【艦これ】神風「最初の一人」

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521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/17(火) 08:36:47.48 ID:KTvo57O3O
待ってる
522 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:13:07.47 ID:vCzKEuQSO
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叢雲「起きてる?」

翌朝、寝癖を整えていたら廊下から叢雲の声がした。

時計を見ると時刻は丁度六時。総員起こしの時間ではあるが叢雲が俺の部屋に来るには少し早い。

男「おはよう、どうした?」ガチャ

叢雲「おはよ、悪いけど急用よ」

男「ん?」

叢雲「上から作戦命令が出たわ」

男「!?」

ウソだろ。しーちゃんからの連絡を受けたのは昨日だぞ。それだけ緊急事態って事なのか?

叢雲「開始は四日後。しばらく慌ただしくなるわ」

男「四日って…短すぎないか?」

叢雲「えぇ。普通短くても一週間、いえ、それでも短すぎるくらいよ」

男「そりゃそうだろうな」

いきなりデカい仕事を振られてそれが一週間後とかゾッとする。

叢雲「前に近場で深海棲艦に動きがあった話はしたでしょう?アレを追っていた別の鎮守府の艦隊が敵の補給線を見つけたのよ」

男「敵の攻勢を見据えての作戦、か?」

叢雲「というより先手必勝ね。体制を整えられる前に潰すってことらしいわ」

男「そのための四日か」

本来ならば今すぐにでも動きたい位なのだろう。
523 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:13:52.35 ID:vCzKEuQSO
叢雲「幸い通常任務の哨戒や護衛はその影響で減らしていたから準備は比較的楽ではあるのだけれどね。それでも四日は大変だけれど」

男「こうして俺と話す時間も勿体ないくらいじゃないのか」

叢雲「本当はね。でもこういう話は直接するに限るから」

男「こちらとしては助かるよ」

叢雲「貴方、こういった事態の経験は?」

男「三度目だ」

叢雲「なら」

男「大体は分かるよ」

叢雲「OK。詳細はまた連絡するわ。とりあえず今日は二人とも部屋にいてちょうだい」

男「あぁ、了解だ」

叢雲「それじゃ」

男「あ、叢雲」

叢雲「ん?何?」

男「…ありがとな」

叢雲「いいわよ」ヒラヒラ

なんてことない風に手を振りながら戻っていく叢雲。しかしその足はいつもより速かった。
524 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:14:36.61 ID:vCzKEuQSO
頑張れ、なんて無責任に言いかけてやめた。

叢雲がずっと頑張ってるのは見ればわかるのに。

俺にかけれる言葉なんてない。

男「何にせよまずは仕事だな」

秋雲と相談するためにモニターの電源を入れる。

男「おい秋「っしゃヘッショ!突っ込め突っ込めえ!」……」

なんか盛り上がってる。

秋雲「あ゛ーーニトロがあ!?」

男「…」

秋雲「うわぁタイミング悪すぎじゃんクソ〜」

男「…」

秋雲「あ〜萎えるぅ」チラッ

男「…」

秋雲「」

男「おはよう」

秋雲「おやすみなさい」
男「寝るな」
525 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:16:17.58 ID:vCzKEuQSO
秋雲「申し訳ございませんでした」

カメラ越しの土下座って滑稽なだけで何の効力もないという事がわかる。

そもそもこいつの土下座は両手で足りない程度にはもう見てる。

男「いや、いいんだよ別に。仕事に問題が出なければ勤務時間外に何しようがさ」

秋雲「えー顔に文句あるって書いてあるぅ」

男「ルール上何も問題は無いけど心象的に言いたいことは山ほどある」

秋雲「是非墓まで持ってってねっ」

男「お前次第だ」

秋雲「ぅう…で、何さ急に」

男「昨日話してた作戦が四日後に開始らしい」

秋雲「はあ四日後!?早っ!これが締切なら私逃亡手段を探し始めるレベルよ!?」

男「もう少し粘れよ」

秋雲「しーちゃんの感じから急を要するとは思っていたけど、まさか翌朝に来るとはねぇ」

男「緋色をどうするか早速話し合わなきゃな」

秋雲「鎮守府の方はどうなのさ」

男「詳細は後でって言ってたが、ここから出られないのは確実だろうな」

秋雲「そりゃそうか」
526 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:16:55.32 ID:vCzKEuQSO
秋雲「で、緋色ちゃんどーすんのよ」

男「部屋で勉強みてやるしかないだろう」

秋雲「まぁた部屋分けてやるの?」

男「いや、今回はちゃんと教えるよ。これを機に鎮守府や出撃時の事も教えなきゃだしな」

秋雲「すっごい嫌そうな顔してる」

男「マジか」

秋雲「何、ヤバいの?」

男「大丈夫だよ。まだ大丈夫だ」

秋雲「ふぅん」

男「なんだよその顔は」

秋雲「アドバイスしてあげよっか?」ニヒヒ

男「…癪だが頼む」

秋雲「そばに居るのがダメってんならさ、一度近づいて背中を押してあげるの。そして自発的に進ませて結果的に離れる。中途半端に距離とるのが一番ダメ」

男「珍しくマトモな意見だな」

秋雲「抗議するー今の発言には断固として異議を唱えるー」
527 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:18:40.83 ID:vCzKEuQSO
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秋雲との話し合いの結果、とりあえず鎮守府の動向を見てからという事になった。

男『緋色、おはよう』コンコン

ドアを叩くと中からか細い声が返ってきた。

緋色『おはよぉ課長ぉさん』

男『入るぞー』

緋色『ぅん〜』

いつものピンクのパジャマに身を包んだ緋色がベットに座っている。

男『眠いのか?』

緋色『なんていうのかしら、重いというか…ブレてる?そんな感じがするの』

少し虚ろな瞳は確かに眠さとは違う何かがあるようだった。

男『ほぉ。まあ体調が悪くないのであれば問題ないさ』

緋色の睡眠状態も依然謎のままだ。

艦娘は夢を見ないはずだし、心音も止まるはずだ。それなのに緋色は

緋色『そうだ。ここが何だかポカポカしたの』

男『ポカポカ?』

緋色『ええ。ほら、何か変じゃないかしら?』スッ
男『ブッ!?』

緋色がパジャマの首元を下げ胸元をさらけ出す。正直若干見なれつつある気もするがとにかく反射的に目を背ける。

緋色『課長さん?』

男『大丈夫だ、大丈夫だからとりあえず服を着てくれ』

飛龍『おっハロー朝食だよ〜ってうわあ!服ぬがせてる!!ロリコンだあ!!』

男『待てえ!!』
528 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:19:08.83 ID:vCzKEuQSO
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飛龍『なぁんだそういう事かぁ。私ゃてっきり』

男『てっきり何だよ、おい』

緋色『ろりこんって何?』

男『気にしないでくれ。それよりも』

飛龍『ん?なになに』

男『朝からこれか』

緋色『豪華ね!』

飛龍が持ってきたのはイクラ丼三人前だった。

飛龍『元々ねぇ、普段からあっちゃこっちゃ遠征でばらばらになってる吹雪型姉妹がさ、ほら!深海棲艦が出たからって出撃や遠征が減ったじゃない?』

男『らしいな』

緋色『いただきま〜す』

男『いただきます』
飛龍『いっただきまーす』
529 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:19:59.44 ID:vCzKEuQSO
飛龍『で!久々に姉妹で揃うからちょっとしたパーチーやろってなったの。長女自ら遠征先のお土産、イクラを持ってね』

男『って事はこれ凄く新鮮な物だったりするのか』

飛龍『多分そうじゃないかなぁ。よくわかんないけど』

緋色『こういうオレンジ色でプリっとしてるのは鮮度が良い証拠よ』

飛龍『へ〜そうなんだ。知らなかった、な』チラッ

男『俺も正直わからん』

飛龍と目が合った。おそらく考えてる事は同じだ。

緋色、こういう知識はあるのか。

飛龍『でねでね!こんな事になっちゃったじゃん?もうパーチーどころじゃないじゃん?』

さっきから物凄い勢いで喋り倒している飛龍だが同じくらいの勢いでイクラ丼も食べている。凄いな。しかも食べ方が綺麗だ。どうやって両立してるんだこれ。

飛龍『悲しくもパーチーはお流れ。でも作戦後までイクラはもたない!でも適当に食べるのはそれはそれで辛い。

という事で吹雪ちゃんが間宮さん達に"託してたイクラは他の人に振舞って上げてください"って哀愁漂う表情で言ってきた』

緋色『…』ピタッ

緋色の手が止まった。まあ今の話聞いたら無邪気に食えなくなるわな。

後どうでもいいけど飛龍の吹雪のマネが妙に上手い。
530 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:20:57.84 ID:vCzKEuQSO
飛龍『という話が鳳翔さん繋がりで入ったから私が少しもらってきたわけ。食べたかったんだけどさ、堂々と貰って食べるのは流石に後ろ髪引かれるものがあってね…』

男『だからここで誰にもみられないように食べたかったと』

飛龍『いぇす!』

十分に図太いのではなかろうか。

緋色『艦娘のお仕事って大変なのね…』

飛龍『普段はそんな事ないよ〜。最前線ならともかく、ここら辺は戦闘自体殆どないし、そりゃあ長期間の遠征とかで中々会えない娘がいたりもするけど、基本的に休みはタップリ取れるから』

そうだ。艦娘は出撃に際してどうしても燃料や弾薬等を消費する。イタズラに出撃してもマイナスになる場合もある。

飛龍『ただ私達が本当に求められるのって緊急事態だからさ。何時どこでそれが起こるか分からないって覚悟してなきゃいけないの。普段の余暇の多さはそういう事態に備えてとも言えるわね』

男『消防士みたいなものだよな。何も起きないなら平和かもしれないが、それでも次の瞬間にはそれが起こっているかもと気を張ってなきゃいけない』

緋色『それは、辛いわ、きっと』

飛龍『こ〜ら箸が止まってるわよっ』ツンッ
緋色『ぁうっ』

飛龍『大変っちゃ大変だけど、私達ヒーローだからねぇ。その分色々なものを貰ってるしイーブンよイーブン』

艦娘の皆が皆この飛龍みたいに力強く笑えるわけではないだろう。それでも少なからずこういった信念があるからこそ戦えている。

それはとても尊い事のはずなのに。

飛龍『ご馳走様』

男緋『『早っ』』
531 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:21:41.30 ID:vCzKEuQSO
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男『ご馳走様』
緋色『ご馳走様でした』

