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【艦これ】神風「最初の一人」
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1 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/27(日) 03:38:15.76 ID:LAC9GZ1m0
まだ朝の冷ややかさが残るとある鎮守府。
その敷地内の端に位置する建物の廊下に俺達は立っていた。
男「中々立派な部屋ですね」
扉の前で俺はそう言った。
勿論言葉通りの意味ではない。
他の部屋とは明らかに材質の違う頑丈な壁。
ちゃちなドアノブがあまりにも不釣り合いな堅牢な扉。
間違いなく中からではなく外から監視するためにある覗き穴。
これを牢獄だと言って否定する者はいないだろう。
普段から使われていないのか一切の気配を感じられないこの建物の中でさえ異質と言えた。
提督「でしょう?上から口酸っぱく言われましてね。可能な限り"いい"部屋になってますよ」
そう言って隣の男は肩を竦める。
俺と殆ど変わらない身長で、軍人とは思えないほどの細身を白い軍服で包み、いかにも知将といったふうな黒縁の眼鏡と、それとは対称的に柔和な顔立ちをしている。
どうやら俺の言葉がいくばか皮肉を含んでる事は理解しているようだ。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1572115095
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/10/27(日) 03:41:39.86 ID:LAC9GZ1m0
男「最後に、もう一度その時の状況を聞かせてもらっていいですか?」
提督「もう一度?報告書に事細かにまとめたはずですが」
男「こういうのは本人に直接聞いた方がいいんですよ」
提督「ほほう。なんだがプロっぽくていいですね」
自分をプロ、と言っていいのかは分からないが理由はそんなんじゃない。
上を通して届けられる文字の羅列なんて一切信用が出来ないというだけだ。
提督「そうですね、報告書と違って長々と書く必要もないので要点だけ話しましょう」
男「お願いします」
言葉の端から伝わってくるくだらないしきたりへの反骨精神に思わず頬が緩んだ。
早朝この鎮守府に到着してからこの部屋に来るまでの僅かな時間だけだが、基本的にこの男の印象は悪くない。
3 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/27(日) 03:42:31.34 ID:LAC9GZ1m0
提督「この鎮守府もそこそこ大きくなってきましてね、戦力の拡大をと既存の建造方法で、狙いとしては駆逐艦か軽巡ですね」
自分の艦隊の成長が嬉しくて仕方ないと言うような顔で話すこの男が、少し羨ましく思えた。
提督「材料の方は割愛しますが、ともかく建造方法は特に異常はありませんでした。ですから彼女の姿を見た時は正直かなり混乱しましたよ」
「彼女」という単語を素早くインプットする。
良かった。
少なくともこの男は艦娘を人として扱っているようだ。
少しだけ肩の力が抜ける。
4 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/27(日) 03:44:01.73 ID:LAC9GZ1m0
提督「身体の大きさから見て駆逐艦なのは間違いないと思いますが、服装や装備がこれまで目にしたものとはまるで違うんですよ。ウチの艦娘達も心当たりはないと言いますし、お手上げです」
少なくとも同型艦はいない、か。
まあそういった新型の艦娘だからこそ俺が呼ばれているわけだが。
提督「本人も記憶は一切無し。とりあえずは、保護、して。上に連絡を取って今に至る。とまあこんな感じですかね」
"保護"という柔らかい表現ですら躊躇する辺よほど彼女が心配なのだろう。随分と優しい男のようだ。
男「彼女の様子は?」
提督「会話は出来ます。身体も特に問題はありません。艤装は使い方が分からないので展開出来ないようですが」
男「それを聞いて安心しましたよ」
提督「…やはりそうでない場合も?」
男「無言で撃たれたパターンはまだ2回しかありませんよ」
提督「…」
察してくれたようだ。
5 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/27(日) 03:44:51.85 ID:LAC9GZ1m0
提督「これがこの扉の鍵です。窓は格子が付いてますし、一応は唯一の出入口です」
男「確かに」
受けとった鍵に付いている兎のキーホルダーについては後で聞いてみるか。
提督「破壊による強行突破の際はこちらが責任をもってあたりますが、扉からの逃走はそちらの問題になりますのでよろしくお願いしますよ」
