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【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】ch.3
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153 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 20:41:38.48 ID:yp9XcVyhO
瀬川「………………」
スグル「そう、ですよね……」
水を差す様な竹田さんの一声で、和やかな雰囲気が一気に現実に引き戻される。……また、振り出しだ
竹田「容疑者が全員いなくなったんだ。こりゃ相当厳しいぜ」
飛田「どどどどうするのだッ!?何か手がかりはッ!?」
照星「えーと、何か怪しいものとか無いんすか!?」
月乃「……争った。という事は犯人も少なからず傷を負っているのは間違いないはず」
駆村「まさかとは思うが御影が非力すぎて跡すら残せなかったんじゃないのか……?」
朝日「それなら跡は残らないよねぇ……」
古河「そんなん……そんなん……」
古河「……御影ェ!オマエ、最期までそんなんでええんか!?殺したヤツに一矢報いたろう思わないんか!?」
古河「悔しくないんか!?無様やと思わへんのか!?死んだ後までオマエ舐められとるんやぞ!?」
古河「何で……何でオマエより、ウチの方が悔しいんや……!」
古河「何とか言うてみいや!御影ぇーーーっ!!!」
154 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 20:42:19.39 ID:yp9XcVyhO
無念の声。信じたいのに信じられない、そんな悲痛な声
普段の勝ち気な古河さんがあんな声を出すなんて。なんて片隅で思いながら御影君を偲ぶ
まさか、本当に争ったのに跡がつけられない訳が……
瀬川「……あっ!?」
月神「きゃっ!どうかした?瀬川さん」
無い。……無いんだ!そんな事は絶対に
争いは同レベルの者としか発生しない……なら、絶対に犯人にも傷がついているはず
でも、どうして見つからないの?見逃す様な傷とか……?でも、そうじゃないとしたら?
……だとしたら、犯人はきっとあの人だ
瀬川「……犯人の可能性のある人がわかったんだ」
古河「は!?」
空気がガラリと変わる。困惑や期待、猜疑の色を滲ませて
共通する感情は……犯人がわかるかもしれないという『興奮』だ
なら、皆の期待には応えないとね!この事件の犯人。御影君を殺した犯人を……
ここに釣り上げるんだ!
【御影と争った可能性のある生徒は?】
155 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 20:52:58.82 ID:yp9XcVyhO
【竹田 紅重(タケダ ベニシゲ)】
瀬川「私達に争った跡は無い……それは間違いないよ」
瀬川「一人だけを除いては、ね」
話を切り出しながら睨み付ける。視線の向こうにいる人物は、気にもしていない素振りで頭をかいている
無関心っぷりにイラッとするけど、それ以外の人は、構わずに猜疑心を高めていた
月乃「……確かに、最初から怪我がある人の確認はしていない」
朝日「どれがそうなのかわかんないもんねぇ」
スグル「でも、その人って……」
月神「まさか、竹田さんがクロだと言いたいの!?」
竹田「おいおい……俺か?何だよ急に」
竹田「俺のこの傷は、臓腑屋の嬢ちゃんにつけられた傷だって説明しただろ?それ以上は無えよ」
けろりとした顔でスラスラと説明を始めた。まるであらかじめ答えを用意していたみたいに、淀みなく進んでいく
……白々しい。それが、今の竹田さんに対する率直な感想だ
瀬川「……なら、その包帯を解いてみてよ!」
瀬川「もし古い傷以外に新しい傷があるなら、それが御影君と争った証拠になるんだから!」
竹田「……………………」
156 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 20:57:00.57 ID:yp9XcVyhO
竹田「応。いいぜ」
瀬川「え?」
あっけらかんと。それこそ拍子抜けすら感じさせる程あっさりと承諾した
ま、まあ違うなら違うでいいし……あ、やっぱり私が恥ずかしい思いするからダメ!
竹田「こんなんで疑いが晴れるなら安いモンよ。待ってな」
ザクッ
竹田「……うおっ!?痛つつつ!!」
月神「きゃあっ!」
照星「うわっ!?大丈夫っすか!?」
飛田「血が飛び散ったぞッ!どうしてくれるッ!」
竹田「痛つつ……悪い悪い。傷が開いちまって血みどろになっちまったぜ」
スグル「あ……傷跡が、血で見えなく……!」
竹田「すまねえな。まさかこうなるとは……これ以上傷を開く訳にはいかねえ。また巻かせて貰うぜ、瀬川の嬢ちゃん」
瀬川「……はーい」
……うやむやになったせいで、結局、竹田さんに争いの跡を見つける事は出来なかった
だけど、私は見逃さなかった。他の誰もが気づかなくっても、強く疑っていた私だけは
包帯を巻いて、服を着直した竹田さんは……嗤っていたんだ
157 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 20:59:08.90 ID:yp9XcVyhO
竹田「ふー痛ぇ痛ぇ。包帯がくっついちまってたかね?」
月神「大丈夫ですか?」
月乃「……血で傷が見えなくなった。もう確認が出来ない」
竹田「ん?まあいいじゃねえか。細かい事は気にしすぎるモンじゃねえぜ」
いけしゃあしゃあと嗜める竹田さん。誰のせいでこうなってると思ってるの?
……このままじゃマズイ。なんとかして突破口を開かないと……!
瀬川「……い、いやー疑ってごめんなさい竹田さん」
瀬川「ところで、竹田さんは何か気になる所とかあったり……」
竹田「特に無えな」
即答された……竹田さんの発言から何かミスをしないか期待していたのに……!
どうしよう……正攻法で竹田さんを突破するのは至難の技だ
なら……この際仕方ない。“正しい攻め方”じゃない。私の得意な方法で追い詰めていくしかない……
……けど、嘘を出すには証拠が足りない。ここで下手な事を話せば、追い込まれるのは私の方なんだ
竹田「逆に聞くけどよ、瀬川の嬢ちゃんは何か無えのか?」
瀬川「ウ゛ぇっ!?」
カウンター!?まさか“竹田さんが怪しいと思います”なんて流石に言う訳にはいかないし……
どうする?どうする私……!
158 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 20:59:47.29 ID:yp9XcVyhO
スグル「……確かに、竹田さんは怪我をしていました」
スグル「けど……酷く傷を負っていたのは、腕だったはずです」
瀬川「え?」
竹田「……ああ?」
朝日「あっ……そうだよねぇ。私も見てたけどぉあんなに身体に傷なんて無かったはずだもん」
月神「腕だけ……?でも、今は身体中にあるわ!」
竹田「んだとぉ……!」
思案していると、思わぬ援護。スグル君と朝日君が、竹田さんへの違和感を指摘する
二人の確かな証言には、少なからず衝撃を受けた様で。さっきまでの余裕綽々とした雰囲気は鳴りを潜めていた
駆村「二人とも、それは本当なのか!?」
古河「竹田ァ!どういう事や。なんで全身に傷があるんや!」
飛田「まさかまさかッ!御影から負わされた傷を誤魔化す為につけたのではッ!?」
月乃「……なら、さっきの血も自分で切った?」
瀬川「血で確認させない為にね!」
照星「さっきまでの沈黙は何だったんすか……」
どさくさ紛れに援護に射撃に加勢する。図々しい?チャンスはモノにしないとダメなんだよ!
竹田「おいおい……待てよ。おかしくねえか?そもそも……」
竹田「御影の坊主と陰陽寺の嬢ちゃんを殺したのは、同じ人間とは限らねえだろ?」
159 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:00:30.54 ID:yp9XcVyhO
竹田「もし万一、俺が御影の坊主を殺したクロだとする」
竹田「だけどよお仮に陰陽寺の嬢ちゃんが先に殺されていたなら、それだと俺達が纏めてオシオキされるんだぜ?」
古河「何言うてるんや!さっきまでの議論で御影の方が先って結論が出たやろ!」
竹田「だがさっきは陰陽寺の嬢ちゃんのが先に殺されたって事になっていただろう」
竹田「これから結論が変わらないとは限らねえ。そうなった時に俺が犯人だって固定観念に囚われてちゃ話にもならねえ」
この人は……!さっきまでの議論を引き合いに出して、自分への疑惑を逸らそうとしているのは明白だ
ここで逃げられたら本当にマズイ。絶対に止めさせないと……!
