梨子「未来のあなたが知ってるね」

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530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 10:57:02.13 ID:jWyG/GcGO

鞠莉「いいよ。………千歌」



千歌「・・・ん?なあに?」



鞠莉「こんなに。……大きく、なったんだね……」



千歌「・・・・・・ッ!・・・・・・そう、かな」



鞠莉「そうよ。……だって、こんなにも、あなたが近いんだから」



千歌「・・・・・・。わたし、鞠莉ちゃんに近づけたのかな・・・・・・」



鞠莉「……うん。だから、これからどこにも行っちゃ、ダメだよ……」




千歌「・・・・・・」




鞠莉「………ちか。ちかぁ!!」



531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 10:57:47.16 ID:jWyG/GcGO


ダイヤ「……鞠莉さん。……あまり、千歌さんを困らせてはダメですよ」




鞠莉「で。でも……!」


ダイヤ「わかっています。……でも、今は……千歌さんのお話を聞きましょう」


ダイヤ「わたくしたち、皆が。……辿り着いた、真実なのですから」


鞠莉「……うん」



梨子「……」


果南「……」




千歌「・・・・・・」


532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 10:58:31.74 ID:jWyG/GcGO

ダイヤ「で、その。……ええと、他に、何を話せばいいんでしょうか」


花丸「……ええ?」

曜「……そりゃないよね」

善子「生徒会長マジか……」


ダイヤ「ちょっと!何てこと言うんです!」


千歌「あははははっ!・・・・・・大丈夫だよ。何でも、聴いて?」


ダイヤ「じゃ。じゃあ、その。……千歌さんの、能力って……?」


曜「そこ、引っ張るんだ……」

ダイヤ「な、何にも思いつかなかったんです!」

花丸「威張ることじゃ、ないずら……」


533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 10:59:13.49 ID:jWyG/GcGO

千歌「私の能力かぁ。・・・何て説明すればいいんだろうね?」

千歌「なんか、せっかくだから色々改造してもらって。……最終的には、本気を出したらアメコミのヒーロー並みのことは出来るようになってたかなぁ」


ルビィ「ひ。ヒーロー……」


千歌「たぶん、全力を出せば結構イロイロ出来るんだけど。・・・・・・例えがムズカシくてね」


千歌「善子ちゃんにだけ伝わる表現をすれば、らいじんぐのらいでんぐらいは軽く出来るよって感じかなぁ」

善子「……す。凄まじいスペックね……」


梨子「……よくわかんないけど。とにかく、トラックを咄嗟に止められるほどの力、その他もろもろ出来るぐらいには、その……高性能、っていうのかな」


千歌「・・・・・・まあ、そういうことになるね。・・・・・・力が余ってる分には、パラメーターを自分でいじれば普通の人間と全然同じ感じに出来るから、ちょっと高めに改造してもらったんだ」



果南「……かいぞう、か」


534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 10:59:58.11 ID:jWyG/GcGO

梨子「千歌ちゃん。……その、何で、入れ替わっていたの?」


梨子「……昔の、自分と……」



千歌「・・・・・・それは、私が皆に聴きたいことでもあるんだけどね」



梨子「あ……。ご、ごめんなさい……(……そうだ)」





梨子(千歌ちゃんから見れば……私たちこそが、自分の昔の仲間を、真似している、不可解な存在なんだ……)





千歌「ふふっ。イジワル言っちゃったね。・・・・・・皆、そんな自覚ないもんね・・・・・・」


曜「……」


善子「……」




千歌「・・・・・・でも、なんでなんだろうね。・・・・・・実は、私にもよくわからないんだ」











千歌「ただ。・・・・・・夢を見ている気分だった」






535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:01:11.87 ID:jWyG/GcGO

梨子「……夢を……見ている……?」




千歌「そう。・・・・・・あの時のまんまな、町を見て。・・・・・・皆を見て」





千歌「私、思ったんだ。・・・・・・最後の、夢がここにあるんだって」






曜「最後って……。どういう、こと?」






千歌「・・・・・・いっぱいミスしちゃったでしょ、私。皆に違和感を持たれるようなこと、いっぱい」






梨子「……」



536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:02:01.65 ID:jWyG/GcGO



千歌「・・・・・・やっぱりね。もう、ガタがきてるんだ」




善子「なっ……!!」



千歌「私は・・・・・・長く、生き過ぎた。・・・・・・皆と別れてからも。・・・・・・ずっと、見届けたくて」



千歌「色んなものを、見てきた。・・・・・・人間の、行き着く先。皆の、夢のカタチが知りたくて」




梨子「………」



千歌「いっぱい生きて。・・・・・・機械になって、生き続けて。・・・・・・でも、もうそろそろ、終わりだなって思う時があった」



千歌「・・・・・・。正直、もう目を覚ますことなんてない。・・・・・・そう思って、でも、次に目を覚ませて。その時に。・・・・・・私は、信じられないものを見た」




千歌「・・・・・・長い長い眠りの後に。私は、私の生まれ育った町とそっくりな場所に、いた」





千歌「しかも。そこには、もうずっと前に、別れたはずの・・・・・・仲間が、いた」





梨子(……!)


537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:03:07.35 ID:jWyG/GcGO







千歌『え。……え?……なんで、〈あなた〉が……』






千歌「・・・・・・夢、だと思ったよ。天国なのかなって、思った」



千歌「でも。私の記憶≠フ通り。私は、私の、機械の体だった」




果南「……っ」





千歌「・・・・・・わからなかった。どうして、こんなことが起きているのか」



千歌「でも、ね。何となく・・・・・・直感だけど。オクソクは、出来たの」



花丸「オクソク……」




千歌「・・・・・・アンドロイドの、生きる意味=B……それは、最初は人間のため、だった」




ルビィ「生きる、意味……」


ダイヤ「アンドロイドの……わたくし、たちの……」



538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:03:59.10 ID:jWyG/GcGO


千歌「人間の生活をよりよくするために生み出されたアンドロイド。・・・・・・でもね、次第にその力は、人間を超えていった」


千歌「最初は、ロボットって呼ばれていた。でも、ロボットの中でも、人間に似せようとして作られたものが出てきてね」


千歌「どんどん、人間に近づいていく、人間そのものの、ロボット・・・・・・」


千歌「それが、アンドロイドと呼ばれる存在だった」


千歌「人間に出来ることは、何でもできる。……人間以上の、力で」


千歌「そして、人間よりも、人間らしい。・・・・・・少なくとも、人間らしく、振舞える」


千歌「そんな存在が出来たとして。・・・・・・じゃあ、人間には何が出来るんだろう?って」


千歌「人間の生きる意味は?・・・・・・そう、考えたとしても、無理はなかったんだよ」




花丸「まさか……」




千歌「・・・・・・多分、花丸ちゃんが察した通り。・・・・・・争いが、起きたの」




善子「……バカげてる」



539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:04:41.39 ID:jWyG/GcGO



千歌「・・・・・・。人間は・・・自分たちに何が出来るのか、問題にした」



千歌「自分たちに、出来ないことが出来る存在。・・・・・・それだけなら、問題にならない」



千歌「だって、別のことが出来ればいいんだからね。・・・・・・でも」




千歌「アンドロイドは、全てを上回った。・・・・・・人間の出来ること、全てを・・・・・・」



鞠莉「……」



540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:05:37.94 ID:jWyG/GcGO


千歌「・・・・・・ねえ、梨子ちゃん。・・・・・・ピアノ、借りてもいい?」



梨子「……え。う、うん。いいけど……?」



千歌「・・・・・・私が最初に弾いた時。・・・・・・その音色は、機械そのものだったよね」



梨子「……そ、それは……」



千歌「でもね。本当は、違うんだよ。・・・・・・聴いてほしい。私の中にある、プログラムが再現する、音を・・・・・・」













梨子(……そう言って、千歌ちゃんは私のピアノに、手をかけた)


