【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】ch.3

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53 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/10/03(木) 23:04:59.84 ID:9EL7v5CGO


飛田「だ……だがおかしいじゃあないかッ、最初のレッスン料等はどうしたのかねッ」

月神「事務所が払ってくれたの。私が必ず返してくれるって信じるから、今は投資するんだって」

月神「でも、それだけじゃ普段の生活もままならない……弟も、クラブを止めて内職をしているの」

月神「だから……私は諦めちゃいけない。家族や事務所の人。マネージャーさんの為にも、絶対に前を向き続けたい」

月神「それが、今の私に出来る恩返しだから……」

スグル「月神さん……」

瀬川「……それって、いざって時には私達を犠牲にしますよって事だったり?」

スグル「瀬川さん、そんな言い方……」

月神「そんな事はしないわ。だって、私の大切なクラスメイトなんですもの」

月神「私、ほとんど友達がいなかったの。ずっとアルバイトをしていたせいで……」

月神「だからクラスメイトの皆とこうして交流出来る事が、本当に楽しいの! ……お父さんには悪いと思っているけれどね」

バツの悪そうな顔で、控えめに微笑む

家族を置き去りにしたのに、自分が楽しんでもいいのか……そう考えているのかな

54 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/10/03(木) 23:09:55.94 ID:9EL7v5CGO
月神「……これで、私の秘密はおしまい。『家族を見捨てた』。それが私の知られたくない秘密……」

古河「せ、せやかてそんなん仕方無いやろ! そんなん言い出したらキリがあらへん!」

竹田「家族の為にアイドルやってんだろ? それに引け目を感じる事なんかねえだろう」

スグル「お父さんや弟さんも、月神さんを応援してくれているんでしょう?」

月神「それは……そうかもしれない、けど」

朝日「なら大丈夫だよぉ。これからもぉ姉弟で助け合っていけばいいと思うなぁ♪」

月乃「……お前が言うな」

朝日「酷いよぅ月乃ちゃあん……」

月神「……ありがとう。皆」

……なんかいい話になってるけど、これって結局月神さんしか得してなくない?

こんなはずじゃなかったのに……。もっとエグい秘密があるって信じていたのに!

……気を取り直して、今日も一日頑張ろーっと。私の秘密はバラさないようにね

55 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/10/14(月) 21:27:28.68 ID:VaVsGbM8O





暇だなぁ。どっか適当にぶらついて……

瀬川「……うわぁ!?何、今の!?」

なんか目の前に飛んできたんだけど!?

御影「あ〜そっち行っちゃった……あれ? 瀬川さんどうかした?」

瀬川「どうかした?じゃないよ! 人の目の前に、得体の知れないもの飛ばさないでよ!」

朝日「瀬川さぁん。それゴムだよぉ」

瀬川「……ゴム?」

朝日「あっ……輪ゴムの事だよ……?」

瀬川「わかってるよ! 朝日君は何と勘違いしたと思っているの!?」

そんな事はわかってるよ。輪ゴムが飛んでくる事自体がおかしいんだって!

御影「竹田さんが作ってくれたんだ! 暇潰しに遊んでみたらってさ!」

朝日「これなんて凄いよぉ? 割り箸を飛ばしたり消しゴムを飛ばしたり出来るんだぁ」

瀬川「そう……」

そんなニチアサ玩具のバリエ違いみたいな……いや竹田さんは玩具屋だし得意だとは思うけど

朝日「良かったらぁ、瀬川さんも一緒に」

瀬川「遠慮しまーす」

御影「即答!?」

そういう子供のオモチャには興味ないんだよね。私小さい頃は塾通いばっかだったし

ここにいても面白くないな……別の所にいこうっと

56 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/10/14(月) 21:29:37.83 ID:VaVsGbM8O





『ダンスホール』

瀬川「あれ? 珍しいね、二人が一緒なんて」

スグル「はい。そうなんで……」

飛田「やあレディー! オレに会いに来てくれたのかい? スグル、お前は用済みだ。どこへなりとも消えるがいい」

哀れスグル君はお役御免となってしまった。何に付き合わされていたのかは知らないけど可哀想に……

瀬川「……飛田君。スグル君に何させてたの?」

スグル「なんでもスランプみたいで……僕にスランプを解消する手伝いをして欲しかったみたいです」

瀬川「ふーん……で、何すればいいの?」

飛田「とにかくオレの全てを称え、オレを誉めちぎればいいだけの簡単な仕事さ」

瀬川「ヨイショ要員かい!」

飛田「練習だッ、スグルカモンッ!」

スグル「はい! 飛田さん、カッコいいです!」

飛田「バカにしてるのかキサマァ! そんな見え透いたお世辞で、本当に喜ぶと思っているのか!?」

飛田「全くこれだから男は……オレの美しさを理解するだけの容量が足りていないな」

いやこれ結構難しくない? 気分良くなる様に褒めないとダメなんでしょ? 無理だよこれ!

瀬川「あっ、私用事を思い出した!」

スグル「え、瀬川さん!?」

申し訳ないけど、私には絶対無理っぽいんだよね。面倒臭いし

と、いう訳で……逃げるんだよぉ〜!

飛田「ん? いないな……やむを得ん。スグル、続けろ」

スグル「うわぁぁぁ……!!」

57 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/10/14(月) 21:31:05.81 ID:VaVsGbM8O





古河「……で、結局食堂に戻ってきたん?」

瀬川「うん……」

輪ゴムをぶつけられたり無茶振りを要求され続けた結果、最終的に着いたのは食堂だった

照星さんが淹れてくれたお茶を流し込む。案外料理上手なんだね……

照星「自分は母親が病気だったっすからね。姉貴と自分が料理の担当だったんすよ」

照星「けど、姉貴の料理は薄味過ぎて……健康にはいいんすけどね……」

瀬川「だから味が濃いめなんだ……」

遠い目をする照星さん。気持ち濃い目のお茶をすすりながら、お茶請けのお菓子をかじる

古河「ウチもアニキや弟が料理せへえんからオカンが料理せへえん時はウチがやるわ。まあ二人には食わせへんけど」

瀬川「食べさせてあげようよ。兄弟なんだし……」

古河「働かんヤツに食わすメシは無いわ!」

照星「そう言えば、瀬川先輩には兄弟いないんすよね。前に聞いたっす」

瀬川「あ、そう言えば……」

あの時は臓腑屋さんも一緒にいたっけ……お姉さんがいるって言ってたけど、お姉さんは何していたんだろう

……まあ、これも嘘かもしれないけどね

照星「一人っ子って羨ましいっすねー。でも、何となく寂しくないっすか?」

瀬川「寂しくなんて無いっ!!!」

古河「ど、どないしたんや。そない大声だして」

瀬川「……ゴメン」

目を白黒する二人に頭を下げる。寂しいという言葉に、過剰に反応してしまった事に、激しい自己嫌悪が襲ってくる

……気まずい雰囲気が辺りに漂う。結局、話が弾む事はなかった

58 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/10/14(月) 21:31:58.39 ID:VaVsGbM8O





『月神の個室』

月神「……はい。これがその勾玉よ」

陰陽寺「………………………………」

月神「どう? それで間違いないかしら」

陰陽寺「ああ。邪魔をした、僕はもう戻る」

月神「待って、せっかく来たのだもの。お茶でもどうかしら?」

陰陽寺「必要ない」

月神「そ、そう……けど、あの勾玉。とても大切な物なのね」

陰陽寺「……お前には関係無い」

月神「……裏に刻まれていた名前は、お母さんの名前かしら?」

陰陽寺「お前には関係無い!」

月神「……ごめんなさい。無神経だったかしら」

陰陽寺「お前は……苦手だ。話していると、どうしても思い出す……」

陰陽寺「どうして、どうしてそんなに、”アイツ”によく似た目をしている……」

月神「……陰陽寺さん?」

陰陽寺「何でもない。もう僕に話しかけるな」

月神「……陰陽寺さん」

59 : ◆hFluTDb/oi42 [sage]:2019/10/26(土) 23:23:50.15 ID:YINJeZweO





ハルカ『よい子の皆ー! ココロオド……』

ハルカ『ってあれ? 普段のイントロは? ていうか、心なしか何だか簡素になってない?』

ヨウ『ああこれの事か? 飽きたんだとよ。需要も無さそうだしやる意義が感じられないんだとよ』

ハルカ『め、メメタァーっ!』

ヨウ『まあそんな事はどうでもいいさ。重要なのは動機の方さ』

ハルカ『あ、もう動機って言っちゃうんだね。建前上は皆が仲良くなる為のミッションなのに』

ヨウ『そんな細かい部分に気づいてる奴いないぞ。という事だ。生徒諸君は体育館に来てくれ』

ハルカ『ゴールデンから週末に左遷されたせいで、尺が取れないんだよね……』

ヨウ『さて、唐突だが初の合言葉といこうか!』

『『鮮やかな!!』』

ハルカ『遥かな明日を!』ヨウ『見届k



60 : ◆hFluTDb/oi42 [sage]:2019/10/26(土) 23:24:40.21 ID:YINJeZweO





『体育館』

モノクマ「うぷぷ。来たみたいだね……」

瀬川「いや、さっきのは何?」

打ち切られた……いや打ち切り所か投げやり過ぎる展開に唖然としながらここまで来たよ

まだ断末魔が耳にこびりついてるよ。あの悲壮な顔がまだ目に焼き付いてるよ

ほら、皆も気まずそうな顔してるよ……

モノクマ「昔ながらのやり方じゃ通用しなくなってきているからね……色々変えていかないと」

竹田「時代についていけなくなったってか。悲しい事言ってくれるじゃねえの」

月乃「……流行り廃りとは残酷なもの」

しみじみと語り出す竹田さん達。今のこの状況で、そんな悲しい話はやめて……

飛田「そんな事はどうでもいいッ、いったい全体、何の用件だと言うんだッ!?」

モノクマ「ああそうそう動機動機……。ところで、オマエラには会いたい人とかいない?」

……は? 会いたい人?

どうしてそんな事を急に……。いや、いないと言えば嘘になるけど

けど、その人にはもう会えない。だって……

61 : ◆hFluTDb/oi42 [sage]:2019/10/26(土) 23:26:21.88 ID:YINJeZweO


スグル「会いたい人……」

月神「……それが、どうかしたのかしら?」

古河「まさかそれが動機言うんちゃうやろな!」

モノクマ「あったりぃ〜! 今回コロシアイを勝ち抜いたクロには、クロが会いたい人にもう一度会わせて差し上げます」

モノクマ「微妙な別れ方をしたアイツも、二度と顔を見たくないアンチクショウにも、ボクプレゼンツの感動の再会をさせてみせま〜す!」

……再会? それが動機になるの?

御影「な〜んだ! 大したことないじゃん!」

駆村「そもそも、今更誰かに会う為だけに人を[ピーーー]奴なんている訳が……」

モノクマ「本当に? 【死んだ人にも会わせる】って言っても大したこと無いかな?」

瀬川「…………は?」

死んだ人にも? どういう事なの?穢土転生?

照星「死んだ人……。……嘘っす! 死んだらもう会えないんすよ!」

モノクマ「そう思うならご自由に! ボクは決して嘘なんて言わないよ!」

モノクマ「正真正銘、本人に会わせてあげるよ!コロシアイしてくれたらね!ぶひゃひゃひゃひゃ!」

嫌な高笑いを残して、モノクマは去っていった

コロシアイしたら会いたい人に会える。……それが既に死んでいる故人だとしても

その動機が私達にもたらすモノは、今の私には理解できなかったんだ

62 : ◆hFluTDb/oi42 [sage]:2019/10/26(土) 23:27:44.85 ID:YINJeZweO


瀬川「……どう思う?動機」

硬直した空気に耐えきれなくなる。背中がむず痒くなる感覚がくすぐったい

でも、そろそろ辛くなってくる。取り合えず、何か話しかけてみる事にした

御影「どうって……死んだ人に会えるって、流石に有り得ないでしょ!」

月乃「……科学的にも、倫理的にも不可能」

朝日「私には月乃ちゃんがいるから大丈夫だよぉ」

月乃「………………………………」

瀬川「……だよねえ」

会いたい人がいる……。けど、それがイコール人を[ピーーー]動機になるかって言われると疑問だ

現に、皆はこの動機に対して何も驚異を感じていない。今回はモノクマも失敗したかな……




照星「あ、あの。もしかしたら、なんすけど……」

照星「それって天地先輩や吊井座先輩にも会えるって事なんすかね……?」

63 : ◆hFluTDb/oi42 [sage]:2019/10/26(土) 23:30:34.18 ID:YINJeZweO


瀬川「……は?」

何を言ってるんだこの人は……頭がおかしいのかな?

照星「それに、デイビット先輩や臓腑屋先輩……」

照星「死んじゃった人達って事は、四人ともそうっすよね……?」

駆村「な……しっかりしろ!モノクマの言葉に惑わされるな!」

スグル「そうですよ!皆さんも言ってるじゃないですか。死んだ人にはもう会えないんです!」

照星「け、けど……自分、ずっと後悔してて、これでいいのかなって悩んでて……」

陰陽寺「……下らない。いつまでも死人に執着するなんて無駄な事を」

陰陽寺「死人は死人だ。人じゃない。そんな奴に会ったところで、何が出来る」

月神「……陰陽寺さん!」

陰陽寺「モノクマを信じるのは好きにすればいい。それでどうしようと僕の知った事じゃないからな」

照星「……………………」

つかつかと帰っていく陰陽寺さんに、項垂れる照星さん。それを遠巻きに眺める私達……

この動機……なにか一波乱ありそうな予感……!

