【艦これ】神風「最初の一人」

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121 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/09(月) 02:41:01.36 ID:PrUZMYEX0
提督「べ、別にそこまで急を要するものじゃなくないかい?」

叢雲「四の五の言わずにやるわよ。明日の仕事はいくつか私がやっておくからやるわよ」

提督「えぇ…」

男「…徹夜ってのはやったりするので?」

提督「たまに…」

叢雲「昔はしょっちゅうやってたものだけれど」

提督「若さは力だよ」

叢雲「まだ若造じゃない」

提督「二十後半辺りからくるんだよ、急に。呪いみたいなのが全身に」

叢雲「何よそれ」

男「…」

それは分かる。
122 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/09(月) 02:41:35.38 ID:PrUZMYEX0
提督「君達は寝なくても平気だけど僕らは寝ないと二三日は引きずられるんだよ…」

叢雲「いつもたっぷり寝てるんだからたまには頑張りなさいよ」

提督「えぇ…」

叢雲「ほら、やるからにはさっさとやるわよ!終われば寝れるんだから」

提督「やるとは言ってなくない?」

叢雲「 や る わ よ 」

提督「ハイ」

男「あーうん。頑張って」

叢雲「じゃまた明日」

提督「こっちの事はお気になさらず…」

男「気にはなるが、まあどうこういうものじゃない」

提督「それもそうだ。では、おやすみ」
123 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/09(月) 02:44:41.62 ID:PrUZMYEX0
E2までしか終わってない!

基本的に艦娘の好意的な態度しか見ないのでそうでない艦娘を書きたいなって。
人選は個人的睨まれてみたい艦娘トップ2からです。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/09(月) 06:04:51.43 ID:yaI3S5dFO
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/09(月) 20:31:11.66 ID:KS3efmdLo
おつ
126 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:34:29.98 ID:2t2tJjtO0
男「…」

扉を乱暴に叩く音で目が覚めた。

ベットに寝たまま手探りでスマホを手繰り寄せ時刻を確認する。

朝の6:18。

一体何の用だ?そもそも誰が扉を叩いているのか。

寝起きの機嫌の悪さを自覚しながらそれでも少し急ぎめで入口まで移動し扉を開ける。

男『はいはい、何の用ですか』ガチャ

叢雲「私よ、おはよ」

妙なアンテナが喋った。いや違う。

目線を少し下げるとそこには叢雲がいた。

男「叢雲?おはよう、どうしたんだ?こんな時間に」

叢雲「マルロクマルマル。艦隊総員起こしの時間よ。だからあなたも一応、ね」

ニヤリと笑う。うーんこの顔、さては嫌がらせの類だなこれ。

男「なるほどね。そりゃご親切にどーも」
127 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:35:11.03 ID:2t2tJjtO0
鎮守府の朝はどこも早い。

なんなら平日は灯りの消えない鎮守府だってある。

男「ここはいつもこの時間なのか?」

叢雲「そうね。6時に声掛けて、暫く猶予を与えた後布団にしがみついてる奴らを叩き起していくのよ」

男「ならこれからその叩き起しってわけかい」

叢雲「これからじゃないわ。今まさによ」

男「あぁなるほど。布団にしがみついてるとさっき叩かれていた扉みたくなってたわけだ」

叢雲「気をつけなさいよ。アナタは私達や扉と違ってそれほど頑丈じゃあないもの」

男「肝に免じておこう」

眠気はすっかり覚めていた。
128 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:36:17.26 ID:2t2tJjtO0
男「君の今後の予定を聞いてもいいか?」

叢雲「全員の起床を確認。今日の各自の予定を改めて通達、各自目を通したか確認。早番の娘達の航路や日程を確認送り出し。夜番の娘達の帰投確認、で報告受けてとりあえずは朝餉ね。司令官は、まあ起きないでしょうけど」

サラッと簡素に答えたがこれだけでもどれほど忙しいかわかる。

今は端末等で事足りるとは言え百を超える部下をまとめあげるのは並の苦労じゃない。

早番というのは恐らく早朝からの遠征や船の護衛だろう。夜番はそれを夜通しやっている艦隊か。

男「改めて聞くとえらい忙しさだ」

叢雲「この身体じゃなきゃ三日持たないわよ。それでも司令官は睡眠を取れって言うけれどね」

男「そうなのか?」

叢雲「ええ。わざわざ秘書艦を交代制にしてまでね。いい夢を見ろって事らしいわ」

男「いい指揮官じゃないか」

叢雲「そう?押し付けがましいと思わないでもないわよ。夢なんか見なくたって、私はあの人の隣いにいる限りは人であり続けられると思うのだけれど」
129 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:36:48.60 ID:2t2tJjtO0
男「あって欲しいという思いだよ。きっと」

叢雲「…ま、だから私から何か言ったりはしないのだけれどね」

提督と叢雲。二人の間にある信頼は少し変わったもののようだ。

最もその印象もお互いが人間だったら、という前提あってのものだが。

叢雲「それで、アナタの方はどうなのよ。今後の予定は」

男「あの娘の様子を見ているよ。起きるようなら一緒に朝食を摂りたいところだが」

叢雲「彼女次第ってわけね。はいコレ」

ポケットから何かを取り出す。ポケットあったのかその服。

男「これは?」

叢雲「アナタ用の連絡用端末」
130 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:37:32.86 ID:2t2tJjtO0
渡されたのは昨日叢雲も使っていたスマホだった。

叢雲「基本的に連絡機能だけが入ってるわ。それも鎮守府内だけの。そこら辺はアナタなら分かってるでしょ?」

男「そりゃな」

情報漏洩には意外な事に国が徹底して対策をとっている。流石にアイツらでも艦娘という存在が如何に重要かは理解しているらしい。

その為基本的に鎮守府と外部の連絡手段はかなり限られている。当然俺の普段使っているようなスマホはここじゃ電波が入らない。

叢雲「その端末の機能レベルは一番最低限のものになってるわ。外部との連絡は私か司令官のみ。後は執務室のコンソールね。観覧用のパソコンの置いてある部屋もあるけど、履歴とか全部外に送られてるからバレるわよ」

男「観覧用ってのはつまり娯楽としてって事か?」

スマホを操作して確認する。うん。今まで使ったことのあるものと同じだ。

叢雲「調べ物のため、って名目だけど実際はアナタの言う通りよ。今時娯楽がテレビだけってのはつまらないでしょ?」
131 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:38:36.20 ID:2t2tJjtO0
男「そりゃそうだろうな。よし確認した。何かあれば連絡する」

叢雲「連絡先は今のところ私と司令官だけ登録しといたわ。緊急なら電話。そうでないならメッセージでお願い」

男「…他の艦娘とも連絡先を交換したりできるのか?」

叢雲「可能よ。機能的にはね。でもその方がアナタはやりやすいかもね」

男「だから買い被りすぎだよ。分かった、ありがとう」

叢雲「それじゃ頑張ってちょうだい」

男「君もな」

右手をヒラヒラと振りながら去ってゆく小さな背中を見送る。

彼女を見て、はたしてその背中がかつて計り知れないほど沢山のものを乗せて海を渡っていたと分かる者がどれだけいるのだろうか。

少なくとも俺には分からなかった。
132 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:39:25.60 ID:2t2tJjtO0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

さて仕事だ。切り替えよう。

顔を洗い歯を磨く。その後ギリギリ社会人らしく見えるラインのラフなシャツとズボンに着替える。

流石にまだ半袖を着る季節ではないが、長居する事を考えると先に仕入れておくべきかもしれないな。

そんな益体も無い事を考えながらお隣さん家の扉を開ける。

男「…変わらずか」

寝ていた。昨日と違い桃色貞子にはなっておらず寝かせたままの姿勢、つまり仰向けのままベットにいた。

寝相とは脳が深く寝ているから起こると聞いた事がある。それでいえば昨日はちゃんと眠れていたという事なのだろうか。

そもそも艦娘の睡眠ってどういう状態なんだ?
133 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:40:35.31 ID:2t2tJjtO0
男『おはようございま〜す』ヒソヒソ

なんとなく小声で呼びかけてみる。別に寝起きドッキリというわけじゃないんだが。

『ん…〜』モゾモゾ

お?意外にも反応があった。つまり気を失っているのではなくあくまで睡眠状態にあるという事か。

男『ヒトナナマルマル。総員起こしから一時間たってるぞ』ユサユサ

身体を優しく揺すりながら普通に起こしてみる。

『んー…ん?』

男『よ、おはよ』

『おは、よう?』

普通に起きた。最初の頃より意識が安定してきているのだろうか?

