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少年「アヤカシノート」
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209 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:54:59.38 ID:uBwrWeJb0
三人「「「……」」」
猫又娘「…すぐには変化なしか」
猫又娘「あーあ、これはもう本物のノートで検証しないとダメなんだろーなー。気になるなぁ」
少年(…ノートのことは勿論僕も気になる……けど、もっと気になるのは)
包帯少女「安全な妖禍子が出てくるとは限らないんだから、今思えば実体化しないで良かったかもね」
猫又娘「それ知ってるよー。酸っぱいぶどうって言うんだ」
少年(…どうしてさっき僕は少女さんに膝枕をされていたんだろう)
少年(少女さんはどういうつもりで僕を……気になる……すごく……)
包帯少女「──何かの手掛かりにはなりそうだよね」
包帯少女「ねぇ少年君、あのノートってどこで買ったの?」
少年「!え、と…」
少年「あんまりよく覚えてないんだ…買った記憶はないけどいつの間にか持ってた、みたいな」
猫又娘「そういえばなんで失くしちゃったのかも訊いてなかったね」
少年「っ……」
少年「それは…」
少年(……)
少年「それも、分からない。知らないうちになくなってたから」
少年「……気付いたのは2週間前の日曜日だけど」
包帯少女「…!」
猫又娘「偶然…にしちゃあ出来過ぎてるなぁ。さすがにここまで重なったらさ」
猫又娘「ね、二人とも」
少年「……」
包帯少女「……」
猫又娘(……?)
猫又娘(!…そっかこの二人、まだあの池の話に触れてないのか)
210 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 00:57:08.72 ID:uBwrWeJb0
猫又娘「………」
バシッ
少年「おぅ!?」
猫又娘「まぁまぁ、そう気落ちしなさんな!」
猫又娘「活路はあるよ絶対に」
猫又娘「私たちは今、真相まであと一歩のとこにいる。ここまで酷くなった世界だけど、最後はきっと私たちが──勝つ!」
猫又娘("キミ"が好きだったこの世界……あんなヒトたちに渡してたまるかってね)
包帯少女「……ふふ、確かに勝ち負けの方が分かりやすいね」
猫又娘「フフン」
猫又娘「…きみも」
少年「な、なに?」イテテ...
猫又娘「聞いたよ?あのノート、暗いことばっかり書き殴ってたって」
猫又娘「私のあげたそれ、まだ使ってないんなら今度は楽しいことでも書いてみなよ」ニッ
少年「…普通の日記みたいに?」
猫又娘「そ♪」
猫又娘「嫌いなものばっかり書いてあるなんて寂しいじゃん」
少年「……」チラリ
(窓からのぞく曇り空)
少年(…次晴れた時にでも、書いてみようか?)
──クネクネクネ
少年「…えっ!」
少年(なんだあれ!?)
包帯少女「少年君…?」
(羽をうねらせ飛ぶ妖禍子)
包帯少女「……もしかして、妖禍子が見えてる?」
少年「あ、あれが妖禍子…!?」
猫又娘「なんと」
猫又娘「…妖禍子にされそうになったから、見えちゃうようになったのかね」
猫又娘「良いことなのか悪いことなのか…」
少年(二人とも全然動じてない……あんなのを今まで相手にしてたんだ…)
211 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 01:00:55.48 ID:uBwrWeJb0
包帯少女「……思うにさ、少年君が狙われた以上、一人でいるのはもう危ないんじゃないかな」
猫又娘「そうだね…奴らが見えるって言っても抵抗するすべなんかないわけだし」
猫又娘「また気絶しちゃうかもしんないもんね」チラッ
少年「う…」
包帯少女「うーん」
包帯少女「……じゃあ」
包帯少女「ぼくの家、泊まる?」
少年「………!?」
猫又娘(おー…)
包帯少女「…?何?事情知らない人の所に居ても意味ないでしょ?もうすぐ夏休みだし、数日くらいなら平気だと思うから」
少年「…ちなみに、僕はどこで寝れば…?」
包帯少女「別々に居るのも怖いから、ぼくと一緒に…………!?」
包帯少女「あっ…違うよ!別におかしな意味とかはなくて…!」
猫又娘「いや〜実に大胆ですなぁ、少女さん」
包帯少女「そういう意味で言ったんじゃないの!」
猫又娘「そういう意味とはー?」ニヤニヤ
包帯少女「この……!」
シッポダシナサイ!
ニャー!ボウリョクハンターイ!
212 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 01:03:37.71 ID:uBwrWeJb0
少年(少女さんの家で過ごす……)
少年(……)ドキドキ
猫又娘「どうどう…!分かった分かったよ!」
猫又娘「少年君には私が付いてるから、それで手打ちにしよ…!」
包帯少女「…あなたが?」
猫又娘「だいじょーぶ!少年君の家に居る時は見つかんないように」
ドロン
仔猫「ニャーオ」
ドロン
猫又娘「こうやって猫になっとくから」
包帯少女「……ちゃんと少年君の壁になってよ」
猫又娘「ご安心を」
猫又娘「………ん?壁?」
包帯少女「そういうわけだから少年君も、妖禍子に近付いちゃわないよう気を付けること」
少年「う、うん」
包帯少女「…ぼくの家は…普通に遊びに来る分にはいつでも、来てよ」ボソ...
少年「!…」
少年「」コクリ
少年(この騒動が解決したら…お邪魔させてもらおう)
猫又娘「さーて!」
猫又娘「それではおさらいでもしましょっか!」
猫又娘「私たちがこれからやるべきこと、知るべき事実!」
猫又娘「まずはトドノツマリ様と本物のノート探し」
猫又娘「トドノツマリ様は妖禍子の封印方法を知ってるかもしれないし、夢見娘さんが生まれたみたいに本物のノートが大きな鍵になる可能性もあるからね」
少年(……ノートに……トドノツマリ様……)
猫又娘「あとは元凶君の過去」
猫又娘「少女さんが時折見るっていう夢。それが紐解ければ、一連の出来事の根っこを掴める」
包帯少女(……あの夢は強い怒りだけじゃない)
包帯少女(微かに悲しみの念も混ざってる)
猫又娘「そして……あー、これが前途多難なのですが……」
猫又娘「──派手娘さん説得作戦」
213 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 01:05:54.59 ID:uBwrWeJb0
ーーーーーーー
...ガブリ
ここは優しいユメの世界。
少年『……』
だって私の好きなきみがいるから。
夢見娘『……』
少年『……』トットットッ...
ギュッ
ユメのきみは何も喋らないけど、私を優しく抱き締めてくれる。
夢見娘『……』...ギュー
……ねぇ、怖いよ。
きみが居なくなってしまうことが、何よりも怖いの。
この町のひしゃげた不具合が、不条理が全部襲ってきて、きみを飲みこもうとする。
私、きみを守れてるかな?
………。
……うん、分かってる。
所詮はただの自己満足なんだ。
私はマブタの案内人(ストーカー)。
こうしてユメの隙間をかき分けて、きみの温もりを求めているだけ。
214 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 01:07:43.57 ID:uBwrWeJb0
少年『……』ギュッ
夢見娘『………』ギューッ...
……本当はね。
本当は──
──きみに護ってほしい。
きまにいっぱい甘えたい。
………でもそれはユメ。
甘くて届かない、ユメ。
夢見娘『……っ……』
私が触れてるこの"きみ"は、私を慰めてくれる私のユメ…。
……ここは悲しい、ユメの世界。
夢見娘(少年くん)
お願い。
どうか来ないで。
残酷な結末も、
午前7時の魔法も──
215 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/11/08(金) 01:08:42.40 ID:4547r8BBO
ピピピピッ ピピピピッ
ピピピピッ...
216 :
◆YBa9bwlj/c
[sage saga]:2019/11/08(金) 01:13:43.03 ID:uBwrWeJb0
第六幕はここまでです。
次回第七幕は派手夢に焦点が置かれます。
この物語自体第九幕までを想定してるので、あと3分の1と行ったところです。
217 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:19:30.31 ID:hGyrOzpP0
■第七幕 異論を強く唱えるもの■
ーーー翌月曜日 学校ーーー
猫又娘「さてさて、お元気ですかなお二人さん?」
包帯少女「……」
少年「……」
猫又娘「なーんでそうどんよりしてるんかなぁ」
少年「なんでって…また何人か消えて…」
猫又娘「…それを止めるための、私たちでしょうに」
猫又娘「少しでも早く現状を打開する!今はそれだけを考える!」
少年「……それもそうかな」
猫又娘「消えちゃった人だって、きっと元に戻ってくるさ」
包帯少女「そうは言っても、昨日は何の成果も無かったし……外で少年君連れ回すのは辞めた方がいいかもね。危険だよ」
猫又娘「寄ってきた妖禍子(アヤカシ)は私らで撃退したじゃん?」
包帯少女「そうだけど……少年君、身体平気?何ともない?」
少年「今のところは」
猫又娘「私が付いてるんだからノープロブレムです!」
包帯少女「………」
猫又娘「…その目はなんですか。さては信用してないな?」
包帯少女「ううん。ただ、あなた抜けてるところがありそうでハラハラするから」
包帯少女「夜、ちゃんと見張れてる?」
猫又娘「もちろん」
猫又娘「だって一緒に寝てるもん」
218 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:21:21.90 ID:hGyrOzpP0
包帯少女「……………は?」
少年「あ…!ち、違うから少女さん!猫の姿で丸まってるだけだから!」
猫又娘「ふふ〜ん♪あったかいでしょー?」
少年「今の季節だとちょっと暑苦しいかな…」
猫又娘「うぬぬ」
猫又娘「昨日あれだけじゃれてきたくせに」
少年「尻尾を少し触っただけだろ!?」
少年「あんなにパタパタ動かされちゃ気になるよ」
猫又娘「えー?その後毛並みがどうこうとか言って撫でてきたじゃなーい?」
少年「ゔ……猫又の毛並みなんて誰だって気に──」ハッ
包帯少女「………」
包帯少女「…楽しそうだね??」
少年「あ、遊んでたわけじゃなくて…!」
包帯少女「へぇー…」ジロ
猫又娘「」ビクッ
猫又娘「警護は真面目にやってるから、ね?」
包帯少女「……」
包帯少女「いいけどさ」ボソッ
猫又娘(…素直なんだか素直じゃないんだか)
猫又娘「さって、それよりも!」
猫又娘「今日の本題に入るとしますか」
少年「本当にやるの…?」
猫又娘「えぇえぇ。気持ちはよーく分かります…でも私らの中に引き込めれば絶っっ対心強い味方になる、それは間違いないよ!」
包帯少女「引き込めれば、ね」
三人「………」
派手娘「」ホオヅエ
少年(なんでもあの人もアヤカシと戦ってる人間……らしい)
少年(…アヤカシをちぎっては投げている姿を想像してもあんまり違和感がない)
219 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:22:31.46 ID:hGyrOzpP0
猫又娘「派手娘さん攻略作戦」
猫又娘「いよいよ発動する時だよ」
包帯少女「説得作戦とか言ってなかった?」
猫又娘「同じ同じ」
猫又娘「作戦はこう」
猫又娘「まず一人ずつ派手娘さんと話をして説得する」
猫又娘「その時点で納得してくれればよし。それでもダメなら三人で行く」
包帯少女「初めから全員で行けばいいんじゃない?」
猫又娘「……ほら、そこで断られたら一発アウトでしょ?」
包帯少女「何回も話しかけるのも大概だと思うけど…」
猫又娘「と、とにかく!一対一で行った方が礼儀とかなんとかで上手くいくんよ!」
猫又娘「あとは誰から行くかだけど…」
少年・包帯少女「「……」」
猫又娘(うむむ…言い出しっぺの法則で私になりそう…)
少年「…僕が行く」
猫又娘「!」
少年「僕だけ何も出来てないんだ。せめてこういう時くらい力になりたい」
猫又娘「少年君…!」
包帯少女(…なんだか少し、頼もしくなったね)
猫又娘「そう言ってくれると私は信じてたよ」ウンウン
猫又娘「ではトップバッターの少年君、よろしくお願いします」
少年「うん」
猫又娘「」ホッ...
包帯少女(こっちはこっちで、苦手な相手だから後にして欲しいって言えばいいのに)
少年「じゃあ行ってくる」
キーンコーンカーンコーン
少年「……次の授業の後に」
220 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:25:01.42 ID:hGyrOzpP0
ーーー休み時間1ーーー
ガヤガヤ
少年「……」
少年(…派手娘さんか…)
少年(この前のことがあるから少し怖いけど……逆にそれが話すきっかけくらいにはなってくれるはず)
少年「──あの」
派手娘「?」
派手娘「あんたか。何?あの本なら貸さないわよ。こう見えてちゃんと読んでるんだから」
派手娘「それとも、この前の仕返しでもしに来た?」ニヤ
少年「そういうのじゃなくて、その…」
少年「……アヤカシのことで……」
派手娘「え?声小さくてよく聞こえないけど」ズイッ
少年「…いや、派手娘さんもアヤカシが見えるんだって聞いて…」
ガヤガヤガヤ
派手娘「だから聞こえないっての」ズズイッ
少年「…!」
少年「…え、えっと…出来るなら派手娘さんにも協力して…」ゴニョゴニョ
派手娘「………」
派手娘「きーこーえーまーせーん!!」
少年「──!?!?」グワァン
少年(み、耳元で……)
ナニナニ?
ハデムスメサンガマタオコッテル
派手娘「言いたいことがあんならはっきり言いなさいよ。ったく」テクテク...
少年「」フラフラ
.........
221 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:26:19.51 ID:hGyrOzpP0
派手娘(朝から無駄に腹立たしいわね)
派手娘(なんでもっと"まっすぐに"こないのよ)
派手娘(弱々しい自己主張。そんなだからバカどもに目付けられるんじゃないの?)
派手娘(この前の騒音野郎とはまったくの逆ね)
===6月某日===
ガタンゴトン ガタンゴトン
派手娘「ふぁーあ…」
派手娘(ねっむい)
派手娘(電車通学失敗だったわ。朝起きるの早いし、この時間座れないし)
プシュー
ゴジョウシャアリガトウゴザイマス
ゾロゾロ
音漏れ男「」〜〜♪
派手娘「……」
〜〜♪
派手娘(……はぁ?)
乗客たち「………」
音漏れ男「」〜〜♪
派手娘「……チッ」
バッ(イヤホンをぶんどる)
音漏れ男「!おい、なにすん──」
派手娘「うっさいのよ!!その雑音!!」
派手娘「自分で分かんないわけ?頭沸いてんじゃない??」
音漏れ男「っ……な、なんだ偉そうに…」
派手娘「あ?」ギロッ
音漏れ男「」ウッ
音漏れ男「…はいはい、俺が悪かったよ。…めんどいやつに絡まれた…」テクテク...
乗客たち「」ポカン
派手娘(ふん、ダサい捨て台詞)
「ねぇあの子の制服って…」
「思った…私たちと同じ学校の…」
=======
222 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:27:44.50 ID:hGyrOzpP0
派手娘(気に入らないのよね、ああいうのも)
派手娘(あたしは、納得いかないものに見て見ぬフリをすることが出来ない)
派手娘(ガツンと言ってやらないと気が済まないのよ)
カサッ...(床を這う妖禍子)
派手娘(例えばそう、こいつみたいな捻じくれた奴らとか──)
派手娘(ね!!)
グシャッ
223 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:29:00.16 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
少年「ごめん、役に立てなかった…」
猫又娘「まさかああも足蹴にされるとはねぇ」
猫又娘「やはり強敵だよ……むぅ…」
包帯少女「まぁ…意気込みやよし、だったよ」
猫又娘「そもそも気になってたんだけどさ」
猫又娘「派手娘さんて昔からあんなに怒りっぽい性格だったの?」
包帯少女「どうかな。ぼくは3年になって初めて同じクラスになったから」
少年「同じく。この前まで話したこともなかった」
猫又娘「この前?派手娘さんと話してみたんだ?」
少年「……ちょっとね」
包帯少女「でもあの人が笑ってるところなら時々見かけるね」
猫又娘「…それ、主に私をいじめてる時でしょ」
包帯少女「……」
猫又娘「……」
包帯少女「…みんなを笑顔にさせたいんでしょ?」
猫又娘「それはなんか違うよね!?」
包帯少女「ま、次はぼくがやってみる」
猫又娘「ん…その、勝算の程は?」
包帯少女「全く分かんない。ぼくは喋ったこともないから」
包帯少女「けど、後に控えてる人が不安そうな目してるし、ぼくが派手娘さんを連れてくるよ」
猫又娘「少女さん…」ウルウル
224 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:30:40.65 ID:hGyrOzpP0
ーーー休み時間2ーーー
包帯少女「派手娘さん」
派手娘「あん?」
包帯少女「話があるんだけど、いいかな」
派手娘「嫌」
包帯少女「……」
派手娘「……」
包帯少女「………」
派手娘「………」
.........