イクラ丼は非常に美味しかった。非情にも。

緋色『ところで、その。一つ質問いいかしら』

飛龍『何何改まっちゃって〜。ドンと来い』

緋色『さっき飛龍さんの言ってたこんな事って何?』

飛龍『あー大規模作戦のk』ハッ

ほぼ言い終わったところで飛龍が慌てて口を塞いで俺を見る。

緋色『なんだか鎮守府の雰囲気も変な感じで、何かあったのかなって』

男『その事については説明するつもりだったんだ。飛龍が来てくれたから手間が省けたし』

飛龍『あ、なんだ話してよかったんだ。はぁー焦ったー』

緋色『大規模作戦?』

男『悪いが飛龍、説明をお願いしてもいいか?』

飛龍『んぇ?いいけど、なんで私』

男『俺は知識だけだからな。現場の声の方が伝わると思って』

飛龍『なるほどなるほど。なら私に任せて!』
532 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:22:29.31 ID:vCzKEuQSO
飛龍『まず上から命令の来る作戦ってのは大きく分けて2種類あってね。一つは鎮守府単体で行うもの。もう一つが複数の鎮守府共同で行うもの。今回はこっち』

緋色『複数ってどのくらい?』

飛龍『場合によるかなぁ。今回は即応性、機動性を考えて近場の四鎮守府での作戦だけど、例えば深海棲艦共がわっと押し寄せてきたとかなら十や二十の鎮守府でって事になると思う』

男『実際本土近海を取り戻すまではずっと総力戦だったらしいからな。いずれそういう時も来るだろう』

飛龍『他の三つの鎮守府とは交流もあるし連携は楽だと思う。でも流石にいきなりすぎだからな〜。何が起こるか分からないってのが怖いかも』

緋色『ん〜お仕事って大変なのね』

飛龍『大変よ、とってもね。辛いかどうかはそれぞれだけど、とても大変だって所は確か。私はそれが誇りなんだけどねっ』

男『…なぁ、こういう質問はするべきでないかもと迷ったんだが』

飛龍『なになに遠慮しないでドンと来てよ』

男『作戦の期間はどれくらいだと思う』

飛龍『それ聞くの躊躇する内容?』

男『機密かなって』

飛龍『あ〜まぁダメって言われてないしだいじょうビッ』

不安だ…
533 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:23:09.29 ID:vCzKEuQSO
飛龍『て言ってもそもそも期間は決まってないのよね』

緋色『そうなの?』

飛龍『推測、経験則でなら補給線潰しに三日ってとこかな。これは三日かかるじゃなくて三日以上かけるのはマズイって意味ね』

男『後は敵の戦力次第か』

飛龍『そゆこと』

緋色『飛龍さんも行っちゃうの?』

飛龍『へ?あー大丈夫大丈夫。ウチは戦力少ない方だから、一番ヤバいのは別んとこが引き受けてくれるって』

男『鬼ヶ島の所だろ。噂なら聞いたことある』

飛龍『へぇそんな有名なんだあの鎮守府。まそんなだからウチらはせいぜい乙くらいの難易度よ。楽じゃないけどそんな身構える程でもないって』

緋色『そ、そう』ホッ

嘘だな。乙というのは十分に身構える必要がある難度だという。

でもありがたい嘘だ。緋色に心配をかけさせたくは無い。
534 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:23:44.68 ID:vCzKEuQSO
男『助かったよ。色々話してくれて。それに悪いな、時間取ってしまって』

飛龍『いいっていいって。むしろここに逃げてきたいくらいでさ』ハハハ

緋色『ありがとう、飛龍さん』

飛龍『…抱きついてもいい?』

緋色『え゛っ、い、いいけど…』

飛龍『緋色ちゃぁぁあ゛あ゛ん゛』ガバッ
緋色『〜〜〜〜ッ!!??』

再び二つの圧倒的な弾力に挟まれて悶える緋色。

今回は許可取ってるから止めるに止められない。

飛龍『よっし元気でた!それじゃあばっはは〜い』シュバッ

男『ずっと元気100パーセントじゃねぇか』

緋色『』

男『…大丈夫か、緋色?』

緋色『おっきぃ…』

何が、とは聞かない。
535 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:24:13.68 ID:vCzKEuQSO
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男『そろそろお昼か』

緋色『もうそんな時間なのね』

男『続きは後にして休憩にしよう』

緋色『もうちょっと、もうちょっとだけやるわ』

男『やる気だな』

緋色『皆も、頑張ってるから。私も負けてられないわ』

男『そうか。なら頑張ろう』

緋色のやる気は日を追う事に増しているようだった。他の艦娘を見て、なにか思うところがあるのだろう。

男『ん?』

廊下から足音が聞こえてきた。昼食を誰かが持ってきてくれたのだろう。こんな時に申し訳ない。

飛龍『はいはーい飛龍入りまーす!』

男『え』

緋色『あら?』

またお前かよ。
536 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:24:47.07 ID:vCzKEuQSO
飛龍『イクラ丼美味しかった?』

男『何だ急に』

飛龍『美味しかった?』ズイッ

緋色『えぇ勿論。また機会があったら食べたいわね』

飛龍『ならちょうど良かったぁはいこれ』

イクラ丼が再び机に並べられた。

男『どういう事だこれ』

飛龍『みんな忙しそうでさ、余ってるっぽかったからつい』

男『お、おう』

お前は忙しくないのかよ。

緋色『やったぁ!早く食べましょう!』

飛龍『おーおー気に入ってくれてるようでお姉さん嬉しいな〜』

男『まあ美味いしいいんだけどな』

緋色『これなら幾らでも食べられるわよ』

飛龍『上手いっ!』

緋色『え?』

飛龍『あれ?』

ダジャレでは無かったらしい。
537 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:25:14.90 ID:vCzKEuQSO
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男『まさか二回連続で飛龍が来るとはな』

緋色『忙しいでしょうに、わざわざ持ってきてくれるなんて』

男『あれは本人が食いたいだけな感じもあるけどな』

緋色『でも美味しかったわ』

男『それはまあ。でも三回目は流石に勘弁だ』

緋色『いくらなんでも三食同じにはしないでしょう』

男『だな。さて昨日の続きだ。法律と軍規のどっちからやりたい?』

緋色『航海術がやりた〜い』

男『それでもいいっちゃいいんだが、やるなら海に出てやりたいものでもあるからなぁ』

緋色『…暫くはお預けかしら』

男『残念ながらな』
538 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:25:51.70 ID:vCzKEuQSO
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飛龍『こんばんわ〜〜』

男『』
緋色『』

飛龍『え、あれ、何この空気』

男『そんな気はしてたけど』
緋色『あ、でも丼じゃない』

飛龍『そうそう!流石に三連続は飽きると思ってイクラ巻きにしてみたの!作ったの私じゃないけどね!』

すっげぇ楽しそうに話すな。

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緋色『ご馳走様』

飛龍『お粗末さま〜』

男『まさか本当に三食イクラとは。明日も持ってくる気じゃないだろうな』

飛龍『残念ながら在庫切れで』

緋色『あら』

男『食べたかったか?』

緋色『えへへ、正直ちょっとありかなって』

飛龍『それと伝言ね』

男『伝言?』

飛龍『叢雲から。今夜は忙しいからいつものはなしって。なになに毎晩何してたのぉ?』

男『知ってて言ってるだろ』

飛龍『さぁてねっ』
539 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:26:25.31 ID:vCzKEuQSO
緋色『皆、大変ね』

飛龍『怖い?』

緋色『え』

緋色の何気ない一言。それを飛龍は真っ直ぐ捉えた。

緋色『怖くは、ないわ。でも不安で、少し怖い』

男『緋色…』

かける言葉が見つからなかった。一体何に不安を抱いているのか、何に恐怖しているのか皆目見当がつかなかったから。

飛龍『わかるなぁ、私もそういう時あったもん』

緋色『そうなの?』

飛龍『うんうん。昔ね、置いてかれそうな気がして怖かった』

緋色『置いて…そう!そうなのよ!多分それだわ!!』

どうやら緋色の中にあった何かを飛龍は知っていたらしい。緋色自身でも理解していなかった何かを。

飛龍『そういう時はともかく勉強と訓練!ただ闇雲に進むには海って強大すぎるから、まずは自分を鍛えよう』

緋色『はいっ!』

何にせよ緋色のやる気が出たなら問題ない。
540 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:26:52.68 ID:vCzKEuQSO
男『今のは飛龍の経験談か?』

飛龍『まあね。海って目的もなしに立ってられる場所じゃないからさ、その目的を見つけるまでが大変なのよ』

男『艦娘にも色々あるんだな』

飛龍『誰だって色々あるのよ。課長もそうじゃないの?』

男『ま、そうかもな』

緋色『そうなの?』

男『多分』

飛龍『それじゃ私はこれで、おやすみ〜』

男『おやすみ』
緋色『おやすみなさい』
541 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:27:39.80 ID:vCzKEuQSO
男『緋色は何か目的があるのか?』

緋色『分からないわ。まだ』

男『そりゃそうか』

緋色『課長さんの目的って?』

男『秘密だ』

緋色『え〜』

男『もし緋色の目的が見つかったら、それを教えてもらう代わりに俺も言うよ』

緋色『なら私、課長さんから目的を聞くのを目的にするわ!』

男『却下』

緋色『えぇ〜』

男『ほら、風呂入って寝るぞ』

緋色『は〜い』
542 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:28:35.34 ID:vCzKEuQSO
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男「さてと」

翌朝、緋色用の教材を見直しながら支度をする。

秋雲に頼んでおいた物だが流石に出来がいい。普段からこういう真面目さを発揮して欲しいものだが、オンオフが激しいのがあいつの良さでもある。

そんなことを考えていると扉から聞きなれた声がした。

叢雲「おはよ」

男「おはよう」

廊下にいた叢雲は、なんだか昨日とは雰囲気が違っていた。

なんだろう、柔らかいというか。

叢雲「部屋、お邪魔してもいいかしら」

男「それはもちろん構わないが、いいのか?今忙しいんだろ?」

叢雲「えぇ。昨晩遅くまで忙しくした結果、今日の午前中は何も動けないと分かったのよ。だから司令官は部屋で休息中」

男「叢雲は?」

叢雲「ここなら誰にも見つからないでしょう?」

男「なるほど」

つまりリラックス状態なわけか。彼女の負担を少しでも和らげられるのならいくらでも手を貸したいところだ。
543 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:29:23.02 ID:vCzKEuQSO
叢雲「意外と日当たりいいのねここ」

男「住んでみると快適なもんだよ。でここで何する気だ?」

叢雲「棚上げしてた仕事片付けるの」

男「それ休めてないだろ…」

叢雲「別に休む気は無いわよ」

男「なら何しにここに来たんだ」

叢雲「私、鎮守府じゃどこにいても秘書艦叢雲なのよね。だからこうしてただの叢雲としていられる場所って実は貴重な事に気づいたのよ」

男「イマイチわからんが、まあ落ち着けるんなら別に構わんさ」

叢雲「あ、せっかくだしその黒い箱見せてよ」

男「ダメだ企業秘密だ」

叢雲「ざ〜んねん」
544 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:29:49.92 ID:vCzKEuQSO
特に残念そうな素振りも見せず、当然のようにベットに腰かけ端末をいじり始める叢雲。