『えっと、その、私また寝てたの?』

男『ああ、ぐっすりとな。今は朝の七時だ』

『朝…うーいつの間に寝てたのかしら』
134 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:41:12.84 ID:2t2tJjtO0
男『そこら辺は気にしなくても大丈夫だよ。起きられるか?』

『えぇ。問題ないわ』

そう言って上半身を起こし大きく伸びをする。

『久々に朝に起きた気がするわね』

男『ならきっとそうなんだろうな』

『よッ痛っ!』

男『!?どうした!』

『あ!ち、違うの!ちょっと髪を引っ張っちゃって…』

男『髪?あぁそういう事か』

長座体前屈の姿勢からベットに手を付き立ち上がろうとして、その長い髪を手で押えてしまいピンと張ってしまったようだ。

『…』サラサラ

不思議そうに自分の髪を触る。記憶が無いと自身の身体すらままならないか。
135 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:41:51.34 ID:2t2tJjtO0
男『身体に異常はないか?』

『異常?うーん、ないと思うけど、多分』

男『よし。なら朝食にしよう。一日三食が健康の基本だ』

『そういえば私何も食べて無いわね』

男『ちょっと待っててくれ』

スマホを取りだし叢雲にメッセージを送る。

男:彼女が起きた。とりあえず朝食を食べようと思う。

よし、これでしばらくすれば

叢雲:早いわね。了解。そっちに送るわ。

男『返信早いな…』

『ん?何何?』

男『叢雲からの返事がすげえ早くてな。よっぽど忙しいんだろうよ』

色々連絡取りまくってんだろうなあ。わざわざ朝食を持ってきてもらうなんて少し気が引けるな。
136 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:42:24.49 ID:2t2tJjtO0
『そうじゃなくて!そのちっこい板よ。なんなのそれ?』

男『ん?あー、そうか。そうなるわけか』

船の記憶のみならず現代の記憶も欠けているのか。

男『スマホって言ってな。最新の通信機器だ』

『おぉー』

凄いキラキラした目で見てくる。確かに知らなければ随分と不思議なアイテムだろう。

男『ま、それはあとだ。とりあえずは朝食を食べる準備だな』

部屋を見渡す。

家具は下が二段のタンスになっているこのベットのみ。食べるとしたらこの木の床になるのか…まあ掃除はされているようだし別にいいか?
137 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:42:52.83 ID:2t2tJjtO0
男『ん?』
『あら?』

廊下の方から何やら音がする。

男『なんだ?』
『足音かしら?』

随分と慌てた様子の足音がこちらにすごいスピードで近づいて、そして

飛龍『どーーっも宅急便でーーす!!』バァン!!

そいつは勢いよく扉を開けて入ってきた。

男『飛龍…』

相変わらず元気120%の様だ。

というか普通に彼女を他の艦娘に会わせてしまったが大丈夫かこれ!?

『…』ドンビキ

…すっげぇ引いてる。ドン引きしてる。無理もないか。提督、叢雲、俺ときて次がコレだもんな。

飛龍『…あのー、なんか反応が欲しかったり?』

男『廊下を走るな』

飛龍『えぇーそこぉ?よりによってそこぉ?』
138 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:44:53.81 ID:2t2tJjtO0
男『というか何でお前なんだ。叢雲は朝食を、を?』

"送るわ"、とそう言った。なるほどな、送るってそういう意味か。

飛龍『だからその叢雲に朝食持ってってって言われたのよ』

男『OK理解した。ありがとう』

飛龍『どいたま〜』

叢雲はそう判断したわけか。確かに他の艦娘達に慣れさせるなら飛龍はかなり向いていそうだが、それにしたっていきなりすぎるだろ。

飛龍『というわけで私!航空母艦飛龍です!よろしくぅ〜』イェイ

『よ、よろしくオネガイシマス』

声が小さくなっていく。完全にビビって縮こまる小動物状態なんだが。
139 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:45:41.72 ID:2t2tJjtO0
飛龍『ムフッ』

男『あ?』

なんだ?凄い気持ち悪い笑みを浮かべてなんか変な声を出しやがった。

一体何g
飛龍『会いたかったにょぉぉぉおおおお!!!』ガバァッ
『キャァァァアアア!!』ビクッ

それは艦娘の身体能力を遺憾無く発揮した動きだった。

僅かに体を斜めにし重心を前に倒しつつ膝を瞬時にバネにし彼女に飛びかかった。

それは淀みないスムーズさで気づいた時には彼女は飛龍によって再びベットに寝かせられていた。

もっとも今の布団は飛龍だが。すげぇな見事にルパンダイブしたのに衝撃を自分の腕だけで殺してやがる。流石艦娘。
140 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:46:49.40 ID:2t2tJjtO0
飛龍『ムフッ』

男『あ?』

なんだ?凄い気持ち悪い笑みを浮かべてなんか変な声を出しやがった。

一体何g
飛龍『会いたかったにょぉぉぉおおおお!!!』ガバァッ
『キャァァァアアア!!』ビクッ

それは艦娘の身体能力を遺憾無く発揮した動きだった。

僅かに体を斜めにし重心を前に倒しつつ膝を瞬時にバネにし彼女に飛びかかった。

それは淀みないスムーズさで気づいた時には彼女は飛龍によって再びベットに寝かせられていた。

もっとも今の布団は飛龍だが。すげぇな見事にルパンダイブしたのに衝撃を自分の腕だけで殺してやがる。流石艦娘。
141 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:47:44.84 ID:2t2tJjtO0
飛龍『あ゛あ゛あ゛ちっちゃーい!ちんこいちんちくりんー!!うわほっそ腕細!髪スベスベーウリウリ〜』

クリスマスプレゼントに欲しいぬいぐるみを買ってもらった子供でもここまで全力で堪能はしないだろってくらい抱きついて堪能してる…

『んーー!!んんん!!??』バタバタ

よしこれは流石に助けた方がいいなうん。

飛龍『ん?』ピタッ

男『お?』

止まった?

飛龍『…A、じゃないBか!Bはあるな!』
『んん!!??』

男『変態かお前は!』ベシッ

大した効果は見込めないが反射的に頭を叩いてしまった。
142 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:48:39.44 ID:2t2tJjtO0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

飛龍『あはは』

男『あははじゃねえよ変質者』
『』

飛龍『あははー…ごめんつい』

彼女は俺の後ろに隠れて飛龍に対して警戒態勢全開だった。当たり前だ。

飛龍『だって仕方なくなくなくない?』

男『仕方なくねえよ』

どうせろくな理由じゃねえ。まっくこいつは頼りになるんだかならないんだか…

飛龍『いやぁでもようやくちゃんと会えたわね、さk『あ゛あ゛あ゛ストォォプ!!飛龍ストップ!!』…え?』

『?』

男『あ、いや、その…』

やっべ思わず声を荒らげてしまった。

飛龍『えと、何が?ん?』

男『あー悪い。少し急用を思い出したすぐ戻る』

『え、ええ、分かったわ』
143 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:49:24.66 ID:2t2tJjtO0
飛龍『じゃあここで待ってるねー』

違ぇよお前も来るんだよ。今更不審がられることを気にしてもしょうがない気もするが、一応彼女に気づかれないように飛龍にアイコンタクトを送る。

気づけ!お前もちょっと外に来い!

飛龍『…?』

そうだこっちを見ろ!汲み取れ!

飛龍『……!』

お!

飛龍『!』パチンッ

すっごいいい笑顔でウィンクされた。

男『少し飛龍借りるぞ』グイッ
飛龍『えちょっ!』
『ええ!?』
144 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:49:58.81 ID:2t2tJjtO0
飛龍と共に廊下に出て戸を閉める。

飛龍『どうしたのよ急に。ウィンク変だった?』

男『んなわけあるか…』

飛龍『じゃ何よ』

男『…名前だ』

飛龍『名前?』

男『これは、まあ俺が言ってなかったのが悪いっちゃ悪いんだがな。飛龍、さっき彼女の事"さくら"って言いかけたろ』

飛龍『あーうんうん。言いそびれたけど』

男『"彼女を名前で呼んではいけない"』

飛龍『…はい?え、なんで?』

男『あ、いやほら。本当の名前が見つかる前に渾名があるのも変だろ、な?』

飛龍『はぁ、まあそれもそうか。でも呼び名がないのは不便じゃん』

男『そこら辺は、今提督と相談中だ』

飛龍『ふーん、ならしゃーないか』

とっさの事だったから凄い雑な誤魔化し方になったが、まあ納得したようなのでいいか。
145 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:50:42.94 ID:2t2tJjtO0
男『ともかく、彼女には不用意に接触するな』

飛龍『そんなに徹底するものなの?記憶がないってだけで』

男『あぁ、だってお前らは…』

飛龍『お前らは?』

男『悪いなn『何でもないってのはなしね』…』

飛龍『なら、昨日の貸し、ここで返してもらおっかな〜』

男『…お前ら艦娘は危ういからだよ』

飛龍『…それって人にとってって事?』

男『存在が危ういって事だ。彼女は特にな』

沈黙が廊下を埋める。飛龍の真剣な顔はなんというか、叢雲とは別の凄みがあった。
146 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:51:25.00 ID:2t2tJjtO0
飛龍『そっか。じゃ私は退散した方がいいかな。朝食は届けたし』