月乃「……恐らく、犯人は同一人物」
スグル「え……?」
飛田「どういう事だ……ッ。説明してくれレディ!」
月乃「……魔矢にせよ御影にせよ、別人ならおかしな事がある」
……竹田さんを止めたのは、月乃さんの静かな声
小さく、儚げで、それでも秘めた意思の強さが、有無を言わせない空気を産んでいた
竹田「……おかしな事、ねえ。聞かせて貰おうじゃねえの」
聞かせて貰おう。なんて随分と余裕のある発言だ。そこにあるのは虚勢じゃない。確かな経験と実力に裏打ちされた余裕だけ
でも、私には竹田さんには無い武器がある。若さっていう唯一のね!だから自信を持って答えるんだ……
二人が別人に殺されたとしたら、不自然な事は……
1:同じ場所で殺されていた事
2:同じ凶器で殺されていた事
3:同じ時代に今生まれた仲間達よ
160 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:01:00.93 ID:yp9XcVyhO
2:同じ凶器で殺されていた事
瀬川「これだよ!」解!
瀬川「同じ凶器で殺されていた事……。これって犯人が別人ならおかしな事だよね」
瀬川「わざわざ御影君から引き抜いて使わなくても、食堂には色々な凶器があるんだからさ」
月神「陰陽寺さんが殺して、その後誰かに殺された可能性は既に無い……つまり、凶器を奪う理由が無いの」
瀬川「御影君が先か陰陽寺さんが先かなんて、もうどうだっていい話なんだ……」
瀬川「どちらが先だろうと、犯人は一人なんだ。『誰が先に殺されたか』じゃなくて『誰が先に殺したか』が重要なんだ!」
ビシッと指を指し示して、勝ち誇って竹田さんに叩きつける
これで逃げ道は全て封じた。袋のネズミとはこういう事を言うんだろう。もう竹田さんに打つ手なんて……
竹田「そうか?俺にはこの事件の真相を明かす事が出来るぜ」
瀬川「ハァッ!?」
あるの!?この状況で!?詰みを通り越してチェックメイト。完全封鎖状態なのに!?
古河「う……嘘や!そんなのある訳……!」
朝日「でも聞いてみないとダメだよぉ。もしかしたらぁ本当に犯人じゃないかもしれないしねぇ」
月神「そうね……」
竹田「話がわかるじゃねえか。まあ聞いとけや」
161 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:05:00.67 ID:yp9XcVyhO
竹田「まず、犯人は御影の坊主の動きを封じた」
竹田「その後で陰陽寺の嬢ちゃんを殺した……って話だよな?」
瀬川「そうだけど……だから竹田さんにしか争いの跡が無かったんでしょ!」
竹田「なら尚更おかしいじゃねえか!相手は他でもない。あの陰陽寺の嬢ちゃんだぜ?」
竹田「幾らちっとばかし鍛えているとはいえ……俺が、嬢ちゃんに勝てると思うか?」
スグル「あっ……!」
……追い込む事に必死ですっかり忘れていた。相手はあの陰陽寺さん。まともに近寄る事すら危険な人物だったって
竹田「つまり犯人は二人を相手にして勝てる実力のある人間っつう事になる……これが誰だか、わからない訳ねえよな?」
朝日「そんな人ぉ、この中には一人しかぁ……」
照星「……自分が犯人だって言いたいんすか」
ご名答。とばかりに笑う竹田さん。その顔はまるで、昔絵本で見た悪い王様を思い出させた
竹田「そういやあ嬢ちゃんは動機に一番反応していたよなあ?天地の嬢ちゃんや吊井座の坊主。会いたがってたよなあ?」
実力も、動機も、照星さんは満たしている。断言する竹田さんは歪んだ笑みを隠そうともせず勝ち誇る
まるで、ここまでの展開は読み通りだとでも言わんばかりに
瀬川「……まさか、今までの議論は照星さんに罪を被せる布石だったの!?」
162 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:11:53.96 ID:yp9XcVyhO
……追い詰めたと思っていた。けど、本当は逆だったんだ
私達は追い詰められていた。竹田さんの仕掛けた罠によって……
全てはこの展開の為。照星さんを身代わりにして出し抜く為に
月乃「……一応の筋は、通っている」
竹田「そうだろう?だから言ったじゃねえか。決めつけるのは止めておけってな」
竹田「青い青い!物事はじっくりと考え、確かな結論で動かすものなのさ」
竹田「……なあ?嬢ちゃん?」
最後の一手。裁判を詰みに向かわせるための、致死の毒を議論に打ち込んだ
ここで照星さんが折れたら……終わりだ!
瀬川「待「舐めねーでほしいっすね」って!?」
私が話す直前に横入りされた。せっかく発言チャンスなのに……
割り込んで来た人は、竹田さんを見据えていた。強く、強く。罠すら踏み砕かんとする程の強い意思で
照星「誰かを殺して先輩達と会っても自分は嬉しくねーっす。寧ろ、罪悪感で苦しいっす」
照星「自分は吊井座先輩に『こんな事してほしくなかった』って言ったっす……。……なのに、自分が“こんな事”して、それで胸を張れる訳ねーじゃないっすか!」
照星「自分は絶対にここから出るっす……正々堂々。黒幕を捻り倒してっす!」
宣言する。その瞳の輝きはは、煌々と夜を照らす星の様だった
163 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:17:48.76 ID:yp9XcVyhO
竹田「………………」
瀬川「そうだよ!照星さんがそんな事するはずないもん!」
スグル「それに、彼女が犯人だとしても貴方の傷はどう考えても不自然です」
古河「話を逸らして誤魔化そうとしたんやろ!」
月神「……一番疑わしいのは、竹田さんの方よ」
照らし出した一筋の光。それは私達を勇気づけて、正しい方向への道標となってくれる
逆に……間違いを犯した人には、裁きの光として降り注ぐ
朝日「竹田さぁん……本当に、貴方なのぉ?」
朝日「私ぃ、三人で一緒にお風呂入ってお話しして……すっごく楽しかったんだぁ」
スグル「僕も……竹田さんに話を聞いてもらって、嬉しかったんです。これは嘘なんかじゃありません」
スグル「だから、僕からもお願いします。どうか、本当の事を話してください……!」
照星「竹田先輩!どうなんすか!?二人の言葉を聞いてたなら答えてほしいっす!」
照星「誰かを信じるって、凄く辛い事なんっすから……!」
信頼する人の願う声、それこそが咎人を焼き尽くす純粋な炎。罪の意識を燃やさんと、更なる薪を放り込む
瀬川「どうなの!?ねえ、どうなの!?」
竹田「…………ふーっ」
……これだけの火の粉を浴びても、竹田さんは何の変わりもない
寧ろ、その目は冷めきっていた。つまらないドラマを見ている様な感情表現を放棄した表情で
164 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:26:51.02 ID:yp9XcVyhO
竹田「ガキが……舐めてると潰すぞ」
反
竹田「その推理、ネジが飛んでるぜ!」
論
!
165 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:27:32.66 ID:yp9XcVyhO
竹田「友情ドラマはそこまでだ。くだらねえんだよ」
竹田「ここからは大人らしく、クレバーに行かせて貰うぜ」
絶句。朝日君や照星さん。スグル君の思いすら、くだらないと切り捨てた
三人の表情は様々だ。困惑、敵意、……悲嘆
それすら置き去りにする程の勢いで議論は加速する。私はそれを、真っ向から捌いてみせる……!
