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【艦これ】艦娘「ショタ提督に好かれたい」照月「その35!」【安価】

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616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/10(日) 00:31:07.58 ID:bW545An60
名取が寝取った・・・だと・・・
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/10(日) 00:35:15.85 ID:pT7SFHaEo
ここからグレカーレ失恋の名取一人勝ちまで見えてきたな
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/10(日) 00:39:57.65 ID:5Q6znqqsO
>>610>>611の最低値と>>614>>615の最高値の対比すこ
619 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/10(日) 00:41:43.36 ID:eTVAbK3o0
名取「や、やった……やったぁ……っ!最後の最後で、寝取りの汚名返上出来ました……!」ウルウル

グレカーレ「くっ……!ま、まだチャンスは残ってるもん!」

朝風(う、う〜ん……私もゴールしたいけど、中途半端に出番が回って失恋しちゃうのは嫌だし……)













U-511「………」

U-511(……私だけ、置いてけぼり……ドイツの呪いって、ビスマルク姉さんで終わったんじゃないの……?)グスッ


今回はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました!
長らく寝取りと弄られ続けてきた名取が最終回でEND確定……こちらとしても感慨深いです。
次回からはしばらく回想パートが続きます。恐らく歴代で1番長い回想になるかと思います。プロットの時点で文字がギッチギチなので……
それではまた次回の更新でお会いしましょう。
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/10(日) 01:50:29.17 ID:eX/toNKFO

失恋でもエピローグで割と重要ポジに配置される事が多いから朝風も頑張って40台まで上がって欲しいな
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/10(日) 10:19:41.42 ID:uA9pzKPUO
幸か不幸か前回エンディング直行だったら
今回の時点でグレちゃん失恋確定だったし
まだチャンスが残ったのは結果オーライやね
622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/10(日) 18:49:28.74 ID:jg6LtEh5O
結果オーライどころか名取がEND開放したからこそグレが失恋する危険性が出てきてんだよなあ
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/10(日) 21:36:58.14 ID:LiA1jmW8O
前回名取END開放で今回名取ゴールインだとグレカーレ失恋だったから
前回名取END開放キャンセルした事により今回名取END開放になってもう一回名取が選ばれるまでの猶予が生まれたって意味じゃないの?
624 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/13(水) 17:55:28.54 ID:3sQ+vWdv0
22:30〜23:30頃開始予定です。
625 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/13(水) 22:51:46.41 ID:3sQ+vWdv0
始めます。
626 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/13(水) 22:52:55.52 ID:3sQ+vWdv0
名取「………」

名取(……ダメ。どれだけ考えても、どうしても……分からない。後少しで、この違和感の正体を掴めそうな気がするのに……!)

姉妹達の心配を他所に、彼女は思考を巡らせ続けていた。

しかし、その答えは一向に見えてこない。どうしても真実に辿り着けないのだ。

名取「………」

名取(やっぱり、提督に尋ねるしか……無い、のかな……)

頼みの綱は彼しかいない。自力で答えを導き出せないのなら、後はもう……彼を頼るしか、術は無い。

しかし、彼は目に見えて思い悩んでいる。もしかすると、より一層彼を追い詰めてしまうかもしれない。

そう思っていた彼女は、どうしても一歩を踏み出せずにいた……これまでは。

名取「……っ」グッ…

名取(ごめんなさい、提督……こんな時に、訳の分からない相談を持ち掛ける私を、許して……)

名取(だけど、もう……無理なんです。心の中に靄がかかった状態で、見えない答えを探し続けるのは……無理、なんです……!)

彼女は……決心した。彼に、己が抱く違和感の謎を相談することを。

そして、あの時のフラッシュバック……その謎を、打ち明けることを。

名取「………」ガチャ…

名取(見覚えの無いはずなのに、提督は確かにそこにいた……だから、きっと……提督なら、何か知ってるはず……!)バタン…

名取「………」スタスタ…

彼女は静かに歩く。行き先はもちろん、彼がいる執務室。

途中、数人の艦娘達とすれ違い、彼女らから声をかけられるが……彼女は全て無視した。

決して意図的では無いのだが、今の彼女は……心の靄を取り除くことしか、頭に無かったのだ。

名取「………」スタスタ…

名取(提督……貴方なら、私の違和感を……取り払ってくれますよね……?)
627 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/13(水) 23:02:46.12 ID:3sQ+vWdv0
ショタ提督「………」

ショタ提督(名取さん……)

同時刻。執務室にいた彼は、彼女の決心を……既に"把握"していた。

彼女が違和感と謎の正体を、自身に問いかけようとしていることを。

ショタ提督「………」

ショタ提督(……これ以上、隠す訳にはいかないかもしれない)

彼女がもし、建造直後のように何も知らない状態であれば……彼はやはり、真実を話すことはしないだろう。

だが、今の彼女は……彼と深く交流したことで、真実のすぐ傍まで近づいているのだ。

そのような状況では、むしろ隠し通そうとした方が……彼女に不信感を抱かせてしまうこととなる。

ショタ提督「……っ」グッ

ショタ提督(……覚悟を決めろ、僕。ここから先は……"提督"としてでは無い。"50周目提督"として……)

そもそも、どうして彼は彼女らの心情を全て"把握"することか出来るのだろうか。

どうして視界にさえ入っていないはずの彼女らを、彼は"気がつく"ことが出来るのだろうか。

それは偶然でも勘でも、何でも無い。それにはれっきとした理由がある。

コンコンコン…

ショタ提督「……どうぞ」

ガチャ…

名取「……失礼します」

ショタ提督「……名取さん」

名取「今……良い、ですか……?」

ショタ提督「………」コクリ

ショタ提督(向こうも覚悟を決めた顔をしている、か……)
628 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/13(水) 23:14:32.39 ID:3sQ+vWdv0
名取「……この前、一瞬だけ……目の前を、ある光景がよぎったんです」

ショタ提督「………」

名取「今まで、1度も行ったことが無いはずの場所で……私と提督が、一緒にいて……」

ショタ提督「………」

名取「それだけじゃ、無いんです……頭の中に、靄がかかっていて……その光景を思い出そうとすると、何も浮かばなくなっちゃって……」

ショタ提督「………」

名取「ずっと考えても……分からないんです。あの光景は、この靄は……何なのかが……!」

ショタ提督「………」

名取「……提督。今から凄く、変な質問をしますけど……真剣に答えて下さい」

ショタ提督「………」コクリ
629 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res]:2019/11/13(水) 23:15:26.03 ID:3sQ+vWdv0










名取「……私と提督は、ここでは無いどこかで……出会ったことが、ありませんか……?」


名取「そして……何か、大切なことがありませんでしたか……?」









630 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/13(水) 23:16:41.83 ID:3sQ+vWdv0
ショタ提督「………」

名取「……あ、あれ?」

ショタ提督(……そこまで、"思い出そうと"してくれていたのか。やはりこれは、奇跡に違いない……!)

名取(大切な、こと……?私、何を言って……)

ショタ提督「……名取さん。いや……"ナトリ"」

名取「"ナトリ"……うぅっ!?」ピキ…ッ!

名取(い、今……頭と心の中に、何か……凄い衝撃が……っ!?)

ショタ提督「……今の名前、覚えているはずだよ。僕は何度も、その名前を呼んだから」

名取「うっ……うぅっ……!」

ショタ提督「………」

名取(あ、あぁっ……そう、だよ……!私は、前に……凄く、凄く……気が遠くなるほど、前に……提督と、出会って――――――)
631 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/13(水) 23:25:44.81 ID:3sQ+vWdv0




















――彼の口から告げられた"ナトリ"と言う名。それは正しく……彼女の"本当の"名である。


――だが、彼女は長良型軽巡洋艦・名取。それ以外の名前など、存在しないはずではないだろうか?


――その答えは、彼と彼女の"記憶"……彼という"存在"と、彼らの邂逅に隠されている。


――彼は"己の記憶を思い出し"、彼女は"己に刻まれていたにも関わらず、失われていた想いを取り戻す"……


――特に、彼女が想いを取り戻すことが出来たのは……今の彼と親密になり、"共鳴"したからだ。


――彼は、自身が持つ最古の記憶……常人であれば、発狂してしまうほどに昔の出来事を思い浮かべる。



















632 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/13(水) 23:28:40.74 ID:3sQ+vWdv0






























――――――――それは、天地創造される前……この世界全てが、文字通り"無"であった頃まで遡る。





























633 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/13(水) 23:43:55.31 ID:3sQ+vWdv0
見渡す限り何も無く、暗黒に包まれた世界。否、暗黒や世界という概念さえ存在しない空間。

突き詰めて言えば、空間という定義さえ当てはまらないと言えるかもしれない。

そんな時間と空間が生み出される前の世界に……"その存在"は突然、その場に現れた。

「………」

その存在は、我々人間の言葉では説明することが出来ない。

姿形はもちろん、どのような存在であるかも定義出来ないだろう。

ただ、あえて我々が知る言葉で例えるならば――

(……新たな世界を作らなければ)

――"神"。

その存在は万物を司り、この無が支配する場に新たな世界を創造する為に姿を現した。

姿を現すと言うが、実際には我々に視認することが出来るかさえ怪しいだろう。

分かることはただ1つ。彼とも彼女とも言えないその存在は、この世界に意味をもたらす為に現れたことだけだ。

「………」

その存在は集中する。これから無の世界に、あらゆる万物を与えるのだ。

仮に、このまま事が進めば……この世界は、我々が住む現実世界とほぼ同じ世界となっていたことだろう。

だが、そうはさせまいと、その存在の行動を邪魔する者が現れる。

「――――ッ!」

「……?」

(何だ?どこからか、声が……おかしい。ここには誰も存在しないはず……)

否、既に"存在していた"と言った方が正しいだろう。

神でさえ"彼"の存在は予想外で、ある種"全ての元凶"とも言える人物がそこにいた。
634 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/13(水) 23:45:50.54 ID:3sQ+vWdv0




















42周目提督「うがあああああああああああああああああああッ!!いつになたらビッグバンが起こるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」

「っ!?」

(ど、どうして生物がここに……!?)



















635 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/14(木) 00:00:36.18 ID:HlOCdbnV0
そう。場をかき乱すことに関しては右に出る者はいない……42周目提督である。

覚えているだろうか?彼は1度、自力でタイムマシンを開発し、起動したと同時に"遥か遠くの過去へ飛ばされた"ことを。

42周目提督「株や競馬でボロ儲けしようとしてただけなのに!何でこうなっちまうんだよおおおおおおおおおおおッ!!」

42周目提督「気がついたら真っ暗闇って時点でアレなのにさぁ!何十年何百年何万年何億年何兆年!いやそれ以上待っても一向にビッグバンが起こらないってどう考えてもおかしいだろうが!?」

42周目提督「流石の俺でも我慢の限界なんだよッ!!とっとと爆発して宇宙作りやがれやゴルァアアアアアアアアアアアッ!」

彼はあろうことか、この世が創造される前に遡ってしまい……以後、気が遠くなるほどの時を待ち続けたのだ。

いつかはビッグバンが発生し、そのまま時の流れに身をゆだねていれば元の時代へ追い付くはず……彼はそう考えていた。

ところがどれだけ待っていてもビッグバンはおろか、爆発の予兆さえ感じられない。そのことにイライラを感じていた彼は、ついに我慢の限界を迎えた。

(そ、そんな!?ここは生物が生存出来るような環境では無い!それ以前に物質さえ存在不可能であるはず……)

このような異常事態は、流石に神とも呼べるその存在も想定外であったのだ。

目の前で怒り狂う42周目提督の姿に、その存在は驚愕して呆然としていた。

そして42周目提督は、怒りのままにとんでも無いことをしでかしてしまう。

42周目提督「畜生!こうなったら俺が直々にビッグバンを起こしてやるッ!!」シュバババババッ!

(どこからともなくミサイルや爆発物を取り出した!?そんな物をどこに、どうやって隠し持って……いやそれより先に彼を止めなければ!)

焦ったその存在は咄嗟に彼の精神に干渉し、怒りを鎮めようとする。しかしその行動がまずかった。

「ッ!?」

(な、何だこれは!?思考が支離滅裂で何を考えているか分からない!?)

42周目提督「むっ!?俺様の心に語り掛けてくる奴は誰だ!?」

(しまった!気がつかれてしまった!?)

42周目提督「誰かは知らねえけどなぁ!邪魔するっつーなら容赦しねーぞ!うおりゃあああああああああああああああっ!」ブンッ!

