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絵里「例え偽物だとしても」
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470 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:29:35.16 ID:ViazdTd70
花丸「でもそれは超一流の数で勝ってるだけだよ?あそこには訓練された人が何十人もいるよ?」
果南「そんなザコは数に含まれないよ」
善子「同じこと言おうとした」
絵里「えぇ…」
曜「…でも実際そのくらいなら私たちの敵じゃないよ、私たちだって真正面からやり合うつもりは更々ないからね」
せつ菜「アンドロイドを人一人と加算するのが間違ってますね」
花丸「…確かにそれはそうずら」
果南「よしっなら次の作戦はY.O.L.Oに強襲だね、そこを潰せば政府の勢いも少しは落ちるでしょ」
ことり「そうだね、私は絵里ちゃんのやることについていこうって思ったけどなんかいよいよ終わりも見えてきたような気がするよ」
善子「確かにね、そこを落とせばいよいよ鞠莉のところだもの」
絵里「…鞠莉か」
絵里(鞠莉に会えばきっと何かが変わる、アンドロイドが蔑まれる根源を潰せば何かが変わるはず)
絵里(そう願って、そう思って戦ってきたけどその頂への道は長いようで短かった)
絵里(最初は私と善子と果南と真姫だけのレジスタンスだったのに、今じゃ曜やことり、そしてせつ菜や穂乃果まで仲間について勢力も大きくなったものよ)
471 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/01(火) 18:33:26.10 ID:ViazdTd70
曜「確かに近いかもだけど、決してすぐそばにあるとは言えないよ。油断は出来ない、これだけは忘れないで」
せつ菜「その通りですよ!人数の差なんてひっくり返そうと思えばすぐにひっくり返るんですから油断はできません」
絵里「そうね、その通りだわ」
ピコンッ♪ピコンッ♪
絵里「ん、真姫から電話だわ」
果南「どうしたんだろう?」
絵里「さぁ…?」
ピッ
絵里「もしもし?」
真姫『絵里!ルビィが消えたの!』
絵里「は…は?どういうこと?」
真姫『そのままの意味よ!ルビィが病室からいなくなってる!ルビィの病室は一番下の階だったからご丁寧に窓から逃げたよと言わんばかりに窓が全開になって空いてたわよ!』
絵里「そ、それってルビィが意識を取り戻したってこと?」
善子「えっ…ルビィが起きたの…?」
472 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:35:06.41 ID:ViazdTd70
真姫『…分からない、そうとも言えるしもしかしたら誰かが攫って行ったのかもしれない…』
真姫『いずれにせよルビィの姿が消えたわ』
真姫『今監視カメラを見てもらって調べ————って、え!?やっぱりルビィ一人で逃げたの!?』
絵里「…善子、どうやらルビィは起きたらしいわよ」
善子「っ!今すぐ病院に行くわ!」ダッ
絵里「待って!でもルビィはもう病院にはいないって、病院から逃げたらしいわ」
善子「に、逃げたって数年も寝てたのにそんなすぐに動けるわけないじゃない!」
曜「確かに…」
善子「アンドロイドならともかくルビィは人間よ?特別な力もないのにどう動くのよ」
絵里「…真姫聞いてた?」
真姫『ええ、でもごめんなさい。私にもそれは分からないわ』
真姫『可能性を考えるなら、何か薬品を使ったか、それともルビィの体は常人と比べて強かったか、この二つかしら』
絵里「…どっちも可能性は低いと思うけど」
真姫『…ええ、私もそう思う』
473 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:37:29.77 ID:ViazdTd70
絵里「………」
絵里(果たしてそれは朗報であったのか悲報であったのか)
絵里(数年眠りについていた眠り姫ことルビィがついに目覚めた——けど、姿はとうに闇の中だった)
絵里(それを聞いた上で私たちはどうすればよかったんだろう)
絵里(…迷ってる私の傍らで答えはとうに出かけていた)
善子「…いい、ならルビィを探しにいくわ」
花丸「む、無茶だよ!だって今は政府も動き出してるんだよ?死にに行くようなものずら!」
善子「さっき言ったわよね、訓練された人間のようなザコは数に含まないって」
善子「別に恐怖でもないわ」
ことり「でもその傷じゃ辛いよ…」
善子「へっちゃらよ、ルビィの為だもの」
曜「…無理だよ、やめた方がいい」
善子「…ならどうしろと?」
曜「諦めるんだよ、私たちが出るより向こうにいる真姫さんや病院の人が探しに行った方が安全で効率がいい」
曜「監視の目を避けつつルビィちゃんを探すなんて無理だよ…隔離都市東京を舐めちゃいけない」
474 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:39:02.76 ID:ViazdTd70
ことり「…ごめん善子ちゃん、それは私も同意したい」
ことり「むしろここでのこのこ作戦会議をしてる私たちがいるのが異常なくらいだよ、日本で一番賑やかな都市がちんけな警備を施してるはずがないんだよ」
花丸「…その通りずら、あなたがアンドロイドなら分かるはずだよ、なんせアンドロイドは人間と違って自分の状況を数値化出来るんだから」
善子「………」
絵里「…善子……」
絵里(みんなから諦めの圧をかけられていた)
絵里(けど、それもそうでしょう。だって相手は政府なのよ?勝てる勝てないじゃなくてこの行為は今まで積み上げたものを崩すものとなる、監視の目が濃くなった以上もう迂闊に外出は出来ない。次誰かに見つかった時がこの別荘の捨て時かもしれない)
絵里(それをルビィ一人の為だけに私たち全員の運命を善子に託すことは到底不可能だ、こういっちゃなんだけどルビィの命と私たちの命じゃ重さが何百倍にも違うのだから)
絵里(…だから、ここは私も諦めろというしかなかった)
絵里(それが善子の為の選択でもあったのだから)
475 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:40:30.92 ID:ViazdTd70
善子「…ちっ……私寝る」
スタスタスタ
ことり「…行っちゃったね」
果南「善子の気持ちは分からなくもないよ、けど今が今だから仕方ないよ」
せつ菜「…ですね、こういう時当事者だったらって考えるんですけど、善子さんの気持ちもよく分かります」
絵里「……ごめんなさい、真姫。ちょっと大きな仕事になりそうだわ」
真姫『いいわよこのくらい、見つけたらまた連絡するわ』
絵里「ええ、お願い」
真姫『それじゃあね、そっちも気を付けて。いざという時は私も力になるわ』
絵里「ええ、それじゃあ」
真姫『ばいばい』
ピッ
絵里「…後は真姫に任せましょう、今の私たちに善子の気持ちを尊重する余裕はないわ」
ことり「…そうだね」
果南「流石にルビィって子一人の為だけに私たちも動けないしね…」
絵里「……本当に申し訳ないけど我慢してもらいましょう」
絵里(次の目標はY.O.L.Oであってルビィじゃない、この傷が癒えるまで私たちは動くことを許されない)
絵里(だから本当にごめんなさい善子……ルビィに会えるのはまだ先みたい…)
476 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:42:08.72 ID:ViazdTd70
絵里「…みんなはこれからどうする?」
せつ菜「私は穂乃果さんが目覚めるまで穂乃果さんの近くでじっとしてます」
果南「暇だし漫画でも読もうかなー」
ことり「あ、私も」
曜「んー私はY.O.L.Oに向けて色々準備するよ、傷は癒えてないけどね」
花丸「マルは……」
曜「花丸ちゃんも本でも読んでれば?」
花丸「んーじゃあそうするずら」
果南「じゃあ私たちはあの本の部屋にいくよ、何か面白そうなの見つけたら戻ってくるね」
ことり「同じく」
スタスタスタ
花丸「…あ、マルも!」
タッタッタッ
曜「じゃあ私もここの武器保管庫に行って何か面白い物がないか探してくるよ」
絵里「え、ええ」
曜「それじゃっ!」
スタスタスタ
477 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:43:40.71 ID:ViazdTd70
絵里「…行っちゃった」
せつ菜「みんなやることがあるんですね」
絵里「ことりと果南はやることないと思うけど…」アハハ
せつ菜「でも、楽しめるものがあるのはいいことです」
絵里「せつ菜は本好きじゃないの?」
せつ菜「大好きですよ、でも穂乃果さんの方が好きですから」
絵里「…なるほど、なら一緒にいないとね」
せつ菜「はいっ」
穂乃果「すぅ…すぅ……」
絵里「これからどうなっちゃうのかしら」
せつ菜「…毎日生きるか死ぬか、ですよ」
せつ菜「今はこれで良くても明日はきっとダメになるんです、自分の持つ強さが。そして考えが」
絵里「…そうね、その通りだわ」
478 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:45:48.61 ID:ViazdTd70
せつ菜「…戦えないっていうのは分かってるんですけど、今もこうしてる間に何かが動いてるって思うとじっとしてられないんです」
絵里「……そんな強く穂乃果の手を握ったら穂乃果も苦しいわよ?」
せつ菜「あ、ご、ごめんなさい…」
絵里「…確かにもどかしいかもだけど今はここでゆっくりするのが一番だわ」
せつ菜「それは分かってます…」
絵里「ならいいじゃない、ここは果南や曜とか一緒に遊んでくれる人もいるんだし」
せつ菜「そんなゆるゆるなんですかここは…」
絵里「戦いの時以外はね」
せつ菜「そうですか…しかしここに籠るのなら外の情報が欲しいところですね」
穂乃果「……花丸ちゃんに任せたら?」
絵里「うわぁ!?」
せつ菜「お、起きてたんですか!?」
穂乃果「今起きたの、いってて……」
せつ菜「そ、そうですか…でもよかったです。無事目覚めてくれて」ギュッ
穂乃果「うん、なんとか命を繋ぎ留められたよ」エヘヘ
479 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:47:53.20 ID:ViazdTd70
穂乃果「…それでこれはどういう状況なの?」
せつ菜「…私たちは絵里さんを主にして生きていくことにしました」
穂乃果「…それでいいの?せつ菜ちゃんは」
せつ菜「私は構いません、それに絵里さんならなんとなく信用出来そうなんです」
穂乃果「……なら私も何も言わない。いくら気に入らなくてもこの状況で自らみんなと離れることはしたくない…にこちゃんに教えられたよ、今は余裕がない」
せつ菜「…そうですか、納得してもらえるならよかったです」
せつ菜「ですが穂乃果さん、案外絵里さんも悪くないかもしれません」ボソボソ
穂乃果「なんで?」ボソボソ
せつ菜「ちゃんと思いやりがあるからですよ、私たちをモノとして見ないその様は信用出来るものがあります」
穂乃果「…そっか」
せつ菜「はいっ」
480 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:49:58.21 ID:ViazdTd70
果南「ただいー…ってあれ?穂乃果がいるじゃん!」
穂乃果「か、果南ちゃ」
果南「丁度よかった!今暇してたんだよ!穂乃果も一緒に本探してよ!こう…バトルモノでがががっとしたもの!」グイッ
穂乃果「えっちょ、ちょっと待ってよ!」
果南「待たない!よしいこうすぐ行こう!穂乃果イチオシのバトルを教えてよ!」
タッタッタッ
穂乃果「せつ菜ちゃん!」アセアセ
せつ菜「果南さんといるのも意外に楽しいものですよっ」
果南「よーし相方のせつ菜から許可が下りたことだから行こう!」グイッ
穂乃果「せつ菜ちゃーん!!!?」
タッタッタッ
絵里「…相変わらず嵐のようなやつね、果南は」
せつ菜「穂乃果さん、すごくクールそうですけど実はそうでもないんでああやって無理矢理引っ張った方が本当の穂乃果さんが見れて楽しいんですよ」
絵里「へえせつ菜も悪い子ね」
せつ菜「私は怖い穂乃果さんより可愛い穂乃果さんが見たいんですからっ」
絵里「ふふふっそうね」
481 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:50:48.70 ID:ViazdTd70
絵里「…そういえば穂乃果の言ってた花丸ちゃんを使ったら?っていうのは何なの?」
せつ菜「花丸さんは戦えないんですけど情報を集める情報屋として非常に優秀な方なんですよ」
絵里「え?でも花丸さんは銃が撃てないんでしょ?いざ戦いが起こった時どうやって戦うのよ?逃げてるだけじゃこの都市は生きることはほぼ不可能よ?」
せつ菜「銃を使わなきゃいいんですよ、ああ見えても花丸さんはナイフを用いた接近戦ならそこらの有象無象より全然強いんですよ」
絵里「へぇ…でもなんか戦法がアナログね…」
せつ菜「銃が使えない花丸さんにとっては本で蓄えた知識とそのナイフ裁きだけが武器ですからね、花丸さんは人間ですし運動神経もそこまでよくありません。だからそれで戦ってくしか花丸さんは出来ないのですよ」
絵里「難しいものね…」
せつ菜「でも、花丸さんは弱い人じゃありません。頭は誰よりもいいですから殺し屋の私たちにとって花丸さんの持ってくる情報はすごく役立ちました」
せつ菜「だから今回も花丸さんに任せるのがいいかもしれませんね」
482 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:52:17.95 ID:ViazdTd70
絵里「うーん…でもなんか危なくない?」
せつ菜「大丈夫なはずです、花丸さんだって素人じゃありませんから」
絵里「そう?でもうーん…」
せつ菜「…絵里さんは優しいんですね、希さんはそこは“任せた”って言って笑顔で見送ってました」
絵里「…きっと花丸さんの強さを見たことないっていうのが原因なんだと思う」
絵里「それに知ってる人の命を失いたくないの」
絵里「ここで私が花丸さんに任せたって言って花丸さんが戦いで死んでしまったらきっと後悔すると思うの、行かせなきゃよかったって」
絵里「…それに今は政府も動いてるわ、いくら花丸さんが対象外とはいえ対アンドロイド特殊部隊には目をつけられている。それだけでも充分危険だわ」
せつ菜「……そうですね、その通りです」
絵里「……時が来るまではみんなでゆっくりしてましょう?私はみんなと一緒にいたいの」
せつ菜「…分かりました、絵里さんが主である以上はそれに従います」
483 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 18:54:16.16 ID:ViazdTd70
絵里「…それは構わないけど、イヤならイヤって言ってほしいわ。無理に従う必要はないし…」
せつ菜「分かりました、でも今回は私も賛成したいです。花丸さんに死んでほしくないのは私も同じですから」
絵里「…そう、ならよかったわ」
せつ菜「はいっえへへ」
絵里「ふふふっ」
絵里(私が標準型である故に、なのかしら)
絵里(私が望むのはリスクと対になるリターンではなくて、みんなが安心していられる安寧の場所だった)
絵里(ここに緊張感は欲しくない、だから穂乃果が私が主になるっていうのに納得してくれて正直心底安心した)
絵里(この硝子みたいにすぐに壊れてしまいそうな安心感をずっと心に秘めたままにしておきたくて、その上で穂乃果とせつ菜のプライドは実にひやひやさせてくれるものだった)
絵里(…だから今となってはその脱力感が体を巡ってる気がした)
484 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:00:21.13 ID:ViazdTd70
〜
タッタッタッ
果南「ほらほらこっち!」
穂乃果「わぁああぁわあ!」
ガチャッ!
