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絵里「例え偽物だとしても」
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570 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:23:03.22 ID:Kb3Xmjfp0
歩夢「あっ…!」
曜(そうして私の二発目の蹴りが当たり、相手の持つアサルトライフルが手元を離れて宙を舞えば次に起こる運命はもはや決まってた)
曜「チェックメイト、さよならだね」
バァンッ!
歩夢「ぁ…!!」
曜「……ふう、呆気ないね」
曜(銃を弾かれて怯む相手の脳天に一発ハンドガンの銃弾を撃ち込むだけ————それだけ相手は死んだ)
曜(穂乃果ちゃんの上位互換とはいえど経験に勝るステータスはない、次世代モデルと言われるくらい最近出来たアンドロイドなら戦闘経験も少ないし、銃を弾かれただけで回避行動にも移れないのはまだ稚拙なメンタルを持っている証拠で、まだまだ未熟としか言いようがない。小さい頃から色んなのと戦ってきた私に性能だけで勝とうなんて思わないでほしいね)
曜「………」
曜(固いコンクリートの上に染み込む赤色は久々の感覚だった。何かを…生き物を殺す感覚————これほどまでに爽快で、不快で、中毒的で、忌々しい感覚は早々ない)
曜(アンドロイド隔離都市東京では今日も人が死ぬ)
曜(その犠牲者を私は作り上げたんだ。この手で。この銃弾で)
571 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:24:26.23 ID:Kb3Xmjfp0
曜「…まぁいいや、みんなと合流しないと」
曜(戦いは終わった、なら私のするべきことは仲間の誰かと合流すること。だからすぐさま止めた足を動かした)
バンッ!
曜「っ!?」シュッ
曜(…そう、“誰か”の放った銃弾のせいでね)
曜「っぶな…!」
歩夢「これも効きないんだね」
曜「な、なんで!?今頭を撃ったよね!?」
歩夢「私は新型だよ?未踏の地っていうのは踏むためにあるんだよ」
曜「くっ、厄介だね…新型ってやつは」
曜(どういう仕組みなんだろう…頭を撃っても死なない……何が起こってるんだろう…)
572 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:25:27.01 ID:Kb3Xmjfp0
歩夢「うんそうだよ!だから私が死ぬまでちゃんと付き合ってね!」カチャッ!
曜(空気を切り裂く銃弾は絶望への一手だった。頭を撃っても死なないとなると有効な対処法が見つからない)
曜「仕方ないね!でもすぐ片付けるよ!」シュッ
曜(…とは言ったけど、アンドロイド相手にがむしゃらに撃っても当たるはずがなく、だからといって弱点が見当たらないんじゃ撃つ意味もない。ほんの一瞬だけこいつは死なないのでは?と考えたけどそんな馬鹿な話あるはずがない)
曜(ここは一旦引くか…いやでも逃がしてくれるかな……思い付く作戦は懸念と不安が瞬時にかき消してくる)
曜「…いや」
曜(やるしかないか…未知との戦闘なんて今まで何回もあった、何も初めてではないんだから臆する必要なんてないよね)
曜「…そうだね!そうこなくっちゃ!」
曜「やろうよ!バトル!」
曜「殺しあいをさ!!」ドドド!
曜(サブマシンガンで数発撃って回避をさせてから相手に近付いた。相手は回避と同時にこちらへ発砲してきたけど射線が見える私には足止めにもならない)
573 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:27:16.67 ID:Kb3Xmjfp0
歩夢「またCQCって相当近接戦闘が好きなんだね!」
曜「銃で戦うよりよっぽと安定性があるからね!」
曜(お互いが同じ状態――――いわば、射線が見えて並外れた運動神経を有すアンドロイド同士の戦いを仮定した時に一番有効なのは近接攻撃だ)
曜(私はアンドロイドではないけど、恵まれた運動神経と靴に施されているブーストはアンドロイドの身体能力に対して引けを取らないと自負してる、だから結局ここでは近接攻撃が要になるはずだ)
曜(幸いにも相手は経験が浅いせいなのか自分自身の有効手段に気付いていない、なら悟られる前に一気に方をつけるだけ)
曜「ふんっ!」
曜(颯爽と相手の顔目掛けて右ストレートを打ちこめば相手は軽く顔を横に動かし回避してみせた、そうしてやってくる相手は裏拳を使い大きく半円を描きながら私の顔目掛けて打撃をいれてきたので私はしゃがんで回避し、そのまま足払いをし相手を宙に浮かせた)
曜「これでどう!」バンッ!
曜(宙に浮いた相手の心臓部——胸に向かってハンドガンで発砲し、見事命中。貫いた場所からは血が噴出してて死亡確認も出来た)
曜(……はずだった)
574 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:28:30.44 ID:Kb3Xmjfp0
歩夢「それで勝ったつもり?」
曜「なんでっ!?」
曜(死に際に絶望を悟ったような無表情な顔から一変、薄気味悪い笑いを浮かべて喋った相手。笑うや否や両手から着地し次の一瞬でひざをつき四つん這いのような状態から、膝を上げ立ちながら後ろ回転をし、先私の方へ来る左足で後ろ回りにローキックを繰り出してきた)
曜「ぎっ…」
曜(もちろん一発銃弾を撃ち込んだ直後の出来事だったから、私にそれを回避する術はなかった。結果私はさっきの相手と同じよう宙に浮いた)
歩夢「さっきのお返しだよっ!」
曜(そう言って飛んでくる飛び膝蹴りは私のお腹にヒット。ここで顔を狙うのではなくてお腹を狙うのが何とも厭らしいかった)
曜「けっ…かはっ……ああぁあああっ!!」
歩夢「痛いよね、私も分かるよ?でもあなたと私じゃ決定的な違いがある」
曜「ああああぁ…!うああああああっ!!」
歩夢「そりゃあアンドロイドの一撃だもん、人間の一撃なんかより数倍痛いに決まってるよね」
575 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:29:04.71 ID:Kb3Xmjfp0
曜「うっ…おえええぇ……」
歩夢「ぷっふふふっ…汚いなぁ」
曜「ああああぁ…ッ!」
曜(数メートル吹っ飛ばされた私に反撃する力はなかった)
曜(悶絶して、のたうち回って、苦しみの絶頂に達して……今まで味わったこともない激痛は口から様々なモノを噴射させた)
曜「あぁあああっ…ッ…!!」
歩夢「何?そろそろ痛いのが辛いから死にたい?」
曜(血、吐瀉物、悲痛な叫び、空気、もう私の口は何が何だか分からなくなってた)
曜「あああああああ…あぁ…あああ……」
曜(……ダメだ、頭がぼーっとしてきた。視界がぼやけてきて、不意にたくさんの白を描く夜空へ手を伸ばすと次の瞬間には力が入らなくなって手がそのまま地面に力なく落ちてきて、ついに私も死ぬんだ——なんて自覚が出てきた)
576 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:29:51.63 ID:Kb3Xmjfp0
歩夢「……潮時だね、ありがとう。誰だか分からないけどあなたは強かったよ、きっと私が最新型じゃなければ負けてたね」
歩夢「それじゃあね」カチャッ
曜「……ぁ」
曜(死を悟って目を瞑った、さっきの攻撃では咄嗟に取り出せなかったハンドガンの銃口を私の頭に向けて終わりへのトリガーを引こうとしてた)
曜(……そう、引こうとしてた)
577 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:30:19.77 ID:Kb3Xmjfp0
曜「…っ!!」カチャッ!
歩夢「っ!あっ!?」
曜「はあああああっ!」ダッ
曜(一瞬は諦めた、けどまだ諦めきれない。そんな思いは私の手を動かした)
タッタッタッタッ
曜「はぁはぁはぁ…!」
曜(私の銃にはレーザーサイトという銃口が向いてる先を人には無害な光のレーザーによって可視化するアタッチメントがついてる。これをつけることで狙っている先が分かり相対的な射撃の精度上昇が見込める)
曜(しかしそんなサポートに徹したようなアタッチメントだけどこのアタッチメント、強力な光を使ってレーザーを発してるわけで、それを人の目に向ければスタングレネードにも負けない強力な閃光になる)
曜(それを知ってた私は悪あがきにハンドガンについたレーザーサイトの光を相手の目に向けた)
曜「よしっ…なんとか…ッ!」
曜(そうして結果は大成功、最後の力とも言っていいその力を振り絞って全力で逃げた。もちろんは相手は追ってくるだろう)
578 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:31:45.68 ID:Kb3Xmjfp0
ドカーン!
曜(……今の爆発で傷を負っていなければだけどね)
曜(希ちゃんみたいなことをしちゃったよ、やっぱりグレネードって不意打ちに使う道具なんだね、よく分かった)
曜(相手が怯んだその隙にグレネードを転がして私は逃げる)
曜(経験と知識があってよかった、その時は心底そう思った)
タッタッタッタッ
曜「はぁはぁ…!まだっ…止まれない…!」
曜(無我夢中で走った、生き延びる為————この大きな戦争に勝つ為に)
曜「んうう…!んぇ…」
曜(死んでしまうほどの激痛も今は我慢するしかない…逃げ切ったことが今は奇跡なんだから一切合切死んだって仕方ない。仕方ないから今は痛みを堪えて逃げるだけ)
曜(そうして私が向かった先は————————)
579 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:37:22.03 ID:Kb3Xmjfp0
〜同時刻
ドカーン!
穂乃果「くっ…」
せつ菜「右から来ますよ穂乃果さん!」
穂乃果「分かってる!」シュッ
「行って姉様!」
「もちろんです!」ドドドドッ!
穂乃果「きゃっ…!」
せつ菜「スモーク!」ポイッ!
穂乃果「ありがとうせつ菜ちゃん!」
せつ菜「一度合流しましょう!」
穂乃果「うんっ!」
穂乃果(現在私たちは敵本拠地Y.O.L.O直前ですらない暗い森の中だった)
穂乃果(作戦通り私たちはY.O.L.Oを前から押していくつもりだった、だけどそんなところにいく暇もなく敵は現れた)
580 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:38:21.90 ID:Kb3Xmjfp0
穂乃果「あれがY.O.L.Oを防衛するアンドロイドの二人か…」
穂乃果(向かう途中それは突然戦いの幕が切って落とされる。不意の銃撃をギリギリで躱して次に飛んでくるのはスタングレネードで、それをせつ菜ちゃんが狙撃すれば相手と私たちの間で眩い光が発生し、戦いはたちまち目まぐるしいものへと変化を遂げた)
スタスタスタ ピタッ
穂乃果「……どうする?」
せつ菜「まさかここまでやれるアンドロイドがいるなんて驚きですよ…」
穂乃果「…そうだね」
穂乃果(せつ菜ちゃんが投げたスモークグレネードにより一時的に相手と私たちの間に壁が出来たから、その間にお互いゆっくりと背中を合わせ僅かな時間で次の行動を話し合う。フィールドが森だから視界が悪く時折足元がいれくんでいるところもある、だからこの戦いでは如何に私たちのアドリブ力があるかが試される)
581 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:39:02.38 ID:Kb3Xmjfp0
せつ菜「…相手のコンビネーションプレイはもはや私たち以上です、あれは絶対に機械的に意思疎通をしてていわば知覚共有をしてるとしか考えられません……」
穂乃果「…ならどうする?一旦引く?それとも何か攻略法を見つけに戦う?」
せつ菜「……分かりません」
穂乃果「………」
穂乃果(相手の人数は二人、こちらの人数も二人————その中で重要視されるのは一人がアクションを起こした後の相方のカバーだよ。どれだけ息の合った戦いが出来るか、それだけで何もかもが違う)
穂乃果(私とせつ菜ちゃんはずっと前から二人で戦ってきた)
穂乃果(それはつまりタッグバトルのプロ、阿吽の呼吸でもありその言葉要らずに通じる私たちだからこそ最強と謳われてきた)
582 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:41:18.03 ID:Kb3Xmjfp0
穂乃果「…なんて言ったっけ、あの人たち」
せつ菜「理亞さんと聖良さんですよ」
穂乃果「……姉妹なんだよね」
せつ菜「設定上はそうらしいですね」
穂乃果「………」
穂乃果(…それなのに、あの姉妹は私たちをも驚かせるコンビネーションプレイを見せてきた。それは今までにないくらいの強敵で、対アンドロイド特殊部隊を壊滅に近づけられるほどの強さだと思う)
聖良「そこにいるのは分かってますよ」
理亞「逃げてもいいけど、それじゃあ軍神とトリックスターの名が廃ると思うんだけど?」
穂乃果「…お姉ちゃんの方を狙おう。妹の方は持ってる武器が厄介だから妹を追うよりお姉ちゃんを狙った方が戦いやすいはずだよ」
せつ菜「分かりました、カバーをしますけど何が起こるか分からないので気を付けてください」
穂乃果「もちろんだよ」
583 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:42:38.85 ID:Kb3Xmjfp0
穂乃果「…じゃあ行こうか」
せつ菜「はいっ!」
ダッ!
