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絵里「例え偽物だとしても」

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370 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:14:04.52 ID:7iMNu1YO0
絵里「…じゃあ結果どうなったの?」


曜「結論から言うとね、私たちは勝ったよ」


絵里「…それで?」

曜「こちらの死人は0人、向こうの死人は……」


曜「一人…かな」


絵里「…!もしかして今言ってた凛…?」

曜「うん…死んだ」


穂乃果「あの猫女が死んだのはいい気味だよ」


絵里「!」

せつ菜「お、お邪魔してます!」
371 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:16:42.86 ID:7iMNu1YO0
絵里「あなたたちは…」

善子「あの二人の主は死んだからね、とりあえず曜がここへ連れてきたのよ」

絵里「そ、そう…」

絵里「…そう、そうよ凛は私が殺したって……」

曜「あ、うん…絵里さんが殺したね…」

絵里「………」

善子「…そうよ、さっきも言ったわよね、俊敏だったって。あの時凛は腿を斬られてあまり動けない状況だった、だからダメ押しで攻めてスコーピオンEVOの弾を食らって死んだ」

絵里「………」

曜「…正直、無惨だったかな」

曜「自分が作った武器だけど、連射速度が高い銃はやっぱり殺した時如何に恐ろしいかが分かるよ」

善子「腹を数十発に渡って貫かれて死んだわ、多分一発か二発は脳天や心臓をぶち抜いてるんじゃないかしらね、スコーピオンはブレが酷いから狙わずとも当たるもんだわ」

絵里「…ッ」ゾクッ

絵里(想像しただけで寒気がした、確かに銃とは人を殺す為にあるもの。だけどオーバーキルにも程がある)

絵里(腹を貫ぬかれて死亡ならまだしも、何十発も貫かれて死亡なんてまともに死体が見れたものじゃないでしょう…もう一人の私は…一体何を考えて凛を殺したのかしらね)
372 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:18:04.18 ID:7iMNu1YO0
曜「…それでまぁ、こうやって今はみんなで羽を休めてるんだ」

絵里「…そう」

果南「絵里は二週間も眠ってたんだよ?」

絵里「…え?二週間?」

ことり「そうだよ、あの戦いからずっと起きる気配が全く無かったんだよ?」

絵里「…嘘でしょ」

絵里(横長の棚の上にある時計はあの日から約二週間の月日が経っていることを示していた。今でも感じるこの不自由な体は一体何が起こって不自由になったというのだろうか)

果南「これでみんなお荷物だね」クスクス

穂乃果「だからその呼び名はっ!」

曜「穂乃果ちゃんはそんなに怒らないの、実際今はみんな戦えないんだしここでゆっくりしてようよ」ゴクゴク

ことり「…渡辺曜はくつろぎ過ぎだと思うけど」

せつ菜「私も何か飲みます!」

善子「…まぁそんなところよ、しばらくの間はみんなこの体が癒えるまで動けないわ。それは相手も同じよ」

絵里「…凛以外のやつらはどうなったの?」

善子「みんな私たちと同じくらい怪我を追って退却って感じ、今回のこの戦いは痛み分けだったわ」

絵里「…そうなのね」

絵里(戦いの結果はどうにもコメントに困るものだった、一応戦いには勝ったっぽいけどもやもやは全然消えない。もう一人の私の事も気になるし、死んだ凛の事も気になる、それに相手の事も気になる)

絵里(……だから顔は晴れないままだったと思う)
373 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:21:06.30 ID:7iMNu1YO0
果南「はーいポテチ持ってきたよー」

曜「お、いいね!みんなも食べよー!」

せつ菜「穂乃果さんも食べましょうよ!」

穂乃果「う、うん」

果南「ことりも食べよ?」

ことり「私カロリー高いやつはちょっと…」

果南「普段から全然食べてないんだしポテチ食べた程度じゃ太らないよほらほらっ!」

ことり「分かったからポテチ押し付けないで!自分で食べるから!」

善子「果南は何をしてるのよ…」

絵里「……ふふっ」

絵里(でも、心なしかみんな楽しそうだった。あの戦場とその結果は散々なものだったけど、またここが賑やかになったのを見て少し安心した)

絵里(穂乃果って子とせつ菜って子も曜からは話を聞いてたけどすごくいい子そうでよかったわ。果南のおかげでこの空間にも馴染めてるし、私もそれで少しは心が楽になった)


にこ「絢瀬絵里、ちょっといい?」


絵里「! あなたは…」

にこ「もう敵対するつもりはないわ、あいつらを殺すつもりもない。だからちょっと来て、話があるの」

絵里「…ええ」

絵里(廊下の方から小さな声で私を呼ぶ相手、それは対アンドロイド特殊部隊のにこだった)
374 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:22:55.56 ID:7iMNu1YO0
スタスタスタ

にこ「ここでいいかしら」

絵里「…外まで来て何を話すの」

にこ「あぁいや…」

絵里「…?」

にこ「その…ごめんなさいね」

絵里「…何の話?」

にこ「あんたらを狙って悪かったって話よ、私も目が覚めたわ、あいつらとはいたくないもんでね。海未には悪いけど」

絵里「…そう、そんなことならいいわよ」

にこ「…ありがとうって言っておくわ」

絵里「ええ」

にこ「……でもね、絢瀬絵里——いや、絵里」

絵里「…何?」


にこ「松浦果南は本当に危険よ」


にこ「これだけは譲れない、戯れ言と聞き入れても良い、でも頭のどこかで私の言葉を覚えておいてほしい」
375 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:25:32.94 ID:7iMNu1YO0
絵里「分からないわね、どうしてそこまで果南を危険視するの?」

にこ「それは————」


ガチャッ


絵里「!」

にこ「あんたら…」

絵里(外にでてにこと話してれば、今度はそこに穂乃果とせつ菜がきた)

穂乃果「…帰る」

にこ「帰る?あんたらの家はどこにあるのよ」

穂乃果「私たちは軍人だよ、野宿くらい慣れてるよ」

絵里「え、ならこの家で」

せつ菜「そうはいきません」

絵里「…どうして?」

せつ菜「業務用アンドロイドはあなた方標準型や戦闘型と違って自分の思考通りに体が動きません」

絵里「…どういうこと?」

せつ菜「私たちはとにもかくにも業務用アンドロイド——希さんは私たちを自立出来るアンドロイドへと変えてくれた」

せつ菜「だけどどうにもこうにも業務用アンドロイドの域から抜け出せないんです。また私たちを引っ張ってくれる主が見つからないことには私たちの生きる意味も価値も、そして術もありません」
376 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:28:44.98 ID:7iMNu1YO0
絵里「…なら私が」


穂乃果「なら私が主をやる、とは言わないよね?」


絵里「っ……」

穂乃果「私はあなたが気に入らない」

絵里「…どうして?」

穂乃果「………」

せつ菜「とにかく私たちはここから離れます。次会う時は敵かもしれませんね」

にこ「待って、その傷のまま戦闘でもしたら間違いなくあんたらは死ぬわよ。特に海未のやつは二週間も経ってるんだからもう動けるはずよ」

穂乃果「私たちは戦闘のプロ、体だけじゃなくて頭もちゃんと使えるから心配ないよ」

にこ「…無理ね、死ぬわ。百パーセント」

せつ菜「…何を根拠に言ってるんですか?」

にこ「あんたらは強いわ、二対二じゃ絶対に負けないと言ってもいいくらいに強い、そしてある程度人数に差が開いてても戦えるポテンシャルがある。だからEMPグレネードは元々あんたらを殺す為に作られたモノだった」

にこ「万全の状態なら海未にだって勝つことは可能でしょうけど、今の状態じゃ海未一人にすら勝てない。それは海未と一緒にいた私がよく知ってる」

にこ「元はといえば今回は私や曜、そして絵里と善子が助けに来てくれたから助かったけどあんたらは言えば死んでる存在なのよ?お高いプライドも大概にして、自分の出来ることを弁えてから行動に移すことね」

穂乃果「それでも私たちはいくよ、何故なら勝てるから」

にこ「あーあそうかいそうかい、ならとっとと海未のところに行って死んでくれば?そうすれば天国にいる希もあんたらに会えて嬉しいことね」
377 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:30:51.61 ID:7iMNu1YO0
絵里「ちょ、ちょっと喧嘩は…」

穂乃果「…どんだけ私たちを殺したいの?不愉快なんだけど」

にこ「現実を見ろっていってんのよ、穂乃果の隣にいる夢追い人のせいで穂乃果にも夢追い人が感染しちゃった?」

せつ菜「私は夢追い人じゃありません!」

穂乃果「…いこっせつ菜ちゃん、こんなところにいても無駄な体力使うだけだよ」

せつ菜「は、はい」

スタスタスタ

絵里「………」

絵里(いい子なのは分かる、だけどあの二人はプライドが高い、高すぎる。だから見えるあの背中はとても冷たいものだった)


穂乃果『私はあなたが気に入らない』


絵里(…あの凍てついた顔はどうしたら綻びるのかしら)


せつ菜『とにかく私たちはここから離れます。次会う時は敵かもしれませんね』


絵里(あの固い態度を緩めるにはどうしたらいいのかしら)

絵里(さっきはあんな楽しそうな笑顔をしてたのに、それが嘘であったかのような、それがまるで本当のあなたであるような今は一体何なのかしら)

絵里(この外にいる全員の怪訝そうな顔は今も解けることはない)
378 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:34:55.47 ID:7iMNu1YO0
絵里「あぅ…あ……」

絵里(その中で私は、この状況で何を言えばいいのか分からなかった)

絵里(軍神と謳われた相手に威圧されて弥立って言葉が上手く出せなくて、一歩進んだ足と一つ伸びた手は二人に届くことは無かった)



にこ「ったく、希が死んだせいで拠り所がないせいか昔のあいつらを見てる気分だわ」

絵里「…知ってるの?昔のあの二人を」

にこ「当たり前でしょ、希と私は元仲間だったからね、敵対関係にあっても殺し合いをすることは無かった。だから増えていくのはあいつらとの交流関係だったわ」

絵里「…そうなの」

にこ「ええ、昔なんて殺すことしか考えてなかったのに、数か月経てば何かめんどうなことがあっても穂乃果が“希ちゃんのところへ帰るよ”ってせつ菜を引率しておとなしく帰ってくもんだから驚いたわよ」

にこ「それからあいつらも常識を覚えてきたから今ではかなりまともなアンドロイドだけど、心の支えの主軸であった希が死んだからね、あいつらの道徳が決壊し始めてるんだわ」

絵里「…それはまずくない?」

にこ「…あいつらの道徳性は別に心配ないけど命は今もすり減ってる状態だわ、次第に海未とかに遭遇して死ぬのはもはや確定的」

絵里「………」

にこ「せつ菜はちゃんと自覚してたけど、結局あいつらは業務用アンドロイドなのよ」

にこ「主の導がないとあいつらは自然と死の道を選んでしまうし猜疑心はまた増えてく一方、特に穂乃果は……ね」
379 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/29(日) 21:35:41.19 ID:7iMNu1YO0
絵里「…何?」

にこ「昔よりもっと前、一昔前の穂乃果はよく笑ってたわ。それはせつ菜も同様」

にこ「それが今はこうなんだから、主の重要性が分かるわ」

絵里「…ならにこがやれば」

にこ「無理ね、あいつらの主が私なんかに務まるわけがない」

絵里「どうして?」

にこ「私は希ほど心は広くないし、優しくもない。希は基本的に放任主義だから穂乃果とせつ菜をたっぷり可愛がるだけで後は何もしないいわば拘束を一切しないやつなのよ」

にこ「でも私は違う、希の放任主義はある意味でいえば正解だけどある意味でいえば不正解。あんな危ないやつに好き勝手やっていいよなんて言うやつがまともなんて到底言えたものじゃないわ」

絵里「…確かに」

にこ「だからきっと私が主になった暁にはあいつらに不自由な生活を強いてしまうでしょうね、だから私はやらないわ。プライド高きアンドロイドは拘束を嫌うだろうから」

絵里「…ちゃんと弁えてるのね」

にこ「当然よ」
380 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:38:28.69 ID:7iMNu1YO0
絵里「………」

にこ「…じゃあ私も帰るわ」

絵里「え?」

にこ「絵里が生きてるのを確認出来たならもうここにいる必要はない、あいつらもきっと絵里が目覚めたからここを出たんだわ」

絵里「…どうして?このままいればいいじゃない」

にこ「私には妹たちがいるの、例えあの部隊を裏切ろうとも戻らなきゃいけないのよ。ママはいるけどね、姉として誇りを持って生きてるの」

絵里「…姉として」

絵里(私にも亜里沙という妹がいる、だからその言葉は少し…少しばかり痛かった)

にこ「その点ダイヤは姉として最低だったわ」

絵里「…!そういえばそう、なんでダイヤを嫌ってるの?」


にこ「…あいつにはルビィっていう妹がいるの」


絵里「!!」

にこ「…でもその妹は昔あったデパートに乗り込んできた武装集団によって足を撃たれて意識は闇へと誘われた、きっと熟成した今の体なら意識はあったと思うけど、まだ幼い頃だったから痛みは体についていけてなかったんだわ」