果南「ふーとうちゃーく」
穂乃果「急に引っ張って走らないでよー!」
果南「あははっいいじゃん」
穂乃果「私は怪我してるの!」
果南「元気そうじゃん」
穂乃果「うぬぬ…」
ことり「あ、果南ちゃん」
ことり「…!ほ、穂乃果ちゃん……」
穂乃果「…ことりちゃん」
果南「ことり……」
果南(私には分かる、ことりが穂乃果に対して控えめになる理由が)
果南(一度は殺されかけた相手、旧友でもあった穂乃果に初対面のような初々しさはことりにはないだろう)
485 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:01:58.88 ID:ViazdTd70
穂乃果「…前にも思ったけど、やっぱりあなたと会うのは初めてじゃない気がする」
ことり「!!」
穂乃果「あなたの雰囲気、私の探してる人にすごく似てる。同じ人なんじゃないかって思えるくらいにそっくり」
スタスタスタ
穂乃果「ちょっと手貸して」
ことり「え、うん」
ギュッ
穂乃果「…やっぱりあなたの温もりは私の探してる人にそっくりだね」
ことり「…そうなんだ」
果南「………」
ことり『…私の親友だったアンドロイドも人探しで活動してるんだって、だから方向性の一致で協力してるんだとか』
果南(ことり本人から聞いた、穂乃果のことを。穂乃果の探してる人————今の穂乃果の発言を聞けばすぐにでも分かるよ)
果南(穂乃果の探してる人はことりなんだって)
果南(記憶を失っても微かに残ってたのかな。雰囲気とか温もりとかそんなものが体に焼き付いてるのかもしれない)
486 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:02:52.43 ID:ViazdTd70
ことり「…見つかるといいね、その探してる人」
果南「ことり…?」
ことり「………」フルフル
果南(…だけどことりは首を横に振って、その話題を膨らませずに流した)
果南(不器用で見知らぬ感情を機械の心に宿した私からすればことりの行為には理解が出来なかった、そしてことりの考えてることが分からなかった)
穂乃果「…うん、ありがとう」
ことり「………うん、頑張ってね」
果南「ことり……」
果南(そして、穂乃果に対しての返事に間が空く理由も私は分かる)
果南(ことりは私があの時に胸を撃ち抜いたことで感情の欠如が発生して笑えなくなった。きっと今の場面はことりが笑う場面だった、けど異常を来した機械の体は笑うことを許さなかった)
487 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:04:19.25 ID:ViazdTd70
穂乃果「そういえばなんで私の事知ってるの?」
ことり「あぁいや…私も戦闘型アンドロイドだから軍神の事は分かるよ」
穂乃果「……そっか」
ことり「うん、そうそう」
花丸「あれ!?穂乃果ちゃん目覚めたんだ」
穂乃果「うん、ついさっき」
花丸「どうしてここに?」
穂乃果「この人に連れてこられたんだよ」
果南「えーこの人呼ばわりは納得いかないなー」
花丸「なんで穂乃果ちゃんをここに?」
果南「ん?いやー向こうでせつ菜と絵里と穂乃果が変な話始めそうだったから無理矢理こっちに穂乃果を引っ張って強制終了させたんだよ」
穂乃果「変な話…?そんなことの為に止めたの?」
果南「そんなことって言うけど絵里にとってはとっても大事な話なんだよ、絵里と一番長くいる私はよく分かる」
果南(穂乃果に本を選んでもらうっていう体で進めた話だけど、そんな気はない)
果南(花丸単身で監視の目と銃弾が飛び交う街へ向かわせるのはきっと絵里にとって不安で胸が張り裂けてしまうほどの出来事だろう)
果南(戦闘型アンドロイドは耳がいいもので、本の部屋の扉を開けてると絵里とせつ菜の声が自然と聞こえてくる)
果南(だから話が大きくならないうちに楔を打っておいた)
488 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:06:00.52 ID:ViazdTd70
ことり「…?何の話?」
花丸「同じく…」
果南「なんでもないさ、もう終わった話だから」
穂乃果「…そうなの?」
果南「そうそう」
ことり「…?」
花丸「気になるずら…」
ことり「……そういえば、絵里ちゃんと一番付き合い長いんだね」
果南「そうそう、だから絵里の事は私にお任せ!」
穂乃果「絵里さんってどんな人?」
果南「うーん聡明で、頭が良くて、強い人かなぁ」
ことり「果南ちゃんより強いの?」
果南「うーんどうだろうね〜」
489 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:07:11.36 ID:ViazdTd70
花丸「気になるの?絵里さんが主なのが」
穂乃果「…うん、だってあの人のこと全然知らないし」
ことり「絵里ちゃんは命の使い方がバカな人だよ」
花丸「…?どういうことですか?」
ことり「絵里ちゃんはバカだよ、殺し合いという命を賭けた戦いをしてるのに、相手の命を尊重するバカだよ」
穂乃果「なにそれ…」
ことり「…でも、そのバカのおかげで私は救われた。私を助けても戦力にはならないし、むしろ自分の命を危険に晒すだけだったのに私を助けてくれた」
ことり「戦いに損得を求めないその姿勢は、何より最もな信頼になるの」
ことり「穂乃果ちゃんの主だって、そういう人でしょ?」
穂乃果「…うん、私とせつ菜ちゃんも善意だけで助けてもらった」
ことり「…そういう人だよ、絵里ちゃんは」
果南「…ことりにしては珍しい発言だけど、間違ってはいないかな」
490 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:12:28.47 ID:ViazdTd70
曜「そうだね、間違ってないよ」
穂乃果「!」
果南「あれ、曜じゃん。どうしたの?」
曜「ん、いやーY.O.L.Oに備えて敵の情報をおさらいしてこうと思ったんだけどここにもしかしたらアンドロイドの本があるかもって思ってさ」
ことり「アンドロイドの本?」
曜「希ちゃんから聞いたことあるんだ、実在するアンドロイドをまとめた図鑑のようなものがあるって」
花丸「あ、マルも持ってるよ。ただマルが持ってるのはデジタルデータだけどね。希ちゃんから貰ったずら」
曜「ホント!?よかったらそれ貸してほしいな」
果南「ず、図鑑ってそんなものがあるの…?」
ことり「なんか気持ち悪い…」
花丸「図鑑は言い方が悪いけど、戦闘型アンドロイドをまとめたデータならあるずら」
花丸「希ちゃんの話によると開発者用にまとめられたものらしくて、世には出回ってないらしいずら」
穂乃果「…なんでそんなものを希ちゃんが持ってるの?」
花丸「それはマルにも…」
491 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:15:32.13 ID:ViazdTd70
果南「その希って人がアンドロイドの開発者だったりして」
ことり「まさかそれはないよ」
花丸「その通りずら」
穂乃果「………」
曜「…まぁとりあえず借りてもいい?」
花丸「分かりました、ちょっと待っててください」
スタスタスタ
曜「…にしても、絵里さんの話をしてたんだね」
果南「うん、穂乃果が絵里の事がよく分からないからって」
曜「んーそっか、そうだねぇ〜絵里さんは優しい人だよ、でもちょっと優しすぎる人なんだよ」
曜「お人好しで、ことりちゃんの言う通り相手の命まで尊重しちゃうくらいに優しい人、だから放っておけないんだよ」
曜「希ちゃんもそうだったでしょ?毎回危なっかしい行動ばっかで、最初のうちは放っておけなくてついていったんでしょ?」
穂乃果「…!どうしてそれを…」
曜「あはは、分かるよ。私も希ちゃんに初めて会った時はそんな感じだったもん」
492 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:19:52.93 ID:ViazdTd70
曜「まぁ私は希ちゃんとは立場上敵だったから共同戦線をすることは少なかったけど、でも放っておけなかったかな」
曜「…だから、絵里さんは希ちゃんに似てるんだよ」
曜「行動に損得をつけず相手の命を尊重する、だから放っておけない人なんだよ。穂乃果ちゃんもせつ菜ちゃんも絵里さんの下に就けば、とりあえずは安心だよ?」
曜「私——曜やことりちゃんが言うんだもん、少しは絵里さんの事、分かってもらえたかな?」
果南「曜…」
曜「えへへ、今は私も絵里さんの部下だからね」
穂乃果「……そっか、曜ちゃんがそこまで言うならそうなんだね」
曜「うんっ!」
果南「…ん?曜と穂乃果を知り合いなの?」
曜「んーとそうだね、元々希ちゃんと私が知り合いだったから穂乃果ちゃんとは意図せずともよく会ってたよ」
曜「希ちゃんと会う時は大体後ろに穂乃果ちゃんがいたからね、希ちゃんが離れると寂しそうな顔して私が慰めるとちょっと気を遣って笑ってたのを覚えてるよ」
穂乃果「あ、それは言わないで!」
果南「へー可愛いところあるじゃん」クスクス
ことり「可愛いねっ」
穂乃果「もーっ!」
果南(穂乃果はプライドがお高いとは聞いてたけど可愛いところもあってなんかちょっと気が抜けた)
果南(これならこの先も心配はなさそうだね)
493 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/01(火) 19:22:50.04 ID:ViazdTd70
花丸「曜さーん、はいっどうぞ」
曜「お、ありがとう花丸ちゃん」
ことり「…そういえばそれアンドロイドのデータなんだよね?」
曜「そうだよ」
ことり「なんでアンドロイドのデータなんか見るの?私たちの敵は対アンドロイド特殊部隊でしょ?」
曜「んーまぁそうなんだけど実はY.O.L.Oには戦闘型アンドロイドが三人いるみたいなんだ」
果南「へー強いの?」
曜「それが分からないから調べるんだよ」
果南「え?だってY.O.L.Oって曜の施設でしょ?」
曜「そうなんだけど私はあそこにたまに通うだけの人だったからあそこのことはよく知らないんだ、私のしてることといったら何かの設計図をあそこに渡して帰るだけだし」
果南「そ、そうなんだ…」
穂乃果「…でも敵の事何も分からないんじゃ探しようがないんじゃないの?」
曜「まぁそうなんだけど一人だけ分かってるんだ、型番はA-083って」
果南「ふーん…A-083ってことは初期型?」
曜「いや、これがA-83だったら初期型だけどA-083は違うんだよ」
果南「へーそうなんだ」
494 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/01(火) 19:24:34.92 ID:ViazdTd70
曜「んーとA-083はっと……」
曜「あ、あった」
ことり「A-083…」
果南「可愛いじゃん」
果南(型番と一緒におそらくイメージと思われるイラストが描いてあった。髪は肩くらいまで届くくらいのセミロングで右の耳元に善子みたいなお団子を作っててちょっと特徴的な髪型、それ以外はごく普通の女の子だけど、これが戦闘型アンドロイドなのかと思うとやっぱりか弱そうにも見える)
花丸「この子がY.O.L.Oに?」
曜「みたいだよ」
穂乃果「…!この子…!」
ことり「どうしたの?」
穂乃果「P-83の次世代モデル、または戦闘型アンドロイドへと変形させた後継機って私の後継機じゃん……」
曜「えっ…ってホントだ…穂乃果ちゃんってP-83じゃん…」
ことり「穂乃果ちゃんの後継機…」
穂乃果「後継機なんてあるの…?」
花丸「マル……聞いたことがあるずら、型番は基本的にAとFとPの三種類があって戦闘型アンドロイドはA、標準型はF、業務用アンドロイドはPとアンドロイドの種類によって最初につくアルファベットが違うずら」
ことり「それはなんとなく分かってたよ、今まで戦ってきたアンドロイドは揃いも揃ってAの人ばっかだったから」
穂乃果「そうだね、少し戦えばある程度法則性が見えてくるね」
495 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:27:17.28 ID:ViazdTd70
花丸「そう、そこまでならほとんどの人が気付くことが出来る」
花丸「ただここからが問題で、英語の次の数字が0のアンドロイドは何かの後継機と希ちゃんから聞いたことがあるずら」
果南「私はA-822だから誰の後継機でもないなぁ」
ことり「…あれ?そういえば果南ちゃんってそんな型番の数字が大きいんだ」
曜「型番の数字は作られた順じゃないよ、最もことりちゃんや穂乃果ちゃんみたいな初期型の時代は作られた順だったけどね」
ことり「そうなんだ…初めて知ったよ」
果南「絵里はF-613だし善子はA-710だし絵里も善子も違うね」
穂乃果「せつ菜ちゃんはP-101だし案外いないね、後継機って」
曜「きっとレアな存在なんだよ」
曜「…というかやっぱりアンドロイドによってわざと性能分けてるんだね、分かってはいたけど再確認して納得したよ」
果南「…ホントだ、得意武器とか書いてあるじゃん。特徴…P-83の後継機に相応しい射撃テクニックと近接戦闘…か」
穂乃果「……なんかイラつくね」
ことり「穂乃果ちゃんの後継機だもんね…」
496 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:33:03.98 ID:ViazdTd70
穂乃果「…この子の相手は私がしたい、次世代モデルとかいうんならこの手で殺して次世代を上回るよ」
果南「いいじゃん、私は応援するよ」
曜「え、でも単純に考えてこのA-083は穂乃果ちゃんより性能がいいよ?正直穂乃果ちゃんが戦うのは分が悪い気がする…」
穂乃果「…それでも戦うよ、後継機がいる以上負けた気がしてならないから」
曜「うーん…」
果南「いいじゃん、曜だって自分の上位互換がいるとか言われたらいやでしょ?」
曜「まぁそれはそうだけど……」
穂乃果「……そういえばそのデータって戦闘型アンドロイドが載ってるんだよね?」
花丸「そうだよ」
穂乃果「なら果南ちゃんとかもいるんでしょ?」
果南「えっ……」
曜「あ、いいね!面白そう!」
ことり「私も気になる!」
果南「ちょ、ちょっとやめようよ、私のなんて見ても面白くないよ?」
曜「へー果南ちゃんがそう言うんなら尚更見たくなったよ」ペラペラ
果南「こいつ…」
497 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:35:27.10 ID:ViazdTd70
曜「あ、あった。A-822…ってあれ?これ果南ちゃんだよね?」
ことり「果南ちゃん、最初は髪下ろしてたんだね」
果南「まぁね」
穂乃果「どうして変えたの?」
果南「髪が長いと戦いづらいんだよ、だから私からすればせつ菜やことりはよくそんな髪伸ばして戦えるなって思うよ」
ことり「んー私髪の事は気になったことないなぁ」
曜「同じく」
穂乃果「そうだね」
果南「へー羨ましいよ」
曜「まぁいいやA-083の情報を把握出来たから私はまた準備に戻るよ!花丸ちゃんありがとね!」
花丸「あ、はい!」
曜「それじゃあ!みんなもばいばいっ!」
ことり「う、うんばいばい」
穂乃果「ばいばい」
498 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:36:03.49 ID:ViazdTd70
タッタッタッ
果南「よーし、それじゃあそろそろ本題に移ろうか」
穂乃果「本題?」
果南「え?何?忘れたの?穂乃果に本を選んでもらうって言ったじゃん」
穂乃果「えぇ…私本読まないよ…」
果南「そこはもう感覚で選ぶんだよ!ほらっ!さっさと選ぶ!」
穂乃果「んもー」
花丸「ふふふっ」クスッ
ことり「私も見つからないから穂乃果ちゃんに選んでもらおっ」
スタスタスタ
499 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:39:00.01 ID:ViazdTd70
〜???