穂乃果(二人同時にそれぞれ別方向へ大きく放物線を描き相手を挟むように走った、視界が悪い上に木という壁がある為に私たちが向かっているということを把握していてもどこからくるのかはわからないはずだよ、それに二人相手だっていうならこっちも二人で制す他ない)
せつ菜「はっ!」穂乃果「はっ!」
穂乃果(相手もさっきの私たちと同じように二人固まってた為にせつ菜ちゃんと同じタイミングで跳躍し二人を挟んで発砲した)
聖良「そのくらいの攻撃なら既に予想済みです」
穂乃果(だけど流石にこれじゃあ死にはしないよね。相手はお姉ちゃんが前方向へ走り、妹が後ろ方向へ走り出した)
穂乃果(もちろんそうなれば私もせつ菜ちゃんもお姉ちゃんである聖良って人を狙う。けど、妹のカバーの早さは尋常じゃない、自分が狙われてないと分かった途端私へ発砲しながら全力疾走で私へ近づいてきた)
584 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:44:01.63 ID:Kb3Xmjfp0
理亞「姉様!」
聖良「分かってますよ!」
穂乃果「何っ!?」
穂乃果(妹の方の持ってる武器はとにかく軽く、それ故に動きが俊敏だった。だから私が姉の方に意識を向け発砲してる間に妹は私のすぐそばまで来てて、手に持つサブマシンガンを鈍器のように扱い私に向かって殴ってきたのでそれを後方へと跳躍し回避すると感じる死の感覚)
穂乃果(射線が私の頭を貫いてる、そうと分かった次の展開はもう目に見えてる)
穂乃果「またッ…!」
ドドドドッ!
せつ菜「穂乃果さんっ!?」
穂乃果「っあ…!まだッ!」
穂乃果(咄嗟に空中での体をねじって頭部への命中は避けた、だけどそれでも肩へと命中し後の祭り感は否めない)
585 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:44:58.61 ID:Kb3Xmjfp0
穂乃果「いだぃ…!!」
理亞「ここで死ねば楽になるよ軍神!」ババババッ!
穂乃果「それは絶対にいやあっ!」シュツ
穂乃果(痛みに耐えながら着地しても私へ歯向かう射線は消えない)
せつ菜「跳躍で回避しちゃダメです穂乃果さん!」
穂乃果「!」
穂乃果(不意にせつ菜ちゃんの叫びが私に耳に届いた。確かにそうかもしれない、一つの行動で早く長い距離を移動できる跳躍は回避する方向が一定な上にした後の行動がだいぶ限られる。さっきはそれを利用されて私はダメージを受けた)
穂乃果(なら走って逃げるだけ、幸いにもここは木が多いからそんなに早く走らなくても木を使って銃弾を回避出来る)
586 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:46:33.78 ID:Kb3Xmjfp0
ドドドド!
穂乃果「はっ!」シュッ
聖良「ちっ…木が多い場所である森をフィールドにしたのは間違いだったかもしれませんね。後少しのところで隠れられるともどかしいです」
理亞「姉様、そんなことはないと思うよ」ポイッ!
穂乃果「! グレネード!」
穂乃果(木で隠れられるのはいい、けどその後に展開を見据えてみると木に隠れるというのは悪手だ)
理亞「相手が隠れるというのなら、炙り出せばいいだけの話」
穂乃果(木なんていう縦に伸びただけのオブジェクトは投げもの一つで簡単に移動を強いることは出来る。それじゃあ隠れる意味がまるでない)
穂乃果(グレネードが飛んできたのを察知した私は木から飛び出すと同時に肩を押さえながら妹に向かって発砲した、肩を射貫かれたせいで狙いはでだらめではあるけど発砲はまだ出来る。だから威嚇射撃程度にトリガーを引き続けた)
587 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/03(木) 19:47:23.93 ID:Kb3Xmjfp0
せつ菜「手伝いますっ!」パサパサパサッ
穂乃果「うんっ!」
穂乃果(私が木から飛び出し発砲したと同時に相手の後ろに回ってたせつ菜ちゃんも発砲。ちょっと唐突だったけど綺麗なクロスファイアが組まれもちろん相手も回避に移るけどこれで終わる私たちじゃない)
穂乃果「カバーはさせないよっ!」バンッ!
聖良「なっ!?」
穂乃果(妹に向かってはアサルトライフルで、お姉ちゃんに向かっては腰にかけてあったハンドガンで応戦する。アサルトライフルを持つ片方の肩はあまり使い物にならないけど、それでも使えないわけじゃない。だからここは無理矢理にでも発砲して二つの武器を同時に発砲する荒業で戦況をいい方向へ加速させた)
理亞「うわっ!?」
穂乃果(相手二人が同じ方向に逃げたもので妹に撃った銃弾は下手すりゃお姉ちゃんにも当たる。相手から見て射線はどんな感じに見えてるのだろう、想像しただけでも怖いものだよ)
588 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:48:40.75 ID:Kb3Xmjfp0
理亞「ぎっ…いったっ……!!」
聖良「大丈夫ですか!?」
理亞「大丈夫…まだ…まだ大丈夫…!」
穂乃果「後少しだったのに…!」
穂乃果(相手の首元を少し抉った。後一センチでも中心に近かったら相手を殺せてた、でもここで悔しがってちゃいけない。弾はまだ10発残ってる、リロードをする前に仕留めたい)
聖良「こちらも避けてるだけじゃないですよ!」ドドドド!
穂乃果「ちぃ…っ!」タッ
穂乃果(ここで攻撃に転じるのが手練れの証なのかな。妹は逃げに徹して姉は私に向かって発砲してきた)
穂乃果(もちろんそれを走り込みで回避すれば今度は別の方向から飛んでくる銃弾、せつ菜ちゃんも弾を使い切った今はカバーもないからここは自分でなんとかするしかない)
589 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:50:32.68 ID:Kb3Xmjfp0
タッタッタッタッ
理亞「旧型のクセに随分と性能がいいんだね!」
穂乃果「そっちこそ新型のクセに旧型と対になってしまうくらい性能が悪いんだね!」
聖良「安い挑発に乗るつもりはありませんよ」ドドドド!
穂乃果(私が走れば妹もお姉ちゃんも走ってくる。風を切る音が三つ…いや四つあって二人の銃弾を躱していればようやくカバーが回ってきた)
穂乃果「いち…にい…さん…」
穂乃果「今っ!」
せつ菜「せいっ!」ポイッ!
聖良「何っ!」
理亞「ピン抜きグレネード…!?」
穂乃果「ハァッ!」ドドドドッ!
穂乃果(せつ菜ちゃんはさっき弾切れを起こした時からリロードなんてするつもりはなかった、私が走り出した瞬間グレネードを二つ用意して二人を追いかけた。そうして私が手を下げてさりげなく三本指を立ててカウントダウンをした)
穂乃果(それに気付いたせつ菜ちゃんはカウントダウンを開始した直後にグレネードのピンを抜いた。結果せつ菜ちゃんがグレネードを投げると同時に私が二人に向かって発砲する…完璧なコンビネーションプレイだよね)
穂乃果(前門の私、後門のせつ菜ちゃんだよ)
590 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:54:44.34 ID:Kb3Xmjfp0
穂乃果(前門の私、後門のせつ菜ちゃんだよ)
ドカーン!
せつ菜「……終わった」
穂乃果「………」
穂乃果(私の目の前で大きな爆発が広がった。木の葉を吹き飛ばし木々を燃やし地形を崩すそんな爆発が大きな赤と共に弾けた)
シュッ
聖良「残念ですね」
穂乃果「っ!?」
理亞「終わったのはあなただよ」
ザシュッ!
穂乃果(何が起こったんだろう、爆発の赤からものすごいスピードで飛び出してきた二人——そして次の瞬間に感じるバカみたいな痛み)
穂乃果(力が抜けていくのを感じる。視界が歪んでいくのを感じる。手元から銃が放れていくのを感じる——そう色々なモノを感じた上で、不意に私の体は急激な退廃を迎え始めた)
591 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:55:50.63 ID:Kb3Xmjfp0
穂乃果「ぁ……」
バタッ
せつ菜「穂乃果さんっ!?」ダッ
穂乃果「………」
せつ菜(……まだ生きてる…!)
せつ菜「…でも……ッ!」
ドドドドッ!
せつ菜「!」シュッ
聖良「悲しむ時間を作ってあげるほど私たちは優しくありませんよ」
理亞「あなたも今ここで死ぬのだから」
せつ菜「くっ……」
せつ菜(穂乃果さんの脈を確認したけどほんの微かに動いている、けど両の肩をナイフで斬られた穂乃果さんの寿命はもうない。すぐにでも手当てをして延命しないと…でもこんな状況じゃ助けられない…!!)
592 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:56:48.36 ID:Kb3Xmjfp0
タッタッタッタッ
聖良「やはりあなた方は所詮旧型ですね、カウントダウンのやり方がアナログすぎます」
理亞「指で合図は流石に分かりやすすぎるね」
聖良「ええ、おかげで爆風を利用して軍神を仕留めることが出来ました」
理亞「……正直ちょっと痛かったけど」
聖良「痛かったですね」
せつ菜「ふざけないでください…!」
理亞「悔やむなら旧型として生まれた自分を恨むことだね、さっきの行動は新型であったならきっとこうはならなかったから」
せつ菜(近づく死の音————遠ざかる穂乃果さん。このもどかしさは今までに感じたことのない感情だった)
せつ菜(私の相棒…ううん家族が今死のうとしてるのに私は逃げることしかできないなんてそんな最悪の一言以外何も無かった)
せつ菜「どうすればっ…」
せつ菜(でも、今ここで二人に挑んでも勝てる未来が見えない。新型旧型以前に数で劣る私に勝てる道があるなら誰か教えてくださいよ…!)
593 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:59:10.07 ID:Kb3Xmjfp0
ザーザーザー……
せつ菜「!」
せつ菜(そんな時私のつけてたカチューシャ型の通信機に一つの応答が入った)
穂乃果『せつ菜…ちゃ……』
せつ菜「穂乃果さん!?」
穂乃果『わた…し…の…こと、は…もう……いい』
穂乃果『だから……にげ……てぇ…』
せつ菜「いやです!絶対に逃げません!穂乃果さんと一緒に帰ります!」
理亜「帰らせないけどね」ドドド!