梨子(……どこかで聴いたことがあるような。でも、この世にはない演奏)


梨子(懐かしいと感じ、凄いと感じ。……感情が、溢れてどうしようもなくなる)


梨子(熱い想いがある。……このピアノを聴いていると、何でか……泣きたくなるような)


梨子(そんな、音色だった)




541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:07:46.04 ID:jWyG/GcGO



曜「……すごい」




千歌「・・・・・・すごいでしょ。・・・・・・技術の力は、こんなことも出来るようにしてくれたの」




ダイヤ「そ。その。……すごく、失礼なことなんですが……」


ダイヤ「とても、その。……機械的な演奏に、聴こえませんでした」


ダイヤ「情感豊かで……何より、熱い想いを感じました」




千歌「・・・・・・それが、答えなんだよ」


ダイヤ「答え……?」



千歌「私が今やったことは。・・・・・・ある2人のピアニスト達の音を、違和感なく、くっつけて。別のものにしてしまう、技術を再現しただけなの」



梨子「……!」





千歌「・・・・・・私の尊敬する、ある人と。・・・・・・私の自慢の、ある人の音色。・・・・・・その二つを、掛け合わせただけなんだよ」


542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:08:22.58 ID:jWyG/GcGO


ダイヤ「……なんという」



千歌「やってることは、シンプルなんだ。・・・・・・単に、最善と思われている組み合わせを見つけて、カタチにしているだけ」



千歌「・・・・・・ただ。その組み合わせの見つけ方は、人間よりもはるかに精確で、速い」



千歌「・・・人間にしか出来ないと言われていた、創造の分野。・・・・・・でも、創造って、現在あるものから、色んな組み合わせを見出して、カタチにすること」



千歌「もし、そう考えれば。・・・・・・創造はむしろ、機械の方が得意だってことになるよね」



千歌「・・・・・・人間に見つけられない、特徴を見つけ出して。人間では間違えてしまうことも、精確に行って」



千歌「・・・・・・完璧な組み合わせを。見つけられるんだから・・・・・・」




ルビィ「……」


曜「……」


543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:09:03.98 ID:jWyG/GcGO

花丸「……。『物を作るとは、物と物との結合を変ずることでなければならない』」


花丸「『大工が家を造るというのは、物の性質に従って物と物との結合を変ずること、即ち形を変ずることでなければならない』……そういう言葉を、呼んだことがあるずら」


果南「……その言葉の通りのことが、起きたってこと、か……」



千歌「人間にしか、出来ないことがある。・・・・・・その考えは、否定されたんだよ」


千歌「そして。存在意義を、『何が出来るのか』で考える限り。・・・・・・人間は、アンドロイドに比べて、『必要ない』ことになる・・・・・・。そんなことは、明白だった」



鞠莉「だから……争いが起こったっていうの?」


鞠莉「……『必要ない』なんて、ただの考え方なのに。……ただ、『必要ない』を目の前に突き付けてくる、存在を否定することによって、自分を保とうとして……!」






千歌「・・・・・・。争いは、止められなかった。・・・・・・人間は・・・・・・」




千歌「人間は。・・・・・・怖かった」



544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:09:56.58 ID:jWyG/GcGO


果南「千歌……」


曜「千歌ちゃん……」



千歌「・・・・・・・人間はアンドロイドを超えるために、色んなことをしちゃったの」



千歌「否定していた、機械の体にもなれるようにして。・・・・・・だんだんと、人間は、ロボットに近づいていった」



善子「……サイボーグ」




千歌「・・・・・・最初はロボットで、人間に近づいていったアンドロイド。・・・・・・ロボットとの違いが判らなくなるぐらい、機械になっていった人間」






千歌「・・・・・・《逆》に。なっていった」







梨子「《逆》に……」





千歌「人間はもう・・・・・・ほとんど、いないと思う」



千歌「・・・・・・。人間の出来ないことを、出来るアンドロイド。その技術力は、やっぱり、人間を超えていた」



善子「……」



545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:10:28.56 ID:jWyG/GcGO


千歌「でも。・・・・・・人間のために、作られたアンドロイド。じゃあ、人間がいなくなったら?」



千歌「どうやって、自分の生きる意味を探すんだろう・・・・・・?」



梨子「………!」





千歌「生きる意味。・・・・・・輝き=v





千歌「・・・・・・どうやったら。知れるんだろうね・・・・・・?」



ダイヤ「……!」



果南「アンドロイドは、存在意義を失った。……そういう、こと」



梨子「………そんな」






千歌「・・・・・・」



546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:11:01.40 ID:jWyG/GcGO

善子「……待った」



千歌「・・・・・・善子ちゃん?」



善子「……もし、さっきの千歌の言葉が正しいとしたら。……問題がない?」


梨子「……問題?」


善子「そうよ。……もし、創造が。あらゆるものから、あらゆる組み合わせを生み出す行為だとしたら」


善子「当然。そこには、《生きる意味を考え出す》ことだって、含まれるはず」


ルビィ「あ……!」


花丸「言葉……言語の組み合わせによって表現されるのが、思想で。……生きる意味が思想のように、少なくとも言語によって語られるものなら……そういうことに、なるね」



善子「……どうなの?」



547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:11:46.05 ID:jWyG/GcGO



千歌「・・・・・・流石、善子ちゃん。善子ちゃんの言う通りだよ」



曜「……じゃ、じゃあ……」



千歌「・・・・・・そう。善子ちゃんの言った通り、生きる意味は、すぐに考え出されていった」



千歌「過去、生きる意味を考えた全ての人達。・・・・・・人生訓だったり、思想だったり」


千歌「哲学的な考え方。・・・・・・そこには、哲学なら哲学の、哲学的な語り口に共通の《論理》があった」



千歌「・・・・・・もちろん、人の考え方、《論理》はそれぞれ違う部分も多くで。・・・・・・何もかもを結び付けられるわけじゃなかったけど」


千歌「でも。・・・・・・それぞれの論理、それぞれの考え方の中で特有な部分。・・・・・・いや、共通する部分って言った方がいいのかな。それは、カンタンに見つけ出せた」



果南「共通する部分……?」



千歌「哲学の例なら、ある哲学者が書いた作品の全てから、その考え方のパターンを抽出して、その作者の・・・・・・時点別での、書き方の違い、そして共通点を抽出できたっていうこと」



千歌「共通点という言い方をしたのは・・・・・・。時点の違う自分も、ある意味、〈他の人〉だからね」





千歌「・・・・・・チカ≠フように」



果南「!!……ち、か」


548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:12:20.30 ID:jWyG/GcGO



千歌「・・・・・・それぞれの共通点を見つけたら。今度は、見つけたそれぞれの共通点の、共通点を組み合わせていける」



千歌「・・・・・・そうして。世界には、[生きる意味]が満ちることになる」



千歌「しかも、それは取捨選択された、より洗練された[生きる意味]」



千歌「・・・・・・人間が考えるより、はるかに高度な《知能》によって創り出された、[生きる意味]が、そこら中に出来上がった」




善子「じゃあ……アンドロイドが生きる意味を見失うなんてこと、ないんじゃ……」


千歌「確かに、皆が皆、自分の[生きる意味]を、自分に相応しいものを、手に入れることが出来るようになった」



千歌「私も、私の生きる意味を。・・・・・・私の、生きた意味を手に入れることは出来るようになった」



鞠莉「……」



549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:13:07.95 ID:jWyG/GcGO



千歌「・・・・・・でも、それって。[自分の生きる意味]であっても、〈私〉の生きる意味なのかな・・・・・・?」



梨子「!」


曜「!」


善子「……!」



千歌「誰もが、もうあるものの中から、『自分』に合った[生きる意味]を選択できる。・・・・・・いや、そこまでいったら、自分に合った生きる意味を選ぶなんて言葉自体、意味の無いものになる」



