他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
少年「アヤカシノート」
Check
Tweet
260 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:18:22.31 ID:hBUPAlst0
包帯少女「少年君、見てたの?」
少年「偶々下校途中だったんだ。そのトラックがどっかの家に突っ込んで凄まじい状況になってたのはよく覚えてるよ」
包帯少女「……友達は平気だった?」
少年「僕の周りはね。近くの学校の子が轢かれたらしいって話は聞いたけど」
包帯少女「そう…」
包帯少女「良かった…って手放しに言っちゃいけないんだろうね」
包帯少女「その事件の被害者が運良くぼくたちじゃなかっただけで、どこかの誰かにとってはきっと大切な人だったはずだから」
ーーーーー
老婆「──あの子の親はね、あの子が中学に上がる前に交通事故で亡くなってしまってねぇ」
ーーーーー
包帯少女(……)
少年「!…うん」
包帯少女「あ、ごめん。話逸らしちゃって………猫又娘さん?」
猫又娘「………!」
猫又娘「な、なになに?」
包帯少女「?平気?」
猫又娘「なにが?」
包帯少女「今、少し──」
猫又娘「なんでもなーいっ。明日からどう探していこうか、考えてただけ!」
猫又娘「探す場所を変えるか、探す方法、つまりさっきのアプローチを変えるか……何をどうしたらいいかなぁ。正直私一人だとこれだ!ってものが思い付かなくて」
包帯少女「本当に社壊すわけにもいかないもんね」
包帯少女「既に半壊してるとはいえ」
少年「……あの」
猫又娘「うむ?」
少年「もしも…もしもだよ」
少年「トドノツマリ様も、例の男ももうこの町に居ないんだとしたら…?」
包帯少女「別の町に?」
少年「だってこんなしらみ潰しにして見つからないのもそうだし、なのに妖禍子は減ってるって言うならそれってさ…」
猫又娘「…この山も離れて、違う場所へ侵略しに行ったと?」
少年「そういう可能性もあるんじゃないかなって」
猫又娘「………」
包帯少女「だからってここを離れるのも危ない気はする」
包帯少女「今ぼくたちが居なくなったらこの町は…みんなはどうなっちゃう?」
261 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:19:31.12 ID:hBUPAlst0
少年「それは……考えたくないけど」
少年「……最悪、見放すことになるのか──」
猫又娘「絶対嫌だっ!!」
少年「!」ビクッ
猫又娘「信じられない、何言ってんのっ!?」
猫又娘「きみに大切な人は居ないの!?親は?親戚は?友達は?」
猫又娘「きみを大切にしてくれた人を、きみはみんな見捨てるってことだよね?例えば明日みんな死んじゃうかもしれないことが分かってるのに放置するんだ!?」
猫又娘「奴らが違うとこに行っちゃったんなら、探す範囲を広げればいいだけじゃん!」
猫又娘「そんな、この町を切り捨てる真似…私は許さないよ!!」
包帯少女「………」
少年「ご、ごめん……」
猫又娘「…!」
猫又娘「あ……いや……」
猫又娘(何してるの、私)ギリ...
猫又娘「……今日は、帰ろ」
猫又娘「少し頭冷やしたい」クルッ
ドロン
仔猫「……」
サッサッサッ...
262 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:20:16.42 ID:hBUPAlst0
包帯少女「……」
少年「猫又娘、さん…」
少年「僕、こんなつもりじゃ…」
包帯少女「分かってる。分かってるよ」
包帯少女「きっとあの子も」
少年「……」グッ...
包帯少女「……」
ギュッ(手を包み込む)
少年「え…」
包帯少女「…大丈夫、焦らないで」
包帯少女「はやる気持ちはぼくにもある。けど、いたずらに急いでちゃ見えるものも見えなくなっちゃうよ」
包帯少女「ぼくはちゃんと、きみの味方だから」
少年(──)
包帯少女「…って感じのこと、あの子にも言っておいてよ」フッ
少年「……はは、伝えとく」
少年「ありがとう。元気付けてくれて」
包帯少女「ぼくたちがへこたれてたら町を救う救わないどころじゃないからね」
少年「あぁ、ほんと」
包帯少女「猫又娘さんが一番、分かってると思うよ」
──ズクンッ
包帯少女「っ……」
少年「?少女さん…?」
包帯少女「ううん、何でもない」
包帯少女(………)
263 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:21:28.25 ID:hBUPAlst0
ーーー夜 少年の自室ーーー
少年「………」
仔猫「………」
少年(猫又娘さん、猫の姿でいるのはいつも通りだけど、こっちに背中を向けてる)
少年(帰ってきてからずっとこの調子だ)
少年「……」
少年「……ねぇ」
仔猫「……」
少年「…夕方のさ、ごめんよ。猫又娘さんの気持ちも考えずに…」
少年「僕も本気でこの町を見捨てようなんて思ってるんじゃなくて……」
少年「…いや、見捨てたくなんかない。ここにあるのは家族とか大切な人もそうだけど、かけがえのない思い出もたくさんあるから」
ーーーーー
少女「──友達になってくれませんか?」
ーーーーー
仔猫「……」
仔猫「………」
ドロン
猫又娘「………」
猫又娘「…私の方こそ、過剰に反応しちゃった」
猫又娘「あんな風に言うつもりは、なかったんよ」
少年「うん」
少年(……)
少年「…僕、猫又娘さんのこと好きだよ」
猫又娘「………え!?」
猫又娘「それはっ…んん!?」
少年「"人"として尊敬してるってことだよ」クスッ
猫又娘「……からかったなー?」
少年「からかい半分、真面目半分かなぁ」
少年「尊敬してるのは本当だからさ」
少年「どんな時でも明るくて眩しくて…みんなを元気付けようとしてくれて」
少年「それってすごく格好いいよ。僕みたいな人間には真似出来ないから……憧れるんだ」
猫又娘「ど、どしたの。そんなに褒めても何も……」
少年「つまりだ」
少年「僕はきみを信じる」
猫又娘「……」
少年「猫又娘さんには何度も勇気をもらってる。だからもう弱音は吐かないよ」
少年「僕たちの手で、絶対この町を取り戻そう」
264 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:22:40.47 ID:hBUPAlst0
猫又娘「……」
猫又娘「…はぁまったく…何言い出すかと思えば」
猫又娘「私も、きみらを信じてるから一緒に居るんだよ」
猫又娘「…そもそも私"人"じゃあないし、本当は憧れてもらうようなとこなんか、ないんよ…」
少年「──本当かウソかなんてどうでもいいんさ」
猫又娘「!」
少年「前、言ってた言葉」
少年「その通り、猫又娘さんが人かそうじゃないかなんて関係ない。僕が見てきたのは"猫又娘"っていうやんちゃなお人好しだからね」
猫又娘「………」
少年「………」
猫又娘「…言うようになったねぇ、きみ」ニッ
少年「だって猫又娘さんが居ないと、僕どうしていいか分からないから…」
猫又娘「えぇ?なにそれ締まんないなー」
少年「それと、少女さんからも。もちろんきみの味方でいる…って、言ってた」
猫又娘「…ありがと」
猫又娘(……)
猫又娘「あー!よもや私が少年君に励まされるなんてね〜」
猫又娘「少年君、きみ変わったね」ニコッ
少年「そ、そうかな」
猫又娘「そうだよ!もっと自信持ちなって!」グシャグシャ
少年「ちょ、髪…子供扱いしてる!?」
猫又娘「へへへっ」
少年「親戚のおじさんじゃないんだから…!」
少年(おてんばなところは相変わらずだけど、やっぱり猫又娘さんはこうでなくちゃ)
猫又娘「……この町はさ」
猫又娘「私にとって、私よりも大事なものなんだ」
猫又娘「だからね、この身を賭してもここを守るんだ。…全部全部、変えてみせる」
少年「……」
265 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:23:49.22 ID:hBUPAlst0
猫又娘「よっし!うじうじタイム終わり!」
猫又娘「頭も十分冷やしてもらったし遅ればせながら今後の作戦を考えてこー!」
少年「それなんだけど、一ついい?」
猫又娘「お?」
少年「あの人──夢見娘さんなら何か知らないかな」
猫又娘「ほほぉ…そういえば夏休み入ってから一回も見かけてないね」
少年「手伝いはしてくれるって言ってたんだったよね?この前みたいにまた陰から見ていてくれたりしてさ」
猫又娘「あり得る」
猫又娘「あの子少年君のストーカーさんだし…」ボソッ
少年「問題はいつどこに居るのか謎なことだけど」
猫又娘「きみが呼べば来るんじゃないかなぁ」
少年「僕が…?」
猫又娘(あの不思議ちゃんか…考え付かなかったな)
猫又娘(思えば一緒に居られないなんて言ってた子がどうやって手伝うつもりだったんだろ)
猫又娘(今の私らの現状も見てるんかな)
ーーーーー
派手娘「──いっそ全部吹っ飛んじまえっ!!」
ーーーーー
猫又娘(……あの事も)
猫又娘「」ブンブン
少年「?」
猫又娘「少女さんにも訊いてみようよ。夢見娘さんから何かアクションがあったかどうか」
少年「うん。…今?」
猫又娘「もち」
少年「……」スッ
猫又娘「その機械便利よねー。スマホ?だっけ。実は買おうか迷ってたんよ」
少年「自分で作っちゃえばいいんじゃないか?」スッ、スッ
猫又娘「私が作れるのは精々模型だよ。複雑なものは真似れないからさ」
猫又娘「私の力がそんなに万能だったら、きみにあげたノートで今頃解決出来てたかもね〜」ノゾキコミ
少年「少女さんにLINEするけど、何て送る?」
猫又娘(……7/28……)
猫又娘(あ!)
猫又娘「そういえば少年君。あの神社って明日は──」
266 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:25:38.20 ID:hBUPAlst0
ーーー少女の自室ーーー
包帯少女「……」
シュルシュル
包帯少女「……っ」
包帯少女(…いつかこうなってしまうだろうとは思ってた)
包帯少女(包帯の下、一見何も変わってないように見える……けど)
ズクンッ
包帯少女「ぁ……はぁ…!」
ジク..ジク..
包帯少女「ゥグ…!」
包帯少女(お願イ、もう少しダけ保って…!)
包帯少女「……っ……ぃ……」
ピロリン
包帯少女「はぁ、はぁ……?」チラリ
少年『てすてす。猫又娘です』
少年『こんな感じで送れてるの?』
包帯少女(少年君のLINE…)
少年『大丈夫みたい。じゃ、改めて』
少年『さっき勝手に帰っちゃってごめん。でもきみたちに励ましてもらったからもう大丈夫』
少年『でさ!今少年君と話してて出てきた案があるんです!』
少年『まず夢見娘さん』
少年『ここしばらくあの子を見てないんだけど、少女さんは??彼女、何か知ってれば情報提供してもらおうよ』
267 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:26:27.22 ID:hBUPAlst0
包帯少女「……」
少女『ぼくも知らない。明日は夢見娘さんを探しに行くの?』
少年『そうそうそのことについて!』
少年『明日ってさ例の神社で夏祭りやる日なんよね』
少年『それに便乗して最後に神社周りを探してこうよ』
少女『便乗?あのお祭りってトドノツマリ様にまつわるものだっけ?』
少年『夏祭りとか楽しいことが目の前でやってたらポッと出てきてくれないかなーって』
少年『少なくとも私なら目一杯楽しむ』
少年『(ドヤ顔スタンプ)』
包帯少女「思いつきなのね…」
少女『いいんじゃない?夢見娘さんはその後ってことだよね』
少年『まーね。逆に夢見娘さんが見つかっても私ら的にはOKだけどね』
ーーーーー
夢見娘「──少年くんを、お願いします…」
ーーーーー
包帯少女「……ぼくは……何をすればいいんだろう」
包帯少女(……)
包帯少女(一度死に…帰ってきたあの日から、何もかもが思い通りにいかない)
包帯少女(誰かを守ることも怪異を終わらせることも出来ないこんなぼくに…)
包帯少女「っ……いや、ぼくがこんなことを考えてちゃダメ……」
包帯少女(でも)
包帯少女(ぼくがここに居る意味はなに…?)
包帯少女「……少年君……」
268 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:27:24.32 ID:hBUPAlst0
ーーー翌日 夏祭りーーー
ワイワイ ガヤガヤ
少年「おぉ…」
包帯少女「……」
少年「すごい人だね。こんな人混みを見るの久々だ」
少年「ほとんどみんな消えちゃったかと思ってた…」
包帯少女「ここのお祭り、市外からも結構集まってくるからね」
少年(来てる人も気合入ってるなぁ)
少年(女の人どころか男でも浴衣着てる人がちらほら)
少年「……」チラリ
包帯少女「なに?」
少年「な、なんでもない」
少年(少女さんの浴衣姿、ちょっと想像してたなんて言える空気じゃないよな)
包帯少女「じゃあ行こうか」
少年「この人だかりの中に入ってくんだね…」
包帯少女「人のいない場所は猫又娘さんが探してくれてるし、ぼくたちはここにトドノツマリ様が紛れてないかを確認していくのが仕事」
少年「分かってるけどさ。…小さい女の子って言っても家族連れまでいるから、こう人が多いと見分けられるか不安だよ」
少年「妖禍子は全然居ないのが救いかな」
包帯少女「……猫又娘さんに付いていった方がよかった?」
少年「え?そうは言ってないけど」
包帯少女「……」テクテク
少年「……」...テクテク
269 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:29:22.20 ID:hBUPAlst0
ーーー石段前ーーー
「次あっちの屋台行ってみない?」
「すいませーん!通してください!」
「あっ……りんご飴落としちゃった…」グスン
少年「ここなんてもう満員電車みたいだ…」
包帯少女「……」
少年「足元気を付けながら進まないと転びそう……少女さん?」
包帯少女「あ、うん」
少年「大丈夫?気分悪かったり…?」
包帯少女「平気…うん、気にしないで」
テク..テク..
少年(うわ…人多過ぎて全然進めないな。人波に飲まれないようにしないと)
包帯少女「……」スルリ
少年「……」グッ..テクテク
少年(…少女さん、今日は妙に口数が少ない)
少年(周りは騒がしいのに、僕たちだけ違う空気の中に居るみたいだ)
少年(……前にも、こんなことがあったな。あれは、まだ少女さんが包帯を着けるようになる前、僕が少女さんをあの池に突き落と……)
少年(………)
少年「…その、包帯さ」
包帯少女「ん?」
少年「巻いてるとこ、夜になると痛み出すって言ってたけど今はもう治ったの?」
包帯少女「……」
少年「…!ごめん、バカな質問した。まだ痛むから包帯してるんだよね…」
包帯少女「…まだ治ってはないよ」
包帯少女「もうすぐ解放されるかなとは思ってるけどね」
少年「本当っ?」
少年「そしたらさ、また二人で野球出来るよね。少女さんが万全な状況でさ」
包帯少女「そのためには…先にこっちの問題を終わらせないとだよ」
少年「そう…だね」
包帯少女「……」
少年「……」
少年(……)
270 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:30:22.70 ID:hBUPAlst0
グンッ!
少年「!?」
少年(ちょっ…押され…!)
ゴンッ
少年「おぶっ…!」ナガサレー
少年(ま、まずい)
少年「少女さん!少女さーん!」
少年「すいませんそっちに行きたいんです、道空けてください!」
ガヤガヤガヤ...
少年(全然動かない。一つの人波になっちゃってるんだ)
少年(なら)
少年「んっ…!」ググッ
「おい!変に押すなよ!痛いだろ!」
少年「あ、ごめんなさ──」
ドンッ
少年「痛っ」ズテッ
少年(やば、転けちゃった)
少年(どうしよう…ぎゅうぎゅうで立ち上がれない…)
ザワザワ
少年(踏まれる…!?)
「こっちよ、付いてきて」グイッ
少年「え!わ…!」
.........