包帯少女「ダメだった」
猫又娘「いやいやいやいや」
猫又娘「え?何もしてないよね?門前払いでおしまいだよね??」
猫又娘「せめてもう少し食らいついてさぁ!」
猫又娘「……うぅ…さっきの感動を返しておくれ…」
包帯少女「…なんというか、取りつく島もないって感じで」
少年「うん、そう。すごい分かる。人を寄せ付けないオーラが出てるんだよね」
包帯少女「これ以上邪魔するなって暗に言われてるみたいだった」
猫又娘「?そう?」
猫又娘(確かに普段から怒ってるのはよく見るけど)
猫又娘(何でもかんでも否定してるわけじゃないと思うんだよなぁ)
猫又娘「……ふぅ。分かったよ、私に託されたってことね」
少年「結局また猫又娘さんに任せることになっちゃうな…」
猫又娘「気にしない気にしない」
猫又娘「どうせいつかは派手娘さんと話をつけないとって思ってたから」
猫又娘「私を誰だと思ってるん?愛と勇気のトラブルシューター猫又娘ちゃんだよ」
猫又娘「本気を出せば派手娘さんの一人や二人、なんのその!」
包帯少女「本当は?」
猫又娘「………」
猫又娘「ちょっとだけ、おっかないです」アハハ...
225 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:31:58.76 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
女生徒「ねー、夏休みどこ行こっか?」
男子生徒「俺はどこだっていいぜ。行きたいとこ言ってくれれば」
女生徒「無気力人間か!一緒に考えようよー」
ワイワイ
派手娘(夏休み)
派手娘「……」
派手娘(今年の夏はどうしてこう気に食わないのが多いのよ)
ーーーーー
同級生A「」クスクス
同級生B「」ケラケラ
少年「……」
ーーーーー
派手娘(目障りな連中が居たり)
ーーーーー
包帯少女「……」
ーーーーー
派手娘(…どっか拗らせたようなやつが湧いたり)
派手娘(あの子が包帯を着けるようになった日と、"奴ら"が見え隠れするようになったのは同じ日だった)
派手娘「…!」
女生徒「それでねー、──」
男子生徒「そのチョイスはなかなか──」
妖禍子「」カサカサ
派手娘「……」
ガタッ テクテク
226 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:34:54.23 ID:hGyrOzpP0
男子生徒「南町神社の祭りもたまにはいいかも──ん?」
女生徒「…派手娘さん?」
派手娘「どいて、邪魔」
女生徒「ごめんなさ……いえ、なんでわざわざどかなくちゃ──」
派手娘「なに?」ジロッ
男子生徒「…素直にどいとこう」
女生徒「あ、ちょっと…!もう…」
派手娘「……はー」
妖禍子「ギ…」カササ
派手娘「」スッ
グシャッ(踏み潰す)
派手娘(いきなり現れて、無断であたしらの世界を掻き乱してさ)
派手娘(誰も気付かないからってもっと調子付いてきてるわよね)
サラサラ...(消えていく妖禍子)
派手娘「…1匹ならただの雑魚ね」フンッ
派手娘(群れたところで負けるつもりはないけど)
派手娘(…いいわ)
派手娘(やってやろうじゃない)
派手娘(ただでさえ捻くれたこの世界を、あんたらがもっとひん曲げるって言うんなら)
派手娘(あたしはあたしの目の前に現れたあんたらをぶっ飛ばす)
派手娘(先に仕掛けてきたのはそっちなんだからこれは立派な正当防衛よね?)
派手娘(こそこそちまちまと動いてる人たちも居るみたいだけど、あんなんじゃ話にならない)
派手娘(要は納得しないのよ、あたしが!それだけ!)
派手娘(気に入らないものは片っ端から消し飛ばしてやるわ!)
227 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:37:03.74 ID:hGyrOzpP0
ポンポン
派手娘「あん?」フリムキ
イケメン「これ、落としたよ。君のでしょ?」
「あれは、クラスで一番モテる爽やか好青年のイケメン君…!」
「派手娘さんにも分け隔てなく接するなんて…仏か…!」
派手娘「ぁ……」
イケメン「ん?」ニコッ
派手娘「……やす……き……」モジッ
イケメン「ははっ、何だい?もっと落ち着いて喋ってごらん」
派手娘「っ……」グッ
派手娘「き、気安く触んな!!」バシーン!
「おおーっとイケメン君吹っ飛ばされたー!?」
「あぁやっぱり鬼の派手娘さんには近付かない方が吉なんだね…」
イケメン「」ピクッ、ピクッ
派手娘「あ……その……」
派手娘(っ…)
派手娘「」タッタッタッ
228 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:41:49.84 ID:hGyrOzpP0
ーーー昼休みーーー
「イケメン君大丈夫なの?」
イケメン「平気平気。怪我とかしたわけじゃないから」
「ほんと、怖いよね…派手娘さん。人の親切を暴力で返すなんて」
イケメン「そう言わないであげてよ。彼女には彼女なりの理由があるんだよきっと」
派手娘「……」モヤモヤ
派手娘(理由なんかないっつーの!)
派手娘(んもー…調子狂う…)
派手娘(んな絵に描いたような善人…)
派手娘(いるわけないじゃん)
派手娘(どうせこの世はみんな天邪鬼。心の中で何考えてるかなんてそいつにしか分かりゃしないのよ)
派手娘「……もう一人いたわね」
派手娘(このクラスのお調子者)
派手娘(張りぼてみたいな笑みをひっさげてるあのバカが──)
猫又娘「派ー手ー娘さん♪」
派手娘「うわ」
猫又娘「うわって何…!そんなに私のこと嫌いなの!」
派手娘「…あんた、あたしの神経逆撫するのだけは上手よね」
猫又娘「理不尽だ…まだ何もしてないのに!今日という今日は私に対するその扱い、断固抗議するよ!」プンプン
派手娘(う、鬱陶しい…)
派手娘「はいはいしょうもない抗議なら一人でやってな。何の用?」
猫又娘「……スー…ハー…」
猫又娘「派手娘さん、折り入ってお願いが──」
派手娘「嫌よ帰ってさようなら」
猫又娘「ありま、す…」
猫又娘「……」
派手娘「……」
猫又娘「派手娘さん、折り入ってお願いがあります」
派手娘「なかったことにするんじゃないわよ」
猫又娘「そんなこと言わずにぃ〜!話くらい聞いてちょうだいよー!」バッ
派手娘「ちょっ、なんでまとわり付いてくんの!暑苦しいっての…!」
猫又娘「へへっ!派手娘さんが大人しく言うことを聞いてくれるまで離れませんよぉ!」ギュー
派手娘「ウッザ!この上なくウザい!離れないと逆さ吊りにするわよ!」
猫又娘「やれるものならどーぞ♪本気出した私を捕まえられるかな?」
猫又娘(これぞ私の考え出した戦略!)
猫又娘(名付けて……勢いのままなんとかいっちゃおう作戦!)
猫又娘(押せ押せ私!このままじゃじゃ馬さんを丸め込むんだ!)
229 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:43:50.56 ID:hGyrOzpP0
派手娘「──あ゙ー!分かったわよ、聞いてやるから離しなさい!」
猫又娘「!ほんと!」
派手娘「本当本当」
パッ
派手娘「髪が崩れるわ、まったく…」
猫又娘(…よし、最初にして最大の関門は突破)
猫又娘(後は事情の共有だけ)
猫又娘「…それじゃ、単刀直入に言うね」
猫又娘「あなたの力を貸して欲しい」
派手娘「……」
猫又娘「この町に起きてる異変…派手娘さんも気が付いてるよね?」
猫又娘「化け物たち──妖禍子が闊歩したり、同じクラスの子が消えたり…」
猫又娘「今、私と少年君と少女さんの三人でこの事件を解決する手立てを探してる。そしてあと一歩のところまで来たんよ」
猫又娘「あとは時間との勝負…」
猫又娘「…派手娘さん、妖禍子に触れてもなんともないんね。さっき踏み潰してたの、見えたから」
猫又娘「その力を見込んでお願い!手を貸して!あなたがいれば比喩抜きで百人力なの!」
猫又娘「派手娘さんだってこんなおかしな世のままにしておきたくないでしょ?」
派手娘「………」
猫又娘「ね?」
派手娘(……)
派手娘「はい、聞いてあげた」
派手娘「用は済んだ?じゃ、回れ右してさよなら」
猫又娘「……へ?」
派手娘「無駄に疲れさせることしないで欲しいわ…ったく」
猫又娘「………」
猫又娘(〜〜!)
猫又娘「な、なな…!」
猫又娘「なんなんそれ!?」
猫又娘「ひとがせっかく真面目に話してるのになんなのその態度!」ガシッ
派手娘「だからひっついてくんなって──」
猫又娘「ははーん、さては怖いんだね?お化けとかそういうの。」
猫又娘「プクク、見かけに寄らずかわいいとこあるんね」
派手娘「フンッ、やっすい挑発。いつの時代の漫画よ」
派手娘「さっきから精一杯強がっちゃって、かわいいのはどっちかしらね?」クスッ
猫又娘「ぬぬぬ…!」
230 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:45:53.16 ID:hGyrOzpP0
猫又娘「…いいさ、そっちがそのつもりなら本当に怖いものなしなのか試してあげる…!」フッフッフッ
少年「!猫又娘さん、まさかここでアレに化けるつもりなんじゃ…」
包帯少女「アレ?」
少年「大きな骸骨みたいな妖怪」
猫又娘「腰抜かしても知らないかんね!」
猫又娘「そいや──」
派手娘「いいからとにかく離せっ」パシッ
猫又娘「──!?」グラッ
ドロン
「うお!なんだ何の騒ぎだ!?」
「あそこ。猫又娘さんと派手娘さんが何かしてたみたいだけど」
猫又娘「いつつ…」アタマサスリ
猫又娘「あれ?変わってない…」
猫又娘「ん?」
派手娘「……」テカー
「ハゲ頭…?」
猫又娘(あ)
派手娘「……」
猫又娘「……」
猫又娘「…んくっ」プルプル
「おい見ろよあれ…」クスス
「やめとけって。後で因縁付けられても……ぶふっ」
猫又娘「くく……くふっ…!」
猫又娘「なっはは!ごめ、ごめん!派手娘さん…!グフッ、ちょっと失敗しちゃったみたいで…!」
猫又娘「今、戻すから!…クク」
ドロン
派手娘「……」(元の髪型)
231 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:46:49.45 ID:hGyrOzpP0
猫又娘「ひーっ!ダメだ、ツボに入った…!はは、あははは!」
猫又娘(なんでスキンヘッド?がしゃどくろ→骸骨→髪はないってことぉ?スキンはあるのに)
猫又娘(なんにしても)
猫又娘「絶望的に、似合わな過ぎる…!」ゲラゲラ
派手娘「………」
「あ…」
「…ちょっとベランダに避難すっか」
猫又娘「はー、ひー…笑った…」
猫又娘「いやぁ、悪い悪い。あんなことするつもりはなくってさ……プフッ」
猫又娘「ちょっとしたハプニングってことで許しておくれよ」
猫又娘「でもさっきの、ちょっとおいしいなとか思ったでしょ?あはは」チラッ
派手娘「………」ゴゴゴゴ
猫又娘「……はは……」
232 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:48:32.62 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
...ドドドド
教師「……?」
猫又娘「」ドドド!
教師「おい!廊下を全速力で走る奴があるか」
猫又娘「あ!先生!」
猫又娘「お願いです匿って下さい職員室とかでいいんです!これから勉強も頑張りますからどうか頼みます…!」
教師「は…?ん?どういうことだ?」
シュバババ!
派手娘「せーんせ♪」
教師「おう?今度は派手娘か」
派手娘「ちょっとそこの、後ろに隠れてる子渡してくれません?」
派手娘「"オハナシ"がしたいので」ニッコリ
猫又娘「ひっ…!」
教師「なんだお前たち、喧嘩か?中三になってマジもんの喧嘩とはなぁ…てっきり仲良いと思ってたが――」
派手娘「先生」 ← 虎をも殺せそうな目
教師「……」
教師「…そうだ、午後の授業準備しとかんとな、うん」スタスタスタ
猫又娘「えっ。ちょ、ちょっ!」
派手娘「……」ニコッ
猫又娘「」ダッ
派手娘「」ダッ
ダダダッ
派手娘「ねーなんで逃げんのー?まだ話の途中だったのよねー?止まってくれないと続き話せないわよー?」
猫又娘「だったらその手に持ってる物騒な縄はなに!?何の"ハナシ"をする気なんでしょうか!?」
派手娘「すこーし実験に使うだけよ?」
派手娘「ねー止まってくんない??今なら…」
派手娘「…半殺しで済ませてあげるから」
猫又娘「やだぁ!」
猫又娘(殺される…!)
猫又娘「ほんとに悪気は無かったんだよぉ!許して…!」
ダダダダッ...
233 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:49:28.27 ID:hGyrOzpP0
ーーー教室ーーー
少年「……行っちゃったね」
包帯少女「…そうだね」
少年・包帯少女「「……」」
包帯少女「うん、まぁあれは自業自得としか」
少年「あの二人仲良いんだか悪いんだか分かんないね」
少年「これで全敗。あとは…僕たち全員での説得だっけ」
包帯少女「あの子が無事に帰ってこれればね」
少年「1抜けたとか言い出さなきゃいいけど」
包帯少女「そしたら門前払い組二人ででも行ってみる?案外上手くいったりして」
少年「猫又娘さんを差し出すのと引き換えに…とか」
包帯少女「んー?少年君いつからそんな黒い発想をするようになったのかな?」
少年「本気じゃないって」ハハッ
包帯少女「分かってる」フフッ
包帯少女「ひとまずあの子が戻ってくるまで待ってようか」
少年「うん」
少年(……けどそもそも)
少年(本当にそこまでして協力してもらう必要があるのだろうか)
少年(いやもちろん、こんな異常時に助けは一人でも居た方がいいっていうのは理解してるけど)
少年(…派手娘さんのこと教えてくれたのは確か、夢見娘さん…)チラリ
夢見娘「……」スー..スー..
少年「……」
少年(あの人が、僕の作り出した妖禍子だなんて)
少年(気になる。話をしてみたいけど、僕たちの近くには居れないって言ってたらしい…)
234 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:50:38.68 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
………。
苦しい。
………。
悲しい。
………。
──憎い。
……違うの。
その感情は。
煮えたぎる怒りの奔流は、私じゃなくて──。
ーーーーーーー
「……さん………見娘さん!」
夢見娘「…ん」
同級生C「大丈夫?うなされてたよ」
同級生C「辛い夢でも見てた…?」
夢見娘「………」
夢見娘「……平気……」
同級生C「…嘘だよ」
同級生C「だって涙、出てる」
夢見娘(…!)
夢見娘「」コスコス
夢見娘「……ただのあくび、だから……」
同級生C「………」
夢見娘「………」
235 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:51:59.51 ID:hGyrOzpP0
同級生C「……お菓子、いる?」
夢見娘「……」コク
スッ...
夢見娘「………」ジー...
夢見娘(そういえば少し…お腹が空いてる…)
夢見娘(……今、何時?時計、時計……)
同級生C「――1時10分。もうすぐ昼休みも終わるとこ」
夢見娘「!」
同級生C「…で、よかった?」
夢見娘「……なんで……」
同級生C「分かったのかって?」
同級生C「ちょびっとだけだけど、夢見娘さんが何考えてるのか分かるようになってきたんだぜぃ」
同級生C「へへっ、これで夢見娘さん検定二級くらいは合格かな」
夢見娘「……」
同級生C「…そのさ、何かあったら気負わず吐き出してよ」
同級生C「愚痴でも弱音でも溜め込んでる方がよっぽど辛いっしょ」
同級生C「俺に出来ることなら……あー、夢見娘さんの助けになりたいから、さ」ポリポリ
夢見娘「………」
同級生C「………」
同級生C(これは…驚いてる顔だろうな)
同級生C(今更ながらあんなクサイ台詞、恥ずかしくなってきた…)
同級生C(けどま、暗い雰囲気は消えたしこれでよかったんだ。うん)
同級生C「さて、次はなんの授業だったかねー」
…クイッ(袖を掴む)
同級生C「…!」
夢見娘「………チャイム、なるまで」
夢見娘「そばに居て…」
同級生C(………!?)
