ゾンビ娘の記憶

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37 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 17:43:07.91 ID:Dujh7MCQ0
ゾンビ娘(ふん、何が来ようと『つまらない』と言ってやる)

博士「それではこちら」

ゾンビ娘(ごくり...)

博士「ピリ辛カップラーメンです」

ゾンビ娘「ふぅん」

博士「このカップラーメン、実は特殊なカップラーメンなんだ。どんなカップラーメンだと思う?」

ゾンビ娘「食べるとマウンテンゴリラになる」

博士「違います」
38 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 18:42:04.08 ID:Dujh7MCQ0
博士「正解は...」

博士「おなかに優しい辛味成分を利用しているカップラーメンでした」

ゾンビ娘「っ...」

博士「だから、胃腸が弱い方や腸の異物を摘出したばかりの方でも食べられる」

博士「どうだ、すごいだろう」

ゾンビ娘「心底つまんねぇー...」

博士「えっ」

ゾンビ娘「やべっ、口に出ちまった」
39 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 18:45:43.24 ID:Dujh7MCQ0
ゾンビ娘「だ、だってあの前フリでそんなもん出されたらさぁ」

博士「そんなもんですか」

博士「くすん」

ゾンビ娘「わ、わーっ!!待て待て!分かった!私が悪かった!」

ゾンビ娘「何かまだあるだろ!?別の発明品にしよう!な!?」

博士「...そうだな...」
40 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 19:04:43.75 ID:Dujh7MCQ0
博士「では、気を取り直して」

博士「カモン!俺の発明品!」


博士はスタイリッシュなポーズで指パッチンをする
すると天井に穴が開き、棒状の物体が落ちてくる


ゾンビ娘「おお...っ」

ゾンビ娘「うあああっ!?ぐ...ううっ!!」

ゾンビ娘「頭痛ぁ...」

博士「え!?ここで!?」
41 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 19:09:49.58 ID:Dujh7MCQ0
博士「くそっ!」


博士はスタンガンでゾンビ娘を気絶させる


博士「どういう事なんだ一体」

博士「彼女は自己に問いかけをした訳でも、俺が質問をした訳でもない」

博士「ではなぜ?俺の仮説が間違っていたのか...?」

博士「難問だ...」
42 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 22:19:29.40 ID:2whs64vV0
博士「短時間でここまでの精神的ダメージを負うとは...」

博士「処置はあと三回...」

博士「過程を蔑ろにしては結果は出ない」

博士「機械に処置をさせている間、何をしようか」

博士「まったく、こんな昼下がりでは気分も乗らない」

博士「日と共に気分も落ちていくようだ」
43 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 22:26:30.09 ID:2whs64vV0
博士「脳についての本でも読むか」

博士「買ったはいいが、ろくに読んでいない本が多くて困る」

博士「さて、読むか」

博士「...」

博士「むっずいな」

博士「思考が放棄され始めている」

博士「...」
44 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 22:32:25.83 ID:2whs64vV0
半分斜め読みになりかけていたある時、見覚えのある記述を見つける


博士「ん」

博士「プラシーボ効果...」

博士「あれだな。効かない薬でも効くと思い込めば効く」

博士「刷り込みってのは恐ろしいな」

博士「プラシーボがプラシーボを呼ぶ。プラシーボを知るものが最もプラシーボの恐怖に取りつかれる」

博士「恐れを恐れるということに近いな」
45 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 22:53:39.45 ID:2whs64vV0
博士の癖にあまりに無学な彼は、いつの間に寝てしまった
夕日があまりに眩しいので、日向で寝ていた彼も夕方には起きることになる


博士「うー...」

博士「観察の続きに取りかかるとしよう」


博士はスタンガンでゾンビ娘を起こす


ゾンビ娘「ふん」
46 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 23:10:53.21 ID:2whs64vV0
ゾンビ娘「この私に何か用か?」

博士「パンツ何色?」

ゾンビ娘「命が惜しくないらしいな」

博士「冗談だ」

ゾンビ娘「だ、だだが、どうしても聞きたいと言うのであれば...やぶさかではない」

博士(でも気絶させればいつでも見れるか)

博士「あ、いいっす」

ゾンビ娘「なっ...!」

ゾンビ娘「私のパンツには魅力がないのか...?」

博士「お前めんどくせぇな」
47 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 23:17:13.20 ID:2whs64vV0
ゾンビ娘「そういう言葉の端々が人を不幸にするんだぞ」