いつもの何処かピリピリとした、背筋を伸ばしてるような感じはない。これがただの叢雲という事なんだろうか。

叢雲「コラムとかって書いた事ある?新聞なんかにあるような」

男「コラム?普通ないだろそんな経験。なんでコラム」

叢雲「鎮守府内の新聞用にね。ネタが浮かばなくって」

男「そんな仕事まであるのかよ…」

叢雲「面白いわよ案外」

男「息抜きとしてか?」

叢雲「そんなところね」
545 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:30:30.41 ID:vCzKEuQSO
男「そういや昨日三食全部飛龍が持ってきてくれたんだが」

叢雲「なに、なんかやらかしたあの娘?」

男「そういうんじゃなくてな。作戦前で皆忙しいんだろ?なのにアイツ随分暇そうというか、その」

叢雲「あーそういう。実際暇なのよあの娘」

男「え、そうなのか?」

叢雲「むしろそうして暇にしてるのが仕事と言ってもいいわね」

ますます分からん。

叢雲「駆逐艦や軽巡は遠征や護衛やらで忙しいわ。戦艦や空母はこういう時の重要戦力。艤装の整備や作戦前の打ち合わせやらで忙しい。重巡は数が少ないから普段から地味に忙しいわ」

端末に素早く文字を入力しながらもこちらとしっかり会話をする叢雲。

男「皆忙しいわけだ」

叢雲「そ。作戦が始まれば更にね。でも、みんな忙しかったらダメでしょ?」

男「ん?」
546 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:31:12.28 ID:vCzKEuQSO
叢雲「作戦中、出払った鎮守府に敵が攻めてくるかもしれない。突如救助を求める船がでてくるかもしれない。戦況が一変して即時出撃する必要があるかもしれない。そういう想定外な緊急事態に対応出来る艦隊が必要なのよ」

男「つまり予備選力ってことか?」

叢雲「そう言ってもいいかもしれないわね。飛龍はウチでもかなりの古参で腕も立つわ。だから基本的に鎮守府近辺に留まって、後輩の指導や演習をしてるの」

男「それは、俺の考えが甘かったよ…すまん」

叢雲「私に謝っても仕方ないでしょ。というか飛龍に謝っても意味ないわよ」

男「ああ、そうだな」

叢雲「あの娘はね、どんなに楽しい時でももしその緊急事態が起こったら誰よりも早く出撃しなきゃならないの。

敵の戦力が一切不明でも、無事に帰れる保証なんてまるでなくても、誰かに見送られたり決心したりする間もなく出撃するのよ」

飛龍は言っていたな。自分達が求められるのは緊急事態の時だと。本当に文字通りだったわけか。

それなのにあんなに力強く笑えるのか、あいつは。

男「凄いな」

叢雲「ええ。それが飛龍が選ばれてる理由でもあるわ。飛龍以外の艦隊メンバーもそう。皆何よりも心が強いわ」
547 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:31:46.78 ID:vCzKEuQSO
叢雲「ま、そーゆーわけでアナタ達の事あの娘達に任せる事は多くなると思うの。よろしくね」

男「俺はむしろ任される側だよ」

叢雲「それで、作戦中はどうするつもり?」

男「部屋で勉強だよ。記憶の方は一旦置いといて、艦娘としての勉強に集中しようかと」

叢雲「そ。海に出られるようになった以上そっちは確かに大切ね。分かったわ。なにか入り用なら今のうちに準備しときなさい。飛龍は好きに使っていいわ」

男「そうさせてもらうよ」

叢雲「そうだ、せっかくだから写真撮ってもいいかしら?記事に使えるかも」

男「残念ながらNGだ」

叢雲「あらら、何処の事務所に電話すればいいのかしら」

男「あー、しーちゃんのとこにでも頼むよ。情報扱いだろうしな」

叢雲「彼女の説得は私じゃ無理そうねぇ」

男「手強いぞあいつは。じゃ俺は緋色の所行ってくるよ」

叢雲「はいはーい」
548 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:32:23.63 ID:vCzKEuQSO
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

…誘われてるのかしら。

されげなく部屋を撮ろうとしたけれどしっかりNGされたし、所属なんかを期待して聞いてみたけれどはぐらかされた。

かと思えばこうして部屋に私だけを残して行ってしまった。

写真でも動画でも取り放題、なのだけれど。

叢雲「ムカつくわね」

誘い受けの罠にしか見えない。この状況で賭けをする理由は、流石に無いわね。

叢雲「あ〜ぁ」パタン

どうにも遣る方無くなってベットに寝転んでみた。

ん、司令官と同じ匂いがする。なんで?

あーシャンプーとか司令官の買い置きの渡したからか。

叢雲「…同じね」

今まで司令官の匂いと思っていたけれど、つまるところシャンプーやらの匂いでしかなかったというわけか。

なんか癪だわ。知らなきゃ良かった。
549 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:33:19.75 ID:vCzKEuQSO
そういえば加齢臭なるものがあるらしいけれど流石にそういったものはなさそうね。

司令官もいつか臭くなるのかしら。

今まで、司令官のものだと思っていたアレやコレやは、大半が鎮守府において人間が司令官しかいないから勘違いしていただけで、人間にとっては極々普通の事なのかもしれない。

叢雲「…」スーハー

それは少し、嫌だわ。


緋色『ぁ、あのー』

叢雲「ん?」

振り向くと入口に不思議そうな顔をした緋色と怪訝な面持ちの課長がいた。


あれ?私今これこの姿勢というか状況というか他人の部屋のベットで俯せで枕に顔突っ込んでてそしてそのえっと


叢雲『…課長』ムクリ

男『アッハイ』

叢雲『休憩終わったから帰る』

男『アッハイ』

叢雲『じゃ』

男『アッハイ』


扉をそっと閉めて全速力でその場を離れた。
550 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:33:56.02 ID:vCzKEuQSO
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

緋色『…叢雲、何してたのかしら?』

男『さーなんだろうなー』

よく分からんが深く突っ込んではいけないと本能が叫んでいる。

男『とりあえず、叢雲も帰っちゃったし一度部屋に戻るか。朝食が来たら緋色の部屋に行くよ』

緋色『はーい』タタタ

元気よく部屋に戻ってゆく。寝起きが悪いということはないようだ。

男「…でどうだった?」

「なーんもなし」

秋雲の声が箱から流れる。

男「何も?」

秋雲「写真も取らないしこっちを観察したり触ったりもなーんもなし」

男「そんなもんか。警戒しすぎたか?」

秋雲「どうかねぇ。でもなんか悶えてクンカクンカスーハーしてたよ」

男「いやその辺は、いいよ」

秋雲「見る?小型カメラだけどバッチリ映ってるわよ」

男「いいって。次会う時やりにくいからいいって」

秋雲「あーほら見て見て思いっきり枕に」
男「やめろマジで!」
551 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:34:53.51 ID:vCzKEuQSO
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

提督「ふぁ〜…ぁ。ん?」

叢雲『…』モゾ

提督「おはよ、叢雲」

叢雲『おはよ…』

提督「どうしたのさ、こんな日の明るいうちから添い寝なんて。誰かに見つかるよ」

叢雲『精神衛生上必要な事だったのよ』

提督「それはそれでどんな状況なんだい」

叢雲『気にしなくていいわよ。もう大丈夫だから、ほら仕事よ仕事』

提督「はいはい」

司令官から見えないようにそっと胸に手を当てる。

間違いようがない。この鼓動だけは、唯一無二だ。

他の誰でもない司令官の。
552 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/06(月) 01:37:33.74 ID:vCzKEuQSO
叢雲は無自覚に依存度が高いタイプ

一時期のSS速報の不安定さからこちらでの更新は半ば諦めていたのですが、他所に移るにせよ一度書き始めたものは終わらせなければなと。
遅くなりましたが可能な限りは続けていきたいと思います。
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/06(月) 11:33:36.04 ID:JGpFMQ3n0
乙、更新ありがてぇ
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/06(月) 12:16:55.87 ID:uES6KTKYo

もう見れないかと思ってた
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/07(火) 02:37:11.25 ID:NVzFkcFko
おかえり
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/08(水) 22:39:25.82 ID:OaQDVJZLo
乙です
557 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:46:59.74 ID:+6Bg2JYSO
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男「今日か」

目が覚めた。

朝の鎮守府はいつも通り静かで、ザワついていた。

この雰囲気には覚えがある。

あれから数日。

今日は作戦の決行日だ。

ヒトロクマルマル。

叢雲は部屋には来ない。

男「秋雲」

秋雲「はいはい起きてますよーっと」

箱から秋雲の元気な声が聞こえる。

男「どうだ?」

秋雲「面白いニュースがあるわよ」

箱の画面が起動する。そこにはテレビの速報が流れていた。
558 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:47:35.20 ID:+6Bg2JYSO
男「こいつは確か、中央のトップだったか」

秋雲「他にも軍のお偉方が何人か」

男「このタイミングで会見ってことは」

秋雲「作戦の発表だろうね。大々的にさ」

妙だな。

普通この程度の規模の作戦をこんな大々的に発表したりしないはずだ。

男「今しーちゃんに連絡取れると思うか?」

秋雲「忙しそうだしなぁ。多分連絡自体は取れると思うけど、どうする?」

男「いや、やめとくか」

秋雲「それがいいと思うよ」

もう政界には関係のない身だ。気にしても仕方ないだろう。
559 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:48:24.72 ID:+6Bg2JYSO
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男『おはよう』

緋色『…おはよ』

男『どうした?』

緋色『いよいよ今日なのね』

男『あぁ。何か思うところがあるか?』

緋色『重いわ、とても』

男『それは、俺にも何となくわかるよ』

緋色『私もいつか、向こうに立っているんでしょうね』

そう言って港の方を見る。

男『嫌か?』

緋色『ううん。でもやっぱり重いわ』

男『大丈夫だよ』

緋色『えぇ』

外は晴れ渡っていたが、鎮守府の空気は大雨の中外に出なくてはならない時のような気の滅入る重さがあった。
560 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:49:04.36 ID:+6Bg2JYSO
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飛龍『いやぁ朝会だるかったァ』ノビー

