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少年「アヤカシノート」
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160 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:31:37.29 ID:OOuoymdI0
老婆「ばあちゃんの周りにも居ったよ?やれ辛抱強く願ったら叶えてくれたって叫んでたっけね」
老婆「その人は身長が欲しいと言ってて…事実、20過ぎにも関わらずそれから不自然なくらい背丈が伸びてってねぇ」
老婆「ま、異性に注目されたいなんちゅうしょうもない動機やったらしいけども」
包帯少女「…不思議、ではありますね」
包帯少女(……)
包帯少女「あともう一個。…願いを聞いてもらうと世界に災いがもたらされる…なんて話も聞きました」
老婆「災い?そんなはずないさ」
老婆「トドノツマリ様は、うちらの守り神なんじゃからの」
二つ編み「守り神…」
老婆「遠い昔からずー…っと、あの神社のお社でこの町を見守って下さっとるんじゃ」
老婆「ばあちゃんはそう言い聞かせられて、育ったものよ」
包帯少女「……」
二つ編み「……」
包帯少女「……妖禍子が封じられたのも神社、トドノツマリ様が町を見守ってる場所も神社……」
包帯少女「何か、関係があるのかな…」
老婆「悪い妖禍子が出てこないように見張ってくれとる……というのが有力さね」
老婆「妖禍子に悪いも何も無いと思うんじゃけどねぇ…」
包帯少女(……トドノツマリ様に、神社に、妖禍子に……そして、生き返ったぼく)
包帯少女(あの時、少年君は……もしかして……)
老婆「けんども、少女さん、妖禍子を見たんじゃもんなぁ」
包帯少女「そう、ですね。夜になると、たくさん徘徊してるんです」
老婆「…もし真実なら、あるいは…」
老婆「神社に、良くないことが起きとるのかもねぇ……」
161 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:33:30.91 ID:OOuoymdI0
ーーー神社ーーー
幼女「………」
幼女「……何用か?」
黒服男「用など、言わなくても分かっているだろう?」
幼女「……立ち去るがよい。そなたの望む物は此処には無い」
黒服男「俺が何を為すつもりか、把握しているような口振りだな」
黒服男「なら、少し違う。俺が今望むのは…」
黒服男「障害の排除」
幼女「……」
黒服男「お前のような妖禍子(アヤカシ)が存在するとはな」
黒服男「見てくれは人だが……その異能。他の妖禍子を遣い、俺の妨害をしていたか」
黒服男「……何故人間に加担する?」
幼女「………」
幼女「加担には非ず。我の所業は単純」
幼女「人と妖禍子の混ざらぬ事」
黒服男「人間が俺達を受容することは無いからな。その思考は同意する」
黒服男「だからこそ、愚かな人間共を除き去る必要がある」
幼女「……紅(あか)と碧(あお)の獣」
黒服男「…!」
幼女「あの凄惨が繰り返されてはならぬ。我等と人、其の均衡は保たれて然るもの」
黒服男「……」
162 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:35:19.92 ID:OOuoymdI0
黒服男「それを知っていて尚、俺を止めようとするか…」
幼女「…憎しみが最後に残すは、虚な無でしかない」
黒服男「その憎しみを生むのも、増長するのも人間だ」
幼女「我等とて完全な存在ではあるまい。相互不干渉、其れが最適解となるのだ」
黒服男「…どうやら言葉を交わすだけ無駄なようだな。お前と俺とでは決定的に価値観が異なる」
...ザッザッ
幼女「………我を消すか?」
黒服男「いや」ザッザッ
黒服男「言っただろう。障害を排除することが目的だと」ザッ...
バシュンッ!
幼女「っ」バッ
幼女「…………?」
黒服男「ほう、こんなノートで妖禍子を生み出せるのだな」ペラ..
幼女「!」
黒服男「む…これは……」
黒服男(奇妙な繋がりだ。あの男の持っていたものか)
幼女「…返還せよ」
黒服男「返すと思うか?」
幼女「……」
黒服男「……」
黒服男「……愚人のように飛びかかるかと思ったが、聡明だな」
黒服男「お前では俺を止められない」
幼女「………」
黒服男「………」
ザッザッザッ...
黒服男「……安心しろ。消えるのは人間だけだ」ザッザッ
スッ...(闇に紛れる黒服男)
幼女「……………」
163 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:37:23.06 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー
二つ編み「……」テクテク
二つ編み(……何かしらね。今日は少し…)
二つ編み(楽しかった気がする)
二つ編み(おばあちゃんと話してるだけの時とはまた違う…)
ーーーーー
包帯少女「──へぇー…なんか、かわいいね」フフッ
ーーーーー
二つ編み(少女さんが居たから…?)
二つ編み「……」テクテク
二つ編み(ふぅ…楽観視出来る状況じゃないのにね)
二つ編み(………ふふ)
二つ編み「…そういえば変な悲鳴が聞こえてくることも無かった」
二つ編み(本当にあの子の言ってた"笑顔"なんてものが……影響するのかしら…)
二つ編み「……」テク..
(二つ編み宅)
二つ編み「………」
ガチャ
二つ編み「…!」
二つ編み母「………」
二つ編み「……遅くなりました」
二つ編み母「……」
二つ編み母「どこに行ってたの?」
二つ編み「それは、連絡した通り補習で──」
二つ編み母「嘘をつくんじゃない!」
二つ編み「っ…」
二つ編み母「あなたがあんまり遅いものだから、学校に電話してみたのよ。そしたら補習なんてとっくに終わってるって言うじゃないの!」
二つ編み母「言いなさい、どこに行ってたの?」
164 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:44:38.65 ID:OOuoymdI0
二つ編み「……祖母の書店で、調べ物を……」
二つ編み母「あのおばあさん…!またあなたに余計な時間を使わせたのね!?」
二つ編み母「あぁ嫌だわ…!もっと遠くに越せば良かった!そうすればあなたが無駄な寄り道をすることもないのに!」
二つ編み「!…嘘ついたことはすみません。でも必要な調べ物だったんです」
二つ編み母「あなたに今必要なのは成績でしょう!他は二の次!」
二つ編み母「もう高校合格するまで、おばあさんに近付いちゃ駄目ですからね!」
二つ編み「なっ…成績はちゃんと取り返します!祖母は関係ありません!」
二つ編み母「口答えする気……?」
二つ編み「その調べ物だって勉強に集中するために必要なものなんです」
二つ編み「何でもかんでも無駄だゴミだって、決め付けないで下さい」
二つ編み(…あ)
二つ編み母「」ブチッ
二つ編み母「あなたねぇ…!」
二つ編み母「誰のおかげで生活出来てると思ってるの!?路頭に迷いかけてたあなたを引き取った恩を──」
二つ編み(やってしまった)
二つ編み(つい、口から零れてた)
二つ編み(だって今日の全てを否定されたような気がしたんだもの…)
二つ編み母「──あなたが救われた恩はあなたの人生をかけて返すべきでしょう!親が誇れる子供になる。私は無理なことは一言も言ってないはず──」
二つ編み(耳障り…)
二つ編み母「──それなのに最近──だったその成績──、─!──つもり───!?」
二つ編み(あれ…?)
二つ編み母「───!──、────」
二つ編み(この人の顔、のっぺらぼうだったっけ?)
二つ編み(声も、喋ってるのは分かるのに聞こえない……)
二つ編み「あの…すみません」
二つ編み「さっきから何を言ってるのか全然分からないんですけど…」
二つ編み母「〜〜っ!」
二つ編み母「」ギャーギャー
ガミガミ
二つ編み「……?」
165 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:45:50.75 ID:OOuoymdI0
ーーー深夜 自室ーーー
二つ編み「……」ボー
二つ編み「……」
──いやだ…
──しにたい
二つ編み(……そうね……)
二つ編み「………」
──だれかぁ…
二つ編み「………」
二つ編み「……あや……かし……」
二つ編み(……そう)
二つ編み(何もかも)
そいつらのせいなのよ。
166 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:47:20.14 ID:OOuoymdI0
ーーー翌日 学校ーーー
猫又娘「妖禍子(アヤカシ)…って言うんだ…」
包帯少女「うん。で、これが今話してた本」トリダシ
猫又娘「ほほぉ」ペラペラ
猫又娘「……お、私が載ってる」
包帯少女「そ。ついでに猫又娘さんが何者かもはっきりしたね」
猫又娘「ついで扱いなのぉ?」
包帯少女「……でも、これでやっと色々見えてきた」
猫又娘「…そだね」
猫又娘「しっかし、トドノツマリ様は守り神だったんね。あの神社に何かが住んでるのは感じてたけど、土地神様だとは……」
包帯少女「まだそうと決まったわけじゃないよ。あくまでも伝聞でしかないから、だから…」
包帯少女「南町神社に行って、確かめてこよう」
包帯少女(なんだかんだで避けてきてしまっていたあの場所…)
猫又娘「……怖い顔してるよ」
猫又娘「少女さんが無理して向かうくらいなら、私だけで見てこよっか?」
包帯少女「ううん。ぼくも行く。あそこに何があるのか、ちゃんと自分で見てこないと」
二つ編み「……」トットットッ
猫又娘「あ、戻ってきた!」
二つ編み「もう昨日の話は共有出来た?」
猫又娘「バッチリです!」
包帯少女「ありがとね。二つ編みさんのおかげで大分筋道が立てられるようになった」
二つ編み「わたしも早く元の日常に戻りたいだけよ」
包帯少女(…元に戻っても、友達のままでいられるよね)
包帯少女「それで、昨日あの後連絡はあったの?」
二つ編み「?何のこと?」
包帯少女「妖禍子について書かれた本が見つかったら追って伝えるって、約束してたでしょ?」
二つ編み「……?…誰と?」
包帯少女「誰って…おばあさんだよ。古書店の、二つ編みさんのおばあちゃん」
二つ編み「おばあちゃん……祖母?」
包帯少女「そう」
二つ編み「わたし、会ったこともないわよ?」
167 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:48:36.48 ID:OOuoymdI0
包帯少女「………え」
包帯少女「何言って…昨日古書店で会ったよね…!?」
二つ編み「古書店には行ったけど、その本買って読んでただけよね」
包帯少女(なに?どういうこと…?)
包帯少女(おばあさんのこと知らないなんて、そんな嘘をつくとは思えないけど……)
包帯少女「…じゃあ、トドノツマリ様の昔話をしてくれたのは?」
二つ編み「それはわたしが知ってたから聞かせてあげたんじゃない」
包帯少女「………」
二つ編み「……どうしたの?いきなり祖母の話なんか持ち出して…」
包帯少女「………いや、何でもない。ぼくの勘違いだったみたい」
二つ編み「そう…?」
二つ編み「あと、先に謝っておくわね。わたししばらく放課後は付き合えない。昨日、帰りが遅過ぎるって言われちゃって」
包帯少女「っ…ごめん、ぼくたちのせいで…」
二つ編み「気にしないで」
二つ編み「あなたたち神社に行くのよね?わたしはわたしで妖禍子の封印について探ってみるつもり」
二つ編み「収穫があれば報告するわ。そっちもよろしくね」クルッ
トットットッ(自席に戻る)
包帯少女「………」
猫又娘「……少女さん、さっきの」
包帯少女「うん、おかしかった」
包帯少女「古書店のおばあさん、間違いなく二つ編みさんのおばあちゃんだったはず…」
猫又娘「んぅ……私も昨日行けてれば…!」
168 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:51:50.48 ID:OOuoymdI0
少年「──二人とも、今平気?」
包帯少女「…少年君」
猫又娘「おやおやどうしたよお兄さん。思い詰めた顔しちゃって」
少年「……」
少年「…相談があるんだけど…」
猫又娘「割と深刻なやつだったり…?」
少年「まぁ、その……」
少年「夢見娘さんのことで」
包帯少女「──!」
包帯少女(色々あって忘れてた……あの子もつまり…)
包帯少女(妖禍子なんだよね…?)
猫又娘「おー、そういえば少年君に気がある──」
包帯少女「大丈夫なの!?なにかおかしなことされた!?」ズイッ
少年(近っ…!)
少年「…おかしなことというか」
少年「尾けられてるみたいなんだ」ボソリ
包帯少女「……ん?」
少年「下校の時、僕の後ろを付いてくるんだよ…!」ヒソヒソ
少年「気付いたのは一昨日からだけど、多分もっと前からされてたんだと思ってる」ヒソヒソ
少年「一度僕の家まで来てたことがあったし…」ヒソヒソ
169 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:53:10.46 ID:OOuoymdI0
猫又娘「わお…」
猫又娘「……ストーカーの妖禍子?」
少年「あや……なに?」
猫又娘「んーん、なんでもない」
少年「だからさ、今日途中まででいいから一緒に帰ってくれないかな」
少年「──猫又娘さん」
猫又娘さん「私?」
包帯少女「……」チラリ
猫又娘「…少女さんは?」
少年「し、少女さんは…」チラッ
少年「っ」メソラシ
猫又娘(?)
少年「明日、とか」
包帯少女「……明日からはまた一緒に帰ろうか。二人で」
猫又娘「え゙」
猫又娘「私は仲間外れ!?」
包帯少女「ははは本気じゃないよー」
猫又娘(目が笑ってないんですが)
包帯少女「……ま、ぼくも今日は行かなくちゃいけないとこがあるしね」
包帯少女(おかしくなったのはぼくか、二つ編みさんか……)
包帯少女「神社には明日、少年君を送ってから向かおう。夢見娘さんのことは任せたから」ヒソ
猫又娘「りょーかい」ヒソ
170 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:56:00.78 ID:OOuoymdI0
ーーー放課後 学校ーーー
二つ編み「……」テクテク
二つ編み「……」テクテク
「ねー、お願い!明日までの宿題、終わったら手伝って!」
「ちょっとは自分でやればー?ってか、あんたいつも二つ編みに見せてもらってなかった?」
「だって今のあの人使えなさそうなんだもん。たまに変な独り言言ってて不気味だしぃ」
「友達じゃなかったの?」
「まっさかー(笑)」
二つ編み(………)
二つ編み「……」テクテク
テクテク...
ーーー昇降口ーーー
二つ編み「……」テクテク
二つ編み「……」テクテク
同級生A「頼むよー。こんくらいでいいからよ、今月も足りなくなさそうなんだわ」
下級生「でも、俺ももうお金は…」
同級生B「いいだろ?俺たち友達じゃん。そのうちちゃんと返すからさ」
下級生「…そのうちって、い、いつになるんですか…」
同級生A「近いうちにはぜってーだよ。俺らが信用出来ねぇの?」
二つ編み「………」
二つ編み「……」テクテク
テクテク...
171 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:56:48.21 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー
二つ編み「……」テクテク
二つ編み「……」テクテク
──ヒック...グスッ...
二つ編み(……)
二つ編み「……」テクテク
ギョロリ
二つ編み(……っ)
二つ編み「」...スタスタ
スタスタスタ...
172 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 02:57:44.25 ID:OOuoymdI0
ーーー古書店ーーー
包帯少女「ここ…だよね」
包帯少女「………」
包帯少女(うん。並んでる本も昨日見てたものと同じ。ここから見えるところにおばあさんはいないけど…)
包帯少女「……すみませーん」
シーン
包帯少女「すみません!誰かいませんかー!」
...ガタッ
包帯少女(!)