64 : ◆hFluTDb/oi42 :2019/11/04(月) 22:10:37.66 ID:rDbZw++MO








私が会いたい人は、きっと私に会いたくないと思う


だって、私は、その人から【──】を奪い取ったから


いなくなった事をいい事に、好き勝手してきたんだから


だから、会いたいけれど会いたくない。そんな矛盾した想いを懐いている


ああ、でも───


もし、許されるなら、もう一度…………







65 : ◆hFluTDb/oi42 :2019/11/04(月) 22:12:24.89 ID:rDbZw++MO






瀬川「おはよー」

月神「おはよう。瀬川さん」

動機が語られた次の朝。食堂には、いつもと変わらない顔の皆が揃っていた

何て事無さそうな態度を見るに、気にしている人はいなさそう

照星「……。あ、おはようございますっす。先輩」

……いや、一人いた。陰陽寺さんにバッサリされた照星さんだ

まだあの二人に未練があるのかな……。見るからにしょげた表情は、見てるこっちも辛気臭くなるよ

古河「そないしょげんなや。あんなんウソに決まっとるで」

駆村「死人が蘇るなんて……時雄島では有り得ないしな」

御影「いやどこでも有り得ないから!?」

照星「……なんかごめんなさいっす。自分のせいで」

月神「そんな事ないわ。悪いのはモノクマ……けほっ、けほっ」

朝日「あれぇ?月神さん。もしかして風邪ぇ?」

月神「そうじゃないわ。少し、むせただけ……」




66 : ◆hFluTDb/oi42 :2019/11/04(月) 22:15:46.51 ID:rDbZw++MO





…………ドサッ






67 : ◆hFluTDb/oi42 :2019/11/04(月) 22:16:25.30 ID:rDbZw++MO



スグル「つ……月神さん!」

飛田「ノォオオオオオオウ!?何があったのだね!?」

月神「あ……ごめんなさい。少しふらついて……」

唐突に倒れ込んだ月神さん。少し。と言った割には結構辛そうな顔をしてるけど……?

というか、なんか息が荒いんだけど……??

月乃「……熱がある。今日は寝ていた方がいい」

月神「平気よ。私は皆のリーダーなんだもの。このくらい……」

駆村「体を壊したら元も子もないだろう?休む事だって仕事の内と島では言われているんだ」

月神「でも……」

照星「……だーい丈夫っす!自分、先輩の分まで頑張るっす!」

竹田「ぶっ倒れて死んじまう事の方がよっぽど怖えからなあ。好意ってのは素直に受け取っとくモンだぜ?嬢ちゃん」

月神「……そうね、今日は部屋で休む事にしましょう」

月神「けど、何かあったら遠慮せずに私に相談して。話を聞く事くらいなら出来るから」

古河「そんじゃ行くで。また倒れたら敵わんからな。ウチの肩貸したるわ」

ありがとう。と会釈して、月神さんは食堂から出ていった

流石に毒とかは無いよね……なんて、そんな事を考えながら一日は始まっていくのだった




68 : ◆hFluTDb/oi42 :2019/11/04(月) 22:17:15.85 ID:rDbZw++MO



スグル「月神さん、何事も無くて良かったですね」

瀬川「うん。倒れた時はビックリしたけど」

御影「いや~でも正直焦ったよ!何かあったらどうしようって」

月乃「……何も無いのが一番。ゆっくり休めば明日には治る」

のんびりとお茶をすすりながらさっきの一幕を思い返す

急にフラッと倒れたから、てっきり毒でも盛られたのかと……

スグル「でも、心配です。早く戻ってこれるといいですね」

瀬川「……どうして?月神さんはリーダーだから?」

スグル「それもありますけど……月神さんは皆の為に一生懸命ですから。きっと疲れも溜まっていたんでしょうし」

瀬川「ふーん……そっか」

スグル君の答えに適当な相槌で返す。まるで"お前とは違って"とでも言いたそうにしていたのは気のせいだと信じたい

月乃「……それに、直前に動機が出されて、疲弊していたのかも知れない」

月乃「……肉体での疲労と違って、精神の疲労は自覚しにくい。知らず知らずの内に蓄積していく」

月乃「……それが、今日に噴出しただけ」

少し遠く見ながら、月乃さんはそう呟いた

まるで、どこか遠くの過去を見つめる様に……




69 : ◆hFluTDb/oi42 :2019/11/04(月) 22:18:03.97 ID:rDbZw++MO



御影「あ~あ!でもどうせなら古河さんが倒れてくれれば良かったのになあ」

瀬川「えっ、何で?」

御影「だって怖いし、乱暴だしさぁ……この前の一件で、やたら当たりが強くなったんだよね」

スグル「確かに、前から御影さんにはキツかったですね」

御影「いるよねああいうチンピラ……どうせボクの事を動くサンドバッグか何かだと思ってるんだよ……」

月乃「……ちょっかいかけやすいだけでは?」

御影「はぁー……ボクはいずれビッグになる男だからね。その時に古河さんに泣き付かれても許さないからね!」

古河「ほーん。何をどう許さないんや」

御影「そりゃもうボクをパシりにしたり顎で使ったりうわあああああああああああ!!!!」

瀬川「あぁ……フラグだったね」

速攻回収と言わんばかりに登場した古河さん。逃げようとした御影君をむんずと掴み、その足を思いっきり踏みつけた 

古河「んー?誰が倒れてほしかったん?言うてみいや」

御影「そこから聞いてたの!?ごめんなさああい!!!」

古河「謝って済むなら警察要らんのやこのボケぇええ!!!」

スグル「……大丈夫でしょうか。御影さん」

月乃「……死にはしないと思う。多分」

走り去る二人を眺めながら、のんびりとお茶請けをくわえる月乃さん

なんというか……うん……元気だなぁ……




70 : ◆hFluTDb/oi42 :2019/11/04(月) 22:19:10.48 ID:rDbZw++MO





古河「ったく。あのボケカスクソ野郎……」

駆村「また御影を追い回してたのか……」

あの後、散々御影君を虐めて満足したのかまた戻ってきた

今は皆で月神さんのご飯を作っている最中だ。お粥とかなら私も作れるって言ったけど、気持ちだけ受け取るってさ。ちぇ

竹田「御影の坊主も苦労するねえ。嬢ちゃんもよく坊主を虐めんの飽きねえなあ」

古河「あいつイジメんのおもろいねん」

瀬川「最低の答えだ……」

そんな理由でちょっかいかけられる御影君が不憫だ……。まあ自業自得なトコもあるんだけどね

駆村「あんまり御影を追い詰めるなよ?案外参っているかもしれないからな」

古河「はあ?アイツが?ありえへんありえへん」

古河「万一御影に何かあったとしても、ウチは絶対になんともならへんな!」

竹田「冷たいねえ。ま、若いモンにはそれが普通かもしれねえけどな。手加減はしてやれよ?」

古河「わーっとるって!ウチもそこまで酷い事はせえへん。少し殴ったりする程度やし」

瀬川「少し……?私はいぶかしんだ」

流石に暴力が原因でコロシアイになる訳無い……よね?

駆村「お、そろそろ出来そうだな。瀬川、持っていくか?」

瀬川「……何で私が?」

駆村「手伝いたいって言っていたじゃないか」

そうだった……下手な事は言うもんじゃないね。うん……


71 : ◆hFluTDb/oi42 :2019/11/04(月) 22:20:09.93 ID:rDbZw++MO






瀬川「はあ~。めんどくさ……」

こんな事になるなら素直に戻ってればよかった……お粥重いし……

朝日「あ、瀬川さぁん。どうしたのぉ?」

瀬川「朝日君に照星さん?珍しいね。二人が一緒なんて」

飛田「オレもいるぞッ!」

あ、本当だ。正直視界に入っていなかった

照星「そうっすか?ちょっとパトロールしてたんす。そしたら先輩達とばったり会ったんすよ」

朝日「それでちょっと話してたんだぁ。栄養管理学」

瀬川「ん?」

ええ羊羮……なんだって?

朝日「でも意外だったよぉ。二人とも頭がいいんだねぇ。勉強になったよぉ」

照星「健全な肉体は健全な食事からっす!自分もまだまだだと痛感したっす……」

飛田「このオレの美しさを保つ為。伸ばす為には労力は惜しまない!それこそがオレの流儀ッ!」

瀬川「お、おおう……」

最悪だ……私の預かり知らぬ所で、ヘンなグループが形成されている……!

照星「ところで、瀬川先輩は何持ってるんすか?」

瀬川「そうだ!私お粥持ってかないと!」

飛田「そうか!ならオレも一緒に」

瀬川「結構です!」

さっさと変人集団から逃げ出そう。……あれ?よく考えたらあの三人に押し付けとけばよかったんじゃない?

瀬川「……本っ当にツイてなーーーい!」


72 : ◆hFluTDb/oi42 :2019/11/04(月) 22:21:12.46 ID:rDbZw++MO






月神「……けほっ、ごほっ!」

瀬川「はーい。お粥持ってきたよー」

月神「あ、ありがとう。これ、瀬川さんが作ったの?」

瀬川「え?まあ皆と一緒に……」

本当は見てただけなんだけどね……。皆がそう言ったからそうしただけで嘘は言ってないしいいよね?

月神「ふふっ。瀬川さんは優しいのね」

瀬川「え、そう?当然の事をしただけだけど」

そもそも、皆から言われたから来ただけだし……

月神「そうやって、誰かの為に動ける事が凄いのよ」

月神「私も、貴女の事を信頼しているわよ?もし、私がまた倒れたら、その時は頼らせて貰うわ」

瀬川「……ありがと」

瀬川「お粥、食べ終わったら置いておいて。また取りに行くから」

月神「大丈夫よ。……ありがとう、瀬川さん」

瀬川「どういたしまして」

それだけ言って、部屋から出ていく。お粥のお皿は残したまま

瀬川「安心しなよ。リーダーは私がちゃんと受け継ぐからさ」

扉を閉める直前に、そんな事を小声で吐き捨てる。当然、聞こえない様にする為に


73 : ◆hFluTDb/oi42 :2019/11/04(月) 22:21:42.91 ID:rDbZw++MO





月神「けほっ、美味しい……」

月神「……陰陽寺さんも、隠れなくても良かったのに」

陰陽寺「あいつとは話したくない」

月神「もう。……瀬川さんはいい人よ?」

陰陽寺「どうだかな」

月神「そんなつっけんどんな態度はダメよ。もっと歩み寄らないと嫌われちゃうわ」

陰陽寺「知るか。嫌いたければ嫌えばいい」

月神「ダーメ。……けど、このお守りのお陰かしら。何だか、誰かに守って貰っているみたい」

月神「今は陰陽寺さんに守って貰っているけれどね」

陰陽寺「もう戻る」

月神「でも、いいの?私がずっとお守りを預かっていて」

陰陽寺「……ずっと僕の手元にあると、僕はそれに頼る。お前が持っていろ」

陰陽寺「お前は……アイツに似ている。顔も、声も、性格も違うのに……」ボソッ

月神「……?今、何か言った?」

陰陽寺「何でもない」

月神「そう?……じゃあね、陰陽寺さん」



74 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/09(土) 20:01:54.33 ID:GwnjO7d1O







古河「ほーん。じゃあ月神はもう平気なんやな?」

月乃「……熱も引いてきた。後は一晩眠れば収まるはず」

駆村「それはよかった。時雄島直伝の栄養豊富な粥だからな」

飛田「いやあ倒れた時はどうなるかと思ったが、オレの献身のお陰かすぐに治って良かったじゃあないかッ」

御影「えっ!?飛田クン何かしてたっけ!?」

あの後、何人かが代わる代わる様子を見に行っていたみたい

どうやら月神さんの容態は順調に回復しているようで、明日には復帰できるみたいだね

朝日「でも油断は出来ないよぉ。引き始めと治り始めはしっかりと様子を見ないとねぇ」

竹田「なら誰か看病について貰うか?男の俺達よりも、女子の方がいいだろう」

照星「はいはいはーい!自分やるっす!」

スグル「張り切りすぎてぶつけてませんでしたか……?」

月乃「……今回は別の人にしてもらう」

照星「そうっすか……」

駆村「じゃあ、誰かやってくれる人はいるか?いないなら適当に決めよう」

瀬川「……………………」


75 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/09(土) 20:02:33.32 ID:GwnjO7d1O





月神「……それで、瀬川さんが看病してくれる事になったの」

瀬川「うん。まあ……」

本当の所は、“ここでやるって言えば褒めてくれるかな”って考えでやってるんだけどね……

ありがとうとは言われたけど、褒めてはくれなかったな……誰も

月神「一応、熱は引いたけど……」

瀬川「でもまだ動けないでしょ?何かあるなら私も手伝うよ」

月神「ありがとう。けど今は大丈夫。ココアでも飲む?」

瀬川「朝日君が淹れてたやつ?飲む飲む!」

月神さんからコップを受け取って、それを喉に流し込む

う~ん。やっぱり朝日君のココア美味しいなあ……

瀬川「……ふぁあ。なんか眠くなってきちゃった。少しだけ寝てていい?」

月神「構わないわよ。ベッド使う」

瀬川「流石にそこまではね……少し仮眠とるだけだから、ベッドに突っ伏すだけでいいや」

月神「そう?お休みなさい」

瀬川「はーい……」



76 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/09(土) 20:03:46.19 ID:GwnjO7d1O






瀬川「……んっ。うぅん……」

瀬川「ん~……。よく寝た……」

ココアは眠りにいいって聞くけど、案外本当かもね……

月神「すぅ、すぅ……」

ありゃりゃ、月神さんも寝ちゃってる。まあこっちとしてはやり易いからいいけれどね

で、今何時?そんなに寝てないとは思うけど

瀬川「…………うわぁあああ!!!朝の6時じゃん!?!?」

月神「きゃっ!?どうしたの!?」

瀬川「ゴメン!一晩寝ちゃってた!」

月神「いいのよ、瀬川さんも疲れていたんでしょう?」

月神「私の為に色々と手を尽くしてくれたんだもの。この位、なんて事無いわ」

瀬川「ごめんなさーい……」

クラスメイトの部屋で寝落ちとか、恥ずかしくなってくる……

瀬川「じゃ、私部屋に戻って二度寝してきまーす……」

月神「せっかくだし、一緒に行かない?私、待っているから」

瀬川「……体調はいいの?」

月神「万全よ。よく眠れたもの」

瀬川「わかった。じゃあ少し待っててね」


77 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/09(土) 20:04:31.04 ID:GwnjO7d1O







瀬川「うぅ、寒い……眠い……」

月神「もう朝よ……?」

瀬川「私はエンジンかかるのが遅いの!」

ストレッチもして、顔も洗って……でも、それでもまだ体が怠い

そもそも私はスロースターターなの!朝はもっと寝てたいの!

