3G1swxO
タイトル「サブリミナルパンデミック」
タイトル「サディストとマゾヒスト」
タイトル「最強の最弱」
タイトル「忍びの里の掟」
タイトル「プリンは何処へ?」
タイトル「或るロックスターの話」

すっごい浮かんだ
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/23(金) 19:12:19.20 ID:0SR8anbm0
タイトル「こちら魔界立魔王城前高校」
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 13:54:10.19 ID:FzqkIm3fO
タイトル「JO−BANーLINE!」
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 17:50:30.37 ID:PDGW0SRgO
タイトル「お前はもう詰んでいる」
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/24(土) 17:51:28.87 ID:PDGW0SRgO
タイトル「固唾が飲めない」
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/26(月) 08:56:16.61 ID:dLEJgeaY0
タイトル「変態戦隊キモイマン」
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/26(月) 22:42:48.93 ID:wYiLKdVa0
>>313
(思いつかないなら一先ず休憩されては?そうすればもしかしたら続きが浮かぶかもしれませんよ?)
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/29(木) 15:57:17.48 ID:bQZW1rvc0
タイトル「草加学会」
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/10/29(木) 22:36:49.57 ID:aL0UdRTX0
>>156「最果ての村」

 TOKYO、という文字列が、いまだに頭にこびりついている。もう、そんなところはとっくに捨てたはずだ。しかし、なぜ離れていかないのだろう。

 そんなことを考えているくらいだから、彼は都会から抜け出してどこかの辺境へ旅立っているのだった。だが若くて凡庸な彼には金がない。飛行機や船を使うことはできないので、電車やバス、貸自転車、あるいは徒歩などを駆使して国内を放蕩しているのだった。

 だいぶ遠くまで来た。地名を示す看板ももはや見かけることはなく、森閑とした畑に広漠な雑木林に包まれひび割れたアスファルトがかろうじて道路の体裁を保っていた。
 ……ここはどこだ……朽ちていく風景に襲われ、不安な気持ちで立ち竦んでいた。西の角には草が絡み泥と錆が定着したトラクターが、穴だらけの幌屋根の下に置き去りである。小屋はその2、30メートル先にあるがそれもまたボロボロで、とても誰かいそうになかった。目が潤み始めた。歩き続けて疲れていた。座ることもほとんどできていなかった。

 
 礫が取り囲む寂寥な駅にたどり着いて、興味本位で降りて散歩していたら、彼はそこに着いてしまったのだった。彼は都会に嫌気がさして出てきたが、東京で生まれ東京で育ちかつ東京一円から出たことのない彼にとって、日本のほとんどは異邦だったのだ。ましてこの辺境である、何をかいわんや……。

 
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/29(木) 22:37:37.84 ID:aL0UdRTX0
undefined
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/29(木) 22:38:26.48 ID:aL0UdRTX0
>>327続き


 道路に沿ってとぼとぼ進んだ。駅がどっちにあったのかまるで分らなかった。だから適当に歩くほかなかったし(人は一度も見かけていない)、駅の近くに人家が数件あっただけなので、この先にまた家がある可能性は十分あると踏んでいた。だがそれはますます伸びていく道路の両脇の草木に、裏切られる予感しかしないのだった。生き物が見たかった。それも動くものを。マムシでも青大将でもいいから、目の前を横切ってほしかった。一人ぼっちで怖かった、寂しかった。突然の邂逅を望んだとき、彼は自分が人の住む家にありつけない未来をあり得るものと考えていることに気づいた。ぞっとして、その考えを振り払おうとした。しかし追い出そうとすると何度でも、TOKYO、の文字が蘇るのだった。


 ついにアスファルトがなくなった。草が生えっぱなしの砂利道を分け入っていく。そう書くと絶望的じゃないか、そうだろう? と彼は誰ともなく呼び掛ける。わざわざそういうからには、絶望から彼は脱しているのだった。かれは、「砂利道」を歩いているのである。もうわかるだろう? 山頭火はこんな道を進んだだろうか? 分け入っても分け入っても青い山はこんなところだったろうか。彼はそれを知らなかった。

 
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/29(木) 22:39:15.65 ID:aL0UdRTX0
>>329続き