バシィッ!!

「はぐっ!?」

42周目提督は何と、いつの間にか手に持っていたハリセンで、その存在を力任せに叩いてしまう。

するとその存在は、想定外の"力の相互反発"を受けてしまったことで暴走し……

「うぅっ……ぁ、ぁぁぁぁああああああああああああッ!!」カッ

42周目提督「へ?」
636 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/14(木) 00:17:05.99 ID:HlOCdbnV0








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     ||| .|i  ´   i ' ||  ii   ii | iilll||ii | i     .ill|!!i l   ...|ll iii i   i l|l. |li   li||li |il||||
      ||il||li .|i ii||il lil|| ||lili  ||ii l|il| |llii||| li|iii|lli || ..iil|||lll.|ll   llll||illli  iiil|iii|||l|i |l|l!liil||lll.|l||
     .. ||!|i||ill ..| ||lll|||ii|||lliiiill|lliiilll|||lll||!!lilllii!!!||ll||ill|ll lll|||lll||!!lillliil.l| |lll||!!lillliill| !!||lll|||lll||!!lilllli||||!lll||
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    ..   .||l||lll|||i||lll||!!!!llll!!|||ll!!!!!|ll!!ll||||!!ll||!!!ll||!!|||lll||!!!!llll!!|||ll!!!!!|ll!!ll||||i||lll||!|ll!!ll||||!!ll||!!!l||!||







42周目提督「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああッ!?」ヒュウウウウゥゥゥゥ…ッ!



その存在は2つに分かれて破裂してしまい、その余波でビッグバンが発生してしまう。

更にこの出来事がきっかけで宇宙が誕生し、何も無い世界にあらゆる物を与える結果となった。

この世のものとは思えないほどの大爆発をまともに受けた42周目提督は、遠い宇宙のどこかへ凄まじい速度で吹っ飛んでしまう。

尤も、彼はその後何とか地球に辿り着くことになるのだが、それは今語るべきことでは無い。

それ以上に問題なのは、2つに分かれてしまい破裂してしまった存在である。

"自身の力を持ち、尚且つ暴走した力を直撃させられた"その存在は、2つに破裂する際に己の力を各地へばら撒いてしまった。

厄介なのは、ただばら撒いてしまっただけでは無い。空間と同時に、時間さえ超越してばら撒いてしまったのだ。

己の力を失ったその存在2つは、自身の存在が不明瞭なものとなってしまい、そのまま意識さえ取り戻せなくなってしまう。

そのまま気が遠くなるほどの時間が経過し、その存在が再び目を覚ますまで……永い永い眠りにつくこととなる。
637 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/14(木) 00:37:17.86 ID:HlOCdbnV0
実に100億年以上もの間、その存在は力を失ってしまった影響で眠り続けていた。

だが、失ってしまった分の力は……新たに生まれた生命から分け与えられ、徐々に不明瞭だった存在が元の状態に戻ってゆく。

そして人類が誕生。そこからある程度の進化を重ね、彼らの外見が現代の人間とそれほど変わらなくなってきた頃のことである。

「……ぅ」

名取?「あっ……!」

グレカーレ?「よ、良かった……生きてるみたい……!」

朝風?「見たところ、怪我は無いみたいだけど……」

U-511?「……っ」オロオロ

(ここ、は……それに、"僕"は一体……)

ついに"彼"は、およそ100億年振りに意識を取り戻したのだ。

しかし、2つに分裂してしまった上に、己の力をばら撒いてしまった為……彼の自身の存在や役目に対する認識が消失してしまっていた。

それでも、生命が宿すエネルギーを受け取り続けた結果……彼は何とか、その姿を具現化させることが出来るほどに回復した。

「……えっと、貴女達は……?」

名取?「だ、大丈夫……?」

グレカーレ?「どこか痛いところは無い!?」

彼の目の前には、4人の少女が顔を覗かせていた。それぞれが名取、グレカーレ、朝風、U-511と非常によく似ている。

尤も、彼女らと違い……目の前の4人は全員が黒髪であり、艦娘では無く原始人なのだが。

「……う、うん」

朝風?「ふぅ……一先ずは安心ね」

U-511?「……どうして、ここに倒れていたの?」

「倒れて……?」キョロキョロ

(……浜辺?僕は、どうして……ここに……?)

彼は姿が具現化しているものの、まだ全快には程遠い。故に自身が置かれている状況を正確に把握することが出来なかった。

彼は少年の姿に具現化しており、服装も提督が着用する白い服だ。これは意識を失う直前、42周目提督の精神に干渉したことが原因である。

記憶が消失してしまっている彼だが、姿を具現化する際、無意識の内に42周目提督と類似する姿を反映したのだ。
638 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/14(木) 00:39:46.21 ID:HlOCdbnV0
今回はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました!
回想パートはまだまだ続きます。
それではまた次回の更新でお会いしましょう。
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/14(木) 00:42:25.50 ID:P3GymcfPO
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/14(木) 06:12:22.28 ID:i+3/AONdO

提督が普通の人間じゃないのは予想してたが神だったとは
42週目提督が絡んでくるのは予想外だった
641 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 17:32:27.97 ID:A0yYdP+m0
21:30〜23:00頃開始予定です。
642 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 22:04:01.57 ID:A0yYdP+m0
始めます。
643 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 22:06:17.54 ID:A0yYdP+m0
名取?「……もしかして、自分のことが分からないの?」

「自分の、こと……」

グレカーレ?「うん。お名前とか、どこから来たのか、とか……」

「……分からない」

朝風?「……!」

「分からない……何も……」

U-511?「もしかして……倒れてた時に、覚えてたことを忘れちゃったの……?」

「………」

名取?達「………」ジー…

名取を始めとする艦娘と似た容貌の彼女達は、彼のことを心配していた。それと同時に……不思議な感覚を抱いていた。

彼を見ていると……胸の奥が温かくなっていく。初対面であるはずなのに、長年共に過ごしたかのような安心感が芽生えるのだ。

名取?「……あの」

「……?」

故に彼女らには、彼のことを見捨てるという選択肢等無かったのだ。

右も左も分からないであろう彼を、何とかして助けたい。そう考えた彼女らは……

名取?「……私達の住処に、来る?」

「……すみか?」

グレカーレ?「あっ、それ良いかも!」

朝風?「私も同じこと考えてたわ!」

U-511?「……賛成」

彼を保護し、自分達が住む居住地へ連れて行くことにしたのだ。

彼の記憶が蘇るまでを共に過ごす。危険があれば、自分達が彼を守る。

名取似の少女がそう言うと、残りの3人も即座に同意した。文字通り、"以心伝心"である。
644 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 22:24:30.60 ID:A0yYdP+m0
グレカーレ?「君も、それで良い?」

「………」

朝風?「……えっと、聞いてる?」

「……あっ、僕のこと……?」

U-511?「……名前が分からないの、ちょっと困るかも」

グレカーレ?「うん。近くにいる時はまだしも、遠くから声をかける時に何て言えば……」

「………」

彼自身は記憶を失っているが、元より彼に名は存在しない。

以前は神、現在は2つに分裂し、その存在が弱まっている状態である彼に……名付け親がいるはずが無い。

名取?「……"50周目提督"」

「……"50周目提督"?」

だが、そんな名無しの彼に……名取似の少女は、自らが考えた名を与えようとする。

グレカーレ?「何それ?」

名取?「えっと、この子の名前……」

朝風?「貴女が考えたの?」

名取?「………」コクリ

「僕の、名前……」

U-511?「……良いと思う」

グレカーレ?「うんうん!呼びやすいし、この子の感じに合ってる!」

名取?「……ダメ、かな?」

「………」

(僕の名前を、考えてくれたんだ……ん、何だか、体が少し軽くなったかも……)ギュッ

彼女らの、自身を思いやる"気持ち"が……そして、初めて与えられた"名"が……彼の身に染み渡ってゆく。

同時に、先程まで不安定だった彼の存在が……僅かに安定する。彼は無意識ながら、それを"体感"した。

「……50周目提督。僕は、50周目提督……50周目提督……」

その名を噛み締めるかのように、何度も復唱する。その度に、身体が温かくなり……奥から力が湧いてくる。

ショタ提督「……うん。僕の名前は、50周目提督……ありがとう。えっと……」

名取?「え?あっ……ごめんね?私達、まだ……名前、言ってなかったよね……?」
645 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 22:25:27.20 ID:A0yYdP+m0






























ナトリ「私は"ナトリ"。よろしくね……?」



グレ「私は"グレ"よ!」



アサカゼ「私は"アサカゼ"。よろしく、50周目提督!」ニコッ



ユー「……"ユー"、です」



――これが、彼と彼女らの……正真正銘、初めての出会いだった。


――そして同時に、彼がこの先名乗ることになる"名"が与えられた瞬間だったのだ。





























646 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 22:42:12.37 ID:A0yYdP+m0
彼は記憶が朦朧とする中、しばらく彼女達と生活を共に過ごすこととなった。

当然、何も分からない彼が出来ることは少なく、彼女らに世話をしてもらう日々を送っていた。

ショタ提督「……これ、は?」

ナトリ「えっと、木の実って言うんだけど……美味しいよ……?」

グレ「私達が集めてきたの!」

ショタ提督「………」ジー

アサカゼ「そんなに怖がらなくても大丈夫よ」

ユー「いつも、私達が食べてるから……」

ショタ提督「………」スッ…

ショタ提督(あっ……)

彼が、彼女らが集めて来てくれた木の実に触れる。するとその瞬間、彼女らと出会った時のように……温かい"気持ち"が流れ込んでくる。

木の実に込められた"元気に育とうとする想い"と、彼女達の"提督に美味しい物を食べてもらいたい想い"。

この2つが、彼の胸に、心に……否、"存在そのもの"に染み渡ってゆく。

ショタ提督「……はむっ」

ナトリ「……どう、かな?」

ショタ提督「………」ムグムグ

ショタ提督(口の中に、甘くてみずみずしい感覚が広がっていく……これが、"美味しい"ということ……?)

木の実を口に含み、伝わる気持ちと共に優しい味を舌と肌で味わっていく。

彼は本来、人間と違い飲食の必要は無い。しかし、彼は無意識ながら……確かに感じていたのだ。

ショタ提督「……美味しい」

ナトリ「本当……?良かった……喜んでもらえて……」ニコッ

ショタ提督「………」ギュッ

ショタ提督(また、胸の奥が温かく……?)

木の実から、そして彼女達から……人が抱く"善意"を。優しくて、温かい気持ちを。
647 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 22:51:43.49 ID:A0yYdP+m0
もちろん、食べ物を食べることだけが生活ではない。

時間の許す限り、彼と彼女らが交流し……触れ合うことも生活の1つだ。

ショタ提督「………」スタスタ

ナトリ「わぁ……♪今日も明るくて、見晴らしが良いかも……!」スタスタ

ショタ提督(……感じる。ナトリから、温かさを……)

彼と彼女は住処の周辺を散歩していた。無論、誘ったのは彼女の方だ。

明るい日差し、漣の音を静かに奏でる海、生き生きと生い茂る植物……正しく、生気に満ち溢れた場所だ。

彼はこの場に立っているだけでも、その生気を……活力に満ちた生き物のエネルギーを、受け取っていく。

ナトリ「……あっ」

ショタ提督「……?」

ナトリ「この植物、枯れちゃってる……かわいそうに……」スッ…

ショタ提督「……!」

ショタ提督(今、胸の奥が……締め付けられたような感覚が……)

彼女は、枯れてしまった花を見つけ……悲しい気持ちを抱く。

すると、その想いは彼に流れ込み……いつもと違う"感情"が流れてきたことで、彼は僅かに動揺する。

ナトリ「………」シュン

ショタ提督(何故か分からないけど……嫌だ。ナトリが、こうしているのを見るのは……僕も、同じ感じになってしまう……)

ショタ提督「………」スッ…

ナトリ「……50周目提督?」

ショタ提督(……感じない。生きようとする想いを、活力を……つまり、この植物は……"死んだ"……?)

ショタ提督(……嫌だ。このままでは、ナトリがいつもの顔に戻らない……何とか、しなければ……!)カッ

パァァ…ッ!