竹田「うん?誰かと思ったら月神の嬢ちゃんに瀬川の嬢ちゃんか。体調はもういいのか?」

月神「はい、お陰さまで」

瀬川「竹田さん早くない?まだ6時過ぎだよ?」

竹田「そうかあ?それと、年取ると眠りが浅くなるんでね……」

瀬川「うわぁ、悲しい……」

月神「………………あら?今、そっちの方で何か動いた様な……」

瀬川「えっどこ?見えないけど……」

竹田「俺も見えなかったけどなあ。……俺がボケ始めた訳じゃねえよな?」

月神「気のせいだったのかしら……」

竹田「ま、何でもいいだろ。せっかくだ、オッサンも一緒に食堂に行かせて貰おうかね」




78 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/09(土) 20:05:24.68 ID:GwnjO7d1O






……数分後



スグル「あれ、古河さんに照星さん、珍しいですね」

照星「おはよっす!バッタリ会ったんすよね。運命っす!」

古河「ウチは普段遅めなんやけどな。なんか今日は目ぇ覚めてもうて」

照星「あ、スーグルん!一緒にいこっす!」

スグル「あははは……いいんですか?」

古河「別にええわ。ほなパパッといくで!」

スグル「はい!…………あれ?」

照星「どしたんすか?」

スグル「今、向こうで何か……」

古河「向こうって……花畑やん。気のせいと違うんか?」

照星「自分もよくわかんないっすね……」

スグル「……………………………………」

照星「あっ、スグルん!?どうしたんすか!?」

スグル「なんだか……嫌な予感がします……!」


79 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/09(土) 20:06:09.80 ID:GwnjO7d1O


瀬川「……な、なにこれ!?」

食堂の中は、メチャクチャに荒らされていた

椅子は倒され机は明後日の方向に吹き飛んでいる

足元には食器が散らばり、壁の至るところには傷がついている

月神「いったい、何が……?」

竹田「……オイ、嬢ちゃん。あれは何だ?」

瀬川「あれ。って……」

竹田さんが指差すその先、そこに倒れていたのは……







照星「スーグールーんー!本当にどうしたんすかー!?」

古河「こんな所に入り込んで、何がしたいんや!」

スグル「わからないです……けど、確かに見たんです!」

古河「何をや!」

スグル「……人間です!」

古河「ハァ!?」
80 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/09(土) 20:06:46.27 ID:GwnjO7d1O




瀬川「……ウソ、でしょ?」

仰向けに倒れていたその人は、既に息をしていなかった

深々と喉に突き刺さった銀の矢。一目で死んでいると確信する惨たらしい姿

竹田「なんてこった……」

月神「そんな……。そんな、どうして!!」

月神さんが叫ぶ。虚ろな目で天盖を見つめる、仲間だったモノの名前を







スグル「………………」

古河「はぁ、はぁ……オイコラスグル!人間なんかおる、わ……」

照星「先輩……?どうしたんすか? ……え?」

スグル「……どうして、貴女がここにいるんですか……」


81 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/09(土) 20:07:20.05 ID:GwnjO7d1O





 





月神「…………御影君っ!!」


哀しい叫びが響き渡る。超高校級の幸運、御影直斗君は、もうここにはいないんだって示すように




照星「陰陽寺、先輩……?」

古河「なんで……なんでや!なんで陰陽寺が死んどるんや!?」





……そして、これはまだ序の口で

この裁判が、私達にとって最大の試練になる事なんて、この時はまだ思ってもいなかったんだ


82 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/09(土) 20:07:55.15 ID:GwnjO7d1O