271 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:32:06.07 ID:hBUPAlst0
「ここなら人もあんまり居ないね」
少年「はぁ、はぁ…あの、ありがとうございます。助けてくれて」
「あの人口密度はもう一種の凶器だよね。怪我はない?」
少年「はい。お姉さんの方も平気ですか?」
「まぁね。浴衣で走るの慣れてるから」フフッ
少年「でも、お祭り楽しんでるの邪魔しちゃいましたよね…」
「いいのいいの。元々人の少ない所で射的やりに行った友達を待つつもりだったしね」
「そういうきみは…もしかして迷子?」
少年「迷子、なんですかね…人混みに揉まれちゃいまして」
「あー…私も、正直ここまで混んでるって知ってたら来なかったかも」
「でも今は便利な時代、私たちにはこれがあるもの」スッ
少年「スマホ…」
「そう。きみも、お友達にここに居るってこと教えておかないと」
少年「……」ゴソゴソ
スッスッ、スッ
少年『ごめん、人に流された。今石段の横のはずれた場所に居るよ。焼きそばと金魚すくいの屋台の間』
少年(……)
少年(……そうすぐには既読にならないか)
「ふぅ。早く戻ってこないかな」
少年「…お姉さんて、この町の人ですか?」
「私?ううん、北市の人だよ」
少年「お姉さん、この町って人少ないなって思いませんでした…?」
「別に思わなかったけど……というかその、お姉さんって言われるのこそばゆいな…」
少年「えっと、それじゃ先輩?」
眼鏡娘「眼鏡娘、でいいよ。私の名前」
少年「眼鏡娘さん…?」
眼鏡娘「はい」ニコッ
少年(綺麗な笑顔……まるで……)
ーーーーー
少女「」フフッ
ーーーーー
272 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:34:26.41 ID:hBUPAlst0
少年「………」
少年「…あの、ちょっとだけ相談してもいいですか…?」
眼鏡娘「?うん。私で良ければ」
少年「……」フリムキ
少年(……あの池は、向こうの方だったっけな……)
少年「例えば…」
少年「例えばの話ですけど」
少年「もし願いを叶えてくれる人が居たら……眼鏡娘さんだったら、お願いをしますか?」
眼鏡娘「…願い事?」
少年「はい」
眼鏡娘「神妙な顔で喋り出すから何かと思ったら…随分メルヘンチックな相談ね」クスッ
少年「理不尽に死んでしまった友達が居たとして」
眼鏡娘「…!」
少年「…その人を生き返して欲しいと願うのは、いけないことなんでしょうか…」
眼鏡娘「……」
少年「……」
眼鏡娘「……なくなった命はね、戻らないよ」
眼鏡娘「願いを叶えてくれるだなんて、そんな都合の良いものはこの世にないの。よしんばあったとしても、必ず犠牲が付いてくる」
眼鏡娘「おいしい話には裏がある、ただ程高いものはない…なんて言うでしょ?」
眼鏡娘「だから私ならそんなものには頼らないかな」
少年「そう、ですか」
眼鏡娘「…意外だった?」
少年「まぁ…少し…」
眼鏡娘「ふふっ。そうね、普通目の前にそんなチャンスが降って湧いたら、誰だって飛びつきたくなるよね」
眼鏡娘「少し前の私なら、迷わずお願いするって答えてたろうなぁ」
少年「…?」
眼鏡娘「ね、ちょっと可笑しな話」
眼鏡娘「私ついこの間までね、重力が嫌いだったの」
少年「え、重力…?」
眼鏡娘「そう。きみにも私にも産まれた時からずーっと降りかかってる重力」
眼鏡娘「重力のせいで転ぶし、重力のせいで気分が沈む……重力がまとわり付いてくるから息苦しいんだーって、うんざりしてた」
眼鏡娘「…けど違った」
眼鏡娘「重力が嫌いだったわけじゃなかった。いつも流されるだけで行動しようとしない自分が、嫌だったの」
眼鏡娘「それを重力のせいにしてたんだよね」
273 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:36:52.52 ID:hBUPAlst0
少年「……」
眼鏡娘「あんまり面白くなかった?」
少年「…どうやって克服したんですか?」
眼鏡娘「克服、というか……気付かせてくれたんだ」
眼鏡娘「私の大事な人たちが…」
少年「……それって、今日一緒に来てる友達さん?」
眼鏡娘「!…すごい、どうして分かったの?」
少年「眼鏡娘さんの顔見てたら、なんとなくそうかなって」
眼鏡娘「へぇ……んふ、なんか少し嬉しいかも」
眼鏡娘「あ、でも」
眼鏡娘「この相談って…もしかしてきみのお友達は……」
少年(………)
少年「いえ、生きてます。さっきのは例えばの話ですから」
眼鏡娘「…そっか」
元気娘「あ!居たー!」テッテッテッ
眼鏡娘「!来た来た」
少年(あの人が眼鏡娘さんの大事な人…?)
元気娘「ねー見て見て!男くんこんなに撃ち落としたの!隠れた才能がーとか言って──む?」
少年・眼鏡娘「「?」」
元気娘「……眼鏡娘ちゃんが」
元気娘「男の子を口説いてる!?」
眼鏡娘「違いますー。人混みで潰されそうになってたからここまで連れてきただけ」
元気娘「なーんだ」
元気娘「こーゆうとこではねぇ、スルスルッて、人の間をうまくすり抜けるのだよお兄さん」ニシシッ
少年「は、はい」
元気娘「眼鏡娘ちゃん行こっ!男くん向こうで待ってるから!」
眼鏡娘「うん」
眼鏡娘「それじゃあね。今度は倒されないように気を付けるんだよ?」
少年「…お話、ありがとうございました」
眼鏡娘「余計なお世話になってたらごめんなさい」
少年「そんなことないです」
眼鏡娘「……」
眼鏡娘「じゃ、余計ついでに最後に一つだけ」
眼鏡娘「──きみときみの愛する人を大切にね」
元気娘「眼鏡娘ちゃん早くー!」
眼鏡娘「はいはい!」
タッタッタッ...
274 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:38:03.42 ID:hBUPAlst0
少年「………」
少年「愛する人…って」
少年(友達は大事にしなさいってこと?)
少年「友達……ともだち……」
少年「……少女さん……」
少年(……………)
少年(懐かしいな、初めて少女さんと話したのがもうずっと前の気がする)
少年(あの時は終わったと思った。僕の情けないノートを見られて、またクラスの笑い者にでもされるんじゃないかなんて)
少年(けど彼女はバカにすることもなく勇気付けてくれた。こんな僕と友達になろうなんて言ってくれてさ…)
少年(…僕があの時差し伸べられた手を握っていたら、未来は少しでも違うものになっていたのかな)
少年「……」
少年(……そう。僕がノートを落としてなければ、あの男に会ってなかったら……あんなノートに頼らないくらい強かったら)
少年(少女さんがあんな目に遭うことはなかったのかもしれない)
少年「……っ」
少年(時間が経つに連れて少女さんは、笑うことが減っていった。もう逃げないって、目を逸らさないって誓ったはずの僕は……それを見ていることしか出来なかった)
少年(流されるままで行動しようとしない……いや、行動はしてるつもりなんだけど…)
少年(…眼鏡娘さんが言ってたのはそういうことじゃないよな)
少年(……あぁ、分かってるよ)
少年(今の僕に足りないのは、向き合うこと)
少年(がむしゃらに怪異を追いかけていればいずれ何もかも丸く収まる?そんなわけないだろ)
少年(一番見過ごしちゃいけない問題から逃げようとしてたんだ)
少年(………)
少年(………)
包帯少女「少年君!」
少年「!」
包帯少女「やっと見つけた」タッタッタッ...
275 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:39:33.61 ID:hBUPAlst0
包帯少女「ここまで酷い混み具合はさすがに予想外…」
包帯少女「悪かったよ、きみが居なくなってるの気付けなくてさ」
少年「……なんで少女さんが謝るんだよ」
少年「ぼくが、勝手に押し流されただけだよ」
包帯少女「…どうかしたの?」
少年「………」
包帯少女「少年君…?」
少年「…謝らなきゃいけないのは僕だ」ソッ
包帯少女「っ」ピクッ
少年「……こんな……包帯なんて……」
少年「ごめん、僕のせいで」
少年「少女さんを苦しめていたくせに、僕はそこから逃げてた…」
包帯少女「………」
少年「……」
少年「…僕がこの神社を訪ねた土曜日、覚えてる?トドノツマリ様の噂を確かめるだとか言って」
包帯少女「……うん」
少年「あの日、さ」
少年「実は僕だけじゃなくて少女さんも一緒にここに来てたんだよ。境内でトドノツマリ様が現れるか確かめて、でも何も出てこなかったから場所を変えてさ」
少年「…近くの池まで行ったんだ。そこで……そこで…………」
少年(……)
少年「変な声に唆されて……いやこれは言い訳だ」
少年「──僕は、きみを池に落とした」
少年「あまつさえそのまま逃げて見捨てようとした…!」
少年「僕はきみを殺したんだ!」
少年「きみが今生きてるのはきっと………僕がトドノツマリ様にお願いをしたから」
少年(そうだよ、社の前で泣き喚いてたあの時、思い返してみれば不可解な現象が起きていたじゃないか)
少年「少女さんを生き返して欲しいって願いを、トドノツマリ様は本当に叶えてくれたんだ…!」
少年「だけどきみは苦痛に苛まれた状態で戻ってきた。それは…願いの代償なのかもしれない…」
包帯少女「……」
少年「僕はさ、きみがあの日のことを覚えてないって言った時、好都合だと思っちゃったんだ」
少年「このままあの事が無かったことになれば……なんて考えてたんだろうね」
少年「何もかも少女さんに押し付けて自分は逃げようとして」
少年「それでも少女さんは僕のことを助けてくれた」
少年「また笑って、一緒に話をしてくれた…」
少年(……っ)
276 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:40:52.39 ID:hBUPAlst0
少年「ごめん、少女さん!僕は卑劣な嘘をついてた!きみとの関係が壊れるのが怖くて…!」
少年「でも結局僕が全部ぶち壊しにした!」
少年「きみから平穏な日常を奪っておきながら、平気な顔して居座り続けた人間が!!」
少年「……僕という奴なんだ……」
少年(弱い人間だ…僕は…)
少年(傷付くのを恐れ、傷付けるのを恐れ……最後には逃げ出す)
少年(その結果どうだ。結局こうして大切な人を傷付けている)
少年「ごめん……ごめんよ……!」
少年「僕は、きみに出会うべきじゃなかったんだ……」
包帯少女「……」
少年「……」
包帯少女「………」
包帯少女「知ってたよ」
少年「……え?」
包帯少女「今話してくれたこと。あの土曜日の出来事」
包帯少女「少年君に突き落とされて溺れたことも、全部ね」
包帯少女「嘘つきはきみだけじゃないの。ぼくも、覚えてないなんて嘘をついた」
少年「な…なんで…」
包帯少女「きみと同じだよ。ぼくだって少年君との関係を壊したくなかったから」
包帯少女「どうして生き返ったのかは、今初めて知ったけどね」クスッ
包帯少女「……少年君。色々言いたいことはあるけど、とりあえず」
包帯少女「きみを恨んではいないよ」
少年「…!」
包帯少女「確かに身体が痛んだり、怖い夢を見ることもあった。普通の女の子じゃなくなったような気がしたよ」
包帯少女「でもね、それ以上にきみと過ごすのが楽しかった。勉強は教え甲斐があったし、仲直りしてくれた時はすごく嬉しかったもん」
包帯少女「だからきみに日常をめちゃくちゃにされたなんて思ってない」
包帯少女「むしろあのまま死んでいたら、それこそ恨むよ。化けて枕元に出てたかもしれないなぁ」
少年「……………」
包帯少女「…ぼくはね、きみと出会えて良かった」
少年「──」
少年(……どうして……きみは、こんな)
包帯少女「こんな弱い自分が恥ずかしい」
少年「っ!」
包帯少女「とか思ってるんでしょ」
少年「…実際その通りだし…」
包帯少女「全然違うよ。だってこうやって、ぼくに洗いざらい打ち明けてくれたじゃない」
包帯少女「ぼくの知る以前の少年君だったら、その罪悪感を最後まで胸にしまったままだったと思う」
包帯少女「今、ちゃんと向き合ってくれた。きみは十分強くなってるよ」
277 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:41:47.11 ID:hBUPAlst0
包帯少女(…ん、そっか。ぼくがここに居る意味なんて至極単純。というより頭のどこかでは分かってた)
包帯少女(この人がこんなだから、ぼくは放って置けなかったんだ)
包帯少女(見守って、側で過ごして、手を貸して……こんな風に成長してくれるのを見届けたかったんだろうな)
包帯少女「……ふふっ」
少年「………」
少年「…怒って、くれよ」
少年「自分を殺した殺人犯が、目の前に居るんだぞ!普通怒り狂うくらい──」
ピトッ(人差し指を唇に押し当てる)
少年「!」
包帯少女「そういうとこかな、ぼくが怒るのは」
包帯少女「全部自分が悪いと思い込むところ」
包帯少女「…少年君さ、ぼくを殺したいと思ったことがあったの?」
少年「あるわけない!そんなこと絶対思うもんか!…あの時はなんか、自分が自分でないような感覚で…」
包帯少女「そう。じゃ、許す」
少年「へ?」
包帯少女「それが聞ければ満足だよ」
包帯少女(水底に沈む間際見えたあの男)
包帯少女(今なら分かる。ぼくを突き落としたのは多分、あいつだ)
少年「少女、さん……」
包帯少女「あれ…泣いちゃう?」
少年「!…泣かない」
少年「強い奴は、泣き顔なんて見せないだろ?」
包帯少女「そうそう、その息だ」
少年(間違いない)
包帯少女(それにしてもこんな時に気付かされるなんて)
少年(やっぱり僕は──)
包帯少女(きっとぼくは──)
少年・包帯少女(この人のことが好きなんだ)
278 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:42:43.15 ID:hBUPAlst0
少年(鬱屈とした日々から救ってくれただけじゃない、こんなにも僕を認めてくれる)
少年(こんなの好きになるなって方が無理だ)
少年「……ありがとう、少女さん」
包帯少女「どういたしまして」
少年(…この人だけは絶対、何がなんでも守り抜いてやる)
包帯少女「さて、捜索再開しよっか。あんまり遅いと猫又娘さんにどやされちゃう。花火の上がる時間までには済ませられるといいね」
少年「花火?もっと混んでくるから?」
包帯少女「ううん。せっかくお祭りに来たんだもん、花火くらい見ていきたくない?」フフッ
少年「…いいね」ハハッ
...ギュ
少年「…!」
少年(手を……)
包帯少女「またはぐれたら、大変だから」
少年「そう……だね」
少年(…♪)
包帯少女「それから、さっきの話もう少し詳しく教えて。きみの身に何が起こってたのか、ぼくが溺れた後何があったのか知っておきたい」
少年「わ、分かった…!」
包帯少女(ありがとう、はこっちの台詞だよ少年君。おかげで踏ん切りがついた)
包帯少女(ぼくはもう迷わない)
279 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:44:19.49 ID:hBUPAlst0
同級生A「あ?少年じゃん」
同級生B「ミイラ女も一緒かよ」ケッ
少年(こいつら…来てたのか)
同級生A「おぅおぅなんだその手。お前ら結局出来てたんかよ(笑)」
同級生B「付き合ってないとか言ってた癖にな?」
同級生A「しっかしまぁ、よくやべぇ奴同士でくっつこうと思ったもんだわ」
同級生A「傷の舐め合いってやつか、え?そこんとこどうよ少年ちゃんよ?」ニタニタ
包帯少女「…あなたたち、よく飽きもせず──」
少年「いいよ少女さん」
包帯少女「…?」
少年「……」
少年「傷の舐め合いじゃない、一緒に居るのが楽しいだけだ」
少年「お前らだって二人でこの祭りに来てるじゃん。わざわざ僕をからかうために来たんじゃあるまいし、僕たちと同じだろ?」
同級生B「はぁ…?」
同級生A「てめぇらと一緒とか…冗談言うな」
少年「じゃあ何しに来たんだよ」
同級生A・B「「………」」
同級生B「…!なぁおい、もう時間が」
同級生A「あ!やっべ、姉貴にボコられる!」
タッタッタッ...
包帯少女「……」
少年「……」
包帯少女「……やるじゃん」
少年「……へへっ」
280 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:45:18.95 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
猫又娘「……」ザッザッ
猫又娘「……」ザッ...
猫又娘「………」
(大きな池)
猫又娘(ここにもいないか)
猫又娘(今日こそはもしかしたらって思ったんだけどなぁ)
猫又娘「……」
猫又娘(…いつ見ても気味悪い所だよ)
猫又娘(ここからそう遠くないとこでお祭りやってるはずなんに、喧騒なんか聞こえやしない)
猫又娘「……ここ、なんよね。きっと」
猫又娘(少年君が少女さんを突き落としたっていう例の池)
猫又娘(池の底からたくさんの手が伸びてくるのを見たって言ってたけど、私が来た限りではそんなの一回もなかった)
ーーーーー
少年「──それに、声が聞こえたんだ。少女さんを、ここで突き落とせって」
ーーーーー
猫又娘(…そんなことも言ってたっけ)
猫又娘「……」
猫又娘「………」
猫又娘「……………」
猫又娘「」グッ...