千歌「だって・・・・・・究極的に言えば、皆、自分にピッタリの[生きる意味]を、当てはめることが出来てしまうだけなんだからね」





鞠莉「……でも。自分の生きる意味なのよ!」


鞠莉「自分の生きる意味は、たとえ昔あったものと似ていたとしても。……極限まで似たものであったとしても!それは、極限でしかない。ただ、同じと見なしているに過ぎない!」


鞠莉「それは、自分だけのもののはずよ!」


550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:13:57.44 ID:jWyG/GcGO



千歌「・・・・・・自分と”全く同じ”存在があり得たとしても?」




鞠莉「……!?」


鞠莉「そ。……それは……」



花丸「……自分だけのものと考えるのは。……難しい、かもしれないずら……」




千歌「・・・・・・アンドロイドが直面したのは、その問題だった」



千歌「どんなものも、パラメーターとして、操作できる。・・・・・・数にして、制御できてしまう」


千歌「これは、見方を変えれば、何にだってなれるってこと」



千歌「・・・・・・アンドロイドって言っちゃったけど。アンドロイドに限った話じゃないんだけどね」



千歌「全てを数値化出来てしまうようになった、技術。・・・・・・それ自体はもう、私≠ェ生まれた時に既にあった・・・・・・」




曜「……千歌ちゃん≠ェ、生まれた時って。……本当に、本当の。千歌ちゃんの、生まれた時……」




551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:14:58.02 ID:jWyG/GcGO



千歌「・・・・・・。私が生まれた時には、もう。デジタル化が、普及し始めていた」



千歌「デジタル化っていうことの本質は、あらゆるものを数値で表現できるようにするということ。そして、数値化できるなら、それを[再現]もできるっていうこと」



花丸「……『アンドロイドは。何にだって、誰にだってなれる』」


千歌「そうだよ。・・・・・・だとしたら、そこには『自分』だって含まれるはずだよね?」


曜「……。自分の、生きる意味が。……自分だけのものだって、決して言えなくなった」



千歌「・・・・・・。そうだよ」



千歌「自分という、たった一つしかないって、誰もが信じて疑わなかったものさえ。その、たった一つって言える根拠さえ」



千歌「・・・・・・その人が、生まれ育った環境。遺伝子。・・・出会った人によって、『自分だけ』っていうことが、生み出される。そして、それは決して同じにならない」


千歌「双子でさえ、空間的な場所が違う。鞠莉ちゃんの言ったように、極限まで近づけられても、同じにはならない」



千歌「でも、その根拠は、覆してしまえる」




千歌「それら全てを・・・・・・再現できてしまう・・・・・・」




花丸「……」



552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:15:36.76 ID:jWyG/GcGO



千歌「・・・・・・[自分]という存在さえ。・・・・・・あらゆる関係性によって、決められている」



千歌「自分も、あらゆるものとの関係から逃げられない。・・・・・・あらゆるものとの関係によって、成り立っているから」



千歌「・・・・・・その、あらゆるものが。同じに出来たら・・・・・・」





曜「……生きる意味=c…それは……」


花丸「……あるのに。ない……」


果南「……」


ダイヤ「……」


ルビィ「……うぅ」


鞠莉「くっ。……ぅ」


梨子「……」



553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:16:18.81 ID:jWyG/GcGO


善子「…………違う」


梨子「…………善子ちゃん?」



善子「私は。……ヨハネだけど、よしこよ」





千歌「・・・・・・!」






善子「……私は。確かに、[自分]の通りに振舞ったかもしれない」



千歌「・・・・・・」



善子「でも。……例え、[自分]が、[自分]の通り。じぶんの、ままに生きたとしても」



善子「じぶんの、じぶんに沿って、そのまま沿ってやったとしても。……」






善子「やったのは、〈わたし〉よ!!」





千歌「・・・・・・!!」



554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:17:07.29 ID:jWyG/GcGO



善子「私が!……〈わたし〉が、〈あなた〉の味方になりたいって思った!!」



善子「じぶんに従っていただけでも。これだけは、間違えようがない。わたしがしたの!!」





千歌「・・・・・・」




鞠莉「……」



鞠莉「『・・・・・・でも、それをやってくれたのは。・・・・・・間違いなく、〈あなた〉なんだよ』」




千歌「まり、ちゃん・・・・・・?」




鞠莉「……そう、言ってくれたのは。……こういう、意味だったんだね……」





千歌「・・・・・・・・・・・・」



555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:17:56.66 ID:jWyG/GcGO


曜「……本当に、そう、なのかな……」



千歌「・・・・・・。私には、わからない。わかるのは、〈あなたたち〉だけ」



梨子「……〈わたしたち〉」




千歌「・・・・・・。少なくとも。〈あなたたち〉は、《逆》のことをしている」




千歌「・・・・・・たとえ同じものであっても。その輝き≠ヘ違うってことを、証明して見せるんだって、いうかのように・・・・・・」



556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:18:34.16 ID:jWyG/GcGO


ダイヤ「……まさか」


果南「だから……私たちが生まれたっていうの?……生きる意味が。全く同じだったとしても……!」


花丸「輝き≠。……〈わたしたち〉が、持てるのか……!」


ルビィ「それを、知るために。……イチバン、輝いていた人の。……輝きを求める、スクールアイドルのマネをすることで、それがわかるかもしれない……!」


梨子「だから……私たち≠ェ、生まれた……」





千歌「・・・・・・」



557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:19:10.89 ID:jWyG/GcGO


千歌「わたしには。・・・・・・やっぱり、ハッキリしたことは、わからない。・・・・・・けど」




千歌「ひとつ。わたしにはたしかに、うれしさがあった」




曜「うれしさ、って……」







千歌「わたしは・・・・・・うれしかった。・・・・・・たとえ、みんな≠ノのこっていなくても」



千歌「[わたしたち]を、目指してくれる。・・・・・・そんな存在が、いることが」


558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:19:49.84 ID:jWyG/GcGO


千歌「・・・・・・その夢に。いっしょにいたくなっちゃった」



千歌「その夢を、見たくなっちゃったんだね」



千歌「わたしも・・・・・・あのとき、夢を歌ったから」



千歌「・・・・・・もう一度だけ。やりたくなっちゃった」





千歌「・・・・・・スクールアイドルを・・・・・・」






曜「……ちか、ちゃん」


559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:20:33.88 ID:jWyG/GcGO



千歌「でも。・・・・・・夢はやっぱり、見るより、追いかけた方がいいもんね」



千歌「あの時、経験したこと。・・・・・・機械の私なら、全部再現できると思っていた」



千歌「いい夢、見ちゃえるって。・・・・・・夢、語れるって、思ったのかな」



千歌「でも。・・・・・・夢を語った私。・・・・・・それより、今≠追いかけて、夢を歌い続ける皆の方が」





千歌「・・・・・・輝いてる=E・・・・・人間、らしいよ」





善子「……うぅ」



鞠莉「ちか……」





560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:21:20.64 ID:jWyG/GcGO



梨子「……一つ。〈あなた〉に、言いたいことがあるんだ」




千歌「・・・なに?」





梨子「夢は、それを語る言葉から、生まれる」



梨子「……百の言葉を尽くして、夢を語った貴女から!……千の夢を歌う、私たちが生まれた!」





千歌「・・・・・・!」






梨子「あなたの目指した場所を、私も知りたいと思って!!」



梨子「私達は、目指した!……今≠焉A目指している!!」







梨子「ラブライブ!を!!」









千歌「・・・・・・」








「……だから……」


561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:22:10.67 ID:jWyG/GcGO

梨子「だ、だから……」グスッ


千歌「・・・・・・りこちゃん」


曜「……だから。大丈夫だよ、千歌ちゃん」


千歌「・・・曜ちゃん?」


果南「私ら、頑張るからさ」


花丸「千歌ちゃんが、いたこと。いること」


ダイヤ「……全部。わたくしたちの中に、刻み込みます」



千歌「・・・果南ちゃん。花丸ちゃん。・・・・・・ダイヤ、ちゃん」



ルビィ「だから。……もう、大丈夫」


千歌「・・・・・・ルビィちゃん」


鞠莉「私たち、ちゃんと、〈あなた〉の輝き=A知ってるから。……そりゃあ、こんな風に真似しちゃったら、説得力ないかもしれないけど」


千歌「鞠莉、ちゃん・・・・・・?」


善子「……輝く≠ゥら。……私たちも。……私たちなりに、ね」


千歌「・・・・・・よしこ、ちゃん」


562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:22:54.13 ID:jWyG/GcGO

善子「だ。だから。……だからぁ!」


善子「あなたはもう、夢を見なくていい!」



千歌「・・・・・・ゆめ?」



善子「そうだよ!……もう!!」


善子「もう、見ないで!・・・・・もう!!」


善子「もう!辛い思いをしないでぇ・・・・・・!!」



千歌「・・・・・・」


563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:23:25.07 ID:jWyG/GcGO


千歌「・・・・・・。辛くなんて、なかったよ」



千歌「わたしは。・・・・・・ほんとうに」





千歌「ほんとうに。しあわせ、だった・・・・・・」






千歌「最後に・・・・・・幸せな夢を、見せてもらった」



千歌「・・・・・・皆の、おかげで」


564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:24:07.76 ID:jWyG/GcGO


善子「……うそ!うそ!」


善子「だって!……私たちこそが、[亡霊]じゃない!!」



千歌「・・・・・・ぼうれい・・・・・・?」



善子「私たちこそが!……千歌にとって、ありえないはずのものだった……」



善子「……も……う。……[亡霊]なんて言葉じゃ、済まされない」



善子「わたしたち。……”悪霊”よ……!」




花丸「……」


梨子「……っ!」





千歌「・・・・・・」





善子「なんで。あなたの、思い出を……汚す、私たちなんかがいていいの」



善子「……私たちは……」






千歌「・・・・・・違うよ」



565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:25:13.44 ID:jWyG/GcGO


善子「……ぇ?」


千歌「私こそが、[亡霊]だった。・・・だって」


千歌「私は、自分の目的を果たした後も、この世にいたんだから。・・・・・・皆の姿を見た後でも、ここにいた」


千歌「答えを探した。探し続けた、皆の姿を見届けた後も。・・・・・・心残りなんてなくなった後もここにいた」



千歌「・・・・・・ほら。・・・・・・善子ちゃんの言う通り。・・・・・・わたしは、ぼうれいだったの」



善子「……そんな。そんなこと!」



千歌「・・・・・・」



善子「悪夢だったんじゃないの!?……私たちのせいで」


善子「イヤな夢を、見せたくない!……千歌には、イイ夢を見て欲しいよ!」




千歌「・・・・・・」





千歌「・・・・・・。・・・・・・・見てたよ」






千歌「見てたんだ。・・・・・・長い。長い・・・・・・」






566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:26:40.61 ID:jWyG/GcGO











ながい・・・・・・ゆめを。










567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:27:38.36 ID:jWyG/GcGO






千歌「・・・・・・でも。それも、もう終わり」


千歌「皆は、真実に辿り着いた。・・・・・・それとも、思い出したって言うべきかな」



梨子「……」






梨子(……いったい。この人は)


梨子(どれだけの時間を、過ごしてきたのだろう……)



梨子(どれだけの輝き≠……見届けてきたんだろう)





梨子(どんな、想いで。……夢を、見続けたんだろう)






梨子(どれだけの、気持ちを。………受け止めて、来たんだろう……)