男『悪いな』

飛龍『悪いかどうかは、私が決めるから』

男『そりゃそうか』

飛龍『それじゃ!』

いつもの調子で変なポーズをとりつつ、部屋の前から立ち去ーらなかった。

男『飛龍?』

飛龍『ねえ、一個だけあの子に質問させてくれない?』

質問してもいいか、という問ではなかった。

質問をさせて欲しいという願いを口にした。

先程の真剣な顔に戻って。

男『…内容による』
147 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:52:00.45 ID:2t2tJjtO0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

飛龍『たっだいまー、朝ごはん食べよー』

『は、はい!』

男『あんまり怖がらせんなよ』

飛龍『怖がらせてない!怖がらせてないから!』

男『あれ、そういや肝心の朝食は?』

飛龍『これこれ』

『それは、お弁当?』

飛龍『そうそう。ホントは遠征とか遠出する娘用に用意されてるんだけどぉ、その予備のやつを丁度いいから食べちゃおって。余ったら勿体ないしさ』

男『そりゃありがたい。見ての通り食べる場所なくてな。弁当なら食べやすい』

飛龍『あー確かになんもないわねここ』

とりあえずは机を用意した方がいいかなこれは。後で考えておこう。
148 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:52:28.43 ID:2t2tJjtO0
『えっと、じゃあどこで食べようかしら』

男『弁当だからな。ベットに腰かけてか、床でピクニックか』

飛龍『床は止めといた方がいいと思うけどね。それじゃ配達員はここでばいなら!』

『ば、ばいなら〜』

古い…

飛龍『あそうだ!配達代代わりに一つ質問してもいい?』

『え、私に?』

飛龍『そう!』

なるほどそう来たか。恩着せがましい気もするが質問の仕方としては悪くない。

『いいけれど、あまり答えられる自信はないわよ?』
149 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:53:55.68 ID:2t2tJjtO0
飛龍『そう大したことじゃないって〜』

ベットに腰かけ緊張からか体を少し強ばらせる彼女の目の前に目線を合わせる形で屈む飛龍。

じっと、真剣に、でもやさしく彼女の薄らと桜色が透ける瞳を見つめる。

飛龍『貴方、何処か行きたいところはない?』

『行きたい、所?』

飛龍『そう。自分はそこに向かいたい。辿り着かなくてもいいから目指したい。そんな場所』

『うーん、えっと…ごめんなさい。ちょっとよく分からなくて』

飛龍『…そっか!ごめんごめんなんか変に重苦しくしちゃって。性格診断テストみたいなもんだからあんま気にしないで?それじゃバイビー!』ピューッ

『行っちゃった…』

男『なんだったんだ?』

『さあ?』

男『とりあえず朝食にするか』
150 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2019/12/31(火) 23:58:55.29 ID:2t2tJjtO0
どうして年末の方が忙しいんです

週一くらいで更新したい。
でも次はE6を無事突破出来たらですかね…
とりあえず晴れ着艦娘達を拝みます。
151 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/01(水) 00:04:24.85 ID:xm7/y7fL0
明けましておめでとうございます。

今年も少しばかりお付き合いしていただければ幸いです。
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/01(水) 01:46:43.63 ID:txX2po6Po
今年もよろしくお願いします!
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/01(水) 02:07:49.12 ID:LwjDEaAeo

ずっと違う名前で呼ばれ続けるとその名前が定着しちゃうみたいな感じかな
神風という艦娘じゃなくてさくらという艦娘になっちゃう的な
もう自分の名前わかんなくてもいっかって感じにもなりかねんし
154 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:24:17.59 ID:zTAKenQX0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

叢雲『どぉ?そっちは』

男『順調だ。トラブルがないって意味ならな』

叢雲『それは重畳』

端末の向こうからは叢雲の声以外に様々な艦娘の声が聞こえる。何処かで作業中のようだ。

叢雲『なら昼餉も必要って事でいいわね?』

男『ああ頼む。いや待て飛龍はもうなしだぞ』

叢雲『それについては悪かったわね』

男『とても悪気のある声とは思えないが』

叢雲『だから感謝をするわ』

男『感謝?』

叢雲『ええ。ありがと、飛龍を追い返さなくて』

男『…どの道いつかは頼っていただろうからな』
155 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:24:57.77 ID:zTAKenQX0
叢雲『じゃ昼餉が出来たら持っていくから楽しみにしてなさい。そうね、小半時くらいかしら』

男『お、おう。分かった、ありがとう』

通信が切れる。

『叢雲?』

男『あぁ。昼飯を持ってくるとさ』

『もうお昼なのね。時間が過ぎるのって早いわ』

男『だな。それまで休憩しとくか?』

『ううん。キリが悪いからこのまま解いちゃうわ』

男『分かった』

しかし小半時ときたか。一時が二時間で半時が一時間だから、三十分か。

…ババむさいというのもさもありなん。
156 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:25:59.45 ID:zTAKenQX0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

男『お、来たかな』

『ん?何が?』

男『足音だよ』

『足音、あー本当だ』

叢雲『もしもーし。持ってきたわよー』

廊下から声がする。ノックもなしという事は両手が塞がってるのか。

男『はいよー。お?鍋か』ガチャ

叢雲『入れ物はね』

男『うお、カレーの匂いが』

叢雲『ご明察』

男『誰でも分かるだろ』

叢雲『ご飯はこっち』

男『もうよそってあるのか。お代わりは?』

叢雲『ない』

男『マジか』

叢雲『そんなに食べる?』

男『いや別に』

叢雲『なら聞かないで』
157 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:26:28.55 ID:zTAKenQX0
叢雲『あ、しまったこの部屋食べるとこないわね』

男『それなら大丈夫だ。ほら』

叢雲『あら、この机って』

男『俺の部屋から持ってきたんだ。食べるのにはちょうどいいだろう』

部屋には高さ五十センチ程の四角い机が置いてある。小さめだが一応四人用くらいの大きさなので鍋を囲むには最適だ。

叢雲『それじゃお邪魔するわよ』

男『あ、紙どかさないと』

『はいはーい』

彼女が机の上のプリントを退かしていく。

叢雲『紙?』

男『あーその話はまた後で』

叢雲『ふん、まあいいわ。とりあえずカレーよカレー』
158 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:41:10.75 ID:zTAKenQX0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

男『いただきます』
『いただきます』

叢雲『…』ジー

男『…なんだよ』

叢雲『お味は?』

男『味?んー…ん、ん?』

普通に美味しいカレーだったが叢雲のいつも通りなツンとした態度になんとなく微妙な表情で返してみた。のだが


叢雲『え』


零れ落ちるような一声と共にもう戻ってこない飼い主を待ち続ける忠犬のような悲愴な表情で固まってしまった。

男『美味い!美味いぞ普通に!』

あまりに予想外の反応にこっちもテンパってしまう。

叢雲『 あ でしょ!!』

まるで時が止まったかのようなしばらくの間の後、身を大きく乗り出しいつもの得意げな顔に戻る。
159 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:42:02.82 ID:zTAKenQX0
『ん〜美味しいわ!私甘口の方が好きだもの。具も柔らかくて食べやすいし』

叢雲『そうよ〜。しっかり火を通しているもの』

男『お、おう』

ビビった。軽くあしらわれるか文句あるのかみたいな事言われると思ってたがまさかあんな反応をされるとは。

このカレー、叢雲が作ったんだろうな。誰かさんのために。

ったく振る舞われる野郎は幸せだな。

男『なんでそんなに喜ぶんだ?ひょっとして叢雲が作ったのか?』

我ながら大人気ないと思いつつもついからかってしまう。

叢雲『なッ!ち、違うわよ!これはぁその、白雪が作った…のよ』

男『ほほぉう』
叢雲『何よ!』

『お代わり!』

男『え』
叢雲『あら』

『…え?』

おかわりないんだよな。
160 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:43:07.87 ID:zTAKenQX0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

男『ご馳走様』
『ご馳走様』

男『さて、片付けに行くとするか』

叢雲『あら、いいわよ私一人で』

だろうな。カレーの鍋、ご飯の入った皿3つを乗せたトレイ。これらを一人でまるで軽いお届け物持ってきたくらいの感覚で運んで来ているんだからな。

鍋に至っては素手だ素手。そりゃ戦闘時の火器などによる熱に比べりゃ可愛いものだろうが。

だがしかし、

男『態々持ってきてくれたんだ。少しはお礼もしたい』チラッ

叢雲と話せるいい機会だ。自然と彼女をここに残していけるし。

さて今回はアイコンタクトできるだろうか。

叢雲『…あー、そうね。ならお願いしようかしら』

通じた。流石秘書艦。

『えっと、私はどうしたらいいかしら』

男『食べたばかりだし休憩してていいぞ』

『ならさっきの本の続きが見たいわ!』

男『それでもいいさ。留守番頼むよ』

『はーい』
161 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:44:30.12 ID:zTAKenQX0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