せつ菜「邪魔しないでください!」パサパサパサッ
穂乃果『もう……ダ、め…し、べる………の……も、つ、らいぃ…』
せつ菜「そんな!ダメです!死なないでください!」
せつ菜(穂乃果さんの声は今まで聞いたことないモノだった。精気が感じられない覇気ゼロの死の声だった)
594 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:00:15.12 ID:Kb3Xmjfp0
曜『はぁ…はぁ…はぁ…お話中悪いけど穂乃果ちゃん今どこ?』
せつ菜「!」
穂乃果『も…り……』
曜『分かったよ、GPSを頼りにして私が助けにいくからせつ菜ちゃんは逃げて』
せつ菜「ま————」
曜『ダメ、声にすると相手に情報がばれる。一度撤退しよう、緊急事態が発生して何も作戦が実行出来てない』
せつ菜「………」
曜『…私も正直今立ってるのが辛いけど、穂乃果ちゃんの為にいく。だからせつ菜ちゃんも全力でその相手から撒いて』
せつ菜「……分かりました」
曜『じゃあね、そこまで冷静になると怪しまれるから演技しといた方がいいよ』
曜『穂乃果ちゃんはもうちょっと耐えてて』
穂乃果『ぅ……ん…』
595 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:02:26.44 ID:Kb3Xmjfp0
ザーザーザー…
せつ菜「………」
せつ菜(逃げる。私のやるべきことは決まった)
タッタッタッタッ
せつ菜(…ここは希さんから教わった秘儀を使うしかないようですね)
せつ菜「っ!」カチャッ
理亜「!」ピタッ
聖良「やる気ですか」カチャッ
せつ菜「はっ!」
せつ菜(ずっと走ってた私だけど突然振り向き、相手に向かって片手で銃を持ち銃口を向けた——けど、戦うつもりは更々ない)
596 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:03:34.95 ID:Kb3Xmjfp0
カランカランッ
聖良「っ!」
理亞「グレネード!?どこに持ってた!?」
せつ菜(この戦い、ましてや作戦実行の前の準備の時から私の着ている衣装の裏に隠してたグレネード三種。それを背中につけることで不意に、そしてすぐに使えるようにしておいたのです)
せつ菜(私が相手に銃口を向けることで注目は銃口と私の顔に行きます。となるともう片方……つまり背中に置いてた手には目も行きません。だから相手は気付けなかった)
せつ菜(私の————希さんの秘儀が)
ドカーン!
597 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:04:13.15 ID:Kb3Xmjfp0
タッタッタッタッ
せつ菜「………」
せつ菜(今回はさっきとは違って成功した)
せつ菜(相手が追ってくる様子はなく、足音も聞こえないし爆発の中から飛び出してくることもなかった)
せつ菜(やはり希さんはすごい方です、今着てるこの衣装のような服だって今では私のアイデンティティとなってますが元々はグレネードとかを隠すカモフラージュとして希さんから提案されたものでした)
せつ菜(才能には努力ではなく知恵で勝つしかない)
せつ菜(それが希さんの教えでした)
せつ菜(当時はよく分かりませんでしたけど、今の状況なら痛いほど分かります)
せつ菜(…きっとスポーツなら知恵以外にもあるんでしょうけど、銃社会においては違うんですよね)
せつ菜(深く理解したつもりでいる私はその場から颯爽と逃げ出した)
598 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:05:45.28 ID:Kb3Xmjfp0
〜その後、別荘付近
曜「あ、来た来た」
ことり「お待たせ…」
せつ菜「ふー……」
曜「二人ともお疲れ様…」
ことり「助かったよせつ菜ちゃん、赤髪の子をおんぶしてくれて」
せつ菜「いえいえ、なんてことないです」
ことようせつ「………」
せつ菜「…そういえば善子さんと果南さんはどちらへ?」
ことり「…それが分からないんだ」
せつ菜「分からない?」
曜「連絡がつかなくてね、撤退しようってことになって絵里さんだけ見つけたけどその二人が行方不明で…」
せつ菜「その見つけた絵里さんも倒れていた…と」
ことり「…うん、絵里ちゃんを見つけた時にこの赤髪の子——ルビィちゃんっていうらしいんだけどこの子が寄り添ってたんだ」
599 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:07:03.68 ID:Kb3Xmjfp0
曜「え?ルビィちゃんってこの前話してた子?」
ことり「うん、そうみたい。それであの時の私はものすごく焦ってて…この子と戦ったんだ」
曜「戦った!?この子病み上がりだよ!?」
ことり「そう…なんだけど、正直…後五秒戦いを続けてたら私負けてたと思う…」
せつ菜「…それはどういうことですか?」
ことり「この子…ものすごい強いんだよ、あり得ない反応速度と身体能力、そして射撃技術——特に偏差撃ちに関して相当熟知してるんじゃないかな…」
曜「偏差撃ちって…というかルビィちゃんって戦えるの?」
ことり「…戦えるね」
600 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:07:54.89 ID:Kb3Xmjfp0
ことり「…ただね、薬を使ってるらしいんだ」
曜「薬?」
ことり「病み上がりの体じゃまともに動かせないからって薬を利用していつも通りを保ってたらしい、だからその薬の副作用で…」
せつ菜「……倒れたと」
ことり「そうそう」
せつ菜「こんなか弱さそうな子が薬に手を染めているんですね……」
ことり「…東京の悪しき姿の体現だね」
曜「……ことりちゃんをも葬れる相手ということは絵里さんはルビィちゃんにやられたの?」
ことり「…そんなことはないと思う、だって最初見た時は絵里ちゃんの肩に手を置いて寄り添ってたんだよ?」
曜「んー……」
せつ菜「…状況は最悪ですね」
曜「…そうだね、善子ちゃんと果南ちゃんは行方不明だし、絵里さんと穂乃果ちゃんは致命傷だし、ルビィちゃんに関してもよく分からないし」
ことり「……一旦帰ろうか」
せつ菜「…そうですね」
601 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:09:50.66 ID:Kb3Xmjfp0
〜別荘
ガチャッ
曜「ただいま〜…」
真姫「おかえりな……さい?」
ことり「…あはは、ごめん。負けちゃった」
真姫「ま、負けた…?なんでよ…?」
曜「…単純に相手が強かったのと、色々事故があったんだ。それで負けた」
スタスタスタ
花丸「…でも、よかった。みんな無事で」
せつ菜「花丸さん…ごめんなさい…」
花丸「…問題ないずら」
602 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/03(木) 20:10:34.90 ID:Kb3Xmjfp0
真姫「ぶ、無事って三人が抱えてるその三人は生きてるの…?」
曜「首の皮が一枚繋がってるくらいだから早く手当しないと多分まずいね…」
真姫「じゃ、じゃあ早く手当しないと!」
ことり「手当は私に任せて」
花丸「マルも手伝うずら!」
タッタッタッタッ
せつ菜「…ごめんなさい、あなたの大好きな人をこんなにさせちゃって」
真姫「うぇぇええええ!?だ、大好きってそんな!」
真姫「……でも、仕方ないわ。絵里も最強じゃないもの、むしろ絵里を助けてくれてありがとう」
せつ菜「そう言ってもらえると私も助かります」
603 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:11:33.73 ID:Kb3Xmjfp0
曜「…でもまさかこんなにボロボロになるなんてね」
真姫「…そんなに強かったの?」
曜「私は穂乃果ちゃんの次世代機と呼ばれるアンドロイドと戦ったよ」
せつ菜「…!穂乃果さんの次世代機と戦ったんですか!?」
曜「うん、でもね技量は明らかに私の方が上だった」
真姫「……でも負けたんでしょ?」
曜「うん…なんかおかしいんだ」
せつ菜「おかしい?」
曜「確かに私はあのアンドロイドの頭と胸を銃弾で貫いたはずなのに生きてるんだ。普通に、何事もなく…」
真姫「気のせいとかじゃなくて?」
曜「いや、それはない、だってちゃんと血も出てた。そして血も出てたのにも関わらず普通に動いてた」
歩夢『私は新型だよ?未踏の地っていうのは踏むためにあるんだよ』
曜「……新型の機能なのかな」
604 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:13:07.77 ID:Kb3Xmjfp0
せつ菜「そ、そんなおかしいです!だってそれじゃあ…だってそれじゃあ人間の域を超えてるじゃないですか!」
せつ菜「人間じゃないですよ!!!」
真姫「…確かに」
せつ菜「頭を撃たれても記憶を失わない、胸を撃たれても心が欠如しない。それってもはやアンドロイドでもないですよ……」
曜「……生まれ変わろうとしてるのかも」
真姫「生まれ変わる?」
曜「アンドロイドという概念が生まれ変わろうとしてるのかもしれない。だってアンドロイドの母である鞠莉ちゃんは今現在ではアンドロイドの制作に関与していない、だから鞠莉ちゃんの意図してないアンドロイドが生まれても何も不思議じゃないんだよ」
せつ菜「…それじゃあ私たちは一体何なんですか」
曜「…分からない、けど新型の命がどこにあるかが分からない限り旧型に勝ち目はないね」
せつ菜「………」
605 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:13:42.64 ID:Kb3Xmjfp0
真姫「ならその情報系は私に任せて」
曜「…それは頼もしいけどアンドロイドの情報っていうのはかなり固くて漏洩もほとんどしない、つまり情報の発信源がないんだ。それなのにどう探すの?」
真姫「……それは今の段階じゃ何も言えない、けど絶対に見つけてみせるわ」
せつ菜「…頑張ってください」
真姫「ええ」
真姫「……そういえば善子と果南は?」
曜「…行方不明」
真姫「はぁ!?」
曜「応答がないんだ、試しにかけてみてよ」
ツー………
真姫「……ホントだ、なにこれ」
曜「それが分からないんだよ」
真姫「……状況は思ったより深刻そうね」
606 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:15:46.99 ID:Kb3Xmjfp0
せつ菜「現在戦えるのが私とことりさんと曜さんしかいません。絵里さんと穂乃果さんは当分戦えませんし善子さんと果南さんは今だ行方知らずの状態…これではY.O.L.Oに攻めるどころか対アンドロイド特殊部隊にも勝てません」
曜「……この後私たちはどうするべきなんだろうね、ちょっと詰まりすぎて私も分からないや…」
せつ菜「…そこまで絶望を感じているのですか?」
曜「当たり前だよ…だって心臓を撃っても頭を撃っても死なない生き物なんて初めてなんだからさ…それに絵里さんも穂乃果ちゃんもやられちゃったっていうのに」
せつ菜「……正直言うと、私も酷く絶望してます」
せつ菜「私たちも戦いました、Y.O.L.Oを守ってると言われてるアンドロイド二人と」
曜「穂乃果ちゃんがあんなになる相手なんだから相当強かったんだろうね」
せつ菜「ええ、おそらく最新型故に秘匿通信のようなものが使えるようで通信機を使わずとも心の中の声だけでやりとりができるようです」
真姫「なにそれ…ズルじゃない…」
せつ菜「ええ、二対二というコンビネーションプレイが大事な対面で声も発することなくコンビネーションプレイが出来るその秘匿通信はもはやチートです」
せつ菜「……もし次戦うというのならこれをどうにかしないといけませんね」
607 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:18:38.09 ID:Kb3Xmjfp0
真姫「EMPグレネードはどうなのよ?曜は作れるんでしょ?」
曜「もちろんそれは有効な手段だけどせつ菜ちゃんが使うのは難しいかな、何故ならせつ菜ちゃんもアンドロイドだから自分にも食らうよ。EMPグレネードは他のグレネードと違って爆発しても痛みを受けるようなものは一切飛ばなくて、爆発して飛ぶモノといったら電子機器を狂わせる特殊な粒子かな」
曜「人間にとってはただの風でしかないけど、アンドロイドにとっちゃグレネード以上の危険物だから人間以外は扱えないものだね」
曜「まぁだからといって人間がぽいぽい使ってアンドロイドを簡単に無力化出来るようなら最初からそうしてるよって話だけどね」
真姫「どういうことよ?」
曜「今さっき言ったけどEMPグレネードはグレネードみたいに爆発でダメージを与えるものではなくて小さな粒子を大量に体内へ流し込んで攻撃するバイオテクノロジーにも関与してる特殊なグレネード、言葉だけでこのEMPグレネードを推し量るなら間違いなく最強だけど、EMPグレネードは案外不便なところもあるんだよ」
せつ菜「不便なところ…ですか、想像もつきませんね」
608 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:19:43.99 ID:Kb3Xmjfp0
曜「まぁまぁ聞いてよ、粒子っていうのはそこまで早く動くものじゃなくて空気の流れによって移動するものだから基本的に粒子は鈍足なんだ」
せつ菜「ふむ…」
曜「まぁだからね?EMPグレネードが爆発した際に出てくる風っていうのは粒子を高速で飛ばす為の流れを作る為で、その爆風範囲外にいられると簡単に避けることが出来ちゃうんだ。つまり外なんかの広いフィールドだとEMPグレネードもそこまで脅威にはならないってことだよ」
真姫「む、難しいのね…」
曜「うん、だから結局のところグレネードと同じで工夫した使い方をしないと意味がないんだよね」
せつ菜「…まぁ仕方ありませんね、曜さんも今言っていましたが使って解決するなら最初から使ってますよ」
真姫「………」
曜「やっぱり戦いって、奥が深いなぁ」
曜「希望という光も、絶望という闇も感じれるのは一瞬だけなんだから…」
609 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:22:07.35 ID:Kb3Xmjfp0
〜???