絵里「…それ、知ってるわ」

にこ「…そう、それでダイヤはショックが大きすぎたんだわ。悲しみは次第に怒りへと変わっていき、二度と大事なモノを無くさないと対アンドロイド特殊部隊に入った。あそこの部隊は人間の中でも指折りの強者しかいないからね、あそこに入ることこそ自分が強くなる最短ルートだと思ったんでしょうよ」


にこ「そうしてそこで出会った凛に慰められて、次第に凛を本当の妹のように見るようになってしまった」


絵里「……なるほどね、でもおかしいわ。なら凛は何なの?」

にこ「あいつはぁ…そうね…ただのバカかしら」
381 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:41:21.51 ID:7iMNu1YO0
絵里「ただのバカ?」

にこ「人っていうのは変わるものなのね」

絵里「え?」

にこ「私はそれを凛で知ったわ」

絵里「どういうこと?」

にこ「アンドロイドでも人間でも、とにかく人語を喋れる者はみんな同じ事を言うわ」


にこ「昔の方がよかったって」


にこ「昔のあなたの方が優しかった、昔のゲームの方が面白かった、昔の公園はもっと楽しかった」

にこ「当たり前よね、だってよく考えてみて、今が在った時昔の自分を見るとその時には当たり前だと思ってたものが今にはないの」

絵里「…?意味が分からないんだけど」

にこ「例えば初めて恋人が出来たっていうならそれは相手を大切にしなきゃって思う気持ちが強い時なの、だから相手に優しくするし何があっても守らなきゃって思う、つまりそこに初々しさがあるの」

にこ「でも時間ってものは残酷だわ、数か月…いや短いかしら、数年が経てばそこに当たり前のように相手がいることに気が付かなくて扱いも段々と雑になってくる、大切にしていく必要性がなくなるの、どう接すればいいか分からない泡沫の存在から元からいるような当たり前の存在に変わってしまうから」

にこ「ゲームだってそうよ、今はインターネットが盛んだから昔みたいに友達で集まってゲームをやらないの、友達がいることが当たり前だと思ってたから昔の方がいいだなんていって懐かしむの、失ったモノに気付かないままね」

絵里「………」

にこ「だから?って顔してるわね、分かるわよ」

絵里「えっ!いや…」
382 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:42:46.42 ID:7iMNu1YO0
にこ「…回りくどくてごめんなさいね、本題を言うと凛はいじめっ子だったのよ」

絵里「いじめっ子…」

にこ「ええ、凛はここ東京出身で幼い頃から周りにまともな人間が少なくて育ちが悪かったの」

にこ「動物は遊び半分で殺すし、人の気持ちを理解しようとしない薄情者、そのおかげで凛の周りにいたのは凛と同じよう狂ったやつだけ」

にこ「好戦的なくせに反則級に強いのが凛、百戦錬磨のその姿は戦闘型アンドロイドなら必ず知ってるくらいよ」

絵里「………」

にこ「そんな中で狂ったやつらの集まりである対アンドロイド特殊部隊が入った時、凛は初めて思いやりという言葉を知ったわ」

絵里「思いやり?」

にこ「さっき言った通りよ、凛はダイヤで初めて人を労わる気持ちを覚えた。凛はそれから変わった、いい方にも悪い方にも」

にこ「人に関心のない薄情な心が初々しい交感をした、凛は初めて人の気持ちを理解した。だから凛は分からないの、他人が笑顔でくれる言葉は全て良いモノとして受け取ってしまう」


にこ「例えそれが狂った感情だとしてもね」


絵里「……そういうこと」

にこ「ダイヤは凛を本当の妹として見て、凛はダイヤの操り人形、人の気持ちを理解しようと凛は偉かったわ。でもそれ以降の凛はただのバカだった」


にこ「…だから私はバカな凛が嫌い、そしてルビィという本当の妹がいながらも凛を妹に仕立て上げたダイヤが大嫌い」


絵里「………」

にこ「だからね、今回凛を殺してくれたのはある意味言えば救済になったと思う。ダイヤは目が覚めたでしょう、凛は天国で反省してると私は嬉しいわね」

絵里「……私は」

絵里(私は凛を殺した覚えはない、死体も見てない。私がもう一人の私に全てを委ねた時から記憶は闇の中だった)

絵里(それなのにどうしてだろう、凛が死んだ——そこまでならきっとよかった。でも私が殺したっていう事実があることに、どうしても私は痛みを感じてしまっていた)
383 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:44:50.90 ID:7iMNu1YO0
にこ「…まぁ帰るわ、私も何かない限りはここへ帰ることはないわ」

絵里「……気を付けてね」

にこ「はいよ、でも人の心配より自分の心配をしなさい。私はまだ戦える体だからいいけど絵里は違うんだから」

絵里「…ええ」

にこ「じゃあね」

スタスタスタ

絵里「………」

絵里(…どうして、みんなはそんなに一人へ…孤独へなろうとするのかしら)

絵里(協力関係は結んだならきっとそれは仲間って言っても良いと思うのに、穂乃果もせつ菜もにこも、みんなここから離れたがる)

絵里(……そんなにここの居心地が悪かったのかしら)

絵里「…いや」

絵里(そんなことはない、ムードメーカーの果南だっているしツッコミとボケ両刀の善子だっている、割かし自由人な曜や比較的まともなことりもいて、どういう性格をしててもきっとそこは馴染みやすい場所だったと私は思う)

絵里(みんな怪我してて、死ぬ危険性もあるというのに…)


絵里(どうしてみんな、そこまで死にたがりなのかしら……)

384 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:45:41.10 ID:7iMNu1YO0
絵里「はぁ」

ことり「おかえりなさい、大丈夫だった?」

絵里「ええ、特に何も」

ことり「…あれ?矢澤にこや穂乃果ちゃんは?」

絵里「みんな帰っていったわ」

ことり「えぇ!?大丈夫かな…」

絵里「…にこは多分大丈夫だけど、せつ菜と穂乃果はやばいってにこも言ってたわ」

ことり「……どうするの?」

絵里「……正直分からない、何かあったら助けに行きたいけど、この体じゃまともには……」

ことり「………」


果南「その時は私とことりに任せてよ」


絵里「! 果南…でも二人は体が…」

果南「大丈夫だよ、もう私は戦える。もちろん万全じゃないけど、それでも充分なほどには戦えるから今度は私が絵里の代わりをやるよ」

ことり「…そうだね、私も万全じゃないけど戦えるよ。肩も動くし、足もさほど痛みはない」

絵里「…そう、でも無理はしないでね」
385 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:48:09.49 ID:7iMNu1YO0
果南「あははっそう言ってくるのが何とも絵里らしいよ」

ことり「…分かるかも」

絵里「そ、そう?」

果南「うんうん、絵里は絵里だね」クスクス

絵里(果南はやっぱりすごい人よ、人を元気づけるのがとても上手くて尊敬しちゃうわ)

絵里(果南に腕を引っ張られてリビングに向かえば善子と曜が楽しそうにゲームをしてて、“絵里も一緒にやろうよ”って笑顔で言ってくるもんだからこれは参加せずにはいられないわよね)

スタスタスタ

絵里「………」

絵里(ただゲームの前に、テーブルに所狭しと置かれている武器が戦いの爪痕を残していた)

果南「改めて見るとすごい武器の数だよね」

曜「不良みたいだよね」

善子「いやこんな物騒な武器持ってる不良どこにもいないわよ…」

絵里「…あ、これことりの……」

ことり「あ、うん。曜ちゃんに直してもらったんだ」

絵里「ええ、よかったわね」

ことり「うんっ」
386 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:52:00.63 ID:7iMNu1YO0


花丸「あ、あの…」


絵里「…あれ?」

ことり「…あれ?穂乃果ちゃんと優木せつ菜は帰ったんだよね?」

絵里「え、ええ」

絵里「どうして花丸さんがここに?」

花丸「マルは寝てたらなんか二人に置いてけぼりにされちゃったみたいで…あ、でもこの手紙が私のところに置かれてて…」スッ

絵里「…読んでもいい?」

花丸「…はい」

絵里「………」ペラペラ

絵里(そこに書いてあったのはせつ菜から花丸へ向けてここの家に残れというメッセージだった)
387 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:54:39.48 ID:7iMNu1YO0
絵里「ふむ…私たちといるよりかここにいる方が何十倍も安全だから戦闘が出来ない花丸さんはここにいるべきです…か」

善子「…無責任ね、要は足手纏いって言いたいんでしょ?」

花丸「ずら……」

絵里「ちょっとその言い方は…」


曜「強ち間違ってないよ」


絵里「!」

曜「死にかけの二人が実質非戦闘員である花丸さんと一緒にいて、誰かと戦闘が始まった暁には少し荷が重いように感じると私は思うよ」

曜「だって助ける余裕がないんだもん、そんな状態で死なれてもどうしようもないし、そんな状況になるくらいなら最初から戦闘に参加しないよう心掛けるべき」

曜「だから二人の判断は正しいと私は思う」

花丸「…知ってる、マルがお荷物だなんてことは。足手纏いってことも遠回しに言ってくれるのはきっとせつ菜ちゃんなりの優しさなんだと思ってる…ううん思いたいずら……」

曜「…大丈夫だよ、せつ菜ちゃんも穂乃果ちゃんも仲間は大切にする人だから。花丸ちゃんを捨てたわけじゃないよ」

花丸「…うん」
388 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/29(日) 21:56:08.81 ID:7iMNu1YO0
絵里「………」

果南「…あぁもういいじゃん!ならあの軍神とトリックスターを引っ張ってくればいいじゃん!」

曜「うん、それが一番良いと思う。あの二人は今はまだここにいるべき」


曜「…だけど、私、絵里さん、善子ちゃんは戦えないね」


善子「…ええ」

絵里「この傷じゃ…足を引っ張るだけね」

曜「あの二人は絶対に抵抗してくるよ、プライドが高いからね」

果南「なら二対二になるってことか」


ことり「…私は戦いたくない」


果南「え?なんで?」

ことり「……穂乃果ちゃんとは二重の意味で戦えない」
389 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:56:47.15 ID:7iMNu1YO0
果南「…あの時の話?」

ことり「…うん、そうだよ」

絵里「あの時の話?」

果南「絵里と善子が曜とかと戦ってる時、私たちは色々話をしてたんだよ」

ことり「そんな時にあがったのが希ちゃんのところにいたアンドロイドの話だった」

果南「そこでその高坂穂乃果っていうアンドロイドの事を聞いた、結論からいればことりは穂乃果の元親友で、でも穂乃果に殺されかけたんだって」

善子「なんで?喧嘩でもしたの?」

曜「違うね、穂乃果ちゃんは過去に一回死んだことのあるアンドロイドだよ、だからその時に埋め込まれた記憶で性格が一変した」

ことり「その通りだよ、だから私はその変わり果てた穂乃果ちゃんを殺そうとした」

絵里「…それで結果はボロ負けだったと」

ことり「…うん」

善子「なるほどね、つまり戦いたくないっていうのは腐っても元は親友であった相手で、しかも一回殺されかけたくらいに実力を知っている相手とはやりあえないってわけ」

ことり「…その通りだよ」

曜「…こればっかりは仕方ないんじゃないかな、私はことりちゃんに同情するよ」

絵里「ええ、あくせくしたって何も始まらないわ」
390 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:59:10.42 ID:7iMNu1YO0
果南「…まぁね、でもそれじゃああの二人の助けようがないよ?」

花丸「大丈夫だと思う…ずら」

花丸「例え負け戦を強いられたとしても、そう簡単には死なないと思うから」

果南「…ならいいけど」


「………」


絵里’(この状況で、それは流石の果南もこの重い空気の中で何かを話そうとはしなかった)

絵里(私は考える、あの戦いは勝利であったのだろうか)


絵里(それは否、私はそう思う)


絵里(私としては敗北で、今でもピリピリ残ってるトリガーを引く感覚は人を殺めた感覚とほぼ同義なんでしょう)

絵里(私があの時——千歌が死んだ時にトリガーを引いた時から一本道であったのは確かだけど、それは今に戦えば戦うほど目標までの距離が遠く見えてくる)

絵里(それは届きそうで届かない錯覚の距離ではないし、ただ単純に目に見えて分かるほど遠い距離でもない)


絵里(私が見てるのは、どこがゴールかもわからない道のない道)


絵里(きっと発砲しても誰にも当たらないしどこかの壁に当たることもない無限の彼方で私は黄昏てるだけ)

絵里(私のいるこの道は、一体何があるというのかしら)



花丸「大丈夫…ですか?」

絵里「…心配してくれるの?」

花丸「…一応友達だから」

絵里「…ええ、そうね。私たちは友達だものね」

絵里(花丸さんと話すのは、まだ千歌が死ぬ以前の図書室に真姫といた時以来だった。その時はPR-15の事を丁寧に教えてもらって、私も花丸さんも真姫もよく分からずに親しくなってた)
391 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:02:12.63 ID:7iMNu1YO0
絵里「……あの希って人のところの人だったのね、あなた」