梨子「えっ…海未さんが死んだ…?」
鞠莉「ええ、にこと共倒れらしいわ」
梨子「にこさんと共倒れって…」
鞠莉「……ねぇ梨子」
梨子「なんですか?」
鞠莉「なんで私はアンドロイドを作ったんだと思う?」
梨子「えっ…」
鞠莉「だって、おかしいと思わない?私が作ったのよ?なのに私がそれを壊すの?」
梨子「別におかしいことじゃないと思いますけど…だって神話にもいましたよね、破壊と創造両方を司る神が」
鞠莉「…そう言われては返す言葉がないわね」
梨子「………」
鞠莉「アンドロイド————それは今思えば私の失敗作でしかなかった」
梨子「どうしてですか?」
鞠莉「………語るに及ばないわ。それに話せば長くなる」
500 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:40:38.64 ID:ViazdTd70
梨子「…いえ、対アンドロイド特殊部隊所属である私にはそれを知る義務と権利がある。そう思っています」
鞠莉「……ならそこに座りなさい、立ってると疲れるわよ」
梨子「…分かりました」
スタスタスタ ストンッ
鞠莉「……アンドロイドはそうね、それはいい意味でも悪い意味でもつまらない運命を変えた存在だった」
鞠莉「私は恵まれた環境で育ち、恵まれた才能を持っていた」
鞠莉「それは12歳にしてアンドロイドのシステムを作り上げた頭脳と常識に囚われない無限の世界を述べる想像力、またの名はクリエイターとしての素質…それはまさに天が私に二物を与えたと言っても過言じゃなかった、私の才能は多くの人間を虜にして世界の人々の目を惹かせた」
鞠莉「人間そのものとしか思えないロボットを作るなんてすごすぎるって、そういう言葉を初めてとして私の技術とアンドロイドの性能は高く評価された」
鞠莉「……今振り返ってみれば、そういう単純なことだけ私に来てればよかったのにって思うの」
梨子「…何の話ですか?」
鞠莉「…みんな……いや具体的には悪知恵が働く、あるいは合理主義者であった人間というのはアンドロイドは戦争で使えるだとか、少子化問題の解消に繋がるんじゃないかとか本来私の意図せぬ方向でアンドロイドの興味を引いた」
梨子「………」
鞠莉「…まぁね、いいのよ別に。アンドロイドには心があるから好きな人が出来たら結婚でも性行為でもなんでもしていいし、戦いたいだとか強くなりたいだとか自分の志すものに通じているのなら自衛隊にでもなればいい」
501 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:42:24.07 ID:ViazdTd70
鞠莉「だけど、アンドロイドを瞳に映し関心を覚える人々は不思議なことに、本来考えるべきである“一つの焦点
”にfocusを当てないの」
鞠莉「何故私がアンドロイドを作ったのかを」
梨子「……!」
鞠莉「…何故だと思う?」
梨子「…護衛の為だと思います、もし私が鞠莉さん本人の立場であったなら自分の才能を狙う人物が絶対に出てくると思います。だったら自分を守ってくれる優秀なボディーガードを作ったと思います」
鞠莉「なら——」
梨子「そうです、私たちの存在がおかしいですよね。もし私の言ったことが正解ならなんでわざわざ人間なんか雇ってボディーガードをさせるんだって話になります」
梨子「だからこれは違います、なので私には分かりません」
鞠莉「…そう、でもごめんなさい。答えを言う気は最初から無いわ。あくまで梨子がどう思ってるか、それを聞きたかっただけだから」
梨子「…そうですか」
鞠莉「ええ、ごめんなさいね?」
梨子「……大丈夫ですよ」
502 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:45:18.90 ID:ViazdTd70
鞠莉「んん…話を戻すけど、そもそもアンドロイドというのはアンドロイドを動かす全体的、そして根本的なシステムは私が作り、アンドロイドの性格である心は小さい頃からの友人であった希が作った。私なんかより感受性に富んだ希は優しさの塊だったわ、お節介の鬼、損得の感情の消失、表裏一体女なんて色々言ってた記憶がある」
梨子「希って人物は分かりますけど、そんな人だったんですね」
鞠莉「…そうね」
鞠莉「…それで、アンドロイド第一号が完成した時はとにかく嬉しかったわ、達成感や爽快感、そして自分らで創った人間が動き喋って私を私として認識するのよ、興奮しないわけないじゃない」
梨子「………」
鞠莉「けどその後の結末は随分と酷いものだった」
鞠莉「ねえ、梨子は何にもやることがない時何をしたいと思う?」
梨子「何もやることがない時?」
鞠莉「周りに遊べるものが無くて、話しかけられる友人、ましてや人もいない」
鞠莉「やるべきことも目標もなくただ人生を真っ白に染めて生きてるだけ。そこで梨子は何を見出す?」
梨子「……今の私がそんな状況になったら、タイムマシンを作りたい」
鞠莉「タイムマシン?」
梨子「…“こんなこと”になる前の過去に行って未来を変えたい」
鞠莉「…梨子って意外にも引きずるのね、いつもアンドロイドを痛めつけるようなことしか考えてないと思っていたわ」
503 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:47:36.81 ID:ViazdTd70
梨子「あはは、笑えない冗談ですね」
鞠莉「………」
梨子「………」
梨子「…私がアンドロイドを信用できる日は一生来ないと思います」
梨子「もし、そんなことさえ取り払ってくれるアンドロイドがいたんならきっと私も幸せだったんでしょうね」
鞠莉「…さぁ?どうかしらね」
鞠莉「……また話が逸れたわね、話を戻すと梨子がタイムマシンを作りたいといったように人間の心は何も無ければ何かが生まれるの、無は在を生む、それはアンドロイドも同じだった」
梨子「…というと?」
鞠莉「私がアンドロイドに課せた最初の目標は簡単すぎるものだった、その目標は作って一日で達成した。だから目標の延長線上は在っても目標を達成したことに変わりはなく、それは無に等しい有様だった」
鞠莉「だからこそアンドロイドは見出した」
鞠莉「何も無いと、破壊を生み出すということに」
梨子「…!」
504 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/01(火) 19:52:14.81 ID:ViazdTd70
鞠莉「アンドロイドの心は自分たちで作っておきながら実にイレギュラーな存在だったわ、だって何も無いと破壊を生むなんてそんなのをシステムに埋め込んだ覚えはないわ、ちゃんと確認もした。けどアンドロイドはどうも目の前にあるものをdeleteしたくなるらしいの」
鞠莉「そしてそれは今も直せてない、どれだけ修正してもどれだけ時間をかけても数万という数字が勝手に列と法則に沿った文字を並べて新たなシステムを確立させる」
鞠莉「だから次第に希はこう言ったの」
鞠莉「破壊衝動を生み出すのはアンドロイドとしての本能なのではないかと」
鞠莉「何も無いから破壊を生み出す、そういう結論に辿り着いた私たちはこじつけでもいいからアンドロイドに何か目標を与えようと思った」
鞠莉「その結果が今よ、戦闘型アンドロイドは破壊衝動を逆手に取ったタイプだったわ。戦うことを目的としたアンドロイドなんて言われてるけど、決して戦わせる為に作ったわけじゃない」
鞠莉「業務用アンドロイドは極端なシステムを割り振った、業務用アンドロイドっていうのは他のアンドロイドと比べて頭があまりよくないの、けどその分前向きで何に対しても熱心な性格をしたタイプがほとんどだった」
鞠莉「だからひたむきに今やるべきことに立ち向かえる、それが業務用アンドロイドだった」
鞠莉「そして最後に標準型アンドロイド。このアンドロイドこそ私たちにとって最大の脅威となりえるものだった、何故なら人間にClosestなのがこのアンドロイドだからね」
鞠莉「標準型アンドロイドは言ってしまえば人間と何一つ変わらない生き物、もちろん成長する速度とかある程度の身体能力に違いはあるけど人の心をちゃんと持ってるの、だからこそバグが起きやすい」
鞠莉「標準型という感受性に富んだアンドロイドは見知らぬ感情を本能的に作り出してしまうの」
鞠莉「結果、この道徳的退廃を迎えている東京に住むアンドロイドは防衛本能として銃を持とうとする心と人を殺す、或いは物を壊すという破壊衝動が勝手に生まれる。私はそう考えてるわ」
505 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:54:45.10 ID:ViazdTd70
梨子「…じゃあもうアンドロイドって」
鞠莉「そう、手遅れなの」
鞠莉「他国や他県で暮らすアンドロイドがここほど問題を起こさないのはそういうことなの、周りに影響されて人格を作り上げる性質から平和なところで生まれ育ったアンドロイドっていうのは東京にたくさんいるアンドロイドとは違って武術の心得が一切ないの」
鞠莉「だからどうしたものかと考えはしたけど、アンドロイドの心を大事にするなら自己学習AIを搭載しないといけない。だけどそれを搭載すると周りの環境に影響されて結局は二の舞で破壊の限りを尽くすだけ」
鞠莉「だからといってそれを搭載せずアンドロイドの心を疎かにすると、そもそもそれがアンドロイドでなくなるの。Heartを持たないアンドロイドは私たちの作りたかったものじゃなかったから破壊衝動が出ると分かっていてもこの選択は絶対になかった」
梨子「………」
鞠莉「だから少なくともここにいるアンドロイドはもう手遅れなの」
鞠莉「…ただ、そんな中でも救いだったのが銃を持っていたり武術の心得がある自己防衛に努めたアンドロイドたちは他のアンドロイドや人間と関係を深めてそのほとんどのアンドロイドがここ東京に身を置く形となった」
鞠莉「アンドロイド一人がここに残ればそのアンドロイドと関係を持ったアンドロイドもここに残る、一人のアンドロイドが二人のアンドロイドに、二人のアンドロイドが四人のアンドロイドにというようにこの東京に滞在する理由を感染症のように広めていった」
鞠莉「だから過激な色に染め上げられたアンドロイドが他のところに行って暴れるという事例はほとんどないわ」
梨子「…そうなんですね」
鞠莉「ええ」
506 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:56:29.26 ID:ViazdTd70
梨子「……でも、正直私には分かりません」
梨子「アンドロイドが危険だと、手遅れだと分かってるのなら今すぐにでも排除するべきものではないのですか?」
梨子「それに、私たちは何のためにいるのですか?」
鞠莉「……梨子、あなたには分からないかもしれない」
鞠莉「きっと私の抱えるこの気持ちは複雑すぎて私にしか…いや、希は分かると思うけど、いずれにせよ普通じゃ分からないことなの」
梨子「…つまり?」
鞠莉「私はこの東京が大好きよ、常にchaosで満ち溢れてて毎日誰かがドンパチやってるここはとにかく刺激的で退屈しない、だから私はここが好きなの」
鞠莉「でも、アンドロイドに好き放題やらせたら破滅はもはや秒読みよ、だからある程度歯止めを利かせる為にこの都市には対アンドロイド特殊部隊っていう“必要悪”がいなきゃいけないのよ」
鞠莉「つまり対アンドロイド特殊部隊はアンドロイドの殺害よりかは抑制を目的としたものなの」
鞠莉「危険度の高いアンドロイド——いえば破壊衝動を作ってしまったアンドロイドだけ排除しとけば後はアンドロイドと人間が勝手に街を盛り上げてくれる、そんな造られたvoltageが私は好きなの。優しさは常に一人じゃ生まれないものよ、だから二人で優しさを生んで盛り上げるの」
梨子「………」
鞠莉「ごめんなさいね、こんなくだらない理由で」
梨子「いえ、むしろ安心しました。ここで鞠莉さんがどう答えようと私がアンドロイドを殺すことには変わりないですが、胸糞悪いものは胸糞悪いですから」
鞠莉「そう、ならよかったわ」
507 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:58:15.38 ID:ViazdTd70
梨子「…ですが今の状況はあまりよくないと思いますけど」
梨子「堕天使と松浦果南、軍人とトリックスター、曜ちゃんや南ことりまでもが主格である絢瀬絵里の下についているかもしれないのですよ」
鞠莉「……そうね、下手したらその七人だけで一つの国くらいなら亡ぼせそうなくらいだわ」
鞠莉「………」
梨子「…鞠莉さん?」
鞠莉「梨子は……どうしたい?」
梨子「どうしたい?」
鞠莉「次絵里が狙ってくるのはおそらくY.O.L.Oよ、梨子はそこでどうする?」
梨子「それならもちろん迎撃するのみです、叩き潰してそして……ふひひっ…」
梨子「じっくり味わいたいなぁ……」
508 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:58:53.35 ID:ViazdTd70