猫又娘「もー!あとちょっとなのになぁ!」
猫又娘(もうちょっとで何か分かりそうなのに!ここまで出かかってるんよここまで!)
猫又娘(喉につっかえた小骨が取れないときよりもやもやする〜!!)
281 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:45:55.13 ID:hBUPAlst0
猫又娘「…………はー」
猫又娘(結局、あの子たちの問題も解決し切れてないんだよね)
猫又娘(少年君も少女さんも、ここで起きたことについて触れないようにしてさ)
猫又娘(…かく言う私も、あれ以上首を突っ込めなかった)
猫又娘(……中途半端な関係に戻すくらいだったら、初めから関わるべきじゃなかったんかなぁ……)
ーーーーー
派手娘「──人を騙してまで仲良しごっこするの、楽しい?」
ーーーーー
猫又娘「………」
猫又娘「……騙してるつもりなんて、ないのに」
猫又娘(でも)
猫又娘(ここに居る私は、いつも失敗ばっか)
猫又娘(…それって…)
猫又娘(………)
猫又娘(私のしてることって、間違ってるのかな…)
猫又娘「……」
猫又娘(…キミの居ない世界は、やっぱり難しいよ…)
猫又娘(私はただ……)
猫又娘「もっとキミと笑いたいだけなんだよ…」
282 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:46:26.59 ID:hBUPAlst0
例えば、子供が大人のフリをして大人になっていくように。
キミのフリをずっと続けていれば私は、キミのようになれると思ったんです。
283 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:47:39.36 ID:hBUPAlst0
===5年前===
……………。
ワイワイ
……………。
キャハハハ!
猫又娘(………!)
猫又娘「…?……?」
猫又娘(ここ、どこ…?)キョロ、キョロ
坊主「」テテテッ
おてんば「もうちょっとー!」テテテッ
ヒョロ「いいぞ!そのまま捕まえちゃえ!」
気弱「」ハラハラ
坊主「くっそー!なんで俺ばっか追いかけんだよ!いろんなやつ狙うのが鬼ごっこだろぉ!?」
おてんば「坊主が一番追いかけやすいのよー!」
坊主「なんじゃそりゃ!?」
ワーワー!
猫又娘(……なんか、楽しそう……)
おてんば「それ捕まえた!」タッチ
坊主「はぁ、はぁ……足はえーよお前…」
坊主「ちくしょー…追いかけやすいやつってんなら、気弱を狙ってやるか」
気弱「え」ピクッ
おてんば「ちょっと!気弱ちゃんいじめたら許さないからね!」
坊主「ふざけんなよおい!?」
ヒョロ「やっば逃げなきゃ」ダッ
坊主「うおおぉ!」タッタッタッ
気弱「……」テテテッ
気弱「…ん?」チラッ
気弱「ねぇみんな、あの子」
坊主「お?」
おてんば「あら?」
猫又娘「!」
ヒョロ「初めて見る子だ!」
猫又娘(あ……ど、どうしよう…)
284 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:48:39.85 ID:hBUPAlst0
気弱「」トコトコ
猫又娘「……」アセアセ
気弱「……あなたも、一緒に遊ぶ?」
猫又娘「え…?」
坊主「いいなそれ!これで鬼じごくから解放されるぜぃ」
おてんば「どーせ次の鬼も坊主になると思うわよー」ニヤニヤ
坊主「なにぃ!?」
ヒョロ男「今日は全員で坊主狙う日だな!」
ワーワーギャーギャー
気弱「ごめんね、ちょっと騒がしいけどみんな面白い人だから。あなたさえ良ければだけど…どうかな?」
猫又娘「……いいの…?」
坊主「あたぼうよ!」
ヒョロ「ウェルカムウェルカム」
気弱「……」ニコッ
猫又娘「………じゃ、じゃあ」
おてんば「決まりね!わたしおてんばって言うの!あなたは?」
猫又娘「私…えっと……」
猫又娘「猫又娘、です」
おてんば「よろしく、猫又娘ちゃん」
坊主「よーし!鬼決め直そうぜー!」
おてんば「それはなしよ。坊主からでしょ?」
ヒョロ「異議なーし」
坊主「くっそおまえら…」
マチヤガレオラー!
ボウズガキレタ!
猫又娘「……」ポカン
気弱「…行こ?」
猫又娘「!うん」
285 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:50:09.93 ID:hBUPAlst0
ーーー夕方ーーー
坊主「──そら!」ビュン!
ヒョロ「ぐはっ」バシン
猫又娘「」ボールキャッチ
坊主「うっし、これで全員外野だな」
ヒョロ「いてて…坊主&猫又娘チーム強過ぎない!?」
おてんば「坊主がドッチボール強いのは知ってるけど、猫又娘ちゃん運動神経いいのね」
気弱「」コクコク
猫又娘「そうかな?…えへへ」
ヒョロ「全然当てらんないんだもんなー。猫みたいにかわしちゃってさー」
おてんば「じゃ、次は猫又娘ちゃんと坊主が分かれて──」
カーン、カーン
坊主「あ、もうそんな時間か。…やべぇ俺帰って宿題やんないと」
ヒョロ「…おれも」
おてんば「宿題くらい遊ぶ前に終わらせとけばいいのに」
おてんば「ま、わたしももうかーえろ。そもそもここ親に来ちゃダメって言われてるし」
ヒョロ「へー。なぜに?」
おてんば「……怖いお化けが出る、とか言ってくるの。知らないとこに連れてかれちゃうんだって」
坊主「あれ、お前お化け苦手じゃなかったか?」
おてんば「べ、別に怖くなんかないですけど何か!?」
坊主「めっちゃ怖がってるよなそれ!そんなんでよくここで遊んでたなぁ」
おてんば「…だってここ丁度いいんだもん。誰もいない手頃な空き地」
気弱「秘密基地…って感じだよね…?」
おてんば「そうそう!さすが気弱ちゃん分かってるー!」
ヒョロ「誰も来ない空き地ならこの山のてっぺんにもあるよね。あそこ、ほら、えーと…お寺のとこ」
おてんば「あそこは、なんか……変なのが出そうじゃないっ」
坊主「お祭り以外じゃ行きたくねーよなー」
286 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:50:47.19 ID:hBUPAlst0
坊主「はー、帰るとすっかー」
ヒョロ「猫又娘っちは家どこなん?」
猫又娘「え!?…とぉー…」
猫又娘(家なんて無い…)
猫又娘「…あっちの方」
気弱「私とおんなじ方向だね」
おてんば「いいないいな。わたしも猫又娘ちゃんとお話しながら帰りたいー」
坊主「また明日も遊ぼうぜ、この五人でよ」
ヒョロ「異議なーし」
猫又娘「!遊びたい!今日すっごく楽しかったから!」
猫又娘「あ……えと、あのね」
猫又娘「ありがと」ニコッ
坊主「俺らも楽しかったぜー」
おてんば「」ウンウン
気弱「……♪」ニコニコ
坊主「んじゃ、まったなー!」
ヒョロ「じゃね〜」
おてんば「猫又娘ちゃん、バイバイ!」
猫又娘「うん!バイバイ!」
猫又娘(一緒に遊ぶことは、楽しい)
猫又娘(絶対覚えておこう)
287 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:51:26.19 ID:hBUPAlst0
ーーー帰り道ーーー
気弱「……」トコトコ
猫又娘「……」テクテク
気弱「…猫又娘、ちゃん」
猫又娘「?」
気弱「今日、その…楽しかった、んだよね…?」
猫又娘「もちろんだよ。みんなと遊ぶの一生飽きないかも」
気弱「…良かった。さっき、私が無理に誘っちゃったんじゃないかなって、ちょっと不安だったんだ」
猫又娘「ううん、声かけてくれて嬉しかった!」
気弱「まだまだ元気そうだね」フフッ
気弱「……実を言うとね、私も幽霊みたいな怖いの、全然ダメなの」
猫又娘「そうなの?それじゃあ…」
気弱「うん。あの空き地も怖い」
気弱「…けど、みんなと居れば楽しくて怖さなんて忘れちゃうんだ」
気弱「私もおてんばちゃんに誘われてみんなと遊び始めたからね、一緒だよ猫又娘ちゃんと」
猫又娘「気弱ちゃん…」ジーン
気弱「だ、だからね、その……」
猫又娘「?どしたの?」
気弱「…わ、私と、友達になってくれる…?」
猫又娘「!……なる。ならせて!」
気弱「…!」パアァ
気弱「やた…!どうしよ…とっても嬉しい」
猫又娘「私もだよ。初めてのお友達だもん!」
気弱「初めて…?」
猫又娘「ぁ……私ここにお引越ししてきたばっかりなの」
気弱「そうだったんだ……そういえば、学校はどこにいってるの?」
猫又娘「………あっちの方の……」
気弱「向こうは……中央小学校かな」
猫又娘「そ、そこそこ」
気弱「そっか、残念…。私たち、南小だから学校終わってからじゃないと遊べないね…」
猫又娘「……」
猫又娘「私、放課後時間いっぱいあるからさ、毎日でも遊ぼ!」
気弱「…ふふっ、そうだね。ヘトヘトになるくらい遊ぼうね」
猫又娘「うん!!」
288 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:52:18.81 ID:hBUPAlst0
ーーー数日後ーーー
猫又娘「……」サササッ
猫又娘「」チラリ
猫又娘「……」ササッ
猫又娘「……!」
猫又娘「坊主くん見ーつけた!」
坊主「!?マジかよ!」ダッ
猫又娘「」ダッ
タタタタッ
猫又娘「…むふー」トン
坊主「いや無理!猫又娘の方がはえーのに缶蹴れるわけねーって!」
おてんば「わたしがかけっこで負けちゃうのよ?見つかったら最後、追い付けない!」
ヒョロ「一瞬で捕まりましたはい…」トホホ
気弱「すごいね…どこに隠れても見つかっちゃう」
猫又娘「えへ、みんなの気配で分かっちゃうんだ」
おてんば「気配!なんか忍者みたい!」
坊主「でもヒョロは真っ先に見つかって良かったんじゃね?お前猫又娘のことかわいいなーっつってたもんな」
ヒョロ「なっ!なんでばらすんだよ!?」
おてんば「あら?ヒョロ、まさか猫又娘ちゃんのこと」
ヒョロ「ちがっ…ないから!んなこと!」
猫又娘「……かわいい…私が…?」
気弱「うん…とっても」
おてんば「そうねー、わたしの次くらいにはね!」
坊主「うーわ始まった、おてんばのかわいい自慢」
おてんば「あぁ?」
ギャーギャー
ヒョロ「あーあ、そしていつもの二人の口喧嘩だー」
猫又娘「あはは」
気弱「……」
気弱「…ねぇ、猫又娘ちゃん?」
猫又娘「なーに?」
気弱「……こ、今度、私んちに遊びに来ない?」
猫又娘「気弱ちゃんのおうち…!」
気弱「うん。…私がね、家で猫又娘ちゃんの話してたら、お母さんが今度その子遊びに連れてきなさいって」
気弱「でもでも!嫌ならいいよ!どうせ私の家で遊んでも、面白いものないし…」
猫又娘「行く行く!」
気弱「!」
猫又娘「気弱ちゃんが居るだけで楽しいもん!行くよ!」
気弱「……お母さんに言っとくね」ニコッ
289 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:53:27.08 ID:hBUPAlst0
猫又娘(私が誰なのか、この世界が何なのか、よく分かんないけど)
猫又娘(そんなのどうでもいいや。こうして気弱ちゃんたちと遊べれば、なんもいらないもん)
ヒョロ「おーい、そろそろ別の遊びしようよ」
おてんば「ん?そうね…」
坊主「鬼ヶ島鬼ごっこやろうぜ!」
おてんば「なにそれ」
坊主「今俺が考えた!猫又娘以外全員鬼で、猫又娘を捕まえる鬼ごっこだ!鬼ばっかいるから鬼ヶ島風、みたいな」
猫又娘「え」
気弱「そんなの、すぐ捕まっちゃうよ…」
ヒョロ「4対1はそりゃあねぇ」
おてんば「わっかんないわよ?猫又娘ちゃんすばしっこいから案外苦労するかも」
坊主「そういうことだ。俺らまだ猫又娘に勝てたことないしな!」
ヒョロ「負けず嫌いなだけやんか」
坊主「……そうだよ悪いか!?」
猫又娘「…いいよー?」
坊主「まじ!」
おてんば「ふぅん、自信ありげな顔してるわね!」
気弱「え、え…私、でも猫又娘ちゃんだけ狙うなんて……」
坊主「こんな時にまで遠慮する必要ないんだぜ?」
気弱「そうじゃなくて…」
おてんば「ならこうしない?負けた方は罰ゲーム!」
おてんば「わたしたちが捕まえられなかったらこっちの負け、捕まえられたら猫又娘ちゃんの負け」
おてんば「で!負けた方は言うことを一つ聞かなくちゃいけない!」
ヒョロ「いやーそんなの気弱っちはもっとやりたくなくなるだけじゃ?」
気弱「………」チラリ
猫又娘「…?」
気弱「……そ、それなら」
ヒョロ「なぬっ」
おてんば「なんて命令する気なのかな〜?」ニヒッ
気弱「ないしょ…!でも」
気弱「つ、捕まえちゃうから、猫又娘ちゃん」
猫又娘「」ニヤリ
猫又娘「私が勝ったらみんなそれぞれに命令出来るんだよね?」
おてんば「そうよ」
坊主「おいおいまじで逃げ切る気なのか!?」
ヒョロ「絶対捕まえてやろう!」
坊主「おうよ!」
おてんば「覚悟はいい?猫又娘ちゃん??」
気弱「……」ドキドキ
290 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:54:47.30 ID:hBUPAlst0
猫又娘「にっへへー。みんなまだ私の本気を知らないでしょー」
猫又娘「私が本気出したらぜーったい捕まらないもんね!」
おてんば「なぁに?坊主みたいなこと言っちゃって」
ヒョロ「知ってる、それ負けフラグってやつだ!」
猫又娘「ふふふ……では!」
ピョコン!
四人「!?」
猫又娘「さーて!始めよっか!」ネコミミ&シッポ
気弱「…ね、猫の耳…?」
坊主「すげぇ…手品かよ」
猫又娘「手品?違うよー、これが私の真なる姿なのです!」
おてんば「」ソーッ
猫又娘「!」ピクッ
おてんば「う、動いた…」
猫又娘「ちょっとびっくりしちゃって」
坊主「俺も触っていいか…?」
ヒョロ「」チョンチョン
猫又娘「ん……や…ムズムズするぅ…」
坊主「めっちゃふさふさ……っつか生えてんのか、これ…?」
猫又娘「?うん。そうだよ」
猫又娘(みんな、そんなに珍しいのかな?)
坊主「は!?えぇ…!?なんじゃそりゃ!どうやって動かしてんだ!?」
猫又娘「そんなの普通に──」
ギュー!
猫又娘「いだぁい!!」
猫又娘(え、なに?なに…!?)
おてんば「……」
猫又娘「…おてんばちゃん…?今、耳引っ張ったの…?」
おてんば「……すごいのね。その耳どう付けたのか知らないけど頑丈なのね。ねぇどうしたらそれはずせるの?」
猫又娘「これ、私の耳だよ?」
おてんば「うん分かってる分かってる。だからどういう風にくっついてるのか知りたいの」
猫又娘「えっと…だから、これは私の耳で──」
おてんば「そんなわけないでしょ!猫の耳生やした人なんていないもん!!」
おてんば「じゃあなに!?猫又娘ちゃんは人間じゃないって言いたいの!?」
猫又娘「う、うーん……」
猫又娘「……みんなと一緒じゃ、ないかなぁ…」
四人「………」
291 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:55:43.40 ID:hBUPAlst0
猫又娘「………」
おてんば「……人間じゃない……」
おてんば「バケモノ……」
猫又娘「え…」
おてんば「……いやぁ…!」ダッ!
タッタッタッ
坊主「おい!おてんば!」
ヒョロ「な、なぁ坊主。おれらも逃げようよ…なんか怖くなってきた…!」
猫又娘「なんで…?みんな、遊ぶんじゃ…」
坊主「そうな…」
坊主「取り憑くなら俺らじゃないやつにしてくれよ、頼むから!」
タッタッタッ
猫又娘「坊主くん!ヒョロくん!」
気弱「……」
猫又娘「気弱ちゃんどうしよ…おてんばちゃんたち、どっか行っちゃったよ…!」
気弱「ひっ……こ、こないで…!」
猫又娘「気弱、ちゃん…?」
気弱「気持ち悪い…」
猫又娘「──」
気弱「」タッタッタッ
猫又娘「…!」
猫又娘「……待ってよ……行かないで……」
気弱「」タッタッタッ...