花丸「希ちゃんに、マルの才能を買ってもらったずら」

絵里「あなたの才能?」

花丸「……銃にとっても詳しいっていう点で、相手を解析する役目と情報を集める情報屋として拾ってもらったずら」

絵里「拾ってもらったって言っても花丸さん人間でしょ?親はいるんでしょ?」

花丸「…ううん、一人ずら」

絵里「え?なんで?」

花丸「…ごめんなさい、その話はあんまりしたくないずら」

絵里「…そう、ごめんなさい」

絵里(人は過去を振り返りたがらない、特にこの隔離都市に住む人間はそう、みんながみんな過去を良いモノとしては見ていない)

絵里(実際そうだったでしょ?善子も、ことりも、にこも、全ては銃弾によって撃ち抜かれた運命を体験してる)

絵里(だからきっとこの花丸さんもそうなんでしょう、“そういう過去”があるんでしょう)
392 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:06:07.96 ID:7iMNu1YO0
花丸「…まぁ一人のマルを拾ってもらって、希ちゃんの家で居候をしてたずら」

絵里「…そうなのね」

花丸「だからいつまでの話になるか分かりませんが、しばらくの間ここでよろしくお願いします」ペコリ

絵里「え、ええ…よろしくね。でもそんなかしこまらなくてもいいのよ?」

花丸「ううん、最初はいつもこうだから…希ちゃんの時も全く同じだったから…」

絵里「そ、そう…」

絵里(まだ関りが薄いっていうのもあったし、今が今なだけに私も花丸さんも口は中々開かなかった)

絵里(月明かりに照らされるだけの真っ暗な寝室で二人、どこか妖しくて丸いお月様に黄昏ていた)


「………」


絵里「ね、ねえ花丸さん」

花丸「はい、なんですか?」

絵里「これからしばらくの間休み傷が癒えたとして、それから私たちはどうすればいいのかしら?」

花丸「……あの戦いはマルたちと対アンドロイド特殊部隊だけが動く事件にはならなかった、次第に普通の警察も動きだす。だからもう派手な事は出来ないずら」

絵里「………」

花丸「だから…もう、対アンドロイド特殊部隊は無視でもいいと思うずら。絵里さんの行き先——そう鞠莉さんのところに行くべきだとマルは思う」
393 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:09:42.21 ID:7iMNu1YO0


曜「いや、違うかな」


絵里「!」

花丸「!」

曜「それは無理だよ、鞠莉ちゃんの家は大きな豪華ホテルの最上階なんだけど、警備が分厚い上に対犯罪集団に努めシステムが厳重すぎて侵入が難しい上に侵入が出来たとしてもって感じ」

絵里「なら外にいる時に殺せば」

曜「その時に鞠莉ちゃんの近くにいるのが対アンドロイド特殊部隊とかの一流警察の集まりなんだよ、だからアンドロイド特殊部隊を壊滅させることにはちゃんと意味があるし、政府の武器庫であるY.O.L.Oを潰すことにも将来性が見える時なんだよ、今は」

花丸「…なるほど、確かにその通りずら」

曜「確か絵里さんと戦ってたぶどう色の髪をした子——梨子ちゃんっていうんだけどね、梨子ちゃんは中学一年生の時にアンドロイドに親を殺されててそれ以来ずっとアンドロイドの復讐の事しか考えてないし、後から戦場にやってきた果林ちゃんなんかは元々アンドロイドを肯定してる人なんだけどちょっと狂った美学を持ってて殺すことに美しさを感じちゃってて、だから誰かを殺しても犯罪にならない対アンドロイド特殊部隊に入ってるしで対アンドロイド特殊部隊っていうのは特別なことでもない限り一生敵でい続けると思う」

絵里「……」

花丸「…難しい話ずら」

曜「…まぁ今考えるべきことはそこじゃないけどね」アハハ

花丸「…?」
394 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:12:09.35 ID:7iMNu1YO0
曜「今考えるべきことは…それはー?」


曜「今日の夜ご飯をどうするか!だよ!」


絵里「…?」

曜「いやいや何も難しいこと言ってないじゃん!もう十時だよ!?十時なのに何も食べてないからお腹空いたんだよ!」


グゥ~…


花丸「ずらっ…」

曜「ぷっくすくすくす……」

花丸「わ、笑わないでほしいずら!!」

絵里「よ、曜って料理作れるんじゃなかったの?」

曜「作れるよ、でもあの状況で作るのもなんか違うじゃん?」

絵里「まぁ確かに…」

曜「ほらっだから絵里さんも花丸ちゃんもダイニングとリビングに行こ?腹が減っては戦は出来ぬだ!」
395 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:12:45.99 ID:7iMNu1YO0

スタスタスタ

絵里「…曜は強いのね」

花丸「あんな状況でも笑っていられるのは…少し羨ましいずら」

絵里(そう花丸さんと交感をして曜の後ろをついていった、ダイニングとリビングに行けば果南とことりは一つの漫画を一緒に見て変な感興の声をあげてて、善子はことりが好きそうなうさぎさんの可愛いクッションを抱いてソファで寝てた)

曜「二人ともご飯食べよー!あ、善子ちゃんはご飯出来たら起こそう」タッタッタッ

絵里「…ふふふっ」

絵里(曜も、果南もことりも、そして寝てる善子も笑ってて私はなんとなく安心した。また、いつもの雰囲気が戻ってきたような気がする)
396 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:14:27.94 ID:7iMNu1YO0
果南「絵里たちの傷、いつ頃治るかなぁ」モグモグ

曜「アンドロイドは人間より回復が早いから絵里さんと善子ちゃんは後数週間で治るんじゃないかな」

絵里「後数週間は長いわね…」

善子「それまでに何も無いといいんだけど」

曜「そうだね、それを祈って今はくつろぐのみだ!」ワッハッハ

ことり「それはどうかと思うけど…」

花丸「ずらっ」

果南「いやいやどうせ何も無ければやることないんだし漫画とか見てるのが一番だよ」

絵里「まぁ休み方は人それぞれにせよとにかく休むことは必要よ、曜もさっき言ってた通り腹が減っては戦は出来ぬ、よ。しっかり食べなさい?」

曜「あははっなんか絵里さんお母さんみたい」クスクス

善子「なら果南は迷惑な長女ね」

果南「あ?じゃあ善子は生意気でガキな末っ子ね」

ことり「じゃあって…」

絵里「二人ともなんですぐにそういう発想になるのよ…」

曜「あはははっ」

絵里(なんだかんだ騒がしいようなこの食卓で食べる夕飯はなんとなくだけど幸せの味がした)

絵里(だから如何なる退廃的状況、そして状態でもここはまだ幸せの在り処でいてくれてるのかもしれない)
397 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/29(日) 22:15:52.33 ID:7iMNu1YO0
果南「ふうごちそうさま、ちょっと地下の射撃場行ってくるよ、そろそろなまった体を正さないといけないみたいだからね」

ことり「私も行く、お荷物から戦力へ成り上がったならサボることは出来ないから」

絵里「い、いいけど大丈夫?二人とも肩を撃たれたわけだし」

果南「大丈夫だよ、心配しないで」

ことり「私も」

絵里「そ、そう…」

果南「じゃっ行ってくるよ」

スタスタスタ



果南「すぅ…ふぅ…」

ことり「久々の発砲に緊張してるの?」カチャッ

果南「まさかっ深呼吸をして落ち着いて狙いがずれないようにしてるだけだよ」カチャッ

ことり「そっか」

果南「はー久々にチャージングハンドルを引いたよ」

ことり「私もだよ、これを引くだけでちょっと戦いの感覚を思い出すね」

果南「うん、そうだね」
398 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:20:46.25 ID:7iMNu1YO0


ドドドドド!


果南「へぇやるじゃん、全部的の真ん中なんてね」

ことり「そっちも全部的の真ん中じゃん」

果南「私にとっては当たり前だよ、何年戦ってきたと思ってるのさ」

ことり「それは私だって同じだよ、言っとくけど戦歴は私の方が長いんだからね?」

果南「知ってる知ってる」ドドドド

ことり「…というかその銃は……」


ことり「スカー?」


果南「そうだよ、SCAR-H。銃を持ち始めてからずっとこれとデザートイーグルしか使ってないんだ」

ことり「へぇ…でも松浦果南は戦闘経験が豊富っていうならそれこそスコーピオンEVOを使えばよかったんじゃないの?」

果南「…それはことりにも同じことが言えるよね」

ことり「まさかっ私は前に言ったよね、ブレが酷い銃はどうしても扱えないって」

果南「あぁそうだったね…うん、そうだね、確かにスコーピオンはブレが酷いから扱うのはかなり難しい銃だよ」
399 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:22:56.41 ID:7iMNu1YO0
果南「みんな勘違いしがちだけど、スコーピオンは強いけど最強ではない。連射速度が速すぎる分マガジンはすぐに切れるし、銃口が小さい分一発一発の威力が低い」

果南「もちろんアンドロイドだろうと完璧に避けるのが難しいと言われる連射速度のアドバンテージは魅力的だけど、案外スコーピオンは不完全なところがあるんだよね。ブレが酷いから思った通りに弾が飛ばないせいで事故も結構多いし」

果南「その点このSCAR-Hは一発の威力が大きいし壁もよく抜けるから遮蔽物をあんまり気にせずに済むし一発敵に撃ちこむだけでも致命傷になる火力の武器、防弾チョッキなんてなんのそのそんなもの貫通するよ」

ことり「…なるほどね、あくまで求めるのは”そういうところ”なんだ」

果南「そうそう、スコーピオンみたいな器用さはいらないよっと!」ドドドド

ことり「そっか」ドドドド

ことり「…ねえ松浦果南」

果南「何?」

ことり「もし絵里ちゃんたちの傷が癒えてない時に戦いが始まったら、戦いの主軸は私たちになる」

果南「…うん、そうだね」

ことり「だからその時は…絶対に負けないようにしよう。このままお荷物ではいられないよ」

果南「そんなの当たり前だよ、千歌を殺した分はしっかり償ってもらわないとね」
400 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:24:17.84 ID:7iMNu1YO0
ことり「…私も、助けてもらった命をふいにはしたくない」

果南「……でも、絵里は乱暴な命の使い方をしたら怒ると思うよ」

ことり「…そうだね、怒るね」

果南「あははっ本人も命の使い方は結構乱暴だっていうのに、人の事になると急に厳しくなるのがホント絵里って感じ」

果南「…でもさ…今回、ことりは何のために戦うの?」

ことり「何の為?」

果南「絵里や善子はこのアンドロイド差別を無くす為に戦ってるけど、私は違う」

果南「言ったよね、私は戦うの好きだから戦うって。だから私は戦争を起こす気でいる絵里についていったと同時に、千歌の仇討ちをしようとしてるだけ」

果南「ことりは何の為に戦うの?命を助けてもらったといってもそこで恩を返す義務はないよ」

ことり「……そうだね、なんで私は戦うんだろう」

果南「…どういうこと?」

ことり「私自身もよく分からない、でも理由はなんとなく松浦果南と同じかも」


ことり「絵里ちゃんについていこうかなって、そう思っただけかもしれない」


果南「…そっか、じゃあ私が絵里についていってるのは別に珍しいことじゃないんだね」
401 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:25:43.02 ID:7iMNu1YO0
ことり「…うん、危なっかしいところあるしほっとけない存在なんだと思う」

果南「……そうなのかな」

ことり「そうだよ」

果南「…そっか」



絵里「花丸さん、それ何?」

花丸「これですか?」

絵里「そうそう」

花丸「これはかよさんのライブのチケットずら!ようやくチケットが取れたから是非この日は行きたいって思ってて…」

曜「あぁ知ってる、今話題のアイドルだよね!可愛らしい歌声は私もとっても好き!」

善子「かよさんってあの千歌が言ってた人のこと?」
402 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:27:59.01 ID:7iMNu1YO0
絵里「かよ……はなよ…」


花陽『だからまた今度、お会いした時はもっといっぱいお話しましょう♪』


絵里(あの人もすごい人なんだなって思う、こんな退廃的都市を彩る歌声とその煌きは威力そのものは無いけれど心を揺さぶる波状攻撃として今も広がり続けている)

絵里(今、花陽さんは何をしているのだろうか。あの時会ってから今に至るまで、花陽さんは立ち位置があやふやでイマイチ考えてることがよく分からない不思議な人だった)

絵里(ただ分かるのは、アイドルってだけ。なのになんであの人は私を助けたんだろうか)

曜「じゃあ行けるといいね、かよちゃんのライブに」

花丸「はいずら!」
403 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:31:21.48 ID:7iMNu1YO0
〜???