作戦前の集まりの後、飛龍が朝食を運んできてくれた。

男『仮にも作戦中なのに早々にこんなところでくつろぐなよ…』

飛龍『私真面目な空気は壊したくなるタイプだからさぁ、我慢するの大変なのよ。あ、海の上は別ね!』

緋色『え、飛龍さん真面目な時あるんですか?』

飛龍『あるよ!?』

正直緋色の疑問はもっともだと思う。

飛龍『そんなこと言ってるとせっかくのプレゼントあげないわよ〜』

緋色『プレゼント?』

飛龍『そ!ちょっとまっててね〜』

そう言うとわざわざ部屋の外に隠していたらしい箱を持ってきた。

男『朝食と別にこんなもの持ってきてたのか』

緋色『何かしら!』

飛龍『そこはお楽しみよ。ほら開けて開けて』
561 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:49:50.22 ID:+6Bg2JYSO
片手で持てる程度のそこそこな大きさの箱を緋色が丁寧に開ける。

プレゼントとは言うがお店で買うような丁寧な包装の物とは程遠い、無骨な感じの箱だ。一体なんなんだろうか。

男『え?』

緋色『これって…』

飛龍『そう!単装砲よ!』

男『12cm単装砲、だよな』

ネズミ色の四角い箱から伸びる砲塔。見間違えることは無い。

飛龍『んーかな?正直私はよくわかんない』

緋色『わあ凄い!本物?』スチャ

男『待て待て!いいのかこんな物騒な物普通に持ってて!』

飛龍『大丈夫大丈夫。偽物だから』

緋色『そうなの?』

飛龍『夕張と明石が緋色の訓練用にって作ったんだって』

男『なるほどな。ビックリした…』

飛龍『でもタダのレプリカってわけじゃないわよ〜。なんせあの二人が作ったものだからね』ニヒヒ

男『なんだよその不穏な感じは』
562 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:50:29.71 ID:+6Bg2JYSO
飛龍『ちょっと構えてみて』

緋色『えっと、こうかしら』

左手で単装砲を持ち右手で側面を支える形で胸の前に構える。

飛龍『そうそう。じゃ私が合図したらトリガー引いてみて』

飛龍が緋色の後ろに回り込み、単装砲のセーフティーレバーらしきものを外す。

飛龍『てぇー!』
緋色『はい!』

トリガー。本来単装砲には存在しない部分だ。そこは練習用のレプリカ故だろう。

そのトリガーを緋色が引くと

緋色『キャッ!?』

ガイン、という妙な金属音と共に単装砲が上に跳ね上がった。

そのまま緋色の顎か鼻辺りに直撃しそうだった単装砲を飛龍が後ろから素早く押さえつける。

緋色『び、びっくりしたぁ…』

腰が抜けた緋色を支えながら飛龍が再びセーフティーレバーをかける。

飛龍『ふふ、どうだった?』

緋色『思ったよりも大きかったわ』

男『俺もだ。なんというか…』
563 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:51:26.81 ID:+6Bg2JYSO
例え小さくてもそれは軍艦に搭載されていた兵器。ちゃちな拳銃なんかとは別物だと理解していたつもりだった。

それでも軽々とこれらを操る艦娘を見て、それほどたいしたものじゃないと思っていたのも事実だった。

飛龍『普段は私達が腕力にもの言わせて押さえつけてるものだからさ、課長さんなんか撃ったら骨の一本二本は覚悟しなきゃよこれ』

男『肝に銘じておこう…それ中身はどうなってるんだ?』

飛龍『中身は知〜らないっ。でもなんかアレしてこれして上手いこと本物みたいな反動にしたんだって。あの二人の暇つぶし品だから無駄に凝ってるわよ』

緋色『このレバーが安全装置?』

飛龍『詳しい使い方は中の仕様書見てってさ』

男『ちゃんと仕様書まで作ってあるのか』

箱の中を見てみると中に小さな紙が入っていた。どうやら一枚の紙を折り畳んで冊子風にしたものらしい。

ご丁寧に表紙や中身には図以外に手順を分かりやすくするためのイラストがいくつか添えられている。

男『秋雲だなこれ』

飛龍『え、凄い、なんでわかったの?』

男『そりゃあ…なんとなくな』

緋色『前にイラストが得意って言ってたけれど、とても綺麗ねこれ』

男『だな』

単装砲のイラストはどの角度の絵も実に正確に描かれている。

それとは逆に添えられている夕張や明石のイラストは二頭身程の人形のようなディテールで、ポーズや表情のバリエーションに富んでいた。

きっとどちらも描いていて楽しかったのだろう。
564 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:52:05.05 ID:+6Bg2JYSO
飛龍『ちょくちょくこういう仕事やってるのよあの娘。新聞とか掲示板とか、あと艤装にペイントとかね!』

緋色『へぇ〜』

男『ん?艤装に無断で描くのって禁止じゃなかったか?』

装備は軍の所有物であり、その扱いは極めて厳格に定められているはずだ。

飛龍『おぉやっぱ詳しい。でもほら、魚雷とかは一度使ったら終わりでバレないからってさ』

男『そう来たか』

緋色『でもそれってなんだか勿体なくないかしら』

飛龍『験担ぎってやつよ。駆逐艦の間では恒例になってるわ。当たりますようにって』

男『当たるのか?』

飛龍『当たる』

緋色『おぉ!』

飛龍『と思って発射するからでしょうね。そういう心持ちが大切だから、効果は確かにあるわ』

男『理にはかなってるわけだ』
565 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:52:47.05 ID:+6Bg2JYSO
緋色『飛龍さんもペイントしてもらったりした事はあるの?』

飛龍『私はないのよねぇ。ほら空母って甲板と艦載機が装備なわけだけど、どっちも色とか書いてある文字なんかで見分けたりするからそういうのやると危ないのよ』

緋色『色?』

飛龍『あり?まだ未履修?』

男『レクチャー頼んでもいいか先生?』

飛龍『ラジャっ!』サッ

よく分からないポーズをとったかと思うと飛龍の左腕に今まで無かった飛行甲板があらわれた。

飛龍『私達はさ、艦載機を飛ばすのは弓だけど着艦はここなわけ。でも空母が複数いるとどの甲板に降りればいいかわからなくなるでしょ?だから目印とかがあって、コロコロペイントとかしてると艦載機達が分からなくなっちゃうのよ』

神風『うーん?』

男『…例えば飛龍と蒼龍が並んでたとして、分からなくなるものなのか?』

飛龍『んっとね〜、見た目は問題ないんだけど、んん、難しいな。例えるなら電波ね。私が橙色で蒼龍が青色の電波。これに余計な要素を足しちゃうと電波が変わっちゃって混線しちゃうーみたいな?』

緋色『ラジオのダイヤル調整みたいなものかしら』

飛龍『おぉそれいいわね。それでいきましょう!』
566 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:53:58.54 ID:+6Bg2JYSO
男『結構繊細なんだな。正直もっと自由に操れるものだと』

飛龍『艦娘は基本的に内に秘めてる力を放出するものだけれど、私達空母は放ったそれを繋ぎ止めて操らなきゃいけないもの。それも幾つもね。だから潜水艦に並んで特殊なのよ』

緋色『潜水艦…』

飛龍『潜水っ娘達とはまだ会ったことないんだっけ』

男『あぁ』

流石に潜水艦という線は無さそうなので特に接触の機会を作ってはいなかった。

飛龍『そのうち分かってくるわ。私達にも色んなのがいるってね』

男『そういえば、飛龍はこの後どうするんだ?』

飛龍『午前中はここにいるつもり。コレの撃ち方とか教えられるし。午後はちょっと野暮用が』

男『了解。なら緋色へのレクチャーは任せるよ』

緋色『よろしくお願いします!』

飛龍『まっかせなさぁい』
567 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:55:00.32 ID:+6Bg2JYSO
緋色『こう?』

飛龍『もうちょっと横で、そうそう。結構上に跳ねるから』

2人共楽しそうだった。

ふと、小学生くらいの時に上級生から輪ゴム鉄砲の打ち方を教わったのを思い出した。

こんな楽しそうに撃ち方を教わってていいのだろうか。深海棲艦を、命を軽く消し飛ばせるモノを。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

飛龍「そういうとこ、やっぱ気になる?」

午後になり緋色へのレクチャーを終え帰ろうとする飛龍に、その話をしてみた。

飛龍「私も最初は特に疑問には思わなかったわ。というか今も疑問に思ってはないけどね」

そう言いながら右手で銃の形をつくって俺に向ける。

飛龍「こういうのが当たり前だからさ、私達。怖いとか、そういうのはない。それが人とズレた感覚だってのは分かるけどね」

男「そういうものか」

飛龍「この国は武器を持つ感覚に疎いからね。善し悪しは別としてさ。だから」

左眼を瞑り、人差し指の狙いを定める。

飛龍「バァン」

男「…」

飛龍「こーゆーとこも含めてさ、だからきっとここに壁があるんでしょうねぇ」

コンコンと扉を叩くように俺との間をノックする。

男「壁なら壊せるさ」

飛龍「お、カックィ。期待してるからね〜、それじゃっ!」タッタッタッ

廊下を駆けてく飛龍にそれ以上何も言えなかった。追うことも、手を伸ばすことも。

きっとそれが壁なのだろう。
568 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:55:50.19 ID:+6Bg2JYSO
男「ま、確かにビビってたら戦場でやってけないもんな」

そういう意味じゃ緋色が武器に対して抵抗がないのはとりあえず良しとすべきなのかもしれない。

男「武器、か」

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男「武器だ」

秋雲「え、なに急に、どしたの」

すぐさま部屋に戻り秋雲に話しかけた。

男「艦娘にはそれぞれその艦に合った武器があるだろ?」

秋雲「あ〜そういう事。確かにね」

俗に言うフィット装備。生前からの馴染み深さやその艦の性能に沿った装備が本来のスペック以上の性能を発揮できるというやつだ。

男「でもそれだけじゃない。例えば初期装備なんかもそういう馴染みのある装備と言えるだろ?」

秋雲「初期装備ねぇ。私はそこら辺わかんないにゃぁ」

男「秋雲という艦娘は12.7連装砲だったよな」

秋雲「そそ。でも同口径の連装砲にも色々あっからね〜。私のは亀って呼ばれてたやつ。陽炎とかは像だったかな」
569 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:56:40.77 ID:+6Bg2JYSO
男「同じ口径でも色々種類があるからな。だから逆にそこから特定できるんじゃないかって」

秋雲「ふむふむ。記憶にはなくても身体に染み付いてるクセみたいなのって艦娘にはあるしね。実際に触ってみたら思い出す可能性はありよりのあり」

男「何より他に糸口もないしなぁ」

秋雲「でもどうすんの?実際に緋色ちゃんに装備持たせるってわけにもいかないし、何より今作戦中だしょ」

男「装備の方は夕張達がレプリカを渡してくれてな。反動まで再現した凄いやつ」

秋雲「流石ねぇあの拘り技術者ズ」

男「作戦中は無理でも、今後のことを考えて話してはおこうかと思ってな。後秋雲は装備についてもう一度今の視点で調べ直してくれ」

秋雲「オーキードーキー。夕張達にはなんて?」

男「今メッセージで送ったところだ。作戦が落ち着いたら何かしら反応をぉわっ!」

手元の端末から慣れない音が鳴る。

秋雲「連絡?」

男「お、おう」

秋雲「…夕張?」

男「…ぽいな」

はえぇよ。
570 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:57:54.06 ID:+6Bg2JYSO
男『もしもし』
明石『面白そうなこと言うじゃないですかあ!』