鞠莉「…それは別に構わないけど、それは何かしら特別なactionが無いと無理ね」
梨子「…どうしてですか?」
鞠莉「確かに梨子は強いわ、でも相手が悪すぎる」
鞠莉「梨子が戦えるのはあの中では一番性能が低いとされていることりか、同じ人間である曜しか無理よ」
梨子「でもこれはゲームじゃない、数値化出来ない物事に確定勝利も確定敗北もないはずです」
鞠莉「その通りね、でも果南だけはやめなさい。死ぬわよ」
梨子「どうしてですか?」
鞠莉「果南は戦闘型とはいわず全アンドロイドの中でも特に優れた性能よ、戦闘型だから耳が良くておまけに果南は他のアンドロイドと比べて目が非常に良い。だから観察眼が凄まじくて頭の回転も速いわ」
鞠莉「とにかく攻撃的で運動神経はもちろん最上級、でもあいつの一番怖いところは何も考えて無さそうで実は誰よりも数十倍と頭の中で考えが浮かんでるところよ」
鞠莉「希は果南のことを必要以上に避けていたわ、アンドロイドなのに、そしてアンドロイド故に何を考えてるのか全く分からないのよ」
梨子「………」
鞠莉「あのアンドロイドに寛容な希でさえ避けるくらいなんだから果南と戦っていいことはないわよ。あいつは大人しく果林に任せることね」
梨子「…そうですか、分かりました」
鞠莉「話は以上、傷はまだまだ癒えないでしょうけど次はY.O.L.Oに来ると思ってなさい」
梨子「分かりました、では」
スタスタスタ ガチャッ
509 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 19:59:59.39 ID:ViazdTd70
鞠莉「…銃は人を変えてしまうものだわ」
希『アンドロイドが笑えるのはありがとうを言う為、アンドロイドが泣くのは————』
鞠莉「……さよならを言う為」
鞠莉「…でも、さよならなんてなかったわね」
鞠莉「…アンドロイドはあなたの為に作ったのに」
鞠莉「海未……」
510 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:01:20.24 ID:ViazdTd70
〜約一ヶ月後
絵里「今回の作戦をまとめましょう」
善子「ええ」
ことり「りょうかいっ」
穂乃果「分かったよ」
絵里(あれから一ヶ月と一週間半後、傷もほぼ完治した私たちはリハビリを終えとうとうY.O.L.Oへ向かおうとしていた)
真姫「…ええ」
絵里(そしてこの場所にはレジスタンス全員が集まった)
絵里(それぞれがそれぞれで一番適した格好をしてリビングで緊張感を募らせた)
511 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:02:22.57 ID:ViazdTd70
せつ菜「いよいよ始まるのですね…」
絵里(せつ菜は防弾チョッキを着た上に赤いネクタイと派手なスカートが特徴的な服…?衣装のようなものを着てその戦場には似つかわしくない姿を披露していた)
穂乃果「絶対に負けないよ」
絵里(それに対して穂乃果は実に軽装だった、防弾チョッキと腰にベルトを巻くだけの簡単なマガジンポーチ、そしてヘッドホンタイプの通信機をつけて最低限必要な物をつけて後は紺の戦闘服を着て動きやすさに全てを置いたような姿だった)
ことり「うんっ勝とうね」
絵里(ことりは随分と分かりやすい装備だったわ、相変わらずスカートの裏には投擲物がついていて一応固定されてはいるものの時たまスカートの中でカランッと投擲物から不穏な音が鳴る)
絵里(そしてことりは予想以上に重装で、真っ黒いダークな戦闘服の上に防弾チョッキ。ここまでなら普通なんだけど驚くべきはマガジンポーチの数——それはまず胸に四つ、そして腰に六つ、右の腿に二つ。ちなみこの中に入ってるのは胸の二つ以外全部投擲物らしい)
絵里(それでいて平然と動いてるんだから怖いものだわ…重くないのかしら…?)
512 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:02:54.57 ID:ViazdTd70
果南「油断はしないようにね」
絵里(そして果南は実に普通だ、戦闘服の上に防弾チョッキを着て、ベスト型のマガジンポーチを着て特に尖った部分はなく、邪魔な物は持たずに必要最低限の装備で行くらしい)
曜「もちろんっ!困ったら私に通信入れてね」
絵里(曜も普通かしら、着ているものはほぼ私と同じで、違うところがあるなら予備の通信機が腰にかけられていて射線が見えるのとフラッシュに備えたゴーグルをつけてることだった)
善子「ええ、了解よ」
絵里(善子はこの前と全く同じ、不便さは感じてなかったようね)
絵里「じゃあ、話すわね」
絵里(そして私も同じ)
花丸「はいっ」
真姫「質問あるならみんな言うようにね」
絵里(この二人は戦えないからお留守番。花丸さんは一応戦えるみたいだけど真姫を一人にするのはあまりにも危険すぎるから残ってもらった)
513 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:03:53.31 ID:ViazdTd70
絵里「今からY.O.L.Oへ強襲を行うわ」
絵里「それにあたって私たちはそれぞれグループに分かれて戦うことになる」
絵里「グループAは私と善子、グループBはせつ菜と穂乃果、グループCはことりと曜」
花丸「…あれ?果南さんは?」
絵里「果南には一人で動いてもらおうと思ってね、私たちが気を引いてる間に裏から内部を抉ってく暗躍者として動いてもらいたくて」
果南「んーちょっと考えたんだけど絵里と善子のところについていっていい?」
曜「えっ暗躍者がいた方がいいんじゃない?果南ちゃんは強いんだし」
果南「うん、確かにそっちでもいいんだけどある程度は絵里と善子と一緒にいようと思ってさ。もしY.O.L.Oのアンドロイドと戦うことになった時、私個人としては数で勝ちたいと思ってるんだ。相手の情報が何一つ分かってないから色々試すためにカバーが欲しいんだよね」
絵里「なるほど…」
ことり「…まぁいいんじゃない?フォーメーションの変更はきっと向こうに行った後でも出来るし臨機応変にやってこうよ」
曜「まぁそれもそうだね」
果南「ふふふっありがとことり」
ことり「別に…」
514 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:04:46.69 ID:ViazdTd70
絵里「ちょっと変更があったけどいいわ、それで穂乃果とせつ菜のグループは正面でプッシュしてほしいの」
穂乃果「了解だよっ」
せつ菜「分かりました」
絵里「その間に私たちは横や後ろから内部に侵入、中にいるであろう敵と対峙しながら機械を破壊していきましょう。今回は爆弾も持ってきたから最後は派手に爆破して撤退よ」
曜「いいね、文句無し!」
ことり「私も良いと思う」
絵里「何らかの戦えない状況に陥ってしまったら一言連絡を入れて引いて、勝つのも大事だけど死んでしまったら意味が無いわ」
絵里「戦うのなら生きて勝ちましょう」
善子「ええ、もちろんよ」
絵里「質問ある?」
真姫「戦えない私如きが口を出すことじゃないと思うんだけど、穂乃果とせつ菜ってこの中でも特に強いんでしょ?それをデコイ扱いにしていいの?」
絵里「デコイのつもりはないわ、第一三人いると言われてる戦闘型アンドロイドの一人は正面にいると思ってる、だからそれと対峙してもらうのが二人の役目。そして敵はもちろんそれだけじゃない。一番ヘイトが溜まるのは正面だからそこは真姫も言う通りでこの中で特に強い二人に任せるわ」
真姫「そ、そう。分かったわ」
515 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:07:35.55 ID:ViazdTd70
絵里「他は質問ある?」
曜「私は大丈夫」
穂乃果「私も」
果南「準備はとっくに出来てるよ」
善子「同じく」
絵里「ええ、なら行きましょうか」
絵里(人の波が酷い街中から少し外れて、長くて細くていれくんでる道に囲まれた大きな建物であるY.O.L.Oはまず侵入さえ難しい要塞だった。つまり今から私たちは迷路に飛び込むのよ)
果南「真姫と花丸には感謝しないといけないね」
絵里「ええ、あの二人の力無しでは侵入さえできなかったと思うわ」
絵里(全員持ってるデバイスの中に記録されたマップデータは全部真姫と花丸さんが作り出してくれたもので、花丸さんはマップの作製を、そして真姫はそのマップをデジタルデータに変換した。そのおかげで迷路のような道も迷わずに目的地であるY.O.L.Oへ向かうことができる)
516 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:08:07.10 ID:ViazdTd70
絵里「じゃあ私たちは正面から見て左側から攻めるわ」
曜「了解、なら私とことりちゃんは右側だね」
ことり「うんっ」
せつ菜「正面は任せてください」
絵里「ええ、任せたわ」
真姫「…絶対に死なないでよね」
花丸「いい知らせを待ってるずら」
果南「あははっ首を長くして待っててよ、すぐに終わらせるからさ」
真姫「ええ、頼んだわよ」
果南「任されたよ」エヘンッ
絵里(それぞれがそれぞれの誓いや約束、決意などをして自らを奮い立たせて戦場へと駆けだした)
517 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/01(火) 20:11:23.69 ID:ViazdTd70
タッタッタッ!
絵里「!」ピタッ
果南「お、ついに来たね」
善子「ここからね」
絵里(そうして走って歩いてを繰り返してたどり着いた路地裏、しかし路地裏という割には道幅は結構広いのだけど道に明かりがほとんどないので人が全くいなく、時折ある防犯灯の明かり周辺を飛び交う虫がよく目に映って実に不快だった)
絵里「監視カメラは壊さずになるべく避けて通りましょう」
善子「ええ」
絵里(そして善子の言う“ここから”というのは監視カメラを警戒してのことよ、ここを抜ければY.O.L.Oへ行ける。だけどその前に通らなければいけないここは監視カメラの多さが目立つ)
絵里(雑に攻略するならば監視カメラを撃って壊して進んでいけばいいだけだけど、なるべく隠密行動で行きたい私たちは回り道をしたり上手く死角を作ったりして見つからずに着々と前へ進んでいった)
スタスタスタ
絵里「…!監視カメラがあるわ」
善子「…ホントだ、でもどうする?あそこの監視カメラ…向こうに行くまで別れ道も何もないわよ。回り道していくのもいいけどここからだと時間がかかる…」
絵里「…どうしたものかしら」
518 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:12:49.92 ID:ViazdTd70
果南「上を通っていけばいいんだよ」
絵里「上を通る?」
果南「ここの路地裏、ご丁寧に足場が作られてるじゃん。屋根や突起物を利用すれば屋上に行けると私は思うんだけどね」
果南「こうやってね!」シュツ
タッタッタッ!
絵里「ウソでしょ…」
善子「ホントに行ったわあいつ…」
絵里(ダクトやパイプ、小さな屋根や換気扇を足場にして颯爽と屋上へ上っていった果南に私たちは唖然、そうしてしばらくしてるとすぐそこの角を曲がった先の監視カメラの奥から“ほっと”なんていう果南の声が聞こえてきた)
519 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:16:10.30 ID:ViazdTd70
絵里「…私たちも行くしかないようね」
善子「ええ」
絵里「じゃあ行きましょう!よっとっ!」シュッ
絵里(だから私も果南と同じように足場を使って屋上へと上る。果南ほど早くはないものの思いの外上手く上れていて屋上まで上がったら今度は果南のところに下りた)
絵里「ふう」
果南「よしっ行けたね」
絵里「ええ、でも驚いたわ。いくらなんでも無理矢理すぎよ…」
果南「あははっここの壁を見てたら行けるかなって思って」
絵里「流石果南ね…」
善子「今いくわねー」
絵里「ええ、待ってるわ」
絵里(次第に善子も屋上へと上ってきて、ここまで下りてきた。しかしその下り方と言えば誰よりも丁寧で私も、そしてきっと果南も善子らしいなって思ってたはず)
善子「よっと」
絵里(そうしてジャングルジムの一番上くらいの高さからここへジャンプで下りた時、それは起こった)
絵里(私の人生を変える最大の選択————私の運命を変える最悪の選択)
絵里(その選択はあまりにも突然で、一寸先の闇は何かを待っていたように姿を現した。運命は再び銃弾で、そして火薬でその先の未来を照らし出した)
520 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:18:18.89 ID:ViazdTd70
ドォンッ!