トットットッ ガラッ
中年「あい、いらっしゃい」
包帯少女(え…)
中年「なんかね?お会計かい?」
包帯少女「…あの、このお店におばあさんていませんか?」
中年「ばあさん?さぁ知らんなぁ。ばあさんの客はたまに来るけども。それかほれ、おっさんならここにおるでな、ぶはは!」
包帯少女「……この書店、あなたが持ってるものなんですか?」
中年「いんや、ここは兄が趣味でやってるような店だ。今日は俺が店番してるっつーだけよ」
包帯少女「お兄さん…」
中年「あぁ。別に店番でばあさん雇ったいう話も聞いてねぇからな……君、来る店間違えたかい?」
中年「いやまぁ!俺としちゃ君みたいな子が来てくれるだけで良い清涼剤になっけどなー!ははは!」
包帯少女「……」
包帯少女「…妖禍子って知ってます?」
中年「あやかしぃ?なんでぇ、妖怪のことけ?そこらに置いてある本にしこたま書いてあんじゃねぇか?」
包帯少女「………」
包帯少女「すいません、お騒がせしました」ペコリ
中年「おう、帰るんか。気を付けてな」
テクテクテク...
中年「…学生かぁ。戻りてぇよなぁ、俺もなぁ」
中年(にしても今の子、すげぇ包帯してたけど、怪我は平気なんかね)
173 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:00:57.56 ID:OOuoymdI0
ーーーーーーー
少年「──どう、見える?」テクテク
猫又娘「…うーん、まだどこにも見えないかなー」テクテク
少年「おかしいな…昨日はもうこの辺りで後ろにいたんだけど」
猫又娘「誰かといるときはストーキングしないとか?」
少年「どうかな…」
猫又娘「…けど、後をつける以外何もされてないんだよね」
少年「うん、まあ」
猫又娘「その時に訊いちゃえばよかったのに。なんで付け回すのって」
少年「……実際されてごらんよ。結構怖いんだ」
猫又娘「えー?私ならズバッと尋ねちゃうよ?」
少年「みんなが猫又娘さんみたいなわけじゃないから」
少年(……)
少年「……少女さんのこと、なんだけどさ」
少年「最近よく猫又娘さんといるだろ?…その、僕のこと、何か話してなかった?」
猫又娘「少年君の?」
猫又娘(あの子といる時は異変の話しかしないからなぁ)
猫又娘「特にしてないよ」
少年「そっか…」
猫又娘「どしたの?もしや少女さんのこと気になってたりー?」
少年「………」
猫又娘「え……ほんとに?」
猫又娘「つ、ついにお二人さんが──!」
少年「そう決まったわけじゃ…!前にも言ったけど、自分でもまだよく分かってないんだよ」
少年「少女さんが気になるのはその通りでさ。でもそれが友達として気にかかるだけなのか…好きとしての気になるなのかは、全然」
少年「あの包帯だって、いつまで着けてるのか気がかりだし…」
猫又娘(包帯…)
猫又娘(……あの子の包帯からはずっと、私たちと同じ妖禍子(アヤカシ)の気配がしてる)
猫又娘(……それってもしかして……)
174 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:02:14.67 ID:OOuoymdI0
猫又娘「……ん?」チラッ
夢見娘「……」ソロリ
猫又娘「あ…!」
猫又娘「いたよ少年君!かなり後ろの方に!」ヒソヒソ
少年「!いつの間に…」
猫又娘「よーし、任せて。私が問い詰めてくるから!」ヒソヒソ
猫又娘「」クルッ
ダッ!
夢見娘「!」
夢見娘「」タッタッタッ
猫又娘「逃げた!?待ちなさいー!」スタタタ
少年「待ってよ僕も──」
スタタ...
少年「……はや……」
少年「………」
少年「………」
ーーーーー
少女「」ニコッ
ーーーーー
少年(あの笑顔がまた見たいって思うのは……)
少年(好き、だからなのかな……)
少年「……………」
ピロリン
少年「!」
[LINE]
猫又娘『ごめーん、見失っちゃった(T_T)』
少年「えぇ……」
175 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:06:05.16 ID:OOuoymdI0
ーーー夜ーーー
ザッザッ
黒服男「……」ザッザッ
黒服男(……満月の夜)
ーーーーー
女「〜〜♪」
ーーーーー
黒服男(未だに貴女を思い出す)
黒服男「……」ザッザッ...
黒服男「………」
黒服男(……もう少しで、あの無念を晴らすことが出来る)
黒服男「……」スッ
...キイィ
ゴオオオォォ...!
シュン、シュン、シュン!
「キシャア!」
「キュー、キュー」ヒラッ
「……」ガシャガシャ
「グオォ…」ゴゴゴ
黒服男「………」
(夥しい数の妖禍子達)
黒服男「……あわれあわれや」...ザッザッ
黒服男「だれぞおにか」ザッザッ
黒服男「てのなるところ」ザッザッ
ゾロゾロワラワラ
黒服男「さいてさいてや」ザッザッ
黒服男「あかいはな」ザッザッ
黒服男「ははなるところ…」ザッザッ...
.........
176 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:07:26.27 ID:OOuoymdI0
ーーー少女の自室ーーー
包帯少女「……どうして……」
包帯少女(あの古書店、二つ編みさんのおばあちゃんの居る感じが全くなかった。代わりに雑なおじさんが出てきて…)
包帯少女(まるで最初から居なかったかのように……)
包帯少女「夢でも見てた…?」
包帯少女(店員が知り合いのおばあちゃんになる夢…?)
包帯少女「……」
ーーーーー
老婆「──二つ編みちゃんの友達で居てくれるかい…?」
ーーーーー
包帯少女(そんなはずない!あれが嘘だったなんて、そんな残酷なこと…!)
包帯少女「…訊いてみよう、かな」
ポチッ スッスッ
包帯少女(昨日交換しておいたLINE)
[二つ編みとのトーク]
『唐突だけどさ、二つ編みさんのおばあちゃんって、どんな人だったか覚えてる?』
包帯少女「………」
包帯少女(これで送信すれば)
...ズキッ
包帯少女「痛っ…!」
包帯少女(な、に……急に身体が…!)
ザワザワ...ガサガサ...
包帯少女(変な音……外から…?)
包帯少女「……」ソッ..
「「「……」」」ゾロゾロゾロ
包帯少女「…!?」
シャッ(カーテンを閉める)
177 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:12:40.98 ID:OOuoymdI0
包帯少女(なに今の……!)
包帯少女(あれ全部……妖禍子……?)
ズキズキ
包帯少女「あ゙ぃ……!」
包帯少女(痛い…!)
包帯少女(なんで…?奴らに近付いてもない、家中の鍵も締めて入れないようにしてるのに…!)
包帯少女「はぁ…!ぅぐ……」
ーーーーー
「──おい!向こうへ逃げたぞ!」
「──追えー!化け物を逃がすなー!」
「──妖禍子は根絶やしにするのじゃ!」
ーーーーー
包帯少女(…これは…?)
ーーーーー
メラメラ..
ボオォ..
女「」
「……俺は……」
「──生まれて来て善かったのか…?」
ーーーーー
包帯少女(……誰かの、記憶……?)
178 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:14:04.25 ID:OOuoymdI0
ーーー二つ編みの自室ーーー
二つ編み「……」スッ、スッ
スマホ『"妖禍子 封印" の検索結果』
二つ編み「………」
二つ編み「…見つかれば苦労しないわよね…」
二つ編み(またあの古書店に行くしかないのかしら)
ーーーーー
包帯少女「──古書店の、二つ編みさんのおばあちゃん」
ーーーーー
二つ編み「……」
二つ編み(…無性に気になる)
二つ編み(あそこにはわたしの知ってる人なんていないけれど……)
二つ編み(わたしの祖母…どんな人なのかしら…?)
二つ編み(……)
二つ編み「…気になるわ」
二つ編み「……」スッ、スッ
[少女とのトーク]
『あなた、わたしの祖母について何か知ってるの?』
二つ編み「……」
二つ編み(そもそもなんで少女さんが祖母の話を出したのか、今思うと疑問ね)
二つ編み(あるいは、あの子にしか見えてなかったものでも…?)
二つ編み「……いいわ。こんな時間にLINEで訊いてももどかしくなりそうだし」
二つ編み(どうせ明日は土曜午前授業。少しくらいお昼過ぎたところでうちの人は気付かないでしょう)
179 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:15:09.22 ID:OOuoymdI0
──あああああぁぁ!
──憎い…!
二つ編み「っ……」
二つ編み(また……)
二つ編み「………」
二つ編み「…………」
二つ編み「……………」
二つ編み「……………っっ!」
ダンッ!
二つ編み「もういい加減にして!!」
二つ編み「さっきから何度も何度も何度も何度も!」
二つ編み「わたしの中で叫ばないで!消えなさいよ!」
二つ編み「はぁ……はぁ……」
二つ編み(…!)
二つ編み(わたしのバカ!あんな大声出したら、あの人に聞かれてまた余計なことに…!)
二つ編み「……」
二つ編み「………」
二つ編み(………来ない……?)
ザワザワ...ガサガサ...
二つ編み「………?」
二つ編み(何かしら……足音とは違う、妙な音が)
二つ編み(……外から?)
二つ編み「……」
トットットッ
180 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:16:37.48 ID:OOuoymdI0
ーーー玄関ーーー
二つ編み「……」トットッ...
二つ編み「………」
ガシャ、ガシャ
ズズズズ...バサッ
二つ編み(何の音なの?誰かのイタズラ…?)
二つ編み(だとしたら迷惑極まりないわ。ただでさえしつこい悲鳴にうんざりだっていうのに)
二つ編み(…静かにしてちょうだいよ)
...ガチャ
二つ編み「………は………?」
ゾロゾロゾロ(大量の妖禍子の行軍)
二つ編み「な………え………」
二つ編み(……っ!)
二つ編み(まさか……これ、が……)
目玉怪物「……」ギョロッ
二つ編み「──!!」ゾクッ
二つ編み(今の視線……)
二つ編み「……………」
二つ編み「……………」
二つ編み「……は、はは……」
二つ編み(──なんだ、そうだったんだ)
二つ編み(わたし、ずっと勘違いをしてた)
二つ編み(妖禍子が見えなかったわけじゃない……ただ)
二つ編み(わたしが見ようとしていなかっただけなんだ)
181 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:17:49.55 ID:OOuoymdI0
バサッ、バサッ
ゴゴゴゴ
二つ編み(あの人ののっぺらぼうな顔も)
二つ編み(周囲にひしめく悪意も)
二つ編み(見えていないことにして…)
二つ編み(……それに、なぜ気付かなかったのかしら)
二つ編み(あの悲鳴…そこに混じるすすり泣く声も……あれは全部──)
二つ編み(──わたしの声じゃないの)
二つ編み「…あはは…!」
二つ編み(笑えちゃうわね!!)
二つ編み(自分の弱さを必死に隠しておきながら、その実それをぼやかしていたのはわたし自身だなんて!!)
二つ編み(元々壊れテたのは、クルってたノハ、ワタシの方ダッタ!!)
二つ編み「ソンナの、どんなニ足掻イタところデ、ドウにもならナい──無イミにキマッてるのに!」
二つ編み「ソウデショウ?アヤカシサン」
目玉怪物「ゴオォ……」ズッ...
二つ編み「アハ、ハハハハハ!」
アハハハハハハハハハハハ──!
182 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:18:57.92 ID:OOuoymdI0
ーーー翌朝 学校ーーー
猫又娘「──少女さん!大変だよ!」テテテッ
猫又娘「昨日の夜外で見張りしてたらさ、見ちゃったんだ!」
包帯少女「…妖禍子(アヤカシ)の群れ?」
猫又娘「!……もしかして少女さんも?」
包帯少女「……」コクッ
包帯少女(包帯の下の痛みと、知らない情景も一緒に…ね)
包帯少女「……ぼく思うんだよ。もうあんまり悠長にしていられる時間はないんじゃないかって」
猫又娘「うん……」
猫又娘(…正直ちょっと気楽に構えてた)
猫又娘(最近は妖禍子の数も少なくなってきてたから、そっちよりもみんなの仲を取り持つことにばかり気がいってた)
猫又娘(そんなんじゃ、根本的な解決にはならないよね)
包帯少女「ねぇ」
包帯少女「今日、早退しよう」
猫又娘「へ?」
包帯少女「神社に行くの。もうなりふり構ってられない」
包帯少女「二つ編みさんも連れて、二限らへんであがろ」
猫又娘「三人いっぺんに?さすがに許してもらえないんじゃ…」
包帯少女「言い訳はぼくが考えておくから。それでもダメそうだったら猫又娘さんの魔法で…」
猫又娘「私変えることくらいしか出来ないよ?」
包帯少女「…先生を変えちゃう」
猫又娘「そこまでの凶行はしないからね!?」
包帯少女「それはそうと夢見娘さんの方はどうだったの?」
猫又娘「え……あー、それが……」
猫又娘「……あと尾けてるところは見つけたんですが、逃げられてしまいまして…」ニャハハ...
包帯少女「………」
猫又娘「……いっそあの子も神社に連れてっちゃう?」
包帯少女「……」
包帯少女「…ありかもね」
包帯少女「今は少しでも、解決の糸口が欲しいから」
猫又娘「きっとあの子、良い妖禍子だから協力してくれるよ!」
包帯少女「…今日に限ってまだ夢見娘さんも二つ編みさんも来てないなんて…」
猫又娘「ぐぬぬ…二人とも遅刻したことなんかないはずなのに」
183 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:20:45.74 ID:OOuoymdI0
ガラッ
教師「よーし、夏休み前最後の土曜授業。出席取ってくぞー」
夢見娘「……」トコトコトコ
包帯少女(時間ぴったりに入ってきた)
夢見娘「……」トコトコ
ストッ
同級生C「夢見娘さん、ぎりぎりセーフだよ…」
夢見娘「………」
包帯少女(……なんだろ、少し慌ててるような……)
包帯少女(遅刻しそうだったから…?)
教師「──少女」
包帯少女「!はい」
教師「OKと」
教師「とりあえず全員居るみたいだな」
包帯少女(…?いやいや)
包帯少女「あの、先生。二つ編みさんがまだ来てません」
教師「んー?二つ編み?」
包帯少女「はい。…体調不良の連絡とか来てたんですか?」
教師「よその学年の子か?」
包帯少女「──!」
教師「俺の知る限り三年には居ないよな」
猫又娘「え…」
派手娘「っ」
少年「な…!?」
教師「悪いが他学年の出欠までは分からん。俺じゃなくて、その子の担任に訊いてくれ」
包帯少女「………」
包帯少女(……………)
184 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/10/28(月) 03:25:35.55 ID:OOuoymdI0
第五幕はここまでです。
次回第六幕はいよいよ少年が町の異変を知ることになります。そして夢見娘がついに少年と接触します…。
185 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:17:32.91 ID:uBwrWeJb0
■第六幕 マブタのストーカー■
ーーー休み時間ーーー
少年「少女さん…!」
少年「二つ編みさんって…!僕の勘違いじゃないんだよね、このクラスに居たよね!?」
包帯少女「……」
少年「みんなおかしくないか…?二つ編みさんなんて初めから居ないみたいに振る舞って…」
少年「少女さんもあの人のこと覚えてる……んだよね…?」
猫又娘「…ね、こうなったらもう」
包帯少女「………」
包帯少女「少年君、二つ編みさんがどんな人だったかって言える?」
少年「え、と……いつも勉強してる人。少女さんが僕にテスト勉強つけてくれてた時もひたすらやってたっけ」
少年「こんな髪型で、あんまり他の人と話してる印象がないけど…成績は毎回トップだったはず…」
包帯少女「……そうだね」
包帯少女「合ってるよ、ぼくの知る二つ編みさんと」
包帯少女(……)
包帯少女「…今この町に起きてること、きみにも話しておくよ」
.........