同級生C(夢見娘さん…?)
夢見娘「………」ジッ
同級生C(…この上目遣いは反則だ)
同級生C「喜んで」ニッ
236 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:53:04.29 ID:hGyrOzpP0
ーーー放課後ーーー
ガヤガヤ
派手娘「……ふぅ」
派手娘(どこかのアホのせいでいやに疲れる日になったわね)
派手娘(逃げ足だけは速いくせして)
派手娘「…行くか」スクッ
「今日さー部活に顔出してみようと思うんだよね」
「OBとして?いいんじゃない楽しそう」
「夏の大会も近いし、置いてきた後輩たちの成長を見てやろうってね〜」
テクテク
...ポトッ
派手娘「?」ヒロイアゲ
派手娘「ねぇ、ちょっと」
派手娘「財布落としたわよ」
「!…あ、派手娘さん…」
「ご、ごめんなさい。変な手をかけさせちゃって…」
「…お願いです、普通に返してあげてください」
派手娘「そりゃ構わないけど」スッ
「」パッ
「行こ」
「う、うん…」
スタスタスタ...
「なに、また派手娘さんが…?」
「こわ…目付けられないようにしないと…」
ヒソヒソ
派手娘「………」
237 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:54:34.38 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
猫又娘「」ソローリ
猫又娘「…あれ?派手娘さんは…」
少年「あ、いつの間に戻ってきてたんだ」
包帯少女「もう居なかったよ。帰っちゃったのかも」
猫又娘「ほ、ほんと…?」キョロキョロ
包帯少女「ぼくたちもちょうど二人で説得しようかって考えてたとこなんだけどね」
猫又娘(………)
猫又娘「探そ」
猫又娘「探し出して、なんとしても協力してもらおう」
猫又娘「作戦最終フェーズ、全員でこっち側に引きずり込む!」
少年「その言い方じゃあまるで悪者みたいだな…」
包帯少女「平気?あなた捕まったら今度こそ何されるか分からないんじゃ」
猫又娘「うぐ……そのときは」
猫又娘「お二人が頼みの綱です」メソラシ
少年「え、本当に猫又娘さんと引き換えにしていいの?」
猫又娘「!?そこは助けて欲しいとこだから!」
包帯少女「少年君…」ハハ...
猫又娘「そりゃあ私も悪かったけどさぁ、あそこまで怒んなくてもいいじゃん…?」
猫又娘「…でも、もっと不満なのは私の話をはぐらかしたこと」
猫又娘「妖禍子のこと絶対気付いているはずなのにあの態度だよ。せめて協力したくないならそうとはっきり言えって感じ!」
猫又娘「だからちゃんと返事もらうまで私は引き下がらないよ!」
238 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:56:56.71 ID:hGyrOzpP0
ーーー石段麓ーーー
派手娘「……」(体育座り)
派手娘「……」
派手娘(……)
ーーーーー
「──行こ」
「──う、うん…」
ーーーーー
派手娘「……なによ」
派手娘「んな警戒しなくたって何もしないっての」
派手娘「………」
派手娘(…分かってるわよ)
派手娘(腫れ物扱いが自業自得なんてこと)
派手娘(だって仕方ないじゃん。納得いかないものはいかないの!)
派手娘(電車の音漏れ野郎も)
派手娘(不味い料理を平然と出してくる店も)
派手娘("友達"なんて、都合良く利用する奴らも)
ーーーーー
「──ねー、お願い!明日までの宿題、終わったら手伝って!」
「ちょっとは自分でやればー?ってか、あんたいつも二つ編みに見せてもらってなかった?」
「だって今のあの人使えなさそうなんだもん。たまに変な独り言言ってて不気味だしぃ」
「友達じゃなかったの?」
「まっさかー(笑)」
二つ編み「……」テクテク
テクテク...
「あーあ、聞こえてたんじゃない?どっか行っちゃったよ?」
「根暗さんに悪いことしちゃったわぁ。ごめんなさーい」
「全っ然謝る気ないでしょ」
クスクス
239 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 04:58:59.54 ID:hGyrOzpP0
派手娘「…あのさ、さっきからうるさいんだけど」
「は?なにいきなり」
派手娘「耳障りなのよ消えてくんない?」
「あ、もしかしてぇ…二つ編みちゃんのお友達なんですかぁー?」
「いがーい!性格とか真逆そうなのに」
「友達料貰ってたりしてます?(笑)」
派手娘「…….」
...ガシッ
「!?」
グググッ メリ...
「い、痛い痛いやめて!」
派手娘「」グリッ
「んぎっ!?いだぁ!!やめて爪剥がれる…!!」
「ちょっと、何して──」
パッ
「ん゙ぅ…!」フラッ
「っと」トサッ
派手娘「…何回も言わせんな。とっとと失せろ」
派手娘「次は剥ぐ」
「ひぃ…!」
スササッ...
ーーーーー
派手娘(共に生きてく気もないくせに薄っぺらい言葉をいいように振りかざす)
派手娘(あたしが嫌いなタイプ)
ーーーーー
少年「──、───」
猫又娘「──♪」
包帯少女「…──?──」
ーーーーー
派手娘「………」
派手娘(………)
派手娘「……ふん……」
派手娘「……」
派手娘「別に、友達とか…」
派手娘(羨ましくなんか、ないし)
240 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:00:05.60 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
猫又娘「…!居た、あそこ!」
派手娘「……」
少年「まさか本当にここにいるなんて…」
猫又娘「妖禍子を倒し続けてるならたくさん集まる神社に居るかも…って、少女さんの洞察力には感服ですな」
包帯少女「大袈裟だって。…現に妖禍子を相手にしてるわけじゃなさそうだしね」
少年(妖禍子自体はそこらに湧いてるのに……異常な光景だ)
猫又娘「うーむ、むしろあれは」
猫又娘「…落ち込んでる?」
派手娘「……別に、友達とか…」
三人「!」
少年「今の…」
包帯少女「…うん」
猫又娘「ばっちり聞こえた」
少年(やっぱり、派手娘さんでもひとりは寂しいんだ)
包帯少女(あの子も人の子ってことだね)
猫又娘(強がってるのはそっちじゃん。本当は人恋しいくせにさ)
猫又娘「…二人とも!」
派手娘「……」
トットットッ
猫又娘「や、さっきぶり」
少年・包帯少女「「……」」
派手娘「…あんたら…」
派手娘「…よくノコノコあたしの前に出てこれたわね」
猫又娘「……」
猫又娘「いいよ、別に」
猫又娘「私を締め上げるっていうんでしょ?ちょっと理不尽だけど、それくらいであなたの鬱憤が晴れるなら付き合ってあげる」
猫又娘「私は心が広いからねっ」
猫又娘「そん代わし」
スッ(手を差し出す)
猫又娘「あなたのこと、もっと教えてよ」
241 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:02:11.36 ID:hGyrOzpP0
派手娘「…?」
猫又娘「いや、何というか、頼み事をするならお互いのことも知っといた方がいいしさ……えー……はい……」
猫又娘「──もとい、派手娘さんと仲良くなりたいの!それだけ!」
猫又娘「その後でさ、さっきの返事も聞かせてよ」ニヒッ
派手娘「……」
派手娘「……バカ、じゃないの…」
派手娘「ほんと…」
猫又娘「バカで結構」
猫又娘「それできみの笑顔が見れるなら安いものよ」
猫又娘「ってね」
派手娘「……」チラリ
少年「……」コクリ
派手娘「……」チラッ
包帯少女「」フフッ
派手娘(……)
(差し伸べられた手)
派手娘「……」ソッ...
ギュッ
猫又娘「…!」パァア
幼女「」スッ...
派手娘(──っ!)
...ムンズッ
猫又娘「んぇ?」
派手娘「本に書いてあったの」
派手娘「あいつら物の怪は、大きい音が弱点らしいわよ?」スッ
猫又娘「…その手に持ってるものは…?」
派手娘「……」ニヤ
派手娘「こいつはね、あたし手製の…」
242 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:03:09.84 ID:hGyrOzpP0
派手娘「──爆竹よ!」
ヒョイ
パァン!
三人「!?」
派手娘「…らぁああああ!」ヒョイヒョイヒョイ
パァン!
猫又娘「に゙ゃぃ!?」
派手娘「いっつもコソコソコソコソ鬱陶しい!イラつかせるんじゃないわよ!!」
パン!パァン!
少年「こ、鼓膜が…!」
派手娘「こんなこじれた世界なんてねぇ!!」
パァン!バチバチッパァンッ!
包帯少女「…、…」(耳を塞ぐ)
派手娘「いっそ全部吹っ飛んじまえっ!!」
パァン!パァン!パン、バチッ!パァン!!
.........
243 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:04:57.72 ID:hGyrOzpP0
タッタッタッ
ザッ...
派手娘「やっと見つけた…!」
幼女「……」フリカエリ
派手娘「……」
派手娘「…あんたなんでしょ?こいつら使ってバカげたことしようとしてんの」
(そこら中で気絶している妖禍子たち)
派手娘「お仲間はこの様。消さないだけ有情と思って欲しいわ」
幼女「………」
派手娘「あたし、あんたらの存在が気に食わない」
派手娘「見えないところで静かに暮らしてるだけなら構いやしないのよ」
派手娘「急に出張ってきてあたしらの日常に介入してんのが気に入らないって言ってんの」
派手娘「誰の許可を得てやってるって?少なくともあたしは許すつもりはないから」
派手娘「化け物は化け物の世界に帰りなさい」
幼女「……」
派手娘「……はん、あたしに見つかったのが運の尽きね」
派手娘「あんたにゃここで」
派手娘「──退場してもらうわ!」ダッ
ブンッ
派手娘(こいつさえいなくなれば──!)
スカッ
派手娘「!?」
ズテーン!
派手娘「いっ…たぁ……」
派手娘(今、すり抜けた…?)
派手娘「……」
ヒュッ(小石を投げる)
幼女「……」スルッ...
派手娘「…あんた、霊か何か?」
幼女「………」
派手娘(触れない物の怪とか…)
派手娘(聞いてないわよそんなの。どうしろってのよ)
244 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:06:13.71 ID:hGyrOzpP0
幼女「………」
スッ
派手娘「………あ?」
派手娘「…なに、その手」
幼女「……」
ーーーーー
猫又娘「」スッ(手を差し伸べる)
ーーーーー
派手娘(……)
派手娘「まさか、あのバカの真似事なんて言わないわよね?」
派手娘「…あたしをおちょくってる?」
幼女「………」
派手娘「ふざけんな」
派手娘「もー…!」グシャグシャ
派手娘「わっかんない、納得できない!」
派手娘「何がしたいの、あんたら!?」
幼女「……」
派手娘「……」
幼女「………」ジッ...
派手娘「……っ」
派手娘(どうせその手、触れないじゃない…)
派手娘「……今日はこれで引き下がってやるわ」
派手娘「けど覚えときなさい!次会うときは絶対あんたを…!」
派手娘「…あんたを…」
幼女「……?」
派手娘「……ただで済むと思わないことね!!」ピューッ
タッタッタッ...
245 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:07:25.95 ID:hGyrOzpP0
幼女「………」
幼女「………」
幼女(…そうだ)
幼女(あれが"人"らしい人間なのだろう)
幼女(異物を廃し、己が領域の秩序を守らんとする)
幼女(ある意味で最も生物としての本能に従順)
幼女「……」
三人「」バタンキュー
幼女「……」チラリ
イロヌリ瘴女「」ピク..ピク..
イイフラシ「」シロメ
カネクイ蟲「……」モゾ...
幼女("創造主"──其の手で自らの世界を描こうとしていた少年よ)
幼女(世界の綻びに立ち会うか)
幼女(そなたらに責はない。遥か昔の軋轢を理不尽に被ったに過ぎぬ)
幼女(然し尚、全てを奪い去らんとする激昂を止めようと言うか)
幼女(妖禍子を有す者とさえ、共闘し…誰が為にこの世界を守る?)
幼女(……誠、摩訶不可思議である)
幼女「………」
幼女(……)
幼女(…我に何が出来よう)
幼女(かの者の憤りに屈し、其の書物一つ奪わせることを許した我が)
幼女(魅えざる"張り裂け"の深潭)
幼女(終焉を告げる夜、其のネジレを直す力など初めから在りもしなかった)
幼女(…だが)
幼女「……そなたの道を敷くことなら可能やもしれぬ」
スッ...
246 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:08:47.94 ID:hGyrOzpP0
ーーーーーーー
三人「」
少年「……う、あぁ…」ノソ...
包帯少女「……ん…ケホッ」
少年「…大丈夫?」
包帯少女「なんとかね…。まだ耳がガンガン言ってる気がするけど」
猫又娘「」ピョンッ
猫又娘「あー!死ぬかと思った…!」
猫又娘「なんなのなんなのあいつ!?ああまでするほど私が嫌いか!?」
少年「手製の爆竹とか言ってた。思った以上にとんでもない人だね…」
猫又娘「対妖禍子用のものなんだろうけど、そんなことは関係ない!」
猫又娘「話は聞かない、文句しか言わない、果てにゃこの仕打ちって…いくらなんでも私らをバカにし過ぎだ!」
包帯少女「…うん。全くもって同意」
包帯少女「これはさすがにやり過ぎてるよねぇ…」ゴゴゴ
猫又娘「いつまでも下手に出てると思ったら大間違いだよ…」ゴゴゴ
少年(おぉ…)
少年(今の二人、絶対敵に回したくないな…)
ーーーーーーー
派手娘「……」テクテク
派手娘「……」テクテク
派手娘「…むしゃくしゃする」
派手娘「ん゙ー!」
派手娘「嫌い…嫌いだわ」
派手娘(人を小馬鹿にしたようなこんな世界も)
派手娘(…それに惑わされるあたし自身も)
ーーーーー
スッ(手を差し伸べる)
ーーーーー
派手娘(…なんだったのよあいつ)
派手娘(あんなのにあたしの何が分かるっていうのよ)
派手娘「……」
──ホントはみんなと仲良くしたい?
派手娘「………」
派手娘「……なわけ」
247 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:12:50.54 ID:hGyrOzpP0
ズイッ
派手娘「!」ピタッ
派手娘「っぶな」
派手娘「ちょっと、どこ見て歩いてんの──って」
猫又娘「……」
包帯少女「……」
少年「……」
派手娘「…あぁ?」
派手娘(……)
派手娘「……なに?わざわざあたしを追いかけたきたの?相当暇人なのねあんたら」
派手娘「生憎だけど今日はもう話すことなんかないわ。そこ通してくれないかし……ら…?」
猫又娘「………」ポン..ポン..
派手娘(杓子…?)
派手娘(にしてもでか過ぎる…)
包帯少女「……」カツッ...
派手娘(こっちはバット)
派手娘「…野球でもするの?」
少年「」アセアセ
派手娘(こいつはなによ)
少年「…そ、その、早く謝ってくれた方が…」
派手娘「はぁ?なんであたしが──」
ガキンッ!
派手娘・少年「「」」ビクッ
猫又娘「……そうだねぇ……派手娘さんには同じ目を味わってもらった方が理解出来るんじゃないかなぁ」
猫又娘「話も聞かずにぶっ飛ばされる気持ちがさぁ…」ユラァ...
包帯少女「野球、興味ある?いいね…丁度"ボール"が足りなかったとこだから」ジリ...