その後彼は別の場所に移動することができた。二両編成のガラガラの車内で呆然として座っていた。
 人の足が入っている形跡はあったものの一向に開けず、彼は疲弊してしまって曖昧な意識でいた。そのうち、人家にたどり着いたのだ。といってもそのような容態だったために、はきはきした受けごたえはできなかった。家を見つけて近寄ると、住人が鋭敏な感覚で軒廡へと迅速に表れ、驚いた表情で、どがんはってん、なんてーこだんとかあいおらあ、と言った。疲れてくらくらしていたので、ええちょっと、とか曖昧な返事で濁した。目的という高尚なものはすでに脳裏から消え失せていた。何もできないくせに、何もしたくなかったのだ。住人は慌てた様子で、いあんはっつめなばしゃあいちゃだらんべ、はいしゃーさはいおぶらら、ぎょしーきよ、と勧めてくれた。それに甘えて駅まで送ってもらった。他に住んでいる人はいるんですか、と聞くと、
そだいんがよ、もせーはっつきんいっと、もうなんけかいおるべな! と答えた。まだ奥に人が、と新鮮な気持ちだった。果てじゃないんですね、と呟いた。住人は聡くそれを聞きつけ、なな、いあんとかよりはっつめたとかいおらによ! と力強く断言したのだった。

 彼は何故会話が成立したのかわからなかった。あんなにどぎつい訛りを理解できるはずはないのだ。しかし、それはどうでもいいのかもしれない。とにかく、彼は最も辺鄙な場所へ行ったと言い切れるのだった。彼を乗せた電車は、人里の果てから遠ざかっているのだった。
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/30(金) 11:25:58.18 ID:mci5x9sQ0
タイトル「100万回殺したねこ」
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/31(土) 18:07:14.19 ID:BcxwLtif0
タイトル「イチギガバイト」
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/11/01(日) 18:41:19.99 ID:deSh/Y+aO
タイトル「春はつとめて」
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/11/01(日) 18:41:47.58 ID:deSh/Y+aO
タイトル「遅押しクイズ」
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/11/02(月) 22:15:47.33 ID:+opK6qNK0
タイトル「四面蘇我」
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/02(月) 22:37:14.80 ID:aqd9Fm/30
>>166「笑う男」

「眠いんですか?」と、黒ずくめのスーツに山高帽の男が話しかけてきた。うさん臭さを何度も何度も濾して蒸留までし、そうして取り出した液体が人間になったような男だった。これ以上ない怪しさじゃないか? 彼は警戒しようとしつつも、実際彼の言う通り眠かったから、不完全な拒み方をしてしまった。男はそれを都合よく解釈し、勝手に彼の斜め前の椅子に腰かけた。

「すみませんね、みんな立て込んでいるようでして、声がかけられなくてワタクシ悲しかったんですよ」
 男はわかりやすい軽薄さを隠しもしないでニタニタ笑っていた。両手が机の上に出て、彼が手袋までしていたことを知った。
「そこで発見しましたのがアナタ! たった一人でうとうとしてるなんて、なんて好都合な! すばらしいですよ、ホント。ありがたやありがたや」

 男は彼をあからさまに見下して堂々とのたまう。しかも肘を机について頬杖をし、足まで組んで体は斜めだ。態度も、発言も余すところなく失礼なのだが、何となくその雰囲気がごまかされているのは、不自然なほど執拗にニタニタ笑っていて、それが延々変わらないせいだろう。

 彼は睡魔のせいで男を追い払うことはできないのだった。奇妙で嫌な感じだったがどうにもできない。

 男はニタニタしながらタバコまで吸い始めた。鷹揚とした動作がここでは尋常でない腹立たしさを覚えさせる。
「あーねえ、とりあえずお伝えしましょうか――何を、というのはなしですよ。ワタクシはこれを誰かに伝えなきゃやっていけないんですから」先制して男は、勝手に滔々と話した。
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/02(月) 22:38:13.30 ID:aqd9Fm/30
undefined
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/11/02(月) 22:38:58.74 ID:aqd9Fm/30
>>336続き