部屋を出て廊下を歩く。

叢雲が空になった鍋を、俺がトレイと重ねた皿を持つ。

叢雲『留守番とはまたうまいこと言うわね』

男『物は言いようだな』

叢雲『それで、何やっていたの?』

男『さっきのプリント。あれは問題集だ』

叢雲『問題集?』

男『大学入試の過去問やらをな。教科は数学と物理』

叢雲『そんなのやらしてどうするのよ?』

男『例えば、叢雲、この問題解けるか?』

端末を操作して保存してある問題の一部を見せる。

叢雲『んー解こうと思えばいけるわね』
162 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:45:31.25 ID:zTAKenQX0
男『その"解こうと思えば"ってのは具体的にどういう意味だ?』

叢雲『どういうって、そりゃあ…あー、なるほどね。そういうこと』

男『流石に理解が早いな』

叢雲『どうも』

船とはただ舵を握っていれば動かせるものではない。

大きなものになればなるほどただ海を進むだけでも様々な計算が必要になってくる。

まして砲撃、雷撃なんかを行うにはさらに複雑な計算を要する。

そして本来それらは船に乗る何人ものエリート達によって行われるものだ。

だが、艦娘はその身一つで一隻の船であり、一隻の船にもかかわらず一人でしかない。本来大勢の人間で行われる様々なものを一人で体現している。
163 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:46:31.11 ID:zTAKenQX0
男『こうして普通に過ごしている時と違って、戦闘中の艦娘の脳は凡そ人間離れした作業をしている』

叢雲『ええ。さっきの"解こうと思えば"ってのも戦闘態勢で脳をフル回転させればって意味だもの』

男『単純計算すれば艦娘の脳は優秀な軍人の脳の十や二十以上が並列化されているようなもんだ。スパコンと比べるには余りにも人間の範疇だが、普通の人間と比較すれば余りに人間離れしている』

叢雲『だからこそのテスト?』

男『計算ってのをきっかけに思い出すものがあるかなってな。結果はこの通り』

叢雲『これは?』

男『さっきのテストの点数』

叢雲『…見てもよくわからないわ』

男『偏差値は70以上。秀才だ。だが人の範囲だな』

叢雲『偏差値って何の統計よ』

男『あぁ、全国の受験生達と比べてって事だよ』

叢雲『受験…あーそういう。そっか、学生って奴か。そっか、そういう世界があるのね』

そう言って叢雲は廊下の窓から外を見る。彼女の持つ薄い空色のカーテンのせいで見えなかったが、その表情は想像に難くなかった。
164 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:49:15.72 ID:zTAKenQX0
男『俺も昔受験生だったな。もう二度とゴメンだし、出来れば忘れたいくらい嫌な思い出だがな』

つい、ついくだらない事を口走ってしまう。ただ誤魔化す為に。

叢雲『アナタの事は聞いてないわ。いいから話を進めてちょうだい』

ヒラヒラと片手でこちらをあしらう叢雲の呆れた表情に安堵しつつ会話を戻す。

男『あー、それでだな。さっきのテスト。普通艦娘にガチで解かせたら軒並み満点か凡ミスが少し出る程度の結果になる』

叢雲『まあそうね。引っ掛け問題なんかは慣れていないから間違えそうだけど、ええ、他は大抵暗算でいけるわ』

端末に映る問題を凝視しながらそう答える。きっと今俺との会話と並行して問題を解いているのだろう。こういう作業は艦娘だからできる事だ。

男『頭の中で計算ってどんな感じなんだ?』

叢雲『んー殆ど感覚的なものなのよねぇ。問題だけ見てあとは他の人に頼んでる感覚。人というか他の脳みそ?何せメタグロス状態だもの』

男『めた?』

叢雲『あ、気にしなくていいわよ』

男『そうか』

メタグロス。なんだろう。専門用語か?それなら俺でも知ってそうだが。
165 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:50:26.19 ID:zTAKenQX0
叢雲『それにしても記憶なくても解けるものなのね。あ、たまたま覚えてただけ?』

男『いや、どうも記憶と言うよりは知識の方らしい』

叢雲『それって違うの?』

男『例えば俺が記憶喪失になったとしよう。俺は誰、ここは何処ってなる』

叢雲『それで?』

男『そんな状態でも俺は二本の足で歩いて日本語での意思疎通ができる。記憶喪失ならそれはおかしくないか?』

叢雲『…確かに。言われてみれば記憶喪失って
なんだがんだ記憶あるわよね』

男『つまり経験の方の記憶は失われて知識の方はあるって事だ。彼女も経験の方はさっぱりだが知識は恐らくある』

叢雲『数学や物理は分かるってわけね』

男『他にもカレーに対する知識もな。甘口が好きってことは辛口の知識はあるみたいだ』

叢雲『となると記憶喪失ってそれほど厳しい状況でもないのかしら』

男『そこはなんとも言えないな。脳をタンスと仮定すれば彼女は恐らくどこに何をしまったか分からなくなってるんだ

そしてどういうわけか特定の引き出しは開けると爆発する』

叢雲『だからどれが爆弾の大元を探るために引き出しを一個ずつ開けていくしかないと』

男『そういう事だ』
166 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:51:08.80 ID:zTAKenQX0
叢雲『手当り次第試すってそういう事だったのね』

男『実際計算能力から記憶が戻った例があってな。だから試してる』

叢雲『あら、実例有りなの』

男『歴史と計算。とりあえずはここら辺が実例有り。さっき彼女が読んでいたのが歴史の教科書だ』

叢雲『それで、試して見たアナタの所感は?』

男『なんとも。一万まである数字の中からランダムで当たりが出るまで引き続けるみたいな作業だ。地道にやってくさ』

叢雲『ま、精々頑張って頂戴。応援してるわ』スッ

男『…なんだその手は』

叢雲『ここまででいいわよ。お皿。ここからは艦娘も多いし』

鎮守府の外れのあの建物はともかく食堂は鎮守府の中心に近い。当然艦娘も集まる場所だ。

男『ならお言葉に甘えよう』

叢雲『あともう一つ』

男『まだ何か』

叢雲『カレーの事言ったらコロス』

あ、からかってたのバレてたのね。

想像以上に怖かった彼女の目を前にして俺は黙って首を縦に振ることしか出来なかった。
167 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/01/19(日) 05:53:10.95 ID:zTAKenQX0
イベント海域逆RTA完遂

艦娘はきっと頭がいい、というより処理能力が高いんだという世界です。
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/19(日) 07:19:49.32 ID:sJHeB0agO
叢雲ちゃんかわいい
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/19(日) 22:01:13.12 ID:RBSr/U4mO
おつ
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/19(日) 22:56:59.10 ID:C1XCRMRfo
メタグロスはどっから……いつくか経路が
おつ
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/20(月) 09:46:02.53 ID:nVOx+n2Oo
おつおつ
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/21(火) 15:27:33.96 ID:OoD8MqGA0
小半時なんて初めて聞いたわ
有名なのは四半時(四半刻)だけどこっちは調べたら江戸時代だった
173 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:43:28.05 ID:qK3o3GJF0
"夕餉"のように古臭い言い回しをしそうだなというのが私の中の叢雲概念です。つまりババむs
174 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:45:00.42 ID:qK3o3GJF0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

一週間、という感覚。間隔。

この一見世間から隔離された鎮守府という空間。

しかし意外な程に世間と同じ一週間という感覚を共有して動いている。

一週間の天気は入念にチェックするし、当番や護衛艦隊の編成なんかも曜日で交代させている。

休日は人を乗せた船が多く通るし、輸送の船の種類や数は季節や時期にそって大きく変わる。

僕や彼女達にとって一週間という周期はそれなりの意味を持っている。

提督「なんというかまあ、意外と長いですよね。一週間」

叢雲「あっという間よ」

男「あっという間だな」

そう。彼が、そしてあの娘が来てから約一週間になる。
175 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:45:55.59 ID:qK3o3GJF0
夕飯を済ませ鎮守府が少しづつ静かになってゆくこの時間。いつもの会議も七回目になる。

提督「半ば様式美になってきたけど一応これから始めましょうか。どうです、彼女は」

男「残念ながらさっぱりですよ」

そう言って目の前の男は首振る。

いつも通りソファに座り部屋のテーブルを囲んで叢雲のコーヒーを啜るこの会議。気付けば彼が僕の向かいのソファの右側。そして僕の左に叢雲というのが定位置になっていた。

提督「流石にそろそろ違うアプローチを始めるべきなんじゃないですかね」

素人考えだが未知の相手であるのは彼も同じだ。的外れということもないだろう。

叢雲「そうね。流石にそろそろ名前も欲しいわ。"彼女"とか"あの娘"とか言うの面倒だもの」

そう言い放って叢雲が"コーヒーを啜る"。

ふむ。どうにも御立腹のようだ。
176 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:46:38.90 ID:qK3o3GJF0
男「"仮名"か。まあ、そうだな。そうする他にないでしょう」

