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未来「翼と入れ替わってたときの話」【ミリマス 】
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24 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:30:17.23 ID:UbedML5p0
「あら、どうしたの翼」
ドアから出たすぐにバッタリと会ったのは静香ちゃんだった。
「どうしたの翼、青い顔して」
「ううん、なんにもないよ」
「ならいいんだけど。そうだ、翼に話があったの。今いいかしら?」
静香ちゃんもか。なんだかすごくイヤな予感がする。
25 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:30:56.01 ID:UbedML5p0
「あなた未来でしょ。自分でも信じられないけど」
静香ちゃんに連れていかれた先の二人っきりの部屋で、静香ちゃんはこう切り出した。
怪しまれることは何回かあったけど、実際に見破られるとは思ってなくて心臓がドクンと跳ねた。あの占い師さんはバレたときの罰については、多分言ってなかったと思う。でもとにかくマズい、ごまかさなきゃという思いでいっぱいになった。
「あはは、何言ってるの静香ちゃん」
自分でもわざとらしいセリフだと思った。全然笑えてないし、おまけに棒読みだし。
静香ちゃんはため息をつきながら言う。
「この前のラジオのときからおかしいと思っていたのよね。それでずっと考えていたのだけど、2人が入れ替わっていると考えたら、すべてに納得がいく説明がつくの。今も自分で言ってておかしなことを言ってると思うけど」
「……」
どうしよ。このまま黙っていたらますます疑われちゃう。でもうまい言葉が見つからなかった。
「それでもわたしは翼だよ」
26 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:32:04.76 ID:UbedML5p0
「そこまで言い張るのなら分かったわ。ここに一枚に紙があるの。何か分かる?」
「え?」
「翼のプロフィールよ。プロデューサーに頼んでもらったの。あなたが翼っていうのなら、今から出すクイズに答えてみなさい。自分のことなら分かるわよね。……血液型は?」
「えっと……Bかな」
「ふーん、やるじゃない。じゃあ次は……」
簡単なことなら意外と答えられるのは自分でもびっくりしたけど、そりゃそうかとも思った。だってあれだけ一緒にいたもの。ちょっとは詳しくなる。
「やるじゃない。翼、いえ未来。だったら本人以外のことを聞こうかしらね。祖父母の名前は? そして彼らはどこに住んでるの?」
むむ、本人以外か。それは難しいなぁ。やっぱりまだまだ知らないこともたくさんある。
27 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:32:45.67 ID:UbedML5p0
「翼のことなら答えられると思ったんだけどなぁ。それはちょっと分かんないや」
「じゃああなたは未来って認めることになるけどいい?」
「……やっぱり静香ちゃんには敵わないなぁ」
決着がついた。
28 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:33:36.16 ID:UbedML5p0
静香ちゃんは困ったようにため息をついてこう言った。
「で、どうやって2人は入れ替わったのよ。戻れる方法はあるの?」
「私たちが願ったら元に戻れるって言ってたよ」
「誰が?」
「えっと……」
なんでかは分からないけど、占い屋さんのことを言ったらダメな気がして言えなかった。
「まぁそれはいいわ……今すぐに翼に連絡をとってお互い元の姿に戻りなさい」
「それは……」
「戻りたくないの?」
「だってこの姿だとダンスも踊れるし、歌だって上手に踊れるんだよ。それにみんなも優しくしてくれるし、良いことばっかりで。ううっ……」
話しているうちになんだか視界がにじんできちゃった。それが涙だとしてもなんの涙かは分からなかった。でもさ、翼になれたんだよ?