「死体が発見されました!一定の自由時間の後、学級裁判を行います!」

「死体が発見されました!一定の自由時間の後、学級裁判を行います!」







83 : ◆hFluTDb/oi42 [!red_res saga]:2019/11/09(土) 20:08:47.67 ID:GwnjO7d1O







【Chapter3】
  善悪インヤン双方の悲願  非日常編








84 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/17(日) 23:55:35.05 ID:JfQMgyAqO






~~~♪



ハルカ『良い子の皆……ココロオドルTVの時間だよ……』 

ハルカ『………………はあ』

ヨウ『どうした?無駄に高いテンションだけがキャラを作っているお前にしては珍しい』

ハルカ『だってさあ……このコーナー、いる?』

ハルカ『ただでさえ視聴率取れてない番組の更に隅っこ……』

ハルカ『言うなれば、マイナー雑誌の巻末の打ち切りコースをひた走ってる様なものじゃん……』

ヨウ『真理ここに到ったか……』

ヨウ『言いたい事はよくわかる。というか俺も同意見だ』

ヨウ『しかし、やらないと給料が貰えないぞ』

ハルカ『そうだよね……合言葉だけ言って終わろうか』


『『鮮やかな……』』

ハルカ『遥かな明日を……』ヨウ『見届けよう』

ヨウ『ま、俺達の明日は無いんだがな』





85 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/17(日) 23:56:14.86 ID:JfQMgyAqO







モノクマ「うぷぷ……全員揃ったよね?」

モノクマ「今回は大変だよ!何せ二人も死んでるからね!」

アナウンスが鳴らされた後、私達は学園の正門前に全員が集められていた

死体がバラバラの位置にある都合で、一度別の場所に纏まらないと不平等だからね

飛田「な、何がなんだかわからんッ。どういう事だッ!」

駆村「二人も死んだ……本当なのか?」

照星「間違いないと思うっす。息も止まってたっすし……」

竹田「なんてこった。御影の坊主の他に、陰陽寺の嬢ちゃんまでくたばっちまったのか」

月神「嘘………………」

こぼすように呟く。私だって信じられないよ、あの陰陽寺さんが死んでいるなんて……

モノクマ「ま、ともかく殺ったものはしょうがないので、捜査頑張ってちょーだいな!」


86 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/17(日) 23:56:54.64 ID:JfQMgyAqO



竹田「捜査っつってもなぁ……どうするよ?」

竹田「前みてえに二人づつ見張りをつけると、捜査に割く人が足りなくなるぜ」

朝日「えっとお、十二人引く二で十人でぇ……そこから四人引くからぁ……」

スグル「六人ですね……二つの事件を並行して調べる事も考えると、かなり厳しいです」

月乃「…………私に、提案がある」

月乃「……二人組で捜査をすればいい。互いが互いを見張り合う形になる」

飛田「なるほど逆転の発想かッ!」

月神「そうね。……」

瀬川「大丈夫?月神さん、まだ本調子じゃないでしょ?」

月神「……正直、辛いわ」

月神「けど、ここで折れる訳にはいかない。亡くなった二人の為にも私は立ち上がらないといけないから……」

駆村「よし、皆いいな?それじゃあジャンケンで決めるぞ……」




「「じゃーん、けーん」」

「「ぽん!!」」


87 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/17(日) 23:57:32.63 ID:JfQMgyAqO


【捜査開始】



瀬川「よろしくね、月神さん」

月神「此方こそ。……頑張りましょう」

厳正なるジャンケンの結果、私は月神さんと組む事になった

なんだか最近、月神との縁ばっかりだなあ……

月神「早速、モノクマファイルを確認しましょう。二人分の量は少しキツイけれど……」

瀬川「はーい」




【モノクマファイル3】
 被害者は陰陽寺 魔矢
 死体発見現場は、彩海学園敷地内花園
 死因は何らかの毒物の接種による中毒死
 背中に何らかの刃物で突き刺さった形跡が残っている


【モノクマファイル4】
 被害者は御影 直斗
 死体発見現場は一階食堂
 死亡推定時刻は夜の12時頃と見られる
 争った形跡があり、喉には矢が突き刺さっている




瀬川「……惨いね」

月神「そう、ね……」

あまりに凄惨な状況に、思わず二人でため息を吐く

正直、逃げたいけど……逃げられないよね。絶対に


88 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/17(日) 23:58:28.05 ID:JfQMgyAqO





月神「陰陽寺さん……」

まず、私達は陰陽寺さんの方から調べる事にした

眠るように目を閉じ、だらんとしたその姿。生前の、あの刃の様な雰囲気は微塵も感じられない

別に、私は陰陽寺さんと仲良くないし、特に何かされた訳でもない。けれど……

あの氷の様な寒気の殺気が感じられない。その実感が、彼女の死が、肌に痛々しく伝わってきた

瀬川「……本当大丈夫?なんなら私が見るけれど」

月神「っ、平気……って言えば嘘になっちゃうけれど……」

月神「本音を言えば、泣きたい。どうしてって叫びたい……」

月神「けど、それは全てが終わった後。そうじゃないと、陰陽寺さんにバカにされちゃうから」

瀬川「ふーん」

月神さんと陰陽寺さん、そんなに仲良かったっけ?まあ単純にリーダーだからって言うのもありそうだけどね

でも、あの陰陽寺さんでも哀しんでくれる人がいる……。それが少しだけ、救いになるんじゃないかな……



89 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/17(日) 23:59:09.88 ID:JfQMgyAqO



瀬川「えーっと、背中に何か刺さった傷があるんだっけ?」

月神「よいしょっ……と。ごめんなさい、陰陽寺さん」

陰陽寺さんの死体を横にズラす。字面だけ見ると中々エグいけど、その手つきはこなれている

私達、もうこんなに死体の扱いになれたんだなぁ……

月神「……これの事ね。確かに何かが突き刺さった後があるわ」

指差す先には背中の赤黒く染まった部分。確かに、何かが背中に刺さったみたいな傷がある

瀬川「でも、これかなり小さくない?これが致命傷になる?」

月神「流石に私達じゃわからないわね……」

まさか、これが俗に言う秘孔ってやつ?でも、そんなの知ってそうなのはそれこそ陰陽寺さんくらいしか……

月神「……あら?これは何かしら」

瀬川「毛糸じゃない?でも、陰陽寺さんのマフラーのものじゃないと思う……」

月神「わかるの?」

瀬川「コスプレイヤーなんですけど!超高校級ですけど!」

瀬川「服に使われている糸くらい、パッと見れば断言出来るんですけど!」

月神「凄いわ!瀬川さん!」

……けど、この毛糸どっかで見たんだよなぁ。どこだっけ?



90 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/17(日) 23:59:45.54 ID:JfQMgyAqO





『食堂』



スグル「あ、瀬川さんに月神さん!」

竹田「なんでえ、陰陽寺の嬢ちゃんの方はいいのかい?」

月神「ええ。一度別の場所を調べようと思って」

一旦陰陽寺さんからは離れて、御影君の方へと来てみた

皆もこっちの捜査をしているみたいで、ほとんどの生徒はここにいるみたい

古河「……………………」

照星「古河先輩……。その、えっと……」

古河「……ハン!こんな所で勝手に死ぬなんてマヌケやな!」

古河「ま、どうせ御影や。ここで死なへんかっても適当に死んどったやろ!フン!」

瀬川「それはちょっと言い過ぎじゃ……」

古河「せ、せやから、別にウチは何とも思っとらへん……」

古河「うっ、ぐすっ……うぅう……!」

啜り泣く音が聞こえる。あの強気で勝ち気な古河さんが、御影君の死に泣いているんだ

竹田「嬢ちゃん。お前さん……」

照星「……先輩。絶対に勝つっすよ」

熱い決意が漲ってくる。今回の事件はきっと前までよりも白熱した裁判になる……

瀬川「……よし!頑張るぞ!」


91 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/18(月) 00:00:17.84 ID:XvMqM0eSO



月神「御影君、痛かったでしょうね……」

目を瞑り、頭を下げる月神さん。痛々しい喉の矢がいやに強く光るのが不気味だ

瀬川「これ、ダンスホールのアレだよね……」

月神「そうね……後で確認してみましょう」

胸や頭ならともかく、喉元を一発で撃ち抜くなんて相当なプロだねこれは……

でも、何でわざわざ弓矢で殺したんだろ?というか肝心の弓はどこに?

瀬川「月神さーん。そっちに弓無い?」

月神「待って……これ……」

瀬川「あった?」

月神「ねえ、これ……陰陽寺さんの竹刀じゃないかしら?」

瀬川「そっちかあ……」

刀じゃなくて弓を探していたんだけど……けど、どうしてここに陰陽寺さんの竹刀が?

あの陰陽寺さんが竹刀を忘れるなんて思えないけど……

92 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/18(月) 00:00:57.06 ID:XvMqM0eSO




瀬川「それにしても……酷い荒らされようだね……」

床にはお皿や割り箸、コップが散乱し、椅子や机はとんでもない方向に飛んでいっている

月神「きっと、必死に抵抗したんでしょうね……」 

瀬川「うん……。うん……?」

確かに、殺されそうになったら抵抗するとは思う。けど、何か引っ掛かるような……?

瀬川「……あれ?あっ!?これだ!」

月神「ど、どうかした?」

瀬川「これだよ!あの毛糸!御影君のニットの毛だよ!」

質感、色、間違いない……けど、それがどうして陰陽寺さんについてたんだろ?

月神「……あら、これはココアかしら?」

瀬川「あ、そうだね。朝日君が淹れてくれてたヤツ」 

あ~あ。溢れちゃって勿体無い……御影君にもかかってるし

これ美味しかったんだよね。まだ作り置きとかあるかな……?

月神「瀬川さん。そろそろ次の場所に行きましょう」

瀬川「は~い……。……ちぇっ」


93 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/18(月) 00:01:25.58 ID:XvMqM0eSO






瀬川「……これが、あの銀の矢だよね?」

月神「ええ。恐らく……」

凶器の出所を探るため、私達は凶器博物館ことダンスホールに足を運んでいた

今、私の握っているのがその銀の矢だ。案外軽いそれは、弓道というよりはアーチェリーに使わそうな短めの矢

鏃に当たる部分な無く、尖っているだけ。これは競技用の矢にはよくあるんだって。的に当たっても抜けやすいようになってるんだ

月神「そうなの……詳しいのね、経験があるの?」

瀬川「アーチャーはファンタジーの鉄板ジョブだからね!」

まあちょろっと嗜んだ程度なんだけどね。何が役立つかわからないよ本当……

駆村「お、お前達もこっちに来てたのか」

飛田「フフフ、このオレの」

瀬川「ねえ、肝心の弓はどこ?さっきから見当たらないけど」

飛田「ここにあるぞ!」

瀬川「持ってたんかいっ!」

道理で見渡しても無いと思った……。ってアレ?

瀬川「その弓、どこにあったの?」

飛田「ここにあったとも!」

駆村「不思議な事にな……。それに、この弓は相当強い。引ける人間は絞られるぞ」

月神「んっ……!……本当ね。私じゃびくともしない」

ピン。と張られた弦は月神さんを拒む様に不動だ。こんなの引ける人って……



94 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/18(月) 00:02:00.35 ID:XvMqM0eSO





月乃「……二人とも、毒を探しに?」

瀬川「まあそんな所……」

陰陽寺さんは毒殺されている。という事は毒薬が使われている事は最早確定だ

と、言う訳で毒薬がいっぱいある科学室にやってきたのだった

朝日「きっとこれだねぇ。一個無くなってたんだぁ」

瀬川「なになに、"どんな方法でも即死させる毒"……」

瀬川「……って、幾らなんでも名前が安直過ぎない!?」

これもう名前じゃなくて説明文じゃん!考えた人はな◯う系ラノベの読み過ぎか何か!?

月神「"浸透率の極めて高い猛毒です。水に溶かしても直接注射しても気体に変えても効果があります。無味無臭ですので飲み水にでも混ぜといてください"……」

瀬川「説明文もなんか適当だね……」

朝日「緩いよねぇ。けどぉ、こんな毒を使ってまで陰陽寺さんを殺したかったのかなぁ……」

月乃「……それに、あの魔矢が毒の混入したものを飲むとは思えない。知らないにしても、素直に受け取るなんて」

瀬川「だよねえ……」

警戒心の強い陰陽寺さんが誰かに渡されたものを安易に口にするかな……?もしそうだとしたら、かなり親しい人。とか……?



95 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/18(月) 00:02:39.35 ID:XvMqM0eSO






捜査はまあまあ順調かな……あ、古河さんに照星さんだ

丁度いいや、あっちの捜査状況も聞いておこっと

瀬川「あっ、古河さんに照星さん。おー……」

月神「しっ」

瀬川「むぐっ!?」

……よく見たら、二人はなんだか真剣な表情で向き合っている。何かあったのかな?

古河「……なぁ、照星」

照星「どうしたんっすか?」

古河「ウチな、正直御影や陰陽寺見とるとムカついてたんよ」

古河「いっつも自分勝手な事ばっか言うとるし、目ぇ離したらすぐどっか行くやん」

古河「せやけど……せやけど!何も、二人揃ってあっちに行かんでもええやろ……!」

古河「なあ、ウチはどうすればええんや?あんなに嫌いやったんに、どうしてこんなに辛いんや!?」

照星「……そうっすね。でも、二人とも行きたくて行っちゃったワケじゃないと思うっす」

照星「戦うっすよ、皆で!それで、真実を見つけるっす!」

照星「……まあ、自分あんまし頭良くないっすけど!」

古河「なんやソレ!」

96 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/18(月) 00:03:09.73 ID:XvMqM0eSO



月神「……そうね。全力で戦いましょう」

月神「そして、見つけるの。二人の殺された真相を」

月神「全員で戦えば、きっと掴み取れるはずだもの!」

……まあ、古河さんや照星さん。月神さんがクロの場合もあるんだけどね。言わないけど

瀬川「ねえねえ。捜査の方はどう?順調?」

古河「……スマン。進んでへん」

瀬川「あっ……」

照星「け、けど証拠は見つけたっすよ!ほら!」

手ぶらはマズイと思ったのか、慌てて何かを取り出してくる

月神「これは……ゴム紐?」

照星「工業用ゴム紐らしいっす。駆村先輩から聞いたっす!」

照星「なんでも普通のゴムよりも弾性があって、ちぎれにくいとか……工作室にあるそうっすよ」

瀬川「じゃあ、それはどこにあったの?」

照星「食堂っす!倒れた椅子の下に落ちてたんすけど……」

……食堂?なんでまたそんな所にそんな物が?

そんでもって、なんでそれが必要だったんだろう……?



97 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/18(月) 00:04:31.03 ID:XvMqM0eSO


キーンコーンカーンコーン


『うぷぷぷっ。二人分の事件の捜査は終わったかな?』

『終わっていてもいなくても、学級裁判は問答無用で進むのでご注意を!』

『さあ、ドキドキワクワクの最高にハイな学級裁判を始めたいと思いまーす!』



月神「とうとう、始まるのね……」

古河「……しゃっ!気合いいてれくで!」

瀬川「あ、その前に私着替えてくるから先に行ってて……」

古河「……あれ、着る意味あるんか?」

瀬川「あるよ!あれは私の勝負服なんだもん!」

発言力と集中力が当社比三倍、更に精神的スーパーアーマーもついて議論にはハイパームテキなんだから……!

月神「……ごめんなさい。私も少し用事があるの」

照星「月神先輩もっすか?なら先に待ってるっす!」

瀬川「どうかした?もしかして月神もお色直し?」

月神「ええ。少し……ね」

瀬川「???」

……まあなんでもいっか!さっさと着替えてこよーっと