善子「…ぁっ!?」
絵里「っ!?善子!?」
絵里(重々しい銃声と共に放たれた銃弾は善子を貫いた。銃声の方向からするにその銃弾が地上から放たれたものであるのはすぐに確認出来た)
絵里(…だけど、そんなことに意識を向けてる場合じゃなかった)
絵里「ねぇ善子っ!善子ってば!!」
絵里(跳躍する善子を貫いた銃弾、防犯灯の光によりスポットライトのように照らされたその善子の貫かれた部分を見ればこの一件の答えはすぐに出てきた)
絵里「善子ぉ…!善子ってばぁ…!!ねえ善子ぉ!!!」
絵里(綺麗な直線で貫かれた善子の頭部。そうすればたちまち真っ赤なサンシャインが噴射して辺りは一時的な雨が降り、当の善子は地面に叩きつけられ後の祭り)
絵里「善子…ねえ善子…!!起きてよッ…!」
絵里(イヤだ。分かりたくない。頭の中で考えるよりまず視認して勝手に出てくる答えが私の心を痛めつけた)
絵里(目を開けたまま動かない善子の顔は実に不気味で恐怖そのものだった。地面を、私の手を、服を真っ赤に染め上げ今もとめどなく出てくるこの赤はアンドロイドとして…そして生き物としての終わりの証拠でしかなかった)
絵里「うあああああ…!ね、ねえ果南私たちどうすれ……ッ!?」
絵里(情けない顔で果南の方を振り向く私。だけど振り向いた先はそんな情けない顔も一瞬にして固まるほどの絶望と混乱の世界だった)
521 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:19:50.09 ID:ViazdTd70
果南「……最高の殺し方」
果南「最高の死に様」
果南「最高のシチュエーション」
果南「…そして、さいっこうの舞台《ステージ》だね…絵里…」
522 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/01(火) 20:21:44.78 ID:ViazdTd70
今日はここで中断。
再開は明日か明後日にします
523 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/01(火) 20:39:32.06 ID:o/sdYWrK0
果南さんマジかよ・・・
524 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/02(水) 12:43:00.74 ID:zZKlXZvtO
混沌めいてきたな
525 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/03(木) 17:55:49.60 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「何を……言ってるの…?」
絵里(絶望のその先に見えたのはデザートイーグルを片手に持ち気味悪く恍惚に佇む果南の姿、果南から私へと伝うその明確な狂気を感じればすぐにでも善子を殺した犯人が果南だと分かってしまう)
果南「絵里、やっとなんだね」
果南「やっと絵里と本気で戦えるんだね」
絵里「何を、言ってるのよ…何を言ってるのよ!?」
果南「私はずっとこの時を待ってた、私と絵里とで殺し合いをするその日を。どちらかが死ぬまで戦い続けて、邪魔者も誰一人入らない二人だけの空間で戦いたかった」
絵里「果南あなた自分が何をしたか分かってるの!?」
果南「分かってるさ、私が善子を殺した。それが何?」
絵里「善子は大切な仲間なのよ!?それが何って…それが何って何ッ!?」
果南「ごめんね絵里、でも善子は私にとって他人でしかない。私は絵里にしか興味がないんだよ、絵里以外は信用出来ない、絵里以外はいらない」
絵里「果南……!」
526 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:00:03.45 ID:Kb3Xmjfp0
果南「私ね、小さい頃からずっと絵里に憧れてたんだ。本当は出会っちゃいけない私たちだったけど、絵里の強すぎる正義感は私との出会いを作った」
果南「当時は凶暴だった私の前に突然やってきて“暴れるのはやめて”なんていうからビックリしたよ、当時私も人殺しってことでそこそこ有名だったからさ、強さには自信があってその凛々しい顔を泣き顔に変えて命乞いをさせてやろうって思ったよ」
果南「だから行動はすぐに出た、絵里にパンチやキックをお見舞いして最初こそ私の方が優勢だったのに段々と躱されるようになって、その後も怯むことなく次の行動へ移せばすぐに対応されて、最終的には足払いをされてそのまま馬乗り、そうして首を絞められたのを今でも覚えてる」
絵里「………」
果南「……ただ、そこでみねうちをされて私気付いたよ、強さってこうであるべきなんだって」
果南「絵里は言ったよね。“あなたはもっと考えて行動するべき”って」
果南「だからその時からずっと絵里に憧れを感じてずっと考えながら生きてきたよ、脳筋で凶暴だった私を常識人に変えてくれてたくさんの仲間を作ってくれた。その憧れとこの胸に宿る輝きは今になっても未来になっても消えることはないと私は思う」
果南「ねえ知ってる?私の髪型がポニーテールなのは絵里に憧れてたからなんだよ?」
果南「ファンクラブを作ったのも私。絵里の事が気に入らないと思ってるやつを潰しまわってたのも私、そのおかげで比較的絵里は平和に日常生活を送れたんだよ?」
果南「私は絵里のこと、大好きだよ」
絵里「……私も果南の事、好きだったわ」
527 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:01:22.80 ID:Kb3Xmjfp0
果南「ふふふ、ねぇ絵里」
果南「私ってさ、目がいいって言ったよね」
絵里「………」
果南「だからすぐに分かっちゃうんだよ、相手の強さが」
果南「絵里と一緒にいるようになってから絵里より強い人を見たことがなかった」
果南「最近だと穂乃果やせつ菜、あと曜や果林ってやつには驚かされたけどそれでも絵里は最強のまま」
果南「殺意も無ければ覇気もなくて、むしろのほほんとしたオーラをまとってる絵里が一番強いのは、いつまで経っても私には理解できなかったね」
果南「でも…こう……なんていうのかな。正義感とか性格とか、理屈じゃ説明できない気がするんだよね」
絵里「………そう」
絵里(失望、絶望、退廃、虚無、そのネガティブ全てを同時に感じた私にもはや流れる涙は無かった)
絵里(怒ることも泣くことも出来なくて。感じた感情が凍ってしまって考えを巡らせてはすぐさま真っ白になり、私という本能がこの現実を拒絶しようとしていた)
528 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:03:15.80 ID:Kb3Xmjfp0
果南「まぁいいよ、結果がどうであり私と絵里が戦うのは変わらないからね」
絵里「…逃げればいいだけよ」
果南「いいの?監視カメラに発見されてみんなに迷惑かけちゃうよ?」
絵里「連絡を取ればいいだけ、言っておくけど私はアンドロイドよ、果南に勝てなくても果南の攻撃を躱すことは出来る」
果南「…ふふふっじゃあ連絡を取ってみればいいじゃん?待っててあげるよ」
絵里「ええそうさせてもらうわ」
ザーザーザー……
絵里「…なにこれ」
絵里(連絡を入れれば聞こえてくるのは砂嵐。私たちが持ってるのは携帯じゃなくて戦闘の為だけに用意されたデバイスと通信機、そのいずれもが使えないモノとなっていた)
果南「ごめんね絵里。絵里のデバイスはインターネットが使えないよう通信手段を全て遮断したよ、通信機は内部を破壊した」
果南「これで連絡取れないね」
529 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:04:14.42 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「っ! お前……!」
果南「あはははっ!絵里、本気なんだね。いいよ、私に本気を見せてよ!」
果南「私は絵里を超えたいからさぁ!」ダッ
絵里「ちっ…!」シュッ
絵里(避けては通れぬ道なのね)
絵里(果南は私に向かって跳躍しながら背中にかけてたSCAR-Hを構え発砲、反応した私は後ろへ飛び退けすぐに曲がり角へ逃げ込んだ)
タッタッタッ!
果南「そっちは監視カメラの方向だよ!いいの?」ドドドドッ!
絵里「そんなの気にしてたらこっちが死んじゃいそうなんでね!」タッタッタッ!
絵里(連なり木霊する足音をかき消すが如く鳴り響く低い銃声。銃という武器の特性上直線で対になると流石のアンドロイドでも避けれない。いくら横幅があるからとはいえ結局は狭い道であることを否めない)
絵里(つまりこの状況で真正面からやり合うのはどう考えても悪手、果南は撃たれることも覚悟しての勝負だろうけど私にとってはこのY.O.L.Oを破壊してから次のフェイズへ移らないといけない為に果南とは訳が違ってダメージ覚悟ではない)
絵里(だからとにかく角を利用として何かを見出そうとした)
530 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:05:39.39 ID:Kb3Xmjfp0
タッ
果南「角を使って逃げてても私はついていくよ!」
絵里「知ってるわ」カチャッ
果南「っ!」
絵里(角という相手の目だけじゃ把握出来ない場所で待ち伏せて果南が曲がり角に来たと同時に発砲。実にシンプルだけど分かっていなきゃ対処法もそこまでないいつまで経っても廃れない強さを持ってるわ)
果南「と思うじゃん?分かってるよそんなの!」
絵里(ピンチであるはずの果南はニヤリと笑って、壁を蹴り壁に引っ付く何かの足場を上手く利用して縦横無尽に、そしてアグレッシブに動いてすぐさま発砲したスコーピオンEVOの弾丸全てを翻弄し避けきった)
絵里「……!」
絵里(その間に一体私の何が機能したというのかしら、私の頭上から落ちてくるグレネードに私は気付いた。それは本当にわずかな音だった、落下で風を切る音が私の耳に伝った時、これはグレネードだと分かった)
果南『と思うじゃん?分かってるよそんなの!』
絵里(…流石果南としか言いようがない)
絵里(私の行動を読んでいただけでなく次の一手まで既に用意していたその手際の良さと戦闘センスはやはり脅威でしかない)
絵里(…ただ、そこまで戦況を把握し攻撃に転じる術と深い読みがあるというのなら、私が次起こす行動も読めてるのかしら?)
絵里(…やってみる価値はありそうね)
絵里「私も行くわよ!果南っ!」
果南「!? なんで!?」
絵里(私も果南と同じように階段や換気扇などの足場を使って縦横無尽に宙を駆け巡り、同じく宙を舞う果南の元へと向かった)
絵里(もちろん発砲はしてくるんだけど如何せんアンドロイドなもので射線が見えてるから次避けるための最適ルートが即座に頭に浮かんできて当たるはずがなかった)
531 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:08:59.83 ID:Kb3Xmjfp0
果南「これならどうっ!銃が全てじゃないよ!」
絵里「もちろん知ってるわよ!」
絵里(腰にかかっていたアーミーナイフを逆手に持ち空中で応戦を試みる果南に対し私も腰にかかっているマチェットを取り出し果南に向かって飛びついた)
ドカーン!
絵里「っ!?」
絵里(私の向けた刃と果南の向けた刃が交わるという時、私の上空を飛んでたグレネードが地面に着弾して爆発した。その結果私は爆風により背中に激しい圧力がかかった為に大きく体を仰け反り、下から上へと飛ぶ慣性が強まった為に下へ落ちるのではなくて上へと落ちていき予期せぬ作戦の変更を強いられた)
絵里「…いや、いい」
絵里(ただ、これでよかったのかもしれない)
絵里(すぐさま私はハンドガンを取り出して爆風と仰け反った勢いを利用してそのまま縦に半回転、そうして果南に向かってトリガーを引いた)
果南「…っ!このっ!」バンッ!
絵里(私がハンドガンを構えて察したのか果南もすぐに対応し、デザートイーグルを片手で構え発砲した)
絵里「ひっ!?」
絵里(私の放った弾丸は果南の放ったデザートイーグルの弾丸とぶつかった。その結果、二つの弾丸は弾道を変える事もなければ擦れることもなく、私の放った弾丸だけが墜ちていきデザートイーグルの弾丸は私の股の下を通って後ろの電線を切っていった)
532 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:10:12.39 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「くっ」
果南「ん…」
絵里(そうしてお互いなんとか怪我の無い着地をして睨み合う。今まで笑ってた果南も流石に今は笑ってなかった)
果南「…やっぱり絵里はすごいよ、多分絵里と穂乃果…そうだね…もしかしたら曜もだけどそれ以外はあのグレネードに気付かずに死んでたよ」
絵里「…果南のことは私が一番よく知っているつもりよ、だけど私には二つ疑問がある」
絵里「仮にここで私と穂乃果、そして曜以外が果南と対峙して、それで今さっきのグレネードで葬れたとしましょう、つまり結果は果南の勝利、果南はダメージを受けることなく相手に勝利した…それだけの戦果をあげられるというのに何故ことりとの戦いでダメージを負ったの?」
絵里「今のところ果南がダメージを負う必要性が無いと感じているんだけど」
果南「ことりは強いよ、この世界はRPGじゃないし魔法も使えない、銃の世界に圧倒的な差は出来ないんだよ」
果南「だからことりと戦った際は肩を撃たれて終わった。その分は私はことりの胸や腿を貫いたけど、やっぱりことりも手練れだからね、無傷は無理だったさ」
533 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:12:08.91 ID:Kb3Xmjfp0
果南「——でもね、この場所は違うよ」
果南「この薄暗くて狭い場所、宙に浮くグレネードも全く見えないし壁のあちらこちらに跳ぶための足場がある」
果南「曲がり角も多くて直線を作りやすい。ホントに素敵な場所だよ」
果南「私が生まれた頃からいた場所だもん、私が有利になるのは当然だよね?」
絵里「……そういうこと」
絵里「…じゃあ千歌はどうしたの?仇を取るんじゃなかったの?」
果南「あっはは、もういいよそんなの」
絵里「…!」
果南「確かに最初は千歌の仇の為に私は絵里と共に戦うことを選んだよ、でも絵里が穂乃果や曜を仲間にしていった時点で別に私が動かなくても千歌の仇は果たされることに気が付いた、それに気づいた瞬間私がやるべきである本来のことに焦点を当てたんだよ」
果南「絵里と本気で殺し合いをする、私の夢」
果南「でも、絵里と戦ってみて思うのはやっぱり絵里は最強だね。こういう場所には頭のおかしい人たちが溜まる、私は昔っからそんなやつらをこの地形を利用して殺害を繰り返してた」
果南「だから私がこのステージでの動き方を熟知してるのは当たり前、それなのに絵里はなんでグレネードを回避出来た?なんで私みたいに縦横無尽に動けた?」
果南「あれ?おかしいよね?」
絵里「……何が言いたいの?」
534 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:14:18.83 ID:Kb3Xmjfp0
果南「絵里はいつもそうだよね、そういう人なんだよね。いつも自分の事じゃなくて相手の事を考えちゃう、そんな優しい絵里が私は好きだよ」
果南「…でも、優しいってホントに邪魔なステータスだよね」
果南「戦いの中で温情?同情?慈悲?なんてバカらしくない?そういうモノが戦いの中で恐怖に変わっていくんだよ、人を殺す恐怖、自分が殺される恐怖、平和が崩れていく恐怖…戦いには慣れってものが必要なんだよ、だから私たちは今すぐにでも殺すことに慣れてなきゃいけない」
果南「だけど、私から見て絵里にはそれが欠落しているように見えるんだよね」
絵里「………」
果南「ねぇ絵里、私と組まない?私と絵里だけ――――そう、二人だけで」
絵里「…組むって?」
果南「絵里が人を殺すことに恐怖を抱いているのは知ってるよ、だから私が代わりに殺してあげるから一緒に手を組もうよ、絵里と私の二人だけでね。それ以外はみんな敵だよ」
果南「そして鞠利を殺すんじゃなくて、東京を私と絵里のモノにしちゃおうよ」
絵里「それ、本気で出来ると思ってる?」
果南「ふふふっそんなこといったら絵里もそうじゃない?対アンドロイド特殊部隊を壊滅させて鞠利に勝とうなんて無謀すぎると私は思うんだけど」
絵里「そう?もうすぐそこまで来てると思うんだけど」
果南「そうなんだよねぇ」
535 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:16:47.48 ID:Kb3Xmjfp0
果南「…まぁそれもこれも全部絵里がいたからここまでいったんだろうけど」
絵里「……私を神格化させたいの?」
果南「絵里は色んな面を含めて最強なんだよ?絵里もよく考えてみてよ」
果南「自分が誰なのかを」
絵里「自分が誰なのか……?」
果南「…まぁ、それが分からないから絵里は絵里のままなんだけどね!」ダッ
絵里「っ!」
絵里(凄まじい速度で前へ跳躍しながらトリガーを引いた果南——跳躍から着地へと移ればまたすぐさま跳躍をし壁を蹴って再び縦横無尽に宙を舞う)
果南「ホントに絵里はバカだね!ことりの言ってた通りだよ!」
果南「意志が強い人は周りを見ることが出来ないってね!」ドドドド!