ナトリ「あっ……!」

彼は無意識の内に……己の力を、枯れた植物に注いだ。

2つに分裂してしまっている上に、力をばら撒いてしまった為、以前ほどの能力や効果は無い。

だが、それでも……1つの枯れた植物に生気を宿すには、十分の力だった。

ナトリ「枯れた植物が……また、元気になって……!50周目提督、今の……どうやったの……!?」

ショタ提督「……分からない。ナトリの、さっきの顔を見たくないと思ったら……こうなって」

ナトリ「私の、さっきの顔……それって、悲しんでる私を励まそうと……?あっ……!」

ナトリ(あ、あれ……?心の中が、温かくて……フワッとする……)ギュッ

その力に反応したのは、枯れていた植物だけでない。

傍にいた彼女もまた、彼と"共鳴"し……心が温かい気持ちで満たされてゆくのを感じていた。
648 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 23:06:16.49 ID:A0yYdP+m0
そんな日々を過ごしていく内に、彼や彼女らに心境の変化が表れていく。

彼女達から、人の"優しさ"……言い換えれば、"善意"を注がれ続けてきた。

特にナトリとは多くの時を共に過ごし……彼の中でも、彼女の存在は大きくなっていた。

ナトリ「はぁ……はぁ……っ!」

グレ「ナトリ!しっかりして!」

ショタ提督「………」

ある時、ナトリが体調を崩してしまう。それも、誰が見ても症状が重いと分かるほどに苦しんでいた。

アサカゼ「ずっと休んでいても、熱が下がらないなんて……」

ユー「ど、どうしよう……」アセアセ

ナトリ「うぅっ……」

ショタ提督「……ナトリ」

ナトリ「ご、50周目提督……私なら、大丈夫だから……」ニコ…

ショタ提督「……っ」ズキッ

ショタ提督(そんなはず、ない……ナトリからは、苦しんで辛いという気持ちが伝わってくる……これは、ただ事じゃない……!)

彼は無意識の内に、彼女の容態の重さを感じ取っていた。

同時に、このままでは……その命の灯火が消えてしまうことも、分かってしまったのだ。

ショタ提督(……嫌だ。このまま、ナトリが目の前で苦しんで……"死んでしまう"だなんて、そんなの……嫌だ……!)スッ…

ナトリ「……?」

ショタ提督(ナトリは……僕が助ける。このまま、苦しませたりはしない……!)カッ…!

パァァ…ッ!

ナトリ「……!」

ナトリ(あ、れ……?熱さと辛さが抜けていって……体が、軽くなっていく……)

グレ「……あれ!?熱が下がってる!」

アサカゼ「本当……そんな、こんなことって……!」

ショタ提督「………」

ナトリ「……50周目提督、もしかして……貴方が……?」

ショタ提督「……うん。僕、苦しむナトリを助けたかった。それだけじゃない。ナトリが死んで、離れ離れになるのが……嫌だった」

ショタ提督「どうしてかは、よく分からないけど……とにかく、嫌だった。そう思ったら、手が動いて……」

ショタ提督「そして……ナトリが助かったことが分かると、胸の奥が……いつもより、凄く温かくなったんだ……!」

ナトリ「………」ギュッ

ナトリ(50周目提督……私の、為に……)

彼はまた、己の力を無意識の内に行使し……彼女の病を、見事完治させたのだ。

本来であれば、彼女は助かることはなかった。だが、彼の干渉により……彼女の命は救われることとなったのだ。

このようなことが可能となったのは、彼が彼女達から"善意"を注がれたことで……以前より、その存在の安定が強まったからだ。

ショタ提督「……っ」グッ

ショタ提督(僕が触れた生き物は、生気と活力で満ち溢れるようになる……もしかして、僕には……そんな力が……?)

彼はこの時点で、生物に対して己の力が有効であることを理解した。

同時に、彼女達から"感謝"の気持ちを与えられたことで……彼はこの力を使い、他の生物を元気にする為に活用しようと決めた。
649 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 23:24:26.79 ID:A0yYdP+m0
そして、彼と彼女達は更に多くの時を共に過ごし……数年の月日が流れた。

未だ己の存在に対する認識が完全に戻っていない彼にとっては、その時間は自らの想いを募らせるのに十分過ぎた。

そしてそれは、彼だけでなく……彼女にとっても、同じであったのだ。

ザザー… ザザー…

ショタ提督「………」

ナトリ「………」

日が沈み、辺り一面が暗くなってゆく。そんな中、彼と彼女は……2人静かに浜辺に座り、夕焼け空を眺めていた。

そして同時に、彼は己が抱く気持ちについて考えていた。時が経つにつれて膨らんでいく、この想いの正体を。

ショタ提督「………」

ナトリ「……大丈夫?」

ショタ提督「……え?」

ナトリ「ずっと、上の空だったから……」

ショタ提督「………」

ショタ提督(やっぱり、そうだ……ナトリと一緒にいる時や、ナトリの顔を見ている時……いつものような温かさではなく、胸が熱いと感じる……)

ナトリ「………」

ナトリ(……まだ思い出せないことを、不安に思ってるのかな。私には……見ているだけしか、出来ないのかな……)

ナトリ(目の前で、50周目提督が困っているのに……私を、助けてくれたのに……!)

彼女も彼と共に過ごし……彼に特別な感情を抱いていた。そして、彼とは違い……その感情の意味を理解していた。

しかし、彼女から見れば……彼がそれどころではないことは、分かっている。

ナトリ「……私がいるから」

ショタ提督「……!」

ナトリ「不安になったり、怖くなっちゃったりしても……私達が、いつも傍にいるからね?」

ショタ提督(……ナトリ)

彼女は、自分の気持ちを伝えるより先に……彼が記憶を取り戻すことを優先した。

自分が想いを告げることで、彼に負担をかけたくないと考えていたのだ。

ショタ提督「……うんっ」

ショタ提督(……ナトリはいつも、僕のことを考えてくれる。そして、温かい気持ちを注いでくれる……その度に、胸の奥の熱が込み上がって……)

しかし、彼女のその心遣いが……彼が抱く、彼女への気持ちに火をつけることとなる。

我々の感覚で言う、親友と呼べる程に親しくなったグレやアサカゼ、ユーとは違い……彼は、ナトリに対して……
650 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 23:36:26.23 ID:A0yYdP+m0
ショタ提督「……ナトリ」

ナトリ「……何、かな?」

ショタ提督「僕、実は……さっきから、胸の奥が……凄く、熱い」

ナトリ「胸の奥が……?」

ショタ提督「うん。こうして、ナトリと一緒にいる時や……ナトリが僕のことを、考えてくれている時……凄く、凄く……熱くなる」

ナトリ「……!」

ナトリ(そ、それって……!もしかして、この子も……私のことを……?)

ショタ提督「……分からない。この胸の熱は……何……?ナトリのことを考えれば、考えるほどに……熱くなっていって……」ギュッ

ナトリ「……それはね?」スッ…

ショタ提督「……?」

ダキッ…

ショタ提督「あ……」

ナトリ「……こういうこと、だと思う」ギュッ

ショタ提督「……温かい」ギュッ

ナトリ「それは、体?それとも……胸?」

ショタ提督「……両方。ナトリから、温かさを感じて……胸の奥にも、温かさが伝わってくる……」

ナトリ「そっか……私も、同じだよ」

ショタ提督「同じ……?」

ナトリ「貴方のことを考えると、胸がドキドキして……貴方の顔を見ると、嬉しくなって……」

ショタ提督(……同じだ。僕と……)

ナトリ「……一緒に過ごす内に、貴方のことが……好きになっちゃったみたい」ギュッ

ショタ提督「"好き"……?」

ナトリ「うん、好き。大好き……ずっと、一緒にいたい……この温かさを、ず〜っと感じていたい……」

ショタ提督「………」

ショタ提督(……そう、か。やっと分かった……これが、胸の熱の正体……僕は、ナトリのことが……"好き"なんだ。きっと、いや、絶対……そうに、違いない……!)
651 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 23:37:23.99 ID:A0yYdP+m0
ショタ提督「……僕も」

ナトリ「……?」

ショタ提督「僕も、ナトリのことが……好き」

ナトリ「……!」

ショタ提督「ずっとこうしていたい……僕も、ナトリと一緒にいたい……!」

ナトリ「……嬉しい。凄く……すっごく、嬉しいよ……!」ギュッ

ショタ提督「……うん」ギュッ

ナトリ「えへへっ……私達、両想いなんだよね……?」

ショタ提督「両想い……?」

ナトリ「こうして、お互いが相手の傍にいたいと思うこと。それだけじゃない……相手のことを考えると、ドキドキすること……だよ」

ショタ提督「……じゃあ、両想い。僕とナトリは、両想い……」

ナトリ「……うんっ」

ショタ提督「……温かい」

ナトリ「私も……」

ショタ提督「………」ギュッ

ナトリ「………」ギュッ

ショタ提督(あぁ、伝わる……ナトリから、今までにないほどの温かい気持ちを……!体の奥から、力が湧き上がってくる……!)

……恋愛感情を抱いていた。ナトリを1人の女性として、好意を抱いていた。

彼は本来、人間に対して……恋愛感情を抱くことはない。

だが、今の彼は己について認識が曖昧となっている。言わば普通の人間と近い感性を持っている状態だ。

故に、彼は自分のことを大切に考えてくれて、最大限の優しさで包んでくれた彼女を……愛してしまったのだ。

だが、問題は無い。神……今は神とは呼べない存在だが、それに準ずる者と人間が恋し合ってはいけない等、誰が決めただろうか。

彼と彼女は、互いに相思相愛となり……彼女の寿命が尽きるその時まで、共に歩み続けてゆく――
652 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/21(木) 23:38:43.20 ID:A0yYdP+m0

























――そうなるはずだった。しかし、運命の歯車は……既に狂い始めていたのだ。



――その狂いが……"彼女"が、彼と彼女に……容赦無く牙をむくこととなる。
























653 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 23:40:34.78 ID:A0yYdP+m0
今回はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました!
それではまた次回の更新でお会いしましょう。
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/22(金) 00:13:42.96 ID:C6MN51IdO
おつ
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/22(金) 14:03:33.31 ID:txQ+KR+y0
早い話が全部42週目提督が悪いってことか
656 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 17:45:16.78 ID:HEE8sNIQ0
22:00〜23:00頃開始予定です。
657 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 22:08:53.17 ID:HEE8sNIQ0
始めます。
658 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 22:13:39.94 ID:HEE8sNIQ0
話は数年前……彼が浜辺で目覚め、彼女らに保護されたところまで遡る。

既に述べたが、"その存在"は42周目提督により2つに分裂させられてしまっている。

彼が目覚めたということは……もう片方の存在も、意識を取り戻すことは予想出来たことだろう。

しかし、もう1人の"彼"……否、"彼女"は……運命の歯車の狂いによるしわ寄せを、とてつもなく受けてしまったのだ。

「……ん」

(ここは……どこ?それに、私は……一体……)

彼女は、彼との分裂の果てに具現化された存在。故に、彼とは"同一の存在"と言える。

しかし彼女は、彼とは対照的に……少女の姿をしていた。理由はもちろん、42周目提督への精神干渉による影響だ。

彼は42周目提督自身の姿を参考としていたが、彼女は42周目提督の記憶にある……潮と羽黒の姿を、無意識の内に再現した。

よって、彼女は潮と羽黒を足して2で割ったような外見をしていた。それが後々、彼女に不幸をもたらすこととなる。

だが、彼女には既に危機が迫っていた。目が覚めた場所は森。猛獣等が数多く生息している地だ。そんなところに丸腰でいれば……その後の末路は想像に難くない。

「グルル……」

「……え?」

(な、何……この、大きい生き物は……?)

「……グワアアアアアアアアアアッ!」

「こ、こっちに来た!?いやっ、来ないで!?ひゃああああああああああああっ!?」

猛獣にとって、人間は良い餌だ。そして武器を持たない人間が、突然襲い掛かってきた猛獣に勝つことなど出来るだろうか?

答えは否。彼女は無残に猛獣に襲われ……その身を噛み千切られ、貪り食われることとなる。

「グルルルルッ!グワアアアアッ!」

「嫌ああああっ!?痛い!?やめっ、やめてええええええええええっ!?」

だが、彼女は人間ではない。どれだけ痛めつけられたとしても、その傷は瞬く間に回復する。

更に、血しぶき等が飛び散ることさえ無い。傍から見れば、猛獣が人型の玩具にじゃれ付いていると言えなくもないだろう。

しかし、今の彼女の認識は人間のそれと変わらない。故に、彼女にとっては噛み殺される痛みが延々と続くこととなる。

それでも、やはり元が神である為、通常の人間とは違い精神崩壊を引き起こすことはない。

だが、その肉体及び精神に与えられる苦痛は決して無視出来るものではなく……

「ガアアアアアアアアッ!グルルルルルルルルッ!」

「嫌……嫌ぁ……っ!」

(顔を食べないで……腕を引き千切らないで……!お腹を抉らないでぇ……っ!)
659 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 22:29:22.23 ID:HEE8sNIQ0
グサッ!