男「ええ。お互い責任がありますから」
提督「お昼前までに執務室まで来てください。昼食の後にここを案内しますので」
男「分かりました」
6 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/27(日) 03:45:26.84 ID:LAC9GZ1m0
提督「それでは私はこれで」
そう言うと今しがた来た廊下を戻っていく。
男「…」
なんとなくその後ろ姿をじっと見てみる。
あ、振り返った。
一瞬目が合ったかと思うと物凄い速さで向き直し早歩きで曲がり角へ消えていった。
そこまで恥ずかしがらずとも…
よほど心配なようだ。
7 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/27(日) 03:45:53.84 ID:LAC9GZ1m0
男「さてと」
解れた緊張を繋ぎ直す。
覗き穴から扉付近に彼女が居ない事を確認してドアを開ける。
音を立てないようにドアを閉め靴を脱ぐ。
さて報告通りならば…
部屋は扉を開けてすぐの部屋のみ。彼女を探すのは難しくない。
奥の方に置かれているベットに目をやる。
8 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/27(日) 03:46:22.74 ID:LAC9GZ1m0
男「…」
「ン~」
寝ている。せっかくの集中力が一気に霧散する。
男「緋色…」
彼女の姿を見て思わず呟いてしまった。
色というのも艦の大切な判断材料になるのだが、しかし緋色なんて色の艦あったか?
「ムニャムニャ…」
…むにゃむにゃなんて本当に言う奴がいるとは。
男「さてどうするかな」
寝ている以上無理に起こしてもしょうがない。
「ンッ…スー」
反応、のようなものがあった。聞こえてはいるらしい。
男「さっさと執務室に行っちまうか」
9 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/27(日) 03:47:09.86 ID:LAC9GZ1m0
くるりと向きを変え扉に向かおうとしたその時だった。
「行かないで」グィッ
男「おぉ!?」
ズボンの裾を引っ張られた。
振り返ると彼女は目を擦りながら俺を見つめていた。
「ん、え〜っと?貴方は?」
男「俺は、男ってんだ。よろしく」
あまりに急な事に頭がフリーズした。まるで機械のようなギクシャクした挨拶をしてしまう。
「よ、よろしく。私は、私…は……ふにゃ」パタン
1度起こした体が再び布団に倒れる。
男「…oh」
桜模様があしらわれた緋色のパジャマから臍と右の肩が顕になっている。
まるでメデューサのようになっているボサボサな紅色のロングストレートが彼女の寝相の悪さを如実に物語っていた。
報告1:自身の記憶を呼び起こそうとすると気を失う。
なるほどそのようだ。
10 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/27(日) 03:49:46.21 ID:LAC9GZ1m0
また長くなりそうな話を…
タイトル通り嘘偽りなく神風の話です本当です。
基本的に神風えっちいなと思いながら書いているので秋刀魚や鰯を獲るついでにでも読んでいただければ幸いです。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/27(日) 09:29:39.71 ID:pAL8RsDGo
きたい
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/27(日) 10:15:16.34 ID:z5frhazvO
神風ちゃん好きだから嬉しい
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/28(月) 13:10:22.85 ID:1N/+sYbto
期待
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/28(月) 15:35:53.43 ID:KYTItMAYO
続きはよ
15 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:46:00.87 ID:rqljmlHD0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
提督「大体寝てるんですよ。原因は、まあ記憶の欠落なんでしょうね。心理学とか脳科学とかそういう分野の話なんでしょうか」
男「でしょうね。彼女が人間だったら、ですが」
場所、執務室。
結局気絶した彼女はその後目を覚ます様子がなかったため早々に切り上げる事となった。