【反論ショーダウン】
『コトノハ』
【朝日のココア】
【死体発見アナウンス】
【荒らされた食堂】
竹田「俺が犯人だとしたら……」
竹田「【陰陽寺の嬢ちゃんとやり合った】事になる」
竹田「俺は【勝てないんだよ】。陰陽寺の嬢ちゃんにな」
竹田「その真実を無視して話し続けた結果がこれだ!」
竹田「餓鬼共の甘さが今回の事態を招いたと言っても過言じゃあねえんだよ!」
瀬川「甘くなんてないよ……」
瀬川「私達は、真実に近づいているんだから……!」
竹田「現実を見ろ!まさか、陰陽寺の嬢ちゃんが俺に負けたとでも言うつもりか?」
竹田「陰陽寺の嬢ちゃんが弱かったとでも言うつもりか!?」
竹田「犯人は争った……この事実がある以上……」
竹田「【疑う理由なんざ無え】んだよ!」
166 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:28:17.03 ID:yp9XcVyhO
【疑う理由なんざ無え】←【死体発見アナウンス】
瀬川「その反論、打ち切っちゃうね!」論破!
瀬川「ううん。竹田さんを疑う理由はまだあるよ」
瀬川「だって……アナウンスの矛盾があるんだから!」
咄嗟に思い出した剣を構える。荒れ狂う一太刀を受け止めて、肉薄する───!
瀬川「アナウンスは、三人が死体を初めて見ると鳴るんだよ」
瀬川「けど、もし御影君の死体を陰陽寺さんが見ていたらあの時になるのは不自然なんだ!」
瀬川「あの時、竹田さんは私達よりも早く死体を見ていたんだから、私が見て鳴らないといけないんだから!」
即興で組み立てたハリボテの反論。軋んで悲鳴を上げている程チープだけど、今の私にはこれが精一杯……!
瀬川「アナウンスの矛盾と身体の傷……二つの要素は竹田さんが犯人だって示しているんだ!」
竹田「グッ……!」
……届いた。でもまだ浅い。竹田さんにはまだ反撃の余裕がある
竹田「忘れたか!犯人と陰陽寺の嬢ちゃんが争った事をな!」
竹田「幾ら俺への疑惑を積み上げようが無駄なんだよこのクソメスガキが!」
瀬川「メスガキ!?」
竹田「いいか……この世は力で出来てんだ。力の無い言葉なんざカスにも及ばねえ」
竹田「力……そうだ、力だ!ねじ伏せる力!守り抜く力!」
竹田「見せてみろクソ餓鬼共!青いなりに相応しく、必死に振り絞って立ってみろや!」
割れんばかりの咆哮を放ち、仁王立ちして待ち構える。それは鋼鉄の城壁の様に、目の前に立ち塞がる。……これは、私が乗り越えるべき障害だ
なら、絶対に負ける訳にはいかない……どんな手段を使っても、飛び越えてやるんだから……!
167 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:29:07.03 ID:yp9XcVyhO
【ノンストップ議論(嘘) 開始】
『コトダマ』
【荒らされた食堂】
【陰陽寺の竹刀】
【喉に刺さった矢】
【アナウンスの順番】
月神「瀬川さんの話は……」
月神「竹田さんが犯人だという説得力があるわ」
竹田「説得力だあ?んなもんは何の意味も持たねえんだよ」
竹田「俺を犯人にしたけりゃあ、俺を打ち倒す程の力を見せてみるんだなあ!」
駆村「そうは言われても……何も……」
照星「何か無いんすか!?先輩を認めさせる証拠は!」
竹田「ハッ無駄だぜ、そんなモンは無え。諦めるんだな」
スグル「竹田さんの主張は、陰陽寺さんと争ったとしても勝てないという部分ですが……」
古河「アイツ、そんな弱かないしな……」
スグル「犯人と陰陽寺さんが【争った前提】がある以上、竹田さんを追及する事は難しいです」
竹田「がっははははは!若過ぎる、青過ぎる、未熟過ぎる!」
竹田「若造の浅知恵ごとき、俺の年期には程遠いんだよ!」
168 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:29:40.27 ID:yp9XcVyhO
【争った前提】←【陰陽寺の【新品の竹刀】
瀬川「これで嘘憑きを暴くよ……!」偽証!
ずっと、議論は竹田さんのペースで動いてきた。それは、敷かれたレールを進んでいたみたいに
……それを変えるには、今しかない。最後までとっておいたこの嘘で、レールをひっくり返す……!
瀬川「そもそも……本当に犯人と陰陽寺さんは争っていたの?」
竹田「……何だと?」
瀬川「竹刀だよ。陰陽寺さんのトレードマークの、腰に下げた武器。彼女の命とも呼べるモノ」
照星「あのよく手入れされてるヤツっすね!自分も運動部っすけど、竹刀の手入れは大変なんっす」
照星「ちょっとでも怠ると刀を竹が裂けて、相手に大怪我させちゃうっすから」
朝日「道具はしっかり手入れしないとねぇ。使う人にとっては手足みたいなものだもん」
竹田「……それが何だってんだ。そんなチンケな竹棒が何の証拠になるってんだ!」
瀬川「現場に落ちていた竹刀は新品同然だったんだ。殺人現場はあんなに荒れていたのに!」
竹田「………………!!!」
愕然。カッと眼を見開いて、全身を激しく震わせる。全く予期していなかった反論は、正しく青天の霹靂だ
安全地帯を崩された焦りから、さっきまでの余裕はかき消えた
堅牢な砦も、微かな穴で崩壊する。嘘で塗り固めた要塞なら、嘘でしか打ち崩す事は出来ないんだ
それが出来るのは、私だけ。なら精一杯に舞ってみよう!
竹田「まだだ……それだけで認める訳にはいかねえ!」
竹田「竹田紅重!一世一代の大勝負といこうじゃあねえの!」
竹田「いざ!」
竹田「いざ!」
竹田「いざぁあぁああぁああぁあぁあああっ!!!」
169 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:40:07.06 ID:yp9XcVyhO
【Re:理論武装】
竹田「争いが無かった?んなワケが無えだろうが!」
竹田「陰陽寺の嬢ちゃんと争ったからああなったんだ!」
竹田「俺がやったとでも言いてえのか?何の為にだよ?」
竹田「どう説明するつもりだ?説明してみろ、嬢ちゃん!」
……争いが無かった。それは私の嘘だけど、竹田さんの反応から遠くはないんだろう
だとしたら、食堂が荒らされていたのは竹田さんの自作自演になるけど……何の為に?
思い出すんだ、記憶の中から。ありもしない理由を探しに……!
──────────
『椅子や机はふき飛んでおり、床にはコップ、スプーン、割り箸や皿が散らばっていた』
御影「竹田さんが作ってくれたんだ! 暇潰しに遊んでみたらってさ!」
朝日「これなんて凄いよぉ? 割り箸を飛ばしたり消しゴムを飛ばしたり出来るんだぁ」
──────────
170 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:41:36.34 ID:yp9XcVyhO
……なんだ。そうだったんだ
“凶器”は最初から……私達の目の前にあったんだ!
瀬川「……竹田さんにはわざと食堂を荒らす理由があったんだ」
瀬川「だってそれが……陰陽寺さんを殺す事と凶器。両方を隠す方法としては最適だったんだから!」
竹田「幻想妄想大いに結構!だがそんなものは笑止千万よ!」
竹田「んな摩訶不思議な方法があんなら、是非とも聞かせて貰おうとするか!」
竹田「食堂を荒らした理由、陰陽寺の嬢ちゃんを殺せた理由、どう説明するのかをな……!」
竹田「【俺が食堂を荒らした理由、説明出来るのか!?】」
【食堂を荒らした理由。陰陽寺を殺した凶器の正体は?】
1:箸
2:砲
3:割
4:鉄
171 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:42:14.95 ID:yp9XcVyhO
解:割箸鉄砲
瀬川「さあ、これでエンディングだよ!」解!