少年「派手娘さん…!」
派手娘「ぅ……」
派手娘(……っ……)
派手娘「……す」
派手娘「すいませんでしたぁ!」
派手娘「いくらなんでもやり過ぎました!あの化け物共にストレスが溜まってたんです!」
派手娘「…これでいいっ!?」
248 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:15:31.17 ID:hGyrOzpP0
派手娘「…これでいいっ!?」
猫又娘・包帯少女「「……」」
派手娘「な、なに…」
猫又娘「…ほんとに」
猫又娘「ほんっとーに!素直じゃないよねきみ!」
猫又娘「あんね、さっき派手娘さんが呟いてた独り言、私ら聞こえてたんよ」
派手娘「独り言……あ」
ーーーーー
派手娘「──別に、友達とか……」
ーーーーー
猫又娘「私さ、派手娘さんがどういう性格なのかってある程度分かってるつもり。…不本意ながらね」
猫又娘「自分が許せないと思ったものには口を出さずにいられない。違う?」
派手娘「……」
猫又娘「…きっとそんなだから、おいそれと近付いてきてくれる人なんて居なかった」
少年(そっか。自分が理不尽だと思うようなことに、強く反論してただけなんだ)
少年(……僕にその気概の一部でもあれば、あいつらにちょっかい出されることもなかったのかな)
派手娘「………」
派手娘「…見てて苛つくのよ」
派手娘「隠したり、誤魔化したり、理不尽を強要する奴、ましてそれを受け入れてる奴なんかも」
派手娘「この化け物共なんて一番嫌い」
派手娘「…爆竹も、元はあんたらに使う気なんかなかったわ」
派手娘「ただ、化け物のボスみたいのが見えたから…全部吹き飛ばしたくなっただけ」
猫又娘「えっ!?」
少年「ボス…!」
包帯少女「ってことは…会ったんだね!?あの男に!」
派手娘「男?なに言ってんの、こんくらいのちっさい女の子よ」
派手娘「不気味なくらい何も喋んない…おまけに立体映像よろしく身体がすり抜けるわけのわかんない生き物」
派手娘「…あんたの言うあの男って?」
猫又娘「この事件の元凶なんだって。顔も知らないんですけどね…」
包帯少女「……派手娘さんの言うそれってもしかしてさ」
少年「──トドノツマリ様」
猫又娘・包帯少女「「!」」
少年「…あ、いやそうじゃないかなって…」
猫又娘「ふむ…確かに少女さんが借りてきた本にそんな容姿で描かれてたね」
包帯少女(古書店で借りたあの本……二つ編みさん……)
249 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:17:48.04 ID:hGyrOzpP0
猫又娘「やっぱりこの山に居たんだ!というか今さっき私らのすぐ近くまで来てたなんて…くぅ…」
猫又娘「派手娘さんっ!」
派手娘「っ…あによ」
猫又娘「ありがとっ!あなたのおかげで一つ懸念点がなくなった!」
猫又娘「間違いなくここらを探せば見つかるってことよね」
派手娘「……つくづく謎だわ、あんた。さっきまで怒ってた相手にお礼?」
猫又娘「それとこれとは別」
猫又娘「もう派手娘さんの返事は聞かないからね。あなたは私たちに協力する!」
猫又娘「…それと、私と友達になること」ニシッ
派手娘「……」
派手娘(………)
派手娘「……悪いけど──」
──シュルルッ
少年(妖禍子…!?)
少年「危ない!」
派手娘「─?」
少年(間に合わない…!まさかこのまま目の前で派手娘さんが消される…?)
少年「──そんなのダメだっ!!」
ピカッ!
少年(眩しっ…!)
包帯少女「ん…!」
猫又娘「にゃっ!?」
ヒュオオオォ!
妖禍子「グウウウゥゥ…!」
ヒュオオォ...
...ストッ
250 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:19:19.15 ID:hGyrOzpP0
全員「………」
猫又娘「……これ、アヤカシノート…?」
少年「!」ガサゴソ
少年「僕のカバンに入ってたやつだ」
包帯少女「今、吸い込まれていった…ね」
三人「……」
猫又娘「…す、すごい!」
猫又娘「これ私があげたやつだよね!こんな力があったの!?」
包帯少女「ってことは本物は」
猫又娘「うん。もっと強い力を持ってるに違いないよ」
猫又娘「ねぇねぇ少年君!もっかいやってみせて!」
少年「…今の、僕が狙って起こしたんじゃないんだ」
猫又娘「?じゃあなんでいきなり…」
少年「……」
スッ パラパラ
少年「……あ」
包帯少女「今の妖禍子だね」
猫又娘「どれどれ…」ノゾキコミ
猫又娘「…絵?になっちゃったんだ」
猫又娘「本物のノートは書いた妖禍子が出てくるけど、こっちのノートは妖禍子を吸い込む、と?」
猫又娘(我ながら凄まじいものを作ってしまったのでは)
少年「逆にこれを何冊も使えば奴らを封印出来たりしないかな」
猫又娘「!なるほど!量産なら簡単に出来るから──」
猫又娘「…けど、用意したところで使いこなせるかも分かんないしなぁ。この辺の妖禍子全部となるといくつ必要になるんだろ」
包帯少女「結局のところ、ますます本物を見つけ出さなきゃいけなくなったってことだね」
猫又娘「うむ、そうなるね」
猫又娘「この奇妙な生活もいよいよもって終わりが見えてきたわけだ!」
ワイワイ
251 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:20:15.65 ID:hGyrOzpP0
派手娘「……」
派手娘「」クルッ
猫又娘「──ちょっと、どこ行くんよ!」
派手娘「帰るのよ」
猫又娘「もちっと待って。今、明日からの行動予定を決めちゃおうと思うから」
猫又娘「派手娘さんは私と一緒にお山探索してもらおっかなぁ。私らなら大胆に動けそうだし!」
派手娘「…あのね、誰があんたたちに付き合うって言った?」
猫又娘「むっ、この後に及んでまだそんなこと──」
派手娘「あたしに付いてきて欲しいなら、まずその嘘くさい空元気をやめなさいよ」
猫又娘「…え?」
派手娘「作り物みたいに不自然な笑いとか、見苦しくてしょうがない」
派手娘「そういうの嫌いだって言ったばっかでしょうが」
派手娘「」ジロリ
少年・包帯少女「「……」」
派手娘「…人を騙してまで仲良しごっこするの、楽しい?」
猫又娘「──……」
派手娘「……ふん」
スタスタスタ...
猫又娘「………」
猫又娘(……っ……)
252 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:22:43.39 ID:hGyrOzpP0
ーーー夜 神社ーーー
幼女「……」
(びっしりと札の張られた社)
幼女「……毒を制すのは、これもまた毒」
幼女「かの者に奪われた者よりも濃密で暗澹たる意思共」
幼女(かつて人に迫害され、封じられた妖禍子を人の世の為に用いる所業など……なんと皮肉なものか)
幼女(妖禍子が人の世に混じればそこには必ず理不尽が生まれ出ずる)
幼女(其の理不尽を防遏していた…はずであった)
幼女(……)
幼女(我の力だけでこの者共を御しきれるか、読めぬところである)
幼女(…そうであろうと、我は見届けたいと思ったのだ)
幼女(彼らの行く末)
幼女(吹きすさぶ激情の終着点──)
幼女(──あの時かの者の命を繋いだ我の選択は、正しかったか否かを)
幼女「……」ソッ...
...カタ、ガタガタガタ
幼女「……」
ビリ、ビリッ、ビリリッ
幼女「……く……」
ベリベリベリッ!
ドタァン!
253 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:24:07.29 ID:hGyrOzpP0
ーーー翌朝 学校ーーー
ガラッ
派手娘「……」テクテク
猫又娘「──やることは変わらないさ。これからは二手に分かれて動いてくよ」
少年「僕と猫又娘さん?」
猫又娘「んにゃ、私が一人で。きみらはペアでね」
猫又娘「少女さんの方が、もっと積極的に少年君のこと守ってくれそうよね」ニヒッ
派手娘「」テクテク
猫又娘「あ…」
派手娘「……」テクテク
猫又娘「……」
派手娘「」スッ(席に着く)
猫又娘「………」
猫又娘「…んで、明日から夏休みに入っちゃうし、集まる場所とか細かい予定も──」
少年(……猫又娘さん……)
少年(昨日派手娘さんが去ってから、猫又娘さんはいつものように勝気な声で言っていた)
ーーーーー
猫又娘「──私がきみらを騙すだのなんだの、そんなことあるわけないからねっ!」
猫又娘「失礼しちゃうよまったく、あの人は!もう知らない!」
ーーーーー
少年(…確かに僕は、猫又娘さんが僕らを裏切ってどうこうするだとか、そんな考えが浮かんだことはなかった)
少年(派手娘さん……この人には何が見えているんだろう)
254 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2019/12/22(日) 05:25:16.60 ID:hGyrOzpP0
ガララ
教師「悪い悪い、遅れそうになったな」
教師「とりあえず出席だけとってくぞ。この後すぐ体育館に移動だからな」
少年(体育館…終業式の場所もうちょっとマシなところにならないかな。暑いんだよなあそこ)
少年「……?」
少年(あれ…?)
少年「先生!…今日休みの人多くないですか?」
少年(クラスの半分くらいが来てないなんて)
教師「なんだ、寝ぼけてるのか?」
教師「全員居るじゃないか」
少年「──っ」
教師「まぁ、少し無駄な席が多い気もするが…」
派手娘「……チッ」
教師「そうこう言ってる間にもう移動の時間だ。準備しろ準備!」
ガタ、ガタッ
夢見娘「……」
(空席の同級生C)
夢見娘「………」
255 :
◆YBa9bwlj/c
[sage saga]:2019/12/22(日) 05:33:21.43 ID:hGyrOzpP0
七幕はここまでとなります。
次回八幕は過去が明らかになっていきます。
更新間隔が空いてしまっていますが、必ず完結はさせます。
見てくれてる方がいるかは分かりませんが…。
256 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:09:02.35 ID:hBUPAlst0
八幕が長くなってしまいそうなので、前後半に分けて投下します。
以下、前半です。
257 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:12:14.31 ID:hBUPAlst0
■第八幕 ヒトとアヤカシ■
ーーー神社 境内ーーー
カー、カー...
包帯少女「……」
少年「……」
包帯少女「少年君」
少年「ん?」
包帯少女「今何時かな」
少年「今?えっと…」
包帯少女「当てっこしようよ。ぼく17時ね」
少年「んー、じゃあ…16時半?」
包帯少女「正解は…」スマホトリダシ
包帯少女「16時45──あ、46分になった」
包帯少女「…ぼくの勝ち」
少年「えぇ?そんな図ったようなタイミング…」
包帯少女「ふふっ」
包帯少女「すると今日はざっと6時間くらい、山の周りを駆けずり回ってたんだ」
少年「…そうなるね」
包帯少女「……」
少年「……」
少年「……猫又娘さん、遅いね」
包帯少女「うん」
258 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:14:06.69 ID:hBUPAlst0
仔猫「」スタタタッ
ドロン
猫又娘「ごめんごめん、怪しそうなところがあったからちょびっと寄り道してた」
少年「怪しそうな?」
猫又娘「ま、何もなかったんですけどね」
猫又娘「そっちはどう?」
包帯少女「ぼくたちも同じ。怪しい影どころか…通行人もほとんど居なかったような」
猫又娘「そうかぁ」
猫又娘「うーん、夏休みに入ってそろそろ一週間でしょ?ここまで足取りが掴めないのも変だよね」
猫又娘「…あと一歩、もう少しなのに…」
少年「……」
少年(猫又娘さんの言う通り、終業式の日からもう6日も経ってる。…のに、まったく進展がない)
少年(トドノツマリ様に、ノートに、黒幕の男の、過去)
少年(連日こうやって猫又娘さんが山を、僕と少女さんでこの町を探索してるんだけど、それももう限界なのかもしれない)
猫又娘「むー……」アタマオサエ
少年(猫又娘さんは派手娘さんとの一件以来、こうして悩むことが多くなった気がする)
包帯少女「………」
少年(少女さんも時折、辛そうな顔を見せることがある…)
包帯少女「…ぼくたち、意図的に避けられてる?」
猫又娘「どうしてさ。避ける理由が見当たらないじゃんか」
包帯少女「でも派手娘さんとは顔を合わせたんだよね?ぼくたちがこれだけ探しても見つけられないのはもうさ…」
猫又娘「……だったらどうすればいいんよ」
包帯少女「う、ん……もしそうだとしたら、あっちからの接触は絶望的だから」
包帯少女「アプローチの仕方を変えるしかないかもね」
猫又娘「アプローチねー」
猫又娘「気配はすれども姿は見せない。そんなシャイな子を引っ張り出す方法…」
猫又娘「…あ、そうだ」
猫又娘「例えば神社のお社にイタズラすれば出て来てくれるんかな」
少年「落書きでもする?」
猫又娘「いーや、もっと…」
猫又娘「叩き壊すとか?」
少年「え」
猫又娘「……冗談に決まってるでしょー?そんな罰当たりなことするわけないじゃん」
259 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:16:17.42 ID:hBUPAlst0
猫又娘「とはいえもしかしたらこの中で隠れんぼしてたり…………っ!!」
包帯少女「どうしたの?」
猫又娘「……あれ……」ユビサシ
(散り散りになった無数の紙札)
少年「ひどい、なんだこれ…」
包帯少女「…先週の土曜だっけ、来た時破けてるのは一枚だけだったけど」
少年「まさか…」チラッ
猫又娘「んーんー!私じゃないよ!?私だって今気付いたんだから!」
少年「…だよね。こんな乱暴に千切るような真似、よっぽど恨みのある人がやったのかな」
包帯少女(…確信に近いものがある。これをやったのはきっと"人"じゃない)
猫又娘「……」
包帯少女(ここまで派手な痕跡なんだから何かしら感じ取れてるよね)
包帯少女「」チョンチョン
猫又娘「!」
包帯少女「……」ジッ...チラリ
猫又娘「……」フルフル
包帯少女(……そっか)
少年「どうしたの?」
包帯少女「ちょっとね…この社、元々何かを封印してる雰囲気があったから」
少年「…中の妖禍子が出てきたってこと…?」
猫又娘「どうかねぇ。今となってはもう分からんね」
猫又娘「…にしては妙なんだよね」
猫又娘「私が山ん中見てた限り、むしろ最近は妖禍子減ってきてると思ってたんだけど」
包帯少女「…今もほとんど居ないね」
猫又娘「でしょ?」
三人「………」
少年「…この神社って随分昔からあるんだ」
包帯少女「ん。伝承に出てくるくらいには古いみたい…どうかした?」
少年「社がさ、相当ボロボロだから…」
猫又娘「中も無残だねこれ」
少年「…あれだ」
少年「いつかの轢き逃げ事件を思い出すよ」
猫又娘(──!)
260 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:18:22.31 ID:hBUPAlst0
包帯少女「少年君、見てたの?」
少年「偶々下校途中だったんだ。そのトラックがどっかの家に突っ込んで凄まじい状況になってたのはよく覚えてるよ」
包帯少女「……友達は平気だった?」
少年「僕の周りはね。近くの学校の子が轢かれたらしいって話は聞いたけど」
包帯少女「そう…」
包帯少女「良かった…って手放しに言っちゃいけないんだろうね」
包帯少女「その事件の被害者が運良くぼくたちじゃなかっただけで、どこかの誰かにとってはきっと大切な人だったはずだから」
ーーーーー
老婆「──あの子の親はね、あの子が中学に上がる前に交通事故で亡くなってしまってねぇ」
ーーーーー
包帯少女(……)
少年「!…うん」
包帯少女「あ、ごめん。話逸らしちゃって………猫又娘さん?」
猫又娘「………!」
猫又娘「な、なになに?」
包帯少女「?平気?」
猫又娘「なにが?」
包帯少女「今、少し──」
猫又娘「なんでもなーいっ。明日からどう探していこうか、考えてただけ!」
猫又娘「探す場所を変えるか、探す方法、つまりさっきのアプローチを変えるか……何をどうしたらいいかなぁ。正直私一人だとこれだ!ってものが思い付かなくて」
包帯少女「本当に社壊すわけにもいかないもんね」
包帯少女「既に半壊してるとはいえ」
少年「……あの」
猫又娘「うむ?」
少年「もしも…もしもだよ」
少年「トドノツマリ様も、例の男ももうこの町に居ないんだとしたら…?」
包帯少女「別の町に?」
少年「だってこんなしらみ潰しにして見つからないのもそうだし、なのに妖禍子は減ってるって言うならそれってさ…」
猫又娘「…この山も離れて、違う場所へ侵略しに行ったと?」
少年「そういう可能性もあるんじゃないかなって」
猫又娘「………」
包帯少女「だからってここを離れるのも危ない気はする」
包帯少女「今ぼくたちが居なくなったらこの町は…みんなはどうなっちゃう?」
261 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:19:31.12 ID:hBUPAlst0
少年「それは……考えたくないけど」
少年「……最悪、見放すことになるのか──」
猫又娘「絶対嫌だっ!!」
少年「!」ビクッ
猫又娘「信じられない、何言ってんのっ!?」
猫又娘「きみに大切な人は居ないの!?親は?親戚は?友達は?」
猫又娘「きみを大切にしてくれた人を、きみはみんな見捨てるってことだよね?例えば明日みんな死んじゃうかもしれないことが分かってるのに放置するんだ!?」
猫又娘「奴らが違うとこに行っちゃったんなら、探す範囲を広げればいいだけじゃん!」
猫又娘「そんな、この町を切り捨てる真似…私は許さないよ!!」
包帯少女「………」
少年「ご、ごめん……」
猫又娘「…!」
猫又娘「あ……いや……」
猫又娘(何してるの、私)ギリ...