「ギャアッ!?」

「うぅ……え?」

グサッ! グサッ! グサッ!

「アガァ……ッ……!」

(な、何が起こったの……?)

彼女が痛みと混乱に取り乱していると、突如猛獣に向かって何かが投げ付けられる。

そして無残に猛獣の体中に刺さっていく。しばらくすると、猛獣が痛みと出血で動きを鈍らせていく。

「グルゥッ……」ピクピク

「……!」

(あれは……私と同じような姿をしてる人達が……もしかして、私を助け……)

彼女は、少し離れた位置にいる者が自分のことを助けてくれたのだと考える。

しかし、その期待は一瞬にして裏切られることとなってしまう。

グサッ!

「はぐっ!?」

グサッ! グサッ! グサッ!

「ど、どうして……うぐっ!?い、嫌っ!やめ……うぁっ!?」

猛獣の息の根を止めた何か……石槍が彼女の身体を貫いていく。

石槍を投げる者……狩りをする原始人達は、まだ猛獣を仕留めたと考えていない。

同時に、猛獣と比べて小さい彼女の体が見えておらず……彼らは容赦無く石槍を投げ続けた。

その結果、彼女の身体のいたるところに石槍が刺さることとなった。

無論、石槍が刺さったと同時に石槍は消滅し、彼女の傷も完治する。だが、それでも彼女にとっては耐え難い苦痛に変わりないのだ。

(こ、ここから逃げなきゃ……でないと、ずっと痛い目に遭わされる……!)ヨロヨロ

彼女は震える手足で、体中を石槍で貫かれながらも、何とかその場から遠ざかることに成功した。
660 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 22:30:13.94 ID:HEE8sNIQ0






























――――――だが、彼女の苦しみはまだ終わらない。否、まだ始まったばかりなのだ。





























661 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 22:41:06.79 ID:HEE8sNIQ0
「はぁっ、はぁっ……!」

彼女は飲まず食わずで、汗と土で汚れた身体を動かして……眠ることさえせず、走り続けていた。

飲食・睡眠・その他休息等を一切必要としない存在でも、今の彼女は己に対する認識が人間と同等である。

そのような状況で、こんな無茶を続けていれば……彼女の精神は疲労困憊していく。

「ぜぇ……ぜぇ……ここ、は……?」キョロキョロ

無我夢中で走っていた彼女は、気が付けば見知らぬ土地へと辿り着いていた。

少なくとも、獰猛な野生生物と殺意に満ち溢れた人間に襲われた場所ではない。

「………」ヘナヘナ

彼女は一先ず安全を確保出来たと考え、ようやく警戒を解き、その場に座り込む。

本来であれば、体力の概念等存在しない彼女だが……今だけは、ボロボロの身体を休めなければと思っていた。

「………」キョロキョロ

(周りに、何もいない……これなら、大丈夫……よね……?)

辺りは既に暗闇で覆われている。これ以上、無暗に移動したとしても迷ってしまうだけだろう。

彼女はそう結論付け、その場で仰向けとなり、静かに目を閉じる。

(……日が昇ったら、もう少し安全そうな所へ行かないと……)

例え睡眠が不必要な存在だとしても、意識を休ませることは出来る。

だが、彼女の選択は間違っていた。闇夜に紛れていた上に、己の認識が朦朧としていた彼女は見逃してしまったが……

原始人A「あれは……女、か?」

原始人B「……みたいだな」

彼女を舐め回すように見ていた、人の皮を被った野獣が近づいていたことに……
662 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 22:59:37.68 ID:HEE8sNIQ0
しかし彼女は、身体を休めることに意識を集中させていた。故に彼らの接近を察知出来なかったのだ。

彼女はそのまま彼らに拉致され、住処まで運び込まれる。無論、それだけで済むはずがなく……

原始人A「はぁはぁ……」

「んっ……ぁ、え……?」

(何だか、身体が……おかしような……)

原始人B「早くしろよ」

原始人C「次は俺だぞ」

原始人A「分かってるよ!いいから黙ってろ!」

「……っ!?」

(えっ、こ、これって……嫌っ!嫌ぁっ!?)

例え汚れだらけで、ボロボロだったとしても……彼女の容姿は間違いなく美少女に分類される。

そんな彼女が、現代人よりも本能のままに行動する原始人に見つかれば……こうなることは確実だった。

「や、やだ……!やめっ……!」

原始人A「ん?目が覚めたのか?」

「あっ、あぁっ……!嫌……っ!」

原始人B「どうせならそのまま眠ってくれてた方が良かったんだがな」

原始人A「関係無い。このまま犯すだけだ」

「やめてっ……!お願いだからぁ……!」

彼女の肉体を堪能する原始人。当然、そこに愛情等は無く、あるのは醜い欲望だけ。

彼女が必死にやめてほしいと訴えたところで、猿と化した彼らの耳に届くはずがない。

原始人A「んくっ……!」

「うぅっ……どうして……どうしてぇ……!」ポロポロ

原始人C「よし、交代だ!」

無論、今の彼女はどれだけ性行為をしたとしても……本人が望まない限り、妊娠することはない。

だが、それを忘れてしまっていた彼女は……目の前が真っ暗になった。汚らわしい男達の欲を何度もぶつけられ、そのたびに――

原始人D「お前は女なんだ……!俺達の子孫を産んで、増やしてもらわなきゃな……!」

「ぐすっ……うぅっ……!」ポロポロ
663 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:00:40.53 ID:HEE8sNIQ0






























――――――計り知れない絶望が、彼女の精神を蝕んでいき……同時に、彼女の目から涙が溢れ出していった。





























664 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 23:06:33.89 ID:HEE8sNIQ0
原始人B「あースッキリした!明日もこいつでヤろうぜ!」

原始人A「だけど生かしておくとなると、その分の食料も必要だぞ?」

原始人C「こいつに取らせればいいだろ。誰が奴隷の為の飯なんざ調達するかよ」

原始人D「それもそうだな!」

スタスタ…

「………」ピクピク…

(……どう、して……私が、こんな目に……)

彼女の目には光が宿っていなかった。その瞳の奥は、ドス黒い闇で澱んでいた。

だが、彼女の絶望はこの程度では終わらない。心無い男達に犯された翌日、彼女は無謀な狩りへと連れ出されていた。

原始人「ほら!とっとと歩け!」ガッ!

「うっ……」

原始人「ここで適当に狩りをして、自分の飯くらい何とかしろ!」

「………」

原始人「何だ?逆らうのか?それとも逃げようと企んでるのか?」

「………」

原始人「この辺りは俺達の狩り場なんだ。変な気を起こそうとしたら、すぐに仲間を呼んでお前を犯すからな」

「……どうせ私が言う通りにしても、後で……昨日のようにする気でしょう?」

原始人「当たり前だ。お前の体、最高に気持ち良かったからな!」

「………」ジワッ

(酷い……私、何も悪いこと……していないのに……)

助けを求めようとしても、周りには敵しかいない。自分1人で立ち向かおうにも、あんな大人数の男に敵うはずが無い。

彼女は彼らの言う通りにせざるを得なかった。そこから先は、彼女の地獄のような日々が続いてゆく。
665 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 23:17:59.02 ID:HEE8sNIQ0
「ガルルルッ!ガアアアアアアッ!」

「かはっ……!うぐっ……!」

ある時は、無謀な狩りのせいで猛獣に襲われ、その身を噛み千切られる。

それで絶命することが出来れば、どれほど楽だったことだろう。

だが、どれほどの傷も瞬く間に全快する彼女にとっては、延々と苦痛が続いてしまう。

原始人「1つも取れなかっただと!?まさか俺達の飯をあてにしてるんじゃないだろうな!?」

「そんな、つもりじゃ……」

原始人「うるせえ!だったら今日は飯抜きで俺達に犯されてもらうからな!」グイッ

「うぐっ……!」

(目の前の人達は、何かを口にして……私は、それさえ与えられず……ただ、体を汚されて……)

ある時は、ロクに食料を得ることすらままならないまま、飲まず食わずで強姦される。

それだけではない。彼らは彼女を人として扱わず、性奴隷としか見ていなかった。

彼女に人権等存在しない。ただ強姦されるだけでなく、彼らの機嫌次第では……

原始人達「糞ッ!お前のせいで俺達まで飯抜きじゃねえか!!」バキッ!

「あうっ……!?」バタッ

原始人達「せめてお前が食い物を取っていれば、それでしのげたかもしれないのに……っ!」グイッ

「く、苦し……っ!私のせいに、しないで……っ!」

原始人達「俺達に口答えするなッ!!」バキッ!

「かはっ……!?」バタッ

ストレスの捌け口として、サンドバッグのように暴行を加えられることも多かった。

どれだけ「やめて」「嫌だ」と叫んでも、彼らの心に……彼女の心情が届くことは無い。

否、むしろ……彼らの醜い欲望ばかりが……"穢れを知らなかった"彼女に注がれてゆく。

「……っ」プルプル

(最低な、人達だ……いつも、私に……酷いことばかり、して……今だって、私のことを……汚すことしか、考えていない……)

(それだけじゃない……イライラしたり、何か気に入らないことがあれば……私を、殴って……蹴りつけて……っ!)
666 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:21:29.53 ID:HEE8sNIQ0






























――――――そんな日々を過ごす内に、彼女の心には……人の"悪意"ばかりが植え付けられていき、彼女自身も……歪んでいった。





























667 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:27:09.28 ID:HEE8sNIQ0
あれから何年経過したことだろう。彼女は強姦され、猛獣に身体を食い千切られ、暴行される日々が当たり前となっていた。

最初は事あるごとに絶望していたが、いつしか……彼女は常に濁った目で、何もかもを諦めていた。

途中、彼らが狩り場を移動したり、住処に集う原始人が入れ替わったりもしたが……不幸なことに、彼女を労わる者は誰1人いなかった。

「………」

原始人A「はぁっ、はぁっ……こいつ、最近何も喋らないな」

原始人B「下手に反抗されるよりはマシじゃないか?」

原始人A「それもそうだな。この体をずっと使えると思うと興奮するぜ!」

「………」

だが、彼女は気がついていなかった。全てに希望を見失っていた彼女であったが……

「………」ギロッ

原始人A「……ん?」

原始人B「どうした?」

原始人A「いや、こいつ、こんな真っ赤な目してたっけか?」

彼女には……"その存在"には、彼らや猛獣達の欲望と憎悪……"悪意"が注ぎ込まれ続けていたことに。

それだけでは無い。彼女は、己を支配する"絶望"と、その身に植え付けられた悪意に侵食され……

「……す」

原始人AB「は?」

「……す……す……」

原始人A「な、何だよ?」

原始人B「全然聞こえねえぞ?言いたいことがあるならはっきり言えよ」

彼女の心は……既に限界を超えていたことに。そして、悪意と絶望が入り交じり、今にも破裂寸前だった彼女の"感情"が……
668 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:29:46.78 ID:HEE8sNIQ0






























「お前達、全員……皆殺しにしてやる……ッ!!」


原始人AB「ッ!?」


――――――今まさに、大爆発を起こしてしまったことに。





























669 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:31:32.90 ID:HEE8sNIQ0
一瞬であった。彼女の溜め込んだ怒り、憎悪、絶望……その全てが、この一帯に拡散した。

「はぁはぁ……」

原始人A(骨)「」ガラガラ…

原始人B(骨)「」ガラガラ…

その他原始人達(骨)「」ガラガラ…

「……は、ははっ。凄い……急に胸の奥からドス黒い感情が込み上がってきて、それに身をゆだねたら……憎くて仕方なかった奴らが、亡骸に変わり果てるなんて……!」

それが直撃した原始人達は、彼女の膨大な絶望に飲まれ……その命が即座に散ることとなった。

「………」キョロキョロ

(いや、こいつらだけじゃない。よく見ると、周りの動植物も……)

骨×大量「」ガラガラガラ…

周囲は地獄絵図と化していた。動物は肉さえ残らず骨となり、植物は真っ黒に変色し、全てが朽ち果てていた。

この光景を見て、彼女は……確信した。自分には、生物や無生物を問わず……全てを破壊する力が宿っているということに。

否、正確には……彼女が本来持っていた力が、人の悪意に染められてしまったことで……このような力に変異してしまったのだ。

「……ははっ。あははっ……あははははっ!」

(そう……そうよ……!この世を生きている奴らなんて、どいつもこいつも……汚らわしくて、醜くて、最低で……ゴミのような奴ばっかり……!)