瀬川「割箸鉄砲!これが陰陽寺さんを殺した凶器だよ!」
想定外の凶器の正体。それは凶器と呼ぶにはあまりにも馬鹿馬鹿しいモノで
それ故に、凶器とは全く結び付かなかったモノだった
飛田「わ……割箸鉄砲だとぉオオッ!?」
月乃「……だから、凶器に矢を選んだと?」
瀬川「食堂に落ちていた割箸は、割箸鉄砲として組み立てられていたものだったんだ。けど、割箸鉄砲がそのまま置いてあれば目立つよね?」
瀬川「だから、バラバラに分解して、折って床に撒いたんだ。争いがあった事を印象付けられる一石二鳥の隠し方だから!」
朝日「けどぉあの割箸鉄砲は普通のゴムだよぉ?それなのに人に刺さるのかなぁ」
瀬川「普通のゴムなら無理だよね。普通のゴムなら」
スグル「そっか。だから工業用の特別なゴム紐が必要だったんですね」
月神「拘束する為だけじゃない……。……いや、もしかしたら組み立てる時に余ったものを使ったのかもしれないわ」
瀬川「矢だけを持ってきたのは、弓は必要無かったから……」
瀬川「全部辻褄が合うんだよ。竹田さんが犯人だとしたら!」
完璧なロジック。穴を嘘で埋めた歪なものだけど……
これで皆を救えるなら、私はどれだけの嘘でもついてみせる
瀬川「これが、事件の真相だよ……!」
172 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:42:49.96 ID:yp9XcVyhO
【クライマックス推理 開始】
Act.1
最初に、今回の事件を整理しようか
今回のは御影君と陰陽寺さん……二人の犠牲者が出たからね
犯人もどうして二人を殺したのかは知らないけど……多分、犯行を見られたとか、そんな理由だろうね
Act.2
まず、犯人が殺害したのは御影君だった
と言っても、現場の様子から見て計画性があったとは言い難いし……こっちは偶然だったんじゃないかな?
犯人は御影君を痛め付けて、動きを封じた。余ったゴム紐で手足を縛ってね
そして、そのまま放置したんだ。次の被害者を狙うための餌として利用する為に
Act.3
次の被害者……陰陽寺さんが食堂にやって来た。多分御影君の死を口実に呼び寄せたんじゃないかな
陰陽寺さんが御影君の死体に気を向けている内に……隠していた凶器で背中を撃ち抜いたんだ。矢には毒が塗ってあったから、彼女は即死したんだ
……こうして、簡単に二人の命を奪い取ったんだ
Act.4
犯行を終えた犯人は後始末を始めた。凶器……割箸鉄砲を分解してバラバラにした。犯行現場を食堂にしたのもその為だろうね
次に、食堂にあるものを軒並みひっくり返してグチャグチャにしたんだ。これは本当の凶器を誤魔化す他にも、争いがあったと偽装する目的もあったから
ひとしきり荒らし尽くすと、犯人は陰陽寺さんの死体を担いで外に出て、花畑に遺棄したんだ
Act.5
そして、部屋に戻ろうとした時に私と月神さんに会ったんだ
まさか帰るわけにもいかないから、私達と行動を共にして死体を発見した……。と同時期に陰陽寺さんの死体も見つかったんだ
このほんの少しのタイミングが、犯人を照らし出したんだから
瀬川「御影君、陰陽寺さん。二人の命を弄んだクロ……私は、絶対に許せないよ」
瀬川「その邪悪なクロは……貴方だよ!【超高校級の玩具屋】竹田 紅重さん!」
173 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:45:59.68 ID:yp9XcVyhO
竹田「……ふーっ。やれやれ、餓鬼と見くびった俺の不覚か」
竹田「いや、それよりも……。何でもねえ。世迷い言だな」
竹田「俺も潮時か……短えなあ……」
……認めたのか、それとも諦めたのか。煙管をくわえたその顔に闘志は一切消えていた
心なしか、竹田さんが普段よりも子供に見えた。私達と同年代くらいなんだけど……
古河「ふざけんな……ふざけんなやぁああ!!」
照星「先輩!落ち着くっす!ここで殴っても何も変わんねーっすよ!」
古河「せやけど!せやけどなあ!ウチは許さへん!絶対や!」
月神「もう止めて……!止めてっ!」
月神「これ以上、憎しみをぶつけないで……!」
モノクマ「そうそう。議論も終わったし、やるべき事はやってよね!」
ハルカ『はいはーい!それでは皆さん、お手元のボタンで投票してくださーい!』
ヨウ『それでは、オマエラの投票結果は正しいのか、それとも不正解なのか!』
モノクマ「それでは……どっちがどっちなんだーーー!!!」
174 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:47:37.89 ID:yp9XcVyhO
【投票結果】
・竹田 紅重 10票
175 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/01/19(日) 21:48:33.73 ID:yp9XcVyhO
【 学 級 裁 判 閉 廷 】
176 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:11:48.01 ID:uYCTxZY7O
モノクマ「フッフゥゥ!大正解、なんと三連チャン!」
モノクマ「今回、御影 直斗クン。及び陰陽寺 魔矢さんを殺したのは、超高校級の玩具屋の竹田 紅重クンなのでしたーっ!」
古河「竹田ァァアアアーーーッ!!!」
モノクマ「ってうるさっ!急に大声を出さないでよ!ボクの耳は、落ちた時計塔の針の音すら聴こえる程ビンカンだから!」
ハルカ『時計塔程大きいなら誰でも聞こえない?』
ヨウ『黙ってろ。今回はシリアスだから空気を読め』
茶番で茶々を入れてくる連中は無視して、目の前で叫ぶ女の子に向き直る
女の子……照星さんが羽交い締めにしている古河さんのつんざく絶叫。そこに籠められた感情は憎悪
ここに学級裁判は終結した。解かなくたっていい謎を残して。……けど、それとこれとは話が別だ
問いには出てない答え合わせ。知らなくてもいいけれど、知らないと後味が悪くなる矛盾を解くための
月神「……どうして、大人である貴方がこんな事を!」
スグル「ここから出るだけなら、リスクを背負ってまで二人も殺害する必要は無かったはずです」
竹田「ふーっ……」
照星「……答えてほしいっす。竹田先輩!」
竹田「あー、そうだな……モノクマ、煙草吸っていいか?」
モノクマ「うぷぷ。本当は裁判場は完全禁煙なんだけど……ま、最期に一服くらいはさせてあげましょう!」
どうも。と一声だけかけて、手馴れた動きで煙管に刻まれた葉を流し込む
そして、懐から取り出したライターに火をつける。辺りに紫煙が漂う頃、重苦しく語り始めた
177 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:12:44.25 ID:uYCTxZY7O
竹田「さて……どこから話すかね。二人も殺した事からか?」
竹田「ま、これに関しちゃ単純な理由だ。裁判に出てくる人数は少ねえ方がいいからな」
竹田「特に陰陽寺の嬢ちゃんは厄介だ。あの洞察力と集中力は侮れねえ。……だから、先んじて潰させて貰ったのさ」
語る言葉は淡々と。事務的な声色からは誤魔化しや偽りの意思は全く感じない
竹田さんは嘘をついていない。つまり、二人はただそれだけの為に……
古河「なんやソレ……なんなんやソレはぁあああっ!!」
照星「わっ!先輩!?」
駆村「止めるんだ古河!戻れ!」
激情でリミッターが外れたのか、本来なら絶対に敵わないはずの、照星さんを振り払う
憤怒を撒き散らしながら突き進む。その迫力は、竹田さんの胸ぐらを掴みかかっても、誰も手出しが出来ない程で
古河「先に潰したやと……?なら御影は何なんや。何と関係あらへんやろ。何でアイツが死ななアカンかったんや!?」
竹田「ツイてなかった。それだけだな」
けど、竹田さんは平然と答えた。古河さんの鬼気迫る怒号すら意に返さずに、微風の様に受け流して
竹田「まあ無駄死にでは無えだろう。陰陽寺の嬢ちゃんを誘き寄せる為のエサにはなったんだからよ」
古河「エ、サ……!?」
竹田「本命である嬢ちゃんを確実に仕留める為にはどうしたって必要だからな。ま、雑魚にも使い道はあるっつうこった」
古河「オマエはぁああアッ!!どこまで人をコケにすれば気が済むんやアアアァアッッ!!!」
178 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:13:45.80 ID:uYCTxZY7O
バキッ!