29 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:34:37.33 ID:UbedML5p0
「……未来はファンの人の気持ちを考えたことある?」
「ファンの人の気持ち?」
「だって未来のファンは未来を翼のファンは翼を見に来てるんでしょ。中身が逆のまま活動するなんて失礼とは思わない?」
そっか。私たちだけの問題じゃない。ファンの人や家族、周りのお友達だって巻き込んでいる。
「……そうかも」
そして静香ちゃんは小さく笑って言った。
「それに今は忙しいから休みはとりにくいけど、オフが重なったら翼と遊びに行くんでしょ? 自分と同じ姿の翼と居て楽しいかしら?」
「それは……分かんない」
「じゃあ未来が翼とよく一緒にいる理由は何? ダンスや歌がうまいから?」
ううん、違う。表面の部分はそうだったかもしれないけど、本当は……
「ほら、それを翼に伝えてきなさい」
気付いたら私は駆け出していた。静香ちゃんが何かつぶやいた気もしたけど、それは聞き取れなかった。
30 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:35:34.87 ID:UbedML5p0
◆
携帯で連絡をとると翼は家にいるみたい。私の姿なんだから居るのは私の家だ。ずっと翼の家にいたけど、やっぱり自分の家への帰る道が見慣れてる。私の家に向かって走っていると、やっぱり自分に戻らなきゃって思いが強くなってきた。
この季節は夜でもすっごく暑い。走ってるから余計にそう感じた。だけど噴き出してくる汗なんて気にしてられない。
自宅に近づいてくると玄関で待ってる人影が見えたので、走るのをやめて、歩いてゆっくりと近づいた。玄関の薄いライトが彼女の顔をうっすらと照らす。今更なんだけど笑ってしまう。だって私の姿なんだもの。
「やっほー未来、なんだか久しぶりな気がするね」
「お仕事であんまり予定が合わなかったからね」
「そのカンジだと真剣な話みたいだね。ちょっと歩こっか。近くに公園があるんだ」
「知ってるよ」
だって私がずっと住んでた場所なんだもの。
31 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:44:02.41 ID:UbedML5p0
とりとめのないお話をしながら公園につく。この時刻の公園は私にとって新鮮で、まるで知らない場所みたいだった。
私たちはなんとなく目についたブランコに座った。ちょうど2つ並んでたから、それぞれのイスに座った。
足がもてあそぶので、小さく漕いでみる。左右にある掴むための鎖はちょっと冷たい。地面をみると、うっすらとカゲができている。自分の足元にできた頭の上にあるアホ毛のあるカゲと翼の足元にできたサイドテールのあるカゲを見比べたりした。
どこかでセミが鳴いている。だけどお昼によく聞く鳴き声とは違うので違う種類のセミかなとボーッと考えたら翼が切り出してきた。
32 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:45:44.08 ID:UbedML5p0
「ねえ未来、元の姿に戻りたいんでしょ」
ちらっと翼の方をみたけど、翼はこっちを見てなかった。理由は分かる。真剣な話なのに自分に話しかけてるみたいでイヤだったんだろう。だからカゲに話かけたんだ。
「うん、そうなんだ。翼はどう思う?」
「わたしは戻りたくないかなぁ」
やっぱりそう言うかなってどこか心の中では分かってた。戻りたかったら翼から言ってくるだろうし。それにしても何で私の姿で居たいのかな。
「なんで?」
「だって未来がうらやましいもん」
「え、私が?」
これにはびっくりした。まさかいろんなことができる翼が私をうらやましがるなんて、思ってもなかったから。
「説明するのは難しいんだけど、未来は人から大事に思ってもらいやすいんだよ。もし失敗したって怒る人なんていない。むしろ未来の失敗がみんなの力になるくらい。わたしが未来になって改めて思ったよ。未来ほどアイドルに向いてる子いないかもって」
そんなこと言われてもいまいちピンとこなかった。
「うーん。そうなのかなぁ」
「まぁ自覚してないのがいいんだろうね〜」
翼はケラケラと笑って言った。でもそのから笑いが、自分が手にすることのない諦めにも感じた。
33 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:47:19.93 ID:UbedML5p0
「じゃあ次さ、私が元に戻りたい理由言ってもいい?」
「いいよ」
「私が翼になりたかった理由がわかったから」
それを聞いて翼は「ふーん」と小さく言った。多分照れ隠しだと思う。でも私の方が倍くらい恥ずかしいと思うから1回しか言わないよ。
「最初はね、翼は練習をちゃんとやらなくても、なんでもできるから翼みたいになりたいって思ったの。でもそれはちがったよ」
ブランコから降りて、翼に向かい合う。今の翼の姿は私だけど、私の中の翼の姿を浮かべて話し始める。
私の人生初めての告白。少女漫画みたいな上手なセリフは思いつかないから、私の等身大の気持ちをぶつけるだけだ。
「私は翼に憧れてたの。まっすぐで自由でキラキラしてて、みんなの幸せも願ってて、しかもときどきカッコよくてドキドキもする。だから、翼は翼のままで翼らしくいてほしいんだ」
自分でも何言ってるか分かんなくなってきた。翼だってだまってるし、もー!
「……ダメ、かな」
最後の声はすごく小さくなっちゃった。
34 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:48:11.31 ID:UbedML5p0
そのとき、プププと笑い声が翼から漏れ始めた。
「あっ! どうして笑うの」
「だって、未来が変なこと言うからだよ」
「変って?」
「自分が元の姿に戻りたいんじゃなくて、わたしがわたしに戻ってほしいだなんて、未来はホントわがままだね」
「ワガママなんて翼もよく言ってるよ」
「あーなんだか未来の話を聞いてたら元の自分に戻りたくなっちゃったかも」
え、ホント? って聞こうとした途端、目が回ったときみたいに世界がぐるっとした感覚に襲われた。
35 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:48:44.90 ID:UbedML5p0
しばらくして、もう大丈夫かなと目を開けると目の前に翼が立っていた。……ということは?
「わ、私だ! 私が私に戻ってる!」
手のひらをグッパーグッパーさせてみる。この感覚懐かしい!