スピーカー機能をオンにしたんじゃないかという程に大きな声が部屋に響いた。

秋雲「…」
男「…」

画面の秋雲と無言で見つめ合う。

うん、このテンションには覚えがある。

男『あれ、この連絡先夕張じゃなかったっけ』

明石『あーこれ工廠共通アカなんですよ。つっし、秋津洲とか他にも数名いますよ』

アカウント名、メロン海峡なのにか。あ海峡って明石海峡か?分かりにくいわ。

男『待て待て、そっちは作戦中なんだろう?』

明石『皆が出撃やら作戦会議してる時は暇なんですよ。暇なんです』

二回言った。

男『あーつまり?』

明石『今すぐウチに来てください!』

工廠をウチと呼ぶその楽しそうな声は、何処の明石も変わらないな。

男『残念だが叢雲から一応軟禁を言い渡されていてな』

明石『…ではちょっと待ってて下さい』

通話を切らずに、端末を何処かに置いたような音がした。

秋雲「どうよ」

男「おい、声聞こえたらどうすんだよ」ヒソヒソ

秋雲「へーきっしょ」アハハ
男「…」
秋雲「ゴメンナサィ」
571 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:58:38.82 ID:+6Bg2JYSO
明石『あ、オッケーだそうです』

男『え?あ、なんて?』

明石『内線で聞いてきました!というわけで今すぐ来ちゃってください!』

男『いいのか?本当にか?』

明石『そ、そんなに疑わなくても…あーでも緋色ちゃんは絶対に部屋から出さないように〜と』

男『分かった、向かうよ』

明石『お待ちしてま〜す』ピッ


秋雲「行くの?」

男「のようだ」

秋雲「なら二人によろしく言っといてネ」

男「言えるわけないだろ」

誰にも、言う訳にはいかない。
572 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:59:04.42 ID:+6Bg2JYSO
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

叢雲から釘を刺されたので緋色には暫く部屋を空けることを伝える必要がある。

しかしなんでOK出したんだろうか叢雲。

男『緋色』ガチャ

緋色『あ』

男『え』

そこにはいつも通り机に座りプリントや本を広げる緋色の姿はなく、実に楽しそうに単装砲を構える艦娘の姿があった。

緋色『え、えっとぉ…』サァ

一瞬青くなって

緋色『これはそのぉ!』カァ

赤くなって

男『これはその?』

緋色『ほ、本能です!』バァン

開き直った。

余計な知恵付けやがって。
573 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 00:59:34.01 ID:+6Bg2JYSO
男『楽しいか?』

緋色『ごめんなさい!』

男『いや、違うんだ。サボっていたのはこの際いい』

緋色『いいの!?』

男『あ、うん』

つい許してしまうのは甘いのだろうか。でも見た目でいえば小中学生に当たる娘を怒るって中々難しいと思う。

男『そういうのじゃなくて、単純にそれを持ってみてどう思ったか知りたくてな』

緋色『楽しい、というより憧れかしら?私も早く一人前にならなきゃって』

男『なるほど。よし、なら勉強さぼっちゃダメだな』

緋色『うぅ…』

男『それと暫く出かけてくるから、部屋で待っててくれ』

緋色『はーい』
574 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 01:00:09.16 ID:+6Bg2JYSO
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

工廠は鎮守府の中心からは少し離れているが港に近い。だから近くに行くといつも艦娘達の声や音がした。

今はとても静かだ。

なんとなく海沿いを通りながら工廠に向かう、その途中だった。

男「…え」

伊401『』スヤァ
伊19『』スヤァ
伊14『』スヤァ

男「……え?」

そろそろ夏かぁと思える程にはじわりと肌に刺さるようになってきた太陽がさんさんと降り注ぐ港のコンクリートのその上。

打ち上げられたアザラシか、はたまた釣り上げられたマグロか、とにかくそんな感じで三人の潜水艦が川の字に並んで横たわっていた。

周りには何も無く日向ぼっこだと言われればそうとしか思えないような状況ではあるのだが。

男「…」

微動だにしない三人に何か声をかけるのは不味い気がしたのでそのままゆっくりと工廠に向かった。
575 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 01:00:41.28 ID:+6Bg2JYSO
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

明石『あ〜天日干し中ですね』

男『天日干して』

明石『陸離れの話は前に聞いてましたよね?』

男『あぁ』

明石『潜水艦達は水上艦よりも長く、またさらに地上と切り離されますから、個体によっては帰投後ああして日光とか地上の感触、重力に慣らさないといけないんですよ』

男『そんなものまであるのか』

宇宙飛行士が地上に戻った時なんかはリハビリが大変だという話があるが、それと同じようなものか。

明石『あの三人は特に重症でして。多分海と親和性がありすぎるんでしょうねぇ。ホントに何しても起きませんよ、あの状態だと』

男『まるで試したことあるような口ぶりだが』

明石『試したことあるんで』ドヤァ

男『…』

深くは聞くまい。
576 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 01:01:22.26 ID:+6Bg2JYSO
明石『それで、装備の種類でしたよね。まずは今と同じ単装砲で試していきましょうか?』

男『あのレプリカは、たしかハンマーってやつだろ』

明石『俗称の方を知ってるとは中々通ですねぇ。単装砲だと後はブリキ、?(オモテ)なんかがありますね。12.7連装砲だとA型、像、亀、ブラシ、箱等々色々ですし、でもハンマーで違和感なく使えてるのならブリキ辺からの方が馴染みやすい?そっちの方が作るのも早いし、あーでもでも連装砲の方も試したいからそれならブラシとかいっちゃう?後は反動かぁ、連装砲となるとぉ、いや敢えて逆にする?しちゃう?』ブツブツ

おっとこれはもう話してるんじゃなくて思考が漏れてるだけの状態だな。完全にスイッチが入ってしまっている。

どうしようか。考え中なら邪魔しない方がいいんだろうが…

明石『よし!』パンッ
男『うぉ!?』ビクッ

明石『暫く中で考えるんで他の話しませんか?』

そう言って自身のこめかみをコンコンと叩く。

艦娘お得意の並列思考か。
577 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 01:01:51.76 ID:+6Bg2JYSO
明石『ちなみに課長さんは何か要望あります?』

男『そちらに任せるよ。餅は餅屋だ』

明石『最っ高のご要望です』フフ

男『そういえば夕張は?』

明石『出撃があるみたいなので提督と話してると思いますよ』

男『ほぉ』

工作艦という特殊な艦首の明石と違って夕張は軽巡だ。当然出撃もあるわけか。

明石『そうだ、せっかくだし外の潜水艦達見に行きます?』

男『見に行くって、何かあるのか?』

明石『えぇえぇ、きっと面白いものが見れますよ』

正直かなり興味がある。ここは断る理由もないか。

男『よし行こう』

明石『では!』

明石がすぐ側にあった何の変哲もないバケツを掴んで外へ向かう。

何する気だよ…
578 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/09/29(水) 01:04:36.01 ID:+6Bg2JYSO
ギリギリイベント突破できた提督

同じ連装砲でも見た目はかなり種類がありますよね。
そもそも連装砲なんかを手に持って撃ったらどういう方向に反動が働くのでしょうか。
実物の知識はないのでそこら辺は適当こいてます。
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/29(水) 08:34:52.87 ID:7pCCxCj9o
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/06(水) 03:09:43.84 ID:OejkVOKa0

秋雲さん何処に居るのか今更気づいたわ・・・
581 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/23(火) 05:21:07.54 ID:kHStvoJCO
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

伊401『』スヤァ
伊19『』スヤァ
伊14『』スヤァ

男『酷い絵面だ…』

並べられているのが港じゃなければ微笑ましい昼寝風景なのだが、やはりここだと魚市場にしか見えない。

明石『この状態だと殆ど何しても起きませんよこの娘達』

男『そんなに眠りが深いのか』

明石『眠り、という表現は適切じゃないでしょうね。では何が適切かというと上手い言い回しが出て来ないのですけれどね』

男『今どれ位ここで寝てるんだ?』

明石『大体四時間くらいですかね。平均で八時間くらいはこうしてますよ』

男『凄いな…ほんとどういう状態なんだ』

明石『例えば、ほい』グイ
男『うぉ!?』

明石が伊14の瞼を開ける。右の瞳に真上から日差しが差し込むが確かに反応する気配はない。

明石『起きないんですよね〜これでも』

男『怖いから瞼閉じてあげて』
582 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/23(火) 05:23:33.26 ID:kHStvoJCO
明石『課長さんも何かします?しおいちゃんならスク水脱がすくらいでも起きませんよ』

男『やったの?それ試したの?』

明石『あはは、それはともかくとして今回見せたかったのはですねぇ』

明石が一体何をしたのか何を置いてもまずたしかめるべき事な気もするが。

明石『ちょっと待っててください』

そう言って海の方へ行き海水をバケツに汲んでくる。

男『かけるのか?』

明石『そりゃもう盛大にっ!』バシャッ

打ち水感覚でバケツ1杯の、バケツいっぱいの水を三人にぶちまける。

日に焼かれた状態にいきなり海水というのはかなりの衝撃のはずだがそれで三人は微動打にしなかった。

だらしなく口を開けて眠る伊14の口にも海水がいくらか入るが少しも反応はない。少し細すぎる気もする身体に海水が走る。

伊19の、その、胸に思いっきり海水が直撃するがこちらも無反応だ。スク水は新品のように水を弾き、光を反射させながら滴り落ちる。

伊401も、

男『ん?』
583 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/23(火) 05:25:07.26 ID:kHStvoJCO
妙だ。気のせいかとも思ってもう一度じっくりと観察する。

他の2人と変わらずこちらも反応はない。

生まれつきの特徴とも言える程よく焼けた華奢でいて力強い手足や呼吸に合わせて上下するお腹や隣と比べるととても控えめな胸囲も変わらず海水が滴り落ちる。

いや、落ちていない。

弾かれ染み込むでもない海水は確かに動いてはいるが、それは明らかに重力に従っていなかった。

男『足先に向かってないか、これ?』

明石『今はしおいちゃんだけ見たいですね。ほか二人は結構慣れてきてるみたいです』

男『どういう事だこれ』

明石『課長さん、この娘達が海中で動く時、どうやってると思います?』

男『どうやってってそりゃ、泳ぐ?』

クロール?平泳ぎか?いやいや、そもそもそんな人間みたいなやり方で海中を動けるのか?