鞠莉「…新型アンドロイド、なんて不快な響きなのかしら」
鞠莉「まさか堂々と人間の域から外れたアンドロイドを作るなんて……」
鞠莉「私の知らないアンドロイド…もはや要らない子ね」
果林「…急にどうしたの?私を呼び出して」
鞠莉「…Y.O.L.Oの防衛に対アンドロイド特殊部隊は参加しないわ」
果林「どうして?絢瀬絵里たちを殺せるチャンスでしょ?」
鞠莉「私は新型アンドロイドの存在が気に入らない、私はあくまでアンドロイドを人間に模して作ったのよ。それなのに新型ってやつはあからさまに人間の域を超えてきた。そんなの第一アンドロイド開発者として認めない、不届き千万もいいところよ」
610 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:24:01.97 ID:Kb3Xmjfp0
果林「…じゃあ、Y.O.L.Oにいる新型アンドロイドを潰しちゃう?」
鞠莉「…それはいい案かもしれないわ」
果林「私から提案しといて難だけど、そんなことして大丈夫なの?政府が黙ってないと思うけど」
鞠莉「私からしたら私の技術を悪用されて怒り心頭なんだから誰にも文句は言わせないわ」キッ
果林「あら怖い怖い」クスクス
鞠莉「新型アンドロイド…今すぐにデストロイすべきだわ…」
鞠莉「…でも、その前に準備が必要そうね……」
611 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:25:47.58 ID:Kb3Xmjfp0
〜??日後
絵里「ん……」
絵里「あれ…私……」
絵里「……生きてる?」
絵里(目覚めの感覚が伝っても尚私には伝わらない生の意識。それから両手を閉じて開いてを繰り返してようやく自分が生きてることに気が付いた)
「すぅ…すぅ…」
絵里「真姫…曜…」
絵里(私の寝ていたベッドには私を挟むよう両サイドに曜と真姫が寝てた、傍から見れば微笑ましい光景だけど、私は無意識的にあることに気付いた)
ポロポロ…
絵里「…あれ、私なんで……」
絵里(涙が出てきた、無意識に)
絵里(隣に真姫がいることにとてつもない罪悪感と敗北感を感じた。いや、真姫が悪いわけじゃないけど“真姫の位置”に何かが欠落してた)
612 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:27:24.04 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「…っ!果南!善子!?」
曜「わぁ!?」バサッ!
真姫「何っ!?」バサッ!
絵里「私…そうだ…!私…ッ!」
真姫「え、絵里目覚めたの!?」
絵里「真姫…!私どうしたら…!」ポロポロ…
真姫「ど、どうしたのよ急に…」オロオロ
絵里「善子が…!果南が死んじゃったぁ…!!」
曜「!!」
真姫「ど、どういうことよそれ…」
絵里(言葉が上手く出せなかった、けど私は必死に真姫と曜に説明した。涙が私の言葉をかき消して、儚さが私の涙を加速させる。未だに拭えない絶望は混乱を招き、善子と果南の死体がまだ鮮明に私の瞳に映ってくる)
613 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:28:47.28 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「うわあぁああああああ……!!」ポロポロ
曜「………」
真姫「………」
曜「…やっぱりね」
真姫「やっぱり?」
曜「前に花丸ちゃんから借りたアンドロイド名鑑に載ってたんだ、果南ちゃんの項目……」
曜「全アンドロイド中トップの性能を誇る最強に近いアンドロイドの一人。何も考えてないようで実は誰よりも深い考え持つテロリズムとアンビバレンスの持ち主————いわば危険思想の塊」
曜「…と書いてあった。それを見てなんとなく察してた、初めてこの家で夜を明かした時からずっと何か変な事を考えてたんだろうと」
曜「……でもまさかこんな形になるなんて思ってなかった。まさか仲間を殺して…そして憧れであった絵里さんと一対一になるフィールドを作って殺し合いをするなんて」
真姫「………」
614 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:29:58.88 ID:Kb3Xmjfp0
曜「…にしても、もし絵里さんたちのところが通常通り作戦を実行したら成功率87パーセントか…」
真姫「何かあるの?」
曜「何か引っかかるんだよね、だって穂乃果ちゃんやせつ菜ちゃんのグループは穂乃果ちゃんが負傷したことでシンプルに撤退せざるを得ない状況になるし、そんなんで87パーセントも成功率あるのかな…」
真姫「言われてみれば確かに…」
曜「…果南ちゃんの数値化が間違ってた……?でも全アンドロイドの中で特に性能がいい果南ちゃんが間違うのかな」
曜「分からないな…死人に口なしとはよく言ったものだよ。今じゃ果南ちゃんの見えてたものが何も分からないよ……」
絵里「うわあああああ……」
真姫「…絵里は泣かないの!まだ私がいるんだから!」ギューッ
絵里「うぅ…だってぇ…!!」
曜「……問題は山積みだね、著しく戦力の低下が起こってる。次の作戦は考えこまなきゃ負けちゃうね」
真姫「…そうね」
絵里(目覚めた世界はいつもに増して退廃的だった。大切な仲間を二人失い、当の私はまた当分戦えなくなるくらいの傷を負った)
615 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:30:28.44 ID:Kb3Xmjfp0
果南『そして今日から私が絢瀬絵里として生きていくよ、この名前…大切にするから』
絵里(戦いが終わった今でも果南のあの行動は理解出来ない、憧れが曲がるとああなるのかしら)
果南『絵里と一緒にいるようになってから絵里より強い人を見たことがなかった』
絵里(一体何を見て、一体何を思って私が最強と視えたのかしら)
絵里(第一あの時の果南の戦いはルビィがいなきゃ死んでたし、凛と梨子と対峙した時はそもそも一回死んだようなものだし、曜と戦った時はだいぶ運がよかったとしか言いようがない)
絵里(私が最強である要素がまるで見当たらない、私が最強であるなら少し分かりやすいステータスとアドバンテージがあってもいいはず、耳がいいとか目がいいとかそんな強化五感の一つだけでもいいのにそれすらも見当たらない)
絵里(果南はどこを見た?何を見た?)
絵里(……考えても、分からないままだ)
616 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:32:01.01 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「うぅ…といれぇ…」メソメソ
真姫「行ってきなさいよ…」
絵里「うん……」
スタスタスタ
絵里(激しい戦いを乗り越えてから歩く家の廊下は数年の歳月を感じるくらいに懐かしかった。それだけ眠りの世界は一日千秋なもので、手にしたこの平和はやはり温かいものね)
スタスタスタ
曜「絵里さん」
絵里「!」
絵里「よ、曜?」
曜「ごめんね、止めちゃって。でもちょっと聞いてほしいんだ」
617 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:33:22.38 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「な、何…?」
曜「…こんな時に言うべきじゃないのは分かる、けど言わせてほしい」
曜「絵里さんは何者?」
絵里「わたし…?」
果南『絵里は色んな面を含めて最強なんだよ?絵里もよく考えてみてよ』
果南『自分が誰なのかを』
絵里「!」
絵里(そういえば果南も同じようなこと言ってた、私は誰なのか、そんな意味深なことを言ってた)
618 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:34:33.79 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「私は…アンドロイドよ、コードF-613。誕生日は10月21日、名前は絢瀬絵里。年齢17の高校三年生」
曜「…知ってる、でもおかしいじゃん。それ」
絵里「おかしい?どこが?」
絵里(曜の引き締まった表情に私の涙と弱い心はとっくに引っ込んだ。次第に頭が回り始めて消えないはずの痛みが今だけは消えてくような気がした)
曜「………」
絵里「…曜?」
曜「なんで…なんで絵里さんはさ……」
曜「標準型アンドロイドなのに、どうして戦闘型アンドロイドや高い戦闘力を有した人間と戦えるの?」
絵里「…!!」
619 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:35:53.15 ID:Kb3Xmjfp0
曜「絵里さんの言う標準型が嘘であるっていうのも考えたけど、ちゃんと首元にはFと書いてある。別に標準型でも戦える子はたくさんいるけど絵里さんに関しては頭一つ抜けてるんだよね」
曜「…というかね、標準型っていうのは人間を元にして作られたアンドロイドなんだよ、だから絵里さんが標準型であるというのなら、その標準型にしては高すぎる能力値を鑑みるに」
曜「絵里さんは人間を模して造られたわけではない気がする」
絵里「私が…?じゃあ私は…何者なの…?」
曜「…希ちゃんから聞いたことがあるんだよね」
希『実は探してる人がウチには二人いるんよ』
曜「…てね」
620 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:36:54.11 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「探してる人?」
曜「一人は東京で大規模な銃撃戦が発生した時に民間人側として参加してた殺し屋の異名を持つスナイパー」
曜「そしてもう一人は————」
曜「——鞠莉ちゃんだけしか正体を知らない標準型アンドロイドXと称されたアンドロイド」
絵里「!!」
曜「そのアンドロイドはまだ全然情報が無かった、だから希ちゃんもある程度情報が揃うまでは希ちゃんと花丸ちゃんだけの秘密にしておいたらしい」
曜「だけど如何せん何も手がかりがないもんで、私にまで希ちゃんのその話が来たわけだけど」
曜「一つそのアンドロイドで確実に言える事があるならね」
曜「そのアンドロイド、金髪なんだよね」
絵里「えっ……」
621 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:38:34.75 ID:Kb3Xmjfp0
曜「デバイスを開いて」
絵里「え、うん…」
ピコンッ♪
絵里「…?これは?」
絵里(曜から送られてきたのは何らかの画像のデータだった)
曜「花丸ちゃんと希ちゃんが一ヶ月鞠莉ちゃんのPCとサイバー戦争をして手に入れたって言ってた画像データだよ、あまりにも複雑なプログラムとセキュリティを通り越してきたデータだからノイズ化しちゃってるんだけど、それでもその左上のところ、髪の色だけ分かるんだよ」
絵里「…!ホントだ、金髪ね」
絵里(いつかに花丸さんから見せてもらったアンドロイドのデータと同じようにそこには“誰か”が描かれてた。体系もどんな顔をしてるかも分からないけど金髪だ。横にある説明文らしきところには“標貅門梛繧「繝ン繝峨ΟイドX”と名前欄と思わしきところに書かれていて、その下の説明文は読めたものじゃなかった)
曜「そういう文字化けってやつは解読ができるんだけど、どういうわけかその文字化けは特殊なプログラムが張り巡らされてて解読出来ないんだ」
曜「こう…画像を開くたびに文字が違って、それを解読しても支離滅裂な言葉しか出てこない」
曜「だからすごく厳重に保管されてるんだろうね…」
絵里「………」
622 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:40:11.34 ID:Kb3Xmjfp0
曜「…でもまぁその標準型アンドロイドXと呼ばれるアンドロイドが金髪だと分かっても金髪の標準型アンドロイドなんて世の中たくさんいる、それをしらみつぶしに探し回ってたらキリがないって希ちゃんも半分諦めかけてた」
曜「でもよくよく考えて思ったよ、多分希ちゃんも同じこと思ってたと思う」
絵里「………」
絵里(次曜の口から出てくる言葉はなんとなく分かってた。私もきっと曜やその希って人と同じことを想ってるはずだから)
曜「標準型アンドロイドXっていうのは絵里さんのことなんじゃないか、と」
絵里「…そうよね、そうなるわよね」
曜「元々標準型アンドロイドXっていうのは鞠莉さんしか正体を知らない特別なアンドロイドということしか知らない、だから希ちゃんも会ってみたかったんだと思う」
曜「…絵里さんには何か特別なモノがあるの?」
絵里「私に……」
絵里(どうだろう、少し考える。だけど考えて出てくる特別なモノはこれといってなかった。確かに標準型なのに凛や果南とまともにやり合える私はおかしい、けどそれしかない。それ以外、他にない)
623 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:40:53.35 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「…!」
絵里(いやまって…これを特別と言っていいのかは分からないけどあった)
絵里「…えりち」
曜「ん?」
絵里(私より強いもう一人の私。私の心の中に住み着く謎の————ある意味特別な存在が私には宿ってた)
絵里(…でも、それを言葉にするのはどうだろうか。別に言いたくないわけじゃないけど、言うのを躊躇ってしまう。何かが私の口を開かなくさせていた)
絵里「…ごめんなさい、やっぱり私には分からないわ」
624 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:42:55.58 ID:Kb3Xmjfp0
曜「…そっか、でもやっぱり標準型アンドロイドは絵里さんなのかな…」
絵里「…多分ね、よくよく考えればおかしいものね。私標準型なのに」
曜「ううん、聞きたかっただけだから気にしないで」
曜「それじゃあ私寝室戻るね!」
絵里「え、ええ」
スタスタスタ
絵里「………」
絵里(もし、本当に私が標準型アンドロイドXだとしたら私の正体ってやつは一体なんなのかしら)
絵里(鞠莉の人形なのかしら、それとも新型なのかしら)
絵里(……当たり前だけど、考えて分かる問題ではなかった)
625 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 20:45:00.02 ID:Kb3Xmjfp0
今日はここで中断。
再開は明日か明後日やります
626 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/04(金) 12:25:59.30 ID:reThwItbO
いよいよえりちの正体に近づいてくる?