568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:28:51.73 ID:jWyG/GcGO


千歌「・・・・・・でも、私は、もう体験しちゃってるんだから。そろそろ、本当の持ち主に……夢を、返す時だね」


梨子「本当の、持ち主……?」


千歌「モチロン。『高海千歌』のことだよ」


曜「!それって……」


千歌「私の、この、qoursでの[記録]は、ちゃんと残っている。・・・・・・それを渡してあげれば、明日から何の違和感もなく、Aqoursは続けられる」



鞠莉「……千歌≠ヘ、どうするの……?」



千歌「・・・・・・さあ。どうなるのかな」



千歌「さすがに、色々し過ぎたからね。消される・・・・・・ってことはないけど、皆の[記録]からは、多分いなくなると思う」


善子「そんな……!」


千歌「私も残念だけど。・・・・・・しょうがないよ」


千歌「これだけ、全ての[記録]や、町自体も作り直してまでやっていること。輝き≠探すこと」


千歌「その目的を考えると・・・・・・私の[記録]が残るとは考えにくい」


千歌「今までほっといてもらってたのも、なんだかんだ、オカルトだったり偶然の範疇で説明できて、真実を明らかにすることはなかったからだと思う」



千歌「・・・・・・でも、少なくとも。真似してる最中に、真似を成り立たなくするものが多すぎたら、実験としては失敗になっちゃうからね。そう考えると、やっぱりね」



569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:29:41.57 ID:jWyG/GcGO

ルビィ「……じ。じっけん」


千歌「・・・・・・ごめん。皆にとって、いい思いのする言葉じゃなかった」


花丸「でも。それじゃあ結局、真実は……」



千歌「・・・・・・今≠フ段階では。[記録]には残らないだろうね」



ダイヤ「……」


ダイヤ「では。……わたくしたちは、〈あなた〉にとって。……[亡霊]で、在り続けることになるのですか」





千歌「・・・・・・きっといつか。・・・・・・ちゃんと、自分たちの輝きを見つけた、〈あなたたち〉に会えるよ」





千歌「・・・・・・〈未来の私〉は、知ってるから」








ダイヤ「……う。う……」




570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:30:36.29 ID:jWyG/GcGO


善子「……私は。……ずっとわすれない」



千歌「・・・・・・ぇ」



善子「[記録]がなくなっても。記憶≠ノ」


善子「〈あなた〉を。覚え続ける……!」



千歌「・・・・・・よしこちゃん」



鞠莉「……トーゼンね……」



千歌「まりちゃん」



花丸「おらも……!」



千歌「はなまるちゃん」



果南「もちろん、私だって。……妹のこと、忘れるわけないもんね!」



千歌「かなんちゃん」



ルビィ「わたしたち。……あなたがいたから、ここにいるんだよね」



千歌「るびぃちゃん」



ダイヤ「そんな存在であるわたくしたちが、あなたのことを忘れることはあり得ない」



千歌「だいやちゃん」



曜「……あなたの輝き≠受けて。わたしたちは、その光を反射させるだけじゃない」


曜「単純に、誰かの鏡としての光じゃなくて。……わたしたちなりの。……わたしの、光を放ってみせる」



千歌「・・・・・・ようちゃん」



梨子「……あなたがそうしたように」




千歌「りこちゃん・・・・・・」




571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:31:06.75 ID:jWyG/GcGO




千歌「みんな。さいごに、あなたたちにあえて、よかった」





千歌「・・・・・『千歌』のこと。よろしくね」





千歌「わたしのせいで、まだ夢を見ていると思うから。・・・・・・起こして、一緒に夢を追いかけてあげて」







千歌「・・・・・・・・・・・・」









千歌「・・・・・・みんな。また、未来でね」










572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:31:41.20 ID:jWyG/GcGO










・・・・・・長い。ながい、夢を。・・・・・・ながいゆめを見ていた・・・・・・・








奇跡のような出会いをした、あの人。・・・・・・わたしの、ともだち・・・・・・。




すごく、キレイな指で。・・・すごく、キレイな手で。


キレイな音色を奏でてくれる、世界一のピアニスト。




わたしの、だいすきなともだちだった。





573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:32:25.12 ID:jWyG/GcGO


「ねぇ、大丈夫?」


「ん?・・・・・・いやぁ、大丈夫に決まってるよ」




「……嘘。……うそ、ばっかり」


「・・・・・・そんなこと、ないよ」


「……そんなこと、あるよ」


「・・・・・・そんなことないってば」


「…………ホントに、そんなことないの?」


「そうだよ!・・・・・・。ぜったい。・・・・・・そんなこと、ないんだから・・・・・・」


「……。じゃあ。そういうことに、しておくか!」


「・・・・・・なんだなんだ!?そういうことにしておくって!」


「ふふっ!……ねえ!」



574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:32:51.69 ID:jWyG/GcGO


「・・・・・・うん?・・・・・・なあ、に・・・・・・?」



「……。……、ありがとう。……あなたに、あえて」





「わたし。……しあわせだったよ」






「・・・・・・」





「ごめんね。……ありがとう」


「ありがと。……ち」






「・・・・・・ばか」




575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:33:22.33 ID:jWyG/GcGO


彼女は、人間のまま。・・・・・・人間の奏でる、音のまま。



ずっと。音楽を奏でて。・・・・・・静かに。最後には、沈黙の音さえも愛して。







・・・・・・わたしをのこして・・・・・・・・・







・・・・・・夢を、見ていた。


576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:34:18.96 ID:jWyG/GcGO


「……ああ。……〈あなた〉、なの……?」


「・・・・・・そうだよ」


「……。若い、まんまなんだねぇ……」


「・・・・・・うん」


「あは、はっ。……うらやましい、ねぇ……」



「・・・・・・ごめんね」



「……え?。……何が、ごめんねなんだい……?」




「私だけ。・・・・・・機械だから」


「……」



「私だけ。歳をとれなくって。・・・・・・一緒に。お婆ちゃんになっても一緒にいようって言ったのに」



「……」



「ごめんね。・・・・・・ごめんなさい」

577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:35:04.97 ID:jWyG/GcGO


「……違うよ」


「・・・・・・?」


「ありがとう、だよ。……こんな時、言う言葉は」


「・・・・・・っ」


「ありがとうしかないよ。……こんなふうに、お婆ちゃんになっても、一緒にいてくれて」


「しあわせだよ」


「・・・・・・」



「だいすきだよ。……ち、」



「・・・・・・・・・!」



「…………ち」




「……………」





「・・・・・・。私も」



「わたしも。・・・・・・だいすき。だいすき!」



578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:36:01.21 ID:jWyG/GcGO

ずっと一緒にいようって、言ったはずの人だった。


わたしのしんゆう。・・・・・・お婆ちゃんになっても、一緒に笑い合えるって。想っていた人だった。



・・・・・・その夢の中には。ずっと、皆がいた。





「う。う〜ん……」


「ほら。……待ったは、ナシですよ」


「いや、でも!……もっと、イイ手があるから……」



「・・・・・・なに、してるんですか?」


579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:36:37.44 ID:jWyG/GcGO


・・・・・・夢の中のその姉妹は。・・・・・・ずっと、遊んでいた。


遊びつくされた、ゲーム。・・・使い古された、それを。


・・・・・・もう、攻略され尽くされた、それを。・・・・・・何でか、二人は遊んでいて。


それを見た、私は。つい、質問しちゃったんだ。





「あの。・・・なんで。・・・・・・そんなゲーム、しているんですか」


「……そんな、とは?」


「あ。いや。・・・他意は、無いんですけど。・・・・・・・その。いわゆる。・・・・・・私は、そう思わないけど。・・・・・・いわゆる、時代遅れのゲーム、してるんですよね」