明石『私達海上の船と同じですよ。この娘達の場合はほぼ全身に推進力みたいな物が働くんです』

男『推進力?』

明石『厳密には全然違うんですけれど。つまりこの海水の動きみたいにって事です。海の中ではこんな水滴じゃなくて周りの水をどんどん掻き分けてるんですよ』

男『マジか…』

伊401の太腿に触れてみた。

軟らかい。

日光で焼けた身体は思ったよりも熱い。

身体を下に下にナメクジのように動く水滴が俺の指先にくっついた。

水滴のついた指をそっと持ち上げると、途中で重力に負けた水滴が再び太腿に落ちて、また足先を目指して進行を始めた。
584 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/23(火) 05:26:02.76 ID:kHStvoJCO
男『な、なんも分からん…起きてる事象一つ一つは子供でもわかる事なのに、こうして目にすると頭がおかしくなりそうだ』

明石『分かったら苦労しませんって。ちなみにこの海中モードの時はまだ陸に上がれてない証拠です。彼女達にとっての地上は、私達で言う海中か、あるいは宇宙空間に当たるのかもしれませんね』

男『つまり伊401、しおいはまだ海で泳いでる途中のつもりなのか』

明石『多分そんな感じです』

男『こんなふうに、泳ぐのか』

明石『さっきみたいに目に対する反応がないのもそれが理由です。海中じゃ目なんてなんの意味もないですから、潜水モードだと刺激を受け付けてないんですよ』

男『そりゃそうか。海なんて少し潜れば真っ暗だしな』

明石『ち な み に 、牛乳とかお酒とか醤油とかだとこうはなりません!』

男『試したってそれか!?』

明石『水はいけるんですけどねぇ。死海レベルで濃い塩水とか。あ、なんとプールの水はダメだったんですよ!ローションも!』

男『それちゃんと本人に許可取ってんだろうな…』
585 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/23(火) 05:27:25.40 ID:kHStvoJCO
伊14『ぅわあしょっぱ!!』カバッ
男『!?』

明石『あら、おはようございます』

伊14『暑い!眩しい!あれなんか濡れてる?』

目が覚めて口の中に入った海水に反応したらしい。

伊14『あー!明石さんまたなんかかけたでしょぉ』

明石『今日はただの海水よ』

伊14『本当にぃ?おしっことかとかじゃないよね…提督もさぁ見てないで止めてよね〜』ペッペッ

尿をかけかねないと思われてるあたりがまた。

男『ん?』

明石『あら?』

伊14『へ?あり?提督じゃない?えっとー、カチョーさんだカチョーさん。あれぇっかしいなぁ』

どうやら俺を提督と間違えたようだ。

間違えた?どうやって?

明石『…まあ鎮守府で男性って言えば提督位でしたもんね』

伊14『違う違う。浮上前だから薄らとだったけど、明るかったからさ。てっきり提督かと』

意味はよく分からないがどうにも起きる前から何かを認識していたらしい。しかし目は見えていないのに明るいとはなんだ?

男『…』チラリ

明石『?』

明石と顔を見合せる。向こうもさっぱりらしく分からないとジェスチャーを返してきた。
586 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/23(火) 05:28:12.37 ID:kHStvoJCO
伊14『は!今ならお昼間に合う!?』

明石『そうですねぇ。ギリギリ行ける?かな?』

伊14『こうしちゃいられない!っとと』フラフラ

男『お、大丈夫なのか?』

伊14『へーきへーき慣れてっから!』

まだ少し身体がふらついてはいたが転ぶこと無く建物へ戻っていく。

男『不思議な体験だった…』

明石『私も少し予想外でした。それとアイデアまとまったので工廠に戻りますね』

男『アイデア?あーそうか単装砲の件で来てたんだったな。なら俺も緋色の所に戻るか』

ずっと並列して考えていたんだったな。

男『実際どうだろうか。装備で記憶が戻るってのは』

明石『艤装の一部ですからね。フィットなんてのがあるように装備と艦娘の繋がりはそれなりに深いものがあります。記憶を戻すきっかけとしては、文字通りいい衝撃になる可能性はあると思いますよ』

男『期待したいところだな』

正直他は手詰まりだ。
587 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/23(火) 05:29:05.08 ID:kHStvoJCO
明石『それと、たまにはウチにも顔出してくださいよ。今日みたいに面白いものが見れるかもしれませんし』

男『興味が無いと言ったら嘘だが、あまり無闇に関わるべきじゃないだろ?』

明石『叢雲がそう言ったからですか?』

男『それもある、が俺も同意見だ』

明石『貴方のような外部の人間との接触は私達にとって良くも悪くも色々な影響がありますからねぇ』

男『あぁ、だから』

明石『だから私は良い方を見たいです。勿論立場のある叢雲や貴方が悪い方を気にするのも分かります。でも鎮守府にとって変化というのはそれだけで価値があると思うんですよ』

男『それは工作艦としての意見か?』

明石『それもあります、けど私個人の意見でもあります』

男『…ま、たまには顔を出すよ。叢雲に怒られない程度に』

明石『おお!それではまたのご来店お待ちしております』

するべきでは無い約束をしてしまった気がする。

でも嬉しかった。

俺と関わる事が何か良いきっかけになるかもしれない。自分で考えると自惚れや願望でしかないが、こうして艦娘から言われることに舞い上がっている自分がいた。
588 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/23(火) 05:29:50.59 ID:kHStvoJCO
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

男『戻ったぞ〜』ガチャ

緋色『!』ビクッ

男『?』

緋色『お、おかえりなさぃ…』

部屋の角でこちらに背を向けたまま蚊の鳴くような声を出す緋色。

男『何やってんだ?』

緋色『そのぉ…あのぉ…』

泣きそうな声を絞り出す緋色の真後ろまで近づいてみる。

何かを隠そうとしているようだがこの小さな身体では限度がある。

男『壁、穴空いてないかそれ』

緋色『つ、机がぶつかって?』

男『お前の肩の高さだぞそれ』

緋色『あぅ…』

男『それにこの色…』

ペットボトルのキャップ位の凹みにはネズミ色の跡が残っていた。机じゃこんな色はつかない。

となると。
589 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/23(火) 05:30:54.71 ID:kHStvoJCO
男『何回撃った』

緋色『た、たくさん…』

部屋の隅に申し訳なさそうに置いてある12cm単装砲のレプリカを見る。確かに角がひとつ少しばかり禿げている。

男『怪我は?』

緋色『おでこに一回当たったわ…でも怪我はないわよ!』

男『ならまあ良、くはないが』

緋色『ゴメンナサィ』

男『明日は飛龍に頼んで多めに訓練してもらうか』

緋色『ホントっ!?』

男『目を輝かせるんじゃない』ポン

緋色『ぁう』

勉強を教えたり、ご飯を食べたり、そういう生活で忘れていた。

緋色にとってこういう事こそ日常なんだ。

今この時、水平線の向こうで戦っているその姿こそ艦娘なんだ。

男『お互い慣れていかなきゃな』

緋色『お互い?』

男『とりあえず壁の事を叢雲に話そう』

緋色『え゛』

男『俺も謝るから』

緋色『ぅん』

この後めちゃくちゃ怒られた。
590 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/23(火) 05:33:39.32 ID:kHStvoJCO
秋刀魚スコア99

艦娘がどうやって浮いていてどうして進めるのか、というのは人によって様々に解釈があって好きです。
とりわけ潜水艦は独特な解釈が多く見受けられる印象ですね。
591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/24(水) 12:20:48.07 ID:AE2V9bQjo
おつおむ
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/25(木) 19:10:26.78 ID:LEJ6xd48o
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/27(土) 02:25:43.90 ID:hCPCosElo
594 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 03:45:53.16 ID:vgGQ1HgcO
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男『なあ飛龍』

飛龍『ん〜?』モグモグ

男『こうして毎朝、毎日来てくれるのはありがたいんだがな』

携帯画面「次は今週のお天気予報です」

緋色『ん、見て見てこれ』

飛龍『なになに?』

男『食べながら携帯を弄るんじゃありません』

緋色『はーい』

男『でな、飛龍』

飛龍『はいな』

男『毎日ここに入り浸り過ぎなのでは』

飛龍『あ、台風だ』

緋色『台風』

男『台風?』

緋色『四号だって』

飛龍『いつの間に四人も生まれてんだって話しよね』

緋色『こっち来るみたいね』

飛龍『こりゃあちょっと忙しくなるわよ』

緋色『どうして?』
595 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 03:46:38.38 ID:vgGQ1HgcO
飛龍『艦娘ってのは雑多に言えば本来の姿から百分の一とか二百分の一スケールになってるわけだけど、当然それだけ小さくなると色々影響があるわけ。はい緋色!』

緋色『えっと、戦闘距離、航続距離が短くなる。索敵の難易度が上がる。後は、海に弱くなる』

飛龍『正解!偉い!』

緋色『よし!』

飛龍『船は海に強いってイメージがあると思うけれど、実際はどうにかしがみついてる位なもので、自然がちょっと本気出したらあっという間に海の藻屑だものねぇ』

男『現代の船であっても嵐は脅威そのものだものな』

飛龍『極端な話デカけりゃデカいほど強いわけ。コスト無視するなら』

緋色『私達はヒト一人分の大きさだものね』

飛龍『波は怖いわよぉ。荒れた海なんて大口開けて襲いかかる化物同然だもの』

男『つまり』

飛龍『台風が来たらお休み!』
596 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 03:47:29.64 ID:vgGQ1HgcO
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作戦の一時中断、になるそうだ。

さらに鎮守府でも台風対策をしなくてはならない。

勿論海沿いの建物だ。そこら辺元々対策はあるのだろうが、それでも準備は必要なのだろう。

叢雲『で、問題はこの建物なのよ』

長屋とか呼ばれてる俺と緋色のいる建物に叢雲がやってきた。

叢雲『以前は全く使ってなかったから窓とか全部板打ち付けてお化け屋敷みたいにしていたのだけれどね』

飛龍『中々迫力ある見た目してたよね〜』

叢雲『で、今回それらをとっぱらっちゃったから、改めて台風対策しなきゃいけないわけ』

男『見るからに頑強さとは程遠い見た目してるものなここ』

緋色『具体的にはどうするの?』

叢雲『板貼るしかないわね。部屋の窓はシャッターがついているけれど、廊下の窓は塞ぐ他ないわ』

男『結構な仕事量になりそうだな』

叢雲『予報通りなら三日は時間があるもの。どうにかなるわ』
597 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 03:48:03.19 ID:vgGQ1HgcO
叢雲『というわけで飛龍よろしく』