展開が目まぐるしくて飽きないな
627 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/05(土) 18:37:53.95 ID:dIWqa2t10
〜次の日
絵里「ふぁー……っていったっ!?」
絵里(眩しい光を受け瞼を閉じて、それに負けじと無理矢理瞼を開けて背伸びをした直後、私に激痛が走る)
絵里(お腹を中心とした痛みが体の中で広がっていく。すぐさまお腹を見れば包帯越しでも赤く染まっているのが分かる)
絵里「…果南か」
絵里(果南の遺した傷は随分と痛い。それは直接的でもあって精神的でもあった)
絵里(今頃果南と善子が生きてれば戦況はどうなってたのかしら、在りもしない希望を掲げた絶望がイマジネーションを発生させた。鞠莉という一人の人物を殺すのになんでこんな想いをしないといけないんだろう、世界は常に理不尽で謎しかない)
絵里「……変な顔」
絵里(誰もいない寝室のテーブル、さりげなく置かれた誰かの鏡を見ると私の瞳とその周りは赤かった)
絵里(泣いたのかしら、でもいつ泣いたのかしら?)
絵里(果南と善子が死んで冷静でいる自分が少しおかしく感じてはいたけど、やっぱり無意識の中の私はとてもつもなく悲しいのよね、分かるわよ)
絵里(こんな退廃的世界で次は何をしてけばいいのかしら)
絵里(エンドロールに向かっていくはずの私は、足を動かすことも憂鬱だった)
628 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:40:23.44 ID:dIWqa2t10
絵里(エンドロールに向かっていくはずの私は、足を動かすことも憂鬱だった)
スタ…スタ…スタ…
ことり「! 絵里ちゃん!」
花丸「絵里さん!?」
せつ菜「絵里さん!」
絵里(二足歩行で歩くのが辛くて、壁に寄り添いながら少しずつ歩いてリビングへ向かった。昨日の深夜とは違って痛みは鮮明に感じる、だから今の身体はものすごく不自由だった)
スタスタスタ
絵里「ありがとうことり、せつ菜」
ことり「いいよっ絵里ちゃんは無理しないで」
せつ菜「その通りです!」
絵里(二人の肩を借りて一緒に歩いてもらった。そうすればだいぶ楽に歩けるようになった)
絵里「よいしょっいたたっ…」ストンッ
真姫「あんまり無理しないようにしなさいよ?」
絵里「え、ええ…」
629 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:41:19.06 ID:dIWqa2t10
ことり「…曜ちゃんから聞いてたけど、やっと起きたんだね」
曜「今回は二週間で起きれたね」
絵里「に、二週間!?」
せつ菜「穂乃果さんはまだ目覚めません…」
絵里「そ、そんな経ってたの…」
ルビィ「おはようございま…ってぴぎっ!?」
絵里「ルビィ!」
ルビィ「絵里さん!」
ギューッ
絵里「…あの時はありがとう」
ルビィ「…いいんです」
630 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:42:55.60 ID:dIWqa2t10
ことり「…どういう状況?」
絵里「ルビィは私を助けてくれたの」
ことり「…じゃあやっぱりあの時は助けた後だったんだ」
ルビィ「あ、はい…」
ことり「そっか…ごめん」
ルビィ「大丈夫です、焦る気持ちはルビィも分かるので!」
絵里「…そういえば果南と善子の事は話したの?」
曜「いや…まだ…」
花丸「…?果南さんと善子さんがどうなったかを知ってるんですか?」
絵里「あぁ…うん……」
絵里(私の口からはあまり言いたくない事実だった。でも、当然よね。過去は消せないけど、あんな忌々しい記憶はそうと分かっていても消したくなるものよ)
曜「あ、えっとね…私の口から言うと善子ちゃんと果南ちゃんは…死んじゃったんだ」
ことり「っ!?」
せつ菜「ど、どうしてですか!?」
曜「それは————」
絵里(それ以降は昨日の深夜私が話したのと同じだった、初めて聞くせつ菜とことりは昨日の真姫と曜と同じ反応をしてた)
631 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:45:54.14 ID:dIWqa2t10
ことり「……やっぱり」
曜「やっぱり?」
ことり「連絡がつかなくなった時、何かやらかすなら絶対に松浦果南だと思った。だから私は急いで絵里ちゃんを探しに行ったんだよ」
曜「…今見返せばもっと気にするべきだったのかな」
ことり「……いや、気にするのは多分無理だよ、だって仲間だもん」
せつ菜「…そうやって、穂乃果さんも一度死にましたからね」
ことり「うん……」
絵里「………」
曜「これは最近知ったことなんだけど、対アンドロイド特殊部隊も今著しい戦力の低下が起こってるらしいんだ」
絵里「どういうこと?」
曜「海未さんとにこさんが死んだらしいんだ」
せつ菜「………」
絵里「えっ…」
ことり「…内紛を起こして共倒れしたんだって」
絵里「そんなことが…」
632 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:47:02.62 ID:dIWqa2t10
せつ菜「にこさん…海未さんを倒せるほど強かったんですね…」
曜「…それは私も思った、確かににこさんは強いけどまさかあの生命力お化けの海未さんを殺すなんて……」
ルビィ「…殺してないよ」
花丸「え?」
ルビィ「にこさんは確かに海未さんに勝ってた、けど最後に油断したせいで海未さんに殺された。だから結果的に海未さんの勝利だった」
せつ菜「ど、どうしてそんなことが分かるんですか?」
ルビィ「…だってルビィいたもん、その時そこに」
曜「えっ…じゃあ海未さんって……」
ルビィ「ルビィが殺した」
633 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:48:16.78 ID:dIWqa2t10
ことり「……やっぱりあなた只者じゃないよね、あの時の戦闘といい何かの戦闘員でしょ」
ことり「あの時のハンドガンだって随分と持ち慣れてた、少なくとも私は穂乃果ちゃんや曜ちゃんとも対等に戦える強さだと思った」
曜「最初はずっと泣いてたからあまり気に留めてなかったけど…」
せつ菜「あなたは一体…?」
絵里「…それは私から話すわ」ガタッ
絵里「ルビィはね……」
スタ…スタ…
絵里「昔東京で起こった大規模な銃撃戦で民間人として参加した————」
スタ…スタ…
絵里「——殺し屋という異名を持つ子なの」ポンッ
634 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:49:23.12 ID:dIWqa2t10
曜「っ!?」
せつ菜「殺し屋って…!」
花丸「希ちゃんが探してた人ずら!!」
ことり「殺し屋ってこんな人だったんだ…」
真姫「…名前は聞いてたけどこんな身近にいたなんてね」
絵里「元々ルビィは善子とタッグを組んで日々悪と戦うまさに正義の味方だった」
絵里「善子は持前の接近戦の強さを活かして突っ込んで、ルビィはそのカバーをスナイパーでするのと同時に善子の後に続く。たった二人だけというのに恐ろしく強かったわ」
絵里「ルビィは恐ろしく才能に恵まれた子よ、モノの動きを完璧に捉えることが出来る目の良さで相手を必ず射貫くわ」
花丸「…!それがいわゆる偏差撃ちの所以…?」
絵里「ええ、百発百中のその腕は敵に回したら死はほぼ間違いないものよ」
635 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:50:45.15 ID:dIWqa2t10
絵里「だけどルビィの強さはそこだけじゃない。ルビィは姉の才能をも受け継いでるの」
真姫「姉の才能?」
曜「…分かった、ダイヤさんでしょ」
絵里「正解、ダイヤの才能を受け継いでるの」
せつ菜「ダイヤさんの才能ってなんですか?」
絵里「ダイヤはね、近接戦闘がものすごく得意なの。元々ダイヤは小さい頃から薙刀とか刀を嗜んでいた身だったから体術に関しては指折りで、でもそういうの関係無く黒澤の血を引く者としてダイヤはその刀や体術の才能に恵まれた」
絵里「…そして、ルビィもそれ同様に」
ことり「…なるほど、ようやく分かったよ。アンドロイドの私を超える反応速度の原因が」
ことり「薬だけじゃどう考えてもあんな動き出来ないからね」
ルビィ「…近接戦闘は奥の手だからあまり使いたくなかったんだけどね」
636 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:52:52.77 ID:dIWqa2t10
曜「ダイヤさんはナイフの使い方がものすごい上手い人だったよ、梨子ちゃんや私がヘイト集めてダイヤさんがそそくさに近づいて近接戦闘持ち込んではい終わりっていうムーブを何十回とやったことか」
花丸「はぇ〜…」
絵里「…とりあえずそういうことよ、以後ルビィとも仲良くしてあげて、普段は大人しい子だから」
ルビィ「改めてよろしくお願いします」ペコリッ
曜「うんっ!頼もしい仲間が来てくれて嬉しいよ!」
せつ菜「はいっ!私も考えは同じです!」
真姫「ええ、困ったことがあったらちゃんと言うのよ」
ことり「あの戦いでは驚かされるばかりだったよ、よろしくね」
花丸「ルビィちゃん!よろしくずら!」
ルビィ「!」パアアア
ルビィ「うんっ!」
絵里「…ふふふっ」
絵里(ルビィは大人しい子よ、そして故に大人しいから姉であるダイヤにも自分の強さがばれなかった)