スグル「……な」
竹田「……気は済んだか?嬢ちゃん」
古河「う……っ、痛、痛ぁ……!」
朝日「古河さん!?大丈夫!?」
月乃「……っ。何て事を………!」
飛田「貴様アアアア!レディに手を上げたな!?この恥知らずめがッッッ!!」
突然、古河さんが吹き飛ばされる。頬には赤黒く痣がつき、目は怒りではなく、痛みで涙が滲んでいた
対する竹田さんの手は、固く握りしめられていた。横に振った様な動きで制止した腕のその先で、岩の様な拳を作っていて
月神「酷い……!女の子を殴るなんて!」
瀬川「ふうん。図星を突かれたからって暴力に頼るんだ。少しは大人気ないと思わないの?」
竹田「何とでもいいな。青臭え餓鬼にはいいお灸だろうよ」
悪びれもせずに古河さんを見下ろす。その目からは、既に感情は消え去っていた
竹田「いいか。大人ってのはな、汚えんだ。目的の為なら何を犠牲にしようが、何を傷つけようが知った事じゃねえ」
竹田「成長するって事は、切り捨てる事なんだよ。覚えとけ」
冷酷に放つ言葉は吐き捨てるみたいで、どこか私の心の奥深くに突き刺さる
それはきっと……今の私達が、大人と子供の真ん中に立っているからだって思ったんだ
瀬川「……だったら、私は大人になんてなりたくない」
瀬川「何かを捨てないと大人になれないなら……ずっと子どものままでいいもん!」
モノクマ「……うぷぷぷぷ」
179 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:14:34.21 ID:uYCTxZY7O
スグル「……動機は、なんなんですか」
スグル「もう何も言いません。ですがせめて、それだけは教えてください……!」
この場を支配する重圧に耐えかねたのか、絞り出す様にスグル君が問い掛ける
その声が届いたのか。それとも単に面倒になったのか……煙草を揺らしながら、竹田さんが口を開いた
竹田「わかってんだろう。俺にはな、どうしても会いてえ人間がいるんだよ」
スグル「…………そう、ですか」
モノクマは確かに言っていた。このコロシアイを勝ち抜けば、誰でも会いたい人間に会わせてみせると
けれど、そんなのは戯言だ。モノクマは“死んだ人”すら会わせてみせると言ったけど、そんなのが可能なのは黒魔術くらいだ
勿論そんな事は出来っこ無い。だから、そんなの信じるなんてあり得ない……
瀬川「……それは、御影君や陰陽寺さんを殺しても、私達全員を殺しても会いたい人なの?」
竹田「応とも。是が非でも、悪魔に魂を売ってでも……なんて、チンケな表現だがな」
断言するその顔は、強い決意を秘めていた。竹田さんの立場は私達のそれとは比べ物にならない程の力があるというのに
その全てを失ってでも、会いたい人……誰なんだろう?
照星「誰なんすか……その人って」
瀬川「そうだよ。ここまで話したなら、教えてくれたっていいでしょ?」
竹田「……ま、そうだな。冥土の土産に教えてやるか」
竹田「俺の会いたい奴は……姉貴の子供。俺の姪だよ」
180 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:15:11.06 ID:uYCTxZY7O
駆村「姪……?」
月乃「……兄、もしくは姉の娘の事」
スグル「それって、駆け落ちしたお姉さんの。ですよね……?」
照星「駆け落ち!?初耳っす。そうなんすか!?」
飛田「待てッ!オレは姪がいた事すら知らなかったぞッ!?」
姪。という聞き慣れない単語が、重苦しい空気で静まり返っていた裁判場を再度ざわつかせる
というか私も知らなかったよ。スグル君なんで知ってるの?
竹田「一度。たった一度だけでいい。顔も声も、何も知らねえ血縁者に一目会いたいと願う事は傲慢かね?」
竹田「俺にとっちゃあ、その子供だけが姉貴の遺した希望なんだよ。何もかも置いていっちまった姉貴のな」
竹田「結局、何もしてやれなかったからなあ……せめて、その子だけでも俺は何かの助けになってやりたかったんだがなあ……」
一つ一つを刻むように、噛み締める様に呟く竹田さん。遠く、遠くを見つめるその目には、何が映っているんだろう
遠くにいった過去なのか、あり得たはずの未来なのか。それは本人の心の中。体験して、歩いてきた歴史の中に答えがある
……つまり、部外者の私達には絶対にわからないんだ。あれだけの激情をまとっていた古河さんすら、物思いに耽る竹田さんを怒鳴らない
どこか厳かで、何とも言えない静寂がまとわりつく。煙も薄く霞んでくる
モノクマ「うぷぷぷぷ……ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
モノクマ「あーっはっはっはっは!はーはははははっ!!!」
……そんないい感じな雰囲気を、このクマが見逃すはずもなく。汚いダミ声の哄笑が、嫌に五月蝿く聴こえたんだ
181 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:15:51.73 ID:uYCTxZY7O
月神「モノクマ……!」
竹田「笑いたけりゃ笑えばいいさ。さっさとオシオキでも何でもすりゃあいい」
照星「い、いいんすか……?死んじゃうんすよ……?」
竹田「んなモンは最初から承知の上だ。負けたからってぎゃあぎゃあと喚くかよ。餓鬼じゃあるめえし、みっともねえ」
竹田「そら。やるならやっちまえ。逃げも隠れもしねえよ」
当然だ。と言わんばかりに、どかっと座り込む竹田さん。その堂々とした姿からは、一種の威風すら感じられる
だけど、モノクマは動かない。オシオキをするでもなく、かといって見逃すはずもなく……
モノクマ「うぷ、うぷぷぷぷぷ」
飛田「な、何なのだッ。薄気味悪い声をあげてからにッ!」
スグル「どこがおかしいんですか……!」
壊れたのか、気色悪い声を出し続けるモノクマ。流石に、これを不審に思った皆が問い詰めると……
モノクマ「うぷぷ。じゃあさ、竹田クンに聞いておきたい事があるんだけど」
竹田「ああ?」
モノクマ「竹田さんのお姉さんの名前って、何て言うの?」
瀬川「お姉さんの名前……?」
月乃「……それが、今必要?」
確かに、気にはなる。なるけど……何で今このタイミングで?