(私だって、ずっと酷い目に遭わされてきた……!どいつもこいつも、人間も動物も……みな存在価値など無い。あるとすれば、醜くて反吐が出る憎悪と欲だけ……!)

そして彼女は、最悪の存在と化する。彼らのせいで、本来であれば宇宙に生を与えるはずの存在だった彼女が……

(だからこそ、私が……全部、ぶっ壊してやる……!1人残らず、欠片も残さず……滅ぼしてやる……ッ!!)

この世の全てを憎み、滅ぼす存在となってしまう。今や彼女に、かつての面影は無い。

目は怒りで赤く染まり、身体は絶望で黒く染まり……肌は"無を望む"かの如く、真っ白となっていく。

彼女の姿が変貌を遂げた、まさにその時……彼女は、ある"少年"と少女達を見つける。

「……ふふっ」

(ちょうど良い。手始めにあいつらから滅ぼして…………ッ!?)

そして、彼女は衝撃を受ける。人間は滅ぼすべき醜い存在としか思っていなかった彼女にとって、少年と少女達の様子は……あり得ない光景だったのだ。
670 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 23:32:29.33 ID:HEE8sNIQ0
グレ「そっかそっかぁ。2人が夫婦になるとはね〜!」

ショタ提督「………」ニコ…

ナトリ「えへへ……♪」

アサカゼ「それで子供はいつ作るの?」

グレ「あっ!それ私も気になる!」

ショタ提督(……子供?)

ナトリ「ふえっ!?そ、それは……///」モジモジ

ユー「あ、アサカゼ……!それにグレも……!」アセアセ

アサカゼ「あははっ、ごめんなさい」

ナトリ「え、えっとっ……いずれは、その……///」モジモジ

ショタ提督「……?」

グレ「……50周目提督、もしかして……意味、分かってない……?」

ショタ提督「………」

ナトリ「……そっか。そうだよね……何もかも、忘れちゃってるもんね……」

グレ「でも大丈夫!ナトリが1から全部教えてくれるから!」

ナトリ「ふえええええっ!?///」

ショタ提督「……本当?」

ナトリ「あぅ……///」

アサカゼ「もう。そんなことで照れてたら、いつまで経っても子供を産めないわよ?」

ユー「だ、だからその話題からは離れた方が……」アセアセ
671 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:33:05.78 ID:HEE8sNIQ0





「……何よ、あれ」

(どうして……あんなに楽しそうに、会話して……)

少年……50周目提督は、ナトリ達と楽しく会話し……明るく賑わっていた。

彼女がこれまで味わってきた、耐え難い苦痛とは……何もかもが正反対だ。

(どうして……人間は、酷い奴らばかりじゃ……)プルプル

彼女は混乱していた。今まで辛い思いばかりしてきた彼女にとって、ナトリ達のような人間は……受け入れるには、眩し過ぎたのだ。

それだけでなく、彼らが仲良くしている姿を見ていると……心の奥から、今まで感じたことが無い……ドロドロとした黒い感情が湧き上がってくる。
672 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:34:22.99 ID:HEE8sNIQ0
























――どうして……お前は人間と仲良くしている?




――私は人間共に酷い目に遭わされたのに。




――どうしてお前は人間と話していて、そんな幸せそうな顔をする?




――私は人間に対して、殺意しか抱いたことが無かったのに。




――どうシてお前ダけ良い想イをしテいル?




――私ハずっとト辛い思イばカりしテきたノニ




――許セナイ。




――許セナイ……許セナイ……!























673 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:37:45.34 ID:HEE8sNIQ0
ユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイ――――――
674 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 23:40:02.20 ID:HEE8sNIQ0
今回はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました!
更新頻度が少なくなってしまい申し訳ありません。ただ、回想パートはまだまだ続きます。
それではまた次回の更新でお会いしましょう。
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/29(金) 23:41:48.95 ID:fBSE6ZRco

片割れが提督になってもう片割れは深海棲艦になったのか
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/30(土) 00:52:27.46 ID:AUi+rTBwO

42週目提督の爪痕が深すぎる
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/30(土) 01:45:47.71 ID:Eg572+gm0

大戦犯42週目提督
お前のせいでやべーことになってんじゃねーか!早くなんとかしろよ!
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/30(土) 07:50:57.44 ID:O+CSTEuU0
乙乙
42週目提督と嫁たちは早く彼女を何とかしろ
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/30(土) 09:38:58.78 ID:zY0xDS6o0
しかし42週目とENDをむかえてしまった上、片割れに勝手に姿を使われたうえ深海棲艦の祖の姿にされた潮と羽黒がある意味不憫すぎる
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/30(土) 11:01:59.95 ID:yx0oMozlO
ああ深海の皆さんがやけに卑猥なのっそういう……
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/02(月) 13:46:46.53 ID:kAE8VbC50
そして42週目はこんなことになってるとも知らずにこの時代で楽しく暴れまくってんだろうな絶対
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/02(月) 20:07:42.23 ID:ilfFHXzRO
片割れが深海棲艦なら現代の艦娘とかショタ提督たちは神(の片割れ)と戦争してるって事か?なんか神話っぽいな
そして深海棲艦の元ネタになった42週目嫁コンビェ・・・これ狭霧と速吸が知ったらネタにして爆笑しそう
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/03(火) 23:11:59.61 ID:Qxttyyvg0
狭霧は絶対爆笑してるかも
速吸はむしろ一応失恋したことに感謝の涙が止まらなくなってそう……失恋艦唯一の例外だし
失恋艦で集まっても速吸に関してはむしろ本当に失恋したことが救いになっちゃってる特異例すぎるね
684 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 20:49:03.46 ID:jD9SdfWF0
22:00〜23:00頃開始予定です。
685 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 23:01:01.63 ID:jD9SdfWF0
始めます。
686 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 23:02:41.29 ID:jD9SdfWF0
それは、我々の言葉で言い表せば……"嫉妬"。

自分ばかりが人間共に虐げられてきたのに、目の前の少年はあろうことか、人間と楽しげに会話しているではないか。

そのような光景が……残酷な事実が、心に飛び込んできて……平然としていられるほどの冷静さは、既に彼女から消え失せていた。

ショタ提督「……っ!?」ゾワッ

ショタ提督(な、何だ……!?今、氷のようにつめたく、マグマのように熱い悪意を感じたような……)

ナトリ「……50周目提督?」

それほどの黒い感情を込めていれば、人の想いに敏感である彼も当然それを察知する。

しかし、彼女は彼よりも早く己の力を解き放っていた。

彼女の心が、炎のような"嫉妬"という悪意で埋め尽くされ……気がつけば彼女は……彼らを攻撃していた。

「………」カッ

ショタ提督「……危ないッ!!」バッ!

ナトリ達「え?」

バシュウウウウウウウウウンッ!

ナトリ達「きゃあっ!?」

ショタ提督「はぁはぁ……」

ショタ提督(と、咄嗟に身体が一人でに動いて……だけど、そのお陰でナトリ達を守れた……!)

彼は反射的にナトリ達の前に立ち、その身に込められた"善意"の力を発揮し……彼女の力を防ぐ。

しかし、彼女の力はとてつもなく強い。故に、完全には防げず……周囲に分散してしまう。

彼とナトリ達の周辺に生えていた草花は黒く染まり、その生命に終止符が打たれてしまった。

ナトリ「は、花が枯れてる……!」

グレ「木もシワシワになっちゃたよ!?」

アサカゼ「う、嘘……何で……」

ユー「こんなことって……」

「……へぇ。まさか、今のを防ぐなんて」

ショタ提督「……!」クルッ

ナトリ達「だ、誰……!?」クルッ

「………」ズゴゴゴゴゴ…

ショタ提督(……ナトリ達と同じ、女の人……?)

ナトリ達(女の、子……?だけど、目が赤いし……肌も真っ白で……)
687 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 23:19:17.71 ID:jD9SdfWF0
「……どうしてお前達は仲良くしているの?」

ショタ提督「……どういう、意味?」

「どうしてそんなゴミ同士で楽しそうにしてるかって言ってるのよッ!!」カッ!

ショタ提督「っ!」バッ

バシュウウウウウウウウウンッ!

ナトリ達「ひゃあっ!?」

ショタ提督「……っ!」

ショタ提督(ま、また身体が一人でに……それに、あの女の人の力を防ぐと……周りの植物から、生気が失われて……!)

彼と彼女は、元が同一の存在だとしても……今、己に宿る力の方向性は真逆と言って良いだろう。

ナトリ達から優しさや思いやり、温かさ……"善意"を注がれた彼は、人間や生物を癒し、幸福に出来る力に変貌した。

だが、心無い男達から凌辱され、人としての尊厳さえ与えられなかった彼女は……あらゆる者を破滅させる、災厄を起こす力へ変り果ててしまった。

そして、両者の考え方も正反対……彼と彼女の対立は、もはや定められた運命と言って良いだろう。

ショタ提督「……どうしてこんな酷いことをするんだ」

「酷い?馬鹿じゃないの?人間なんて……いや、この世全ての者は、どいつもこいつも醜い欲だけでのうのうと生きているゴミばかりじゃない!」

ショタ提督「そんな訳無い。人間は……いや、どの生き物も、生きる為にいつも一生懸命で……生気と活力で満ち溢れている」

「ハッ!自分のことしか考えていない馬鹿な奴らの集まりでしょうが!お陰で私は……私はずっとっ……!」ギリッ…!

ショタ提督「………」

ショタ提督(やはり感じる……彼女から、全てを埋め尽くすほどの……黒い感情を)

「それに……お前達を見ていると、凄くイライラするのよ……!」

ナトリ「い、イライラ……?」

「どうしてうわべっつらだけの、まやかしの優しさなんて向けてるのよ。どうせお前だって、そこの餓鬼のことなんか……どうでも良いと思ってるんでしょ?」

ナトリ達「……!?」

ショタ提督「………」
688 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 23:37:03.60 ID:jD9SdfWF0
「だって、こいつと仲良くする理由が無いじゃない!夫婦?何を馬鹿なことを!一緒にいれば食料は多く減っていくし、狩りに出そうにもチビで役立たずでしょうが!」

ナトリ「………」

グレ「役立たず!?そんな風に考えたことなんて無いよ!」

「はっきり言ってただの邪魔者でしかない!それなのに夫婦!?どうせ性欲処理用の道具としか考えていないんでしょ!?」

アサカゼ「せ、性よ……っ!?」

「だったら何?何の利用価値さえ無いこいつと仲良くしたり夫婦になる理由は!?無いでしょ!?無いわよねぇ!?ただの無駄な行為でしかないものねぇ!?」

ユー「……何、言ってるの、この人……怖い……」

「私からすればお前達人間の方が醜くて最低な存在よ!この期に及んで性処理の為に餓鬼に媚びを売るなんて!これだから人間は度し難いゴミでしかないのよ!」

もはや彼女は自分でも何を言っているか分かっていなかった。だが、それだけ人間を含む全てに憎悪を抱いていた。

光を失った瞳で、狂気的な笑みを浮かべながら……ただ彼らに自分が抱く憎しみを洗いざらい吐き出していた。

その姿は、まさに狂人と呼ぶに相応しい。人間の"悪意"を、その身に刻まれ続けてきた彼女は……もう、戻れない領域まで堕ちてしまっていたのだ。

ショタ提督「………」

ショタ提督(ダメだ。話が通じそうにない……一体、何故この女の人は僕達を……人間をそこまで憎んで……)

対する、人の"善意"に包まれてきた彼は……彼女の言っていることが理解出来なかった。

人は優しく温かい気持ちを抱いていることを体感してきた彼は、彼女と反対の考え方なのだ。それで彼女の気持ちを理解しろというのが無理な話。

だが、彼女が異常な程に全てに対して憎悪を抱いていることだけは把握していた。彼女の思考が危険であることも、無意識の内に感じ取っていたのだ。

ナトリ「……して」

「は?」

ナトリ「今の言葉……取り消して」

「取り消す?」

ショタ提督「……ナトリ?」

ナトリ「利用価値?性欲処理……そんなこと言わないで!私は……そんな馬鹿な考えで、50周目提督と一緒にいる訳じゃないよ……!」

「……ッ!?」

ショタ提督「……!」

だが、彼女の"悪意"に真正面から反発する者が現れた。そう、50周目提督と恋仲となった……ナトリである。

ナトリにとって、彼女の言葉は……最愛の50周目提督を馬鹿にされただけでなく……

自身が抱く気持ちさえ、勝手な理由で否定されたのだ。そんな彼女の言葉を、許す訳にはいかない。絶対に、許してはいけないのだ。
689 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 23:49:45.53 ID:jD9SdfWF0
ナトリ「貴女がどうしてそんなことを考えてるかは分からないけど……そんな言い方されて、黙っていられるほど……私は落ち着いていられない……!」