"名前"。この話について彼はいつも言い淀む。

「本当の名前を探すのが目的なのだからその前に名前をつけるとややこしい問題が起こる」と言いあの娘を名前で呼ぶなとそう続けた。

それはきっと本当だろうし本音なんだと思うけれど、それ以外に何か、それ以上に何かを隠しているように思えて仕方がない。

提督「今あの娘の渾名って何があったっけ」

叢雲「ええっと、眠り姫、赤頭巾、座敷童子、さくら、撫子、赤子、後なんだったかしら」

提督「この中だったら何がいいですかね?専門家としては」

軽いジョークのつもりで聞いてみる。しかし

男「それはあなたの役割ですよ。俺じゃない」

酷く真剣な顔で返される。

こちらに対して何か隠し事があるのはまあ上層部に関わる人間である以上当たり前だろうと思えるけれど、それにしたってもう少し心を開いて欲しいものだ。

叢雲も叢雲で彼には警戒しろと再三言ってくるし。

再び叢雲を見る。

コーヒーがもう殆どない。
177 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:48:08.68 ID:qK3o3GJF0
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叢雲「名前だけじゃないわ。一週間、何の成果もなかったんだもの。何か大きく方法を変えないと埒が明かないわよ」

自分の口から出た言葉に自分で驚いてしまった。

私、思ったよりイライラしてる。

まったく!これじゃ本当に子供じゃない!何をそんなに苛立ってるのよ私。

どうにか気を紛らわせようとコーヒーを…あら、もうない。

男「そうだな。他の艦娘との接触。後は海や艤装に触れさせる事だな」
叢雲「そういう事なら今すぐでもできるじゃない。仮の名だってそうよ」

つい食い気味に言ってしまった。何よ、何を焦ってるのよ。

男「いや、だからそれは、彼女に負担をかけてしまう事になるから慎重に」

この眼。なにかに怯える眼。何度見てきただろう。

あ、やばいな私。
178 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:48:46.34 ID:qK3o3GJF0
叢雲「だからッ!!なんでいつもあの娘を腫れ物扱いするのよ!!一体何に怯えてそんなに縮こまってるのよ"アナタ達"は!!」バンッ

あー、やっちゃった。

机を叩いた痛みが少しずつ掌から伝わってくる。

でもそれと同じように、どうしてこんなにイライラしていたのかがようやく分かってきた。

別に今回に限った話じゃない。人間(コイツら)のこういう態度に、ずっとイライラしてたんだ。私は。

艦娘(私達)に近づいてくるくせに、艦娘(私達)に怯える人間(コイツら)に。

男「」

うわードン引きしてる。当たり前だ。まだ私睨んだままだし。

落ち着けー落ち着け私。深呼吸深呼吸。

提督「はいそこまで」ポン
叢雲「ヒャッ」ビクッ
179 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:49:17.81 ID:qK3o3GJF0
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叢雲「ちょっと!急に頭叩かないでちょうだい!!」

提督「えぇー、手を置いただけじゃん」

二人がまたいつもの痴話喧嘩を始めた。

しかしありがたい。おかげで一旦落ち着ける。

しかし、怯えるときたか。

確かにそうかもしれない。自分じゃ大丈夫だと思っていたが結局俺はまだトラウマを引きずってるようだ。

提督「ま、焦る気持ちは分かるんですけどね。僕らは一週間も彼女をあそこに閉じ込めているわけですから」

叢雲「そーね」プイッ

僕ら、か。

そうだ。彼女の事を案じているのは俺だけじゃない。立場は違えどそこは同じなんだ。

男「もう一度状況を整理しましょう」

一度冷静になるべきだ。
180 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:49:56.82 ID:qK3o3GJF0
男「記憶とは言ってしまえば五感から得た刺激が形作るものの総称です。故に記憶喪失の際はその五感に働きかけるのが効果的だ」

叢雲「御託はいいから結論だけ言ってちょうだい」ムスッ

バツが悪そうにそっぽを向きながら叢雲が一蹴してくる。

後でどう言い訳をしようか…

男「この一週間試せたのは三つ。

計算。これは彼女に知識がある事は分かったが記憶には繋がらなかった。

歴史。文献や写真。やはり第二次世界大戦の部分が抜け落ちていた。これらは新しい知識として教えれば問題はなかったが覚えてないかと尋ねると意識が保てなくなる。

艦名。艦名である事を伏せて名前や関連するキーワードを見せたり聞かせたりした。帝国時代に存在した日本の艦艇。改名されたものを含めれば400以上。その全てのワードで反応がなかった」
181 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:50:53.97 ID:qK3o3GJF0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

400以上か。ウチもそれなりに大所帯になっては来たけど、400っていうのはやはりかなりの数字だ。

提督「ここまで記憶が戻らないのはやはり異例ですか?」

男「計算に関しては前回たまたまそこから記憶の糸口が掴めただけで有効かどうかはなんとも。

ただ歴史や、特に名前。これらは彼女達の根幹とも言える部分。何も反応がない、というのは初めてです」

提督「ならやはり、彼女をあの部屋から出す、という方針でいいですかね」

提督「ええ、そうする他なさそうです」

叢雲「で!あの娘を外に出す場合どんな不都合が起こるわけ」

まだ怒ってはいるけど思考自体は冷静らしい。叢雲は感情が激しいからなあ。
182 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:52:52.92 ID:qK3o3GJF0
男「一つは力の暴走。艦娘の力は凄まじい。彼女がもし艤装を使えたとしても制御できるかは分からない。最悪それを止められるように見張りが必要です」

撃たれた事があると彼は言っていた。何が起こるかは確かに分からない。

男「もう一つ、やはり他の艦娘との接触は可能な限り抑えたい。一度に合わせるのは恐らく相当な負担になる」

これも同意だ。言葉だけでも気を失ったりするんだ。他の娘との接触は良くも悪くも影響が大き過ぎるだろう。

叢雲「…他の娘との接触だけならあの部屋で一人ずつ会ってもらうって事も出来るけど」

男「それはダメだ。やはり部屋を出てこの鎮守府に触れて欲しいと思う。彼女がなんであれ、ここに所属する艦娘であるのは確かなんだ。それを彼女に認識して欲しい」

ん?まあ言わんとする事は分かるけれど、それは別にそこまでこだわる事ではないようにも思える。

ましてこれまで消極的なアプローチしか取らなかった彼が。何か意図があるのだろうか?

叢雲「…」チラッ

叢雲と目が合う。叢雲も疑問を抱いたようだ。

叢雲「そう。なら艤装や海に触れさせる方を優先しましょうか。そうね、見張りに私ともう一人の他の娘を付けるのはどう?それくらいなら負担なく会わせられるんじゃない?」

男「そうだな。よし、そうしよう」
183 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:54:38.62 ID:qK3o3GJF0
提督「決まりだね。なら早速見張りと艤装運用の方法を考えよう」

叢雲「となるとまずは明石や夕張辺りに合わせることになるかしら」

男「いや、その前に一つやらなくてはいけないことがある」

叢雲「まだ何か?」

男「あぁ」

そう言って彼は端末を取り出して何か操作する。

ん?僕の端末が震えた。メール?

提督「これは」
叢雲「なになに?」ヒョコ

見覚えがある書類が添付されていた。

うわあ仕事が増えるなこれは。

男「協力者をこの鎮守府に、呼びたいんだ」

つまりその許可等の手続きをしろというわけだ。
184 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/05(水) 03:56:12.65 ID:qK3o3GJF0
Atlantaが可愛くてつい…

次は意外な協力者に来てもらいます。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 06:06:09.58 ID:lyMvRRcGO
おつおつ
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 15:37:57.65 ID:Z9W0euEMo
187 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/18(火) 02:17:29.64 ID:I2evzXDx0
鎮守府の正面入口。そこにある門の前で待機する。

男「お、来た来た」

鎮守府は大抵人の大勢いる港か人の寄り付かない沿岸の二種類の場所にある。

ここは後者だ。山に囲まれ外界と通じているのは海路か山の中を走るこの一本道だけだ。

海は勿論だが陸の監視も厳しい。一本道は最初と最後にゲートがあり許可なく入れない。山の方も色々と防犯設備が張り巡らされてるとか。

そんな一本道を鎮守府に向かってやってくる大型トラックが見えてきた。

思えばこうして直接会うのは久々な気がする。
188 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/18(火) 02:18:30.32 ID:I2evzXDx0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