猫又娘「……今日は、帰ろ」
猫又娘「少し頭冷やしたい」クルッ
ドロン
仔猫「……」
サッサッサッ...
262 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:20:16.42 ID:hBUPAlst0
包帯少女「……」
少年「猫又娘、さん…」
少年「僕、こんなつもりじゃ…」
包帯少女「分かってる。分かってるよ」
包帯少女「きっとあの子も」
少年「……」グッ...
包帯少女「……」
ギュッ(手を包み込む)
少年「え…」
包帯少女「…大丈夫、焦らないで」
包帯少女「はやる気持ちはぼくにもある。けど、いたずらに急いでちゃ見えるものも見えなくなっちゃうよ」
包帯少女「ぼくはちゃんと、きみの味方だから」
少年(──)
包帯少女「…って感じのこと、あの子にも言っておいてよ」フッ
少年「……はは、伝えとく」
少年「ありがとう。元気付けてくれて」
包帯少女「ぼくたちがへこたれてたら町を救う救わないどころじゃないからね」
少年「あぁ、ほんと」
包帯少女「猫又娘さんが一番、分かってると思うよ」
──ズクンッ
包帯少女「っ……」
少年「?少女さん…?」
包帯少女「ううん、何でもない」
包帯少女(………)
263 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:21:28.25 ID:hBUPAlst0
ーーー夜 少年の自室ーーー
少年「………」
仔猫「………」
少年(猫又娘さん、猫の姿でいるのはいつも通りだけど、こっちに背中を向けてる)
少年(帰ってきてからずっとこの調子だ)
少年「……」
少年「……ねぇ」
仔猫「……」
少年「…夕方のさ、ごめんよ。猫又娘さんの気持ちも考えずに…」
少年「僕も本気でこの町を見捨てようなんて思ってるんじゃなくて……」
少年「…いや、見捨てたくなんかない。ここにあるのは家族とか大切な人もそうだけど、かけがえのない思い出もたくさんあるから」
ーーーーー
少女「──友達になってくれませんか?」
ーーーーー
仔猫「……」
仔猫「………」
ドロン
猫又娘「………」
猫又娘「…私の方こそ、過剰に反応しちゃった」
猫又娘「あんな風に言うつもりは、なかったんよ」
少年「うん」
少年(……)
少年「…僕、猫又娘さんのこと好きだよ」
猫又娘「………え!?」
猫又娘「それはっ…んん!?」
少年「"人"として尊敬してるってことだよ」クスッ
猫又娘「……からかったなー?」
少年「からかい半分、真面目半分かなぁ」
少年「尊敬してるのは本当だからさ」
少年「どんな時でも明るくて眩しくて…みんなを元気付けようとしてくれて」
少年「それってすごく格好いいよ。僕みたいな人間には真似出来ないから……憧れるんだ」
猫又娘「ど、どしたの。そんなに褒めても何も……」
少年「つまりだ」
少年「僕はきみを信じる」
猫又娘「……」
少年「猫又娘さんには何度も勇気をもらってる。だからもう弱音は吐かないよ」
少年「僕たちの手で、絶対この町を取り戻そう」
264 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:22:40.47 ID:hBUPAlst0
猫又娘「……」
猫又娘「…はぁまったく…何言い出すかと思えば」
猫又娘「私も、きみらを信じてるから一緒に居るんだよ」
猫又娘「…そもそも私"人"じゃあないし、本当は憧れてもらうようなとこなんか、ないんよ…」
少年「──本当かウソかなんてどうでもいいんさ」
猫又娘「!」
少年「前、言ってた言葉」
少年「その通り、猫又娘さんが人かそうじゃないかなんて関係ない。僕が見てきたのは"猫又娘"っていうやんちゃなお人好しだからね」
猫又娘「………」
少年「………」
猫又娘「…言うようになったねぇ、きみ」ニッ
少年「だって猫又娘さんが居ないと、僕どうしていいか分からないから…」
猫又娘「えぇ?なにそれ締まんないなー」
少年「それと、少女さんからも。もちろんきみの味方でいる…って、言ってた」
猫又娘「…ありがと」
猫又娘(……)
猫又娘「あー!よもや私が少年君に励まされるなんてね〜」
猫又娘「少年君、きみ変わったね」ニコッ
少年「そ、そうかな」
猫又娘「そうだよ!もっと自信持ちなって!」グシャグシャ
少年「ちょ、髪…子供扱いしてる!?」
猫又娘「へへへっ」
少年「親戚のおじさんじゃないんだから…!」
少年(おてんばなところは相変わらずだけど、やっぱり猫又娘さんはこうでなくちゃ)
猫又娘「……この町はさ」
猫又娘「私にとって、私よりも大事なものなんだ」
猫又娘「だからね、この身を賭してもここを守るんだ。…全部全部、変えてみせる」
少年「……」
265 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:23:49.22 ID:hBUPAlst0
猫又娘「よっし!うじうじタイム終わり!」
猫又娘「頭も十分冷やしてもらったし遅ればせながら今後の作戦を考えてこー!」
少年「それなんだけど、一ついい?」
猫又娘「お?」
少年「あの人──夢見娘さんなら何か知らないかな」
猫又娘「ほほぉ…そういえば夏休み入ってから一回も見かけてないね」
少年「手伝いはしてくれるって言ってたんだったよね?この前みたいにまた陰から見ていてくれたりしてさ」
猫又娘「あり得る」
猫又娘「あの子少年君のストーカーさんだし…」ボソッ
少年「問題はいつどこに居るのか謎なことだけど」
猫又娘「きみが呼べば来るんじゃないかなぁ」
少年「僕が…?」
猫又娘(あの不思議ちゃんか…考え付かなかったな)
猫又娘(思えば一緒に居られないなんて言ってた子がどうやって手伝うつもりだったんだろ)
猫又娘(今の私らの現状も見てるんかな)
ーーーーー
派手娘「──いっそ全部吹っ飛んじまえっ!!」
ーーーーー
猫又娘(……あの事も)
猫又娘「」ブンブン
少年「?」
猫又娘「少女さんにも訊いてみようよ。夢見娘さんから何かアクションがあったかどうか」
少年「うん。…今?」
猫又娘「もち」
少年「……」スッ
猫又娘「その機械便利よねー。スマホ?だっけ。実は買おうか迷ってたんよ」
少年「自分で作っちゃえばいいんじゃないか?」スッ、スッ
猫又娘「私が作れるのは精々模型だよ。複雑なものは真似れないからさ」
猫又娘「私の力がそんなに万能だったら、きみにあげたノートで今頃解決出来てたかもね〜」ノゾキコミ
少年「少女さんにLINEするけど、何て送る?」
猫又娘(……7/28……)
猫又娘(あ!)
猫又娘「そういえば少年君。あの神社って明日は──」
266 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:25:38.20 ID:hBUPAlst0
ーーー少女の自室ーーー
包帯少女「……」
シュルシュル
包帯少女「……っ」
包帯少女(…いつかこうなってしまうだろうとは思ってた)
包帯少女(包帯の下、一見何も変わってないように見える……けど)
ズクンッ
包帯少女「ぁ……はぁ…!」
ジク..ジク..
包帯少女「ゥグ…!」
包帯少女(お願イ、もう少しダけ保って…!)
包帯少女「……っ……ぃ……」
ピロリン
包帯少女「はぁ、はぁ……?」チラリ
少年『てすてす。猫又娘です』
少年『こんな感じで送れてるの?』
包帯少女(少年君のLINE…)
少年『大丈夫みたい。じゃ、改めて』
少年『さっき勝手に帰っちゃってごめん。でもきみたちに励ましてもらったからもう大丈夫』
少年『でさ!今少年君と話してて出てきた案があるんです!』
少年『まず夢見娘さん』
少年『ここしばらくあの子を見てないんだけど、少女さんは??彼女、何か知ってれば情報提供してもらおうよ』
267 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:26:27.22 ID:hBUPAlst0
包帯少女「……」
少女『ぼくも知らない。明日は夢見娘さんを探しに行くの?』
少年『そうそうそのことについて!』
少年『明日ってさ例の神社で夏祭りやる日なんよね』
少年『それに便乗して最後に神社周りを探してこうよ』
少女『便乗?あのお祭りってトドノツマリ様にまつわるものだっけ?』
少年『夏祭りとか楽しいことが目の前でやってたらポッと出てきてくれないかなーって』
少年『少なくとも私なら目一杯楽しむ』
少年『(ドヤ顔スタンプ)』
包帯少女「思いつきなのね…」
少女『いいんじゃない?夢見娘さんはその後ってことだよね』
少年『まーね。逆に夢見娘さんが見つかっても私ら的にはOKだけどね』
ーーーーー
夢見娘「──少年くんを、お願いします…」
ーーーーー
包帯少女「……ぼくは……何をすればいいんだろう」
包帯少女(……)
包帯少女(一度死に…帰ってきたあの日から、何もかもが思い通りにいかない)
包帯少女(誰かを守ることも怪異を終わらせることも出来ないこんなぼくに…)
包帯少女「っ……いや、ぼくがこんなことを考えてちゃダメ……」
包帯少女(でも)
包帯少女(ぼくがここに居る意味はなに…?)
包帯少女「……少年君……」
268 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:27:24.32 ID:hBUPAlst0
ーーー翌日 夏祭りーーー
ワイワイ ガヤガヤ
少年「おぉ…」
包帯少女「……」
少年「すごい人だね。こんな人混みを見るの久々だ」
少年「ほとんどみんな消えちゃったかと思ってた…」
包帯少女「ここのお祭り、市外からも結構集まってくるからね」
少年(来てる人も気合入ってるなぁ)
少年(女の人どころか男でも浴衣着てる人がちらほら)
少年「……」チラリ
包帯少女「なに?」
少年「な、なんでもない」
少年(少女さんの浴衣姿、ちょっと想像してたなんて言える空気じゃないよな)
包帯少女「じゃあ行こうか」
少年「この人だかりの中に入ってくんだね…」
包帯少女「人のいない場所は猫又娘さんが探してくれてるし、ぼくたちはここにトドノツマリ様が紛れてないかを確認していくのが仕事」
少年「分かってるけどさ。…小さい女の子って言っても家族連れまでいるから、こう人が多いと見分けられるか不安だよ」
少年「妖禍子は全然居ないのが救いかな」
包帯少女「……猫又娘さんに付いていった方がよかった?」
少年「え?そうは言ってないけど」
包帯少女「……」テクテク
少年「……」...テクテク
269 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:29:22.20 ID:hBUPAlst0
ーーー石段前ーーー
「次あっちの屋台行ってみない?」
「すいませーん!通してください!」
「あっ……りんご飴落としちゃった…」グスン
少年「ここなんてもう満員電車みたいだ…」
包帯少女「……」
少年「足元気を付けながら進まないと転びそう……少女さん?」
包帯少女「あ、うん」
少年「大丈夫?気分悪かったり…?」
包帯少女「平気…うん、気にしないで」
テク..テク..
少年(うわ…人多過ぎて全然進めないな。人波に飲まれないようにしないと)
包帯少女「……」スルリ
少年「……」グッ..テクテク
少年(…少女さん、今日は妙に口数が少ない)
少年(周りは騒がしいのに、僕たちだけ違う空気の中に居るみたいだ)
少年(……前にも、こんなことがあったな。あれは、まだ少女さんが包帯を着けるようになる前、僕が少女さんをあの池に突き落と……)
少年(………)
少年「…その、包帯さ」
包帯少女「ん?」
少年「巻いてるとこ、夜になると痛み出すって言ってたけど今はもう治ったの?」
包帯少女「……」
少年「…!ごめん、バカな質問した。まだ痛むから包帯してるんだよね…」
包帯少女「…まだ治ってはないよ」
包帯少女「もうすぐ解放されるかなとは思ってるけどね」
少年「本当っ?」
少年「そしたらさ、また二人で野球出来るよね。少女さんが万全な状況でさ」
包帯少女「そのためには…先にこっちの問題を終わらせないとだよ」
少年「そう…だね」
包帯少女「……」
少年「……」
少年(……)
270 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:30:22.70 ID:hBUPAlst0
グンッ!
少年「!?」
少年(ちょっ…押され…!)
ゴンッ
少年「おぶっ…!」ナガサレー
少年(ま、まずい)
少年「少女さん!少女さーん!」
少年「すいませんそっちに行きたいんです、道空けてください!」
ガヤガヤガヤ...
少年(全然動かない。一つの人波になっちゃってるんだ)
少年(なら)
少年「んっ…!」ググッ
「おい!変に押すなよ!痛いだろ!」
少年「あ、ごめんなさ──」
ドンッ
少年「痛っ」ズテッ
少年(やば、転けちゃった)
少年(どうしよう…ぎゅうぎゅうで立ち上がれない…)
ザワザワ
少年(踏まれる…!?)
「こっちよ、付いてきて」グイッ
少年「え!わ…!」
.........
271 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:32:06.07 ID:hBUPAlst0
「ここなら人もあんまり居ないね」
少年「はぁ、はぁ…あの、ありがとうございます。助けてくれて」
「あの人口密度はもう一種の凶器だよね。怪我はない?」
少年「はい。お姉さんの方も平気ですか?」
「まぁね。浴衣で走るの慣れてるから」フフッ
少年「でも、お祭り楽しんでるの邪魔しちゃいましたよね…」
「いいのいいの。元々人の少ない所で射的やりに行った友達を待つつもりだったしね」
「そういうきみは…もしかして迷子?」
少年「迷子、なんですかね…人混みに揉まれちゃいまして」
「あー…私も、正直ここまで混んでるって知ってたら来なかったかも」
「でも今は便利な時代、私たちにはこれがあるもの」スッ
少年「スマホ…」
「そう。きみも、お友達にここに居るってこと教えておかないと」
少年「……」ゴソゴソ
スッスッ、スッ
少年『ごめん、人に流された。今石段の横のはずれた場所に居るよ。焼きそばと金魚すくいの屋台の間』
少年(……)
少年(……そうすぐには既読にならないか)
「ふぅ。早く戻ってこないかな」
少年「…お姉さんて、この町の人ですか?」
「私?ううん、北市の人だよ」
少年「お姉さん、この町って人少ないなって思いませんでした…?」
「別に思わなかったけど……というかその、お姉さんって言われるのこそばゆいな…」
少年「えっと、それじゃ先輩?」
眼鏡娘「眼鏡娘、でいいよ。私の名前」
少年「眼鏡娘さん…?」
眼鏡娘「はい」ニコッ
少年(綺麗な笑顔……まるで……)
ーーーーー
少女「」フフッ
ーーーーー
272 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:34:26.41 ID:hBUPAlst0
少年「………」
少年「…あの、ちょっとだけ相談してもいいですか…?」
眼鏡娘「?うん。私で良ければ」
少年「……」フリムキ
少年(……あの池は、向こうの方だったっけな……)
少年「例えば…」
少年「例えばの話ですけど」
少年「もし願いを叶えてくれる人が居たら……眼鏡娘さんだったら、お願いをしますか?」
眼鏡娘「…願い事?」
少年「はい」
眼鏡娘「神妙な顔で喋り出すから何かと思ったら…随分メルヘンチックな相談ね」クスッ
少年「理不尽に死んでしまった友達が居たとして」
眼鏡娘「…!」
少年「…その人を生き返して欲しいと願うのは、いけないことなんでしょうか…」
眼鏡娘「……」
少年「……」
眼鏡娘「……なくなった命はね、戻らないよ」
眼鏡娘「願いを叶えてくれるだなんて、そんな都合の良いものはこの世にないの。よしんばあったとしても、必ず犠牲が付いてくる」
眼鏡娘「おいしい話には裏がある、ただ程高いものはない…なんて言うでしょ?」
眼鏡娘「だから私ならそんなものには頼らないかな」
少年「そう、ですか」
眼鏡娘「…意外だった?」
少年「まぁ…少し…」
眼鏡娘「ふふっ。そうね、普通目の前にそんなチャンスが降って湧いたら、誰だって飛びつきたくなるよね」
眼鏡娘「少し前の私なら、迷わずお願いするって答えてたろうなぁ」
少年「…?」
眼鏡娘「ね、ちょっと可笑しな話」
眼鏡娘「私ついこの間までね、重力が嫌いだったの」
少年「え、重力…?」
眼鏡娘「そう。きみにも私にも産まれた時からずーっと降りかかってる重力」
眼鏡娘「重力のせいで転ぶし、重力のせいで気分が沈む……重力がまとわり付いてくるから息苦しいんだーって、うんざりしてた」
眼鏡娘「…けど違った」
眼鏡娘「重力が嫌いだったわけじゃなかった。いつも流されるだけで行動しようとしない自分が、嫌だったの」
眼鏡娘「それを重力のせいにしてたんだよね」
273 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:36:52.52 ID:hBUPAlst0
少年「……」
眼鏡娘「あんまり面白くなかった?」
少年「…どうやって克服したんですか?」
眼鏡娘「克服、というか……気付かせてくれたんだ」
眼鏡娘「私の大事な人たちが…」
少年「……それって、今日一緒に来てる友達さん?」
眼鏡娘「!…すごい、どうして分かったの?」
少年「眼鏡娘さんの顔見てたら、なんとなくそうかなって」
眼鏡娘「へぇ……んふ、なんか少し嬉しいかも」
眼鏡娘「あ、でも」
眼鏡娘「この相談って…もしかしてきみのお友達は……」
少年(………)
少年「いえ、生きてます。さっきのは例えばの話ですから」
眼鏡娘「…そっか」
元気娘「あ!居たー!」テッテッテッ
眼鏡娘「!来た来た」
少年(あの人が眼鏡娘さんの大事な人…?)