飛龍『一人!?流石に私だけはちょっとキツくない?』

叢雲『と言ってもこっちも人員はあまり割けないし』

男『叢雲の方も忙しいのか?』

叢雲『鎮守府自体は別にいいのだけれど、作戦用に運んだ補給物資とか奪い返した海域の守りとかで外に出なきゃいけない人員が多いのよ』

飛龍『んー蒼龍空いてる?』

叢雲『他の空母はちょっと、あ、そうでもないか…うーん、行けるわね』

飛龍『別に無理にとは言わないわよ?』

叢雲『いえ。嵐となると基地航空隊も避難させなきゃいけなくなるし、そうなると後で基地に行く予定だった空母はこっちで待機になるわ』

飛龍『あそっか。なら蒼龍借りてくね』

緋色『ねえ私は?私はどうする?』

叢雲『勿論働いてもらうわよ。えっと、ここの板張りって誰がやってたかしら?』

飛龍『えっと、そーだ鈴谷だ鈴谷』

叢雲『そういえば得意だったわねこういうの』
598 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 03:49:37.03 ID:vgGQ1HgcO
飛龍『よっし早速呼ぼう』

叢雲『まずは板を取りに行ってもらわなきゃ』

男『ここの窓全部となると結構な量だよな』

緋色『どうやって貼るの?』

叢雲『釘とかで固定して』

男『壁に釘さしてもいいのか?』

飛龍『もしもし鈴谷?今暇?そうでもない?OKちょっと長屋来てくんない?そうそう。そこら辺は大丈夫。後ついでに蒼龍連れて来て〜。うんうん。じゃ後で』

叢雲『なんて?』

飛龍『暇だったから来るって』

叢雲『港の荷物運び手伝ってるはずなのだけれどね…』

飛龍『おっと、今の私から聞いたって言わないでね』

叢雲『まあいいわ。私は戻るから、あとは任せてもいいわよね』

飛龍『了解。なんかあったら連絡するから。板は小屋のでいいんだよね』

叢雲『ええ、それじゃ』
599 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 03:51:02.82 ID:vgGQ1HgcO
男『小屋ってのは何だ』

飛龍『物置よ。装備とか保管してるのとは別のちゃっちぃの』

緋色『何が入ってるの?』

飛龍『掛軸とか、クリスマスツリーとか門松、射的台鬼の面雪だるま連装砲、後なんだっけなぁ。ま色々あるわね』

緋色『え、え?』

男『なんだその空間…』

飛龍『たまに動く浮き輪とかカワウソみたいなよく分かんない着ぐるみもあったり』

緋色『そ、そこに今から行くの…?』

男『普通に怖いんだがそれ』

飛龍『あはは、別に何も無いわよ。動いた所で死ぬわけじゃなしに』

そりゃ深海棲艦と比べりゃそうなのだろうが、そう言われると何も言い返せない。
600 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 03:52:06.13 ID:vgGQ1HgcO
鈴谷『呼ばれて飛び出てチーッス。鈴谷宅急便で〜す』

飛龍『おー早い』

鈴谷『こちらお届け物』

蒼龍『ど、ども』

鈴谷『っと、そういえばはじめましてね。私鈴谷。ヨロシクね』

緋色『鈴谷、ね。ええ、こちらこそよろしくお願いします』

飛龍『よしよし早速取り掛かろう』

鈴谷『そもそもこれ何の集まり?』

飛龍『台風対策にまた板貼るんだって』

鈴谷『あーね』

飛龍『前やってたの鈴谷だよね?』

鈴谷『モチ!DIYならまっかせて!』

緋色『でぃーあいわい?』

鈴谷『日曜大工ってやつよ。えっとDは、大工…んー、日曜大工ってやつね』

正解はDo It Yourselfである。

蒼龍『私はなんで?』

飛龍『雑用?』

蒼龍『そんな役割!?』

飛龍『ウソウソ。じゃ私と飛龍と課長さんで小屋に荷物取りね!鈴谷と緋色はどうやって張ってくか相談しといて』

鈴谷『うぃーッス』

緋色『はーい』
601 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 03:55:20.07 ID:vgGQ1HgcO
蒼龍『そっかー台風対策だったのねぇ』

飛龍『懐かしいよね。前あそこで肝試しとかやったじゃん』

蒼龍『あったあった!ボヤ騒ぎになったやつ!』

男『ボヤ?一体何やったんだ…』

蒼龍『それがねえ』ニヤニヤ

蒼龍は俺相手でもよく話すやつだ。こうして並ぶと飛龍よりもお喋りかもしれない。

これが素なんだろうが、そういう蒼龍が見れるのはこうして周りに飛龍以外がいない時だけだ。

普段は空気を読んで俺とはあまり話さないようにしてるのだろう。先の鈴谷なんかは目も合わせてくれなかった。

蒼龍『あ、ほらほらアレが小屋』

男『思ったより小屋だな』

飛龍『元は何の建物だったのかな』

蒼龍『あそこにはねぇ板とか以外にも人を喰うと噂のカワウソみたいな着ぐるみがあったりして』

男『それはさっき聞いた』

飛龍『私が言った』

蒼龍『えーずる〜い』

飛龍『早い者勝ち〜』

蒼龍『そうだ!課長さん着てみる?』

男『俺が!?』

蒼龍『大丈夫誰にも言わないから!』

男『さっきの噂を抜きにしても普通に臭そうだし遠慮しとくよ…』
602 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 03:56:17.13 ID:vgGQ1HgcO
飛龍『おっと鍵持ってきてなかった』

蒼龍『鍵かかってたっけここ?』

飛龍『え、なかったっけ?』

男『とりあえず開けてみるか?』

蒼龍『てい』ガラ

飛龍『開いたし』

男『セキュリティ的にどうなんだ』

蒼龍『まあ取られて困るものもないし』

飛龍『さて必要なのは板と釘ね』

蒼龍『電気電気〜あった』カチ

男『中は意外と広いんだな』

飛龍『ちなみにあれが着ぐるみ』

男『うわ怖!なんて吊り下げて保管してるんだよ』

蒼龍『その方が雰囲気出るからって』

男『雰囲気出してどうする…』
603 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 03:57:40.51 ID:vgGQ1HgcO
飛龍『板、というか木材は結構あるわね』

蒼龍『保管状態もヨシ』

男『あとはどう運ぶかだな』

飛龍『どっか台車とかなかったっけ』

蒼龍『入口の横に2つあったわよ』

飛龍『流石に往復は避けられないかぁ』

蒼龍『重さはともかくこう大きいと私達持てないものねぇ』

艦娘の弱点だな。オリジナルと遜色ない馬力や火力はあってもその積載量は見た目通りだ。

1トンのダンベルは軽々持ち上げられるだろうが、軽自動車1台となるとバランスが取れず運ぶのは難しいだろう。

男『道具もここにあるのか?金槌とか』

飛龍『あー忘れてた!』

蒼龍『道具なら工廠かな』

飛龍『私ちょっと取ってくるから板台車に積んどいて』

蒼龍『オッケー』
604 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:00:15.61 ID:vgGQ1HgcO
蒼龍『じゃ始めましょっか』

男『しかしこれはまた重労働だな』

大小様々な板が煩雑に積み上げられている。安全性とかをまるで考慮していない。

蒼龍『まず上半分くらいガバッといきますか』ガシッ

男『え?おいいくら何でもそれは!』

艦娘からしたら重量的には問題ないのだろうが、こんな山積みの資材をぞんざいに持ち上げようものなら

蒼龍『あ』グラッ
男『ゲェッ!』

当然崩れる。




蒼龍『うぎゃっ!!』

身が縮こまる騒音と共に蒼龍の悲鳴が聞こえた。
605 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:01:35.72 ID:vgGQ1HgcO
男「おい!大丈夫か!?」

資材に下半身を飲まれて倒れ込んだ蒼龍に駆け寄る。

蒼龍『ったー…ん?なんて?』

男「あ、いや…『大丈夫かって』」

咄嗟の事でつい普通に喋ってしまっていたようだ。こんな言葉ですら、本来彼女達には届かない。

蒼龍『あーそっかそっか、うん!大丈夫大丈夫ほら、その…艦娘、だしね』

一瞬、彼女は目を逸らした。

実際平気なのだろう。彼女達がたかが崩れた木材の山で怪我を負う程ヤワなわけが無い。この雑な管理体制もそういう意識から来るものか。

男『…その、』
加賀『なんの音』

言葉が遮られる。慌てて振り向くと

男『あっ』

小屋の入口に立っていたのは、一航戦の加賀だった。

その瞳には凡人たる俺にも十二分に伝わる程の殺気があった。

蒼龍『げっ』

加賀『げっ、とは何よ二航戦』

蒼龍『たははー』

加賀『それに、何をしているの。人間』

男『いや、その』

蒼龍『板!板を取りに来たんですよ!長屋に台風対策するために!ほら撫子ちゃんとこの』

加賀『なでし、あぁ例の赤子ね。なるほど』
606 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:02:16.48 ID:vgGQ1HgcO
蒼龍『板をこうガバッと取ろうとしたら、見ての通りで』

加賀『把握したわ。それで、』
飛龍『道具一式借りてきったぅわお!!かっがさん!!』

加賀の後ろから今度は飛龍がやって来た。

加賀『相変わらずね、貴方達は』ハァ

飛龍『たははー。あれ?でもなんでここに?』

加賀『たまたま近くにいたら大きな音がしたからよ』

飛龍『大きな音?うわ、わー土砂崩れだ。大丈夫だった?』

蒼龍『へーきへーき』

男『俺も、一応な』

飛龍『ならいっか』

加賀『次からは気をつけなさい、二航戦』

飛蒼『『はーい』』

加賀『それに、アナタも、ね』

男『ああ、分かってるよ』

氷のような目で俺を一瞥し去っていく。
607 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:03:27.97 ID:vgGQ1HgcO
男『ふぅーー』ドサッ

蒼龍『大丈夫?』

男『死ぬかと思った』

飛龍『加賀さん怖いからなー。むしろよく耐えた、エライっ!』

男『死んだ方がマシなレベルだありゃ』

蒼龍『さてと、板運んじゃおうか』

飛龍『じゃあ、台車は私達やるから課長はこれお願い』

男『わかった』

力仕事をせっせとこなす少女2人を眺める道具箱を持った俺。どうにも居心地の悪い気分だがこれが一番効率的である。

飛龍『加賀さんね、強いから。空母代表みたいな感じでよくお偉いさんとかに会ってたりするの。だからかな、結構、いやかなーーーり人間嫌いみたいで』

男『それは、まあ分かるかな』

飛龍『赤城さんとかその辺全く気にしてなかったりするし、私もこんなんだから、余計に気を張るっていうかさ。そんな感じ』

蒼龍『飛龍は気にしなさすぎるのよ』

男『だろうな』

飛龍『ありゃ後でご機嫌取っとかないとかなぁ』

男『管理職は大変だな』

飛龍『私はそんなんじゃないって。加賀さんは、そうねぇ。手の焼けるお姉ちゃんって感じ』

蒼龍『アレで結構可愛いところも、っとこれは言ったら怒られるかな』

飛龍『だねー。秘密秘密』

男『それでいいさ』

それを知るのは、同じ艦娘か提督である彼の特権なのだろう。
608 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:06:19.07 ID:vgGQ1HgcO
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板張りの作業はかなりスムーズに進んだ。鈴谷が妙に手際がいい。指示通りに進めるだけで半分も終わった。