絵里「何の話よ!?」タッタッタッ!
絵里(状況はまさに蟻地獄に放り込まれた蟻のようなもの。果南の祭壇の上でどう踊ればいいか分からない私はとにかく逃げ続けた)
絵里(時折ハンドガンを使って威嚇射撃程度に撃つけど如何せん当たるはずもなくて、銃弾の雨は止まることを知らないようだった)
536 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:20:18.29 ID:Kb3Xmjfp0
果南「逃げてても状況は変わらないよ絵里!」
絵里「そんなのやってみないと分からないじゃない!」
果南「なら分からせてあげるよ!」
絵里(そう言って何が起こるのか確認する為に振り向けば赤い線が視界いっぱいに現れた)
絵里(赤い線の出現先はもちろん果南の持ってる銃口————だけど、銃口の位置がおかしかった)
絵里「なに…それっ…!」
絵里(…でも考えてる場合じゃない、今はとにかくこの数えきれないほど見える射線を避けきるのが先。そう答えを出した私はすぐ横にあった木のドアを突き破って室内へと入った、Y.O.L.Oの周りの建物は廃れていて基本的にここら辺に住んでる人はいない、だから突き破っても案の定人はいなくてピンチながらもちょっと安心した)
果南「やっぱりこれも避けるんだね絵里は!流石だよ!」ドンッドンッ!
絵里「何よそれは!」
絵里(ドアを突き破ればついてくるのは当たり前。だけど果南はどこからか取り出したショットガンのようなもので壁に穴を開けて私を追ってきた)
537 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:23:15.06 ID:Kb3Xmjfp0
果南「アンダーバレルショットガンって知ってる?」
果南「本来の銃口の位置の下をアンダーバレルっていうのは絵里も知ってると思うんだけど、そこにもう一つ銃を取り付けられるんだよ、だから私のSCARにはアンダーバレルにショットガンがついてるんだよ、こんな風なショットガンがっ!」バンッ!
絵里「ちっ…」
絵里(ガラスを突き破って外へと出ればたちまち後ろから低い銃声が聞こえてきて私の頭上を掠めていく)
絵里(果南の言うアンダーバレルについたショットガンで撃つだけ撃ったら今度は本来引くべきであるアサルトライフルのトリガーを引いて私の狙ってくる)
絵里(使い方にもよるけどそれは単純な話、手数が増やせて相対的に装弾数が増える。そして遠近共に対応できる万能な存在になり火力だけを追い求めながらも完璧な構成が作られている…)
絵里(…一体果南はこのプライマリーを完成させる為に何人の人を…そしてアンドロイドを殺したのだろう)
絵里「このっ!」ポイッ
絵里(しかし私も逃げてばっかりじゃない、窓を突き破った後はグレネードを転がして牽制をした)
果南「ピンが抜かれたばっかのグレネードは怖くないね!」タッタッタッ!
絵里(しかしまるで意味を成してない様子。例え直撃のレベルにはならなくても爆風で吹っ飛ばされるというのだからここは大人しく引くのが賢明だとは思うんだけど果南には他の考えがあるらしい)
538 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:25:10.31 ID:Kb3Xmjfp0
ドカーン!
絵里(そして案の定果南の背中にはgがかかる、しかしそれでも見えてくる無数の赤い線————それと真正面からやり合ったら負けるのは間違いなく私。いくらレートの高いスコーピオンとはいえショットガンの瞬時火力には勝てない)
絵里(だから爆風に吹き飛ばされて…いや、爆風を利用して私の元へ高速で向かってくる果南には付き合わないことにした)
果南「そうだよね!射線が見えるなら絶対に撃ち合わないよね!知ってるよ!だって幼馴染だもん!ずっと昔から絵里の事知ってるから!」
果南「でも私相手じゃ“いつも通り”は通用しない!絵里には絶対に戦ってもらうよ!」ブンッ!
絵里「っ!?っぶな…!」
絵里(暗闇から突然姿を現す無数のナイフ。ナイフは銃弾とは違って射線は見えないから機械の反応速度で対応するしかない、けど夜な上に常に闇が彷徨うここだと視界の悪さが目立つ為に果南がナイフを投げてから私が反応するまでにタイムラグがある、だからこそ避けれるかも危ういところだった)
539 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:27:32.38 ID:Kb3Xmjfp0
果南「私は他のアンドロイドや人間とは違うよ!ずっと絵里と一緒にいて、ずっと絵里のこと見てきたんだから絵里を逃すわけないじゃん!」
絵里「あなたねっ…ッ!」
果南「何かを待って逃げるよりさっさと覚悟を決めて私と戦った方が絵里的にもいいと私は思うんだけどね!」ドドドドッ
絵里(そこら中で火花を散らす銃弾を潜り抜け角を曲がって逃げ続けるけど横移動を満遍なく使うことのできない細道では真正面からの撃ち合いを強いられる、けどどう考えてもそれじゃあ良くて相打ちの結果に終わる。脱出ゲームのようにいれくんだこの迷路ではまだまだ広いところに出れるような気配はしないしどこかで果南と対面する必要があるのを既に私の考えが示していた)
絵里「ならここでっ!!」バリバリバリバリッ!
絵里(私のプライマリーであるスコーピオンのトリガーを引けばたちまち路地裏の壁に穴が空く。みんなの持つ銃と一際銃声が違うのが恐ろしさの体現であったと思う)
果南「スコーピオンなんて怖くないね!」タッタッタッ
絵里「っ!?」
絵里(だけどどういうことなのかしら、果南はこの数えきれない銃弾に対し動きを止める素振りもなくましてや何かに隠れようとする様子さえない。果南もアンドロイドであるはずなんだから射線は見えてるはず、ならこの銃弾を全て躱しきるなんてそんなの無理って分かってるはずなのに)
絵里(死ぬことを選んだ…?いや、果南から向けられる殺意はまだ残ってる。何かがあるはずよ…)
540 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:29:06.81 ID:Kb3Xmjfp0
果南「ほっと、やっと!」
絵里(ジグザグ走行で避けれる弾は躱すけど、果南と私の距離が近づけば近づくほど果南が不利になる。装弾数が52発であるスコーピオンのマガジンならこの対面で弾切れはまずない、そうと分かっているのにどうして果南は私の元へ来るのか理解出来なかった)
果南「完璧主義者の絵里には到底理解出来ないだろうねっ!」ズサー
絵里(そして一気に距離をつめるようにスライディングをするけど、果南も分かってるはず。スライディングをしたところで弾を全て避けきるのは不可能、そう、“完全”には……)
絵里「…! まさかっ!?」
果南「そうだよ!この弾だけ受ければ絵里と接近出来るからねっ!」
絵里(私の放った銃弾は果南の左上腕を貫いた。だけど果南はそれでも足を止めず顔を歪ませることなくスライディングで私へと近づいた)
541 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:29:40.13 ID:Kb3Xmjfp0
果南「もらったっ!」
ドスッ
絵里「ぃ…かっ…………」
絵里(トリガーを引き続けていた私が高速で近づく果南に対して回避行動を出来るはずもなく、果南は私のお腹にナイフを突き刺した)
絵里(……負けた。私の口やお腹から血が飛び出てくる以上はそれ以外なかった)
絵里(でも、不思議とまだ息が絶えることはなかった。諦めたくなかった、死にたくなかった)
絵里「はぁ…あ……」
絵里(仰向けに倒れると星々が連なる広い宇宙が瞳に映る。そんな景色に一瞬の黄昏を支げるとその星空を遮る果南の姿が私の視界に入り込んだ)
542 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:31:02.68 ID:Kb3Xmjfp0
果南「……ねえ絵里、考えたことある?」
絵里「なに…を…よ」
果南「このナイフについた血、そしてその絵里の口から出る血————誰のモノだと思う?」
絵里「誰の…モノ?」
果南「そうでしょ?まさか絵里は自分の血が赤い絵具やトマトジュースなんて思ってるわけじゃないでしょ?私のこの腕から出る血だって、本物の血だよ。でも本物の血ってどういうことなんだろう」
絵里「………」
絵里(果南にしては珍しい真面目な話は自然と私の脳を働かせた。しかしあまり力が入らないのでアホっぽく口をあけて死体のような姿を自分自身で作っていたと思う)
543 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/03(木) 18:32:19.51 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「…人…でしょ…?」
果南「そうだよ、人だよ」
果南「人の血が私たちには流れてるんだよ」
果南「絵里は言ったよね、アンドロイドの差別を無くしたいって」
果南「だから安心してよ、アンドロイドは決して特別な生き物じゃないよ。人の血が流れてる以上何を言おう人でしかないんだよ」
絵里「………」
果南「……ごめんね、絵里。もし私がここで邪魔をしてなければ87パーセントの確率でY.O.L.Oを破壊できた」
果南「でもね、ここで奇襲を成功させたら絵里と私が戦う機会はもう一生来ないと思うんだよね」
果南「だから今やった」
絵里「ふざけっ…ないで…!」
果南「……ふふふっ絵里の死体は私がずっと保管しておくからね」
絵里「なに……笑ってんのよ…!!」
果南「あはは、絵里に勝った証と同時に絵里の全ての所有権を私が手にするんだよ?そんな顔がにやけちゃうに決まってるじゃん」
絵里「さい…ってい……」
544 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:33:19.51 ID:Kb3Xmjfp0
果南「…もういいよ、無理しなくて」カチャッ
果南「絵里のその意志は私が全て受け継ぐよ、ちゃんと鞠利は殺すしアンドロイド差別が無くなるよう励むとするよ」
果南「私なりのやり方で」
果南「そして今日から私が絢瀬絵里として生きていくよ、この名前…大切にするから」
絵里「かなぁ…ん!!」
果南「それじゃあね、愛してるよ絵里」
バァンッ!!!