「・・・・・・もう。時代遅れの、つまらないゲームだって。必勝法だって、機械からすれば、全部わかってるゲームだなんて、言われるような・・・・・・」


580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:37:28.64 ID:jWyG/GcGO


「……ふふっ。時代遅れ、ですか……」



「……うーん。今日こそ、勝てると思ったのに」



「でも。……このゲームを、時代遅れにした、技術。……機械の力」


「それを、生み出したのは。……わたくしたち、時代遅れの。つまらない、皆でしょう……?」



「・・・・・・!そっか。うん。・・・・・・そう、だね」



「・・・・・・流石だね」



「ふふっ……当然、でしょう?」


「わたくしは。……〈あなた〉の仲間なのですからね」






・・・・・・その姉妹は。まるで、示し合わせたかのように。


姉が夢から去った後。・・・・・・妹も、後を追うように、去っていった。



姉と遊んでいた妹は。・・・・・・姉と同じくらい、立派になって・・・・・・。


でも、やっぱり姉と遊ぶ時に見せていたように。あの時と同じように、可憐なままだった。


・・・・・・私が可愛いと思った、あの時の面影だけは。ずっと、持っていた・・・・・・。


581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:38:15.30 ID:jWyG/GcGO


「わたくしたち、しあわせだったんです。……自分たちの、大好きを、言わせてくれる場所を作った、人に会えて」


「……あなたに、あえて」



「・・・・・・」



「だから。……頑張ルビィ、だよ」



「…………この年になって言うの。すごく、恥ずかしいけどね………」




「・・・・・・。かわいいから、いいんじゃない?」



「……もう。ふふっ」


「あんまり、わたくしのことからかっちゃダメですわよ?……わたくしだって」


「りっぱに、なったって。おねえちゃんにいってもらえたんだから……」



「・・・・・・ごめん」



「……ありがとう。だよ」



「・・・・・・」



「じゃあね。……皆に、よろしくね」



「・・・・・・うん。・・・・・・ありがとう」



「……ふふっ」






・・・・・・私の、幼馴染。・・・・・・私、たくさんお姉ちゃんがいるけど。



私の、もう1人のお姉ちゃん。・・・・・・最後の夢の時まで、あっけらかんとしてたな。


582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:39:15.32 ID:jWyG/GcGO


「………やー。また、さっきぶりに会ったね。……干物、いる?」


「・・・・・・いや、もういいって。・・・・・・それより・・・・・・・」


「・・・・・・機械の体に。・・・・・・改造、しなかったんだね」


「……あー。まあ、ね」


「どうして・・・・・・?」


「私。……やっぱさぁ、海が好きでさ」


「・・・・・・」


「海って。生身で潜ってこそだと思っちゃうんだよね!……古い、考え方だと思うけど」


「そんなこと、ないよ」


「・・・・・・。私も、そう思うよ」

583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:41:26.51 ID:jWyG/GcGO

「……ありがと。……じゃあ、わかるでしょ。……確かに、私。もう、よくないよ」


「機械に、なれば。……私、生きてけるのかもしれないけどさ」


「……やっぱ、皆に、生身で潜ってこそだよって言ってた身としてはさ!……貫き通したいんだ」


「・・・・・・頑固だね」


「……まあ、ね。……でも、体は固くないんだよ」


「なんなら、抱きしめてみてもいいよ?……こう見えて、柔らかくて気持ちいいって、評判なんだよ」


「・・・・・・だれからの評判だよ・・・・・・」


「……ん?もちろん!娘達とか、孫達とかからさ!」

584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:42:40.21 ID:jWyG/GcGO



「・・・・・・もう。家族の話ばっか、するんだから」


「……あはは。……いいぞ〜、家族は」


「わたし。……自分の体で、過ごせてよかったなって思える。……家族の、おかげでね」



「・・・・・・」




「……ゴメン。……こんな話、するべきじゃないって……〈あなた〉には、しちゃだめだって、わかってるけど」



「私にとっての家族は。……〈あなた〉も、そうだから」



「だから。……その、なんだろうな」


「……」



「・・・・・・大丈夫、だよ」



「……」



「もし、あなたが先に行っても。・・・・・・わたしは、ずっと、わたしのままだから」



「だから。・・・・・・心配、しなくても大丈夫だよ」


585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:43:48.92 ID:jWyG/GcGO



「…………そっか」




「うん。……安心したよ」


「じゃあ……。先に、行くね」



「・・・・・・うん」



「ありがと。……んじゃね」




「・・・・・・うんっ」





「……あ。そうだ」





「・・・・・・うん?」





「……や、やっぱ改めて言うとなると、その。……は、恥ずかしいけど。……その」


「……ハグ、しよ?」




「・・・・・・うんっ!」






そうして。あの人は、大好きな、海と家族に囲まれながら。


・・・・・・安らかに、眠った。
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:45:19.43 ID:jWyG/GcGO