292 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:57:17.88 ID:hBUPAlst0
ーーー夕方ーーー
猫又娘「……」トボトボ
猫又娘「……」トボトボ
猫又娘「………」
(誰もいない小さな公園)
猫又娘「………」
トボトボトボ...
猫又娘「……」
猫又娘(これが公園…)
猫又娘(遊べそうなものが、たくさんある)
猫又娘(あの空き地よりも…)
猫又娘「……」ウズクマリ
猫又娘(……)
ーーーーー
おてんば「──バケモノ……」
ーーーーー
猫又娘「……なんでかな……」
猫又娘「私、みんなと遊んじゃダメなのかな……」
猫又娘「……」
フサフサ ギュ...
猫又娘「…こんな耳が付いてるから…?」
猫又娘「みんなと違うから遊べないの…?」
ーーーーー
気弱「──私と、友達になってくれる…?」
ーーーーー
猫又娘「……みんなと同じじゃないと、本当の友達になれないの…?」
猫又娘「ウソの友達にしか…」
猫又娘「………」
猫又娘「……友達って……なんだろう……」
猫又娘「………」
猫又娘(……私って、なんなの……)
猫又娘「……」グッ...
猫又娘(今ここから消えちゃえば、みんなと同じに生まれてこれるかな)
293 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:58:14.91 ID:hBUPAlst0
...ザッザッザッ
猫又娘「…!」カオアゲル
帽子少年(以下、帽子)「……」
猫又娘「……なんですか?」
帽子「……」スッ(手を差し伸べる)
帽子「お困りですか?お嬢さん」ニッ
猫又娘「へ…?」
帽子「こんなとこで落ち込んでたら、ずっと気分はくもりだよ?ほら!元気出して笑って笑って!」
猫又娘「…ほっといて」
帽子「いーや、きみが笑ってくれるまで離れない!」
猫又娘(…っ)
猫又娘「やめてよ!こんなバケモノに構わないで!」
帽子「化け物?…その猫耳とシッポ?」
猫又娘「……」
帽子「かわいいじゃん!天然物の仮装だね、100点だよ!」
猫又娘「─!」
帽子「あんね、きみが誰なのかなんて関係ないんよ。みんなみーんなが笑ってくれれば、みんな楽しくなるじゃん?」
帽子「つまり……そいっ」グイッ
猫又娘「わわっ」
帽子「よし、立ち上がれたね!ほいじゃ次は笑顔を作ろう!こーやって…」ニー
帽子「こう!」ニカッ
帽子「笑って嫌なことも面倒なことも全部吹き飛ばしちゃえ!」
猫又娘「………」
猫又娘「……ぅ……」ジワ...
猫又娘「うええぇぇん…!」ギュッ
帽子「おっとと」ダキトメ
猫又娘「うぅ…ヒック…ああぁ…!」ポロポロ
帽子「…よしよし」
帽子「いっぱい泣いたら、いっぱい笑おうか」ナデナデ
.........
294 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:59:32.55 ID:hBUPAlst0
帽子「──それで、その友達は逃げていっちゃったんだ?」
猫又娘「……」コク
帽子「気持ち悪くなんかないけどなぁ。何を怖がったんかな。きみ、悪さでもするん?」
猫又娘「しない……と思う」
帽子「?」
猫又娘「だって分かんないの…ついこの間気が付いた時にはここにいたんだもん」
猫又娘「…もしかしたらひどいこと、するかも…」
帽子「へーきだって。きみ悪い子には見えないしさ」
帽子「……友達が欲しいん?」
猫又娘「っ…」
帽子「友達がいれば、きみは笑ってくれるんかな?」
猫又娘「……でも、どうせみんな私から離れてく…」
帽子「だから僕が友達になるよ」
猫又娘「ふぇ…?」
帽子「僕はきみから離れない。そう言われない限りは。むしろきみに興味があるんです」ヘヘッ
猫又娘「ほんと…?離れて、かない?」
帽子「うむ!」
猫又娘「……じ、じゃあ──」
ーーーーー
気弱「──気持ち悪い…」
ーーーーー
猫又娘「……でも、ダメだよ」
猫又娘「本当の友達にはなれないよ…」
帽子「んー?」
猫又娘「私、みんなと違うから……みんなと同じじゃないからウソの友達にしかなれない…」
帽子「……」
猫又娘「……」ウツムキ
295 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:00:03.86 ID:hBUPAlst0
帽子「本当かウソかなんてどうでもいいんさ」
帽子「きみがここにいて、きみの笑顔が見たいと思ってる僕がここにいてさ、それだけでいいじゃない」
帽子「難しく考え過ぎだって。友達に本当もウソもない!仲良しなら友達でオッケー!」
猫又娘「……」
帽子「…やっぱ、怖いん?」
猫又娘「……怖い、けど……」
猫又娘「ねぇ…ほんとに離れてかない…?」
帽子「もちろん」
猫又娘「私、気持ち悪くないの…?」
帽子「全然」
猫又娘「……」
帽子「……」
猫又娘「…絶対だよ!私を一人にしたら、呪っちゃうから…!」
帽子「おーこわいこわい」ニシシッ
帽子「その調子で明日はもっと元気なきみを見せておくれよ」
帽子「じゃ、帰りますかね〜。もう暗くなってきたし」
帽子「きみを家まで送ってしんぜよう」
猫又娘「……家、ない……」
帽子「んぇ?…あー、そか」
猫又娘(……)
帽子「僕の家来る?」
猫又娘「!…いいの?」
帽子「僕んち無駄に広いからきみ一人隠せる部屋くらいいくらでもあるんさ」
296 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:00:33.01 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
帽子「これが僕んち」
猫又娘「大きい…」
帽子「でも住んでんの僕とじいちゃんだけなんだよね。縁側とかも多いから掃除が大変でさー」
帽子「ちょっと隠れててね」
猫又娘「」ササッ
帽子「じいちゃんただいまー!」ガラッ
祖父「……うむ」
祖父「…今日は、少し遅かったな」
帽子「すごーく落ち込んでる子がいてさ、泣き止むまで慰めてた」
祖父「……そうか」
祖父「夕食、出来てるぞ。早く食べなさい」トットットッ...
帽子「はーい!」
帽子「……よし、行こう行こう」
猫又娘「……」
帽子「どしたん?今なら見つからんよ」
ドロン
仔猫「…ニャ」
帽子「おぉ…!すごい、それなら安全に潜入できるな!」
帽子「あ、なんだっけ、確か…」
仔猫「?」
帽子「そうだ!猫又!」
帽子「人に化けられる猫のこと、そう言うんだって!あれ?猫に化けられる人か?…ま、どっちでもいっか!」
祖父「冷めてしまうぞ、早く食べなさい」
帽子「今行くー!」
297 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:01:31.12 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
帽子「さーて、と」
仔猫「」オスワリ
帽子「ご飯、あれだけで足りたん?」
仔猫「……」コクリ
帽子「僕なら絶対お腹空きまくる量だわな」
帽子「んで、部屋決めなー」
帽子「今いるのは大部屋。ここはよくじいちゃんがお客さんとか連れてくるからなしとして」
帽子「向こうの和室3つ、あっちは物置になってる部屋、そこの右行ったとこにもおんなじような部屋があって」
帽子「一応そっちの廊下の奥が僕の部屋」
帽子「うーむ…まぁ物置部屋なんかが布団もいっぱいあるし、悪くないかもな〜」
仔猫「……」
ドロン
猫又娘「…キミの部屋」
帽子「おぅ?」
猫又娘「キミの部屋がいい」
帽子「へ。僕はいいけど、あんま広くないよ?」
猫又娘「……一人は、やだ」
帽子「……」
帽子「よぉーし、では一名様ご案内!」
それからの日々はすごく目まぐるしかった覚えがある。
298 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:02:26.63 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
帽子「お困りですか、おばあさん?」
老婆「荷物が重くて、階段が上がれなくてねぇ…」
帽子「それくらい僕が持ちますよ!上まで一緒に行きましょう!」
老婆「ありがとうねぇ」
帽子「きみはおばあさんがバランス崩さないように支えてあげて!」
猫又娘「うん」
キミは誰彼構わず助けの手を差し出していた。
299 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:03:05.14 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
高学年「ここの公園は俺らが使うんだから他所に行けよ」
帽子「まぁそんなかたいこと言わずにさー、みんなで仲良く、ね?」
低学年の子たち「「「………」」」
高学年「やだよ、狭くなんじゃん」
帽子「あ!ならさ、こういうのはどう?そのボール使ってドッチボール勝負!勝った方が今日この公園を使える!」
高学年「えー?チビ達とやんの?どうせ弱い者いじめしたとか言って先生にチクる気だろ」
帽子「ノンノン。あの子たちの代わりに僕と、この人の二人で相手しますぜ」
猫又娘「わ、私も?」
高学年「……ぎゃはは!たった二人かよ!俺たち六人いるけど、速攻で負けても文句言うなよなー、はははっ!」
高学年「しかも一人は女子かぁ。ま、痛くないように当てっから安心しな」プクク
猫又娘「」ムッ
ーー5分後ーー
高学年「ま、参りました……」
猫又娘「……ふぅ」
帽子「わお…」
高学年「…ちぇ、分かったよ。約束だかんな、今日は俺らが別んとこ行くよ」
テクテク
帽子「また遊ぼうねー!」
高学年「うっせ!バーカ!」
帽子「……にしても、きみすごい機敏──」
テテテッ
低学年女子「お姉ちゃんありがとー!」
低学年男子「すっげー!どうしたらあんな風に動けんの!」
ワーワー!
猫又娘「え、え…!私は、えっと…」
帽子「……はは」
帽子「みんな?公園を取り返してくれたお姉ちゃんにお礼だ!」
低学年の子たち「「「お姉ちゃんありがとうございました!」」」
猫又娘「……どう、いたしまして」テレテレ
キミといるようになってから、この世界に溢れてる愛が、少しずつ見え始めてきた。
300 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:03:51.13 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
帽子「あっちぃ……夏バテかいな…」ナデナデ
帽子「あのーもしもし?そろそろ足が痺れてきたよ?」ナデナデ
仔猫「……」チョコン
帽子「……分かりましたよお姫様」ナデナデ
仔猫「♪」
帽子「家臣はこんな時のために取ってきておいたアイスでも食べますかね」ガサガサ
帽子「んー!やっぱこれが一番だな!」
仔猫「……」
ドロン
猫又娘「」パクッ
帽子「ちょっ」
猫又娘「冷たくて甘い」
帽子「あー!僕のアイス…」
帽子「なんてむごいことを!」
猫又娘(だって、キミの好きなものは全部知っておきたいから)
猫又娘「…ごちそうさまでした」ニコッ
帽子「!」
帽子「…いいね、その顔」
帽子「いや〜、最近よく笑うようになってきて僕は嬉しいよ。初めて笑顔見るまで苦労の日々だったもんなぁ」
301 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:04:30.79 ID:hBUPAlst0
帽子「…しかし、これはこれ、それはそれ。おイタした罰は受けてもらうよ?」ガシッ
猫又娘「な、何する気…」
帽子「ふっふっふ……くらえ!くすぐり攻──!」
猫又娘「…!」
帽子「──げきぃ……」グデ
猫又娘「…?」
帽子「ダメだぁ…気力が暑さに吸い取られる…」
帽子「アイスのことはもういいや…僕はちょっとだけ寝る…」
猫又娘「……」
猫又娘「手伝う」
帽子「ほえー…?」
猫又娘「……ねむれねむれや、ゆらりゆられ」〜♪
猫又娘「たなびくくものごとし」〜♪
帽子(あー…子守唄かなぁ…)
猫又娘「おやまもさともよるのなか」〜♪
猫又娘「はかなきゆめみんとす」〜♪
帽子(どことなく…懐かしい唄だなぁ……)
帽子「」スヤスヤ
猫又娘「はやい…」
猫又娘(……かわいい寝顔)
猫又娘「……」クスッ
猫又娘「あわれあわれやだれぞおにか」〜♪
猫又娘「てのなるところにおちて」〜♪
〜〜♪
キミといるとなぜか私の心の中は、暖かい光で満たされるようになっていった。
302 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:05:33.03 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
猫又娘「ねーねー」
帽子「なーにー」
猫又娘「真似っこ禁止!」
猫又娘「キミはなんでいつも誰かを助けようとするの?」
帽子「みんなを笑顔にしたいから」
帽子「そんなん夢物語だって分かってんだけどさ、この町の人全員笑顔に出来たらいいなってね」
猫又娘「…なんで?」
帽子「笑ってるとたのしーじゃん?」
猫又娘「……」
帽子「……」
帽子「」ヘンガオ
猫又娘「あはは!もう不意打ちも禁止!」
一度キミの学校までこっそりついて行ったことがあったよ。
ーーーーーーー
帽子「──!──、───♪」
「──?」
帽子「───!!」
ワハハハ
仔猫「……」
キミの周りはいつも笑顔の人でいっぱいだ。
私も……キミと一緒に笑っている時が一番楽しかった。
ずっとこんな日が続けばいいなって、思ってた。
303 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:06:38.14 ID:hBUPAlst0
ーーー夕方 帰り道ーーー
猫又娘「♪」テクテク
帽子「今日めっちゃご機嫌だね、何かあった?」テクテク
猫又娘「なにもー♪」
帽子「いやいや絶対何かあったっしょ!?」
猫又娘(さっき助けたおじいさん、私とキミを見て、かわいい彼女さんだって…)
猫又娘(♪)
猫又娘「ねね!今日のご飯なにかな?」
帽子「なんだろなー。昨日は肉だったから、今日は魚?」
猫又娘「やった」
帽子「魚好きなところはさすが猫だよねぇ」
猫又娘「にゃーん♪」
帽子「それは仔猫姿の方がかわいいな」
猫又娘「……ひっかく」
帽子「そんな!?」
猫又娘(今日も楽しかった。この人といるだけでなんでも楽しく感じられる)
ーーーーー
気弱「──気持ち悪い…」
ーーーーー
猫又娘(…この世界には、辛いこともある。けどきっと、それ以上に楽しくて暖かいことがあるんだ)
猫又娘「明日はどこに行こっか?」
帽子「そうなー、久々にあの公園にでも行ってみるか!きみと出会った公園!」
猫又娘「!…いいかも!」
帽子「あそこでまた泣きそうな子がいたら、今度はきみが励ましてみるかい?」
猫又娘「ぬぬ…それはあんまり自信ないよ…」
帽子「ははっ、まだまだ精進が足りとらんようだな?」
──ブオオォ
帽子「ん?」フリムキ
トラック「」ゴオオオォ!
304 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:12:08.61 ID:hBUPAlst0
帽子「──!」
帽子「危ない!!」ドンッ
猫又娘「え…!?」
ゴスッ!
ゴロン、ゴロンゴロン
ドサッ
ブオオォ...
猫又娘「いたた…」
猫又娘(なに?何が起きて…)
帽子「」
猫又娘「え…………」
猫又娘(……?この腕の千切れたお人形さんは……え?……キミ……?)
猫又娘「……ね、ねぇ、起きて」
帽子「」
猫又娘「嘘だよね…?いつもみたいにまた、笑って起き上がる気なんでしょ?」
帽子「」
猫又娘「ねぇ」
帽子「」
猫又娘「ねぇってば!」
帽子「」
猫又娘「……」
帽子「」
猫又娘「………」
猫又娘「……約束したじゃん……」
猫又娘「離れないって……」
帽子「」
猫又娘「………」
猫又娘「………」
猫又娘(………)
305 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:13:00.47 ID:hBUPAlst0
ーーー帽子少年の家ーーー
テレビ『──次のニュースです。今日夕方、一台の大型トラックが暴走。次々と人を轢いて200メートル程走り続け、最後は民家の塀にぶつかって止まりました。この事故で死傷者が数名出ており、トラックのドライバーは──』
仔猫「……」
運命は残酷だ。
ーーーーーーー
ザー
「やべ、めっちゃ降ってんな…傘入れてくんない?」
「おう」
仔猫「……」トテトテ
仔猫「……」トテトテ
「ママ!」
「どうしたの?」
「あそこの猫ちゃん、びしょびしょ」
「あら…こんな雨なのに…」
仔猫「……」トテトテ
仔猫「……」トテトテ
.........
306 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:13:47.51 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
猫又娘「……」テクテク
猫又娘「……」テクテク
猫又娘(……なんで、キミはこんな私を庇ったの…?)