「おーい、おーいってばー!」

絵里「…ん、誰?」

凛「凛だよー星空凛」

絵里「…!?なんであなたがいるの!?」

凛「ん?なんでってどういうこと?」

絵里「だって死んだんじゃ…!」

凛「あははっ勝手に殺さないでよ」

絵里「え、え…?」

絵里(目が覚めれば外は暗く周りを見ればそこは真姫の別荘の寝室だった、そして隣を見れば死んだはずの凛がニッコリ笑顔で座ってた)
404 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/29(日) 22:33:06.57 ID:7iMNu1YO0
絵里「…なんであなたはここにいるの?」

凛「んー?なんでだろう、凛もよく分からないや」

絵里「…私とあなたは敵でしょう?」

凛「んーどうしてだろう、もう敵じゃない気がするんだよね」

絵里「…意味が分からないんだけど」

凛「こう…気持ちの問題なのかな!しかもほらっ今の凛は武器も何も持ってないし」

絵里「…じゃああなたは何でここに来たの?」

凛「だから言ってるじゃん、よく分からないって」

絵里「はぁ?」

絵里(戦う気はないみたいだけど、その分返す答えも理解させてくれないくらいに適当なものだった)

絵里(それに今思えば曜や果南はどこに行ったんだろう、曜と果南は私と一緒に寝てたはずなのに何故か今は姿が見えなかった)
405 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:34:21.57 ID:7iMNu1YO0
絵里「果南と曜はどこ?」

凛「知らないよ、凛はここにいるだけだもん」

絵里「いや意味分からないわよ…」

絵里「…とりあえず来て、リビングに行くわよ」

ギュッ

凛「…ダメ」

絵里「え?どうして?」

凛「…いや、よく分からないけどその扉は開けちゃダメな気がして」

絵里「何よそれ、とりあえず開けるわね?」

凛「…っだめ、やっぱりダメ」

絵里「どうしてよ、ここは安全よ?」

凛「そういう問題じゃない、凛もこう…なんて説明すればいいか分からないけどとにかくダメ!」

絵里「じゃあどうしろっていうのよ?このまま疑問を残して寝室にいるのは私いやだわ」

凛「…で、でも」

絵里「大丈夫だから、みんな優しいから仲良くしてくれるわ」
406 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:35:36.95 ID:7iMNu1YO0

ガチャッ


バリバリバリ!


絵里「っ!?」

絵里(暗い部屋の暗い扉を開ければその先から飛んでくる聞きなれた銃声と数えきれないほどの弾丸に心臓が止まりそうなほどに驚いた)

絵里「くっ…!」シュッ

絵里(幸いにも横へ跳躍すれば廊下から見て死角へと移れる、だからダメージは無かったけど安心したのも束の間、私は死を悟った)


絵里「…凛?」


絵里(…直立不動の凛に呼びかけた、けど何も返事は無かった)

凛「…ぁ」

バタッ


絵里「! 凛!」タッ


絵里(……そう、凛の死を悟った。膝から倒れる凛を抱きかかえると私のお腹に伝ってくる大量の血は焼けてしまいそうなほどに熱かった)
407 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:36:44.08 ID:7iMNu1YO0


絵里「ッ!? わぁあああっ!?」


絵里(そうして凛から離れて凛のお腹を見れば、服越しだろうとすぐ分かるほど無惨に貫かれたお腹の穴が私の恐怖を煽った)

絵里(お腹の穴からぽろっと出てくるほっそい弾丸は吐き気を催し、このお腹に空いた無数の穴とその死体はとてもじゃないけど見てたものじゃなかった)

絵里「うっ…ぷっ……」


スクッ


絵里「!」

絵里(お腹から沸き上がってくるものを抑えようとしてると後ろから聞こえる服と銃が擦れる音)


絵里「あなた…あッ!?」


絵里(振り返ればもうすぐそばにまで近づいたマチェットを持ったもう一人の私がいた)

絵里(この距離からして避けるのはほぼ不可能で、私は死あるのみだった)
408 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:38:26.31 ID:7iMNu1YO0
絵里「ぁ…!」

絵里(振り返ってそして死に際に、目に光を通していないであろう濁った瞳に理解などとうに無さそうな気味の悪い無表情、私だけど私じゃないそんな姿をしたこのもう一人を見たら出る言葉も凍ってしまうでしょう?)


絵里(私の最期は、あまりにもホラーで最悪な最期だった)



絵里「わああああああぁぁぁぁあぁあぁああ!?」バサッ



曜「うわぁ!?何々!?」バサッ

果南「何っ!?敵!?」シュッ

絵里「はぁ…はぁ…はぁ……」

果南「ど、どうしたのさ絵里…」

絵里「ご、ごめん起こしちゃったかしら…」

曜「う、うん…それよりどうしたの?」

絵里「…夢…?を見たのかしら…?」

果南「なんで疑問形?」

絵里「いや…ごめんなさい。多分夢現なんだと思うわ、ちょっと冷静になれないかも…」

絵里(叫べばそこはあの時と同じ寝室、横には果南も曜もいるし多分ここが現実であの凛のいた世界が夢なんだと思う)
409 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:39:12.30 ID:7iMNu1YO0
曜「それで何を見たの?」

絵里「それは……」

絵里「………」

絵里(喋ることに何が邪魔をしたのかしら、意識することもない頭のどこかでくだらないことって思ってしまったのかしら)

絵里(いくら内容が奇妙とはいえたかが夢、現実とはかけ離れた空想の世界の話をさも現実かのように語るのは確かにくだらないしバカバカしい)

絵里(だからこの口から、その夢が出ることは無かった)

果南「…?何?何を見たの?」

絵里「……いや、なんでもない」

曜「えぇ…あんな叫び声まで出してそれはないよ絵里さん…」

果南「そうだよ!」
410 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:39:39.82 ID:7iMNu1YO0
絵里「…でもたかが夢でしょ?別になんでもない話じゃない」

果南「そういう問題じゃないよ、私はただ単純に絵里の夢の話が聞きたいだけ」

曜「そうそう、私も同じ」

絵里「………」

絵里(それを言うのをくだらないと私は思っているのに……しかもあの夢をどう説明すればいい?)

絵里(短い時間だったけど話せばきっと長くなる、あんな僅かな時間でどれだけの情報が交差としたというのかしら。あの夢に追及をしても何も無いと私は思う)

絵里(だから私はただの悪夢で終わらせることにした)




果南「ぶー……」

曜「んー……」


善子「…何?あれは」

ことり「いや、私は何も…」

花丸「何かあったんですか?」

絵里「あはは…私が原因かしら…」
411 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:40:32.15 ID:7iMNu1YO0
善子「何やったの?」

絵里「いや…ちょっとね…」

善子「…?」

果南「あー!モヤモヤする!絵里!いい加減教えてよ!」

絵里「いやだから何でもないって…」

曜「その一点張りが私たちのモヤモヤを加速させるの!」

ことり「え、え?意味が分からないんだけど…」

善子「誰か堕天使ヨハネに説明をよこしたまえ…!」

果南「絵里が昨日見た夢を教えてくれないんだよ」

ことり「昨日見た夢?どうして急にそんな」

曜「絵里さん、悲鳴をあげて起き上がったんだよ。それで私も果南ちゃんも起きちゃって」

果南「そうそう、なのに夢の内容を教えてくれないんだよ!?」
412 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:41:11.18 ID:7iMNu1YO0


善子「…くだらな」


果南「くない!夜中に突然悲鳴をあげて起き上がるなんてどんな夢を見たか気になるでしょ!?」

曜「そうだ!心を持つ者の性だよこれは!」

ことり「そこまで大げさに言う?」

花丸「でも確かに気になるところもあるずら」

曜「もちろんだよ!」

ことり「絵里ちゃんはどうしてそこまで口を割らないの?ここまで引っ張るんだったら言ってあげればいいじゃん」

絵里「いや…別に……」

ことり「んー…?」

善子「言いたくない理由があるのよ、察しさない」

果南「知らないモノがあるのなら知りたくなるのは普通でしょ?つまりはそういうことなんだよ」

善子「だからそこは相手の気持ちを尊重しなさいよ…」

曜「んー…どっちもどっちだね」
413 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:42:12.30 ID:7iMNu1YO0
ことり「…まぁ絵里ちゃんも訳ありみたいだし我慢した方がいいんじゃない?」

果南「むー……」

曜「…まぁいいよ、そうだね。相手の気持ちも尊重しないとだよね」

絵里「え、ええごめんなさいね」

曜「いいよ、でも言ってくれる時があったら言ってね!」

絵里「ええもちろんよ」

果南「……仕方ないね、言うことは曜と同じ。言ってくれる時があったら言ってね?」

絵里「ええ」

絵里(次の日の朝、機嫌を悪くして起きる二人だったけどなんとか腹をくくってくれたみたいで助かったわ)

絵里(その後は朝ごはんを作って食べるのだけど、ことりも果南もだいぶ動けるようになったみたいでことりは自ら料理に参加するし果南は皿を運んでくれたりで戦線の復帰も見込めそうだった)
414 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:43:54.75 ID:7iMNu1YO0


ことかな「おぉ〜!」


善子「…何してんの?」

果南「漫画を見てるんだよ、善子も見る?」

善子「いや…なんか表紙からして絶対私に合ってないやつだからいい」

曜「表紙?あぁあれは恋愛モノだね」

花丸「恋愛モノならいいと思いますけど…」

絵里「善子はバトルモノが好きなのよ」

花丸「そうなんですか」

ことり「この漫画ヒロインが複数いるからドキドキしちゃって…」

果南「ことりも戦いじゃ鬼みたいな顔してるけどなんだかんだ乙女だよね」クスクス


ことり「あ?」


果南「鬼だ…」

曜「あははは……にしてもここの書物はすごいよね、私もちらっと覗いたけど図書館じゃんあれ」

花丸「あれは学校の図書室より大きかったずら…」
415 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:47:32.29 ID:7iMNu1YO0
絵里「ここの別荘は山奥だから山奥でも楽しめるようにって真姫が本を蓄えた場所なの、その分家の面積も増えたしある意味で言えば真姫の図書館、或いは図書室かもね」

曜「へぇ…真姫さんってすごいんだね…」

花丸「真姫さんってそんなすごい人だったんですか…」

絵里「ええ、超お金持ちよ」

善子「そして絵里のパートナーよ」

絵里「あはは…どうかしらね…」

曜「ん?どっち?」

絵里「私も真姫もそのつもりはないけど、そう呼ばれてるだけなのよ」

善子「授業と短い休み時間以外はほぼ全部の時間一緒にいるからね」

ことり「なんで?」

絵里「んー…まぁ昔色々あってね」

果南「はい始まったよ、絵里の適当誤魔化し芸」

絵里「何よそれ…」

果南「絵里は人に言えないことがありすぎるんだよ、抱えないで言ってよ?私たち親友でしょ?」

絵里「んーまぁ確かに否定は出来ないけど…いいの、これは胸の内にしまっておきたいから」

果南「えー…」
416 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:49:25.52 ID:7iMNu1YO0
ことり「…なんか思ってた以上に複雑そうだね、絵里ちゃんの過去って」

絵里「まぁ色々あるのよ」

花丸「ずらっ」

果南「んあー!もう!なんか隠してることがあるって分かるとモヤモヤが止まらない!ちょっと射撃場で乱射してくる!」タッタッタッ

曜「あ、ちょっと弾撃ち過ぎないでね?いくらここに貯蓄されてるとはいえ有限なんだから」

果南「分かってるー!」

ことり「じゃあ私外でちょっと体を動かしてくるよ」

善子「体を動かす?」

ことり「私は中国武術の心得があるから、型通りに技を繰り出したりで体を慣らすんだよ」

曜「そうだよね、初めて見た時からキレッキレの身のこなしに惚れ惚れしちゃったけどやっぱり中国武術だよねあれは」

ことり「そうだよ」

花丸「ことりさんの近接戦法は希ちゃんもマークしてて、あそこまで丁寧で綺麗な動きが出来るアンドロイド、ましてや人間でさえ見たことがないってすごい嬉しそうに言ってたのを覚えてるずら」

花丸「でも不思議ずら、どうして中国武術なの?」

絵里「そういえばそうね」

善子「確かにね、近接といえば私や絵里みたいな特に特化したものがなくて、ナイフでも持たない限り近接だけじゃ相手を殺めることのないCQCが基本なんだけどことりのそれは少し違うわね」
417 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:50:42.59 ID:7iMNu1YO0
ことり「私、力がないから柔道みたいな投げたり固めたりみたいな近接は全然扱えなくてましてや絵里ちゃんや善子ちゃんみたいなシンプルなのも私には厳しかった」

絵里「えっ……」

絵里(ことりの飛び膝蹴りをもろに受けた私には力がないとか厳しいとか言われても正直困惑した)

ことり「だから中国武術っていう工夫されたモノを心得たんだよ、特定の構えをすることで力が手に集中して、仮にそれが胸にでも当たれば心臓を止めることも出来る殺人拳法へと変わるの」

曜「へー…恐ろしいねそれは」

絵里「ええ…そんな食らわなくてよかったわ…」

ことり「…まぁそんなところだよ」

花丸「そっか、理解したずら」

ことり「じゃあ私は行くね」

曜「あ、じゃあ私もことりちゃんのところ行ってもいいかな?ことりちゃんの公式の型が見れるのなら見に行かないわけがないからね!」

ことり「いいけど邪魔しないでね?」

曜「了解であります!」ビシッ
418 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:51:22.48 ID:7iMNu1YO0

スタスタスタ

絵里「…行っちゃった」

善子「まぁ動けるようになった果南とことりは動きたいでしょうに」

花丸「あ、じゃあマルはあの本がいっぱいの部屋に行ってきてもいいですか?もしかしたら面白い本が見つかるかもしれないので…」

絵里「ええ、行ってらっしゃい」

花丸「はいずらっ!」

スタスタスタ

善子「……みんなやりたいことがあるのね」

絵里「…善子はないの?」

善子「驚くほどにないわね」
419 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:52:28.87 ID:7iMNu1YO0
絵里「ゲームは?」