テーブルを挟んで置かれた二つのソファにお互い向かい合うように座る。
叢雲「はいコーヒー。熱いわよ」
男「ありがとう」
俺と提督の間の机にコーヒーが2つおかれる。
叢雲「何かいるかしら?」
男「いやこのままで結構だよ」
ここの秘書艦は叢雲だという。
腰まである薄らと雲のかかった空の様な色のロングヘア。姉妹艦の中で唯一ワンピースの様になっている白の制服。鋭い目付きとそこから覗くオレンジ色の大きな瞳。
駆逐艦らしい矮躯には不釣り合いな言動に不思議と違和感を抱かせない独特の雰囲気があった。
16 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:46:48.95 ID:rqljmlHD0
叢雲「あらブラック?ウチの司令官と違って大人ね」チラ
提督「一言多いよ」
チラと提督の手元を見ると既にミルクが2つ空けられていた。
叢雲「ねえアナタ歳は?」
提督「叢雲、あまり馴れ馴れしくするもんじゃ」
叢雲「いいじゃない。これから暫くはここにいるんでしょう?」
男「構いませんよ」
叢雲「で、幾つなのよ。四十手前?」
男「…三十一歩手前だ」
叢雲「あら、えーっと。深みのある顔ね!」
男「一言多いわ」
思わず素が出てしまった。
提督「君ねぇ…」
叢雲「てへっ」
チロと舌を出しておどける。
悪びれる様子はない。
17 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:47:34.82 ID:rqljmlHD0
叢雲「というかアナタ達殆ど同年代じゃない。よそよそしく敬語なんて使ってないでもっと馴れ馴れしくしなさいよ」
提督「君はもう少し馴れ馴れしさを抑えた方がいい」
男「お互い立場もあるんだよ」
叢雲「はぁぁめんっどくっさいわねえ」
これだから人間は、と呟きながら隣の部屋に消えていく。
コーヒーを持ってきたし簡易的な台所があるのだろうか?
提督「悪いね。まあ彼女いつもあんな調子なんでよろしくお願いします」
男「ああ、よく分かりましたよ。よそよそしいよりはいい」
提督「そう言ってくれると助かりますよ」
お互いに少し口調が砕ける。
18 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:48:26.07 ID:rqljmlHD0
男「で、彼女の事だが」
提督「ええ、見てもらったのなら大体わかったと思いますが」
男「初対面の時もあんな感じで?」
提督「とりあえず自己紹介をと名乗ったらその後にパタン、と。その後も何回も会話はしたけれど、長く話していると段々意識が薄くなっていくようで」
男「意識に絶対量でもあるのか。だとしたら確かに記憶の欠落が原因なんでしょう」
提督「というと?」
男「記憶も知識も積み重ねです。こうした会話ですら例外ではない。言葉やイメージ、相手の表情。色々な情報を無意識のうちに俺達は処理してる。
そしてその処理は生まれた時から今日までの全てに支えられているものです」
叢雲が運んできたコースターを手に取る。
19 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:49:12.32 ID:rqljmlHD0
男「勉強でもよく言われる土台が大切というのは生きる上で殆どの事に当てはまる」
コースターを机に置き、その上に残り半分となったコーヒーのカップを乗せる。
提督「土台があるから乗せられる、と」
男「ええ。でもこの積み重ね以上の物は乗せられない。鎮守府の作戦書なんかを俺が読んでも、気絶とまではいかなくてもきっと知恵熱がでるでしょうよ」
提督「買い被りすぎだよ。書類は所詮書類です」
照れと苦悩が入り交じったようなその顔は、彼がここの提督である事を改めて実感させた。
男「ところが彼女はその土台がない。タチが悪いのはまるっきり無いのではない事だ。会話や最低限生活に支障がない程度にはある。その中途半端さが原因でしょう」
20 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:50:14.72 ID:rqljmlHD0
叢雲「土台がまるでないなら赤子のように何でも吸収できる。なまじ変に土台が残っているせいで受け止め損ねて、中身のコーヒーをぶちまけてショートする、ってことかしら」
男「正解。かどうかは分からいけどな。少なくとも俺はそう思った」
隣の部屋から戻ってきた叢雲は自分用らしいカップを手にしていた。自分のコーヒーを作っていたのだろう。
ウサギの顔が描かれたカップだ。
提督「なるほど。その継ぎ接ぎだらけの記憶を戻していかないといけないわけか」
男「おそらくは」
提督「大変な仕事だね」
男「他人事じゃあないですよ。下手すりゃ1年ここにいる事になるかもしれないんだ」
提叢「「1年も!?」」