ナトリ「私はこの子を……右も左も分からないこの子を、ただ助けたいと思っただけ……!」

ナトリ「狩りがどうとか、役に立つかなんて……そんなこと、関係無い……!一緒にいたいと思ったから、私はこの子と一緒にいるんだよ……!」

「……やめて」

ナトリ「そんな捻くれた考えでこの子を傍に置くほど、私は酷い人間じゃない……!」

「やめなさいよ……」

ナトリ「でも、それ以上に許せないのは……!」

「やめなさいって言ってるでしょ……!」









ナトリ「大好きな50周目提督の悪口を言ったこと……!この子を悲しませるようなことをするなら、私が許さない……!」









「――ッ!!」

ショタ提督「ナトリ……」

ナトリ「……これが私の気持ち、だよ?」ギュッ

ショタ提督「……うん。僕も、同じだよ……」ギュッ

ナトリの心の叫びは、彼にしっかりと届いていた。彼の心に……その存在全てに、温かさと優しさ……"絆"が刻まれた。

「……殺す」

だが、その言葉は……感情は、彼女にとって、最も不愉快で……すぐにでも消し去ってしまいたいと思える程に、憎い言葉だったのだ。

「殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺すッ!全員殺してやるうううううううううううううううううッ!!」カッ

ナトリ達「っ!?」ビクッ

ショタ提督「危ないっ!」バッ

バシュウウウウウウウウウンッ!

グレ「あぁっ!?向こうの花まで枯れて……!」

アサカゼ「そ、それに……遠くで走っていた動物が、ほ、骨に……!」

ショタ提督「……どうしてこんなことをするんだ。何の罪も無い生物を痛めつけるなんて……」

「うるさいっ!お前なんかに……お前達なんかに、私の気持ちが分かってたまるかああああああああああああああああッ!!」カッ

ユー「ま、また……!」

ショタ提督「っく……!」バッ

バシュウウウウウウウウウンッ!

ショタ提督(このままでは、周囲が死の土地となってしまう……何とかしなければ……!だけど、どうやって……)
690 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:06:57.80 ID:jYzv0GcH0
「糞ッ!」

(あいつがいる限り、私の力が分散される……周りはどんどん酷いことになっていってるけど、肝心のあいつらを滅ぼせないんじゃ……!)

(そもそも、どうして私の力を防げるのよ!さっきの男共も、向こうにいた動物も一瞬で骨になっただけなのに……!)

怒りに身を任せている彼女だが、同時に現状を分析することも怠っていなかった。

彼は少なくとも、普通の人間でないことだけは分かる。もしかすると、彼女のように得体のしれない力を行使出来る存在かもしれない。

だが、こちらの力を分散させることしか出来ないということは……少なくとも、彼女を消し去れるだけの力は持っていない可能性もある。

(……それだけじゃない。あいつは自分よりも、傍にいる女共を守ろうとしている……チッ、反吐が出るわね……)

自分より他人を優先する等、かつて自分の身体に欲をぶつけてきた人間からは想像も出来ない行動だ。

それも、私に似た力を持っているにも関わらず……人間というゴミを守る為に力を行使するという、愚かにも程がある行為。

(……気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いッ!!こいつだけは……こいつらだけは絶対に滅ぼす……ッ!)サッ

そう考えた彼女は、力の使い方を変化させる。今までは彼らに対し、己の力をぶつけようとした。

しかし、それは彼の手によって防がれてしまう。しかし、それが突然……"ぶつける"のではなく、こちらに"引き寄せる"性質に変化したとすれば……

「……だったらこれならどう!?」カッ!

ナトリ「……っ!」ギュッ

ショタ提督(またか……!でも、力を分散させれば……!)スッ

(引っかかったわね?)ニヤリ

グレ「……あぁっ!?」ドクンッ

アサカゼ「……うっ!?」ドクンッ

ユー「……あぅっ!?」ドクンッ

ナトリ「……っ!?」ビクッ

ショタ提督「……?」

ショタ提督(おかしい……先程までとは違って、こちらへ向かって来る力を感じない……)

グレ「」バタッ

アサカゼ「」バタッ

ユー「」バタッ

ナトリ「い、今……身体が、フワッとしたような……えっ、ぐ、グレ?アサカゼ?ユー!?」チラッ

ショタ提督「ナトリ!?どうし……ッ!?」ゾクッ

ショタ提督(そ、そんな……!グレ達から、生気を感じない……!?)

「……ふふっ。くっふふ……あはっ、あはははははははははははっ!見事に騙されてくれたわね!」

ショタ提督「……グレ達に何をした」

「決まってるでしょ?力をぶつけても防がれるなら、いっそのこと……お前達の魂を吸い取って、私が直々にぶっ壊してやろうと思ったのよ!」

ショタ提督「っ!?」

ナトリ「た、魂を……?」
691 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:18:10.17 ID:jYzv0GcH0
「でも、どうしてお前だけ無事なのかしら?4人仲良く魂を奪い取ってやろうと思ったのに」

そう。彼女の言う通り、ナトリだけは彼女による攻撃から免れることが出来ている。

結論から言えば、ナトリが彼の手を握っていたからである。そのお陰で、ナトリは彼と"共鳴"し……守られたのだ。

ナトリ「………」ギュッ

ショタ提督「……!」

ショタ提督(もしかして、僕の手に触れていたから……)

「ま、1人くらい後でどうにでもなるか。まずはこいつらの魂から消滅して……っぐ!」

ショタ提督「や、やめろ……!」

ナトリ「グレ達に何をする気……!?」

「……チッ」

(こいつら、魂になってまで抵抗するなんて……!しかも、変な力を感じる……!)

魂となったグレ達は、肉体から引き離されるも……まだその意識や精神まで消し去られてはいなかった。

それに加えて、グレ達の魂には……ある共通点があった。それは――

(眩しくて、生温くて……耐え難い気持ち悪さが体を駆け巡る……!あいつから感じる嫌悪感と同じ……!)

(……そうか。そういうことか……これがあいつの力か。どうしてこいつらに同じ力が宿っているかは分からないけど……)

――かつて彼と彼女がばら撒いた"力の欠片"。それらがナトリ、そしてグレ達の魂に宿っていたのだ。

無論、彼と彼女が持つ力と比べれば、その魂に宿る力は微々たるもの。

だが、その力は……彼と彼女が証明しているように、己が抱く想いに比例して変質し、強化されてゆく。

(……私にとって、身の毛がよだつくらい……憎くて、たまらない……ッ!!)ギリッ…!

このまま消滅などしたくない。そして……彼とナトリを守りたい。その想いが、彼女の力に抗っていた。

ショタ提督「……!」

ショタ提督(……感じる。目の前の女から……グレと、アサカゼと……ユーの想いを……!)

彼はグレ達の魂と、己の力の欠片と"共鳴"し……グレ達がまだ生きていることに気がつく。

ナトリ「……!」

ナトリ(……どうして、かな。グレ達は……まだ、死んでない……はっきり、分かる……心に、そう伝わってくる……!)

そして、グレ達と同じように彼の"欠片"を宿したナトリも、また……同じ欠片を持つ者同士で"共鳴"し、グレ達の生存を確信する。

まだ間に合う。例え肉体から魂が引き離されてしまっても、魂さえ失われていなければ……助けられる可能性は残されているのだ。
692 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:32:09.70 ID:jYzv0GcH0
ショタ提督「……今すぐグレ達の魂を元に戻すんだ」

「言う通りにするとでも?」ギロッ

ショタ提督「………」

「あのねぇ?お前、自分の立場を分かってるの?私があのゴミ3人の魂を握ってるのよ?」

「仮にお前が私を攻撃したとしたら、私の中にいるゴミ3人も一緒に苦しむでしょうねぇ?」

ショタ提督「くっ……」

ナトリ「どうして……どうしてそんな酷いことが出来るの……!?」

「うるさいッ!!優しさなんて、思いやりなんて……全部、幻想に決まってるでしょうが!」

「人間なんか……いや、この世の何もかもがいらない……全部滅ぼしてやるッ!!」

ショタ提督「そんなこと……させる訳が……!」

「まだ言う!?それなら早く私を消してみなさいよ!私が握っているゴミ3人を犠牲にしても良いならね!」

ショタ提督「……っ!」

「ほら、早くやりなさいよ。やりなさいよ……やりなさいって言ってるでしょッ!?」

ショタ提督「………」

「どうして何もしないの!?どうせ上辺だけで仲良くしてた奴らでしょう!?どうしてそんな苦しそうな顔をするのよッ!?」

(悩むような表情をするな……悲しげな表情を見せるな……!誰かを思いやるような、生温い顔を見せるなああああああああああああああああッ!!)カッ

ショタ提督「ッ!?」

ナトリ「あっ……!?」

彼がグレ達を心配し、その身を案ずる表情を見れば見る程……彼女の"嫉妬"は膨れ上がる。

私はこんなにも苦しんだのに。私は誰にも心配されなかったのに。私は誰からも助けてもらえず、ずっと酷いことばかりされ続けてきたのに。

その黒い感情が、彼女の力を更に凶悪なものにし……今もなお抗おうとするグレ達の魂を、更に消滅まで追い詰める。

そして同時に……この世で最も憎み、汚らわしいと思う目の前の存在を……

かつて同一の存在であった彼を、消し去らんとばかりに絶望の力を打ち込む。

ショタ提督(さ、さっきの何十倍も……いや、何百倍も強い感情の力が……!だ、ダメだ、防げな――)
693 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:49:43.72 ID:jYzv0GcH0
ナトリ「ご、50周目提督……ッ!」バッ!

ショタ提督「――!?」

彼女の力をまともに受ければ、恐らく彼は無事では済まない。本能的にそう感じた彼女は、思考より先に体が動いていた。

そして彼に覆い被さるように抱き締め、迫り来る攻撃から彼を守ろうとする。

(馬鹿ね!お前如きが盾となったところで、どっちもまとめて地獄に叩き落して……!)

ズバアアアアアアアアアアアンッ!

「……なっ!?」

ショタ提督「……え?」

ナトリ「……うぅ」バタッ

ショタ提督「な、ナト……リ……?」

ナトリは彼女の攻撃を、その身で全て受け止めた。普通の人間であれば、そのまま骨と化し……否、肉体さえ残らないだろう。

だが、ナトリは彼の"欠片"を宿し……彼と深い絆で結ばれ、そして……

彼を救いたいという強い想いが、ナトリの存在を強くし……彼女の力に抗ってみせたのだ。

それでも、やはり無傷では済まない。ナトリの身体は、生きているのが奇跡と言えるほどボロボロとなり……

ゆっくりと倒れたナトリは、既に虫の息だった。

ショタ提督「そんな……どうして……!」

ナトリ「ゴホッ……だって、50周目提督を……守りたかった、から……」

「嘘……嘘よ。あの力を食らって、生きているはずが無い……そんな馬鹿なこと、あり得る訳……!」ワナワナ

ショタ提督「……っ!」

ショタ提督(ナトリから、生気が失われていく……!このままでは、ナトリの魂が……!)

ショタ提督「……嫌だ。嫌だよ……ナトリ、死なないで……!」ギュッ

ナトリ「ぅ……」

「……こ、こんなことがあってたまるかぁッ!!自分を犠牲にして人を守る!?人間共にそんな思考が出来る訳無いッ!!これは嘘!嘘嘘嘘ッ!!嘘に決まってるッ!!」

ナトリ「……嘘なんかじゃ、無い……!」

「何……!?」

ナトリ「私、は……ゴホッ……50周目提督のことが、大好き……だから……っぐ、心の底から、愛してる……から……っ!」

ナトリ「だから……私は、自分が傷ついたとしても……ううっ、はぁっ……!この子を、守りたい……この、気持ちに……嘘なんか、無い……!」

「――ッ!!」ギリッ…!