男「よ、久しいな」

門の前で停車したトラックの運転席に声を掛ける。

「こちらこそお久しぶりです。かれこれ一年半ぶりですかね」

大きな車体に似つかわしくない小さな顔がひょっこりと顔を出す。以前と変わらない丸っこい顔だ。

男「え、そんなにだったか」

「いつもはメールか電話ですからね。お互い忙しい身ですし」

男「お前に忙しいと言われる程じゃないさ」

日向「取り込み中すまない」

戦艦日向。いや航空戦艦だったか。彼女が今日の門の当番のようだ。

日向「ここにサインと、いや、説明は不要か?」

「ええ、慣れてますから」
189 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/18(火) 02:19:50.56 ID:I2evzXDx0
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日向「よし、照合完了だ。通ってくれ。ゆっくりとな」

日向が端末を操作し門を開ける。

「はい」

門には色々とセンサーやら何やらがついてるらしく危険物や事前の申請以外の人間がいるかを見つけられるそうだ。

技術的な部分はよくわからんが、やろうと思えば抜けれるのではないかと思わなくもない。

「あ、トラックってどこに停めます?いつものグラウンドでしょうか?」

男「あー、鎮守府の端にある別棟というか、入って右にある建物の後ろに頼む」

「別棟…あぁ分かりました、はい。思い出したので。そこで準備しちゃっていいですか?」

男「頼む。終わったら執務室に、でいいか?」

「大丈夫です」

男「じゃ」

トラックが三台。静かに動き出した。
190 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/18(火) 02:20:47.12 ID:I2evzXDx0
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叢雲「なんだか不思議な感覚ね。夏に桜でも見ているようだわ」

執務室の窓からトラックを眺める。

提督「そんなに違和感があるのかい?」

叢雲「アンタはどうか知らないけど、私達にとってアレは生まれた時からある季節のイベントだもの」

提督「なるほど。言われてみればそうか。で、イベントとしてはどうだい?」

叢雲「…ま、別に悪い気はしないわね。人間相手じゃないからってのもあるけど」

男「それを聞いたら彼女達は喜ぶよ。そのために頑張っているからな」

いつの間にか課長が戻って来ていた。

提督「おかえり。問題なかったですかね」

男「ええ。後は準備して診察するだけです」

提督「こちらも朝礼であそこには近づくなと皆に伝えてあるので恐らく、大丈夫だと思います」

叢雲「大丈夫よ。その位は弁えてるわ」

一部駆逐艦辺りで少し不安なのがいるけど。
191 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/18(火) 02:21:47.85 ID:I2evzXDx0
叢雲「しかしまさか健康診断とはね」

健康診断。司令官が年に一度遠くにある軍の施設で受けるものとは違う、艦娘の為の健康診断。

ウチでは毎年秋にああやってトラックで機器が運ばれてきて艦隊全員が例外なく受診する。

男「本来書類上必要な事でもあるんだ。鎮守府の外、つまり海で艦娘を活動させるのに診断を受ける必要がある」

叢雲「ならあの娘の場合は?」

男「今言った事もそうだが、何より本当に俺達の知る艦娘なのかちゃんと調べておきたいからな」

私達の知る艦娘、ね。

逆に

提督「僕達の知らない艦娘、というのはどういった場合を指すんですか?」

男「分かりませんよ。何せ知らないんですから」

叢雲「そりゃそうね」

あの娘がそうでないという保証は、確かにないわね。
192 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/18(火) 02:22:32.95 ID:I2evzXDx0
男「ところで叢雲。健康診断の時のスタッフ。君はどう思う?」

叢雲「どうって、また随分あやふやな聞き方ね」

男「別に深い意味は無いんだ。艦娘にとってどういう印象なのかを参考までに聞きたかっただけだ」

叢雲「ふーん。ならそうね、好印象よ。驚く程ね」

男「そりゃよかった」

叢雲「…なんだか妙にこだわるわね、そこら辺。アナタも関わりがあるの?」

男「うむ、まあそうだな。あると言えばある。お」

「失礼します」コンコン

控えめなノックとともに扉の向こうから声がする。

大人しく、落ち着いた、しかしそれでいて中にいる私達にしっかり届く、女性の声だ。

提督「どうぞ」
193 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/18(火) 02:23:31.05 ID:I2evzXDx0
叢雲「…」

艦娘だ。

予感なんてものじゃない。確信がある。

私達艦娘は大抵そういうものだ。

人間が私達艦娘を見てなんとなく直感的に"人じゃない"という感覚を覚えるのと似ているけれど、私達の方はもっと確信的だ。

例え初対面でも艦娘は艦娘に会えば自分と同じだとわかる。

声や雰囲気、オーラというか、ともかく何かがそう確信させる。


扉が開きその女性が入ってくる。

茶色っぽい髪は首の後ろで結えられている。長さは肩に触れる程度か。

身長は私よりも少し高いくらい。軽巡クラスといったところかしら。

白い襟の深緑のセーラー服に生成りのパーカーを羽織っている。見たことの無い服装だけれど何型だろうか。海外、ではなさそうなのだけれど。

黒いふちのメガネに黄緑色の瞳。人懐っこそうな、猫のような印象を受ける。

ふむ、
194 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/18(火) 02:24:30.76 ID:I2evzXDx0
叢雲「…え、誰?」

提督「え?」

叢雲「いや待って、アレ?」

提督「誰って、初対面で名乗ってもないのに開口一番それはどうなんだい」

叢雲「違、違うのよ…確かにそうなんだけど、んん?」

艦娘だ。間違いなくそう感じる。なのに、それなのに。

誰だ?見た事ない。知らない。

現在世界で確認されている艦娘のデータは全部一通り見ている。でもその中に彼女はいなかった。

それに司令官が申請した書類にあった今回のスタッフの数は三人。その内艦娘は二人で私も知っている顔ぶれだった。

どういう事?だって目の前の彼女は"間違いなく人じゃない"

男「えっと、とりあえず紹介してもいいかな」

提督「あーうん、お願いします」

課長が彼女の横に立ち私達の方を向き直る。そして
195 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/18(火) 02:25:10.48 ID:I2evzXDx0
男「こちら、海軍情報部三課課長の」

「しーちゃんです。どうぞよろしくお願いします」ペコリ





叢雲「…」
提督「…」


叢雲「は?」
提督「え?」

男「しーちゃんです」

叢雲「え、なに、馬鹿にしてんの?」

男「気持ちは分かるがそうではない」

提督「しかも情報部三課で、課長?」

しーちゃん「はい。課長を務めております」

叢雲「それでえっと、その、」

しーちゃん「しーちゃんです」

叢雲「」
提督「」

あ、ダメだ。処理能力が追いつかない。
196 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/18(火) 02:27:13.91 ID:I2evzXDx0
男「これがあるから面倒なんだよ…」ハァ

しーちゃん「なら過去の自分を恨んでくださいね」ニコニコ

男「お前絶対楽しんでるだろ」

しーちゃん「滅多に無い機会ですから楽しまない手はありません」フンス

男「他人事だと思って」

しーちゃん「何せ人の事ですから」

男「でぇ、えー何から説明するか」

しーちゃん「あーでももうすぐ機器の用意が終わるので手短にお願いします」

男「出来るかっ」

叢雲「一つ!」

しーちゃん「はい?」

叢雲「一つ確認するわよ。そのしーちゃんってのはあだ名よね」

しーちゃん「いいえ」

男「…」

しーちゃん「れっきとした私の名前です」

それまでの穏やかな表情を崩してハッキリと彼女は断言した。
197 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/02/18(火) 02:28:50.56 ID:I2evzXDx0
サンリオには行けなかった…

しーちゃん可愛い。結わえているのも解いているのもいい
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/18(火) 14:54:09.57 ID:sTJ2K/3ho
C2機関娘かぁ……そら艦娘じゃ分からんわ
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/18(火) 23:18:21.35 ID:2u6ftI4VO

前にあだ名で読んじゃいけないみたいな事があったけどこれが失敗例なのかね
あだ名が名前で定着しちゃった感じ?
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/19(水) 22:17:04.83 ID:X9V9wLHtO
乙です
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/11(水) 01:57:35.37 ID:oOMMh9mg0
おっつおっつ
次も楽しみだ

202 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:22:42.26 ID:w9F8Uh920
叢雲「…はいどうぞ」コト

しーちゃん「ありがとうございます?」

全員にお茶を出して私も席に着く。

私の隣に司令官、向かい側に課長と…しーちゃんが座る。

課長の横に座っているためか彼女の小柄という印象に拍車がかかる。

提督「それでえっと、情報部三課のしーちゃん、さんですよね」

しーちゃん「しーちゃんでいいですよ。あ、でもしーさんはやめていただけると幸いです。なんかこそばゆいので」

柔らかく微笑む。見る者に無害であると思わせるその表情が返って私の警戒心を煽る。

提督「では、しーちゃん。その情報部三課というのがそもそも聞き慣れない組織なのですが」

そう、そうよ。海軍にも色々な組織がある。

けどこうして鎮守府に直接関わるような組織はそう多くない。まして私達が聞いた事ない、なんて事はないはずだ。

しーちゃん「それはまあ情報部ですからね。あまり目立つ事はしません。でも例えばこれ」スッ

ポケットから取り出したのは、端末?私のとは少し違うようだけど。

しーちゃん「こういった端末や鎮守府のシステムなんかは情報部一課が深く係わってたりします。二課は、ちょっと詳しくは言えませんね。でもあそこは基本鎮守府には係わってません」
203 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:23:22.26 ID:w9F8Uh920
提督「確かにシステム面は特に気にせず使っていたけれど、そりゃ誰か作った人がいるわけですよね」