博士「知ったことか」

ゾンビ娘「いつか私の力の前にひれ伏す事となるぞ」

博士「そりゃ楽しみだ」

ゾンビ娘「ぐぬぬ...」

博士「...っと、もう夜か。部屋の電気を点けねば」
48 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 23:27:55.16 ID:2whs64vV0
ゾンビ娘「な、なぁ」

博士「はい」

ゾンビ娘「今日は、その、泊まっていって良いのか?」

博士「...あぁ...良いぞ」

ゾンビ娘「ま、当然と言ったところか」

博士「言っちまえばそりゃそうだ」

ゾンビ娘「ふんっ」
49 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 23:35:27.75 ID:2whs64vV0
博士「うあー」


回転する椅子を使って回転している
それだけなら良いが、ギコギコとうるさい


ゾンビ娘「幼稚だな」

博士「なんとでも言え」

博士「だが確かにうるさいな...古くなってきたのか」

博士「買い換えの時期が来たのかもな」

ゾンビ娘「っ!」
50 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 23:42:07.14 ID:2whs64vV0
ゾンビ娘「先輩はさ」

博士「?」


口調と語気が明らかに弱まった
しかし頭痛の発作ではないようなので無視する


ゾンビ娘「私が古くなったら...その、私を捨てるのか?」

博士「捨てる、とは」

ゾンビ娘「私がもし年をとったり...あるいは先輩の期待に添えなかったら」

ゾンビ娘「私は要らないか?」

博士「...お前らしくもない。だがそう言ったらお前が可哀想なので一応回答する」

博士「そんなことはしないさ」
51 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/15(月) 23:52:26.15 ID:2whs64vV0
ゾンビ娘「...そうか。安心した」

博士「大袈裟な」

ゾンビ娘「いやいや、大袈裟なんかじゃあないさ」

ゾンビ娘「これで私は先輩を殺さずに済むのだからな」

博士「...!?」

ゾンビ娘「どうかしたか?」

博士「いや、気のせいだ」

ゾンビ娘「そう...か」

52 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 00:00:22.90 ID:yZxyrlfI0
博士「なんか腹減ったわ」

ゾンビ娘「...む」

ゾンビ娘「私が料理してやろう。光栄に思うがいい」

博士「いいや、俺もやる」

ゾンビ娘「この私が信用できんと?」

博士「信用できねぇ奴と一緒に料理はしねーよ」

ゾンビ娘「そ、そうか...ふふ」
53 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 00:11:33.81 ID:yZxyrlfI0
博士「俺はフライパン温めとくから、具材切っといてくれ」

博士「包丁はお前の腰あたりの位置にある引き出しに入ってるぞ」

ゾンビ娘「いいだろう。我が包丁裁きに刮目せよ」


ゾンビ娘は引き出しを開ける
そして包丁を取り出す。しかし


ゾンビ娘「ぐぅぅっ!!ああ!!」

ゾンビ娘「うっ、おえっ...!」

ゾンビ娘「す、すまない...頭痛と吐き気が」

博士「なっ、おま人がガス使ってんのによ」


博士はスタンガンで彼女を気絶させる
54 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 00:19:25.17 ID:yZxyrlfI0
結局、彼女の処置を機械に任せ、調理は続けた
何故かラーメンができた


博士「...やはり発作の原因は思考のみではなさそうだ」

博士「しかも今回は吐き気も伴っての頭痛」

博士「物騒な発言といい、発作の原因が包丁であることといい、嫌な想像が...」

博士「っべ、麺すすり過ぎで鼻水出てきた」
55 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 00:35:05.71 ID:yZxyrlfI0
博士「いやぁ、食った食った」

博士「あまり気は進まないが...」

博士「早いことに処置はもう終わってしまったらしい」


博士はスタンガンで彼女を起こす


ゾンビ娘「あっ、ご主人様!」

博士「...ふー...」

ゾンビ娘「どうしたんてすか?そんな肝を冷やしたような顔をして」

博士「いや、なんでもないさ」
56 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 00:41:42.07 ID:yZxyrlfI0
ゾンビ娘「元気出して下さいよ。私、ご主人様の為だったらなんだってしますよ」

博士「ん?今なんでも...」

博士「...じゃあ、君が無くしたカメラには何が納められていたんだ?」

ゾンビ娘「ご主人様の隠し撮り写真です」

博士「えぇ...」

博士「なんで?」

ゾンビ娘「ご主人様、学校では人気あるんですよ?」

ゾンビ娘「だから私がその写真を売って儲けてました」

ゾンビ娘「エッチぃのは全部私が保管しましたけどね」

博士「...もう何も言うまい」
57 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 00:49:29.51 ID:yZxyrlfI0
博士「あ、いや待った」