ショタ提督(ナトリ……僕の為に……僕の、為に……そこまで、してくれて……)
694 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:53:21.98 ID:jYzv0GcH0
ナトリ「はぁっ、はぁっ……ゲホッ!」

ショタ提督「っ!な、ナトリ!しっかり……!」パァッ…!

吐血したナトリを見て、彼はすぐにでも己に宿る力でナトリの苦痛を癒そうとする。

だが、そうは問屋が卸さないとばかりに、怒りが頂点に達した彼女が……刃を向ける。

「……させるか。これ以上、私に……その忌々しい光景を見せつけるなあああああああああああああああああッ!!」バッ!

ショタ提督「……っ!」

ショタ提督(あの女の攻撃を防がないと、全滅する……!だけど、ここで治療を止めれば、ナトリが……!どうする!?一体、どうすれば……!)

ナトリ「……50周目、提督……」ギュッ

ショタ提督「あっ……」

ナトリ「もう、いい……もう、いいの……きっと、この"身体"は……もう、助からない……」

ショタ提督「諦めちゃダメだよ!生きている限り、望みは……!」

ナトリは既に覚悟していた。このままでは、自分の身体は数分ももたないということに。

そして、仮にもう少しだけ身体が持ちこたえたとしても……目の前にいる女が攻撃すれば、自分達はただでは済まないと。

そして同時に、ナトリは確信していた。彼女がグレ達の魂を奪い取ったように……不思議な現象を引き起こせる彼なら、同様のことが出来るかもしれない。

ナトリ「……50周目提督」

ショタ提督「な、何…………ッ!?」

ショタ提督(い、今……ナトリを通じて、頭の中に……何かが、伝わってきて……!これって、ナトリの考えていること……?)

互いに親密な関係となり、魂の"共鳴"が強まった2人。既に彼とナトリは、言葉にせずとも……想いが通じ合う絆で結ばれていた。

そして彼は、ナトリの最後の手段を"把握"する。もはや賭けに近いが、現状を打開出来るとすれば……この方法しか無いだろう。

ナトリ「伝わった……みたい……うん、これなら……!」

ショタ提督「で、でも……万が一、失敗したら……」

ナトリ「大じょ……うくっ!あぁっ……大、丈夫……私を、信じ……て……!」

ショタ提督「ナトリ……」

「死ね……死ね死ね死ね死ねッ!死ねええええええええええええええええええええええッ!!」カッ!

ナトリ「お願い……っ!」

ショタ提督「っ!!」カッ…!

ナトリが彼の手を強く握り、同時に彼もナトリの手を強く握る。その瞬間、彼らの視界は眩い光に包まれ……
695 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/12/05(木) 00:54:29.83 ID:jYzv0GcH0






























――――――ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!





























696 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:55:46.21 ID:jYzv0GcH0
「はぁはぁ……や、やった!目障りな奴らを、これで……!」

彼女は勝利を確信していた。怒りに身を任せ、己が持つ力を……彼らにぶつけた。

あれを食らえば、いくら謎の力を持った人間だったとしても……ひとたまりもないだろう。

「……なッ!?」

だが、彼女が確信した勝利は、すぐさま撤回されることとなる。何故なら、彼女の眼前には……

ショタ提督「……っ!」バッ!

凄まじい速度で接近する、彼の姿が……無傷どころか、身体に光を纏った彼の姿があったからだ。

「ど、どうして!?あれほどの力を込めたのに!?どうして無事なのよ!?」

ショタ提督「……ナトリの力」

「は……?」

ショタ提督「ナトリが、僕に……グレ達を救い、お前を退ける力を与えてくれたからだ……!」

「な、何を言って…………ッ!」

彼女は彼の背後に視線を移す。すると、そこには……

ナトリ「」

絶命し、瞳から光が失われていた……ナトリの姿があった。否、そこにはるのは、ナトリの亡骸だ。

「……は、ははっ。あはははははっ!お前、やっぱり人間だな!私からあのゴミ共を助ける為に、夫婦だとか言っていた奴を犠牲にするなんて!」

ショタ提督「………」

彼女は、後ろに横たわる亡骸を見て……彼はナトリを盾とし、その隙を突いて自分に接近したと思い込んでいた。

ショタ提督「……何を誤解しているんだ?」

「……え?」

ショタ提督「……ッ!」ドンッ!

「あっ……!?」ドサッ

(う、動けない……!それに、

彼は有無を言わさず彼女を押し倒し、両手で掴みかかる。そして己の力を込め、彼女が再び力を行使出来ないようにする。

ショタ提督「僕は言ったはずだ……ナトリから、力を与えてもらったと……」ググッ

「は、離せっ!だからそれは、あの女を犠牲に……」

ショタ提督「犠牲になんか、していない……ナトリは、今も……!」
697 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2019/12/05(木) 00:57:04.45 ID:jYzv0GcH0






























ショタ提督「僕の中にいる……!」



ナトリ『私なら、50周目提督の中にいる……!』





























698 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:58:09.17 ID:jYzv0GcH0
「ッ!?」

(まさか、そんな……こいつは、私と同じ力を使って、あの女の魂を自分の中に取り込んだとでも言うの……!?)

ショタ提督「……そうだ」

「なっ……!?」

(今、私の心を読んで……)

ショタ提督「それだけじゃない。こうして、お前に触れて……ようやく分かった。いや、"思い出した"……!」

ナトリ『私も、50周目提督と1つになって……そして、貴女を魂で感じて……全部、分かった……!』

「思い出す……うぅっ!?」

その瞬間、彼女の脳裏に……失われていた記憶が蘇り、朦朧としていた認識が……覚醒した。

彼と彼女は、元は同一の存在であったこと。第三者の襲撃により、2つの存在に分離してしまったこと。

片方は、少年の姿となり……ナトリ達と共に幸せな日々を送っていたこと。

もう片方は、少女の姿となり……心無い人間や、猛獣達に……壮絶な苦痛を与えられ続けてきたこと。

そして、彼女が思い出した出来事は……同時に、元が同じ存在である彼も思い出し、彼に取り込まれたナトリにも知れ渡る。

ショタ提督「……そう、だったのか。それで、あんなことを……」

ナトリ『………』

「……ああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

ショタ提督「うわっ!?」

ナトリ『ご、50周目提督!?大丈夫!?』

「殺す殺す殺すッ!!お前だけは……お前だけは絶対に!何としても殺してやるッ!!うがあああああああああああああああああああああああああッ!!」

全てを思い出したことにより、彼女の絶望は……より一層、深くなってしまった。

どうして元が同じ存在なのに、少年となった自分自身ばかりが良い思いをして、私ばかりが惨めな思いをしなければならないのか。

私が醜い人間共から欲望のままに乱暴されていた裏で、こいつは呑気に楽しく暮らしていたのだ。

それを許すことなど、出来るはずがない……受け入れて、納得出来るはずが無い……彼女の怒りは暴走し、自分を押し倒す"自分"を滅ぼそうと決めた。

ショタ提督「っぐ……!?ば、馬鹿な真似はやめるんだ……!」

「お前なんかに私の気持ちが理解出来るかッ!!お前が楽しく暮らしていた時に、私は……私はあああああああああああああああああああッ!!」

ナトリ『だからって……何の罪も無いグレ達の魂を奪うことが、許される訳……!』

「うるさいって言ってるでしょッ!!こいつ諸共、お前も消してやる!絶対に消してやるううううううううううううううううッ!!」

ショタ提督(す、凄くドロドロした、黒い感情の力が流れ込んでくる……!それだけ、"僕"が感じた絶望は……!)ググッ

ショタ提督(……だけど、それでも……ナトリや、グレ達を傷つけようとするなら……僕は、"僕"を……退けなければならない……!)

彼女の途方も無い絶望……そして、その記憶……彼は彼女の全てを知るも、やはり彼女との和解は出来ないと結論付けた。

何より、彼女は既にグレ達の命を殺めようとしているのだ。せめて、グレ達を救ってからでないと……まともに話し合うことなど、出来ないだろう。
699 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:59:16.04 ID:jYzv0GcH0
「殺す殺す殺す殺す殺すッ!絶対に殺すッ!お前だけは許さないッ!死ねええええええええええええええええええええええええッ!!」

ショタ提督「ぐぅっ……!」

ナトリ『だ、大丈夫……!?』

ショタ提督(な、何とか……一刻も早く、グレ達の魂を救い出さないと……!)

『……けて』

ショタ提督「……!」

ナトリ『この声って……!』

グレ『助けて……!もう、限界……っ!』

アサカゼ『ずっと抵抗してたけど、これ以上は……っ!』

ユー『私達、消えちゃう……!』

ナトリ『皆……!』

ショタ提督「……っ!」

彼女の心の奥から、確かに聞こえてきた……グレ達の声。

それは今にも消えてしまいそうで……グレ達の魂、すなわち、命が尽きるまで……猶予が残っていないことを示していた。

その瞬間、彼の中に……今まで抱いたことが無かった、強い感情が湧き上がってきた。

ショタ提督「……せ」

ナトリ『あっ……!』

ショタ提督「返せ……グレを、アサカゼを、ユーを……僕の大切な人達を……返せえええええええええええええええええええッ!!」カッ!

「うぐっ!?あっ、ぁ、ぁあああああああああああああああああああああああああああああッ!?」

それは"怒り"。それも彼女のような、自分本位の怒りでは無い。

彼の怒りは、大切な者を傷つけ、その命を散らそうとしている……誰かの為の怒りだ。

ナトリ『……そうだよ。返してよ……!私の大切な友達を、返してええええええええええええええええええッ!!』カッ!

「がああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」

それに加えて、彼に取り込まれたナトリも……彼と同様、グラ達を傷つけたことに対する怒りが爆発した。

両者の怒りが莫大なエネルギーとなり、容赦無く彼女を襲い掛かった。

その瞬間、彼と彼女、そしてナトリのエネルギーが……彼と彼女の身体の中で1つとなり、互いに激しく衝突した。
700 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/12/05(木) 01:00:10.40 ID:jYzv0GcH0






























――――――だが、今の彼と彼女は……既に互いが背反する存在となっていた。



――――――そのような者同士が、強い力を持って衝突すれば……あるいは、1つになろうとすれば……待ち受ける結果は、ただ1つのみ。





























701 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 01:01:22.95 ID:jYzv0GcH0
ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」

ショタ提督「うわあああああああああああああああああああああああああああああッ!?」

ナトリ『きゃあああああああああああああああああああああああああああっ!?』

互いに正反対となった存在が持つ力が触れ合ったことで、彼と彼女は互いに反発する力に耐えられず……再び破裂してしまう。

ただ、42周目提督が介入した時とは異なり、今回はあくまでも彼と彼女の存在が分裂してしまったことに留まり、物理的な爆発は起こらなかった。

しかし、破裂した彼と彼女は無事で済むはずが無く、身体が凄まじい勢いでバラバラとなってゆく。

同時に、彼と彼女の身体が破裂したことにより、2人が持つ力の破片を……再び、時空を超えてこの世へばら撒いてしまうこととなった。

「あ……あがっ……糞っ……糞ぉっ……!絶対……絶対に、殺してやる……ぅ……」

ショタ提督「……"僕"が……消え、た……」チラッ

魂(グレ)『………』シュンッ…

魂(アサカゼ)『………』シュン…

魂(ユー)『………』シュン…

ショタ提督「……っ」

ショタ提督(ごめん、なさい……グレ達のこと、救ってあげられなかった……元に、戻して……あげられなかった……)

ショタ提督(だけど……魂さえ消滅していないなら……あの世へいくか、もしくは……輪廻転生して、新たな生命に……)

ショタ提督(強い未練を残した時は、幽霊としてこの世を彷徨うこともあるけど……でも、グレ達は違う……既に、旅立とうとして……)