善子「一人でやっても面白くないわ」

絵里「漫画は?」

善子「見たいのがない」

絵里「リハビリは?」

善子「横っ腹撃たれただけの私にリハビリもクソもないわよ」

絵里「………」

善子「はぁ…暇ね」

絵里「私たちがレジスタンスである以上は娯楽にも行けないしね」

善子「堕天使になって空を飛びたいわ…」

絵里「堕天使は飛べないんじゃないの?」

善子「そんな決まりはどこにもないわ」

絵里「…そうね」

絵里(蒸し暑い夏の朝、クーラーのかかった部屋で二人ソファでだらけるだけだった)
420 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:53:06.85 ID:7iMNu1YO0
善子「……羨ましいわ」

絵里「何がよ?」

善子「あの鳥よ」

絵里「青いわね、あの鳥」

善子「幸せを運んでくれてるのかしら」

絵里「そうだといいけど」

善子「…あの鳥のように自由に未来を羽ばたきたいわ」

絵里「……それは誰しも望むことよ、そして誰しもが諦める届かない存在」

絵里「前を向いた者は現実に押しつぶされて、後ろを向いた者は潔く夢を捨て去るのよ。そうやってこの都市のアンドロイドたちは記憶を失ってきた」

絵里「それはもはや理想郷ですらない、残された選択がNOかいいえかの違いなだけ」


絵里「…そうと分かってる私たちは一秒でも早くそこにはいかYESの選択を創らなきゃいけないのよ」


善子「…ええ、その通りね」
421 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:54:08.43 ID:7iMNu1YO0
絵里「………」

善子「………」


ミンミンミンミンミン ジリジリジリジリ


絵里(蝉が沈黙を嫌って辺りを漂う何とも言えない空気に唄を混ぜ始めた。元はといえば始める気の無かったこの戦争も、何故か今では自分から始めた気になってしまっているくらいに心が戦いで沁み渡っていた)


絵里(造られた命は果たして命であったのか)


絵里(きっと世の中がもっと平等であったら私もこんなこと思わずに済んだのに、どうして私はこんなことを考えてるのかしら)

絵里「………」

絵里(鞠莉————どうしてあなたは私たちを生んだの?私という心を持った存在を創れたというのならあなたにも私たちを見下す意味があるのでしょう?)

絵里(…分からないわね、鞠莉の考えてることが)


絵里(…いや、鞠莉の全てが分からない)

422 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:00:47.08 ID:7iMNu1YO0
善子「…まだ気にしてるの?」

絵里「何の話?」

善子「とぼけないでよ、真姫のことよ」

絵里「…お互い様でしょ」

善子「ルビィは……仕方ないじゃない、真姫とは訳が違うんだから」

絵里「…そうね、真姫がルビィと同じであったらきっと私も善子と同じだったと思う」

絵里(ルビィと真姫は違って、私と善子もまた違う存在だった。そしてそれはAかBかの平等的な違いではなくて1か10かの優劣のある違いだった)

善子「…絵里は真姫に何をした?」

絵里「命を助けたわ」

善子「…そう、だけど真姫にとってはそれ以上の事がいくつもあった」

善子「絵里が気にしてるのは、五年前のことでしょ?」

絵里「…ええ」
423 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:03:50.22 ID:7iMNu1YO0
善子「……アンドロイドには理解出来ない心よね」


善子「恋心って」


絵里「…ちょっと違うかしら、理解出来ないんじゃないわ、私たちはそもそも恋愛というモノを知らないの」

絵里「恋愛をしたことがないから恋愛がどういうモノか学習が出来ない、恋愛が見て学べるモノであるなら私たちは恋愛を知ってるはずだし、恋愛っていうのはきっと複雑なモノなんだと思う」

絵里「……だからこそ、あの時はこう返すしかなかったでしょ?」



絵里「私は真姫に興味がない、と」



善子「……うん、間違ってない。けど、言い方は間違ってる」

絵里「…それは今なら私でも思う、だから気にしてるのよ」

善子「気負う必要はないと思うわ、私たちは恋愛というモノを知らないんだもの。真姫に対して好きという感情が無ければ興味も沸くはずがない」
424 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:05:56.48 ID:7iMNu1YO0
絵里「……昔、小説で読んだわ。恋愛とは異なる性を持った者がし合う愛情表現の連なりと」

絵里「私と真姫は異なる性を持ってたのかしら?」

善子「……残念だけど同じ性ね、だって絵里は女なんだから」

絵里「…そうよね、私もそう思う」

善子「だからそういう視点から見ても絵里のその言葉は正しかった、女が女を好きになるのはもしかしたらあり得ないことではないのかもしれない」

善子「けど少なくとも男女がやるべき行為であるのは確かなはず、それはバトル漫画を見てる時に学んだから」

絵里「…ことりや果南が見てた恋愛モノも表紙は確か男女だったしね」

善子「ええ」

絵里「それから真姫、だいぶ控えめになったなって感じるの」

絵里「滅多に感情的にならないしいつも冷静でクールになったわ、それは劇的に変わったって程でもないけど変わったことを違和として感じることが出来るくらいには変わった」

絵里「だからもしかしたら…いやもしかしたらでもなく今でもあの時の事気にしてるんじゃないかしらって真姫と私の過去を問われると思うの」

絵里「私としては封印したい記憶だけど、それを封印したら真姫に失礼な気がしてね」

善子「…多分今でも気にしてると思うわ、だって過去は絶対に消えないモノなんだから」

絵里「…ええ、そうよね」
425 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:07:41.92 ID:7iMNu1YO0
絵里「………」

善子「………」


カタッ


絵里「!」

花丸「ずらっ…ごめんなさい、なんか重い話で入りづらくてどうしようって思って…」

絵里「そ、そう…ごめんなさいね、こんな話をしてて」

花丸「い、いえ…」

絵里「どうしてここ?真姫の図書室に行ったんじゃないの?」

花丸「あ、はい。行ったんですけどあそこで本を読むには少し暑すぎて…だからここで読もうかと思って…」

絵里「あぁなるほど…クーラーあるから勝手につけてもよかったのに」

花丸「い、いえマルにもちゃんと礼儀ってモノがありますから」

絵里「そ、そう」
426 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:08:27.65 ID:7iMNu1YO0
善子「…聞いたのよね?」

花丸「え?」

善子「絵里と真姫の過去のこと、聞いたのよね?」

花丸「えっ…あ、は、はい……」

絵里「…気にしないでね?でも、誰にも言わないであげて?」

花丸「も、もちろんずら!」

善子「いや、この際聞かれたことに関してはどうでもいいわ。私が花丸さんに言いたいのはただ一つ」


善子「同性に告白をする真姫をどう思うか、それよ」


善子「私たちはアンドロイド、でも花丸さんは人間よ」

善子「だから人間としての意見が聞きたい」

絵里「ちょ、ちょっと善子…」

花丸「い、いえ絵里さん、答えさせてください」

絵里「え、いいの?」

花丸「はいっ」
427 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:12:15.51 ID:7iMNu1YO0
善子「………」

花丸「マルは…別に良いと思う……ずら」

花丸「せつ菜ちゃんもこういう漫画は大好きだったし、真姫さんは間違ったことをしてるわけではないと思います」

花丸「だけど、珍しくて一般的に受け入れ難いモノであるのもまた事実」


花丸「女が女を好きになるというイレギュラーを弁えて絵里さんに告白した真姫さんは、振られたことで今までにないダメージを負った」


花丸「人間もアンドロイドと同じで学習する生き物だからその時の真姫さんはきっと初めて失恋を体験した」

花丸「だからどうやったってもその時の記憶を消すのは無理…だけど、絵里さんのしてることは間違ってはないずら」

花丸「好きでもない人に好きっていう行為こそ恋愛への冒涜だし、きっと絵里さんはそこで恋愛を知ることで狂うモノがいくつもあったと思うから…」

花丸「マルは…絵里さんのファンクラブの存在も知ってたからそのままの絵里さんでいてほしいずら」

花丸「あの希ちゃんでさえ…絵里さんの事を色々気にかけてたくらいなんだからそのカッコよさは維持するべきモノだと思う」

絵里「…そう、ありがとう」

花丸「このくらい全然ずら!」

絵里「……やっぱり真姫は気にしてるのね」

花丸「…はい、それはもう確実に」

絵里「…そう」
428 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:16:09.71 ID:7iMNu1YO0
善子「……何かしようと思ってる?」

絵里「いや、そういうことは考えてない」

絵里「ただ…曜と戦って帰ってきた時に電話で泣いてくれた時は嬉しかったなって……」

善子「嬉しい?」

絵里「さっきもいったけど、真姫は滅多に感情的にならないからそんな真姫が私の為に涙まで流してくれて嬉しくて…」

花丸「…素敵なことだと思う、真姫さんは昔の事を気にしながらも今の絵里さんの事を真摯に受け止めて真っ直ぐに立ち向かおうとしてる証拠ずら」

絵里「…なら、いいんだけどね」

花丸「きっと…ううん、もう確実にそうずら!」

絵里「……ふふふっありがとう」

花丸「えへへ…」

絵里(私と真姫の過去は複雑なモノだった)

絵里(五年前に突然告白をされて、私は少し考えてからあのような発言をして真姫を振った)

絵里(当時から今に至るまで恋愛というモノがよく分からなかったけど、私の稚拙な知識と考えでも同性である相手から告白をされるというのは何かがおかしいというのは分かっていた)

絵里(それにきっと告白っていうのはデリケートな問題なんだと思う、もしそうでないのならわざわざ人気のない帰り道なんて貧相でつまらない場所を告白の場所にするはずがない)

絵里(だからこれは真姫と私の問題だと思って胸の内に秘めておいた。最も善子には知られちゃったけどね)

絵里(でも、そんな過去を解き放てば花丸さんが答えに等しいモノをくれた。それを聞いて今まで頭にあったモヤモヤが消えた、そして気が楽になった)


絵里(だからもっと真姫の事を大切にしなきゃ、そう思うばかりだった)

429 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:24:14.97 ID:7iMNu1YO0
〜???

鞠莉「……とうとう動き出しちゃったのね、政府が」

海未「この際私たちは他のアンドロイドには目もくれずに絢瀬絵里たちを全力で殺しに行きます、いいですか?」

鞠莉「別に構わないわ」

鞠莉「いつかこうして大きな力を持ったアンドロイドたちが結託して反乱を起こすとは思ってたけど、案外早いものね」

海未「AIというものは常に人間の理解の範囲を超えている未知の存在です、人工的とはいえ心というモノを創れたのならそれはもはや天然と瓜二つの人の心なのです」

海未「アンドロイドがあなたの事を不服に思うのなら反乱を起こしても不思議ではないでしょう」

鞠莉「…ええ、そうね」
430 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:27:19.98 ID:7iMNu1YO0
鞠莉「ねえ、海未に聞きたいことがあるの」

海未「なんですか?」

鞠莉「希が死んだらしいけど、希の下にいた穂乃果とせつ菜を知らない?」

海未「知りませんけどおそらくは絢瀬絵里のところにいるでしょう」

海未「というか希をご存じで?」

鞠莉「ええ、だって希はアンドロイド制作においてアンドロイドの心を創った人なのよ?そりゃあ知ってるわよ」

海未「こ、心!?そんな人だったのですか!?」

鞠莉「希は心が広くて寛容だったわ、だからほぼ全てのアンドロイドの性格を優しく作った。だけどそこで勝手に生まれたのが猜疑心と敵愾心だった」

鞠莉「元々ね、私や希が当初作ったアンドロイドは平和を望むアンドロイドだったのよ。戦いは好きじゃないし運動神経もほとんどない臆病なアンドロイド、だけど優しくて人一倍感受性に長けた寛容なアンドロイド」


鞠莉「でも、結果は違った」


鞠莉「私から見てアンドロイドは人間と全く同じだけど、されどアンドロイドは造られた命。機械仕掛けのその体と心は勝手に進化を遂げて新たな感情を作り出した」

鞠莉「AIというアンドロイドなら誰しもが持ってるその心で自ら運動神経を作り上げて、気に入らない相手に対抗する手段を作り上げた」

鞠莉「ねぇ、なんで対アンドロイド特殊部隊が女しかいないか分かる?」

海未「…分かりませんね」
431 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/29(日) 23:30:51.94 ID:7iMNu1YO0
鞠莉「アンドロイドは頭が良すぎるのよ、何を見て学んだのかは知らないけどもう処分されてる初期型の獰猛なアンドロイドはハニートラップってやつで戦闘慣れした男共を何百人と殺害してったの」

海未「…!なるほどだから…!」

鞠莉「そう、だから対アンドロイド特殊部隊は女しかいないの」

鞠莉「…それからアンドロイドは私の意図しなかった方向へ発展していった」

海未「………」

鞠莉「ごめんなさい、話が逸れたわね」

海未「い、いえ」

鞠莉「話を戻すけど、穂乃果とせつ菜はいくら戦闘の鬼とはいえ腐っても業務用アンドロイドよ、それは主がいないと生きていけないアンドロイド」

鞠莉「しかしあの二人は全アンドロイドの中でもかなりプライドが高いアンドロイドよ、主が死んで、そう易々と主をとっかえるほどあの二人は薄情じゃないわ」

鞠莉「……だからあの二人は今フリーである可能性が高い」


鞠莉「私から提案するなら、今はそっちをspotした方が後々有利に立ち回れるかもしれないわ」


海未「ふむ…なるほど、分かりました。少し検討してみます」

432 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:32:35.99 ID:7iMNu1YO0
鞠莉「ええ、よろしくね」

海未「はい、では私はこれで」

ガチャッ


ドンッ!