猫又娘(何も出来ない私なんかより、笑顔を振りまけるキミの方が、生きてなきゃいけないのに)
ーーーーー
帽子「──友達に本当もウソもない!仲良しなら友達でオッケー!」
ーーーーー
猫又娘(………)
猫又娘(……私は、またひとりぼっち……)
猫又娘(………)
猫又娘(……キミと笑うことが出来ないのなら、もういっそ……)
低学年女子「あ!ドッチボールのお姉ちゃん!」
猫又娘(…確か、あの公園の…)
低学年女子「こんにちは!」
猫又娘「…こんにちは」
低学年女子「あのねあのね、お姉ちゃんのおかげでね、あそこの公園いっぱいの人たちと遊べるようになったの!」
猫又娘「…?」
低学年女子「前のこわいおにいさんたちも一緒に遊んでくれるの」エヘヘ
低学年女子「お姉ちゃんが仲良しこよしの魔法をかけてくれたんだよね!ありがとー!」
テッテッテッ...
猫又娘「あ…」
猫又娘(行っちゃった…)
猫又娘「…魔法…」
猫又娘(……そんなことが出来たら、私は今頃キミを……)
307 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:14:49.58 ID:hBUPAlst0
猫又娘「………」
猫又娘「……………」
猫又娘(………ううん、そうじゃない)
ピョコン
猫又娘「……」ネコミミ&シッポ
ドロン
仔猫「……」
ドロン
猫又娘「……」
猫又娘(私にはこれがある)
猫又娘(私自身も"変える"力)
猫又娘「………」
猫又娘(……そうだね)
猫又娘(キミが置き忘れたまっすぐな正義は、私が拾い上げればいい)
ーーーーー
帽子「──みんなを笑顔にしたいから」
帽子「──笑ってるとたのしーじゃん?」
ーーーーー
猫又娘「………」
猫又娘「…本当か嘘かなんてどうでもいいんさ」
猫又娘(だから、私がキミの正義を振りまいてもいいんだよね?)
猫又娘(私がキミのフリをすることで、世界を照らす光になれるなら、キミはきっとまた笑ってくれる──)
猫又娘「……」
猫又娘「……」
猫又娘「…にゅふふ」
強がる世界にバイバイ。それはみんな、笑顔に変えちゃおう。
キミが望んでいた世界を作れますよう、私は今日も笑う。
笑ってキミのフリをする。
猫又娘「──お困りですか?みなさん!」
=======
308 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:15:38.33 ID:hBUPAlst0
例えば、子供が大人のフリをして大人と笑い合うように。
キミのフリをずっと続けていれば私は、キミとずっと笑えると思ったんです。
309 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:17:49.53 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
猫又娘「………」
(池に映る自分の姿)
猫又娘「……くふっ」
猫又娘「危ない危ない、危うく見失うところだった」
猫又娘(私がどうしてこの世界を、この町を……彼らを守ろうとしたのか)
ーーーーー
少年「――どんな時でも明るくて眩しくて…みんなを元気付けようとしてくれて」
ーーーーー
猫又娘(私はね少年君、そんなにたいそうなものじゃないんさ。派手娘さんの言う通りある意味きみたちを騙してるのかもしんない)
猫又娘(元々の私は、とっても弱いんだもん)
猫又娘(でもね)
猫又娘(私が持ってるこの気持ちだけはウソじゃないからさ)
猫又娘(私は今日も前を向けるんだ!)
猫又娘「……負けないよ、私」
猫又娘「絶対、ぜーったい負けないから!だから!」
猫又娘(もう少しだけ、キミの勇気を貸してね)
310 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:20:23.45 ID:hBUPAlst0
「何者に勝たんとする?」
猫又娘「!」バッ
黒服男「人と妖禍子の混じるその身体で、何を為そうと言うのか」
猫又娘(…なに、この男)
猫又娘(人間じゃない。それどころか、酷く濃い、禍々しい気配…)
黒服男「お前のその行動理由が、俺はずっと気になっていた」
猫又娘「…私が?」
黒服男「そうだ」
猫又娘「……その前に教えて、あなたは誰?」
黒服男「俺は…そうだな、お前たちが元凶と呼ぶ存在だ」
猫又娘「ー!」
猫又娘(こいつが……この怪異の根源…!)
黒服男「俺の疑問に答えてもらおうか」
猫又娘「私の方が、あなたに聞きたいことは山ほどある!この町を襲った理由、あなたが求めるものも──」
黒服男「──答えろ」
猫又娘「っ……」
猫又娘「……私は、笑顔が見たいだけ。この町のみんなが、笑って過ごしてるのを見れればいい」
黒服男「…笑みとは本来、敵をけん制するための威嚇行動に過ぎぬ」
猫又娘「そんなの知らない!人はね、楽しければ笑う生き物なんよ!」
黒服男「他者を痛めつけて嗤う生き物だな」
猫又娘「違う!」
黒服男「違わぬ。お前にも心当たりがあるだろう」
黒服男「お前が行動を共にするあの男は、如何な仕打ちを受けていた?」
猫又娘「……」
黒服男「人間の本質など、斯様に醜い。お前一人が身を粉にしたところで何を変えられる?」
311 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:22:49.82 ID:hBUPAlst0
猫又娘「…一人じゃないよ。私の側にはいつも、大切な人がついていてくれてるから」
黒服男「……それも人間か?下らぬな」
猫又娘「あなたに言われたくない。あなたのその考えの方がよっぽど下らないよ。この世界から犯罪が無くなることはないから取り締まるだけ無駄だって言ってるようなものじゃない。その先にあるのは…もっとめちゃくちゃになった世界だけ」
黒服男「世界を壊して回っているのは人間だ。俺は世界のゴミを除いてやろうと言うのだぞ」
猫又娘「人はゴミなんかじゃない!この世界に必要な人だってたくさんいる!」
黒服男「ではゴミは俺達の方か?そうだな、奴らにとっては俺達こそ居てはならないゴミであるらしいからな」
猫又娘「なんでそうなんのさ!そもそも何が必要で何が不要かなんて、そんな話じゃないでしょ!みんな、誰かにとっては大切な存在なんだよ」
黒服男「ならば何故、人間は俺達を封じ込めた?何故執拗に排斥しようとする?」
黒服男「俺達は奴らに対し、何もしていない」
黒服男「お前はこの問いの合理的な答えを持っているのか?」
猫又娘「それ、は……」
ーーーーー
おてんば「──バケモノ……」
ーーーーー
猫又娘「………」
黒服男「……所詮お前も人間混じりか」
黒服男「出来もしない妄言を宣い、本質を見ようとしない」
黒服男「…実に下らぬ」
黒服男「お前も、この町諸共消えるがいい」ザッ...
猫又娘「……!!」
猫又娘(今ちょっとだけ見えた、こいつが手に持ってるの……まさか)
猫又娘(アヤカシノート…!)
312 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:23:27.30 ID:hBUPAlst0
猫又娘「……」
ドロン
仔猫「」ダッ
スタッ、スタッ、スタッ!
黒服男「」ギロッ
仔猫「っ」ピタッ...
黒服男「………」
ヒュオオォ...
仔猫「……………」
...ドロン
猫又娘「……」
猫又娘(……今の……)
猫又娘(なんで、あいつは……)
猫又娘(あんなに悲しい目をしていたんだろう)
313 :
◆YBa9bwlj/c
[sage saga]:2020/01/14(火) 04:25:34.80 ID:hBUPAlst0
八幕前半はここまでです。
後半は前半ほどのボリュームはないので一週間ちょっとで投下できると思います。
314 :
◆YBa9bwlj/c
[sage saga]:2020/01/21(火) 07:20:06.95 ID:8RzomirI0
すみません、少し立て込んでいて、次の投稿までもう少しかかりそうです。
315 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:03:06.69 ID:L/MaCyf+0
ーーー境内 はずれーーー
猫又娘「……」ソワソワ
猫又娘「」キョロキョロ
猫又娘「……」
猫又娘(まだかな…)
猫又娘「……」ウロウロ
猫又娘「……!」
少年・包帯少女「「……」」テクテク
猫又娘(その瞬間、全部分かっちゃった。二人の間に何があったのか、どんな話をしたのか、とか)
猫又娘(……仲良さそうに手繋いじゃってさー。それでそんな、憑物が落ちた顔してるんだ)
少年「ごめん、待たせた?」
猫又娘「えぇえぇ。それはもう待ちに待ちましたよぉ?きみたちが二人でいちゃいちゃしてる間にも?」
少年「う…あー、これは…」
猫又娘「いいんさいいんさ。言われなくても伝わってくるから」
猫又娘「……ようやく、だね」フフッ
少年「……うん」
少年「お祭り客の中、探してみたけどそれらしい人は見当たらなかった。この人混みだからしらみつぶしに出来たかどうかは微妙なところだけど…少なくとも登ってきた石段には居なさそうだよ」
猫又娘「そうなん…まーそう上手くはいかないよね」
少年「?」
猫又娘「うん、私の方はね」
猫又娘「例の元凶君に会ったんよ」
少年「え!?」
猫又娘「音も無く近づいて来たからびっくりしたんだけど…ねぇ聞いて!」
猫又娘「あの人、アヤカシノートを持ってた!」
少年「!それは…本物の?」
猫又娘「だって私が作った方はきみが持ってるでしょ?」
少年「確かに…」
少年(いつの間に盗られたんだろう…いやそもそも何のためにノートを…?)
少年(…ん…?)
包帯少女「……」
少年「少女さん?」
包帯少女「…!な、なにかな」
少年「大丈夫?顔色悪い気が…」
包帯少女「平気、ありがと」...ニッ
包帯少女「考え事してただけだから」
少年「そう…?」
猫又娘「……?」
316 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:04:56.86 ID:L/MaCyf+0
少年「…けどまずいことになったな。そいつがノートを持ってるなら簡単には返ってこないもんな…」
猫又娘「そーこーは!逆転の発想よ!」
猫又娘「ラスボスが聖剣を持っててくれてるようなものでしょ?ならここでの定石は……一瞬の隙をついて奪う→即カウンターのコンボしかないわけ!」
少年「そんなゲーム感覚で言ってくれちゃって…その役目は誰がやればいいんだ…」
少年「…ん、いや違うか。僕らで、やるんだ」
少年「力を貸してくれる?猫又娘さん、少女さん」
猫又娘「当然!」ニシッ
包帯少女「……」...コクン
ーーーーーーー
黒服男「………」
黒服男「………」
ヒュオオオオォォ...
黒服男「………」
黒服男(……何度問うただろう)
それでも、愛していたのか…?
黒服男(………)
黒服男「………」グッ...!
ーーーーーーー
──ドクン
包帯少女(…っ!)
猫又娘「──とは言ってもトドノツマリ様には会っておきたいんよね。今のままじゃまだまだ危険過ぎる」
少年「そうだね。ノートでどうこうできる確信もないし…」
少年「…そういえば猫又娘さん、その男とどんな話をしたの?」
猫又娘「ん……まぁ、なんで私が人の味方してるんだーとか、人間は居なくなるべきだ、とか」
少年「なんだそれ」
少年(何がそんなに、そいつを駆り立ててるんだ)
317 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:06:55.27 ID:L/MaCyf+0
包帯少女「……ゔっ……あ゙ぁ゙……!」
少年・猫又娘「「!?」」
少年「少女さん!」
包帯少女「だい……じょうぶだ、から……!」
猫又娘「どこが!ねぇどうしたんさ!どこが痛むん!?」
包帯少女「っ……」ガクッ
ドサッ
少年「は…?は!?おい嘘だろ…!」
包帯少女「……ぅ……」
猫又娘「落ち着いて!息はある」
少年「少女さん…!少女さん!聞こえる!?聞こえてたら反応してくれ!」
猫又娘(…恨むよ、神様。こんな次から次へと試練ばっかり。そんなに私らが諦めるのを心待ちにしてるんかね…!)
猫又娘「少年君、あんま派手に動かさないで。取り敢えず私に診させて…………!!」
猫又娘(……少女さんの、この気配……)
猫又娘(間違いない。以前なんかより比べ物にならないくらい……)
「……その子は、そのままじゃ目覚めないよ……」テクテク
少年「…夢見娘さん…」
夢見娘「……」
猫又娘「どういうこと?このままじゃ起きないって…」
猫又娘「ね、あなた何を知ってるの?」
夢見娘「………」
夢見娘「……この子は今、"あのヒト"のユメに囚われてる……」
猫又娘「あの男の、夢…それって少女さんがたまに見てたっていう?」
夢見娘「……」コクリ
少年「夢を見てるってこと?…大騒ぎすれば起きてくれたりしないかな…!?」
夢見娘「……ユメに呑み込まれたら、二度とこっちに帰ってくることは、ないの……」
少年「そんな……」
包帯少女「は……はぁ……っ…」
少年「…頼む。どんな方法でもいい、少女さんを助けることは出来ないか…?」
少年(例え自身と引き換えだとしても…僕は構わない)
318 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:08:07.97 ID:L/MaCyf+0
夢見娘「………ある」
少年「!それは!」ズイッ
夢見娘「!?」
夢見娘「……//」ススス
少年「?」
夢見娘「……この子の見てるユメを分け合うの」
夢見娘「そうすればこの子への負担は減る……呑まれる前にユメが終わればちゃんと目は覚める……」
猫又娘「どうやって夢を分け合うん?んにゃ、第一夢を分けるってどういうこと…」
夢見娘「……そのために、私が居る……」
夢見娘「私たちで、この子が見てるユメを一緒に見てあげればいい……」
少年「やる」
夢見娘「……でもね、分けたユメと言っても、それを見る者もまた、呑まれる可能性はある……」
少年「それでもやるよ」
夢見娘「……うん」
夢見娘「……」チラリ
猫又娘「私も!」
夢見娘「………」
少年(黒幕だの犯人だの、そいつの夢がなんだ。僕は決めたんだ、二度と少女さんを失わないって……それは僕の義務だ)
猫又娘(あの悲しい目……あいつがどんな道を辿ってきたのか、これで分かる…?……キミが居たらなんて言うのかな)
夢見娘(……きみが大切にしているものは、私も大切。…そこに私が居なくても)
夢見娘(私はきみのマヤカシだから)
夢見娘「……いくよ」
スー...
.........
319 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:09:04.84 ID:L/MaCyf+0
===???年前===
『睦月も終わりの頃。それを見過ごす事は私には出来ませんでした。』
スタッ、スタッ、スタッ
ケモノ「」スタッ、スタッ
「くそ、逃げ足の速い化け物だ…!」タッタッ
「右だ!右の方から音がしたぞ!」タッタッ
タッタッタッ
スタッ、スタッ...
「…あ゙ぁ!見失ったか」
「仕方ねぇ…だが奴を手負いにはした、次に見っけた時が最後だ」
ザッザッザッ...
ケモノ「………」ジッ...
ケモノ「………」
ケモノ「……行ったか」
ケモノ「俺としたことが、油断した…」
ケモノ「よもやこんな森の中にまで人を置いているとは」
ズキッ
ケモノ「グッ…」
(腕に刺さった矢)
ケモノ「…毒矢の類ではなさそうだが…鉛を身体に入れたくはないな…」
...グイ
ケモノ「っ……」
ググッ
ズルリ
ケモノ「……ハァ……ハァ……」
ケモノ(血を垂らさぬようにせねば…)
ケモノ(この山も、もう無理か。人間の活動範囲がまた拡大している)
ケモノ(…どこか、我々が静かに暮らせる場所はないものだろうか)
320 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:11:06.71 ID:L/MaCyf+0
ガサッ
ケモノ「!」フリムキ
女「……あ……」
ケモノ(人間の…女?)