「何回私、私言ってるの? それにしてもさ〜」
翼がニマ〜ッと笑って言う。
「さっきのセリフもう一回言ってよー。すっごくドキドキしたから、ね?」
「ぜったい言わない!」
「えー」
なんて元の姿に戻ってからも、いつも通りの感じでおしゃべりをしあった。けっこう遅くなるまで話したけど、何をしゃべったのかはあんまり覚えてない。でもとっても楽しかったのは覚えているんだ。
36 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:49:46.29 ID:UbedML5p0
次の日にシアターに行くと、まず静香ちゃんに出会った。静香ちゃんは私を一目見ただけで「おかえり」って言ってくれたから、静香ちゃんには敵わないなぁとは思った。
それでレッスンの方だけど、私は逆戻りをしてまたダンスが思うようにできなくなっていた。でも私が望んだ結果だし、仕方ないかと思いつつ練習に励むことにしたよ。トレーナーさんに叱られながらでもね。やっぱりズルはいけないよ。
そうそう、あとで考えたら私たちを入れ替えさせた占い師さんはまつりちゃんにとっても似ている気がしたから、本人に聞いてみたんだ。そうしたら「ほ? 姫はそんなこと知らないのです」って言われちゃった。だから「人違いかぁ」って思って話を切り上げたら、別れ際に「翼ちゃんともっと仲良くなれたみたいですね」って意味ありげな笑顔で言われたから、やっぱりこの人は分かんないなぁとも思ったよ。
戻ってからの私と翼のカンケイなんだけど、あんまり変わってない気もする。だけど普段は言えないようなことも翼には伝えられたし、まぁ恥ずかしかったけど結果オーライかな。それに翼と一緒に過ごす時間も増えた。翼が言うには「未来も含めてハッピーライフ」らしい。よく分かんないけど、変わっていってる部分もあるのかなって。
37 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:53:41.44 ID:UbedML5p0
さて、今日は学校に行かなきゃならない。翼とは通っている中学校が違っていて、私が翼の姿でいる間はあっちに通っていたので、普段通りの学校が少しだけ懐かしく思えた。入れ替わっている間にテストだとかなくてよかったなぁと今考えてみれば思う。
向こうの中学校では私も戸惑いながらも、なんとかやれたと思う。多少間違いがあっても翼の姿なら「そうだったかなー」で逃げられたから。翼はうまくやってたのかな。
なんて考えながら下駄箱を開けるとたくさんの手紙がバサーって落ちてきた。なんとなく、その中の1枚を読んでみるとラブレターだった。気になって他のを読んでみると、どれもこれもそうだった。え、誰かの間違い? なんて思ったけど、「春日未来さんへ」と書いてあるので私宛で違いない。
イタズラかなぁと思いつつ廊下を歩き、教室のドアをくぐるとサキちゃんに呼び止められた。
「おはよう、未来。今日の未来は大丈夫?」
「え、大丈夫って?」
「今日はいつもの未来だね。この前の未来はいろいろとすごかったんだよ」
38 :
◆z80pHM8khRJd
[saga]:2019/07/30(火) 00:55:29.07 ID:UbedML5p0
いろいろとすごい? とハテナマークを浮かべると、男子たちの熱っぽい視線を浴びてることに気づいた。ふとそっちをみると、顔を赤らめて目をそらす男子たち。
数日間、翼として過ごしていたのでクセが抜けなかったんだろう。ついその視線にウインクをしながら小さく手を振って応えると、男子たちは鼻血を噴き出しながらパタパタと倒れていった。……なんだろう、これと戸惑っているとサキちゃんが説明してくれた。
「未来ってばこの数日間でクラスの男子たちをメロメロにしちゃったの」
「つ、翼ってば知らない間に何やってたのー!!!」
私は戸惑いだとか恥ずかしさだとか翼への怒りを込めてそう叫んだ。その声は学校中に響いたらしい。
おわり
39 :
◆NdBxVzEDf6
[sage]:2019/07/30(火) 01:53:23.43 ID:lbfbxTVLO
不思議な力を持つ姫っているもんだな...
乙です
伊吹翼(14) Vi/An
http://i.imgur.com/jYD95ta.jpg
http://i.imgur.com/zbtjSF7.jpg
春日未来(14) Vo/Pr
http://i.imgur.com/aQyOApp.jpg
http://i.imgur.com/bLcgMYZ.jpg
>>17
最上静香(14) Vo/Fa
http://i.imgur.com/VHDs2b4.png
http://i.imgur.com/CfNZjkM.jpg
>>23
ジュリア(16) Vo/Fa
http://i.imgur.com/AC10XEb.png
http://i.imgur.com/TvYzzK4.jpg
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/30(火) 03:16:53.57 ID:XQYjUPAn0
乙
良かった
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[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
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