竹田「んだよ急に……言って何かあんのかよ?」
モノクマ「言えないの?もしかして忘れちゃったとか?」
竹田「んな訳ねえだろうが。……ま、言ってやるよ」
竹田「竹田 玉緒。……玉露の玉に、鼻緒の緒で、玉緒だ」
182 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:16:31.33 ID:uYCTxZY7O
月神「……え?」
朝日「わぁ、綺麗な名前ですねぇ」
飛田「さぞかし美しい女性なのだろう……。ッとそんな事は今はどうでもいいッ!」
飛田「それで竹田がなんなんだと言うんだッ!オレ達に何の関係があるというのかッ!?」
確かに、私はそんな女の人は知らない。というか、ほとんどの人に接点の無いはずの人なんだ
……けれど、何事にも例外はあるもので。一人だけ、その名前に反応した人がいた
月神「嘘、なんで、どうして……」
瀬川「あれ?月神さん、どうかした?」
スグル「もしかして、お知り合いでしたか……?」
月神「違う、違うわ。私は会った事はない……ないけど……!」
竹田「……?なんだ、嬢ちゃん。何かあるのか?」
真っ青に、血の気のた顔で竹田さんと手元を交互に見比べる月神さん。その表情を的確に表すとするならば……
───“絶望”。その理由は……彼女の震える唇から明かされた
瀬川「……月神さん。本当にどうしたの?何でそんな……」
月神「だって……!それは、竹田さんの言った名前は……!」
183 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:18:10.58 ID:uYCTxZY7O
月神「この勾玉に書かれている名前と、全く同じなの……」
184 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:19:01.53 ID:uYCTxZY7O
月神「……きゃっ!?」
駆村「月神っ!」
一陣の風が、月神さんに襲い掛かる。突風の主は愕然と、彼女が手に握りしめた何かを目を凝らして見つめていた
竹田「……おい、どういう事だ……?何故、月神の嬢ちゃんがそれを持っている……?」
掴みかかるその手は震えていて、まるですがる様にも見えた
徐に懐を探り、紐に括られた何かを見せる。確かめさせる様に私達の目の前に掲げた“それ”は……
……月神さんの持っている、深紅の勾玉と対になるかの様な光を放つ、純白色の勾玉だった
スグル「それは……!?」
照星「なんか、月神先輩のとそっくり……というか同じっす!」
月乃「……綺麗。二つとも、同じ人が造ったものだと思う」
朝日「月乃ちゃん。美術館好きだもんねぇ〜」
月乃「……それとこれとは関係無い」
小さいながらも、淡く、力強く輝く勾玉。竹田さんと月神さんの二人の手の中で、揺られながら瞬いている
その光は紛れもなく同一のもの。あの二つの勾玉は、元は一人の人間が造ったものであるのは明白だった
月神「これは私のものじゃない……。陰陽寺さんが私の元に預けたものなの……!」
竹田「な……何でだ、何でだ!?何で陰陽寺の嬢ちゃんが!!」
モノクマ「うぷぷ。気になる?気になっちゃう?最後の最期で知りたくなっちゃう?」
モノクマ「いいでしょう!それではVTR、スターティン!」
問い掛ける竹田さんを煽る様な、ふざけた調子で嗤うモノクマ
砂嵐の映るモニター。突然に明るくなったそこに、過去が鮮明に映し出され始めた……
185 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:21:10.56 ID:uYCTxZY7O
※
ハルカ『はーい!ハルカだよ!私達が解説するね!』
ヨウ『ヨウだ。暫く俺達の説明を聞いてもらおうか』
ハルカ『えー…まずは陰陽寺さんの過去から遡ってみよう!』
ハルカ『陰陽寺さんは幼い頃から剣道に打ち込んでいて、小さい時には県大会で優勝してるんだって!』
ヨウ『当然、中学に上がっても剣道は続けていたみたいだな。その時の写真がこれだ』
瀬川「わ……笑ってる!?あの陰陽寺さんが!?」
飛田「そら見た事かッ!彼女は絶対に笑うと可愛いはずだと前から言っていただろうにッ!」
スグル「初耳ですよ……」
月神「でも、本当に可愛いわ。……陰陽寺さんにも、こんな風に穏やかに笑える時期があったのね」
写真の陰陽寺さんには、あの剣呑な雰囲気は全く無い。寧ろ、年相応な柔らかな女の子の顔付きだ
ヨウ『そこで、陰陽寺は一人の女子と出会う。名前は……コンプライアンス的なアレがあるから少女とだけ言っておくぞ』
ハルカ『で、その子と陰陽寺さんは中学では同じクラスに同じ部活。つまり剣道部に入ったんだよね』
ハルカ『そこで、二人は腕を磨き合い、切磋琢磨を繰り返して晴れて親友となったのでーす!』
※
『ねえ!マヤはさ、高校でも剣道やるの?』
陰陽寺『僕は一応そのつもりだけど……。【──】は?』
『私も!でさ、私達の中学ってエスカレーター式でしょ?だからさ、私達で県大会、出ようよ!』
『それでそれで!二人で優勝しよ!ねっ?』
陰陽寺『……しょうがないなあ。うん、約束だよ』
※
186 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:22:51.34 ID:uYCTxZY7O
ハルカ『けど、そんな二人には残酷な運命が待っていました』
ヨウ『それは中学二年の夏、インターハイの少し前の事……』
場面が変わる。雨の降る校舎の中、陰陽寺さんは傘の中で誰かを待っていた
※
陰陽寺『……遅いなあ、【──】。忘れ物かな』
陰陽寺『遅くまで待ってたら練習出来なくなるし……そろそろ僕は行こうかな……』
『あ……ごめん、マヤ。待ってた?』
陰陽寺『ううん、そんなに。それじゃあ練習に行こうか』
『…………。ねえ、マヤ、あのさ……』
陰陽寺『なあに?』
『……ううん、何でもない!さあ、練習に行くぞーっ!』
陰陽寺『どうしたの?やけにそんなに張り切って……あ、そろそろ夏のインターが近いから?』
陰陽寺『一緒に大会出るんだもんね。僕も頑張らないと』
『うん。そうだね……』
『ごめんね……』 陰陽寺『……?』
※
『あの子、死んじゃったって本当?家で睡眠薬を飲んだって』
『剣道部のホープだって、部長さんも喜んでたんだけどね……。陰陽寺さんも可哀想に』
『二人で県大会に出て優勝するんだって、陰陽寺さんと言っていたのに……どうして自殺なんて……』
陰陽寺『…………………………』
『……あの、貴女が陰陽寺さん?』
『あの子が、貴女だけに読んでほしいって……これを』
『あの子、陰陽寺さんの事が本当に大好きだったから……』
陰陽寺『…………ありがとうございます』
※
187 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:23:45.62 ID:uYCTxZY7O
※
陰陽寺『……先生』
『……どうした、陰陽寺。【──】の事は残念だったな』
陰陽寺『一つだけ、聞かせてください』
陰陽寺『先生が……顧問が、【──】を追い詰めたんですか』
『何の事だ。私は剣道部の顧問として然るべき指導を……』
陰陽寺『ここには!貴方が脅迫したって!大会に出たいなら、顧問の言う事に服従するしか無かったって……!』
『ハッ、そんなものがいったい何だと言うんだ?』
陰陽寺『な……』
『仮にそこに書かれていた事が事実だとしても……【──】は、自ら進んで私に従ったんだ』
『【──】は本当にいい生徒だったよ……お前の、陰陽寺の名前を出せば何でも言う事を聞いてくれた』
『陰陽寺。お前も大会に出たいだろう?死んだ【──】の願いを叶えてやりたいと思うだろう』
陰陽寺『…………もう、いい』
『お前も私の言う事を聞け。そうすれば【──】の願いを、私が叶えさせてやろう』
陰陽寺『もう、いい…………!』
『【──】もそれを望んでいるんだ。私の力なら、中学だけでなく高校での推薦も……』
陰陽寺『もういい…………。もう、止めろ……!』
陰陽寺『お前が!僕の……ッ。僕の親友の名前を、口にするな…………ッ!』
188 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:24:27.44 ID:uYCTxZY7O
※
『……顧問は全治二ヶ月。パイプ椅子で滅多打ちにするなんて』
陰陽寺『…………』