男「最高記録は358日。後は大体2ヶ月以内で長かったのはそれっきりですが」
21 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:51:27.46 ID:rqljmlHD0
提督「そんなに大変なのかい!?"最初の一人"というのは」
男「聞いたことはないので?」
提督「そういう事がある、というのは…もちろん色々な根も葉もない噂も。でもこうして実際に目の当たりにするとは思いもよりませんでしたよ」
叢雲「…」
叢雲はコーヒーを飲みながらじっとこちらを見つめている。こちらも必要以上にこの件を知ってはいないようだ。
そして何故か提督の横に座ったりせず彼の座るソファーの背もたれの部分に後から前のめりで寄り掛かる形で落ち着いている。
男「知らないのは当然ですよ。むしろ知っていたらまずいくらいだ」
提督「迂闊に喋ると消されたり?」
男「正直笑い事じゃないですよ。トップシークレットと言っても過言じゃない」
提督「マジですか」
冗談半分だった表情が凍る。
男「マジです」
22 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:52:10.43 ID:rqljmlHD0
男「艦娘は、こういう言い方はあまり好きではないが基本的にはコピー、クローンというべき存在です。少なくとも鎮守府の数だけ同じ艦娘がいるようなものだ」
叢雲「そうね。私も何度か、何人かの私と顔を合わせたことがあるわ」
男「でもコピーやクローンだとして、ならば当然元となるオリジナルがいるはずだ」
提督「かつての駆逐艦叢雲こそがそれに当たるんじゃないんですか?」
男「そういう見方もあります。それが正しいのかどうか結局のところ誰も分かっていないのが実情ですが」
叢雲「アナタはそう見てはないみたいね」
男「建造できる艦娘の種類は年々増えている。しかしそれはなぜだと思います?」
提督「そりゃあレシピというか、新しい建造方法が見つかっているからじゃないですか」
男「それは建造しやすい方法というだけです。建造可能な艦娘が増えているのは新たにオリジナルが発見されているからです」
叢雲「オリジナルねえ」
23 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:52:46.33 ID:rqljmlHD0
男「本当に突然、なんの前触れもなくそれまで建造では確認されていなかった艦娘が生まれる事があるんですよ」
叢雲「今回みたいに?」
男「まさしく」
提督「肝心な部分は妖精さんまかせだからなあ。何をどうやっているのやら」
男「それがわかれば苦労しないんですが…ともかくそうやってある日急にオリジナル、最初の一人が生まれる。そうするとこれまた不思議な事にその艦娘が各鎮守府で建造可能になるんです」
叢雲「なにそれ」
提督「ゲームとかのアンロック機能みたいな感じだね」
叢雲「あー確かに」
どうやら2人とも思い当たるものがあるようだ。
男「…」
ゲームなんてやらないから全然わからんな。
24 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:53:18.01 ID:rqljmlHD0
男「ただ少し条件があるんです」
提督「条件?アンロックの?」
男「そう。多分そう」
叢雲「あ、それが記憶ってわけね」
叢雲が手に持ったコップを俺の方に掲げる。
その体制だと零れたら確実にソファーが、最悪提督の肩もアウトになりそうで怖い。
男「そういうことだ。記憶が元からあるなら問題ないが今回の様に記憶に欠損がある場合それを取り戻さないと行けないんですよ」
提督「…でも記憶と言っても何を忘れているかなんて外からじゃ分からないでしょう?完全に記憶を取り戻したかどうかは何処で判断するんですか」
鋭い質問だな。流石は提督と言うべきか。
25 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:53:52.21 ID:rqljmlHD0
男「言い方が少し悪かった。正確には記憶というより、名前なんですよ。恐らく」
叢雲「名前って、叢雲とか?」
男「そう。自分が誰なのか、どういった船だったのか。経験則ですがそれがトリガーになっていると思います」
提督「なるほどね。真名か。なんだかカッコイイね」
叢雲「またそうやって変な想像して」
提督「変じゃないでしょ変じゃ」
男「期間にバラツキがあるのもこれが原因でしてね。外見の特徴や他の記憶から艦名を特定できれば直ぐに記憶は戻るんですが」
叢雲「今回みたいにヒントゼロ記憶なしだとどうなるかってわけね」
男「ああ」
26 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:54:26.95 ID:rqljmlHD0