少年「──じゃあ…二つ編みさんはそのアヤカシってやつに消されたってこと?」
包帯少女「多分。あの子のおばあちゃんも同じ居なくなり方しててね…その人に関する記憶ごとなくなってるっていう」
少年「………」
少年「……で、そっちの猫又娘さんは……」
猫又娘「どーも、良い子な方の妖禍子、猫又娘ちゃんです♪」
包帯少女「ぼくも初めはちょっとびっくりしたけどね。いたずら好きの猫って思えば違和感ないんじゃない?」
少年「あ、確かに」
猫又娘「あれはみんなを楽しませる手品だからっ」
186 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:19:06.66 ID:uBwrWeJb0
少年「…ちなみに、すごい力持ちだったりする?」
猫又娘「力?そうだなー、少年君なら片手で持ち上げられるくらい?」
少年(通りでこの前僕を運べたわけだ)
包帯少女「……それで、ぼくと猫又娘さんはこれから例の神社に向かうつもり」
少年(─!)
包帯少女「…きみは、どうする?」
少年「僕は……」
猫又娘(……少年君……)
少年「………」
包帯少女「………」
包帯少女「…分かった」
包帯少女「少年君はここに居て。他に知り合いが消えてたなんてことがあったら報告してくれる?」
少年「…!」
包帯少女「神社はぼくたちで行ってくるから。きみはきみでしっかり周りを見てて欲しい」
包帯少女「出来るよね」
少年「……まぁ」
包帯少女「頼んだよ」ニッ
少年(っ…)ドキッ
187 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:20:08.45 ID:uBwrWeJb0
包帯少女「さてもう行こう。そろそろ予鈴がなっちゃう」
猫又娘「私はいつでもオッケーだよ!」カバンセオイ
包帯少女「行動の早さは見習いたいね…」
包帯少女「…ん、夢見娘さんは?」
猫又娘「あら。ほんとだ、席いないね」
少年「?夢見娘さん?」
猫又娘「そそ。重要参考人としてあの子も連れて行きたいんよ」
猫又娘「彼女も妖禍子だからね。きっと良い子の!」
少年「え」
猫又娘「と言っても私らも全然喋ったことないけどさー」
猫又娘「あ。おーいCくん!」
同級生C「……ん…?」トボトボ
猫又娘「夢見娘さんどこ行ったか知らないかな。きみよく一緒にいるじゃん?」
同級生C「あぁ…それがさ、具合が悪くなったって言って帰っちゃったんだ…」
同級生C「夢見娘さん……はぁ、大丈夫かなぁ」
包帯少女「……神社かもしれない」
猫又娘「私もおんなじこと思った」
包帯少女「急ごう…!」
ガタッ スタスタ
猫又娘「そうそうC君!私と少女さんも体調良くないので早退しますって伝えといて!よろしくー!」ガラッ
タッタッタッ
同級生C「え、なんで俺が…」
「お前転校生さんだけじゃなくて猫又娘とも仲良くなったの?物好きだなぁ」
同級生C「今のが仲良くに見えるかよ。俺は夢見娘ちゃん一筋だっ」キリッ
「いっそ清々しいな…」
少年(………)
188 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:21:06.54 ID:uBwrWeJb0
ーーー廊下ーーー
包帯少女「気が利くね、さっきの」タッタッ
猫又娘「でしょでしょー?どうせ先生に言いにいっても揉めるだろうし、逃げるが勝ちってね」タッタッ
包帯少女「…頼りにしてるよ、相棒」タッタッ
包帯少女「なんて」フフッ
猫又娘「…!」タッタッ
猫又娘「任せんしゃい!」ニカッ
ーーーーーーー
夢見娘「………」
夢見娘「………」
夢見娘(………)
夢見娘「……」
「キューキュー」カツカツ
夢見娘「………」
夢見娘(……どうか壊れないで……)
夢見娘(きみのセカイ)
夢見娘「……」スッ
「…?」カツ...
...パタ
189 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:22:13.65 ID:uBwrWeJb0
ーーー神社 境内ーーー
包帯少女「」ゼェ..ゼェ..
包帯少女「やっと、着いた…」
仔猫「」ピョン、ピョンッ
仔猫「……」スススッ
ドロン
猫又娘「ここの階段こんな長かったんね」
猫又娘「だいじょぶ?」
包帯少女「ハァ…ハ…ずるくない…?それ」
猫又娘「いやぁ猫の方が身軽なもので」
猫又娘「さてさて、ここが神社…来るのは初めてだけど…」
(物静かな社)
猫又娘「…なるほどやっぱり、ちょっと空気が違うよ」
包帯少女「夢見娘さんは…」
猫又娘「いないみたい…」
包帯少女「………」
ザッザッ
包帯少女(前来た時はそこまでじっくり見なかったけど)
包帯少女「……」
猫又娘「…お札、だね」
包帯少女「…普通、こんなにびっしり貼るかな」
猫又娘「どうだろ……」
猫又娘「少なくとも何か封じてますよって主張してくれてはいるんね」
猫又娘「これが妖禍子の封印…?」
包帯少女「この中に何があるか分かる?」
猫又娘「分かんないなぁ…お札のせいかもしれないけど、何の変哲もないお社にしか見えない」
包帯少女「そっか…」
190 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:24:56.04 ID:uBwrWeJb0
包帯少女(……あれ……?)
包帯少女「……」ソーッ
猫又娘「!開けない方が──」
包帯少女「違う、これ」
(裂けた1枚の紙札)
包帯少女「これだけ破れてる」
猫又娘「……ほんとだ」
包帯少女(乱暴に千切られたような跡。破けてるのはこの一枚だけ…)
包帯少女(誰かが破った?それとも──内側から破かれた?)
猫又娘「いつこうなったんだろ。もし最近なんだとしたら…」
包帯少女「………」
包帯少女「……トドノツマリ様」
包帯少女「トドノツマリ様が本当に居るなら、ここで起きたことも町に起きてる異常も何なのか知ってるはず」
包帯少女「神社に誰かの気配を感じるって言ってたよね。それは今もあるの?」
猫又娘「うん、でも…」
猫又娘「何処からするのか分からない」
猫又娘「この山に居るのは間違いないのに、気配自体はそこら中に四散してるんよ」
包帯少女「……山の中探すしかないってこと?」
猫又娘「そうなる……かも」
猫又娘「いっそ願い事すれば出て来てくれないかなぁ」
包帯少女「それで会えたら苦労はしないけど…」
猫又娘「よーし!」
ポンッ
猫又娘「……」ネコミミ&シッポ
猫又娘「──みんなが楽しく笑える世の中に!」
猫又娘「…してくれませんか?」
ーーーーー
少年「──誰にも関わらず、誰にも干渉されない、そんな日々を下さい」
ーーーーー
包帯少女(……)
猫又娘「………」
191 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:27:28.94 ID:uBwrWeJb0
猫又娘「…なーんて。それは私の役目ですから、叶えてくれる必要はありません」
猫又娘「ただ、この町に蔓延るお化けたちはみんなから笑顔を奪っていくんです」チラッ
包帯少女(…ぼく?)
猫又娘「だから!ちょっとでいいんです、力を貸してもらえませんか!」
包帯少女「………」
猫又娘「………」
包帯少女「…まあ、ね」
猫又娘「恥ずかしがり屋さんなんだねきっと」
包帯少女「なんで耳と尻尾出したの?」
猫又娘「こうした方が声届くかなーって。トドノツマリ様も同じ妖禍子だからさ」
包帯少女「てっきり魔法でも使うのかと思ったよ」
猫又娘「お社にイタズラでもしたら出て来てくれるかもね」ニシシ
猫又娘「ま、切り替えていきましょー!押してダメならもっと押すだけ」
猫又娘「山の隅から隅まで徹底的に探し回ってやろうじゃないの!」
包帯少女「…それしかないね」
包帯少女(結局ぼくたちが出来ることと言ったらそのくらいしかない…)
...ズキッ
包帯少女(っ……もうあんまり時間がないのに)
猫又娘「──少女さん、後ろ!」
包帯少女「!」クルッ
目玉蛇「シュー…」ニョロニョロ
包帯少女(蛇……?ううん、体中に目が付いてる蛇なんて…)
包帯少女「………妖禍子」
猫又娘「まだ昼間なのに…!?」
猫又娘「とりあえずっ」タッタッ
ポンッ
蛙「ゲコッ」
192 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:28:58.03 ID:uBwrWeJb0
猫又娘「……どういうことだろ」
猫又娘「明るい時間にも活動出来るようになった?」
包帯少女「…それかここが特別な場所だから……とか?」
猫又娘「」キョロ..キョロ..
猫又娘「他には見当たらないけど…」
包帯少女「………」
包帯少女(…昨日の妖禍子の群れ)
包帯少女(二つ編みさんが消えた事件)
包帯少女(そして、それに気付いてた少年君……)
包帯少女「……ねぇ。ぼく嫌な予感がする」
猫又娘「……うん、私も」
包帯少女・猫又娘「「少年君が危ない」」
193 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:32:11.73 ID:uBwrWeJb0
ーーー正午前ーーー
少年「……戻って来なかったな、少女さんたち」テクテク
少年「早退扱いで出てったんだから学校には戻らないか」テクテク
少年(それでも帰る時間くらいにはまた来てくれないかなんて思ってた……今一人で居るのはどことなく怖い)
少年(付いていくって言わなかったのは僕だ。でもあの神社に少女さんと一緒に向かうのは……)
少年「………」
少年「……アヤカシ……」
少年(僕たちが神社に行ったあの土曜日以降に現れ始めたって言ってた)
少年(そう、神社に)
少年(僕が少女さんを突き落とした、あの──)
少年「……」
少年(……やっぱり、あれは夢なんかじゃないんだろう)
少年(彼女の包帯も、彼女自身もずっとその違和感を主張していたのに、見て見ぬフリをしようとしてたんだ)
少年(僕があの出来事を幻と思い込ませている間に、彼女たちはずっと立ち向かっていた)
少年(猫又娘さんと少女さんの二人の気持ちに甘えて、何も知ろうとせず、しようとせず…)
少年(……なんだよ、まるで変わってないじゃないか)
少年(少女さんと出会う前──ノートを使って現実逃避していたあの時から)
少年「……くそ……」
少年(…そういえばアヤカシノートが無くなったのも日曜日だったっけ)
少年("アヤカシ"……関係あるのかな)
少年(猫又娘さんに貰ったもう一つのノートは結局何も書いてないや)
ーーーーー
包帯少女「──頼んだよ」ニッ
ーーーーー
少年「……少女さん」
少年(………)
少年(二つ編みさん以外に消えた人はいなかった)
少年(人の痕跡ごと消す妖怪……?)
少年「……」テク...
(本屋)
少年「………」
少年(…このままじゃダメだ)
少年(僕に何が出来るかなんて関係ない)
少年(これは僕自身の問題でもあるんだ)
194 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:33:59.13 ID:uBwrWeJb0
ーーー本屋ーーー
少年(……うーん)
少年「……」スッ
ペラ..ペラ..
少年(とは言っても少女さんたちの真似事以外に思い付くことはない)
少年(何か手掛かりになること…)
少年「……」ペラ...
少年(人を食べる妖怪、化かす妖怪、連れ去る妖怪)
少年(有名なものからまったく聞かないようなものまで……色々載ってるけど、人を消す妖怪はないな…)
少年「……はぁ……」
少年(…少女さんの言ってた、古書店みたいなところじゃないとアヤカシを書いた本はないのかな)
少年(とりあえず一冊だけでも…)
表紙『怖いほどよく分かる妖怪大辞典』
少年(…あれにするか)
少年「」スッ
──スッ
派手娘「あ」
少年「え」
少年(派手娘さん…!?)
少年(なんでこんな所に…)
少年(というか派手娘さんもこの本を?)
195 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:34:51.71 ID:uBwrWeJb0
派手娘「あんた、これ読むの?」
少年「あ…うん」
派手娘「ふーん」
ストッ(本を手に取る)
派手娘「じゃ、これあたしが買ってくから」
少年「うん……え!?」
少年「ちょっと待ってよ!僕もそれ読みたいんだって…!」
派手娘「はぁ?その辺に似たようなのいっぱいあんでしょ?」
少年「ここにあるのは大体見ちゃったから…」
派手娘「どーせ立ち読みじゃない」
派手娘「あたしが買った方が絶対読むし、有効活用になんのよ」
少年「そんな横暴な」
派手娘「みみっちいわね。そんなに欲しいなら……」
ヒュッ
少年「!?」
ボスッ!
少年「ぐぇ…!」
少年(お、お腹に…)
派手娘「それ使ってあの包帯ちゃんとボール遊びでもしてなさい」
派手娘「プレゼントにもなって最適でしょ?あたしってやさしー」
派手娘「じゃね」テクテク
少年「う……ぅ……」ウズクマリ
少年(鳩尾に思いっきり入った……)
少年(しかもこのボール、硬式…)
店員「!」ギョッ
店員「君、大丈夫かい…?」
196 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:35:58.46 ID:uBwrWeJb0
ーーーーーーー
少年「……酷い目に遭った」テクテク
少年(店員に言い訳するの大変だったし、あの本の在庫は無いって言うし)
少年(なんだってこう、上手くいかないんだよ…)
少年「…やっぱ、少女さんに付いていくべきだったか…?」
少年(……まだ神社に居るのかな)
少年(………)
少年「………」
少年「今日は、帰ろう…」
テクテクテク...
「……」コソッ
.........
197 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:36:53.17 ID:4547r8BBO
少年「……」テクテク
少年「……」テクテク
少年(……?)
少年(何だろう)
少年「………」
少年(…誰かに見られてるような気がする)
...ギョロ
少年「っ!」バッ
少年(……誰もいない)
少年「………」
少年(いや、そもそもここの通り)
少年(こんなに静かだったか…?)
少年「……っ」
少年(なんか、気味悪いな)
少年(さっさと帰──)
「ダメ…触らないで…!」
──ゾクッ
少年(──!?)
少年「ぁ……?」
少年(なんだ、これ……)
少年(意識が……)
少年(立って……られな……)
グラリ...