絵里(大人しいから人と話すのが苦手だった、だからあの大規模な銃撃戦の時は誰とも話さなかった)
絵里(…でも、今はこうしてみんなが優しくしてくれてるのを見るとなんだか安心した。真姫に出逢う前は善子と私とルビィと果南と千歌の五人がいつものメンバーだったんだから……その中でも妹のように可愛がったルビィが幸せだと私も何故か幸せな気持ちになれた)
637 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:54:09.01 ID:dIWqa2t10
ことり「はいっことり特製朝ごはんですっ」
曜「あれ?今は思考が攻撃寄りなの?」
ことり「そんな伝わるか伝わらないか微妙なこと言わなくていいから早く食べて!」
曜「はーい」
花丸「チーズケーキ……」
ことり「どうしたの?」
花丸「いや…朝なのにデザートが出てくるなんてちょっと驚きずら…」
ことり「そうなの?ことりは普通だと思うんだけどなぁ」
せつ菜「花丸さんはいつも希さんに頼んでちゃんとした朝食を食べてますもんね、それに比べて希さんなんて夜以外大体菓子パンですし」
真姫「それは甘いわね…」
絵里「…うん、おいしいじゃない」
638 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:56:13.85 ID:dIWqa2t10
ことり「当然だよ、ことりはデザート作りが好きなんだからっ」
絵里「えっ…」
ことり「…何その顔!?ことりだって女の子だよ!?」
曜「あはは…ことりちゃんってすごく可愛いけど戦闘になると鬼になるし……」
せつ菜「…間違ってないです」
花丸「異論無しずら」
ルビィ「?」
ことり「えぇ…じゃあもうちょっと女の子らしくしなきゃっ」
絵里(いつもは私が朝ごはんを作ってるのだけど、まともに動けない今はことりが朝ごはんを作ってくれた)
絵里(…ただ朝ごはんと呼ぶにケーキは少し重い気がするけど味は一級品なので文句は言わないでおく)
絵里(まぁそんなおいしいチーズケーキを口に運ぶ中で、話は進む)
絵里「あれから何か変わった?」
真姫「特に変わってないわ、Y.O.L.Oも対アンドロイド特殊部隊も何も起こしてない」
ことり「それどころか政府すら何も変わった動きを見せてないんだよね、やる気あるのかな?」
花丸「…何かありそうずら」
せつ菜「私もそう思います」
639 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 18:57:11.59 ID:dIWqa2t10
曜「……でも何かって何だろう」
曜「政府の武器庫と呼ばれるY.O.L.Oが攻撃を受けそうになったというのに追撃が来ない、政府は本当に何をしてるんだろう?本当なら今頃私たちは政府に追われててもおかしくないはずなのに」
絵里「行動を起こさないことで起こる相手側のメリットは何?」
曜「ないよ、だってどう考えたって私たちと、対アンドロイド特殊部隊と結託してる政府じゃ相手側に軍配があがるじゃん。なのに攻めてこないなんて私たちに復活のチャンスを与えてるだけだよ?」
絵里「…ということは向こうで何かが起きてるんじゃない?」
真姫「例えば?」
絵里「例えば…?えーっと…」
絵里「内紛とか」
640 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:04:19.04 ID:dIWqa2t10
〜四十分後
曜「そういえばルビィちゃんは何のスナイパーを使ってるの?」
ルビィ「L115A3っていうスナイパーだよ」
ことり「…うわっ」
花丸「おお、なるほど」
真姫「趣味がいいのね」
絵里「…え?何?私全然分からないんだけど……」
曜「L115A3っていうのは超簡単に言うと命中精度がものすごく高いボルトアクション式のスナイパーライフルだよ」
曜「スナイパーだから重いのは変わりないんだけど、その中でもこのスナイパーは軽くて他のスナイパーと比べて理論的にコッキングにかかる時間が短いとされてるんだ」
絵里「コッキング?」
花丸「とっても簡単に言うとチャージハンドルを引くことを意味していて、ボルトアクション式のスナイパーは一発弾を撃つたび絶対にコッキングをしないといけない特徴があるずら」
花丸「また、ボルトアクション式のスナイパーっていうのは他の武器と比べてたった一つの弾を撃つに手間がかかるものの、威力はやはり最高級の一言で、相手を一撃で仕留めるのに適した武器種ずら」
花丸「その中でルビィちゃんという偏差撃ちが得意で目がいい人がこのL115A3を持つことは鬼に金棒ともいえるずら!」
曜「その通り」ウンウン
絵里「へ、へぇ…」
絵里(毎回この銃の説明になると面食らって返答が引け気味になってしまう、銃のことはこれからの為にもっと知りたいとは思うけどこういう銃一つの知識というか…専門的な知識を目の当たりにすると銃の世界が広いことを思い知らされる)
641 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/05(土) 19:05:17.54 ID:dIWqa2t10
せつ菜「これからの戦いでスナイパーがいてくれるのはとても頼もしいですね」
曜「そうだね、相手がアンドロイドだろうと人間だろうと効果は絶大だからね」
絵里「…というか勝手にルビィは戦いに参戦することなってるけどルビィはいいの?」
ルビィ「もちろん任せて、善子ちゃんの意志はルビィが受け継ぐよ」
絵里「…そう、ルビィがそう言うなら私は何も言わないわ」
絵里(果南と善子が消えて、新たなに加わったルビィという最強の矛)
絵里(それは即戦力どころか一種のモンスターであり、何か異常がない限り百発百中を保つルビィの腕は頼もしいってレベルじゃない)
曜「…しっかしこうしてみると私たち色んな武器持ってるんだねぇ」
絵里「人が増えた証拠ね」
絵里(ダイニングのテーブルやその辺に床に転がってる武器の数々を見てこの家の住居者もふえたことを実感できる。ホントなら後三人ここにいるはずだったのに、どうしてその三人はいないのかしら。分かっていながら疑問に思う)
絵里(エンドロールへ歩く私たちのそのエンドロールも、悪い意味だとしても良い意味だとしても終わりが近いように思える)
絵里(その中で最初は四人だったのに、次第に増えていって今じゃ八人もいるなんて感慨深いにも程がある)
絵里(この八人で、どう乗り越えていくのか)
絵里(果たして革命は起こせるのかしら)
642 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:06:14.02 ID:dIWqa2t10
絵里「…あれ?ルビィはもう動けるの?リハビリとか必要じゃないの?」
ルビィ「うん、必要だよ。まだ歩けるってだけで全然動けない」
ルビィ「でもスナイパーは撃てるよ!」
絵里「なるほど、でもそれじゃあ戦線の復帰は無理ね」
ことり「人の事いえたことじゃないけどね」
絵里「わ、私はなんとかするわよ!アンドロイドだし…」
曜「…だけど傷が治ってもちゃんと対策も考えないとね」
せつ菜「その通りです、新型アンドロイドはただのズルです。私たちに出来ないことを平然とやってのける疑似的な魔法を持っています」
せつ菜「その魔法にどう立ち向かっていくか検討していく必要があります」
曜「私が戦ったアンドロイドは命が複数ある…或いは記憶保存領域が別の場所にある。もしかしたら痛みを感じないなんてこともあるよ」
せつ菜「私と穂乃果さんが戦ったアンドロイド二人は喋らずに会話が出来る、或いは意思疎通がとれるはずです」
せつ菜「近づいて作戦を取ることも必要とせず思い立った瞬間すぐに二人共理想の行動に移せるのは驚異的です」
真姫「そうね…」
643 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:07:57.29 ID:dIWqa2t10
曜「まず前提条件として数で勝っていこう、こっちは戦える人が六人いる。でも向こうは三人、こっちには三人のアドバンテージがあるんだからそれをどう使うにせよこの三人のアドバンテージは活かしていこう」
絵里「もちろんよ」
曜「次に」
花丸「待ってほしいずら」
曜「ん?どうしたの?」
花丸「…次Y.O.L.Oに行くときはマルも連れていってほしいずら」
せつ菜「だ、ダメです!あそこはとっても危険な場所なんですよ?花丸さんが行っていいところではありません!」
花丸「それでもマルは行きたい、真姫さんには失礼かもしれないけどこのまま家で待ってるだけの人間にはなりたくない」
花丸「それにマルも戦えるよ」
花丸「銃は撃てなくても、投げ物は扱えるしナイフでなら人を殺せる。マルだって一応は希ちゃんの部下だもん」
花丸「希ちゃんに評価されたのは情報だけじゃないずら」
644 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:09:39.89 ID:dIWqa2t10
曜「…んまぁその辺はまた考えよう」
曜「それで————」
絵里(その日は来る次の戦いに向けてずっと話し合いだった。そんな戦いなんてまだ遠い話————)
絵里(——そう思っていたけど、あの別荘で何かしてる度に時は加速していき最初は人の手を借りないと歩けない私も気付いたら自分で歩けるようになっていて、みんな囲む食卓には穂乃果もいた)
絵里(その長い期間…そうね、一ヶ月半くらいかしら。それだけ長い期間が空いてるというのに政府も対アンドロイド特殊部隊も何もしてこない。一体なぜ?)