『正直、お前程の人が『インターハイから外された』だけで、ここまでの事をするとは思えないけど……』
『部としては、お前を許す事は絶対に出来ない。荷物を纏めて今すぐに出ていくんだ』
陰陽寺『……わかりました。けど、一つだけお願いがあります』
『なんだ?』
陰陽寺『【──】の竹刀を、僕にください』
『……お前はあいつの親友だったな。練習も熱心だったし……俺が許可を出す。持っていけ』
『残念だよ。二人もいなくなるなんて。お前達は、将来剣道部を背負って立てる人間だから尚更な……』
陰陽寺『……ありがとうございました。部長』
※
※
陰陽寺『…お母さん』
『話は全て聞きました。魔矢がした事、全て』
陰陽寺『どんな罰でも受け入れます。ですが、僕は間違った事をしたとは思っていません』
陰陽寺『これからは、僕の正義だけを信じる……それだけです』
『……魔矢。これを』
『不肖の弟の為に造ったものですが、結局渡す機会はありませんでした。代わりに、貴女に』
『“緋”の色は、魔除けの色。魔矢……貴女の道に、悪しき者が寄り付かない様に託します』
『希望ヶ峰学園からのお誘いも……“貴女をヒーローとして認可する代わりに、卒業した暁には剣道への復帰を認める”と』
『……頑張りなさい。魔矢。私の、可愛い娘……』
陰陽寺『……“玉緒お母さん”。ありがとうございます』
※
189 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:25:25.05 ID:uYCTxZY7O
※
竹田「…………んだよ。これ」
過去のレコードを覗き見た。誰も彼もが、陰陽寺さんの凄絶な過去に心が追い付かない
けれど、それよりも悲惨な事は。……この中で最も混乱しているだろう人は
竹田「お母さんだと?陰陽寺の嬢ちゃんのか?俺の姉貴が?」
竹田「じゃあ、俺の姪は、俺の殺した陰陽寺の嬢ちゃんは……」
モノクマ「うぷぷっ、まだわからないのかなぁ?ならボクから直々に言ってあげるよ!」
モノクマ「オマエの探していた姪は!オマエの大切なお姉さんの愛娘は!」
モノクマ「ずっと近くにいた陰陽寺さんだって事なんだよ!」
竹田「嘘を吐くなあああああああああ!!!」
咆哮が轟く。耳と心をつんざく程の、大音量が皮膚を震わせる
その声はただの爆音じゃない。全ての感情がない交ぜになった瀑布が、裁判場を叩き割らんと響き渡る
探していた人が、自分の殺した相手だった
それも、それが大切な……お姉さんの娘。姪だったなんて、信じられないし、信じたくもないだろうから
竹田「じゃあ!俺がした事は!俺の殺した子供は!」
モノクマ「無駄死にだよ!全員揃って!」
モノクマ「御影クンも、陰陽寺さんも、勿論オマエも!」
モノクマ「ねえ今どんな気持ち?大切な人を無駄に殺したその気分はさぞ爽快だろうね!ぶひゃひゃひゃひゃ!!」
竹田「クソヤロウがあああああああ!!!!!」
絶叫。そうとしか形容出来ない声で竹田さんが吼える。血走る眼でモノクマを捉え、怒りの握り拳が炸裂……
190 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:26:20.03 ID:uYCTxZY7O
竹田「………………」
スグル「……え?」
……しなかった。間に一髪、目と鼻の先。拳はモノクマの目の前で制止する
震える拳は絶望を滲ませて、けれどもそれは届かない。眼前でピタリと止められた拳を引っ込める
モノクマ「……おろ?いいの?殴ってもオシオキで帳消しに出来たのに、勿体無い」
竹田「……御影の坊主、陰陽寺の嬢ちゃん、古河の嬢ちゃん」
竹田「もう、三人も傷つけてんだ。これ以上の情けねえ真似、大人として……漢として、晒せるかよ」
平静を取り戻し、煙管を咥え直す。漂っていた既に紫煙は薄れていて、再度火を灯す素振りも見せようとしない
だらりと腕を下げたその姿は、まるで数百年もの齢を重ねた老木にも見えた。激昂に滾っていた相貌は、樹皮の様に深く刻まれた皺で覆われていた
竹田「もういい……やれ。けどその前に少し言わせて貰うぜ」
竹田「いいか、ちゃんと親孝行しろ。身体を大事にな。それと兄弟姉妹との連絡は欠かすなよ」
モノクマ「うぷぷ!ではではやっちゃいましょう!」
最期の言葉。人生を先に生きた人から、私達へと送られる遺言
前までの竹田さんとは比べ物にならない程のしゃがれた声で、一つ一つを噛み締める様に呟いていく
今にも消えそうな、灯火の様に……
竹田「人との繋がりってのは貴重なモンだ。無理に断ち切ろうとするんじゃあねえぞ」
モノクマ「今回は超高校級の玩具屋である竹田紅重クンにスペシャルなオシオキを用意いたしましたっ!」
竹田「じゃねえと……じゃねえとよ……」
191 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:26:49.78 ID:uYCTxZY7O
竹田「俺みてえな、クソッタレた大人になっちまうからよ……」
モノクマ「では張り切って参りましょう。オシオキターーーイム!!!」
192 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:27:16.80 ID:uYCTxZY7O
GAME CLEAR!
タケダ クンが クロに 決まりました
オシオキ を 開始 します
193 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:28:24.99 ID:uYCTxZY7O
※
広い、広い砂利の地面。広大過ぎて座らせられた竹田さんが、まるで砂粒程の小ささに見える
その眼前にそびえ立つは大きな舞台。一匹には広すぎるその上で、モノクマが偉そうにふんぞり返っていた
これは確か江戸の裁判場……白州の場。竹田さんを裁いたつもりなのか、扇子をパタパタと扇いでいる
徐に扇子を頭上へ掲げると、奥から小さなモノクマがぞろぞろと沸いてくる。竹田さんを寝かせると、その両手と両足を縄で縛り上げた
縄を持ったモノクマは対極の四方に引っ張っていく。ギリギリと嫌な音を立てて軋む竹田さんは、見るからに苦しそうでいつ引きちぎれてもおかしくはない
大岡裁き……。親の子供を想う気持ちを利用した、ある意味では一番残酷な刑罰を、竹田さんは課せられたんだ
メリメリと音を立てる竹田さん。顔は真っ赤に、身体は宙に浮きながらもモノクマは引っ張るのを止めない……
……かに思われた。突然モノクマは縄を離す。竹田さんはそのまま地面に強かに墜落し、身体をしたたかに打ち付ける
よく見たら、引っ張っていた縄はいつの間にか砂利の中に埋もれている。まるで、何かに突き刺さっているみたいに
ゴゴゴ……と物々しい音が響く。砂利をかき分け現れたのは巨大なロボット。大の字に伸びていた竹田さんを飲みこみ、縛られていた手足と合体した
立った姿は正しく人形のロボット。慌てる様子から察すると竹田さんの動きと同調しているみたいだ
すると突然、同じ様に砂利の下から巨大な怪獣……まるでゴ◯ラもどきが召喚される様に表れた
なし崩し的に対面し会う両者。舞台の上ではモノクマと子モノクマが、ロボットのオモチャを持って応援していた
194 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:29:14.63 ID:uYCTxZY7O
『ゆけゆけぼくらの竹田ロボ』
『超高校級の玩具屋 竹田紅重処刑執行』
取っ組み合う両者に、力の差は見られない。殴る蹴るの応酬は続き、一向に終わる気配は無い
……いや、怪獣の方が僅かに強い。口から火を吐す火炎の放射で鋼の身体は焼かれていく一方だから
やられていく竹田さんロボットに、子モノクマ達はハラハラと怯えるばかり……。それを見たモノクマは、手元に置かれた扇子を空高く掲げた
『合体!』
すると、何処からともなく赤のモノクマが降ってくる。赤モノクマは分解すると……竹田さんの両手両足と入れ替わった
関節部分から真っ赤なオイルを滴らせる竹田さんロボット。炎を物ともせずに殴りかかる。けど、四肢が別物だからか上手く殴れていないみたい
子モノクマはまた心配そうにオモチャを握り締める。モノクマはまた扇子を突きつけた
『変形!』
突然、竹田さんロボットが震え始める。腕は身体に収納される様に縮んでいき、足は肩につく位に開き出す
オイルで濡れた身体は既に全身が深紅に染まる程。変形し終えた姿は、まるでキャノン砲だ。頭に当たる部分には、白熱したエネルギーが集中し……