緋色『どうしてそんなに上手なの?』

鈴谷『鈴谷、元々手を動かすの好きでさ。なんとなーく暇潰しに初めて見たら趣味になっちったわけ』

とかなんとか。

そんな訳で残りは明日にまわし今日の作業は日が沈む前に終了となった。

しかし、俺は作業中も作業後もずっと集中出来なかった。

脳に焼き付いて離れない。

あの目が、ずっと見つめてくる。

加賀の目、じゃあない。そうじゃない。

蒼龍のあの目だ。

言葉が届かないという現実を前にしたあの目。

寂しそうで、悲しそうで。

普段意識してない現実を突き付けられた、絶望にも近いような、そんな目。

人とは違う。人ではない。人にはなれない。人でいられない。人間じゃない。

きっとみんなそれをわかっていて、その上で見ないふりをしている。

"艦娘だしね"

一体その言葉にはどんな意味がある。

明石は人と関わる事は良い面も悪い面もあると言っていたが、やはり俺は
609 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:08:07.69 ID:vgGQ1HgcO
男「やはり関わるべきじゃないように思えたよ」

秋雲「はぁーーーーーーくっっっっさ!!」

男「は?」

秋雲「くっさいわぁマジくっさいわー。何それ、高二病?今どきそんなの流行んないって。なんてんだろ、シンジ君タイプの主人公?古い古いって」

画面越しに物凄く馬鹿にされた。しかもまるで虫けらでも見るような目で。

秋雲「今どきはもっと熱く燃えるヒーロー的なのが流行りなわけ。暗くてうじうじした話とかそんなんリアルで溢れてるじゃんありふれてるじゃん?タダでさえ戦争中なんだから」

俺は、なんだ、これ、説教されてるのか?

秋雲「大体課長がどうこうできる問題じゃないじゃん。そりゃ自分が原因だっていうなら別だけどそうじゃないし」

男「でも、」
秋雲「デモも一揆もないのだってもへちまもないの。そんなのチラシの裏か便所にでも吐き捨てといてよね。私まで辛気臭くなるし」

男「すまん」

秋雲「あー?なんて?聞こえないなー」

男「悪かった!謝る」

秋雲「そーそー、それでよし。お人好しなのはいいけどさ、それで自分を追い込んでちゃ意味ないんだからね」

男「肝に免じておくよ」
610 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:08:40.22 ID:vgGQ1HgcO
秋雲「ま、そのお人好しに助けられた私が言っても説得力ないか」

男「秋雲」

秋雲「なに」

男「ありがとな」

秋雲「…ふっふ〜ん♪そういうのをもっと言うべきなのよ。もっと私を敬いなさぁい」

男「あぁそうだな。感謝してるよ、秋雲」

秋雲「お、おぅ、うん…//」

男「秋雲?」

秋雲「なんかこう改まって言われると恥ずかしいなぁって」

男「お前が煽ったんだろうが」

秋雲「えへへ。ではおやすみ!」

逃げるように画面を消す秋雲。それでも声は聞こえてるはずだ。

男「おう、おやすみ」
611 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:09:35.67 ID:vgGQ1HgcO
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同日、【某事務所】

しーちゃん「はぁぁぁ…」


時雨「…おはよう」

しーちゃん「あ、おはようございます」

時雨「部屋入ってきたのにも気づかない程の溜め息って相当だよ」

しーちゃん「そんなに大きかったですか…?」

時雨「幸せ逃げるよー」

しーちゃん「この程度で逃す幸せならいらないですよ。あと今日はそこのデスク使えますよ」

時雨「明石さんいないの?」

しーちゃん「出張です」

時雨「ふぅん。いやいいよこっちので。あの人の使った後ってデスクトップゴチャゴチャしてるし」

しーちゃん「弄ると怒られますもんねぇ」

時雨「殆ど専用だもんねこれ」
612 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:10:13.67 ID:vgGQ1HgcO
北上「おはよーさん」ガチャ

時雨「おはよ」

しーちゃん「おはようございます」ハァ

北上「おっと、幸せ逃げちゃうよしーちゃん」

しーちゃん「それさっき聞きました」

時雨「それさっき言った」

北上「え、マジかぁ」

しーちゃん「ガス抜きみたいなものなので気にしないでください」

北上「事務所にそんなもん撒かないでよ」

時雨「北上はここ使う?」

北上「明石さんいないの?ラッキー」

時雨「躊躇なく使うよねぇ」

北上「動作軽い方が嬉しいし」
613 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:10:58.97 ID:vgGQ1HgcO
時雨「ところで今回の溜め息の原因は?」

しーちゃん「こちらの要求に応える気はまるで無いのにそうは言いたくないからとりあえず返しとくかと送られてくる無意味なメールに辟易してるんです」

北上「あーね」

時雨「北上聞く気ないでしょ」

北上「その手の話はわかんないもん。大体私らでどうこうできる事でもないっしょ」

時雨「それは、どう?」

しーちゃん「現状交渉事の代表に艦娘を出す訳にはいきませんからねぇ。私なら戸籍ありますし。偽名ですけど」

北上「ほらー」

時雨「偽名って、一応そっちが正式な名前なんでしょ」

しーちゃん「偽名ですよ。そもそも自分でつけたものですし」

時雨「だから本名はしーちゃん?」

しーちゃん「えぇ。しーちゃんです」

北上「大切な名前かぁ。なんかいいねぇしびれるねぇ」

時雨「でもしーちゃんはどうかと思う」

北上「それはそう」

しーちゃん「ちょっと」
614 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:11:38.04 ID:vgGQ1HgcO
金剛「Good morning!!」バァァン

時雨「おはよう」
北上「God morgen」
時雨「え、なんて?」

金剛「あら、しーちゃんは?」

時雨「ん」クイッ


しーちゃん「…」ハァ


金剛「Hey,しーちゃん!そんなんだと幸せが逃げちゃいマスよ〜」グイグイ

しーちゃん「あ〜金剛さんおはようございます」

時雨「ちなみにそれさっきも言った」

金剛「oh」

北上「ちなみに私も言った」

金剛「wtf」

しーちゃん「ぇーん助けて金剛さ〜ん」ダキッ

金剛「おーよしよし、頑張ってマスネ〜」

時雨「僕らの時と反応が違いすぎない?」

北上「包容力かっこ物理が違うんでしょ」

時雨「確かに」

北上「デカいは正義だねぇ」

時雨「僕だって北上よりはあるのになぁ」

北上「あ?」

時雨「ん?」
615 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:12:49.05 ID:vgGQ1HgcO
金剛「ところでなんでこんなになってるんデス?」ヨシヨシ

しーちゃん「出張やなんです」

北上「どいつもこいつも舐め腐った目で見てくるしね」

時雨「この前もほぼセクハラなこと言われてたもんね」

しーちゃん「選挙前ですし、あんなのでも仲良くしておかないと損ですからね…砲撃でも当たってくれればいいのに」

金剛「おっとこれは重症ネー」

北上「いいぞー言ったれ言ったれ」

時雨「クソジジイ共は全員墓場行きだー」

金剛「そこ煽らない。ちなみに次はどこ行く予定なんデス?」

しーちゃん「えーっと、あら」

金剛「?」

北上「お、あれはなんか企んでる顔だ」

時雨「逃げておこうか?」

しーちゃん「ちょっとやる気が出てきました」

金剛「…ははぁん、しーちゃんも物好きデスネー」

北上「えーなになに教えてよ〜」

しーちゃん「今日の仕事ぶりで決めます」

北上「じゃあいいや」

時雨「えぇ…」
616 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:13:44.02 ID:vgGQ1HgcO
金剛「では出張決定デスか?」

しーちゃん「決定ですね〜。では北上さんと時雨さんでジャンケン」

北上「え、なんで!?」

しーちゃん「勝った方が私の付き添いです」

時雨「えーなら負けた方じゃない?」

北上「罰ゲームじゃんか」

しーちゃん「そんなに嫌ですか?」

北上「嫌だ」

時雨「ずっとそばに立ってつまんない話聞くだけだもんね」

北上「というかなんで金剛さんは抜きなのさ」

金剛「私はscheduleが埋まっているのデース!」

時雨「なら仕方ない」

北上「というか何時行くの?」

しーちゃん「もうちょっと先ですね。今は作戦中でしょうし、台風も来てますから」

時雨「作戦中って、また鎮守府行くの?」

北上「鎮守府の方がマシか。いや鬼ヶ島んとことかだとヤダな、アイツら怖いし」
617 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 04:14:41.72 ID:vgGQ1HgcO
しーちゃん「鎮守府はついでです。本命はこの間挨拶した議員さんの所」

北上「あーアイツか。ならまあ、ギリギリセーフかな」

時雨「何がセーフなの?」

北上「こうギリギリ殺意を抑えられる感じ」

時雨「護衛失格すぎる」

北上「そっかぁじゃあ仕方ない時雨に譲ろう」

時雨「うわズルい。じゃあ僕も殺意と嫌悪マシマシで」

金剛「ハイハイさっさとどっちか決めてくだサーイ」

北上「よしメジャーだ。胸が小さいヤツがお供だ」ガタッ

時雨「よし来た。後負けた方はバストサイズ晒す事」ガタッ

北上「上等」



しーちゃん「仕事放り出されても困るんですけどね…」

金剛「体良く逃げられましたネ」

しーちゃん「ふふ、あの二人もすっかり仲悪くなりましたね」

金剛「しーちゃんNO、言い方がNOデス。言いたいことは分かりマスけど」

しーちゃん「…バストかぁ。私課で一番小さい自信ありますね」

金剛「しーちゃんはそのままでいいんデスヨー」ヨシヨシ

しーちゃん「あ、そういえばそろそろ制服が届くんでした」

金剛「New uniformデスか?何のEventに使う物デース?」

しーちゃん「イベント用では無いですよ。ただちょうどいい機会なので、ふふ」

金剛「おっと、悪い顔ネー」
618 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2021/11/28(日) 16:21:29.50 ID:W0JqC9FuO
そろそろイベントやらねば

人間大の大きさで嵐は無理なのではという話。
何より高さが足りないので索敵の難しさが一番船と差が出そうだなと。
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 17:26:20.38 ID:mPJYYi3Vo
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/28(火) 05:07:19.35 ID:kQGNWjAm0
おつ 気づかないうちに再開してて嬉しい 続きを楽しみにしてる
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