ケモノ(……一処に留まってはおけない、か)
ケモノ「……」スッ
女「…!」
女「待って!」
ケモノ「」ザッ
女「あなた、怪我してるのですか…?」
ケモノ「………?」
女「やっぱり!とても痛そう…」
女「待ってて下さい。今手当て致しますから」
ケモノ「!…よせ、俺に近づくな」
女「」スタスタ
ケモノ「…俺はお前を喰い殺すことだって──」
女「怪我人はお静かに、ですよ」
ケモノ「……」
ケモノ(なんだ、この奇特な人間は…)
ポンポンポン
クルクル、ギュ
女「…これでよいでしょう。ひとまず消毒と止血だけですが、しないよりは楽なはずです」
ケモノ「……お前は、俺が怖くないのか」
女「はい」
ケモノ「俺が憎くはないのか」
女「なぜです?」
ケモノ「…人間は皆、俺を殺そうとするからだ」
女「…そうですか」
321 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:12:04.92 ID:L/MaCyf+0
女「それは、あなたが殺めた人の仇討ちでしょうか?」
ケモノ「いや、そんなことはしていない」
女「では、川を氾濫させ、家屋を荒らし人様の生活を脅かしたから?」
ケモノ「するものか。人の世に触れず生きてきたのだ」
女「ほら。あなたを忌避する必要など、ないのです」
ケモノ「…何を言っているんだ?」
女「邪気など微塵も感じませんから」フフッ
ケモノ(──……)
ケモノ「…すまない、世話になった」
ケモノ「ではな」
女「何処へ行くのです?」
ケモノ「ここではない、遠くだ」
女「そんな怪我をしているのに…それにこの時期益々寒さは厳しくなります」
女「…私の家を宿と思ってお使い下さい」
ケモノ「宿、だと…?」
女「その通りです」
ケモノ「……貴様、俺を謀(たばか)るつもりだな?」
女「疑うお気持ちは分かります。ただ、私の家はここよりすぐ近く。そして周りに他の家屋はありません。…居るのは私一人だけ」
女「それでも信じて頂けないようでしたら…この身を差し出しましょう」
ケモノ「……」
ケモノ(燃えるような紅い目…不思議だ、このような目をした人間は初めてだ)
ケモノ「……この傷が癒えるまで、頼む」
女「はい」ニコッ
322 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:13:06.08 ID:L/MaCyf+0
ーーー女の家ーーー
ケモノ(万が一を考えてはいたが…)
ケモノ「本当にお前一人なのだな」
女「えぇ。先程申し上げた通りです」
ケモノ「何故このような場所で暮らしている?」
女「…私の村は、ここを下った小さな集落なのですが、残念なことに村民との反りが合わず半ば飛び出すようにここへ来ていました」
ケモノ「…咎人か?」
女「いえ、そうではありません」
女「彼らは些か、粗暴過ぎるのです。あなたのその怪我もきっと……」
女「…申し訳ありません。同じ村の者でありながら、私にはどうすることも出来ず…」
ケモノ「……お前が頭を下げる必要はなかろう」
女「……」
女「ここには、滅多なことで人が訪ねてくることはありません。私がそう言い含めておりますから」
女「罪滅ぼし…とは虫がいいかもしれませんが、どうか気持ちを休めて頂けないでしょうか?」
ケモノ「………」
ケモノ「…その手」
ケモノ「先の、血が付いている。…洗い落としてくるといい」
女「お優しいのですね」
ケモノ「その言葉、そのまま返してやろう」
女「……」
ケモノ「……」
女「…ふふ」
ケモノ「フッ…」
『憐みが無かったと言ったら嘘になるでしょう。ですが、そう……この方の鮮やかな碧い瞳が、私を突き動かしたのです。』
323 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:13:54.33 ID:L/MaCyf+0
ーーーーーーー
巫女「御神様、どうぞお聞き下さい」
巫女「また、一つの妖禍子が見かけられたそうでございます」
巫女「彼の者はまだ存命でいるのでしょうか?」
──是である。
巫女「…そうですか。それは良き事」
巫女「では、彼の者の保護に努めましょう。所在の程はどちらにございましょう?」
……………。
巫女「………」
巫女「………」
324 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:14:58.89 ID:L/MaCyf+0
ーーー春ーーー
女「お加減はいかがです?」
ケモノ「大分良くなった。最早外からでは見えぬ程には塞がったな」
女「化膿などもしていないようで、安心しました」
ケモノ「あぁ」
女「……」
ケモノ「……」
女「暖かい時分になりましたね」
ケモノ「そうだな」
女「……これから、川へ向かうのです」
女「越冬の為に取り置いていた水が底を尽きてしまったので。また、暑くなってくれば戸の付け替えもしなければならないでしょう」
女「女手一つでは何かと苦労の絶えない日が続きます」
ケモノ「……」
女「…何処かに、助力をして頂ける方がいらっしゃればいいのですが…」
ケモノ「………」
ケモノ「……俺は、この身が癒えるまではここに居ると、そう言ったな」
女「……」
ケモノ「だが、この身が癒えてからここを去るとは言っていない」
女「!」
ケモノ「貴女と共に居たいと、考えている」
ケモノ「人ではない俺のような者が、貴女の傍に居てもよいだろうか…?」
女「はいっ、勿論です」ニコッ
ケモノ「…感謝する」
女「それでは早速参りましょう!この山に積もった雪は汚れがなく、その雪解けが流れ込むお水は本当に美味しいのですよ!」テテテッ
ケモノ「あぁ理解した。だから雪上を走るのは控えるんだ。危険だぞ…」
『弥生 六
いつの間にかあの人の居る生活が当然となっていました。今日はあの人の口から、共に在りたいと聞く事が出来ました。…これ程心が躍るのは何時振りでしょうか。』
325 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:15:30.66 ID:L/MaCyf+0
ーーー夏ーーー
ザクッ、ザクッ
女「」ザクッ
女「……」
女「…これは、食しても良いものですね」
女「ふぅ…これだけ集めれば十分でしょうか」
女「そちらはどうです?」
ケモノ「こんなものだが、よいか?」ドッサリ
女「まぁ…!」
女「きちんと食せるものですね。これほど多く採ってこれるなんて」
ケモノ「俺は鼻がきくからな」
女「私にもその嗅覚があればこの収穫ももっと楽になるのでしょうね…」
ケモノ「…いや、貴女はそのままでいい。人間である貴女が、きっと最も美しいと俺は思う」
女「……」
女「ふふっ。ではこれからもたくさん、あなたを頼りにさせてもらいます」
ケモノ「任せてくれ」
『葉月 十二
普段の口数は決して多いとは言えませんが、実直に、想いを伝えてくれるあの人が愛しい。言葉を交わし、想いを交わし…そこに姿形の違いなど介在しないのです。』
326 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:16:05.09 ID:L/MaCyf+0
ーーー秋ーーー
女「見て下さいこの葉!赤、橙、黄、緑……ここまで多色が混在しているのは風情がありますね」
ケモノ「そうだな。だが」
スッ
ケモノ「これも、色数は少ないが映えていると思わないか?」
女「あら本当…!」
女「葉が色付いていく様は、いつ見ても良いものです」
ケモノ「毎年必ず訪れるものだが…見ていて飽くことはないのか?」
女「何をおっしゃいます。一日一日少しずつ姿を変えていく山を見るのはとても胸が躍るものです。一年で決まった期間しか見られないのです、飽くことはありませんよ」
女「…それに、誰かと見るこの景色は、また特別なものですから」
ケモノ「!…」
ケモノ「……そう、か」
『神無月 二十五
山があまりに美しく色付いていたものですから、ついその欠片を何枚か採ってきてしまいました。あの人も綺麗だと言って笑ってくれたけれど……あなたのその瞳に敵う葉は、一枚もありませんでしたよ。』
327 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:17:33.65 ID:L/MaCyf+0
ーーー冬ーーー
ケモノ「………」
ケモノ「………」
ケモノ「…ふむ」
ケモノ「なかなかどうして、一人ならばこの家屋も広いと感じられるじゃないか」
ケモノ「……」
ーーーーー
女「──村へ、下りて行こうと思いますね」
女「──顔に出ていますよ。通例のことですから、心配いりません。時々顔を見せてやらないと父が煩いのです」
女「──では、行って参ります」
ーーーーー
ケモノ「………」
ケモノ「少し、寒い」
ーーー村ーーー
コンコンコン
村長「ん?誰じゃ?」
「お父様、私です」
村長「おぉその声、女か。さぁさ、入りなさい」
ガチャリ
女「お久しぶりです、お父様」
村長「実に一年ぶりかの。あまり待たせるものだから、使いの者を出そうか迷っておったところじゃ」
女「ふふっ、それはごめんなさい。忘れていたのではないのです」
村長「お前のことじゃからな。そろそろかとは思っておったよ」
村長「…して、無病息災、平穏に過ごせているのだろうな?」
女「はい。それはもう」
女「この通り、五体満足です」
村長「うむ……」
村長「……」ジッ...
女「……」
村長「……安心したわい」
村長「近頃、よく奴らの目撃報告を耳にするものでな。女の身に何か起こっておらぬか気が気でなくての」
328 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:22:02.29 ID:L/MaCyf+0
村長「のう…やはり警護の者を付ける訳にはいかぬか」
女「お父様」
村長「分かっておる。それが村を出て行かぬ条件であったよな。…じゃがのぅ…」
女「こうして何事も無く生きてゆけてるのです。まだ気がかりだと言うのですか?」
村長「むぅ……いつ何時奴らに襲われるやもしれぬ……そうでなくても女子の独り暮らしなど危険を伴うと言うに……」
女「………」
スッ
村長「…む?なんじゃこれは」
女「秋の頃、葉の標本というものを作ってみたのです」
女「如何でしょう?美しく仕立てられたと思っているのですが」
村長「ふむ、確かにの。艶やかな色遣いじゃ」
女「まるで私のよう……ではありませんか?」
村長「いや、お前の方が綺麗じゃよ」
女「娘を口説いてどうするのですか」フフッ
女「それはお父様に差し上げます。私の代わりとでも思って、持っていて下さいな」
村長「……」
村長「…まったく…お前には敵わんよ。その強かな様、誰に似たんじゃろうな」
ガチャッ
巫女「村長、今戻ったわ」
村長「うむ。丁度よい時に来たの」
女「姉様…!」
巫女「あら、来ていたのね」
女「はい!お元気そうで何よりです」
巫女「お互いにね。昔は私から離れなかった女が、今じゃ独り立ちまでしちゃって」
女「私だって成長しているんです」
村長「わしは独り立ちをさせているつもりはないぞ」
巫女「心配性なところは死んでも変わらなさそうね」
女「…姉様はまだ破邪の巫女を?」
巫女「…不満そうな顔ね?」
女「だって姉様があんな役回りをする必要なんて……」
巫女「仕方がないのよ。奴らを根絶するには大勢の人の力がいるの。それを支える象徴もね」
女「……私、その思想は苦手です。彼らが私達に何をしたというのでしょう。彼ら──妖禍子はそこに居ることさえ許されないのですか…?」
村長「女…ここでそのような発言は」
巫女「大丈夫、外には誰も居ないから。聞かれてないわよ」
巫女「…女、あなたは優し過ぎるのよね。その優しさはあなたの魅力でもある」
巫女「でもね覚えておいて。全てを受容することは出来ないの。生物にとって、自分を脅かす可能性のあるものは遍く除去するべきなのよ」
巫女「私達がこうして平和に生きていくためにもね」
女「……そんなの、私達の都合ではないですか……」
巫女「……」
329 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:23:04.35 ID:L/MaCyf+0
...ギュッ
女「あ…」
巫女「いいのよ、あなたは考えなくて」ナデナデ
巫女「残酷なことは全部私達に任せておいて。あなたは静かに暮らしてくれればいい」
巫女「…安心なさい。彼らを根絶やしにはしないから」ボソッ
女「!」
女「そ、それは…!」
巫女「……」ニコッ
巫女「さ、今日はもう帰りなさい。暗くなる前に戻れなくなるわ」
村長「そうじゃの。本当なら今しばらく寛いでいって欲しいものじゃが…」
村長「次の来訪を半年以内にすると言うのならば、止めはしまい」
女「お父様ったら…えぇ、約束します」
女「それではお父様、姉様、どうかお元気で」
巫女「女、あなたもね」
ガチャ…パタン
村長「……変わらぬな、あの子は。いつまでも心優しい女のままじゃ」
巫女「そうね。全てを愛することが出来るというのも、一つの才能だと思う」
村長「して、巫女よ。あれはどうなっておる?」
巫女「残念だけど、進展は無しよ。返事だけは返ってくるんだけどね」
村長「気難しいお方なのかのぅ…トドノツマリ様というのは」
巫女「それでも辛抱強く続けるしかないわ。あれをどうにかしない限り、私達に先はないのだから」
巫女「それに、胸騒ぎがするのよ」
村長「なんじゃと?」
巫女「覚えてる?一年前仕留め損ねた、例の獣」
村長「あぁ、そのような報告を受けたの。すぐに続報が来ると思っておったが…」
巫女「…逆よ。不気味な程音沙汰がない。捜索範囲も拡げてるはずなのにね」
村長「目立った被害も無いようじゃからの、気に留めておらなんだが…」
巫女「そういう問題じゃないのよ」
巫女「……汚らわしい……」
330 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:24:36.47 ID:L/MaCyf+0
ーーーーーーー
ザッ、ザッ、ザッ
ケモノ「!」
女「」ザッ、ザッ
ズボッ
女「きゃっ…!」
ケモノ「女!」ダッ
...ポスッ
女「…!ありがとう、ございます」
ケモノ「雪道は歩き慣れているのではなかったのか?」
女「…少し、上の空でした」
ケモノ「何かあったのか」
女「いえ、おかしなことは何も……」
女(………)
女「……思い出しませんか?」
ケモノ「…?」
女「あの日も、ここは同じような雪化粧を纏っていました」
女「丁度帰路に着いていた私と、手負いのあなたと……運命の神様が引き合わせてくれたのかもしれません」
ケモノ「……」
女「あれから一年が経ちましたね」
ケモノ「そうだな」
ケモノ「…前から訊きたいと思っていた」
ケモノ「貴女は何故、俺と共に居てくれるんだ」
ケモノ「貴女の村は恐らく、俺のような異形の存在を許してはいないのだろう。いや、人は俺達妖禍子を受け入れる事はない……そう思って生きてきた」
ケモノ「しかし貴女は違った」
女「……大層な理由ではありませんよ?」
女「あなたのその、澄んだ碧い瞳が私を惑わしたのです。まるで灯りに引き寄せられる羽虫のように…私は魅せられていました」
ケモノ「………」
ケモノ「驚いた」
ケモノ「俺も同じ事を考えていた」
ケモノ「貴女のその目……その紅い瞳に見惚れなかった日はない」
女「まぁ…!そんなことを考えながら…?」
女「なんだか……ふふっ、恥ずかしい」
女「私達、とても似た者同士なのですね」
ケモノ「──!」
331 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:25:29.10 ID:L/MaCyf+0
ケモノ「…似た者…?俺と、貴女が、か?」
女「はい。世界中の誰より、きっと」
ケモノ「……ハハ。皮肉なものだ。一体誰が、俺と貴女を見て似た者と表するのだろうな」
ケモノ「片や一輪の花、片や異形の化け物」
女「化け物だなんて──」
ケモノ「──あぁ、だが、貴女は認めてくれた。俺を、一つの個として」
...ギュッ
ケモノ「…俺は貴女を…」
──愛している。
女「………」
ケモノ「………」
女「……でしたら」
女「私のお願いを言ってもよいですよね」
ケモノ「持てる力を以て、叶えてやろう」
女「…あなたにしか出来ないことですよ」ポツリ
女「………」
女「私と生涯を共にして頂けませんか?」
『その時のあなたの顔を、私は忘れる事はないでしょう。今までに見た事のない呆けたような表情……一世一代の場面なのに思わずたくさん笑ってしまいました。あなたも連られて笑っていましたね。私とあなたは、そういう生き物なのでしょうね。』
332 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:27:08.50 ID:L/MaCyf+0
ーーー2年後ーーー
『長月 十七
今日は少しだけ喋ってくれました。いつも静かにしてる事が多い子ですから、偶にこうして話しかけてくれた時の喜びは一入ですね。』
女「……んー……」
『何かを伝えようとしてくれてるのですが……まだまだ精進が足りないもので、解してあげられな』
赤子「か…!か!」
女「!」
女「なぁに?」
赤子「……」ジーッ
女「どうしたの?お母さんに何か、言いたかったんでしょ?」ダキアゲ
赤子「…かぁ」
女「もしかして、烏さんの鳴き声かなー?」
ケモノ「貴女を呼んでいるのではないか?」
女「あら…あなた、帰ってたのですね」
ケモノ「たった今な」
女「いつもごめんなさい。あなたにばかり家の仕事を任せてしまって…」
ケモノ「貴女の身に何か起きてしまってはいけない。当然の事だ」
女「それで、私を呼んでいる…ですか?」
ケモノ「あぁ。俺には、お"かあ"さん、の"かぁ"、に聞こえるのだがな」
女「まぁ…!」
女「ふふ、そうなの?」
赤子「……」ジーッ
女「ねぇ、それじゃあ次はお父さんを呼んでみよっか」
赤子「……」
女「向こうのおっきな人がお父さん」
赤子「………」
ケモノ「………」
赤子「」フイッ
ケモノ「…俺は嫌われているらしい」
女「そんなことありません。ほら、抱いてみて下さいな」スッ
ケモノ「うむ…」
赤子「……」ジー...