198 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:38:33.83 ID:uBwrWeJb0
ーーーーーーー
夢見娘「……」テクテク
夢見娘「……」テクテク
少年「……」テクテク
夢見娘「……」ミアゲ
(空を舞う妖禍子たち)
夢見娘(今すぐここから離れて)
夢見娘(……って言えたらいいのにな……)
少年「」テクテク
夢見娘(前を歩くきみにとって、理不尽をばら撒くあの子達と)
夢見娘(同じ妖禍子である私はきっと)
夢見娘(…忌むべき存在)
夢見娘「……」
夢見娘(……それでも構わないよ)
夢見娘(きみが悲しまないでいられる世界)
夢見娘(それを守れるなら、私はどんな盾にでもなってあげる)
夢見娘(………)
夢見娘(……それが……)
きみの隣だったら……なぁ。
199 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:39:30.89 ID:4547r8BBO
少年「」ピタッ...
夢見娘「…!」
夢見娘(止まった…どうしたの…?)
少年「っ!」バッ
夢見娘「」サッ
夢見娘(…気付かれちゃった…?)
夢見娘(……今度は、きみが追いかけてきてくれるのかな……)ドキドキ
夢見娘(──え)
目玉怪物「……」ズズ...
夢見娘(あの子……少年くんの方に……)
夢見娘(………!)
夢見娘「ダメ…触らないで…!」ダッ
目玉怪物「」ベシャッ
少年「」ゾクッ
少年「ぁ……?」グラリ...
夢見娘「…少年くん…!」タッタッ
ギュッ
少年「……ぅ……」
夢見娘(良かった……まだ心は食べられてない……)
目玉怪物「ゴォ…」
夢見娘「…あっち、行って」
目玉怪物「……」
ズズズ...
200 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:40:38.33 ID:uBwrWeJb0
少年「うぅ……いや…だ……」
夢見娘「……ごめんなさい」
夢見娘(きみをこんな目に晒してしまうなんて)
夢見娘(……きみを守るなんて、そんな力)
夢見娘(私なんかじゃ、足りないんだろうな)
夢見娘「……」
少年「……ゆるして……」
少年「少女…さ……」
夢見娘(でも)
きみの悪夢を齧ることが出来るのは、私だけ──
ガブリ
201 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:41:42.17 ID:uBwrWeJb0
ーーーーーーー
タッタッタッ
猫又娘「……居た!あそこ!」
少年「」
夢見娘「……」
包帯少女「夢見娘、さん…?」
猫又娘「…!」
スタタッ
夢見娘「………」
猫又娘「…何してるの?」
夢見娘「……」
猫又娘「少年君に、何をしたの?」
夢見娘「……守ってた」
夢見娘「あなたたちが、居なかったから」
包帯少女「守るって、少年君を…?」
夢見娘「……」コクッ
夢見娘「……あの子に……」
(遠目に見える目玉の怪物)
猫又娘「あんなのまで…」
包帯少女「っ」
夢見娘「…もう少しで、妖禍子にされるところだった」
少年「」スー..スー..
包帯少女(よく見たら眠ってるだけだ)
猫又娘「私たちを助けてくれたんだ?やっぱりこの子、良い妖禍子ちゃんなんだよ」ヒソヒソ
包帯少女「……」
202 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:44:23.84 ID:uBwrWeJb0
包帯少女「…夢見娘さん」
包帯少女「この際だから訊いておきたい」
夢見娘「……」
包帯少女「あなたは一体、何者なの?」
夢見娘「………」
夢見娘「……私は……」
夢見娘「……」チラリ
少年「」スー..スー..
夢見娘「……彼に望まれて、生まれた…もののヒトリ」
猫又娘「…?」
夢見娘「……」
ガサゴソ
夢見娘「これ…」
猫又娘「あっ!それって」
包帯少女「…"アヤカシノート"」
夢見娘「……少年くんの逃げ場所だった」
猫又娘「逃げ場所?どゆこと?」
包帯少女「…少年君はさ、クラスのバカ連中にしょっちゅうからかわれてたでしょ?」
包帯少女「嫌なことをされる度、妖怪のせいにして日記みたいに書き付けてたの。それがそのノート」
猫又娘(そんな後ろ向きなノートだったんだ…)
夢見娘「……色んな妖禍子を描いてた。その中で一番最初に描いてもらったのが」
夢見娘「私」
包帯少女「え…」
夢見娘「私は彼の嫌なユメを食べるために生まれた妖禍子。少年くんが苦しまないように、ただ静かに見守ってる……」
夢見娘(…だけのはずだった)
猫又娘「…少年君がノートに書いた妖禍子が実体化した…ってこと!?」
猫又娘「なにそれ初めて聞いたよ!なんで私たちに秘密にしてたのかな?」
包帯少女「ううん、多分少年君も知らなかったんだと思う」
包帯少女「知ってたら…それ使って同級生Aたちに仕返しでもしてるんじゃない?」
猫又娘「なるほど」
203 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:46:40.26 ID:uBwrWeJb0
包帯少女「夢見娘さん、それ貸してもらってもいい?」
夢見娘「……」スッ
パラパラパラ
包帯少女「…何も書いてない」
猫又娘「あー、そっちは私があげた方だからね。前のは失くしちゃったんだって」
包帯少女(失くした…あんなに大切そうにしてたのに…?)
猫又娘「しっかしほんとに全然使ってないんね。暗いこと書くよりかマシだけど、これはこれで少し寂しいかも」
包帯少女「…夢を食べる妖禍子ってことは…」
夢見娘「……」
包帯少女「………"獏"?」
夢見娘「……そう、呼ばれることもある…」
包帯少女「……」
包帯少女「あなたが少年君を助けてるんだってことは分かった」
包帯少女「じゃあなんで、今になってぼくたちのクラスに転入して来たの?」
包帯少女「少年君の後を付け回したりして…」ボソッ
夢見娘「………それは」
夢見娘「あなたも、よく分かっているはず……」
夢見娘「──この世界の、壊れる音がするから」
夢見娘「笑顔を振り撒くよりも早く」
猫又娘「─!」
夢見娘「歪んだ身体を引き摺るよりも歪に」
包帯少女「……」
夢見娘「闇が……"あのヒト"の嘆きが、すべてを覆い尽くそうとしてる……」
夢見娘「……だからここに来ただけ」
夢見娘「彼の…そばに……」
猫又娘「…もしかして夢見娘さん、この町に何が起きてるのか知ってる…?」
夢見娘「………」
猫又娘「だったら教えてくれないっ?今私たちが相手にしてる妖禍子が何なのか、どうしたらアレらが居なくなるのか」
猫又娘「……"あのヒト"って何?」
204 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:48:13.52 ID:uBwrWeJb0
夢見娘「……」
夢見娘「…昔」
夢見娘「人から追われる妖禍子が居た」
夢見娘「大きな身体で、大切に抱えた何かを庇いながら…逃げて、逃げて……」
夢見娘「……でも、最後には息絶えてしまうの」
夢見娘「無慈悲な炎と、たくさんの人に囲まれながら……」
包帯少女(その光景って……)
夢見娘「……私が見た"あのヒト"のユメは、それだけ」
夢見娘「…少女、さん」
包帯少女「!」
夢見娘「あなたはもう、何度か見ている…」
夢見娘「……よね?」
包帯少女「………」
夢見娘「…今この町を飛び交う妖禍子は、みんな"あのヒト"の怒りにあてられた子」
夢見娘「あの子たちを使って、人を妖禍子に変え…"居なかった"ことにしようとしている…」
夢見娘「でも、最初の犠牲者は」
夢見娘「他ならない、あなた」
包帯少女「──」
夢見娘「だから時々、"あのヒト"のユメを見る……見てしまう……」
夢見娘「……違う?」ジッ...
ーーーーー
黒服男「」ニタァ
ーーーーー
包帯少女(一瞬だけ見えた顔)
包帯少女(まさかたまに見るあの夢は、全部あの男の……)
205 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:49:29.01 ID:uBwrWeJb0
猫又娘「ちょ、ちょ、ちょっと待って」
猫又娘「さっきから全く付いていけてないんですけど……つまり、どういうこと?」
包帯少女「…この現象には黒幕が居るってことだよ」
猫又娘「それが"あのヒト"?」
包帯少女「そう。私たちを襲ってくる妖禍子はそいつに操られてるんだって」
猫又娘「怒りにあてられるってそういうこと…」
猫又娘「じゃあさ……ここまでのことをする何かが、そのヒトの過去にあったってことだよね?」
夢見娘「……あれ以来、そのユメは見てない……」
包帯少女「ぼくも断片的にしか…」
猫又娘「………」
猫又娘「…結局のところ奴らをどうこうする方法もないままってことか…」
猫又娘「……ま」
猫又娘「ひとまずさ」ポン
夢見娘「…?」
猫又娘「私たちもあなたに協力させてよ」ニコッ
夢見娘「……」
猫又娘「夢見娘さんの力を貸してもらえればこの異常事態の解明もすぐ出来ると思うんよね」
猫又娘「少年君のこと守りたいんでしょ?今までみたいにこそこそしてないで、堂々と隣に居られるよ!」
夢見娘「……」フルフル
夢見娘「……それは無理……」
猫又娘「え」
夢見娘「本来、妖禍子は人の中に居てはいけない存在…」
猫又娘「…そんなこと」
夢見娘(何より……恥ずかしくて、きみの顔、見れないから……)
夢見娘「……」スクッ
夢見娘「…はい」
包帯少女「わ、ちょっと…!」
少年「」ノシッ...
包帯少女(お、重い)
夢見娘「……あなたたちの手伝いはする」
夢見娘「でも隣には居れない」
206 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:50:31.25 ID:uBwrWeJb0
夢見娘「……」チラッ...
夢見娘「…少年くんを、お願いします…」
包帯少女「……」
夢見娘「……」...テクテク
テクテク
夢見娘「……」ピタリ
夢見娘「……派手娘さん、なら」
猫又娘「」ピクッ
夢見娘「力になってくれる……かも」
夢見娘「あの子もたくさんの妖禍子と戦ってる…」
テクテクテク...
包帯少女「……派手娘って、あの派手娘さん?」
猫又娘「うちの学校の派手娘さんて言ったら一人しかいないね…」
包帯少女「…派手娘さんまで妖禍子だって言うんじゃ…」
猫又娘「それはないよ。あの人はれっきとした人間…だから多分…」ヒキツリ
包帯少女「?なにその顔」
猫又娘「いやぁ、あの人ちょっと苦手で…」
包帯少女「猫又娘さんにも苦手なものあるんだ」
少年「」ズルッ...
包帯少女「…!…ごめん、少年君支えるの変わってもらいたい…」
猫又娘「ん」ヒョイ
猫又娘(……)
猫又娘「…けどさ、夢見娘さんは正体が分かっても不思議ちゃんだったね」
包帯少女「まぁあの喋り方とか雰囲気とかは独特……あれが獏の性格なのかな」
猫又娘「ノーノーそこじゃあなくって」
猫又娘「…妖禍子は人と居られないなんて言う割に、ずーっと少年君に膝枕してたじゃん」
207 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:52:13.77 ID:uBwrWeJb0
ーーーーーーー
「……や………ノート…」
「さっきと…………になる……」
少年(……ん……)
猫又娘「そこは何でも試して──あ」
猫又娘「起きたよ!」
少年(あ…れ……?)
包帯少女「おはよ、少年君」
少年「…!?」
少年(少女さん…!?)
少年(え、っていうか僕見下ろされてる…?ここどこ?何があったんだっけ??)
猫又娘「おーい、寝ぼけてるー?」
包帯少女「無理ないよ、いきなり知らない部屋で目覚めたらね」
包帯少女「ここはぼくの部屋。もう夕方だけど、日付は変わってないよ。土曜日のまま」
包帯少女「…少年君きみはね、妖禍子に襲われたんだよ」
.........
208 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:53:44.60 ID:uBwrWeJb0
少年「……アヤカシノートの、妖怪…?」
少年「夢見娘さんが?」
包帯少女「そう言ってたね」
少年「……」
猫又娘「心当たりある?」
少年「うん、かなり前に…そんな妖怪をノートに書いた覚えがある」
少年「確か、最初のページだったような…」
包帯少女・猫又娘「「!」」
猫又娘「…合ってる、ね」
包帯少女「……」
猫又娘「ねね、試して欲しいことがあるんだ」
猫又娘「ほい」スッ
(アヤカシノートとペン)
少年「…書いてみろ、って?」
猫又娘「うむ」
猫又娘「これは知っての通り本物じゃないし、さっき私たちが書いても何も起きなかったんだけど」
猫又娘「少年君が書けばもしかしたらもしかしたり…?」
少年「……」
少年「………」
少年「…何書けばいいのか…」
猫又娘「何でも──怖くない妖禍子ならどんな子でもオッケー」
少年「そう言われると…んー…」
猫又娘「何なら私とおんなじ猫又ちゃん書いてよ!上手くいけば友達が増えるっ」ニシシッ
少年「………」
少年「」サラサラサラ
『7月20日 一日中曇り
イタズラ好きの猫又が二人に増えていた。ただでさえ賑やかなクラスがもっと活気付いたんじゃないだろうか。』
209 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:54:59.38 ID:uBwrWeJb0
三人「「「……」」」
猫又娘「…すぐには変化なしか」
猫又娘「あーあ、これはもう本物のノートで検証しないとダメなんだろーなー。気になるなぁ」
少年(…ノートのことは勿論僕も気になる……けど、もっと気になるのは)
包帯少女「安全な妖禍子が出てくるとは限らないんだから、今思えば実体化しないで良かったかもね」
猫又娘「それ知ってるよー。酸っぱいぶどうって言うんだ」
少年(…どうしてさっき僕は少女さんに膝枕をされていたんだろう)
少年(少女さんはどういうつもりで僕を……気になる……すごく……)
包帯少女「──何かの手掛かりにはなりそうだよね」
包帯少女「ねぇ少年君、あのノートってどこで買ったの?」
少年「!え、と…」
少年「あんまりよく覚えてないんだ…買った記憶はないけどいつの間にか持ってた、みたいな」
猫又娘「そういえばなんで失くしちゃったのかも訊いてなかったね」
少年「っ……」
少年「それは…」
少年(……)
少年「それも、分からない。知らないうちになくなってたから」
少年「……気付いたのは2週間前の日曜日だけど」
包帯少女「…!」
猫又娘「偶然…にしちゃあ出来過ぎてるなぁ。さすがにここまで重なったらさ」
猫又娘「ね、二人とも」
少年「……」
包帯少女「……」
猫又娘(……?)
猫又娘(!…そっかこの二人、まだあの池の話に触れてないのか)
210 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:57:08.72 ID:uBwrWeJb0
猫又娘「………」
バシッ
少年「おぅ!?」
猫又娘「まぁまぁ、そう気落ちしなさんな!」
猫又娘「活路はあるよ絶対に」
猫又娘「私たちは今、真相まであと一歩のとこにいる。ここまで酷くなった世界だけど、最後はきっと私たちが──勝つ!」
猫又娘("キミ"が好きだったこの世界……あんなヒトたちに渡してたまるかってね)
包帯少女「……ふふ、確かに勝ち負けの方が分かりやすいね」
猫又娘「フフン」
猫又娘「…きみも」
少年「な、なに?」イテテ...
猫又娘「聞いたよ?あのノート、暗いことばっかり書き殴ってたって」
猫又娘「私のあげたそれ、まだ使ってないんなら今度は楽しいことでも書いてみなよ」ニッ
少年「…普通の日記みたいに?」
猫又娘「そ♪」
猫又娘「嫌いなものばっかり書いてあるなんて寂しいじゃん」
少年「……」チラリ
(窓からのぞく曇り空)
少年(…次晴れた時にでも、書いてみようか?)