元気娘「ねー見て見て!男くんこんなに撃ち落としたの!隠れた才能がーとか言って──む?」
少年・眼鏡娘「「?」」
元気娘「……眼鏡娘ちゃんが」
元気娘「男の子を口説いてる!?」
眼鏡娘「違いますー。人混みで潰されそうになってたからここまで連れてきただけ」
元気娘「なーんだ」
元気娘「こーゆうとこではねぇ、スルスルッて、人の間をうまくすり抜けるのだよお兄さん」ニシシッ
少年「は、はい」
元気娘「眼鏡娘ちゃん行こっ!男くん向こうで待ってるから!」
眼鏡娘「うん」
眼鏡娘「それじゃあね。今度は倒されないように気を付けるんだよ?」
少年「…お話、ありがとうございました」
眼鏡娘「余計なお世話になってたらごめんなさい」
少年「そんなことないです」
眼鏡娘「……」
眼鏡娘「じゃ、余計ついでに最後に一つだけ」
眼鏡娘「──きみときみの愛する人を大切にね」
元気娘「眼鏡娘ちゃん早くー!」
眼鏡娘「はいはい!」
タッタッタッ...
274 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:38:03.42 ID:hBUPAlst0
少年「………」
少年「愛する人…って」
少年(友達は大事にしなさいってこと?)
少年「友達……ともだち……」
少年「……少女さん……」
少年(……………)
少年(懐かしいな、初めて少女さんと話したのがもうずっと前の気がする)
少年(あの時は終わったと思った。僕の情けないノートを見られて、またクラスの笑い者にでもされるんじゃないかなんて)
少年(けど彼女はバカにすることもなく勇気付けてくれた。こんな僕と友達になろうなんて言ってくれてさ…)
少年(…僕があの時差し伸べられた手を握っていたら、未来は少しでも違うものになっていたのかな)
少年「……」
少年(……そう。僕がノートを落としてなければ、あの男に会ってなかったら……あんなノートに頼らないくらい強かったら)
少年(少女さんがあんな目に遭うことはなかったのかもしれない)
少年「……っ」
少年(時間が経つに連れて少女さんは、笑うことが減っていった。もう逃げないって、目を逸らさないって誓ったはずの僕は……それを見ていることしか出来なかった)
少年(流されるままで行動しようとしない……いや、行動はしてるつもりなんだけど…)
少年(…眼鏡娘さんが言ってたのはそういうことじゃないよな)
少年(……あぁ、分かってるよ)
少年(今の僕に足りないのは、向き合うこと)
少年(がむしゃらに怪異を追いかけていればいずれ何もかも丸く収まる?そんなわけないだろ)
少年(一番見過ごしちゃいけない問題から逃げようとしてたんだ)
少年(………)
少年(………)
包帯少女「少年君!」
少年「!」
包帯少女「やっと見つけた」タッタッタッ...
275 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:39:33.61 ID:hBUPAlst0
包帯少女「ここまで酷い混み具合はさすがに予想外…」
包帯少女「悪かったよ、きみが居なくなってるの気付けなくてさ」
少年「……なんで少女さんが謝るんだよ」
少年「ぼくが、勝手に押し流されただけだよ」
包帯少女「…どうかしたの?」
少年「………」
包帯少女「少年君…?」
少年「…謝らなきゃいけないのは僕だ」ソッ
包帯少女「っ」ピクッ
少年「……こんな……包帯なんて……」
少年「ごめん、僕のせいで」
少年「少女さんを苦しめていたくせに、僕はそこから逃げてた…」
包帯少女「………」
少年「……」
少年「…僕がこの神社を訪ねた土曜日、覚えてる?トドノツマリ様の噂を確かめるだとか言って」
包帯少女「……うん」
少年「あの日、さ」
少年「実は僕だけじゃなくて少女さんも一緒にここに来てたんだよ。境内でトドノツマリ様が現れるか確かめて、でも何も出てこなかったから場所を変えてさ」
少年「…近くの池まで行ったんだ。そこで……そこで…………」
少年(……)
少年「変な声に唆されて……いやこれは言い訳だ」
少年「──僕は、きみを池に落とした」
少年「あまつさえそのまま逃げて見捨てようとした…!」
少年「僕はきみを殺したんだ!」
少年「きみが今生きてるのはきっと………僕がトドノツマリ様にお願いをしたから」
少年(そうだよ、社の前で泣き喚いてたあの時、思い返してみれば不可解な現象が起きていたじゃないか)
少年「少女さんを生き返して欲しいって願いを、トドノツマリ様は本当に叶えてくれたんだ…!」
少年「だけどきみは苦痛に苛まれた状態で戻ってきた。それは…願いの代償なのかもしれない…」
包帯少女「……」
少年「僕はさ、きみがあの日のことを覚えてないって言った時、好都合だと思っちゃったんだ」
少年「このままあの事が無かったことになれば……なんて考えてたんだろうね」
少年「何もかも少女さんに押し付けて自分は逃げようとして」
少年「それでも少女さんは僕のことを助けてくれた」
少年「また笑って、一緒に話をしてくれた…」
少年(……っ)
276 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:40:52.39 ID:hBUPAlst0
少年「ごめん、少女さん!僕は卑劣な嘘をついてた!きみとの関係が壊れるのが怖くて…!」
少年「でも結局僕が全部ぶち壊しにした!」
少年「きみから平穏な日常を奪っておきながら、平気な顔して居座り続けた人間が!!」
少年「……僕という奴なんだ……」
少年(弱い人間だ…僕は…)
少年(傷付くのを恐れ、傷付けるのを恐れ……最後には逃げ出す)
少年(その結果どうだ。結局こうして大切な人を傷付けている)
少年「ごめん……ごめんよ……!」
少年「僕は、きみに出会うべきじゃなかったんだ……」
包帯少女「……」
少年「……」
包帯少女「………」
包帯少女「知ってたよ」
少年「……え?」
包帯少女「今話してくれたこと。あの土曜日の出来事」
包帯少女「少年君に突き落とされて溺れたことも、全部ね」
包帯少女「嘘つきはきみだけじゃないの。ぼくも、覚えてないなんて嘘をついた」
少年「な…なんで…」
包帯少女「きみと同じだよ。ぼくだって少年君との関係を壊したくなかったから」
包帯少女「どうして生き返ったのかは、今初めて知ったけどね」クスッ
包帯少女「……少年君。色々言いたいことはあるけど、とりあえず」
包帯少女「きみを恨んではいないよ」
少年「…!」
包帯少女「確かに身体が痛んだり、怖い夢を見ることもあった。普通の女の子じゃなくなったような気がしたよ」
包帯少女「でもね、それ以上にきみと過ごすのが楽しかった。勉強は教え甲斐があったし、仲直りしてくれた時はすごく嬉しかったもん」
包帯少女「だからきみに日常をめちゃくちゃにされたなんて思ってない」
包帯少女「むしろあのまま死んでいたら、それこそ恨むよ。化けて枕元に出てたかもしれないなぁ」
少年「……………」
包帯少女「…ぼくはね、きみと出会えて良かった」
少年「──」
少年(……どうして……きみは、こんな)
包帯少女「こんな弱い自分が恥ずかしい」
少年「っ!」
包帯少女「とか思ってるんでしょ」
少年「…実際その通りだし…」
包帯少女「全然違うよ。だってこうやって、ぼくに洗いざらい打ち明けてくれたじゃない」
包帯少女「ぼくの知る以前の少年君だったら、その罪悪感を最後まで胸にしまったままだったと思う」
包帯少女「今、ちゃんと向き合ってくれた。きみは十分強くなってるよ」
277 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:41:47.11 ID:hBUPAlst0
包帯少女(…ん、そっか。ぼくがここに居る意味なんて至極単純。というより頭のどこかでは分かってた)
包帯少女(この人がこんなだから、ぼくは放って置けなかったんだ)
包帯少女(見守って、側で過ごして、手を貸して……こんな風に成長してくれるのを見届けたかったんだろうな)
包帯少女「……ふふっ」
少年「………」
少年「…怒って、くれよ」
少年「自分を殺した殺人犯が、目の前に居るんだぞ!普通怒り狂うくらい──」
ピトッ(人差し指を唇に押し当てる)
少年「!」
包帯少女「そういうとこかな、ぼくが怒るのは」
包帯少女「全部自分が悪いと思い込むところ」
包帯少女「…少年君さ、ぼくを殺したいと思ったことがあったの?」
少年「あるわけない!そんなこと絶対思うもんか!…あの時はなんか、自分が自分でないような感覚で…」
包帯少女「そう。じゃ、許す」
少年「へ?」
包帯少女「それが聞ければ満足だよ」
包帯少女(水底に沈む間際見えたあの男)
包帯少女(今なら分かる。ぼくを突き落としたのは多分、あいつだ)
少年「少女、さん……」
包帯少女「あれ…泣いちゃう?」
少年「!…泣かない」
少年「強い奴は、泣き顔なんて見せないだろ?」
包帯少女「そうそう、その息だ」
少年(間違いない)
包帯少女(それにしてもこんな時に気付かされるなんて)
少年(やっぱり僕は──)
包帯少女(きっとぼくは──)
少年・包帯少女(この人のことが好きなんだ)
278 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:42:43.15 ID:hBUPAlst0
少年(鬱屈とした日々から救ってくれただけじゃない、こんなにも僕を認めてくれる)
少年(こんなの好きになるなって方が無理だ)
少年「……ありがとう、少女さん」
包帯少女「どういたしまして」
少年(…この人だけは絶対、何がなんでも守り抜いてやる)
包帯少女「さて、捜索再開しよっか。あんまり遅いと猫又娘さんにどやされちゃう。花火の上がる時間までには済ませられるといいね」
少年「花火?もっと混んでくるから?」
包帯少女「ううん。せっかくお祭りに来たんだもん、花火くらい見ていきたくない?」フフッ
少年「…いいね」ハハッ
...ギュ
少年「…!」
少年(手を……)
包帯少女「またはぐれたら、大変だから」
少年「そう……だね」
少年(…♪)
包帯少女「それから、さっきの話もう少し詳しく教えて。きみの身に何が起こってたのか、ぼくが溺れた後何があったのか知っておきたい」
少年「わ、分かった…!」
包帯少女(ありがとう、はこっちの台詞だよ少年君。おかげで踏ん切りがついた)
包帯少女(ぼくはもう迷わない)
279 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:44:19.49 ID:hBUPAlst0
同級生A「あ?少年じゃん」
同級生B「ミイラ女も一緒かよ」ケッ
少年(こいつら…来てたのか)
同級生A「おぅおぅなんだその手。お前ら結局出来てたんかよ(笑)」
同級生B「付き合ってないとか言ってた癖にな?」
同級生A「しっかしまぁ、よくやべぇ奴同士でくっつこうと思ったもんだわ」
同級生A「傷の舐め合いってやつか、え?そこんとこどうよ少年ちゃんよ?」ニタニタ
包帯少女「…あなたたち、よく飽きもせず──」
少年「いいよ少女さん」
包帯少女「…?」
少年「……」
少年「傷の舐め合いじゃない、一緒に居るのが楽しいだけだ」
少年「お前らだって二人でこの祭りに来てるじゃん。わざわざ僕をからかうために来たんじゃあるまいし、僕たちと同じだろ?」
同級生B「はぁ…?」
同級生A「てめぇらと一緒とか…冗談言うな」
少年「じゃあ何しに来たんだよ」
同級生A・B「「………」」
同級生B「…!なぁおい、もう時間が」
同級生A「あ!やっべ、姉貴にボコられる!」
タッタッタッ...
包帯少女「……」
少年「……」
包帯少女「……やるじゃん」
少年「……へへっ」
280 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:45:18.95 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
猫又娘「……」ザッザッ
猫又娘「……」ザッ...
猫又娘「………」
(大きな池)
猫又娘(ここにもいないか)
猫又娘(今日こそはもしかしたらって思ったんだけどなぁ)
猫又娘「……」
猫又娘(…いつ見ても気味悪い所だよ)
猫又娘(ここからそう遠くないとこでお祭りやってるはずなんに、喧騒なんか聞こえやしない)
猫又娘「……ここ、なんよね。きっと」
猫又娘(少年君が少女さんを突き落としたっていう例の池)
猫又娘(池の底からたくさんの手が伸びてくるのを見たって言ってたけど、私が来た限りではそんなの一回もなかった)
ーーーーー
少年「──それに、声が聞こえたんだ。少女さんを、ここで突き落とせって」
ーーーーー
猫又娘(…そんなことも言ってたっけ)
猫又娘「……」
猫又娘「………」
猫又娘「……………」
猫又娘「」グッ...
猫又娘「もー!あとちょっとなのになぁ!」
猫又娘(もうちょっとで何か分かりそうなのに!ここまで出かかってるんよここまで!)
猫又娘(喉につっかえた小骨が取れないときよりもやもやする〜!!)
281 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:45:55.13 ID:hBUPAlst0
猫又娘「…………はー」
猫又娘(結局、あの子たちの問題も解決し切れてないんだよね)
猫又娘(少年君も少女さんも、ここで起きたことについて触れないようにしてさ)
猫又娘(…かく言う私も、あれ以上首を突っ込めなかった)
猫又娘(……中途半端な関係に戻すくらいだったら、初めから関わるべきじゃなかったんかなぁ……)
ーーーーー
派手娘「──人を騙してまで仲良しごっこするの、楽しい?」
ーーーーー
猫又娘「………」
猫又娘「……騙してるつもりなんて、ないのに」
猫又娘(でも)
猫又娘(ここに居る私は、いつも失敗ばっか)
猫又娘(…それって…)
猫又娘(………)
猫又娘(私のしてることって、間違ってるのかな…)
猫又娘「……」
猫又娘(…キミの居ない世界は、やっぱり難しいよ…)
猫又娘(私はただ……)
猫又娘「もっとキミと笑いたいだけなんだよ…」
282 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:46:26.59 ID:hBUPAlst0
例えば、子供が大人のフリをして大人になっていくように。
キミのフリをずっと続けていれば私は、キミのようになれると思ったんです。
283 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:47:39.36 ID:hBUPAlst0
===5年前===
……………。
ワイワイ
……………。
キャハハハ!
猫又娘(………!)
猫又娘「…?……?」
猫又娘(ここ、どこ…?)キョロ、キョロ
坊主「」テテテッ
おてんば「もうちょっとー!」テテテッ
ヒョロ「いいぞ!そのまま捕まえちゃえ!」
気弱「」ハラハラ
坊主「くっそー!なんで俺ばっか追いかけんだよ!いろんなやつ狙うのが鬼ごっこだろぉ!?」
おてんば「坊主が一番追いかけやすいのよー!」
坊主「なんじゃそりゃ!?」
ワーワー!