男「言い方が少し悪かった。正確には記憶というより、名前なんですよ。恐らく」
叢雲「名前って、叢雲とか?」
男「そう。自分が誰なのか、どういった船だったのか。経験則ですがそれがトリガーになっていると思います」
提督「なるほどね。真名か。なんだかカッコイイね」
叢雲「またそうやって変な想像して」
提督「変じゃないでしょ変じゃ」
男「期間にバラツキがあるのもこれが原因でしてね。外見の特徴や他の記憶から艦名を特定できれば直ぐに記憶は戻るんですが」
叢雲「今回みたいにヒントゼロ記憶なしだとどうなるかってわけね」
男「ああ」
27 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:55:17.82 ID:rqljmlHD0
提督「ちなみに最長記録の一年以上ってのはどういう感じで?」
男「記憶自体はそこまで欠落していなかったんですが、その艦娘ってのが海外の船でね」
叢雲「そういえば海外艦って建造可能よね。あまり気にしたことはなかったけど」
男「大変でしたよ。海外艦なんて予想外なところの資料なんてなかったから全部一からで。海外から資料取り寄せるだけで一苦労ですから」
提督「それで1年ですか」
男「殆ど事務作業みたいなものでしたがね。お役所ってのはどうもこういうのに弱い」
28 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:55:51.47 ID:rqljmlHD0
提督「それで」
提督が少し姿勢を正す。これが本題といった感じだ。
提督「答えられる問じゃないとは思うけれど、今回はどう思います」
男「…初めて、ですよ」
提督「初めて?」
男「あそこまで記憶がない事が、です。実際今日見てみるまで半信半疑な所があった…」
提督「…」
叢雲がコーヒーを啜る音だけが部屋に響「熱ッ!」
……
叢雲「な、何よ…」タジッ
29 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 04:56:26.56 ID:rqljmlHD0
男「まあ暴れるような心配もないですし、気楽に気長にいきますよ。焦る必要も無い」
提督「ですね。丁度お昼ですし、昼食に行きましょう。食堂とか色々案内するんで」
男「頼みます」
提督「いやいや、長い付き合いになりそうだからね」ハハハ
男「そのようだ」ハハハ
叢雲「ちょっと!何あからさまに無かった事にしてんのよ!ホットミルクぶっかけるわよ!」
提督「君が勝手にやった事だろ!なんで切れてるんだよ!」
叢雲「五月蝿い!」
提督「だー待て落ち着いて!デザート分け、いやあげるから待って!」
男「…」
コーヒーではなくミルクだったか…
この情報は、頭に入れておくとしよう。
30 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/10/29(火) 05:01:15.92 ID:rqljmlHD0
量を減らして確実に更新していったほうがいいのではというのが前回から得た教訓
例えば「はじめまして!吹雪です!」と名乗られなければ私達は彼女を吹雪と認識できない、というような話です。
初期艦贔屓で叢雲頼もしいなあと思いながら書いていきます。
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/29(火) 07:42:34.26 ID:+az76G90O
乙
期待
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/29(火) 19:07:18.61 ID:vDtVVzxjo
相変わらずいい雰囲気
期待
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/30(水) 12:40:48.17 ID:nfS4jwjlo
おつね
34 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:41:23.83 ID:bR8MUREO0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【食堂】
提督「流石に慣れてますね」
男「慣れてる?」
叢雲「男女比率が1:100の環境に、よ」
辺りを見渡す。
食堂には俺たちの他に50人ほどの艦娘がそれぞれ昼食をとっている。
昼は出撃や遠征などでまばらなので夜はさらに増えるだろう。
男「改めて言われると確かにすごい環境だ」
叢雲「それはこの戦争にも言えることだわ」
提督「まったくだね」
昼食は私が魚定食。向かい側の叢雲が唐揚げ丼、提督がカレーだ。
35 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:42:39.95 ID:bR8MUREO0