98 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/18(月) 00:05:00.59 ID:XvMqM0eSO






瀬川「お待たせ〜。待った?」

月神「いいえ、全然。……それにしても、凄い格好ね」

瀬川「それバカにしてるよね!?」

月神「そういうつもりでは無かったけど……ごめんなさい。私も動揺を隠せてないわね」

……言われてみると、確かに心なしか顔が青ざめている。きっと月神さんは今でも結構ムチャしてるんだ。病み上がりなら尚更

月神「今回の事件は異様だもの。アナウンスも二回鳴るし……」

瀬川「えっ、あれ二回鳴るものじゃないの?」

月神「そっか。瀬川さんは前の二つの事件では寝ていたから聴いていなかったのね」

いやそうなんだけど……確かにそうなんだけど、言い方!

月神「あのアナウンスは"死体を初めて見た三人が発見したら鳴らされる"らしいの」

瀬川「ふーん。……あれ?それって犯人は含まれるの?」

月神「フレキシブルに対応するとは聞いたけど……、多分、含まれていないと思うわ」

……なら、陰陽寺さんを見た三人と、御影君を見た私達にはある程度の潔白がある訳だ

何かに使えるかも知れないから、一応覚えていよっと


99 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/18(月) 00:05:51.94 ID:XvMqM0eSO






月神「……お待たせ。待たせてしまったかしら?」

スグル「いえ、全然!」

エレベーターの前で、既に集結した皆が待っていた

全員揃っているのに、その数が少ないと感じるのは、きっと母数自体が削れているからだろう

照星「よーし!気合い!入れて!行くっすよー!」

月乃「……あまり気負いするのも駄目。自然体でやればいい」

竹田「為せば成る。為さねばならぬ、何事も。ってな」

飛田「ぐぐぐッ、しかし二人分の事件だぞ。果たしてオレ達の手に負えるのかッ!?」

駆村「やるしかないだろ……生き残る為なんだからな……」

朝日「……頑張ろうねぇ。私も頑張るからぁ」

古河「……そっちで見とれよ。御影、陰陽寺」



……全員がエレベーターに乗り込むと、静かに、静かに真下へと落ちていく

それは死の宣告への猶予か、それとも精神統一の準備期間かはわからない。けど、私は今はいない二人の事を考えていた

御影 直斗君。緊張感の無い態度で、いつもヘラヘラとしていた彼はどうして死んでしまったのか

陰陽寺 魔矢さん。正直死んでざまあみろと思わなくもない位には仲が悪かったけど、それが良かった事なのかはわからない

善、悪、陰、陽。それをハッキリと示すんだ

ゴチャゴチャになって収拾がつかないくらい、暗く混沌とした裁判の中で

100 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/11/18(月) 22:05:30.65 ID:s9Li+Y7OO

【Chapter3 善悪インヤン双方の悲願】

【コトダマ一覧】

 
【モノクマファイル3】
 被害者は陰陽寺 魔矢 
 死体発見現場は、彩海学園敷地内花園 
 死因は何らかの毒物の接種による中毒死 
 背中に何らかの刃物で突き刺さった形跡が残っている 


【モノクマファイル4】 
 被害者は御影 直斗 
 死体発見現場は一階食堂 
 死亡推定時刻は夜の12時頃と見られる 
 争った形跡があり、喉には矢が突き刺さっている 


【陰陽寺の死体】
 死体は花園の一角にあった
 瀬川は気づかなかったが、月神は何故か一瞬だけ気づいた


【背中の傷】
 背中の傷は小さく、穴のような形状をしている


【ニットの毛糸】
 陰陽寺の衣服に付着していた毛糸。御影のニット帽に使われていたものである


【喉に刺さった矢】
 矢は喉に深く突き刺さっており、外した様子は見られない
 この一本以外は、全てダンスホールに仕舞われていた


【陰陽寺の竹刀】
 常日頃から陰陽寺が持ち歩いていた、愛用の竹刀
 陰陽寺の死体近くではなく、何故か御影の死体の近くに捨てられていた
 ボロボロであるが手入れはよくされており、使用者の年期を感じさせる


【荒らされた食堂】
 事件前後に荒らされたであろう食堂
 椅子や机はふき飛んでおり、床にはコップ、スプーン、割り箸や皿が散らばっていた


【朝日のココア】
 事件前に朝日が淹れていたココア。月神に渡したのもこれ
 食堂に常備されていた


【銀の弓と矢】
 弓は事件現場にはなく、ダンスホールに置かれていた
 相当強い弓であるらしく、月神では引くことは出来なかった


【どんな方法でも即死させる毒】
 科学室に置いてあった毒。一つ紛失しているため使用されたのはこの毒で間違いない
 "浸透率の極めて高い猛毒です。水に溶かしても直接注射しても気体に変えても効果があります。
 無味無臭ですので飲み水にでも混ぜといてください"


【工業用ゴム紐】
 工作室にあったらしいゴム
 伸縮性や弾性に優れ、ちぎれにくい


【死体発見アナウンス】
 死体を初めて見た三人が発見したら鳴らされるアナウンス
 フレキシブルに対応するらしいが、犯人は含まれないらしい


【アナウンスの順番】
 陰陽寺の死体を発見したのは、瀬川、竹田、月神の三名
 御影の死体を発見したのは、スグル、照星、古河の三名
101 : ◆hFluTDb/oi42 [sage]:2019/12/05(木) 23:22:00.04 ID:Xbbbl/4BO
Twitterにも貼りましたが暫くの間更新を無期限停止します
このスレの確認は行いますので、何かあれば随時お答えしていきたいと思います
102 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:45:07.83 ID:kDyRoiDHO








【 学 級 裁 判  開 廷 】







103 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:46:21.04 ID:kDyRoiDHO



ハルカ『ではでは、まずは始めに学級裁判の簡単なルール説明から始めまーす!』

ヨウ『学級裁判では、誰が犯人かを議論し、その結果はオマエラの投票により決定される』

ハルカ『正しいクロを指摘できれば、クロだけがオシオキ‥‥ですが!』

ヨウ『間違ったクロを指摘した場合はクロ以外の全員がオシオキされ、クロにはこの学園からの解放を約束しよう』

モノクマ「さーあ、今回は大変だよ!なにせ二つの事件を解決しないといけないからね!」

モノクマ「それでは脳汁ドバドバのマックス大興奮な学級裁判を……」


竹田「あー、その前に俺からも一つ聞いてもいいか?」

竹田「今回は二人死んでいる訳だけれどよ。もしクロが違った場合はどうすんだ?二人共当てないといけないのか?」

張り切るモノクマを制止して、竹田さんが疑問を呈する

クロが二人いたら……なんて想像したくもないけれど、実際その可能性は否定しきれないんだよね

モノクマ「んーそうだなぁ……なら、『先に殺したクロ』を当ててくれればいいや!」

モノクマ「後追いのノロマに人権なんか無いからね!」

スグル「酷い理由ですね……」

後出しのアイデアはパクり扱いされる。悲しいけれど、これって裁判なのよね……

けど、一人だけでいいなら気持ちは楽かな……

モノクマ「もういいよね!?では、フルスロットルで学級裁判を進めてくださーい!」




104 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:47:39.94 ID:kDyRoiDHO





竹田「と、言う訳だ……。なら、話は早え」

駆村「先に殺したクロ……それを当てればいいのか」

スグル「ですが、それにはまず最初に『どちらが先に殺されたのか』を議論する必要があります」

スグル「極端な事は考えたくないですけど……後に殺したクロを答えてもダメですから」

そう。冷たいけれどそれがこのルールだ。御影君か陰陽寺さんのどちらかは、無駄死にだって事になるから

……けど、やっぱり納得するか、割り切れるかは別の問題だよね

照星「……でも、自分はどっちの事件の真相も知りたいっす!」

朝日「そうだよぉ。二人もいなくなっちゃったしぃ、どっちかを無視するなんて嫌だもんねぇ」

飛田「し、しかしだねッ、二つの事件を同時に議論するのは、我々には不可能ではないかッ!」

月乃「……同じ日に、同時に殺人が起きた。偶然とは思えない」

月神「繋がっている……って事かしら?」

一連の二つの事件は繋がっている。そう聞いた月神さんの言葉に、微かに頷く月乃さん

その反応に、皆の顔が引き締まる。特に古河さんに至っては……

古河「……繋がってようがなかろうが、同じ事や」

古河「どっちもまとめて締め上げればええんやからな……!」

月神「……冷静にね?」

燃える闘志が伝播する。今この瞬間、私史上最大の学級裁判の火蓋が切って落とされた……!

105 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:48:09.05 ID:kDyRoiDHO

【ノンストップ議論 開始】

『コトダマ』
【モノクマファイル3】
【モノクマファイル4】
【陰陽寺の死体】




飛田「結局、先に殺されたのは……」

飛田「【魔矢の方】なのかね、【御影の方】なのかねッ!?」

駆村「どちらが先に殺されたのか……わからないのか?」

竹田「死体には【それらしいモンは無かった】な」

月乃「……状況からも、【判断出来ない】」

スグル「何か《時間が示されているもの》があれば……」

飛田「そんなものがあるというのかッ!スグルッ!」

照星「何かあったような気もするんすけどねー……」
106 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:48:37.92 ID:kDyRoiDHO



《時間が示されているもの》←【モノクマファイル4】



瀬川「それに賛成だよっ!」

瀬川「御影君のモノクマファイルには、死亡推定時刻が書かれてあるはずなんだ」

瀬川「とりあえず、今はこれを目安に考えていけばいいんじゃないかな?」

スグル「は、はい!」

朝日「御影君の死亡時刻はぁ……夜の12時みたいだねぇ」

竹田「一応聞くが、この時刻にアリバイのある奴はいるか?」

問いかけられた質問に、返答する人はいない。そりゃ、そんな時間にアリバイがある人なんて……

月神「……私と、瀬川さんにはあると思うわ」

瀬川「えっ!?私!?」

月乃「……何故そこで驚く?」

いやだって身に覚えが……。あっ

瀬川「そっか。私達一晩同じ部屋にいたもんね」

月神「ええ。瀬川さんが付き添いで看病してくれたの」

……実際はただ寝ていただけなんだけどね。それは黙っとこ

竹田「……んじゃ、月神と瀬川の嬢ちゃんらにはアリバイがあるという事にしておくか」

古河「けど、それ以外にはあらへんしな……」



107 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:49:28.44 ID:kDyRoiDHO



瀬川「でも、アリバイがわからなかったのも前進だよ」

瀬川「アリバイからじゃ犯人には辿り着けないって、わかったんだからね!」

朝日「それもそうだよねぇ。前向きに考えようよぉ」 

駆村「じゃあ、次は何を議論する?犯人については今は考えてもわからないだろう」

スグル「では、丁度御影さんの事についてなので。僕から少し疑問があるんです」

月神「……何かしら?スグル君」

スグル「御影さんの殺害方法です。御影さんは、喉に矢を受けていましたよね?」

飛田「恐らく、それが原因で死んだんだろう……恐ろしいッ!」

スグル「ですが、そんな事を出来る人はいるんでしょうか……」

矢で射抜かれて死んだ……それは皆も共通して考えている事だ

それでも、スグル君が心配しているのは……多分、あの事かな?




1:食堂にいた事
2:喉を射られていた事
3:御影に矢は刺さらない事
108 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:50:09.03 ID:kDyRoiDHO


2:喉を射られていた事



瀬川「これだね!」

瀬川「スグル君が言っているのは……御影君の喉を、正確に射抜かれていた事だよね?」

スグル「はい……」

古河「それの何がおかしいんや!喉やられたら死ぬやろ!」

駆村「いや……確かに無理だな」

古河「駆村ァ!オマエ頭おかしなったんか!?」

駆村「確かに喉を撃たれたら死ぬ。けどな……それを出来る人間は、果たして何人いる?」

朝日「私には無理かなぁ。弓なんて使った事無いよぉ」

他の皆も無理だと首を横に降る。そりゃそうだ。私達は超高校級でも、アーチェリーはド素人の集団なんだから……

スグル「素人が弓矢で正確に撃つ……それも、急所とはいえ喉という狭い部分をです」

月乃「……無理だと思う」

飛田「なら御影が動いていなければどうかねッ、例えば奴に薬を盛り動きを封じればッ!」

月神「それも……不自然だと思うわ」

月神「だって、御影君のモノクマファイルには“争った形跡がある”って書いてあるのよ?」

古河「争いながら弓で喉を撃つ……何者やねんソイツ!」

頭の中で、緑色の服を着たあんちゃんが御影君をボコボコにして弓矢を撃つ寸劇が繰り広げられる

ありえるかも!とはならず即座に却下。どんなアーチャーかって話だよね……


109 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:50:57.16 ID:kDyRoiDHO


照星「むむむ、難しいっすね……」

竹田「普通に撃つんじゃあ無理なんだろ?なら手に持って突き刺したらどうよ」

古河「長ドスの要領でぶっ刺すんか?それなら簡単やろ!」

朝日「その方法ならぁ、誰でも出来るんじゃないかなぁ」

手持ちで力一杯突き刺す。確かにこれなら誰でも出来る。私にも出来る。けど、それだと別の問題が出ない?

瀬川「だとしてもおかしいよ。犯人はなんでわざわざ矢を凶器にしたの?」

飛田「食堂ならば包丁なりなんなりを使えばいいッ、使い辛い矢を凶器にする理由はあるのか?」

スグル「そうせざるを得ない理由があったから……ですかね?」

月乃「……どんな理由?」

スグル「わからないです……」

朝日「そうだよねぇ。どうしても弓矢で殺したかった理由でもあるのかなぁ」

弓矢で殺したかった……そんな理由が犯人にあったの?よっぽど腕前に自信があるとか?

ん?でもヘンだよ。だったらなんで……


110 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:51:41.39 ID:kDyRoiDHO


【銀の弓と矢】



瀬川「これだよ!」

瀬川「本当に犯人は、弓矢での殺害を重視してたの?」

瀬川「そもそも、弓の方はダンスホールに置いてあるし……」

駆村「しかも、あの弓はかなり強い。引けるのは照星か、それこそ陰陽寺くらいだろう」

照星「自分、そんなにパワータイプに見えるっすか……?」

月乃「……なら、出来ない?」

照星「バカにしないでほしいっす!余裕っすよ!」

スグル「出来るんですね……」

ふんす!と胸を張る照星さん。前から思ってたけど照星さんって余計な一言で追い詰められる事を言うよね……

だけど、いくら引けても当たらなくっちゃ意味がない。御影君も殺されると思うなら動き回るだろうし……

竹田「……なあ、御影の坊主は置いておいて、次は一度陰陽寺の嬢ちゃんの方を考えてみねえか?」

竹田「陰陽寺の嬢ちゃんが先に殺された可能性もあるんだ。話してみるべきだと思うけどな」

月神「そうね……それじゃあ三人とも、最初に発見した時の状況を教えてくれるかしら」

古河「……せやな」

111 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:52:38.02 ID:kDyRoiDHO



照星「……と、言っても自分達が言える事って無いんすよね」

照星「スグルんが見つけて、古河先輩と自分はその後を追っていただけっすからね」

駆村「スグルが見つけたのか?」

スグル「はい。なんだか気になって……」

月神「私も、どこか気になる所があった様な……」

瀬川「なんじゃそりゃ……幽霊じゃあるまいし」

後ろ髪を引く……だっけ?これはまた意味が違うか。そんな二人だけが気づくなんて事ある?普通

飛田「死体は触っていないだろうなッ?最初から花園の中にいたんだなッ!?」

古河「それは間違いあらへん!そもそもウチらは寄宿棟でおうて、そのまま一緒だったんや!」

竹田「それは俺達も同じだぜ。なあ?嬢ちゃん」

月神「ええ。私と瀬川さんも一緒だったけど、竹田さんも何かを動かしていた風には見えなかったわ」

朝日「どうして二人だけなのぉ?他の人達はぁ?」

瀬川「さっぱりわかりませんでしたー……」