「……ふぅ〜っ」



「・・・・・・お疲れ様です。住職さま」



「とっても素敵な説法でした。・・・・・・私、考えさせられました」



「……考え過ぎじゃないですか?」



「・・・・・・え?」



「……私、常々思っていたんです。……頑張り過ぎじゃないか、大丈夫ずらか……って」



「・・・・・・ずらか」



「……。そこには触れませんが。……一つ。貴女にこそ、話しておきたいことがあります」



「・・・・・・私にこそ?」



「はい。……『所詮人間は一人』……私が、先程お話した言葉ですが」


「きっと。機械の体をもち、生き続けるあなたにこそ、この言葉の意味がわかってしまうと思います」



「・・・・・・」


587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:46:00.79 ID:jWyG/GcGO


「……いえ。……ちょっと、語弊がありますね。……機械だから、というところは間違いです」


「…………。〈あなた〉だからこそ。………全てを見届けようとする、貴女だからこそ。……先の言葉の意味、解ってしまう気がします」



「・・・・・・」



「……さきの言葉、私が考えるに……《逆》なんです」


「・・・・・・《逆》?」



「はい。……きっと、人間は」


「どんなに頑張っても、逃れられない。……思い出と、家族と。……友達との、……様々な、関係から」



「・・・・・・」



588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:46:31.15 ID:jWyG/GcGO


「そこから、独立することが、出来ない。……独りになることへの、渇望」


「逃れられないからこそ、言い聞かせる必要がある。……独りなんだ、と」


「それこそが、悟りへの渇望なんです。……あらゆる関係性に、私達は、いつの間にか絡めとられてしまう」


「そのせいで、色んな煩悩に、私達は惑わされる。……執着を、する」



「・・・・・・」



「でも。……きっと、あなたは出来てしまう」


「執着から……逃れることが……」



「・・・・・・」



589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:47:30.51 ID:jWyG/GcGO


「……色々なものを自在に変えられる存在。それが、今のあなたなんですよね」



「・・・・・・うん」



「……なら、いつか。……あなたは、誰にも絡めとられることのない……本当の意味での、独り≠ノなってしまうかもしれない」




「……わ、わたしは。……おらは……それが、辛い……」




「・・・・・・大丈夫だよ」



「………え?」



「だって。その時なら」


「《逆》も、あり得るかもしれないじゃん」



「……《逆》」



「・・・・・・私は、機械に近づいた人間だけど。・・・・・・もしかしたら、人間に近づいた、機械があるかもしれない」



「そしたら。・・・・・・きっと」



「わたし。友達になれるかなって思うんだ」




「……」




「だから。・・・・・・大丈夫だよ」






「……そうだよね。あなたなら、大丈夫だよね」



590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:47:58.26 ID:jWyG/GcGO


「…………。〈あなた〉なら。きっと、だいじょうぶずら!」



「・・・・・・うん!そうずら!!」



「……あ!真似した!」


「うん!真似しちゃった!?」


「バカにしてる!?」


「バカにしてない!!」


「そっか!」


「そうだよ!!」





・・・・・・お寺の。凄くきれいで、可愛くて、ちょっぴり食いしん坊な、かしこいあの人も。



気が付いたら。・・・・・・夢の中から旅立って、いった。




591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:49:05.53 ID:jWyG/GcGO


そして。夢は、流れて。



・・・・・・あの人も、ついに・・・・・・



私を助けてくれた、あの人もついに。





「……これまで、ね」


「・・・・・・そうなの?」


「うん。……そうは、見えないと思うけど」


「うん。・・・・・・私より、キレイだもん」


「あはは……。サイボーグに、そんな言葉、通じないわよ」


「そう、なの・・・・・・?」


「そうよ。……ねえ、あのね?」


「うん・・・・・・?」




「ごめんね。……責任を、果たせなくて」




592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:49:43.39 ID:jWyG/GcGO


「・・・責任・・・?」



「そう、責任。……私、責任があるの」


「……機械の、技術を。……発展させた、その責任が……」


「技術の発展は、確かに皆に便利をもたらした……」


「でも、幸せはもたらせなかった……」


「残したのは……不幸のほう……。だから……」



「・・・・・・。だから、〈あなた〉は生き続けたの?」



「自分を。・・・・・・機械の体にしてまでも。・・・・・・ムチャな、改造を自分にしてまでも」



593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:50:19.87 ID:jWyG/GcGO


「……当然でしょ……?」



「わたしが、自分から受けなきゃ。……新しい技術があるんなら、私が、その被験者にならなきゃ」


「発展させた、張本人なんだから。……私が、受けなきゃ、いけないの」


「結果として。……皆の、存在意義は、見失われてしまったから……」


「皆を、見届けなきゃいけないんだから……」




「・・・・・・そうやって。自分を責めないでよ!」




「…………!!」



594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:51:30.58 ID:jWyG/GcGO


「私は、感謝してるんだよ。・・・・・・私の命、長くしてくれた・・・・・・!」



「……」



「・・・・・・これ。あなたがくれた、ペンダントだよ・・・・・・」


「……まだ。持ってたんだ」


「当たり前だよ。・・・・・あなたの運転で見に行った、あの時の。・・・・・・皆の、9個の星があるんだからね」


「………」



「・・・・・・この写真、撮れたの。・・・・・・あなたの、お陰なんだよ・・・・・・」



「わたしが、あの日。・・・・・・交通事故にあって、手が・・・・・・」



「………」



「でも。・・・・・・あなたが機械の手を。・・・・・・本当に、人間そっくりな手を、くれたから」



「私の家族に・・・・・・姉妹に、触れられて。一緒に、大人になった私の写真を撮れたんだ」



「………」




「・・・・・・最期に。あの子を撫でられた」




「あなたの、おかげなんだよ」



「………そう」


「・・・・・・ん」




595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:52:24.50 ID:jWyG/GcGO


「………ねえ」



「・・・・・・ん?」



「わたし、頑張ったのかな……?」




「え・・・・・・」




「………わたし、頑張れたのかな……?」







「・・・・・・頑張ったよ。・・・・・・誰よりも、頑張った」



「………そう。……よかっ、た」



「・・・・・・」



「でも。……わたしより、もっと頑張っちゃう、〈あなた〉を、残していくのは、心配だよ……」




「・・・・・・」


596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:53:11.60 ID:jWyG/GcGO

「わたしなら、大丈夫、・・・・・・一緒にいてくれる、人がいるから」


「……ふふっ。そうね。誰よりも、善い子がいるもんね」




「……そ、れで。……本当に、見届けるつもりなの?……最後まで……人間の……。生末、を」




「・・・・・・うん。・・・・・・あなたに代わって、やり遂げるよ」




「そう……。そうよね」


「あなたは、そういう人だもんね……」



「……ありがとう」



「・・・・・・うぅん」





「……。じゃあ……私は、先に、皆に会いに行くね」



「うん。・・・・・・ありがとう」



「こちらこそ。……また、ね」










そう言って、誰よりも仲間を愛した彼女は。


一足先に、仲間の元へと旅立って行った。



597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:53:50.61 ID:jWyG/GcGO





「はぁ。……もう、意地っ張りなんだから」


「私の周り、皆そう。……自分が辛くても、周りに見せようとしないで、耐えて耐えて、歯を食いしばって前に進んでいく人ばっかり」



「……少しは。……仲間に頼って、任せればいいのに」



「……〈あなた〉もそう思わない?」







ぶっきらぼうな口調で、愚痴を言っているのは。


私と同じ時期に、機械の体になった。サイボーグの、女の子だ。





598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:54:46.84 ID:jWyG/GcGO