絵里(疑問だらけの世界は今日も謎を置いていく、しかしそんな謎に振り回されずにこの家は動いていく。地下の射撃場では今日も銃弾が飛ぶし、図書室の本は今日も複数抜かれ複数戻ってくる)
絵里(こんなのうのうと暮らしてていいのかしら、流石の私も平和ボケしてるわけじゃない、危機感は充分なほどにある。だけどそんな危機感も空回りしてしまうほどその時は何もなくて、逆に心配になってる私がいた)
絵里(テレビをつけても大したニュースはやってないし私たちの事も何も載ってない、真姫や花丸さんが情報を集めに行ってもそれらしい情報は一切なし)
絵里(戦いの合間に平和があるのか、平和の合間に戦争があるのか)
絵里(…違う、どちらもそうだとも肯定できなくはないけどこの一ヶ月半の沈黙は何を言おう戦争の真っ最中よ)
絵里(決して平和などではなく“何か”が動き出してた、だから来る日はみんなが動けるようになってすぐに来た)
645 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:10:49.88 ID:dIWqa2t10
〜夜、リビング
せつ菜「………」
ことり「………」
曜「………」
絵里「…それじゃあこれからY.O.L.O強襲作戦を実行するわ」
花丸「…了解ずら」
絵里「今回も前回同様グループ三つに別れて行動するわ、一つは姉妹のアンドロイドと対峙、一つは命が複数あるといわれるアンドロイドと対峙、そして最後の一つはY.O.L.Oの破壊を担当する」
絵里「それで姉妹のアンドロイドを担当するのは穂乃果、せつ菜」
絵里「そして花丸よ」
花丸「…はい!」
せつ菜「ホントに大丈夫なんですか?」
穂乃果「…助けれる保証はないよ」
花丸「もちろん、任せてほしいずら」
穂乃果「………」
646 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:12:15.91 ID:dIWqa2t10
絵里「そして命が複数あるアンドロイドを担当するのが私とルビィよ」
ルビィ「よろしくね、絵里さん」
絵里「ええ、よろしくね」
絵里「最後にY.O.L.Oの破壊を行うのが曜とことりよ、じゃんじゃん破壊しちゃって」
曜「もちろんっ!任せといて!」
絵里「…正直、今回はアンドロイドを殺すことが目標じゃない。Y.O.L.Oの破壊が出来た場合は撤退した方がいいわ、だから殺さずとも耐えるだけでもいいわ」
せつ菜「分かりました、ですが」
穂乃果「そんなつまらないことはしたくない」
穂乃果「…お返ししないとね」
せつ菜「その通りです」
絵里「…ほどほどにね」
絵里(大都会の街も少しだけ賑わいが落ち着く深夜、また再び私たちは戦闘服へと着替えて銃を持つ。今度こそとリベンジの思いを胸に秘めてみんな銃のチャージハンドルを引いた)
絵里(もう銃のセーフティーは要らない)
647 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/05(土) 19:14:47.70 ID:dIWqa2t10
穂乃果「じゃあ私たちは行くね」
絵里「ええ、死なないようにね」
穂乃果「大丈夫、もう負けない」
絵里(また銃弾で物語を語るのね、私は私自身に呆れた。けどこれも必要なストーリーだ、既に銃についてる弾倉の確認と持ち物の確認をして大丈夫なグループから好きなルートを使って動き出した)
絵里「じゃあ私たちも行きましょうか」
ルビィ「はいっ!」
絵里(準備が出来た私とルビィも動き出す。後は曜とことりだけで、真姫はここには呼ばずに家で待機してもらった)
タッタッタッタッ
ルビィ「……絵里さん」
絵里「何?」
ルビィ「…ルビィ、負けないよ」
ルビィ「……だから善子ちゃんとの約束は多分守れないや」
絵里「………」
648 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:15:34.63 ID:dIWqa2t10
善子『……私はルビィとの約束を守れない』
絵里「…許してくれるわよ、あの善子よ?」
ルビィ「…うん、そうだよね」
絵里(やはり善子とルビィは同じ気持ちを通わせてるのね。やはりあなたたちは二人であるべきだった)
絵里(善子とルビィが交わした約束——それはもう絶対に戦わないということだった)
絵里(善子から聞いた、数年前ルビィが数年眠ることの原因となったデパートの事件でルビィは倒れる前に善子と約束したらしい)
絵里(もうルビィみたいにならないように戦うのをやめて平和に生きて、と)
絵里(善子はそれを数年守った、そう…数年ね)
絵里(だけどこのアンドロイド隔離都市でその約束をずっと守るのは無理にも程がある、そんなルビィと善子の平和条約は今日完全に破綻した)
649 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:16:09.91 ID:dIWqa2t10
絵里「…もうすぐなの、もうすぐで鞠莉のところまで届くと思うの」
絵里(最初こそ月を目指す地上の兎というくらいに遠かったのに、今では手を伸ばせば届きそうなほど近くなった。ここを乗り越えればきっとそこに目指していた場所がある)
絵里(果たしてそこは天国か地獄か)
絵里(…行ってみるまで分からないけど、おそらくそこは地獄だろう)
絵里(でも、その先にユートピアが待っていることを私は知ってる。だからそこへ向かうの)
絵里(その為にも…)
絵里「……ここが正念場よ、頑張っていきましょう」
ルビィ「うんっ!」
650 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:18:04.64 ID:dIWqa2t10
〜路地裏
絵里「…また来ちゃったわね」
ルビィ「………」
絵里(私にとって最悪の場所。今も果南と善子の死体は転がってるのかしら、それとももう回収されたのかしら。分からないけどあの時通ったルートを通るのはやめよう、そう私の中で答えが出た)
絵里「…監視カメラは壊して行きましょう、もう隠密である必要は全くないわ」
ルビィ「分かったよ」
絵里(あの時とは違って今回は時間との勝負、いくらY.O.L.Oのアンドロイドが魔法のようなものが使えても人数は増やせない。銃の世界において数に勝てるステータスは無くて、それなら私たちは数で勝つしかない)
絵里(その為にも命が複数あるといわれるアンドロイドには負けてもらわないとね)
タッタッタッタッ
絵里「…!」ピタッ
ルビィ「!!」ピタッ
絵里(目に映る監視カメラはハンドガンで撃ち抜いて颯爽と路地裏を駆け抜ける私たちに待ち受ける一つの影。消えかけている防犯灯がその相手にスポットライトを当てていた)
651 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:19:42.14 ID:dIWqa2t10
絵里「…わざわざ待ってくれてたの?」
歩夢「うん、戦闘型アンドロイドは耳がいいからね」
絵里「…そう」
ルビィ「………」カチャッ
歩夢「前回のMSMC使いと戦えないのは残念だけど、あなたたちもあなたたちで侮れなさそうだね」
絵里「私たちを高く評価してくれてありがとう、その期待に応えるべくあなたを殺してあげるわ」
歩夢「…殺せたらいいね」
絵里「ええ、そっちは生きれたらいいわね」
歩夢「…あまり標準型が大きな口叩かないほうがいいよ、弱く見えるから」
ルビィ「じゃあルビィから言ってあげるよ」
ルビィ「せいぜい死なないように頑張ってね」
652 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:21:24.11 ID:dIWqa2t10
歩夢「…人間?またあのMSMC使いと同じパターン?」
ルビィ「別に曜さんより強いというつもりはないけど、あまりルビィを舐めないほうがいいよ」
歩夢「舐めてるつもりなんてないよ、あのMSMC使いは強かったからね。きっと私が新型じゃなければ瞬殺だったもん」
歩夢「…だからこそ私はそこの標準型アンドロイドよりあなたを警戒してるんだよ?」
ルビィ「…そっか」
歩夢「…そんなことより始めよっか、時間稼ぎとかされたらたまったものじゃないし」
絵里「そうね、じゃあ————」
「——始めましょうか?」
絵里「っ!?」
ルビィ「!」
歩夢「何っ!?」
653 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:23:13.57 ID:dIWqa2t10
ドドドド!
歩夢「ちっ…」シュッ
絵里「あれは…梨子…!?果林!?」
果林「可愛い可愛いY.O.L.Oの新型アンドロイドちゃんは私たちと遊びましょう?」
絵里「何…!?なんで…?」
絵里(どこからともなく聞こえた声と共に飛ぶ銃弾は歩夢に一直線で、梨子と果林が私の前に現れてもその殺意はずっと歩夢に向けられたままだった)
果林「は〜いごめんなさいね、絵里と可愛い赤髪ちゃん、この子の相手は私たちがするから」
絵里「…何が目的?」
歩夢「…それは私も知りたいです」
果林「鞠莉が人を模して作ってないアンドロイドは要らないっていってるの、その結果私たちの殺害対象は絵里やことりよりダントツであなたが上ってわけ」
梨子「私も人の形を投げだしたアンドロイドに興味はないかなぁ」
654 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:24:29.07 ID:dIWqa2t10
絵里「…それで信用出来ると思う?」
果林「別にいいわよ、信用しなくて。でもあなたたちにとってこの子と私たちを相手するなら信用出来ない私たちにこの子を相手してもらった方が嬉しいでしょ?」
果林「それに今回のこの戦いには鞠莉も一枚噛んでるのよ?今までの一ヶ月半何も無かったのなんでか知ってる?」
絵里「…知らないわ」
梨子「鞠莉さんがずっと政府にサイバー攻撃仕掛けてたからですよ、政府が持ってるデータのほとんどが今ノイズ化してるからてんてこ舞い状態で今もまともに機能してないんですよ」
絵里「…! そんなことが…」
果林「…だからね、本当簡単に言っちゃえば」
果林「今の私たちは相対的にあなたたちの味方になってるの」
絵里「………」
ルビィ「…信じて良いと思いますよ、絵里さん。その青い髪が出してる人の殺意は本物だしそこの紫色の髪の人が出してる気だるい感じも本物、人間は完璧には感情を偽れないんだよ、ルビィがそうだから」
果林「あはは、全然気にしてなかったけどもしかして赤髪ちゃんものすごい強い感じ?その観察眼は目を配りたいわね」
梨子「将来的に戦う事になったらまずはあの子狙いたいね」
ルビィ「………」
655 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:26:17.64 ID:dIWqa2t10
果林「…まぁいいわ、それより絵里」
絵里「何よ?」
果林「これは鞠莉からの伝言だと思って聞いて」
絵里「…?」
果林「どうやらY.O.L.Oを守ってるアンドロイドは三人じゃなくて五人いるらしいわ」
絵里「…それホント?」
果林「ええ、だからここで一人殺してあげるからその四人目五人目を殺してきなさい。私たちと絵里たちの目標は利害の一致で同じよ、後々私たちと戦うとしても今は私たちに任せて先に向かうのが頭の良い選択だと私は思うんだけど?」
絵里「……ええ、そうね。そうしてくれるならそうさせてもらうわ」
果林「ありがとう」ニコッ
絵里「…行きましょう」
絵里(あまり納得は出来ないけど、ルビィもあまり警戒はしてなさそうだったから静かにルビィに耳打ちをして私たちはY.O.L.Oへ向かった)
656 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:27:35.41 ID:dIWqa2t10
果林「…はーあ、対アンドロイド特殊部隊も人数減っちゃったわねぇ」
梨子「ダイヤさんはいつまでもしょげてるから実質二人ですよ今」
果林「ここに凛ちゃんとにこがいてくれたらもっと楽になるんだけどねぇ…」
梨子「はぁ……」
果林「ちょっと私の溜め息吐かないでよ、先に私が吐きたかったのに」
梨子「私が初めて対アンドロイド特殊部隊の人たちと会った時は負ける気がしないなんて思ってましたけど、二人しか残ってない現状を見ればそりゃあ溜め息の一つや二つも出ますよ」
果林「海未は強かったわねぇ、あんなのと戦ったら絶対に死ぬわよ、だから実は一番戦いたくなかった相手だったり」
梨子「私も凛ちゃんとは戦いたくなかったですよ、あの本能的に動く姿は対処のしようがないですから」
果林「うんうん、行動の読みにくさで言えば凛ちゃんが圧倒的だもの。戦いにくいに決まってるわ」
梨子「単純に強い曜ちゃんとも戦いたくないし対アンドロイド特殊部隊一の戦闘のセンスを持ったダイヤさんとも戦いたくないですね…ってもう全員ですね」
657 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:29:31.54 ID:dIWqa2t10
果林「にこを忘れてない?」
梨子「にこさんは…まだマシかなって思いますよ」
果林「そう?私はにこと戦うのもイヤだけどね、確かに対アンドロイド特殊部隊ではそこまでだけど、それはあくまでも対アンドロイドだからであって」
果林「にこは対人間でなら一番強いと思うわよ」
梨子「…それが本当ならにこさんと敵ではなくてよかったです」
果林「にこの相手をした海未は可哀想ね、また逆も然りで海未の相手をしたにこも可哀想だわ」
梨子「こうもドミノみたいに対アンドロイド特殊部隊が崩壊してくとアンドロイドって一生厄介のままなんだなって思いますよ、同時に私たちみたいな殺しの過激集団も同じように」
梨子「いずれ私たちも死ぬのかな…」
果林「…まっいずれは死ぬでしょうね」
果林「でも、死ぬ前に最新型のアンドロイド一人くらいは殺しておきたいかしら」
梨子「その通りですね」カチャッ
658 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:30:53.46 ID:dIWqa2t10
歩夢「…お話は終わった?」
果林「待たせてごめんなさいね」
果林「鞠莉というアンドロイドの母があなたは要らないって言ってるの、これは罪でもなければ罰でもなくて理なのよ」
歩夢「そのバッチ…あなたたちはY.O.L.Oとも友好な関係であった小原社直属の部隊と認識したよ、そんなところが私を傷つけていいの?」
梨子「残念だけどその友好な関係にある小原社の社長が命令したことなの、鞠莉さんにとってアンドロイドというのは子供みたいな存在と聞いてるので、そんな中で異形の子供が生まれたら殺したくなると私は思うな」
果林「回りくどい言い方をするつもりはないわ、単純に新型アンドロイドっていう人の域から外れたアンドロイドがムカつくから殺したいだけよ。そこに友好も敵対も関係無く、それで関係が悪くなるならそこまでの関係ってことよ」
果林「鞠莉は本気よ」
梨子「私もそろそろあの金髪美人のアンドロイドの下につく準備はしておいた方がいいのかな」
果林「冗談は死んでからにしなさい」
梨子「残念ですけど死ぬつもりはありませんよ」
659 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:32:29.68 ID:dIWqa2t10
歩夢「……そっか、ならやることは一つだね」
果林「ええそうね」
カチャッ
果林「……梨子」
梨子「分かってます、心配しないでください」
歩夢「………」
果林「…今!」
バァンッ!