ケモノ「……」
333 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:27:40.81 ID:L/MaCyf+0
女「あなたが抱えても、泣き声一つ零しませんよ?」
ケモノ「それはそうだが…」
女「…クスッ。あなた、この子のことになると奥手になりますよね。なんだか可愛いです」
女「忘れないうちに書いておきましょうか」
ケモノ「おい…!また日記というものか?俺の痴態など記録せずによいと言うに…」
赤子「……ぅー……」
ケモノ「む…何事だ?」
赤子「……」ウトウト...
女「もう眠いのですね。そろそろお昼寝の時間ですから」
ケモノ「そうか」
女「あなた、そのまま持っていて下さい」
女「……ねむれねむれや ゆらりゆられ」〜♪
女「たなびくくものごとし」〜♪
女「おやまもさともよるのなか」〜♪
女「はかなきゆめみんとす」〜♪
.........
赤子「」スー..スー..
ケモノ「…子守唄か。初めて聴くが、良い唄だ」
女「まだ私が幼い頃に母が教えてくれたのです」
ケモノ「さぞ優しい母親なのだろうな」
女「はい、それはもう……ですから、天が母を必要としたみたいで」
女「流行り病だったのですが、私が十くらいの時に逝ってしまったのです」
ケモノ「……」
ケモノ「こうして貴方を産み落としてくれた。それだけで俺は抱えきれない程の謝意を抱いている」
赤子「……」スゥ..スゥ..
ケモノ「この子と共に生きよう。それが我々に出来る恩返しだ」
女「……はい」
女「私が貰った愛を、次はこの子に…」
「……なんだあれは……何かの冗談か……?」
334 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:28:39.13 ID:L/MaCyf+0
ーーー翌日 村ーーー
村民「村長!村長!いらっしゃいますか!?」
村長「なんじゃ騒々しいの。せめてノックの一つくらいしたらどうじゃ」
村民「す、すみません……いえ!それどころではないのです!」
村民「昨日、村の男が一人、女様の家を見かけたそうなのですが──」
村長「なに?勝手に女の家に近付いたと申すか!」
村民「はい。ですがその責を咎めるより早く、我らに信じられないことを!」
村長「言うてみよ」
村民「男が言うには、その、女様の家に…」
村民「獣のような異形が居た、と。それに産まれたばかりの赤子も」
村長「……ホラを吹かれたのだろう」
村民「男はただならぬ様相でした。瞳孔は開き、額には脂汗が浮き、とても嘘をついているようには…」
村長「………」
村長(…あの子に限って、そのようなことなど…)
村民「村長、如何致しましょう…」
村長「むぅ……」
村長(………)
村長「わしが見てこよう」
ーーーーーーー
女「いい?これが緑色。これが青色」
赤子「……」ジッ
女「こっちが黄色で…赤色」
赤子「かぁ」
女「ん?赤が好き?」
赤子「…かぁ」カオペタペタ
女「なによ、ふふ」
女「どう?綺麗なものよね。色というのはね、今教えたものだけじゃないの。他にもたくさん、混ざって組み合わさって私達の世界を飾り付けてくれてる」
女「紅葉の季節が来たら、お父さんと一緒に見に行こうね」
赤子「……」
女「…お父さん、今日は少し遅いね」ナデナデ
女「お天気が曇ってるせいで元気が出てないのかもね?」ナデナデ
赤子「……」
女「あの人に限ってそんなことあり得ないでしょうけど」フフッ
...ザッザッザッ
女「…!噂をすれば」
コンコン
女(?扉を叩いてる…?)
335 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:29:35.10 ID:L/MaCyf+0
「女よ、居ないのかね」
女「!?」
女「その声……お父様?」
村長「良かった、そこに居るのじゃな」
村長「すまないの。お前との約束があるというに、訪ねてきてしまって」
女「何故お父様が…」
村長「なに、ちと気になることがあっての。中に入らせてもらうが、よいな?」
女「だ、駄目です!今は──」
ガラッ...
女「あ……」
村長「……なんと……」
赤子「?」
村長「…女よ」
村長「その赤子は何じゃ?」
女「………」
村長「お前の、子か?」
女「…………はい」
村長「…よもや、真であったとは…」
女「……」ギュ
赤子「…かぁ?」
村長「相手は誰じゃ」
女「お父様、この事は後ほど必ずお話し致します。ですから──」
村長「誰なのかと訊いておる!」
女「っ……」
村長「…おかしな話を聞いての。なんでも、この家に化け物が住み着いておるとか」
村長「まさかとは思うが、女」
村長「その化け物と子を成したなどと言うまいな?」
女「……」
村長「……」
女「……………」
村長「おぉ……なんということじゃ……」
村長「女、その子を貸しなさい」
女「…何をなさるおつもりですか」
村長「……」スタスタ
女「い、嫌です!来ないで下さい!」
336 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:30:12.89 ID:L/MaCyf+0
村長「…!」
赤子「……」
村長「こやつ、目の色が左右で異なるのか。……紅(あか)と碧(あお)の瞳」
村長「やはり化け物の子か…!」
村長「村へ帰るぞ、女よ」
女「話を聞いて下さい!この子もあの人も、決してお父様方が考えているような悪ではありません!」
村長「これはお前の身を案じて言っておるのじゃぞ!今ならまだお前は妖禍子に誑かされた人間として保護出来る!」
女「この子はどうなるのです…?」
村長「生かすことは許されぬ。いくらお前が愛したと言うても、化け物の間に出来た存在など間違いなく深い禍根を残してゆくからの」
女「…何故いつもいつもお父様方はそうなのですか」
女「この世界に生きているのは私達人間だけではないのに…!気に入らないという理由だけで他者を害せる程、人は偉いのですか!?」
村長「ええい、聞き分けのない子じゃ!」
村長「もうよい!腕尽くでも連れて行くぞ!」ガシッ
女「いや!やめてっ…!」
赤子「……」キィィン
バシュッ
村長「ぐぉっ…!?」
ドシャン!
女「え…?」
女(お父様…吹き飛ばされた…?)
女「…な、何が…」
赤子「かぁ、めっ」
女「貴方がやったの…?」
村長「……ぐっ……」
村長「なんと……危険じゃ……あまりに……邪悪……」ノソッ...
女「あ……あぁ……」
女「」ダッ!
村長「これ!待たんかぁ!!」
タッタッタッ...
337 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:30:49.35 ID:L/MaCyf+0
ーーーーーーー
巫女「御神様、どうぞお聞き下さい」
巫女「我ら村の者一同、妖禍子の保護に努めておりますが、ご存知の通りこの山の妖禍子も数が減ってきておられます」
巫女「再三の請いとなってしまいますが、どうかそのお力貸して頂けないでしょうか」
……………。
巫女「………」
巫女(……今日も駄目ね)
巫女「…また参ります」
巫女「彼らにあなた様の加護があらんことを」
...スッ
巫女「…!」
幼女「……」
巫女「…あなた様が…」
巫女「──トドノツマリ様……」
338 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:31:25.81 ID:L/MaCyf+0
ーーーーーーー
ケモノ「少し遅くなったな」ザッザッ
ケモノ「だが仕方あるまい」ザッザッ
ソッ(一輪の紅い花)
ケモノ「貴女に似合う花を見かけてしまったから、と言えば許してもらえるだろうか?」
ケモノ「……フッ」
...タッタッタッ
女「あなたっ…!」タッタッ
ケモノ「!」
女「はぁ……は……」
ケモノ「どうしたんだ」
ケモノ「…すまない、そこまで遅くなっている自覚はなかった」
女「いえ…違うのです…!」
女「どうしましょう……この子が殺されてしまう…!」
ケモノ「……何があった?」
女「お父様が突然、訪ねてこられたのです……あなたの事、知っているかのような口振りで…!この子も見つかってしまいました…」
ケモノ「貴女の父を、説得する事は出来ないか?」
女「無理です…!お父様は私の村の長なのです…」
女「先程だってこの子を生かしてはおけないと……人ならざる者との子はそれだけで深い禍根を残すからと…!」
女「どうして……この子に罪は無いのに……」ツー...
女「私は、あなた達を愛しているだけなのに……」ポロポロ
赤子「…かぁ」
ケモノ「……」
ギュ...
女「うぅ…」ポロポロ
ケモノ「案ずるな。貴女は何一つ間違った事をしていない」
ケモノ「貴方が俺を愛してくれたのと同じように、俺は貴女を愛する事が出来て良かったと思っている」
ケモノ「この子が居ることが、その証だろう?」
女「あなた……」ポロポロ...
ケモノ「周囲がなんと言おうと、三人で過ごしてゆけばいい」
赤子「……とぉ」
ケモノ「!…あぁ、俺もお前の事を愛しているさ」
339 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:32:12.46 ID:L/MaCyf+0
女「でも…もう私達は戻れません……あの家も、既に荒らされているでしょう…」
女「それに執念深い彼らのことです……こうしている今も、私達を殺す為に探し回っているかもしれない……」
ケモノ「………」
ケモノ「逃げよう」
ケモノ「最早それしか道は無い」
ケモノ「誰の干渉も受けず、静かに暮らせる所へ逃げるんだ」
ケモノ「……ともすれば一生人と関わる事が出来なくなってしまうが…それでも付いてきてくれるか?」
女「………はいっ!」
340 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:32:58.14 ID:L/MaCyf+0
ーーーーーーー
巫女「……お初にお目にかかります。あなた様が妖禍子を束ねておられる、トドノツマリ様でございますね?」
幼女「……」
幼女「妖禍子を統べる者は居ない」
幼女「我は只、自由を与え、此処に彼等の居場所を拵えんとするのみである」
幼女「だが、そなたの言葉通り、此の程彼等の減少が著しい」
幼女「数年祈りを捧げたそなたの信心に応え、我も手を差し出そう」
巫女「感謝致します」
巫女「…もう一つ、あなた様は私共、人の願いを聞き届けて下さる事もあるとお聞きしました」
幼女「人の心というものはまったく興味深い。其の心の震えを覗かせてもらう事は、確かにある」
巫女「そうでしたか。……では、私の願いもここで申し上げさせて頂きましょう」
幼女「妖禍子の保全であれば既に承諾したつもりであるが」
巫女「……」スッ(手を上げる)
ゾロゾロ
凶器を持った男たち「………」
幼女「……この者等は?」
巫女「御神様」
巫女「──どうか、死んで下さいますか」ニタッ
幼女「……貴様……」
巫女「ご安心下さい。お一人ではありません。たった今、今日までしぶとく生きながらえていた獣を追い立てているところです」
巫女「化け物同士仲良く、あの世に送って差し上げましょう」
幼女(……浅はかであったか。人間を安易に信じるなど、してはならなかったと言うのか)
巫女「やりなさい」
「うおぉぉ!」ダッ!
「死ね、化け物!」ブォン!
幼女「」スッ...
「ぬぉ…!」
「消えやがった…!?」
巫女「チッ…。動じるでない!こちらには封魔の札がある!」
サッ(札を掲げる)
巫女「……そちらへ逃げたようね」
「よし、追うぞ!」
巫女「皆の者!これは化け物を消し去る絶好の機会!必ず奴を仕留めるのです!」
341 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:33:40.93 ID:L/MaCyf+0
ーーーーーーー
タッタッタッ!
ケモノ「」スタッ、スタッ
女「はぁ…はぁ…」タッタッタッ
「おい!向こうへ逃げたぞ!」
「追えー!化け物を逃すなー!」
ケモノ「む…正面に待ち伏せしているな」
ケモノ「やむを得まい。開けた場所になるが、西へ向かおう」
女「は、はい…」ハァ..ハァ..
ケモノ「…俺の背に乗るか?」
女「平気です…まだ走れます」
ケモノ「分かった。だが無理はするな」
ボォォ…
ケモノ「…!」
女「そんな、山に火が…!」
ケモノ「奴ら、ここまでするか…」
ケモノ「急ごう」
タッタッタッ
ーーー空き地ーーー
ケモノ(ここを過ぎれば、木々の生い茂る森へ入って行ける)
ケモノ(そうすれば奴らを撒くことも出来るだろう)
女「はぁ……はぁ……」
赤子「……」
ケモノ(…もう体力も限界に近いだろうに)
ケモノ「ここが最後の正念場だ。行けるか?」
女「はぁ…はぁ…」コクリ
ケモノ(…追い風に助けられたな。おかげで背後から来る者の臭いが察知出来る)
342 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:34:18.07 ID:L/MaCyf+0
ケモノ「……よし、今だ」スタッ
女「」タッタッ
タッタッタッ
ケモノ「……?」スタッ、スタッ
ケモノ(なんだ…この臭い……油か……?)
ケモノ(…………っ!!)
ケモノ(しまった!そういう事か!)
「──着火!」
カチッ
ブワァ!
女「きゃあっ!」
ケモノ「女!」
ガシッ...ギュ
ケモノ「無事か!?」
女「はい…なんとか…」
村長「ようやく追い詰めたぞ、化け物め」
女「お父、様……」
ケモノ「………」
村長「弓兵隊!構えろ!」
ギチッ...
女「もうやめて下さい!」
女「ねぇお願いです!私達は絶対にあなた方の邪魔は致しません!遠い所で、誰にも迷惑をかけずに生きていきます!」
女「だからもう放っておいて下さい…!」
343 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:35:08.67 ID:L/MaCyf+0
村長「……」
村長「放て!」
シュッ、シュシュッ!
女「嘘っ…」
ケモノ「捕まれ!」グイッ
サッ
ヒラ、ヒラリ
グサッ
ケモノ「ぬぅ…!」
女「あなた!」
村長「仕留め損なったか。……油矢じゃ!火の手を回せ!」
シュッ
ボオォ!
村長「…これで躱せまい」
赤子「……ふぇ」
オギャー!
女「!大丈夫、泣かないで。怖くないよ、お母さんがついてるからね」
ケモノ「……っ」
ケモノ「人間よ!問いたい事がある!」
ケモノ「何故我々を排そうとする!」
ケモノ「姿が異なるからか!或いは我々がお前達に害為す存在だからか!?」
ケモノ「後者であるというのなら、今一度考え直して欲しい!」
村長「…弓兵隊」
ケモノ「──俺と彼女のように、人と妖禍子は手を取り合い生活する事が出来るのだと!」
村長「放てぇい!!」
シュッ、バシュッ!
女(嗚呼…)
ケモノ(駄目か…)
赤子「オギャー!ンギャー!」
女(…だったらせめて)
ケモノ(…だが)
女・ケモノ(貴方だけは──)
──ザクッ、グサッ...
344 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:36:07.08 ID:L/MaCyf+0
ーーーーーーー
メラメラ..ボオォ..
ケモノ「」
女「」
赤子「オギャー…!フギャー!」
村長「…赤子を庇ったか」
「村長…あの、良かったのですか?」
村長「何がじゃ」
「……女様の事……」
村長「……」
村長「わしの娘は一人だけじゃ」
村長「それより、赤子がまだ生きておる。息の根を止めてきなさい」
村長「奴らは何人も生かしてはならん。妖禍子は根絶やしにするのじゃ!」
「はっ!」
赤子「オギャー!」
ケモノ「……」
ケモノ(……すまない……俺が、同じ人間であったなら……)
ケモノ(…いや…)
ケモノ(そうではないな……種の壁を越えたからこそ、俺達は深く愛し合えた……)
ケモノ(お前を愛した二つの命があったこと……忘れ得ぬよう、お前に託そう……)
キィィ...
赤子「…ヒック…」
ケモノ(……生きて……くれ……)
...ザッザッ
「おぞましい怪物の子でなければ、お前も生きていけたろうな」
「じゃあな」スッ
ビュオッ!
「な、なんだ…!」
村長「む!?」
幼女「………」
「あのお姿は…!」
「まさか……トドノツマリ様!」
345 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:36:35.55 ID:L/MaCyf+0
幼女「……遅かったか」
赤子「…グスッ…」
オギャー…!
タッタッタッ
巫女「何を呆けているの!あれが妖禍子の頭領とも言うべき存在よ!早く殺しなさい!」
「そうか!奴を殺せば…!」
「人の住みやすい世界になるんだ!」
ドドドドッ!
幼女「……」
シュンッ
「また消えた!?」
「赤子も居ないぞ!」
巫女「往生際の悪い…!」サッ
巫女「……!?」
巫女(札が反応しない…!)
「巫女様、奴はどちらへ!?」
巫女「……追えないわ」
「え?」
巫女「方向が掴めないの」
「…そんな、それでは…」
巫女「……」ギリッ
巫女「口惜しいけど、何処へ行ったか分からない以上、この人数で探すのは現実的じゃない」
「そうですか…」
巫女「……あともう少しで始末出来たものを……!」
ケモノ「」
女「」
巫女「…そこの汚い死体を、早く焼いてしまいなさい」
346 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:37:11.52 ID:L/MaCyf+0
ーーーーーーー
幼女「……」
赤子「」スー..スー..