博士「パンツ何色?」

ゾンビ娘「水色の縞パンです」

博士「...ほへー...」

ゾンビ娘「そんな目で見ないで下さい!」

博士「はは」
58 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 00:53:06.01 ID:yZxyrlfI0
ゾンビ娘「ところで、食事はお済みでしょうか」

博士「おう」

ゾンビ娘「では、デザートのクレープを調理いたしますね」

博士「そりゃありがたいな」

ゾンビ娘「光栄でございます」
59 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 21:12:12.32 ID:yZxyrlfI0
博士「流石にクレープの作り方は分からない」

ゾンビ娘「では私にお任せ下さい」

博士「じゃあそうしようかな」

ゾンビ娘「本日は趣向を変えてバナナクレープなんて如何ですか」

博士「ふむ、いいじゃないか」
60 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 21:32:32.56 ID:yZxyrlfI0
ゾンビ娘「出来ましたよ、ご主人様」


皿に盛られたバナナクレープが運ばれてくる
飲み物も届いたが、それはお茶とか水ではなく、ミルクティーだった


ゾンビ娘「バナナクレープにはミルクティーが合うと思うんですよ」

博士「...そうなのか?」

博士「ならば実食といこうか」
61 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 21:41:18.82 ID:yZxyrlfI0
バナナクレープを口に運ぶ
それを流し込むようにミルクティーを飲む


博士「...ゲロ甘だ」

博士「たまには悪くないな」

ゾンビ娘「そうでしょう!?」

博士「あ、ああ。お前相当な甘党だろ」

ゾンビ娘「確かに言われますね」

ゾンビ娘「『マグロの切り身にチョコレートかけて食いそう』って言われたこともあります」

博士「それは流石に品性に欠けるぞ」

ゾンビ娘「ちょっといいかもなって思いました」

博士「おい」
62 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 21:47:08.19 ID:yZxyrlfI0
博士「結構美味かったな」

ゾンビ娘「そうでしょうそうでしょう」

ゾンビ娘「歯は良く磨いて下さいね」

博士「言われずとも」


ゾンビ娘は慣れた手つきで食卓の片付けに取りかかる
手際よく食卓を片付けていく彼女はその妙な口調と相まってメイドのようであった
そして最後に皿を運んでいく
が...


ゾンビ娘「うぉあっはあ!」


転倒。
誰か床にワックスでも塗ったんじゃないか?
彼女は尻餅をつき、床には皿の破片が散乱する
63 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 21:50:40.76 ID:yZxyrlfI0
博士「お、おい」

博士(とにかく彼女を安全な所へ移動させ、破片を片さねば)

博士「やっちまったみたいだな。そういう時は落ち着いて...」

ゾンビ娘「あっ...あ...あぁ...」

ゾンビ娘「こういう時はこういう時はぁっ...!」

ゾンビ娘「あっあっああああっ!?」

博士「どうした!?」


彼女は気絶してしまった
64 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 21:53:29.99 ID:yZxyrlfI0
博士は駆け寄り、容態を確認する


博士「...完全にオチてやがる」

博士「スタンガンは使ってないぞ...?」

博士「何か妙だな...」

博士「破片を掃除しながら考えるとしよう」
65 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 21:59:57.86 ID:yZxyrlfI0
博士「これが最後の記憶処置」

博士「しかしながら、トラウマのようなものは抱えつつも態度は軟化しているように感じる」

博士「そう恐れることもないのかもしれないな」


ゴミ箱に破片を捨てながら彼はそう思った
その時、またもや鳴りのいい音が鳴る
訪問者だ。チャイムの音がどうにも苦手らしい
時刻は午前1時45分を示していたので、訪問者が誰かはすぐに分かった
66 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 22:06:21.31 ID:yZxyrlfI0
剣「無事でござんしたか」

博士「無事というと、何かあったんですか」

剣「今夜、不審な男が徘徊しているらしいんでさぁ」

博士「そうですか」

剣「くれぐれも気をつけておくれ」

博士「そうだな...戸締まりは注意しときますよ」

剣「是非、そうなさって下さい」

博士「むしろ俺はあなたが心配ですよ」

剣「はは。行く家行く家で言われておってかなわん」

博士「...では、巡回を続けて下さい」

剣「そんじゃ、お気をつけて」

博士「ええ」
67 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 22:11:24.39 ID:yZxyrlfI0
博士「巡回もご苦労様だ」

博士「俺以外に好き好んで墓に立ち入る奴など居ないだろうし」

博士「心配性のジジババが熊と人間を見間違えたに違いない」

博士「俺も観察が終わればこんなところとっとと引っ越したい」

博士「記憶処置は終わったようだ」

博士「...さあ、一体どうなんだ?」
68 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 22:15:20.51 ID:yZxyrlfI0
博士はスタンガンで彼女を起こす