猫又娘(……なんか、楽しそう……)
おてんば「それ捕まえた!」タッチ
坊主「はぁ、はぁ……足はえーよお前…」
坊主「ちくしょー…追いかけやすいやつってんなら、気弱を狙ってやるか」
気弱「え」ピクッ
おてんば「ちょっと!気弱ちゃんいじめたら許さないからね!」
坊主「ふざけんなよおい!?」
ヒョロ「やっば逃げなきゃ」ダッ
坊主「うおおぉ!」タッタッタッ
気弱「……」テテテッ
気弱「…ん?」チラッ
気弱「ねぇみんな、あの子」
坊主「お?」
おてんば「あら?」
猫又娘「!」
ヒョロ「初めて見る子だ!」
猫又娘(あ……ど、どうしよう…)
284 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:48:39.85 ID:hBUPAlst0
気弱「」トコトコ
猫又娘「……」アセアセ
気弱「……あなたも、一緒に遊ぶ?」
猫又娘「え…?」
坊主「いいなそれ!これで鬼じごくから解放されるぜぃ」
おてんば「どーせ次の鬼も坊主になると思うわよー」ニヤニヤ
坊主「なにぃ!?」
ヒョロ男「今日は全員で坊主狙う日だな!」
ワーワーギャーギャー
気弱「ごめんね、ちょっと騒がしいけどみんな面白い人だから。あなたさえ良ければだけど…どうかな?」
猫又娘「……いいの…?」
坊主「あたぼうよ!」
ヒョロ「ウェルカムウェルカム」
気弱「……」ニコッ
猫又娘「………じゃ、じゃあ」
おてんば「決まりね!わたしおてんばって言うの!あなたは?」
猫又娘「私…えっと……」
猫又娘「猫又娘、です」
おてんば「よろしく、猫又娘ちゃん」
坊主「よーし!鬼決め直そうぜー!」
おてんば「それはなしよ。坊主からでしょ?」
ヒョロ「異議なーし」
坊主「くっそおまえら…」
マチヤガレオラー!
ボウズガキレタ!
猫又娘「……」ポカン
気弱「…行こ?」
猫又娘「!うん」
285 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:50:09.93 ID:hBUPAlst0
ーーー夕方ーーー
坊主「──そら!」ビュン!
ヒョロ「ぐはっ」バシン
猫又娘「」ボールキャッチ
坊主「うっし、これで全員外野だな」
ヒョロ「いてて…坊主&猫又娘チーム強過ぎない!?」
おてんば「坊主がドッチボール強いのは知ってるけど、猫又娘ちゃん運動神経いいのね」
気弱「」コクコク
猫又娘「そうかな?…えへへ」
ヒョロ「全然当てらんないんだもんなー。猫みたいにかわしちゃってさー」
おてんば「じゃ、次は猫又娘ちゃんと坊主が分かれて──」
カーン、カーン
坊主「あ、もうそんな時間か。…やべぇ俺帰って宿題やんないと」
ヒョロ「…おれも」
おてんば「宿題くらい遊ぶ前に終わらせとけばいいのに」
おてんば「ま、わたしももうかーえろ。そもそもここ親に来ちゃダメって言われてるし」
ヒョロ「へー。なぜに?」
おてんば「……怖いお化けが出る、とか言ってくるの。知らないとこに連れてかれちゃうんだって」
坊主「あれ、お前お化け苦手じゃなかったか?」
おてんば「べ、別に怖くなんかないですけど何か!?」
坊主「めっちゃ怖がってるよなそれ!そんなんでよくここで遊んでたなぁ」
おてんば「…だってここ丁度いいんだもん。誰もいない手頃な空き地」
気弱「秘密基地…って感じだよね…?」
おてんば「そうそう!さすが気弱ちゃん分かってるー!」
ヒョロ「誰も来ない空き地ならこの山のてっぺんにもあるよね。あそこ、ほら、えーと…お寺のとこ」
おてんば「あそこは、なんか……変なのが出そうじゃないっ」
坊主「お祭り以外じゃ行きたくねーよなー」
286 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:50:47.19 ID:hBUPAlst0
坊主「はー、帰るとすっかー」
ヒョロ「猫又娘っちは家どこなん?」
猫又娘「え!?…とぉー…」
猫又娘(家なんて無い…)
猫又娘「…あっちの方」
気弱「私とおんなじ方向だね」
おてんば「いいないいな。わたしも猫又娘ちゃんとお話しながら帰りたいー」
坊主「また明日も遊ぼうぜ、この五人でよ」
ヒョロ「異議なーし」
猫又娘「!遊びたい!今日すっごく楽しかったから!」
猫又娘「あ……えと、あのね」
猫又娘「ありがと」ニコッ
坊主「俺らも楽しかったぜー」
おてんば「」ウンウン
気弱「……♪」ニコニコ
坊主「んじゃ、まったなー!」
ヒョロ「じゃね〜」
おてんば「猫又娘ちゃん、バイバイ!」
猫又娘「うん!バイバイ!」
猫又娘(一緒に遊ぶことは、楽しい)
猫又娘(絶対覚えておこう)
287 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:51:26.19 ID:hBUPAlst0
ーーー帰り道ーーー
気弱「……」トコトコ
猫又娘「……」テクテク
気弱「…猫又娘、ちゃん」
猫又娘「?」
気弱「今日、その…楽しかった、んだよね…?」
猫又娘「もちろんだよ。みんなと遊ぶの一生飽きないかも」
気弱「…良かった。さっき、私が無理に誘っちゃったんじゃないかなって、ちょっと不安だったんだ」
猫又娘「ううん、声かけてくれて嬉しかった!」
気弱「まだまだ元気そうだね」フフッ
気弱「……実を言うとね、私も幽霊みたいな怖いの、全然ダメなの」
猫又娘「そうなの?それじゃあ…」
気弱「うん。あの空き地も怖い」
気弱「…けど、みんなと居れば楽しくて怖さなんて忘れちゃうんだ」
気弱「私もおてんばちゃんに誘われてみんなと遊び始めたからね、一緒だよ猫又娘ちゃんと」
猫又娘「気弱ちゃん…」ジーン
気弱「だ、だからね、その……」
猫又娘「?どしたの?」
気弱「…わ、私と、友達になってくれる…?」
猫又娘「!……なる。ならせて!」
気弱「…!」パアァ
気弱「やた…!どうしよ…とっても嬉しい」
猫又娘「私もだよ。初めてのお友達だもん!」
気弱「初めて…?」
猫又娘「ぁ……私ここにお引越ししてきたばっかりなの」
気弱「そうだったんだ……そういえば、学校はどこにいってるの?」
猫又娘「………あっちの方の……」
気弱「向こうは……中央小学校かな」
猫又娘「そ、そこそこ」
気弱「そっか、残念…。私たち、南小だから学校終わってからじゃないと遊べないね…」
猫又娘「……」
猫又娘「私、放課後時間いっぱいあるからさ、毎日でも遊ぼ!」
気弱「…ふふっ、そうだね。ヘトヘトになるくらい遊ぼうね」
猫又娘「うん!!」
288 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:52:18.81 ID:hBUPAlst0
ーーー数日後ーーー
猫又娘「……」サササッ
猫又娘「」チラリ
猫又娘「……」ササッ
猫又娘「……!」
猫又娘「坊主くん見ーつけた!」
坊主「!?マジかよ!」ダッ
猫又娘「」ダッ
タタタタッ
猫又娘「…むふー」トン
坊主「いや無理!猫又娘の方がはえーのに缶蹴れるわけねーって!」
おてんば「わたしがかけっこで負けちゃうのよ?見つかったら最後、追い付けない!」
ヒョロ「一瞬で捕まりましたはい…」トホホ
気弱「すごいね…どこに隠れても見つかっちゃう」
猫又娘「えへ、みんなの気配で分かっちゃうんだ」
おてんば「気配!なんか忍者みたい!」
坊主「でもヒョロは真っ先に見つかって良かったんじゃね?お前猫又娘のことかわいいなーっつってたもんな」
ヒョロ「なっ!なんでばらすんだよ!?」
おてんば「あら?ヒョロ、まさか猫又娘ちゃんのこと」
ヒョロ「ちがっ…ないから!んなこと!」
猫又娘「……かわいい…私が…?」
気弱「うん…とっても」
おてんば「そうねー、わたしの次くらいにはね!」
坊主「うーわ始まった、おてんばのかわいい自慢」
おてんば「あぁ?」
ギャーギャー
ヒョロ「あーあ、そしていつもの二人の口喧嘩だー」
猫又娘「あはは」
気弱「……」
気弱「…ねぇ、猫又娘ちゃん?」
猫又娘「なーに?」
気弱「……こ、今度、私んちに遊びに来ない?」
猫又娘「気弱ちゃんのおうち…!」
気弱「うん。…私がね、家で猫又娘ちゃんの話してたら、お母さんが今度その子遊びに連れてきなさいって」
気弱「でもでも!嫌ならいいよ!どうせ私の家で遊んでも、面白いものないし…」
猫又娘「行く行く!」
気弱「!」
猫又娘「気弱ちゃんが居るだけで楽しいもん!行くよ!」
気弱「……お母さんに言っとくね」ニコッ
289 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:53:27.08 ID:hBUPAlst0
猫又娘(私が誰なのか、この世界が何なのか、よく分かんないけど)
猫又娘(そんなのどうでもいいや。こうして気弱ちゃんたちと遊べれば、なんもいらないもん)
ヒョロ「おーい、そろそろ別の遊びしようよ」
おてんば「ん?そうね…」
坊主「鬼ヶ島鬼ごっこやろうぜ!」
おてんば「なにそれ」
坊主「今俺が考えた!猫又娘以外全員鬼で、猫又娘を捕まえる鬼ごっこだ!鬼ばっかいるから鬼ヶ島風、みたいな」
猫又娘「え」
気弱「そんなの、すぐ捕まっちゃうよ…」
ヒョロ「4対1はそりゃあねぇ」
おてんば「わっかんないわよ?猫又娘ちゃんすばしっこいから案外苦労するかも」
坊主「そういうことだ。俺らまだ猫又娘に勝てたことないしな!」
ヒョロ「負けず嫌いなだけやんか」
坊主「……そうだよ悪いか!?」
猫又娘「…いいよー?」
坊主「まじ!」
おてんば「ふぅん、自信ありげな顔してるわね!」
気弱「え、え…私、でも猫又娘ちゃんだけ狙うなんて……」
坊主「こんな時にまで遠慮する必要ないんだぜ?」
気弱「そうじゃなくて…」
おてんば「ならこうしない?負けた方は罰ゲーム!」
おてんば「わたしたちが捕まえられなかったらこっちの負け、捕まえられたら猫又娘ちゃんの負け」
おてんば「で!負けた方は言うことを一つ聞かなくちゃいけない!」
ヒョロ「いやーそんなの気弱っちはもっとやりたくなくなるだけじゃ?」
気弱「………」チラリ
猫又娘「…?」
気弱「……そ、それなら」
ヒョロ「なぬっ」
おてんば「なんて命令する気なのかな〜?」ニヒッ
気弱「ないしょ…!でも」
気弱「つ、捕まえちゃうから、猫又娘ちゃん」
猫又娘「」ニヤリ
猫又娘「私が勝ったらみんなそれぞれに命令出来るんだよね?」
おてんば「そうよ」
坊主「おいおいまじで逃げ切る気なのか!?」
ヒョロ「絶対捕まえてやろう!」
坊主「おうよ!」
おてんば「覚悟はいい?猫又娘ちゃん??」
気弱「……」ドキドキ
290 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:54:47.30 ID:hBUPAlst0
猫又娘「にっへへー。みんなまだ私の本気を知らないでしょー」
猫又娘「私が本気出したらぜーったい捕まらないもんね!」
おてんば「なぁに?坊主みたいなこと言っちゃって」
ヒョロ「知ってる、それ負けフラグってやつだ!」
猫又娘「ふふふ……では!」
ピョコン!
四人「!?」
猫又娘「さーて!始めよっか!」ネコミミ&シッポ
気弱「…ね、猫の耳…?」
坊主「すげぇ…手品かよ」
猫又娘「手品?違うよー、これが私の真なる姿なのです!」
おてんば「」ソーッ
猫又娘「!」ピクッ
おてんば「う、動いた…」
猫又娘「ちょっとびっくりしちゃって」
坊主「俺も触っていいか…?」
ヒョロ「」チョンチョン
猫又娘「ん……や…ムズムズするぅ…」
坊主「めっちゃふさふさ……っつか生えてんのか、これ…?」
猫又娘「?うん。そうだよ」
猫又娘(みんな、そんなに珍しいのかな?)
坊主「は!?えぇ…!?なんじゃそりゃ!どうやって動かしてんだ!?」
猫又娘「そんなの普通に──」
ギュー!
猫又娘「いだぁい!!」
猫又娘(え、なに?なに…!?)
おてんば「……」
猫又娘「…おてんばちゃん…?今、耳引っ張ったの…?」
おてんば「……すごいのね。その耳どう付けたのか知らないけど頑丈なのね。ねぇどうしたらそれはずせるの?」
猫又娘「これ、私の耳だよ?」
おてんば「うん分かってる分かってる。だからどういう風にくっついてるのか知りたいの」
猫又娘「えっと…だから、これは私の耳で──」
おてんば「そんなわけないでしょ!猫の耳生やした人なんていないもん!!」
おてんば「じゃあなに!?猫又娘ちゃんは人間じゃないって言いたいの!?」
猫又娘「う、うーん……」
猫又娘「……みんなと一緒じゃ、ないかなぁ…」
四人「………」
291 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:55:43.40 ID:hBUPAlst0
猫又娘「………」
おてんば「……人間じゃない……」
おてんば「バケモノ……」
猫又娘「え…」
おてんば「……いやぁ…!」ダッ!
タッタッタッ
坊主「おい!おてんば!」
ヒョロ「な、なぁ坊主。おれらも逃げようよ…なんか怖くなってきた…!」
猫又娘「なんで…?みんな、遊ぶんじゃ…」
坊主「そうな…」
坊主「取り憑くなら俺らじゃないやつにしてくれよ、頼むから!」
タッタッタッ
猫又娘「坊主くん!ヒョロくん!」
気弱「……」
猫又娘「気弱ちゃんどうしよ…おてんばちゃんたち、どっか行っちゃったよ…!」
気弱「ひっ……こ、こないで…!」
猫又娘「気弱、ちゃん…?」
気弱「気持ち悪い…」
猫又娘「──」
気弱「」タッタッタッ
猫又娘「…!」
猫又娘「……待ってよ……行かないで……」
気弱「」タッタッタッ...
292 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:57:17.88 ID:hBUPAlst0
ーーー夕方ーーー
猫又娘「……」トボトボ
猫又娘「……」トボトボ
猫又娘「………」
(誰もいない小さな公園)
猫又娘「………」
トボトボトボ...
猫又娘「……」
猫又娘(これが公園…)
猫又娘(遊べそうなものが、たくさんある)
猫又娘(あの空き地よりも…)
猫又娘「……」ウズクマリ
猫又娘(……)
ーーーーー
おてんば「──バケモノ……」
ーーーーー
猫又娘「……なんでかな……」
猫又娘「私、みんなと遊んじゃダメなのかな……」
猫又娘「……」
フサフサ ギュ...
猫又娘「…こんな耳が付いてるから…?」
猫又娘「みんなと違うから遊べないの…?」
ーーーーー
気弱「──私と、友達になってくれる…?」
ーーーーー
猫又娘「……みんなと同じじゃないと、本当の友達になれないの…?」
猫又娘「ウソの友達にしか…」
猫又娘「………」
猫又娘「……友達って……なんだろう……」
猫又娘「………」
猫又娘(……私って、なんなの……)
猫又娘「……」グッ...
猫又娘(今ここから消えちゃえば、みんなと同じに生まれてこれるかな)
293 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:58:14.91 ID:hBUPAlst0
...ザッザッザッ
猫又娘「…!」カオアゲル
帽子少年(以下、帽子)「……」
猫又娘「……なんですか?」
帽子「……」スッ(手を差し伸べる)
帽子「お困りですか?お嬢さん」ニッ
猫又娘「へ…?」
帽子「こんなとこで落ち込んでたら、ずっと気分はくもりだよ?ほら!元気出して笑って笑って!」
猫又娘「…ほっといて」
帽子「いーや、きみが笑ってくれるまで離れない!」
猫又娘(…っ)
猫又娘「やめてよ!こんなバケモノに構わないで!」
帽子「化け物?…その猫耳とシッポ?」
猫又娘「……」
帽子「かわいいじゃん!天然物の仮装だね、100点だよ!」
猫又娘「─!」
帽子「あんね、きみが誰なのかなんて関係ないんよ。みんなみーんなが笑ってくれれば、みんな楽しくなるじゃん?」
帽子「つまり……そいっ」グイッ
猫又娘「わわっ」
帽子「よし、立ち上がれたね!ほいじゃ次は笑顔を作ろう!こーやって…」ニー
帽子「こう!」ニカッ
帽子「笑って嫌なことも面倒なことも全部吹き飛ばしちゃえ!」
猫又娘「………」
猫又娘「……ぅ……」ジワ...