しーちゃん「そして私の所属する三課。ここは比較的最近できたものですね」

叢雲「組織の目的は?」

しーちゃん「んー、情報の発信。あるいは誘導、って所でしょうか」

つまり教える気はないということね。

しーちゃん「あ、名刺ならありますよ。名刺の役割を果たしてはいませんけれど」

そう言ってパーカーの下から首に下げた名札ケースを出す。その中にあった名刺を一枚司令官に渡した。

提督「…連絡先と所属、ID。以上」

叢雲「名刺なのに名前が無い…」

しーちゃん「顔写真はあるので一応私のと分かるはずです」

男「名前は諸事情によってなしだそうだ。しーちゃんと書くよりは不明の方が信用されそうだもんな」

しーちゃん「そうなんですよねぇ」

困り顔で微笑まれたが困惑してるのはこっちの方だ。

結局何一つ分からなかった。なんなのよこいつ。
204 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:24:36.12 ID:w9F8Uh920
叢雲「…」

どうしよう。怪しいのが増えた。

むしろ課長よりもこの女の方が私としては怪しい。司令官にはきっと分からない。この"艦娘なのに艦娘ではない"という感覚。

提督「二三質問してもいいですか?」

しーちゃん「質問は構いませんがお答えできるかは分かりません」

提督「簡単な質問です。YESNO程度で簡単に答えてる形で構いません」

しーちゃん「分かりました」

提督「年に一度の艦娘達の健康診断。あれは貴女の組織が関わっているのですか?」

しーちゃん「YES、というより私達が主導で始めたものです」

提督「最近できた組織と言いましたが、貴方が設立を?」

しーちゃん「NO。私は何も出来ませんでしたから」

提督「では最後に、貴方は"提督"ですか?」

しーちゃん「…それは提督というものの定義によりますね。ですが私の基準で言えばNOです」

提督「…分かりました。とりあえずは彼女の診察の方をお願いします」

しーちゃん「はい。お任せ下さい」
205 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:25:23.50 ID:w9F8Uh920
しーちゃん「それで診察の事なんですが、接触する人数は少ない方がいいとの事でしたね」

男「あぁ。負担は出来るだけ減らしたい」

しーちゃん「では私と男さんの二人でよろしいでしょうか?」

提督「それに関してはお二人にお任せします」

しーちゃん「分かりました。それで、今準備をしているウチのスタッフ二人なのですが、この部屋で待機してもらっても構いませんか?」

提督「それは大丈夫ですが、何故ここで?」

しーちゃん「色々と話したい事があるのではないかと思いまして、ね」

そう言って女が私を見て口元を歪ませる。

なんかイラッとくる。微笑む、という表現で間違いはないのだろうけれど、この女の猫のような瞳とそれをキュッと細めた表情はなんだか見透かされているようで落ち着かない。

叢雲「…いいんじゃないかしら。私は構わないわよ」

提督「そうかい?ではそういう事で」

しーちゃん「はい」
206 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:26:21.78 ID:w9F8Uh920
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

執務室がいつも通り私と司令官だけになる。

叢雲「…」

提督「…」

叢雲「…」

提督「…なあ叢雲。さっきからどうしたんだい?」

叢雲「不機嫌なのよ」

提督「それは見ればわかるけど…別に警戒するような相手では無いと思うよ?」

叢雲「…そうね」

その判断に間違いはない。

組織としては彼女の情報部三課とやらにウチの鎮守府は敵対する意味は無い。というか基本あっちが優位だし揉め事は勘弁だ。

例の健康診断を見る限りも、彼女の組織はとても友好的だ。私達にとってそれはとても大切な事だ。

でも

叢雲「あの見た目で、しかも女で課長よ?古き悪しきの塊みたいな軍でそれは警戒するには十分過ぎると思わない?」

彼女が艦娘だと感じたという話は黙っておこう。これは私の問題だ。

提督「なら今回の事でそれを判断すればいいさ」

叢雲「少しは疑う事を覚えなさいよ」

提督「もう少し信用する事を覚えてもいいんじゃないかい」
207 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:28:39.09 ID:w9F8Uh920
叢雲「…」

提督「…」

ここで揉めても仕方ないか。こうやって今までも私達はバランスを取ってきたんだし。

「失礼します」コンコン

提督「どうぞ」

この声には聞き覚えがある。事前の書類で見た残りの二人。

時雨「初めまして。情報部三課、時雨です」ペコリ

北上「北上でーす」イェイ

叢雲「あら」

見知った顔だが二人共服が制服ではなかった。

それに何より"人間の言葉を話している"。

提督「宜しく、二人とも」

北上(佐世保mode)「ほほぉ、中々いい部屋ですなあ」

軽巡洋艦、北上。制服とは真逆なロングスカートにシンプルな服。え、これでトラック運転してきたの?嘘でしょ?

時雨(佐世保mode)「こら北上、あんまりうろちょろしないで」

駆逐艦、時雨。こっちは制服をアレンジした感じでオシャレ。オシャレすぎる。オシャレとかよく分からないけれど。しかもメガネだ。

提督「構わないよ。診察には時間がかかると言っていたし、ゆっくりしてていい」

北上「だってさ」

時雨「もぉ…」
208 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:29:36.51 ID:w9F8Uh920
ここはひとつ試しに、

叢雲『はいコーヒー』コト

時雨『どうも。でも"それ"は要らないよ』

叢雲「…みたいね。二人共ミルクと砂糖は?」

北上「なんか甘いのないの?」

時雨「砂糖多めで」

叢雲「牛乳ならあるわよ」

北上「牛乳…牛乳って甘いと言えるかな?」

時雨「知らないよ…」

叢雲「後こっちも、自由に食べていいわよ」

時雨「お構いなく」

北上「おー饅頭あるよ饅頭。こうなると牛乳は合わないかなぁ」

叢雲「次は熱いお茶が一杯怖い、って?」

北上「ん?あぁ、はは、そうだね。ちなみに一番怖いのは羊羹かな」

時雨「怖い?」

北上「気にしなーい気にしなーい」
209 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:32:00.34 ID:w9F8Uh920
提督「二人はいつも健康診断の時にいた北上と時雨、でいいのかい?」

北上「ふぉれえあっえうお」モグモグ

時雨「食べるか喋るかどっちかにしなよ」

北上「」モグモグ

時雨「…うん、基本的に診断の際のスタッフはいつも同じなんだ。僕らの他に金剛、響、瑞鳳、明石が主要メンバー。後はその時々で一人二人つく感じだね」

提督「なるほど。ならお久しぶり、と言うべきなのかな」

北上「まーそうは言ってもウチら直接会った事はないしね。そういうのは金剛さんか瑞鳳さんに任せてたから。ここの時は大体金剛さんじゃない?」

提督「そう言えばそうだね」

叢雲「…」

へぇ。意外と考え無しってこともないのね。

今の時雨と北上の話した内容は間違いなく当事者だからこそ言える内容だ。

カマかけ、という程じゃないけれどしっかりと警戒はしていたようね。

叢雲「それで、さっきしーちゃんと話していたのだけれど途中で終わっちゃったのよ。一つ聞きたいのだけれど」

北上「なになに?年収とかの話?」

時雨「なんでそうなるのさ」

なら私も踏み込んでみようかしら。
210 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:33:04.32 ID:w9F8Uh920
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

叢雲「情報部三課の活動と目的」

時雨「ん?」

提督「!?」

叢雲?おいおいまさか…

叢雲「艦娘の為、という話は聞いたけれど詳しくはアナタ達から聞いてと言われたの」

北上「うへーめんどくさい事押し付けていきやがったぞあのチェシャ猫」

思いっきり騙しにかかった!悪びれもせず!躊躇なく!

でもそれが知りたいのも事実だ。どうする、このまま上手くいくかな?

時雨「ふーん、そこまで話してたんだ」

北上「随分話が早いもんだ」

時雨「なら、もうしーちゃんの本名は聞いたんだ」

本名!?流石に"しーちゃん"っていう名前は本名じゃないのか。しかしこれはどうする?詰んでないかな?