ゾンビ娘「ご、ご主人様...?」

ゾンビ娘「先輩...?」

博士「?」

ゾンビ娘「ち、違う」

ゾンビ娘「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う」

ゾンビ娘「い、いやだ私は私なんだ助けて先輩」

博士「お、おいお前」

ゾンビ娘「うわあああああああっ!!!」

ゾンビ娘「あっ、あっああああっ!!」

博士「待てっ!!」
69 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 22:20:45.11 ID:yZxyrlfI0
彼女は駆け出し、台所へ向かう
博士の静止も聞かず一心不乱に台所を漁る
終に彼女が手に取ったのは包丁だった


博士「おいバカ待て」

ゾンビ娘「絶対に許さない...絶対にっ!!」

ゾンビ娘「キェアアアアアッ!!」


包丁を持って突貫してくる
明らかに異常だ
スタンガンを構え、気絶を試みる


博士「今だっ!!」

ゾンビ娘「私は屈しない!」
70 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 22:27:41.73 ID:yZxyrlfI0
博士はスタンガンを突き出す
だが彼女はそれをいとも簡単に避けて見せた
包丁は脅威として確実にこちらに向けられている


ゾンビ娘「死ねっ!!」

博士「軌道は直線即ち易し!!」


博士は彼女が冷静を欠いていることに気づいているため、単調な動きを読んだ
動かねば一突きで殺されている所をすんでで避けた


ゾンビ娘「ふざけるなぁっ!!」


接近されてしまったのが運の尽きであった
足払いで博士は転倒させられ、スタンガンを手放してしまった
彼女はすかさず馬乗りになる
71 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 22:34:21.67 ID:yZxyrlfI0
明らかにその包丁を避けることはもう不可能になっていた


ゾンビ娘「死ね死ね死ね死ね死ねっ!!!!」

博士(考えろ俺!どうにか打開出来ないのか)

博士(彼女の奇妙な点。トラウマの対象...)

ゾンビ娘「あんたは終わりだっ!!」

博士「聞けええええっ!!」


ぱちんっ


ゾンビ娘「う...うぐ...っ...があああっ...!」

博士「や...やった...」

博士「『指パッチン』だ!!」
72 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 22:38:13.13 ID:yZxyrlfI0
彼女はよろめき立ち上がり距離を取る


博士「今しかない」

博士「スタンガンで動きを止めるんだ...!」

ゾンビ娘「あんたの好きにはさせないっ!!」


次の瞬間
彼女は自分自身の喉を包丁で突き刺していた
彼女は己が死した身であると気付かずに自殺を試みたのだ


博士「っ...」

博士「ど...どうしろと...言うんだ...」
73 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 22:41:58.49 ID:yZxyrlfI0
博士「そういえば...」

博士「俺が彼女を掘り出した時も彼女は喉を貫かれていた」

博士「観察は成功したのかもしれない」

博士「だが...何とも空虚っ...」

博士「きっとどこかで期待していたんだ」

博士「不幸な結末を自分の力で変えられるんじゃないか」

博士「彼女をもしかしたら幸せに出来るんじゃないか、って期待していたんだ」
74 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 22:44:31.63 ID:yZxyrlfI0
博士「だが、バカな期待だった」

博士「彼女を墓に戻そう」

博士「俺は最低だ」

博士「俺は...っ」
75 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 22:51:07.17 ID:yZxyrlfI0
〜墓地〜


博士「彼女はここに埋まっていた」

博士「墓石もないような隅っこだが、安らかに眠らせておいてやろう」

博士「丑三つ時の墓地というのは気味が悪いな。全く...」


「おい」


博士「!?」

男「なぜお前がその子を持っている」

博士「...研究の為だったさ。お前は誰だ」

男「俺はその子のご主人様だ」


博士は振り向き、男の方を見る
しかしその顔はあまりに醜悪で、目を背けてしまう


男「俺はお前を決して許さない。彼女は俺のモノだ。よくも盗みやがって」

博士「...なあ、お前が持っている『それ』...なんだ」
76 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 22:55:36.89 ID:yZxyrlfI0
顔を背けてしまったからこと目に入った
彼は楕円形の何かを持っていたのだ


男「ん?これか?」

男「これはお前と同じ許されざる者」

男「その子は先輩って呼んでたかなぁ。ほら、見せてやる」


彼は楕円形を投げつけてきた
それをあえて掴むことはしなかった
博士の嫌な予感は的中したのだ


____それは、眼球をくり貫かれた男の生首だった
77 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 23:00:06.65 ID:yZxyrlfI0
男「お前も今からこうなるんだぜ」