──クネクネクネ
少年「…えっ!」
少年(なんだあれ!?)
包帯少女「少年君…?」
(羽をうねらせ飛ぶ妖禍子)
包帯少女「……もしかして、妖禍子が見えてる?」
少年「あ、あれが妖禍子…!?」
猫又娘「なんと」
猫又娘「…妖禍子にされそうになったから、見えちゃうようになったのかね」
猫又娘「良いことなのか悪いことなのか…」
少年(二人とも全然動じてない……あんなのを今まで相手にしてたんだ…)
211 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 01:00:55.48 ID:uBwrWeJb0
包帯少女「……思うにさ、少年君が狙われた以上、一人でいるのはもう危ないんじゃないかな」
猫又娘「そうだね…奴らが見えるって言っても抵抗するすべなんかないわけだし」
猫又娘「また気絶しちゃうかもしんないもんね」チラッ
少年「う…」
包帯少女「うーん」
包帯少女「……じゃあ」
包帯少女「ぼくの家、泊まる?」
少年「………!?」
猫又娘(おー…)
包帯少女「…?何?事情知らない人の所に居ても意味ないでしょ?もうすぐ夏休みだし、数日くらいなら平気だと思うから」
少年「…ちなみに、僕はどこで寝れば…?」
包帯少女「別々に居るのも怖いから、ぼくと一緒に…………!?」
包帯少女「あっ…違うよ!別におかしな意味とかはなくて…!」
猫又娘「いや〜実に大胆ですなぁ、少女さん」
包帯少女「そういう意味で言ったんじゃないの!」
猫又娘「そういう意味とはー?」ニヤニヤ
包帯少女「この……!」
シッポダシナサイ!
ニャー!ボウリョクハンターイ!
212 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 01:03:37.71 ID:uBwrWeJb0
少年(少女さんの家で過ごす……)
少年(……)ドキドキ
猫又娘「どうどう…!分かった分かったよ!」
猫又娘「少年君には私が付いてるから、それで手打ちにしよ…!」
包帯少女「…あなたが?」
猫又娘「だいじょーぶ!少年君の家に居る時は見つかんないように」
ドロン
仔猫「ニャーオ」
ドロン
猫又娘「こうやって猫になっとくから」
包帯少女「……ちゃんと少年君の壁になってよ」
猫又娘「ご安心を」
猫又娘「………ん?壁?」
包帯少女「そういうわけだから少年君も、妖禍子に近付いちゃわないよう気を付けること」
少年「う、うん」
包帯少女「…ぼくの家は…普通に遊びに来る分にはいつでも、来てよ」ボソ...
少年「!…」
少年「」コクリ
少年(この騒動が解決したら…お邪魔させてもらおう)
猫又娘「さーて!」
猫又娘「それではおさらいでもしましょっか!」
猫又娘「私たちがこれからやるべきこと、知るべき事実!」
猫又娘「まずはトドノツマリ様と本物のノート探し」
猫又娘「トドノツマリ様は妖禍子の封印方法を知ってるかもしれないし、夢見娘さんが生まれたみたいに本物のノートが大きな鍵になる可能性もあるからね」
少年(……ノートに……トドノツマリ様……)
猫又娘「あとは元凶君の過去」
猫又娘「少女さんが時折見るっていう夢。それが紐解ければ、一連の出来事の根っこを掴める」
包帯少女(……あの夢は強い怒りだけじゃない)
包帯少女(微かに悲しみの念も混ざってる)
猫又娘「そして……あー、これが前途多難なのですが……」
猫又娘「──派手娘さん説得作戦」
213 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 01:05:54.59 ID:uBwrWeJb0
ーーーーーーー
...ガブリ
ここは優しいユメの世界。
少年『……』
だって私の好きなきみがいるから。
夢見娘『……』
少年『……』トットットッ...
ギュッ
ユメのきみは何も喋らないけど、私を優しく抱き締めてくれる。
夢見娘『……』...ギュー
……ねぇ、怖いよ。
きみが居なくなってしまうことが、何よりも怖いの。
この町のひしゃげた不具合が、不条理が全部襲ってきて、きみを飲みこもうとする。
私、きみを守れてるかな?
………。
……うん、分かってる。
所詮はただの自己満足なんだ。
私はマブタの案内人(ストーカー)。
こうしてユメの隙間をかき分けて、きみの温もりを求めているだけ。
214 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 01:07:43.57 ID:uBwrWeJb0
少年『……』ギュッ
夢見娘『………』ギューッ...
……本当はね。
本当は──
──きみに護ってほしい。
きまにいっぱい甘えたい。
………でもそれはユメ。
甘くて届かない、ユメ。
夢見娘『……っ……』
私が触れてるこの"きみ"は、私を慰めてくれる私のユメ…。
……ここは悲しい、ユメの世界。
夢見娘(少年くん)
お願い。
どうか来ないで。
残酷な結末も、
午前7時の魔法も──
215 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 01:08:42.40 ID:4547r8BBO
ピピピピッ ピピピピッ
ピピピピッ...
216 :
◆YBa9bwlj/c
[sage saga]:2019/11/08(金) 01:13:43.03 ID:uBwrWeJb0
第六幕はここまでです。
次回第七幕は派手夢に焦点が置かれます。
この物語自体第九幕までを想定してるので、あと3分の1と行ったところです。
217 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:19:30.31 ID:hGyrOzpP0
■第七幕 異論を強く唱えるもの■
ーーー翌月曜日 学校ーーー
猫又娘「さてさて、お元気ですかなお二人さん?」
包帯少女「……」
少年「……」
猫又娘「なーんでそうどんよりしてるんかなぁ」
少年「なんでって…また何人か消えて…」
猫又娘「…それを止めるための、私たちでしょうに」
猫又娘「少しでも早く現状を打開する!今はそれだけを考える!」
少年「……それもそうかな」
猫又娘「消えちゃった人だって、きっと元に戻ってくるさ」
包帯少女「そうは言っても、昨日は何の成果も無かったし……外で少年君連れ回すのは辞めた方がいいかもね。危険だよ」
猫又娘「寄ってきた妖禍子(アヤカシ)は私らで撃退したじゃん?」
包帯少女「そうだけど……少年君、身体平気?何ともない?」
少年「今のところは」
猫又娘「私が付いてるんだからノープロブレムです!」
包帯少女「………」
猫又娘「…その目はなんですか。さては信用してないな?」
包帯少女「ううん。ただ、あなた抜けてるところがありそうでハラハラするから」
包帯少女「夜、ちゃんと見張れてる?」
猫又娘「もちろん」
猫又娘「だって一緒に寝てるもん」
218 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:21:21.90 ID:hGyrOzpP0
包帯少女「……………は?」
少年「あ…!ち、違うから少女さん!猫の姿で丸まってるだけだから!」
猫又娘「ふふ〜ん♪あったかいでしょー?」
少年「今の季節だとちょっと暑苦しいかな…」
猫又娘「うぬぬ」
猫又娘「昨日あれだけじゃれてきたくせに」
少年「尻尾を少し触っただけだろ!?」
少年「あんなにパタパタ動かされちゃ気になるよ」
猫又娘「えー?その後毛並みがどうこうとか言って撫でてきたじゃなーい?」
少年「ゔ……猫又の毛並みなんて誰だって気に──」ハッ
包帯少女「………」
包帯少女「…楽しそうだね??」
少年「あ、遊んでたわけじゃなくて…!」
包帯少女「へぇー…」ジロ
猫又娘「」ビクッ
猫又娘「警護は真面目にやってるから、ね?」
包帯少女「……」
包帯少女「いいけどさ」ボソッ
猫又娘(…素直なんだか素直じゃないんだか)
猫又娘「さって、それよりも!」
猫又娘「今日の本題に入るとしますか」
少年「本当にやるの…?」
猫又娘「えぇえぇ。気持ちはよーく分かります…でも私らの中に引き込めれば絶っっ対心強い味方になる、それは間違いないよ!」
包帯少女「引き込めれば、ね」
三人「………」
派手娘「」ホオヅエ
少年(なんでもあの人もアヤカシと戦ってる人間……らしい)
少年(…アヤカシをちぎっては投げている姿を想像してもあんまり違和感がない)
219 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:22:31.46 ID:hGyrOzpP0
猫又娘「派手娘さん攻略作戦」
猫又娘「いよいよ発動する時だよ」
包帯少女「説得作戦とか言ってなかった?」
猫又娘「同じ同じ」
猫又娘「作戦はこう」
猫又娘「まず一人ずつ派手娘さんと話をして説得する」
猫又娘「その時点で納得してくれればよし。それでもダメなら三人で行く」
包帯少女「初めから全員で行けばいいんじゃない?」
猫又娘「……ほら、そこで断られたら一発アウトでしょ?」
包帯少女「何回も話しかけるのも大概だと思うけど…」
猫又娘「と、とにかく!一対一で行った方が礼儀とかなんとかで上手くいくんよ!」
猫又娘「あとは誰から行くかだけど…」
少年・包帯少女「「……」」
猫又娘(うむむ…言い出しっぺの法則で私になりそう…)
少年「…僕が行く」
猫又娘「!」
少年「僕だけ何も出来てないんだ。せめてこういう時くらい力になりたい」
猫又娘「少年君…!」
包帯少女(…なんだか少し、頼もしくなったね)
猫又娘「そう言ってくれると私は信じてたよ」ウンウン
猫又娘「ではトップバッターの少年君、よろしくお願いします」
少年「うん」
猫又娘「」ホッ...
包帯少女(こっちはこっちで、苦手な相手だから後にして欲しいって言えばいいのに)
少年「じゃあ行ってくる」
キーンコーンカーンコーン
少年「……次の授業の後に」
220 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:25:01.42 ID:hGyrOzpP0
ーーー休み時間1ーーー
ガヤガヤ
少年「……」
少年(…派手娘さんか…)
少年(この前のことがあるから少し怖いけど……逆にそれが話すきっかけくらいにはなってくれるはず)
少年「──あの」
派手娘「?」
派手娘「あんたか。何?あの本なら貸さないわよ。こう見えてちゃんと読んでるんだから」
派手娘「それとも、この前の仕返しでもしに来た?」ニヤ
少年「そういうのじゃなくて、その…」
少年「……アヤカシのことで……」
派手娘「え?声小さくてよく聞こえないけど」ズイッ
少年「…いや、派手娘さんもアヤカシが見えるんだって聞いて…」
ガヤガヤガヤ
派手娘「だから聞こえないっての」ズズイッ
少年「…!」
少年「…え、えっと…出来るなら派手娘さんにも協力して…」ゴニョゴニョ
派手娘「………」
派手娘「きーこーえーまーせーん!!」
少年「──!?!?」グワァン
少年(み、耳元で……)
ナニナニ?
ハデムスメサンガマタオコッテル
派手娘「言いたいことがあんならはっきり言いなさいよ。ったく」テクテク...
少年「」フラフラ
.........
221 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:26:19.51 ID:hGyrOzpP0
派手娘(朝から無駄に腹立たしいわね)
派手娘(なんでもっと"まっすぐに"こないのよ)
派手娘(弱々しい自己主張。そんなだからバカどもに目付けられるんじゃないの?)
派手娘(この前の騒音野郎とはまったくの逆ね)
===6月某日===
ガタンゴトン ガタンゴトン
派手娘「ふぁーあ…」
派手娘(ねっむい)
派手娘(電車通学失敗だったわ。朝起きるの早いし、この時間座れないし)
プシュー
ゴジョウシャアリガトウゴザイマス
ゾロゾロ
音漏れ男「」〜〜♪
派手娘「……」
〜〜♪
派手娘(……はぁ?)
乗客たち「………」
音漏れ男「」〜〜♪
派手娘「……チッ」
バッ(イヤホンをぶんどる)
音漏れ男「!おい、なにすん──」
派手娘「うっさいのよ!!その雑音!!」
派手娘「自分で分かんないわけ?頭沸いてんじゃない??」
音漏れ男「っ……な、なんだ偉そうに…」
派手娘「あ?」ギロッ
音漏れ男「」ウッ
音漏れ男「…はいはい、俺が悪かったよ。…めんどいやつに絡まれた…」テクテク...
乗客たち「」ポカン
派手娘(ふん、ダサい捨て台詞)
「ねぇあの子の制服って…」
「思った…私たちと同じ学校の…」
=======
222 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:27:44.50 ID:hGyrOzpP0
派手娘(気に入らないのよね、ああいうのも)
派手娘(あたしは、納得いかないものに見て見ぬフリをすることが出来ない)
派手娘(ガツンと言ってやらないと気が済まないのよ)
カサッ...(床を這う妖禍子)
派手娘(例えばそう、こいつみたいな捻じくれた奴らとか──)
派手娘(ね!!)
グシャッ
223 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:29:00.16 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
少年「ごめん、役に立てなかった…」
猫又娘「まさかああも足蹴にされるとはねぇ」
猫又娘「やはり強敵だよ……むぅ…」
包帯少女「まぁ…意気込みやよし、だったよ」
猫又娘「そもそも気になってたんだけどさ」
猫又娘「派手娘さんて昔からあんなに怒りっぽい性格だったの?」
包帯少女「どうかな。ぼくは3年になって初めて同じクラスになったから」
少年「同じく。この前まで話したこともなかった」
猫又娘「この前?派手娘さんと話してみたんだ?」
少年「……ちょっとね」
包帯少女「でもあの人が笑ってるところなら時々見かけるね」
猫又娘「…それ、主に私をいじめてる時でしょ」
包帯少女「……」
猫又娘「……」
包帯少女「…みんなを笑顔にさせたいんでしょ?」
猫又娘「それはなんか違うよね!?」
包帯少女「ま、次はぼくがやってみる」
猫又娘「ん…その、勝算の程は?」
包帯少女「全く分かんない。ぼくは喋ったこともないから」
包帯少女「けど、後に控えてる人が不安そうな目してるし、ぼくが派手娘さんを連れてくるよ」
猫又娘「少女さん…」ウルウル
224 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:30:40.65 ID:hGyrOzpP0
ーーー休み時間2ーーー
包帯少女「派手娘さん」
派手娘「あん?」
包帯少女「話があるんだけど、いいかな」
派手娘「嫌」
包帯少女「……」
派手娘「……」
包帯少女「………」
派手娘「………」
.........
包帯少女「ダメだった」
猫又娘「いやいやいやいや」
猫又娘「え?何もしてないよね?門前払いでおしまいだよね??」
猫又娘「せめてもう少し食らいついてさぁ!」
猫又娘「……うぅ…さっきの感動を返しておくれ…」
包帯少女「…なんというか、取りつく島もないって感じで」
少年「うん、そう。すごい分かる。人を寄せ付けないオーラが出てるんだよね」
包帯少女「これ以上邪魔するなって暗に言われてるみたいだった」
猫又娘「?そう?」
猫又娘(確かに普段から怒ってるのはよく見るけど)
猫又娘(何でもかんでも否定してるわけじゃないと思うんだよなぁ)
猫又娘「……ふぅ。分かったよ、私に託されたってことね」
少年「結局また猫又娘さんに任せることになっちゃうな…」
猫又娘「気にしない気にしない」
猫又娘「どうせいつかは派手娘さんと話をつけないとって思ってたから」
猫又娘「私を誰だと思ってるん?愛と勇気のトラブルシューター猫又娘ちゃんだよ」
猫又娘「本気を出せば派手娘さんの一人や二人、なんのその!」
包帯少女「本当は?」
猫又娘「………」
猫又娘「ちょっとだけ、おっかないです」アハハ...