幼女「……謝罪しよう」
幼女「我がより賢明であれば、失わずに済んだ命であった」
幼女「……」
幼女「そして誓おう」
幼女「御前の身に危険が及ぶ事は赦さぬと」
幼女「──御前を封印する」
幼女「痛く苦しい封印ではない。平穏と静寂を伴う封印である」
幼女「…いずれ、封印なぞせずとも良い時代が訪れる、その時まで」
.........
=======
347 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:37:56.31 ID:L/MaCyf+0
それでも俺は──。
生まれて来て善かったのか…?
母よ……父よ……。
348 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:38:45.55 ID:L/MaCyf+0
ーーーーーーー
ヒュルルルルル...
ドーン!
少年「!」ハッ
少年「ふぅ……ふぅ……」
少年(頭が焦げ付くような怒りと悲しみ……こんなの初めてだ)
少年(……最後に聞こえたあの声)
ーーーーー
──ここでこいつを突き落とせばいい
ーーーーー
少年(あの時の声だ)
少年(そして、繋がった。前に学校で見かけた変な服装の男……これはあいつ声)
ヒュルル...
ドドーン!
猫又娘「うー…花火の音が頭に響くぅ…」
少年(猫又娘さん…)
少年(…!そうだ、そういえば!)
夢見娘「……」ノゾキコミ
少年「うぉ!?」ギョッ
夢見娘「……」チラッ
包帯少女「」スー..スー..
少年「少女さん!」
少年(起きてない…?)
少年「夢見娘さん、少女さんは…!」
夢見娘「……大丈夫。ユメに呑み込まれるのは、回避できた……」
夢見娘「ちゃんと目は覚めるよ……」
少年「良かった…」
少年(………)
少年「…それにしても、今見てたのがあの男の過去ってことなんだよね」
夢見娘「……」コク
少年「あいつが人を消そうとしてる理由は、僕たち人間の身勝手な行い…」
猫又娘「人と妖禍子の間に出来た子供か」
349 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:40:00.66 ID:L/MaCyf+0
猫又娘(周りと違うことがあるだけで迫害される。それはいつの時代も変わらないんだ)
猫又娘(さっき私に近づいてきたのも)
ーーーーー
黒服男「──ならば何故、人間は俺達を封じ込めた?何故執拗に排斥しようとする?」
黒服男「──お前はこの問いの合理的な答えを持っているのか?」
ーーーーー
猫又娘(…あの問いかけの意味も)
猫又娘(あいつはきっと、出口のない理不尽な幻影に囚われ続けてる)
少年「僕さ…あいつの気持ちちょっとだけ分かっちゃう気がするんだ」
少年「自分の呼び方が変わってるからって、面白半分で僕に嫌がらせをしてきた同級生Aの奴ら…消えちゃえって思ったことが何回もあった」
少年「あいつの過去に比べたら、ちっぽけなことかもだけどさ」
猫又娘「少年君…」
猫又娘(……)
猫又娘「……ちょっち気になることがあるんだけどさ」
猫又娘「あの女の人が歌ってた子守唄。あれって何の子守唄なんかな?」
少年「え、子守唄……知らないな。僕、あれは初めて聞いた」
猫又娘「ふーん…」
猫又娘(なんだろう)
猫又娘(物心ついた時から、私が唯一知ってた唄)
猫又娘(……キミが気に入ってくれてた唄)
350 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:40:32.76 ID:L/MaCyf+0
包帯少女「ん……んぅ…」ゴロ...
猫又娘・少年「「!」」
猫又娘「…ま、とにかく今は少女さんをちゃんとしたとこで寝かせてあげよっか」
少年「うん、そうだね。…て、ちゃんとしたところって?」
猫又娘「少年君の部屋でいいじゃない」
少年「!?な、なんで僕の部屋…!」
猫又娘「つべこべ言わない。好きな女の子を地べたに置いとく気?」
少年「う……分かった」
猫又娘「よろしい」
猫又娘「少女さん運んだら、私はまたここで捜索を続けるから」
少年「トドノツマリ様を?…それとも、あいつ?」
猫又娘「………」
猫又娘「…へへ」
少年「………」
少年(猫又娘さん、そんな顔で笑うこともあるんだ…)
少年「…ありがとうね、夢見娘さん。おかげで少女さんを──」
少年「……居ない」
猫又娘「相変わらず幽霊みたいな子だよ…」
ドーン!ドドーン!
猫又娘「花火、綺麗だね」
少年「……うん」
351 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:41:15.95 ID:L/MaCyf+0
ーーーーーーー
黒服男「………」
黒服男「……母よ」
黒服男「貴女は何故、異形の者に愛を見出した?決して祝福される事はないと、知っていたはず」
黒服男「………」
黒服男「父よ」
黒服男「貴方は何故、俺に記憶を残したのだ。自らが殺される、そのような仕打ちを受ける中で俺に何を期待した?」
黒服男「…それでも人を愛していたと、言いたかったのか」
黒服男「……」
黒服男「……」
黒服男「否」
黒服男(そうではなかろう)
黒服男(俺が為すべき事、貴女方が成しえなかった事)
黒服男「………」
黒服男「人の世が、ただ一つの純然な愛をすら奪う存在と為るのならば…!」
黒服男「俺は人の世の下らぬ業を奪う修羅と為ろう!」
黒服男「貴様ら人間の価値がどれ程矮小なものか、身を以て知るがいい!」
...ゴオォォ
黒服男「あわれあわれや」
黒服男「だれぞおにか」
黒服男「てのなるところ」
ゴゴゴゴゴ...!
黒服男「さいてさいてや」
黒服男「ふたつのかげ」
黒服男「だれなくところ…」
352 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:42:19.90 ID:L/MaCyf+0
ーーー少年の自室ーーー
プルルルル プルルルル
少年「……」
プルルルル...プツッ
『ただいま電話に出ることが出来ません。ピーっという音の後に、用件をお話しください』
少年「…出ない」
少年(少女さんの家、今誰も居ないのかな。少女さんからいざという時のために教えてもらってた家の番号、間違ってることはないはずだけど…)
少年(……誰も居ないといえば、ここに帰ってくる途中、誰ともすれ違わなかったな)
少年(お祭りにはあれだけの人が居たのに、帰り道は不気味なくらい静かだった)
包帯少女「……」スー..スー..
少年「……」
少年(猫又娘さんは今頃あの山に戻ってる頃か…)
少年(僕だけまた何も出来ない…)
少年(──なんてな)
少年(そんな考えはもうしない。僕はきみが目を覚ますまで見守っているよ)
少年「…ん?」
(カバンからはみ出たアヤカシノート)
少年「……」
ーーーーー
猫又娘「──今度は楽しいことでも書いてみなよ」ニッ
ーーーーー
少年「……」スッ
カチカチ
サラサラサラ...
『7月29日 お祭り日和
少女さんとようやく本当の意味で仲直りが出来た。やっぱり僕は少女さんのことが好きなんだ。
お祭りは結局、花火どころじゃなくなっちゃったけど、次は二人で見られたらいいな。』
少年「……よし」パタン
少年「ふぁーあ…」
少年「さすがに、何日も歩き回ってたら疲れるな…」
少年「……」
少年「ちょっとだけ……ほんの仮眠程度だから…」
ゴロン...
353 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/02/03(月) 03:43:25.88 ID:L/MaCyf+0
ーーーーーーー
包帯少女「……んん……」
包帯少女(……!)パチッ
包帯少女「…ここは…?」
仔猫「……」グッスリ
少年「」グー..グー..
包帯少女「………」
包帯少女(少年君の部屋…かな)
包帯少女(昨日、どうしたんだっけ)
包帯少女(確か少年君と境内の方まで行って、それから…)
包帯少女(……)
包帯少女(そっか、多分あのまま倒れちゃったんだ)
包帯少女(…とっても理不尽な物語だった)
包帯少女「……」
包帯少女「…暗いな。今何時だろう」
ゴソゴソ スッ
スマホ『09:00』
包帯少女「…?」
包帯少女(9時?…夜の?)
シャッ(カーテンを開ける)
包帯少女「──っ」
包帯少女「……え……」
ゴゴゴゴ...(一面黒紫色の空)
ウヨウヨ...(跳梁跋扈する妖禍子たち)
包帯少女「……………」
包帯少女(………!)グッ...
354 :
◆YBa9bwlj/c
[sage saga]:2020/02/03(月) 03:46:41.26 ID:L/MaCyf+0
八幕は以上となります。
次回、第九幕でこの騒動は終わりを迎えます。
次の投稿で完結となります。
355 :
@ramiasu2270
[saga]:2020/02/18(火) 22:10:29.41 ID:Yxrt9fKO0
■第九幕 約束■
ーーー少年の自室ーーー
包帯少女「起きて、少年君、猫又娘さん」ユサユサ
少年「う…んー……!」
少年「少女さん…!目、覚めたんだね」
少年(しまったな、そんなに寝ちゃってたか…)
仔猫「……zzZ」
包帯少女「……」
ムンズ
仔猫「!?」ビクゥッ
ドロン
猫又娘「なになにっ!?何が起きたん!?」
猫又娘「……」
猫又娘「気持ち悪い…何なん、この嫌な気配…」
(黒紫色の空、蔓延る妖禍子)
猫又娘「う…わ、通りで…」
包帯少女「ぼくが起きた時にはもうこうなってた」
少年「え、午前9時って…嘘だろ、こんなに暗いのに…」
猫又娘「仕方ないよ。これもう普通の空じゃない」
包帯少女「…!少年君!」
包帯少女「きみの両親は!?」
少年「両親?」
包帯少女「今居るの!?この家に!」
少年「…見てくる!」
.........
356 :
@ramiasu2270
[saga]:2020/02/18(火) 22:13:39.31 ID:Yxrt9fKO0
少年「……居ない、どこにも」
少年「携帯も置きっぱなしだった」
包帯少女「……」
少年「…あの、実はさ、昨日の夜少女さんの家に電話した時も誰も出なかったんだ」
包帯少女「…そう、やっぱり…」
猫又娘「もしかして私たち以外全員……」
猫又娘「…ごめん…私が昨日の夜、何も見つけられなかったから」
少年「なんで猫又娘さんのせいなんだよ。昨日は緊急事態のようなものだったんだし、そんな中で捜し出せって方が難しいって」
猫又娘「うん、それでもね……時間は無限に待ってくれるわけじゃないなんて分かってたはずなのに…」
包帯少女「……そんなの――」
パシン!(自分の両頬を叩く)
二人「!?」ギョッ
猫又娘「…ニッシシ」
猫又娘「落ち込んでると思った?はっずれー♪」
猫又娘「こんな土壇場で弱音吐いててもどーしよーもないもん!もうここまできたらやることはひとつ!」
猫又娘「鬼も蛇もいっぱい出るだろうけど、期せずして私らにこの町の命運がかかってしまったんだから……」
猫又娘「――運命共同体!出発せにゃなるまいな!」ビシッ
少年「……」
包帯少女「……」
猫又娘「…あれ」
包帯少女「…ちょっとむかっとした。耳摘んでいい?」
猫又娘「なぜ!?」
少年「…本当、どんな時でもブレないよなぁ」
少年(僕なんてこんな悪夢みたいな世界が怖くてたまらないのに…)
少年(…今だって、足の震えを抑えるのがやっと――)
...ソッ
少年「…!」
包帯少女「大丈夫。きみは強い」
少年「……少女さん……」
包帯少女「…ふふっ」
猫又娘「二人の世界に入ってるとこ悪いけど、早いとこ出よう」
猫又娘「…これは私の勘なんだけどさ。なんとなーく、あの人は私らを待ってる気がするんよね」
包帯少女「敵の期待を裏切っちゃ、悪いね」
猫又娘「そゆことよ」
少年「その感じ、僕にも分かる」
少年「…多分あいつが待ってるのってさ…」
三人「――南町神社だ」
357 :
◆7jwTcAQqF.Dj
[saga]:2020/02/18(火) 22:20:48.77 ID:Yxrt9fKO0
ーーーーーーー
「キシャア!」
派手娘「ふん!」ドゴッ
「キュー…」ベシャ...
――スルスルスル グイッ
派手娘「!」
「…グォォ…」シメツケ
派手娘「あたしに、触るんじゃないわよ!」ブン!
ビターン!
派手娘「一生這いつくばってなさい」
カツカツ...
ズズズ...
派手娘「…あぁもう!キリがないわね!」
派手娘「あんたらどんだけ暇なのよ!外に出てすることが鬼ごっこ?」
ヒュッ
派手娘「あたしにぶっ飛ばされに来たのは感心するけどね」サッ
派手娘「来るならそこに一列に並びなさいっての!」バッ
ドシーン!
派手娘「全員畳んでやるわ。そうすればこの安っぽい三流映画みたいな演出も終わんでしょ?」
トリップミスしていたため、トリップを変更しました。
358 :
◆7jwTcAQqF.Dj
[saga]:2020/02/18(火) 22:23:46.02 ID:Yxrt9fKO0
ーーーーーーー
猫又娘「ほっ!えい!」ポン、ポン
(ネズミ、ウサギに変えられた妖禍子)
包帯少女「」タッタッタッ
少年「わっ…とと」タッタッ
包帯少女「少年君!」
少年「平気…転びそうになっただけだから」
猫又娘「にしてもこれはやり過ぎだよねぇ…!うじゃうじゃと、こんなにどこに隠れてたんよ」
少年「昨日のお祭りの人が全部妖禍子に化けたみたいだ…」
包帯少女「本当に…ね!」ブォン!
ドシャッ
包帯少女「…っ」ズキッ...
猫又娘(…少女さん、やっぱり…)
少年「あっち!妖禍子が少ない道がある!」
猫又娘「うわ、あからさまに怪しい…」
ゾロゾロゾロ
猫又娘「…ま、他に選択肢もないみたいだね」
猫又娘「行くよ!私から離れないで!」
タッタッタッ...
三人「」タッタッタッ
包帯少女「……っ」タッタッ
猫又娘「……」タッタッ
猫又娘「…少女さん」ボソッ
包帯少女「?」
猫又娘「その包帯の下……今、どうなってるん?」
包帯少女「……」
猫又娘「ここんところずっと感じてたんだ。少女さんが包帯を巻いたとこから、妖禍子の気配がするの」
猫又娘「……少女さん、あなたもしかして――」
包帯少女「しー…」
包帯少女「」フルフル
包帯少女「…ぼくはね、これで満足してる」
包帯少女「彼を最後まで支えることができればそれでいい…そうやって思わせてくれた。今のぼくはそれが全てだから」
猫又娘「……」
包帯少女「…ありがとね」ニッ
猫又娘(………)
359 :
◆7jwTcAQqF.Dj
[saga]:2020/02/18(火) 22:24:39.15 ID:Yxrt9fKO0
少年「は…は……」タッタッ
猫又娘(少年君はきっとこのことを知らない……この子が少年君の支えになってるのは間違いないだろうけど)
猫又娘(じゃあそれが失くなってしまったら…?)
少年「――見て!」
猫又娘「!」
少年「向こう、神社の方向だよな!?」
(小山ほどの巨大な黒塊)
猫又娘「ひゃあ…」
少年「なんだよあれ…まさか神社ごと消されたのか…?」
包帯少女「ううん、よく見て。あれの後ろに神社の山がある」
少年「ってことはあそこを通らないといけないってことか…」
少年「迂回して裏からまわった方がいいかもな」
猫又娘「!…そうも言ってられないみたい」
バサバサ シュルルル
カツカツカツ ズズ..ズ..
包帯少女「…囲まれた」
猫又娘「案の定奴らの罠だったわけだね…分かってたとは言え、この量は骨が折れるなぁ」ウヘェ...
包帯少女「けど、進むしかない」
猫又娘「当然!」
「フシュルルル...」
少年「っ…」ゴクリ
少年「ぼ、僕は何をすればいい?僕も出来るならこいつらと戦いたい…!」
猫又娘「それはちとリスキー過ぎんね」
包帯少女「少年君は、ぼくたちの無事を願っててくれないかな」
少年「それって…僕はまた何も出来ずに…」
包帯少女「そうじゃないよ。きみの力が必要になる場面は絶対にやってくる。それまできみが無事でいてくれることが何より大事なの」
包帯少女「きみはぼくが守る。だからぼくたちが無事でいることを、願っていてほしい」
少年「……分かった」
猫又娘「少女さん、くるよ!」
包帯少女「……」グッ(バットを構える)
サッ!
ポン、ポン
グシャッ
.........
508.86 KB
Speed:0.2
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)