竹田「同じくな。てっきり俺がボケたモンかと……」

照星「自分もっすね……」

古河「ウチもや!」

どうやら私だけじゃなくて、スグル君と月神さん以外は微塵も気づいていなかったみたい。……なんで?

112 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:53:07.50 ID:kDyRoiDHO



月乃「……どうして二人だけ?」

駆村「まさか、もう老眼が始まったのか……?」

古河「駆村ァ!女子相手になんて事言うんや!」

瀬川「竹田さんならともかく私達は違うって!」

照星「そうっすよ!自分達は花のティーンエイジャーっす!」

飛田「レディに対してなんたる不敬!万死に値するッ!」

月乃「……それは流石に擁護不可能」

駆村「わ、悪かった……時雄島では『うっかり見逃した』という使い方だからつい……」

スグル「そうなんですね……」

朝日「大丈夫だよぉ~面白い言い方だもんねぇ」

月神「元気出して、駆村君!」

竹田「おーい、誰か俺の事もフォローしてくれや……」

ショボくれている竹田さんは置いておいてなんで二人だけが……

古河「なんか妙な事でもしとったんやないか?」

月神「そんな事はしていないけれど……昨夜もココアを飲んで、すぐに寝たわ」

スグル「僕も少しだけ食堂でお菓子を食べていただけですよ」

朝日「それは私が証人になるよぉ?二人っきりでぇ、い~っぱいお話ししたもんねぇ」

月乃「………………は?」

スグル「ほ、本当に何でもないですから……!」



113 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:53:53.19 ID:kDyRoiDHO


瀬川「……なんか、偶々みたいだね」

月神「そうね……」

なんだか無駄に時間を費やした気分……おのれ陰陽寺さんめ……

……陰陽寺さんと言えば、こっちもおかしな事が多いんだよね

瀬川「……これ以上御影君の事を話しても、何も進展しないんじゃない?」

駆村「そうだな……」

朝日「もう行き止まりって感じだもんねぇ」

瀬川「だからさ、次は陰陽寺さんの方を話してみない?こっちも気になる事は多いしさ」

飛田「うむッ御影なんてどうでもいい!魔矢の事を語り合おうではないか!!」

飛田「オレは、あのマフラーの下の意外と可愛らしい顔つきが素敵だと思うぞッ!!!」

竹田「本人が聞いてたら殺しに来そうだな……。そいつはよ」

よし、しれっと話題を変える事に成功した。後は、これから何を話すかなんだけど……


114 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:54:30.38 ID:kDyRoiDHO



月神「……なら、私から少しいいかしら?」

一瞬の静寂を感じ取ったのか、月神さんが手を挙げる

どうぞ。と促されると、ほんの些細な事だけど。と前置きして話し始めた

月神「陰陽寺さんの死体は、どうして花園に置かれていたのか気になるの」

月神「花園で殺されたから。と言われてしまえばそれまでなんだけれど……」

スグル「それは幾らなんでも不自然ですよね……」

花畑に立つ陰陽寺さんを想像してみる。うん。確かに不自然だ

ふざけるとはともかく……警戒心の強い彼女が、誘われたからってホイホイと行くとは考えにくい

なら、ここは逆転の発想で……

瀬川「月神「なら、逆に誰かに運ばれてきたのかしら?」

瀬川「………………………………」

月神「え?せ、瀬川さん?」

照星「どうしたんすか?おあずけされたみたいな顔して」

古河「放っとき放っとき。どうせ下らん事考えとったんやろ」

盗られた……私の台詞盗られた……!

でも頭の中の事なんて証明できないし……いっぱい悲しい……

駆村「じゃあ、それを議論していくぞ……。いいよな?瀬川」

瀬川「はーい……」


115 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:55:24.89 ID:kDyRoiDHO


【ノンストップ議論  開始】

『コトダマ』
【モノクマファイル3】
【陰陽寺の竹刀】
【銀の弓と矢】



駆村「陰陽寺はどうして花園にいたのか……」

月神「皆の意見を聞かせて欲しいの」

古河「【逃げてきた】……ワケちゃうよな。あいつに限って」

スグル「【やむを得ず】行ったのかもしれませんね……」

朝日「でもぉ、理由が何であれどうして夜にいったのかなぁ」

飛田「夜分に女が一人……危険でしかないッ!!」

スグル「自信があったと言われればそれまでですけど……」

照星「逆に《違う場所に行ってた》とか無いっすか?」

竹田「ほお?そいつはどんな理由だい」

照星「それは知らねーっす!」

スグル「言い切るんですか!?」




116 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:55:55.74 ID:kDyRoiDHO


《違う場所に行ってた》←【陰陽寺の竹刀】



瀬川「その意見、フォローするね!」同意!

瀬川「照星さんの言う通り……陰陽寺さんは、最初は別の場所にいたんじゃない?」

照星「マジっすか!?」

瀬川「照星さんが言ったんでしょ!?」

古河「オマエが驚くんかい!」

目を見開いて大袈裟に驚く照星さん。自分で言った事には自信を持ってくれないと凄く困るんだけど!?

駆村「……一応聞いておくか。どこに居たかわかるのか?」

瀬川「一応って何で……まあいいや。食堂だと思うよ」

スグル「食堂って……」

朝日「御影君の死体があった場所……だよねぇ?」

瀬川「うん。ところで皆は陰陽寺さんのトレードマークである竹刀がどこにあるか知ってるかな?」

飛田「竹刀……?」

照星「そういえば……見てないっすね」

古河「そんなん、花園のどこかにあるんとちゃうか?」

駆村「あれだけ広いんだからな。紛れてもわからないだろう」

瀬川「ううん、食堂にあったんだ。崩された机と椅子の下敷きになっていてね」




117 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:56:29.63 ID:kDyRoiDHO


《違う場所に行ってた》←【陰陽寺の竹刀】



瀬川「その意見、フォローするね!」同意!

瀬川「照星さんの言う通り……陰陽寺さんは、最初は別の場所にいたんじゃない?」

照星「マジっすか!?」

瀬川「照星さんが言ったんでしょ!?」

古河「オマエが驚くんかい!」

目を見開いて大袈裟に驚く照星さん。自分で言った事には自信を持ってくれないと凄く困るんだけど!?

駆村「……一応聞いておくか。どこに居たかわかるのか?」

瀬川「一応って何で……まあいいや。食堂だと思うよ」

スグル「食堂って……」

朝日「御影君の死体があった場所……だよねぇ?」

瀬川「うん。ところで皆は陰陽寺さんのトレードマークである竹刀がどこにあるか知ってるかな?」

飛田「竹刀……?」

照星「そういえば……見てないっすね」

古河「そんなん、花園のどこかにあるんとちゃうか?」

駆村「あれだけ広いんだからな。紛れてもわからないだろう」

瀬川「ううん、食堂にあったんだ。崩された机と椅子の下敷きになっていてね」




118 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:57:07.88 ID:kDyRoiDHO



竹田「……ああ?食堂だと?」

月神「確かにあれだけ荒れていたら、見つからなくてもおかしくは無いと思うけど……」

竹田「待てよ。おかしいじゃねえか。あんだけ雁首揃えて見つけたのが瀬川の嬢ちゃんだけなんてよ」

駆村「確かにな……」

微かな、けれどハッキリとした疑念の目が私に刺さる。正直に話したのにこの仕打ち。許せない……

なんて、怒りは今は収めておいてどうしようか。正答したのに発言力が下がるなんて、私聞いてない!

月乃「……当時、私達はペアで行動していた。互いが互いに気をつけている分周囲への注意は散漫になる」 

月乃「……普通ならその分をお互いが補えるけど、食堂は周囲が荒れていて物が溢れていた」

月乃「……これでは注視する物が増えて、周囲へ向ける集中力が切れても仕方がないと私は思う」

スグル「えーと……つまり、えっと」

朝日「瀬川さんしか見てないのはおかしな事じゃない……って事だよねぇ。月乃ちゃあん」

にこぉっと微笑みながら、最愛の妹へ兄としての慈愛に満ちた視線を向ける朝日君

その視線を控えめに言っても嫌悪感丸出しの蔑んだ視線を向ける妹である月乃ちゃん

我々の業界ではご褒美です……なんて言ってる場合じゃない!

瀬川「ほら!おかしくないじゃん!私嘘つきじゃないもん!」

駆村「そこまでは言ってないだろ……」



119 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:57:38.13 ID:kDyRoiDHO



月神「陰陽寺さんは食堂にいた……それはわかったわ」

月神「なら逆に……御影君はどうして食堂にいたのかしら?」

結局はそこに行きつくのか。死んでも傍迷惑な……

スグル「そもそも、どちらが先に来たんでしょうか?」

朝日「陰陽寺さんと御影くん……二人が夜に一緒に話し合うのはちょっと想像できないかなぁ」

照星「カツアゲっすね。どう見ても……」

しれっと酷い事言われてるけど否定出来ない。どうしても穏健なイメージが沸かないのは単に陰陽寺さんの性格からかな……?

そうでなくても、単独行動の多い陰陽寺さんだ。下手な行動は自分の首を締めるだけなのに……

竹田「この際どっちが先に来たとかは関係ねえ。今重要なのはどっちが先に殺されたかだろ?」

月神「そんな言い方!」

瀬川「まあまあ今は話を聞こうよ……で、竹田さんはどっちだと思ってるの?」

ここで話を混ぜ返されると本当にワケわかんなくなる……なのでこうして月神さんにストップをかけて、竹田さんに話を振る

やおら頭を傾げると、真剣な表情を浮かべながら告げ始めた



竹田「そうさなぁ……殺された順番を逆算すればわかるんじゃねえか?」
120 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:58:09.72 ID:kDyRoiDHO


瀬川「……はあ?」

質問したのはこっちなのに、何で質問されてるんだろう

質問には疑問文で答えろって、あの世代の人は学校で教わったのかな?

竹田「そんなおっかねえ顔で睨まねえでよ……そうすりゃわかんだろって話だろ?」

瀬川「わからないんですけど……」

月乃「……確かに、少し唐突な気分もする」

古河「年寄りは話をすぐ急かすからアカンわ……」

スグル「言い過ぎでは……?」

竹田「気にしちゃいねえよ。まずは二人が殺された凶器から話していこうや」

気にしていなさそうに話を始めた竹田さん。話を進めていく様に促されたけど……

駆村「凶器……?御影は喉の矢だろうが……」

月神「陰陽寺さんの方は、死因しかわかっていないわね」

陰陽寺さんの死因……確か、毒殺だよね?

それに使われた毒は、もうわかっているんだよね




121 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:58:48.47 ID:kDyRoiDHO


【どんな方法でも即死させる毒】



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「陰陽寺さんを殺した凶器って、どんな方法でも即死させる毒だよね?」

飛田「安直でつまらん名前だな」

照星「頭悪そうな名前っすね……」

おまいう……とは流石に言わないけれど、まあ概ね同意見かな

見てわかるを通り越して、名乗っちゃってるんだもんね……

瀬川「……説明いる?」

朝日「要らないかなぁ」

瀬川「ですよねー……」

古河「下らん事言うとらんではよ進めろや!」

繰り広げられる茶番にイライラがマックスになった古河さんがマジギレトーンで怒り始める

それに呼応するみたいに、周りから白い目で射抜かれた。これ私のせいなのかな……?

瀬川「まあ、何となく察してくれたとは思うんだけど、この毒はどんな方法でも即死させる毒なんだよね」

瀬川「何かに混ぜたり塗って刺したり……それはもう色々とね」

……そう考えると、陰陽寺さんがどこから毒を接種したのかはわかるはずだ

落ち着いて考えれば、わかるはずなんだ……!



122 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:59:27.63 ID:kDyRoiDHO


【ノンストップ議論  開始】
『コトダマ』
【背中の傷】
【ニットの毛糸】
【陰陽寺の死体】




古河「毒殺なんは知っとるわ!」

古河「問題は毒がどこから入ったかって話やろ!」

朝日「毒をうっかり《飲んじゃった》のかなぁ~?」

飛田「霧状にして《吸い込んだ》のではないかね?」

月乃「……《打ち込まれた》のかもしれない」

照星「むむ、わかんないっすね……そもそも使用方法が雑過ぎるんすよ!」

照星「もっと【パスワードロックとかあればいいんすよ!】」

スグル「それはちょっとおかしいと思います……」
123 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/25(水) 23:59:57.59 ID:kDyRoiDHO


《打ち込まれた》←【背中の傷】



瀬川「その意見、フォローするね!」同意!

瀬川「私も月乃さんと同じで、毒は外部から打ち込まれたんだと思う」

瀬川「だって、陰陽寺さんの背中には何かが刺さったみたいな傷があったんだ。それ以外に考えられないよ!」



毒を含んでいる可能性のあるものを、あの陰陽寺さんが迂闊に口にするなんて有り得ない


なら、逆に有り得る可能性は?……決まってる。外側から打ち込まれた以外には存在しないんだ!


……それを踏まえて思考を組み立てていこう。この事件、どちらの死がその口火を切ったのか


……どちらが、巻き込まれたツイてない人なのかを


思考を全力でフルスロットルさせるんだ。真実に追い付く為にも……!


124 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/26(木) 00:00:27.50 ID:rbHEu1x3O


【ブレインドライブ  START】




1【陰陽寺の死因は?】
A.どんな方法でも即死させる毒
B.銀の矢
C.竹刀

解 A.どんな方法でも即死させる毒
瀬川「これだよ!」解!


毒殺。と書かれている以上、それ以外の可能性は切り捨てても大丈夫だ……よね?

次は、どうしてその毒を接種したのかだけど……


2【陰陽寺の死の原因になったのは?】
A.花畑
B.竹刀
C.銀の矢


解 C.銀の矢
瀬川「これだよ!」解!


毒は外部から。そして背中の傷の状態を考えると、銀の矢に毒が塗られていたんだ

……なら、最初に殺されたのは


3【最初に殺害された被害者は?】
A.陰陽寺 魔矢
B.御影 直斗



125 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/26(木) 00:00:57.80 ID:rbHEu1x3O


A.陰陽寺 魔矢




瀬川「推理を繋げたよ!」CLEAR!

瀬川「最初に殺されたのは……陰陽寺さんの方だったんだ」

月神「……っ」

駆村「嘘だろう……?」

息を呑む音がざわついた裁判の中でもやけに耳に残る

私達の中で、最も強かった。最も死からは遠かった彼女が最初の被害者だったなんて信じられない

少なからず混乱の余波の響く中で……一人だけ、その最中で明確な意思を持つ声が裁判場を一刀の下に叩き割る

古河「……待てや。なら、なんで御影は死んだんや」

古河「アイツは……御影は、何で死ぬハメになったんや!!」

叫び出す激情は、古河さんの心の底から爆発するマグマの様に吹き出される

……そうだ。この事件は陰陽寺さんだけじゃない。通りすがりの一般人こと御影君も犠牲になっている

彼が死ぬ必要はあったの?どうして二人も?何故と何がこんがらがって、思考が追い付けずに、頭がヒリついて痛くなる

その先にある真実に、納得できるかはわからないけど……

それでも、進むんだ。犯人に一泡吹かせてやる為にも!




126 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2019/12/26(木) 00:01:25.47 ID:rbHEu1x3O







【学 級 裁 判  中 断 】







127 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/18(土) 22:53:53.04 ID:PkMWZ19CO