「・・・・・・ホントだね」



「でも、〈あなた〉の言うことじゃないと思うよ。・・・・・・こんな、ムチャして・・・・・・」



「サイボーグと、アンドロイドの戦いを止めちゃったんだからね」




「……」




「知ってる?『天使』って呼ばれてるんだよ。・・・・・・羽を生やしたり、無茶苦茶な改造をして、一番人間離れした姿になって」


「でも、最後は、人間の姿になって。争いを、止めるように訴えた、〈あなた〉のこと。・・・・・・皆、『天使』だって」



「……なんにもわかってないじゃない、それ言ってる連中は」


「私は、カッコイイ羽を泣く泣く取って、地上に舞い降りたのよ。……そんな存在は、天使じゃなくてむしろ、《逆》の存在でしょ!」



「・・・・・・《堕天使》・・・・・・?」



「そういうこと!……流石に、よくわかってるじゃない、リトルデーモン?」


「いや違うけど」


「否定早いな!」


599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:55:30.00 ID:jWyG/GcGO



彼女とは、ずっと一緒にいた。




長い、長い、時を。気の遠くなるような道のりを。




私たちは、共に歩んできた。




意外と言えば意外かもしれない。・・・・・・まさか、彼女と過ごした日々が、一番長くなるなんて。






近い寿命を持って。サイボーグという存在で。












・・・・・・これからも、ずっと一緒にいれると思っていた。









600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:56:34.33 ID:jWyG/GcGO


「・・・・・・そうやって、誤魔化そうとして。やっぱり、人のこと言えないね」



「…………だって」



「本当に辛いのは、〈あなた〉のはずじゃない……」



「・・・・・・」



「辛いのに、頑張って。頑張って頑張って。……いつもどーでもいいことで泣いたりするくせに、一番大事なことは、辛くても、笑って何とかしようとする」




「……機械になってでも。……輝き≠見届けようとする」




「自分たちにしか、出来ないことなんて。もう、あり得なくなった」


「何でも、真似ができる。……どんなものも、それだけにしか出来ないことは、なくなってしまったこの時で」


「それでも、生きる意味≠見出そうとする存在がたった一つでもあるなら。……その姿を、見届けたいだなんて」




「・・・・・・」



601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:57:07.73 ID:jWyG/GcGO


「……せっかくの機械の体なんだから、もっと楽しいことに使ったらいいのに」


「ただ、耐えて、見届けるために、生き延びるために、手に入れるようなものじゃないでしょ?」


「……あなたも。……『理事長』も。……皆、意地っ張りなんだから……」


「サイボーグになるのは意地っ張りって、相場が決まってるのかしら」



「・・・・・・それを言ったら〈あなた〉だってそうじゃん」


「私は、別に……。ただカッコイイと思ったから、こうなったってだけよ」


「ツバサを生やせるなら。……やっちゃおうって、気になるでしょ?」



「・・・・・・」



「……。何とか言いなさいよ」


602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:57:57.71 ID:jWyG/GcGO


「……」



「確かに、人間そっくりな手になった。・・・・・・でも、やっぱり、怖かった」


「部分的にでも、機械になった私を・・・・・・。皆が、受け入れてくれるのか・・・・・・」



「…………」



「あの人と、あなたは。・・・・・・ほとんど、同じ時期に、サイボーグになったよね」



「…………」



「・・・・・・私のため、だったんだよね」



「…………」



「私が、奇異の目で見られないように。・・・・・・私一人だけ、孤独な思いをしないように」



「私を、受け入れるために。・・・・・・やってくれた、ことなんだよね」



603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:02:42.43 ID:jWyG/GcGO



「・・・・・・私がこの体になっていった、キッカケの、あの時のことだよ」


「・・・・・・あの時。あなたは、どこも悪いところがないのに、サイボーグになった……」



「……さあ。どうだか。[証拠]もないのに、よくそんな恥ずかし気なこと、言えるわね」



「・・・・・・[証拠]は、あるよ」


「……どこに……ってうわぁ!急にくっつかないでよ!」



「・・・・・・目の前に、だよ」



「……え?」


「だって。顔に出るんだもん。・・・・・・あなたって」




「……。私の、表情が、そんな、表情をしていたとでもいうの?」


「そうだよ」



「……あり得ない。……私は、サイボーグ。……顔の表情も、それを形作る元々の感情ですらも、パラメーターとして、制御できる」



「だから。……きっと、見間違いよ」


604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:03:28.04 ID:jWyG/GcGO


「・・・・・・じゃあ。・・・・・・音だったら・・・・・・・?」



「………音?」



「あなたの胸に。響いている、この音・・・・・・。あなたの鼓動の、音」



「優しい音。・・・・・・あなたの、音。・・・・・・すっごい、バクバクいってるけど?」



「……う」



「どうして、こんなに怖がってるの・・・・・・?」









「……だって」




「だって。あなたを、置いていけない。……もう、終わりだなんて思いたくない」




「・・・・・・」



605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:04:51.41 ID:jWyG/GcGO


「ごめん……」



「・・・・・・え?」















「ごめん。あなたとずっと一緒にいられなくて」
















「・・・・・・」





606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:05:49.58 ID:jWyG/GcGO


「・・・・・・ありがとう」



「え……」



















「わたしとずっと一緒にいてくれて、ありがとう」



















607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:06:57.92 ID:jWyG/GcGO


「……う。うぅううぅぅ!」



「・・・・・・ゥ」



「ばかっ!……ばかぁ………!!」



「・・・・・・グスッ」




「そんなの、《逆》よ!!わたしの方が……ずっと一緒にいてくれて、ありがとうよ!!」



「わたしを、受け入れてくれて……!!……ありがとう、なのに……!」




「・・・・・・ごめん」


「だから!こっちがごめんだってば!」


「・・・・・・ありがとう」


「だからぁ!……こっちがありがとうだって!」





「・・・・・・終わんないじゃん・・・・・・」



608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:07:46.34 ID:jWyG/GcGO



「いいの!終わんなくていいの!……ずっと、ずっと続けばいいの……」



「・・・・・・ずっと、続けるの?」



「ずっと。……そしたら、ずっと、一緒にいれる」














「ずっと。……わすれな、い……」













「・・・・・・っ」




609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:08:30.90 ID:jWyG/GcGO




「ねえ。……私でも、よかったの……?」





「・・・・・・え?」





「わたしでも……よかった、の?」





「・・・・・・〈あなた〉で。よかったよ」











「……そう」



「………よかった」




610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:09:29.17 ID:jWyG/GcGO




「・・・・・・ねえ?」





「……」





「・・・・・・ねえっ!」





「………」






「・・・・・・。ねぇ」







「…………」







「・・・・・・・・・ッ!!」



「・・・」




「・・・・・・」


611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:10:25.94 ID:jWyG/GcGO






「・・・・・・。ずっとわすれない」







「わすれないよ。でも。・・・・・・・やっぱり」




「やっぱり。・・・・・・いや」





「いやだよ」


「いやなんだってば」


「いやなんだよ」













「・・・・・・いや、だ」






612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:11:13.14 ID:jWyG/GcGO