薄れゆく意識の中、グレ達の魂が彼女から解放され……肉体を失ったことにより、天に召される姿が見えた。

恐らくこのまま、あの世へと旅立っていくのだろう。もし、彼に十分な力が残されていれば、すぐにでも魂を肉体に戻していたことだろう。

だが、彼にはもう、そのような力は残されていなかった。旅立つ魂を、眺めていることしか出来なかったのだ。

グレ達を救えなかった無力感と悲しさが、彼の心を締め付ける。だが、それ以上に……彼にとって、救えなかったことが悲しくてたまらない人物がいた。

ナトリ『……50周目、提督……』

ショタ提督「……ナト、リ……君も……」

ナトリ『……うん。グレ達と一緒に……消えちゃう、みたい……』

ショタ提督「……ごめん、なさい……僕が、ナトリを……救えなかった、から……!あんなことを、させて……しまったから……っ!」ジワッ…

それは、彼が初めて流した"涙"だった。今まで、彼はナトリ達人間が持つ優しさに包まれて過ごしてきたが、別れは経験したことが無かったのだ。

無論、全てを思い出した彼は、知識として別れを理解していたが……それでも、このような形で……最愛の人と別れることになるとは、思ってもいなかったのだ。

ショタ提督「……っ!」ポロポロ

ショタ提督(離れたくない……!僕に、温かい気持ちを……ずっと、注いでくれたのに……!僕が、初めて……好きになった人なのに……!)ポロポロ

ショタ提督(逝かないで……!僕の傍にいて……!お願いだから……っ!)ポロポロ

涙がとめどなく溢れ出す。最愛の人との、永遠の別れになるかもしれないという状況とならば……元が神と言える存在だったとしても、悲しくてたまらない。

否、彼がこれほど人間らしい感情を持つようになったのは……やはり、ナトリやグレ達との交流を経たお陰だろう。
702 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 01:02:25.14 ID:jYzv0GcH0
ナトリ『………』ダキッ

ショタ提督「あ……っ」ポロポロ

ナトリ『……ありがとう。私のことを、そこまで……好きになってくれて……』ギュウッ

ナトリは消えゆく身体で、彼を力一杯抱き締め……既に透け始めた手で、彼の頭を撫でる。

同時に、ナトリの魂を通じて……彼に、温かい感情とナトリの"心情"が注ぎ込まれてゆく。

ショタ提督「……ナト、リ……」ポロポロ

ナトリ『50周目提督、今……輪廻転生って、考えたよね……?また、新しい生命として……生まれ変わるって……』

ショタ提督「………」ポロポロ

ナトリ『……大丈夫。私と50周目提督の"絆"は……こうして、魂同士で繋がった"絆"は……そう簡単に、途切れたりはしないよ』

ナトリ『今はお別れになっちゃうかもしれないけど……私は、また……絶対に、貴方へ会いに行く』

ショタ提督「……!」ポロポロ

ナトリ『どんなに気が遠くなるほど、離れ離れになったとしても……いつか、必ず……もう1度、こうして貴女を抱き締めに戻って来る……!』ジワッ

ナトリ『約束、する……!私が好きなのは、今も……そして、これからも……こうして、命がけで守ってくれた……貴女だけ、だから……!』ポロポロ

ショタ提督「……うん、うんっ……!約束、だよ……?絶対に、また……会おうね……?ずっと、待ってるからね……!」ポロポロ

互いに薄れゆく意識の中、彼とナトリは……再び出会うことを約束した。彼はいつか目が覚めた後に、ナトリは輪廻転生を経た後に。

ナトリ『……んっ』チュッ

ショタ提督「ん……」

彼とナトリは……生まれて初めて、キスをする。お互いの、不滅の愛を誓い合うように。

そして……どれほど離れ離れになったとしても、いずれ再会すると誓い合うように。

ナトリ『……50周目提督』

ショタ提督「……ナトリ」
703 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2019/12/05(木) 01:03:34.27 ID:jYzv0GcH0






























魂(ナトリ)『……また、ね……?今度は、ずっと一緒に――――』シュン…


ショタ提督「……うん。また……今度こそ、ずっと……一緒に……」


ショタ提督(……恐らく僕は、再び永い眠りにつくだろう。けど、次も必ず目を覚ましてみせる……ナトリの為に――――)


そして、ナトリの魂はあの世へ旅立ち……彼の意識は無くなり、再び力が集うまで……永い永い眠りへとついた。





























704 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2019/12/05(木) 01:08:48.02 ID:jYzv0GcH0
今回はここまでです。遅くまでお付き合いいただきありがとうございました!
え〜っと、もはや艦これ要素がほとんど無いような……(白目)
ですが回想パートとしてはようやく半分〜2/3が終わったかな?という感じです。はい、まだ続くんです。
打ち切りみたいな〆ですが、まだまだ続きます。相変わらず長くてすみません。

それではまた次回の更新でお会いしましょう。
705 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 01:09:28.11 ID:jYzv0GcH0
黒字に戻すのを忘れるミス……何度もすみません!今度こそ次回の更新でお会いしましょう。
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/05(木) 01:09:46.95 ID:23Uzi1OAO
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/05(木) 07:43:51.21 ID:xeKfT5g/O
おつおつ
42週目ショタ安価でギャグ補正やばすぎる提督が選ばれた時は笑ったがまさか最終回でこんなことになるとはな・・・
このスレで「だいたいこいつのせい」がこれほど当てはまるキャラは42週目提督以外にいないと思う
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/10(火) 10:53:50.62 ID:XXOJRMNp0
これで42週目の時ギャグ補正ヤバすぎ提督が選ばれてなかったらどうなってたんだろう
709 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 16:56:07.82 ID:AjcP0Ezj0
22:00〜23:00頃開始予定です。
710 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 22:33:12.71 ID:AjcP0Ezj0
始めます。
711 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 22:35:41.26 ID:AjcP0Ezj0
ナトリ「……!」ガバッ

グレ「うぅ……」ムクリ…

アサカゼ「あ、れ……」ムクリ…

ユー「私……さっき、消えちゃいそうになって……」ムクリ…

魂となり、現世から旅立ったナトリ達は……とある場所で目覚める。

そこは綺麗な花畑が広がり……虹がかかる青い空を、小鳥が飛びながらさえずっている。

グレ「ここ……どこ……?」

アサカゼ「凄く綺麗な場所だけど……」

ユー「……何だか、温かい」

ナトリ「………」

温かいそよ風が、ナトリ達の体に優しく触れる。そう、ここは正しく、死者の魂が集う"あの世"だ。

グレ、アサカゼ、ユーは現状を把握出来ていなかったが……ナトリだけは違っていた。

ナトリ(……私達がここにいるということは、やっぱり……)

彼と文字通り"1つ"となり、様々な想いを共有したナトリは……この場所の意味を理解していた。

自分はやはり"死んだ"のだと。そして……グレ達も"死んでしまった"のだと。

グレ「それに、私達以外……誰もいないよ……?」

アサカゼ「そういえば、確かに……」

ユー「……?」キョロキョロ

ナトリ「………」グッ…

ナトリ(だけど、私は諦めない……約束したから。50周目提督と……あの子の元へ、必ず戻るって……!)

ナトリ(こんな場所で立っている場合じゃない……一刻も早く、"転生"しないと……!でも、どうやって……)
712 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2019/12/15(日) 22:36:55.06 ID:AjcP0Ezj0






























「……それについては、僕が説明するよ」





























713 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 22:42:52.17 ID:AjcP0Ezj0
ナトリ達「……っ!?」クルッ

「………」

ナトリ(50周目提督と、同じ服を着た……男の子……?)

突然、後ろから声が聞こえる。ナトリ達が振り向くと、そこには……彼と同じ白い服と帽子を身に着けた、"少年にしか見えない男性"が立っていた。

その表情は、どこか穏やかで……同時に、どこか悲しげで……しかし、そこには確かな意志が宿っていた。

ユー「だ、誰……?」

「……ごめんなさい。驚かせちゃったね」

グレ「………」

アサカゼ「………」

「………」

(本当に、名取さんやグレカーレちゃん、朝風ちゃんやユーちゃんにそっくり……そうか。彼女達が……)

ナトリ「……説明」

「……!」

ナトリ「説明、してくれるんだよね……?"転生"して、もう1度……50周目提督に会える方法を……」

グレ「……ハッ!?そ、そうだよ!私達、さっきまで50周目提督に守ってもらって……」

アサカゼ「あれ?だったらどうして私達はこんな所に……」

ユー「それに、ナトリも……」

「……うん。順を追って説明するね?まず、落ち着いて聞いて欲しいんだけど……君達は"死んでしまった"。ここは"あの世"……死んだ人達が来る場所なんだ」

グレ達「ッ!?」

ナトリ「………」

謎の少年から告げられた事実に、グレ達はショックを受け、激しく動揺する。

無論、既に全てを察していたナトリだけは、少年からの言葉を冷静に受け止めているが。

グレ「そ、そんな……!」ガクガク

アサカゼ「じゃあ私達は、皆あいつに……っ!」ギリッ

ユー「嫌……嫌ぁっ……!」

ナトリ「……だけど、貴方がこうして来てくれたのは……それで終わりじゃないから、だよね?」

「……うん」

グレ達「……え?」
714 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 22:50:19.54 ID:AjcP0Ezj0
「貴女達は、現世に強い未練を……あるいは、それに近い信念を持って……絶命した。だからこそ、チャンスを与えられることになったんだ」

グレ達「チャンス……?」

ナトリ「………」

「ほら、あれを見てごらん?」スッ…

サアァ…!

ナトリ達「……!」

少年が指を向ける先。そこには虹色の光に包まれた……1つの穴があった。

「あの穴に飛び込めば、貴女達はもう1度……人生を初めからやり直せる……」

グレ「ほ、本当に!?」

アサカゼ「じゃあ、生き返ることが出来るの!?」

ユー「また、50周目提督に……会える……!?」

「………」

ナトリ「……!」

しかし、ナトリは見逃さなかった……少年が一瞬だけ見せた、僅かな陰りを。

そして、ナトリは確信した。恐らく少年は、次に辛い事実を突きつけて来るであろうことを。

「……普通なら、ね。だけど、貴女達の場合は……魂に、真っ黒な呪いが染み付いてしまっている」

グレ達「の、呪いって……まさか……!」

ナトリ「……あの女の子の力?」

彼女の力をまともに受けてしまったグレ達、彼と共に彼女に対抗したナトリ。

その魂には、多かれ少なかれ……彼女の、ドス黒い絶望が混ざり込んでしまっていたのだ。

「正解。今は"あの世"……死後の世界にいるから、その呪いの影響を受けていない。でも、このまま現世に戻れば……どんなことになるかは、僕にも分からない」

ナトリ達「………」

「少なくとも、同じ自分に乗り移る完全な"転生"は……ただ、来世の自分に乗り移る"輪廻転生"なら、何とかなるかもしれない。その時には1度、魂が浄化されるはずだから」

ナトリ「……!」

「だけど、それでも……きっと、何かしらの影響は出てしまう。恐らく、染み付いた呪いを洗い流す時に……前世の記憶、つまり、今の貴女達の記憶が失われてしまうかもしれない」

ナトリ達「……ッ!」
715 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 22:57:43.44 ID:AjcP0Ezj0
「……転生出来るタイミングはこの瞬間だけ。この機会を逃してしまえば……もう2度と、転生することが出来なくなってしまう」

ナトリ「………」

グレ「………」

アサカゼ「………」

ユー「………」

グレ達は大いに悩んだ。例え生き返ることが出来たとしても、今まで過ごして来た思い出を全て忘れてしまうこととなるのだ。

そうなってしまえば、自分の今までの人生を全て否定し、壊してしまうことと同義だ。

ナトリ「……それでも」

グレ達「……!」

だが、ナトリだけは違った。仮に記憶を失ったとしても……ナトリには、確固たる意志があった。

ナトリ「このまま、本当の意味で死んでしまうより……もう1度、新しい人生を歩みたい」

ナトリ「そして……50周目提督に会いたい。約束したから……絶対に、また会うって……!」

ナトリ(もし、記憶が消えてしまっても……私の魂に刻まれた、50周目提督への想いは消えない……絶対に、消えたりしない……!)

彼を愛する気持ち……彼と魂を通じて1つとなった、あの時の感覚……彼と出会い、今まで深め合ってきた絆……それが消えることは無い。

記憶が無くなってしまっても、彼と出会うことさえ出来れば……必ず思い出す。ナトリはそう信じていた。

グレ「……そう、だよね。私、まだ……お礼言ってないよ。助けようとしてくれて、ありがとうって……!」

アサカゼ「……えぇ。50周目提督は、自分の身を削る思いで、私達を助けようとしてくれたのに……感謝の気持ちさえ伝えられないままだなんて……!」

ユー「そんなの、嫌……!ちゃんと、50周目提督に……お礼を言いたい……!」

「……決まったみたいだね」

少年はまるでこうなることを予想していたかのように、微笑みながらナトリ達を眺める。

ユー「うん……!」

アサカゼ「私達は……」

グレ「全員……転生して……」

ナトリ「……50周目提督と、再会する」

ナトリ(そして……今度こそ、ずっと一緒に……!)

「………」ニコッ

(うん、感じる……4人の気持ち、いや、魂が……1つの気持ちで繋がっているのを……!)
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