鞠莉「……Fuck you」


鞠莉「…私はこんな結末を望んでアンドロイドを作ったわけじゃないのに」


鞠莉「………なんで死んだのよ」


鞠莉「希……」

433 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:39:17.91 ID:7iMNu1YO0
〜???

ツバサ「はーあっ疲れちゃった、あの殺し屋三人を殺そうかと思ったのにとんだ邪魔が入っちゃったわよ」

英玲奈「まったくだ、おまけに傷まで負わされて最悪だな」

ツバサ「あなたはいいわよねぇスナイパーだから遠くでチクチクやってるだけでいいんだから」


「いやいやそんな言い方はないと思うけどぉ」


英玲奈「よせっツバサ、あんじゅ、スナイパーの強みはアサルトライフルやマークスマンライフルでも対応の難しい距離から一方的に撃てることだ、むしろ傷を受けてないのは当然だ」

ツバサ「そんなの知ってるわよ、ただムカつくのよね」

あんじゅ「私が?」

ツバサ「違う、あの黒髪と青髪の女よ」

英玲奈「確か一人はダイヤ、と言っていたな」

あんじゅ「あぁあの清楚っぽい人?動きが特徴的よねー動くっていうよりかは舞ってると言った方がいいのかも」
434 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:41:05.04 ID:7iMNu1YO0
あんじゅ「…ってその二人がムカついてなんで私に当たるの?」

ツバサ「……ムカつくから」

あんじゅ「答えになってない…」

英玲奈「あのまま戦ってたら共倒れだったかもな、幸いにももう一つの戦場で大きな変化があったようで私たちはフリーになったから逃げさせてもらったが…」

ツバサ「私たちもあの殺し屋と結託して黒髪と青髪を殺した方がよかったかしら」

英玲奈「…合理的に考えるのでいえばそうかもしれないが、後々の事を考えるとそれは悪手だな」

あんじゅ「まぁ今更何言ったって変わるわけじゃないんだし次の事でも考えたら?」

ツバサ「……ええそうね、あの殺し屋はいずれ殺すとして他にも目的があるのよね。忘れてたわ」

英玲奈「おいおい…」

ツバサ「いいわ、この際私たちのやるべきことにあの黒髪と青髪へのお返しも兼ねましょうか」


バンッ!


英玲奈「…おい、その銃で花瓶を割るな。水も垂れてるし花が可哀想だろう」

ツバサ「はっむしり取られた花に可哀想もクソもないわよ、地から離れた時点で死んだも同然なんだから」

英玲奈「………」


ツバサ「次会った時があなたの最期よ」


ツバサ「……待ってなさい」ニタァ…
435 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:42:47.62 ID:7iMNu1YO0
〜深夜、別荘

ピコンッ♪ピコンッ♪

絵里「……ん」

絵里「誰…?」

絵里(深夜、それは突然として誰かからメールが送られてきた)

絵里「……! 亜里沙…!」

絵里(そしてそのメールの送り主は私の妹である亜里沙だった)

『お姉ちゃん、元気ですか?

お姉ちゃんの事情は分かっています、亜里沙は一人でも大丈夫だから余裕が出来た時に連絡ください。
何かお姉ちゃんの力になれることがあると思います』

絵里「亜里沙……」

絵里(流石は私の妹と言いたい)

絵里(あんな純粋無垢な子がこんな真面目な事を言ってくるのだから世の中怖いモノが減らないのよ、ここまで頼りになる妹を持って私が誇りに思う)

絵里「………」

ピッ

絵里(ただ、頼り甲斐があっても頼るとは言っていない)

絵里(亜里沙を危険な目にあわせるわけにはいかない、亜里沙は平和に暮らすべきなの。まだ戦いの味も知らない純白のままでいてほしいの)

絵里(だから私は静かにデバイスの電源を落とした)
436 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:43:27.26 ID:7iMNu1YO0


果南「メール、返さないの?」


絵里「っ!?って果南か…脅かさないでよ…」

果南「ごめんごめん、ガサガサ音が聞こえたもので」

絵里「どんだけ音に敏感なのよ…」

果南「あははっ寝込みに襲われるっていうのは王道パターンだからなんか警戒が解けなくて」

絵里「何よそれ…」

果南「そんなことより返信しないの?」

絵里「え、ええ亜里沙には心配かけれないわ」

果南「メールを送らないことでもっと心配するかもよ?」

絵里「危険な目にあわせるよりかはマシよ、言っとくけど亜里沙は戦闘型アンドロイドなのに一回も戦ったことがないんだからね」

果南「あははっ珍しいよね、戦闘型アンドロイドなのに」

絵里「ええホントよ、血の味も知らない子なんだからずっとこのまま純粋な子でいてほしいの」

果南「んーまぁ綺麗なら綺麗のままでいてほしいのは分かるよ」

絵里「でしょう?」

果南「まぁね」
437 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:45:14.74 ID:7iMNu1YO0


ドカッ


果南「痛っ…」

善子「んー…だからヨハネだって……zzz」

果南「善子か…酷い寝相だね…」

絵里「今日は珍しくみんな一緒に寝てるからやっぱり狭いわね…」

果南「まぁね、親睦を深めるとかどうのだけど私はいっつもこうでいいんだけどなー」

絵里「それは流石に狭くて寝苦しいんじゃない?」

果南「くっつけば大丈夫!」

絵里「…夏なのに?」

果南「大丈夫!」ピース

絵里「…そういえば善子がみんなと寝たがらないのって……」

果南「…寝相が悪いから、なのかもね」クスクス

絵里「ふふふっ可愛らしいわね」クスッ
438 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:46:14.22 ID:7iMNu1YO0


曜「くかー…zzz」

ことり「すぅ……zzz」


絵里「曜はこう…場所を取る寝方をしてるわよね」

果南「大体大の字で寝てるからね、起きる時はいつも私のお腹か背中に曜の手が乗ってるよ」

絵里「ふふふっいいじゃない」

果南「まぁね」

絵里「ことりは見た目通り寝てる時もキュートよね」

果南「あははっ枕なんて抱いちゃってこのこのっ」ツンツン

ことり「んんー…殺してやるー……zzz」

果南「……あはは…ことりらしい寝言だね」

絵里「いやいやどんな寝言よ……」
439 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:47:16.60 ID:7iMNu1YO0


花丸「ずらー…zzz」


絵里「花丸さんはすごいらしさがあるわよね、こじんまりとしてて」

果南「んーどうなんだろう、私はこの子のことよく知らないから何とも言えないかな」

絵里「そっか、そうよね。花丸さんと果南はほぼ初対面みたいなものだもんね」

果南「そうそう。あ、でも銃が撃てないってのは知ってるよ、それは前に聞いた」

絵里「ええ、花丸さんは銃が撃てないらしいの」

果南「へーなんでだろ?」

絵里「うーん…過去に何かあったんじゃない?」

果南「んーまぁそんなところか」

絵里「でも、過去の詮索はやめてあげて?ここの人たちの過去は語り継ぐものではないから」

果南「分かってるよ、それ私は興味がある人しかそういうことしないし」

絵里「…興味のある人って例えば誰よ?」

果南「絵里に決まってるじゃん、むしろ絵里しかいないよ」
440 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:49:16.86 ID:7iMNu1YO0
絵里「…なんで私?」

果南「あははっ昔っからいるのに謎なところが多いし、どこからともなく発生する自信や強さの源が知りたくてね」

絵里「そんなの私でも知らないわよ?」

果南「だからこそ第三者である私が客観的に見る必要があるんだよ」ジロジロ

絵里「…やっなんか恥ずかしいから見ないで」

果南「なんで!?」

絵里「ぷっふふふ…ごめんなさいね」

絵里(今もどこかで何かが動いてるかもしれない、そんな変わりゆく戦場で私たちは真姫の別荘で平和に今を過ごしていた)

絵里(戦争は終わりなき季節、その中で私は暑い夏を過ごしている。外の世界で何が起ころうともまずは羽休めをするしかなかった)

絵里(今、亜里沙はどうしてるのだろう。今、私が殺めてしまった天国にいる凛はどうしているのだろう)

絵里「……今、何をしているのかしら」


絵里(…みんなは)

441 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:51:16.51 ID:7iMNu1YO0
〜三日後、夜

にこ「はぁ?私を主にしたい?」

せつ菜「はい、私たちはにこさんを主にしたいんです」

穂乃果「………」

にこ「はっ無理ね、私は希とは違ってあんたらを部下に迎え入れるほどの余裕と器がないの」

せつ菜「それでもいいんです!何もしなくても私たちの主っていう権利とにこさんからの導があればいいんです!」

にこ「冗談言わないで、私には妹のちびたちだけでも精一杯よ」

せつ菜「そんな……」

穂乃果「………」


カチャッ


にこ「…なんで私に銃を向ける?」

穂乃果「やっぱり人間は愚かだね、希ちゃんとせつ菜ちゃんと花丸ちゃん以外は信用するに値しないよ」

穂乃果「私は最初からあなたを主にしたいとは思ってなかった、だから変な期待しないでよかったよ」

にこ「なら私は変な期待されなくてよかったわ」
442 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:55:53.58 ID:7iMNu1YO0
せつ菜「ちょ、ちょっと待ってください、にこさんは良い人じゃないですか!」

穂乃果「良い人なのは分かるよ、でもそれで?」

せつ菜「そ、それでって…」

穂乃果「確かに業務用アンドロイドは主がいないとやっていけない、けど主をすぐに入れ替えるほど私たちは薄情じゃないし見ず知らず他人を主にするほど能無しじゃない」

穂乃果「例え昔希ちゃんと一緒に戦ってたと言われる仲間だとしても理由がないんじゃ私は受け入れられない」

せつ菜「……でも」

にこ「やめときなさい、あんたらは二人で一人なんでしょ?私が原因で仲違いするならおとなしく引き下がって新しい主を見つけなさい」

せつ菜「で、でも新しい主なんて……」

にこ「…思ったんだけど絢瀬絵里じゃダメなの?絵里は曜やことりを扱う寛容なアンドロイドよ?それにあんたらも知ってるあの凶暴な松浦果南や昔問題を起こした堕天使と親友の仲よ、今主にするなら間違いなく絵里にするべきだと私は思うけど」

穂乃果「…あいつはイヤだ」

にこ「なんで?」

穂乃果「……とにかくイヤ」

にこ「…何?何かあるの?」
443 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:58:17.12 ID:7iMNu1YO0
穂乃果「………」

せつ菜「…とにかくにこさんが無理なら分かりました、私たちは新たな主を探しに行きます」

にこ「……でも」


海未「なら、私があなたたちの主になってさしあげましょうか?」


にこ「!」

穂乃果「っ!?」

せつ菜「あなたですか…」

海未「お久しぶりですね、にこ。そしてあなたたちも」

にこ「海未…」

穂乃果「……目的は何?」

海未「そんなの言わなくても分かるでしょう?軍神とトリックスターを殺しに来たんですよ」

せつ菜「…どこまでもしつこいお方なんですね」

にこ「やめときなさい、海未。いくらあんたが再生能力お化けとはいえこいつらもアンドロイドよ、再生能力は人間より上の存在だからある程度は戦える。ある程度戦える軍神とトリックスター相手じゃ流石の海未でも分が悪いでしょう?」

海未「確かにその通りですが、私は即死でもない限りは死にませんからね、勝つ勝たないというところに観点を置くより戦うか戦わないかが私にとっては重要なんですよ」
444 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:01:17.15 ID:GdeG3AG80
穂乃果「…消耗戦がしたいんだね」

海未「ご名答」

にこ「なるほどね、でもそれは消耗戦じゃなくてただの八百長ね。海未相手に消耗戦で勝てるわけないじゃない」

海未「ええその通りですよ、そんなの私と戦えばすぐに分かるでしょう?私の意図が、消耗戦がしたいっていう私の目的が」

穂乃果「…なら尚更戦うわけにはいかないよね」

せつ菜「周りを見る限り今日は仲間の方もいないようですし逃げようと思えばすぐに逃げれますよ」

海未「ええ、ですが戦ってもらいます。逃げられるとしても、ダメージはちゃんとダメージとして残りますからね」

にこ「…呆れたわ、海未」

海未「はい?」

にこ「穂乃果、せつ菜、あんたらは絵里のところへ行きなさい」

せつ菜「え?」

穂乃果「なんで?」

にこ「一度海未とは本気で殺し合いをしてみたかったの。最強相手にどこまで私の実力が通用するのかやってみたかったの」

海未「………」
445 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:02:52.15 ID:GdeG3AG80
にこ「だからあんたらは絵里のところで傷を癒すべきよ、そして絵里を主にしなさい」

穂乃果「……あいつはイヤだ」


にこ「なら今ここで死になさい!穂乃果っ!」ドドドド!