225 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:31:58.76 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
女生徒「ねー、夏休みどこ行こっか?」
男子生徒「俺はどこだっていいぜ。行きたいとこ言ってくれれば」
女生徒「無気力人間か!一緒に考えようよー」
ワイワイ
派手娘(夏休み)
派手娘「……」
派手娘(今年の夏はどうしてこう気に食わないのが多いのよ)
ーーーーー
同級生A「」クスクス
同級生B「」ケラケラ
少年「……」
ーーーーー
派手娘(目障りな連中が居たり)
ーーーーー
包帯少女「……」
ーーーーー
派手娘(…どっか拗らせたようなやつが湧いたり)
派手娘(あの子が包帯を着けるようになった日と、"奴ら"が見え隠れするようになったのは同じ日だった)
派手娘「…!」
女生徒「それでねー、──」
男子生徒「そのチョイスはなかなか──」
妖禍子「」カサカサ
派手娘「……」
ガタッ テクテク
226 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:34:54.23 ID:hGyrOzpP0
男子生徒「南町神社の祭りもたまにはいいかも──ん?」
女生徒「…派手娘さん?」
派手娘「どいて、邪魔」
女生徒「ごめんなさ……いえ、なんでわざわざどかなくちゃ──」
派手娘「なに?」ジロッ
男子生徒「…素直にどいとこう」
女生徒「あ、ちょっと…!もう…」
派手娘「……はー」
妖禍子「ギ…」カササ
派手娘「」スッ
グシャッ(踏み潰す)
派手娘(いきなり現れて、無断であたしらの世界を掻き乱してさ)
派手娘(誰も気付かないからってもっと調子付いてきてるわよね)
サラサラ...(消えていく妖禍子)
派手娘「…1匹ならただの雑魚ね」フンッ
派手娘(群れたところで負けるつもりはないけど)
派手娘(…いいわ)
派手娘(やってやろうじゃない)
派手娘(ただでさえ捻くれたこの世界を、あんたらがもっとひん曲げるって言うんなら)
派手娘(あたしはあたしの目の前に現れたあんたらをぶっ飛ばす)
派手娘(先に仕掛けてきたのはそっちなんだからこれは立派な正当防衛よね?)
派手娘(こそこそちまちまと動いてる人たちも居るみたいだけど、あんなんじゃ話にならない)
派手娘(要は納得しないのよ、あたしが!それだけ!)
派手娘(気に入らないものは片っ端から消し飛ばしてやるわ!)
227 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:37:03.74 ID:hGyrOzpP0
ポンポン
派手娘「あん?」フリムキ
イケメン「これ、落としたよ。君のでしょ?」
「あれは、クラスで一番モテる爽やか好青年のイケメン君…!」
「派手娘さんにも分け隔てなく接するなんて…仏か…!」
派手娘「ぁ……」
イケメン「ん?」ニコッ
派手娘「……やす……き……」モジッ
イケメン「ははっ、何だい?もっと落ち着いて喋ってごらん」
派手娘「っ……」グッ
派手娘「き、気安く触んな!!」バシーン!
「おおーっとイケメン君吹っ飛ばされたー!?」
「あぁやっぱり鬼の派手娘さんには近付かない方が吉なんだね…」
イケメン「」ピクッ、ピクッ
派手娘「あ……その……」
派手娘(っ…)
派手娘「」タッタッタッ
228 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:41:49.84 ID:hGyrOzpP0
ーーー昼休みーーー
「イケメン君大丈夫なの?」
イケメン「平気平気。怪我とかしたわけじゃないから」
「ほんと、怖いよね…派手娘さん。人の親切を暴力で返すなんて」
イケメン「そう言わないであげてよ。彼女には彼女なりの理由があるんだよきっと」
派手娘「……」モヤモヤ
派手娘(理由なんかないっつーの!)
派手娘(んもー…調子狂う…)
派手娘(んな絵に描いたような善人…)
派手娘(いるわけないじゃん)
派手娘(どうせこの世はみんな天邪鬼。心の中で何考えてるかなんてそいつにしか分かりゃしないのよ)
派手娘「……もう一人いたわね」
派手娘(このクラスのお調子者)
派手娘(張りぼてみたいな笑みをひっさげてるあのバカが──)
猫又娘「派ー手ー娘さん♪」
派手娘「うわ」
猫又娘「うわって何…!そんなに私のこと嫌いなの!」
派手娘「…あんた、あたしの神経逆撫するのだけは上手よね」
猫又娘「理不尽だ…まだ何もしてないのに!今日という今日は私に対するその扱い、断固抗議するよ!」プンプン
派手娘(う、鬱陶しい…)
派手娘「はいはいしょうもない抗議なら一人でやってな。何の用?」
猫又娘「……スー…ハー…」
猫又娘「派手娘さん、折り入ってお願いが──」
派手娘「嫌よ帰ってさようなら」
猫又娘「ありま、す…」
猫又娘「……」
派手娘「……」
猫又娘「派手娘さん、折り入ってお願いがあります」
派手娘「なかったことにするんじゃないわよ」
猫又娘「そんなこと言わずにぃ〜!話くらい聞いてちょうだいよー!」バッ
派手娘「ちょっ、なんでまとわり付いてくんの!暑苦しいっての…!」
猫又娘「へへっ!派手娘さんが大人しく言うことを聞いてくれるまで離れませんよぉ!」ギュー
派手娘「ウッザ!この上なくウザい!離れないと逆さ吊りにするわよ!」
猫又娘「やれるものならどーぞ♪本気出した私を捕まえられるかな?」
猫又娘(これぞ私の考え出した戦略!)
猫又娘(名付けて……勢いのままなんとかいっちゃおう作戦!)
猫又娘(押せ押せ私!このままじゃじゃ馬さんを丸め込むんだ!)
229 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:43:50.56 ID:hGyrOzpP0
派手娘「──あ゙ー!分かったわよ、聞いてやるから離しなさい!」
猫又娘「!ほんと!」
派手娘「本当本当」
パッ
派手娘「髪が崩れるわ、まったく…」
猫又娘(…よし、最初にして最大の関門は突破)
猫又娘(後は事情の共有だけ)
猫又娘「…それじゃ、単刀直入に言うね」
猫又娘「あなたの力を貸して欲しい」
派手娘「……」
猫又娘「この町に起きてる異変…派手娘さんも気が付いてるよね?」
猫又娘「化け物たち──妖禍子が闊歩したり、同じクラスの子が消えたり…」
猫又娘「今、私と少年君と少女さんの三人でこの事件を解決する手立てを探してる。そしてあと一歩のところまで来たんよ」
猫又娘「あとは時間との勝負…」
猫又娘「…派手娘さん、妖禍子に触れてもなんともないんね。さっき踏み潰してたの、見えたから」
猫又娘「その力を見込んでお願い!手を貸して!あなたがいれば比喩抜きで百人力なの!」
猫又娘「派手娘さんだってこんなおかしな世のままにしておきたくないでしょ?」
派手娘「………」
猫又娘「ね?」
派手娘(……)
派手娘「はい、聞いてあげた」
派手娘「用は済んだ?じゃ、回れ右してさよなら」
猫又娘「……へ?」
派手娘「無駄に疲れさせることしないで欲しいわ…ったく」
猫又娘「………」
猫又娘(〜〜!)
猫又娘「な、なな…!」
猫又娘「なんなんそれ!?」
猫又娘「ひとがせっかく真面目に話してるのになんなのその態度!」ガシッ
派手娘「だからひっついてくんなって──」
猫又娘「ははーん、さては怖いんだね?お化けとかそういうの。」
猫又娘「プクク、見かけに寄らずかわいいとこあるんね」
派手娘「フンッ、やっすい挑発。いつの時代の漫画よ」
派手娘「さっきから精一杯強がっちゃって、かわいいのはどっちかしらね?」クスッ
猫又娘「ぬぬぬ…!」
230 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:45:53.16 ID:hGyrOzpP0
猫又娘「…いいさ、そっちがそのつもりなら本当に怖いものなしなのか試してあげる…!」フッフッフッ
少年「!猫又娘さん、まさかここでアレに化けるつもりなんじゃ…」
包帯少女「アレ?」
少年「大きな骸骨みたいな妖怪」
猫又娘「腰抜かしても知らないかんね!」
猫又娘「そいや──」
派手娘「いいからとにかく離せっ」パシッ
猫又娘「──!?」グラッ
ドロン
「うお!なんだ何の騒ぎだ!?」
「あそこ。猫又娘さんと派手娘さんが何かしてたみたいだけど」
猫又娘「いつつ…」アタマサスリ
猫又娘「あれ?変わってない…」
猫又娘「ん?」
派手娘「……」テカー
「ハゲ頭…?」
猫又娘(あ)
派手娘「……」
猫又娘「……」
猫又娘「…んくっ」プルプル
「おい見ろよあれ…」クスス
「やめとけって。後で因縁付けられても……ぶふっ」
猫又娘「くく……くふっ…!」
猫又娘「なっはは!ごめ、ごめん!派手娘さん…!グフッ、ちょっと失敗しちゃったみたいで…!」
猫又娘「今、戻すから!…クク」
ドロン
派手娘「……」(元の髪型)
231 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:46:49.45 ID:hGyrOzpP0
猫又娘「ひーっ!ダメだ、ツボに入った…!はは、あははは!」
猫又娘(なんでスキンヘッド?がしゃどくろ→骸骨→髪はないってことぉ?スキンはあるのに)
猫又娘(なんにしても)
猫又娘「絶望的に、似合わな過ぎる…!」ゲラゲラ
派手娘「………」
「あ…」
「…ちょっとベランダに避難すっか」
猫又娘「はー、ひー…笑った…」
猫又娘「いやぁ、悪い悪い。あんなことするつもりはなくってさ……プフッ」
猫又娘「ちょっとしたハプニングってことで許しておくれよ」
猫又娘「でもさっきの、ちょっとおいしいなとか思ったでしょ?あはは」チラッ
派手娘「………」ゴゴゴゴ
猫又娘「……はは……」
232 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:48:32.62 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
...ドドドド
教師「……?」
猫又娘「」ドドド!
教師「おい!廊下を全速力で走る奴があるか」
猫又娘「あ!先生!」
猫又娘「お願いです匿って下さい職員室とかでいいんです!これから勉強も頑張りますからどうか頼みます…!」
教師「は…?ん?どういうことだ?」
シュバババ!
派手娘「せーんせ♪」
教師「おう?今度は派手娘か」
派手娘「ちょっとそこの、後ろに隠れてる子渡してくれません?」
派手娘「"オハナシ"がしたいので」ニッコリ
猫又娘「ひっ…!」
教師「なんだお前たち、喧嘩か?中三になってマジもんの喧嘩とはなぁ…てっきり仲良いと思ってたが――」
派手娘「先生」 ← 虎をも殺せそうな目
教師「……」
教師「…そうだ、午後の授業準備しとかんとな、うん」スタスタスタ
猫又娘「えっ。ちょ、ちょっ!」
派手娘「……」ニコッ
猫又娘「」ダッ
派手娘「」ダッ
ダダダッ
派手娘「ねーなんで逃げんのー?まだ話の途中だったのよねー?止まってくれないと続き話せないわよー?」
猫又娘「だったらその手に持ってる物騒な縄はなに!?何の"ハナシ"をする気なんでしょうか!?」
派手娘「すこーし実験に使うだけよ?」
派手娘「ねー止まってくんない??今なら…」
派手娘「…半殺しで済ませてあげるから」
猫又娘「やだぁ!」
猫又娘(殺される…!)
猫又娘「ほんとに悪気は無かったんだよぉ!許して…!」
ダダダダッ...
233 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:49:28.27 ID:hGyrOzpP0
ーーー教室ーーー
少年「……行っちゃったね」
包帯少女「…そうだね」
少年・包帯少女「「……」」
包帯少女「うん、まぁあれは自業自得としか」
少年「あの二人仲良いんだか悪いんだか分かんないね」
少年「これで全敗。あとは…僕たち全員での説得だっけ」
包帯少女「あの子が無事に帰ってこれればね」
少年「1抜けたとか言い出さなきゃいいけど」
包帯少女「そしたら門前払い組二人ででも行ってみる?案外上手くいったりして」
少年「猫又娘さんを差し出すのと引き換えに…とか」
包帯少女「んー?少年君いつからそんな黒い発想をするようになったのかな?」
少年「本気じゃないって」ハハッ
包帯少女「分かってる」フフッ
包帯少女「ひとまずあの子が戻ってくるまで待ってようか」
少年「うん」
少年(……けどそもそも)
少年(本当にそこまでして協力してもらう必要があるのだろうか)
少年(いやもちろん、こんな異常時に助けは一人でも居た方がいいっていうのは理解してるけど)
少年(…派手娘さんのこと教えてくれたのは確か、夢見娘さん…)チラリ
夢見娘「……」スー..スー..
少年「……」
少年(あの人が、僕の作り出した妖禍子だなんて)
少年(気になる。話をしてみたいけど、僕たちの近くには居れないって言ってたらしい…)
234 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:50:38.68 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
………。
苦しい。
………。
悲しい。
………。
──憎い。
……違うの。
その感情は。
煮えたぎる怒りの奔流は、私じゃなくて──。
ーーーーーーー
「……さん………見娘さん!」
夢見娘「…ん」
同級生C「大丈夫?うなされてたよ」
同級生C「辛い夢でも見てた…?」
夢見娘「………」
夢見娘「……平気……」
同級生C「…嘘だよ」
同級生C「だって涙、出てる」
夢見娘(…!)
夢見娘「」コスコス
夢見娘「……ただのあくび、だから……」
同級生C「………」
夢見娘「………」
235 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:51:59.51 ID:hGyrOzpP0
同級生C「……お菓子、いる?」
夢見娘「……」コク
スッ...
夢見娘「………」ジー...
夢見娘(そういえば少し…お腹が空いてる…)
夢見娘(……今、何時?時計、時計……)
同級生C「――1時10分。もうすぐ昼休みも終わるとこ」
夢見娘「!」
同級生C「…で、よかった?」
夢見娘「……なんで……」
同級生C「分かったのかって?」
同級生C「ちょびっとだけだけど、夢見娘さんが何考えてるのか分かるようになってきたんだぜぃ」
同級生C「へへっ、これで夢見娘さん検定二級くらいは合格かな」
夢見娘「……」
同級生C「…そのさ、何かあったら気負わず吐き出してよ」
同級生C「愚痴でも弱音でも溜め込んでる方がよっぽど辛いっしょ」
同級生C「俺に出来ることなら……あー、夢見娘さんの助けになりたいから、さ」ポリポリ
夢見娘「………」
同級生C「………」
同級生C(これは…驚いてる顔だろうな)
同級生C(今更ながらあんなクサイ台詞、恥ずかしくなってきた…)
同級生C(けどま、暗い雰囲気は消えたしこれでよかったんだ。うん)
同級生C「さて、次はなんの授業だったかねー」
…クイッ(袖を掴む)
同級生C「…!」
夢見娘「………チャイム、なるまで」
夢見娘「そばに居て…」
同級生C(………!?)