~~~♪


ハルカ『良い子の皆ー!ココロオドルTVの時間だよー!』

ヨウ『やたらの長い割には大した事無いでおなじみのこの番組も、そろそろ佳境に入る頃だな』

ハルカ『いやー長かったね。長寿シリーズとして確固たる地位を築けるまでもう少しの辛抱だよ!』

ヨウ『その前に打ち切りの危機だがな。視聴率取れないと俺達の首で償わされる羽目になるぞ?』

ハルカ『平気平気。どうせ打ち切っても後番組無いし!』

ハルカ『私達に支えられているっていう揺るぎ無い事実がある以上、何しても許されるからねー!』

ヨウ『スポンサーがキレてたぞ。テンポが悪くなるってな』

ハルカ『……………………』

ヨウ『…………………………』




『『鮮やかな!』』

ハルカ『遥かな明日を!』ヨウ『見届けよう!』




~~~



128 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/18(土) 22:54:45.78 ID:PkMWZ19CO





【 学 級 裁 判   再 開 】




古河「……ここから出るだけなら陰陽寺だけで良かったハズや」

古河「なんでや!?なんで、クロは御影まで殺したんや!?」

……悲痛な表情と震える声が、裁判の再起動を予感させる

理解不能で意味不明な、犯人への憤りを迸らせて

スグル「そうですよね。わざわざリスクを犯してまで、二人を殺すなんて有り得ません」

古河「ウチはハッキリさせたいんや。なんでアイツが死んだんか……話し合うてもええよな?」

竹田「あ?別に要らねえだろ?必要なのは陰陽寺の嬢ちゃんのクロだけだ」

古河「あぁ!?!?」

瀬川「ちょっ、古河さん落ち着いて……」

さらっと受け流そうとする竹田さんを、掴みかかって殴らんとする古河さん。その目には怒りの炎が燃えていた

月神「……私は、御影君についても話し合うべきだと思うわ」

月神「彼だって私達の仲間だもの。それにクロが別人だとしたらこの中に潜んでいる事になる……」

月神「それで咎められないなんて、そんなのおかしいわ。私達の出来る範囲で話し合いましょう?」

その炎を鎮める様に、月神さんが言葉を紡ぐ。冷たい、けれど確かな情熱を秘めた声で、私達を導いていく



129 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/18(土) 22:56:45.77 ID:PkMWZ19CO



朝日「そうだよねぇ。可哀想だもん……」

飛田「オレは別にどうでもいいが、そう言うならば……」

月乃「……死人にくちなしとは言うけれど、あるならばきっと悲しんでいるはず」

照星「『何でさー!』って言ってそうっすよね!御影先輩!」

スグル「あはは……らしいですよね」

脳内再生余裕な御影君の表情と声色。目を閉じなくても、その顔は私の頭の中にまだ残っている

残っている……というより、そう簡単に忘れ去られる程の時間は経っていなかったんだから当然だ

……本当に、この学園では泡みたいに人が消えていく

竹田「まあ別にいいんだけれどよ……で、何を話すんだよ?」

月神「何か案のある人はいるかしら?」

駆村「なら、俺から少しいいか?」

駆村「陰陽寺の方が先に矢で射抜かれていたんだよな?なら、どうして御影にも矢が刺さっているんだ?」

駆村「同じ矢を使うなんて、デメリットでしかない。矢が曲がれば軌道もズレるし、獲物の血で切れ味も鈍る……」

瀬川「あ、言われてみれば……」

月乃「……詳しいの?」

駆村「まあ、狩りに使う道具は一通りな……」

意外な特技を披露した所で、改めて考えてみる。陰陽寺さんを殺した後御影君を襲う為に矢を引き抜く……

……うん。無駄が多いね!幾らトロい御影君でも逃げられそうだ



130 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/18(土) 22:58:01.42 ID:PkMWZ19CO




古河「……なんか、アホやしい絵面やな」

竹田「そうさなぁ……」

駆村「そもそも、狩猟用の矢には中った獲物から外れない様に返しがついているんだ。釣り針にもあるだろ?」

駆村「あれと同じだよ。釣った魚が、餌だけ取って逃げないようにする為の工夫だからな」

飛田「やたらと詳しいじゃあないか。まさかとは思うが……」

駆村「こんなベラベラと喋るわけないだろっ!」

そりゃそうだ……なんてね。ブラフかもしれないけど、ここまで真剣に熱く語れるのはオタクの特徴だ

オタクを悪く言うのは許さないよ。私だってアニオタだもん!

瀬川「……じゃあ、犯人はどうしても矢で殺す必要があったって事なのかな?」

スグル「それか、凶器がそれしか無かったからか……」

月乃「……何にせよ、非合理的な発想である事は間違いない」

照星「そうっすよね……」

朝日「それじゃあ、次はその話を軸に議論しよっかぁ」

月乃「……朝日に音頭を取られるのも非合理的」

……朝日君の間の抜けた声とは裏腹に、裁判には着実に緊張感が満ちてきた

まるで錆びた機械に潤滑油を差し込んだみたいに、硬直してきた議論は再び回り出す

二人を死に追いやった理不尽なクロへと突き進み、確かな真相へと進むべく



131 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/18(土) 22:59:06.03 ID:PkMWZ19CO


【ノンストップ議論  開始】

『コトダマ』
【背中の傷】
【荒らされた食堂】
【喉に刺さった矢】
【銀の弓と矢】



月神「犯人はわざわざ、矢を凶器に選んだ……」

飛田「凶器ならば幾らでもあるッ。何故その様な事を!?」

照星「【凶器がそれだけだった】んすかねー?」

スグル「食堂の凶器を【取れなかった】とか……どうですか?」

月乃「……何にせよ、犯人は魔矢の背中から【引き抜いて】凶器に使ったのは不自然」

竹田「矢に【スペアが無かった】訳じゃあ無えしなあ」

スグル「もしくは、御影さんが油断していたから……」

スグル「【一瞬で殺せる状況】だったなら、有り得ない話でも無いと思います」

月神「不意討ちだった……という事かしら?」

スグル「後処理の際に出会したなら、【避けられない】と思うんですが……」



132 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/18(土) 22:59:52.37 ID:PkMWZ19CO


【一瞬で殺せる状況】←【荒らされた食堂】



瀬川「それは違うよっ!」論破!

瀬川「これは私の推理だけど……多分、御影君は不意討ちで殺されたんじゃないと思う」

スグル「えっ……どうしてですか?」

瀬川「現場になった食堂……あれ、凄く荒らされていたよね?」

瀬川「それこそ嵐が来たみたいに、ぐちゃぐちゃにさ」

古河「確かに、メチャメチャに荒れとったなあ」

月神「現場があれだけの状態で、気づかれた相手を静かに殺すのは無理があるわね……」

散乱した食器にテーブル。台風一過が通り過ぎたかの様な惨状が事件当時の荒れ具合を伝えてくる

あの陰陽寺さんを殺そうとしたんだから、きっと必死に抵抗もしたはず……

朝日「御影くんはぁ、争って殺されちゃったのかなぁ……?」

飛田「あの様な針金の如き肉体、簡単にへし折れるだろうよ」

駆紫「筋肉どころか、贅肉しかなさそうだしな……」

朝日「あは。御影くんぷにぷにだもんねぇ~」

古河「ホンマアホやなあアイツ……」

死しても尚公衆の面前でだらしないと貶される御影君には同情を禁じ得ない

けれど、争いがあった事を示す証拠はまだあったはず……


133 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/18(土) 23:00:49.53 ID:PkMWZ19CO


【モノクマファイル4】



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「少なくとも、御影君と犯人が争った事は間違いないよ。モノクマファイルにも書いてあるし……」

モノクマ「再三言っておきますが、ボクはモノクマファイルにはウソは書きません!」

モノクマ「ゴキブリをカップ焼きそばに入らせない様に、ファイルに虚偽は紛れ込ませないって神経を使っているからね!」

飛田「例えが気持ち悪過ぎるッ!」

古河「アカン。メッチャ不安になってもうた……」

竹田「気持ちはわかるけどよ……嘘じゃあねえぞ?」

駆村「あれはそういうトッピングなんだろ?違うのか?」

朝日「ねえねえ月乃ちゃん。駆村くんってぇ……」

月乃「……もうツッコまない。絶対に」

一部にいる意味不明な事を言っている人は置いておいて、ファイルの信憑性については散々議論してきた事だ

今までに嘘が入っていた事は無かったし、これのお陰で事件が解けた部分もあるにはあるんだけど……

いい加減信用したいのは山々だけど、どうしても信じられない人っているもんね。残念だけど当然だよ




スグル「……待ってください。もしかしたら、犯人がわかるかもしれません!」

飛田「な、なんだとッ!?説明しろスグルッ!」

134 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/18(土) 23:02:10.87 ID:PkMWZ19CO



スグル「犯人が御影さんと争ったなら……」

スグル「当然、犯人にも争いの跡が残されているはずです」

スグル「ですから、今ここでその跡を確認すれば……」

飛田「でかした!よし脱いでくれ!レディの諸君!!!」

瀬川「変態だーーーーー!!!!!」

古河「やるわけあらへんやろ!ボケカス!」

月乃「……スグルには失望した」

照星「堕ちる所まで堕ちたっすね」

月神「それはちょっと……困るわ」

非難轟々を通り越した罵声が轟く。主に女子からの軽蔑の視線が、発言者のスグル君に向かって突き刺さる

可哀想に思える程のオーバーキルだけど仕方無い。大人しい子がいきなりハードな不良にクラスチェンジする位の衝撃だもん

スグル「え……あ!そういう意味はないです!本当です!」

駆村「スグルが女子達に向かって服を脱げと言うなんて予想もしなかったからな……」

竹田「坊主は若えからな。若気の至りって事で許されんだろ」

スグル「違いますから!そういうつもりじゃないんです!」

竹田「はぁ……しゃあねえな。脱げばいいのか?」

古河「言うとらへんわ!」

瀬川「いや別に脱がなくてもいいんだけど!?」

竹田「ここで脱ぐとただの変態だが、俺の身の潔白を証明するためだ。背に腹は変えられねえな」




竹田「……おら!刮目して見とけよ見とけよ!」

月神「嫌ぁあああああぁああああっ!!」


135 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/18(土) 23:03:22.63 ID:PkMWZ19CO


───そこにあったのは、筋肉だった


はちきれそうな胸板、丸太の様な腕、鬼神の如き背筋──


そして、それを包み込む……痛々しく巻かれた、包帯





竹田「……これが俺自慢のマッスルスーツだ。どうよ?」

古河「きゃあああっ!?はよ服を着んかいこのド変態!!」

照星「古河先輩意外と初心っすね……。にしてもよく鍛えられたいい筋肉っすよ。あれは……」

飛田「せ……背中に羽が生えている……」

瀬川「腹筋6LDKかーい!」

駆村「肩にでっかいカブトムシ乗せてんのかーい!」

月乃「……筋肉を見ると、何故かテンションが高くなる」

朝日「皆、どうしちゃったんだろうねぇ~」

筋肉は人の理性を狂わせる。皆も知っているね?

って、よく見たら所々痣が出来ている。という事は、竹田さんは怪我してる……!?

月神「……竹田さん。その傷はどういう事?」

竹田「ん?どの傷だ?この通り、今の俺は満身創痍でね」

古河「だからって裸を見せつけんなや!ホンマキモイねん!」

竹田「オイオイ嬢ちゃん。さっきからこっちをチラチラ見てただろ?見たけりゃあ見せてやるぜ?」

照星「そこまでにしておいてあげてほしいっす。古河先輩茹でダコみたいになってるっすから」

顔を覆う指の隙間から覗いていたのか、耳まで真っ赤に染めた古河さんが震えて叫ぶ

これ以上は本当に泣いちゃうから……と竹田さんに甚平を着直させて、話を進め始めた……



136 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/18(土) 23:04:30.80 ID:PkMWZ19CO


竹田「この傷はな、前からあったモンなんだよ」

月乃「……それはおかしい。今の身体の傷はどれも、最近ついたばかりの生傷だった」

朝日「わぁ。月乃ちゃんしっかりと見てたんだぁ」

月乃「黙れ」

竹田「これは前の学級裁判……臓腑屋の嬢ちゃんに負わされた傷なんだよ」

竹田「スグルの坊主と、御影の坊主を庇ってな……」

月神「あの時の……?」

スグル「それは間違いないと思います。僕は実際に、竹田さんに庇われましたから」

前回の学級裁判……臓腑屋さんの悪あがきで、私達は狂騒の渦に叩き込まれた

私も、すんでの所で天地さんの遺影を盾にして難を逃れていたけれど……その時に、降り注ぐガラスで身体の至る所を切ったのかな

朝日「竹田さんはぁ、嘘は言っていないと思うなぁ。私、前にも竹田さんの裸を見たことあるもんねぇ」

月乃「は?」

瀬川「詳しく」

スグル「そこに食いつくんですか……?」


朝日「スグルくんと一緒にお風呂に入ったんだけどぉ、その時に竹田さんも途中から来たんだもんね~」


瀬川「は?」

月乃「……詳しく」

照星「三人はどういう関係なんっすか……」

スグル「どんな関係でもありませんからっ!」


137 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:07:42.97 ID:yp9XcVyhO



駆村「今はスグルと朝日についてはどうでもいいだろう?」

駆村「あ、これは独り言だが時雄島は同性愛に寛容だから移住するなら教えてくれよ」

スグル「しませんから!」

かつては儚げ美少年だったのに、今やすっかり弄られキャラと化したスグル君には私も同情を禁じ得ない

それはそれとして、いつの間に朝日君と仲良くなったの?

飛田「だが待てッ、ならばスグルと朝日は互いの裸を見ている訳だな?」

スグル「そ、そうなりますけど……」

竹田「一応言っておくが、俺は下にタオルを巻いてたからな」

飛田「どうだった?やはり男の身体だったのか?」

スグル「当たり前じゃないですか!男の人なのに線が細くて、肌もスベスベしてて綺麗でしたから」

瀬川「」(絶句)

朝日「スグルくぅん……ちょっと、恥ずかしいなぁ」

スグル「あっ……いや、えっと……」

照星「ひゅーひゅー!熱いっすねー!」

古河「オマエラそういう仲やったんか……」

竹田「まあ若いからな。色々あるよな。おう」

月神「……………………///」

スグル「本当に違うんですってばーーー!!」


138 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:08:25.45 ID:yp9XcVyhO



「…………」ダンッ!!

月神「きゃっ!?」

スグル「ひっ!?」

月乃「……そんな下らない話はどうでもいい。重要なのは、争いの跡があるか無いかだけ」

朝日「月乃ちゃん、どうしたのぉ?そんなに機嫌悪く……」

月乃「…………」ダンッ!!

古河「目が据わっとるわ……」

……どうやら月乃さんの我慢は限界に達したみたいだ。机に叩き付けた拳はプルプルと震え、顔からも普段の雰囲気が消し飛ばされている

まあ、兄と別の男の子が仲良くしてるなんて当事者からすれば面白くないのもわかるけどね

月乃「……今すぐ身体に跡が無いか確かめる。全員服を脱いで」

照星「へ?いやそれはちょっと……」

月乃「脱げ」

わきわきと両手を揉みながら、私ににじり寄ってくる月乃さん

その目はさっきまでの剣呑な雰囲気じゃない。妖しい光を宿していて……

瀬川「えっ、ちょっと待って?ね?落ち着い……」

瀬川「あーーーーーーーーーーっ!?!?!」






モノクマ「オマエラ!エロはいけません!」

ハルカ『はーい幕でござーい!』ヨウ『ここから先は有料会員限定だ!散れ散れ!』


139 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:09:08.45 ID:yp9XcVyhO






瀬川「うぅ……よ、汚された……」

飛田「マーヴェラス……」

古河「ウチ、もうお嫁に行かれへん……」

月乃「……ごちそうさまでした」

照星「やー激しかったっすね。自分も危うかったっす」

月神「凄かったわね。月乃さん……」

スグル「……はっ!?僕達に何が……」

駆村「なんだか記憶が飛んでいた様な……」

朝日「うぅん。別に気にしない方がいいと私は思うなぁ~」

やられた……敢えて漢字変換はしないけど、月乃さんに滅茶苦茶にひんむかれた……

幸いコスプレは崩れてない……というか崩れない様にどうやってやったのか。謎の技術が凄く気になる

……因みに男子もやったらしい。私は見てないけど

月乃「……確かめたけど、全員に争いの跡は無かった」

照星「あ、月乃先輩も無かったっすよ。自分が証人っす!」

瀬川「えぇ……今のはいったい何のための時間だったの……?」

無駄な時間を使ってしまった……そんな虚脱感が辺りを包み込む

月乃「……これで争いの跡が証拠にならない事が判明した」

瀬川「開き直り!?」

月乃「……案はスグルのもの。恨むならスグルにして」

スグル「そんなぁ!?」



140 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:09:35.95 ID:yp9XcVyhO