「このところ、皆さん余裕がなくて残念ですよ、ねえ? 同意はいりません。みんながみんな、画面だったり対面の人と何とか生産性をあげようと躍起になっていらっしゃる。
 ワタクシ、ヒマになっちゃうんですよ! もっとゆっくりしましょうよ。仕事なんかおっぽり出してさ、甘ったるいケーキと砂糖たっぷりのお茶を飲んでダラダラしましょうよお!
 みんな時間をどんどん一本化しちゃって商売あがったりですわ。もう、時間を使う方法がほとんど一個だけ。多様性の社会ですよ、まったく信じられませんね、ぷんぷん。
 さあ、そこでです、アナタ! 世の中の価値観は金銭的な生産性だけじゃないんですよ。むしろ、真の価値はそんなところにはないのですから! 唾棄すべきですよ金儲けなんて。
 ではそのために見てもらいたいものがありましてね。なあに、変なものじゃありませんよ。ちょっとしたパワーポイント資料ですから。頑張って起きててくださいね。ははは、目開いてます?
 …(中略)…見ての通り、人々からは選択肢というものが喪われているのです。センが見たら激怒するでしょうね。
 人々には無限の可能性が無限に開かれるべきであり無限の選択を人々が行えるようにしなければ! ほらほら、あそこにも、ここにも、向こうにも! より取り見取り選び放題、何でもできます。
 お好きなものを選べます、自由は無限です! 生産性何てものはその無限の未来を狭めるばっかりで何にもなりゃしない。無限に人々が主体的に選択し、行動できる世界が私らはお望みなのですよ。
 誰がそれはダメだと言えようか。ないですよね。さあ、無限に広がる自由に飛び込み、無限の進路の前でよくお考え下さい。それがいいはずですよ、むしろそれ以外に何があるでしょう。
 早くしないと、あなたはまたあの生産性の渦に取り込まれて、溺れてしまいますよ。はやく、はやく。必ずしも、待てはしませんから……。」
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/02(月) 22:40:17.27 ID:aqd9Fm/30
>>338続き なんでいっつもundefinedになるかなあ?

 やっぱり眠かった。頑張って顔を上げて彼の方を向いたが限界で、ガクッと頭を垂れてしまった。
「おっ、首が縦に! いいですね、承諾と受け取ります。はい完了、契約お終い!」
 
 違う、違うよ、僕は眠いだけなんだ、そう言おうとしたが、もはや体の自由が利かなかった。眠気を晴らすために、まずどれをすべきかがわからなかった。首を振るか頬をはたくか、その場合にどの筋肉を先行して動かすかも判断できないほど僕の意識は混迷していた。
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/02(月) 23:09:15.86 ID:U0ny9eQp0
タイトル「画像に一言ボケる会」
タイトル「井戸端会議、始めます」
タイトル「既知との遭遇」
タイトル「オーバードライバー」
タイトル「マキシマムドリンク」

結構浮かんだな
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/11/03(火) 21:53:47.34 ID:bIOD3I1U0
タイトル「エイトイレブン」
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/11/04(水) 16:17:29.70 ID:46cwSpZrO
タイトル「ヤホーでググれ」
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/11/05(木) 15:58:08.22 ID:fFWLcmEQ0
>>166「Mr.Box」

 今日もまたあの家に大量の箱が運び込まれていった。しかも今日とて小型トラックの荷台に、段ボールを中心としてわんさか積まれている。

 誰が住んでいるのか、近所の人々は誰も知らない。そもそも、表立って知ろうとする人だっていないのだ。何しろその家は砂に塗れたようにくすんだペールオレンジの肌をし、破れている窓すらある。
そして蔦が外壁を駆け上がっているし、門扉が開け放たれているにもかかわらず侵入を拒む異様な佇まいなのだ。

 かつて子どもたちが好奇心でこの家に入り、怯えた顔つきで戻ってきたことがある。その詳細は語られず、謎は解けないばかり。全員戻ってきたけれど、ますます恐ろしい建物になったのである。

 そしてその極めつけがホームレス失踪事件である。

 公園で眠っていたホームレスがこの家の門扉をくぐり入っていったという証言がそれだ。それ以降ホームレスは姿を見なくなった。どこかに行ったのだろうと皆々噂したが、結局誰も探そうとはしなかった。
 ホームレスに対する人々の関心など、そんなものだ。
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 16:36:37.73 ID:fFWLcmEQ0
>>343続き

 ところでその家のことに移ろう。その家に住んでいるのはただ一人ではなかった。とはいってもそれは同一の人物が住み続けていることを意味しはしない。

 その家に住む人間は襲名制なのだった。そこに入った人間を連れ込んで自分の後継にしなければ、決して抜け出せない。
その家の中ですることは、ひたすら箱を作ることだった。箱を作り、ひっそりと運ばれてくるものを詰める。それで一日が終わる。
また、食事もない。その理由については後述する。楽しみなどない、無間地獄だ。かれは囚われているのだ。次の人間が来るまでの、ひたすらのつなぎ役になることが要求される。……