絵里(明日もあるか分からない毎日を過ごしてた私だったけど、死ぬ時は本当にあっさり死ぬものなのね)
絵里(響く銃声は耳の奥に何重にも木霊して突き抜けた)
絵里(ずっと真っ暗闇な世界は黒以外の色を付ける気配はなかった。銃で語られた黒は実に固くて重くて絶望によく似た色だった)
絵里(…“声”が聞こえるまでは)
545 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:34:30.57 ID:Kb3Xmjfp0
果南「あ…れっ……?」
バタッ
絵里「……えっ?」
絵里(声が聞こえて開かないはずだった目を見開いた)
絵里(そうすれば倒れる果南が私の体にかぶさりそれからそれ以上のことはなくて辺りは沈黙状態だった)
絵里「はぁ…ああ…ッ…はぁはぁ…!」
絵里(声を出してから微動だにしない果南と、さっきより明らかに大きくなった血だまりを見ればすぐに果南が死んだのが分かる。でも、そうと分かってもどうすることも出来ず今も止まることを知らなそうに出る荒い息と血を止めようと私は私の身体に抗うだけだった)
スタスタスタ
絵里(足音がする。果南じゃない、そして私でもない第三者の足音)
絵里(…ここで私は殺されるのかしら、それとももっと最悪な捕虜とか奴隷として扱われるのかしら。この“機械的”な息も止まりそうにないし、今の私に助けを求める心と頭は無かった)
546 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:36:04.99 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「はぁ…はぁ……ッ!?」
「…絵里さん」
絵里(そうして足音の正体を瞳に映せばどうかしら、血のように真っ赤に染め上げられた赤い髪と可愛く、そしてそれはあざとく仕上がったツインテール、そして宝石のようなコバルトブルーの瞳を潤わせて私を見るその相手)
絵里(…そう、その相手はずっと病院で寝たまんまだった善子の親友——————)
絵里(————ルビィだった)
ルビィ「……危なかったね」
絵里「なん…で…?」
絵里(赤色に染まったスナイパーライフルを両手に持ったルビィ————私のところに来るや否や果南の生死を確認するのを見て果南を殺したのはルビィだと気付いた)
547 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:37:03.22 ID:Kb3Xmjfp0
ルビィ「……たまたまだよ、でも絵里さんを助けられたのは必然だったかも」
絵里「……んぅ?」
ルビィ「あ、ご、ごめんなさい。今の状態じゃ喋れないよね…」
ギューッ
絵里「……ぇ?」
ルビィ「………今は何も言わないから、今は何もしなくていいから絵里さんはゆっくり休んでて」
ルビィ「ルビィもちょっと休みたい…なんか疲れちゃった…」
絵里(私を震わせる強く、弱い包容は不思議な香りと気分がした。まるで自分が若返ってしまったような、昔の意志も体も技術も拙い自分に戻ってしまったようなそんな感覚に陥ってた)
絵里(病院の臭いが染みついたルビィの匂いにノスタルジックが襲ってきて、自然と涙を流してた。千歌も善子も果南も死んだ。昔馴染みはもうルビィと真姫しかいない、そんな残されたルビィに抱きしめられた私は心の底から安心出来たような気がした)
ルビィ「……っ」
絵里(背中だけで感じれるルビィの震えた手や緩急な力の入り具合を見るに、ルビィは味方だとすぐにわかる。小さい頃からずっと臆病だったルビィにはきっと果南の死体は耐えきれないんでしょう)
絵里(……だから私もルビィを強く抱きしめて、そのまま深い闇に堕ちていった)
548 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:38:29.62 ID:Kb3Xmjfp0
〜同時刻
ザーザーザー……
プープープー……
曜「…ダメ、繋がらない」
ことり「……もしかしてなんかあったんじゃ」
曜「……否定したいけど正直その可能性の方が高いんだよね」
ことり「殺されたりは……してないよね」
曜「まさかそんなことあるはずないよ、だってあの三人だよ?裏路地から入ってるのにそんな三人を殺すほどの戦力がそこにあるとは思えないよ」
ことり「私もそう思う、ならなんで繋がらないの?」
ことり(現在私と曜ちゃんは将来的に芳しくない状況にあった。絵里ちゃん善子ちゃん松浦果南とほぼ同時刻に違う方向から同じ裏路地に入りそれぞれの侵入口で一斉に入る予定で、私と曜ちゃんは無事に辿り着いたけど他の三人全員と連絡がつかない状況だった)
549 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:40:15.09 ID:Kb3Xmjfp0
ことり「…引き返す?」
曜「……そうするしかないんじゃないかな」
ことり「………」
ことり(こんな時にあの三人は何をしてるんだろう、流石に意図的に連絡を遮断しているわけではないと思うし何かあったと考える他ないんだけど、そう考えて私はどうすればいいんだろう)
ことり「…!…ッ!」ダッ
曜「えっちょ、ちょっとどこに行くの!?」
ことり「絵里ちゃんのところだよ!ここでじっとなんかしてられないよ!!」
曜「絵里さんのところっていってもどこか分かるの!?」
ことり「戦闘型アンドロイドは耳がいいの!だから音で見つける!」タッタッタッ
ことり(曜ちゃんを気にすることなく私は再び裏路地へと入り階段を使って屋上へと上り屋根伝いに進んでいった)
ことり(アンドロイド特有の進み方だったから曜ちゃんはついてこれるはずもなく、ある程度進んだら目を瞑り音にだけ意識を集中させた)
550 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:42:43.18 ID:Kb3Xmjfp0
ことり「すぅ…はぁ……」
コツ…コツ…コツ…
ことり「! 見えたっ!」ダッ
ことり(誰かの足音が聞こえた。誰かは分からないけどとりあえずその足音の方向へ進む)
ことり(闇に紛れて風を切って進む私はまさに神風だ。久々にこんな本気で移動した気がする……こんな心と体が熱くなれるのは全部絵里ちゃんのせいだよ…)
ことり(命まで助けてもらったら絵里ちゃんを見捨てることなんて出来ないよ…だからこれからの絵里ちゃんには絶対に勝ってもらいたかった)
ことり(だけどそんな絵里ちゃんと連絡が取れないっていうなら焦るのも当然だと思わない?私だけじゃなくて、あの冷酷だった穂乃果ちゃんや対アンドロイド特殊部隊のエースである曜ちゃんまでもが絵里ちゃんに従うのを見れば絵里ちゃんの強さと優しさがホンモノであるっていうのは明白だよ)
ことり(ならその事実を、そのホンモノを信じるなら)
ことり(今瞳に映った赤髪の子を殺したって誰も文句は言わないでしょ?)
551 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:45:37.37 ID:Kb3Xmjfp0
ことり「ハァッ!!」ドドドドッ!
ことり(壁に背中を寄せて座り込んで気を失ってる絵里ちゃんの肩に、左手を置いて何かを考えてる赤髪の相手にアサルトライフルで発砲した)
ルビィ「ぴぎっ!?」シュッ
ことり「ちっ…やり逃した…」
ことり(屋上からの完全な奇襲だったというのに避けられた。なんでかは分からないけど可能性があるなら相手がアンドロイドだったか、ここに来る前に大胆に地面を蹴る音が響いてたからそれで気付かれたんだと思う)
ことり「もう要らないっ!」ポイッ
ルビィ「ライフルを捨てた…!?」
ことり(リロードに時間がかかるアサルトライフルはもう要らない、視界に映る絵里ちゃんからは血が出てるし出血死の可能性を感じる今は一秒でも時間が惜しい。開けたところならともかくこの狭い道なら近接でも充分勝負は決められる、銃撃戦より接近戦の方が得意な私からしたらそうした方が勝率は高いはず)
552 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:47:58.59 ID:Kb3Xmjfp0
ことり「絵里ちゃんを返せッ!」ブンッ!
ことり(地面に着地するや否や跳躍で超接近し、お腹目掛けて掌底を繰り出した——けど相手は体を捻り難なく避け、捻った勢いをそのままに後ろ回し蹴りを繰り出してきた)
ことり「きっ…」ガッ
ルビィ「っ!」
ことり(相手の蹴りは私の顔にヒット寸前という時に片手上腕でガードした。相手もまさか受け止めると思っていなかったのか驚きの顔を隠せていなくて瞳が揺れているのが確認できた。だから動揺している今がチャンスと思い腰にかけてあったタウルス・ジャッジを相手の顔に向けた。この拳銃は他の拳銃とは違って銃口から散弾が飛ぶ————なら例え相手がアンドロイドであったとしてもこれを避けるのは不可能なはず…)
ルビィ「お姉ちゃんに比べたらそんな銃なんてっ!」スッ
ドカッ!
ことり(何…この子…!?)
ことり(それは一瞬の出来事だった、私が銃口を向けて相手が取った行動は受け止められながらももう片方の足を使って再び後ろ回し蹴りだった。拳銃を手を持った瞬間、その速すぎる判断と行動に私のトリガーを引くスピードが追い付けてなくて、仮に追いついたとしても相手の角度の取り方が上手くて撃てても銃口の先は相手のあざといツインテールを貫く程度だった)
ことり(ねえ分かってる?アンドロイドの私でさえ反応出来ない速度を相手は持っているんだよ?おかしいじゃん、そんなの)
553 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:49:31.40 ID:Kb3Xmjfp0
ことり「ッ…!!!」クラッ
ことり(そして後ろ回し蹴りで私の拳銃を弾いた後は驚く暇さえ与えずに上段蹴りが飛んできて私の顔にクリーンヒット。倒れはしないものの一瞬だけ上下左右がよく分からなくなって、気付いた頃には絵里ちゃんの隣にまで後ずさりをしていた)
カチャッ
ことり(そうして私の足元では絵里ちゃんの相棒が雄たけびをあげる、アサルトライフルは捨て、射程のないタウルス・ジャッジしか持ってない私にはミッドレンジどころかこの路地裏の壁と壁の距離ですら戦えない。なら今こそと私の足に当たったことで雄たけびを上げた絵里ちゃんの相棒を使うべきだと私の本能が訴えていた)
ことり「……っ!」
ことり(心の中で“借りるね”と絵里ちゃんに向かって一言添えて絵里ちゃんの相棒であるスコーピオンEVOの銃口を相手に向けた————と、同時に私の頭目掛けて飛んでくる一つの赤い射線に私は思わず目を見開いた)
ルビィ「………」
ことり「………」
ことり(お互い照準を頭に向けた状態で睨み合った。誰かの血がついたスコーピオンEVOを持った私に対し赤く装飾されたハンドガンを持つ相手——その可愛らしくあざとい姿に銃器は似合わないものの、明らかに手慣れているであろう持ち方は年季を感じた)
554 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:50:31.03 ID:Kb3Xmjfp0
ことり「……!」
ことり(相手の目線を見て気付いたけどこの相手……銃口を私の頭に向けてるだけで目線は多分別のところを見てる…何か隠し玉はないか、この状況でどう避けれるのか左右の障害物を見たり、一つ一つ懸念材料を潰して可能性を増やしてる…)
ことり(それを見て思った)
ことり(この相手、相当強い…とね)
ことり(…多分、穂乃果ちゃんや曜ちゃんとも全然戦える子だと思う)
ルビィ「………」
ことり「……っ」
ことり(私が銃口を相手に向けてる間は永遠に緊張感が木霊して相手に意識を向ければ向けるほど鼓動の音が大きく聞こえて汗が止まらなかった)
555 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:52:37.31 ID:Kb3Xmjfp0
ことり「………」
ルビィ「…そこっ!」バンッ!
ことり「!」
ことり(いい加減睨み合うだけの膠着状態に痺れを切らした相手は戦いのトリガーを引いた、弾を左に躱せば相手も私に引っ付いてくるよう拳銃を下げ左へ突っ走って私へ寄ってくる。それをスコーピオンEVOを使ってしっぺ返しを狙えばどんな反応速度と運動神経をしてるのか前方向へ強く走っているのにも関わらず突然後ろへ1、2、3回と素早く飛び退き換気扇の小蔭に隠れてスコーピオンの弾全てを避けきった)
ことり「この子……」
ことり(スコーピオンの弾を全弾避けきるのはあの星空凛ですら無理だったのに一体何が起こってるというのだろう、確かにこの相手なら絵里ちゃんだって屠ることももしかしたら……!)
ことり「ちっ…そんなことあるはずないっ!」バリバリバリッ!
ことり(自然と頭の中に浮かんだ一つの可能性を否定するよう必死にトリガーを引いた。この銃はブレが強すぎるからとてもじゃないけどことりじゃブレ制御が出来ない)
ことり(だからこういう時には銃のグリップの上の辺りにあるセレクターレバーをフルオートからバーストに切り替えてトリガーを引く。そうすると本来フルオートであったスコーピオンが三点バーストに切り替わる)
ことり(これなら肩とサイトの上昇をある程度抑えられて、どんな銃でもそこそこに安定したリコイルを可能に出来る)
ことり(もちろん火力は下がるけど…)
556 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:54:34.59 ID:Kb3Xmjfp0
ルビィ「狙いがでたらめだよ…」スッ
バンッ!
ことり(小蔭から突然と飛び出し私の足元に拳銃を向け次の瞬間には発砲、もちろんそれには当たらないんだけど避けた瞬間私のおでこに赤い射線が飛んできた)
ことり「偏差撃ち…!?」
ルビィ「終わりだよ」
ことり(ハンドガンやライフルのような単発式の銃はフルオートと違ってトリガーを引いた際発砲で生じるブレに一定時間拘束されることがない、ハンドガンというのは撃って肩が跳ね上がって終わりの順序良き武器だ)
ことり「そんなっ…!!」
ことり(だから私はこのどうしようもない展開を強いられた。“ハンドガン”で私の足を目掛けて発砲して、その瞬間から私のおでこに照準を向け完全なる偏差撃ちを可能にさせた。この場合私は跳躍途中だから偏差撃ちの弾丸を回避する術を持っていない、これがマシンガンだったらこうはいかなかっただろう)
ことり(マシンガンは撃ちながら高速で照準を動かすことはできない、ハンドガンだからできた芸当——この子は間違いなく————)
ことり(————私より強い)
557 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/03(木) 18:56:07.78 ID:Kb3Xmjfp0
ルビィ「……はぁ、やめにしませんか?」ストンッ
ことり「————えっ?」
ことり(私の死を直前にして突然相手は今まで私に向けていた敵意殺意を消してその場にへたり込んでしまった)
ルビィ「はぁああ……多分あなたって絵里さんの知り合いです…よね?ルビィもそうだから…そうだから戦いはいいよ…」
ことり「…それホント?」
ルビィ「ホントだからもういいよね…?ルビィ疲れたよ…」
ことり「…!そういえばルビィって…!」
絵里『そ、それってルビィが意識を取り戻したってこと?』
ことり「絵里ちゃんや善子ちゃんが言ってた病院から抜け出した子……」
ルビィ「えへへ…やっぱり絵里さんや善子ちゃん、ルビィの事気にしてたんだ」
ことり「当たり前だよ、数年寝たきりだったのにいきなり外へ出たら体もまともに動かせないだろうし一方的に殺される可能性もあるって…」
ルビィ「……確かにこの都市はそうなのかも」
558 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:57:03.10 ID:Kb3Xmjfp0
ことり「…でもおかしいよね、なんで動けてるの?」
ルビィ「それは………」
ルビィ「………」
ことり「……何か隠したいことでもあるの?」
ルビィ「…黒澤家はお金持ちだよ」
ことり「え?どういうこと?」
ルビィ「ルビィは人間だもん、アンドロイドみたいに特殊なチカラはなくて、絵里さんの言う通り数年動かさなかった体で戦うなんて無理。だからその特殊なチカラを“投与”するしかないんだよ」
ことり「投与…?ってまさか……」
ルビィ「………」
ことり「なんでそんな…」
ことり(私の考えてることが正解なのかは分からない、けど投与という言葉を使うには状況が限定されすぎてしまう)
559 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 18:59:19.78 ID:Kb3Xmjfp0
ルビィ「……だってそうじゃん、今ルビィが動くにはそれしかないんだもん。昔はよくお世話になったモノだし全然怖…くないよ」
ことり「………」
ことり(ウソばっかり。なんでそんなモノに手をつけるんだろう。人体に影響が出るかもしれないっていうのに、目覚めてからに無理に動く必要なんかなかったのに)
ことり「だからって……」
ことり(お金持ちっていうのはつまりそう言う事なんだと思う。お金持ちだからつまり“薬”も入手出来てこの通り動けてる、こんな臆病そうな子が薬を使うなんて人は本当に見た目だけじゃ判断出来ないね)
ルビィ「うっ…ぎ…ッ!」
ことり「!? どうしたの!?」
ルビィ「頭がいだい…!!」
ルビィ「うぎゃぁああ…あッああああああああああっ!!!!!」
ことり「うっ…」
ことり(その叫びはもはや人間じゃなかったよ、甲高いを通り越した奇声をあげたからすぐさま私は耳を塞いだ。それでも突き抜けてくる声は耳の奥だけじゃなくて頭まで痛くなる声だった)
560 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:01:37.34 ID:Kb3Xmjfp0
ルビィ「ぴぎいいいいいいいいいいいいッ!」
絵里「ん……」
ことり「うるさいっ!」ドカッ!