博士「何だと?」

男「お前は今、指一本ですら動かせないはずだ」

博士「っ!?」


博士は金縛りにでもあったが如く、体が動かない


男「お前はちらとでも俺の顔を見ちまった」

男「俺は類い稀な催眠術の才能があってな。その程度呼吸をするようにできるんだぜ」

男「さて、目ん玉からいこうかなぁ」
78 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 23:06:03.16 ID:yZxyrlfI0
彼は着実に一歩ずつにじり寄ってくる


博士「彼女も、そうやって催眠術で?」

男「ああそうとも。そそっかしい奴でよぉ。それもまた可愛いんだが」

男「よく皿割っちまうんだな。だからその度にカラダで奉仕させてたさ」

男「あと精神を平時と入れ換えたり催眠術の導入には指パッチンを使ってたなぁ」

男「面白いぐらい良く効いたぜ?くくく」

博士「このっ...ゲスが!」

男「てめぇ、今自分が置かれてる状況を分かってねぇようだなぁ!!」
79 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 23:11:12.14 ID:yZxyrlfI0
彼はフルスイングで博士の顔面を殴打する


博士「ぶっ!」

男「下半身の筋肉は固まってるから倒れることもできねぇはずだぜ」

男「さて、もう一発_____」

男「っ、ぐっ...あ...?」


彼のどてっ腹には刃が貫通していた
それは勢いよく引き抜かれ、彼は目を白黒させながら崩れ落ちる


剣「少し遅れてしまいました」

剣「申し訳ない」
80 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 23:16:25.62 ID:yZxyrlfI0
博士の体に自由が戻ってきた


博士「く...助かった」

剣「話は聞かせていただきやした」

剣「急ぎ元軍兵の農家から銃剣を借りてきた次第でさぁ」

剣「警察にも通報しておきやした」

剣「あとは弁護士雇ってカネで解決してくだせぇ」

博士「ああ、そうさせてもらおうか」
81 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 23:23:22.93 ID:yZxyrlfI0
剣「はぁ」

博士「どうかしたんですか」

剣「全く儲からない仕事をしてしまった、と思いやして」

剣「あっしはそこで生首になってる男に雇われたんでさぁ」

剣「ボディーガードかと思ったら夜に見回りをしろとだけ」

剣「結局死なれまして...あっしの本職は用心棒なんでござんす」

博士「...あの」

剣「はい」

博士「死体はあの男に投棄させたことにして、一緒の墓に彼女とその先輩を入れてあげませんか」

剣「...そりゃあいい」
82 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 23:28:22.65 ID:yZxyrlfI0
博士「ふぅ、入りましたね」

剣「死体は結構重いんでさぁ」


剣は合掌し、黙祷する


博士「そこまでするなら、脱帽した方が良いのでは?」


すると剣は笠を外し、また合掌し、黙祷した
博士も続いて合掌し、黙祷した
83 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 23:47:52.20 ID:yZxyrlfI0
祈り終え、ふと剣の方を見る
笠で隠れていたが、彼女は凛とした銀髪セミロングの女性だった


剣「あまりまじまじと顔を見ないでくだせぇ」

剣「と、いっても雇い主に危険だから笠を被れと言われただけなんでもう外してもいいんですがね」

博士「すまない。見とれてしまった」

剣「なんかあんた、あっしの雇い主さんに似てますね」

剣「彼女が恋をするのも分からぁ」

剣「それじゃ、また何かの縁があれば会いましょう」

博士「そうだな」
84 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 23:56:08.62 ID:yZxyrlfI0
〜某日・ラーメン屋にて〜


博士「てな事があってさ」

店主「そりゃあいい経験になったね」

店主「ところで、なんで人間を蘇生出来るんだ?」

博士「ラーメンってさ、伸びるだろ?」

店主「...おう」

博士「それを元に戻す機構を作ってたらなんか細胞を原子レベルで再生する機械できちゃって」

店主「んーーーーー...流石『ラーメン博士』だな」

博士「どういうことだ?むしろ失敗だ」

店主「そういうとこさね」
85 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/16(火) 23:58:57.02 ID:yZxyrlfI0
これで終わりです
元々安価スレの予定だったんですが【安価】ってつけ忘れてしまいまして
わざわざhtml化依頼するのも気が引けたんで最後までやりました
そういう訳で書き溜めとかなかったんで雑で適当なのは許して下さい
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/17(水) 00:47:25.74 ID:za5Z8RXC0
乙です。

こういう少し余韻の残る話、好きですよ。
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