「いやだ。・・・・・・いかないで!」




「わたしと。ずっといっしょにいて・・・・・・!!」






「わたしを・・・・・・一人にしないでよ」








「わたしと、いっしょにいてよ・・・・・・!」















「よ、・・・・・はね、ちゃん・・・・・・」

613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:13:08.53 ID:jWyG/GcGO



「・・・・・・」






「・・・・・・・・・・・・」










「…………」




「……。……ちがうわよ。わたしは、よはねじゃなくて」




「・・・・・・っっ!!」










「わたしの、なまえは…………」










「……………」












堕天使は。それはそれはキレイな姿で。


私の大好きな、姿のまま。


天使に戻って。・・・・・・天に、帰っていった。



614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:14:13.09 ID:jWyG/GcGO




・・・・・・それからも。私は一人で、輝き≠見続けてきた。





長い、長い時を。旅してきた。




いつのものだっただろう、だれのものだっただろう?




[記録]には残っているはずのものが。だんだん、記憶≠ゥら消えていった。










それでも、ずっとおぼえていることがある




あれは・・・・・・だれだったんだろう?








誰のものかわからない、言葉と歌が、でも、ずっと残っている。








615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:15:02.76 ID:jWyG/GcGO



「どうして、歌を歌い続けているんですか」




「・・・・・・好きだから、かな」




「好きだから・・・・・・」





「それに。・・・・・・歌を歌ってるとね、本気で思えるんだ」







「いつだって飛べる。あの頃のようにって」








「・・・・・・飛べる・・・・・・」


「あなたも、そうじゃないかな?」


「・・・・・・そう、ですね」


「あなたは、見届けるつもりなんだよね。・・・・・・皆が、どこに行き着くのか」


「・・・・・・はい」


「そっかぁ。・・・・・・タイヘンだね」


「・・・・・・はい」


「でも、挫けないでね。私、応援してるよ」







「・・・・・・ファイトだよ!」







「・・・・・・はい!」



616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:15:51.23 ID:jWyG/GcGO





・・・・・・ながい。ながい、じかんをかけて。





ながい。ながい、ゆめを。・・・・・・ながいゆめを、みてきた・・・・・・。





そして、そのゆめのさいごには。





[記録]に残っていない、記憶≠ノしかなかった、あの日々が。









・・・・・・輝き≠目指した、あの日々が。
















私の目の前に、広がっていたんだ。






617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:16:43.26 ID:jWyG/GcGO



……ヵ、……ヵっ!



……ちかっ!……ち……ちかっ、ちゃん……!





ちか!ちかちゃん!……ちか!!!






「……ぁ、れ……?」








善子「千歌!!」



千歌「……ぇ……?」










目が覚めた時。そこは、知らないんだけど知っている……。


いつもの、風景が。


でも、目覚めたら。


違う朝が、笑いかけていた。




618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:17:35.76 ID:jWyG/GcGO



果南「よかった。……ようやく、目が覚めたんだね」


千歌「え、ええっと……。ここって……」


鞠莉「……まだ、寝ぼけてるの?」


千歌「……いや。……うん、そうかも」


ダイヤ「……大丈夫ですの?」


千歌「え?……何が……?」


ルビィ「……千歌ちゃん。泣いてたんだよ」



千歌「……ぇ?」








言われて、ようやく意識した。



自分の……私の、ことを。



私の頬には、つぅっと、垂れているものがあった。



冷たくて。でも、暖かい。……水の、跡が、ここにはあった。




619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:19:10.11 ID:jWyG/GcGO

千歌「……そっか。……私、泣いてたんだ」


善子「……そんなことにも気づかなかったの?……まったく、心配させないでよね」


千歌「しんぱい……?」


善子「あっ。えっと、その。それは、何というか……」



花丸「善子ちゃん、千歌ちゃんが起きなくて、急に千歌ちゃんの目から涙が出てくるものだから、すごくうろたえてたんだよ」


花丸「悪い夢でもみてるんじゃないかーって」

善子「あ、ちょっ、ずら丸!何てこと言うのよ!」

ルビィ「……照れなくてもいいのにぃ」


善子「……う、う。うるさーい!!」




千歌「あはは……」












元気な1年生たちを見ながら、私は自分の記憶≠思い出していた。


……そうだ。昨日、2人で合宿の続きをしてたんだけど、私が何も思い浮かばなくて。



結局、皆を巻き込んで。急遽みんなで合宿をすることになったんだ。





あーでもない、こーでもないって言いながら……それでも、皆で一つのものに辿り着いたんだ。







620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:19:54.63 ID:jWyG/GcGO


千歌「……うぅん。でも、いい夢だったなぁ〜」


曜「……千歌ちゃん。どんな、夢だったの?」

千歌「うん?」


曜「……泣いてたけど。でも、良い夢だったんだよね?」


曜「……それって、どんな夢?」


千歌「……ああ、えっとね」


千歌「あんまり思い出せないんだけど……」






千歌「……私に、そっくりな人が出てきたの」



621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:20:37.45 ID:jWyG/GcGO



千歌「その人は、頑張って、頑張って。……色んなものを見続けて、頑張って頑張って」





千歌「いっぱい辛いこともあったけど。いっぱい、幸せだった」






千歌「最後に……夢の中なのに、夢を見てて」




















「私の背中を、押してくれた」















「……そんな、夢」






622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:21:17.30 ID:jWyG/GcGO



「……それって、もしかしたら」




千歌「……?」





梨子「未来のあなたが知ってることなのかもね」




千歌「……未来の……」





623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:22:08.20 ID:jWyG/GcGO




・・・・・・そう・・・・・・














未来の僕らは知ってるよ













・・・・・・だから・・・・・・




624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:22:52.08 ID:jWyG/GcGO



「本気で駆け抜けて、ね?」







「私、見届けるよ。だから・・・・・・」












千歌=u夢をつかまえにきてね!!」







625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:23:44.21 ID:jWyG/GcGO


おしまい


626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:28:16.54 ID:jWyG/GcGO
酒飲みながら書くとこういう冗長で不可解なものが出来上がってしまう。

こんな拙い文章でも、もし読んでくれた方がいたとしたら、その方には心よりお礼申し上げます。
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/06(土) 20:50:19.50 ID:mgQExjaWO

感動した
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/07(日) 01:16:07.32 ID:KQNCRl690
大切な仲間達との別れから始まった旅路、それを終わらせてくれたのも大切な仲間達。色々と考えさせられるなぁ
あ、乙です
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/17(金) 13:03:55.24 ID:CmZ2xfIdO
何が書きたいのかさっぱり分からない
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