穂乃果「っ!?」シュッ

にこ(我が儘をいう穂乃果に向かって私の愛銃——MP5で発砲した)

穂乃果「っあ……!」

にこ(そして見事私の放った銃弾は穂乃果の横っ腹を貫き、穂乃果は力なく倒れた)

穂乃果「んくっ…!」

せつ菜「穂乃果さん大丈夫ですか!?」アセアセ


せつ菜「にこさんは何をやってるのですか!?」


にこ「それで反抗する余裕はなくなったでしょ?出血を止める術なく今ここで死ぬか、絵里のところへ行って無様に助けてもらうかどちらかにしなさい」


せつ菜「にこさん…!流石の私でも怒りますよ…?」

海未「……正直、敵である私からしてもにこの行動は理解出来ないのですが」

海未「裏切ったっていうなら話は早いですが、にこから私に向けられているのは殺意と敵意、一体何がしたいのですか?」

にこ「穂乃果とせつ菜は一度底辺まで落ちるべきよ、プライドが高すぎるからね」
446 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:04:11.50 ID:GdeG3AG80
にこ「それでどうする?せつ菜」

せつ菜「…何がですか?」

穂乃果「く…そっ……!」

にこ「血を流すアンドロイドを助けてくれる人がいたらいいわね、まぁこんなクソみたいな都市で助けてくれる人なんていないと思うけど」

せつ菜「………」

にこ「もし助かりたいんだったら絵里のところに行くことね、あそこなら助けてくれるわよ」

にこ「それとも、今ここでせつ菜も死ぬ?せつ菜が死にたいのなら今だけは海未と手を組んで殺してあげるわ」

せつ菜「…いえ、それならそうさせてもらいます」

穂乃果「せつ菜ちゃ……」

せつ菜「穂乃果さんは喋らないでください、私にとって穂乃果さんは家族なんですから死なれては困るんです」

穂乃果「………」

せつ菜「……感謝します、にこさん」

にこ「感謝される義理はないわよ」

タッタッタッ

にこ(穂乃果はともかく、せつ菜は気付けたのかしら)

にこ(私の不器用なやり方に)
447 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:05:32.00 ID:GdeG3AG80
海未「…驚きましたね、まさか軍神を撃つなんて。流石の私でも呆気に取られてトリガーを引くことが出来ませんでしたよ」

にこ「そうね、私もきっと狂ってるんだわ」

海未「私も、ですか」

にこ「ええ、所詮海未も鞠莉の犬なのね」

海未「鞠莉の犬ですか…そうなのかもしれませんね。それは強ち否めないかもしれません」

にこ「ええ、海未には事情があるのだもの。知ってるわ」

海未「ええ、ですから残念ですよ。私に理解のある人と殺し合いをしないといけないなんて」

にこ「私も残念ね、もっと海未のこと知りたかったわ」

海未「…それは遺言ですか?」

にこ「どうかしらね」カチャッ
448 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:06:20.94 ID:GdeG3AG80
海未「…いつもより軽装なんですね」

にこ「私、基本的に小さい銃しか持たないの」

にこ「グレネードランチャーを背中にかけるための幅が無くなっちゃうからね」

海未「知ってますよ、いつも持ってますよね。そのグレネードランチャーは」

にこ「サブマシンガンとハンドガンだけじゃ火力と射程がないからね、それをグレネードランチャーでカバーするのよ」

海未「トレードオフの破棄ですか、ですがまぁ確かにグレネードランチャーなら狙いが外れても遠方へと広がる爆発でなんとかなりますしね」

にこ「そんなところよ、それじゃあやりましょうか。お互い曜の作ったガジェットを使う者同士アンドロイドをも驚かせる戦いをしようじゃない」

海未「望むところですよ、にこ相手なら正々堂々と殺してあげますよ」カチャッ
449 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:08:42.75 ID:GdeG3AG80
にこ「……そっちこそ変わった銃を持ってるのよね」

海未「私はこの銃声が好きなんですよ」

にこ「…そう」

にこ(海未は対アンドロイドに長けすぎた人間だった、人間離れした運動神経と人間離れした再生能力、もちろん不死身じゃないしアニメでよくある即時回復でもなければただの道から屋根へ飛び移るなんて漫画みたいなことは出来ないけどそれでも普通の域はとっくに超えてた)

にこ(私が対アンドロイド特殊部隊に入った時、一番最初に仲良くなったのは海未だった)

にこ(銃を持たない海未は一般人より可愛いだけのただそれだけの女の子だった、でも銃を持つことで海未は全てを変える、性格も何もかも)
450 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:11:08.40 ID:GdeG3AG80
にこ「最後に聞きたいわ」

海未「なんですか?」

にこ「…海未は鞠莉を恨んでないの?」

海未「…恨んでないって言ったら嘘になるかもしれません、ですが私に鞠莉は恨めません」

海未「助けてもらった身ですし、鞠莉は優しいお方です」

にこ「…そう」

にこ(…海未は孤児だった。親を産まれて間もない時に亡くしたせいで、奴隷のような生活を送っていた。しかし海未は産まれた瞬間そうなる運命にあった)

にこ(何故なら海未は人間とは思えない生命力を有していたから。本当ならその親と一緒に死ぬはずであった海未はその自らの生命力で命を繋ぎ止めた、だから海未は孤児として生きることが決まっていた)

にこ(そしてそんな苦しい生活を送り、海未が十歳辺りになった頃に鞠莉が海未を引き取った)

にこ(そこからかしら、海未の始まりは)

にこ(海未的には助けてもらったことに感謝してるけど、鞠莉から見ればきっと海未も駒に過ぎなかった。私はそう考える)

にこ(対アンドロイド特殊部隊には少数ながら様々な理由でこの部隊に入っている、その中でも海未は実に単純な理由だったわ)

にこ(命の恩人であった鞠莉直属の部隊だったから入っただけ、そこに曜やダイヤのような何かを求めて入った理由は無くて、凛や果林のような実力を買われたわけでもない)

にこ「……残念ね」

にこ(この残念の意味はきっと私にしか分からない)
451 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/30(月) 00:13:31.97 ID:GdeG3AG80
海未「…何がですか?」

にこ「いや、なんでもない」

にこ「じゃあ始めましょうか」

海未「……ええ」

にこ(戦いの意識を研ぎ澄まして、MP5を下げて姿勢を低く構えた)

にこ(私の戦闘スタイルは身軽さに重点を置き、柔道のような投げと至近距離での射撃を主体にしたスパイのようなもの、サブマシンガンであるMP5とハンドガンで対応出来ない距離は背中にかけてあるこのグレネードランチャーで対処する、それが私のやり方よ)

海未「………」

にこ「………」

にこ(それに比べ海未は実にバランスのいい戦術を用いている、海未の使ってるアサルトライフル——AN-94は初弾と二発目の発射レートだけが非常に速く…ううんもっと簡単に言えば初弾を撃ってから二発目を撃つまでの間隔が非常に短いから初弾を避けても二発目で命中してしまうなんていうのを海未と仲間として戦場に立った時はよく見てた)

にこ(この性質は連射速度が速いスコーピオンとよく似ているけど、海未の持つ銃の連射速度が速いのは初段と二発目だけで、スコーピオンみたいに暴れ馬のような性能ではない。初段と二発目という瞬時火力を備えながらもアサルトライフルとして相応しい高い命中精度を誇る火力寄りのバランス型——これが海未の持つ銃の特徴だ)

にこ(また、アサルトライフルは遠距離を主体とした武器でなければ大体対応出来る射程を持ってるから間合いで悩むことはほとんどない)
452 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:15:07.11 ID:GdeG3AG80


海未「はぁっ!」ダッ

にこ「おっと」シュッ


にこ(そして、今私が躱したこの一閃が海未の最大の特徴だ)

にこ(こんな銃社会において剣を嗜む珍しいやつだからね、海未は。銃剣ってやつでサブマシンガンにもショットガンにも劣らない近距離の強さを発揮してるわ)


にこ「相変わらずの音ねっ!」

海未「この風切り音が聞こえるんですね!ならお分かりでしょうが食らえば死にますよ!」


にこ(正直、海未相手に近距離は分が悪すぎる。素早いステップとちょっと不快な風切り音と白い軌跡を残す海未の一振り一振りは避けるのに必死になっちゃってトリガーを引く余裕を与えてくれない)

にこ(…でも、私も近距離は得意なんでね。この近距離戦が不利になるのかと言われたらそれはNOかしら)


にこ「もらいっ!」


にこ(海未の横斬りをちょっと姿勢を低くすることで躱し、海未の腹部に向けて肘打ちをした。ここで海未の横切りが躱せたのは背の低さがあったからね、だから今だけはこの背の低さに感謝しないといけない)


にこ(今だけは…ね)

453 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:21:16.07 ID:GdeG3AG80
海未「ぐっ…」

にこ(そうして怯んだ海未の左手を掴んでそのまま強く引っ張って離し後ろに流す——そして私はよろめく海未の後頭部に向かって旋風脚を放った)

にこ「休んでる暇はないわよ!」

にこ(私の蹴りを受け倒れる海未に向かってMP5で発砲、そうすれば海未は機械みたいに銃弾へ反応して横へと半回転した後、足の裏と手のひらを地につけてブリッチのような体勢から後方へと跳躍した)

にこ「でたっ…」

にこ(やはり海未の運動神経には目を配るモノがある、跳躍した海未は空中で一回転した後に綺麗に着地して息を切らした)

海未「はぁ…はぁ…はぁ……」

にこ「曜のガジェットの恩恵は大きいわね、海未」

海未「ええ…曜は偉大ですよ……」

にこ(曜のガジェットが無ければ海未はここで弾を避けきれずに死んでいた。私や海未が履いてる靴は跳躍をすることで曲がる足首を察知することで、足元の重力の働きをほぼ一瞬だけ改変させ跳躍にブーストをかける機能がある。私たち人間の技術じゃ重力を変えることは出来ないけど、一瞬無敵というように一瞬だけならそれも可能なの)

にこ(だからそれを使って普通じゃ出来ない動きを可能にしてる)
454 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:24:48.95 ID:GdeG3AG80
にこ「今まで何回も海未は実はアンドロイドなんじゃないかって思ったけど、やっぱり海未も人間ね」

海未「私は元から人間って言ってましたけどね」

にこ「ええ、でも口は信用出来ないから」

海未「…そうですね」

海未「ですが……」

にこ「…?」


海未「できれば私もアンドロイドとして生まれたかったですよ!!」ドドドド!


にこ「っと…!」シュッ

にこ(息を切らす海未が突然放つ無数の弾丸、この後の展開を先に説明するなら私はその銃弾を避けるのだけど、人間対人間っていうのはアンドロイドとはちょっと違う)

にこ(きっとアンドロイドなら横方向へ大きく跳躍して反撃をしてた、けどそれはアンドロイドが射線を見ることのできる生き物だから)

にこ(相手が人間だと分かっている私たちはアンドロイドと同じ動きをすると偏差撃ちによって死ぬ、人間である以上はそれが定め)

にこ(だから人間である私が取った行動は————)

にこ「ほっ!たぁっ!」


ズサー


にこ(前方向へギザギザを作るよう左斜め前へ跳躍して次に私の胸へと向かう銃弾を右斜め前へスライディングして躱す、そしてそれと同時にMP5で発砲…うん、完璧)

にこ(人間は横幅ではなくて高低差を生かして銃弾を避けるの、死角もないフィールドなら戦いはそう長くはならない)
455 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:26:21.16 ID:GdeG3AG80


海未「ああああああぁああ!?がぁあ…ッ!!」


にこ(そう、人間相手ならすぐに決着がつく。跳躍しながら発砲は出来るけど発砲しながら跳躍は出来ない、それは人間もアンドロイドも同じ)

にこ(棒立ちで発砲は死亡フラグが立つわ、それを見事に回収した海未は胸と腹、そして腕に数発ぶち込まれて俯けに倒れた)


にこ(ゲームセット、私の勝ちね)


にこ「……あっけなかったわね、海未」

海未「ぁ……」

にこ「海未、あなたは強いわ。でもあなたが強いのは多人数戦と対特殊部隊アンドロイド以外の人物よ、海未がどれだけ頑張っても果林やダイヤにはおそらく勝てないわ」
456 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:27:43.04 ID:GdeG3AG80
海未「…ぁ……?」

にこ「何故?という顔をしてるわね、いいわよ答えてあげる」

にこ「言っとくけどね海未、対アンドロイド特殊部隊に入ってるやつは狂ってるけどそれ相応の強さがあるの、あんたみたいに孤児として生まれ才能を持つ故に、そして鞠莉の犬だから入ったとかそんな軽い気持ちで入ったやつはいないのよ」

にこ「小さい頃から戦闘の経験があって、その様々な経験で培った技術や知識がある。みんな海未と同じスタートラインを切ってるわけじゃない、銃声が好きとか適当な理由抜かして武器を手に取ってるわけじゃないのよ」

にこ「それだけの話、そう…それが海未と私の————」


ドスッ!