同級生C(夢見娘さん…?)
夢見娘「………」ジッ
同級生C(…この上目遣いは反則だ)
同級生C「喜んで」ニッ
236 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:53:04.29 ID:hGyrOzpP0
ーーー放課後ーーー
ガヤガヤ
派手娘「……ふぅ」
派手娘(どこかのアホのせいでいやに疲れる日になったわね)
派手娘(逃げ足だけは速いくせして)
派手娘「…行くか」スクッ
「今日さー部活に顔出してみようと思うんだよね」
「OBとして?いいんじゃない楽しそう」
「夏の大会も近いし、置いてきた後輩たちの成長を見てやろうってね〜」
テクテク
...ポトッ
派手娘「?」ヒロイアゲ
派手娘「ねぇ、ちょっと」
派手娘「財布落としたわよ」
「!…あ、派手娘さん…」
「ご、ごめんなさい。変な手をかけさせちゃって…」
「…お願いです、普通に返してあげてください」
派手娘「そりゃ構わないけど」スッ
「」パッ
「行こ」
「う、うん…」
スタスタスタ...
「なに、また派手娘さんが…?」
「こわ…目付けられないようにしないと…」
ヒソヒソ
派手娘「………」
237 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:54:34.38 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
猫又娘「」ソローリ
猫又娘「…あれ?派手娘さんは…」
少年「あ、いつの間に戻ってきてたんだ」
包帯少女「もう居なかったよ。帰っちゃったのかも」
猫又娘「ほ、ほんと…?」キョロキョロ
包帯少女「ぼくたちもちょうど二人で説得しようかって考えてたとこなんだけどね」
猫又娘(………)
猫又娘「探そ」
猫又娘「探し出して、なんとしても協力してもらおう」
猫又娘「作戦最終フェーズ、全員でこっち側に引きずり込む!」
少年「その言い方じゃあまるで悪者みたいだな…」
包帯少女「平気?あなた捕まったら今度こそ何されるか分からないんじゃ」
猫又娘「うぐ……そのときは」
猫又娘「お二人が頼みの綱です」メソラシ
少年「え、本当に猫又娘さんと引き換えにしていいの?」
猫又娘「!?そこは助けて欲しいとこだから!」
包帯少女「少年君…」ハハ...
猫又娘「そりゃあ私も悪かったけどさぁ、あそこまで怒んなくてもいいじゃん…?」
猫又娘「…でも、もっと不満なのは私の話をはぐらかしたこと」
猫又娘「妖禍子のこと絶対気付いているはずなのにあの態度だよ。せめて協力したくないならそうとはっきり言えって感じ!」
猫又娘「だからちゃんと返事もらうまで私は引き下がらないよ!」
238 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:56:56.71 ID:hGyrOzpP0
ーーー石段麓ーーー
派手娘「……」(体育座り)
派手娘「……」
派手娘(……)
ーーーーー
「──行こ」
「──う、うん…」
ーーーーー
派手娘「……なによ」
派手娘「んな警戒しなくたって何もしないっての」
派手娘「………」
派手娘(…分かってるわよ)
派手娘(腫れ物扱いが自業自得なんてこと)
派手娘(だって仕方ないじゃん。納得いかないものはいかないの!)
派手娘(電車の音漏れ野郎も)
派手娘(不味い料理を平然と出してくる店も)
派手娘("友達"なんて、都合良く利用する奴らも)
ーーーーー
「──ねー、お願い!明日までの宿題、終わったら手伝って!」
「ちょっとは自分でやればー?ってか、あんたいつも二つ編みに見せてもらってなかった?」
「だって今のあの人使えなさそうなんだもん。たまに変な独り言言ってて不気味だしぃ」
「友達じゃなかったの?」
「まっさかー(笑)」
二つ編み「……」テクテク
テクテク...
「あーあ、聞こえてたんじゃない?どっか行っちゃったよ?」
「根暗さんに悪いことしちゃったわぁ。ごめんなさーい」
「全っ然謝る気ないでしょ」
クスクス
239 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:58:59.54 ID:hGyrOzpP0
派手娘「…あのさ、さっきからうるさいんだけど」
「は?なにいきなり」
派手娘「耳障りなのよ消えてくんない?」
「あ、もしかしてぇ…二つ編みちゃんのお友達なんですかぁー?」
「いがーい!性格とか真逆そうなのに」
「友達料貰ってたりしてます?(笑)」
派手娘「…….」
...ガシッ
「!?」
グググッ メリ...
「い、痛い痛いやめて!」
派手娘「」グリッ
「んぎっ!?いだぁ!!やめて爪剥がれる…!!」
「ちょっと、何して──」
パッ
「ん゙ぅ…!」フラッ
「っと」トサッ
派手娘「…何回も言わせんな。とっとと失せろ」
派手娘「次は剥ぐ」
「ひぃ…!」
スササッ...
ーーーーー
派手娘(共に生きてく気もないくせに薄っぺらい言葉をいいように振りかざす)
派手娘(あたしが嫌いなタイプ)
ーーーーー
少年「──、───」
猫又娘「──♪」
包帯少女「…──?──」
ーーーーー
派手娘「………」
派手娘(………)
派手娘「……ふん……」
派手娘「……」
派手娘「別に、友達とか…」
派手娘(羨ましくなんか、ないし)
240 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:00:05.60 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
猫又娘「…!居た、あそこ!」
派手娘「……」
少年「まさか本当にここにいるなんて…」
猫又娘「妖禍子を倒し続けてるならたくさん集まる神社に居るかも…って、少女さんの洞察力には感服ですな」
包帯少女「大袈裟だって。…現に妖禍子を相手にしてるわけじゃなさそうだしね」
少年(妖禍子自体はそこらに湧いてるのに……異常な光景だ)
猫又娘「うーむ、むしろあれは」
猫又娘「…落ち込んでる?」
派手娘「……別に、友達とか…」
三人「!」
少年「今の…」
包帯少女「…うん」
猫又娘「ばっちり聞こえた」
少年(やっぱり、派手娘さんでもひとりは寂しいんだ)
包帯少女(あの子も人の子ってことだね)
猫又娘(強がってるのはそっちじゃん。本当は人恋しいくせにさ)
猫又娘「…二人とも!」
派手娘「……」
トットットッ
猫又娘「や、さっきぶり」
少年・包帯少女「「……」」
派手娘「…あんたら…」
派手娘「…よくノコノコあたしの前に出てこれたわね」
猫又娘「……」
猫又娘「いいよ、別に」
猫又娘「私を締め上げるっていうんでしょ?ちょっと理不尽だけど、それくらいであなたの鬱憤が晴れるなら付き合ってあげる」
猫又娘「私は心が広いからねっ」
猫又娘「そん代わし」
スッ(手を差し出す)
猫又娘「あなたのこと、もっと教えてよ」
241 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:02:11.36 ID:hGyrOzpP0
派手娘「…?」
猫又娘「いや、何というか、頼み事をするならお互いのことも知っといた方がいいしさ……えー……はい……」
猫又娘「──もとい、派手娘さんと仲良くなりたいの!それだけ!」
猫又娘「その後でさ、さっきの返事も聞かせてよ」ニヒッ
派手娘「……」
派手娘「……バカ、じゃないの…」
派手娘「ほんと…」
猫又娘「バカで結構」
猫又娘「それできみの笑顔が見れるなら安いものよ」
猫又娘「ってね」
派手娘「……」チラリ
少年「……」コクリ
派手娘「……」チラッ
包帯少女「」フフッ
派手娘(……)
(差し伸べられた手)
派手娘「……」ソッ...
ギュッ
猫又娘「…!」パァア
幼女「」スッ...
派手娘(──っ!)
...ムンズッ
猫又娘「んぇ?」
派手娘「本に書いてあったの」
派手娘「あいつら物の怪は、大きい音が弱点らしいわよ?」スッ
猫又娘「…その手に持ってるものは…?」
派手娘「……」ニヤ
派手娘「こいつはね、あたし手製の…」
242 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:03:09.84 ID:hGyrOzpP0
派手娘「──爆竹よ!」
ヒョイ
パァン!
三人「!?」
派手娘「…らぁああああ!」ヒョイヒョイヒョイ
パァン!
猫又娘「に゙ゃぃ!?」
派手娘「いっつもコソコソコソコソ鬱陶しい!イラつかせるんじゃないわよ!!」
パン!パァン!
少年「こ、鼓膜が…!」
派手娘「こんなこじれた世界なんてねぇ!!」
パァン!バチバチッパァンッ!
包帯少女「…、…」(耳を塞ぐ)
派手娘「いっそ全部吹っ飛んじまえっ!!」
パァン!パァン!パン、バチッ!パァン!!
.........
243 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:04:57.72 ID:hGyrOzpP0
タッタッタッ
ザッ...
派手娘「やっと見つけた…!」
幼女「……」フリカエリ
派手娘「……」
派手娘「…あんたなんでしょ?こいつら使ってバカげたことしようとしてんの」
(そこら中で気絶している妖禍子たち)
派手娘「お仲間はこの様。消さないだけ有情と思って欲しいわ」
幼女「………」
派手娘「あたし、あんたらの存在が気に食わない」
派手娘「見えないところで静かに暮らしてるだけなら構いやしないのよ」
派手娘「急に出張ってきてあたしらの日常に介入してんのが気に入らないって言ってんの」
派手娘「誰の許可を得てやってるって?少なくともあたしは許すつもりはないから」
派手娘「化け物は化け物の世界に帰りなさい」
幼女「……」
派手娘「……はん、あたしに見つかったのが運の尽きね」
派手娘「あんたにゃここで」
派手娘「──退場してもらうわ!」ダッ
ブンッ
派手娘(こいつさえいなくなれば──!)
スカッ
派手娘「!?」
ズテーン!
派手娘「いっ…たぁ……」
派手娘(今、すり抜けた…?)
派手娘「……」
ヒュッ(小石を投げる)
幼女「……」スルッ...
派手娘「…あんた、霊か何か?」
幼女「………」
派手娘(触れない物の怪とか…)
派手娘(聞いてないわよそんなの。どうしろってのよ)
244 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:06:13.71 ID:hGyrOzpP0
幼女「………」
スッ
派手娘「………あ?」
派手娘「…なに、その手」
幼女「……」
ーーーーー
猫又娘「」スッ(手を差し伸べる)
ーーーーー
派手娘(……)
派手娘「まさか、あのバカの真似事なんて言わないわよね?」
派手娘「…あたしをおちょくってる?」
幼女「………」
派手娘「ふざけんな」
派手娘「もー…!」グシャグシャ
派手娘「わっかんない、納得できない!」
派手娘「何がしたいの、あんたら!?」
幼女「……」
派手娘「……」
幼女「………」ジッ...
派手娘「……っ」
派手娘(どうせその手、触れないじゃない…)
派手娘「……今日はこれで引き下がってやるわ」
派手娘「けど覚えときなさい!次会うときは絶対あんたを…!」
派手娘「…あんたを…」
幼女「……?」
派手娘「……ただで済むと思わないことね!!」ピューッ
タッタッタッ...
245 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:07:25.95 ID:hGyrOzpP0
幼女「………」
幼女「………」
幼女(…そうだ)
幼女(あれが"人"らしい人間なのだろう)
幼女(異物を廃し、己が領域の秩序を守らんとする)
幼女(ある意味で最も生物としての本能に従順)
幼女「……」
三人「」バタンキュー
幼女「……」チラリ
イロヌリ瘴女「」ピク..ピク..
イイフラシ「」シロメ
カネクイ蟲「……」モゾ...
幼女("創造主"──其の手で自らの世界を描こうとしていた少年よ)
幼女(世界の綻びに立ち会うか)
幼女(そなたらに責はない。遥か昔の軋轢を理不尽に被ったに過ぎぬ)
幼女(然し尚、全てを奪い去らんとする激昂を止めようと言うか)
幼女(妖禍子を有す者とさえ、共闘し…誰が為にこの世界を守る?)
幼女(……誠、摩訶不可思議である)
幼女「………」
幼女(……)
幼女(…我に何が出来よう)
幼女(かの者の憤りに屈し、其の書物一つ奪わせることを許した我が)
幼女(魅えざる"張り裂け"の深潭)
幼女(終焉を告げる夜、其のネジレを直す力など初めから在りもしなかった)
幼女(…だが)
幼女「……そなたの道を敷くことなら可能やもしれぬ」
スッ...
246 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:08:47.94 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
三人「」
少年「……う、あぁ…」ノソ...
包帯少女「……ん…ケホッ」
少年「…大丈夫?」
包帯少女「なんとかね…。まだ耳がガンガン言ってる気がするけど」
猫又娘「」ピョンッ
猫又娘「あー!死ぬかと思った…!」
猫又娘「なんなのなんなのあいつ!?ああまでするほど私が嫌いか!?」
少年「手製の爆竹とか言ってた。思った以上にとんでもない人だね…」
猫又娘「対妖禍子用のものなんだろうけど、そんなことは関係ない!」
猫又娘「話は聞かない、文句しか言わない、果てにゃこの仕打ちって…いくらなんでも私らをバカにし過ぎだ!」
包帯少女「…うん。全くもって同意」
包帯少女「これはさすがにやり過ぎてるよねぇ…」ゴゴゴ
猫又娘「いつまでも下手に出てると思ったら大間違いだよ…」ゴゴゴ
少年(おぉ…)
少年(今の二人、絶対敵に回したくないな…)
ーーーーーーー
派手娘「……」テクテク
派手娘「……」テクテク
派手娘「…むしゃくしゃする」
派手娘「ん゙ー!」
派手娘「嫌い…嫌いだわ」
派手娘(人を小馬鹿にしたようなこんな世界も)
派手娘(…それに惑わされるあたし自身も)
ーーーーー
スッ(手を差し伸べる)
ーーーーー
派手娘(…なんだったのよあいつ)
派手娘(あんなのにあたしの何が分かるっていうのよ)
派手娘「……」
──ホントはみんなと仲良くしたい?
派手娘「………」
派手娘「……なわけ」
247 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:12:50.54 ID:hGyrOzpP0
ズイッ
派手娘「!」ピタッ
派手娘「っぶな」
派手娘「ちょっと、どこ見て歩いてんの──って」
猫又娘「……」
包帯少女「……」
少年「……」
派手娘「…あぁ?」
派手娘(……)
派手娘「……なに?わざわざあたしを追いかけたきたの?相当暇人なのねあんたら」
派手娘「生憎だけど今日はもう話すことなんかないわ。そこ通してくれないかし……ら…?」
猫又娘「………」ポン..ポン..
派手娘(杓子…?)
派手娘(にしてもでか過ぎる…)
包帯少女「……」カツッ...
派手娘(こっちはバット)
派手娘「…野球でもするの?」
少年「」アセアセ
派手娘(こいつはなによ)
少年「…そ、その、早く謝ってくれた方が…」
派手娘「はぁ?なんであたしが──」
ガキンッ!