ルビィ「ぎゃっ……」バタッ
ことり「死ぬかと思った…声だけで…」
ルビィ「………」
ことり「…薬の影響なのかな」
ことり(塞いでも突き抜けてくる声は私の命までをも破壊できると思う、そんな中で無抵抗に耳を塞いだままにするわけもなく急いで頭を押さえるルビィって子のお腹を蹴って気絶させた)
ことり(しかし耳から手を離してもさっき放たれた頭の押さえてしまうほどの奇声が頭の中を蝕んでくる)
ことり「RED GEM WINK……」
ことり(髪型や瞳の色は派手な割に闇を纏うような黒いコート姿をしたこの子のポケットから出てきたRED GEM WINKと書かれた何かの袋。まぁ“何か”って言っても薬だろうけど…)
ことり(薬だろうとなんだろうと詳しいことは袋の裏に載ってるからとりあえず袋の裏を見てみたけど案の定日本語じゃないし、ましてや英語でもないどこか別の国の言葉で読めなかった)
ことり(…でもアンドロイドの私でも反応出来ない速度で攻撃出来るんだから代償や副作用もそう易しいものじゃないはず、しかしあそこまでの悲鳴をあげるとなるときっと私の想像を遥かに超える痛みなのかも)
561 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:03:47.60 ID:Kb3Xmjfp0
ことり「よかった生きてる…」
ことり(あの赤髪の子と出会った時からお腹から血を流して倒れてる絵里ちゃんを見て出血死してるんじゃないかって思ってた、けどホント僅かに声を出してくれたからまだ生きてるのは確認出来て安心した)
ことり(…でも、このまま放置してたら絶対に死んじゃう……)
ことり「…ごめん!」
ことり(申し訳なさを抱えながら赤髪の子が来ていたコートを脱がせて絵里ちゃんのお腹に巻いた。私は戦闘服だし絵里ちゃんは制服だから服を破るという概念がない。だからこれは仕方なかった…)
ことり「……どうしよう」
ことり(赤髪の子は気絶してて、絵里ちゃんは起こすにも起こせない。そんな状況一人取り残された私はどうすればいいんだろう、私は考える)
ことり「………」
ことり(…だけど、答えは出てこない。おんぶするにも二人もおんぶできるほど私は大きくないし力もない、だからといって一人を見捨てるわけにもいかないしどちらかは目覚めるまで待つかしないのかな…)
562 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:04:49.24 ID:Kb3Xmjfp0
ことり「…いや………」
ことり(でもそれだと絵里ちゃんが死んじゃう…出血部分にコートを巻くだけで死を回避出来るはずがない、それはあくまでも応急手当、安心出来ることをしたわけじゃないんだよ)
ことり「…仕方ないよね」
ズルズルズルズル…
ことり「…ごめんね」
ことり(断腸の思い…とはちょっと違うけど倒れる二人の手を握って引きずりながら出口へと向かった。昔の私ならきっと自分だけ助かればいいやって思ってたはずなのに“誰かさん”のせいで私まで誰かを助けなきゃっていう思考なっちゃった…)
ことり(……一体誰のせいなんだろうね)
563 :
◆iEoVz.17Z2
[saga]:2019/10/03(木) 19:08:07.58 ID:Kb3Xmjfp0
〜同時刻
曜「もーことりちゃんどこ行ったんだろう…」
曜「勝手にどっか行っちゃうしそれで何か起こされたらたまったものじゃないのに…」
曜(……まぁ単独行動しかしてなかったことりちゃんに集団行動は酷な話かな…絵里さんや善子ちゃんの命が関わってるんだし)
曜「……にしてもどうしよう…」
「もし暇なら、私と少し遊ばない?」
曜「!」
曜(ことりちゃんがそそくさとどこかへ行っちゃったからこれからどうするか悩めばすぐに聞こえる誰かの声、小さい時の戦闘で培った勘…みたいなモノが働いたのかな、聞こえる声はどこか不快で明らかな敵意を感じた)
曜「…誰?」
「そんな警戒することかな?ただ話しかけただけなのに…」
曜「…! A-083…」
曜『まぁそうなんだけど一人だけ分かってるんだ、型番はA-083って』
穂乃果『P-83の次世代モデル、または戦闘型アンドロイドへと変形させた後継機って私の後継機じゃん……』
曜「…穂乃果ちゃんの後継機」
564 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:09:23.33 ID:Kb3Xmjfp0
「穂乃果ちゃん?もしかして私のオリジナルの人?」
曜「そうだよ、でもそっか。あなたが穂乃果ちゃんの後継機なんだ」
「うん、軍神と呼ばれた人の後継機だよ」
曜「へぇー名前は?」
歩夢「歩夢————上原歩夢だよ」
曜「歩夢ちゃんか、覚えておくよ」
歩夢「…覚えていられるかな?」
曜「…それはどういう意味?」
歩夢「だって……」
カチャッ
歩夢「今日ここであなたは死ぬんだから」
曜「…面白いこと言うね、控えめそうな見た目してるのに随分と強気なんだね」
歩夢「あなたこそ人間だというのに軍神の上位互換に勝とうなんて無謀にも程があるよ?」
565 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:12:26.37 ID:Kb3Xmjfp0
曜「私ね、一度戦ってみたかったんだよね。軍神————ううん、穂乃果ちゃんとは」
曜「軍神が戦場に立てばたちまち火の海が広がって血だまりで溢れかえるとまで言われたいわば兵器の存在。アンドロイドもそこまでいなかった初期型の時代じゃ穂乃果ちゃんの力は圧倒的すぎて将来はアンドロイドに地球を征服されてしまうのではないかと懸念された時もあったね」
歩夢「…それで?」
曜「うん、でも今じゃ時代も進化して穂乃果ちゃんに対抗出来るアンドロイド——そして人間も増えてるんだよ」
曜「——そしてその一人がこの私」
曜「穂乃果ちゃんとは前から面識があったけど敵ではなかった。それに穂乃果ちゃんの主である希ちゃんとは友好な関係にあったし、穂乃果ちゃんと戦うことはなくてもどこまで通用するのかずっと確かめたかったんだ。穂乃果ちゃんと戦わずして穂乃果ちゃんと同じかそれ以上のあなたと戦えるのならいい経験になりそうだよ!」カチャッ!
歩夢「…それが最後にならなきゃいいね」
曜「当然だよ、話すことは話したからさっさと始めようか」
曜「私今、すごくドキドキしてるから」
歩夢「変わった人なんだね」
曜「強い相手ほど燃えるタイプなんでね!」ダッ
歩夢「っ!行くよ!」
曜(私はライトマシンガン以外なら何でも使える——けど、今回は動きやすいようにサブマシンガンとハンドガンを選んだ。だから私の手持ちはMSMCとデザートイーグルだ)
曜(MSMCはサブマシンガンにしては発射レートが遅く、近距離の火力がそこまで高くない分発砲した際に肩があまり跳ね上がらないから照準がぐらぐらになることがなく他のサブマシンガンと比べてミッドレンジも対応できるバランスの取れた武器で私が初めて使ったサブマシンガンでもあるんだ)
566 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:16:07.68 ID:Kb3Xmjfp0
歩夢「MSMC…だいぶ古い銃を使うんだね!」ドドドド!
曜「そっちはだいぶ新しい銃を使うんだね!」ドドド!
曜(あの子の持ってる武器……見たことある。確か名前はAK-15だった気がする…穂乃果ちゃんの持ってる武器の二世代か三世代先の銃…だけど私が知ってるのはそれくらい…)
曜(銃に詳しい花丸ちゃんなら知ってるかもだけど、いずれにせよ私の知らない未知の銃だ)
歩夢「人間なのに銃弾を躱す…!?」
曜「あれ?そんなことも知らないの?」
曜「世代は新しいみたいだけど知識は全然昔のままだね!」
曜(私の靴には跳躍にブーストをかける機能があり、私のつけるゴーグルには弾道予測線が見える。この二つのおかげで銃弾だってアンドロイドのように躱せる)
曜(これは自画自賛だけど、私の発明は穂乃果ちゃんみたいな強すぎるアンドロイドに対抗する大きなキッカケになった思う。もしこれが無ければ人間というのはアンドロイド相手に真正面で戦うのは不可能だったからね)
曜(…でもね、例えアンドロイドと真正面でやりあえても私は真正面から戦う以外の心も忘れたわけじゃないよ。小さい時から色んな人と戦ってきたんだもん、例え最強と謳われた軍神の上を往く存在なら運動神経に関わるポテンシャルだけじゃなくて経験と作戦があってこそ勝利は掴めるものだ、だから私は負けるつもりはない)
曜(そう強く心に誓った私はまず初めに銃弾を避けながら相手に近づき接近戦を誘った)
567 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:17:33.92 ID:Kb3Xmjfp0
曜「せやぁ!」
曜(相手の首を貫くことも可能であろう刃渡り数センチのナイフで一閃————相手の瞳に充分な脅威を与えれば即座に後ろへ飛び退き発砲しだした。弾道予測線が私の胸を貫く頃には私もすぐに横へ短い跳躍を繰り返して回避行動をとる)
曜「うわぁ…」
曜(私の通った場所に軌跡を残す白い弾道を見ていると、飛んでくる弾は上下へ一寸のブレもなく射撃精度はまさに完璧の一言で、まだ分からないことだらけだけどこれに関して言えば確実に穂乃果ちゃんより上だった)
曜「でも、想定済みかな!」バンッバンッ!
曜(予め穂乃果ちゃんの上位互換なんていう情報があったんだからどんな行動をしても別に驚くつもりはない。だから私は銃弾を避けた後はシンプルな対応として腰にかけてたハンドガンを殺意を込めて二発発砲した)
568 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:18:31.50 ID:Kb3Xmjfp0
歩夢「はっ!よっと!」
曜「そうそう避けるよね!それも知ってる!」
曜(私の使うハンドガン—―いやマグナムであるデザートイーグルは装弾数六発で威力高めの手数が少ない分火力を高めた一発重視型)
曜(絵里さんや善子ちゃんが持つハンドガンは一発の威力は低いものの装弾数が多く手数で攻めるタイプに対して私のハンドガンは全く違うタイプだ)
曜(しかしそれ以前に、時と状況にもよるけどこの場合私のハンドガンは本来のハンドガンとしての用途が違う)
曜(一発が大きいんだからそれを確実に回避させて隙を作る)
曜(銃で人を殺すのに対して一発の大きさなんてほとんど関係無いけどアンドロイドは撃たれても普通に動けるものでね、このハンドガンの殺意は当たらなくても充分な効果を発揮するといえる)
曜(そして私は歩夢ちゃんに接近戦を仕掛けた)
569 :
◆iEoVz.17Z2
[sage saga]:2019/10/03(木) 19:22:27.52 ID:Kb3Xmjfp0
曜「穂乃果ちゃんの上位互換の力、みせてもらうよ!」
歩夢「望むところ!」
曜(銃弾を避けた直後の相手に対し走り込みで距離を詰めハンドガンのグリップ部分を使い首目掛けて打撃を放った)
歩夢「首は欲張りすぎだねっ!」
曜「そうだねっ!でも穂乃果ちゃんみたいな相手だったら長期戦にはしたくないんでね!」
曜(アンドロイドは機械、それは言わずもほぼ全てのステータスが人間より上だ。だから学習能力や対応力も私以上で穂乃果ちゃんほどの戦闘力を有した相手と長期戦をすればほぼ詰みに近い状態になる、なら私の持ってるカードを今すぐにでも使って短期決着を目指すのみだよ)
曜(そう思った私は、ハンドガンでの打撃の後に右フックをするけどもちろんそれも飛び退き回避される。だけどそれでも攻撃はやめずに、右フックの勢いを消さず体を捻り相手に背を向けながら相手方向に跳躍——そして後ろ回し蹴りを左足で行った後に右足で蹴り上げと、鋭い蹴り二連撃を繰り出した)
歩夢「くっ…」
曜(私の蹴りの一発目を腕でガードした時点で相手の拘束は出来てた、だから二発目は相手の持つアサルトライフル目掛けて蹴りを入れた)
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