怪獣に向けて、放出した。爆炎と轟音が地を揺らす。これには流石に堪らず、フラフラとその巨体を震わせた
子モノクマは歓声をあげる。トドメと言わんばかりにロボットは変形を戻して、両手を怪獣に向けた
既にピクリとも動かないロボット。怪獣に向けた両手を……そのままロケットの様に放ち、巨大怪獣を貫いた
叫び声をあげて倒れる怪獣。既に動かなくなったロボット。子モノクマはオモチャをブンブンと振り回して大喜びだ
その光景が遠くになっていく。背景には『〜終〜』のテロップだけが残っていた
195 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:29:52.96 ID:uYCTxZY7O
※
モノクマ「ひゃっはー!やっぱり変形ロボは最高だぜ!」
モノクマ「ああいうの何て言うんだっけ?漢の浪漫?女子風呂を覗く事だけが浪漫ではないのです!」
モノクマ「ま、ボクはクマだから関係無いけどね!ぶひゃひゃひゃひゃっ!!」
三度目のオシオキ。もう、皆も感覚が麻痺しているんだろう。誰も画面から目を反らさなかった
モノクマの戯れ言にも無反応。ただただ画面の中で朽ち果てた竹田さんだけを直視していた
それは竹田さんへの黙祷でもあり、散っていった二人への追悼でもある。矛盾している。けど、それが私達のやり方だから
……当然、モノクマ達には関係の無い話で。侮蔑に満ちた声で、三人の事を貶めていた
モノクマ「それにしても今回は酷い事件だったね!三人とも犬死にとかある意味前代未聞じゃない?」
モノクマ「ま、ボクとしては老害にバカと前科持ちっていう、社会のゴミがいなくなったからいいけどさ!」
誰も、モノクマに反論はしない。すればするだけ向こうが図に乗るだろう事は想定内だから
だから……耐えていた。懸命に下を向いて、やり過ごす様に
古河「…………笑うな………………!」
196 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:30:31.00 ID:uYCTxZY7O
モノクマ「おろ?」
古河「アイツらを笑うんなら……ウチも笑えや!」
古河「オマエらみたいなヤツに、アイツ等を笑う権利なんざ無いんや!アホ!」
モノクマ「いいでしょう。お望み通りに笑ってあげるよ!」
モノクマ「アーッハッハッハッハッハ!はい復唱!」
ハルカ・ヨウ『『あーっはっはっはっはっは!!!』』
照星「モノクマーーーっ!!」
駆村「止めろ!二人とも、戻れ!」
笑えと言って、実際に笑う人は初めて見た。耳障りなノイズ、我慢の限界に達したのか古河さんと照星さんはモノクマに走りよって……止められた
古河「何でや!オマエは悔しないんか!?」
駆村「悔しいに決まっているだろう!?だけど、ここで俺達が感情に任せて行動したら……」
駆村「竹田さんが、本当に無駄死にになるだろ……」
照星「あ…………」
ハッとした顔。さっきまで生きていた、先人の言葉を思い出したんだ
拳を引っ込める古河さん。だけどその目は憎々しげにモノクマを貫いていた
モノクマ「……ふん、つまんないの。じゃ、待ったのー!」
月乃「……出来れば、二度と見たくは無いけれど」
瀬川「それに賛成かな……」
197 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:31:05.91 ID:uYCTxZY7O
古河「…………………………」
月神「古河さん、その……」
どう言葉をかけようか考えあぐねている。古河さん、ああ見えて結構デリケートな所があるから……
月神さんがまごついていると、ふと古河さんから零れ落ちる
古河「……ウチなあ、アイツらの事、どうでもよかったんよ」
古河「なのに、陰陽寺が死んだ時メッチャビックリしたんよ。御影が死んだ時もな」
古河「なんでやろなぁ……どうでもよかったら、こんな気持ちにならへんやろうし……」
古河「『いなくなって寂しい』なんて、思わんのに……!」
朝日「ヘンな事じゃないよぉ……。皆、仲間だったもん」
スグル「それは、古河さんが優しいからですよ。誰かを思いやる優しい心が無いと、心が傷つく事なんてありませんから」
瀬川「うっ」
何気無いスグル君の一言が、私の心を傷付けた……これって私が優しいというよりは……いや止めとこう
スグル「それは、竹田さんもそうです。やった事は許されてはいけないと思いますが……」
飛田「無条件に断罪して良いものでは無いッ!そうでなければ学級裁判を正しいと認めてしまうからなッ!」
朝日「あ、スグルくんの台詞盗ったぁ〜」
スグル「別にそれくらい気にしませんよ」
照星「セコいっすね……」
飛田「盗ってないッ!盗った前提で話をするなッ!!」
198 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:31:53.49 ID:uYCTxZY7O
古河「……うっ、くく、くくく……っ」
駆村「古河……?」
古河「アハハハハっ!!」
瀬川「え?何?まさかこのタイミングで闇落ちでもするの?」
唐突に高笑いし始めた古河さん。皆もその奇行に釘付けだ
まさか、メンタルブレイクして闇落ちしたんじゃ……。そんな私の心配は、前を向いた彼女の顔で消え失せた
古河「オマエら……ホントこすい事すんなや!こんなん、ウチがウジウジしとったらダメやん!」
古河「もうグダグダ言うのは止め止め!安心せえ、ウチは立ち直った!普段通りや!」
月乃「……無理、してない?」
古河「しとらんしとらん。それに、ウチ気付いたんや」
古河「御影も、陰陽寺も、竹田も……ウチも、皆いい面もイヤな面もある。その方っぽだけを見る事なんて無理な事や」
古河「ただ、見てる面がどっちが多いかなんや。陰陽寺も竹田も、エエところがあったからいなくなって辛いんや」
古河「ま!御影は裏表無さすぎて、ウチにはボンクラの面しか見えへんかったけどな!」
古河「……ありがとな。皆」ボソッ
月神「……そうね。生きている皆も、死んでいった皆も同じ事を考えていた」
月神「ここから出たい。生きたい……そう必死に願っていたの」
瀬川「いい人も、悪い人も……ね」
口の中で思い付きを噛み潰す。空気を読む様に周りを見ると、古河さんの周囲は笑顔になっていた
199 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:32:28.89 ID:uYCTxZY7O
死を悼んで貰える事。罪を赦して貰える人
真逆に見えて、実は似ている。私達にとっては、特に顕著だ
それは、どちらの願いも同じだからだ。『生きたい』という、ほんのささやかで確かな悲願
善、悪、陰、陽。全ての側面が願う切なる想い。当然の感情を押し潰し、それが溢れたら処罰される。私達は自分の手でディストピアを造っていく
そうやって自分を削っていく。それはどこでも……ここも、外の世界も同じ事
なら、どうしてこの学園から出る必要があるんだろう……?
そんな疑問すら消さないと、この世界では生きてはいけない。赦されないから我慢する
いつか、そんな我慢が無くなります様に……。それが、今の私の悲願。なのかな……
200 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:33:36.61 ID:uYCTxZY7O
【CHAPTER3】
善悪インヤン双方の悲願 【END】
生徒総数:9
201 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:34:23.10 ID:uYCTxZY7O
GET:紅白勾玉
三章を隣歩いた証。陰陽寺魔矢、及び竹田紅重の遺品
紅の色には破魔の祈りが、白の色には繁栄の祈りが込められている。元は一人の女性が大切な人間に捧ぐと決めたもの
202 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2020/02/02(日) 21:35:12.26 ID:uYCTxZY7O
本日はここまで。これで三章終了です
ここまで応援して下さり、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願いします
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