猫又娘「うええぇぇん…!」ギュッ
帽子「おっとと」ダキトメ
猫又娘「うぅ…ヒック…ああぁ…!」ポロポロ
帽子「…よしよし」
帽子「いっぱい泣いたら、いっぱい笑おうか」ナデナデ
.........
294 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 03:59:32.55 ID:hBUPAlst0
帽子「──それで、その友達は逃げていっちゃったんだ?」
猫又娘「……」コク
帽子「気持ち悪くなんかないけどなぁ。何を怖がったんかな。きみ、悪さでもするん?」
猫又娘「しない……と思う」
帽子「?」
猫又娘「だって分かんないの…ついこの間気が付いた時にはここにいたんだもん」
猫又娘「…もしかしたらひどいこと、するかも…」
帽子「へーきだって。きみ悪い子には見えないしさ」
帽子「……友達が欲しいん?」
猫又娘「っ…」
帽子「友達がいれば、きみは笑ってくれるんかな?」
猫又娘「……でも、どうせみんな私から離れてく…」
帽子「だから僕が友達になるよ」
猫又娘「ふぇ…?」
帽子「僕はきみから離れない。そう言われない限りは。むしろきみに興味があるんです」ヘヘッ
猫又娘「ほんと…?離れて、かない?」
帽子「うむ!」
猫又娘「……じ、じゃあ──」
ーーーーー
気弱「──気持ち悪い…」
ーーーーー
猫又娘「……でも、ダメだよ」
猫又娘「本当の友達にはなれないよ…」
帽子「んー?」
猫又娘「私、みんなと違うから……みんなと同じじゃないからウソの友達にしかなれない…」
帽子「……」
猫又娘「……」ウツムキ
295 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:00:03.86 ID:hBUPAlst0
帽子「本当かウソかなんてどうでもいいんさ」
帽子「きみがここにいて、きみの笑顔が見たいと思ってる僕がここにいてさ、それだけでいいじゃない」
帽子「難しく考え過ぎだって。友達に本当もウソもない!仲良しなら友達でオッケー!」
猫又娘「……」
帽子「…やっぱ、怖いん?」
猫又娘「……怖い、けど……」
猫又娘「ねぇ…ほんとに離れてかない…?」
帽子「もちろん」
猫又娘「私、気持ち悪くないの…?」
帽子「全然」
猫又娘「……」
帽子「……」
猫又娘「…絶対だよ!私を一人にしたら、呪っちゃうから…!」
帽子「おーこわいこわい」ニシシッ
帽子「その調子で明日はもっと元気なきみを見せておくれよ」
帽子「じゃ、帰りますかね〜。もう暗くなってきたし」
帽子「きみを家まで送ってしんぜよう」
猫又娘「……家、ない……」
帽子「んぇ?…あー、そか」
猫又娘(……)
帽子「僕の家来る?」
猫又娘「!…いいの?」
帽子「僕んち無駄に広いからきみ一人隠せる部屋くらいいくらでもあるんさ」
296 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:00:33.01 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
帽子「これが僕んち」
猫又娘「大きい…」
帽子「でも住んでんの僕とじいちゃんだけなんだよね。縁側とかも多いから掃除が大変でさー」
帽子「ちょっと隠れててね」
猫又娘「」ササッ
帽子「じいちゃんただいまー!」ガラッ
祖父「……うむ」
祖父「…今日は、少し遅かったな」
帽子「すごーく落ち込んでる子がいてさ、泣き止むまで慰めてた」
祖父「……そうか」
祖父「夕食、出来てるぞ。早く食べなさい」トットットッ...
帽子「はーい!」
帽子「……よし、行こう行こう」
猫又娘「……」
帽子「どしたん?今なら見つからんよ」
ドロン
仔猫「…ニャ」
帽子「おぉ…!すごい、それなら安全に潜入できるな!」
帽子「あ、なんだっけ、確か…」
仔猫「?」
帽子「そうだ!猫又!」
帽子「人に化けられる猫のこと、そう言うんだって!あれ?猫に化けられる人か?…ま、どっちでもいっか!」
祖父「冷めてしまうぞ、早く食べなさい」
帽子「今行くー!」
297 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:01:31.12 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
帽子「さーて、と」
仔猫「」オスワリ
帽子「ご飯、あれだけで足りたん?」
仔猫「……」コクリ
帽子「僕なら絶対お腹空きまくる量だわな」
帽子「んで、部屋決めなー」
帽子「今いるのは大部屋。ここはよくじいちゃんがお客さんとか連れてくるからなしとして」
帽子「向こうの和室3つ、あっちは物置になってる部屋、そこの右行ったとこにもおんなじような部屋があって」
帽子「一応そっちの廊下の奥が僕の部屋」
帽子「うーむ…まぁ物置部屋なんかが布団もいっぱいあるし、悪くないかもな〜」
仔猫「……」
ドロン
猫又娘「…キミの部屋」
帽子「おぅ?」
猫又娘「キミの部屋がいい」
帽子「へ。僕はいいけど、あんま広くないよ?」
猫又娘「……一人は、やだ」
帽子「……」
帽子「よぉーし、では一名様ご案内!」
それからの日々はすごく目まぐるしかった覚えがある。
298 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:02:26.63 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
帽子「お困りですか、おばあさん?」
老婆「荷物が重くて、階段が上がれなくてねぇ…」
帽子「それくらい僕が持ちますよ!上まで一緒に行きましょう!」
老婆「ありがとうねぇ」
帽子「きみはおばあさんがバランス崩さないように支えてあげて!」
猫又娘「うん」
キミは誰彼構わず助けの手を差し出していた。
299 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:03:05.14 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
高学年「ここの公園は俺らが使うんだから他所に行けよ」
帽子「まぁそんなかたいこと言わずにさー、みんなで仲良く、ね?」
低学年の子たち「「「………」」」
高学年「やだよ、狭くなんじゃん」
帽子「あ!ならさ、こういうのはどう?そのボール使ってドッチボール勝負!勝った方が今日この公園を使える!」
高学年「えー?チビ達とやんの?どうせ弱い者いじめしたとか言って先生にチクる気だろ」
帽子「ノンノン。あの子たちの代わりに僕と、この人の二人で相手しますぜ」
猫又娘「わ、私も?」
高学年「……ぎゃはは!たった二人かよ!俺たち六人いるけど、速攻で負けても文句言うなよなー、はははっ!」
高学年「しかも一人は女子かぁ。ま、痛くないように当てっから安心しな」プクク
猫又娘「」ムッ
ーー5分後ーー
高学年「ま、参りました……」
猫又娘「……ふぅ」
帽子「わお…」
高学年「…ちぇ、分かったよ。約束だかんな、今日は俺らが別んとこ行くよ」
テクテク
帽子「また遊ぼうねー!」
高学年「うっせ!バーカ!」
帽子「……にしても、きみすごい機敏──」
テテテッ
低学年女子「お姉ちゃんありがとー!」
低学年男子「すっげー!どうしたらあんな風に動けんの!」
ワーワー!
猫又娘「え、え…!私は、えっと…」
帽子「……はは」
帽子「みんな?公園を取り返してくれたお姉ちゃんにお礼だ!」
低学年の子たち「「「お姉ちゃんありがとうございました!」」」
猫又娘「……どう、いたしまして」テレテレ
キミといるようになってから、この世界に溢れてる愛が、少しずつ見え始めてきた。
300 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:03:51.13 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
帽子「あっちぃ……夏バテかいな…」ナデナデ
帽子「あのーもしもし?そろそろ足が痺れてきたよ?」ナデナデ
仔猫「……」チョコン
帽子「……分かりましたよお姫様」ナデナデ
仔猫「♪」
帽子「家臣はこんな時のために取ってきておいたアイスでも食べますかね」ガサガサ
帽子「んー!やっぱこれが一番だな!」
仔猫「……」
ドロン
猫又娘「」パクッ
帽子「ちょっ」
猫又娘「冷たくて甘い」
帽子「あー!僕のアイス…」
帽子「なんてむごいことを!」
猫又娘(だって、キミの好きなものは全部知っておきたいから)
猫又娘「…ごちそうさまでした」ニコッ
帽子「!」
帽子「…いいね、その顔」
帽子「いや〜、最近よく笑うようになってきて僕は嬉しいよ。初めて笑顔見るまで苦労の日々だったもんなぁ」
301 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:04:30.79 ID:hBUPAlst0
帽子「…しかし、これはこれ、それはそれ。おイタした罰は受けてもらうよ?」ガシッ
猫又娘「な、何する気…」
帽子「ふっふっふ……くらえ!くすぐり攻──!」
猫又娘「…!」
帽子「──げきぃ……」グデ
猫又娘「…?」
帽子「ダメだぁ…気力が暑さに吸い取られる…」
帽子「アイスのことはもういいや…僕はちょっとだけ寝る…」
猫又娘「……」
猫又娘「手伝う」
帽子「ほえー…?」
猫又娘「……ねむれねむれや、ゆらりゆられ」〜♪
猫又娘「たなびくくものごとし」〜♪
帽子(あー…子守唄かなぁ…)
猫又娘「おやまもさともよるのなか」〜♪
猫又娘「はかなきゆめみんとす」〜♪
帽子(どことなく…懐かしい唄だなぁ……)
帽子「」スヤスヤ
猫又娘「はやい…」
猫又娘(……かわいい寝顔)
猫又娘「……」クスッ
猫又娘「あわれあわれやだれぞおにか」〜♪
猫又娘「てのなるところにおちて」〜♪
〜〜♪
キミといるとなぜか私の心の中は、暖かい光で満たされるようになっていった。
302 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:05:33.03 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
猫又娘「ねーねー」
帽子「なーにー」
猫又娘「真似っこ禁止!」
猫又娘「キミはなんでいつも誰かを助けようとするの?」
帽子「みんなを笑顔にしたいから」
帽子「そんなん夢物語だって分かってんだけどさ、この町の人全員笑顔に出来たらいいなってね」
猫又娘「…なんで?」
帽子「笑ってるとたのしーじゃん?」
猫又娘「……」
帽子「……」
帽子「」ヘンガオ
猫又娘「あはは!もう不意打ちも禁止!」
一度キミの学校までこっそりついて行ったことがあったよ。
ーーーーーーー
帽子「──!──、───♪」
「──?」
帽子「───!!」
ワハハハ
仔猫「……」
キミの周りはいつも笑顔の人でいっぱいだ。
私も……キミと一緒に笑っている時が一番楽しかった。
ずっとこんな日が続けばいいなって、思ってた。
303 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:06:38.14 ID:hBUPAlst0
ーーー夕方 帰り道ーーー
猫又娘「♪」テクテク
帽子「今日めっちゃご機嫌だね、何かあった?」テクテク
猫又娘「なにもー♪」
帽子「いやいや絶対何かあったっしょ!?」
猫又娘(さっき助けたおじいさん、私とキミを見て、かわいい彼女さんだって…)
猫又娘(♪)
猫又娘「ねね!今日のご飯なにかな?」
帽子「なんだろなー。昨日は肉だったから、今日は魚?」
猫又娘「やった」
帽子「魚好きなところはさすが猫だよねぇ」
猫又娘「にゃーん♪」
帽子「それは仔猫姿の方がかわいいな」
猫又娘「……ひっかく」
帽子「そんな!?」
猫又娘(今日も楽しかった。この人といるだけでなんでも楽しく感じられる)
ーーーーー
気弱「──気持ち悪い…」
ーーーーー
猫又娘(…この世界には、辛いこともある。けどきっと、それ以上に楽しくて暖かいことがあるんだ)
猫又娘「明日はどこに行こっか?」
帽子「そうなー、久々にあの公園にでも行ってみるか!きみと出会った公園!」
猫又娘「!…いいかも!」
帽子「あそこでまた泣きそうな子がいたら、今度はきみが励ましてみるかい?」
猫又娘「ぬぬ…それはあんまり自信ないよ…」
帽子「ははっ、まだまだ精進が足りとらんようだな?」
──ブオオォ
帽子「ん?」フリムキ
トラック「」ゴオオオォ!
304 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:12:08.61 ID:hBUPAlst0
帽子「──!」
帽子「危ない!!」ドンッ
猫又娘「え…!?」
ゴスッ!
ゴロン、ゴロンゴロン
ドサッ
ブオオォ...
猫又娘「いたた…」
猫又娘(なに?何が起きて…)
帽子「」
猫又娘「え…………」
猫又娘(……?この腕の千切れたお人形さんは……え?……キミ……?)
猫又娘「……ね、ねぇ、起きて」
帽子「」
猫又娘「嘘だよね…?いつもみたいにまた、笑って起き上がる気なんでしょ?」
帽子「」
猫又娘「ねぇ」
帽子「」
猫又娘「ねぇってば!」
帽子「」
猫又娘「……」
帽子「」
猫又娘「………」
猫又娘「……約束したじゃん……」
猫又娘「離れないって……」
帽子「」
猫又娘「………」
猫又娘「………」
猫又娘(………)
305 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:13:00.47 ID:hBUPAlst0
ーーー帽子少年の家ーーー
テレビ『──次のニュースです。今日夕方、一台の大型トラックが暴走。次々と人を轢いて200メートル程走り続け、最後は民家の塀にぶつかって止まりました。この事故で死傷者が数名出ており、トラックのドライバーは──』
仔猫「……」
運命は残酷だ。
ーーーーーーー
ザー
「やべ、めっちゃ降ってんな…傘入れてくんない?」
「おう」
仔猫「……」トテトテ
仔猫「……」トテトテ
「ママ!」
「どうしたの?」
「あそこの猫ちゃん、びしょびしょ」
「あら…こんな雨なのに…」
仔猫「……」トテトテ
仔猫「……」トテトテ
.........
306 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:13:47.51 ID:hBUPAlst0
ーーーーーーー
猫又娘「……」テクテク
猫又娘「……」テクテク
猫又娘(……なんで、キミはこんな私を庇ったの…?)
猫又娘(何も出来ない私なんかより、笑顔を振りまけるキミの方が、生きてなきゃいけないのに)
ーーーーー
帽子「──友達に本当もウソもない!仲良しなら友達でオッケー!」
ーーーーー
猫又娘(………)
猫又娘(……私は、またひとりぼっち……)
猫又娘(………)
猫又娘(……キミと笑うことが出来ないのなら、もういっそ……)
低学年女子「あ!ドッチボールのお姉ちゃん!」
猫又娘(…確か、あの公園の…)
低学年女子「こんにちは!」
猫又娘「…こんにちは」
低学年女子「あのねあのね、お姉ちゃんのおかげでね、あそこの公園いっぱいの人たちと遊べるようになったの!」
猫又娘「…?」
低学年女子「前のこわいおにいさんたちも一緒に遊んでくれるの」エヘヘ
低学年女子「お姉ちゃんが仲良しこよしの魔法をかけてくれたんだよね!ありがとー!」
テッテッテッ...
猫又娘「あ…」
猫又娘(行っちゃった…)
猫又娘「…魔法…」
猫又娘(……そんなことが出来たら、私は今頃キミを……)
307 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:14:49.58 ID:hBUPAlst0
猫又娘「………」
猫又娘「……………」
猫又娘(………ううん、そうじゃない)
ピョコン
猫又娘「……」ネコミミ&シッポ
ドロン
仔猫「……」
ドロン
猫又娘「……」
猫又娘(私にはこれがある)
猫又娘(私自身も"変える"力)
猫又娘「………」
猫又娘(……そうだね)
猫又娘(キミが置き忘れたまっすぐな正義は、私が拾い上げればいい)
ーーーーー
帽子「──みんなを笑顔にしたいから」
帽子「──笑ってるとたのしーじゃん?」
ーーーーー
猫又娘「………」
猫又娘「…本当か嘘かなんてどうでもいいんさ」
猫又娘(だから、私がキミの正義を振りまいてもいいんだよね?)
猫又娘(私がキミのフリをすることで、世界を照らす光になれるなら、キミはきっとまた笑ってくれる──)
猫又娘「……」
猫又娘「……」
猫又娘「…にゅふふ」
強がる世界にバイバイ。それはみんな、笑顔に変えちゃおう。
キミが望んでいた世界を作れますよう、私は今日も笑う。
笑ってキミのフリをする。
猫又娘「──お困りですか?みなさん!」
=======
308 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/01/14(火) 04:15:38.33 ID:hBUPAlst0
例えば、子供が大人のフリをして大人と笑い合うように。
キミのフリをずっと続けていれば私は、キミとずっと笑えると思ったんです。
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