この鎮守府には本来提督以外の人間はいない。
人口の多い都市部などを守る主要な鎮守府以外は基本的にそんなものだ。
今ここには俺の提督以外は全員女性という事になる。
もっとも言葉で聞くほどいい環境ではない。
仮にも軍の施設だ。確かに比較的規模は小さいがそれでも国防の要の一つである。そんな鎮守府に何故人がいないのか。
政府や上層部も馬鹿だけで構成されているわけじゃない。
当然理由がある。
こうならざるを得ないだけの理由が。
"人"と"艦娘"を隔てる理由が…
36 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:43:20.11 ID:bR8MUREO0
叢雲「それにしてもいきなり魚とはね」
男「ん、何がだ」
叢雲「アナタの昼餉よ」
男「不思議か?」
提督「外部の人間はたいていカレーや麺類を選ぶね」
男「なるほど」
確かにそこら辺を選んでおけばまず不味いということはあまりないだろう。
叢雲「何かこだわりでもあるの?」
男「長居する事になりそうだからな。定食の味を知っておく事が大切なんだ」
提督「へえ。やはり鎮守府毎に味が違ったり?」
男「そうだな。地元で何が捕れるか作られているかにもよる。10を超える鎮守府を回ったが、そのうちグルメ本でも出せそうだ」
37 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:43:48.09 ID:bR8MUREO0
叢雲「他所の鎮守府か〜。興味深いわね」
男「オススメできない所ならいくつか教えてやろうか?」
叢雲「…ご忠告どうも」
提督「我が家が一番ってことだよ」
叢雲「住めば都かもしれないわよ」
男「生まれ故郷が一番だよ。艦娘には」
提督「そういうものなのかい?」
男「経験則では」
提督「そうなのかい?」
叢雲「さあね」
38 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:44:35.23 ID:bR8MUREO0
飛龍「」ツンツン
提督「ん?どうした飛龍」
何故かこっそりと提督に近づき肩をつついたのは正規空母、飛龍。
橙色の着物と緑色のミニスカートのような袴。明るい茶髪のショートヘアと柔らかい表情は見た目よりもいくばか幼さを感じさせる。
彼女が来た方を見ると複数の艦娘が何やら興味深そうにこちらを見ている。
話しかけづらい転校生に誰が声をかけるかといった結果飛龍が挙げられた、という感じか。
飛龍『この人が前に言ってた派遣のリーマン?』
提督「認識は間違ってなくもないけど、そんな言い方はしてないよ」
飛龍『あはは冗談冗談。えーっと』「私は飛龍、よろしくね」
言葉を聞いて理解した。
あぁ、なるほど。
これが彼女が挙げられた理由か。
39 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:45:19.33 ID:bR8MUREO0
男「調査官の男という者だ。大本営直属、と言えば聞こえはいいが提督という身分と大して違いはない。私も君達に頼る事があるだろうし気軽にしてくれ」
飛龍「な〜んだそっかそっか。てっきり提督がなんか悪い事してバレたのかと」
提督「君達もう少し提督を信用してくれてもいいんだよ?」
叢雲「アンタももう少し信頼されるような働きを見せてくれてもいいのよ?」
提督「働いてない?僕結構頑張ってない?」
飛龍『でも実際前線に出てるのは私達だしね〜。もう少し労わって欲し〜な〜』
提督「人の酒勝手に持ち出すような奴がよくもぬけぬけと…」
飛龍『げっ!』
提督「げっじゃないよバレてるに決まってるだろう」
40 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:46:23.83 ID:bR8MUREO0
飛龍『いーじゃん!どうせ提督たいしてお酒なんてわからないくせに!』
提督「この口か!この口が言うか!」
ギャーギャーワーワーと、喧しくて、騒がしくて、賑やかだ。
それが少し羨ましい。
男「それともうひとつ」
飛龍『イタタタタほっぺ伸びる伸びる!ん?』
男『私と話す時、君を通す必要は無いよ』
飛龍『…へぇ』
叢雲「…」
提督「…ん?」
飛龍『ひょーかい、みんはにふはいほふね』
叢雲「手ぇ離しなさいよ」
提督「あ、スマン」パッ
飛龍「ブヘッ」
艦娘の頬も人間とそう変わらないらしい。
41 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:48:33.35 ID:bR8MUREO0
飛龍が元のグループ、どうやら空母の集まりらしき所へ戻っていく。
彼女達の楽しそうに話すのを受けてか食堂全体の空気が少し緩んだように思えた。
提督「すまないね、お見苦しいところを」
叢雲「全くよ。冷める前にさっさと食べなさいな」