梨子「はっ!」ダッ
梨子(果林さんの持つハンドガンの銃声を皮切りに私の足は動き出す。果林さんは後衛をやって私は近接で攻める前衛をやる——それが私と果林さんの攻めパターンだ)
660 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:34:13.14 ID:dIWqa2t10
歩夢「1と1の動きだね!何回も見たことあるよ!」
梨子「果たしてその何回がどこまで通じるかな!」
歩夢「経験だけが全てじゃないよ!」
梨子(私が右ストレートの体勢を走りながらとれば相手はたちまち受け止めるか回避のどちらかの準備をした、本当だったらここで私はこの体勢通りに右ストレートを打つのだけど、二対一なら話は違う)
梨子「よっと」ピョーン
歩夢「なにっ!?なんで人間がそんな高く…!」
果南「驚いてる暇はないわよ?」
歩夢「!!」
梨子(曜ちゃんが作った靴の恩恵は大きかったよ、凛ちゃんのような勢いだけのフェイントはアンドロイド相手でも効果的で、パンチを振る直前まで気迫を出し相手をその気にさせて回避に専念して空回りさせる、そうして出来た隙を他の人がカバーする。それが今回の動きの目的)
梨子(まさか私がアンドロイドの上を跳ぶようなジャンプをするなんて思ってなかっただろうし、ましてやこれがフェイントとすら思ってなかったと私は思う。そうして大きな大きな空回りをした相手にもう余裕はない)
661 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:35:25.80 ID:dIWqa2t10
歩夢「くっ…」シュッ
梨子「こっちも見てね人間やめたアンドロイドさん!」ババババッ!
歩夢「あッ……!」
梨子「ヒット♪」
梨子(果林さんの放った銃弾をだいぶ反応が遅れた状態で回避した上で私の放つ銃弾を回避出来るはずがない。それに私の持つ銃はサブマシンガンな上に連射速度も速い、そんな近距離特化ともいえる銃の弾丸を回避するのはいくら最新型でも無理みたいだった)
歩夢「また……」
バタッ
果林「…呆気ないわね」
梨子「機械は単純な動きに対しては強いですけど特殊な動きに対応できませんからね」
果林「にしてもこれが最新型なんて片腹痛いわね、まだ旧型の方が強いわよ」
梨子「私もそう思います、穂乃果ちゃんの次世代機とか言ってますけど全然穂乃果ちゃんの方が強いですよ」
662 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:36:57.68 ID:dIWqa2t10
歩夢「………期待外れなのは否定しないけど、私にもプライドがある」
果林「あら?」
梨子「これが鞠莉さんの言ってたやつかな?」
歩夢「不死身は死なないことだけが取り柄じゃない」
歩夢「やられ役はもう飽き飽きだよ」
歩夢「私だってこんな人の道外したアンドロイドに生まれたくて生まれたわけじゃない。でも私のこの力があなたたちを亡ぼせるというのなら私は喜んでこの力を肯定するよ」
歩夢「始めよう?夢への一歩はもう歩んでる」
歩夢「私、最強のアンドロイドになりたいから」
果林「…皮肉なものね、最強になりたいのは私も分かるけど射撃の腕前でもなければ身体能力の高さでもなくて」
果林「複数ある命で強さを誇るなんて」
果林「…これには海未も失笑でしょうね」
梨子「………」
663 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:38:25.25 ID:dIWqa2t10
歩夢「これが私のチカラなので」
果林「ええ、とっても素敵なチカラだと思うわ。でも最強のアンドロイドになる為には穂乃果やことりを殺さないとなれないでしょうね」
歩夢「…私の下位互換のアンドロイドが私より強いの?」
果林「総合的な腕前はどう考えても穂乃果ね、あなたは相対的に他のアンドロイドより強いとしか言いようがない、頂点に立ちたいその心意気は私すっごく好きだけど弱い子は私好きじゃないの」
歩夢「…そっか、ならあなたの持つ強さを教えてよ」
歩夢「それで世界の広さを推し量るから」
果林「…そう、ならせいぜいがっかりさせないように頑張るとするわ」
果林「…梨子」
梨子「準備は出来てますよ、命が複数あるのは知ってます。焦る必要はありません」
果林「もちろんよ」
梨子(穂乃果ちゃんの次世代機と呼ばれるアンドロイドに命が複数あるのは鞠莉さんから聞いてた)
梨子(それを聞いた時から私は思った、鞠莉さんから言われるまでもなくね)
梨子(…命が複数あるとは言っても爆発物で殺せば体をもぎ取れるって)
664 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:40:30.63 ID:dIWqa2t10
ジャランッ
梨子(私と果林さんの腰回りにぶら下がる投擲物が威嚇をしだした。今回の戦いに備えて投擲物をたくさん用意した、このアンドロイドを殺すには万全すぎるくらい)
梨子(それに今回の戦いには絶対に負けられない理由がある)
梨子(新型アンドロイドとはいえど私たちは対アンドロイド特殊部隊————そんなところがアンドロイドに完全敗北なんてしたら名が廃るでしょ?)
梨子(あのアンドロイドにもプライドがあるというのなら私にだってそれ相応のプライドがある。だからこれは正義対悪なんかじゃない)
梨子(一方的な正義 vs 一方的な正義の戦いなんだ)
梨子(…正直、そんな戦いではまだどちらが勝つかなんて分からない)
梨子(だからこそ私たちは勝つよ、勝たなきゃいけない)
スタッ
梨子(静かに果林さんはその一歩を踏み出す。第二ラウンドの合図はもう鳴った、だから後の私たちは————)
梨子(————勝利を持ち帰るだけ)タッ
665 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/05(土) 19:41:36.38 ID:dIWqa2t10
〜
ドドドドド!
聖良「何度戦っても結果は変わりませんよ二人とも!」
せつ菜「あなたたちの仕組みは理解したつもりです、今日という日は少し展開が違うかもしれませんよ?」シュッ
理亞「でも、防戦一方なのはどうして?」ドドドドッ
穂乃果「理解する必要はないと思うよ」
せつ菜(現在私と穂乃果さんは前回戦った森ではなく既にY.O.L.Oの中にありました。射線や物音には気を遣ったのですが敵の様子はなくそのまま進めば内部で待ち構えてるあの二人)
せつ菜(ここは拳銃を並大抵使える研究員とY.O.L.Oを守るアンドロイドしかいません。内部とはいえどそのアンドロイドと私たちが戦ってる中では野次から飛ぶ銃弾はどちらの立場からしても邪魔でしかありません)
せつ菜(ですから敵の本拠地とはいえど結局は私たちとあの姉妹アンドロイドだけのフィールド。誰も邪魔は出来ません)
666 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:43:07.40 ID:dIWqa2t10
せつ菜「ほっと」タッ
聖良「物陰に隠れても無駄ですよ」シュッ
せつ菜「果たしてそうでしょうか?」ニヤリッ
聖良「っ!?またっ!?」
ドカーン!
せつ菜(コンテナが多いこの場所ではとにかく銃弾が貫通しない遮蔽物が多い、そんな中でとにかく引いて引いて誘い受けのような戦法で戦う私たちの牙が今光った)
せつ菜(コンテナに隠れればそれはもう相手から見たら死角——私がその死角へと移れば相手は決め撃ちのような形で跳躍と共にやってくる)
せつ菜(そうと分かれば私はそこにグレネードを転がすだけ、そうすれば必ず避けなきゃいけない状況が出来て————)
穂乃果「今っ!」ドドドド!
せつ菜「これで終わりです!」パサパサパサッ
聖良「きゃっ…」
理亞「姉様!」
せつ菜(グレネードが転がったタイミングで穂乃果さんが私の相手をしている聖良さんに発砲、そして私はその聖良さんの逃げ場を無くすように発砲。これには妹の理亞さんも焦ってるのを見て手応えが感じた)
667 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:44:51.07 ID:dIWqa2t10
聖良「いあっ…!」
穂乃果「ちっ…腿だ…」
せつ菜「腿ですね…」
せつ菜(命中したのは胸でも頭でもなくて腿。もちろん致命的なダメージではあるのですがここは仕留めたかった)
せつ菜「でも、今度こそ終わりです!」ダッ
せつ菜(アサルトライフルの弾は切れた、だからハンドガンを持って聖良さんに突っ走った)
理亞「させない!」ババババッ!
穂乃果「私の方も見てほしいな!」ドドドドッ
理亞「このっ…こんな時に…!」シュッ
タッタッタッタッ
せつ菜「さあどうしますか!」バンッ!バンッ!
聖良「くっ…」シュッ
せつ菜(苦し紛れに回避をするけどもう遅い)
668 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:46:36.00 ID:dIWqa2t10
穂乃果「はっ!」バンッ!
聖良「ぐああああっ…!」
せつ菜(穂乃果さんが左肩を貫いた時点でもう勝負は決まってた、膝をついて左肩を抑える相手に容赦などしない。私はすぐそばまで近づいてナイフを首元に————)
ガキンッ!
せつ菜「っ!?!?」
聖良「……くっ」
理亞「姉様に近寄らないで!」ババババッ!
せつ菜「きゃっ!あっ…」
穂乃果「せつ菜ちゃん!?」
せつ菜(ナイフを首元に振った直後に当たる固い何か。フルスイングで振っただけに“それ”に当たれば私のナイフを持った手は反動で飛び跳ねて無防備な状態になり、その状態のまま別方向から飛んでくる銃弾は————)
せつ菜「いやあああああああああああああああああああっ!?」
せつ菜(——私の胸を貫いた)
669 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/05(土) 19:47:59.73 ID:dIWqa2t10
せつ菜(なんだろうこの感覚。私の胸から明らかに何かが離れていった、激痛で辺り全ての人間とアンドロイドの耳を塞げそうな甲高い悲鳴を上げれば、波を感じることが出来る電波のようなモノが私の身体中を駆け巡った)
せつ菜(…あ、そうだ。私死ぬんだ)
せつ菜(力が抜けて、膝をつき、口も手も動かせなくなって倒れるその最後の一秒まで痛いのかすらも分からないような強烈な電撃が私には走って、頭がずっと真っ白のままだった)
『感情保管領域で深刻な損傷が発生————記憶保存領域の稼働が出来ません。システムオールダウン、機能を停止します』
せつ菜(私の頭に直接響いた何かのアナウンス。それすらも分からない私は目を開けたまま仰向けになって倒れた)
バタッ
穂乃果「せつ菜…ちゃん?」
せつ菜「………」
穂乃果「せつ菜ちゃん!!」ダッ
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