 その食事が要らないわけというのは、囚われているから想像できた読者もいるだろうが、寄生というか、憑依されるためである。
それはMr.Boxと名乗る。彼は人に取り憑き、延々と箱を作りものを詰める作業を強いる。詰めるものに制限はない。あえて言えば、物理的に可能なものというくらいだ。
ただ、体の自由は奪われても、意識は残っているので、汚物などを扱うときの嫌悪感は想像に難くない。それが一生涯続く拷問生活。

それゆえ、日々衰える憑依先の体力を補うために新しい人間を求めるのである。Mr.Boxは箱状の場所にならどこにだって行ける。肉体を持たないなら、壁を伝って素早い移動ができる。
ただし単体ではあまり長く活動できないので、基本は憑依した人間の肉体で移動し閉じこめ、壁に張りつくことになる。
そのように部屋を丸々多い、だんだん部屋の中心に追い込み、取り憑く。これがMr.Boxの寄生方法である。ただし前面に広がる前だと簡単に突破されるから、なるべく狭いところに追い込むのだ。
一度取り憑いたのち切り離された肉体は大概もう使えないくらいボロボロだから、失敗は許されない。
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 16:37:27.03 ID:fFWLcmEQ0
>>344続き
 
 その点、子どもたちのときはむしろ危なかったのである。肉体を切り離そうとした途端に突破され、大慌てでそれを取りやめた。それ以来、安全志向にMr.Boxはなった。

 次々運び込まれてくる箱は何か? それはもちろんある業者である。彼らについては明かすことはしないが、少なくとも事業者届を出した合法法人ではないだろう。闇稼業の担い手だ。

 Mr.Boxは彼らが言外に頼む仕事をひたすらこなし続ける。すでにどのようにして発生したかの記憶はない。もしかすると、自然に生まれたのではなく、人工的にできたのかもしれないのだ。
たぶん失敗作なのだろう、だからこんなところに閉じこめられているのだ。ああMr.Box、君は延々とその家で箱を作るのだ。そして秘密裏に搬入されるものを暗莫のうちに葬るのだ。

 孤独に朽ちていく建物の中で、生き物を寄せつけないままに、ずっと箱を作るのだ。
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 16:44:11.34 ID:rGU28nmAO
タイトル「永久機関の作り方」
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/05(木) 18:15:18.87 ID:lHtRopwZO
お菓子な家
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/11/06(金) 11:12:22.46 ID:GMinRP/j0
タイトル「デンタクカルキュレーター」
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/11/06(金) 11:13:44.31 ID:GMinRP/j0
タイトル「万歳3章」
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/11/07(土) 09:32:06.42 ID:Bqqhvq8mO
タイトル「INAKA」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/11/07(土) 09:32:49.10 ID:Bqqhvq8mO
タイトル「C'mon baby INAKAMON」
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/07(土) 13:38:44.93 ID:hl0Y5L8IO
タイトル「身代わり屋」
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/10(火) 20:49:35.50 ID:EN0fctM+0
>>166「半透明人間」

 明らかにおかしかった。

 まるで交差点を行き交う人々が、ぼくをじろじろ、敵意を持った瞳で睨みつけてくるのだ。離れたところからでも、こちらをわざわざ見つけて、ぎょっとしたように厭な目をする。

 どうして、こんなに見られるのだろう? たまたますぐわきを通り抜けようとした人に手を伸ばすと、素早く身を引かれて速足で去っていってしまった。
そんなに汚いか! 怒りがふつふつと湧き立ってくる。ずんずんと、人波を突き進んで、あえてぶつかるくらいの気持ちで分け入ってやると、人々はさーっと道を開けた。
ある意味、モーセみたいだ。

 信号機のたもとに、足の止まっている若い女性が一人。竦んで、身動きが取れないだろうことがわかった。
 彼女なら、ぼくを避けることはできやしない。つかつかと歩み寄っていく。

 彼女を助ける正義漢はいなかった。みんな、自分を優先して距離を取る。女性が一人、哀れにも取り残された。鞄を盾みたいに胸の前に構えて怯えている。
 
 その姿がとても健気で好感が持てた。そして手が届く距離にまで詰めた。手を伸ばした。肩をむんずとつかんだ。女性に緊張が走る。より小さく縮こまる。

 一拍おいて、みんなが避ける理由を問い詰めようと口を開く。

 そこで女性が先制して言った。「離れてください、気持ち悪い、気味悪い、キモい、幽霊!」
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