派手娘・少年「「」」ビクッ
猫又娘「……そうだねぇ……派手娘さんには同じ目を味わってもらった方が理解出来るんじゃないかなぁ」
猫又娘「話も聞かずにぶっ飛ばされる気持ちがさぁ…」ユラァ...
包帯少女「野球、興味ある?いいね…丁度"ボール"が足りなかったとこだから」ジリ...
少年「派手娘さん…!」
派手娘「ぅ……」
派手娘(……っ……)
派手娘「……す」
派手娘「すいませんでしたぁ!」
派手娘「いくらなんでもやり過ぎました!あの化け物共にストレスが溜まってたんです!」
派手娘「…これでいいっ!?」
248 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:15:31.17 ID:hGyrOzpP0
派手娘「…これでいいっ!?」
猫又娘・包帯少女「「……」」
派手娘「な、なに…」
猫又娘「…ほんとに」
猫又娘「ほんっとーに!素直じゃないよねきみ!」
猫又娘「あんね、さっき派手娘さんが呟いてた独り言、私ら聞こえてたんよ」
派手娘「独り言……あ」
ーーーーー
派手娘「──別に、友達とか……」
ーーーーー
猫又娘「私さ、派手娘さんがどういう性格なのかってある程度分かってるつもり。…不本意ながらね」
猫又娘「自分が許せないと思ったものには口を出さずにいられない。違う?」
派手娘「……」
猫又娘「…きっとそんなだから、おいそれと近付いてきてくれる人なんて居なかった」
少年(そっか。自分が理不尽だと思うようなことに、強く反論してただけなんだ)
少年(……僕にその気概の一部でもあれば、あいつらにちょっかい出されることもなかったのかな)
派手娘「………」
派手娘「…見てて苛つくのよ」
派手娘「隠したり、誤魔化したり、理不尽を強要する奴、ましてそれを受け入れてる奴なんかも」
派手娘「この化け物共なんて一番嫌い」
派手娘「…爆竹も、元はあんたらに使う気なんかなかったわ」
派手娘「ただ、化け物のボスみたいのが見えたから…全部吹き飛ばしたくなっただけ」
猫又娘「えっ!?」
少年「ボス…!」
包帯少女「ってことは…会ったんだね!?あの男に!」
派手娘「男?なに言ってんの、こんくらいのちっさい女の子よ」
派手娘「不気味なくらい何も喋んない…おまけに立体映像よろしく身体がすり抜けるわけのわかんない生き物」
派手娘「…あんたの言うあの男って?」
猫又娘「この事件の元凶なんだって。顔も知らないんですけどね…」
包帯少女「……派手娘さんの言うそれってもしかしてさ」
少年「──トドノツマリ様」
猫又娘・包帯少女「「!」」
少年「…あ、いやそうじゃないかなって…」
猫又娘「ふむ…確かに少女さんが借りてきた本にそんな容姿で描かれてたね」
包帯少女(古書店で借りたあの本……二つ編みさん……)
249 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:17:48.04 ID:hGyrOzpP0
猫又娘「やっぱりこの山に居たんだ!というか今さっき私らのすぐ近くまで来てたなんて…くぅ…」
猫又娘「派手娘さんっ!」
派手娘「っ…あによ」
猫又娘「ありがとっ!あなたのおかげで一つ懸念点がなくなった!」
猫又娘「間違いなくここらを探せば見つかるってことよね」
派手娘「……つくづく謎だわ、あんた。さっきまで怒ってた相手にお礼?」
猫又娘「それとこれとは別」
猫又娘「もう派手娘さんの返事は聞かないからね。あなたは私たちに協力する!」
猫又娘「…それと、私と友達になること」ニシッ
派手娘「……」
派手娘(………)
派手娘「……悪いけど──」
──シュルルッ
少年(妖禍子…!?)
少年「危ない!」
派手娘「─?」
少年(間に合わない…!まさかこのまま目の前で派手娘さんが消される…?)
少年「──そんなのダメだっ!!」
ピカッ!
少年(眩しっ…!)
包帯少女「ん…!」
猫又娘「にゃっ!?」
ヒュオオオォ!
妖禍子「グウウウゥゥ…!」
ヒュオオォ...
...ストッ
250 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:19:19.15 ID:hGyrOzpP0
全員「………」
猫又娘「……これ、アヤカシノート…?」
少年「!」ガサゴソ
少年「僕のカバンに入ってたやつだ」
包帯少女「今、吸い込まれていった…ね」
三人「……」
猫又娘「…す、すごい!」
猫又娘「これ私があげたやつだよね!こんな力があったの!?」
包帯少女「ってことは本物は」
猫又娘「うん。もっと強い力を持ってるに違いないよ」
猫又娘「ねぇねぇ少年君!もっかいやってみせて!」
少年「…今の、僕が狙って起こしたんじゃないんだ」
猫又娘「?じゃあなんでいきなり…」
少年「……」
スッ パラパラ
少年「……あ」
包帯少女「今の妖禍子だね」
猫又娘「どれどれ…」ノゾキコミ
猫又娘「…絵?になっちゃったんだ」
猫又娘「本物のノートは書いた妖禍子が出てくるけど、こっちのノートは妖禍子を吸い込む、と?」
猫又娘(我ながら凄まじいものを作ってしまったのでは)
少年「逆にこれを何冊も使えば奴らを封印出来たりしないかな」
猫又娘「!なるほど!量産なら簡単に出来るから──」
猫又娘「…けど、用意したところで使いこなせるかも分かんないしなぁ。この辺の妖禍子全部となるといくつ必要になるんだろ」
包帯少女「結局のところ、ますます本物を見つけ出さなきゃいけなくなったってことだね」
猫又娘「うむ、そうなるね」
猫又娘「この奇妙な生活もいよいよもって終わりが見えてきたわけだ!」
ワイワイ
251 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:20:15.65 ID:hGyrOzpP0
派手娘「……」
派手娘「」クルッ
猫又娘「──ちょっと、どこ行くんよ!」
派手娘「帰るのよ」
猫又娘「もちっと待って。今、明日からの行動予定を決めちゃおうと思うから」
猫又娘「派手娘さんは私と一緒にお山探索してもらおっかなぁ。私らなら大胆に動けそうだし!」
派手娘「…あのね、誰があんたたちに付き合うって言った?」
猫又娘「むっ、この後に及んでまだそんなこと──」
派手娘「あたしに付いてきて欲しいなら、まずその嘘くさい空元気をやめなさいよ」
猫又娘「…え?」
派手娘「作り物みたいに不自然な笑いとか、見苦しくてしょうがない」
派手娘「そういうの嫌いだって言ったばっかでしょうが」
派手娘「」ジロリ
少年・包帯少女「「……」」
派手娘「…人を騙してまで仲良しごっこするの、楽しい?」
猫又娘「──……」
派手娘「……ふん」
スタスタスタ...
猫又娘「………」
猫又娘(……っ……)
252 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:22:43.39 ID:hGyrOzpP0
ーーー夜 神社ーーー
幼女「……」
(びっしりと札の張られた社)
幼女「……毒を制すのは、これもまた毒」
幼女「かの者に奪われた者よりも濃密で暗澹たる意思共」
幼女(かつて人に迫害され、封じられた妖禍子を人の世の為に用いる所業など……なんと皮肉なものか)
幼女(妖禍子が人の世に混じればそこには必ず理不尽が生まれ出ずる)
幼女(其の理不尽を防遏していた…はずであった)
幼女(……)
幼女(我の力だけでこの者共を御しきれるか、読めぬところである)
幼女(…そうであろうと、我は見届けたいと思ったのだ)
幼女(彼らの行く末)
幼女(吹きすさぶ激情の終着点──)
幼女(──あの時かの者の命を繋いだ我の選択は、正しかったか否かを)
幼女「……」ソッ...
...カタ、ガタガタガタ
幼女「……」
ビリ、ビリッ、ビリリッ
幼女「……く……」
ベリベリベリッ!
ドタァン!
253 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:24:07.29 ID:hGyrOzpP0
ーーー翌朝 学校ーーー
ガラッ
派手娘「……」テクテク
猫又娘「──やることは変わらないさ。これからは二手に分かれて動いてくよ」
少年「僕と猫又娘さん?」
猫又娘「んにゃ、私が一人で。きみらはペアでね」
猫又娘「少女さんの方が、もっと積極的に少年君のこと守ってくれそうよね」ニヒッ
派手娘「」テクテク
猫又娘「あ…」
派手娘「……」テクテク
猫又娘「……」
派手娘「」スッ(席に着く)
猫又娘「………」
猫又娘「…んで、明日から夏休みに入っちゃうし、集まる場所とか細かい予定も──」
少年(……猫又娘さん……)
少年(昨日派手娘さんが去ってから、猫又娘さんはいつものように勝気な声で言っていた)
ーーーーー
猫又娘「──私がきみらを騙すだのなんだの、そんなことあるわけないからねっ!」
猫又娘「失礼しちゃうよまったく、あの人は!もう知らない!」
ーーーーー
少年(…確かに僕は、猫又娘さんが僕らを裏切ってどうこうするだとか、そんな考えが浮かんだことはなかった)
少年(派手娘さん……この人には何が見えているんだろう)
254 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:25:16.60 ID:hGyrOzpP0
ガララ
教師「悪い悪い、遅れそうになったな」
教師「とりあえず出席だけとってくぞ。この後すぐ体育館に移動だからな」
少年(体育館…終業式の場所もうちょっとマシなところにならないかな。暑いんだよなあそこ)
少年「……?」
少年(あれ…?)
少年「先生!…今日休みの人多くないですか?」
少年(クラスの半分くらいが来てないなんて)
教師「なんだ、寝ぼけてるのか?」
教師「全員居るじゃないか」
少年「──っ」
教師「まぁ、少し無駄な席が多い気もするが…」
派手娘「……チッ」
教師「そうこう言ってる間にもう移動の時間だ。準備しろ準備!」
ガタ、ガタッ
夢見娘「……」
(空席の同級生C)
夢見娘「………」
255 :
◆YBa9bwlj/c
[sage saga]:2019/12/22(日) 05:33:21.43 ID:hGyrOzpP0
七幕はここまでとなります。
次回八幕は過去が明らかになっていきます。
更新間隔が空いてしまっていますが、必ず完結はさせます。
見てくれてる方がいるかは分かりませんが…。
256 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:09:02.35 ID:hBUPAlst0
八幕が長くなってしまいそうなので、前後半に分けて投下します。
以下、前半です。
257 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:12:14.31 ID:hBUPAlst0
■第八幕 ヒトとアヤカシ■
ーーー神社 境内ーーー
カー、カー...
包帯少女「……」
少年「……」
包帯少女「少年君」
少年「ん?」
包帯少女「今何時かな」
少年「今?えっと…」
包帯少女「当てっこしようよ。ぼく17時ね」
少年「んー、じゃあ…16時半?」
包帯少女「正解は…」スマホトリダシ
包帯少女「16時45──あ、46分になった」
包帯少女「…ぼくの勝ち」
少年「えぇ?そんな図ったようなタイミング…」
包帯少女「ふふっ」
包帯少女「すると今日はざっと6時間くらい、山の周りを駆けずり回ってたんだ」
少年「…そうなるね」
包帯少女「……」
少年「……」
少年「……猫又娘さん、遅いね」
包帯少女「うん」
258 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:14:06.69 ID:hBUPAlst0
仔猫「」スタタタッ
ドロン
猫又娘「ごめんごめん、怪しそうなところがあったからちょびっと寄り道してた」
少年「怪しそうな?」
猫又娘「ま、何もなかったんですけどね」
猫又娘「そっちはどう?」
包帯少女「ぼくたちも同じ。怪しい影どころか…通行人もほとんど居なかったような」
猫又娘「そうかぁ」
猫又娘「うーん、夏休みに入ってそろそろ一週間でしょ?ここまで足取りが掴めないのも変だよね」
猫又娘「…あと一歩、もう少しなのに…」
少年「……」
少年(猫又娘さんの言う通り、終業式の日からもう6日も経ってる。…のに、まったく進展がない)
少年(トドノツマリ様に、ノートに、黒幕の男の、過去)
少年(連日こうやって猫又娘さんが山を、僕と少女さんでこの町を探索してるんだけど、それももう限界なのかもしれない)
猫又娘「むー……」アタマオサエ
少年(猫又娘さんは派手娘さんとの一件以来、こうして悩むことが多くなった気がする)
包帯少女「………」
少年(少女さんも時折、辛そうな顔を見せることがある…)
包帯少女「…ぼくたち、意図的に避けられてる?」
猫又娘「どうしてさ。避ける理由が見当たらないじゃんか」
包帯少女「でも派手娘さんとは顔を合わせたんだよね?ぼくたちがこれだけ探しても見つけられないのはもうさ…」
猫又娘「……だったらどうすればいいんよ」
包帯少女「う、ん……もしそうだとしたら、あっちからの接触は絶望的だから」
包帯少女「アプローチの仕方を変えるしかないかもね」
猫又娘「アプローチねー」
猫又娘「気配はすれども姿は見せない。そんなシャイな子を引っ張り出す方法…」
猫又娘「…あ、そうだ」
猫又娘「例えば神社のお社にイタズラすれば出て来てくれるんかな」
少年「落書きでもする?」
猫又娘「いーや、もっと…」
猫又娘「叩き壊すとか?」
少年「え」
猫又娘「……冗談に決まってるでしょー?そんな罰当たりなことするわけないじゃん」
259 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:16:17.42 ID:hBUPAlst0
猫又娘「とはいえもしかしたらこの中で隠れんぼしてたり…………っ!!」
包帯少女「どうしたの?」
猫又娘「……あれ……」ユビサシ
(散り散りになった無数の紙札)
少年「ひどい、なんだこれ…」
包帯少女「…先週の土曜だっけ、来た時破けてるのは一枚だけだったけど」
少年「まさか…」チラッ
猫又娘「んーんー!私じゃないよ!?私だって今気付いたんだから!」
少年「…だよね。こんな乱暴に千切るような真似、よっぽど恨みのある人がやったのかな」
包帯少女(…確信に近いものがある。これをやったのはきっと"人"じゃない)
猫又娘「……」
包帯少女(ここまで派手な痕跡なんだから何かしら感じ取れてるよね)
包帯少女「」チョンチョン
猫又娘「!」
包帯少女「……」ジッ...チラリ
猫又娘「……」フルフル
包帯少女(……そっか)
少年「どうしたの?」
包帯少女「ちょっとね…この社、元々何かを封印してる雰囲気があったから」
少年「…中の妖禍子が出てきたってこと…?」
猫又娘「どうかねぇ。今となってはもう分からんね」
猫又娘「…にしては妙なんだよね」
猫又娘「私が山ん中見てた限り、むしろ最近は妖禍子減ってきてると思ってたんだけど」
包帯少女「…今もほとんど居ないね」
猫又娘「でしょ?」
三人「………」
少年「…この神社って随分昔からあるんだ」
包帯少女「ん。伝承に出てくるくらいには古いみたい…どうかした?」
少年「社がさ、相当ボロボロだから…」
猫又娘「中も無残だねこれ」
少年「…あれだ」
少年「いつかの轢き逃げ事件を思い出すよ」
猫又娘(──!)
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