叢雲「…聞いたわ」

半ば諦め気味に叢雲が答える。

時雨「へぇそうかい。なるほどなるほど」

ニヤリと笑う時雨。

あらら、完全にしてやられたな。というより思ったより用心深かった。
211 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:34:39.48 ID:w9F8Uh920
時雨「あはは、残念。しーちゃんは本当にしーちゃんなんだ。本名なんてないよ」

叢雲「嘘でしょ!それはそれでビックリなんだけど…」

提督「はぁ」

やれやれ。最初に仕掛けたのは僕だけど、まさか叢雲があそこまでグイグイ行くとは思わなかった。

北上「んー?ん、あーそういう事か。わおウチらめっちゃ警戒されてんじゃん」

叢雲「なんていうかその、ごめんなさい…」

提督「僕からも謝罪しよう。叢雲を止めなかったのは僕の意思だ」

時雨「いや、いいよ。むしろそれが普通だしね」

北上「なんせ初対面でいきなりしーちゃんだもんね。これが名前ですって。怪しまない方がおかしいってあんなの」

随分とバッサリ躊躇なく意見を言うな北上。北上らしいと言えばそうだけど。

改めて考えるとバランスの取れた二人と言える。
212 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:36:19.40 ID:w9F8Uh920
時雨「でもね、しーちゃんが名前を名乗るって事はそれだけ相手を信用してるって事なんだ。元々二人には僕らの事を話すつもりだったんだよ」

北上「でもその前にお菓子追加で、後牛乳。罰ゲームね」

時雨「北上」

北上「いやいや、これはちゃんと意味があるんだって。立場あるもの同士が揉め事をチャラにしたいって時は謝罪とそれに対する罰が一番なんだって」

時雨「それは、まあ確かに」

それに二人とも随分と人間に慣れている。色々な面で。

叢雲「りょーかい。牛乳とお菓子ね。何かリクエストは?」

北上「和菓子ー」

叢雲「はいはい」

叢雲が席を立つ。和菓子か、他にあったっけな。
213 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:37:15.43 ID:w9F8Uh920
時雨「さて、話すとは言ったけれど何から話したものかな」

北上「全部説明すんの?めんどくない?」

時雨「勿論話せる範囲でだけど、事細かに説明してもしょうがないし掻い摘んでだね」

提督「さっきしーちゃんは情報の発信、誘導と言っていたよ」

時雨「それは概ね正解だね」

北上「情報部としての仕事は基本それだよね。まーそんな仰々しいもんじゃなくて実際は単なるプロパガンダ。てゆーかパンダだよパンダ。白黒ハッキリしないとこなんかそっくりだね」

時雨「パンダ?」

提督「客は誰だい」

北上「国民」

時雨「あぁそういう意味か」

提督「国民ね。軍人らしい言い回しだ」

北上「そりゃどーも」
214 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:37:55.31 ID:w9F8Uh920
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『よ、よろしくお願いしらす!』

自分を閉じ込めている小さな部屋でさらに縮こまるような形でお辞儀をする。

しーちゃん『そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。軽い健康診断ですし』

しらす…うん相当緊張してるな。

しーちゃん『予め聞いてはいると思いますけど改めて、本日貴方の診察を担当しますしーちゃんです』スッ

『あ、どうも』

しーちゃん『あら暖かい手。それにまだ白い』

『そ、そうかしら』

しーちゃん『えぇ。さ、行きましょう。車はすぐそこに停めてあるから』

『はい!』

触れて、笑顔で話す。彼女の緊張は幾ばか解れたようだ。
215 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:39:10.20 ID:w9F8Uh920
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『わぁー…』

しーちゃん『どうです?これ全部私のなんですよ』エッヘン

『凄い!なんかこう、カッコイイわね!』

しーちゃん『んーカッコイイかはともかく凄いのは確かですよ。三台とも世界に一つしかない特注品なの』

男『いやお前のではないだろ』

何故か建物横に停められた三台のトラックに目を輝かせている。何故…

カモフラージュの為まるで運送トラックの様にしーちゃんの趣味全開なデコレーション?がされているのだ。カッコイイ…のだろうかこれは。

しーちゃん『では早速行きましょう。あー靴は脱がなくていいですよ。そのまま階段でトラックの中に』

『はーい』
216 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:40:16.29 ID:w9F8Uh920
男『じゃあ俺はここで待ってるよ』

『え?』

男『ん?いや、俺は外で待ってるから安心してくれ』

『そう、なの』

しーちゃん『…何言ってるんですか。付き添いが付き添わなくてどうするんです』

男『は?』

しーちゃん『大丈夫ですよーこの人言う事やる事コロコロ変わる人ですから。ほら男さんも早く』

『あら、中は結構広いのね』

男「おい!なんで俺まで中に!」ヒソヒソ

しーちゃん「不安がってる女の子残して外で待つとかありえないでしょ」ヒソヒソ

いつものイタズラ猫の様な顔でそんな事言われてもなあ!

『しーちゃん…さん?私どうしたらいいのかしら』

しーちゃん『そこの椅子に座っててください。すぐ行きますから』

だが彼女が俺に着いてきて欲しいと思ってるのは事実だろう。あまり気は進まないが…

しーちゃん「どうします?」

男「行くよ…」

しーちゃん「そうですね、貴方はそうするべきです」ニヤ

こいつ…
217 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:41:55.80 ID:w9F8Uh920
しーちゃん『ではまず服を脱いでください』

男『おい』

『はーい』

男『おいぃ!?』

しーちゃん『『え?』』

男『二人してそんな不思議そうな顔をするな』

しーちゃん『でも脱がないと測定とか出来ませんし。あ、下着はそのままで。というか下着はちゃんと現代の物なのね』

『こう言ってるわよ?ちなみに下着は叢雲から借りてるわ』

男『それは出来れば知りたくなかった…』

『?どうして?』

男『見ていて複雑な気持ちになる』

この白いブラと下着が叢雲の…いやらしさは無いがなんかこう、複雑だ。

しーちゃん『この娘の下着ならいいって言うんですか』

男『そうは言ってない』

しーちゃん『へー、この着物細かいパーツはないんですね。楽でよかった』

『パーツって?』

しーちゃん『着物って中に着たり巻いたりする物が多かったりするの。貴方のはその点とても簡素で良さそうと思ったんです』

『そういうのもあるのね。一度着てみたいわ』

なんだろう。目を背けておきたいがこういう時それをやると逆に恥ずかしい気もする。どうすればいいの俺。
218 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:43:35.62 ID:w9F8Uh920
しーちゃん『さて、では簡単な測定から行きましょう。寒くはない?』

『ええ。とても暖かいわ』

男『…』

ここまで来て俺ここにいる必要あるか?とは言えない。もういい、割り切ろう。仕事だこれは。

しーちゃん『まず身長体重と、これらの器具は知ってますよね?』

『ええ、知ってるわよ』

しーちゃん『では最初はここに』

目の前の少女を改めて観察する。

撫子、赤子、眠り姫、赤ちゃん、紅、緋色…なんとかさくら。

様々な呼び方があるがその多くが彼女の最も特徴的な部分、つまり紅色のロングストレートを指している。

今の所その最も特徴的な部分は一切彼女の名前に結びついていないが。まあそれ自体はよくある事だ。叢雲だってあの髪色は船と関係はない。

身体的特徴が当てにならないのは既に知っている。
219 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:44:37.93 ID:w9F8Uh920
身長は駆逐艦としては並だ。体重も、見た目より少しずっしりとくるがけして重いわけではない。

しーちゃん『手を上げて、こうバンザーイって』

『これは?』

しーちゃん『バストウエストヒップの計測です』

『…それも必要なの?』

しーちゃん『勿論!』

胸は、人間で言えば発育が進んでいる方だろうが艦娘で言えばこちらも並だろう。これに関しては一部駆逐艦がおかしいのだが。

腰はクビレというより痩せているといった感じだ。なんだか少し心配になる。もっと食え。

下半身は逆に少し肉付きがいい。太っているというのではなく子供特有の柔らかさと言うべきか。

しーちゃん『…』

『?』

男『…ん?どうした』

しーちゃん『何ジロジロ見てるんですか』

男『変な目ではない。お前とやってる事は同じだ。というか他にどうしろと』

しーちゃん『冗談です。後は長座体前屈と握力と』
220 : ◆rbbm4ODkU. [saga]:2020/03/11(水) 04:45:08.27 ID:w9F8Uh920
男『そんなに色々あったか?』

しーちゃん『ええありましたよ。ありましたと』

つまり、今回の特別仕様か。どういう意図かは後で聞くとしよう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

しーちゃん『はい。これでここでの測定は終了です。一旦この服を着て隣のトラックに行きましょう。向こうでもすぐ脱ぐので』

取り出したのは病院などで見る患者服だ。

『わーこれも可愛いわね』

しーちゃん『緋色という特徴を男さんから聞いていたのでそれに近い色を持ってきました。帯をつけたらこれも案外着物っぽく見えそうですね』

患者か…嫌な言葉だ。勝手な思い込みだが、そう感じてしまう。

しーちゃん『行きますよ?』

男『あぁ』
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