朝日「でも、これでまた振り出しになっちゃったねぇ……」

スグル「うっ……」

朝日「あっごめんねぇ。別にスグルくんが悪いって訳じゃないからぁ」

大失態で大ダメージを負ったスグル君。自分の発言のせいとはいえ、ベコベコに凹んでいる姿は見てられない

そんな事よりも、確かにまた議論はやり直しになっちゃった。何度も何度もやり直しになる学級裁判には参るねホント……

月神「困ったわね……もう証拠になり得そうなものは……」

竹田「無さそうだよなぁ……」

駆村「確かに……もう全て出尽くしたのか……?」

古河「なんか無いんか!?なんでもええから出してぇな!」

飛田「何でもいいと言われても……ガッデェム!」

……必死の叫びも虚しく、裁判場にはなんの反応も響かない

照星「そもそも本当に争いはあったんすか?なんかもうそこから怪しい気が……」

朝日「モノクマがデタラメを書いたって事ぉ?」

ハルカ『嘘なんてついてないよ!約束するよ!』

ヨウ『議論が進まないのを俺達のせいにするのは心外だな』

暗中模索の結果は振るわず、私達の行く末も不透明だ

何か無いの?どこかに無いの?起死回生の打開策は───!




竹田「……いるじゃねえか。一人だけ調べられてねえ奴が」

141 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:11:20.92 ID:yp9XcVyhO



月神「……え?」

竹田「これだけ探してもいねえんだ。だとしたら可能性があるのは一人だけだろ?」

重低音が地を揺るがす。竹田さんの深みのある声が、否応にも思考に喝が入れられる

瀬川「ホントに?誰の事言ってるの?」

竹田「応ともさ。尤も、今までの議論を根本からひっくり返す必要はあるけどな……」

頭をガリガリとかきながら独りごちる。その浮かない表情からは、本心を窺う事は出来なかった

でも、少なくとも適当に言った訳じゃない……。確固たる自信があって発言している事は理解できる

駆村「だけどそんな奴はいるのか?全員調べたよな?」

月乃「……私は夕に見てもらった」

照星「それは自分のテクニックにかけて断言するっすよ!」

瀬川「何の!?」

気になる言葉はこの際無視して……確かに全員に争った跡が無いか調べたのは間違いない

その上で、可能性があるのって誰?それに今までの議論を根本からひっくり返す必要って……?

一度、全てを逆転させよう。視点をクリアに、俯瞰させて

探しだすんだ……その人を……!



【争った可能性のある生徒は?】



142 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:11:59.81 ID:yp9XcVyhO



【陰陽寺 魔矢(オンミョウジ マヤ)】



瀬川「貴女しか……いないよ!」解!

瀬川「月乃さんが調べた人……それはここにいる人だけだよね」

月乃「……? 勿論そう」

……もし、少しでも可能性があるならば

瀬川「逆に、ここにいない人は調べていないよね」

古河「何当然の事言うてんねん!まさか天地やデイビッド達がやった言うんか!?」

竹田「そうさなぁ……案外、それに近いかもしんねえな」

古河「はぁ!?」

……もし、この場にいない人が犯人だとしたら

飛田「まさか死体が殺したとでも言うつもりか?ふざけた事をほざくなッ!」

瀬川「でも、可能性がある人はもう一人しかいないよ」

……もし、“最初に殺されていた人が御影君だったら”?

瀬川「陰陽寺さん。争った可能性があるのは調べられていない人なら、彼女しかいない」

瀬川「最初に殺されていたのは……御影君だったんだ!」

古河「なっ……!?」



143 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:13:36.67 ID:yp9XcVyhO



駆村「待ってくれ!おかしいだろ!?」

駆村「御影の矢には外した跡が無い。だからこそ最後に刺されたんだと結論が出たんだぞ!?」

そう。それがネックになっていたんだ。銀の矢の存在が、推理に大きく楔を打ち込んでいた

問題は、それを引き抜く程の推理が全く思い付かない事……

月乃「……争いはしたけれど、殺されてはいなかったのかも」

照星「どういう事っすか?」

月乃「……例えば、御影を負傷させた後に身動きを封じて、魔矢を殺害する」

月乃「……その後に、凶器を抜き取って御影を刺す。これなら、順序による矛盾は起こらない」

瀬川「そっか!その手があった!」

スグル「でも、どうやって動きを封じたんですか?」

古河「両手両足へし折ればええやろ!」

朝日「そこまでするならぁ、もう殺しちゃった方が早いと思うんだけどなぁ」

月乃さんの援護も虚しく、また議論の壁に突き当たる

言われてみればその通り。古河さんのアイデアはバイオレンス過ぎてあり得ないとは思うけど……

月神「道具があったんじゃないかしら?結束バンドとか……」

駆村「確かに手足を縛る道具があるなら容易いだろうが……」

飛田「そんなゴミクズは無かったはずだがッ?」

……手足を縛る道具、か。それなら多分アレだよね


144 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:15:48.55 ID:yp9XcVyhO


【工業用ゴム紐】



瀬川「これだよ!」解!

丁度思い当たるものがある。それを見せれば……!

瀬川「なら……このゴム紐を使ったんじゃないかな?」

駆村「それは……!」

照星「作業室にあったやつっすね!」

飛田「なんだね?そのひょろながい糸は」

瀬川「飛田君。ちょっとこれ引きちぎってみてくれる?」

飛田「ハハハハハ。こんな紐切れ簡単に……」

飛田「………………………………………………………………」

手に持った紐を握りしめ、複雑そうな表情を浮かべている飛田君。その顔は徐々に苦くなっていく

照星「にひひっ、もしかして切れないんすかぁー?」

朝日「頑張れぇ~。頑張れぇ~」

飛田「グググ……なんだこれはッ!?伸びる上に硬いぞ!?」

瀬川「それは工業用に使われる特殊なゴム紐なんだって。少なくとも素手で引きちぎれないくらいには丈夫みたい」

説明を聞いて諦めたのか、飛田君はゴム紐を放り捨てる

それを慌てて拾い上げて私も引っ張ってみる。……私でも伸ばす事は出来るけど、ちぎるのは無理みたいだね

古河「せやけど、それが何や言うねん!この紐がどう陰陽寺に結び付く言うんや!」


145 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:16:32.90 ID:yp9XcVyhO



竹田「話はこうだ。まず陰陽寺の嬢ちゃんと御影の坊主が食堂で争った」

月神「……え?」

竹田「そして、陰陽寺の嬢ちゃんは坊主を殺害。その隙を突き第三者が嬢ちゃんを殺した……」

……語られる筋書きは淀みなく、スラスラと答えられていく。否を唱える人が出るまでは

月神「待って!そんなのおかしいわ!」

竹田「……おかしい?何処がだよ、月神の嬢ちゃん」

月神「確かに、それは今までの矛盾が無くなるかもしれない。けど、新たに矛盾が生まれるわ」

古河「そうやそうや!その第三者って何モンやねん!」

朝日「結局ぅ、犯人は全くわかっていないしねぇ」

竹田「そうか?俺達が調べりゃいいのは『最初に殺したクロ』だろう」

月神「陰陽寺さんを犯人にしろって言いたいんですか……!?」

竹田「言いたいっつうかよ。事実、これまでの議論は陰陽寺の嬢ちゃんがクロだろう」

月乃「……これ以上の議論は必要無いと?」

月神「ここにいる、殺した人を見過ごせと言いたいの!?」

……この裁判では、最初に殺されていた人。つまりは御影君を殺した人を見つければいい

だから、クロが陰陽寺さんなら陰陽寺さんを指名すれば済む話

なんだけど……


146 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:17:46.02 ID:yp9XcVyhO


スグル「確かに、そうかもしれませんけど……」 

飛田「も、もういい投票だッ!一人だけでいいだろうッ!」

月乃「……状況的にも、疑う余地は少ない」

照星「んー……そうっすか?何だか引っ掛かる様な気も……」

月神「皆は、仲間を殺した人を放っておくの?」

駆村「それは……けど、後で追求すればいい話じゃないか?」

皆も、複雑で要り組んだ事件で疲弊してきている。体力自慢の照星さんですら、疲労の色を隠せていない

……正直な所、私だってここで終わらせたい。面倒臭いし

月神「……瀬川さん。貴女はどう思う?」

月神「貴女も……陰陽寺さんが、犯人だと思う……?」

か細い声に、すがる様な視線。いつでも気丈に振る舞っていた月神さんとは思えない程弱気な顔

私の考えは……






陰陽寺『僕は、僕は!』

陰陽寺『犯人じゃ、ない……!』



147 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:18:48.91 ID:yp9XcVyhO


瀬川「私は……違うと思う」

月乃「……違う?」

瀬川「陰陽寺さんは、犯人じゃないと思う」

竹田「……ああ?」

スグル「瀬川さん……」

フラッシュバックするのは、かつて、私が一度犯人として処刑した女の子の顔

普段の印象は最悪で、今だって殺されてもおかしくない性格をしていると思っている

瀬川「えーっと、さ……」

でも、だけど!あの顔は、声は、嘘なんて全く無かったんだ

それを私は信じなかった。だから、私達は……

瀬川「今度こそ、陰陽寺さんを信じてあげたいかなって」

月神「……え?」

瀬川「……なんちゃって!」

竹田「……おい」

竹田「おいおい……おいおいおいおいおい!」

竹田「陰陽寺の嬢ちゃんを疑ったのは前の話だろう?今の話と何の関係があるってんだ?」

竹田「何の関係も無えだろうが!下らねえ情で議論をかき回すなんざ、青二才が粋がるんじゃあねえぞ!」


モノクマ『はいストーップ!これ以上の弁論は、この変形裁判場の中でやっちゃってくださーい!』

ハルカ・ヨウ『『いざ出陣!エイエイオー!』』


148 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:20:19.42 ID:yp9XcVyhO





瀬川「…………ふーっ」

……身体の芯が昂って、頭の中がバチバチと弾けていく

今から戦うんだという感覚が、心の奥底で燻っていた闘争心を燃やしていく



少しだけ深呼吸。鼓動を整えて、眼前を見据える

まるで戦乱の武将みたいな面構えの竹田さんを筆頭に、議論に強いメンバーが私の敵になる



瀬川「……上等!」

敵は強い方が、難易度は高い方がより燃える。こういうのって主人公みたいだしね!

そう考えると、俄然やる気が沸いてくる。この議論で何を証明するのか、私だけが決められるんだ───!





149 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:21:38.25 ID:yp9XcVyhO


駆村「陰陽寺よりも先に御影が殺されていた事は理解したよ」
駆村「その上で、犯行を行えたのは死んだ陰陽寺にしか可能性が無い事もな……」
照星「その可能性は犯人じゃなくて争った可能性っすよ!」
照星「確かに陰陽寺先輩しか調べられてねーっすけど、だからと言って陰陽寺先輩がクロだって決めつけられないっす!」

一撃。議論の中で凝り固まった偏見を、照星さんが組み伏せる
だけど、それだけでは終わりじゃない。矢継ぎ早に畳み掛ける異議はまだ止まない……

月乃「……けれど、魔矢の服に付着していた毛糸は、御影の被るニットのものだと判明している」
月乃「……ニット帽は被る物。毛糸が付着する程に、魔矢は御影にかなり接近していたはずでは?」
古河「あの陰陽寺に、御影の毛糸がくっつくほど密着する訳があらへんやろ!」
月乃「……けど、実際には付着していた」
古河「それは……えっと……。……せや!御影の死体を動かそうとしてたんちゃうか!?」
月乃「……何の為に?」
古河「そんなんウチが知るワケあらへんやろ!」
瀬川「開き直らないで!?」

ダメだ。古河さんは勢い派だから理論派の月乃さんとは相性が最悪過ぎる……なんとかしないと……

朝日「もしかしてぇ、動かそうとしたんじゃなくてぇ、確認したんじゃないかなぁ?」
月乃・古河「「は?」」
瀬川「この際誰でもいいよ!続けて朝日君!」
朝日「陰陽寺さんはぁ、天地さんの時もデイビットくんの時もすぐに駆け寄ったいたよねぇ」
朝日「だからぁ、今回も死体を見て、すぐに駆け寄ったんじゃないかなぁって思うんだけどぉ」
スグル「そっか……それなら陰陽寺さんを殺すのも容易になるかもしれませんね」
スグル「一瞬でも背後を取れれば、正面から相手をするよりも格段に動きやすいですから」

古河さんのせいでがら空きになったボディーを守るべく、朝日君とスグル君からの加勢が飛んでくる
なんとか首の皮が繋がったけど……



150 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:22:05.90 ID:yp9XcVyhO


竹田「なら、モノクマファイルの記述はどうなんだよ?」
竹田「争いがあった事は間違いねえ。陰陽寺の嬢ちゃんじゃねえなら誰だって言うんだ?なあ」

……そう。この問題はどの道避けては通れない
そして、この答えは誰もが全く検討ついていないのだ

飛田「我々には争った跡が無い事は証明済みだッ!」
駆村「食堂もあんなに荒らされていたしな……」
月乃「……あれだけの跡が残っている以上、犯人にも相当に傷を負っているはず」

全員の意見はどれも正論。だからこそ打ち崩すのは難しい
鉄壁の正しさは難攻不落で。嘘の小細工なんて通じる訳がない
マズイ……。今度は私が大ピンチだ。

竹田「そら見ろ。証拠だけじゃねえ、現場が物語ってんだよ」
竹田「御影の坊主と陰陽寺の嬢ちゃんが争ったんだってな!」
瀬川「…………ん?ちょっと待って」

一瞬。ほんの一瞬だけ、竹田さんの話に違和感を感じた
微かな綻びを解き歪みを見つけ出す。竹田さんの話の違和感。その正体は……

月神「どうかしたの?瀬川さん。おかしな事は言っていないと思うけど……」
瀬川「いや、だって冷静に考えてさ……」




瀬川「御影君と陰陽寺さんで、勝負になると思う?」


151 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:22:59.34 ID:yp9XcVyhO


竹田「…………ああ?」
瀬川「いや普通に考えてさ。御影君と陰陽寺さんで跡がつく程争えるのかなーって……」



スグル「……無理でしょうね」
朝日「無理だと思うなぁ」
月神「無理じゃないかしら……」
飛田「無理だろうッ」
駆村「無理じゃないか?」
月乃「……無理だと思う」
古河「無理やろそんなん!」

瀬川「ちょっとは信じてあげようよ。私が言い出しっぺなんだけどさ……」

全員からボロカスに否定される御影君には涙を禁じ得ない。私が原因?それは違うよ、多分ね!

瀬川「けど、皆の言う通りだよ。無理なんだ。御影君と陰陽寺さんが争い会うなんてさ」
瀬川「どうやったって、御影君が勝てる訳がないんだから!」
竹田「……だが、モノクマファイルはどうなんだ?」
瀬川「ちょっと聞いてみよっか。モノクマ、片方が反撃させずにボコボコにした場合はファイルにどう書くの?」

モノクマ「その場合なら『争った形跡』じゃなくて『暴行された形跡』って書くよ」
モノクマ「争いは同レベルの者としか発生しないしね!」
照星「納得するような、しないような理屈っすねー……」


瀬川「……ま、まあとにかく!これでわかったよね?」
瀬川「陰陽寺さんは争っていない……。少なくとも、今回の被害者でもある御影君とはね!」

……危なかった。この違和感に気づかなかったら、私は押し切られて負けていたはずだから
でもそれはあくまで気づかなかったら、の話。例え偶然でも、例え運が良かっただけだとしても……

瀬川「……これは、私達の勝利だよ!」


瀬川「これが私達の答えだよ!」全論破!!!

152 : ◆hFluTDb/oi42 [saga]:2020/01/19(日) 15:23:34.40 ID:yp9XcVyhO



月神「……陰陽寺さんは、犯人じゃない」

月神「だって、彼女がそんな事をするなんて思えないもの!」

感情論1000%の月神さんの訴え。普通なら一笑に伏されて終了レベルの幼稚な弁論だけど、今回は違う

確固たる結論と、全員の認識。二つの要素が脆い言葉を強固にして、凝り固まった考えと裁判を打ち砕く

ボロボロと崩れ去る偏見。隙間から差し込む風は、皆の考えを変えていった

駆村「そう、だな……あいつはひねくれてはいたが、自分の正義に反する様な事はしなかった」

照星「そうっすよ!確かにちょっとツンツンしてるっすけど、陰陽寺先輩はいい人っすから!」

飛田「そ、そうだな……彼女も可愛らしいレディだからなッ!」

月乃「……私達は、魔矢に対して偏った考え方をしていた事は否めない。ごめんなさい」

朝日「大丈夫だよぉ。きっと陰陽寺さんも許してくれる……。と思うなぁ」

スグル「そこは自信を持ってくださいよ……」

月神「陰陽寺さん……。貴女を信じてくれる人はこんなにも多くいるの」

月神「貴女は……本当は優しい人だから……!」



竹田「……おいおい。なんだかハッピーエンドみてえになっているけどよお」

竹田「結局、犯人に繋がる手立てが無くなったんだろ?かなりヤベェ状況なんじゃあねえのか?」

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