にこ「……ぇ?」

にこ(それは一瞬の出来事だった、銃を下げ人差し指を立てて海未に説明をして最後の一言を言おうと思ったその時、私の心臓に深く入り込む一つの刃)

にこ(するとどうなる?私の胸から、そして口から出てくるこの赤が私には何なのか分からなかった)


にこ(それが分からないまま私は———————)


海未「……私とにこの…なんですか?」

にこ「………」
457 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:29:18.99 ID:GdeG3AG80
海未「……きっ、けほっ………」

スタ…スタ…スタ……

海未「はや…く戻って……休まない…と………」


スタ…スタ…スタ…



タッ……タッタッタッタッ……!


海未「…っ!?」

「ふんっ!」

海未「ぐあッ!?」

海未(両手でお腹を押さえながら歩いていれば、後ろから聞こえる足音。そうして振り返った瞬間には襟を掴まれてフルパワーで地面に叩きつけられた)

海未「な——————」
458 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:31:02.99 ID:GdeG3AG80


カチャッ


「ごめんね刑事さん」



ルビィ「ルビィ、悪い子だから」



ドオン!


459 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:33:22.93 ID:GdeG3AG80
ここで一旦中断。
再開は明日か明後日にします
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/30(月) 08:45:57.26 ID:IIeKG0yEO
一気に犠牲者増えたな……
461 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/01(火) 18:09:19.53 ID:ViazdTd70
ルビィ「…うぅ……ホントならあんな至近距離でスナイパーなんて使いたくなかったんだけどな…」

ルビィ(青い髪の刑事さんを殺すべくしてルビィはその刑事さんの脳天に向かってゼロ距離でスナイパーをぶっ放した)

ルビィ(流石の人間とは思えない生命力でも脳をスナイパーの弾丸で撃ち抜けば死に至ると思う…そう考えた私ちゃんと息と脈を確認したけどしっかり死亡していた)

ルビィ「いたた……」

ルビィ(病院を抜け出してまだ数日しか経ってなくて、ルビィの怪我も完治してない。だから時々足が痛むし、ルビィの頭を————ううん、記憶を蝕むような痛みが発生する)

ルビィ(数年の歳月を経て動き出す体はリハビリでもしないとまともに動いてくれない、けど私は無理矢理体を動かした)

ルビィ(そして、ルビィはスナイパーを両手で下げて闇へと消える)


ルビィ(ルビィが戦える以上は、戦って生きていく)


ルビィ(————それが、ルビィが信じた未来だから)

462 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:10:46.78 ID:ViazdTd70
〜別荘


穂乃果「すぅ…すぅ……」


善子「…まさか帰ってくるなんてね」

せつ菜「…私だってここへ帰りたくて帰ってきたわけじゃありません」

善子「なら今から帰ったら?その矢澤にこのところへ」

絵里「ちょ、ちょっと善子それは流石に酷いわよ…」

善子「私、色んな人を見てきたけどあなたたちみたいなプライドの塊とはどうも仲良く出来ないのよね。普通にしてれば可愛いのに、命が関わる時にまで意地張ってるんじゃさっさと死ねって私は思う」

曜「うわー…強烈……」

善子「その不本意ながらっていう態度、私ものすごい気にくわない。申し訳ないけど信じられないなら救えない、信仰心がなきゃ加護を与えてくれる神なんていないわよ、業務用アンドロイドにはそれが分からないの?」

花丸「………」

絵里「あちゃー……」

絵里(夜、この別荘に死にかけの穂乃果を連れたせつ菜がやってきた)

絵里(横っ腹を撃たれたみたいで、それを見たことりがすぐに手当てをした)

絵里(けど如何せんこの二人はプライドが高いもので穂乃果も眠りにつく最後の最後まで反抗的だしせつ菜も相変わらず否定しかしない)

絵里(その二人の様に怒りを覚えてしまった善子はとうとう口から爆弾を吐き出した)
463 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:12:16.26 ID:ViazdTd70
せつ菜「………」ウルウル

せつ菜「……だって」

善子「…だって?」

せつ菜「だってムカつくじゃないですか!希さんが気に入ってた相手なんですよ!?」

果南「気に入ってた相手?なにそれ?」

せつ菜「希さんは基本的に他人に無関心なんですよ、それ以上もそれ以下もない一定の接し方で誰とでも仲良く出来る人でしたから私たちは我が子を可愛がるようなそんな態度でした」

果南「え?それって良くない?というか絵里と何の関係が?」

せつ菜「違うんですよ…絵里さん、あなたは希さんの興味を引いてしまったんですよ」

絵里「興味?」

せつ菜「言いましたよね、他人に無関心って。私や穂乃果さんにも見せなかった感情を絵里さん相手に示して、挙句の果てにはウチの部下にしたいっておかしくありません?なんで初めて会うはずの絵里さんに?私には分かりません」

ことり「……それってさ」

曜「…あ、待って私も同じ事思ったかも」


ことよう「……嫉妬だよね?」


せつ菜「……そうですよ」

せつ菜「だって…ムカつくじゃないですか…」

善子「…それはさっきも聞いた」
464 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:15:40.77 ID:ViazdTd70
花丸「…確かに希ちゃんが他人に興味を示すのはすごく珍しいことずら、いつも何考えてるか分からないような人だったからどうして急にウチの部下にしたいなんて言ったのかマルにも分からないずら」

果南「それは絵里が心の広い持ち主で尚且つ強いからだよ、そうとしか私は考えられない」

善子「………」

曜「う、うーん…よく分からないけど希ちゃんが興味を示すならもっとちゃんとした理由があると思うよ」

ことり「ちゃんとした理由って?」

曜「それは私にも…」

せつ菜「私たちは業務用アンドロイドなんですよ、穂乃果さんはこんなこと言いませんけどね、業務用アンドロイドっていうのは所詮主に好かれたいだけの生き物なんですよ。主が与えてくれる導に沿っていって主に褒めてもらうことが業務用アンドロイドとしての生き甲斐なんです」

せつ菜「きっと私たちの気持ちは戦闘型にも標準型にも分からないでしょう、ましてや人間にも。でも、私たちに見せてくれなかった感情をまだ関りの薄い人に見せるっていうのは私たちに興味がないっていう死刑宣告みたいなものなんですよ…」

絵里「………」

絵里(せつ菜の言う通り、きっと私には業務用アンドロイドの気持ちは分からない。だって私には主がいないし、褒めてもらうっていう以外にも生き甲斐はちゃんとある)

絵里(しかし、せつ菜の気持ちは分からなくてもせつ菜の感じてる感情はきっと分かる。悲しいとか怒りとかそんな簡単で些細なモノだけど、きっとそれなら私にも分かる)

絵里(だから私は————)


絵里「そう…ごめんなさい」ギュッ


絵里(私も成長したのね、知らない内に小難しい話を乗り越えられる強さを手にしてた)

絵里(きっとこんな生易しい解決の仕方じゃいつか綻びしてしまうのだと私は思う、けど戦いをこの先で語るのはきっと違うでしょう)

絵里(ただ、今は“熱さ”に対する表現として、せつ菜を力いっぱい抱きしめた)
465 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:17:51.07 ID:ViazdTd70
絵里「…きっと私にあなたの気持ちは理解出来ないわ。でも私はあなたと仲良くしたいの、だからこの際言っちゃうけど」


絵里「私じゃ主は務まらないのかしら?」


せつ菜「…!」

絵里「あの時、穂乃果に威圧された時は言葉も出せなかったけど今ならちゃんと返せるわ」


絵里「知ってる命を失うことの意味と怖さ、私はそれを知ってる」


絵里「誰も死なせたくない、私は誰にも死んでほしくないの」

絵里(…私は千歌を失った、その死はホントに些細な出来事からで、いつ振り返ってみても儚くて呆気ないものだった感じるの)

絵里(きっと銃を持つということは人を殺す意思表示なんだと思う、けれど私はそう思いながら銃を持つのではない)

絵里(目指すところはもっと別にあって、もっともっと近くにある)

絵里(平和を夢見るのなら、戦いが避けれないのならせめて命を失わないようにしてほしい)

絵里(だから他人とはいえ、他人な気がしないせつ菜と穂乃果には死んでほしくなかった)

絵里(二人が業務用アンドロイドというのなら、私が主になって私が生きる為の導を与えたかったのよ)
466 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:19:18.85 ID:ViazdTd70
ことり「……ずるい」

曜「あはは、ずるいね」

果南「やっぱり絵里はこうでなくっちゃ!」

せつ菜「………」ウルウル

せつ菜「…そうですね、なんか希さんが言ってたこと分かる気がします」

曜「希ちゃんの言ってたこと?」

せつ菜「はい、あの金髪の子の事が信用出来なくてもついていけばいつか絶対に信頼出来る時が来るって」


せつ菜「もしウチが死んだらあの金髪の子を主にしな、と」


絵里「私!?」

せつ菜「はい、だから穂乃果さんは絵里さんに気に入らないって言ったんです」


穂乃果『私はあなたが気に入らない』


せつ菜「理由は私と同じ嫉妬です、希さんに絶対に信用出来るなんて言われたら私たちにはない何らかの感情や関係があるに違いありません、そう思って穂乃果さんは絵里さんを毛嫌いしたんです」

絵里「何らかの感情については知らないけど、私その希って人と関係はないわよ?」

せつ菜「ですが絶対に信用出来るって希さんは言ってましたよ?」

絵里「えっ…なんでかしら…」
467 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:19:55.78 ID:ViazdTd70
善子「戦ってて強いって思ったからじゃないの?曜を殺しに行く時に戦った絵里には確かに驚かされることが多かったわ」

花丸「…希ちゃんの事だから何か理由があったと思うずら、感覚とかじゃなくてちゃんとした理由が」

曜「理由か…分からないな…希ちゃん死んじゃったし」

せつ菜「…私がいれば」

花丸「そ、そんなせつ菜ちゃんのせいじゃないよ」

せつ菜「……例えそうだとしても私があの時いればもしかしたら希さんは助かったんじゃないかって思えるんです」

ことり「…確かにそうだけど、そう思っても仕方ないでしょ?」

果南「ことりの言う通りだよ、過去を悔やむならそれを今に繋げなきゃ」

せつ菜「……はい」
468 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:23:32.98 ID:ViazdTd70
善子「…とにかくあんたら二人は絵里を主にするの?」

せつ菜「…そうさせてもらいます」

ことり「主っていうけど主にするために何かするの?」

せつ菜「特にしませんよ、システム的に業務用アンドロイドが主と認めた人がこれからの主になります」

果南「システム的?」

せつ菜「本能みたいなモノです、基本的には主の入れ替えはないんですけど主がその人を主って思えばなんとなーく思考に補正がかかるんです、この人が主だと。でも業務用アンドロイドはそんなこと滅多にしませんよ、一番最初の主に思い入れがあるのは当たり前ですから」

善子「へぇ…なんか特殊ね…」

せつ菜「所詮業務用アンドロイドはペットみたいなモノですからね、誰かの支えがないと正しく生きていけません」

曜「業務用アンドロイドは自立出来ない生き物とは言われてたけど本当なんだね、てっきりバカにされてるだけかと思ってたよ」

果南「戦闘型は完全自立、標準型は自立的、業務用は自立不可って聞くよね」

花丸「…それがそれぞれアンドロイドのコンセプトだからずら」

絵里「知ってるの?」

花丸「希ちゃんから貰ったアンドロイドの本で学んだずら、最初に作られたのは型が決められていない何型でもないアンドロイドで、そのアンドロイドは揃いも揃って危険思想を抱いてたみたいで、アンドロイドはやることがないと今目の前にある物を破壊しようとする危険なシステムが勝手に生まれてしまうみたいずら」

花丸「だから人間を模して造られたと言われる標準型アンドロイドだけではなくて、標準型アンドロイドの上位互換である戦闘型アンドロイドっていう標準型が万が一破壊衝動を抱いても自由に戦闘を起こさないようにする抑制の存在と、標準型アンドロイドの下位互換である業務用アンドロイドっていう助けるべく存在を生んで破壊衝動の消化に努めたと記されていたずら」

善子「上位互換ねぇ…」

せつ菜「下位互換ですか…」

ことり「そんな作られ方してたんだ…」

絵里「なんか複雑ね…」
469 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:27:15.95 ID:ViazdTd70
せつ菜「……とにかくよろしくお願いしますね、絵里さん」

絵里「え、ええ。よろしくね」


ギュッ


絵里(いまいち実感はないけど、とりあえず私はせつ菜と穂乃果の主となった)

絵里(あの時は勢いとかで私が主になるって言ったけど、私に主が務まるのかしら?)

絵里(私は人の道を決めるほど偉くないし強くない、むしろ私は頼ってばっかの生き物だ)

果南「いやートリックスターと軍神が一緒に戦ってくれるんじゃ心強いね!さっそくY.O.L.Oってところに行く?」

絵里「いやそれはいきすぎじゃ…」

曜「…いや、そうでもないかもしれない」

絵里「えっ?」

曜「もし行くのなら流石にみんなの傷が癒えてからだけど、この戦力なら充分勝てるよ」

ことり「…確かに勝てる、対アンドロイド特殊部隊は今四人、そこに誰かが入ったとしてもこっちは八人、矢澤にこを入れれば九人になるよ」

曜「Y.O.L.Oには三人超一流の腕を持ったのがいるけどそれをプラスしても六人だから数で勝てる」

善子「確かに…」
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