男「いや。随分と仲がいいようで安心しましたよ」
提督「安心?」
男「そうでないところもあるという事で。まああまり気にしないでください」
提督「なるほど、ね」
42 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:49:01.47 ID:bR8MUREO0
ふいに食を並べているテーブルの下から軽快な音楽が鳴り出した。
この声は確か那珂という軽巡の歌だ。
提督「おっと、ごめんごめん」
叢雲「連絡?」
提督「やっば遠征帰ってきてるって」
叢雲「そういえば予定がずれ込んでたわね」
提督「ごめん叢雲。行ってくる」ガタ
叢雲「カレーどうすんのよ」
提督「お好きに、食べてもいいよ」
叢雲「はいはい」
43 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:49:45.95 ID:bR8MUREO0
提督「急でごめん。案内の方は叢雲に任せるからゆっくり食べててください」
男「了解」
叢雲「ほらさっさと行ってあげなさい」
提督「ああ」ダッ
特に怒るでもなくヒラヒラと手を振る叢雲。
よくあることなのだろう。
男「彼は何を?」
叢雲「出撃や遠征の帰りは必ず迎えにいくようにしてるのよ。報告やらもそこでね。過保護なのよ」
男「いい人じゃないか」
叢雲「甘いのよ。皆にも、自分にも」
そう事も無げに言うとお茶を豪快に飲み干す。
男「甘い、か」
叢雲「子供扱いして」ボソッ
男「ん?」
叢雲「なんでもないわ」
当然聞こえていた。
が、彼女が初めて口にした不満にあまり触れるべきではないと思った。
44 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:50:48.26 ID:bR8MUREO0
叢雲「それにしても、驚いたわよさっきは」
唐揚げ丼をペロリと平らげ提督の残したカレーに手をつけ始める叢雲。
艦娘は基本的によく食べるものだと知ってはいるが目の前でこれだけの量を当然のように食す様はやはり壮観である。
提督「さっきとは?」
叢雲「飛龍の事よ」
提督「ああ」
締めの味噌汁を啜る。
うむ、好みの濃さだ。グルメ本を書くなら星三つだろう。
提督「喋れる事、か」
叢雲「そ。確かに調査員なんだしそれくらい当たり前なのかもしれないけれど、提督でもないのに実際に喋れる人間を見たのは初めてよ」
45 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:51:34.92 ID:bR8MUREO0
男「逆だよ。調査員だから喋れるんじゃない。喋れるから調査員になれたんだ。いやそもそも調査員なんてものが出来たのも俺がいたからだしな」
叢雲「へえ、何か事情があるってとこかしら」
男「そんなところだ」
叢雲「アナタも苦労してるのね」
男「君もか」
叢雲「皆苦労してるのよ」
男「世知辛い世の中だな」
叢雲「甘いのはカレーくらいなものよ」
男「カレーといえば」
叢雲「なによ?」
男「普通に食べるんだな」
叢雲「普通?どういう意味よ」
男「そのスプーン提督が使ってたものだろ?」
46 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:52:04.50 ID:bR8MUREO0
叢雲「ええ、そうだけど」
何言ってんだこいつという目で見られた。あまりそういう事を気にする質じゃなかったようだ。
叢雲「そう、だけど…」
まあ間接キスなんて今どき流行らないか。まして見た目は子供とはいえ軍人として日々働く身。そんなことをいちいち
叢雲「…」
男「あれ?」
叢雲「…」プルプル
俯かれた。しかも何か震えている。
頭の、耳?は警告色になっているし。
男「む、叢雲さん?」
叢雲「…辛いのよ」
男「さっき甘いって」
叢雲「五月蝿い!」
男「はい!」
真っ赤な顔でそう喚かれた。
47 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/11/02(土) 04:57:37.02 ID:bR8MUREO0
神風を書きたいのに神風が出てこない!
人間と艦娘の違いとかが好きなんです。
楽しそうに笑う飛龍を見守り隊の者として今後も飛龍の話は書いていきます。
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/11/02(土) 06:51:23.03 ID:QuCGoejZO
乙!
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/11/02(土) 09:24:14.81 ID:p3prB7beO
乙
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